OSNR測定装置および光通信システム
【課題】運用中の光信号のOSNRを簡易かつ安価な構成によって精度良く測定することのできるOSNR測定装置を提供する。
【解決手段】OSNR測定装置1は、可変の通過帯域を有する波長選択部12により、入力ポート11に与えられる被測定光Lから測定対象の信号光波長に対応した光成分を選択的に取り出して遅延干渉部14に与え、該遅延干渉部から出力される遅延干渉光のパワーを光検出部15で検出し、波長選択部の通過帯域の帯域幅および光検出部の検出結果を基に、OSNR演算部16が測定対象の信号光波長におけるOSNRを算出する。
【解決手段】OSNR測定装置1は、可変の通過帯域を有する波長選択部12により、入力ポート11に与えられる被測定光Lから測定対象の信号光波長に対応した光成分を選択的に取り出して遅延干渉部14に与え、該遅延干渉部から出力される遅延干渉光のパワーを光検出部15で検出し、波長選択部の通過帯域の帯域幅および光検出部の検出結果を基に、OSNR演算部16が測定対象の信号光波長におけるOSNRを算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムにおいて送受信される光信号の品質を表す光信号対雑音比(OSNR:Optical Signal to Noise Ratio)の測定を行うOSNR測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムにおいて、光送信器から送り出された光信号は、伝送路である光ファイバを伝搬して光受信器に送信される。このとき、伝送路で生じる損失を補償するために光増幅器が使用される。光増幅器の配置形態としては、光送信器の出力側に配置されるポストアンプ、光受信器の手前に配置されるプリアンプ、または、光信号を多段中継する場合に用いられるインランアンプなどが挙げられる。例えば、1550nm帯の光通信システムにおいては、光増幅媒体としてエルビウムドープドファイバを用いた光増幅器(EDFA:Erbium-Doped Fiber Amplifier)が広く用いられている。
【0003】
上記光増幅器からは、増幅された信号光と、増幅された自然放出光(ASE:amplified spontaneous emission)とが出力される。このASEは、ランダムに発生して信号光と干渉するため、光通信システムにおける雑音成分となる。光受信器の性能は、この雑音成分によって制限されるため、光通信システムでは信号成分と雑音成分を測定することが重要である。通常、光受信器の性能は、信号成分と雑音成分の比をとった光信号対雑音比(OSNR)の耐力で表される。
【0004】
また、ブロードバンドアクセス網においては、インターネットトラフィックの増大に伴い、波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)技術の適用による大容量化が図られている。WDM光通信システムにおける1波長当たりの伝送レートは、2.5Gbpsや10Gbpsから40Gbps、更には100Gbpsにシフトしつつある。伝送レートが40Gbps以上のWDM光通信システムでは、10Gbpsの場合と比較して、1ビット幅の光パルスの間隔が狭く、かつ、信号光のスペクトル幅(周波数帯域)が広いため、光増幅器の雑音、伝送路光ファイバの波長分散および偏波分散などの影響を受けて伝送特性の劣化が大きくなる。このため、従来の光強度変調(OOK:On Off Keying)方式とは異なる光変調方式として、例えば、雑音耐力および分散耐力に優れた差動位相偏移変調(DPSK:Differential Phase Shift Keying)、差動4値位相偏移変調(DQPSK:Differential Quadrature Phase Shift Keying)などの位相変調方式が採用されている。
【0005】
図1は、上記のようなWDM光通信システムに用いられるEDFAの出力スペクトルの一例を示した図である。このようにEDFAでは、1550nm帯に配置された複数の信号光が増幅されるとともに、約40nmにわたり広帯域なASEが発生する。このようなEDFAを伝送路上に複数配置してWDM光を多段中継伝送するWDM光通信システムでは、WDM光がEDFAを通過する度にASEが累積していく。該ASEの累積したWDM光は、受信端に配置された分波器で各波長の光に分離され、各波長にそれぞれ対応した光受信器に入力されて受信処理される。
【0006】
図2は、上記分波器から出力される1波長の光スペクトルの一例を示す図である。このように各波長に対応した光受信器は、信号光成分とASE成分が重畳されたスペクトルを有する光をそれぞれ受信することになる。当該受信光のOSNR[dB]は、一般に、信号光成分のパワーをPsig[mW]とし、信号光波長における0.1nm帯域幅のASE成分のパワーをPase,0.1nm[mW]として、次の(1)式により表される。
【数1】
【0007】
したがって、OSNRを求めるためには、受信光に含まれる信号光成分のパワーとASE成分のパワーとを測定する必要がある。しかし、光スペクトルアナライザ等を用いて受信光のスペクトルを測定しただけでは、信号光成分とASE成分が同一波長上で重なって測定されるため(図2参照)、OSNRを求めることは出来ない。そこで、信号光成分とASE成分を分離するために、例えば、非特許文献1に記載されているような、パルス法、ASE補間法、プローブ法、偏光消光比法またはタイムドメイン消光法などの種々の技術が適用されてきた。
【0008】
具体的に、上記パルス法は、光スイッチ等を用いて光増幅器への入力光をオンオフさせながら出力光のスペクトルを測定し、入力光オフ時にASEレベルの測定を行う手法である(例えば、特許文献1参照)。また、上記ASE補間法は、光増幅器の出力光のスペクトルを測定し、該スペクトルからASE部分を除いて、信号光成分と同一波長のASE成分のレベルを推定する手法である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3467296号公報
【特許文献2】特許第3311102号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】波平宜敬,「DWDM光測定技術」,オプトロニクス社,2001年3月,p.95−100
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記のような従来のパルス法を適用したOSNR測定については、ASEレベルをダイレクトに測定することが可能となるが、光増幅器への信号光の入力を一時的にオフにする必要があり、そのオフの間は信号光の通信がエラーになってしまう。つまり、信号光の運用中にOSNR測定を行うことが困難であるという課題がある。
【0012】
また、ASE補間法を適用したOSNR測定については、信号光およびASEを含む光スペクトルより、信号光が存在しない波長領域を判別する必要があるが、40Gbps以上の高速な信号光の場合、信号光自体のスペクトル幅が広いため、上記信号光が存在しない波長領域の判別が困難になる。例えば、光増幅器から出力されるWDM光を分波器に与えて信号光波長毎に分波した光のOSNRを測定するようなとき、高速な信号光のスペクトル幅は、分波器の個々の波長に対応した透過帯の幅よりも広くなる場合がある。この場合、例えば図3に示すように、分波器を透過した光のスペクトルは、信号光波長の両サイドのASE成分(および信号光のサイドバンド成分)がカットされた形状となる。このため、当該光スペクトルより信号光が存在しない波長領域を判別することができず、信号光成分と同一波長のASEレベルの推定が不可能になる。このようにASE補間法を適用したOSNR測定は、スペクトル幅の広い高速な信号光への対応という点で課題がある。
【0013】
さらに、上記のようなパルス法やASE補間法などを適用したOSNR測定は、基本的に、高価な光スペクトラムアナライザを用いて被測定光のスペクトル測定を行うことが必要であるため、コスト面の課題もある。
【0014】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、運用中の光信号のOSNRを簡易かつ安価な構成によって精度良く測定することのできるOSNR測定装置および光通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため本発明によるOSNR測定装置の一態様は、被測定光が与えられる入力ポートと、前記入力ポートに光学的に結合され、可変の通過帯域を有し、前記被測定光から測定対象とする信号光波長に対応した光成分を選択的に取り出す波長選択部と、前記波長選択部の通過帯域を制御する波長制御部と、前記波長選択部から出力される光を分岐し、一方の分岐光に対して他方の分岐光を遅延させて互いに干渉させる遅延干渉部と、前記遅延干渉部から出力される遅延干渉光のパワーを検出する光検出部と、前記波長選択部の通過帯域の帯域幅および前記光検出部で検出された遅延干渉光のパワーに基づいて、測定対象とする信号光波長における光信号対雑音比を算出するOSNR演算部と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
上記OSNR測定装置によれば、被測定光に含まれる任意の伝送レートおよび光変調方式の信号光のOSNRを、高価な光スペクトルアナライザを用いることなく高い精度で測定することができる。また、波長選択部により、被測定光から測定対象の信号光波長に対応した所要帯域の光を選択的に取り出して遅延干渉部に与えるようにしたことで、測定対象の信号光が運用中であってもOSNRの測定を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】WDM光通信システムに用いられるEDFAの出力スペクトルの一例を示す図である。
【図2】WDM光通信システムの受信端に配置された分波器から出力される1波長の光スペクトルの一例を示す図である。
【図3】従来のASE補間法に関する課題を説明するための図である。
【図4】第1実施形態OSNR測定装置の構成を示すブロック図である。
【図5】上記実施形態における波長選択部に使用可能なモノクロメータの構成例を示す図である。
【図6】上記実施形態のOSNR測定装置をOADMノードに適用した場合の一例を示す図である。
【図7】上記実施形態について非位相変調方式の信号光のOSNRを測定する場合の動作を説明するフローチャートである。
【図8】上記実施形態について位相変調方式の信号光のOSNRを測定する場合の動作を説明するフローチャートである。
【図9】遅延干渉部の光遅延量に応じて各光検出器で検出される光パワーが変化する一例を示した図である
【図10】各光検出器で受光される信号光成分およびASE成分の割合と遅延干渉部の光遅延量との関係を纏めた図である。
【図11】1ビットの時間に対する光遅延量の割合を変化させたときに得られる各光検出器の平均光パワーとOSNRの関係を示した図である。
【図12】各光検出器の平均光パワーの差とOSNRの関係を示した図である。
【図13】第2実施形態OSNR測定装置の構成を示すブロック図である。
【図14】波長選択部からの出力光波形がDGDによって劣化する一例を示した図である。
【図15】波長選択部からの出力光波形が波長分散によって劣化する一例を示した図である。
【図16】第3実施形態OSNR測定装置の構成を示すブロック図である。
【図17】遅延干渉後の受信信号の波形がDGDによって劣化する一例を示した図である。
【図18】遅延干渉後の受信信号の波形が波長分散によって劣化する一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図4は、本発明によるOSNR測定装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
図4において、本実施形態のOSNR測定装置1は、例えば、被測定光Lが与えられる入力ポート11と、入力ポート11に光学的に結合する波長選択部12と、波長選択部12を制御する波長制御部13と、波長選択部12の出力光が与えられる遅延干渉部14と、遅延干渉部14から出力される干渉光のパワーを検出する光検出部15と、光検出部15の検出結果を基に測定対象の信号光波長におけるOSNRを演算するOSNR演算部16と、を備える。
