説明

P2P配信方法およびシステム

【課題】ネットワーク情報を共有しない複数のネットワークから構成されるP2Pネットワークにおいて、各ネットワークのネットワーク情報が反映されたピアリストを作成する。
【解決手段】要求ピアが、自ピアのIPアドレス、要求ピア数,NW情報管理サーバ10aのIPアドレスおよびコンテンツ識別子の記述されたピアリスト要求を配信制御サーバ50へ送信する手順(1)〜(3)と、配信制御サーバ50が、要求ピアのIPアドレスおよび要求ピア数、ならびにコンテンツのピア候補が記述されたピアリスト作成要求をNW情報管理サーバ10aへ送信する手順(4)と、NW情報管理サーバ10aが、ピア候補から自身の管理ピアノードを抽出してピアリストを作成し、これを配信制御サーバ50へ送信する手順(5)〜(11)と、配信制御サーバ50がピアリストを要求ピアへ送信する手順(12)と、要求ピアがピアリストに基づいてコンテンツのピースをダウンロードする手順(13)とを具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、P2P通信によりコンテンツを配信するP2P配信方法およびシステムに係り、特に、ピアノードリストを作成する配信制御サーバが所属するネットワークと要求ピアが所属するネットワークとが異なり、配信制御サーバが要求ピアのネットワークのトポロジを参照できないネットワーク構成に好適なP2Pネットワーク配信方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、P2P技術を用いたコンテンツ配信により、ISP (Internet Services Provider)間またはIP内部のトラフィックが増加し、これによりバックボーンが非常に圧迫されている。このような技術課題に対して、複数のISPがネットワーク情報を公開し、P2P配信サービス側で公開情報を利用し、ISPと配信サービスとが互いに協力することで双方にとって効率の良い配信を行うP4P (Provider Portal for P2P)と呼ばれる取組が非特許文献1に開示されている。
【0003】
このP4Pでは、コンテンツのピースを所持するピアノードのアドレスを監視してピアノードリストを作成する配信制御サーバに加えて、更に各ISP内部にiTrackerと呼ばれるサーバが設置されている。iTrackerはISP内部のネットワーク状況を保持し、ピアからコンテンツ配信を要求されると、配信制御サーバは、接続可能なピア候補を優先度順に記載したピアリストを作成する際に、接続可能なピア情報をiTrackerへ通知する。iTrackerは、自身が保持しているネットワーク情報に基づいて要求ピアと各ピア候補との間の距離(P4P-distance)や帯域を求めて配信制御サーバへ通知する。配信制御サーバは、ピアの間の距離や帯域に基づいてピアリストを作成し、これを要求ピアへ返信する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】P4P: Provider Portal for Applications http://www.cs.washington.edu/homes/arvind/papers/p4p.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術では、複数のISPが公開するネットワーク情報をP2P配信サービス側で利用し、ISPと配信サービスとが互いに協力し、双方にとって効率の良い配信を行うことでトラフィック量が削減される。
【0006】
例えば、配信制御サーバが、コンテンツを要求した要求ピアに対して、接続可能なピア候補のリストを提供する際、要求ピアと同一のISPに属するピアノードをピアリストに優先的に登録すれば、ISP間のトラヒック量を削減できる。
【0007】
しかしながら、上記の従来技術では各ISPが自身のネットワーク情報を公開することが前提となっており、ネットワーク情報を公開しない、あるいは公開できない複数のISPネットワークにより構成されるP2Pネットワークには適用できない。
