説明

OA機器用導電性部材

【課題】 10〜1012Ω・cmの体積抵抗領域において極めて安定した導電性を示し、導電性の印加電圧依存性が小さく、連続通電時の導電性の変化が小さく、温湿度変化等の環境条件変動による導電性の変化が小さく、ブリードやブルームによる感光体汚染を生じることのないOA機器用導電性部材を提供する。
【解決手段】 非エーテル系ポリウレタン及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムからなる組成物を成型してなるOA機器用導電性部材。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子写真装置、静電記録装置の帯電、現像、転写、定着、除電、クリーニング、給紙、搬送用のブレード、ローラ、ベルトとして好適なOA機器用導電性部材に関する。
【0002】
【従来の技術】複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子写真装置や静電記録装置等のOA機器は種々のパーツで構成されているが、ブレード、ローラ、ベルトは電子写真プロセスにおいて、帯電、現像、転写、定着、除電、クリーニング、給紙、搬送等の役割を担うパーツとして不可欠である。これらのパーツにはポリウレタン材料が多く用いられるが、その機能上10〜1012Ω・cm程度の導電性を付与させなければならない場合が多い。
【0003】従来、OA部品用ポリウレタン部材に導電性を付与するためには、ポリウレタン中にカーボンブラックやカーボン繊維、カーボンフレーク、金属粉末、金属繊維、金属酸化物ウィスカー等の電子伝導性物質を添加して分散するか、又は、過塩素酸塩、アンモニウム塩等のイオン導電性物質を添加して溶解させて得られたポリウレタン材料を成型する等の手段が講じられていた。
【0004】しかしながら、カーボンブラックや金属粉末等を添加して分散させる方法では、これらの物質の僅かな添加量のズレ、材料温度、成型温度、成型時間等の条件の僅かな変化、更には成型方法の違いによって導電パスの形態が変化するため、導電性が大きく変動し、特に体積抵抗値が10〜1011Ω・cmである領域においては、成型物全体に渡ってバラツキなく安定した導電性を付与させることは極めて困難であった。また、ポリウレタン材料中へのこれらの物質を添加すると、系の粘度が著しく上昇するために、成型が困難となったり、成型物自体の力学物性が損なわれたりすることがあった。更にこれらの物質の比重は概ねポリウレタンの比重よりも大きいため、保存中や成型中にこれらの物質が沈降して所望の導電性を得ることができないことがあった。また、これらの方法により得られた導電性ポリウレタンでは電気抵抗の印加電圧依存性、連続通電時の電気抵抗変動が大きいため電子写真装置、静電記録装置の高性能化に対する障害となっていた。
【0005】一方、過塩素酸塩、アンモニウム塩等のイオン導電性物質をポリウレタン中に添加して溶解させる方法では、所望の導電性、特に10〜1010Ω・cm領域の体積抵抗を得るためには比較的多量のイオン導電性物質を添加させなければならず、このため、コスト高となるばかりでなく成型物自体の力学物性を低下させたり、成型物表面にイオン導電性物質がブリード又はブルームし、感光体や紙等を汚染する等の問題があった。またこれらの物質は通常ポリエチレングリコール等の吸湿性の高い物質に溶解させたマスターバッチの状態で使用されているため、得られた成型物が吸湿し易くなり、温湿度変化による導電性の変動が大きな成型物しか得ることができなかった。更に得られた成型物は連続通電時の抵抗変動が大きい傾向が強かった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に鑑み、10〜1012Ω・cmの体積抵抗領域において極めて安定した導電性を示し、導電性の印加電圧依存性が小さく、連続通電時の導電性の変化が小さく、温湿度変化等の環境条件変動による導電性の変化が小さく、ブリードやブルームによる感光体汚染を生じることのないOA機器用導電性部材を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、非エーテル系ポリウレタン及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムからなる組成物を成型してなるOA機器用導電性部材である。以下に本発明を詳述する。
