PCSK9アンタゴニスト
本発明の開示は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9a型(「PCSK9」)に対する抗体アンタゴニストおよびこのような抗体の使用方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、全目的のために参照により組み込んだ2009年12月11日出願の米国特許仮出願第61/285,942号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、PCSK9に対する抗体アンタゴニストに関する。
【背景技術】
【0003】
低密度リポタンパク質受容体(LDL−R)は、血流中の低密度リポタンパク質(LDL)を排除することによってアテローム性動脈硬化および高コレステロール血症を防御する。LDL−Rは、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9a型(「PCSK9」)によって翻訳後のレベルが調節される。最近、マウスにおけるPCSK9のノックアウトが報告された。これらのマウスでは血漿コレステロールレベルが約50%低下しており、血漿コレステロール低下においてスタチンに対する高い感受性を示した(Rashid S, et al (2005) Proc Natl Acad Sci 102:5374-5379。ヒトの遺伝子データによってもLDL恒常性維持におけるPCSK9の役割が裏付けられる。おそらくPCSK9の「機能損失」変異と考えられる2つの変異が最近同定された。これらの変異を有する個体は、LDL−Cの血漿レベルが約40%低下しており、このことは冠動脈心疾患が約50〜90%減少することを意味している。考え合わせると、これらの研究は、PCSK9の阻害剤がLDL−Cの血漿濃度およびPCSK9によって媒介されるその他の病的状態の軽減に有益で、効率を高めるために、例えば、コレステロールを低下させるために有用な第2の薬剤と一緒に同時投与することができることを示唆している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)(例えば、配列番号47)と結合し、その機能と拮抗する抗体および、例えば、PCSK9によって媒介される病的状態を治療するためにこのような抗体を使用するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明はプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に結合する抗体および抗原結合分子を提供する。いくつかの実施形態では、この抗体は、
a)PCSK9が低密度リポタンパク質受容体(LDLR)に結合するのを阻止せず、
b)LDLRのPCSK9の媒介による分解を阻害する。
【0006】
いくつかの実施形態では、この抗体または抗原結合分子はヒトPCSK9の680〜692位の残基内の少なくとも1個のアミノ酸に結合する。例えば、いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合分子は、アミノ酸配列RSRHLAQASQELQ(配列番号49)内のPCSK9のエピトープに結合する。
【0007】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合分子はヒトPCSK9に平衡解離定数(KD)約500pM以下で結合する。例えば、いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合分子はヒトPCSK9に平衡解離定数(KD)約400pM、300pM、250pM、200pM、190pM、180pM、170pM、160pM、150pM、140pMまたはそれ以下で結合する。
【0008】
いくつかの実施形態では、抗体抗原結合分子は、インビボ(in vivo)における半減期が少なくとも約7日である。いくつかの実施形態では、抗体抗原結合分子は、インビボにおける半減期が少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10日である。いくつかの実施形態では、抗体抗原結合分子は、インビボにおけるコレステロール低下効果が少なくとも約2週間、例えば、2、3、4週間またはそれ以上である。好ましくは、インビボにおける半減期はヒト対象において測定する。
【0009】
いくつかの実施形態では、抗体は、
(a)ヒト重鎖Vセグメント、重鎖相補性決定領域3(CDR3)および重鎖フレームワーク領域4(FR4)を含む重鎖可変領域と、
(b)ヒト軽鎖Vセグメント、軽鎖CDR3、および軽鎖FR4を含む軽鎖可変領域と
を含み、
i)重鎖CDR3がアミノ酸配列SYYYY(A/N)MD(A/F/S/V/Y)(配列番号14)を含み、
ii)軽鎖CDR3可変領域がアミノ酸配列LQWSSDPPT(配列番号26)を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗体は、
(a)ヒト重鎖Vセグメント、重鎖相補性決定領域3(CDR3)および重鎖フレームワーク領域4(FR4)を含む重鎖可変領域と、
(b)ヒト軽鎖Vセグメント、軽鎖CDR3、および軽鎖FR4を含む軽鎖可変領域と
を含み、
i)重鎖CDR3がアミノ酸配列SYYYYNMDY(配列番号12)を含み、
ii)軽鎖CDR3可変領域がアミノ酸配列LQWSSDPPT(配列番号26)を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗体は、
(a)ヒト重鎖Vセグメント、重鎖相補性決定領域3(CDR3)および重鎖フレームワーク領域4(FR4)を含む重鎖可変領域と、
(b)ヒト軽鎖Vセグメント、軽鎖CDR3、および軽鎖FR4を含む軽鎖可変領域と
を含み、
i)重鎖CDR3がアミノ酸配列SYYYYAMDY(配列番号13)を含み、
ii)軽鎖CDR3可変領域がアミノ酸配列LQWSSDPPT(配列番号26)を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、重鎖CDR3が配列番号12および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントは、配列番号28と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、軽鎖Vセグメントは、配列番号31と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントは、配列番号27と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、軽鎖Vセグメントは、配列番号29および配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、重鎖FR4がヒト生殖系列FR4である。いくつかの実施形態では、重鎖FR4が配列番号35である。
【0016】
いくつかの実施形態では、軽鎖FR4がヒト生殖系列FR4である。いくつかの実施形態では、軽鎖FR4が配列番号39である。
【0017】
いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントおよび軽鎖Vセグメントがそれぞれ、相補性決定領域1(CDR1)および相補性決定領域2(CDR2)を含み、
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号8のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号11のアミノ酸配列を含み、
iii)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号22のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号25のアミノ酸配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントおよび軽鎖Vセグメントがそれぞれ、相補性決定領域1(CDR1)および相補性決定領域2(CDR2)を含み、
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号7のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号10のアミノ酸配列を含み、
iii)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号21のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号24のアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号7を含み、
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号10を含み、
iii)重鎖CDR3が、配列番号12および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号21を含み、
v)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号24を含み、
vi)軽鎖CDR3が配列番号26を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域が配列番号40の可変領域と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域が配列番号41の可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗体が配列番号40を含む重鎖および配列番号41を含む軽鎖を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域が配列番号2および配列番号4からなる群から選択される可変領域と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域が配列番号16および配列番号18からなる群から選択される可変領域と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域が配列番号2および配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号16および配列番号18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗体はIgGである。いくつかの実施形態では、抗体はIgG1である。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号3および配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有する重鎖を有する。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号17および配列番号19からなる群から選択されるアミノ酸と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有する軽鎖を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、抗体はFab’断片である。いくつかの実施形態では、抗体は1本鎖抗体(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗体はヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体はヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1定常領域は、細胞または補体のC1成分上のFc受容体(FcR)、例えば、FcガンマR1などのエフェクターリガンドに対する結合親和性が低下するように変異させる。例えば、米国特許第5,624,821号参照。いくつかの実施形態では、IgG1定常領域のアミノ酸残基L234およびL235をAla234およびAla235に置換させる。重鎖定常領域中の残基の番号は、EUインデックスの番号である(Kabat, et al., (1983) “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” U.S. Dept. Health and Human Servicesを参照のこと)。
【0026】
いくつかの実施形態では、抗体は担体タンパク質、例えば、アルブミンに連結させる。
【0027】
いくつかの実施形態では、抗体はペグ化する。
【0028】
関連する態様では、本発明はPCSK9に結合する抗体であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域がそれぞれ以下の3種類の相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2およびCDR3を含み、
i)重鎖可変領域のCDR1が配列番号8のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖可変領域のCDR2が配列番号11のアミノ酸配列を含み、
iii)重鎖可変領域のCDR3が配列番号14のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖可変領域のCDR1が配列番号22のアミノ酸配列を含み、
v)軽鎖可変領域のCDR2が配列番号25のアミノ酸配列を含み、
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む
抗体を提供する。
【0029】
いくつかの実施形態では、
i)重鎖可変領域のCDR1が、配列番号6および配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖可変領域のCDR2が、配列番号9および配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
iii)重鎖可変領域のCDR3が、配列番号12および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖可変領域のCDR1が、配列番号20および配列番号21からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
v)軽鎖可変領域のCDR2が、配列番号23および配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む。
【0030】
関連する態様では、本発明はPCSK9に結合する抗体であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域がそれぞれ以下の3種類の相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2およびCDR3を含み、
i)重鎖可変領域のCDR1が配列番号6のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖可変領域のCDR2が配列番号9のアミノ酸配列を含み、
iii)重鎖可変領域のCDR3が配列番号13のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖可変領域のCDR1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、
v)軽鎖可変領域のCDR2が配列番号23のアミノ酸配列を含み、
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む
抗体を提供する。
【0031】
関連する態様では、本発明はPCSK9に結合する抗体であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域がそれぞれ以下の3種類の相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2およびCDR3を含み、
i)重鎖可変領域のCDR1が配列番号7のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖可変領域のCDR2が配列番号10のアミノ酸配列を含み、
iii)重鎖可変領域のCDR3が配列番号12のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖可変領域のCDR1が配列番号21のアミノ酸配列を含み、
v)軽鎖可変領域のCDR2が配列番号24のアミノ酸配列を含み、
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む
抗体を提供する。
【0032】
関連する態様では、本発明はPCSK9に結合する抗体であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域がそれぞれ以下の3種類の相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2およびCDR3を含み、
i)重鎖可変領域のCDR1が配列番号7のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖可変領域のCDR2が配列番号10のアミノ酸配列を含み、
iii)重鎖可変領域のCDR3が配列番号13のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖可変領域のCDR1が配列番号21のアミノ酸配列を含み、
v)軽鎖可変領域のCDR2が配列番号24のアミノ酸配列を含み、
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む
抗体を提供する。
【0033】
他の態様では、本発明は本明細書で記載したような抗体または抗原結合分子および生理学的に適合できる賦形剤を含む組成物を提供する。
【0034】
いくつかの実施形態では、この組成物はさらに、個体において低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)レベルを低下させる第2の薬剤を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、この第2の薬剤はスタチンである。例えば、スタチンは、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンからなる群から選択することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤が、フィブラート、ナイアシンおよびそれらの類似体、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸捕捉剤、甲状腺ホルモン様物質、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(acyltransferase)(DGAT)阻害剤、PCSK9を標的とする阻害性核酸およびapoB100を標的とする阻害性核酸からなる群から選択される。
【0037】
他の態様では、本発明は、LDL−C、非HDL−Cおよび/または全コレステロールの低下を必要とする個体におけるLDL−C、非HDL−Cおよび/または全コレステロールの低下方法であって、個体に本明細書で記載したような抗体または抗原結合分子の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態では、個体は、スタチン治療に低応答性または耐性である。いくつかの実施形態では、個体はスタチン治療に不耐性である。いくつかの実施形態では、個体のベースラインLDL−Cレベルは、少なくとも約100mg/dL、例えば、少なくとも約110、120、130、140、150、160、170、180、190mg/dLであるかまたはそれを上回る。いくつかの実施形態では、個体は家族性高コレステロール血症を有する。いくつかの実施形態では、個体はトリグリセリド血症を有する。いくつかの実施形態では、個体は機能獲得型PCSK9遺伝子変異を有する。いくつかの実施形態では、薬剤誘導性脂質代謝異常を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、全コレステロールがLDL−Cと共に低下する。
【0040】
いくつかの実施形態では、方法がLDL−Cの低下に有効な第2の薬剤の治療有効量を個体に投与することをさらに含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤はスタチンである。例えば、スタチンは、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンからなる群から選択することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤が、フィブラート、ナイアシンおよびそれらの類似体、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸捕捉剤、甲状腺ホルモン様物質、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤、PCSK9を標的とする阻害性核酸およびapoB100を標的とする阻害性核酸からなる群から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合分子および第2の薬剤は混合物として同時投与される。
【0044】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合分子および第2の薬剤は別々に同時投与される。
【0045】
いくつかの実施形態では、抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗体は皮下投与される。
【0046】
定義
「抗体」とは、イムノグロブリンファミリーのポリペプチドまたは非共有的、可逆的、かつ特異的な様式で対応する抗原に結合することができるイムノグロブリンの断片を含むポリペプチドを意味する。抗体構造単位の一例には、テトラマーが含まれる。各テトラマーは、2つの同一なポリペプチド鎖対から構成され、各対は、ジスルフィド結合によって連結した1本の「軽」鎖(約25kD)および1本の「重」鎖(約50〜70kD)を有する。確認されたイムノグロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子ならびに無数のイムノグロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κまたはλのいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δまたはεとして分類され、次に、それぞれイムノグロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを決定する。各鎖のN末端は、抗原認識に主に関与する約100個から110個以上のアミノ酸の可変領域を決定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語はそれぞれ、軽鎖および重鎖のこれらの領域を意味する。本出願で使用したように、「抗体」は、特に、例えばPCSK9に対して、特定の結合性を有する抗体およびその断片の変種全てを包含する。したがって、この概念の範囲内には、完全長抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、1本鎖抗体(ScFv)、Fab、Fab’および同じ結合特異性を有するこれらの断片の多量体変種(例えば、F(ab’)2)が存在する。
【0047】
「相補性決定ドメイン」または「相補性決定領域(「CDR」)は同義で、VLおよびVHの超可変領域を意味する。CDRとは、このような標的タンパク質に特異性を有する抗体鎖の標的タンパク質結合部位である。ヒトVLまたはVHそれぞれには3つのCDR(CDR1〜3、N末端から順番に番号付け)があり、可変ドメインの約15〜20%を構成する。CDRは、標的タンパク質のエピトープに対して構造的に相補的であり、したがって、結合特異性に直接関与する。VLまたはVHの残りの連続部分、いわゆるフレームワーク領域は、アミノ酸配列の変動が少ないことが示された(Kuby, Immunology, 4th ed., Chapter 4. W.H. Freeman & Co., New York, 2000)。
【0048】
CDRおよびフレームワーク領域の位置は、当業界で周知の様々な定義法、例えば、Kabat,Chothia,international ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)(ワールドワイドウェブimgt.cines.fr/)およびAbM(例えば、Johnson et al., Nucleic Acids Res., 29:205-206 (2001);Chothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196:901-917 (1987);Chothia et al., Nature, 342:877-883 (1989);Chothia et al., J. Mol. Biol., 227:799-817 (1992);Al-Lazikani et al., J.Mol.Biol., 273:927-748 (1997)を参照のこと)を使用して決定する。抗原結合(combining)部位の定義はまた、以下に記載されている:Ruiz et al., Nucleic Acids Res., 28:219?221 (2000)およびLefranc, M.P., Nucleic Acids Res., 29:207-209 (2001);MacCallum et al., J. Mol. Biol., 262:732-745 (1996)およびMartin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:9268?9272 (1989);Martin et al., Methods Enzymol., 203:121?153 (1991)およびRees et al., In Sternberg M.J.E. (ed.), Protein Structure Prediction, Oxford University Press, Oxford, 141?172 (1996)。
【0049】
「結合特異性決定基」または「BSD」という用語は同義で、抗体の結合特異性を決定するために必要な相補性決定領域内の最小限の連続または非連続アミノ酸配列を意味する。最小限の結合特異性決定基は、1個または複数のCDR配列内にあってもよい。いくつかの実施形態では、最小限の結合特異性決定基は、抗体の重鎖および軽鎖のCDR3配列の一部または完全長内に存在する(すなわち、それによってのみ決定される)。
【0050】
本明細書で使用した「抗体軽鎖」または「抗体重鎖」はそれぞれ、VLまたはVHを含むポリペプチドを意味する。内在性VLは、遺伝子セグメントV(可変)およびJ(連結)によってコードされ、内在性VHはV、D(多様性)およびJによってコードされる。VLまたはVHのそれぞれは、CDRおよびフレームワーク領域を含む。本出願では、抗体軽鎖および/または抗体重鎖は、時々、集合的に「抗体鎖」を意味することもある。これらの用語には、当業者であれば容易に理解するように、VLまたはVHの基本構造を破壊しない変異を含有する抗体鎖が包含される。
【0051】
抗体は、完全なイムノグロブリンとして、または様々なペプチダーゼで消化することによって生成したいくつかの良く特徴付けられた断片として存在する。したがって、例えば、ペプシンはヒンジ領域のジスルフィド結合より下で抗体を消化して、それ自体がFab’の二量体、F(ab)’2を生じ、Fab’はVH−CH1にジスルフィド結合によって連結した軽鎖である。F(ab)’2は、穏和な条件下で還元され、ヒンジ領域のジスルフィド結合が切断し、それによってF(ab)’2二量体はFab’単量体に変換される。Fab’単量体はヒンジ領域の一部を含むが、本質的にはFabである。Paul, Fundamental Immunology 3d ed. (1993)。様々な抗体断片が完全な抗体の消化に関して定義されているが、当業者であれば、このような断片は化学的に、または組換えDNA法を使用することによって、新たに合成できることを理解するであろう。したがって、本明細書で使用したように、「抗体」という用語はまた、抗体全体の改変によって生成した抗体断片、または組換えDNA法を使用して新たに合成された抗体断片(例えば、1本鎖Fv)またはファージディスプレーライブラリーを使用して同定された抗体断片を含む(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)を参照のこと)。
【0052】
モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の調製では、当業界で公知の任意の技術を使用することができる(例えば、Kohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975);Kozbor et al., Immunology Today 4:72 (1983);Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, pp. 77-96. Alan R. Liss, Inc. 1985を参照のこと)。1本鎖抗体を生成するための技術(米国特許第4,946,778号)は、本発明のポリペプチドに対する抗体の生成に適合させることができる。また、トランスジェニックマウス、またはその他の生物、例えば、その他の哺乳類を、ヒト化抗体の発現のために使用することができる。あるいは、ファージディスプレー技術は、選択した抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロマーFab断片を同定するために使用することができる(例えば、McCafferty et al.、前述; Marks et al., Biotechnology, 10:779-783, (1992)を参照のこと)。
【0053】
非ヒト抗体のヒト化または霊長類化の方法は、当業界では周知である。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである原料からヒト化抗体に導入された1個または複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、移入残基(import residue)と呼ばれることが多く、通常は移入可変ドメインから得られる。ヒト化は、齧歯類のCDR(複数)配列またはCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することによって、Winterおよび共同研究者の方法(例えば、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988)およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと)にしたがって本質的に実施することができる。したがって、このようなヒト化抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号)であり、完全なヒト可変ドメインよりも実質的に少ない部分が非ヒト種の対応する配列によって置換されている。実際に、ヒト化抗体は通常、いくつかの相補性決定領域(CDR)残基およびおそらくいくつかのフレームワーク(「FR」)残基が齧歯類抗体の類似部位の残基によって置換されているヒト抗体である。
【0054】
「キメラ抗体」とは、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるかまたは変化したクラス、エフェクター機能および/または種類の定常領域、またはキメラ抗体に新たな特性を与える全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子および薬剤に結合するように定常領域またはその一部が変化、置換または交換しているか、あるいは(b)可変領域、またはその一部が、異なるかまたは変化した抗原特異性を有する可変領域で変化しているか、置換または交換している抗体分子である。
【0055】
本発明の抗体または抗原結合分子はさらに、化学的に結合した、またはその他のタンパク質との融合タンパク質として発現した、1個または複数のイムノグロブリン鎖を含む。二特異性抗体も含む。二特異性または二機能性抗体は、2個の異なる重鎖/軽鎖対および2個の異なる結合部位を有する人工的なハイブリッド抗体である。本発明のその他の抗原結合断片または抗体部分には、2価scFv(二重特異性抗体(diabody))、抗体分子が2個の異なるエピトープを認識する二特異性scFv抗体、単一の結合ドメイン(dAb)および小型抗体(minibody)が含まれる。
【0056】
本明細書で記載した様々な抗体または抗原結合断片は、完全な抗体の酵素的もしくは化学的改変によって生成することができるか、または組換えDNA法を使用して新たに合成することができ(例えば、1本鎖Fv)、またはファージディスプレーライブラリーを使用して同定することができる(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554, 1990を参照のこと)。例えば、小型抗体は、当業界で記載された方法、例えば、Vaughan and Sollazzo, Comb Chem High Throughput Screen. 4:417-30 2001を使用して作製することができる。二特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の結合を含む様々な方法によって生成することができる。例えば、Songsivilai & Lachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315-321 (1990); Kostelny et al., J. Immunol. 148, 1547-1553 (1992))を参照のこと。1本鎖抗体は、ファージディスプレーライブラリーまたはリボソームディスプレーライブラリー、遺伝子シャッフルライブラリーを使用して同定することができる。このようなライブラリーは、合成、半合成または天然および免疫適格性材料から構築することができる。
【0057】
「キメラ抗体」とは、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるかまたは変化したクラス、エフェクター機能および/または種類の定常領域、またはキメラ抗体に新たな特性を与える全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子および薬剤等に結合するように定常領域またはその一部が変化、置換または交換しているか、あるいは(b)可変領域、またはその一部が、異なるかまたは変化した抗原特異性を有する可変領域で変化しているか、置換または交換している抗体分子である。例えば、以下の実施例で示したように、マウス抗PCSK9抗体は、その定常領域をヒトイムノグロブリンの定常領域と置換することによって改変することができる。ヒト定常領域と置換することによって、キメラ抗体はヒトPCSK9の認識においてその特異性を保持することができる一方、元のマウス抗体と比較してヒトにおける抗原性が低下する。
【0058】
「抗体結合分子」または「非抗体リガンド」という用語は、非イムノグロブリンタンパク質骨格を使用する抗体様物質を意味しており、アドネクチン、アビマー、1本鎖ポリペプチド結合分子および抗体様結合ペプチド様物質が含まれる。
