説明

PCB含有油泥処理装置およびPCB含有油泥処理方法

【課題】 本発明は、油泥の状態に応じて脱液装置の圧迫板の圧力を調節することにより、濾布袋から油泥を漏出させることなく、効率的に油泥を乾燥させることが可能なPCB含有油泥処理装置およびPCB含有油泥処理方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 本発明にかかるPCB含有油泥処理装置の代表的な構成は、PCBが付着した微粉末を含む油泥を乾燥させるための脱液装置を備えるPCB含有油泥処理装置であって、脱液装置300は、脱液装置を密封するための蓋310と、脱液装置内を減圧する減圧装置302と、油泥を充填する濾布袋380を支持する載置台308を備え、蓋には、濾布袋の開口部を押さえて封止する閉塞部材320と、濾布袋のほぼ全面を載置台に向かって圧迫する圧迫板330と、圧迫板を濾布袋に向かって進退させるエアシリンダ340とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCBが付着した微粉末を含む油泥を無害化処理するPCB含有油泥処理装置およびPCB含有油泥処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビフェニル(以下PCBと略称する)は、化学的に安定している、熱により分解しにくい、電気絶縁性に優れている、沸点が高い、不燃性であるなどの性質を有する物質である。このため、変圧器、安定器、開閉器、計器用変成器、コンデンサ、サージアブソーバ、遮断器、整流器、放電コイル、リアクトル等に使用する絶縁油、ボイラーや熱交換器の熱媒体等幅広い分野で使用されてきた。わが国では、これまで約59,000トンのPCBが生産され、このうち約54,000トンが国内で使用された(例えば非特許文献1)。
【0003】
近年、PCBの人体への有毒性が明らかになり、わが国では1972年からは、PCBの新たな製造はされなくなった。さらに、1973年に制定された「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」に基づき、1974年からは、その製造、輸入等が事実上禁止となった。その後、我が国においては、高圧変圧器及び高圧コンデンサを始めとしたPCB廃棄物について、その処理体制の整備が著しく停滞していたため、長期にわたり処分がなされず、事業者において保管が行われてきた。このように処分のめどが立たないまま長期にわたる保管が継続する中で、PCB廃棄物の紛失等が発生し、環境汚染の進行が懸念される状況となっている。
【0004】
そこで「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」が2001年に施行され、PCBおよびPCBを含む廃油等を15年以内に処分するよう義務付けた。
【0005】
従来からのPCBの処理法としては様々なものが提唱されており、代表的なものとしては、脱塩素化分解法、水熱酸化分解法、還元熱分解法、光分解法、プラズマ分解法などがある。
【0006】
PCBそれ自体を処理する前段階として、PCBが付着した機器を部材ごとに解体する必要がある。例えば特許文献1(特開2006−334572号)には、PCB混入絶縁油を含有する変圧器の解体および洗浄方法が開示されている。
【0007】
特許文献1に記載されているように、PCB処理装置においては、洗浄処理を行う前に被処理物たる機器および部品を分解し、物によっては破砕する必要がある。このように分解や破砕するとき、微粉末が発生し、被処理物に付着したまま洗浄処理が行われる。
【0008】
微粉末には金属粉のスラッジから木片、紙粉など様々なものが含まれており、材質も比重も多種多様である。洗浄により被処理物から除去された微粉末は大きなものはストレーナ(40メッシュのフィルタ)で分離している。しかし、数nmから数μmくらいの大きさのものはストレーナでは分離できず、使用後の溶剤(洗浄液)と共に受入槽や蒸留塔に導入され、その底部に蓄積する。この蓄積した油泥は、PCB処理装置の定期点検ごとに排出される。
【0009】
上記のように粒子の細かい微粉末は、緻密なケーキ層(液中の懸濁物質が蓄積して形成するケーキ状の堆積層)を形成しやすい。ケーキ層には溶剤が自然通液しにくいため、溶剤中に堆積しているにもかかわらず、無害化処理は困難である。したがって定期点検時に排出された油泥には、極めて微量ながらも処理すべき濃度のPCBが残留している。
【特許文献1】特開2006−334572号
【非特許文献1】環境省 「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画」 <インターネットURL http://www.env.go.jp/recycle/poly/plan/180320.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のようなPCBが残留する油泥を処理する方法として、本件出願人は、かかる油泥を溶剤で洗浄した後に濾布袋に充填し、脱液装置を用いて濾布袋を圧迫して脱液し、加熱かつ減圧することにより、溶剤を蒸気化して乾燥させる処理装置および処理方法を提案している。かかる処理方法により、油泥に残留するPCBを処理し、かつ、油泥に含まれる溶剤と微粉末を分離することができる。
【0011】
上記の処理方法においては、油泥が充填された濾布袋は脱液装置の載置台に設置され、脱液装置の蓋を閉じることにより、脱液装置内は密封状態になる。そして、それと同時に、濾布袋の開口部を閉塞部材によって封止し、蓋に備えられている圧迫板によって濾布袋の全面を圧迫する。これにより、油泥に含まれる溶剤の一部が圧搾されて脱液される。次に、濾布袋を加熱しつつ真空に近い程度まで減圧することによって、油泥に含まれる溶剤を蒸気化して脱液および乾燥させる。
【0012】
上記の脱液工程において、油泥に含まれる溶剤を圧搾するため、圧迫板は濾布袋を加圧する。かかる圧迫板は、圧迫板保持部材によって蓋に備えられており、圧迫板保持部材の例としては、バネ部材がある。このバネ部材の圧力が低いと、油泥に含まれる溶剤が十分に脱液されないため、加熱前の油泥への溶剤の残留量が多くなる。このため、乾燥時間が長くなり、乾燥効率が低下する。逆に、バネ部材の圧力を高くすると、圧迫板を濾布袋に押し付けた際に、濾布袋から油泥が漏出するという問題が生じる。
