説明

O/W乳化組成物及びその製造方法

【課題】無機粉末と有機紫外線吸収剤とを配合し、製剤安定性に優れたO/W乳化組成物の提供。
【解決手段】O/W乳化組成物であって、下記第1油相と第2油相とがそれぞれ別個に水相中に乳化粒子として分散していることを特徴とするO/W乳化組成物:(i)有機紫外線吸収剤を含有し、平均粒子径が700nm以下である第1油相;(ii)シリコーン油を含有し、疎水化処理無機粉末が分散している第2油相。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はO/W乳化組成物、特に無機粉末と有機紫外線吸収剤を配合したO/W乳化組成物の製剤安定性の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
O/W乳化組成物は、油分を配合しながらもみずみずしくさっぱりとした使用感が得られることから、乳液、クリームなどの基礎化粧料としてはもちろん、ファンデーションや日焼け止め化粧料などの製品においても汎用される。
また、化粧料においては、各種無機粉末が配合され、紫外線防御を目的として微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛などの無機紫外線散乱剤が配合されることもある。これら無機粉末は、化粧もち等の点から、疎水化処理したものが使用されることが多い。
【0003】
しかしながら、油相中に疎水化処理無機粉末と有機紫外線吸収剤を配合し、これを水相中に乳化してO/W乳化組成物とした場合、無機粉末が経時的に凝集することがあった。さらに、UV−B吸収剤であるフェニルベンズイミダゾールスルホン酸は水溶性の有機紫外線吸収剤であるが、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸を水相に配合した場合には、無機粉末の凝集が特に著しくなるという問題があった。
【0004】
特許文献1には、2つの油相、すなわち、
(1)常温固体でクラフト点が40℃以上の非イオン性界面活性剤で形成される平均粒子径0.5μm以下の油相(硬性油相)と、
(2)界面活性剤及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーで形成される平均粒子径0.5〜100μmの油相(軟性油相)と、
を含むO/W毛髪化粧料が記載されている。
しかしながら、特許文献1では、疎水化処理無機粉末の凝集抑制については何ら検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−89366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記背景技術に鑑みなされたものであり、その目的は無機粉末と有機紫外線吸収剤とを配合し、製剤安定性に優れたO/W乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成すべく本発明者等が鋭意検討を行った結果、油溶性の有機紫外線吸収剤を含有する極性油相(第1油相)と、疎水化処理無機粉末を分散したシリコーン油相(第2油相)とを別々の乳化粒子として水相中に分散させることで、疎水化処理無機粉末の分散安定性、ならびに油相の乳化安定性に優れるO/W乳化組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、O/W乳化組成物であって、下記第1油相と第2油相とがそれぞれ別個に水相中に乳化粒子として分散していることを特徴とするO/W乳化組成物を提供する。
(i)有機紫外線吸収剤を含有し、平均粒子径が700nm以下である第1油相;
(ii)シリコーン油を含有し、疎水化処理無機粉末が分散している第2油相。
【0009】
また、本発明は、前記O/W乳化組成物において、無機粉末が紫外線散乱剤であることを特徴とするO/W乳化組成物を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載のO/W乳化組成物において、疎水化処理無機粉末の第2油相中における平均分散粒子径が700nm以下であることを特徴とするO/W乳化組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記何れかに記載のO/W乳化組成物において、第2油相中のシリコーン油中、ジメチルポリシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンから選ばれるシリコーン油が合計で70質量%以上で、ジメチルポリシロキサンが5質量%以上であることを特徴とするO/W乳化組成物を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載のO/W乳化組成物において、水相中に、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸を含有することを特徴とするO/W乳化組成物を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載のO/W乳化組成物からなる日焼け止め化粧料を提供する。
【0011】
また、本発明は、有機紫外線吸収剤を含有する第1油相と水相とを乳化し、水相中に前記第1油相が平均粒子径700nm以下に分散したO/W乳化物(第1乳化物)を調製する工程と、
