説明

PARP阻害剤としてのキナゾリンジオン誘導体

【化1】


本発明は、式(I)の化合物、PARP阻害剤としてのそれらの使用ならびに該式(1)の化合物[式中、R,L,L,X,YおよびZは定義された意味を有する]を含有する製薬学的組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPARPの阻害剤に関し、そして化合物および開示される化合物を含有する組成物を提供する。さらに、本発明は、例えば医薬としての開示されるPARP阻害剤の使用方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
核酵素ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ−1(PARP−1)は、PARP酵素ファミリーの一員である。この増加するファミリーの酵素は、例えば、PARP−1、PARP−2、PARP−3およびVault−PARPのようなPARP;ならびに例えば、TANK−1、TANK−2およびTANK−3のようなTankyrase(TANK)からなる。またPARPは、ポリ(アデノシン5’−ジホスホ−リボース)ポリメラーゼまたはPARS(ポリ(ADP−リボース)シンテターゼ)とも呼ばれる。
【0003】
Tankyrase(TANK)はヒトのテロメア複合体の構成分として同定された。また、それらは小胞の取引(trafficking)に役割を有することが提案されており、そして種々の他の細胞プロセスに関与するタンパク質のための舞台として働くのであろう。染色体の維持と安定性のために必須であるテロメアは、テロメラーゼ、特殊な逆転写酵素によって維持される。TANKは、シグナル伝達と細胞骨格タンパク質の両方のいくつかの特徴をもつ(ADP−リボース)転移酵素である。それらは、基質タンパク質のポリ−ADPリボシル化(ribosylation)を触媒するPARPドメイン、ある種のシグナル伝達分子と共有される不稔アルファモチーフ、および細胞骨格タンパク質アンキリン(ankyrin)に対する24個のアンキリン反復同族体(repeats homologues)を含有するANKドメインを含有する。ANKドメインはテロメアタンパク質、テロメア反復結合因子−1(TRF−1)と相互作用する。したがって、これらのタンパク質は、TRF1相互作用性アンキリン関連ADP−リボースポリメラーゼ(TANK)と命名された。
【0004】
TANKのより特別な機能の1つは、TRF−1のADPリボシル化である。ヒトのテロメア機能は、2つのテロメア特異的DNA結合タンパク質、TRF−1およびTRF−2を要求する。TRF−2は染色体末端を保護し、そしてTRF−1はテロメアの長さを調節する。ADPリボシル化は、テロメアDNAに結合するTRF−1の能力を阻害する。TRF−1のこのポリ−ADPリボシル化は、テロメア複合体を開裂してテロメアからTRF−1を遊離し、そしてテロメラーゼに接近させる。したがって、TANKはテロメアの長さのポジティブレギュレーターとして機能して、テロメラーゼによるテロメアの伸長を可能にする。
【0005】
PARP−1は、3種のドメイン:2個の亜鉛フィンガーを含有するN末端DNA結合ドメイン、自己修飾(automodification)ドメインおよびC末端触媒ドメインからなる116kDaの主要な核タンパク質である。それはほとんど全ての真核生物において存在している。この酵素は、ポリ(ADP−リボース)、200以上のADP−リボース単位からなる分枝ポリマーを合成する。ポリ(ADP−リボース)のタンパク質アクセプターは、直接的にも、また間接的にもDNAの完全な状態を維持することに関与している。それらは、ヒストン、トポイソメラーゼ、DNAおよびRNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、およびCa2+およびMg2+依存エンドヌクレアーゼを含む。PARPタンパク質は、多数の組織、もっとも注目されるには免疫系、心臓、脳および生殖系細胞において高レベルで発現される。正常な生理学的条件下では、最小のPARP活性が存在する。しかしながら、DNAの損傷は500倍までPARPの即時活性化を惹起する

