説明

OLEDの製造方法

LPOVPDによりOLEDを製造する方法が提供され、これには低い仕事関数の金属の有機複合体(例えばリチウムキノラートまたはリチウムシッフ塩基複合体)から電子注入層を形成するステップを含み、電子注入層は、不活性キャリアーガスの流れの下、OLEDのその他の有機層、例えば正孔注入層、正孔輸送層、エレクトロルミネッセント層および電子輸送層と同一のリアクターにおいて堆積される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はOLEDの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6337102号(Forrest、プリンストン大学の理事、当該文献の開示は本願に援用される)には、有機気相堆積法(OVPD)が進歩し、ディスプレイといった多数の潜在的な光デバイスの用途に関する小分子量有機層を、低コスト、ラージスケールで堆積させたことが開示されている。OVPDプロセスでは、キャリアーガスを使用して基体に対して供給材料を輸送し、ガスは凝縮して所望の薄膜を形成する。根本的に異なる蒸気圧を有する材料の共堆積の制御が可能であるため、OVPDは、多構成成分の薄膜を化学量的に正確に成長させる唯一の方法であると、発明者らは考えている。しかしながら、OPVDプロセスを大気圧下で行なう場合、膜成長は、しばしば荒く、非均一な表面の形態がもたらされるといわれている。開示される方法(ここでは、低圧有機気相堆積法(LPOVPD)と称される)は、多数の有機前駆体を提供する工程(有機前駆体は、気相中および不活性キャリアーガスの流れ中に存在する)、基体の存在下、低大気圧下にて多数の有機前駆体を反応させて、基体上に薄膜を形成する工程を含む。開示される方法は、滑らかな表面を有する均一な有機薄膜を提供するだけでなく、大きな基体領域上における有機物質の均一な堆積を達成することができる。
【0003】
開示されたキャリアーガスは窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノン、ネオン等を含む。また、水素、アンモニアおよびメタンといった還元する特徴を有するガスが多くの有機物質に対して不活性である。堆積圧力は約0.001−100Torr、例えば約0.1Torrから約10Torrであると述べられている。例えば、トリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)またはN−N’−ジフェニル−N,N−ビス(3−メチルフェニル)1、1’−ビフェニル−4,4’ジアミン(TPD)といった単一の構成成分の層の堆積のための最適圧力は約0.1−10Torrと述べられている。例えば、ガラス基体には、0.65Torrの窒素にて200±0.5℃の供給源からの正孔輸送材料(TPD)の層、その後、0.65Torrの窒素にて247±0.8℃の供給源からアルミニウムキノラートの電子輸送層が連続的に堆積される。
【0004】
有機物質は、全てのあらゆる流速で入ってくるキャリアーガスを満たすのに十分に高い一定温度に保持される。堆積速度はキャリアーガスの流速の調節により制御される。彼らの発明の一実施形態では、Forrestらは適当な大きさの反応容器内に基体を配置し、そこに運ばれた蒸気は基体上で混合および反応または凝縮する。Forrestの発明の別の実施形態は、大きな面積の基体をコーティングすること、および互いに連続した様式でいくつかのそのような堆積プロセスを行うことに関する。この実施形態において、Forrestらは、基体の移動方向に垂直な材料を堆積させる連続的な線を形成するために、ガスマニホールド(「穴の線を有する中空チューブ」として定義される)によって供給されるガスカーテンを使用することを開示している。
【0005】
さらに米国特許6734038号(ShteinおよびForrest、プリンストン大学の理事、当該文献の開示は本願に援用される)は、LP−OVPDにおいて、有機化合物は、熱により蒸発され、その後、熱い囲まれたリアクターにて不活性キャリアーガスにより、冷却された基体に向けて輸送され、そこで凝縮されると説明している。フローパターンは、有機蒸気の基体選択的で均一な分布を達成するために設計してよく、これによって非常に均一のコーティング厚および消費する材料の最小化がもたらされる。OVPDは、減圧熱蒸発(VTE)の広く使用されるプロセスとは本質的に異なっていると評され、当該プロセスは、堆積チャンバーに有機蒸気を輸送するためにキャリアーガスを使用し、当該チャンバーにおいて、分子は境界層を介して拡散し、基体上で物理吸着する。膜堆積のこの方法は、III−V半導体の成長に使用される水素化物気相エピタキシーに最も類似すると言われている。LP−OVPDでは、有機化合物は、熱によって蒸発し、その後熱い囲まれたガスキャリアーチューブを通って不活性キャリアーガスによって堆積チャンバーに輸送され、冷却チャンバーに輸送され、そこで凝縮が生じる。フローパターンは、有機蒸気の基体選択的で均一な分布を達成するように設計してよく、これによって、非常に均一なコーティング厚および消費する材料の最小化がもたらされる。薄膜デバイスに使用される事実上全ての有機物質は十分高い蒸気圧を有しており、400℃未満の温度で蒸発し、その後、アルゴンまたは窒素といったキャリアーガスによって気相に輸送される。これは、リアクターチューブ外に蒸発源を配置すること、蒸発および輸送の機能を空間的に分離することを可能にし、これによって堆積プロセスの正確な制御が可能となる。
【0006】
これまでForrestの発明の使用を阻害した因子の1つは、電子注入層が事実上必須であること、および従来適切であると解釈された材料は無機化合物、例えばフッ化リチウムであることである。これらの無機化合物は高い揮発温度を有すため、それらの堆積のためには、基体を堆積チャンバー間で移動させる必要がある有機層堆積とは異なる装置が必要となるだけでなく、例えばフッ化リチウムの堆積は比較的高い減圧条件が必要であり、有機層の堆積速度と比較して遅く、相対的に限定されたサイズの面積を処理するためにしか使用できない。したがって、電子注入層堆積ステップは、製造プロセスの仕事、処理時間およびコストの不均一化をもたらし、例えば、製造に実用的なディスプレイ製品のサイズを制限する。
【発明の概要】
【0007】
現在、有機金属複合体は、電子注入層またはその成分として使用することができ、その他の有機層と一般的に同様の条件で、単一の装置において堆積することができることがわかった。
【0008】
本発明は、低い仕事関数の金属の有機複合体から電子注入層を形成する工程を含むLPOVPDによりOLEDを製造する方法であって、前記電子注入層は、前記OLEDのその他の有機層と同じリアクターにおいて不活性キャリアーガスの流れにて堆積される方法を提供する。
【0009】
ここにおいて使用される「有機層」という用語は、小分子有機化合物、例えばα−NPBおよび金属またはメタロイド(例えばホウ素)を有機リガンドとともに含む化合物の層を含み、前記層は、約400℃未満の温度で真空蒸着させることができる。それはまた、例えば、基体上の1以上のモノマーのインサイチュー重合によって形成されるポリマー材料の層を含む。
【0010】
LPOVPDという用語は、低大気温度のもと、最大約400℃の高温で、例えば760Torr未満の圧力で有機層を堆積することを意味し、ある実施形態では約0.001−約100Torr、さらなる実施形態では約0.1Torr−約10Torr、さらに別の実施形態では約300mTorr−3Torrの圧力で堆積することを意味する。それは、本質的に単一の物質から成る有機層、ドープした有機層、2以上の反応物の反応によって形成された有機層およびインサイチューで1以上のモノマーが重合することで形成された層の堆積を含む。電子注入層の堆積に適用される場合、LOPVDは、実施形態において、単一の電子注入材料、電子材料および電子注入材料の混合物および1以上のドーパントの堆積に使用される。
【0011】
電子注入層における複合体の金属成分に関して使用される「低い仕事関数」という用語は、下に議論されるように、その金属がマグネシウムより小さい仕事関数を有することを意味する。
【発明の詳細な説明】
【0012】
[堆積装置]
本発明は、LPOVPDによって、例えばAixtronAGが開発し同社から利用可能な装置によって、OLED層を堆積させる既知の方法および装置に適用可能である。本発明は、米国特許第6337102号(Forrest)に開示されるように、例えばスリット状の穴により堆積させたい材料のカーテンが形成されるような、電子注入層の堆積に適用可能である。さらに、シャワーヘッド堆積によりカーテンの様式でまたはエリアの様式で電子注入層を含む層を堆積する装置に適用できる。
【0013】
例えば、米国特許第6962624号(Jurgensenら、当該文献の開示は本願に援用される)には、例えばOLEDの有機層を堆積するためのOVPD方法が開示され、当該方法では、加熱したリアクターが、容器に非ガス性出発原料を含み、当該材料は昇華され、例えば約1.5Torr(2mbar)でキャリアーガスによって容器から基体まで蒸気として輸送され、その後基体に堆積する。出発原料のベッドを通して底から上に向けて予め加熱したキャリアーガスの流れを通すことで、昇華の速度の不規則性が低減または回避され、ここにおいて出発原料は、加熱した容器壁によってキャリアーガスに対して実質的に等温に維持される。堆積した層の成長率の再現性はより高く、層は相対的に大きな表面積の基体に堆積することができる。
【0014】
本発明は、多数の開口部を有する「シャワーヘッド」型堆積ヘッドのように、線形の開口部を有する、または1以上の開口部が1列または1つの領域に形成された堆積ヘッドを用いて、堆積させる材料を基体上に導く堆積装置に適用可能である(例えば米国特許第5595606号参照、その開示は本願に援用される)。これらの可能性はフッ化リチウム電子注入層には利用可能ではなく、OVPDと組み合わせて400℃以下で昇華できるもの有機リチウム複合体および線形またはエリア堆積ヘッド(例えばスリット状の堆積ヘッドまたは個々の開口部が、線に沿って別々に配置される、または領域にわたって別々に配置される多重開口部堆積ヘッド)の選択は、独立した堆積装置を電子注入層に使用しなければならないという問題および電子注入層の形成の遅滞の問題を克服するだけでなく、さらに、電子層が堆積することができる基体のサイズに対する制限を回避する。
【0015】
[OLEDデバイス]
典型的なデバイスは、透明基体上に、アノード層、正孔注入(バッファー)層、正孔輸送層、エレクトロルミネッセント層、電子輸送層、電子注入層およびアノード層が連続的に形成されたものであって、そこにさらに第2の透明基体が積層されてもよいものを含む。さらに、アルミニウムまたはその他の金属基体が、ITO層、正孔注入層、正孔輸送層、エレクトロルミネッセント層、電子輸送層、電子注入層、およびITOまたはその他の透明カソードを有し、光がカソードを通して放射される前面OLEDも可能である。さらに、アルミニウムまたはアルミニウムと仕事関数の低い金属との合金のカソードに、電子注入層、電子輸送層、エレクトロルミネッセント層、正孔輸送層、正孔注入層およびITOまたはその他の透明導電性アノードが連続的に形成され、光の放射はアノードを通して行われる倒置型OLEDが可能である。必要ならば、正孔ブロッキング層を、例えばエレクトロルミネッセント層と電子輸送層との間に挿入してもよい。いずれの場合においても、電子注入層は金属キノラートまた置換キノラートである。
【0016】
本発明の方法によって製造してもよいエレクトロルミネッセントデバイスは次のものから形成される:
(i)透明アノード;
(ii)正孔輸送材料の層;
(iii)エレクトロルミネッセント材料の層;
(iv)電子輸送材料の層;
(v)厚さ1nm未満の金属キノラートの層;および
(vi)金属カソード。
【0017】
金属キノラートの層は厚さ1nm未満であり、典型的に厚さ1−0.1nmであり、例えば厚さ約0.3nmである。それは好ましくは仕事関数が3.5eV未満であり、より好ましくは3eV未満であり、最も好ましくは2eV未満である。材料の仕事関数は、金属の表面から電子を除去するために必要なエネルギーの最少量である。
【0018】
[アノード]
第1の電極は、好ましくは、陽極として作用する導電ガラスまたはプラスチック材料といった透明基体である。好ましい基体は、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛インジウムまたは酸化アンチモンスズでコーティングされたガラスである。しかしながら、伝導性であるか、または金属もしくは導電性ポリマーのような導電層を有するあらゆるガラスを使用することができる。
【0019】
[正孔注入材料]
単一の層をアノードとエレクトロルミネッセント材料との間に提供してよいが、多くの実施形態において、少なくとも2つの層が存在し、その1つは正孔注入層(バッファー層)であり、他方は正孔輸送層であり、いくつかの実施形態において提示される2つの層構造は安定性およびデバイスの寿命を改善した(米国特許第4720432号(VanSlykeら、Kodak)参照)。正孔注入層は、続く有機層の膜形成特性を改善し、正孔輸送層への正孔の注入を容易にする役割を担ってよい。
【0020】
正孔注入層の厚さは、材料およびセルタイプに依存して例えば0.1−200nm、例えば約25nmであってよく、正孔注入層の適した材料は、正孔注入ポルフィリン化合物(米国特許第4356429号(Tang、Eastman Kodak)参照)を含み、例えば亜鉛フタロシアニン、銅フタロシアニンおよびZnTpTP(その式を以下に示す)を含む。
【化1】