【0019】
入力ポート11は、例えば、波長の異なる複数の信号光が合波されたWDM光が被測定光Lとして与えられる。該各波長の信号光の伝送レートは任意であり、40Gbps以上の高速な信号光をOSNRの測定対象とすることができる。上記信号光の変調方式としては、一般的な光強度変調(OOK)方式だけでなく、DPSKやDQPSK等の位相変調方式、または、該位相変調光をパルス化したRZ−D(Q)PSK等の光変調方式に対応可能である。
【0020】
波長選択部12は、可変の通過帯域を有し、入力ポート11を介して入力される被測定光Lより、測定対象とする信号光波長に対応した光成分を選択的に取り出して遅延干渉部14に出力する。この波長選択部12の可変の通過帯域は、波長制御部13により測定波長に応じて制御される。上記波長選択部12の具体的な構成としては、例えば、モノクロメータ、波長可変フィルタ、波長・帯域幅可変フィルタ、波長選択スイッチなどを使用することが可能である。
【0021】
図5は、モノクロメータを用いた波長選択部12の構成例を示す図である。この構成例では、モノクロメータの入射ポート121に与えられた被測定光Lが、コリメーティングミラー122、回折格子123、フォーカシングミラー124およびスリット125を順に通過することにより、測定対象とする信号光波長に対応した光成分が選択的に出射ポート126に結合される。
【0022】
具体的に、コリメーティングミラー122は、入射ポート121から放射される被測定光Lを平行光に変換し、該平行光を回折格子123に照射する。回折格子123は、コリメーティングミラー122からの平行光を波長に応じて異なる方向に反射する。フォーカシングミラー124は、回折格子123で反射された光を、各々の波長に応じてスリット125近傍の異なる位置に集光する。上記回折格子123は、図示を省略したアクチュエータ等により、コリメーティングミラー122からの平行光の入射方向に対する反射面の角度が可変になっており、該反射面の角度(回折格子123の回転角度)が測定波長に応じて設定される。これにより、スリット125近傍に集光される各波長の光のうち、測定波長に対応した光のみがスリット125を通過して出射ポート126に結合される。
【0023】
また、前述した波長選択部12に使用可能な波長可変フィルタの具体例としては、ここでは図示を省略するが、アレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed-Waveguide Grating)やファイバブラッググレーティング(FBG;Fiber Bragg Grating)等を利用した光フィルタ、音響光学チューナブルフィルタ(AOTF;Acousto Optic Tunable Filter)などの周知の光デバイスが挙げられる。さらに、通過帯域の中心波長だけでなく帯域幅も可変にした波長・帯域幅可変フィルタとしては、例えば、サンテック(株)社製のOTF−950,OTF−350、または、(株)アルネアラボラトリ社製のBVF−200などを適用することが可能である。また、波長選択スイッチについては、例えば、回折格子および可動ミラーを組み合わせて入出力ポート間の光路の切り替えを行うものなどが知られている。該波長選択スイッチでは、可動ミラーの角度が測定波長に応じて設定されることになる。
【0024】
波長制御部13は、OSNR測定装置1の外部より与えられる、測定対象とする信号光に関する情報(以下、「信号光情報」とする)INFに基づいて、波長選択部12における通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致するように、波長選択部12を制御する。信号光情報INFには、例えば、測定対象とする信号光の波長、伝送レート、変調方式などの情報が含まれる。具体的に、上記図5に示したようなモノクロメータを用いて波長選択部12が構成されている場合、波長制御部13は、測定対象の信号光波長に対応した光成分がスリット125を通過して出射ポート126に結合されるように、回折格子123の回転角度を制御する。また、波長・帯域幅可変フィルタを用いて波長選択部12が構成されている場合には、波長制御部13は、測定波長に応じて波長選択部12の通過帯域の中心波長を制御するだけでなく、該通過帯域の帯域幅も制御する。この帯域幅の制御では、測定対象の信号光の伝送レートおよび変調方式を基に信号光のスペクトル幅が判断され、該スペクトル幅に応じてOSNR測定に必要な帯域幅が設定される。
【0025】
遅延干渉部14は、波長選択部12からの出力光を2分岐するY分岐部141、該Y分岐部141で分岐された一方の光が与えられる第1アーム142および他方の光が与えられる第2アーム143、並びに、各アーム142,143をそれぞれ伝搬した光を互いに干渉させるXカプラ部144を具備したマッハツェンダ干渉計型の光導波路が、所要の基板に形成されている。ここでは第1アーム142の光路長よりも第2アーム143の光路長が長くなるように設計されており、第1アーム142を伝搬した光に対して、第2アーム143を伝搬した光が遅延される。当該光遅延量τは、例えば、平面光波回路(PLC)で構成される遅延干渉部14の温度をヒータやペルチェ素子等を用いて変化させることにより、調整可能となっている。各アーム142,143を伝搬した光はXカプラ部144に与えられることで干渉し、当該遅延干渉光はXカプラ部144の2つの出力ポートより出力されて、光検出部15に送られる。
【0026】
光検出部15は、遅延干渉部14の各出力ポートから出力される光をそれぞれ受光し、各々の光のパワーに応じてレベルが変化する電気信号を生成する1組の光検出器151,152を有する。各光検出器151,152で生成された電気信号は、OSNR演算部16にそれぞれ送られる。
【0027】
OSNR演算部16は、各光検出器151,152からの出力信号、波長選択部12の帯域幅を示す波長制御部13からの出力信号、および、OSNR測定装置1の外部より与えられる信号光情報INFを用い、後述するアルゴリズムに従って、測定波長に対応したOSNRを演算し、該演算値をOSNRの測定結果として外部に出力する。
【0028】
図6は、WDM光通信システムのOADM(Optical Add-Drop Multiplexing)ノードについて上記OSNR測定装置1を適用した場合の一例を示す図である。ただし、OSNR測定装置1の適用箇所がOADMノードに限定されることを意味するものではなく、WDM光通信システムの任意の場所でOSNR測定装置1によるOSNR測定を行うことが可能である。
【0029】
図6の適用例では、OADMノードに入力されるWDM光が、光増幅器51で一括増幅された後に分岐器52で2分岐され、一方の分岐光が分岐器53に送られ、他方の分岐光が波長選択スイッチ56に送られる。分岐器53では、分岐器52からのWDM光が更に2分岐され、一方の分岐光が被測定光LとしてOSNR測定装置1に送られ、他方の分岐光が分波器54に送られる。分波器54では、分岐器52,53で分岐されたWDM光が波長に応じて分離され、各波長の信号光がドロップ光として各々に対応した光受信器(RX)55で受信される。波長選択スイッチ56では、下流のノードに送信する各波長の信号光として、分岐器52から出力される信号光(スルー光)および光送信器(TX)57から出力される信号光(アド光)のいずれかが選択される。該波長選択スイッチ56で選択された信号光は、光増幅器58で一括増幅されて下流側の伝送路に出力される。
【0030】
なお、上記図6では、OADMノードにおいて、WDM光に対する信号光の分岐(ドロップ)および挿入(アド)の両方が実施される一例を示したが、分岐および挿入のいずれか一方のみが行われるノードであっても上記の場合と同様にOSNR測定装置1の適用が可能である。例えば、WDM光に対する信号光の挿入のみが実施され、分岐が行われないノードの場合には、上記図6の分岐器53、分波器54および光受信器55が省略され、分岐器52における一方の分岐光が被測定光LとしてOSNR測定装置1に送られることになる。
【0031】
次に、第1実施形態のOSNR測定装置1の動作について説明する。
上記のような構成のOSNR測定装置1では、被測定光Lに含まれる非位相変調方式の信号光のOSNRを測定する場合と、位相変調方式の信号光のOSNRを測定する場合とで動作とが異なる。このため、まず、非位相変調方式の信号光のOSNRを測定する場合の動作について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0032】
OSNR測定装置1が起動されると、最初に図7のステップ101(図中S101で示し、以下同様とする)において、波長制御部13が、外部より与えられる信号光情報INFを基に測定対象とする信号光波長を取得する。そして、ステップ102では、当該測定波長に従って、波長制御部13が、波長選択部12の通過帯域の中心波長を設定する。これにより、波長選択部12の通過帯域の中心波長と測定波長とが一致するようになり、入力ポート11に与えられる被測定光Lより測定波長に対応した信号光およびASEを含む光成分が選択的に取り出されて遅延干渉部14に送られる。遅延干渉部14では、波長選択部12からの出力光がY分岐部141で2分岐され、アーム142を伝搬した光と、アーム143を伝搬して光遅延量τが与えられた光とがXカプラ部144で結合されることにより遅延干渉光が生成される。該遅延干渉光は、光遅延量τに応じた割合でXカプラ部144の2つの出力ポートから出力され、光検出部15の対応する光検出器151,152でそれぞれ光電変換される。
【0033】
ステップ103では、各光検出器151,152の出力信号を参照しながら、遅延干渉部14における光遅延量τの調整が行われる。この光遅延量τの調整は、τ≠0[sec]となり、かつ、各アーム142,143を伝搬する光の位相差が0またはπ[rad]となるように、遅延干渉部14の温度等が最適化される。上記位相差が0またはπ[rad]になると、光検出器151,152のうちの一方の出力信号の平均レベルが最大になり、他方の出力信号の平均レベルが最小になる。なお、τ≠0[sec]の条件は、製造誤差等によって、同じ長さで設計したアーム142,143間に光路長差が発生した場合の光遅延を含むものとする。
【0034】
ステップ104では、波長・帯域幅可変フィルタ等を適用することで波長選択部12における通過帯域の帯域幅が可変とされる場合に、波長制御部13が、信号光情報INFを基に測定対象とする信号光のスペクトル幅を判断し、該スペクトル幅に応じて波長選択部12の帯域幅を設定する。なお、前述したモノクロメータや波長可変フィルタ、波長選択スイッチを用いて波長選択部12が構成される場合には、通常、通過帯域の帯域幅は固定となるので、ステップ104の動作は省略される。
【0035】
上記ステップ101〜ステップ104の動作が完了することによりOSNR測定の準備が整うので、以降、OSNR演算部16によるOSNRの算出処理が実行される。まず、ステップ105では、OSNR演算部16において、各光検出器151,152の出力信号を基に、光検出器151で検出される平均光パワーP1と、光検出器152で検出される平均光パワーP2とが取得される。
【0036】
ここで、各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2について詳しく説明する。
遅延干渉部14の各アーム142,143を伝搬する光には、信号光成分およびASE成分がそれぞれ含まれている。各アーム142,143を伝搬する信号光成分はコヒーレントであるため、Xカプラ部144で干渉が生じる。前述のステップ103において、各アーム142,143を伝搬する光の位相差が0またはπ[rad]となるように、遅延干渉部14の光遅延量τが調整されているので、信号光成分の遅延干渉光は、Xカプラ部144の2つの出力ポートのうちの片方のみから出力される。
【0037】
一方、各アーム142,143を伝搬するASE成分は、例えば、前述の図6に示したOAMDノードの構成例では、入力側の光増幅器51で発生するASEや、該OAMDノードよりも上流のノード等に配置された光増幅器で発生するASEが累積したものが、Y分岐部141で2分岐されたものであり、各々のASE成分はインコヒーレントである。このため、Xカプラ部144で干渉が生じることは無く、Xカプラ部144で結合されたASE成分は2つの出力ポートから略等しい割合で出力される。
