説明

O/W乳化組成物の製造方法

【課題】特別な冷却装置を用いることなく容易に製造することができ、経済性に優れたO/W乳化組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のO/W乳化組成物の製造方法は、(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルと、(B)前記(A)とともに水中でαゲルを形成し得る炭素数16以上の直鎖状高級アルコールと、(C)油分と、を含む油相と、(D)水を含む水相の一部(第1水相)とを70℃以上の温度で乳化してO/W乳化物である乳化パーツを調製し、この乳化パーツを10〜35℃の残りの主水相(第2水相)と攪拌しながら混合することにより冷却することを含み、前記乳化パーツ中における水性溶媒が15質量%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、O/W乳化組成物の製造方法、特に簡易性、経済性に優れた製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧品、医薬部外品、医薬品などの皮膚外用剤の乳化安定性を保つ目的で高級脂肪族アルコールとポリオキシエチレン型非イオン界面活性剤が形成するαゲルを用いたO/W乳化組成物が用いられており、特に、化粧料として用いることが知られている。このようなO/W乳化組成物を調製する方法としては、水に保湿剤と親水的なポリオキシエチレン型非イオン界面活性剤等を溶解させ70℃付近に加温した水相に、必須成分として油分と高級アルコールを70℃付近で均一にした油相をホモゲナイザーで攪拌しながら添加し、乳化したものをオンレーターなどの冷却機で35℃付近まで冷却する方法が用いられてきた(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来より行われている70℃付近で乳化後、冷却という方法は加熱や熱交換機の使用によりエネルギーを要するために無駄が多いだけでなく、オンレーター等の冷却機の使用後の洗浄に多量の水を使うこととなり、環境負荷が高くなる。
【0004】
したがって、従来のオンレーター等の冷却装置を用いることなく、従来と同等の使用感を有したO/W乳化組成物を経済的に優れながら容易に製造することができる方法を開発することが望まれていた。
【0005】
特許文献1には、(A)親水性非イオン性界面活性剤と、(B)炭素数16以上の直鎖状高級アルコールと、(C)油分と、(D)水に溶解する水性溶媒であって、該水性溶媒中における前記親水性非イオン性界面活性剤の臨界ミセル濃度(c.m.c)が水中におけるそれよりも高い水性溶媒と、(E)(A)〜(E)全量中5〜25重量%の水と、を70〜80℃で混合攪拌して、W/Oエマルションを調製するW/Oエマルション調製工程と、該W/Oエマルション中に、10〜35℃の(F)水または水性処方を混合攪拌しながら添加してO/W微細エマルションに転相させるO/W微細エマルション調製工程と、を備えることを特徴とする、乳化粒子径50〜500nmのO/W微細エマルション外用剤の製造方法が記載されている。
【0006】
特許文献1の方法によれば、オンレーターのような冷却機を用いる従来の方法では調製しにくかったO/W微細エマルションを、オンレーターを用いることなく低エネルギーで容易に製造することができる。また、特許文献1の方法で得られたO/W微細エマルションは、オンレーターのような冷却機を用いる従来の方法で製造した同一処方のO/Wエマルションよりも、さっぱりしながらコクがある使用性を有している。
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法は特定組成によって一度W/Oエマルションを調製し、これを転相させることにより微細なO/Wエマルションとする方法であるため、組成が制限されることがあった。そして、特許文献1には、W/Oエマルションからの転相を経由せずにO/Wエマルションを製造する方法については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/082602号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】妹尾学著,「界面活性の化学と応用」,大日本図書,1995年,p.159−160
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記背景技術の事情に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は、簡易性、及び経済性に優れたO/W乳化組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題に鑑み、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、特定の非イオン性界面活性剤と前記非イオン性界面活性剤とともに水中でαゲルを形成し得る炭素数16以上の直鎖状高級アルコールとを用い、且つ水性溶媒量をコントロールすれば、水相の一部を冷却に使用して、オンレータ等を使用する従来の方法と同等の使用感を有するO/W乳化組成物が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明にかかるO/W乳化組成物の製造方法は、
