説明

PC部材の接続方法、鉄筋コンクリート造建物

【課題】グラウトを充填することなく、PC部材を接続して柱を構築する方法を提供する。
【解決手段】上下方向に延びるように柱主筋21、31が埋設された上方及び下方のPC柱部材20、30を部材間にコンクリートが打設できるように間隔を空けて建て込み、上方及び下方のPC柱部材20、30の柱主筋21、31をねじ式継手32により継手し、部材間の空間5にコンクリート40を打設する。空間5にコンクリート40を打設する際には、空間5内の少なくとも上部を構成するコンクリート50に圧力が加わるように打設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下方向にPC部材を接続する方法及びこの方法によりPC部材を接続して柱を構築した鉄筋コンクリート造建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、施工期間短縮のため、PC部材を用いて鉄筋コンクリート造構造物を構築することが行われている。このようなPC部材を用いて仕口部を構築する方法として、図22に示すように、仕口部638及び梁部639を一体成形し、柱主筋を貫通させるための鉄筋貫通孔631が設けられたPC梁・仕口部材630を、頭部に機械式継手642が設けられたPC柱部材640の上部に建込み、さらに、下面に柱主筋621が突出したPC柱部材620を、その柱主筋621がPC梁・仕口部材630の貫通孔631を貫通し、PC柱部材640の機械式継手642内に挿入されるように建込み、貫通孔631及び機械式継手642内にグラウトを充填することにより、柱梁架構を構築する工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようにPC部材を用いて柱梁架構を構築する場合には、PC柱部材620、640とPC梁・仕口部材630との間の目地650、660の処理を行う必要がある。通常、このような目地650、660の処理は、目地650、660内にグラウトを充填することにより行っていた。
【特許文献1】特許3837390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、建築物の超高層化にともない、柱に非常に高い圧縮強度を有する超高強度コンクリートを用いた建築物が構築されている。ここで、このような建築物の構築に上記の特許文献1記載の方法を適用しようとすると、柱を構成するフルPC柱部材間の目地に充填するグラウトにも同程度の圧縮強度が必要となる。しかしながら、超高強度コンクリートと同等な非常に高い圧縮強度を有するグラウトは存在せず、このような建物の柱梁架構をPC部材を用いて構築することはできなかった。
【0004】
また、柱を構成するPC柱部材の間にコンクリートを打設することにより、これらPC柱部材を接合する方法も考えられるが、この方法では、打設したコンクリートが収縮し、コンクリートの表面の高さが低下してしまうため、上方のPC柱部材と打設したコンクリートとの間に目地ができてしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、グラウトを充填することなく、PC部材を接続して柱を構築する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のPC部材の接続方法は、上下方向に延びるように鉄筋が埋設された複数のPC部材を、各部材間にコンクリートが打設できるように上下方向に間隔を空けて建て込むPC部材建て込みステップと、前記複数のPC部材の鉄筋を接続する鉄筋接続ステップと、前記PC部材間の空間にコンクリートを打設するコンクリート打設ステップと、を備え、前記コンクリート打設ステップでは、前記空間内の少なくとも上部を構成するコンクリートに圧力が加わるように打設することを特徴とする。
【0007】
上記の方法において、前記複数のPC部材には、部材上面から下面まで貫通する貫通孔が形成されており、前記コンクリート打設ステップでは、前記空間内の少なくとも上部を構成するコンクリートに連続して、前記貫通孔内にコンクリートを打設することにより、前記空間内の少なくとも上部を構成するコンクリートに圧力を加えてもよい。
【0008】
また、前記コンクリート打設ステップでは、前記空間内の少なくとも上部を構成するコンクリートを圧入することにより、前記コンクリートに圧力を加えてもよい。
【0009】
また、前記コンクリート打設ステップでは、前記貫通孔内のコンクリートに連続して、前記空間の上方に位置するPC部材の上部にもコンクリートを打設してもよい。
【0010】
