OCBモード半透過反射型液晶表示装置
【課題】 本発明は、光反射表示部と光透過表示部とを有する半透過反射型液晶表示装置においてOCBモードを実現できる技術の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明は、光透過表示部30の一方の基板側において液晶側の部分に凸部24または凹部が複数形成され、光透過表示部に透明電極と配向膜が凸部または凹部を覆うように形成されて配向膜に液晶をスプレイ配向状態からベンド配向状態に転移させる核となり得る液晶配向を促す斜面が形成されてなることを特徴とする。
【解決手段】 本発明は、光透過表示部30の一方の基板側において液晶側の部分に凸部24または凹部が複数形成され、光透過表示部に透明電極と配向膜が凸部または凹部を覆うように形成されて配向膜に液晶をスプレイ配向状態からベンド配向状態に転移させる核となり得る液晶配向を促す斜面が形成されてなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外光反射を利用しての反射表示とバックライトを利用しての透過表示の両方に対応することができる半透過反射型液晶表示装置においてOCBモードとして望ましい構造とした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の分野においては消費電力の低減が強く要求されており、画素の領域をできるだけ大きくして表示の明るさを向上することも求められている。このため、アクティブマトリクス基板全面に厚膜の絶縁膜を形成し、この絶縁膜の上に反射型の画素電極を形成したものが実用化されている。このように絶縁膜上に画素電極を上置きする構造のものでは、絶縁膜下層に配された走査線や信号線等と上層に配された画素電極との間で電気的な短絡を生じない構成を採用できるため、これら配線上にオーバーラップさせるように広い面積で画素電極を形成することが可能となる。これにより、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor :以下にTFTと略記する)等のスイッチング素子や走査線,信号線の形成された領域を含めてほとんど全てを表示に寄与する画素領域とすることができ、開口率を高めて明るい表示を得ることができる。
【0003】
また、反射型の画素電極を用いた液晶表示形態のみでは暗所での使用ができないため、液晶表示装置にバックライトを併設し、反射型液晶表示装置を部分的に透過表示可能な構成とした半透過反射型の液晶表示装置も広く使用されている。(特許文献1、2参照)
先の半透過反射型の液晶表示装置では、1つの画素に反射表示領域と透過表示領域を作り込み、反射表示領域のセルギャップを透過表示領域のセルギャップの半分程になるように作り込むデュアルギャップタイプ構造とされる。
これは、反射表示領域では外部から入射した光が観察者に到達するまでの間に2回液晶層を通過するのに対して、透過表示領域では光が1回のみ液晶層を通過して観察者に到達するので、同じ液晶層厚としたのでは、透過表示領域と反射表示領域とで光学条件が異なるようになり、色味やコントラストなどが変化することを解消するためである。
【0004】
しかし、反射表示領域と透過表示領域とを1つの画素内に作り込む構造として更にデュアルギャップ構造とすると、1つの画素内で反射表示領域の液晶と透過表示領域の液晶をそれぞれに好適な配向状態とする必要がある。しかし、デュアルギャップ構造で領域毎に液晶層厚が異なるということは、反射表示領域と透過表示領域とで段差を有する構造となるので、段差付きの各領域の配向膜に好ましい配向特性を付与しなくてはならない。
【0005】
ところで近年、液晶表示装置の広視野角化と高速応答性を目的としてOCB(Optical Compensated Bend)モードと称される表示方式が研究されているが、このOCBモードの液晶表示装置では、上下の基板の配向膜のプレチルトの方向を逆向きとして液晶をベンド配向させる必要があるとともに、ベンド配向させることが可能な液晶セルに更に補償フィルムが付設された構造とされている。
【特許文献1】特願2000−171794号公報
【特許文献2】特許第3235102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記OCBモードの液晶は、スプレイ配向している液晶を電圧印加時にベンド配向状態へスムーズに転移する必要があるが、現状知られている技術ではスプレイ配向状態の液晶をベンド配向状態の液晶とするためには、10Vの電圧印加で1時間程度必要であるとの報告もある状態であり、実用的に液晶のスプレイ配向状態をベンド配向状態にスムーズに転移することは極めて困難な状況であった。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、光反射表示部と光透過表示部とを有する半透過反射型液晶表示装置において液晶のスプレイ配向状態からベンド配向状態に転移することを容易化することができるOCBモードの半透過反射型液晶表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、対向配置された基板間に液晶が封入されたOCBモードの液晶パネルを備え、前記一方の基板の液晶層側の面と前記他方の基板の液晶層側の面にそれぞれ電極と配向膜が形成され、前記他方の基板の電極の一部が光反射性の画素電極とされ、前記画素電極の一部に透過部が形成され、該透過部の形成領域に透明電極が形成されて光透過表示部とされ、前記光反射性の画素電極形成領域が光反射表示部にされ、前記一方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きと前記他方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きが平行にされるとともに、前記光透過表示部の前記一方の基板側において前記液晶側の部分に凸部または凹部が複数形成され、前記光透過表示部に透明電極と配向膜が前記凸部または凹部を覆うように形成されて前記配向膜に液晶をスプレイ配向状態からベンド配向状態に転移させる核となり得る液晶配向を促す斜面が形成されてなることを特徴とする。
【0009】
OCBモードの液晶パネルではスプレイ配向状態の液晶分子をベンド配向状態に転移してから駆動する。スプレイ配向状態の液晶分子は配向膜に近い位置の液晶分子が基板に対して小さなプレチルト角で配向しながら基板間に位置する液晶分子は基板面方向に沿った配向方位を示すスプレイ配向状態をとる。これに対して本発明の構造においては光透過表示部に凸部または凹部を設けることにより、その上に形成される配向膜に斜面を形成し、この斜面により液晶分子にスプレイ配向状態の液晶分子よりも高プレチルトの領域を部分的に生成する。先の斜面に近い位置に存在する液晶分子、即ち、高プレチルトの領域の液晶分子は、斜面がない領域の液晶分子よりベンド配向状態になりやすい状態であるので、高プレチルト角の領域の液晶分子がベンド配向状態に転移する場合の液晶分子の配向開始の核となり得る。従って前記の構造を実現することにより、スプレイ配向状態からベンド配向状態への転移を円滑に行うことができる。
【0010】
本発明は、対向配置された基板間に液晶が封入されたOCBモードの液晶パネルを備え、前記一方の基板の液晶層側の面と前記他方の基板の液晶層側の面にそれぞれ電極と配向膜が形成され、前記他方の基板の電極の一部が光反射性の画素電極とされ、前記画素電極の一部に透過部が形成され、該透過部形成領域に透明電極が形成されて光透過表示部とされ、前記光反射性の画素電極形成領域が光反射表示部にされ、前記一方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きと前記他方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きが平行にされるとともに、前記光反射性の画素電極の下に絶縁層が設けられて前記光反射表示部の液晶層の厚さが前記光透過表示部の液晶層の厚さよりも大きくされたマルチギャップ構造とされる一方、前記光透過表示部の前記一方の基板側において前記液晶側の部分に凸部または凹部が複数形成され、該凸部または凹部を覆って前記光透過表示部に透明電極と配向膜が前記凸部または凹部を覆うように形成されて前記配向膜に液晶をスプレイ配向状態からベンド配向状態に転移させる核となり得る液晶配向を促す斜面が形成されてなることを特徴とする。
【0011】
OCBモードの液晶パネルではスプレイ配向状態の液晶分子をベンド配向状態に転移してから駆動する。スプレイ配向状態の液晶分子は配向膜に近い位置の液晶分子が基板に対して小さなプレチルト角で配向しながら基板間に位置する液晶分子は基板面方向に沿った配向方位を示すスプレイ配向状態をとる。これに対して前記の構造においては光透過表示部に凸部または凹部を設けることにより、その上に形成される配向膜に斜面を形成し、この斜面により液晶分子にスプレイ配向状態の液晶分子よりも高プレチルトの領域を生成する。この高プレチルトの領域の液晶分子は、斜面がない領域の液晶分子よりベンド配向状態になりやすい状態であるので、高プレチルトの領域の液晶分子がベンド配向状態に転移する場合の液晶分子の配向開始の核となり得る。従って本発明の構造により、スプレイ配向状態からベンド配向状態への転移を円滑に行うことができる。
また、光反射性の画素電極の下に絶縁層を設けて前記光反射表示部の液晶層の厚さを前記光透過表示部の液晶層の厚さよりも大きくしたマルチギャップ構造とすることで、光反射表示部での反射光の光路と光透過部での透過光の光路を均等化することができ、光学条件の設定が容易となり、カラー表示の場合の反射表示と透過表示の色味の違いの少ないカラー表示に望ましい形態をとることができる。
【0012】
本発明は、前記斜面の向きが前記配向膜の液晶配向容易軸の向きに沿う向きであって、OCBモード液晶のベンド配向時において前記一方の基板側の液晶が示す向きに沿うように揃えられてなることを特徴とする。
前記斜面の形成により、液晶分子の高プレチルト角の領域を生成できるが、液晶分子の配向容易軸の向きに前記斜面が沿っている場合に、液晶分子のスプレイ配向状態からベンド配向状態への転移をより確実に促進することができる。前記斜面がベンド配向時の液晶分子の向きに沿うならば、スプレイ配向状態の際に既に液晶分子の一部をベンド配向状態に近い状態に配向させておくことができ、これによりベンド配向に転移させる場合により円滑に液晶分子を配向させることができる。
【0013】
本発明は、前記凸部が断面不等辺三角型またはピラミッド型であることを特徴とする。
先のベンド配向を促する斜面は断面不等辺三角型またはピラミッド型の凸部で実現することができ、これらの形状の凸部の斜面を利用して液晶分子の高プレチルト角の領域を形成しておくことでベンド配向への転移を促進する。
【0014】
本発明は、前記光反射性の画素電極の下に絶縁層が設けられ、該絶縁層上に凹凸部が形成され、前記凹凸部上に該凹凸部形状に沿うように前記光反射性の画素電極が形成されてなることを特徴とする。
凹凸形状の光反射性の画素電極を有することで、反射表示の際に反射光を拡散させて広い範囲で明るい表示形態を実現できる。
【0015】
