説明

PCグラウト組成物

【課題】超低粘性の高流動性を発現し、実PC構造物にグラウトを注入施工してもブリーディングが発生することが無く、且つ、自己収縮ひずみが小さく硬化収縮ひび割れを抑制し、安定した高い強度発現性を有するプレミックス型の超低粘性PCグラウト組成物を提供する。
【解決手段】早強セメント15質量%以上、膨張材1.2〜4.8質量%、増粘剤0.02〜0.1質量%及びセメント分散剤0.2〜2.0質量%を含有するプレミックスタイプの超低粘性PCグラウト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレミックス型のPCグラウト組成物に関する。詳しくは、流動性が非常に優れ、材料分離抵抗性が大きく、材齢28日における圧縮強度が100N/mm2を超える超低粘性PCグラウト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、PCグラウトはプレストレストコンクリート橋において、内ケーブルにおけるPC鋼材緊張後のダクトの空隙充填材料として使用される。プレストレストコンクリート橋以外でも建築構造物や容器構造物、その他構造物の内ケーブル等にもPCグラウトは使用されており、その要求性能のとしては、PC鋼材を腐食から保護することと、PC鋼材と部材コンクリートの間の一体化を図る事が挙げられる。具体的には、材料分離が無くブリーディングが無いこと、安定した流動性を有し、空隙に容易に注入出来ること、十分な圧縮強度を有すること、塩化物量が低いこと等が要求される。
【0003】
近年、上記要求性能に加えて、PC構造物の長大化に適応可能とすべく、狭い間隙やロングスパンにも施工が非常にスムーズで清掃作業も容易にできる様、より低粘性(超低粘性)のPCグラウト材が要求されている。具体的には、一般的にJP ロート流下時間(土木学会規準「PCグラウト試験方法(JSCEF531−1999)」に準じて測定する流動性を示す)で、流下時間が14秒以上のものを高粘性型、6〜14秒のものを低粘性型、6秒以下のものを超低粘性型の目安とされている。
【0004】
PCグラウト材は、現場での使用方法の違いにより、プレミックスタイプと混和剤タイプが有る。プレミックスタイプは、予め、水以外のPCグラウト材成分をプレミックスしておく材料であり、現場施工による労力の軽減、均一になされた品質性能を発揮する、混和剤の入れ忘れや配合ミス等のトラブルを回避するといった特徴を有する。一方で混和剤タイプは、現場調達セメントと混和剤、水を現場にて混合する方法であり、プレミックスタイプに比べ安価に施工できる特徴を有する。
【0005】
プレミックスタイプとして、セメント、高性能減水剤、遅延剤、特定の無機質フィラーをPCグラウト材成分とするものが知られている(例えば、特許文献1)。しかし、自己収縮が大きく、シース管内におけるひび割れによるPC鋼材との付着性の減弱やブリーディングの発生等の大きな課題があった。また、自己収縮を抑制する技術として、セメント、膨張材、炭酸カルシウム、高性能減水剤、遅延剤、消泡剤を主成分とするPCグラウト材が知られている(例えば、特許文献2)。しかしながら、これらのPCグラウトを含め多くは、ブリーディング率試験としてポリエチレン袋法[JSCE−F532−1999]が実施されている。この試験方法では、PC鋼材を配置するPC実構造物へのグラウト施工時のPC鋼材の影響が考慮されておらず、この方法でブリーディングが発生しないものであっても、実PC構造物にグラウトを注入施工するとブリーディングが発生する大きな問題が生じていた。また、超低粘性で高強度発現を有する高ビーライト系セメント、シリカフューム、セメント分散材からなるPCグラウト材も知られている(例えば、特許文献3)が、前記文献と同様に、実PC構造物にグラウトを注入施工するとブリーディングが発生する大きな問題が生じていた。
【0006】
一方で混和剤タイプとして、上記実PC構造物を考慮したブリーディング率試験方法でブリーディングを抑制したポリカルボン酸系セメント分散剤と増粘剤、石灰系混和材を配合してなるPCグラウト用混和剤が知られている(例えば、特許文献4)。
この混和剤を使用したPCグラウトは、近年のPC構造物の長大化に適応可能なPCグラウト材として、安定して高い流動性(混練直後のJ14 ロート流下時間4秒未満であり、60分経過後の流下時間の増加が1秒未満)を有し、低い注入圧で良好な充填性を確保でき、さらに分離抵抗性に優れブリーディングを生じず、高い圧縮強度を発現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開1997−30855号公報
【特許文献2】特開2002−28512号公報
【特許文献3】特開2003−137634号公報
