PCB含有トランス等の抜油装置
【課題】半自動化された抜油装置を構成し、それにより簡易にトランス、コンデンサ、柱上トランスの区別なく、抜油装置を取付け、密封状態で穿孔、抜油、洗浄、施栓作業を一連で行うことができるようにする。
【解決手段】穿孔部位とステップドリル19を密閉被覆する密閉装置と、穿孔部を閉止する閉止栓33を供給する閉止栓供給装置を備えた孔あけ装置1と、孔あけ装置1に接続する洗浄用ループ配管60、移送配管63、ベント配管61を備え、密封状態で穿孔、抜油、洗浄、施栓を可能とした。
【解決手段】穿孔部位とステップドリル19を密閉被覆する密閉装置と、穿孔部を閉止する閉止栓33を供給する閉止栓供給装置を備えた孔あけ装置1と、孔あけ装置1に接続する洗浄用ループ配管60、移送配管63、ベント配管61を備え、密封状態で穿孔、抜油、洗浄、施栓を可能とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCB含有トランスおよびコンデンサ(以下、「PCB含有トランス等」という。)からの抜油装置に係り、特にグローブボックス等を不要とするPCB含有トランスおよびコンデンサ抜油装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、PCB含有トランスおよびコンデンサや柱上トランスの抜油装置においては、本設の抜油弁が使えるものは既設のバルブから液抜きを行い、弁がない場合や本設の抜油弁が使えない場合には、トランスについては上部から一部遠隔による穿孔および抜油を行い、コンデンサについてはグローブボックス内に入れて、それぞれ人間の手作業等により液抜きが行われている。
【0003】
このような従来技術としては、例えば特許文献1等に記載されたものがある。この技術では、外部との連通孔を有する治具を用いて液抜きを実施する構成となっている。
【特許文献1】特開2002−192136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した抜油作業においては、人による手作業が主体であるため、グローブボックス内作業ではグローブボックスの設置スペースが必要であり、またグローブバック方式(手袋のついたカバーを抜油部位の廻りに取付けて、拡散範囲を限定する方式)では、周囲に引掛けたりして、グローブバックが破損し、作業員がPCBに汚染される危険性があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、半自動化された抜油装置を構成し、それにより簡易にトランス、コンデンサ、柱上トランス等の区別なく筐体の取付けを行うことができ、密封状態で穿孔、抜油、洗浄および施栓作業を一連の作業として行うことができ、人間が容易に処理対象物に近付いて作業することができ、かつグローブボックスを利用する必要もなく閉止栓を容易かつ確実に取付けることができ、しかも能率向上も大幅に図ることができるPCB含有トランス等の抜油装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明では、PCBを含有するトランスおよびコンデンサの筐体を水平軸心回りで直立姿勢と横転姿勢とに回動可能に支持する反転装置と、前記反転装置に設けられトランスおよびコンデンサを把持するクランプ装置と、前記クランプ装置に設けられ、前記筐体の側壁を前記PCBの液面高さよりも上側位置で穿孔するドリルと、このドリルと前記筐体表面の穿孔部位を密閉被覆する密閉装置と、この密閉装置に接続され、前記筐体に穿設された孔に装填する閉止栓を供給する閉止栓供給装置を備えた孔あけ装置と、前記孔あけ装置に連結される抜油用配管とを備えたことを特徴とするPCB含有トランス等の抜油装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易にトランス、コンデンサ、柱上トランスの区別なく、抜油装置を取付け、密封状態で穿孔、抜き油、洗浄、閉止栓作業を一連で行うことができ、密封状態で作業するため、人間が容易に対象物に近付いて作業することができ、また環境への汚染の恐れが少なく、しかも開口部を露出することなく、閉止栓を容易かつ確実に取付けることができる。したがって、グローブボックスを利用する必要なく作業することができ、能率向上も大幅に図ることができる。さらに、機械的操作も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係るPCB含有トランス等の抜油装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態においては、コンデンサの筐体からPCBを抜油する構成について説明するが、トランスの筐体からの抜油についても同様の構成を採用して実施することができる。