本発明は、前記光透過表示部の前記一方の側の基板の液晶側に形成された複数の凸部または凹部が前記光反射表示部の画素電極の下に形成されている絶縁層と同じ絶縁材料からなることを特徴とする。
光反射表示部の画素電極下の絶縁層と同じ絶縁材料から前記凸部または凹部を形成するならば、画素電極下の絶縁層を形成する際に利用した絶縁層の一部を利用して光透過表示部に凸部または凹部を形成することができる。
例えば、基板全面に絶縁層を形成した後、絶縁層の一部を除去するエッチングを行って透過表示部の窪部を形成する際、透過表示部底部に絶縁層の一部を残しておいてそれらを凸部または凹部の形状にしておくならば、凸部や凹部を形成する工程を別途行わなくとも透過表示部を形成する工程を流用できるので、製造工程を別途増やすことなく凸部または凹部を形成できる。
【発明の効果】
【0016】
OCBモードの液晶パネルではスプレイ配向状態の液晶分子をベンド配向状態に転移してから駆動する。スプレイ配向状態の液晶分子は配向膜に近い位置の液晶分子が基板に対して小さなプレチルト角で配向しながら、基板間に位置する液晶分子は基板面方向に沿った配向方位を示すスプレイ配向状態をとる。これに対して前記の構造においては光透過表示部に凸部または凹部を設けることにより、その上に形成される配向膜に斜面を形成し、この斜面により液晶分子にスプレイ配向状態の液晶分子よりも高プレチルトの領域を生成する。この高プレチルトの領域の液晶分子は、ベンド配向状態になりやすい状態であるので、高プレチルトの領域の液晶分子がベンド配向状態に転移する場合の液晶分子の配向開始の核となる。従って前記構造により、スプレイ配向状態からベンド配向状態への転移を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明に係る液晶表示装置の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするために各構成要素の厚さや寸法等の比率などは適宜異ならせて示してある。
図1〜図8は本発明に係る半透過反射型液晶表示装置の第1の実施形態を示すもので、この形態の半透過反射型液晶表示装置Aは、図2に全体構成を示すように、本体であるOCBモードの液晶パネル1と、この液晶パネル1の背面側に配置されたバックライトBLと、液晶パネル1の上面側に必要に応じて配置されたフロントライトFLとを備えて構成されている。
【0018】
「液晶パネルの構造」
前記液晶パネル1は、図3に概略構造を示すように、スイッチング素子が形成された側のアクティブマトリクス基板(下基板:他方の基板)2と、それに対して設けられた対向側の基板(上基板:一方の基板)3と、これらの基板2、3の間に基板2、3とシール材4とに囲まれて挟持されている光変調層としての液晶層5とを備えて構成されている。即ち、上述のように構成された基板2、3は、スペーサ(図示略)によって互いに一定に離間された状態で保持されるとともに、図2に示すように基板周辺部に矩形枠状に塗布された熱硬化性のシール材4によって接着一体化されている。
【0019】
アクティブマトリクス基板2は、図1、図4または図5に示すように、ガラスやプラスチック等からなる透明の基板本体6上に、平面視それぞれ行方向(図4、図5のx方向)と列方向(図4、図5のy方向)に複数の走査線7と信号線8が相互に電気的に絶縁されて形成され、各走査線7、信号線8の交差部の近傍にTFT(スイッチング素子)10が形成されている。上記基板本体6上において、画素電極11が形成される領域、TFT10が形成される領域、走査線7及び信号8が形成される領域を、それぞれ画素領域、素子領域、配線領域と呼称することができる。
【0020】
本実施形態のTFT10は逆スタガ型の構造を有し、本体となる基板本体6の最下層部から順にゲート電極13、ゲート絶縁膜15、i型半導体層14、ソース電極17及びドレイン電極18が形成され、i型半導体層14の上であってソース電極17とドレイン電極18との間にはエッチングストッパ層9が形成されている。
即ち、走査線7の一部が延出されてゲート電極13が形成され、これを覆ったゲート絶縁膜15上にゲート電極13を平面視で跨るようにアイランド状の半導体層14が形成され、このi型半導体層14の両端側の一方にn型半導体層16を介してソース電極17、他方にn型半導体層16を介してドレイン電極18がそれぞれ形成されている。
【0021】
基板本体6はガラスの他、合成樹脂等の絶縁性透明基板からなる。ゲート電極13は導電性の金属材料からなり、図4に示すように行方向に配設される走査線7と一体に形成されている。ゲート絶縁膜15は酸化シリコン(SiOx)や窒化シリコン(SiNy)等のシリコン系の絶縁膜からなり、走査線7及びゲート電極13を覆うように基板上に形成されている。
前記半導体層14は、アモルファスシリコン(a−Si)等からなり、ゲート絶縁膜15を介してゲート電極13と対向する領域がチャネル領域として構成される。ソース電17及びドレイン電極18は導電材料からなり、半導体層14上に、チャネル領域を挟むように対向して形成されている。また、ドレイン電極18は列方向に配設される信号線8から個々に延出されて形成されている。
【0022】
なお、i型半導体層14とソース電極17及びドレイン電極18との間で良好なオーミック接触を得るために、半導体層14と各電極17、18との間には、リン(P)等のV族元素を高濃度にドープしたn型半導体層(オーミックコンタクト層)16が設けられている。そして、以上説明の如く構成されている薄膜トランジスタ10の部分および走査線7と信号線8を覆うソース絶縁膜20Aが基板本体6上に形成されている。このソース絶縁膜20Aは先のTFT10を覆い隠すことができる程度の厚膜状に形成され、その上面は平坦化されている。即ち、この厚膜の絶縁膜20AによりTFT10や各種配線によって形成された基板本体6上の段差構造が平坦化されている。なお、この実施形態ではスイッチング素子として逆スタガ型のTFT10を設けたが、スイッチング素子は他の積層構造の薄膜トランジスタあるいは薄膜ダイオード素子などのスイッチング素子を用いても良いのは勿論である。
【0023】
更に、先のソース絶縁膜20Aの上には有機材料からなる絶縁膜20Bが積層され、この絶縁膜20B上にAlやAg等の高反射率の金属材料からなる光拡散反射性画素電極(光反射性の画素電極)11が形成されている。
前記光反射性の画素電極11は、先の走査線7と信号線8とが囲む矩形状の領域よりも若干小さくなるような平面視矩形状になるように絶縁膜20B上に形成され、図5に示すように平面視した場合に上下左右に並ぶ画素電極11どうしが短絡しないように所定の間隔をあけてマトリクス状に配置されている。即ち、これらの画素電極11は、それらの端辺がそれらの下に位置する走査線7及び信号線8に沿うように配置されており、走査線7と信号線8が区画する領域のほぼ全域を画素領域とするように形成されている。なお、これらの画素領域の集合が液晶パネル1での表示領域に相当する。
【0024】
前記絶縁膜20Bは、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ベンゾシクロブテンポリマ(BCB)等からなる有機系の絶縁膜とされており、TFT10の保護機能を強化するようになっている。この絶縁膜20Bは、基板本体6上において他の層に対して比較的厚く積層され、画素電極11とTFT10及び各種配線との絶縁を確実にし、画素電極11との間に大きな寄生容量が発生するのを防止する。
【0025】
前述の絶縁膜20A、Bにおいて先の各ソース電極17の一端部17aに達するようにコンタクトホール21が形成され、このコンタクトホール21の内部にはその上下に位置する画素電極11とソース電極17の一端の接続部17aを電気的に接続する導電材料からなる接続部25が形成され、TFT10の動作により画素電極11に対する通電のスイッチングの切り替えができるように構成されている。
【0026】
先の絶縁膜20Bにおいて走査線7と信号線8とが囲む矩形状の領域の中央部に位置するように平面視短冊状の窪部22が形成され、この窪部22は絶縁膜20Bを貫通して絶縁膜20Aに達するように形成されている。この窪部22の平面形状は先の画素電極11の横幅の数分の1程度、画素電極11の縦幅の5〜6割程度、総合的には画素電極11の総面積の20〜50%程度の大きさとされることが望ましい。
また、窪部22の底面側で絶縁膜20Aの上面側には、図1の断面視三角波状の凸部24が複数相互に離間して整列形成されている。これらの凸部24はその高さが0.1〜1μm、好ましくは0.1〜0.3μmの範囲に形成され、それら個々の形状は凸部24の1つ1つが独立した三角錐、四角錐などの多角錐、あるいは円錐、ピラミッド型などの形状のものが独立して離間整列形成された形状、あるいは、これらが連続形成された形状などのいずれの形状にされていても良い。
ただし、これらの凸部24においては、図1の断面図において左右方向のいずれかに向いた斜面24a、24bを有する形状であることが好ましく、更には、図1の断面図において左側向き(コンタクトホール21側向き)の斜面24aよりも、その反対側の右側向きの斜面24bの方が長い(面積が大きい)断面不等辺三角形状であることが好ましい。以上のような形状が好ましい理由については後述する。
【0027】
次に、前記窪部22の位置に相当する部分の画素電極11には窪部22の底面に合致するような平面形状の透過部(透孔)23が形成され、この画素電極11の透過部23の下側に位置する窪部22の底面を覆うように透明電極材料からなる透明(画素)電極19が形成され、窪部22の内周面を覆うように延長形成された画素電極形成材料が窪部底面の透明電極19の周縁部まで到達されて光反射性の画素電極11に透明電極19が電気的に接続されている。従って光反射性の画素電極11と透明電極19はTFT10のスイッチング動作によって同時駆動されて液晶層に電界を印加して液晶の駆動を行うことができるようになっている。
従って各画素領域において、窪部22の形成部分が基板2の外側からの入射光(バックライトBLから出射された光)を透過する光透過部30とされており、その他の領域、即ち、画素電極11の非透過部(透過部23が形成されていない部分)が基板3の外側からの入射光を反射する光反射部35とされている。
【0028】
また、先の光反射性の画素電極11の3つが、後述するカラー表示のためのほぼ1つの画素領域に対応し、透過部23の底面積が透過表示の際の光通過領域に対応するので、先の画素電極11の面積に占める透過部23の面積割合を20〜50%の範囲とすることが好ましい。更に、この実施形態では画素電極11に透過部23を1つのみ形成したが、画素電極11に複数の透過部を形成しても良い。その場合に複数の透過部を合わせた総面積を画素電極11の面積の20〜50%の範囲とすることが好ましい。勿論その場合に複数の透過部の形成位置に合わせて各透過部の下にそれぞれ窪部を設けることとなる。
【0029】
ところで、絶縁膜20Bの表面には画素領域に対応する位置に、転写型を絶縁膜20Bの上面に圧着する方法などにより形成された複数の凹部26が設けられている。この絶縁膜20Bの上面に形成された複数の凹部26は、図5の鎖線に示すように画素電極11に所定の表面凹部形状を付与し、この画素電極11に形成された複数の凹部27によって液晶パネルに入射した光は一部散乱され、より広い観察範囲でより明るい表示が得られるような拡散反射機能が付与されている。また、図6に示すように各凹部27は左右に隣接したものが互いにそれらの開口部側の内面の一部を隣接するように密接配置されている。これら画素電極11の凹部27の詳細形状の説明については後述する。
