説明

PC中空杭の鉛直度管理方法

【課題】 PC中空杭の鉛直度を規定値内に保って計画位置に高精度に立て込んで管理することができるPC中空杭の鉛直度管理方法を提供する。
【解決手段】 PC中空杭2の上端を地表に設けた支持手段14,18で固定して、掘削した溝4内に吊下状態で立て込む際に、該PC中空杭の下部に軸芯部を通って設けてある係止ロッド12に、予めその軸芯部に位置させて測定糸30の一端を止着してその他端を上端部から上方に導き出しておき、該PC中空杭の立て込み後に、該PC中空杭の上方に櫓状の測定台34を設置して、該測定糸の他端を該測定台に止着して張設し、該測定糸を2方向からトランシット36で視準しながら該測定糸が鉛直になるように該測定台側の端部の止着位置を調整し、該位置調整の完了後、該PC中空杭の上端部の軸芯位置と該測定糸とのズレを測定して、該位置ズレが規定値内に収まるように該PC中空杭上端部の固定位置を修正して鉛直度を管理する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、掘削した溝内に吊り下げ状態で立て込むPC中空杭の鉛直度を管理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、仮設の土留め壁や本設の地下構造物の側壁等を構築するにあたって、下記の特許文献1〜3に示されているような、地中にPC中空杭を列状に連続埋設配置して壁体に形成する工法が多用されるようになってきている。
【0003】
即ち、この工法は、予め工場等でプレストレスを付与して高強度及び高精度に製作した、横断面が角形をなすPC中空杭を用いて施工するものであり、その中空部は杭の軸芯に沿って円柱状に全長に亘って形成されていて、オーガスクリューの挿入孔になっている。つまり、PC中空杭はその中空部内にオーガスクリューが挿通されて所定の建込み位置に吊り上げられ、その先端部直下の地盤を当該オーガスクリューで連続的に掘削・排土しながら圧入されていくことで地中に沈設されるようになっている。
【0004】
そして、この先行して沈設させたPC中空杭をガイドにしながらこれに隣接させて、さらに新たなPC中空杭を同様にして次々に沈設させていき、各PC中空杭間の隙間(目地)にはモルタルを充填していくことで、これらPC中空杭が連続埋設されてなる壁体を構築していくという工法である。なお、各PC中空杭はその沈設完了時に、逐次にその隣に埋設されているPC中空杭に杭頭部が連結用プレート等で結合されていく。また、必要に応じて沈設完了時にセメントミルクを注入して先端の根固め処理を行うことで支持力を確保するようにしている。
【特許文献1】特開平10−46618号公報
【特許文献2】特開平11−36296号公報
【特許文献3】特開平11−36334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の構築方法であると、PC中空杭の中心部に挿通したオーガスクリューで掘削・排土しつつ圧入するので、沈設済みのPC中空杭に隣接させてこれをガイドに新たなPC中空杭を沈設させていっても、当該新たなPC中空杭の下端部側が先行して沈設済みのPC中空杭から離間して地中に斜めに嵌入してしまい易く、PC中空杭相互間に生じる隙間の誤差を規定値内に保持して鉛直に立て込むことが難しかった。しかも地中に沈設しているため、根伐時までPC中空杭の先端部側の状態は全く視認できず、その鉛直度を測定して確認する術がないという課題があった。これ故、根伐時まで壁体の出来形が不明で、目地の開き(PC中空杭間の開き)や全体的な傾斜が発生し、出来形が不十分になることがあった。即ち、計画通りに各PC中空杭を所望の位置に鉛直に正確に立て込むことが困難で、所定数のPC中空杭で構築する壁体の長さが所望寸法よりも長大化してしまうことがあった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、PC中空杭の鉛直度を規定値内に保って計画位置に高精度に立て込んで管理することができるPC中空杭の鉛直度管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明の請求項1に係るPC中空杭の鉛直度管理方法にあっては、PC中空杭の上端を地表に設けた支持手段で固定して、掘削した溝内に吊下状態で立て込む際に、該PC中空杭の下部に軸芯部を通って設けてある係止ロッドに、予めその軸芯部に位置させて測定糸の一端を止着してその他端を上端部から上方に導き出しておき、該PC中空杭の立て込み後に、該PC中空杭の上方に櫓状の測定台を設置して、該測定糸の他端を該測定台に止着して張設し、該測定糸を2方向からトランシットで視準しながら該測定糸が鉛直になるように該測定台側の端部の止着位置を調整し、該位置調整の完了後、該PC中空杭の上端部の軸芯位置と該測定糸とのズレを測定して、該位置ズレが規定値内に収まるように該PC中空杭上端部の固定位置を修正して鉛直度を管理することを特徴とする。
