説明

PCB汚染フィルム素子の処理装置

【課題】PCB汚染フィルム素子の洗浄後に残留する洗浄溶剤の濃度を低下させ、保管施設内の作業環境の悪化を防止することができるPCB汚染フィルム素子の処理装置を提供する。
【解決手段】細分化(粉砕、裁断等)されたPCB汚染フィルム素子11をPCB除去洗浄溶剤(IPA、NS100、ヘキサン等)12で洗浄するPCB除去洗浄装置13と、洗浄されたPCB除去フィルム素子14を仕上げ洗浄溶剤15で仕上げ洗浄する第1の仕上げ洗浄装置16Aと、前記第1の仕上げ洗浄装置16Aで洗浄した後、PCB除去フィルム素子14中の残留PCB濃度を判定する判定装置17と、判定合格PCB除去フィルム素子14Aを乾燥する乾燥装置18とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCB汚染フィルム素子の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PCBは、従来からトランスやコンデンサなどの絶縁油として広く使用されてきた経緯があるが、その毒性が強いことにより、PCBを処理する必要がある。このため、PCBを無害化処理する種々の分解方法が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
ここで、PCB無害化装置はPCBのみを処理するものであるが、一方のPCBを抜き出したPCB汚染容器等は有機溶剤や界面活性剤等の洗浄液により洗浄処理が施されて、容器の無害化を図っている(特許文献4)。
また、蛍光灯安定器、トランス、コンデンサ等の紙素子のPCB除去を行うために、アルコール洗浄剤として、イソプロピルアルコール(以下「IPA」ともいう。)を用い、除去されたPCBを含むIPAは水熱分解処理装置でPCBを分解することを先に提案した(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−253795号公報
【特許文献2】特開平11−253796号公報
【特許文献3】特開2000−126588号公報
【特許文献4】特開2002−248455号公報
【特許文献5】特開2005−21830号公報
【特許文献6】特開2010−137156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献5の洗浄法は、PCBを確実に除去することができるものの、洗浄液のイソプロピルアルコールが多量に、しかも高濃度で紙素子が保管されることとなる。このイソプロピルアルコールは、沸点が82.4℃と通常の有機溶剤(ヘキサン、アセトン等)よりは高いので、洗浄素子からなかなか除去できない、という問題がある。
【0006】
このような高濃度のイソプロピルアルコール(IPA)を含む例えばフィルム素子等は、保管管理する場合に、そのIPA臭対策等の厳重な管理が必要となる。
【0007】
また、紙素子は上質紙であるので再利用が可能であるが、イソプロピルアルコールを多量に含む場合には、再利用に関する作業環境が悪化すると共に、ハンドリング性が困難である、という問題がある。
【0008】
そこで、本発明者等は、先に、紙素子からのイソプロピルアルコールを、洗浄水を用いて除去する除去装置の提案をした(特許文献6)。
【0009】
しかしながら、特許文献6の提案では、洗浄水を多量に使用する結果、洗浄排水の処理として、水熱分解処理装置で処理する必要があり、水熱分解処理装置での処理負荷がかかるという問題がある。このため、水熱分解処理装置での負荷が無い、イソプロピルアルコール等の洗浄溶剤を除去することが切望されている。
【0010】
また、紙素子以外のフィルム素子(PP等)からPCBを洗浄する場合、フィルム素子の裁断物をメッシュ状袋に入れて、浸漬洗浄し、その後乾燥するが、乾燥が不十分な場合や、素子同士の間に、洗浄剤が残留する場合には、洗浄溶剤が保管場所に充満する、という問題がある。
IPAは蒸気密度(空気=1)が2.1であり、空気より重いので、保管施設内作業環境中に、降下拡散して、作業者の作業域(立ち位置)で高濃度化してくる、という課題がある。特に、作業が連続して行われる場合、外部への払い出し期間が遅くなり、保管倉庫に長期保管される場合には、これが顕著となり、作業環境の悪化となる。
【0011】
そこで、PCB汚染フィルム素子の洗浄後に残留する洗浄溶剤の濃度を低下させ、保管施設内の作業環境の悪化を防止する対策が切望されている。
【0012】
