NRG−2核酸分子、ポリペプチド、ならびに診断および治療法
【課題】NRG-2ポリペプチド、核酸分子、および抗体を使用する治療および診断の方法及び、新規NRG-2ポリペプチドおよび核酸分子を提供する。
【解決手段】NRG-2αをコードする全長cDNAが小脳から同定された。NRG-2コード配列の様々な領域に対する多数のプローブが、クローニング、マッピングおよび配列解析のためにげっ歯類およびヒト配列データに基づいて設計された。ライブラリーをスクリーニングするに先立ち、プローブの特異性が3'RACE(cDNA末端の迅速増幅)法を用いてヒト小脳RNAを解析することにより確認された。
【解決手段】NRG-2αをコードする全長cDNAが小脳から同定された。NRG-2コード配列の様々な領域に対する多数のプローブが、クローニング、マッピングおよび配列解析のためにげっ歯類およびヒト配列データに基づいて設計された。ライブラリーをスクリーニングするに先立ち、プローブの特異性が3'RACE(cDNA末端の迅速増幅)法を用いてヒト小脳RNAを解析することにより確認された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ニューレグリンおよびその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ニューレグリン(NRG)およびそれらの受容体は、神経、筋肉、上皮および他の組織における器官発生に関与している細胞と細胞とのシグナル伝達のための成長因子-受容体チロシンキナーゼ系を構成している(Lemke、Mol. Cell Neurosci.、7:247-262(1996);Burdenら、Neuron、18:847-855(1997))。3種の公知のNRG遺伝子であるNRG-1、NRG-2およびNRG-3は、個別の染色体遺伝子座にマッピングされ(Pinkas-Kramarskiら、Proc. Natl. Acad Sci. USA、91:9387-91(1994);Carrawayら、Nature、387:512-516(1997);Changら、Nature、387:509-512(1997);および、Zhangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、94:9562-9567(1997))、ならびに集合的にNRGタンパク質の多様なアレイをコードしている。NRGタンパク質ファミリーは、上皮細胞成長因子様(EGFL)ドメイン、免疫グロブリン(Ig)ドメイン、および他の認識可能なドメインを含む、少なくとも20個(およびおそらくは50個またはそれ以上)の分泌されかつ膜結合されたアイソフォームを含む。
【0003】
今日までに最も徹底して研究されたNRGタンパク質は、NRG-1の遺伝子産物であり、これはおよそ15個の個別の構造的に関連したアイソフォームの群を含む(Lemke、Mol. Cell Neurosci.、7:247-262(1996)、ならびにPelesおよびYarden、BioEssays、15:815-824(1993))。NRG-1のアイソフォームは、Neu分化因子(Neu Differentiation Factor)(NDF;Pelesら、Cell、69:205-216(1992)およびWenら、Cell、69:559-572(1992))、ヘレグリン(HRG;Holmesら、Science、256:1205-1210(1992))、アセチルコリン受容体誘導活性(Acetylcholine Receptor Inducing Activity)(ARIA;Fallsら、Cell、72:801-815(1993))、およびグリア成長因子GGF1、GGF2およびGGF3(Marchionniら、Nature、362:312-8(1993))を含む。
【0004】
NRG-2遺伝子は、相同クローニングにより(Changら、Nature、387:509-512(1997);Carrawayら、Nature、387:512-516(1997);および、Higashiyamaら、J. Biochem.、122:675-680(1997))、およびゲノムアプローチを通して(Busfieldら、Mol. Cell. Biol.、17:4007-4014(1997))により同定されている。NRG-2アイソフォームは、erbBキナーゼの神経および胸腺に由来するアクチベーター(NTAK;Genbankアクセッション番号AB005060)、ニューレグリン誘導体(Don-1)、および小脳由来の成長因子(CDGF;国際公開公報第97/09425号)を含む。erbB4またはerbB2/erbB4受容体を発現している細胞は、NRG-2に対する特に強固な反応を示し得る(Pinkas-Kramarskiら、Mol. Cell. Biol.、18:6090-6101(1998))。NRG-3遺伝子産物(Zhangら、Proc. Natl. Acad. Sci USA、94:9562-9567(1997))も、erbB4受容体に結合し活性化することが知られている(Hijaziら、Int. J. Oncol.、13:1061-1067(1998))。
【0005】
NRGアイソフォームのコアに存在するEGFLドメインはNRG受容体の結合し、活性化に必要であり、これは上皮細胞成長因子受容体(EGFR)ファミリーに属し、ならびにEGFR(またはerbB1)、erbB2、erbB3、およびerbB4を含み、これらは各々ヒトにおいてHER1からHER4として公知である(Meyerら、Development、124:3575-3586(1997);Orr-Urtregerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90:1867-71(1993);Marchionniら、Nature、362:312-8(1993);Chenら、J. Comp. Neurol.、349:389-400(1994);Corfasら、Neuron、14:103-115(1995);Meyerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、91:1064-1068(1994);および、Pinkas-Krainarskiら、Oncogene、15:2803-2815(1997))。NRG類の高親和性結合は、主としてerbB3受容体またはerbB4受容体のいずれかにより媒介され得る。NRGリガンドの結合は、他のerbBサブユニットとの二量体化および特異的チロシン残基上のリン酸化によるトランス活性化につながる。
【0006】
NRGタンパク質は、多様な生物学的特性を有し、これらは広範な疾患および障害の新規療法の開発において有用である可能性を有する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、NRG-2ポリペプチド、核酸分子、および抗体を用いる治療および診断法を提供する。本発明はまた、新規NRG-2ポリペプチドおよび核酸分子も提供する。
【0008】
第一の局面において、本発明は、細胞の有糸分裂誘発、生存、成長または分化を増加するのに有効量のNRG-2ポリペプチドを細胞へ投与する段階により、細胞の有糸分裂誘発、生存、成長または分化を増加する方法であって、この細胞がNRG-2ポリペプチドに対して選択的であるerbB受容体を発現している方法を提供する。本局面の好ましい態様において、erbB受容体は、erbB4ホモダイマー、erbB2/erbB4ヘテロダイマー、またはerbB1/erbB3ヘテロダイマーである。別の第一の局面の好ましい態様において、細胞は、神経系細胞、神経前駆細胞、神経関連細胞、または筋細胞である。別の第一の局面の好ましい態様において、神経関連細胞は、シュワン細胞、星状膠細胞、希突起膠細胞、O-2A前駆細胞、グリア細胞、小グリア細胞、嗅球鞘性細胞(olfactory bulb ensheathing cell)、または感覚器細胞であり、および筋細胞は、筋芽細胞、衛星細胞、ミオサイト、骨格筋細胞、平滑筋細胞、または心筋細胞を含む。
【0009】
第二の局面において、本発明は、グリア細胞と組換えNRG-2ポリペプチドとを接触させる段階により、グリア細胞の有糸分裂誘発を刺激する方法を提供する。好ましい第二の局面の態様において、グリア細胞は、希突起膠細胞、小グリア細胞、髄鞘形成しているグリア細胞、嗅球鞘性細胞、または成体のグリア細胞である。
【0010】
第三の局面において、本発明は、グリア細胞とNRG-2ポリペプチドとを接触させる段階により、グリア細胞により神経系細胞の髄鞘形成を誘導する方法を提供し、結果としてこの接触段階は、グリア細胞による神経系細胞の髄鞘形成を誘導するのに十分なものである。
【0011】
第四の局面において、本発明は、心筋細胞(cardiomypcyte)の生存、心筋細胞の増殖、心筋細胞の成長、または心筋細胞の分化を増大させるのに有効量のNRG-2ポリペプチドを哺乳類へ投与する段階により、それを必要とする哺乳類において心筋細胞の生存、心筋細胞の増殖、心筋細胞の成長、または心筋細胞の分化を増大させる方法を提供する。第四の局面の好ましい態様において、哺乳類はヒトである。別の第四の局面の好ましい態様において、哺乳類は、例えば、心筋症(例えば、先天性変性疾患)、心臓外傷、心不全、または虚血性損傷のような、心筋に影響を及ぼす病態生理学的状態を有するか、もしくは哺乳類は、例えば、アテローム硬化症、血管病変、血管高血圧、または先天性変性血管疾患などの平滑筋に影響を及ぼす病態生理学的状態を有する。別の第四の局面の好ましい態様において、哺乳類は、重症筋無力症患者である。
【0012】
第五の局面において、本発明は、ニューレグリンが、神経関連細胞と相互作用し、結果として神経関連細胞による少なくとも1種の神経栄養性物質を生じ、ならびにこの1種または複数の神経栄養性物質が神経系細胞の有糸分裂誘発、生存、成長、分化、または神経突起伸長に影響を及ぼすように、NRG-2ポリペプチドを哺乳類へ投与する段階による、哺乳類における神経関連細胞と神経系細胞の間の細胞の情報伝達に影響を及ぼす方法を提供する。第五の局面の好ましい態様において、哺乳類はヒトである。別の第一の局面の好ましい態様において、神経関連細胞は、シュワン細胞、星状膠細胞、希突起膠細胞、O-2A前駆細胞、グリア細胞、嗅球鞘性細胞、小グリア細胞、感覚器細胞、または筋細胞(例えば、骨格筋細胞、平滑筋細胞、または心筋細胞)である。第五の局面の好ましい態様において、細胞の情報伝達は、哺乳類の中枢神経系または末梢神経系において影響を受ける。別の第五の局面の好ましい態様において、投与は、精製されたNRG-2ポリペプチド産生細胞の投与を含む。
【0013】
第六の局面において、本発明は、治療的有効量の組換えNRG-2ポリペプチドを哺乳類へ投与する段階による、哺乳類における神経系の病態生理学的状態の治療または予防の方法を提供する。第六の局面の好ましい態様において、病態生理学的状態は、末梢神経系または中枢神経系の状態であり;この病態生理学的状態は、神経細胞の脱髄、シュワン細胞の損傷、シュワン細胞の喪失、または神経変性疾患であり;この病態生理学的状態は、末梢ニューロパシーであり(例えば、感覚神経線維ニューロパシー、運動神経線維ニューロパシー、または両方); または、この病態生理学的状態は、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、神経損傷、アルツハイマー病、パーキンソン病、小脳性運動失調症、または脊髄損傷である。別の第六の局面の好ましい態様において、治療または予防は、神経再生または神経修復を必要としている。別の第六の局面の好ましい態様において、NRG-2ポリペプチドは神経関連細胞と相互作用し、結果として神経関連細胞により少なくとも1種の神経栄養性物質を生じ、ならびにこの1種または複数の神経栄養性物質が、神経系細胞の有糸分裂活性、生存、分化または神経突起伸長に影響を及ぼす。別の第六の局面の好ましい態様において、投与は、グリア細胞(例えば、シュワン細胞または希突起膠細胞)により神経系細胞の髄鞘形成を誘導するのに十分である。別の第六の局面の好ましい態様において、投与は、精製されたNRG-2ポリペプチド産生細胞を哺乳類へ投与する段階を含む。本発明のNRG-2ポリペプチド産生細胞は、組換えDNA配列を含むことができ、このDNA配列はNRG-2ポリペプチドコード配列を含み、かつNRG-2ポリペプチドコードDNA配列はプロモーターに機能的に連結されている。
【0014】
第七の局面において、本発明は、NRG-2ポリペプチドと腫瘍細胞表面に存在する受容体との結合を阻害する有効量の抗体を、そのような治療を必要としている対象へ投与し、腫瘍細胞の増殖を阻害する段階により、腫瘍(例えば、グリア細胞腫)を治療する方法を提供する。第七の局面の好ましい態様において、腫瘍細胞は、NRG-2ポリペプチドに対し選択性であるerbB受容体を発現している。
【0015】
第八の局面において、本発明は、NRG-2ポリペプチドと神経線維腫症の個体においてグリア細胞腫細胞の表面に存在する受容体との結合を阻害する有効量の抗体を、そのような治療を必要としている対象へ投与し、グリア細胞の有糸分裂誘発を阻害する段階により、神経線維腫症を治療する方法を提供する。
【0016】
第九の局面において、本発明は、NRG-2ポリペプチドと細胞表面に存在する受容体との結合を阻害する有効量の抗体と細胞とを接触させることにより、細胞の増殖を阻害する方法を提供する。
【0017】
第10の局面において、本発明は、NRG-2ポリペプチドを細胞へ投与する段階により、細胞の増殖を刺激する方法を提供する。
【0018】
第九および第10の局面の好ましい態様において、細胞は、神経系細胞、神経関連細胞、または筋細胞である。
【0019】
本発明の前述の局面または態様のいずれかのNRG-2ポリペプチドは、配列番号:2もしくは4に記載のアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなるか、または配列番号:1もしくは3に記載の核酸配列によりコードされうる。
【0020】
第11および第12の局面において、本発明は、配列番号:2もしくは4に記載のアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる、実質的に純粋なNRG-2ポリペプチドを提供する。第13の局面において、本発明は、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする配列を含む、実質的に純粋な核酸分子を提供する。好ましい態様において、本発明は、プロモーターに機能的に連結された第13の局面の核酸分子を含むベクター(例えば、遺伝子治療用ベクター);第13の局面の核酸分子を含む遺伝子治療用ベクターを含む細胞;および、第13の局面の核酸分子を含む非ヒトトランスジェニック動物を提供する。
【0021】
第14および第15の局面において、本発明は、配列番号:1もしくは3に記載の核酸配列と実質的に同一の核酸配列を含むか、またはこれらからなる、実質的に純粋な核酸分子を提供する。第16の局面において、本発明は、配列番号:1もしくは3に記載の核酸配列のコード鎖配列に対しアンチセンスである配列、またはそれらの断片を含む、核酸分子を提供する。
【0022】
第17の局面において、本発明は、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むNRG-2ポリペプチドをコードする一方または両方の対立遺伝子において、ノックアウト変異を有する非ヒト動物を提供する。第17の局面の好ましい態様において、本発明は、第17の局面の非ヒト動物由来の細胞を提供する。
【0023】
第18の局面において、本発明は、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むNRG-2ポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。第18の局面の好ましい対応において、本発明は、第18の局面の抗体に試料を接触させ、かつポリペプチドと抗体との結合をアッセイすることにより、試料中のNRG-2ポリペプチドの存在を検出する方法を提供する。第18の局面の好ましい対応において、本発明は、被験対象のNRG-2ポリペプチドの分析のためのキットであって、このキットが第18の局面の抗体を含むものを提供する。
【0024】
第19の局面において、本発明は、被験対象が、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むNRG-2ポリペプチドをコードするNRG-2遺伝子に変異を含むか否かを決定するために、被験対象の核酸分子を分析する段階により、被験対象(例えばヒト)におけるNRG-2に関連する疾患または状態の発症の可能性の増大の診断法であって、変異の存在が被験対象がNRG-2関連疾患の発症の可能性の増大を有することの指標である方法を提供する。
【0025】
「ニューレグリン」または「NRG」とは、NRG-1、NRG-2、もしくはNRG-3遺伝子または核酸分子(例えばcDNA)によりコードされ、かつerbB受容体またはそれらの組み合わせに結合し、活性化するポリペプチドを意味する。一般にニューレグリンは、erbB受容体またはそれらの組み合わせに結合し、活性化する上皮細胞成長因子様(EGFL)ドメインのような認識可能なドメイン、ならびに免疫グロブリン(Ig)ドメインを有する。EGFLドメインは、Holmesらの論文(Science、256:1205-1210(1992))、米国特許第5,530,109号、米国特許第5,716,930号、米国特許出願第08/461,097号、Hijaziら(Int. J. Oncol.、13:1061-1067(1998))、Changら(Nature、387:509-512(1997))、Carrawayら(Nature、87:512-516(1997))、Higashiyamaら(J. Biochem.、122:675-680(1997))の論文、および国際公開公報第97/09425号に説明されたような、EGF受容体-結合ドメインに類似した構造を持つ。
【0026】
「ニューレグリン2」または「NRG-2」とは、NRG-2遺伝子、またはNRG-2核酸分子によりコードされているポリペプチドを意味し、本明細書、ならびに例えばCarrawayら、Nature、387:512-516(1997);Changら、Nature、387:509-511(1997);Higashiyamaら、J. Biochem.、122:675-680(1997);および、Busfieldら、Mol Cell. Biol.、17:4007-4014(1997)の論文において説明されている。NRG-2アイソフォームは、ErbBキナーゼの神経および胸腺に由来するアクチベーター(NTAX;Genbankアクセッション番号AB005060;Higashlyamaら、J. Biochem.、122:675-680(1997))、ニューレグリン誘導体(don-1;国際公開公報第98/07736号)、および小脳由来成長因子(CDGF;国際公開公報第97/09425号;米国特許第5,912,326号)を含み、これらは本明細書に参照として組入れられており、かつこのNRG-2分子が本明細書において説明されている。一般にerbB1受容体(EGFR)は、NRG-2ポリペプチドの好ましい二量体化のパートナーである。NRG-2ポリペプチドの好ましい受容体の組み合わせは、erbB4ホモダイマー、erbB2/erbB4ヘテロダイマー、またはerbB1/erbB3ヘテロダイマーである。Higashiyarnaらの論文(J. Biochem.、122:675-680(1997))、国際公開公報第98/07736号、国際公開公報第97/09425号、および米国特許第5,912,326号に開示されたアミノ酸および核酸配列に示されているような、CDGF、don-1、またはNTAKポリペプチドまたは核酸分子は、本発明のある局面から特に除外されている。例えば、1種または複数のCDGF、don-1、またはNTAKポリペプチドまたは核酸分子は、細胞の有糸分裂誘発、生存、成長、または分化を増大させる方法;哺乳類における心筋細胞生存、心筋細胞増殖、心筋細胞肥大、または心筋細胞分化を増大させる方法;神経関連細胞と神経系細胞の間の細胞の情報伝達に影響を及ぼす方法;グリア細胞の有糸分裂誘発を刺激する方法;グリア細胞による神経系細胞の髄鞘形成を誘導する方法;哺乳類の神経系の病態生理学的状態を治療または予防する方法;腫瘍治療の方法;神経線維腫症治療の方法;細胞増殖阻害の方法;または、細胞増殖刺激の方法から除外することができる。
【0027】
「erbB受容体」とは、1種または複数のニューレグリンに結合するおよび/または活性化される単量体または多量体(例えば、ホモダイマーまたはヘテロダイマー)の細胞表面受容体チロシンキナーゼとして存在するerbB1(EGFR)、erB2、erbB3、およびerbB4(同じく、ヒトのHER-1、HER-2、HER-3、およびHER-4)を意味する(Meyerら、Development、124:3575-3586(1997);Orr-Urtregerら、Proc. Natl. Acad. Sci USA、90:1867-71(1993);Marchionniら、Nature、362:312-8(1993);Chenら、J. Comp. Neurol.、349:389-400(1994);Corfasら、Neuron、14:103-115(1995);Meyerら、Proc. Natl. Acad Sci. USA、91:1064-1068(1994);および、Pinkas-Kramarskiら、Oncogene、15:2803-2815(1997))。好ましくは、erbB受容体は、erbB4ホモダイマー、erbB2/erbB4ヘテロダイマー、erbB1/erbB3ヘテロダイマー、またはNRG-1ポリペプチドもしくはNRG-3ポリペプチドよりもNRG-2ポリペプチドについて選択性であるいずれかの受容体組み合わせである。
【0028】
「選択性」とは、erbB受容体またはそれらの組み合わせが、NRG-1またはNRG-3ポリペプチドよりもNRG-2ポリペプチドへ優先的に結合することを意味する。より詳細には、優先的結合は、erbB受容体とNRG-2ポリペプチドとの親和力が、erbB受容体とNRG-1またはNRG-3ポリペプチドとの親和力に対し、少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも2倍の増加として定義される。
【0029】
「神経系細胞」とは、ニューロン、神経細胞;ニューロサイト(neurocyte)、または神経前駆細胞を意味する。神経系細胞は、中枢神経系および末梢神経系の形態学的および機能的単位であり、かつコリン作用性ニューロンおよび非コリン作用性ニューロンを含む。
【0030】
「神経関連細胞」とは、ニューロンの機能に影響を及ぼすことが可能であるか、またはその機能がニューロンにより影響され得るような任意の非神経系細胞を意味する。神経関連細胞は、筋細胞、またはシュワン細胞、星状膠細胞、希突起膠細胞、O-2A前駆細胞、グリア細胞(例えば放射グリア細胞またはベルクマン(Bergmann)グリア細胞)、小グリア細胞、嗅球鞘性細胞、もしくは感覚器細胞(例えば、網膜細胞)を含む神経系支持細胞を含むが、これらに限定されるものではない。
【0031】
「筋細胞」とは、筋肉組織に寄与する任意の細胞を意味する。筋肉組織は、主に特定化された収縮細胞を含む一次組織であり、一般に骨格筋、心筋、または平滑筋に分類される。筋芽細胞、衛星細胞、筋管、ミオサイト(例えば心筋細胞)および筋原線維組織は、全て「筋細胞」という用語に含まれ、全て本発明の方法に従って処理され得る。筋細胞の作用は、骨格筋、心筋、および平滑筋内において誘導され得る。
【0032】
「神経栄養性物質」または「神経栄養性因子」とは、1種または複数の神経系細胞において栄養性作用を誘引する物質を意味する。これらの作用は、生存、有糸分裂および分化を含むが、これらに限定されるものではない。神経栄養性物質は、神経成長因子、毛様体神経栄養性因子、および脳由来の神経栄養性因子を含むが、これらに限定されるものではない。
【0033】
「影響を及ぼす」とは、NRG-2ポリペプチドまたは核酸分子との相互作用の結果として、標的細胞の反応の定量的変化が誘導されることを意味する。
【0034】
「細胞の情報伝達」とは、第一の細胞型(例えば、神経関連細胞)における物質(例えば、神経栄養性物質)を合成し、およびその物質が第二の細胞型(例えば、神経系細胞)と相互作用し、結果としてこの物質は第一または第二の細胞型の変化を誘起することを意味する。細胞の情報伝達は、細胞からの物質の分泌を含むが、これらに限定されるものではない。細胞の情報伝達は、1種または複数の細胞型と相反性または非相反性に生じることができる。
【0035】
「有糸分裂誘発」とは、患者における新規細胞の生成を生じる細胞分裂を意味する。より具体的には、インビトロにおける有糸分裂誘発は、細胞が標識物質に2倍加時間と同等の時間曝露された場合に、未処理の細胞と比べ分裂指数の50%、より好ましくは100%、および最も好ましくは300%の増加と定義される。分裂指数は、S期にのみ取り込まれるようなトレーサー(例えば、BrdU)の存在下で増殖した場合に、標識された核を有する培養物中の細胞の分数であり、倍加時間は、2倍まで培養物中の細胞数が増加するために必要な平均時間として定義される。「有糸分裂誘発の阻害」とは、細胞が標識物質に2倍加時間と同等の時間曝露された場合の、未処理の細胞と比べ50%、より好ましくは100%、および最も好ましくは300%の分裂指数の減少を意味する。有糸分裂の阻害は、対照細胞に比べ分裂指数の増加の休止も意味する。
【0036】
インビボにおける有糸分裂に対する作用は、S期にのみ取り込まれるようなトレーサー(例えば、BrdU)に曝露された哺乳類組織における標識された細胞の出現により測定された細胞活性化の増加と定義される。有用な治療は、インビボにおいて、哺乳類が15分間よりも長く標識物質に曝露されかつ組織がマイトジェンの治療用量の投与後10時間〜24時間に測定された場合に、細胞活性化を、対照哺乳類と比べ少なくとも10%、より好ましくは少なくとも50%、および最も好ましくは200%より多く増大させる化合物と定義される。例えば、筋細胞において、インビボにおける衛星細胞活性化は、BrdU取込みをモニタリングすることにより検出することができる。あるいは、インビボにおける衛星細胞活性化は、免疫学的方法またはRNA分析法による中間体線維ビメンチンの出現で検出することができる。ビメンチンが測定される場合、有用なマイトジェンは、治療的に有用な用量が提供された場合に筋肉組織中のビメンチンの検出可能なレベルの発現を引き起すものと定義される。有糸分裂誘発は、例えば、骨格筋、心筋および平滑筋の筋細胞において、ならびにグリア細胞において誘導することができる。
【0037】
「生存」とは、細胞が死を避ける過程を意味する。本明細書において使用される生存という用語は、壊死、アポトーシスにより証拠付けられるような細胞喪失の防止、または細胞喪失の他の機構の防止も意味する。本明細書において使用される生存の増加は、未処理の対照に比べ、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも50%、および最も好ましくは少なくとも100%の細胞死の割合の減少を示している。生存率は、培養物中の死細胞に特異的な色素(例えば、ヨウ化プロピジウム)により染色可能である細胞を計数することにより、測定することができる。生存率は、細胞が分化後8日間(すなわち、20%から0.5%血清へ培地交換の8日後)の、培養物中の死細胞に特異的な色素(例えば、ヨウ化プロピジウム)により染色可能である細胞を計数することにより、測定することができる。
【0038】
「成長」とは、対照細胞と比べた細胞型の大きさまたは数の増加を意味する。治療的に有用な成長は、罹患組織における細胞の大きさまたは数を、同様に処理された対照動物の同等の組織と比べ、少なくとも10%またはそれ以上、より好ましくは50%またはそれ以上、および最も好ましくは100%より多く増加する。成長は、例えば、正味の質量、タンパク質含量、または細胞直径の増加により測定することができる。筋肉成長は、線維の大きさの増加および/または線維数の増加により生じる。
【0039】
「分化」とは、様々な細胞型の生成または特定化の状態を生じる形態学的変化および/または化学的変化を意味する。本明細書において使用される細胞の分化は、細胞型の1種または複数の成分を特定化する細胞発生プログラムを意味する。治療的に有用な分化は、罹患組織の細胞のいずれかの成分量を、同様に処理された対照動物の同等の組織と比べて、少なくとも10%またはそれ以上、より好ましくは50%またはそれ以上、および最も好ましくは100%より多く増大させる。
【0040】
「増殖」とは、類似細胞の成長または再生を意味する。「増殖の阻害」とは、類似細胞の数の、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、および最も好ましくは少なくとも50%の減少を意味する。「増殖の刺激」とは、類似細胞の数の、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、および最も好ましくは少なくとも50%の増加を意味する。
【0041】
「髄鞘形成の誘導」とは、神経線維周囲の髄鞘の収集、発生、または形成を意味する。髄鞘形成の誘導に有用な治療は、髄鞘密度の、対照神経に比べ、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、および最も好ましくは少なくとも50%の増加をもたらす。「脱髄」とは、神経線維周囲の髄鞘の喪失を意味する。
【0042】
「相互作用」とは、NRG-2ポリペプチドと受容体または標的細胞上の他の分子との接触を意味する。
【0043】
「病態生理学的状態」とは、任意の哺乳類疾患を含むが、これらに限定されるものではなく、外部の原因、遺伝的素因、物理的もしくは化学的外傷、またはそれらの組み合わせから生じる、生体の機能および/または構造の混乱を意味する。
【0044】
「ニューロパシー」とは、神経系に影響を及ぼす任意の障害を意味する。ニューロパシーは、例えば感覚器神経線維ニューロパシーまたは運動神経線維ニューロパシーのような末梢ニューロパシーでありうる。
【0045】
「心筋症」とは、心筋に影響を及ぼす疾患を意味する。心筋症は、原発性、すなわち主に心筋に影響を及ぼすか、または続発性、すなわち全身疾患に続発して心筋に影響を及ぼすような感染症、または代謝疾患であることができる。
【0046】
「虚血性損傷」とは、心筋への血液循環の減少により生じた損傷を意味する。
【0047】
「先天性変性疾患」とは、細胞または組織における病理学的変化を生じる、遺伝的であるかまたは妊娠時に生じる影響に起因するような、誕生時に存在する疾患を意味する。
【0048】
「治療」とは、疾患、病態、または障害の治癒、緩和、安定化または予防を意図する患者の医学的管理を意味する。この用語は、改善が特に指示された、または疾患、病態、もしくは障害の治癒に関連した治療である、能動的治療を含み、かつこれは更に関連した疾患、病態または障害の原因の除去に向けられた治療である、原因治療も含む。加えてこの用語は、疾患、病態または障害の治療よりむしろ症状の軽減が設計された治療である、緩和治療;関連した疾患、病態または障害の発生の最小化または一部もしくは完全な阻害に向けられた治療である、予防治療;ならびに、関連した疾患、病態または障害の改善に向けられた他の特異的治療を補助するために使用される治療である、支持治療を含む。「治療」という用語は、更に、関連する疾患、病態、または障害の構成的症状に向けられた治療である対症治療も含む。
【0049】
「治療的有効量」とは、障害の治療において緩和、治癒、安定化または軽減作用を生じるのに十分なNRG-2ポリペプチドまたは核酸分子の量を意味する。
【0050】
「神経変性障害」とは、神経系細胞または神経関連細胞の変性を特徴とする病態生理学的状態を意味する。変性は、例えば細胞数もしくは大きさの減少、細胞アポトーシスもしくは死滅の増加、または細胞成長、生存もしくは分化の減少を含む。
【0051】