【0006】
PARP、特にPARP−1に因るとされる多くの機能の中で、その主な役割は、ADPリボシル化によってDNA修復を促進すること、したがって多くのDNA修復タンパク質を調整することにある。PARPの活性化の結果として、NADレベルは有意に減少する。広範なPARP活性化は、大きなDNA損傷を蒙っている細胞におけるNADの深刻な枯渇をもたらす。ポリ(ADP−リボース)の短い半減期は急速なターンオーバー速度をもたらす。一旦ポリ(ADP−リボース)が形成されると、それは、ホスホジエステラーゼおよび(ADP−リボース)タンパク質リアーゼとともに、構成的に活性のあるポリ(ADP−リボース)グリコヒドロラーゼ(PARG)によって急速に分解される。PARPおよびPARGは、大量のNADをADP−リボースに変換するサイクルを形成する。1時間未満に、PARPの過剰刺激は正常レベルの20%未満までのNADおよびATPの低下を惹起できる。そのようなシナリオは、酸素の喪失が細胞のエネルギー生産を既に劇的に危うくしている虚血においては特に有害である。再還流における続く遊離ラジカルの産生は、組織損傷の主要な原因であると考えられる。虚血と再還流の間の多くの器官において典型的に存在するATP低下の一部は、ポリ(ADP−リボース)ターンオーバーによるNAD枯渇に結び付けられるであろう。かくして、PARPまたはPARG阻害は、細胞のエネルギーレベルを保持し、それによって発作後の虚血組織の生残を強化することが期待される。
【0007】
また、ポリ(ADP−リボース)合成は、炎症応答に必須である多くの遺伝子の誘導発現に関与している。PARP阻害剤は、マクロファージにおける誘導性ニトリック・オキシド・シンターゼ(nitric oxide synthase)(iNOS)、P型セレクチン(P−type selectin)および内皮細胞における細胞間接着分子−1(ICAM−1)の生産を抑制する。そのような活性は、PARP阻害剤によって発揮される強力な抗炎症効果の基礎をなす。PARP阻害は、傷害された組織への好中球の移動および浸潤を防ぐことによって壊死を低下させることができる。
【0008】
PARPは損傷されたDNAフラグメントによって活性化され、一旦活性化されると、ヒストンおよびPARPそれ自体を含む、種々の核タンパク質への100ADP−リボース単位までの結合を触媒する。大きな細胞ストレスにおいて、PARPの広範な活性化は、急速に、エネルギー貯蔵の枯渇をとおして細胞の損傷または死をもたらすことができる。ATPの4分子が再生されるNADの各分子のために消費されるので、NADは大量のPARP活性化によって枯渇させられ、NADを再合成するために、ATPがまた枯渇するようになるであろう。
【0009】
PARP活性化が両NMDAおよびNO誘導の神経毒性において重要な役割を演じることが報告された。これは、皮質培養物および海馬切片において例証されたが、この場合、毒性の防御は直接PARP阻害力に相関される。かくして、正確な作用機構がまだ解明されてなくても、神経変性疾患および頭部外傷の処置におけるPARP阻害剤の潜在的役割が認識された。
【0010】
同様に、PARP阻害剤の単一注射が、ウサギにおいて心臓または骨格筋の虚血と再還流によって惹起された梗塞サイズを減少させたことが例証された。これらの研究において、閉塞1分前または再還流1分前のいずれでも3−アミノ−ベンズアミド(10mg/kg)の単一注射が、心臓における梗塞サイズの同様の減少(32〜42%)を惹起したが、一方、その他のPARP阻害剤、1,5−ジヒドロキシイソキノリン(1mg/kg)も同程度(38〜48%)、梗塞サイズを低下させた。これらの結果は、PARP阻害剤が、虚血心臓または骨格筋組織の再還流傷害を予め救済できるという仮説を理にかなったものにさせる。
【0011】
PARPの活性化は、また、卒中、アルツハイマー病およびパーキンソン病のような病状に関与している、次の誘導物質、例えばグルタメート(NMDAレセプター刺激をとおして)、反応性酸素中間体、アミロイドβ−タンパク質、N−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)またはその活性代謝物N−メチル−4−フェニルピリジン(MPP)のいずれかへの曝露から生じる神経毒性発作に続く損傷の測定手段として使用されてもよい。他の研究は、イン・ビトロでの小脳の顆粒細胞およびMPTP神経毒性におけるPARP活性化の役割を探求するために継続された。顕著な中枢神経系神経伝達物質として働き、そしてN−メチルD−アスパルテート(NMDA)レセプターおよび他のサブタイプレセプターに作用するグルタメートへの過剰な神経曝露は、ほとんど、卒中または他の神経変性過程の結果としてしばしば発生する。酸素を奪われたニューロンは、虚血性脳発作、例えば卒中もしくは心臓発作において大量にグルタメートを放出する。グルタメートのこの過剰な放出は、順に、N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)、AMPA、カイネート(Kainate)およびMGRレセプターの過剰刺激(刺激毒性(excitotoxicity))を惹起し、これらは、イオンチャンネルを開き、そして無制御のイオン流動(例えば、細胞内へのCa2+およびNa,細胞外へのK)を許して、ニューロンの過剰刺激をもたらす。過剰刺激されたニューロンは、より多くのグルタメートを分泌して、フィードバックループまたはドミノ効果を生成し、これが最終的に、プロテアーゼ、リパーゼおよび遊離ラジカルの産生をとおして細胞損傷または死をもたらす。グルタメートレセプターの過剰な活性化は、癲癇、卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、精神分裂病、慢性疼痛、低酸素後の虚血症およびニューロン喪失、低血糖症、虚血症、トラウマおよび神経性発作を含む種々の神経学的疾患および症状に関係していた。グルタメート曝露および刺激は、また、強迫障害、特に薬物依存に対する根拠として関係していた。証拠は、グルタメートまたはNMDAにより処置された多数の動物種ならびに脳皮質培養物における発見を含み、そのグルタメートレセプター・アンタゴニスト(すなわち、そのレセプターへの結合またはそれの活性化からグルタメートを遮断する化合物)が、血管卒中に続く神経損傷を阻止する。NMDA、AMPA、カイネートおよびMGRレセプターを遮断することによる刺激毒性(excitotoxicity)を予防する試みは、困難であることが証明されたが、その理由は、各レセプターはグルタメートが結合できる多数の部位を有し、それ故、レセプターの全てへのグルタメートの結合を防ぐアンタゴニストの有効な混合物または普遍的なアンタゴニストを見いだして、この理論の試験を可能にすることが困難であったからである。さらにまた、レセプターを遮断することに効果的である多くの組成物はまた動物に対して毒性である。それだけで、グルタメートの異常に対する既知の有効な処置は現在存在しない。
グルタメートによるNMDAレセプターの刺激は、例えば、酵素ニューロンのニトリック・オキシド・シンターゼ(nNOS)を活性化して、ニトリック・オキシド(NO)の生成をもたらし、これがまた神経毒性を媒介する。NMDA神経毒性は、ニトリック・オキシド・シンターゼ(NOS)阻害剤による処置によるか、またはイン・ビトロでのnNOSの標的遺伝子破壊をとおして予防されてもよい。
【0012】
PARP阻害剤のその他の用途は、末梢神経傷害、ならびに普通の座骨神経の慢性狭窄損傷(CCI)によって誘導されるような神経病性疼痛として知られ、そして細胞質と核質の過染色性(いわゆる、「暗い」ニューロン)を特徴とする脊髄背角の経シナプス変調が起きる結果として生じる病理学的疼痛症候群の処置である。
【0013】
また、PARP阻害剤が大腸炎のような炎症性腸障害を処置するために有用であるという証拠も存在する。具体的には、大腸炎が、50%エタノール中ハプテン スルホン酸トリニトロベンゼンの管腔内投与によってラットにおいて誘導された。処置されたラットは、3−アミノベンズアミド、PARP活性の特異的阻害剤を受けた。PARP活性の阻害は、炎症応答を低減し、そして末端大腸の形態およびエネルギー状況を回復した。
【0014】
さらなる証拠は、PARP阻害剤が関節炎の処置のために有用であることを示唆する。さらに、PARP阻害剤は糖尿病の処置のために有用であると思われる。PARP阻害剤は内毒素ショックまたは敗血症ショックを処置するために有用であることが示された。
【0015】
PARP阻害剤は、また、皮膚の老化、アルツハイマー病、動脈硬化症、骨関節炎、骨粗鬆症、筋ジストロフィー、複製老衰を伴う骨格筋の変性疾患、年齢に関連する筋肉変性、免疫老衰、AIDSおよび他の免疫老衰疾患のような疾病の処置を含む、細胞の寿命および増殖能力を拡大するため、ならびに老衰細胞の遺伝子発現を変えるために使用された。
【0016】
3−アミノベンズアミドのようなPARP阻害剤が、例えば、過酸化水素またはイオン化放射への応答においてDNA対全体に影響を与えることもまた知られている。
【0017】
DNA鎖の破損部の修復におけるPARPの中心的役割は、特に、イオン化放射によって直接的に、あるいはメチル化剤、トポイソメラーゼI阻害剤、および他のシスプラチンおよびブレオマイシンのような化学療法剤によって誘導されるDNA損傷の酵素的修復後に間接的に惹起される場合には、十分に確立されている。「ノックアウト」マウス、トランス−ドミナント(trans−dominant)インヒビション・モデル(DNA結合性ドメインの過発現)、アンチセンスおよび低分子量阻害剤を用いる種々の研究は、DNA損傷の誘導後の修復および細胞生残におけるPARPの役割を例証した。PARP酵素活性の阻害は、DNA損傷処理に対する腫瘍細胞の感受性の増強をもたらすであろう。
【0018】
PARP阻害剤は、多分、DNA鎖破損の再連結を防ぐそれらの能力によって、そしていくつかのDNA損傷シグナル伝達経路に影響を与えることによって、(低酸素の(hypoxic))腫瘍細胞を放射線増感する(radiosensitizing)のに効果的であり、そして放射線療法後の潜在的に致死的および致死以下のDNAの損傷からの腫瘍細胞の回復を防ぐのに効果的であることが報告された。
【0019】
PARP阻害剤はがんを処置するために使用された。さらに、特許文献1は、腫瘍細胞に及ぼすイオン化放射または化学療法剤の致死効果を増進するために使用された数種のイソキノリンを議論している。非特許文献1は、PARP活性の阻害、腫瘍細胞の低下された増殖、および腫瘍細胞がアルキル化剤で同時に処理された場合の顕著な相乗効果を議論している。
【0020】
当該技術の状態の総説は、非特許文献2、非特許文献3および非特許文献4によって公表された。
【0021】
有効かつ強力なPARP阻害剤、より具体的には、最小の副作用を生じるPARP−1阻害剤に対する要求が継続して存在する。本発明は、がんを処置し、そして/または例えば、壊死またはアポトーシスによる細胞の損傷または死から生じる細胞、組織および/または器官の損傷を予防するための、PARP活性を阻害するための化合物、組成物、および阻害する方法を提供する。本発明の化合物および組成物は、処置の一次効果が標的細胞におけるDNA損傷を惹起する処置である、化学療法および放射線療法の効力を増進する際に特に有用である。
【0022】
背景先行技術
特許文献2は、置換キナゾリンジオン誘導体を開示する。記述される化合物は、基底部の弛緩特性を有する。より特定の化合物1−[1−[(2S)−2−[(2R)−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−2−イル]−2−ヒドロキシエチル]−4−ピペリジニル」−2、4−(1H,3H)−キナゾリンジオン(本出願の化合物.9)が開示
されている。
【0023】
【化1】

特許文献3は、置換ピペリジニルアルキルキナゾリン誘導体を開示する。記述される化合物は、セロトニン・アンタゴニストである。より特定の化合物
1−[2−[4−(4−フルオロベンゾイル)−1−ピペリジニル]エチル]−2,4−(1H,3H)−キナゾリンジオン(本出願の化合物.10),
1−[3−[4−(4−フルオロベンゾイル)−1−ピペリジニル]プロピル]−2,4−(1H,3H)−キナゾリンジオン(本出願の化合物.11),
3−[2−[4−(4−クロロベンゾイル)−1−ピペリジニル]エチル]−2,4−(1H,3H)−キナゾリンジオン(本出願の化合物.12),
3−[2−[4−[(4−フルオロフェニル)ヒドロキシメチル]−1−ピペリジニル]エチル]−2,4−(1H,3H)−キナゾリンジオン(本出願の化合物.13)が開示されている。
【0024】
【化2】