(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルと、
(B)前記(A)とともに水中でαゲルを形成し得る炭素数16以上の直鎖状高級アルコールと、
(C)油分と、
を含む油相と、
(D)水
を含む水相の一部(第1水相)とを、70℃以上の温度で乳化してO/W乳化物である乳化パーツを調製し、
この乳化パーツを10〜35℃の残りの主水相(第2水相)と攪拌しながら混合することにより冷却することを含み、
前記乳化パーツ中における水性溶媒が15質量%以下であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記方法において、水性溶媒が2〜3価のポリオールであることを特徴とするO/W乳化組成物の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載の方法において、前記主水相がO/W乳化組成物全量中50〜75質量%であることを特徴とするO/W乳化組成物の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記何れかに記載の方法において、(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルと(B)炭素数16以上の直鎖状高級アルコールの合計量が、(C)油分10質量部に対して0.5〜10質量部であることを特徴とするO/W乳化組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかるO/W乳化組成物の製造方法によれば、オンレーターのような冷却機を用いることなく、低エネルギーで容易に製造することができるため経済性に優れている。さらに、本発明にかかる製造方法によって製造されたO/W乳化組成物は、オンレーターのような冷却機を用いて製造した同一処方のO/W乳化組成物と比較しても、同等の使用感を有しており、また保存安定性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明にかかるO/W乳化組成物の製造方法は、(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルと、(B)前記(A)とともに水中でαゲルを形成し得る炭素数16以上の直鎖状高級アルコールと、(C)油分と、を含む油相と、(D)水を含む水相の一部とを70℃以上の温度で乳化して高濃度のO/W乳化物である乳化パーツを調製し、この乳化パーツを10〜35℃の残りの主水相と攪拌しながら混合することによって冷却すること、ならびに前記高濃度O/W乳化パーツ中における水性溶媒量を15質量%以下とすることを特徴とし、得られたO/W乳化組成物の乳化粒子界面にはαゲルが形成されている。
【0017】
前記αゲルは、水との共存下において、界面活性剤が炭素数16以上の直鎖状高級アルコールや未中和の脂肪酸とともに形成する、ラメラ状の2分子膜からなる会合体のことをいう。
【0018】
本発明に用いられる(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルは、水相中で(B)高級アルコールとともにαゲルを形成し得る非イオン性界面活性剤である。本発明において、(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルを用いずに他の非イオン性界面活性剤を用いた場合には、例えαゲルを形成したとしても、乳化パーツの調製において十分な乳化ができず、乳化パーツ自体の調製が困難となって、目的とするO/W乳化組成物が得られないことがある。
【0019】
本発明に用いられる(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステル(「POE(0−60)グリセリルモノ分岐脂肪酸エステル」ともいう)は、オキシエチレン基の平均付加モル数が0〜60であるポリオキシエチレングリセリルエーテルの分岐脂肪酸モノエステル体であり、分岐脂肪酸としては、炭素数が16〜24、好ましくは炭素数16〜20の飽和分岐脂肪酸が挙げられる。なお、分岐の位置は特に制限されない。POEはポリオキシエチレン基を意味し、その平均付加モル数は0〜60、好ましくは5〜60である。本発明においては、(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルを一種以上用いることができる。
好適な(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルの一例としては、例えば、下記一般式(1)のものが挙げられる。
【0020】
【化1】


(式中、Rは炭素数が16〜24、好ましくは炭素数16〜20の飽和分岐脂肪酸からOH基を除いた残基である。a、b、cはそれぞれ0又は正の整数であり、a+b+c=0〜60、好ましくは5〜60である。)
