PCSK9に対する高親和性ヒト抗体
血清HDLコレステロールをほとんど又は全く減少させず、及び/又はALT及びAST測定で測定される、肝機能への測定可能な影響がほとんど又は全くなしに、血清LDLコレステロールを投与前レベルに比べて40〜80%、24、60又は90日の期間に亘って減少させる能力を特徴とする、ヒトプロタンパク質コンバターゼスブチリシン/ケキシン9型(hPCSK9)に特異的に結合して阻害する、ヒト抗体又はヒト抗体の抗原結合フラグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトプロタンパク質コンバターゼスブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に特異的に結合するヒト抗体及びヒト抗体の抗原結合フラグメント、並びにそれらの抗体を用いる治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトプロタンパク質コンバターゼスブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)は、分泌型スブチラーゼファミリーのプロテイナーゼKサブファミリーに属するプロタンパク質コンバターゼである。コード化タンパク質は、小胞体内で自己触媒的分子内プロセシングを受ける可溶性チモーゲンとして合成される。循環からのLDLクリアランスの主要経路である、肝臓内のLDLエンドサイトーシスを媒介するPCSK9が、LDL受容体の分解を促進することにより血漿LDLコレステロールを増加させることを示唆する証拠がある。PCSK9タンパク質の構造は、それがシグナル配列を有し、その後にプロドメイン、保存三つ組残基(D186、H226及びS386)を含む触媒ドメイン、及びC末端ドメインが続くことを示す。それは、ERで自己触媒的切断を受け、14kDaプロドメイン及び60kDa触媒フラグメントを生成する、可溶性の74kDa前駆体として合成される。自己触媒活性は分泌に必要なことが示されている。切断後、プロドメインは触媒ドメインと強固に会合する状態を維持する。
【0003】
PCSK9に対する抗体は、例えば、特許文献1、2、3、4、5、及び6に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許公開第2008/057457号
【特許文献2】国際特許公開第2008/057458号
【特許文献3】国際特許公開第2008/057459号
【特許文献4】国際特許公開第2008/063382号
【特許文献5】国際特許公開第2008/125623号
【特許文献6】米国特許出願第2008/0008697号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1の態様では、本発明は、ヒトPCSK9(hPCSK9)に特異的に結合してその活性を中和する完全ヒトモノクローナル抗体(mAbs)及びその抗原結合フラグメントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの実施態様では、本発明は、hPCSK9に特異的に結合する抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含み、以下の事項:
(i)血清総コレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜35%減少させ、少なくとも24日の期間に亘ってその減少を維持することができ、好ましくは血清総コレステロールの減少が少なくとも約30〜40%であること;
(ii)血清LDLコレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約65〜80%を減少させ、少なくとも24日の期間に亘ってその減少を維持することができること;
(iii)血清トリグリセリドを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜40%を減少させることができること;
(iv)血清HDLコレステロールを減少させないこと、又は血清HDLコレステロールを投与前レベルと比べて僅か5%しか減少させないこと;
の少なくとも1つを特徴とする。
【0007】
1つの実施態様では、本発明は、hPCSK9に特異的に結合する抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含み、以下の事項:
(i)血清LDLコレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約40〜70%を減少させ、少なくとも60又は90日の期間に亘ってその減少を維持することができること;
(ii)血清トリグリセリドを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜40%を減少させることができること;
(iii)血清HDLコレステロールを減少させないこと、又は血清HDLコレステロールを投与前レベルと比べて僅か5%しか減少させないこと;
の少なくとも1つを特徴とする。
【0008】
1つの実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、hPCSK9(配列番号755)のアミノ酸残基238を含むエピトープを結合することを特徴とする。より具体的な実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、hPCSK9(配列番号755)のアミノ酸残基238、153、159及び343の1つ又はそれ以上を含むエピトープを結合する。より具体的な実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号755の192、194及び/又は237の位置において、アミノ酸残基を含まないエピトープを結合することを特徴とする。
【0009】
1つの実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、hPCSK9(配列番号755)のアミノ酸残基338を含むエピトープを結合することを特徴とする。より具体的な実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号755の147、366及び380位置において1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を含むエピトープを結合する。より具体的な実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号755の215及び/又は238の位置において、アミノ酸残基を含まないエピトープを結合することを特徴とする。
【0010】
1つの実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、プラズモン表面共鳴によって測定した場合、pH7.4でのKDと比べてpH5.5でhPCSK9に対する結合親和性(KD)の増強を示すことを特徴とする。ある特定の実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、プラズモン表面共鳴によって測定した場合、中性pHと比べて酸性pHにおいて、PCSK9に対して少なくとも20倍、少なくとも40倍又は少なくとも50倍の親和性増強を示す。
【0011】
1つの実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、プラズモン表面共鳴によって測定した場合、中性pHと比べて酸性pHにおいて、PCSK9に対して結合親和性増強を示さないことを特徴とする。ある特定の実施態様では、酸性pHにおける結合は、中性pHにおいてより小さく、T1/2はより短い。
【0012】
別の実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、ヒト、ヒトGOF突然変異D374Y、カニクイザル、アカゲザル、マウス、ラット及びハムスターPCSK9を結合する。
【0013】
1つの実施態様では、本抗体又は抗原結合フラグメントは、ヒト及びサルPCSK9を結合するが、マウス、ラット又はハムスターPCSK9を結合しない。
【0014】
本mAbsは、完全長(例えば、IgG1又はIgG4抗体)であってもよく、又は抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab′)2又はscFvフラグメント)だけを含んでもよく、そして機能性に影響を与えるために、例えば、残存エフェクター機能を除去するために修飾してもよい(Reddy et al. (2000) J. Immunol. 164:1925-1933)。
【0015】
1つの実施態様では、本発明は、配列番号2、18、22、26、42、46、50、66、70、74、90、94、98、114、118、122、138、142、146、162、166、170、186、190、194、210、214、218、234、238、242、258、262、266、282、286、290、306、310、314、330、334、338、354、358、362、378、382、386、402、406、410、426、430、434、450、454、458、474、478、482、498、502、506、522、526、530、546、550、554、570、574、578、594、598、602、618、622、626、642、646、650、666、670、674、690、694、698、714、 718、722、738及び742、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される重鎖可変領域(HCVR)を含む、抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含む。1つの実施態様では、HCVRは、配列番号50、66、70、74、90、94、122、138、142、218、234、238、242、258、262、314、330及び334から成る群から選択されるアミノ酸配列である。より具体的な実施態様では、HCVRは、配列番号90又は218を含む。
【0016】
1つの実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号10、20、24、34、44、48、58、68、72、82、92、96、106、116、120、130、140、144、154、164、168、178、188、192、202、212、216、226、236、240、250、260、264、274、284、288、298、308、312、322、332、336、346、356、360、370、380、384、394、404、408、418、428、432、442、452、456、466、476、480、490、500、504、514、524、528、538、548、552、562、572、576、586、596、600、610、620、624、634、644、648、658、668、672、682、692、696、706、716、720、730、740及び744、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される、軽鎖可変領域(LCVR)を更に含む。 1つの実施態様では、LCVRは、配列番号58、68、72、82、92、96、130、140、144、226、236、240、250、260、264、322、332及び336から成る群から選択されるアミノ酸配列である。より具体的な実施態様では、LCVRは配列番号92又は226を含む。
【0017】
特定の実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号2/10、18/20、22/24、26/34、42/44、46/48、50/58、66/68、70/72、74/82、90/92、94/96、98/106、114/116、118/120、122/130、138/140、142/144、146/154、162/164、166/168、170/178、186/188、190/192、194/202、210/212、214/216、218/226、234/236、238/240、242/250、258/260、262/264、266/274、282/284、286/288、290/298、306/308、310/312、314/322、330/332、334/336、338/346、354/356、358/360、362/370、378/380、382/384、386/394、402/404、406/408、410/418、426/428、430/432、434/442、450/452、454/456、458/466、474/476、478/480、482/490、498/500、502/504、506/514、522/524、526/528、530/538、546/548、550/552、554/562、570/572、574/576、578/586、594/596、598/600、602/610、618/620、622/624、626/634、642/644、646/648、650/658、666/668、670/672、674/682、690/692、694/696、698/706、714/716、718/720、722/730、738/740及び742/744から成る群から選択される、HCVR及びLCVR(HCVR/LCVR)配列ペアを含む。1つの実施態様では、HCVR及びLCVRは、配列番号50/58、66/68、70/72、74/82、90/92、94/96、122/130、138/140、142/144、218/226、234/236、238/240、242/250、258/260、262/264、314/322、330/332及び334/336のアミノ酸配列ペアから選択される。より具体的な実施態様では、HCVR/LCVRペアは、配列番号90/92又は218/226を含む。
【0018】
第2の態様では、本発明は、配列番号8、32、56、80、104、128、152、176、200、224、248、272、296、320、344、368、392、416、440、464、488、512、536、560、584、608、632、656、680、704及び728、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される、重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン;及び配列番号16、40、64、88、112、136、160、184、208、232、256、280、304、328、352、376、400、424、448、472、496、520、544、568、592、616、640、664、688、712及び736、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される、軽鎖CDR3(LCDR3)ドメインを含む抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを特色とする。1つの実施態様では、HCDR3/LCDR3配列ペアは、配列番号56/64、80/88、128/136、224/232、248/256又は320/328である。より具体的な実施態様では、HCDR3/LCDR3は配列番号80/88又は224/232を含む。
【0019】
更なる実施態様では、本発明は、配列番号4、28、52、76、100、124、148、172、196、220、244、268、292、316、340、364、388、412、436、460、484、508、532、556、580、604、628、652、676、700及び724、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される、重鎖CDR1(HCDR1)ドメイン;配列番号6、30、54、78、102、126、150、174、198、222、246、270、294、318、342、366、390、414、438、462、486、510、534、558、582、606、630、654、678、702及び726、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される、重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン;配列番号12、36、60、84、108、132、156、180、204、228、252、276、300、324、348、372、396、420、444、468、492、516、540、564、588、612、636、660、684、708及び732、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される、軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン;及び配列番号14、38、62、86、110、134、158、182、206、230、254、278、302、326、350、374、398、422、446、470、494、518、542、566、590、614、638、662、686、710及び734、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される、軽鎖CDR2(LCDR2)ドメインを更に含む、抗体又はそのフラグメントを含む。1つの実施態様では、重鎖及び軽鎖CDR配列は、配列番号52、54、56、60、62、64;76、78、80、84、86、88;124、126、128、132、134、136;220、222、224、228、230、232;244、246、248、252、254、256;及び316、318、320、324、326、328を含む。より具体的な実施態様では、重鎖及び軽鎖CDR配列は、配列番号76、78、80、84、86、88;又は220、222、224、228、230、232を含む。
【0020】
関連する実施態様では、本発明は、hPCSK9に特異的に結合する抗体又は抗体の抗原結合フラグメントであって、該抗体又はフラグメントが、配列番号2/10、18/20、22/24、26/34、42/44、46/48、50/58、66/68、70/72、74/82、90/92、94/96、98/106、114/116、118/120、122/130、138/140、142/144、146/154、162/164、166/168、170/178、186/188、190/192、194/202、210/212、214/216、218/226、234/236、238/240、242/250、258/260、262/264、266/274、282/284、286/288、290/298、306/308、310/312、314/322、330/332、334/336、338/346、354/356、358/360、362/370、378/380、382/384、386/394、402/404、406/408、410/418、426/428、430/432、434/442、450/452、454/456、458/466、474/476、478/480、482/490、498/500、502/504、506/514、522/524、526/528、530/538、546/548、550/552、554/562、570/572、574/576、578/586、594/596、598/600、602/610、618/620、622/624、626/634、642/644、646/648、650/658、666/668、670/672、674/682、690/692、694/696、698/706、714/716、718/720、722/730、738/740及び742/744から成る群から選択される、重鎖及び軽鎖配列ペア中に含まれる重鎖及び軽鎖CDRドメインを含む、抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含む。1つの実施態様では、該CDR配列は、配列番号50/58、66/68、70/72、74/82、90/92、94/96、122/130、138/140、142/144、218/226、234/236、238/240、242/250、258/260、262/264、314/322、330/332及び334/336のアミノ酸配列ペアから選択されるHCVR及びLCVR中に含まれる。より具体的な実施態様では、該CDR配列は、配列番号90/92又は218/226アミノ酸配列ペアから選択されるHCVR及びLCVR中に含まれる。
【0021】
1つの実施態様では、本発明は、hPCSK9に特異的に結合して活性を中和する、完全ヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントであって、抗体又はそのフラグメントが以下の特性:
(i)血清総コレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜35%減少させ、少なくとも24日の期間に亘ってその減少を維持することができ、好ましくは血清総コレステロールの減少が少なくとも約30〜40%であること;
(ii)血清LDLコレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約65〜80%減少させ、少なくとも24日の期間に亘ってその減少を維持することができること;
(iii)血清トリグリセリドを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜40%減少させることができること;
(iv)血清HDLコレステロールを減少させないこと、又は血清HDLコレステロールを投与前レベルと比べて僅か5%しか減少させないこと;
(v)hPCSK9(配列番号755)のアミノ酸残基238を含むエピトープを結合すること;
(vi)プラズモン表面共鳴によって測定した場合、pH7.4でのKDと比べて、pH5.5ではhPCSK9に対する結合親和性(KD)の増強を示し、その親和性増強が約20〜50倍の親和性の増加であること;
(vii)ヒト、ヒトGOF突然変異D374Y、カニクイザル、アカゲザル、マウス、ラット及びハムスターPCSK9を結合すること;
(viii)配列番号80及び88を含む重鎖及び軽鎖CDR3配列を含むこと;
(ix)配列番号90及び92からのCDR配列を含むこと;
の1つ又はそれ以上を示す完全ヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0022】
1つの実施態様では、本発明は、hPCSK9を特異的に結合して活性を中和する、完全ヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントであって、抗体又はそのフラグメントが以下の特性:
(i)血清LDLコレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約40〜70%減少させ、少なくとも60又は90日の期間に亘ってその減少を維持することができること;
(ii)血清トリグリセリドを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜40%減少させることができること;
(iii)投与前レベルと比べて血清HDLコレステロールを減少させないこと、又は血清HDLコレステロールを僅か5%しか減少させないこと;
(iv)hPCSK9(配列番号755)のアミノ酸残基366を含むエピトープを結合すること;
(v)プラズモン表面共鳴によって測定した場合、中性pHと比べて酸性pHにおいてPCSK9に対する結合親和性の増強を示さないこと;
(vi)ヒト及びサルPCSK9を結合するが、しかしマウス、ラット又は
ハムスターPCSK9を結合しないこと;
(vii)配列番号224及び232を含む重鎖及び軽鎖CDR3配列を含むこと;そして
(viii)配列番号218及び226を含むCDR配列を含むこと;
の1つ又はそれ以上を示す、完全ヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0023】
第3の態様では、本発明は抗PCSK9抗体又はそのフラグメントをコード化する核酸分子を提供する。本発明の核酸を持つ組み換え発現ベクター、及び当該ベクターが導入されている宿主細胞も、抗体産生が可能な条件下で宿主細胞を培養することによって抗体を産生させ、そして産生抗体を回収する方法と同様、本発明に包含される。
【0024】
1つの実施態様では、本発明は、配列番号1、17、21、25、41、45、49、65、69、73、89、93、97、113、117、121、137、141、145、161、165、169、185、189、193、209、213、217、233、237、241、257、261、265、281、 285、289、305、309、313、329、333、337、353、357、361、377、381、385、401、405、409、425、 429、433、449、453、457、473、477、481、497、501、505、521、525、529、545、549、553、569、573、577、593、597、601、617、621、625、641、645、649、665、669、673、689、693、697、713、 717、721、737及び741、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、核酸配列によってコード化されるHCVRを含む抗体又はそのフラグメントを提供する。1つの実施態様では、HCVRは、配列番号49、65、69、73、89、93、121、137、141、217、233、237、241、257、261、313、329及び333から成る群から選択される核酸配列によってコード化される。より具体的な実施態様では、HCVRは、配列番号89及び217から成る群から選択される核酸配列によってコード化される。
【0025】
1つの実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号9、19、23、33、43、47、57、67、71、81、91、95、105、115、119、129、139、143、153、163、167、177、187、191、201、211、215、225、235、239、249、259、263、273、283、287、297、307、311、321、331、335、345、355、359、369、379、383、393、403、407、417、427、431、441、451、455、465、475、479、489、499、503、513、523、527、537、547、551、561、571、575、585、595、599、609、619、623、633、643、647、657、667、671、681、691、695、705、715、719、729、739及び743、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、核酸配列によってコード化されるLCVRを更に含む。1つの実施態様では、LCVRは、配列番号57、67、71、81、91、95、129、139、143、225、235、239、249、259、263、321、331及び335から成る群から選択される核酸配列によってコード化される。より具体的な実施態様では、LCVRは、配列番号91及び225から成る群から選択される核酸配列によってコード化される。
【0026】
1つの実施態様では、本発明は、配列番号7、31、55、79、103、127、151、175、199、223、247、271、295、319、343、367、391、415、439、463、487、511、535、559、583、607、631、655、679、703及び727、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、ヌクレオチド配列によってコード化されるHCDR3ドメイン;及び配列番号15、39、63、87、111、135、159、183、207、231、255、279、303、327、351、375、399、423、447、471、495、519、543、567、591、615、639、663、687、711及び735、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、ヌクレオチド配列によってコード化されるLCDR3ドメインを含む、抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを特色とする。1つの実施態様では、HCDR3及びLCDR3配列は、配列番号55/63、79/87、127/135、223/231、247/255及び319/327の核酸配列によってそれぞれコード化される。より具体的な実施態様では、HCDR3及びLCDR3配列ペアは、配列番号79/87及び223/231の核酸配列によってコード化される。
【0027】
更なる実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号3、27、51、75、99、123、147、171、195、219、243、267、291、315、339、363、387、411、435、459、483、507、531、555、579、603、627、651、675、699及び723、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、ヌクレオチド配列によってコード化されるHCDR1ドメイン;配列番号5、29、53、77、101、125、149、173、197、221、245、269、293、317、341、365、389、413、437、461、485、509、533、557、581、605、629、653、677、701及び725、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、ヌクレオチド配列によってコード化されるHCDR2ドメイン;配列番号11、35、59、83、107、131、155、 179、203、227、251、275、299、323、347、371、 395、419、443、467、491、515、539、563、587、 611、635、659、683、707及び731、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、ヌクレオチド配列によってコード化されるLCDR1ドメイン;そして配列番号13、37、61、85、109、133、157、181、205、229、253、277、301、325、349、373、397、421、445、469、493、517、 541、565、589、613、637、661、685、709及び733、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、ヌクレオチド配列によってコード化されるLCDR2ドメインを更に含む。1つの実施態様では、重鎖及び軽鎖CDR配列は、配列番号51、53、55、59、 61、63;75、77、79、83、85、87;123、125、127、131、133、135;219、221、223、227、229、231;243、245、247、251、253、255;及び315、317、319、323、325、327の核酸配列によってコード化される。 より具体的な実施態様では、重鎖及び軽鎖CDR配列は、75、77、79、83、85、87;及び219、221、223、227、229、231の核酸配列によってコード化される。
【0028】
第4の態様では、本発明は、HCDR3及びLCDR3を含む、hPCSK9を特異的に結合する単離抗体又は抗体の抗原結合フラグメントであって、HCDR3が、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20(配列番号747)のアミノ酸配列を含み、式中、X1はAla、X2はArg又はLys、X3はAsp、X4はSer又はIle、X5はAsn又はVal、X6はLeu又はTrp、X7はGly又はMet、X8はAsn又はVal、X9はPhe又はTyr、X10はAsp、X11はLeu又はMet、X12はAsp又は不存在、X13はTyr又は不存在、X14はTyr又は不存在、X15はTyr又は不存在、X16はTyr又は不存在、X17はGly又は不存在、X18はMet又は不存在、X19はAsp又は不存在、そしてX20はVal又は不存在である;そしてLCDR3が、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9(配列番号750)のアミノ酸配列、式中、X1はGln又はMet、X2はGln、X3はTyr又はThr、X4はTyr又はLeu、X5はThr又はGln、X6はThr、X7はPro、X8はTyr又はLeu、そしてX9はThrである、を含む単離抗体又は抗体の抗原結合フラグメントであることを特色とする。
【0029】
更なる実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号745)のHCDR1配列、式中、X1はGly、X2はPhe、X3はThr、X4はPhe、X5はSer又はAsn、X6はSer又はAsn、X7はTyr又はHis、及びX8はAla又はTrpである;式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号746)のHCDR2の配列、式中、X1はIle、X2はSer又はAsn、X3はGly又はGln、X4はAsp又はSer、X5はGly、X6はSer又はGly、X7はThr又はGlu、及びX8はThr又はLysである;式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12(配列番号748)のLCDR1の配列、式中、X1はGln、X2はSer、X3はVal又はLeu、X4はLeu、X5はHis又はTyr、X6はArg又はSer、X7はSer又はAsn、X8はAsn又はGly、X9はAsn、X10はArg又はAsn、X11はAsn又はTyr、及びX12はPhe又は不存在である;式X1−X2−X3(配列番号749)のLCDR2の配列、式中、X1はTrp又はLeu、X2はAla又はGly、及びX3はSerである、を更に含む。図1は、316P及び300NmAbsに対する重鎖及び軽鎖可変領域の配列アラインメントを示す。
【0030】
第5の態様では、本発明は、VH、DH及びJH生殖細胞系配列から由来するヌクレオチド配列セグメントによってコード化される重鎖可変領域(HCVR)、及びVK及びJK生殖細胞系配列から由来するヌクレオチド配列セグメントによってコード化される軽鎖可変領域(LCVR)を含む、ヒト抗PCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントであって、生殖細胞系配列が、(a)VH遺伝子セグメント3−23、DH遺伝子セグメント7−27、JH遺伝子セグメント2、VK遺伝子セグメント4−1及びJK遺伝子セグメント2;又は(b)VH遺伝子セグメント3−7、DH遺伝子セグメント2−8、JH遺伝子セグメント6、VK遺伝子セグメント2−28及びJK遺伝子セグメント4である、ヒト抗PCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを特色とする。
【0031】
第6の態様では、本発明は、配列番号755のPCSK9タンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであって、変異体PCSK9タンパク質への本抗体又はそのフラグメントの結合が、本抗体又はそのフラグメントと配列番号755のPCSK9タンパク質との結合の50%より小さい、抗体又はその抗原結合フラグメントを特色とする。特定の実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、PCSK9(配列番号755)への結合と比較して、約50%より小さい、約60%より小さい、約70%より小さい、約80%より小さい、約90%より小さい又は約95%より小さい結合親和性(KD)を有する変異体PCSK9タンパク質に結合する。
【0032】
1つの実施態様では、変異体PCSK9タンパク質は、配列番号755の238の位置で少なくとも1つの突然変異を含む。より具体的な実施態様では、該突然変異はD238Rである。1つの実施態様では、変異体PCSK9タンパク質に対する本抗体又は抗体フラグメント結合親和性は、変異体タンパク質が残基238において突然変異を含む、配列番号755の野生型タンパク質と比べて少なくとも90%少ない。1つの実施態様では、変異体PCSK9タンパク質に対する本抗体又は抗体フラグメント結合親和性は、変異体タンパク質が残基153、159,238及び343の1つ又はそれ以上において突然変異を含む、配列番号755の野生型タンパク質と比べて少なくとも80%少ない。より具体的な実施態様では、突然変異はS153R、E159R、D238R及びD343Rの1つである。
【0033】