【0059】
「可変領域」または「V領域」という用語は同義で、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4を含む重鎖または軽鎖を意味する。図1参照のこと。内在性可変領域は、イムノグロブリン重鎖V−D−J遺伝子または軽鎖V−J遺伝子によってコードされる。V領域は、天然に生じるか、組換えられているか、または合成されていてもよい。
【0060】
本明細書で使用したように、「可変セグメント」または「Vセグメント」という用語は同義で、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3を含む可変領域の部分配列である。図1参照のこと。内在性Vセグメントは、イムノグロブリンV遺伝子によってコードされる。Vセグメントは、天然に生じるか、組換えられているか、または合成されていてもよい。
【0061】
本明細書で使用したように、「Jセグメント」という用語は、CDR3およびFR4のC末端部分を含む、コードされた可変領域の部分配列を意味する。内在性Jセグメントは、イムノグロブリンJ遺伝子によってコードされる。図1参照のこと。Jセグメントは、天然に生じるか、組換えられているか、または合成されていてもよい。
【0062】
「ヒト化」抗体は、非ヒト抗体の反応性を保持する一方、ヒトにおける免疫原性が少ない抗体である。これは、例えば、非ヒトCDR領域を保持し、抗体の残存する部分をヒトの対応部分と置換することによって実現することができる。例えば、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984); Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65-92 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988); Padlan, Molec. Immun., 28:489-498 (1991); Padlan, Molec. Immun., 31(3):169-217 (1994)を参照のこと。
【0063】
「対応するヒト生殖系列配列」という用語は、ヒト生殖系列イムノグロブリン可変領域配列によってコードされた公知のその他の可変領域アミノ酸配列全てと比較して、参照可変領域アミノ酸配列または部分配列との決定されたアミノ酸配列同一性が最高であるヒト可変領域アミノ酸配列または部分配列をコードする核酸配列を意味する。対応するヒト生殖系列配列はまた、その他の評価された可変領域アミノ酸配列全てと比較して、参照可変領域アミノ酸配列または部分配列とのアミノ酸配列同一性が最高であるヒト可変領域アミノ酸配列または部分配列を意味することができる。対応するヒト生殖系列配列は、フレームワーク領域のみ、相補性決定領域のみ、フレームワークおよび相補性決定領域、可変セグメント(上記で定義)または可変領域を含む配列もしくは部分配列のその他の組み合わせであってもよい。配列同一性は、本明細書で記載した方法、例えば、BLAST、ALIGNまたは当業界で公知の別の配列比較アルゴリズムを使用して、2つの配列をアラインメントさせることによって決定することができる。対応するヒト生殖系列核酸配列またはアミノ酸配列は、参照可変領域核酸配列またはアミノ酸配列と少なくとも約90%、92%、94%、96%、98%、99%の配列同一性を有することができる。対応するヒト生殖系列配列は、例えば、公式に利用可能な国際的ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)(ワールドワイドウェブimgt.cines.fr/)およびV−base(ワールドワイドウェブvbase.mrc−cpe.cam.ac.uk)によって決定することができる。
【0064】
抗原、例えば、タンパク質と抗体または抗体由来の結合物質との間の相互作用を述べる場合に使用したときの「特異的に(または選択的に)結合する」という表現は、タンパク質およびその他の生物学的物質の不均一な集団、例えば、生物学的試料、例えば、血液、血清、血漿または組織試料中における抗原の存在を決定する結合反応を意味する。したがって、指定した免疫アッセイ条件下では、特定の結合特異性を有する抗体または結合物質は、背景の少なくとも2倍で特定の抗原と結合し、試料中に存在するその他の抗原とは有意な量では実質的に結合しない。このような条件下での抗体または結合物質の特異的結合には、抗体または物質が特定のタンパク質に対する特異性で選択されることが必要であり得る。所望であれば、または適切であれば、この選択は、例えば、その他の種(例えば、マウス)のPCSK9分子またはその他のPCSK亜型と交差反応する抗体を差し引くことによって実現することができる。様々なイムノアッセイ形式を、特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために使用してもよい。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために日常的に使用される(例えば、イムノアッセイ形式および特異的免疫反応を測定するために使用できる条件についての説明は、Harlow & Lane, Using Antibodies, A Laboratory Manual (1998)を参照のこと)。典型的は、特異的または選択的結合反応は、背景シグナルの少なくとも2倍のシグナルを生成し、より典型的には背景の少なくとも10から100倍のシグナルを生成する。
【0065】
「平衡解離定数(KD、M)」という用語は、結合速度定数(ka、時間−1、M−1)によって除した解離速度定数(Kd、時間−1)を意味する。平衡解離定数は、当業界で公知の任意の方法を使用して測定することができる。本発明の抗体の平衡解離定数は一般的に、約10−7または10−8M未満、例えば、約10−9Mまたは10−10M未満、いくつかの実施形態では、約10−11M、10−12Mまたは10−13M未満である。
【0066】
本明細書で使用したように、「抗原結合領域」という用語は、分子とPCSK9の特異的結合に関与する本発明のPCSK9結合分子のドメインを意味する。抗原結合領域には、少なくとも1個の抗体重鎖可変領域および少なくとも1個の抗体軽鎖可変領域が含まれる。本発明の各PCSK9結合分子にはこのような抗原結合領域が少なくとも1個存在し、抗原結合領域はそれぞれその他のものと同一であるかまたは異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、本発明のPCSK9結合分子の抗原結合領域の少なくとも1個はPCSK9のアンタゴニストとして作用する。
【0067】
本明細書で使用した「アンタゴニスト」という用語は、標的分子に特異的に結合して標的分子の活性を阻害することができる薬剤を意味する。例えば、PCSK9のアンタゴニストは、PCSK9に特異的に結合し、PCSK9媒介によるLDLRの分解を完全に、または部分的に阻害する。PCSK9媒介によるLDLRの分解の阻害は、PCSK9のLDLRへの結合を妨害してもよく、または妨害しなくてもよい。いくつかの場合において、PCSK9アンタゴニストは、PCSK9に結合しPCSK9のLDLRへの結合を阻害する能力によって同定することができる。PCSK9媒介によるLDLRの分解が、本発明のアンタゴニストに曝露したときに生じる阻害は、対照の存在下またはアンタゴニストなしでのPCSK9媒介による分解と比較して、少なくとも約10%低下している、例えば、少なくとも約25%、50%、75%低下しているか、または完全な阻害である。対照は、抗体もしくは抗原結合分子に曝露しないか、または別の抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗原結合分子、またはアンタゴニストとしての機能を果たすことが知られていない抗PCSK9抗体もしくは抗原結合分子であってもよい。「抗体アンタゴニスト」とは、アンタゴニストが阻害抗体である場合を意味する。
【0068】
「PCSK9」または「プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9a型」という用語は同義で、分泌型サブチラーゼファミリーのプロテイナーゼKサブファミリーに属する天然に生じるヒトプロタンパク質転換酵素を意味する。PCSK9は、小胞体において自己触媒的細胞内プロセシングを受ける可溶性酵素前駆体として合成され、プロタンパク質転換酵素として機能を果たすと考えられている。PCSK9は、コレステロール恒常性維持において役割を果たし、皮質ニューロンの分化において役割を担う可能性がある。このPCSK9遺伝子における変異は、常染色体優性家族性高コレステロール血症の形態に関連づけられている。例えば、Burnett and Hooper, Clin Biochem Rev (2008) 29(1):11-26を参照のこと。PCSK9の核酸配列およびアミノ酸配列は公知で、それぞれジェンバンク受入番号NM_174936.2およびNP_777596.2として発表された。本明細書で使用したように、PCSK9ポリペプチドは、LDLRに機能的に結合し、LDLRの分解を促進する。構造的に、PCSK9アミノ酸配列は、ジェンバンク受入番号NP_777596.2のアミノ酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。構造的に、PCSK9核酸配列は、ジェンバンク受入番号NM_174936.2の核酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0069】
「PCSK9機能獲得型突然変異」という表現は、例えば、LDLR分解の増加およびLDLRレベルの低下による家族性高コレステロール血症表現型、加速化アテローム硬化症および早期冠状動脈心疾患(premature coronary heart disease)に関連した、かつ/または原因となる、PCSK9遺伝子中に生じる天然の突然変異を意味する。PCSK9機能獲得型突然変異の対立遺伝子出現頻度は稀である。Burnett and Hooper, Clin Biochem Rev. (2008) 29(1):11-26を参照のこと。PCSK9機能獲得型突然変異の例には、D129N、D374H、N425SおよびR496Wが含まれる。Fasano, et al., Atherosclerosis (2009) 203(1):166-71を参照のこと。PCSK9機能獲得型突然変異は、例えば、Burnett and Hooper、前述;Fasano, et al、前述;Abifadel, et al., J Med Genet (2008) 45(12):780-6;Abifadel, et al., Hum Mutat (2009) 30(4):520-9およびLi, et al., Recent Pat DNA Gene Seq (2009) Nov. 1 (PMID 19601924)に概説されている。
【0070】
本発明のポリペプチドの「活性」とは、天然の細胞または組織におけるポリペプチドの構造的、調節的または生化学的機能を意味する。ポリペプチドの活性の例には、直接的活性および間接的活性の両方が含まれる。PCSK9の直接的活性の例は、LDLRへの結合およびPCSK9媒介によるLDLRの分解を含む、ポリペプチドとの直接的相互作用の結果である。PCSK9の場合の間接的活性の例は、ポリペプチドの直接的活性に対する細胞、組織、臓器または対象における表現型の変化または応答、例えば、増加した肝臓LDLRの低下、血漿HDL−Cの低下、血漿コレステロールの減少、スタチンに対する感受性の増加として観察される。
【0071】
核酸またはタンパク質に適用したときの「単離した」という用語は、核酸またはタンパク質が、天然の状態で関連しているその他の細胞成分を本質的に含まないことを意味する。好ましくは均一な状態である。乾燥しているか、または水溶液であってもよい。純度および均一性は通常、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの化学分析技術を使用して測定する。調製物中に存在する主な種がタンパク質であれば、実質的に精製されている。特に、単離された遺伝子は、遺伝子に隣接し、関心のある遺伝以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから分離されている。「精製した」という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルにおいて本質的に1本のバンドを生じることを意味する。特に、核酸またはタンパク質は少なくとも85%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、最も好ましくは少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0072】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、1本鎖または2本鎖の形態のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)およびそれらのポリマーを意味する。特に限定はしないが、この用語は、参照核酸と類似の結合特性を有し、天然に生じるヌクレオチドと類似の方法で代謝される天然のヌクレオチドの公知の類似体を含有する核酸を包含する。特に指示がなければ、特定の核酸配列は、保存的に改変されたそれらの変異体(例えば、縮重コドン置換体)、対立遺伝子、オルソログ、SNPおよび相補的配列ならびに明瞭に指示された配列も非明示的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1個または複数の選択される(または全ての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作製することによって実現することができる(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991);Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985)およびRossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0073】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は本明細書では同義で、アミノ酸残基のポリマーを意味する。この用語は、1個または複数のアミノ酸残基が対応する天然に生じるアミノ酸の人工的な化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に生じるアミノ酸ポリマーおよび天然には生じないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0074】
「アミノ酸」という用語は、天然に生じるアミノ酸および合成アミノ酸ならびに天然に生じるアミノ酸と類似の方法で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を意味する。天然に生じるアミノ酸とは、遺伝子コードによってコードされるアミノ酸ならびに後で改変されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸およびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体とは、天然に生じるアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基に結合したα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを意味する。このような類似体は、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド主鎖を有するが、天然に生じるアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然に生じるアミノ酸と類似の方法で機能する化合物を意味する。
【0075】
「保存的に改変された変異体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変異体とは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合は、本質的に同一な配列を意味する。遺伝子コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全てアミノ酸、アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定される全ての位置において、コードするポリペプチドを変化させることなく、記載した対応するコドンのいずれかにコドンを変化させることができる。このような核酸の変動は、「サイレント変動」であり、保存的に改変された変動の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書の全核酸配列はまた、核酸の可能な全サイレント変動を記載する。当業者であれば、核酸の各コドン(通常はメチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)は、機能的に同一の分子を生じるために改変することができることを認識するだろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変動は、記載した各配列に事実上含まれる。
【0076】
アミノ酸配列については、当業者であれば、コードされた配列の1個のアミノ酸またはごく少数のアミノ酸を変化させるか、付加するか、または欠失させる核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列への個々の置換、欠失または付加は、その変化が化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換を引き起こす場合、「保存的に改変された変異体」であることを認識するであろう。機能的に類似のアミノ酸をもたらす保存的置換の一覧は、当業界では周知である。このような保存的に改変された変異体はさらに、本発明の多形変異体、種間相同体および対立遺伝子を排除しない。
【0077】
以下の8群はそれぞれ、互いに保存的な置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)4)アルギニン(R)、リシン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、7)セリン(S)、トレオニン(T)および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照のこと)。
【0078】
「配列同一性のパーセント」は、比較窓にわたって2種類の最適にアラインメントさせた配列を比較することによって決定され、比較窓中のポリヌクレオチド配列の一部は、2種類の配列の最適なアラインメントのために付加または欠失を含まない参照配列(例えば、本発明のポリペプチド)と比較して、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでいてもよい。パーセントは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両配列内に生じる位置の数を測定して、一致した位置の数を出し、一致した位置の数を比較窓中の位置の全数によって除し、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセントを出すことによって算出する。
【0079】
2種以上の核酸またはポリペプチド配列の場合、「同一な」またはパーセント「同一性」という用語は、配列が同じ2種以上の配列または部分配列を意味する。以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、または手動のアラインメントおよび目視検査によって測定したときに、比較窓または指定した領域にわたって最大限対応するように比較し、アラインメントさせたとき、2種類の配列が特定のパーセントの同じアミノ酸残基またはヌクレオチドを有する場合(すなわち、特定の領域にわたって、または特定していないときは、参照配列の全配列にわたって、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する場合)、2種類の配列は「実質的に同一」である。本発明は、本明細書で例示したポリペプチドまたはポリヌクレオチドそれぞれに実質的に同一なポリペプチドまたはポリヌクレオチドを提供する(例えば、配列番号1〜5、15〜19および40〜41のいずれか1つに例示した可変領域、配列番号27〜31のいずれか1つに例示した可変セグメント、配列番号6〜14、20〜26のいずれか1つに例示したCDR、配列番号32〜39のいずれか1つに例示したFR、配列番号42〜45のいずれか1つに例示した核酸配列)。所望により、同一性は長さが少なくとも約15、25または50ヌクレオチドの領域にわたって、より好ましくは、長さが100から500または1000以上のヌクレオチドである領域にわたって、あるいは参照配列の全長にわたって存在する。アミノ酸配列に関して、同一性または実質的同一性は、長さが少なくとも5、10、15または20個のアミノ酸の領域にわたって、所望により長さが少なくとも約25、30、35、40、50、75または100個のアミノ酸にわたって、所望により少なくとも約150、200または250個のアミノ酸にわたって、あるいは参照配列の全長にわたって存在し得る。より短いアミノ酸配列、例えば、アミノ酸20個以下のアミノ酸配列に関して、本明細書で定義した保存的置換によって、1個または2個のアミノ酸残基が保存的に置換されているとき、実質的同一性が存在する。
【0080】
配列比較のため、通常、1配列は、試験配列を比較する参照配列とする。配列比較アルゴリズムを使用するとき、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、その後の位置を指定し、必要であれば、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。初期設定のプログラムパラメータを使用することができ、または代わりのパラメータを指定することもできる。次に、配列比較アルゴリズムによって、プログラムパラメータをベースにして、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を算出する。
【0081】
本明細書で使用した「比較窓」には、2種類の配列を最適にアラインメントさせた後、1配列を同数の連続した位置の参照配列と比較することができる20から600、通常約50から約200、より通常は約100から約150からなる群から選択される連続した位置の数のいずれか1個のセグメントに対する参照が含まれる。比較のための配列のアラインメント方法は、当業界では周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith and Waterman (1970) Adv. Appl. Math. 2:482cの局所的相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman (1988) Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータによる手法(GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)または手動のアラインメントおよび目視検査(例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (1995 supplement)を参照のこと)によって実施することができる。
【0082】
パーセント配列同一性および類似性を決定するために適切なアルゴリズムの2つの例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムで、それぞれAltschul et al. (1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402およびAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターから公式に利用可能である。このアルゴリズムは、まず、問い合わせ配列内の長さがWの短いワードであって、データベース配列内の同じ長さのワードとアライメントしたときに、ある正の値の閾値スコアTと一致するか、またはそれを満たすワードを同定することにより高スコア配列ペア(HSP)を同定することを含む。Tは、近傍ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al.、前述)。これら最初の近傍ワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見出す検索を開始するためのシードとして作用する。このワードヒットは、累積アライメントスコアを増加することができる限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(一対の一致残基に対するリワードスコア;常に>0)およびN(不一致残基に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて算出する。アミノ酸配列については、スコアリングマトリクスを用いて累積スコアを算出する。累積アライメントスコアが最高到達値から数量Xだけ低下した場合;負のスコアを有する残基アライメントが1個または複数累積したことにより累積スコアが0以下になった場合;またはいずれかの配列の末端に達した場合には、各方向におけるワードヒットの伸長が停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXにより、アライメントの感度および速度が決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、既定値として、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、規定値として、ワード長3および期待値(E)10を用い、BLOSUM62スコアリングマトリクス(Henikoff and Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915を参照のこと)は、アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両鎖の比較を用いる。
【0083】
BLASTアルゴリズムはまた、2種類の配列の類似性の統計学的分析を実施する(例えば、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによってもたらされた類似性の1測定値は、最小合計確率(P(N))であり、2種類のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の一致が偶然生じる可能性の指標となる。例えば、試験核酸と参照核酸との比較において最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満であるならば、その核酸は、参照配列と類似であると考えられる。
【0084】
2種類の核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であることの指標は、第1の核酸によってコードされたポリペプチドが、以下に説明したように、第2の核酸によってコードされたポリペプチドに対して生じた抗体と免疫学的に交差反応することである。したがって、ポリペプチドは通常、第2のポリペプチドと実質的に同一で、例えば、2種類のペプチドは保存的置換のみが異なる。2種類の核酸配列が実質的に同一である別の指標は、以下に説明したように、2種類の分子またはそれらの相補体がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。2種類の核酸配列が実質的に同一であるさらに別の指標は、同じプライマーを使用して配列を増幅することができることである。
【0085】
本発明のPCSK9結合分子内で抗原結合領域がどのように連結するかを説明する場合に使用される「結合(link)」という用語は、物理的に領域を結合するために可能な手段全てを包含する。多数の抗原結合領域は、共有結合(例えば、ペプチド結合またはジスルフィド結合)または非共有結合などの化学的結合によって結合することが多く、直接的結合(すなわち、2種類の抗原結合領域の間にリンカーがない)であってもよく、または間接的結合(すなわち、2種類以上の抗原結合領域の間の少なくとも1個のリンカー分子による)であってもよい。
【0086】
「対象」、「患者」および「個体」という用語は同義で、哺乳類、例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類哺乳類を意味する。哺乳類はまた、実験動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスターであってもよい。いくつかの実施形態では、哺乳類は農業用哺乳類(例えば、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ラクダ)または家畜哺乳類(例えば、イヌ、ネコ)であってもよい。
【0087】
「治療上許容される量」または「治療有効用量」は同義で、所望する結果を達成するために(すなわち、血漿非HDL−C、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患の減少)十分な量を意味する。いくつかの実施形態では、治療上許容される量は、所望しない副作用を誘導しないか、または引き起こさない。治療上許容される量は、まず低用量を投与し、次に、所望する効果が実現するまで、その用量を徐々に増加させることによって決定することができる。本発明のPCSK9拮抗抗体の「予防的有効用量」は、PCSK9の存在に関連した疾患症状(例えば、高コレステロール血症)の発症を防御するができ、「治療有効用量」は疾患症状の重症度の減少を引き起こすことができる。前記用語はまた、疾患症状のない期間の頻度を高め、持続期間を延長させることができる。「予防有効用量」および「治療有効用量」はまた、PCSK9の活性から生じた障害および疾患による機能障害または能力障害を予防するかまたは回復させることができる。
【0088】
「同時投与」という用語は、個体の血液における2種類の活性薬剤の同時存在を意味する。同時投与された活性薬剤は、同時に、または順次送達され得る。
【0089】
本明細書で使用したように、「本質的に構成される」という表現は、方法または組成物に含まれた活性のある医薬品の部類または種類ならびに方法または組成物の企図した目的のために不活性な任意の賦形剤を意味する。いくつかの実施形態では、「本質的に構成される」という表現は、本発明のアンタゴニスト抗PCSK9抗体以外の1種または複数の追加的活性薬剤の包含を明白に除外する。いくつかの実施形態では、「本質的に構成される」という表現は、本発明のアンタゴニスト抗PCSK9抗体以外の1種または複数の追加的活性薬剤および第2の同時投与された薬剤の包含を明白に除外する。
【0090】
「スタチン」という用語は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)還元酵素の競合的阻害剤である薬理学的作用物質の種類を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は、親マウスモノクローナル抗体NVP−LFU720の重鎖(配列番号1)および軽鎖(配列番号15)アミノ酸配列を示す。CDR1、CDR2およびCDR3の配列には下線を引き、太字にしている。
【0092】
【図2】図2は、親マウスモノクローナル抗体NVP−LGT209の重鎖(配列番号2)および軽鎖(配列番号16)アミノ酸配列を示す。CDR1、CDR2およびCDR3の配列には下線を引き、太字にしている。
【0093】
【図3】図3は、親マウスモノクローナル抗体NVP−LGT210の重鎖(配列番号2)および軽鎖(配列番号18)アミノ酸配列を示す。CDR1、CDR2およびCDR3の配列には下線を引き、太字にしている。
【0094】
【図4】図4は、親マウスモノクローナル抗体NVP−LGT211の重鎖(配列番号4)および軽鎖(配列番号16)アミノ酸配列を示す。CDR1、CDR2およびCDR3の配列には下線を引き、太字にしている。
【0095】
【図5】図5A〜Cは、いくつかの異なるヒトおよびマウス抗原に対するNVP−LFU720−NX−4と比較したNVP−LGT209(A)、NVP−LGT210(B)およびNVP−LGT−211(C)の結合を試験するELISAアッセイを示す。
【0096】
【図6】図6A〜Cは、ヒトおよびカニクイザル(cyno)Pcsk9に対するELISAにおけるNVP−LGT209(A)、NVP−LGT210(B)およびNVP−LGT−211(C)の結合を示す。第2抗体はヤギ抗マウス抗体で、1:5000に希釈する。第2のみ(2nd only)とは、第2抗体のみの対照である。
【0097】
【図7】図7は、親マウスモノクローナル抗体、NVP−LFU720がPCSK9のC末端、残基680〜692(RSRHLAQASQELQ;配列番号49)に結合することを示す。Humaneered(商標)抗体LGT209、LGT210およびLGT211は同じエピトープで競合する。C−末端変異体A685X=配列番号56である。
【0098】
【図8】図8は、親マウス抗体NVP−LFU720(5p20)は、時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR−FRET)生化学アッセイで測定すると、PCSK9とLDL−Rの相互作用を十分に分断しないことを示す。対照的に、13C10は、PCSK9−LDL−R FRET相互作用をIC5050nMで分断する。アッセイ緩衝液中(HEPES 20mM、pH7.2、NaCl 150mM、CaCl2 1mM、0.1%v/v Tween20および0.1%w/v BSA)で、蛍光色素(hPCSK9−AF)で標識したヒトPCSK9をNVP−LFU720−AX−1または13C10で室温で30分間インキュベートした。この後ユーロピウム標識LDL−R(hLDL−R−Eu)を添加し、室温で90分間さらにインキュベートし、したがって、最終濃度はhPcsk9−AF 8nMおよびhLDL−R−Eu 1nMであった。TR−FRETシグナル(330nm励起および665nm放射)をプレートリーダー(EnVision 2100、Perkin Elmer)で測定し、5P20または13C10存在下での%阻害を計算した。IC50値は、Prism(GraphPad)でパーセント阻害値をプロットすることによって計算した。各データ点は平均±SD(点当たりn=4連)を表す。データは、少なくとも2回の独立した実験を表す。
【0099】
【図9】図9は、Humaneered(商標)抗体LGT209、LGT210およびLGT211が、LDL−Rレベルの増加およびHepG2細胞によるLDL取り込みの誘導についてマウス抗体LFU720と同等であることを示す。LDL−R測定のため、細胞をPCSK9結合抗体でインキュベートし、抗LDL−R抗体で標識した。LDL取り込みのため、細胞をPCSK9結合抗体、PCSK9およびDiI−LDLでインキュベートした。LDL−R抗体およびDiI−LDL蛍光はフローサイトメトリーで測定した。反復測定の平均+SEMを各アッセイについて示す。結果は、3回の独立した実験を表す。
【0100】