【0013】
しかしながら、濾布袋に充填される油泥の状態は常に一定ではなく、密度が高いものと低いものとがある。密度が高いものは圧迫しても、また乾燥させても体積が大きく、密度が低いものは体積が小さくなる。一方、バネ部材はバネの縮む長さによってバネ圧が変化するため、油泥の状態によっては圧力が高すぎたり低すぎたりする場合があり、上述した問題を解決することができなかった。
【0014】
また、圧迫板保持部材の他の例としては、ギア部材や油圧式部材があり、これらは位置によって圧迫を制御する。しかし上記のように、油泥の密度が高い場合と低い場合とでは、油泥から溶剤が脱液した後の濾布袋の厚みが異なる。したがってギア部材や油圧式部材であると、濾布袋の厚みによって圧力が変化してしまい、油泥の状態によっては濾布袋から油泥が漏出するという問題が生じる。
【0015】
さらには、脱液装置が真空乾燥を行うことから、その筐体は堅牢であり、かつ高度な密閉性を要求される。したがって、圧力を調整可能な繊細な装置は取り付けることが難しい。
【0016】
本発明は、このような課題に鑑み、油泥の状態に応じて脱液装置の圧迫板の圧力を調節することにより、濾布袋から油泥を漏出させることなく、効率的に油泥を乾燥させることが可能なPCB含有油泥処理装置およびPCB含有油泥処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明にかかるPCB含有油泥処理装置の代表的な構成は、PCBが付着した微粉末を含む油泥を乾燥させるための脱液装置を備えるPCB含有油泥処理装置であって、脱液装置は、脱液装置を密封するための蓋と、脱液装置内を減圧する減圧装置と、油泥を充填する濾布袋を支持する載置台を備え、蓋には、濾布袋の開口部を押さえて封止する閉塞部材と、濾布袋のほぼ全面を載置台に向かって圧迫する圧迫板と、圧迫板を濾布袋に向かって進退させるエアシリンダとを備えたことを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、蓋によって脱液装置を密封し、圧迫板で濾布袋を圧迫することにより、濾布袋に充填された油泥に含まれる溶剤の一部が圧搾され、脱液される。そして、それと同時に、減圧装置によって脱液装置内を減圧することにより、圧搾できずに油泥に残留している溶剤を蒸気化し、油泥を脱液、乾燥し、濾布袋(すなわち油泥)を平坦に成形することができる。
【0019】
油泥には極めて粒子の小さい微粉末が含まれているため、圧搾による脱液のみではフィルタの役割をしている濾布袋が早期に目詰まりを生じ、乾燥効率が著しく低下するという問題がある。しかし、上述したように圧搾と同時に減圧を行うことにより、溶剤が蒸気化し、目詰まりしているか否かにかかわらず、円滑にフィルタを通過することができるため、乾燥効率を向上することが可能となる。したがって、本発明は、極めて粒子の小さい微粉末が含まれる油泥の脱液および乾燥において特に効果を発揮する。
【0020】
また、圧迫板を進退させるためにエアシリンダを用いることにより、エアの気圧によって圧迫板を押圧することから、油泥の状態(密度)にかかわらず圧迫板を所定の圧力で押圧(圧迫)することができる。換言すれば、油泥の状態に応じて、圧力を一定に調節することができる。圧力が調節できない部材であると、圧迫板の圧力が高い場合、油泥に含まれる溶剤の圧搾は十分にできるが、濾布袋から油泥が漏出する問題が生じ、逆に、圧迫板の圧力が低い場合、濾布袋から油泥が漏出することはないが、油泥に含まれる溶剤の圧搾が不十分になる問題が生じる。しかし上記のように圧力を一定に調節可能になることにより、油泥の状態に応じた圧力で濾布袋を圧迫することができ、上記のような問題を解決することができる。
【0021】
またエアシリンダを用いることにより、シリンダに注入するエアの気圧を変更することにより、圧迫板の圧力を積極的に調節(制御)することができる。このため油泥の乾燥状態に応じて圧迫板の圧力を調節することが可能となる。例えば乾燥の初期には小さい圧力で押圧し、乾燥が進行したら大きい圧力で押圧することにより、さらに乾燥速度を速めることができる。
【0022】
上記のエアシリンダは、シリンダと、シリンダ内に、シリンダとの間に空隙を有するピストンとを備えるとよい。
【0023】
上記構成によれば、シリンダ内をピストンが降下することによって圧迫板が濾布袋を圧迫するとき、シリンダとピストンとの空隙から気体が漏れることにより、圧迫板が濾布袋に衝突する際の衝撃荷重を緩和することができる。また、シリンダとピストンの間に空隙を設けることにより、シリンダとピストンの接触を低減し、ピストンが円滑な上下運動を行うことが可能となる。
【0024】
上記のシリンダ内の空間は、ピストンによって、ピストンに対して圧迫板と反対側にある上室と、ピストンに対して圧迫板側にある下室とに仕切られ、さらに脱液装置には、上室内への気体の注入、または減圧、もしくは大気開放を切り替える上室マニホールドと、下室内への気体の注入、または減圧、もしくは大気開放を切り替える下室マニホールドとを備え、上室と下室の圧力差を用いて圧迫板を濾布袋に圧迫するとよい。
【0025】
シリンダ内の空間を2つの室に仕切ることにより、上室の圧力と下室の圧力に圧力差を生じさせることができ、ピストンに接合されている圧迫板を濾布袋に圧迫することが可能となる。また、脱液装置に上室マニホールドおよび下室マニホールドを備えることにより、マニホールドを切り替えることで、シリンダ内の上室および下室の気体の状態を簡便に変化させることができる。
【0026】
上記の脱液装置は、上室を大気開放状態とし且つ下室を減圧状態とすることにより、または、上室を窒素注入状態とし且つ下室を大気開放状態もしくは減圧状態とすることによって、圧迫板を濾布袋に圧迫するとよい。
【0027】
上記構成によれば、下室の圧力が上室の圧力よりも低くなる。したがって、ピストンはシリンダ内を降下し、圧迫板が濾布袋を圧迫することが可能となる。また、上述のように、上室の状態および下室の状態は、気体の注入、または減圧、もしくは大気開放のいずれかの状態に切り替えることができる。したがって、上室の状態および下室の状態を切り替えることによって、油泥の乾燥状態に応じて、圧迫板の圧力を所望の圧力に調整することが可能となる。
【0028】