【特許文献1】米国特許第5,177,075号
【特許文献2】1999年6月17日公表の、欧州特許第1036073号
【特許文献3】1983年11月11日公表の、欧州特許第13612号
【非特許文献1】Weltin et al.,”Effect of 6(5−Phenanthridinone)、an Inhibitor of Poly(ADP−ribose)Polymerase,on Cultured Tumor Cells”,Oncol.Res,6:9,399−403(1994)
【非特許文献2】Li and Zhang,IDrugs 2001,4(7):804−812
【非特許文献3】Ame et al.,Bioassys,2004,26:882−883
【非特許文献4】Nguewa et al.,Progress in Biophysic & Molecular Biology 2005,88:143−172
【発明の開示】
【0025】
本発明は、式(I)
【0026】
【化3】

{式中、
各Xは、独立して>N−または>CH−であり;そしてXが>CH−である場合、Yは>N−であり;
各Yは、独立して>N−または>CH−であり;ただし、Xが>CH−である場合、Yは>N−であり;
は、直接結合か、または−C1−6アルカンジイル−から選ばれる二価の基であり;Lは、直接結合か、またはカルボニル、−C1−6アルカンジイル−、−(ヒドロキシ)C1−6アルカンジイル−、−C(O)−C1−6アルカンジイル−または−C1−6アルカンジイル−C(O)−から選ばれる二価の基であり;
は、水素またはヒドロキシであり;
Zは、水素、または
【0027】
【化4】

(式中、各Rは、独立して、水素、ハロまたはC1−6アルキルから選ばれる)
から選ばれる基であり;
但し、ここで、
1−[1−[(2S)−2−[(2R)−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−2−イル]−2−ヒドロキシエチル]−4−ピペリジニル」−2、4−(1H,3H)−キナゾリンジオン、1−[2−[4−(4−フルオロベンゾイル)−1−ピペリジニル]エチル]−2,4−(1H,3H)−キナゾリンジオン、1−[3−[4−(4−フルオロベンゾイル)−1−ピペリジニル]プロピル]−2,4−(1H,3H)−キナゾリンジオン、3−[2−[4−(4−クロロベンゾイル)−1−ピペリジニル]エチル]−2
,4−(1H,3H)−キナゾリンジオンおよび3−[2−[4−[(4−フルオロフェニル)ヒドロキシメチル]−1−ピペリジニル]エチル]−2,4−(1H,3H)−キナゾリンジオンは含まれない}
の化合物、そのN−オキシド形態物、製薬学的に許容できる付加塩および立体化学的異性形態物に関する。
【0028】
Zが、−CH−,−CH=または−NH−部分を含有する複素環式環系である場合は常に、置換基Rおよび/または分子の残り部分は、炭素および/または窒素原子に結合され、この場合、1個または両方の水素原子が置換される。
【0029】
式(I)の化合物では、キナゾリンジオン部分は、1または3位の−NH−部分における分子の残り部分に結合され、この場合、1個の水素原子が置換される。
【0030】
また、式(I)の化合物は、それらの互変異性形態物において存在してもよい。そのような形態物は、上記式において明白には指示されないが、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0031】
前記定義および以降において使用される多くの用語が以下に説明される。これらの用語は、時には、それだけでも、または合成用語においても使用される。
【0032】
前記定義および以降において使用されるように、ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードに対する総称であり;C1−6アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、1−メチルエチル、2−メチルプロピル、2−メチルブチル、2−メチルペンチルなどを定義し;C1−6アルカンジイルは、1〜6個の炭素原子を有する二価の直鎖および分枝鎖飽和炭化水素基、例えば、メチレン、1,2−エタンジイル、1,3−プロパンジイル、1,4−ブタンジイル、1,5−ペンタンジイル、1,6−ヘキサンジイルおよびその分枝異性体、例えば、2−メチルペンタンジイル、3−メチルペンタンジイル、2,2−ジメチルブタンジイル、2,3−ジメチルブタンジイルなどを定義する。
【0033】
用語「製薬学的に許容できる塩」は、製薬学的に許容できる酸または塩基付加塩を意味する。先に述べられたような製薬学的に許容できる酸または塩基付加塩は、式(I)の化合物が形成できる治療学的に活性のある無毒の酸および無毒の塩基付加塩形態物を含むと意味される。塩基性を有する式(I)の化合物は、適当な酸により該塩基形態物を処理することによってそれらの製薬学的に許容できる酸付加塩に変換できる。適当な酸は、例えば、ハロゲン化水素酸のような無機酸、例えば塩化水素酸もしくは臭化水素酸;硫酸;硝酸;リン酸およびそれに類する酸;または、有機酸、例えば、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸(すなわちブタン二酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモ酸およびそれに類する酸を含む。
酸性を有する式(I)の化合物は、適当な有機または無機塩基により該酸形態物を処理することによってそれらの製薬学的に許容できる塩基付加塩に変換できる。適当な塩基塩形態物は、例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩など、有機塩基との塩、例えば、ベンザシン、N−メチル−D−グルカミン、ヒドラバミン塩、およびアミノ酸、例えばアルギニン、リジンなどとの塩を含む。
また、用語、酸または塩基付加塩は、式(I)の化合物が形成することができる水和物および溶媒付加形態物を含む。そのような形態物の例は、例えば水和物、アルコラートおよびそれに類するものである。
【0034】
先に使用されたような、用語、式(I)の化合物の立体化学的異性形態物は、式(I)の化合物が保持してもよい、同じ結合配列によって結合された同じ原子から作成されるが、相互交換不可能である異なる三次元構造を有するすべての可能な化合物を定義する。別の方法で記述または指示されなければ、化合物の化学的名称は、該化合物が保持してもよい、すべての可能な立体化学的異性形態物の混合物を包含する。該混合物は、該化合物の基本分子構造のすべてのジアステレオマーおよび/または鏡像異性体を含んでもよい。両純粋形態物または互いの混合物における式(I)の化合物のすべての立体化学的異性形態物は、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0035】
式(I)の化合物のN−オキシド形態物は、1個または数個の窒素原子がいわゆるN−オキシドに酸化されるそれらの式(I)の化合物、特に、1個以上のピペリジンまたはピペラジン窒素がN−オキシド化されるそれらのN−オキシドを含むことを意味する。
【0036】
これ以降で使用される場合は、用語「式(I)の化合物」は、またN−オキシド形態物、製薬学的に許容できる酸または塩基付加塩およびすべての立体異性形態物を含むことを意味する。
【0037】
特許文献2に記述される化合物は、基底部の弛緩特性を有する。1−[1−[(2S)−2−[(2R)−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−2−イル]−2−ヒドロキシエチル]−4−ピペリジニル」−2、4−(1H,3H)−キナゾリンジオン(本出願の化合物.9)が特許文献2に開示されている。特許文献3の化合物は、セロトニン・アンタゴニストである。1−[2−[4−(4−フルオロベンゾイル)−1−ピペリジニル]エチル]−2,4−(1H,3H)−キナゾリンジオン(本出願の化合物.10),1−[3−[4−(4−フルオロベンゾイル)−1−ピペリジニル]プロピル]−2,4−(1H,3H)−キナゾリンジオン(本出願の化合物.11),3−[2−[4−(4−クロロベンゾイル)−1−ピペリジニル]エチル]−2,4−(1H,3H)−キナゾリンジオン(本出願の化合物.12),3−[2−[4−[(4−フルオロフェニル)ヒドロキシメチル]−1−ピペリジニル]エチル]−2,4−(1H,3H)−キナゾリンジオン(本出願の化合物.13)が開示されている。
予期せぬことに、本発明の化合物がPARP阻害活性を示すことが見い出された。
【0038】
興味ある化合物の第1群は、次に示す制約の1つ以上が適合する式(I)のそれらの化合物からなる:
a)各Xは、独立して>N−または>CH−であり;
b)各Yは、独立して>N−または>CH−であり;
c)Lは、直接結合か、または−C1−6アルカンジイル−から選ばれる二価の基であり;
d)Lは、直接結合か、またはカルボニル、−C1−6アルカンジイル−、−(ヒドロキシ)C1−6アルカンジイル−または−C(O)−C1−6アルカンジイル−から選ばれる二価の基であり;
e)Rは、水素またはヒドロキシであり;
f)Zは、水素、または(a−1),(a−2),(a−3),(a−4)または(a−5)から選ばれる基であり;
g)各Rは、独立して、水素、ハロまたはC1−6アルキルから選ばれる。
【0039】
興味ある化合物の第2群は、次に示す制約の1つ以上が適合する式(I)のそれらの化合物からなる:
a)Lは、直接結合か、または−C1−6アルカンジイル−または−C(O)−C1−6アルカンジイル−から選ばれる二価の基であり;
b)Zは、水素、または(a−1),(a−4)または(a−5)から選ばれる基である。
【0040】
興味ある化合物の第3群は、次に示す制約の1つ以上が適合する式(I)のそれらの化合物からなる:
a)各Xは>N−であり;
b)各Yは>CH−であり;
c)Lは直接結合であり;
d)Lは直接結合であり;
e)Rは水素であり;
f)Zは水素である。
【0041】
好適な化合物の群は、
各Xは、独立して>N−または>CH−であり;各Yは、独立して>N−または>CH−であり;Lは、直接結合か、または−C1−6アルカンジイル−から選ばれる二価の基であり;Lは、直接結合か、またはカルボニルまたは−C1−6アルカンジイル−から選ばれる二価の基であり;Rは、水素またはヒドロキシであり;
Zは、水素、または(a−1),(a−2),(a−3),(a−4)または(a−5)から選ばれる基であり;そして各Rは、独立して、水素、ハロまたはC1−6アルキルから選ばれる、式(I)のそれらの化合物からなる。
【0042】
より好適な化合物の群は、
各Xは>N−であり;各Yは>CH−であり;Lは直接結合であり;Lは直接結合であり;Rは水素であり;そしてZは水素である、式(I)のそれらの化合物からなる。
【0043】
もっとも好適な化合物は、化合物1である。
【0044】
【化5】