【0038】
したがって、各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2は、上記のような遅延干渉部14における信号光成分およびASE成分の性質を反映したものになる。例えば、信号光成分の遅延干渉光が光検出器152側に出力されるように光遅延量τが調整されている場合、信号光成分の総パワーをPsig[mW]、ASE成分の総パワーをPase,total[mW]とすると、各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2について次の(2),(3)式の関係が成り立つことになる。
【数2】
【数3】
【0039】
上記(2)式および(3)式の関係より、信号光成分のパワーPsig[mW]は、次の(4)式により表される。また、各平均光パワーP1,P2の総和については、次の(5)式の関係が成り立つ。
【数4】
【数5】
【0040】
上記(4)式および(5)式の関係より、ASE成分の総パワーはPase,total=2×P1となる。これを波長選択部12の帯域幅B[nm]を用いて0.1nm帯域のASEパワーPase,0.1nmに換算すると、次の(6)式の関係が得られる。
【数6】
【0041】
したがって、測定対象の信号光波長におけるOSNR[dB]は、上記(4)式および(6)式の関係より、次の(7)式で表すことができる。
【数7】
【0042】
上記のような関係に従って測定対象の信号光波長におけるOSNRを算出するために、OSNR演算部16では、図7のステップ106において、各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2の差がとられ、上記(4)式で表される信号光成分のパワーPsigが算出される。続くステップ107では、光検出器151の平均光パワーP1と波長選択部12の帯域幅Bを用い、上記(4)式で表される0.1nm帯域のASEパワーPase,0.1nmが算出される。そして、ステップ108では、PsigおよびPase,0.1nmを用い、上記(7)式に従って測定対象の信号光波長におけるOSNRが算出される。
【0043】
次に、位相変調方式の信号光のOSNRを測定する場合の動作について、図8のフローチャートを参照しながら説明する。
位相変調方式の信号光のOSNR測定を行う場合にも、前述した非位相変調方式の信号光のOSNR測定を行う場合のステップ101〜ステップ104と同様な動作により、OSNR測定のための準備として、波長選択部12の通過帯域の設定および遅延干渉部14の光遅延量τの調整が行われる。
【0044】
位相変調方式の信号光の場合、遅延干渉部14の各アーム142,143を伝搬する信号光の位相はビット値に応じてそれぞれ変化する。例えば、2値の位相変調が適用された信号光の場合、図9に示すように各アーム142,143を伝搬する信号光の位相はビット値に応じて0,πで変化する。図9の(A)は、遅延干渉部14の光遅延量がτ≒0に調整されているときの一例を示している。τ≒0では、各アーム142,143を伝搬する信号光の間で殆ど位相差が生じないため、当該遅延干渉光は2つの光検出器151,152のうちの片側(ここでは光検出器152側)に出力される。
【0045】
遅延干渉部14の光遅延量τを増やしていくと、各アーム142,143を伝搬する信号光間の位相差がπになる割合が増えるため、遅延干渉光が光検出器151側にも出力されるようになる。図9の(B)は、遅延干渉部14の光遅延量τが1ビットの時間の0.75倍に調整されているときの一例である。そして、遅延干渉部14の光遅延量τが1ビットの時間に一致するようになると(100%遅延)、図9の(C)に示すように、遅延干渉光が各光検出器151,152側に同じ割合で出力されるようになる。この場合、当該信号光の送信側でのマーク率(全符号に対する符号“1”の割合)を50%とすると、各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2はほぼ等しくなる。
【0046】
なお、上記図9では、2値の位相変調が適用された信号光の例を示したが、OSNR測定装置1によりOSNRの測定が可能な位相変調方式が2値のものに限定されることを意味するものではなく、nを自然数とする2n値の位相変調方式全般についてOSNR測定装置1は有効である。
【0047】
一方、各アーム142,143を伝搬するASE成分はインコヒーレントであるため(前述した非位相変調方式の信号光の場合と同様)、Xカプラ部144で干渉が生じることは無い。このため、Xカプラ部144で結合されたASE成分は、遅延干渉部14の光遅延量τに依存することなく、各光検出器151,152側に同じ割合で出力される。
【0048】
図10は、各光検出器151,152で受光される信号光成分およびASE成分の割合と、遅延干渉部14の光遅延量τとの関係を纏めた図である。なお、横軸のtは、信号光の1ビットの時間に対する遅延干渉部14の光遅延量τの割合を表している。このように、1ビットの時間に対する光遅延量τの割合tが増加すると、光検出器151での信号光成分の受光パワーP1sigの割合は増加し、光検出器152での信号光成分の受光パワーP2sigの割合は減少していく。一方、各光検出器151,152でのASE成分の受光パワーP1ase,P2aseの割合は、1ビットの時間に対する光遅延量τの割合tの変化に関係なく一定となる。
【0049】
上記図10の関係を基に、信号光成分の総パワーPsig[mW]、ASE成分の総パワーPase,total[mW]、1ビットの時間に対する光遅延量τの割合tを用いて、各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2[mW]を数式化すると、次の(8)式および(9)式の関係が得られる。
【数8】
【数9】
【0050】
上記(8)式および(9)式の関係より、信号光成分のパワーPsig[mW]は、次の(10)式により表すことができる。
【数10】
【0051】
また、前述した(5)式の関係と、上記(8)式および(9)式の関係とにより、ASE成分の総パワーPase,totalについては、次の(11)式の関係が成り立つ。
【数11】
【0052】
上記(11)式の関係を、波長選択部12の帯域幅B[nm]を用いて0.1nm帯域のASEパワーPase,0.1nmに換算すると、次の(12)式の関係が得られる。
【数12】
【0053】
したがって、測定対象の信号光波長におけるOSNR[dB]は、上記(10)式および(12)式の関係より、次の(13)式で表すことができる。
【数13】
【0054】
図11は、上記(13)式の関係より、波長選択部12の帯域幅をB=0.6[nm]、1ビットの時間に対する光遅延量τの割合をt≒0からt=0.8の間で変化させたときに得られる、OSNR[dB]と各光検出器151,152の平均光パワーP1[dBm],P2[dBm]との関係を示した図である。図11の関係より、OSNRが大きくなるとP1とP2の差が大きくなることが分かる。また、tを小さくした方がP1とP2の差が大きくなることが分かる。図12は、P1とP2の差ΔP[dB]とOSNRの関係を示した図である。図12の関係からは、tをより小さくしてΔPを求めることで、位相変調方式の信号光のOSNRをより高い精度で測定できることが分かる。
【0055】
上記のような関係に従って測定対象の信号光波長におけるOSNRを算出するために、OSNR演算部16では、図8のステップ105において、各光検出器151,152の出力信号を基に、各光検出器151,152で検出される平均光パワーP1,P2が取得される。続くステップ106’では、信号光の伝送レート(ボーレート)および遅延干渉部14の光遅延量τの設定を基に、1ビットの時間に対する光遅延量τの割合tが判断され、その割合tおよび各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2を用いて、上記(10)式で表される信号光成分のパワーPsigが算出される。さらに、ステップ107’では、上記1ビットの時間に対する光遅延量τの割合tおよび各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2と、波長選択部12の帯域幅Bとを用いて、上記(12)式で表される0.1nm帯域のASEパワーPase,0.1nmが算出される。そして、ステップ108では、PsigおよびPase,0.1nmを用い、上記(13)式に従って測定対象の信号光波長におけるOSNRが算出される。
【0056】
上述したように第1実施形態のOSNR測定装置1によれば、被測定光Lに含まれる任意の伝送レートおよび光変調方式の信号光のOSNRを、高価な光スペクトルアナライザを用いることなく高い精度で測定することができる。また、波長選択部12により、入力ポート11に与えられる被測定光Lから測定対象の信号光波長に対応した所要帯域の光を選択的に取り出して遅延干渉部14に与えるようにしたことにより、当該信号光の受信処理系(例えば、図6の分波器54および光受信器55)に対してOSNR測定系を切り離すことができるため、測定対象の信号光が運用中であってもOSNRの測定を行うことが可能である。勿論、運用開始前に伝送されるテスト光などのOSNR測定を行うこともできる。
【0057】
次に、本発明によるOSNR測定装置の第2実施形態について説明する。
図13は、第2実施形態のOSNR測定装置の構成を示すブロック図である。
図13において、本実施形態のOSNR測定装置2は、上述の図4に示した第1実施形態の構成について、波長選択部12からの出力光のピークパワーを検出する機能を追加し、測定対象となる信号光の品質に関して、OSNRだけでなくピークパワーの情報も得られるようにしたものである。
【0058】
具体的には、波長選択部12と遅延干渉部14の間の光路上に分岐器21が挿入される。この分岐器21は、波長選択部12から遅延干渉部14に送られる光の一部を分岐し、該分岐光を光検出器22に与える。光検出器22は、分岐器21で分岐された光を電気信号に変換して、ピークパワー検出回路23に出力する。ピークパワー検出回路23は、光検出器22の出力信号のピークパワーを検出して、その検出結果をOSNR測定装置2の外部に出力する。
【0059】
上記のような構成のOSNR測定装置2では、波長選択部12からの出力光を利用して、OSNR測定の対象となる信号光のピークパワーが検出されることにより、その検出結果に基づいて、当該信号光の群遅延時間差(DGD:Differential Group Delay)による波形劣化、または、波長分散による波形劣化の状態を判断することが可能になる。
【0060】
図14は、波長選択部12からの出力光波形がDGDによって劣化する一例を示した図である。また、図15は、波長選択部12からの出力光波形が波長分散によって劣化する一例を示した図である。ここでは、43.02GbpsのRZ−DQPSK変調された信号光を測定対象としている。図14の例より、DGDの値が大きくなるにつれて光波形が崩れ、光のピークパワーが低下していく様子が分かる。また、図15の例より、波長分散の値が0ps/nmから離れるにつれて光波形が崩れ、DGDの場合と同様に光のピークパワーが低下していく様子が分かる。したがって、波長選択部12から遅延干渉部14に出力される光の一部を分岐器21で取り出し、光検出器22およびピークパワー検出回路23により光強度のピークパワーをモニタすることによって、当該信号光の品質を測定することができる。
【0061】
上記のように第2実施形態のOSNR測定装置2によれば、測定対象の信号光について、上述した第1実施形態の場合と同様にOSNR測定を行うことができるのに加えて、ピークパワー検出回路23で検出されるピークパワーの値を基にDGDまたは波長分散による光波形の劣化を判断することができ、信号光の品質を多角的に測定することが可能になる。
【0062】
次に、本発明によるOSNR測定装置の第3実施形態について説明する。
図16は、第3実施形態のOSNR測定装置の構成を示すブロック図である。