本発明は、前記問題に鑑み、PCB汚染フィルム素子の洗浄後に残留する洗浄溶剤の濃度を低下させ、保管施設内の作業環境の悪化を防止することができるPCB汚染フィルム素子の処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、PCB汚染フィルム素子をPCB除去洗浄溶剤で洗浄するPCB除去洗浄装置と、洗浄されたPCB除去フィルム素子を仕上げ洗浄溶剤で仕上げ洗浄する第1の仕上げ洗浄装置と、前記第1の仕上げ洗浄装置で洗浄した後、PCB除去フィルム素子中の残留PCB濃度を判定する判定装置と、判定合格PCB除去フィルム素子を乾燥する乾燥装置とを具備することを特徴とするPCB汚染フィルム素子の処理装置にある。
【0014】
第2の発明は、PCB汚染フィルム素子をPCB除去洗浄溶剤で洗浄するPCB除去洗浄装置と、洗浄されたPCB除去フィルム素子中の残留PCB濃度を判定する判定装置と、判定合格PCB除去フィルム素子を仕上げ洗浄溶剤で再度仕上げ洗浄する第2の仕上げ洗浄装置と、前記第2の仕上げ洗浄装置で洗浄した後、判定合格PCB除去フィルム素子を乾燥する乾燥装置とを具備することを特徴とするPCB汚染フィルム素子の処理装置にある。
【0015】
第3の発明は、PCB汚染フィルム素子をPCB除去洗浄溶剤で洗浄するPCB除去洗浄装置と、洗浄されたPCB除去フィルム素子を仕上げ洗浄溶剤で仕上げ洗浄する第1の仕上げ洗浄装置と、前記第1の仕上げ洗浄装置で洗浄した後、PCB除去フィルム素子中の残留PCB濃度を判定する判定装置と、判定合格PCB除去フィルム素子を仕上げ洗浄溶剤で再度仕上げ洗浄する第2の仕上げ洗浄装置と、前記第2の仕上げ洗浄装置で洗浄した後、判定合格PCB除去フィルム素子を乾燥する乾燥装置とを具備することを特徴とするPCB汚染フィルム素子の処理装置にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、仕上げ洗浄溶剤で仕上げ洗浄することにより、PCB汚染フィルム素子の洗浄後に残留するPCB除去溶剤の濃度を低下させ、保管施設内の作業環境の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例1に係るPCB汚染フィルム素子の処理装置の概略図である。
【図2】図2は、実施例2に係るPCB汚染フィルム素子の処理装置の概略図である。
【図3】図3は、実施例3に係るPCB汚染フィルム素子の処理装置の概略図である。
【図4】図4は、大気温度と気相中のIPA濃度との関係図である。
【図5】図5は、各種IPA希釈割合におけるIPAの温度と蒸気圧との関係図である。
【図6】図6は、IPAと水との希釈割合における基本適用例の図である。
【図7】図7は、IPAとn−PAとの希釈割合における寒冷地用適用例の図である。
【図8】図8は、n−PAとIPAとの混合液と水との希釈割合における高温地用適用例の図である。
【図9】図9は、n−PAと水との希釈割合における基本適用例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0019】
本発明による実施例に係るPCB汚染フィルム素子の処理装置について、図面を参照して説明する。図1は、実施例1に係るPCB汚染フィルム素子の処理装置の概略図である。
図1に示すように、本実施例に係るPCB汚染フィルム素子の処理装置10Aは、細分化(粉砕、裁断等)されたPCB汚染フィルム素子11をPCB除去洗浄溶剤(IPA、NS100、ヘキサン等)12で洗浄するPCB除去洗浄装置13と、洗浄されたPCB除去フィルム素子14を仕上げ洗浄溶剤15で仕上げ洗浄する第1の仕上げ洗浄装置16Aと、前記第1の仕上げ洗浄装置16Aで洗浄した後、PCB除去フィルム素子14中の残留PCB濃度を判定する卒業判定装置(以下「判定装置」という)17と、判定合格PCB除去フィルム素子14Aを乾燥する乾燥装置18とを具備する。
【0020】
ここで、本発明でPCB汚染フィルム素子とは、PCBが含有されていた絶縁油を用いたトランス、コンデンサ等の分解処理物の内、フィルム素子部分を、粉砕手段や裁断手段により細分化された処理物でPCBが付着又は含有している汚染物をいう。
【0021】
PCB汚染フィルム素子11をPCB除去溶剤で洗浄するPCB除去洗浄装置13は、現在稼動しているPCB処理設備での公知のPCB洗浄装置であり、例えばPCB除去溶剤として例えばイソプロピルアルコール(IPA)、NS100、ヘキサン等が用いられており、PCB除去溶剤にPCB汚染フィルム素子11をメッシュ状の袋に入れ、所定時間又は所定回数浸漬等させて、PCB汚染フィルム素子11からPCBを洗浄除去している。
