説明

O−キシレンおよび関連化合物のニトロ化方法

o−キシレンなどの芳香族化合物が、ポリリン酸および大細孔酸性ゼオライトまたは大細孔疎水性モレキュラーシーブの存在下に硝酸によって選択的にニトロ化される。これは、芳香族化合物のパラ位が選択的にニトロ化される、環境に優しく、商業的に実現可能な高変換率の方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2009年8月28日出願の米国特許仮出願第61/237,998号に基づく優先権を主張し、この仮出願の利益を主張するものであり、この仮出願は、この参照によりすべての目的についてその全体が本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本開示は、種々の工業材料の合成における中間体として使用することができる化合物を生成するためのo−キシレンなどの芳香族化合物のニトロ化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
芳香族化合物のニトロ化によって、ニトロベンゼン、ニトロトルエン、ニトロキシレン、ニトロクロロベンゼン、および他の芳香族ニトロ化合物などの多数の大量の化学物質が生成される。これらのような化合物は、芳香族ジアミン、爆薬、染料、医薬品、香料、殺虫剤、除草剤(発芽前除草剤など)、繊維系、および多くの特殊化学製品の重要な前駆体および中間体である。
【0004】
芳香族炭化水素のニトロ化は、典型的には硝酸と硫酸の混合物を用いて液相中で実施されてきた。しかし、反応はあまり選択的ではなく、パラ異性体のほうが、商業的に望まれている異性体である場合(例えば、4−ニトロ−o−キシレンが3−ニトロ−o−キシレンより望まれている場合)には、特に問題である。従来のニトロ化方法では、しばしば過ニトロ化に至り、または酸化された副生成物になる。さらに、水(溶液)で後処理することがしばしば必要になり、リサイクルすることができない大量の希薄酸廃水流が生成することになる。これによって、高価で大々的な分離および精製ステップならびに廃棄物の処理が必要になる。
【0005】
したがって、この数十年間に、農芸化学工業、特殊化学工業および製薬工業において、より清浄で、より安全でかつ/またはより有効なニトロ化方法を開発することによってこのような問題を克服しようとする試みが協力してなされた。このような試みは、例えば
硫酸、無水酢酸、ポリリン酸を含有する混酸(特許文献1に記述);
ゼオライトなどの固体酸触媒(特許文献2に記述);および
メソポーラスモレキュラーシーブMCM−48担持固体超酸SO42−/ZrO[非特許文献1に記述]
を使用する方法を含むものであった。特許文献3には、芳香族ニトロ化合物を調製する単一酸プロセスが開示されている。この方法においては、芳香族炭化水素を、液相中、金属イオン交換粘土触媒の存在下に発煙硝酸を使用してニトロ化する。ただし、金属イオンは、La3+、Cu2+、またはFe3+である。
【0006】
残念なことに、上記のような方法は、4−ニトロ−o−キシレンへの低変換率、低位置選択率、または望ましくない副生成物の大量生成が、あまりにも相当な程度および/またはあまりにもきわめて頻繁であるので、それらの商業価値が目減りすることを特徴とする。特許文献3では、例えば実施例10(表3)のo−キシレンのニトロ化において、3−ニトロ−o−キシレンに優先して4−ニトロ−o−キシレンの最も高い選択率は、変換率56.8%で53対47であると報告されている。
【0007】
したがって、芳香族化合物を高変換率で選択的にニトロ化する、環境に優しく商業的に実現可能な方法が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭47/047,370号公報
【特許文献2】Manoranjanら、インド特許出願第2001DE01308(A)号明細書
【特許文献3】米国特許第6,376,726号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Xiら、Huagong Jinzhan、25巻(12号)、1419〜1422頁(2006年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態において、本開示は、次式Iの構造で表わされるニトロ化生成物:
【化1】

[式中、Xはそれぞれ独立に、C〜C20ヒドロカルビル基、ハロゲン、ハロゲン化C〜C20ヒドロカルビル基、カルボン酸基、またはニトリル基である]の調製方法であって、
(a)反応混合物中、次式IIの構造で表わされる基質化合物:
【化2】

とポリリン酸を、(i)Si/Alのモル比が約5以上である大細孔酸性ゼオライト、および(ii)ケイ素含有量が約35質量%を超える大細孔疎水性モレキュラーシーブから選択される触媒材料の存在下に接触させるステップであって、触媒材料の質量と基質化合物の質量の比が、約1/99から約25/75の範囲であり、かつ式IIにおけるXが、式Iで上述した通りであるステップと、
(b)硝酸を反応混合物に添加して、その中で(i)硝酸と基質化合物の(100%硝酸を基準とする)モル比を約1/1から約1/1.5の範囲にし、かつ(ii)硝酸とポリリン酸の質量比を約15/85から約40/60の範囲にして、ニトロ化生成物を生成するステップと
を含む方法を対象にする。
【0011】
代替実施形態において、本明細書の方法は、次式I(a)の構造で表わされるニトロ化生成物:
【化3】

