説明

OCTによる光診断方法及び装置

【課題】 従来OCT眼科用の場合、参照光側で高速光遅延装置として複数のプリズムを等間隔に配した円板を高速回転させ深さ方向の走査を行っており、またサンプル側に配設された光スキャナによりデータ取得を高速化する方式があるが、回転方式の円板は小型化が困難かつ高速回転にはバランス調整を要し光学系も複雑でかつ、円板回転で複数のプリズムが切替わる瞬間は参照光データが取得できず、またサンプル側のプローブ内に光スキャナがあるものは、プローブが振動や衝撃に弱い問題があった。
【解決手段】 本体の参照側に配置された深さ方向の高速光遅延装置が、光ファイバからの光源光を導入するコリメートレンズとその光を受ける二次元方向高速光スキャナと、その光を受けて反射する回折格子と、同反射された回帰光を受ける前記高速光スキャナ及び前記コリメートレンズを配設してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OCT(Optical Coherence Tomography)に係り、特に参照側に高速光スキャナ及び回折格子を用いた高速光遅延装置による光診断方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば眼科用等の製品の場合、データ取得を高速化するために、参照光側に高速光遅延装置として、複数個の直角プリズムを等間隔に配置した円板を置き高速で回転させて、これにより深さ方向の走査を高速で行っている。
また、被検体サンプル側に配設された例えば、光スキャナにて、データ取得を高速化する方式がある。
【特許文献1】特開2002−310895号公報
【特許文献2】特開2002−310899号公報
【特許文献3】特開2002−139421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記回転方式における円板は小型化することは困難でかつ、高速回転させるためには精密なバランス調整等高度な技術が必要であり、光学系も複雑である。さらに、円板の回転により参照光があたるプリズムは、一つのプリズムから次のプリズムへと切り替わってゆく時参照光がプリズムに当らない瞬間ができ、この間はデータが取得できない。
そして、サンプル側のプローブ内に光スキャナが入るものは、構造上プローブが振動や衝撃に弱い問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記に鑑み本願発明者等は鋭意実験研究の結果、下記の手段によりこれらの問題を解決した。
(1)OCT装置による光診断方法において、低コヒーレンス光源からの光を、マイケルソン干渉計によって被検体への照射光と参照光とに分割し、前記参照光は、高速光スキャナと回折格子を用いた高速光遅延装置により反射回帰して、被検体から回帰する光と共に、前記マイケルソン干渉計で合成された干渉光を、干渉光検出器で検出することを特徴とするOCT装置による光診断方法。
(2)高速光遅延装置が、光ファイバからの信号光を平行光にして導入するコリメートレンズと、その光を受けて二次元方向にスキャンする高速光スキャナと、同高速光スキャナの光を受ける回折格子と、同回折格子により反射された回帰光を受ける前記高速光スキャナ及び前記コリメートレンズを配設してなることを特徴とする請求項1記載のOCT装置による光診断方法。
(3)光診断方法が、歯科診断のための方法であることを特徴とする前項(1)又は(2)に記載のOCT装置による光診断方法。
(4)低コヒーレンス光源と、同低コヒーレンス光源からの光を被検体への照射光と参照光とに分割するマイケルソン干渉計と、前記参照光を高速光スキャナーと回折格子を用いて遅延させる高速光遅延装置と、前記被検体から回帰する光と前記高速光遅延装置から回帰する参照光とを合波する前記マイケルソン干渉計と、同マイケルソン干渉計で合波された干渉光を検出する干渉光検出器とを備えてなることを特徴とするOCT装置。
(5)前記高速光遅延装置が、光ファイバからの信号光を平行光にして導入するコリメートレンズと、その光を受けて二次元方向にスキャンする高速光スキャナと、同高速光スキャナの光を受けて反射する回折格子と、同回折格子により反射された回帰光を受ける前記高速光スキャナ及び前記コリメートレンズを配設してなることを特徴とする前項(4)に記載のOCT装置。