【0008】
ここで、請求項2に示すように、前記PC中空杭が、所定長さに亘って掘削された溝内に隣接されて列状に連設配置されて壁体を構築する横断面角形をなす壁体構築用のPC中空杭である構成となし得る。
【0009】
また、請求項3に示すように、前記PC中空杭が、隣接配置される該PC中空杭同士を係合させて相互の離間寸法を規制するための係合手段を下部に備えている構成となし得る。 さらに、請求項4に示すように、前記係合手段の一方が、前記PC中空杭の壁面形成側の面に外方に突出して設けられているロッドでなり、前記係合手段の他方が、隣接して先行配置されているPC中空杭の該ロッドに上方から係合可能に、連設側面より外方に突出して該壁面形成側面に沿って設けられている鉤状のフックでなる構成となし得る。
【発明の効果】
【0010】
上記のようにしてなる本発明に係るPC中空杭の鉛直度管理方法によれば、PC中空杭の下部に軸芯を通る係止ロッドを設けて、予めその軸芯位置に測定糸の一端を止着するとともに、その測定糸の他端を上端部から導き出しておき、立て込み後にその上方に測定台を設けて、測定糸の他端をその測定台に鉛直に張設して止着し、当該測定糸にPC中空杭の軸芯が一致するようにその上端部側の支持固定位置を修正するので、当該PC中空の鉛直度を高精度に管理しながら立て込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明に係る壁体構築用PC中空杭および当該PC中空杭を用いた壁体の構築方法の好適な一実施の形態について、添付図面に基づいて詳述する。
【0012】
図1はPC中空杭2を用いた壁体構造物としての貯水槽3を示す平面図である。また、図2〜図7は各種作業工程を説明する図であり、図2は掘削工程、図3は保護部材撤去工程、図4はPC中空杭の立て込み時前半の仮受け工程、図5はPC中空杭の立て込時中半の本受け工程、図6はPC中空杭の立て込み時後半の精度管理工程、図7は保護部材立て込み工程をそれぞれ示している。
【0013】
先ず、壁体構築用のPC中空杭2について説明する。図1〜図5に示すように、このPC中空杭2は、壁体構築ラインに沿って掘削した挿入溝4内に多数が隣接して順次列状に連設配置されることで壁体6を形成するものであり、基本的には従来のPC中空杭と同様に工場等にて、プレストレスが付与されて高強度及び高精度に製作されるプレキャスト・プレストレス・コンクリート製品である。即ち、中芯部に貫通孔8を有して横断面が略角形に形成される点、および隣接配置されて相互に対面して接合される連設側面2aには止水材充填用の溝部2cが形成されている点等は従来のPC中空杭と全く同様である。
【0014】
ここで、本願発明のPC中空杭2が従来のものと異なる点は、隣接配置されるPC中空杭2,2同士を係合させてそれらの相互の離間寸法を規制するための係合手段10が下部に設けられている点、並びに立て込み精度の測定用に供する測定糸の一端を固定係止するための係止具として、PC中空杭2の軸芯部を横断する係止ロッド12が下端部に設けられている点が異なり、貫通孔8は従来の様にオーガスクリューを挿通して掘削・排土に供されることはない。
【0015】
前記係合手段10は、例えば図示するように、その一方の係合片を鉤状のフック10aとし、他方の係合片を当該フック10aが係合する係合ロッド10bとして構成し得る。この係合ロッド10bはPC中空杭2の壁面形成側面2bに、これより外方に突出して一体的に設けられており、フック10aは隣接して先行配置されているPC中空杭2の当該係合ロッド10bに上方から係合可能に壁面形成側面2bに沿って設けられて連接側面2aよりも外方に突出して一体的に設けられている。
【0016】
また、PC中空杭2の杭頭部には、当該PC中空杭2の上端部を地盤表面から所定深さに下方に位置させて挿入溝4内に吊り下げ支持するためのPC中空杭吊金具14を結合させるボルト孔が設けられていて、挿入溝4内への立て込み時に当該吊金具14がPC中空杭2の杭頭部に長ボルトによって結合されて地盤表面から吊り下げ支持されるようになっている。このPC中空杭吊金具14は横断面形状がPC中空杭2と同形状をなし、貫通孔16を有するとともに、その上端部には挿入溝4を横断して当該挿入溝4の両側部に沿って設けられているガイドウォールに両端が固定係止される本受け金物18が取り付けられている。
