説明

OFDM信号合成用受信装置

【課題】低計算量で処理を行うことができ、劣悪な受信環境においても効果的に干渉波を抑圧することが可能なOFDM信号合成用受信装置を提供する。
【解決手段】アレー合成部14は、時間領域で重み付け合成を行ってアレー合成信号を生成し、チャネル等化部18は、周波数領域で複素除算を行って等化後のキャリヤシンボルを生成する。重み係数制御部21は、予め定められたパイロット信号にチャネル応答を乗算し、IFFT部213によって得られる時間領域信号を参照信号とし、前記アレー合成のために用いる重み係数を、アレー合成信号と参照信号との間の誤差が最小となるように、自乗誤差の規範により最適化によって求める。この場合、重み係数の数は、アレー合成するブランチ数で済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OFDM方式を用いるデジタル放送またはデジタル伝送のOFDM信号合成用受信装置に関し、特に、デジタル放送または無線LANなどにおいて電波を受信する際に問題となるフェージングおよび干渉波の対策のために、アダプティブアレーアンテナ技術またはダイバーシティ受信技術を適用するOFDM信号合成用受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
OFDM信号用アダプティブアレー技術として、例えば、特許文献1および2に記載のものが知られており、これらはいずれも放送波中継用の装置へ応用することを目的としている。これらの技術を用いた放送波中継用の干渉除去装置は、送信側の設備であることから、低計算量で処理を行うことよりも、高精度な干渉除去特性を得ることが求められる。しかし、この放送波中継用の干渉除去装置は、極端に劣悪な受信環境で用いられることは想定していない。特に、SFN(Single Frequency Network)環境のサービスエリアは、レベルが高く、GI(Guard Interval)内であるが遅延時間が長いマルチパス波の影響を受ける環境であることから、十分な干渉除去特性を得ることができないことがあるという問題がある。また、最適化すべき重み係数の数がサブキャリヤ数とブランチ数との積となり、計算量が多くなるという問題もある。
【0003】
これに対し、前述のOFDM信号用アダプティブアレー技術を受信機へ応用することを想定した場合、低コスト化を実現するために、受信機には、より簡易な構成かつ少ない計算量で所要のビット誤り率(BER:Bit Error Rate)が得られること、また、より劣悪な受信環境でも動作できることが求められる。
【0004】
放送波中継用の装置では、干渉除去後に所要のBERが得られることが最低条件であり、干渉による伝送特性の劣化をいかに抑圧するかが求められる。これに対し、サービスエリアにおける受信用の装置では、干渉除去後に所要のBERが得られればよい。このように、放送波中継用の装置とサービスエリアにおける受信用の装置とでは、OFDM信号用アダプティブアレー技術に対する要求条件が大きく異なっている。
【0005】
一方、非特許文献1および2に、Pre−FFT型のOFDM信号用アダプティブアレー技術が記載されている。非特許文献1の技術は、移動受信を想定したものであり、希望波以外の到来波を全て抑圧することができる。また、非特許文献2の技術は、固定受信を想定したものであり、遅延時間がGIを越えるマルチパス波のみを抑圧することができる。これらはいずれも、少ない計算量で処理を行うことができる。
【0006】
【特許文献1】特許第3759448号公報
【特許文献2】特開2005−295506号公報
【非特許文献1】堀智、菊間信良、稲垣直樹、「OFDMにおけるガード区間を利用したMMSEアダプティブアレー」、信学論、J85−B(9):1608−1615、Sep 2002
【非特許文献2】堀智、菊間信良、稲垣直樹、「ガード区間を超える到来波のみを抑圧する固定受信のためのOFDM用MMSEアダプティブアレー」、信学論、J86−B(9):1934−1940、2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1および2に記載の技術は、いずれもGIが有効シンボルの後部と同一であるというOFDM信号の特徴を利用するものである。このため、干渉波が希望波と同一方式であって、GI比が同じである場合には、干渉波を抑圧することができない場合があるという問題があった。例えば、希望波と干渉波のシンボル同期位置が一致する場合には、希望波と干渉波を区別することができず、干渉波を抑圧することができないという問題があった。
【0008】
本発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、低計算量で処理を行うことができ、劣悪な受信環境においても効果的に干渉波を抑圧することが可能なOFDM信号合成用受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数のアレー素子で構成されるアレーアンテナによってOFDM波を受信し、ビット列を出力するOFDM信号合成用受信装置であって、受信したOFDM波の等価ベースバンド信号を時間領域において重み付けにより合成し、アレー合成信号を生成するアレー合成部と、前記アレー合成信号を周波数領域の信号であるキャリヤシンボルに変換するFFT(Fast Fourier Transform)部と、パイロット信号を用いてチャネル応答を推定するチャネル推定部と、前記キャリヤシンボルを前記チャネル応答で除算することにより、チャネル等化を行うチャネル等化部と、前記時間領域において重み付けによりアレー合成するために用いる重み係数を制御する重み係数制御部と、を備え、前記重み係数制御部が、パイロット信号を生成するパイロット信号生成部と、前記パイロット信号を時間領域の信号に変換するIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部と、前記時間領域の信号を参照信号とし、前記アレー合成信号と前記参照信号との間の誤差が最小となるように最適化し、前記重み係数を求める重み係数算出部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、複数のアレー素子で構成されるアレーアンテナによってOFDM波を受信し、ビット列を出力するOFDM信号合成用受信装置であって、受信したOFDM波の等価ベースバンド信号を時間領域において重み付けにより合成し、アレー合成信号を生成するアレー合成部と、前記アレー合成信号を周波数領域の信号であるキャリヤシンボルに変換するFFT部と、パイロット信号を用いてチャネル応答を推定するチャネル推定部と、前記キャリヤシンボルを前記チャネル応答で除算することにより、チャネル等化を行うチャネル等化部と、前記時間領域において重み付けによりアレー合成するために用いる重み係数を制御する重み係数制御部と、を備え、前記重み係数制御部が、前記チャネル等化後のキャリヤシンボルをデマッピングおよび再マッピングすることによりシンボル再生し、再生キャリヤシンボルを生成するシンボル再生部と、前記再生