【0021】
特に、正孔注入層がZnTpTPであり、電子輸送層がジルコニウムまたはハフニウムキノラートである場合に優れたデバイス寿命が得られる可能性がある。
【0022】
[正孔輸送材料]
使用してもよい正孔輸送層は、好ましくは厚さ20−200nmである。
【0023】
適切な正孔輸送材料は昇華できる小分子を含む。例えば、芳香族三級アミンは、好ましい正孔輸送材料のクラスを提供し、例えば、少なくとも2つの芳香族三級アミン成分(例えばビフェニルジアミンに基づくもの、または「星形」構成のもの)を含む芳香族三級アミンを提供する。
【0024】
例えば、次の一般式(a)−(g)の芳香族アミンを使用してよい。
【化2】

【化3】

【0025】
ここにおいて、(a)−(g)の何れかの式の基Rは、同一または異なっていてよく、水素;置換および非置換脂肪性基;置換および非置換芳香環、複素環および多環の構造;ハロゲン;並びにチオフェニル基;から選択され、式(a)において、メチル基は、C−Cアルキルまたは単環式もしくは多環式アリール基またはヘテロアリール(それらはさらに例えばアルキル、アリールまたはアリールアミノで置換されてよい)によって置換されてよい。
【0026】
さらに、正孔輸送材料は次の式のものを含む。
【化4】

【0027】
ここにおいてR−R基は、上式の何れかに現われる場合、同一であるかまたは異なってよく、水素;置換および非置換脂肪性基;置換および非置換芳香環、複素環および多環の構造;ハロゲン;並びにチオフェニル基から選択される。
【0028】
特に好ましい正孔輸送材料は、少なくとも2つの芳香族三級アミン成分(例えばビフェニルジアミンに基づくもの、または「星形」構成のもの)を含む芳香族三級アミンであり、そのような例を以下に示す。
【化5】