1つの実施態様では、変異体PCSK9タンパク質は、配列番号755の366の位置で少なくとも1つの突然変異を含む。より具体的な実施態様では、突然変異はE366Kである。1つの実施態様では、変異体PCSK9タンパク質に対する本抗体又は抗体フラグメントの結合親和性は、変異体タンパク質が残基366において突然変異を含む配列番号755の野生型タンパク質と比べて少なくとも95%少ない。1つの実施態様では、変異体PCSK9タンパク質に対する本抗体又は抗体フラグメントの結合親和性は、変異体タンパク質が残基147、366及び/又は380の1つ又はそれ以上において突然変異を含む配列番号755の野生型タンパク質と比べて、少なくとも70%、80%又は90%少ない。より具体的な実施態様では、突然変異はS147F、E366K及びV380Mの1つである。
【0034】
本発明は、修飾グリコシル化パターンを有する抗PCSK9抗体を包含する。幾つかの応用では、望ましくないグリコシル化部位を除去するための修飾は有用であり、又は、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を増加させるフコース部分の除去は有用となり得る(Shield et al. (2002) JBC 277:26733を参照) 。他の応用では、ガラクトシル化の修飾を、補体依存性細胞傷害(CDC)を修飾するために行うことができる。
【0035】
第7の態様では、本発明は、hPCSK9に特異的に結合する組み換えヒト抗体又はそのフラグメント、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を特色とする。1つの実施態様では、本発明は、本発明の抗体又は抗体の抗原結合フラグメント、及び第2の治療薬の組み合わせである組成物を特色とする。第2の治療薬は、本発明の抗体又はそのフラグメントと有利に組み合わされるいずれの薬剤、例えば、セロバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンなどの、例えば、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル(HMG)−コエンザイムA(CoA)レダクターゼを阻害することによるコレステロール合成の細胞枯渇を誘導することができる;コレステロール取り込み及び/又は胆汁酸再吸収を阻害することができる;リポタンパク質異化を増加させることができる(ナイアシンなど)薬剤;及び/又は22−ヒドロキシコレステロールなどのコレステロール除去の役割を果たすLXR転写因子のアクチベーターであってよい。
【0036】
第8の態様では、本発明は、本発明の抗PCSK9抗体又は該抗体の抗原結合部分を用いてhPCSK9活性を阻害する方法であって、該治療方法が、本発明の抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の治療的有効量を投与することを含む方法を特色とする。処置される障害は、PCSK9活性の除去、阻害又は減少によって改善し、軽減し、阻害し又は防止するいずれかの疾患又は病態である。本発明の治療法によって処置可能な特定集団としては、LDLアフェレーシスの適応対象、PCSK9活性化突然変異対象(機能獲得型突然変異、「GOF」)、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(heFH) 対象;スタチン不耐性又はスタチンコントロール不良の原発性高コレステロール血症対象;及び予防的処置可能な高コレステロール血症の発症リスクを有する対象が含まれる。他の適応としては、2型糖尿病のような副因に伴う脂質異常症、胆汁うっ滞性肝疾患(原発性胆汁性肝硬変)、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、肥満;及びアテローム性動脈硬化症及び心血管疾患の予防及び処置が含まれる。
【0037】
本発明方法の特定の実施態様では、本発明の抗hPCSK9抗体又は抗体フラグメントは、総コレステロール、非HDLコレステロール、LDLコレステロール、及び/又はアポリポタンパク質B(アポリポタンパク質B100)の上昇を低減するのに有用である。
【0038】
本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、単独で又は第2の薬剤、例えば、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤及び/又は他の脂質低下薬と併用して使用してよい。
【0039】
更なる実施態様は、PCSK9仲介疾患又は病態を減弱又は抑制するのに使用するための、上記で定義した抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含む。
【0040】
本発明は、PCSK9仲介疾患又は病態を減弱又は阻害するのに使用するための薬剤の製造における、上記で定義した抗体又は抗体の抗原結合フラグメントの使用を包含する。特定の実施態様では、PCSK9仲介疾患又は病態は、高コレステロール血症、高脂血症、LDLアフェレーシス、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合性、スタチン不耐性、スタチンコントロール不良;高コレステロール血症、脂質異常症、胆汁うっ滞性肝疾患、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、肥満、アテローム性動脈硬化症及び心血管疾患の発症リスクである。
【0041】
他の実施態様は、以下の詳細な説明のレビューから明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】抗体H1H316P及びH1M300Nの、重鎖(A)及び軽鎖(B)可変領域及びCDRの配列比較表
【図2】経時的血清中抗体濃度。316P:5mg/kg(□);300N:5mg/kg(○);316P:15mg/kg(■);300N:15mg/kg(●)。
【図3】バッファーコントロールに対する変化率としての血清総コレステロールレベル。コントロール(*);316P:5mg/kg(■);300N:5mg/kg(▲);316P:15mg/kg(□);300N:15mg/kg(△)。
【図4】バッファーコントロールに対する変化率としての血清LDLコレステロールレベル。コントロール(*);316P:5mg/kg(■);300N:5mg/kg(▲);316P:15mg/kg(□);300N:15mg/kg(△)。
【図5】バッファーコントロールに正規化した血清LDLコレステロールレベル。バッファーコントロール(*);316P:5mg/kg(■);300N:5mg/kg(▲);316P:15mg/kg(□);300N:15mg/kg(△)。
【図6】バッファーコントロールに対する変化率としての血清HDLコレステロールレベル。コントロール(*);316P:5mg/kg(■);300N:5mg/kg(▲);316P:15mg/kg(□);300N:15mg/kg(△)。
【図7】バッファーコントロールに対する変化率としての血清トリグリセリドレベル。バッファーコントロール(*);316P:5mg/kg(■);300N:5mg/kg(▲);316P:15mg/kg(□);300N:15mg/kg(△)。
【図8】単回皮下投与後のベースラインに対する変化率として表わした血清HDLコレステロールレベル。316P:5mg/kg(■);300N:5mg/kg(●)。
【図9】単回皮下投与後の経時的血清中抗体濃度。316P:5mg/kg(●);300N:5mg/kg(▲)。
【図10】肝臓総ホモジネートのマウスLDL受容体に対するウェスタンブロット。試料は、PBS(レーン1〜3)、316P:5mg/kg(レーン4〜6)、又は非hPCSK9特異的mAb:5mg/kg(レーン7〜8)の投与24時間後、そしてhPCSK9−mmh:1.2mg/kg(全レーン)の投与の4時間後に採取した。
【図11】PCSK9hu/huマウスにおける血清LDLコレステロールレベルに対する316Pの効果。
【化1】
【図12】C57BL/6マウスにおける抗hPCSK9mAbの血清薬物動力学的プロファイル。単回用量のコントロールImAb:10mg/kg(●);316P:10mg/kg(▲);及び300N:10mg/kg(■)。
【図13】hPCSK9ヘテロ接合体マウスにおける抗hPCSK9mAbの血清薬物動力学的プロファイル。単回用量:各10mg/kg;コントロールImAb:(●);316P(▲):及び300N(■)。
【図14】普通の食餌で給餌したシリアンハムスターにおける血清LDLコレステロールレベルに対する316Pの効果。バッファーコントロール(●);316P:1mg/kg(■);316P:3mg/kg(▲);316P:5mg/kg(▼)。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本方法を説明する前に、当然のことながら、本発明は特定の方法に限定されるものではなく、そしてそのような方法及び条件として記載される実験条件は変動してもよい。また当然のことながら、本発明の範囲は付属の特許請求の範囲のみによって限定されるので、本明細書で使用される用語は特定の実施態様を記載する目的のためだけであり、限定することを意図するものではない。
【0044】
特に明記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等のいずれの方法及び材料も、本発明の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。
【0045】
定義
本明細書で使用される用語「ヒトプロタンパク質コンバターゼスブチリシン/ケキシン9型」又は「hPCSK9」は、配列番号754で示される核酸配列及び配列番号755のアミノ酸配列を有するhPCSK9、又はその生物活性フラグメントを指す。
【0046】
本明細書で使用される用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に連結した4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖から構成される免疫グロブリン分子を指すことを意図している。各重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR」又は「VH」)及び重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3ドメインから構成される)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVR」又は「VL」)及び軽鎖定常領域(CL)から構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより良く保存された領域が組み入れられている、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に更に細分される。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配列している:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0047】
1つ又はそれ以上のCDR残基の置換又は1つ又はそれ以上のCDRの脱落もまた可能である。1つ又は2つのCDRが結合のために省くことができる抗体は、科学文献に記載されている。Padlan et al. (1995 FASEB J. 9:133-139) は、公表された結晶構造を基準にして抗体とそれらの抗原間の接触領域を解析し、CDR残基の約1/5〜1/3だけが実際に抗原と接触していると結論した。Padlanは、また、 1つ又は2つのCDRが、抗原と接触したアミノ酸を有さない多くの抗体を見出した(Vajdos et al. 2002 J Mol Biol
320:415-428も参照)。
【0048】
抗原と接触していないCDR残基は、ChothiaCDR外にあるKabatCDRの領域から、分子モデリングにより及び/又は経験的に、過去の研究(例えばCDRH2中の残基H60〜H65は頻繁には必要とされない)に基づいて同定することができる。CDR又はその残基が脱落している場合、それは通常別のヒト抗体配列又は当該配列のコンセンサス中で対応する位置を占有するアミノ酸で置換される。CDR内の置換位置及び置換するアミノ酸は経験的に選択することもできる。経験的置換は保存的置換又は非保存的置換であってよい。
【0049】
本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本発明のヒトmAbsは、例えばCDR特にCDR3において、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的突然変異により又はインビボでの体細胞突然変異により導入される突然変異)によってコード化されないアミノ酸残基を含んでもよい。しかしながら、本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖細胞系から由来するCDR配列がヒトFR配列上に移植された、mAbsを含むことを意図するものではない。
【0050】
用語「特異的に結合する」等は、抗体又はその抗原結合フラグメントが生理的条件下に相対的に安定な抗原と複合体を形成することを意味する。特異的結合は、少なくとも約1×10-6M以下(例えば、小さいKDはより強固な結合を示す)の平衡解離定数によって特徴付けることができる。2分子が特異的に結合するかどうかを測定する方法は当技術分野で周知であり、そして例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。しかしながら、hPCSK9を特異的に結合する単離抗体は、他の種からのPCSK9分子のような他の抗原に対して交差反応を呈する。更に、hPCSK9及び1つ又はそれ以上の更なる抗原に結合する多特異性抗体(例えば二重特異体)は、それでも本明細に記載のhPCSK9を「特異的に結合する」検討された抗体である。
【0051】
用語「高親和性」抗体は、表面プラズモン共鳴、例えば、 BIACORE(商標)又は溶液親和性ELISAで測定して、少なくとも10-10M;好ましくは10-11M;尚更に好ましくは10-12MのhPCSK9に結合親和性を有するそれらのmAbsを指す。
【0052】
用語「スローオフレート(slow off rate)」、「Koff」又は「kd」では、表面プラズモン共鳴、例えば、 BIACORE(商標)で測定して、1×10-3s-1以下、好ましくは1×10-4s-1以下の速度定数でhPCSK9から解離する抗体を意味する。
【0053】
本明細書で使用される用語、抗体の「抗原結合部分」(又は簡単に「抗体フラグメント」)は、hPCSK9に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ又はそれ以上のフラグメントを指す。抗体フラグメントは、Fabフラグメント、F(ab′)2フラグメント、Fvフラグメント、dAbフラグメント、CDRを含むフラグメント、又は単離CDRを含むことができる。
【0054】
特定の実施態様、本発明の抗体又は抗体フラグメントは、細胞毒、化学療法薬、免疫抑制薬又は放射性同位体などの治療部分に結合することができる(「イムノコンジュゲート」)。
【0055】
本明細書で使用される「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他のmAbs(例えば、hPCSK9を特異的に結合する単離抗体は、hPCSK9以外の抗原を特異的に結合するmAbsを実質的に含んでいない)を実質的に含んでいない抗体を指すことを意図する。しかしながら、hPCSK9を特異的に結合する単離抗体は、他の種からのPCSK9分子など他の抗原に対して交差反応性を有する。
【0056】
本明細書で使用される「中和抗体」(又は「PCSK9活性」を中和する抗体)は、PCSK9に対するその結合がPCSK9の少なくとも1つの生物活性の阻害をもたらす抗体を指すことを意図する。PCSK9の生物活性のこの阻害は、当技術分野で公知の幾つかの1つ又はそれ以上の標準的インビトロ又はインビボ分析で、PCSK9生物活性の1つ又はそれ以上の指標を測定するにより評価することができる(下記の実施例を参照)。
【0057】
本明細書で使用される用語「表面プラズモン共鳴」は、例えばBIACORE(商標) システム (Pharmacia Biosensor AB, Uppsala, Sweden and Piscataway, NJ)を用いて、 バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度変化の検出により、リアルタイム生体特異的相互作用の解析を可能にする光学現象を指す。
【0058】
本明細書で使用される用語「KD」は、特定の抗体抗原相互作用の平衡解離定数を指すことを意図する。
【0059】
用語「エピトープ」は抗体によって結合される抗原の領域を指す。エピトープは構造又は機能と定義される。機能エピトープは一般的に構造エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与するそれらの残基を有する。エピトープは、立体配座性でもあり、すなわち非線形アミノ酸から構成されてもよい。特定の実施態様では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、又はスルホニル基などの分子の化学的活性表面グルーピングである決定因子を含んでもよく、そして特定の実施態様では、特異的3次元構造特性、及び/又は特異的電荷特性を有してもよい。
【0060】
核酸又はそのフラグメントに言及する場合の、用語「実質的同一性」又は「実質的に同一の」とは、別の核酸(又はその相補鎖)と適切なヌクレオチド挿入又は欠失を有して最適に整列した場合に、下記で検討するFASTA、BLAST又はGAPなど配列同一性のいずれか周知のアルゴリズムによって測定して、少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%又は99%のヌクレオチド塩基においてヌクレオチド配列同一性があることを示す。
【0061】
ポリペプチドに適用した場合に、用語「実質的類似性」又は「実質的に類似の」は、デフォルトギャップ重量を用いてGAP又はBESTFITプログラムによるなど最適整列した場合に、2つのペプチド配列は、少なくとも90%の配列同一性、尚より好ましくは少なくとも95%、98%又は99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は保存アミノ酸置換によって異なる。「保存アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の化学特性(例えば、電荷又は疎水性)をもつ側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたものである。一般に、保存アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変えないと考えられる。2つ又はそれ以上のアミノ酸配列が保存的置換により互いに異なるという場合に、類似性の割合及び程度は、置換の保存的性質を修正するために上方へ調整してもよい。この調整を行なう手段は当業者に周知である。例えば、Pearson (1994) Methods Mol. Biol. 24: 307-331を参照されたい。類似の化学特性をもつ側鎖を有するアミノ酸群の例は、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリン及びトレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン;5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン;6)酸性側鎖;アスパラギン酸及びグルタミン酸、及び7)含硫黄側鎖:システイン及びメチオニンを含む。好ましい保存アミノ酸置換群は:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、及びアスパラギン−グルタミンである。あるいはまた、保存的置換は、Gonnet et al. (1992) Science 256: 1443 45に開示されているPAM250対数尤度マトリックスにおいて、正の値を有するあらゆる変化である。「緩やかな保存」置換は、PAM250対数尤度マトリックスにおいて負ではない値を有するあらゆる変化である。
【0062】
ポリペプチドの配列類似性は、一般的に配列解析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失及び他の修飾に帰属される類似性の尺度を用いて類似配列を整合させる。例えば、GCGソフトウェアは、生物の異なる種からの相同ポリペプチドなどの密接に関連するポリペプチド間、又は野生型タンパク質とその突然変異タンパク質間の、配列相同性又は配列同一性を決定するために、デフォルトパラメータによって使用することができるGAP及びBESTFITなどのプログラムを含む。例えば、GCGバージョン6.1を参照されたい。ポリペプチド配列は、また、GCGバージョン6.1のプログラムで、デフォルト又は推奨パラメータによるFASTAを用いて比較することができる。FASTA(例えば、FASTA2及びFASTA3)は、クエリー及びサーチ配列間の最良重なり領域のアラインメント及び百分率配列同一性を与える(Pearson (2000)上記)。本発明の配列を異なる生物からの多数の配列を含むデータベースと比較する場合に、別の好ましいアルゴリズムは、コンピュータープログラムBLAST、特にデフォルトパラメータを用いるBLASTP又はTBLASTNである。例えば、Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403 410 and (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389 402を参照されたい。
【0063】
特定の実施態様では、本発明の方法に使用するための抗体又は抗体フラグメントは、単一特異性、二重特異性、又は多特異性であってよい。多特異性抗体は1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的であってよく、又は1つの標的ポリペプチドより大きいエピトープに特異的な抗原結合ドメインを含んでもよい。本発明との関連で使用することができる典型的な二重特異体型は、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメイン及び第2のIgCH3ドメインの使用であって、第1及び第2のIgCH3ドメインが少なくとも1つのアミノ酸で互いに異なり、そして少なくとも1つのアミノ酸の差異が、アミノ酸の差異を欠いている二重特異体と比べて、プロテインAに対する二重特性抗体の結合を減少させる、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメイン及び第2のIgCH3ドメインの使用を包含する。1つの実施態様では、第1のIgCH3ドメインはプロテインAを結合し、そして第2のIgCH3ドメインはH95R修飾(IMGTエキソンナンバリングによる;EUナンバリングによるH435R)などのプロテインA結合を減少又は停止させる突然変異を含む。第2のCH3はY96F修飾(IMGTによる;EUによるY436F)を更に含む。第2のCH3内に認められる可能性のある更なる修飾は:IgG1mAbsの場合におけるD16E、L18M、N44S、K52N、V57M、及びV82I(IMGTによる;EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、及びV422I);IgG2mAbsの場合におけるN44S、K52N、及びV82I(IMGT;EUによるN384S、K392N、及びV422I);及びIgG4mAbsの場合におけるQ15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、及びV82I(IMGTによる;EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、及びV422I)を含む。上記の二重特異体型の変異は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0064】
語句「治療的有効量」は、それが投与されて所望の効果をもたらす量を意味する。正確な量は処置の目的によって決まり、そして公知技術を用いて当業者により確認することが可能である(例えば、Lloyd (1999) The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照)。
ヒト抗体の製造
【0065】
トランスジェニックマウス中にヒト抗体を生成させる方法は公知である(例えば、米国特許第6596541号、Regeneron Pharmaceuticals, VELOCIMMUNE(商標)を参照)。VELOCIMMUNE(商標)技術は、マウスが抗原刺激に応じてヒト可変領域及びマウス定常領域を含む抗体を産生するように、内在性マウス定常領域遺伝子座に機能的に連結した、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの作製を包含する。抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコード化するDNAが単離され、そしてヒト重鎖及び軽鎖定常領域をコード化するDNAに機能的に結合される。DNAはその後完全ヒト抗体を発現することができる細胞に発現する。特定の実施態様では、細胞はCHO細胞である。
【0066】
抗体は、補体の固定及び補体依存性細胞傷害(CDC)への関与を通した細胞致死、又は抗体依存性細胞傷害(ADDC)を通した細胞致死よりむしろ、リガンド−受容体相互作用の遮断又は受容体成分相互作用の抑制に有用と考えられる。従って抗体の定常領域は、抗体が補体を固定し、細胞依存性細胞傷害を媒介する能力において重要である。従って、抗体のイソタイプは、抗体が細胞傷害性を媒介することが望ましいかどうかを基にして選択してもよい。
【0067】
ヒト抗体はヒンジ不均一性に関与する2つの型で存在することができる。1つの型では、抗体分子は、2量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって結合している、約150〜160kDaの安定な4鎖構築物を含む。第2の型では、2量体は鎖間ジスルフィド結合を経て結合せず、約75〜80kDaの分子が共有結合軽鎖及び重鎖を構成して形成される(半抗体)。これらの型は、親和性による精製後でも単離することは非常に困難である。
【0068】
種々のインタクトIgGイソタイプにおける第2の型の発現頻度は、抗体のヒンジ領域イソタイプと関連する構造差に因るが、これに限定されるものではない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一アミノ酸置換は、第2の型の出現(Angal et al. (1993) Molecular Immunology 30:105)を通常ヒトIgG1ヒンジを用いて観察されるレベルまで低下させることができる。本発明は、所望の抗体型の収量を改善するために、例えば、産生に望ましいと考えられるヒンジ、CH2又はCH3領域において、1つ又はそれ以上の突然変異を有する抗体を包含する。
【0069】
一般に、VELOCIMMUNE(商標)マウスは、対象とする抗原を投与され、そして抗体を発現するマウスからリンパ細胞(B細胞など)が回収される。リンパ細胞は、不死化ハイブリドーマ細胞株を調製するために骨髄腫細胞株で融合してもよく、対象とする抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定するために、当該ハイブリドーマ細胞株がスクリーニングされ選択される。重鎖及び軽鎖の可変領域をコード化するDNAは、単離し、重鎖及び軽鎖の所望のイソタイプ定常領域に結合してもよい。当該抗体タンパク質は、CHO細胞などの細胞中に産生させてもよい。あるいはまた、抗原特異的キメラ抗体又は軽鎖及び重鎖の可変ドメインをコード化するDNAは、抗原特異的リンパ球から直接単離してもよい。
【0070】
最初に、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体が単離される。下記のように、該抗体は特徴付けされ、そして親和性、選択性、エピトープなどを含む所望の特性で選択される。マウス定常領域は、本発明の完全ヒト抗体、例えば、野生型又は修飾IgG1又はIgG4(配列番号751、752、753)を生成させるために、所望のヒト定常領域で置換される。選択された定常領域は、特定の用途によって変化する可能性があるが、一方で高親和性抗原結合及び標的特異性特性は可変領域に残存する。
エピトープマッピング及び関連技術
【0071】
特定のエピトープに結合する抗体(例えば、IgEのその高親和性受容体への結合を遮断する抗体)をスクリーニングするために、Antibodies, Harlow and Lane (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harb., NY) に記載のルーチン交差遮断分析を行うことができる。他の方法は、アラニンスキャニング突然変異体、ペプチドブロット(Reineke (2004) Methods Mol Biol 248:443-63)、又はペプチド切断解析を含む。加えて、エピトープ切出、エピトープ抽出及び抗原の化学修飾を用いることができる(Tomer (2000) Protein Science 9: 487-496)。
【0072】
用語「エピトープ」は、B及び/又はT細胞が反応する抗原上の部位を指す。B細胞エピトープは、タンパク質の三次元折畳みによって並列した隣接アミノ酸又は非隣接アミノ酸の両方から形成することができる。隣接アミノ酸から形成されるエピトープは一般的に変性溶媒への曝露時に保持されるが、一方で三次元折畳みによって形成されるエピトープは一般的に変性溶媒で処理時に失われる。エピトープは、一般的には少なくとも3、そしてより一般的には少なくとも5又は8〜10のアミノ酸を特有の空間立体配座の中に含む。
【0073】
抗原構造ベース抗体プロファイリング(ASAP)としても知られる、修飾支援プロファイリング(MAP)は、化学的又は酵素的修飾抗原表面に対する各抗体の結合プロファイルの類似性によって、同じ抗原に対する多数のモノクローナル抗体(mAbs)を分類する方法である(米国特許出願第2004/0101920号)。各カテゴリーは、別のカテゴリーによって表わされるエピトープと非常に異なるか又は部分的に重複する特有のエピトープを反映すると考えられる。この技術は、キャラクタリゼーションが遺伝的に異なるmAbsに焦点を当てることができるように、遺伝的に同一のmAbsの迅速なフィルタリングを可能にする。ハイブリドーマスクリーニングに適用する場合に、MAPは所望の特性を有するmAbsを産生する稀なハイブリドーマクローンの同定を促進すると考えられる。MAPは、本発明の抗PCSK9mAbsをmAbs結合性の異なるエピトープ群を仕分けするのに使用してもよい。
【0074】
種々の実施態様では、抗hPCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントは、配列番号755の約153〜425である触媒ドメイン内のエピトープを;更に具体的には、約153から約250まで又は約250から約425までのエピトープを結合する。更に具体的には、本発明の抗体又は抗体フラグメントは、約153から約208まで、約200から約260まで、約250から約300まで、約275から約325まで、約300から約360まで、約350から約400まで、及び/又は約375から約425までのフラグメント内のエピトープを結合する。
【0075】
種々の実施態様では、抗hPCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントは、プロペプチドドメイン(配列番号755の残基31〜152)内のエピトープを;更に具体的には、約残基31から約残基90まで又は約残基90から約残基152までのエピトープを結合する。更に具体的には、本発明の抗体又は抗体フラグメントは、約残基31から約残基60まで、約残基60から約残基90まで、約残基85から約残基110まで、約残基100から約残基130まで、約残基125から約残基150まで、約残基135から約残基152まで、及び/又は約残基142から約残基152までのフラグメント内のエピトープを結合する。
【0076】
幾つかの実施態様では、抗hPCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントは、C末端ドメイン(配列番号755の残基426〜692)内のエピトープを;更に具体的には、約残基426から約残基570まで又は約残基570から約残基692までのエピトープを結合する。更に具体的には、本発明の抗体又は抗体フラグメントは、約残基450から約残基500まで、約残基500から約残基550まで、約残基550から約残基600まで、及び/又は約残基600から約残基692までのフラグメント内のエピトープを結合する。
【0077】
幾つかの実施態様では、該抗体又は抗体フラグメントは、触媒的、プロペプチド又はC末端ドメイン内、及び/又は2つ又は3つの異なるドメイン(例えば、触媒的及びC末端ドメイン内、又はプロペプチド及び触媒的ドメイン内、又はプロペプチド、触媒的及びC末端ドメイン内エピトープ)内の1つより多い列挙されたエピトープを含むエピトープを結合する。
【0078】
幾つかの実施態様では、本抗体又は抗原結合フラグメントは、hPCSK9(配列番号755)のアミノ酸残基238を含むhPCSK9上のエピトープを結合する。実験結果(表27)は、D238が突然変異した場合に、mAb316PのKDが>400倍の結合親和性における低下を示し(〜1×10-9Mから〜410×10-9Mまで)、そしてT1/2が>30倍(〜37から〜1分まで)減少したことを示す。特定の実施態様では、突然変異はD238Rであった。特定の実施態様では、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、153、159、238及び343の位置において2つ又はそれ以上のアミノ酸残基を含むhPCSK9のエピトープを結合する。
【0079】
下記のように、アミノ酸残基153、159又は343における突然変異は、約5〜10倍の親和性低下又は類似のT1/2の短縮をもたらした。特定の実施態様では、突然変異はS153R、E159R及び/又はD343Rであった。
【0080】
幾つかの実施態様では、本抗体又は抗原結合フラグメントは、hPCSK9(配列番号755)のアミノ酸残基366を含むhPCSK9上のエピトープを結合する。実験結果(表27)は、E366が突然変異した場合に、mAb300Nの親和性は約50倍の低下(〜0.7×10-9Mから〜36×10-9Mまで)、そして類似のT1/2の短縮(〜120から〜2分まで)を示した。特定の実施態様では、突然変異はE366Kであった。
【0081】
本発明は、本明細書に記載のいずれかの特異的典型的抗体と同じエピトープに結合する抗PCSK9抗体を含む。同様に、本発明は、本明細書に記載のいずれかの特異的典型的抗体とPCSK9又はPCSK9フラグメントへの結合を競合する抗PCSK9抗体を含む。
【0082】
抗体が、当技術分野で公知の常法を用いることによって、参照抗PCSK9抗体と同じエピトープに結合するか、又は参照抗PCSK9抗体との結合を競合するかどうかは、容易に決定することができる。例えば、試験抗体が、本発明の参照抗PCSK9抗体と同じエピトープと結合するかどうかを決定するために、参照抗体を飽和条件下でPCSK9タンパク質又はペプチドに結合するようにすることができる。次いで、試験抗体のPCSK9分子への結合能が評価される。試験抗体が参照抗PCSK9抗体との飽和結合後にPCSK9分子に結合することができる場合、試験抗体は参照抗PCSK9抗体と異なるエピトープに結合すると結論することができる。他方で、試験抗体が参照抗PCSK9抗体との飽和結合後にPCSK9分子に結合することができない場合、従って試験抗体は、本発明の参照抗PCSK9抗体によって結合したエピトープと同じエピトープに結合すると考えられる。
【0083】
抗体が参照抗PCSK9抗体との結合を競合するかどうかを決定するために、上記結合方法を2つの方針で行うことができる。第1の方針では、参照抗体を飽和条件下でPCSK9分子に結合するようにし、続いてPCSK9分子に対する試験抗体の結合の評価を行うようにする。第2の方針では、試験抗体を飽和条件下でPCSK9分子に結合するようにし、続いてPCSK9分子に対する参照抗体の結合の評価を行うようにする。両方針において、第1の(飽和)抗体だけがPCSK9分子に結合する場合、その結果試験抗体及び参照抗体はPCSK9への結合を競合すると結論される。当業者には当然のことながら、参照抗体との結合を競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同一のエピトープに結合しないが、しかし重複又は隣接エピトープを結合することにより参照抗体の結合を立体的に遮断すると考えられる。
【0084】