【0021】
モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルは公知の方法で容易に合成可能であるが、非イオン性界面活性剤として市販されているものを用いれば簡便であり、例えば、EAMALEX GWIS−100シリーズ、日本エマルジョン(株)などが挙げられる。
【0022】
また、モノ分岐鎖脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルとしては親水性であるものが好ましく、特にHLB6以上のものが好ましい。なお、本発明においては、モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルとともに、モノステアリン酸POEグリセリンエステルなどの、直鎖脂肪酸型非イオン性界面活性剤を組み合わせて使用することができる。
【0023】
本発明に用いられる(B)炭素数16以上の直鎖状高級アルコールは、前記(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルとともに水中でαゲルを形成し得るものであり、化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野において用いられ得るものであれば特に限定されるものでなく、例としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどが挙げられる。好ましくは炭素数16〜24の直鎖状飽和高級アルコールである。本発明においては、(B)炭素数16以上の直鎖状高級アルコールを1種以上用いることができる。
なお、αゲルの形成の上では、バチルアルコール、モノグリセライド等を添加することが好ましい。
本発明で用いる(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルと(B)炭素数16以上の直鎖状高級アルコールとの質量比は、本発明の効果が損なわれない範囲で設定すればよく、特に制限されるものではない。通常は(A):(B)の質量比はO/W乳化パーツ中1:2〜10:1である。
【0024】
(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルと(B)炭素数16以上の直鎖状高級アルコールの濃度は、特に限定されるものではないが、O/W乳化組成物中、(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルと(B)炭素数16以上の直鎖状高級アルコールの合計量を、(C)油分10質量部に対して0.5〜10質量部とすることが好ましい。0.5質量部未満の場合には、(A)と(B)の合計量が少ないため、安定性の高いO/W乳化組成物が得られない場合があり、10質量部を超える場合には、(A)と(B)の合計量が多すぎるため、使用感の点で好ましくない傾向がある。
【0025】
本発明に用いられる(C)油分は、特に限定されるものではなく、通常、化粧品、医薬品等に用いられる油分であれば何れも用いることができる。
固形油分としては、一般に化粧料や皮膚外用剤に用いられる室温において固体の油分が挙げられる。具体的に示すとすれば、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化脂、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固体油脂;ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等のロウ類;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、ルナセラ、オゾケライト等の炭化水素系ワックス;モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)等の脂肪酸グリセリルエーテル;アセトグリセライド、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド等の脂肪酸グリセリド等が挙げられる。これらの固形油分は、それぞれ単独ないしは2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0026】
また、液状油分としては、一般に化粧料や皮膚外用剤に用いられる室温において液体の油分が挙げられる。