「神経再生または神経修復」とは、例えば神経系細胞または神経関連細胞の数もしくは大きさの増加、神経系細胞もしくは神経関連細胞のアポトーシスまたは死滅の減少、あるいは神経系細胞もしくは神経関連細胞の成長、生存または分化の増加による、病態生理学的状態の治療を意味する。
【0052】
「結合の阻害」とは、NRG-2ポリペプチドと受容体との結合を予防または減少させることを意味する。結合は、好ましくは対照試料と比べ、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも50%、および最も好ましくは少なくとも100%減少される。
【0053】
「ポリペプチド」または「ポリペプチド断片」とは、天然または非天然のポリペプチドの全てまたは一部を構成する、翻訳後修飾(例えばグリコシル化またはリン酸化)とは無関係の、2個またはそれ以上のアミノ酸の鎖を意味する。「翻訳後修飾」とは、合成期間またはその後のポリペプチドまたはポリペプチド断片のあらゆる変化を意味する。翻訳後修飾は、天然に作成されるか(例えば細胞内に合成時に)、もしくは人工的に作出される(例えば組換えまたは化学的手段により)。「タンパク質」は、1個または複数のポリペプチドから作成することができる。
【0054】
本明細書において使用される「同一性」という用語は、特に核酸分子またはポリペプチドと、同型の参照分子の配列との関係を説明するものである。例えば、ポリペプチドまたは核酸分子が、所定の位置に同一のアミノ酸またはヌクレオチド残基を有する場合には、並置された参照分子と比較して、その位置で「同一」と称される。核酸分子またはポリペプチドの参照分子に対する配列同一性のレベルは、典型的には最適な並置を達成するためのギャップ導入のような、そこで特定化されたデフォルトパラメーターを備えた配列分析ソフトウェアを用いて測定される(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group、University of Wisconsin Biotechnology Center、1710 University Avenue, Madison, WI 53705, BLASTまたはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)。これらのソフトウェアプログラムは、様々な置換、欠失またはその他の修飾に同一性の程度を割当てることにより、同一または類似した配列を合致させる。同類置換は、典型的には下記群内の置換を含む:グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、およびロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミン;セリンおよびトレオニン;リシンおよびアルギニン;ならびに、フェニルアラニンおよびチロシン。
【0055】
核酸分子またはポリペプチドは、その全長について、参照分子の配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、および最も好ましくは99%同一であることを示す場合に、参照分子と「実質的に同一」と称される。ポリペプチドについて、比較配列の長さは、少なくとも16個のアミノ酸、好ましくは少なくとも20個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも25個のアミノ酸、および最も好ましくは少なくとも35個のアミノ酸である。核酸分子について、比較配列の長さは、少なくとも50個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも60個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも75個のヌクレオチド、および最も好ましくは少なくとも110個のヌクレオチドである。
【0056】
核酸分子またはポリペプチドは、その生物学的活性またはそれが野生型もしくは変異されたか否かを決定することができる試験法が実行される場合に、「分析される」かまたは「分析」が施される。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用い動物のゲノムDNAを増幅し、その後例えばヌクレオチド配列決定または制限断片分析により、増幅されたDNAが変異を含むか否かを決定することにより、動物(例えばヒト)の遺伝子を分析することができる。
【0057】
「実質的に純粋なポリペプチド」とは、タンパク質およびそれを天然に伴う有機分子から分離されたポリペプチド(またはそれらの断片)を意味する。典型的にはポリペプチドは、少なくとも60重量%がタンパク質およびそれに天然に会合した天然の有機分子を含まない場合に、実質的に純粋である。好ましくはこのポリペプチドは、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、および最も好ましくは少なくとも99重量%純粋であるNRG-2ポリペプチドである。実質的に純粋なNRG-2ポリペプチドは、例えば天然の給源(例えば、小脳)からの抽出、NRG-2ポリペプチドをコードする組換え核酸分子の発現、または化学合成により得ることができる。純度は、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析などの適当な方法により測定することができる。
【0058】
ポリペプチドは、これらのタンパク質および天然の状態でそれを伴う有機分子から分離された場合に、実質的に天然に会合した成分を含有しない。従って、化学的に合成されたタンパク質またはそれが天然に生成された細胞とは異なる細胞系において産生されたタンパク質は、実質的にその天然に会合した成分を含まない。従って実質的に純粋なポリペプチドは、真核生物由来のもののみではなく、大腸菌または他の原核生物において合成されたものも含む。
【0059】
抗体は、ポリペプチド(例えばNRG-2ポリペプチド)を認識しかつ結合するが、例えば生物学的試料のような、天然にポリペプチドを含有する試料中の他の分子(例えば非NRG-2関連ポリペプチド)は実質的に認識も結合もしない場合に、ポリペプチドへ「特異的に結合する」と称される。
【0060】
「導入遺伝子」は、人工的に細胞(例えば、細胞の核ゲノム)へ挿入されるDNA分子を意味し、その細胞から発生している生物のゲノム中に組込まれる。このような導入遺伝子は、トランスジェニック生物に対して、部分的もしくは全体的に非相同(すなわち外来性)であるか、またはその生物の外因性遺伝子と相同である遺伝子でありうる。生物または動物(例えば、マウス、ラットまたはヤギのような哺乳類)は、導入遺伝子が人工的に挿入された細胞から発生した場合に、「トランスジェニック」と称することができる。
【0061】
「ノックアウト変異」は、通常にコードされたポリペプチドの生物学的活性を未突然変異の遺伝子に対して少なくとも80%低下している(組換えDNA技術または変異原への意図的曝露により作成された)核酸分子中に人工的に誘導された変更を意味する。この突然変異は、挿入、欠失、フレームシフト突然変異、またはミスセンス突然変異であるが、これらに限定されるものではない。「ノックアウト動物」は、前述のようなノックアウト変異を含む、好ましくは哺乳類、より好ましくはマウスである。
【0062】
「ベクター」とは、コードされたペプチドまたはポリペプチドが宿主細胞内で発現されるように、プロモーターに機能的に連結されたポリペプチド(例えば、NRG-2ポリペプチド)コード配列を宿主細胞へ移動するために使用される、例えばバクテリオファージ、アデノウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、または人工染色体由来の、遺伝子操作されたプラスミドまたはウイルスを意味する。
【0063】
「プロモーター」とは、転写を誘導または制御するのに十分な最小配列を意味する。更に、細胞型もしくは生理的状態(例えば、低酸素状態と正常酸素状態)について制御可能な、または外部シグナルもしくは物質により誘導可能な、プロモーター依存型遺伝子発現を提供するのに十分なプロモーター要素も含まれ;このような要素は、未変性の遺伝子の5'側もしくは3'側または内側領域に位置することができる。
【0064】
「機能的に連結した」とは、ポリペプチドをコードする核酸(例えばcDNA)および1種または複数の調節配列が、適当な分子(例えば、転写アクチベータータンパク質)が調節配列に結合された場合に、遺伝子発現を可能にするように連結されていることを意味する。
【0065】
「NRG-2ポリペプチド産生細胞」とは、組換えDNA技術または公知の遺伝子治療技術による、NRG-2ポリペプチドをコードするDNA分子が導入される細胞(または細胞の子孫)を意味する。
【0066】
本発明はいくつかの利点を提供する。例えばこれは、NRG-2ポリペプチドの生体活性に対し感受性がある疾患の診断および治療において使用することができる方法および試薬を提供する。本発明のその他の特徴および利点は、本発明の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかであると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】NRG-2遺伝子産物およびヒトcDNAクローンの概略図を示す。
【図2】哺乳類発現ベクターpRc/CMV2の概略図を示す。
【図3】図3Aは、疑似物(ベクター)またはrhNRG-2α-トランスフェクションCHO/S細胞に由来する馴化培地(cm)および細胞溶解物(cell)におけるウエスタンブロット解析を示す。 図3Bは、疑似物(ベクター)、rhNRG-2α(α)、またはrhNRG-2β(β)-トランスフェクション(β)CHO/S細胞に由来する馴化培地におけるウエスタンブロット解析を示す。 図3Cは、ラットNRG-2βを発現するCHO細胞に由来する馴化培地におけるウエスタンブロット解析を示す。
【図4】NRG-2ポリペプチド処理に応答性の細胞におけるチロシン残基の受容体リン酸化におけるウエスタンブロット解析を示す。
【図5】組換えヒトNRG-2αおよびNRG-2βの発現におけるウエスタンブロット解析を示す。
【図6】ヒトNRG-2αの核酸配列を示す(配列番号:1)。
【図7】ヒトNRG-2αのアミノ酸配列を示す(配列番号:2)。
【図8】ヒトNRG-2β(クローン2b7)の核酸配列を示す(配列番号:3)。
【図9】ヒトNRG-2β(クローン2b7)のアミノ酸配列を示す(配列番号:4)。
【図10】メソトレキセート選択に使用された安定トランスフェクタントにおけるウエスタンブロット解析を示す。
【図11】図11Aは、精製rhNRG-2βのクーマシー染色されたポリアクリルアミドゲルを示す。 図11Bは、図11Aのゲルのスキャンを示す。
【図12】総タンパク質および精製rhNRG-2βの金染色ポリアクリルアミドゲルを示す。
【図13】HPLCにより精製されたrhNRG-2βに応答性の細胞におけるチロシン残基の受容体リン酸化におけるウエスタンブロット解析を示す。
【図14】図14Aは、rhNRG-2βで前処理され、6-OHDAを投与された中脳ドーパミン作動性ニューロンの写真を示す。 図14Bは、6-OHDAを投与された未処理対照中脳ドーパミン作動性ニューロンの写真を示す。
【図15】図15Aは、rhNRG-2βとともに培養された、神経前駆細胞を含む神経細胞におけるBrdU取りこみを示す写真を示す。 図15Bは、rhNRG-2βのBrdU取り込みに対する効果を示す棒グラフを示す。
【図16】図16Aは、グリア細胞突起に沿って移動している小脳顆粒ニューロンの写真を示す。 図16Bは、NRG-2のニューロン移動に対する効果を示す棒グラフを示す。
【図17】p42/44 MAPk(Erk)およびAktのNRG-2タンパク質による活性化におけるウエスタンブロット解析を示す。
【図18】NRGタンパク質で処理された新生児ラット心室筋細胞への3H-ロイシンの取りこみの折れ線グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
発明の詳細な説明
本発明は、NRG-2ポリペプチドおよび核酸分子、これらのNRG-2ポリペプチドに結合する抗体、ならびにNRG-2ポリペプチドおよび核酸分子を利用した治療および診断法を提供する。
【0069】
生物学的試験
NRG-2リガンドおよびerbB受容体は、神経系、脳の神経前駆細胞およびニューロン、脊髄、および網膜;骨格筋および心筋;肺;胸腺;腎臓;副腎;皮膚;乳房上皮;ならびに胚発生中の他の臓器および成体の組織において発現する。NRG-2発現の主要な部位は小脳(プルキンエおよび顆粒細胞)、嗅球、歯状回、後頭部皮質の錐体細胞、肺および胸腺を含む。特定の細胞および組織におけるNRG-2受容体の発現パターンは、NRG-2作用の細胞標的を同定するために、且つ、末梢および中枢神経系の脱髄異常;ニューロパシー;神経変性障害;心筋症;聴覚、平衡感覚または視覚の損失;痛覚;神経外傷;癌;ウイルス感染、老化または抗生物質(例えば、アミノ配糖体など)による感覚神経聴力損失または感覚神経平衡損失;網膜症(例えば、高血圧、糖尿病、閉塞性、黄斑部変性、網膜色素変性症、視覚神経病、傷害など);ギラン・バレー疾患;脳卒中;または脳もしくは脊髄傷害などの特定のNRG-2関連疾患に関連する生物活性を同定するために使用される。胚組織、新生児組織、および成体組織におけるNRG-2応答性細胞型の多くは、erbB2/erbB3、erbB2/erbB4、またはerbB4のみの受容体の組み合わせを発現する。例えば、末梢神経系(PNS)および中枢神経系(CNS)のグリア細胞型はerbB2を発現する;シュワン細胞はまたerbB3も発現する。CNSにおいては、erbB4およびerbB3が、星状膠細胞、希突起膠細胞前駆細胞、発生中の皮質における放射グリアおよび小脳におけるベルグマングリアを含む様々なグリア細胞型に関して観察される。erbB2/erbB4の組み合わせは心室筋細胞において見出される。
【0070】
NRG-2ポリペプチドの治療および診断用途は、例えばインビトロにおいて生物学的試験を実施することにより同定される。NRG-1よりもNRG-2に優先性を示す可能性のあるerbB受容体の組み合わせの例である、erbB2/erbB4またはerbB4単独などの特定の受容体の分布とともに、NRG-2発現パターンを反映する培養系が選択される。例えば、NRG-2の生物活性は、希突起膠細胞および嗅球鞘性細胞、中脳ドーパミン作動性ニューロン、小脳顆粒ニューロン、および心筋細胞などのCNSグリアを用いて評価される。これらの細胞集団はNRG受容体を発現し、様々な定量的生物学的試験において1種または複数のNRG-1アイソフォームを用いる処理に対して応答する。NRG-2(例えば、rhNRG-2α、rhNRG-2β)およびNRG-1(例えばrhGGF2)アイソフォームの活性は、増殖刺激、生存、分化、移動、および形態学的変化を含むがそれらに制限されない、様々な用量反応性アッセイ法において姉妹培養を用いて比較される。NRG-2およびNRG-1アイソフォームの相対力価が、例えばタンパク質濃度を基礎として決定される。
【0071】
NRG-2核酸分子、ポリペプチド、および抗体を用いた診断法
NRG-2核酸分子、ポリペプチド、および抗体が、NRG-2遺伝子の変異または不適切な発現が関係するものを含む、様々な疾患および状態を診断またはモニターするための方法に使用される。上記のように、NRG-2発現は様々な組織において記載されている。したがって、NRG-2遺伝子の異常またはその発現の検出は、これら組織の疾患の治療または発生を、診断またはモニターするための方法において使用される。
【0072】
本発明の診断法は、例えば、心血管または神経学的疾患に罹患する患者を用いて、その病因を決定するための試み、したがって、適切な治療方針の選択を容易にするための試みにおいて使用される。診断法はまた、心血管または神経学的疾患をまだ発症していないが、そのような疾患を発症する危険性が高い可能性がある患者に関して、またはそのような疾患を発症する早期段階にある患者に関してもまた使用される。多くの心血管または神経学的疾患は発生中に生じる、したがって、本発明の診断法はまた発生中に胎児または胚に関しても実施される。また、本発明の診断法は、例えば劣性NRG-2変異の保有者でありうる患者を同定するために、出生前遺伝子スクリーニングにおいても使用される。
【0073】
本発明の診断法を用いて検出されるNRG-2異常は、例えば、(i)異常なNRG-2ポリペプチド、(ii)結果としてそのようなポリペプチドを生産する変異を含むNRG-2遺伝子、および(iii)結果として異常な量のNRG-2を生産するNRG-2変異によって特徴付けられるものを含む。
【0074】
患者試料におけるNRG-2発現のレベルは、当技術分野において周知である多数の標準技術のうち任意のものを用いて決定される。例えば、患者由来の生物試料(例えば、血液もしくは組織試料、または羊水)におけるNRG-2発現は、標準的ノーザンブロット解析により、または定量的PCRによりモニターされる(例えば、Ausubelら、「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley&Sons、New York、NY、1998;「PCR技術:DNA増幅の原理および応用(PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification)」、H. A. Ehrlich編、Stockton Press、NY;Yapら、Nucl. Acids. Res. 19:4294、1991)。
【0075】
NRG-2核酸分子、ポリペプチド、および抗体を活用した治療法
本発明はNRG-2関連疾患を治療または予防する方法を含む。治療法は、NRG-2遺伝子欠陥、または不適切もしくは過剰なNRG-2遺伝子発現を回避または克服するため、したがってNRG-2遺伝子またはタンパク質の欠陥を含む状態を調節および可能であれば緩和するために設計される。様々な治療法を考慮すると、そのような治療法は、例えば心臓または神経系などの罹患器官、または潜在的な罹患器官に、好ましくは標的化されると理解される。NRG-2の生物学的活性を調節するために使用される試薬は、全長NRG-2ポリペプチド;NRG-2 cDNA、mRNAまたはアンチセンスRNA;NRG-2抗体;およびNRG-2の生物学的活性、発現、または安定性を調節する任意の化合物を含みうるが、これらに限定されることはない。
【0076】
変異NRG-2遺伝子から生じる疾患の治療または予防は、例えば、正常NRG-2遺伝子を用いて変異NRG-2遺伝子を置換する段階、正常NRG-2遺伝子を投与する段階、変異NRG-2タンパク質の機能を調節する段階、適切な細胞に正常NRG-2タンパク質を送達する段階、または正常または変異NRG-2タンパク質レベルを変更する段階により達成される。NRG-2タンパク質が関与する生理学的経路(例えば、シグナル伝達経路)を修飾するためにNRG-2欠陥を補正することも可能である。
【0077】
遺伝子導入は、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、およびリポソームを含むがそれらに制限されない、任意の標準技術によるインビトロトランスフェクションを含む非ウイルス性の方法、ならびにウイルスベクターを用いて達成される。患者の罹患組織への正常遺伝子の移植は、正常NRG-2遺伝子を培養可能な細胞型にエクスビボで導入し、その後細胞(またはその子孫)を標的化組織に注入することによっても達成されうる。遺伝子治療法を用いてNRG-2機能を阻害する別の方法は、抗NRG-2抗体またはNRG-2抗体の一部を細胞内で発現させることを含む。例えば、NRG-2に特異的に結合する、およびその生物学的活性を阻害するモノクロナール抗体をコードする遺伝子(または遺伝子断片)が、組織特異的遺伝子調節配列の転写制御下に配置される。別の治療法は、潜在的または実際の疾患罹患組織の部位に直接(例えば、注射による)または全身的(例えば、任意の従来の組換えタンパク質投与技術による)のいずれかにより、組換えNRG-2ポリペプチドを投与することを含む。全身的に送達されるNRG-2の用量は、個々の患者の大きさおよび健康を含む多数の因子に依存するが、一般的には、任意の薬学的に許容される製剤にて成人に1日当り約0.006mg/kgから約0.6mg/kgの間(両値を含む)を投与する。局所送達により送達されるNRG-2の用量は全身送達とは異なることもあり、当業者に既知の標準的技術を用いて決定されうる。
【0078】
NRG-2変異またはNRG-2関連疾患を有すると診断された患者、またはNRG-2変異、異常なNRG-2発現(それらの変異または発現パターンがNRG-2発現または生物学的活性の変更をまだ結果生じていないとしても)もしくはNRG-2関連疾患に感受性であると診断された患者において、上記の治療法の任意のものが疾患表現型を生じる前に投与される。また、NRG-2発現またはNRG-2生物学的活性を調節することが示されている化合物が、潜在的にまたは実際に疾患を有すると診断された患者に対して、任意の標準的用量および投与経路により投与される。または、アンチセンスNRG-2 mRNA発現構築物を用いた遺伝子治療が、疾患の完全な過程を発症する前に、遺伝子欠陥を逆転するまたは予防するために実施される。
【0079】
本発明の治療法は、いくつかの事例においては、出生前治療を目的とする。例えば、NRG-2変異を有することが見出された胎児は、正常NRG-2遺伝子を含む遺伝子治療ベクターまたは正常NRG-2タンパク質を投与される。そのような治療は短期間でのみ必要であるかもしれないし、またはいくつかの型ではそのような患者の生涯にわたり必要であるかもしれない。しかしながら、任意の治療の連続した必要性は、例えば上記の診断法を用いて決定される。また上で議論されているように、NRG-2異常は成体における疾患に関連している可能性があり、したがって成体も同様に本発明の治療法に供される。
【0080】
NRG-2の生物学的活性を調節する分子またはその生物学的活性がNRG-2により調節される分子の同定
NRG-2 cDNAの単離はまた(本明細書に記載のように)、NRG-2の生物学的活性を増加または減少させる分子の同定を容易にする。同様に、活性がNRG-2の生物学的活性により調節される分子もまた同定されうる。ある方法にしたがえば、候補分子が様々な濃度で、NRG-2 mRNAを発現する細胞の培養培地に添加される。NRG-2の生物学的活性はその後、標準的技術を用いて測定される。生物学的活性の測定には、NRG-2タンパク質および核酸分子レベル、およびNRG-2リン酸化の測定が含まれうるが、それらに限定されることはない。
【0081】
望ましい場合には、候補モジュレーターが発現に与える効果もまた、同一の一般的方法およびNRG-2特異的抗体を用いたウエスタンブロッティングまたは免疫沈降法(下記参照)などの標準的免疫学的検出技術を用いて、NRG-2タンパク質生産のレベルとして測定されうる。
【0082】
上記の方法においてスクリーニングされる試験化合物は、天然に生じる化学物質または人工的に産生された化学物質でありうる。そのような化合物は、例えば、ポリペプチド、合成有機分子、天然に生じる有機分子、核酸分子、およびそれらの構成成分を含みうる。候補NRG-2モジュレーターは、非ペプチド分子ならびにペプチドを含む(例えば、細胞抽出物、哺乳類血清、または哺乳類細胞が培養された増殖培地中に見出されるペプチドまたは非ペプチド分子)。
【0083】
NRG-2ポリペプチド、NRG-2核酸分子、およびNRG-2合成または機能のモジュレーターの投与
NRG-2タンパク質、核酸分子、モジュレーター、中和NRG-2抗体、またはNRG-2阻害化合物(例えば、アンチセンスNRG-2またはNRG-2ドミナントネガティブ変異体)が薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤内で、単位剤形において、患者または実験動物に投与される。また、末梢および中枢神経系の脱髄異常;ニューロパシー;神経変性障害;心筋症;聴覚、平衡感覚または視覚の損失;痛覚;神経外傷;癌;ウイルス感染、老化または抗生物質(例えば、アミノ配糖体など)による感覚神経聴力損失または感覚神経平衡損失;網膜症(例えば、高血圧、糖尿病、閉塞性、黄斑部変性、網膜色素変性症、視覚神経病、傷害など);ギラン・バレー疾患;脳卒中;または脳もしくは脊髄傷害などのNRG-2関連疾患に罹患した患者にそのような分子または化合物を投与するために、適切な製剤または組成物を提供するための従来の製薬技術が活用される。投与は患者が症状を表す前または後に始めることが可能である。
【0084】
投与には任意の適切な経路を活用することができ、例えば、投与は、非経口、経静脈、経動脈、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼内、心室内、嚢内、髄腔内、槽内、腹膜内、鼻腔内、深肺部への吸入、エアロゾル、座薬、経口または局所(例えば、皮膚を通過し、血流に入る能力を有する製剤を保持する粘着性パッチを適用することによる)であってもよい。好ましくは、投与は、心、肺または神経組織などの罹患組織に局所的に行われる。治療用製剤は、液体溶液または懸濁液の形であることが可能であり;経口投与用には、製剤は錠剤またはカプセル剤の形であることが可能であり;および経鼻製剤に関しては、粉末、点鼻剤、またはエアロゾルの形である。上記の製剤の任意のものは徐放性製剤であってもよい。
【0085】
製剤を製造するための当技術分野に周知の方法は、例えば、「レミントン製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」(第18版)、A. Gennaro編、1990、Mack Publishing Company、Easton、PAに見出される。非経口投与の製剤には、例えば、賦形剤;滅菌水;または食塩水;例えばポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール;植物起源の油;または水素化ナフタレンが含まれうる。徐放性、生物学的適合性、生分解性のラクチド重合体、ラクチド/グリコリド共重合体、またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体が、化合物の放出を調節するために使用されうる。NRG-2調節化合物に関する、他の潜在的に有用な非経口送達系は、エチレン-ビニル酢酸共重合体粒子、浸透圧ポンプ、埋込み式注入系、およびリポソームを含む。吸入のための製剤は、賦形剤、例えばラクトースを含むことができるか、または例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸およびデオキシコール酸を含む水溶液であることができるか、または点鼻薬の形で、もしくははゲルとして投与される油性溶液であることができる。
【0086】
NRG-2タンパク質、ポリペプチド、およびポリペプチド断片の合成
分子生物学の業者は、広範囲に多様な発現系が、組換えNRG-2タンパク質を生産するため使用されうることを理解すると思われる。使用される正確な宿主細胞は発明にとって重大ではない。NRG-2タンパク質は、原核生物宿主(例えば、大腸菌)において、または真核生物宿主(例えば、S.セレビシエ(S. cerevisiae)、Sf9などの昆虫細胞、またはCOS、NIH 3T3、CHOもしくはHela細胞などの哺乳類細胞)において生産されうる。これらの細胞は、例えば、アメリカン・タイプカルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、ロックビル、メリーランド州から商業的に入手可能である(Ausubelら、「分子生物学の最新プロトコール」、John Wiley&Sons、New York、NY、1998も参照のこと)。形質転換の方法および発現媒体(例えば、発現ベクター)の選択は、選択された宿主系に依存すると考えられる。形質転換法およびトランスフェクション法は、例えば、Ausubelら、「分子生物学の最新プロトコール」、John Wiley&Sons、New York、NY、1998に記載されており、発現媒体は、例えば、Pouwelsら、「クローニングベクター:実験室マニュアル(Cloning Vectors:A Laboratory Manual)」、1985、補足.1987に提供されるものから選択することができる。
【0087】
NRG-2核酸分子の特徴は、そのような遺伝子を様々な細胞型に導入する段階、およびインビトロ細胞外システムを用いる段階により解析される。そのような細胞または系で生産されるNRG-2タンパク質の機能は、異なる生理学的条件下で試験される。また、生化学的な特徴付け、大規模生産、抗体生産、および患者治療のためにNRG-2を精製することが可能となるように、NRG-2遺伝子産物を過剰発現する細胞株が生産されうる。
【0088】
NRG-2抗体の使用
NRG-2タンパク質に対する抗体(例えば、本明細書に記載されているもの)がNRG-2タンパク質を検出するために、またはNRG-2タンパク質の生物学的活性を阻害するために使用される。例えば、抗体または抗体の一部をコードする核酸分子を、NRG-2機能を阻害するために細胞内で発現することができる。加えて、診断または治療用途のために、抗体を、放射性核種およびリポソームなどの化合物に結合することができる。NRG-2ポリペプチドの活性を阻害する抗体もまた、野生型の不適切な発現または変異NRG-2遺伝子により引き起こされる疾患の発症を予防または遅延させる点でも有用でありうる。
【0089】
トランスジェニク動物およびノックアウト動物の作製
NRG-2遺伝子の特徴付けは、相同組換えによりNRG-2ノックアウト動物モデルを開発可能にする情報を提供する。好ましくは、あるNRG-2ノックアウト動物は哺乳類であり、最も好ましくはマウスである。同様に、NRG-2過剰発現の動物モデルを、標準的トランスジェニック技術にしたがって、1種または複数のNRG-2配列を動物ゲノムへ挿入することにより生成することができる。さらに、NRG-2遺伝子変異の効果(例えば、優性遺伝子変異)を、変異NRG-2導入遺伝子を有するトランスジェニックマウスを用いて、または標準的相同組換え技術を用いて、内因性NRG-2遺伝子にそのような変異を導入することにより調べることができる。
【0090】
ノックアウトモデルを作製するために使用可能である置換型標的化ベクターを、例えば129/Sv(ストラタジーン社(Stratagene Inc.)、LaJolla、CA)などのマウス系統由来の同質遺伝子系統ゲノムクローンを用いて構築することができる。標的化ベクターを、十分に短縮型のNRG-2遺伝子を保持するES細胞株を生成するために、エレクトロポレーションにより胚性幹(ES)細胞の適切に由来する株に導入することができる。キメラ初代マウスを生成するために、標的化細胞株がマウス胞胚期の胚に注入される。ヘテロ接合体子孫を交配して、ホモ接合性にすることができる。NRG-2ノックアウトマウスは、NRG-2の胚発生および疾患における役割を検討するためのツールを提供する。さらにそのようなマウスは、NRG-2依存性またはNRG-2に影響を受けた経路を含む疾患または状態を改善するための治療化合物を試験するためのインビボの方法を提供する。
【0091】
以下の実施例は、当業者が、本発明ならびにその原理および利点をよりよく理解することを支援するものと考えられる。これらの実施例は本発明を例示するものであって、その範囲を制限しないことを意図している。
【実施例】
【0092】
実施例1
ヒトNRG-2 cDNAのクローニング
NRG-2αをコードする全長cDNAが小脳から同定された。NRG-2コード配列の様々な領域に対する多数のプローブが、クローニング、マッピングおよび配列解析のためにげっ歯類およびヒト配列データに基づいて設計された。ライブラリーをスクリーニングするに先立ち、プローブの特異性が3'RACE(cDNA末端の迅速増幅)法を用いてヒト小脳RNAを解析することにより確認された。2個のヒト小脳γt10 cDNAライブラリー(クロンテックラボラトリーズ(Clontech Laboratoris)、Palo Alto、CA;カタログ番号HL1128a)由来の約400,000個のcDNAが、NRG-2のEGFLドメイン由来のオリゴヌクレオチドプローブ