【特許文献4】特開2005−314154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年、施工現場で調達されるセメントとPCグラウト用混和剤を組み合わせ水と混合しPCグラウトを現場で練り混ぜた場合、施工現場で調達されたセメントのキャラクターの影響により、流動性が担保できない等の課題が生じている。すなわち、施工現場で調達したセメントの品質により、流動性が大きく変動する場合が生じている。一般的に市販の流通セメントは、銘柄及び製造工場、ロット間(内)等に関係なく、セメントのJIS規格範囲内にすべて入っており、一般の生コンクリート等に使用しても特に問題は生じない。一方、近年、特にセメントへの廃棄物の受け入れ等により、そのキャラクターが大きくばらつく方向にあり、流動性に影響があることが把握されつつある。さらにPCグラウト材用混和剤とともに用いた場合、使用するセメントのキャラクターの違いがPCグラウトの流動性に大きく影響を与える。特に、このセメントキャラクターの流動性への影響は、粘性度の低い流動性に優れたPCグラウトがより影響を受けやすい。例えば、流動性が著しく低下し、施工現場で圧送不良や施工不良の発生や、流動性が良好であっても多量のブリーディングを生じることがあった。
【0009】
従って本発明の課題は、超低粘性の高流動性を発現し、実PC構造物にグラウトを注入施工してもブリーディングが発生することが無く、且つ、自己収縮ひずみが小さく硬化収縮ひび割れを抑制し、安定した高い強度発現性を有するプレミックス型の超低粘性PCグラウト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者は、プレミックス型のPCグラウト組成物の特性と各成分の種類及び配合量との関係について種々検討したところ、早強セメント及び膨張材を一定量含有させ、これに一定量の増粘剤とセメント分散剤を組み合せて配合すれば、前記課題を解決したプレミックスタイプのPCグラウト組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、早強セメント15質量%以上、膨張材1.2〜4.8質量%、増粘剤0.02〜0.1質量%及びセメント分散剤0.2〜2.0質量%を含有するプレミックスタイプの超低粘性PCグラウト組成物を提供するものである。
また本発明は、上記プレミックスタイプの超低粘性PCグラウト組成物を、水/結合材比30〜45%で練り混ぜた超低粘性PCグラウトを提供するものである。
さらに、本発明は、上記プレミックスタイプの超低粘性PCグラウト組成物に消泡剤を0.001〜0.08質量%混和し、水/結合材比30〜45%で練り混ぜた超低粘性PCグラウトを提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプレミックスタイプの超低粘性PCグラウト組成物を用いれば、特定の水結合比で使用することにより、超低粘性の流動性を発現し、実PC構造物にグラウトを注入施工してもブリーディングが発生することが無く、且つ、自己収縮ひずみが小さく硬化収縮ひび割れを抑制し、安定した高い強度発現性を有する超低粘性PCグラウトが得られる。また、プレミックス型のPCグラウト材であるため、常に安定した品質性能を保持し、PC鋼材を腐食から保護し、PC鋼材と部材コンクリートの間の一体化を図った各種PC構造物を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】鉛直管試験の概略図である。
【図2】傾斜管試験の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体的に説明する。なお、%は特に示す場合及び単位固有の場合を除き質量%である。
【0015】
本発明で使用される(A)早強セメントとしては特に限定はされないが、一般的には早強ポルトランドセメントが挙げられる。本発明のプレミックスタイプの超低粘性PCグラウト組成物中の早強セメントの含有量は、15%以上である。15%未満では、特に高温度下において実PC構造物にグラウトを注入施工した場合に、ブリーディングが発生し、初期強度発現性も低下するので好ましくない。ブリーディングの発生を抑え、超高流動で可使時間を長く確保する上で、20〜80%が好ましく、40〜80%がより好ましい。
【0016】
早強セメント以外に、本発明の効果を損なわない範囲でモルタルやコンクリートに使用できるセメントや混和材料を添加することができる。このセメントや混和材料としては、例えば普通、低熱、中庸熱、白色等の各種ポルトランドセメント、エコセメント、並びにこれらポルトランドセメント又はエコセメントにフライアッシュ、高炉スラグ、シリカヒューム等を混合した各種混合セメント、石膏、石粉、粘土鉱物粉末、スラグ粉末、フライアッシュ、シリカフューム、無機質フィラー等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を本発明による効果を阻害しない範囲で使用することができる。