キャリヤシンボルにパイロット信号を挿入するパイロット信号挿入部と、前記パイロット信号が挿入された再生キャリヤシンボルを時間領域の信号に変換するIFFT部と、前記時間領域の信号を参照信号とし、前記アレー合成信号と前記参照信号との間の誤差が最小となるように最適化し、前記重み係数を求める重み係数算出部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載のOFDM信号合成用受信装置において、前記重み係数制御部が、請求項1のパイロット信号生成部により生成されたパイロット信号、または請求項2のパイロット信号挿入部によりパイロット信号が挿入された再生キャリヤシンボルに、前記チャネル応答を乗算する乗算部を備え、前記IFFT部が、前記乗算結果を時間領域の信号に変換する、ことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項2に記載のOFDM信号合成用受信装置において、前記重み係数制御部が、前記チャネル等化後のキャリヤシンボルおよび前記再生キャリヤシンボルに基づいて変調誤差比を算出する変調誤差比算出部を備え、前記パイロット信号挿入部が、前記変調誤差比に基づいて、予め定められたパイロット信号または前記パイロット信号に予め定められた定数を乗算した新たなパイロット信号を、前記再生キャリヤシンボルに挿入する、ことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項4に記載のOFDM信号合成用受信装置において、前記パイロット信号挿入部が、前記変調誤差比が予め定められたしきい値を下回り、かつ、前記キャリヤシンボルのシンボル番号が予め定められたシンボル間隔の整数倍となるときに、予め定められたパイロット信号に予め定められた定数を乗算した新たなパイロット信号を、前記再生キャリヤシンボルに挿入する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、アレー合成部が、時間領域で重み付け合成を行ってアレー合成信号を生成し、チャネル等化部が、周波数領域でチャネル等化後のキャリヤシンボルを生成し、重み係数制御部が、予め定められたパイロット信号または再生キャリヤシンボルをIFFTして得られる時間領域信号を参照信号とし、アレー合成のために用いる重み係数を、アレー合成信号と参照信号との間の誤差が最小となるように最適化によって求めるようにした。これにより、最適化すべき重み係数の数は、アレー合成するブランチの数で済むから、サブキャリヤ数とブランチ数との積の数を必要とした従来の装置よりも低計算量となる。また、チャネル推定部が、パイロット信号を用いてチャネル応答を直接推定するから、同様に低計算量となる。また、このような低計算量にてアレー合成及びチャネル等化を行うことができるから、劣悪な受信環境においても効果的に干渉波を抑圧することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。図1は、実施例1のOFDM信号合成用受信装置の構成を示すブロック図である。このOFDM信号合成用受信装置1は、周波数変換部11、A/D変換部12、直交復調部13、アレー合成部14、GI除去部15、FFT部16、チャネル推定部17、チャネル等化部18、デマッピング部19、パラレルシリアル変換部20および重み係数制御部21を備えている。また、アレー合成部14は、アレー素子数分の乗算部141、加算部142および複素共役部143を備えている。重み係数制御部21は、アレー素子数分のGI除去部214、重み係数算出部30、パイロット信号生成部211、乗算部212およびIFFT部213を備えている。
【0016】
アレー素子数分の周波数変換部11は、アンテナ10を介して受信したOFDM信号をIF信号に周波数変換する。アレー素子数分の周波数変換部11の出力するIF信号はそれぞれA/D変換部12へ入力される。アレー素子数分のA/D変換部12は、周波数変換部11から入力されるIF信号をデジタルIF信号にA/D変換する。アレー素子数分のA/D変換部12の出力するデジタルIF信号はそれぞれ直交復調部13に入力される。アレー素子数分の直交復調部13は、A/D変換部12から入力されるデジタルIF信号を直交復調し、等価ベースバンド信号を生成する。アレー素子数分の直交復調部13の出力する等価ベースバンド信号は2分配され、一方がアレー合成部14の乗算部141へ、他方が重み係数制御部21のGI除去部214へ入力される。
【0017】
アレー合成部14におけるアレー素子数分の乗算部141は、直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号に、複素共役部143から入力される重み係数の複素共役値を乗算する。アレー素子数分の乗算部141が出力する、重み係数の複素共役値が乗算された等価ベースバンド信号は加算部142へ入力される。加算部142は、アレー素子数分の乗算部141の出力する、重み係数の複素共役値が乗算された等価ベースバンド信号を加算し、アレー合成信号を生成する。加算部142の出力するアレー合成信号はGI除去部15へ入力される。
【0018】
GI除去部15は、加算部142から入力されるアレー合成信号からGIを除去し、有効シンボル期間に相当する時間の信号を抽出する。GI除去部15の出力する、有効シンボル期間におけるアレー合成信号はFFT部16へ入力される。
【0019】
FFT部16は、GI除去部15の出力する有効シンボル期間におけるアレー合成信号をFFTにより周波数領域の信号であるキャリヤシンボルに変換する。FFT部16の出力するキャリヤシンボルは2分配され、一方がチャネル等化部18へ、他方がチャネル推定部17へ入力される。
【0020】
チャネル推定部17は、前記FFT部16の出力するキャリヤシンボルからチャネル応答を推定する。チャネル推定部17の出力するチャネル応答は2分配され、一方がチャネル等化部18へ、他方が重み係数制御部21の乗算部212へ入力される。
【0021】
チャネル等化部18は、FFT部16から入力されるキャリヤシンボルを、チャネル推定部17から入力されるチャネル応答で除算することにより、チャネル等化を行う。チャネル等化部18の出力するチャネル等化後のキャリヤシンボルはデマッピング部19へ入力される。
【0022】
デマッピング部19は、チャネル等化部18の出力するチャネル等化後のキャリヤシンボルをデマッピングすることにより、パラレル信号に変換する。デマッピング部19の出力するパラレル信号はパラレルシリアル変換部20へ入力される。パラレルシリアル変換部20は、デマッピング部19から入力されるパラレル信号をシリアル信号に変換し、ビット列を出力する。
【0023】
一方、重み係数制御部21のパイロット信号生成部211は、予め定められたパイロット信号を生成する。パイロット信号生成部211の出力するパイロット信号は乗算部212へ入力される。
【0024】
乗算部212は、パイロット信号生成部211から入力されるパイロット信号に、チャネル推定部17から入力されるチャネル応答を乗算する。乗算部212の出力する、チャネル応答が乗じられたパイロット信号はIFFT部213へ入力される。