を用いてスクリーニングされた。25個のハイブリダイゼーションシグナルが検出された;これらのシグナルに相当する20個のファージクローンがクローニングされ、ハイブリダイゼーション検討、物理的マッピング、およびDNA配列決定によりさらに解析された。これらの解析の結果は、同定されたヒトNRG-2クローンの中の多数の構造変異体(アイソフォーム)の存在と一致した。クローンに関する予備的な構造情報が、ファージプラークへのフィルターハイブリダイゼーションおよびcDNA挿入物の制限エンドヌクレアーゼ解析により取得された。内部プライマーを用いてのPCR検討は、対で、または隣接配列とともに組み合わせて、物理的マッピングデータを取得するために使用された(表1参照)。
【0093】
使用されたプライマーは以下のとおりである。
【0094】
最初に、0.8kbから3.3kbの範囲の挿入物サイズ(平均サイズは約1.7kb)が解析された。NRG-2転写物は、これらのポリペプチドの構造多様性の多くを示すEGFLドメインおよび細胞質配列を含み、この特異的内部領域はPCR解析により次にクローンをマッピングするための対象となった。この解析は4個の産物群を生じ、各群に多数のクローンが同定された。したがって4個の群(A〜D)がヒト小脳におけるNRG-2遺伝子産物内のこの領域における構造多様性の程度を表す可能性が高い。4個のクローン(群A)はこの実験では産物を生じなかった。この結果は、これらのクローンが(細胞質ドメイン中の)下流プライマー配列を欠くことを示したハイブリダイゼーション実験のデータと一致した。三番目の実験においては、クローンの方向が決定され、EGFLドメインからクローンの末端への距離が、EGFLドメイン中のプライマーを、ファージアーム中の隣接配列由来のプライマーと組み合わせて使用することにより推定された。これらの研究は、したがって、NRG-2のcDNAを群に分離することを可能にし、ヒトNRG-2の分泌可能なアイソフォームをコードする潜在的な全長cDNAを同定することを容易にした。
【0095】
(表1) ヒトNRG-2小脳cDNAクローンのマッピング
cDNAクローンのPCR解析:産物は6%ポリアクリルアミドゲル中でサイズ決定された;表は塩基対でサイズを示す。
1、EGFLドメイン由来の上流プライマー1471;細胞質ドメイン中の下流プライマー1531
2、λgt10中の隣接配列由来のプライマー1527、1528
3、λgt10中の隣接配列由来の上流プライマー1527;EGFLドメイン由来の下流プライマー1494
4、EGFLドメイン由来の上流プライマー1471;λgt10中の隣接配列由来の下流プライマー1528
【0096】
実施例2
ヒトNRG-2のDNAの配列解析
異なる構造のより完全な像を取得するために、サイクル塩基配列決定プロトコールおよび上述のPCR解析に使用されたものと同一のプライマーを用いて、代表的クローンに関してDNA配列決定を実施した。EGFLドメイン周辺の配列コンティグ(群B〜D由来の)を互いに、ならびにラットおよびヒトNRG-2配列と比較することにより、いくつかの結論を得た。第一に、群BのクローンはNRG-2βのcDNA構造と一致した。これらの配列は、EGFLドメインを膜貫通および細胞質ドメインに連結し、したがって膜付着NRG-2タンパク質をコードした。第二に、群C構造の全ては、αおよびβの両方の配列を含み、NRG-2αのcDNA構造にマッチした。したがって、群Cクローンは分泌型NRG-2タンパク質をコードすると考えられる。クローン14はこの構造の全長の最良の候補であるように思われた。群Dには、αおよびβの両方の配列が存在したが、それらは隣接していなかった。これらの2個の既知のコンティグ配列の間に介在する450bpの配列が発見され、標準スプライス部位ドナー(GT)およびアクセプター(AG)配列が、αおよびβ配列として同定されたその領域に近接した。したがってこの構造は恐らくNRG-2遺伝子の部分的にスプライシングされた転写物を表すと思われる。
【0097】
この情報から、分泌可能型のNRG-2は群Aおよび群Cのクローンにおいて見出される可能性が最も高いように思われた。クローン14は群Cの適切な代表として使用した。2個の群Aのクローンは平行して進めた:クローン13は比較的大きな挿入物サイズのために選択され、クローン15はハイブリダイゼーション実験において検出されたEGFLドメインの5'の配列の存在のために調査された。クローン13、14および15の配列が完了した時、それらのいずれも単独では全長ヒトNRG-2αをコードしないことが明らかとなった。しかしながら、これらクローンの構造における十分な重複から、各々の部分が共にスプライシングされ、NRG-2αをコードする1つの全長クローンを生成することが明らかとなった。図1はこれら配列の構造の説明図を示す;NRG-2遺伝子のコードセグメントは影付き囲みにおいて示されており、記載されたNRG-2αおよびNRG-2βアイソフォームに存在するコード配列(実線)が上に記載されている;NRG-2のアイソフォームは、GGF-2様、免疫グロブリン様(Ig)、EGF様(EGFL)、α、β、膜貫通(M)および細胞質(cyto)ドメインを含む;終止コドンは(*)により示される;および推定イントロン配列が点線により示される。αコードセグメント内に存在する特有のBsrGI部位(B)が、クローン15の5'配列をクローン14の3'配列に連結することにより、全長ヒトNRG-2αのcDNAを構築するために使用され、最終構築物の配列が決定された。NRG-2αのcDNAの主要なオープンリーディングフレーム(図6、配列番号:1)は331個のアミノ酸のタンパク質をコードする(図7、配列番号:2)。
【0098】
実施例3
ヒトNRG-2βのcDNAのクローニングおよび構築
ヒトNRG-2βのcDNAは、部分的にはヒトNRG-2αのcDNA(ベクターならびにαおよびβアイソフォームの両方に存在するヒトNRG-2のN末端をコードする5'の869bpの配列)から、および部分的にはヒトNRG-2βをコードする部分的ヒトcDNA(2個の3'断片であり、一方がβ配列、および他方が終止コドンを含む)を含むファージクローン(例えば、ファージクローン11は、マッピング研究においてβ配列を含むことが示された。例えば、表1、実施例1および実施例2を参照)から構築される。
【0099】
ヒトNRG-2αのcDNA(実施例2)を、5500bpのベクターおよびcDNAを含む1555bpの挿入物を生成するために、酵素NotIおよびXbaI(ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs)、Beverly、MA)を用いて消化することができる。両方の断片が、QIAEX IIアガロースゲル抽出キットおよびプロトコール(キアゲン社(Qiagen Inc.)、Valencia、CA)を用いてTAE緩衝液中1%アガロースゲルから回収される。この挿入物断片(1555bp)は、5'の869bp断片および約700bpの3'断片を生成するためにDrdI(ニューイングランドバイオラボ、Beverly、MA)を用いてさらに消化される。869bpのNotI-DrdI断片がQIAEX IIアガロースゲル抽出キットおよびプロトコール(キアゲン社、Valencia、CA)を用いてTAE緩衝液中2%アガロースゲルから回収される。この869bp断片は開始メチオニンを含み、ヒトNRG-2βのN末端部分をコードする。それは、下記のようにヒトNRG-2βの配列を有するcDNAに由来する2個の付加的断片とともに、5500bpのベクターにライゲーションされる。
【0100】
ヒトNRG-2αおよびヒトNRG-2β配列の間の主要な差異は、単一のDrdIおよびBsrDI部位の間に存在する。αアイソフォームは、βアイソフォーム配列にスプライシングされる77bpのコードセグメントを含む。ヒトNRG-2βをコードする配列を取得するために、ヒトNRG-2α配列に相当するものよりも77bp短い、113bpのDrdI-BsrDI断片が以下のようにファージクローン11から生成される。DrdIおよびBsrDI部位に隣接するプライマー
が、Taqポリメラーゼの供給者(パーキンエルマー/ロシュ(Perkin Elmer/Roche)、Branchburg、NJ)により推奨される方法に従って、ファージクローンDNA11鋳型を増幅するために使用される。PCR産物をエタノールで沈殿し、その後113bpの断片を生産するためにDrdIおよびBsrDIを用いて連続的に消化する。同様に、3'断片はまた、プライマー1550および1546を用いてファージクローン11鋳型のPCR増幅により得られる。プライマー1550
はBsrDI部位を交差するように配置され、標的配列
へ変異させ、したがってリシンコドンをTAA終止コドンに変換するであろう単一Tの挿入を含む。プライマー1546はファージ右アームのクローニング部位に標的化され、XbaI部位を含む。BsrDIおよびXbaIを用いての産物の消化は、ヒトNRG-2βのcDNAの3'末端となる425bp断片を生成する。113bpおよび425bp断片は両方とも2%アガロースゲルから回収される。
【0101】
断片の回収は、既知の長さおよび量の二重鎖のDNAマーカーに対して相対的に電気泳動により定量される(例えば、ファージラムダHindIII消化;ニューイングランドバイオラボ、Beverly、MA);pGEMマーカー、プロメガ(Promega)、Madison、WI)、その後各精製断片がモル等量物に変換される。精製ベクター(100ng)および3個の断片が、供給者により提供される指示書に従い、等モル比で相互にライゲーションされる(T4 DNAリガーゼ、ニューイングランドバイオラボ、Beverly、MA)。ライゲーションは、供給者により提供される指示書に従い、大腸菌XL1 Blue(ストラタジーン社、LaJolla、CA)などのコンピテント細菌細胞を形質転換するために使用される。ベクターを含むコロニーは50μg/mlアンピシリンの耐性を基礎として選択され、ヒトNRG-2βのcDNAの構造は、PCR増幅およびプラスミドDNAのDNA配列決定により解析される。ヒトNRG-2βのcDNAの主要なオープンリーディングフレーム(図8、配列番号:3)は298アミノ酸のタンパク質をコードする(図9、配列番号:4)。
【0102】
実施例4
ヒトNRG-2の発現
哺乳類細胞においてヒトNRG-2を一過性または安定に発現するためのベクターを構築した。pRc/CMV2ベクター(インビトロジェン(Invitrogen) V750-20;図2参照)をヒトNRG-2を発現するために使用した。この5.5kbのベクターは、一過性および安定トランスフェクションの両方における高レベルの構成的発現を誘導するために、CMVプロモーターおよびウシ成長ホルモンポリアデニル化部位を利用している。ネオマイシン選択(G418)を安定形質転換体を選択するために使用することができる。ヒトNRG-2αのcDNA配列(配列番号:1)はHindIIIおよびXbaI部位を用いてポリリンカーに定方向性にクローニングされた。最終構築物のcDNA挿入物は両方の鎖に関して配列決定された。ヒトNRG-2発現ベクターはその後、組換えヒトタンパク質の信頼性の高い起源を提供するためにCHO細胞において発現された。
【0103】
ヒトNRG-2αおよびβの両方のcDNAが、一過性にCHO/S細胞にトランスフェクションされた(ライフテクノロジーズ社(Life Technologies Inc.)、Rockville、MD)。トランスフェクションされた遺伝子の異種発現は、CHO/S細胞系の適切な機能を保証するために実施された。疑似トランスフェクションは平行して実施された。トランスフェクションは、製造元(ライフテクノロジーズ社、Rockville、MD)により提供されるプロトコールにしたがって、リポフェクタミン(Lipofectamine)(商標)2000法により100mmディッシュ(三つ組)で実施された。細胞溶解物および馴化培地(conditioned medium)試料がトランスフェクションの3日後または4日後に回収された。溶解物を調製するために、細胞単層をPBSで洗浄し、ディッシュからこすり落とし、150μlの0.25Mトリス塩酸、pH8中で3回の凍結融解により溶解した。細胞破壊片を沈殿させて、上清を回収した。馴化培地試料を回収し、その後直接解析するか、または、セントリコン10(Centricon-10)ユニット(Ambion)を用いて濃縮し、10mMトリス塩酸、pH7.4と緩衝液を交換した。生物学的に活性のある組換えヒトNRG-2遺伝子産物の分泌は、CHO/S細胞の一過性トランスフェクションに続くシュワン細胞の増殖刺激および細胞溶解物と比較して馴化培地におけるNRG-2生物活性の検出により証明された(Marchionniら、Nature 362:312〜8、1993)。
【0104】
組換えヒトNRG-2(rhNRG-2)タンパク質は、トランスフェクションされた細胞の馴化培地において効率的に発現され(図3Aおよび図3B)、これらのタンパク質が哺乳類細胞から分泌されうることを示している。図3Aにおいては、rhNRG-2αをトランスフェクションされた細胞由来の細胞溶解物ではなく(および疑似トランスフェクションされた細胞由来の細胞溶解物でなく)、馴化培地が、約56kDに泳動される特異的な免疫反応性バンドを発現した。図3Bにおいては、αおよびβアイソフォームの両方がトランスフェクションされたCHO/S細胞の馴化培地に分泌された(予想されたように、より小さなrhNRG-2βタンパク質(298アミノ酸)が、rhNRG-2αタンパク質(331アミノ酸)よりも早く泳動される(約47kD)ことに留意されたい)。
【0105】
一過性トランスフェクションにおいて発現構築物の生物活性を確認した後に、rhNRG-2βを発現する安定CHO/S細胞株が生成された。pRc/CMV2ベクターはネオマイシン耐性遺伝子を含み、そのため安定的に形質転換された細胞が、有効な濃度のG418を含む培地において選択可能となる。レシピエントCHO/S細胞のトランスフェクションに続いて、選択培地中で11日間生存したよく単離されたコロニーが、コロニーリングを用いて選択された。rhNRG-2βおよびG418耐性の最高レベルの発現を示す細胞株はさらなる評価のために持続された。細胞株の3つの有用な特性は、持続した生存性、無血清(または低血清)培地への適合、および組換えタンパク質の発現レベルである。したがって、いくつかの株は平行して増殖され、無血清増殖条件への適合、およびウエスタンブロットによるrhNRG-2βの発現に関して試験された。ウエスタンブロット解析は、2%ウシ胎児血清を添加されたダルベッコ(Dulbecco)の修飾必須培地が、これらの実験においてrhNRG-2βの最適発現を提供したことを示した。生物活性は先行する候補株由来の発現された物質に関してアッセイされた。2個の単離物が、限界希釈によりクローニングされ、単一の単離された細胞株がさらなる研究のために使用された。
【0106】
NRG-2タンパク質を発現する安定CHO/S細胞株を生成することに加えて、rhNRG-2β発現構築物およびトランスフェクションされたジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子の統合コピーの共増幅に頼る戦略が開発された。哺乳類発現ベクターが、各々CMVおよびSV40プロモーター調節下となる、pcDNA3.1(インビトロジェン)およびpMACSKk.II(ミルテニバイオテク社(Miletenyi Biotec Ltd.))中に構築された。これらのベクターはdhfr発現ベクターとともにCHO-dhfr細胞に共トランスフェクションされ、G418耐性の30コロニーが選択され、増殖され、ウエスタンブロット(図10)およびRT/PCRにより発現レベルが解析された。図10、レーン1はrhNRG-2β対照試料を示し、レーン2はCHO SD(US)rhNRG-2βの48時間の上清を示し、レーン3〜5は24〜72時間のクローンT3B2を示し、レーン6〜8は24〜72時間のクローンT3B1を示し、レーン9は分子量マーカー(インビトロジェン、カタログ番号LC5925)を示し、レーン10〜12は24〜72時間のクローンT3A6を示し、およびレーン13〜15は24〜72時間のクローンT3A5を示す。T3B2、T3B1、T3A5クローンは希釈クローニングおよび増幅/選択のために選択された。遺伝子共増幅はメトトレキセート濃度の段階的な増加により誘導され、クローンは分泌rhNRG-2βの生産の増加に関してモニターされる。
【0107】
実施例5
発現されたNRG-2タンパク質を検出するための抗血清の生成および試験
発現されたNRG-2タンパク質を特異的に検出するポリクローナル抗血清が以下のように生成された。発現および精製試料中のNRG-2レベルをモニターするために使用されるウサギポリクローナル抗血清を生成するために、推定ヒトおよびラットNRG-2配列から、ペプチドが設計された。
【0108】
使用されたペプチドは以下の通りである。
【0109】
推定ラットおよびヒトNRG-2配列において同一であるIgドメイン配列由来の、これらのペプチドの1つ(K71984M)は、トランスフェクションされたCHO細胞由来の馴化培地における組換えラットNRG-2βをウエスタンブロットするのに有用な血清が生産され(図3参照)、rhGGF2には交差反応を生じなかった。これらのNRG-2抗血清は、固相化ペプチドに対して精製された。図3CはラットNRG-2βを発現するCHO細胞由来の馴化培地のウエスタンブロット解析を示す。レーンは、rrNRG-2βを発現するCHO細胞由来の15倍濃縮の馴化培地の20μl(左)または10ngのrhGGF2(右)のいずれかを含む。抗NRG-2血清は1μg/mlで使用され、特異的に46kDのrrNRG-2βを検出したが、80kDに泳動されるrhGGF2は検出されなかった。
【0110】
さらに、発現プラスミドrhNRG-2αおよびrhNRG-2βおよびペプチドK71984Mに対して作製されたウサギポリクローナル抗体を用いた、一過性にトランスフェクションされた単層CHO/S細胞由来の培養培地の解析により、rhNRG-2αおよびrhNRG-2βの両方が発現され、各々約55kDおよび47kDに泳動されることが示された(図5)。
【0111】
実施例6
発現されたrhNRG-2αおよびrhNRG-2βの生物活性の評価のための生物学的試験
生物学的に活性のあるrhNRG-2αの検出のための生物学的試験が開発された。ニューレグリンシグナル伝達はEGF受容体ファミリーに属するerbB受容体チロシンキナーゼを介して生じる。NRGリガンド結合および受容体活性化は、リン酸化チロシン残基に対して作製された抗血清を用いて、処理された細胞溶解物をウエスタンブロッティングすることにより検出されうる。このアッセイ法は、シュワン細胞、希突起膠細胞前駆細胞、骨格筋の筋管、心筋細胞、ならびに乳房および前立腺アデノカルシノーマ由来のヒト腫瘍細胞株を含むが、それらに制限されない様々な細胞型において、NRG-2タンパク質およびerbB受容体の相互作用を検討するために使用される。生物学的に活性のあるNRG-2(例えば、組換えラットNRG-2βを発現するCHO細胞由来の馴化培地)を、ヒト乳房アデノカルシノーマ細胞株MCF-7に関してこのアッセイ法を用いて検出することができる。受容体リン酸化チロシンのウエスタンブロットによる、MCF-7細胞に対してラットNRG-2β(rrNRG-2β)およびrhGGF2を試験する実験の結果は図4Aに示されている。MCF-7細胞は24ウェルプレート中で培養され(2x105細胞/ウェル)、10ng/mlのrhGGF2またはrhNRG-2βを発現するCHO細胞により馴化された培地の様々な希釈において15分間処理された。処理後その培地は除去され、細胞は一度洗浄され、その後培養物は溶解され、試料はウエスタンブロットにより解析された(Canollら、Neuron 17:229〜243、1996)。リン酸化されたErbB受容体はRC20Bリン酸化チロシン抗体を用いて検出される(トランスダクションラボラトリーズ(Transduction Laboratories)、Lexington、KY)。この解析の陽性対照試料はEGFを用いて処理されたA431細胞の溶解液である(最も左のレーン、図4A)。rhGGF2またはrrNRG-2βのいずれも増殖培地に添加されないとき、チロシンに関してリン酸化された検出可能なタンパク質は存在しなかった。しかしながら、様々な濃度のNRG-2βの添加は、185kdのリン酸化に関して用量依存性の増加を示した。このバンドは、rhGGF2(10ng/ml)処理の応答に対してもリン酸化されるErbB2およびErbB3受容体の予測位置と一致した。したがって、この生物学的試験は、発現および精製されたrhNRG-2αおよびrhNRG-2βの生物活性を立証するための信頼できる方法を提供する。精製された組換えタンパク質に適用された場合に、このアッセイ法は、DNA合成アッセイ法に匹敵するデータを提供する用量反応性曲線においてNRG-2の生物活性の定量化を可能にする。CHO/S細胞一過性トランスフェクション由来の馴化培地または精製された組換えNRG-2タンパク質を処理されたMCF-7細胞に関する受容体チロシンキナーゼ生物学的試験もまた図4Bに示されている。
【0112】
実施例7
rhNRG-2αまたはβのミリグラム量での精製
(rhNRG-2αを発現する)生産細胞株から回収された馴化培地は酢酸を用いてpH6.0に調整され、酢酸ナトリウム(pH6.0)を用いて平衡化されたS-セファロースカラムに直接添加される。結合物質を酢酸緩衝液中で1M NaClを用いて溶出し、硫酸アンモニウム緩衝液中で平衡化し、同一緩衝液中で疎水性相互作用カラム(ブチルセファロースFF)に通過させる。結合物質は低塩(800mM硫酸アンモニウム)緩衝液を用いて溶出され、rhNRG-2αのピークが回収される。回収された物質は緩衝液交換され、アミコンらせんカートリッジ(Amicon spiral cartridge)を用いて製剤緩衝液中(100mMアルギニン、100mM硫酸ナトリウム、20mM酢酸ナトリウム、1%マンニトール、pH6〜7)中で1mg/mlに濃縮される。選択的な、最終精製段階はセファクリル(Sephacryl)200HRカラムであり、溶出されたrhNRG-2αピークは製剤緩衝液中で製剤化された。別の方法では、ヘパリン親和性、銅キレートおよびC4-逆相クロマトグラフィーによる精製工程に従う(Higashiyamaら、J. Biochem. 122:675〜680、1997)。
【0113】
クロマトグラフィーカラム由来のタンパク質分画は、分泌されたrhNRG-2αまたはβのピークを同定するために、ウエスタンブロッティングによりモニターされる(例えば、図3A〜C参照)。ピーク分画および最終調製物が、MCF-7細胞に関する受容体リン酸化により解析される(図4A〜B参照)。純度は、ゲル電気泳動により(クーマシーブルー染色)および解析HPLC(0.1%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリル勾配において泳動されるVydac C8カラム)により評価される。タンパク質濃度は、標準として使用されるウシ血清アルブミンを用いたビシンコニン酸(BCA)アッセイ法(ピアス(Pierce))により決定される。
【0114】
精製の別の一般的な計画には、陽イオン交換に基づく従来のクロマトグラフィーによる捕捉、続いて1つまたは複数の段階(例えば、カルボキシメチルセファロースクロマトグラフィー、後に、逆相HPLCを利用することによる)を介した汚染タンパク質からの分離を含む。
【0115】
簡単には、様々な大きさのカルボキシメチルセファロース(ファストフロー)カラムが、200mM NaCl、10mMトリスpH7.4を用いて平衡化され、その後馴化培地試料が添加され、カラムが約3容量の200mM NaCl、10mMトリスpH7.4を用いて洗浄された(吸光度がベースラインに達するまで)。結合タンパク質が500mM NaCl、10mMトリスpH7.4を用いて溶出された。この溶出には、3カラム容量の高塩洗浄(1M NaCl、10mMトリスpH7.4)が続いた。分画は回収され、ウエスタンブロットおよび金またはクーマシーブルー染色タンパク質ゲル(4〜20%アクリルアミドトリスグリシンSDS)により解析された。カラム規模および捕捉され添加されたタンパク質の量に依存して、rhNRG-2βは、カラムからの0.5M NaCl中で溶出されたタンパク質の10〜70%を表した。カラムが過剰に添加されていない場合には、フロースルー中、または0.2M NaClもしくは1M NaCl分画中においては、検出可能なrhNRG-2βは検出されなかった。回収における有意な改善が、プロテアーゼ阻害剤を含めること、およびカラムを冷却中で泳動することにより獲得された(90%超)。捕捉クロマトグラフィーの規模は、10mlカラムから始まり、40ml、100mlおよび200mlカラムを通して増加された。全体的な結果は、回収および精製の両方の観点から一致しており、この段階の規模が、利用可能な開始物質の容量に適合するために調節されることが可能であることを示している。
【0116】
精製法は、バイオキャッド(Biocad)環流クロマトグラフィーワークステーション上で実施されるC4カラム(Vydac 214 TP 1010、1cm x 25cmカラム)を用いた逆相HPLCを用いてさらに開発された。一連の試験的運転は、10mMトリスHCl、pH7.4、0.5M NaCl中にrhNRG-2βを含むいくつかのカルボキシメチルセファロースカラム由来のプールされた分画に対して実施された。カラムは1ml/分の流速で実施され、0.2%TFA中で平衡化された。試料を注入後、0.2%TFA中の10分間のカラム洗浄が、30分の、90%アセトニトリル、0.2%TFAまでの線形傾斜を用いて行われ、90%アセトニトリル、0.2%TFAの最終の10分間の洗浄段階を本方法を完了するために使用した。分画はウエスタンブロットにより解析された。非常に純粋なrhNRG-2βを含む分画のみが最終プールに含まれた。図11に示されている、ゲルのクーマシーブルー染色により評価されるように、rhNRG-2βの調製物は約92%の純度であった。しかしながら、HPLCクロマトグラフに渡り検出された免疫反応性の約60〜70%は、rhNRG-2βプールには含まれなかった。したがって、90%精製は2段階で達成されたが、rhNRG-2βのより完全な回収を可能にするために第3の段階を実施してもよい。この3番目の段階はヘパリンセファロースおよび/または逆相HPLC段階の数個の修飾(例えば、溶媒の変動)を含んでもよい。
【0117】
金染色は、タンパク質調製物における汚染タンパク質を検出するための別の感度の高い方法を提供し、この染色は容易にナノグラム量のタンパク質を検出する。精製段階を可視化するために、およびさらなる解析のために、精製の異なる段階に由来するrhNRG-2β試料の純度が比較された(図12)。試料は還元状態中で4%〜20%SDS PAGE(Novex、カタログ番号EC6025)上で泳動された。ゲルはPVDF膜上に転写され、金染色(Gold Stain)(アマシャム(Amersham)、カタログ番号RPN490)を用いて総タンパク質に関して染色された。レーン中の過剰添加を防止するために、開始物質(無血清馴化培地)は精製試料の相対量の1%において添加された。この解析からの中心的な観察は、2段階において非常に有意な精製が達成されたことであった。
【0118】
MCF-7細胞株(ヒト乳房アデノカルシノーマ)に関して実施されたチロシンリン酸化アッセイ法が、精製されたNRG-2試料の生物活性を測定するために使用された。簡単には、培養は37℃15分間、試験試料(0.1%FCSを含む培地中の精製試料の希釈物)を投与され、その後培地が吸引除去され、DTTおよび1mMのオルトバナジウム酸ナトリウムを含む50μlの2x試料緩衝液が添加された。試料はその後、電気泳動およびウエスタンブロッティング用に調製された。対照試料と上皮細胞成長因子で処理されたA431細胞由来の溶解物とは納入業者(トランスダクションラボラトリーズ、Lexington、KY)により提供された。rhNRG-2β生産をモニターすることに加えて、50%アセトニトリル(AN)またはPBSなどの精製処理に適合可能な賦形剤中に希釈されているrhNRG-2βのHPLC精製試料の活性が試験された(図13)。この実験において使用された濃度においては、ANはNRGシグナル伝達を劇的には妨害しなかった。
【0119】
実施例8
希突起膠細胞前駆細胞におけるNRG-2活性
rhGGF2を比較に用いて、培養された希突起膠細胞前駆細胞の増殖および生存に対するrhNRG-2αおよびrhNRG-2βの効果の評価を実施する。希突起膠細胞前駆細胞は、McCarthyおよびDeVellis(J. Cell Biol. 85:890〜902、1980)の方法にしたがって2日齢ラットから生成され、細胞は、0.5%FBSを含むN2合成培地(DM+)中で、1〜3日間、希突起膠細胞系列中の細胞を濃縮するために培養される。培養物の純度は、星状膠細胞マーカーのGFAPに対する抗体;小グリア細胞マーカーであるOX42モノクロナール(ハーランバイオプロダクトフォーサイエンス(Harlan Bioproducts for Science));O-2A前駆細胞のマーカーである、抗A2B5モノクロナール(ベーリンガーマンハイム(Boehringer Mannheim));早期および成熟希突起膠細胞を各々認識するO4およびO1(Sommerら、Dev. Biol 83:311〜327、1980);RPTP-β(J. Schlessinger、NYU Med Ctrからの寄贈)および希突起膠細胞系列の早期の細胞を選好的に認識するネスチン抗体(発生研究ハイブリドーマバンク(Developmental Studies Hybridoma Bank))(Canollら、Neuron 17:229〜243、1996;Galloら、J. Neurosci. 15:394〜406、1995)の一連の抗体を用いて免疫蛍光解析により確立される。
【0120】
rhNRG-2α、rhNRG-2βまたはrhGGF2に反応してDNAを合成する細胞の割合(%)を決定するために、培養は16時間行われ、最後の4時間は10μMブロモデオキシウリジン(BrdU;シグマ(Sigma))存在下で処理される。BrdU標識された細胞はフルオレセイン結合抗BrdU免疫検出キット(ベーリンガーマンハイム)を用いて検出される。全細胞に対するBrdU+細胞の比に相当する標識指数は、BrdU標識された核およびヘキスト染色された核の個々の視野の顕微鏡写真から決定される。分化の特定の段階における標識指数を決定するために、BrdU染色を、O4、O1およびGFAP免疫蛍光解析と組み合わせる。
【0121】
細胞生存に対するNRG-2の効果を評価するために、B104馴化培地中で増殖する細胞を、3日間DM+培地に変更する。それらはその後、12時間または24時間の間、rhGGF2、rhNRG-2αまたはrhNRG-2βの存在または非存在において、N2培地またはDMEMのいずれかに転換され、製造者の指示書にしたがって、15分間Live/Dead染色キット(モリキュラープローブ社(Molecular Probes, Inc.))を用いて染色される。細胞死を定量化する形態学的基準、すなわち、位相差顕微鏡下でのピクノチック(Pyknotic)細胞のモニター段階およびMTTアッセイ法(シグマ)は、別々の実験で使用される。
【0122】
実施例9
嗅球鞘性細胞に対するNRG-2の活性
ラット嗅球は例外的なCNS組織である。脳の他の領域とは異なって、成長軸索は嗅球に進入することが可能であり、成体期間を通じてこのCNS環境内において伸長することが可能である。嗅球鞘性細胞(OBEC)として知られる、嗅覚系のグリア細胞は、CNS神経再生において重要な役割を有する可能性がある(Liら、J. Neurosci. 18:10514〜10524、1998)。OBECは、星状膠細胞およびシュワン細胞の両方の特性を有する異常なグリア細胞であり、脊髄再生を支援するために有用な細胞でありうる。OBECは、機能的NRG受容体、erbB2およびerbB4を発現する(Pollockら、Eur. J. Neurosci. 11:769〜780、1999)。さらに、高レベルのNRG-2ポリペプチドが嗅球において発現されている。したがって、これらのOBECは、NRG-1をNRG-2遺伝子産物の生物活性と比較する理想的な候補である。
