説明

OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子の相乗作用効果

【課題】哺乳動物細胞(特に、神経細胞)の生存または増殖の促進、あるいは死または変性の阻害のための薬物の提供。
【解決手段】OP/BMP活性化セリン/スレオニンキナーゼレセプターおよびGDNF/NGF活性化チロシンキナーゼレセプターを発現する哺乳動物細胞(特に、神経細胞)の生存または増殖の促進、あるいは死または変性の阻害における、GDNF/NGF神経栄養因子と組み合わせたOP/BMPモルフォゲンの相乗的効果を開示する。そのような細胞に対する損傷または傷害に罹患したか、あるいは損傷または傷害の切迫した危険にある哺乳動物についてのインビボでの処置を含む、そのような細胞のインビボおよびインビトロでの処置のための新しい方法、ならびに、そのようなインビボおよびインビトロでの処置のための新しい薬学的調製物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子のレセプターを発現する組織(特に神経組織)に対する損傷または傷害に罹患したか、またはその切迫した危険にある哺乳動物被検体の処置のための方法および調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
哺乳動物神経系の発生の間に、中枢神経系および末梢神経系から分化するニューロンは、成長して、そして特異的な標的細胞と接触しなければならない軸索を派出する。ある場合において、ニューロンは、全体が中枢神経系内部に、閉じこめられたままである。しかし、他の場合において、成長する軸索は、莫大な距離にわたり、CNSから身体の末梢へと伸長しなければならない。哺乳動物において、この神経発生の段階は、生命の胚期間に完成され、神経細胞は、一旦完全に分化すると、増加しないと考えられている。
【0003】
樹状突起成長は、2つの段階において生じる:初期の伸長、その後の延長および分岐。Purvesら、Nature 336:123〜128(1988)。神経伝達物質およびホルモンを含むいくつかの分子は、既存の樹状突起樹の拡がりを調節することが示されている。しかし、初期の事象に影響し、そしてニューロンに最初に樹状突起を形成させる因子については、ほとんど知られていない。特定のクラスのニューロンにおいては、初期の樹状突起の出芽が、栄養性相互作用に比較的依存しない内在的な発生プログラムの一部として生じる。Dottiら、J.Neurosci.8:1454〜1468(1988)。しかし、他のクラスのニューロンにおいては、樹状突起成長の初期の段階の調節は、非常に異なるようである。例えば、ラットの交感神経ニューロンは、樹状突起を形成しそこない、非神経細胞の不在下において培養された場合、軸索のみを伸長する。対照的に、シュワン細胞または星状細胞との同時培養は、これらのニューロンに樹状突起を形成させ、そして究極的にインサイチュにおいて観察されたサイズに匹敵するサイズの樹状突起樹を生成する。Tropeaら、Glia 1:380〜392(1988)。従って、特定の栄養性相互作用が交感神経に樹状突起を形成させるために必要とされるようである。
【0004】
以上の観察は、インサイチュの環境が、樹状突起樹の形成を特定するという理論を支持するものと、解釈されている。神経細胞または発生中の神経突起の近傍における環境としては、ポジティブにか、またはネガティブに樹状突起の成長の程度および特異性、ならびに樹状突起と神経細胞体と軸索との間のシナプス形成の程度および特異性に影響する、電磁気的、電気化学的、および/または生化学的な場または勾配が挙げられると考えられている。しかし、この理論は、ニューロンに樹状突起を出芽させる能力を有する、同定されたメディエーターの不足に苦しむ。
【0005】
神経障害の宿主(このいくつかは、末梢神経系または中枢神経系におけるニューロンのサブ集団またはニューロンの系のみに、影響する)が同定されている。ニューロン自体か、または関連する神経膠細胞に影響し得る神経障害は、細胞性代謝機能不全、感染、毒性薬剤に対する曝露、自己免疫機能不全、栄養失調または虚血から生じ得る。ある場合においては、細胞性機能不全は、アポトーシスによって直接的に細胞死を誘導すると考えられている。Oppenheim、Ann.Rev.Neurosci.14:37〜43(1991)。他の場合においては、神経障害は、身体の免疫系を刺激することによって組織の壊死を誘導し得、これは神経傷害の初期の部位における局所的な炎症応答および細胞溶解を生じる。
【0006】
末梢神経系内のニューロンが損傷した神経の経路を再生する能力は、限定されている。具体的には、新しい軸索および樹状突起は、無作為に伸長し、そしてしばしば、方向を間違えて、異常な機能を生じ得る不適切な標的との接触を生じる。さらに、突起が必要な距離の成長をしそこねるためか、または誤って方向づけられた軸索成長のために、切断された神経突起が数ミリメ−トルより長い(例えば、10ミリメートル(mm)を超える)ギャップを生じる場合、適切な神経再生は起こらない。外科的手段によって末梢神経損傷を修復する試みは、特に損傷が顕著な距離にわたって伸長する場合、混合した結果を生じる。ある場合においては、切断された神経末端の適切な整列を得るために使用される縫合工程が、軸索再生を阻害すると考えられている瘢痕組織の形成を刺激する。瘢痕組織形成が減少されたとしても、神経ガイダンスチャンネルまたは他のチューブ型人工器官の使用を伴う場合、成功した再生は、一般的に、10ミリメートル未満の距離の神経損傷に、なお制限されている。
【0007】
いまや、種々の栄養因子が、発生中のニューロンの生存および分化の調節において重要な役割を担うことが、十分に確立されている。Sniderら、Ann.Neurol.26:489〜506(1989)。神経栄養性作用物の特徴づけられた作用のほとんどは、発生の事象に関連し、そしてこれらのタンパク質の時間的および位置的な発現の調節が、神経系の成熟の間に役割を担うことを示唆する。神経栄養因子はまた、構造的完全性の維持のため、および可塑性の調節のための成体神経系の機能において重要である。そのようなプロセスは、神経変性性疾患および神経系に対する急性傷害の後の神経変性性事象において、変化する。このことは、神経栄養因子が、傷害および疾患に応答して生じる構造的変化に関与するという推測を思いつかせた。
【0008】
いくつかの十分に特徴づけられた栄養因子が、組織培養におけるドーパミン作用性ニューロンおよび/または前眼房への移植後のドーパミン作用性ニューロンの生存および分化を増強することが示されている。これらの栄養因子としては、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスホーミング増殖因子α(TGF―α)、および神経膠細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ならびにいくつかの神経成長因子(NGF)関連ニューロトロフィンが挙げられる。
【0009】
神経栄養因子は、そのアミノ酸配列相同性および/またはその3次元構造に基づき、ポリペプチド増殖因子のいくつかのタンパク質スーパーファミリー中に見いだされる。MacDonaldら、Cell 73:421〜424(1993)。神経栄養因子の1つのファミリーは、ニューロトロフィンファミリーである。このファミリーは、現在、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン3(NT―3)、ニューロトロフィン4/5(NT―4/5)、およびニューロトロフィン/6(NT―6)からなる。これらの神経栄養因子は、中枢神経系の特定のニューロン集団に影響する。そのような特定の神経栄養因子の欠損は、年齢に関連する細胞の生存および/または機能の減少の原因かもしれない。細胞での供給源は、不明なままであるが、ニューロンおよび神経膠細胞が、共に神経栄養因子を分泌し得ることを示唆する証拠が存在する。
【0010】
骨形成性タンパク質/骨形態形成タンパク質(OP/BMP)のタンパク質は、タンパク質のより大きなTGF−βスーパーファミリー内に、ファミリーまたはサブファミリーを形成する。すなわち、これらのタンパク質は、本明細書において、TGF−βスーパーファミリーとして公知の配列関連タンパク質の緩やかな進化的分類内において、「モルフォゲンのOP/BMPファミリー」または「OP/BMPモルフォゲン」という異なるサブグループを形成する。このタンパク質ファミリーのメンバーは、共通の構造的特徴を共有し、プロタンパク質から同様にプロセスされて、カルボキシ末端成熟タンパク質を生じる、分泌ポリペプチドを包含する。発生中および成体の神経組織からのmRNA抽出物に対するモルフォゲン特異的プローブのノザンブロットハイブリダイゼーション、および免疫局在化研究の両方によって決定されるように、OP/BMPモルフォゲンは、発生中および成体のラットの脳および脊髄組織において同定されている。例えば、発生中のラット組織のノザンブロット分析は、CNSにおいて、有意なOP−1 mRNA転写物の発現を同定している。他のOP/BMPファミリーのメンバーであるGDF−1のmRNAは、主に、発生中および成体の神経組織(特に、小脳および脳幹を含む脳、脊髄、および末梢神経)において発現するようである。BMP4(BMP2Bともいう)およびVgr−1転写物はまた、神経組織において発現することが報告されている。
【0011】
モルフォゲンOP−1が、灰白質(ニューロン細胞体)の細胞外基質において優勢に局在化し、細胞体自体を除いて全ての領域において明瞭に存在することが見いだされた。ミエリン化神経繊維で主に形成された白質においては、染色は、星状細胞(神経膠細胞)に限定されるようである。同様の染色パターンはまた、新生ラット(10日齢)脳切片においても見られた。
【0012】
さらに、OP−1は、その機能が大脳皮質および皮質脊髄系と関連する副運動神経の系である、線条体脳幹神経節から主に構成される黒質において、特異的に局在する。この神経のサブ集団または神経系の機能不全は、ハンティングトン舞踏病およびパーキンソン病を含む多数の神経障害に関連する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、部分的に、GDNF/NGF神経栄養因子と組み合わせたOP/BMPモルフォゲンが、OP/BMP活性化セリン/スレオニンキナーゼレセプターおよびGDNF/NGF活性化チロシンキナーゼレセプターを発現する哺乳動物細胞(特に神経細胞)の生存または増殖の促進、あるいは、死または変性の阻害において、相乗的効果を示すということの発見に基づく。この発見に基づき、本発明は、そのような細胞に対する損傷または傷害に罹患したか、あるいは、損傷または傷害の切迫した危険にある哺乳動物についてのインビボでの処置を含む、そのような細胞のインビボおよびインビトロでの処置のための新しい方法、ならびに、そのようなインビボおよびインビトロでの処置のための新しい薬学的調製物を提供する。