【0017】
本発明で使用される(B)膨張材としては、特に限定はされず、一般的には遊離生石灰を有効成分とする生石灰系膨張材、カルシウムサルホアルミネート等のエトリンガイト生成物質を有効成分とするエトリンガイト系膨張材、遊離生石灰とエトリンガイト生成物質の複合系膨張材が代表的なものとして挙げられる。このうち、生石灰系膨張材は一般に水和反応活性が高く、特にコンクリートの大規模な初期収縮を抑制する効果に優れることが知られている。
本発明のプレミックスタイプの超低粘性PCグラウト組成物中の膨張材の含有量は、1.2〜4.8%であり、1.8〜4.0%がより好ましい。1.2%未満では、自己収縮が大きくなり、硬化体に収縮ひび割れ等が発生し耐久性を損ねるので好ましくない。4.8%を超えると、流動性不良、膨張過多による異常膨張や水和熱の上昇による温度ひび割れ等の恐れがあるため好ましくない。
【0018】
本発明で使用される(C)増粘剤としては、特に限定はされず、セルロース系増粘剤、アクリル系増粘剤、グアーガム系増粘剤などが挙げられる。このうち、セルロース系増粘剤が好ましく、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい例として挙げられる。本発明のプレミックスタイプの超低粘性PCグラウト組成物中の増粘剤の含有量は0.02〜0.1%であり、0.025〜0.065%がより好ましい。0.02%未満では、増粘効果に乏しく、材料分離やブリーディングが発生するので好ましくない。0.1%を超えるとワーカビリティが著しく低下し、良好なフレッシュ性状を維持することが困難であるため好ましくない。
【0019】
本発明で使用される(D)セメント分散剤は、特に限定されず、例えば、ポリカルボン酸塩系減水剤、ナフタレンスルホン酸塩系減水剤、メラミンスルホン酸塩系減水剤及びリグニンスルホン酸塩系減水剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。用いる減水剤としては、高性能減水剤又は高性能AE減水剤を用いると、グラウトを超高強度とし易いことから好ましい。また、メラミンスルホン酸塩系減水剤が、セメントの水溶性アルカリの影響を受けにくく、セメントのばらつきに対して一定の流動性を保持し易いことから、品質の安定したプレミックス製品を製造する観点から好ましい。本発明のプレミックスタイプの低粘性PCグラウト組成物中のセメント分散剤の含有量は、0.2〜2.0%であり、0.5〜1.5%がより好ましい。0.2%未満では、分散剤の効果が乏しく、ワーカビリティが著しく低下するので好ましくない。2.0%を超えると凝結時間が遅延し、且つ、ブリーディングが発生するため好ましくない。
【0020】
本発明のプレミックスタイプの超低粘性PCグラウト組成物には、(E)消泡剤を微量混和することができる。この消泡剤の混和により、僅かなグラウト中の気泡を消し、硬化体をより緻密化させることができる。本発明のプレミックスタイプの超低粘性PCグラウト組成物中の消泡剤の含有量は、0.001〜0.03%が好ましく、さらに0.003〜0.015%がより好ましい。0.001%未満では、消泡剤の効果が発揮されず、0.03%を超えると、表面に気泡が押し上げられ、肌分れ等脆弱部位が発生するため好ましくない。
【0021】
本発明のプレミックスタイプの超低粘性PCグラウト組成物には、本発明の効果を実質的に失わない範囲でモルタルやコンクリートに使用できる骨材を使用できる。例えば、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、川砂利、陸砂利、砕石、人口骨材などを用いることができる。なお、骨材の種類は限定されないが、吸水率の大きい軽量骨材は好ましくない。
【0022】
本発明の超低粘性PCグラウト組成物は、プレミックス材として使用する。従って、所定量の水を計量し混練するだけですぐに使用できるように、本発明の超低粘性PCグラウト組成物の配合成分のすべてが予め混合され、粉末状であるプレミックス製品とする。本発明の超低粘性PCグラウト組成物の配合成分をプレミックス化させる方法は特に限定されず、V型混合機や可傾式コンクリートミキサ等の重力式ミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、パドルミキサー等で混合される。また、袋やポリエチレン製容器等の容器に直接、各材料を計り取り投入する方法により、本発明の超低粘性PCグラウト組成物をプレミックス化することもできる。
【0023】
本発明のプレミックスタイプの超低粘性PCグラウト組成物を用いて超低粘性PCグラウトを製造するには、水/結合材比30〜45%で練り混ぜるのが好ましい。30%未満の場合、超流動性と可使時間のバランスが取れず、良好なワーカビリティを維持することができず好ましくない。また、45%を超えると、ブリーディングの発生や強度発現性が低下するので好ましくない。