【0030】
上述のように構成された基板本体6上には、更に画素電極11及び絶縁層20Bと窪部22とその底面並びに複数の凸部24を覆うようにポリイミド等からなる下基板側配向膜29a、29bが形成されている。これらの下基板側配向膜29a、29bにおいて、光透過部30、即ち、窪部22の底部側に形成されているのが配向膜29aであり、画素電極11上に形成されているのが配向膜29bである。
これらの配向膜29a、29bには、図1の矢印Rに示す方向(図1の断面図において左向き)にラビング処理が施されて、液晶の配向容易軸の方向が矢印Rに示す方向とされるとともに、プレティルト角が0゜を超えて10゜以下、例えば1〜10゜の範囲、より好ましくは5〜10゜の範囲とされている。
なお、窪部2の底部側の配向膜29aにおいてその下側の凸部24上に形成されている配向膜29aには、凸部24の斜面24aの上に位置する斜面29a1が形成され、凸部24の斜面24bの上に位置する斜面29a2が形成されている。
【0031】
図1または図3に示す対向基板3はガラスやプラスチック等からなる透光性の基板本体41の液晶層5側の面に、カラーフィルタ層42とITO等の透明な対向電極(共通電極)43と上基板側配向膜44が形成されている。なお、図1において基板本体41の外面側には図1に示すように偏光板H1、位相差板H2、H3が必要に応じて設けられる。前記カラーフィルタ層42はブラックマトリクスにより碁盤目状に区画された矩形状の領域に個々に赤色と青色と緑色の3原色のいずれかのカラー絵素が配置され、これらの矩形状の領域は先に図5を元に説明した平面視矩形状の画素電極11の形状と対応され、これら各画素電極11が対応する領域の液晶の透過率を調節することでカラー表示ができるように構成されている。
前記上基板側配向膜44と、前記画素電極11上の平面部分に形成されている配向膜29bは、例えば、図7、8に示すような凹凸形状の配向膜を例示することができる。
前記配向膜(一方の基板側の配向膜)44並びに前記配向膜29bは、表面に形状異方性が付与された高分子膜から構成された配向膜であって、いずれもプレティルト角が0゜を超えて10゜以下、例えば1〜10゜の範囲、より好ましくは5〜10゜の範囲とされている。
【0032】
前記配向膜44、29bによる配向制御に関する技術的詳細は、本出願人による非特許文献のSID93 DIGEST,頁957(93')に記載されているが、これらの配向膜44、29bの表面形状は、図7及び図8に示すように、第1の方向に沿う微細な凹凸と、この第1の方向に交差する第2の方向に沿う微細な凹凸が形成されている。尚、図8は図7中のIII−III線に沿う断面図であり、第2の方向に沿った凸条54の断面を示すものである。
また、第1の方向に沿う微細な凹凸のピッチP1は第2の方向に沿うピッチP2よりも短くされている。ピッチP1は3.0μm以下、好ましくは0.05μm以上、0.5μm以下、ピッチP2は50μm以下、好ましくは0.5μm以上、5μm以下が好ましい。
上記のようにピッチP2の長さをピッチP1よりも長くすることにより、プレティルト角を制御し易い。
【0033】
また、第1の方向の凹部の深さd1(あるいは第1の方向の凸部の高さ)は0.5μm以下、好ましくは0.01μm以上、0.2μm以下であり、第2の方向の凹部の深さd2(あるいは第2の方向の凸部の高さ)は0.5μm以下、好ましくは0.01μm以上、0.2μm以下である。また、ドメインの発生がなく、かつ目的とする配向力を得るためには、例えば第2の方向に沿う微細な凹凸の緩斜面62の基板10に対する傾斜角θを、0度より大きく、10度以下とするのが好ましい。傾斜角θが0度であると、ドメイン発生が顕著であり、10度を超えると、配向力の低下が徐々に認められる傾向となる。
【0034】
更に図7に示すように、第2の方向に沿う微細な凹凸の各凸部は左右が非対称の略三角形状になっている。即ち、三角形の頂点から下ろした図8に示す垂線Aによって分割された頂角の左右の角度の比r2/r1が1とならない形状とされる。前記凸条54の横断面形状としては,sin波に類似した形状、櫛形状、三角形状等各種の形状が考えられる。中でも液晶の配向性を向上する上では、三角形状が最も望ましい。この場合、三角形状の頂部は、丸まっていても、平にカットされていても良い。前記凸条54を横断面三角形状とした場合、図7に示すように三角形の頂点から下ろした垂線Aによって分割された頂角の左右の角度の比r2/r1は、5.6以上の範囲であることが望ましい。この範囲の比に設定すると、プレチルト角を5〜8゜にすることができる。
これらの配向膜44、29bの膜厚は、例えば500〜600Å(0.05〜0.06μm)程度とされる。
【0035】
前記配向膜44、29bに用いる高分子膜の材料としては、硬化する前に弱い剪断力により剪断ひずみを付与可能な材料及び/または応力により塑性変形(塑性流動)可能な材料であり、例えば、ポリイミド系、ポリアミド系、ポリビニルアルコール系、エポキシ系、変性エポキシ系、ポリスチレン系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、アクリル系等の樹脂から適宜選択して用いられる。
これらの配向膜44、29bの形成方法としては、例えば、転写すべき微細な凹凸模様(上記第1の方向に沿う微細な凹凸と第2の方向に沿う微細な凹凸を形成するための微細な凹凸模様)が表面に形成された転写型を、一方の基板上に反射体と電極層を介して形成された上記高分子膜材料からなる層に押圧し、上記微細な凹凸模様を転写する転写法により容易に作製できる。
【0036】
上記転写型は、例えば、以下のようにして作製されたものである。まず、2倍のコヒーレントなレーザビームを用いるホログラフィク干渉により形成したグレーティングモールド(格子型)を作製する。このグレーティングモールドの表面には、配向膜44、29bに形成する微細な凹凸模様と同様の微細な凹凸模様が形成されている。
次いで、上記グレーティングモールドをシリコーンゴム層に押圧すると、シリコーンゴム層の表面に上記グレーティングモールドの凹凸模様と逆の凹凸模様が形成される。次いでグレーティングモールドを剥離すると、シリコーンゴム層からなる転写型が得られる。
【0037】
次に、先に説明した絶縁膜20Bの上面側の光拡散反射用の凹部27の形状について説明する。
これらの凹部27の内面は、この実施形態では図9と図10に示すように非対称球面形状に形成され、画素電極11に所定角度(例えば30°)で入射した光の拡散反射光の輝度分布がその正反射角度からある角度範囲で非対称に、しかも、観察者の視覚方向として有効な方向に集中するようになっている。
前記凹部27において凹部27の1つの周辺部S1から最深点Dに至る第1曲線A1と、この第1曲線A1に連続して凹部の最深点Dから他の周辺部S2に至る第2曲線A2とからなっている。これら両曲線は、最深点Dにおいて共に基材本体6の上面に対する傾斜角がゼロとなり、互いにつながっている。
【0038】
前記第1曲線A1の基板本体上面に対する傾斜角は第2曲線A2の傾斜角よりも急であって、最深点Dは凹部27の中心Oから若干x方向にずれた位置にある。すなわち、第1曲線Aの基材表面Sに対する傾斜角の絶対値の平均値は、第2曲線Bの基材表面Sに対する傾斜角の絶対値の平均値より大きくなっている。
本実施形態の反射体において、各凹部27におけるそれぞれの最大傾斜角δmaxは、2〜90゜の範囲内で不規則にばらついている。しかし多くの凹部は最大傾斜角δmaxが4°〜35°の範囲内で不規則にばらついている。
また、製造の容易性から凹部27の直径は5μm〜100μmに設定されている。さらに、凹部27の深さは0.1μm〜3μmの範囲に形成されている。
【0039】
なお、図5に示す画素電極11の平面形状では図面の簡略化のために画素電極11上の凹部27を略しているが、画素電極11は通常の液晶パネルでは縦100〜200μm程度、横幅30〜90μm程度の大きさであるので、先の凹部27の画素電極11に対する相対的な大きさの一例を図5の1つの画素上に鎖線で示しておく。
【0040】
更に、これら凹部27の上に形成されている配向膜29bの膜厚は500〜600Å程度とされるので、凹部27の形状が配向膜29bの上面側においても維持されるので、凹部27の上に位置する液晶分子においても例えば図10に示すように第2曲線A2に沿った斜面S2に沿って液晶分子の配向規制力を作用させるようになっている。従って、これらの凹部27の内面のほとんどの部分は、配向膜29bが発揮する1〜10゜の範囲のプレチルト角よりも大きなプレチルトを液晶分子に発現させ得る高プレチルト角領域生成用の斜面27aとされている。
【0041】
本実施形態の半透過反射型液晶表示装置Aでは、図1に示したように画素電極11に形成した透過部23の下に位置する絶縁膜20に窪部22を形成し、この窪部22内にも液晶が導入されることにより、光透過部30上の液晶層5の厚さd3は、光反射部35上の液晶層5の厚さd4より大きい値とされており、好ましくは光透過部30上の液晶層5の厚さd3は、光反射部35上の液晶層5の厚さd4の約2倍の値とされている。この構造によって反射表示部35における光の反射経路と透過表示部30における光の透過経路を略等しくすることができ、反射表示の際のカラー表示の色味と透過表示の際のカラー表示の色味をできる限り差異のないものとすることができる。
【0042】
「バックライトの構造」
次に、この実施形態の半透過反射型表示装置Aに適用されるバックライトBLは、図2に示すように、液晶パネル1の裏面側に設けられ、平板状の透明なアクリル樹脂などからなる導光板52と光源53とバー導光体55とから概略構成されている。
透明の導光板52は、液晶パネル1の裏面側に配置されて光源53から出射された光を液晶パネル1側に照射するものである。図2に示す光源53から出射される光は端面を介して導光板52の内部に導入され、導光板52の裏面側に形成されているプリズム形状の凹凸部などの光反射部で光路変更して導光板上面の出射面から液晶パネル1側に出射できるようになっている。このバックライトBLと液晶パネル1との間には必要に応じて偏光板と位相差板が配置される。
【0043】
「フロントライトの構造」
この実施形態の半透過反射型表示装置Aに適用されるフロントライトFLは、図2に示すように、導光板72と光源73とから構成されており、光源73は、導光板72に光を導入する端部側に配設されている。また、導光板72は透明樹脂板で形成されており、導光板72の下面(液晶パネル1側の面)は、液晶パネル1を照明するための光が出射される出射面とされており、この出射面と反対側の一面(導光板72の上面)は、その内部を伝搬する光の方向を変えるための反射面(導光手段)とされている。
【0044】
この反射面には、その内部を伝搬する光を反射させて伝搬方向を変えるために、くさび状の溝74が、所定のピッチでストライプ状に複数形成されている。この溝74は、出射面に対して傾斜して形成された緩斜面部と急斜面部とからなり、それぞれの溝74の形成方向は、導光板72の側端面に平行となるように揃えられている。なお、導光板72の上面の溝74は所定の間隔と幅で形成され、導光板72を介して液晶パネル1の表示を見る際の障害とならないように設けられている。
