説明

OLEDデバイスにおける干渉縞の排除のための方法及び装置

発光デバイスに対するニュートン環の出現を抑制するための技法が開示される。発光デバイス(10)はカバー基板(20)の内表面(40)に接して配置された散乱層(50)を有する。光を散乱させることで増加的干渉に対する機会が抑制または排除され、この結果、ニュートン環形成が抑制または排除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機発光ダイオード(OLED)に向けられる。特に、本発明はOLEDにおけるニュートン環の排除のための方法及び装置に向けられる。
【背景技術】
【0002】
厚さが変化する空隙で隔てられた相異なる曲率をもつ2つのガラス表面の間で反射される光の結合は、ニュートン環として知られる、目に見える干渉パターンをつくることができる。同様に、ほぼ平行な2つの面をもつガラス基板において、光線は第1の面を通ってガラス基板に入り、ガラス基板の第1の面での反射による第1の反射光線を生じることができる。同じ光線はガラス基板の第2の面でも反射し、第2の反射光線を生じることができる。第1の反射光線と第2の反射光線が増加的態様(すなわち、互いに補足しあって足し合される、増加的干渉)で結合するときに、ガラス基板の第1の面から視ると、増加的干渉による明るい領域がつくられる。第1の反射光線と第2の反射光線が減殺的態様(すなわち、互いに減じあう、減殺的干渉)で結合するときは、ガラス基板の第1の面から視ると、暗い領域が現れる。周囲光がガラス基板に向けられると、増加的干渉と減殺的干渉が、本明細書では一括してニュートン環と称される、一連の交互する明るい環と暗い環をつくる。これらの環は2つの反射面の間の等光路長差線である。
【0003】
有機発光ダイオード(OLED)デバイスは2枚の薄いガラス基板の間に配されたOLED(すなわち活性発光材料)及び薄い透明電極材料を有する。新しく開発されたタイプのフラットパネルディスプレイ技術はディスプレイにおいて優れた目視品質を生じさせるためにOLEDデバイスを用いる。活性発光材料は、水及び酸素を含む、汚染物質による損傷を受け易い。この結果、活性材料は100万分の1単位(ppm)レベルのそのような汚染物質によって損なわれるから、無水/無酸素環境を維持するためにデバイスの周縁が密封されなければならない。密封された環境はセルと称されることが多い。
【0004】
封止が予定ディスプレイ寿命にかけて気密を維持できない場合には、一般に乾燥剤がセル内に入れられる。市販のシーラント系は一般にディスプレイの寿命を耐え抜く気密封止を提供せず、したがって乾燥剤が必要である。不透明な乾燥剤を内包することから、OLEDからの発光光は電子ドライバ及び電極のマトリックスを抜けてOLEDデバイスの底面から外部に向けられる(すなわち底面発光型となる)ことが必要になる。永続する気密封止であれば乾燥剤は必要にならず、したがって発光光は透明カバー基板を透過して(すなわち上面発光型となって)画像の輝度及び明瞭度が維持され得る。無機フリットの使用のような気密シーラント解決策によって気密封止されたOLEDでは乾燥剤が不要になるから、OLEDディスプレイを上面発光型OLEDで実施することが可能になる。
【0005】
周囲光によりOLEDのカバー基板にニュートン環が生じ得る。OLEDセルの内表面で反射された周囲光の増加的/減殺的干渉により、OLEDのカバープレートに可視干渉縞が現れ得る。低屈折率媒質と高屈折率媒質、例えばOLEDに対する空気の界面で反射された光は180°の位相反転を受ける。この結果、カバー基板の内表面で反射された光はOLED表面で反射された光と結合し、干渉縞を生じ得る。
【0006】
デバイスを可能な限り薄くつくるために、従来の基板間の空隙の目標は100μm未満であり、最近の目標は15μm未満である。この空隙範囲では、空隙間隔が一様でなければ周囲光の下でニュートン環干渉パターンが形成され、眼に見える。市場の圧力は一層薄いデバイスの製造を要求し続けている。空隙間隔が縮小されるにつれて、ニュートン環を防止することは一層困難になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
干渉縞問題に対する現在の解決策には、底面発光型デバイスにおける無空隙化及び、100μmより大きい、蛍光灯光のコヒーレント長より大きな大空隙の使用がある。前者には輝度及び解像度の低下の問題がある。後者ではデバイス封止の表面積が増大し、よってデバイスの気密性及び寿命が低下する。したがって、OLEDデバイスにおいてニュートン環を弱めるかまたは排除するための代替手法を見いだすことが有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の教示にしたがえば、ニュートン環を排除または軽減するために有機発光デバイスに散乱層が配備される。