【0014】
従って、1つの局面において、本発明は、哺乳動物細胞(特に神経細胞)を、GDNF/NGF神経栄養因子およびOP/BMPモルフォゲンを含有する有効濃度の調製物と接触させることによる、その細胞の生存または増殖を促進するための方法を提供する。同様に、本発明は、哺乳動物細胞(特に神経細胞)を、GDNF/NGF神経栄養因子およびOP/BMPモルフォゲンを含有する有効濃度の調製物と接触させることによる、その細胞の死または変性を阻害するための方法を提供する。そのような方法は、インビトロ(例えば、改善された細胞培養のために)またはインビボ(例えば、哺乳動物被検体におけるそのような細胞に影響する状態を処置するために)で、使用され得る。
【0015】
別の局面において、本発明は、具体的には、細胞(特に神経細胞)に対する損傷または傷害に罹患したか、あるいは、損傷または傷害の切迫した危険にある哺乳動物被検体を処置する方法であって、その神経細胞を、GDNF/NGF神経栄養因子およびOP/BMPモルフォゲンを含有する有効濃度の調製物と接触させる工程を包含する方法を提供する。これらの方法は、ニューロンまたは神経膠細胞のいずれかに対して、そして中枢神経系細胞または末梢神経系細胞のいずれかに対して適用され得る。
【0016】
本発明の方法は、特に、機械的外傷(例えば、鈍力外傷性脳損傷、鈍力外傷性脊髄損傷、振とう症、脳水腫または硬膜下血腫に起因する頭蓋内圧、椎骨破壊または椎骨圧挫症、および神経断裂または神経切断);化学的外傷(例えば、神経毒への曝露または化学治療の副作用より生じる);虚血傷害(例えば、発作、心停止または心不全から生じる);ならびに神経障害または神経変性性の損傷もしくは傷害(例えば、パーキンソン病、ハンティングトン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、癲癇、進行性筋萎縮、シャルコー−マリー−ツース病、麻痺、痴呆、シャイ−ドレーガー病、ヴェルニッケ−コルサコフ症候群、およびハレルフォルデン−シュパッツ病を含む神経障害疾患から生じるもの)に起因する、損傷したかまたは傷害を受けた細胞、あるいは、損傷または傷害の切迫した危険にある細胞の処置に適する。
【0017】
好ましい実施態様において、本発明のOP/BMPモルフォゲンは、ヒトOP−1のC末端7システインドメインに対して、少なくとも70%の相同性、より好ましくは80%の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。特に好ましい実施態様において、OP/BMPモルフォゲンは、ヒトOP−1のC末端7システインドメインに対して、少なくとも60%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも70%の同一性を有するポリペプチドを含む。最も好ましい実施態様において、OP/BMPモルフォゲンは、哺乳動物(好ましくは、ヒト)のOP−1、OP−2、OP−3、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、またはBMP9タンパク質のC末端の6または7システインのドメインを少なくとも含む。好ましくは、本発明のOP/BMPモルフォゲンは、Reddi−Sampathの異所性骨アッセイにおいて、骨形成を誘導し得る。
【0018】
好ましい実施態様において、本発明のGDNF/NGF神経栄養因子は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)のGDNF、NGF、BDNF、NT−3、NT−4、NT−5およびNT−6タンパク質の成熟した機能的形態を少なくとも含有する。
【0019】
好ましい実施態様において、有効濃度の調製物は、OP/BMPモルフォゲンの0.1ng/mlと10μg/mlとの間の、および、GDNF/NGF神経栄養因子の0.1ng/mlと10μg/mlとの間の濃度を含み、より好ましくは、OP/BMPモルフォゲンまたはGDNF/NGF神経栄養因子のいずれかの1ng/mlと100ng/mlとの間の濃度を含み、そして最も好ましくは、OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子の両方の1ng/mlと100ng/mlとの間の濃度を含む。
【0020】
別の局面において、本発明は、OP/BMP活性化セリン/スレオニンキナーゼレセプターおよびGDNF/NGF活性化チロシンキナーゼレセプターを発現する哺乳動物細胞(非神経細胞を含む)の生存または増殖を促進する方法か、またはその死または変性を阻害する方法を提供する。同様に、本発明は、OP/BMP活性化セリン/スレオニンキナーゼレセプターおよびGDNF/NGF活性化チロシンキナーゼレセプターを発現する細胞(非神経細胞を含む)に対する損傷または傷害を罹患したか、あるいは損傷または傷害の切迫した危険にある哺乳動物被検体を処置するための方法を提供する。これらの方法はまた、そのような細胞と、上記のように、GDNF/NGF神経栄養因子およびOP/BMPモルフォゲンを含む有効濃度の調製物とを接触させる工程を包含する。
【0021】
別の局面において、本発明は、哺乳動物細胞の生存または増殖を促進するための薬学的調製物、あるいは哺乳動物細胞(特に神経細胞)の死または変性を阻害するための薬学的調製物を提供し、この薬学的調製物は、OP/BMPモルフォゲンと組み合わせたGDNF/NGF神経栄養因子を含む。したがって、本発明は、以下をも提供する。
(項目1) 哺乳動物神経細胞の増殖を促進する方法であって、該方法が、以下:
(a)ヒトOP−1のC末端7システイン骨格に対して、少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を有する二量体タンパク質を含む、モルフォゲン、および、
(b)GDNF/NGF神経栄養因子、
を含む調製物と、神経細胞とを接触させる工程、
を包含する、方法。
(項目2) 哺乳動物神経細胞の変性を阻害する方法であって、該方法が、以下:
(a)ヒトOP−1のC末端7システイン骨格に対して、少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を有する二量体タンパク質を含む、モルフォゲン、および、
(b)GDNF/NGF神経栄養因子、
を含む調製物と、神経細胞とを接触させる工程、
を包含する、方法。
(項目3) 神経細胞に対する損傷または傷害に罹患した哺乳動物被検体を処置する方法であって、該方法が、以下:
(a)ヒトOP−1のC末端7システイン骨格に対して、少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を有する二量体タンパク質を含む、モルフォゲン、および
(b)GDNF/NGF神経栄養因子、
を含む調製物と、神経細胞とを接触させる工程、
を包含する、方法。
(項目4) 神経細胞に対する損傷または傷害の切迫した危険にある哺乳動物被検体を処置する方法であって、該方法が、以下:
(a)GDNF/NGF神経栄養因子、および、
(b)OP/BMPモルフォゲン、
を含む有効濃度の調製物と、該神経細胞とを接触させる工程、
を包含する、方法。
(項目5) 項目3〜4のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記損傷または傷害が、前記細胞を含有する組織に対する機械的外傷を含む、方法。
(項目6) 項目5に記載の方法であって、ここで、前記機械的外傷が、鈍力外傷性脳損傷、鈍力外傷性脊髄損傷、振とう症、脳水腫または硬膜下血腫に起因する頭蓋内圧、椎骨破壊または椎骨圧挫症、および神経断裂または神経切断からなる群から選択される、方法。
(項目7) 項目3〜4のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記損傷または傷害が、前記細胞を含有する組織に対する化学的外傷を含む、方法。
(項目8) 項目3〜4のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記損傷または傷害が、前記細胞を含有する組織の虚血を含む、方法。
(項目9) 項目3〜4のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記損傷または傷害が、神経障害疾患から生じる、方法。
(項目10) 項目9に記載の方法であって、ここで、前記神経障害疾患が、パーキンソン病、ハンティングトン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、癲癇、進行性筋萎縮、シャルコー−マリー−ツース病、麻痺、痴呆、シャイ−ドレーガー病、ヴェルニッケ−コルサコフ症候群、およびハレルフォルデン−シュパッツ病からなる群から選択される、方法。
(項目11) 項目1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記神経細胞が、ニューロンまたは神経膠細胞を含む、方法。
(項目12) 項目1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記神経細胞が、中枢神経系の神経細胞を含む、方法。
(項目13) 項目1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記神経細胞が、末梢神経系の細胞を含む、方法。
(項目14) 項目1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記OP/BMPモルフォゲンが、ヒトOP−1のC末端7システインドメインに対して、少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を含む、方法。
(項目15) 項目14に記載の方法であって、ここで、前記OP/BMPモルフォゲンが、ヒトOP−1のC末端7システインドメインに対して、少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含む、方法。
(項目16) 項目14に記載の方法であって、ここで、前記OP/BMPモルフォゲンが、ヒトOP−1のC末端7システインドメインに対して、少なくとも60%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含む、方法。