【0017】
次に、上記の様に構成されたPC中空杭2を用いて壁体6を構築する方法の手順について、図1に示すような矩形の貯水槽 を構築する場合を例にして説明する。即ち、この壁体の構築方法は、図1〜図7に示すように、隣接配置されるPC中空杭2,2同士を係合させて相互の離間寸法を規制する係合手段10が設けられている横断面が略角形をなす壁体構築用のPC中空杭2を、地中に列状に連設配置して所定長の壁体6を段階的に延設していく方法であり、以下に述べる掘削工程と立て込み工程、並びに固化工程とを有して、これらの工程を順次繰り返し行っていくことで所望長の壁体6を得ることを基本としており、その具体的手順を以下に詳しく述べる。
【0018】
《掘削工程》
図2に示すように、先ず、壁体構築ラインに沿って所定長さ(例えば5m程度)に亘ってPC中空杭2の挿入溝4を掘削する。この掘削はケリー掘削機20等を用いて行い、グラブ22を押さえつけながら土に食い込むように作動させて掘削し、掘削中は溝内に自硬性安定液24を常に充填させ掘削溝壁面の崩壊を防止する。この自硬性安定液24はセメント、ベントナイト、水、適量の遅延材、分散材等が混合されて作製されるもので、時間の経過とともに固化して所定の強度と止水性を発現する固化材(自硬性安定液硬化体)となる。
【0019】
ここで、当該図2は固定工程が終了した既構築の壁体6の終端部に連続させて当該壁体6を延設構築していく場合を示しているが、この既構築の壁体6にはその終端のPC中空杭2の連設面2aを覆って保護部材26が設けられている。即ち、この保護部材26は上記連設面2aに固化材(自硬性安定液硬化体)が付着するのを防止するとともに、ケリー掘削機20による削溝時にグラブ22でPC中空杭2の連設面2aに損傷を与えてしまうのを防止するためのものである。また、グラブ22にはスクレーパ28が取り付けられていて、このスクレーパ28で保護部材26の外表面に付着固化している固化材を削ぎ落とすようになっている。
【0020】
《保護部材引き抜き工程》
掘削工程が終了して挿入溝4が形成されると、図3に示すように、既構築の壁体6終端のPC中空杭2の上端部に設けたジャッキ31で、保護部材26を掘削した挿入溝4側へ押し倒して当該保護部材26と既構築の壁体6の固化材(自硬性安定液硬化体)24aとの付着を切る。次に、押し上げジャッキで保護部材26を押し上げて、保護部材26と固化材24aとの付着を完全に切った後、最後にクレーンで保護部材26を上方に引き抜く。
【0021】
《PC中空杭立て込み工程(1)(仮受け工程)》
保護部材26の引き抜きが終了したならば、図4に示すように、クレーンで立て起こしたPC中空杭2を掘削した挿入溝4内に挿入して立て込む。このとき、PC中空杭2の底部には、事前に係合手段10のフック10aと係合ロッド10bとを壁面形成側の両面2bに一体的に取り付けておく。この取付はPC中空杭2の作成時に予め下端部に埋め込まれて一体的に設けられている金具部に溶接等により行う。さらに、PC中空杭2の底部には、立て込み精度の測定用に供する測定糸の一端を固定係止するための係止ロッド12を取り付けておくとともに、当該係止ロッド12に絶体位置確認用の測定糸として釣糸30を、その一端を結束係止させて事前に設けておく。ここで、当該釣糸30の一端は係止ロッド12の中央のPC中空杭2の軸芯位置に結束しておき、その他端は貫通孔8の上端部から外部に導いておく。
【0022】
PC中空杭2の立て込みの際には、上記両面のフック10aを先行配置されているPC中空杭2の壁面形成側面2bに摺接させつつ、その両面を挟み込むように係合させて、その先行配置されているPC中空杭2をガイドにしながら吊り降ろしていく。そして、PC中空杭2の上部に挿入溝4の横断方向に延びる仮受け金物32をボルトで取付け、この仮受け金物32を挿入溝4の両側に設けられているガイドウォールを支持手段にしてその上に係止させて地表からPC中空杭2を仮受けする。
【0023】
《PC中空杭立て込み工程(2)(本受け工程)》