【化6】

【化7】

【0029】
さらに可能な材料は、α−NBPよりも広いバンドギャップを有する正孔輸送材料であって、ある実施形態において放射層に励起を閉じ込めるのを助ける4,4’,4’’−トリス(カルバゾリル)−トリフェニルアミン(TCTA)である。
【0030】
それはさらに、芳香族アミン、例えばスピロ−TAD(2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−スピロ−9,9’−ビフルオレン)である、スピロ結合分子を含む。
【0031】
さらなるクラスの小分子正孔輸送材料は、WO2006/061594(Kathirgamanathanら)に開示されており、ジアミノジアントラセンに基づく。典型的な化合物は次のものを含む:
9−(10−(N−(ナフタレン−1−イル)−N−フェニルアミノ)アントラセン−9−イル)−N−(ナフタレン−1−イル)−N−フェニルアントラセン−10−アミン;
9−(10−(N−ビフェニル−N−2−m−トリルアミノ)アントラセン−9−イル)−N−ビフェニル−N−2−m−トリルアミノ−アントラセン−10−アミン;および
9−(10−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)アントラセン−9−イル)−N−フェニル−N−m−トリルアントラセン−10−アミン。
【0032】
[エレクトロルミネッセント材料]
原則として、あらゆる昇華できるエレクトロルミネッセント材料を使用してよく、それには分子固体が含まれ、それは蛍光色素、例えばペリレン色素、金属複合体、例えばAlq、Ir(III)L、希土類元素キレート化合物、例えばTb(III)複合体、デンドリマーおよびオリゴマー、例えばセキシチオフェンであってもよい。エレクトロルミネッセント層は、発光材料として、金属キノラート、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウムまたはプラチナ複合体、ホウ素複合体または希土類元素複合体を含んでよい。また、それは、タイプAlqLのいわゆる「ブルー」アルミニウムキノラートを含んでよく、ここにおいて、qはキノラートを表わし、Lはモノアニオンのアリールオキシリガンドを表わし、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−フェニル−フェノラート)Al(III)であってよい。
【0033】
エレクトロルミネッセント材料の好ましいクラスの1つは、1以上の色素でドープされたホスト材料を含み、当該色素は蛍光性、燐光性またはイオン燐光性(希土類元素)であってよい。ここにおいてホスト材料として記載される新規化合物の使用はまた、本発明の一部を形成し、それらは、1以上のドーパントの実施形態において、適切なドーパントでドープされた場合、赤、緑および青のエミッターを提供してよい。「エレクトロルミネッセントデバイス」という用語はエレクトロフォスフォレッセントデバイスを含む。
【0034】
放射光のカラースペクトルを変更し、および/またはフォトルミネッセントおよびエレクトロルミネセンスの効率を増強するために、上記のような化合物を蛍光レーザー色素、発光レーザー色素といった色素によってドープしてよい。
【0035】
好ましくは、化合物は、ドーパントとして小量の蛍光性または燐光性の材料によってドープされ、その量は好ましくはドープした混合物の重量に対して0.01−25%でドープされる。より好ましくは、ドーパントは、化合物中に0.01重量%から10重量%で、例えば0.01重量%から2重量%で存在する。
【0036】
米国特許第4769292号(Tangら、Kodak)(当該文献の内容は本願に援用される)において議論されるように、蛍光性材料の存在は、光放射の波長の広い範囲からの選択を可能にする。特に、米国特許第4769292号に開示されるように、有機金属複合体と正孔−電子再結合に応じて光を放射することができる小量の蛍光体とを混合することにより、発光域から放射された光の色調を変更することができる。理論上、正孔−電子再結合のために正確に同一の親和性を有するホスト材料および蛍光性材料が混合のために見つかる場合、各々の材料は、発光域における正孔および電子の注入によって光を放射するだろう。光放射の知覚される色調は、双方の放射の視覚的な統合となるだろう。しかしながら、ホスト材料および蛍光性材料のそのようなバランスを課すことは限定されているため、光放射のための好ましい部位を提供するように蛍光性材料を選択することが好ましい。光放射のための好ましい部位を提供するわずか少数の蛍光性材料が存在する場合、蛍光性材料に起因する新規のピーク強度波長放射を選択して、ホスト材料に典型的なピーク強度波長放射を完全に除去できる。
【0037】
この効果の達成に十分な蛍光性材料の最小部分は変化する一方、ホスト材料に基づいて約10モルパーセントを超える蛍光性材料の使用が必要となる例はなく、1モルパーセントを超える蛍光性材料の使用が必要となることはめったにない。他方、蛍光性材料のパーセントを極端に少量、典型的にはホスト材料に基づいて約10−3モルパーセント未満に限定することは、ホスト材料に特有の波長における放射を保つこともたらす。したがって、光放射のための好ましい部位を供給できる蛍光性材料の部分を選択することにより、放射波長の十分な、または部分的なシフトを実現することができる。このことは、対象とする用途に適すように、ELデバイスのスペクトルの放射を選択し平衡を保つことを可能にする。蛍光色素の場合、典型的な量は、0.01−5wt%であり、例えば2−3wt%である。燐光性色素の場合は、典型的な量は0.1−15wt%である。イオン燐光性材料の場合、典型的な量は0.01−25wt%または100wt%以内である。
【0038】
光放射のための好ましい部位を供給できる蛍光性材料を選択することは、必然的に、蛍光性材料の特性をホスト材料のそれと関連付けることに関する。ホストは、光放射のために分子部位を供給する蛍光性材料を有する、注入された正孔および電子のためのコレクターとして見ることができる。ホストに存在する場合において、光放射の色調を改変することができる蛍光性材料を選択するための1つの重要な関係は、2つの材料の還元電位の比較である。光放射の波長を変えることが実証された蛍光性材料は、ホストのそれよりも陰性ではない還元電位を示した。還元電位(電子ボルトで測定)は、それらの測定のための様々な技術と共に文献に広く報告されている。それらの絶対値ではなく還元電位の比較が望ましいため、蛍光性およびホストの還元電位が同様に測定される限り、還元電位測定のためのあらゆる認められた技術を使用できることが明らかである。好ましい酸化および還元電位測定技術は、R.J.Coxの文献(Photographic Sensitivity, Academic Press,1973,Chapter15)に報告されている。
【0039】
ホストに存在する場合において、光放射の色調を改変することができる蛍光性材料を選択するための第2の重要な関係は、2つの材料のバンドギャップ電位の比較である。光放射の波長のシフトが実証された蛍光性材料はホストより低いバンドギャップ電位を示した。分子のバンドギャップ電位は、その基底状態と第1の一重項状態とを分離する電位差(電子ボルト(eV))として得られる。バンドギャップ電位およびそれらの測定技術は文献に広く報告されている。ここに報告されるバンドギャップ電位は、吸収ピークに対して深色性であり、吸収ピークの大きさの10分の1の大きさである吸収波長にて測定された(電子ボルト(eV))ものである。それらの絶対値ではなくバンドギャップ電位の比較が好ましいため、蛍光性およびホストのバンドギャップの双方が同様に測定される限り、バンドギャップ測定のためのあらゆる認められる技術を使用できることが明らかである。1つの実例となる測定技術がF.GutmanおよびL.E.Lyonsの文献(Organic Semiconductors,Wiley,1967,Chapter5)に開示されている。
【0040】
蛍光性材料がない状態で、それら自身で光を放射できるホスト材料を用いると、単独のホストに特有の放射の波長における光放射の抑制および蛍光性材料に特有の波長の放射の増強は、ホストおよび蛍光性材料のスペクトルのカップリングが達成される場合に生じることがわかっている。「スペクトルのカップリング」とは、単独のホストに特有の放射の波長とホストがない状態での蛍光性材料の光吸収の波長との間に存在するオーバーラップを意味する。ホストの放射波長が蛍光性材料単独の最大吸収の±25nm内である場合、最適なスペクトルのカップリングが生じる。実際、有利なスペクトルのカップリングは、ピークの幅およびそれらの浅色性および深色性のスロープに依存して、100nmまでまたはそれを超えて異なるピーク放射および吸収波長にて生じ得る。ホストと蛍光性材料との間において最適未満のスペクトルのカップリングを意図する場合、蛍光性材料の浅色性の置換と比較して深色性の置換がより効率的な結果をもたらす。
【0041】
有用な蛍光性材料は、ホストと混合して、上述された厚さ範囲を満たす薄膜に組み立てて、本発明のELデバイスの発光域を形成することができるものである。結晶性の有機金属複合体は薄膜形成に向いていない一方、ホスト中の限られた量の蛍光性材料は、薄膜形成を単独でできない蛍光性材料の使用を可能にする。好ましい蛍光性材料はホストを有する一般的な相を形成するものである。色素はホストにおける分子レベルの分布に自己を向けるため、蛍光色素は好ましいクラスの蛍光性材料を構成する。ホストにおける蛍光色素を分散させるためのあらゆる都合のよい技術を使用することができるものの、好ましい蛍光色素は、ホスト材料と共に真空蒸気堆積できるものである。
【0042】
ホスト材料の1つのクラスは、特許出願WO2004/058913に開示されるように、金属複合体、例えばリチウムキノラート、アルミニウムキノラート、チタニウムキノラート、ジルコニウムキノラートまたはハフニウムキノラートといった金属キノラートであって、蛍光性材料または色素とドープされうるものを含む。別のクラスのホスト材料は昇華できる多芳香族小分子を含む。
【0043】
蛍光レーザー色素は、本発明の有機ELデバイスにおける使用のための特に有用な蛍光性材料であると認識される。使用可能なドーパントは、ジフェニルアクリジン、クマリン、ペリレンおよびそれらの誘導体を含む。有用な蛍光性ドーパントは米国特許第4769292号に開示される。好ましいドーパントの1つのクラスはクマリン、例えば以下の式である。
【化8】

