説明

NPYY5受容体拮抗作用を有するアザベンゾオキサゾール誘導体

【課題】新規なNPYY5受容体拮抗作用を有する化合物の提供。
【解決手段】


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキル等であり;pおよびqはそれぞれ独立して、0または1であり;−X=X−X=X−は、−C(R)=C(R)−N=C(R)−等であり;R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン等である。)で示される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はNPY Y5受容体拮抗作用を有し、医薬、特に、抗肥満薬として有用な新規なアザベンゾオキサゾール誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は除脂肪体重に対して体内に過剰な脂肪あるいは脂肪組織が蓄積した状態と定義されており、健康問題の主なリスクファクターと認識されている。身体質量指数(BMI)は成人(15歳以上)の集団あるいは個人を過体重や肥満に分類する際に共通して使用されている身長体重比の単純指数である。メートルで表す身長の二乗で割ったキログラムで表す体重(kg/m)として定義されている。世界保健機関では、BMIが25kg/m以上を「過体重」、30kg/m以上を「肥満」としている。一方で、日本肥満学会ではBMIが25kg/m以上を「肥満」としている。なぜなら、糖尿病や脂質異常症を含む肥満関連疾患の数がBMIに応じて増加する、そしてその疾患の数の平均値がBMIが25kg/mにおいて1.0以上になるためである。世界保健機関による2005年の調査では、世界中で、約16億人が過体重、少なくとも4億人が肥満であるとされている。肥満は主に身体的活動や日常生活における消費に対するカロリー摂取の割合の増加によってもたらされる。近年の高脂肪、高糖分含有食物の摂取増加により肥満者数は増加しており、2015年には世界中で、7億人以上が肥満と診断されると予想されている。
【0003】
ニューロペプチドY(以下、NPYとする)は36個のアミノ酸残基からなるペプチドで、1982年に豚の脳から分離された。NPYはヒトおよび動物の中枢神経系および末梢組織に広く分布している。
これまでの報告において、NPYは中枢神経系においては摂食促進作用、抗痙攣作用、学習促進作用、抗不安作用、抗ストレス作用等を有していることが判明しており、さらにうつ病、アルツハイマー型痴呆、パーキンソン病等の中枢神経系疾患に深く関与している可能性もある。また、末梢組織においては、NPYは血管等の平滑筋や心筋の収縮を引き起こすため、循環器系障害にも関与していると考えられる。さらには肥満症、糖尿病、ホルモン異常等の代謝性疾患にも関与していることが知られている(非特許文献1参照)。従って、NPY受容体拮抗作用を有する医薬組成物は上記のようなNPY受容体が関与する種々の疾患に対する予防または治療薬となる。
NPY受容体には、現在までにY1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6のサブタイプが発見されている(非特許文献2参照)。Y5受容体は少なくとも摂食機能に関与しており、その拮抗剤は抗肥満薬になることが示唆されている(非特許文献3〜5参照)。
【0004】
特許文献1および3〜5には、NPY Y5受容体拮抗作用を有するアザベンゾオキサゾール誘導体として、1化合物が開示されている。特許文献1〜5には、NPY Y5受容体拮抗作用を有するベンゾオキサゾール誘導体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/125952号
【特許文献2】国際公開第2008/134228号
【特許文献3】国際公開第2009/54434号
【特許文献4】米国公開第2010/273841号
【特許文献5】日本公開公報2010/270114号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Trends in Pharmacological Sciences, Vol.15, 153(1994)
【非特許文献2】Trends in Pharmacological Sciences, Vol.18, 372(1997)
【非特許文献3】Peptides, Vol.18, 445(1997)
【非特許文献4】Obesity, Vol.14, No.9, A235(2006)
【非特許文献5】Obesity, Vol.15, No.9, A57(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、代謝を受けにくい優れたNPY Y5受容体拮抗作用を有する化合物として、新規アザベンゾオキサゾール誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、代謝を受けにくい優れたNPY Y5受容体拮抗作用を有する化合物として、新規アザベンゾオキサゾール誘導体の合成に成功した。また、該化合物が強い摂食抑制効果を示すことを見出した。さらに、本発明者らは、本発明化合物について、薬物代謝酵素に対する阻害が少なく、水溶性が良いことも見出した。また、本発明化合物は毒性が低く、医薬として使用するために十分安全である。
【0009】
すなわち、本発明は、以下に関する。
(1)式(I):
【化1】


(式中、
は置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換アミノであり、
pおよびqは、それぞれ独立して0または1であり、
−X=X−X=X−は、
−C(R)=C(R)−N=C(R)−、
−C(R)=C(R)−C(R)=N−、
−N=C(R)−N=C(R)−、
−N=C(R)−C(R)=N−、
−C(R)=N−N=C(R)−、
−C(R)=N−C(R)=N−または
−C(R)=C(R)−N=N−であり、
、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシまたはシクロアルキルアルキルオキシである。)で示される化合物またはその製薬上許容される塩。
(2)X、X、XおよびXの炭素原子のうち少なくとも1つが、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシまたはシクロアルキルアルキルオキシで置換されている、上記(1)記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
(3)pが1であり、qが0である、上記(1)または(2)記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
(4)Rが置換もしくは非置換のアルキルである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
(5)−X=X−X=X−が、
−C(R)=C(R)−N=C(R)−または
−C(R)=C(R)−C(R)=N−である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
(6)−X=X−X=X−が、
−C(R)=C(R)−C(R)=N−である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩を含有する医薬組成物。
(8)NPY Y5受容体拮抗作用を有する、上記(7)記載の医薬組成物。
(9)NPY Y5受容体が関与する疾患の治療および/または予防に使用するための、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の化合物、またはその製薬上許容される塩。
(10)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の化合物、またはその製薬上許容される塩を投与することを特徴とする、NPY Y5受容体が関与する疾患の治療および/または予防方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明化合物はNPY Y5受容体拮抗作用を示し、医薬品、特にNPY Y5の関与する疾患、例えば、摂食障害、肥満症、神経性食欲昂進症、性的障害、生殖障害、鬱病、癲癇発作、高血圧、脳溢血、鬱血心不全または睡眠障害等の治療または予防のための医薬として非常に有用である。また、本発明化合物は有効な摂食抑制作用を示すことから、肥満症における体重管理、体重減量、体重減量後の体重維持のために非常に有用である。さらに、肥満がリスクファクターとなる疾患、例えば糖尿病、高血圧、脂質異常症、動脈硬化、急性冠症候群等の治療または予防のための医薬として非常に有用である。加えて、アザベンゾオキサゾール誘導体は、ベンゾオキサゾール誘導体に比べ代謝を受けにくく、安全性の高い医薬として非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本明細書中で使用する各用語を説明する。なお、本明細書中、各用語は単独で使用されている場合もまたは他の用語と一緒になって使用されている場合も、特に記載の無い限り、同一の意義を有する。
【0012】
「アルキル」とは、炭素数1〜10の直鎖または分枝状の炭化水素基を意味する。炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜3のアルキル等を包含する。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、n−へプチル、イソヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、n−ノニル、n−デシル等が挙げられる。
における「アルキル」としては、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル等が挙げられる。特に、エチル、イソプロピル、tert−ブチル等が好ましく、さらにはtert−ブチル等が好ましい。
、R、RおよびRにおける「アルキル」としては、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル等が挙げられる。特に、メチル、エチル等が好ましく、さらにはメチルが好ましい。
【0013】
「アルケニル」とは、任意の位置に1以上の二重結合を有する炭素数2〜10の直鎖または分枝状の炭化水素基を意味する。炭素数2〜8のアルケニル、炭素数3〜6のアルケニル等を包含する。例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、プレニル、ブタジエニル、ペンテニル、イソペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル、イソヘキセニル、ヘキサジエニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル等が挙げられる。
【0014】
「アルキニル」とは、任意の位置に1以上の三重結合を有する炭素数2〜10の直鎖状または分枝状の炭化水素基を意味する。炭素数2〜6のアルキニル、炭素数2〜4のアルキニル等を包含する。例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等が挙げられる。アルキニルは任意の位置の1以上の三重結合の他、さらに二重結合を有していてもよい。
【0015】
「シクロアルキル」とは、炭素数3〜8の環状飽和炭化水素基、およびこれらの環状飽和炭化水素基にさらに3〜8員の環が1または2個縮合した基を意味する。炭素数3〜8の環状飽和炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチルが挙げられる。特に、炭素数3〜6のシクロアルキル、炭素数3または4のシクロアルキルが好ましい。
炭素数3〜8の環状飽和炭化水素基に縮合する環としては、非芳香族炭素環(例えば、シクロアルカン環(例:シクロヘキサン環、シクロペンタン環等)、シクロアルケン環(例:シクロヘキセン環、シクロペンテン環)等)、非芳香族複素環(例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等)が挙げられる。なお、結合手は、炭素数3〜8の環状飽和炭化水素基から出ているものとする。
例えば、以下の基もシクロアルキルに例示され、シクロアルキルに含まれる。なお、これらの基は置換可能な任意の位置で置換されていてもよい。
【化2】