導光板72の側端面側には棒状のバー導光体76が配置され、このバー導光体76の両端部に光源73が配置されている。
以上説明したバックライトBLとフロントライトFLの構造は本実施形態で採用した1つの例であるので、この例の構造に限るものではなく、液晶表示装置用として使用される一般的なバックライトとフロントライトを本発明に適宜適用できるのは勿論である。
【0045】
以上説明の如く構成された本実施形態の半透過反射型表示装置Aは、電界無印加時において図11に示すように液晶分子が配向される。即ち、光透過表示部30において配向膜44と配向膜29aの間の液晶分子は基本的にスプレイ配向状態、光反射表示部35において配向膜44と配向膜29bの間の液晶分子は基本的にスプレイ配向状態となる。
また、配向膜44と配向膜29bによってそれらに近接する位置の液晶分子には1〜10゜程度のプレチルト角が付与される。
ただし、光反射表示部35において、凹部27の内面の斜面27aに隣接する位置の液晶分子は先の1〜10゜程度よりも高プレチルト角が付与されている。また、光透過表示部30において凸部24の斜面24a、27aに隣接する位置の液晶分子は先の1〜10゜程度よりも高プレチルト角が付与されている。
【0046】
図11に示す状態から画素電極11と透明電極19に通電して液晶層に電界を印加すると、光透過表示部30と光反射表示部35において液晶分子はスプレイ配向状態からベンド配向状態に遷移する。
次に、先に説明した配向膜44の表面の凸条54の向きと液晶分子の配向状態並びに、先に説明した凸部24とその上の配向膜29aの表面の凹凸の向きを図11と図12に比較して示す。
これらの図11、図12に示すように下基板側の配向膜29aはその緩斜面が右下向き(右下がり勾配)、上基板側の配向膜44は傾斜面62が右上向き(右上がり勾配)とされ、上下の配向膜のラビング方向をいずれもR方向としたことにより、液晶分子を電圧無印加状態で図11に示すようにスプレイ配向状態とするように形成されている。
即ち、光透過部30の領域において配向膜29a、44の間に存在する液晶分子は配向膜29aにごく近い位置の液晶分子の向きは1〜10゜程度のプレチルト角で右下がり、配向膜44にごく近い位置の液晶分子の向きは1〜10゜程度のプレチルト角で右上がり状態とされている。
【0047】
これらに対して光反射領域35における配向膜44は先に説明した光透過部30の配向膜44と同等であるが、光反射部35における配向膜29bはその平面状の部分においては、液晶分子の配向状態は図11に示すように、配向膜44にごく近い位置の液晶分子の向きは1〜10゜程度のプレチルト角で右上がり状態とされ、配向膜29bにごく近い位置の液晶分子の向きは1〜10゜程度のプレチルト角で右下がりの状態とされる。
次に、配向膜29bの下の光反射性の画素電極11には図9と図10に示すような形状の複数の凹部27が形成されているので、これら凹部27に形成されている配向膜29bの部分には凹部27の輪郭形状に沿う凹部が形成されている。
この配向膜29bの凹部27の斜面27aにより、例えば図10に示すように液晶分子には凹部27にごく近い部分の液晶分子にのみプレチルト角の大きな立ち上がりが付与される高プレチルト角領域が生成される。
【0048】
先の透過表示領域30の液晶配向状態について、図13に凸部24と液晶分子の位置関係を記載した。この状態からTFT10を介して画素電極11と透明電極19に通電して液晶層に電界を印加すると、凸部24の斜面24b上の配向膜の斜面29a1に沿って配向している図14のE1領域の液晶分子は円滑にベンド配向状態に転移し、ベンド配向状態となり、そのベンド配向状態の液晶分子に他の液晶分子が習うように配向してゆくので、結果的に全体の液晶分子がベンド配向状態に転移する。ここで図14で左右に隣接する凸部24と凸部24の間に存在していてスプレイ配向状態とされていたE3領域の液晶分子は、ベンド配向状態に転移する場合にE1領域の液晶分子の影響を受けて液晶分子の移動が容易になるので、E1領域に存在してベンド配向している液晶分子が他の領域の液晶分子のベンド配向への転移開始の核となる。以上のような理由から本実施形態の構造によれば、スプレイ配向状態からベンド配向状態への転移が円滑になされる。
【0049】
本実施形態の半透過反射型表示装置Aでは図11に示すスプレイ配向状態から図12に示すベンド配向状態に切り替え、ベンド配向状態で印加する電界の強弱により液晶分子の配向を制御して液晶表示の階調表示を行う。このように配向状態を変更するOCBモードの液晶パネル1では、OCBモードに特有の高速スイッチングができるので、例えば、15msec以下の応答時間を実現でき、高速書き換えが可能な動画表示に対応できる特徴を有する。また、OCBモードに特有の広視野角特性も得ることができる。
【0050】
次に、反射表示領域35においては、先の透過表示領域30において凸部24がベンド配向の核となるように機能した作用について拡散反射用の凹部27の内面側の配向膜29aの斜面が同様の機能を奏する。即ち、図10に示すように凹部27の第1曲線A1よりも長い第2曲線A2を先の透過表示部領域30の凸部24の配向膜の斜面29a1の斜面と同じ機能を奏する斜面と見立てることができ、この斜面に沿って並ぶ液晶分子がベンド配向状態への転移の核となる。
このような背景から凹部27の第1曲線A1と第2曲線A2が並ぶ方向を図1の断面の左右方向、還元するとラビング方向(液晶配向容易軸方向)と平行に揃えて凹部27を配置することが好ましい。これによってスプレイ配向状態の液晶分子をベンド配向状態にすることを従来よりも円滑にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は本発明に係る液晶表示装置の要部を示す断面図。
【図2】図2はバックライトとフロントライトを液晶パネルに備えた状態を示す斜視図。
【図3】図3はバックライトと液晶パネルからなる本発明に係る液晶表示装置の全体構成図。
【図4】図4は同液晶表示装置の薄膜トランジスタ部分と透明電極の配置構成の一例を示す平面略図。
【図5】図5は同液晶表示装置の画素電極部分を示す平面略図である。
【図6】図6は同液晶表示装置の画素電極部分に形成されている光反射部分の形状を示す斜視図。
【図7】図7は図1の液晶表示装置に備えられる配向膜の一例を示す斜視図。
【図8】図8は図7の配向膜の第2の方向に沿う凹凸の断面図。
【図9】図9は光反射表示部に形成される非対称凹部の一例を示す斜視図。
【図10】図10は図9に示す非対称凹部の断面図。
【図11】図11は図1に示す構造の液晶表示装置において光透過表示部と光反射表示部における電界無印加時の液晶のスプレイ配向状態を示す説明図。
【図12】図12は図1に示す構造の液晶表示装置において光透過表示部と光反射表示部における電界印加時の液晶のベンド配向状態を示す説明図。
【図13】図13は光透過表示部におけるスプレイ配向状態の液晶分子の配向状態を示す説明図。
【図14】図14は光透過表示部におけるベンド配向状態に転移する場合の液晶分子の配向状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0052】
A…半透過反射型表示装置、BL…バックライト、FL…フロントライト、1…液晶パネル、2、3…基板、4…シール材、5…液晶、10…薄膜トランジスタ(TFT)、11…画素電極、19…透明電極、20…絶縁層、24…凸部、24a、24b…斜面、27…凹部、27a…斜面、29a、b…配向膜、29a…光透過表示部の配向膜、29a1…斜面、29b…光反射表示部の配向膜、30…光透過表示部、35…光反射表示部、43…電極、44…配向膜。
【技術分野】
【0001】
本発明は、外光反射を利用しての反射表示とバックライトを利用しての透過表示の両方に対応することができる半透過反射型液晶表示装置においてOCBモードとして望ましい構造とした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の分野においては消費電力の低減が強く要求されており、画素の領域をできるだけ大きくして表示の明るさを向上することも求められている。このため、アクティブマトリクス基板全面に厚膜の絶縁膜を形成し、この絶縁膜の上に反射型の画素電極を形成したものが実用化されている。このように絶縁膜上に画素電極を上置きする構造のものでは、絶縁膜下層に配された走査線や信号線等と上層に配された画素電極との間で電気的な短絡を生じない構成を採用できるため、これら配線上にオーバーラップさせるように広い面積で画素電極を形成することが可能となる。これにより、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor :以下にTFTと略記する)等のスイッチング素子や走査線,信号線の形成された領域を含めてほとんど全てを表示に寄与する画素領域とすることができ、開口率を高めて明るい表示を得ることができる。
【0003】
また、反射型の画素電極を用いた液晶表示形態のみでは暗所での使用ができないため、液晶表示装置にバックライトを併設し、反射型液晶表示装置を部分的に透過表示可能な構成とした半透過反射型の液晶表示装置も広く使用されている。(特許文献1、2参照)
先の半透過反射型の液晶表示装置では、1つの画素に反射表示領域と透過表示領域を作り込み、反射表示領域のセルギャップを透過表示領域のセルギャップの半分程になるように作り込むデュアルギャップタイプ構造とされる。
これは、反射表示領域では外部から入射した光が観察者に到達するまでの間に2回液晶層を通過するのに対して、透過表示領域では光が1回のみ液晶層を通過して観察者に到達するので、同じ液晶層厚としたのでは、透過表示領域と反射表示領域とで光学条件が異なるようになり、色味やコントラストなどが変化することを解消するためである。
【0004】
しかし、反射表示領域と透過表示領域とを1つの画素内に作り込む構造として更にデュアルギャップ構造とすると、1つの画素内で反射表示領域の液晶と透過表示領域の液晶をそれぞれに好適な配向状態とする必要がある。しかし、デュアルギャップ構造で領域毎に液晶層厚が異なるということは、反射表示領域と透過表示領域とで段差を有する構造となるので、段差付きの各領域の配向膜に好ましい配向特性を付与しなくてはならない。
【0005】
ところで近年、液晶表示装置の広視野角化と高速応答性を目的としてOCB(Optical Compensated Bend)モードと称される表示方式が研究されているが、このOCBモードの液晶表示装置では、上下の基板の配向膜のプレチルトの方向を逆向きとして液晶をベンド配向させる必要があるとともに、ベンド配向させることが可能な液晶セルに更に補償フィルムが付設された構造とされている。
【特許文献1】特願2000−171794号公報