また、前記空間は前記柱の各階の中間部にあたる位置に設けられていてもよく、柱梁仕口部にあたる位置に設けられていてもよい。
【0011】
また、上記のPC部材の接続方法において、前記PC部材は、上階の柱の少なくとも柱脚から中間までを構成する上方のプレキャストコンクリートと、下階の柱の中間から柱頭までを構成し、部材上面から下面に到達するような貫通孔が形成された下方のプレキャストコンクリートとからなり、前記鉄筋は前記上方及び下方のプレキャストコンクリートを通るように設けられており、前記上方及び下方のプレキャストコンクリートの間の柱梁仕口部を構成するコンクリートは打設されておらず、前記柱梁仕口部にあたる部分において前記鉄筋が露出しており、前記PC部材建て込みステップでは、前記PC部材を前記上方のプレキャストコンクリートの下面が前記柱梁仕口部に接続される梁の上面にあたる高さよりも低くなるように建て込み、前記コンクリート打設ステップでは、前記空間内の少なくとも上部を構成するコンクリートに連続して、前記貫通孔内にコンクリートを打設することにより、前記空間内の少なくとも上部を構成するコンクリートに圧力を加えてもよい。
【0012】
また、前記コンクリート打設ステップでは、前記貫通孔に連続して、前記柱梁仕口部及び前記梁の少なくとも前記柱梁仕口部に接続される端部における上部領域を構成するコンクリートを、その上面が前記柱梁仕口部に接続される梁の上面の高さに到達するまで打設してもよい。
【0013】
また、前記鉄筋の上端は前記PC部材の上面より突出しており、また、下端には前記PC部材の下面に鉄筋挿入口が開口するように設けられたスリーブ式継手が接続されており、前記鉄筋接続ステップでは、前記空間の上下に位置する前記PC部材の鉄筋を前記スリーブ式継手により継手してもよい。
【0014】
また、前記鉄筋の下端は前記PC部材の下面より突出しており、また、上端には前記PC部材の上面に鉄筋挿入口が開口するように設けられたスリーブ式継手が接続されており、前記鉄筋接続ステップでは、前記空間の上下に位置する前記PC部材の鉄筋を前記スリーブ式継手により継手してもよい。
【0015】
また、前記鉄筋の両端は前記PC部材の上面及び下面から夫々突出しており、前記鉄筋の上端又は下端にはねじ式継手又はスリーブ式継手が取り付けられており、前記鉄筋接続ステップでは、前記コンクリート打設空間の上下に位置する前記PC部材の鉄筋を前記ねじ式継手又はスリーブ式継手により継手してもよい。
【0016】
また、前記PC部材を構成するコンクリート及び前記打設されるコンクリートには、圧縮強度が120N/mmを超える高強度コンクリートが用いられていてもよい。
【0017】
また、本発明の鉄筋コンクリート造建物は、上記の方法によりPC部材の接続方法によりPC柱部材が接続されて柱が構築されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コンクリート打設空間内の少なくとも上部を構成するコンクリートを打設する際に、コンクリートに圧力を加えることにより、コンクリート打設空間内のコンクリートの上面がその上方に建て込まれたPC部材の下面に接触した状態が保たれ、目地が発生しないため、グラウトの充填を行うことなく、PC部材を接続して柱を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の柱の構築方法の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1〜図3は、本実施形態の柱の構築方法を説明するための図である。
本実施形態の柱の構築方法は、図1に示すような、下階の柱の中間部から柱頭部までの柱上部4、柱梁仕口部2、上階の柱の柱脚部までの柱下部3、及び柱梁仕口部2に接合される梁1の一部が一体に構築されたPC部材20、30を用い、上方のPC部材20を下方のPC部材30に接続することにより柱を構築する。なお、柱を構成するPC部材20、30は圧縮強度が120N/mmを超える高強度コンクリートを用いて構築されており、また、現場において打設される柱を構成するコンクリートにも圧縮強度が120N/mmを超える高強度コンクリートが用いられている。
【0020】
図1は、PC部材20、30を接合する前の状態を示す。上方及び下方のPC部材20、30は、夫々部材内部に上下方向に延び、部材の上下面より突出するように埋設された複数の柱主筋21、31と、柱主筋21、31の上端に接続されたねじ式継手22、32と、を備える。また、上方及び下方のPC部材20、30には、部材の上面から下面まで貫通するような貫通孔23、33が設けられており、後述するように、上方及び下方部材20、30間の空間にコンクリートを打設する際に、この貫通孔23、33を通してコンクリートの打設を行う。なお、下方のPC部材30は、既に建て込みが完了しており、下方のPC部材30の貫通孔33内にはコンクリート50が打設されている。