(項目17) 項目14に記載の方法であって、ここで、前記OP/BMPモルフォゲンが、ヒトOP−1のC末端7システインドメインに対して、少なくとも70%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含む、方法。
(項目18) 項目14に記載の方法であって、ここで、前記OP/BMPモルフォゲンが、OP−1、OP−2、OP−3、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、およびBMP9からなる群から選択される哺乳動物タンパク質のC末端の6または7システインのドメインを少なくとも含む、方法。
(項目19) 項目1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記OP/BMPモルフォゲンの有効濃度が、0.1ng/mlと10μg/mlとの間であり、そして前記GDNF/NGF神経栄養因子の有効濃度が、0.1ng/mlと10μg/mlとの間である、方法。
(項目20) 項目19に記載の方法であって、ここで、前記OP/BMPモルフォゲンの前記有効濃度が、1ng/mlと100ng/mlとの間である、方法。
(項目21) 項目19に記載の方法であって、ここで、前記GDNF/NGF神経栄養因子の前記有効濃度が、1ng/mlと100ng/mlとの間である、方法。
(項目22) 項目19に記載の方法であって、ここで、前記OP/BMPモルフォゲンの有効濃度が、1ng/mlと100ng/mlとの間であり、そして前記GDNF/NGF神経栄養因子の有効濃度が、1ng/mlと100ng/mlとの間である、方法。
(項目23) 項目1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記GDNF/NGF神経栄養因子が、GDNF、NGF、BDNF、NT−3、NT−4、NT−5およびNT−6からなる群から選択されるタンパク質の成熟した機能的形態を含む、方法。
(項目24) 哺乳動物細胞の生存または増殖を促進する方法であって、ここで、該細胞が、OP/BMP活性化セリン/スレオニンキナーゼレセプターおよびGDNF/NGF活性化チロシンキナーゼレセプターを発現し、ここで、該方法が、以下:
(a)GDNF/NGF神経栄養因子、および
(b)OP/BMPモルフォゲン、
を含有する有効濃度の調製物と、該細胞とを接触させる工程、
を包含する、方法。
(項目25) 哺乳動物細胞の死または変性を阻害する方法であって、ここで、該細胞が、OP/BMP活性化セリン/スレオニンキナーゼレセプターおよびGDNF/NGF活性化チロシンキナーゼレセプターを発現し、ここで、該方法が、以下:
(a)GDNF/NGF神経栄養因子、および
(b)OP/BMPモルフォゲン、
を含有する有効濃度の調製物と、該細胞とを接触させる工程、
を包含する、方法。
(項目26) 細胞に対する損傷または傷害に罹患した哺乳動物被検体を処置する方法であって、ここで、該細胞が、OP/BMP活性化セリン/スレオニンキナーゼレセプターおよびGDNF/NGF活性化チロシンキナーゼレセプターを発現し、ここで、該方法が、以下:
(a)GDNF/NGF神経栄養因子、および
(b)OP/BMPモルフォゲン、
を含有する有効濃度の調製物と、該細胞とを接触させる工程、
を包含する、方法。
(項目27) 細胞に対する損傷または傷害の切迫した危険にある哺乳動物被検体を処置する方法であって、ここで、該細胞が、OP/BMP活性化セリン/スレオニンキナーゼレセプターおよびGDNF/NGF活性化チロシンキナーゼレセプターを発現し、ここで、該方法が、以下:
(a)GDNF/NGF神経栄養因子、および
(b)OP/BMPモルフォゲン、
を含有する有効濃度の調製物と、該細胞とを接触させる工程、
を包含する、方法。
(項目28) 哺乳動物神経細胞の生存または増殖を促進するための薬学的調製物であって、該薬学的調製物が、以下:
(a)GDNF/NGF神経栄養因子、および
(b)OP/BMPモルフォゲン、
を含有する、薬学的調製物。
(項目29) 哺乳動物神経細胞の死または変性を阻害するための薬学的調製物であって、該薬学的調製物が、以下:
(a)GDNF/NGF神経栄養因子、および
(b)OP/BMPモルフォゲン、
を含有する、薬学的調製物。
【0022】
ここに記載する好ましい方法、物質、および実施例は、説明のみのためであって、限定を意図することはない。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】図1は、OP−1存在下および非存在下において、NT−3(2ng/ml)またはGDNF(50ng/ml)を用いた処置の、2または6日後に、コラーゲンゲル中で増殖した、分離した交感神経ニューロンの生存率を示す棒グラフである。
【図1B】図1は、OP−1存在下および非存在下において、NT−3(2ng/ml)またはGDNF(50ng/ml)を用いた処置の、2または6日後に、コラーゲンゲル中で増殖した、分離した交感神経ニューロンの生存率を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明は、組織(特に、神経組織)に対する損傷または傷害に罹患したまたはその切迫した危険にある哺乳動物被験体を処置する新規な方法を提供し、この方法は、OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子の組合せを投与する工程を包含する。驚くべきことに、これらの薬剤の組合せ投与は、神経組織の生存および/または成長を促進すること、および神経組織の死または変性を阻害することにおいて相乗効果を有することが実証された。さらに、本発明は、OP/BMPモルフォゲンをGDNF/NGF神経栄養因子と組み合わせて含む新規の薬学的組成物を提供する。
【0025】
本発明の特定の理論には束縛されることなく、OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子が、神経組織の生存および/または成長を促進すること、および神経組織の死または変性を阻害することにおいて、別個のレセプターに基づくシグナル伝達経路を通じて作用することによって、相乗効果を実行する。特に、OP/BMPタンパク質は、セリン/スレオニンキナーゼレセプターを通じて作用し、そして本発明のGDNF/NGF神経栄養因子は、チロシンキナーゼレセプターを通じて作用し、その結果、OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子が組み合わせて投与される場合、セリン/スレオニンキナーゼシグナル伝達経路およびチロシンキナーゼシグナル伝達経路の両方が活性化され、そして相乗効果が生成すると考えられる。
【0026】
従って、OP/BMPモルフォゲンは、セリン/スレオニンキナーゼレセプターを通じて作用することが示されており、そしてこれらのレセプターは末梢神経系組織および中枢神経系組織の両方において発現することが示されている。例えば、インサイチュハイブリダイゼーションによって、いくつかのクラスの末梢ニューロンが、OP/BMPモルフォゲンファミリーのメンバーに結合することが公知であるBMP II型のセリン/スレオニンキナーゼレセプターを発現すること(Liuら、Mol.Cell.Biol.15:3479−3486(1995);Rosenzweigら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)92:7632−7636(1995))、ならびにOP/BMPI型およびII型セリン/スレオニンレセプターがCNSにおいて発現することが示された。Soederstroemら、Cell Tiss.Res. 286:269−279(1996a);Nosratら、Cell.Tiss.Res.286:191−207(1996)。
【0027】
同様に、GDNF/NGF神経栄養因子は、神経組織において発現される特定のチロシンキナーゼレセプターを通じて作用することが示された。従って、例えば、GDNFのシグナル伝達経路は、チロシンキナーゼレセプターRet(Truppら、Nature 381:785−780(1996)、これは、交感神経系、結節、および毛様体神経節を含む神経組織において発現される)の活性化を含むことが示された。同様に、NT−3は、TrkCレセプターを介して作用し、そしてある程度、TrkAレセプターを介して作用する。例えば、Ebendal、J.Neurosci.Res.32:461−470(1992)を参照のこと。これらのレセプターは、脳および脊髄ならびに末梢ニューロンにおいて発現する。例えば、VazquezおよびEbendal、Neuro.Report 2:593−596(1991);PeiおよびEbendal、Exp.Neurol.132:105−115(1995);Soederstroemら、Dev.Brain Res.85:96:108(1995);Hallboeoekら、Int.J.Dev.Biol.39:855−868(1995);WilliamsおよびEbendal、Neuro Report 6:2277−2282(1995);Williamsら、Eur.J.Neurosci.7:116−128(1995)を参照のこと。
【0028】
従って、1つの局面において、本発明は、神経組織の生存および/または成長を促進するか、あるいは神経組織の死または変性を阻害する方法を提供する。この方法は、OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子を組み合わせて哺乳動物を投与することによってOP/BMP活性化セリン/スレオニンキナーゼ経路およびGDNF/NT活性化チロシンキナーゼ経路の両方を活性化することによる。別の局面において、本発明は、神経組織の生存および/または成長を促進すること、あるいは神経組織の死また
は変性を阻害することにおいて使用するためであり、そしてOP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子を組み合わせて含む新規の薬学的組成物を提供する。
【0029】
別の局面において、本発明は、神経組織でない組織の処置のための方法および薬学的組成物を提供する。特に、OP/BMP活性化セリン/スレオニンキナーゼレセプターおよびGDNF活性化チロシンキナーゼレセプターを発現する非神経組織が種々存在し、これには、腎臓組織および多くの甲状腺乳頭ガンを含む(例えば、Schuchardtら、Nature 367:380−383(1994);Pachnisら、Development 119:1005−1017(1993)を参照のこと)。従って、本発明はまた、このような非神経組織の生存および/または成長を促進する方法またはこのような非神経組織の死または変性を阻害する方法を提供する。この方法は、OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子を組み合わせて哺乳動物に投与し、それにより、OP/BMP活性化セリン/スレオニンキナーゼ経路およびGDNF/NT活性化チロシンキナーゼ経路の両方を活性化することによる。同様に、本発明は、非神経組織の生存および/または成長を促進するか、またはこのような非神経組織の死または変性を阻害することにおいて使用するための新規の薬学的組成物を提供し、この組成物は、OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子を組み合わせて含む。