【0009】
一実施形態において、本発明はニュートン環を示さないか、あるいは実質的に弱められたニュートン環パターンを示す、発光表示デバイスに関する。本発明の教示にしたがえば、周囲光の内部反射を弱め、ニュートン環の形成を軽減するために発光デバイスカバー基板の内表面上に散乱層が配備される。散乱層は人間の眼に見える連続等光路長線をなくし、それらを通常の目視条件下では検出できない小さな不連続干渉領域で置き換える。
【0010】
一実施形態において、本発明は、光を受け取ることができ、第1の表面及び第1の表面に対向する側の第2の表面を有するカバー基板、支持基板及びカバー基板と支持基板の間に配置された発光素子を有し、発光素子は最初の基板と発光素子の間に配置された散乱層の方向に光を発する、発光デバイスを含む。本発明の教示にしたがえば、散乱層は入り光を散乱し、よって第2の表面上のニュートン環パターンの形成を軽減または排除する。
【0011】
本発明の別の実施形態においては、OLEDデバイスのカバー基板に拡散反射条件がつくられる。拡散反射条件は発光素子によって発生するいかなる光もその反射の散乱を生じさせる。
【0012】
別の実施形態において、上面発光型OLEDデバイスに散乱層を配備することによって、デバイスの輝度及び解像度品質は維持しながら、上面発光型OLEDデバイスからニュートン環を排除するための解決策が提供される。
【0013】
一実施形態において、本発明は、内部反射されて透過する周囲光を散乱し、散乱がOLEDデバイスの面内で反射角をランダム化するという事実により、反射光のコヒーレントな重畳を崩す。
【0014】
別の実施形態においては、OLEDカバー基板の内表面及び外表面の内の1つだけまたは両方を粗面化することによってOLEDに散乱層が設けられる。
【0015】
一実施形態において、カバー基板の両面上に散乱層を実施することによって正反射またはグレアが排除される。例えば、一実施形態において、OLEDのカバー基板の両面を粗面化することができる。
【0016】
本発明のさらなる態様は、ある程度は、以下の詳細な説明、図面及び添付される特許請求の範囲に述べられ、ある程度は詳細な説明から得られるであろうし、あるいは以下に説明される本発明の態様の実施によって会得され得る。以下に説明される利点は添付される特許請求の範囲に特に指示される要素または組合せによって実現され、達成されるであろう。上述の全般的な説明及び以下の詳細な説明がいずれも例示及び説明のために過ぎず、開示される本発明を限定するものではないことは当然である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部をなす添付図面は本発明のいくつかの態様を示し、記述とともに、限定することなく、本発明の原理の説明に役立つ。
【0018】
本発明の教示にしたがえば、発光素子によって発生する光を散乱し、よってニュートン環を軽減または排除するための散乱層が上面発光型OLEDデバイスに設けられる。散乱層は、OLEDのカバーガラスの内表面、OLEDのカバーガラスの外表面、または内表面と外表面のいずれにも実施することができる。本発明の教示にしたがえば、散乱層は光のカバーガラス透過が散乱層によって弱められないように実施される。一実施形態において、散乱層の表面形態及び散乱能力が特徴付けられ、散乱層は粗面化表面によって実施される。さらに、様々な粗面化表面実施方法が開示される。本発明の教示にしたがって実施されるOLEDデバイスは、セル式携帯電話、テレビ等のような、様々な用途に実装することができる。
【0019】
本発明の教示にしたがえば、周囲光によって生じる全ての干渉縞効果を軽減する散乱層が実施される。一実施形態において、散乱層は、透過及び解像度のいかなる低下も最小限に抑えながら、有効であるための必要最小限に表面粗さを制御することによって実施される。したがって、OLEDのカバーガラスの内表面の表面粗さは、OLED光の直接透過を弱めず、画像の強度及び解像度に影響を与えずに、観察可能な干渉を排除する拡散反射条件を生じるように定められる。
【0020】
一実施形態において、厚さが60μm以下の空隙をもつガラス−ガラスセルにおける可視干渉縞の発生を排除するための、ニュートン環の効果を軽減し、同時に透過に与える影響は最小限に抑える程度の、表面粗さを与えるために無垢のディスプレイカバーガラスプレートを処理する方法が示される。
