説明

PCSK9のアンタゴニスト

ヒトプロタンパク質コンバターゼサブチリシン−ケキシン9型(「PCSK9」)のアンタゴニストが開示されている。開示されるアンタゴニストは、PCSK9機能の阻害において有効であり、したがって、PCSK9活性と関連する症状の治療において用いるのに望ましいアンタゴニストを提示する。本発明はまた、前記アンタゴニストをコードする核酸、ベクター、宿主細胞、及びアンタゴニストを含む組成物を開示する。PCSK9特異的アンタゴニストを作製する方法並びにPCSK9機能を阻害又は拮抗するためにアンタゴニストを使用する方法も開示され、さらなる本開示内容の重要な態様を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、両方とも2006年11月7日に出願された米国仮出願第60/857,293号及び同60/857,248号の利益を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当なし
【0003】
マイクロフィッシュ付属物の参照
該当なし
【背景技術】
【0004】
プロタンパク質コンバターゼサブチリシン−ケキシン(kexin)9型(本明細書において以下、「PCSK9」と呼ぶ)は、神経アポトーシス調節コンバターゼ1(「NARC−1」)としても知られており、分泌性サブチラーゼファミリーの9番目のメンバーとして同定されるプロテイナーゼK様サブチラーゼ(subtilase)である;Seidahら、2003年、PNAS、100:928〜933頁参照のこと。PCSK9の遺伝子は、ヒト染色体1p33−p34.3に位置している;Seidahら、上記。PCSK9は、例えば、肝細胞、腎間葉細胞、腸の回腸及び結腸上皮、並びに胎生期脳終脳ニューロンを含む増殖及び分化可能な細胞において発現される;Seidahら、上記。
【0005】
PCSK9の最初の合成は、約72kDaの不活性酵素前駆体又はチモーゲンの形であり、これは、小胞体(「ER」)において、自己触媒的分子内プロセシングを受けて、その機能性を活性化する。この内部プロセシング事象は、SSVFA↓SIPWNL158モチーフで起き、最初の3個のN末端残基Ser−Ile−Proを提供すると報告されており(Benjannetら、2004年、J.Biol.Chem.279:48865〜48875頁)、ERからの出るための必要条件としても報告されている;Benjannetら、上記;Seidahら、上記。次いで、切断されたタンパク質が分泌される。切断されたペプチドは活性化され、分泌された酵素と結合したままである;上記。
【0006】
約22kbの長さであり692個のアミノ酸のタンパク質をコードする12のエキソンを含むヒトPCSK9の遺伝子配列は、例えば、寄託番号NP_777596.2で見い出すことができる。ヒト、マウス及びラットPCSK9核酸配列は、寄託されている;例えば、それぞれ、GenBank受託番号AX127530(同様にAX207686)、AX207688及びAX207690参照のこと。
【0007】
PCSK9は、以下:WO01/31007、WO01/57081、WO02/14358、WO01/98468、WO02/102993、WO02/102994、WO02/46383、WO02/90526、WO01/77137及びWO01/34768;US公開番号US2004/0009553及びUS2003/0119038並びに欧州公開番号EP1440981、EP1067182及びEP1471152をはじめとするいくつかの特許公報において開示され、及び/又は、特許請求されているが、それだけには限定されない。
【0008】
PCSK9は、肝細胞及び神経細胞の分化において役割を果たしているとされており(Seidahら、上記)、胎生肝において高度に発現され、コレステロール恒常性に強力に関与しているとされている。最近の研究は、コレステロール生合成又は取り込みにおける特定の役割を示唆しているようである。Maxwellらは、コレステロール食を与えられたラットの研究において、PCSK9は、コレステロール生合成に関与する3種のその他の遺伝子と同様に下流で制御されることを見い出した。(Maxwellら、2003年、J.Lipid Res.44:2109〜2119頁)。さらに、興味深いことに、PCSK9の発現は、コレステロール代謝を含むその他の遺伝子について見られるのと同様に、ステロール調節エレメント結合性タンパク質(「SREBP」)によって調節された;上記。これらの知見は、このような調節が、リポタンパク質代謝に関係しているその他遺伝子にかなり特有であることを実証したPCSK9転写調節の研究によって後に支持された;(Dubucら、2004年、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol、24:1454〜1459頁)。PCSK9発現は、薬物のコレステロール低下効果による方法でスタチンによって上流で制御された;上記。さらに、PCSK9プロモーターは、コレステロール調節を含む2つの保存された部位、ステロール調節エレメント及びSp1部位を有していた;上記。PCSK9のアデノウイルス発現は、循環LDLの顕著な時間依存性増大につながることがわかっている(Benjannetら、2004年、J.Biol.Chem.279:48865〜48875頁)。さらに、PCSK9遺伝子を欠失させたマウスは、肝LDL受容体のレベルを増大させ、血漿からLDLをより迅速に除去した;(Rashidら、2005年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、102:5374〜5379頁)。最近、PCSK9を用いて一過性にトランスフェクトされたHepG2細胞から得られた培地は、トランスフェクトされていないHepG2細胞に移された場合に、細胞表面LDLR及びLDLのインターナリゼーションの量を減少させたと報告された;Cameronら、2006年、Human Mol.Genet.15:1551〜1558頁参照のこと。PCSK9又はPCSK9によって作用される因子のいずれかが分泌され、トランスフェクトされた細胞及びトランスフェクトされていない細胞の両方においてLDLRを低下させることができると結論付けられた。より最近、HepG2細胞の培地に添加された精製PCSK9は、細胞表面LDLRの数を、用量及び時間依存的に減少させる作用を有すると実証された;(Lagaceら、2006年、J.Clin.Invest.116:2995〜3005頁)。
【0009】
また、遺伝子PCSK9中のいくつかの突然変異は、早発性心血管不全につながり得る常染色体優性高コレステロール血症(「ADH」)、血漿における低密度リポタンパク質(「LDL」)粒子の著しい上昇を特徴とする遺伝性代謝障害と確実に関係している;(Abifadelら、2003年、Nature Genetics、34:154〜156頁);(Timmsら、2004年、Hum.Genet.114:349〜353頁);(Leren,2004年、Clin.Genet.65:419〜422頁)参照のこと。Abifadelら、上記のS127R突然変異に関する後に公開された研究では、このような突然変異を保持する患者は、(1)アポB100含有リポタンパク質、例えば、低密度リポタンパク質(「LDL」)、超低密度リポタンパク質(「VLDL」)及び中間密度リポタンパク質(「IDL」)の過剰産生、及び(2)前記リポタンパク質のクリアランス又は変換における関連する減少、に帰因する血漿中のより高い総コレステロール及びアポB100を示すということが報告された;(Ouguerramら、2004年、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.24:1448〜1453頁)。
【0010】
合わせて考えると、上記で参照される研究は、PCSK9はLDL産生の調節において役割を果たすという事実を証明する。PCSK9の発現又は上流での制御は、LDLコレステロールの血漿レベルの上昇と関係しており、PCSK9の発現の阻害又は欠如は、低いLDLコレステロールレベルと関係している。PCSK9の配列変化と関係している低いLDLコレステロールレベルが、冠動脈心疾患に対する保護を与えたということは重要である;(Cohen、2006年、N.Engl.J.Med.354:1264〜1272頁)。
【0011】
心血管疾患の治療において有効な化合物及び/又は薬剤の同定は、非常に望ましい。LDLコレステロールレベルの低下は、冠動脈イベントの率と直接関連していることを臨床試験においてすでに実証した;(Lawら、2003年、BMJ、326:1423〜1427頁)。より最近、血漿LDLコレステロールレベルの中程度の生涯にわたる低下は、冠動脈イベントの発生率の実質的な減少と実質的に相関していることがわかった;Cohenら、上記。このことは、非脂質関連心血管危険因子の高い有病率を有する集団においてさえもそうであることがわかった;上記。したがって、LDLコレステロールレベルの管理された制御から得られる大きな利点がある。
【0012】
したがって、PCSK9の活性及び種々の治療条件においてPCSK9が果たす対応する役割を阻害又は拮抗するPCSK9の治療ベースのアンタゴニストを製造することは非常に重要である。
【発明の概要】
【0013】
発明の要旨
本発明は、PCSK9、特に、ヒトPCSK9のアンタゴニストに関する。PCSK9のタンパク質特異的アンタゴニスト(又は本明細書において、「PCSK9特異的アンタゴニスト」とも呼ばれる)は、PCSK9タンパク質特異的結合分子又はPCSK9機能と関連している又はPCSK9機能によって影響を与えられる症状、例えば、それだけには限らないが、高コレステロール血症、冠動脈心疾患、メタボリックシンドローム、急性冠動脈症候群及び関連症状の治療において重要なPCSK9機能の阻害において有効なタンパク質である。PCSK9特異的アンタゴニストは、PCSK9の選択的認識及び結合を特徴とする。PCSK9特異的アンタゴニストは、アンタゴニスがPCSK9特異的結合部分にさらなる別個の特異性を付与するよう補われている特定の例以外では、PCSK9以外との有意な結合を示さない。特定の実施形態では、PCSK−9特異的アンタゴニストは、1.2×10−6以下のKDでヒトPCSK9と結合する。特定の実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、1×10−7以下のKDでヒトPCSK9と結合する。さらなる実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、1×10−8以下のKDでヒトPCSK9と結合する。その他の実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、5×10−9以下の、又は1×10−9以下のKDでヒトPCSK9と結合する。さらなる実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、1×10−10以下のKD、1×10−11以下のKD、1×10−12以下のKDでヒトPCSK9と結合する。特定の実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、その他のタンパク質とは上記のレベルで結合しない。
【0014】
PCSK9特異的アンタゴニストは、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害に対抗するのに有効である。PCSK9特異的アンタゴニストは、LDL取り込みに対するPCSK9の効果の用量依存性阻害を繰り返し実証する。したがって、PCSK9特異的アンタゴニストは、血漿LDLコレステロールレベルの低下にとって重要である。前記アンタゴニストはまた、PCSK9の検出及び定量化において種々の診断目的で有用性を有する。
【0015】
特定の実施形態では、本発明は、PCSK9特異的アンタゴニスト、特定の実施形態では、開示される重鎖及び/又は軽鎖可変領域、その1以上の保存的アミノ酸置換を有する等価物及び相同体を含む抗体分子を包含する。特定の実施形態は、開示されるCDRドメイン又は重鎖及び/又は軽鎖CDRドメインのセット、及び1以上の保存的アミノ酸置換を有することを特徴とするその等価物を含む単離されたPCSK9特異的アンタゴニストを含む。当業者には当然のことながら、PCSK9を拮抗する能力を保持するPCSK9特異的アンタゴニストの断片を、種々のフレームワークに挿入してもよく、例えば、抗原結合に基づいて予め選択された抗体ループをディスプレイするために使用できる種々の足場を議論し、米国特許第6,818,418号及びそれに含まれる参照文献を参照のこと。別の方法では、VL及びVHをコードする遺伝子を、組換え法を用いて、例えば、VL及びVH領域対が、別に一本鎖Fvs(「ScFVs」)として知られる一価の分子を形成する単一タンパク質鎖として作製されるのを可能にする合成リンカーを用いて結合してもよく;例えば、Birdら、1988年、Science、242:423〜426頁、及びHustonら、1988年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5879〜5883頁参照のこと。
【0016】
PCSK−9特異的アンタゴニスト及び断片は、種々の非抗体ベースの足場、例えば、それだけには限らないが、アビマー(avimers)(Avidia);ダーピン(DARPins)(Molecular Partners);アドネクチン(Adnectins)(Adnexus)、アンチカリン(Anticalins)(Pieris)及びアフィボディー(Affibodies)(Affibody)の形であり得る。タンパク質結合のための代替足場の使用は、科学文献においてよく理解され、例えば、Binz&Pluckthun、2005年、Curr.Opin.Biotech.16:1〜11頁。したがって、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害に対抗する、PCSK9に対して選択性を有する非抗体ベースの足場又はアンタゴニスト分子は、本発明の重要な実施形態を形成する。
【0017】
別の態様では、本発明は、開示されるPCSK9特異的アンタゴニストをコードする核酸を提供する。本発明は、特定の態様において、PCSK9特異的アンタゴニストをコードする核酸、特定の実施形態において、開示される可変重鎖及び軽鎖領域及びその選択成分、特に開示される個々のCDR3領域を含む開示される抗体分子を提供する。別の態様では、本発明は、前記核酸を含むベクターを提供する。別の態様では、本発明は、開示されるPCSK9特異的アンタゴニストをコードする核酸を含む単離細胞、特定の実施形態では開示される抗体分子及び記載されるようなその成分を提供する。別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチド又はベクターを含む単離細胞を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、PCSK9と選択的に結合するPCSK9特異的アンタゴニスト、例えば、それだけには限らないが、抗体、抗原結合断片、誘導体、キメラ分子、前記のもののいずれかのその他のポリペプチドとの融合物、又はPCSK9と特異的に結合できる代替構造/組成物を作製する方法を提供する。本方法は、PCSK9特異的アンタゴニスト(類)をコードする核酸を含む又は1種以上のその成分をコードする個々の核酸を含む細胞をインキュベートすることを含み、前記核酸は、発現される場合には、PCSK9特異的アンタゴニスト(類)の発現及び/又は構築を可能にする条件下で、集合的にアンタゴニスト(類)を産生し、そして細胞から前記アンタゴニスト(類)を単離することを含む。当業者ならば、同様に、標準的な組換えDNA技術を用いて本明細書に開示されるPCSK9特異的アンタゴニストを得ることができる。
【0019】
別の態様では、本発明は、前記アンタゴニストがPCSK9と結合するのを可能にする条件下で、細胞、細胞の集団、又はPCSK9を発現する(又はPCSK9で処理された)注目する組織サンプルを、本明細書に開示されるPCSK9特異的アンタゴニストと接触させることを含む、PCSK9の活性若しくは機能又はPCSK9の顕著な効果を拮抗する方法を提供する。本発明の特定の実施形態は、細胞がヒト細胞であるこのような方法を含む。これに一致するアンタゴニストは、PCSK9機能の阻害において有効である。開示されるPCSK9特異的アンタゴニストは、LDL取り込みに対するPCSK9の効果を用量依存的に阻害することがわかった。
【0020】
別の態様では、本発明は、被験者に、治療上有効な量の本発明のPCSK9特異的アンタゴニストを投与することを含む、PCSK9活性に関連する症状又はPCSK9が機能することが特定の被験者には禁忌である症状を示す被験者においてPCSK9の活性を拮抗する方法を提供する。選択された実施形態では、症状は、高コレステロール血症、冠動脈心疾患、メタボリックシンドローム、急性冠動脈症候群又は関連症状であり得る。別の態様では、本発明は、本発明のPCSK9特異的アンタゴニストと、薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、安定剤、バッファー又は治療される個体への所望の量のアンタゴニストの投与を促進にするよう設計された代替物とを含む医薬組成物又は別の組成物を提供する。
【0021】
本発明はまた、精製PCSK9及び標識されたLDL粒子を細胞サンプルに提供し;PCSK9アンタゴニストであると疑われる分子(類)を細胞サンプルに提供し;細胞サンプルを、細胞によるLDL粒子取り込みを可能にするのに十分な時間インキュベートし;上清を除去することによって細胞サンプルの細胞を単離し;標識されたLDL粒子の非特異的結合を減少させ;細胞を溶解し;細胞溶解物内に保持される標識の量を定量し;PCSK9が単独投与される場合に観察されるものと比較して定量される標識の量の増大をもたらす候補アンタゴニストを同定することを含む、細胞サンプルにおいてPCSK9アンタゴニストを同定する方法に関する。定量される標識の量の増大をもたらす候補アンタゴニストは、PCSK9アンタゴニストである。この方法は、PCSK9特異的アンタゴニストを同定するための有効な手段であることがわかっており、したがって、本発明の重要な態様を形成する。
【0022】
以下の表は、本出願において論じられる配列の一般的な概略を提供する:
【0023】
【表1−1】

【0024】
【表1−2】

【0025】
【表1−3】

【0026】
【表1−4】

【0027】
【表1−5】

【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】Fab発現ベクターpMORPH_x9_MHを示す図である。
【図2】ExopolarにおけるPCSK9突然変異体の効力が、血漿LDLコレステロールとどのように相関するかを示す図である。
【図3】図3A〜3Dは、1CX1G08及び3CX4B08の、LDL取り込みに対するPSCK9依存的効果の用量依存的阻害を示す。図3B及び3Dは、2種の対照:(i)細胞のLDL取り込みの基礎レベルを示す細胞のみの対照、及び(ii)LDL取り込みのPCSK9依存性喪失のレベルを示す、細胞+PCSK9(25μg/ml)対照を有する。Fab及びPCSK9を含む力価測定実験は、固定濃度のPCSK9(25μg/ml)及びグラフに示される漸増濃度のFabで実施した。図3A及び3Cは、IC−50の算出を示す。