【0009】
図1は、装置全体の構成を側面視として示す概略的な構成図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の抜油装置100は作業床101上に設置された装置支持用のフレーム構造体102と、このフレーム構造体102に搭載された基台3と、油圧配管104等によって構成されている。
【0011】
基台3上には、主要構成部材としての孔あけ装置1とクランプ装置2とを備えたコンデンサ搭載用の反転装置7が設置されている。孔あけ装置1は、作業者の手動操作または機械的操作により操作することができるドリルを備えた密閉構造のものである。
【0012】
クランプ装置2はコンデンサCが直立姿勢において把持する高さを調整可能なようにエアシリンダにて伸縮自在に設置されている。
【0013】
反転装置7は、作業を効率良く順次に行うため複数台、例えば2台のコンデンサC(C1,C2)を同時に搭載することができる構成のものである。すなわち、反転装置7は、コンデンサCの筐体を水平軸心回りで直立姿勢と横転姿勢とに回動可能に支持するものである。具体的には、例えば2台のコンデンサC1,C2をそれぞれ2基の反転装置7(7a,7b)に同時に搭載し、順次に能率よく抜油することができるものであり、2基の反転装置7(7a,7b)はそれぞれ水平な回転軸6(6a,6b)を介して左右に展開可能に設置されている。図1においては、一方の反転装置7aを実線による直立姿勢と仮想線による横転姿勢で支持する状態と、他方の反転装置7bを横転姿勢で支持する状態とが示してある。
【0014】
このように交互に反転可能な構成とすることで、直立姿勢のコンデンサC1の孔あけ作業を行っている間に、既に孔あけ作業が完了した横転姿勢のコンデンサC2の抜油作業を行う事が出来る。
【0015】
図2は、コンデンサ搭載用の反転装置7の側面構成を簡略化して示す構成図である。この反転装置7(7a,7b)は水平な基台3の上に、支持台5(5a,5b)を介して支持されている。すなわち、基台3上には水平方向に一定の間隔を開けて1対の支持台55(5a,5b)が設けてあり、これらの支持台5(5a,5b)にはそれぞれ水平な回転軸6(6a,6b)を介してクランプ装置2(2a,2b)を備える側面視で略L字形の反転装置7(7a,7b)が左右方向に回転可能に支持されている。支持台5(5a,5b)間の間隔は1対のコンデンサC1,C2をそれぞれ支持して相互に回転できる間隔に設定されている。そして、図示省略の駆動機構により左右方向(矢印a,b)にそれぞれ90度回動することができる構成となっている。
【0016】
これらの反転装置7(7a,7b)にそれぞれコンデンサC1,C2が搭載され、後述するように、孔あけ装置1により順次に穿孔がなされ、抜油・洗浄の後閉止栓33が装着される。
【0017】
図3は孔あけ装置1を示す側面構成図であり、図4はその平面図である。図5は、さらにコンデンサC側面側から見た図3の側面図である。
【0018】
図6にスライドボックス23の動作説明図を示す。図6のAはスライドボックス23がスライドして孔あけ装置1がコンデンサCに押付けられる前の状態であり、図6のBは押し付けられた状態である。
【0019】
図7に孔あけ装置1の動作説明図を示す。図7のAはトグルバー26を傾動せず、ステップドリル19が外筒に内包された状態であり、図7のBはトグルバー26を傾動して、ステップドリル19が突出した状態である。
【0020】
図3および図4に示すように、孔あけ装置1はその駆動装置として、作業者が把持する例えば短銃形の可変速ドリル13を使用する。
【0021】
孔あけ装置1は、クランプ装置2に設置される上面が水平なフレーム20、フレーム20上に設置されている上面が水平なスライドレール24およびスライドレール24上をスライドするスライドボックス23により支持されている。
【0022】
図3および図6に示すように、孔あけ装置1はスライドボックス23に取り付けられる押付けボルト25を回転させることにより、スライドボックス23と共にスライドレール24上を水平方向にスライドし、ソケットパッキン29を介してコンデンサCに押付けられ、穿孔表面に密着する。
【0023】
可変速ドリル13の先端部には手動操作によりドライバー、ドリル等の工具やシャフト類を保持および解除できるクランプ15が設けられている。