【0030】
(A.OP/BMPモルフォゲン)
本発明のOP/BMPモルフォゲンは、タンパク質のTGF−βスーパーファミリー内の骨形成タンパク質/骨形態形成性タンパク質(OP/BMP)ファミリーの天然に存在するタンパク質であるか、または天然に存在するタンパク質の機能的改変体である。すなわち、これらのタンパク質は、TGF−βスーパーファミリーとして公知の配列が関連するタンパク質の大まかな進化的グループ分けの中に入る、本明細書において「OP/BMPモルフォゲン」と言及される異なるサブグループを形成する。このタンパク質ファミリーのメンバーは、共通の構造特徴を共有し、そしてカルボキシ末端成熟タンパク質を生成するためにプロタンパク質から類似にプロセシングされている分泌ポリペプチドを含む。成熟タンパク質の内において、すべてのメンバーは、97〜106アミノ酸ドメインを規定する、6または7個のシステイン残基の保存パターンを共有する。そして、これらのタンパク質の活性形態は、単一のファミリーのメンバーのジスルフィド結合ホモ二量体または2つの異なるメンバーのヘテロ二量体のいずれかである。例えば、Massague、Annu.Rev.Cell.Biol.6:597(1990);Sampathら、J.Biol.Chem.265:13198(1990)を参照のこと。例えば、その成熟したネイティブ形態において、天然起源のヒトOP−1は、代表的には、SDS−PAGEで決定される場合、約30〜36kDaの見かけ上の分子量を有するグリコシル化された二量体である。還元された場合、この30kDaタンパク質は、約16kDaおよび18kDaの見かけ上分子量を有する2つのグリコシル化されたペプチドサブユニットを生じる。非グリコシル化タンパク質は、約27kDaの見かけ上の分子量を有する。還元された場合、この27kDaタンパク質は、約14kDaおよび16kDaの分子量を有する、2つの非グリコシル化されたポリペプチド鎖を生じる。
【0031】
代表的に、天然に生じるOP/BMPタンパク質は、N末端シグナルペプチド配列、「プロ」配列、および「成熟」タンパク質ドメインを有する前駆体として翻訳される。シグナルペプチドは、代表的に、30残基未満であり、そしてVon Heijne、Nucleic Acids Research 14:4683−4691(1986)の方法を用いて推定され得る切断部位で翻訳の際に迅速に切断される。「プロ」ドメインは、配列および長さの両方において可変であり、約200〜400超の残基にまで及ぶ。プロドメインが切断されて、約115〜180残基の「成熟」C末端ドメインが得られ、これは、97〜106残基の保存された6または7個のシステインのC末端ドメインを含む。本明細書において使用される場合、OP/BMPファミリーメンバーの「プロ形態」とは、ポリペプチドの折り畳まれた対を含むタンパク質である。このポリペプチドは、各々がOP/BMPポリペプチドの成熟ドメインと共有結合または非共有結合のいずれかで結合するプロドメインを含む。代表的には、このタンパク質のプロ形態は、生理的条件下で成熟形態より可溶性である。プロ形態は、培養された哺乳動物細胞から分泌される一次形態であるようである。このタンパク質の「成熟形態」は、そのプロドメインとは共有結合的または非共有結合的のいずれかでは結合していない成熟C末端ドメインを含む。任意のOP−1の調製物は、その調製物におけるプロドメインの量が「成熟」C末端ドメインの量の5%以下であるとき、成熟形態を含むとみなされる。
【0032】
本明細書において有用なOP/BMPファミリーメンバーは、天然に存在する公知のネイティブタンパク質のいずれかであり、これには、対立遺伝子改変体、系統発生的対応物およびその他の改変体(これらは、天然源由来または生合成的にのいずれかで産生される(例えば、「ムテイン」または「ムテインタンパク質」を含む))、ならびにOP/BMPタンパク質ファミリーの新たな活性メンバーが含まれる。
【0033】
特に有用な配列は、哺乳動物のC末端7システインドメインを含む配列を包含し、好ましくは、ヒト、ヒトOP−1、OP−2、OP−3、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP8、およびBMP9を含む。本発明の実施において有用な他のタンパク質は、GDF−5、GDF−6、GDF−7、DPP、Vgl、Vgr−1、60A、GDF−1、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、BMP10、BMP11、BMP13、BMP15、UNIVIN、NODAL、SCREW、ADMP、またはNURALならびにそれらのアミノ酸配列改変体の活性形態を含む。現在好ましい1つの実施態様において、本発明のOP/BMPモルフォゲンは、OP−1、OP−2、OP−3、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、およびBMP9のいずれか1つから選択される。
【0034】
これらの配列を開示する刊行物、ならびにそれらの化学的および物理的特性は、以下を含む:OP−1およびOP−2:米国特許第5,011,691、米国特許第5,266,683およびOzkaynakら、EMBO J.9:2085−2093(1990);OP−3:WO94/10203;BMP2、BMP3、およびBMP4:米国特許第5,013,649、WO91/18098、WO88/00205、およびWozneyら、Science 242:1528−1534(1988);BMP5およびBMP6:WO90/11366およびCelesteら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)87:9843−9847(1991);Vgr−1:Lyonsら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)86:4554−4558(1989);DPP:Padgettら、Nature 325:81−84(1987);Vgl:Weeks、Cell 51:861−867(1987);BMP9:WO95/33830;BMP10:WO94/26893;BMP−11:WO94/24892:BMP12:WO95/16035;BMP−13:WO95/16035;GDF−1:WO92/00382およびLeeら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88:4250−4254(1991);GDF−8:WO94/21681;GDF−9、WO94/15966;GDF−10:WO95/10539;GDF−11:WO96/01845;BMP−15:WO96/36710;MP121:WO96/01316;GDF−5(CDMP−1、MP52):WO94/15949、WO96/14335、WO93/16099およびStormら、Nature 368:630−643(1994);GDF−6(CDMP−2、BMP13):WO95/01801、WO96/14335およびWO95/10635;GDF−7(CDMP−3、BMP12):WO95/10802およびWO95/10635;BMP−3b:Takaoら、Biochem.Biophys.Res.Comm.219:656−662(1996);GDF−3:WO94/15965;60A:Baslerら、Cell 73:687−702(1993)ならびにGenBank登録番号L12032。別の実施態様において、有用なタンパク質は、生物学的に活性な生合成構築物を含み、これには、2以上の公知のOP/BMPファミリータンパク質由来の配列を用いて設計された新規の生合成タンパク質およびキメラタンパク質が含まれる。米国特許第5,011,691に開示される生合成構築物もまた参照のこと(この開示は本明細書において参考として援用される)(例えば、COP−1、COP−3、COP−4、COP−5、COP−7およびCOP−16)。
【0035】
他の好ましい実施態様において、本明細書において有用なOP/BMPモルフォゲンは、ヒトOP−1の活性形態(すなわち、米国特許第5,266,683号の配列番号2で示される場合残基330〜441)に存在するC末端7システインドメインと、少なくとも70%のアミノ酸配列「相同性」、そして好ましくは、75%または80%の相同性を共有するアミノ酸配列を含むタンパク質を包含する。他の好ましい実施態様において、本明細書において有用なOP/BMPモルフォゲンは、ヒトOP−1の活性形態に存在するC末端7システインドメインと、少なくとも60のアミノ酸配列同一性、そして好ましくは、65%または70%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むタンパク質を包含する。従って、候補アミノ酸配列は、Alignプログラム(DNAstar、Inc.)のようなコンピュータープログラムによって簡便に実行されるNeedlemanら、J.Mol.Biol.48:443−453(1970)の方法を用いて、ヒトOP−1のC末端7システインドメインのアミノ酸配列と整列され得る。当業者に理解されるるように、相同性または機能的に等価な配列は、保存されたシステイン骨格内のシステイン残基の機能的に等価な配列を含み、これには、これらのシステインの直鎖整列を変更するアミノ酸挿入または欠失が含まれるが、二量体タンパク質の折り畳み構造におけるそれらの関係を物質的に損なわず、これには、生物学的活性に必要であり得る鎖内または鎖間のジスルフィド結合のようなものを形成する能力が含まれる。従って、候補配列における内部ギャップおよびアミノ酸挿入は、候補配列と参照配列との間のアミノ酸の相同性または同一性のレベルを計算する目的で無視される。
【0036】