【図4】図4A〜4Dは、3BX5C01及び3CX2A06の、LDL取り込みに対するPSCK9依存性効果の用量依存性阻害を示す。図4B及び4Dは、2種の対照:(i)細胞のLDL取り込みの基礎レベルを示す細胞のみの対照、及び(ii)LSL取り込みのPCSK9依存性喪失のレベルを示す、細胞+PCSK9(25μg/ml)対照を有する。Fab及びPCSK9を含む力価測定実験は、固定濃度のPCSK9(25μg/ml)及びグラフに示される漸増濃度のFabで実施した。図4A及び4Cは、IC−50の算出を示す。
【図5】図5A〜5Bは、3CX3D02の、LDL取り込みに対するPSCK9依存性効果の用量依存性阻害を示す。図5Bは、2種の対照:(i)細胞のLDL取り込みの基礎レベルを示す細胞のみの対照、及び(ii)LSL取り込みのPCSK9依存性喪失のレベルを示す、細胞+PCSK9(25μg/ml)対照を有する。Fab及びPCSK9を含む力価測定実験は、固定濃度のPCSK9(25μg/ml)及びグラフに示される漸増濃度のFabで実施した。図5Aは、IC−50の算出を示す。
【図6】IgG1(配列番号89の残基24〜353)、IgG2(配列番号90の残基7〜332)、IgG4(配列番号91の残基7〜333)及びIgG2m4(配列番号92の残基7〜332)アイソタイプのFcドメインの配列比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な記載
本発明は、PCSK9、特にヒトPCSK9のアンタゴニストに関する。これに一致して、PCSK9のタンパク質特異的アンタゴニスト(又は「PCSK9特異的アンタゴニスト」)は、PCSK9機能の阻害に有効であり、従って、PCSK9機能と関連する/PCSK9機能によって影響を与えられる症状、例えば、それだけには限らないが、高コレステロール血症、冠動脈心疾患、メタボリックシンドローム、急性冠動脈症候群及び関連症状の治療において重要である。本明細書において、PCSK9機能又はPCSK9活性への言及は、PCSK9を必要とするか、それによって悪化する又は増強される任意の活性/機能を指す。本明細書において、PCSK9特異的アンタゴニストは、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を抑制するのに特に有効であることが実証された。開示されるアンタゴニストは、LDL取り込みに対するPCSK9の効果の用量依存性阻害を繰り返し実証した。
【0030】
したがって、本明細書に開示されるPCSK9特異的アンタゴニストは、血漿LDLコレステロールレベルを低下するのに望ましい分子である。PCSK9特異的アンタゴニストは、獣医学上重要な商業用又は家畜用の任意の霊長類、哺乳類又は脊椎動物にとって有用である。PCSK9特異的アンタゴニストは、LDL受容体を保有する細胞又は組織の集団にとっても同様に有用である。LDL取り込み、そしてそれに対する種々の効果を測定する手段は、文献に記載されている;例えば、Barak&Webb、1981年、J.Cell Biol.90:595〜604頁、及びStephan&Yurachek、1993年、J.Lipid Res.34:325330参照のこと。さらに、血漿中のLDLコレステロールを測定する手段は、文献に十分に記載されている;例えば、McNamaraら、2006年、Clinica Chimica Acta、369:158〜167頁参照のこと。
【0031】
PSCK9特異的アンタゴニストはまた、PSCK9の検出及び定量化において、種々の診断目的上有用である。
【0032】
本明細書に定義されるPCSK9特異的アンタゴニストは、PCSK9を選択的に認識し、特異的に結合する。本明細書において、用語「選択的」又は「特異的」の使用は、開示されるアンタゴニストが、アンタゴニストがPCSK9特異的結合部分にさらなる別個の特異性を付与するよう補われている特定の例(例えば、分子が少なくとも一方がPCSK9と特異的に結合する2つの機能を結合又は達成するよう設計されている二重特異性又は二機能性分子におけるような)を除いて、PSCK9以外と有意な結合を示さないという事実を指す。特定の実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、ヒトPCSK9と1.2×10−6以下のKDで結合する。特定の実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、ヒトPCSK9と5×10−7以下の、2×10−7以下の、又は1×10−7以下のKDで結合する。さらなる実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、ヒトPCSK9と1×10−8以下のKDで結合する。その他の実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、ヒトPCSK9と、5×10−9以下の、又は1×10−9以下のKDで結合する。さらなる実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、ヒトPCSK9と1×10−10以下のKD、1×10−11以下のKD、又は1×10−12以下のKDで結合する。特定の実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、上記のKDでその他のタンパク質とは結合しない。KDとは、Kd(特定の結合分子−標的タンパク質相互作用の解離速度)対Ka(特定の結合分子−標的タンパク質相互作用の結合速度)の割合、すなわち、モル濃度(M)として表されるKd/Kaから得られる解離定数を指す。KD値は、当技術分野で十分に確立された方法を用いて求めることができる。結合分子のKDを求めるための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴法、例えば、Biacore(商標)(GE Healthcare Life Sciences)システムなどのバイオセンサーシステムを用いることによる。
【0033】
PCSK9特異的アンタゴニストは、LDL取り込みに対するPCSK9依存的効果を用量依存的に阻害することがわかっている。したがって、PCSK9特異的アンタゴニストは、細胞へのLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を抑制するその能力を特徴とする。LDL受容体による細胞へのLDLのこの取り込みは、本明細書において、「細胞のLDL取り込み」と呼ばれる。特定の実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、1.2×10−6以下のIC50を示して細胞へのLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を拮抗する。特定の実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、5×10−7以下、2×10−7以下又は1×10−7以下のKDを示して細胞へのLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を拮抗する。さらなる実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、1×10−8以下のIC50を示して細胞へのLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を拮抗する。その他の実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、5×10−9以下、2×10−9以下、又は1×10−9以下のIC50を示して細胞へのLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を拮抗する。さらなる実施形態では、PCSK9特異的アンタゴニストは、1×10−10以下のIC50、1×10−11以下のKD又は1×10−12以下のKDを示して細胞へのLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を拮抗する。任意のPCSK9特異的アンタゴニストによる阻害の程度は、対照に対する統計的比較において、又はPCSK9機能に対する負の効果又はPCSK機能の阻害を評価するために当技術分野において利用可能な任意の代替法(すなわち、PCSK9機能の拮抗作用を評価できる任意の方法)によって定量的に測定することができる。特定の実施形態では、阻害は、少なくとも約10%阻害である。その他の実施形態では、阻害は、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は95%である。
【0034】
本明細書と一致して、PCSK9特異的アンタゴニストは、PCSK9タンパク質に対する特異性を有する任意の結合分子であり得、例えば、それだけには限らないが以下に定義される抗体分子、任意のPCSK9特異的結合構造、PCSK9と特異的に結合する任意のポリペプチド又は核酸構造、種々のタンパク質足場、例えばそれだけには限らないが種々の非抗体ベースの足場に組み込まれた前記のもののいずれか、及びPCSK9との選択的結合を与えることができる種々の構造、例えばそれだけには限らないが小モジュラー免疫薬剤(small modular immunopharmaceuticals)(すなわち、「SMIP」;Haan&Maggos、2004年、Biocentury、1月26日参照のこと);免疫タンパク質(例えば、Chakら、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:6437〜6442頁参照のこと);チトクロム b562(Ku及びSchultz、1995年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92:6552〜6556頁参照のこと);ペプチドα2p8(Bartheら、2000年、Protein Sci.9:942〜955頁参照のこと);アビマー(avimers)(Avidia;Silvermanら、2005年、Nat.Biotechnol.23:1556〜1561頁参照のこと);ダーピン(DARPins)(Molecular Partners;Binzら、2003年、J.Mol.Biol.332:489〜503頁;及びForrerら,2003年、FEBS Lett.539:2〜6頁参照のこと);テトラネクチン(Kastrupら、1998年、Acta.Crystallogr.D.Biol.Crystallogr.54:757〜766頁参照のこと);アドネクチン(Adnectins)(Adnexus;Xuら、2002年、Chem.Biol.9:933〜942頁参照のこと)、アンチカリン(Anticalins)(Pieris;Vogt&Skerra、2004年、Chemobiochem.5:191〜199頁;Besteら、1999年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96:1898〜1903年;Lamla&Erdmann、2003年、J.Mol.Biol.329:381〜388頁;及びLamla&Erdmann、2004年、Protein Expr.Purif.33:39〜47頁参照のこと);A−ドメインタンパク質(North&Blacklow、1999年、Biochemistry、38:3926〜3935頁参照のこと)、リポカリン(Lipocalins)(Schlehuber&Skerra、2005年、Drug Discov.Today、10:23〜33頁参照のこと);アンキリンリピートタンパク質などのリピートモチーフタンパク質(Sedgwick&Smerdon、1999年、Trends Biochem.Sci.24:311〜316頁;Mosaviら、2002年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、99:16029〜16034頁;及びBinzら、2004年、Nat.Biotechnol.22:575〜582頁参照のこと);昆虫デフェンシンA(Zhaoら、2004年、Peptides、25:629〜635頁参照のこと);クニッツドメイン(Robertsら、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:2429〜2433頁;Robertsら、1992年、Gene、121:9〜15頁;Dennis&Lazarus、1994年、J.Biol.Chem.269:22129〜22136頁;及びDennis&Lazarus、1994年、J.Biol.Chem.269:22137〜22144頁参照のこと);PDZドメイン(Schneiderら、1999年、Nat.Biotechnol.17:170〜175頁);カリブドトキシンなどのサソリ毒(Vitaら、1998年、Biopolymers、47:93〜100頁参照のこと);10番目フィブロネクチンIII型ドメイン(又は10Fn3;Koideら、1998年、J.Mol.Biol.284:1141〜1151頁、及びXuら、2002年、Chem.Biol.9:933〜942頁参照のこと);CTLA−4(細胞外ドメイン;Nuttallら、1999年、Proteins、36:217〜227頁;及びIrvingら、2001年、J.Immunol.Methods、248:31〜45頁参照のこと);ノッティン(Knottins)(Souriauら、2005年、Biochemistry、44:7143〜7155頁、及びLehtioら、2000年、Proteins、41:316〜322頁参照のこと);ネオカルチノスタチン(Heydら2003年、Biochemistry、42:5674〜5683頁参照のこと);糖結合モジュール4−2(CBM4−2;Cicortasら、2004年、Protein Eng.Des.Sel.17:213〜221頁参照のこと);テンダミスタット(Tendamistat)(McConnell&Hoess、1995年、J.Mol.Biol.250:460〜470頁、及びLiら、2003年、Protein Eng.16:65〜72頁参照のこと);T細胞受容体(Hollerら、2000年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97:5387〜5392頁;Shustaら、2000年、Nat.Biotechnol.18:754〜759頁;及びLiら、2005年、Nat.Biotechnol.23:349〜354頁参照のこと);アフィボディー(Affibodies)(Affibody;Nordら、1995年、Protein Eng.8:601〜608頁;Nordら、1997年、Nat.Biotechnol.15:772〜777頁;Gunneriussonら、1999年、Protein Eng.12:873〜878頁参照のこと);及び文献において認識される、その他の選択的結合タンパク質又は足場であり得る;例えば、Binz&Pluckthun、2005年、Curr.Opin.Biotech.16:1〜11頁;Gill&Damle、2006年、Curr.Opin.Biotechnol.17:1〜6頁;Hosseら、2006年、Protein Science、15:14〜27頁;Binzら、2005年、Nat.Biotechnol.23:1257〜1268頁;Heyら、2005年、Trends in Biotechnol.23:514〜522頁;Binz&Pluckthun、2005年、Curr.Opin.Biotech.16:459〜469頁;Nygren&Skerra、2004年、J.Immunolog.Methods、290:3〜28頁;Nygren&Uhlen、1997年、Curr.Opin.Struct.Biol.7:463〜469頁参照のこと。抗体及び抗原結合断片の使用は、文献において十分に定義されている。タンパク質結合のための代替足場の使用は、同様に科学文献において十分に理解されており、例えば、Binz&Pluckthun、2005年、Curr.Opin.Biotech.16:1〜11頁;Gill&Damle、2006年、Curr.Opin.Biotechnol.17:1〜6頁;Hosseら、2006年、Protein Science、15:14〜27頁;Binzら、2005年、Nat.Biotechnol.23:1257〜1268頁;Heyら、2005年、Trends in Biotechnol.23:514〜522頁;Binz&Pluckthun、2005年、Curr.Opin.Biotech.16:459〜469頁;Nygren&Skerra、2004年、J.Immunolog.Methods、290:3〜28頁;Nygren&Uhlen、1997年、Curr.Opin.Struct.Biol.7:463〜469頁参照のこと。したがって、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害に対抗する、PCSK9に対して選択性を有する非抗体ベースの足場又はアンタゴニスト分子は、本発明の重要な実施形態を形成する。アプタマー(標的分子と選択的に結合できる核酸又はペプチド分子)は、1つの具体的な例である。それらは、ランダム配列プールから選択され、リボスイッチなどの天然供給源から同定され得る。ペプチドアプタマー、核酸アプタマー(例えば、構造化核酸、例えば、DNA及びRNAベースの構造の両方)及び核酸デコイは、注目するタンパク質と選択的に結合し、阻害する点で効果的であり得る;例えば、Hoppe−Seyler&Butz、2000年、J.Mol.Med.78:426〜430頁;Bockら、1992年、Nature355:564〜566頁;Bunka&Stockley、2006年、Nat.Rev.Microbiol.4:588〜596頁;Martellら、2002年、Molec.Ther.6:30〜34頁;Jayasena、1999年、Clin.Chem.45:1628〜1650頁参照のこと。
【0035】
種々のPCSK9特異的アンタゴニストの発現及び選択は、適した技術、例えばそれだけには限らないが、ファージディスプレイ(例えば、国際出願番号WO92/01047、Kayら、1996年、Phage Display of Peptides and Proteins:A Laboratory Manual、San Diego: Academic Press参照のこと)、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、T7ディスプレイ、及びリボソームディスプレイ(例えば、Lowe&Jermutus、2004年、Curr.Pharm.Biotech.517〜527頁参照のこと)を用いて達成できる。
【0036】
本明細書に記載される「抗体分子」又は「抗体」は、PCSK9と選択的に結合する免疫グロブリン由来構造、例えば、それだけには限らないが、全長又は全抗体、抗原結合断片(抗体構造に物理的に又は概念的に由来する断片)、前記のもののいずれかの誘導体、キメラ分子、前記のもののいずれかのその他のポリペプチドとの融合物、又はPCSK9と選択的に結合する/PCSK9の機能を阻害する目的で前記のもののいずれかを組み込む代替構造/組成物を指す。「全」抗体又は「全長」抗体とは、ジスルフィド結合によって相互接続している2つの重鎖(H)及び2つの軽鎖(L)含むタンパク質を指し、(1)重鎖に関しては、可変領域(本明細書において「V」と略される)及び3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む重鎖定常領域を含み、(2)軽鎖に関しては、軽鎖可変領域(本明細書において「V」と略される)及び1つのドメインCを含む軽鎖定常領域を含む。