図16において、本実施形態のOSNR測定装置3は、上述の図4に示した第1実施形態の構成について、各光検出器151,152の出力信号を受信処理する差動受信回路31と、該差動受信回路31から出力される受信信号の波形をモニタする波形モニタ32とを追加し、測定対象となる信号光の品質に関して、OSNRだけでなく受信波形の情報も得られるようにしたものである。このような構成では、光検出部15で得られる電気信号を利用して、OSNR測定の対象となる信号光の受信波形がモニタされることにより、該信号光のDGDまたは波長分散による波形劣化の状態を判断することが可能になる。
【0063】
図17は、遅延干渉後の受信信号の波形がDGDによって劣化する一例を示した図である。また、図18は、遅延干渉後の受信信号の波形が波長分散によって劣化する一例を示した図である。ここでも、43.02GbpsのRZ−DQPSK変調された信号光を測定対象としている。図17の例より、DGDの値が大きくなるにつれて受信波形が劣化し、アイ開口部分が小さくなっていく様子が分かる。また、図18の例より、波長分散の値が0ps/nmから離れるにつれて受信波形が劣化し、DGDの場合と同様にアイ開口部分が小さくなっていく様子が分かる。したがって、各光検出器151,152の出力信号を差動受信回路31で受信処理し、波形モニタ32を用いて受信信号の波形をモニタすることによって、当該信号光の品質を測定することができる。
【0064】
上記のように第3実施形態のOSNR測定装置3によれば、測定対象の信号光について、上述した第1実施形態の場合と同様にOSNR測定を行うことができるのに加えて、波形モニタ32でモニタされる受信波形を基にDGDまたは波長分散による波形劣化を判断することができ、信号光の品質を多角的に測定することが可能になる。
【0065】
以上の各実施形態に関して、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 被測定光が与えられる入力ポートと、
前記入力ポートに光学的に結合され、可変の通過帯域を有し、前記被測定光から測定対象とする信号光波長に対応した光成分を選択的に取り出す波長選択部と、
前記波長選択部の通過帯域を制御する波長制御部と、
前記波長選択部から出力される光を分岐し、一方の分岐光に対して他方の分岐光を遅延させて互いに干渉させる遅延干渉部と、
前記遅延干渉部から出力される遅延干渉光のパワーを検出する光検出部と、
前記波長選択部の通過帯域の帯域幅および前記光検出部で検出された遅延干渉光のパワーに基づいて、測定対象の信号光波長における光信号対雑音比を算出するOSNR演算部と、
を備えたことを特徴とするOSNR測定装置。
【0066】
(付記2) 付記1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、モノクロメータを含み、
前記波長制御部は、前記モノクロメータの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致するように、前記モノクロメータに具備された回折格子の角度を制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【0067】
(付記3) 付記1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、波長可変フィルタを含み、
前記波長制御部は、前記波長可変フィルタの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致するように、前記波長可変フィルタを制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【0068】
(付記4) 付記1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、波長・帯域幅可変フィルタを含み、
前記波長制御部は、前記波長・帯域幅可変フィルタの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致し、かつ、前記波長・帯域幅可変フィルタの通過帯域の帯域幅が測定対象の信号光のスペクトル幅に応じた値となるように、前記波長・帯域幅可変フィルタを制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【0069】
(付記5) 付記1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、波長選択スイッチを含み、
前記波長制御部は、前記波長選択スイッチの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致するように、前記波長選択スイッチに具備された可動ミラーの角度を制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【0070】
(付記6) 付記1〜5のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記遅延干渉部は、各分岐光の間の位相差が0またはπラジアンとなるように、一方の分岐光に対して他方の分岐光を遅延させることを特徴とするOSNR測定装置。
【0071】
(付記7) 付記1〜6のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記遅延干渉部は、前記波長選択部から出力される光を2つに分岐するY分岐部、該Y分岐部で分岐された一方の分岐光が伝搬する第1アーム、前記Y分岐部で分岐された他方の分岐光が伝搬し、前記第1アームよりも長い光路長を有する第2アーム、および、前記第1,2アームを伝搬した各光を互いに干渉させ、当該遅延干渉光を2つの出力ポートから前記光検出部に出力するXカプラ部を具備したマッハツェンダ干渉計型の光導波路を含み、
前記光検出部は、前記遅延干渉部の一方の出力ポートから出力される遅延干渉光を受光し、当該光パワーに応じてレベルが変化する電気信号を生成する第1光検出器と、前記遅延干渉部の他方の出力ポートから出力される遅延干渉光を受光し、当該光パワーに応じてレベルが変化する電気信号を生成する第2光検出器とを含むことを特徴とするOSNR測定装置。
【0072】
(付記8) 付記1〜7のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部から出力される光のピークパワーを検出するピークパワー検出部を備えたことを特徴とするOSNR測定装置。
【0073】
(付記9) 付記8に記載のOSNR測定装置であって、
前記ピークパワー検出部は、前記波長選択部から出力される光の一部を分岐する分岐器と、該分岐器で分岐された光を電気信号に変換する光検出器と、該光検出器の出力信号のピークパワーを検出するピークパワー検出回路と、を含むことを特徴とするOSNR測定装置。
【0074】
(付記10) 付記1〜7のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記光検出部から出力される信号を受信処理し、当該受信信号の波形をモニタする波形モニタ部を備えたことを特徴とするOSNR測定装置。
【0075】
(付記11) 付記10に記載のOSNR測定装置であって、
前記波形モニタ部は、前記光検出部から出力される信号を差動受信する差動受信回路と、該差動受信回路から出力される受信信号の波形をモニタする波形モニタと、を含むことを特徴とするOSNR測定装置。
【0076】
(付記12) 付記1〜11のいずれか1つに記載のOSNR測定装置を備えたことを特徴とする光通信システム。
【0077】
(付記13) 付記12に記載の光通信システムであって、
OADMノード内に前記OSNR測定装置を配置したことを特徴とする光通信システム。
【符号の説明】
【0078】
1,2,3…OSNR測定装置
11…入力ポート
12…波長選択部
121…入射ポート
122…コリメーティングミラー
123…回折格子
124…フォーカシングミラー
125…スリット
126…出射ポート
13…波長制御部
14…遅延干渉部
15…光検出部
16…OSNR演算部
21,52,53…分岐器
22…光検出器
23…ピークパワー検出回路
31…差動受信回路
32…波形モニタ
51,58…光増幅器
54…分波器
55…光受信器
56…波長選択スイッチ
57…光送信器
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムにおいて送受信される光信号の品質を表す光信号対雑音比(OSNR:Optical Signal to Noise Ratio)の測定を行うOSNR測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムにおいて、光送信器から送り出された光信号は、伝送路である光ファイバを伝搬して光受信器に送信される。このとき、伝送路で生じる損失を補償するために光増幅器が使用される。光増幅器の配置形態としては、光送信器の出力側に配置されるポストアンプ、光受信器の手前に配置されるプリアンプ、または、光信号を多段中継する場合に用いられるインランアンプなどが挙げられる。例えば、1550nm帯の光通信システムにおいては、光増幅媒体としてエルビウムドープドファイバを用いた光増幅器(EDFA:Erbium-Doped Fiber Amplifier)が広く用いられている。
【0003】
上記光増幅器からは、増幅された信号光と、増幅された自然放出光(ASE:amplified spontaneous emission)とが出力される。このASEは、ランダムに発生して信号光と干渉するため、光通信システムにおける雑音成分となる。光受信器の性能は、この雑音成分によって制限されるため、光通信システムでは信号成分と雑音成分を測定することが重要である。通常、光受信器の性能は、信号成分と雑音成分の比をとった光信号対雑音比(OSNR)の耐力で表される。
【0004】
また、ブロードバンドアクセス網においては、インターネットトラフィックの増大に伴い、波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)技術の適用による大容量化が図られている。WDM光通信システムにおける1波長当たりの伝送レートは、2.5Gbpsや10Gbpsから40Gbps、更には100Gbpsにシフトしつつある。伝送レートが40Gbps以上のWDM光通信システムでは、10Gbpsの場合と比較して、1ビット幅の光パルスの間隔が狭く、かつ、信号光のスペクトル幅(周波数帯域)が広いため、光増幅器の雑音、伝送路光ファイバの波長分散および偏波分散などの影響を受けて伝送特性の劣化が大きくなる。このため、従来の光強度変調(OOK:On Off Keying)方式とは異なる光変調方式として、例えば、雑音耐力および分散耐力に優れた差動位相偏移変調(DPSK:Differential Phase Shift Keying)、差動4値位相偏移変調(DQPSK:Differential Quadrature Phase Shift Keying)などの位相変調方式が採用されている。
【0005】
図1は、上記のようなWDM光通信システムに用いられるEDFAの出力スペクトルの一例を示した図である。このようにEDFAでは、1550nm帯に配置された複数の信号光が増幅されるとともに、約40nmにわたり広帯域なASEが発生する。このようなEDFAを伝送路上に複数配置してWDM光を多段中継伝送するWDM光通信システムでは、WDM光がEDFAを通過する度にASEが累積していく。該ASEの累積したWDM光は、受信端に配置された分波器で各波長の光に分離され、各波長にそれぞれ対応した光受信器に入力されて受信処理される。
【0006】
図2は、上記分波器から出力される1波長の光スペクトルの一例を示す図である。このように各波長に対応した光受信器は、信号光成分とASE成分が重畳されたスペクトルを有する光をそれぞれ受信することになる。当該受信光のOSNR[dB]は、一般に、信号光成分のパワーをPsig[mW]とし、信号光波長における0.1nm帯域幅のASE成分のパワーをPase,0.1nm[mW]として、次の(1)式により表される。
【数1】
【0007】
