説明

NR2B受容体アンタゴニストとしてのキヌレン酸アミド誘導体

本発明は、式(I):


の新規なキヌレン酸アミド誘導体、およびその光学的鏡像異性体、ラセミ体および塩が、NMDA受容体の非常に有効で且つ選択的なアンタゴニストであり、そしてその上、該化合物のほとんどがNMDA受容体のNR2Bサブタイプの選択的アンタゴニストであることを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NMDA受容体のアンタゴニストである新規なキヌレン酸アミド誘導体、またはその製造のための中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)受容体は、神経細胞の細胞膜中に包埋されたリガンド開口型カチオン−チャンネルである。それらの天然リガンドであるグルタミン酸によるNMDA受容体の過剰活性化は、細胞のカルシウム過負荷を生じ得る。これは、細胞機能を改変する細胞内事象のカスケードを引き起こし、最終的には神経細胞の死滅を生じ得る[TINS, 10, 299-302 (1987)]。該NMDA受容体のアンタゴニストは、グルタミン酸(中枢神経系の主要な興奮性神経伝達物質)の過剰な放出を伴う多くの疾患を処置するのに使用することができる。
【0003】
該NMDA受容体は、少なくとも7個の公知のサブユニット遺伝子から構築されるヘテロマーの集合体である。該NR1サブユニットは、機能性NMDA受容体チャンネルの必要な成分である。4個の遺伝子コード化NR2サブユニット(NR2A−D)が存在する。CNS中の空間分布および様々なNR2サブユニットから構築されるNMDA受容体の薬理学的な感受性の両方は異なる。近年、NR3AおよびNR3Bが報告されている。これらのうち特に関心あることは、その制限された分布(脊髄の前脳および膠様質中の最大密度)によるNR2Bサブユニットである。このサブタイプに対して選択的である化合物を入手することができ、そしてこのものは、脳卒中[Stroke, 28, 2244-2251 (1997)]、外傷性脳障害[Brain Res., 792, 291-298 (1998)]、パーキンソン病[Exp. Neurol., 163, 239-243 (2000)]、神経障害性および炎症性の疼痛[Neuropharmacology, 38, 611-623 (1999)]の動物モデルにおいて有効であると証明されている。その上、NMDA受容体のNR2Bサブタイプ選択的アンタゴニストは、典型的にはNMDA受容体の非選択的アンタゴニストによって生じる有害な副作用(すなわち、例えば眩暈、頭痛、幻覚、不快、並びに認識および運動機能の障害などの精神異常発現性の効果)をほとんどまたは全く有しないと予想される。
【0004】
NR2Bサブタイプ選択的NMDA拮抗作用は、NR2Bサブユニット含有受容体のアロステリックな修飾部位と特異的に結合し、そして該部位で特異的に作用する化合物を用いて達成することができる。この結合部位は、特異的な放射性リガンド(例えば、[125I]−イフェンプロジル[J.Neurochem., 61, 120-126 (1993)]または[H]−Ro 25,6981[J. Neurochem., 70, 2147-2155 (1998)]を用いる置換(結合)研究によって確認することができる。イフェンプロジルはこの受容体の最初の公知のリガンド(十分に特異的ではないが)であるという理由で、そのものはイフェンプロジル結合部位とも呼ばれる。
【0005】
式(I)のカルボン酸アミド誘導体の近似する構造アナログは、該文献からは知られていない。
【発明の開示】
【0006】
(発明の概要)
驚くべきことに、本発明の式(I)の新規なキヌレン酸アミド誘導体はNR2Bサブユニット含有NMDA受容体の機能性アンタゴニストであるが、一方で、それらはNR2Aサブユニット含有NMDA受容体において無効であることを見出した。従って、それらは、NR2Bサブタイプ特異的NMDAアンタゴニストであると考えられる。ある化合物は、経口投与後に、マウス疼痛モデルにおいてインビボで有効であることが証明された。
【0007】
(詳細な記載)
従って、本発明は第1に、式(I):
【化1】

[式中、
XおよびYは独立して、水素原子、ヒドロキシ、アミノ、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたC〜Cアルキルスルホンアミド、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたC〜Cアルカノイルアミド、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルコキシカルボニル基であるか、あるいは、
ある場合には、近接するX基およびY基は、1個以上の同一もしくは異なる更なるヘテロ原子、−CH=基、および/または−CH−基と一緒になって、場合により置換された4〜7員の単素環またはヘテロ環(モルホリン、ピロール、ピロリジン、オキソ−もしくはチオキソ−ピロリジン、ピラゾール、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリジン、オキソ−もしくはチオキソ−イミダゾールもしくはイミダゾリジン、1,4−オキサジン、オキサゾール、オキサゾリジン、オキソ−もしくはチオキソ−オキサゾリジン、または3−オキソ−1,4−オキサジン環が好ましい)を形成し得て;
Wは、酸素原子、並びにC〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、アミノカルボニル、−NH−、−N(アルキル)−、−CHO−、−CHS−、−CH(OH)−、−OCH−基であり、ここで、アルキルの意味はC〜Cアルキル基−であり;
点線結合:
【化2】

がC−C単結合である場合には、Vの意味はヒドロキシ基または水素原子であるか、あるいは、
WがC〜Cアルキレン基またはC〜Cアルケニレン基である場合には、該点線結合:
【化3】

の1つは更なるC−C二重結合であり得て、そしてこの場合には、Vは該二重結合に関与する電子対であり;
Zは、水素原子、ハロゲン原子、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、またはカルボキシル基である]
で示される新規なキヌレン酸アミド誘導体、並びにその光学的鏡像異性体、ラセミ体、および塩に関する。
【0008】
本発明の更なる目的は、式(I)のキヌレン酸アミド誘導体の製造方法、およびこれらの化合物を含有する医薬品の製薬、並びに、これらの化合物を用いる処置方法(これは、処置する哺乳動物(ヒトを含む)に、本発明の式(I)の新規なキヌレン酸アミド誘導体の有効量をそのまままたは医薬品として投与することを意味する)である。
【0009】
本発明の新規な式(I)の新規なキヌレン酸アミド誘導体は、非常に有効であり且つNMDA受容体の選択的アンタゴニストであり、その上、該化合物のほとんどはNMDA受容体のNR2Bサブタイプの選択的アンタゴニストである。
【0010】
本発明によれば、式(I)の新規なキヌレン酸アミド誘導体は、式(II):
【化4】