【0025】
IFFT部213は、乗算部212が出力する、チャネル応答が乗じられたパイロット信号を時間領域の信号に変換し、パイロット信号のみが含まれる時間領域信号を生成する。IFFT部213の出力する、パイロット信号のみが含まれる時間領域信号は重み係数算出部30へ入力される。ここで、IFFT部213の出力する、パイロット信号のみが含まれる時間領域信号は、重み係数算出部30において参照信号として扱われる。
【0026】
アレー素子数分のGI除去部214は、それぞれの直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号からGIを除去し、有効シンボル期間に相当する時間の等価ベースバンド信号を抽出する。アレー素子数分のGI除去部214の出力する、有効シンボル期間における等価ベースバンド信号は重み係数算出部30へ入力される。
【0027】
重み係数算出部30は、アレー素子数分のGI除去部214から入力される、有効シンボル期間における等価ベースバンド信号と、IFFT部213から入力される、チャネル応答が乗じられたパイロット信号のみが含まれる時間領域信号である参照信号とを用いて、重み係数を算出する。具体的には、重み係数算出部30は、入力した等価ベースバンド信号を重み付けして得られるアレー合成信号と入力した参照信号との間の自乗誤差が最小となるように、最小自乗誤差(MMSE)の規範により重み係数を算出する。重み係数算出部30の出力する重み係数はアレー合成部14の複素共役部143へ入力される。
【0028】
アレー合成部14の複素共役部143は、重み係数算出部30から入力される重み係数について、その複素共役値を算出する。アレー合成部14の出力する重み係数の複素共役値はアレー素子数分の乗算部141へ入力される。
【0029】
このように、実施例1のOFDM信号合成用受信装置1によれば、アレー合成部14が、時間領域で重み係数を用いて合成を行ってアレー合成信号を生成し、チャネル推定部17が、パイロット信号を用いてチャネル応答を推定し、チャネル等化部18が、周波数領域においてキャリヤシンボルをチャネル等化し、重み係数制御部21が、予め定められたパイロット信号にチャネル応答を乗算し、この乗算結果の信号をIFFTして得られる時間領域信号を参照信号とし、アレー合成のために用いる重み係数を、アレー合成信号と参照信号との間の誤差が最小となるように最適化によって求めるようにした。これにより、最適化すべき重み係数の数はアレー合成するブランチの数で済む。従来の装置では、最適化すべき重み係数の数はサブキャリヤ数とブランチ数との積の数を必要としたが、実施例1のOFDM信号合成用受信装置1では従来よりも低計算量で済む。また、チャネル推定部17がチャネル応答を直接推定するから、同様に低計算量で済む。また、このような低計算量にてアレー合成及びチャネル等化を行うから、劣悪な受信環境においても効果的に干渉波を抑圧することが可能となる。
【0030】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。図2は、実施例2のOFDM信号合成用受信装置の構成を示すブロック図である。このOFDM信号合成用受信装置2は、周波数変換部11、A/D変換部12、直交復調部13、アレー合成部14、GI除去部15、FFT部16、チャネル推定部17、チャネル等化部18、シンボル再生部23、パラレルシリアル変換部20および重み係数制御部22を備えている。また、アレー合成部14は、アレー素子数分の乗算部141、加算部142および複素共役部143を備えている。シンボル再生部23は、デマッピング部19および再マッピング部221を備えている。重み係数制御部22は、アレー素子数分の遅延部226、アレー素子数分のGI除去部227、重み係数算出部228、再マッピング部221、変調誤差比(MER:Modulation Error Ratio)算出部222、パイロット信号挿入部223、乗算部224およびIFFT部225を備えている。
【0031】
図1に示した実施例1のOFDM信号合成用受信装置1と図2に示す実施例2のOFDM信号合成用受信装置2とを比較すると、両装置とも、アレー素子数分の周波数変換部11、A/D変換部12および直交復調部13を備え、また、アレー合成部14、GI除去部15、FFT部16、チャネル推定部17、チャネル等化部18、デマッピング部19およびパラレルシリアル変換部20を備えている点で同一である。また、両装置とも、重み係数制御部21,22において、アレー素子数分のGI除去部214,227を備え、乗算部212,224、IFFT部213,225および重み係数算出部30,228を備えている点で同一である。
【0032】
一方、OFDM信号合成用受信装置1は、重み係数制御部21においてパイロット信号生成部211を備えているのに対し、OFDM信号合成用受信装置2は、シンボル再生部23および重み係数制御部22において、再マッピング部221、変調誤差比算出部222およびパイロット信号挿入部223を備えている点で相違する。また、OFDM信号合成用受信装置2は、重み係数制御部22において、アレー素子数分の遅延部226を備えている点で相違する。
【0033】
周波数変換部11、A/D変換部12、直交復調部13、アレー合成部14、GI除去部15、FFT部16、チャネル推定部17、チャネル等化部18、デマッピング部19およびパラレルシリアル変換部20については、実施例1にて説明したとおりである。
【0034】
ここで、アレー素子数分の直交復調部13の出力する等価ベースバンド信号は2分配され、一方がアレー合成部14の乗算部141へ、他方が重み係数制御部22の遅延部226へ入力される。また、チャネル等化部18の出力するチャネル等化後のキャリヤシンボルは2分配され、一方がシンボル再生部23のデマッピング部19へ、他方が重み係数制御部22の変調誤差比算出部222へ入力される。また、シンボル再生部23のデマッピング部19の出力するパラレル信号は2分配され、一方がパラレルシリアル変換部20へ、他方が再マッピング部221へ入力される。
【0035】
再マッピング部221は、デマッピング部19から入力されるパラレル信号を再マッピングし、再生キャリヤシンボルを生成する。再マッピング部221の出力する再生キャリヤシンボルは2分配され、一方が変調誤差比算出部222へ、他方がパイロット信号挿入部223へ入力される。
【0036】
変調誤差比算出部222は、チャネル等化部18から入力されるチャネル等化後のキャリヤシンボルと、再マッピング部221から入力される再生キャリヤシンボルとを用いて、変調誤差比を算出する。変調誤差比算出部222の出力する変調誤差比はパイロット信号挿入部223へ入力される。
【0037】