【化3】


【化4】

【0016】
「シクロアルケニル」とは、炭素数3〜8個の環状不飽和脂肪族炭化水素基、およびこれらの環状不飽和脂肪族炭化水素基にさらに3〜8員の環が1または2個縮合した基を意味する。炭素数3〜8個の環状不飽和脂肪族炭化水素基としては、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロヘキサジエニル等が挙げられる。特に、炭素数3〜6のシクロアルケニル、炭素数5または6のシクロアルケニルが好ましい。
炭素数3〜8の環状不飽和脂肪族炭化水素基に縮合する環としては、炭素環(芳香族炭素環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等)、非芳香族炭素環(例えば、シクロアルカン環(例:シクロヘキサン環、シクロペンタン環等)、シクロアルケン環(例:シクロヘキセン環、シクロペンテン環等)等))、複素環(芳香族複素環(ピリジン環、ピリミジン環、ピロール環、イミダゾール環等)、非芳香族複素環(例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等)が挙げられる。なお、結合手は、炭素数3〜8の環状不飽和脂肪族炭化水素基から出ているものとする。
例えば、以下の基もシクロアルケニルとして例示され、シクロアルケニルに含まれる。なお、これらの基は置換可能な任意の位置で置換されていてもよい。
【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。特にフッ素および塩素が好ましい。
、R、RおよびRにおける「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素等が好ましく、特にフッ素、塩素が好ましい。
【0017】
「アルキルオキシ」のアルキル部分は、上記「アルキル」と同意義である。
「ハロアルキル」および「ハロアルキルオキシ」とは、アルキルおよびアルキルオキシのアルキル部分に、1〜5個(好ましくは、1〜3個)の上記「ハロゲン」が置換可能な任意の位置に置換した基を意味する。
、R、RおよびRにおける「ハロアルキル」としては、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2,2,2−トリクロロエチル等が挙げられる。特にトリフルオロメチル等が好ましい。
、R、R、およびRにおける「ハロアルキルオキシ」としては、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2,2,2−トリフルオロエチルオキシ等が好ましい。
【0018】
「シクロアルキルオキシ」のシクロアルキル部分は、上記「シクロアルキル」と同意義である。
「シクロアルキルアルキルオキシ」のシクロアルキル部分は上記「シクロアルキル」と同意義であり、アルキル部分は上記「アルキル」と同意義である。
【0019】
「置換アルキル」、「置換アルケニル」、「置換アルキニル」、「置換シクロアルキル」、「置換シクロアルケニル」の置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、ニトロソ、シアノ、アジド、ホルミル、アミノ、カルボキシ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、置換アミノ、置換カルバモイル、置換スルファモイル、置換アミジノ、式:−O−Rで示される基、式:−O−C(=O)−Rで示される基、式:−C(=O)−Rで示される基、式:−C(=O)−O−Rで示される基、式:−S−Rで示される基または式:−SO−Rで示される基(ここでRは、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、カルバモイル、スルファモイルまたはアミジノ)が挙げられる。これらの置換基で、置換可能な任意の位置が1〜数個、置換されていてもよい。
「シクロアルキル」、「シクロアルケニル」および「ヘテロサイクリル」は、置換可能な任意の位置がオキソ、チオキソまたは置換もしくは非置換のイミノで置換されていてもよい。
【0020】
「置換アミノ」、「置換カルバモイル」、「置換スルファモイル」、「置換アミジノ」および「置換イミノ」の置換基としては、ヒドロキシ、シアノ、ホルミル、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、カルバモイル、スルファモイル、アミジノ、式:−O−Rで示される基、式:−C(=O)−Rで示される基、式:−C(=O)−O−Rで示される基、または式:−SO−Rで示される基(ここでRは、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロサイクリル)が挙げられる。これらの置換基で、置換可能な任意の位置が1〜2個、置換されていてもよい。
【0021】
「アリール」とは、単環または多環の芳香族炭素環式基、およびこれらの単環または多環の芳香族炭素環式基にさらに3〜8員の環が1または2個縮合した基を意味する。単環または多環の芳香族炭素環式基としては、例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリルが挙げられる。特にフェニルが好ましい。
単環または多環の芳香族炭素環式基に縮合する環としては、非芳香族炭素環(例えば、シクロアルカン環(例:シクロヘキサン環、シクロペンタン環等)、シクロアルケン環(例:シクロヘキセン環、シクロペンテン環等)等)、非芳香族複素環(例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等)が挙げられる。なお、結合手は、単環または多環の芳香族炭素環式基から出ているものとする。
例えば、以下の基もアリールとして例示され、アリールに含まれる。なお、これらの基は置換可能な任意の位置で置換されていてもよい。
【化9】