LDL取り込みアッセイのために、10%牛胎児リポタンパク質欠乏血清(Intracel)およびヒトPCSK9(Hampton et al. PNAS (2007) 104:14604-14609)200nMを含有するDMEM中でPSCK9結合抗体を室温で30分間インキュベートし、抗体/PCSK9/培地溶液を96ウェルプレート中の細胞に添加し、一晩インキュベートした。翌日、1,1’−ジオクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチル−インドカルボシアニン過塩素酸塩標識LDL(DiI−LDL、Biomedical Technologies)をさらに2時間かけて添加した。次に培地を吸引し、細胞をPBSで3回洗浄し、細胞を0.25%トリプシン−EDTAで分離した。その後、細胞をFACS緩衝液(5%牛胎児血清、EDTA 2mMおよび0.2%アジ化ナトリウムを含有するPBS)に移し、1000×gで10分間遠心し、吸引し、1%パラホルムアルデヒドで固定した。LDL取り込みは、フローサイトメトリー(Becton Dickinson LSR II)を使用して、細胞のDiI蛍光(488nmで励起し、575nmで放射)によって測定した。表面LDL−Rアッセイのために、抗体を含有する無血清培地で細胞をインキュベートし、PBSで洗浄し、ベルシン(Biowhittaker、17−771E)およびFACS緩衝液中に採取した。細胞を新たなプレートに移し、1200rpMで5分間遠心し、正常なウサギIgG(MP biomedicals)で遮断した。細胞をFACS緩衝液中でウサギ抗hLDL−R−Alexa647IgG(5μg/ml)標識抗体で標識し、遠心して、洗浄し、1%パラホルムアルデヒドで固定した。表面LDL−Rは、フローサイトメトリー(488nmで励起し、633nmで放射)によって測定した。EC50はPrism(GraphPad)を使用して計算した。
【0101】
【図10】図10は、本発明の抗体のコレステロール低下効果を測定するためのヒトPCSK9注入マウスモデルの研究設計の概略を示す。LGT209、LGT210およびLGT211は、マウスPCSK9には検出可能な結合は示さないが、hPCSK9には高い親和性で結合するHumaneered(商標)抗PCSK9抗体である。LGT209、LGT210またはLGT211がhPCSK9媒介による非HDLコレステロールの上昇を阻害し、かつPCSK9媒介による肝LDLRの分解を防御できるかどうかを試験するために、hPCSK9を含有する浸透圧ミニポンプを埋め込む(持続注入のため)3時間前にこれらの抗体を各マウスに注射した。血漿および肝臓組織採取は、hPCSK9注射の24時間後に実施した。
【0102】
【図11】図11は、注入マウスモデルにおいて、抗体LGT209、LGT210およびLGT211による処理がヒトPCSK9(「hPCSK9」)の蓄積を引き起こしたことを示している。簡単に説明すると、全hPCSK9は捕捉用にmAb7D16を使用したELISAによって測定した。mAb7D16はLGT209、LGT210およびLGT211よりもPCSK9上のエピトープに結合し、全(遊離および結合)PCSK9を測定するために使用することができる。全hPCSK9で認められた増加はおそらく、hPCSkK9/Ab複合体の増加によるものであろう。遊離抗体は捕捉用にhPCSK9を使用するELISAによって測定した。このアッセイでは、「遊離」抗体が測定され、おそらく1:1Ab:PCSK9複合体が測定される。C57BL/6マウスを媒体単独、PCSK9単独、PCSK9+LGT210 20mg/kg、PCSK9+NVP−LGT211 20mg/kg、またはマウス非特異的IgG混合物(陰性対照)で処理した。個々のデータ点をプロットし、平均値は水平線で明示し、p<0.05は有意とみなした。
【0103】
血漿IgGレベルは、Meso Scale Discovery(MSD)アッセイによって定量した。遊離抗体は捕捉用のhPCSK9を使用して測定した。このアッセイでは、「遊離」抗体が測定され、おそらく1:1Ab:PCSK9複合体が測定される。IgG MSDアッセイでは、MSD標準96プレート(L11XA−3)を使用した。簡単に説明すると、PBSに溶かした捕捉抗原PCSK9−his 1μg/mlの25から28μl(25〜28ng/ウェル)でプレートを4℃で一晩コーティングした。コーティング溶液を除去し、プレートを5%MSDブロッカーA(R93AA−2)150μl/ウェルで室温で1時間振盪して遮断した。プレートをPBS+0.05% Tween−20の300μlで3回洗浄した後、IgG標準物質希釈物(MSDブロッカーAで10,000から0.0003ng/mlまでの10段階に希釈)、未知の血漿試料希釈物(MSDブロッカーAで10,000倍)または品質対照試料25μlを添加し、室温で1時間振盪しながらインキュベートした。洗浄後、検出抗体1μg/ml(MSDヤギ抗マウスSULFO−TAG標識検出抗体、R32AC−5、1%BSA/PBS/0.05%Tween20で希釈)25μl/ウェルを添加し、室温で1時間振盪しながらインキュベートした。洗浄し、1倍読み取り緩衝液T 150μl/ウェルを添加した後、プレートをMSD SECTOR Imager 6000ですぐに読み取った。標準曲線および未知の試料のプロットは、MSDデータ分析ソフトウェアを使用して計算した。
【0104】
血漿IgGおよびhPCSK9の両レベルは、Meso Scale Discovery(MSD)アッセイによって定量した。MSD hPCSK9アッセイは、IgGアッセイと類似しているが、以下を除く。プレートを捕捉抗体(7D16.C3:2.95mg/ml)1μg/mlの25〜28μlでコーティングした。mAb7D16はLGT209、LGT210およびLGT211よりもPCSK9上のエピトープに結合し、全(遊離および結合)PCSK9を測定するために使用することができる。プレートを遮断した後、hPCSK9標準物質希釈物(10,000から0.0003ng/mlの10箇所)および血漿試料希釈物(MSDブロッカーAで10,000倍)25μlを室温で1時間振盪しながらインキュベートし、その後1次検出抗体(ウサギ抗PCSK9ポリクローナル抗体、Ab4、施設内ウサギ(in house rabbit)ID#RB11835)でインキュベートした。MSD SECTOR Imager6000で読み取る前に、2次検出抗体(MSDヤギ抗ウサギSULFO−TAG標識検出抗体、R32AB−5)によるインキュベーション工程を追加した。全hPCSK9で認められた増加はおそらく、hPCSkK9/Ab複合体の増加によるものであろう。統計学的分析は、GraphPad Prism 4.02(GraphPadソフトウェア、San Diego、CA)を使用して実施した。一元配置ANOVAを使用して群の差を分析し、全体の差が見出されたときは、ニューマンクールズのポストホック検定を使用して処理群の具体的な鎖を決定した。
【0105】
【図12】図12は、注入マウスモデルにおいて、抗体LGT209、LGT210およびLGT211がhPCSK9媒介による分解から肝LDL−Rの防御をもたらすことを示している。C57BL/6マウスを媒体単独、PCSK9単独、PCSK9+LGT210 20mg/kg、PCSK9+NVP−LGT211 20mg/kg、または非特異的IgG混合物(陰性対照)で処理した。個々の動物の肝臓試料を示す。
【0106】
細胞膜試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動は、20列の4〜12%ビス−トリスInvitrogen Midiゲル(Invitrogen WG1402BX10)を使用してMOPS泳動緩衝液(Invitrogen NP0001)を用いて実施した。調製した試料は、70℃で10分間加熱し、氷上に置き、その後Matrixマルチチャンネルピペッターを使用して各試料10μlをゲル上に添加した。大きさの決定およびゲル方向を示すため、SeeBlue Plus2マーカー(Invitrogen LC5925)を試料の横に添加した。色素の先端がゲルの底に到達するまで、ゲルを200Vの定電圧で泳動した。電気泳動後、iBlotユニット(Invitrogen IB1001EU)を使用してゲルをニトロセルロース膜(InvitrogenIB3010−01)に移した。移動は20Vで7分間実施した。移動後、膜をPierce Superblock T20(Pierce 37536)で少なくとも30分間遮断した。膜を「食品密封」袋に入れ、次いでSuperblock中にウサギ抗LDLR抗体の1:500希釈物を添加し、その後4℃で振盪しながら一晩インキュベートした。膜を振盪しながらTBS/0.05% Tweenで5分間ずつ5回濯ぎ、その後Superblock中でヤギ抗ウサギHRP 2次抗体の1:30,000希釈物を膜に1時間添加した。膜をTBS/0.05%Tweenで振盪しながら5分間ずつ5回再度濯いだ。HRP結合体は、Pierce SuperSignal West Pico化学ルミネセンス基質(Pierce 37079)を使用して、製造者の指示に従って検出した。簡単に説明すると、ペルオキシド溶液およびルミノール/エンハンサー溶液を同部ずつ混合し、膜に5分間添加した(0.2ml/cm2)。過剰な溶液をブロッティングによって除去し、膜を曝露用のKodak BioMax MR X線フィルム(Kodak 870 1302)に曝露した。
【0107】
【図13】図13A〜Cは、hPCSK9注入マウスモデルにおいて、抗体LGT209、LGT210およびLGT211が血漿中の非HDLコレステロールの低下を引き起こすことを示している。LGT209抗体を予め注射すると、非HDLコレステロールのhPCSK9媒介による上昇から46%の防御が引き起こされた。LGT210またはLGT211を予め注射すると、非HDLコレステロールのhPCSK9媒介による上昇から同等以上の防御が引き起こされた。13C10は、hPCSK9に高い親和性で結合する有効なマウス抗PCSK9抗体であり、このアッセイで陽性対照として使用した。C57BL/6マウスを媒体単独、PCSK9単独、PCSK9+LGT209 20mg/kg、PCSK9+LGT210 20mg/kg、PCSK9+NVP−LGT211 20mg/kg、PCSK9+13C10 20mg/kg、またはマウス非特異的IgG混合物(陰性対照)で処理した。個々の値は、水平線として明示した平均値で示した。血漿全コレステロールレベルを定量するために、Olympus臨床用分析器(Olympus America Inc.:Olympus AU400)を使用した。血漿試料は、ddH2Oで1:3に希釈し、希釈した血漿試料40μlの全コレステロールレベルを製造者の指示に従って定量した。血漿HDLおよび非HDLを定量するため、Helena LaboratoriesのSpife 3000を使用してリポタンパク質コレステロール画分を得た。試料調製、ゲル調製、試料添加、ゲル電気泳動、染色、洗浄および乾燥を含む手順は全て、操作者用マニュアルの指示に従った。次に、ゲルをQuick Scan 2000でスリット5を用いて走査し、リポタンパク質コレステロール画分の相対パーセントをHelena濃度計で計算した。最後に、HDLおよび非HDLの絶対値は、各画分のパーセントおよび全コレステロールレベルを乗ずることによって計算した。
【0108】
【図14】図14は、「典型的」IgG1薬物動態(PK)プロファイルと比較した抗体LGT209、LGT210およびLGT211(ヒトIgG1−サイレント)のラット(PK)プロファイルを示す。抗体LGT209、LGT210およびLGT211の半減期は、典型的なIgG1半減期(約6日)と比較して著しく長い(7〜13日)(例えば、ヒト対象で測定した通り)。標的媒介による体内動態(target mediated disposition)(TMD)の証拠はなく、抗体は齧歯類のPCSK9と交差反応しないことが示された。各試験抗体10mg/kgを3匹のオスLewisラットに注射した。0、1、6、24時間後、2、4、8および16日後に、血液250μlを採取し、血漿を清澄にし、希釈し、回収したヒト全抗体を測定するために捕捉ELISA(ヤギ抗ヒトIgG)で評価した。標準曲線も各試験抗体のために作成した。回収されたIgGの量は、ラットにおける典型的なヒトIgGの予測回収に対してグラフにした。
【発明を実施するための形態】
【0109】
1.導入
本発明の抗体および抗原結合分子は特異的にプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9a型(「PCSK9」)に結合する。本発明の抗PCSK9抗体および抗原結合分子は、PCSK9のC末端に結合し、PCSK9の低密度リポタンパク質受容体(LDL−R)への結合を妨害することなくPCSK9媒介によるLDL−Rの分解を妨害するという予期せぬ特性を備えている。特に、抗PCSK9抗体および抗原結合分子はPCSK9の残基680〜692内のエピトープ、例えば、PCSK9のC末端に位置するアミノ酸配列RSRHLAQASQELQ(配列番号49)内のエピトープに結合する。本発明の抗体および抗原結合分子は循環しているPCSK9だけでなく細胞に結合している間のPCSK9にも結合するので、患者におけるインビボ半減期は比較的長く、例えば、少なくとも約7日以上で、いくつかの実施形態では、投与後少なくとも2週間脂質低下効果を実現する。本発明の抗PCSK9抗体および抗原結合分子は、PCSK9のアンタゴニストで、LDL−RのPCSK9媒介による分解を低下および/または阻害し、それによって低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の取り込み増加を促進する。抗PCSK9抗体および抗原結合分子は、例えば、脂質代謝異常、高コレステロール血症、トリグリセリド血症およびその他のPCSK9媒介による病的状態に罹患した対象の治療に用途が見出される。
【0110】
2.改善された抗PCSK9抗体一般論
抗PCSK9抗体断片は、限定はしないが、組換え発現、化学合成および抗体4量体の酵素的消化を含む当業界で公知の任意の手段によって生成することができる一方、完全長モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマまたは組換え生成によって得ることができる。組換え発現は、当業界で公知の適切な任意の宿主細胞、例えば、哺乳類宿主細胞、細菌宿主細胞、酵母宿主細胞、昆虫宿主細胞などから行うことができる。存在するならば、抗PCSK9抗体の定常領域は任意の型または亜型であってもよく、適切ならば、本発明の方法によって処理した対象の種[例えば、ヒト、非ヒト霊長類またはその他の哺乳類、例えば、農業用哺乳類(例えば、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ラクダ)、家畜哺乳類(例えば、イヌ、ネコ)または齧歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ)]由来であるように選択することができる。いくつかの実施形態では、抗PCSK9抗体はヒト化またはHumaneered(商標)される。いくつかの実施形態では、定常領域アイソタイプは、IgG、例えば、IgG1である。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1定常領域は、細胞または補体のC1成分上のFc受容体(FcR)、例えば、FcガンマR1などのエフェクターリガンドに対する結合親和性が低下するように変異させる。例えば、米国特許第5,624,821号を参照のこと。このような変異を含有する抗体は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)または補体依存性細胞毒性(CDC)の低下または欠如をもたらす。いくつかの実施形態では、IgG1定常領域のアミノ酸残基L234およびL235は、Ala234およびAla235に置換する。重鎖定常領域中の残基の番号は、EUインデックスの番号である(Kabat, et al., (1983) “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” U.S. Dept. Health and Human Servicesを参照のこと)。例えば、Woodle, et al, Transplantation (1999) 68(5):608-616; Xu, et al., Cell Immunol (2000) 200(1):16-26; and Hezareh, et al., J Virol 75(24):12161-8も参照のこと。
【0111】
本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子には、ラクダ科の骨格を有する単一ドメイン抗原結合単位も含まれる。ラクダ科の動物には、ラクダ、ラマおよびアルパカが含まれる。ラクダ科は軽鎖の欠如した機能的抗体を生成する。重鎖可変(VH)ドメインは自動的に折り畳まれ、抗原結合単位として独立して機能する。その結合表面には、古典的な抗原結合分子(Fab)または1本鎖可変断片(scFv)の6個のCDRと比較して、3個のみのCDRが含まれる。ラクダ科抗体は、従来の抗体と同程度の結合親和性に達することができる。本明細書で例示した抗PCSK9抗体の結合特異性を備えたラクダ科骨格をベースにした抗PCSK9分子は、当業界で周知の方法、例えば、Dumoulin et al., Nature Struct. Biol. 11:500?515, 2002;Ghahroudi et al., FEBS Letters 414:521?526, 1997およびBond et al., J Mol Biol. 332:643-55, 2003を使用して生成することができる。
【0112】
本発明の改善された抗PCSK9抗体は、参照抗体の特異性および親和性を保持しながら、ヒト生殖系列V領域配列と実質的にアミノ酸配列が同一なV領域配列を有する遺伝子操作されたヒト抗体である。いずれも本明細書に参考として組み込んだ米国特許出願公開第2005/0255552号および米国特許出願公開第2006/0134098号を参照のこと。改善のプロセスでは、参照抗体の可変領域から抗原結合特異性を決定するために必要な最小限の配列情報を確認し、その情報をヒトの部分的V領域遺伝子配列のライブラリーに移してヒト抗体V領域のエピトープを焦点に当てたライブラリーを作製する。微生物をベースにした分泌系を使用して、抗体Fab断片としてライブラリーのメンバーを発現し、例えば、コロニーリフト結合アッセイを使用して、このライブラリーの抗原結合Fabをスクリーニングする。例えば、米国特許出願公開第2007/0020685号参照。陽性クローンはさらに、最高の親和性を有するものとして特徴付けることができる。遺伝子操作して得られたヒトFabは、親、参照抗PCSK9抗体の結合特異性を保持しており、通常、親抗体と比較して抗原に対して同等またはより高い親和性を有し、ヒト生殖系列V領域に匹敵した高い程度の配列同一性を有するV領域を有する。
【0113】
エピトープを焦点とするライブラリーを作製するために必要な最小限の結合特異性決定基(BSD)は通常、重鎖CDR3(「CDRH3」)内の配列、および軽鎖のCDR3(「CDRL3」)内の配列によって表される。BSDは、CDR3の一部または完全長を含んでいてもよい。BSDは、連続または非連続アミノ酸残基から構成され得る。場合によっては、エピトープを焦点とするライブラリーは、BSDおよびヒト生殖系列Jセグメント配列を含有する参照抗体の特有のCDR3−FR4領域に結合したヒトVセグメント配列から構成される(米国特許出願公開第2005/0255552号を参照のこと)。あるいは、ヒトVセグメントライブラリーは、参照抗体Vセグメントの一部のみがヒト配列のライブラリーによって最初に置換される連続的カセット置換によって作製され得る。残存する参照抗体アミノ酸配列の場合に結合を支持する同定されたヒト「カセット」は、その後、完全なヒトVセグメントを作製するために第2のライブラリースクリーンに再結合される(米国特許出願公開第2006/0134098号を参照のこと)。
【0114】
いずれの場合においても、参照抗体の特異性決定基を含有する、対になった重鎖および軽鎖CDR3セグメント、CDR3−FR4セグメント、またはJセグメントは、ライブラリーから得られた抗原結合部が参照抗体のエピトープ特異性を保持するように、結合特異性を制限するように使用される。最適な結合速度を備えた抗体を同定するために、ライブラリー構築中に各鎖のCDR3領域に、成熟した変化をさらに導入することができる。得られた遺伝子操作されたヒト抗体は、ヒト生殖系列ライブラリーから得られたVセグメント配列を有し、CDR3領域内の短いBSD配列を保持し、ヒト生殖系列フレームワーク4(FR4)領域を有する。
【0115】
したがって、いくつかの実施形態では、抗PCSK9抗体は、元の、または参照モノクローナル抗体から得られた重鎖および軽鎖のCDR3内の最小限の結合配列決定基(BSD)を含有する。重鎖および軽鎖可変領域(CDRおよびFR)の残存する配列、例えば、VセグメントおよびJセグメントは、対応するヒト生殖系列および親和性成熟したアミノ酸配列由来である。Vセグメントは、ヒトVセグメントライブラリーから選択することができる。さらなる配列の改良は、親和性成熟によって達成することができる。
【0116】
他の実施形態では、抗PCSK9抗体の重鎖および軽鎖は、例えば、ヒトVセグメントライブラリーから選択される、対応するヒト生殖系列配列のヒトVセグメント(FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3)および元のモノクローナル抗体のCDR3−FR4配列セグメントを含有する。CDR3−FR4配列セグメントはさらに、配列セグメントを対応するヒト生殖系列配列で置換することによって、かつ/または親和性成熟によって改良することができる。例えば、FR4および/またはBSDを取り囲むCDR3配列は、対応するヒト生殖系列配列で置換することができ、元のモノクローナル抗体のCDR3のBSDは保持される。
【0117】
いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントの対応するヒト生殖系列配列はVh1−02である。いくつかの実施形態では、重鎖Jセグメントの対応するヒト生殖系列配列はJH4である。いくつかの実施形態では、重鎖Jセグメントは、ヒト生殖系列JH4の部分的配列WGQGTLVTVSS(配列番号50)を含む。ヒト生殖系列JH4の完全長Jセグメントは、YFDYWGQGTLVTVSS(配列番号51)である。可変領域遺伝子は、イムノグロブリン可変領域遺伝子の標準的命名法を基準とする。現在のイムノグロブリン遺伝子情報は、例えば、ImMunoGeneTics(IMGT)のワールドワイドウェブ、V−baseおよびPubMedデータベースから利用可能である。Lefranc, Exp Clin Immunogenet. 2001;18(2):100-16;Lefranc, Exp Clin Immunogenet. 2001;18(3):161-74;Exp Clin Immunogenet. 2001;18(4):242-54およびGiudicelli, et al., Nucleic Acids Res. 2005 Jan 1;33(Database issue):D256-61も参照のこと。
【0118】
いくつかの実施形態では、軽鎖Vセグメントの対応するヒト生殖系列配列はVK3 L6である。いくつかの実施形態では、軽鎖Jセグメントの対応するヒト生殖系列配列はJk2である。いくつかの実施形態では、軽鎖Jセグメントは、ヒト生殖系列Jk2の部分的配列FGQGTKLEIK(配列番号52)を含む。ヒト生殖系列Jk2の完全長Jセグメントは、YTFGQGTKLEIK(配列番号53)である。
【0119】
いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントは、アミノ酸配列QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFS(D/T)MYMSWVRQAPGQGLEWMGRIDPAN(A/E/G)HTNY(A/D)(P/Q)KFQ(A/G)RVTMTRDTSISTAYMELSRLTSDDTAVYYCAR(配列番号28)と少なくとも85%、89%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントは、アミノ酸配列QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFSTMYMSWVRQAPGQGLEWMGRIDPANEHTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLTSDDTAVYYCAR(配列番号27)と少なくとも85%、89%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0120】
いくつかの実施形態では、軽鎖Vセグメントは、アミノ酸配列(E/Q)IV(L/M)TQSPATLSVSPGERATLSC(R/S)AS(Q/S)SVSYMHWYQQKPGQAPRLLIY(G/L)(T/V)F(N/R)(L/R)A(S/T)GIPDRFSGSGSGTDFTLTIGRLEPEDFAVYYC(配列番号31)と少なくとも85%、89%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントは、アミノ酸配列QIVLTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSVSYMHWYQQKPGQAPRLLIYGVFRRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTIGRLEPEDFAVYYC(配列番号29)と少なくとも85%、89%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントは、アミノ酸配列EIVMTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSVSYMHWYQQKPGQAPRLLIYGVFRRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTIGRLEPEDFAVYYC(配列番号30)と少なくとも85%、89%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0121】
いくつかの実施形態では、
i)重鎖CDR3は、アミノ酸配列SYYYY(A/N)MD(A/F/S/V/Y)(配列番号14)を含み、
ii)軽鎖CDR3可変領域は、アミノ酸配列LQWSSDPPT(配列番号26)を含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、
i)重鎖CDR3は、配列番号12および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
ii)軽鎖CDR3は、配列番号26のアミノ酸配列を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、アミノ酸配列(D/T)MYMS(配列番号8)を含むCDR1、アミノ酸配列RIDPAN(A/E/G)HTNY(A/D)(P/Q)KFQ(A/G)(配列番号11)を含むCDR2およびアミノ酸配列SYYYY(A/N)MD(A/F/S/V/Y)(配列番号14)を含むCDR3を含む重鎖可変領域を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、アミノ酸配列(R/S)AS(Q/S)SVSYMH(配列番号22)を含むCDR1、アミノ酸配列(G/L)(T/V)F(N/R)(L/R)A(S/T)(配列番号25)を含むCDR2およびアミノ酸配列LQWSSDPPT(配列番号26)を含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号32のアミノ酸配列を含むFR1、配列番号33のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号34のアミノ酸配列を含むFR3および配列番号35のアミノ酸配列を含むFR4を含む。同定したアミノ酸配列は、1個または複数の置換されたアミノ酸(例えば、親和性成熟から)または1個または2個の保存的に置換されたアミノ酸を有することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は配列番号36のアミノ酸配列を含むFR1、配列番号37のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号38のアミノ酸配列を含むFR3および配列番号39のアミノ酸配列を含むFR4を含む。同定したアミノ酸配列は、1個または複数の置換されたアミノ酸(例えば、親和性成熟から)または1個または2個の保存的に置換されたアミノ酸を有することができる。
【0127】
完全長にわたって、本発明の抗PCSK9抗体の可変領域は一般的に、可変領域全体(例えば、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4)が対応するヒト生殖系列可変領域アミノ酸配列と少なくとも約85%、例えば、少なくとも約89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。例えば、抗PCSK9抗体の重鎖は、ヒト生殖系列可変領域Vh1−02に対して少なくとも約85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。抗PCSK9抗体の軽鎖は、ヒト生殖系列可変領域VK3L6に対して少なくとも約85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、フレームワーク領域内のアミノ酸のみが添加、欠失または置換されている。いくつかの実施形態では、配列同一性の比較にはCD3を除外する。
【0128】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号40の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域を含み、配列番号41の軽鎖可変領域(すなわち、コンセンサス配列)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号1の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域を含み、配列番号15の軽鎖可変領域(すなわち、マウスLFU720)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号2の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域を含み、配列番号16の軽鎖可変領域(すなわち、LGT−209)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号2の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域を含み、配列番号18の軽鎖可変領域(すなわち、LGT−210)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号4の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域を含み、配列番号16の軽鎖可変領域(すなわち、LGT−211)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号3の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖ポリペプチドを含み、配列番号17の軽鎖可変領域(すなわち、LGT−209)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖ポリペプチドを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号3の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖ポリペプチドを含み、配列番号19の軽鎖可変領域(すなわち、LGT−210)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖ポリペプチドを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号5の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖ポリペプチドを含み、配列番号17の軽鎖可変領域(すなわち、LGT−211)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖ポリペプチドを含む。
【0136】
アミノ酸の長さが20個未満の同定されたアミノ酸配列では、1個または2個の保存的アミノ酸残基置換が許容得る一方、所望する特異的結合および/またはアンタゴニスト活性を依然として保持される。
【0137】
本発明の抗PCSK9抗体は一般的にPCSK9に結合し、平衡解離定数(KD)は約10−8Mまたは10−9M未満、例えば、約10−10Mまたは10−11M未満、いくつかの実施形態では、約10−12Mまたは10−13M未満である。
【0138】
抗PCSK9抗体は、所望により多量体化し、本発明の方法に従って使用することができる。抗PCSK9抗体は、完全長4量体抗体(すなわち、2本の軽鎖および2本の重鎖を有する)、1本鎖抗体(例えば、scFv)または1個もしくは複数の抗原結合部位を形成し、PCSK9結合特異性を付与する抗体断片、例えば、重鎖および軽鎖可変領域(例えば、Fab’またはその他の類似の断片)を含む分子であってもよい。
【0139】
本発明はさらに、本明細書で記載した抗体をコードするポリヌクレオチド、例えば、重鎖または軽鎖可変領域または本明細書で記載した相補性決定領域を含むセグメントをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、重鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号42、配列番号43および配列番号54からなる群から選択されるポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号44、配列番号45および配列番号55からなる群から選択されるポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。
【0140】
いくつかの実施形態では、重鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号42のポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号45(すなわち、LGT−209)のポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。
【0141】
いくつかの実施形態では、重鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号42からなる群から選択されるポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号44(すなわち、LGT−210)からなる群から選択されるポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。
【0142】