【0044】
ここにおいて、R−Rは水素またはアルキル、例えばメチル、エチルを表わす。このタイプの化合物は、7−ヒドロキシ−2H−クロメン−2−オン、7−ヒドロキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−カルボニトリル、7−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソ−2H−クロメン−3−カルボニトリル、7−(エチルアミノ)−4,6−ジメチル−2H−クロメン−2−オン、7−アミノ−4−メチル−2H−クロメン−2−オン、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−クロメン−2−オン、7−ヒドロキシ−4−メチル−2H−クロメン−2−オン、7−(ジメチルアミノ)−4−(トリフルオロメチル)−2H−クロメン−2−オンおよび7−(ジメチルアミノ)−2,3−ジヒドロシクロペンタ[c]クロメン−4(1H)−オンを含む。さらに、次の色素を使用してもよい。
【化9】

【0045】
使用してもよいさらなるドーパントは、3−(ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−8−(ジエチルアミノ)−2H−ベンゾ[g]クロメン−2−オン、3−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−8−(ジエチルアミノ)−2H−ベンゾ[g]クロメン−2−オン、9−(ペンタン−3−イル)−1H−ベンゾ[a]フェノキサジン−5(4H,7aH,12aH)−オンおよび10−(2−ベンゾチアゾリル)−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H,11H−[l]ベンゾ−ピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン(C−545−T)(下式)およびC−545TBおよびC545MTといったアナログを含む。
【化10】

【0046】
使用できるさらなるドーパントは、ピレンおよびペリレン化合物、例えば下式のうちの1つの化合物を含む。
【化11】

【0047】
ここにおいて、RからRは、同一でも異なっていてもよく、水素、ヒドロカルビル基、置換および非置換の芳香環、複素環および多環構造、フルオロカーボン、例えばトリフルオロメチル、ハロゲン、例えばフッ素またはチオフェニルから選択され、または置換または非置換の融合した芳香環、複素環および多環の構造であり得る。上記の化合物の中で好ましいものは、RからRが水素およびt−ブチルから選択される化合物であり、例えばペリレンおよびテトラキス−t−ブチルペリレン(下式)であり、これはt−ブチル基の立体効果のためにマトリックスから結晶化しない。
【化12】

【0048】
また、RからRは、モノマー(例えばスチレン)と共重合してもよく、且つビニル基または−CHCH=CH−R基といった不飽和アルキレン基であってよく、ここにおいてRは、ヒドロカルビル基、アリール基、複素環基、カルボキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシル基、アミノ基または置換アミノ基、例えばスチリル基であってよい。このタイプの化合物は、少なくとも4つの融合した芳香環および任意に1以上のアルキル置換基を含む多環式芳香族炭化水素、例えばペリレン、テトラキス−(t−ブチル)−ペリレンおよび7−(9−アントリル)−ジベンゾ[a,o]ペリレン(pAAA)(構造は下式)を含む。
【化13】

【0049】
ビス−ペリレンおよびジアントリルドーパントを使用してもよい。その他のドーパントにはペリレンおよびペリレン誘導体が含まれる。
【0050】
とりわけイリジウムに基づく様々な蛍光性のドーパントは、WO2005/080526、WO2006/003408、WO2006/016193、WO2006/024878およびWO2006/087521に開示され、これらの文献の開示は本願に援用される。
【0051】
例えば、ドーパントは、以下から選択される一般式の複合体であってよい:
【化14】

【0052】
ここにおいて、
、RおよびRは、同一または異なってよく、水素、アルキル、トリフルオロメチルまたはフルオロから成る群から選択され;および
、RおよびRは、同一または異なってよく、水素、アルキルまたはフェニル(これらは、置換されていなくてよく、または1以上のアルキル、アルコキシル、トリフルオロメチルまたはフルオロ置換基を有してよい)から成る群から選択され;
Mは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムまたはプラチナであり;および
nは1または2である。
【0053】
さらに、ドーパントは以下から選択される一般式の複合体であってよい:
【化15】

【0054】
ここにおいて、
Mは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムまたはプラチナであり;
nは1または2であり;
、R、R、RおよびRは、同一または異なってよく、水素、ヒドロカルビル、ヒドロカルビロキシ、ハロゲン、ニトリル、アミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびチオフェニルから成る群から選択され;
p、sおよびtは独立に0、1、2または3であり、但し、p、sおよびtのいずれかが2または3である場合、それらのうちの1つのみが飽和ヒドロカルビルまたはハロゲン以外でありえ;
qおよびrは独立して0、1または2であり、但し、qまたはrが2である場合、それらのうちの1つのみが飽和ヒドロカルビルまたはハロゲン以外でありえる。
【0055】
実施形態において、上述した化合物に関して:
(a)下式の化合物が赤いドーパントとして役立ち得る:
【化16】

【0056】
ここにおいて、Rは、アルキル、例えばメチル、エチルまたはt−ブチルを表し、Rは、水素またはアルキル、例えばメチル、エチルまたはt−ブチルを表し、およびRおよびRは、水素、アルキル、例えばメチルもしくはエチル、または互いに融合し且つ3位および5位でフェニル環に融合し、任意に1または2のアルキル基、例えばメチル基でさらに置換されたC環構造を表す。そのような化合物の例は以下のものを含む。
【化17】

【0057】
赤いドーパントとして使用できる特定の燐光性材料は(WO2005/080526を参照、当該文献の開示は本願に援用される)、下式のものを含む。
【化18】

【0058】
(b)下記の化合物は、例えば、緑色のドーパントとして役立つことができる。
【化19】

【0059】
ここにおいて、Rは、C−Cアルキル、単環アリール、二環アリール、単環ヘテロアリール、二環ヘテロアリール、アラルキルまたはチエニルであり、好ましくはフェニルであり;さらに、緑色のドーパントとして使用できる燐光性化合物は以下の化合物を含む(WO2005/080526を参照)。
【化20】

【0060】
(c)化合物ペリレンおよび9−(10−(N(ナフタレン−8−イル)−N−フェニルアミノ)アントラセン−9−イル)−N−(ナフタレン−8−イル)−N−フェニルアントラセン−10−アミンが青色ドーパントとして使用できる。
【0061】
またさらに可能なドーパントは、正孔輸送材料にて上述されるような、少なくとも2つの芳香族三級アミン成分(例えばビフェニルジアミンに基づくもの、または「星形」構成のもの)を含む芳香族三級アミンを含む。
【0062】
その他のドーパントは、蛍光性の4−ジシアノメチレン−4H−ピランおよび4−ジシアノメチレン−4H−チオピランといった色素であり、例えば蛍光性のジシアノメチレンピランおよびチオピラン色素である。また、有用な蛍光色素は、既知のポリメチニン色素から選択でき、これには、シアニン、複合シアニン、およびメロシアニン(すなわち、トリ−、テトラ−およびポリ−核シアニンおよびメロシアニン)、オキソノール、ヘミオキソノール、スチリル、メロスチリルおよびストレプトシアニンが含まれる。シアニン色素は、メチニン結合によって連結され、アゾリウムまたはアズリンの核といった2つの基本的な複素環の核を含み、例えば、ピリジニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、オキサゾリウム、チアゾリウム、セレナゾリウム、インダゾリウム、ピラゾリウム、ピロリウム、インドリウム、3H−インドリウム、イミダゾリウム、オキサジアゾリウム、チアジオキサゾリウム、ベンゾオキサゾリウム、ベンゾチアゾリウム、ベンゾセレナゾリウム、ベンゾテルラゾリウム、ベンズイミダゾリウム、3H−または1H−ベンゾインドリウム、ナフトオキサゾリウム、ナフトチオアゾリウム、ナフトセレナゾリウム、ナフトテルラゾリウム、カルバゾリウム、ピロロピリジニウム、フェナントロチアゾリウムおよびアセナフトチアゾリウムの四級塩に由来するものが含まれる。その他の有用なクラスの蛍光色素は、4−オキソ−4H−ベンズ−[d、e]アントラセンおよびピリリウム、チアピリリウム、セレナピリリウムおよびテルルピリリウム色素である。
【0063】
さらなる燐光性ドーパント(WO2005/080526を参照)は、次の化合物を含む。
【化21】