【特許文献2】特許第3235102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記OCBモードの液晶は、スプレイ配向している液晶を電圧印加時にベンド配向状態へスムーズに転移する必要があるが、現状知られている技術ではスプレイ配向状態の液晶をベンド配向状態の液晶とするためには、10Vの電圧印加で1時間程度必要であるとの報告もある状態であり、実用的に液晶のスプレイ配向状態をベンド配向状態にスムーズに転移することは極めて困難な状況であった。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、光反射表示部と光透過表示部とを有する半透過反射型液晶表示装置において液晶のスプレイ配向状態からベンド配向状態に転移することを容易化することができるOCBモードの半透過反射型液晶表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、対向配置された基板間に液晶が封入されたOCBモードの液晶パネルを備え、前記一方の基板の液晶層側の面と前記他方の基板の液晶層側の面にそれぞれ電極と配向膜が形成され、前記他方の基板の電極の一部が光反射性の画素電極とされ、前記画素電極の一部に透過部が形成され、該透過部の形成領域に透明電極が形成されて光透過表示部とされ、前記光反射性の画素電極形成領域が光反射表示部にされ、前記一方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きと前記他方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きが平行にされるとともに、前記光透過表示部の前記一方の基板側において前記液晶側の部分に凸部または凹部が複数形成され、前記光透過表示部に透明電極と配向膜が前記凸部または凹部を覆うように形成されて前記配向膜に液晶をスプレイ配向状態からベンド配向状態に転移させる核となり得る液晶配向を促す斜面が形成されてなることを特徴とする。
【0009】
OCBモードの液晶パネルではスプレイ配向状態の液晶分子をベンド配向状態に転移してから駆動する。スプレイ配向状態の液晶分子は配向膜に近い位置の液晶分子が基板に対して小さなプレチルト角で配向しながら基板間に位置する液晶分子は基板面方向に沿った配向方位を示すスプレイ配向状態をとる。これに対して本発明の構造においては光透過表示部に凸部または凹部を設けることにより、その上に形成される配向膜に斜面を形成し、この斜面により液晶分子にスプレイ配向状態の液晶分子よりも高プレチルトの領域を部分的に生成する。先の斜面に近い位置に存在する液晶分子、即ち、高プレチルトの領域の液晶分子は、斜面がない領域の液晶分子よりベンド配向状態になりやすい状態であるので、高プレチルト角の領域の液晶分子がベンド配向状態に転移する場合の液晶分子の配向開始の核となり得る。従って前記の構造を実現することにより、スプレイ配向状態からベンド配向状態への転移を円滑に行うことができる。
【0010】
本発明は、対向配置された基板間に液晶が封入されたOCBモードの液晶パネルを備え、前記一方の基板の液晶層側の面と前記他方の基板の液晶層側の面にそれぞれ電極と配向膜が形成され、前記他方の基板の電極の一部が光反射性の画素電極とされ、前記画素電極の一部に透過部が形成され、該透過部形成領域に透明電極が形成されて光透過表示部とされ、前記光反射性の画素電極形成領域が光反射表示部にされ、前記一方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きと前記他方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きが平行にされるとともに、前記光反射性の画素電極の下に絶縁層が設けられて前記光反射表示部の液晶層の厚さが前記光透過表示部の液晶層の厚さよりも大きくされたマルチギャップ構造とされる一方、前記光透過表示部の前記一方の基板側において前記液晶側の部分に凸部または凹部が複数形成され、該凸部または凹部を覆って前記光透過表示部に透明電極と配向膜が前記凸部または凹部を覆うように形成されて前記配向膜に液晶をスプレイ配向状態からベンド配向状態に転移させる核となり得る液晶配向を促す斜面が形成されてなることを特徴とする。
【0011】
OCBモードの液晶パネルではスプレイ配向状態の液晶分子をベンド配向状態に転移してから駆動する。スプレイ配向状態の液晶分子は配向膜に近い位置の液晶分子が基板に対して小さなプレチルト角で配向しながら基板間に位置する液晶分子は基板面方向に沿った配向方位を示すスプレイ配向状態をとる。これに対して前記の構造においては光透過表示部に凸部または凹部を設けることにより、その上に形成される配向膜に斜面を形成し、この斜面により液晶分子にスプレイ配向状態の液晶分子よりも高プレチルトの領域を生成する。この高プレチルトの領域の液晶分子は、斜面がない領域の液晶分子よりベンド配向状態になりやすい状態であるので、高プレチルトの領域の液晶分子がベンド配向状態に転移する場合の液晶分子の配向開始の核となり得る。従って本発明の構造により、スプレイ配向状態からベンド配向状態への転移を円滑に行うことができる。
また、光反射性の画素電極の下に絶縁層を設けて前記光反射表示部の液晶層の厚さを前記光透過表示部の液晶層の厚さよりも大きくしたマルチギャップ構造とすることで、光反射表示部での反射光の光路と光透過部での透過光の光路を均等化することができ、光学条件の設定が容易となり、カラー表示の場合の反射表示と透過表示の色味の違いの少ないカラー表示に望ましい形態をとることができる。
【0012】
本発明は、前記斜面の向きが前記配向膜の液晶配向容易軸の向きに沿う向きであって、OCBモード液晶のベンド配向時において前記一方の基板側の液晶が示す向きに沿うように揃えられてなることを特徴とする。
前記斜面の形成により、液晶分子の高プレチルト角の領域を生成できるが、液晶分子の配向容易軸の向きに前記斜面が沿っている場合に、液晶分子のスプレイ配向状態からベンド配向状態への転移をより確実に促進することができる。前記斜面がベンド配向時の液晶分子の向きに沿うならば、スプレイ配向状態の際に既に液晶分子の一部をベンド配向状態に近い状態に配向させておくことができ、これによりベンド配向に転移させる場合により円滑に液晶分子を配向させることができる。
【0013】
本発明は、前記凸部が断面不等辺三角型またはピラミッド型であることを特徴とする。
先のベンド配向を促する斜面は断面不等辺三角型またはピラミッド型の凸部で実現することができ、これらの形状の凸部の斜面を利用して液晶分子の高プレチルト角の領域を形成しておくことでベンド配向への転移を促進する。
【0014】
本発明は、前記光反射性の画素電極の下に絶縁層が設けられ、該絶縁層上に凹凸部が形成され、前記凹凸部上に該凹凸部形状に沿うように前記光反射性の画素電極が形成されてなることを特徴とする。
凹凸形状の光反射性の画素電極を有することで、反射表示の際に反射光を拡散させて広い範囲で明るい表示形態を実現できる。
【0015】
本発明は、前記光透過表示部の前記一方の側の基板の液晶側に形成された複数の凸部または凹部が前記光反射表示部の画素電極の下に形成されている絶縁層と同じ絶縁材料からなることを特徴とする。
光反射表示部の画素電極下の絶縁層と同じ絶縁材料から前記凸部または凹部を形成するならば、画素電極下の絶縁層を形成する際に利用した絶縁層の一部を利用して光透過表示部に凸部または凹部を形成することができる。
例えば、基板全面に絶縁層を形成した後、絶縁層の一部を除去するエッチングを行って透過表示部の窪部を形成する際、透過表示部底部に絶縁層の一部を残しておいてそれらを凸部または凹部の形状にしておくならば、凸部や凹部を形成する工程を別途行わなくとも透過表示部を形成する工程を流用できるので、製造工程を別途増やすことなく凸部または凹部を形成できる。
【発明の効果】
【0016】
OCBモードの液晶パネルではスプレイ配向状態の液晶分子をベンド配向状態に転移してから駆動する。スプレイ配向状態の液晶分子は配向膜に近い位置の液晶分子が基板に対して小さなプレチルト角で配向しながら、基板間に位置する液晶分子は基板面方向に沿った配向方位を示すスプレイ配向状態をとる。これに対して前記の構造においては光透過表示部に凸部または凹部を設けることにより、その上に形成される配向膜に斜面を形成し、この斜面により液晶分子にスプレイ配向状態の液晶分子よりも高プレチルトの領域を生成する。この高プレチルトの領域の液晶分子は、ベンド配向状態になりやすい状態であるので、高プレチルトの領域の液晶分子がベンド配向状態に転移する場合の液晶分子の配向開始の核となる。従って前記構造により、スプレイ配向状態からベンド配向状態への転移を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明に係る液晶表示装置の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするために各構成要素の厚さや寸法等の比率などは適宜異ならせて示してある。
図1〜図8は本発明に係る半透過反射型液晶表示装置の第1の実施形態を示すもので、この形態の半透過反射型液晶表示装置Aは、図2に全体構成を示すように、本体であるOCBモードの液晶パネル1と、この液晶パネル1の背面側に配置されたバックライトBLと、液晶パネル1の上面側に必要に応じて配置されたフロントライトFLとを備えて構成されている。
【0018】
「液晶パネルの構造」
前記液晶パネル1は、図3に概略構造を示すように、スイッチング素子が形成された側のアクティブマトリクス基板(下基板:他方の基板)2と、それに対して設けられた対向側の基板(上基板:一方の基板)3と、これらの基板2、3の間に基板2、3とシール材4とに囲まれて挟持されている光変調層としての液晶層5とを備えて構成されている。即ち、上述のように構成された基板2、3は、スペーサ(図示略)によって互いに一定に離間された状態で保持されるとともに、図2に示すように基板周辺部に矩形枠状に塗布された熱硬化性のシール材4によって接着一体化されている。
【0019】
アクティブマトリクス基板2は、図1、図4または図5に示すように、ガラスやプラスチック等からなる透明の基板本体6上に、平面視それぞれ行方向(図4、図5のx方向)と列方向(図4、図5のy方向)に複数の走査線7と信号線8が相互に電気的に絶縁されて形成され、各走査線7、信号線8の交差部の近傍にTFT(スイッチング素子)10が形成されている。上記基板本体6上において、画素電極11が形成される領域、TFT10が形成される領域、走査線7及び信号8が形成される領域を、それぞれ画素領域、素子領域、配線領域と呼称することができる。
【0020】
本実施形態のTFT10は逆スタガ型の構造を有し、本体となる基板本体6の最下層部から順にゲート電極13、ゲート絶縁膜15、i型半導体層14、ソース電極17及びドレイン電極18が形成され、i型半導体層14の上であってソース電極17とドレイン電極18との間にはエッチングストッパ層9が形成されている。
即ち、走査線7の一部が延出されてゲート電極13が形成され、これを覆ったゲート絶縁膜15上にゲート電極13を平面視で跨るようにアイランド状の半導体層14が形成され、このi型半導体層14の両端側の一方にn型半導体層16を介してソース電極17、他方にn型半導体層16を介してドレイン電極18がそれぞれ形成されている。
【0021】