【0037】
本明細書において用いる場合、「単離された」とは、開示されるPCSK9特異的アンタゴニスト、核酸又はその他のものを、天然にみられるものとは異なるようにするよう、属するような特性として記載する。この相違は、例えば、天然にみられるものとは異なる純度である場合もあるし、又は天然にみられるものとは異なる構造であるか、異なる構造の一部を形成する場合もある。天然に見られない構造として、例えば、組換えヒト免疫グロブリン構造、例えば、それだけには限らないが、最適化されたCDRを含む組換えヒト免疫グロブリンが挙げられる。天然に見られない構造のその他の例として、その他の細胞物質を実質的に含まないPCSK9特異的アンタゴニスト又は核酸がある。単離されたPCSK9特異的アンタゴニストは、通常、異なるタンパク質特異性を有するその他のタンパク質に特異的な(すなわち、PCSK9以外に対して親和性を有する)アンタゴニストを含まない。
【0038】
抗体断片、より詳しくは抗原結合断片は、PCSK9、特にヒトPCSK9との選択結合を付与する、抗体可変領域又はそのセグメントを有する(開示されるCDR3ドメイン、重及び/又は軽のうち1つ以上を含む)分子である。このような抗体可変領域を含有する抗体断片としては、それだけには限らないが、以下の抗体分子が挙げられる:Fab、F(ab’)、Fd、Fv、scFv、二重特異性抗体分子(PCSK9特異的抗体とは異なる結合特異性を有する第2の機能性部分、例えば、限定するものではないが、抗体又は受容体リガンドなどの別のペプチド又はタンパク質と連結している本明細書に開示されるPCSK9特異的抗体又は抗原結合断片を含む抗体分子)、二重特異性一本鎖Fv二量体、単離されたCDR3、ミニボディー、「scAb」、dAb断片、ダイアボディー、トリアボディー、テトラボディー、ミニボディー及びタンパク質足場に基づいた人工抗体、例えば、それだけには限らないが、フィブロネクチンIII型ポリペプチド抗体(例えば、米国特許第6,703,199号及び国際出願番号WO02/32925及びWO00/34784参照のこと)又はチトクロムB;例えば、Nygrenら、1997年、Curr.Opinion Struct.Biol.7:463〜469頁参照のこと。抗体部分又は結合断片は、天然であってよいし、又は部分的に若しくは全体的に合成によって製造されていてもよい。このような抗体部分は、当業者に公知の種々の手段、例えば、それだけには限らないが、パパイン又はペプシン消化などの従来技術によって調製できる。
【0039】
本発明は、特定の一態様では、PCSK9機能に拮抗する、単離されたPCSK9特異的アンタゴニストを提供する。特定の実施形態では、前記PCSK9特異的アンタゴニストは、細胞のLDL取り込みのPCSK9の拮抗作用を阻害する。開示されるPCSK9特異的アンタゴニストは、LDL取り込みのPCSK9の阻害を効率的に拮抗し、ひいては、血漿LDLコレステロールレベルを低下するのに望ましい分子を形成する;例えば、Cohenら、2005年、Nat.Genet.37:161〜165頁(ここでは、対立遺伝子PCSK9におけるナンセンス突然変異の個体のヘテロ接合性について相当に低い血漿LDLコレステロールレベルが記されている);Rashidら、2005年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、102:5374〜5379頁(ここでは、PCSK9ノックアウトマウスは、肝細胞中のLDLR数の増加、血漿LDLクリアランスの促進及び血漿コレステロールレベルの大幅な低下を証明した);及びCohenら、2006年、N.Engl.J.Med.354:1264〜1272頁(ここでは、突然変異された機能喪失PCSK9についてのヒトヘテロ接合が、アテローム硬化性心疾患を発症する長期の危険の大幅な減少を示した)参照のこと。
【0040】
実験を反復する中で、5種のPCSK9特異的アンタゴニスト、すなわち、抗体分子1CX1G08、3BX5C01、3CX2A06、3CX3D02及び3CX4B08が、LDL取り込みに対するPCSK9の効果を用量依存的に阻害した。したがって、特定の実施形態では、本発明は、PCSK9特異的アンタゴニストを包含し、より特定の実施形態では、これらの抗体分子内に重鎖及び/又は軽鎖可変領域を含む抗体分子、並びにその等価物(1以上の保存的アミノ酸置換を有することを特徴とする)又は相同体を包含する。特定の実施形態は、本明細書に開示されるCDRドメイン又は本明細書に開示される重鎖及び/又は軽鎖CDRドメインのセットを含む単離されたPCSK9特異的アンタゴニスト、又は1以上の保存的アミノ酸置換を有することを特徴とするその等価物を含む。本明細書において、用語「ドメイン」又は「領域」の使用は、単純に、問題の配列又はセグメントが存在する、又は別の方法では現在存在している抗体分子の個々の部分を指す。
【0041】
特定の実施形態では、本発明は、単離されたPCSK9特異的アンタゴニストを提供し、より特定の実施形態では、配列番号11、配列番号27、配列番号45、配列番号61及び配列番号79からなる群から選択される重鎖可変領域を含む抗体分子、1以上の保存的アミノ酸置換を有することを特徴とするその等価物及びその相同体を提供する。開示されるアンタゴニストは、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性の阻害を阻害するはずである。特定の実施形態では、本発明は、本明細書に開示される、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を阻害するアンタゴニストと少なくとも90%相同性であることを特徴とする、開示されるアンタゴニストの相同体を提供する。
【0042】
特定の実施形態では、本発明は、単離されたPCSK9特異的アンタゴニストを提供し、より特定の実施形態では、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99及び配列番号101からなる群から選択される軽鎖可変領域を含む抗体分子;1以上の保存的アミノ酸置換を有することを特徴とするその等価物及びその相同体を提供する。開示されるアンタゴニストは、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を阻害するはずである。特定の実施形態では、本発明は、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を阻害する、本明細書に開示されるアンタゴニストと少なくとも90%相同性であることを特徴とする、開示されるアンタゴニストの相同体を提供する。
【0043】
特定の実施形態では、本発明は、単離されたPCSK9特異的アンタゴニストを提供し、より特定の実施形態では、(i)配列番号11を含む重鎖可変領域及び配列番号93を含む軽鎖可変領域、(ii)配列番号27を含む重鎖可変領域及び配列番号95を含む軽鎖可変領域、(iii)配列番号45を含む重鎖可変領域及び配列番号97を含む軽鎖可変領域、(iv)配列番号61を含む重鎖可変領域及び配列番号99を含む軽鎖可変領域、(v)配列番号79を含む重鎖可変領域及び配列番号101を含む軽鎖可変領域を含む抗体分子;又は所定の配列中に1以上の保存的アミノ酸置換を有することを特徴とする前記抗体分子のいずれかの等価物を提供する。特定の実施形態として、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を阻害する前記アンタゴニストがある。
【0044】
特定の実施形態では、本発明は、単離されたPCSK9特異的アンタゴニストを提供し、より特定の実施形態では、配列番号17、配列番号33、配列番号51、配列番号67及び配列番号85からなる群から選択される可変重CDR3配列を含むPCSK9抗体分子;及びその保存的修飾を提供し、その特定の実施形態は、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を阻害する。特定の実施形態は、CDR1、CDR2及び/又はCDR3配列が、(i)それぞれ、配列番号13、配列番号15及び/又は配列番号17、(ii)それぞれ、配列番号29、配列番号31及び/又は配列番号33、(iii)それぞれ、配列番号47、配列番号49及び/又は配列番号51、(iv)それぞれ、配列番号63、配列番号65及び/又は配列番号67、(v)それぞれ、配列番号81、配列番号83及び/又は配列番号85を含む、重鎖可変領域を含む単離されたアンタゴニスト;又は任意の1以上のCDR配列中に1以上の保存的アミノ酸置換を有することを特徴とするその等価物を提供する。
【0045】
特定の実施形態では、本発明は、単離されたPCSK9特異的アンタゴニストを提供し、より特定の実施形態では、配列番号7、配列番号23、配列番号41、配列番号57及び配列番号75からなる群から選択される可変軽CDR3配列を含む抗体分子;及びその保存的修飾を提供し、その特定の実施形態は、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を阻害する。特定の実施形態は、CDR1、CDR2及び/又はCDR3配列が、(i)それぞれ、配列番号3、配列番号5及び/又は配列番号7、(ii)それぞれ、配列番号21、配列番号5及び/又は配列番号23、(iii)それぞれ、配列番号37、配列番号39及び/又は配列番号41、(iv)それぞれ、配列番号55、配列番号39及び/又は配列番号57、(v)それぞれ、配列番号71、配列番号73及び/又は配列番号75を含む、軽鎖可変領域を含む単離されたアンタゴニスト;又は任意の1以上のCDR配列中に1以上の保存的アミノ酸置換を有することを特徴とするその等価物を提供する。
【0046】
特定の実施形態では、本発明は、単離されたPCSK9特異的アンタゴニストを提供し、より特定の実施形態では、(i)それぞれ、配列番号17及び7、(ii)それぞれ、配列番号33及び23、(iii)それぞれ、配列番号51及び41、(iv)それぞれ、配列番号67及び57、並びに(v)それぞれ、配列番号85及び75を含む、重鎖可変領域CDR3配列及び軽鎖可変領域CDR3配列を含む抗体分子、又は任意の1以上のCDR3配列におけるその保存的修飾物を提供し、その特定の実施形態は、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を阻害する。
【0047】
特定の実施形態は、単離されたPCSK9特異的アンタゴニストを提供し、より特定の実施形態では、(i)それぞれ、配列番号13、15、17、3、5及び7、(ii)それぞれ、配列番号29、31、33、21、5及び23、(iii)それぞれ、配列番号47、49、51、37、39及び41、(iv)それぞれ、配列番号63、65、67、55、39及び57、並びに(v)それぞれ、配列番号81、83、85、71、73及び75を含む、重鎖可変領域CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む抗体分子;及び任意の1以上のCDT配列中に1以上の保存的アミノ酸置換を有することを特徴とするその等価物を提供し、その特定の実施形態は、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を阻害する。
【0048】
当業者には当然であろうが、保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基を、同様又はより良好な(意図される目的にとって)機能的特徴及び/又は化学的特徴を付与するよう置き換える置換である。例えば、保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものであることが多い。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において規定されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β−分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。このような修飾は、PCSK9特異的アンタゴニストの結合又は機能阻害特徴を改善する可能性はあるものの、このような特性を大幅に低下又は変更するようには設計されない。置換を行う目的は、重要なものではなく、限定するものではないが、残基を、分子の構造、分子の電荷若しくは疎水性、又は分子の大きさをより良好に維持若しくは増強できるもので置き換えることが挙げられる。例えば、あまり望まない残基を、同一の極性又は電荷のもので置換することを単純に望む場合がある。このような修飾は、当技術分野における既知の標準法、例えば、部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介性突然変異誘発によって導入できる。当業者が保存的アミノ酸置換を達成する1つの具体的な手段として、例えば、MacLennanら、1998年、Acta Physiol.Scand.Suppl.643:55〜67頁、及びSasakiら、1998年、Adv.Biophys.35:1〜24頁に論じられるアラニンスキャニング突然変異形成がある。次いで、変更されたアンタゴニストを、当技術分野で利用可能な又は本明細書に記載される機能アッセイを用いて、保持された又はより良好な機能について試験する。ヒトPCSK9と選択的に結合し、PCSK9の機能をこのようなアミノ酸変更を有さない分子と同様以上のレベルで拮抗する能力を保持する1以上のこのような保存的アミノ酸置換を有するPCSK9特異的アンタゴニストは、これは本明細書において開示されるアンタゴニストの「機能的等価物」と呼ぶが、本発明の特定の実施形態を形成する。
【0049】
別の態様では、本発明は、単離されたPCSK9特異的アンタゴニストを提供し、より特定の実施形態では、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を阻害し、開示される抗体分子の対応するアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を含む、重鎖及び/又は軽鎖可変領域を含む抗体分子を提供する。特定の実施形態としては、それぞれ、開示される重鎖及び/又は軽鎖可変領域と少なくとも90%相同性であり、重鎖及び/又は軽鎖可変領域を含むアンタゴニストである。「少なくとも90%相同」は、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び100%相同性の配列を含む。
【0050】
本明細書に記載されるアンタゴニストのアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を含むPCSK9特異的アンタゴニストは、通常、PCSK9に対する特異性を変更せず、アンタゴニストの1以上の特性を改善するよう作製される。当業者に利用可能な唯一の方法ではないが、このような配列を得るための1つの方法としては、PCSK9特異的アンタゴニストをコードする配列又はその特異性決定領域を突然変異させ、突然変異配列を含むアンタゴニストを発現させ、本明細書に記載されるものをはじめとする利用可能な機能アッセイを用いて、保持される機能についてコードされるアンタゴニストを試験することがある。突然変異は、部位指定突然変異誘発又はランダム突然変異誘発であってもよい。当業者には当然であろうが、その他の突然変異誘発方法も同様の効果を容易にもたらし得る。例えば、特定の方法では、突然変異体のスペクトラムは、アミノ酸化学的特徴若しくは構造的特徴のいずれかに基づいて、又はタンパク質構造を考慮することによって、保存的置換を無作為でなく標的とすることによって制約される。親和性成熟実験では、無作為に選択されたものであろうと無作為でなく選択されたものであろうと、単一の選択された分子中にいくつかのこのような突然変異が見られる場合がある。また、例えば、米国特許第7,117,096号、PCT公開番号WO02/084277及びWO03/099999において実証されるような親和性成熟に向けた種々の構造ベースのアプローチがある。
【0051】
本明細書において用いる場合、2種のアミノ酸配列間の相同性パーセントは、2種の配列間の同一性パーセントと等価である。2種の配列間の同一性パーセントは、2種の配列の最適アラインメントのために導入される必要があるギャップの数、各ギャップの長さを考慮した配列によって共有される同一の位置の数の関数(すなわち、相同性%=同一な位置の#/位置の総#×100)である。配列間の配列の比較及び同一性パーセントの決定は、一般に当業者に公知の方法を用いて決定してよく、数学アルゴリズムを用いて達成できる。例えば、アミノ酸配列及び/又はヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているMeyers及びMiller、1988年、Comput.Appl.Biosci.4:11〜17頁のアルゴリズムを用いて決定してよい。さらに、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、Accelrysからオンラインで入手可能なGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを用い、そのデフォルトパラメータを用いて決定してよい。
【0052】
一態様では、本発明は、その中に少なくとも1つの軽鎖可変ドメインと少なくとも1つの重鎖可変ドメイン(それぞれVL及びVH)を有する、ヒトPCSK9の単離されたPCSK9特異的抗体分子を提供する。
【0053】