【0123】
OBECは、O4抗体(Barnett、「動物細胞の培養(Culture of Animal Cells)」、I. R. Freshney、第3版、pp337〜341、Wiley-Liss、New York、NY、1993;Barnettら、Dev Biol. 155:337〜350、1993)を用いて蛍光細胞分析分離装置により生後7日のラットから精製される。分別後、細胞懸濁物は、カバースリップ上にプレーティングされ、成長因子またはACMのいずれかの処理前に、(細胞生存を促進するために)10%星状膠細胞馴化培地(ACM)を含むDMEM-BS中で37℃にて一晩インキュベーションされる。分裂活性は、分裂細胞へのBrdUの取り込みにより測定され、細胞生存およびアポトーシスアッセイ法は記載されるように実施される(Pollockら、Eur. J. Neurosci. 11:769〜780、1999)。
【0124】
実施例10
中脳ドーパミン作動性ニューロンに対するNRG-2の活性
NRG受容体erbB4は、ラット、マウスおよびサルの中脳ドーパミン作動性ニューロンで発現している。組換えヒトNRGタンパク質の線条体への送達はパーキンソン病の治療において有用である。例示的タンパク質、rhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2を用いた研究では、NRGに対するドーパミン作動性黒質線条体系の応答をさらに研究するために実施される。2個のNRGタンパク質が、ドーパミン作動性ニューロン(例えば、胎児げっ歯類およびヒト神経芽細胞腫細胞株、例えば、SKNNCに由来する)に対する生存促進活性(すなわち、酸化ストレスを誘導する試薬により誘導される細胞死からの保護)に関してインビトロにおいて比較される。様々な濃度のrhNRG-2α、rhNRG-2βまたはrhGGF2で前処理された細胞は、酸化ストレスを誘導するために1μMのメタジオンまたは100mMのジエチルジチオカルバメートで24時間処理され、標準的方法により細胞死が定量化される。ドーパミン放出のインビボモデルならびにラットにおけるドーパミン作動性機能の電気化学的および行動評価もまた使用可能である。
【0125】
NRGタンパク質は、インビトロにおけるラットドーパミン作動性ニューロンに対する生存促進活性に関して試験された。具体的には、6ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)を用いて培養中で投与されたドーパミン作動性ニューロンに関してNRGランパク質が神経保護的であるかが決定された。rhNRG-2βまたはrhGGF2で前処理された細胞および未処理対照培養物を50μMの6-OHDAで24時間暴露し、その後、培養物をチロシン水酸化酵素(TH)で染色し、光学顕微鏡下で試験した(図14)。図14は、インビトロ7日目(DIV)の、チロシン水酸化酵素(TH)で免疫染色された初代間脳培養物を示す。上部のパネルは、DIV 0から開始し、DIV 3で終了するまで毎日100ngのrhNRG-2βで処理された培養物を示す。DIV 4において、培養物は50μMの6-OHDAで処理された。下パネルは前処理を受けなかったが、DIV 4において50μMの6-OHDAで処理された培養物を示す。両方の培養物はDIV 7においてTH免疫反応性に関して解析された。目盛り棒は50マイクロンに等しく、上部および下部パネルの両方に適用される。類似の染色パターンが各培養物の全体に渡り観察された。TH陽性ニューロンの密度、数、および神経突起の長さは、前処理を受けなかった培養物における6-OHDA処理により減少した。対照的に、rhNRG-2βで前処理された培養物は、rhGGF2に関して観察された結果と同等の正常な形態学的発生を示す。この結果はいくつかの培養実験において繰り返された。結果は、rhNRG-2βは、例えばパーキンソン病の動物モデルにおいて試験可能であるインビボの好ましい効果を有することを示す。
【0126】
実施例11
小脳における神経発生および移動
NRG-1、NRG-2およびerbB4受容体のアイソフォームは小脳において高レベルで発現している(Chenら、J Comp Neurol 349:389〜400、1994;Changら、Nature 387:509〜512、1997;Laiら、Neuron 6:691〜704、1991)。RhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2を小脳における移動およびニューロン形成の細胞培養アッセイ法において評価することが可能である。RhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2はグリア細胞基質上の小脳顆粒ニューロンの移動速度に対する効果に関して比較される。接着している移動中のニューロンとともに無傷なベルグマングリアを含む、生後5日のラット小脳のインプリント培養物を記載のように作製する(Antonら、J. Neurosci. 16:2283〜2293、1996)。ニューロン移動を、ツァイスW63対物レンズを備えたツァイスアキシオバート135(Zeiss Axiovert135)顕微鏡を用いてモニターし、映像を光学ディスクに記録する。ニューロン移動の速度およびパターン、ニューロン-グリア相互作用、および形態の変化を、rhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2に対する応答においてモニターする。
【0127】
小脳顆粒ニューロン形成に対する効果が、生後のラット小脳顆粒ニューロンの解離培養において研究される。分裂中の神経前駆細胞は、パーコール(Percoll)密度勾配遠心分離により生後5日の小脳から精製され、解離細胞培養中に設置される。培養物はその後10μM BrdUrd(分裂細胞を標識化するために)、様々な濃度のrhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2を用いて処理される。培養において2〜7日の付加的な日数の後で、ニューロンおよびグリア細胞系列への分化が、GFAP(グリア)およびTUJ1(ニューロン)などの細胞型特異的マーカーを用いての免疫染色によりアッセイされる。各培養条件において、細胞の総数、BrdU標識された細胞、および各マーカーを用いて同定される細胞が列挙される。これらの成長因子に暴露されて以来、特定の細胞系列に入った細胞が、BrdUおよびマーカーの一つで標識されたものとして同定される。各マーカーで標識されるBrdU標識された細胞の割合(%)は、したがって、各成長因子のニューロンおよびグリアの形成および生存に与える効果の尺度を提供する。様々な時間点での細胞の総数、および異なる条件下でのアポトーシス細胞の数の解析は、rhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2の、神経前駆細胞、またはそのニューロンもしくはグリア誘導体の選択的生存に与える任意の潜在的な効果を評価するために使用される。
【0128】
NRG-1、NRG-2およびerbB4受容体のアイソフォームは、小脳において高レベルで発現し、したがって小脳の神経細胞に関するインビトロ研究はこれらの研究において重要な構成要素となる。rhNRG-2βおよびrhGGF2の両者は、小脳における移動およびニューロン形成の細胞培養アッセイ法において評価された。それらに接着している移動中のニューロンとともに無傷なベルグマングリアを含む生後5日のラット小脳のインプリント培養が作製され、解析された。ニューロン移動は、ツァイスW63対物レンズを備えたツァイスアキシオバート135顕微鏡を用いてモニターされ、映像は光学ディスクに記録された。ニューロン移動の速度およびパターン、ニューロン-グリア相互作用、および形態の変化が、rhnrg-2βおよびrhGGF2に対する応答においてモニターされた(図16A〜B)。小脳顆粒ニューロンのニューロン移動速度が、rhNRG-2β(100ng/ml)、rhGGF2(50ng/ml)、または未添加の対照培地への暴露の前後で測定された。図16Aは、成長因子(ここに示されているのはrhGGF2)の添加の前(黒矢印の左のパネル)および後(黒矢印の右のパネル)にモニターされた、グリア細胞突起上を移動するニューロンを示す。各パネル間で経過している時間は1時間である。図16Bは、rhGGF2への暴露がニューロンの移動速度を45±2.1%促進したことを示す。対照的に、対照培地またはrhNRG-2βのいずれも移動速度を変更しなかった。星印は有意性、P<0.05を示す。示されているデータは平均±標準誤差(各群に関してn>16)である。したがって、rhGGF2により促進されるニューロン移動速度における観察された増加とは対照的に、rhNRG-2βは明らかな効果を有さなかった。しかし、小脳神経前駆細胞を解離培養において調べた場合に、rhNRG-2βは外部顆粒層(EGL)ニューロンの増殖および/または生存を促進した(図15A〜B)。外部顆粒層(EGL)細胞は解離され、神経基本(NB)/N2培地または100ng/mlのrhNRG-2βを添加したNB/N2培地中で5日間培養される。10μMのBrdUは最初から全ての培養に添加された。細胞はその後固定され、ポリクローナルニューロン特異的抗体(Tuj-1;バブコ(Babco))および抗BrdUモノクロナール抗体を用いてプローブ検索された。Tuj-1のみ(すなわち、ニューロン;星印[A])、BrdU+Tuj-1(すなわち、培養において分裂中の神経芽細胞から生成されるニューロン;矢印[A])およびBrdUのみ(すなわち、非神経細胞;矢頭[A])で標識された細胞が計数された。対照と比較して、rhNRG-2βを含む培地において培養される時、より多くのニューロン(矢印[A])が核においてBrdU(オレンジ)を取り入れたことが見出された。BrdU免疫反応性が、Cy3(赤)に結合された抗マウスを用いて検出された。Tuj-1免疫反応性はFITCに結合された抗ウサギを用いて検出された。Tuj-1およびBrdU陽性細胞の数が計数された。rhNRG-2β群由来の細胞の計数は、BrdU陽性ニューロンの数における基礎的な変化の倍率を取得するために、対照群由来のものに対して正規化された。この結果は、rhNRG-2βがEGL細胞増殖、または新規に生成された小脳顆粒ニューロンの選択的生存を促進することを示唆する。これらのデータはしたがって、erbB4を発現するニューロン集団に、より一般的に適用可能な、神経細胞への生物活性を例示する。
【0129】
実施例12
心室筋細胞に対するNRG-2の活性
発生中および生後の心筋におけるNRGリガンドおよび受容体の役割を検査するために、NRG-2タンパク質について、単離された新生児および成体ラットの心筋細胞の増殖、生存および成長を促進する可能性が研究された。ニューレグリン、erbB2、erbB3およびerbB4に対する全部で3個の既知の受容体は、E14の発生中の心臓において発現され、その後erbB3発現は急速に減少し、一方erbB2およびerbB4発現は心室筋細胞において成体期まで持続する。rhNRG-2αおよびrhNRG-2βの心筋細胞に対するインビトロ活性はrhGGF2と比較して評価される。具体的には、その2個の成長因子が、下記のように心筋細胞生存、肥大および収縮性タンパク質の発現に対する効果に関して比較される。新生児ラット心室筋細胞(NRVM)初代培養を以前に記載されているように調製する(Springhornら、J. Biol. Chem. 267:14360〜14365、1992)。筋細胞を選択的に濃縮するために、解離された細胞を500rpmで5分間、2回遠心分離し、75分間2回、前プレーティングし、最終的には7%FBSを添加したDME培地中で低密度(0.7〜1x104細胞/cm2)にてプレーティングする。シトシンアラビノシド(AraC;10M;シグマ)を、非筋細胞の増殖を防止するために最初の24〜48時間の間添加する。他に述べられなければ、全ての実験は、無血清培地、DMEプラスITS(シグマ)に変えた後、36〜48時間実施される。この方法を用いて、95%超の筋細胞を有する初代培養は、自発収縮を顕微鏡観察することにより、およびモノクロナール抗心ミオシン重鎖抗体(抗MHC;バイオジェネシス(Biogenesis)、Sandown、NH)を用いた免疫蛍光染色により評価されるように、型どおりに取得される。
【0130】
成体ラット心室筋細胞(ARVM)初代培養の単離および調製は以前に記載された技術を用いて実施される(Bergerら、Am. J. Physiol. 266:H341〜H349、1994)。棒型心筋細胞は、ラミニン(10 ( g/ml)で前コーティングされたディッシュ上で60分間、培養液中にプレーティングされる、続いて緩く付着している細胞を除去するために培地が1回交換される。非筋細胞による、ARVM初代培養の汚染は、血液血球計算器を用いて決定され、典型的には5%未満である。全てのARVM初代培養は、2mg/mlのBSA、2mMのL-カルニチン、5mMのクレアチン、5mMのタウリン、0.1 ( Mのインスリン、および10nMのトリヨードチロニンを添加した100IU/mlのペニシリンおよび100 ( g/mlのストレプトマイシンを有するDMEから構成される「ACCITT」(Ellingsenら、Am. J. Physiol. 265:H747〜H754、1993)と名付けられた合成培地中で維持されている。筋細胞の生存および/またはアポトーシスを検査するために設計された実験プロトコールにおいては、インスリンが合成培地から除去され、したがって「ACCTT」と名付けられる。
【0131】
タンパク質合成速度の尺度([3H]ロイシン取り込み)が、心筋細胞肥大に対する成長因子の効果をモニターするために使用される。これらの実験に関しては、10 ( Mシトシンアラビノシドが培養培地に添加される。細胞は無血清培地中で36から48時間増殖され、その後、異なる用量のrhNRG-2α、rhNRG-2βまたはrhGGF2を用いて刺激される。40時間後、[3H]ロイシン(5 ( Ci/ml)が8時間添加され、細胞はPBSを用いて洗浄され、10%TCAを用いて回収される。TCA沈殿可能な放射活性はシンチレーション計数により決定される。
【0132】
免疫細胞化学を、rhNRG-2α、rhNRG-2βまたはrhGGF2を用いての筋細胞表現型における変化を検査するために使用される。例えば、成長因子処理に続いて、細胞を4%(w/v)パラホルムアルデヒド中で室温30分間固定し、PBSで洗浄し、0.1%トライトン-Xを用いて15分間透過性化し、その後1%FBSを用いてさらに15分間インキュベーションし、抗ミオシン重鎖(1:300)を用いたインキュベーションが続き、TRITC結合(NRVM)またはFITC結合(ARVM)二次抗体で可視化した。ARVMはKr/Arレーザーを有するMRC600共焦点顕微鏡を用いて検査される。
【0133】
rhGGF2と比較して、rhNRG-2αおよびrhNRG-2βの心筋細胞に対するインビトロ活性を評価した。(タンパク質合成を測定することによりモニターされるように)細胞肥大に関する研究、ならびにp42/44 MAPKおよびAktを含むシグナル伝達経路の活性化が実施された(図17および図18)。1日齢新生児ラット心室から単離された新生児ラット心室筋細胞は、約80,000細胞/ウェルで10%FCS中に、24時間、24ウェル組織培養プレート中にプレーティングされ、その後血清を一晩除去した。細胞を、3H-ロイシン存在下で24時間、組換えニューレグリンで処理した。細胞タンパク質を5%TCAを用いて沈殿し、0.4N NaOHを用いて溶解した。3H-ロイシン取り込みはシンチレーション計数器を用いて測定され、未処理細胞における平均計数により分割された、同一に処理された4ウェルの平均として提示された。新生児ラット心室筋細胞は、約2〜300万細胞/プレートで10%FCS中に、p100s中に24時間プレーティングされ、その後血清を24時間除去した。細胞を、組換えニューレグリンで10分間処理し、その後プロテアーゼおよびフォスファターゼ阻害剤(ニューイングランドバイオラボ)を含む緩衝液で溶解した。70μgのタンパク質を表す試料を10%ゲル(バイオラッド)上で泳動し、ニューイングランドバイオラボのリン酸化特異的抗体を用いてリン酸化ErkまたはAtkを検出するために、PVDF膜上に転写した。rhGGF2およびrhNRG-2βの両方は、検査された全ての濃度において約40%タンパク質合成を増加させた。しかしながら、rhNRG-2αは試験された濃度では、タンパク質合成に対する効果を有さなかった。示されているブロット(図17)は2個の別個の実験の代表である。
【0134】
これらの結果は、NRG2シグナル伝達が、心筋小柱形成の間および形成後の両方において、心筋細胞の増殖、生存および成長を促進するように作用する可能性があることを示している。さらに、生後および成体の心臓におけるNRG受容体の持続は、生理学的ストレスまたは傷害に対する心筋の適応においてニューグレリンに関して持続性の役割を示唆する。
【0135】
実施例13
細胞生存アッセイ法およびアポトーシスの検出
細胞生存度は、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT、シグマ)細胞呼吸アッセイ法により決定される。無血清培地中で2日後の初代培養NRVMを、異なる濃度のrhNRG-2α、rhNRG-2βまたはrhGGF2を用いて、4または6日のいずれかの間刺激する。ARVMを、ACCTT培地、または異なる濃度のrhNRG-2α、rhNRG-2βもしくはrhGGF2を添加したACCTT培地中で6日間維持する。MTTはその後細胞とともに37℃3時間インキュベーションされる。生存細胞はテトラゾリウム環を、ジメチルスルホキシドを用いた細胞溶解の後、570nmの光学的密度を読み取ることにより定量化可能な濃青色のホルマザン結晶に変換する。
【0136】
アポトーシスは、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)を介するdUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイ法を用いて、新生児および成体の筋細胞において検出される。フルオレセイン結合dUTPを用いたDNAの3'末端標識は、製造元の指示書にしたがって、インサイチュー細胞死検出キット(ベーリンガーマンハイム)を用いて実施される。細胞は上述のように、抗MHC抗体を用いて対比染色され、核はまた、ヘキスト33258(10 ( M、シグマ)を用いて5分間染色される。500超の筋細胞が各カバースリップにおいて計数され、TUNEL陽性筋細胞の割合(%)が計算される。
【0137】
他の態様
本明細書において言及される全ての刊行物および特許出願は、各々の独立した刊行物または特許出願があたかも具体的におよび個別に参照として組み入れられるように指示されているのと同様に、参照として本明細書に組み入れられる。
【0138】
本発明は、その特定の態様に関連して記載されているが、さらなる修飾が可能であることが理解されると思われ、本出願は、一般的には本発明の原則に従って、且つ本発明が関連する技術分野内の既知のまたは習慣的な実施内にある、本発明の開示からのそのような逸脱を含む、本発明の任意の変動、使用または適応を含むことを意図し、本明細書において以前に開示された重要な特徴に適用されてもよく、添付の特許請求の範囲にしたがうものである。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ニューレグリンおよびその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ニューレグリン(NRG)およびそれらの受容体は、神経、筋肉、上皮および他の組織における器官発生に関与している細胞と細胞とのシグナル伝達のための成長因子-受容体チロシンキナーゼ系を構成している(Lemke、Mol. Cell Neurosci.、7:247-262(1996);Burdenら、Neuron、18:847-855(1997))。3種の公知のNRG遺伝子であるNRG-1、NRG-2およびNRG-3は、個別の染色体遺伝子座にマッピングされ(Pinkas-Kramarskiら、Proc. Natl. Acad Sci. USA、91:9387-91(1994);Carrawayら、Nature、387:512-516(1997);Changら、Nature、387:509-512(1997);および、Zhangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、94:9562-9567(1997))、ならびに集合的にNRGタンパク質の多様なアレイをコードしている。NRGタンパク質ファミリーは、上皮細胞成長因子様(EGFL)ドメイン、免疫グロブリン(Ig)ドメイン、および他の認識可能なドメインを含む、少なくとも20個(およびおそらくは50個またはそれ以上)の分泌されかつ膜結合されたアイソフォームを含む。
【0003】
今日までに最も徹底して研究されたNRGタンパク質は、NRG-1の遺伝子産物であり、これはおよそ15個の個別の構造的に関連したアイソフォームの群を含む(Lemke、Mol. Cell Neurosci.、7:247-262(1996)、ならびにPelesおよびYarden、BioEssays、15:815-824(1993))。NRG-1のアイソフォームは、Neu分化因子(Neu Differentiation Factor)(NDF;Pelesら、Cell、69:205-216(1992)およびWenら、Cell、69:559-572(1992))、ヘレグリン(HRG;Holmesら、Science、256:1205-1210(1992))、アセチルコリン受容体誘導活性(Acetylcholine Receptor Inducing Activity)(ARIA;Fallsら、Cell、72:801-815(1993))、およびグリア成長因子GGF1、GGF2およびGGF3(Marchionniら、Nature、362:312-8(1993))を含む。
【0004】
NRG-2遺伝子は、相同クローニングにより(Changら、Nature、387:509-512(1997);Carrawayら、Nature、387:512-516(1997);および、Higashiyamaら、J. Biochem.、122:675-680(1997))、およびゲノムアプローチを通して(Busfieldら、Mol. Cell. Biol.、17:4007-4014(1997))により同定されている。NRG-2アイソフォームは、erbBキナーゼの神経および胸腺に由来するアクチベーター(NTAK;Genbankアクセッション番号AB005060)、ニューレグリン誘導体(Don-1)、および小脳由来の成長因子(CDGF;国際公開公報第97/09425号)を含む。erbB4またはerbB2/erbB4受容体を発現している細胞は、NRG-2に対する特に強固な反応を示し得る(Pinkas-Kramarskiら、Mol. Cell. Biol.、18:6090-6101(1998))。NRG-3遺伝子産物(Zhangら、Proc. Natl. Acad. Sci USA、94:9562-9567(1997))も、erbB4受容体に結合し活性化することが知られている(Hijaziら、Int. J. Oncol.、13:1061-1067(1998))。
【0005】
NRGアイソフォームのコアに存在するEGFLドメインはNRG受容体の結合し、活性化に必要であり、これは上皮細胞成長因子受容体(EGFR)ファミリーに属し、ならびにEGFR(またはerbB1)、erbB2、erbB3、およびerbB4を含み、これらは各々ヒトにおいてHER1からHER4として公知である(Meyerら、Development、124:3575-3586(1997);Orr-Urtregerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90:1867-71(1993);Marchionniら、Nature、362:312-8(1993);Chenら、J. Comp. Neurol.、349:389-400(1994);Corfasら、Neuron、14:103-115(1995);Meyerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、91:1064-1068(1994);および、Pinkas-Krainarskiら、Oncogene、15:2803-2815(1997))。NRG類の高親和性結合は、主としてerbB3受容体またはerbB4受容体のいずれかにより媒介され得る。NRGリガンドの結合は、他のerbBサブユニットとの二量体化および特異的チロシン残基上のリン酸化によるトランス活性化につながる。
【0006】
NRGタンパク質は、多様な生物学的特性を有し、これらは広範な疾患および障害の新規療法の開発において有用である可能性を有する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、NRG-2ポリペプチド、核酸分子、および抗体を用いる治療および診断法を提供する。本発明はまた、新規NRG-2ポリペプチドおよび核酸分子も提供する。
【0008】
第一の局面において、本発明は、細胞の有糸分裂誘発、生存、成長または分化を増加するのに有効量のNRG-2ポリペプチドを細胞へ投与する段階により、細胞の有糸分裂誘発、生存、成長または分化を増加する方法であって、この細胞がNRG-2ポリペプチドに対して選択的であるerbB受容体を発現している方法を提供する。本局面の好ましい態様において、erbB受容体は、erbB4ホモダイマー、erbB2/erbB4ヘテロダイマー、またはerbB1/erbB3ヘテロダイマーである。別の第一の局面の好ましい態様において、細胞は、神経系細胞、神経前駆細胞、神経関連細胞、または筋細胞である。別の第一の局面の好ましい態様において、神経関連細胞は、シュワン細胞、星状膠細胞、希突起膠細胞、O-2A前駆細胞、グリア細胞、小グリア細胞、嗅球鞘性細胞(olfactory bulb ensheathing cell)、または感覚器細胞であり、および筋細胞は、筋芽細胞、衛星細胞、ミオサイト、骨格筋細胞、平滑筋細胞、または心筋細胞を含む。
【0009】
第二の局面において、本発明は、グリア細胞と組換えNRG-2ポリペプチドとを接触させる段階により、グリア細胞の有糸分裂誘発を刺激する方法を提供する。好ましい第二の局面の態様において、グリア細胞は、希突起膠細胞、小グリア細胞、髄鞘形成しているグリア細胞、嗅球鞘性細胞、または成体のグリア細胞である。
【0010】
第三の局面において、本発明は、グリア細胞とNRG-2ポリペプチドとを接触させる段階により、グリア細胞により神経系細胞の髄鞘形成を誘導する方法を提供し、結果としてこの接触段階は、グリア細胞による神経系細胞の髄鞘形成を誘導するのに十分なものである。
【0011】
第四の局面において、本発明は、心筋細胞(cardiomypcyte)の生存、心筋細胞の増殖、心筋細胞の成長、または心筋細胞の分化を増大させるのに有効量のNRG-2ポリペプチドを哺乳類へ投与する段階により、それを必要とする哺乳類において心筋細胞の生存、心筋細胞の増殖、心筋細胞の成長、または心筋細胞の分化を増大させる方法を提供する。第四の局面の好ましい態様において、哺乳類はヒトである。別の第四の局面の好ましい態様において、哺乳類は、例えば、心筋症(例えば、先天性変性疾患)、心臓外傷、心不全、または虚血性損傷のような、心筋に影響を及ぼす病態生理学的状態を有するか、もしくは哺乳類は、例えば、アテローム硬化症、血管病変、血管高血圧、または先天性変性血管疾患などの平滑筋に影響を及ぼす病態生理学的状態を有する。別の第四の局面の好ましい態様において、哺乳類は、重症筋無力症患者である。
【0012】
第五の局面において、本発明は、ニューレグリンが、神経関連細胞と相互作用し、結果として神経関連細胞による少なくとも1種の神経栄養性物質を生じ、ならびにこの1種または複数の神経栄養性物質が神経系細胞の有糸分裂誘発、生存、成長、分化、または神経突起伸長に影響を及ぼすように、NRG-2ポリペプチドを哺乳類へ投与する段階による、哺乳類における神経関連細胞と神経系細胞の間の細胞の情報伝達に影響を及ぼす方法を提供する。第五の局面の好ましい態様において、哺乳類はヒトである。別の第一の局面の好ましい態様において、神経関連細胞は、シュワン細胞、星状膠細胞、希突起膠細胞、O-2A前駆細胞、グリア細胞、嗅球鞘性細胞、小グリア細胞、感覚器細胞、または筋細胞(例えば、骨格筋細胞、平滑筋細胞、または心筋細胞)である。第五の局面の好ましい態様において、細胞の情報伝達は、哺乳類の中枢神経系または末梢神経系において影響を受ける。別の第五の局面の好ましい態様において、投与は、精製されたNRG-2ポリペプチド産生細胞の投与を含む。
【0013】
第六の局面において、本発明は、治療的有効量の組換えNRG-2ポリペプチドを哺乳類へ投与する段階による、哺乳類における神経系の病態生理学的状態の治療または予防の方法を提供する。第六の局面の好ましい態様において、病態生理学的状態は、末梢神経系または中枢神経系の状態であり;この病態生理学的状態は、神経細胞の脱髄、シュワン細胞の損傷、シュワン細胞の喪失、または神経変性疾患であり;この病態生理学的状態は、末梢ニューロパシーであり(例えば、感覚神経線維ニューロパシー、運動神経線維ニューロパシー、または両方); または、この病態生理学的状態は、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、神経損傷、アルツハイマー病、パーキンソン病、小脳性運動失調症、または脊髄損傷である。別の第六の局面の好ましい態様において、治療または予防は、神経再生または神経修復を必要としている。別の第六の局面の好ましい態様において、NRG-2ポリペプチドは神経関連細胞と相互作用し、結果として神経関連細胞により少なくとも1種の神経栄養性物質を生じ、ならびにこの1種または複数の神経栄養性物質が、神経系細胞の有糸分裂活性、生存、分化または神経突起伸長に影響を及ぼす。別の第六の局面の好ましい態様において、投与は、グリア細胞(例えば、シュワン細胞または希突起膠細胞)により神経系細胞の髄鞘形成を誘導するのに十分である。別の第六の局面の好ましい態様において、投与は、精製されたNRG-2ポリペプチド産生細胞を哺乳類へ投与する段階を含む。本発明のNRG-2ポリペプチド産生細胞は、組換えDNA配列を含むことができ、このDNA配列はNRG-2ポリペプチドコード配列を含み、かつNRG-2ポリペプチドコードDNA配列はプロモーターに機能的に連結されている。
【0014】
第七の局面において、本発明は、NRG-2ポリペプチドと腫瘍細胞表面に存在する受容体との結合を阻害する有効量の抗体を、そのような治療を必要としている対象へ投与し、腫瘍細胞の増殖を阻害する段階により、腫瘍(例えば、グリア細胞腫)を治療する方法を提供する。第七の局面の好ましい態様において、腫瘍細胞は、NRG-2ポリペプチドに対し選択性であるerbB受容体を発現している。
【0015】
第八の局面において、本発明は、NRG-2ポリペプチドと神経線維腫症の個体においてグリア細胞腫細胞の表面に存在する受容体との結合を阻害する有効量の抗体を、そのような治療を必要としている対象へ投与し、グリア細胞の有糸分裂誘発を阻害する段階により、神経線維腫症を治療する方法を提供する。
【0016】
第九の局面において、本発明は、NRG-2ポリペプチドと細胞表面に存在する受容体との結合を阻害する有効量の抗体と細胞とを接触させることにより、細胞の増殖を阻害する方法を提供する。
【0017】
第10の局面において、本発明は、NRG-2ポリペプチドを細胞へ投与する段階により、細胞の増殖を刺激する方法を提供する。
【0018】
第九および第10の局面の好ましい態様において、細胞は、神経系細胞、神経関連細胞、または筋細胞である。
【0019】
本発明の前述の局面または態様のいずれかのNRG-2ポリペプチドは、配列番号:2もしくは4に記載のアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなるか、または配列番号:1もしくは3に記載の核酸配列によりコードされうる。