PC中空杭2を仮受けさせたならば、次に図5に示すように、クレーンでPC中空杭吊金具14を吊上げ、その仮受けしてあるPC中空杭2の上部に重ね合わせて、長ボルトでPC中空杭吊金具14とPC中空杭2とを結合する。このPC中空杭吊金具14は横断面形状がPC中空杭2と同形状に形成されており、PC中空杭2の貫通孔8の上端部から外部に導いておいた絶体位置確認用の釣糸30は、上記結合に先立って、さらにPC中空杭吊金具14の貫通孔16を挿通させてその上端部から外部に導き出しておく。
【0024】
次に、仮受け金具32のボルトを外して、この仮受け金具32を撤去する。その後、この一体となったPC中空杭2とPC中空杭吊金具14とをクレーンで徐々に吊り降ろして、既設の壁体6終端に先行設置されているPC中空杭2の係合ロッド10bに、後行設置するPC中空杭2のフック10aを噛み合わせて係合させる。そして、PC中空杭吊金具14の上部に設けられている本受け金物18を挿入溝4の両側に設けられているガイドウォール上に係止させて固定し、地表からPC中空杭2を挿入溝4内に吊下状態にして本受けする。
【0025】
《PC中空杭の立て込み工程(3)(精度管理工程)》
立て込んだPC中空杭吊金具14の上方に、櫓状の測定台34を設置し、貫通孔16の上端部から外部に導かれている絶体位置確認用の釣糸30を当該測定台34に固定して張力を加える。なお、本受け金物18にも釣糸30の挿通孔18aが形成されている。そして、この釣糸30に張力を加えて張設した状態で、2方向からトランシット36で当該釣糸30を視準しながら、当該釣糸30が鉛直になるようにその測定台34側の端部の止着位置を調整する。この位置調整の完了後、PC中空杭吊金具14上部の変位測定箇所で当該PC中空杭吊金具14の軸芯が、貫通孔内を鉛直に挿通されている釣糸30に一致しているか否かを2方向から測定してその絶体位置を確認する。ここで、当該軸芯と釣糸30とのズレが許容範囲内になければ、PC中空杭吊金具14をガイドウォール上に支持している本受け金物18の固定位置を修正して、PC中空杭2の軸芯と測定糸の釣糸30とのズレが規定値内に収まるようにする。また、そのズレが大きい場合には、先行設置されていたPC中空杭2の係合ロッド10bに後行設置したPC中空杭2のフック10aが正しく噛み合っていないことがあるので、再度クレーンでPC中空杭2とPC中空杭吊金具14とを吊り上げて、本受け工程をやり直して上記係合ロッド10bにフック10aを正しく係合させてから、再び鉛直度の調整を行う。そして、上記軸芯と釣糸30とのズレが許容範囲内にあることを確認できたならば、同様にして次々にPC中空杭2の立て込みと鉛直度管理とを行い、所定本数のPC中空杭2を順次設置していく。
【0026】
《保護部材立て込み工程》
所定本数のPC中空杭2の立て込みが完了したならば、次に、その終端に設置したPC中空杭2の一方の未連設の連設側面2aに、これに密着してその全長を覆う保護部材26を設ける。
【0027】
この保護部材26は鋼製でなり、強度保持用の補剛板26aとこの補剛板26aに取り付けられて上記未連設の連設側面に密着するカバー部材26b、及び補剛板26aの下部に取り付けられてPC中空杭2の係合ロッド10bに噛み合うフック26cとを有している。補剛板26aの長さは挿入溝4の深さ以上あり、フック26cがPC中空杭2の係合ロッド10bに係合した状態で、当該補剛板26aの先端部が挿入溝4の溝底部に圧接するようになっている。また、補剛板26aの幅は挿入溝4の溝幅にほぼ一致されていて、保護部材26を終端のPC中空杭2に沿わせて挿入溝4内に立て込むと、補剛板26aは挿入溝4をPC中空杭設置側と溝余剰部分とに分離して、当該溝余剰部分側内に充填されている自硬性安定液24をPC中空杭設置側から縁切りするようになっている。カバー部材26bは両側部が起立した横断面コ字状をなして、フック26cの直上部からほぼ上端部にかけて設けられており、両側部の起立片26dの間隔はPC中空杭2の厚みに一致されていて壁面形成側面2bに摺動自在に嵌合するようになっている。また起立片26dの突出長さはフック26cの突出量に一致されている。
【0028】
そして、この保護部材26はクレーンで吊り下げられて挿入溝4内に立て込まれる。即ち、PC中空杭2にカバー部材26b両側の起立片26dを嵌合させた状態で当該PC中空杭2に沿わせ下降させていくことで下部のフック26cをPC中空杭2の係合ロッド10bに係止させるとともに、上端側を仮固定することで、カバー部材26bをPC中空杭2の、未連設側の連設面2aに密着させて、当該連設面2aに自硬性安定液24が付着固化してしまうことを未然に防止するようにしている。
【0029】
《固定工程》