「アミノ酸配列の相同性」とは、本明細書において、アミノ酸配列同一性および類似性の両方を含むことが理解される。従って、本明細書において使用される場合、2つのアミノ酸配列間の「相同性」パーセントとは、それらの配列の間の同一であるかまたは類似するアミノ酸残基のパーセントを示す。「類似」残基は、Dayhoffら、Atlas of Protein Sequence and Structure 第5巻(補遺3)、354〜352頁(1978)、Natl.Biomed.Res.Found.Washington,D.C.において「受容された点変異」について規定された基準を満たす「保存的置換」である。従って、「保存的アミノ酸置換」は、類似の大きさ、形状、電荷、および/または化学特性(例えば、共有結合または水素結合を形成する能力)などを有する、対応する参照残基に物理的または機能的に類似な残基である。保存的置換の例は、あるアミノ酸を類似の特徴を有する別のアミノ酸へと置換することを含み、例えば、以下の群内の置換:(a)バリン、グリシン;(b)グリシン、アラニン;(c)バリン、イソロイシン、ロイシン;(d)アスパラギン酸、グルタミン酸;(e)アスパラギン、グルタミン;(f)セリン、スレオニン;(g)リジン,アルギニン,メチオニン;ならびに(h)フェニルアラニン、チロシン。用語「保存的置換」または「保存的改変」はまた、得られる置換されたポリペプチド鎖が本発明において有用な生物学的活性を有する限り、所定のポリペプチド鎖における置換されていないもとのアミノ酸の代わりの置換されたアミノ酸の使用を含む。
【0037】
本発明のOP/BMPモルフォゲンは、当業者によって容易に確認され得る生物学的活性によって特徴付けられる。具体的には、本発明のOP/BMPモルフォゲンは、Reddi−Sampath異所性骨アッセイ(SampathおよびReddi、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)78:7599−7603(1981)))または実質的に等価なアッセイにおいて骨形成性を誘発し得る、
Reddi−Sampath異所性骨アッセイは、骨形成活性のアッセイとして当該分野で周知である。このアッセイは、容易に実施され得、そして例えば、SampathおよびReddi、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)78:7599−7603(1981);ならびにWozney、「Bone Morphogenic Proteins」、Progress in Growth Factor Research 1:267−280(1989)に記載されそして議論される。他の動物および組織部位を用いる多くの等価なアッセイが、本発明のOP/BMPモルフォゲンの生物学的活性を評価するために当業者によって使用され得るかまたは開発され得る。例えば、米国特許第5,226,683号に記載されるバイオアッセイを参照のこと。
【0038】
本明細書において意図されるOP/BMPモルフォゲンは、原核生物または真核生物の宿主細胞において、インタクトまたは短縮型のゲノムまたはcDNAあるいは合成DNAから発現され得る。二量体タンパク質は、培養培地から単離され得、そして/またはインビトロで再折り畳みおよび二量体化されて生物学的に活性な調製物を形成し得る。ヘテロ二量体は、インビトロで、別個で異なるポリペプチド鎖を合わせることによって形成され得る。あるいは、ヘテロ二量体は、単一の細胞において、別個で異なるポリペプチド鎖をコードする核酸を同時発現することによって形成され得る。例えば、いくつかの例示的な組換えへテロ二量体タンパク質産生プロトコルについて、WO93/09229または米国特許第5,411,941号を参照のこと。現在好ましい宿主細胞は、限定することなく、E.coliを含む原核生物、または酵母(例えば、Saccharomyces)、昆虫細胞、哺乳動物細胞(例えば、CHO、COSまたはBSC細胞)を含む真核生物を包含する。当業者は、他の宿主細胞が有利に使用され得ることを理解する。本発明の実施において有用なタンパク質の詳細な説明(それらの作製方法、使用方法および骨形成性についての試験方法を含む)は、多数の刊行物に開示されており、この刊行物は、米国特許第5,266,683号および同5,011,691号を含み、それらの開示は、本明細書において参考として援用される。
【0039】
(B.GDNF/NGF神経栄養因子)
本発明の方法および調製物において有用であるGDNF/NGF神経栄養因子は、ポリペプチドならびにポリペプチドの機能的改変体を含み、それには、GDNF、BDNF、NGF,NT−3、NT−4、NT−5およびNT−6からなる群より選択される成熟哺乳動物タンパク質の少なくとも活性部分が含まれる。これらの好ましいGDNF/NGF神経栄養因子の各々を以下に別個に説明する。
【0040】
1.GDNF。グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)は、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーに属するが、TGF−βスーパーファミリー内のOP/BMPファミリーには属さない、神経栄養因子である。GDNFは、インビトロ(Linら、Science 260:1130−1132(1993))および動物モデルにおけるインビボ(Hudsonら、Brain Res.Bull.36:425−432(1995);Hofferら、Neurosci. Lett.182:107−111(1994)の両方で、ドパミン作用性ニューロンについて強力な生存および分化促進効果を示す。GDNFはまた、脳幹および脊髄のコリン作用性運動ニューロンに対して神経栄養効果を有することが示されている。Oppenheimら、Nature 373:344−346(1995);Yanら、Nature 373:341−344(1995)。成熟哺乳動物GDNFタンパク質の活性部分の記載は、例えば、Linら、Science 260:1130−1132(1993);Linら、J;Neurochem.63:758−768(1994);ならびにPCT公開WO97/11965に見い出され得る。手短には、GDNFは、前駆体として合成され、そしてTGF−βタンパク質スーパーファミリーを特徴付ける7システインドメインを含む134アミノ酸を含有する成熟タンパク質として分泌される。最初のMet残基が省略されているGDNFの133アミノ酸改変体([Met-1]GDNF)は、実質的に等価な生物学的活性を有する。例えば、WO97/11965を参照のこと。本明細書において使用される場合、用語「GDNF」は、少なくとも134アミノ酸成熟形態を含むポリペプチドならびにそのポリペプチドの機能的改変体(例えば、保存的アミノ酸置換改変体または133アミノ酸改変体)を包含する。
【0041】
2.NGF。神経成長因子(NGF)は、「ニューロトロフィン」タンパク質ファミリーの最も良く特徴付けられたメンバーであり、このファミリーの他のメンバーは、下記のように、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、ニューロトロフィン−4(NT−4)、ニューロトロフィン−5(NT−5)、およびニューロトロフィン−6(NT−6)を含む。NGFは、樹状突起成長の初期段階の調節において役割を果たすこと、ならびにコリン作用性ニューロンの生存、成長および/または修復の促進、およびコリン作用性ニューロンの分化した表現型の維持を補佐することが示されている。例えば、NGFは、培養物中の樹状突起を形成する神経節ニューロンの小集団を発生させ得(De Koninckら、J.Neurosci.13:577−585(1993))、そしてインサイチュに注射されたときに交感神経樹状突起の成長を促進し得る(Snider、J.Neurosci.8:2628−2634(1988))。しかし、NGF単独は、交感神経ニューロンの培養物中での樹状突起成長を支持しない。BrickensteinおよびHiggins、Dev.Biol.128:324−326(1988)。さらに、NGFは、アルツハイマー病の標準的な采/脳弓軸策切断モデルにおいて誘導されるコリン作用性ニューロンの萎縮を予防または反転さえさせるのに有効であることが示されている。例えば、Batchelorら、J.Comp.Neurol.284:204(1989);Heftiら、J.Neurobiol.25:1418−1435(1994);Olsonら、Neurochem.J.25:1−3(1994)を参照のこと。本明細書において使用される場合、用語「NGF」は、少なくとも成熟形態を含むポリペプチドならびにそのポリペプチドの機能的改変体(例えば、保存的アミノ酸置換改変体)を包含する。
【0042】
3.BDNF。脳由来神経栄養因子(BDNF)は、タンパク質の神経栄養因子の別のメンバーであり、これは、細胞培養物中の胎性黒質DAニューロンによるドパミン取り込みを増強すること(Beckら、Neurosci.52:855−866(1993);Knuselら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88:961−969(1991))、ならびに神経毒素であるN−メチル−4−フェニルピリジニウムイオンおよび6−ヒドロキシドパミン(6−ODHA)の毒性効果からDAニューロンを部分的に保護することが示されている。Hymanら、Nature 350:230−232(1991)。BDNFはまた、培養された黒質DAニューロンの生存に対して強力な支持効果を有することが示されている。Beckら、Neurosci.52:855−866(1993);Hymanら、Nature 350:230−232(1991);Knuselら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88:961−965(1991)。これらの知見は、BDNFがインビボで移植されたDAニューロンに対して生存増強効果を有し得ることを示唆する。BDNF処置は、移植後2週間でのアンフェタミン誘導回転における相対的減少によって示されるように、移植された黒質DNAニューロンの、片側6−ODHA損傷させたラットのDA涸渇線条に対する行動効果を増強する。Sauerら、Brain Research 626:37−44(1993)。しかし、この研究は、移植されたDAニューロンからの神経突起の成長(outgrowth)の程度において、処置された動物とコントロール動物との間の顕著な相違を何ら確立し得なかった。従って、BDNFの注入は、胎性黒質組織を移植されたラットにおいて、いくつかの行動および形態学的効果を生成したが、移植されたドパミン細胞の生存率を増加させ得なかった。本明細書において使用される場合、用語「BDNF」は、少なくとも成熟形態を含むポリペプチドならびにそのポリペプチドの機能的改変体(例えば、保存的アミノ酸置換改変体)を包含する。
【0043】