第1乳化物とは別に、シリコーン油を含有する第2油相中に疎水化処理無機粉末を分散させ、この第2油相と水相とを乳化し、水相中に前記第2油相が分散したO/W乳化物(第2乳化物)を調製する工程と、
前記第1乳化物と第2乳化物を混合して、水相中に第1油相と第2油相とがそれぞれ別個に分散したO/W乳化物を調製する工程と、
を備えることを特徴とする前記何れかに記載のO/W乳化組成物の製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、有機紫外線吸収剤を含有する第1油相と水相とを乳化し、水相中に前記第1油相が平均粒子径700nm以下に分散したO/W乳化物(第1乳化物)を調製する工程と、
第1乳化物とは別に、シリコーン油を含有する第2油相中に無機紫外線散乱剤を分散させ、この第2油相と、水相と、前記第1乳化物とを乳化し、水相中に第1油相と第2油相とがそれぞれ別個に分散したO/W乳化物を調製する工程と、
を備えることを特徴とする前記何れかに記載のO/W乳化組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるO/W乳化組成物は、油相中に疎水化処理無機粉末と有機紫外線吸収剤とを配合しながら、疎水化処理無機粉末の経時的な凝集が少なく、油相の乳化安定性にも優れる。また、水相にフェニルベンズイミダゾールスルホン酸を配合した場合であっても優れた製剤安定性を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1油相>
本発明において第1油相には、油溶性の有機紫外線吸収剤が溶解している。このような有機紫外線吸収剤としては、通常化粧料や皮膚外用剤に使用可能なものを用いることができ、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤(例えば、ビスレゾルシニルトリアジン等);オクチルトリアゾン(2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン);安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル-N- アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート) 、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'- ジヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4'-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等);3-(4'-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2'-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール;2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、4,4-ジアリールブタジェン、オクトクリレン等が挙げられる。
【0015】
これらのうち、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチルメトキシシンナメート、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート等の高極性油である桂皮酸系紫外線吸収剤を用いた場合、本発明は特に効果的である。
【0016】
第1油相中に配合される有機紫外線吸収剤の量は目的に応じて設定すればよいが、日焼け止め化粧料においては通常O/W乳化組成物中0.01質量%以上、典型的には1質量%以上配合される。本発明では、有機紫外線吸収剤を高配合した場合(例えばO/W乳化組成物中5質量%以上、さらには8質量%以上)でも製剤安定性の良好なO/W乳化組成物を得ることができる。有機紫外線吸収剤の配合量の上限は特に限定されないが、配合量が多すぎるとべたつくなど使用感が悪くなることがあるので、通常O/W乳化組成物中30質量%以下、典型的には20質量%以下である。
【0017】
第1油相には、特に問題のない限り、有機紫外線吸収剤と相溶する油分を含んでいてもよい。例えば、天然油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油が挙げられる。シリコーン油は好ましくは第2油相に配合される。
天然油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等の液状油脂;カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固体油脂が挙げられる。
【0018】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0019】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0020】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0021】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等);分岐鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