式(I)の化合物は、欧州特許第1036073号および欧州特許第13612号に記述される一般的方法にしたがって製造することができる。出発物質および若干の中間体は既知の化合物であり、そして市販されているか、または当該技術分野において一般に既知である慣用の反応手順にしたがって製造されてもよい。
若干の製造方法がこれ以降においてより詳細に記述されるであろう。式(I)の最終化合物を得るための他の方法は実施例に記述される。
【0045】
ここでは式(I−a)の化合物と呼ばれる、Xが>N−である式(I)の化合物は、式(II)の中間体を、Wが適当な脱離基、例えば、ハロ、例えばフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード、またはスルホニルオキシ基、例えばメチルスルホニルオキシ、4−メチルフェニルスルホニルオキシなどである式(III)の中間体と、反応させることによって製造できる。反応は、反応に不活性な溶媒、例えば、アルコール、例えばメタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、プロパノール、ブタノ―ルなど;エーテル、例えば4,4−ジオキサン、1,1’−オキシビスプロパンなど;ケトン、例えば4−メチル−2−ペンタノン;N,N−ジメチルホルムアミド、ニトロベンゼンなどにおいて実施で
きる。適当な塩基、例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩または炭酸水素塩、例えばトリエチルアミンまたは炭酸ナトリウムの添加は、反応過程において遊離される酸をピックアップ(pick up)するために利用されてもよい。少量の適当な金属ヨウ化物、例えばヨウ化ナトリウムまたはカリウムが、反応を促進するために添加されてもよい。撹拌は反応速度を増進できる。反応は、室温〜反応混合液の還流温度の範囲の温度で都合よく実施でき、そして所望であれば、反応は加圧下で実施されてもよい。
【0046】
【化6】

類似の方法において、ここでは式(I−b)の化合物と呼ばれる、Yが>N−である式(I)の化合物は、式(IV)の中間体を、Wが前記のとおりである式(V)の中間体と反応させることによって製造できる。
【0047】
【化7】

また、式(I)の化合物は、技術的に既知の反応または官能基変換を介して互いに転化されてもよい。若干のそのような変換は既に前述されている。他の例は、カルボン酸エステルの対応するカルボン酸またはアルコールへの加水分解;アミドの対応するカルボン酸またはアミンへの加水分解;ニトリルの対応するアミドへの加水分解であり;イミダゾールまたはフェニルにおけるアミノ基が技術的に既知のジアゾ化(diazotation)反応により水素によって置換され、続いて水素によってジアゾ基が置換されてもよい;アルコールはエステルおよびエーテルに転化されてもよい;1級アミンは2級または3級アミンに転化されてもよい;二重結合は水素化されて対応する単結合にされてもよい;フェニル基上のヨード基は、適当なパラジウム触媒の存在下で一酸化炭素挿入によってエステル基に転化されてもよい。
【0048】
また本発明は医薬として使用するための先に定義された式(I)の化合物に関する。
【0049】
本発明の化合物は、以下の実験の部から理解できるように、PARP阻害特性を有する。
【0050】
用語「PARP」は、ポリ−ADP−リボシル化活性を有するタンパク質を意味するように本明細書では使用される。この用語の意味の中では、PARPは、parp遺伝子によってコードされたすべてのタンパク質、その変異体、およびその代替断片(slice)タンパク質を包含する。さらに、本明細書で使用されるように、「PARP」は、PARP類似体、同族体および他の動物の類似体を含む。
【0051】
用語「PARP」は、限定されるものではないがPARP−1を含む。この用語の意味の中には、PARP−2、PARP−3、Vault−PARP(PARP−4)、PARP−7(TiPARP)、PARP−8、PARP−9(Bal)、PARP−10、
PARP−11、PARP−12、PARP−13、PARP−14、PARP−15、PARP−16、TANK−1、TANK−2およびTANK−3が包含されてもよい。
【0052】
両PARP−1およびタンキラーゼ(tankyrase)2を阻害する化合物は、それらが、がん細胞において増強された成長阻害活性を有するという点で有利な性質を有することができる。
【0053】
また、本発明は、本明細書に記述される動物における疾病および障害のいずれかの処置のための薬物の製造における化合物の使用を意図し、この場合、該化合物は、式(I)
【0054】
【化8】

{式中、
各Xは、独立して>N−または>CH−であり;そしてXが>CH−である場合、Yは>N−であり;
各Yは、独立して>N−または>CH−であり;ただし、Xが>CH−である場合、Yは>N−であり;
は、直接結合か、または−C1−6アルカンジイル−から選ばれる二価の基であり;Lは、直接結合か、またはカルボニル、−C1−6アルカンジイル−、−(ヒドロキシ)C1−6アルカンジイル−、−C(O)−C1−6アルカンジイル−または−C1−6アルカンジイル−C(O)−から選ばれる二価の基であり;
は、水素またはヒドロキシであり;そして
Zは、水素、または
【0055】
【化9】