【0020】
第11および第12の局面において、本発明は、配列番号:2もしくは4に記載のアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる、実質的に純粋なNRG-2ポリペプチドを提供する。第13の局面において、本発明は、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする配列を含む、実質的に純粋な核酸分子を提供する。好ましい態様において、本発明は、プロモーターに機能的に連結された第13の局面の核酸分子を含むベクター(例えば、遺伝子治療用ベクター);第13の局面の核酸分子を含む遺伝子治療用ベクターを含む細胞;および、第13の局面の核酸分子を含む非ヒトトランスジェニック動物を提供する。
【0021】
第14および第15の局面において、本発明は、配列番号:1もしくは3に記載の核酸配列と実質的に同一の核酸配列を含むか、またはこれらからなる、実質的に純粋な核酸分子を提供する。第16の局面において、本発明は、配列番号:1もしくは3に記載の核酸配列のコード鎖配列に対しアンチセンスである配列、またはそれらの断片を含む、核酸分子を提供する。
【0022】
第17の局面において、本発明は、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むNRG-2ポリペプチドをコードする一方または両方の対立遺伝子において、ノックアウト変異を有する非ヒト動物を提供する。第17の局面の好ましい態様において、本発明は、第17の局面の非ヒト動物由来の細胞を提供する。
【0023】
第18の局面において、本発明は、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むNRG-2ポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。第18の局面の好ましい対応において、本発明は、第18の局面の抗体に試料を接触させ、かつポリペプチドと抗体との結合をアッセイすることにより、試料中のNRG-2ポリペプチドの存在を検出する方法を提供する。第18の局面の好ましい対応において、本発明は、被験対象のNRG-2ポリペプチドの分析のためのキットであって、このキットが第18の局面の抗体を含むものを提供する。
【0024】
第19の局面において、本発明は、被験対象が、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むNRG-2ポリペプチドをコードするNRG-2遺伝子に変異を含むか否かを決定するために、被験対象の核酸分子を分析する段階により、被験対象(例えばヒト)におけるNRG-2に関連する疾患または状態の発症の可能性の増大の診断法であって、変異の存在が被験対象がNRG-2関連疾患の発症の可能性の増大を有することの指標である方法を提供する。
【0025】
「ニューレグリン」または「NRG」とは、NRG-1、NRG-2、もしくはNRG-3遺伝子または核酸分子(例えばcDNA)によりコードされ、かつerbB受容体またはそれらの組み合わせに結合し、活性化するポリペプチドを意味する。一般にニューレグリンは、erbB受容体またはそれらの組み合わせに結合し、活性化する上皮細胞成長因子様(EGFL)ドメインのような認識可能なドメイン、ならびに免疫グロブリン(Ig)ドメインを有する。EGFLドメインは、Holmesらの論文(Science、256:1205-1210(1992))、米国特許第5,530,109号、米国特許第5,716,930号、米国特許出願第08/461,097号、Hijaziら(Int. J. Oncol.、13:1061-1067(1998))、Changら(Nature、387:509-512(1997))、Carrawayら(Nature、87:512-516(1997))、Higashiyamaら(J. Biochem.、122:675-680(1997))の論文、および国際公開公報第97/09425号に説明されたような、EGF受容体-結合ドメインに類似した構造を持つ。
【0026】
「ニューレグリン2」または「NRG-2」とは、NRG-2遺伝子、またはNRG-2核酸分子によりコードされているポリペプチドを意味し、本明細書、ならびに例えばCarrawayら、Nature、387:512-516(1997);Changら、Nature、387:509-511(1997);Higashiyamaら、J. Biochem.、122:675-680(1997);および、Busfieldら、Mol Cell. Biol.、17:4007-4014(1997)の論文において説明されている。NRG-2アイソフォームは、ErbBキナーゼの神経および胸腺に由来するアクチベーター(NTAX;Genbankアクセッション番号AB005060;Higashlyamaら、J. Biochem.、122:675-680(1997))、ニューレグリン誘導体(don-1;国際公開公報第98/07736号)、および小脳由来成長因子(CDGF;国際公開公報第97/09425号;米国特許第5,912,326号)を含み、これらは本明細書に参照として組入れられており、かつこのNRG-2分子が本明細書において説明されている。一般にerbB1受容体(EGFR)は、NRG-2ポリペプチドの好ましい二量体化のパートナーである。NRG-2ポリペプチドの好ましい受容体の組み合わせは、erbB4ホモダイマー、erbB2/erbB4ヘテロダイマー、またはerbB1/erbB3ヘテロダイマーである。Higashiyarnaらの論文(J. Biochem.、122:675-680(1997))、国際公開公報第98/07736号、国際公開公報第97/09425号、および米国特許第5,912,326号に開示されたアミノ酸および核酸配列に示されているような、CDGF、don-1、またはNTAKポリペプチドまたは核酸分子は、本発明のある局面から特に除外されている。例えば、1種または複数のCDGF、don-1、またはNTAKポリペプチドまたは核酸分子は、細胞の有糸分裂誘発、生存、成長、または分化を増大させる方法;哺乳類における心筋細胞生存、心筋細胞増殖、心筋細胞肥大、または心筋細胞分化を増大させる方法;神経関連細胞と神経系細胞の間の細胞の情報伝達に影響を及ぼす方法;グリア細胞の有糸分裂誘発を刺激する方法;グリア細胞による神経系細胞の髄鞘形成を誘導する方法;哺乳類の神経系の病態生理学的状態を治療または予防する方法;腫瘍治療の方法;神経線維腫症治療の方法;細胞増殖阻害の方法;または、細胞増殖刺激の方法から除外することができる。
【0027】
「erbB受容体」とは、1種または複数のニューレグリンに結合するおよび/または活性化される単量体または多量体(例えば、ホモダイマーまたはヘテロダイマー)の細胞表面受容体チロシンキナーゼとして存在するerbB1(EGFR)、erB2、erbB3、およびerbB4(同じく、ヒトのHER-1、HER-2、HER-3、およびHER-4)を意味する(Meyerら、Development、124:3575-3586(1997);Orr-Urtregerら、Proc. Natl. Acad. Sci USA、90:1867-71(1993);Marchionniら、Nature、362:312-8(1993);Chenら、J. Comp. Neurol.、349:389-400(1994);Corfasら、Neuron、14:103-115(1995);Meyerら、Proc. Natl. Acad Sci. USA、91:1064-1068(1994);および、Pinkas-Kramarskiら、Oncogene、15:2803-2815(1997))。好ましくは、erbB受容体は、erbB4ホモダイマー、erbB2/erbB4ヘテロダイマー、erbB1/erbB3ヘテロダイマー、またはNRG-1ポリペプチドもしくはNRG-3ポリペプチドよりもNRG-2ポリペプチドについて選択性であるいずれかの受容体組み合わせである。
【0028】
「選択性」とは、erbB受容体またはそれらの組み合わせが、NRG-1またはNRG-3ポリペプチドよりもNRG-2ポリペプチドへ優先的に結合することを意味する。より詳細には、優先的結合は、erbB受容体とNRG-2ポリペプチドとの親和力が、erbB受容体とNRG-1またはNRG-3ポリペプチドとの親和力に対し、少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも2倍の増加として定義される。
【0029】
「神経系細胞」とは、ニューロン、神経細胞;ニューロサイト(neurocyte)、または神経前駆細胞を意味する。神経系細胞は、中枢神経系および末梢神経系の形態学的および機能的単位であり、かつコリン作用性ニューロンおよび非コリン作用性ニューロンを含む。
【0030】
「神経関連細胞」とは、ニューロンの機能に影響を及ぼすことが可能であるか、またはその機能がニューロンにより影響され得るような任意の非神経系細胞を意味する。神経関連細胞は、筋細胞、またはシュワン細胞、星状膠細胞、希突起膠細胞、O-2A前駆細胞、グリア細胞(例えば放射グリア細胞またはベルクマン(Bergmann)グリア細胞)、小グリア細胞、嗅球鞘性細胞、もしくは感覚器細胞(例えば、網膜細胞)を含む神経系支持細胞を含むが、これらに限定されるものではない。
【0031】
「筋細胞」とは、筋肉組織に寄与する任意の細胞を意味する。筋肉組織は、主に特定化された収縮細胞を含む一次組織であり、一般に骨格筋、心筋、または平滑筋に分類される。筋芽細胞、衛星細胞、筋管、ミオサイト(例えば心筋細胞)および筋原線維組織は、全て「筋細胞」という用語に含まれ、全て本発明の方法に従って処理され得る。筋細胞の作用は、骨格筋、心筋、および平滑筋内において誘導され得る。
【0032】
「神経栄養性物質」または「神経栄養性因子」とは、1種または複数の神経系細胞において栄養性作用を誘引する物質を意味する。これらの作用は、生存、有糸分裂および分化を含むが、これらに限定されるものではない。神経栄養性物質は、神経成長因子、毛様体神経栄養性因子、および脳由来の神経栄養性因子を含むが、これらに限定されるものではない。
【0033】
「影響を及ぼす」とは、NRG-2ポリペプチドまたは核酸分子との相互作用の結果として、標的細胞の反応の定量的変化が誘導されることを意味する。
【0034】
「細胞の情報伝達」とは、第一の細胞型(例えば、神経関連細胞)における物質(例えば、神経栄養性物質)を合成し、およびその物質が第二の細胞型(例えば、神経系細胞)と相互作用し、結果としてこの物質は第一または第二の細胞型の変化を誘起することを意味する。細胞の情報伝達は、細胞からの物質の分泌を含むが、これらに限定されるものではない。細胞の情報伝達は、1種または複数の細胞型と相反性または非相反性に生じることができる。
【0035】
「有糸分裂誘発」とは、患者における新規細胞の生成を生じる細胞分裂を意味する。より具体的には、インビトロにおける有糸分裂誘発は、細胞が標識物質に2倍加時間と同等の時間曝露された場合に、未処理の細胞と比べ分裂指数の50%、より好ましくは100%、および最も好ましくは300%の増加と定義される。分裂指数は、S期にのみ取り込まれるようなトレーサー(例えば、BrdU)の存在下で増殖した場合に、標識された核を有する培養物中の細胞の分数であり、倍加時間は、2倍まで培養物中の細胞数が増加するために必要な平均時間として定義される。「有糸分裂誘発の阻害」とは、細胞が標識物質に2倍加時間と同等の時間曝露された場合の、未処理の細胞と比べ50%、より好ましくは100%、および最も好ましくは300%の分裂指数の減少を意味する。有糸分裂の阻害は、対照細胞に比べ分裂指数の増加の休止も意味する。
【0036】
インビボにおける有糸分裂に対する作用は、S期にのみ取り込まれるようなトレーサー(例えば、BrdU)に曝露された哺乳類組織における標識された細胞の出現により測定された細胞活性化の増加と定義される。有用な治療は、インビボにおいて、哺乳類が15分間よりも長く標識物質に曝露されかつ組織がマイトジェンの治療用量の投与後10時間〜24時間に測定された場合に、細胞活性化を、対照哺乳類と比べ少なくとも10%、より好ましくは少なくとも50%、および最も好ましくは200%より多く増大させる化合物と定義される。例えば、筋細胞において、インビボにおける衛星細胞活性化は、BrdU取込みをモニタリングすることにより検出することができる。あるいは、インビボにおける衛星細胞活性化は、免疫学的方法またはRNA分析法による中間体線維ビメンチンの出現で検出することができる。ビメンチンが測定される場合、有用なマイトジェンは、治療的に有用な用量が提供された場合に筋肉組織中のビメンチンの検出可能なレベルの発現を引き起すものと定義される。有糸分裂誘発は、例えば、骨格筋、心筋および平滑筋の筋細胞において、ならびにグリア細胞において誘導することができる。
【0037】
「生存」とは、細胞が死を避ける過程を意味する。本明細書において使用される生存という用語は、壊死、アポトーシスにより証拠付けられるような細胞喪失の防止、または細胞喪失の他の機構の防止も意味する。本明細書において使用される生存の増加は、未処理の対照に比べ、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも50%、および最も好ましくは少なくとも100%の細胞死の割合の減少を示している。生存率は、培養物中の死細胞に特異的な色素(例えば、ヨウ化プロピジウム)により染色可能である細胞を計数することにより、測定することができる。生存率は、細胞が分化後8日間(すなわち、20%から0.5%血清へ培地交換の8日後)の、培養物中の死細胞に特異的な色素(例えば、ヨウ化プロピジウム)により染色可能である細胞を計数することにより、測定することができる。
【0038】
「成長」とは、対照細胞と比べた細胞型の大きさまたは数の増加を意味する。治療的に有用な成長は、罹患組織における細胞の大きさまたは数を、同様に処理された対照動物の同等の組織と比べ、少なくとも10%またはそれ以上、より好ましくは50%またはそれ以上、および最も好ましくは100%より多く増加する。成長は、例えば、正味の質量、タンパク質含量、または細胞直径の増加により測定することができる。筋肉成長は、線維の大きさの増加および/または線維数の増加により生じる。
【0039】
「分化」とは、様々な細胞型の生成または特定化の状態を生じる形態学的変化および/または化学的変化を意味する。本明細書において使用される細胞の分化は、細胞型の1種または複数の成分を特定化する細胞発生プログラムを意味する。治療的に有用な分化は、罹患組織の細胞のいずれかの成分量を、同様に処理された対照動物の同等の組織と比べて、少なくとも10%またはそれ以上、より好ましくは50%またはそれ以上、および最も好ましくは100%より多く増大させる。
【0040】
「増殖」とは、類似細胞の成長または再生を意味する。「増殖の阻害」とは、類似細胞の数の、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、および最も好ましくは少なくとも50%の減少を意味する。「増殖の刺激」とは、類似細胞の数の、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、および最も好ましくは少なくとも50%の増加を意味する。
【0041】
「髄鞘形成の誘導」とは、神経線維周囲の髄鞘の収集、発生、または形成を意味する。髄鞘形成の誘導に有用な治療は、髄鞘密度の、対照神経に比べ、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、および最も好ましくは少なくとも50%の増加をもたらす。「脱髄」とは、神経線維周囲の髄鞘の喪失を意味する。
【0042】
「相互作用」とは、NRG-2ポリペプチドと受容体または標的細胞上の他の分子との接触を意味する。
【0043】
「病態生理学的状態」とは、任意の哺乳類疾患を含むが、これらに限定されるものではなく、外部の原因、遺伝的素因、物理的もしくは化学的外傷、またはそれらの組み合わせから生じる、生体の機能および/または構造の混乱を意味する。
【0044】
「ニューロパシー」とは、神経系に影響を及ぼす任意の障害を意味する。ニューロパシーは、例えば感覚器神経線維ニューロパシーまたは運動神経線維ニューロパシーのような末梢ニューロパシーでありうる。
【0045】
「心筋症」とは、心筋に影響を及ぼす疾患を意味する。心筋症は、原発性、すなわち主に心筋に影響を及ぼすか、または続発性、すなわち全身疾患に続発して心筋に影響を及ぼすような感染症、または代謝疾患であることができる。
【0046】
「虚血性損傷」とは、心筋への血液循環の減少により生じた損傷を意味する。
【0047】
「先天性変性疾患」とは、細胞または組織における病理学的変化を生じる、遺伝的であるかまたは妊娠時に生じる影響に起因するような、誕生時に存在する疾患を意味する。
【0048】
「治療」とは、疾患、病態、または障害の治癒、緩和、安定化または予防を意図する患者の医学的管理を意味する。この用語は、改善が特に指示された、または疾患、病態、もしくは障害の治癒に関連した治療である、能動的治療を含み、かつこれは更に関連した疾患、病態または障害の原因の除去に向けられた治療である、原因治療も含む。加えてこの用語は、疾患、病態または障害の治療よりむしろ症状の軽減が設計された治療である、緩和治療;関連した疾患、病態または障害の発生の最小化または一部もしくは完全な阻害に向けられた治療である、予防治療;ならびに、関連した疾患、病態または障害の改善に向けられた他の特異的治療を補助するために使用される治療である、支持治療を含む。「治療」という用語は、更に、関連する疾患、病態、または障害の構成的症状に向けられた治療である対症治療も含む。
【0049】
「治療的有効量」とは、障害の治療において緩和、治癒、安定化または軽減作用を生じるのに十分なNRG-2ポリペプチドまたは核酸分子の量を意味する。
【0050】
「神経変性障害」とは、神経系細胞または神経関連細胞の変性を特徴とする病態生理学的状態を意味する。変性は、例えば細胞数もしくは大きさの減少、細胞アポトーシスもしくは死滅の増加、または細胞成長、生存もしくは分化の減少を含む。
【0051】
「神経再生または神経修復」とは、例えば神経系細胞または神経関連細胞の数もしくは大きさの増加、神経系細胞もしくは神経関連細胞のアポトーシスまたは死滅の減少、あるいは神経系細胞もしくは神経関連細胞の成長、生存または分化の増加による、病態生理学的状態の治療を意味する。
【0052】
「結合の阻害」とは、NRG-2ポリペプチドと受容体との結合を予防または減少させることを意味する。結合は、好ましくは対照試料と比べ、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも50%、および最も好ましくは少なくとも100%減少される。
【0053】
「ポリペプチド」または「ポリペプチド断片」とは、天然または非天然のポリペプチドの全てまたは一部を構成する、翻訳後修飾(例えばグリコシル化またはリン酸化)とは無関係の、2個またはそれ以上のアミノ酸の鎖を意味する。「翻訳後修飾」とは、合成期間またはその後のポリペプチドまたはポリペプチド断片のあらゆる変化を意味する。翻訳後修飾は、天然に作成されるか(例えば細胞内に合成時に)、もしくは人工的に作出される(例えば組換えまたは化学的手段により)。「タンパク質」は、1個または複数のポリペプチドから作成することができる。
【0054】
本明細書において使用される「同一性」という用語は、特に核酸分子またはポリペプチドと、同型の参照分子の配列との関係を説明するものである。例えば、ポリペプチドまたは核酸分子が、所定の位置に同一のアミノ酸またはヌクレオチド残基を有する場合には、並置された参照分子と比較して、その位置で「同一」と称される。核酸分子またはポリペプチドの参照分子に対する配列同一性のレベルは、典型的には最適な並置を達成するためのギャップ導入のような、そこで特定化されたデフォルトパラメーターを備えた配列分析ソフトウェアを用いて測定される(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group、University of Wisconsin Biotechnology Center、1710 University Avenue, Madison, WI 53705, BLASTまたはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)。これらのソフトウェアプログラムは、様々な置換、欠失またはその他の修飾に同一性の程度を割当てることにより、同一または類似した配列を合致させる。同類置換は、典型的には下記群内の置換を含む:グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、およびロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミン;セリンおよびトレオニン;リシンおよびアルギニン;ならびに、フェニルアラニンおよびチロシン。
【0055】
核酸分子またはポリペプチドは、その全長について、参照分子の配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、および最も好ましくは99%同一であることを示す場合に、参照分子と「実質的に同一」と称される。ポリペプチドについて、比較配列の長さは、少なくとも16個のアミノ酸、好ましくは少なくとも20個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも25個のアミノ酸、および最も好ましくは少なくとも35個のアミノ酸である。核酸分子について、比較配列の長さは、少なくとも50個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも60個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも75個のヌクレオチド、および最も好ましくは少なくとも110個のヌクレオチドである。
【0056】
核酸分子またはポリペプチドは、その生物学的活性またはそれが野生型もしくは変異されたか否かを決定することができる試験法が実行される場合に、「分析される」かまたは「分析」が施される。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用い動物のゲノムDNAを増幅し、その後例えばヌクレオチド配列決定または制限断片分析により、増幅されたDNAが変異を含むか否かを決定することにより、動物(例えばヒト)の遺伝子を分析することができる。
【0057】
「実質的に純粋なポリペプチド」とは、タンパク質およびそれを天然に伴う有機分子から分離されたポリペプチド(またはそれらの断片)を意味する。典型的にはポリペプチドは、少なくとも60重量%がタンパク質およびそれに天然に会合した天然の有機分子を含まない場合に、実質的に純粋である。好ましくはこのポリペプチドは、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、および最も好ましくは少なくとも99重量%純粋であるNRG-2ポリペプチドである。実質的に純粋なNRG-2ポリペプチドは、例えば天然の給源(例えば、小脳)からの抽出、NRG-2ポリペプチドをコードする組換え核酸分子の発現、または化学合成により得ることができる。純度は、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析などの適当な方法により測定することができる。
【0058】
ポリペプチドは、これらのタンパク質および天然の状態でそれを伴う有機分子から分離された場合に、実質的に天然に会合した成分を含有しない。従って、化学的に合成されたタンパク質またはそれが天然に生成された細胞とは異なる細胞系において産生されたタンパク質は、実質的にその天然に会合した成分を含まない。従って実質的に純粋なポリペプチドは、真核生物由来のもののみではなく、大腸菌または他の原核生物において合成されたものも含む。
【0059】
抗体は、ポリペプチド(例えばNRG-2ポリペプチド)を認識しかつ結合するが、例えば生物学的試料のような、天然にポリペプチドを含有する試料中の他の分子(例えば非NRG-2関連ポリペプチド)は実質的に認識も結合もしない場合に、ポリペプチドへ「特異的に結合する」と称される。
【0060】
「導入遺伝子」は、人工的に細胞(例えば、細胞の核ゲノム)へ挿入されるDNA分子を意味し、その細胞から発生している生物のゲノム中に組込まれる。このような導入遺伝子は、トランスジェニック生物に対して、部分的もしくは全体的に非相同(すなわち外来性)であるか、またはその生物の外因性遺伝子と相同である遺伝子でありうる。生物または動物(例えば、マウス、ラットまたはヤギのような哺乳類)は、導入遺伝子が人工的に挿入された細胞から発生した場合に、「トランスジェニック」と称することができる。
【0061】
「ノックアウト変異」は、通常にコードされたポリペプチドの生物学的活性を未突然変異の遺伝子に対して少なくとも80%低下している(組換えDNA技術または変異原への意図的曝露により作成された)核酸分子中に人工的に誘導された変更を意味する。この突然変異は、挿入、欠失、フレームシフト突然変異、またはミスセンス突然変異であるが、これらに限定されるものではない。「ノックアウト動物」は、前述のようなノックアウト変異を含む、好ましくは哺乳類、より好ましくはマウスである。
【0062】
「ベクター」とは、コードされたペプチドまたはポリペプチドが宿主細胞内で発現されるように、プロモーターに機能的に連結されたポリペプチド(例えば、NRG-2ポリペプチド)コード配列を宿主細胞へ移動するために使用される、例えばバクテリオファージ、アデノウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、または人工染色体由来の、遺伝子操作されたプラスミドまたはウイルスを意味する。
【0063】
「プロモーター」とは、転写を誘導または制御するのに十分な最小配列を意味する。更に、細胞型もしくは生理的状態(例えば、低酸素状態と正常酸素状態)について制御可能な、または外部シグナルもしくは物質により誘導可能な、プロモーター依存型遺伝子発現を提供するのに十分なプロモーター要素も含まれ;このような要素は、未変性の遺伝子の5'側もしくは3'側または内側領域に位置することができる。
【0064】
「機能的に連結した」とは、ポリペプチドをコードする核酸(例えばcDNA)および1種または複数の調節配列が、適当な分子(例えば、転写アクチベータータンパク質)が調節配列に結合された場合に、遺伝子発現を可能にするように連結されていることを意味する。
【0065】
「NRG-2ポリペプチド産生細胞」とは、組換えDNA技術または公知の遺伝子治療技術による、NRG-2ポリペプチドをコードするDNA分子が導入される細胞(または細胞の子孫)を意味する。
【0066】
本発明はいくつかの利点を提供する。例えばこれは、NRG-2ポリペプチドの生体活性に対し感受性がある疾患の診断および治療において使用することができる方法および試薬を提供する。本発明のその他の特徴および利点は、本発明の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかであると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】NRG-2遺伝子産物およびヒトcDNAクローンの概略図を示す。
【図2】哺乳類発現ベクターpRc/CMV2の概略図を示す。
【図3】図3Aは、疑似物(ベクター)またはrhNRG-2α-トランスフェクションCHO/S細胞に由来する馴化培地(cm)および細胞溶解物(cell)におけるウエスタンブロット解析を示す。 図3Bは、疑似物(ベクター)、rhNRG-2α(α)、またはrhNRG-2β(β)-トランスフェクション(β)CHO/S細胞に由来する馴化培地におけるウエスタンブロット解析を示す。 図3Cは、ラットNRG-2βを発現するCHO細胞に由来する馴化培地におけるウエスタンブロット解析を示す。
【図4】NRG-2ポリペプチド処理に応答性の細胞におけるチロシン残基の受容体リン酸化におけるウエスタンブロット解析を示す。
【図5】組換えヒトNRG-2αおよびNRG-2βの発現におけるウエスタンブロット解析を示す。
【図6】ヒトNRG-2αの核酸配列を示す(配列番号:1)。
【図7】ヒトNRG-2αのアミノ酸配列を示す(配列番号:2)。
【図8】ヒトNRG-2β(クローン2b7)の核酸配列を示す(配列番号:3)。
【図9】ヒトNRG-2β(クローン2b7)のアミノ酸配列を示す(配列番号:4)。
【図10】メソトレキセート選択に使用された安定トランスフェクタントにおけるウエスタンブロット解析を示す。
【図11】図11Aは、精製rhNRG-2βのクーマシー染色されたポリアクリルアミドゲルを示す。 図11Bは、図11Aのゲルのスキャンを示す。
【図12】総タンパク質および精製rhNRG-2βの金染色ポリアクリルアミドゲルを示す。
【図13】HPLCにより精製されたrhNRG-2βに応答性の細胞におけるチロシン残基の受容体リン酸化におけるウエスタンブロット解析を示す。
【図14】図14Aは、rhNRG-2βで前処理され、6-OHDAを投与された中脳ドーパミン作動性ニューロンの写真を示す。 図14Bは、6-OHDAを投与された未処理対照中脳ドーパミン作動性ニューロンの写真を示す。
【図15】図15Aは、rhNRG-2βとともに培養された、神経前駆細胞を含む神経細胞におけるBrdU取りこみを示す写真を示す。 図15Bは、rhNRG-2βのBrdU取り込みに対する効果を示す棒グラフを示す。
【図16】図16Aは、グリア細胞突起に沿って移動している小脳顆粒ニューロンの写真を示す。 図16Bは、NRG-2のニューロン移動に対する効果を示す棒グラフを示す。
【図17】p42/44 MAPk(Erk)およびAktのNRG-2タンパク質による活性化におけるウエスタンブロット解析を示す。
【図18】NRGタンパク質で処理された新生児ラット心室筋細胞への3H-ロイシンの取りこみの折れ線グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
発明の詳細な説明
本発明は、NRG-2ポリペプチドおよび核酸分子、これらのNRG-2ポリペプチドに結合する抗体、ならびにNRG-2ポリペプチドおよび核酸分子を利用した治療および診断法を提供する。
【0069】
生物学的試験
NRG-2リガンドおよびerbB受容体は、神経系、脳の神経前駆細胞およびニューロン、脊髄、および網膜;骨格筋および心筋;肺;胸腺;腎臓;副腎;皮膚;乳房上皮;ならびに胚発生中の他の臓器および成体の組織において発現する。NRG-2発現の主要な部位は小脳(プルキンエおよび顆粒細胞)、嗅球、歯状回、後頭部皮質の錐体細胞、肺および胸腺を含む。特定の細胞および組織におけるNRG-2受容体の発現パターンは、NRG-2作用の細胞標的を同定するために、且つ、末梢および中枢神経系の脱髄異常;ニューロパシー;神経変性障害;心筋症;聴覚、平衡感覚または視覚の損失;痛覚;神経外傷;癌;ウイルス感染、老化または抗生物質(例えば、アミノ配糖体など)による感覚神経聴力損失または感覚神経平衡損失;網膜症(例えば、高血圧、糖尿病、閉塞性、黄斑部変性、網膜色素変性症、視覚神経病、傷害など);ギラン・バレー疾患;脳卒中;または脳もしくは脊髄傷害などの特定のNRG-2関連疾患に関連する生物活性を同定するために使用される。胚組織、新生児組織、および成体組織におけるNRG-2応答性細胞型の多くは、erbB2/erbB3、erbB2/erbB4、またはerbB4のみの受容体の組み合わせを発現する。例えば、末梢神経系(PNS)および中枢神経系(CNS)のグリア細胞型はerbB2を発現する;シュワン細胞はまたerbB3も発現する。CNSにおいては、erbB4およびerbB3が、星状膠細胞、希突起膠細胞前駆細胞、発生中の皮質における放射グリアおよび小脳におけるベルグマングリアを含む様々なグリア細胞型に関して観察される。erbB2/erbB4の組み合わせは心室筋細胞において見出される。