4.NT−3。本明細書において使用される場合、「NT−3」とは、以下の文献において実質的に刊行されたタンパク質配列を有する、ヒトタンパク質または哺乳動物のその相同体を意味する:Jonesら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)87:8060−8064(1990);Maisonpierreら、Genomics 10:558−568(1991);Kaishoら、FEBS Lett.266:187−191(1990);Wo91/03569、そしてこれはGenBank登録番号M37763を通して利用可能である。ヒトNT−3の単離および/または特徴付けは、例えば、Jonesら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)87:8060−806(1990);およびMaisonpierreら、Science 247:1446−1451(1990)に記載される。マウスNT−3配列は、Hohneら、Nature、344:339−341(1990);WO91/03569、ならびにGenBank登録番号X53257に開示される。ラットNT−3遺伝子配列は、Ernforsら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)87:5454−5458(1990);WO91/03569;ならびにGenBank登録番号M34643に開示される。ヒトNT−3前駆体と、ラットおよびマウスNT−3前駆体との比較は、成熟形態が同一であることを示す。ヒトNT−3についての遺伝子は、18アミノ酸シグナルペプチドを有する推定257アミノ酸前駆体をコードし、これは、119アミノ酸成熟ペプチドへとプロセシングされる。NT−3 RNAは、小脳、基底核、脳幹神経節、海馬および視覚皮質を含むヒトCNS組織において検出されている。Maisonpierreら、Genomics 10:558−568(19911)、ヒトNT−3は、ヒトNGFおよびヒトBDNFと56%アミノ酸同一性を共有しており、そしてニューロトロフィンファミリーの他のメンバーと保存された6システインを共有し、これらの3つのタンパク質の間で最も相同である領域は、これらのシステイン残基の周りにクラスター化されている。用語「NT−3」は、本明細書において使用される場合、Jonesら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)87:8060−806(1990)において開示される成熟119アミノ酸形態を少なくとも含むポリペプチド、ならびに保存的アミノ酸置換改変体のようなポリペプチドの機能的改変体を包含する。
【0044】
5.NT−4.本明細書において使用される場合、「NT−4」とは、Ipら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)89:3060−3064(1992);米国特許第5,364,769号において本質的に刊行され、そしてGenBank登録番号M86528号から利用可能なタンパク質配列を有する、ヒトタンパク質または哺乳動物相同体を意味する。NT−4の単離および/または特徴付けは、例えば、Ipら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)89:3060−3064(1992);Hallboeoekら、Neuron6:845−858(1991);ならびにIbanezら、Development 117:1345−1353(1993)に記載される。完全なNT−4遺伝子配列は、推定シグナルペプチド配列およびおよそ60アミノ酸のプロ領域を含む、236アミノ酸の27kD前駆体タンパク質(これは、130アミノ酸成熟ヒトNT−4ポリペプチドへとプロセシングされると考えられる)をコードする。NT−4の成熟形態は、NGF、BDNFおよびNT−3と、それぞれ、46.5%、55.4%、および52.2%の配列同一性を共有する。NT−4は、ニューロトロフィンファミリーの保存された6システインを含むが、第二のシステインと第三のシステインとの間の位置する7つのアミノ酸挿入を含む。NT−4は、マウスにおいて三叉神経神経節(Ibanezら、Development 117:1345−1353(1993))およびニワトリにおいて後根神経節(Ipら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)89:3060−3064(1992))のニューロンの生存を支持することが示されている。ラットにおいて、NT−4 mRNAは、脊髄および小脳および皮質を含むいくつかの脳領域において見出されている。用語「NT−4」は、本明細書において使用される場合、Ipら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)89:3060−3064(1992)において開示されるような成熟130アミノ酸形態を少なくとも含むポリペプチド、ならびに保存的アミノ酸置換改変体のようなポリペプチドの機能的改変体を包含する。
【0045】
6.NT−5。本明細書で用いられるとき、用語「NT−5」は、本質的にBerkemeierら、Neuron 7:857〜866(1991)に記載のようなタンパク質配列を有する、ヒトタンパク質、またはその哺乳動物相同体を意味する。NT−5の単離および/または特徴付けは、例えば、Berkemeierら、Neuron 7:857〜866(1991)およびBerkemeierら、Som.Cell Mol.Genet.18:233〜245(1992)に記載されている。NT−5に対するヒト遺伝子は、推定の210アミノ酸の22.4kD前駆体タンパク質をコードする。割り当てられた開始コドンの後には、切断部位がSer−24にある推定のシグナル配列が続く。NT−5の推定のプレプロ配列は、その他の神経栄養因子のそれより約50アミノ酸短い。このNT−5前駆体の、アフリカツメガエルNT−4、ヒトNT−3、ヒトBDNFおよびヒトNGFとの全体の相同性は、それぞれ、52%、45%、47%および41%である。成熟NT−5は、123アミノ酸長であり、そして神経栄養因子ファミリーで保存された6つのシステインを共有する。NT−5は、NGFと50%の相同性、BDNFと56%の相同性、NT−3と55%の相同性およびアフリカツメガエルNT−4と66%の相同性を共有する。ラットNT−5遺伝子は、そのヒト相当物に91%同一である、209アミノ酸タンパク質をコードする。Berkemeierら、Neuron 7:857〜866(1991)。NT−5タンパク質は、成体ラット脳において同定され、そして脊髄神経節感覚細胞のための生存因子として作用し、かつ交感神経神経節ニューロンの生存およびそれからの軸索成長を促進する。Berkemeierら、Neuron 7:857〜866(1991)。本明細書で用いる用語「NT−5」は、成熟123アミノ酸形態を含むポリペプチド、および保存的アミノ酸置換改変体のようなこのペプチドの機能的改変体を含む。
【0046】
7.NT−6。本明細書で用いられるとき、「NT−6」は、本質的にGotzら、Nature 327:266〜269;WO95/26363(1994);およびGenBank登録番号L36325およびL36942を通じて入手可能なタンパク質配列を有する、ヒトタンパク質、またはその哺乳動物相同体を意味する。NT−6の単離および特徴付けは、例えば、Gotzら、Nature 327:266〜269(1994)に記載されている。NT−6前駆体は、シグナルペプチドに特徴的なN末端(残基1〜19)に疎水性ドメイン、および残基20〜142に推定のプロ領域を有する286アミノ酸を含む。この推定の成熟タンパク質は、残基143で始まる。NT−6は、すべての神経栄養因子に見出される保存された6システインを共有するが、第2と第3の保存されたシステイン含有ドメインの間に22残基の挿入物を含む。本明細書で用いられる用語「NT−6」は、Gotzら、Nature 327:266〜269(1994)に開示される成熟119アミノ酸形態を含むポリペプチド、および保存的アミノ酸置換改変体のようなこのポリペプチドの機能的改変体を含む。
【0047】
(C.処置のための被験体)
本発明の方法に従う処置のための被験体は、以下を含むが、これらに制限されない:(1)頭部への鈍力外傷、脳水腫、硬膜下血腫、椎骨破壊または椎骨圧捻、または神経断裂または神経切断(手術手順に起因するそれらを含む)から生じるような機械的外傷に起因した、損傷した神経組織を有するか、または損傷の切迫した危険にある被験体;(2)例えば、神経毒(例えば、鉛、エタノール、アンモニア、ホルムアルデヒド、水銀)への曝露、または神経毒性副作用を有する化学的治療剤(例えば、シスプラチン)の投与から生じ得るような、神経組織への化学的外傷を罹患したか、または罹患する切迫した危険にある被験体;(3)神経組織への虚血傷害(例えば、脳卒中)を罹患したか、または罹患する切迫した危険にある被験体;および(4)神経障害または神経変性疾患を罹患したか、または罹患する切迫した危険にある被験体。特に意図されるのは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性筋萎縮症、遺伝性運動および感覚神経障害(シャルコー−マリー−ツース病)、アルツハイマー病、てんかん、ハンチントン病、パーキンソン病、麻痺、痴呆、シャイ−ドレーガー病、ウェルニッケ−コルサコフ症候群、およびハレルホルデン−シュパッツ病からなる群から選択される神経障害または神経変性疾患と診断されたか、または切迫した危険にあるヒト被験体の処置である。
【0048】
ALS、進行性筋萎縮症、および遺伝性運動および感覚神経障害(シャルコー−マリー−ツース病)のような疾患はすべて、少なくとも一部分は、脊髄の前角中に位置する運動ニューロンの変性から生じる。従って、1つの実施態様では、本発明は、運動ニューロンの損失またはそれの損傷を含むこれらまたはその他の症状の処置のための、GDNF/NGF神経栄養因子と組み合わせたOP/BMPモルフォゲンを利用する方法および調製物を提供する。
【0049】
脳の大脳皮質の一部分である良く規定された構造の海馬は、長期間の記憶の形成に重要である。海馬のCA1領域に位置する錐体CA1ニューロンの変性は、アルツハイマー病の1つの特徴である。これらの同じニューロンは、発作および頭部外傷のような症状で起こる虚血および無酸素性損傷で選択的に傷つき易い。さらに、CA1錐体海馬ニューロンおよび海馬のCA3領域に位置する錐体ニューロンは、てんかんで選択的に損傷される。従って、1つの実施態様では、本発明は、海馬ニューロンの損失またはそれに対する損傷を含むこれらまたはその他の症状の処置のための、GDNF/NGF神経栄養因子と組み合わせたOP/BMPモルフォゲンを利用する方法および調製物を提供する。