【0024】
可変速ドリル13は、クランプ15に把持固定された六角棒16により、六角棒16が挿入されるシャフト51に連結され、シャフト51の先端に取り付けられたステップドリル19に回転力を伝達する。
【0025】
シャフト51は、ガイドロッド17及びピストン18に設けられたベアリング(図示省略)により回転可能に支持されている。
【0026】
またシャフト51は、ガイドロッド17、外筒50、シールブロック28等からなる密閉装置により密閉されている。
【0027】
さらにシャフト51には同軸上にピストン18が設けてあり、このピストン18は外筒50にスライド可能に支持されて、ガイドロッド17及びシャフト51が外筒内を進退するのと同時に高精度でピストン18の軸心方向に沿って進退可能となっておりガイドロッド17側へ対して密閉性を保持している。
【0028】
図3、図4および図7に示すように、ガイドロッド17には支点ピン26cを介してトグルバー26が連結されている。このトグルバー26は手動操作により支点ピン26cを中心として回動することができ、傾斜方向の移動すなわち傾動が可能となっている。そして、トグルバー26には中間支点ピン26aを介してリンク27が回動可能に連結されており、このリンク27の先端は端部支点ピン26dを介して外筒50に連結されている。そして、このトグルバー26を傾動させることにより、ガイドロッド17、シャフト51、ピストン18、ステップドリル19が外筒50およびシールブロック28内部を進退し、コンデンサCの筐体部分に穿孔することができる。
【0029】
また、シールブロック28にはノズル52が設けられている。
【0030】
このノズル52には、穿孔後に抜油、ベント、洗浄作業を行うための配管が接続されている。
【0031】
したがって、本実施形態によれば、略完全な密閉状態のもとでコンデンサCに対する孔あけ作業を行うことができ、孔あけに際してコンデンサC内部の液が外部に噴出することがない。
【0032】
次に、図5に示すように、シールブロック28の側方には、外筒50と軸心が直行する配置で閉止栓供給装置が設けられている。
【0033】
閉止栓供給装置には、ピストンプランジャ30、プランジャボックス31、閉止栓収納具32、が設けられており密閉構造となっている。プランジャボックス31の内部にはピストンプランジャ30が配置され、ノブ35を回転させることにより、ピストンプランジャ30の先端に設けられた閉止栓受け37により、閉止栓33をステップドリル19と略同軸上まで側方に移動させて、ステップドリル19にてコンデンサCに穿孔した孔に押込み、孔を閉塞することができるようになっている(このときステップドリルは回転させない)。
【0034】
また、ピストンプランジャ30にはピストンゴム36が設けられ、閉止栓受け37以外に閉止栓33が落下するのを防止している。
【0035】
図8には、孔あけ後にコンデンサC内のベント、油移送および洗浄液循環等の作業を行うことができる配管構成を示している。
【0036】
本構成では、コンデンサCの3箇所に孔あけ装置1を密着させ、穿孔した後それぞれの孔あけ装置1をベント用ノズル、洗浄用ノズル、抜油用ノズルとして使用する。
【0037】
すなわち、図4、図5、に示す孔あけ装置1のシールブロック28に設けられたノズル52は、図8に示すように、その用途により、ベント用ノズル、抜油用ノズル、洗浄用ノズルとして使用できる。
【0038】
抜油用ノズル、洗浄用ノズルにそれぞれ接続された洗浄用ループ配管60、移送・洗浄ループ切換え用弁43を介して洗浄用ループ配管60に接続される移送配管63、ベント用ノズルに接続されるベント配管61、ベント・窒素注入切替え用弁42を介してベント用ノズルに接続される窒素供給配管62、等が配置される。そして、洗浄用ポンプ64、移送用ポンプ65等が設けられる。
【0039】
本構成による抜油作業は、抜油用ノズルよりコンデンサCの内部に封入されていた油を移送用ポンプ65により移送配管63へ移送する。その後洗浄ループ配管60により形成される洗浄ループにて洗浄液を循環させ、コンデンサC内部を洗浄し、洗浄後の洗浄液は移送配管63へ移送する。
【0040】
さらに、コンデンサCに窒素ガスを供給して閉止栓33にて密閉する事により、安全な状態で、コンデンサCの筐体の切断、解体等の作業に移行することができる。
【0041】
なお、孔あけ装置1の密閉性を確認するため、孔あけ作業を行う前に、0.3MPaの窒素耐圧試験を行う。
【0042】