さらに、気体の圧力を変更するよりも気体の種類を切り換えることによって簡略に圧力を変更、調節することができ、制御を簡略にすることができる。例えば、「上室を大気開放状態且つ下室を減圧状態」にすることによって、上室と下室に圧力差が生じるが、「上室を窒素注入状態且つ下室を減圧状態」に切り替えることによって、更にその圧力差を増大させることができる。したがって、ピストンへの上室からの圧力が増し、圧迫板はより高い圧力で濾布袋を圧迫することが可能となる。
【0029】
上記の閉塞部材は、バネ部材によって濾布袋の開口部に付勢するとよい。
【0030】
バネ部材を用いることにより、閉塞部材は一定の圧力によって濾布袋の開口部に付勢されることが可能となる。濾布袋の開口部は封止されることから、油泥の状態(密度)にかかわらず、常に閉塞部材は同じ位置にある。したがって、バネ部材を用いたとしても圧力一定であり、油泥を漏出させてしまうおそれがない。むしろ、閉塞部材の方が圧迫板よりも濾布袋に向かって突出して配置され、かつ、閉塞部材の付勢力の方が圧迫板の付勢力よりも強いことが好ましく、これにより、濾布袋から油泥が漏出することを防止することができる。
【0031】
上記の蓋には、濾布袋内の油泥の乾燥状態を表示するインジケータを備え、インジケータは、蓋を貫通する貫通孔と、貫通孔に摺動自在に貫入され一端が自重によって圧迫板に当接する軸部材と、軸部材を内包して貫通孔を封止する略透明な真空筒と、真空筒に設けられ軸部材の位置を示す目盛りと、から構成されるとよい。
【0032】
上記構成によれば、脱液装置を開閉することなく、インジケータによって、濾布袋内の油泥の乾燥状態を把握することが可能となる。例えば、濾布袋内の溶剤の残量が多いときにはインジケータの軸部材は大きく突出し、濾布袋内の溶剤がほとんど蒸発しきったときには軸部材は所定位置まで沈降する。これにより、乾燥の完了を判断することができる。
【0033】
上記課題を解決するために、本発明にかかるPCB含有油泥処理方法の代表的な構成は、PCBが付着した微粉末を含む油泥を、加熱し、かつ減圧することにより、溶剤を蒸気化して乾燥させる脱液工程を含むPCB含有油泥処理方法であって、脱液工程は、濾布袋に油泥を充填する充填工程と、脱液装置の蓋に備えられたエアシリンダによって圧迫板を濾布袋に付勢しながら乾燥させる乾燥工程と、を含むことを特徴とする。
【0034】
上述したPCB含有油泥処理装置の技術的思想に基づく構成要素やその説明は、当該PCB含有油泥処理方法にも適用可能である。
【0035】
上記のシリンダ内の空間のうち、ピストンに対して圧迫板と反対側を上室、ピストンに対して圧迫板側を下室とするとき、乾燥工程は、上室を減圧状態とし且つ下室を大気開放状態として圧迫板を蓋に引き寄せ、脱液装置の蓋を閉じて圧迫板と濾布袋とを正対させ、上室を大気開放状態とし且つ下室を減圧状態として圧迫板を濾布袋に付勢し、脱液装置内を減圧しながら加熱するとよい。
【0036】
上記構成によれば、シリンダ内の空間を上室および下室の2つの室に仕切り、ピストン内の上室と下室とに圧力差を生じさせることにより、その圧力差を利用して圧迫板を濾布袋に付勢させることができる。
【0037】
上記の脱液装置内を加熱した後に、さらに所定のタイミングで上室を窒素注入状態とし且つ下室を大気開放状態もしくは減圧状態とすることにより、圧迫板を濾布袋に付勢する圧力を変更するとよい。
【0038】
脱液装置内を減圧および加熱し、油泥の脱液および乾燥をする際に、上述のように上室および下室の状態を変化させることによって、油泥の乾燥状態に応じて濾布袋への圧力を調整することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明にかかるPCB含有油泥処理装置およびPCB含有油泥処理方によれば、油泥の状態に応じて脱液装置の圧迫板の圧力を調節することにより、濾布袋から油泥を漏出させることなく、効率的に油泥を乾燥させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0041】
[PCB処理装置]
図1は機器のPCB無害化処理を行う装置の概略構成を示す図であって、本実施形態にかかるPCB含有油泥処理装置の処理対象となる「PCBが付着した微粉末を含む油泥」が生じる過程について説明する。
【0042】
図1に示すPCB処理装置500は、処理対象となる機器の例としての柱上変圧器の洗浄と再資源化を行うための設備である。PCB処理装置500は大別して、受入解体設備510と、洗浄設備520、判定設備530、払出設備540を備えている。
【0043】
受入解体設備510では、一時保管所512に受け入れられた機器を解体ライン514において碍子、金属、ケース(鉄)、木材などの材質に応じて分解する。特に柱状変圧器では鉄心と銅製のコイルを分離機516において分解する。これらの解体や分離された被処理物は材質毎に分類し、所定の形状と容量を有するバケット(不図示)に入れられた状態で洗浄設備520の洗浄機522へと搬送される。
【0044】
洗浄設備520では、被処理物は洗浄機522においてバケットごと溶剤に浸漬される。被処理物には主として表面にPCBが付着しており、浸積洗浄および超音波洗浄によって洗浄される。洗浄に用いる溶剤としては既知の様々なものを使用することができるが、例えばウンデカン(C1124)などの有機化合物を利用することができる。コイルには絶縁紙が巻き付けられているため、洗浄後に破砕機/選別機524へと搬送して銅と絶縁紙を分離・選別した後に、さらに銅線は銅二次洗浄機525において再度洗浄する。分離した絶縁紙は、焼却処分によって高温無害化することができる。洗浄した被処理物、および二次洗浄したコイルの銅線は、判定設備530の判定機532へと搬送される。
【0045】
判定設備530において、判定機532では、溶剤に洗浄後の被処理物等を浸漬し、溶剤のPCB濃度を測定することにより、卒業(洗浄が完了したか否か)を判定する。卒業判定に合格すると、払出設備540の払出前保管所542に一時的に保管された後に払い出しされ、再利用できる材質はリサイクル設備へと搬出され、再利用できないものは産業廃棄物として焼却処分などの適正な処理が施される。
【0046】