パイロット信号挿入部223は、再マッピング部221から入力される再生キャリヤシンボルと、変調誤差比算出部222から入力される変調誤差比とにより、既知のパイロット信号を含む新たな再生キャリヤシンボルを生成する。具体的には、パイロット信号挿入部223は、既知のパイロット信号を生成し、入力した再生キャリヤシンボルのうちパイロット信号に割り当てられた再生キャリヤシンボルを、生成した既知のパイロット信号に置き換える。この場合、入力した変調誤差比と予め定められたしきい値とを比較し、変調誤差比がしきい値を下回り、かつシンボル番号が予め定められたシンボル間隔の整数倍であるときに、置き換えるパイロット信号には、予め定められた定数を乗じる。パイロット信号挿入部223の出力する再生キャリヤシンボルは乗算部224へ入力される。
【0038】
乗算部224は、パイロット信号挿入部223から入力される再生キャリヤシンボルに、チャネル推定部17から入力されるチャネル応答を乗算する。乗算部224の出力するチャネル応答が乗じられた再生キャリヤシンボルはIFFT部225へ入力される。
【0039】
IFFT部225は、乗算部224から入力される、チャネル応答が乗じられた再生キャリヤシンボルを時間領域の信号に変換する。IFFT部225の出力する時間領域信号は重み係数算出部228へ入力される。ここで、IFFT部225の出力する時間領域信号は、重み係数算出部228において参照信号として扱われる。
【0040】
アレー素子数分の遅延部226は、それぞれの直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号を、予め定められた時間分だけ遅延させる。予め定められた時間とは、直交復調部13から出力された等価ベースバンド信号がアレー合成部14においてアレー合成され、IFFT部225から参照信号が出力されるまでの間の演算に必要な時間をいう。アレー素子数分の遅延部226の出力する遅延した等価ベースバンド信号はそれぞれGI除去部227へ入力される。
【0041】
GI除去部227は、それぞれの遅延部226から入力される遅延した等価ベースバンド信号からGIを除去し、有効シンボル期間に相当する時間の等価ベースバンド信号を抽出する。アレー素子数分のGI除去部227の出力する、有効シンボル期間における等価ベースバンド信号は重み係数算出部228へ入力される。
【0042】
重み係数算出部228は、アレー素子数分のGI除去部227から入力される、有効シンボル期間における等価ベースバンド信号と、IFFT部225から入力される、チャネル応答が乗じられた時間領域信号である参照信号とを用いて、重み係数を算出する。具体的には、重み係数算出部228は、入力した等価ベースバンド信号を重み付けして得られるアレー合成信号と入力した参照信号との間の自乗誤差が最小となるように、最小自乗誤差の規範により重み係数を算出する。重み係数算出部228の出力する重み係数はアレー合成部14の複素共役部143へ入力される。
【0043】
このように、実施例2のOFDM信号合成用受信装置2によれば、アレー合成部14が、時間領域で重み係数を用いて合成を行ってアレー合成信号を生成し、チャネル推定部17が、パイロット信号を用いてチャネル応答を推定し、チャネル等化部18が、周波数領域においてキャリヤシンボルをチャネル等化するようにした。また、重み係数制御部22が、チャネル等化されたキャリヤシンボルをデマッピングおよび再マッピングして再生キャリヤシンボルを生成し、再生キャリヤシンボルに予め定められたパイロット信号を挿入してチャネル応答を乗算し、この乗算結果をIFFTして得られる時間領域信号を参照信号とし、アレー合成のために用いる重み係数を、アレー合成信号と参照信号との間の誤差が最小となるように最適化によって求めるようにした。これにより、実施例1の場合と同様に、最適化すべき重み係数の数はアレー合成するブランチの数で済むから、重み係数は、従来よりも低計算量で済む。また、チャネル推定部17がチャネル応答を直接推定するから、同様に低計算量で済む。また、このような低計算量にてアレー合成及びチャネル等化を行うから、劣悪な受信環境においても効果的に干渉波を抑圧することが可能となる。
【0044】
また、実施例2のOFDM信号合成用受信装置2によれば、再マッピングした再生キャリヤシンボルおよび予め定められたパイロット信号をIFFT部225により時間領域に変換して参照信号を生成する。そして、重み係数算出部228は、GI除去部227から入力した等価ベースバンド信号を合成して得られるアレー合成信号と、参照信号との誤差が最小となるように最適化した重み係数を算出する。これにより、重み係数算出部228は、希望波と干渉波のシンボル同期位置およびパイロット信号が同一サブキャリヤに挿入される4シンボル周期が一致した場合でも、パイロット信号以外のデータキャリヤが希望波と干渉波とでは異なるため、希望波と干渉波を区別可能な重み係数を算出することができる。
【0045】
また、実施例2のOFDM信号合成用受信装置2によれば、パイロット信号挿入部223は、再生キャリヤ信号にパイロット信号を挿入する際に、変調誤差比算出部222により算出された変調誤差比がしきい値を下回り、かつシンボル番号が予め定められたシンボル間隔の整数倍であるときに、予め定められた定数を乗じたパイロット信号を挿入するようにした。この場合、IFFT部225により生成される参照信号は、本来のパイロット信号とは異なる振幅のパイロット信号に基づいた信号となる。そして、重み係数算出部228は、GI除去部227から入力した等価ベースバンド信号を合成して得られるアレー合成信号と、本来のパイロット信号とは異なる振幅のパイロット信号に基づいた参照信号とを用いて、これらの信号の誤差が最小となるように最適化した重み係数を算出する。これにより、重み係数算出部228は、受信信号に含まれる干渉波におけるパイロット信号の振幅と、参照信号におけるパイロット信号の振幅とが異なる信号を用いるようにしたから、干渉波を抑圧可能な重み係数を算出することができる。一方、予め定められた定数を乗じずにパイロット信号を挿入する場合は、希望波と干渉波のシンボル同期位置およびパイロット信号が同一サブキャリヤに挿入される4シンボル周期が一致し、かつ希望波と干渉波の電力比が非常に小さい場合には、受信信号に含まれる干渉波におけるパイロット信号の振幅と、参照信号におけるパイロット信号の振幅とが一致していたから、希望波と干渉波を区別可能な重み係数を算出することができなかった。したがって、希望波と干渉波のシンボル同期位置およびパイロット信号が同一サブキャリヤに挿入される4シンボル周期が一致し、かつ希望波と干渉波の電力比が非常に小さい場合には、希望波と干渉波を区別することができず、干渉波を抑圧することができなかったが、実施例2のOFDM信号合成用受信装置2によれば、この問題を解決することができる。
【0046】
以上のように構成される実施例1のOFDM信号合成用受信装置1および実施例2のOFDM信号合成用受信装置2における構成部の詳細について、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting−Terrestrial)を適用した場合を例にして、以下に説明する。
【0047】
〔アレー合成部〕
まず、図1および図2に示したアレー合成部14について説明する。アレー素子数分の直交復調部13の出力する等価ベースバンド信号からなるベクトルを以下に示す。
【数1】