具体的に示すとすれば、例えば、アボカド油、月見草油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、ヒマワリ油、アーモンド油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油等の液体油脂;オクタン酸セチル、セチル2−エチルヘキサノエート、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、エチルラウレート、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、2−エチルヘキシルパルミテート、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、ドデシルオレエート、オレイン酸オレイル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、コハク酸2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、アセトグリセライド、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラオクタン酸ペンタエリスリトール、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール等のエステル油;流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、ポリブテン等の炭化水素油;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸;イソステアリン酸、イソパルミチン酸、イソミリスチン酸等の分岐脂肪酸;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の各種変性ポリシロキサン等のシリコーン油が挙げられる。これらの液状油分は、それぞれ単独ないしは2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0027】
本発明においては、(C)油分中に高級脂肪酸を一種または二種以上配合することが好適である。油分中にこれらを配合することで乳化粒子が更に微細化され、より安定性の高いO/W乳化組成物が得られる。高級脂肪酸としては炭素数16〜24のものが好適であり、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、イソミリスチン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等が挙げられる。高級脂肪酸は、O/W乳化組成物中0.1〜3質量%、さらには0.2〜1.5質量%が好ましい。
【0028】
本発明に用いられる(D)水を含む水相とは、水を主な媒体とし、通常、化粧品、医薬品等に用いられる親水性成分を本発明の効果が損なわれない範囲で配合していても構わない。
なお、本発明のO/W乳化組成物における水の総配合量は、特に限定されるものではないが、一般的には、O/W乳化組成物全量中40〜95重量%であることが好ましい。
【0029】
本発明のO/W乳化組成物の水相には水性溶媒を含むことができる。ただし、本発明の乳化パーツ中において水性溶媒の濃度が高すぎると、乳化パーツの調製自体ができなかったり、乳化パーツが調製できたとしてもオンレータ等を用いて得られる従来のO/W乳化組成物と同等の使用感を有するO/W乳化組成物を得ることができないことがある。また、保存安定性も不十分となることがある。
従って、乳化パーツ中において水性溶媒を含まないことが好ましく、含む場合には乳化パーツ中における水性溶媒の濃度は15質量%以下、さらには3質量%以下、特に1質量%以下とすることが好適である。
なお、化粧料や皮膚外用剤では、水性溶媒が多量に配合されることが多いが、本発明の乳化パーツ中の水性溶媒量は上記のように制限されても、乳化パーツとの混合用の主水相(第2水相)中の水性溶媒量は特に制限されない。よって、最終的に得られるO/W乳化組成物中の水性溶媒量は自由に設計することができる。
【0030】
乳化パーツ調製用の水相で配合が制限される水性溶媒としては、例えば分子内に0〜3個の水酸基を有する水と相溶性を示す室温で液状の水性溶媒が挙げられ、代表的なものは2〜3個の水酸基を任意の位置に有する飽和脂肪族ポリオールである。具体的には、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,2−ペンタングリコール、1,2−ヘキサングリコール、2−メチル−1,3−プロパノール、エチルカルビトール、1,2−ブチレングリコール、グリセリン等を挙げることができる。本発明の範囲内であれば、これらの2種類以上を組み合わせて用いても良い。
これらのうち、グリコール(2価ポリオール)は乳化パーツ調製に及ぼす影響が特に著しい。
【0031】
本発明の製造方法において、主水相(第2水相)は、(D)水を含むものであり、上述の水性溶媒やその他の水性溶媒を任意に含むことができ、また、通常化粧品、医薬品等に用いられる成分を本発明の効果が損なわれない範囲で含むこともできる。
該主水相は、O/W乳化組成物全量中50〜75質量%が好ましく、55〜70質量%がより好ましい。主水相が、50質量%未満であると十分な冷却効果が得られず、その分余計な冷却エネルギーを必要とするため、経済性に劣る。また、75質量%を超えると70℃以上で調製するO/W乳化パーツの水相が少なくなるために、安定なO/W乳化組成物の調製が困難になる傾向にある。
【0032】
また、後から添加する主水相の温度は10〜35℃が好ましく、15〜30℃であることが特に好ましい。10℃未満であると、主水相を冷やすエネルギーが過剰に必要となり、経済性に劣る傾向にある。また、35℃を超えると、十分な冷却効果が得られず、その分余計な冷却エネルギーを必要とするため、経済性に劣る。