また、抜油作業時は、反転装置7を反転させ抜油用ノズルが下側、ベント用ノズル及び洗浄用ノズルが上側となるようにコンデンサCを横転させる。
【0043】
閉止栓33の形状については、図9(a)〜(f)に示したように種々の形状として実施することができる。図9は閉止栓33の各種構成例を示す説明図である。
【0044】
図9(a)に示したように、断面が台形のもの33a、図9(b)に示したように、断面が台形の幅広底部に鍔部を有するもの33b、図9(c)に示したように、傾斜角度を拡大した断面台形としたもの33c、図9(d)に示したように、断面が台形で幅狭側に矢尻上ストッパを有するのもの33d、図9(e)に示したように、断面が直方体状のもの33e、図9(f)に示したように、小径側断面が大径な台形のもの33f等である。
【0045】
図10には、クロロプレン、ウレタン、エポキシ、木(樫の木)等についての硬度、形状、耐PCB性能、耐洗浄剤例、挿入性等についての比較結果を表として示している。
【0046】
この結果から、閉止栓は耐PCBに優れた樹脂(例:エポキシ)製を用いる。
【0047】
エポキシ樹脂製の栓はPCBおよび洗浄剤に対し、浸透せず耐久性に優れる。また、硬度が高く、栓をする際に内部で多少栓が傾いても、きちんと孔に栓ができる特徴がある。
【0048】
ネオプレンゴムはPCB、洗浄液の浸透性がエポキシ樹脂に比べ劣ること、および硬度の関係で同じ硬度60にしても変形するため確実に栓をするには劣るのでエポキシ樹脂(硬度60)を選定した。
【0049】
このようにして、本装置を用いれば穿孔、抜油、洗浄、施栓までの一連の作業を、密封状態で行う事ができるため、環境への汚染の恐れが少なく人間が対象物に近付いて容易に作業ができる。
【0050】
また、上記実施形態ではコンデンサに対する抜油装置構成を説明したが、本発明ではトランスに対する抜油装置としても好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態による抜油装置の構成図。
【図2】本発明の一実施形態による反転装置の構成図。
【図3】本発明の一実施形態による孔あけ装置側面図。
【図4】前記孔あけ装置の平面図。
【図5】前記孔あけ装置図3の右方からみた側面図。
【図6】スライドボックスの動作説明図。
【図7】孔あけ装置の動作説明図。
【図8】本発明の一実施形態で適用する配管構成図。
【図9】本発明の一実施形態における閉止栓形状例。
【図10】本発明の一実施形態における閉止栓材質選定表1。
【符号の説明】
【0052】
1 孔あけ装置
2(2a,2b) クランプ装置
3 基台
5(5a,5b) 支持台
6(6a,6b) 回転軸
7(7a,7b) 反転装置
13 可変速ドリル
15 クランプ
16 六角棒
17 ガイドロッド
18 ピストン
19 ステップドリル
20 フレーム
23 スライドボックス
24 スライドレール
25 押付けボルト
26 トグルレバー
26a 中間支点ピン
26b 把持操作部
26c 支点ピン
26d 端部支点ピン
27 リンク
28 シールブロック
29 ソケットパッキン
30 ピストンプランジャ
31 プランジャボックス
32 閉止栓収納具
33 閉止栓
35 ノブ
36 ピストンゴム
37 閉止栓受け
42 ベント・窒素注入切替え用弁
43 移送・洗浄ループ切替え用弁
50 外筒
51 シャフト
52 ノズル
60 洗浄用ループ配管
61 ベント配管
62 窒素供給配管
63 移送配管
64 洗浄用ポンプ
65 移送用ポンプ
33(a〜f) 閉止栓
100 抜油装置
101 作業床
102 フレーム構造体
104 油圧配管
C(C1,C2)コンデンサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCB含有トランスおよびコンデンサ(以下、「PCB含有トランス等」という。)からの抜油装置に係り、特にグローブボックス等を不要とするPCB含有トランスおよびコンデンサ抜油装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、PCB含有トランスおよびコンデンサや柱上トランスの抜油装置においては、本設の抜油弁が使えるものは既設のバルブから液抜きを行い、弁がない場合や本設の抜油弁が使えない場合には、トランスについては上部から一部遠隔による穿孔および抜油を行い、コンデンサについてはグローブボックス内に入れて、それぞれ人間の手作業等により液抜きが行われている。
【0003】