[式中、2つのXは同一でなく、Xはそれぞれ独立に、C〜C20ヒドロカルビル基、ハロゲン、ハロゲン化C〜C20ヒドロカルビル基、カルボン酸基、またはニトリル基である]を、
(a)反応混合物中、次式IIIの構造で表わされる基質化合物:
【化4】

とポリリン酸を、(i)Si/Alのモル比が約5以上である大細孔酸性ゼオライト、および(ii)ケイ素含有量が約35質量%を超える大細孔疎水性モレキュラーシーブから選択される触媒材料の存在下に接触させるステップであって、触媒材料の質量と基質化合物の質量の比が、約1/99から約25/75の範囲であり、かつ式IIIにおけるXおよびYが、式I(a)で上述した通り同一でない2つのXを表すステップと、
(b)硝酸を反応混合物に添加して、その中で(i)硝酸と基質化合物の(100%硝酸を基準とする)モル比を約1/1から約1/1.5の範囲にし、かつ(ii)硝酸とポリリン酸の質量比を約15/85から約40/60の範囲にして、ニトロ化生成物を生成するステップと
によって調製する方法を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書の方法の一実施形態は、次式Iの構造で表わされるニトロ化生成物
【化5】

[式中、Xはそれぞれ独立に、C〜C20ヒドロカルビル基、ハロゲン、ハロゲン化C〜C20ヒドロカルビル基、カルボン酸基、またはニトリル基である]を、
(a)反応混合物中、次式IIの構造で表わされる基質化合物:
【化6】

とポリリン酸を、(i)Si/Alのモル比が約5以上である大細孔酸性ゼオライト、および(ii)ケイ素含有量が約35質量%を超える大細孔疎水性モレキュラーシーブから選択される触媒材料の存在下に接触させるステップであって、触媒材料の質量と基質化合物の質量の比が、約1/99から約25/75の範囲であり、かつ式IIにおけるXが、式Iで上述した通りであるステップと、
(b)硝酸を反応混合物に添加して、その中で(i)硝酸と基質化合物の(100%硝酸を基準とする)モル比を約1/1から約1/1.5の範囲にし、かつ(ii)硝酸とポリリン酸の質量比を約15/85から約40/60の範囲にして、ニトロ化生成物を生成するステップと
によって調製する方法を対象にする。
【0013】
式Iに関連して上述されたC〜C20ヒドロカルビル基は、反応に不活性であり、触媒の作用に干渉しない、炭素と水素しか含まない1価の基である。ハロゲン化するヒドロカルビル基は、1つまたは複数のハロゲン原子(F、Cl、BrまたはIなど)を含有するヒドロカルビル基である。本明細書の一実施形態において、Xは、C〜C12ヒドロカルビル基、またはC〜C10ヒドロカルビル基、またはC〜Cヒドロカルビル基、またはC〜Cヒドロカルビル基である。本明細書の別の実施形態において、XはCHである。本明細書のもう一つの実施形態において、Xは、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、またはC12ヒドロカルビル基である。本明細書のもう一つの実施形態において、Xは、フッ素化メチル、エチル、プロピル、またはブチル基など、フッ素化、塩素化、または臭素化されたC〜C12、C〜C10、C〜C、またはC〜Cヒドロカルビル基である。
【0014】
本明細書の方法の第1のステップにおいて、基質化合物(o−キシレンまたはその誘導体)を、触媒材料の存在下にポリリン酸(「PPA」)」と接触させる。ポリリン酸とは、化合物:
【化7】