【化10】

【0022】
「ヘテロアリール」とは、O、SおよびNから任意に選択されるヘテロ原子を環内に1以上有する単環または多環の芳香族へテロ環式基、およびこれらの単環または多環の芳香族へテロ環式基にさらに3〜8員の環が1または2個縮合した基を意味する。
「単環の芳香族ヘテロ環式基」としては、特に5員または6員のヘテロアリールが好ましく、例えば、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアゾリル、トリアジニル、テトラゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、フリル、チエニル等が挙げられる。
「多環の芳香族ヘテロ環式基」としては、特に5員または6員の環が縮合したヘテロアリールが好ましく、例えば、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、プリニル、プテリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、イミダゾピリジル、トリアゾロピリジル、イミダゾチアゾリル、ピラジノピリダジニル、オキサゾロピリジル、チアゾロピリジル等の2環の芳香族へテロ環式基;カルバゾリル、アクリジニル、キサンテニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、ジベンゾフリル等の3環の芳香族へテロ環式基等が挙げられる。多環の芳香族へテロ環式基である場合、結合手をいずれの環に有していてもよい。
単環または多環の芳香族へテロ環式基に縮合する環としては、非芳香族炭素環(例えば、シクロアルカン環(例:シクロヘキサン環、シクロペンタン環等)、シクロアルケン環(例:シクロヘキセン環、シクロペンテン環等)等)、非芳香族複素環(例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等)が挙げられる。なお、結合手は、単環または多環の芳香族へテロ環式基から出ているものとする。
例えば、以下の基もヘテロアリールとして例示され、ヘテロアリールに含まれる。なお、これらの基は置換可能な任意の位置で置換されていてもよい。
【化11】


【化12】

【0023】
「ヘテロサイクリル」とは、O、SおよびNから任意に選択されるヘテロ原子を環内に1以上有する非芳香族へテロ環式基、およびこれらの非芳香族へテロ環式基にさらに3〜8員の環が1または2個縮合した基を意味する。
単環の非芳香族へテロ環式基または多環の非芳香族へテロ環式基を含有する。
「単環の非芳香族ヘテロ環式基」として、具体的には、ジオキサニル、チイラニル、オキシラニル、オキサチオラニル、アゼチジニル、チアニル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペリジル、ピペリジノ、ピペラジニル、ピペラジノ、モルホリニル、モルホリノ、オキサジアジニル、ジヒドロピリジル、チオモルホリニル、チオモルホリノ、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチアゾリル、テトラヒドロイソチアゾリル、オキサゾリジル、チアゾリジル等が挙げられる。
「多環の非芳香族ヘテロ環式基」として、具体的には、インドリニル、イソインドリニル、クロマニル、イソクロマニル等が挙げられる。多環の非芳香族へテロ環式基である場合、結合手をいずれの環に有していてもよい。
例えば、以下の基もヘテロサイクリルに含まれる。
【化13】


【化14】


【化15】


【化16】

【0024】
本発明化合物においては、Rとしては、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換アミノが挙げられるが、特に、置換もしくは非置換のアルキルが好ましい。
本発明化合物においては、pおよびqは、それぞれ独立して0または1である。好ましくは、p+q=1である。pが1であり、かつ、qが0である場合が特に好ましい。
、X、XおよびXの炭素原子のうち少なくとも1つが、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシまたはシクロアルキルアルキルオキシで置換されている場合が好ましい。
例えば、−X=X−X=X−が−C(R)=C(R)−N=C(R)−の場合は、R、RおよびRのうち少なくとも1つが、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシまたはシクロアルキルアルキルオキシを意味する。
−X=X−X=X−が−C(R)=C(R)−C(R)=N−の場合は、R、RおよびRのうち少なくとも1つが、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシまたはシクロアルキルアルキルオキシを意味する。
−X=X−X=X−が−N=C(R)−N=C(R)−の場合は、RおよびRのうち少なくとも1つが、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシまたはシクロアルキルアルキルオキシを意味する。
−X=X−X=X−が−N=C(R)−C(R)=N−の場合は、RおよびRのうち少なくとも1つが、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシまたはシクロアルキルアルキルオキシを意味する。
−X=X−X=X−が−C(R)=N−N=C(R)−の場合は、RおよびRのうち少なくとも1つが、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシまたはシクロアルキルアルキルオキシを意味する。
−X=X−X=X−が−C(R)=N−C(R)=N−の場合は、RおよびRのうち少なくとも1つが、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシまたはシクロアルキルアルキルオキシを意味する。
−X=X−X=X−が−C(R)=C(R)−N=N−の場合は、RおよびRのうち少なくとも1つが、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシまたはシクロアルキルアルキルオキシを意味する。
、R、RおよびRとしては、水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシまたはシクロアルキルアルキルオキシが挙げられるが、RおよびRは水素が好ましく、RおよびRはハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシまたはハロアルキルオキシ等が好ましい。
【0025】
本発明化合物において、特に好ましい態様を以下に示す。
式(IV):
【化17】