いくつかの実施形態では、重鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号43からなる群から選択されるポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号45(すなわち、LGT−211)からなる群から選択されるポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。
【0143】
いくつかの実施形態では、重鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号54のポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号55(すなわち、マウスLFU720)のポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。
【0144】
3.抗PCSK9抗体を同定するためのアッセイ
アンタゴニスト抗体は、抗PCSK9抗体を生成し、各抗体のPCSK9媒介による現象、例えば、LDLRへの結合、LDLR分解の促進を低下させるかまたは阻害する能力を試験することによって同定することができる。このアッセイは、インビボまたはインビトロ(in vitro)で実施することができる。好ましい抗体はPCSK9に結合し、PCSK9がLDLRに結合するのを防御せず、PCSK9媒介によるLDLRの分解を低下させるかまたは阻害する。
【0145】
抗体または抗原結合分子のPCSK9への結合は、限定はしないが、ELISA、Biacoreおよびウェスタンブロットを含む当業界で公知の任意の方法を使用して測定することができる。
【0146】
PCSK9媒介によるLDLRの分解はまた、当業界で公知の任意の方法を使用して測定することができる。一実施形態では、抗PCSK9抗体または抗原結合分子がLDLR分解を阻害する能力は、注入マウスモデルを使用して測定する。抗PCSK9抗体または抗原結合分子をマウスに静脈内注入し(例えば、3μg/時間)、肝臓膜調製物中のLDLRのレベルを、対照抗体(例えば、無関連の抗原に結合する)の静脈内注入を受けたマウスの肝臓膜調製物中のLDLRのレベルと比較して測定した。アンタゴニスト抗PCSK9抗体を受けたマウスは、対照抗体を受けたマウスと比較して、検出可能な高レベルの、例えば、少なくとも10%、20%、50%、80%、100%高いLDLRを有するだろう。
【0147】
抗PCSK9アンタゴニスト抗体はまた、LCL−C、非HDL−Cおよび/または全コレステロールの血漿レベルの低下における治療効果を試験することができる。抗PCSK9抗体または抗原結合分子を哺乳類(例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、ヒト)に静脈内注入し(例えば、3μg/時間)、LCL−C、非HDL−Cおよび/または全コレステロールの血漿レベルを、処理前の同じ哺乳類または対照抗体(例えば、無関連の抗原に結合する)の静脈内注入を受けた哺乳類のLCL−C、非HDL−Cおよび/または全コレステロールの血漿レベルと比較して測定する。アンタゴニスト抗PCSK9抗体を受けた哺乳類は、例えば、処理前の哺乳類または対照抗体を受けた哺乳類と比較して、検出可能に低い、例えば、少なくとも10%、20%、50%、80%、100%低いLCL−C、非HDL−Cおよび/または全コレステロールの血漿レベルを有するだろう。
【0148】
4.抗PCSK9抗体を含む組成物
本発明は、薬学的に許容される担体と一緒に製剤化した本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子を含む医薬組成物を提供する。この組成物は、所与の障害を治療または予防するために適しているその他の治療薬をさらに含有することができる。薬学的担体は、組成物を増強するか、または安定化し、あるいは、組成物の調製を容易にする。薬学的に許容される担体には、生理学的に適合した溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などが含まれる。
【0149】
本発明の医薬組成物は、当業界で公知の様々な方法によって投与することができる。投与の経路および/または様式は、所望する結果に応じて変化する。投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下に投与するか、あるいは標的部位の近位に投与することが好ましい。薬学的に許容される担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、鼻腔内、吸入、脊髄内または腸内投与(例えば、注射または注入による)に適しているべきである。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、抗体、二特異性および多特異性分子は、酸による作用および化合物を不活性化することができるその他の天然の状態から化合物を防御するための材料でコーティングしてもよい。
【0150】
抗体は、単独でまたはその他の適切な成分と組み合わせて、吸入によって投与するエアロゾル製剤にすることができる(すなわち、「噴霧」することができる)。エアロゾル製剤は、例えば、ジクロロフルオロメタン、プロパン、窒素などの許容できる加圧噴射剤に入れることができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、組成物は滅菌されており、流体である。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合には必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。多くの場合、組成物には等張化剤、例えば、糖、マンニトールまたはソルビトールなどのポリアルコールおよび塩化ナトリウムを含めることが好ましい。吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物中に含めることによって、注射可能な組成物を長期にわたって吸収させることができる。
【0152】
本発明の医薬組成物は、当業界で周知であり、日常的に実施されている方法によって調製することができる。薬学的に許容される担体は、投与する特定の組成物によって、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法によって、ある程度決定される。したがって、本発明の医薬組成物の適切な製剤は多種多様である。抗体を製剤化するため、ならびに適切な用量および計画を決定するために適用できる方法は、例えば、それぞれ本明細書に参考として組み込んだRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., University of the Sciences in Philadelphia, Eds., Lippincott Williams & Wilkins (2005)およびMartindale: The Complete Drug Reference, Sweetman, 2005, London: Pharmaceutical Press.およびMartindale, Martindale: The Extra Pharmacopoeia, 31st Edition., 1996, Amer Pharmaceutical AssnおよびSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978に見出すことができる。医薬組成物は、GMP条件下で製造されることが好ましい。通常、抗PCSK9抗体の治療有効量または効果用量を本発明の医薬組成物に使用する。抗PCSK9抗体は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容される剤形に製剤化する。投与計画は、所望する応答(例えば、治療応答)を実現するために調節する。治療または予防有効用量の決定において、低用量を投与し、その後、所望する応答が、最小限の副作用で、または副作用なく実現するまで徐々に増加させることができる。例えば、1回で大量投与してもよく、数回に分けて徐々に投与してもよく、または、治療状況の緊急性によって必要に応じて用量を減少させるか、または増加させてもよい。投与を簡便にし、投薬を一定にするためには、非経口組成物を投与単位形態に製剤化すると特に有利である。本明細書で使用した投与単位形態とは、治療する対象のための単位製剤として適当な物理的に分離された単位のことで、各単位は、必要な医薬担体と共に、所望する治療効果を生じるように計算された、予め決定された量の活性化合物を含有する。
【0153】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、患者に対して毒性を有さず、特定の患者、組成物および投与様式について所望する応答を実現するために有効な活性成分の量を得るために変化させることができる。選択した用量レベルは、使用した本発明の特定の組成物またはそのエステル、塩またはアミドの活性を含む様々な薬物動態因子、投与経路、投与時間、使用した特定の化合物の排泄速度、治療期間、使用した特定の組成物と併用したその他の薬剤、化合物および/または材料、治療する患者の年齢、性別、体重、症状、一般的健康状態および既往歴などの要素によって左右される。
【0154】
いくつかの実施形態では、薬理学的組成物には、抗PCSK9抗体または抗原結合分子および第2の薬理学的作用物質の混合物が含まれる。例えば、組成物には、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子およびLDL−C、非HDL−Cおよび全コレステロールを含むコレステロールを低下させるため、および/またはHDL−Cを上昇させるために有益であることが知られている薬剤を含めてもよい。
【0155】
本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体または抗原結合分子と混合して含めるための第2の薬剤の例には、限定はしないが、HMG−CoA還元酵素阻害剤(すなわち、スタチン)、フィブラート(例えば、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、シプロフィブラート、ベザフィブラート)、ナイアシンおよびその類似体、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸捕捉剤(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム)、回腸胆汁酸輸送体(IBAT)阻害剤、甲状腺ホルモン様物質(例えば、化合物KB2115)、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤、二重ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アルファおよびガンマアゴニスト、アシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤、ニーマンピックC1様1(NPC1−L1)阻害剤(例えば、エゼチミブ)、ATP結合カセット(ABC)タンパク質G5またはG8のアゴニスト、コレステロールエステル輸送タンパク質(CETP)阻害剤、PCSK9を標的とする阻害性核酸およびapoB100を標的とする阻害性核酸が含まれる。脂質低下剤は当業界では公知で、例えば、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 11th Ed., Brunton, Lazo and Parker, Eds., McGraw-Hill (2006); 2009 Physicians’ Desk Reference (PDR)、例えば、63rd (2008) Eds., Thomson PDRに記載されている。
【0156】
本発明の組成物で使用する他の脂質低下剤は、例えば、Chang, et al., Curr Opin Drug Disco Devel (2002) 5(4):562-70;Sudhop, et al., Drugs (2002) 62(16):2333-47;Bays and Stein, Expert Opin Pharmacother (2003) 4(11):1901-38;Kastelein, Int J Clin Pract Suppl (2003) Mar(134):45-50;Tomoda and Omura, Pharmacol Ther (2007) 115(3):375-89;Tenenbaum, et al., Adv Cardiol (2008) 45:127-53;Tomkin, Diabetes Care (2008) 31(2):S241-S248;Lee, et al., J Microbiol Biotechnol (2008) 18(11):1785-8;Oh, et al., Arch Pharm Res (2009) 32(1): 43-7;Birch, et al, J Med Chem (2009) 52(6):1558-68およびBaxter and Webb, Nature Reviews Drug Discovery (2009) 8:308-320に記載および/または概説されている。
【0157】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子はスタチンとの混合物として形成される。スタチンの例には、限定はしないが、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンが含まれる。
【0158】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子は、高コレステロール血症またはトリグリセリド血症を誘導する薬理学的作用物質との混合物として提供される。例えば、第2の薬理学的作用物質は、プロテアーゼ阻害剤、例えば、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、チプラナビル、ダウラナビル、アバカビル−ラミブジン−ジドブジン(トリジビル)であってもよい。いくつかの実施形態では、この第2の薬理学的作用物質はタクロリムスである。
【0159】
5.抗PCSK9抗体の使用方法
a.抗PCSK9抗体による治療を受ける状態
本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体および抗原結合分子は、PCSK9の活性または過剰活性によって媒介される任意の病的状態の治療において用途が見出される。
【0160】
例えば、様々な理由または病因のために脂質代謝異常または高コレステロール血症を発症する危険性を有するか、またはその危険性に瀕している個体は、本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体および抗原結合分子の投与によって利益を得る可能性がある。例えば、個体は、機能的LDL−Rが存在する家族的または遺伝的に伝達されたホモ接合的またはヘテロ接合的高コレステロール血症を有していてもよい。家族的または遺伝的に受け継がれた高コレステロール血症に関連した、および/または原因となる遺伝子変異は、例えば、Burnett and Hooper, Clin Biochem Rev (2008) 29(1):11-26にまとめて記載されている。個体はまた、脂質代謝異常または高コレステロール血症を発症する危険性に関与するか、または危険性を増大させるその他の病的状態を有するか、または行動をとっていてもよい。例えば、個体は肥満であるか、または糖尿病もしくは代謝異常症候群に罹患していてもよい。個体は、喫煙者であってもよく、ほとんど体を動かさない生活を送っていていてもよく、またはコレステロールの高い食事をとっていてもよい。
【0161】
PCSK9の標的化は、脂質代謝異常、高コレステロール血症および食後トリグリセリド血症の軽減、回復、阻害または予防のために有用である。例えば、Le May, et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol (2009) 29(5):684-90;Seidah, Expert Opin Ther Targets (2009) 13(1):19-28およびPoirier, et al., J Biol Chem (2009) PMID 19635789を参照のこと。したがって、本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体および抗原結合分子の投与は、脂質代謝異常、高コレステロール血症および食後トリグリセリド血症の軽減、回復、阻害および予防を必要とする個体における脂質代謝異常、高コレステロール血症および食後トリグリセリド血症の軽減、回復、阻害および予防に用途が見出される。
【0162】
本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体および抗原結合分子は、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の減少または低下を必要とする個体における低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の減少または低下に用途が見出される。個体は、LDL−Cのレベルが持続的に上昇していてもよい。いくつかの実施形態では、個体は、LDL−C血漿レベルが一貫して80mg/dLを上回り、例えば、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190mg/dLを上回る。本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体および抗原結合分子はまた、非高密度リポタンパク質コレステロール(非HDL−C)または全コレステロールの減少または低下を必要とする個体における非高密度リポタンパク質コレステロール(非HDL−C)または全コレステロールの減少または低下に用途が見出される。
【0163】
個体は、コレステロールを低下させるために別の薬理学的作用物質を既に摂取していて、この薬剤に耐性または不耐性であってもよい。例えば、個体は、LDL−C、非HDL−Cまたは全コレステロールの許容されるレベルまでの低下においてこの個体では無効であることが証明されたスタチンの治療計画下に既にあってもよい。個体はまた、スタチンの投与に不耐性であってもよい。本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体および抗原結合分子とLDL−Cまたは非HDL−Cの低下および/またはHDL−Cの上昇に有用な第2の薬剤との併用投与は、例えば、投与する第2の薬剤の用量の低下を可能にすることによって、第2の薬剤の有効性および耐性を改善する。
【0164】
いくつかの実施形態では、個体は、例えば、LDLRの分解の異常な増加を引き起こすPCSK9遺伝子の機能獲得型変異を有する。
【0165】
いくつかの実施形態では、個体は、脂質代謝異常または高コレステロール血症を誘導する薬理学的作用物質を投与されており、すなわち、個体は薬剤誘導性の脂質代謝異常または高コレステロール血症である。例えば、個体は、例えば、HIV感染を治療するためにプロテアーゼ阻害剤の治療計画を受けていてもよい。血漿トリグリセリドレベル上昇の原因となることが知られている別の薬理学的作用物質は、移植患者に投与される免疫抑制剤、タクロリムスである。シクロスポリンは、LDLを著しく増加させることが示されたことがある。例えば、Ballantyne, et al. (1996) 78(5):532-5を参照のこと。第2世代抗精神病薬(例えば、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジプラシドン)はまた、脂質代謝異常に関連している。例えば、Henderson, J Clin Psychiatry (2008) 69(2):e04 and Brooks, et al., Curr Psychiatry Rep (2009) 11(1):33-40を参照のこと。
【0166】
b.抗PCSK9抗体の投与
医師または獣医師は、医薬組成物中において使用する本発明の抗体の用量を所望する治療効果を実現するために必要なレベルよりも低いレベルで開始し、所望する効果が実現するまで投薬量を徐々に増加させることができる。一般的に、本発明の組成物の有効用量は、治療する特定の疾患または症状、投与の手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるかまたは動物であるか、その他の投与された治療薬、および処置が予防的であるかまたは治療的であるかを含む多種多様な要素に応じて変化する。治療投薬は、安全性および効果を最適にするために用量設定する必要がある。抗体の投与については、投薬量は宿主体重当たり約0.0001から100mg/kg、より通常は0.01から5mg/kgの範囲である。例えば、投薬量は1mg/kg体重または10mg/kg体重または1〜10mg/kgの範囲内であってもよい。投薬は、必要があれば、または所望であれば、毎日、毎週、2週間毎、毎月またはそれより多いかもしくは少なくてもよい。治療計画の例には、週1回、2週間に1回または月1回または3から6ヵ月に1回の投与が含まれる。
【0167】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを投与する。薬剤が核酸である実施形態では、典型的な投薬量は約0.1mg/kg体重から約100mg/kg体重まで(約100mg/kg体重を含む)の範囲、例えば、約1mg/kg体重と約50mg/kg体重の間であってもよい。いくつかの実施形態では、約1、2、3、4、5、10、15、20、30、40または50mg/kg体重である。
【0168】
抗体は、1回または分割投与で投与することができる。抗体は通常、様々な場合に投与される。1回の投薬の間隔は、必要または所望により、1週間、2週間、1ヵ月または1年であってもよい。間隔はまた、患者における抗PCSK9抗体の血液レベルを測定することによって指示して、不規則であってもよい。いくつかの方法では、投薬量は、血漿抗体濃度1〜1000μg/ml、いくつかの場合では25〜300μg/mlを実現するように調節する。あるいは、抗体は、より少ない頻度での投与を必要とする場合では、徐放製剤として投与することができる。投薬量および頻度は、患者における抗体の半減期に応じて変化させる。一般的に、ヒト化抗体は、キメラ抗体および非ヒト抗体よりも長い半減期を示す。投与の投薬量および頻度は、処置が予防であるか、または治療であるかに応じて変化させることができる。予防適用では、比較的低用量が比較的少ない頻度の間隔で、長期間にわたって投与される。患者によっては、残りの人生において治療を受け続ける。治療適用では、疾患の進行が抑えられるか、または停止するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高用量が必要とされることが時々ある。その後、患者は予防的投与計画を受けることができる。いくつかの実施形態では、抗PCSK9抗体または抗原結合剤は、患者の血漿LDL−Cレベルが予め決定した閾値レベルを上回るとき、例えば、少なくとも約80mg/dL、例えば、少なくとも約90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190mg/dLまたはそれ以上のときに投与される。
【0169】
c.第2の薬剤との同時投与
PCSK9抗体アンタゴニストは、LDL−C、非HDL−Cおよび全コレステロールを含むコレステロールを低下させるため、および/またはHDL−Cを上昇させるために有益であることが知られている薬剤と組み合わせて使用することができる。
【0170】
活性薬剤は抗PCSK9アンタゴニスト抗体と混合して一緒に投与することができるか、または各薬剤は別々に投与することができる。抗体薬剤およびその他の活性剤は同時に投与することができるが、同時に投与する必要はない。
【0171】
本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体または抗原結合分子との同時投与で使用するための第2の薬剤の例には、限定はしないが、HMG−CoA還元酵素阻害剤(すなわち、スタチン)、フィブラート(例えば、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、シプロフィブラート、ベザフィブラート)、ナイアシンおよびその類似体、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸捕捉剤(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム)、回腸胆汁酸輸送体(IBAT)阻害剤、甲状腺ホルモン様物質(例えば、化合物KB2115)、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤、二重ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アルファおよびガンマアゴニスト、アシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤、ニーマンピックC1様1(NPC1−L1)阻害剤(例えば、エゼチミブ)、ATP結合カセット(ABC)タンパク質G5またはG8のアゴニスト、コレステロールエステル輸送タンパク質(CETP)阻害剤、PCSK9を標的とする阻害性核酸およびapoB100を標的とする阻害性核酸が含まれる。
【0172】
使用する他の脂質低下剤は、例えば、Chang, et al., Curr Opin Drug Disco Devel (2002) 5(4):562-70;Sudhop, et al., Drugs (2002) 62(16):2333-47;Bays and Stein, Expert Opin Pharmacother (2003) 4(11):1901-38;Kastelein, Int J Clin Pract Suppl (2003) Mar(134):45-50;Tomoda and Omura, Pharmacol Ther (2007) 115(3):375-89;Tenenbaum, et al., Adv Cardiol (2008) 45:127-53;Tomkin, Diabetes Care (2008) 31(2):S241-S248;Lee, et al., J Microbiol Biotechnol (2008) 18(11):1785-8;Oh, et al., Arch Pharm Res (2009) 32(1): 43-7;Birch, et al, J Med Chem (2009) 52(6):1558-68およびBaxter and Webb, Nature Reviews Drug Discovery (2009) 8:308-320に記載および/または概説されている。
【0173】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子はスタチンと同時投与される。スタチンの例には、限定はしないが、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンが含まれる。
【0174】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子は、高コレステロール血症またはトリグリセリド血症を誘導する薬理学的作用物質と同時投与される。例えば、第2の薬理学的作用物質は、プロテアーゼ阻害剤、例えば、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、チプラナビル、ダウラナビル、アバカビル−ラミブジン−ジドブジン(トリジビル)であってもよい。いくつかの実施形態では、この第2の薬理学的作用物質はタクロリムスである。
【0175】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子は、PCSK9またはapoB100を特異的に標的とする阻害性核酸(例えば、siRNA、miRNA、アンチセンス配列、リボザイム)と共に同時投与する。
【0176】
6.キット
本発明の医薬組成物はキットで提供することができる。ある実施形態では、本発明のキットは、本明細書で記載したように、本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体または抗原結合分子を含む。抗PCSK9抗体または抗原結合分子は均一に、または様々な投薬量で提供することができる。
【0177】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書で記載したように、1種または複数の第2の薬理学的作用物質を含む。第2の薬理学的作用物質は、同じ製剤中に、または抗PCSK9抗体または抗原結合分子とは別の製剤中に提供することができる。第1および第2の薬剤の投薬量は、独立して均一であるか、または変化させてもよい。
【0178】
いくつかの実施形態では、キットは、PCSK9抗体アンタゴニストならびに(an)LDL−C、非HDL−Cおよび全コレステロールを含むコレステロールを低下させ、かつ/またはHDL-Cを上昇させるために有益であることが知られている1種または複数の薬剤を含む。
【0179】
本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体または抗原結合分子を含むキットに含めるための第2の薬剤の例には、限定はしないが、HMG−CoA還元酵素阻害剤(すなわち、スタチン)、フィブラート(例えば、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、シプロフィブラート、ベザフィブラート)、ナイアシンおよびその類似体、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸捕捉剤(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム)、回腸胆汁酸輸送体(IBAT)阻害剤、甲状腺ホルモン様物質(例えば、化合物KB2115)、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤、二重ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アルファおよびガンマアゴニスト、アシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤、ニーマンピックC1様1(NPC1−L1)阻害剤(例えば、エゼチミブ)、ATP結合カセット(ABC)タンパク質G5またはG8のアゴニスト、コレステロールエステル輸送タンパク質(CETP)阻害剤、PCSK9を標的とする阻害性核酸およびapoB100を標的とする阻害性核酸が含まれる。
【0180】
キットで使用する他の脂質低下剤は、例えば、Chang, et al., Curr Opin Drug Disco Devel (2002) 5(4):562-70;Sudhop, et al., Drugs (2002) 62(16):2333-47;Bays and Stein, Expert Opin Pharmacother (2003) 4(11):1901-38;Kastelein, Int J Clin Pract Suppl (2003) Mar(134):45-50;Tomoda and Omura, Pharmacol Ther (2007) 115(3):375-89;Tenenbaum, et al., Adv Cardiol (2008) 45:127-53;Tomkin, Diabetes Care (2008) 31(2):S241-S248;Lee, et al., J Microbiol Biotechnol (2008) 18(11):1785-8;Oh, et al., Arch Pharm Res (2009) 32(1): 43-7;Birch, et al, J Med Chem (2009) 52(6):1558-68およびBaxter and Webb, Nature Reviews Drug Discovery (2009) 8:308-320に記載および/または概説されている。
【0181】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子はスタチンと共にキットに供給した。スタチンの例には、限定はしないが、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンが含まれる。
【0182】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子は、高コレステロール血症またはトリグリセリド血症を誘導する薬理学的作用物質と共にキットに供給する。例えば、第2の薬理学的作用物質は、プロテアーゼ阻害剤、例えば、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、チプラナビル、ダウラナビル、アバカビル−ラミブジン−ジドブジン(トリジビル)であってもよい。いくつかの実施形態では、この第2の薬理学的作用物質はタクロリムスである。
【実施例】
【0183】
以下の実施例は、限定はしないが請求した本発明を例示するために挙げる。
【実施例1】
【0184】
実施例1:Pcsk9アンタゴニストNVPLFU720の生成および同定
概要
Pcsk9に対する機能的抗体アンタゴニストを作製するために研究を行った。タンパク質のHisタグ型に結合することができる抗体を分泌する多数のハイブリドーマを同定した。ハイブリドーマからの抗体は、HepG2細胞のLDLコレステロール取り込み能力を増加させるHepG2細胞上のLDL受容体のPcsk9媒介による分解を阻害する能力で測定した機能的アンタゴニスト活性で評価した。潜在的な機能的マウス抗ヒトPcsk9 IgG1−カッパモノクローナル抗体を同定し、NVP−LFU720(LFU720)と称した。
【0185】
方法
抗原およびその他のタンパク質
ヒトPcsk9タンパク質を分泌する安定した発現細胞株は、HEK293Freestyle(商標)細胞(Invitrogen、Carlsbad、Ca)の形質移入によって作製した。簡単に説明すると、BioCoatフラスコ(Becton Dickinson)でFreestyle(商標)培地(Invitrogen)および10%牛胎児血清中で接着させて培養した細胞を、Lipofectamine 2000(商標)形質移入試薬およびメリチンシグナル配列を特徴とする組換えプラスミド、成熟Pcsk9 cDNA(アミノ酸31〜692)および配列のC末端のhis6(配列番号57)タグ(E.Hampton、GNF、NPL010051によってクローニングされた)を使用して形質移入した。形質移入して48時間後、ゼオシン100μg/mlを培養培地に添加することによって陽性形質移入体の選択を開始した。4週間後、Pcsk9産生細胞の4つの安定した収集物が出現した。最も産生が多いプール4をFreestyle(商標)培地中で無血清懸濁条件に適応させ、その後、生成用量の規模が10〜20LのWave(商標)バイオリアクターを使用して、大量生成のために規模を拡大した。
【0186】