【0064】
希土類元素キレート化合物が、さらに可能なドーパントであり、例えば、式(Lα)Mまたは(Lα)n>M←Lpが該当し、ここにおいて、LαおよびLpは有機リガンドであり、Mは希土類金属であり、nは金属Mの原子価である。そのような化合物の例は、一連のランタニド元素複合体について記述する特許出願WO98/58037に開示されており、また、米国特許第6524727号、第6565995号、第6605317号、第6717354号および第7183008号に開示されるものである。これらの明細書のそれぞれ開示は本願に援用される。
【0065】
混合されたホスト材料は、文献に開示されており、本発明によるOLEDデバイスに使用してよく、本方法において、キャリアーガスは、したがって、2以上ホスト材料を含んでよい。様々な文献が、さらに特性を改善する試みのもと、OLEDのための添加物および混合ホストを開示している。Jarikovらの文献(J.Appl.Phys.,100,014901(2006))は、LEL添加物として、平らで強固な多環式芳香族炭化水素(PAH)、例えばペリレンを開示している。
【0066】
Jarikovらは、さらに、有機発光ダイオード(OLED)における発光層(LEL)添加物としてペリレン誘導体を報告している(J.Appl.Phys.,100,pp.094907−094907−7(2006))。これらの分子は、LELに添加された場合、容易に放射性凝集物を形成する。例えばAlq+ジベンゾ[b,k]ペリレン混合ホストに、これらの多環式芳香族炭化水素を添加することで、ドープしていないおよびドープしたOLEDの半減期(t50)を30−150回増大させる。当該著者は、さらに有機発光ダイオード(OLED)における、寿命が延長した発光層(LEL)添加物の相乗効果および電子の注入および輸送の改善を報告している(J.Appl.Phys.,102,104908(2007))。ジ−(2−ナフチル)−ペリレン(DNP)は、LEL添加物として役立ち、2を超えるオーダーでOLEDの作動寿命を延長するといわれている。電子輸送層(ETL)として2−フェニル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(PADN)および電子注入層(EIL)として4,7−ジフェニル−1,10−フェナントリン(BPhen)の分離層を使用することで、トリス(8−キノリンオラート)アルミニウム(Alq)で作られた伝統的なETLと比較して、電荷再結合領域への電子の送達を顕著に改善できると著者は主張している。また米国特許第7175922号(Jarikovら)が参照され、当該文献の開示は本願に援用される。
【0067】
J.C.Deatonら(同上)は、共ホストとしての「ブルー」アルミニウムキノラートを有するα−NBPホストおよびイリジウムドーパントを開示している。燐光性デバイスにおいて低濃度のドーパントによって非常に良好な収率が得られ、混合ホストデバイスは出力効率の増大を示した。これは、5.40eVのイオン化ポテンシャルを有する正孔−輸送NPBを6.02eVのより高いイオン化ポテンシャルを有し、優位に電子を輸送する「ブルー」アルミニウムキノラートと混合することで、放射層に正孔を注入するためのエネルギー障壁が減少するためであると仮定される。
【0068】
米国特許第6392250号(Azizら、当該文献の開示は本願の援用される)には、正孔輸送材料、例えば芳香族三級アミン、電子輸送材料、例えばキノラートおよびドーパント材料の混合物を含む混合領域を含む有機発光装置が開示されている。例えば、N,N’−ジ−1−ナフチル−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPB)およびトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)を、それぞれ正孔輸送材料および電子輸送材料として使用してよく、N,N’−ジメチルキナクリドン(DMQ)、5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン(Rubrene)、およびナイル赤色色素(ウィスコンシン、ミルウォーキーのAldrich Chemicalsから利用可能)をドーパントとして使用してよい。
【0069】
米国2002/0074935(Kwongら)には、さらに、ドーパントとしてPtOEPまたはビス(ベンゾチエニル−ピリジナト−NΛC)イリジウム(III)(アセチルアセトネート)およびホスト材料として等しい比率のNPBおよびAlqを含む放射層を有する装置が開示されている。混合ホストエレクトロルミネセンス混合層は、実質的に、ヘテロ構造デバイスのヘテロ接合インターフェースに通常存在する電荷の蓄積を低減し、これによって有機物質の分解を低減し、デバイスの安定性および効率を増強する役割を担うと説明されている。
【0070】
米国2004/0155238(Thompsonら)には、電荷運搬材料および燐光性エミッターと組み合わせられた広いバンドギャップの不活性なホストマトリックスを含むOLEDデバイスの発光層が開示される。電荷運搬化合物は正孔または電子を輸送することができ、電荷運搬材料および燐光性エミッターが反対の極性の電荷を輸送するように選択される。
【0071】
M.Furugoriらは、米国2003/0141809において、発光層において、ホスト材料と、別の正孔または電子輸送材料とが混合された燐光性デバイスを開示している。当該文献は、複数のホスト化合物を利用するデバイスが、所定の電圧において、より高い電流およびより高い効率を示すことを開示している。
【0072】
T.Igarashiらは、WO2004/062324において、少なくとも1つの電子輸送化合物、少なくとも1つの正孔輸送化合物および燐光性ドーパントを含む発光層を備えた燐光性デバイスを開示している。
【0073】
WO2006/076092(Kondakovaら、当該文献の内容は本願に援用される)は、カソード、アノード、およびそれらの間に設けられた発光層(LEL)であって、少なくとも1つの正孔輸送共ホスト、例えば芳香族三級アミン、例えば4,4’−ビス[N−(l−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)、4,4’−ビス[N−(l−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB)、4、4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ−]ビフェニル(TPD)、4,4’−ビス−ジフェニルアミノ−テルフェニルまたは2,6,2’,6’−テトラメチル−N,N,N’,N’−テトラフェニル−ベンジジン、および少なくとも1つの電子輸送共ホスト、例えば置換1,2,4−トリアゾール、例えば3−フェニル−4−(l−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾールまたは置換1,3,5−トリアジン、例えば2,4,6−トリス(ジフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリカルバゾール−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(N−フェニル−1−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、および4,4’,6,6’−テトラフェニル−2,2’−ビ−1,3,5−トリアジンを燐光性エミッターとともに含む発光層を含み、ここにおいて各々の共ホスト材料の三重項エネルギーは燐光性エミッターの三重項エネルギーより大きく、およびさらにアノード側の放射層に隣接し、2.5eVより大きいか等しい三重項エネルギーを有する正孔輸送材料であって、置換トリアリールアミンであってもよいもの、例えば4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)トリフェニルアミン(TDATA)、N,N−ビス[2,5−ジメチル−4−[(3−メチルフェニル)−フェニルアミノ]フェニル]−2,5−ジメチル−N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニル−1,4−ベンゼンジアミンを含む励起ブロッキング層を含むOLEDデバイスを開示している。当該デバイスでは、効率が改善され駆動電圧は低下したといわれている。
【0074】
米国特許第7045952号(Lu、Universal Display Corporation)には、アノードとカソードとの間に配置され、それらに電気的に接続された放射領域を含む有機光学放射デバイスを開示しており、ここにおいて、放射領域は、(i)第1のホスト材料を含む第1の単一ホスト放射層、および(ii)第1の単一ホスト放射層との直接接する混合ホスト放射層を含み、ここにおいて混合ホスト放射層は第1のホスト材料および第2のホスト材料を含み、ここにおいて第1の単一ホスト放射層および混合ホスト放射層はさらにそれぞれ燐光性電子放出物質を含む。
【0075】
[電子輸送材料]
Kulkarniらの文献(Chem.Mater.2004,16,4556−4573)では、有機発光ダイオード(OLED)のパフォーマンスを増強するために使用される電子輸送材料(ETM)に関する文献につて論評されている。多数の有機物質に加えて、彼らは、アルミニウムキノラートを含む金属キレート化合物について議論しており、彼らの説明は、高いEA(〜−3.0eV;本願では約−2.9eVとして測定される)およびIP(〜−5.95eV;本願では約−5.7eVとして測定される)、優れた熱安定性(Tg〜172℃)および蒸着によるピンホールのない薄膜の迅速な堆積といったその優れた特性に起因して最も広く研究された金属キレート化合物である。アルミニウムキノラートは好ましい材料であり、必要であればアルミニウムキノラートの層が電子輸送層として組込まれてもよい。
【0076】
さらに好ましい電子輸送材料は、ジルコニウム、ハフニウムまたはリチウムキノラートから成るか、またはそれらを含む。
【0077】
ジルコニウムキノラートは、電子輸送材料としての使用のための特性の特に有利な組み合わせを有しており、電子輸送材料として使用のためのアルミニウムキノラートにおける顕著な改善と認識される。それは高い電子移動性を有する。その融点(388℃)はアルミニウムキノラートの融点(414℃)より低い。それは昇華によって精製でき、アルミニウムキノラートと異なり、それは残留物なく再昇華して、アルミニウムキノラートより使用が簡単である。その最低空軌道(LUMO)は−2.9eVであり、その最高被占軌道(HOMO)は−5.6eVであり、アルミニウムキノラートの値に類似する。更に、予期しないことに、それは、電荷輸送層に組み入れられた場合、所定の電流において、デバイスが働く時間を上昇させつつ(すなわちデバイス寿命を増大する)、OLEDデバイスの輝度の損失を遅らせ、または所定の印加電圧、所定の輝度のための電流効率および/または所定の輝度のための出力効率のための光学出力を増大させることがわかった。電子輸送材料がジルコニウムキノラートであるセルの実施形態は、ターンオン電圧の低減および電子輸送材料がジルコニウムキノラートである同様のセルの寿命の最大4倍の寿命を示すことができる。それは、OLEDのエレクトロルミネッセント層においてアルミニウムキノラートがホストとして使用される場合、アルミニウムキノラートと適合し、それゆえ、多くのOLED製造者によって、彼らの技術および装置にわずかな変化を与えるだけで利用できる。さらに、それは、無機電子注入層、例えば層剥離による失敗の可能性が低いLiF層との間で、優れた電気的および機械的接続を形成する。当然、ジルコニウムキノラートは、エレクトロルミネッセント層においてホストとして、および電子輸送層として使用することができる。ハフニウムキノラートの特性は、ジルコニウムキノラートのそれと一般的に類似する。
【0078】
ジルコニウムまたはハフニウムキノラートは、電子輸送層の全体または実質的に全体であってよい。それは主にジルコニウムキノラートである共堆積した材料の混合物であってよい。ジルコニウムまたはハフニウムは、2006年7月26日出願のGB06 14847.2(当該文献の内容は本願に援用される)に記述されるように、ドープされてよい。適切なドーパントは、例えばエレクトロルミネッセント層に関して上述されるような、例えばドープした混合物の重量に対して0.01−25重量%で、蛍光性もしくは燐光性色素またはイオン蛍光性材料を含む。その他のドーパントは、低電圧で高い明るさを提供できる金属を含む。さらにまたはあるいは、ジルコニウムまたはハフニウムキノラートは別の電子輸送材料と混合して使用してもよい。そのような材料は、電子の移動性を増大し、それにより伝導性を増大させる、3価または5価の状態にて金属の複合体を含んでよい。ジルコニウムおよびハフニウムキノラートは、周期表の1、2、3、13または14族の金属のキノラートと混合されてよく、例えばリチウムキノラートまたは亜鉛キノラートであってよい。好ましくは、ジルコニウムまたはハフニウムキノラートは、電子輸送層の少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも50重量%で含まれる。
【0079】
WO2008/078115(Kathirgamanathanら)の主題である、使用してもよいフェナントロリンの種類は、次式の化合物を含む:
[Ar](CH=CH−R
ここにおいて、
nは1から4までの整数であり;
[Ar]は、多環式芳香族のまたは複素環式芳香族の骨格であり、例えば任意に1以上のアルキル基またはアルコキシ基で置換されたフェナントロリン骨格であり;および
は、メチル、メトキシ、アリールもしくはヘテロアリールで任意に置換された5員ヘテロアリール基であり、またはメチル、メトキシ、トリフルオロメチルまたはシアンで任意に置換されたフェニルまたはナフチルであり、またはビフェニルであり、または置換されたビフェニルである。
【0080】
代表的な化合物は、2,9−ビス(4,4’−トリフルオロメチルスチレニル)フェナントロリン、2,9−ビス((E)−2−(5−(チオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)ビニル)−1,10−フェナントロリン、2,9−ビス(4,4’−シアノスチレニル)フェナントロリンおよび2,9−ビス(2,2’−ビニル−5,5’−フェニルチオフェニル)フェナントロリンを含む。
【0081】
2009年2月24日に出願されたPCT/GB2009/050180に開示されるそのような化合物のさらなる種類は次式である:
(CR=CRAr(CR=CR
ここにおいて:
nは0または1であり;
Arは、1−5芳香環を有するアリールまたはヘテロアリールを表わし、これは、鎖であってよくもしくは融合していてよくまたは鎖と融合との組み合わせであってよく、アルコキシ、フルオロ、フルオロアルキルまたはシアンで置換されていてよく、および5員環窒素ヘテロ原子の場合には、アリールでN置換されてよくまたはアルコキシル、フルオロ、フルオロアルキルまたはシアンでさらに任意に置換されたアリールでN置換されてよく;
およびRは、独立に、アリール、または窒素、酸素もしくは硫黄を含むヘテロアリールを表し、但し、それは2から4の融合した芳香環を有し、その1つは5員環であってもよく、アルコキシ、フルオロ、フルオロアルキルまたはシアノでさらに置換されていてもよい1−5鎖または融合芳香環を有するアリールまたはヘテロアリールで任意に置換されてもよく;
および、RおよびRは独立して水素、メチル、エチルまたはベンジルを表わす。
【0082】
代表的な化合物は、2,2’−ビス(ビニルキノリニル)−1,4−ベンゼン;6,6−ビス(フェニル−2,2−ビニルキノリニル)ベンゼン;6,6−ビス(ビフェニル−2,2−ビニルキノリニル)ベンゼン;6,6−ビス(2,4−フルオロフェニル−2,2−ビニルキノリニル)ベンゼン;6,6−ビス(ナフチル−2,2−ビニルキノリニル)ベンゼン;6,6−ビス(1,1’−ピレニル−2,2’−ビニルキノリニル)ベンゼン;1,4−[ビス(2,2−キノキサリン−2−イル)ビニル]ベンゼン;および4−[ビス(6,6’−(2−チエニル)−2,2’キノリン−2−イル)ビニル]ベンゼンを含む。
【0083】
[電子注入層]
電子注入層は、電子輸送層のそれとは異なった組成の別個の層である。小分子電子注入材料の層の実施形態は、厚さ約0.3−2nm、ある特定の実施形態において厚さ約0.3nmおよびその他の実施形態において厚さ約0.5−1nmであり、好ましくはマグネシウム3.7eVよりも低い仕事関数有しており、これは、本目的のために低い仕事関数と見なされる。ある実施形態において、電子注入材料は低い仕事関数の金属、例えばリチウム、カリウムまたはセシウムでドープされてよい。リチウムに基づく小分子電子注入材料の場合、ドーピングは金属リチウムによってよい。
【0084】
例えば、電子輸送層がキノラート、例えばアルミニウムまたはジルコニウムキノラートである場合、電子注入層は異なるキノラートである。金属キノラートはカソードの仕事関数を低下させるために作用し、エレクトロルミネッセントデバイスが低電圧で作動することを可能にし、デバイスの寿命およびパフォーマンスを改善する。
【0085】
適した金属キノラートは、アルカリ金属キノラートおよびアルカリ土類キノラートおよびその置換された誘導体を含み、例えばモノ−、ジ−およびトリ−置換された誘導体および希土類元素キノラートを含む。好ましい金属キノラートに次式である。
【化22】