で示される化合物もしくはその製薬上許容される塩において、以下の(II−A)〜(II−D)で示される態様が挙げられる。
(II―A)
が、置換もしくは非置換のアルキルであり、
−X=X−X=X−が、
−C(R)=C(R)−N=C(R)−、
−C(R)=C(R)−C(R)=N−、
−N=C(R)−N=C(R)−、
−N=C(R)−C(R)=N−、
−C(R)=N−N=C(R)−、
−C(R)=N−C(R)=N−または
−C(R)=C(R)−N=N−であり、
、R、RおよびRがそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシまたはハロアルキルオキシである、化合物またはその製薬上許容される塩。
(II―B)
が、置換もしくは非置換のアルキルであり、
−X=X−X=X−が、
−N=C(R)−N=C(R)−、
−N=C(R)−C(R)=N−、
−C(R)=N−N=C(R)−、
−C(R)=N−C(R)=N−または
−C(R)=C(R)−N=N−であり、
、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシまたはハロアルキルオキシである、化合物またはその製薬上許容される塩。
(II―C)
が、置換もしくは非置換のアルキルであり、
−X=X−X=X−が、
−C(R)=C(R)−N=C(R)−、または
−C(R)=C(R)−C(R)=N−であり、
、R、RおよびRがそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシまたはハロアルキルオキシである、化合物またはその製薬上許容される塩。
(II―D)
が、置換もしくは非置換のアルキルであり、
−X=X−X=X−が、
−C(R)=C(R)−N=C(R)−または
−C(R)=C(R)−C(R)=N−であり、
、R、RおよびRがそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、アルキルまたはハロアルキルである、化合物またはその製薬上許容される塩。
【0026】
本発明化合物は、特定の異性体に限定するものではなく、全ての可能な異性体(例えば、ケト−エノール異性体、イミン−エナミン異性体、ジアステレオ異性体、光学異性体、回転異性体等)、ラセミ体またはそれらの混合物を含む。
【0027】
本発明化合物の一つ以上の水素、炭素および/または他の原子は、それぞれ水素、炭素および/または他の原子の同位体で置換され得る。そのような同位体の例としては、それぞれH、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、123Iおよび36Clのように、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素および塩素が包含される。本発明化合物は、そのような同位体で置換された化合物も包含する。該同位体で置換された化合物は、医薬品としても有用であり、本発明化合物のすべての放射性標識体を包含する。また該「放射性標識体」を製造するための「放射性標識化方法」も本発明に包含され、代謝薬物動態研究、結合アッセイにおける研究および/または診断のツールとして有用である。
【0028】
本発明化合物の放射性標識体は、当該技術分野で周知の方法で調製できる。例えば、式(I)で示されるトリチウム標識化合物は、例えば、トリチウムを用いた触媒的脱ハロゲン化反応によって、式(I)で示される特定の化合物にトリチウムを導入することで調製できる。この方法は、適切な触媒、例えばPd/Cの存在下、塩基の存在下または非存在下で、式(I)で示される化合物が適切にハロゲン置換された前駆体とトリチウムガスとを反応させることを包含する。他のトリチウム標識化合物を調製するための適切な方法としては、文書Isotopes in the Physical and Biomedical Sciences,Vol.1,Labeled Compounds (Part A),Chapter 6 (1987年)を参照にできる。14C−標識化合物は、14C炭素を有する原料を用いることによって調製できる。
【0029】
本発明化合物の製薬上許容される塩としては、例えば、式(I)で示される化合物と、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、バリウム等)、マグネシウム、遷移金属(例えば、亜鉛、鉄等)、アンモニア、有機塩基(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メグルミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン等)およびアミノ酸との塩、または無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、臭化水素酸、リン酸、ヨウ化水素酸等)、および有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マンデル酸、グルタル酸、リンゴ酸、安息香酸、フタル酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等)との塩が挙げられる。特に塩酸、硫酸、リン酸、酒石酸、メタンスルホン酸との塩等が挙げられる。これらの塩は、通常行われる方法によって形成させることができる。
【0030】
本発明化合物またはその製薬上許容される塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)および/または結晶多形を形成する場合があり、本発明はそのような各種の溶媒和物および結晶多形も包含する。「溶媒和物」は、本発明化合物に対し、任意の数の溶媒分子(例えば、水分子等)と配位していてもよい。本発明化合物またはその製薬上許容される塩を、大気中に放置することにより、水分を吸収し、吸着水が付着する場合や、水和物を形成する場合がある。また、本発明化合物またはその製薬上許容される塩を、再結晶することでそれらの結晶多形を形成する場合がある。
【0031】
本発明化合物またはその製薬上許容される塩は、プロドラッグを形成する場合があり、本発明はそのような各種のプロドラッグも包含する。プロドラッグは、化学的または代謝的に分解できる基を有する本発明化合物の誘導体であり、加溶媒分解によりまたは生理学的条件下でインビボにおいて薬学的に活性な本発明化合物となる化合物である。プロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素的に酸化、還元、加水分解等を受けて本発明化合物に変換される化合物、胃酸等により加水分解されて本発明化合物に変換される化合物等を包含する。適当なプロドラッグ誘導体を選択する方法および製造する方法は、例えばDesign of Prodrugs, Elsevier, Amsterdam 1985に記載されている。プロドラッグは、それ自身が活性を有する場合がある。
【0032】
本発明化合物またはその製薬上許容される塩がヒドロキシル基を有する場合は、例えばヒドロキシル基を有する化合物と適当なアシルハライド、適当な酸無水物、適当なスルホニルクロライド、適当なスルホニルアンハイドライドおよびミックスドアンハイドライドとを反応させることにより或いは縮合剤を用いて反応させることにより製造されるアシルオキシ誘導体やスルホニルオキシ誘導体のようなプロドラッグが例示される。例えばCHCOO−、CCOO−、t−BuCOO−、C1531COO−、PhCOO−、(m−NaOOCPh)COO−、NaOOCCHCHCOO−、CHCH(NH)COO−、CHN(CHCOO−、CHSO−、CHCHSO−、CFSO−、CHFSO−、CFCHSO−、p-CH-O-PhSO−、PhSO−、p-CHPhSO−が挙げられる。
【0033】
以下に、本発明化合物の一般的な製造方法を説明する。なお、本発明化合物は以下に示す合成方法以外の方法でも、有機化学の知識に基づいて、製造することができる。
【0034】
式(I)で示される化合物の製造方法
【化18】


(式中、−X=X−X=X−は、
−C(R)=C(R)−N=C(R)−、
−C(R)=C(R)−C(R)=N−、
−N=C(R)−N=C(R)−、
−N=C(R)−C(R)=N−、
−C(R)=N−N=C(R)−、
−C(R)=N−C(R)=N−または
−C(R)=C(R)−N=N−であり、
、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシまたはシクロアルキルアルキルオキシである。)
工程A
化合物a1の溶液に、金属触媒存在下、水素ガスを反応させることにより、化合物a2を得ることができる。
反応溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエン、酢酸エチル、酢酸、水等が挙げられ、単独または混合して用いることができる。
金属触媒としては、パラジウム−炭素、酸化白金、ロジウム−酸化アルミニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)等が挙げられ、化合物a1に対して、0.01〜50重量パーセント用いることができる。
水素気圧は、1〜50気圧が挙げられる。なお、水素源として、シクロへキセン、1,4−シクロヘキサジエン、ギ酸、ギ酸アンモニウム等も用いることができる。
反応温度は、0℃〜加熱還流下、好ましくは20℃〜40℃である。
反応時間は、0.5〜72時間、好ましくは1〜12時間である。
【0035】
工程B
【化19】


(式中の記号は、上記と同意義である。)
化合物a2の溶液に、ジ(1H−イミダゾール−1−イル)メタンチオンを反応させることにより、化合物a3を得ることができる。
反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、トルエン等が挙げられる。
ジ(1H−イミダゾール−1−イル)メタンチオンは、化合物a2に対して、1〜3当量用いることができる。
反応温度は、0℃〜加熱還流下、好ましくは室温〜50℃である。
反応時間は、0.5〜72時間、好ましくは1〜12時間である。
【0036】
工程C
【化20】