【0021】
柱梁架構を構築するには、まず、図2に示すように、上方のPC部材20を、上方及び下方のPC部材20、30の間にコンクリートを打設することが可能な空間5が形成されるように、下方のPC部材30の上方に間隔を空けて建て込む。そして、上方及び下方のPC部材20、30の柱主筋21、31をねじ式継手32により継手する。
【0022】
次に、上方及び下方のPC部材20、30の間の空間5の周囲に型枠を設置する。そして、図3に示すように、上方のPC部材20の貫通孔23を通して、上方及び下方のPC部材20、30の間の空間5にコンクリート50を打設する。さらに、この空間5に連続して、打設したコンクリート50の上面が上方のPC部材30の上面に到達するまで貫通孔23内にもコンクリートを打設する。これにより、打設したコンクリート50の上面が上方のPC部材20の下面より高くなり、上方及び下方のPC部材20、30の間の空間5内に打設されたコンクリート50には、圧力が加わることになる。このように圧力が加わることにより、コンクリートが上方のPC部材20の下面に接した状態が保たれ、上方のPC部材20の下面と空間5内に打設したコンクリート50の間に隙間が生じず、上方及び下方のPC部材20、30を接続することができる。
なお、隣接するPC部材20の梁1には高い強度が求められないため、梁1の接続は従来のようにグラウトを用いた方法などにより行えばよい。
以上の工程を繰り返すことにより柱梁架構を構築することができる。
【0023】
本実施形態の柱の構築方法によれば、上方のPC部材20に設けられた貫通孔23を通じて、上方及び下方のPC部材20、30の間の空間5内にコンクリート50を打設し、さらに、空間5に連続して上方のPC部材20の上面に到達するまで貫通孔23内にもコンクリート50を打設することにより、この空間5内のコンクリート50に圧力を加えることができる。これにより、上方のPC部材20の下面と空間5内に打設したコンクリート50の間に隙間が生じず、グラウトを用いることなく、上方及び下方のPC部材20、30を接続することができる。このため、120N/mmを超える圧縮強度を有する高強度コンクリートを用いた建築物であっても、PC部材を用いて構築することが可能となる。
【0024】
なお、本実施形態では、柱主筋21、31をねじ式継手32により継手するものとしたが、これに限らず、スリーブ式継手により継手してもよい。さらに、スリーブ式継手を用いる場合には、スリーブ式継手をPC部材20、30内に埋設する構成とすることもできる。このような場合、例えば、図4に示すように、PC部材20、30の上面に鉄筋挿入口が開口するようにスリーブ式継手42、52を埋設するとともに、柱主筋21、31の下端を部材下面より突出させておく。そして、上方のPC部材20の柱主筋21が下方のPC部材のスリーブ式継手52内に挿入されるように、上方のPC部材20を建て込み、スリーブ式継手52内にグラウトを充填すればよい。これにより、柱主筋21、31を継手することができる。なお、スリーブ式継手42、52内にグラウトが充填されることになるが、このグラウトは鉄筋の引張応力に寄与するものの、コンクリートの圧縮応力には寄与しないため、柱の圧縮強度が低下することはない。
【0025】
また、これと同様に、図5に示すように、PC部材20、30の下面に鉄筋挿入口が開口するようにスリーブ式継手62、72を埋設しておき、柱主筋21、31の上端を部材上面より突出させてもよい。
【0026】
なお、以下に説明する各実施形態においても、本実施形態と同様に、柱主筋は上方又は下方のPC部材にスリーブ式継手を埋設しておき、このスリーブ式継手により継手してもよいし、上方又は下方何れかのPC部材の柱主筋にねじ式継手を取り付けておき、このねじ式継手により継手してもよい。
【0027】
<第2実施形態>
第1実施形態では、柱の中間部においてPC部材を接続することにより柱梁架構を構築する場合について説明したが、これに限らず、仕口部においてPC柱部材を接続することにより柱梁架構を構築することも可能である。
【0028】
図6は、仕口部2においてPC柱部材120、130を接続して、柱を構築する場合を説明するための図である。同図に示すように、本実施形態では、柱の柱脚部から柱頭部までの部分6を構成し、上面と下面との間を結ぶように貫通孔123、133が設けられたPC柱部材120、130を用いて柱梁架構を構築する。かかる場合には、まず、下方のPC柱部材130の上部の仕口部2にあたる位置に両側よりフルPC梁部材140を建て込む。そして、フルPC梁部材140の端部より突出する梁主筋141をねじ式継手142により継手する。