(式中、各Rは、独立して、水素、ハロまたはC1−6アルキルから選ばれる)
から選ばれる基である}
の化合物、そのN−オキシド形態物、製薬学的に許容できる付加塩および立体化学的異性形態物である。
【0056】
それらのPARP結合特性に鑑みて、本発明の化合物は、参照化合物またはトレーサー化合物として使用されてもよく、この場合、この分子の原子の1個が、例えば、放射性アイソトープにより置換されてもよい。
【0057】
本発明の製薬学的組成物を製造するために、有効成分としての、塩基もしくは酸付加塩形態における特定の化合物の有効量が、製薬学的に許容できる担体との直接混合物において組み合わされるが、この担体は、投与に望ましい調製物の形態に応じて、広範な種類の
形態をとることができる。これらの製薬学的組成物は、好ましくは、経口的、肛門内、経皮的、または非経口的注射による投与に適当な単位用量形態物で存在するのが望ましい。例えば、経口用量形態物における組成物を製造するには、例えば、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤および液剤のような経口液状調製物の場合には、水、グリコール、オイル、アルコール等:あるいは散剤、丸剤、カプセル剤および錠剤の場合には、固形担体、例えば澱粉、糖、カオリン、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等のような、いずれの通常の製薬学的媒質が使用されてもよい。それらの投与が容易であることから、錠剤およびカプセル剤が、もっとも有利な経口用量単位形態物を代表し、この場合には、固形の製薬学的担体が使用されることは明らかである。非経口組成物では、他の成分が、例えば溶解性を助けるために含まれてもよいけれども、担体は、通常は、少なくとも大部分は無菌水を含有するであろう。例えば、注射用液剤は、担体が、生理食塩溶液、グルコース溶液もしくは生理食塩水とグルコース溶液の混合液を含む状態で製造されてもよい。また、注射用懸濁剤が製造されてもよく、この場合には適当な液状担体、懸濁化剤等が使用されてもよい。経皮投与に適する組成物では、担体は、場合によっては、添加物が皮膚に対して有意な悪影響を惹起しない、少量で何らかの性質をもつ適当な添加物と組み合わされて、場合によっては、浸透促進剤および/または適当な湿潤剤を含有する。該添加物は、皮膚への投与を容易にし、そして/または所望の組成物を製造するのに役立つであろう。これらの組成物は、種々の方法、例えば経皮パッチ剤として、スポット・オン剤として、軟膏剤として投与されてもよい。前述の製薬学的組成物を、投与の簡易性および用量の均一性のために用量単位形態物において調合することは、特に得策である。本明細書および請求範囲において使用される用量単位形態物は、単位用量として適当な物理的に分割された単位を指し、各単位は、必要な製薬学的担体と一緒になって所望の治療効果を生むように計算された有効成分の予め決定された量を含有している。そのような用量単位形態物の例は、錠剤(刻み目をつけたり、コーティングされた錠剤を含む)、カプセル剤、丸剤、粉末包装剤、ウェーファー剤、注射用液剤もしくは懸濁剤、ティースプーン量剤(teaspoonfuls)、テーブルスプーン量剤(tablespoonfuls)等、およびそれらの分割される集合物である。
【0058】
本発明の化合物は、壊死またはアポトーシスによる細胞の損傷または死から生じる組織の損傷を処置または予防することができ;次ぎの巣状虚血、心筋梗塞および再還流傷害を含む、神経または心臓血管組織の損傷を回復することができ;PARP活性によって惹起されるか、または悪化される種々の疾病または症状を処置することができ;細胞の寿命または増殖能力を拡大または増強でき;老衰細胞の遺伝子発現を変えることができ;細胞を放射線増感(radiosensitize)および/または化学増感(chemosensitize)することができる。一般に、PARP活性の阻害はエネルギー損失から細胞を救済して、神経細胞の場合は、ニューロンの不可逆的減極を防ぎ、その結果、神経保護を提供する。
【0059】
前記理由のために、本発明は、さらに、壊死またはアポトーシスによる細胞の損傷または死から生じる組織の損傷を処置または予防するため、NMDAの毒性によって媒介されないニューロンの活性を生じさせるため、NMDAの毒性によって媒介されるニューロンの活性を生じさせるため、虚血および再還流傷害から生じる神経組織の損傷、神経学的障害および神経変性疾患を処置するため;血管卒中を予防または処置するため;心臓血管障害を処置または予防するため;他の症状および/または障害、例えば年齢に関連する筋肉変性、AIDSおよび他の免疫老衰疾患、炎症、痛風、関節炎、動脈硬化症、悪液質、がん、複製老衰を伴う骨格筋の変性疾患、糖尿病、頭部外傷、炎症性腸障害(例えば大腸炎およびクローン病)、筋ジストロフィー、骨関節炎、骨粗鬆症、慢性および/または急性疼痛(例えば神経病性疼痛)、腎不全、網膜虚血、敗血症ショック(例えば内毒素ショック)、および皮膚の老化を処置するため;細胞の寿命および増殖能力を拡大するため;老衰細胞の遺伝子発現を変えるため;(低酸素の)腫瘍細胞を化学増感および/または放射
線増感するために、PARP活性を阻害するのに十分な量における先に同定された化合物の治療学的有効量を投与する方法に関する。また、本発明は、先に同定された化合物の治療学的有効量を動物に投与することを含む、該動物における疾患おける症状の処置に関する。
特に、本発明は、先に同定された化合物の治療学的有効量を動物に投与することを含む、該動物における神経学的障害を処置、予防または抑制する方法に関する。神経学的障害は、肉体的傷害または疾病状態によって惹起される末梢神経病、外傷性脳傷害、脊髄に対する物理的損傷、脳損傷に伴う卒中、巣状虚血、総体的虚血、再還流傷害、脱髄疾患および神経変性に関連する神経学的障害からなる群から選ばれる。
【0060】
また、本発明は、PARP活性を阻害するため、壊死またはアポトーシスによる細胞の損傷または死から生じる組織の損傷を処置、予防または抑制するため、動物における神経学的障害を処置、予防または抑制するための式(I)の化合物の使用を意図する。
【0061】
用語「神経変性を予防する」は、神経変性疾患を有すると新たに診断されたか、または新たな変性疾患を現す危険にある患者において神経変性を予防する能力、および既に神経変性疾患を罹患しているか、その症候を有する患者においてさらなる神経変性を予防するための能力を含む。
【0062】
本明細書で使用されるような用語「処置」は、動物、特にヒトにおける疾病および/または症状のすべての処置に関し、そして(i)疾病および/または症状にかかり易いがまだそれを有すると診断されてない患者において疾病および/または症状が発生するのを予防する;(ii)疾病および/または症状を抑制する、すなわちその発達を止める;(iii)疾病および/または症状を軽減する、すなわち疾病および/または症状の退化を惹起することを含む。
【0063】
本明細書で使用されるような、用語「放射線増感剤(radiosensitizer)」は、イオン化放射に対する細胞の感受性を増大し、そして/またはイオン化放射により処置できる疾病の処置を促進するために治療学的有効量において動物に投与される、分子、好ましくは低分子量分子として定義される。イオン化放射により処置できる疾病は、新生物形成疾患、良性および悪性腫瘍およびがん細胞を含む。本明細書に挙げられていない他の疾病のイオン化放射処置もまた本発明によって意図される。
【0064】
本明細書で使用されるような、用語「化学増感剤(chemosensitizer)」は、化学療法に対する細胞の感受性を増強し、そして/または化学療法剤により処置できる疾病の処置を促進するために治療学的有効量において動物に投与される、分子、好ましくは低分子量分子として定義される。化学療法により処置できる疾病は、新生物形成疾患、良性および悪性腫瘍およびがん細胞を含む。本明細書に挙げられていない他の疾病の化学療法処置もまた本発明によって意図される。
【0065】
本発明の化合物、組成物および方法は、特に、壊死またはアポトーシスによる細胞の死または損傷から生じる組織の損傷を処置または予防するために有用である。
本発明の化合物は「抗がん剤」であってもよく、この用語はまた、「抗腫瘍細胞増殖剤」および「抗新生物形成剤」を包含する。例えば、本発明の方法は、ACTH産生腫瘍、急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病、副腎皮質のがん、膀胱がん、脳がん、乳がん、頸がん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜がん、食道がん、Ewing’s肉腫、胆嚢がん、hairy細胞白血病、頭頸部がん、Hodgkin’s白血病、カポジ肉腫、腎臓がん、肝臓がん、肺がん(小および/または非小細胞)、悪性腹膜滲出、悪性胸膜滲出、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、非Hodgkin’s白血病、骨肉腫、卵巣がん、卵巣(生殖細胞)がん、前立腺がん、膵臓がん、陰茎がん、網膜芽腫、皮膚がん、軟組織肉腫、鱗状細胞がん腫、胃がん、睾丸がん、甲状腺がん、栄養芽層新生物腫、子宮がん、外陰部のがんおよびWilm’s腫瘍のようながんを処置するため、そしてそのようながんにおける腫瘍細胞を化学増感および/または放射線増感するために有用である。
【0066】
それ故、本発明の化合物は、「放射線増感剤」および/または「化学増感剤」として使用することができる。
【0067】
放射線増感剤は、イオン化放射の毒性作用に対するがん性細胞の感受性を増強することが知られている。放射線増感剤の作用様式についてのいくつかのメカニズムは、次のことを含む文献において示唆された:低酸素下で酸素を模倣するか、さもなくば生物還元剤のように挙動する低酸素細胞の放射線増感剤(例えば、2−ニトロイミダゾール化合物および二酸化ベンゾトリアジン化合物);非低酸素細胞の放射線増感剤(例えば、ハロゲン化ピリミジン)がDNA塩基の類似体であってもよく、そしてがん細胞のDNA中に優先的に組み入れられ、それによってDNA分子の放射誘導破壊を促進し、そして/または正常なDNA修復メカニズムを妨げる;および種々の他の潜在的作用機構が疾病の処置における放射線増感剤について仮説を立てられた。
現在、多くのがんの処置プロトコルは、x線の放射と組み合わせて放射線増感剤を使用する。x線活性化放射線増感剤の例は、限定されるものではないが、次のとおりである:メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、マイトマイシンC、RSU1069、SR4233、EO9、RB6145、ニコチンアミド、5−ブロモデオキシウリジン(BUdR)、5−ヨードデオキシウリジン(IUdR)、ブロモデオキシシチジン、フルオロデオキシウリジン(FudR)、ヒドロキシ尿素、シスプラチン、およびそれらの治療学的に有効な類似体および誘導体。
がんの光力学的療法(PDT)は、増感剤の放射線活性化作用物として可視光線を使用する。光力学的放射線増感剤の例は、限定されるものではないが次のとおりである:ヘマトポルフィリン誘導体、フォトフリン、ベンゾポルフィリン誘導体、錫エチオポルフィリン、フェオボルビド−a、バクテリオクロロフィル−a、ナフタロシアニン、フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、およびそれらの治療学的に有効な類似体および誘導体。
放射線増感剤は、治療学的有効量の1種以上の他の化合物と組み合わせて投与されてもよく、それらは、限定されるものではないが、標的細胞への放射線増感剤の組み入れを促進する化合物;標的細胞への治療剤、栄養物および/または酸素の流動を制御する化合物;さらなる放射の有無によらず腫瘍に作用する化学療法剤;またはがんもしくは他の疾病を処置するための他の治療学的に有効な化合物を含む。放射線増感剤と組み合わせて使用されてもよいさらなる治療剤の例は、限定されるものではないが、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、5’−アミノ−5’−デオキシチミジン、酸素、カルボゲン、赤血球輸血、ペルフルオロカーボン(例えば、Fluosol 10DA)、2,3−DPG、BW12C、カルシウムチャンネル遮断剤、ペントキシフィリン、抗血管形成化合物、ヒドラルアジンおよびLBSOを含む。放射線増感剤と組み合わせて使用されてもよい化学療法剤の例は、限定されるものではないが、アドリアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、インターフェロン(α、β、γ)、インターロイキン2、イリノテカン、パクリタキセル、トポテカン、およびそれらの治療学的に有効な類似体および誘導体。
【0068】
化学増感剤は、治療学的有効量の1種以上の他の化合物と組み合わせて投与されてもよく、それらは、限定されるものではないが、標的細胞への化学増感剤の組み入れを促進する化合物;標的細胞への治療剤、栄養物および/または酸素の流動を制御する化合物;腫瘍に作用する化学増感剤またはがんまたは他の疾病を処置するための他の治療学的に有効な化合物を含む。化学増感剤と組み合わせて使用されてもよいさらなる治療剤の例は、限
定されるものではないが、メチル化剤、トポイソメラーゼI阻害剤および他の化学療法剤、例えばシスプラチンおよびブレオマイシンを含む。
【0069】
また、式(I)の化合物は、PARP、より特別にはPARP−1レセプターを検出または同定するために使用することができる。その目的のためには、式(I)の化合物は標識される。該標識は、放射性アイソトープ、スピン標識、抗原標識、酵素標識、蛍光原子団または化学発光原子団からなる群から選ばれてもよい。
【0070】
当業者は、これ以降に提示される試験結果から有効量を容易に決定できるであろう。一般に、有効量は、0.001mg/kg〜100mg/kg体重、特に0.005mg/kg〜10mg/kg体重であることが考えられる。1日をとおして適当な間隔で2、3、4またはそれ以上のサブ用量として要求用量を投与することが適当であろう。該サブ用量は、例えば、1単位用量形態物当たり有効成分の0.05〜500mg、特に0.1mg〜200mgを含有する単位用量形態物として調合されてもよい。
【0071】
次ぎの実施例は、本発明を具体的に説明している。
【0072】
実験の部
これ以後、「DCM」はジクロロメタンとして定義され;「DIPE」はジイソプロピルエーテルとして定義され、「DMF」はN,N−ジメチルホルムアミドとして定義され、「EtOH」はエタノールとして定義され、「MeOH」はメタノールとして定義され、「MEK」はメチルエチルケトンとして定義され、「TEA」はトリエチルアミンとして定義され;そして「THF」はテトラヒドロフランとして定義される。
【0073】
A.中間化合物の製造
例A1
中間体1の製造
【0074】
【化10】