2つの抗体は、各々が抗原に対するもう一方の結合を競合的に阻害(遮断)する場合、同じ又は重複エピトープに結合する。即ち、1つの抗体の1、5、10、20又は100倍過剰は、競合的結合測定法(例えば、Junghans et al., Cancer Res. 1990 50: 1495-1502参照)で測定して、少なくとも50%、しかし好ましくは75%、90%又は99%までも、もう一方の結合を阻害する。あるいはまた、基本的に1つの抗体の結合を低減又は排除する抗原中の全アミノ酸突然変異が、もう一方の結合を低減又は排除する場合、2つの抗体は同じエピトープを有する。1つの抗体の結合を低減又は排除する幾つかのアミノ酸突然変異が、もう一方の結合を低減又は排除する場合、2つの抗体は重複エピトープを有する。
【0085】
従って、更なるルーチン実験(例えば、ペプチド突然変異及び結合解析)を、試験抗体の実測した結合欠如が実際に参照抗体と同じエピトープへの結合に因るか、又は立体遮断(又は別の現象)が実測した結合欠如に関与しているかどうかを、確認するために行うことができる。この種の実験は、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリー又は当技術分野で利用できるその他の定量的若しくは定性的抗体結合分析を用いて行うことができる。
【0086】
特定の実施態様では、本発明は、配列番号755のPCSK9タンパク質を結合する抗PCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントであって、PCSK9に対する該抗体又はそのフラグメントと変異体PCSK9タンパク質との結合が、該抗体又はそのフラグメントと配列番号755のPCSK9タンパク質との結合の50%より小さい、抗PCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含む。1つの特定の実施態様では、変異体PCSK9タンパク質は、153、159、238及び343から成る群から選択される位置において、少なくとも1つの残基の突然変異を含む。更に特定の実施態様では、少なくとも1つの突然変異はS153R、E159R、D238R及びD343Rである。別の特定の実施態様では、変異体PCSK9タンパク質は、366から成る群から選択される位置において残基の少なくとも1つの突然変異を含む。1つの特定の実施態様では、変異体PCSK9タンパク質は、147、366及び380から成る群から選択される位置において少なくとも1つの残基の突然変異を含む。1つの更に特定の実施態様では、突然変異はS147F、E366K及び/又はV380Mである。
【0087】
イムノコンジュゲート
本発明は、細胞毒、化学療法薬、免疫抑制薬又は放射性同位体などの、治療部分(「イムノコンジュゲート」)に結合したヒト抗PCSK9モノクローナル抗体を包含する。細胞毒性剤は細胞に有害ないずれの薬剤をも含む。イムノコンジュゲートを形成するための好適な細胞毒性剤及び化学療法薬の例は当技術分野で公知であり、例えば、国際特許公開第05/103081号を参照されたい。
【0088】
二重特異体
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、又は多特異性であってよい。多特異性mAbsは1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的であり、又は1つより多い標的ポリペプチドに対して特異的な抗原結合ドメインを含んでもよい。例えば、Tutt et al. (1991) J. Immunol. 147:60-69を参照されたい。ヒト抗PCSK9mAbsは、別の機能性分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質に結合又はそれと共発現し得る。例えば、抗体又はそのフラグメントは、第2の結合特異性を有する二重特異性又は多特異性抗体を産生するために、別の抗体又は抗体フラグメントなどの、1つ又はそれ以上の他の分子実体に機能的に(例えば、化学的結合、遺伝子融合、非共有結合又は別の方法により)結合することができる。
【0089】
本発明に関連して使用することができる典型的な二重特異体型は、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメイン及び第2のIgCH3ドメインの使用であって、第1及び第2のIgCH3ドメインが少なくとも1つのアミノ酸により互いに異なり、そして少なくとも1つのアミノ酸差異が、アミノ酸差異を欠く二重特異体と比べてプロテインAに対する二重特異体の結合を減少させる使用を包含する。1つの実施態様では、第1のIgCH3ドメインはプロテインAを結合し、そして第2のIgCH3ドメインはH95R修飾(IMGTエキソンナンバリングによる;EUナンバリングによるH435R)などのプロテインA結合を低減又は停止する突然変異を含む。第2のCH3はY96F修飾(IMGTによる;EUによるY436F)を更に含む。第2のCH3内に認められる可能性のある更なる修飾は:IgG1抗体の場合では、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、及びV82I(IMGTによる;EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、及びV422I);IgG2抗体の場合では、N44S、K52N、及びV82I(IMGT;EUによるN384S、K392N、及びV422I);及びIgG4抗体の場合では、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、及びV82I(IMGTによる;EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、及びV422I)を含む。上記の二重特異体型の変異体は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0090】
生物学的同等物
本発明の抗PCSK9抗体及び抗体フラグメントは、記載されたmAbsのそれから変異しているが、しかしヒトPCSK9を結合する能力を保持するアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。当該変異体mAbs及び抗体フラグメントは、親配列と比較した場合に、アミノ酸の1つ又はそれ以上の付加、欠失、又は置換を含むが、しかし記載されたmAbsと基本的に同等の生物活性を示す。同様に、本発明の抗PCSK9抗体コード化DNA配列は、開示された配列と比較した場合に、ヌクレオチドの1つ又はそれ以上の付加、欠失、又は置換を含むが、しかし本発明の抗PCSK9抗体又は抗体フラグメントと基本的に生物学的に同等な抗PCSK9抗体又は抗体フラグメントをコード化する配列を包含する。当該変異体アミノ酸及びDNA配列の例は、上記で検討されている。
【0091】
2つの抗原結合タンパク質、又は抗体は、例えば、それらが、それらの吸収速度及び程度が、類似の実験条件下で同じモル用量で単回用量か又は多数回用量で投与された場合に有意差を示さない、製剤学的同等物又は製剤学的代替物である場合、生物学的に同等と考えられる。幾つかの抗体は、それらがそれらの吸収の程度において同等であるがしかし吸収速度は同等でない場合、同等物又は製剤学的同等物と考えることができ、そして吸収速度の当該差が意図的でそしてラベリングに反映されたものであり、例えば、長期使用時に有効な体内薬剤濃度の達成に必須ではなく、そして特定の試験薬物製剤に対して医学的に無意味と考えられるという理由から、尚生物学的同等性と考えてもよい。1つの実施態様では、2つの抗原結合タンパク質は、それらの安全性、純度、及び有効性に臨床的有意差がない場合、生物学的に同等である。
【0092】
1つの実施態様では、患者が、当該変更のない連続治療と比べて、免疫原性の臨床的に顕著な変化又は有効性の低下を含む、副作用の予想されるリスクの増加なしに参照製品及び生物学的製剤間で1回又はそれ以上の回数変更できる場合、2つの抗原結合タンパク質は生物学的に同等である。
【0093】
1つの実施態様では、2つの抗原結合タンパク質は、それら両方が病態又は使用条件に対して共通メカニズム又は作用メカニズムで作用する場合、当該メカニズムが公知の程度まで生物学的に同等である。
【0094】
生物学的同等性は、インビボ及びインビトロ法で実証することができる。生物学的同等性の尺度としては、例えば 、(a)血液、血漿、血清、又は他の生体液中の抗体又はその代謝物の濃度が時間の関数として測定される、ヒト又は他の哺乳動物でのインビボ試験;(b)ヒトインビボバイオアベイラビリティデータと相関して、それが合理的に予測されるインビトロ試験;(c)抗体(又はその標的)の適切な急性薬理学的効果が時間の関数として測定される、ヒト又は他の哺乳動物でのインビボ試験;そして(d)抗体の安全性、有効性、又はバイオアベイラビリティ又は生物学的同等性を確立する対照比較臨床試験が挙げられる。
【0095】
本発明の抗PCSK9抗体の生物学的同等性変異体は、例えば、残基若しくは配列の種々の置換を行ない、又は生物活性に必要ではない末端若しくは内部残基若しくは配列を除去することによって構築することができる。例えば、生物活性に必須ではないシステイン残基は、再生時に不要又は不適切な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するために、除去するか又は他のアミノ酸と置換することができる。
【0096】
処置集団
本発明は、本発明の組成物を必要とする患者を処置する治療方法を提供する。ライフスタイルの改善及び従来の薬剤処置が、コレステロールレベルの低下にしばしば成功する一方で、すべての患者が当該アプローチにより推奨目標コレステロールレベルを達成できるわけではない。家族性高コレステロール血症(FH)などの種々の病態は、従来治療法の積極的使用にもかかわらずLDL−Cレベルの低下に抵抗的であるように見える。ホモ接合性及びヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(hoFH、heFH)は、早期アテローム性動脈硬化性血管疾患に関連する病態である。しかしながら、hoFHと診断された患者は、従来の薬物療法に大きく抵抗性であり、限定された処置選択肢を有する。特に、コレステロール合成を阻害し、肝LDL受容体をアップレギュレートすることによりLDL−Cを減少させるスタチンによる処置は、LDL受容体が存在せず又は欠損している患者においてほとんど効果を有さないと考えられる。最近スタチンの最大用量で処置した遺伝子型確認hoFHの患者において、わずか約20%より少ない平均LDL−C減少が報告されている。本レジメンに対してエゼチミブ10mg/日の追加は27%のLDL−Cレベルの総減少をもたらしたが、これは最適から尚かけ離れている。同様に、多くの患者はスタチン不応性であり、スタチン療法でコントロール不良であり、又はスタチン療法に耐容性がなく;一般に、これらの患者は代替治療法によりコレステロールコントロールを達成することができない。現行の治療選択肢の欠点に対処することができる新処置法に対し、満たされていない大きな医学的ニーズがある。
【0097】
本発明の治療法により処置可能な特定集団としては、LDLアフェレーシス適応患者、PCSK9活性化(GOF)突然変異の対象、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(heFH);スタチン不耐性又はスタチンコントロール不良の原発性高コレステロール血症患者;及び予防的処置可能と考えられる高コレステロール血症発症リスクを有する対象が含まれる。
治療的投与及び製剤
【0098】
本発明は、本発明の抗PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を提供する。本発明に基づいた医薬組成物の投与は、好適な担体、賦形剤、及び移動、送達、耐容性などの改良を提供するために製剤に組み込まれる他の薬剤とともに投与することができる。適切な製剤の数量は、すべての製剤化学者に公知の処方集に見出すことができる:Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PA。これらの製剤は、例えば、散剤、パスタ剤、軟膏剤、ジェリー剤、ろう剤、油、脂質類、ベシクル(LIPOFECTIN(商標)など)を含む脂質(陽イオン性又は陰イオン性)、DNA複合体、無水吸収パスタ剤、水中油及び油中水懸濁剤、懸濁剤カーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固形ゲル剤、及びカーボワックスを含む半固形混合剤を含む。またPowell et al. “Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA (1998) J Pharm Sci Technol 52:238-311をも参照されたい。
【0099】
用量は、投与される対象の年齢及びサイズ、標的疾患、病態、投与経路などによって変動してもよい。本発明の抗体が、高コレステロール血症、LDL及びアポリポタンパク質Bに関連する障害、及び脂質代謝障害などを含み、PCSK9に関連する種々の病態及び疾患を処置するために使用される場合には、本発明の抗体を、約0.01〜約20mg/kg体重、更に好ましくは約0.02〜約7、約0.03〜約5、又は約0.05〜約3mg/kg体重の通常単回投与で静脈内投与することが有利である。病態の重症度によって、処置の頻度及び持続期間は調整することができる。
【0100】
種々の送達システムは公知であり、本発明の医薬組成物、例えば、リポソームへのカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することができる組み換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス、を投与するために使用することができる(例えば Wu et al. (1987) J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)。導入の方法は、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路を含むが、これらに限定されるものではない。組成物は、いずれかの好都合な経路により、例えば、輸注又は静脈内ボーラスにより、上皮又は皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、結腸及び腸粘膜など)を通した吸収により投与してもよく、そして他の生理活性物質と一緒に投与してもよい。投与は全身的又は局所的であってよい。
【0101】
医薬組成物はベシクルで、特にリポソーム(Langer (1990) Science 249:1527-1533; Treat et al. (1989) in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353-365; Lopez-Berestein, ibid., pp. 317-327を参照; 一般に同書を参照)で送達することもできる。
【0102】
特定の状況では、医薬組成物は放出制御システムで送達することもできる。1つの実施態様では、ポンプを使用してもよい(Sefton (1987) CRC Crit. Ref.Biomed. Eng. 14:201を参照)。別の実施態様では、高分子材料を使用してもよい;Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Florida(1974)を参照。尚別の実施態様では、放出制御システムは、組成物標的に近接して留置することができ、その結果全身投与用量のわずかだけが必要となる(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115-138, 1984を参照)。
【0103】
注射製剤は、静脈内、皮下、皮内及び筋肉内注射用剤形、点滴静注などの剤形を含んでよい。これらの注射製剤は公知の方法により調製することができる。例えば、注射製剤は、例えば、通常注射用に便利に使用される滅菌水性媒体又は油性媒体中で、上記の抗体又はその塩を溶解、懸濁又は乳化することにより調製することができる。注射用の水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコース及び他の助剤などを含む等張液があり、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO−50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加体)などの適切な可溶化剤との組み合わせで使用してもよい。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが用いられ、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの適切な可溶化剤との組み合わせで使用してもよい。このように調製した注射剤は、好ましくは適切なアンプルに充填される。本発明の医薬組成物は、標準注射針及びシリンジにより皮下又は静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン送達デバイスは、本発明の医薬組成物を送達するのに容易な適用性を有する。このようなペン送達デバイスは、再利用可能又は使い捨て可能となり得る。再利用可能なペン送達デバイスは、一般的に医薬組成物を含む交換可能カートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物のすべてが投与され、カートリッジが空になった時点で、空のカートリッジは容易に廃棄され、医薬組成物を含む別のカートリッジと交換することができる。このようにペン送達デバイスは再使用することができる。使い捨てペン送達デバイスでは、交換式カートリッジはない。むしろ使い捨てペン送達デバイスは、デバイス内のリザーバに貯められる医薬組成物であらかじめ充填される。リザーバの組成物が空になった時点で、全デバイスは廃棄される。
【0104】
多くの再利用可能なペン及び自己注射送達デバイスは、本発明の医薬組成物の皮下送達に適用性を有する。例としては、例えば、わずか数例を挙げると、AUTOPEN(商標) (Owen Mumford, Inc., Woodstock, UK)、DISETRONIC(商標)ペン (Disetronic Medical Systems, Burghdorf, Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン, HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co., Indianapolis, IN)、NOVOPEN(商標) I、II及びIII (Novo Nordisk, Copenhagen, Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標) (Novo Nordisk, Copenhagen, Denmark)、BD(商標)ペン (Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、 OPTIPEN STARLET(商標)、及び OPTICLIK(商標) (sanofi-aventis, Frankfurt, Germany)を含むが、それらに限定されるものではない。本発明の医薬組成物の皮下送達において適用を有する使い捨てペン送達デバイスの例としては、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi-aventis)、FLEXPEN(商標) (Novo Nordisk)、及びKWIKPEN(商標) (Eli Lilly)を含むが、それらに限定されるものでない。
【0105】
有利なことには、上記の経口又は非経口使用の医薬組成物は、有効成分の用量に適合させるのに適する単位用量の剤形に調製される。単位用量の当該剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが含まれる。含まれる前述の抗体量は、一般に単位用量の剤形当たり約5〜約500mgであり;特に注射剤の形態では、前述の抗体は約5〜約100mgで、及び他の剤形に対しては約10〜約250mgで含まれることが好ましい。
【0106】
本発明は、本発明の抗体又は抗体フラグメントが、hPCSK9に関わる様々な病態と関連する高コレステロール血症を処置するのに有用な治療方法を提供する。本発明の抗PCSK9抗体又は抗体フラグメントは、特に高コレステロール血症などの処置に有用である。併用療法には、例えば、(1)セリバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンなどの、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル(HMG)−コエンザイムA(CoA)レダクターゼを阻害することにより、コレステロール合成の細胞枯渇を誘導する;(2)コレステロール取り込み及び/又は胆汁酸再吸収を阻害する;(3)リポ蛋白質異化作用を増加させる(ナイアシンなど)、1つ又はそれ以上のいずれかの薬剤;及び22−ヒドロキシコレステロールなどのコレステロール排泄の役割を果たすLXR転写因子のアクチベーター、又はエゼチミブ+シンバスタチンなどの固定組み合わせ;胆汁レジン(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム)とスタチン、ナイアシン+スタチンの固定組み合わせ(例えば、ナイアシンとロバスタチン);と併せた、又はω−3−脂肪酸エチルエステル(例えば、オマコール)などの他の脂質低下薬、と併せた本発明の抗PCSK9抗体を含んでよい。
【実施例】
【0107】
以下の実施例は、当業者に、本発明の方法及び組成物の作り方および使い方の完全な開示及び説明を提供するために記載するものであり、本発明者らが彼らの発明と考えている範囲を限定することを意図するものではない。使用した数に関して正確さを確保する努力をしているが、ある程度の実験誤差及び偏差は含まれる筈のものである。特に明記しない限り、分子量は平均分子量で、温度は摂氏で、そして圧力は大気圧又はほぼ大気圧である。
【0108】
〔実施例1〕:ヒトPCSK9に対するヒト抗体の作成
VELOCIMMUNE(商標)マウスをPCSK9で免疫し、抗体免疫応答を、これらのマウスから得られた血清を用いて抗原特異的免疫アッセイによってモニタリングした。 B細胞を発現する抗hPCSK9を、高抗hPCSK9抗体力価を有することを示した免疫マウスの脾臓から採取し、マウス骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを形成させた。ハイブリドーマをスクリーニングして選択し、下記の分析法を用いてhPCSK9特異抗体を発現する細胞株を同定した。本分析法により、H1M300、H1M504、H1M505、H1M500、H1M497、H1M498、H1M494、H1M309、H1M312、H1M499、H1M493、H1M496、H1M503、H1M502、H1M508、H1M495及びH1M492と命名したキメラ抗hPCSK9抗体を産生する幾つかの細胞株を同定した。
【0109】
また、ヒトPCSK9特異的抗体は、米国特許出願第2007/0280945A1号に記載のように、骨髄腫細胞への融合なしに抗原免疫B細胞から直接単離した。重鎖及び軽鎖可変領域をクローン化し、H1H313、H1H314、H1H315、H1H316、H1H317、H1H318、H1H320、H1H321及びH1H334と命名した完全ヒト抗hPCSK9抗体を作成した。これらの抗体を発現する安定組み換え抗体発現CHO細胞株を樹立した。
【0110】
〔実施例2〕遺伝子利用解析
産生mAbsの構造を解析するために、抗体可変領域をコード化する核酸をクローン化し配列決定した。可変領域の予測アミノ酸配列をN末端アミノ酸配列決定により確認した。核酸配列及びmAbsの予測アミノ酸配列から、遺伝子使用を各抗体鎖について同定した。
【0111】
【表1】
【0112】
〔実施例3〕抗原結合親和性の測定
前述のハイブリドーマ細胞株によって作成した、mAbsに結合するhPCSK9の平衡解離定数(KD)を、リアルタイムバイオセンサー表面プラズモン共鳴アッセイ(BIACORE(商標)T100)の表面動力学によって測定した。各抗体は、捕捉抗体表面を形成するために、BIACORE(商標)チップへの直接化学カップリングを通して作出した、ヤギ抗マウ
スIgGポリクローナル抗体表面上で4μl/分の流速にて90秒間捕捉した。50nM又は12.5nM濃度のhPCSK9−myc−myc−his(hPCSK9−mmh)を、50μl/分の流速で300秒間捕捉抗体表面上に注入し、そして抗原抗体解離を25℃か又は37℃で15分間モニタリングした(KD=pM;T1/2=分)。
【0113】
【表2】
【0114】
脾細胞の直接単離を経て作成した、mAbsへのhPCSK9結合についての平衡解離定数(KD)を、リアルタイムバイオセンサー表面プラズモン共鳴アッセイ(BIACORE(商標)T100)において表面動力学によって測定した。選択された各抗体は、捕捉抗体表面を形成するために、BIACORE(商標)チップへの直接化学カップリングを通して作出した、ヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体表面上で2μl/分の流速にて6分間捕捉した。50nM又は12.5nM濃度のPCSK9−mmhを、70μl/分の流速にて5分間捕捉抗体表面上に注入し、そして抗原抗体解離を25℃か又は37℃で15分間モニタリングした(KD=pM;T1/2=分)。
【0115】
【表3】
【0116】
25℃におけるタグ付きアカゲザル(Macaca mulata)PCSK9(mmPCSK9;配列番号756)(mmPCSK9−mmh)についての選択mAbsの解離速度(kd)は、前述のようにして決定した。
【0117】
【表4】
【0118】
〔実施例4〕抗原結合親和性に対するpHの影響
CHO細胞産生完全ヒトhPCSK9mAbsへの抗原結合親和性に対するpHの影響を、前述のように評価した。試験mAbsは、H1H316P(「316P」)(HCVR/LCVR配列番号90/92;CDR配列の配列番号76/78/80及び84/86/88)、及びH1M300N(「300N」)(HCVR/LCVR配列番号218/226;CDR配列の配列番号220/222/224及び228/230/232)の完全ヒトバージョンである。hPCSK9−mmhは抗mycmAb表面上に、高密度(約35〜45共鳴単位)(RU)か又は低密度(約5〜14RU)で捕捉した。各抗体は、HBST(pH7.4又はpH5.5)中50nMで、25℃で100μl/mlの流速にて1.5分間捕捉hPCSK9表面上に注入し、そして抗原抗体解離を10分間モニタリングした。コントロールI:抗hPCSK9mAb配列番号79/101(WO2008/063382)(KD=pM;T1/2=分)。
【0119】
【表5】
【0120】
pH7.4又はpH5.5での316P及び300Nの抗原結合特性を、上記のように改良BIACORE(商標)アッセイによって測定した。簡潔に言えば、mAbsは、アミンカップリングを介してBIACORE(商標)CM5センサーチップ上に固定化した。様々な濃度のmyc−myc−hisタグ付きhPCSK9、マウスPCSK9(mPCSK9、配列番号757)、D374Yの機能獲得型(GOF)点突然変異(hPCSK9(D374Y))を有するhPCSK9、カニクイザル(Macaca fascicularis) PCSK9(mfPCSK9、配列番号761)(mfPCSK9)、ラット(Rattus norvegicus) PCSK9(rPCSK9、配列番号763)及びhis−タグ付きシリアンゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus) PCSK9(maPCSK9、配列番号762)(maPCSK9)を、11から100nMまでの範囲で、100μl/mlの流速にて1.5分間抗体表面上に注入し、そして抗原抗体解離を25℃(表6)か又は37℃(表7)において5分間リアルタイムでモニタリングした。コントロールII:抗hPCSK9mAbs配列番号67/12(WO2009/026558)。NB:実験条件下で結合を認めなかった。(KD=pM;T1/2=分)。
【0121】
【表6】
【0122】
【表7】
【0123】
〔実施例5〕点突然変異D374Yを有するhPCSK9への抗hPCSK9mAbsの結合
D374Yの機能獲得型(GOF)点突然変異を有するhPCSKに対する、選択抗hPCSK9mAbs(hPCSK9(D374Y)−mmh)の結合親和性を、前述のように決定した。各抗体は、捕捉抗体表面を形成するために、BIACORE(商標)チップへの直接化学カップリングを通して作出した、ヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体表面上に40μl/分の流速にて8〜30秒間捕捉した。1.78nM〜100nMの種々濃度のhPCSK9(D374Y)−mmhを、50μl/分の流速で5分間捕捉抗体表面上に注入し、そしてhPCSK9(D374Y)−mmh及び抗体の解離を25℃で15分間モニタリングした。コントロールIII:抗hPCSK9mAbs配列番号49/23(WO2009/026558)(KD=pM;T1/2=分)。
【0124】
【表8】
【0125】
〔実施例6〕抗hPCSK9mAbsの結合特異性
316P、300N、及びコントロールI抗hPCSK9mAbsを、BIACORE(商標)2000のアミン結合抗hFcCM5チップ上に捕捉した。タグ付き(myc−myc−his)ヒトPCSK9、ヒトPCSK1(hPCSK1)(配列番号759)、ヒトPCSK7(hPCSK7)(配列番号760)、又はマウスPCSK9を、捕捉mAb表面上に注入し(100nM)、25℃で5分間結合できるようにした。RUの変化を記録した。結果:300N及びコントロールIはhPCSK9だけに結合し、316PはhPCSK9及びmPCSK9の両方を結合した。
【0126】
抗hPCSK9mAbsの結合特異性をELISAによって測定した。簡潔に言えば、抗hPCSK9抗体を96ウェルプレートにコーティングした。1.2nMのヒトPCSK9−mmh、mPCSK9−mmh、maPCSK9−h、hPCSK1−mmh、又はhPCSK7−mmhを抗体コーティングプレートに加えて、RTで1時間インキュベートした。次に、プレートに結合したPCSKタンパク質をHRP結合抗His抗体によって検出した。結果は、316Pはヒト、マウス、及びハムスターPCSK9に結合するが、一方で300N及びコントロールIはhPCSK9だけを結合することを示した。いずれの抗hPCSK9mAbsも、hPCSK1又はhPCSK7に顕著な結合を示さなかった。
【0127】
〔実施例7〕抗hPCSK9mAbsの交差反応
抗hPCSK9mAbsと、mmPCSK9、mfPCSK9、mPCSK9、maPCSK9、又はrPCSK9との交差反応は、BIACORE(商標)3000を用いて測定した。抗hPCSK9mAbsをBIACORE(商標)チップへの直接化学カップリングを通して作出した抗hFc表面上で捕捉した。精製タグ付きhPCSK9、hPCSK9(D374Y)、mmPCSK9、mfPCSK9、mPCSK9、maPCSK9、又はrPCSK9を、各々1.56nM〜50nMの濃度で25℃又は37℃において抗体表面に注入した。316P、300N、コントロールI、コントロールII、コントロールIII及びPCSK9タンパク質間の結合を測定した(KD=pM;T1/2=分)。
【0128】
【表9】
【0129】
【表10】
【0130】
【表11】
【0131】
【表12】
【0132】
【表13】
【0133】
〔実施例8〕hPCSK9とhLDLRドメイン間の結合の阻害
選択された抗hPCSK9mAbsの、ヒトLDLR完全長細胞外ドメイン(hLDLR−ecto配列番号758)、hLDLREGF−Aドメイン(配列番号758のアミノ酸313−355)、又はhLDLREGF−ABドメイン(配列番号758のアミノ酸314−393)(LDLR Genbank number NM_000527)へのhPCSK9結合遮断能力を、BIACORE(商標)3000を用いて評価した。簡潔に言えば、hLDLR−ecto、EGF−A−hFc、又はEGF−AB−hFcタンパク質を、受容体又は受容体フラグメント表面を作製するためにCM5チップ上でアミン結合した。選択された抗hPCSK9mAbsを、62.5nM(抗原に対して2.5倍過剰)で、25nMのhPCSK9−mmhとプレミックスし、続いて25℃で40分インキュベーションして、平衡溶液を形成するために抗体抗原結合が平衡に達することができるようにした。平衡溶液を、25℃で40分間2μl/分にて受容体又は受容体フラグメント上に注入した。抗hPCSK9mAbsの、hLDLR−ecto、EGF−A−hFc、又はEGF−AB−hFcへの結合に因るRUの変化を測定した。結果は、H1H316P及びH1M300Nは、hPCSK9−mmhの、hLDLR−ecto、hLDLREGF−Aドメイン、及びhLDLREGF−ABドメインへの結合を遮断した;H1H320Pは、hPCSK9−mmhの、hLDLR−ecto及びhLDLREGF−Aドメインへの結合を遮断した;そしてH1H321Pは、hPCSK9−mmhのhLDLREGF−Aドメインへの結合を遮断した;ことを示す。
【0134】
mAbsの、hLDLR−ecto、hLDLREGF−Aドメイン、又はhLDLREGF−ABドメインへのhPCSK9結合遮断能力についても、ELISAベース免疫アッセイで評価した。簡潔に言えば、hLDLR−ecto、hLDLREGF−A−hFc又はhLDLREGF−AB−hFcを、各々2 μg/mlでPBS緩衝液中4℃にて一夜96ウェルプレートにコーティングし、非特異的結合部位をBSAで遮断した。本プレートを用いて、種々の濃度の抗hPCSK9mAbsで前平衡化した、PCSK9−mmh溶液中にて遊離hPCSK9−mmhを測定した。一定量のhPCSK9−mmh(500pM)を、連続希釈法において0から〜50nMまでの範囲の種々量の抗体とプレミックスし、続いて室温(RT)において1時間インキュベーションして、抗体抗原結合が平衡に達するようにした。平衡試料溶液を受容体又は受容体フラグメントコーティングプレートに移した。1時間の結合後、洗浄して、結合hPCSK9−mmhはHRP結合myc抗体を用いて検出した。IC50値(pM)を、プレートコーティング受容体又は受容体フラグメントに結合したhPCSK9−mmhの50%減少達成に必要な抗体量として測定した。結果は、特異的mAbsが、中性pH(7.2)及び酸性pH(5.5)の両方で3受容体の結合を機能的に遮断することを示す。
【0135】
【表14】
【0136】
本mAbsの、hLDLREGF−Aドメイン又はhLDLREGF−ABドメインへのhPCSK9GOF変異体hPCSK9(D374Y−mmh結合遮断能力(pMでのIC50値)を、一定量の0.05nMのhPCSK9(D374Y)−mmhを用いて、上記のELISAに基づく免疫アッセイで評価した。
【0137】
【表15】
【0138】
本mAbsの、hLDLR−ectoドメイン、hLDLREGF−Aドメイン、又はhLDLREGF−ABドメインへの、mmPCSK9か又はmPCSK9結合遮断能力(pMでのIC50値)を、一定量の1nMのmmhタグ付きmmPCSK9か又は1nMのmPCSK9を用いて、上記のELISAに基づく免疫アッセイにより、中性pH7.2で評価した。
【0139】
【表16】
【0140】
本mAbsの、hLDLREGF−Aドメインへの、hPCSK9、mmPCSK9、rPCSK9、maPCSK9、mfPCSK9、又はmPCSK9結合遮断能力(pMでのIC50値)を、一定量の0.5nMのhPCSK9−mmh、1nMのmmPCSK9−mmh、1nMのrPCSK9−mmh、1nMのmaPCSK9−h、0.3nMのmfPCSK9−mmh、又は1nMのmPCSK9−mmhを用いて、上記のELISAに基づく免疫アッセイにより、中性pH(7.2)(表17)又は酸性pH(5.5、表18)で評価した。
【0141】
【表17】
【0142】
【表18】
【0143】
316P及びコントロールIの、hLDLRへのhPCSK9結合遮断能力についても測定した。簡潔に言えば、組み換えhLDLR又はhLDLR−EGFA−mFcをBIACORE(商標) CM5チップにアミン結合を経て固定化した。100nMのhPCSK9−mmh及び316P、コントロールImAb、又は非hPCSK9特異的mAb(各々250nM)をRTで1時間インキュベートし、次いで10μl/mlの流速にて25℃で15分間hLDLR又はhLDLR−EGFA表面上に注入した。hLDLRか又はhLDLR−EGFAの混合物における、遊離hPCSK9−mmh間の結合に因るRUの変化を記録した。hLDLRか又はhLDLR−EGFAへのhPCSK9の結合は、316P及び300Nによって完全に遮断されたが、コントロールImAbでは遮断されなかった。
【0144】
〔実施例9〕エピトープマッピング