【0022】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0023】
<第2油相>
第2油相に含まれるシリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)が挙げられる。特に、200mPa・s以下(20℃)の低粘度シリコーン油が肌へ塗布した際の使用感の点で好ましい。また、特に問題のない限り、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム等も配合可能である。
【0024】
本発明においては、シリコーン油中、ジメチルポリシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンから選ばれるシリコーン油が合計で70質量%以上、さらには80質量%以上であることが好ましい。ジメチルポリシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンは、有機紫外線吸収剤を含む第1油相に対する第2油相の親和性(相溶性)を低下させ、第1油相と第2油相との経時的な合一を阻害する。特に、ジメチルポリシロキサンが好ましく、シリコーン油中に占めるジメチルポリシロキサンの割合が5質量%以上、さらには10質量%以上、特に15質量%以上であることが好ましい。
【0025】
第2油相は後述する疎水化処理無機粉末の分散媒となるので、少なくとも疎水化処理無機粉末を第2油相中に分散可能な量を用いればよい。通常、疎水化処理無機粉末に対して等量以上、好ましくは1.5倍量以上用いられる。
【0026】
<疎水化処理無機粉末>
第2油相中に分散させる疎水化処理粉末は、無機粉末粒子の表面を例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類、デキストリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、金属石鹸、アルキルリン酸エーテル、フッ素化合物、またはスクワラン、パラフィン等の炭化水素類を、溶媒を使用する湿式法、気相法、メカノケミカル法等により疎水化処理したものである。
【0027】
無機粉末としては、化粧料や皮膚外用剤に通常配合可能なものが使用でき、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、雲母チタン、黒酸化鉄、黄酸化鉄、ベンガラ、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム等が挙げられる。日焼け止め化粧料の場合には、平均一次粒子径が100μm未満の微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛などの紫外線散乱剤を用いることが好ましい。
【0028】
第2油相中に配合する疎水化処理無機粉末の配合量は目的に応じて設定すればよいが、日焼け止め化粧料などにおいては通常O/W乳化組成物中1質量%以上、典型的には3質量%以上配合される。本発明では、疎水化処理無機粉末を高配合した場合(例えばO/W乳化組成物中5質量%以上、さらには8質量%以上)でも製剤安定性の良好なO/W乳化組成物を得ることができる。上限は特に限定されないが、配合量が多くなると必然的に分散媒である第2油相の配合量も多くなり、他の成分の配合が制限されるので、通常O/W乳化組成物中20質量%以下、典型的には10質量%以下である。
【0029】
<O/W乳化組成物>
本発明のO/W乳化組成物は、その連続相である水相中に、下記第1油相からなる乳化粒子と、第2油相からなる乳化粒子とがそれぞれ別々に分散しているものである。
(i)第1油相:有機紫外線吸収剤を含有する油相。
(ii)第2油相:シリコーン油を含有し、疎水化処理無機粉末が分散している油相。
【0030】
本発明のO/W乳化組成物の製造方法は特に制限されないが、典型的には、第1油相のO/W乳化物(以下第1乳化物という)と、第2油相のO/W乳化物(以下第2乳化物という)とを別々に調製し、両者を混合することにより得ることができる。あるいは、第1乳化物を調製後、これを第2乳化物の製造成分として添加し、第2油相の乳化を行うことにより得ることもできる。特に問題のない限り、上記必須成分以外の成分をその相溶性や親和性に応じて、各油相又は水相に配合してもよい。
【0031】
<第1乳化物>
第1乳化物において、第1油相は平均乳化粒子径700nm以下に乳化される。粒子径が700nmを超えると製剤安定性が悪くなる。
第1油相の乳化方法は、油相を700nm以下にまで微細に乳化できる限り任意の方法を採用できる。例えば、高圧乳化法や、少量の水の存在下(あるいは非存在下)で多価アルコールなどの親水性溶媒を用いる微細乳化法(例えば特公昭57−29213号公報、特開2006−182724号公報など)などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0032】
第1油相の乳化剤としては、通常O/W乳化剤として使用されるものの中から1種又は2種以上を適宜選択して用いることができるが、第1油相の好ましい乳化剤として、下記一般式(1)又は(2)で示されるポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマーの1種以上が挙げられる。本乳化剤を用いれば、第1油相が微細化・安定化されたO/W乳化組成物を容易に製造することができる。また、このようにして得られた第1乳化物は、第2乳化物の製造工程中に添加した場合にも破壊されずに高い安定性を示す。