(式中、XおよびYの意味は式(I)について上記する通りである)
のカルボン酸またはその活性誘導体を、式(III):
【化5】

(式中、Z、V、W、および点線結合:
【化6】

の意味は式(I)について上記する通りである)
のアミンと反応させ、
次いで場合により、その結果得られる式(I)(式中、X、Y、W、Z、および点線結合:
【化7】

の意味は式(I)について上記する通りである)のキヌレン酸アミド誘導体を、公知の方法によって、新規な置換基を導入するか、および/または存在する置換基を修飾しもしくは除去するか、および/または塩を形成するか、および/または塩から該化合物を遊離させるか、および/または該得られるラセミ体を光学活性な酸もしくは塩基を用いて分割するかによって、式(I)の別の化合物に変換する、ことによって製造する。
【0011】
式(II)のカルボン酸および式(III)のアミンの反応、すなわち、該アミド結合形成反応は、式(II)のカルボン酸由来の活性誘導体を製造することによって実施することが好ましく、そしてこのものを、好ましくは塩基の存在下で、式(III)のアミンと反応させる。
【0012】
カルボン酸の活性誘導体への変換は、インシチュで適当な溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、クロロ化炭化水素、または炭化水素)中でのアミド結合の間に実施する。該活性誘導体は、酸クロリド(例えば、塩化チオニルを用いてカルボン酸から製造する)、混合酸無水物(例えば、塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下、クロロギ酸イソブチルを用いてカルボン酸から製造する)、活性エステル(例えば、塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下、ヒドロキシベンゾトリアゾールおよびジシクロヘキシル−カルボジイミドまたはO−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)を用いて、カルボン酸から製造する)であり得る。該活性誘導体は、室温から0℃の間で製造する。式(III)の適当なアミンを、塩基としてまたは無機酸と形成する塩として、その結果得られる溶液または懸濁液に加え、その結果、該アミンの遊離に必要とされる塩基(例えば、トリエチルアミン)は別に該反応混合物に加える。該縮合反応に続いて、薄層クロマトグラフィー精製を行なう。該必要な反応時間は6〜20時間である。該反応混合物のワークアップは、異なる方法によって実施することができる。
【0013】
該反応混合物が懸濁液である場合には、該沈降物をろ取し、そして適当な溶媒から再結晶して純粋な生成物を得る。結晶化により純粋な生成物を得られない場合には、カラムクロマトグラフィー精製をその精製のために使用することができる。該カラムクロマトグラフィー精製は、吸収剤としてキセルゲル60上で、溶出液として異なる溶媒系(例えば、トルエン/メタノール、クロロホルム/メタノール、またはトルエン/アセトン)を用いて実施する。反応混合物がアシル化の最後に溶液である場合には、そのものを濃縮し、そして該残渣を上記の通り、結晶化し、あるいはカラムクロマトグラフィーによって精製する。該生成物の構造は、IR、NMR、およびマス分光学によって測定する。
【0014】
得られる式(I)のキヌレン酸アミド誘導体は、製造方法とは独立して、ある場合には、更なる置換基を導入するか、および/または存在する置換基を修飾しおよび/または除去するか、および/または酸との塩を形成するか、および/または塩基を用いる処理によって、得られる酸付加塩から式(I)のカルボン酸アミド誘導体を遊離させるかによって式(I)の他のキヌレン酸アミド誘導体に変換することができ、および/または式(I)の遊離なキヌレン酸アミド誘導体は塩基を用いる処理によって塩に変換することができる。
【0015】
例えば、X、YおよびZについて定義するメトキシ基およびベンジルオキシ基からメチル基およびベンジル基を切断することにより、フェノール誘導体を誘導する。該ベンジル基の除去は、例えば接触水素化または酢酸溶液中の臭化水素を用いて実施することができ、メチル基の切断はジクロロメタン溶液中の三臭化ホウ素を用いて実施することができる。遊離フェノール性ヒドロキシ基を含有する式(I)のキヌレン酸アミド誘導体は、異なるアシル化剤を用いてアシル基に変換することができる。該反応は、塩基(例えば、トリエチルアミンまたは炭酸ナトリウム)の存在下で、アシル化剤として酸クロリドまたは酸無水物を用いて、クロロ化炭化水素中、室温で実施する。アミノ基を含有する式(I)のキヌレン酸アミド誘導体は、フェノール性ヒドロキシ基のアシル化について上記する、異なるアシル化剤またはスルホニル化剤を用いて、アシルアミドまたはスルホンアミド誘導体に変換することができる。遊離ヒドロキシ基は、塩基の存在下で酸無水物または酸ハロゲン化物によってエステル化することができる。
【0016】
式(II)のカルボン酸および式(III)の第2級アミンは、いずれも商業的に入手可能であるか、あるいは異なる公知の方法によって製造することができる。いくつかの商業的に入手不可能な式(II)のカルボン酸および式(III)の第2級アミンの製造を、実施例に記載する。
【0017】
(実験プロトコール)
組み換えNMDA受容体の発現
本発明の化合物のNR2B選択性を証明するため、本発明者は、NR1/NR2AまたはNR1/NR2Bのサブユニット組成物を用いて、組み換えNMDA受容体を安定に発現するセルラインについて、それらを調べた。誘導性哺乳類発現ベクター中にサブクローニングするヒトNR1−3およびNR2Aのサブユニット、またはラットNR1aおよびNR2BのサブユニットのcDNAを、カチオン性脂質媒介性の形質移入法を用いて、NMDA受容体がないHEK293細胞中に導入した[Biotechniques, 22, 982-987, (1997); Neurochemistry International, 43, 19-29, (2003)]。ネオマイシンおよびハイグロマイシンに対する耐性を使用して、両方のベクターを有するクローンについてスクリーニングし、そしてモノクローナルセルラインをNMDA曝露に対して最大応答を生じるクローンから確立した。化合物を、蛍光カルシウム測定における、NMDA誘起性の細胞質ゾルカルシウムの増大についてのそれらの阻害作用を試験した。誘発剤の添加後に、研究を48〜72時間行なった。ケタミン(500μM)もまた、細胞毒性を防止するために、該誘発の間に存在させた。
【0018】
蛍光光度計プレートリーダーを用いる細胞内カルシウム濃度の測定に基づく、組み換えNMDA受容体を発現するHEK293細胞に及ぼす、化合物の機能性NMDAアンタゴニスト力価の評価
NMDA受容体は興奮時にカルシウムイオンに透過性であることが知られるているので、NMDA受容体活性化の大きさ、および機能性アンタゴニストによるその阻害は、アゴニスト(NMDA)の細胞中への適用後に、細胞内カルシウム濃度の増大を測定することによって確認することができる。ラットおよびヒトNMDA受容体の間には非常に高い配列相同性(NR1、NR2A、およびNR2Bサブユニットについてそれぞれ、99、95、97%)が存在するので、たとえあっても、それらの薬理学的な感受性においてほとんど差違はないと考えられる。従って、ラットNMDA受容体(クローンまたは天然)を用いて得られる結果は、ヒトの結果に十分に外挿することができる。
【0019】
細胞内カルシウム測定は、NR1aおよびNR2BまたはNR2A NMDA受容体サブユニットを発現するHEK293細胞上で実施する。該細胞を標準的な96ウェルマイクロプレート上にプレートし、そして該培養物を、試験まで95%空気−5%COの雰囲気下、37℃で保つ。
【0020】
該測定の前に、該細胞を蛍光Ca2+−感受性色素、フルオ−4/AM(2−2.5μM)と一緒にロードする。ロードを、測定の間にも使用する溶液(140mM NaCl、5mM KCl、2mM CaCl、5mM HEPES[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタン−スルホン酸]、5mM HEPES−Na、20mM グルコース、10μM グリシン、pH=7.4)を用いて2回洗浄することによって停止する。次いで、上記溶液中に溶解する被験化合物(90μL/ウェル)を加える。細胞内カルシウム測定は、プレートリーダー蛍光光度計を用いて実施する。細胞内カルシウム濃度を反映するフルオ−4−蛍光の増大は、200μM NMDAを適用することによって誘発する。該被験化合物の阻害力価は、異なる濃度の該化合物の存在下でのカルシウム増大の低下を測定することによって評価する。
【0021】
1濃度点での化合物の阻害力価は、コントロールNMDA応答の阻害パーセントとして表す。NR1a/NR2B発現細胞について、濃度−阻害曲線を得る。S字型の濃度−阻害曲線をデータ上にフィットさせ、そしてIC50値を、該化合物を用いて達成することができる最大阻害の半分を与える濃度として定義する。平均的なIC50値は、少なくとも3個の独立した実験から導く。NR1−3/NR2A発現細胞について、本発明の化合物および基準化合物による細胞内カルシウム濃度の増大を誘発するNMDAの拮抗作用は、それぞれ10および15マイクロMの濃度で試験した。
【0022】
化合物の生物学的活性
NR1a/NR2Bトランスフェクト細胞中で測定されるIC50値、およびNR1a/NR2Aトランスフェクト細胞中の15μM濃度での阻害パーセントを、本発明の化合物の選別した例について表1に例示する。比較のために、最も強力な公知の基準化合物についてのデータをも測定し、そして表2に示す。
【0023】
本発明の化合物は、NR1−3/NR2Bトランスフェクト細胞中での機能性NMDA拮抗作用において15μM以下のIC50値を示し、そしてNR1/NR1Aトランスフェクト細胞においてはこの濃度では不活性である。従って、本発明の化合物および医薬組成物は、NR2Bサブタイプ特異的NMDAアンタゴニストである。該化合物のいくつかは、公知の基準化合物と比較して優れた力価を有する(表1を参照)。
【表1】