【0033】
水相中で油相がαゲルを形成していることは、DSC(示査走査型熱量測定)により確認することができる。(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルと(B)炭素数16以上の直鎖状高級アルコールと(C)油分とを含む油相を第1水相に乳化した乳化パーツを70℃以下に降温しながらDSC(示査走査型熱量測定)で測定すれば、発熱ピークが認められ、これは油相が水相中でαゲルを形成していることを示している。
なお、DSC測定において、αゲル形成による発熱ピークの他にも発熱ピークが検出されることがある。これは、乳化パーツ中に含まれる成分の単なる凝固による発熱ピークであり、αゲル形成による発熱ピークはこれら凝固による発熱ピークとは異なる。
なお、本発明において発熱ピーク温度の測定は、DSC(Q−2000,TA Instruments,USA)を用い、1℃/分で降温させて測定した。
【0034】
上記DSC(示査走査型熱量測定)で測定された発熱ピークのピーク温度は本発明の製造方法における乳化パーツの融点に相当すると考えられる。
【0035】
本発明においては、70℃以上の乳化パーツと10〜35℃の低温主水相とを攪拌しながら混合するが、低温主水相混合終了直後の混合物温度が高く、例えば40℃以上であった場合、得られるO/W乳化組成物の粘度のばらつきが大きくなることがある。その理由は明らかではないが、一つには、αゲルの形成が未熟であることが考えられる。このような粘度のばらつきを回避するため、本発明においては主水相と乳化パーツとの混合終了直後の該混合物の温度が35℃±2℃、あるいはそれ以下であることが好ましい。これは主水相の量と温度により容易にコントロールすることができる。
【0036】
本発明の製造方法によって生成されるO/W乳化組成物は、水との共存下において、油相からなる乳化粒子の界面に、モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルと高級アルコールとが形成するラメラ状の2分子膜からなる会合体、いわゆるαゲルが存在している状態である。
【0037】
以下、本発明にかかるO/W乳化組成物の製造方法の概念を説明する。
概念
(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルと(B)前記(A)とともに水中でαゲルを形成し得る炭素数16以上の直鎖状高級アルコールと(C)油分とを含む油相と、(D)水を含む水相とを70℃以上の温度で乳化し、これを冷却する工程によりO/W乳化組成物が得られる。
【0038】
しかしながら、放冷による冷却では相当の時間がかかってしまう。また、オンレーター等の冷却装置を用いると経済的・環境的に負荷がかかってしまう。
よって、上記問題を解消するために、水相の一部を用いて高濃度に乳化された乳化パーツを70℃以上(好ましくは70〜80℃、さらに好ましくは70〜75℃)で調製し、上記乳化パーツと10〜35℃の残りの水相(主水相)とを攪拌しながら徐々に混合する。この低温主水相の混合により、上述の高温乳化パーツが希釈されるとともに一気に冷却され、αゲルが乳化粒子界面に存在するO/W乳化組成物が調製される。ただし、このような方法において乳化パーツ中における水性溶媒濃度が高すぎると使用性や保存安定性に優れるO/W乳化組成物が得られない。よって、本発明においては、水性溶媒を乳化パーツ中15質量%以下とすることが必要である。乳化、攪拌などに用いる装置は通常使用されているものから適宜選択すればよく、それまで使用していた装置をそのまま利用することができ、特別の設備は不要である。乳化パーツと主水相との混合順序も特に制限されない。
【0039】
上記製造方法によって得られたO/W乳化組成物は、粒子径が1〜7.5μmと、十分小さな粒子径であり、広い温度範囲で長期間安定に存在することができる。
【0040】
また、従来のO/W乳化組成物の製造方法では、水、保湿剤、増粘剤を予め溶解させ70℃付近に加温した水相に、油分と高級アルコール、及び親水性非イオン界面活性剤を70℃付近で均一にした油相を、ホモゲナイザーで攪拌しながら乳化したものをオンレーターを用いて35℃付近まで急冷する方法が用いられてきた。しかしながら、従来の製造方法では、加熱や熱交換機の使用によりエネルギーの無駄が多く、冷却器に使用される水の消費量がかさんでしまい、環境負荷が高かった。
【0041】
これに対して、本発明の製造方法によれば、乳化の際、オンレーターなどの冷却機を用いることなく、多量の水相を加熱する必要がないため、低エネルギーで容易にO/W乳化組成物を製造することができる。また、実質的に、人体に対する刺激性が比較的小さい非イオン性界面活性剤のみによって乳化されるものであるため、安全性に優れている。
【0042】
以上のように、本発明にかかるO/W乳化組成物の製造方法は、予め70〜80℃で製造した乳化パーツに、10〜35℃の水相を添加するだけで、従来と使用感の変わらない良好なO/W乳化組成物を得ることができるため、従来用いられてきた製造工程を大幅に簡素化できる。
【0043】