【0022】
このPCB除去洗浄装置13で洗浄・除去されたPCB除去フィルム素子14は、溶剤であるIPAが多量残留されているので、仕上げ洗浄溶剤15を用いて第1の仕上げ洗浄装置16Aで、最終仕上げ洗浄処理を行うようにしている。
【0023】
ここで、本発明で、仕上げ洗浄溶剤15としては、イソプロピルアルコール(IPA)、n−プロピルアルコール(n−PA)、水の少なくとも一種又はこれらの混合液を例示することができる。
【0024】
イソプロピルアルコール(IPA)に水又はn−プロピルアルコール(n−PA)のいずれか一方又は両方を添加した溶剤の例示としては、例えばIPA60容量%(以下「%」というと水40%との混合液、IPA50%とn−PA50%との混合液、「IPA(50%)とn−PA(50%)との混合液」を50%と、水50%との混合液(=(IPA25%とn−PA25%と、水50%との混合液)、n−PA60%と水40%との混合液等を挙げることができる。
【0025】
図4は、大気温度と気相中のIPA濃度との関係図である。
PCB洗浄処理設備内での気中に浮遊するIPA濃度について検討する。
大気温度を14℃近傍、28℃近傍、40℃近傍とした場合、ガス流量を所定の条件(1m3/分、2m3/分、3m3/分)とした場合のIPA濃度(ppm)の変化を確認した。
図4にその結果を示す。
図4に示すように、例えば流量が2m3/分において、大気温度14℃で300ppmである場合、40℃で1000ppmと約3倍の高濃度のIPA濃度となることが確認された。なお、流量の影響はさほどないことが確認された。
【0026】
図5は、各種IPA希釈割合におけるIPAの温度と蒸気圧との関係図である。
図5に示すように、IPAの液温度は、IPAの蒸発に伴い、蒸発潜熱により液温が低下し、大気からの対流伝熱による入熱、液の顕熱変化によりIPAの蒸発が生じる。
IPAを水で希釈すると、希釈による蒸気圧の低下効果が発揮される。
よって、100%IPAで仕上げ洗浄を行うよりも、水で希釈するほうが蒸気圧の低下により、IPAの揮発量の低減をはかることとなり、好ましいことが確認された。
【0027】
図6は、IPAと水との希釈割合における基本適用例の図である。
図6は、IPA60%と水40%との混合液である。この割合を基本とし、残留有機物が多い場合には、洗浄効果を高めるために、IPAの割合を60%よりも多くし、一方準工業地帯(非危険物取り扱い)での作業を行う場合には、IPAの割合を60%よりも低く(例えばIPA50%と水50%との混合液)している。
【0028】
図7は、IPAとn−PAとの希釈割合における寒冷地用適用例の図である。
図7は、IPA50%とn−PA50%との混合液である。IPA50%とn−PA50%との混合液とすると、粘性が低下するので、作業環境の気温が低い冬場の作業に適している。
冬場における処理プラントでは、0℃以下となる場合があり、表面張力の低い混合
液とすることで、作業性を良好としている。
【0029】
図8は、(n−PAとIPAとの混合液)と水との希釈割合における高温地用適用例の図である。
図8は、「(IPA(50%)とn−PA(50%)との混合液)(50%)」と、「
水(50%)」との混合液の適用例であり、この内訳は、IPA(25%)と、n−PA(25%)と、水(50%)との混合液である。
IPAとn−PAとの混合液に、水を希釈する場合、水の希釈割合を少なくすると、乾燥が速くなるので、冬場での適用が良好となり、一方水の希釈割合を多くすると、乾燥が遅くなるが、夏場の温度は高いので、蒸発は冬場と同等となる。
【0030】
図9は、n―PAと水との希釈割合における基本適用例の図である。
図9は、n―PA60%と、水40%との希釈割合を基本とし、冬場の作業や工業地帯の場合には、洗浄効果を高めるために、n―PAの割合を60%よりも多くし、一方夏場の作業や準工業地帯(非危険物取り扱い)での作業の場合には、n―PAの割合を60%よりも低く(例えばn―PA50%と水50%との混合液)している。
【0031】
ここで、仕上げ洗浄溶剤15として、水のみを用いる場合には、IPA及びn―PAを用いる場合と較べて、IPA及びn―PAが外部に排出するのを防止するために設ける排気処理用の活性炭フィルタの活性炭の使用量を減らすことができるので、好ましい。
【0032】