を指すものである。ポリリン酸は、異なる2つの組成:105%および115%で市販されている。ポリリン酸の%値は、そのHPO含有量を指す(すなわち、100グラムの115%PPAは115グラムのHPOを含有し、100グラムの105%PPAは105グラムのHPOを含有する)。105%または115%の強度のPPAを、本明細書の方法で使用することができる。
【0015】
基質化合物とPPAは触媒材料の存在下に接触させるが、その触媒材料は、(i)Si/Al比が約5以上である大細孔酸性ゼオライト、もしくは(ii)ケイ素含有量が約35質量%を超える大細孔疎水性モレキュラーシーブのどちらかまたは両方とすることができる。触媒材料は、触媒として作用するものの、化学的に変化させたいかなる形でも反応に関与するものではない。それにもかかわらず、反応の1つまたは複数のパラメータを変更して、それによって生成物生成を向上させると考えられる。
【0016】
触媒材料は、典型的には基質化合物と触媒材料を合算した質量の約1%から約25%に及ぶ質量で使用される。すなわち、触媒材料の質量と基質化合物の質量の比が、約1/99から約25/75の範囲である。別の実施形態において、触媒材料は、触媒材料と基質化合物を合算した質量の約5%から約20%に及ぶ質量で使用され、これは、約5/95から約20/80の質量比として表すこともできる。
【0017】
本明細書における触媒としての使用に適したゼオライトは通常、次式MO・Al・xSiO・yHO[式中、Mは原子価nのカチオンであり、xは約2以上であり、yは、ゼオライトの多孔度および水和状態によって決まる数、通常約2から約8までの数である]で表わすことができる。天然ゼオライトにおいて、Mは、通常おおよその地球化学的存在度を反映する割合で存在するNa、Ca、K、Mg、およびBaで主に表わされる。カチオンMは、構造に緩く結合しており、従来のイオン交換によって、頻繁に他のカチオンで完全または部分置換することができる。
【0018】
ゼオライト骨格構造は、頂点結合した四面体であり、AlまたはSi原子が四面体の中心にあり、酸素原子が頂点に存在する。このような四面体は、4員環、6員環、8員環、10員環、および12員環の様々な組合せを含む輪郭のはっきりした反復構造として組み合わされる。得られる骨格構造は、規則的なチャネルおよびケージの細孔ネットワークであり、分離にとって有用である。細孔径は、ゼオライトのチャネルまたはケージを形成するアルミノケイ酸塩四面体の幾何形状によって決まり、公称開口は、6員環では約0.26nmであり、8員環では約0.40nm、10員環では約0.55nm、12員環では約0.74nm(これらの数は、酸素の場合のイオン半径を呈する)。8員環、10員環、および12員環である、最大細孔を有するゼオライトは、それぞれ小細孔、中細孔、および大細孔ゼオライトとみなされることが多い。ゼオライトにおいて、用語「ケイ素とアルミニウムの比」または等しく「Si/Al比」は、ケイ素原子とアルミニウム原子の比を意味する。
【0019】
細孔径は、触媒および分離用途においてこれらの材料の性能にとって決定的に重要である。というのは、この特性によって、ある特定のサイズの分子がゼオライト骨格を出入りできるかどうか決まるからである。実際には、環の大きさの非常にわずかな低減によって、特定の分子種のゼオライト構造を通過する動きを効果的に妨げるまたはブロックできることが観察された。
【0020】
ゼオライトの内部へのアクセスを制御する有効細孔径は、細孔開口を形成する四面体の幾何学的寸法だけでなく、細孔の中または近くにおけるイオンの有無によって決まる。例えば、A型ゼオライトの場合は、アクセスが、8員環開口および6員環開口の中または近くに位置しているNaまたはKなどの1価イオンによって制限され得る。アクセスは、6員環開口の中または近くに位置しているCa2+などの2価イオンによって向上させることができる。したがって、A型ゼオライトのカリウム塩およびナトリウム塩はそれぞれ、約0.3nmおよび約0.4nmの有効細孔開口を示すが、ゼオライトAのカルシウム塩は、約0.5nmの有効細孔開口を有する。細孔、チャネル、および/またはケージの中または近くにおけるイオンの有無は、材料を収着するためのゼオライトのアクセス可能な細孔容積を大幅に改変することもできる。
【0021】
本明細書における使用に適したゼオライトの代表例としては、(i)NaA(LTA)、CaA(LTA)、毛沸石(ERI)、Rho(RHO)、ZK−5(KFI)、斜方沸石(CHA)などの小細孔ゼオライト;(ii)ZSM−5(MFI)、ZSM−11(MEL)、ZSM−22(TON)、ZSM−48などの中細孔ゼオライト;および(iii)ゼオライトβ(BEA)、フォージャサイト(FAU)、モルデナイト(MOR)、ゼオライトL(LTL)、NaX(FAU)、NaY(FAU)、DA−Y(FAU)、CaY(FAU)などの大細孔ゼオライトが挙げられる。括弧内の文字は、ゼオライトの骨格構造型を示す。
【0022】
本明細書における使用に適したゼオライトとしては、限定されるものではないが、ケイ素とアルミニウムの比が高いフォージャサイト、β、およびモルデナイト型ゼオライトを含めて、大細孔酸性疎水性ゼオライトが挙げられる。大細孔ゼオライトは、孔径が約0.65から約0.75nmの12員環からなる骨格構造を有する。疎水性ゼオライトは、一般にSi/Al比が約5以上であり、疎水性は、一般にSi/Al比が増加するにつれて増大する。
【0023】