【0070】
NRG-2ポリペプチドの治療および診断用途は、例えばインビトロにおいて生物学的試験を実施することにより同定される。NRG-1よりもNRG-2に優先性を示す可能性のあるerbB受容体の組み合わせの例である、erbB2/erbB4またはerbB4単独などの特定の受容体の分布とともに、NRG-2発現パターンを反映する培養系が選択される。例えば、NRG-2の生物活性は、希突起膠細胞および嗅球鞘性細胞、中脳ドーパミン作動性ニューロン、小脳顆粒ニューロン、および心筋細胞などのCNSグリアを用いて評価される。これらの細胞集団はNRG受容体を発現し、様々な定量的生物学的試験において1種または複数のNRG-1アイソフォームを用いる処理に対して応答する。NRG-2(例えば、rhNRG-2α、rhNRG-2β)およびNRG-1(例えばrhGGF2)アイソフォームの活性は、増殖刺激、生存、分化、移動、および形態学的変化を含むがそれらに制限されない、様々な用量反応性アッセイ法において姉妹培養を用いて比較される。NRG-2およびNRG-1アイソフォームの相対力価が、例えばタンパク質濃度を基礎として決定される。
【0071】
NRG-2核酸分子、ポリペプチド、および抗体を用いた診断法
NRG-2核酸分子、ポリペプチド、および抗体が、NRG-2遺伝子の変異または不適切な発現が関係するものを含む、様々な疾患および状態を診断またはモニターするための方法に使用される。上記のように、NRG-2発現は様々な組織において記載されている。したがって、NRG-2遺伝子の異常またはその発現の検出は、これら組織の疾患の治療または発生を、診断またはモニターするための方法において使用される。
【0072】
本発明の診断法は、例えば、心血管または神経学的疾患に罹患する患者を用いて、その病因を決定するための試み、したがって、適切な治療方針の選択を容易にするための試みにおいて使用される。診断法はまた、心血管または神経学的疾患をまだ発症していないが、そのような疾患を発症する危険性が高い可能性がある患者に関して、またはそのような疾患を発症する早期段階にある患者に関してもまた使用される。多くの心血管または神経学的疾患は発生中に生じる、したがって、本発明の診断法はまた発生中に胎児または胚に関しても実施される。また、本発明の診断法は、例えば劣性NRG-2変異の保有者でありうる患者を同定するために、出生前遺伝子スクリーニングにおいても使用される。
【0073】
本発明の診断法を用いて検出されるNRG-2異常は、例えば、(i)異常なNRG-2ポリペプチド、(ii)結果としてそのようなポリペプチドを生産する変異を含むNRG-2遺伝子、および(iii)結果として異常な量のNRG-2を生産するNRG-2変異によって特徴付けられるものを含む。
【0074】
患者試料におけるNRG-2発現のレベルは、当技術分野において周知である多数の標準技術のうち任意のものを用いて決定される。例えば、患者由来の生物試料(例えば、血液もしくは組織試料、または羊水)におけるNRG-2発現は、標準的ノーザンブロット解析により、または定量的PCRによりモニターされる(例えば、Ausubelら、「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley&Sons、New York、NY、1998;「PCR技術:DNA増幅の原理および応用(PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification)」、H. A. Ehrlich編、Stockton Press、NY;Yapら、Nucl. Acids. Res. 19:4294、1991)。
【0075】
NRG-2核酸分子、ポリペプチド、および抗体を活用した治療法
本発明はNRG-2関連疾患を治療または予防する方法を含む。治療法は、NRG-2遺伝子欠陥、または不適切もしくは過剰なNRG-2遺伝子発現を回避または克服するため、したがってNRG-2遺伝子またはタンパク質の欠陥を含む状態を調節および可能であれば緩和するために設計される。様々な治療法を考慮すると、そのような治療法は、例えば心臓または神経系などの罹患器官、または潜在的な罹患器官に、好ましくは標的化されると理解される。NRG-2の生物学的活性を調節するために使用される試薬は、全長NRG-2ポリペプチド;NRG-2 cDNA、mRNAまたはアンチセンスRNA;NRG-2抗体;およびNRG-2の生物学的活性、発現、または安定性を調節する任意の化合物を含みうるが、これらに限定されることはない。
【0076】
変異NRG-2遺伝子から生じる疾患の治療または予防は、例えば、正常NRG-2遺伝子を用いて変異NRG-2遺伝子を置換する段階、正常NRG-2遺伝子を投与する段階、変異NRG-2タンパク質の機能を調節する段階、適切な細胞に正常NRG-2タンパク質を送達する段階、または正常または変異NRG-2タンパク質レベルを変更する段階により達成される。NRG-2タンパク質が関与する生理学的経路(例えば、シグナル伝達経路)を修飾するためにNRG-2欠陥を補正することも可能である。
【0077】
遺伝子導入は、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、およびリポソームを含むがそれらに制限されない、任意の標準技術によるインビトロトランスフェクションを含む非ウイルス性の方法、ならびにウイルスベクターを用いて達成される。患者の罹患組織への正常遺伝子の移植は、正常NRG-2遺伝子を培養可能な細胞型にエクスビボで導入し、その後細胞(またはその子孫)を標的化組織に注入することによっても達成されうる。遺伝子治療法を用いてNRG-2機能を阻害する別の方法は、抗NRG-2抗体またはNRG-2抗体の一部を細胞内で発現させることを含む。例えば、NRG-2に特異的に結合する、およびその生物学的活性を阻害するモノクロナール抗体をコードする遺伝子(または遺伝子断片)が、組織特異的遺伝子調節配列の転写制御下に配置される。別の治療法は、潜在的または実際の疾患罹患組織の部位に直接(例えば、注射による)または全身的(例えば、任意の従来の組換えタンパク質投与技術による)のいずれかにより、組換えNRG-2ポリペプチドを投与することを含む。全身的に送達されるNRG-2の用量は、個々の患者の大きさおよび健康を含む多数の因子に依存するが、一般的には、任意の薬学的に許容される製剤にて成人に1日当り約0.006mg/kgから約0.6mg/kgの間(両値を含む)を投与する。局所送達により送達されるNRG-2の用量は全身送達とは異なることもあり、当業者に既知の標準的技術を用いて決定されうる。
【0078】
NRG-2変異またはNRG-2関連疾患を有すると診断された患者、またはNRG-2変異、異常なNRG-2発現(それらの変異または発現パターンがNRG-2発現または生物学的活性の変更をまだ結果生じていないとしても)もしくはNRG-2関連疾患に感受性であると診断された患者において、上記の治療法の任意のものが疾患表現型を生じる前に投与される。また、NRG-2発現またはNRG-2生物学的活性を調節することが示されている化合物が、潜在的にまたは実際に疾患を有すると診断された患者に対して、任意の標準的用量および投与経路により投与される。または、アンチセンスNRG-2 mRNA発現構築物を用いた遺伝子治療が、疾患の完全な過程を発症する前に、遺伝子欠陥を逆転するまたは予防するために実施される。
【0079】
本発明の治療法は、いくつかの事例においては、出生前治療を目的とする。例えば、NRG-2変異を有することが見出された胎児は、正常NRG-2遺伝子を含む遺伝子治療ベクターまたは正常NRG-2タンパク質を投与される。そのような治療は短期間でのみ必要であるかもしれないし、またはいくつかの型ではそのような患者の生涯にわたり必要であるかもしれない。しかしながら、任意の治療の連続した必要性は、例えば上記の診断法を用いて決定される。また上で議論されているように、NRG-2異常は成体における疾患に関連している可能性があり、したがって成体も同様に本発明の治療法に供される。
【0080】
NRG-2の生物学的活性を調節する分子またはその生物学的活性がNRG-2により調節される分子の同定
NRG-2 cDNAの単離はまた(本明細書に記載のように)、NRG-2の生物学的活性を増加または減少させる分子の同定を容易にする。同様に、活性がNRG-2の生物学的活性により調節される分子もまた同定されうる。ある方法にしたがえば、候補分子が様々な濃度で、NRG-2 mRNAを発現する細胞の培養培地に添加される。NRG-2の生物学的活性はその後、標準的技術を用いて測定される。生物学的活性の測定には、NRG-2タンパク質および核酸分子レベル、およびNRG-2リン酸化の測定が含まれうるが、それらに限定されることはない。
【0081】
望ましい場合には、候補モジュレーターが発現に与える効果もまた、同一の一般的方法およびNRG-2特異的抗体を用いたウエスタンブロッティングまたは免疫沈降法(下記参照)などの標準的免疫学的検出技術を用いて、NRG-2タンパク質生産のレベルとして測定されうる。
【0082】
上記の方法においてスクリーニングされる試験化合物は、天然に生じる化学物質または人工的に産生された化学物質でありうる。そのような化合物は、例えば、ポリペプチド、合成有機分子、天然に生じる有機分子、核酸分子、およびそれらの構成成分を含みうる。候補NRG-2モジュレーターは、非ペプチド分子ならびにペプチドを含む(例えば、細胞抽出物、哺乳類血清、または哺乳類細胞が培養された増殖培地中に見出されるペプチドまたは非ペプチド分子)。
【0083】
NRG-2ポリペプチド、NRG-2核酸分子、およびNRG-2合成または機能のモジュレーターの投与
NRG-2タンパク質、核酸分子、モジュレーター、中和NRG-2抗体、またはNRG-2阻害化合物(例えば、アンチセンスNRG-2またはNRG-2ドミナントネガティブ変異体)が薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤内で、単位剤形において、患者または実験動物に投与される。また、末梢および中枢神経系の脱髄異常;ニューロパシー;神経変性障害;心筋症;聴覚、平衡感覚または視覚の損失;痛覚;神経外傷;癌;ウイルス感染、老化または抗生物質(例えば、アミノ配糖体など)による感覚神経聴力損失または感覚神経平衡損失;網膜症(例えば、高血圧、糖尿病、閉塞性、黄斑部変性、網膜色素変性症、視覚神経病、傷害など);ギラン・バレー疾患;脳卒中;または脳もしくは脊髄傷害などのNRG-2関連疾患に罹患した患者にそのような分子または化合物を投与するために、適切な製剤または組成物を提供するための従来の製薬技術が活用される。投与は患者が症状を表す前または後に始めることが可能である。
【0084】
投与には任意の適切な経路を活用することができ、例えば、投与は、非経口、経静脈、経動脈、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼内、心室内、嚢内、髄腔内、槽内、腹膜内、鼻腔内、深肺部への吸入、エアロゾル、座薬、経口または局所(例えば、皮膚を通過し、血流に入る能力を有する製剤を保持する粘着性パッチを適用することによる)であってもよい。好ましくは、投与は、心、肺または神経組織などの罹患組織に局所的に行われる。治療用製剤は、液体溶液または懸濁液の形であることが可能であり;経口投与用には、製剤は錠剤またはカプセル剤の形であることが可能であり;および経鼻製剤に関しては、粉末、点鼻剤、またはエアロゾルの形である。上記の製剤の任意のものは徐放性製剤であってもよい。
【0085】
製剤を製造するための当技術分野に周知の方法は、例えば、「レミントン製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」(第18版)、A. Gennaro編、1990、Mack Publishing Company、Easton、PAに見出される。非経口投与の製剤には、例えば、賦形剤;滅菌水;または食塩水;例えばポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール;植物起源の油;または水素化ナフタレンが含まれうる。徐放性、生物学的適合性、生分解性のラクチド重合体、ラクチド/グリコリド共重合体、またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体が、化合物の放出を調節するために使用されうる。NRG-2調節化合物に関する、他の潜在的に有用な非経口送達系は、エチレン-ビニル酢酸共重合体粒子、浸透圧ポンプ、埋込み式注入系、およびリポソームを含む。吸入のための製剤は、賦形剤、例えばラクトースを含むことができるか、または例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸およびデオキシコール酸を含む水溶液であることができるか、または点鼻薬の形で、もしくははゲルとして投与される油性溶液であることができる。
【0086】
NRG-2タンパク質、ポリペプチド、およびポリペプチド断片の合成
分子生物学の業者は、広範囲に多様な発現系が、組換えNRG-2タンパク質を生産するため使用されうることを理解すると思われる。使用される正確な宿主細胞は発明にとって重大ではない。NRG-2タンパク質は、原核生物宿主(例えば、大腸菌)において、または真核生物宿主(例えば、S.セレビシエ(S. cerevisiae)、Sf9などの昆虫細胞、またはCOS、NIH 3T3、CHOもしくはHela細胞などの哺乳類細胞)において生産されうる。これらの細胞は、例えば、アメリカン・タイプカルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、ロックビル、メリーランド州から商業的に入手可能である(Ausubelら、「分子生物学の最新プロトコール」、John Wiley&Sons、New York、NY、1998も参照のこと)。形質転換の方法および発現媒体(例えば、発現ベクター)の選択は、選択された宿主系に依存すると考えられる。形質転換法およびトランスフェクション法は、例えば、Ausubelら、「分子生物学の最新プロトコール」、John Wiley&Sons、New York、NY、1998に記載されており、発現媒体は、例えば、Pouwelsら、「クローニングベクター:実験室マニュアル(Cloning Vectors:A Laboratory Manual)」、1985、補足.1987に提供されるものから選択することができる。
【0087】
NRG-2核酸分子の特徴は、そのような遺伝子を様々な細胞型に導入する段階、およびインビトロ細胞外システムを用いる段階により解析される。そのような細胞または系で生産されるNRG-2タンパク質の機能は、異なる生理学的条件下で試験される。また、生化学的な特徴付け、大規模生産、抗体生産、および患者治療のためにNRG-2を精製することが可能となるように、NRG-2遺伝子産物を過剰発現する細胞株が生産されうる。
【0088】
NRG-2抗体の使用
NRG-2タンパク質に対する抗体(例えば、本明細書に記載されているもの)がNRG-2タンパク質を検出するために、またはNRG-2タンパク質の生物学的活性を阻害するために使用される。例えば、抗体または抗体の一部をコードする核酸分子を、NRG-2機能を阻害するために細胞内で発現することができる。加えて、診断または治療用途のために、抗体を、放射性核種およびリポソームなどの化合物に結合することができる。NRG-2ポリペプチドの活性を阻害する抗体もまた、野生型の不適切な発現または変異NRG-2遺伝子により引き起こされる疾患の発症を予防または遅延させる点でも有用でありうる。
【0089】
トランスジェニク動物およびノックアウト動物の作製
NRG-2遺伝子の特徴付けは、相同組換えによりNRG-2ノックアウト動物モデルを開発可能にする情報を提供する。好ましくは、あるNRG-2ノックアウト動物は哺乳類であり、最も好ましくはマウスである。同様に、NRG-2過剰発現の動物モデルを、標準的トランスジェニック技術にしたがって、1種または複数のNRG-2配列を動物ゲノムへ挿入することにより生成することができる。さらに、NRG-2遺伝子変異の効果(例えば、優性遺伝子変異)を、変異NRG-2導入遺伝子を有するトランスジェニックマウスを用いて、または標準的相同組換え技術を用いて、内因性NRG-2遺伝子にそのような変異を導入することにより調べることができる。
【0090】
ノックアウトモデルを作製するために使用可能である置換型標的化ベクターを、例えば129/Sv(ストラタジーン社(Stratagene Inc.)、LaJolla、CA)などのマウス系統由来の同質遺伝子系統ゲノムクローンを用いて構築することができる。標的化ベクターを、十分に短縮型のNRG-2遺伝子を保持するES細胞株を生成するために、エレクトロポレーションにより胚性幹(ES)細胞の適切に由来する株に導入することができる。キメラ初代マウスを生成するために、標的化細胞株がマウス胞胚期の胚に注入される。ヘテロ接合体子孫を交配して、ホモ接合性にすることができる。NRG-2ノックアウトマウスは、NRG-2の胚発生および疾患における役割を検討するためのツールを提供する。さらにそのようなマウスは、NRG-2依存性またはNRG-2に影響を受けた経路を含む疾患または状態を改善するための治療化合物を試験するためのインビボの方法を提供する。
【0091】
以下の実施例は、当業者が、本発明ならびにその原理および利点をよりよく理解することを支援するものと考えられる。これらの実施例は本発明を例示するものであって、その範囲を制限しないことを意図している。
【実施例】
【0092】
実施例1
ヒトNRG-2 cDNAのクローニング
NRG-2αをコードする全長cDNAが小脳から同定された。NRG-2コード配列の様々な領域に対する多数のプローブが、クローニング、マッピングおよび配列解析のためにげっ歯類およびヒト配列データに基づいて設計された。ライブラリーをスクリーニングするに先立ち、プローブの特異性が3'RACE(cDNA末端の迅速増幅)法を用いてヒト小脳RNAを解析することにより確認された。2個のヒト小脳γt10 cDNAライブラリー(クロンテックラボラトリーズ(Clontech Laboratoris)、Palo Alto、CA;カタログ番号HL1128a)由来の約400,000個のcDNAが、NRG-2のEGFLドメイン由来のオリゴヌクレオチドプローブ
を用いてスクリーニングされた。25個のハイブリダイゼーションシグナルが検出された;これらのシグナルに相当する20個のファージクローンがクローニングされ、ハイブリダイゼーション検討、物理的マッピング、およびDNA配列決定によりさらに解析された。これらの解析の結果は、同定されたヒトNRG-2クローンの中の多数の構造変異体(アイソフォーム)の存在と一致した。クローンに関する予備的な構造情報が、ファージプラークへのフィルターハイブリダイゼーションおよびcDNA挿入物の制限エンドヌクレアーゼ解析により取得された。内部プライマーを用いてのPCR検討は、対で、または隣接配列とともに組み合わせて、物理的マッピングデータを取得するために使用された(表1参照)。
【0093】
使用されたプライマーは以下のとおりである。
【0094】
最初に、0.8kbから3.3kbの範囲の挿入物サイズ(平均サイズは約1.7kb)が解析された。NRG-2転写物は、これらのポリペプチドの構造多様性の多くを示すEGFLドメインおよび細胞質配列を含み、この特異的内部領域はPCR解析により次にクローンをマッピングするための対象となった。この解析は4個の産物群を生じ、各群に多数のクローンが同定された。したがって4個の群(A〜D)がヒト小脳におけるNRG-2遺伝子産物内のこの領域における構造多様性の程度を表す可能性が高い。4個のクローン(群A)はこの実験では産物を生じなかった。この結果は、これらのクローンが(細胞質ドメイン中の)下流プライマー配列を欠くことを示したハイブリダイゼーション実験のデータと一致した。三番目の実験においては、クローンの方向が決定され、EGFLドメインからクローンの末端への距離が、EGFLドメイン中のプライマーを、ファージアーム中の隣接配列由来のプライマーと組み合わせて使用することにより推定された。これらの研究は、したがって、NRG-2のcDNAを群に分離することを可能にし、ヒトNRG-2の分泌可能なアイソフォームをコードする潜在的な全長cDNAを同定することを容易にした。
【0095】
(表1) ヒトNRG-2小脳cDNAクローンのマッピング
cDNAクローンのPCR解析:産物は6%ポリアクリルアミドゲル中でサイズ決定された;表は塩基対でサイズを示す。
1、EGFLドメイン由来の上流プライマー1471;細胞質ドメイン中の下流プライマー1531
2、λgt10中の隣接配列由来のプライマー1527、1528
3、λgt10中の隣接配列由来の上流プライマー1527;EGFLドメイン由来の下流プライマー1494
4、EGFLドメイン由来の上流プライマー1471;λgt10中の隣接配列由来の下流プライマー1528
【0096】
実施例2
ヒトNRG-2のDNAの配列解析
異なる構造のより完全な像を取得するために、サイクル塩基配列決定プロトコールおよび上述のPCR解析に使用されたものと同一のプライマーを用いて、代表的クローンに関してDNA配列決定を実施した。EGFLドメイン周辺の配列コンティグ(群B〜D由来の)を互いに、ならびにラットおよびヒトNRG-2配列と比較することにより、いくつかの結論を得た。第一に、群BのクローンはNRG-2βのcDNA構造と一致した。これらの配列は、EGFLドメインを膜貫通および細胞質ドメインに連結し、したがって膜付着NRG-2タンパク質をコードした。第二に、群C構造の全ては、αおよびβの両方の配列を含み、NRG-2αのcDNA構造にマッチした。したがって、群Cクローンは分泌型NRG-2タンパク質をコードすると考えられる。クローン14はこの構造の全長の最良の候補であるように思われた。群Dには、αおよびβの両方の配列が存在したが、それらは隣接していなかった。これらの2個の既知のコンティグ配列の間に介在する450bpの配列が発見され、標準スプライス部位ドナー(GT)およびアクセプター(AG)配列が、αおよびβ配列として同定されたその領域に近接した。したがってこの構造は恐らくNRG-2遺伝子の部分的にスプライシングされた転写物を表すと思われる。
【0097】
この情報から、分泌可能型のNRG-2は群Aおよび群Cのクローンにおいて見出される可能性が最も高いように思われた。クローン14は群Cの適切な代表として使用した。2個の群Aのクローンは平行して進めた:クローン13は比較的大きな挿入物サイズのために選択され、クローン15はハイブリダイゼーション実験において検出されたEGFLドメインの5'の配列の存在のために調査された。クローン13、14および15の配列が完了した時、それらのいずれも単独では全長ヒトNRG-2αをコードしないことが明らかとなった。しかしながら、これらクローンの構造における十分な重複から、各々の部分が共にスプライシングされ、NRG-2αをコードする1つの全長クローンを生成することが明らかとなった。図1はこれら配列の構造の説明図を示す;NRG-2遺伝子のコードセグメントは影付き囲みにおいて示されており、記載されたNRG-2αおよびNRG-2βアイソフォームに存在するコード配列(実線)が上に記載されている;NRG-2のアイソフォームは、GGF-2様、免疫グロブリン様(Ig)、EGF様(EGFL)、α、β、膜貫通(M)および細胞質(cyto)ドメインを含む;終止コドンは(*)により示される;および推定イントロン配列が点線により示される。αコードセグメント内に存在する特有のBsrGI部位(B)が、クローン15の5'配列をクローン14の3'配列に連結することにより、全長ヒトNRG-2αのcDNAを構築するために使用され、最終構築物の配列が決定された。NRG-2αのcDNAの主要なオープンリーディングフレーム(図6、配列番号:1)は331個のアミノ酸のタンパク質をコードする(図7、配列番号:2)。
【0098】
実施例3
ヒトNRG-2βのcDNAのクローニングおよび構築
ヒトNRG-2βのcDNAは、部分的にはヒトNRG-2αのcDNA(ベクターならびにαおよびβアイソフォームの両方に存在するヒトNRG-2のN末端をコードする5'の869bpの配列)から、および部分的にはヒトNRG-2βをコードする部分的ヒトcDNA(2個の3'断片であり、一方がβ配列、および他方が終止コドンを含む)を含むファージクローン(例えば、ファージクローン11は、マッピング研究においてβ配列を含むことが示された。例えば、表1、実施例1および実施例2を参照)から構築される。
【0099】
ヒトNRG-2αのcDNA(実施例2)を、5500bpのベクターおよびcDNAを含む1555bpの挿入物を生成するために、酵素NotIおよびXbaI(ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs)、Beverly、MA)を用いて消化することができる。両方の断片が、QIAEX IIアガロースゲル抽出キットおよびプロトコール(キアゲン社(Qiagen Inc.)、Valencia、CA)を用いてTAE緩衝液中1%アガロースゲルから回収される。この挿入物断片(1555bp)は、5'の869bp断片および約700bpの3'断片を生成するためにDrdI(ニューイングランドバイオラボ、Beverly、MA)を用いてさらに消化される。869bpのNotI-DrdI断片がQIAEX IIアガロースゲル抽出キットおよびプロトコール(キアゲン社、Valencia、CA)を用いてTAE緩衝液中2%アガロースゲルから回収される。この869bp断片は開始メチオニンを含み、ヒトNRG-2βのN末端部分をコードする。それは、下記のようにヒトNRG-2βの配列を有するcDNAに由来する2個の付加的断片とともに、5500bpのベクターにライゲーションされる。
【0100】
ヒトNRG-2αおよびヒトNRG-2β配列の間の主要な差異は、単一のDrdIおよびBsrDI部位の間に存在する。αアイソフォームは、βアイソフォーム配列にスプライシングされる77bpのコードセグメントを含む。ヒトNRG-2βをコードする配列を取得するために、ヒトNRG-2α配列に相当するものよりも77bp短い、113bpのDrdI-BsrDI断片が以下のようにファージクローン11から生成される。DrdIおよびBsrDI部位に隣接するプライマー
が、Taqポリメラーゼの供給者(パーキンエルマー/ロシュ(Perkin Elmer/Roche)、Branchburg、NJ)により推奨される方法に従って、ファージクローンDNA11鋳型を増幅するために使用される。PCR産物をエタノールで沈殿し、その後113bpの断片を生産するためにDrdIおよびBsrDIを用いて連続的に消化する。同様に、3'断片はまた、プライマー1550および1546を用いてファージクローン11鋳型のPCR増幅により得られる。プライマー1550
はBsrDI部位を交差するように配置され、標的配列
へ変異させ、したがってリシンコドンをTAA終止コドンに変換するであろう単一Tの挿入を含む。プライマー1546はファージ右アームのクローニング部位に標的化され、XbaI部位を含む。BsrDIおよびXbaIを用いての産物の消化は、ヒトNRG-2βのcDNAの3'末端となる425bp断片を生成する。113bpおよび425bp断片は両方とも2%アガロースゲルから回収される。
【0101】
断片の回収は、既知の長さおよび量の二重鎖のDNAマーカーに対して相対的に電気泳動により定量される(例えば、ファージラムダHindIII消化;ニューイングランドバイオラボ、Beverly、MA);pGEMマーカー、プロメガ(Promega)、Madison、WI)、その後各精製断片がモル等量物に変換される。精製ベクター(100ng)および3個の断片が、供給者により提供される指示書に従い、等モル比で相互にライゲーションされる(T4 DNAリガーゼ、ニューイングランドバイオラボ、Beverly、MA)。ライゲーションは、供給者により提供される指示書に従い、大腸菌XL1 Blue(ストラタジーン社、LaJolla、CA)などのコンピテント細菌細胞を形質転換するために使用される。ベクターを含むコロニーは50μg/mlアンピシリンの耐性を基礎として選択され、ヒトNRG-2βのcDNAの構造は、PCR増幅およびプラスミドDNAのDNA配列決定により解析される。ヒトNRG-2βのcDNAの主要なオープンリーディングフレーム(図8、配列番号:3)は298アミノ酸のタンパク質をコードする(図9、配列番号:4)。
【0102】
実施例4
ヒトNRG-2の発現
哺乳類細胞においてヒトNRG-2を一過性または安定に発現するためのベクターを構築した。pRc/CMV2ベクター(インビトロジェン(Invitrogen) V750-20;図2参照)をヒトNRG-2を発現するために使用した。この5.5kbのベクターは、一過性および安定トランスフェクションの両方における高レベルの構成的発現を誘導するために、CMVプロモーターおよびウシ成長ホルモンポリアデニル化部位を利用している。ネオマイシン選択(G418)を安定形質転換体を選択するために使用することができる。ヒトNRG-2αのcDNA配列(配列番号:1)はHindIIIおよびXbaI部位を用いてポリリンカーに定方向性にクローニングされた。最終構築物のcDNA挿入物は両方の鎖に関して配列決定された。ヒトNRG-2発現ベクターはその後、組換えヒトタンパク質の信頼性の高い起源を提供するためにCHO細胞において発現された。
【0103】
ヒトNRG-2αおよびβの両方のcDNAが、一過性にCHO/S細胞にトランスフェクションされた(ライフテクノロジーズ社(Life Technologies Inc.)、Rockville、MD)。トランスフェクションされた遺伝子の異種発現は、CHO/S細胞系の適切な機能を保証するために実施された。疑似トランスフェクションは平行して実施された。トランスフェクションは、製造元(ライフテクノロジーズ社、Rockville、MD)により提供されるプロトコールにしたがって、リポフェクタミン(Lipofectamine)(商標)2000法により100mmディッシュ(三つ組)で実施された。細胞溶解物および馴化培地(conditioned medium)試料がトランスフェクションの3日後または4日後に回収された。溶解物を調製するために、細胞単層をPBSで洗浄し、ディッシュからこすり落とし、150μlの0.25Mトリス塩酸、pH8中で3回の凍結融解により溶解した。細胞破壊片を沈殿させて、上清を回収した。馴化培地試料を回収し、その後直接解析するか、または、セントリコン10(Centricon-10)ユニット(Ambion)を用いて濃縮し、10mMトリス塩酸、pH7.4と緩衝液を交換した。生物学的に活性のある組換えヒトNRG-2遺伝子産物の分泌は、CHO/S細胞の一過性トランスフェクションに続くシュワン細胞の増殖刺激および細胞溶解物と比較して馴化培地におけるNRG-2生物活性の検出により証明された(Marchionniら、Nature 362:312〜8、1993)。
【0104】
組換えヒトNRG-2(rhNRG-2)タンパク質は、トランスフェクションされた細胞の馴化培地において効率的に発現され(図3Aおよび図3B)、これらのタンパク質が哺乳類細胞から分泌されうることを示している。図3Aにおいては、rhNRG-2αをトランスフェクションされた細胞由来の細胞溶解物ではなく(および疑似トランスフェクションされた細胞由来の細胞溶解物でなく)、馴化培地が、約56kDに泳動される特異的な免疫反応性バンドを発現した。図3Bにおいては、αおよびβアイソフォームの両方がトランスフェクションされたCHO/S細胞の馴化培地に分泌された(予想されたように、より小さなrhNRG-2βタンパク質(298アミノ酸)が、rhNRG-2αタンパク質(331アミノ酸)よりも早く泳動される(約47kD)ことに留意されたい)。
【0105】