(Rは置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換アミノであり、pおよびqは、それぞれ独立して0または1であり、その他の記号は上記と同意義である。)
化合物a4またはその塩の溶液に、塩基存在下、化合物a3をカップリングさせ、続いて酸化剤で酸化することにより、式(I)で示される化合物を得ることができる。
化合物a4は、特許文献3(国際公開第2009/54434号)に準じて製造することができる。
溶媒は、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、水、メタノール、エタノール等が挙げられる。
塩基としては、DIEA、トリエチルアミン、ピリジン、炭酸カリウム等が挙げられ、化合物a4に対して、1〜5当量、好ましくは、2〜3当量用いることができる。
酸化剤としては、超酸化カリウム、過酸化水素、過酸化水素尿素、過ホウ酸ナトリウム、メタクロロ過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられ、化合物a4に対して、3〜10当量用いることができる。
カップリングの反応温度は、室温〜加熱還流下、またはマイクロウェーブ照射下で室温〜200℃である。
酸化の反応温度は、室温〜50℃である。
カップリングの反応時間は、0.1〜5時間である。
酸化の反応時間は、5〜24時間である。
【0037】
このようにして得られた本発明化合物は、各種の溶媒で結晶化させて精製することができる。用いることができる溶媒としては、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等)、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、アセトニトリル、ヘキサン、ジオキサン、ジメトキシエタン、水またはそれらの混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒に加温下で溶解し、不純物を除去した後、徐々に温度を下げて、析出した固形物または結晶を濾取すればよい。
【0038】
本発明化合物はNPY Y5の関与する疾患全般、例えば、摂食障害、肥満症、神経性食欲昂進症、性的障害、生殖障害、鬱病、癲癇発作、高血圧、脳溢血、鬱血心不全または睡眠障害の予防および/または治療に有効に作用する。特に肥満症の予防および/または治療並びに肥満症における体重管理に有用である。また、肥満がリスクファクターとなる疾患、例えば糖尿病、高血圧、脂質異常症、動脈硬化、急性冠症候群等の予防および/または治療に対しても有効である。
さらに、本発明化合物は、NPY Y5受容体拮抗作用のみならず、医薬としての有用性を備えており、下記いずれか、あるいは全ての優れた特徴を有している。
a)CYP酵素(例えば、CYP1A2、CYP2C9、CYP3A4等) に対する阻害作用が弱い。
b)高いバイオアベイラビリティー、適度なクリアランス等良好な薬物動態を示す。
c)貧血誘発作用等の毒性が低い。
d)代謝安定性が高い。
e)水溶性が高い。
f)脳移行性が高い。
g)消化管障害(例えば、出血性腸炎、消化管潰瘍、消化管出血等)を起こさない。
h)安全性が高い。
【0039】
さらに、本発明化合物はNPY Y1およびY2受容体に対する親和性は低く、高いY5受容体選択性を有していると考えられる。NPYは末梢で持続性の血管収縮作用を惹起するが、この作用は主としてY1受容体を介している。Y5受容体はこのような作用に全く関与しないことから、末梢血管収縮に基づく副作用を誘発する可能性は低く、高いY5受容体選択性を有していると考えられる本発明化合物を有効成分とする医薬組成物は、安全な医薬として好適に用いることが可能である。
【0040】
本発明化合物を有効成分とする医薬組成物は、摂食を抑制して抗肥満効果を示すものである。そのため、消化吸収を阻害することによって抗肥満効果を示す薬剤に見られるような消化不良等の副作用や、抗肥満効果を示すセロトニントランスポーター阻害剤のような抗鬱作用等の中枢性副作用を発現しないことは該医薬組成物の特長の一つである。
【0041】
本発明の医薬組成物を投与する場合、経口的、非経口的のいずれの方法でも投与することができる。経口投与は常法に従って錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤、液剤、シロップ剤、バッカル剤または舌下剤等の通常用いられる剤型に調製して投与すればよい。非経口投与は、例えば筋肉内投与、静脈内投与等の注射剤、坐剤、経皮吸収剤、吸入剤等、通常用いられるいずれの剤型でも好適に投与することができる。本発明に係る化合物は経口吸収性が高いため、経口剤として好適に使用できる。
【0042】
本発明化合物の有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤等の各種医薬用添加剤を必要に応じて混合し医薬組成物とすることができる。注射剤の場合には適当な担体と共に滅菌処理を行なって製剤とすればよい。
【0043】
賦形剤としては乳糖、白糖、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウムまたは結晶セルロ−ス等が挙げられる。結合剤としてはメチルセルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−ス、ヒドロキシプロピルセルロ−ス、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤としてはカルボキシメチルセルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−スナトリウム、デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末またはラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。滑沢剤としてはタルク、ステアリン酸マグネシウムまたはマクロゴ−ル等が挙げられる。坐剤の基剤としてはカカオ脂、マクロゴ−ルまたはメチルセルロ−ス等を用いることができる。また、液剤または乳濁性、懸濁性の注射剤として調製する場合には通常使用されている溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、保存剤、等張剤等を適宜添加しても良い。経口投与の場合には嬌味剤、芳香剤等を加えても良い。
【0044】
本発明の医薬組成物の投与量は、患者の年齢、体重、疾病の種類や程度、投与経路等を考慮した上で設定することが望ましいが、成人に経口投与する場合、通常0.05〜100mg/kg/日であり、好ましくは0.1〜10mg/kg/日の範囲内である。非経口投与の場合には投与経路により大きく異なるが、通常0.005〜10mg/kg/日であり、好ましくは0.01〜1mg/kg/日の範囲内である。これを1日1回〜数回に分けて投与すれば良い。
【0045】
本発明の医薬組成物は他の抗肥満薬(抗肥満作用を有する化合物を含有する医薬組成物、肥満症や肥満症における体重管理等に用いることのできる薬剤)と組み合わせて用いることもできる。例えば、抗肥満作用を有する化合物を含有する医薬組成物を、本発明化合物と併用することにより、肥満症の予防および/または治療や肥満症における体重管理等に用いることができる。また、本発明化合物を含有する医薬組成物を、抗肥満作用を有する化合物を含有する医薬組成物と併用することにより、肥満症の予防および/または治療や肥満症における体重管理等に用いることができる。また、本発明の医薬組成物の投与療法は、食事療法、薬物療法、運動等と組み合わせて用いることもできる。
【0046】
例えば、以下の方法も本発明の範囲内である。
本発明化合物またはその製薬上許容される塩と併用して、他の抗肥満作用を有する化合物を含有する医薬組成物を投与することを特徴とする、肥満もしくは肥満関連疾患の予防もしくは治療または肥満における体重管理の方法。
本発明化合物またはその製薬上許容される塩の投与による予防または治療を受けている患者に、他の抗肥満作用を有する化合物を含有する医薬組成物を投与することを特徴とする、肥満もしくは肥満関連疾患の予防もしくは治療または肥満における体重管理の方法。
【0047】
本発明化合物の態様としては、以下の一般式(IV)において、以下の基を有するものが挙げられる。
【化21】