ここで、tは時刻、Lはブランチ数を示す。また、上付きのTは転置を示す。
【0048】
重み係数算出部30の出力する重み係数からなるベクトルを以下に示す。
【数2】


これにより、アレー合成部14は、以下に示す演算を行い、アレー合成信号を出力する。
【数3】


ここで、上付きのHは複素共役転置を示す。なお、前記式(3)には、複素共役部143による処理が含まれる。
【0049】
〔チャネル推定部〕
次に、図1および図2に示したチャネル推定部17について説明する。図3は、チャネル推定部17の構成を示すブロック図である。このチャネル推定部17は、パイロット抽出部171、パイロット生成部172、除算部173および補間部174を備えている。
【0050】
FFT部16の出力するキャリヤシンボルは、チャネル推定部17のパイロット抽出部171へ入力される。パイロット抽出部171は、入力したキャリヤシンボルのうちの、予め決められたシンボル番号およびサブキャリヤ番号のキャリヤシンボルとして伝送されたパイロット信号を抽出する。パイロット抽出部171の出力するパイロット信号は、受信パイロット信号として除算部173へ入力される。
【0051】
パイロット生成部172は、予め決められた振幅および位相を持つパイロット信号を生成する。パイロット生成部172が出力するパイロット信号は除算部173へ入力される。
【0052】
除算部173は、パイロット抽出部171から入力される受信パイロット信号を、パイロット生成部172から入力されるパイロット信号で除算し、パイロット信号が伝送されるシンボルおよびサブキャリヤにおけるチャネル応答を求める。除算部173が出力するパイロット信号におけるチャネル応答は補間部174へ入力される。
【0053】
補間部174は、除算部173から入力される、パイロット信号が伝送されるシンボルおよびサブキャリヤにおけるチャネル応答を、シンボル方向およびサブキャリヤ方向に補間し、OFDM信号の全サブキャリヤにおけるチャネル応答を算出して出力する。
【0054】
ISDB−T方式において、パイロット信号であるSP(Scattered Pilot)に割り当てられたサブキャリヤは、シンボル番号をi、サブキャリヤ番号をkとすると、以下の式を満足する。
【数4】


ただし、modは剰余を示す。以下、前記式(4)を満足するi,kをそれぞれi,kとする。
【0055】
ここで、図3に示したパイロット抽出部171をSP抽出部とし、パイロット生成部172をSP生成部とする。SP抽出部により抽出される受信SP信号をXip,kpとし、SP生成部により生成されるSP信号、すなわち、送信側のISDB−T変調器において生成されて送信されるSP信号(以下、単に「送信SP信号」という。)をSip,kpとすると、シンボル番号i、サブキャリヤ番号kにおけるチャネル応答Uip,kpは、次式で表される。
【数5】

【0056】
ここでは、ISDB−T方式で採用されているSP信号を基準信号とし、チャネル応答を算出する方法を説明したが、振幅および位相が既知の信号であって、受信側において生成可能なシンボルであれば同様にチャネル応答算出のための基準信号として利用することができる。すなわち、本発明は、チャネル応答を算出するにあたり、基準信号としてSP信号を用いることに限定されるものではない。
【0057】
ところで、SP信号を用いてチャネル応答を算出する場合、全てのシンボルおよびサブキャリヤにおけるチャネル応答を直接算出することができない。全てのシンボルおよびサブキャリヤにおけるチャネル応答を算出するためには、シンボルおよびサブキャリヤ方向に補間処理を行う必要がある。
【0058】
シンボル方向の補間には、例えば以下に示す最新値保持法または線形補間法を用いることができ、次式により補間処理を行うことができる。最新値保持法を用いる場合、以下の式により補間処理を行う。
【数6】


また、線形補間法を用いる場合、以下の式により補間処理を行う。
【数7】

【0059】
一方、サブキャリヤ方向の補間には、例えば以下に示す線形補間法を用いることができ、次式により補間処理を行うことができる。
【数8】

【0060】
〔チャネル等化部〕
次に、図1および図2に示したチャネル等化部18について説明する。図4は、チャネル等化部18の構成を示すブロック図である。このチャネル等化部18は、除算部181を備えている。
【0061】
FFT部16の出力するキャリヤシンボルおよびチャネル推定部17の出力するチャネル応答は、チャネル等化部18の除算部181へ入力される。チャネル等化部18の除算部181は、次式のように、FFT部16から入力されるキャリヤシンボルXを、OFDM信号のサブキャリヤごとにチャネル推定部17から入力されるチャネル応答Uで除算することにより、チャネル等化を行う。
【数9】


ここで、Zはチャネル等化後のキャリヤシンボルを示す。
【0062】
〔シンボル再生部(デマッピング部、再マッピング部)〕
次に、図2に示したシンボル再生部23のデマッピング部19および再マッピング部221について説明する。
【0063】
デマッピング部19は、チャネル等化部18から入力される、チャネル等化後のキャリヤシンボルから、送信されたキャリヤシンボルを推定し、複数ビットからなるパラレル信号を取り出す。再マッピング部221は、デマッピング部19から入力されるパラレル信号(複数ビットからなるパラレル信号)をキャリヤ変調し、キャリヤシンボルを再生する。ここで、前記式(9)は、以下の式で表すことができる。
【数10】


ただし、Tは送信キャリヤシンボル、Nは雑音成分を示す。
【0064】
したがって、雑音成分Nが十分小さい場合は、以下の式で表すことができる。
【数11】


ここで、decはマッピングおよび再マッピングを示す関数であり、具体的には、与えられたキャリヤシンボルとの間のノルムが最も小さい送信キャリヤシンボルを返す関数である。すなわち、シンボル再生部23は、チャネル等化後のキャリヤシンボルをデマッピング部19にてデマッピングし、再マッピング部221にて再マッピングすることにより、送信キャリヤシンボルを得ることができる。
【0065】
〔変調誤差比算出部〕
次に、図2に示した変調誤差比算出部222について説明する。変調誤差比算出部222は、チャネル等化部18から入力されるチャネル等化後のキャリヤシンボルZと、再マッピング部221から入力される再マッピングされた再生キャリヤシンボルDとを用いて、次式で定義される変調誤差比MERを算出する。
【数12】