同様以上の特異性を有するその他の結合分子を製造するためのタンパク質特異的分子の操作は、十分に当業者の範囲内である。これは、例えば、組換えDNA技術の技術を用いて達成できる。これの一具体例は、異なる免疫グロブリンの可変領域、定常領域又は定常領域及びフレームワーク領域への、適切な抗体の免疫グロブリン可変領域又は1以上のCDRをコードするDNAの導入を含む。このような分子は、本発明の重要な態様を形成する。特定の開示された配列が挿入され得る、又は別の方法では不可欠な部分を形成する特定の免疫グロブリンとしては、限定されないが、本発明の特定の実施形態を形成する以下の抗体分子が挙げられる:Fab(可変軽(VL)、可変重(VH)、定常軽(CL)及び定常重1(CH1)ドメインを含む一価の断片)、F(ab’)(ジスルフィド橋によって、あるいはヒンジ領域で連結されている2つのFab断片を含む二価の断片)、Fd(VH及びCH1ドメイン)、Fv(VL及びVHドメイン)、scFv(VL及びVHがリンカー、例えばペプチドリンカーによって接続されている一本鎖Fv、例えば、Birdら、1988年、Science、242:423〜426頁、Hustonら、1988年、PNAS USA、85:5879〜5883頁参照のこと)、二重特異性抗体分子(例えば、限定するものではないが、抗体又は受容体リガンドなどの別のペプチド又はタンパク質を含む抗体以外の異なる結合特異性を有する第2の機能性部分、と連結している本明細書に開示されるPCSK9特異的抗体又は抗原結合断片を含む抗体分子)、二重特異性一本鎖Fv二量体(例えば、PCT/US92/09965参照のこと)、単離されたCDR3、ミニボディー(約80kDaの二価の二量体に自己集合する一本鎖−CH3融合物)、「scAb」(VH及びVL並びにCL又はCH1のいずれかを含む抗体断片)、dAb断片(VHドメイン、例えば、Wardら、1989年、Nature、341:544〜546頁、及びMcCaffertyら、1990年、Nature、348:552〜554頁;又はVLドメイン;Holtら、2003年、Trends in Biotechnology、21:484〜489頁参照のこと)、ダイアボディー(例えば、Holligerら、1993年、PNAS USA、90:6444〜6448頁及び国際出願番号WO94/13804参照のこと)、トリアボディー、テトラボディー、ミニボディー(CH3と接続しているscFv;例えば、Huら、1996年、Cancer Res.56:3055〜3061頁参照のこと)、IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgD、IgA、IgE又はその任意の誘導体、及びタンパク質足場に基づく人工抗体、例えば、それだけには限らないが、フィブロネクチンIII型ポリペプチド抗体(例えば、米国特許第6,703,199号及び国際出願番号WO02/32925参照のこと)又はチトクロムB;例えば、Koideら、1998年、J.Molec.Biol.284:1141〜1151頁、及びNygrenら、1997年、Current Opinion in Structural Biology、7:463〜469頁参照のこと。特定の抗体分子、例えば、それだけには限らないが、Fv、scFv、ダイアボディー分子又はドメイン抗体(Domantis)は、VH及びVLドメインを並べるようジスルフィド橋を導入することによって安定化できる。例えば、Reiterら、1996年、Nature Biotech.14:1239〜1245頁参照のこと。二重特異性抗体は、従来技術(例えば、Holliger&Winter、1993年、Current Opinion Biotechnol.4:446〜449頁参照のこと、この特定の方法は、化学的又はハイブリッドハイブリドーマからの製造を含む)及びその他の技術、例えば、それだけには限らないが、BiTE(商標)技術(ペプチドリンカーを用いて異なる特異性の抗原結合領域を有する分子)及びknobs−into−holes工学(例えば、Ridgewayら、1996年、Protein Eng.9:616〜621頁参照のこと)を用いて製造できる。二重特異性ダイアボディーは、大腸菌(E.coli)中で製造でき、その他のPCSK9特異的アンタゴニスト同様、これらの分子は、当業者には当然であろうが、適当なライブラリーにおいてファージディスプレイを用いて選択できる(例えば、国際出願番号WO94/13804参照のこと)。
【0054】
注目するCDRが挿入されている可変ドメインは、任意の生殖系列又は再配列されたヒト可変ドメインから得ることができる。可変ドメインはまた合成によって製造してもよい。CDR領域は、組換えDNA技術を用いて、それぞれの可変ドメインに導入できる。これを達成できる1つの手段が、Marksら、1992年、Bio/Technology、10:779〜783頁に記載されている。可変重ドメインは、可変軽ドメインと対を形成し、抗原結合部位を提供し得る。さらに、独立領域(例えば、可変重ドメイン単独)を用いて、抗原と結合できる。さらに、技術者ならば、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、おそらくは別個の遺伝子によってコードされているが、組換え法を用い、合成リンカーによって接続でき、このためにVL及びVH領域対が一価分子(scFvs)を形成する単一のタンパク質鎖として作製されるのが可能となるということは十分承知している。
【0055】
特定の実施形態では、CDR(類)を生殖系列フレームワーク領域中に提供する。本明細書において、特定の実施形態は、配列番号17及び配列番号85からなる群から選択される重鎖CDR(類)を、関連CDR(類)の代わりにVH3中に提供する。本明細書において、特定の実施形態は、配列番号33、配列番号51及び配列番号67からなる群から選択される重鎖CDR(類)を、関連CDR(類)の代わりにVH5中に提供する。本明細書において、特定の実施形態は、配列番号7、配列番号23及び配列番号75からなる群から選択される軽鎖CDR(類)を、関連CDR(類)の代わりにVL3中に提供する。本明細書において、特定の実施形態は、配列番号41及び配列番号57からなる群から選択される軽鎖CDR(類)を、関連CDR(類)の代わりにVK1中に提供する。
【0056】
特定の実施形態では、配列番号1、配列番号19、配列番号35、配列番号53及び配列番号69からなる群から選択される配列を含む軽鎖領域を含む、本明細書に定義される抗体分子を提供する。さらなる実施形態は、記載される軽鎖領域と、配列番号9、配列番号25、配列番号43、配列番号59及び配列番号77からなる群から選択される配列を含む重鎖領域の両方を含む抗体分子を提供する。
【0057】
本発明は、ヒト、ヒト化、脱免疫された、キメラ化及び霊長類化された抗体分子を包含する。本発明はまた、ベニアリング(veneering)の方法によって製造される抗体分子を包含する。例えば、Markら、1994年、Handbook of Experimental Pharmacology、第113巻:The pharmacology of monoclonal Antibodies,Springer−Verlag、105〜134頁参照のこと。開示される抗体分子に関して「ヒト」とは、具体的に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び/又は定常領域を有する抗体分子を指し、ここで、前記配列は、必ずしもそうではないが、特定のアミノ酸置換又はヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていない残基を有するよう修飾/変更されている場合もある。このような突然変異は、それだけには限らないが、インビトロでのランダム又は部位特異的突然変異誘発、又はインビボでの体細胞突然変異によって導入できる。文献において論じられた突然変異技術の特定の例として、Gramら、1992年、PNAS USA、89:3576〜3580頁;Barbasら、1994年、PNAS USA、91:3809〜3813頁、及びSchierら、1996年、J.Mol.Biol.263:551〜567頁に開示されるものがある。これらは、単に特定の例であって、唯一の利用可能な技術を表すものではない。科学文献中には、利用可能である多量の突然変異技術があり、当業者には広く理解されている。開示される抗体分子に関して「ヒト化」とは、具体的に、別の哺乳類種、例えば、マウスに由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体分子を指す。開示される抗体分子に関して「霊長類化」とは、非霊長類のCDR配列が、霊長類フレームワーク配列中に挿入されている抗体分子を指し、例えば、WO93/02108及びWO99/55369参照のこと。
【0058】
本発明の特定の抗体として、モノクローナル抗体があり、特定の実施形態では、以下の抗体形式のうちの1種である:IgD、IgA、IgE、IgM、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4又は前記のいずれかの任意の誘導体。これに関して、用語「その誘導体」又は「誘導体」とは、とりわけ、(i)可変領域の一方又は両方(すなわち、VH及び/又はVL)に修飾を含む抗体及び抗体分子、(ii)VH及び/又はVLの定常領域中に操作を含む抗体及び抗体分子、(iii)通常は免疫グロブリン分子の一部ではないさらなる化学部分を含む(例えばペグ化)抗体及び抗体分子、を含む。
【0059】
可変領域の操作は、1以上のVH及び/又はVL CDR領域内であり得る。部位特異的突然変異誘発、ランダム突然変異誘発又は配列若しくは分子多様性を生じさせるためのその他の方法を使用して突然変異体を作製することができ、これをその後、本明細書に記載されるものを含む利用可能なインビトロ又はインビボアッセイにおいて注目する機能特性について調べることができる。
【0060】
本発明の抗体はまた、注目する抗体の1以上の特性を改善するよう、VH及び/又はVL内のフレームワーク残基に修飾がなされているものを含む。通常、このようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を低減するよう行われる。例えば、1つのアプローチとして、1個以上のフレームワーク残基を、対応する生殖系列配列に「逆突然変異させる」ことがある。より具体的には、体細胞突然変異を受けている抗体は、抗体が由来するものから得られる生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含み得る。このような残基は、抗体フレームワーク配列を、抗体が由来するものから得られた生殖系列配列と比較することによって同定できる。このような「逆突然変異された」抗体もまた、本発明に含まれるものとする。別の種類のフレームワーク修飾は、フレームワーク領域内の、さらには、1以上のCDR領域内の1個以上の残基を突然変異させて、T細胞エピトープを除去し、それによって抗体の免疫原性の可能性を低減することを含む。このアプローチはまた、「脱免疫化」と呼ばれ、Carrらによる米国特許公開第20030153043号において、さらに詳細に記載されている。
【0061】
フレームワーク又はCDR領域内になされる修飾に加え又はそれに代わるものとして、本発明の抗体は、Fc領域内に修飾を含むよう設計してもよく、存在する場合には、通常、抗体の1以上の機能特性、例えば、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合及び/又は抗原依存性の細胞傷害活性を変更する。
【0062】
所望のエフェクター機能に焦点を合わせるよう種々の抗体アイソタイプを含む「ハイブリッド」又は「コンビナトリアル」IgG型を作製するという概念は、概して記載されている;例えば、Taoら、1991年、J.Exp.Med.173:1025〜1028頁参照のこと。本発明の特定の実施形態は、抗体の側でFcγR受容体又はC1qとの結合の低減をもたらすことがわかっているFc領域に特定の操作をほどこす抗体分子を包含する。したがって、本発明は、通常の薬物動態学的(「PK」)特性を保持しながら、抗体依存性細胞傷害(「ADCC」)、補体媒介性細胞傷害(「CMC」)を誘発しない(又はより低い程度に誘発する)、又は免疫複合体を形成する、本記載に一致する抗体を包含する。本発明の特定の実施形態は、その免疫グロブリン構造の一部として、配列番号87を含む、本発明に従って定義される抗体分子を提供する。図6は、配列番号87、特に、IgG2m4の、IgG1、IgG2及びIgG4との比較を示す。
【0063】
特定のPCSK9特異的アンタゴニストは、検出可能な標識を保持してもよいし、毒素(例えば細胞毒)、放射性同位元素、放射性核種、リポソーム、標的部分、バイオセンサー、カチオン性テール又は酵素(例えばペプチジル結合又はリンカーを介して)と結合していてもよい。このようなPCSK9特異的アンタゴニスト組成物は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0064】
別の態様では、本発明は、開示されるPCSK9特異的アンタゴニストをコードする単離された核酸を提供する。核酸は、全細胞中に、細胞溶解物中に、部分精製された形で又は実質的に純粋な形で存在し得る。核酸は、例えば、限定するものではないが、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動及び当技術分野で公知のその他の適した方法を含む標準技術を用いて、その他の細胞成分又はその他の夾雑物、例えばその他の細胞性核酸又はタンパク質から分離して精製された場合に、「単離される」又は「実質的に純粋にされる」。核酸は、DNA(cDNAを含めて)及び/又はRNAを含み得る。本発明の核酸は、標準的な分子生物学の技術を用いて得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保持する形質転換マウスから調製されたハイブリドーマ)によって発現される抗体については、標準的なPCR増幅又はcDNAクローニング技術によって得られるハイブリドーマによって作製された抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAを得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから得られる(例えば、ファージディスプレイ技術を用いて)抗体については、抗体をコードする核酸をライブラリーから回収することができる。
【0065】
本発明は、開示される可変重鎖及び/又は軽鎖及びその選択成分、特に開示される個々のCDR3領域をコードする単離された核酸を包含する。その特定の実施形態では、CDR(類)は、抗体フレームワーク領域内に提供される。特定の実施形態は、CDR(類)をコードする単離された核酸を、生殖系列フレームワーク領域中に提供する。本明細書において、特定の実施形態は、重鎖CDR(類)配列番号18又は86をコードする単離された核酸を、関連CDR(類)をコードする核酸の代わりにVH3中に提供する。本明細書において特定の実施形態は、重鎖CDR(類)配列番号34、52又は68をコードする単離された核酸を、関連CDR(類)をコードする核酸の代わりにVH5中に提供する。本明細書において、特定の実施形態は、軽鎖CDR(類)配列番号8、24又は76をコードする単離された核酸を、関連CDR(類)をコードする核酸の代わりにVL3中に提供する。本明細書において、特定の実施形態は、軽鎖CDR(類)配列番号42又は58をコードする単離された核酸を、関連CDR(類)をコードする核酸の代わりにVK1中に提供する。可変領域をコードする単離された核酸は、任意の所望の抗体分子形式、例えば、それだけには限らないが、以下:F(ab’)、Fab、Fv、scFv、二重特異性抗体分子(例えば、限定するものではないが、抗体又は受容体リガンドなどの別のペプチド又はタンパク質とは異なる結合特異性を有する第2の機能性部分と連結している本明細書に開示されるPCSK9特異的抗体又は抗原結合断片を含む抗体分子)、二重特異性一本鎖Fv二量体、ミニボディー、dAb断片、ダイアボディー、トリアボディー又はテトラボディー、ミニボディー、IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgD、IgA、IgE又はその任意の誘導体内に提供され得る。
【0066】
特定の実施形態は、配列番号1、配列番号19、配列番号35、配列番号53及び配列番号69からなる群から選択される配列を含む軽鎖領域を含む本明細書に定義される抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。特定の実施形態は、配列番号2、配列番号20、配列番号36、配列番号54及び配列番号70からなる群から選択される核酸を含む。さらなる実施形態は、記載される軽鎖領域と、配列番号9、配列番号25、配列番号43、配列番号59及び配列番号77からなる群から選択される配列を含む重鎖領域の両方を含む抗体分子を提供する。重鎖領域をコードする核酸配列は、特定の実施形態では、配列番号10、配列番号26、配列番号44、配列番号60及び配列番号78からなる群から選択される配列を含み得る。
【0067】
特定の実施形態は、配列番号11、配列番号27、配列番号45、配列番号61及び配列番号79からなる群から選択される重鎖可変ドメインを含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供し、その特定の実施形態は、それぞれ、核酸配列配列番号12、配列番号28、配列番号46、配列番号62又は配列番号80を含む。本発明の特定の実施形態は、(i)重鎖CDR1ヌクレオチド配列配列番号14、(ii)重鎖CDR2ヌクレオチド配列配列番号16、及び/又は(iii)重鎖CDR3ヌクレオチド配列配列番号18、を含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。本発明の特定の実施形態は、(i)重鎖CDR1ヌクレオチド配列配列番号30、(ii)重鎖CDR2ヌクレオチド配列配列番号32、及び/又は(iii)重鎖CDR3ヌクレオチド配列配列番号34、を含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。本発明の特定の実施形態は、(i)重鎖CDR1ヌクレオチド配列配列番号48、(ii)重鎖CDR2ヌクレオチド配列配列番号50、及び/又は(iii)重鎖CDR3ヌクレオチド配列配列番号52、を含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。本発明の特定の実施形態は、(i)重鎖CDR1ヌクレオチド配列配列番号64、(ii)重鎖CDR2ヌクレオチド配列配列番号66、及び/又は(iii)重鎖CDR3ヌクレオチド配列配列番号68、を含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。本発明の特定の実施形態は、(i)重鎖CDR1ヌクレオチド配列配列番号82、(ii)重鎖CDR2ヌクレオチド配列配列番号84、及び/又は(iii)重鎖CDR3ヌクレオチド配列配列番号86、を含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。特定の実施形態は、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99及び配列番号101からなる群から選択される軽鎖可変ドメインを含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供し、その特定の実施形態は、それぞれ、核酸配列配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100又は配列番号102を含む。本発明の特定の実施形態は、(i)軽鎖CDR1ヌクレオチド配列配列番号4、(ii)軽鎖CDR2ヌクレオチド配列配列番号6、及び/又は(iii)軽鎖CDR3ヌクレオチド配列配列番号8、を含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。本発明の特定の実施形態は、(i)軽鎖CDR1ヌクレオチド配列配列番号22、(ii)軽鎖CDR2ヌクレオチド配列配列番号6、及び/又は(iii)軽鎖CDR3ヌクレオチド配列配列番号24、を含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。本発明の特定の実施形態は、(i)軽鎖CDR1ヌクレオチド配列配列番号38、(ii)軽鎖CDR2ヌクレオチド配列配列番号40、及び/又は(iii)軽鎖CDR3ヌクレオチド配列配列番号42、を含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。本発明の特定の実施形態は、(i)軽鎖CDR1ヌクレオチド配列配列番号56、(ii)軽鎖CDR2ヌクレオチド配列配列番号40、及び/又は(iii)軽鎖CDR3ヌクレオチド配列配列番号58、を含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。本発明の特定の実施形態は、(i)軽鎖CDR1ヌクレオチド配列配列番号72、(ii)軽鎖CDR2ヌクレオチド配列配列番号74、及び/又は(iii)軽鎖CDR3ヌクレオチド配列配列番号76、を含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。本発明の特定の実施形態は、抗体の側でFcγR受容体又はC1qとの結合の低減をもたらす、Fc領域中に操作を有する抗体分子をコードする核酸を包含する。本発明の特定の一実施形態は、配列番号88を含む単離された核酸である。特定の実施形態では、合成PCSK9特異的アンタゴニストは、適した発現ベクター内で合成され、構築されるオリゴヌクレオチドから作製された核酸からの発現によって製造でき、例えば、Knappickら、2000年、J.Mol.Biol.296:57〜86、及びKrebsら、2001年、J.Immunol.Methods、254:67〜84頁参照のこと。