本発明にかかるO/W乳化組成物は、例えば、化粧料、医薬、医薬部外品において皮膚、頭髪など身体に適用し得る外用組成物などに好適に適用することができる。例えば、皮膚化粧料、頭髪洗浄料、皮膚洗浄料、整髪料等に用いることができる。
また、本発明にかかるO/W乳化組成物には、上記必須成分の他に、通常、化粧品、医薬品等に用いられる成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。かかる成分としては、例えば次のようなものが挙げられる。
【0044】
ポリエチレングリコール及びそのモノ−又はジ−アルキルエーテル、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール共重合物及びそのモノ−又はジ−アルキルエーテル、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ムコ多糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサンなどの保湿剤。メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアガム、ポリビニルアルコールなどの増粘剤。エタノールなどの有機溶剤。ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン酸などの酸化防止剤。安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル(エチルパラベン、ブチルパラベンなど)、ヘキサクロロフェンなどの抗菌防腐剤。グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、タウリン、アルギニン、ヒスチジンなどのアミノ酸とその塩。アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸などの有機酸及びその塩。
【0045】
ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体などのビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル(塩)、アスコルビン酸ジパルミテートなどのビタミンC類、α―トコフェロール、β―トコフェロール、γ―トコフェロール、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネートなどのビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチンなどのビタミン類。ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ―オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸及びその誘導体、ヒノキチオール、ムシジン、ビサボロール、ユーカリプトール、チモール、イノシトール、サポニン類(サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニンなど)、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、セファランチン、プラセンタエキスなどの各種薬剤。
【0046】
ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、タイム、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センキュウ、センブリ、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラなどの有機溶剤、アルコール、多価アルコール、水、水性アルコールなどで抽出した天然エキス。ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイドなどのカチオン界面活性剤。エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤。水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等の中和剤。
また、その他、香料、スクラブ剤、粉末、色材、美白剤、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤などの紫外線防御剤なども、安定性などを損なわない範囲で適宜配合することができる。
【実施例】
【0047】
以下、具体例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量は全て質量%で示す。
まず、本発明で用いた試験法・評価法について説明する。
【0048】
[粘度]
B型粘度計(ローター番号3番、ローター回転数12rpm)を用い、30℃における粘度を測定した。
【0049】
[保存安定性]
調製したO/W乳化組成物を、0℃、25℃、50℃の各温度で1か月間保存した後、製造直後の粘度との差が最大となる温度条件において、下記の評価基準により評価した。 ○:粘度変化が10%未満