したがって、OSNRを求めるためには、受信光に含まれる信号光成分のパワーとASE成分のパワーとを測定する必要がある。しかし、光スペクトルアナライザ等を用いて受信光のスペクトルを測定しただけでは、信号光成分とASE成分が同一波長上で重なって測定されるため(図2参照)、OSNRを求めることは出来ない。そこで、信号光成分とASE成分を分離するために、例えば、非特許文献1に記載されているような、パルス法、ASE補間法、プローブ法、偏光消光比法またはタイムドメイン消光法などの種々の技術が適用されてきた。
【0008】
具体的に、上記パルス法は、光スイッチ等を用いて光増幅器への入力光をオンオフさせながら出力光のスペクトルを測定し、入力光オフ時にASEレベルの測定を行う手法である(例えば、特許文献1参照)。また、上記ASE補間法は、光増幅器の出力光のスペクトルを測定し、該スペクトルからASE部分を除いて、信号光成分と同一波長のASE成分のレベルを推定する手法である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3467296号公報
【特許文献2】特許第3311102号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】波平宜敬,「DWDM光測定技術」,オプトロニクス社,2001年3月,p.95−100
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記のような従来のパルス法を適用したOSNR測定については、ASEレベルをダイレクトに測定することが可能となるが、光増幅器への信号光の入力を一時的にオフにする必要があり、そのオフの間は信号光の通信がエラーになってしまう。つまり、信号光の運用中にOSNR測定を行うことが困難であるという課題がある。
【0012】
また、ASE補間法を適用したOSNR測定については、信号光およびASEを含む光スペクトルより、信号光が存在しない波長領域を判別する必要があるが、40Gbps以上の高速な信号光の場合、信号光自体のスペクトル幅が広いため、上記信号光が存在しない波長領域の判別が困難になる。例えば、光増幅器から出力されるWDM光を分波器に与えて信号光波長毎に分波した光のOSNRを測定するようなとき、高速な信号光のスペクトル幅は、分波器の個々の波長に対応した透過帯の幅よりも広くなる場合がある。この場合、例えば図3に示すように、分波器を透過した光のスペクトルは、信号光波長の両サイドのASE成分(および信号光のサイドバンド成分)がカットされた形状となる。このため、当該光スペクトルより信号光が存在しない波長領域を判別することができず、信号光成分と同一波長のASEレベルの推定が不可能になる。このようにASE補間法を適用したOSNR測定は、スペクトル幅の広い高速な信号光への対応という点で課題がある。
【0013】
さらに、上記のようなパルス法やASE補間法などを適用したOSNR測定は、基本的に、高価な光スペクトラムアナライザを用いて被測定光のスペクトル測定を行うことが必要であるため、コスト面の課題もある。
【0014】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、運用中の光信号のOSNRを簡易かつ安価な構成によって精度良く測定することのできるOSNR測定装置および光通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため本発明によるOSNR測定装置の一態様は、被測定光が与えられる入力ポートと、前記入力ポートに光学的に結合され、可変の通過帯域を有し、前記被測定光から測定対象とする信号光波長に対応した光成分を選択的に取り出す波長選択部と、前記波長選択部の通過帯域を制御する波長制御部と、前記波長選択部から出力される光を分岐し、一方の分岐光に対して他方の分岐光を遅延させて互いに干渉させる遅延干渉部と、前記遅延干渉部から出力される遅延干渉光のパワーを検出する光検出部と、前記波長選択部の通過帯域の帯域幅および前記光検出部で検出された遅延干渉光のパワーに基づいて、測定対象とする信号光波長における光信号対雑音比を算出するOSNR演算部と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
上記OSNR測定装置によれば、被測定光に含まれる任意の伝送レートおよび光変調方式の信号光のOSNRを、高価な光スペクトルアナライザを用いることなく高い精度で測定することができる。また、波長選択部により、被測定光から測定対象の信号光波長に対応した所要帯域の光を選択的に取り出して遅延干渉部に与えるようにしたことで、測定対象の信号光が運用中であってもOSNRの測定を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】WDM光通信システムに用いられるEDFAの出力スペクトルの一例を示す図である。
【図2】WDM光通信システムの受信端に配置された分波器から出力される1波長の光スペクトルの一例を示す図である。
【図3】従来のASE補間法に関する課題を説明するための図である。
【図4】第1実施形態OSNR測定装置の構成を示すブロック図である。
【図5】上記実施形態における波長選択部に使用可能なモノクロメータの構成例を示す図である。
【図6】上記実施形態のOSNR測定装置をOADMノードに適用した場合の一例を示す図である。
【図7】上記実施形態について非位相変調方式の信号光のOSNRを測定する場合の動作を説明するフローチャートである。
【図8】上記実施形態について位相変調方式の信号光のOSNRを測定する場合の動作を説明するフローチャートである。
【図9】遅延干渉部の光遅延量に応じて各光検出器で検出される光パワーが変化する一例を示した図である
【図10】各光検出器で受光される信号光成分およびASE成分の割合と遅延干渉部の光遅延量との関係を纏めた図である。
【図11】1ビットの時間に対する光遅延量の割合を変化させたときに得られる各光検出器の平均光パワーとOSNRの関係を示した図である。
【図12】各光検出器の平均光パワーの差とOSNRの関係を示した図である。
【図13】第2実施形態OSNR測定装置の構成を示すブロック図である。
【図14】波長選択部からの出力光波形がDGDによって劣化する一例を示した図である。
【図15】波長選択部からの出力光波形が波長分散によって劣化する一例を示した図である。
【図16】第3実施形態OSNR測定装置の構成を示すブロック図である。
【図17】遅延干渉後の受信信号の波形がDGDによって劣化する一例を示した図である。
【図18】遅延干渉後の受信信号の波形が波長分散によって劣化する一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図4は、本発明によるOSNR測定装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
図4において、本実施形態のOSNR測定装置1は、例えば、被測定光Lが与えられる入力ポート11と、入力ポート11に光学的に結合する波長選択部12と、波長選択部12を制御する波長制御部13と、波長選択部12の出力光が与えられる遅延干渉部14と、遅延干渉部14から出力される干渉光のパワーを検出する光検出部15と、光検出部15の検出結果を基に測定対象の信号光波長におけるOSNRを演算するOSNR演算部16と、を備える。
【0019】
入力ポート11は、例えば、波長の異なる複数の信号光が合波されたWDM光が被測定光Lとして与えられる。該各波長の信号光の伝送レートは任意であり、40Gbps以上の高速な信号光をOSNRの測定対象とすることができる。上記信号光の変調方式としては、一般的な光強度変調(OOK)方式だけでなく、DPSKやDQPSK等の位相変調方式、または、該位相変調光をパルス化したRZ−D(Q)PSK等の光変調方式に対応可能である。
【0020】
波長選択部12は、可変の通過帯域を有し、入力ポート11を介して入力される被測定光Lより、測定対象とする信号光波長に対応した光成分を選択的に取り出して遅延干渉部14に出力する。この波長選択部12の可変の通過帯域は、波長制御部13により測定波長に応じて制御される。上記波長選択部12の具体的な構成としては、例えば、モノクロメータ、波長可変フィルタ、波長・帯域幅可変フィルタ、波長選択スイッチなどを使用することが可能である。
【0021】
図5は、モノクロメータを用いた波長選択部12の構成例を示す図である。この構成例では、モノクロメータの入射ポート121に与えられた被測定光Lが、コリメーティングミラー122、回折格子123、フォーカシングミラー124およびスリット125を順に通過することにより、測定対象とする信号光波長に対応した光成分が選択的に出射ポート126に結合される。
【0022】
具体的に、コリメーティングミラー122は、入射ポート121から放射される被測定光Lを平行光に変換し、該平行光を回折格子123に照射する。回折格子123は、コリメーティングミラー122からの平行光を波長に応じて異なる方向に反射する。フォーカシングミラー124は、回折格子123で反射された光を、各々の波長に応じてスリット125近傍の異なる位置に集光する。上記回折格子123は、図示を省略したアクチュエータ等により、コリメーティングミラー122からの平行光の入射方向に対する反射面の角度が可変になっており、該反射面の角度(回折格子123の回転角度)が測定波長に応じて設定される。これにより、スリット125近傍に集光される各波長の光のうち、測定波長に対応した光のみがスリット125を通過して出射ポート126に結合される。
【0023】
また、前述した波長選択部12に使用可能な波長可変フィルタの具体例としては、ここでは図示を省略するが、アレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed-Waveguide Grating)やファイバブラッググレーティング(FBG;Fiber Bragg Grating)等を利用した光フィルタ、音響光学チューナブルフィルタ(AOTF;Acousto Optic Tunable Filter)などの周知の光デバイスが挙げられる。さらに、通過帯域の中心波長だけでなく帯域幅も可変にした波長・帯域幅可変フィルタとしては、例えば、サンテック(株)社製のOTF−950,OTF−350、または、(株)アルネアラボラトリ社製のBVF−200などを適用することが可能である。また、波長選択スイッチについては、例えば、回折格子および可動ミラーを組み合わせて入出力ポート間の光路の切り替えを行うものなどが知られている。該波長選択スイッチでは、可動ミラーの角度が測定波長に応じて設定されることになる。
【0024】
波長制御部13は、OSNR測定装置1の外部より与えられる、測定対象とする信号光に関する情報(以下、「信号光情報」とする)INFに基づいて、波長選択部12における通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致するように、波長選択部12を制御する。信号光情報INFには、例えば、測定対象とする信号光の波長、伝送レート、変調方式などの情報が含まれる。具体的に、上記図5に示したようなモノクロメータを用いて波長選択部12が構成されている場合、波長制御部13は、測定対象の信号光波長に対応した光成分がスリット125を通過して出射ポート126に結合されるように、回折格子123の回転角度を制御する。また、波長・帯域幅可変フィルタを用いて波長選択部12が構成されている場合には、波長制御部13は、測定波長に応じて波長選択部12の通過帯域の中心波長を制御するだけでなく、該通過帯域の帯域幅も制御する。この帯域幅の制御では、測定対象の信号光の伝送レートおよび変調方式を基に信号光のスペクトル幅が判断され、該スペクトル幅に応じてOSNR測定に必要な帯域幅が設定される。
【0025】