【0008】本発明者は、上述の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを添加して溶解させた非エーテル系ポリウレタンが10〜1012Ω・cmの体積抵抗領域において極めて安定した電気抵抗を示し、導電性の電圧依存性が小さく、連続通電時の導電性の変化が小さく、温湿度変化等の環境変動による導電性の変化が小さく、ブリードやブルームによる感光体汚染を生じることのないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】本発明で用いられる組成物は、非エーテル系ポリウレタン及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムからなるものである。本発明において、非エーテル系ポリウレタンとは、非エーテル系ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるものを意味する。上記非エーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリ(エチレンアジペート)ポリオール、ポリ(ブチレンアジペート)ポリオール、ポリ(エチレンブチレンアジペート)ポリオールに代表される縮合系ポリエステルポリオール;ポリ(カプロラクトン)ポリオール、ポリ(β−メチルγ−バレロラクトン)ポリオールに代表されるラクトン系ポリエステルポリオール;ポリ(イソプレン)ポリオール、ポリ(ブタジエン)ポリオールに代表されるオレフィン系ポリオール;ポリ(カーボネート)ポリオール、ひまし油系ポリオール、アクリル系ポリオール、ダイマー酸系ポリオール、シリコン系ポリオール、フッ素系ポリオール等を挙げることができる。
【0010】なお、ポリエチレングリコールやポリ(オキシテトラメチレン)グリコールに代表されるエーテル系ポリオールは吸湿性が高く、導電性の環境依存性を増大させるので、本発明のOA機器用導電性部材には不適切である。
【0011】上記ポリイソシアネートとしては特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、液状MDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)ナフチレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水素化TDI、水素化MDI、イソホロンジイソシアネート(IPDI)リジンジイソシアネート(LDI)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0012】上記非エーテル系ポリオール及びポリイソシアネートとを反応させる際には、更に、硬化剤を配合してもよい。上記硬化剤としては特に限定されず、例えば、脂肪族、芳香族、脂環族及びヘテロ環族の低分子量グリコール類;トリメチロールプロパン、グリセリン等のトリオール類;ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類;メチレンビス−o−クロロアニリン(MOCA)に代表されるアミン系化合物等を挙げることができる。
【0013】本発明は、導電剤として下記式で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを使用することを特徴とする。
【0014】
【化1】


【0015】この導電剤は解離度が大きいため、常用されている過塩素酸リチウムや四級アンモニウム塩型の導電剤に比して少量で高い導電性を付与することができるとともに、ポリウレタンが乾燥したり、吸湿したり、温度変化したりする等の環境条件が変化した場合にも安定した導電性を示すことができる。
【0016】ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムは、ポリウレタンのポリオール成分や硬化剤成分に直接溶解させることができるという特徴を有する。常用されている過塩素酸リチウムは低分子量アルコール類に溶解させることができず、通常オリゴマー程度の分子量を有するポリエーテル類に溶解させた形で使用される。従って、環境変動による導電性の変化を小さくする目的で、疎水性の高いポリウレタンを用い導電性部材を成型した場合であっても、環境変動にともないポリエーテル類が吸湿、乾燥することによって導電性に大きな変動を生じることがあった。また、これらのポリエーテル類が成型物の力学物性を低下させたり、ブリードの原因となる可能性もあった。本発明で用いられるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムによれば、このようなトラブルを回避することができる。
【0017】OA用導電性部材は電子写真装置や静電記録装置の心臓となるパーツである感光体、特に現在主流の有機感光体(OPC)に接触して使用されることがある。常用されている四級アンモニウム塩型の導電剤を配合したポリウレタン製導電性部材ではOPCに接触すると、OPCの表面に濁りを生じたり、静電特性に影響を与える等のOPC汚染を発生したりすることがあったが、本発明で用いられるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムによれば、OPCを汚染することがない。