【0068】
また、本明細書に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも約90%同一であり、より好ましくは、少なくとも約95%同一であるヌクレオチド配列を含み、そのヌクレオチド配列が細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害を阻害するPCSK9特異的アンタゴニストをコードする単離された核酸が、本発明内に含まれる。同一性を調べるための配列比較法は、当業者には公知であり、先に論じられたものを含む。「少なくとも約90%同一である」とは、少なくとも約90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%同一であるものを含む。
【0069】
本発明はさらに、特定のハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に開示される核酸の相補体とハイブリダイズする単離された核酸を提供し、その核酸は、PCSK9と特異的に結合し、PCSK9機能を拮抗する。核酸をハイブリダイズさせる方法は、当技術分野では周知であり、例えば、Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、N.Y.、6.3.1−6.3.6、1989年参照のこと。本明細書において定義される中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、0.5%w/v SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)を含有する予備洗浄溶液、約50%v/vホルムアミド、6×SSCのハイブリダイゼーションバッファー及び55℃のハイブリダイゼーション温度(又は42℃のハイブリダイゼーション温度を用い、その他の類似のハイブリダイゼーション溶液、例えば、約50%v/vホルムアミドを含有するもの)及び0.5×SSC、0.1%w/v SDS中、60℃の洗浄条件を用いてもよい。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、45℃で6×SSC、及びそれに続く0.1×SSC、0.2%SDS中、68℃での1回以上の洗浄であり得る。さらに、当業者ならば、互いに少なくとも65、70、75、80、85、90、95、98又は99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸が、通常、互いにハイブリダイズされたままであるようにハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを高め又は低下させるよう、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件を操作できる。ハイブリダイゼーション条件の選択に影響を及ぼす基本パラメータ及び適した条件を考案する指針は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、第9及び11章、1989年、及びAusubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、Inc.、2.10及び6.3〜6.4節、1995年によって示されており、当業者によって、例えばDNAの長さ及び/又は塩基組成に基づいて容易に決定され得る。
【0070】
別の態様では、本発明は、前記核酸を含むベクターを提供する。本発明に一致するベクターとしては、限定されないが、意図される目的上適当なレベルでの所望の抗体分子の発現に適したプラスミド及びその他の発現構築物(例えば、必要に応じてファージ又はファージミド)が挙げられる;例えば、Sambrook&Russell、Molecular Cloning:A Laboratory Manual:第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press参照のこと。ほとんどのクローニング目的に、DNAベクターを使用してよい。一般的なベクターには、プラスミド、改変ウイルス、バクテリオファージ、コスミド、酵母人工染色体及びその他の形のエピソームDNA又は組み込まれたDNAが含まれる。個々の遺伝子導入、組換えPCSK9特異的アンタゴニストの作製又はその他の用途のために適当なベクターを決定することは十分に当業者の範囲内である。特定の実施形態では、ベクターは、組換え遺伝子に加え、宿主細胞における自己複製のための複製起点、適当な調節配列、例えば、プロモーター、終結配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、選択マーカー、限定された数の有用な制限酵素部位、必要に応じてその他の配列及び高コピー数のための可能性も含み得る。タンパク質特異的アンタゴニストを製造するための発現ベクターの例は、当技術分野では周知であり、例えば、Persicら、1997年、Gene、187:9〜18頁;Boelら、2000年、J.Immunol.Methods、239:153〜166頁、及びLiangら、2001年、J.Immunol.Methods、247:119〜130頁参照のこと。必要であれば、アンタゴニストをコードする核酸を、当技術分野で周知の技術を用いて宿主染色体に組み込んでもよく、例えば、Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、1999年、及びMarksら、国際出願番号WO95/17516参照のこと。核酸はまた、エピソームで維持された又は人工染色体に組み込まれたプラスミドで発現されてもよく、例えば、Csonkaら、2000年、J.Cell Science、113:3207〜3216頁;Vanderbylら、2002年、Molecular Therapy、5:10参照のこと。抗体分子に関して具体的には、抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は、別個のベクターに挿入される場合があり、又は、より通常は、両遺伝子は同一の発現ベクター中に挿入され得る。任意のPCSK9特異的アンタゴニストをコードする核酸は、標準法(例えば、核酸断片及びベクター上の相補的制限部位のライゲーション又は制限部位が存在しない場合には平滑末端ライゲーション)を用いて発現ベクター中に挿入できる。これを実施するやり方の別の特定の例として、例えばClontechの「InFusion」システム若しくはInvitrogenの「TOPO」システム(両方ともインビトロ)又は細胞内(例えば、Cre−Loxシステム)での組み換え法の使用がある。抗体分子に関して具体的には、軽鎖及び重鎖可変領域を用い、ベクター内でVHセグメントがCHセグメント(類)と機能し得る形で連結されるよう、そして、ベクター内でVLセグメントがCLセグメントと機能し得る形で連結されるよう、それらを所望のアイソタイプの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をすでにコードしている発現ベクターに挿入することによって、任意の抗体アイソタイプの全長抗体遺伝子を作製できる。さらに又はあるいは、PCSK9特異的アンタゴニストをコードする核酸を含む組換え発現ベクターは、宿主細胞からのアンタゴニストの分泌を容易にするシグナルペプチドをコードし得る。核酸は、シグナルペプチドをコードする核酸が、PCSK9特異的アンタゴニストをコードする核酸に隣接してインフレームで連結されるようベクターにクローニングできる。シグナルペプチドは、免疫グロブリン又は非免疫グロブリンシグナルペプチドであり得る。当業者に利用可能な任意の技術を使用して、宿主細胞に核酸を導入してよい;例えば、Morrison、1985年、Science、229:1202頁参照のこと。注目する核酸分子を発現ベクターにサブクローニングし、ベクターを含有する宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトする方法、及びそれぞれの発現ベクターを宿主細胞に導入するステップ及び適当な条件下で宿主細胞を培養するステップを含む実質的に純粋なタンパク質を作製する方法は周知である。そのように製造されたPCSK9特異的アンタゴニストは、従来法で宿主細胞から回収できる。注目する細胞に核酸を導入するのに適した技術は、使用されている細胞の種類に応じて変わる。一般的な技術としては、それだけには限らないが、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介性トランスフェクション及び注目する細胞株に適当なウイルス(例えば、レトロウイルス、ワクシニア、バキュロウイルス又はバクテリオファージ)を用いる形質導入が挙げられる。
【0071】
別の態様では、本発明は、開示されるPCSK9特異的アンタゴニストをコードする核酸を含む単離された細胞(類)を提供する。PCSK9特異的アンタゴニストの組換え製造には、種々の異なる細胞株、例えば、それだけには限らないが、原核生物由来のもの(例えば、大腸菌、桿菌及びストレプトマイセス属)及び真核生物由来のもの(例えば、酵母、バキュロウイルス及び哺乳類)を用いることができる;例えば、Breitlingら、Recombinant antibodies、John Wiley&Sons、Inc.及びSpektrum Akademischer Verlag、1999年参照のこと。形質転換植物を含めた植物細胞及び形質転換動物を含めた動物細胞(ヒト以外)も、本明細書に開示される核酸又はアンタゴニストを含み、本発明の一部として考慮される。適した哺乳類細胞株、例えば、それだけには限らないが、チャイニーズハムスター卵巣に由来するもの(CHO細胞、例えば、それだけには限らないが、例えばDHFR選択マーカー(例えば、Kaufman及びSharp、1982年、Mol.Biol.159:601〜621頁に記載される)とともに用いられるDHFR−CHO細胞(Urlaub及びChasin、1980年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:4216〜4220頁に記載される)、NS0骨髄腫細胞(WO87/04462、WO89/01036及びEP338,841に記載されるようなGS発現系が用いられ得る)、COS細胞、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、YB2/0ラット骨髄腫細胞、ヒト胎児腎臓細胞、ヒト胎児網膜細胞及び本明細書に開示される核酸又はアンタゴニストを含むその他のものは、本発明のさらなる実施形態を形成する。本発明の特定の実施形態は、大腸菌;例えば、Pluckthun、1991年、Bio/Technology、9:545〜551頁参照のこと、又はピキアなどの酵母及びその組換え誘導体(例えば、Liら、2006年、Nat.Biotechnol.24:210〜215頁)を使用してよい。本発明のさらなる特定の実施形態は、PCSK9特異的アンタゴニストの製造のために真核細胞を使用してよく、Chadd&Chamow、2001年、Current Opinion in Biotechnology、12:188〜194頁、Andersen&Krummen、2002年、Current Opinion in Biotechnology、13:117頁、Larrick&Thomas、2001年、Current Opinion in Biotechnology、12:411〜418頁参照のこと。本発明の特定の実施形態は、適切な翻訳後修飾を用いて、PCSK9特異的アンタゴニストを産生できる哺乳類細胞を使用してよい。翻訳後修飾としては、限定されるものではないが、ジスルフィド結合形成及びグリコシル化が挙げられる。別の種類の翻訳後修飾としては、シグナルペプチド切断がある。本明細書において好ましい実施形態は、適当なグリコシル化があり、例えば、Yooら、2002年、J.Immunol.Methods、261:1〜20頁参照のこと。天然に存在する抗体は、重鎖と結合している少なくとも1個のN結合型炭水化物を含む。同文献。異なる種類の哺乳類宿主細胞を用いて、効率的な翻訳後修飾を提供できる。このような宿主細胞の例として、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、C6、PC12及び骨髄腫細胞が挙げられ、Yooら、2002年、J.Immunol.Methods、261:1〜20頁、及びPersicら、1997年、Gene、187:9〜18頁参照のこと。
【0072】
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドを含む単離された細胞を提供する。
【0073】
別の態様では、本発明は、ヒトPCSK9に対する特異性を有するPCSK9特異的アンタゴニスト、又は所望のPCSK9特異的アンタゴニストの重鎖及び/若しくは軽鎖(所望のアンタゴニストによって決定される)をコードする核酸を含む細胞を、PCSK9特異的アンタゴニストの発現又は前記重鎖及び/若しくは軽鎖の発現及びPCSK9特異的アンタゴニストへの構築を可能にする条件下でインキュベートし、そして細胞から前記PCSK9特異的アンタゴニストを単離することを含む、本発明のPCSK9特異的アンタゴニストを作製する方法を提供する。特定の所望の重鎖及び/又は軽鎖配列を作製するための一例は、まず、PCRを用いて生殖系列重鎖及び/又は軽鎖可変配列を増幅(及び修飾)することである。ヒト重及び/又は軽可変領域の生殖系列配列は、当業者にとって容易に入手可能であり、例えば、「Vbase」ヒト生殖系列配列データベース、及びKabat、E.A.ら、1991年、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保険社会福祉省、NIH出版番号91〜3242;Tomlinson、I.M.ら、1992年、「The Repertoire of Human Germline VH Sequences Reveals about Fifty Groups of VH Segments with Different Hypervariable Loops」J.Mol.Biol.227:776〜798頁;及びCox,J.P.L.ら、1994年、「A Directory of Human Germ−line Vk Segments Reveals a Strong Bias in their Usage」、Eur.J.Immunol.24:827〜836頁参照のこと。生殖系列配列の突然変異誘発は、標準法、例えば、突然変異がPCRプライマー中に組み込まれるPCR媒介性突然変異誘発、又は部位特異的突然変異誘発を用いて実施してよい。全長抗体が望まれる場合は、ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列が入手可能であり、例えばKabat.E.A.ら、1991年、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保険社会福祉省、NIH出版番号91〜3242参照のこと。これらの領域を含む断片は、例えば、標準PCR増幅によって得ることができる。あるいは、当業者ならば、重鎖及び/又は軽鎖定常領域をすでにコードしているベクターを利用できる。
【0074】
元の抗体の特異性を保持する他の抗体分子を組換え製造するために利用可能な技術が存在する。この特定の例として、免疫グロブリン可変領域又はCDRをコードするDNAが、別の抗体分子の定常領域又は定常領域及びフレームワーク領域に導入されているものがあり;例えば、EP−184,187、GB2188638及びEP−239400を参照のこと。キメラ抗体を含む抗体分子のクローニング及び発現は、文献に記載されており、例えば、EP0120694及びEP0125023を参照のこと。
【0075】
本発明に一致する抗体分子は、一例では、公知の技術を用いて産生され、次いで本明細書において同定される特徴についてスクリーニングされ得る。モノクローナル抗体を調製するための基礎技術は、文献に記載されており、例えば、Kohler及びMilstein(1975年、Nature、256:495〜497頁)参照のこと。完全ヒトモノクローナル抗体は、利用可能な方法によって製造できる。これらの方法として、限定されるものではないが、マウス抗体遺伝子が不活化されており、次いで機能的ヒト抗体遺伝子のレパートリーで置換されており、一方で、マウス免疫系のその他の成分は変更されていない免疫系を有する遺伝子操作されたマウス株の使用が挙げられる。このような遺伝子操作されたマウスによって、高親和性の完全ヒトモノクローナル抗体をもたらす自然なインビボ免疫応答及び親和性成熟プロセスが可能となる。この技術は当技術分野では周知であり、種々の刊行物、例えば限定されないが、米国特許第5,545,806号、同5,569,825号、同5,625,126号、同5,633,425号、同5,789,650号、同5,877,397号、同5,661,016号、同5,814,318号、同5,874,299号、同5,770,249号(GenPharm Internationalに譲渡され、「UltraMab Human Antibody Development System」の保護の下、Medarexによって利用可能)並びに米国特許第5,939,598号、同6,075,181号、同6,114,598号、同6,150,584号及び関連ファミリーメンバー(Abgenixに譲渡され、XenoMouse(登録商標)技術を開示する)に十分に記載されている。また、Kellerman及びGreen、2002年、Curr.Opinion in Biotechnology、13:593〜597頁、並びにKontermann&Stefan、2001年、Antibody Engineering、Springer Laboratory Manualsからの総説を参照のこと。
【0076】