遅延干渉部14は、波長選択部12からの出力光を2分岐するY分岐部141、該Y分岐部141で分岐された一方の光が与えられる第1アーム142および他方の光が与えられる第2アーム143、並びに、各アーム142,143をそれぞれ伝搬した光を互いに干渉させるXカプラ部144を具備したマッハツェンダ干渉計型の光導波路が、所要の基板に形成されている。ここでは第1アーム142の光路長よりも第2アーム143の光路長が長くなるように設計されており、第1アーム142を伝搬した光に対して、第2アーム143を伝搬した光が遅延される。当該光遅延量τは、例えば、平面光波回路(PLC)で構成される遅延干渉部14の温度をヒータやペルチェ素子等を用いて変化させることにより、調整可能となっている。各アーム142,143を伝搬した光はXカプラ部144に与えられることで干渉し、当該遅延干渉光はXカプラ部144の2つの出力ポートより出力されて、光検出部15に送られる。
【0026】
光検出部15は、遅延干渉部14の各出力ポートから出力される光をそれぞれ受光し、各々の光のパワーに応じてレベルが変化する電気信号を生成する1組の光検出器151,152を有する。各光検出器151,152で生成された電気信号は、OSNR演算部16にそれぞれ送られる。
【0027】
OSNR演算部16は、各光検出器151,152からの出力信号、波長選択部12の帯域幅を示す波長制御部13からの出力信号、および、OSNR測定装置1の外部より与えられる信号光情報INFを用い、後述するアルゴリズムに従って、測定波長に対応したOSNRを演算し、該演算値をOSNRの測定結果として外部に出力する。
【0028】
図6は、WDM光通信システムのOADM(Optical Add-Drop Multiplexing)ノードについて上記OSNR測定装置1を適用した場合の一例を示す図である。ただし、OSNR測定装置1の適用箇所がOADMノードに限定されることを意味するものではなく、WDM光通信システムの任意の場所でOSNR測定装置1によるOSNR測定を行うことが可能である。
【0029】
図6の適用例では、OADMノードに入力されるWDM光が、光増幅器51で一括増幅された後に分岐器52で2分岐され、一方の分岐光が分岐器53に送られ、他方の分岐光が波長選択スイッチ56に送られる。分岐器53では、分岐器52からのWDM光が更に2分岐され、一方の分岐光が被測定光LとしてOSNR測定装置1に送られ、他方の分岐光が分波器54に送られる。分波器54では、分岐器52,53で分岐されたWDM光が波長に応じて分離され、各波長の信号光がドロップ光として各々に対応した光受信器(RX)55で受信される。波長選択スイッチ56では、下流のノードに送信する各波長の信号光として、分岐器52から出力される信号光(スルー光)および光送信器(TX)57から出力される信号光(アド光)のいずれかが選択される。該波長選択スイッチ56で選択された信号光は、光増幅器58で一括増幅されて下流側の伝送路に出力される。
【0030】
なお、上記図6では、OADMノードにおいて、WDM光に対する信号光の分岐(ドロップ)および挿入(アド)の両方が実施される一例を示したが、分岐および挿入のいずれか一方のみが行われるノードであっても上記の場合と同様にOSNR測定装置1の適用が可能である。例えば、WDM光に対する信号光の挿入のみが実施され、分岐が行われないノードの場合には、上記図6の分岐器53、分波器54および光受信器55が省略され、分岐器52における一方の分岐光が被測定光LとしてOSNR測定装置1に送られることになる。
【0031】
次に、第1実施形態のOSNR測定装置1の動作について説明する。
上記のような構成のOSNR測定装置1では、被測定光Lに含まれる非位相変調方式の信号光のOSNRを測定する場合と、位相変調方式の信号光のOSNRを測定する場合とで動作とが異なる。このため、まず、非位相変調方式の信号光のOSNRを測定する場合の動作について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0032】
OSNR測定装置1が起動されると、最初に図7のステップ101(図中S101で示し、以下同様とする)において、波長制御部13が、外部より与えられる信号光情報INFを基に測定対象とする信号光波長を取得する。そして、ステップ102では、当該測定波長に従って、波長制御部13が、波長選択部12の通過帯域の中心波長を設定する。これにより、波長選択部12の通過帯域の中心波長と測定波長とが一致するようになり、入力ポート11に与えられる被測定光Lより測定波長に対応した信号光およびASEを含む光成分が選択的に取り出されて遅延干渉部14に送られる。遅延干渉部14では、波長選択部12からの出力光がY分岐部141で2分岐され、アーム142を伝搬した光と、アーム143を伝搬して光遅延量τが与えられた光とがXカプラ部144で結合されることにより遅延干渉光が生成される。該遅延干渉光は、光遅延量τに応じた割合でXカプラ部144の2つの出力ポートから出力され、光検出部15の対応する光検出器151,152でそれぞれ光電変換される。
【0033】
ステップ103では、各光検出器151,152の出力信号を参照しながら、遅延干渉部14における光遅延量τの調整が行われる。この光遅延量τの調整は、τ≠0[sec]となり、かつ、各アーム142,143を伝搬する光の位相差が0またはπ[rad]となるように、遅延干渉部14の温度等が最適化される。上記位相差が0またはπ[rad]になると、光検出器151,152のうちの一方の出力信号の平均レベルが最大になり、他方の出力信号の平均レベルが最小になる。なお、τ≠0[sec]の条件は、製造誤差等によって、同じ長さで設計したアーム142,143間に光路長差が発生した場合の光遅延を含むものとする。
【0034】
ステップ104では、波長・帯域幅可変フィルタ等を適用することで波長選択部12における通過帯域の帯域幅が可変とされる場合に、波長制御部13が、信号光情報INFを基に測定対象とする信号光のスペクトル幅を判断し、該スペクトル幅に応じて波長選択部12の帯域幅を設定する。なお、前述したモノクロメータや波長可変フィルタ、波長選択スイッチを用いて波長選択部12が構成される場合には、通常、通過帯域の帯域幅は固定となるので、ステップ104の動作は省略される。
【0035】
上記ステップ101〜ステップ104の動作が完了することによりOSNR測定の準備が整うので、以降、OSNR演算部16によるOSNRの算出処理が実行される。まず、ステップ105では、OSNR演算部16において、各光検出器151,152の出力信号を基に、光検出器151で検出される平均光パワーP1と、光検出器152で検出される平均光パワーP2とが取得される。
【0036】
ここで、各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2について詳しく説明する。
遅延干渉部14の各アーム142,143を伝搬する光には、信号光成分およびASE成分がそれぞれ含まれている。各アーム142,143を伝搬する信号光成分はコヒーレントであるため、Xカプラ部144で干渉が生じる。前述のステップ103において、各アーム142,143を伝搬する光の位相差が0またはπ[rad]となるように、遅延干渉部14の光遅延量τが調整されているので、信号光成分の遅延干渉光は、Xカプラ部144の2つの出力ポートのうちの片方のみから出力される。
【0037】
一方、各アーム142,143を伝搬するASE成分は、例えば、前述の図6に示したOAMDノードの構成例では、入力側の光増幅器51で発生するASEや、該OAMDノードよりも上流のノード等に配置された光増幅器で発生するASEが累積したものが、Y分岐部141で2分岐されたものであり、各々のASE成分はインコヒーレントである。このため、Xカプラ部144で干渉が生じることは無く、Xカプラ部144で結合されたASE成分は2つの出力ポートから略等しい割合で出力される。
【0038】
したがって、各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2は、上記のような遅延干渉部14における信号光成分およびASE成分の性質を反映したものになる。例えば、信号光成分の遅延干渉光が光検出器152側に出力されるように光遅延量τが調整されている場合、信号光成分の総パワーをPsig[mW]、ASE成分の総パワーをPase,total[mW]とすると、各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2について次の(2),(3)式の関係が成り立つことになる。
【数2】
【数3】
【0039】
上記(2)式および(3)式の関係より、信号光成分のパワーPsig[mW]は、次の(4)式により表される。また、各平均光パワーP1,P2の総和については、次の(5)式の関係が成り立つ。
【数4】
【数5】
【0040】
上記(4)式および(5)式の関係より、ASE成分の総パワーはPase,total=2×P1となる。これを波長選択部12の帯域幅B[nm]を用いて0.1nm帯域のASEパワーPase,0.1nmに換算すると、次の(6)式の関係が得られる。
【数6】
【0041】
したがって、測定対象の信号光波長におけるOSNR[dB]は、上記(4)式および(6)式の関係より、次の(7)式で表すことができる。
【数7】
【0042】
上記のような関係に従って測定対象の信号光波長におけるOSNRを算出するために、OSNR演算部16では、図7のステップ106において、各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2の差がとられ、上記(4)式で表される信号光成分のパワーPsigが算出される。続くステップ107では、光検出器151の平均光パワーP1と波長選択部12の帯域幅Bを用い、上記(4)式で表される0.1nm帯域のASEパワーPase,0.1nmが算出される。そして、ステップ108では、PsigおよびPase,0.1nmを用い、上記(7)式に従って測定対象の信号光波長におけるOSNRが算出される。
【0043】
次に、位相変調方式の信号光のOSNRを測定する場合の動作について、図8のフローチャートを参照しながら説明する。
位相変調方式の信号光のOSNR測定を行う場合にも、前述した非位相変調方式の信号光のOSNR測定を行う場合のステップ101〜ステップ104と同様な動作により、OSNR測定のための準備として、波長選択部12の通過帯域の設定および遅延干渉部14の光遅延量τの調整が行われる。
【0044】
位相変調方式の信号光の場合、遅延干渉部14の各アーム142,143を伝搬する信号光の位相はビット値に応じてそれぞれ変化する。例えば、2値の位相変調が適用された信号光の場合、図9に示すように各アーム142,143を伝搬する信号光の位相はビット値に応じて0,πで変化する。図9の(A)は、遅延干渉部14の光遅延量がτ≒0に調整されているときの一例を示している。τ≒0では、各アーム142,143を伝搬する信号光の間で殆ど位相差が生じないため、当該遅延干渉光は2つの光検出器151,152のうちの片側(ここでは光検出器152側)に出力される。
【0045】
遅延干渉部14の光遅延量τを増やしていくと、各アーム142,143を伝搬する信号光間の位相差がπになる割合が増えるため、遅延干渉光が光検出器151側にも出力されるようになる。図9の(B)は、遅延干渉部14の光遅延量τが1ビットの時間の0.75倍に調整されているときの一例である。そして、遅延干渉部14の光遅延量τが1ビットの時間に一致するようになると(100%遅延)、図9の(C)に示すように、遅延干渉光が各光検出器151,152側に同じ割合で出力されるようになる。この場合、当該信号光の送信側でのマーク率(全符号に対する符号“1”の割合)を50%とすると、各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2はほぼ等しくなる。
【0046】
なお、上記図9では、2値の位相変調が適用された信号光の例を示したが、OSNR測定装置1によりOSNRの測定が可能な位相変調方式が2値のものに限定されることを意味するものではなく、nを自然数とする2n値の位相変調方式全般についてOSNR測定装置1は有効である。
【0047】
一方、各アーム142,143を伝搬するASE成分はインコヒーレントであるため(前述した非位相変調方式の信号光の場合と同様)、Xカプラ部144で干渉が生じることは無い。このため、Xカプラ部144で結合されたASE成分は、遅延干渉部14の光遅延量τに依存することなく、各光検出器151,152側に同じ割合で出力される。
【0048】