【0021】
本発明の教示にしたがえば、ニュートン環を排除または軽減する散乱層は、以下の特性:
160μm×120μmの面積にわたって測定して、0.02μmより高く、0.5μmより低い粗さ(RMS);
91%より高い全透過率及び5%より低い拡散透過率;及び
20μmと300μmの間の自己相関/自己共分散幅;
を有するように定められる。
【0022】
本発明の教示にしたがえば、散乱層の粗表面形態は、OLEDのカバープレートを透過する周囲光への拡散効果を生じ、デバイス内表面での周囲光の拡散反射もおこさせる。これにより、連続的な干渉縞効果を生じる、交互する増加的態様及び減殺的態様での内表面反射の再結合の可能性が排除される。さらに、カバープレートの両面での散乱層の形成により、ディスプレイの外表面からの周囲光反射による正反射またはグレアの排除という利点も付加される。
【0023】
図1は、本発明の教示にしたがう散乱層を備える発光デバイスを説明する略図を示す。OLEDデバイス10が示される。OLEDデバイス10はカバー基板20を備える。カバー基板20は上面30及び下面40を有する。カバー基板20の下面40に接している散乱層50が示される。散乱層50と発光素子70の間に空隙60が示される。支持基板80が発光素子70を支持する。入射光線102を発している発光素子70が示され、カバー基板20の上面及び下面、散乱層50,及び空隙60で入射光線102が反射されたときに反射光線104がつくられる。気密シーラント90が示される。気密シーラントはフリット及びレーザ封止プロセスによって実施することができる。本発明の教示にしたがって用いることができるプロセスは、本明細書に参照として含まれる、米国特許第6998776号明細書に詳述されている。
【0024】
図2は図1に示される散乱層50の拡大図である。図2において、散乱層50と接しているカバー基板20が示される。入射光102は散乱層50に向けられ、次いで反射光104を生じる。散乱層50の結果として、反射光104は様々なOLEDデバイス内部に向かう方向及びOLEDデバイスの外に戻る方向のいずれにも分散されることに注意されたい。光の一様な偏向はほとんどないことに注意すべきである。概念上、反射後には様々な光線が相異なる経路を取ることができる。
【0025】
散乱層50は、ガラス表面の粗面化によるか、カバー基板上への透明粒子の被着によるか、またはコーティングの付加による、等のような、様々な方法を用いて実施することができる。例えば、図3はカバー基板20及び透明粒子で実施された散乱層50の拡大図である。図3に示されるように、散乱層50はガラスに焼結された透明粒子すなわち「スート」で実施される。散乱層50を実施するために様々な方法及び手順を用いることができるが、本発明に定められる特性を結果として生じるいかなる散乱層も本発明の範囲内にあることは当然である。
【0026】
図1,2及び3は全て散乱層50を示す。散乱層は、交互する増加的態様及び減殺的態様での表面反射の再結合を軽減または排除する表面として定義することができる。散乱層50は、OLEDのカバープレートを透過する入射光に拡散効果を生じさせ、OLEDの内表面での入射光の拡散反射も生じさせる、粗面形態を有する。さらに、散乱層50にはさらに、光を相異なる方向に向け直し、増加的及び減殺的干渉パターンを回避することによってOLEDの外表面からの周囲光の反射による正反射またはグレアを排除するという利点がある。
【0027】
本発明の教示にしたがえば、散乱層は以下の特性:
160μm×120μmの面積にわたって測定して、0.02μmより高く、0.5μmより低い(ほぼλ/4のレングスフィールドの)粗さ(RMS);
(546nmで測定して)91%より高い全透過率及び5%より低い拡散透過率、ここで、全透過率は正反射(すなわち完全反射)で測定し、拡散透過率は拡散+ヘイズ(ヘイズは小角度散乱である)として測定したままの値である;
20μmと300μmの間の自己相関(すなわち自己共分散)幅;
をもって実施される。自己相関(すなわち自己共分散)幅は2次元自己相関関数の第1次ゼロ交差であり、ここで表面波長の周波数、表面のピーク及び谷または粗面の構成は、散乱を回避するに十分に高く、眼に見えることを回避するに十分に低い。本発明の教示にしたがえば、表面は表面粗さで特徴付けられる。概念上、表面粗さはピーク及び谷を表す表面の構造として特徴付けることができる。ピーク及び谷は、山岳から想起され得るような鋭いピーク及び谷としてまたは丘陵で想起され得るようなより緩やかなピーク及び谷として、様々に実施され得る。本発明の一実施形態において、散乱層は160μm×120μmの面積にわたって測定して、0.02μmより高く、0.5μmより低い(ほぼλ/4のレングスフィールドの)粗さ(RMS)をもって実施される。表面粗さは、ピーク−谷(PV)測定、平均粗さ(RA)及び/または二乗平均平方根(RMS)を用いて測定される。表面の非一様性(すなわち表面粗さ)は、光を様々な方向に偏向させ、増加的干渉を軽減または排除する。一実施形態において、表面粗さは非ランダムとすることができる。表面は増加的干渉を止める表面構造をもつ。本発明の教示にしたがえば、粗さは干渉法を用いて測定される。