Si/Al比の高いゼオライトは、当技術分野において公知である方法を用いて、合成により、または高アルミナ含有ゼオライトの改変により調製することができる。これらの方法としては、限定されるものではないが、SiClまたは(NHSiFで処理して、AlをSiで置換する方法、および水蒸気と、続いて酸で処理する方法が挙げられる。例えば、このような目的に適したSiCl処理は、Blatterによって記載されている[J.Chem.Ed.、67巻、(1990年)、519頁]。このような目的に適した(NHSiF処理は、米国特許第4,503,023号明細書に記載されている。これらの処理は一般に、Y型ゼオライトやモルデナイト型ゼオライトなどのゼオライトのSi/Al比を増加させる上できわめて有効である。さらに、国際公開第00/51940号明細書には、水蒸気中でゼオライトを、ゼオライトの流れパターンに対して乱流条件下に650から1000℃の間の温度でか焼することによって、Si/Al比の高いゼオライトを調製する方法が記載されている。アルミニウム原子が骨格中に存在することによって、親水性部位が生じる。これらの骨格アルミニウム原子を除去すると、水吸着の低下が認められ、材料は、より疎水性になり、一般により有機親和性になる。ゼオライトにおける疎水性特性は、Chenによってさらに記述されている[J.Phys.Chem.、80巻、(1976年)、60頁]。一般に、高Si/Al含有ゼオライトは、より高い熱および酸安定性を示す。
【0024】
酸性型ゼオライトは、アンモニウム交換と、その後に続くか焼、または鉱酸またはイオン交換体を使用した、アルカリイオンからプロトンへの直接交換を含めて、種々の技法で調製することができる。酸性型ゼオライトは、Dwyer、「Zeolite,Structure,Composition and Catalysis」、Chemistry and Industry、1984年4月2日にさらに記述されている。
【0025】
あるタイプのモレキュラーシーブは、そのゼオライトがサブタイプであれば、本明細書の方法において触媒材料として使用することもできる。ゼオライトはアルミノケイ酸塩であり、一方モレキュラーシーブは、アルミニウムおよびケイ素の代わりに他の元素を含有するが、類似構造をとる。上述された好ましいゼオライトと同様の特性を有する大細孔疎水性モレキュラーシーブは、本明細書における使用に適している。このようなモレキュラーシーブの例としては、限定されるものではないが、Ti−β、B−β、およびGa−βシリケートが挙げられる。モレキュラーシーブは、Szostak、Molecular Sieves Principles of Synthesis and Identification、(Van Nostrand Reinhold、NY、1989年)にさらに記述されている。
【0026】
基質化合物とPPAを反応混合物中、触媒材料の存在下に接触させた後、硝酸を反応混合物に添加して、その中で(i)硝酸と基質化合物の(100%硝酸を基準とする)モル比を約1/1から約1/1.5の範囲にし、かつ(ii)硝酸とポリリン酸の質量比を約15/85から約40/60の範囲にする。代替実施形態において、硝酸と基質化合物の(100%硝酸を基準とする)モル比は、約1/1から約1/1.2の範囲とすることができる。反応混合物への硝酸の添加量は、100%硝酸[すなわち、100質量%濃度の(無水)硝酸]を基準として算出されるが、反応混合物に実際に添加される硝酸は、約70%強度から約100%強度の範囲の強度(質量%濃度)を有する硝酸とすることができる。別の代替実施形態において、硝酸とポリリン酸の質量比は、約20/80から約25/75の範囲とすることができる。
【0027】
別の代替実施形態において、反応混合物に、硝酸を、希釈剤としてのニトロ化合物と一緒に共フィードすることができる。本明細書において希釈剤として使用されるニトロ化合物は、1個または複数のニトロ官能基を含む有機化合物である。硝酸および希釈剤は、同じ流れまたは別々の流れで反応混合物にフィードすることができる。希釈剤としての使用に適したニトロ化合物の例としては、限定されるものではないが、ニトロベンゼンおよびニトロメタンが挙げられる。希釈剤と基体のモル比は約0から約5の範囲とすることができ、特定の一実施形態において、約0.5から約1の範囲である。硝酸または硝酸/希釈剤の混合物は、反応混合物に徐々に添加される。
【0028】
硝酸を反応混合物に添加する前および/または後に、反応混合物の温度を加熱または冷却、通常は加熱によって調整することができる。反応混合物の温度は、どちらかまたは両方の場合に、以下の最大および最小のいずれか2つの組合せから成ることができる可能な範囲のいずれかで表される温度に調整することができる。ここで、最小は、約0℃以上、または約10℃以上、または約20℃以上、または約30℃以上、または約40℃以上、または約45℃以上であり、なおかつ最大は、約100℃以下、または約90℃以下、または約80℃以下、または約70℃以下、または約60℃以下、または約55℃以下である。様々な代替実施形態において、温度は、例えば約0℃以上、約100℃以下の範囲;または約10℃以上、約60℃以下の範囲;または約20℃以上、約70℃以下の範囲;または約30℃以上、約80℃以下の範囲;または約40℃以上、約90℃以下の範囲である温度に調整することができる。
【0029】
硝酸の添加の前および/もしくは後、または両方の場合に、所望のレベルに一度調整された反応混合物の温度を、そのレベルに約2時間から約24時間、または約4時間から約10時間の範囲である時間維持することができる。別の代替実施形態において、反応が定常状態に到達するまで、反応混合物の温度を所望のレベルに保持することができる。別の代替実施形態において、硝酸添加が完了した後、約1時間、反応混合物を約45℃から約55℃の間の温度に加熱することができる。
【0030】
次いで、反応生成物であるニトロ化生成物は、当技術分野において公知である適切な任意の手段によって場合によっては単離および/または回収してもよい。一実施形態において、反応混合物を冷水でクエンチし、ニトロ化生成物を溶媒抽出によって単離する。このような目的での使用に適した溶媒の例としては、限定されるものではないが、塩化メチレンが挙げられる。別の実施形態において、熱い反応混合物を無溶媒で濾過して、触媒を除去する。2相にはっきりと分かれると、上(生成物)層をデカンテーションで分取し、水および塩基で洗浄し、乾燥する。
【0031】
本明細書の方法の例示的な一実施形態(基体がo−キシレン(すなわち、X=CH)であり、触媒材料がゼオライトCBV−30Aである)を、以下に概略的に示す。
【化8】