一過性トランスフェクションにおいて発現構築物の生物活性を確認した後に、rhNRG-2βを発現する安定CHO/S細胞株が生成された。pRc/CMV2ベクターはネオマイシン耐性遺伝子を含み、そのため安定的に形質転換された細胞が、有効な濃度のG418を含む培地において選択可能となる。レシピエントCHO/S細胞のトランスフェクションに続いて、選択培地中で11日間生存したよく単離されたコロニーが、コロニーリングを用いて選択された。rhNRG-2βおよびG418耐性の最高レベルの発現を示す細胞株はさらなる評価のために持続された。細胞株の3つの有用な特性は、持続した生存性、無血清(または低血清)培地への適合、および組換えタンパク質の発現レベルである。したがって、いくつかの株は平行して増殖され、無血清増殖条件への適合、およびウエスタンブロットによるrhNRG-2βの発現に関して試験された。ウエスタンブロット解析は、2%ウシ胎児血清を添加されたダルベッコ(Dulbecco)の修飾必須培地が、これらの実験においてrhNRG-2βの最適発現を提供したことを示した。生物活性は先行する候補株由来の発現された物質に関してアッセイされた。2個の単離物が、限界希釈によりクローニングされ、単一の単離された細胞株がさらなる研究のために使用された。
【0106】
NRG-2タンパク質を発現する安定CHO/S細胞株を生成することに加えて、rhNRG-2β発現構築物およびトランスフェクションされたジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子の統合コピーの共増幅に頼る戦略が開発された。哺乳類発現ベクターが、各々CMVおよびSV40プロモーター調節下となる、pcDNA3.1(インビトロジェン)およびpMACSKk.II(ミルテニバイオテク社(Miletenyi Biotec Ltd.))中に構築された。これらのベクターはdhfr発現ベクターとともにCHO-dhfr細胞に共トランスフェクションされ、G418耐性の30コロニーが選択され、増殖され、ウエスタンブロット(図10)およびRT/PCRにより発現レベルが解析された。図10、レーン1はrhNRG-2β対照試料を示し、レーン2はCHO SD(US)rhNRG-2βの48時間の上清を示し、レーン3〜5は24〜72時間のクローンT3B2を示し、レーン6〜8は24〜72時間のクローンT3B1を示し、レーン9は分子量マーカー(インビトロジェン、カタログ番号LC5925)を示し、レーン10〜12は24〜72時間のクローンT3A6を示し、およびレーン13〜15は24〜72時間のクローンT3A5を示す。T3B2、T3B1、T3A5クローンは希釈クローニングおよび増幅/選択のために選択された。遺伝子共増幅はメトトレキセート濃度の段階的な増加により誘導され、クローンは分泌rhNRG-2βの生産の増加に関してモニターされる。
【0107】
実施例5
発現されたNRG-2タンパク質を検出するための抗血清の生成および試験
発現されたNRG-2タンパク質を特異的に検出するポリクローナル抗血清が以下のように生成された。発現および精製試料中のNRG-2レベルをモニターするために使用されるウサギポリクローナル抗血清を生成するために、推定ヒトおよびラットNRG-2配列から、ペプチドが設計された。
【0108】
使用されたペプチドは以下の通りである。
【0109】
推定ラットおよびヒトNRG-2配列において同一であるIgドメイン配列由来の、これらのペプチドの1つ(K71984M)は、トランスフェクションされたCHO細胞由来の馴化培地における組換えラットNRG-2βをウエスタンブロットするのに有用な血清が生産され(図3参照)、rhGGF2には交差反応を生じなかった。これらのNRG-2抗血清は、固相化ペプチドに対して精製された。図3CはラットNRG-2βを発現するCHO細胞由来の馴化培地のウエスタンブロット解析を示す。レーンは、rrNRG-2βを発現するCHO細胞由来の15倍濃縮の馴化培地の20μl(左)または10ngのrhGGF2(右)のいずれかを含む。抗NRG-2血清は1μg/mlで使用され、特異的に46kDのrrNRG-2βを検出したが、80kDに泳動されるrhGGF2は検出されなかった。
【0110】
さらに、発現プラスミドrhNRG-2αおよびrhNRG-2βおよびペプチドK71984Mに対して作製されたウサギポリクローナル抗体を用いた、一過性にトランスフェクションされた単層CHO/S細胞由来の培養培地の解析により、rhNRG-2αおよびrhNRG-2βの両方が発現され、各々約55kDおよび47kDに泳動されることが示された(図5)。
【0111】
実施例6
発現されたrhNRG-2αおよびrhNRG-2βの生物活性の評価のための生物学的試験
生物学的に活性のあるrhNRG-2αの検出のための生物学的試験が開発された。ニューレグリンシグナル伝達はEGF受容体ファミリーに属するerbB受容体チロシンキナーゼを介して生じる。NRGリガンド結合および受容体活性化は、リン酸化チロシン残基に対して作製された抗血清を用いて、処理された細胞溶解物をウエスタンブロッティングすることにより検出されうる。このアッセイ法は、シュワン細胞、希突起膠細胞前駆細胞、骨格筋の筋管、心筋細胞、ならびに乳房および前立腺アデノカルシノーマ由来のヒト腫瘍細胞株を含むが、それらに制限されない様々な細胞型において、NRG-2タンパク質およびerbB受容体の相互作用を検討するために使用される。生物学的に活性のあるNRG-2(例えば、組換えラットNRG-2βを発現するCHO細胞由来の馴化培地)を、ヒト乳房アデノカルシノーマ細胞株MCF-7に関してこのアッセイ法を用いて検出することができる。受容体リン酸化チロシンのウエスタンブロットによる、MCF-7細胞に対してラットNRG-2β(rrNRG-2β)およびrhGGF2を試験する実験の結果は図4Aに示されている。MCF-7細胞は24ウェルプレート中で培養され(2x105細胞/ウェル)、10ng/mlのrhGGF2またはrhNRG-2βを発現するCHO細胞により馴化された培地の様々な希釈において15分間処理された。処理後その培地は除去され、細胞は一度洗浄され、その後培養物は溶解され、試料はウエスタンブロットにより解析された(Canollら、Neuron 17:229〜243、1996)。リン酸化されたErbB受容体はRC20Bリン酸化チロシン抗体を用いて検出される(トランスダクションラボラトリーズ(Transduction Laboratories)、Lexington、KY)。この解析の陽性対照試料はEGFを用いて処理されたA431細胞の溶解液である(最も左のレーン、図4A)。rhGGF2またはrrNRG-2βのいずれも増殖培地に添加されないとき、チロシンに関してリン酸化された検出可能なタンパク質は存在しなかった。しかしながら、様々な濃度のNRG-2βの添加は、185kdのリン酸化に関して用量依存性の増加を示した。このバンドは、rhGGF2(10ng/ml)処理の応答に対してもリン酸化されるErbB2およびErbB3受容体の予測位置と一致した。したがって、この生物学的試験は、発現および精製されたrhNRG-2αおよびrhNRG-2βの生物活性を立証するための信頼できる方法を提供する。精製された組換えタンパク質に適用された場合に、このアッセイ法は、DNA合成アッセイ法に匹敵するデータを提供する用量反応性曲線においてNRG-2の生物活性の定量化を可能にする。CHO/S細胞一過性トランスフェクション由来の馴化培地または精製された組換えNRG-2タンパク質を処理されたMCF-7細胞に関する受容体チロシンキナーゼ生物学的試験もまた図4Bに示されている。
【0112】
実施例7
rhNRG-2αまたはβのミリグラム量での精製
(rhNRG-2αを発現する)生産細胞株から回収された馴化培地は酢酸を用いてpH6.0に調整され、酢酸ナトリウム(pH6.0)を用いて平衡化されたS-セファロースカラムに直接添加される。結合物質を酢酸緩衝液中で1M NaClを用いて溶出し、硫酸アンモニウム緩衝液中で平衡化し、同一緩衝液中で疎水性相互作用カラム(ブチルセファロースFF)に通過させる。結合物質は低塩(800mM硫酸アンモニウム)緩衝液を用いて溶出され、rhNRG-2αのピークが回収される。回収された物質は緩衝液交換され、アミコンらせんカートリッジ(Amicon spiral cartridge)を用いて製剤緩衝液中(100mMアルギニン、100mM硫酸ナトリウム、20mM酢酸ナトリウム、1%マンニトール、pH6〜7)中で1mg/mlに濃縮される。選択的な、最終精製段階はセファクリル(Sephacryl)200HRカラムであり、溶出されたrhNRG-2αピークは製剤緩衝液中で製剤化された。別の方法では、ヘパリン親和性、銅キレートおよびC4-逆相クロマトグラフィーによる精製工程に従う(Higashiyamaら、J. Biochem. 122:675〜680、1997)。
【0113】
クロマトグラフィーカラム由来のタンパク質分画は、分泌されたrhNRG-2αまたはβのピークを同定するために、ウエスタンブロッティングによりモニターされる(例えば、図3A〜C参照)。ピーク分画および最終調製物が、MCF-7細胞に関する受容体リン酸化により解析される(図4A〜B参照)。純度は、ゲル電気泳動により(クーマシーブルー染色)および解析HPLC(0.1%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリル勾配において泳動されるVydac C8カラム)により評価される。タンパク質濃度は、標準として使用されるウシ血清アルブミンを用いたビシンコニン酸(BCA)アッセイ法(ピアス(Pierce))により決定される。
【0114】
精製の別の一般的な計画には、陽イオン交換に基づく従来のクロマトグラフィーによる捕捉、続いて1つまたは複数の段階(例えば、カルボキシメチルセファロースクロマトグラフィー、後に、逆相HPLCを利用することによる)を介した汚染タンパク質からの分離を含む。
【0115】
簡単には、様々な大きさのカルボキシメチルセファロース(ファストフロー)カラムが、200mM NaCl、10mMトリスpH7.4を用いて平衡化され、その後馴化培地試料が添加され、カラムが約3容量の200mM NaCl、10mMトリスpH7.4を用いて洗浄された(吸光度がベースラインに達するまで)。結合タンパク質が500mM NaCl、10mMトリスpH7.4を用いて溶出された。この溶出には、3カラム容量の高塩洗浄(1M NaCl、10mMトリスpH7.4)が続いた。分画は回収され、ウエスタンブロットおよび金またはクーマシーブルー染色タンパク質ゲル(4〜20%アクリルアミドトリスグリシンSDS)により解析された。カラム規模および捕捉され添加されたタンパク質の量に依存して、rhNRG-2βは、カラムからの0.5M NaCl中で溶出されたタンパク質の10〜70%を表した。カラムが過剰に添加されていない場合には、フロースルー中、または0.2M NaClもしくは1M NaCl分画中においては、検出可能なrhNRG-2βは検出されなかった。回収における有意な改善が、プロテアーゼ阻害剤を含めること、およびカラムを冷却中で泳動することにより獲得された(90%超)。捕捉クロマトグラフィーの規模は、10mlカラムから始まり、40ml、100mlおよび200mlカラムを通して増加された。全体的な結果は、回収および精製の両方の観点から一致しており、この段階の規模が、利用可能な開始物質の容量に適合するために調節されることが可能であることを示している。
【0116】
精製法は、バイオキャッド(Biocad)環流クロマトグラフィーワークステーション上で実施されるC4カラム(Vydac 214 TP 1010、1cm x 25cmカラム)を用いた逆相HPLCを用いてさらに開発された。一連の試験的運転は、10mMトリスHCl、pH7.4、0.5M NaCl中にrhNRG-2βを含むいくつかのカルボキシメチルセファロースカラム由来のプールされた分画に対して実施された。カラムは1ml/分の流速で実施され、0.2%TFA中で平衡化された。試料を注入後、0.2%TFA中の10分間のカラム洗浄が、30分の、90%アセトニトリル、0.2%TFAまでの線形傾斜を用いて行われ、90%アセトニトリル、0.2%TFAの最終の10分間の洗浄段階を本方法を完了するために使用した。分画はウエスタンブロットにより解析された。非常に純粋なrhNRG-2βを含む分画のみが最終プールに含まれた。図11に示されている、ゲルのクーマシーブルー染色により評価されるように、rhNRG-2βの調製物は約92%の純度であった。しかしながら、HPLCクロマトグラフに渡り検出された免疫反応性の約60〜70%は、rhNRG-2βプールには含まれなかった。したがって、90%精製は2段階で達成されたが、rhNRG-2βのより完全な回収を可能にするために第3の段階を実施してもよい。この3番目の段階はヘパリンセファロースおよび/または逆相HPLC段階の数個の修飾(例えば、溶媒の変動)を含んでもよい。
【0117】
金染色は、タンパク質調製物における汚染タンパク質を検出するための別の感度の高い方法を提供し、この染色は容易にナノグラム量のタンパク質を検出する。精製段階を可視化するために、およびさらなる解析のために、精製の異なる段階に由来するrhNRG-2β試料の純度が比較された(図12)。試料は還元状態中で4%〜20%SDS PAGE(Novex、カタログ番号EC6025)上で泳動された。ゲルはPVDF膜上に転写され、金染色(Gold Stain)(アマシャム(Amersham)、カタログ番号RPN490)を用いて総タンパク質に関して染色された。レーン中の過剰添加を防止するために、開始物質(無血清馴化培地)は精製試料の相対量の1%において添加された。この解析からの中心的な観察は、2段階において非常に有意な精製が達成されたことであった。
【0118】
MCF-7細胞株(ヒト乳房アデノカルシノーマ)に関して実施されたチロシンリン酸化アッセイ法が、精製されたNRG-2試料の生物活性を測定するために使用された。簡単には、培養は37℃15分間、試験試料(0.1%FCSを含む培地中の精製試料の希釈物)を投与され、その後培地が吸引除去され、DTTおよび1mMのオルトバナジウム酸ナトリウムを含む50μlの2x試料緩衝液が添加された。試料はその後、電気泳動およびウエスタンブロッティング用に調製された。対照試料と上皮細胞成長因子で処理されたA431細胞由来の溶解物とは納入業者(トランスダクションラボラトリーズ、Lexington、KY)により提供された。rhNRG-2β生産をモニターすることに加えて、50%アセトニトリル(AN)またはPBSなどの精製処理に適合可能な賦形剤中に希釈されているrhNRG-2βのHPLC精製試料の活性が試験された(図13)。この実験において使用された濃度においては、ANはNRGシグナル伝達を劇的には妨害しなかった。
【0119】
実施例8
希突起膠細胞前駆細胞におけるNRG-2活性
rhGGF2を比較に用いて、培養された希突起膠細胞前駆細胞の増殖および生存に対するrhNRG-2αおよびrhNRG-2βの効果の評価を実施する。希突起膠細胞前駆細胞は、McCarthyおよびDeVellis(J. Cell Biol. 85:890〜902、1980)の方法にしたがって2日齢ラットから生成され、細胞は、0.5%FBSを含むN2合成培地(DM+)中で、1〜3日間、希突起膠細胞系列中の細胞を濃縮するために培養される。培養物の純度は、星状膠細胞マーカーのGFAPに対する抗体;小グリア細胞マーカーであるOX42モノクロナール(ハーランバイオプロダクトフォーサイエンス(Harlan Bioproducts for Science));O-2A前駆細胞のマーカーである、抗A2B5モノクロナール(ベーリンガーマンハイム(Boehringer Mannheim));早期および成熟希突起膠細胞を各々認識するO4およびO1(Sommerら、Dev. Biol 83:311〜327、1980);RPTP-β(J. Schlessinger、NYU Med Ctrからの寄贈)および希突起膠細胞系列の早期の細胞を選好的に認識するネスチン抗体(発生研究ハイブリドーマバンク(Developmental Studies Hybridoma Bank))(Canollら、Neuron 17:229〜243、1996;Galloら、J. Neurosci. 15:394〜406、1995)の一連の抗体を用いて免疫蛍光解析により確立される。
【0120】
rhNRG-2α、rhNRG-2βまたはrhGGF2に反応してDNAを合成する細胞の割合(%)を決定するために、培養は16時間行われ、最後の4時間は10μMブロモデオキシウリジン(BrdU;シグマ(Sigma))存在下で処理される。BrdU標識された細胞はフルオレセイン結合抗BrdU免疫検出キット(ベーリンガーマンハイム)を用いて検出される。全細胞に対するBrdU+細胞の比に相当する標識指数は、BrdU標識された核およびヘキスト染色された核の個々の視野の顕微鏡写真から決定される。分化の特定の段階における標識指数を決定するために、BrdU染色を、O4、O1およびGFAP免疫蛍光解析と組み合わせる。
【0121】
細胞生存に対するNRG-2の効果を評価するために、B104馴化培地中で増殖する細胞を、3日間DM+培地に変更する。それらはその後、12時間または24時間の間、rhGGF2、rhNRG-2αまたはrhNRG-2βの存在または非存在において、N2培地またはDMEMのいずれかに転換され、製造者の指示書にしたがって、15分間Live/Dead染色キット(モリキュラープローブ社(Molecular Probes, Inc.))を用いて染色される。細胞死を定量化する形態学的基準、すなわち、位相差顕微鏡下でのピクノチック(Pyknotic)細胞のモニター段階およびMTTアッセイ法(シグマ)は、別々の実験で使用される。
【0122】
実施例9
嗅球鞘性細胞に対するNRG-2の活性
ラット嗅球は例外的なCNS組織である。脳の他の領域とは異なって、成長軸索は嗅球に進入することが可能であり、成体期間を通じてこのCNS環境内において伸長することが可能である。嗅球鞘性細胞(OBEC)として知られる、嗅覚系のグリア細胞は、CNS神経再生において重要な役割を有する可能性がある(Liら、J. Neurosci. 18:10514〜10524、1998)。OBECは、星状膠細胞およびシュワン細胞の両方の特性を有する異常なグリア細胞であり、脊髄再生を支援するために有用な細胞でありうる。OBECは、機能的NRG受容体、erbB2およびerbB4を発現する(Pollockら、Eur. J. Neurosci. 11:769〜780、1999)。さらに、高レベルのNRG-2ポリペプチドが嗅球において発現されている。したがって、これらのOBECは、NRG-1をNRG-2遺伝子産物の生物活性と比較する理想的な候補である。
【0123】
OBECは、O4抗体(Barnett、「動物細胞の培養(Culture of Animal Cells)」、I. R. Freshney、第3版、pp337〜341、Wiley-Liss、New York、NY、1993;Barnettら、Dev Biol. 155:337〜350、1993)を用いて蛍光細胞分析分離装置により生後7日のラットから精製される。分別後、細胞懸濁物は、カバースリップ上にプレーティングされ、成長因子またはACMのいずれかの処理前に、(細胞生存を促進するために)10%星状膠細胞馴化培地(ACM)を含むDMEM-BS中で37℃にて一晩インキュベーションされる。分裂活性は、分裂細胞へのBrdUの取り込みにより測定され、細胞生存およびアポトーシスアッセイ法は記載されるように実施される(Pollockら、Eur. J. Neurosci. 11:769〜780、1999)。
【0124】
実施例10
中脳ドーパミン作動性ニューロンに対するNRG-2の活性
NRG受容体erbB4は、ラット、マウスおよびサルの中脳ドーパミン作動性ニューロンで発現している。組換えヒトNRGタンパク質の線条体への送達はパーキンソン病の治療において有用である。例示的タンパク質、rhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2を用いた研究では、NRGに対するドーパミン作動性黒質線条体系の応答をさらに研究するために実施される。2個のNRGタンパク質が、ドーパミン作動性ニューロン(例えば、胎児げっ歯類およびヒト神経芽細胞腫細胞株、例えば、SKNNCに由来する)に対する生存促進活性(すなわち、酸化ストレスを誘導する試薬により誘導される細胞死からの保護)に関してインビトロにおいて比較される。様々な濃度のrhNRG-2α、rhNRG-2βまたはrhGGF2で前処理された細胞は、酸化ストレスを誘導するために1μMのメタジオンまたは100mMのジエチルジチオカルバメートで24時間処理され、標準的方法により細胞死が定量化される。ドーパミン放出のインビボモデルならびにラットにおけるドーパミン作動性機能の電気化学的および行動評価もまた使用可能である。
【0125】
NRGタンパク質は、インビトロにおけるラットドーパミン作動性ニューロンに対する生存促進活性に関して試験された。具体的には、6ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)を用いて培養中で投与されたドーパミン作動性ニューロンに関してNRGランパク質が神経保護的であるかが決定された。rhNRG-2βまたはrhGGF2で前処理された細胞および未処理対照培養物を50μMの6-OHDAで24時間暴露し、その後、培養物をチロシン水酸化酵素(TH)で染色し、光学顕微鏡下で試験した(図14)。図14は、インビトロ7日目(DIV)の、チロシン水酸化酵素(TH)で免疫染色された初代間脳培養物を示す。上部のパネルは、DIV 0から開始し、DIV 3で終了するまで毎日100ngのrhNRG-2βで処理された培養物を示す。DIV 4において、培養物は50μMの6-OHDAで処理された。下パネルは前処理を受けなかったが、DIV 4において50μMの6-OHDAで処理された培養物を示す。両方の培養物はDIV 7においてTH免疫反応性に関して解析された。目盛り棒は50マイクロンに等しく、上部および下部パネルの両方に適用される。類似の染色パターンが各培養物の全体に渡り観察された。TH陽性ニューロンの密度、数、および神経突起の長さは、前処理を受けなかった培養物における6-OHDA処理により減少した。対照的に、rhNRG-2βで前処理された培養物は、rhGGF2に関して観察された結果と同等の正常な形態学的発生を示す。この結果はいくつかの培養実験において繰り返された。結果は、rhNRG-2βは、例えばパーキンソン病の動物モデルにおいて試験可能であるインビボの好ましい効果を有することを示す。
【0126】
実施例11
小脳における神経発生および移動
NRG-1、NRG-2およびerbB4受容体のアイソフォームは小脳において高レベルで発現している(Chenら、J Comp Neurol 349:389〜400、1994;Changら、Nature 387:509〜512、1997;Laiら、Neuron 6:691〜704、1991)。RhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2を小脳における移動およびニューロン形成の細胞培養アッセイ法において評価することが可能である。RhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2はグリア細胞基質上の小脳顆粒ニューロンの移動速度に対する効果に関して比較される。接着している移動中のニューロンとともに無傷なベルグマングリアを含む、生後5日のラット小脳のインプリント培養物を記載のように作製する(Antonら、J. Neurosci. 16:2283〜2293、1996)。ニューロン移動を、ツァイスW63対物レンズを備えたツァイスアキシオバート135(Zeiss Axiovert135)顕微鏡を用いてモニターし、映像を光学ディスクに記録する。ニューロン移動の速度およびパターン、ニューロン-グリア相互作用、および形態の変化を、rhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2に対する応答においてモニターする。
【0127】
小脳顆粒ニューロン形成に対する効果が、生後のラット小脳顆粒ニューロンの解離培養において研究される。分裂中の神経前駆細胞は、パーコール(Percoll)密度勾配遠心分離により生後5日の小脳から精製され、解離細胞培養中に設置される。培養物はその後10μM BrdUrd(分裂細胞を標識化するために)、様々な濃度のrhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2を用いて処理される。培養において2〜7日の付加的な日数の後で、ニューロンおよびグリア細胞系列への分化が、GFAP(グリア)およびTUJ1(ニューロン)などの細胞型特異的マーカーを用いての免疫染色によりアッセイされる。各培養条件において、細胞の総数、BrdU標識された細胞、および各マーカーを用いて同定される細胞が列挙される。これらの成長因子に暴露されて以来、特定の細胞系列に入った細胞が、BrdUおよびマーカーの一つで標識されたものとして同定される。各マーカーで標識されるBrdU標識された細胞の割合(%)は、したがって、各成長因子のニューロンおよびグリアの形成および生存に与える効果の尺度を提供する。様々な時間点での細胞の総数、および異なる条件下でのアポトーシス細胞の数の解析は、rhNRG-2α、rhNRG-2βおよびrhGGF2の、神経前駆細胞、またはそのニューロンもしくはグリア誘導体の選択的生存に与える任意の潜在的な効果を評価するために使用される。
【0128】
NRG-1、NRG-2およびerbB4受容体のアイソフォームは、小脳において高レベルで発現し、したがって小脳の神経細胞に関するインビトロ研究はこれらの研究において重要な構成要素となる。rhNRG-2βおよびrhGGF2の両者は、小脳における移動およびニューロン形成の細胞培養アッセイ法において評価された。それらに接着している移動中のニューロンとともに無傷なベルグマングリアを含む生後5日のラット小脳のインプリント培養が作製され、解析された。ニューロン移動は、ツァイスW63対物レンズを備えたツァイスアキシオバート135顕微鏡を用いてモニターされ、映像は光学ディスクに記録された。ニューロン移動の速度およびパターン、ニューロン-グリア相互作用、および形態の変化が、rhnrg-2βおよびrhGGF2に対する応答においてモニターされた(図16A〜B)。小脳顆粒ニューロンのニューロン移動速度が、rhNRG-2β(100ng/ml)、rhGGF2(50ng/ml)、または未添加の対照培地への暴露の前後で測定された。図16Aは、成長因子(ここに示されているのはrhGGF2)の添加の前(黒矢印の左のパネル)および後(黒矢印の右のパネル)にモニターされた、グリア細胞突起上を移動するニューロンを示す。各パネル間で経過している時間は1時間である。図16Bは、rhGGF2への暴露がニューロンの移動速度を45±2.1%促進したことを示す。対照的に、対照培地またはrhNRG-2βのいずれも移動速度を変更しなかった。星印は有意性、P<0.05を示す。示されているデータは平均±標準誤差(各群に関してn>16)である。したがって、rhGGF2により促進されるニューロン移動速度における観察された増加とは対照的に、rhNRG-2βは明らかな効果を有さなかった。しかし、小脳神経前駆細胞を解離培養において調べた場合に、rhNRG-2βは外部顆粒層(EGL)ニューロンの増殖および/または生存を促進した(図15A〜B)。外部顆粒層(EGL)細胞は解離され、神経基本(NB)/N2培地または100ng/mlのrhNRG-2βを添加したNB/N2培地中で5日間培養される。10μMのBrdUは最初から全ての培養に添加された。細胞はその後固定され、ポリクローナルニューロン特異的抗体(Tuj-1;バブコ(Babco))および抗BrdUモノクロナール抗体を用いてプローブ検索された。Tuj-1のみ(すなわち、ニューロン;星印[A])、BrdU+Tuj-1(すなわち、培養において分裂中の神経芽細胞から生成されるニューロン;矢印[A])およびBrdUのみ(すなわち、非神経細胞;矢頭[A])で標識された細胞が計数された。対照と比較して、rhNRG-2βを含む培地において培養される時、より多くのニューロン(矢印[A])が核においてBrdU(オレンジ)を取り入れたことが見出された。BrdU免疫反応性が、Cy3(赤)に結合された抗マウスを用いて検出された。Tuj-1免疫反応性はFITCに結合された抗ウサギを用いて検出された。Tuj-1およびBrdU陽性細胞の数が計数された。rhNRG-2β群由来の細胞の計数は、BrdU陽性ニューロンの数における基礎的な変化の倍率を取得するために、対照群由来のものに対して正規化された。この結果は、rhNRG-2βがEGL細胞増殖、または新規に生成された小脳顆粒ニューロンの選択的生存を促進することを示唆する。これらのデータはしたがって、erbB4を発現するニューロン集団に、より一般的に適用可能な、神経細胞への生物活性を例示する。
【0129】
実施例12
心室筋細胞に対するNRG-2の活性
発生中および生後の心筋におけるNRGリガンドおよび受容体の役割を検査するために、NRG-2タンパク質について、単離された新生児および成体ラットの心筋細胞の増殖、生存および成長を促進する可能性が研究された。ニューレグリン、erbB2、erbB3およびerbB4に対する全部で3個の既知の受容体は、E14の発生中の心臓において発現され、その後erbB3発現は急速に減少し、一方erbB2およびerbB4発現は心室筋細胞において成体期まで持続する。rhNRG-2αおよびrhNRG-2βの心筋細胞に対するインビトロ活性はrhGGF2と比較して評価される。具体的には、その2個の成長因子が、下記のように心筋細胞生存、肥大および収縮性タンパク質の発現に対する効果に関して比較される。新生児ラット心室筋細胞(NRVM)初代培養を以前に記載されているように調製する(Springhornら、J. Biol. Chem. 267:14360〜14365、1992)。筋細胞を選択的に濃縮するために、解離された細胞を500rpmで5分間、2回遠心分離し、75分間2回、前プレーティングし、最終的には7%FBSを添加したDME培地中で低密度(0.7〜1x104細胞/cm2)にてプレーティングする。シトシンアラビノシド(AraC;10M;シグマ)を、非筋細胞の増殖を防止するために最初の24〜48時間の間添加する。他に述べられなければ、全ての実験は、無血清培地、DMEプラスITS(シグマ)に変えた後、36〜48時間実施される。この方法を用いて、95%超の筋細胞を有する初代培養は、自発収縮を顕微鏡観察することにより、およびモノクロナール抗心ミオシン重鎖抗体(抗MHC;バイオジェネシス(Biogenesis)、Sandown、NH)を用いた免疫蛍光染色により評価されるように、型どおりに取得される。
【0130】
成体ラット心室筋細胞(ARVM)初代培養の単離および調製は以前に記載された技術を用いて実施される(Bergerら、Am. J. Physiol. 266:H341〜H349、1994)。棒型心筋細胞は、ラミニン(10 ( g/ml)で前コーティングされたディッシュ上で60分間、培養液中にプレーティングされる、続いて緩く付着している細胞を除去するために培地が1回交換される。非筋細胞による、ARVM初代培養の汚染は、血液血球計算器を用いて決定され、典型的には5%未満である。全てのARVM初代培養は、2mg/mlのBSA、2mMのL-カルニチン、5mMのクレアチン、5mMのタウリン、0.1 ( Mのインスリン、および10nMのトリヨードチロニンを添加した100IU/mlのペニシリンおよび100 ( g/mlのストレプトマイシンを有するDMEから構成される「ACCITT」(Ellingsenら、Am. J. Physiol. 265:H747〜H754、1993)と名付けられた合成培地中で維持されている。筋細胞の生存および/またはアポトーシスを検査するために設計された実験プロトコールにおいては、インスリンが合成培地から除去され、したがって「ACCTT」と名付けられる。
【0131】
タンパク質合成速度の尺度([3H]ロイシン取り込み)が、心筋細胞肥大に対する成長因子の効果をモニターするために使用される。これらの実験に関しては、10 ( Mシトシンアラビノシドが培養培地に添加される。細胞は無血清培地中で36から48時間増殖され、その後、異なる用量のrhNRG-2α、rhNRG-2βまたはrhGGF2を用いて刺激される。40時間後、[3H]ロイシン(5 ( Ci/ml)が8時間添加され、細胞はPBSを用いて洗浄され、10%TCAを用いて回収される。TCA沈殿可能な放射活性はシンチレーション計数により決定される。