【表1】


(上記表中、Meはメチル、Etはエチル、i−Prはイソプロピル、t−Buはtert−ブチルを示す。)
【表2】


【表3】

【0048】
およびRの組み合わせが、以下の(R、R)である化合物。
(R,R)=(Ra1,Rb1),(Ra1,Rb2),(Ra1,Rb3),(Ra1,Rb4),(Ra1,Rb5),(Ra1,Rb6),(Ra1,Rb7),(Ra1,Rb8),(Ra1,Rb9),(Ra1,Rb10),(Ra1,Rb11),(Ra1,Rb12),(Ra1,Rb13),(Ra1,Rb14),(Ra1,Rb15),(Ra1,Rb16),(Ra1,Rb17),(Ra1,Rb18),(Ra1,Rb19),(Ra1,Rb20),(Ra1,Rb21),(Ra1,Rb22),(Ra1,Rb23),(Ra1,Rb24),(Ra1,Rb25),(Ra1,Rb26),(Ra1,Rb27),(Ra1,Rb28),(Ra1,Rb29),(Ra1,Rb30),(Ra1,Rb31),(Ra1,Rb32),(Ra1,Rb33),(Ra1,Rb34),(Ra1,Rb35),(Ra1,Rb36),(Ra1,Rb37),(Ra1,Rb38),(Ra1,Rb39),(Ra1,Rb40),(Ra1,Rb41),(Ra1,Rb42),(Ra1,Rb43),(Ra1,Rb44),(Ra1,Rb45),(Ra2,Rb1),(Ra2,Rb2),(Ra2,Rb3),(Ra2,Rb4),(Ra2,Rb5),(Ra2,Rb6),(Ra2,Rb7),(Ra2,Rb8),(Ra2,Rb9),(Ra2,Rb10),(Ra2,Rb11),(Ra2,Rb12),(Ra2,Rb13),(Ra2,Rb14),(Ra2,Rb15),(Ra2,Rb16),(Ra2,Rb17),(Ra2,Rb18),(Ra2,Rb19),(Ra2,Rb20),(Ra2,Rb21),(Ra2,Rb22),(Ra2,Rb23),(Ra2,Rb24),(Ra2,Rb25),(Ra2,Rb26),(Ra2,Rb27),(Ra2,Rb28),(Ra2,Rb29),(Ra2,Rb30),(Ra2,Rb31),(Ra2,Rb32),(Ra2,Rb33),(Ra2,Rb34),(Ra2,Rb35),(Ra2,Rb36),(Ra2,Rb37),(Ra2,Rb38),(Ra2,Rb39),(Ra2,Rb40),(Ra2,Rb41),(Ra2,Rb42),(Ra2,Rb43),(Ra2,Rb44),(Ra2,Rb45),(Ra3,Rb1),(Ra3,Rb2),(Ra3,Rb3),(Ra3,Rb4),(Ra3,Rb5),(Ra3,Rb6),(Ra3,Rb7),(Ra3,Rb8),(Ra3,Rb9),(Ra3,Rb10),(Ra3,Rb11),(Ra3,Rb12),(Ra3,Rb13),(Ra3,Rb14),(Ra3,Rb15),(Ra3,Rb16),(Ra3,Rb17),(Ra3,Rb18),(Ra3,Rb19),(Ra3,Rb20),(Ra3,Rb21),(Ra3,Rb22),(Ra3,Rb23),(Ra3,Rb24),(Ra3,Rb25),(Ra3,Rb26),(Ra3,Rb27),(Ra3,Rb28),(Ra3,Rb29),(Ra3,Rb30),(Ra3,Rb31),(Ra3,Rb32),(Ra3,Rb33),(Ra3,Rb34),(Ra3,Rb35),(Ra3,Rb36),(Ra3,Rb37),(Ra3,Rb38),(Ra3,Rb39),(Ra3,Rb40),(Ra3,Rb41),(Ra3,Rb42),(Ra3,Rb43),(Ra3,Rb44),(Ra3,Rb45),(Ra4,Rb1),(Ra4,Rb2),(Ra4,Rb3),(Ra4,Rb4),(Ra4,Rb5),(Ra4,Rb6),(Ra4,Rb7),(Ra4,Rb8),(Ra4,Rb9),(Ra4,Rb10),(Ra4,Rb11),(Ra4,Rb12),(Ra4,Rb13),(Ra4,Rb14),(Ra4,Rb15),(Ra4,Rb16),(Ra4,Rb17),(Ra4,Rb18),(Ra4,Rb19),(Ra4,Rb20),(Ra4,Rb21),(Ra4,Rb22),(Ra4,Rb23),(Ra4,Rb24),(Ra4,Rb25),(Ra4,Rb26),(Ra4,Rb27),(Ra4,Rb28),(Ra4,Rb29),(Ra4,Rb30),(Ra4,Rb31),(Ra4,Rb32),(Ra4,Rb33),(Ra4,Rb34),(Ra4,Rb35),(Ra4,Rb36),(Ra4,Rb37),(Ra4,Rb38),(Ra4,Rb39),(Ra4,Rb40),(Ra4,Rb41),(Ra4,Rb42),(Ra4,Rb43),(Ra4,Rb44),(Ra4,Rb45)。
【実施例】
【0049】
以下に本発明の実施例および試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0050】
また、本明細書中で用いる略語は以下の意味を表す。
Me:メチル
Et:エチル
Bu:ブチル
Ph:フェニル
AcOEt:酢酸エチル
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
THF:テトラヒドロフラン
DIEA、Hunig‘s Base:N,N−ジイソプロピルエチルアミン
OAc:酢酸基
NMP:1−メチルピロリジン−2−オン
DCM:塩化メチレン
TEA:トリエチルアミン
KO:超酸化カリウム
【0051】
各実施例で得られたNMR分析は300MHzで行い、d6−DMSOまたはCDClを用いて測定した。
明細書中にRTとあるのは、LC/MS:液体クロマトグラフィー/質量分析でのリテンションタイムを表す。
LC/MS分析の測定条件は以下のとおりである。
カラム:Shim−pack XR−ODS (2.2μm、i.d.50x3.0mm) (Shimadzu)
流速:1.6 mL/分
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液
グラジェント:3分間で10%−100%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、1分間、100%溶媒[B]を維持した。
【0052】
実施例1 化合物I−006の合成
【0053】
第1工程
【化22】


化合物1(1000mg, 6.49 mmol)のエタノール(20ml)溶液に、10%Pdカーボン粉末(含水品)(200mg)を加え、水素雰囲気下で一晩室温攪拌した。反応液を濾過し、クロロホルムで洗浄し、得られた濾液を濃縮した。残渣にジエチルエーテルを加えてろ取することにより、化合物2(756mg, 6.09 mmol, 収率94%)を得た。
【0054】
第2工程
【化23】