【0028】
PV値は表面構造の最高地点と最低地点の間の差である。RMSは表面偏差の二乗平均の平方根として数学的に定義される。RMS値はPVと同じ情報を与えるが、表面構造の固有平均により、総体的表面品質をより明確に示す。例えば、表面の大半にわたって公称上平坦であるが1つまたは2つの極端に高い地点及び低い地点を有する光学面は高いPV値及び低いRMS値を有する傾向があろう。PV値とRMS値の間の関係は表面構造に依存する。RMS値は一般にPV値の1/4であるが、これは表面が異なれば変わり得る。
【0029】
本発明の教示にしたがって実施される散乱層は全透過率測定値及び拡散透過率測定値の両者によって定められる。全透過率及び拡散透過率の測定は分光光度計を用いて行われる。全透過率は原光量の内の媒質を透過する量である。一実施形態において、(546nmで測定して)91%より高い全透過率及び5%より低い拡散透過率が実施される。全透過率は散乱層に向けられる光の完全反射を定める正反射測定値である。拡散透過率は光の拡散透過+ヘイズ(ヘイズは小角度光散乱である)として測定される。
【0030】
透過率測定は、150mm径積分球検出器を備える750nm〜350nm二ビーム分光光度計で行った。以下の計測器パラメータ:
スペクトル帯域幅−3.0nm
スキャン速度−120nm/分
アパーチャ−無
球材料−スペクトラロン(spectralon)
を用いた。
【0031】
用いた球検出器は、1つは参照ビームのためであり、1つは試料ビームのための、2つのポートを球の背面に有する。全透過率測定を行うため、ポートを球上に保ち、試料を球入光ポートにおいた。試料の前進透過光の全てを球で集めた。拡散測定については、試料ポート遮蔽を取り外して軸上光が試料ポートを通過して光トラップに入ることができるようにした。いかなる軸外散乱光(すなわち拡散透過光)も球で集めた。光トラップではいくらかの光が球内に戻ることが可能であり、よってゼロオフセット測定を行い、試料の拡散透過率から差し引いた。
【0032】
一実施形態において、散乱層は高地点及び低地点(すなわちピーク及び谷)のある表面形態を有する。これらのピーク及び谷の周波数及び密度特性は周波数測定で識別することができる。一実施形態において、散乱層の表面形態周波数を識別するために自己相関及び自己共分散を用いた。一実施形態において、20μmと300μmの間の自己相関(すなわち自己共分散)幅を実施した。この幅は2次元自己相関関数の第1次ゼロ交差である。粗面化表面の形態の周波数は、散乱を回避するに十分に高く、眼に見えることを回避するに十分に低い。
【0033】
本発明の教示にしたがえば、散乱層は、(1)小粒子の被着によるか、(2)グリットブラストまたは(3)研削による機械的表面粗面化によるか、または(4)化学エッチング手順によって、カバープレート表面に実施することができる。さらに、同じ結果を生じさせるために、(5)適切な微細表面組織をもつかまたは微細散乱粒子が分散されている高分子光学フィルムをカバープレートに貼り付けることができる。それぞれの実施形態において、散乱層は本開示の範囲内で定められるような特性をもつ起伏のある表面形態を有する。
【0034】
一実施形態において、散乱層を実施するために化学エッチングが用いられる。カバープレートを化学エッチングして散乱層を形成するためには、様々な方法を用いることができる。本発明の一実施形態においては、フッ化物ベース溶媒を用いて散乱層を形成した。例えば、容器当り150mLのフッ化水素アンモニウム(NHF・HF)を用意した。いずれもコーニング社(Corning Incorporated)の登録商標である、1737またはEagle2000のような、2インチ×2インチ(約50mm×50mm)のディスプレイガラスを2枚用いた。容器にはエッチング剤28重量%+HO72重量%を入れた。使用を容器内に入れ、次いで設定時間経過時に容器から引き出した。試料を容器から取り出した後、試料上の薄膜をHOで洗浄して除去した。
【0035】