図6乃至図9の混合液の組み合わせは一例であり、これらのデータに基づき、作業環境、作業季節により最適の条件を設定される。
【0033】
この第1の仕上げ洗浄装置16Aで仕上げ洗浄がなされたPCB除去フィルム素子14は、PCBが残留しているか否かの判定を行う判定装置17で判定がなされる。
【0034】
この判定装置17では、PCB除去フィルム素子14を判定槽に浸漬等し、判定液中に残留したPCBを溶解させ、判定液中のPCBの濃度を分析手段により測定することで、間接的に残留量を測定するものである。
【0035】
ここで、判定液としては、例えばヘキサン、イソプロピルアルコール又はイソプロピルアルコールと水との混合物、トリクロロエタン、パラフィン系炭化水素を例示することができる。
【0036】
この判定装置17において、処理の基準以下にPCBが除去されると判定されたものは、合格品となる。この判定合格PCB除去フィルム素子14Aは、その後乾燥装置18で乾燥される。
【0037】
また、この乾燥装置18は、例えば防爆乾燥機やマイクロ波乾燥機等により、乾燥を行うようにしている。この乾燥の際、溶剤の気化と極微量残留するPCBの蒸発を促進させるようにしている。
【0038】
この乾燥装置18での気相組成を、N2ガス、CO2ガスのいずれか一方又は両方を用いて乾燥するのが好ましい。
ここで、窒素ガスは、不活性を維持する効果があり、CO2ガスは、PCBの溶解効果がある。
よって、両者の混合ガスとすることで、乾燥装置内を不活性雰囲気とすると共に、PCBの更なる洗浄効果が発揮され、好ましい。
【0039】
乾燥装置18で所定の乾燥が終了した乾燥処理品は、払出まで別途保管庫で保管される場合、PCB除去洗浄溶剤12であるIPAが除去されているので、イソプロピルアルコールを多量に含むことがなく、作業環境の悪化が低減されると共に、ハンドリング性も容易となる。
【0040】
なお、不合格品については、再度PCB除去洗浄装置13で洗浄し、PCBの残存量の低減を図るようにしている。
【0041】
よって、仕上げ洗浄溶剤15で仕上げ洗浄することにより、PCB汚染フィルム素子11の洗浄後に残留するPCB除去洗浄溶剤12の濃度を低下させ、保管施設内の作業環境の悪化を防止することができる。
【0042】
本実施例では、PCB除去洗浄溶剤12として、IPAを用いているが、IPA以外に、アルコール、アセトン、トルエン等を挙げることができる。
【0043】
本実施例によれば、仕上げ洗浄溶剤15で仕上げ洗浄することにより、PCB汚染フィルム素子の洗浄後に残留するPCB除去溶剤の濃度を低下させ、保管施設内の作業環境の悪化を防止することができる。
【実施例2】
【0044】
本発明による実施例に係るPCB汚染フィルム素子の処理装置について、図面を参照して説明する。図2は、実施例2に係るPCB汚染フィルム素子の処理装置の概略図である。
図2に示すように、本実施例に係るPCB汚染フィルム素子の処理装置10Bは、細分化(粉砕、裁断等)されたPCB汚染フィルム素子11をPCB除去洗浄溶剤(IPA、NS100、ヘキサン等)12で洗浄するPCB除去洗浄装置13と、洗浄されたPCB除去フィルム素子14中の残留PCB濃度を判定する判定装置17と、判定合格PCB除去フィルム素子14Aを仕上げ洗浄溶剤15で再度仕上げ洗浄する第2の仕上げ洗浄装置16Bと、前記第2の仕上げ洗浄装置16Bで洗浄した後、判定合格PCB除去フィルム素子14Aを乾燥する乾燥装置18とを具備する。
【0045】
実施例1のPCB汚染フィルム素子の処理装置10Aでは、判定装置17の前段側において第1の仕上げ洗浄装置16Aを設け、仕上げ洗浄した後に、卒業判定を行うようにしているが、本実施例では、判定装置17において卒業判定が終了した後に、その後流側において、第2の仕上げ洗浄装置16Bを設け、仕上げ洗浄溶剤15での仕上げ処理を行うようにしている。
【0046】
PCB処理設備においては、既設のPCB洗浄設備として、PCBの濃度が所定以上となりPCB排気処理の管理が厳重な「PCB処理管理区域100」と、それ以外の「一般処理管理区域200」とが存在する。
PCB処理管理区域100では、その排気処理のために活性炭フィルタを用いた排気処理を行っている。このため、活性炭を多量に用いて、外部へのPCBの排出を防止しているので、PCB処理管理区域100内では、必要以上の設備の追設はレイアウト及び作業処理上、好ましくない。
【0047】
すなわち、実施例1の構成では、第1の仕上げ洗浄装置16Aは卒業判定の前流側に設けるので、PCB処理管理区域100内に設置することとなり、この管理区域の排ガス処理のための活性炭フィルタの活性炭の使用量の増加となり、好ましくない。