化合物2(200mg, 1.611 mmol)のテトラヒドロフラン(4ml)溶液に、ジ(1H−イミダゾール-1-イル)メタンチオン(316mg, 1.772 mmol)を加え、室温で攪拌した。析出した固体をろ取することにより、化合物3(136.1mg, 0.819 mmol, 収率51%)を得た。
【0055】
第3工程
【化24】


化合物4(37.7 mg, 0.132mmol)のアセトニトリル(1ml)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.063 ml, 0.361mmol)および化合物3(20 mg, 0.120mmol)を加え、マイクロウェーブ反応装置により110℃で30分間攪拌した。得られた反応液にKO2(47.1 mg, 0.662mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。反応液にクロロホルムを加え、さらに水を加えて抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、化合物I−006(23.2 mg, 0.061mmol, 収率51%)を得た。
【0056】
上記実施例に従い、以下の化合物を合成した。
【0057】
【表4】


【表5】

【0058】
以下に、本発明化合物の生物試験例を記載する。
試験例1 マウスNPY Y5受容体に対する親和性
マウスNPY Y5受容体をコードするcDNA配列(Biochim. Biophys. Acta 1328: 83−89, 1997参照)を、発現ベクター pME18S(Takebe et al. Mol. Cell. Biol. 8, 466−472)にクローニングした。得られた発現ベクターを、LipofectAMINE試薬(商標、インビトロジェン社)を用いて、使用説明書にしたがって宿主細胞CHOにトランスフェクションし、NPY Y5受容体安定発現細胞を得た。
マウスNPY Y5受容体を発現させたCHO細胞から調製した膜標品を、本発明に係る化合物および30,000cpmの[125I]ペプタイドYY(終濃度60pM:GE ヘルスケア社製)とともに、アッセイ緩衝液(0.1% 牛血清アルブミンを含む20mM HEPES−Hanks緩衝液、pH7.4)中で、25℃、2時間インキュベーションした後、1% ポリエチレンイミン処理したグラスフィルターGF/Cにて濾過した。50mM Tris−HCl緩衝液、pH7.4にて洗浄後、ガンマカウンターにてグラスフィルター上の放射活性を求めた。非特異的結合は200nMペプタイドYY存在下で測定し、特異的ペプタイドYY結合に対する被検化合物の50%阻害濃度(IC50値)を求めた[Inui, A. et al. Endocrinology 131, 2090−2096(1992)参照]。結果を表28に示す。
本発明に係る化合物は、マウスNPY Y5受容体に対するペプタイドYY(NPYと同族物質)の結合を阻害した。即ち本化合物は、マウスNPY Y5受容体に対して親和性を示した。
結果を以下に示す。
化合物I−001:3.4nM
化合物I−002:0.80nM
化合物I−003:1.20nM
化合物I−009:1.20nM
化合物I−010:0.63nM
【0059】
試験例2 ヒトNPY Y5受容体に対する親和性
ヒトNPY Y5受容体をコードするcDNA配列(WO96/16542号参照)を、発現ベクター pME18S(Takebe et al. Mol. Cell. Biol. 8, 466−472)にクローニングした。得られた発現ベクターを、LipofectAMINE試薬(商標、インビトロジェン社)を用いて、使用説明書にしたがって宿主細胞CHOにトランスフェクションし、NPY Y5受容体安定発現細胞を得た。
ヒトNPY Y5受容体を発現させたCHO細胞から調製した膜標品を、本発明に係る化合物および30,000cpmの[125I]ペプタイドYY(終濃度60pM:GE ヘルスケア社製)とともに、アッセイ緩衝液(0.1% 牛血清アルブミンを含む20 mM HEPES−Hanks緩衝液、pH7.4)中で、25℃、2時間インキュベーションした後、1%ポリエチレンイミン処理したグラスフィルターGF/Cにて濾過した。50mM Tris−HCl緩衝液、pH7.4にて洗浄後、ガンマカウンターにてグラスフィルター上の放射活性を求めた。非特異的結合は200 nMペプタイドYY存在下で測定し、特異的ペプタイドYY結合に対する被検化合物の50%阻害濃度(IC50値)を求めた[Inui, A. et al. Endocrinology 131, 2090−2096(1992)参照]。
結果を以下に示す。
化合物I−003:1.3nM
【0060】
試験例3 ラット脳移行性評価
カセットドージング法(Drug.Metab.Dispos.(2001); 29, 957−966参照)を用いて、ラット(Crl;CD(SD), ♂, 8weeks)への静脈内投与(0.5mg/mL/kg)30分後の血漿および脳内濃度から、脳移行性(脳/血漿分配係数;Kp)を評価した。
【0061】
試験例4 マウス脳移行性評価
カセットドージング法(Drug.Metab.Dispos.(2001); 29, 957−966参照)を用いて、マウス(Jcl;C57BL/6J, ♂, 8weeks)への経口投与(2mg/10mL/kg)3時間または5時間後の血漿および脳内濃度から、脳移行性(脳/血漿分配係数;Kp)を評価することができる。
【0062】
試験例5 ラットにおける薬物動態評価
カセットドージング法を用いて、ラット(Crl;CD(SD), ♂, 8weeks)静脈内投与(0.5mg/mL/kg)後の血漿中濃度推移から、半減期(t1/2)および全身クリアランス(CLtot)を評価した。
【0063】
試験例6 CHO細胞におけるcAMP生成抑制作用
ヒトNPY Y5受容体を発現させたCHO細胞を、2.5mMイソブチルメチルキサンチン(SIGMA社)存在下で37℃、20分間インキュベーションした後、本発明に係る化合物を添加し5分間インキュベーションし、その後50nMNPYおよび10μMフォルスコリン(Sigma社)を加えて30分間インキュベーションした。1N HClを添加して反応を停止した後、上清中のcAMP量をEIA kit(Amersham LIFE SIENCE社製)を用いて測定した。フォルスコリン刺激によるcAMP生成に対するNPYの抑制作用を100%とし、このNPY作用に対する本発明に係る化合物の50%阻害濃度(IC50値)を求めた。
結果を以下に示す。
化合物I−002:8.2nM
化合物I−004:6.2nM
【0064】
試験例7 NPY Y5受容体選択性
Y1発現細胞(human neuroblastoma, SK−N−MC)膜標品およびY2発現細胞(human neuroblastoma, SMS−KAN)膜標品を使用して試験例1−2と同様の方法で試験を行い、本発明に係る化合物のNPY Y1受容体およびNPY Y2受容体に対する親和性を測定する。その結果により、本発明に係る化合物がNPY Y5受容体選択性を有していることを確認することができる。
【0065】
試験例8 摂食抑制作用
エーテル麻酔下、雄性C57BL/6Jマウス(12−14 週齢、28−35g)の外後頭稜から鼻背部まで正中に沿って皮膚を切開し、頭蓋骨上部を露出させた。露出部bregma よりlambdaに向かって約 1 mm後方、正中線から左側に約1mmの位置に電気ドリルを用いて直径約1mmの穴を開けた。麻酔から覚醒後のマウスに0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学株式会社製)水溶液あるいはこの水溶液に懸濁した被検物質を強制経口投与し、投与1時間後、生理食塩水あるいはNPY Y5受容体特異的アゴニスト([ cPP1−7,NPY19−23,Ala31,Aib32,Gln34]−hPancreatic Polypeptide:Tocris社製)0.1nmolを先に設けた頭部開口部よりカニューレを用いて注入した。注入2時間後および4時間後にマウスの摂食量を測定し、0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液投与群と被検物質投与群との間の摂餌量の差を調査した。