(6)OCT装置が、歯科診断用のものであることを特徴とする前項(4)又は(5)に記載のOCT装置。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば次のような優れた効果を発揮する。
参照光は、高速光スキャナーと回折格子を用いた高速光遅延装置としたため、簡単な構造の高速光遅延装置を形成することができる。
また、本方式では、高速光スキャナと回折格子を直接組合せるので光学系は単純である。
かつ、前記回転円板方式と異なり、常に参照光が高速光スキャナの反射面にあたっているため、参照光の動作として好ましい。
従って、本高速光遅延装置を採用することにより、製作が容易でかつ、小型で、振動、騒音の発生の少ない、例えば医療用に最適なOCT装置を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
発明を実施するための最良の形態を以下図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の高速光遅延装置を配設したOCT装置の構成説明のブロック図で、本事例は、歯科用光診断装置である。
図において、1は診断用プローブ、2は高速光遅延装置、3は回折格子,4は高速光スキャナ、5、6は参照光、7はコリメートレンズ、8は深さ方向走査、9はSLD、10は光ファイバ、11は光サーキュレータ、12は光ファイバカップラ、13検出器、14は信号線、15は信号処理部、16はコンピュータ、17は表示部、18は光断層画像、19は横又は縦方向走査、20は信号光、21は歯部、22は歯、23は歯肉、24は駆動信号線を示す。
【0007】
本図は、低コヒーレンス光源のSLD9からの光は、光ファイバ10から光サーキュレータ11経由2分割用光ファイバカップラ12で、被検体の歯部21へ信号光20と参照光6とに分割し、前記参照光6は、高速スキャナ4と回折格子3による高速光遅延装置2によって反射回帰して、被検体の歯部21から回帰する光と共に、前記2分割用光ファイバカプラ12で合成された干渉光を検出器13で検出するようにしたOCT装置における高速光遅延を発生させる方法を示す。
【0008】
また、本ブロック図の主要部分は、低コヒーレンス光源のSLD9と、同SLD9からの光を被検体歯部21への信号光20と参照光6との2分割用光ファイバカプラ12と、前記参照光6を高速光スキャナ4と回折格子3とを組み合わせて遅延させる高速光遅延装置2と、前記被検体歯部21から回帰する光と前記高速光遅延装置2から回帰する参照光6とを合波する前記2分割用光ファイバカプラと12と、同光ファイバカプラ12で合波された干渉光を検出する検出器13(バランスレシーバ)を備えてなる。
また、周辺の、歯科診断用プローブ1は、深さ方向に対し垂直方向の走査(横又は縦の走査19)を行い、信号光20を歯部21に照射及び回帰させる。
また、検出器13からの信号は、信号処理部15経由コンピュータ16に入力され、表示器17には光断層画像18が表示されて、全体でOCT装置を形成する。
【0009】
本OCT装置における前記高速光遅延装置2について説明する。
図2は高速光遅延装置の説明図である。
図において、25は光スキャナのスキャン方向、26は回折反射面、Lは浅い回折反射面に到る光路長、L’は深い回折反射面に到る光路長を示す。
高速光スキャナ4は近時のMEMS(Micro Electoro mechanical Systems)技術を利用した、例えば共振ミラーによる二次元タイプのものが望ましい。
また、回折格子(グレーティング)3は、例えば可視・紫外領域の特定波長に対して高い回折効率を示すブレーズドホログラフィックグレーティング等が望ましい。
【0010】
周知のようにSLDを光源としたマイケルソン型の干渉計では、参照光が通過する光路とサンプル光が通過する光路との距離がほぼ等しい時に干渉信号が現れる。
本構成においての参照光は、光ファイバ10とコリメートレンズ7を通過した平行光は高速スキャナ4の鏡面に到る。そして、高速光スキャナ4は一定周波数でスキャン(X又はY軸のセンターを中心として振動)25されており、また前記回折格子3は所定長を有する回折反射面26が傾斜して配設されているので、光スキャナの面から回折格子3の浅い角度の回折反射面26に到る光路長Lと、同深い角度の回折反射面26に到る光路長L’とでは(L’−L)の差が生じる。