ここで、Kは全サブキャリヤ数を示す。なお、変調誤差比の詳細については、下記の非特許文献を参照されたい。
ETR 290:Measurement guidelines for DVB Systems, ETSI Technical Report, may 1997
【0066】
〔パイロット信号挿入部〕
次に、図2に示したパイロット信号挿入部223について説明する。パイロット信号挿入部223は、再マッピング部221から入力される再生キャリヤシンボルDのうちの、パイロット信号に割り当てられたキャリヤシンボルを、予め決められた振幅および位相を持つキャリヤシンボルSに置き換える。すなわち、以下の式に示す処理を行う。
【数13】

【0067】
〔摂動〕
ここで、パイロット信号挿入部223が前記式(13)の処理を行う場合、シンボル同期位置、および同一サブキャリヤにSPが挿入される4シンボル周期が、希望波と干渉波において完全に一致したときには、干渉波を良好に除去できないことがある。これに対応するため、パイロット信号挿入部223は、以下の式に示す処理を行う。
【数14】


【数15】

【0068】
前記式(12)により得られる変調誤差比は、キャリヤシンボルの送信シンボルの推定値としての確からしさを示しており、言い換えるならば、干渉除去後の信号品質を示している。この変調誤差比MERが、予め定められたしきい値thを下回り、かつシンボル番号iが予め定められたシンボル間隔mの整数倍であるとき、予め決められた振幅および位相を持つパイロット信号のキャリヤシンボルSに定数α’を乗じる。
【0069】
本願発明者らの実験によれば、シンボル同期位置、および同一サブキャリヤにSPが挿入される4シンボル周期が、希望波と干渉波において完全に一致した場合であっても、例えば、th=19dB,α’=1/2,m=3とすることにより、干渉波を良好に除去することができるという結果を得た。
【0070】
変調誤差比MERが、予め定められたしきい値thを下回り、かつシンボル番号iが予め定められたシンボル間隔mの整数倍であるとき、パイロット信号挿入部223は、再生キャリヤシンボルにうちのパイロット信号に割り当てられたキャリヤシンボルを、振幅の小さいパイロット信号のキャリヤシンボルで置き換えた信号に基づいて、参照信号を生成する。そして、重み係数算出部228は、GI除去部227から入力した等価ベースバンド信号を合成して得たアレー合成信号と、振幅の小さいパイロット信号のキャリヤシンボルで置き換えた信号に基づいた参照信号とを用いて、これらの信号の誤差が最小となるように最適化した重み係数を算出する。これにより、重み係数算出部228は、希望波と干渉波とを区別することができ、アレー合成部14によって干渉波を除去することが可能な重み係数を算出することができる。
【0071】
〔パイロット信号生成部〕
次に、図1に示したパイロット信号生成部211について説明する。パイロット信号生成部211は、予め決められたシンボル番号およびサブキャリヤ番号において、予め決められた振幅および位相を持つキャリヤシンボルを生成すると同時に、パイロット信号に割り当てられていないシンボル番号およびサブキャリヤ番号のキャリヤシンボルをゼロに設定する。
【数16】

【0072】
〔周波数特性乗算部〕
次に、図1に示した乗算部212および図2に示した乗算部224である周波数特性乗算部について説明する。乗算部212は、パイロット信号生成部211からパイロット信号(キャリヤシンボル)を入力する。また、乗算部224は、パイロット信号挿入部223から再生キャリヤシンボル(キャリヤシンボル)を入力する。
【0073】
そして、乗算部212,224は、入力したキャリヤシンボル


に、チャネル推定部17から入力されるチャネル応答Uを乗算する。
【数17】


ここで、Rは、チャネル応答が乗じられたキャリヤシンボルを示し、周波数領域で表現した参照信号である。
【0074】
乗算部212,224の出力する周波数領域における参照信号は、チャネル応答を用いて算出した信号であるから、参照信号にはチャネル応答が含まれ、重み係数算出部30,228は、チャネル応答が含まれる時間領域で表現した参照信号を用いて重み係数を算出する。したがって、希望波のマルチパスが受信される環境においても、重み係数算出部30,228は、アレー合成部14によって干渉波を除去することが可能な重み係数を算出することができる。つまり、干渉波はアレー合成部14によって除去され、かつマルチパスによる周波数特性歪みはチャネル等化部18によって等化される。これにより、OFDM信号合成用受信装置1,2は、OFDM信号を良好に受信することができる。
【0075】
〔IFFT部〕
次に、図1に示したIFFT部213および図2に示したIFFT部225について説明する。IFFT部213,225は、周波数特性乗算部である乗算部212,224から入力されるキャリヤシンボルRを、IFFTにより時間領域の信号に変換し、参照信号を生成する。IFFT部213,225は、以下の式に示す処理を行う。
【数18】


ここで、r(t)は参照信号を示す。
【0076】
〔遅延部〕
次に、図2に示した遅延部226について説明する。遅延部226は、直交復調部13が等価ベースバンド信号を出力してから、アレー合成部14、GI除去部15、FFT部16、チャネル等化部18、デマッピング部19、再マッピング部221、パイロット信号挿入部223、乗算部224およびIFFT部225による処理が行われ、IFFT部225が参照信号を出力するまでに要する時間と、GI除去部227による処理に要する時間との差に相当する遅延を加えて、等価ベースバンド信号を出力する。
【0077】
〔重み係数算出部〕
次に、図1に示した重み係数算出部30および図2に示した重み係数算出部228について説明する。図5は、重み係数算出部30,228の構成を示すブロック図である。この重み係数算出部30,228は、自己相関行列計算部301、逆行列計算部302、相互相関ベクトル計算部303および乗算部304を備えている。
【0078】
重み係数算出部30,228は、アレー素子数分のGI除去部214,227から入力される等価ベースバンド信号からなる入力信号ベクトルを重み付け合成して得られるアレー合成信号とIFFT部225から入力される参照信号との誤差を最小化する重み係数ベクトルを生成する。入力信号ベクトルを以下の式に示す。
【数19】


また、アレー合成信号を以下の式に示す。
【数20】

【0079】
重み係数算出部30,228は、前記式(20)のアレー合成信号と参照信号r(t)との間の自乗誤差が最小となるように、重み係数を最適化する。ここで、前記式(1)に示した