その結果、本発明化合物を25mg/kgの用量で投与した場合、0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロースを投与した場合と比較して摂食量が有意に抑制された。
【0066】
試験例9 CYP阻害試験
市販のプールドヒト肝ミクロソームを用いて、ヒト主要CYP5分子種(CYP1A2、2C9、2C19、2D6、3A4)の典型的基質代謝反応として7−エトキシレゾルフィンのO−脱エチル化(CYP1A2)、トルブタミドのメチル−水酸化(CYP2C9)、メフェニトインの4’−水酸化(CYP2C19)、デキストロメトルファンのO脱メチル化(CYP2D6)、テルフェナジンの水酸化(CYP3A4)を指標とし、それぞれの代謝物生成量が被検化合物によって阻害される程度を評価した。
【0067】
反応条件は以下のとおり:基質、0.5 μmol/L エトキシレゾルフィン(CYP1A2)、100 μmol/L トルブタミド(CYP2C9)、50 μmol/L S−メフェニトイン(CYP2C19)、5μmol/L デキストロメトルファン(CYP2D6)、1 μmol/L テルフェナジン(CYP3A4);反応時間、15分;反応温度、37℃;酵素、プールドヒト肝ミクロソーム 0.2mg タンパク質/mL;被検薬物濃度、1、5、10、20 μmol/L(4点)。
【0068】
96穴プレートに反応溶液として、50mM Hepes 緩衝液中に各5種の基質、ヒト肝ミクロソーム、被検薬物を上記組成で加え、補酵素であるNADPHを添加して、指標とする代謝反応を開始し、37℃、15分間反応した後、メタノール/アセトニトリル=1/1(v/v)溶液を添加することで反応を停止した。3000rpm、15分間の遠心操作後、遠心上清中のレゾルフィン(CYP1A2代謝物)を蛍光マルチラベルカウンタで、トルブタミド水酸化体 (CYP2C9代謝物)、メフェニトイン4’水酸化体(CYP2C19代謝物)、デキストロルファン(CYP2D6代謝物)、テルフェナジンアルコール体(CYP3A4代謝物)をLC/MS/MSで定量した。
【0069】
薬物を溶解した溶媒であるDMSOのみを反応系に添加したものをコントロール(100%)とし、被検薬物溶液を加えたそれぞれの濃度での残存活性(%)を算出し、濃度と抑制率を用いて、ロジスティックモデルによる逆推定によりIC50を算出した。
【0070】
試験例10 代謝安定性について
ヒト肝ミクロソームによる代謝安定性評価:トリス塩酸バッファー(pH7.4)中にNADPH(終濃度1mM,酸化的代謝の場合)、肝ミクロソーム(終濃度0.5 mg protein/ml)および各化合物(終濃度2μM)を添加し、37℃で0分および30分間反応させた。グルクロン酸抱合の場合は、NADPHに代えてUDPGA(終濃度5mM)を添加した。反応液の倍量のアセトニトリル/メタノール=1/1(v/v)を添加し反応を停止した後、その遠心上清中の化合物をHPLCで測定した。0分および30分の値の比較から代謝反応による消失量を算出し、本発明化合物の代謝安定性を確認した。
【0071】
試験例11 粉末溶解度試験
適当な容器に検体を適量入れ、JP−1液(塩化ナトリウム2.0g、塩酸7.0mLに水を加えて1000mLとした)、JP−2液(pH6.8のリン酸塩緩衝液500mLに水500mLを加えた)、20mmol/L TCA(タウロコール酸ナトリウム)/JP−2液(TCA 1.08gに水を加え100mLとした)を200μLずつ添加した。試験液添加後に溶解した場合には、適宜原末を追加した。密閉し37℃で1時間振とうした。濾過し、各濾液100μLにメタノール100μLを添加して2倍希釈を行った。希釈倍率は、必要に応じて変更した。気泡および析出物がないかを確認し、密閉して振とうした。絶対検量線法によりHPLCを用いて定量を行った。
【0072】
製剤例
以下に示す製剤例は例示にすぎないものであり、発明の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
製剤例1 錠剤
本発明化合物 15mg
デンプン 15mg
乳糖 15mg
結晶性セルロース 19mg
ポリビニルアルコール 3mg
蒸留水 30ml
ステアリン酸カルシウム 3mg
ステアリン酸カルシウム以外の成分を均一に混合し、破砕造粒して乾燥し、適当な大きさの顆粒剤とする。次にステアリン酸カルシウムを添加して圧縮成形して錠剤とする。
【0073】
製剤例2 カプセル剤
本発明化合物 10mg
ステアリン酸マグネシウム 10mg
乳糖 80mg
を均一に混合して粉末または細粒状として散剤をつくる。それをカプセル容器に充填してカプセル剤とする。
【0074】
製剤例3 顆粒剤
本発明化合物 30g
乳糖 265g
ステアリン酸マグネシウム 5g
よく混合し、圧縮成型した後、粉砕、整粒し、篩別して適当な大きさの顆粒剤とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


(式中、
は置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換アミノであり、
pおよびqは、それぞれ独立して0または1であり、
−X=X−X=X−は、
−C(R)=C(R)−N=C(R)−、
−C(R)=C(R)−C(R)=N−、
−N=C(R)−N=C(R)−、
−N=C(R)−C(R)=N−、
−C(R)=N−N=C(R)−、
−C(R)=N−C(R)=N−または
−C(R)=C(R)−N=N−であり、
、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシまたはシクロアルキルアルキルオキシである。)で示される化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項2】
、X、XおよびXの炭素原子のうち少なくとも1つが、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシまたはシクロアルキルアルキルオキシで置換されている、請求項1記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項3】
pが1であり、qが0である、請求項1または2記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項4】
が置換もしくは非置換のアルキルである、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項5】
−X=X−X=X−が
−C(R)=C(R)−N=C(R)−または
−C(R)=C(R)−C(R)=N−である、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項6】
−X=X−X=X−が
−C(R)=C(R)−C(R)=N−である、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩を含有する医薬組成物。
【請求項8】
NPY Y5受容体拮抗作用を有する、請求項7記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2012−246257(P2012−246257A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120003(P2011−120003)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】