基板本体6はガラスの他、合成樹脂等の絶縁性透明基板からなる。ゲート電極13は導電性の金属材料からなり、図4に示すように行方向に配設される走査線7と一体に形成されている。ゲート絶縁膜15は酸化シリコン(SiOx)や窒化シリコン(SiNy)等のシリコン系の絶縁膜からなり、走査線7及びゲート電極13を覆うように基板上に形成されている。
前記半導体層14は、アモルファスシリコン(a−Si)等からなり、ゲート絶縁膜15を介してゲート電極13と対向する領域がチャネル領域として構成される。ソース電17及びドレイン電極18は導電材料からなり、半導体層14上に、チャネル領域を挟むように対向して形成されている。また、ドレイン電極18は列方向に配設される信号線8から個々に延出されて形成されている。
【0022】
なお、i型半導体層14とソース電極17及びドレイン電極18との間で良好なオーミック接触を得るために、半導体層14と各電極17、18との間には、リン(P)等のV族元素を高濃度にドープしたn型半導体層(オーミックコンタクト層)16が設けられている。そして、以上説明の如く構成されている薄膜トランジスタ10の部分および走査線7と信号線8を覆うソース絶縁膜20Aが基板本体6上に形成されている。このソース絶縁膜20Aは先のTFT10を覆い隠すことができる程度の厚膜状に形成され、その上面は平坦化されている。即ち、この厚膜の絶縁膜20AによりTFT10や各種配線によって形成された基板本体6上の段差構造が平坦化されている。なお、この実施形態ではスイッチング素子として逆スタガ型のTFT10を設けたが、スイッチング素子は他の積層構造の薄膜トランジスタあるいは薄膜ダイオード素子などのスイッチング素子を用いても良いのは勿論である。
【0023】
更に、先のソース絶縁膜20Aの上には有機材料からなる絶縁膜20Bが積層され、この絶縁膜20B上にAlやAg等の高反射率の金属材料からなる光拡散反射性画素電極(光反射性の画素電極)11が形成されている。
前記光反射性の画素電極11は、先の走査線7と信号線8とが囲む矩形状の領域よりも若干小さくなるような平面視矩形状になるように絶縁膜20B上に形成され、図5に示すように平面視した場合に上下左右に並ぶ画素電極11どうしが短絡しないように所定の間隔をあけてマトリクス状に配置されている。即ち、これらの画素電極11は、それらの端辺がそれらの下に位置する走査線7及び信号線8に沿うように配置されており、走査線7と信号線8が区画する領域のほぼ全域を画素領域とするように形成されている。なお、これらの画素領域の集合が液晶パネル1での表示領域に相当する。
【0024】
前記絶縁膜20Bは、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ベンゾシクロブテンポリマ(BCB)等からなる有機系の絶縁膜とされており、TFT10の保護機能を強化するようになっている。この絶縁膜20Bは、基板本体6上において他の層に対して比較的厚く積層され、画素電極11とTFT10及び各種配線との絶縁を確実にし、画素電極11との間に大きな寄生容量が発生するのを防止する。
【0025】
前述の絶縁膜20A、Bにおいて先の各ソース電極17の一端部17aに達するようにコンタクトホール21が形成され、このコンタクトホール21の内部にはその上下に位置する画素電極11とソース電極17の一端の接続部17aを電気的に接続する導電材料からなる接続部25が形成され、TFT10の動作により画素電極11に対する通電のスイッチングの切り替えができるように構成されている。
【0026】
先の絶縁膜20Bにおいて走査線7と信号線8とが囲む矩形状の領域の中央部に位置するように平面視短冊状の窪部22が形成され、この窪部22は絶縁膜20Bを貫通して絶縁膜20Aに達するように形成されている。この窪部22の平面形状は先の画素電極11の横幅の数分の1程度、画素電極11の縦幅の5〜6割程度、総合的には画素電極11の総面積の20〜50%程度の大きさとされることが望ましい。
また、窪部22の底面側で絶縁膜20Aの上面側には、図1の断面視三角波状の凸部24が複数相互に離間して整列形成されている。これらの凸部24はその高さが0.1〜1μm、好ましくは0.1〜0.3μmの範囲に形成され、それら個々の形状は凸部24の1つ1つが独立した三角錐、四角錐などの多角錐、あるいは円錐、ピラミッド型などの形状のものが独立して離間整列形成された形状、あるいは、これらが連続形成された形状などのいずれの形状にされていても良い。
ただし、これらの凸部24においては、図1の断面図において左右方向のいずれかに向いた斜面24a、24bを有する形状であることが好ましく、更には、図1の断面図において左側向き(コンタクトホール21側向き)の斜面24aよりも、その反対側の右側向きの斜面24bの方が長い(面積が大きい)断面不等辺三角形状であることが好ましい。以上のような形状が好ましい理由については後述する。
【0027】
次に、前記窪部22の位置に相当する部分の画素電極11には窪部22の底面に合致するような平面形状の透過部(透孔)23が形成され、この画素電極11の透過部23の下側に位置する窪部22の底面を覆うように透明電極材料からなる透明(画素)電極19が形成され、窪部22の内周面を覆うように延長形成された画素電極形成材料が窪部底面の透明電極19の周縁部まで到達されて光反射性の画素電極11に透明電極19が電気的に接続されている。従って光反射性の画素電極11と透明電極19はTFT10のスイッチング動作によって同時駆動されて液晶層に電界を印加して液晶の駆動を行うことができるようになっている。
従って各画素領域において、窪部22の形成部分が基板2の外側からの入射光(バックライトBLから出射された光)を透過する光透過部30とされており、その他の領域、即ち、画素電極11の非透過部(透過部23が形成されていない部分)が基板3の外側からの入射光を反射する光反射部35とされている。
【0028】
また、先の光反射性の画素電極11の3つが、後述するカラー表示のためのほぼ1つの画素領域に対応し、透過部23の底面積が透過表示の際の光通過領域に対応するので、先の画素電極11の面積に占める透過部23の面積割合を20〜50%の範囲とすることが好ましい。更に、この実施形態では画素電極11に透過部23を1つのみ形成したが、画素電極11に複数の透過部を形成しても良い。その場合に複数の透過部を合わせた総面積を画素電極11の面積の20〜50%の範囲とすることが好ましい。勿論その場合に複数の透過部の形成位置に合わせて各透過部の下にそれぞれ窪部を設けることとなる。
【0029】
ところで、絶縁膜20Bの表面には画素領域に対応する位置に、転写型を絶縁膜20Bの上面に圧着する方法などにより形成された複数の凹部26が設けられている。この絶縁膜20Bの上面に形成された複数の凹部26は、図5の鎖線に示すように画素電極11に所定の表面凹部形状を付与し、この画素電極11に形成された複数の凹部27によって液晶パネルに入射した光は一部散乱され、より広い観察範囲でより明るい表示が得られるような拡散反射機能が付与されている。また、図6に示すように各凹部27は左右に隣接したものが互いにそれらの開口部側の内面の一部を隣接するように密接配置されている。これら画素電極11の凹部27の詳細形状の説明については後述する。
【0030】
上述のように構成された基板本体6上には、更に画素電極11及び絶縁層20Bと窪部22とその底面並びに複数の凸部24を覆うようにポリイミド等からなる下基板側配向膜29a、29bが形成されている。これらの下基板側配向膜29a、29bにおいて、光透過部30、即ち、窪部22の底部側に形成されているのが配向膜29aであり、画素電極11上に形成されているのが配向膜29bである。
これらの配向膜29a、29bには、図1の矢印Rに示す方向(図1の断面図において左向き)にラビング処理が施されて、液晶の配向容易軸の方向が矢印Rに示す方向とされるとともに、プレティルト角が0゜を超えて10゜以下、例えば1〜10゜の範囲、より好ましくは5〜10゜の範囲とされている。
なお、窪部2の底部側の配向膜29aにおいてその下側の凸部24上に形成されている配向膜29aには、凸部24の斜面24aの上に位置する斜面29a1が形成され、凸部24の斜面24bの上に位置する斜面29a2が形成されている。
【0031】
図1または図3に示す対向基板3はガラスやプラスチック等からなる透光性の基板本体41の液晶層5側の面に、カラーフィルタ層42とITO等の透明な対向電極(共通電極)43と上基板側配向膜44が形成されている。なお、図1において基板本体41の外面側には図1に示すように偏光板H1、位相差板H2、H3が必要に応じて設けられる。前記カラーフィルタ層42はブラックマトリクスにより碁盤目状に区画された矩形状の領域に個々に赤色と青色と緑色の3原色のいずれかのカラー絵素が配置され、これらの矩形状の領域は先に図5を元に説明した平面視矩形状の画素電極11の形状と対応され、これら各画素電極11が対応する領域の液晶の透過率を調節することでカラー表示ができるように構成されている。
前記上基板側配向膜44と、前記画素電極11上の平面部分に形成されている配向膜29bは、例えば、図7、8に示すような凹凸形状の配向膜を例示することができる。
前記配向膜(一方の基板側の配向膜)44並びに前記配向膜29bは、表面に形状異方性が付与された高分子膜から構成された配向膜であって、いずれもプレティルト角が0゜を超えて10゜以下、例えば1〜10゜の範囲、より好ましくは5〜10゜の範囲とされている。
【0032】
前記配向膜44、29bによる配向制御に関する技術的詳細は、本出願人による非特許文献のSID93 DIGEST,頁957(93')に記載されているが、これらの配向膜44、29bの表面形状は、図7及び図8に示すように、第1の方向に沿う微細な凹凸と、この第1の方向に交差する第2の方向に沿う微細な凹凸が形成されている。尚、図8は図7中のIII−III線に沿う断面図であり、第2の方向に沿った凸条54の断面を示すものである。
また、第1の方向に沿う微細な凹凸のピッチP1は第2の方向に沿うピッチP2よりも短くされている。ピッチP1は3.0μm以下、好ましくは0.05μm以上、0.5μm以下、ピッチP2は50μm以下、好ましくは0.5μm以上、5μm以下が好ましい。
上記のようにピッチP2の長さをピッチP1よりも長くすることにより、プレティルト角を制御し易い。
【0033】
また、第1の方向の凹部の深さd1(あるいは第1の方向の凸部の高さ)は0.5μm以下、好ましくは0.01μm以上、0.2μm以下であり、第2の方向の凹部の深さd2(あるいは第2の方向の凸部の高さ)は0.5μm以下、好ましくは0.01μm以上、0.2μm以下である。また、ドメインの発生がなく、かつ目的とする配向力を得るためには、例えば第2の方向に沿う微細な凹凸の緩斜面62の基板10に対する傾斜角θを、0度より大きく、10度以下とするのが好ましい。傾斜角θが0度であると、ドメイン発生が顕著であり、10度を超えると、配向力の低下が徐々に認められる傾向となる。
【0034】
更に図7に示すように、第2の方向に沿う微細な凹凸の各凸部は左右が非対称の略三角形状になっている。即ち、三角形の頂点から下ろした図8に示す垂線Aによって分割された頂角の左右の角度の比r2/r1が1とならない形状とされる。前記凸条54の横断面形状としては,sin波に類似した形状、櫛形状、三角形状等各種の形状が考えられる。中でも液晶の配向性を向上する上では、三角形状が最も望ましい。この場合、三角形状の頂部は、丸まっていても、平にカットされていても良い。前記凸条54を横断面三角形状とした場合、図7に示すように三角形の頂点から下ろした垂線Aによって分割された頂角の左右の角度の比r2/r1は、5.6以上の範囲であることが望ましい。この範囲の比に設定すると、プレチルト角を5〜8゜にすることができる。