【0032】
用語「3−NOX」および「4−NOX」はそれぞれ、以下に示す構造で表わされる3−ニトロ−o−キシレンおよび4−ニトロ−o−キシレンを表す。
【化9】

【0033】
本明細書の方法によれば、従来の方法に比べて、変換率が高く、パラ異性体(例えば、4−NOX)に対する選択率が良好であり(すなわち、選択的ニトロ化)、酸化生成物または他の望ましくない副生成物が少なくまたはない。従来の方法のように硫酸を使用することなく、ゼオライト触媒またはモレキュラーシーブ触媒をポリリン酸と一緒に使用すると、触媒およびポリリン酸は何度もリサイクルおよびリユースできるので、本方法は、環境に優しく、安全で、かつ経済的なものとなる。さらに、本明細書の特定の一実施形態において、本明細書の方法は、硫酸の非存在下で実施することができる。PPAの脱水は、Dzhuraevら、Doklady Akademii Nauk USSR、7巻、(1976年)39〜40頁;およびBeglovら、Zhurnal Prikladnoi Khimii(Sankt−Peterburg、Russian Federation)、50巻(2号)、(1977年)、460〜463頁にさらに記述されている。
【0034】
代替実施形態において、本明細書の方法は、次式I(a)の構造で表わされるニトロ化生成物:
【化10】

[式中、2つのXは同一でなく、Xはそれぞれ独立に、C〜C20ヒドロカルビル基、ハロゲン、ハロゲン化C〜C20ヒドロカルビル基、カルボン酸基、またはニトリル基である]を、
(a)反応混合物中、次式IIIの構造で表わされる基質化合物:
【化11】