下の表Iはフッ化水素アンモニウムを用いて化学エッチングした様々な試料についてのデータを与える。
【表1】

【0036】
第2の実施例では、化学エッチング剤としてフッ酸(HF)を用いた。2インチ×2インチ(約50mm×50mm)の大きさにした試料を設定時間の間HFに浸漬した。pH=1のHF49%+脱イオンHO溶液を作成した。30秒より長くガラスを浸漬すると、表面は曇って見える。次いで、曇り層は洗い流すことができる。
【0037】
下の表IIはフッ酸を用いて化学エッチングした様々な試料についてのデータを与える。
【表2】

【0038】
本発明の教示にしたがえば、散乱層は基板上に小粒子を被着することによって形成される。一実施形態において小粒子はヒュームドシリカ粒子で実施することができる。ヒュームドシリカは火炎加水分解でつくられる緻密なシリカ製品であり、公称上球形の一次粒子及び連鎖二次粒子があって、一般には1グラムあたりの表面積で識別され、市販品では50〜300m/gの範囲にある。300m/gの一次粒子は公称上直径が10nmの球形であるが、実際には、100個程度の多数の粒子からなる連鎖が存在する。
【0039】
一実施形態において、ガラス基板上にサブモノレイヤー被膜を設けるためにヒュームドシリカ分散が用いられる。「ピーク対谷」粗さは、最小は一次粒子径により、また最大は二次粒子の大きさ/集塊によって調整されるであろう。平均粗さは粒径及び表面カバレッジの両者によって調整されるであろう。ここで理想的コーティングでは10%と90%の間のいずれかのカバレッジで最大の効果が達成されるであろう。これを達成するため、低濃度の粒子が濡れ性の高い溶液に与えられる。一実施形態において、粒子は水液相に対するよりもガラス表面に対して強い親和性を有し、よって溶媒が蒸発すると粒子は表面に固着する。一実施形態において、水は界面活性剤とともに用いることができよう。溶液内に接着性Si(OH)を与えて粒子の接合を改善するように酸−塩基化学反応を調整できるであろうから、水が好ましいであろう。共溶媒系も有用であろう。膜が乾燥すれば、いかなる界面活性剤も除去するため及び、おそらくは、焼結によって粒子を表面に固着させるために、熱処理が必要であろう。界面活性剤除去のための温度は約250℃であり、焼結のための温度は基板ガラスのガラス転移温度Tgと同程度の高温とすることができよう。スートの分散に加えて、コロイド状シリカを用いることができよう。本発明の教示にしたがえば、散乱層は基板表面の機械的粗面化によって形成することができる。例えば、ブランチャード(blanchard)研削法、表面研削法及びボールミル法を用いることができる。ブランチャード研削はガラス試料を用いる。円形金属プレートにワックスがかけられる。加熱プレートをワックスでコーティングし、基板が加熱プレートに接着され、次いで冷却される。
【0040】
金属プレートは磁石に取り付けられ、円形の、研削ホイールより径が大きいブランチャードテーブルに試料が取り付くように磁石を起動する。2つの面は互いに平行であり、いずれも回転する。研削ホイールはブランチャードテーブルとは逆方向に回転する。試料が研削されている間、冷却剤が試料上にスプレーされる。標準ホイールは、一般に粒度220の、荒研削用である。一般に、試料にはラッピング機による精細仕上げを施す必要がある。研削ホイールには様々な粒径のダイアモンドが埋め込まれており、研削ホイールは金属または樹脂で接合される。別の実施形態において、表面研削を用いることができる。表面研削によって、ブランチャード研削のための準備が試料になされる。金属プレートがテーブルに取り付けられ、テーブルは、研削ホイールがテーブルから90°回転すると前後に動く。研削ホイールは回転し、テーブルが水平方向に移動するにつれて下降する。研削ホイールが回転している間、水が研削ホイール上にスプレーされる。
【0041】
別の実施形態において、ラッピングが行われる。ラッピングは水平に回転する平坦な円形の鋼または鉄の表面を用い、表面上では水と混合された酸化セリウム(CeO)のような別の緩い研削剤がホイールと研削されるべき表面の間に注入される。別の緩い研削剤に加えて、研削粒子及び樹脂に浸した不織ナイロンウエブのような表面仕上げ用品がある。これらの用品は、ガラス基板に散乱層を形成するためのガラス基板と接しておかれたラッピングホイールに固定することができる。接合研磨材及び被覆研磨材のような別のタイプの研磨材を用いることができる。例えば、ジルコニアアルミナを用いることができる。
【0042】
別の実施形態において、適切な表面組織をもつ高分子材光学フィルムを適用することができる。散乱フィルムは、同じ結果が生じるようにカバープレートに施すことができる、分散された微細散乱粒子を有することもできる。