および前記式(3)に示した


は、GI期間および有効シンボル期間の等価ベースバンド信号を示しているのに対し、前記式(19)に示したx(t)および前記式(20)に示したy(t)は、GIが除去された、有効シンボル期間のみの等価ベースバンド信号を示している。
【0080】
また、自乗誤差は、以下の式により定義される。
【数21】


ここで、E[・]は期待値演算を示す。
【0081】
前記式(21)の自乗誤差を最小化する重み係数woptは、以下の式で表される。
【数22】


ここで、Rxxはx(t)の自己相関行列、rxrはx(t)とr(t)の相互相関ベクトルを示す。
【0082】
ここで、自己相関行列および相互相関ベクトルをそれぞれ以下の式で表し、
【数23】


【数24】


係数更新間隔を例えば1シンボル間隔として、これらを更新する。ただし、上付きの*は複素共役を示す。
【0083】
すなわち、自己相関行列計算部301は、入力信号ベクトルx(t)を用いて、以下の式(25)の処理を行い、自己相間行列Rxx(n)を算出する。また、相互相関ベクトル計算部303は、入力した入力信号ベクトルx(t)および参照信号r(t)を用いて、以下の式(26)の処理を行い、相互相関ベクトルrxr(n)を算出する。
【数25】


【数26】


ここで、nは係数更新時間を示す。また、λは、0≦λ<1を満たす適応係数を示し、忘却係数と呼ばれる。さらに、前記式(25)および(26)における右辺の第2項の期待値演算は、係数更新間隔、例えば1シンボルのうちで有効シンボル期間に相当する期間における期待値を示す。
【0084】
逆行列計算部302は、自己相関行列計算部301により算出された自己相間行列Rxx(n)の逆行列Rxx−1(n)を算出する。乗算部304は、逆行列計算部302により算出された自己相間行列の逆行列Rxx−1(n)と、相互相関ベクトル計算部303により算出された相互相関ベクトルrxr(n)とを乗算し、重み係数ベクトルwを算出する。したがって、重み係数算出部30,228は、重み係数ベクトルwを、以下の式により求めることができる。
【数27】