【0024】
本発明における水/結合材比とは、結合材となるセメント、及び膨張材又は水硬性を有するセメント用混和材(シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末など)の合計質量に対する水の質量である。また、該水の質量は、使用するセメント混和剤等に含まれる水をも合わせた質量である。
【0025】
本発明の超低粘性PCグラウトは、上記水/結合材比で混練した場合JPロート流下時間が6秒以下であり、超低粘性となる。本発明の超低粘性PCグラウトを用いて施工すれば、実PC構造物にグラウトを注入施工してもブリーディングが発生することが無く、且つ、自己収縮ひずみが小さく硬化収縮ひび割れを抑制し、安定した高い強度発現性を有する。また、常に安定した品質性能を保持し、PC鋼材を腐食から保護し、PC鋼材と部材コンクリートの間の一体化を図った各種PC構造物を施工できる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の実施例を比較例と共に示すが、本発明は、実施例に限られたものではない。
【0027】
〔実施例1・比較例1〕
使用材料を表1に示す。表1の材料を用いて、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、本発明のプレミックスタイプの超低粘性PCグラウト組成物(本発明品1〜8)を作製した。また、比較参考品として参考品(1〜10)も同時に作製した。作成した各グラウト組成物の配合割合を表2に示す。各グラウト組成物は、グラウトミキサーを用いて90秒間、水と練り混ぜ、グラウト材料を作製した。尚、圧縮強度試験以外の品質試験は、何れも20±3℃、湿度80%以上の恒温室内で行った。なお、表2中の配合(%)は、最も配合量の多いセメントで合計100%に調整している。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
表2で作製した本発明品(1〜8)と参考品(2、5、7、8)のグラウト材料について、流動性及びワーカビリティ(可使時間の確保)を測定し評価した。各評価試験方法を以下に示す。
流動性:土木学会コンクリート標準示方書JSCE F531「PCグラウトの流動性試験方法」によるJP漏斗流下時間の測定値。超高流動(超低粘性)の指標として、練り上がり直後のJP流下時間が6秒以下とした。
ワーカビリティ(可使時間の確保):作業性は、60分後においても流動性が保持し、可使時間を確保する指標として、練り上がりから60分後のJP漏斗流下時間の測定値が8秒未満を○(良好)、8秒以上のものを×(不可)とした。
【0031】
流動性及び作業性試験結果を表3に示す。本発明の実施例は、何れも練り上り直後のJP漏斗流下時間が6秒以下で流動性に優れており、且つ、練り上りから60分後のJP漏斗流下時間も8秒以下と何れも流動性に優れて十分な可使時間が確保し、作業性が良好であることが確認された。
一方で、膨張材を7.0%混和した比較例1−1は、練り上り直後のJP漏斗流下時間が6.9秒と流動性に劣り、練り上りから60分後までにしまりが認められた。セメント分散剤を0.1%混和とした比較例1−2や水結合材比を25%にした比較例1−3、増粘剤を0.15%混和した比較例1−4は、練り上り直後のJP漏斗流下時間が10秒以上と流動性に劣り、グラウト練り上がり後から60分経過後では、著しくしまりが強く、作業性(可使時間)が確保できないことが確認された。
【0032】
【表3】

【0033】
〔実施例2・比較例2〕
表2で作製した本発明品(1〜8)と参考品(1、4、6、9)のグラウト材料について、ブリーディング及び硬化体ひび割れ確認試験を実施した。評価試験方法を以下に示す。
ブリーディング及び硬化体ひび割れ確認試験 :JHS 420−2004「鉛直管試験」によるブリーディング率の測定値及び鉛直管に注入したグラウト硬化体の24時間後のひび割れ発生の有無を目視で確認した。
【0034】
以下に図1を参照して鉛直管試験を説明する。
図1に示すように、先ず、高さ1.7m、外径89mm、内径79mmのPVC製透明シース管の中心に、長さ約1.7m超のPC鋼より線を配置する。そして、シース管内に混練直後のグラウトをグラウトポンプを用いて1.5mの高さまで注入した。注入口は、板線でしっかり閉め、注入直後のグラウト長を測定し、スケール表示のあるシールをグラウト上端(1.5m)に合わせて貼り付け、グラウト長を基長した。基長3時間後及び24時間後のブリーディング水をシース管に貼り付けたスケールで測定し、次式により、ブリーディング率を算出した。
ブリーディング率(%)=(ブリーディング水の高さ)/(グラウトの高さ)×100
【0035】