【0029】
次に、上方のPC柱部材120の貫通孔123より仕口部2にあたる部分にコンクリート50を打設する。そして、仕口部2に連続して貫通孔123内にもコンクリート50の上面が上方のPC柱部材120の上面に到達するまでコンクリート150を打設する。これにより第1実施形態と同様に、仕口部2内のコンクリート50に圧力が加わることとなり、仕口部2内に打設したコンクリート50と上方のPC柱部材120の下面の間に隙間が生じず、上方及び下方のPC柱部材120、130を、グラウトを用いることなく一体に接続し、柱梁架構を構築することができる。
【0030】
<第3実施形態>
以下、本発明の柱の構築方法の第3実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図7〜図9は本実施形態の柱の構築方法を説明するための図である。
本実施形態では、図7に示すように、柱の柱脚部の上方から柱中間部までの部分7を構成するPC柱部材320、330を用いて柱梁架構を構築する。同図に示すように、PC柱部材320、330、は、上下方向に延びるように部材内に埋設され、上下端部が部材の上下面より突出する複数の柱主筋321、331と、柱主筋321、331の上部に取り付けられたねじ式継手322、332を備える。なお、図7に示すように、下方のPC柱部材330は建て込みが完了しており、下方のPC部材330の下方の仕口部2には梁1上面と同じ高さまでコンクリート50が打設されている。また、この階の柱脚部から下方のPC部材330の下面の高さまでの空間(以下、下方の空間という)8にはコンクリートが打設されておらず、柱主筋331が露出している。
【0031】
まず、図8に示すように、下方のPC柱部材330の上階の梁1を構成するPC梁部材140を建て込み、梁主筋141をねじ式継手142により継手する。次に、上方のPC柱部材320を建て込み、上方及び下方のPC柱部材320、330の柱主筋321、331をねじ式継手332により継手する。
【0032】
次に、下方のPC部材330の下方に位置する下方の空間8の周囲に型枠(不図示)を設置する。なお、この型枠設置作業は、上方のPC部材320及びPC梁部材140を建て込む作業の前に行ってもよい。
【0033】
次に、図9に示すように、下方のPC柱部材330の貫通孔333を通して、下方の空間8にコンクリート50を打設する。そして、下方の空間8に連続して、下方のPC柱部材330の貫通孔333にコンクリートを打設し、さらに、下方のPC柱部材330の上方の仕口部2に梁上面高さ付近までコンクリートを打設する。なお、コンクリート50の打設は、上方のPC柱部材320の下方の空間8の側方から行えばよい。
【0034】
このように、梁1の上面高さまで、コンクリート50を打設することにより、下方の空間8内のコンクリートには圧力が作用し、上記の実施形態と同様に、下方のPC柱部材330の下面と、下方の空間8内に打設したコンクリート50の間に隙間が生じず、確実に下方のPC柱材330を、その下方の仕口部2に打設されたコンクリートに接続することができる。
以上の工程を繰り返すことにより、柱梁架構を構築することができる。
【0035】
本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、上記の第1、第2実施形態及び後述する第4実施形態においても、上方及び下方のPC部材の間の空間内のコンクリートは必ずしも一度に打設する必要はなく、少なくとも、上方及び下方のPC部材の間の空間内の上部の(すなわち、上方のPC部材の下面に打ち継がれる)コンクリートを打設する際に、このコンクリートの圧力が加わるようにすればよい。
【0036】
また、上記の実施形態において、梁1に支持されるスラブが、その下面が梁の下面と同一高さである逆スラブである場合には、このように下方のPC柱部材330の下方の仕口部2の上部領域、貫通孔333、下方のPC柱部材330の上方の仕口部2の下部領域、に連続して、この仕口部2に接続される梁1に支持される逆スラブ9を構成するコンクリートも連続して打設することができる。すなわち、図10に太線で囲んだ領域を構成するコンクリートを打設してもよい。
【0037】
<第4実施形態>