上記構成のPCB処理装置において、洗浄機522または銅二次洗浄機525で使用した溶剤は、使用済溶剤の受入槽527に回収され、蒸留塔528において再生処理された後に、循環して再利用される。一方、受入解体設備510において分解や破砕された被処理物には、微粉末を含む破片が付着しており、洗浄によって溶剤に混入して溶剤と共に回収される。洗浄機522や銅二次洗浄機525と受入槽527の間にはストレーナ526が配置されており、40メッシュのフィルタによって大きめの破片を回収している。しかし数nmから数μmくらいの大きさのものはストレーナ526では分離できず、使用後の溶剤と共に受入槽527や蒸留塔528に導入され、その底部に蓄積する。この蓄積した破片は、油泥としてPCB処理装置の定期点検ごとに排出される。
【0047】
油泥はPCBが付着した微粉末を含み、微粉末は金属粉のスラッジから木片、紙粉など様々なものが含まれており、材質も比重も多種多様である。洗浄機522や銅二次洗浄機525において溶剤に浸漬されていることからPCBの濃度は低下しているものの、完全には除去されておらず、極めて微量ながらも処理すべき濃度のPCBが残留している。そこで本発明は、以下のPCB含有油泥処理装置およびPCB含有油泥処理方法によって、油泥の処理を行う。
【0048】
[PCB含有油泥処理装置およびPCB含有油泥処理方法]
図2〜図4は本実施形態にかかるPCB含有油泥処理装置を示す図であって、図2はPCB含有油泥処理装置の正面図、図3はPCB含有油泥処理装置の側面図、図4はPCB含有油泥処理装置の平面図である。
【0049】
図2乃至図4に示すPCB含有油泥処理装置(以下、単に「処理装置100」という。)は大別して、撹拌分離部200と、計量移送部220と、脱液乾燥部240とを備えている。
【0050】
図2に示すように、撹拌分離部200には、PCBが付着した微粉末を含む油泥がドラム缶102に収容されて搬入される。ドラム缶102はローラコンベア202によって撹拌槽204へと移動し、パワーシリンダー206によって持ち上げられつつ傾けられ、油泥を撹拌槽204へと投入する。また撹拌槽204へは、PCBを洗浄するための溶剤が、例えば油泥と同量程度投入される。ここで用いる溶剤は、上記説明したPCB処理装置500において用いた溶剤と同じであることが好ましい。
【0051】
撹拌槽204には、貯留した油泥と溶剤の混合液を撹拌する撹拌装置208と、油泥が沈降した後に上澄みの溶剤を抜き出す溶剤抜出装置210とを備えている。また撹拌槽204は、撹拌中に撹拌槽204を密閉するための蓋204aと、撹拌槽204内に沈降した油泥を計量槽224へ払い出すための排出口204cを備えている。
【0052】
撹拌装置208はモータ208aの駆動軸の先端に撹拌羽根208bを備えている。撹拌羽根208bは撹拌槽204の底部近傍に配置されており、貯留した混合液に下降流を生じさせることにより機械撹拌する。一方、撹拌槽204の底面には、撹拌装置208による下降流と対向する位置に傾斜面204bが形成されており、下降流を傾斜面204bに沿わせることによって上昇流に変換している。これにより撹拌槽内全体を循環する流れを生成し、よりよく撹拌を行うことができる。
【0053】
溶剤抜出装置210は、図3に示すように、撹拌槽より下方に設置された溶剤貯槽212と、一端が溶剤貯槽212に接続され他端が撹拌槽204内の溶剤に挿入された吸引管214とを有している。
【0054】
上記構成の撹拌槽204、撹拌装置208、溶剤抜出装置210を用いて、油泥に付着したPCBを処理する工程について説明する。まず撹拌槽204に油泥と溶剤を投入して貯留し、撹拌装置208を用いて混合液を所定時間(例えば1時間)撹拌する(撹拌工程)。その後、所定時間(例えば12時間)静置し、油泥を沈降させ、油泥が沈降した後の上澄みの溶剤を抜き出す(溶剤抜出工程)。
【0055】
次に抜き出した溶剤のPCB濃度を測定し、基準値以下であるか否かを判定する。基準値以上であった場合には、撹拌槽に再び溶剤を補充し、基準値以下となるまで撹拌工程〜溶剤抜出工程を繰り返す。基準値以下であった場合には、撹拌槽204の排出口204c(図2参照)から計量槽224へ払い出しをする。
【0056】
上記構成によれば、PCBが付着した微粉末を含む油泥を、無害化処理した後に、溶剤と微粉末とを分離させることができる。すなわち、油泥に含まれる微粉末の大きさが数nmから数μm程度と極めて小さいとき、フィルタを用いて捕捉しながら通液しようとすれば目詰まりを生じてしまって効率が著しく低下するが、上記のように静置による沈降を行うことにより、高速かつ効果的に分離することができる。なお、一般に微粉末は沈降が遅いが、撹拌することにより逆に早期に沈降することがわかった。これは、底部に溜まった金属粉を撹拌によって巻き上げることにより、溶剤中に浮遊する紙粉などを付着させ、もしくは紙粉を分散させることによって沈降を促進させることができると考えられる。
【0057】
また、油泥のPCB濃度を直接測定することは困難であるが、抜き出した溶剤のPCB濃度を測定することにより、油泥のPCB濃度を間接的に測定して無害化処理の達成を判定することができる。
【0058】
なお吸引管214は、撹拌槽204側の先端が昇降可能となっており、溶剤に上方から進入することができる。堆積した油泥の高さに応じて吸引管を下降させることにより、堆積した油泥の表面近傍の溶剤まで吸引することができる。また、吸引管214の先端には集液桶214a(図3参照)が備えられており、吸引する際の溶剤の流れによって油泥を巻き上げてしまうことを防止することができる。
【0059】
計量移送部220は撹拌槽から脱液乾燥部240へと油泥を移送するものであって、所定の容量を有する計量槽224と、撹拌槽204と計量槽224との間の経路を開閉する第1バルブ222と、計量槽224と脱液装置との間の経路を開閉する第2バルブ226とから構成される。
【0060】
計量移送部220においては、第1バルブ222を開き、撹拌槽204に沈殿した油泥を計量槽224に移送し、計量槽224が充填されたら第1バルブ222を閉塞する。次に、第2バルブ226を開き、脱液乾燥部240へと油泥を移送する(油泥移送工程)。ここで、計量槽224を所定の容量(例えば10リットル)としていることにより、極めて簡易に、一定量の油泥を移送することができる。かかる計量槽224は、上端が撹拌槽204内の混合液の液面より上方に位置する空気抜き管228を有している。これにより油泥移送工程時に、第1バルブ222を締めるのが遅れたとしても、計量槽224から油泥があふれ出ることを防止することができる。