これらの配向膜44、29bの膜厚は、例えば500〜600Å(0.05〜0.06μm)程度とされる。
【0035】
前記配向膜44、29bに用いる高分子膜の材料としては、硬化する前に弱い剪断力により剪断ひずみを付与可能な材料及び/または応力により塑性変形(塑性流動)可能な材料であり、例えば、ポリイミド系、ポリアミド系、ポリビニルアルコール系、エポキシ系、変性エポキシ系、ポリスチレン系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、アクリル系等の樹脂から適宜選択して用いられる。
これらの配向膜44、29bの形成方法としては、例えば、転写すべき微細な凹凸模様(上記第1の方向に沿う微細な凹凸と第2の方向に沿う微細な凹凸を形成するための微細な凹凸模様)が表面に形成された転写型を、一方の基板上に反射体と電極層を介して形成された上記高分子膜材料からなる層に押圧し、上記微細な凹凸模様を転写する転写法により容易に作製できる。
【0036】
上記転写型は、例えば、以下のようにして作製されたものである。まず、2倍のコヒーレントなレーザビームを用いるホログラフィク干渉により形成したグレーティングモールド(格子型)を作製する。このグレーティングモールドの表面には、配向膜44、29bに形成する微細な凹凸模様と同様の微細な凹凸模様が形成されている。
次いで、上記グレーティングモールドをシリコーンゴム層に押圧すると、シリコーンゴム層の表面に上記グレーティングモールドの凹凸模様と逆の凹凸模様が形成される。次いでグレーティングモールドを剥離すると、シリコーンゴム層からなる転写型が得られる。
【0037】
次に、先に説明した絶縁膜20Bの上面側の光拡散反射用の凹部27の形状について説明する。
これらの凹部27の内面は、この実施形態では図9と図10に示すように非対称球面形状に形成され、画素電極11に所定角度(例えば30°)で入射した光の拡散反射光の輝度分布がその正反射角度からある角度範囲で非対称に、しかも、観察者の視覚方向として有効な方向に集中するようになっている。
前記凹部27において凹部27の1つの周辺部S1から最深点Dに至る第1曲線A1と、この第1曲線A1に連続して凹部の最深点Dから他の周辺部S2に至る第2曲線A2とからなっている。これら両曲線は、最深点Dにおいて共に基材本体6の上面に対する傾斜角がゼロとなり、互いにつながっている。
【0038】
前記第1曲線A1の基板本体上面に対する傾斜角は第2曲線A2の傾斜角よりも急であって、最深点Dは凹部27の中心Oから若干x方向にずれた位置にある。すなわち、第1曲線Aの基材表面Sに対する傾斜角の絶対値の平均値は、第2曲線Bの基材表面Sに対する傾斜角の絶対値の平均値より大きくなっている。
本実施形態の反射体において、各凹部27におけるそれぞれの最大傾斜角δmaxは、2〜90゜の範囲内で不規則にばらついている。しかし多くの凹部は最大傾斜角δmaxが4°〜35°の範囲内で不規則にばらついている。
また、製造の容易性から凹部27の直径は5μm〜100μmに設定されている。さらに、凹部27の深さは0.1μm〜3μmの範囲に形成されている。
【0039】
なお、図5に示す画素電極11の平面形状では図面の簡略化のために画素電極11上の凹部27を略しているが、画素電極11は通常の液晶パネルでは縦100〜200μm程度、横幅30〜90μm程度の大きさであるので、先の凹部27の画素電極11に対する相対的な大きさの一例を図5の1つの画素上に鎖線で示しておく。
【0040】
更に、これら凹部27の上に形成されている配向膜29bの膜厚は500〜600Å程度とされるので、凹部27の形状が配向膜29bの上面側においても維持されるので、凹部27の上に位置する液晶分子においても例えば図10に示すように第2曲線A2に沿った斜面S2に沿って液晶分子の配向規制力を作用させるようになっている。従って、これらの凹部27の内面のほとんどの部分は、配向膜29bが発揮する1〜10゜の範囲のプレチルト角よりも大きなプレチルトを液晶分子に発現させ得る高プレチルト角領域生成用の斜面27aとされている。
【0041】
本実施形態の半透過反射型液晶表示装置Aでは、図1に示したように画素電極11に形成した透過部23の下に位置する絶縁膜20に窪部22を形成し、この窪部22内にも液晶が導入されることにより、光透過部30上の液晶層5の厚さd3は、光反射部35上の液晶層5の厚さd4より大きい値とされており、好ましくは光透過部30上の液晶層5の厚さd3は、光反射部35上の液晶層5の厚さd4の約2倍の値とされている。この構造によって反射表示部35における光の反射経路と透過表示部30における光の透過経路を略等しくすることができ、反射表示の際のカラー表示の色味と透過表示の際のカラー表示の色味をできる限り差異のないものとすることができる。
【0042】
「バックライトの構造」
次に、この実施形態の半透過反射型表示装置Aに適用されるバックライトBLは、図2に示すように、液晶パネル1の裏面側に設けられ、平板状の透明なアクリル樹脂などからなる導光板52と光源53とバー導光体55とから概略構成されている。
透明の導光板52は、液晶パネル1の裏面側に配置されて光源53から出射された光を液晶パネル1側に照射するものである。図2に示す光源53から出射される光は端面を介して導光板52の内部に導入され、導光板52の裏面側に形成されているプリズム形状の凹凸部などの光反射部で光路変更して導光板上面の出射面から液晶パネル1側に出射できるようになっている。このバックライトBLと液晶パネル1との間には必要に応じて偏光板と位相差板が配置される。
【0043】
「フロントライトの構造」
この実施形態の半透過反射型表示装置Aに適用されるフロントライトFLは、図2に示すように、導光板72と光源73とから構成されており、光源73は、導光板72に光を導入する端部側に配設されている。また、導光板72は透明樹脂板で形成されており、導光板72の下面(液晶パネル1側の面)は、液晶パネル1を照明するための光が出射される出射面とされており、この出射面と反対側の一面(導光板72の上面)は、その内部を伝搬する光の方向を変えるための反射面(導光手段)とされている。
【0044】
この反射面には、その内部を伝搬する光を反射させて伝搬方向を変えるために、くさび状の溝74が、所定のピッチでストライプ状に複数形成されている。この溝74は、出射面に対して傾斜して形成された緩斜面部と急斜面部とからなり、それぞれの溝74の形成方向は、導光板72の側端面に平行となるように揃えられている。なお、導光板72の上面の溝74は所定の間隔と幅で形成され、導光板72を介して液晶パネル1の表示を見る際の障害とならないように設けられている。
導光板72の側端面側には棒状のバー導光体76が配置され、このバー導光体76の両端部に光源73が配置されている。
以上説明したバックライトBLとフロントライトFLの構造は本実施形態で採用した1つの例であるので、この例の構造に限るものではなく、液晶表示装置用として使用される一般的なバックライトとフロントライトを本発明に適宜適用できるのは勿論である。
【0045】
以上説明の如く構成された本実施形態の半透過反射型表示装置Aは、電界無印加時において図11に示すように液晶分子が配向される。即ち、光透過表示部30において配向膜44と配向膜29aの間の液晶分子は基本的にスプレイ配向状態、光反射表示部35において配向膜44と配向膜29bの間の液晶分子は基本的にスプレイ配向状態となる。
また、配向膜44と配向膜29bによってそれらに近接する位置の液晶分子には1〜10゜程度のプレチルト角が付与される。
ただし、光反射表示部35において、凹部27の内面の斜面27aに隣接する位置の液晶分子は先の1〜10゜程度よりも高プレチルト角が付与されている。また、光透過表示部30において凸部24の斜面24a、27aに隣接する位置の液晶分子は先の1〜10゜程度よりも高プレチルト角が付与されている。
【0046】
図11に示す状態から画素電極11と透明電極19に通電して液晶層に電界を印加すると、光透過表示部30と光反射表示部35において液晶分子はスプレイ配向状態からベンド配向状態に遷移する。
次に、先に説明した配向膜44の表面の凸条54の向きと液晶分子の配向状態並びに、先に説明した凸部24とその上の配向膜29aの表面の凹凸の向きを図11と図12に比較して示す。
これらの図11、図12に示すように下基板側の配向膜29aはその緩斜面が右下向き(右下がり勾配)、上基板側の配向膜44は傾斜面62が右上向き(右上がり勾配)とされ、上下の配向膜のラビング方向をいずれもR方向としたことにより、液晶分子を電圧無印加状態で図11に示すようにスプレイ配向状態とするように形成されている。
即ち、光透過部30の領域において配向膜29a、44の間に存在する液晶分子は配向膜29aにごく近い位置の液晶分子の向きは1〜10゜程度のプレチルト角で右下がり、配向膜44にごく近い位置の液晶分子の向きは1〜10゜程度のプレチルト角で右上がり状態とされている。
【0047】
これらに対して光反射領域35における配向膜44は先に説明した光透過部30の配向膜44と同等であるが、光反射部35における配向膜29bはその平面状の部分においては、液晶分子の配向状態は図11に示すように、配向膜44にごく近い位置の液晶分子の向きは1〜10゜程度のプレチルト角で右上がり状態とされ、配向膜29bにごく近い位置の液晶分子の向きは1〜10゜程度のプレチルト角で右下がりの状態とされる。
次に、配向膜29bの下の光反射性の画素電極11には図9と図10に示すような形状の複数の凹部27が形成されているので、これら凹部27に形成されている配向膜29bの部分には凹部27の輪郭形状に沿う凹部が形成されている。
この配向膜29bの凹部27の斜面27aにより、例えば図10に示すように液晶分子には凹部27にごく近い部分の液晶分子にのみプレチルト角の大きな立ち上がりが付与される高プレチルト角領域が生成される。
【0048】
先の透過表示領域30の液晶配向状態について、図13に凸部24と液晶分子の位置関係を記載した。この状態からTFT10を介して画素電極11と透明電極19に通電して液晶層に電界を印加すると、凸部24の斜面24b上の配向膜の斜面29a1に沿って配向している図14のE1領域の液晶分子は円滑にベンド配向状態に転移し、ベンド配向状態となり、そのベンド配向状態の液晶分子に他の液晶分子が習うように配向してゆくので、結果的に全体の液晶分子がベンド配向状態に転移する。ここで図14で左右に隣接する凸部24と凸部24の間に存在していてスプレイ配向状態とされていたE3領域の液晶分子は、ベンド配向状態に転移する場合にE1領域の液晶分子の影響を受けて液晶分子の移動が容易になるので、E1領域に存在してベンド配向している液晶分子が他の領域の液晶分子のベンド配向への転移開始の核となる。以上のような理由から本実施形態の構造によれば、スプレイ配向状態からベンド配向状態への転移が円滑になされる。
【0049】