【表2】

【0024】
基準化合物は以下の通りである:
CI-1041:6-{2-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペリジン-1-イル]-エタンスルフィニル}-3H-ベンゾオキサゾール-2-オン;
Co 101244:1-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)エチル]-4-ヒドロキシ-4-(4-メチルベンジル)ピペリジン;
EMD 95885:6-[3-(4-フルオロベンジル)ピペリジン-1-イル]プロピオニル]-2,3-ジヒドロ-ベンゾオキサゾール-2-オン;
CP-101,606:(1S,2S)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリジン-1-イル)-1-プロパノール;
Co-111103: 1-[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)エチル]-4-(4-フルオロベンジル)ピペリジン;
Ro 256981:R-(R*,S*)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-3-[4-(フェニルメチル)ピペリジン-1-イル]-1-プロパノール;
イフェンプロジル:エリスロ-2-(4-ベンジルピペリジノ)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノール;
MK-801:(+)-5-メチル-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-5,10-イミン。
【0025】
インビボ効力の測定のためのマウスホルマリン試験
ラットまたはマウスの後肢中への希釈ホルマリンの注射は、該損傷した肢を舐める/噛むによって費やされる時間として測定される、二相性の疼痛関連行動を誘起することが知られる。該第二相は一般的に、ホルマリン注射後の15〜60分の時間間隔で検出される、疼痛関連事象として定義される。NMDA受容体は、ホルマリン注射に対する応答の第二相に関与し、そしてこの行動上の応答はNMDA受容体の遮断に対して感受性であることが知られる[Dickenson, A.およびBesson J.-M.(編): 第1章, 頁6-7: 鎮痛の動物モデル(Animal models of Analgesia);および8章, 頁180-183: 中枢過敏性の機構(Mechanism of Central Hypersensitivity): 興奮性アミノ酸機構およびそれらのコントロール(Excitatory Amino Acid Mechanisms and Their Control)-疼痛の薬理学(In Pharmacology of Pain.), Springer-Verlag (Berlin) 1997]。従って、本発明者は、ホルマリン試験の第二相を使用して、インビボでの化合物の有効性を確認した。応答の該二相の阻害は、化学的誘発性の持続性疼痛に対する鎮痛性効果を示すと考えられる[Hunker, S.らによる: マウスにおけるホルマリン試験、弱鎮痛薬を評価するための有用な技術(Formalin Test in Mice, a Useful Technique for Evaluating Mild Analgesics), Journal of Neuroscience Methods, 14 (1985) 69-76]。
【0026】
雄性アルビノNMRIマウス(20〜25g)を使用した。該実験前には、いずれの固形食物をも約16時間取り下げるが、しかし、該動物は20%グルコース溶液を自由に摂取させた。該動物を、ガラスシリンダー(直径15cm)中で1時間の順化時間を許容し、次いで、観察を容易にするために鏡を背後に置いた同一のシリンダーに移動させた。該被験物質を5%トゥイーン−80(体重kg当たり10mL)中に懸濁し、そしてホルマリン注射(0.9%生理食塩水中の1%ホルマリン(20μL)を、右後肢の背側の表面中に皮下注射した)の15分前に、胃管栄養法によって経口投与した。ホルマリン注射後の該注射した肢の舐めるおよび噛むによって費やされた時間は、20〜25分と測定された。ED50値の測定のために、該被験物質の多様な投与(少なくとも5回)を5マウスの群に与え、そして該結果を、同日に観察されるビヒクルコントロール群と対比して、舐めることによって費やされる阻害時間%として表した。ED50値(すなわち、50%阻害を与える用量)を、ボルツマンS字型曲線フィッティングによって算出した。
【表3】