ジメチルアセトアミド(25ml)中2−[[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]アミノ]−ベンズアミド(0.03mol)および1,1’−カルボニルビス−1H−イミダゾール(0.033mol)の混合液を、撹拌し、5時間還流し、次いで、さらなる1,1’−カルボニルビス−1H−イミダゾール(0.033mol)を添加し、そして反応混合液を一夜撹拌し、還流した。混合液を水(300ml)中に注入し、次いで得られる沈殿を濾別し、水およびDIPEで洗浄し、そして乾燥した(9.1g−91%を得た)。次いで、一部をDMFおよび水から結晶化し、最後に、所望の生成物を回収して、中間体1、融点233.5℃の0.8gを得た。
【0075】
B.最終化合物の製造
例B1
化合物1の製造
【0076】
【化11】

THF(250ml)およびMeOH(250ml)中、中間体1(0.15mol)の混合液を、Parr装置において、触媒としてPd/C 10g(5g)を用いて水素化した。H(1eq.)の吸収後、触媒を濾過して、濾液(I)および濾紙上に残りの沈殿を得た。この沈殿を沸騰ヒドロキシアセトン中で撹拌し、混合液を熱濾過した。この濾液を濾液(I)と合わせて、混合液を蒸発させた。残渣を水中で撹拌し、次いで、NHOHを添加し、そして混合液をトリクロロメタンとともに1時間撹拌した。沈殿を濾別し、乾燥して、化合物1、融点253.7℃の31g(84%)を得た。
【0077】
例B2
化合物2の製造
【0078】
【化12】

2−メトキシエタノール(150ml)中化合物1(0.038mol)を、撹拌し、加温して完全に溶解し、次いで、2−メトキシエタノール(10ml)中1−(フルオロフェニル)−4−ヨード−1−ブタノン(0.019mol)の溶液を、加温しながら滴下した(沈殿を生じた)。反応混合液を撹拌し、1.5時間還流した。沈殿を濾別し、そして濾液を蒸発した。残渣をガラスフィルター上でシリカゲルで精製した(溶出液:CHCH/MeOH 90/10)。生成物フラクションを回収し、そして溶媒を蒸発させた。残渣を2−プロパノールから結晶化させ、得られる沈殿を回収し、乾燥して、化合物2、融点195℃の2.3g(29%)を得た。
【0079】
例B3
化合物3の製造
【0080】
【化13】

4−メチル−2−ペンタノン(150ml)中1−(3−クロロプロピル)−2,4(1H,3H)−キナゾリンジオン(0.015mol)、3−(4−ピペリジニル)−1H−インドール(0.015mol)および炭酸ナトリウム(0.030mol)の混合液を24時間撹拌、還流し、次いで、反応混合液を冷却し、水を添加した。分離した有機層を乾燥し、溶媒を蒸発させた。残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製した(溶出液:CHCl/CHOH 95/5)。生成物フラクションを回収し、そして溶媒を蒸発させた。残渣をEtOHから結晶化し、そして得られる沈殿を回収して、化合物3、融点216.8℃の2g(33%)を得た。
【0081】
表F−1は、上記実施例の1つにしたがって製造された化合物を列挙する。
【0082】
【表1】