図10は、各光検出器151,152で受光される信号光成分およびASE成分の割合と、遅延干渉部14の光遅延量τとの関係を纏めた図である。なお、横軸のtは、信号光の1ビットの時間に対する遅延干渉部14の光遅延量τの割合を表している。このように、1ビットの時間に対する光遅延量τの割合tが増加すると、光検出器151での信号光成分の受光パワーP1sigの割合は増加し、光検出器152での信号光成分の受光パワーP2sigの割合は減少していく。一方、各光検出器151,152でのASE成分の受光パワーP1ase,P2aseの割合は、1ビットの時間に対する光遅延量τの割合tの変化に関係なく一定となる。
【0049】
上記図10の関係を基に、信号光成分の総パワーPsig[mW]、ASE成分の総パワーPase,total[mW]、1ビットの時間に対する光遅延量τの割合tを用いて、各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2[mW]を数式化すると、次の(8)式および(9)式の関係が得られる。
【数8】
【数9】
【0050】
上記(8)式および(9)式の関係より、信号光成分のパワーPsig[mW]は、次の(10)式により表すことができる。
【数10】
【0051】
また、前述した(5)式の関係と、上記(8)式および(9)式の関係とにより、ASE成分の総パワーPase,totalについては、次の(11)式の関係が成り立つ。
【数11】
【0052】
上記(11)式の関係を、波長選択部12の帯域幅B[nm]を用いて0.1nm帯域のASEパワーPase,0.1nmに換算すると、次の(12)式の関係が得られる。
【数12】
【0053】
したがって、測定対象の信号光波長におけるOSNR[dB]は、上記(10)式および(12)式の関係より、次の(13)式で表すことができる。
【数13】
【0054】
図11は、上記(13)式の関係より、波長選択部12の帯域幅をB=0.6[nm]、1ビットの時間に対する光遅延量τの割合をt≒0からt=0.8の間で変化させたときに得られる、OSNR[dB]と各光検出器151,152の平均光パワーP1[dBm],P2[dBm]との関係を示した図である。図11の関係より、OSNRが大きくなるとP1とP2の差が大きくなることが分かる。また、tを小さくした方がP1とP2の差が大きくなることが分かる。図12は、P1とP2の差ΔP[dB]とOSNRの関係を示した図である。図12の関係からは、tをより小さくしてΔPを求めることで、位相変調方式の信号光のOSNRをより高い精度で測定できることが分かる。
【0055】
上記のような関係に従って測定対象の信号光波長におけるOSNRを算出するために、OSNR演算部16では、図8のステップ105において、各光検出器151,152の出力信号を基に、各光検出器151,152で検出される平均光パワーP1,P2が取得される。続くステップ106’では、信号光の伝送レート(ボーレート)および遅延干渉部14の光遅延量τの設定を基に、1ビットの時間に対する光遅延量τの割合tが判断され、その割合tおよび各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2を用いて、上記(10)式で表される信号光成分のパワーPsigが算出される。さらに、ステップ107’では、上記1ビットの時間に対する光遅延量τの割合tおよび各光検出器151,152の平均光パワーP1,P2と、波長選択部12の帯域幅Bとを用いて、上記(12)式で表される0.1nm帯域のASEパワーPase,0.1nmが算出される。そして、ステップ108では、PsigおよびPase,0.1nmを用い、上記(13)式に従って測定対象の信号光波長におけるOSNRが算出される。
【0056】
上述したように第1実施形態のOSNR測定装置1によれば、被測定光Lに含まれる任意の伝送レートおよび光変調方式の信号光のOSNRを、高価な光スペクトルアナライザを用いることなく高い精度で測定することができる。また、波長選択部12により、入力ポート11に与えられる被測定光Lから測定対象の信号光波長に対応した所要帯域の光を選択的に取り出して遅延干渉部14に与えるようにしたことにより、当該信号光の受信処理系(例えば、図6の分波器54および光受信器55)に対してOSNR測定系を切り離すことができるため、測定対象の信号光が運用中であってもOSNRの測定を行うことが可能である。勿論、運用開始前に伝送されるテスト光などのOSNR測定を行うこともできる。
【0057】
次に、本発明によるOSNR測定装置の第2実施形態について説明する。
図13は、第2実施形態のOSNR測定装置の構成を示すブロック図である。
図13において、本実施形態のOSNR測定装置2は、上述の図4に示した第1実施形態の構成について、波長選択部12からの出力光のピークパワーを検出する機能を追加し、測定対象となる信号光の品質に関して、OSNRだけでなくピークパワーの情報も得られるようにしたものである。
【0058】
具体的には、波長選択部12と遅延干渉部14の間の光路上に分岐器21が挿入される。この分岐器21は、波長選択部12から遅延干渉部14に送られる光の一部を分岐し、該分岐光を光検出器22に与える。光検出器22は、分岐器21で分岐された光を電気信号に変換して、ピークパワー検出回路23に出力する。ピークパワー検出回路23は、光検出器22の出力信号のピークパワーを検出して、その検出結果をOSNR測定装置2の外部に出力する。
【0059】
上記のような構成のOSNR測定装置2では、波長選択部12からの出力光を利用して、OSNR測定の対象となる信号光のピークパワーが検出されることにより、その検出結果に基づいて、当該信号光の群遅延時間差(DGD:Differential Group Delay)による波形劣化、または、波長分散による波形劣化の状態を判断することが可能になる。
【0060】
図14は、波長選択部12からの出力光波形がDGDによって劣化する一例を示した図である。また、図15は、波長選択部12からの出力光波形が波長分散によって劣化する一例を示した図である。ここでは、43.02GbpsのRZ−DQPSK変調された信号光を測定対象としている。図14の例より、DGDの値が大きくなるにつれて光波形が崩れ、光のピークパワーが低下していく様子が分かる。また、図15の例より、波長分散の値が0ps/nmから離れるにつれて光波形が崩れ、DGDの場合と同様に光のピークパワーが低下していく様子が分かる。したがって、波長選択部12から遅延干渉部14に出力される光の一部を分岐器21で取り出し、光検出器22およびピークパワー検出回路23により光強度のピークパワーをモニタすることによって、当該信号光の品質を測定することができる。
【0061】
上記のように第2実施形態のOSNR測定装置2によれば、測定対象の信号光について、上述した第1実施形態の場合と同様にOSNR測定を行うことができるのに加えて、ピークパワー検出回路23で検出されるピークパワーの値を基にDGDまたは波長分散による光波形の劣化を判断することができ、信号光の品質を多角的に測定することが可能になる。
【0062】
次に、本発明によるOSNR測定装置の第3実施形態について説明する。
図16は、第3実施形態のOSNR測定装置の構成を示すブロック図である。
図16において、本実施形態のOSNR測定装置3は、上述の図4に示した第1実施形態の構成について、各光検出器151,152の出力信号を受信処理する差動受信回路31と、該差動受信回路31から出力される受信信号の波形をモニタする波形モニタ32とを追加し、測定対象となる信号光の品質に関して、OSNRだけでなく受信波形の情報も得られるようにしたものである。このような構成では、光検出部15で得られる電気信号を利用して、OSNR測定の対象となる信号光の受信波形がモニタされることにより、該信号光のDGDまたは波長分散による波形劣化の状態を判断することが可能になる。
【0063】
図17は、遅延干渉後の受信信号の波形がDGDによって劣化する一例を示した図である。また、図18は、遅延干渉後の受信信号の波形が波長分散によって劣化する一例を示した図である。ここでも、43.02GbpsのRZ−DQPSK変調された信号光を測定対象としている。図17の例より、DGDの値が大きくなるにつれて受信波形が劣化し、アイ開口部分が小さくなっていく様子が分かる。また、図18の例より、波長分散の値が0ps/nmから離れるにつれて受信波形が劣化し、DGDの場合と同様にアイ開口部分が小さくなっていく様子が分かる。したがって、各光検出器151,152の出力信号を差動受信回路31で受信処理し、波形モニタ32を用いて受信信号の波形をモニタすることによって、当該信号光の品質を測定することができる。
【0064】
上記のように第3実施形態のOSNR測定装置3によれば、測定対象の信号光について、上述した第1実施形態の場合と同様にOSNR測定を行うことができるのに加えて、波形モニタ32でモニタされる受信波形を基にDGDまたは波長分散による波形劣化を判断することができ、信号光の品質を多角的に測定することが可能になる。
【0065】
以上の各実施形態に関して、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 被測定光が与えられる入力ポートと、
前記入力ポートに光学的に結合され、可変の通過帯域を有し、前記被測定光から測定対象とする信号光波長に対応した光成分を選択的に取り出す波長選択部と、
前記波長選択部の通過帯域を制御する波長制御部と、
前記波長選択部から出力される光を分岐し、一方の分岐光に対して他方の分岐光を遅延させて互いに干渉させる遅延干渉部と、
前記遅延干渉部から出力される遅延干渉光のパワーを検出する光検出部と、
前記波長選択部の通過帯域の帯域幅および前記光検出部で検出された遅延干渉光のパワーに基づいて、測定対象の信号光波長における光信号対雑音比を算出するOSNR演算部と、
を備えたことを特徴とするOSNR測定装置。
【0066】
(付記2) 付記1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、モノクロメータを含み、
前記波長制御部は、前記モノクロメータの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致するように、前記モノクロメータに具備された回折格子の角度を制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【0067】
(付記3) 付記1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、波長可変フィルタを含み、
前記波長制御部は、前記波長可変フィルタの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致するように、前記波長可変フィルタを制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【0068】
(付記4) 付記1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、波長・帯域幅可変フィルタを含み、
前記波長制御部は、前記波長・帯域幅可変フィルタの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致し、かつ、前記波長・帯域幅可変フィルタの通過帯域の帯域幅が測定対象の信号光のスペクトル幅に応じた値となるように、前記波長・帯域幅可変フィルタを制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【0069】
(付記5) 付記1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、波長選択スイッチを含み、
前記波長制御部は、前記波長選択スイッチの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致するように、前記波長選択スイッチに具備された可動ミラーの角度を制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【0070】