【0048】
そこで、本実施例では、判定装置17での合格品である判定合格PCB除去フィルム素子14Aの処理を一般処理管理区域200内で行うために、第2の仕上げ洗浄装置16Bを卒業判定装置17の後流側に設けるようにしている。
【0049】
これにより、実施例1に較べて、PCB処理管理区域からの排ガスを処理する活性炭フィルタの使用量の低減を図ることができる。
【実施例3】
【0050】
本発明による実施例に係るPCB汚染フィルム素子の処理装置について、図面を参照して説明する。図3は、実施例3に係るPCB汚染フィルム素子の処理装置の概略図である。
図3に示すように、本実施例に係るPCB汚染フィルム素子の処理装置10Cは、細分化(粉砕、裁断等)されたPCB汚染フィルム素子11をPCB除去洗浄溶剤(IPA、NS100)12で洗浄するPCB除去洗浄装置13と、洗浄されたPCB除去フィルム素子14を仕上げ洗浄溶剤15で仕上げ洗浄する第1の仕上げ洗浄装置16Aと、前記第1の仕上げ洗浄装置16Aで洗浄した後、PCB除去フィルム素子14中の残留PCB濃度を判定する判定装置17と、判定合格PCB除去フィルム素子14Aを仕上げ洗浄溶剤15で再度仕上げ洗浄する第2の仕上げ洗浄装置16Bと、前記第2の仕上げ洗浄装置16Bで洗浄した後、判定合格PCB除去フィルム素子14Aを乾燥する乾燥装置18とを具備する。
【0051】
本実施例は、実施例1のPCB汚染フィルム素子の処理装置10Aの判定装置17の前段側において設けた第1の仕上げ洗浄装置16Aと、実施例2のPCB汚染フィルム素子の処理装置10Bの判定装置17の後段側において設けた第2の仕上げ洗浄装置16Bとを設け、仕上げ洗浄溶剤15での仕上げ処理の徹底を図るようにしている。
【0052】
本実施例によれば、2つの仕上げ洗浄装置16A、16Bで仕上げ洗浄することにより、PCB汚染フィルム素子の洗浄後に残留するPCB除去溶剤の濃度を確実に低下させ、保管施設内の作業環境の悪化を防止することができる。
【符号の説明】
【0053】
10A〜10C PCB汚染フィルム素子の処理装置
11 PCB汚染フィルム素子
12 PCB除去洗浄溶剤
13 PCB除去洗浄装置
14 PCB除去フィルム素子
15 仕上げ洗浄溶剤
16A 第1の仕上げ洗浄装置
16B 第2の仕上げ洗浄装置
17 卒業判定装置(判定装置)
18 乾燥装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCB汚染フィルム素子をPCB除去洗浄溶剤で洗浄するPCB除去洗浄装置と、
洗浄されたPCB除去フィルム素子を仕上げ洗浄溶剤で仕上げ洗浄する第1の仕上げ洗浄装置と、
前記第1の仕上げ洗浄装置で洗浄した後、PCB除去フィルム素子中の残留PCB濃度を判定する判定装置と、
判定合格PCB除去フィルム素子を乾燥する乾燥装置とを具備することを特徴とするPCB汚染フィルム素子の処理装置。
【請求項2】
PCB汚染フィルム素子をPCB除去洗浄溶剤で洗浄するPCB除去洗浄装置と、
洗浄されたPCB除去フィルム素子中の残留PCB濃度を判定する判定装置と、
判定合格PCB除去フィルム素子を仕上げ洗浄溶剤で再度仕上げ洗浄する第2の仕上げ洗浄装置と、
前記第2の仕上げ洗浄装置で洗浄した後、判定合格PCB除去フィルム素子を乾燥する乾燥装置とを具備することを特徴とするPCB汚染フィルム素子の処理装置。
【請求項3】
PCB汚染フィルム素子をPCB除去洗浄溶剤で洗浄するPCB除去洗浄装置と、
洗浄されたPCB除去フィルム素子を仕上げ洗浄溶剤で仕上げ洗浄する第1の仕上げ洗浄装置と、
前記第1の仕上げ洗浄装置で洗浄した後、PCB除去フィルム素子中の残留PCB濃度を判定する判定装置と、
判定合格PCB除去フィルム素子を仕上げ洗浄溶剤で再度仕上げ洗浄する第2の仕上げ洗浄装置と、
前記第2の仕上げ洗浄装置で洗浄した後、判定合格PCB除去フィルム素子を乾燥する乾燥装置とを具備することを特徴とするPCB汚染フィルム素子の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−94728(P2013−94728A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239634(P2011−239634)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】