このような従来技術としては、例えば特許文献1等に記載されたものがある。この技術では、外部との連通孔を有する治具を用いて液抜きを実施する構成となっている。
【特許文献1】特開2002−192136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した抜油作業においては、人による手作業が主体であるため、グローブボックス内作業ではグローブボックスの設置スペースが必要であり、またグローブバック方式(手袋のついたカバーを抜油部位の廻りに取付けて、拡散範囲を限定する方式)では、周囲に引掛けたりして、グローブバックが破損し、作業員がPCBに汚染される危険性があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、半自動化された抜油装置を構成し、それにより簡易にトランス、コンデンサ、柱上トランス等の区別なく筐体の取付けを行うことができ、密封状態で穿孔、抜油、洗浄および施栓作業を一連の作業として行うことができ、人間が容易に処理対象物に近付いて作業することができ、かつグローブボックスを利用する必要もなく閉止栓を容易かつ確実に取付けることができ、しかも能率向上も大幅に図ることができるPCB含有トランス等の抜油装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明では、PCBを含有するトランスおよびコンデンサの筐体を水平軸心回りで直立姿勢と横転姿勢とに回動可能に支持する反転装置と、前記反転装置に設けられトランスおよびコンデンサを把持するクランプ装置と、前記クランプ装置に設けられ、前記筐体の側壁を前記PCBの液面高さよりも上側位置で穿孔するドリルと、このドリルと前記筐体表面の穿孔部位を密閉被覆する密閉装置と、この密閉装置に接続され、前記筐体に穿設された孔に装填する閉止栓を供給する閉止栓供給装置を備えた孔あけ装置と、前記孔あけ装置に連結される抜油用配管とを備えたことを特徴とするPCB含有トランス等の抜油装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易にトランス、コンデンサ、柱上トランスの区別なく、抜油装置を取付け、密封状態で穿孔、抜き油、洗浄、閉止栓作業を一連で行うことができ、密封状態で作業するため、人間が容易に対象物に近付いて作業することができ、また環境への汚染の恐れが少なく、しかも開口部を露出することなく、閉止栓を容易かつ確実に取付けることができる。したがって、グローブボックスを利用する必要なく作業することができ、能率向上も大幅に図ることができる。さらに、機械的操作も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係るPCB含有トランス等の抜油装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態においては、コンデンサの筐体からPCBを抜油する構成について説明するが、トランスの筐体からの抜油についても同様の構成を採用して実施することができる。
【0009】
図1は、装置全体の構成を側面視として示す概略的な構成図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の抜油装置100は作業床101上に設置された装置支持用のフレーム構造体102と、このフレーム構造体102に搭載された基台3と、油圧配管104等によって構成されている。
【0011】
基台3上には、主要構成部材としての孔あけ装置1とクランプ装置2とを備えたコンデンサ搭載用の反転装置7が設置されている。孔あけ装置1は、作業者の手動操作または機械的操作により操作することができるドリルを備えた密閉構造のものである。
【0012】
クランプ装置2はコンデンサCが直立姿勢において把持する高さを調整可能なようにエアシリンダにて伸縮自在に設置されている。
【0013】
反転装置7は、作業を効率良く順次に行うため複数台、例えば2台のコンデンサC(C1,C2)を同時に搭載することができる構成のものである。すなわち、反転装置7は、コンデンサCの筐体を水平軸心回りで直立姿勢と横転姿勢とに回動可能に支持するものである。具体的には、例えば2台のコンデンサC1,C2をそれぞれ2基の反転装置7(7a,7b)に同時に搭載し、順次に能率よく抜油することができるものであり、2基の反転装置7(7a,7b)はそれぞれ水平な回転軸6(6a,6b)を介して左右に展開可能に設置されている。図1においては、一方の反転装置7aを実線による直立姿勢と仮想線による横転姿勢で支持する状態と、他方の反転装置7bを横転姿勢で支持する状態とが示してある。