【0132】
免疫細胞化学を、rhNRG-2α、rhNRG-2βまたはrhGGF2を用いての筋細胞表現型における変化を検査するために使用される。例えば、成長因子処理に続いて、細胞を4%(w/v)パラホルムアルデヒド中で室温30分間固定し、PBSで洗浄し、0.1%トライトン-Xを用いて15分間透過性化し、その後1%FBSを用いてさらに15分間インキュベーションし、抗ミオシン重鎖(1:300)を用いたインキュベーションが続き、TRITC結合(NRVM)またはFITC結合(ARVM)二次抗体で可視化した。ARVMはKr/Arレーザーを有するMRC600共焦点顕微鏡を用いて検査される。
【0133】
rhGGF2と比較して、rhNRG-2αおよびrhNRG-2βの心筋細胞に対するインビトロ活性を評価した。(タンパク質合成を測定することによりモニターされるように)細胞肥大に関する研究、ならびにp42/44 MAPKおよびAktを含むシグナル伝達経路の活性化が実施された(図17および図18)。1日齢新生児ラット心室から単離された新生児ラット心室筋細胞は、約80,000細胞/ウェルで10%FCS中に、24時間、24ウェル組織培養プレート中にプレーティングされ、その後血清を一晩除去した。細胞を、3H-ロイシン存在下で24時間、組換えニューレグリンで処理した。細胞タンパク質を5%TCAを用いて沈殿し、0.4N NaOHを用いて溶解した。3H-ロイシン取り込みはシンチレーション計数器を用いて測定され、未処理細胞における平均計数により分割された、同一に処理された4ウェルの平均として提示された。新生児ラット心室筋細胞は、約2〜300万細胞/プレートで10%FCS中に、p100s中に24時間プレーティングされ、その後血清を24時間除去した。細胞を、組換えニューレグリンで10分間処理し、その後プロテアーゼおよびフォスファターゼ阻害剤(ニューイングランドバイオラボ)を含む緩衝液で溶解した。70μgのタンパク質を表す試料を10%ゲル(バイオラッド)上で泳動し、ニューイングランドバイオラボのリン酸化特異的抗体を用いてリン酸化ErkまたはAtkを検出するために、PVDF膜上に転写した。rhGGF2およびrhNRG-2βの両方は、検査された全ての濃度において約40%タンパク質合成を増加させた。しかしながら、rhNRG-2αは試験された濃度では、タンパク質合成に対する効果を有さなかった。示されているブロット(図17)は2個の別個の実験の代表である。
【0134】
これらの結果は、NRG2シグナル伝達が、心筋小柱形成の間および形成後の両方において、心筋細胞の増殖、生存および成長を促進するように作用する可能性があることを示している。さらに、生後および成体の心臓におけるNRG受容体の持続は、生理学的ストレスまたは傷害に対する心筋の適応においてニューグレリンに関して持続性の役割を示唆する。
【0135】
実施例13
細胞生存アッセイ法およびアポトーシスの検出
細胞生存度は、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT、シグマ)細胞呼吸アッセイ法により決定される。無血清培地中で2日後の初代培養NRVMを、異なる濃度のrhNRG-2α、rhNRG-2βまたはrhGGF2を用いて、4または6日のいずれかの間刺激する。ARVMを、ACCTT培地、または異なる濃度のrhNRG-2α、rhNRG-2βもしくはrhGGF2を添加したACCTT培地中で6日間維持する。MTTはその後細胞とともに37℃3時間インキュベーションされる。生存細胞はテトラゾリウム環を、ジメチルスルホキシドを用いた細胞溶解の後、570nmの光学的密度を読み取ることにより定量化可能な濃青色のホルマザン結晶に変換する。
【0136】
アポトーシスは、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)を介するdUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイ法を用いて、新生児および成体の筋細胞において検出される。フルオレセイン結合dUTPを用いたDNAの3'末端標識は、製造元の指示書にしたがって、インサイチュー細胞死検出キット(ベーリンガーマンハイム)を用いて実施される。細胞は上述のように、抗MHC抗体を用いて対比染色され、核はまた、ヘキスト33258(10 ( M、シグマ)を用いて5分間染色される。500超の筋細胞が各カバースリップにおいて計数され、TUNEL陽性筋細胞の割合(%)が計算される。
【0137】
他の態様
本明細書において言及される全ての刊行物および特許出願は、各々の独立した刊行物または特許出願があたかも具体的におよび個別に参照として組み入れられるように指示されているのと同様に、参照として本明細書に組み入れられる。
【0138】
本発明は、その特定の態様に関連して記載されているが、さらなる修飾が可能であることが理解されると思われ、本出願は、一般的には本発明の原則に従って、且つ本発明が関連する技術分野内の既知のまたは習慣的な実施内にある、本発明の開示からのそのような逸脱を含む、本発明の任意の変動、使用または適応を含むことを意図し、本明細書において以前に開示された重要な特徴に適用されてもよく、添付の特許請求の範囲にしたがうものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の有糸分裂誘発、生存、成長、または分化を増大させる方法であって、該細胞の有糸分裂誘発、生存、成長、または分化を増大させるのに有効量のNRG-2ポリペプチドを該細胞へ投与する段階を含み、該細胞がNRG-2ポリペプチドに対して選択性であるerbB受容体を発現している方法。
【請求項2】
erbB受容体が、erbB4ホモダイマー、erbB2/erbB4ヘテロダイマー、およびerbB1/erbB3ヘテロダイマーからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
細胞が、神経系細胞(neuronal cell)および神経前駆細胞からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
細胞が神経関連細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
神経関連細胞が、シュワン細胞、星状膠細胞、希突起膠細胞、O-2A前駆細胞、グリア細胞、小グリア細胞、嗅球鞘性細胞、および感覚器細胞からなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
細胞が筋細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
筋細胞が、筋芽細胞、衛星細胞、ミオサイト、骨格筋細胞、平滑筋細胞、および心筋細胞からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
グリア細胞を組換えNRG-2ポリペプチドと接触させる段階を含む、グリア細胞の有糸分裂誘発を刺激する方法。
【請求項9】
グリア細胞が、希突起膠細胞、小グリア細胞、髄鞘形成しているグリア細胞、嗅球鞘性細胞、および成体のグリア細胞からなる群より選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
グリア細胞をNRG-2ポリペプチドと接触させる段階を含むグリア細胞による神経系細胞の髄鞘形成を誘導する方法であって、該接触段階が該グリア細胞による該神経系細胞の髄鞘形成を誘導するのに十分である方法。
【請求項11】
心筋細胞(cardiomyocyte)の生存、心筋細胞の増殖、心筋細胞の成長、または心筋細胞の分化をそれが必要な哺乳類において増大させる方法であって、心筋細胞の生存、心筋細胞の増殖、心筋細胞の成長、または心筋細胞の分化を増大させるのに有効量のNRG-2ポリペプチドを該哺乳類へ投与する段階を含む方法。
【請求項12】
哺乳類がヒトである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
哺乳類が心筋に影響を及ぼす病態生理学的状態を有する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
状態が心筋症または虚血性損傷である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
心筋症が先天性変性疾患である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
状態が心臓外傷または心不全である、請求項13記載の方法。
【請求項17】
哺乳類が平滑筋に影響を及ぼす病態生理学的状態を有する、請求項11記載の方法。
【請求項18】
状態が、アテローム硬化症、血管病変、血管高血圧、および先天性変性血管疾患からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
哺乳類が重症筋無力症に罹患した患者である、請求項11記載の方法。
【請求項20】
NRG-2ポリペプチドを該哺乳類へ投与する段階を含む、哺乳類における神経関連細胞と神経系細胞の間の細胞の情報伝達に影響を及ぼす方法であって、ニューレグリンが該神経関連細胞と相互作用し、結果として該神経関連細胞により少なくとも1種の神経栄養性物質を生じ、かつ1種または複数の神経栄養性物質が、該神経系細胞の有糸分裂誘発、生存、成長、分化、または神経突起伸長に影響を及ぼす方法。
【請求項21】
哺乳類がヒトである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
神経関連細胞が、シュワン細胞、星状膠細胞、希突起膠細胞、O-2A前駆細胞、グリア細胞、嗅球鞘性細胞、小グリア細胞、感覚器細胞、および筋細胞からなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項23】
筋細胞が、骨格筋細胞、平滑筋細胞、および心筋細胞からなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
細胞の情報伝達に影響を及ぼす段階が、哺乳類の中枢神経系内で行われる、請求項20記載の方法。
【請求項25】
細胞の情報伝達に影響を及ぼす段階が、哺乳類の末梢神経系内で行われる、請求項20記載の方法。
【請求項26】
投与段階が、精製されたNRG-2ポリペプチド産生細胞を投与する段階を含む、請求項20記載の方法。
【請求項27】
哺乳類の神経系の病態生理学的状態を治療または予防する方法であって、治療的有効量の組換えNRG-2ポリペプチドを該哺乳類へ投与する段階を含む方法。
【請求項28】
病態生理学的状態が末梢神経系の状態である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
病態生理学的状態が中枢神経系の状態である、請求項27記載の方法。
【請求項30】
病態生理学的状態が、神経細胞の脱髄、シュワン細胞の損傷、シュワン細胞の喪失、および神経変性障害からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項31】
病態生理学的状態が末梢ニューロパシーである、請求項27記載の方法。
【請求項32】
ニューロパシーが感覚神経線維ニューロパシーである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
ニューロパシーが運動神経線維および感覚神経線維ニューロパシーである、請求項31記載の方法。
【請求項34】
ニューロパシーが運動神経線維ニューロパシーである、請求項31記載の方法。
【請求項35】
治療または予防が、神経再生または神経修復を必要とする、請求項27記載の方法。
【請求項36】
病態生理学的状態が多発性硬化症である、請求項27記載の方法。
【請求項37】
病態生理学的状態が、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、神経損傷、アルツハイマー病、パーキンソン病、小脳性運動失調症、および脊髄損傷からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項38】
NRG-2ポリペプチドが神経関連細胞と相互作用し、結果として該神経関連細胞により少なくとも1種の神経栄養性物質を生じ、かつ1種または複数の神経栄養性物質が、神経系細胞の有糸分裂活性、生存、分化または神経突起伸長に影響を及ぼす、請求項27記載の方法。
【請求項39】
投与段階が、グリア細胞による神経系細胞の髄鞘形成を誘導するのに十分である、請求項27記載の方法。
【請求項40】
グリア細胞が、シュワン細胞または希突起膠細胞である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
投与段階が、精製されたNRG-2ポリペプチド産生細胞を該哺乳類へ投与する段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項42】
NRG-2ポリペプチド産生細胞が組換えDNA配列を含み、該DNA配列がNRG-2ポリペプチドコード配列を含み、かつ該NRG-2ポリペプチドコードDNA配列がプロモーターに機能的に連結されている、請求項26または41記載の方法。
【請求項43】
腫瘍を治療する方法であって、腫瘍細胞の増殖を阻害する段階を含み、該阻害段階が、NRG-2ポリペプチドと該腫瘍細胞の表面に存在する受容体との結合を阻害する有効量の抗体をそれを必要とする対象へ投与する段階を含む方法。
【請求項44】
腫瘍細胞が、NRG-2ポリペプチドについて選択性であるerbB受容体を発現している、請求項43記載の方法。
【請求項45】
腫瘍がグリア細胞腫である、請求項43記載の方法。
【請求項46】
神経線維腫の治療法であって、グリア細胞有糸分裂誘発を阻害する段階を含み、該阻害段階が、神経線維腫の個体においてグリア細胞腫の細胞の表面に存在する受容体とNRG-2ポリペプチドとの結合を阻害する有効量の抗体をそれを必要とする対象へ投与する段階を含む方法。
【請求項47】
細胞増殖を阻害する方法であって、該細胞の表面に存在する受容体とNRG-2ポリペプチドとの結合を阻害する有効量の抗体と該細胞とを接触させる段階を含む方法。
【請求項48】
細胞増殖を刺激する方法であって、NRG-2ポリペプチドを該細胞へ投与する段階を含む方法。
【請求項49】
細胞が、神経系細胞、神経関連細胞、および筋細胞からなる群より選択される、請求項47または48記載の方法。
【請求項50】
NRG-2ポリペプチドが、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1、8、10、11、20、27、43、46、47、または48記載の方法。
【請求項51】
NRG-2ポリペプチドが、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1、8、10、11、20、27、43、46、47、または48記載の方法。
【請求項52】
NRG-2ポリペプチドが、配列番号:1または3に記載の核酸配列によりコードされる、請求項1、8、10、11、20、27、43、46、47、または48記載の方法。
【請求項53】
配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含む、実質的に純粋なNRG-2ポリペプチド。
【請求項54】
配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなる、実質的に純粋なNRG-2ポリペプチド。
【請求項55】
配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする配列を含む、実質的に純粋な核酸分子。
【請求項56】
配列番号:1または3に記載の核酸配列と実質的に同一の核酸配列を含む、実質的に純粋な核酸分子。
【請求項57】
配列番号:1または3に記載の核酸配列からなる、実質的に純粋な核酸分子。
【請求項58】
配列番号:1または3に記載の核酸配列のコード鎖配列に対しアンチセンスである配列、またはそれらの断片を含む、核酸分子。
【請求項59】
プロモーターに機能的に連結された、請求項55記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項60】
遺伝子治療用ベクターである、請求項59記載のベクター。
【請求項61】
請求項60記載のベクターを含む細胞。
【請求項62】
請求項55記載の核酸分子を含む、非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項63】
配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むNRG-2ポリペプチドをコードする一方または両方の対立遺伝子に、ノックアウト変異を有する、非ヒト動物。
【請求項64】
請求項63記載の非ヒト動物由来の細胞。
【請求項65】
配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むNRG-2ポリペプチドに特異的に結合する抗体。
【請求項66】
試料中のNRG-2ポリペプチドの存在を検出する方法であって、該試料と請求項65記載の抗体とを接触させ、且つ該抗体と該ポリペプチドとの結合についてアッセイする段階を含む方法。
【請求項67】
被験対象におけるNRG-2に関連する疾患または状態の発症の可能性の増大を診断する方法であって、該被検対象が配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むNRG-2ポリペプチドをコードするNRG-2遺伝子の変異を含むか否かを決定するために、該被験対象の核酸分子を分析する段階を含み、この変異の存在が該被験対象がNRG-2関連疾患の発症の可能性の増大を有することの指標である方法。
【請求項68】
被験対象がヒトである、請求項67記載の方法。
【請求項69】
被験対象のNRG-2ポリペプチドの分析のための分析キットであって、請求項65記載の抗体を含むキット。
【請求項1】
細胞の有糸分裂誘発、生存、成長、または分化を増大させる方法であって、該細胞の有糸分裂誘発、生存、成長、または分化を増大させるのに有効量のNRG-2ポリペプチドを該細胞へ投与する段階を含み、該細胞がNRG-2ポリペプチドに対して選択性であるerbB受容体を発現している方法。
【請求項2】
erbB受容体が、erbB4ホモダイマー、erbB2/erbB4ヘテロダイマー、およびerbB1/erbB3ヘテロダイマーからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
細胞が、神経系細胞(neuronal cell)および神経前駆細胞からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
細胞が神経関連細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
神経関連細胞が、シュワン細胞、星状膠細胞、希突起膠細胞、O-2A前駆細胞、グリア細胞、小グリア細胞、嗅球鞘性細胞、および感覚器細胞からなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
細胞が筋細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
筋細胞が、筋芽細胞、衛星細胞、ミオサイト、骨格筋細胞、平滑筋細胞、および心筋細胞からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
グリア細胞を組換えNRG-2ポリペプチドと接触させる段階を含む、グリア細胞の有糸分裂誘発を刺激する方法。
【請求項9】
グリア細胞が、希突起膠細胞、小グリア細胞、髄鞘形成しているグリア細胞、嗅球鞘性細胞、および成体のグリア細胞からなる群より選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
グリア細胞をNRG-2ポリペプチドと接触させる段階を含むグリア細胞による神経系細胞の髄鞘形成を誘導する方法であって、該接触段階が該グリア細胞による該神経系細胞の髄鞘形成を誘導するのに十分である方法。
【請求項11】
心筋細胞(cardiomyocyte)の生存、心筋細胞の増殖、心筋細胞の成長、または心筋細胞の分化をそれが必要な哺乳類において増大させる方法であって、心筋細胞の生存、心筋細胞の増殖、心筋細胞の成長、または心筋細胞の分化を増大させるのに有効量のNRG-2ポリペプチドを該哺乳類へ投与する段階を含む方法。
【請求項12】
哺乳類がヒトである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
哺乳類が心筋に影響を及ぼす病態生理学的状態を有する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
状態が心筋症または虚血性損傷である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
心筋症が先天性変性疾患である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
状態が心臓外傷または心不全である、請求項13記載の方法。
【請求項17】
哺乳類が平滑筋に影響を及ぼす病態生理学的状態を有する、請求項11記載の方法。
【請求項18】
状態が、アテローム硬化症、血管病変、血管高血圧、および先天性変性血管疾患からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
哺乳類が重症筋無力症に罹患した患者である、請求項11記載の方法。
【請求項20】
NRG-2ポリペプチドを該哺乳類へ投与する段階を含む、哺乳類における神経関連細胞と神経系細胞の間の細胞の情報伝達に影響を及ぼす方法であって、ニューレグリンが該神経関連細胞と相互作用し、結果として該神経関連細胞により少なくとも1種の神経栄養性物質を生じ、かつ1種または複数の神経栄養性物質が、該神経系細胞の有糸分裂誘発、生存、成長、分化、または神経突起伸長に影響を及ぼす方法。
【請求項21】
哺乳類がヒトである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
神経関連細胞が、シュワン細胞、星状膠細胞、希突起膠細胞、O-2A前駆細胞、グリア細胞、嗅球鞘性細胞、小グリア細胞、感覚器細胞、および筋細胞からなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項23】
筋細胞が、骨格筋細胞、平滑筋細胞、および心筋細胞からなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
細胞の情報伝達に影響を及ぼす段階が、哺乳類の中枢神経系内で行われる、請求項20記載の方法。
【請求項25】
細胞の情報伝達に影響を及ぼす段階が、哺乳類の末梢神経系内で行われる、請求項20記載の方法。
【請求項26】
投与段階が、精製されたNRG-2ポリペプチド産生細胞を投与する段階を含む、請求項20記載の方法。
【請求項27】
哺乳類の神経系の病態生理学的状態を治療または予防する方法であって、治療的有効量の組換えNRG-2ポリペプチドを該哺乳類へ投与する段階を含む方法。
【請求項28】
病態生理学的状態が末梢神経系の状態である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
病態生理学的状態が中枢神経系の状態である、請求項27記載の方法。
【請求項30】
病態生理学的状態が、神経細胞の脱髄、シュワン細胞の損傷、シュワン細胞の喪失、および神経変性障害からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項31】
病態生理学的状態が末梢ニューロパシーである、請求項27記載の方法。
【請求項32】
ニューロパシーが感覚神経線維ニューロパシーである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
ニューロパシーが運動神経線維および感覚神経線維ニューロパシーである、請求項31記載の方法。
【請求項34】
ニューロパシーが運動神経線維ニューロパシーである、請求項31記載の方法。
【請求項35】
治療または予防が、神経再生または神経修復を必要とする、請求項27記載の方法。
【請求項36】
病態生理学的状態が多発性硬化症である、請求項27記載の方法。
【請求項37】
病態生理学的状態が、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、神経損傷、アルツハイマー病、パーキンソン病、小脳性運動失調症、および脊髄損傷からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項38】
NRG-2ポリペプチドが神経関連細胞と相互作用し、結果として該神経関連細胞により少なくとも1種の神経栄養性物質を生じ、かつ1種または複数の神経栄養性物質が、神経系細胞の有糸分裂活性、生存、分化または神経突起伸長に影響を及ぼす、請求項27記載の方法。
【請求項39】
投与段階が、グリア細胞による神経系細胞の髄鞘形成を誘導するのに十分である、請求項27記載の方法。
【請求項40】
グリア細胞が、シュワン細胞または希突起膠細胞である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
投与段階が、精製されたNRG-2ポリペプチド産生細胞を該哺乳類へ投与する段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項42】
NRG-2ポリペプチド産生細胞が組換えDNA配列を含み、該DNA配列がNRG-2ポリペプチドコード配列を含み、かつ該NRG-2ポリペプチドコードDNA配列がプロモーターに機能的に連結されている、請求項26または41記載の方法。
【請求項43】
腫瘍を治療する方法であって、腫瘍細胞の増殖を阻害する段階を含み、該阻害段階が、NRG-2ポリペプチドと該腫瘍細胞の表面に存在する受容体との結合を阻害する有効量の抗体をそれを必要とする対象へ投与する段階を含む方法。
【請求項44】
腫瘍細胞が、NRG-2ポリペプチドについて選択性であるerbB受容体を発現している、請求項43記載の方法。
【請求項45】
腫瘍がグリア細胞腫である、請求項43記載の方法。
【請求項46】
神経線維腫の治療法であって、グリア細胞有糸分裂誘発を阻害する段階を含み、該阻害段階が、神経線維腫の個体においてグリア細胞腫の細胞の表面に存在する受容体とNRG-2ポリペプチドとの結合を阻害する有効量の抗体をそれを必要とする対象へ投与する段階を含む方法。
【請求項47】
細胞増殖を阻害する方法であって、該細胞の表面に存在する受容体とNRG-2ポリペプチドとの結合を阻害する有効量の抗体と該細胞とを接触させる段階を含む方法。
【請求項48】
細胞増殖を刺激する方法であって、NRG-2ポリペプチドを該細胞へ投与する段階を含む方法。
【請求項49】
細胞が、神経系細胞、神経関連細胞、および筋細胞からなる群より選択される、請求項47または48記載の方法。
【請求項50】
NRG-2ポリペプチドが、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1、8、10、11、20、27、43、46、47、または48記載の方法。
【請求項51】
NRG-2ポリペプチドが、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1、8、10、11、20、27、43、46、47、または48記載の方法。
【請求項52】
NRG-2ポリペプチドが、配列番号:1または3に記載の核酸配列によりコードされる、請求項1、8、10、11、20、27、43、46、47、または48記載の方法。
【請求項53】
配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含む、実質的に純粋なNRG-2ポリペプチド。
【請求項54】
配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなる、実質的に純粋なNRG-2ポリペプチド。
【請求項55】
配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする配列を含む、実質的に純粋な核酸分子。
【請求項56】
配列番号:1または3に記載の核酸配列と実質的に同一の核酸配列を含む、実質的に純粋な核酸分子。
【請求項57】
配列番号:1または3に記載の核酸配列からなる、実質的に純粋な核酸分子。
【請求項58】
配列番号:1または3に記載の核酸配列のコード鎖配列に対しアンチセンスである配列、またはそれらの断片を含む、核酸分子。
【請求項59】
プロモーターに機能的に連結された、請求項55記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項60】
遺伝子治療用ベクターである、請求項59記載のベクター。
【請求項61】
請求項60記載のベクターを含む細胞。
【請求項62】
請求項55記載の核酸分子を含む、非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項63】
配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むNRG-2ポリペプチドをコードする一方または両方の対立遺伝子に、ノックアウト変異を有する、非ヒト動物。
【請求項64】
請求項63記載の非ヒト動物由来の細胞。
【請求項65】
配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むNRG-2ポリペプチドに特異的に結合する抗体。
【請求項66】
試料中のNRG-2ポリペプチドの存在を検出する方法であって、該試料と請求項65記載の抗体とを接触させ、且つ該抗体と該ポリペプチドとの結合についてアッセイする段階を含む方法。
【請求項67】
被験対象におけるNRG-2に関連する疾患または状態の発症の可能性の増大を診断する方法であって、該被検対象が配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を含むNRG-2ポリペプチドをコードするNRG-2遺伝子の変異を含むか否かを決定するために、該被験対象の核酸分子を分析する段階を含み、この変異の存在が該被験対象がNRG-2関連疾患の発症の可能性の増大を有することの指標である方法。
【請求項68】
被験対象がヒトである、請求項67記載の方法。
【請求項69】
被験対象のNRG-2ポリペプチドの分析のための分析キットであって、請求項65記載の抗体を含むキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−63069(P2013−63069A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−229715(P2012−229715)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【分割の表示】特願2001−585810(P2001−585810)の分割
【原出願日】平成13年5月23日(2001.5.23)
【出願人】(399032949)スネス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【分割の表示】特願2001−585810(P2001−585810)の分割
【原出願日】平成13年5月23日(2001.5.23)
【出願人】(399032949)スネス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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