とポリリン酸を、(i)Si/Alのモル比が約5以上である大細孔酸性ゼオライト、および(ii)ケイ素含有量が約35質量%を超える大細孔疎水性モレキュラーシーブから選択される触媒材料の存在下に接触させるステップであって、触媒材料の質量と基質化合物の質量の比が、約1/99から約25/75の範囲であり、かつ式IIIにおけるXおよびYが、式I(a)で上述した通り同一でない2つのXを表すステップと、
(b)硝酸を反応混合物に添加して、その中で(i)硝酸と基質化合物の(100%硝酸を基準とする)モル比を約1/1から約1/1.5の範囲にし、かつ(ii)硝酸とポリリン酸の質量比を約15/85から約40/60の範囲にして、ニトロ化生成物を生成するステップと
によって調製する方法を含む。
【0035】
式IIIの化合物が基質化合物として使用される反応において、ニトロ化生成物は、o,p−配向力が大きいX置換基またはY置換基に対してパラ位が選択的にニトロ化されることになる。上述されたのと同じ方法特性は、式IIIの化合物が基質化合物として使用される反応にも適用される。
【0036】
本明細書に記載される方法は、p−ジニトロベンゼンの選択的合成に使用することができる。p−ジニトロトロベンゼンを水素化して、p−フェニレンジアミン(PPD)を生成することができ、これを使用して、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)を製造する。本方法は、m−ジニトロベンゼンを作製するのにも使用することができる。m−ジニトロベンゼンを水素化して、m−フェニレンジアミン(MPD)を生成することができ、これを使用して、ポリ(m−フェニレンテレフタルアミド)を製造する。MPDは、アラミド繊維の生成において重要な中間体である。
【実施例】
【0037】
本明細書の本発明のいくつかの実施形態の操作および効果は、以下に記載するように一連の実施例(実施例1〜11)からさらに深く理解することができる。これらの実施例の基礎となる実施形態は代表例にすぎず、本発明を例示する実施形態の選択は、実施例に記載されていない材料、成分、反応物質、条件、もしくはプロトコルが本明細書における使用に適していないということを示唆するものでもなく、実施例に記載されていない主題が、添付の特許請求の範囲およびその等価物から除外されるということを示唆するものでもない。実施例の重要性は、実施例から得られた結果と、対照実験(比較例A)として機能し、トリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウムがゼオライトまたはモレキュラーシーブの代わりに触媒として使用されるとき得られた結果を示すように設計された試行実験から得られた結果を比較することによってよく理解される。
【0038】
略語の意味は以下の通りである:「4−NOX」」は4−ニトロ−o−キシレンを意味し、「DI」は脱イオン化を意味し、「eq」は当量を意味し、「g」はグラムを意味し、「GC」はガスクロマトグラフィーを意味し、「h」は時間を意味し、「HPLC」は高圧液体クロマトグラフィーを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「MS」は質量分析を意味し、「Yb(Otf)」はトリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウムを意味する。
【0039】
分析
ニトロ化塊からの試料をGC/MSおよびHPLC/MSで分析した。4−NOXの変換率および選択率は、モルパーセントで報告する。GCレスポンスファクターは、副生物ジニトロ化化合物に指定されず、それらの量は、代わりに面積%として報告され、それらの化合物の観測されたGC面積%を表す。
【0040】
本明細書の方法は公知の方法に比べて、所望のニトロ化生成物への選択率およびその収率の向上をもたらすことが有利である。本明細書では、生成物(「P」)の「選択率」という用語は、最終生成物ミックス中におけるPのモル分率またはモル百分率を表し、用語「変換率」は、どれだけ多くの反応物質を消費したかを理論量の分率または百分率として表すものである。したがって、変換率に選択率を乗じると、Pの最大「収率」に等しくなり、「純収率」とも呼ばれる実際の収率は通常、単離、取扱い、乾燥などの活動の過程において受ける試料損失のため、これより幾分低い。本明細書では、用語「純度」は、手元にある単離された試料の何百分率が、実際に指定された物質であるかを表す。
【0041】
材料
ゼオライトは、Zeolyst Corp(Conshohocken、Pennsylvania、USA)から入手した。これらを以下の手順でか焼した:空気中、室温から475℃まで25℃/分で加熱し;475℃で10分間保持し、次いで12.5℃/分で525℃まで加熱し;525℃で10分間保持し、次いで1℃/分で550℃まで加熱し;550℃で8時間保持し、次いで20℃/分で110℃に冷却し;ターンオフされるまで保持する。試料を110℃の乾燥容器に移す。
【0042】
115%ポリリン酸、o−キシレン(純度97%)、およびトリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウム(純度99.99%)は、Sigma−Aldrich(Milwaukee、Wisconsin、USA)から入手し、受け入れたままの状態で使用した。
【0043】
実施例1
12.7g(0.12mol、1.2eq)のo−キシレン、2gの触媒(CBV−780)、Si/Al比=40、および30gの115%ポリリン酸を、乾燥した100mLの丸底フラスコ反応器中で混合することによって、反応混合物を調製し、50℃に加熱しながら機械撹拌した。別に、6.3g(0.1mol、1eq)の100%硝酸を、滴下漏斗中で10gのニトロベンゼンと混合し、均質化した。反応混合物が定常状態に到達した後、反応器温度を60℃未満に維持して、硝酸/ニトロベンゼンの混合物を50℃で滴下した。硝酸/ニトロベンゼンの混合物の添加が完了した後、反応器を50℃で1時間保持した。
【0044】
次いで、反応混合物を40mLの冷DI水でクエンチし、激しく撹拌した。次に、約30mLの塩化メチレンを反応器に添加し、撹拌した。反応器の内容物をセライト濾過し、DI水および塩化メチレンで、濾液が無色になるまですすいだ。濾液を分液漏斗に移し入れ、分液を行った。水層をもう一度塩化メチレンで抽出し、有機層を合わせて、硫酸マグネシウムで脱水した。硫酸マグネシウムを含む有機層を濾過し、塩化メチレンをロータリーエバポレータで除去した。
【0045】
最終質量を記録して、全収率を決定した。ニトロ化塊からの試料をGC/MSおよびHPLC/MSで分析した。変換率は85.4mol%であり、4−NOX)の選択率は71.0mol%であり、副生物の割合は9.8面積%であった。
【0046】
実施例2
10g(0.1mol)のo−キシレン、10g(0.08mol)のニトロベンゼン、1gの水素−Y型ゼオライト触媒[CBV−780、Si/Al=40]、および25gの115%ポリリン酸を、乾燥した100mLの丸底フラスコ反応器中で混合することによって、反応混合物を調製し、機械撹拌した。別に、滴下漏斗から、4.23g(0.07mol)の98%硝酸を25℃で2時間かけてゆっくりと添加した。硝酸を添加すると、32℃までの発熱が観察された。反応器を25℃で24時間保持した。次いで、反応混合物を40mLの冷DI水でクエンチし、激しく撹拌した。
【0047】
次に、約30mLの塩化メチレンを反応器に添加し、撹拌した。反応器の内容物をセライト濾過し、DI水および塩化メチレンで、濾液が無色になるまですすいだ。濾液を分液漏斗に移し入れ、分液を行った。水層をもう一度塩化メチレンで抽出し、有機層を合わせて、硫酸マグネシウムで脱水した。硫酸マグネシウムを含む有機層を濾過し、塩化メチレンをロータリーエバポレータで除去した。