保護部材26の立て込みが終了したならば、自硬性安定液24が固化するまでの所定時間が経過するまで、そのままの状態に放置して待機する。そして、所定時間経過後に自硬性安定液24が固化すれば、連設した所定数のPC中空杭2は周囲を固化材(自硬性安定液固化体)24aで囲繞されて地中に固定され所定長の壁体6が新たに延長形成されることになる。また、当該固化材24aは連設されたPC中空杭2の内外側において止水層を形成することになる。さらに、各PC中空杭2間の隙間や止水材充填用の溝部2c内にも自硬性安定液24が回り込んでいるので、極めて良好な止水性を有した壁体6が延長形成されることになる。
【0030】
そして、当該固定工程が終了して、所定長の壁体6の延設が完了したならば逐次、上述の掘削工程〜固定工程を繰り返し行って、壁体6を順次延設していくことで所望長の壁体6を構築していくことになる。
【0031】
従って、以上のようにしてなる壁体構築用のPC中空杭2、及びこのPC中空杭2を用いた壁体の構築方法にあっては、壁体構築ラインに沿って掘削した挿入溝4内に、PC中空杭2を隣接させて順次列状に連設配置して壁体6を構築するにあたって、当該隣接するPC中空杭2,2同士を下部に設けてある係合手段10のフック10aと係合ロッド10bとによって相互に係合させて両PC中空杭2,2の離間寸法を規制するので、PC中空杭2,2間に生じる隙間の誤差を規定値内に保持して、その離間寸法精度を高く保って容易に立て込んでいくことができる。
【0032】
また、PC中空杭2の下部に軸芯を通る係止ロッドを設けて、予めその軸芯位置に測定糸の釣糸30の一端を止着するとともに、その釣糸30の他端を貫通孔8を通じて上端部から導き出しておき、立て込み後にその上方に測定台34を設けて、釣糸30の他端をその測定台34に鉛直に張設して止着し、当該釣糸30にPC中空杭2の軸芯が一致するようにその上端部側の支持固定位置を修正することで、当該PC中空2の鉛直度を管理するので、自硬性安定液24が固化しないうちに各PC中空杭2の鉛直度を高精度に管理しながら立て込むことができる。
【0033】
このため、各PC中空杭2,2を計画した所望の位置に正確に立て込むことができ、所定数のPC中空杭2を連設して構築していく壁体6の長さが所望寸法よりも長大化してしまうことを防止できる。これ故、矩形の貯水槽を構築する場合にも、横壁部6Aと縦壁部6Bとの両壁体6の連結部に正確にPC中空杭2を立て込んで、両壁体部6A,6Bの結合を容易にしかも簡易に行うことができるようになる。
【0034】
また、上記係合手段10をPC中空杭2の壁面形成側面2bに外方に突出して設けた係合ロッド10bと、先行配置されているPC中空杭2の係合ロッド10bに上方から係合可能に壁面形成側面2bに沿って設けられて連接側面2aよりも外方に突出している鉤状のフック10aとで構成することによって、先行配置されているPC中空杭2をガイドにしてこれに沿わせて後行配置するPC中空杭2を吊り下ろしながら容易に係合手段10を係合させて順次に各PC中空杭2を立て込んでいくことができ、PC中空杭2の立て込み作業の簡易化を図ることができる。
【0035】
また、所定長さに掘削した挿入溝4内に所定数のPC中空杭2を立て込んで固化材24で固定した後に、再度掘削工程から固化工程を逐次繰り返していくことによって、長大な壁体6も段階的に容易に延設構築していくことができる。
【0036】
また、固化工程が完了して所定長の壁体6を構築した後に、さらに新たな壁体を延設していくに際しては、構築済みの壁体6の終端に設置したPC中空杭2の未連設の連設側面2aを覆ってに密着させて設けておいた保護部材26を、掘削工程の終了後にその掘削した挿入溝4側に押し倒しながら引き剥がして撤去するので、当該掘削時に壁体6の終端に設置されているPC中空杭2の未連設の連設側面2aに傷を付けてしまうことを防止できるばかりか、当該連設側面2aに固化材24a付着してしまうことを防止して、美麗な連設側面2aを容易に露出させることができる。
【0037】
また、カバー部材26aが断面コ字状をなしていて、その両側の起立片26dが先行設置されたPC中空杭2の壁面形成側面2bに接しているので、保護部材26を引き剥がした時には、当該起立片26dによって後行設置するPC中空杭2の係合手段10のフック10aを挿通させる挿通溝部が形成されるので、その連設側面2aが露出した壁体終端のPC中空杭2に連設させて、固化材24aを剥離撤去するという無駄な作業を行うことなく新たなPC中空杭の立て込み工程を容易に継続していくことができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0038】