【0018】本発明において、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの配合量は、上記組成物の0.001〜8重量%であることが好ましい。0.001重量%未満であると、導電性の付与が困難になり、体積抵抗値のバラツキが大きくなる。一方、8重量%を超えるとポリウレタンの力学性に影響を及ぼすとともに、コスト高となる。より好ましくは、0.002〜5重量%である。
【0019】本発明のOA機器用導電性部材は、上記組成物を成型してなるものである。上記組成物を成型して本発明のOA機器用導電性部材を得る際には、硬化反応を促進するために上記組成物に触媒を添加してもよい。上記触媒としてはウレタン化反応を促進する物質であれば特に限定されず、ウレタン成形に一般的に用いられるアミン系化合物や有機金属系化合物等の触媒を使用することができる。
【0020】本発明のOA機器用導電性部材の成型方法としては特に限定されず、例えば、常圧注型成形、減圧注型成型、遠心成型、回転成型、押出成型、射出成型、反応射出成型(RIM)、スピンコーティング等を挙げることができる。
【0021】カーボンブラックや金属粉末等を分散した従来の導電性部材においては、ポリウレタンに比して比重の大きなミクロンオーダーのカーボンブラックや金属粉末が、材料保存中や成型時、更には成型物の形状によって沈降、偏在するために、成型物に均一な導電性を安定して付与させることが困難であった。特に材料に大きな遠心力が加えられる遠心成型により成型する場合はこの傾向が強かった。また、注型機のノズルや配管中に分散粒子が滞留し、トラブルとなることもあった。従って、成型物の形状や成型方法により導電剤種や量を変化させたり、緻密に製造条件を管理する等して対応せざるを得なかった。
【0022】本発明のOA機器用導電性部材では、ポリウレタン中に導電剤であるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの分子がナノオーダーで均一に溶解しているため、成型方法によらず厳しい製造条件の管理を行うことなく成型物に所望の導電性を均一に付与させることができる。
【0023】本発明のOA機器用導電性部材は適宜着色されていてもよく、また、本発明は、カーボンブラック等の従来周知の導電剤を更に配合することを否定するものではない。
【0024】本発明のOA機器用導電性部材は10〜1012Ω・cmの体積抵抗領域において、極めて安定した電気抵抗を示し、導電性の電圧依存性が小さく、連続通電時の導電性の変化が小さく、温湿度変化等の環境条件変動による導電性の変化が小さいものである。このような本発明のOA機器用導電性部材としては、具体的には、以下の(1)、(2)又は(3)の要件を満たすものであることが好ましい。
【0025】(1)OA機器用導電性部材表面の任意の15ヶ所に250Vの電圧を30秒間印加したときの体積抵抗値を1目盛りの間隔が1×10(xは整数を表す)である対数方眼紙にプロットした際の最大値と最小値との差が4目盛り分以下である。好ましくは、2目盛り分以下である。
(2)10〜1000Vの電圧を30秒間印加したときの体積抵抗値を1目盛りの間隔が1×10(xは整数を表す)である対数方眼紙にプロットした際の最大値と最小値との差が10目盛り分以下である。好ましくは、3目盛り分以下である。
(3)100Vの電圧を、30秒間、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、又は、30分間連続して印加したときの体積抵抗値を1目盛りの間隔が1×10(xは整数を表す)である対数方眼紙にプロットした際の最大値と最小値との差が10目盛り分以下である。好ましくは、5目盛り分以下である。本発明のOA機器用導電性部材としては、上記の(1)〜(3)の要件をすべて満たすものがより好ましい。
【0026】本発明のOA機器用導電性部材としては、OA機器に用いられる導電性部材であれば特に限定されず、例えば、導電性ブレード、導電性ローラ、導電性ベルト等を挙げることができる。このような導電性ブレード、導電性ローラ、導電性ベルトもまた、本発明の1つである。