【0061】
[脱液装置および脱液工程]
図5〜図7は本実施形態にかかる脱液装置の構成を示す図であって、図5は脱液装置の正面図、図6は脱液装置の側断面図、図7は脱液装置の平面図である。
【0062】
脱液乾燥部240の脱液装置300は、減圧装置302(図4参照)、加熱装置304、凝縮器306(図4参照)を備えている。脱液工程においては、脱液装置300内を減圧装置302によって減圧し、加熱装置304によって濾布袋内の油泥を加熱することによって、油泥に含まれる溶剤を蒸気化し、油泥を脱液および乾燥する。そして、凝縮器306によって脱液装置300から排出されたガスを冷却して液化させ、排出された水と溶剤を回収して再利用することが可能となる。
【0063】
図5に示すように、脱液装置300は油圧装置242によって開閉可能な蓋310を有し、蓋310を閉塞して密封することによって、脱液装置300を真空容器とすることができる。また脱液装置300の内部には、油泥を充填するための濾布袋380を支持および載置するための載置台308が設けられており、計量移送部220から移送された油泥は濾布袋380の内部に充填される。載置台は油泥の進入方向に対して下方に向かって約15°以上傾斜しており、濾布袋380中に油泥を円滑に導入することができる。傾斜角度は油泥の粘度(密度)にもよるが、15°以下では流動性が悪く、濾布袋380内に円滑に充填することが難しい。一方、加熱性と濾布袋の成形性(平坦性)は、傾斜角度が小さいほど好ましい。このため、傾斜は水平に対して15°程度とすることが好ましい。
【0064】
載置台308の下面には加熱装置304が設けられており、載置台308を加熱することによって濾布袋380を直接加熱する。減圧した状態において脱液装置300の外壁から加熱したとしても、熱伝達媒体となるべき空気がほとんど存在しないため、油泥を加熱することが困難である。そこで濾布袋380の載置台308を加熱することにより、効率的に熱を伝達し、溶剤の蒸気化を促進することができ、乾燥効率を向上させることが可能となる。
【0065】
また加熱装置304は、載置台308の傾斜方向の上方と下方に2分割して設けられており、独立して温度制御可能となっている。これにより、脱液が進行し、濾布袋380内の油泥の上方よりも下方の方により多くの溶剤が残留し、上方が乾燥した場合、すなわち、上方のヒータの温度が所定温度以上に上昇した場合にはその加熱を低下または停止させることにより、効率的に脱液することができる。
【0066】
濾布袋380は柔軟性を有するフィルタによって袋体を形成したものである。柔軟性を有するフィルタは硬質のものよりも目の細かいフィルタを採用しやすく、また洗浄によって目詰まりを取り除きやすい。また交換可能な袋体とすることにより、設置式のフィルタよりもバッチ処理が容易である。濾布袋の具体例としては、石炭灰用の網目の非常に細かい袋を用いることができる。
【0067】
また蓋310は、濾布袋380の開口部を押さえて封止する閉塞部材320と、濾布袋380のほぼ全面を載置台308に向かって圧迫する圧迫板330と、圧迫板330を濾布袋380に向かって進退させるエアシリンダ340と、を備えている。油泥に含まれる溶剤が蒸気化して脱液される際に、圧迫板330が濾布袋380を圧迫していることにより、濾布袋380(すなわち油泥)を平坦に成形する。また、圧迫板330で濾布袋380を圧迫することにより、濾布袋380に充填された油泥に含まれる溶剤の一部が圧搾されて脱液することができる。かかる圧迫板330は多数の開口を有しており、圧迫板330による圧搾で濾布袋380の表面から漏出する溶剤を円滑に流出させることができる。多数の開口を有する圧迫板の例としては、パンチングメタル、網体、枠体などで構成することができる。
【0068】
閉塞部材320は濾布袋380の開口部に向かってバネ部材によって付勢されている。バネ部材はバネの長さによってバネ圧が定められるため、閉塞部材はバネ部材の一定の圧力によって濾布袋の開口部を付勢することができる。また、閉塞部材320は、圧迫板330よりも濾布袋380に向かって突出して配置され、閉塞部材320の方が圧迫板330よりも強く濾布袋380に付勢される。これにより、脱液装置の蓋を閉じるという1つの段取りによって、閉塞部材320で濾布袋380の開口部を封止して濾布袋380から油泥が漏出することを低減しつつ、同時に濾布袋380の全面を圧迫することができる。上記バネ部材としてコイルばねを図示しているが、板バネなど他の弾性部材を用いてもよい。なお閉塞部材320を付勢する付勢部材としては、弾性部材に限定するものではなく、例えばリンク機構などを用いた押圧部材であってもよい。
【0069】
圧迫板330は、蓋310に備えられているエアシリンダ340によって濾布袋に向かって進退可能に支持されている。エアシリンダ340は、シリンダ342と、シリンダ342内のピストン344から構成される。圧迫板を進退させるためにエアシリンダを用いることにより、油泥の状態(密度)にかかわらず一定の圧力で濾布袋を押圧することができると共に、油泥の乾燥状態に応じて圧迫板の圧力を調節することができる。これにより、圧迫板の過剰な圧力によって生じる濾布袋からの油泥の漏出や、圧搾不足による乾燥効率低下等の問題を解決することができる。
【0070】
また、図6の円内(拡大図)に示すように、エアシリンダ340は、シリンダ342とピストン344との間に空隙を有している。これによって、ピストン344と接合している圧迫板330が濾布袋380を圧迫するとき、シリンダ340内の空隙から気体が漏れ、濾布袋380に圧迫板330が衝突する際の衝撃荷重を緩和する。更に、かかる空隙により、シリンダ342とピストン344の接触による摩擦を低減し、ピストン344がシリンダ342を円滑に動くことができる。
【0071】
ピストン344は、シリンダ342内の空間を、ピストン344に対して圧迫板330と反対側にある上室342aと、ピストン344に対して圧迫板330側にある下室342bとに仕切っている。そして、脱液装置300の蓋310には、かかる上室342a内への気体の注入、または減圧、もしくは大気開放を切り替える上室マニホールド360と、かかる下室342b内への気体の注入、または減圧、もしくは大気開放を切り替える下室マニホールド362とが備えられている(図7参照)。