【0014】
このように交互に反転可能な構成とすることで、直立姿勢のコンデンサC1の孔あけ作業を行っている間に、既に孔あけ作業が完了した横転姿勢のコンデンサC2の抜油作業を行う事が出来る。
【0015】
図2は、コンデンサ搭載用の反転装置7の側面構成を簡略化して示す構成図である。この反転装置7(7a,7b)は水平な基台3の上に、支持台5(5a,5b)を介して支持されている。すなわち、基台3上には水平方向に一定の間隔を開けて1対の支持台55(5a,5b)が設けてあり、これらの支持台5(5a,5b)にはそれぞれ水平な回転軸6(6a,6b)を介してクランプ装置2(2a,2b)を備える側面視で略L字形の反転装置7(7a,7b)が左右方向に回転可能に支持されている。支持台5(5a,5b)間の間隔は1対のコンデンサC1,C2をそれぞれ支持して相互に回転できる間隔に設定されている。そして、図示省略の駆動機構により左右方向(矢印a,b)にそれぞれ90度回動することができる構成となっている。
【0016】
これらの反転装置7(7a,7b)にそれぞれコンデンサC1,C2が搭載され、後述するように、孔あけ装置1により順次に穿孔がなされ、抜油・洗浄の後閉止栓33が装着される。
【0017】
図3は孔あけ装置1を示す側面構成図であり、図4はその平面図である。図5は、さらにコンデンサC側面側から見た図3の側面図である。
【0018】
図6にスライドボックス23の動作説明図を示す。図6のAはスライドボックス23がスライドして孔あけ装置1がコンデンサCに押付けられる前の状態であり、図6のBは押し付けられた状態である。
【0019】
図7に孔あけ装置1の動作説明図を示す。図7のAはトグルバー26を傾動せず、ステップドリル19が外筒に内包された状態であり、図7のBはトグルバー26を傾動して、ステップドリル19が突出した状態である。
【0020】
図3および図4に示すように、孔あけ装置1はその駆動装置として、作業者が把持する例えば短銃形の可変速ドリル13を使用する。
【0021】
孔あけ装置1は、クランプ装置2に設置される上面が水平なフレーム20、フレーム20上に設置されている上面が水平なスライドレール24およびスライドレール24上をスライドするスライドボックス23により支持されている。
【0022】
図3および図6に示すように、孔あけ装置1はスライドボックス23に取り付けられる押付けボルト25を回転させることにより、スライドボックス23と共にスライドレール24上を水平方向にスライドし、ソケットパッキン29を介してコンデンサCに押付けられ、穿孔表面に密着する。
【0023】
可変速ドリル13の先端部には手動操作によりドライバー、ドリル等の工具やシャフト類を保持および解除できるクランプ15が設けられている。
【0024】
可変速ドリル13は、クランプ15に把持固定された六角棒16により、六角棒16が挿入されるシャフト51に連結され、シャフト51の先端に取り付けられたステップドリル19に回転力を伝達する。
【0025】
シャフト51は、ガイドロッド17及びピストン18に設けられたベアリング(図示省略)により回転可能に支持されている。
【0026】
またシャフト51は、ガイドロッド17、外筒50、シールブロック28等からなる密閉装置により密閉されている。
【0027】
さらにシャフト51には同軸上にピストン18が設けてあり、このピストン18は外筒50にスライド可能に支持されて、ガイドロッド17及びシャフト51が外筒内を進退するのと同時に高精度でピストン18の軸心方向に沿って進退可能となっておりガイドロッド17側へ対して密閉性を保持している。
【0028】
図3、図4および図7に示すように、ガイドロッド17には支点ピン26cを介してトグルバー26が連結されている。このトグルバー26は手動操作により支点ピン26cを中心として回動することができ、傾斜方向の移動すなわち傾動が可能となっている。そして、トグルバー26には中間支点ピン26aを介してリンク27が回動可能に連結されており、このリンク27の先端は端部支点ピン26dを介して外筒50に連結されている。そして、このトグルバー26を傾動させることにより、ガイドロッド17、シャフト51、ピストン18、ステップドリル19が外筒50およびシールブロック28内部を進退し、コンデンサCの筐体部分に穿孔することができる。
【0029】
また、シールブロック28にはノズル52が設けられている。
【0030】
このノズル52には、穿孔後に抜油、ベント、洗浄作業を行うための配管が接続されている。