時間をかけて数回培養を実施し、組換えタンパク質は12および30mg/Lの間の生成率で生成した。細胞上清を収集し、クロスフロー濾過によって濃縮した。得られた濃縮物を25ml NiNTA His−Bind Superflowカラム(Tris 50mM/NaCl 300mM/CaCl2 1mM/β−メルカプトエタノール 2mM、pH7.4で平衡化)に0.5ml/分で添加した。ベースラインに達した後、Tris 50mM/NaCl 300mM/イミダゾール 20mM、pH7.4で洗浄して、結合した物質はTris 50mM/NaCl 300mM/イミダゾール 250mM、pH7.4で溶出した。得られた溶出液をPBS、pH7.3で透析し、滅菌濾過して分取した。重合化を測定するため、分析用分子ふるいクロマトグラフィーによって試料を分析した。精製したタンパク質から得られたHPLCクロマトグラムは、2本のピークを示し、主要なピークが85%を占める。完全長タンパク質のHPLC−ESI MS分析によって、質量は58176.0Daで、全システイン残基が酸化したメリチン−hsPcsk9アミノ酸31〜692−Hisから予測された質量に一致していることが明らかである。試料の一部はさらにNグリコシル化されている。混入する質量約13kDのタンパク質は、おそらくタンパク質の遊離プロドメインに類似している。マウスおよびカニクイザルの対応するPcsk9相同体は、Freestule培地中の無血清懸濁液中で培養したHEK293 Freestyle細胞を再度使用して、大規模一時発現法で生成した。組換えプラスミド、天然のリーダー配列およびC末端のhis6(配列番号57)タグを特徴とするマウスPcsk9 cDNAならびにCD33リーダー配列およびC末端his6(配列番号57)タグを特徴とするcyno Pcsk9を、プラスミドDNAの担体としてポリエチレンイミンを1:3(μg/ml:μg/ml DNA:PEI)の比で使用して、Freestyle細胞に形質移入した。生成操作は、Wave(商標)バイオリアクターにおいて10リットルの規模で実施し、タンパク質精製および特徴付けは、ヒトPcsk9タンパク質で前述したプロトコールと同様に実施した。マウスPcsk9タンパク質の収率は0.7と2.7mg/L培養物の間であり、cyno Pcsk9は3.1mg/Lで得られた。
【0187】
ハイブリドーマ作製
マウスの免疫およびハイブリドーマの生成
Bcl−2トランスジェニックマウス(C57BL/6−Tgn(bcl−2)22wehi種)を免疫する前に、精製Pcsk9をフロイント完全アジュバントで1:1に希釈した。マウスは、複数部位での反復免疫(RIMMS)を必要とする方法を使用して免疫した。簡単に説明すると、マウスの末梢リンパ節(PLN)の近位の特定部位8ヵ所に抗原1〜3μgを注射した。この方法を12日間にわたり6回反復した。12日目に試験血を収集し、血清抗体力価をELISAによって分析した。力価の高いマウスから15日目にPLNを取り出し収集した。リンパ球を採取するために、PLNを基本DMEMで2回洗浄し、次に、22ミクロンの篩い(Falcon #352350)に通すことによって分離した。得られたリンパ球を融合前にさらに2回洗浄した。NSO/Bcl−2骨髄腫細胞をリンパ球と、リンパ球2.5対NSO細胞1の比で混合した。細胞混合物を遠心し、その後細胞ペレットにPEG1500 1mLを1分間かけて滴下した。30秒後、DMEM 1mlをゆっくり添加し、1分後、DMEM 19mlを5分間かけて添加した。融合した細胞をペレットにし、HAT培地(DMEM+20%FBS、Pen/Strep/Glu、1×NEAA、1×HAT、0.5×HFCS)中に2×105細胞/mLの密度で再懸濁し、37℃で1時間置いた。その後、細胞を384−ウェルプレートに60μl/ウェルで接種した。
【0188】
Pcsk9に対する機能的抗体を分泌するハイブリドーマのスクリーニング
融合して10日後、ハイブリドーマプレートのPcsk9特異的抗体の存在をスクリーニングした。ELISAスクリーニングのため、Maxisorp384ウェルプレート(Nunc #464718)をPcsk9 50μlでコーティングし(PBSで15ng/ウェルに希釈)、一晩4℃でインキュベートした。残存するタンパク質を吸引し、ウェルをPBSに溶かした1%BSAで遮断した。室温で30分間インキュベーションした後、ウェルをPBS+0.05%Tween(PBST)で4回洗浄した。ハイブリドーマ上清15μlをELISAプレートに移した。PLNを取り出す時に採取したマウス血清15μlをPBSで1:1000に希釈し、陽性対照として追加した。2次抗体50μl(ヤギ抗マウスIgG−HRP(Jackson Immuno Research #115−035−071)、PBSで1:5000に希釈)をELISAプレートの全ウェルに添加した。室温で1時間インキュベーションした後、プレートをPBSTで8回洗浄した。TMB(KPL#50−76−05)25μlを添加し、室温で30分インキュベーションした後、プレートを605nmの吸収で読み取った。陽性ウェルの細胞を24−ウェルプレートでHT培地(DMEM+20%FBS、Pen/Strep/Glu、1×NEAA、1×HT、0.5×HFCS)中で増殖させた。
【0189】
抗体精製
LFU720を含有する上清をタンパク質G(Upstate#16−266(Billerica、MA))を使用して精製した。上清を添加する前に、樹脂を10カラム容量のPBSで平衡化した。試料を結合させた後、カラムを10カラム容量のPBSで洗浄し、次いで抗体を5カラム容量のグリシン0.1M、pH2.0で溶出した。カラム画分は1/10容量のTris HCl、pH9.0ですぐに中和した。画分のOD280を測定し、陽性画分を収集し、PBS、pH7.2に対して一晩透析した。
【0190】
結合反応速度およびBiacoreアッセイ
動力学的結合パラメータの測定は、光学的バイオセンサーBiacore S51を使用して、表面プラズモン共鳴測定によって実施した。この技術によって、標識を用いない受容体に対するリガンドの結合(Ka)および解離(Kd)の顕微鏡的速度定数の測定が可能である。したがって、抗体−抗原相互反応を特徴付けるために特に適している。
【0191】
Pcsk9のLFU720(2μg/ml)への結合の研究は、予めシリーズS CM−5 Biacoreセンサーチップ(認定)(Biacore #BR−1005−30)に固定されたウサギ抗マウスFcγ抗体(Biacore #BR−1005−14)でマウス抗体を捕捉することによって実施した。Fcγ捕捉抗体の共有結合は、「アミン結合キット」(Biacore #BR−1000−50)で実施した。捕捉抗体(ウサギ抗マウス)は、酢酸ナトリウム10mM、pH5に溶かした抗Fcγ抗体溶液(Biacore #BR−1003−51)50μg/mlを流速10μl/分でEDC活性化デキストラン表面に結合させた。Pcsk9を0.5μMから7.8nM(2倍希釈系列)の濃度範囲で、PBSおよびNaCl 100mM、0.005%P20(Biacore#BR−1000−54)中での捕捉LFU720チップ上に流した。得られたセンサーグラムは、Biacore S51評価ソフトウェアを使用して分析した。全濃度のデータは全体的に1:1Langmuirモデルに適合させた。
【0192】
TR−FRETアッセイ
TR−FRETアッセイは、浅い384ウェル白色プレート(Perkin Elmer、6008280)で実施した。hPcsk9−AF(10.7nM)を標識していないhPcsk9タンパク質、EGF−AペプチドまたはNVP−LFU720−AX−1抗体の希釈系列とアッセイ緩衝液(HEPES 20mM、pH7.2、NaCl 150mM、CaCl2 1mM、0.1%v/v Tween20および0.1% w/v BSA)15μl中で室温で30分間インキュベートした。この後、アッセイ緩衝液に溶かした5μlのhLDL−R−Eu(4nM)を予めインキュベートしたhPcsk9およびNVP−LFU720−AX−1の複合体に添加し、室温で90分間インキュベートした。これらの標識タンパク質の最終濃度は、hPcsk9−AF 8nMおよびhLDL−R−Eu 1nMであった。TR−FRETシグナルは、EnVision 2100マルチラベルリーダー(Perkin Elmer)を用いて励起330nmおよび放射665nmで測定した。データは、以下の式:[(665nmの値×10,000)/(615nmの値)]を使用して正規化した値に変換した。パーセント阻害は、以下の式:100−[(処理試料の正規化した値/未処理試料の正規化した値の平均値)×100]で計算した。パーセント阻害用量反応曲線はPrism バージョン5を使用して、式Y=最小結合度(Bottom)+(最大結合度(Top)−最小結合度)/(1+10^((LogIC50−X)*傾き(HillSlope))(GraphPad Prism Software)を用いてプロットした。
【0193】
LDL−R代謝回転アッセイ
HepG2細胞をトリプシン処理し、予め1% v/vコラーゲンでコーティングした平底96−ウェルプレート(Corning、3595)で、培養培地100μlにウェル当たり6×104細胞を接種し、その後37℃で5%CO2中で24時間インキュベートした。一般的に、細胞は、hPcsk9タンパク質、EGF−Aペプチドおよび/またはNVP−LFU720−AX−1抗体のいずれかを含有する無血清培地100μlで処理した。処理後、培地を廃棄し、細胞をPBS100μlで洗浄した。細胞を採取するために、Versine(Biowhittaker、17−771E)100μlを添加し、37℃で5%CO2中で1時間インキュベートし、次いでFACS緩衝液100μlを添加した。細胞をV底96ウェルプレート(Corning、3894)に移し、1200rpMで5分間遠心して細胞をペレットにした。細胞上の非特異的結合部位を遮断するため、FACS緩衝液に溶かした正常ウサギIgG(MP biomedicals、55944)およびマウスIgG(Sigma、I5381)100μg/mlの50μlを各ウェルに添加し、氷上で30分間インキュベートした。細胞を1200rpMで5分間遠心して、プレートをはじくことによって緩衝液を除去した。細胞を標識するために、FACS緩衝液に溶かしたウサギ抗hLDL−R−Alexa647IgG(5μg/ml)10μlおよびマウス抗トランスフェリン−R−フィコエリトリン(PE)IgG(2μg/ml)(CD71、Becton Dickinson Biosciences、624048)標識抗体10μlを各ウェルに添加し、氷上で60分間インキュベートした。細胞を1200rpMで5分間遠心して、プレートをはじくことによって緩衝液を除去した。結合していない抗体は、FACS緩衝液ウェル当たり200μlで細胞を2回洗浄することによって除去した。細胞は、PBSに溶かした1%パラホルムアルデヒドで固定し、生細胞をゲーティングし(5000)、BD LSRIIフローサイトメーターおよびFACSDIVAソフトウェア(Becton Dickinson)を使用して分析した。PE蛍光の中央値は、488nmの励起および575nmの放射で測定した。Alexa647蛍光の中央値は、488nmの励起および633nmの放射で測定した。HepG2細胞上の表面hLDL−RのFACS検出のために、特注のウサギ抗hLDL−RポリクローナルIgG583はCovance(Denver、PA、USA)によって注文生産された。ウサギ抗hLDL−R IgG583は、正常なウサギIgGと比較して、HepG2細胞表面上のhLDL−Rの検出について約7倍のウインドウを示した。抗hLDL−R IgG583のHepG2細胞表面上のLDL−Rに対する特異性を測定するために、このIgGの結合の競合相手としてhLDL−Rタンパク質を使用して実験を実施した。HepG2細胞に対する抗hLDL−R IgG583の平均培地蛍光の用量依存減少が、hLDL−Rタンパク質の濃度増加につれて認められた。このことは、FACSによって測定されたように、抗hLDL−R IgG583がHepG細胞表面上のLDL−Rを特異的に認識することを示唆した。その後の研究では、HepG2細胞表面上のLDL−RのFACS定量のために、直接標識した抗hLDL−R−583−Alexa647IgGを使用した。
【0194】
LDL−C取り込み
HepG2細胞をトリプシン処理し、平底96−ウェルプレート(Corning、3595、予め1% v/vコラーゲンでコーティング中の培養培地100μlにウェル当たり6×104細胞を接種し、その後37℃で5%CO2中で24時間インキュベートした。特に記載しない限り、細胞は、hPcsk9タンパク質、EGF−Aペプチドおよび/またはNVP−LFU720−AX−1抗体のいずれかを含有する無血清培地100μlで処理した。処理後、無血清培地に溶かした3,3’−ジオクタデシルインドカルボシアニン標識低密度リポタンパク質(DiI−LDL)(Intracell、RP−077−175)30μg/ml、20μlを各ウェルに入れ、37℃で5%CO2中で2時間インキュベートした。プレートをはじくことによって培地を除去し、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(カルシウムおよびマグネシウムを含まないPBS、Invitrogen、14190−144)100μlで洗浄した。プレートをはじくことによってPBSを除去し、0.25%トリプシン−EDTA100μlを各ウェルに添加し、37℃で5%CO2中で5分間インキュベートした。FACS緩衝液(5%FBS、EDTA 2mMおよび0.2%アジ化ナトリウムを含有するPBS)100μlを各ウェルに添加し、1200rpmで5分間遠心することによって細胞をペレットにした。プレートをはじくことによって培地を廃棄し、PBSに溶かした1%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences、15710)をウェル当たり50μl添加することによって細胞を固定した。生細胞をゲーティングし、BD LSR IIフローサイトメーターおよびFACSDIVAソフトウェア(Becton Dickinson)を使用して分析した。DiI−LDL蛍光の中央値は、488nmの励起および575nmの放射で測定し、5000個の細胞を分析した。Microsoft Excel 2002(Microsoft Corporation)を使用して棒グラフを作成した。活性化のパーセントは以下の通りに算出した、%活性化=[1−(X÷A)]×100、式中、X=試料ウェルから読み取った培地蛍光およびA=hPcsk9処理のみのウェルから読み取った培地蛍光。
【0195】
式Y=最小結合度+(最大結合度−最小結合度)/(1+10^((LogEC’50−X)×傾き))およびGraphPad Prism 5(GraphPad Software)を使用して作成した用量反応曲線からEC50を決定するために、活性化のパーセントを処理に対してプロットした。
【0196】
結果
抗ヒトPcsk9モノクローナル抗体の作製
B細胞は、Pcsk9タンパク質で免疫した動物の一次リンパ節から採取した。ハイブリドーマは、標準的PEG媒介融合を使用して作製した。得られた融合物は、ELISAによってアッセイし、ヒトPcsk9に陽性結合するものを同定し、上清を生成するために増殖させた。ELISA陽性クローンが多数同定され、その後の機能アッセイによって選別された。主要な候補として同定されたクローンは、LFU720であった。我々の主要な候補、LFU720に加えて、Pcsk9に結合してPcsk9がLDLr分解を媒介する能力を遮断することはできても(LDLc取り込みによって測定した通り)、Pcsk9とLDLrの相互作用は遮断することはできない(FRETによって測定した通り)、クローン21D6、5A4−C1および13F1を含む多数のその他のクローンが同定された。クローン21D6はまた、インビボにおいてPcsk9によるLDLrの分解を遮断する能力を示した。
【0197】
Pcsk9に特異的に結合するLFU720のスクリーニング
LFU720の特異性は、一連のその他のタンパク質に対する結合をELISAで評価することによって調べた。HISでタグ付けした3種類のその他のタンパク質に対するLFU720の結合をPcsk9−HISに対する結合と比較した。これによって、Pcsk9に対する結合が特異的で、この抗体はHISタグには結合しないことが示された。
【0198】
LFU720のカニクイザルPcsk9に対する結合の評価
LFU720のPcsk9のカニクイザル相同体に対する結合を測定した。このアッセイのために、HISでタグ付けしたカニクイザルPcsk9を発現する細胞の上清をNi捕捉プレートと共に利用し、材料を精製する必要性を省いた。ヒトPcsk9を希釈し、そのHISタグを介してまた捕捉した。LFU720は、ヒトおよびカニクイザル両方のPcsk9に結合することができた。5P20はまた、ELISAではヒトLDL−RにもマウスPcsk9にも結合しなかった。
【0199】
LFU720の結合速度
光学的バイオセンサー技術(Biacore)を使用することによって、ヒトPcsk9タンパク質を認識するマウス抗体LFU720の結合親和性を分析した。LFU720は、組換えヒトPcsk9にナノモル以下の高い親和性(KD =200pM)で結合することが見出された。
【0200】
LFU720のPcsk9/LDL−R相互作用遮断のスクリーニング
抗hPcsk9抗体NVP−LFU720がhPcsk9−AFとhLDL−R−Eu標識タンパク質との間の相互作用を中断させることができるかどうかを測定するために、TR−FRETアッセイを使用した。hLDL−R−EuとhPcsk9−AF標識タンパク質の相互作用によって生じたTR−FRETシグナルの中断をアッセイが検出できることを示すために、標識していないhPcsk9タンパク質またはEGF−Aペプチドを評価した。標識していないhPcsk9の濃度を増加させると、hLDL−R−Euへの結合をhPcsk9−AFと競合し、TR−FRETシグナルの減少が生じた。EGF−Aペプチドは、hLDL−R−EuとhPcsk9−AFの相互作用をIC502.5μMで中断させた。対照的に、NVP−LFU720はhPcsk9−EuとhLDL−R−AFの間のTR−FRETシグナルをあまり中断させず、IC50は1000nMを上回り、低い抗体濃度ではU型の応答を示した。
【0201】
Pcsk9媒介によるLDL−R分解のLFU720による阻害のスクリーニング
LDL−RへのPcsk9の結合は、LDL−R分解を引き起こすことが示され、このことはHepG2細胞および組換えヒトPcsk9を使用して確かめられた。LFU720がPcsk9に結合し、この効果を遮断する能力を測定した。NVP−LFU720は外来性Pcsk9で処理したHepG2細胞を阻害し、細胞表面LDL−Rの増加を引き起こした。
【0202】
LFU720のPcsk9阻害およびLDL取り込み回復のスクリーニング
LDL−RのPcsk9分解の阻害は、HepG2細胞がLDL−Cを内部移行させる能力を回復させる。NVP−LFU720は、外来性hPcsk9で処理したHepG2細胞でのPcsk9媒介によるLDL−R分解を妨害し、DiI−LDL取り込みをEC50 99nMで増加させた。
【実施例2】
【0203】
実施例2:PCSK9アンタゴニスト抗体NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211の生成
導入
この実施例では、マウスPCSK9アンタゴニストモノクローナル抗体NVP−LFU720のヒト生殖系列抗体に対する配列相同性が高くなるように遺伝子操作することによって、ヒト抗体NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211を作製することを説明する。NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211は、親マウス抗体、NVP−LFU720のエピトープ特異性、親和性およびカニクイザルマカクPCSK9交差反応性を保持している。NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211は、元のマウス抗体よりもヒト生殖系列配列により高い相同性を有し、したがってヒト免疫系により耐性であろう。
【0204】
マウスモノクローナル抗体LFU720は、そのタンパク質配列がヒト生殖系列配列により近く、その免疫原性が減少するように、Humaneered(商標)した。Humaneering(商標)技術は、南サンフランシスコのKaloBios(ワールドワイドウェブkalobios.com)から入手可能である。抗体のHumaneering(商標)によって、ヒト生殖系列配列と高い相同性を有する一方、親または参照抗体の特異性および親和性をなお維持しているV領域配列を有する遺伝子操作されたヒト抗体が作製される(米国特許出願公開第2005/0255552号および第2006/0134098号)。このプロセスではまず、参照Fabの重鎖および軽鎖可変領域における最小抗原結合特異性決定基(BSD)(通常は重鎖CDR3および軽鎖CDR3内の配列)を同定する。これらの重鎖および軽鎖BSDは、Humaneering(商標)プロセス中に構築された全ライブラリー中に維持されるので、各ライブラリーはエピトープに注目し、最終的な完全なHumaneered(商標)抗体は元のマウス抗体のエピトープ特異性を保持する。
【0205】
次に、完全長ライブラリー(軽鎖または重鎖可変領域全体がヒト配列のライブラリーで置換されている)および/またはカセットライブラリー(マウスFabの重鎖または軽鎖可変領域の一部がヒト配列のライブラリーで置換されている)を作製する。抗体Fab断片としてライブラリーのメンバーを発現させるために細菌分泌系を使用して、コロニーリフト結合アッセイ(CLBA)を使用してこのライブラリーの抗原に結合するFabをスクリーニングする。陽性クローンはさらに特徴を明らかにして、最高の親和性を有するものを同定する。残存するマウス配列において結合を支持することが同定されたヒト「カセット」は次に、完全なヒトV領域を作製するための最終的なライブラリースクリーンにおいて一緒にする。
【0206】
得られたHumaneered(商標)Fabは、ヒトライブラリーから得られたVセグメント配列を有し、CDR3領域内で同定された短いBSD配列を保持しており、ヒト生殖系列フレームワーク4領域を有する。これらのFabは、重鎖および軽鎖の可変領域をIgG発現ベクターにクローニングすることによって、完全なIgGに変換する。この方法で作製された完全なHumaneered(商標)抗体は、親、マウス抗体の結合特異性を保持しており、通常、親抗体よりも抗原に対して同等またはより高い親和性を有し、タンパク質レベルでヒト生殖系列抗体遺伝子に匹敵する高い程度の配列同一性のV領域を有する。
【0207】
方法
マウスV領域のクローニング
マウスモノクローナルNVP−LFU720のV領域DNAは、標準的方法を使用してハイブリドーマ細胞株から単離されたRNAからRT−PCRによって増幅した。ハイブリドーマcDNAの重鎖可変領域のPCR増幅での使用に成功したプライマーは、VH14(5’−CTTCCTGATGGCAGTGGTT−3’、配列番号58)(Chardes T, et al 1999, FEBS Letters; 452(3):386-94)およびHC定常部(5’−GCGTCTAGAAYCTCCACACACAGGRRCCAGTGGATAGAC−3’、配列番号59)であった。ハイブリドーマcDNAの軽(カッパ)鎖可変領域のPCR増幅での使用に成功したプライマーは、Vκ4/5(5’−TCAGCTTCYTGCTAATCAGTG−3’、配列番号60)(Chardes T, et al., 1999、前述)およびLC定常部(5’−GCGTCTAGAACTGGATGGTGGGAAGATGG−3’、配列番号61)であった。増幅された重鎖および軽鎖の可変領域の配列を決定した。次に、PCRを使用してV遺伝子を増幅し、クローニング用の制限酵素部位をKaloBiosベクターに組み込んだ。すなわち、VhをKB1292−His(C末端可動性リンカーおよびCH1上のアミノ酸配列AAGASHHHHHH(配列番号62)の6−His(配列番号57)タグをコードするKB1292の改変変種)のNcoI(5’)およびNheI(3’)に組み込み、VkをKB1296のNcoI(5’)およびBsiWI(3’)に組み込んだ。これらの個々の重鎖および軽鎖ベクターは次に、BssHIIおよびClaIによる制限消化および連結によって単一のジシストロニックKaloBios Fab発現ベクターに結合させた。Fab断片は、このベクターによってイー・コリ(E.coli)で発現させた。このFabのPCSK9−抗原結合を試験し、参照Fab SR032と称した。
【0208】
Fab精製
Fab断片は、KaloBios発現ベクターを使用してイー・コリから分泌させることによって発現させた。細胞は、2×YT培地で、OD600が約0.6になるまで増殖させた。発現は、IPTGを100μMまで添加し、33℃で4時間振盪することによって誘導した。アセンブルされたFabは、浸透圧溶解によって周辺質画分から得られ、Ni−NTAカラム(HisTrap HPカラム、GE Healthcareカタログ番号17−5247−01)を使用したアフィニティークロマトグラフィーによって標準的方法に従って精製した。Fabは、イミダゾール500mMを含有する緩衝液中に溶出し、カルシウムおよびマグネシウムを含まないPBS pH7.4で徹底的に透析した。
【0209】
ライブラリー構築
ライブラリー構築の最初の工程では、KaloBiosヒトVセグメントライブラリー配列をPCR増幅することによって、エピトープを特徴とする完全なヒトV領域ライブラリーを作製した。これらの完全鎖ライブラリーの作製においては、最適化した参照Fab SR038のBSDおよびヒト生殖系列Jセグメント配列を含有する特有のCDR3−FR4領域を、重複PCRを使用してヒトVセグメントライブラリーに結合させた。これらの完全なV領域ライブラリーは、直接スクリーニングせず、むしろVhおよびVk中間ライブラリー構築のための鋳型として使用した。完全鎖ライブラリー構築のために使用したKaloBiosヒトVセグメントライブラリーは、CDR領域における元のマウスのVhおよびVk’に最も近いヒト生殖系列配列をベースにして選択した。元のマウスNVP−LFU720 Vhは、CDRがヒト生殖系列配列Vh1−02に最も近いので、Vh1亜群のメンバーを含有する2種類のKaloBiosライブラリー(KB1410およびKB1411)の混合物を、完全なVhライブラリーの作製において使用した。同様に、NVP−LFU720Vkは、そのCDRがVk3 L6ヒト生殖系列配列に最も近いので、Vk3亜群のメンバーを含有する2種類のKaloBiosヒトVセグメントライブラリー(KB1423およびKB1424)の混合物を、完全なVkライブラリーの作製において使用した。次に、これらの完全長VhおよびVkライブラリーを、親マウスVセグメントの一部のみがヒト配列のライブラリーによって置換されているカセットライブラリーの構築のための鋳型として使用した。2種類のカセットは、ブリッジPCRによって構築し、FR1、CDR1およびFR2の最初の部分にヒト配列を含有するフロントエンドカセットは鋳型として前述したVh1ライブラリー(KB1410およびKB1411)の混合物またはVk3ライブラリー(KB1423およびKB1424)の混合物から増幅した。FR2の最後の部分、CDR2およびFR3にヒト配列を含有するミドルカセットは、鋳型として前述した完全なヒトVhまたはVk領域ライブラリーを使用して増幅した。VhカセットはF2におけるアミノ酸45〜49位(Kabatによる番号付け)に重複する共通配列を有し、VkカセットはFR2においてアミノ酸残基35〜39(Kabatによる番号付け)に重複する共通配列を有していた。このように、フロントエンドおよびミドルヒトカセットライブラリーは、ヒトV重鎖1およびVカッパ3アイソタイプについてPCRによって構築した。各Vhカセットライブラリーは、ベクターKB1292−His at NcoI(5’)およびKpnI(3’)にクローニングし、各Vkカセットライブラリーは、ベクターKB1296−B(FR4にサイレントHindIII部位を添加したKaloBiosベクターKB1296の改変変種)のNcoI (5’)およびHindIII(3’)にクローニングした。次に、得られたVhまたはVkプラスミドライブラリーは、BssHIIおよびClaIで消化し、その後連結して完全なFabを発現するジシストロニックベクターのライブラリーを生成することによって、最適化した参照Fab SR038の相補鎖と結合させた(例えば、Vhフロントエンドライブラリーは最適化した参照Vkベクターと結合させた)。
【0210】
一般的ELISA
組換えヒトまたはカニクイザルマカクPCSK9−His6抗原をELISAアッセイ全てに使用した。通常、PBSpH7.4で希釈したPCSK9−His6抗原を96ウェルマイクロタイタープレートに300ng/ウェルで一晩4℃でインキュベートすることによって結合させた。プレートをPBSに溶かした3%BSA溶液で37℃で1時間遮断し、次いでPBSTで1回濯いだ。その後、Fabを含有する誘導細胞培地または希釈した精製Fab(50μl)を各ウェルに添加した。37℃で1時間インキュベートした後、プレートをPBSTで3回濯いだ。PBSで1:5000に希釈した抗ヒトカッパ鎖HRP結合体(Sigma #A7164)(50μl)を各ウェルに添加し、このプレートを室温で45分間インキュベートした。プレートをPBSTで3回洗浄し、次いでSureBlue TMB基質(KPL #52−00−03)100μlを各ウェルに添加し、プレートを室温で約10分間インキュベートした。プレートを分光光度計によって650nmで読み取った。
【0211】
精製したヒトおよびマウスIgGに対する特異的なELISAのために、384ウェルプレートを一群の精製したヒトおよびマウス抗原によってウェル当たり88ngでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを前述のように遮断して洗浄し、次いでPBSで2μg/mlに希釈した精製したマウスまたはヒト抗PCSK9抗体22μlを各ウェルに添加した。プレートを37℃で1時間インキュベートし、その後PBSTで洗浄した。HRPに結合させた抗マウスFc抗体(Jackson ImmunoResearch Labs#115−035−071)または抗ヒトカッパ抗体(Sigma #A7164)をPBSで1:5000に希釈し(25μl)、各ウェルに添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、その後洗浄して、前述のように発色させた。
【0212】
コロニーリフト結合アッセイ(CLBA)
Fab断片のHumaneered(商標)ライブラリーのスクリーニングは、PCSK9−His6 6μg/mlでコーティングしたニトロセルロースフィルターを使用して、本質的に(米国特許出願公開第2005/0255552号および第2006/0134098号)で記載されたように実施した。抗原をコーティングしたフィルターに結合したFabは、PBSTで1:5000に希釈したアルカリホスファターゼ結合抗ヒトカッパ軽鎖抗体(Sigma #A3813)を使用して検出し、ブロットはアルカリホスファターゼのDuoLux化学ルミネセンス基質で発色させた(Vector Laboratories #SK−6605)。
【0213】
ビオチン化組換えPCSK9の作製および親和性測定
pRS5a/PCSK9プラスミドのPCSK9およびHis6(配列番号57)タグをコードする遺伝子の間にEcoRI制限部位を挿入することによってC末端にAvi(部位特異的ビオチン化のため)およびHis6(配列番号57)タグ(PCSK9−Avi−His6)を有するPCSK9を作製し、C末端His6(配列番号57)タグを有するPCSK9 Uniprot Accession Q8NBP7のアミノ酸31〜692を発現する。Aviタグ(アミノ酸配列GGGLNDIFEAQKIEWHE;配列番号63)をコードし、EcoRIオーバーハングが隣接するオリゴヌクレオチドをT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Invitrogen)でリン酸化し、アニーリングし、その後新たに挿入されたEcoRI部位を使用してpRS5a/PCSK9に連結した。Aviタグを含有するクローンを配列分析によって確認した。PCSK9−Avi−His6の発現は、293Freestyle発現系(Invitrogen)で実施し、分泌した組換えタンパク質はNi−NTA樹脂(QIAGEN)を使用して精製した。精製後、PCSK9−Avi−His6タンパク質は、10mM Tris pH8.0、NaCl 50mMに対して透析した。タンパク質は、製造者のプロトコールに従ってビオチン−タンパク質リガーゼ(Avidity)によってインビトロでビオチン化した。完了後、反応物をPBS pH7.2に対して透析し、ビオチン化はウェスタンブロットでHRP結合ストレプトアビジンで探索することによって確認した。
【0214】
IgGおよびFab断片の結合速度は、溶液平衡滴定(「SET」)アッセイを使用して分析した。簡単に説明すると、hPCSK9の希釈系列をIgG 60pMまたはFabに添加し、一晩インキュベートした。96−ウェル標準結合マイクロタイタープレート(Meso Scale Discovery)にhPCSK9 1μg/mlをコーティングし、一晩インキュベートして、PBS/0.05%(w/v)Tween20で洗浄し、PBS/5%(w/v)BSAで遮断し、再度洗浄した。抗体−抗原調製物をPCSK9コーティング標準結合プレートに添加し、室温で30分間インキュベートした。さらに3回洗浄工程を経た後、スルホ−タグ標識ヤギ抗ヒト検出抗体(R32AJ−5、Meso Scale Discovery)を添加し、室温で一時間インキュベートした。プレートを3回洗浄した後、読み取り緩衝液(Meso Scale Discovery)を添加し、電気化学ルミネセンス(ECL)シグナルをSector Imager 6000(Meso Scale Discovery)によって測定した。ECLデータは、Piehler, et al., (1997) J Immunol Methods 201:189-206に記載された抗体に適用可能な適当なモデルを使用して、excelアドインXLfit4.3.2(ID Business Solutions)で処理した。溶液中において、ヒトPCSK9と抗体LGT209、LGT210およびLGT211の間で親和性の高い結合が認められ、それぞれについて算出されたKD値は150〜190pMであった。
【0215】
抗体産生および精製
完全なHumaneered(商標)NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211抗体(サイレントIgG1カッパ)は、293fectin形質移入試薬(Invitrogen #51−0031)を使用して、製造者のプロトコールに従って、以下の通りにベクターを293 Freestyle細胞に同時形質移入することによって生成した。
LGT−209−pJG04(Vh)+pJG10(Vk)
LGT−210−pJG04(Vh)+pJG01(Vk)
LGT−211−pSR74(Vh)+pJG10(Vk)
【0216】
抗体は、5mLのHiTrapプロテインA HPカラム(GE Healthcare #17−0403−03)を使用して、293Freestyle細胞上清から精製した。抗体は、IgG溶出緩衝液(Pierce #21004)を使用して溶出し、透析によって緩衝液をPBSに交換した。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーは、AKTAFPLC液体クロマトグラフィー系(GE Healthcare)で実施した。
【0217】
エピトープ競合アッセイ
元のマウス抗体NVP−LFU720とそのHumaneered(商標)誘導体化NVP−LGT209の間のPCSK9上のエピトープへの結合の競合は、ForteBio Octet QKシステムおよびビオチン化PCSK9−Avi−His6でコーティングしたストレプトアビジン高結合バイオセンサーを使用してアッセイした。次に、3種類の異なる抗体、マウスLFU720、完全ヒトLGT209または対照マウス抗体7D16(LFU720とは別のエピトープを有することが知られている)を別々のPCSK9コーティングセンサーに飽和するまで結合させた。次に、センサーを全て、LFU720マウス抗体を含有するウェルに浸漬し、第1抗体がLFU720の結合を遮断できるかどうかを測定した。
【0218】