あるいは、本発明と一致するPCSK9特異的アンタゴニストのライブラリーを、PCSK9と接触させてもよく、選択された特異的結合を実証することができる。次いで、適切な機能、すなわち細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害の阻害を確実にすることができるように機能研究を実施する。濃縮技術、例えばそれだけには限らないが、ファージディスプレイ(例えば、米国特許第5,565,332号、同5,733,743号、同5,871,907号、同5,872,215号、同5,885,793号、同5,962,255号、同6,140,471号、同6,225,447号、同6,291,650号、同6,492,160号、同6,521,404号、同6,544,731号、同6,555,313号、同6,582,915号、同6,593,081号、並びに1992年5月24日に出願された優先出願GB9206318に頼るその他の米国ファミリーメンバー及び/又は出願に開示されるCambridge Antibody Technology(「CAT」)からの技術を参照のこと;また、Vaughnら、1996年、Nature Biotechnology、14:309〜314頁も参照のこと)、リボソームディスプレイ(例えば、Hanes及びPluckthun、1997年、Proc.Natl.Acad.Sci.94:4937〜4942頁参照のこと)、細菌ディスプレイ(例えば、Georgiouら、1997年、Nature Biotechnology、15:29〜34頁参照のこと)、及び/又は酵母ディスプレイ(例えば、Kiekeら、1997年、Protein Engineering、10:1303〜1310頁参照のこと)を用いてライブラリーからタンパク質特異的分子を選択するために当業者にとって利用可能な種々の技術がある。例えば、ライブラリーをバクテリオファージ粒子の表面上にディスプレイでき、PCSK9特異的アンタゴニストをコードする核酸がその表面上に発現され、ディスプレイされる。次いで、所望のレベルの活性を示すバクテリオファージ粒子から核酸を単離し、この核酸を所望のアンタゴニストの開発に用いてよい。ファージディスプレイは、文献に十分に記載されており;例えば、Kontermann&Stefan、上記及び国際出願番号WO92/01047参照のこと。抗体分子に関して具体的には、本発明と一致する個々の重鎖又は軽鎖クローンを用いて、組み合わされた重鎖及び軽鎖の分子を相互作用により形成することができる相補的重鎖又は軽鎖をそれぞれスクリーニングしてもよく、例えば、国際出願番号WO92/01047参照のこと。当業者にとって利用可能な任意のパニング法を用いて、PCSK9特異的アンタゴニストを同定してもよい。これを達成するための別の具体的な方法は、溶液中で標的抗原、例えば、ビオチン化可溶性PCSK9に対してパニングし、次いで、ストレプトアビジンコートされた磁性ビーズ上にPCSK9特異的アンタゴニスト−ファージ複合体を捕獲し、次いで、これを洗浄して非特異的に結合したファージを除去することである。次いで、捕獲されたファージを、本明細書に記載されるプレート(例えば、DTT)の表面から回収される同様の方法でビーズから回収できる。
【0077】
PCSK9特異的アンタゴニストは、当業者にとって利用可能な技術によって精製してよい。関連アンタゴニスト調製物、腹水、ハイブリドーマ培養液又は関連サンプルの力価は、それだけには限らないが、沈殿、受身凝集反応、酵素結合免疫吸着抗体(「ELISA」)技術及びラジオイムノアッセイ(「RIA」)技術を含む種々の血清学的又は免疫学的アッセイによって決定できる。
【0078】
別の態様では、本発明は、PCSK9によって通常影響を受ける(すなわち、LDL受容体を含む)細胞又は組織サンプルを、本明細書に開示されるPSCK9特異的アンタゴニストと、前記アンタゴニストが存在する場合にPCSK9と結合し、細胞のLDL取り込みのPCSK9の阻害を阻害するのを可能にする条件下で接触させることを含む、PCSK9の活性を拮抗する方法を提供する。本発明の特定の実施形態は、細胞がヒト細胞であるこのような方法を含む。別の態様では、本発明は、被験者に治療上有効量の本発明のPCSK9特異的アンタゴニスト投与することを含む、被験者においてPCSK9の活性を拮抗する方法を提供する。用語「拮抗性の」の使用は、PCSK9の1以上の機能に対立する、対抗する、中和する又は抑制する作用を指す。1以上の関連PCSK9機能特性の阻害又は拮抗作用は、当技術分野で公知の方法論(例えば、Barak&Webb、1981年、J.Cell Biol.90:595〜604頁;Stephan&Yurachek、1993年、J.Lipid Res.34:325330頁;及びMcNamaraら、2006年、Clinica Chimica Acta、369:158〜167頁参照のこと)並びに本明細書に記載されるものに従って容易に調べることができる。阻害又は拮抗作用は、アンタゴニストの不在下で見られるもの、又は、例えば無関係の特異性を有する対照アンタゴニストが存在する場合に見られるものに対してPCSK9活性の低下をもたらす。本発明と一致するPCSK9特異的アンタゴニストは、PCSK9機能を、測定されるパラメータの少なくとも10%低下させて拮抗し、より好ましくは、測定されるパラメータの少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%及び95%の低下が好ましい。PCSK9機能のこのような阻害/拮抗作用は、その機能が、被験者に負に影響を与える特定の表現型、疾患、障害又は症状に少なくとも幾分か寄与している例では特に有効である。また、PCSK9関連疾患、障害又は症状、あるいは、PCSK9アンタゴニストの効果から恩恵を受ける疾患、障害又は症状の治療のための医薬の製造のために開示されるアンタゴニストを使用する方法も意図される。本明細書に開示されるPCSK9特異的アンタゴニストを、特定の個体(ヒト又は霊長類)を治療又は診断する方法において用いることができる。治療する方法は、実際は、予防的又は治療的であり得る。別の態様では、本発明は、本発明のPCSK9特異的アンタゴニスト、及び薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、安定剤、バッファー又は治療される個体への所望の形式及び量でのアンタゴニストの投与を容易にするよう設計された代替物とを含む薬学的に許容される組成物を提供する。本発明と一致する治療方法は、個体に治療上(又は予防上)有効な量の本発明のPCSK9特異的アンタゴニストを投与することを含む。量に関して、用語「治療上有効な」又は「予防上有効な」の使用は、所望の期間、所望の治療効果/予防効果を達成するよう意図される投与量で必要な量を指す。所望の効果は、例えば、治療される症状と関連する少なくとも1つの症状の寛解であり得る。これらの量は、当業者には当然であるが、種々の因子、例えば、それだけには限らないが、個体の疾患の状態、年齢、性別及び体重、並びにPCSK9特異的アンタゴニストの個体において所望の効果を誘発する能力に従って変わる。応答は、インビトロアッセイ、インビボ非ヒト動物研究によって実証され、及び/又は臨床試験からさらに支えられ得る。本発明のアンタゴニストベースの医薬組成物は、当技術分野で公知の任意の数の方法によって製剤でき、例えば、McGoff及びScher、2000年、Solution Formulation of Proteins/Peptides:In−McNally、E.J.編Protein Formulation and Delivery.New York、NY:Marcel Dekker;139〜158頁;Akers&Defilippis、2000年、Peptides and Proteins as Parenteral Solutions.In−Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins.Philadelphia、PA:Taylor及びFrancis;145〜177頁;Akersら、2002年、Pharm.Biotechnol.14:47〜127頁参照のこと。患者投与に適した薬学的に許容される組成物は、生物活性を保持し、その一方で、許容される温度範囲内の貯蔵の間、最大安定性も促進するように、製剤中にPCSK9特異的アンタゴニストの有効量を含む。
【0079】
アンタゴニストベースの薬学的に許容される組成物は、液体又は固体の形であり得る。液体又は固体製剤を製造するための任意の技術を利用してよい。このような技術は、十分に当業者の能力の範囲内である。固体製剤は、任意の利用可能な方法、例えば、それだけには限らないが、凍結乾燥、噴霧乾燥又は超臨界流体技術による乾燥によって製造してよい。経口投与のための固体製剤は、所定量及び所定の期間内に、アンタゴニストを患者が利用しやくする任意の形であってよい。経口製剤は、いくつかの固体製剤、例えば、それだけには限らないが、錠剤、カプセル剤又は散剤の形をとり得る。あるいは、固体製剤は、凍結乾燥して、単回投与又は複数回投与のために投与前に溶液にしてもよい。アンタゴニスト組成物は、通常、生物学的に関連するpH範囲内で製剤されなければならず、貯蔵の間、適切なpH範囲を維持するよう緩衝される場合もある。液体及び固体製剤の両方とも、長期間の安定性を保持するためには、通常、低温(例えば、2〜8℃)での貯蔵を必要とする。製剤されたアンタゴニスト組成物、特に液体製剤は、貯蔵の間のタンパク質分解を防ぐ又は最小にするために、静菌薬、例えば、それだけには限らないが、ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、クロロブタノール、メチルパラベン及び/又はプロピルパラベンを、有効濃度(例えば、≦1%w/v)で含み得る。静菌薬は、一部の患者には禁忌であり得る。したがって凍結乾燥製剤は、このような成分を含有するか含有しないかのいずれかの溶液で再構築され得る。緩衝された液体又は固体アンタゴニスト製剤のいずれかに、さらなる成分、例えば、それだけには限らないが、抗凍結剤として糖類(例えば、それだけには限らないが、ソルビトール、マンニトール、グリセロール及びズルシトールなどのポリヒドロキシ炭化水素及び/又はスクロース、ラクトース、マルトース又はトレハロースなどの二糖類)、及び、いくつかの例では、関連する塩(例えば、それだけには限らないが、NaCl、KCl又はLiCl)が加えられてもよい。長期間の貯蔵が予定されているこのようなアンタゴニスト製剤、特に液体製剤は、例えば、2〜8℃又はそれより高い温度での長期間の安定性を促進し、その一方で、製剤を非経口注射にとって有用にもするような、有用な総浸透圧の範囲に依存する。必要に応じて、保存料、安定剤、バッファー、抗酸化物質及び/又はその他の添加剤が含まれてもよい。製剤は、二価の陽イオン(例えば、それだけには限らないが、MgCl2、CaCl2及びMnCl2)、及び/又は非イオン性界面活性剤(例えば、それだけには限らないが、ポリソルベート−80(Tween80(商標))、ポリソルベート−60(Tween60(商標))、ポリソルベート−40(Tween40(商標))及びポリソルベート−20(Tween20(商標))、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、それだけには限らないが、Brij58(商標)、Brij35(商標)、並びにTriton X−100(商標)、Triton X−114(商標)、NP40(商標)、Span 85及びプルロニックシリーズの非イオン性界面活性剤(例えば、プルロニック121))などのその他のものを含み得る。このような成分の任意の組み合わせは、本発明の特定の実施形態を形成する。
【0080】
液体形式の医薬組成物は、液体担体、例えば、水、石油、動物油、植物油、鉱油又は合成オイルを含み得る。液体形式はまた、生理食塩水、デキストロース又はその他のサッカライド溶液又はグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールを含み得る。
【0081】
医薬組成物は、好ましくは発熱物質を含まず、適したpH、浸透圧及び安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形であり得る。医薬組成物は、等張性ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液又は乳酸加リンガー注射液に希釈された後、投与のために製剤され得る。
【0082】
アンタゴニスト治療薬の投与は十分に当業者の範囲内であり(例えば、Ledermanら、1991年、Int.J.Cancer、47:659〜664頁;Bagshaweら、1991年、Antibody,Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals、4:915〜922頁参照のこと)、また、いくつかの因子、例えば、それだけには限らないが、用いられる個々のPCSK9特異的アンタゴニスト、治療される患者、患者の症状、治療領域、投与経路及び望まれる治療に基づいて変わる。通常の技術を有する医師又は獣医は、アンタゴニストの有効な治療量を容易に決定及び処方できる。投与量範囲は、宿主体重1kgあたり約0.01〜100mg、より通常は、0.05〜25mgであり得る。例えば、投与量は、0.3mg/体重1kg、1mg/体重1kg、3mg/体重1kg、5mg/体重1kg又は10mg/体重1kg又は1〜10mg/kgの範囲内であり得る。例示の目的上、制限されるものではないが、特定の実施形態では、5mg〜2.0gの量を用いて、アンタゴニストを全身に送達できる。毒性を伴わずに効力を生じる範囲内のアンタゴニストの濃度を達成する最適精度は、標的部位に対する薬物のアベイラビリティーの動態学に基づいた投与計画を必要とする。これは、PCSK9特異的アンタゴニストの分配、平衡及び排出についての検討を含む。本明細書に記載されるアンタゴニストは、適当な投与量で単独で用いてもよい。あるいは、その他の薬剤の同時投与又は逐次投与が望ましい場合もある。代替治療計画と併せて、本発明のPCSK9特異的アンタゴニストの治療的投与計画を示すことが可能である。例えば、PCSK9特異的アンタゴニストは、その他のコレステロール低下薬、例えば、それだけには限らないが、コレステロール吸収阻害剤(例えば、ゼチーア(商標))及びコレステロール合成阻害剤(例えば、ゾコール(商標)及びバイトリン(商標))と組み合わせて、又はそれとともに用いてもよい。治療できる個体(被験者)として、霊長類、ヒト及び非ヒトが含まれ、また、獣医学上重要な商業用又は家畜用の任意の非ヒト哺乳類又は脊椎動物を含む。
【0083】
PCSK9特異的アンタゴニストは、当技術分野で理解される任意の投与経路、例えば、それだけには限らないが、経口投与、注射による投与(その特定の実施形態として、静脈内、皮下、腹腔内又は筋肉内注射を含む)、吸入による投与、鼻腔内又は局所投与によって、単独又は個体の治療において補助するよう設計されたその他の薬剤と組み合わせて個体に投与してよい。投与経路は、当業者に理解されるいくつかの検討、例えば、それだけには限らないが、治療の所望の生理化学的特徴に基づいて決定されなければならない。治療は、毎日、毎週、隔週又は毎月ベースで、又は所望の治療が効果的でありそして維持されるよう、適当な量のPCSK9特異的アンタゴニストを所定の回数で個体に送達する任意のその他のレジメで提供され得る。本製剤は、単回投与で又は別個の時点の2回以上の投与で投与してもよい。
【0084】
特定の実施形態では、治療される症状は、以下からなる群:高コレステロール血症、冠動脈心疾患、メタボリックシンドローム、急性冠動脈症候群及び関連症状から選択される。PSCK9関連症状、あるいは、PCSK9アンタゴニストから恩恵を受ける側にあり得る症状、例えば、上記で特定されたものの治療のための医薬の製造におけるPCSK9特異的アンタゴニストの使用は、本発明の重要な実施形態を形成する。
【0085】
本発明は、遺伝子治療目的の、開示される抗PCSK9アンタゴニストの投与をさらに提供する。このような方法によって、被験者の細胞は、本発明のPCSK9特異的アンタゴニストをコードする核酸を用いて形質転換される。次いで、この核酸を含む被験者は、PCSK9特異的アンタゴニストを内因的に産生する。これまでに、Alvarezら、Clinical Cancer Research 6:3081〜3087頁、2000年が、遺伝子治療アプローチを用いて、被験者に一本鎖抗ErbB2抗体を導入した。Alvarezらの、上記によって開示される方法は、本発明の抗PCSK9抗体をコードする核酸の、被験者への導入に容易に適用させることができる。
【0086】
任意のPCSK9特異的アンタゴニストをコードする核酸を被験者に導入できる。
【0087】
核酸は、当技術分野で公知の任意の手段によって被験者の細胞に導入できる。好ましい実施形態では、核酸がウイルスベクターの一部として導入される。ベクターが由来し得る好ましいウイルスの例として、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、アルファウイルス、インフルエンザウイルス及び望ましい細胞指向性を有するその他の組換えウイルスが含まれる。
【0088】
種々の企業がウイルスベクターを工業的に製造しており、例えば、限定されるものではないが、Avigen、Inc.(Alameda、Calif.;AAVベクター)、Cell Genesys(Foster City、Calif.;レトロウイルス、アデノウイルス、AAVベクター及びレンチウイルスベクター)、Clontech(レトロウイルス及びバキュロウイルスベクター)、Genovo,Inc.(Sharon Hill、Pa.;アデノウイルス及びAAVベクター)、Genvec(アデノウイルスベクター)、IntroGene(Leiden、Netherlands;アデノウイルスベクター)、Molecular Medicine(レトロウイルス、アデノウイルス、AAV及びヘルペスウイルスベクター)、Norgen(アデノウイルスベクター)、Oxford BioMedica(Oxford,United Kingdom;レンチウイルスベクター)及びTransgene(Strasbourg、France;アデノウイルス、ワクシニア、レトロウイルス及びレンチウイルスベクター)が挙げられる。
【0089】
ウイルスベクターを構築し、使用する方法は、当技術分野では公知である(例えば、Millerら、BioTechniques、7:980〜990頁、1992年参照のこと)。好ましくは、ウイルスベクターは複製欠損であり、すなわち、それらは標的細胞において自立的に複製できず、したがって感染性でない。好ましくは、複製欠損ウイルスは最小ウイルスであり、すなわち、ゲノムをキャプシド形成してウイルス粒子を製造するのに必要なそのゲノムの配列のみを保持する。ウイルス遺伝子を完全に又はほぼ完全に欠く欠損ウイルスが好ましい。欠損ウイルスベクターの使用によって、ベクターがその他の細胞に感染し得るという懸念がなく、特定の局在化した領域中の細胞への投与が可能となる。したがって、特定の組織を特異的にターゲッティングできる。
【0090】
弱毒化された又は欠損したDNAウイルス配列を含むベクターの例として、それだけには限らないが、欠損ヘルペスウイルスベクター(Kannoら、Cancer Gen.Ther.6:147〜154頁、1999年;Kaplittら、J.Neurosci.Meth.71:125〜132頁、1997年、及びKaplittら、J.Neuro Onc.19:137〜147頁、1994年)が含まれる。
【0091】