【0048】
最終質量を記録して、全収率を決定した。ニトロ化塊からの試料をGC/MSで分析した。変換率は62.0mol%であり、選択率(4−NOX)は76.6mol%であり、副生物の割合は14.4面積%であった。
【0049】
実施例3〜9、比較例A
実施例3〜9については、1g(0.01mol)のo−キシレン、1.4g(0.01mol)のニトロベンゼン、1gのゼオライト触媒(下記のチャートを参照のこと)、および2gの115%ポリリン酸を、乾燥した15mLのバイアル反応器中で混合することによって、反応混合物を調製し、磁気撹拌した。別に、0.61g(0.01mol)の98%硝酸を添加した。反応混合物を25℃で24時間保持し、次いで50℃に2時間加熱した。次いで、反応混合物を5mLの冷DI水でクエンチし、激しく撹拌した。
【0050】
次に、約3mLの塩化メチレンを反応器に添加し、撹拌した。反応器の内容物をセライト濾過し、DI水および塩化メチレンで、濾液が無色になるまですすいだ。濾液を分液漏斗に移し入れ、分液を行った。水層をもう一度塩化メチレンで抽出し、有機層を合わせて、硫酸マグネシウムで脱水した。硫酸マグネシウムを含む有機層を濾過し、塩化メチレンをロータリーエバポレータで除去した。
【0051】
最終質量を記録して、全収率を決定した。ニトロ化塊からの試料をGC/MSで分析した。結果を表1に示す。
【0052】
比較例Aについては、触媒がゼオライトでもモレキュラーシーブでもなく、異なる無機酸性材料のトリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウムであった点以外は、上記の手順を繰り返した。結果を表1に示す。この触媒の場合、変換率が高く、かつ副生成物の生成が少ないことが観察されたが、4−NOXへの選択率は48.0%にすぎなかった。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例10
12.7g(0.12mol)のo−キシレン、2gのH−モルデナイト型ゼオライト触媒[CBV−30A、Si/Al=15]、および25gの115%ポリリン酸を、乾燥した100mLの丸底フラスコ反応器中で混合することによって、反応混合物を調製し、50℃に加熱しながら機械撹拌した。別に、滴下漏斗から、6.3g(0.1mol)の98%硝酸を50℃でゆっくりと添加した。反応を50℃で実施し、硝酸の添加が完了した後、50℃で1時間保持した。
【0055】
次いで、反応混合物を40mLの冷DI水でクエンチし、激しく撹拌した。次に、約30mLの塩化メチレンを反応器に添加し、撹拌した。反応器の内容物をセライト濾過し、DI水および塩化メチレンで、濾液が無色になるまですすいだ。濾液を分液漏斗に移し入れ、分液を行った。水層をもう一度塩化メチレンで抽出し、有機層を合わせて、硫酸マグネシウムで脱水した。硫酸マグネシウムを含む有機層を濾過し、塩化メチレンをロータリーエバポレータで除去した。
【0056】
最終質量を記録して、全収率を決定した。ニトロ化塊からの試料をGC/MSで分析した。変換率は87.4mol%であり、選択性(4−NOX)は66.7mol%であり、副生物の割合は21.44面積%であった。
【0057】
実施例11
12.7g(0.12mol)のo−キシレン、5g(0.08mol)のニトロメタン、2gの[CP814C−β型、Si/Al=19]、および30gの115%ポリリン酸を、乾燥した100mLの丸底フラスコ反応器中で混合することによって、反応混合物を調製し、50℃に加熱しながら機械撹拌した。別に、7.0g(0.11mol)の100%硝酸を、シリンジポンプ(Sono−Tek Model 12−05124)によって速度1mL/時、50℃で添加した。反応を50℃で実施し、反応器を50℃で24時間保持した。次いで、反応混合物を40mLの冷DI水でクエンチし、激しく撹拌した。
【0058】
次に、約30mLの塩化メチレンを反応器に添加し、撹拌した。反応器の内容物をセライト濾過し、DI水および塩化メチレンで、濾液が無色になるまですすいだ。濾液を分液漏斗に移し入れ、分液を行った。水層をもう一度塩化メチレンで抽出し、有機層を合わせて、硫酸マグネシウムで脱水した。硫酸マグネシウムを含む有機層を濾過し、塩化メチレンをロータリーエバポレータで除去した。
【0059】
最終質量を記録して、全収率を決定した。ニトロ化塊からの試料をGC/MSで分析した。変換率は90.8mol%であり、選択性(4−NOX)は58.7mol%であり、副生物の割合は11.18面積%であった。
【0060】
本明細書において数値範囲が記載されている場合、その範囲は、その両終点、ならびにその範囲内の個々の整数および分数すべてを含み、またそれらの終点と内側の整数および分数との考え得る様々な組合せすべてによって、その範囲の中に形成されるより狭い範囲もそれぞれ含んで、より狭い範囲がそれぞれ、明確に記載される場合と同じ程度に、記載された範囲内により大きい数値グループの下位グループを形成する。本明細書において、数値範囲が記載されている値より大きいと記載されている場合でも、その範囲はやはり有限であり、上側の終点が、本明細書に記載される本発明の文脈において実施可能な値と接している。本明細書において、数値範囲が記載されている値より小さいと記載されている場合でも、その範囲はやはり、下側の終点が非ゼロ値と接している。
【0061】
本明細書では、別段の明示的な記載のない限りまたは用法の文脈によって明確にそうでないと示されていない限り、本明細書の主題の実施形態が、いくつかの特徴または要素を含む(comprising)、含む(including)、含む(containing)、有する(having)、それらから構成される(being composed of)、それらから構成される(being constituted byまたはof)と記載または説明されている場合、明示的に記載または説明されているもの以外に、1つまたは複数の特徴または要素が実施形態において存在してもよい。しかし、本明細書の主題の代替実施形態は、いくつかの特徴または要素から実質的になると記載または説明されてもよく、その実施形態においては、実施形態の操作原理または著しい特性を実質的に変更することになる特徴または要素がその中に存在しない。本明細書の主題の別の代替実施形態は、いくつかの特徴または要素からなると記載または説明されてもよく、その実施形態またはその重要でない変形の形態においては、具体的に記載または説明された特徴または要素しか存在しない。
【0062】
本明細書では、別段の明示的な記載のない限りまたは用法の文脈によって明確にそうでないと示されていない限り、(a)本明細書に記載される量(amount)、サイズ、範囲、調合物、パラメータ、および他の量(quantity)ならびに特性は、特に「約」という用語で修飾されるとき、正確であってもよいが、その必要はなく、近似であってもよく、かつ/または許容差、換算係数、丸め、測定誤差などを反映して、記載されたものより(所望通りに)大きくても、小さくてもよく、記載された値の範囲内には、本発明の文脈内で、記載された値に等価な機能性および/または実施可能性を有する、その範囲外の値を含め;(b)本発明の要素または特徴の存在の記載または説明に関して不定冠詞「a」または「an」の使用は、要素または特徴の存在する数を1つに限定するものではなく;(c)単語「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」は、実際にはそうでない場合でさえ「制限なく」という語句が続いている場合と同様に解釈および理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式Iの構造で表わされるニトロ化生成物:
【化1】