【0031】
したがって、本実施形態によれば、略完全な密閉状態のもとでコンデンサCに対する孔あけ作業を行うことができ、孔あけに際してコンデンサC内部の液が外部に噴出することがない。
【0032】
次に、図5に示すように、シールブロック28の側方には、外筒50と軸心が直行する配置で閉止栓供給装置が設けられている。
【0033】
閉止栓供給装置には、ピストンプランジャ30、プランジャボックス31、閉止栓収納具32、が設けられており密閉構造となっている。プランジャボックス31の内部にはピストンプランジャ30が配置され、ノブ35を回転させることにより、ピストンプランジャ30の先端に設けられた閉止栓受け37により、閉止栓33をステップドリル19と略同軸上まで側方に移動させて、ステップドリル19にてコンデンサCに穿孔した孔に押込み、孔を閉塞することができるようになっている(このときステップドリルは回転させない)。
【0034】
また、ピストンプランジャ30にはピストンゴム36が設けられ、閉止栓受け37以外に閉止栓33が落下するのを防止している。
【0035】
図8には、孔あけ後にコンデンサC内のベント、油移送および洗浄液循環等の作業を行うことができる配管構成を示している。
【0036】
本構成では、コンデンサCの3箇所に孔あけ装置1を密着させ、穿孔した後それぞれの孔あけ装置1をベント用ノズル、洗浄用ノズル、抜油用ノズルとして使用する。
【0037】
すなわち、図4、図5、に示す孔あけ装置1のシールブロック28に設けられたノズル52は、図8に示すように、その用途により、ベント用ノズル、抜油用ノズル、洗浄用ノズルとして使用できる。
【0038】
抜油用ノズル、洗浄用ノズルにそれぞれ接続された洗浄用ループ配管60、移送・洗浄ループ切換え用弁43を介して洗浄用ループ配管60に接続される移送配管63、ベント用ノズルに接続されるベント配管61、ベント・窒素注入切替え用弁42を介してベント用ノズルに接続される窒素供給配管62、等が配置される。そして、洗浄用ポンプ64、移送用ポンプ65等が設けられる。
【0039】
本構成による抜油作業は、抜油用ノズルよりコンデンサCの内部に封入されていた油を移送用ポンプ65により移送配管63へ移送する。その後洗浄ループ配管60により形成される洗浄ループにて洗浄液を循環させ、コンデンサC内部を洗浄し、洗浄後の洗浄液は移送配管63へ移送する。
【0040】
さらに、コンデンサCに窒素ガスを供給して閉止栓33にて密閉する事により、安全な状態で、コンデンサCの筐体の切断、解体等の作業に移行することができる。
【0041】
なお、孔あけ装置1の密閉性を確認するため、孔あけ作業を行う前に、0.3MPaの窒素耐圧試験を行う。
【0042】
また、抜油作業時は、反転装置7を反転させ抜油用ノズルが下側、ベント用ノズル及び洗浄用ノズルが上側となるようにコンデンサCを横転させる。
【0043】
閉止栓33の形状については、図9(a)〜(f)に示したように種々の形状として実施することができる。図9は閉止栓33の各種構成例を示す説明図である。
【0044】
図9(a)に示したように、断面が台形のもの33a、図9(b)に示したように、断面が台形の幅広底部に鍔部を有するもの33b、図9(c)に示したように、傾斜角度を拡大した断面台形としたもの33c、図9(d)に示したように、断面が台形で幅狭側に矢尻上ストッパを有するのもの33d、図9(e)に示したように、断面が直方体状のもの33e、図9(f)に示したように、小径側断面が大径な台形のもの33f等である。
【0045】
図10には、クロロプレン、ウレタン、エポキシ、木(樫の木)等についての硬度、形状、耐PCB性能、耐洗浄剤例、挿入性等についての比較結果を表として示している。
【0046】
この結果から、閉止栓は耐PCBに優れた樹脂(例:エポキシ)製を用いる。
【0047】
エポキシ樹脂製の栓はPCBおよび洗浄剤に対し、浸透せず耐久性に優れる。また、硬度が高く、栓をする際に内部で多少栓が傾いても、きちんと孔に栓ができる特徴がある。
【0048】
ネオプレンゴムはPCB、洗浄液の浸透性がエポキシ樹脂に比べ劣ること、および硬度の関係で同じ硬度60にしても変形するため確実に栓をするには劣るのでエポキシ樹脂(硬度60)を選定した。
【0049】
このようにして、本装置を用いれば穿孔、抜油、洗浄、施栓までの一連の作業を、密封状態で行う事ができるため、環境への汚染の恐れが少なく人間が対象物に近付いて容易に作業ができる。
【0050】