【0043】
散乱層はカバープレートの表面に微細粒子を被着することによって施すことができる。これは、基板上に軟化点が基板より低いガラス粒子の希釈懸濁液をスプレーするか、あるいはそのようなガラスの粉末を乾式静電スプレーによって基板上に吹き付け、その後、粒子を基板に接合させるために被着されたガラスの軟化点より高温に加熱することによって達成できるであろう。
【0044】
同じ結果が生じるように、適切な表面組織をもつかまたは分散された微細散乱粒子を有する高分子材光学フィルムをカバー基板に貼り付けることができる。必要な表面粗さを得るため、熱硬化性、化学硬化性または紫外線硬化性の高分子材の微細液滴をスプレー法またはインクジェット法によって付けることができる。無機粒子を含む連続高分子材フィルムで干渉縞形成を妨げることもできる。これらは、基板上にスプレーすることで形成できるであろうし、あるいはあらかじめ形成したフィルムを基板に貼り付けることができるであろう。
【0045】
複数の相を有する共重合体フィルムはニュートン環を軽減及び/または相殺するに十分な表面組織を形成する。これらのフィルムは、ガラスの化学エッチングで生じる表面組織と同様の微小表面組織を生じるであろう、化学エッチングまたはプラズマエッチングにおける不等性も示す。
【0046】
本発明の教示にしたがい、粗面化表面の特性に対する限界を決定するために試験を行った。2つの異なるエッチング条件を用いて試験を行った。試験状況設定A(すなわち、目標RA=0.2μm)及び試験状況設定B(すなわち、目標RA=0.12μm,ここでLは公称初期目標0.2より軽いエッチングを指す)に対するニュートン環試験。フッ化水素エッチング及びフッ酸エッチングを用いて作成した2つの370μm×400μm×0.63μmの試料を、本明細書に参照として含まれる、米国特許第6998776号明細書に開示されているフリット封止法を用いて裸ガラスに封止した。蛍光灯及び緑色光源の両者を用い、ニュートン環の存在について試料を目視で検査した。
【0047】
試験Aのエッチング条件ではニュートン環現象が生じないことがわかったが、試験Bの条件はプロセス限界にあると思われる(すなわち、条件Bの下では非常に浅い視角においてニュートン環が見えた)。フリット封止を行わずにガラス対ガラス接触を用いて試料(すなわち370μm×400μm×0.63μm)を作成した。これらのOLEDは、RA=0.14μmで薄いニュートン環を示したが、RA=0.12μmではニュートン環は見られなかった。非常に明るいニュートン環は、見つけることは極めて困難であるが、1つの封止試料の一端に沿って配置されたセルで見られた。フリット付カバーガラスがOLEDバックプレーンに封止されていれば、ニュートン環は見られなかったはずであり、これはニュートン環に対する軽減プロセスに寄与することが知られている。したがって、一実施形態において、0.2μmの公称目標がニュートン環の排除に有効である。
【0048】
本出願明細書を通して様々な文献が参照される。これらの文献の開示は、本明細書に説明される化合物、組成及び方法をより十分に説明するために、それぞれの全体が本明細書に参照として含まれる。
【0049】
本発明のいくつかの説明のための特定の態様に関して本発明を詳細に述べたが、添付される特許請求の範囲に定められるような本発明の広い範囲を逸脱しない数多くの改変が可能であるから、本発明がそのような特定の態様に限定されると見なされるべきではないことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一態様にしたがう、散乱層を有する発光デバイスを示す略図である
【図2】図1に示される散乱層50の拡大図である
【図3】透明粒子で実施された散乱層50の拡大図である
【符号の説明】
【0051】
10 OLEDデバイス
20 カバー基板
30 上面
40 下面
50 散乱層
60 空隙
70 発光素子
80 支持基板
90 気密シーラント
102 入射光線
104 反射光線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光デバイスにおいて、
光を受け取ることができるカバー基板、
支持基板、
前記カバー基板と前記支持基板の間に配置された発光素子、及び
前記カバー基板と前記発光素子の間に配置された第1の散乱層、
を備え、
前記第1の散乱層が前記光を散乱し、ニュートン環を軽減する、
ことを特徴とする発光デバイス。
【請求項2】