【0027】
NR2B部位で作用するNMDAアンタゴニストを用いて有利に処置することができる疾患(Loftisによる[Pharmacology & Therapeutics, 2003, 97, 55-85]によって、最近、概説されている)としては、総合失調症、パーキンソン病、ハンチントン病、低酸素症および虚血によって誘起される興奮毒性、発作性疾患、薬物乱用、および疼痛(特に、いずれかの原因の神経障害性の炎症性の内臓疼痛)を含む[Eur. J. Pharmacol., 2001, 429, 71-78]。
【0028】
非選択的NMDAアンタゴニストと比較したそれらの副作用の傾向の低下に起因して、NR2B選択的アンタゴニストは、NMDAアンタゴニストが有効であり得る疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症)[Neurol. Res., 21, 309-12 (1999)]、例えばアルコール、オピオイドもしくはコカインの禁断症状[Drug and Alcohol Depend., 59, 1-15 (2000)]、筋肉攣縮[Neurosci. Lett., 73, 143-148 (1987)]、様々な原因の痴呆[Expert Opin. Investig. Drugs, 9, 1397-406 (2000)]、不安症、うつ病、偏頭痛、低血糖症、網膜の変性疾患(例えば、CMV網膜炎)、緑内障、喘息、耳鳴り、聴覚損失[Drug News Perspect 11, 523-569 (1998)、および国際特許出願WO 00/00197]における有用性を有し得る。
【0029】
従って、本発明の化合物の有効量は、脳または脊髄の外傷性傷害、疼痛のオピオイド処置に対する耐性および/または依存、耐性の発生、乱用の可能性の低下、例えばアルコール、オピオイドもしくはコカインなどの薬物の乱用の禁断症状、虚血性CNS障害、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの慢性神経変性障害、例えば神経障害性疼痛などの疼痛および慢性疼痛状態、の処置のために有利に使用し得る。
【0030】
本発明の化合物、並びにその医薬的に許容し得る塩は、そのまま、または医薬組成物の形態で適当に使用することができる。これらの組成物(薬物)は、固体、液体または半液体の形態であり得て、そして実際に通常使用される医薬的なアジュバントおよび補助物質(例えば、担体、賦形剤、希釈剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、pH−および浸透圧−調整剤、香味剤、芳香剤、並びに製剤化−促進または製剤化−付与添加物)を加えることができる。
【0031】
該治療効果を発揮するのに必要な投与量は広範囲な限度内で変えることができ、そして、これは、該疾患の重篤度、処置する患者の症状および体重、並びに有効成分に対する患者の感受性、投与経路、および1日の処置の回数に応じて、各症例における個々の要件に適合するであろう。使用する該有効成分の実際の用量は、処置される患者を知っている熟練した担当の医師によって安全に決定することができる。
【0032】
本発明に記載する有効成分を含有する医薬組成物は通常、1投与単位中に有効成分の0.01〜100mgを含む。当然に、ある組成物中の活性成分の量が上で定義する上限または下限を超えることはあり得る。
【0033】
該医薬組成物の固体形態は、例えば錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤、または注射剤の調製に有用な凍結乾燥粉末状アンプルであり得る。液体組成物は、注射用組成物および注入用組成物、液剤、封入液剤、または滴剤である。半液体組成物は、軟膏、バルサム、クリーム剤、振とう混合物、および坐剤であり得る。
【0034】
単純な投与のために、医薬組成物が投与されるべき有効成分の量を含有する投与量単位を含むとき、1回もしくは複数回、またはその半分、3分の1、4分の1の部が適当である。このような投与量単位は、例えば錠剤であり、このものは、有効成分の必要量を正確に投与するために、錠剤の二分割または四分割を促進する溝を有するように粉末化することができる。
【0035】
錠剤は、胃を通過した後に有効成分の内容物の放出を確実とするために、酸可溶性層でコーティングすることができる。該錠剤は、腸溶コーティングである。同様な効果はまた、有効成分をカプセル封入することによっても達成し得る。
【0036】
経口投与のための医薬組成物は、例えば賦形剤として乳糖またはデンプン、結合剤または造粒剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリジンまたはデンプンのりを含み得る。馬鈴薯でんぷんまたは微結晶性セルロースを崩壊剤として加えるが、しかし、ウルトラアミノペクチンまたはホルムアルデヒドカゼインをも使用し得る。タルカム、コロイド状ケイ酸、ステアリン、ステアリン酸カルシウムまたはマグネシウムを、抗接着剤および滑沢剤として使用し得る。
【0037】
錠剤は、例えば湿式造粒、続く圧縮によって製造することができる。該混合した有効成分および賦形剤、並びにある場合には崩壊剤の部を、適当な装置中で結合剤の水性、アルコール性、またはアルコール性水溶液と一緒に造粒し、次いで該顆粒物を乾燥する。他の崩壊剤、滑沢剤および抗接着剤を該乾燥顆粒物に加え、そして該混合物を圧縮して錠剤とする。ある場合には、該錠剤は投与を容易にするために、二分割の溝を有するように製造する。
【0038】
該錠剤は、有効成分および適当な助剤の混合物から直接圧縮打錠によって製造することができる。ある場合に、錠剤は、薬務において通常使用される添加物(例えば、安定化剤、香味剤、着色剤(例えば、糖類、セルロース誘導体(メチル−またはエチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、食品用着色料、食品用嬌味剤(food laces)、芳香剤、酸化鉄系顔料など)を用いることによってコーティングし得る。カプセル剤の場合には、有効成分および助剤の混合物をカプセルに充填する。
【0039】
液体経口組成物(例えば、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤)は、水、グリコール、油、アルコール、着色剤、および香味剤を用いて製造することができる。
【0040】
直腸投与の場合には、該組成物は坐剤または浣腸剤に製剤化する。坐剤は、有効成分の他に、担体、いわゆるエイデップス・プロ・サポジトリー(adeps pro suppository)を含み得る。担体は、植物油(例えば、水素添加植物油、C12〜C18脂肪酸のトリグリセリド)であり得る(商品名:ウイテップゾール(Witepsol)の担体が好ましい)。該有効成分を、融解したエイデップス・プロ・サポジトリーと一緒に均一に混合し、そして該坐剤を成型する。
【0041】
非経口投与の場合には、該組成物は注射液剤として製剤化する。該注射液剤を製造する場合には、該有効成分を、蒸留水/または異なる有機溶媒(例えば、グリコールエーテル)中に、ある場合には可溶化剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタン−モノラウレート、−モノオレエート、または−モノステアレート(ツウィーン20、ツウィーン60、ツウィーン80))の存在下で、溶解する。該注射液剤はまた、異なる助剤(例えば、保存剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)、並びにpH調節剤および緩衝化剤、およびある場合には局所麻酔剤(例えば、リドカイン))をも含み得る。本発明の有効成分を含有する注射液剤は、そのものをアンプル中に充填する前にろ過し、そして充填後に滅菌する。
【0042】
有効成分が吸湿性である場合には、そのものを凍結乾燥によって安定化し得る。
【実施例】
【0043】
以下の実施例は、如何なる様式でも限定することを意図することなく、本発明を例示する。
【0044】
(実施例1)
2−[4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン−1−カルボニル]−6−ヒドロキシ−1H−キノリン−4−オン