結果
マウスおよび参照V領域アミノ酸配列
NVP−LFU720を発現するハイブリドーマ細胞からのRT−PCR生成物を配列決定し、この配列はThermoElectron LTQ−Orbitrap 質量スペクトル分析を使用してタンパク質レベルでほとんど(95%以上)確認された。次に、参照Fab SR032を作製するために、LFU720の重鎖および軽鎖可変領域をKaloBiosベクターにクローニングした。参照Fab SR032作製用のKaloBiosベクターへのクローニングを可能にするために、NVP−LFU720 Vkの最初のアミノ酸はグルタミン(Q)からグルタミン酸(E)に変化させなければならなかったので、SR 032Vkは最初のVk位置にグルタミン酸を有する。Fab SR032には、ヒト定常領域に融合したNVP−LFU720由来の完全なマウスV領域が有り、イー・コリから精製された。PCSK9−His6抗原結合の希釈ELISA試験において、クローニングされたSR032参照Fabは、Fab濃度に応じた結合曲線を生じた。参照Fab(SR032)に加えて、最適化した参照Fab、SR038を構築した。SR038では、SR032のいくつかのフレームワークアミノ酸残基をヒト生殖系列に変化させた。
【0219】
参照および最適化した参照Fabの親和性分析
FR1およびFR3中の最適化した参照FabSR038に組み込まれたヒト生殖系列残基は、ヒトVセグメントレパートリーを増幅するために使用されたPCRプライマーによって特定されたものであり、したがって、Humaneered(商標)V領域ライブラリーの全メンバー中に存在する。最適化した参照Fabは、ヒト生殖系列への変化のいずれかがFab結合の特性を変化させるかさせないかを評価するために構築する。精製したFabを使用した希釈ELISAによって、組換えPCSK9抗原に対するSR032およびSR038の親和性は同一であることが測定され、SR038中のアミノ酸変化には耐性があることが示唆された。
【0220】
ライブラリー構築および完全なHumaneered(商標)Fabの選択
Vh1またはVk3に限定された重鎖および軽鎖フロントエンドおよびミドルカセットライブラリー亜群を作製し、CLBAによってスクリーニングした。Vhについては、PCSK9抗原への結合を支持するフロントエンドカセットはコロニーリフト結合アッセイによって同定されたが、Vhミドルカセットは同定されなかった。Vkについては、フロントエンドカセットおよびミドルカセットの両方がコロニーリフトによって同定され、さらに、いくつかの完全なVkクローンが同定された(Vkフロントエンドライブラリーに完全鎖Vkクローンが混入したため)。各ライブラリーの多くの結合物がFab含有細胞上清におけるELISAアッセイで再確認され、各ライブラリーのいくつかのFabが周辺質画分から精製され、Forte分析を使用して親和性によって順位付けされた。
【0221】
PCSK9結合を支持するV−重鎖ミドルカセットは同定されなかったので、重鎖CDR2またはFR3内の全位置で親のマウス残基またはヒト生殖系列に最も近い残基のいずれかをコードする2種類の突然変異誘発ライブラリーを構築した。こうして、遺伝子操作されたヒトミドルカセットライブラリーを構築し、スクリーニングし、抗原結合クローンを同定した。その後、個々のクローンにおいて結合を支持した、Vhミドル内におけるヒト生殖系列への変化を一緒にして最終的に1個のミドルカセットを作り出し、最適化した参照Fabにおいてこのカセットを含有するFabの結合の親和性を確認し、最適化した参照FabをForte分析した。
【0222】
作り出したライブラリーから、CLBAによって重鎖および軽鎖両方についてPCSK9抗原への結合を支持するフロントエンドおよびミドルヒトカセットを同定することに成功した。これらの結合物は全てELISAによって確認し、次いでFabを精製し、ForteBio Octetシステムを使用して順位付けした。重鎖および軽鎖について高く順位付けされたカセットをブリッジPCRによって最終的な1個のライブラリーに一緒にし、PCSK9への結合を支持する完全なHumaneered(商標)FabをCLBAによってこのライブラリーから選択した。これと並行して、上位にランク付けされたカセットまたは鎖全て(最良のVhフロントエンド、遺伝子操作されたVhミドル、および最良の完全な軽鎖)を一緒にして、親和性の高い結合を支持することが予測される1個のFab SR066を作り出した。
【0223】
親マウスmAb NVP−LFU720およびHumaneered(商標)Ab NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211の重鎖および軽鎖可変領域の配列をそれぞれ図1〜4に示す。
【0224】
ForteBio Octet分析を使用した完全なHumaneered(商標)FabのPCSK9抗原に対する親和性試験
Humaneered(商標)SR066 Fabおよび最終的なコンビナトリアルライブラリーから引き出された3個のFab(#1−2、#3−2および#4−2)を発現させ、精製した。その後、これら4種類のヒトFabの結合速度は、ForteBio Octetシステムを使用して最適化した参照Fab SR038の速度と比較した(数値データは表1にまとめて示した)。
【表1】
【0225】
これらのFabのタンパク質濃度の決定は困難で、そのため解離速度(off−rate)(kd)データは結合速度(on−rate)(ka)およびKDデータよりもずっと信頼性が高い(解離速度(off−rate)のみが濃度依存的である)。試験したHumaneered(商標)Fab4種は全て、最適化した参照Fabよりも3から4倍「劣る」(すなわち、速い)解離速度(off−rate)を有するように見える。元の重鎖フロントエンドカセットライブラリーから選択されるFab結合物の全ては、最適化した参照Fabよりも「劣る」解離速度(off−rate)を有するように見えたので(データは示さず)親和性のこの減少は、これらのクローンにおける重鎖フロントエンドによるものと考えられる。重鎖フロントエンドは、CDR1を含有するので、Vhフロントエンドカセット中のこのCDRに生じた変化は、最終的なHumaneered(商標)Fabの親和性の減少の原因である可能性があった。完全なHumaneered(商標)Fab、SR066は、最高の解離速度(off−rate)を有し(表1)、重鎖CDR1中のSR066と参照(マウス)配列の間には3つの違いがある。CDRH1に生じた変化がHumaneered(商標)Fab全てに認められる親和性の減少に関連することを試験するために、SR066のCDRH1に同時に2個の残基を元のマウス残基に一致するように変化させて戻し、発現させ、Forte速度分析のためにこれらの変化したFabを精製した。
【0226】
CDRH1(SR079)に2つの変化を同時に有する1個のFabは(表2)、SR066の結合速度が著しく改善された(数値データは表3にまとめて示す)。実際に、SR079 Fabは最適化した参照(マウス)Fab SR038と同等の解離速度(off−rate)を有するように見えた。
【表2】
【表3】
【0227】
Humaneered(商標)Fab SR066、#1−2、#3−2および#4−2は、CDRH2中に「Asn−Gly」(「NG」)アミノ酸配列を含有しており、これは元のマウス抗体由来であった。この配列は、生成に望ましくない特性である脱アミド化を受ける可能性があることが知られている。したがって、Humaneered(商標)SR066 Fabの親和性を改善するように努力すると同時に、2種類の突然変異誘発ライブラリーをSR066について構築し、「N」または「G」を元のアミノ酸以外の可能性のあるアミノ酸全てによって置換した(例えば、「N除去ライブラリー」では、「N」は「N」以外の全アミノ酸で置換した)。次に、「NG」配列はもう有さないが、SR066の結合レベルをまだ保持している(最適化した参照Fab SR038よりは少ない)クローンを同定するために、このライブラリーからのFab含有細胞上清をELISAによってスクリーニングした。「N除去ライブラリー」は、SR066と同程度に結合するFabを生じないが、「G除去ライブラリー」は、「G」位置にいくつかの異なる置換を有し、十分な結合レベルを備えたFabを生じた。そのうち、「NG」から「NE」、「NA」および「NM」への変化を有するFabを精製およびForte速度分析のために選択し、親Fab SR066と類似の反応速度を有することを見出した。
【0228】
親和性を改善するための7472個のヒトIgGの遺伝子操作
Vk操作
完全なヒトIgGを作り出すために、SR079のVh配列(親和性を改善したSR066の改変変種)のCDRH2までを増幅し、ブリッジPCRによってCDRH2からFR4のほとんどの「G除去ライブラリー」クローンの配列(CDRH2中に「NE」を含有する)に付着させた(stitch)。このVh配列をpRS5a−hIgG1LALA+ KpnI(Vhのアミノ酸配列に影響を及ぼすことなく、FR4にKpnI部位を添加するために改変されたサイレントIgG1クローニングベクター)のNruI(5’)およびKpnI(3’)にクローニングし、pSR074を作り出した。SR066からのVk(FR1からFR4を通る経路まで)を増幅して、pRS5a−hカッパのAgeIおよびBsiWIにクローニングし、pSR072を作り出した。これらのベクターは配列決定によって確認し、293 Freestyle細胞に同時形質移入した。このIgG(「7472」と称する)を抗体含有細胞培地から精製した。驚くべきことに、抗体7472は、Biacore分析では親マウス抗体LFU720よりも結合速度(on−rate)が著しく遅かった(示さず)。各ヒト鎖を相補的なマウス鎖で交換することによって、この結合速度(on−rate)の不足は、ヒト軽鎖に関する問題によることが決定された。親和性を回復させるためにpSR072ヒト軽鎖に改変を起こさせ(表4)、軽鎖の最初の4残基をマウス配列に戻すように変換し、CDR1の後半の残基をマウスに戻すように変換した。この軽鎖を前述のようにpRS5a−hカッパにクローニングして、pJG10およびpJG01を作製し、pSR074(Hcベクター)およびpJG10(Lcベクター)またはpJG01(Lcベクター)を同時形質移入することによって完全なIgGを作製した。総合すると、Biacoreによって測定されたように、これらの変化は部分的にHumaneered(商標)抗体の親和性を回復させた。
【表4】
【0229】
表4は、ヒト抗体7472、親マウス抗体LFU720の軽鎖の一部およびpJG10によってコードされた軽鎖のアラインメントを示している。この部分はpJG01によってコードされた軽鎖と同一である。軽鎖ベクターは、最終的なHumaneered(商標)抗体NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT−211の発現のために使用した。
【0230】
CDRH3の親和性成熟
軽鎖の改変と並行して、pSR074重鎖のCDR3の親和性成熟のためにFabライブラリーを構築した。このライブラリーでは、CDR3残基は、元の残基を除くその他の全アミノ酸で1つずつ置換した。このライブラリーはCLBAによってスクリーニングし、結合物はELISAによって確認し、得られたFabは精製して、親ヒトFabと比較して結合速度が改善したかどうかを決定するためにバイオレイヤーインターフェロメトリによって試験した。
【0231】
親和性が著しく改善されたCDRH3置換、AからNへの変化を同定した(表5)。この変化はその後、pSR074重鎖IgG発現プラスミドの場合にも行い、この新たなコンストラクトをpJG04と呼んだ。最終的なHumaneered(商標)抗体NVP−LGT209(LGT209)は、pJG04(Hc)およびpJG10を同時形質移入し、その後精製することによって作製した。最終的なHumaneered(商標)抗体NVP−LGT210(LGT210)は、pJG04(Hc)およびpJG01を同時形質移入し、その後精製することによって作製した。この変化は、抗体NVP−LGT211(LGT211)には導入しなかった。
【表5】
【0232】
表5は、ヒト抗体7472、親マウス抗体LFU720の重鎖CDR3およびpJG04によってコードされた重鎖(最終的なHumaneered(商標)抗体NVP−LGT209およびNVP−LGT210の発現のために使用された重鎖ベクター)のアラインメントを示している。AからNの置換には下線を引いてある。
【0233】
溶液平衡滴定(SET)システムを使用したNVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211の結合速度の分析
SETアッセイを使用して、ヒトPCSK9に対するNVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211抗体の結合親和性は表6に示したように150〜190pMの間であることを測定した。このことは、溶液中における抗体とPCSK9の間の高い親和性相互作用を示唆している。
【表6】
【0234】
ELISAによるNVP−LGT209の抗原特異性の分析
親マウス抗体LFU720の抗原特異性が最終的なHumaneered(商標)IgG、LGT209、LGT210およびLGT211で保持されているかどうかを試験するために、一群のヒトおよびマウス抗原(ならびにヒトPCSK9)に対する抗体の結合をELISAアッセイで試験した。このアッセイの結果(図5A−C)は、LGT209、LGT210およびLGT211が、マウス抗体LFU720と同様にPCSK9に対して高い特異性を保持していることを示している。
【0235】
ELISAにおいてヒトおよびカニクイザルマカクPcsk9タンパク質に結合する抗体
LGT209、LGT210およびLGT211のヒトおよびカニクイザルマカク(cyno)Pcsk9への特異的結合を評価した。このELISAアッセイは、親マウス抗体LFU720のように、Humaneered(商標)抗体LGT209、LGT210およびLGT211が同様の様式でヒトおよびcyno Pcsk9の両方に結合できることを示している(図6A〜C)。
【0236】
バイオレイヤーインターフェロメトリをベースにしたエピトープ競合アッセイ
親マウス抗体NVP−LFU720のエピトープ特異性が最終的なHumaneered(商標)抗体LGT209、LGT210およびLGT211で保持されているかどうかを試験するために、ForteBio Octetシステムを使用した競合アッセイを開発した。Humaneered(商標)抗体LGT209、LGT210およびLGT211は親マウス抗体NVP−LFU720の結合を遮断し、Humaneered(商標)抗体が元のマウス抗体のエピトープ特異性を保持していることを示唆している。抗体の添加の順番を変えると、すなわち、NVP−LFU720を最初に結合させ、次にHumaneered(商標)抗体を結合させても類似の結果が得られた。
【0237】
Humaneered(商標)抗体LGT209、LGT210およびLGT211のアミノ酸配列ならびにヒト生殖系列配列に対するパーセント同一性
最終的なHumaneered(商標)IgG LGT209、LGT210およびLGT211の可変領域アミノ酸配列をそれぞれ、図2〜4に示す。CDRは下線を引いた太字である。ヌクレオチド配列も配列リストに含める。
【0238】
ヒト生殖系列配列に対する抗体LGT209、LGT210およびLGT211のパーセント同一性は、単一のヒト生殖系列配列(それぞれ、Vh1 1−02およびVk3 A27、表7)に対してVhおよびVkアミノ酸配列をアラインメントさせることによって測定した。CDRH3およびCDRL3の残基は、各鎖の計算から除外した。
【表7】
【0239】
humaneered抗体の機能的特徴に関する追加情報は、図8〜14の説明に記載されている。
【実施例3】
【0240】
実施例3:PCSK9アンタゴニスト抗体NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVPLGT211の突然変異分析
PCSK9アンタゴニスト抗体NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVPLGT211の変異体のPCSK9に結合する能力について評価した。結果を以下にまとめて示す。
【0241】
重鎖CDR1、
【表8】
(配列番号66)に関して、元のマウス残基(太字)を含有するクローンのみがマウスAbの結合速度を保持している(バイオレイヤーインターフェロメトリ分析によって測定された通り)。したがって、重鎖CDR1内のこれらの残基は結合において役割を果たしている。
【0242】
重鎖CDR2、
【表9】
(配列番号74)に関して、太字の残基は、元の(マウス)残基または各位置において最も近いヒト生殖系列配列の対応する残基のいずれかをコードするライブラリーから取り出した抗体結合体中では変化しなかった(ELISAによってスクリーニングした)。したがって、太字の残基は結合において役割を果たしている。保存的置換は、下線を引いたGlu残基によって示された位置では耐性があり、例えば、この位置は、ELISAによって測定され、バイオレイヤーインターフェロメトリによって確認されたように、A、EまたはDであってもよい。
【0243】
重鎖CDR3、
【表10】
(配列番号75)に関して、太字の残基は、各位置において可能性のある全アミノ酸をコードする(元のアミノ酸は除く)親和性成熟ライブラリーから取り出したクローンでは変化しなかった。したがって、太字の残基は結合において役割を果たしている。保存的置換は、下線を引いたAlaまたはAsn残基によって示された位置では耐性があり、例えば、この位置は、Biacoreによって測定されたように、A、NまたはQであってもよい。保存的置換は、下線を引いたTry残基によって示された位置では耐性があり、例えば、この位置は、Biacoreによって測定されたように、A、F、S、VまたはYであってもよい。
【0244】
軽鎖FR1に関して、
【表11】
(配列番号76)、保存的置換は、Biocoreによって測定されたように、下線を引いた位置1および4において耐性がある。例えば、位置1のアミノ酸はA、D、E、NまたはQであってもよい。位置4のアミノ酸はV、I、LまたはMであってもよい。QIVLとしての位置1〜4(配列番号69)(マウス親LFU720、LGT209およびLGT211Vkにおけるように)は、Biocoreによって測定されたように、EIVMとして位置1〜4(配列番号67)にわたって結合を改善した(LGT210Vkにおけるように)。
【0245】
軽鎖CDR1、
【表12】
(配列番号71)に関して、太字の残基の空間的配置は、Lc CDR1のこの位置に2つの他のアミノ酸を有するヒトクローンの親和性が損なわれたように、結合について影響を及ぼした。したがって、太字の残基は結合において役割を果たしている。
【0246】
軽鎖CDR3、
【表13】
(配列番号26)に関して、これらの位置のヒト生殖系列への変化は、ELISAによって測定されたように、耐性はない。したがって、太字の残基は結合において役割を果たしている。
【0247】
本明細書で記載された実施例および実施形態は、例示した目的のためだけのものであって、それらに関する様々な変更または変化は当業者に示唆されており、本出願の精神および範囲内ならびに特許請求の範囲内に含まれるものである。本明細書で引用した全出版物、特許、特許出願および配列受入記録は、全目的のために全体を参考として本明細書に組み込む。
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、全目的のために参照により組み込んだ2009年12月11日出願の米国特許仮出願第61/285,942号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、PCSK9に対する抗体アンタゴニストに関する。
【背景技術】
【0003】
低密度リポタンパク質受容体(LDL−R)は、血流中の低密度リポタンパク質(LDL)を排除することによってアテローム性動脈硬化および高コレステロール血症を防御する。LDL−Rは、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9a型(「PCSK9」)によって翻訳後のレベルが調節される。最近、マウスにおけるPCSK9のノックアウトが報告された。これらのマウスでは血漿コレステロールレベルが約50%低下しており、血漿コレステロール低下においてスタチンに対する高い感受性を示した(Rashid S, et al (2005) Proc Natl Acad Sci 102:5374-5379。ヒトの遺伝子データによってもLDL恒常性維持におけるPCSK9の役割が裏付けられる。おそらくPCSK9の「機能損失」変異と考えられる2つの変異が最近同定された。これらの変異を有する個体は、LDL−Cの血漿レベルが約40%低下しており、このことは冠動脈心疾患が約50〜90%減少することを意味している。考え合わせると、これらの研究は、PCSK9の阻害剤がLDL−Cの血漿濃度およびPCSK9によって媒介されるその他の病的状態の軽減に有益で、効率を高めるために、例えば、コレステロールを低下させるために有用な第2の薬剤と一緒に同時投与することができることを示唆している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)(例えば、配列番号47)と結合し、その機能と拮抗する抗体および、例えば、PCSK9によって媒介される病的状態を治療するためにこのような抗体を使用するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明はプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に結合する抗体および抗原結合分子を提供する。いくつかの実施形態では、この抗体は、
a)PCSK9が低密度リポタンパク質受容体(LDLR)に結合するのを阻止せず、
b)LDLRのPCSK9の媒介による分解を阻害する。
【0006】
いくつかの実施形態では、この抗体または抗原結合分子はヒトPCSK9の680〜692位の残基内の少なくとも1個のアミノ酸に結合する。例えば、いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合分子は、アミノ酸配列RSRHLAQASQELQ(配列番号49)内のPCSK9のエピトープに結合する。
【0007】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合分子はヒトPCSK9に平衡解離定数(KD)約500pM以下で結合する。例えば、いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合分子はヒトPCSK9に平衡解離定数(KD)約400pM、300pM、250pM、200pM、190pM、180pM、170pM、160pM、150pM、140pMまたはそれ以下で結合する。
【0008】
いくつかの実施形態では、抗体抗原結合分子は、インビボ(in vivo)における半減期が少なくとも約7日である。いくつかの実施形態では、抗体抗原結合分子は、インビボにおける半減期が少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10日である。いくつかの実施形態では、抗体抗原結合分子は、インビボにおけるコレステロール低下効果が少なくとも約2週間、例えば、2、3、4週間またはそれ以上である。好ましくは、インビボにおける半減期はヒト対象において測定する。
【0009】
いくつかの実施形態では、抗体は、
(a)ヒト重鎖Vセグメント、重鎖相補性決定領域3(CDR3)および重鎖フレームワーク領域4(FR4)を含む重鎖可変領域と、
(b)ヒト軽鎖Vセグメント、軽鎖CDR3、および軽鎖FR4を含む軽鎖可変領域と
を含み、
i)重鎖CDR3がアミノ酸配列SYYYY(A/N)MD(A/F/S/V/Y)(配列番号14)を含み、
ii)軽鎖CDR3可変領域がアミノ酸配列LQWSSDPPT(配列番号26)を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗体は、
(a)ヒト重鎖Vセグメント、重鎖相補性決定領域3(CDR3)および重鎖フレームワーク領域4(FR4)を含む重鎖可変領域と、
(b)ヒト軽鎖Vセグメント、軽鎖CDR3、および軽鎖FR4を含む軽鎖可変領域と
を含み、
i)重鎖CDR3がアミノ酸配列SYYYYNMDY(配列番号12)を含み、
ii)軽鎖CDR3可変領域がアミノ酸配列LQWSSDPPT(配列番号26)を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗体は、
(a)ヒト重鎖Vセグメント、重鎖相補性決定領域3(CDR3)および重鎖フレームワーク領域4(FR4)を含む重鎖可変領域と、
(b)ヒト軽鎖Vセグメント、軽鎖CDR3、および軽鎖FR4を含む軽鎖可変領域と
を含み、
i)重鎖CDR3がアミノ酸配列SYYYYAMDY(配列番号13)を含み、
ii)軽鎖CDR3可変領域がアミノ酸配列LQWSSDPPT(配列番号26)を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、重鎖CDR3が配列番号12および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントは、配列番号28と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、軽鎖Vセグメントは、配列番号31と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントは、配列番号27と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、軽鎖Vセグメントは、配列番号29および配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、重鎖FR4がヒト生殖系列FR4である。いくつかの実施形態では、重鎖FR4が配列番号35である。
【0016】
いくつかの実施形態では、軽鎖FR4がヒト生殖系列FR4である。いくつかの実施形態では、軽鎖FR4が配列番号39である。
【0017】
いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントおよび軽鎖Vセグメントがそれぞれ、相補性決定領域1(CDR1)および相補性決定領域2(CDR2)を含み、
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号8のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号11のアミノ酸配列を含み、
iii)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号22のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号25のアミノ酸配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントおよび軽鎖Vセグメントがそれぞれ、相補性決定領域1(CDR1)および相補性決定領域2(CDR2)を含み、
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号7のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号10のアミノ酸配列を含み、
iii)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号21のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号24のアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号7を含み、
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号10を含み、
iii)重鎖CDR3が、配列番号12および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号21を含み、
v)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号24を含み、
vi)軽鎖CDR3が配列番号26を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域が配列番号40の可変領域と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域が配列番号41の可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗体が配列番号40を含む重鎖および配列番号41を含む軽鎖を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域が配列番号2および配列番号4からなる群から選択される可変領域と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域が配列番号16および配列番号18からなる群から選択される可変領域と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域が配列番号2および配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号16および配列番号18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗体はIgGである。いくつかの実施形態では、抗体はIgG1である。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号3および配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有する重鎖を有する。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号17および配列番号19からなる群から選択されるアミノ酸と少なくとも85%、88%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有する軽鎖を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、抗体はFab’断片である。いくつかの実施形態では、抗体は1本鎖抗体(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗体はヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体はヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1定常領域は、細胞または補体のC1成分上のFc受容体(FcR)、例えば、FcガンマR1などのエフェクターリガンドに対する結合親和性が低下するように変異させる。例えば、米国特許第5,624,821号参照。いくつかの実施形態では、IgG1定常領域のアミノ酸残基L234およびL235をAla234およびAla235に置換させる。重鎖定常領域中の残基の番号は、EUインデックスの番号である(Kabat, et al., (1983) “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” U.S. Dept. Health and Human Servicesを参照のこと)。
【0026】
いくつかの実施形態では、抗体は担体タンパク質、例えば、アルブミンに連結させる。
【0027】
いくつかの実施形態では、抗体はペグ化する。
【0028】
関連する態様では、本発明はPCSK9に結合する抗体であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域がそれぞれ以下の3種類の相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2およびCDR3を含み、
i)重鎖可変領域のCDR1が配列番号8のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖可変領域のCDR2が配列番号11のアミノ酸配列を含み、
iii)重鎖可変領域のCDR3が配列番号14のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖可変領域のCDR1が配列番号22のアミノ酸配列を含み、
v)軽鎖可変領域のCDR2が配列番号25のアミノ酸配列を含み、
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む
抗体を提供する。
【0029】
いくつかの実施形態では、
i)重鎖可変領域のCDR1が、配列番号6および配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖可変領域のCDR2が、配列番号9および配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
iii)重鎖可変領域のCDR3が、配列番号12および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖可変領域のCDR1が、配列番号20および配列番号21からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
v)軽鎖可変領域のCDR2が、配列番号23および配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む。
【0030】
関連する態様では、本発明はPCSK9に結合する抗体であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域がそれぞれ以下の3種類の相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2およびCDR3を含み、
i)重鎖可変領域のCDR1が配列番号6のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖可変領域のCDR2が配列番号9のアミノ酸配列を含み、
iii)重鎖可変領域のCDR3が配列番号13のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖可変領域のCDR1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、
v)軽鎖可変領域のCDR2が配列番号23のアミノ酸配列を含み、
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む
抗体を提供する。
【0031】
関連する態様では、本発明はPCSK9に結合する抗体であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域がそれぞれ以下の3種類の相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2およびCDR3を含み、
i)重鎖可変領域のCDR1が配列番号7のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖可変領域のCDR2が配列番号10のアミノ酸配列を含み、
iii)重鎖可変領域のCDR3が配列番号12のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖可変領域のCDR1が配列番号21のアミノ酸配列を含み、
v)軽鎖可変領域のCDR2が配列番号24のアミノ酸配列を含み、