また、本願発明人らは、以下に示すようなPC部材を用いた柱梁仕口部の構築方法を提案している。すなわち、図11に示すように、例えば、梁1及び仕口部2を構成するコンクリート50を現場において打設する場合に、仕口部2及び梁1に当たる位置に梁主筋932及びせん断補強筋934を配筋し、上方のPC柱部材920を、その下面が梁の上面高さよりも低くなるように、下方のPC柱部材940の上方に建て込み、柱主筋921、941をスリーブ式継手942により継手し、仕口部2及び梁1の少なくとも仕口部2近傍の上部のコンクリートを梁1の上面高さまで一度に打設する。かかる方法によれば、打設したコンクリート50と、上方のPC柱部材920の下面の間に隙間が生じるのを防止し、グラウトを充填することなく、PC柱部材920、940を接合し、柱梁架構を構築することができる。なお、柱に梁が支持するスラブが接続される場合には、仕口部2の上部とスラブの仕口部近傍の上部を構成するコンクリートを一体に打設しても同様の効果が得られる。
【0038】
本発明の柱の構築方法は、上記の柱梁仕口部の構築方法と組み合わせることが可能である。以下、上記の方法と本発明を組み合わせた柱の構築方法を説明する。
図12〜図14は、本実施形態の柱の構築方法を説明するための図である。
同図に示すように、本実施形態では、下階の柱の中間から柱頭までの部分4を構成する下方のプレキャストコンクリート426、436と、上階の仕口部2の上部及び上階の柱の柱脚から中間までの部分3を構成する上方のプレキャストコンクリート425、435と、これらのプレキャストコンクリート425、426、435、436を貫通するように埋設されてこれらプレキャストコンクリート425、426、435、436を接続する柱主筋421、431と、を備えるPC柱部材420、430を用いて柱梁架構を構築する。
【0039】
柱主筋421、431の上端は上方のプレキャストコンクリート425、435の上面より突出しており、この突出した部分には、ねじ式継手422、432が取り付けられている。また、柱主筋421、431の下端は下方のプレキャストコンクリート426、436の下面より突出している。
【0040】
上方のPC柱部材を建て込むにあたり、図12に示すように、下階のPC柱部材の建て込みは完了しており、下階の梁及び仕口部を構成するコンクリートの打設が完了しているものとする。
【0041】
まず、図13に示すように、上方のPC柱部材430を、その上方のプレキャストコンクリート435の下面が梁1の上面にあたる高さよりも低くなるように下方のPC柱部材420の上方に建て込み、ねじ式継手422により柱主筋421、431を継手する。そして、上方のPC柱部材430の上方及び下方のプレキャストコンクリート435、436の間の仕口部2及びこの仕口部2の両側の梁1を構成する梁主筋441及びせん断補強筋442を配筋する。そして、梁1及び仕口部2の外周に当たる位置に型枠を設置する。
【0042】
次に、図14に示すように、貫通孔433を通して、上方及び下方のPC柱部材430、420の間の空間5にコンクリートを打設し、これに連続して、貫通孔433の内部にコンクリート50を打設する。さらに、貫通孔433に連続して、仕口部2及び梁1にあたる位置にコンクリート50を打設する。なお、コンクリート50の打設は、上方のPC柱部材430を構成する上方のプレキャストコンクリート435の側方から行えばよい。
以上の工程を繰り返すことにより柱梁架構を構築することができる。なお、コンクリート50の打設は必ずしも連続して行う必要はなく、下方の空間8の上部領域と貫通孔333内とを構成するコンクリートを一体に打設し、かつ、仕口部2の上部領域及び梁1の仕口部2側の端部の上部領域を構成するコンクリートを一体に打設すれば、複数回にわけて打設することも可能である。
【0043】
本実施形態によれば、梁1の上面高さまでコンクリート50を打設することにより、上方及び下方のPC柱部材430、420の間の空間5内のコンクリート50に圧力が加わることにより、打設したコンクリート50と上方のPC柱部材430の下面との間に隙間が生じることを防止できる。
【0044】
さらに、上方のPC柱部材430の上方のプレキャストコンクリート435が、その下面が梁1の上面よりも低くなるように建て込まれているため、仕口部2に打設したコンクリート50と上方のプレキャストコンクリート435の間に隙間が生じることを防止できる。このため、グラウトを充填することなく、PC柱部材420、430を用いて柱梁架構を構築することができる。
【0045】
また、第4実施形態では、梁は現場においてコンクリートを打設して構築する場合について説明したが、これに限らず、例えば、図15に示すように、フルPC梁部材を用いて構築することも可能である。
【0046】