6−ヒドロキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−2−カルボン酸[J. Med. Chem., 17, 685-690, (1974)](0.5g、2.4mmol)、トリエチルアミン(0.75mL、5.4mmol)、4−(4−フルオロ−ベンジル)−ピペリジン塩酸塩[J. Med. Chem., 35, 4903, (1992)](0.6g、2.6mmol)、HBTU[O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(アドバンス・ケム・テク(Advanced Chem. Tech.)社製](1.0g、2.6mmol)、およびジメチルホルムアミド(15mL)の混合物を室温で24時間撹拌する。該反応混合物を濃縮し、そして該残渣をカラムクロマトグラフィー(吸収剤としてキセルゲル60(メルク社製)、および溶出液としてトルエン:メタノール=4:1を使用する)によって精製して、標題化合物(0.18g、19%)を得る。Mp:190℃(ジエチルエーテル)。
【0045】
(実施例2)
2−(4−ベンジル−ピペリジン−1−カルボニル)−6−ヒドロキシ−1H−キノリン−4−オン
標題化合物は、実施例1に記載する方法に従って、6−ヒドロキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−2−カルボン酸および4−ベンジル−ピペリジンから製造する。Mp:127℃(ジエチルエーテル)。
【0046】
(実施例3)
6−ヒドロキシ−2−[4−(4−メチル−ベンジル)−ピペリジン−1−カルボニル]−1H−キノリン−4−オン
標題化合物は、実施例1に記載する方法に従って、6−ヒドロキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−2−カルボン酸および4−(4−メチルベンジル)−ピペリジン[J. Org. Chem., 64, 3763, (1999)]から製造する。Mp:152℃(ジエチルエーテル)。
【0047】
(実施例4)
2−[4−(4−クロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−カルボニル]−6−ヒドロキシ−1H−キノリン−4−オン
標題化合物は、実施例1に記載する方法に従って、6−ヒドロキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−2−カルボン酸および4−(4−クロロ−ベンジル)−ピペリジン(C. A. 77, 34266 w)から製造する。Mp:194℃(ジエチルエーテル)。
【0048】
(実施例5)
2−(4−ベンジルオキシ−ピペリジン−1−カルボニル)−6−ヒドロキシ−1H−キノリン−4−オン
標題化合物は、実施例1に記載する方法に従って、6−ヒドロキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−2−カルボン酸および4−ベンジルオキシ−ピペリジン[Tetrahedron Lett., 36, 3465, (1995)]から製造する。Mp:103℃(ジエチルエーテル)。
【0049】
(実施例6)
6−ヒドロキシ−2−(4−フェノキシメチル−ピペリジン−1−カルボニル)−1H−キノリン−4−オン
標題化合物は、実施例1に記載する方法に従って、6−ヒドロキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−2−カルボン酸および4−フェノキシ−メチル−ピペリジン[独国特許第254 999号 (1997)]から製造する。Mp:130℃(ジエチルエーテル)。
【0050】
(実施例7)
2−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボニル]−6−ヒドロキシ−1H−キノリン−4−オン
a)4−(4−クロロ−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
アルゴン下、ジメチルホルムアミド(80mL)中の4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル[Bioorg. Med. Chem. Lett. 10, 2815, (2000)](10.0g、49.7mol)の撹拌溶液に、水素化ナトリウム(60%、75mmol)(3.0g)を加える。該反応混合物を40℃で1時間撹拌し、次いでジメチルホルムアミド(20mL)中の1−クロロ−4−フルオロ−ベンゼン(アルドリッチ社製)(5.3mL、49.7mmol)を20℃で滴下する。該反応混合物を80℃で4時間撹拌し、20℃まで冷却し、エタノール(1mL)を滴下し、水(100mL)中にそそぎ、そして酢酸エチルを用いて抽出する。該有機相を硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、そして濃縮する。該残渣を、カラムクロマトグラフィー(吸収剤としてキセルゲル60(メルク社製)、および溶出液として酢酸エチルを使用する)によって精製して、標題化合物(11.07g、75.5%)を得る。Mp:油状物。
【0051】
b)4−(4−クロロ−フェノキシ)−ピペリジン塩酸塩
酢酸エチル中の2.5M 塩酸の溶液(150mL)に、4−(4−クロロ−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(11.07g、37.5mmol)を加える。該反応混合物を20℃で3時間撹拌し、次いで50mLまで濃縮する。該沈降する結晶をろ取し、酢酸エチルを用いて洗浄して、標題化合物(7.0g、75.2%)を得た。Mp:194−196℃。
【0052】
c)2−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−ピペリジン−1−カルボニル]−6−ヒドロキシ−1H−キノリン−4−オン
標題化合物は、実施例1に記載する方法に従って、6−ヒドロキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−2−カルボン酸および4−(4−クロロ−フェノキシ)−ピペリジンから製造する。Mp:91℃(ジエチルエーテル)。
【0053】
(実施例8)
6−ヒドロキシ−2−(4−p−トリルオキシ−ピペリジン−1−カルボニル)−1H−キノリン−4−オン
標題化合物は、実施例1に記載する方法に従って、6−ヒドロキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−2−カルボン酸および4−p−トリルオキシ−ピペリジン[J. Med. Chem., 21, 309, (1978)]から製造する。Mp:258−260℃(ジエチルエーテル)。
【0054】
(実施例9)
6−(4−ベンジル−ピペリジン−1−カルボニル)−1,5−ジヒドロ−オキサゾロ[4,5−g]キノリン−2,8−ジオン
a)2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イルアミノ)−ブタ−2−エン二酸ジメチルエステル
6−アミノ−3H−ベンゾオキサゾール−2−オン[米国特許第2806853号](1.0g、6.66mmol)、アセチレンジカルボン酸ジメチル(アルドリッチ社製)(0.9mL、7.3mmol)、およびメタノール(15mL)の混合物を2時間還流する。該反応混合物を20℃まで冷却し、該沈降する結晶をろ取し、メタノールを用いて洗浄して、標題化合物(1.7g、87%)を得た。Mp:172℃。
【0055】
b)2,8−ジオキソ−1,2,5,8−テトラヒドロ−オキサゾロ[4,5−g]キノリン−6−カルボン酸メチルエステル
沸騰ダウサム(Dowtherm)(フルカ社製)(10mL)の撹拌溶液に、2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾオキサゾール−6−イルアミノ)−ブタ−2−エン二酸ジメチルエステル(1.7g、5.8mmol)を少量ずつ加える。添加の完結後に、該反応混合物を10分間還流し、次いで室温で冷却し、該沈降する生成物をろ取し、ヘキサンを用いて洗浄して、標題化合物(1.16g、76%)を得る。Mp:297℃。
【0056】
c)2,8−ジオキソ−1,2,5,8−テトラヒドロ−オキサゾロ[4,5−g]キノリン−6−カルボン酸