エピトープ結合特異性を明らかにするために、特異的ヒトPCSK9ドメインがマウスPCSK9ドメインで置換された、3種のキメラPCSK9−mmhタンパク質を作成した。キメラタンパク質#1は、マウスPCSK9プロドメイン(配列番号757のアミノ酸残基1−155)で、続いてヒトPCSK9触媒ドメイン(配列番号755の残基153−425)及びマウスPCSK9C末端ドメイン(配列番号757の残基429−694)(mPro−hCat−mC−term−mmh)で構成される。キメラタンパク質#2は、ヒトPCSK9プロドメイン(配列番号755のアミノ酸残基1−152)で、続いてマウスPCSK9触媒ドメイン(配列番号757の残基156−428)及びマウスPCSK9C末端(hPro−mCat−mC−term−mmh)で構成される。キメラタンパク質#3は、マウスPCSK9プロドメイン及びマウスPCSK9触媒ドメインで、続いてヒトPCSK9C末端ドメイン(配列番号755の残基426−692)(mPro−mCat−hC−term−mmh)で構成される。加えて、D374Yの点突然変異を有するhPCSK9(hPCSK9(D374Y)−mmh)を作成した。
【0145】
mAbsの、試験タンパク質hPCSK9−mmh、マウスPCSK9−mmh、キメラタンパク質#1、#2、及び#3、並びにhPCSK9(D374Y)−mmhへの結合特異性を、以下のように試験した:本mAbsを96ウェルプレート上で4℃にて一夜コーティングし、次いで各試験タンパク質(1.2nM)をプレートに加えた。室温で1時間結合後、プレートを洗浄し、結合した試験タンパク質をHRP結合抗mycポリクローナル抗体を用いて検出した(++=OD>1.0;+=OD0.4〜1.0;−=OD<0.4)。
【0146】
【表19】
【0147】
316P、300N及び対照抗hPCSK9mAbsの、hPCSK9−mmh、mPCSK9−mmh、mmPCSK9−mmh、mfPCSK9−mmh、rPCSK9−mmh、キメラタンパク質#1、#2、及び#3、並びにhPCSK9(D374Y)−mmhへの結合特異性を、タンパク質濃度が1.7nMであることを除いて、上記と同じように試験した(−=OD<0.7;+=OD 0.7〜1.5;++=OD>1.5)。
【0148】
【表20】
【0149】
選択mAbsでの類似の結果をBIACORE(商標)結合分析によって得た。簡潔に言えば、316P、300N、又はコントロールImAbを、アミン結合抗hFcCM5チップ上で捕捉し、100nMの各タンパク質を本mAb捕捉表面上に注入した。本mAb捕捉表面への各蛋白質の結合に因るRUの変化を測定した。
【0150】
【表21】
【0151】
mPCSK9−mmhと交差反応する316Pの結合特異性を更に評価するために、結合ドメイン特異性を測定する交差競合ELISA分析法を開発した。簡潔に言えば、先ず、キメラタンパク質#1、#2、又は#3に特異的なmAbsの1μg/mlを、96ウェルプレート上に一夜コーティングした。次いで、ヒトPCSK9−mmh(2μg/ml)を各ウェルに加え、続いて室温で1時間インキュベーションした。316P(1μg/ml)を加えて、更に1時間室温でインキュベートした。プレートへ結合した316Pを、HRP結合抗hFcポリクローナル抗体を用いて検出した。hPCSK9−mmhへの316P結合は、キメラタンパク質#2又はキメラタンパク質#3に特異的なmAbsの存在によって影響されなかったが、hPCSK9−mmhへの316Pの結合は、キメラタンパク質#1に特異的な抗体の存在で大きく減少した。
【0152】
〔実施例10〕BIACORE(商標)に基づく抗原結合プロファイル評価
抗体結合プロファイルは、BIACORE(商標)1000を用いて、316P、300N、コントロールI、II、及びIIImAbsに対しても確立した。簡潔に言えば、hPCSK9−mmhは抗myc表面上で捕捉した。第1の抗hPCSK9mAb(50μg/ml)をPCSK9結合表面上に10分間、25℃で10μl/分の流速にて注入した。次いで第2のhPCSK9mAb(50μg/ml)を、第1のmAb結合表面上に10分間、25℃で10μl/分の流速にて注入した。第1のmAbの、第2のmAb結合遮断能力を測定し、パーセント阻害として表わした。
【0153】
【表22】
【0154】
〔実施例11〕抗hPCSK9抗体によるLDL取り込みの増加
抗hPCSK9mAbsの、インビトロでのLDL取り込み増加能力を、ヒト肝細胞肝癌細胞株(HepG2)を用いて測定した。HepG2細胞を96ウェルプレート上に、DMEM完全培地中9×104細胞/ウェルで接種し、そしてHepG2単層を形成させるために、5%CO2の存在下で37℃で6時間インキュベートした。リポ蛋白質欠乏培地(LPDS)中50nMのヒトPCSK9−mmh、及び試験mAbを、LPDS培地中500nMから0.98nMまでの種々の濃度で加えた。データは、各実験でのIC50値で表わした(IC50=LDL取込みが50%増加する抗体濃度)。加えて、実験では、また、316P及び300Nの両方は、LDL取込みに対するhPCSK9の阻害作用を完全に逆転させることができたが、一方でコントロールImAb又はH1M508抗hPCSK9mAbは、阻害作用を約50%だけ逆転させることを示した。
【0155】
【表23】
【0156】
抗hPCSK9mAbsの、種々の哺乳動物からのPCSK9タンパク質によるLDL取り込みに対する阻害作用逆転能力についても、上記のHepG2細胞株で試験した。簡潔に言えば、HepG2細胞を、LPDS培地(500nMから始める)中で抗体の連続希釈法により、及び50nMのhPCSK9−mmh、mfPCSK9−mmh、mPCSK9−mmh、rPCSK9−mmh、又はmaPCSK9−hと一夜インキュベートした。HepG2細胞を、また、LPDS(50nMから始める)中で抗体の連続希釈法により、及び1nMのhPCSK9(D374Y)と一夜インキュベートした。表24に示すように、316Pは、試験したすべてのPCSK9タンパク質によりLDLに対する阻害作用を完全に逆転させることができたのに対して、300Nは、hPCSK9、hPCSK9(D374Y)、及びmfPCSK9によるLDL取り込みへの阻害作用を逆転させることができただけであった。値はnMIC50で表わした。
【0157】
【表24】
【0158】
〔実施例12〕インビボにおけるhPCSK9の生物学的作用の中和
PCSK9を中和する生物学的作用を評価するために、完全長hPCSK9−mmhをコード化するDNA構築物の流体力学的送達(HDD)により、hPCSK9をC57BL/6マウスに過剰発現させた。4マウス(C57BL/6)に空ベクター/生理食塩水(対照)を注入し、16マウスに50μgのhPCSK9−mmh−DNA/生理食塩水混合物を体重の10%に相当する分だけ尾静脈に注射した。HDDの7日後に、hPCSK9の送達は、総コレステロールの1.6倍上昇、LDLコレステロール(LDL−C)の3.4倍上昇及び非HDLコレステロールの1.9倍上昇(対照と比べて)をもたらした。7日目の血清hPCSK9レベルは、すべて定量的ELISAで評価して1μg/mlより大きかった。
【0159】
HDD後の6日目に、3実験群(1、5又は10mg/kg)(n=4/群)に対して、H1M300Nを腹腔内注射(i.p.)を経て投与した結果、血清コレステロールレベルの顕著な減弱をもたらした。1、5又は10mg/kgのH1M300N処置群において、投与後18時間に総コレステロールはそれぞれ9.8%、26.3%及び26.8%減少し、LDL−Cは5.1%、52.3%及び56.7%減少し、そして非HDLコレステロールは7.4%、33.8%及び28.6%減少した。
【0160】
〔実施例13〕サルでの薬物動力学的及び血清化学的研究
薬物動力学的(PK)研究を、5〜7kgの体重範囲で3〜5歳のナイーブ雄カニクイザル(Macaca fascicularis) で実施した。
【0161】
群割付
サルを5処置群に割り付けた:処置群1(n=3)は対照緩衝液(10mMリン酸ナトリウム、pH6、1ml/kg)の投与を受けた;処置群2(n=3)は1ml/kgの316P(5mg/ml)の投与を受けた;処置群3(n=3)は1ml/kgの300N(5mg/ml)の投与を受けた;処置群4(n=3)は1ml/kgの316P(15mg/ml)の投与を受けた;そして処置群5(n=3)は1ml/kgの300N(15mg/ml)の投与を受けた。すべての処置は、IVボーラスで投与し、続いて1mlの生理食塩水洗浄を受けた。総投与量(ml)は、最新の体重(各動物は環境順化時に2回、そして試験期間を通して毎週1回体重測定した)を基に計算した。試験mAb又はバッファーコントロールの単回用量を1日目に投与した。
【0162】
動物の保護
動物は温度及び湿度監視環境に入れられた。温度及び相対湿度の目標範囲は、それぞれ18〜29°及び30〜70%であった。自動照明システムは12時間の概日周期を与えた。暗周期は研究又は施設関連活動に対して妨害し得た。動物は、動物保護法及び実験動物の保護及び使用に関する指針(National Research Council 1996)に記載の勧告に適合するケージに個別に入れられた。
【0163】
飼料及び給餌
動物は、NBL USA SOPに従い1日2回給餌した。動物は特定の処置で必要な場合には絶食させた(例えば、血清化学のための採血、又は採尿の前、又は鎮静を含む処置が実施される場合)。飼料は、定期的に汚染物質を分析し、メーカー規格内であることが認められた。
【0164】
実験計画
適正な数の動物をNBL USAストックから選択した。動物の健康は獣医スタッフで審査し、そして血清化学、血液学、及び凝固スクリーニングを実施した。健常が確認された16匹の雄を、研究に割り付けた。16匹の雄を特定研究群に割り付けて、残りの動物は予備として利用した。血清コレステロールレベル(順化における2系列の平均を基準)を組み入れた層化ランダム化スキームを用いて、動物を研究群に割り付けた。
【0165】
順化期間
既隔離動物を投与開始前に最小14日間試験室で順化させた。順化段階データは予備を含み全動物から収集した。全動物について、研究結果に影響を与える可能性のある行動異常を評価した。予備動物は1日後にストックに戻した。
【0166】
血液採取
血液は、拘束、覚醒動物の末梢静脈から静脈穿刺で採取した。可能な限り、単回採血を経て血液を採取し、次いで適切に分割した。
【0167】
PK研究
血液試料(1.5ml)は、投与前、2分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、及びその後24時間毎に1回血清分離管(SST)で採取した。標本保存血清は2バイアルに移して−60度又はそれ以下で保存した。
【0168】
血清試料は、最適化ELISA(酵素免疫吸着測定法)手順を用いて解析した。簡潔に言えば、マイクロタイタープレートを先ずhPCSK9−mmhでコーティングした。次いで、試験mAb316P又は300Nを、hPCSK9−mmhプレート上に捕捉した。捕捉316P又は300Nは、ビオチニル化マウス抗hIgG4を用いて検出し、続いてNeutrAvidin−HRPへ結合させた。100〜1.56ng/mlの範囲で種々濃度の316P又は300Nを標準として使用した。316P又は300Nの不存在下に1%のサル血清(分析マトリックス)をゼロ(0ng/ml)標準として使用した。図2に示す結果は、血清316P及び300Nレベルの用量依存性増加を示す。PKパラメーターを、WinNonlinソフトウェア(非コンパートメント解析、モデル201−IVボーラス投与)を用いて解析した。
【0169】
【表25】
【0170】
血清化学検査
血液試料を、投与前、12時間、48時間、及びその後48時間毎に1回、臨床化学分析、特に脂質プロファイル(即ち、コレステロール、LDL−C、HDL−C、トリグリセリド)のために採取した。投与後12時間試料を除いて、全動物は試料採取前に一夜絶食状態にした。試料量は約1mlとした。化学パラメータは、オリンパス自動分析計を用いて測定した。測定パラメータ(Xybionコード):アルブミン(ALB);アルカリ性ホスファターゼ(ALP);アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT);アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST);総ビリルビン(TBIL);カルシウム(Ca);総コレステロール(TCho);クレアチンキナーゼ(CK);クレアチニン(CRN);γグルタミルトランスアミナーゼ(GGT);グルコース(GLU);無機リン(IP);総タンパク質(TP);トリグリセリド(TRIG);血中尿素窒素(BUN);グロブリン(GLOB);アルブミン/グロブリン比(A/G);塩化物(Cl);カリウム(K);ナトリウム(Na);LDL及びHDLコレステロール。残りの血清は−20℃又はそれ以下で保存し、分析後1週間以内に廃棄した。
【0171】
105日の投与後時点を通過した試料の結果を図3〜7に示す。用量に関係なく初回投与後24時間以内に、316P及び300Nの投与を受けた動物に総コレステロール及びLDL−Cの減少が認められた。血清総コレステロールは急速かつ確実に減少した(〜35%、図3)。6日までにLDL−Cの〜80%の確実な減少が見られた(図4〜5)。15mg/kg用量の300Nを投与した動物では、総コレステロール(〜10−15%減少)及びLDL−C(〜40%減少) の両方の減少が、試験の少なくとも80日まで続いた。加えて、HDL−Cが15mg/kgの316Pを投与した動物で上昇した(図6)。316Pか又は300Nの高用量(15mg/kg)投与を受けた動物も、試験期間中トリグリセリドの減少を示した(図7)。316Pはベースラインと比べて80%までのLDL−Cレベルの最大抑制を示した。この抑制の長さは、約18日(5mg/kg用量)及び約45日(15mg/kg用量)持続する、少なくとも60%抑制(ベースラインLDL−Cレベルと比べて)で用量依存性であった。300Nは316Pと異なる薬力学的プロファイルを示した。300NによるLDL−C抑制は同等の用量で非常に長い期間持続した(5mg/kg用量投与後28日間に50%LDL−C抑制、及び15mg/kg用量投与後約90日間に50%LDL−C抑制)。ALT及びAST測定で測定して、肝機能の測定可能な変化はほとんど又は全く見られなかった。本試験で抗PCSK9抗体の投与を受けた全動物は、LDL−C及び総コレステロールの急速な抑制を示した。
【0172】
316P及び300Nの類似のLDL−C低下作用が、5mg/kgの316Pか又は5mg/kgの300Nの単回皮下(SC)投与を受けたカニクイザルで認められた(図8)。316P及び300Nは両方とも、LDL−Cレベルを劇的に抑制し、それぞれ約15及び30日間LDL−C低下作用を維持した(図8)。薬力学的効果(約40%のLDL−C抑制)は、サル血清中の機能的抗体レベルとほぼ相関するように見える(図9)。抗体レベルが10μg/ml以下に低下するに従って、LDL−C抑制は同様に低下するように見えた。加えて、300Nは316Pよりも実質的に長い循環半減期を、従って長い実測LDL−C抑制を示した。
【0173】
【表26】
【0174】
〔実施例14〕抗hPCSK9抗体によるLDL受容体分解の減弱
肝LDL受容体レベルに対するPCSK9の生物学的効果、及びそれに続く血清LDL−Cレベルに対する効果を評価するために、hPCSK9を、hPCSK9を発現するが、mPCSK9(PCSK9hu/huマウス) を発現しないマウスに静脈内注射により投与した。具体的には、PCSK9hu/huマウスに、PBS(対照)、又は1.2mg/kgのhPCSK9−mmhを尾静脈経由で注射した。hPCSK9の送達6時間後に、血清中で(ベースラインレベルと比べて)1.4倍の総コレステロール上昇及び2.3倍のLDL−C上昇が認められた。hPCSK9投与の4時間後、動物の別のコホート(n=3)における肝LDL受容体レベルの解析では、肝ホモジネート中において検出可能なLDL受容体の顕著な低下を示した。
【0175】
肝LDL受容体レベルに対する抗hPCSK9の生物学的効果、及びそれに続く血清LDL−Cレベルに対する効果を評価するために、316P及び非hPCSK9特異的mAbを、上記のhPCSK9−mmhタンパク質注射の20時間前に、等価用量(5mg/kgi.p.)でPCSK9hu/huマウスに投与した。hPCSK9投与の4時間後、マウスを犠牲にし、そして合計8組織(肝臓、脳、肺、腎臓、心臓、回腸、副腎、及び膵臓)を採取して、LDL受容体レベルをウェスタンブロット法によって測定した。LDL受容体レベルの変化は肝臓だけに認められた。PBS対照投与と比べて、316P投与は、総コレステロール及びLDLコレステロールのPCSK9媒介増加を顕著に遮断した(ベースラインでLDL−C=2.49mg/dl及びPCSK9投与後6時間で3.1mg/dl;ビヒクルでの135%と比べて25%増加)。非hPCSK9特異的mAbの前投与は、PBS単独からLDL−C増加を約27%遮断した(PBS5.6mg/dlと比べてLDL−C=4.1mg/dl)。マウスの別のコホート(n=3/群)におけるLDL受容体レベルの解析では、PCSK9投与によりLDL受容体の顕著な低下を示し、これは316Pによって遮断されたが、非hPCSK9特異的mAbでは遮断されなかった(図10)。
【0176】
種々用量の316Pの効果を、LDL−C上昇及びhPCSK9レベル上昇の両方を示すPCSK9hu/huマウスにおいても評価した。PCSK9hu/huマウスを、先ず高炭水化物餌料で8週間飼育して、LDL−C及びhPCSK9レベルの両方を〜2倍上昇させた。316Pか又は非hPCSK9特異的mAbを、各々1mg/kg、5mg/kg、又は10mg/kgで,マウスに投与した。血清を24時間後に採取し、LDL−Cレベルを解析した。316Pは、LDL−Cレベルの低下に用量依存性に有効であった(図11)。加えて、10mg/kg用量で投与した316Pは、24時間以内にLDL−Cレベルを元(給餌前)の値に急速に逆に低下させた(データは示していない)。
【0177】
〔実施例15〕マウスPKの研究
PK研究は、6週齢のC57BL/6マウス及び11〜15週齢のhPCSK9ヘテロ接合体マウスで実施した。コントロールI、316P、又は300Nの単回注射を、各々10mg/kgでSC投与した。血清出血について、0時間(出血前)、6時間、1、3、6、10、14、21、28、35、42及び56日の全12時点で、抗hFc捕捉及び抗hFc検出サンドイッチELISAを用いてhIgGレベルを測定した(図12及び13)。すべてのmAbsは、約3日でそれらのTmaxに到達し、C57BL/6マウスでは約47〜115μg/ml及びhPCSK9ヘテロ接合体マウスでは55〜196μg/mlの対応Cmaxレベルを有した。C57BL/6マウスでは56日に、コントロールImAbレベルは約12μg/mlで、そして300Nレベルは約11μg/mlであったのに対して、316Pレベルは約0.02μg/mlより小さかった。hPCSK9ヘテロ接合体マウスでは56日に、コントロールImAbレベルは約29μg/mlであったが、一方で300N及び316Pレベルの両方は、0.02μg/mlの定量化限界(BQL)以下であった。
【0178】
〔実施例16〕突然変異体/変異体抗hPCSK9への抗hPCSK9抗体結合
hPCSK9と抗hPCSK9mAbsと間の結合を更に評価するために、各変異体が単一点突然変異を含み、そして2つの変異体hPCSK9タンパク質が各々二重突然変異を含む、21変異体hPCSK9タンパク質を作成した。選択された各抗体を、BIACORE(商標)チップへの直接化学カップリングを通して作製したF(ab′)2抗hIgG表面上に捕捉して、捕捉抗体表面を形成させた。次いで、100nMから25nMまでの種々の濃度で各mmhタグ付き変異体hPCSK9を、60μl/分の流速で240秒間捕捉抗体表面上に注入し、そして変異体hPCSK9及び抗体の解離を20分間25℃にてリアルタイムでモニタリングした。nb:結合はこれらの実験条件下で認められなかった(KD=M×10-9;T1/2=分;WT=野生型)。
【0179】
【表27】
【0180】
結果は、残基D238が突然変異した場合に、hPCSK9に対する316Pの結合親和性は、1×10-9Mから410×10-9MのKDまで>400倍低下し;そしてT1/2は37分から1分まで約30倍短縮したことを示す。このことは316PがhPCSK9(配列番号755)のD238を含むhPCSK9上でエピトープを結合することを示唆する。加えて、BIACORE(商標)分析は、153、159又は343で残基が突然変異した場合に、316Pの結合親和性及びT1/2が約5〜10倍低下したことを示す。具体的には、S153、E159又はD343のいずれか1つが突然変異した場合に、KDは約1×10-9Mから約5〜8×10-9Mの間まで低下し;一方でT1/2は約37分から約4〜6分の間まで減少した。
【0181】
366の位置の残基が突然変異した場合に、hPCSK9への300N結合は約50倍低下して、約0.7×10-9Mから約36×10-9MまでのKDの減少、及び約120分から2分までのT1/2の短縮をもたらした。これらの結果は、300NがhPCSK9(配列番号755)のE366を含むhPCSK9上でエピトープを結合することを示す。加えて、BIACORE(商標)分析は、147又は380での残基が突然変異した場合に、3
00N結合親和性及びT1/2が2〜>10倍の間で減少したことを示す。具体的には、S147又はV380のいずれかが突然変異した場合に、KDは約0.69×10-9Mから約2〜9×10-9Mの間まで減少し;一方でT1/2は約120分から約24〜66分の間まで短縮した。316Pと比べて、hPCSK9への300N結合は、残基238での突然変異によって低下しなかった。
【0182】
対照的に、コントロールI抗体は、試験した位置突然変異のいずれにも応じた結合親和性変化又はT1/2を示さず;コントロールII抗体は、残基215が突然変異(R215E)(〜0.1×10-9から〜4.5×10-9まで)して、T1/2が約27倍短縮(〜333から12分まで)した場合に、40倍の親和性減少を示し;一方で、コントロールIII抗体は、残基237が突然変異(KDが〜0.6×10-9から〜5.9×10-9まで減少し、そしてT1/2が〜481から〜43分まで減少)した場合に、親和性減少を示した。
【0183】
316P、300N、及び対照抗hPCSK9mAbsの、hPCSK9変異体への結合特異性を、ELISAに基づく免疫アッセイを用いて試験した。抗PCSK9mAbsを、4℃において一夜96ウェルプレート上でコーティングした。CHO−k1一時的トランスフェクション溶解物上清中の各mmhタグ付き変異体hPCSK9を、0から5nMまでの範囲の種々の濃度で抗体コーティングプレートに加えた。室温で1時間結合後、プレートを洗浄し、結合変異体hPCSK9をHRP結合抗mycポリクローナル抗体を用いて検出した(−=OD<0.7;+=OD0.7〜1.5;++=OD>1.5)。
【0184】
【表28】
【0185】
〔実施例17〕正脂血性及び高脂血性ハムスターに対する316Pの効果
抗PCSK9mAb316Pの血清LDL−C低下能力を、正脂血性及び高脂血性ゴールデンシリアンハムスター(Mesocricetus auratus)で試験した。6〜8週齢で80〜100g重量の雄のシリアンハムスターを、研究に登録する前7日間で順化するようにした。全動物を、標準固形飼料か又は0.1%コレステロール及び10%ココナツオイル補充高脂血性固形飼料で飼育した。316PmAbを、正脂血性ハムスターに対して1、3、又は10mg/kgの用量で、そして高脂血性ハムスターに対して3、10、又は30mg/kgの用量で、単回皮下注射によってハムスターに投与した。血清試料を注射後24時間及び7、14、及び22日に全群から採取し、その時点の血清脂質レベルを評価して、本mAbs投与の7日前に採取したベースラインレベルと比較した。正脂血性ハムスター中の循環総コレステロール及びLDL−Cは、ビヒクル注射と比べて用量依存的に顕著に低下した。図14に示すように、316Pの投与は、試験した最大用量(10mg/kg)で注射7日後に、60%までLDL−Cレベルを効果的に低下させた。316Pの類似のコレステロール低下効果は高脂血性ハムスターでは認められなかった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトプロタンパク質コンバターゼスブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に特異的に結合するヒト抗体及びヒト抗体の抗原結合フラグメント、並びにそれらの抗体を用いる治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトプロタンパク質コンバターゼスブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)は、分泌型スブチラーゼファミリーのプロテイナーゼKサブファミリーに属するプロタンパク質コンバターゼである。コード化タンパク質は、小胞体内で自己触媒的分子内プロセシングを受ける可溶性チモーゲンとして合成される。循環からのLDLクリアランスの主要経路である、肝臓内のLDLエンドサイトーシスを媒介するPCSK9が、LDL受容体の分解を促進することにより血漿LDLコレステロールを増加させることを示唆する証拠がある。PCSK9タンパク質の構造は、それがシグナル配列を有し、その後にプロドメイン、保存三つ組残基(D186、H226及びS386)を含む触媒ドメイン、及びC末端ドメインが続くことを示す。それは、ERで自己触媒的切断を受け、14kDaプロドメイン及び60kDa触媒フラグメントを生成する、可溶性の74kDa前駆体として合成される。自己触媒活性は分泌に必要なことが示されている。切断後、プロドメインは触媒ドメインと強固に会合する状態を維持する。
【0003】
PCSK9に対する抗体は、例えば、特許文献1、2、3、4、5、及び6に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許公開第2008/057457号
【特許文献2】国際特許公開第2008/057458号
【特許文献3】国際特許公開第2008/057459号
【特許文献4】国際特許公開第2008/063382号
【特許文献5】国際特許公開第2008/125623号
【特許文献6】米国特許出願第2008/0008697号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1の態様では、本発明は、ヒトPCSK9(hPCSK9)に特異的に結合してその活性を中和する完全ヒトモノクローナル抗体(mAbs)及びその抗原結合フラグメントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの実施態様では、本発明は、hPCSK9に特異的に結合する抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含み、以下の事項:
(i)血清総コレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜35%減少させ、少なくとも24日の期間に亘ってその減少を維持することができ、好ましくは血清総コレステロールの減少が少なくとも約30〜40%であること;
(ii)血清LDLコレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約65〜80%を減少させ、少なくとも24日の期間に亘ってその減少を維持することができること;
(iii)血清トリグリセリドを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜40%を減少させることができること;
(iv)血清HDLコレステロールを減少させないこと、又は血清HDLコレステロールを投与前レベルと比べて僅か5%しか減少させないこと;
の少なくとも1つを特徴とする。
【0007】
1つの実施態様では、本発明は、hPCSK9に特異的に結合する抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含み、以下の事項:
(i)血清LDLコレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約40〜70%を減少させ、少なくとも60又は90日の期間に亘ってその減少を維持することができること;
(ii)血清トリグリセリドを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜40%を減少させることができること;
(iii)血清HDLコレステロールを減少させないこと、又は血清HDLコレステロールを投与前レベルと比べて僅か5%しか減少させないこと;
の少なくとも1つを特徴とする。
【0008】
1つの実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、hPCSK9(配列番号755)のアミノ酸残基238を含むエピトープを結合することを特徴とする。より具体的な実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、hPCSK9(配列番号755)のアミノ酸残基238、153、159及び343の1つ又はそれ以上を含むエピトープを結合する。より具体的な実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号755の192、194及び/又は237の位置において、アミノ酸残基を含まないエピトープを結合することを特徴とする。
【0009】
1つの実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、hPCSK9(配列番号755)のアミノ酸残基338を含むエピトープを結合することを特徴とする。より具体的な実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号755の147、366及び380位置において1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を含むエピトープを結合する。より具体的な実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号755の215及び/又は238の位置において、アミノ酸残基を含まないエピトープを結合することを特徴とする。
【0010】
1つの実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、プラズモン表面共鳴によって測定した場合、pH7.4でのKDと比べてpH5.5でhPCSK9に対する結合親和性(KD)の増強を示すことを特徴とする。ある特定の実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、プラズモン表面共鳴によって測定した場合、中性pHと比べて酸性pHにおいて、PCSK9に対して少なくとも20倍、少なくとも40倍又は少なくとも50倍の親和性増強を示す。
【0011】
1つの実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、プラズモン表面共鳴によって測定した場合、中性pHと比べて酸性pHにおいて、PCSK9に対して結合親和性増強を示さないことを特徴とする。ある特定の実施態様では、酸性pHにおける結合は、中性pHにおいてより小さく、T1/2はより短い。
【0012】
別の実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、ヒト、ヒトGOF突然変異D374Y、カニクイザル、アカゲザル、マウス、ラット及びハムスターPCSK9を結合する。
【0013】
1つの実施態様では、本抗体又は抗原結合フラグメントは、ヒト及びサルPCSK9を結合するが、マウス、ラット又はハムスターPCSK9を結合しない。
【0014】
本mAbsは、完全長(例えば、IgG1又はIgG4抗体)であってもよく、又は抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab′)2又はscFvフラグメント)だけを含んでもよく、そして機能性に影響を与えるために、例えば、残存エフェクター機能を除去するために修飾してもよい(Reddy et al. (2000) J. Immunol. 164:1925-1933)。
【0015】
1つの実施態様では、本発明は、配列番号2、18、22、26、42、46、50、66、70、74、90、94、98、114、118、122、138、142、146、162、166、170、186、190、194、210、214、218、234、238、242、258、262、266、282、286、290、306、310、314、330、334、338、354、358、362、378、382、386、402、406、410、426、430、434、450、454、458、474、478、482、498、502、506、522、526、530、546、550、554、570、574、578、594、598、602、618、622、626、642、646、650、666、670、674、690、694、698、714、 718、722、738及び742、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される重鎖可変領域(HCVR)を含む、抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含む。1つの実施態様では、HCVRは、配列番号50、66、70、74、90、94、122、138、142、218、234、238、242、258、262、314、330及び334から成る群から選択されるアミノ酸配列である。より具体的な実施態様では、HCVRは、配列番号90又は218を含む。
【0016】
1つの実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号10、20、24、34、44、48、58、68、72、82、92、96、106、116、120、130、140、144、154、164、168、178、188、192、202、212、216、226、236、240、250、260、264、274、284、288、298、308、312、322、332、336、346、356、360、370、380、384、394、404、408、418、428、432、442、452、456、466、476、480、490、500、504、514、524、528、538、548、552、562、572、576、586、596、600、610、620、624、634、644、648、658、668、672、682、692、696、706、716、720、730、740及び744、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される、軽鎖可変領域(LCVR)を更に含む。 1つの実施態様では、LCVRは、配列番号58、68、72、82、92、96、130、140、144、226、236、240、250、260、264、322、332及び336から成る群から選択されるアミノ酸配列である。より具体的な実施態様では、LCVRは配列番号92又は226を含む。
【0017】
特定の実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号2/10、18/20、22/24、26/34、42/44、46/48、50/58、66/68、70/72、74/82、90/92、94/96、98/106、114/116、118/120、122/130、138/140、142/144、146/154、162/164、166/168、170/178、186/188、190/192、194/202、210/212、214/216、218/226、234/236、238/240、242/250、258/260、262/264、266/274、282/284、286/288、290/298、306/308、310/312、314/322、330/332、334/336、338/346、354/356、358/360、362/370、378/380、382/384、386/394、402/404、406/408、410/418、426/428、430/432、434/442、450/452、454/456、458/466、474/476、478/480、482/490、498/500、502/504、506/514、522/524、526/528、530/538、546/548、550/552、554/562、570/572、574/576、578/586、594/596、598/600、602/610、618/620、622/624、626/634、642/644、646/648、650/658、666/668、670/672、674/682、690/692、694/696、698/706、714/716、718/720、722/730、738/740及び742/744から成る群から選択される、HCVR及びLCVR(HCVR/LCVR)配列ペアを含む。1つの実施態様では、HCVR及びLCVRは、配列番号50/58、66/68、70/72、74/82、90/92、94/96、122/130、138/140、142/144、218/226、234/236、238/240、242/250、258/260、262/264、314/322、330/332及び334/336のアミノ酸配列ペアから選択される。より具体的な実施態様では、HCVR/LCVRペアは、配列番号90/92又は218/226を含む。