【0072】
シリンダ342内の上室342aおよび下室342bの気体の状態は、上室マニホールド360および下室マニホールド362を切り替えることにより、簡便に変化させることができる。そして、これによってシリンダ342内の上室342aの圧力と下室342bの圧力に圧力差を生じさせ、その圧力差によってピストン344を動作させ、ピストン344に接合されている圧迫板330を濾布袋380に圧迫させることができる。
【0073】
上述した上室342aおよび下室342bの気体状態は、上室342aを大気開放状態とし且つ下室342bを減圧状態とする、または、上室342aを窒素注入状態とし且つ下室342bを大気開放状態もしくは減圧状態とすることによって、圧迫板330を濾布袋380に圧迫する。
【0074】
上室342aが大気開放状態であるとき、上室342aの圧力は1気圧(大気圧)であり、下室342bが減圧状態であるとき、下室342bの圧力は1気圧未満である。したがって、下室342bの圧力は上室342aの圧力よりも低くなるため、ピストン344はシリンダ342内を降下し、ピストン344に接合されている圧迫板330が濾布袋380を圧迫する。また、上室342aが窒素注入状態であるとき、上室342aの圧力は1気圧より高く、下室342bが大気開放状態であるとき、下室342bの圧力は1気圧(大気圧)である。したがって、下室342bの圧力は上室342aの圧力よりも低くなり、上述のように圧迫板330は濾布袋380を圧迫する。このとき、下室342bを減圧状態とすることにより、上室342aと下室342bの圧力差を増大させることができ、圧迫板はより高い圧力で濾布袋を圧迫することが可能となる。
【0075】
上述したように、上室342aの状態および下室342bの状態を、気体の注入、または減圧、もしくは大気開放のいずれかの状態に切り替えることによって、圧迫板の圧力を調整することができるため、油泥の乾燥状態に応じた圧力で濾布袋を圧迫することが可能となる。
【0076】
蓋310には更に、濾布袋380内の油泥の乾燥状態を表示するインジケータ350が備えられている。インジケータ350は、蓋310を貫通する貫通孔352と、貫通孔352に摺動自在に貫入され一端が自重によって圧迫板330に当接する軸部材354と、軸部材354を内包して貫通孔352を封止する略透明な真空筒356と、真空筒356に設けられ軸部材354の位置を示す目盛り358とから構成されている。
【0077】
脱液工程において、軸部材354は自重によって落下し、圧迫板330に当接している。したがって濾布袋380内の溶剤の残量が多いときにはインジケータ350の軸部材354は大きく突出し、濾布袋380内の溶剤がほとんど蒸発しきったときには軸部材354は所定位置まで沈降する。したがって、目盛り358が示す軸部材354の位置を見ることにより、脱液装置300を開閉することなく濾布袋内の油泥の乾燥状態を把握することが可能となる。また軸部材354が圧迫板330に固定されておらず、当接しているだけであることから、乾燥が継続しているときには沸騰の振動で軸部材354が微細振動を生じていることが観察されるが、乾燥が完了すると静止することにより、乾燥の完了を確認することができる。
【0078】
図4に示すように、脱液装置300には凝縮器306および第1ドレン回収ポット370を介して減圧装置302が接続されている。脱液装置300から排出された蒸気は凝縮器306によって冷却して液化され、水または溶剤として第1ドレン回収ポット370に蓄積され、それを回収して再利用することができる。
【0079】
また図3に示すように、脱液装置300には第2ドレン回収ポット372が接続されており、脱液装置300内で滴下した溶剤および水を回収するよう構成されている。
【0080】
図8は脱液工程を説明するフローチャート、図9はシリンダの状態を説明する図である。まず濾布袋380を脱液装置300内の載置台308の上に設置し(S402)、計量槽224から油泥を充填する(充填工程:S404)。濾布袋380は容量に制限が生じるが、上記の油泥移送工程によれば一定量ずつの油泥を移送することができるため、好適に濾布袋を充填することができる。
【0081】
次に、上室マニホールド360を切り替えることにより、シリンダ342内の上室342aを減圧状態とし、下室342bを大気開放状態とすることにより、圧迫板330を蓋310側に引き寄せるすなわち、圧迫板330を蓋310側に上昇させる(S406、図9(a))。そして、油圧装置242を動作させ、蓋310を閉じることにより脱液装置300を密封しつつ、圧迫板330と濾布袋380とを正対させ、閉塞部材320によって濾布袋380の開口部を圧迫して封止する(S408)。
【0082】
そして、上室マニホールド360を大気に対して弁を微開にしつつ、下室マニホールド362を切り換えて下室342bを減圧状態とし(図9(b))、圧迫板330を降下させる(S409)。このときシリンダ342とピストン344の間に空隙が形成されているため、圧迫板330が濾布袋380に衝突した際にエアが漏れることにより、衝突する際の衝撃荷重を緩和することができる。
【0083】
圧迫板330が濾布袋380に当接した後に、上室マニホールド360を切り替えて上室342aを大気開放状態とし、下室マニホールド362を必要に応じて調節して下室342bを減圧状態とすることによって、圧迫板330を濾布袋380に付勢し、濾布袋380の全面を圧迫する(S410、図9(c))。濾布袋380は、油泥に含まれる微粉末が極めて小さい粒子であることから即座に目詰まりするが、少量の水または溶剤は圧搾されて脱液される。このとき滴下した液体は、第2ドレン回収ポット372に回収する。
【0084】
次に、減圧装置302によって脱液装置300の内部を真空に近い程度まで減圧しつつ、加熱装置304によって加熱する(減圧加熱乾燥工程:S412)。濾布袋380は、圧搾時に油泥中の微粉末によって目詰まりを起こし、乾燥効率が著しく低下する。しかしながら、減圧加熱乾燥工程によって溶剤を蒸気化すれば円滑にフィルタを通過することができるため、目詰まりしているか否かにかかわらず脱液および乾燥することができ、乾燥効率を向上することが可能となる。したがって、本実施形態は、極めて粒子の小さい微粉末が含まれる油泥の脱液および乾燥に特に効果を発揮する。