【0027】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0028】(実施例1)加温減圧下で脱水、脱泡した平均分子量2000、官能基数2のポリ(エチレンブチレンアジペート)ポリオールと、予め、平均分子量2000、官能基数2のポリ(エチレンブチレンアジペート)ポリオールとMDIとを反応させることによりNCO%を16%としたプレポリマーと、予めビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを溶解させておいた1,4−ブタンジオール及びトリメチロールプロパンの重量比7:3の混合物からなる硬化剤とを、ポリオール中の水酸基のモル数とプレポリマー中のイソシアネート基のモル数と硬化剤中の水酸基のモル数との比が1:2.7:1.6となるように秤取り攪拌混合し、130℃の遠心成型機にて約1時間硬化させた。この後、遠心成型機から成型物を取り出し、室温にて12時間熟成させることにより厚さ2mmのシート状試料を得た。なお、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの添加量は全配合量に対して0.002重量%となるようにした。
【0029】(実施例2)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの添加量を全配合量に対して0.005重量%となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で試料を得た。
【0030】(実施例3)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの添加量を全配合量に対して0.46重量%となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で試料を得た。
【0031】(実施例4)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの添加量を全配合量に対して2.30重量%となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で試料を得た。
【0032】(実施例5)加温減圧下で脱水、脱泡した平均分子量2000、官能基数2のポリ(エチレンブチレンアジペート)ポリオールと、ポリイソシアネート成分として液状MDIと、硬化剤として予めビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを溶解させておいた1,4−ブタンジオール及びトリメチロールプロパンの重量比7:3の混合物とを、ポリオール中の水酸基のモル数とポリイソシアネート中のイソシアネート基のモル数と硬化剤中の水酸基のモル数との比が1:3.2:2.1となるようにワンショットで加えて攪拌混合し、130℃の遠心成型機にて約1時間硬化させた。この後、遠心成型機から成型物を取り出し、室温にて12時間熟成させることにより厚さ2mmのシート状試料を得た。なお、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの添加量は全配合量に対して0.005重量%となるようにした。
【0033】(実施例6)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの添加量を全配合量に対して0.46重量%となるようにしたこと以外は実施例5と同様の方法で試料を得た。
【0034】(実施例7)実施例5と同様の配合物を、厚さ2mmのスペーサーを有する130℃の金型に手注型し、同温度にて約1時間硬化させた。この後、成型物を金型より取り出し、室温にて12時間熟成させることにより厚さ2mmのシート状試料を得た。
【0035】(実施例8)実施例6と同様の配合物を、実施例7と同様の方法により成型し試料を得た。
【0036】(比較例1)加温減圧下で脱水、脱泡した平均分子量2000、官能基数2のポリ(エチレンブチレンアジペート)ポリオールと、予め、平均分子量2000、官能基数2のポリ(エチレンブチレンアジペート)ポリオールとMDIとを反応させることによりNCO%を16%としたプレポリマーと、1,4−ブタンジオール及びトリメチロールプロパンの重量比7:3の混合物からなる硬化剤とを、ポリエステル系ポリオール中の水酸基のモル数とプレポリマー中のイソシアネート基のモル数と硬化剤中の水酸基のモル数との比が1:2.7:1.6となるように秤取り、更にここに予め過塩素酸リチウムを溶解させておいたポリエチレングリコール誘導体を添加し攪拌混合し、130℃の遠心成型機にて約1時間硬化させた。この後、遠心成型機から成型物を取り出し、室温にて12時間熟成させることにより厚さ2mmのシート状試料を得た。なお、過塩素酸リチウムの添加量は全配合量に対して0.002重量%となるようにした。