△:粘度変化が10%以上20%未満
×:粘度変化が20%以上
なお、△以上の評価を合格とした。
【0050】
[従来品との同等性]
10名のパネルにより試験を行い、使用感(のび、なじみ、べたつき、みずみずしさ、こく)の総合評価として従来品(同一組成でオンレータを用いて製造したO/W乳化組成物)と同等であると回答した人数が、
○:8名以上
△:5名以上7名以下
×:4名以下
とし、△以上の評価を合格とした。
【0051】

【表1】

【0052】
製造方法A
油相をホモゲナイザーで攪拌しながら第1水相及び第2水相を加え、70℃にて乳化し調製したO/Wエマルションをオンレーターに通過させて35℃まで冷却し、その後室温まで放冷してO/W乳化組成物を得た。
【0053】
製造方法B
油相及び第1水相をホモゲナイザーを用いて70℃で乳化してO/Wエマルション(乳化パーツ)を得た。この乳化パーツを25℃の主水相(第2水相)にプロペラ攪拌機(250rpm)で攪拌しながら混合し、35℃±2℃のO/W乳化組成物を得た。
【0054】
表1の製造例1−1〜1−5及び製造例1−aで得られたO/W乳化組成物は、何れも同じ組成を有するが製造方法が異なっている。
製造例1−aはオンレータを用いた従来法(製造方法A)によるO/W乳化組成物(従来品)である。
一方、製造例1−1〜1−5は、製造例1−a(従来品)と同一組成であるものの、何れもオンレータを使用せずに低温主水相の混合により冷却する方法(製造方法B)により製造されたO/W乳化組成物であり、乳化パーツ中の水性溶媒(ジプロピレングリコール)の量がそれぞれ異なっている。製造例1−1〜1−5の乳化パーツは、αゲルを形成した。
【0055】
表1からわかるように、オンレータを用いずとも、水相の一部を冷却用に用いることで、従来品と同等の使用感を有するO/W乳化組成物が得られた。ただし、製造例1−1〜1−4のように、最終的なO/W乳化組成物の組成が同じでも、乳化パーツ中の水性溶媒濃度がO/W乳化組成物の使用性、保存安定性に影響を及ぼし、製造例1−5のように乳化パーツ中の水性溶媒濃度が高すぎる場合には、乳化パーツの調製段階で乳化破壊が起こり、乳化パーツ自体が調製できないことが明らかとなった。
このようなことから、従来品と同等の使用感のO/W乳化組成物を得るためには、乳化パーツ中の水性溶媒を15質量%以下、さらには3質量%以下、特に1質量%以下とすることが好適であると考えられた。また、保存安定性の点からも、上記のように乳化パーツ中の水性溶媒濃度を調整することが好適であると考えられた。
【0056】

【表2】

【0057】
表2は水性溶媒としてグリセリンを用いた場合の結果である。製造例2−1〜2−2で得られたO/W乳化組成物は、何れもオンレータを使用せずに低温主水相の混合により冷却する方法(製造方法B)により製造されたものであり、その乳化パーツはαゲルを形成した。従来品との同等性は、同じ組成でオンレータを用いた方法(製造方法A)により得られたO/W乳化組成物(従来品)を基準に評価した。
製造例2−1では、従来品と同等の使用感を有し、保存安定性も良好なO/W乳化組成物が得られたが、製造例2−2のように乳化パーツ中の水性溶媒濃度が高すぎると、乳化パーツの調製ができなかった。
【0058】
【表3】

【0059】
表3は、非イオン性界面活性剤の種類を変えて検討した結果である。各製造例においては、低温主水相との混合により冷却する方法(製造方法B)によりO/W乳化組成物を製造した。表3の乳化パーツは何れもαゲルを形成した。従来品との同等性の評価は、同じ組成で製造方法Aに準じて製造したO/W乳化組成物(従来品)をそれぞれ基準として評価した。
表3のように、モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルを用いた場合には、従来品と同等の使用感を有するO/W乳化組成物が得られ、またこれらは保存安定性にも優れていた(製造例3−1〜3−4)。
【0060】
これに対して、モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルの代わりに、モノ直鎖脂肪酸(POE)グリセリンエステルや、POEアルキルエーテルなどの他の非イオン性界面活性剤を用いた場合には、乳化パーツの調製段階で十分な乳化ができずに乳化パーツが分離あるいは離水し、目的とするO/W乳化組成物は得られなかった(製造例3−b、製造例3−c)。
このようなことから、本発明においては、モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルを用いることが重要であることが理解される。
【0061】
実施例1 乳液
<第2水相(主水相)>
精製水 to 100 質量%
トラネキサム酸 2.0
エデト酸2ナトリウム 0.01
キシリトール 3.0
グリセリン 3.0
ジプロピレングリコール 7.0
キサンタンガム 0.05
カルボキシビニルポリマー 0.1
エタノール 3.0
フェノキシエタノール 0.5
<油相>
エチルヘキサン酸セチル 4.0
流動パラフィン 3.5
モノイソステアリン酸PEG−60グリセリル 1.0