【0050】
線条中のニューロンの大部分は、GABA(4−アミノ酪酸)をそれらの神経伝達物質として利用し、そして「GABA作動性」ニューロンと称され得る。線条はまた、ハンチントン病で起こる進行性神経変性の主要な標的であり、そこでは、線条のGABA利用性ニューロン(例えば、棘細胞(spiny cell)ニューロンおよびエンケファリンニューロン)が萎縮および/または死亡する。従って、1つの実施態様では、本発明は、線条またはGABA作動性ニューロンの損失またはそれに対する損傷を含むこれらまたはその他の症状の処置のための、GDNF/NGF神経栄養因子と組み合わせたOP/BMPモルフォゲンを利用する方法および調製物を提供する。
【0051】
ドパミン産生性(「ドパミン作動性」または「DA」)ニューロンは、黒質中に主に、そしてより少ない程度で、隣接する線条(尾状核、被殻、淡蒼球、青斑(locus coerulus)を含む)に位置する。線条のニューロンは、ドパミンに対するレセプターを発現し、そして運動活性の制御に応答性である。従って、DAニューロンの変性は、ドパミンレベルの減少および運動活性の損失を生じる。特に、黒質中のドパミン作動性ニューロンの進行性変性は、パーキンソン病の特徴である、随意筋運動の開始および実行の遅延(運動緩徐)、筋硬直、およびふるえに至り得る。従って、1つの実施態様では、本発明は、黒質のニューロンを含む、ドパミン作動性ニューロンの損失またはそれに対する損傷を含むこれらまたはその他の症状の処置のための、GDNF/NGF神経栄養因子と組み合わせたOP/BMPモルフォゲンを利用する方法および調製物を提供する。
【0052】
神経細胞の集団が失われるかまたは損傷を受けるその他の神経障害性の症状は、麻痺、痴呆、シャイ−ドレーガー病、ウェルニッケ−コルサコフ症候群、およびハレルホルデン−シュパッツ病を含む。従って、他の実施態様では、本発明は、神経組織の損失または損傷を含むこれらまたはその他の症状の処置のための、GDNF/NGF神経栄養因子と組み合わせたOP/BMPモルフォゲンを利用する方法および調製物を提供する。
【0053】
(D.薬学的調製物)
本発明の薬学的調製物は、少なくとも1つのGDNF/NGF神経栄養因子と組み合わせた少なくとも1つのOP/BMPモルフォゲンを含む。好ましくは、このような調製物は、単独で投与される場合有効である各薬剤の量を含む。しかし、組み合わせた薬剤の相乗効果のため、この薬学的調製物は、その他の非存在下で投与される場合に単独では有効であり得ない、各試薬の量を含み得る。薬剤の適切な比率の決定は、所定の症状の処置について、OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子の所定の組み合わせについて、および所定の投与経路について、当業者の能力および裁量の範囲内である。
【0054】
一般的事項として、本発明の薬学的調製物は、少なくとも1つのOP/BMPモルフォゲンおよび少なくとも1つのGDNF/NGF神経栄養因子を含み、インビトロアッセイ、動物モデル、および臨床研究を用いて試験され得る。この調製物の有効濃度は、(1)神経成長のインビトロアッセイにおいて増大した軸索成長を引き起こすため;(2)パーキンソン病の標準的な動物モデルにおいて運動技術改善を引き起こすために;または(3)哺乳動物被験体(例えば、ヒト被験体)に投与されるとき、神経学的機能において臨床的に有意な改善を引き起こすために十分な濃度である。
【0055】
(E.投与のための方法および処方物)
少なくとも1つのOP/BMPモルフォゲンおよび少なくとも1つのGDNF/NGF神経栄養因子を含む本発明の薬学的調製物は、任意の適切な手段により、好ましくは直接(例えば、組織部位への注射によるなど局所的に)、または全身的に(例えば、非経口的または経口的に)個体に投与され得る。この調製物が、静脈内、皮下、筋肉内、眼窩内、眼内、脳室内、頭蓋内、嚢内、脊髄内、槽内、腹腔内、または頬投与によるような、非経口的に投与される場合、好ましくは、調製物は、水性溶液の一部を構成する。この溶液は、患者への所望のOP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子の送達に加えて、溶液が、その他に患者の電解質および容量バランスに悪影響を与えないように、生理学的に受容可能であるように選択される。
【0056】
非経口的投与のために有用な溶液は、薬学の分野で周知の種々の方法により調製され得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical
Sciences、Gennaro、A編、Mack Pub.、(1990)を参照のこと。処方物は、例えば、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、植物起源のオイル、硬化ナフタレンなどを含み得る。直接投与のための処方物は、特に、グリセロールおよびその他の高粘度の調製物を含み得る。例えば、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポリ酪酸、リン酸三カルシウム、ラクチドおよびラクチド/グリコリドコポリマーを含む、生体適合性、好ましくは生体再吸収可能なポリマーは、インビボで調製物の放出を制御する有用な賦形剤である。これら調製物のための潜在的に有用なその他の非経口的送達系は、エチレン−酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な浸剤系、およびリポソームを含む。
【0057】
当業者により認識されるように、薬学的調製物中に存在する薬剤の量および/または濃度は、投与されるべき薬物の用量、採用される薬剤の化学的特性(例えば、疎水性)、および投与経路を含む多くの因子に依存して変化する。好適な用量はまた、処置されるべき損傷または傷害のタイプおよび程度、被験体の全体的な健康状態、採用される薬剤の相対的生物学的効力、賦形剤または希釈剤の存在などのような変数に依存し得る。
【0058】
一般的事項として、本発明の薬学的調製物は、神経組織損傷または傷害の部位、またはそのような傷害の切迫した危険にある部位で、OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子の有効濃度を達成するに十分な量で投与される。好ましくは、この調製物は、投与の選択された経路により投与される場合、約0.1ng/ml〜10μg/mlの、より好ましくは約1ng/ml〜100ng/mlのOP/BMPモルフォゲンの濃度を生じるようなOP/BMPモルフォゲンの量を含む。同様に、好ましくは、この調製物は、投与の選択された経路により投与される場合、約0.1ng/ml〜10μg/mlの、より好ましくは約1ng/ml〜100ng/mlのGDNF/NGF神経栄養因子の濃度を生じるようなGDNF/NGF神経栄養因子の量を含む。OP/BMPモルフォゲンとGDNF/NGF神経栄養因子との相乗作用のため、最適濃度および比は、採用される特定の薬剤に依存して変化し得る。
【0059】
神経経路のニューロンへの損傷が、例えば、手術手順の一部として慎重に誘導される場合、好ましくは、OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子は、外傷の誘導の直前またはそれと同時に提供される。好ましくは、モルフォゲンおよび神経栄養因子は、手術セッテングで予防的に投与される。
【0060】
OP/BMPモルフォゲンおよび神経栄養因子が軸索再生を刺激するために所定の部位に提供されるべき場合、好ましくは、薬学的調製物は、タンパク質をインビボでその部位に維持するために適切な、そして神経突起(neural process)がそれを通して再生され得る生体適合性の、好ましくは生体再吸収性のキャリアと組み合わせて提供される。現在好適なキャリアはまた、軸索成長の指向を援助するに十分な構造を備える。現在好適なキャリアは、コラーゲン、ヒアルロン酸またはラミニン、および/または例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸またはポリ酪酸の合成ポリマーまたはコポリマーのような構造分子を含む。現在最も好ましいのは、組織細胞外基質を含むキャリアである。これらは市場から得られ得る。さらに、脳組織由来の細胞外マトックスが、本明細書に参考として援用されるPCT公開WO92/15323に記載のように、および/または当該分野で公知の他の手段により調製され得る。
【0061】
神経経路、特に末梢神経系経路における破壊を修復する現在好適な手段は、OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子を、破壊に広がるに十分な大きさであって、そして切断された神経末端を受容するために適合した開口部を有する、生体適合性メンブレンまたはケーシングを備えたデバイスの一部分として部位に提供することを含む。OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子は、ケーシング内に配置され、好ましくは、適切なキャリアのいたるところに分散され、そして切断された神経末端に接近可能である。あるいは、OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子は、ケーシングの内表面上に吸着され、またはそうでなければそれと結合され得る。ケーシングは、軸索成長の方向付けを支援する神経案内チャンネルとして作用する。適切なチャンネルまたはケーシング材料は、シリコーンまたはコラーゲン、ヒアルロン酸、ラミニン,ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ酪酸などのような生体再吸収性材料を含む。
【実施例】
【0062】
(実施例)
OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子相乗作用
本明細書に記載されるOP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子組成物は、神経細胞における突起形成を増大する。ニワトリ胎児由来の種々の末梢神経節を、GDNF(PeproTech、Rocky Hill、New Jersey)、NT−3(Austral Biologicals、San Ramon、CA)、アクチビンA(Austral Biologicals、San Ramon、CA)、またはマウスβ−NGFと組み合わせたOP−1(Creative Biomolecules、Hopkinton、MA)による神経繊維成長の誘導のモデルとして用いた。
【0063】