【0008】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、ネットワーク情報を共有しない複数のネットワークから構成されるP2Pネットワークにおいて、要求ピアやコンテンツサーバのネットワークアドレスにかかわらず、各ネットワークのネットワーク情報が反映されたピアリストを作成して要求ピアへ提供できるP2P配信方法およびシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、ネットワーク情報を共有しない複数のネットワークを含むP2Pネットワーク上でコンテンツファイルが複数のピースに分割されて各ピアに分散配置され、コンテンツを要求するピアがピアリストを取得して各ピアからピースを収集するP2P配信システムにおいて、以下のような手段を講じた点に特徴がある。
【0010】
(1)各ネットワークのネットワーク情報を管理するネットワーク情報管理サーバと、コンテンツのピース片を所持するピアノードのアドレス情報を管理する配信制御サーバとを設けた。そして、配信制御サーバは、要求ピアから、当該要求ピアのアドレス情報および当該要求ピアが属するネットワークの情報を管理するネットワーク情報管理サーバのアドレス情報の記述されたピアリスト要求を受信する手段と、前記ピアリスト要求に応答して、要求ピアのアドレス情報およびコンテンツのピースを所持しているピア候補のアドレス情報の記述されたピアリスト作成要求を前記ネットワーク情報管理サーバへ送信する手段と、前記ネットワーク情報管理サーバから返信されるピアリスト作成応答に記述されているピアリストの記述されたピアリスト応答を要求ピアへ返信する手段とを具備する。ネットワーク情報管理サーバは、配信制御サーバから受信したピアリスト作成要求に記述されたピア候補のアドレス情報を抽出する手段と、ピア候補の中から管理対象の管理ピアノードを抽出する手段と、抽出された管理ピアノードを含むピアリストを作成する手段と、ピアリストの記述されたピアリスト作成応答を前記配信制御サーバへ送信する手段とを具備する。
【0011】
(2)ピアリストを作成する手段は、ピアリストの各ピアに対して、要求ピアとのネットワーク上の距離が近い順に、より高い優先度を設定する。
【0012】
(3)ネットワーク情報管理サーバが、ピア候補の中から管理対象外の管理外ピアノードを抽出する手段を具備し、ピアリストを作成する手段は、管理ピアノードおよび管理外ピアノードが所定の割合で含まれるピアリストを作成する。
【0013】
(4)ピアリストでは、管理ピアノードの優先度を管理外ピアノードの優先度よりも高くされる。
【0014】
(5)各ネットワークにおいて、前記ネットワーク情報管理サーバのアドレス情報および管理対象ネットワークのアドレス情報を管理するネットワーク管理サーバを具備し、ネットワーク管理サーバは、要求ピアから、当該要求ピアのIPアドレスが記述された、前記ネットワーク管理サーバに関するアドレス要求を受信する手段と、要求ピアのアドレス情報に基づいて、ネットワーク上の距離が近いネットワーク情報管理サーバを探索し、そのアドレス情報の記述されたアドレス応答を要求ピアに返信する手段とを具備する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下のような効果が達成される。
【0016】
(1)配信制御サーバと要求ピアとが同一のISPネットワーク内に存在せず、要求ピアが所属するネットワークの情報を配信制御サーバが参照できない場合であっても、配信制御サーバは、要求ピアが所属するネットワークの情報を管理するサーバに対してピアリスト作成の一部を移管することにより、要求ピアが所属するネットワークの情報に基づくピアリスト作成が可能になる。
【0017】
(2)要求ピアに提供されるピアリストでは、各ピアに優先度が設定されているので、要求ピアでは、優先度順にP2Pコネクションを確率することで効率の良いP2P配信が可能になる。
【0018】
(3)要求ピアに提供されるピアリストに、同一セグメント内の管理ピアノードのみならず、所定の割合で他のセグメントの管理外ピアノードも登録されているので、人気の高いコンテンツのようにピースが十分に行き渡っている場合にはバックボーンの帯域を圧迫しないP2P配信が可能になる一方、ピースが十分に行き渡っていない場合には他のセグメントからもピースをダウンロードできるので、バックボーンのトラヒック抑制とP2Pの高速配信とを両立できるようになる。
【0019】