【0018】
第2の態様では、本発明は、配列番号8、32、56、80、104、128、152、176、200、224、248、272、296、320、344、368、392、416、440、464、488、512、536、560、584、608、632、656、680、704及び728、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される、重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン;及び配列番号16、40、64、88、112、136、160、184、208、232、256、280、304、328、352、376、400、424、448、472、496、520、544、568、592、616、640、664、688、712及び736、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される、軽鎖CDR3(LCDR3)ドメインを含む抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを特色とする。1つの実施態様では、HCDR3/LCDR3配列ペアは、配列番号56/64、80/88、128/136、224/232、248/256又は320/328である。より具体的な実施態様では、HCDR3/LCDR3は配列番号80/88又は224/232を含む。
【0019】
更なる実施態様では、本発明は、配列番号4、28、52、76、100、124、148、172、196、220、244、268、292、316、340、364、388、412、436、460、484、508、532、556、580、604、628、652、676、700及び724、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される、重鎖CDR1(HCDR1)ドメイン;配列番号6、30、54、78、102、126、150、174、198、222、246、270、294、318、342、366、390、414、438、462、486、510、534、558、582、606、630、654、678、702及び726、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される、重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン;配列番号12、36、60、84、108、132、156、180、204、228、252、276、300、324、348、372、396、420、444、468、492、516、540、564、588、612、636、660、684、708及び732、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される、軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン;及び配列番号14、38、62、86、110、134、158、182、206、230、254、278、302、326、350、374、398、422、446、470、494、518、542、566、590、614、638、662、686、710及び734、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的な類似配列から成る群から選択される、軽鎖CDR2(LCDR2)ドメインを更に含む、抗体又はそのフラグメントを含む。1つの実施態様では、重鎖及び軽鎖CDR配列は、配列番号52、54、56、60、62、64;76、78、80、84、86、88;124、126、128、132、134、136;220、222、224、228、230、232;244、246、248、252、254、256;及び316、318、320、324、326、328を含む。より具体的な実施態様では、重鎖及び軽鎖CDR配列は、配列番号76、78、80、84、86、88;又は220、222、224、228、230、232を含む。
【0020】
関連する実施態様では、本発明は、hPCSK9に特異的に結合する抗体又は抗体の抗原結合フラグメントであって、該抗体又はフラグメントが、配列番号2/10、18/20、22/24、26/34、42/44、46/48、50/58、66/68、70/72、74/82、90/92、94/96、98/106、114/116、118/120、122/130、138/140、142/144、146/154、162/164、166/168、170/178、186/188、190/192、194/202、210/212、214/216、218/226、234/236、238/240、242/250、258/260、262/264、266/274、282/284、286/288、290/298、306/308、310/312、314/322、330/332、334/336、338/346、354/356、358/360、362/370、378/380、382/384、386/394、402/404、406/408、410/418、426/428、430/432、434/442、450/452、454/456、458/466、474/476、478/480、482/490、498/500、502/504、506/514、522/524、526/528、530/538、546/548、550/552、554/562、570/572、574/576、578/586、594/596、598/600、602/610、618/620、622/624、626/634、642/644、646/648、650/658、666/668、670/672、674/682、690/692、694/696、698/706、714/716、718/720、722/730、738/740及び742/744から成る群から選択される、重鎖及び軽鎖配列ペア中に含まれる重鎖及び軽鎖CDRドメインを含む、抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含む。1つの実施態様では、該CDR配列は、配列番号50/58、66/68、70/72、74/82、90/92、94/96、122/130、138/140、142/144、218/226、234/236、238/240、242/250、258/260、262/264、314/322、330/332及び334/336のアミノ酸配列ペアから選択されるHCVR及びLCVR中に含まれる。より具体的な実施態様では、該CDR配列は、配列番号90/92又は218/226アミノ酸配列ペアから選択されるHCVR及びLCVR中に含まれる。
【0021】
1つの実施態様では、本発明は、hPCSK9に特異的に結合して活性を中和する、完全ヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントであって、抗体又はそのフラグメントが以下の特性:
(i)血清総コレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜35%減少させ、少なくとも24日の期間に亘ってその減少を維持することができ、好ましくは血清総コレステロールの減少が少なくとも約30〜40%であること;
(ii)血清LDLコレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約65〜80%減少させ、少なくとも24日の期間に亘ってその減少を維持することができること;
(iii)血清トリグリセリドを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜40%減少させることができること;
(iv)血清HDLコレステロールを減少させないこと、又は血清HDLコレステロールを投与前レベルと比べて僅か5%しか減少させないこと;
(v)hPCSK9(配列番号755)のアミノ酸残基238を含むエピトープを結合すること;
(vi)プラズモン表面共鳴によって測定した場合、pH7.4でのKDと比べて、pH5.5ではhPCSK9に対する結合親和性(KD)の増強を示し、その親和性増強が約20〜50倍の親和性の増加であること;
(vii)ヒト、ヒトGOF突然変異D374Y、カニクイザル、アカゲザル、マウス、ラット及びハムスターPCSK9を結合すること;
(viii)配列番号80及び88を含む重鎖及び軽鎖CDR3配列を含むこと;
(ix)配列番号90及び92からのCDR配列を含むこと;
の1つ又はそれ以上を示す完全ヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0022】
1つの実施態様では、本発明は、hPCSK9を特異的に結合して活性を中和する、完全ヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントであって、抗体又はそのフラグメントが以下の特性:
(i)血清LDLコレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約40〜70%減少させ、少なくとも60又は90日の期間に亘ってその減少を維持することができること;
(ii)血清トリグリセリドを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜40%減少させることができること;
(iii)投与前レベルと比べて血清HDLコレステロールを減少させないこと、又は血清HDLコレステロールを僅か5%しか減少させないこと;
(iv)hPCSK9(配列番号755)のアミノ酸残基366を含むエピトープを結合すること;
(v)プラズモン表面共鳴によって測定した場合、中性pHと比べて酸性pHにおいてPCSK9に対する結合親和性の増強を示さないこと;
(vi)ヒト及びサルPCSK9を結合するが、しかしマウス、ラット又は
ハムスターPCSK9を結合しないこと;
(vii)配列番号224及び232を含む重鎖及び軽鎖CDR3配列を含むこと;そして
(viii)配列番号218及び226を含むCDR配列を含むこと;
の1つ又はそれ以上を示す、完全ヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0023】
第3の態様では、本発明は抗PCSK9抗体又はそのフラグメントをコード化する核酸分子を提供する。本発明の核酸を持つ組み換え発現ベクター、及び当該ベクターが導入されている宿主細胞も、抗体産生が可能な条件下で宿主細胞を培養することによって抗体を産生させ、そして産生抗体を回収する方法と同様、本発明に包含される。
【0024】
1つの実施態様では、本発明は、配列番号1、17、21、25、41、45、49、65、69、73、89、93、97、113、117、121、137、141、145、161、165、169、185、189、193、209、213、217、233、237、241、257、261、265、281、 285、289、305、309、313、329、333、337、353、357、361、377、381、385、401、405、409、425、 429、433、449、453、457、473、477、481、497、501、505、521、525、529、545、549、553、569、573、577、593、597、601、617、621、625、641、645、649、665、669、673、689、693、697、713、 717、721、737及び741、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、核酸配列によってコード化されるHCVRを含む抗体又はそのフラグメントを提供する。1つの実施態様では、HCVRは、配列番号49、65、69、73、89、93、121、137、141、217、233、237、241、257、261、313、329及び333から成る群から選択される核酸配列によってコード化される。より具体的な実施態様では、HCVRは、配列番号89及び217から成る群から選択される核酸配列によってコード化される。
【0025】
1つの実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号9、19、23、33、43、47、57、67、71、81、91、95、105、115、119、129、139、143、153、163、167、177、187、191、201、211、215、225、235、239、249、259、263、273、283、287、297、307、311、321、331、335、345、355、359、369、379、383、393、403、407、417、427、431、441、451、455、465、475、479、489、499、503、513、523、527、537、547、551、561、571、575、585、595、599、609、619、623、633、643、647、657、667、671、681、691、695、705、715、719、729、739及び743、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、核酸配列によってコード化されるLCVRを更に含む。1つの実施態様では、LCVRは、配列番号57、67、71、81、91、95、129、139、143、225、235、239、249、259、263、321、331及び335から成る群から選択される核酸配列によってコード化される。より具体的な実施態様では、LCVRは、配列番号91及び225から成る群から選択される核酸配列によってコード化される。
【0026】
1つの実施態様では、本発明は、配列番号7、31、55、79、103、127、151、175、199、223、247、271、295、319、343、367、391、415、439、463、487、511、535、559、583、607、631、655、679、703及び727、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、ヌクレオチド配列によってコード化されるHCDR3ドメイン;及び配列番号15、39、63、87、111、135、159、183、207、231、255、279、303、327、351、375、399、423、447、471、495、519、543、567、591、615、639、663、687、711及び735、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、ヌクレオチド配列によってコード化されるLCDR3ドメインを含む、抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを特色とする。1つの実施態様では、HCDR3及びLCDR3配列は、配列番号55/63、79/87、127/135、223/231、247/255及び319/327の核酸配列によってそれぞれコード化される。より具体的な実施態様では、HCDR3及びLCDR3配列ペアは、配列番号79/87及び223/231の核酸配列によってコード化される。
【0027】
更なる実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、配列番号3、27、51、75、99、123、147、171、195、219、243、267、291、315、339、363、387、411、435、459、483、507、531、555、579、603、627、651、675、699及び723、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、ヌクレオチド配列によってコード化されるHCDR1ドメイン;配列番号5、29、53、77、101、125、149、173、197、221、245、269、293、317、341、365、389、413、437、461、485、509、533、557、581、605、629、653、677、701及び725、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、ヌクレオチド配列によってコード化されるHCDR2ドメイン;配列番号11、35、59、83、107、131、155、 179、203、227、251、275、299、323、347、371、 395、419、443、467、491、515、539、563、587、 611、635、659、683、707及び731、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、ヌクレオチド配列によってコード化されるLCDR1ドメイン;そして配列番号13、37、61、85、109、133、157、181、205、229、253、277、301、325、349、373、397、421、445、469、493、517、 541、565、589、613、637、661、685、709及び733、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%それらと相同性を有する、実質的に同一の配列から成る群から選択される、ヌクレオチド配列によってコード化されるLCDR2ドメインを更に含む。1つの実施態様では、重鎖及び軽鎖CDR配列は、配列番号51、53、55、59、 61、63;75、77、79、83、85、87;123、125、127、131、133、135;219、221、223、227、229、231;243、245、247、251、253、255;及び315、317、319、323、325、327の核酸配列によってコード化される。 より具体的な実施態様では、重鎖及び軽鎖CDR配列は、75、77、79、83、85、87;及び219、221、223、227、229、231の核酸配列によってコード化される。
【0028】
第4の態様では、本発明は、HCDR3及びLCDR3を含む、hPCSK9を特異的に結合する単離抗体又は抗体の抗原結合フラグメントであって、HCDR3が、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20(配列番号747)のアミノ酸配列を含み、式中、X1はAla、X2はArg又はLys、X3はAsp、X4はSer又はIle、X5はAsn又はVal、X6はLeu又はTrp、X7はGly又はMet、X8はAsn又はVal、X9はPhe又はTyr、X10はAsp、X11はLeu又はMet、X12はAsp又は不存在、X13はTyr又は不存在、X14はTyr又は不存在、X15はTyr又は不存在、X16はTyr又は不存在、X17はGly又は不存在、X18はMet又は不存在、X19はAsp又は不存在、そしてX20はVal又は不存在である;そしてLCDR3が、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9(配列番号750)のアミノ酸配列、式中、X1はGln又はMet、X2はGln、X3はTyr又はThr、X4はTyr又はLeu、X5はThr又はGln、X6はThr、X7はPro、X8はTyr又はLeu、そしてX9はThrである、を含む単離抗体又は抗体の抗原結合フラグメントであることを特色とする。
【0029】
更なる実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号745)のHCDR1配列、式中、X1はGly、X2はPhe、X3はThr、X4はPhe、X5はSer又はAsn、X6はSer又はAsn、X7はTyr又はHis、及びX8はAla又はTrpである;式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号746)のHCDR2の配列、式中、X1はIle、X2はSer又はAsn、X3はGly又はGln、X4はAsp又はSer、X5はGly、X6はSer又はGly、X7はThr又はGlu、及びX8はThr又はLysである;式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12(配列番号748)のLCDR1の配列、式中、X1はGln、X2はSer、X3はVal又はLeu、X4はLeu、X5はHis又はTyr、X6はArg又はSer、X7はSer又はAsn、X8はAsn又はGly、X9はAsn、X10はArg又はAsn、X11はAsn又はTyr、及びX12はPhe又は不存在である;式X1−X2−X3(配列番号749)のLCDR2の配列、式中、X1はTrp又はLeu、X2はAla又はGly、及びX3はSerである、を更に含む。図1は、316P及び300NmAbsに対する重鎖及び軽鎖可変領域の配列アラインメントを示す。
【0030】
第5の態様では、本発明は、VH、DH及びJH生殖細胞系配列から由来するヌクレオチド配列セグメントによってコード化される重鎖可変領域(HCVR)、及びVK及びJK生殖細胞系配列から由来するヌクレオチド配列セグメントによってコード化される軽鎖可変領域(LCVR)を含む、ヒト抗PCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントであって、生殖細胞系配列が、(a)VH遺伝子セグメント3−23、DH遺伝子セグメント7−27、JH遺伝子セグメント2、VK遺伝子セグメント4−1及びJK遺伝子セグメント2;又は(b)VH遺伝子セグメント3−7、DH遺伝子セグメント2−8、JH遺伝子セグメント6、VK遺伝子セグメント2−28及びJK遺伝子セグメント4である、ヒト抗PCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを特色とする。
【0031】
第6の態様では、本発明は、配列番号755のPCSK9タンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであって、変異体PCSK9タンパク質への本抗体又はそのフラグメントの結合が、本抗体又はそのフラグメントと配列番号755のPCSK9タンパク質との結合の50%より小さい、抗体又はその抗原結合フラグメントを特色とする。特定の実施態様では、本抗体又はそのフラグメントは、PCSK9(配列番号755)への結合と比較して、約50%より小さい、約60%より小さい、約70%より小さい、約80%より小さい、約90%より小さい又は約95%より小さい結合親和性(KD)を有する変異体PCSK9タンパク質に結合する。
【0032】
1つの実施態様では、変異体PCSK9タンパク質は、配列番号755の238の位置で少なくとも1つの突然変異を含む。より具体的な実施態様では、該突然変異はD238Rである。1つの実施態様では、変異体PCSK9タンパク質に対する本抗体又は抗体フラグメント結合親和性は、変異体タンパク質が残基238において突然変異を含む、配列番号755の野生型タンパク質と比べて少なくとも90%少ない。1つの実施態様では、変異体PCSK9タンパク質に対する本抗体又は抗体フラグメント結合親和性は、変異体タンパク質が残基153、159,238及び343の1つ又はそれ以上において突然変異を含む、配列番号755の野生型タンパク質と比べて少なくとも80%少ない。より具体的な実施態様では、突然変異はS153R、E159R、D238R及びD343Rの1つである。
【0033】
1つの実施態様では、変異体PCSK9タンパク質は、配列番号755の366の位置で少なくとも1つの突然変異を含む。より具体的な実施態様では、突然変異はE366Kである。1つの実施態様では、変異体PCSK9タンパク質に対する本抗体又は抗体フラグメントの結合親和性は、変異体タンパク質が残基366において突然変異を含む配列番号755の野生型タンパク質と比べて少なくとも95%少ない。1つの実施態様では、変異体PCSK9タンパク質に対する本抗体又は抗体フラグメントの結合親和性は、変異体タンパク質が残基147、366及び/又は380の1つ又はそれ以上において突然変異を含む配列番号755の野生型タンパク質と比べて、少なくとも70%、80%又は90%少ない。より具体的な実施態様では、突然変異はS147F、E366K及びV380Mの1つである。
【0034】
本発明は、修飾グリコシル化パターンを有する抗PCSK9抗体を包含する。幾つかの応用では、望ましくないグリコシル化部位を除去するための修飾は有用であり、又は、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を増加させるフコース部分の除去は有用となり得る(Shield et al. (2002) JBC 277:26733を参照) 。他の応用では、ガラクトシル化の修飾を、補体依存性細胞傷害(CDC)を修飾するために行うことができる。
【0035】
第7の態様では、本発明は、hPCSK9に特異的に結合する組み換えヒト抗体又はそのフラグメント、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を特色とする。1つの実施態様では、本発明は、本発明の抗体又は抗体の抗原結合フラグメント、及び第2の治療薬の組み合わせである組成物を特色とする。第2の治療薬は、本発明の抗体又はそのフラグメントと有利に組み合わされるいずれの薬剤、例えば、セロバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンなどの、例えば、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル(HMG)−コエンザイムA(CoA)レダクターゼを阻害することによるコレステロール合成の細胞枯渇を誘導することができる;コレステロール取り込み及び/又は胆汁酸再吸収を阻害することができる;リポタンパク質異化を増加させることができる(ナイアシンなど)薬剤;及び/又は22−ヒドロキシコレステロールなどのコレステロール除去の役割を果たすLXR転写因子のアクチベーターであってよい。
【0036】
第8の態様では、本発明は、本発明の抗PCSK9抗体又は該抗体の抗原結合部分を用いてhPCSK9活性を阻害する方法であって、該治療方法が、本発明の抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の治療的有効量を投与することを含む方法を特色とする。処置される障害は、PCSK9活性の除去、阻害又は減少によって改善し、軽減し、阻害し又は防止するいずれかの疾患又は病態である。本発明の治療法によって処置可能な特定集団としては、LDLアフェレーシスの適応対象、PCSK9活性化突然変異対象(機能獲得型突然変異、「GOF」)、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(heFH) 対象;スタチン不耐性又はスタチンコントロール不良の原発性高コレステロール血症対象;及び予防的処置可能な高コレステロール血症の発症リスクを有する対象が含まれる。他の適応としては、2型糖尿病のような副因に伴う脂質異常症、胆汁うっ滞性肝疾患(原発性胆汁性肝硬変)、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、肥満;及びアテローム性動脈硬化症及び心血管疾患の予防及び処置が含まれる。
【0037】
本発明方法の特定の実施態様では、本発明の抗hPCSK9抗体又は抗体フラグメントは、総コレステロール、非HDLコレステロール、LDLコレステロール、及び/又はアポリポタンパク質B(アポリポタンパク質B100)の上昇を低減するのに有用である。
【0038】
本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、単独で又は第2の薬剤、例えば、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤及び/又は他の脂質低下薬と併用して使用してよい。
【0039】
更なる実施態様は、PCSK9仲介疾患又は病態を減弱又は抑制するのに使用するための、上記で定義した抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含む。
【0040】
本発明は、PCSK9仲介疾患又は病態を減弱又は阻害するのに使用するための薬剤の製造における、上記で定義した抗体又は抗体の抗原結合フラグメントの使用を包含する。特定の実施態様では、PCSK9仲介疾患又は病態は、高コレステロール血症、高脂血症、LDLアフェレーシス、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合性、スタチン不耐性、スタチンコントロール不良;高コレステロール血症、脂質異常症、胆汁うっ滞性肝疾患、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、肥満、アテローム性動脈硬化症及び心血管疾患の発症リスクである。
【0041】
他の実施態様は、以下の詳細な説明のレビューから明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】抗体H1H316P及びH1M300Nの、重鎖(A)及び軽鎖(B)可変領域及びCDRの配列比較表
【図2】経時的血清中抗体濃度。316P:5mg/kg(□);300N:5mg/kg(○);316P:15mg/kg(■);300N:15mg/kg(●)。
【図3】バッファーコントロールに対する変化率としての血清総コレステロールレベル。コントロール(*);316P:5mg/kg(■);300N:5mg/kg(▲);316P:15mg/kg(□);300N:15mg/kg(△)。
【図4】バッファーコントロールに対する変化率としての血清LDLコレステロールレベル。コントロール(*);316P:5mg/kg(■);300N:5mg/kg(▲);316P:15mg/kg(□);300N:15mg/kg(△)。
【図5】バッファーコントロールに正規化した血清LDLコレステロールレベル。バッファーコントロール(*);316P:5mg/kg(■);300N:5mg/kg(▲);316P:15mg/kg(□);300N:15mg/kg(△)。
【図6】バッファーコントロールに対する変化率としての血清HDLコレステロールレベル。コントロール(*);316P:5mg/kg(■);300N:5mg/kg(▲);316P:15mg/kg(□);300N:15mg/kg(△)。
【図7】バッファーコントロールに対する変化率としての血清トリグリセリドレベル。バッファーコントロール(*);316P:5mg/kg(■);300N:5mg/kg(▲);316P:15mg/kg(□);300N:15mg/kg(△)。
【図8】単回皮下投与後のベースラインに対する変化率として表わした血清HDLコレステロールレベル。316P:5mg/kg(■);300N:5mg/kg(●)。
【図9】単回皮下投与後の経時的血清中抗体濃度。316P:5mg/kg(●);300N:5mg/kg(▲)。
【図10】肝臓総ホモジネートのマウスLDL受容体に対するウェスタンブロット。試料は、PBS(レーン1〜3)、316P:5mg/kg(レーン4〜6)、又は非hPCSK9特異的mAb:5mg/kg(レーン7〜8)の投与24時間後、そしてhPCSK9−mmh:1.2mg/kg(全レーン)の投与の4時間後に採取した。
【図11】PCSK9hu/huマウスにおける血清LDLコレステロールレベルに対する316Pの効果。
【化1】
【図12】C57BL/6マウスにおける抗hPCSK9mAbの血清薬物動力学的プロファイル。単回用量のコントロールImAb:10mg/kg(●);316P:10mg/kg(▲);及び300N:10mg/kg(■)。
【図13】hPCSK9ヘテロ接合体マウスにおける抗hPCSK9mAbの血清薬物動力学的プロファイル。単回用量:各10mg/kg;コントロールImAb:(●);316P(▲):及び300N(■)。
【図14】普通の食餌で給餌したシリアンハムスターにおける血清LDLコレステロールレベルに対する316Pの効果。バッファーコントロール(●);316P:1mg/kg(■);316P:3mg/kg(▲);316P:5mg/kg(▼)。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本方法を説明する前に、当然のことながら、本発明は特定の方法に限定されるものではなく、そしてそのような方法及び条件として記載される実験条件は変動してもよい。また当然のことながら、本発明の範囲は付属の特許請求の範囲のみによって限定されるので、本明細書で使用される用語は特定の実施態様を記載する目的のためだけであり、限定することを意図するものではない。
【0044】
特に明記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等のいずれの方法及び材料も、本発明の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。
【0045】
定義
本明細書で使用される用語「ヒトプロタンパク質コンバターゼスブチリシン/ケキシン9型」又は「hPCSK9」は、配列番号754で示される核酸配列及び配列番号755のアミノ酸配列を有するhPCSK9、又はその生物活性フラグメントを指す。
【0046】
本明細書で使用される用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に連結した4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖から構成される免疫グロブリン分子を指すことを意図している。各重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR」又は「VH」)及び重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3ドメインから構成される)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVR」又は「VL」)及び軽鎖定常領域(CL)から構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより良く保存された領域が組み入れられている、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に更に細分される。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配列している:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0047】
1つ又はそれ以上のCDR残基の置換又は1つ又はそれ以上のCDRの脱落もまた可能である。1つ又は2つのCDRが結合のために省くことができる抗体は、科学文献に記載されている。Padlan et al. (1995 FASEB J. 9:133-139) は、公表された結晶構造を基準にして抗体とそれらの抗原間の接触領域を解析し、CDR残基の約1/5〜1/3だけが実際に抗原と接触していると結論した。Padlanは、また、 1つ又は2つのCDRが、抗原と接触したアミノ酸を有さない多くの抗体を見出した(Vajdos et al. 2002 J Mol Biol
320:415-428も参照)。
【0048】
抗原と接触していないCDR残基は、ChothiaCDR外にあるKabatCDRの領域から、分子モデリングにより及び/又は経験的に、過去の研究(例えばCDRH2中の残基H60〜H65は頻繁には必要とされない)に基づいて同定することができる。CDR又はその残基が脱落している場合、それは通常別のヒト抗体配列又は当該配列のコンセンサス中で対応する位置を占有するアミノ酸で置換される。CDR内の置換位置及び置換するアミノ酸は経験的に選択することもできる。経験的置換は保存的置換又は非保存的置換であってよい。
【0049】
本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本発明のヒトmAbsは、例えばCDR特にCDR3において、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的突然変異により又はインビボでの体細胞突然変異により導入される突然変異)によってコード化されないアミノ酸残基を含んでもよい。しかしながら、本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖細胞系から由来するCDR配列がヒトFR配列上に移植された、mAbsを含むことを意図するものではない。
【0050】
用語「特異的に結合する」等は、抗体又はその抗原結合フラグメントが生理的条件下に相対的に安定な抗原と複合体を形成することを意味する。特異的結合は、少なくとも約1×10-6M以下(例えば、小さいKDはより強固な結合を示す)の平衡解離定数によって特徴付けることができる。2分子が特異的に結合するかどうかを測定する方法は当技術分野で周知であり、そして例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。しかしながら、hPCSK9を特異的に結合する単離抗体は、他の種からのPCSK9分子のような他の抗原に対して交差反応を呈する。更に、hPCSK9及び1つ又はそれ以上の更なる抗原に結合する多特異性抗体(例えば二重特異体)は、それでも本明細に記載のhPCSK9を「特異的に結合する」検討された抗体である。