末梢神経節は、Ebendalら(Ebendal、IBROハンドブックシリーズ:Methods in the Neurosciences 第12巻、81〜93頁(1989)、John Wiley、Chichester)の方法に従って、ニワトリの9日胎児(E9)から得た。交感神経神経節は、腰椎領域から得た。毛様体神経節は眼窩から得た。レーマック神経節は背側直腸間膜から得た。背側根神経節は腰仙領域から得た。結節神経節は心臓上方の迷走神経から得た。いくつかの実験には、三叉神経神経節を得、そして上下顎葉および眼葉を外植の前に分離した。神経節をインタクトに取り出し、そしてコラーゲン基質中に37℃で5%CO2で維持したか、または単一ニューロンに解離させそして薄コラーゲンゲル中に拡げた(Ebendal(1989)、前述)。両方の例では、ゲルは、1%ウシ胎仔血清を含む当容量のEagle’s Basal Mediumで補充した。コントロール培養は、1%ウシ胎仔血清を含むEagle’s Basal Mediumからなり、いくつかの場合には、実験培養希釈物に一致する濃度に、緩衝液(25mM アルギニン、150mM NaCl、pH9.0、0.1% Tween80)で補充した。培養を、コントロール培地、OP−1、NT−3、GDNFまたはNGF単独、または種々の組み合わせおよび一連の濃度で、2、4および6日間処理した。
【0064】
6日培養に、インキュベーション4日後に、成長因子を含む新鮮培地を供給した。全神経節も、暗視野照射下で検査し、その一方解離したニューロンを、位相差光学で検査した。生存細胞を、プレートを横切る小割板中で計数し、5ng/mlのNGFで2日間処理した細胞の生存に対する生存を計算した。
【0065】
先の研究は、NT−3が外植毛様体神経節における繊維成長を誘発し、そしてまたニワトリ胚の交感神経神経節において弱い応答を惹起することを示した。Ernforsら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)87:5454〜5458(1990)。OP−1は、E9交感神経神経節においてNT−3処理により誘導された繊維成長を多いに増大した。この効果は培養2日後に明らかであり、そして培養の4日後に持続した。NT−3およびOP−1の最適濃度は、それぞれ、10ng/mlおよび50ng/mlであった。GDNFと組み合わせたOP−1を用いた神経節培養の処理は、同様の結果を与えた。OP−1は、0.1ng/ml〜1000ng/mlの用量で、全外植Eg神経節のいずれの繊維成長をも刺激しなかった。さらに、OP−1はまた、より若い神経節(例えば、4.5日胚由来)を刺激しなかった。緩衝液(pH9)は、交換神経、毛様体または結節神経節におけるNT−3応答に対して任意の増強効果を奏しなかった。
【0066】
10ng/ml NT−3および50ng/ml OP−1を用いた毛様体神経節の処置は、細胞から放射状に伸びる軸索の厚い束からなる頑強な繊維ハローを生じた。50ng/ml GDNFおよび50ng/ml OP−1を用いた毛様体神経節の処置は、培養の2日後、毛様体神経束の繊維ハーローを与えた。毛様体神経節は、NT−3(2ng/mlおよび10ng/ml)およびGDNF(50ng/ml)に応答してより少ないかまたはより頑強でない神経繊維を伸長させたが、50ng/mlOP−1単独に応答して軸索を伸長しなかった。
【0067】
従って、OP−1とNT−3との、またはOP−1とGDNFとの組み合わせを用いたニューロンの処置は、NT−3またはGDNF誘導軸索成長に対するOP−1の相乗効果を示唆した。統計学的分析はまた、コントロール(BME、またはBasal Medium、Eagle’s)と比較したとき、生存における差異が有意である(図1)ことを示す。OP−1およびNT−3の両方は、毛様体神経節において増大した神経成長応答を惹起するために処理期間の初めから必要である。
【0068】
結節神経節の感覚ニューロンもまた、OP−1(50ng/ml)単独およびNT−3(2ng/mlおよび10ng/ml)との組み合わせ、またはGDNF(50ng/ml)と組み合わせたOP−1(50ng/ml)で処理した。感覚ニューロンのOP−1単独での処理は、繊維成長を惹起しなかった。しかし、OP−1は、処置の2および4日後、NT−3誘導軸索成長を増大した。
【0069】
アクチビンA(20ng/ml)は、交感神経神経節の処置において、単独またはNT−3(10ng/ml)、GDNF(50ng/ml)またはNGF(5ng/ml)との組み合わせで試験した場合、OP−1の効果を模倣しなかった。
【0070】
従って、OP−1は、いくつかのクラスの末梢ニューロンで、NT−3およびGDNFで誘導された神経突起形成を促進し得る。
【0071】
(アルツハイマー病の処置)
アルツハイマー病は、頭頂および前頭連合野、海馬およびアマグディラ(amagdyla)の大錐体細胞の有意なニューロン損失がある、神経変性疾患である。基底前脳のコリン作動性ニューロンおよび青斑のノルアドレナリン作動性ニューロンもまた激しく影響される。
【0072】
本発明に従えば、OP/BMPモルフォゲン、好ましくはヒトOP−1は、GDNF/NGF神経栄養因子、好ましくはGDNFまたはNT−3と組み合わせて、この領域中の細胞の成長および生存を促進するため、およびさらなる神経細胞の進行性損失を阻害するため、アルツハイマー病患者に投与される。
【0073】
OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子を含む水性の薬学的調製物は、患者に非経口的に投与される。好ましくは、この調製物は、例えば、脳室内または髄腔内注射または注入により大脳内に投与される。1つの実施態様では、被験体の頭蓋は、定位固定デバイス中に固定され、頭蓋中に小孔が作成され、そして調製物が脳の影響された領域中に直接注射または注入される。用量は、注射の部位で、OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子の濃度約0.1〜10μg/ml、好ましくは約1〜100ng/mlを達成するために計算され得る。あるいは、用量は、約10〜100μg/kgのモルフォゲンおよび神経栄養因子、好ましくは1〜25μg/kgを送達するために計算され得る。用量は、数週間〜数ヶ月の期間、または、必要に応じて、被験体の寿命を通じ、規則性を基本として、毎日またはより少ない頻度で繰り返される。あるいは、徐放デバイスが、被験体の脳内に移植され、延長された期間に亘って調製物の連続的放出を引き起こす。
【0074】
(切断神経繊維の処置)
哺乳動物神経細胞が増殖または再生する限られた能力に起因して、切断された神経繊維は、しばしば、神経に伴う感覚または運動機能の永久的損失を導く。神経繊維は、事故(例えば交通事故)中または手術の避けがたい副作用として裂かれまたは切断され得る。
【0075】
本発明によれば、OP/BMPモルフォゲン、好ましくはヒトOP−1は、GDNF/NGF神経栄養因子、好ましくはGDNFまたはNT−3と組み合わせて、切断された神経繊維を有する患者に、損傷細胞の修復成長および生存を促進するために投与される。
【0076】
OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子を含む、水性の薬学的調製物は、患者に非経口的に投与される。損傷末梢神経(例えば、座骨神経中の)繊維の場合、好ましくは、この調製物は、切断された繊維の末端を閉じ、そしてそれらの成長を一緒に誘導する神経誘導チャンネルの使用と組み合わせて投与される。脊髄中の切断された繊維の場合、好ましくは、この調製物は、損傷の領域中のCSF中に注射または注入される。用量は、注射または注入の部位で、約0.1〜10μg/ml、好ましくは約1〜100ng/mlのOP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子の濃度を達成するように計算され得る。あるいは、用量は、約10〜100μg/kgのモルフォゲンおよび神経栄養因子、好ましくは1〜25μg/kgを送達するために計算され得る。脊髄損傷の場合、用量は、数週間〜数ヶ月の期間毎日またはより少ない頻度で繰り返される。あるいは、神経誘導チャンネルに囲まれた切断末梢神経の場合、徐放処方物が採用され、そこでは、調製物は、神経誘導チャンネル内の基質材料と混合される。
【0077】
(発作の処置)
脳における、虚血事象、または発作は、認知、感覚、または運動機能の永久的損失を生じる神経損傷を引き起こし得る。発作の発症の直後、虚血領域中の細胞の死または変性の阻害、およびこれらの細胞の成長および生存の促進は、永久的損傷を最小にすることに重要である。
【0078】
本発明に従えば、OP/BMPモルフォゲン、好ましくはヒトOP−1は、GDNF/NGF神経栄養因子、好ましくはGDNFまたはNT−3と組み合わせて、発作を患う患者に投与される。
【0079】
OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子を含む、水性の薬学的調製物は、患者に非経口的に投与される。好ましくは、この調製物は、例えば、脳室内または髄腔注射または注入により大脳内に投与される。用量は、注射の部位で、OP/BMPモルフォゲンおよびGDNF/NGF神経栄養因子の濃度約0.1〜10μg/ml、好ましくは約1〜100ng/mlを達成するために計算され得る。あるいは、用量は、約10〜100μg/kg、好ましくは1〜25μg/kgのモルフォゲンおよび神経栄養因子を送達するために計算され得る。用量は、数日〜数週間の期間、連続的にまたは頻繁であり得る。好ましくは、最初の用量は、発作の発症に対し最初の2〜3時間以内に投与される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1A】
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【図1B】
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【公開番号】特開2012−131832(P2012−131832A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87469(P2012−87469)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2009−143767(P2009−143767)の分割
【原出願日】平成10年9月9日(1998.9.9)
【出願人】(595148888)ストライカー コーポレイション (52)
【氏名又は名称原語表記】STRYKER CORPORATION
【Fターム(参考)】