2,8−ジオキソ−1,2,5,8−テトラヒドロ−オキサゾロ[4,5−g]キノリン−6−カルボン酸メチルエステル(1.16g、4.4mmol)、メタノール(40mL)、水(10mL)、および水酸化ナトリウム(1.25g、31.2mmol)の混合物を20℃で1時間撹拌する。該メタノールを減圧下で留去する。該反応混合物を2M塩酸を用いて酸性とし、そして該沈降結晶をろ取し、水洗して標題化合物(0.9g、82%)を得る。Mp>300℃。
【0057】
d)6−(4−ベンジル−ピペリジン−1−カルボニル)−1,5−ジヒドロ−オキサゾロ[4,5−g]キノリン−2,8−ジオン
標題化合物は、実施例1に記載する方法に従って、2,8−ジオキソ−1,2,5,8−テトラヒドロ[4,5−g]キノリン−6−カルボン酸4−ベンジル−ピペリジンから製造する。Mp:215℃(ジエチルエーテル)。
【0058】
(実施例10)
6−ヒドロキシ−2−(4−フェノキシ−ピペリジン−1−カルボニル)−1H−キノリン−4−オン
標題化合物は、実施例1に記載する方法に従って、6−ヒドロキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−2−カルボン酸および4−フェノキシ−ピペリジン[J. Med. Chem., 17, 1000-1003, (1974)]から製造する。Mp:270℃(ジエチルエーテル)。
【0059】
(実施例11)
2−(4−ベンジル−4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボニル)−6−ヒドロキシ−1H−キノリン−4−オン
標題化合物は、実施例1に記載する方法に従って、6−ヒドロキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−2−カルボン酸および4−ベンジル−ピペリジン−4−オール[J. Med. Chem., 42, 2087-2104, (1999)]から製造する。Mp:178℃(ジエチルエーテル)。
【0060】
(実施例12)
2−(4−ベンジル−4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボニル)−7−ヒドロキシ−1H−キノリン−4−オン
a)2−(4−ベンジル−ピペリジン−1−カルボニル)−7−ベンジルオキシ−1H−キノリン−4−オン
標題化合物は、実施例1に記載する方法に従って、7−ベンジルオキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−2−カルボン酸[J. Med. Chem., 34, 1243-1252, (1991)]および4−ベンジル−ピペリジンから製造する。Mp:228℃(イソプロパノール(izopropanol))。
【0061】
b)2−(4−ベンジル−4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボニル)−7−ヒドロキシ−1H−キノリン−4−オン
2−(4−ベンジル−ピペリジン−1−カルボニル)−7−ベンジルオキシ−1H−キノリン−4−オン(0.5g、1.1mmol)、テトラヒドロフラン(20mL)、メタノール(20mL)、10%Pd/C触媒(0.2g)の混合物を2時間水素添加する。該触媒をろ取し、テトラヒドロフランを用いて洗浄し、そして該ろ液を濃縮する。該残渣を、カラムクロマトグラフィー(吸収剤としてキセルゲル60、および溶出液としてトルエン:メタノール=4:1を使用する)によって精製して、標題化合物(0.32g、80.7%)を得る。Mp:174℃(ジエチルエーテル)。
【0062】
(実施例13)
(医薬組成物の製造)
a)錠剤:
式Iの有効成分の0.01〜50%、乳糖の15〜50%、馬鈴薯でんぷんの15〜50%、ポリビニルピロリドンの5〜15%、タルクの1〜5%、ステアリン酸マグネシウムの0.01〜3%、コロイド状二酸化ケイ素の1〜3%、およびウルトラアミロペクチンの2〜7%を混合し、次いで、湿式造粒により造粒し、錠剤に圧縮打錠する。
【0063】
b)糖剤(dragee)、糖衣錠:
上記の方法によって製造された錠剤を腸−または胃溶解フィルムまたは糖およびタルクからなる層でコーティングする。糖剤は、蜜蝋またはカルヌバワックスの混合物で磨く。
【0064】
c)カプセル剤:
式Iの有効成分の0.01〜50%、ラウリル硫酸ナトリウムの1〜5%、でんぷんの15〜50%、乳糖の15〜50%、コロイド状二酸化ケイ素の1〜3%、およびステアリン酸マグネシウムの0.01〜3%を十分に混合し、該混合物をふるいにかけ、硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0065】
d)懸濁剤:
成分:式Iの有効成分の0.01〜15%、水酸化ナトリウムの0.1〜2%、クエン酸の0.1〜3%、ニパジン(nipagin)(4−ヒドロキシ安息香酸メチルナトリウム)の0.05〜0.2%、ニパゾール(nipasol)の0.005〜0.02%、カルボポール(ポリアクリル酸)の0.01〜0.5%、96%エタノールの0.1〜5%、香味剤の0.1〜1%、ソルビトール(70%水溶液)の20〜70%、および蒸留水の30〜50%。
【0066】
蒸留水(20mL)中のニパジンおよびクエン酸の溶液に、カルボポールを激しく撹拌しながら少しずつ分けて添加し、溶液を10〜12時間放置する。次いで、蒸留水(1mL)中の水酸化ナトリウム、ソルビトールの水溶液、および最後にエタノール性ラズベリー香味剤を、撹拌しながら添加する。この担体に、有効成分を少しずつ分けて添加し、投げ込み(immersing)ホモジナイザーで懸濁する。最後に、該懸濁液を所望の最終容量にまで蒸留水で満たし、そして該懸濁シロップをコロイドミル装置に通過させる。
【0067】
e)坐剤:
各坐剤につき、式Iの有効成分の0.01〜15%、および乳糖の1〜20%を十分に混合し、次いで、アデップス・プロ・サポジトリー(例えば、ウイテップゾール(Witepsol)4)の50〜95%を融解し、35℃に冷却し、そして有効成分および乳糖の混合物をその中でホモジナイザーを用いて混合する。得られた混合物を冷却した型で成型する。
【0068】
f)凍結乾燥粉末アンプル組成物:
マンニトールまたは乳糖の5%溶液を注射用の再蒸留水で調製し、この溶液をろ過して滅菌溶液とする。式Iの有効成分の0.01〜5%溶液もまた注射用の再蒸留水で調製し、この溶液をろ過して滅菌溶液とする。これらの2つの溶液を無菌条件下で混合し、1mLずつアンプル中に充填し、該アンプルの内容物を凍結乾燥し、そしてアンプルを窒素下で封する。投与前に、該アンプルの内容物を、滅菌水または0.9%(生理学的な)滅菌食塩水溶液中に溶解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
XおよびYは独立して、水素原子、ヒドロキシ、アミノ、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたC〜Cアルキルスルホンアミド、場合により1個以上のハロゲン原子によって置換されたC〜Cアルカノイルアミド、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルコキシカルボニル基であるか、あるいは、
ある場合には、近接するX基およびY基は、1個以上の同一もしくは異なる更なるヘテロ原子、−CH=基、および/または−CH−基と一緒になって、場合により置換された4〜7員の単素環またはヘテロ環(モルホリン、ピロール、ピロリジン、オキソ−もしくはチオキソ−ピロリジン、ピラゾール、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリジン、オキソ−もしくはチオキソ−イミダゾールもしくはイミダゾリジン、1,4−オキサジン、オキサゾール、オキサゾリジン、オキソ−もしくはチオキソ−オキサゾリジン、または3−オキソ−1,4−オキサジン環が好ましい)を形成し得て;
Wは、酸素原子、並びにC〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、アミノカルボニル、−NH−、−N(アルキル)−、−CHO−、−CHS−、−CH(OH)−、−OCH−基であり、ここで、アルキルの意味はC〜Cアルキル基−であり;
点線結合:
【化2】