【0085】
減圧加熱乾燥工程において、油泥に含まれる溶剤が蒸気化し脱液が進行すると、濾布袋380内に液体成分がほぼなくなるため、圧力を上げても漏出することがなくなる。したがって、所定のタイミングで、上室マニホールド360を切り替えて上室342aを窒素注入状態とし、下室マニホールド362を必要に応じて調節して下室342bを減圧状態とする(圧力変更工程:S414、図9(d))。これにより、圧迫板330を濾布袋380に付勢する圧力を変更し、圧迫板330は効率的に濾布袋380を圧搾することができる。
【0086】
なお、圧力変更工程(S414、図9(d))において、上室マニホールド360に作用する窒素注入圧力によっては、下室マニホールド362を大気開放状態へと切り替えても、圧迫板330を濾布袋380に付勢するのに十分な圧力を作用させることができる。しかし、脱液装置300の内部が減圧加熱状態であることから、下室マニホールド362から脱液装置300の内部に大気が漏出して圧力が上昇するリスクを避けるため、下室マニホールド362は減圧状態とすることが好ましい。また、濾布袋380の圧迫(S410、図9(c))の際に、圧迫板330を濾布袋380に付勢するのに十分な圧力を作用できるのであれば、窒素注入圧力を用いた圧力変更工程(S414)は必須ではない。
【0087】
濾布袋に充填された油泥中の微粉末の量が多い場合と少ない場合、すなわち、密度が高い油泥の場合と密度が低い油泥の場合とでは、脱液が進行した後の濾布袋の厚みが異なる。このような場合にも、エアシリンダを用いることにより、エアの気圧によって圧迫板を押圧することから、油泥の状態(密度)にかかわらず圧迫板を所定の圧力で押圧(圧迫)することができる。換言すれば、油泥の状態に応じて、圧力を一定に調節することができる。
【0088】
減圧加熱乾燥工程および圧力変更工程においては、加熱温度は60℃以下とする。特に溶剤としてウンデカン(C1124)を用いる場合には、引火点が70℃であるため、安全性を考慮して60℃以下とすることが好ましい。
【0089】
減圧加熱乾燥が進行すると、濾布袋380中の油泥の上方よりも下方の方により多くの溶剤が残留し、上方が先に乾燥する。そこで上下の加熱装置304の温度をそれぞれ監視し(S416)、上方の加熱装置の温度が所定温度以上に上昇した場合(上方が乾燥した場合)には、その加熱を低下または停止させる(S418)。これにより、効率的に脱液することができる。
【0090】
さらに減圧加熱乾燥を行っている間は、凝縮器306の入口温度を監視し(S420)、温度が所定温度より高い間は水であるとして回収し(S422)、温度が急激に低下し、所定温度より低くなった後は溶剤であるとして回収する(S424)。油泥には溶剤ばかりではなく水も混入しているが、水は廃棄処理し、溶剤は蒸留して再使用するため、別離して回収する要請がある。水と溶剤とでは蒸気圧の差異から水の方が先に蒸発するが、水分蒸発が終了すると溶媒が蒸発を開始まで蒸気の流れが途絶えるために、凝縮器の入口温度が低下する。また系内に水が存在する条件では沸点の低い溶媒は蒸発しないので、水が凝縮器に凝集しきった段階で、水を系外に排出した後、真空度を上げて溶剤の蒸発、回収を行う必要がある。そこで、この温度低下を検知することにより、水と溶剤とを分離して回収することができる。
【0091】
そして、減圧加熱乾燥を所定時間継続し(S426)、所定時間が継続したら加熱および減圧を停止する(S428)。なお所定時間は、油泥に含まれる水および溶剤の潜熱および熱損失から概ね算出することができる。次に、上室マニホールド360を切り替えることにより、シリンダ342内の上室342aを減圧状態とし、下室342bを大気開放状態とすることにより、圧迫板330を蓋310側に上昇させる(S430、図9(a))。
【0092】
そして、上述した乾燥工程(S406〜S430)終了後、油圧装置242を動作させ、蓋310を開き、脱液(乾燥)が終了した濾布袋380を取り出す(S432)。濾布袋380は、圧迫板330によって圧迫されながら乾燥されたため平坦となっており、既存のPCB処理装置500のバケットに収容することができる。そして図1に示した洗浄機522に投入し、通常の機器の被処理物と同様にPCB卒業判定装置にかけることができ、新たに専用の卒業判定装置を設ける必要がない。
【0093】
上記説明したように、濾布袋380に油泥を充填する充填工程と、脱液装置300の蓋に備えられたエアシリンダ340によって圧迫板330を濾布袋380に付勢しながら乾燥させる乾燥工程を含む脱液工程によって、油泥に含まれる溶剤を効率的に脱液し、油泥を乾燥することができる。また、エアシリンダ340のピストン内の上室342aと下室342bとに圧力差を生じさせ、その圧力差を利用して圧迫板330によって濾布袋380を圧迫することにより、濾布袋に一定の圧力をかけることができる。
【0094】
なお、減圧装置302には、不図示の水分離装置を設けていてもよい。凝縮器306で液化して第1ドレン回収ポット370で回収するとしても、特に凝縮器306の能力が足りないと減圧装置302まで蒸気が到達して液化するためである。特に減圧装置302が油回転真空ポンプである場合には、動作油に水が混入すると動作油が浮いてしまい、動作不良を招くおそれがあるため、水分離装置を設けることは有効である。
【0095】
また図2に示したように、撹拌槽204または脱液装置300の上方に排気ダクト104を配置し、排気ダクトからの排気経路に活性炭フィルタを設けてもよい。これにより排出される雰囲気ガスに仮に微量のPCBが混入していたとしても、確実に吸収して漏洩を防止することができる。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0097】
例えば濾布袋380は内部の油泥を掻き出して再利用することも可能であるが、濾布袋として石炭灰用の袋を使用した場合は燃やしても有毒ガスを生じないため、乾燥させた汚泥を収容したまま焼却処分することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、PCBが付着した微粉末を含む油泥を無害化処理するPCB含有油泥処理装置およびPCB含有油泥処理方法として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】機器のPCB無害化処理を行う装置の概略構成を示す図である。