【0037】(比較例2)加温減圧下で脱水、脱泡した平均分子量2000、官能基数2のポリ(エチレンブチレンアジペート)ポリオールと、予め、平均分子量2000、官能基数2のポリ(エチレンブチレンアジペート)ポリオールとMDIとを反応させることによりNCO%を16%としたプレポリマーと、予め四級アンモニウム塩型導電剤を溶解させておいた1,4−ブタンジオール及びトリメチロールプロパンの重量比7:3の混合物からなる硬化剤とを、ポリエステル系ポリオール中の水酸基のモル数とプレポリマー中のイソシアネート基のモル数と硬化剤中の水酸基のモル数との比が1:2.7:1.6となるように秤取り攪拌混合し、130℃の遠心成型機にて約1時間硬化させた。この後、遠心成型機から成型物を取り出し、室温にて12時間熟成させることにより厚さ2mmのシート状試料を得た。なお、四級アンモニウム塩型導電剤の添加量は全配合量に対して0.46重量%となるようにした。
【0038】(比較例3)加温減圧下で脱水、脱泡した平均分子量2000、官能基数2のポリ(エチレンブチレンアジペート)ポリオールと、ポリイソシアネート成分として液状MDIと、硬化剤として1,4−ブタンジオール及びトリメチロールプロパンの重量比7:3の混合物とを、ポリオール中の水酸基のモル数とポリイソシアネート中のイソシアネート基のモル数と硬化剤中の水酸基のモル数との比が1:3.2:2.1となるようにワンショットで加えた。更にここに予め過塩素酸リチウムを溶解させておいたポリエチレングリコール誘導体を添加し攪拌混合し、130℃の遠心成型機にて約1時間硬化させた。この後、遠心成型機から成型物を取り出し、室温にて12時間熟成させることにより厚さ2mmのシート状試料を得た。なお、過塩素酸リチウムの添加量は全配合量に対して0.46重量%となるようにした。
【0039】(比較例4)平均分子量2000、官能基数2のポリ(エチレンブチレンアジペート)ポリオールに導電性カーボンブラック(ケッチェンブラックECP)を混練分散させ、加温減圧下で脱水、脱泡したものと、予め、平均分子量2000、官能基数2のポリ(エチレンブチレンアジペート)ポリオールとMDIとを反応させることによりNCO%を16%としたプレポリマーと、1,4−ブタンジオール及びトリメチロールプロパンの重量比7:3の混合物からなる硬化剤とを、カーボンブラック分散ポリオール中の水酸基のモル数とプレポリマー中のイソシアネート基のモル数と硬化剤中の水酸基のモル数との比が1:2.7:1.6となるように秤取り攪拌混合し、130℃の遠心成型機にて約1時間硬化させた。この後、遠心成型機から成型物を取り出し、室温にて12時間熟成させることにより厚さ2mmのシート状試料を得た。
【0040】(比較例5)比較例4と同様の配合物を、厚さ2mmのスペーサーを有する130℃の金型に手注型し、同温度にて約1時間硬化させた。この後、成型物を金型より取り出し、室温にて12時間熟成させることにより厚さ2mmのシート状試料を得た。
【0041】実施例1〜8及び比較例1〜5で得られた試料について、以下の評価試験を行った。結果を表1に示した。
[導電性の評価]抵抗測定器(アドバンテスト社製、R8340A)を使用し評価した。
(1)体積抵抗試料に250Vの電圧を30秒間印加したときの体積抵抗を評価した。測定は試料全面15ヶ所について行い、この算術平均値を体積抵抗値とした。
(2)体積抵抗バラツキ(1)で測定した15ヶ所の体積抵抗値を1目盛りの間隔が1×10(xは整数を表す)である対数方眼紙にプロットした際の最大値と最小値の差を目盛りの間隔で評価した。
(3)電圧依存性試料に10〜1000Vの電圧を30秒間印加したときの体積抵抗値を測定し、1目盛りの間隔が1×10(xは整数を表す)である対数方眼紙にプロットした際の最大値と最小値の差を目盛りの間隔で評価した。
(4)連続通電変動試料に100Vの電圧を30秒〜30分間連続印加したときの抵抗を5分毎に測定し、1目盛りの間隔が1×10(xは整数を表す)である対数方眼紙にプロットした際の最大値と最小値の差を目盛りの間隔で評価した。
(5)環境変動低温低湿(10℃、相対湿度15%)〜高温高湿(32.5℃、相対湿度85%)の環境下で、試料に250Vの電圧を30秒間印加したときの体積抵抗を測定し、1目盛りの間隔が1×10(xは整数を表す)である対数方眼紙にプロットした際の最大値と最小値の差を目盛りの間隔で評価した。
(6)表面抵抗バラツキシート状試料の両面の表面抵抗を測定し、1目盛りの間隔が1×10(xは整数を表す)である対数方眼紙にプロットし、その差を目盛りの間隔で評価した。
【0042】[OPC汚染性の評価]780nmの露光波長に感度を有し、帯電極性がマイナスである直径30mmのOPCドラムに対する汚染性を評価した。試料より切り出した短冊状の試験片をOPCに接触させ、40℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽中で2週間汚染させた後、以下の項目を評価した。
(7)外観OPCより試料を剥がし、OPCの試料接触部分の外観を評価した。試料接触部分が非接触部分とを比較して全く変化なければ○、白濁する等曇りを生じている場合は×とした。