さらに、回折格子3からの回帰光は高速光スキャナ4の鏡面により反射され、コリメートレンズ7を通って光ファイバ10に戻り、前記深さ方向走査8用として、干渉光を発生させる。なおスキャンの周波数は測定条件により異なるが例えば50〜500HZである。
【0011】
図3は干渉信号取得実験データのグラフである。
実験装置は前記図1の構成ブロックによる、ただしサンプルは、光軸と垂直に置かれたミラーとした(図示せず)。また、高速光遅延装置は前記図2に示すものである。
図において、横軸は深さ(mm)、縦軸は信号の強度(mV)を示す。
図より深さ0〜1.8mmの範囲において、信号強度は1.0mV付近で観測され、本
装置により干渉信号が得られることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の高速光遅延装置を配設したOCT装置の構成説明のブロック図
【図2】高速光遅延装置の説明図
【図3】干渉信号取得実験データのグラフ
【符号の説明】
【0013】
1:診断用プローブ
2:高速光遅延装置
3:回折格子
4:高速光スキャナー
5、6:参照光
7:コリメートレンズ
8:深さ方向走査
9:SLD
10:光ファイバ
11:光サーキュレータ
12:光ファイバカップラ
13:検出器
14:信号線
15:信号処理部
16:コンピュータ
17:表示部
18:光断層画像
19:横又は縦方向走査
20:信号光
21:歯部
22:歯
23:歯肉
24:駆動信号線
25:光スキャナのスキャン方向
26:回折反射面
L:浅い回折反射面に到る光路長
L’:深い回折反射面に到る光路長









【特許請求の範囲】
【請求項1】
OCT装置による光診断方法において、
低コヒーレンス光源からの光を、マイケルソン干渉計によって被検体への照射光と参照光とに分割し、前記参照光は、高速光スキャナと回折格子を用いた高速光遅延装置により反射回帰して、被検体から回帰する光と共に、前記マイケルソン干渉計で合成された干渉光を、干渉光検出器で検出することを特徴とするOCT装置による光診断方法。
【請求項2】
高速光遅延装置が、光ファイバからの信号光を平行光にして導入するコリメートレンズと、その光を受けて二次元方向にスキャンする高速光スキャナと、
同高速光スキャナの光を受けて反射する回折格子と、
同回折格子により反射された回帰光を受ける前記高速光スキャナ及び前記コリメートレンズを配設してなることを特徴とする請求項1記載のOCT装置による光診断方法。
【請求項3】
光診断方法が、歯科診断のための方法であることを特徴とする請求項1又は2に記載のOCT装置による光診断方法。
【請求項4】
低コヒーレンス光源と、同低コヒーレンス光源からの光を被検体への照射光と参照光とに分割するマイケルソン干渉計と、前記参照光を高速光スキャナと回折格子を用いて遅延させる高速光遅延装置と、
前記被検体から回帰する光と前記高速光遅延装置から回帰する参照光とを合波する前記マイケルソン干渉計と、
同マイケルソン干渉計で合波された干渉光を検出する干渉光検出器とを備えてなることを特徴とするOCT装置。
【請求項5】
前記高速光遅延装置が、光ファイバからの信号光を平行光にして導入するコリメートレンズと、その光を受けて二次元方向にスキャンする高速光スキャナと、
同高速光スキャナの光を受けて反射する回折格子と、
同回折格子により反射された回帰光を受ける前記高速光スキャナ及び前記コリメートレンズを配設してなることを特徴とする請求項4に記載のOCT装置。
【請求項6】
OCT装置が、歯科診断用のものであることを特徴とする請求項4又は5に記載のOCT装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−248132(P2007−248132A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69342(P2006−69342)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(390011121)株式会社モリタ東京製作所 (28)
【Fターム(参考)】