ブリーディング及び硬化体ひび割れ確認試験結果を表4に示す。本発明の実施例は、何れもブリーディングが発生せず、グラウト硬化体の24時間後のひび割れ発生も認められなかった。膨張材を0.8%混和とした比較例2−1は、ブリーディングの発生はなかったものの、グラウト硬化体の24時間後のひび割れ発生が認められた。セメント分散剤を2.1%混和した比較例2−2は、3時間後のブリーディングが0.6%認められた。また、水結合比48%にした比較例2−3及び増粘剤を0.01%混和した比較例2−4は、何れも1%以上の顕著なブリーディングが認められた。
【0036】
【表4】

【0037】
〔実施例3・比較例3〕
表2で作製した本発明品(1〜8)と参考品(3)のグラウト材料について、圧縮強度試験を実施した。
評価試験方法を以下に示す。
圧縮強度:土木学会基準JSCE−G 531「PCグラウトの圧縮強度試験方法」に準じ、材齢3、7、28日の圧縮強度を測定した
【0038】
圧縮強度試験結果を表5に示す。本発明の実施例は、材齢3日で60N/mm2以上の強度発現性を示し、材齢28日では、100N/mm2以上の超高強度が確認された。早強セメント10%混和し、低熱セメントを混和材料とした比較例2−1は、初期強度発現性が低く、材齢28日強度も45N/mm2と低い性状が確認された。
【0039】
【表5】

【0040】
〔実施例4・比較例4〕
本発明でより好ましいと思われる超低粘性PCグラウト組成物(表2の本発明品4及び5、6)と表2の比較参考品(4、10)について、材料分離抵抗性試験及び自己収縮試験を実施した。評価試験方法を以下に示す。
材料分離抵抗性試験:JHS 419−2004「傾斜管試験」による材料分離抵抗を確認した。以下に図2を参照して傾斜管試験を説明する
図2に示すように、PC鋼より線12本を挿入した長さ約5m、外径90m、内径79mmのPVC製透明シース管を角度30度で設置し、PCグラウトを注入して、ブリーディング水の発生、ブリーディング水の移動現象など材料分離抵抗性を目視で測定した。
材料分離抵抗性の指標を以下に示す。
○:ブリーディングの発生は認められない。
△:ブリーディング水がやや発生し、水の移動はあるが、上端に集中して留まることがない。
×:ブリーディング水が発生し、上端にブリーディングが溜まり、材料分離が生じる。
自己収縮試験:JCI基準JCI−SAS3「コンクリートの自己収縮応力試験方法(案)」に準じて、自己収縮ひずみを測定した。このとき、自己収縮ひずみの起点は始発時間とした。
【0041】
材料分離抵抗性及び自己収縮試験結果を表6に示す。本発明の実施例は、何れも3時間後及び24時間後ともに、ブリーディングの発生が認められず、良好な材料分離抵抗性が確認された。自己収縮についても、材齢1日で3〜100μの膨張を示した。一方、セメント分散剤を2.1%混和した比較例4−1は、ブリーディングが顕著に発生し、上端にもブリーディングが溜まることが確認された。自己収縮は180μの収縮を示した。膨張材を混和せず、消泡剤を0.1%混和した比較例4−2は、材料分離抵抗性試験では傾斜管上面に気泡とブリーディング水が若干現れ、やや水の移動が認められた。また、自己収縮は、材齢1日で650μの大きな収縮が確認された。
【0042】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、超低粘性の高流動で且つ作業時間が十分確保でき、材料分離抵抗性が大きく、圧縮強度100N/mm2を超え且つ硬化時の自己収縮が起こり難くい超低粘性PCグラウトが得られるので、プレストレストコンクリート橋におけるPC鋼材緊張後のダクトの空隙充填材料や、超高層建築物の各部材の接合部分や超高強度の部材内部の充填等に、好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
早強セメント15質量%以上、膨張材1.2〜4.8質量%、増粘剤0.02〜0.1質量%及びセメント分散剤0.2〜2.0質量%を含有するプレミックスタイプの超低粘性PCグラウト組成物。
【請求項2】
さらに消泡剤0.001〜0.8質量%含有する請求項1記載の超低粘性PCグラウト組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプレミックスタイプの超低粘性PCグラウト組成物を、水/結合材比30〜45%で練り混ぜた超低粘性PCグラウト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−51741(P2012−51741A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193667(P2010−193667)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【出願人】(000103769)オリエンタル白石株式会社 (136)
【Fターム(参考)】