(4)ピアリストに管理ピアノードおよび管理外ピアノードの双方が登録される場合、管理ピアノードの優先度が管理外ピアノードの優先度よりも高くされるので、同一セグメント内のピアからの配信を優先され、セグメント間のトラヒック量を削減できるようになる。
【0020】
(5)要求ピアの所属するネットワークが複数のセグメントから構成され、セグメントごとにネットワーク情報が管理されている場合であっても、要求ピアが自ピアの所属するセグメントを管理するサーバのアドレスを取得して配信制御サーバへ通知するので、配信制御サーバは、要求ピアが所属するネットワークに複数の情報管理サーバが設置されている場合であっても、要求ピアと対応付けられたが情報管理サーバに対してピアリストの作成を要求できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明が適用されるP2P配信システムのネットワーク構成を示した図である。
【図2】ネットワーク情報管理サーバおよび配信制御サーバの構成を示した機能ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態のシーケンスフローである。
【図4】ピアリストの作成手順を模式的に示した図である。
【図5】本発明の第2実施形態のネットワーク構成を示した図である。
【図6】本発明の第3実施形態のネットワーク構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明が適用されるP2P配信システムのネットワーク構成を示した図であり、ここでは、P2Pネットワークが3つのインターネットサービスプロバイダISP-A,ISP-B,ISP-Cのネットワークにより構成され、各ISPネットワークが、それぞれ単一のセグメントA,B,Cで構成されている場合を例にして説明する。
【0023】
各ISPネットワークには、セグメント単位でネットワークトポロジを含むネットワーク情報を収集、管理するネットワーク(NW)情報管理サーバ(n-Tracker)10、および当該NW情報管理サーバ10のアドレス情報やその管理対象ネットワークのアドレス情報(ネットワークアドレス)を管理するネットワーク(NW)管理サーバ(nT-Manager)20が、多数のピアノード30およびそのルータ40と共に収容されている。
【0024】
コンテンツの配信元となるサービスプロバイダISP-Bにはさらに、映画や音楽などのコンテンツファイルが蓄積されるコンテンツサーバ60、およびコンテンツごとに、そのピース(ピース状の多数のファイル片)を所持しているピアノードのアドレス情報を管理し、コンテンツ配信を要求するピアノードPeer#1(以下、要求ピアと表現する場合もある)からのピアリスト要求に応答して、ピースを所持しているピアノードのリストを提供する配信制御サーバ(p-Tracker)50が収容されている。
【0025】
このような構成において、コンテンツサーバ60からコンテンツファイルをピアに初めてダウンロードするときは、コンテンツサーバ60から全てのファイルをダウンロードすることになるが、その後は、コンテンツファイルが複数のピースに分割されてネットワーク上の各ピアノードに分散配置される。
【0026】
その後、要求ピアPeer#1がコンテンツファイルをダウンロードする場合、P2P配信により先ずメタ情報ファイルを取得する。このメタ情報ファイルには、コンテンツの配信を管理している配信制御サーバ50のアドレス情報が記述されており、要求ピアPeer#1は配信制御サーバ50に対してピアリストを要求し、これを取得する。要求ピアPeer#1はさらに、このピアリストに基づいて、ネットワーク上の各ピアからピースを収集し、これらを結合してコンテンツファイルを再構築する。
【0027】
図2は、前記NW情報管理サーバ10および配信制御サーバ50の主要部の構成を示したブロック図であり、ここでは、ISP-AのセグメントAに属するピアの一つが要求ピアPeer#1として、ISP-Bのネットワークに収容されているコンテンツサーバ60のコンテンツのダウンロードするための構成を、セグメントAのNW情報管理サーバ10aおよびセグメントBの配信制御サーバ50に注目して説明する。
【0028】