【0086】
ここにおいて
Mは金属であり;
nは、キノラートで複合体を形成するときのMの原子価状態であり;
およびRおよびRは、同一または異なってよく且つ同一または異なる環であってよく、C−Cアルキル(例えばメチル、エチルおよびタートブチル)および置換または非置換の単環式または多環式のアリールまたはヘテロアリールから選択される。
【0087】
特に、リチウムキノラートおよび置換リチウムキノラートが好ましい。そのようなキノラートは、アセトニトリルを含む溶媒中にて、リチウムアルキルまたはアルコキシドと8−ヒドロキシキノリンまたは置換された8−ヒドロキシキノリンとを反応させることで作ってよい(米国2006/0003089、Kathirgamanathanを参照、当該文献は本願に援用される)。溶媒としてのアセトニトリルの使用は、驚くほど高い収量での生成物をもたらし、昇華による精製が容易であり、その他の溶媒にて合成反応を行う場合と比較して驚くほど優れた特性の組み合わせを有することがわかっている。リチウムキノラートおよび置換キノラートはオリゴマー、例えば[LiQ]を形成すると考えられ、溶媒としてのアセトニトリルは、リチウムキノラートおよび置換キノラートの定義に含まれるそのようなオリゴマーの形成を容易にすると考えられている。キノラートは従来使用されるフッ化リチウムより優れているようである。それらは、以下の表に示されるように、著しくより低い蒸発温度およびより大きな蒸発速度を有している。
【表1】