(8)静電特性静電特性測定器(トレック・ジャパン社製、ModelELYSIA VII)を用いて測定した。OPCの試料接触部位と非接触部位に帯電−露光−除電のサイクル疲労試験を500回行い、帯電電位や残留電位の変化を非接触部と比較して評価した。静電特性に異常が認められない場合を○、異常が認められた場合を×とした。
【0043】
【表1】


【0044】
【発明の効果】本発明は、上述の構成よりなるので、10〜1012Ω・cmの体積抵抗領域において、極めて安定した電気抵抗を示し、導電性の電圧依存性が小さく、連続通電時の導電性の変化が小さく、温湿度変化等の環境条件変動による導電性の変化が小さく、ブリードやブルームによる感光体汚染を生じることのない特性を合わせ持つOA機器用導電性部材を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 非エーテル系ポリウレタン及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムからなる組成物を成型してなることを特徴とするOA機器用導電性部材。
【請求項2】 ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの配合量が組成物の0.001〜8重量%であることを特徴とする請求項1記載のOA機器用導電性部材。
【請求項3】 250Vの電圧を30秒間印加したときの体積抵抗値が10〜1012Ω・cmであることを特徴とする請求項1又は2記載のOA機器用導電性部材。
【請求項4】 OA機器用導電性部材表面の任意の15ヶ所に250Vの電圧を30秒間印加したときの体積抵抗値を1目盛りの間隔が1×10(xは整数を表す)である対数方眼紙にプロットした際の最大値と最小値との差が4目盛り分以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のOA機器用導電性部材。
【請求項5】 10〜1000Vの電圧を30秒間印加したときの体積抵抗値を1目盛りの間隔が1×10(xは整数を表す)である対数方眼紙にプロットした際の最大値と最小値との差が10目盛り分以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のOA機器用導電性部材。
【請求項6】 100Vの電圧を、30秒間、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、又は、30分間連続して印加したときの体積抵抗値を1目盛りの間隔が1×10(xは整数を表す)である対数方眼紙にプロットした際の最大値と最小値との差が10目盛り分以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のOA機器用導電性部材。
【請求項7】 OA機器用導電性部材表面の任意の15ヶ所に250Vの電圧を30秒間印加したときの体積抵抗値を1目盛りの間隔が1×10(xは整数を表す)である対数方眼紙にプロットした際の最大値と最小値との差が4目盛り分以下であり、10〜1000Vの電圧を30秒間印加したときの体積抵抗値を1目盛りの間隔が1×10(xは整数を表す)である対数方眼紙にプロットした際の最大値と最小値との差が10目盛り分以下であり、かつ、100Vの電圧を、30秒間、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、又は、30分間連続して印加したときの体積抵抗値を1目盛りの間隔が1×10(xは整数を表す)である対数方眼紙にプロットした際の最大値と最小値との差が10目盛り分以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のOA機器用導電性部材。
【請求項8】 導電性ブレードであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のOA機器用導電性部材。
【請求項9】 導電性ローラであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のOA機器用導電性部材。
【請求項10】 導電性ベルトであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のOA機器用導電性部材。

【公開番号】特開2002−317114(P2002−317114A)
【公開日】平成14年10月31日(2002.10.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−123227(P2001−123227)
【出願日】平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】