NW情報管理サーバ10aにおいて、NW情報検知部101は、セグメントA内の各ピア30が接続されたルータ40aと通信し、ピアノード間のネットワーク上での距離に関係する情報として、リンク毎に距離・帯域幅・帯域使用率・コスト・回線(FTTH/ADSL)などの情報をネットワークトポロジと共に検出する。このような情報検出は、所定の周期で定期的に行われると共に、障害発生時にもその都度行われる。NW情報管理部102は、これらの情報に基づいて、ネットワークトポロジおよびピアノード間のネットワーク上での距離を一元管理する。
【0029】
配信制御サーバ50において、ピアリスト要求受信部201は、セグメントAの要求ピアPeer#1から、そのIPアドレス、コンテンツ識別情報および要求ピア数Nの記述されたピアリスト要求メッセージを受信する。ピアノード抽出部202は、コンテンツごとにそのピースの全部または一部を保持しているピアノードのIPアドレスを、各ピアノードのネットワークセグメントとは無関係に管理し、ピアリスト要求メッセージに記述されたコンテンツ識別情報に基づいて、そのピースを所持しているピアノード候補のIPアドレスを抽出する。ピアリスト作成要求部203は、要求ピアPeer#1のIPアドレス、前記抽出されたピアノード候補のIPアドレスおよび要求ピア数Nの記述されたピアリスト作成要求メッセージを生成し、これをセグメントAのNW情報管理サーバ10aへ送信する。
【0030】
NW情報管理サーバ10aへ戻り、ピアノード識別部103は、配信制御サーバ50から受信したピアリスト作成要求メッセージに記述されているピアノード候補のアドレスを参照し、管理対象のセグメントAに属するピアノード(以下、管理ピアノードと表現する)および他のセグメントB,Cに属するピアノード(以下、管理外ピアノードと表現する)を識別する。優先度設定部104は、各管理ピアノードを要求ピアPeer#1とのネットワーク上の距離が短い順にソートする。
【0031】
ピアリスト作成部105は、要求ピアPeer#1が要求しているピアノード数Nの一部(Sr%)を前記ソートされた管理ピアノードの上位から取得し、さらに残り(100−Sr)%を他のセグメントB,Cに属する管理外ピアノードからランダムに抽出し、総数でN個のピアノードのIPアドレスが記述されたピアリストを作成する。ピアリスト提供部106は、前記ピアリストの記述されたピアリスト作成応答メッセージを生成し、これをセグメントBの配信制御サーバ50へ送信する。
【0032】
配信制御サーバ50へ戻り、ピアリスト応答送信部204は、前記NW情報管理サーバ10から返信されるピアリスト作成応答メッセージを受信し、このメッセージに記述されているピアリストをピアリスト応答メッセージに記述して要求ピアPeer#1へ返信する。
【0033】
次いで、図3のシーケンスフローを参照し、ISP-AのセグメントAに属するピアの一つが要求ピアPeer#1として、ISP-Bのコンテンツサーバ60に蓄積されているコンテンツをダウンロードする場合を例にして本発明の一実施形態の動作を説明する。
【0034】
手順(1):要求ピアPeer#1が、自ピアの属するセグメントAのネットワーク情報を管理するNW情報管理サーバ10a(n-Tracker)のIPアドレスを取得するために、自ピアPeer#1のIPアドレスが記述されたアドレス要求メッセージを生成して、同一セグメント内のNW管理サーバ(nT-Manager)20aへ送信する。
【0035】
手順(2):ネットワーク管理サーバ20aは、少なくとも一つのNW情報管理サーバ10のアドレス情報を保持しており、受信したアドレス要求メッセージに登録されている要求ピアPeer#1のIPアドレスに基づいて、当該要求ピアに近いNW情報管理サーバ10を検索し、そのIPアドレスをアドレス応答メッセージに記述してピアPeer#1へ返信する。本実施形態では、ISP-Aのネットワークにセグメントが一つしか存在しないので、そのセグメントAを管理するNW情報管理サーバ10aのIPアドレスが返信される。
【0036】
上記の手順(1),(2)は、各ピアが要求ピアPeer#1であるか否かにかかわらず定期的に実行しても良いし、あるいはP2Pアプリケーションにおいて、その起動直後に自動で行われるようにしても良いし、あるいはP2Pアプリケーションの実行画面上に「アドレス取得ボタン」を設け、これがクリックされたことを契機に実行されるようにしても良い。
【0037】