アデノウイルスは、本発明の核酸を種々の細胞種に効率的に送達するよう改変され得る真核生物DNAウイルスである。弱毒化されたアデノウイルスベクター、例えば、Strafford−Perricaudetら、J.Clin.Invest.90:626〜630頁、1992年によって記載されるベクターは、一部の例において望ましいものである。種々の複製欠損アデノウイルス及び最小アデノウイルスベクターが記載されている(PCT公開番号WO94/26914、WO94/28938、WO94/28152、WO94/12649、WO95/02697及びWO96/22378)。本発明の複製欠損組換えアデノウイルスは、当業者にとって技術上既知の任意の方法によって調製できる(Levreroら、Gene101:195頁、1991年;EP185573;Graham、EMBO J.3:2917頁、1984年;Grahamら、J.Gen.Virol.36:59頁、1977年)。
【0092】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、比較的小さい大きさのDNAウイルスであり、安定に、そして部位特異的に、それらが感染する細胞のゲノムに組み込まれ得る。それらは、細胞増殖、形態又は分化に対して何ら効果を誘導することなく、広範な細胞に感染することができ、ヒトの病状には関与していないようである。インビトロ及びインビボでの遺伝子導入のためのAAVに由来するベクターの使用は記載されている(Dalyら、Gene Ther.8:1343〜1346頁、2001年、Larsonら、Adv.Exp.Med.Bio.489:45〜57頁、2001年;PCT公開番号WO91/18088及びWO93/09239;米国特許第4,797,368号及び同5,139,941号及びEP488528B1参照のこと)。
【0093】
別の実施形態では、遺伝子は、例えば、米国特許第5,399,346号、同4,650,764号、同4,980,289号及び同5,124,263号;Mannら、Cell33:153頁、1983年;Markowitzら、J.Virol.、62:1120頁、1988年;EP453242及びEP178220に記載されるように、レトロウイルスベクターに導入できる。レトロウイルスは、分裂細胞に感染する組み込まれるウイルスである。
【0094】
レンチウイルスベクターは、脳、網膜、筋肉、肝臓及び血液を含めたいくつかの組織種において、本発明のPCSK9特異的アンタゴニストをコードする核酸の直接送達及び持続的発現のための物質として使用できる。このベクターは、これらの組織において分裂細胞及び非分裂細胞に効率的に形質導入し、PCSK9特異的アンタゴニストの長期の発現を維持できる。総説については、Zuffereyら、J.Virol.72:9873〜80頁、1998年、及びKafriら、Curr.Opin.Mol.Ther.3:316〜326頁、2001年参照のこと。レンチウイルスパッケージング細胞株は、入手可能であり、当技術分野で一般に知られている。それらによって、遺伝子治療のための高力価のレンチウイルスベクターの製造が容易になる。一例として、テトラサイクリン誘導性VSV−G偽型レンチウイルスパッケージング細胞株があり、これは、10IU/mlを越える力価のウイルス粒子を少なくとも3〜4日間生成でき、Kafriら、J.Virol.73:576〜584頁、1999年参照のこと。誘導可能な細胞株によって産生されたベクターは、必要に応じてインビトロ及びインビボで非分裂細胞に効率的に形質導入するために濃縮してもよい。
【0095】
シンドビスウイルスは、アルファウイルス属のメンバーであり、1953年に始まった世界各地でのその発見以来、広く研究されている。アルファウイルス、特に、シンドビスウイルスに基づいた遺伝子形質導入は、インビトロで十分に研究されている(Strausら、Microbiol.Rev.、58:491〜562頁、1994年;Bredenbeekら、J.Virol.、67:6439〜6446頁、1993年;Ijimaら、Int.J.Cancer80:110〜118頁、1999年及びSawaiら、Biochim.Biophyr.Res.Comm.248:315〜323頁、1998年参照のこと。アルファウイルスベクターの多数の特性により、それらが例えば、発現構築物の迅速なエンジニアリング、感染性粒子の高力価ストックの製造、非分裂細胞の感染及び高レベルの発現を含む開発されているその他のウイルス由来ベクター系の望ましい代替物となる(Straussら、1994年上記)。遺伝子治療のためのシンドビスウイルスの使用は開示されている。(Wahlforsら、Gene.Ther.7:472〜480頁、2000年、及びLundstrom、J.Recep.Sig.Transduct.Res.19(1−4):673〜686頁、1999年参照)。
【0096】
別の実施形態では、リポフェクション、又はその他のトランスフェクション促進剤(ペプチド、ポリマーなど)を用いてベクターを細胞に導入できる。合成陽イオン性脂質は、マーカーをコードする遺伝子のインビボ及びインビトロトランスフェクションのためのリポソームの調製に使用できる(Feignerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:7413〜7417頁、1987年、及びWangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:7851〜7855頁、1987年)。核酸の導入にとって有用な脂質化合物及び組成物は、PCT公開番号WO95/18863及びWO96/17823に、及び米国特許第5,459,127号に開示されている。
【0097】
また、裸のDNAプラスミドとしてインビボでベクターを導入することが可能である。遺伝子治療のための裸のDNAベクターは、当技術分野で公知の方法、例えば、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、遺伝子銃の使用又はDNAベクタートランスポーターの使用によって所望の宿主細胞に導入され得る(例えば、Wilsonら、J.Biol.Chem.267:963〜967頁、1992年;Williamsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:2726〜2730頁、1991年参照のこと)。プラスミドのトランスフェクションのためによく用いられるその他の試薬としては、限定されるものではないが、フュージーン(FuGene)、リポフェクチン及びリポフェクタミンを含む。受容体媒介性DNA送達アプローチもまた使用できる(Wuら、J.Biol.Chem.263:14621〜14624頁、1988年)。米国特許第5,580,859号及び同5,589,466号には、哺乳類におけるトランスフェクション促進剤のない外因性DNA配列の送達が開示されている。最近、エレクトロトランスファーと呼ばれる相対的に低い電圧、高い効率のインビボDNA導入技術が開示された(Vilquinら、Gene Ther.8:1097頁、2001年;Payenら、Exp.Hematol.29:295〜300頁、2001年;Mir、Bioelectrochemistry53:1〜10頁、2001年;PCT公開番号WO99/01157、WO99/01158及びWO99/01175)。
【0098】
このような遺伝子治療アプローチに適し、本発明の抗PCSK9アンタゴニストをコードする核酸を含む医薬組成物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0099】
別の態様では、本発明は、本発明のPCSK9特異的アンタゴニストを用いて、注目するサンプル中のPCSK9を同定、単離、定量又は拮抗する方法を提供する。PCSK9特異的アンタゴニストを、ウエスタンブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫組織学的分析、免疫沈降などの免疫化学分析、又は当技術分野で公知のその他の免疫化学分析(例えば、Immunological Techniques Laboratory Manual編Goers、J.1993年、Academic Press参照のこと)又は種々の精製プロトコールにおいて研究ツールとして使用してもよい。アンタゴニストは、関連する活性の即時の同定又は測定を容易にするよう組み込まれる標識、又は付加されている標識を有し得る。当業者ならば、種々の種類の検出可能な標識(例えば、酵素、色素又は、容易に検出可能であるか又は容易に検出可能である何らかの活性/結果を引き起こすその他の適した分子)に容易に精通しており、これらは上記のプロトコールにおいて有用であるか、又は有用であり得る。
【0100】
本発明のさらなる態様として、本明細書に開示されるPCSK9特異的アンタゴニスト又は医薬組成物、及び使用するための指示書を含むキットがある。キットは、必ずしもそうではないが、通常、キットの内容物の意図される用途を示すラベルを含む。用語ラベルは、任意の文書又はキット上に、又はキットとともに供給されるか、又はキットに伴う。
【0101】
本発明はまた、細胞サンプルに、精製PCSK9(又は機能的等価物)及び標識されたLDL粒子を提供し;細胞サンプルに、PCSK9アンタゴニストであると疑われる分子を提供し;前記細胞サンプルを細胞によるLDL粒子取り込みを可能にするのに十分な期間インキュベートし;細胞に組み込まれた標識の量を定量し;そしてPCSK9(又は機能性等価物)が単独で投与される場合に観察されるものと比較して、定量される標識の量の増大をもたらす候補アンタゴニストを同定することを含む、細胞サンプル中のPCSK9特異的アンタゴニストを同定する方法に関する。本発明はまた、細胞サンプルに精製PCSK9(又は機能性等価物)及び標識されたLDL粒子を提供し;細胞サンプルにPCSK9アンタゴニストであると疑われる分子を提供し;前記細胞サンプルを細胞によるLDL粒子取り込みを可能にするのに十分な期間インキュベートし;上清を除去することによって細胞サンプルの細胞を単離し;標識されたLDL粒子の非特異的結合(プレートと、細胞と又はLDL受容体以外の何かとにかかわらず)を減少させ;細胞を溶解し;細胞溶解物内に保持される標識の量を定量し;PCSK9が単独で投与される場合に観察されるものと比較して、定量される標識の量の増大をもたらす候補アンタゴニストを同定することを含む、細胞サンプル中のPCSK9特異的アンタゴニストを同定する方法に関する。定量される標識の量の増大をもたらす候補アンタゴニストがPCSK9アンタゴニストである。この方法は、PCSK9特異的アンタゴニストを同定するのに有効な手段であることが証明されており、したがって、本発明の重要な態様を形成する。LDL受容体を保有する任意の種類の細胞、例えば、それだけには限らないが、HEK細胞、HepG2細胞及びCHO細胞を開示される方法において使用できる。PCSK9の「機能性等価物」とは、保存的アミノ酸置換又はその修飾のいずれかを有し、アミノ酸レベルでPCSK9に対して少なくとも80%の相同性を有するタンパク質として本明細書において定義され;前記タンパク質は、測定可能なLDL受容体によるLDL取り込みの阻害を示す。前記タンパク質をコードする核酸は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、PCSK9をコードする核酸の相補体とハイブリダイズする。任意の数の細胞をプレーティングしてよい。例示目的で、現方法は、96ウェルプレートに30,000個細胞/ウェルをプレーティングした。好ましい実施形態では、細胞は、PCSK9(又は機能性等価物)が添加される時点では血清不含培地中にある。特定の実施形態では、細胞を、血清を含む培地に一定の期間(例えば約24時間)プレーティングし;続いて、血清不含培地(血清含有培地が除去されている)に一定期間(例えば約24時間)プレーティングし;その後、精製PCSK9(又は機能性等価物)及び標識されたLDL粒子を添加する。標識されたLDL粒子の非特異的結合を減少させるステップは、当業者ならば承知しているように、非特異的結合の減少を達成する任意の技術を使用できるが、通常、洗浄/すすぎステップによって実施される。任意の供給源に由来するLDL粒子は、上記のアッセイにおいて有用である。好ましい実施形態は、LDL粒子は、血液に由来する新鮮な粒子である。これは、当業者に利用可能な任意の方法、例えば、それだけには限らないが、Havelら、1955年、J.Clin.Invest.34:1345〜1353頁の方法によって達成できる。特定の実施形態では、LDL粒子は、蛍光で標識される。特定の実施形態では、標識されたLDL粒子は、可視波長によって励起されるフルオロフォア3,3’−ジオクタデシルインドカルボシアニンヨーダイド(dil(3))を中に組み込んでおり、強い蛍光を発するLDL誘導体dil(3)−LDLを形成する。当業者によって認識されるように、本発明は、当業者が細胞溶解物中のLDLを検出するのを可能にする任意の標識を用いて実施できる。特定の実施形態では、細胞内で代謝された場合に、又は例えば、内在化されるようになる過程において、その他の分子と結合している(又は解離している)ようになった場合にのみ検出可能になる(例えば、蛍光を発するなど又は異なる波長で蛍光性になる)LDL類似体を使用できる(例えば、LDL類似体が第2の蛍光と結合するようになる、あるいはクエンチャーから解離されるFRETアッセイ)。本発明では、標識されたLDL粒子の内在化を検出するために当技術分野において利用可能な任意の手段を使用できる。LDL粒子及びPCSK9の、細胞とのインキュベーション時間は、細胞によるLDL粒子取り込みを可能にするのに十分な時間の量である。特定の実施形態では、この時間は、5分〜360分の範囲内である。特定の実施形態では、細胞に添加されるPCSK9又は機能性等価物の濃度は、1nM〜5μMの範囲にある。より特定の実施形態では、細胞に添加されるPCSK9又は機能性等価物の濃度は、0.1nM〜3μMの範囲にある。当業者が、個々のPCSK9タンパク質の濃度の範囲を決定できる1つの特定の手段としては、LDL取り込みアッセイにおいて用量応答曲線を作成することである。PCSL9の濃度は、LDL取り込みの最大減少近くにあり、依然として用量応答曲線の直線範囲中にあるものを選択できる。通常、この濃度は、用量応答曲線から抽出されたタンパク質のEC−50の約5倍である。この濃度はタンパク質ごとに変わり得る。例示目的で、実施例5において用いられる野生型PCSK9の量は、約320nMであるのに対し、「機能の獲得」のPCSK9(例えば、S127R及びD374Y)を用いる同等のアッセイでは、前記突然変異体を低濃度(例えば、6〜50nM)で加えた。記載されるアッセイでは、細胞は、通常、その維持及び/又は増殖に適した温度で維持される。特定の実施形態では、温度は、約37℃で維持される。
【0102】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供され、本発明をそれに限定するものではない。
【0103】
実施例1
組換えFabディスプレイファージの単離
以下に手短に記載される方法によって、組換えFabファージディスプレイライブラリー(例えば、Knappikら、2000年、J.Mol.Biol.296:57〜86頁参照のこと)を、固定化された組換えヒトPCSK9に対してパニングした:ファージFabディスプレイライブラリーを、まず、3つのプールに分けた:VH2+VH4+VH5からなる1つのプール、VH1+VH6からなるもう1つのもの、VH3からなる3番目のプール。ファージプール及び固定化されたPCSK9タンパク質を、脱脂粉乳を用いてブロッキングした。
【0104】
パニングの第1ラウンドのために、各ファージプールを、Nunc Maxisorpプレートのウェルに固定化され、V5−、Hisタグを付けたPCSK9タンパク質に独立して結合させた。固定化されたファージ−PCSK9複合体を、(1)PBS/0.5%Tween(商標)20(3回の迅速な洗浄);(2)PBS/0.5%Tween(商標)20(1回の5分間のミルクとともに振盪しながらのインキュベーション);(3)PBS(3回の迅速な洗浄);及び(4)PBS(2回の5分のミルクとともに振盪しながらのインキュベーション)を用いて逐次洗浄した。結合されているファージを、20mM DTTを用いて溶出し、3回溶出したファージ懸濁液のすべてを1つの試験管中に合わせた。大腸菌TG1を、溶出したファージを用いて感染させた。ファージミド保有細胞(クロファムフェニコール耐性)のプールされた培養物を増殖させ、ファージミド保有細胞の凍結ストックを作製した。ヘルパーファージとの同時感染によってファージを培養物から救出し、パニングの次のラウンドのためにファージストックを作製した。
【0105】
パニングの第2のラウンドのために、ラウンド1から得たファージを、固定化され、ブロッキングされたV5−、Hisタグを付けたPCSK9タンパク質と結合させた。固定化されたファージ−PCSK9複合体を、(1)PBS/0.05%Tween(商標)20(1回の迅速な洗浄);(2)PBS/0.05%Tween(商標)20(4回の5分のミルクとともに振盪しながらのインキュベーション);(3)PBS(1回の迅速な洗浄);及び(4)PBS(4回の5分のミルクとともに振盪しながらのインキュベーション)を用いて逐次洗浄した。ラウンド1においてと同様に、結合されているファージを溶出し、大腸菌TG1細胞に感染させ、ファージを救出した。
【0106】
パニングの第3のラウンドのために、ラウンド2から得たファージを、固定化され、ブロッキングされたV5−、Hisタグを付けたPCSK9タンパク質と結合させた。固定化されたファージ−PCSK9複合体を、(1)PBS/0.05%Tween(商標)20(10回の迅速な洗浄);(2)PBS/0.05%Tween(商標)20(5回の5分のミルクとともに振盪しながらのインキュベーション);(3)PBS(10回の迅速な洗浄);及び(4)PBS(5回の5分のミルクとともに振盪しながらのインキュベーション)を用いて逐次洗浄した。ラウンド1においてと同様に、結合されているファージを溶出し、大腸菌TG1細胞に感染させた。ファージミド感染細胞を一晩増殖させ、ファージミドDNAを調製した。
【0107】
ラウンド3ファージミドDNAから得られたXbaI−EcoRI挿入断片を、Morphosys Fab発現ベクターpMORPH_x9_MH(例えば、図1参照のこと)にサブクローニングし、大腸菌TG1 FにおいてFab発現クローンのライブラリーを作製した。形質転換体をLB+クロラムフェニコール+グルコースプレートに広げ、一晩増殖させて細菌コロニーを作製した。個々の形質転換体コロニーを選び取り、Fab発現についての増殖及びスクリーニングのために2枚の96ウェルプレートのウェルに入れた。
【0108】
実施例2
細菌によって発現されたFABのELISAスクリーニング
個々の形質転換体の培養物を、Fab発現のためにIPTG誘導し、一晩増殖させた。培養上清(候補Fab)を、96ウェルNunc Maxisorpプレートのウェルに固定化され、精製されたV5−、Hisタグを付けたPCSK9タンパク質とともにインキュベートし、PBS中の0.1%Tween(商標)20を用い、プレートウォッシャーを使用して洗浄し、HRP共役抗Fab抗体とともにインキュベートし、PBS/Tween(商標)20で再度洗浄した。結合されているHRPをTMP基質の添加によって検出し、プレートリーダーを用いてウェルのA450値を読み取った。
【0109】
負の対照を、以下のとおりに含めた:
各プレートでの非特異的Fab結合のための対照を、抗EsB、無関係のFabの平行して発現された調製物とともにインキュベートした。
増殖培地のみである。
【0110】
ELISA及びFab発現の陽性対照は、以下のとおりに含めた:
EsB抗原を、プレートの3つのウェルと結合させ、続いて、抗EsB Fabとともにインキュベートした。Fabが、組換えPCSK9抗原のV5又はHisタグと反応するのを制御するために、元のPCSK9抗原と同一細胞に発現され、同様に精製されたV5、Hisタグをつけた分泌性アルカリホスファターゼタンパク質(SEAP)を用いて平行ELISAを実施した。推定PCSK9反応性Fabは、PCSK9抗原とともにインキュベートされた場合に、>3×バックグラウンドの値を生じ、SEAPとともにインキュベートされた場合には陰性であると同定した。スクリーニングの第1ラウンドにおいてPCSK9反応性としてスコアを示すクローンを、単一のプレートにまとめ、3連で再増殖させ、IPTGを用いて再誘導し、PCSK9及びSEAPに対する平行ELISAにおいて再アッセイした。陽性及び陰性対照は上記のとおりに含めた。3の複製のうち少なくとも2において陽性をスコアしたクローンを、その後の特性決定に進めた。既知又は疑われる混合予備クローンの場合には、クロラムフェニコールを含む2xYTプレート上で、単一コロニーのためにストリークすることによって培養物を再精製し、3以上の別個のコロニーから得た液体培養物を、上記のようにELISAによって3連で再度アッセイした。
【0111】
実施例3
PCSK9 ELISA陽性FABクローンのDNA配列決定
陽性Fabのマスターグリセロールストックから得た1.2mlのクロラムフェニコールを含む2xYT液体培地を播種し、一晩増殖させることによって、DNA調製のための細菌培養物を作製した。DNAを、BioRobot9600で実施したQiagen Turbo Mini prepsを使用して一晩培養物から遠心分離した細胞ペレットから調製した。Morphosys規定のシークエンシングプライマー及びABI 3100 Genetic Analyzerで実施するDNAでのABI Dye Terminatorサイクルシークエンシングを行い、FabクローンのDNA配列を得た。DNA配列を、互いに比較して、独特のクローン配列を決定し、また、Fabクローンの軽鎖及び重鎖サブタイプを決定した。
【0112】
実施例4
独特のPCSK9 ELISA陽性クローンから得たFABの発現及び精製
ELISA陽性クローン(1CX1G08、3BX5C01、3CX2A06、3CX3D02及び3CX4B08)から得たFab及びEsB(陰性対照)Fabを、大腸菌TG1F細胞においてIPTG誘導によって発現させた。培養物を溶解し、固定化された金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によってHisタグを付けたFabを精製し、遠心ダイアフィルトレーションによって、25mM HEPES pH7.3/150mM NaCl中にタンパク質を交換した。タンパク質をCaliper Lab−Chip90での電気泳動によって、及び従来のSDS−PAGEによって分析し、Bradfordタンパク質アッセイによって定量化した。精製Fabタンパク質を、段階希釈においてELISAによって再評価し、精製Fabの活性を確認した。陽性及び陰性対照を以前のとおり実施した。精製Fab調製物を、以下の記載するEXOPOLAR(コレステロール取り込み)アッセイにおいて分析した。
【0113】
実施例5
EXOPOLARアッセイ:細胞のLDL取り込みに対する外因性PCSK9の効果
1日目に、30,000個の細胞/ウェルを、96ウェルのポリD−リジンコーティングしたプレートにプレーティングした。2日目に、培地を、血清を含有しないDMEM培地に交換した。3日目に、培地を除去し、細胞をOptiMEMで洗浄した。LPDS及びdI−LDLを含有する100μlのDMEM中で、精製PCSK9を加えた。プレートを37℃で6.5時間インキュベートした。細胞を、2mg/mlのBSAを含有するTBSで迅速に洗浄し、次いで、TBS−BSAで2分間洗浄し、次いで、TBSで2回(ただし、迅速に)洗浄した。この細胞を、100μlのRIPAバッファーに溶解した。次いで、Ex520、Em580nmを用いて、蛍光をプレートにおいて測定した。各ウェル中の総細胞タンパク質を、BCAタンパク質アッセイを用いて測定し、次いで、蛍光単位を総タンパク質に対して標準化した。
【0114】
Exopolarアッセイは、LDL取り込みに対する変異体の効果を特定するのに有効である;Exopolarアッセイにおいて、PCSK9突然変異体の効力が、血漿LDLコレステロールとどのように相関するかを示す図2を参照のこと。データは以下のように表にされている:
【0115】
【表2】

【0116】
結果:5種の抗体分子(1CX1G08;3BX5C01;3CX2A06;3CX3D02;及び3CX4B08)は、LDL取り込みに対するPCSK9の効果を用量依存的に阻害し、その効果は再現性よく観察された。細胞に添加されるPCSK9の量は、約320nMとした。抗体分子は、以下のとおりに含む:(a)1CX1G08、配列番号1の軽鎖(「LC」)(配列番号93のVLを含む)及び配列番号9のFd鎖(配列番号11のVHを含む);(b)3BX5C01、配列番号19のLC鎖(配列番号95のVLを含む)及び配列番号25のFd鎖(配列番号27のVHを含む);(c)3CX2A06、配列番号35のLC鎖(配列番号97のVLを含む)及び配列番号43のFd鎖(配列番号45のVHを含む);(d)3CX3D02、配列番号53のLC鎖(配列番号99のVLを含む)及び配列番号59のFd鎖(配列番号61のVHを含む)、並びに(e)3CX4B08、配列番号69のLC鎖(配列番号101のVLを含む)及び配列番号77のFd鎖(配列番号79のVHを含む)。図3A〜3Dは、1CX1G08及び3CX4B08の、LDL取り込みに対するPSCK9依存性効果の用量依存的阻害を示す。図3B及び3Dは、2種の対照:(i)細胞のLDL取り込みの基礎レベルを示す細胞のみの対照、及び(ii)LDL取り込みのPCSK9依存性喪失のレベルを示す、細胞+PCSK9(25μg/ml)対照を有する。Fab及びPCSK9を含む力価測定実験は、固定濃度のPCSK9(25μg/ml)及びグラフに示される漸増濃度のFabで実施した。図3A及び3Cは、IC−50の算出を示す。1CX1G08が、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害の53%の阻害を示し、一方、3CX4B08は、61%の阻害を示した。図4A〜4Dは、3BX5C01及び3CX2A06の、LDL取り込みに対するPSCK9依存性効果の用量依存性阻害を示す。図4B及び4Dは、2種の対照:(i)細胞のLDL取り込みの基礎レベルを示す細胞のみの対照、及び(ii)LSL取り込みのPCSK9依存性喪失のレベルを示す、細胞+PCSK9(25μg/ml)対照を有する。Fab及びPCSK9を含む力価測定実験を、固定濃度のPCSK9(25μg/ml)及びグラフに示される漸増濃度のFabで実施した。図4A及び4Cは、IC−50の算出を示す。3BX5C01が、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害の25%阻害を示し、一方、3CX2A06は、23%阻害を示した。図5A〜5Bは、3CX3D02の、LDL取り込みに対するPSCK9依存性効果の用量依存性阻害を示す。図5Bは、2種の対照:(i)細胞のLDL取り込みの基礎レベルを示す細胞のみの対照、及び(ii)LSL取り込みのPCSK9依存性喪失のレベルを示す、細胞+PCSK9(25μg/ml)対照を有する。Fab及びPCSK9を含む力価測定実験を、固定濃度のPCSK9(25μg/ml)及びグラフに示される漸増濃度のFabで実施した。図5Aは、IC−50の算出を示す。3CX3D02が、細胞のLDL取り込みのPCSK9依存性阻害の23%阻害を示した。
【0117】
実施例6
FABの動態学的評価:表面プラズモン共鳴(「SPR」)によるPCSK9相互作用
SPR測定を、Biacore(商標)(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden)2000システムを用いて実施した。センサーチップCM5及び固定化のためのアミンカップリングキットは、Biacore(商標)製のものであった
【0118】
抗Fab IgG(ヒト特異的)を、固定化ウィザードを使用し、「Aim for immobilization」オプションを用いて、第一アミン基を介してセンサーチップCM5の表面1及び2に共有結合によってカップリングした。5000RUの標的固定化を特定した。ウィザードは、100mMのNHS及び400mMのEDCの1:1混合物を用いた7分の活性化を使用し、リガンドを数回のパルスで注入して所望のレベルを達成し、次いで、エタノールアミンの7分のパルスを用いて残りの表面を不活化する。
【0119】
抗PCSK9Fabは、捕獲表面2上に捕獲され、表面1をFabの動態学研究:PCSK9相互作用の参照として用いた。Fabは、500ng/mlの溶液を、5μl/分で1〜1.5分間流すことによって捕獲し、反応は100〜150RUのRmaxの標的Rに達した。5〜10濃度のhPCSK9v5His又はmPCSK9v5His抗原を、30μl/分で3〜4分間表面中に流した。15〜60分の解離時間を認め、その後、10mMグリシンpH2.0の30秒のパルスを用いて抗Fab表面を再生した。
【0120】
BiaEvaluationソフトウェアを用いて、各Fabを用いて分析された、PCSK9抗原の複数の濃度から得たセンソグラムを評価し、Fab:PCSK9相互作用の動態学定数を推定した。
【0121】
表3は、開示される抗PCSK9 Fabの、測定された動態学パラメータを示す。
【0122】
【表3】

*「直接」=PCSK9の共有結合による固定化;移動相からのFabを結合する。
「Ab捕獲」=抗−Fab−Abの共有結合による固定化;試験Abの捕獲と、その後、移動相からのPCSK9と結合する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCSK9の細胞のLDL取り込み阻害に拮抗する、単離されたPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項2】
PCSK9の細胞のLDL取り込み阻害に拮抗し、1200nM未満の平衡解離定数(KD)でヒトPCSK9と結合する、単離されたPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項3】
500nM未満のKDでヒトPCSK9と結合する、請求項2に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項4】
100nM未満のKDでヒトPCSK9と結合する、請求項2に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項5】
5nM未満のKDでヒトPCSK9と結合する、請求項2に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項6】
500nM未満のIC50でPCSK9の細胞のLDL取り込み阻害に拮抗する、単離されたPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項7】
200nM未満のIC50でPCSK9の細胞のLDL取り込み阻害に拮抗する、請求項6に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項8】
100nM未満のIC50でPCSK9の細胞のLDL取り込み阻害に拮抗する、請求項6に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項9】
PCSK9の細胞のLDL取り込み阻害に少なくとも20%拮抗する、単離されたPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項10】
PCSK9の細胞のLDL取り込み阻害に少なくとも50%拮抗する、単離されたPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項11】
PCSK9の細胞のLDL取り込み阻害に少なくとも60%拮抗する、単離されたPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項12】
PCSK9の細胞の取り込み阻害に少なくとも20%拮抗する、単離されたPCSK9特異的抗体分子。
【請求項13】
PCSK9の細胞のLDL取り込み阻害に拮抗する、単離されたPCSK9特異的アンタゴニストであって、
(a)配列番号85を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域又はCDR3ドメイン中に1以上の保存的アミノ酸置換を有することを特徴とするその等価物;及び/又は
(b)配列番号75を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域又はCDR3ドメイン中に1以上の保存的アミノ酸置換を有することを特徴とするその等価物;
を含むアンタゴニスト。
【請求項14】
1200nM未満の平衡解離定数(KD)でヒトPCSK9と結合する、請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項15】
500nM未満のKDでヒトPCSK9と結合する、請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項16】
100nM未満のKDでヒトPCSK9と結合する、請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項17】
5nM未満のKDでヒトPCSK9と結合する、請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項18】
500nM未満のIC50でPCSK9の細胞のLDL取り込み阻害に拮抗する、請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項19】
200nM未満のIC50でPCSK9の細胞のLDL取り込み阻害に拮抗する、請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項20】
100nM未満のIC50でPCSK9の細胞のLDL取り込み阻害に拮抗する、請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項21】
PCSK9の細胞の取り込み阻害に少なくとも20%拮抗する、請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項22】
抗体分子である、請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項23】
(a)配列番号81を含む重鎖可変CDR1配列;
(b)配列番号83を含む重鎖可変CDR2配列;
(c)配列番号71を含む軽鎖可変CDR1配列;及び/又は
(d)配列番号73を含む軽鎖可変CDR2配列;
を含む、請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項24】
配列番号79を含む重鎖可変領域及び/又は配列番号101を含む軽鎖可変領域を含む、請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項25】
配列番号77を含む重鎖領域及び/又は配列番号69を含む軽鎖領域を含む、請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項26】
配列番号87を含む定常配列を含む重鎖を含む、請求項22に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト。
【請求項27】
請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニスト及び薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項28】
請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニストを使用することを含む、PCSK9機能を拮抗する方法。
【請求項29】
PCSK9機能によって引き起こされる、及び/又は増悪する障害、症状又は疾患を寛解させるための医薬の製造における、請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニストの使用。
【請求項30】
請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニストをコードする単離された核酸。
【請求項31】
請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニストをコードする単離された核酸であって、
(a)CDR3ドメインが配列番号86を含む核酸配列によってコードされる重鎖可変領域;及び/又は
(b)CDR3ドメインが配列番号76を含む核酸配列によってコードされる軽鎖可変領域;
を含む核酸。
【請求項32】
(a)配列番号82及び配列番号84からなる群から選択される少なくとも1種の核酸配列を含む核酸配列によってコードされるCDR1及び/又はCDR2ドメインをそれぞれ含む重鎖可変領域;及び/又は
(b)配列番号72及び配列番号74からなる群から選択される少なくとも1種の核酸配列を含む核酸配列によってコードされるCDR1及び/又はCDR2ドメインを含む軽鎖可変領域;
を含む抗体分子をコードする、請求項31に記載の単離された核酸。
【請求項33】
(a)配列番号80を含む核酸配列によってコードされる重鎖可変領域、及び/又は
(b)配列番号102を含む核酸配列によってコードされる軽鎖可変領域、
を含む抗体分子をコードする、請求項31に記載の単離された核酸。
【請求項34】
(a)少なくとも一部が配列番号78を含む核酸によってコードされる重鎖領域、及び/又は
(b)少なくとも一部が配列番号70を含む核酸によってコードされる軽鎖領域、
を含む抗体分子をコードする、請求項31に記載の単離された核酸。
【請求項35】
請求項30に記載の核酸を含むベクター。
【請求項36】
請求項30に記載の核酸を含む、インビトロ又はインサイチュでの単離された宿主細胞又は宿主細胞集団。
【請求項37】
PCSK9特異的アンタゴニストを製造する方法であって、
(a)PCSK9特異的アンタゴニストを製造するのに適当な条件下で、請求項36に記載の細胞を培養するステップ;及び
(b)製造されたPCSK9特異的アンタゴニストを単離するステップ;
を含む方法。
【請求項38】
請求項13に記載のPCSK9特異的アンタゴニストを含む、インビトロ又はインサイチュでの単離された宿主細胞又は宿主細胞集団。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−508817(P2010−508817A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535344(P2009−535344)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/023223
【国際公開番号】WO2008/063382
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】