(付記6) 付記1〜5のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記遅延干渉部は、各分岐光の間の位相差が0またはπラジアンとなるように、一方の分岐光に対して他方の分岐光を遅延させることを特徴とするOSNR測定装置。
【0071】
(付記7) 付記1〜6のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記遅延干渉部は、前記波長選択部から出力される光を2つに分岐するY分岐部、該Y分岐部で分岐された一方の分岐光が伝搬する第1アーム、前記Y分岐部で分岐された他方の分岐光が伝搬し、前記第1アームよりも長い光路長を有する第2アーム、および、前記第1,2アームを伝搬した各光を互いに干渉させ、当該遅延干渉光を2つの出力ポートから前記光検出部に出力するXカプラ部を具備したマッハツェンダ干渉計型の光導波路を含み、
前記光検出部は、前記遅延干渉部の一方の出力ポートから出力される遅延干渉光を受光し、当該光パワーに応じてレベルが変化する電気信号を生成する第1光検出器と、前記遅延干渉部の他方の出力ポートから出力される遅延干渉光を受光し、当該光パワーに応じてレベルが変化する電気信号を生成する第2光検出器とを含むことを特徴とするOSNR測定装置。
【0072】
(付記8) 付記1〜7のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部から出力される光のピークパワーを検出するピークパワー検出部を備えたことを特徴とするOSNR測定装置。
【0073】
(付記9) 付記8に記載のOSNR測定装置であって、
前記ピークパワー検出部は、前記波長選択部から出力される光の一部を分岐する分岐器と、該分岐器で分岐された光を電気信号に変換する光検出器と、該光検出器の出力信号のピークパワーを検出するピークパワー検出回路と、を含むことを特徴とするOSNR測定装置。
【0074】
(付記10) 付記1〜7のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記光検出部から出力される信号を受信処理し、当該受信信号の波形をモニタする波形モニタ部を備えたことを特徴とするOSNR測定装置。
【0075】
(付記11) 付記10に記載のOSNR測定装置であって、
前記波形モニタ部は、前記光検出部から出力される信号を差動受信する差動受信回路と、該差動受信回路から出力される受信信号の波形をモニタする波形モニタと、を含むことを特徴とするOSNR測定装置。
【0076】
(付記12) 付記1〜11のいずれか1つに記載のOSNR測定装置を備えたことを特徴とする光通信システム。
【0077】
(付記13) 付記12に記載の光通信システムであって、
OADMノード内に前記OSNR測定装置を配置したことを特徴とする光通信システム。
【符号の説明】
【0078】
1,2,3…OSNR測定装置
11…入力ポート
12…波長選択部
121…入射ポート
122…コリメーティングミラー
123…回折格子
124…フォーカシングミラー
125…スリット
126…出射ポート
13…波長制御部
14…遅延干渉部
15…光検出部
16…OSNR演算部
21,52,53…分岐器
22…光検出器
23…ピークパワー検出回路
31…差動受信回路
32…波形モニタ
51,58…光増幅器
54…分波器
55…光受信器
56…波長選択スイッチ
57…光送信器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定光が与えられる入力ポートと、
前記入力ポートに光学的に結合され、可変の通過帯域を有し、前記被測定光から測定対象とする信号光波長に対応した光成分を選択的に取り出す波長選択部と、
前記波長選択部の通過帯域を制御する波長制御部と、
前記波長選択部から出力される光を分岐し、一方の分岐光に対して他方の分岐光を遅延させて互いに干渉させる遅延干渉部と、
前記遅延干渉部から出力される遅延干渉光のパワーを検出する光検出部と、
前記波長選択部の通過帯域の帯域幅および前記光検出部で検出された遅延干渉光のパワーに基づいて、測定対象の信号光波長における光信号対雑音比を算出するOSNR演算部と、
を備えたことを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、モノクロメータを含み、
前記波長制御部は、前記モノクロメータの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致するように、前記モノクロメータに具備された回折格子の角度を制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、波長可変フィルタを含み、
前記波長制御部は、前記波長可変フィルタの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致するように、前記波長可変フィルタを制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、波長・帯域幅可変フィルタを含み、
前記波長制御部は、前記波長・帯域幅可変フィルタの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致し、かつ、前記波長・帯域幅可変フィルタの通過帯域の帯域幅が測定対象の信号光のスペクトル幅に応じた値となるように、前記波長・帯域幅可変フィルタを制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、波長選択スイッチを含み、
前記波長制御部は、前記波長選択スイッチの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致するように、前記波長選択スイッチに具備された可動ミラーの角度を制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記遅延干渉部は、各分岐光の間の位相差が0またはπラジアンとなるように、一方の分岐光に対して他方の分岐光を遅延させることを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記遅延干渉部は、前記波長選択部から出力される光を2つに分岐するY分岐部、該Y分岐部で分岐された一方の分岐光が伝搬する第1アーム、前記Y分岐部で分岐された他方の分岐光が伝搬し、前記第1アームよりも長い光路長を有する第2アーム、および、前記第1,2アームを伝搬した各光を互いに干渉させ、当該遅延干渉光を2つの出力ポートから前記光検出部に出力するXカプラ部を具備したマッハツェンダ干渉計型の光導波路を含み、
前記光検出部は、前記遅延干渉部の一方の出力ポートから出力される遅延干渉光を受光し、当該光パワーに応じてレベルが変化する電気信号を生成する第1光検出器と、前記遅延干渉部の他方の出力ポートから出力される遅延干渉光を受光し、当該光パワーに応じてレベルが変化する電気信号を生成する第2光検出器とを含むことを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部から出力される光のピークパワーを検出するピークパワー検出部を備えたことを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記光検出部から出力される信号を受信処理し、当該受信信号の波形をモニタする波形モニタ部を備えたことを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載のOSNR測定装置を備えたことを特徴とする光通信システム。
【請求項1】
被測定光が与えられる入力ポートと、
前記入力ポートに光学的に結合され、可変の通過帯域を有し、前記被測定光から測定対象とする信号光波長に対応した光成分を選択的に取り出す波長選択部と、
前記波長選択部の通過帯域を制御する波長制御部と、
前記波長選択部から出力される光を分岐し、一方の分岐光に対して他方の分岐光を遅延させて互いに干渉させる遅延干渉部と、
前記遅延干渉部から出力される遅延干渉光のパワーを検出する光検出部と、
前記波長選択部の通過帯域の帯域幅および前記光検出部で検出された遅延干渉光のパワーに基づいて、測定対象の信号光波長における光信号対雑音比を算出するOSNR演算部と、
を備えたことを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、モノクロメータを含み、
前記波長制御部は、前記モノクロメータの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致するように、前記モノクロメータに具備された回折格子の角度を制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、波長可変フィルタを含み、
前記波長制御部は、前記波長可変フィルタの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致するように、前記波長可変フィルタを制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、波長・帯域幅可変フィルタを含み、
前記波長制御部は、前記波長・帯域幅可変フィルタの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致し、かつ、前記波長・帯域幅可変フィルタの通過帯域の帯域幅が測定対象の信号光のスペクトル幅に応じた値となるように、前記波長・帯域幅可変フィルタを制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部は、波長選択スイッチを含み、
前記波長制御部は、前記波長選択スイッチの通過帯域の中心波長が測定対象の信号光波長に一致するように、前記波長選択スイッチに具備された可動ミラーの角度を制御することを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記遅延干渉部は、各分岐光の間の位相差が0またはπラジアンとなるように、一方の分岐光に対して他方の分岐光を遅延させることを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記遅延干渉部は、前記波長選択部から出力される光を2つに分岐するY分岐部、該Y分岐部で分岐された一方の分岐光が伝搬する第1アーム、前記Y分岐部で分岐された他方の分岐光が伝搬し、前記第1アームよりも長い光路長を有する第2アーム、および、前記第1,2アームを伝搬した各光を互いに干渉させ、当該遅延干渉光を2つの出力ポートから前記光検出部に出力するXカプラ部を具備したマッハツェンダ干渉計型の光導波路を含み、
前記光検出部は、前記遅延干渉部の一方の出力ポートから出力される遅延干渉光を受光し、当該光パワーに応じてレベルが変化する電気信号を生成する第1光検出器と、前記遅延干渉部の他方の出力ポートから出力される遅延干渉光を受光し、当該光パワーに応じてレベルが変化する電気信号を生成する第2光検出器とを含むことを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記波長選択部から出力される光のピークパワーを検出するピークパワー検出部を備えたことを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のOSNR測定装置であって、
前記光検出部から出力される信号を受信処理し、当該受信信号の波形をモニタする波形モニタ部を備えたことを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載のOSNR測定装置を備えたことを特徴とする光通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−9911(P2012−9911A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141120(P2010−141120)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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