なお、要求ピアPeer#1にとってNW情報管理サーバ10aのIPアドレスが既知ならば、前記(1),(2)の手順は省略しても良い。
【0038】
手順(3):要求ピアPeer#1は、自ピアPeer#1のIPアドレス、NW情報管理サーバ10aのIPアドレス、要求するコンテンツの識別子および要求ピア数Nの記述されたピアリスト要求メッセージを生成し、これをISP-Bネットワークの配信制御サーバ(p-Tracker)50へ送信する。
【0039】
手順(4):配信制御サーバ50は、受信したピアリスト要求メッセージに記述されている要求ピアPeer#1のIPアドレスおよび要求ピア数M、ならびに要求されたコンテンツのピースを所持している全てのピア候補のアドレス情報の記述されたピアリスト作成要求メッセージを生成し、これをセグメントAのNW情報管理サーバ10aへ送信する。
【0040】
手順(5):NW情報管理サーバ10aは、ピアリスト作成要求に記述されている全てのピア候補のIPアドレスを参照し、自身が管理するセグメントAに属する管理ピアノードを識別する。
【0041】
手順(6):NW情報管理サーバ10aは、ピアリスト要求メッセージに記述されている全てのピア候補のIPアドレスを参照し、セグメントA以外に属する管理外ピアノードを識別する。
【0042】
手順(7):NW情報管理サーバ10aは、セグメントAに属する全ての管理ピアノードと要求ピアPeer#1との間の距離をそれぞれ計算する。
【0043】
手順(8):NW情報管理サーバ10aは、全ての管理ピアノードを、要求ピアPeer#1との距離が近い順にソートする。
【0044】
手順(9):NW情報管理サーバ10aは、ソート順の上位から、要求ピア数NのSr%に相当する個数分のピアを選択し、ソート順でピアリストに上位から登録する。
【0045】
手順(10):NW情報管理サーバ10aは、管理外ピアノードの中から、(100−Sr)%に相当する個数のピアノードをランダムに選択してピアリストの下位に追加する。
【0046】
図4は、要求ピア数が「5」であり、管理ピアノードの割合Srが「60%」のときのピアリスト作成手順を模式的に示した図であり、ピアリストの上位には管理ピアノードの上位3個のIPアドレスがソート順に登録されており、ピアリストの下位には管理外ピアノードからランダムに選択された2個のIPアドレスが登録されている。
【0047】
このように、本実施形態ではピアリストを生成する際、要求ピアPeer#1と同一セグメント内のピアノードを優先度の上位に登録すると共に、他のセグメントのピアノードも所定の割合で登録するようにしている。したがって、人気の高いコンテンツのようにピースが十分に行き渡っている場合にはバックボーンの帯域を圧迫しないP2P配信が可能になると共に、ピースが十分に行き渡っていない場合には他のセグメントからもピースをダウンロードできるので、バックボーンのトラヒック抑制とP2Pの高速配信とを両立できるようになる。
【0048】
手順(11):NW情報管理サーバ10aは、完成したピアリストをピアリスト作成応答メッセージに記述して配信制御サーバ50へ送信する。
【0049】
手順(12):配信制御サーバ50は、受信したピアリストをピアリスト応答メッセージに記述して要求ピアPeer#1へ送信する。
【0050】
手順(13):要求ピアPeer#1は、受信したピアリストに記載されている順に各ピアとコネクションを張り、コンテンツのピースをダウンロードする。
【0051】
図5は、本発明の第2実施形態に係るP2P配信システムのネットワーク構成を示した図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。本実施形態では、一つのISPネットワークに複数のセグメントが設定されている点に特徴がある。
【0052】
上記の第1実施形態では、各ISPネットワークが一つのセグメントで構成されていたが、本実施形態ではISP-Aのネットワークに2つのセグメントA1,A2が設定されており、各セグメントA1,A2には、そのネットワーク情報を管理するNW情報管理サーバ10a1,10a2がそれぞれ収容されている。
【0053】