【0033】
O−(PO)m−(EO)n−H ・・・(1)
【0034】
一般式(1)において、Rは炭素数16〜18の炭化水素基であり、好ましくは飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。例えば、パルミチル、ステアリル、イソステアリル、オレイル、リノリル等が挙げられる。
POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基である。
一般式(1)において、PO、EOはブロック状に結合していなければならない。ランダム状に結合している場合には、製剤安定性が十分に得られない。なお、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの付加する順序は特に指定はない。またブロック状には2段ブロックのみならず、3段以上のブロックも含まれる。
m、nはそれぞれPO、EOの平均付加モル数を意味し、70>m>4、70>n>10、n>mである。
【0035】
一般式(1)のブロックポリマーの分子量は、好ましくは800以上、さらに好ましくは1500以上である。分子量800未満では効果が低い。また分子量の上限は特に規定できないが、分子量が大きくなっていくにつれべたつき感が生じる傾向がある。
一般式(1)で示されるブロックポリマーとしては、例えば、ニッコールPBC44(日光ケミカルズ(株))などが挙げられる。
【0036】
O−(AO)p−(EO)q−R ・・・(2)
【0037】
一般式(2)において、R、Rは同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4の炭化水素基であり、好ましくは飽和の脂肪族炭化水素基である。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルが挙げられ、より好ましくはメチル、エチルである。
AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、オキシプロピル基、オキシブチル基が挙げられる。EOはオキシエチレン基である。
【0038】
一般式(2)において、AO、EOはブロック状に結合している。ランダム状に結合している場合には、製剤安定性が十分に得られない。なお、エチレンオキシドおよびアルキレンオキシドの付加する順序は特に指定はない。またブロック状には2段ブロックのみならず、3段以上のブロックも含まれる。
p、qはそれぞれAO、EOの平均付加モル数を意味し、1≦p≦70、1≦q≦70、且つ0.2<(q/(p+q))<0.8である。
【0039】
一般式(2)のブロックポリマーの分子量は、好ましくは1000以上、さらに好ましくは3000以上である。分子量1000未満では効果が低い。また分子量の上限は特に規定できないが、分子量が大きくなっていくにつれべたつき感が生じる傾向がある。
一般式(2)のブロックポリマーは、公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を有している化合物にエチレンオキシドおよび炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加重合した後、ハロゲン化アルキルをアルカリ触媒存在下にエーテル反応させることによって得ることができる(例えば、特開2004−83541号公報等)。
【0040】
一般式(2)のブロックポリマーとしては、具体的にはPOE(14)POP(7)ジメチルエーテル、POE(10)POP(10)ジメチルエーテル、POE(7)POP(12)ジメチルエーテル、POE(15)POP(5)ジメチルエーテル、POE(25)POP(25)ジメチルエーテル、POE(27)POP(14)ジメチルエーテル、POE(55)POP(28)ジメチルエーテル、POE(22)POP(40)ジメチルエーテル、POE(35)POP(40)ジメチルエーテル、POE(50)POP(40)ジメチルエーテル、POE(36)POP(41)ジメチルエーテル、POE(55)POP(30)ジメチルエーテル、POE(30)POP(34)ジメチルエーテル、POE(25)POP(30)ジメチルエーテル、POE(14)POB(7)ジメチルエーテル、POE(10)POP(10)ジエチルエーテル、POE(10)POP(10)ジプロピルエーテル、POE(10)POP(10)ジブチルエーテル等が挙げられる。
なお、上記POE、POP、POBは、それぞれポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンの略であり、以下このように略して記載することがある。
【0041】
これらブロックポリマーは、少量でも第1油相を微細・安定に乳化することができるので、界面活性剤によるべたつきを生じることなく安定なO/W乳化組成物を得ることができる。
【0042】
第1油相の乳化に用いられる乳化剤は、通常O/W乳化組成物中0.3〜3質量%、さらには0.3〜2質量%、特に0.3〜1質量%が好ましい。乳化剤が少なすぎると安定なO/W乳化組成物が得られないことがあり、多すぎるとべたつきなどを生じることがある。
【0043】
<第2乳化物>
第2乳化物の調製においては、乳化に先立って、第2油相中に疎水化処理無機粉末を分散させる。