がC−C単結合である場合には、Vの意味はヒドロキシ基または水素原子であるか、あるいは、
WがC〜Cアルキレン基またはC〜Cアルケニレン基である場合には、該点線結合:
【化3】

の1つは更なるC−C二重結合であり得て、そしてこの場合には、Vは該二重結合に関与する電子対であり;
Zは、水素原子、ハロゲン原子、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、またはカルボキシル基である]
で示される新規なキヌレン酸アミド誘導体、並びにその光学的鏡像異性体、ラセミ体、および塩。
【請求項2】
Xは、水素原子であり、
Yは、ヒドロキシ基またはベンジルオキシ基であるか、あるいは、
近接するX基およびY基は、−NH−CO−O−鎖を形成し;
Wは、酸素原子、並びにC〜Cアルキレン、−CHO−、−OCH−基であり;
Vは、ヒドロキシ基または水素原子であり;
Zは、水素原子、ハロゲン原子、またはC〜Cアルキル基であり;
点線結合:
【化4】

は、C−C単結合である、
請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
2-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペリジン-1-カルボニル]-6-ヒドロキシ-1H-キノリン-4-オン、
2-(4-ベンジル-ピペリジン-1-カルボニル)-6-ヒドロキシ-1H-キノリン-4-オン、
6-ヒドロキシ-2-[4-(4-メチル-ベンジル)-ピペリジン-1-カルボニル]-1H-キノリン-4-オン、
2-[4-(4-クロロ-ベンジル)-ピペリジン-1-カルボニル]-6-ヒドロキシ-1H-キノリン-4-オン、
2-(4-ベンジルオキシ-ピペリジン-1-カルボニル)-6-ヒドロキシ-1H-キノリン-4-オン、
6-ヒドロキシ-2-(4-フェノキシメチル-ピペリジン-1-カルボニル)-1H-キノリン-4-オン、
2-[4-(4-クロロ-フェノキシ)-ピペリジン-1-カルボニル]-6-ヒドロキシ-1H-キノリン-4-オン、
6-ヒドロキシ-2-(4-p-トリルオキシ-ピペリジン-1-カルボニル)-1H-キノリン-4-オン、
6-(4-ベンジル-ピペリジン-1-カルボニル)-1,5-ジヒドロ-オキサゾロ[4,5-g]キノリン-2,8-ジオン、
6-ヒドロキシ-2-(4-フェノキシ-ピペリジン-1-カルボニル)-1H-キノリン-4-オン、
2-(4-ベンジル-4-ヒドロキシ-ピペリジン-1-カルボニル)-6-ヒドロキシ-lH-キノリン-4-オン、および、
2-(4-ベンジル-4-ヒドロキシ-ピペリジン-1-カルボニル)-7-ヒドロキシ-lH-キノリン-4-オン
からなる群から選ばれる請求項1の範囲内に属する、キヌレン酸アミド誘導体の化合物。
【請求項4】
有効成分としての式(I)(式中、X、Y、W、V、Z、および点線結合:
【化5】