ネットワーク管理サーバ20aは、要求ピアPeer#1から、そのIPアドレスの記述されたアドレス要求を受信すると、各NW情報管理サーバ10a1,10a2のIPアドレスと要求ピアPeer#1のIPアドレスとを比較し、要求ピアPeer#1により近いNW情報管理サーバ10(本実施形態では、NW情報管理サーバ10a1)を識別して要求ピアPeer#1へ通知する。
【0054】
図6は、本発明の第3実施形態に係るP2P配信システムのネットワーク構成を示した図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。本実施形態では、要求ピアPeer#1の属するISP-Aネットワークが4つのセグメントA1,A2,A3,A4に分割されている。
【0055】
セグメントA2,A3には、それぞれのネットワーク情報を管理するNW情報管理サーバ(n-Tracker)10a2,10a3が収容され、セグメントA1には、そのネットワーク情報のみならずセグメントA4のネットワーク情報も管理するNW情報管理サーバ10a1が収容されている。
【0056】
NW管理サーバ(n-Tracker)20aのn-Tracker検索テーブルでは、図6に一例を示したように、セグメントA1のネットワークアドレス[192.168.10.0/24]およびセグメントA4のネットワークアドレス[192.168.11.0/24]がNW情報管理サーバ(n-Tracker1)10a1と紐付けられている。同様に、セグメントA2のネットワークアドレス[192.168.20.0/24]はNW情報管理サーバ(n-Tracker2)10a2と紐付けられ、セグメントA3のネットワークアドレス[192.168.30.0/24]はNW情報管理サーバ(n-Tracker3)10a3と紐付けられている。
【符号の説明】
【0057】
10…ネットワーク情報管理サーバ(n-Tracker),20…ネットワーク管理サーバ(nT-Manager),30…ピアノード,40…ルータ,50…配信制御サーバ(p-Tracker),60…コンテンツサーバ,101…ネットワーク情報検知部,102…ネットワーク情報管理部,103…ピアノード識別部,104…優先度設定部,105…ピアリスト作成部,106…ピアリスト提供部,201…ピアリスト要求受信部,202…ピアノード抽出部,203…ピアリスト作成要求部,204…ピアリスト応答送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク情報を共有しない複数のネットワークを含むP2Pネットワーク上でコンテンツファイルが複数のピースに分割されて各ピアに分散配置され、コンテンツを要求するピアがピアリストを取得して各ピアからピースを収集するP2P配信システムにおいて、
各ネットワークのネットワーク情報を管理するネットワーク情報管理サーバと、
コンテンツのピース片を所持するピアノードのアドレス情報を管理する配信制御サーバとを具備し、
前記配信制御サーバは、
要求ピアから、当該要求ピアのアドレス情報および当該要求ピアが属するネットワークの情報を管理するネットワーク情報管理サーバのアドレス情報の記述されたピアリスト要求を受信する手段と、
前記ピアリスト要求に応答して、要求ピアのアドレス情報およびコンテンツのピースを所持しているピア候補のアドレス情報の記述されたピアリスト作成要求を前記ネットワーク情報管理サーバへ送信する手段と、
前記ネットワーク情報管理サーバから返信されるピアリスト作成応答に記述されているピアリストの記述されたピアリスト応答を要求ピアへ返信する手段とを具備し、
前記ネットワーク情報管理サーバは、
配信制御サーバから受信したピアリスト作成要求に記述されたピア候補のアドレス情報を抽出する手段と、
前記ピア候補の中から管理対象の管理ピアノードを抽出する手段と、
前記抽出された管理ピアノードを含むピアリストを作成する手段と、
前記ピアリストの記述されたピアリスト作成応答を前記配信制御サーバへ送信する手段とを具備したことを特徴とするP2P配信システム。
【請求項2】
前記ピアリストを作成する手段は、ピアリストの各ピアに対して、要求ピアとのネットワーク上の距離が近い順に、より高い優先度を設定することを特徴とする請求項1に記載のP2P配信システム。
【請求項3】
前記ネットワーク情報管理サーバが、
前記ピア候補の中から管理対象外の管理外ピアノードを抽出する手段を具備し、