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む
抗体を提供する。
【0032】
関連する態様では、本発明はPCSK9に結合する抗体であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域がそれぞれ以下の3種類の相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2およびCDR3を含み、
i)重鎖可変領域のCDR1が配列番号7のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖可変領域のCDR2が配列番号10のアミノ酸配列を含み、
iii)重鎖可変領域のCDR3が配列番号13のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖可変領域のCDR1が配列番号21のアミノ酸配列を含み、
v)軽鎖可変領域のCDR2が配列番号24のアミノ酸配列を含み、
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む
抗体を提供する。
【0033】
他の態様では、本発明は本明細書で記載したような抗体または抗原結合分子および生理学的に適合できる賦形剤を含む組成物を提供する。
【0034】
いくつかの実施形態では、この組成物はさらに、個体において低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)レベルを低下させる第2の薬剤を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、この第2の薬剤はスタチンである。例えば、スタチンは、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンからなる群から選択することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤が、フィブラート、ナイアシンおよびそれらの類似体、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸捕捉剤、甲状腺ホルモン様物質、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(acyltransferase)(DGAT)阻害剤、PCSK9を標的とする阻害性核酸およびapoB100を標的とする阻害性核酸からなる群から選択される。
【0037】
他の態様では、本発明は、LDL−C、非HDL−Cおよび/または全コレステロールの低下を必要とする個体におけるLDL−C、非HDL−Cおよび/または全コレステロールの低下方法であって、個体に本明細書で記載したような抗体または抗原結合分子の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態では、個体は、スタチン治療に低応答性または耐性である。いくつかの実施形態では、個体はスタチン治療に不耐性である。いくつかの実施形態では、個体のベースラインLDL−Cレベルは、少なくとも約100mg/dL、例えば、少なくとも約110、120、130、140、150、160、170、180、190mg/dLであるかまたはそれを上回る。いくつかの実施形態では、個体は家族性高コレステロール血症を有する。いくつかの実施形態では、個体はトリグリセリド血症を有する。いくつかの実施形態では、個体は機能獲得型PCSK9遺伝子変異を有する。いくつかの実施形態では、薬剤誘導性脂質代謝異常を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、全コレステロールがLDL−Cと共に低下する。
【0040】
いくつかの実施形態では、方法がLDL−Cの低下に有効な第2の薬剤の治療有効量を個体に投与することをさらに含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤はスタチンである。例えば、スタチンは、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンからなる群から選択することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤が、フィブラート、ナイアシンおよびそれらの類似体、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸捕捉剤、甲状腺ホルモン様物質、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤、PCSK9を標的とする阻害性核酸およびapoB100を標的とする阻害性核酸からなる群から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合分子および第2の薬剤は混合物として同時投与される。
【0044】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合分子および第2の薬剤は別々に同時投与される。
【0045】
いくつかの実施形態では、抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗体は皮下投与される。
【0046】
定義
「抗体」とは、イムノグロブリンファミリーのポリペプチドまたは非共有的、可逆的、かつ特異的な様式で対応する抗原に結合することができるイムノグロブリンの断片を含むポリペプチドを意味する。抗体構造単位の一例には、テトラマーが含まれる。各テトラマーは、2つの同一なポリペプチド鎖対から構成され、各対は、ジスルフィド結合によって連結した1本の「軽」鎖(約25kD)および1本の「重」鎖(約50〜70kD)を有する。確認されたイムノグロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子ならびに無数のイムノグロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κまたはλのいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δまたはεとして分類され、次に、それぞれイムノグロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを決定する。各鎖のN末端は、抗原認識に主に関与する約100個から110個以上のアミノ酸の可変領域を決定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語はそれぞれ、軽鎖および重鎖のこれらの領域を意味する。本出願で使用したように、「抗体」は、特に、例えばPCSK9に対して、特定の結合性を有する抗体およびその断片の変種全てを包含する。したがって、この概念の範囲内には、完全長抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、1本鎖抗体(ScFv)、Fab、Fab’および同じ結合特異性を有するこれらの断片の多量体変種(例えば、F(ab’)2)が存在する。
【0047】
「相補性決定ドメイン」または「相補性決定領域(「CDR」)は同義で、VLおよびVHの超可変領域を意味する。CDRとは、このような標的タンパク質に特異性を有する抗体鎖の標的タンパク質結合部位である。ヒトVLまたはVHそれぞれには3つのCDR(CDR1〜3、N末端から順番に番号付け)があり、可変ドメインの約15〜20%を構成する。CDRは、標的タンパク質のエピトープに対して構造的に相補的であり、したがって、結合特異性に直接関与する。VLまたはVHの残りの連続部分、いわゆるフレームワーク領域は、アミノ酸配列の変動が少ないことが示された(Kuby, Immunology, 4th ed., Chapter 4. W.H. Freeman & Co., New York, 2000)。
【0048】
CDRおよびフレームワーク領域の位置は、当業界で周知の様々な定義法、例えば、Kabat,Chothia,international ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)(ワールドワイドウェブimgt.cines.fr/)およびAbM(例えば、Johnson et al., Nucleic Acids Res., 29:205-206 (2001);Chothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196:901-917 (1987);Chothia et al., Nature, 342:877-883 (1989);Chothia et al., J. Mol. Biol., 227:799-817 (1992);Al-Lazikani et al., J.Mol.Biol., 273:927-748 (1997)を参照のこと)を使用して決定する。抗原結合(combining)部位の定義はまた、以下に記載されている:Ruiz et al., Nucleic Acids Res., 28:219?221 (2000)およびLefranc, M.P., Nucleic Acids Res., 29:207-209 (2001);MacCallum et al., J. Mol. Biol., 262:732-745 (1996)およびMartin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:9268?9272 (1989);Martin et al., Methods Enzymol., 203:121?153 (1991)およびRees et al., In Sternberg M.J.E. (ed.), Protein Structure Prediction, Oxford University Press, Oxford, 141?172 (1996)。
【0049】
「結合特異性決定基」または「BSD」という用語は同義で、抗体の結合特異性を決定するために必要な相補性決定領域内の最小限の連続または非連続アミノ酸配列を意味する。最小限の結合特異性決定基は、1個または複数のCDR配列内にあってもよい。いくつかの実施形態では、最小限の結合特異性決定基は、抗体の重鎖および軽鎖のCDR3配列の一部または完全長内に存在する(すなわち、それによってのみ決定される)。
【0050】
本明細書で使用した「抗体軽鎖」または「抗体重鎖」はそれぞれ、VLまたはVHを含むポリペプチドを意味する。内在性VLは、遺伝子セグメントV(可変)およびJ(連結)によってコードされ、内在性VHはV、D(多様性)およびJによってコードされる。VLまたはVHのそれぞれは、CDRおよびフレームワーク領域を含む。本出願では、抗体軽鎖および/または抗体重鎖は、時々、集合的に「抗体鎖」を意味することもある。これらの用語には、当業者であれば容易に理解するように、VLまたはVHの基本構造を破壊しない変異を含有する抗体鎖が包含される。
【0051】
抗体は、完全なイムノグロブリンとして、または様々なペプチダーゼで消化することによって生成したいくつかの良く特徴付けられた断片として存在する。したがって、例えば、ペプシンはヒンジ領域のジスルフィド結合より下で抗体を消化して、それ自体がFab’の二量体、F(ab)’2を生じ、Fab’はVH−CH1にジスルフィド結合によって連結した軽鎖である。F(ab)’2は、穏和な条件下で還元され、ヒンジ領域のジスルフィド結合が切断し、それによってF(ab)’2二量体はFab’単量体に変換される。Fab’単量体はヒンジ領域の一部を含むが、本質的にはFabである。Paul, Fundamental Immunology 3d ed. (1993)。様々な抗体断片が完全な抗体の消化に関して定義されているが、当業者であれば、このような断片は化学的に、または組換えDNA法を使用することによって、新たに合成できることを理解するであろう。したがって、本明細書で使用したように、「抗体」という用語はまた、抗体全体の改変によって生成した抗体断片、または組換えDNA法を使用して新たに合成された抗体断片(例えば、1本鎖Fv)またはファージディスプレーライブラリーを使用して同定された抗体断片を含む(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)を参照のこと)。
【0052】
モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の調製では、当業界で公知の任意の技術を使用することができる(例えば、Kohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975);Kozbor et al., Immunology Today 4:72 (1983);Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, pp. 77-96. Alan R. Liss, Inc. 1985を参照のこと)。1本鎖抗体を生成するための技術(米国特許第4,946,778号)は、本発明のポリペプチドに対する抗体の生成に適合させることができる。また、トランスジェニックマウス、またはその他の生物、例えば、その他の哺乳類を、ヒト化抗体の発現のために使用することができる。あるいは、ファージディスプレー技術は、選択した抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロマーFab断片を同定するために使用することができる(例えば、McCafferty et al.、前述; Marks et al., Biotechnology, 10:779-783, (1992)を参照のこと)。
【0053】
非ヒト抗体のヒト化または霊長類化の方法は、当業界では周知である。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである原料からヒト化抗体に導入された1個または複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、移入残基(import residue)と呼ばれることが多く、通常は移入可変ドメインから得られる。ヒト化は、齧歯類のCDR(複数)配列またはCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することによって、Winterおよび共同研究者の方法(例えば、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988)およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと)にしたがって本質的に実施することができる。したがって、このようなヒト化抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号)であり、完全なヒト可変ドメインよりも実質的に少ない部分が非ヒト種の対応する配列によって置換されている。実際に、ヒト化抗体は通常、いくつかの相補性決定領域(CDR)残基およびおそらくいくつかのフレームワーク(「FR」)残基が齧歯類抗体の類似部位の残基によって置換されているヒト抗体である。
【0054】
「キメラ抗体」とは、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるかまたは変化したクラス、エフェクター機能および/または種類の定常領域、またはキメラ抗体に新たな特性を与える全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子および薬剤に結合するように定常領域またはその一部が変化、置換または交換しているか、あるいは(b)可変領域、またはその一部が、異なるかまたは変化した抗原特異性を有する可変領域で変化しているか、置換または交換している抗体分子である。
【0055】
本発明の抗体または抗原結合分子はさらに、化学的に結合した、またはその他のタンパク質との融合タンパク質として発現した、1個または複数のイムノグロブリン鎖を含む。二特異性抗体も含む。二特異性または二機能性抗体は、2個の異なる重鎖/軽鎖対および2個の異なる結合部位を有する人工的なハイブリッド抗体である。本発明のその他の抗原結合断片または抗体部分には、2価scFv(二重特異性抗体(diabody))、抗体分子が2個の異なるエピトープを認識する二特異性scFv抗体、単一の結合ドメイン(dAb)および小型抗体(minibody)が含まれる。
【0056】
本明細書で記載した様々な抗体または抗原結合断片は、完全な抗体の酵素的もしくは化学的改変によって生成することができるか、または組換えDNA法を使用して新たに合成することができ(例えば、1本鎖Fv)、またはファージディスプレーライブラリーを使用して同定することができる(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554, 1990を参照のこと)。例えば、小型抗体は、当業界で記載された方法、例えば、Vaughan and Sollazzo, Comb Chem High Throughput Screen. 4:417-30 2001を使用して作製することができる。二特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の結合を含む様々な方法によって生成することができる。例えば、Songsivilai & Lachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315-321 (1990); Kostelny et al., J. Immunol. 148, 1547-1553 (1992))を参照のこと。1本鎖抗体は、ファージディスプレーライブラリーまたはリボソームディスプレーライブラリー、遺伝子シャッフルライブラリーを使用して同定することができる。このようなライブラリーは、合成、半合成または天然および免疫適格性材料から構築することができる。
【0057】
「キメラ抗体」とは、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるかまたは変化したクラス、エフェクター機能および/または種類の定常領域、またはキメラ抗体に新たな特性を与える全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子および薬剤等に結合するように定常領域またはその一部が変化、置換または交換しているか、あるいは(b)可変領域、またはその一部が、異なるかまたは変化した抗原特異性を有する可変領域で変化しているか、置換または交換している抗体分子である。例えば、以下の実施例で示したように、マウス抗PCSK9抗体は、その定常領域をヒトイムノグロブリンの定常領域と置換することによって改変することができる。ヒト定常領域と置換することによって、キメラ抗体はヒトPCSK9の認識においてその特異性を保持することができる一方、元のマウス抗体と比較してヒトにおける抗原性が低下する。
【0058】
「抗体結合分子」または「非抗体リガンド」という用語は、非イムノグロブリンタンパク質骨格を使用する抗体様物質を意味しており、アドネクチン、アビマー、1本鎖ポリペプチド結合分子および抗体様結合ペプチド様物質が含まれる。
【0059】
「可変領域」または「V領域」という用語は同義で、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4を含む重鎖または軽鎖を意味する。図1参照のこと。内在性可変領域は、イムノグロブリン重鎖V−D−J遺伝子または軽鎖V−J遺伝子によってコードされる。V領域は、天然に生じるか、組換えられているか、または合成されていてもよい。
【0060】
本明細書で使用したように、「可変セグメント」または「Vセグメント」という用語は同義で、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3を含む可変領域の部分配列である。図1参照のこと。内在性Vセグメントは、イムノグロブリンV遺伝子によってコードされる。Vセグメントは、天然に生じるか、組換えられているか、または合成されていてもよい。
【0061】
本明細書で使用したように、「Jセグメント」という用語は、CDR3およびFR4のC末端部分を含む、コードされた可変領域の部分配列を意味する。内在性Jセグメントは、イムノグロブリンJ遺伝子によってコードされる。図1参照のこと。Jセグメントは、天然に生じるか、組換えられているか、または合成されていてもよい。
【0062】
「ヒト化」抗体は、非ヒト抗体の反応性を保持する一方、ヒトにおける免疫原性が少ない抗体である。これは、例えば、非ヒトCDR領域を保持し、抗体の残存する部分をヒトの対応部分と置換することによって実現することができる。例えば、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984); Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65-92 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988); Padlan, Molec. Immun., 28:489-498 (1991); Padlan, Molec. Immun., 31(3):169-217 (1994)を参照のこと。
【0063】
「対応するヒト生殖系列配列」という用語は、ヒト生殖系列イムノグロブリン可変領域配列によってコードされた公知のその他の可変領域アミノ酸配列全てと比較して、参照可変領域アミノ酸配列または部分配列との決定されたアミノ酸配列同一性が最高であるヒト可変領域アミノ酸配列または部分配列をコードする核酸配列を意味する。対応するヒト生殖系列配列はまた、その他の評価された可変領域アミノ酸配列全てと比較して、参照可変領域アミノ酸配列または部分配列とのアミノ酸配列同一性が最高であるヒト可変領域アミノ酸配列または部分配列を意味することができる。対応するヒト生殖系列配列は、フレームワーク領域のみ、相補性決定領域のみ、フレームワークおよび相補性決定領域、可変セグメント(上記で定義)または可変領域を含む配列もしくは部分配列のその他の組み合わせであってもよい。配列同一性は、本明細書で記載した方法、例えば、BLAST、ALIGNまたは当業界で公知の別の配列比較アルゴリズムを使用して、2つの配列をアラインメントさせることによって決定することができる。対応するヒト生殖系列核酸配列またはアミノ酸配列は、参照可変領域核酸配列またはアミノ酸配列と少なくとも約90%、92%、94%、96%、98%、99%の配列同一性を有することができる。対応するヒト生殖系列配列は、例えば、公式に利用可能な国際的ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)(ワールドワイドウェブimgt.cines.fr/)およびV−base(ワールドワイドウェブvbase.mrc−cpe.cam.ac.uk)によって決定することができる。
【0064】
抗原、例えば、タンパク質と抗体または抗体由来の結合物質との間の相互作用を述べる場合に使用したときの「特異的に(または選択的に)結合する」という表現は、タンパク質およびその他の生物学的物質の不均一な集団、例えば、生物学的試料、例えば、血液、血清、血漿または組織試料中における抗原の存在を決定する結合反応を意味する。したがって、指定した免疫アッセイ条件下では、特定の結合特異性を有する抗体または結合物質は、背景の少なくとも2倍で特定の抗原と結合し、試料中に存在するその他の抗原とは有意な量では実質的に結合しない。このような条件下での抗体または結合物質の特異的結合には、抗体または物質が特定のタンパク質に対する特異性で選択されることが必要であり得る。所望であれば、または適切であれば、この選択は、例えば、その他の種(例えば、マウス)のPCSK9分子またはその他のPCSK亜型と交差反応する抗体を差し引くことによって実現することができる。様々なイムノアッセイ形式を、特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために使用してもよい。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために日常的に使用される(例えば、イムノアッセイ形式および特異的免疫反応を測定するために使用できる条件についての説明は、Harlow & Lane, Using Antibodies, A Laboratory Manual (1998)を参照のこと)。典型的は、特異的または選択的結合反応は、背景シグナルの少なくとも2倍のシグナルを生成し、より典型的には背景の少なくとも10から100倍のシグナルを生成する。
【0065】
「平衡解離定数(KD、M)」という用語は、結合速度定数(ka、時間−1、M−1)によって除した解離速度定数(Kd、時間−1)を意味する。平衡解離定数は、当業界で公知の任意の方法を使用して測定することができる。本発明の抗体の平衡解離定数は一般的に、約10−7または10−8M未満、例えば、約10−9Mまたは10−10M未満、いくつかの実施形態では、約10−11M、10−12Mまたは10−13M未満である。
【0066】
本明細書で使用したように、「抗原結合領域」という用語は、分子とPCSK9の特異的結合に関与する本発明のPCSK9結合分子のドメインを意味する。抗原結合領域には、少なくとも1個の抗体重鎖可変領域および少なくとも1個の抗体軽鎖可変領域が含まれる。本発明の各PCSK9結合分子にはこのような抗原結合領域が少なくとも1個存在し、抗原結合領域はそれぞれその他のものと同一であるかまたは異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、本発明のPCSK9結合分子の抗原結合領域の少なくとも1個はPCSK9のアンタゴニストとして作用する。
【0067】
本明細書で使用した「アンタゴニスト」という用語は、標的分子に特異的に結合して標的分子の活性を阻害することができる薬剤を意味する。例えば、PCSK9のアンタゴニストは、PCSK9に特異的に結合し、PCSK9媒介によるLDLRの分解を完全に、または部分的に阻害する。PCSK9媒介によるLDLRの分解の阻害は、PCSK9のLDLRへの結合を妨害してもよく、または妨害しなくてもよい。いくつかの場合において、PCSK9アンタゴニストは、PCSK9に結合しPCSK9のLDLRへの結合を阻害する能力によって同定することができる。PCSK9媒介によるLDLRの分解が、本発明のアンタゴニストに曝露したときに生じる阻害は、対照の存在下またはアンタゴニストなしでのPCSK9媒介による分解と比較して、少なくとも約10%低下している、例えば、少なくとも約25%、50%、75%低下しているか、または完全な阻害である。対照は、抗体もしくは抗原結合分子に曝露しないか、または別の抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗原結合分子、またはアンタゴニストとしての機能を果たすことが知られていない抗PCSK9抗体もしくは抗原結合分子であってもよい。「抗体アンタゴニスト」とは、アンタゴニストが阻害抗体である場合を意味する。
【0068】
「PCSK9」または「プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9a型」という用語は同義で、分泌型サブチラーゼファミリーのプロテイナーゼKサブファミリーに属する天然に生じるヒトプロタンパク質転換酵素を意味する。PCSK9は、小胞体において自己触媒的細胞内プロセシングを受ける可溶性酵素前駆体として合成され、プロタンパク質転換酵素として機能を果たすと考えられている。PCSK9は、コレステロール恒常性維持において役割を果たし、皮質ニューロンの分化において役割を担う可能性がある。このPCSK9遺伝子における変異は、常染色体優性家族性高コレステロール血症の形態に関連づけられている。例えば、Burnett and Hooper, Clin Biochem Rev (2008) 29(1):11-26を参照のこと。PCSK9の核酸配列およびアミノ酸配列は公知で、それぞれジェンバンク受入番号NM_174936.2およびNP_777596.2として発表された。本明細書で使用したように、PCSK9ポリペプチドは、LDLRに機能的に結合し、LDLRの分解を促進する。構造的に、PCSK9アミノ酸配列は、ジェンバンク受入番号NP_777596.2のアミノ酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。構造的に、PCSK9核酸配列は、ジェンバンク受入番号NM_174936.2の核酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0069】
「PCSK9機能獲得型突然変異」という表現は、例えば、LDLR分解の増加およびLDLRレベルの低下による家族性高コレステロール血症表現型、加速化アテローム硬化症および早期冠状動脈心疾患(premature coronary heart disease)に関連した、かつ/または原因となる、PCSK9遺伝子中に生じる天然の突然変異を意味する。PCSK9機能獲得型突然変異の対立遺伝子出現頻度は稀である。Burnett and Hooper, Clin Biochem Rev. (2008) 29(1):11-26を参照のこと。PCSK9機能獲得型突然変異の例には、D129N、D374H、N425SおよびR496Wが含まれる。Fasano, et al., Atherosclerosis (2009) 203(1):166-71を参照のこと。PCSK9機能獲得型突然変異は、例えば、Burnett and Hooper、前述;Fasano, et al、前述;Abifadel, et al., J Med Genet (2008) 45(12):780-6;Abifadel, et al., Hum Mutat (2009) 30(4):520-9およびLi, et al., Recent Pat DNA Gene Seq (2009) Nov. 1 (PMID 19601924)に概説されている。
【0070】
本発明のポリペプチドの「活性」とは、天然の細胞または組織におけるポリペプチドの構造的、調節的または生化学的機能を意味する。ポリペプチドの活性の例には、直接的活性および間接的活性の両方が含まれる。PCSK9の直接的活性の例は、LDLRへの結合およびPCSK9媒介によるLDLRの分解を含む、ポリペプチドとの直接的相互作用の結果である。PCSK9の場合の間接的活性の例は、ポリペプチドの直接的活性に対する細胞、組織、臓器または対象における表現型の変化または応答、例えば、増加した肝臓LDLRの低下、血漿HDL−Cの低下、血漿コレステロールの減少、スタチンに対する感受性の増加として観察される。
【0071】
核酸またはタンパク質に適用したときの「単離した」という用語は、核酸またはタンパク質が、天然の状態で関連しているその他の細胞成分を本質的に含まないことを意味する。好ましくは均一な状態である。乾燥しているか、または水溶液であってもよい。純度および均一性は通常、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの化学分析技術を使用して測定する。調製物中に存在する主な種がタンパク質であれば、実質的に精製されている。特に、単離された遺伝子は、遺伝子に隣接し、関心のある遺伝以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから分離されている。「精製した」という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルにおいて本質的に1本のバンドを生じることを意味する。特に、核酸またはタンパク質は少なくとも85%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、最も好ましくは少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0072】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、1本鎖または2本鎖の形態のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)およびそれらのポリマーを意味する。特に限定はしないが、この用語は、参照核酸と類似の結合特性を有し、天然に生じるヌクレオチドと類似の方法で代謝される天然のヌクレオチドの公知の類似体を含有する核酸を包含する。特に指示がなければ、特定の核酸配列は、保存的に改変されたそれらの変異体(例えば、縮重コドン置換体)、対立遺伝子、オルソログ、SNPおよび相補的配列ならびに明瞭に指示された配列も非明示的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1個または複数の選択される(または全ての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作製することによって実現することができる(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991);Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985)およびRossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0073】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は本明細書では同義で、アミノ酸残基のポリマーを意味する。この用語は、1個または複数のアミノ酸残基が対応する天然に生じるアミノ酸の人工的な化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に生じるアミノ酸ポリマーおよび天然には生じないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0074】
「アミノ酸」という用語は、天然に生じるアミノ酸および合成アミノ酸ならびに天然に生じるアミノ酸と類似の方法で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を意味する。天然に生じるアミノ酸とは、遺伝子コードによってコードされるアミノ酸ならびに後で改変されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸およびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体とは、天然に生じるアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基に結合したα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを意味する。このような類似体は、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド主鎖を有するが、天然に生じるアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然に生じるアミノ酸と類似の方法で機能する化合物を意味する。
【0075】