【0085】
〔実験結果〕
次に、計算機シミュレーションにより得られた干渉除去特性の実験結果について説明する。図6(a)は、従来のPre−FFT型OFDM信号合成用受信装置(前述した非特許文献1に記載されたOFDM信号合成用受信装置)における、シンボル同期位置に対する干渉除去特性を示す図である。また、図6(b)は、本発明の実施形態によるOFDM信号合成用受信装置2における、シンボル同期位置に対する干渉除去特性を示す図である。これらの実験結果は、希望波と干渉波がともにISDB−Tによるものであり、GI比も1/8で同一である場合において、希望波と干渉波のシンボル同期位置の差に対する、干渉除去後の変調誤差比を干渉除去特性として示している。また、受信C/Nは25dB、干渉波のD/Uは10dBとし、希望波が0度から、干渉波が50度からそれぞれ到来し、これらの信号を2素子のアレーアンテナで受信するものとし、その間隔は半波長とした。シンボル同期位置の差を横軸に、干渉除去後の変調誤差比を縦軸に示している。
【0086】
図6(a)に示す従来のPre−FFT型OFDM信号合成用受信装置の実験結果によれば、シンボル同期位置の差がシンボル長の整数倍になるとき、干渉除去特性に劣化が生じていることがわかる。これに対し、図6(b)に示す本発明の実施形態によるOFDM信号合成用受信装置2の実験結果によれば、シンボル同期位置の差に関わらず、良好に干渉が除去されていることがわかる。
【0087】
図7は、従来のOFDM信号合成用受信装置(特許文献2に記載されたOFDM信号合成用受信装置)および本発明の実施形態によるOFDM信号合成用受信装置2のマルチパス環境における干渉除去特性を示す図である。この実験結果は、希望波と干渉波の他に、希望波のマルチパス波が受信される環境において、マルチパスD/Uに対する干渉除去後の変調誤差比を干渉除去特性として示している。また、受信C/Nは45dB、干渉波のD/Uは10dB、希望波が0度から、干渉波が50度から、希望波のマルチパス波が−60度からそれぞれ到来し、これらの信号を2素子のアレーアンテナで受信するものとし、その間隔は半波長とした。また、マルチパス波は遅延時間が120μs(GI長126μsの約95%)とし、マルチパス波のD/Uを横軸に、干渉除去後の変調誤差比を縦軸に示している。
【0088】
図7に示す実験結果によれば、マルチパスD/Uが4dB以上のときは、従来のOFDM信号合成用受信装置の方が、本発明の実施形態によるOFDM信号合成用受信装置2よりも高い変調誤差比が得られていることがわかる。一方、マルチパスD/Uが3dB以下のときは、本発明の実施形態によるOFDM信号合成用受信装置2では良好に干渉が除去されているのに対し、従来のOFDM信号合成用受信装置では著しく受信特性が劣化していることがわかる。
【0089】
前述のとおり、放送波中継用の装置では、干渉除去後に所要のBERが得られることが最低条件であり、干渉による伝送特性の劣化をいかに抑圧するかが求められるのに対し、サービスエリアにおける受信用の装置では、干渉除去後に所要のBERが得られればよい。つまり、OFDM信号合成用受信装置を受信機へ応用することを想定した場合、干渉除去後に所要のBERが得られればよく、所要のBERを下回れば、それ以上低いBERを得ることは必要ではない。したがって、図7に示した実験結果によれば、本発明の実施形態によるOFDM信号合成用受信装置2と従来のOFDM信号合成用受信装置とを比較すると、本発明の実施形態によるOFDM信号合成用受信装置2の方が、低D/Uのマルチパス環境に対する耐性を有していることがわかる。
【0090】
以上のように、OFDM信号合成用受信装置1,2によれば、アレー合成部14が、時間領域で重み付け合成を行ってアレー合成信号を生成し、チャネル等化部18が、周波数領域で複素除算を行って等化後のキャリヤシンボルを生成し、重み係数制御部21,22が、予め定められたパイロット信号(OFDM信号合成用受信装置1の場合)または再生キャリヤシンボル(OFDM信号合成用受信装置2の場合)にチャネル応答を乗算し、再変調して得られる時間領域信号を参照信号として、前記アレー合成のために用いる重み係数を、最小自乗誤差の規範により最適化によって求めるようにした。これにより、低計算量で処理を行うことができ、劣悪な受信環境においても効果的に干渉波を抑圧することが可能となる。
【0091】
なお、図1に示したOFDM信号合成用受信装置1では、乗算部212がパイロット信号にチャネル応答を乗算し、重み係数算出部30において、その乗算結果がIFFT部213にてIFFTされた信号を参照信号として扱うようにした。同様に、図2に示したOFDM信号合成用受信装置2では、乗算部224がパイロット信号挿入後の再生キャリヤシンボルにチャネル応答を乗算し、重み係数算出部228において、その乗算結果がIFFT部225にてIFFTされた信号を参照信号として扱うようにした。この場合、IFFT部213が、チャネル応答が乗算されていないパイロット信号をIFFTし、IFFT部225が、チャネル応答が乗算されていない再生キャリヤシンボルをIFFTし、そして、重み係数算出部30,228において、そのチャネル応答を含まずにIFFTされた信号を参照信号として扱うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1の実施形態(実施例1)によるOFDM信号合成用受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施形態(実施例2)によるOFDM信号合成用受信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】チャネル推定部の構成を示すブロック図である。
【図4】チャネル等化部の構成を示すブロック図である。
【図5】重み係数算出部の構成を示すブロック図である。
【図6】(a)は、従来のPre−FFT型OFDM信号合成用受信装置における、シンボル同期位置に対する干渉除去特性を示す図である。(b)は、本発明の実施形態によるOFDM信号合成用受信装置における、シンボル同期位置に対する干渉除去特性を示す図である。
【図7】従来のPre−FFT型OFDM信号合成用受信装置および本発明の実施形態によるOFDM信号合成用受信装置のマルチパス環境における干渉除去特性を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
1,2 OFDM信号合成用受信装置
10 アンテナ
11 周波数変換部
12 A/D変換部
13 直交復調部
14 アレー合成部
15,214,227 GI除去部
16 FFT部
17 チャネル推定部
18 チャネル等化部
19 デマッピング部
20 パラレルシリアル変換部
21,22 重み係数制御部
23 シンボル再生部
30,228 重み係数算出部
141,212,224,304 乗算部
142 加算部
143 複素共役部
171 パイロット抽出部
172 パイロット生成部
173,181 除算部
174 補間部
211 パイロット信号生成部
213,225 IFFT部
221 再マッピング部
222 変調誤差比算出部
223 パイロット信号挿入部
226 遅延部
301 自己相関行列計算部
302 逆行列計算部
303 相互相関ベクトル計算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアレー素子で構成されるアレーアンテナによってOFDM波を受信し、ビット列を出力するOFDM信号合成用受信装置であって、
受信したOFDM波の等価ベースバンド信号を時間領域において重み付けにより合成し、アレー合成信号を生成するアレー合成部と、
前記アレー合成信号を周波数領域の信号であるキャリヤシンボルに変換するFFT(Fast Fourier Transform)部と、
パイロット信号を用いてチャネル応答を推定するチャネル推定部と、
前記キャリヤシンボルを前記チャネル応答で除算することにより、チャネル等化を行うチャネル等化部と、
前記時間領域において重み付けによりアレー合成するために用いる重み係数を制御する重み係数制御部と、を備え、
前記重み係数制御部が、
パイロット信号を生成するパイロット信号生成部と、
前記パイロット信号を時間領域の信号に変換するIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部と、
前記時間領域の信号を参照信号とし、前記アレー合成信号と前記参照信号との間の誤差が最小となるように最適化し、前記重み係数を求める重み係数算出部と、を備えることを特徴とするOFDM信号合成用受信装置。
【請求項2】
複数のアレー素子で構成されるアレーアンテナによってOFDM波を受信し、ビット列を出力するOFDM信号合成用受信装置であって、
受信したOFDM波の等価ベースバンド信号を時間領域において重み付けにより合成し、アレー合成信号を生成するアレー合成部と、
前記アレー合成信号を周波数領域の信号であるキャリヤシンボルに変換するFFT部と、
パイロット信号を用いてチャネル応答を推定するチャネル推定部と、
前記キャリヤシンボルを前記チャネル応答で除算することにより、チャネル等化を行うチャネル等化部と、
前記時間領域において重み付けによりアレー合成するために用いる重み係数を制御する重み係数制御部と、を備え、
前記重み係数制御部が、
前記チャネル等化後のキャリヤシンボルをデマッピングおよび再マッピングすることによりシンボル再生し、再生キャリヤシンボルを生成するシンボル再生部と、
前記再生キャリヤシンボルにパイロット信号を挿入するパイロット信号挿入部と、
前記パイロット信号が挿入された再生キャリヤシンボルを時間領域の信号に変換するIFFT部と、
前記時間領域の信号を参照信号とし、前記アレー合成信号と前記参照信号との間の誤差が最小となるように最適化し、前記重み係数を求める重み係数算出部と、を備えることを特徴とするOFDM信号合成用受信装置。
【請求項3】
前記重み係数制御部が、
請求項1のパイロット信号生成部により生成されたパイロット信号、または請求項2のパイロット信号挿入部によりパイロット信号が挿入された再生キャリヤシンボルに、前記チャネル応答を乗算する乗算部を備え、
前記IFFT部が、前記乗算結果を時間領域の信号に変換する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のOFDM信号合成用受信装置。
【請求項4】
前記重み係数制御部が、
前記チャネル等化後のキャリヤシンボルおよび前記再生キャリヤシンボルに基づいて変調誤差比を算出する変調誤差比算出部を備え、
前記パイロット信号挿入部が、前記変調誤差比に基づいて、予め定められたパイロット信号または前記パイロット信号に予め定められた定数を乗算した新たなパイロット信号を、前記再生キャリヤシンボルに挿入する、ことを特徴とする請求項2に記載のOFDM信号合成用受信装置。
【請求項5】
前記パイロット信号挿入部が、前記変調誤差比が予め定められたしきい値を下回り、かつ、前記キャリヤシンボルのシンボル番号が予め定められたシンボル間隔の整数倍となるときに、予め定められたパイロット信号に予め定められた定数を乗算した新たなパイロット信号を、前記再生キャリヤシンボルに挿入する、ことを特徴とする請求項4に記載のOFDM信号合成用受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−68263(P2010−68263A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232846(P2008−232846)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】