モノステアリン酸PEG−5グリセリル 1.0
ベヘニン酸 0.3
ステアリン酸 0.4
イソステアリン酸 0.3
ベヘニルアルコール 0.3
バチルアルコール 0.15
ワセリン 0.5
ジメチコン 1.0
<第1水相(乳化パーツ調製用)>
水酸化カリウム 0.08
精製水 15.0
【0062】
<製造方法>
製造方法Bに準じた方法により、O/W乳液を得た。得られた乳液の粘度は4,370mPa・s/30℃であった。この乳液は、同じ組成の従来品(オンレータ等で冷却する製造方法Aで得られたO/W乳液)と同等の使用感を有し、また保存安定性にも優れていた。
【0063】
実施例2 乳液
<第2水相(主水相)>
精製水 to 100 質量%
4−メトキシサリチル酸カリウム 1.0
エデト酸2ナトリウム 0.05
グリセリン 7.0
ジプロピレングリコール 7.0
ブチレングリコール 5.0
サクシノグリカン 0.04
カルボキシビニルポリマー 0.15
エタノール 1.0
フェノキシエタノール 0.5
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
<油相>
トリエチルヘキサノイン 4.0
水添ポリデセン 6.0
モノイソステアリン酸PEG−60グリセリル 1.2
モノステアリン酸PEG−5グリセリル 0.8
ベヘニン酸 0.45
ステアリン酸 0.6
イソステアリン酸 0.45
ベヘニルアルコール 0.95
バチルアルコール 0.25
ワセリン 2.0
ジイソステアリン酸グリセリル 2.0
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 0.1
ジメチコン 2.0
メチルフェニルポリシロキサン 1.5
<第1水相(乳化パーツ調製用)>
トリエタノールアミン 1.5
精製水 15.0
<製造方法>
製造方法Bに準じた方法により、O/W乳液を得た。得られた乳液の粘度は3,690mPa・s/30℃であった。この乳液は、同じ組成の従来品(オンレータ等で冷却する製造方法Aで得られたO/W乳液)と同等の使用感を有し、また保存安定性にも優れていた。
【0064】
実施例3 乳液
<第2水相(主水相)>
精製水 to 100 質量%
メタリン酸ナトリウム 0.01
キシリトール 3.0
グリセリン 4.0
ジプロピレングリコール 5.0
キサンタンガム 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.18
エタノール 4.0
フェノキシエタノール 0.5
<油相>
エチルヘキサン酸セチル 3.0
水添ポリデセン 3.5
ジメチコン 2.0
モノイソステアリン酸PEG−60グリセリル 1.3
モノイソステアリン酸PEG−8グリセリル 0.7
ベヘニン酸 0.3
ステアリン酸 0.4
イソステアリン酸 0.3
ベヘニルアルコール 0.3
バチルアルコール 0.15
<第1水相(乳化パーツ調製用)>
水酸化カリウム 0.14
精製水 15.0
【0065】
<製造方法>
製造方法Bに準じた方法により、O/W乳液を得た。得られた乳液の粘度は3,260mPa・s/30℃であった。この乳液は、同じ組成の従来品(オンレータ等で冷却する製造方法Aで得られたO/W乳液)と同等の使用感を有し、また保存安定性にも優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルと、
(B)前記(A)とともに水中でαゲルを形成し得る炭素数16以上の直鎖状高級アルコールと、
(C)油分と、
を含む油相と、
(D)水
を含む水相の一部(第1水相)とを、70℃以上の温度で乳化してO/W乳化物である乳化パーツを調製し、
この乳化パーツを10〜35℃の残りの主水相(第2水相)と攪拌しながら混合することにより冷却することを含み、
前記乳化パーツ中における水性溶媒が15質量%以下であることを特徴とするO/W乳化組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、水性溶媒が2〜3価のポリオールであることを特徴とするO/W乳化組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法において、前記主水相がO/W乳化組成物全量中50〜75質量%であることを特徴とするO/W乳化組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜4の何れかに記載の方法において、(A)モノ分岐脂肪酸POE(0−60)グリセリンエステルと(B)炭素数16以上の直鎖状高級アルコールの合計量が、(C)油分10質量部に対して0.5〜10質量部であることを特徴とするO/W乳化組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−193168(P2012−193168A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−35831(P2012−35831)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】