また、上記実施形態ではコンデンサに対する抜油装置構成を説明したが、本発明ではトランスに対する抜油装置としても好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態による抜油装置の構成図。
【図2】本発明の一実施形態による反転装置の構成図。
【図3】本発明の一実施形態による孔あけ装置側面図。
【図4】前記孔あけ装置の平面図。
【図5】前記孔あけ装置図3の右方からみた側面図。
【図6】スライドボックスの動作説明図。
【図7】孔あけ装置の動作説明図。
【図8】本発明の一実施形態で適用する配管構成図。
【図9】本発明の一実施形態における閉止栓形状例。
【図10】本発明の一実施形態における閉止栓材質選定表1。
【符号の説明】
【0052】
1 孔あけ装置
2(2a,2b) クランプ装置
3 基台
5(5a,5b) 支持台
6(6a,6b) 回転軸
7(7a,7b) 反転装置
13 可変速ドリル
15 クランプ
16 六角棒
17 ガイドロッド
18 ピストン
19 ステップドリル
20 フレーム
23 スライドボックス
24 スライドレール
25 押付けボルト
26 トグルレバー
26a 中間支点ピン
26b 把持操作部
26c 支点ピン
26d 端部支点ピン
27 リンク
28 シールブロック
29 ソケットパッキン
30 ピストンプランジャ
31 プランジャボックス
32 閉止栓収納具
33 閉止栓
35 ノブ
36 ピストンゴム
37 閉止栓受け
42 ベント・窒素注入切替え用弁
43 移送・洗浄ループ切替え用弁
50 外筒
51 シャフト
52 ノズル
60 洗浄用ループ配管
61 ベント配管
62 窒素供給配管
63 移送配管
64 洗浄用ポンプ
65 移送用ポンプ
33(a〜f) 閉止栓
100 抜油装置
101 作業床
102 フレーム構造体
104 油圧配管
C(C1,C2)コンデンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCBを含有するトランスおよびコンデンサの筐体を水平軸心回りで直立姿勢と横転姿勢とに回動可能に支持する反転装置と、
前記反転装置に設けられトランスおよびコンデンサを把持するクランプ装置と、
前記クランプ装置に設けられ、前記筐体の側壁を前記PCBの液面高さよりも上側位置で穿孔するドリルと、このドリルと前記筐体表面の穿孔部位を密閉被覆する密閉装置と、この密閉装置に接続され、前記筐体に穿設された孔に装填する閉止栓を供給する閉止栓供給装置を備えた孔あけ装置と、
前記孔あけ装置に連結される抜油用配管とを備えたことを特徴とするPCB含有トランス等の抜油装置。
【請求項2】
前記反転装置は互いに隣接する配置で複数設置され、一の反転装置が直立姿勢に設定される際に、他のクランプ装置が横転姿勢となる設定とされている請求項1記載のPCB含有トランス等の抜油装置。
【請求項3】
前記孔あけ装置は、耐圧性が0.3MPa以上の耐漏洩性を有する請求項1記載のPCB含有トランス等の抜油装置。
【請求項1】
PCBを含有するトランスおよびコンデンサの筐体を水平軸心回りで直立姿勢と横転姿勢とに回動可能に支持する反転装置と、
前記反転装置に設けられトランスおよびコンデンサを把持するクランプ装置と、
前記クランプ装置に設けられ、前記筐体の側壁を前記PCBの液面高さよりも上側位置で穿孔するドリルと、このドリルと前記筐体表面の穿孔部位を密閉被覆する密閉装置と、この密閉装置に接続され、前記筐体に穿設された孔に装填する閉止栓を供給する閉止栓供給装置を備えた孔あけ装置と、
前記孔あけ装置に連結される抜油用配管とを備えたことを特徴とするPCB含有トランス等の抜油装置。
【請求項2】
前記反転装置は互いに隣接する配置で複数設置され、一の反転装置が直立姿勢に設定される際に、他のクランプ装置が横転姿勢となる設定とされている請求項1記載のPCB含有トランス等の抜油装置。
【請求項3】
前記孔あけ装置は、耐圧性が0.3MPa以上の耐漏洩性を有する請求項1記載のPCB含有トランス等の抜油装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−297602(P2009−297602A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152007(P2008−152007)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】
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