【図2】PCB含有油泥処理装置の正面図である。
【図3】PCB含有油泥処理装置の側面図である。
【図4】PCB含有油泥処理装置の平面図である。
【図5】脱液装置の正面図である。
【図6】脱液装置の側断面図である。
【図7】脱液装置の平面図である。
【図8】脱液工程を説明するフローチャートである。
【図9】シリンダの状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0100】
100…処理装置、102…ドラム缶、104…排気ダクト、200…撹拌分離部、202…ローラコンベア、204…撹拌槽、204a…蓋、204b…傾斜面、204c…排出口、206…パワーシリンダー、208…撹拌装置、208a…モータ、208b…撹拌羽根、210…溶剤抜出装置、212…溶剤貯槽、214…吸引管、214a…集液桶、220…計量移送部、222…第1バルブ、224…計量槽、226…第2バルブ、228…空気抜き管、240…脱液乾燥部、242…油圧装置、300…脱液装置、302…減圧装置、304…加熱装置、306…凝縮器、308…載置台、310…蓋、320…閉塞部材、330…圧迫板、340…エアシリンダ、342…シリンダ、342a…上室、342b…下室、344…ピストン、350…インジケータ、352…貫通孔、354…軸部材、356…真空筒、358…目盛り、360…上室マニホールド、362…下室マニホールド、370…第1ドレン回収ポット、372…第2ドレン回収ポット、380…濾布袋、500…PCB処理装置、510…受入解体設備、512…一時保管所、514…解体ライン、516…分離機、520…洗浄設備、522…洗浄機、524…破砕機/選別機、525…銅二次洗浄機、526…ストレーナ、527…受入槽、528…蒸留塔、530…判定設備、532…判定機、540…払出設備、542…払出前保管所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCBが付着した微粉末を含む油泥を乾燥させるための脱液装置を備えるPCB含有油泥処理装置であって、
前記脱液装置は、
該脱液装置を密封するための蓋と、
該脱液装置内を減圧する減圧装置と、
油泥を充填する濾布袋を支持する載置台を備え、
前記蓋には、
前記濾布袋の開口部を押さえて封止する閉塞部材と、
前記濾布袋のほぼ全面を前記載置台に向かって圧迫する圧迫板と、
前記圧迫板を前記濾布袋に向かって進退させるエアシリンダとを備えたことを特徴とするPCB含有油泥処理装置。
【請求項2】
前記エアシリンダは、
シリンダと、
前記シリンダ内に、該シリンダとの間に空隙を有するピストンとを備えたことを特徴とする請求項1に記載のPCB含有油泥処理装置。
【請求項3】
前記シリンダ内の空間は、前記ピストンによって、
前記ピストンに対して圧迫板と反対側にある上室と、
前記ピストンに対して圧迫板側にある下室とに仕切られ、
さらに前記脱液装置には、
前記上室内への気体の注入、または減圧、もしくは大気開放を切り替える上室マニホールドと、
前記下室内への気体の注入、または減圧、もしくは大気開放を切り替える下室マニホールドとを備え、
前記上室と前記下室の圧力差を用いて前記圧迫板を濾布袋に圧迫することを特徴とする請求項2に記載のPCB含有油泥処理装置。
【請求項4】
前記脱液装置は、前記上室を大気開放状態とし且つ前記下室を減圧状態とすることにより、または、前記上室を窒素注入状態とし且つ前記下室を大気開放状態もしくは減圧状態とすることによって、前記圧迫板を濾布袋に圧迫することを特徴とする請求項3に記載のPCB含有油泥処理装置。
【請求項5】
前記閉塞部材は、バネ部材によって前記濾布袋の開口部に付勢することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のPCB含有油泥処理装置。
【請求項6】
前記蓋には、前記濾布袋内の油泥の乾燥状態を表示するインジケータを備え、
前記インジケータは、
前記蓋を貫通する貫通孔と、
前記貫通孔に摺動自在に貫入され一端が自重によって前記圧迫板に当接する軸部材と、
前記軸部材を内包して前記貫通孔を封止する略透明な真空筒と、
前記真空筒に設けられ前記軸部材の位置を示す目盛りと、
から構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のPCB含有油泥処理装置。
【請求項7】
PCBが付着した微粉末を含む油泥を、加熱し、かつ減圧することにより、溶剤を蒸気化して乾燥させる脱液工程を含むPCB含有油泥処理方法であって、
前記脱液工程は、
濾布袋に前記油泥を充填する充填工程と、
前記脱液装置の蓋に備えられたエアシリンダによって圧迫板を前記濾布袋に付勢しながら乾燥させる乾燥工程と、を含むことを特徴とするPCB含有油泥処理方法。
【請求項8】
前記シリンダ内の空間のうち、ピストンに対して圧迫板と反対側を上室、ピストンに対して圧迫板側を下室とするとき、
前記乾燥工程は、
前記上室を減圧状態とし且つ前記下室を大気開放状態として前記圧迫板を前記蓋に引き寄せ、
前記脱液装置の蓋を閉じて前記圧迫板と前記濾布袋とを正対させ、
前記上室を大気開放状態とし且つ前記下室を減圧状態として前記圧迫板を前記濾布袋に付勢し、
前記脱液装置内を減圧しながら加熱することを特徴とする請求項7に記載のPCB含有油泥処理方法。
【請求項9】
前記脱液装置内を加熱した後に、
さらに所定のタイミングで前記上室を窒素注入状態とし且つ前記下室を大気開放状態もしくは減圧状態とすることにより、前記圧迫板を前記濾布袋に付勢する圧力を変更することを特徴とする請求項8に記載のPCB含有油泥処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−208022(P2009−208022A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55275(P2008−55275)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(591130319)東電環境エンジニアリング株式会社 (27)
【Fターム(参考)】