【0083】
薬理学的実施例
PARP−1阻害活性についてのインビトロのシンチレーション・プロキシミティ・アッセイ(Scintillation Proximity Assay(SPA)
本発明の化合物は、SPA技術(Amersham Pharmacia Biotechに対する所有権)に基づくインビトロ・アッセイにおいて試験された。
原則として,アッセイは、ビオチン化された標的タンパク質、すなわちヒストンのポリ(ADP−リボシル)化の検出のための十分に確立されたSPA技術に頼る。このリボシル化は、ニックDNA活性化PARP−1酵素およびADP−リボシルドナーとしての[H]−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド([H]−NAD)を用いて誘導される。
【0084】
PARP−1酵素活性の誘導物質として、ニックDNAが製造された。このために、DNA(供給者:Sigma)の25mgが、25mlのDNアーゼバッファー(10mM
Tris−HCl,pH7.4;0.5mg/mlウシ血清アルブミン(BSA);5mMMgCl・6HOおよび1mMKCl)に溶解され、これに50μlのDNアー
ゼ溶液(0.15MNaCl中1mg/ml)が添加された。37℃で90分のインキュベーション後,反応は、1.45gNaClを添加することによって終了され、続いて、さらに58℃で15分間インキュベートされた。反応混合液を氷上で冷却し、そして0.2MKClの1.5lに対してそれぞれ1.5および2時間、そして0.01MKClの1.5lに対して2回、それぞれ1.5および2時間4℃で透析された。混合液は一定分量に分けられ、−20℃で保存された。ヒストン(1mg/ml,II−A型、供給者;Sigma)は、Amershamのビオチン化キットを用いてビオチン化され、一定分量に分けられて−20℃で保存された。100mg/mlのSPAポリ(ビニルトルエン)(PVT)ビーズ(供給者;Amersham)の保存液がPBSにおいて作成された。[H]−NADの保存液は[H]−NAD(0.1mCi/ml、供給者;NEK)の120μlを6mlのインキュベーションバッファー(50mM Tris/HCl,pH8;0.2mM DTT;4mMMgCl)に添加することによって作成された。4mM NAD(供給者;Roche)の溶液は、インキュベーションバッファ―において作成された(−20℃で保存された水中100mM保存溶液から)。PARP−1酵素は、当該技術において既知の技術、すなわち、ヒト肝臓cDNAから出発するタンパク質のクローニングおよび発現を用いて作成された。参考文献を含むPARP−1酵素の使用されたタンパク質配列に関する情報は、主アクセッション番号P09874の下のSwiss−Protデータベースにおいて見出される。ビオチン化ヒストンおよびPVT−SPAビーズが混合され、そして室温で30分間プレインキュベートされた。PARP−1酵素(濃度はロットに依存する)がニック酵素と混合され、そして混合液は4℃で30分間プレインキュベートされた。このヒストン/PVT−SPAビーズ溶液とPARP−1酵素/DNA溶液の等部分が混合され、この混合液75μlがDMSO中化合物1μlおよび[H]−NADの25μlとともに96穴ミクロタイタ―プレート中に1ウエル当たり添加された。インキュベーション混合液における最終濃度は、ビオチン化ヒストンについて2μg/ml、PVT−SPAビーズについては2mg/ml、ニックDNAについては2μg/mlおよびPARP−1酵素については5〜10μg/mlであった。室温で15分間の混合液のインキュベーション後,反応は、インキュベーションバッファー中4mM NADの100μlの添加(最終濃度2mM)によって終了させ、そしてプレート液が混合された。
ビーズは少なくとも15分間沈降させられ、そしてプレートがシンチレーションカウンティングのためにTopCountNXTTM(Packard)に移され、値が1分当たりのカウント(cpm)として表された。各実験では、対照(PARP−1酵素および化合物なしのDMSOを含有する)、ブランクインキュベーション(DMSOを含有するがPARP−1酵素または化合物は含有しない)、サンプル(PARP−1酵素およびDMSOに溶解された化合物を含有する)は並行して実施された。試験された全化合物はDMSOに溶解され、最終的にさらにそれにおいて希釈された。第1の例では、化合物は10−5Mの濃度で試験された。化合物が10−5Mで活性を示した場合、化合物が10−5M〜10−8Mの濃度で試験された用量応答曲線が作成された。各試験では、ブランク値は、両対照とサンプル値から引き算された。対照サンプルが最高のPARP−1酵素活性を示した。各サンプルでは、cpm量は、対照の平均cpm値のパーセントとして表された。適当であれば,IC50値(PARP−1酵素活性を対照の50%まで低下させるのに要する薬物の濃度)は、丁度50%レベルの上下の実験点間の直線補間を用いて算出された。ここでは、試験化合物の効果は、pIC50(IC50値の負のlog値)として表された。参照化合物として、4−アミノ−1,8−ナフタルイミドがSPAアッセイを確認するために包含された。試験化合物は10−5Mの初期試験濃度で阻害活性を示した(表2,参照)。
【0085】
PARP−1阻害活性のインビトロ・フィルトレーションアッセイ
本発明の化合物は、ADP−リボシルドナーとしての[32P]−NADを用いて、そのヒストンポリ(ADP−リボシル)化活性によってPARP−1活性(ニックDNAの
存在下で起こされる)を調査するインビトロ・フィルトレーションアッセイにおいて試験された。放射性リボシル化ヒストンは、96穴フィルタープレートにおいてトリクロロ酢酸(TCA)によって沈殿され,組み込まれた[32P]がシンチレーションカウンターを用いて測定された。
【0086】
インキュベーションバッファー(50mM Tris/HCl,pH8;0.2mM DTT;4mMMgCl)中、ヒストン(保存溶液:HO中5mg/ml)、NAD(保存溶液:HO中100mM)、および[32P]−NADの混合液が作成された。また、PARP−1酵素(5〜10μg/ml)およびニックDNAの混合液が作成された。ニックDNAは、PARP−1阻害活性のためのインビトロSPAにおいて記述されたように調製された。DMSO中化合物1μlおよびヒストン−NAD/[32P]−NAD混合液25μlと一緒に、PARP−1酵素/DNA混合液75μlが、96穴フィルタープレートの1ウエル当たりに添加された。インキュベーション混合液における最終濃度は、ヒストンについて2μg/ml、NADについては0.1mM、[32P]−NADについては200μM(0.5μC)、およびニックDNAについては2μg/mlであった。プレートは、室温で15分間インキュベートされ、そして反応は、10μlの氷冷100%TCAの添加,続いて10μlの氷冷BSA溶液(HO中1%)の添加によって終了させた。タンパク質フラクションは4℃で10分間沈殿させられ、そしてプレートは真空濾過された。続いて、プレートは、各ウエルについて、10%氷冷TCAの1ml、5%氷冷TCAの1mlおよび室温での5%TCAの1mlにより洗浄された。最後に、シンチレーション溶液(Microscint40,Packerd)の100μlが各ウエルに添加され、そしてプレートがシンチレーションカウンティングのためにTopCountNXTTM(供給者:Packard)に移され、値が1分当たりのカウント(cpm)として表された。各実験では、対照(PARP−1酵素および化合物なしのDMSOを含有する)、ブランクインキュベーション(DMSOを含有するがPARP−1酵素または化合物は含有しない)およびサンプル(PARP−1酵素およびDMSOに溶解された化合物を含有する)は並行して実施された。試験された全化合物はDMSOに溶解され、最終的にさらにそれにおいて希釈された。第1の例では、化合物は10−5Mの濃度で試験された。化合物が10−5Mで活性を示した場合、化合物が10−5M〜10−8Mの濃度で試験された用量応答曲線が作成された。各試験では、ブランク値は、両対照とサンプル値から引き算された。対照サンプルが最高のPARP−1酵素活性を示した。各サンプルでは、cpm量は、対照の平均cpm値のパーセントとして表された。適当であれば,IC50値(PARP−1酵素活性を対照の50%まで低下させるのに要する薬物の濃度)は、丁度50%レベルの上下の実験点間の直線補間を用いて算出された。ここでは、試験化合物の効果は、pIC50(IC50値の負のlog値)として表された。参照化合物として、4−アミノ−1,8−ナフタルイミドがフィルトレーションアッセイを確認するために包含された。試験化合物は10−5Mの初期試験濃度で阻害活性を示した(表2,参照)。
【0087】
TANK−2阻害活性についてのインビトロのシンチレーション・プロキシミティ・アッセイ(SPA)
本発明の化合物は、Ni Flashプレート(96または384穴)を用いるSPA技術に基づくインビトロ・アッセイにおいて試験された。
原則として,このアッセイは、ADP−リボシルドナーとして[H]−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド([H]−NAD)を用いるTANK−2タンパク質の自己ポリ(ADP−リボシル)化の検出のためにSPA技術に頼る。
【0088】
H]−NAD/NADの保存液は[H]−NAD(0.1mCi/ml、供給者;PerkinElmer)の64.6μlおよびNAD保存液(10.7mM,−20℃で保存された、供給者;Roche)の46.7μlを1888.7μlのアッセ
イバッファー(60mM Tris/HCl,pH7.4;0.9mM DTT;6mMMgCl)に添加することによって作成された。TANK−2酵素は、欧州特許第1238063号に記述されるように作成された。アッセイバッファーの60μlが、DMSO中化合物1μl、「H]−NAD/NADの20μlおよびTANK−2酵素(最終濃度6μg/ml)の20μlとともに96穴Niコートされたフラッシュプレート(Perkin Elmer)中に1ウエル当たり添加された。室温で120分間の混合液のインキュベーション後,反応は、停止液(6mlのHO中42.6mgのNAD)の60μlの添加によって終了された。プレートはプレートシーラーで覆われ、シンチレーションカウンティングのためにTopCountNXTTM(Packard)に置かれた。値は1分当たりのカウント(cpm)として表された。各実験では、対照(TANK−2酵素および化合物なしのDMSOを含有する)、ブランクインキュベーション(DMSOを含有するがTANK−2酵素または化合物は含有しない)およびサンプル(TANK−2酵素およびDMSOに溶解された化合物を含有する)は並行して実施された。試験された全化合物はDMSOに溶解され、最終的にさらにそれにおいて希釈された。第1の例では、化合物は10−5Mの濃度で試験された。化合物が10−5Mで活性を示した場合、化合物が10−5M〜10−8Mの濃度で試験された用量応答曲線が作成された。各試験では、ブランク値は、両対照とサンプル値から引き算された。対照サンプルが最高のTANK−2酵素活性を示した。各サンプルでは、cpm量は、対照の平均cpm値のパーセントとして表された。適当であれば,IC50値(TANK−2酵素活性を対照の50%まで低下させるのに要する薬物の濃度)は、丁度50%レベルの上下の実験点間の直線補間を用いて算出された。ここでは、試験化合物の効果は、pIC50(IC50値の負のlog値)として表された。参照化合物として、3−アミノベンズアミドおよび4−アミノ−1,8−ナフタルイミドがSPAアッセイを確認するために包含された。ここではアッセイは96穴プレートを用いて記述された。384穴プレートを用いるアッセイでは,同じ最終濃度が使用され、そして容量が適用された。96穴プレートの結果が利用される場合、これらの結果が表2に組み入れられたが、他にも384穴プレートからの結果も示された。
【0089】
【表2】