【0088】
ここに使用してよいさらなるクラスの電子注入化合物、およびリチウムキノラートよりよい結果さえ与えることがわかっている実施形態は、WO2008/081178に開示されるような下式のシッフ塩基複合体である。
【化23】

【0089】
ここにおいて
は、1以上のC−Cアルキルまたはアルコキシで置換されてもよい、単環式または二環式のアリール、アラルキルまたはヘテロアリール基であり;
およびRは一緒になって、C−Cアルキルまたはアルコキシで置換されてもよい、単環式のアリールまたはヘテロアリール基を形成し;
は水素、C−Cアルキルまたはアリールであり;および
Arは、1以上のC−Cアルキルまたはアルコキシ基で置換されてもよい、単環式のアリールまたはヘテロアリールであり、
またはそのオリゴマーである。
【0090】
上記の化合物のサブグループは下式である。
【化24】

【0091】
ここにおいて
は、1以上のC−Cアルキルまたはアルコキシ置換基で置換されてもよい、単環式または二環式の環アリール、アラルキルまたはヘテロアリール基であり;および
およびR一緒になって、1以上のC−Cアルキルまたはアルコキシ置換基で置換されてもよい、単環式の環アリールまたはヘテロアリール基を形成する。
【0092】
上に記載される式において、Rは好ましくはフェニルまたは置換フェニルであり、RおよびRは一緒になって、Rと同一の基を形成し、好ましくはまたフェニルまたは置換フェニルである。置換基が存在する場合、それらは、メチル、エチル、プロピルまたはt−ブチルを含むブチルであってよく、メトキシ、エトキシル、プロポキシまたはt−ブトキシを含むブトキシ置換されてよい。特定の化合物は以下を含む。
【化25】

【0093】
さらに、これらの化合物は、アセトニトリルを含む溶媒中で、リチウムアルキルまたはアルコキシドとシッフ塩基とを反応させることで最も合成されることがわかっている。化合物の実施形態は、リチウムキノラートによって形成されるものと同様のオリゴマーを形成してもよいと考えられる。
【0094】
上述の式のリチウム化合物の実施形態は、MS測定の結果から、クラスター化合物またはオリゴマーを形成でき、上述の式の2−8分子が、例えば三量体、四量体、六量体または八量体オリゴマーの形態で会合すると考えられる。そのようなリチウム化合物は、ある実施形態では、6員環中で交替するLiおよびO原子を有する核構造を有する三量体単位で会合し、これらの三量体単位はさらにペアで会合する可能性があると考えられる。リチウムキノラートにおけるそのような構造の存在は結晶学によって発見された(Begleyらの文献を参照、ヘキサキス(μ−キノリン−8−olato)ヘキサリチウム(I):中心対称の2重に積層された三量体、Acta Cryst.(2006),E62,m1200−m1202、当該文献の開示は本願に援用される)。このタイプのオリゴマー構造の形成は、Li−O結合に対して、より大きな共有結合の特徴を付与し、これは、本願発明の化合物の多くの揮発性の原因となる可能性があり、減圧昇華において相対的に低い温度での堆積を可能にする。しかしながら、その他の構造も可能であり、例えば立方体構造も可能である。
【0095】
電子注入層は、カソード上に直接に堆積され、上記式のうちの1つのシッフ塩基を含み、当該塩基は、単独で、または別の電子注入材料、例えばリチウムもしくはジルコニウムキノラートのようなキノラートと組み合わせて使用してよい。実施形態において、シッフ塩基は、電子注入層の少なくとも30重量%を含み、さらなる実施形態では、少なくとも50重量%を含む。
【0096】
[カソード]
金属キノラートの層が設けられるカソードは、好ましくは低い仕事関数の金属、例えばアルミニウム、バリウム、カルシウム、リチウム、希土類金属、遷移金属、マグネシウムおよびそれらの合金、例えば銀/マグネシウム合金、希土類金属合金等であり;アルミニウムは好ましい金属である。金属電極は多数の金属層から成ってよく;例えば、基体に堆積されるアルミニウムといったより高い仕事関数の金属、およびより高い仕事関数の金属に堆積されるカルシウムといったより低い仕事関数の金属から成ってよい。幾つかの金属の仕事関数を以下の表1にまとめる。
【表2】

【0097】
*化学および物理学のハンドブック
金属キノラートの層は、好ましくは厚さ約0.3nmで、好ましくは3.5eV未満の仕事関数である。
【実施例】
【0098】
本発明を如何に実行できるかを、非限定的な例に関連して以下に記述する。
【0099】
リチウム2−フェニルイミノメチルフェノラート(化合物B)の合成
【化26】

【0100】
窒素大気下、リチウムイソプロポキシド(20mL、1.38g、20.90mmol)を、乾燥させたアセトニトリル(40mL)にN−サリチリデンアニリンを含む溶液(4.12g、20.90mmol)にゆっくりと添加した。浅黄色の沈殿が形成され、一晩撹拌した。生じた浅黄色固体をろ過し、アセトニトリルで徹底的に洗浄し、80℃で8時間真空オーブンにて乾燥させ、3.9gの生成物(92%の収量)(融点290℃)を得た。昇華の前において、生成物は以下の分析結果となった。
元素 C H N
% 理論値 76.85 4.96 6.89
% 実測値 75.77 4.86 6.65
[ジルコニウムテトラキス(8−ヒドロキシキノラート)(Zrq)の合成]
【化27】

【0101】
エタノール(300mL、95%)に8−ヒドロキシキノリン(20.0g、138mmol)を含む溶液に対し、エタノール(50mL)にジルコニウム(IV)塩化物(8.03g、34mmol)を添加した。黄色の沈殿が形成するまでピペリジン(計〜15mL、150mmol)の滴下し、溶液のpHを増大させた。懸濁液をおよそ60℃まで1時間加熱し、室温まで冷却し、ブフナー漏斗で沈殿物を収集した。これを、エタノール(3x100mL、95%)で徹底的に洗浄し、真空下で乾燥した。最初の精製を、1,4−ジオキサンを用いてソックスレー抽出器によって24時間で行った。1,4−ジオキサンを濃縮することで黄色の沈殿が得られ、これをブフナー漏斗で収集し、エタノール(100mL、95%)で洗浄した。このサンプルを80℃で4時間真空オーブンにて乾燥させた。昇華によって最終的な精製を行った。収量−昇華前75%(2回の昇華後60%)。昇華(390℃、10−6Torr)(融点383℃)。
【0102】
[ハフニウムテトラキス(8−ヒドロキシキノラート)(Hfq)の合成]
【化28】

【0103】
エタノール(200mL、95%)に8−ヒドロキシキノリン(5.44g、37.5mmol)を含む溶液に対し、エタノール(100mL)にハフニウム(IV)塩化物(3.0g、9.37mmol)を含む溶液を添加し、さらに水300mLを添加した。黄色の沈殿が形成するまでピペリジンを滴下して、溶液のpHを増大させた。生じた黄色の沈殿を収集し、エタノール(100mL、95%)、水(200mL)および最後にエタノール(100mL、95%)で洗浄した。重量の減少が止まるまで、サンプルを80℃の減圧下で乾燥させた。昇華(400℃、10−6Torr)によって、分析サンプル(4.5g、64%)(融点398℃)を得た。
【0104】
[キノラートの蒸発]
Solciet真空エバポレータ(ULVAC株式会社、日本、茅ヶ崎)を使用して、フッ化リチウム、リチウムキノラートおよび下記化合物YおよびZのための温度の関数としての蒸発速度を測定した。結果は図1に示される通りだった。フッ化リチウムは500から600℃の間で蒸発するのに対し、金属キノラートは約300℃で蒸発するようであり、試験した化合物の揮発性は化合物Z>化合物Y>Liqの順であった。化合物Yはリチウム2−メチル−キノリン−8−オラートであり、化合物Zはリチウム5,7−ジメチル−キノリン−8−オラートである。第1および第2昇華後の収量は以下に示される。
【表3】