前記発光デバイスが上面発光型有機発光デバイスであることを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記第1の散乱層が粗面化表面によって実施されることを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記カバー基板の前記第1の散乱層に対向する側の表面に接する第2の散乱層をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記光が前記発光素子で発生されることを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項6】
前記光が周囲光であることを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項7】
前記カバー基板が前記有機発光デバイスに面する第1の表面及び前記第1の表面に対向する側の第2の表面を有し、前記カバー基板の前記第1の表面及び前記第2の表面が粗面化されることを特徴とする請求項3に記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記カバー基板がガラスであることを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項9】
前記カバー基板がプラスチックであることを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項10】
前記散乱層が160μm×120μmの面積にわたり約0.02μmと0.5μmの間の粗さを有することを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項11】
前記散乱層が91%より高い全透過率及び5%より低い拡散透過率を有することを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項12】
前記散乱層が20μmと300μmの間の自己相関幅を有することを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項13】
発光デバイスにおいて、
上面及び粗面化された下面を有するカバー基板、
支持基板、及び
前記カバー基板と前記支持基板の間に配置された有機発光ダイオード、
を備え、
前記有機発光ダイオードは前記カバー基板の前記下面に対して配置され、
前記粗面化された下面は、160μm×120μmの面積にわたり約0.02μmと0.5μmの間の粗さを有し、
前記カバー基板が91%より高い全透過率及び5%より低い拡散透過率並びに20μmと300μmの間の自己相関幅をさらに有する、
ことを特徴とする発光デバイス。
【請求項14】
前記有機発光デバイスが前記カバー基板と通して光を発する上面発光ダイオードであることを特徴とする請求項13に記載の発光デバイス。
【請求項15】
前記カバー基板がガラスであることを特徴とする請求項13に記載の発光デバイス。
【請求項16】
前記カバー基板がプラスチックであることを特徴とする請求項13に記載の発光デバイス。
【請求項17】
前記カバー基板に反射防止膜が施されていることを特徴とする請求項13に記載の発光デバイス。
【請求項18】
請求項13に記載の発光デバイスを備えることを特徴とするセル式携帯電話。
【請求項19】
請求項13に記載の発光デバイスを備えることを特徴とするテレビ。
【請求項20】
発光デバイスの動作方法において、
有機発光デバイス内に配置された発光素子から光を発生させる工程、
散乱層によって前記光を散乱させる工程、及び
前記光の散乱に応じてニュートン環を軽減する工程、
を含み、
前記散乱層が160μm×120μmの面積にわたり約0.02μmと0.5μmの間の粗さを有し、
前記発光デバイスがカバー基板を備え、前記カバー基板が91%より高い全透過率及び5%より低い拡散透過率並びに20μmと300μmの間の自己相関幅をさらに有する、
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−505331(P2009−505331A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525292(P2008−525292)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/044365
【国際公開番号】WO2007/059223
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】