このような場合には、仕口部2の近傍までプレキャストコンクリートにより構築されているフルPC梁部材を建て込んでしまうと、仕口部2における配筋作業を行うことができないため、柱梁仕口部近傍はコンクリートが打設されておらず、梁主筋が露出しているPC梁部材440を用いる。そして、予め、仕口部2内に雇い筋を配置しておき、仕口部2の両側にフルPC梁部材440を建て込み、仕口部近傍において対向する梁主筋441を、雇い筋444を介して、接続する。そして、上記の第4実施形態と同様にコンクリート50の打設を行うことにより、梁を接続することができる。
【0047】
また、上記の実施形態において、梁に支持されるスラブ10が柱に接続される場合には、上方及び下方のPC柱部材430、420の間の空間5、貫通孔433、仕口部2に連続してスラブ10にコンクリートを打設することとしてもよい。なお、このような場合には、図16に示すように、仕口部2側の端面が柱の外周面と一致するようなPC梁部材440を用いることができる。
【0048】
まず、上記の実施形態と同様に、上方のPC柱部材430を、その上方のプレキャストコンクリート435の下面がスラブ10の上面にあたる高さよりも低くなるように下方のPC柱部材420の上方に建て込み、ねじ式継手422により柱主筋421、431を継手する。
【0049】
次に、PC梁部材440を仕口部2の側部に対向するように建て込み、対向するPC梁部材の梁筋を継手する。
次に、図17に示すように、上方及び下方のPC柱部材430、420の間の空間5、貫通孔433、仕口部2に連続してスラブ10にコンクリートを打設する。
【0050】
かかる場合であっても、上方のPC柱部材430の上方のプレキャストコンクリート435が、その下面がスラブ10の上面よりも低くなるように建て込まれているため、仕口部2に打設したコンクリート50と上方のプレキャストコンクリート435の間に隙間が生じることを防止できる。
【0051】
また、本実施形態では、コンクリート50の打設を上方のPC柱部材430を構成する上方のプレキャストコンクリート435の側方から行うものとしたが、これに限らず、図18に示すように、上方のPC柱部材430を構成する上方のプレキャストコンクリート435に上面から下面まで貫通するような貫通孔434を設けておき、この貫通孔434を通して、仕口部2にコンクリート50を打設してもよい。また、このような場合にはコンクリート50を上方のプレキャストコンクリート435の上面に到達するまで打設することにより、仕口部2内に打設したコンクリート50に圧力が加わるため、上方のプレキャストコンクリート435の下面が梁1の上面より低くなるようにしなくてもよく、すなわち、上方のプレキャストコンクリート435の下面が梁1の上面と同じ高さになるようにしてもよい。
【0052】
また、第1実施形態では、コンクリート50を上方のPC部材20に設けられた貫通孔23を通して打設し、コンクリート50の表面が貫通孔23の上面の高さに到達するまで打設するものとしたが、これに限らず、図19に示すように、上方及び下方のPC部材20、30の間の空間よりコンクリート50を圧入し、その上面が上方のPC部材20の上面高さまで到達するまでコンクリート50を打設するものとしてもよい。このような方法によっても、上方及び下方のPC部材20、30の間の空間5内に打設したコンクリート50に圧力が作用することとなり、コンクリートの収縮を防止し、上方のPC部材20の下面と空間5内に打設したコンクリート50の間に隙間が生じることを防止できる。これにより、グラウトを用いることなく、上方及び下方のPC部材20、30を接続することができる。
【0053】
また、これと同様に、図20に示すように、第3実施形態の柱の構築方法では、下方のPC柱部材の下部のコンクリートの打設されていない空間8の側方よりコンクリートを、その上面が下方のPC柱部材330の上方の仕口部2の上面高さに到達するまで圧入することとしてもよい。
【0054】
また、図17に示す実施形態においても、これと同様に、図21に示すように、上方及び下方のPC部材430、420の間の空間5に、その上面が梁1の上面まで到達するまで、コンクリート50を圧入することとしてもよい。要するに、上方及び下方のPC部材の間の空間にコンクリートを打設して、これらのPC部材を接合する際に、この空間内に打設したコンクリートの圧力を加えられればよい。
また、上記の各実施形態では、PC部材を接続して、柱を構築する場合について説明したが、これに限らず、PC部材同士又は、PC部材と床を接続して壁を構築する場合にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1実施形態の柱の構築方法を説明するための図(その1)である。