【0051】
用語「高親和性」抗体は、表面プラズモン共鳴、例えば、 BIACORE(商標)又は溶液親和性ELISAで測定して、少なくとも10-10M;好ましくは10-11M;尚更に好ましくは10-12MのhPCSK9に結合親和性を有するそれらのmAbsを指す。
【0052】
用語「スローオフレート(slow off rate)」、「Koff」又は「kd」では、表面プラズモン共鳴、例えば、 BIACORE(商標)で測定して、1×10-3s-1以下、好ましくは1×10-4s-1以下の速度定数でhPCSK9から解離する抗体を意味する。
【0053】
本明細書で使用される用語、抗体の「抗原結合部分」(又は簡単に「抗体フラグメント」)は、hPCSK9に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ又はそれ以上のフラグメントを指す。抗体フラグメントは、Fabフラグメント、F(ab′)2フラグメント、Fvフラグメント、dAbフラグメント、CDRを含むフラグメント、又は単離CDRを含むことができる。
【0054】
特定の実施態様、本発明の抗体又は抗体フラグメントは、細胞毒、化学療法薬、免疫抑制薬又は放射性同位体などの治療部分に結合することができる(「イムノコンジュゲート」)。
【0055】
本明細書で使用される「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他のmAbs(例えば、hPCSK9を特異的に結合する単離抗体は、hPCSK9以外の抗原を特異的に結合するmAbsを実質的に含んでいない)を実質的に含んでいない抗体を指すことを意図する。しかしながら、hPCSK9を特異的に結合する単離抗体は、他の種からのPCSK9分子など他の抗原に対して交差反応性を有する。
【0056】
本明細書で使用される「中和抗体」(又は「PCSK9活性」を中和する抗体)は、PCSK9に対するその結合がPCSK9の少なくとも1つの生物活性の阻害をもたらす抗体を指すことを意図する。PCSK9の生物活性のこの阻害は、当技術分野で公知の幾つかの1つ又はそれ以上の標準的インビトロ又はインビボ分析で、PCSK9生物活性の1つ又はそれ以上の指標を測定するにより評価することができる(下記の実施例を参照)。
【0057】
本明細書で使用される用語「表面プラズモン共鳴」は、例えばBIACORE(商標) システム (Pharmacia Biosensor AB, Uppsala, Sweden and Piscataway, NJ)を用いて、 バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度変化の検出により、リアルタイム生体特異的相互作用の解析を可能にする光学現象を指す。
【0058】
本明細書で使用される用語「KD」は、特定の抗体抗原相互作用の平衡解離定数を指すことを意図する。
【0059】
用語「エピトープ」は抗体によって結合される抗原の領域を指す。エピトープは構造又は機能と定義される。機能エピトープは一般的に構造エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与するそれらの残基を有する。エピトープは、立体配座性でもあり、すなわち非線形アミノ酸から構成されてもよい。特定の実施態様では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、又はスルホニル基などの分子の化学的活性表面グルーピングである決定因子を含んでもよく、そして特定の実施態様では、特異的3次元構造特性、及び/又は特異的電荷特性を有してもよい。
【0060】
核酸又はそのフラグメントに言及する場合の、用語「実質的同一性」又は「実質的に同一の」とは、別の核酸(又はその相補鎖)と適切なヌクレオチド挿入又は欠失を有して最適に整列した場合に、下記で検討するFASTA、BLAST又はGAPなど配列同一性のいずれか周知のアルゴリズムによって測定して、少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%又は99%のヌクレオチド塩基においてヌクレオチド配列同一性があることを示す。
【0061】
ポリペプチドに適用した場合に、用語「実質的類似性」又は「実質的に類似の」は、デフォルトギャップ重量を用いてGAP又はBESTFITプログラムによるなど最適整列した場合に、2つのペプチド配列は、少なくとも90%の配列同一性、尚より好ましくは少なくとも95%、98%又は99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は保存アミノ酸置換によって異なる。「保存アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の化学特性(例えば、電荷又は疎水性)をもつ側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたものである。一般に、保存アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変えないと考えられる。2つ又はそれ以上のアミノ酸配列が保存的置換により互いに異なるという場合に、類似性の割合及び程度は、置換の保存的性質を修正するために上方へ調整してもよい。この調整を行なう手段は当業者に周知である。例えば、Pearson (1994) Methods Mol. Biol. 24: 307-331を参照されたい。類似の化学特性をもつ側鎖を有するアミノ酸群の例は、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリン及びトレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン;5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン;6)酸性側鎖;アスパラギン酸及びグルタミン酸、及び7)含硫黄側鎖:システイン及びメチオニンを含む。好ましい保存アミノ酸置換群は:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、及びアスパラギン−グルタミンである。あるいはまた、保存的置換は、Gonnet et al. (1992) Science 256: 1443 45に開示されているPAM250対数尤度マトリックスにおいて、正の値を有するあらゆる変化である。「緩やかな保存」置換は、PAM250対数尤度マトリックスにおいて負ではない値を有するあらゆる変化である。
【0062】
ポリペプチドの配列類似性は、一般的に配列解析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失及び他の修飾に帰属される類似性の尺度を用いて類似配列を整合させる。例えば、GCGソフトウェアは、生物の異なる種からの相同ポリペプチドなどの密接に関連するポリペプチド間、又は野生型タンパク質とその突然変異タンパク質間の、配列相同性又は配列同一性を決定するために、デフォルトパラメータによって使用することができるGAP及びBESTFITなどのプログラムを含む。例えば、GCGバージョン6.1を参照されたい。ポリペプチド配列は、また、GCGバージョン6.1のプログラムで、デフォルト又は推奨パラメータによるFASTAを用いて比較することができる。FASTA(例えば、FASTA2及びFASTA3)は、クエリー及びサーチ配列間の最良重なり領域のアラインメント及び百分率配列同一性を与える(Pearson (2000)上記)。本発明の配列を異なる生物からの多数の配列を含むデータベースと比較する場合に、別の好ましいアルゴリズムは、コンピュータープログラムBLAST、特にデフォルトパラメータを用いるBLASTP又はTBLASTNである。例えば、Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403 410 and (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389 402を参照されたい。
【0063】
特定の実施態様では、本発明の方法に使用するための抗体又は抗体フラグメントは、単一特異性、二重特異性、又は多特異性であってよい。多特異性抗体は1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的であってよく、又は1つの標的ポリペプチドより大きいエピトープに特異的な抗原結合ドメインを含んでもよい。本発明との関連で使用することができる典型的な二重特異体型は、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメイン及び第2のIgCH3ドメインの使用であって、第1及び第2のIgCH3ドメインが少なくとも1つのアミノ酸で互いに異なり、そして少なくとも1つのアミノ酸の差異が、アミノ酸の差異を欠いている二重特異体と比べて、プロテインAに対する二重特性抗体の結合を減少させる、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメイン及び第2のIgCH3ドメインの使用を包含する。1つの実施態様では、第1のIgCH3ドメインはプロテインAを結合し、そして第2のIgCH3ドメインはH95R修飾(IMGTエキソンナンバリングによる;EUナンバリングによるH435R)などのプロテインA結合を減少又は停止させる突然変異を含む。第2のCH3はY96F修飾(IMGTによる;EUによるY436F)を更に含む。第2のCH3内に認められる可能性のある更なる修飾は:IgG1mAbsの場合におけるD16E、L18M、N44S、K52N、V57M、及びV82I(IMGTによる;EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、及びV422I);IgG2mAbsの場合におけるN44S、K52N、及びV82I(IMGT;EUによるN384S、K392N、及びV422I);及びIgG4mAbsの場合におけるQ15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、及びV82I(IMGTによる;EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、及びV422I)を含む。上記の二重特異体型の変異は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0064】
語句「治療的有効量」は、それが投与されて所望の効果をもたらす量を意味する。正確な量は処置の目的によって決まり、そして公知技術を用いて当業者により確認することが可能である(例えば、Lloyd (1999) The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照)。
ヒト抗体の製造
【0065】
トランスジェニックマウス中にヒト抗体を生成させる方法は公知である(例えば、米国特許第6596541号、Regeneron Pharmaceuticals, VELOCIMMUNE(商標)を参照)。VELOCIMMUNE(商標)技術は、マウスが抗原刺激に応じてヒト可変領域及びマウス定常領域を含む抗体を産生するように、内在性マウス定常領域遺伝子座に機能的に連結した、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの作製を包含する。抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコード化するDNAが単離され、そしてヒト重鎖及び軽鎖定常領域をコード化するDNAに機能的に結合される。DNAはその後完全ヒト抗体を発現することができる細胞に発現する。特定の実施態様では、細胞はCHO細胞である。
【0066】
抗体は、補体の固定及び補体依存性細胞傷害(CDC)への関与を通した細胞致死、又は抗体依存性細胞傷害(ADDC)を通した細胞致死よりむしろ、リガンド−受容体相互作用の遮断又は受容体成分相互作用の抑制に有用と考えられる。従って抗体の定常領域は、抗体が補体を固定し、細胞依存性細胞傷害を媒介する能力において重要である。従って、抗体のイソタイプは、抗体が細胞傷害性を媒介することが望ましいかどうかを基にして選択してもよい。
【0067】
ヒト抗体はヒンジ不均一性に関与する2つの型で存在することができる。1つの型では、抗体分子は、2量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって結合している、約150〜160kDaの安定な4鎖構築物を含む。第2の型では、2量体は鎖間ジスルフィド結合を経て結合せず、約75〜80kDaの分子が共有結合軽鎖及び重鎖を構成して形成される(半抗体)。これらの型は、親和性による精製後でも単離することは非常に困難である。
【0068】
種々のインタクトIgGイソタイプにおける第2の型の発現頻度は、抗体のヒンジ領域イソタイプと関連する構造差に因るが、これに限定されるものではない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一アミノ酸置換は、第2の型の出現(Angal et al. (1993) Molecular Immunology 30:105)を通常ヒトIgG1ヒンジを用いて観察されるレベルまで低下させることができる。本発明は、所望の抗体型の収量を改善するために、例えば、産生に望ましいと考えられるヒンジ、CH2又はCH3領域において、1つ又はそれ以上の突然変異を有する抗体を包含する。
【0069】
一般に、VELOCIMMUNE(商標)マウスは、対象とする抗原を投与され、そして抗体を発現するマウスからリンパ細胞(B細胞など)が回収される。リンパ細胞は、不死化ハイブリドーマ細胞株を調製するために骨髄腫細胞株で融合してもよく、対象とする抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定するために、当該ハイブリドーマ細胞株がスクリーニングされ選択される。重鎖及び軽鎖の可変領域をコード化するDNAは、単離し、重鎖及び軽鎖の所望のイソタイプ定常領域に結合してもよい。当該抗体タンパク質は、CHO細胞などの細胞中に産生させてもよい。あるいはまた、抗原特異的キメラ抗体又は軽鎖及び重鎖の可変ドメインをコード化するDNAは、抗原特異的リンパ球から直接単離してもよい。
【0070】
最初に、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体が単離される。下記のように、該抗体は特徴付けされ、そして親和性、選択性、エピトープなどを含む所望の特性で選択される。マウス定常領域は、本発明の完全ヒト抗体、例えば、野生型又は修飾IgG1又はIgG4(配列番号751、752、753)を生成させるために、所望のヒト定常領域で置換される。選択された定常領域は、特定の用途によって変化する可能性があるが、一方で高親和性抗原結合及び標的特異性特性は可変領域に残存する。
エピトープマッピング及び関連技術
【0071】
特定のエピトープに結合する抗体(例えば、IgEのその高親和性受容体への結合を遮断する抗体)をスクリーニングするために、Antibodies, Harlow and Lane (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harb., NY) に記載のルーチン交差遮断分析を行うことができる。他の方法は、アラニンスキャニング突然変異体、ペプチドブロット(Reineke (2004) Methods Mol Biol 248:443-63)、又はペプチド切断解析を含む。加えて、エピトープ切出、エピトープ抽出及び抗原の化学修飾を用いることができる(Tomer (2000) Protein Science 9: 487-496)。
【0072】
用語「エピトープ」は、B及び/又はT細胞が反応する抗原上の部位を指す。B細胞エピトープは、タンパク質の三次元折畳みによって並列した隣接アミノ酸又は非隣接アミノ酸の両方から形成することができる。隣接アミノ酸から形成されるエピトープは一般的に変性溶媒への曝露時に保持されるが、一方で三次元折畳みによって形成されるエピトープは一般的に変性溶媒で処理時に失われる。エピトープは、一般的には少なくとも3、そしてより一般的には少なくとも5又は8〜10のアミノ酸を特有の空間立体配座の中に含む。
【0073】
抗原構造ベース抗体プロファイリング(ASAP)としても知られる、修飾支援プロファイリング(MAP)は、化学的又は酵素的修飾抗原表面に対する各抗体の結合プロファイルの類似性によって、同じ抗原に対する多数のモノクローナル抗体(mAbs)を分類する方法である(米国特許出願第2004/0101920号)。各カテゴリーは、別のカテゴリーによって表わされるエピトープと非常に異なるか又は部分的に重複する特有のエピトープを反映すると考えられる。この技術は、キャラクタリゼーションが遺伝的に異なるmAbsに焦点を当てることができるように、遺伝的に同一のmAbsの迅速なフィルタリングを可能にする。ハイブリドーマスクリーニングに適用する場合に、MAPは所望の特性を有するmAbsを産生する稀なハイブリドーマクローンの同定を促進すると考えられる。MAPは、本発明の抗PCSK9mAbsをmAbs結合性の異なるエピトープ群を仕分けするのに使用してもよい。
【0074】
種々の実施態様では、抗hPCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントは、配列番号755の約153〜425である触媒ドメイン内のエピトープを;更に具体的には、約153から約250まで又は約250から約425までのエピトープを結合する。更に具体的には、本発明の抗体又は抗体フラグメントは、約153から約208まで、約200から約260まで、約250から約300まで、約275から約325まで、約300から約360まで、約350から約400まで、及び/又は約375から約425までのフラグメント内のエピトープを結合する。
【0075】
種々の実施態様では、抗hPCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントは、プロペプチドドメイン(配列番号755の残基31〜152)内のエピトープを;更に具体的には、約残基31から約残基90まで又は約残基90から約残基152までのエピトープを結合する。更に具体的には、本発明の抗体又は抗体フラグメントは、約残基31から約残基60まで、約残基60から約残基90まで、約残基85から約残基110まで、約残基100から約残基130まで、約残基125から約残基150まで、約残基135から約残基152まで、及び/又は約残基142から約残基152までのフラグメント内のエピトープを結合する。
【0076】
幾つかの実施態様では、抗hPCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントは、C末端ドメイン(配列番号755の残基426〜692)内のエピトープを;更に具体的には、約残基426から約残基570まで又は約残基570から約残基692までのエピトープを結合する。更に具体的には、本発明の抗体又は抗体フラグメントは、約残基450から約残基500まで、約残基500から約残基550まで、約残基550から約残基600まで、及び/又は約残基600から約残基692までのフラグメント内のエピトープを結合する。
【0077】
幾つかの実施態様では、該抗体又は抗体フラグメントは、触媒的、プロペプチド又はC末端ドメイン内、及び/又は2つ又は3つの異なるドメイン(例えば、触媒的及びC末端ドメイン内、又はプロペプチド及び触媒的ドメイン内、又はプロペプチド、触媒的及びC末端ドメイン内エピトープ)内の1つより多い列挙されたエピトープを含むエピトープを結合する。
【0078】
幾つかの実施態様では、本抗体又は抗原結合フラグメントは、hPCSK9(配列番号755)のアミノ酸残基238を含むhPCSK9上のエピトープを結合する。実験結果(表27)は、D238が突然変異した場合に、mAb316PのKDが>400倍の結合親和性における低下を示し(〜1×10-9Mから〜410×10-9Mまで)、そしてT1/2が>30倍(〜37から〜1分まで)減少したことを示す。特定の実施態様では、突然変異はD238Rであった。特定の実施態様では、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、153、159、238及び343の位置において2つ又はそれ以上のアミノ酸残基を含むhPCSK9のエピトープを結合する。
【0079】
下記のように、アミノ酸残基153、159又は343における突然変異は、約5〜10倍の親和性低下又は類似のT1/2の短縮をもたらした。特定の実施態様では、突然変異はS153R、E159R及び/又はD343Rであった。
【0080】
幾つかの実施態様では、本抗体又は抗原結合フラグメントは、hPCSK9(配列番号755)のアミノ酸残基366を含むhPCSK9上のエピトープを結合する。実験結果(表27)は、E366が突然変異した場合に、mAb300Nの親和性は約50倍の低下(〜0.7×10-9Mから〜36×10-9Mまで)、そして類似のT1/2の短縮(〜120から〜2分まで)を示した。特定の実施態様では、突然変異はE366Kであった。
【0081】
本発明は、本明細書に記載のいずれかの特異的典型的抗体と同じエピトープに結合する抗PCSK9抗体を含む。同様に、本発明は、本明細書に記載のいずれかの特異的典型的抗体とPCSK9又はPCSK9フラグメントへの結合を競合する抗PCSK9抗体を含む。
【0082】
抗体が、当技術分野で公知の常法を用いることによって、参照抗PCSK9抗体と同じエピトープに結合するか、又は参照抗PCSK9抗体との結合を競合するかどうかは、容易に決定することができる。例えば、試験抗体が、本発明の参照抗PCSK9抗体と同じエピトープと結合するかどうかを決定するために、参照抗体を飽和条件下でPCSK9タンパク質又はペプチドに結合するようにすることができる。次いで、試験抗体のPCSK9分子への結合能が評価される。試験抗体が参照抗PCSK9抗体との飽和結合後にPCSK9分子に結合することができる場合、試験抗体は参照抗PCSK9抗体と異なるエピトープに結合すると結論することができる。他方で、試験抗体が参照抗PCSK9抗体との飽和結合後にPCSK9分子に結合することができない場合、従って試験抗体は、本発明の参照抗PCSK9抗体によって結合したエピトープと同じエピトープに結合すると考えられる。
【0083】
抗体が参照抗PCSK9抗体との結合を競合するかどうかを決定するために、上記結合方法を2つの方針で行うことができる。第1の方針では、参照抗体を飽和条件下でPCSK9分子に結合するようにし、続いてPCSK9分子に対する試験抗体の結合の評価を行うようにする。第2の方針では、試験抗体を飽和条件下でPCSK9分子に結合するようにし、続いてPCSK9分子に対する参照抗体の結合の評価を行うようにする。両方針において、第1の(飽和)抗体だけがPCSK9分子に結合する場合、その結果試験抗体及び参照抗体はPCSK9への結合を競合すると結論される。当業者には当然のことながら、参照抗体との結合を競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同一のエピトープに結合しないが、しかし重複又は隣接エピトープを結合することにより参照抗体の結合を立体的に遮断すると考えられる。
【0084】
2つの抗体は、各々が抗原に対するもう一方の結合を競合的に阻害(遮断)する場合、同じ又は重複エピトープに結合する。即ち、1つの抗体の1、5、10、20又は100倍過剰は、競合的結合測定法(例えば、Junghans et al., Cancer Res. 1990 50: 1495-1502参照)で測定して、少なくとも50%、しかし好ましくは75%、90%又は99%までも、もう一方の結合を阻害する。あるいはまた、基本的に1つの抗体の結合を低減又は排除する抗原中の全アミノ酸突然変異が、もう一方の結合を低減又は排除する場合、2つの抗体は同じエピトープを有する。1つの抗体の結合を低減又は排除する幾つかのアミノ酸突然変異が、もう一方の結合を低減又は排除する場合、2つの抗体は重複エピトープを有する。
【0085】
従って、更なるルーチン実験(例えば、ペプチド突然変異及び結合解析)を、試験抗体の実測した結合欠如が実際に参照抗体と同じエピトープへの結合に因るか、又は立体遮断(又は別の現象)が実測した結合欠如に関与しているかどうかを、確認するために行うことができる。この種の実験は、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリー又は当技術分野で利用できるその他の定量的若しくは定性的抗体結合分析を用いて行うことができる。
【0086】
特定の実施態様では、本発明は、配列番号755のPCSK9タンパク質を結合する抗PCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントであって、PCSK9に対する該抗体又はそのフラグメントと変異体PCSK9タンパク質との結合が、該抗体又はそのフラグメントと配列番号755のPCSK9タンパク質との結合の50%より小さい、抗PCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含む。1つの特定の実施態様では、変異体PCSK9タンパク質は、153、159、238及び343から成る群から選択される位置において、少なくとも1つの残基の突然変異を含む。更に特定の実施態様では、少なくとも1つの突然変異はS153R、E159R、D238R及びD343Rである。別の特定の実施態様では、変異体PCSK9タンパク質は、366から成る群から選択される位置において残基の少なくとも1つの突然変異を含む。1つの特定の実施態様では、変異体PCSK9タンパク質は、147、366及び380から成る群から選択される位置において少なくとも1つの残基の突然変異を含む。1つの更に特定の実施態様では、突然変異はS147F、E366K及び/又はV380Mである。
【0087】
イムノコンジュゲート
本発明は、細胞毒、化学療法薬、免疫抑制薬又は放射性同位体などの、治療部分(「イムノコンジュゲート」)に結合したヒト抗PCSK9モノクローナル抗体を包含する。細胞毒性剤は細胞に有害ないずれの薬剤をも含む。イムノコンジュゲートを形成するための好適な細胞毒性剤及び化学療法薬の例は当技術分野で公知であり、例えば、国際特許公開第05/103081号を参照されたい。
【0088】
二重特異体
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、又は多特異性であってよい。多特異性mAbsは1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的であり、又は1つより多い標的ポリペプチドに対して特異的な抗原結合ドメインを含んでもよい。例えば、Tutt et al. (1991) J. Immunol. 147:60-69を参照されたい。ヒト抗PCSK9mAbsは、別の機能性分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質に結合又はそれと共発現し得る。例えば、抗体又はそのフラグメントは、第2の結合特異性を有する二重特異性又は多特異性抗体を産生するために、別の抗体又は抗体フラグメントなどの、1つ又はそれ以上の他の分子実体に機能的に(例えば、化学的結合、遺伝子融合、非共有結合又は別の方法により)結合することができる。
【0089】
本発明に関連して使用することができる典型的な二重特異体型は、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメイン及び第2のIgCH3ドメインの使用であって、第1及び第2のIgCH3ドメインが少なくとも1つのアミノ酸により互いに異なり、そして少なくとも1つのアミノ酸差異が、アミノ酸差異を欠く二重特異体と比べてプロテインAに対する二重特異体の結合を減少させる使用を包含する。1つの実施態様では、第1のIgCH3ドメインはプロテインAを結合し、そして第2のIgCH3ドメインはH95R修飾(IMGTエキソンナンバリングによる;EUナンバリングによるH435R)などのプロテインA結合を低減又は停止する突然変異を含む。第2のCH3はY96F修飾(IMGTによる;EUによるY436F)を更に含む。第2のCH3内に認められる可能性のある更なる修飾は:IgG1抗体の場合では、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、及びV82I(IMGTによる;EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、及びV422I);IgG2抗体の場合では、N44S、K52N、及びV82I(IMGT;EUによるN384S、K392N、及びV422I);及びIgG4抗体の場合では、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、及びV82I(IMGTによる;EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、及びV422I)を含む。上記の二重特異体型の変異体は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0090】
生物学的同等物
本発明の抗PCSK9抗体及び抗体フラグメントは、記載されたmAbsのそれから変異しているが、しかしヒトPCSK9を結合する能力を保持するアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。当該変異体mAbs及び抗体フラグメントは、親配列と比較した場合に、アミノ酸の1つ又はそれ以上の付加、欠失、又は置換を含むが、しかし記載されたmAbsと基本的に同等の生物活性を示す。同様に、本発明の抗PCSK9抗体コード化DNA配列は、開示された配列と比較した場合に、ヌクレオチドの1つ又はそれ以上の付加、欠失、又は置換を含むが、しかし本発明の抗PCSK9抗体又は抗体フラグメントと基本的に生物学的に同等な抗PCSK9抗体又は抗体フラグメントをコード化する配列を包含する。当該変異体アミノ酸及びDNA配列の例は、上記で検討されている。
【0091】
2つの抗原結合タンパク質、又は抗体は、例えば、それらが、それらの吸収速度及び程度が、類似の実験条件下で同じモル用量で単回用量か又は多数回用量で投与された場合に有意差を示さない、製剤学的同等物又は製剤学的代替物である場合、生物学的に同等と考えられる。幾つかの抗体は、それらがそれらの吸収の程度において同等であるがしかし吸収速度は同等でない場合、同等物又は製剤学的同等物と考えることができ、そして吸収速度の当該差が意図的でそしてラベリングに反映されたものであり、例えば、長期使用時に有効な体内薬剤濃度の達成に必須ではなく、そして特定の試験薬物製剤に対して医学的に無意味と考えられるという理由から、尚生物学的同等性と考えてもよい。1つの実施態様では、2つの抗原結合タンパク質は、それらの安全性、純度、及び有効性に臨床的有意差がない場合、生物学的に同等である。
【0092】
1つの実施態様では、患者が、当該変更のない連続治療と比べて、免疫原性の臨床的に顕著な変化又は有効性の低下を含む、副作用の予想されるリスクの増加なしに参照製品及び生物学的製剤間で1回又はそれ以上の回数変更できる場合、2つの抗原結合タンパク質は生物学的に同等である。
【0093】
1つの実施態様では、2つの抗原結合タンパク質は、それら両方が病態又は使用条件に対して共通メカニズム又は作用メカニズムで作用する場合、当該メカニズムが公知の程度まで生物学的に同等である。
【0094】
生物学的同等性は、インビボ及びインビトロ法で実証することができる。生物学的同等性の尺度としては、例えば 、(a)血液、血漿、血清、又は他の生体液中の抗体又はその代謝物の濃度が時間の関数として測定される、ヒト又は他の哺乳動物でのインビボ試験;(b)ヒトインビボバイオアベイラビリティデータと相関して、それが合理的に予測されるインビトロ試験;(c)抗体(又はその標的)の適切な急性薬理学的効果が時間の関数として測定される、ヒト又は他の哺乳動物でのインビボ試験;そして(d)抗体の安全性、有効性、又はバイオアベイラビリティ又は生物学的同等性を確立する対照比較臨床試験が挙げられる。
【0095】
本発明の抗PCSK9抗体の生物学的同等性変異体は、例えば、残基若しくは配列の種々の置換を行ない、又は生物活性に必要ではない末端若しくは内部残基若しくは配列を除去することによって構築することができる。例えば、生物活性に必須ではないシステイン残基は、再生時に不要又は不適切な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するために、除去するか又は他のアミノ酸と置換することができる。
【0096】
処置集団
本発明は、本発明の組成物を必要とする患者を処置する治療方法を提供する。ライフスタイルの改善及び従来の薬剤処置が、コレステロールレベルの低下にしばしば成功する一方で、すべての患者が当該アプローチにより推奨目標コレステロールレベルを達成できるわけではない。家族性高コレステロール血症(FH)などの種々の病態は、従来治療法の積極的使用にもかかわらずLDL−Cレベルの低下に抵抗的であるように見える。ホモ接合性及びヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(hoFH、heFH)は、早期アテローム性動脈硬化性血管疾患に関連する病態である。しかしながら、hoFHと診断された患者は、従来の薬物療法に大きく抵抗性であり、限定された処置選択肢を有する。特に、コレステロール合成を阻害し、肝LDL受容体をアップレギュレートすることによりLDL−Cを減少させるスタチンによる処置は、LDL受容体が存在せず又は欠損している患者においてほとんど効果を有さないと考えられる。最近スタチンの最大用量で処置した遺伝子型確認hoFHの患者において、わずか約20%より少ない平均LDL−C減少が報告されている。本レジメンに対してエゼチミブ10mg/日の追加は27%のLDL−Cレベルの総減少をもたらしたが、これは最適から尚かけ離れている。同様に、多くの患者はスタチン不応性であり、スタチン療法でコントロール不良であり、又はスタチン療法に耐容性がなく;一般に、これらの患者は代替治療法によりコレステロールコントロールを達成することができない。現行の治療選択肢の欠点に対処することができる新処置法に対し、満たされていない大きな医学的ニーズがある。
【0097】
本発明の治療法により処置可能な特定集団としては、LDLアフェレーシス適応患者、PCSK9活性化(GOF)突然変異の対象、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(heFH);スタチン不耐性又はスタチンコントロール不良の原発性高コレステロール血症患者;及び予防的処置可能と考えられる高コレステロール血症発症リスクを有する対象が含まれる。
治療的投与及び製剤
【0098】
本発明は、本発明の抗PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を提供する。本発明に基づいた医薬組成物の投与は、好適な担体、賦形剤、及び移動、送達、耐容性などの改良を提供するために製剤に組み込まれる他の薬剤とともに投与することができる。適切な製剤の数量は、すべての製剤化学者に公知の処方集に見出すことができる:Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PA。これらの製剤は、例えば、散剤、パスタ剤、軟膏剤、ジェリー剤、ろう剤、油、脂質類、ベシクル(LIPOFECTIN(商標)など)を含む脂質(陽イオン性又は陰イオン性)、DNA複合体、無水吸収パスタ剤、水中油及び油中水懸濁剤、懸濁剤カーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固形ゲル剤、及びカーボワックスを含む半固形混合剤を含む。またPowell et al. “Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA (1998) J Pharm Sci Technol 52:238-311をも参照されたい。
【0099】
用量は、投与される対象の年齢及びサイズ、標的疾患、病態、投与経路などによって変動してもよい。本発明の抗体が、高コレステロール血症、LDL及びアポリポタンパク質Bに関連する障害、及び脂質代謝障害などを含み、PCSK9に関連する種々の病態及び疾患を処置するために使用される場合には、本発明の抗体を、約0.01〜約20mg/kg体重、更に好ましくは約0.02〜約7、約0.03〜約5、又は約0.05〜約3mg/kg体重の通常単回投与で静脈内投与することが有利である。病態の重症度によって、処置の頻度及び持続期間は調整することができる。
【0100】