の意味は、請求項1に示す通りである)で示されるキヌレン酸アミド誘導体、またはその光学的鏡像異性体、ラセミ体もしくは塩の有効量、および実際に通常使用される補助物質(例えば、担体、賦形剤、希釈剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、pH−および浸透圧−調整剤、香味剤、芳香剤、並びに製剤化−促進または製剤化−付与添加物)を含有する、医薬組成物。
【請求項5】
式(I)(式中、X、W、V、Z、Y、および点線結合:
【化6】

の意味は、請求項1に示す通りである)で示されるキヌレン酸アミド誘導体の製造方法であって、ここで、
式(II):
【化7】

(式中、XおよびYの意味は請求項1に示す通りである)
のカルボン酸またはその活性誘導体を、式(III):
【化8】

(式中、Z、V、W、および点線結合:
【化9】

の意味は請求項1に示す通りである)
のアミンと反応させ、
次いで場合により、その結果得られる式(I)(式中、X、Y、W、V、Z、および点線結合:
【化10】

の意味は請求項1に示す通りである)のキヌレン酸アミド誘導体を、公知の方法によって、新規な置換基を導入するか、および/または存在する置換基を修飾しもしくは除去するか、および/または塩を形成するか、および/または塩から式(I)の化合物を遊離させるか、および/または該得られるラセミ体を光学活性な酸もしくは塩基を用いて分割するかによって、式(I)の別の化合物に変換することを特徴とする、該製造方法。
【請求項6】
式(III)(式中、XおよびYの意味は請求項1に示す通りである)のカルボン酸の活性誘導体を、式(III)(式中、Z、V、W、および点線結合:
【化11】

の意味は請求項1に示す通りである)のアミンと、好ましくは塩基の存在下で反応させることを特徴とする、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
式(II)(式中、XおよびYの意味は請求項1に示す通りである)のカルボン酸を、式(III)(式中、Z、V、Wおよび点線結合:
【化12】

の意味は請求項1に示す通りである)のアミンと、ジメチルホルムアミド中、トリエチルアミンおよびO−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)の存在下で、反応させることを特徴とする、請求項5記載の製造方法。
【請求項8】
NR2B選択的NMDA受容体アンタゴニスト効果を有する医薬組成物の製造方法であって、有効成分としての式(I)(式中、X、W、V、W、Z、Y、および点線結合:
【化13】

の意味は請求項1に示す通りである)のキヌレン酸アミド誘導体、またはその光学的鏡像異性体、ラセミ体もしくは医薬的に許容し得る塩を、実際に通常使用する補助物質(例えば、担体、賦形剤、希釈剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、pH−および浸透圧−調整剤、香味剤、芳香剤、並びに製剤化−促進または製剤化−付与添加物)と混合することを特徴とする、該製造方法。
【請求項9】
哺乳動物(ヒトを含む)の下記:脳または脊髄の外傷性傷害、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)関連神経性傷害、筋萎縮性側索硬化症、疼痛のオピオイド処置に対する耐性および/または依存、例えばアルコール、オピオイドもしくはコカインの禁断症状、虚血性CNS障害、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの慢性神経変性障害、例えば神経因性疼痛、癌関連疼痛などの疼痛および慢性疼痛状態、癲癇、不安症、うつ病、片頭痛、精神病、筋肉攣縮、様々な原因の痴呆、低血糖症、網膜の変性疾患、緑内障、喘息、耳鳴り、アミノグリコシド抗生物質誘発性聴覚損失、の疾患の処置および症状の軽減の方法であって、式(I)(式中、X、W、V、Z、Y、および点線結合:
【化14】

の意味は請求項1に示す通りである)で示されるキヌレン酸アミド誘導体、またはその光学的鏡像異性体、ラセミ体もしくは医薬的に許容し得る塩の有効量をそのままで、または担体、充填物質および医薬品に通常使用されるその他と組み合わせて、処置する哺乳動物に投与することを特徴とする、該方法。
【請求項10】
哺乳動物(ヒトを含む)の下記:脳または脊髄の外傷性傷害、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)関連神経性傷害、筋萎縮性側索硬化症、疼痛のオピオイド処置に対する耐性および/または依存、例えばアルコール、オピオイドもしくはコカインの禁断症状、虚血性CNS障害、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの慢性神経変性障害、例えば神経因性疼痛、癌関連疼痛などの疼痛および慢性疼痛状態、癲癇、不安症、うつ病、片頭痛、精神病、筋肉攣縮、様々な原因の痴呆、低血糖症、網膜の変性疾患、緑内障、喘息、耳鳴り、アミノグリコシド抗生物質誘発性聴覚損失、の疾患の処置および症状の軽減のための医薬品の製造における、式(I)(式中、X、W、V、Z、Y、および点線結合:
【化15】

の意味は請求項1に示す通りである)で示されるキヌレン酸アミド誘導体、および/またはその光学的鏡像異性体、もしくはラセミ体、および/または医薬的に許容し得る塩の使用。

【公表番号】特表2008−508250(P2008−508250A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523163(P2007−523163)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【国際出願番号】PCT/HU2005/000080
【国際公開番号】WO2006/010967
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(596035695)
【Fターム(参考)】