【図2】第1実施形態の柱の構築方法を説明するための図(その2)である。
【図3】第1実施形態の柱の構築方法を説明するための図(その3)である。
【図4】柱主筋をPC部材の上部に埋設したスリーブ式継手により継手する方法を説明するための図である。
【図5】柱主筋をねじ式継手により継手する方法を説明するための図である。
【図6】第2実施形態の柱の構築方法を説明するための図である。
【図7】第3実施形態の柱の構築方法を説明するための図(その1)である。
【図8】第3実施形態の柱の構築方法を説明するための図(その2)である。
【図9】第3実施形態の柱の構築方法を説明するための図(その3)である。
【図10】仕口部の下部領域に連続して逆スラブを構成するコンクリートを打設する様子を示す図である。
【図11】発明者らが提案する柱梁仕口部の構築方法を説明するための図である。
【図12】第4実施形態の柱の構築方法を説明するための図(その1)である。
【図13】第4実施形態の柱の構築方法を説明するための図(その2)である。
【図14】第4実施形態の柱の構築方法を説明するための図(その3)である。
【図15】梁をフルPC梁部材を用いて構築する場合の第4実施形態の柱の構築方法を説明するための図である。
【図16】梁を仕口部側の端面が柱外周面に到達するようなフルPC梁部材を用いて構築する場合の第4実施形態の柱の構築方法を説明するための図(その1)である。
【図17】梁を仕口部側の端面が柱外周面に到達するようなフルPC梁部材を用いて構築する場合の第4実施形態の柱の構築方法を説明するための図(その2)である。
【図18】第4実施形態の柱の構築方法において、上方のプレキャストコンクリートに設けられた貫通孔を通してコンクリートの打設を行う方法を説明するための図である。
【図19】第1実施形態の柱の構築方法においてコンクリートを圧入する場合の方法を説明するための図である。
【図20】第3実施形態の柱の構築方法においてコンクリートを圧入する場合の方法を説明するための図である。
【図21】図17に示す柱の構築方法においてコンクリートを圧入する場合の方法を説明するための図である。
【図22】従来のPC部材を用いて柱梁仕口部を構築する方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0056】
1 梁
2 仕口部
3 柱下部
4 柱上部
5 空間
20、120、320 上方のPC柱部材
21、121、321 柱主筋
22、322 ねじ式継手
23、123、323 貫通孔
30、120、320 下方のPC柱部材
31、131、331 柱主筋
32、332 ねじ式継手
33、133、333 貫通孔
42、52、62、72 スリーブ式継手
50 コンクリート
122、132 機械式継手
140 フルPC梁部材
141 梁主筋
142 ねじ式継手
420、520 下方のPC部材
421、431、521、531 柱主筋
422、432、522、532 ねじ式継手
423、433、523、533 貫通孔
425、435 上方のプレキャストコンクリート
426、436 下方のプレキャストコンクリート
430 上方のPC部材
441 梁主筋
442 せん断補強筋
920 上方のPC部材
921 柱主筋
922 機械式継手
932 梁主筋
934 せん断補強筋
940 下方のPC部材
941 柱主筋
942 機械式継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びるように鉄筋が埋設された複数のPC部材を、各部材間にコンクリートが打設できるように上下方向に間隔を空けて建て込むPC部材建て込みステップと、
前記複数のPC部材の鉄筋を接続する鉄筋接続ステップと、
前記PC部材間の空間にコンクリートを打設するコンクリート打設ステップと、を備え、
前記コンクリート打設ステップでは、前記空間内の少なくとも上部を構成するコンクリートに圧力が加わるように打設することを特徴とするPC部材の接続方法。
【請求項2】
請求項1記載のPC部材の接続方法であって、
前記複数のPC部材には、部材上面から下面まで貫通する貫通孔が形成されており、
前記コンクリート打設ステップでは、前記空間内の少なくとも上部を構成するコンクリートに連続して、前記貫通孔内にコンクリートを打設することにより、前記空間内の少なくとも上部を構成するコンクリートに圧力を加えることを特徴とするPC部材の接続方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のPC部材の接続方法であって、