種々の送達システムは公知であり、本発明の医薬組成物、例えば、リポソームへのカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することができる組み換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス、を投与するために使用することができる(例えば Wu et al. (1987) J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)。導入の方法は、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路を含むが、これらに限定されるものではない。組成物は、いずれかの好都合な経路により、例えば、輸注又は静脈内ボーラスにより、上皮又は皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、結腸及び腸粘膜など)を通した吸収により投与してもよく、そして他の生理活性物質と一緒に投与してもよい。投与は全身的又は局所的であってよい。
【0101】
医薬組成物はベシクルで、特にリポソーム(Langer (1990) Science 249:1527-1533; Treat et al. (1989) in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353-365; Lopez-Berestein, ibid., pp. 317-327を参照; 一般に同書を参照)で送達することもできる。
【0102】
特定の状況では、医薬組成物は放出制御システムで送達することもできる。1つの実施態様では、ポンプを使用してもよい(Sefton (1987) CRC Crit. Ref.Biomed. Eng. 14:201を参照)。別の実施態様では、高分子材料を使用してもよい;Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Florida(1974)を参照。尚別の実施態様では、放出制御システムは、組成物標的に近接して留置することができ、その結果全身投与用量のわずかだけが必要となる(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115-138, 1984を参照)。
【0103】
注射製剤は、静脈内、皮下、皮内及び筋肉内注射用剤形、点滴静注などの剤形を含んでよい。これらの注射製剤は公知の方法により調製することができる。例えば、注射製剤は、例えば、通常注射用に便利に使用される滅菌水性媒体又は油性媒体中で、上記の抗体又はその塩を溶解、懸濁又は乳化することにより調製することができる。注射用の水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコース及び他の助剤などを含む等張液があり、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO−50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加体)などの適切な可溶化剤との組み合わせで使用してもよい。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが用いられ、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの適切な可溶化剤との組み合わせで使用してもよい。このように調製した注射剤は、好ましくは適切なアンプルに充填される。本発明の医薬組成物は、標準注射針及びシリンジにより皮下又は静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン送達デバイスは、本発明の医薬組成物を送達するのに容易な適用性を有する。このようなペン送達デバイスは、再利用可能又は使い捨て可能となり得る。再利用可能なペン送達デバイスは、一般的に医薬組成物を含む交換可能カートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物のすべてが投与され、カートリッジが空になった時点で、空のカートリッジは容易に廃棄され、医薬組成物を含む別のカートリッジと交換することができる。このようにペン送達デバイスは再使用することができる。使い捨てペン送達デバイスでは、交換式カートリッジはない。むしろ使い捨てペン送達デバイスは、デバイス内のリザーバに貯められる医薬組成物であらかじめ充填される。リザーバの組成物が空になった時点で、全デバイスは廃棄される。
【0104】
多くの再利用可能なペン及び自己注射送達デバイスは、本発明の医薬組成物の皮下送達に適用性を有する。例としては、例えば、わずか数例を挙げると、AUTOPEN(商標) (Owen Mumford, Inc., Woodstock, UK)、DISETRONIC(商標)ペン (Disetronic Medical Systems, Burghdorf, Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン, HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co., Indianapolis, IN)、NOVOPEN(商標) I、II及びIII (Novo Nordisk, Copenhagen, Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標) (Novo Nordisk, Copenhagen, Denmark)、BD(商標)ペン (Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、 OPTIPEN STARLET(商標)、及び OPTICLIK(商標) (sanofi-aventis, Frankfurt, Germany)を含むが、それらに限定されるものではない。本発明の医薬組成物の皮下送達において適用を有する使い捨てペン送達デバイスの例としては、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi-aventis)、FLEXPEN(商標) (Novo Nordisk)、及びKWIKPEN(商標) (Eli Lilly)を含むが、それらに限定されるものでない。
【0105】
有利なことには、上記の経口又は非経口使用の医薬組成物は、有効成分の用量に適合させるのに適する単位用量の剤形に調製される。単位用量の当該剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが含まれる。含まれる前述の抗体量は、一般に単位用量の剤形当たり約5〜約500mgであり;特に注射剤の形態では、前述の抗体は約5〜約100mgで、及び他の剤形に対しては約10〜約250mgで含まれることが好ましい。
【0106】
本発明は、本発明の抗体又は抗体フラグメントが、hPCSK9に関わる様々な病態と関連する高コレステロール血症を処置するのに有用な治療方法を提供する。本発明の抗PCSK9抗体又は抗体フラグメントは、特に高コレステロール血症などの処置に有用である。併用療法には、例えば、(1)セリバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンなどの、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル(HMG)−コエンザイムA(CoA)レダクターゼを阻害することにより、コレステロール合成の細胞枯渇を誘導する;(2)コレステロール取り込み及び/又は胆汁酸再吸収を阻害する;(3)リポ蛋白質異化作用を増加させる(ナイアシンなど)、1つ又はそれ以上のいずれかの薬剤;及び22−ヒドロキシコレステロールなどのコレステロール排泄の役割を果たすLXR転写因子のアクチベーター、又はエゼチミブ+シンバスタチンなどの固定組み合わせ;胆汁レジン(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム)とスタチン、ナイアシン+スタチンの固定組み合わせ(例えば、ナイアシンとロバスタチン);と併せた、又はω−3−脂肪酸エチルエステル(例えば、オマコール)などの他の脂質低下薬、と併せた本発明の抗PCSK9抗体を含んでよい。
【実施例】
【0107】
以下の実施例は、当業者に、本発明の方法及び組成物の作り方および使い方の完全な開示及び説明を提供するために記載するものであり、本発明者らが彼らの発明と考えている範囲を限定することを意図するものではない。使用した数に関して正確さを確保する努力をしているが、ある程度の実験誤差及び偏差は含まれる筈のものである。特に明記しない限り、分子量は平均分子量で、温度は摂氏で、そして圧力は大気圧又はほぼ大気圧である。
【0108】
〔実施例1〕:ヒトPCSK9に対するヒト抗体の作成
VELOCIMMUNE(商標)マウスをPCSK9で免疫し、抗体免疫応答を、これらのマウスから得られた血清を用いて抗原特異的免疫アッセイによってモニタリングした。 B細胞を発現する抗hPCSK9を、高抗hPCSK9抗体力価を有することを示した免疫マウスの脾臓から採取し、マウス骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを形成させた。ハイブリドーマをスクリーニングして選択し、下記の分析法を用いてhPCSK9特異抗体を発現する細胞株を同定した。本分析法により、H1M300、H1M504、H1M505、H1M500、H1M497、H1M498、H1M494、H1M309、H1M312、H1M499、H1M493、H1M496、H1M503、H1M502、H1M508、H1M495及びH1M492と命名したキメラ抗hPCSK9抗体を産生する幾つかの細胞株を同定した。
【0109】
また、ヒトPCSK9特異的抗体は、米国特許出願第2007/0280945A1号に記載のように、骨髄腫細胞への融合なしに抗原免疫B細胞から直接単離した。重鎖及び軽鎖可変領域をクローン化し、H1H313、H1H314、H1H315、H1H316、H1H317、H1H318、H1H320、H1H321及びH1H334と命名した完全ヒト抗hPCSK9抗体を作成した。これらの抗体を発現する安定組み換え抗体発現CHO細胞株を樹立した。
【0110】
〔実施例2〕遺伝子利用解析
産生mAbsの構造を解析するために、抗体可変領域をコード化する核酸をクローン化し配列決定した。可変領域の予測アミノ酸配列をN末端アミノ酸配列決定により確認した。核酸配列及びmAbsの予測アミノ酸配列から、遺伝子使用を各抗体鎖について同定した。
【0111】
【表1】
【0112】
〔実施例3〕抗原結合親和性の測定
前述のハイブリドーマ細胞株によって作成した、mAbsに結合するhPCSK9の平衡解離定数(KD)を、リアルタイムバイオセンサー表面プラズモン共鳴アッセイ(BIACORE(商標)T100)の表面動力学によって測定した。各抗体は、捕捉抗体表面を形成するために、BIACORE(商標)チップへの直接化学カップリングを通して作出した、ヤギ抗マウ
スIgGポリクローナル抗体表面上で4μl/分の流速にて90秒間捕捉した。50nM又は12.5nM濃度のhPCSK9−myc−myc−his(hPCSK9−mmh)を、50μl/分の流速で300秒間捕捉抗体表面上に注入し、そして抗原抗体解離を25℃か又は37℃で15分間モニタリングした(KD=pM;T1/2=分)。
【0113】
【表2】
【0114】
脾細胞の直接単離を経て作成した、mAbsへのhPCSK9結合についての平衡解離定数(KD)を、リアルタイムバイオセンサー表面プラズモン共鳴アッセイ(BIACORE(商標)T100)において表面動力学によって測定した。選択された各抗体は、捕捉抗体表面を形成するために、BIACORE(商標)チップへの直接化学カップリングを通して作出した、ヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体表面上で2μl/分の流速にて6分間捕捉した。50nM又は12.5nM濃度のPCSK9−mmhを、70μl/分の流速にて5分間捕捉抗体表面上に注入し、そして抗原抗体解離を25℃か又は37℃で15分間モニタリングした(KD=pM;T1/2=分)。
【0115】
【表3】
【0116】
25℃におけるタグ付きアカゲザル(Macaca mulata)PCSK9(mmPCSK9;配列番号756)(mmPCSK9−mmh)についての選択mAbsの解離速度(kd)は、前述のようにして決定した。
【0117】
【表4】
【0118】
〔実施例4〕抗原結合親和性に対するpHの影響
CHO細胞産生完全ヒトhPCSK9mAbsへの抗原結合親和性に対するpHの影響を、前述のように評価した。試験mAbsは、H1H316P(「316P」)(HCVR/LCVR配列番号90/92;CDR配列の配列番号76/78/80及び84/86/88)、及びH1M300N(「300N」)(HCVR/LCVR配列番号218/226;CDR配列の配列番号220/222/224及び228/230/232)の完全ヒトバージョンである。hPCSK9−mmhは抗mycmAb表面上に、高密度(約35〜45共鳴単位)(RU)か又は低密度(約5〜14RU)で捕捉した。各抗体は、HBST(pH7.4又はpH5.5)中50nMで、25℃で100μl/mlの流速にて1.5分間捕捉hPCSK9表面上に注入し、そして抗原抗体解離を10分間モニタリングした。コントロールI:抗hPCSK9mAb配列番号79/101(WO2008/063382)(KD=pM;T1/2=分)。
【0119】
【表5】
【0120】
pH7.4又はpH5.5での316P及び300Nの抗原結合特性を、上記のように改良BIACORE(商標)アッセイによって測定した。簡潔に言えば、mAbsは、アミンカップリングを介してBIACORE(商標)CM5センサーチップ上に固定化した。様々な濃度のmyc−myc−hisタグ付きhPCSK9、マウスPCSK9(mPCSK9、配列番号757)、D374Yの機能獲得型(GOF)点突然変異(hPCSK9(D374Y))を有するhPCSK9、カニクイザル(Macaca fascicularis) PCSK9(mfPCSK9、配列番号761)(mfPCSK9)、ラット(Rattus norvegicus) PCSK9(rPCSK9、配列番号763)及びhis−タグ付きシリアンゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus) PCSK9(maPCSK9、配列番号762)(maPCSK9)を、11から100nMまでの範囲で、100μl/mlの流速にて1.5分間抗体表面上に注入し、そして抗原抗体解離を25℃(表6)か又は37℃(表7)において5分間リアルタイムでモニタリングした。コントロールII:抗hPCSK9mAbs配列番号67/12(WO2009/026558)。NB:実験条件下で結合を認めなかった。(KD=pM;T1/2=分)。
【0121】
【表6】
【0122】
【表7】
【0123】
〔実施例5〕点突然変異D374Yを有するhPCSK9への抗hPCSK9mAbsの結合
D374Yの機能獲得型(GOF)点突然変異を有するhPCSKに対する、選択抗hPCSK9mAbs(hPCSK9(D374Y)−mmh)の結合親和性を、前述のように決定した。各抗体は、捕捉抗体表面を形成するために、BIACORE(商標)チップへの直接化学カップリングを通して作出した、ヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体表面上に40μl/分の流速にて8〜30秒間捕捉した。1.78nM〜100nMの種々濃度のhPCSK9(D374Y)−mmhを、50μl/分の流速で5分間捕捉抗体表面上に注入し、そしてhPCSK9(D374Y)−mmh及び抗体の解離を25℃で15分間モニタリングした。コントロールIII:抗hPCSK9mAbs配列番号49/23(WO2009/026558)(KD=pM;T1/2=分)。
【0124】
【表8】
【0125】
〔実施例6〕抗hPCSK9mAbsの結合特異性
316P、300N、及びコントロールI抗hPCSK9mAbsを、BIACORE(商標)2000のアミン結合抗hFcCM5チップ上に捕捉した。タグ付き(myc−myc−his)ヒトPCSK9、ヒトPCSK1(hPCSK1)(配列番号759)、ヒトPCSK7(hPCSK7)(配列番号760)、又はマウスPCSK9を、捕捉mAb表面上に注入し(100nM)、25℃で5分間結合できるようにした。RUの変化を記録した。結果:300N及びコントロールIはhPCSK9だけに結合し、316PはhPCSK9及びmPCSK9の両方を結合した。
【0126】
抗hPCSK9mAbsの結合特異性をELISAによって測定した。簡潔に言えば、抗hPCSK9抗体を96ウェルプレートにコーティングした。1.2nMのヒトPCSK9−mmh、mPCSK9−mmh、maPCSK9−h、hPCSK1−mmh、又はhPCSK7−mmhを抗体コーティングプレートに加えて、RTで1時間インキュベートした。次に、プレートに結合したPCSKタンパク質をHRP結合抗His抗体によって検出した。結果は、316Pはヒト、マウス、及びハムスターPCSK9に結合するが、一方で300N及びコントロールIはhPCSK9だけを結合することを示した。いずれの抗hPCSK9mAbsも、hPCSK1又はhPCSK7に顕著な結合を示さなかった。
【0127】
〔実施例7〕抗hPCSK9mAbsの交差反応
抗hPCSK9mAbsと、mmPCSK9、mfPCSK9、mPCSK9、maPCSK9、又はrPCSK9との交差反応は、BIACORE(商標)3000を用いて測定した。抗hPCSK9mAbsをBIACORE(商標)チップへの直接化学カップリングを通して作出した抗hFc表面上で捕捉した。精製タグ付きhPCSK9、hPCSK9(D374Y)、mmPCSK9、mfPCSK9、mPCSK9、maPCSK9、又はrPCSK9を、各々1.56nM〜50nMの濃度で25℃又は37℃において抗体表面に注入した。316P、300N、コントロールI、コントロールII、コントロールIII及びPCSK9タンパク質間の結合を測定した(KD=pM;T1/2=分)。
【0128】
【表9】
【0129】
【表10】
【0130】
【表11】
【0131】
【表12】
【0132】
【表13】
【0133】
〔実施例8〕hPCSK9とhLDLRドメイン間の結合の阻害
選択された抗hPCSK9mAbsの、ヒトLDLR完全長細胞外ドメイン(hLDLR−ecto配列番号758)、hLDLREGF−Aドメイン(配列番号758のアミノ酸313−355)、又はhLDLREGF−ABドメイン(配列番号758のアミノ酸314−393)(LDLR Genbank number NM_000527)へのhPCSK9結合遮断能力を、BIACORE(商標)3000を用いて評価した。簡潔に言えば、hLDLR−ecto、EGF−A−hFc、又はEGF−AB−hFcタンパク質を、受容体又は受容体フラグメント表面を作製するためにCM5チップ上でアミン結合した。選択された抗hPCSK9mAbsを、62.5nM(抗原に対して2.5倍過剰)で、25nMのhPCSK9−mmhとプレミックスし、続いて25℃で40分インキュベーションして、平衡溶液を形成するために抗体抗原結合が平衡に達することができるようにした。平衡溶液を、25℃で40分間2μl/分にて受容体又は受容体フラグメント上に注入した。抗hPCSK9mAbsの、hLDLR−ecto、EGF−A−hFc、又はEGF−AB−hFcへの結合に因るRUの変化を測定した。結果は、H1H316P及びH1M300Nは、hPCSK9−mmhの、hLDLR−ecto、hLDLREGF−Aドメイン、及びhLDLREGF−ABドメインへの結合を遮断した;H1H320Pは、hPCSK9−mmhの、hLDLR−ecto及びhLDLREGF−Aドメインへの結合を遮断した;そしてH1H321Pは、hPCSK9−mmhのhLDLREGF−Aドメインへの結合を遮断した;ことを示す。
【0134】
mAbsの、hLDLR−ecto、hLDLREGF−Aドメイン、又はhLDLREGF−ABドメインへのhPCSK9結合遮断能力についても、ELISAベース免疫アッセイで評価した。簡潔に言えば、hLDLR−ecto、hLDLREGF−A−hFc又はhLDLREGF−AB−hFcを、各々2 μg/mlでPBS緩衝液中4℃にて一夜96ウェルプレートにコーティングし、非特異的結合部位をBSAで遮断した。本プレートを用いて、種々の濃度の抗hPCSK9mAbsで前平衡化した、PCSK9−mmh溶液中にて遊離hPCSK9−mmhを測定した。一定量のhPCSK9−mmh(500pM)を、連続希釈法において0から〜50nMまでの範囲の種々量の抗体とプレミックスし、続いて室温(RT)において1時間インキュベーションして、抗体抗原結合が平衡に達するようにした。平衡試料溶液を受容体又は受容体フラグメントコーティングプレートに移した。1時間の結合後、洗浄して、結合hPCSK9−mmhはHRP結合myc抗体を用いて検出した。IC50値(pM)を、プレートコーティング受容体又は受容体フラグメントに結合したhPCSK9−mmhの50%減少達成に必要な抗体量として測定した。結果は、特異的mAbsが、中性pH(7.2)及び酸性pH(5.5)の両方で3受容体の結合を機能的に遮断することを示す。
【0135】
【表14】
【0136】
本mAbsの、hLDLREGF−Aドメイン又はhLDLREGF−ABドメインへのhPCSK9GOF変異体hPCSK9(D374Y−mmh結合遮断能力(pMでのIC50値)を、一定量の0.05nMのhPCSK9(D374Y)−mmhを用いて、上記のELISAに基づく免疫アッセイで評価した。
【0137】
【表15】
【0138】
本mAbsの、hLDLR−ectoドメイン、hLDLREGF−Aドメイン、又はhLDLREGF−ABドメインへの、mmPCSK9か又はmPCSK9結合遮断能力(pMでのIC50値)を、一定量の1nMのmmhタグ付きmmPCSK9か又は1nMのmPCSK9を用いて、上記のELISAに基づく免疫アッセイにより、中性pH7.2で評価した。
【0139】
【表16】
【0140】
本mAbsの、hLDLREGF−Aドメインへの、hPCSK9、mmPCSK9、rPCSK9、maPCSK9、mfPCSK9、又はmPCSK9結合遮断能力(pMでのIC50値)を、一定量の0.5nMのhPCSK9−mmh、1nMのmmPCSK9−mmh、1nMのrPCSK9−mmh、1nMのmaPCSK9−h、0.3nMのmfPCSK9−mmh、又は1nMのmPCSK9−mmhを用いて、上記のELISAに基づく免疫アッセイにより、中性pH(7.2)(表17)又は酸性pH(5.5、表18)で評価した。
【0141】
【表17】
【0142】
【表18】
【0143】
316P及びコントロールIの、hLDLRへのhPCSK9結合遮断能力についても測定した。簡潔に言えば、組み換えhLDLR又はhLDLR−EGFA−mFcをBIACORE(商標) CM5チップにアミン結合を経て固定化した。100nMのhPCSK9−mmh及び316P、コントロールImAb、又は非hPCSK9特異的mAb(各々250nM)をRTで1時間インキュベートし、次いで10μl/mlの流速にて25℃で15分間hLDLR又はhLDLR−EGFA表面上に注入した。hLDLRか又はhLDLR−EGFAの混合物における、遊離hPCSK9−mmh間の結合に因るRUの変化を記録した。hLDLRか又はhLDLR−EGFAへのhPCSK9の結合は、316P及び300Nによって完全に遮断されたが、コントロールImAbでは遮断されなかった。
【0144】
〔実施例9〕エピトープマッピング
エピトープ結合特異性を明らかにするために、特異的ヒトPCSK9ドメインがマウスPCSK9ドメインで置換された、3種のキメラPCSK9−mmhタンパク質を作成した。キメラタンパク質#1は、マウスPCSK9プロドメイン(配列番号757のアミノ酸残基1−155)で、続いてヒトPCSK9触媒ドメイン(配列番号755の残基153−425)及びマウスPCSK9C末端ドメイン(配列番号757の残基429−694)(mPro−hCat−mC−term−mmh)で構成される。キメラタンパク質#2は、ヒトPCSK9プロドメイン(配列番号755のアミノ酸残基1−152)で、続いてマウスPCSK9触媒ドメイン(配列番号757の残基156−428)及びマウスPCSK9C末端(hPro−mCat−mC−term−mmh)で構成される。キメラタンパク質#3は、マウスPCSK9プロドメイン及びマウスPCSK9触媒ドメインで、続いてヒトPCSK9C末端ドメイン(配列番号755の残基426−692)(mPro−mCat−hC−term−mmh)で構成される。加えて、D374Yの点突然変異を有するhPCSK9(hPCSK9(D374Y)−mmh)を作成した。
【0145】
mAbsの、試験タンパク質hPCSK9−mmh、マウスPCSK9−mmh、キメラタンパク質#1、#2、及び#3、並びにhPCSK9(D374Y)−mmhへの結合特異性を、以下のように試験した:本mAbsを96ウェルプレート上で4℃にて一夜コーティングし、次いで各試験タンパク質(1.2nM)をプレートに加えた。室温で1時間結合後、プレートを洗浄し、結合した試験タンパク質をHRP結合抗mycポリクローナル抗体を用いて検出した(++=OD>1.0;+=OD0.4〜1.0;−=OD<0.4)。
【0146】
【表19】
【0147】
316P、300N及び対照抗hPCSK9mAbsの、hPCSK9−mmh、mPCSK9−mmh、mmPCSK9−mmh、mfPCSK9−mmh、rPCSK9−mmh、キメラタンパク質#1、#2、及び#3、並びにhPCSK9(D374Y)−mmhへの結合特異性を、タンパク質濃度が1.7nMであることを除いて、上記と同じように試験した(−=OD<0.7;+=OD 0.7〜1.5;++=OD>1.5)。
【0148】
【表20】
【0149】
選択mAbsでの類似の結果をBIACORE(商標)結合分析によって得た。簡潔に言えば、316P、300N、又はコントロールImAbを、アミン結合抗hFcCM5チップ上で捕捉し、100nMの各タンパク質を本mAb捕捉表面上に注入した。本mAb捕捉表面への各蛋白質の結合に因るRUの変化を測定した。
【0150】
【表21】
【0151】
mPCSK9−mmhと交差反応する316Pの結合特異性を更に評価するために、結合ドメイン特異性を測定する交差競合ELISA分析法を開発した。簡潔に言えば、先ず、キメラタンパク質#1、#2、又は#3に特異的なmAbsの1μg/mlを、96ウェルプレート上に一夜コーティングした。次いで、ヒトPCSK9−mmh(2μg/ml)を各ウェルに加え、続いて室温で1時間インキュベーションした。316P(1μg/ml)を加えて、更に1時間室温でインキュベートした。プレートへ結合した316Pを、HRP結合抗hFcポリクローナル抗体を用いて検出した。hPCSK9−mmhへの316P結合は、キメラタンパク質#2又はキメラタンパク質#3に特異的なmAbsの存在によって影響されなかったが、hPCSK9−mmhへの316Pの結合は、キメラタンパク質#1に特異的な抗体の存在で大きく減少した。
【0152】
〔実施例10〕BIACORE(商標)に基づく抗原結合プロファイル評価
抗体結合プロファイルは、BIACORE(商標)1000を用いて、316P、300N、コントロールI、II、及びIIImAbsに対しても確立した。簡潔に言えば、hPCSK9−mmhは抗myc表面上で捕捉した。第1の抗hPCSK9mAb(50μg/ml)をPCSK9結合表面上に10分間、25℃で10μl/分の流速にて注入した。次いで第2のhPCSK9mAb(50μg/ml)を、第1のmAb結合表面上に10分間、25℃で10μl/分の流速にて注入した。第1のmAbの、第2のmAb結合遮断能力を測定し、パーセント阻害として表わした。
【0153】
【表22】
【0154】
〔実施例11〕抗hPCSK9抗体によるLDL取り込みの増加
抗hPCSK9mAbsの、インビトロでのLDL取り込み増加能力を、ヒト肝細胞肝癌細胞株(HepG2)を用いて測定した。HepG2細胞を96ウェルプレート上に、DMEM完全培地中9×104細胞/ウェルで接種し、そしてHepG2単層を形成させるために、5%CO2の存在下で37℃で6時間インキュベートした。リポ蛋白質欠乏培地(LPDS)中50nMのヒトPCSK9−mmh、及び試験mAbを、LPDS培地中500nMから0.98nMまでの種々の濃度で加えた。データは、各実験でのIC50値で表わした(IC50=LDL取込みが50%増加する抗体濃度)。加えて、実験では、また、316P及び300Nの両方は、LDL取込みに対するhPCSK9の阻害作用を完全に逆転させることができたが、一方でコントロールImAb又はH1M508抗hPCSK9mAbは、阻害作用を約50%だけ逆転させることを示した。
【0155】
【表23】
【0156】
抗hPCSK9mAbsの、種々の哺乳動物からのPCSK9タンパク質によるLDL取り込みに対する阻害作用逆転能力についても、上記のHepG2細胞株で試験した。簡潔に言えば、HepG2細胞を、LPDS培地(500nMから始める)中で抗体の連続希釈法により、及び50nMのhPCSK9−mmh、mfPCSK9−mmh、mPCSK9−mmh、rPCSK9−mmh、又はmaPCSK9−hと一夜インキュベートした。HepG2細胞を、また、LPDS(50nMから始める)中で抗体の連続希釈法により、及び1nMのhPCSK9(D374Y)と一夜インキュベートした。表24に示すように、316Pは、試験したすべてのPCSK9タンパク質によりLDLに対する阻害作用を完全に逆転させることができたのに対して、300Nは、hPCSK9、hPCSK9(D374Y)、及びmfPCSK9によるLDL取り込みへの阻害作用を逆転させることができただけであった。値はnMIC50で表わした。
【0157】
【表24】
【0158】
〔実施例12〕インビボにおけるhPCSK9の生物学的作用の中和
PCSK9を中和する生物学的作用を評価するために、完全長hPCSK9−mmhをコード化するDNA構築物の流体力学的送達(HDD)により、hPCSK9をC57BL/6マウスに過剰発現させた。4マウス(C57BL/6)に空ベクター/生理食塩水(対照)を注入し、16マウスに50μgのhPCSK9−mmh−DNA/生理食塩水混合物を体重の10%に相当する分だけ尾静脈に注射した。HDDの7日後に、hPCSK9の送達は、総コレステロールの1.6倍上昇、LDLコレステロール(LDL−C)の3.4倍上昇及び非HDLコレステロールの1.9倍上昇(対照と比べて)をもたらした。7日目の血清hPCSK9レベルは、すべて定量的ELISAで評価して1μg/mlより大きかった。
【0159】
HDD後の6日目に、3実験群(1、5又は10mg/kg)(n=4/群)に対して、H1M300Nを腹腔内注射(i.p.)を経て投与した結果、血清コレステロールレベルの顕著な減弱をもたらした。1、5又は10mg/kgのH1M300N処置群において、投与後18時間に総コレステロールはそれぞれ9.8%、26.3%及び26.8%減少し、LDL−Cは5.1%、52.3%及び56.7%減少し、そして非HDLコレステロールは7.4%、33.8%及び28.6%減少した。
【0160】
〔実施例13〕サルでの薬物動力学的及び血清化学的研究
薬物動力学的(PK)研究を、5〜7kgの体重範囲で3〜5歳のナイーブ雄カニクイザル(Macaca fascicularis) で実施した。
【0161】
群割付
サルを5処置群に割り付けた:処置群1(n=3)は対照緩衝液(10mMリン酸ナトリウム、pH6、1ml/kg)の投与を受けた;処置群2(n=3)は1ml/kgの316P(5mg/ml)の投与を受けた;処置群3(n=3)は1ml/kgの300N(5mg/ml)の投与を受けた;処置群4(n=3)は1ml/kgの316P(15mg/ml)の投与を受けた;そして処置群5(n=3)は1ml/kgの300N(15mg/ml)の投与を受けた。すべての処置は、IVボーラスで投与し、続いて1mlの生理食塩水洗浄を受けた。総投与量(ml)は、最新の体重(各動物は環境順化時に2回、そして試験期間を通して毎週1回体重測定した)を基に計算した。試験mAb又はバッファーコントロールの単回用量を1日目に投与した。
【0162】
動物の保護
動物は温度及び湿度監視環境に入れられた。温度及び相対湿度の目標範囲は、それぞれ18〜29°及び30〜70%であった。自動照明システムは12時間の概日周期を与えた。暗周期は研究又は施設関連活動に対して妨害し得た。動物は、動物保護法及び実験動物の保護及び使用に関する指針(National Research Council 1996)に記載の勧告に適合するケージに個別に入れられた。
【0163】
飼料及び給餌
動物は、NBL USA SOPに従い1日2回給餌した。動物は特定の処置で必要な場合には絶食させた(例えば、血清化学のための採血、又は採尿の前、又は鎮静を含む処置が実施される場合)。飼料は、定期的に汚染物質を分析し、メーカー規格内であることが認められた。
【0164】
実験計画
適正な数の動物をNBL USAストックから選択した。動物の健康は獣医スタッフで審査し、そして血清化学、血液学、及び凝固スクリーニングを実施した。健常が確認された16匹の雄を、研究に割り付けた。16匹の雄を特定研究群に割り付けて、残りの動物は予備として利用した。血清コレステロールレベル(順化における2系列の平均を基準)を組み入れた層化ランダム化スキームを用いて、動物を研究群に割り付けた。
【0165】
順化期間
既隔離動物を投与開始前に最小14日間試験室で順化させた。順化段階データは予備を含み全動物から収集した。全動物について、研究結果に影響を与える可能性のある行動異常を評価した。予備動物は1日後にストックに戻した。
【0166】
血液採取
血液は、拘束、覚醒動物の末梢静脈から静脈穿刺で採取した。可能な限り、単回採血を経て血液を採取し、次いで適切に分割した。
【0167】
PK研究
血液試料(1.5ml)は、投与前、2分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、及びその後24時間毎に1回血清分離管(SST)で採取した。標本保存血清は2バイアルに移して−60度又はそれ以下で保存した。
【0168】
血清試料は、最適化ELISA(酵素免疫吸着測定法)手順を用いて解析した。簡潔に言えば、マイクロタイタープレートを先ずhPCSK9−mmhでコーティングした。次いで、試験mAb316P又は300Nを、hPCSK9−mmhプレート上に捕捉した。捕捉316P又は300Nは、ビオチニル化マウス抗hIgG4を用いて検出し、続いてNeutrAvidin−HRPへ結合させた。100〜1.56ng/mlの範囲で種々濃度の316P又は300Nを標準として使用した。316P又は300Nの不存在下に1%のサル血清(分析マトリックス)をゼロ(0ng/ml)標準として使用した。図2に示す結果は、血清316P及び300Nレベルの用量依存性増加を示す。PKパラメーターを、WinNonlinソフトウェア(非コンパートメント解析、モデル201−IVボーラス投与)を用いて解析した。
【0169】
【表25】
【0170】
血清化学検査
血液試料を、投与前、12時間、48時間、及びその後48時間毎に1回、臨床化学分析、特に脂質プロファイル(即ち、コレステロール、LDL−C、HDL−C、トリグリセリド)のために採取した。投与後12時間試料を除いて、全動物は試料採取前に一夜絶食状態にした。試料量は約1mlとした。化学パラメータは、オリンパス自動分析計を用いて測定した。測定パラメータ(Xybionコード):アルブミン(ALB);アルカリ性ホスファターゼ(ALP);アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT);アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST);総ビリルビン(TBIL);カルシウム(Ca);総コレステロール(TCho);クレアチンキナーゼ(CK);クレアチニン(CRN);γグルタミルトランスアミナーゼ(GGT);グルコース(GLU);無機リン(IP);総タンパク質(TP);トリグリセリド(TRIG);血中尿素窒素(BUN);グロブリン(GLOB);アルブミン/グロブリン比(A/G);塩化物(Cl);カリウム(K);ナトリウム(Na);LDL及びHDLコレステロール。残りの血清は−20℃又はそれ以下で保存し、分析後1週間以内に廃棄した。
【0171】
105日の投与後時点を通過した試料の結果を図3〜7に示す。用量に関係なく初回投与後24時間以内に、316P及び300Nの投与を受けた動物に総コレステロール及びLDL−Cの減少が認められた。血清総コレステロールは急速かつ確実に減少した(〜35%、図3)。6日までにLDL−Cの〜80%の確実な減少が見られた(図4〜5)。15mg/kg用量の300Nを投与した動物では、総コレステロール(〜10−15%減少)及びLDL−C(〜40%減少) の両方の減少が、試験の少なくとも80日まで続いた。加えて、HDL−Cが15mg/kgの316Pを投与した動物で上昇した(図6)。316Pか又は300Nの高用量(15mg/kg)投与を受けた動物も、試験期間中トリグリセリドの減少を示した(図7)。316Pはベースラインと比べて80%までのLDL−Cレベルの最大抑制を示した。この抑制の長さは、約18日(5mg/kg用量)及び約45日(15mg/kg用量)持続する、少なくとも60%抑制(ベースラインLDL−Cレベルと比べて)で用量依存性であった。300Nは316Pと異なる薬力学的プロファイルを示した。300NによるLDL−C抑制は同等の用量で非常に長い期間持続した(5mg/kg用量投与後28日間に50%LDL−C抑制、及び15mg/kg用量投与後約90日間に50%LDL−C抑制)。ALT及びAST測定で測定して、肝機能の測定可能な変化はほとんど又は全く見られなかった。本試験で抗PCSK9抗体の投与を受けた全動物は、LDL−C及び総コレステロールの急速な抑制を示した。