分散は、第2油相を構成する油分と疎水化処理無機粉末とを混合し、ビーズミル等の高い破砕力をもつ湿式分散機で粉末を微粉砕して行うことができる。
【0044】
疎水化処理無機粉末を湿式分散機で処理する時、無機紫外線散乱剤の微細分散化や分散安定化のために、第2油相中に分散剤を添加しておくことが好ましい。このような分散剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサン、両末端シリコーン化グリセリン、アクリル変性シリコーン、側鎖型アミノ変性シリコーンなどが挙げられる(特開2009−209123号等)。
【0045】
ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(I)で示されるものが挙げられる。
一般式(I):
【化1】

(一般式(I)中、Rはメチル基又はフェニル基、R’は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基、pは1〜5の整数、qは2〜3の整数、x,m,nは平均数でポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンが分子中にポリオキシアルキレン基を5〜40質量%含有し、且つ該ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンの分子量が2000以上になるような数値を表す。)
【0046】
また、両末端シリコーン化グリセリンとしては、例えば、下記一般式(II)で示されるものが挙げられる。
一般式(II):
【化2】

(一般式(II)中、R1は炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、もしくはフェニル基であり、R2は炭素数2〜11のアルキレン基であり、mは10〜120、nは1〜11である。)
【0047】
また、アクリル変性シリコーンとしては、例えば、下記一般式(III)で示されるものが挙げられる。
一般式(III):
【化3】

(一般式(III)中、Rは炭素数10〜20のアルキル基、a+b+c=1、a,b,c共に0.2以上、nは5〜100の整数である。)
【0048】
また、側鎖型アミノ変性シリコーンとしては、例えば、下記一般式(IV)で示されるものが挙げられる。
一般式(IV):
【化4】

(一般式(IV)中、Xは炭素数1〜18のアルキル基、Rは炭素数1〜6のアルキル基、R’は炭素数1〜6のアルキレン基である。)
【0049】
分散剤の配合量は、その効果が十分発揮されるような量を配合する。通常は第2油相中0.1質量%以上、好ましくは4質量%以上である。一方、過剰に配合しても効果の増大は見込めず、使用感等を損なうことがあるので、通常は第2油相中50質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
【0050】
得られた疎水化処理無機粉末の分散液(第2油相)を、乳化剤等をあらかじめ配合した水相とホモミキサー等で混合、乳化して第2乳化物とする。
第2乳化物において、第2油相の平均乳化粒子径は特に制限されないが、通常は0.5〜15μm、好ましくは5〜10μmである。粒子径が小さすぎると疎水化処理無機粉末が安定に保持できないことがあり、また大すぎても製剤安定性の低下が懸念されるようになる。
【0051】
第2油相を乳化する際、生成する乳化粒子より大きい粒子径をもつ粉末粒子が存在すると、乳化処理により粉末の一部が油相から出て凝集物を形成してしまうことがある。よって、疎水化処理無機粉末の第2油相中における平均分散粒子径を第2油相の乳化平均粒子径より小さくしておく必要がある。例えば、ビーズミルを使用する場合には、分散液のミルへのパス回数を増やすことで疎水化処理無機粉末の粒子径を十分小さくし、乳化粒子径よりも十分小さい破砕粉末を得ることができる。
【0052】
また、O/W乳化組成物における疎水化処理無機粉末の分散安定性の点からは、疎水化処理無機粉末の平均分散粒子径が700nm以下であることが好ましい。疎水化処理無機粉末は、通常一次粒子が集合して二次凝集体を形成しているが、本発明においては第2油相中で予めビーズミル等の湿式分散機により二次凝集体が解砕されて第2油相中に安定に分散される。よって、疎水化処理無機粉末として例えば平均一次粒子径が100nm〜700nmの顔料級粉末を用いて平均分散粒子径が700nm以下の疎水化処理無機粉末分散液が得られる。また、疎水化処理無機粉末が紫外線散乱剤(平均一次粒子径が100nm未満)の場合には、その紫外線防御能を十分発揮させるために、湿式分散機で解砕後の平均分散粒子径が200nm以下、さらには100nm以下であることが好ましい。
【0053】
第2乳化物の乳化剤としては、O/W乳化用の界面活性剤を用いることができるが、油相中への溶解性が低く温度安定性がよいことから親水性の非イオン性界面活性剤が好ましく、特に総HLBで10以上である1種または2種以上から構成されるものが好適である。例えばグリセリン又はポリグリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、POE脂肪酸エステル類、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、POEヒマシ油又は硬化ヒマシ油誘導体、POE蜜ロウ・ラノリン誘導体、アルカノールアミド類、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル類、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド等から選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0054】