本実施形態の半透過反射型表示装置Aでは図11に示すスプレイ配向状態から図12に示すベンド配向状態に切り替え、ベンド配向状態で印加する電界の強弱により液晶分子の配向を制御して液晶表示の階調表示を行う。このように配向状態を変更するOCBモードの液晶パネル1では、OCBモードに特有の高速スイッチングができるので、例えば、15msec以下の応答時間を実現でき、高速書き換えが可能な動画表示に対応できる特徴を有する。また、OCBモードに特有の広視野角特性も得ることができる。
【0050】
次に、反射表示領域35においては、先の透過表示領域30において凸部24がベンド配向の核となるように機能した作用について拡散反射用の凹部27の内面側の配向膜29aの斜面が同様の機能を奏する。即ち、図10に示すように凹部27の第1曲線A1よりも長い第2曲線A2を先の透過表示部領域30の凸部24の配向膜の斜面29a1の斜面と同じ機能を奏する斜面と見立てることができ、この斜面に沿って並ぶ液晶分子がベンド配向状態への転移の核となる。
このような背景から凹部27の第1曲線A1と第2曲線A2が並ぶ方向を図1の断面の左右方向、還元するとラビング方向(液晶配向容易軸方向)と平行に揃えて凹部27を配置することが好ましい。これによってスプレイ配向状態の液晶分子をベンド配向状態にすることを従来よりも円滑にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は本発明に係る液晶表示装置の要部を示す断面図。
【図2】図2はバックライトとフロントライトを液晶パネルに備えた状態を示す斜視図。
【図3】図3はバックライトと液晶パネルからなる本発明に係る液晶表示装置の全体構成図。
【図4】図4は同液晶表示装置の薄膜トランジスタ部分と透明電極の配置構成の一例を示す平面略図。
【図5】図5は同液晶表示装置の画素電極部分を示す平面略図である。
【図6】図6は同液晶表示装置の画素電極部分に形成されている光反射部分の形状を示す斜視図。
【図7】図7は図1の液晶表示装置に備えられる配向膜の一例を示す斜視図。
【図8】図8は図7の配向膜の第2の方向に沿う凹凸の断面図。
【図9】図9は光反射表示部に形成される非対称凹部の一例を示す斜視図。
【図10】図10は図9に示す非対称凹部の断面図。
【図11】図11は図1に示す構造の液晶表示装置において光透過表示部と光反射表示部における電界無印加時の液晶のスプレイ配向状態を示す説明図。
【図12】図12は図1に示す構造の液晶表示装置において光透過表示部と光反射表示部における電界印加時の液晶のベンド配向状態を示す説明図。
【図13】図13は光透過表示部におけるスプレイ配向状態の液晶分子の配向状態を示す説明図。
【図14】図14は光透過表示部におけるベンド配向状態に転移する場合の液晶分子の配向状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0052】
A…半透過反射型表示装置、BL…バックライト、FL…フロントライト、1…液晶パネル、2、3…基板、4…シール材、5…液晶、10…薄膜トランジスタ(TFT)、11…画素電極、19…透明電極、20…絶縁層、24…凸部、24a、24b…斜面、27…凹部、27a…斜面、29a、b…配向膜、29a…光透過表示部の配向膜、29a1…斜面、29b…光反射表示部の配向膜、30…光透過表示部、35…光反射表示部、43…電極、44…配向膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された基板間に液晶が封入されたOCBモードの液晶パネルを備え、前記一方の基板の液晶層側の面と前記他方の基板の液晶層側の面にそれぞれ電極と配向膜が形成され、前記他方の基板の電極の一部が光反射性の画素電極とされ、前記画素電極の一部に透過部が形成され、該透過部の形成領域に透明電極が形成されて光透過表示部とされ、前記光反射性の画素電極形成領域が光反射表示部にされ、前記一方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きと前記他方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きが平行にされるとともに、
前記光透過表示部の前記一方の基板側において前記液晶側の部分に凸部または凹部が複数形成され、前記光透過表示部に透明電極と配向膜が前記凸部または凹部を覆うように形成されて前記配向膜に液晶をスプレイ配向状態からベンド配向状態に転移させる核となり得る液晶配向を促す斜面が形成されてなることを特徴とするOCBモード半透過反射型液晶表示装置。
【請求項2】
対向配置された基板間に液晶が封入されたOCBモードの液晶パネルを備え、前記一方の基板の液晶層側の面と前記他方の基板の液晶層側の面にそれぞれ電極と配向膜が形成され、前記他方の基板の電極の一部が光反射性の画素電極とされ、前記画素電極の一部に透過部が形成され、該透過部の形成領域に透明電極が形成されて光透過表示部とされ、前記光反射性の画素電極形成領域が光反射表示部にされ、前記一方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きと前記他方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きが平行にされるとともに、
前記光反射性の画素電極の下に絶縁層が設けられて前記光反射表示部の液晶層の厚さが前記光透過表示部の液晶層の厚さよりも小さくされたマルチギャップ構造とされる一方、
前記光透過表示部の前記一方の基板側において前記液晶側の部分に凸部または凹部が複数形成され、該凸部または凹部を覆って前記光透過表示部に透明電極と配向膜が前記凸部または凹部を覆うように形成されて前記配向膜に液晶をスプレイ配向状態からベンド配向状態に転移させる核となり得る液晶配向を促す斜面が形成されてなることを特徴とするOCBモード半透過反射型液晶表示装置。
【請求項3】
前記斜面の向きが前記配向膜の液晶配向容易軸の向きに沿う向きであって、OCBモード液晶のベンド配向時において前記一方の基板側の液晶が示す向きに沿うように揃えられてなることを特徴とする請求項1または2に記載のOCBモード半透過反射型液晶表示装置。
【請求項4】
前記凸部が断面不等辺三角型またはピラミッド型であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のOCBモード半透過反射型液晶表示装置。
【請求項5】
前記光反射性の画素電極の下に絶縁層が設けられ、該絶縁層上に凹凸部が形成され、前記凹凸部上に該凹凸部形状に沿うように前記光反射性の画素電極が形成されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のOCBモード半透過反射型液晶表示装置。
【請求項6】
前記光透過表示部の前記一方の側の基板の液晶側に形成された複数の凸部または凹部が前記光反射表示部の画素電極の下に形成されている絶縁層と同じ絶縁材料からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のOCBモード半透過反射型液晶表示装置。
【請求項1】
対向配置された基板間に液晶が封入されたOCBモードの液晶パネルを備え、前記一方の基板の液晶層側の面と前記他方の基板の液晶層側の面にそれぞれ電極と配向膜が形成され、前記他方の基板の電極の一部が光反射性の画素電極とされ、前記画素電極の一部に透過部が形成され、該透過部の形成領域に透明電極が形成されて光透過表示部とされ、前記光反射性の画素電極形成領域が光反射表示部にされ、前記一方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きと前記他方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きが平行にされるとともに、
前記光透過表示部の前記一方の基板側において前記液晶側の部分に凸部または凹部が複数形成され、前記光透過表示部に透明電極と配向膜が前記凸部または凹部を覆うように形成されて前記配向膜に液晶をスプレイ配向状態からベンド配向状態に転移させる核となり得る液晶配向を促す斜面が形成されてなることを特徴とするOCBモード半透過反射型液晶表示装置。
【請求項2】
対向配置された基板間に液晶が封入されたOCBモードの液晶パネルを備え、前記一方の基板の液晶層側の面と前記他方の基板の液晶層側の面にそれぞれ電極と配向膜が形成され、前記他方の基板の電極の一部が光反射性の画素電極とされ、前記画素電極の一部に透過部が形成され、該透過部の形成領域に透明電極が形成されて光透過表示部とされ、前記光反射性の画素電極形成領域が光反射表示部にされ、前記一方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きと前記他方の基板側の配向膜の液晶配向容易軸の向きが平行にされるとともに、
前記光反射性の画素電極の下に絶縁層が設けられて前記光反射表示部の液晶層の厚さが前記光透過表示部の液晶層の厚さよりも小さくされたマルチギャップ構造とされる一方、
前記光透過表示部の前記一方の基板側において前記液晶側の部分に凸部または凹部が複数形成され、該凸部または凹部を覆って前記光透過表示部に透明電極と配向膜が前記凸部または凹部を覆うように形成されて前記配向膜に液晶をスプレイ配向状態からベンド配向状態に転移させる核となり得る液晶配向を促す斜面が形成されてなることを特徴とするOCBモード半透過反射型液晶表示装置。
【請求項3】
前記斜面の向きが前記配向膜の液晶配向容易軸の向きに沿う向きであって、OCBモード液晶のベンド配向時において前記一方の基板側の液晶が示す向きに沿うように揃えられてなることを特徴とする請求項1または2に記載のOCBモード半透過反射型液晶表示装置。
【請求項4】
前記凸部が断面不等辺三角型またはピラミッド型であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のOCBモード半透過反射型液晶表示装置。
【請求項5】
前記光反射性の画素電極の下に絶縁層が設けられ、該絶縁層上に凹凸部が形成され、前記凹凸部上に該凹凸部形状に沿うように前記光反射性の画素電極が形成されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のOCBモード半透過反射型液晶表示装置。
【請求項6】
前記光透過表示部の前記一方の側の基板の液晶側に形成された複数の凸部または凹部が前記光反射表示部の画素電極の下に形成されている絶縁層と同じ絶縁材料からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のOCBモード半透過反射型液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−113259(P2006−113259A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300105(P2004−300105)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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