【0172】
316P及び300Nの類似のLDL−C低下作用が、5mg/kgの316Pか又は5mg/kgの300Nの単回皮下(SC)投与を受けたカニクイザルで認められた(図8)。316P及び300Nは両方とも、LDL−Cレベルを劇的に抑制し、それぞれ約15及び30日間LDL−C低下作用を維持した(図8)。薬力学的効果(約40%のLDL−C抑制)は、サル血清中の機能的抗体レベルとほぼ相関するように見える(図9)。抗体レベルが10μg/ml以下に低下するに従って、LDL−C抑制は同様に低下するように見えた。加えて、300Nは316Pよりも実質的に長い循環半減期を、従って長い実測LDL−C抑制を示した。
【0173】
【表26】
【0174】
〔実施例14〕抗hPCSK9抗体によるLDL受容体分解の減弱
肝LDL受容体レベルに対するPCSK9の生物学的効果、及びそれに続く血清LDL−Cレベルに対する効果を評価するために、hPCSK9を、hPCSK9を発現するが、mPCSK9(PCSK9hu/huマウス) を発現しないマウスに静脈内注射により投与した。具体的には、PCSK9hu/huマウスに、PBS(対照)、又は1.2mg/kgのhPCSK9−mmhを尾静脈経由で注射した。hPCSK9の送達6時間後に、血清中で(ベースラインレベルと比べて)1.4倍の総コレステロール上昇及び2.3倍のLDL−C上昇が認められた。hPCSK9投与の4時間後、動物の別のコホート(n=3)における肝LDL受容体レベルの解析では、肝ホモジネート中において検出可能なLDL受容体の顕著な低下を示した。
【0175】
肝LDL受容体レベルに対する抗hPCSK9の生物学的効果、及びそれに続く血清LDL−Cレベルに対する効果を評価するために、316P及び非hPCSK9特異的mAbを、上記のhPCSK9−mmhタンパク質注射の20時間前に、等価用量(5mg/kgi.p.)でPCSK9hu/huマウスに投与した。hPCSK9投与の4時間後、マウスを犠牲にし、そして合計8組織(肝臓、脳、肺、腎臓、心臓、回腸、副腎、及び膵臓)を採取して、LDL受容体レベルをウェスタンブロット法によって測定した。LDL受容体レベルの変化は肝臓だけに認められた。PBS対照投与と比べて、316P投与は、総コレステロール及びLDLコレステロールのPCSK9媒介増加を顕著に遮断した(ベースラインでLDL−C=2.49mg/dl及びPCSK9投与後6時間で3.1mg/dl;ビヒクルでの135%と比べて25%増加)。非hPCSK9特異的mAbの前投与は、PBS単独からLDL−C増加を約27%遮断した(PBS5.6mg/dlと比べてLDL−C=4.1mg/dl)。マウスの別のコホート(n=3/群)におけるLDL受容体レベルの解析では、PCSK9投与によりLDL受容体の顕著な低下を示し、これは316Pによって遮断されたが、非hPCSK9特異的mAbでは遮断されなかった(図10)。
【0176】
種々用量の316Pの効果を、LDL−C上昇及びhPCSK9レベル上昇の両方を示すPCSK9hu/huマウスにおいても評価した。PCSK9hu/huマウスを、先ず高炭水化物餌料で8週間飼育して、LDL−C及びhPCSK9レベルの両方を〜2倍上昇させた。316Pか又は非hPCSK9特異的mAbを、各々1mg/kg、5mg/kg、又は10mg/kgで,マウスに投与した。血清を24時間後に採取し、LDL−Cレベルを解析した。316Pは、LDL−Cレベルの低下に用量依存性に有効であった(図11)。加えて、10mg/kg用量で投与した316Pは、24時間以内にLDL−Cレベルを元(給餌前)の値に急速に逆に低下させた(データは示していない)。
【0177】
〔実施例15〕マウスPKの研究
PK研究は、6週齢のC57BL/6マウス及び11〜15週齢のhPCSK9ヘテロ接合体マウスで実施した。コントロールI、316P、又は300Nの単回注射を、各々10mg/kgでSC投与した。血清出血について、0時間(出血前)、6時間、1、3、6、10、14、21、28、35、42及び56日の全12時点で、抗hFc捕捉及び抗hFc検出サンドイッチELISAを用いてhIgGレベルを測定した(図12及び13)。すべてのmAbsは、約3日でそれらのTmaxに到達し、C57BL/6マウスでは約47〜115μg/ml及びhPCSK9ヘテロ接合体マウスでは55〜196μg/mlの対応Cmaxレベルを有した。C57BL/6マウスでは56日に、コントロールImAbレベルは約12μg/mlで、そして300Nレベルは約11μg/mlであったのに対して、316Pレベルは約0.02μg/mlより小さかった。hPCSK9ヘテロ接合体マウスでは56日に、コントロールImAbレベルは約29μg/mlであったが、一方で300N及び316Pレベルの両方は、0.02μg/mlの定量化限界(BQL)以下であった。
【0178】
〔実施例16〕突然変異体/変異体抗hPCSK9への抗hPCSK9抗体結合
hPCSK9と抗hPCSK9mAbsと間の結合を更に評価するために、各変異体が単一点突然変異を含み、そして2つの変異体hPCSK9タンパク質が各々二重突然変異を含む、21変異体hPCSK9タンパク質を作成した。選択された各抗体を、BIACORE(商標)チップへの直接化学カップリングを通して作製したF(ab′)2抗hIgG表面上に捕捉して、捕捉抗体表面を形成させた。次いで、100nMから25nMまでの種々の濃度で各mmhタグ付き変異体hPCSK9を、60μl/分の流速で240秒間捕捉抗体表面上に注入し、そして変異体hPCSK9及び抗体の解離を20分間25℃にてリアルタイムでモニタリングした。nb:結合はこれらの実験条件下で認められなかった(KD=M×10-9;T1/2=分;WT=野生型)。
【0179】
【表27】
【0180】
結果は、残基D238が突然変異した場合に、hPCSK9に対する316Pの結合親和性は、1×10-9Mから410×10-9MのKDまで>400倍低下し;そしてT1/2は37分から1分まで約30倍短縮したことを示す。このことは316PがhPCSK9(配列番号755)のD238を含むhPCSK9上でエピトープを結合することを示唆する。加えて、BIACORE(商標)分析は、153、159又は343で残基が突然変異した場合に、316Pの結合親和性及びT1/2が約5〜10倍低下したことを示す。具体的には、S153、E159又はD343のいずれか1つが突然変異した場合に、KDは約1×10-9Mから約5〜8×10-9Mの間まで低下し;一方でT1/2は約37分から約4〜6分の間まで減少した。
【0181】
366の位置の残基が突然変異した場合に、hPCSK9への300N結合は約50倍低下して、約0.7×10-9Mから約36×10-9MまでのKDの減少、及び約120分から2分までのT1/2の短縮をもたらした。これらの結果は、300NがhPCSK9(配列番号755)のE366を含むhPCSK9上でエピトープを結合することを示す。加えて、BIACORE(商標)分析は、147又は380での残基が突然変異した場合に、3
00N結合親和性及びT1/2が2〜>10倍の間で減少したことを示す。具体的には、S147又はV380のいずれかが突然変異した場合に、KDは約0.69×10-9Mから約2〜9×10-9Mの間まで減少し;一方でT1/2は約120分から約24〜66分の間まで短縮した。316Pと比べて、hPCSK9への300N結合は、残基238での突然変異によって低下しなかった。
【0182】
対照的に、コントロールI抗体は、試験した位置突然変異のいずれにも応じた結合親和性変化又はT1/2を示さず;コントロールII抗体は、残基215が突然変異(R215E)(〜0.1×10-9から〜4.5×10-9まで)して、T1/2が約27倍短縮(〜333から12分まで)した場合に、40倍の親和性減少を示し;一方で、コントロールIII抗体は、残基237が突然変異(KDが〜0.6×10-9から〜5.9×10-9まで減少し、そしてT1/2が〜481から〜43分まで減少)した場合に、親和性減少を示した。
【0183】
316P、300N、及び対照抗hPCSK9mAbsの、hPCSK9変異体への結合特異性を、ELISAに基づく免疫アッセイを用いて試験した。抗PCSK9mAbsを、4℃において一夜96ウェルプレート上でコーティングした。CHO−k1一時的トランスフェクション溶解物上清中の各mmhタグ付き変異体hPCSK9を、0から5nMまでの範囲の種々の濃度で抗体コーティングプレートに加えた。室温で1時間結合後、プレートを洗浄し、結合変異体hPCSK9をHRP結合抗mycポリクローナル抗体を用いて検出した(−=OD<0.7;+=OD0.7〜1.5;++=OD>1.5)。
【0184】
【表28】
【0185】
〔実施例17〕正脂血性及び高脂血性ハムスターに対する316Pの効果
抗PCSK9mAb316Pの血清LDL−C低下能力を、正脂血性及び高脂血性ゴールデンシリアンハムスター(Mesocricetus auratus)で試験した。6〜8週齢で80〜100g重量の雄のシリアンハムスターを、研究に登録する前7日間で順化するようにした。全動物を、標準固形飼料か又は0.1%コレステロール及び10%ココナツオイル補充高脂血性固形飼料で飼育した。316PmAbを、正脂血性ハムスターに対して1、3、又は10mg/kgの用量で、そして高脂血性ハムスターに対して3、10、又は30mg/kgの用量で、単回皮下注射によってハムスターに投与した。血清試料を注射後24時間及び7、14、及び22日に全群から採取し、その時点の血清脂質レベルを評価して、本mAbs投与の7日前に採取したベースラインレベルと比較した。正脂血性ハムスター中の循環総コレステロール及びLDL−Cは、ビヒクル注射と比べて用量依存的に顕著に低下した。図14に示すように、316Pの投与は、試験した最大用量(10mg/kg)で注射7日後に、60%までLDL−Cレベルを効果的に低下させた。316Pの類似のコレステロール低下効果は高脂血性ハムスターでは認められなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトプロタンパク質コンバターゼスブチリシン/ケキシン9型(hPCSK9)に特異的に結合するヒト抗体又はヒト抗体の抗原結合フラグメントであって、以下の事項:
(i)血清総コレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜35%減少させ、少なくとも24日の期間に亘ってその減少を維持することができること;
(ii)血清LDLコレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約65〜80%減少させ、少なくとも24日の期間に亘ってその減少を維持することができ、又は血清LDLコレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約40〜70%減少させ、少なくとも60〜90日の期間に亘ってその減少を維持することができること;
(iii)血清トリグリセリドを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜40%を減少させることができること;
(iv)血清HDLコレステロールを減少させることなく、又は投与前レベルと比べて血清HDLコレステロールを減少させても5%若しくはそれ以下でしかなく、(i)〜(iii)の1つ又はそれ以上を達成すること;
(v)ALT及びAST測定で測定して、肝機能への測定可能な影響がほとんど又は全くなしに、(i)〜(iii)の1つ又はそれ以上を達成すること;
の1つ又はそれ以上を特徴とする、ヒト抗体又はヒト抗体の抗原結合フラグメント。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体又は抗原結合フラグメントであって、
配列番号8、32、56、80、104、128、152、176、200、224、248、272、296、320、344、368、392、416、440、464、488、512、536、560、584、608、632、656、680、704及び728から成る群から選択される、重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン;及び
配列番号16、40、64、88、112、136、160、184、208、232、256、280、304、328、352、376、400、424、448、472、496、520、544、568、592、616、639、664、688、712及び736から成る群から選択される、軽鎖CDR3(LCDR3)ドメイン;
を含む、上記抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項3】
HCDR3/LCDR3が配列番号80/88又は224/232である、請求項2に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項4】
請求項2に記載の抗体又は抗原結合フラグメントであって、
配列番号4、28、52、76、100、124、148、172、196、220、244、268、292、316、340、364、388、412、436、460、484、508、532、556、580、604、628、652、676、7000及び724から成る群から選択される、重鎖CDR1(HCDR1)ドメイン;
配列番号6、30、54、78、102、126、150、174、198、222、246、270、294、318、342、366、390、414、438、462、486、510、534、558、582、606、630、654、678、702及び726から成る群から選択される、重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン;
配列番号12、36、60、84、108、132、156、180、204、228、252、276、300、324、348、372、396、420、444、468、492、516、540、564、588、612、636、660、684、708及び732から成る群から選択される、軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン;及び
配列番号14、38、62、86、110、134、158、182、206、230、254、278、302、326、350、374、398、422、446、470、494、518、542、566、590、614、638、662、686、710及び734から成る群から選択される、軽鎖CDR2(LCDR2)ドメイン;
を更に含む、上記抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項5】
請求項4に記載の抗体又は抗原結合フラグメントであって、軽鎖及び重鎖CDR配列が、
配列番号76、78、80、84、86、88;
配列番号220、222、224、228、230、232;
から成る群から選択される、上記抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項6】
HCVRが配列番号90又は218であり、そしてLCVRが配列番号90又は218である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項7】
HCDR3及びLCDR3配列を含む、請求項1に記載の抗体又は抗原結合フラグメントであって、
HCDR3が、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20(配列番号747)のアミノ酸配列を含み、式中、X1はAla、X2はArg又はLys、X3はAsp、X4はSer又はIle、X5はAsn又はVal、X6はLeu又はTrp、X7はGly又はMet、X8はAsn又はVal、X9はPhe又はTyr、X10はAsp、X11はLeu又はMet、X12はAsp又は不存在、X13はTyr又は不存在、X14はTyr又は不存在、X15はTyr又は不存在、X16はTyr又は不存在、X17はGly又は不存在、X18はMet又は不存在、X19はAsp又は不存在、そしてX20はVal又は不存在であり;そして
LCDR3が、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9(配列番号750)のアミノ酸配列を含み、式中、X1はGln又はMet、X2はGln、X3はTyr又はThr、X4はTyr又はLeu、X5はThr又はGln、X6はThr、X7はPro、X8はTyr又はLeu、そしてX9はThrである;
上記抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項8】
HCDR1、HCDR2、LCDR1及びLCDR2を更に含む、請求項7に記載の抗体又は抗原結合フラグメントであって、
HCDR1が、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号745)のアミノ酸配列を含み、式中、X1はGly、X2はPhe、X3はThr、X4はPhe、X5はSer又はAsn、X6はSer又はAsn、X7はTyr又はHis、及びX8はAla又はTrpであり;
HCDR2が、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号746)のアミノ酸配列を含み、式中、X1はIle、X2はSer又はAsn、X3はGly又はGln、X4はAsp又はSer、X5はGly、X6はSer又はGly、X7はThr又はGlu、及びX8はThr又はLysであり;
LCDR1が、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12(配列番号748)のアミノ酸配列を含み、式中、X1はGln、X2はSer、X3はVal又はLeu、X4はLeu、X5はHis又はTyr、X6はArg又はSer、X7はSer又はAsn、X8はAsn又はGly、X9はAsn、X10はArg又はAsn、X11はAsn又はTyr、及びX12はPhe又は不存在であり;
LCDR2が、式X1−X2−X3(配列番号749)のアミノ酸配列を含み、式中X1はTrp又はLeu、X2はAla又はGly、及びX3はSerである;
上記抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントであって、変異体PCSK9タンパク質への抗体又はそのフラグメントの結合が、抗体又はそのフラグメントと配列番号755のPCSK9タンパク質との結合の50%より少ない、上記抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
請求項9に記載の抗体又は抗原結合フラグメントであって、変異体PCSK9タンパク質が、
S153、E159、D238及びD343;又は
S147、E366及びV380;
の群から選択される位置において少なくとも1つの突然変異の残基を含む、上記抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項11】
VH、DH及びJH生殖系列遺伝子セグメントに由来するヌクレオチド配列セグメントによってコード化される重鎖可変領域(HCVR)、及びVK及びJK生殖系列遺伝子セグメントに由来するヌクレオチド配列セグメントによってコード化される軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合フラグメントであって、生殖系列配列が、
(a)VH遺伝子3−23、DH遺伝子7−27、JH遺伝子2、VK遺伝子4−1、JK遺伝子2;又は
(b)VH遺伝子3−7、DH遺伝子2−8、JH遺伝子6、VK遺伝子2−28、JK遺伝子4;
である、上記抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合フラグメントをコード化する単離した核酸分子。
【請求項13】
請求項11に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項14】
請求項13に記載の発現ベクターを単離した宿主細胞に導入し、抗体又はそのフラグメントの産生を可能にする条件下で細胞を増殖させ、そのように産生した抗体又はフラグメントを回収する工程を含む、抗ヒトPCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを生産する方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項16】
第2の治療薬を更に含む請求項15に記載の医薬組成物であって、第2の治療薬が、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル(HMG)−コエンザイムA(CoA)レダクターゼ阻害剤、スタチン、コレステロール取り込み及び又は胆汁酸再吸収阻害剤、リポタンパク質異化を増加させる薬剤、又はLXR転写因子のアクチベーターから選択される、上記医薬組成物。
【請求項17】
治療的有効量の請求項15又は16に記載の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、PCSK9アンタゴニストによって軽減され、改善され、阻害され又は予防される疾患又は病態を処置する方法。
【請求項18】
対象が、高コレステロール血症、高脂血症に罹患した;LDLアフェレーシスの適応とされた;家族性高コレステロール血症ヘテロ接合性、スタチン不耐性、スタチンコントロール不良と認定された;高コレステロール血症、脂質異常症、胆汁うっ滞性肝疾患、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、肥満、アテローム性動脈硬化症及び心血管疾患発症の発症リスクを有するヒト対象である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
PCSK9仲介疾患又は病態を減弱又は阻害するのに使用するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体又は抗体の抗原結合フラグメント。
【請求項20】
PCSK9仲介疾患又は病態を減弱又は阻害するのに使用するための薬剤の製造における、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体又は抗体の抗原結合フラグメントの使用。
【請求項21】
PCSK9仲介疾患又は病態が、高コレステロール血症、高脂血症、LDLアフェレーシス、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合性、スタチン不耐性、スタチンコントロール不良、高コレステロール血症、脂質異常症、胆汁うっ滞性肝疾患、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、肥満、アテローム性動脈硬化症及び心血管疾患の発症リスクである、請求項20に記載の使用。
【請求項1】
ヒトプロタンパク質コンバターゼスブチリシン/ケキシン9型(hPCSK9)に特異的に結合するヒト抗体又はヒト抗体の抗原結合フラグメントであって、以下の事項:
(i)血清総コレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜35%減少させ、少なくとも24日の期間に亘ってその減少を維持することができること;
(ii)血清LDLコレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約65〜80%減少させ、少なくとも24日の期間に亘ってその減少を維持することができ、又は血清LDLコレステロールを投与前レベルと比べて少なくとも約40〜70%減少させ、少なくとも60〜90日の期間に亘ってその減少を維持することができること;
(iii)血清トリグリセリドを投与前レベルと比べて少なくとも約25〜40%を減少させることができること;
(iv)血清HDLコレステロールを減少させることなく、又は投与前レベルと比べて血清HDLコレステロールを減少させても5%若しくはそれ以下でしかなく、(i)〜(iii)の1つ又はそれ以上を達成すること;
(v)ALT及びAST測定で測定して、肝機能への測定可能な影響がほとんど又は全くなしに、(i)〜(iii)の1つ又はそれ以上を達成すること;
の1つ又はそれ以上を特徴とする、ヒト抗体又はヒト抗体の抗原結合フラグメント。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体又は抗原結合フラグメントであって、
配列番号8、32、56、80、104、128、152、176、200、224、248、272、296、320、344、368、392、416、440、464、488、512、536、560、584、608、632、656、680、704及び728から成る群から選択される、重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン;及び
配列番号16、40、64、88、112、136、160、184、208、232、256、280、304、328、352、376、400、424、448、472、496、520、544、568、592、616、639、664、688、712及び736から成る群から選択される、軽鎖CDR3(LCDR3)ドメイン;
を含む、上記抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項3】
HCDR3/LCDR3が配列番号80/88又は224/232である、請求項2に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項4】
請求項2に記載の抗体又は抗原結合フラグメントであって、
配列番号4、28、52、76、100、124、148、172、196、220、244、268、292、316、340、364、388、412、436、460、484、508、532、556、580、604、628、652、676、7000及び724から成る群から選択される、重鎖CDR1(HCDR1)ドメイン;
配列番号6、30、54、78、102、126、150、174、198、222、246、270、294、318、342、366、390、414、438、462、486、510、534、558、582、606、630、654、678、702及び726から成る群から選択される、重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン;
配列番号12、36、60、84、108、132、156、180、204、228、252、276、300、324、348、372、396、420、444、468、492、516、540、564、588、612、636、660、684、708及び732から成る群から選択される、軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン;及び
配列番号14、38、62、86、110、134、158、182、206、230、254、278、302、326、350、374、398、422、446、470、494、518、542、566、590、614、638、662、686、710及び734から成る群から選択される、軽鎖CDR2(LCDR2)ドメイン;
を更に含む、上記抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項5】
請求項4に記載の抗体又は抗原結合フラグメントであって、軽鎖及び重鎖CDR配列が、
配列番号76、78、80、84、86、88;
配列番号220、222、224、228、230、232;
から成る群から選択される、上記抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項6】
HCVRが配列番号90又は218であり、そしてLCVRが配列番号90又は218である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項7】
HCDR3及びLCDR3配列を含む、請求項1に記載の抗体又は抗原結合フラグメントであって、
HCDR3が、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20(配列番号747)のアミノ酸配列を含み、式中、X1はAla、X2はArg又はLys、X3はAsp、X4はSer又はIle、X5はAsn又はVal、X6はLeu又はTrp、X7はGly又はMet、X8はAsn又はVal、X9はPhe又はTyr、X10はAsp、X11はLeu又はMet、X12はAsp又は不存在、X13はTyr又は不存在、X14はTyr又は不存在、X15はTyr又は不存在、X16はTyr又は不存在、X17はGly又は不存在、X18はMet又は不存在、X19はAsp又は不存在、そしてX20はVal又は不存在であり;そして
LCDR3が、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9(配列番号750)のアミノ酸配列を含み、式中、X1はGln又はMet、X2はGln、X3はTyr又はThr、X4はTyr又はLeu、X5はThr又はGln、X6はThr、X7はPro、X8はTyr又はLeu、そしてX9はThrである;
上記抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項8】
HCDR1、HCDR2、LCDR1及びLCDR2を更に含む、請求項7に記載の抗体又は抗原結合フラグメントであって、
HCDR1が、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号745)のアミノ酸配列を含み、式中、X1はGly、X2はPhe、X3はThr、X4はPhe、X5はSer又はAsn、X6はSer又はAsn、X7はTyr又はHis、及びX8はAla又はTrpであり;
HCDR2が、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号746)のアミノ酸配列を含み、式中、X1はIle、X2はSer又はAsn、X3はGly又はGln、X4はAsp又はSer、X5はGly、X6はSer又はGly、X7はThr又はGlu、及びX8はThr又はLysであり;
LCDR1が、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12(配列番号748)のアミノ酸配列を含み、式中、X1はGln、X2はSer、X3はVal又はLeu、X4はLeu、X5はHis又はTyr、X6はArg又はSer、X7はSer又はAsn、X8はAsn又はGly、X9はAsn、X10はArg又はAsn、X11はAsn又はTyr、及びX12はPhe又は不存在であり;
LCDR2が、式X1−X2−X3(配列番号749)のアミノ酸配列を含み、式中X1はTrp又はLeu、X2はAla又はGly、及びX3はSerである;
上記抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントであって、変異体PCSK9タンパク質への抗体又はそのフラグメントの結合が、抗体又はそのフラグメントと配列番号755のPCSK9タンパク質との結合の50%より少ない、上記抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
請求項9に記載の抗体又は抗原結合フラグメントであって、変異体PCSK9タンパク質が、
S153、E159、D238及びD343;又は
S147、E366及びV380;
の群から選択される位置において少なくとも1つの突然変異の残基を含む、上記抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項11】
VH、DH及びJH生殖系列遺伝子セグメントに由来するヌクレオチド配列セグメントによってコード化される重鎖可変領域(HCVR)、及びVK及びJK生殖系列遺伝子セグメントに由来するヌクレオチド配列セグメントによってコード化される軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合フラグメントであって、生殖系列配列が、
(a)VH遺伝子3−23、DH遺伝子7−27、JH遺伝子2、VK遺伝子4−1、JK遺伝子2;又は
(b)VH遺伝子3−7、DH遺伝子2−8、JH遺伝子6、VK遺伝子2−28、JK遺伝子4;
である、上記抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合フラグメントをコード化する単離した核酸分子。
【請求項13】
請求項11に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項14】
請求項13に記載の発現ベクターを単離した宿主細胞に導入し、抗体又はそのフラグメントの産生を可能にする条件下で細胞を増殖させ、そのように産生した抗体又はフラグメントを回収する工程を含む、抗ヒトPCSK9抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを生産する方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項16】
第2の治療薬を更に含む請求項15に記載の医薬組成物であって、第2の治療薬が、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル(HMG)−コエンザイムA(CoA)レダクターゼ阻害剤、スタチン、コレステロール取り込み及び又は胆汁酸再吸収阻害剤、リポタンパク質異化を増加させる薬剤、又はLXR転写因子のアクチベーターから選択される、上記医薬組成物。
【請求項17】
治療的有効量の請求項15又は16に記載の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、PCSK9アンタゴニストによって軽減され、改善され、阻害され又は予防される疾患又は病態を処置する方法。
【請求項18】
対象が、高コレステロール血症、高脂血症に罹患した;LDLアフェレーシスの適応とされた;家族性高コレステロール血症ヘテロ接合性、スタチン不耐性、スタチンコントロール不良と認定された;高コレステロール血症、脂質異常症、胆汁うっ滞性肝疾患、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、肥満、アテローム性動脈硬化症及び心血管疾患発症の発症リスクを有するヒト対象である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
PCSK9仲介疾患又は病態を減弱又は阻害するのに使用するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体又は抗体の抗原結合フラグメント。
【請求項20】
PCSK9仲介疾患又は病態を減弱又は阻害するのに使用するための薬剤の製造における、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体又は抗体の抗原結合フラグメントの使用。
【請求項21】
PCSK9仲介疾患又は病態が、高コレステロール血症、高脂血症、LDLアフェレーシス、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合性、スタチン不耐性、スタチンコントロール不良、高コレステロール血症、脂質異常症、胆汁うっ滞性肝疾患、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、肥満、アテローム性動脈硬化症及び心血管疾患の発症リスクである、請求項20に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−511913(P2012−511913A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540965(P2011−540965)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/068013
【国際公開番号】WO2010/077854
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(597160510)リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/068013
【国際公開番号】WO2010/077854
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(597160510)リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】
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