本発明のO/W乳化組成物において増粘剤を使用する場合、サクシノグリカン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、アクリルアミド共重合体から選ばれる増粘剤を用いることが好ましい。これら増粘剤を配合することで、経時による乳化油滴の沈降、クリーミングに対する安定性、さらには粉体の凝集に対する安定性を改善することができる。さらに好ましくは、耐塩性増粘剤であるサクシノグリカン、キサンタンガムまたはアクリルアミド系共重合体を用いる。通常の増粘剤を使用した場合、無機粉体微粒子から水相へ、経時的に徐々に溶出する塩が増粘剤に作用し粘度を低下させることがあるが、サクシノグリカン等の耐塩性に優れた増粘剤を使用した場合には、溶出塩による影響を受けず、長期にわたり乳化粒子の沈降を防ぐことができる。増粘剤の配合量としては、組成物全量に対して0.1〜1質量%が好ましい。0.1質量%未満であると上記効果が十分でなく、1質量%を超えるとよれが生じるなど使用感が悪くなることがある。
【0055】
サクシノグリカンは、微生物に由来する多糖類の一種であり、より具体的にはガラクトース及びグルコースから誘導される糖単位に加え、コハク酸及びピルビン酸並びに随意成分としての酢酸、又はこれらの酸の塩から誘導される単位を含む微生物に由来する多糖類を意味する。
より具体的にはサクシノグリカンは、ガラクトース単位:1,グルコース単位:7,コハク酸単位:0.8及びピルビン酸単位:1に、随意成分である酢酸単位を含むことのある平均分子量が約600万の下記一般式(V)で表される水溶性高分子である。サクシノグリカンとしては、例えばレオザンSH(RHODIA社製)が挙げられる。
【0056】
このサクシノグリカンの供給源となる微生物としては、例えばシュードモナス属、リゾビウム属、アルカリゲネス属又はアグロバクテリウム属に属する細菌を挙げることができる。これらの細菌の中でも、アグロバクテリウム属に属する細菌であるアグロバクテリウム・ツメファシエンスI−736〔ブタペスト条約に従い1988年3月1日に微生物培養締約国収集機関(CNCM)に寄託され、I−736の番号で公に入手し得る。〕が特にサクシノグリカンの供給源として好ましい。
【0057】
サクシノグリカンは、これらの微生物を培地中で培養することによって製造することができる。より具体的には、概ねグルコース、蔗糖、デンプンの加水分解物等の炭素源;カゼイン、カゼイネート、野菜粉末、酵母エキス、コーンスティープリカー(CSL)等の有機窒素源;金属の硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩等の無機塩類や随意微量元素等を含む培地で上記の微生物を培養することによって製造することができる。
なお、乳化組成物中にサクシノグリカンをそのまま配合し得ることは勿論、必要に応じて酸分解、アルカリ分解、酵素分解、超音波処理等の分解処理物も同様に配合することができる。
サクシノグリカンは温度変化に対して保持力が大きく、大きな降伏値を有することから特に好ましい増粘剤であり、粉っぽさがなく、みずみずしい使用感を与えるなどの使用性の効果に優れる。
【0058】
また、アクリルアミド系共重合体としては、ビニルピロリドン/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、ジメチルアクリルアミド/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸アミド/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、ポリアクリル酸アミドとポリアクリル酸ナトリウムの混合物、アクリル酸ナトリウム/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリルアミド/アクリル酸アンモニウム共重合体、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体、N,N’−ジメチルアクリルアミド−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム−N,N’−メチレンビスアクリルアミド共重合体が挙げられる。
【0059】
本発明のO/W乳化組成物には、上記成分に加えて、本発明の効果に特に影響のない限り、化粧料や皮膚外用剤に配合可能な他の成分を配合してよい。例えば、粉末成分、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。油性成分を配合する場合には、相溶性等を考慮して、第1油相及び/又は第2油相に含有させることができる。
【0060】
本発明のO/W乳化組成物は、日焼け止め機能が望まれる各種化粧料に適用可能であり、乳液、クリーム、化粧下地料の他、ファンデーション、口紅などのメークアップ化粧料にも適用可能である。
【実施例】
【0061】