【0105】
[例1]
LPOVPD装置を使用し、キャリアーガスの流れにて堆積されるカソード層としてリチウムキノラートを使用してデバイスを形成した。デバイスは、ITO(100)/α−NPB(65)/化合物H:化合物−Aから成る。
(25:0.5)/Zrq(20)/Liq(0.3)/Al
ここにおいて、
α−NPBは上記の通りであり;
化合物Aは以下に示される2,6−ジ−タート−ブチル−9−ナフタレン−2−イルメチル−10−ナフタレン−1−イルメチル−アントラセンであり;
化合物Hは、4,4’−ビス−(2,2−ジフェニル−ビニル)−ビフェニルであり;
Zrqはジルコニウムキノラートであり;
Liqは、上記の通り、溶媒としてアセトニトリル中で作製されるリチウムキノラートである。
【化29】

【0106】
単一のチャンバーにて、LPOVPDを使用し、層形成ステップの間にチャンバーから基体を除去することなく、デバイスの連続的有機質層を形成した。それぞれの層形成ステップでは、材料に依存して200−300℃のリアクターチューブにおいてソース(または、ドープした材料の場合、1以上のソース)を使用し、堆積する特定の材料(または、ドープした層の場合、材料の混合物)に依存して、例えば50−100sccm、0.5Torrの圧力および5−30分の成長時間で、キャリアーガス(例えば窒素またはアルゴン)の流れに供した。堆積の際の低圧の使用は滑らかで均一な表面を有する有機質層を生じさせ、得られるOLEDは、電子注入層としてLiFを有するものと同等のまたはそれよりもよい特徴を有する。
【0107】
[例2]
上記の方法により緑色のエミッターを備えたデバイスを形成し、これはアノード層、バッファー層、正孔輸送層、エレクトロルミネッセント層(ドープした金属複合体)、電子輸送層、電子注入層およびカソード層から成り、膜厚は次の通りである(nm):
ITO/ZnTp TP(20)/α−NBP(50)/Alq:DPQA(40:0.1)/Zrq(20)/EIL(0.5)/Al
ここにおいて、DPQAはジフェニルキナクリドンであり、EILは電子注入層であり、リチウム2−フェニルイミノメチルフェノラート(化合物B)である。
【化30】

【0108】
さらに、単一のチャンバーにて、LPOVPDを使用し、層形成ステップの間にチャンバーから基体を除去することなく、デバイスの連続的有機質層を形成した。EILがLiFであるセルと比較して、化合物Bを使用した場合、より大きな輝度、所定の輝度のためのより大きな電流および出力効率、および所定の印加電圧のためのより大きな電流密度を示した。緑を放射するOLEDにおいて、化合物Bはまた、電子注入層としてリチウムキノラートが使用された場合よりも良好な結果を与え、300℃以下で蒸発した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LPOVPDによりOLEDを製造する方法であって、低い仕事関数の金属の有機複合体を含む電子注入層を形成する工程を含み、前記電子注入層は、不活性キャリアーガスの流れのもと、好ましくは前記OLEDのその他の有機層と同一のリアクターにおいて堆積される方法。
【請求項2】
前記電子注入層を形成するための材料がカーテンとして出る堆積ヘッドを使用して、前記電子注入層が堆積される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記堆積ヘッドが、スリット様開口を有するか、または線に沿って別々に配置される3以上の開口を有する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記堆積ヘッドが、領域にわたって別々に配置される3以上の開口を有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電子注入層がリチウム複合体を含む、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
以下の何れかの特徴を有する請求項5に記載の方法:
(a)前記リチウム複合体が、アセトニトリルを含む溶媒中におけるリチウムアルキルまたはアルコキシドとリガンドとの反応によって形成される;
(b)前記リチウム複合体が、リチウムキノラートまたは置換リチウムキノラート(そのオリゴマーを含む)である;
(c)前記リチウム複合体が、次の式の化合物である;
【化1】

ここにおいて、
は、C−Cアルキルまたはアルコキシで置換されてもよい1−2環アリール、アラルキルまたはヘテロアリール基であり;および
およびRは一緒になって、C−Cアルキルまたはアルコキシで置換されてもよい単環式アリール、アラルキルまたはヘテロアリール基を形成する;
(d)前記リチウム複合体が、リチウム2−フェニルイミノメチルフェノラートである;
(e)前記リチウム複合体が、以下の化合物の何れかである。
【化2】

【請求項7】
前記キャリアーガスが窒素またはアルゴンである、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
亜鉛フタロシアニン、銅フタロシアニンまたはZnTpTPを含む不活性キャリアーガスの流れを形成する工程、前記キャリアーガスから材料を堆積させて、正孔注入層を形成する工程を含む、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2つの芳香族三級アミン成分を有する芳香族三級アミンを含む不活性キャリアーガスの流れを形成する工程、および前記キャリアーガスから材料を堆積させて、正孔輸送層を形成する工程を含む、上記請求項の何れか1項に記載の方法であって、前記芳香族アミンは、以下の(a)から(g)の一般式を有するか、
【化3】

【化4】

ここにおいて、(a)から(g)の何れかの式における基Rは、同一または異なっていてよく、水素;置換および非置換脂肪性基;置換および非置換芳香環、複素環および多環の構造;ハロゲン;並びにチオフェニル基から選択され;および式(a)において、メチル基は、C−Cアルキルまたは単環式もしくは多環式アリール基またはヘテロアリールであって、さらに例えばアルキル、アリールまたはアリールアミノで置換されてもよいものによって置換されてよい;
または、以下の化合物から選択される方法:
【化5】

【化6】

4,4’,4’’−トリス(カルバゾリル)−トリフェニルアミン(TCTA)、
スピロ−TAD(2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−スピロ−9,9’−ビフルオレン)、
9−(10−(N−(ナフタレン−1−イル)−N−フェニルアミノ)アントラセン−9−イル)−N−(ナフタレン−1−イル)−N−フェニルアントラセン−10−アミン、
9−(10−(N−ビフェニル−N−2−m−トリルアミノ)アントラセン−9−イル)−N−ビフェニル−N−2−m−トリルアミノ−アントラセン−10−アミン、および
9−(10−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)アントラセン−9−イル)−N−フェニル−N−m−トリルアントラセン−10−アミン。
【請求項10】
少なくとも1つのホスト材料および少なくとも1つの蛍光性または燐光性ドーパントを含む不活性キャリアーガスの流れを形成する工程、および前記キャリアーガスから材料を堆積させ、エレクトロルミネッセント層を形成する工程を含む、上記請求項の何れか1項に記載の方法であって、前記ホスト材料は、リチウムキノラート、アルミニウムキノラート、ブルーアルミニウムキノラート、チタニウムキノラート、ジルコニウムキノラート、ハフニウムキノラートまたは昇華できる多芳香族小分子から選択される方法。
【請求項11】
前記不活性キャリアーガスの流れが、最大10モル%のドーパントを含むエレクトロルミネッセント層を形成するためのホスト材料およびドーパントを含み、前記ドーパントが、ジフェニルアクリジン、クマリン、ペリレン、キノラート、ポルフォリン、ポルフィン、ピラザロンおよびそれらの誘導体から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記キャリアーガスが、混合ホストエレクトロルミネッセント層を堆積するための少なくとも2つのホスト材料を含み、前記ホスト材料の1つが、金属キノラートまたは「ブルー」アルミニウムキノラートであり、他方の前記材料が、芳香族炭化水素または有機三級アミンである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記キャリアーガスが、
ブルーアルミニウムキノラート、アルミニウムキノラート、ジルコニウムキノラートまたはハフニウムキノラート、および
ペリレン、ジ−(2−ナフチル)ペリレン(DNP)、2−フェニル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(PADN)、α−NBP、4,4’−ビス[N−(l−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB)、4、4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)、4,4’−ビス−ジフェニルアミノ−テルフェニルまたは2,6,2’,6’−テトラメチル−N,N,N’,N’−テトラフェニル−ベンジジン
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
電子輸送材料を含む不活性キャリアーガスの流れを形成する工程、および前記キャリアーガスから材料を堆積させ、電子輸送層を形成する工程を含み、前記電子輸送材料が、アルミニウムキノラート、ジルコニウムキノラート、ハフニウムキノラートまたはフェナントロリンを含む、上記請求項の何れか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2011−523184(P2011−523184A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512873(P2011−512873)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003988
【国際公開番号】WO2009/149860
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】