化合物は、細胞の化学および/または放射線増感アッセイ、がん細胞系および最終的にはインビボの放射線増感試験における内因性PARP−1活性の阻害を測定するアッセイにおいてさらに評価されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

{式中、
各Xは、独立して>N−または>CH−であり;そしてXが>CH−である場合、Yは>N−であり;
各Yは、独立して>N−または>CH−であり;ただし、Xが>CH−である場合、Yは>N−であり;
は、直接結合か、または−C1−6アルカンジイル−から選ばれる二価の基であり;Lは、直接結合か、またはカルボニル、−C1−6アルカンジイル−、−(ヒドロキシ)C1−6アルカンジイル−、−C(O)−C1−6アルカンジイル−または−C1−6アルカンジイル−C(O)−から選ばれる二価の基であり;
は、水素またはヒドロキシであり;
Zは、水素、または
【化2】

(式中、各Rは、独立して、水素、ハロまたはC1−6アルキルから選ばれる)
から選ばれる基であり;
但し、ここで、
1−[1−[(2S)−2−[(2R)−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−2−イル]−2−ヒドロキシエチル]−4−ピペリジニル」−2、4−(1H,3H)−キナゾリンジオン、1−[2−[4−(4−フルオロベンゾイル)−1−ピペリジニル]エチル]−2,4−(1H,3H)−キナゾリンジオン、1−[3−[4−(4−フルオロベンゾイル)−1−ピペリジニル]プロピル]−2,4−(1H,3H)−キナゾリンジオン、3−[2−[4−(4−クロロベンゾイル)−1−ピペリジニル]エチル]−2,4−(1H,3H)−キナゾリンジオンおよび3−[2−[4−[(4−フルオロフェニル)ヒドロキシメチル]−1−ピペリジニル]エチル]−2,4−(1H,3H)−キナゾリンジオンは含まれない}
の化合物、そのN−オキシド形態物、製薬学的に許容できる付加塩および立体化学的異性形態物。
【請求項2】
各Xは、独立して>N−または>CH−であり;各Yは、独立して>N−または>CH−であり;Lは、直接結合か、または−C1−6アルカンジイル−から選ばれる二価の基であり;Lは、直接結合か、またはカルボニルまたは−C1−6アルカンジイル−から選ばれる二価の基であり;Rは、水素またはヒドロキシであり;
Zは、水素、または(a−1),(a−2),(a−3),(a−4)または(a−5)から選ばれる基であり;そして各Rは、独立して、水素、ハロまたはC1−6アルキル
から選ばれる、請求項1に記載される化合物。
【請求項3】
各Xは>N−であり;各Yは>CH−であり;Lは直接結合であり;Lは直接結合であり;Rは水素であり;そしてZは水素である、請求項1および2に記載の化合物。
【請求項4】
化合物が化合物1である、請求項1、2および3記載の化合物。
【化3】

【請求項5】
医薬として使用するための、請求項1〜4のいずれかに記載される化合物。
【請求項6】
製薬学的に許容できる担体および有効成分として請求項1〜4に記載される化合物の治療学的有効量を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項7】
製薬学的に許容できる担体および請求項1〜4に記載される化合物が密接に混合される、請求項6に記載される製薬学的組成物の製造方法。
【請求項8】
PARPに媒介される障害の処置用の薬物の製造のための化合物の使用であって、該化合物が、式(I)
【化4】

{式中、
各Xは、独立して>N−または>CH−であり;そしてXが>CH−である場合、Yは>N−であり;
各Yは、独立して>N−または>CH−であり;ただし、Xが>CH−である場合、Yは>N−であり;
は、直接結合か、または−C1−6アルカンジイル−から選ばれる二価の基であり;Lは、直接結合か、またはカルボニル、−C1−6アルカンジイル−、−(ヒドロキシ)C1−6アルカンジイル−、−C(O)−C1−6アルカンジイル−または−C1−6アルカンジイル−C(O)−から選ばれる二価の基であり;
は、水素またはヒドロキシであり;
Zは、水素、または
【化5】

(式中、各Rは、独立して、水素、ハロまたはC1−6アルキルから選ばれる)
から選ばれる基である}
の化合物、そのN−オキシド形態物、製薬学的に許容できる付加塩および立体化学的異性形態物である、上記使用。
【請求項9】
PARP−1に媒介される障害の処置用の薬物の製造のための式(1)のPARP阻害剤の請求項8に記載の使用。
【請求項10】
処置が化学増感作用(chemosensitization)を伴う、請求項8および9に記載の使用。
【請求項11】
処置が放射線増感作用(radiosensitization)を伴う、請求項8および9に記載の使用。
【請求項12】
化合物が、式(I)
【化6】

{式中、
各Xは、独立して>N−または>CH−であり;そしてXが>CH−である場合、Yは>N−であり;
各Yは、独立して>N−または>CH−であり;ただし、Xが>CH−である場合、Yは>N−であり;
は、直接結合か、または−C1−6アルカンジイル−から選ばれる二価の基であり;Lは、直接結合か、またはカルボニル、−C1−6アルカンジイル−、−(ヒドロキシ)C1−6アルカンジイル−、−C(O)−C1−6アルカンジイル−または−C1−6アルカンジイル−C(O)−から選ばれる二価の基であり;
は、水素またはヒドロキシであり;
Zは、水素、または
【化7】

(式中、各Rは、独立して、水素、ハロまたはC1−6アルキルから選ばれる)
から選ばれる基である}
の化合物、そのN−オキシド形態物、製薬学的に許容できる付加塩および立体化学的異性形態物である、化学療法剤と該化合物の組み合わせ物。
【請求項13】
a)式(II)の中間体を、Wが適当な脱離基である式(III)の中間体と、反応に不活性な溶媒中かつ適当な塩基の添加により反応させて、Xが>N−である式(I−a)の化合物を形成するか、
【化8】

あるいは、
b)式(IV)の中間体を、Wが適当な脱離基である式(V)の中間体と、反応に不活性な溶媒中かつ適当な塩基の添加により反応させて、Yが>N−である式(I−b)の化合物を形成する
【化9】

ことを特徴とする、請求項1に記載される化合物の製造方法。

【公表番号】特表2008−504349(P2008−504349A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518608(P2007−518608)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053031
【国際公開番号】WO2006/003148
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】