以下、具体例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合量は特に記載のない限り質量%である。なお、本発明で用いた評価方法は次の通り。
【0062】
(平均乳化粒子径)
第1油相乳化物(第1乳化物)の製造直後の乳化粒子の粒度分布をゼータサイザー(Zetasizer Nano ZS (シスメックス株式会社))で測定した。
【0063】
(平均分散粒子径)
疎水化処理無機粉末の分散液の製造直後の分散粒子の粒度分布をマイクロトラックHRA(日機装株式会社)で測定した。
【0064】
(乳化安定性)
被験試料を50℃で1ヵ月保存した後の外観を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
◎:油浮きやクリーミングなどがない。
○:油浮きやクリーミングなどがほとんどない。
△:油浮きやクリーミングなどがややある。
×:油浮きやクリーミングがある。
【0065】
(分散安定性)
被験試料を50mlのサンプル管(直径3cm)に入れ、25℃において45rpmの速度で4時間回転させローリング試験を行い、粉末の凝集度合いを肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
◎:凝集または沈殿がない。
○:凝集または沈殿がほとんどない。
△:凝集または沈殿がややある。
×:凝集または沈殿がある。
【0066】
試験例1
表1の組成で下記製法によりO/W組成物を調製した。
【0067】
【表1】

【0068】
*1:KF−96A−6cs(信越化学工業(株))
*2:下記式(II−a)で示される両末端シリコーン化グリセリン:
【0069】
【化5】

(式(II−a)中、mは10〜120、nは1〜11の整数である。)
【0070】
(製法)
製法1(第1油相と第2油相とを別々に乳化):
第1油相を、高圧乳化法により乳化する。具体的には、第1水相と親水性溶媒相とを混合し、これに第1油相を混合し、高圧乳化機(APV社)で乳化する(第1乳化物、平均乳化粒子径700nm以下)。
別に、ビーズミルを用いて、第2油相中に疎水化処理無機粉末を分散し(疎水化処理微粒子酸化チタンの平均分散粒子径は200nm以下、疎水化処理顔料級酸化チタン及び疎水化処理酸化鉄の平均分散粒子径は700nm以下)、得られた分散液を第2水相に混合し、ホモミキサーで乳化する(第2乳化物)。
第2乳化物に第1乳化物を混合し、その他の成分をさらに添加混合して、目的とするO/W乳化組成物を得る。
【0071】
製法1’(第1油相と第2油相とを別々に乳化):
第1油相を、微細乳化法により乳化する。具体的には、第1油相に親水性溶媒相を添加して、ホモミキサーで乳化し、さらに第1水相を混合する(第1乳化物、平均乳化粒子径700nm以下)。
別に、ビーズミルを用いて、第2油相中に疎水化処理無機粉末を分散し(疎水化処理微粒子酸化チタンの平均分散粒子径は200nm以下、疎水化処理顔料級酸化チタン及び疎水化処理酸化鉄の平均分散粒子径は700nm以下)、得られた分散液を第2水相に混合し、ホモミキサーで乳化する(第2乳化物)。
第2乳化物に第1乳化物を混合し、その他の成分をさらに添加混合して、目的とするO/W乳化組成物を得る。
【0072】
製法2(第1油相と第2油相とを一括で乳化):
第1水相、第2水相及び親水性溶媒相を混合する。別に、ビーズミルを用いて、第1油相と第2油相との混合物中に疎水化処理無機粉末を分散し(疎水化処理微粒子酸化チタンの平均分散粒子径は200nm以下、疎水化処理顔料級酸化チタン及び疎水化処理酸化鉄の平均分散粒子径は700nm以下)、得られた分散液と、第1水相等を含む混合液と混合し、ホモミキサーで乳化する(平均乳化粒子径700nm超)。
この乳化物にその他の成分をさらに添加混合して、目的とするO/W乳化組成物を得る。
【0073】
製法3(第1油相と第2油相とを別々に乳化):
第1水相と親水性溶媒相とを混合し、これに第1油相を混合し、ホモミキサーで乳化する(第1乳化物、平均乳化粒子径700nm超)。
別に、ビーズミルを用いて、第2油相中に疎水化処理無機粉末を分散し(疎水化処理微粒子酸化チタンの平均分散粒子径は200nm以下、疎水化処理顔料級酸化チタン及び疎水化処理酸化鉄の平均分散粒子径200nm以下)、得られた分散液を第2水相に混合し、ホモミキサーで乳化する(第2乳化物)。
第2乳化物に第1乳化物を混合し、その他の成分をさらに添加混合して、目的とするO/W乳化組成物を得る。
【0074】
表1に示されるように、第1油相(有機紫外線吸収剤含有油相)と第2油相(疎水化処理無機粉末分散シリコーン油相)とを別々に乳化し、第1油相の平均油相の粒子径を700nm以下とした場合には、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸が水相に配合されていたとしても、製剤安定性に優れたO/W乳化組成物を得ることができる(試験例1−1、試験例1−2)。フェニルベンズイミダゾールスルホン酸は、第一水相、第2水相の何れに添加してもよいし、O/W乳化組成物調製後に添加してもよい。
一方、試験例1−1や試験例1−2と同じ組成で、第1油相と第2油相とを混合して一括で乳化した場合には、十分な製剤安定性得られない(試験例1−a、試験例1−c)。
また、第1油相と第2油相とを別々に乳化した場合であっても、第1油相の乳化粒子径が700nmを超えていると、やはり製剤安定性が不十分であった(試験例1−b、試験例1−d)。