前記コンクリート打設ステップでは、前記空間内の少なくとも上部を構成するコンクリートを圧入することにより、前記コンクリートに圧力を加えることを特徴とするPC部材の接続方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載のPC部材の接続方法であって、
前記コンクリート打設ステップでは、前記貫通孔内のコンクリートに連続して、前記空間の上方に位置するPC部材の上部にもコンクリートを打設することを特徴とするPC部材の接続方法。
【請求項5】
請求項1から4何れかに記載のPC部材の接続方法であって、
前記空間は前記柱の各階の中間部にあたる位置に設けられていることを特徴とするPC部材の接続方法。
【請求項6】
請求項1から4何れかに記載のPC部材の接続方法であって、
前記空間は柱梁仕口部にあたる位置に設けられていることを特徴とするPC部材の接続方法。
【請求項7】
請求項1記載のPC部材の接続方法であって、
前記PC部材は、上階の柱の少なくとも柱脚から中間までを構成する上方のプレキャストコンクリートと、下階の柱の中間から柱頭までを構成し、部材上面から下面に到達するような貫通孔が形成された下方のプレキャストコンクリートとからなり、前記鉄筋は前記上方及び下方のプレキャストコンクリートを通るように設けられており、前記上方及び下方のプレキャストコンクリートの間の柱梁仕口部を構成するコンクリートは打設されておらず、前記柱梁仕口部にあたる部分において前記鉄筋が露出しており、
前記PC部材建て込みステップでは、前記PC部材を前記上方のプレキャストコンクリートの下面が前記柱梁仕口部に接続される梁の上面にあたる高さよりも低くなるように建て込み、
前記コンクリート打設ステップでは、前記空間内の少なくとも上部を構成するコンクリートに連続して、前記貫通孔内にコンクリートを打設することにより、前記空間内の少なくとも上部を構成するコンクリートに圧力を加えることを特徴とするPC部材の接続方法。
【請求項8】
請求項7記載の柱のPC部材の接続方法であって、
前記コンクリート打設ステップでは、前記貫通孔に連続して、前記柱梁仕口部及び前記梁の少なくとも前記柱梁仕口部に接続される端部における上部領域を構成するコンクリートを、その上面が前記柱梁仕口部に接続される梁の上面の高さに到達するまで打設することを特徴とするPC部材の接続方法。
【請求項9】
請求項1から8何れかに記載のPC部材の接続方法であって、
前記鉄筋の上端は前記PC部材の上面より突出しており、また、下端には前記PC部材の下面に鉄筋挿入口が開口するように設けられたスリーブ式継手が接続されており、
前記鉄筋接続ステップでは、前記空間の上下に位置する前記PC部材の鉄筋を前記スリーブ式継手により継手することを特徴とするPC部材の接続方法。
【請求項10】
請求項1から8何れかに記載のPC部材の接続方法であって、
前記鉄筋の下端は前記PC部材の下面より突出しており、また、上端には前記PC部材の上面に鉄筋挿入口が開口するように設けられたスリーブ式継手が接続されており、
前記鉄筋接続ステップでは、前記空間の上下に位置する前記PC部材の鉄筋を前記スリーブ式継手により継手することを特徴とするPC部材の接続方法。
【請求項11】
請求項1から8何れかに記載のPC部材の接続方法であって、
前記鉄筋の両端は前記PC部材の上面及び下面から夫々突出しており、
前記鉄筋の上端又は下端にはねじ式継手又はスリーブ式継手が取り付けられており、
前記鉄筋接続ステップでは、前記コンクリート打設空間の上下に位置する前記PC部材の鉄筋を前記ねじ式継手又はスリーブ式継手により継手することを特徴とするPC部材の接続方法。
【請求項12】
前記PC部材を構成するコンクリート及び前記コンクリート打設ステップにおいて打設されるコンクリートには、圧縮強度が120N/mmを超える高強度コンクリートが用いられていることを特徴とする請求項1から11何れかに記載のPC部材の接続方法。
【請求項13】
請求項1から12何れかに記載のPC部材の接続方法によりPC柱部材が接続されて柱が構築されたことを特徴とする鉄筋コンクリート造建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−144399(P2009−144399A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322443(P2007−322443)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】