[式中、Xはそれぞれ独立に、C〜C20ヒドロカルビル基、ハロゲン、ハロゲン化C〜C20ヒドロカルビル基、カルボン酸基、またはニトリル基である]の製造方法であって、
(a)反応混合物中、次式IIの構造で表わされる基質化合物:
【化2】

とポリリン酸を、(i)Si/Alのモル比が約5以上である大細孔酸性ゼオライト、および(ii)ケイ素含有量が約35質量%を超える大細孔疎水性モレキュラーシーブから選択される触媒材料の存在下に接触させるステップであって、前記基質化合物の質量に対する前記触媒材料の質量の比が、約1/99から約25/75の範囲であり、かつ式IIにおけるXが、式Iで上述した通りであるステップと、
(b)硝酸を前記反応混合物に添加して、その中で(i)基質化合物に対する硝酸の(100%硝酸を基準とする)モル比を約1/1から約1/1.5の範囲にし、かつ(ii)ポリリン酸に対する硝酸の質量比を約15/85から約40/60の範囲にして、ニトロ化生成物を生成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
〜C20ヒドロカルビル基がCHである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ハロゲン化C〜C20ヒドロカルビル基が、フッ素化されたアルキル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ゼオライトが、フォージャサイト、モルデナイト、β、EMT、ITQ−21、ITQ−4、およびSSZ−31からなる群のメンバーから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
モレキュラーシーブが、Ti−βシリケート、B−βシリケート、およびGa−βシリケートからなる群のメンバーから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
基質化合物に対する触媒材料の質量比が、約5/95から約20/80の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリリン酸が115%ポリリン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
基質化合物に対する硝酸のモル比が、約1/1から約1/1.2の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ポリリン酸に対する硝酸の質量比が、約20/80から約25/75の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記硝酸の添加前に、前記反応混合物の温度を調整するステップ(a−1)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記硝酸の添加後に、前記反応混合物の温度を調整するステップ(c−1)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記硝酸と共に、ニトロ化合物希釈剤を添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記希釈剤が、ニトロベンゼンおよびニトロメタンの一方または両方から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記硝酸および希釈剤が、別々の流れで共フィードされる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
基質化合物に対する希釈剤のモル比が、約5/1未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
基質化合物に対する希釈剤のモル比が、約0.5/1から約1/1の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記ニトロ化生成物を単離および/または回収するステップ(c−2)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
次式I(a)の構造で表わされるニトロ化生成物:
【化3】

[式中、2つのXは同一でなく、Xはそれぞれ独立に、C〜C20ヒドロカルビル基、ハロゲン、ハロゲン化C〜C20ヒドロカルビル基、カルボン酸基、またはニトリル基である]
の製造方法であって、
(a)反応混合物中、次式IIIの構造で表わされる基質化合物:
【化4】

とポリリン酸を、(i)Si/Alのモル比が約5以上である大細孔酸性ゼオライト、および(ii)ケイ素含有量が約35質量%を超える大細孔疎水性モレキュラーシーブから選択される触媒材料の存在下に接触させるステップであって、前記基質化合物の質量に対する前記触媒材料の質量の比が、約1/99から約25/75の範囲であり、かつ式IIIにおけるXおよびYが、式I(a)で上述した通りの同一でない2つのXを表すステップと、
(b)硝酸を、前記反応混合物に添加して、その中で(i)基質化合物に対する硝酸の(100%硝酸を基準とする)モル比を約1/1から約1/1.5の範囲にし、かつ(ii)ポリリン酸に対する硝酸の質量比を約15/85から約40/60の範囲にして、ニトロ化生成物を生成するステップと
を含む方法。

【公表番号】特表2013−503185(P2013−503185A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527007(P2012−527007)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/046900
【国際公開番号】WO2011/025912
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】