このように、本発明のO/W乳化組成物によれば、例えフェニルベンズイミダゾールスルホン酸を水相に溶解した場合であっても、非常に高い製剤安定性を得ることができる。
【0075】
試験例2
上記試験例1−1において、第2油相のシリコーン油(ジメチルポリシロキサン)を他のシリコーン油との混合物に変えたO/W乳化組成物について評価を行った。
その結果、表2のように、第2油相のシリコーン油中、ジメチルポリシロキサン及び/又はデカメチルシクロペンタシロキサンが合計で70質量%以上、ジメチルポリシロキサンを5質量%以上含むことが好適であると考えられた。
【0076】
【表2】

【0077】
処方例1
<第1油相> 質量%
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5
2−ヒドロキシ 4−メトキシベンゾフェノン 0.5
α−オレフィンオリゴマー 2
イソステアリン酸 0.2
<親水性溶媒相>
ジプロピレングリコール 1.75
ポリオキシプロピレン(8モル)ポリオキシエチレン(20モル)
セチルエーテル(ブロックポリマー) 0.41
<第1水相>
水 6
EDTA 0.2
<第2油相>
ジメチルポリシロキサン[KF−96A−6cs] 15
両末端シリコーン化グリセリン[式(II−a)] 2
疎水化処理微粒子酸化チタン 9
<第2水相>
水 to 100
サクシノグリカン 0.1
N,N’−ジメチルアクリルアミド−2−アクリルアミド−
2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム−
N,N’−メチレンビスアクリルアミド共重合体 100% 0.35
カルボキシメチルセルロース 0.1
ポリオキシエチレン(100モル)硬化ひまし油 1.5
【0078】
(製法)
製法1又は製法1’に準じて、目的とするO/W乳化組成物を得た。本組成物は、分散安定性、乳化安定性に優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
O/W乳化組成物であって、下記第1油相と第2油相とがそれぞれ別個に水相中に乳化粒子として分散していることを特徴とするO/W乳化組成物:
(i)有機紫外線吸収剤を含有し、平均粒子径が700nm以下である第1油相;
(ii)シリコーン油を含有し、疎水化処理無機粉末が分散している第2油相。
【請求項2】
請求項1記載のO/W乳化組成物において、無機粉末が紫外線散乱剤であることを特徴とするO/W乳化組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のO/W乳化組成物において、疎水化処理無機粉末の第2油相中における平均分散粒子径が700nm以下であることを特徴とするO/W乳化組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のO/W乳化組成物において、第2油相中のシリコーン油中、ジメチルポリシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンから選ばれるシリコーン油が合計で70質量%以上で、ジメチルポリシロキサンが5質量%以上であることを特徴とするO/W乳化組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のO/W乳化組成物において、水相中に、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸を含有することを特徴とするO/W乳化組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のO/W乳化組成物からなる日焼け止め化粧料。
【請求項7】
有機紫外線吸収剤を含有する第1油相と水相とを乳化し、水相中に前記第1油相が平均粒子径700nm以下に分散したO/W乳化物(第1乳化物)を調製する工程と、
第1乳化物とは別に、シリコーン油を含有する第2油相中に疎水化処理無機粉末を分散させ、この第2油相と水相とを乳化し、水相中に前記第2油相が分散したO/W乳化物(第2乳化物)を調製する工程と、
前記第1乳化物と第2乳化物を混合して、水相中に第1油相と第2油相とがそれぞれ別個に分散したO/W乳化物を調製する工程と、
を備えることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のO/W乳化組成物の製造方法。
【請求項8】
有機紫外線吸収剤を含有する第1油相と水相とを乳化し、水相中に前記第1油相が平均粒子径700nm以下に分散したO/W乳化物(第1乳化物)を調製する工程と、
第1乳化物とは別に、シリコーン油を含有する第2油相中に無機紫外線散乱剤を分散させ、この第2油相と、水相と、前記第1乳化物とを乳化し、水相中に第1油相と第2油相とがそれぞれ別個に分散したO/W乳化物を調製する工程と、
を備えることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のO/W乳化組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−246445(P2011−246445A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87085(P2011−87085)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】