また、固化材24aに自硬性安定液24を用いることで、掘削工程終了後におけるPC中空杭の立て込みに先だって、当該自硬性安定液24を予め挿入溝4内に充填しておくことができ、この自硬性安定液24が充填された挿入溝4内に順次PC中空杭を立て込んでいくことで、各PC中空杭間の隙間やその周囲に容易に自硬性安定液24を回り込ませて固化させることができ、もって止水工に関わる労力の低減化を図りつつ良好な止水性を確保することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るPC中空杭を用いた壁体構造物としての貯水槽を示す平面図である。
【図2】掘削工程を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図3】保護部材撤去工程を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。である。
【図4】PC中空杭の立て込み時前半の仮受け工程を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図5】PC中空杭の立て込み時中半の本受け工程を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図6】PC中空杭の立て込み時後半の精度管理工程を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図7】保護部材立て込み工程を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【符号の説明】
【0040】
2 PC中空杭 4 挿入溝
6 壁体 8 貫通孔
10 係合手段 10a フック
10b 係合ロッド 12 係止ロッド
14 PC中空杭吊金具 16 貫通孔
18 本受け金物 20 ケリー掘削機
22 グラブ 24 自硬性安定液
24a 固化材(自硬性安定液固化体) 26 保護部材
26a 補剛板 26b カバー部材
26c フック 26d 起立片
28 スクレーパ 30 釣糸(測定糸)
32 仮受け金具 34 測定台
36 トランシット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC中空杭の上端を地表に設けた支持手段で固定して、掘削した溝内に吊下状態で立て込む際に、該PC中空杭の鉛直度を管理する方法であって、
該PC中空杭の下部に軸芯部を通って設けてある係止ロッドに、予めその軸芯部に位置させて測定糸の一端を止着してその他端を上端部から上方に導き出しておき、
該PC中空杭の立て込み後に、該PC中空杭の上方に櫓状の測定台を設置して、該測定糸の他端を該測定台に止着して張設し、
該測定糸を2方向からトランシットで視準しながら該測定糸が鉛直になるように該測定台側の端部の止着位置を調整し、
該位置調整の完了後、該PC中空杭の上端部の軸芯位置と該測定糸とのズレを測定して、該位置ズレが規定値内に収まるように該PC中空杭上端部の固定位置を修正して鉛直度を管理することを特徴とするPC中空杭の鉛直度管理方法。
【請求項2】
前記PC中空杭が、所定長さに亘って掘削された溝内に隣接されて列状に連設配置されて壁体を構築する横断面角形をなす壁体構築用のPC中空杭であることを特徴とする請求項1に記載のPC中空杭の鉛直度管理方法。
【請求項3】
前記PC中空杭が、隣接配置される該PC中空杭同士を係合させて相互の離間寸法を規制するための係合手段を下部に備えていることを特徴とする請求項2に記載のPC中空杭の鉛直度管理方法。
【請求項4】
前記係合手段の一方が、前記PC中空杭の壁面形成側の面に外方に突出して設けられているロッドでなり、前記係合手段の他方が、隣接して先行配置されているPC中空杭の該ロッドに上方から係合可能に、連設側面より外方に突出して該壁面形成側面に沿って設けられている鉤状のフックでなることを特徴とする請求項3に記載のPC中空杭の鉛直度管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−336239(P2006−336239A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159867(P2005−159867)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】