前記ピアリストを作成する手段は、管理ピアノードおよび管理外ピアノードが所定の割合で含まれるピアリストを作成することを特徴とする請求項1または2に記載のP2P配信システム。
【請求項4】
前記ピアリスト要求およびピアリスト作成要求に更に要求ピア数が記述され、
前記ネットワーク情報管理サーバの前記ピアリストを作成する手段は、前記要求ピア数の所定の割合が管理ピアノード、残りが管理外ピアノードのピアリストを作成することを特徴とする請求項3に記載のP2P配信システム。
【請求項5】
前記ピアリストでは、管理ピアノードの優先度が管理外ピアノードの優先度よりも高いことを特徴とする請求項3または4に記載のP2P配信システム。
【請求項6】
前記ネットワークが複数のセグメントにより構成され、前記ネットワーク情報管理サーバがセグメントごとに設けられて各セグメントのネットワーク情報を管理することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のP2P配信システム。
【請求項7】
前記ネットワークが複数のセグメントにより構成され、一つのネットワーク情報管理サーバが複数のセグメントのネットワーク情報を管理することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のP2P配信システム。
【請求項8】
各ネットワークにおいて、前記ネットワーク情報管理サーバのアドレス情報および管理対象ネットワークのアドレス情報を管理するネットワーク管理サーバを具備し、
前記ネットワーク管理サーバは、
前記要求ピアから、そのアドレス情報の記述されたアドレス要求を受信する手段と、
前記要求ピアのアドレス情報に基づいて、ネットワーク上の距離が近いネットワーク情報管理サーバを探索し、そのアドレス情報の記述されたアドレス応答を要求ピアに返信する手段とを具備したことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のP2P配信システム。
【請求項9】
ネットワーク情報を共有しない複数のネットワークを含むP2Pネットワーク上でコンテンツファイルが複数のピースに分割されて各ピアに分散配置され、コンテンツを要求するピアがピアリストを取得して各ピアからピースを収集するP2P配信方法において、
各ネットワークのネットワーク情報を管理するネットワーク情報管理サーバと、
コンテンツのピース片を所持するピアノードのアドレス情報を管理する配信制御サーバとを具備し、
要求ピアが、自ピアが属するネットワークの情報を管理するネットワーク情報管理サーバのアドレス情報を取得する手順と、
要求ピアが、自ピアのアドレス情報、コンテンツ識別子および前記ネットワーク情報管理サーバのアドレス情報をピアリスト要求に記述して配信制御サーバへ送信する手順と、
配信制御サーバが、前記ピアリスト要求に応答して、要求ピアのアドレス情報およびコンテンツのピア候補のアドレス情報をピアリスト作成要求に記述して前記要求ピアのネットワーク情報管理サーバへ送信する手順と、
ネットワーク情報管理サーバが、前記ピアリスト作成要求に応答して、ピア候補の中から管理対象である管理ピアノードを抽出する手順と、
ネットワーク情報管理サーバが、前記抽出された管理ピアノードを含むピアリストを作成する手順と、
ネットワーク情報管理サーバが、前記ピアリストをピアリスト作成応答に記述して配信制御サーバへ送信する手順と、
配信制御サーバが、前記ピアリスト作成応答に応答して、前記ピアリストをピアリスト要求応答に記述して要求ピアへ送信する手順とを具備したことを特徴とするP2P配信方法。
【請求項10】
ネットワーク情報管理サーバが、前記ピアリスト作成要求に応答して、ピア候補の中から管理外ピアノードを抽出する手順を更に具備し、
ネットワーク情報管理サーバは、前記管理ピアノードおよび管理外ピアノードが所定の割合で含まれるピアリストを作成することことを特徴とする請求項9に記載のP2P配信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−277314(P2010−277314A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128922(P2009−128922)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】