「保存的に改変された変異体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変異体とは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合は、本質的に同一な配列を意味する。遺伝子コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全てアミノ酸、アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定される全ての位置において、コードするポリペプチドを変化させることなく、記載した対応するコドンのいずれかにコドンを変化させることができる。このような核酸の変動は、「サイレント変動」であり、保存的に改変された変動の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書の全核酸配列はまた、核酸の可能な全サイレント変動を記載する。当業者であれば、核酸の各コドン(通常はメチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)は、機能的に同一の分子を生じるために改変することができることを認識するだろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変動は、記載した各配列に事実上含まれる。
【0076】
アミノ酸配列については、当業者であれば、コードされた配列の1個のアミノ酸またはごく少数のアミノ酸を変化させるか、付加するか、または欠失させる核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列への個々の置換、欠失または付加は、その変化が化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換を引き起こす場合、「保存的に改変された変異体」であることを認識するであろう。機能的に類似のアミノ酸をもたらす保存的置換の一覧は、当業界では周知である。このような保存的に改変された変異体はさらに、本発明の多形変異体、種間相同体および対立遺伝子を排除しない。
【0077】
以下の8群はそれぞれ、互いに保存的な置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)4)アルギニン(R)、リシン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、7)セリン(S)、トレオニン(T)および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照のこと)。
【0078】
「配列同一性のパーセント」は、比較窓にわたって2種類の最適にアラインメントさせた配列を比較することによって決定され、比較窓中のポリヌクレオチド配列の一部は、2種類の配列の最適なアラインメントのために付加または欠失を含まない参照配列(例えば、本発明のポリペプチド)と比較して、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでいてもよい。パーセントは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両配列内に生じる位置の数を測定して、一致した位置の数を出し、一致した位置の数を比較窓中の位置の全数によって除し、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセントを出すことによって算出する。
【0079】
2種以上の核酸またはポリペプチド配列の場合、「同一な」またはパーセント「同一性」という用語は、配列が同じ2種以上の配列または部分配列を意味する。以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、または手動のアラインメントおよび目視検査によって測定したときに、比較窓または指定した領域にわたって最大限対応するように比較し、アラインメントさせたとき、2種類の配列が特定のパーセントの同じアミノ酸残基またはヌクレオチドを有する場合(すなわち、特定の領域にわたって、または特定していないときは、参照配列の全配列にわたって、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する場合)、2種類の配列は「実質的に同一」である。本発明は、本明細書で例示したポリペプチドまたはポリヌクレオチドそれぞれに実質的に同一なポリペプチドまたはポリヌクレオチドを提供する(例えば、配列番号1〜5、15〜19および40〜41のいずれか1つに例示した可変領域、配列番号27〜31のいずれか1つに例示した可変セグメント、配列番号6〜14、20〜26のいずれか1つに例示したCDR、配列番号32〜39のいずれか1つに例示したFR、配列番号42〜45のいずれか1つに例示した核酸配列)。所望により、同一性は長さが少なくとも約15、25または50ヌクレオチドの領域にわたって、より好ましくは、長さが100から500または1000以上のヌクレオチドである領域にわたって、あるいは参照配列の全長にわたって存在する。アミノ酸配列に関して、同一性または実質的同一性は、長さが少なくとも5、10、15または20個のアミノ酸の領域にわたって、所望により長さが少なくとも約25、30、35、40、50、75または100個のアミノ酸にわたって、所望により少なくとも約150、200または250個のアミノ酸にわたって、あるいは参照配列の全長にわたって存在し得る。より短いアミノ酸配列、例えば、アミノ酸20個以下のアミノ酸配列に関して、本明細書で定義した保存的置換によって、1個または2個のアミノ酸残基が保存的に置換されているとき、実質的同一性が存在する。
【0080】
配列比較のため、通常、1配列は、試験配列を比較する参照配列とする。配列比較アルゴリズムを使用するとき、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、その後の位置を指定し、必要であれば、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。初期設定のプログラムパラメータを使用することができ、または代わりのパラメータを指定することもできる。次に、配列比較アルゴリズムによって、プログラムパラメータをベースにして、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を算出する。
【0081】
本明細書で使用した「比較窓」には、2種類の配列を最適にアラインメントさせた後、1配列を同数の連続した位置の参照配列と比較することができる20から600、通常約50から約200、より通常は約100から約150からなる群から選択される連続した位置の数のいずれか1個のセグメントに対する参照が含まれる。比較のための配列のアラインメント方法は、当業界では周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith and Waterman (1970) Adv. Appl. Math. 2:482cの局所的相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman (1988) Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータによる手法(GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)または手動のアラインメントおよび目視検査(例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (1995 supplement)を参照のこと)によって実施することができる。
【0082】
パーセント配列同一性および類似性を決定するために適切なアルゴリズムの2つの例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムで、それぞれAltschul et al. (1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402およびAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターから公式に利用可能である。このアルゴリズムは、まず、問い合わせ配列内の長さがWの短いワードであって、データベース配列内の同じ長さのワードとアライメントしたときに、ある正の値の閾値スコアTと一致するか、またはそれを満たすワードを同定することにより高スコア配列ペア(HSP)を同定することを含む。Tは、近傍ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al.、前述)。これら最初の近傍ワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見出す検索を開始するためのシードとして作用する。このワードヒットは、累積アライメントスコアを増加することができる限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(一対の一致残基に対するリワードスコア;常に>0)およびN(不一致残基に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて算出する。アミノ酸配列については、スコアリングマトリクスを用いて累積スコアを算出する。累積アライメントスコアが最高到達値から数量Xだけ低下した場合;負のスコアを有する残基アライメントが1個または複数累積したことにより累積スコアが0以下になった場合;またはいずれかの配列の末端に達した場合には、各方向におけるワードヒットの伸長が停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXにより、アライメントの感度および速度が決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、既定値として、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、規定値として、ワード長3および期待値(E)10を用い、BLOSUM62スコアリングマトリクス(Henikoff and Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915を参照のこと)は、アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両鎖の比較を用いる。
【0083】
BLASTアルゴリズムはまた、2種類の配列の類似性の統計学的分析を実施する(例えば、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによってもたらされた類似性の1測定値は、最小合計確率(P(N))であり、2種類のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の一致が偶然生じる可能性の指標となる。例えば、試験核酸と参照核酸との比較において最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満であるならば、その核酸は、参照配列と類似であると考えられる。
【0084】
2種類の核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であることの指標は、第1の核酸によってコードされたポリペプチドが、以下に説明したように、第2の核酸によってコードされたポリペプチドに対して生じた抗体と免疫学的に交差反応することである。したがって、ポリペプチドは通常、第2のポリペプチドと実質的に同一で、例えば、2種類のペプチドは保存的置換のみが異なる。2種類の核酸配列が実質的に同一である別の指標は、以下に説明したように、2種類の分子またはそれらの相補体がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。2種類の核酸配列が実質的に同一であるさらに別の指標は、同じプライマーを使用して配列を増幅することができることである。
【0085】
本発明のPCSK9結合分子内で抗原結合領域がどのように連結するかを説明する場合に使用される「結合(link)」という用語は、物理的に領域を結合するために可能な手段全てを包含する。多数の抗原結合領域は、共有結合(例えば、ペプチド結合またはジスルフィド結合)または非共有結合などの化学的結合によって結合することが多く、直接的結合(すなわち、2種類の抗原結合領域の間にリンカーがない)であってもよく、または間接的結合(すなわち、2種類以上の抗原結合領域の間の少なくとも1個のリンカー分子による)であってもよい。
【0086】
「対象」、「患者」および「個体」という用語は同義で、哺乳類、例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類哺乳類を意味する。哺乳類はまた、実験動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスターであってもよい。いくつかの実施形態では、哺乳類は農業用哺乳類(例えば、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ラクダ)または家畜哺乳類(例えば、イヌ、ネコ)であってもよい。
【0087】
「治療上許容される量」または「治療有効用量」は同義で、所望する結果を達成するために(すなわち、血漿非HDL−C、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化、冠動脈心疾患の減少)十分な量を意味する。いくつかの実施形態では、治療上許容される量は、所望しない副作用を誘導しないか、または引き起こさない。治療上許容される量は、まず低用量を投与し、次に、所望する効果が実現するまで、その用量を徐々に増加させることによって決定することができる。本発明のPCSK9拮抗抗体の「予防的有効用量」は、PCSK9の存在に関連した疾患症状(例えば、高コレステロール血症)の発症を防御するができ、「治療有効用量」は疾患症状の重症度の減少を引き起こすことができる。前記用語はまた、疾患症状のない期間の頻度を高め、持続期間を延長させることができる。「予防有効用量」および「治療有効用量」はまた、PCSK9の活性から生じた障害および疾患による機能障害または能力障害を予防するかまたは回復させることができる。
【0088】
「同時投与」という用語は、個体の血液における2種類の活性薬剤の同時存在を意味する。同時投与された活性薬剤は、同時に、または順次送達され得る。
【0089】
本明細書で使用したように、「本質的に構成される」という表現は、方法または組成物に含まれた活性のある医薬品の部類または種類ならびに方法または組成物の企図した目的のために不活性な任意の賦形剤を意味する。いくつかの実施形態では、「本質的に構成される」という表現は、本発明のアンタゴニスト抗PCSK9抗体以外の1種または複数の追加的活性薬剤の包含を明白に除外する。いくつかの実施形態では、「本質的に構成される」という表現は、本発明のアンタゴニスト抗PCSK9抗体以外の1種または複数の追加的活性薬剤および第2の同時投与された薬剤の包含を明白に除外する。
【0090】
「スタチン」という用語は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)還元酵素の競合的阻害剤である薬理学的作用物質の種類を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は、親マウスモノクローナル抗体NVP−LFU720の重鎖(配列番号1)および軽鎖(配列番号15)アミノ酸配列を示す。CDR1、CDR2およびCDR3の配列には下線を引き、太字にしている。
【0092】
【図2】図2は、親マウスモノクローナル抗体NVP−LGT209の重鎖(配列番号2)および軽鎖(配列番号16)アミノ酸配列を示す。CDR1、CDR2およびCDR3の配列には下線を引き、太字にしている。
【0093】
【図3】図3は、親マウスモノクローナル抗体NVP−LGT210の重鎖(配列番号2)および軽鎖(配列番号18)アミノ酸配列を示す。CDR1、CDR2およびCDR3の配列には下線を引き、太字にしている。
【0094】
【図4】図4は、親マウスモノクローナル抗体NVP−LGT211の重鎖(配列番号4)および軽鎖(配列番号16)アミノ酸配列を示す。CDR1、CDR2およびCDR3の配列には下線を引き、太字にしている。
【0095】
【図5】図5A〜Cは、いくつかの異なるヒトおよびマウス抗原に対するNVP−LFU720−NX−4と比較したNVP−LGT209(A)、NVP−LGT210(B)およびNVP−LGT−211(C)の結合を試験するELISAアッセイを示す。
【0096】
【図6】図6A〜Cは、ヒトおよびカニクイザル(cyno)Pcsk9に対するELISAにおけるNVP−LGT209(A)、NVP−LGT210(B)およびNVP−LGT−211(C)の結合を示す。第2抗体はヤギ抗マウス抗体で、1:5000に希釈する。第2のみ(2nd only)とは、第2抗体のみの対照である。
【0097】
【図7】図7は、親マウスモノクローナル抗体、NVP−LFU720がPCSK9のC末端、残基680〜692(RSRHLAQASQELQ;配列番号49)に結合することを示す。Humaneered(商標)抗体LGT209、LGT210およびLGT211は同じエピトープで競合する。C−末端変異体A685X=配列番号56である。
【0098】
【図8】図8は、親マウス抗体NVP−LFU720(5p20)は、時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR−FRET)生化学アッセイで測定すると、PCSK9とLDL−Rの相互作用を十分に分断しないことを示す。対照的に、13C10は、PCSK9−LDL−R FRET相互作用をIC5050nMで分断する。アッセイ緩衝液中(HEPES 20mM、pH7.2、NaCl 150mM、CaCl2 1mM、0.1%v/v Tween20および0.1%w/v BSA)で、蛍光色素(hPCSK9−AF)で標識したヒトPCSK9をNVP−LFU720−AX−1または13C10で室温で30分間インキュベートした。この後ユーロピウム標識LDL−R(hLDL−R−Eu)を添加し、室温で90分間さらにインキュベートし、したがって、最終濃度はhPcsk9−AF 8nMおよびhLDL−R−Eu 1nMであった。TR−FRETシグナル(330nm励起および665nm放射)をプレートリーダー(EnVision 2100、Perkin Elmer)で測定し、5P20または13C10存在下での%阻害を計算した。IC50値は、Prism(GraphPad)でパーセント阻害値をプロットすることによって計算した。各データ点は平均±SD(点当たりn=4連)を表す。データは、少なくとも2回の独立した実験を表す。
【0099】
【図9】図9は、Humaneered(商標)抗体LGT209、LGT210およびLGT211が、LDL−Rレベルの増加およびHepG2細胞によるLDL取り込みの誘導についてマウス抗体LFU720と同等であることを示す。LDL−R測定のため、細胞をPCSK9結合抗体でインキュベートし、抗LDL−R抗体で標識した。LDL取り込みのため、細胞をPCSK9結合抗体、PCSK9およびDiI−LDLでインキュベートした。LDL−R抗体およびDiI−LDL蛍光はフローサイトメトリーで測定した。反復測定の平均+SEMを各アッセイについて示す。結果は、3回の独立した実験を表す。
【0100】
LDL取り込みアッセイのために、10%牛胎児リポタンパク質欠乏血清(Intracel)およびヒトPCSK9(Hampton et al. PNAS (2007) 104:14604-14609)200nMを含有するDMEM中でPSCK9結合抗体を室温で30分間インキュベートし、抗体/PCSK9/培地溶液を96ウェルプレート中の細胞に添加し、一晩インキュベートした。翌日、1,1’−ジオクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチル−インドカルボシアニン過塩素酸塩標識LDL(DiI−LDL、Biomedical Technologies)をさらに2時間かけて添加した。次に培地を吸引し、細胞をPBSで3回洗浄し、細胞を0.25%トリプシン−EDTAで分離した。その後、細胞をFACS緩衝液(5%牛胎児血清、EDTA 2mMおよび0.2%アジ化ナトリウムを含有するPBS)に移し、1000×gで10分間遠心し、吸引し、1%パラホルムアルデヒドで固定した。LDL取り込みは、フローサイトメトリー(Becton Dickinson LSR II)を使用して、細胞のDiI蛍光(488nmで励起し、575nmで放射)によって測定した。表面LDL−Rアッセイのために、抗体を含有する無血清培地で細胞をインキュベートし、PBSで洗浄し、ベルシン(Biowhittaker、17−771E)およびFACS緩衝液中に採取した。細胞を新たなプレートに移し、1200rpMで5分間遠心し、正常なウサギIgG(MP biomedicals)で遮断した。細胞をFACS緩衝液中でウサギ抗hLDL−R−Alexa647IgG(5μg/ml)標識抗体で標識し、遠心して、洗浄し、1%パラホルムアルデヒドで固定した。表面LDL−Rは、フローサイトメトリー(488nmで励起し、633nmで放射)によって測定した。EC50はPrism(GraphPad)を使用して計算した。
【0101】
【図10】図10は、本発明の抗体のコレステロール低下効果を測定するためのヒトPCSK9注入マウスモデルの研究設計の概略を示す。LGT209、LGT210およびLGT211は、マウスPCSK9には検出可能な結合は示さないが、hPCSK9には高い親和性で結合するHumaneered(商標)抗PCSK9抗体である。LGT209、LGT210またはLGT211がhPCSK9媒介による非HDLコレステロールの上昇を阻害し、かつPCSK9媒介による肝LDLRの分解を防御できるかどうかを試験するために、hPCSK9を含有する浸透圧ミニポンプを埋め込む(持続注入のため)3時間前にこれらの抗体を各マウスに注射した。血漿および肝臓組織採取は、hPCSK9注射の24時間後に実施した。
【0102】
【図11】図11は、注入マウスモデルにおいて、抗体LGT209、LGT210およびLGT211による処理がヒトPCSK9(「hPCSK9」)の蓄積を引き起こしたことを示している。簡単に説明すると、全hPCSK9は捕捉用にmAb7D16を使用したELISAによって測定した。mAb7D16はLGT209、LGT210およびLGT211よりもPCSK9上のエピトープに結合し、全(遊離および結合)PCSK9を測定するために使用することができる。全hPCSK9で認められた増加はおそらく、hPCSkK9/Ab複合体の増加によるものであろう。遊離抗体は捕捉用にhPCSK9を使用するELISAによって測定した。このアッセイでは、「遊離」抗体が測定され、おそらく1:1Ab:PCSK9複合体が測定される。C57BL/6マウスを媒体単独、PCSK9単独、PCSK9+LGT210 20mg/kg、PCSK9+NVP−LGT211 20mg/kg、またはマウス非特異的IgG混合物(陰性対照)で処理した。個々のデータ点をプロットし、平均値は水平線で明示し、p<0.05は有意とみなした。
【0103】
血漿IgGレベルは、Meso Scale Discovery(MSD)アッセイによって定量した。遊離抗体は捕捉用のhPCSK9を使用して測定した。このアッセイでは、「遊離」抗体が測定され、おそらく1:1Ab:PCSK9複合体が測定される。IgG MSDアッセイでは、MSD標準96プレート(L11XA−3)を使用した。簡単に説明すると、PBSに溶かした捕捉抗原PCSK9−his 1μg/mlの25から28μl(25〜28ng/ウェル)でプレートを4℃で一晩コーティングした。コーティング溶液を除去し、プレートを5%MSDブロッカーA(R93AA−2)150μl/ウェルで室温で1時間振盪して遮断した。プレートをPBS+0.05% Tween−20の300μlで3回洗浄した後、IgG標準物質希釈物(MSDブロッカーAで10,000から0.0003ng/mlまでの10段階に希釈)、未知の血漿試料希釈物(MSDブロッカーAで10,000倍)または品質対照試料25μlを添加し、室温で1時間振盪しながらインキュベートした。洗浄後、検出抗体1μg/ml(MSDヤギ抗マウスSULFO−TAG標識検出抗体、R32AC−5、1%BSA/PBS/0.05%Tween20で希釈)25μl/ウェルを添加し、室温で1時間振盪しながらインキュベートした。洗浄し、1倍読み取り緩衝液T 150μl/ウェルを添加した後、プレートをMSD SECTOR Imager 6000ですぐに読み取った。標準曲線および未知の試料のプロットは、MSDデータ分析ソフトウェアを使用して計算した。
【0104】
血漿IgGおよびhPCSK9の両レベルは、Meso Scale Discovery(MSD)アッセイによって定量した。MSD hPCSK9アッセイは、IgGアッセイと類似しているが、以下を除く。プレートを捕捉抗体(7D16.C3:2.95mg/ml)1μg/mlの25〜28μlでコーティングした。mAb7D16はLGT209、LGT210およびLGT211よりもPCSK9上のエピトープに結合し、全(遊離および結合)PCSK9を測定するために使用することができる。プレートを遮断した後、hPCSK9標準物質希釈物(10,000から0.0003ng/mlの10箇所)および血漿試料希釈物(MSDブロッカーAで10,000倍)25μlを室温で1時間振盪しながらインキュベートし、その後1次検出抗体(ウサギ抗PCSK9ポリクローナル抗体、Ab4、施設内ウサギ(in house rabbit)ID#RB11835)でインキュベートした。MSD SECTOR Imager6000で読み取る前に、2次検出抗体(MSDヤギ抗ウサギSULFO−TAG標識検出抗体、R32AB−5)によるインキュベーション工程を追加した。全hPCSK9で認められた増加はおそらく、hPCSkK9/Ab複合体の増加によるものであろう。統計学的分析は、GraphPad Prism 4.02(GraphPadソフトウェア、San Diego、CA)を使用して実施した。一元配置ANOVAを使用して群の差を分析し、全体の差が見出されたときは、ニューマンクールズのポストホック検定を使用して処理群の具体的な鎖を決定した。
【0105】
【図12】図12は、注入マウスモデルにおいて、抗体LGT209、LGT210およびLGT211がhPCSK9媒介による分解から肝LDL−Rの防御をもたらすことを示している。C57BL/6マウスを媒体単独、PCSK9単独、PCSK9+LGT210 20mg/kg、PCSK9+NVP−LGT211 20mg/kg、または非特異的IgG混合物(陰性対照)で処理した。個々の動物の肝臓試料を示す。
【0106】
細胞膜試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動は、20列の4〜12%ビス−トリスInvitrogen Midiゲル(Invitrogen WG1402BX10)を使用してMOPS泳動緩衝液(Invitrogen NP0001)を用いて実施した。調製した試料は、70℃で10分間加熱し、氷上に置き、その後Matrixマルチチャンネルピペッターを使用して各試料10μlをゲル上に添加した。大きさの決定およびゲル方向を示すため、SeeBlue Plus2マーカー(Invitrogen LC5925)を試料の横に添加した。色素の先端がゲルの底に到達するまで、ゲルを200Vの定電圧で泳動した。電気泳動後、iBlotユニット(Invitrogen IB1001EU)を使用してゲルをニトロセルロース膜(InvitrogenIB3010−01)に移した。移動は20Vで7分間実施した。移動後、膜をPierce Superblock T20(Pierce 37536)で少なくとも30分間遮断した。膜を「食品密封」袋に入れ、次いでSuperblock中にウサギ抗LDLR抗体の1:500希釈物を添加し、その後4℃で振盪しながら一晩インキュベートした。膜を振盪しながらTBS/0.05% Tweenで5分間ずつ5回濯ぎ、その後Superblock中でヤギ抗ウサギHRP 2次抗体の1:30,000希釈物を膜に1時間添加した。膜をTBS/0.05%Tweenで振盪しながら5分間ずつ5回再度濯いだ。HRP結合体は、Pierce SuperSignal West Pico化学ルミネセンス基質(Pierce 37079)を使用して、製造者の指示に従って検出した。簡単に説明すると、ペルオキシド溶液およびルミノール/エンハンサー溶液を同部ずつ混合し、膜に5分間添加した(0.2ml/cm2)。過剰な溶液をブロッティングによって除去し、膜を曝露用のKodak BioMax MR X線フィルム(Kodak 870 1302)に曝露した。
【0107】
【図13】図13A〜Cは、hPCSK9注入マウスモデルにおいて、抗体LGT209、LGT210およびLGT211が血漿中の非HDLコレステロールの低下を引き起こすことを示している。LGT209抗体を予め注射すると、非HDLコレステロールのhPCSK9媒介による上昇から46%の防御が引き起こされた。LGT210またはLGT211を予め注射すると、非HDLコレステロールのhPCSK9媒介による上昇から同等以上の防御が引き起こされた。13C10は、hPCSK9に高い親和性で結合する有効なマウス抗PCSK9抗体であり、このアッセイで陽性対照として使用した。C57BL/6マウスを媒体単独、PCSK9単独、PCSK9+LGT209 20mg/kg、PCSK9+LGT210 20mg/kg、PCSK9+NVP−LGT211 20mg/kg、PCSK9+13C10 20mg/kg、またはマウス非特異的IgG混合物(陰性対照)で処理した。個々の値は、水平線として明示した平均値で示した。血漿全コレステロールレベルを定量するために、Olympus臨床用分析器(Olympus America Inc.:Olympus AU400)を使用した。血漿試料は、ddH2Oで1:3に希釈し、希釈した血漿試料40μlの全コレステロールレベルを製造者の指示に従って定量した。血漿HDLおよび非HDLを定量するため、Helena LaboratoriesのSpife 3000を使用してリポタンパク質コレステロール画分を得た。試料調製、ゲル調製、試料添加、ゲル電気泳動、染色、洗浄および乾燥を含む手順は全て、操作者用マニュアルの指示に従った。次に、ゲルをQuick Scan 2000でスリット5を用いて走査し、リポタンパク質コレステロール画分の相対パーセントをHelena濃度計で計算した。最後に、HDLおよび非HDLの絶対値は、各画分のパーセントおよび全コレステロールレベルを乗ずることによって計算した。
【0108】
【図14】図14は、「典型的」IgG1薬物動態(PK)プロファイルと比較した抗体LGT209、LGT210およびLGT211(ヒトIgG1−サイレント)のラット(PK)プロファイルを示す。抗体LGT209、LGT210およびLGT211の半減期は、典型的なIgG1半減期(約6日)と比較して著しく長い(7〜13日)(例えば、ヒト対象で測定した通り)。標的媒介による体内動態(target mediated disposition)(TMD)の証拠はなく、抗体は齧歯類のPCSK9と交差反応しないことが示された。各試験抗体10mg/kgを3匹のオスLewisラットに注射した。0、1、6、24時間後、2、4、8および16日後に、血液250μlを採取し、血漿を清澄にし、希釈し、回収したヒト全抗体を測定するために捕捉ELISA(ヤギ抗ヒトIgG)で評価した。標準曲線も各試験抗体のために作成した。回収されたIgGの量は、ラットにおける典型的なヒトIgGの予測回収に対してグラフにした。
【発明を実施するための形態】
【0109】
1.導入
本発明の抗体および抗原結合分子は特異的にプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9a型(「PCSK9」)に結合する。本発明の抗PCSK9抗体および抗原結合分子は、PCSK9のC末端に結合し、PCSK9の低密度リポタンパク質受容体(LDL−R)への結合を妨害することなくPCSK9媒介によるLDL−Rの分解を妨害するという予期せぬ特性を備えている。特に、抗PCSK9抗体および抗原結合分子はPCSK9の残基680〜692内のエピトープ、例えば、PCSK9のC末端に位置するアミノ酸配列RSRHLAQASQELQ(配列番号49)内のエピトープに結合する。本発明の抗体および抗原結合分子は循環しているPCSK9だけでなく細胞に結合している間のPCSK9にも結合するので、患者におけるインビボ半減期は比較的長く、例えば、少なくとも約7日以上で、いくつかの実施形態では、投与後少なくとも2週間脂質低下効果を実現する。本発明の抗PCSK9抗体および抗原結合分子は、PCSK9のアンタゴニストで、LDL−RのPCSK9媒介による分解を低下および/または阻害し、それによって低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の取り込み増加を促進する。抗PCSK9抗体および抗原結合分子は、例えば、脂質代謝異常、高コレステロール血症、トリグリセリド血症およびその他のPCSK9媒介による病的状態に罹患した対象の治療に用途が見出される。
【0110】
2.改善された抗PCSK9抗体一般論
抗PCSK9抗体断片は、限定はしないが、組換え発現、化学合成および抗体4量体の酵素的消化を含む当業界で公知の任意の手段によって生成することができる一方、完全長モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマまたは組換え生成によって得ることができる。組換え発現は、当業界で公知の適切な任意の宿主細胞、例えば、哺乳類宿主細胞、細菌宿主細胞、酵母宿主細胞、昆虫宿主細胞などから行うことができる。存在するならば、抗PCSK9抗体の定常領域は任意の型または亜型であってもよく、適切ならば、本発明の方法によって処理した対象の種[例えば、ヒト、非ヒト霊長類またはその他の哺乳類、例えば、農業用哺乳類(例えば、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ラクダ)、家畜哺乳類(例えば、イヌ、ネコ)または齧歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ)]由来であるように選択することができる。いくつかの実施形態では、抗PCSK9抗体はヒト化またはHumaneered(商標)される。いくつかの実施形態では、定常領域アイソタイプは、IgG、例えば、IgG1である。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1定常領域は、細胞または補体のC1成分上のFc受容体(FcR)、例えば、FcガンマR1などのエフェクターリガンドに対する結合親和性が低下するように変異させる。例えば、米国特許第5,624,821号を参照のこと。このような変異を含有する抗体は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)または補体依存性細胞毒性(CDC)の低下または欠如をもたらす。いくつかの実施形態では、IgG1定常領域のアミノ酸残基L234およびL235は、Ala234およびAla235に置換する。重鎖定常領域中の残基の番号は、EUインデックスの番号である(Kabat, et al., (1983) “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” U.S. Dept. Health and Human Servicesを参照のこと)。例えば、Woodle, et al, Transplantation (1999) 68(5):608-616; Xu, et al., Cell Immunol (2000) 200(1):16-26; and Hezareh, et al., J Virol 75(24):12161-8も参照のこと。
【0111】
本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子には、ラクダ科の骨格を有する単一ドメイン抗原結合単位も含まれる。ラクダ科の動物には、ラクダ、ラマおよびアルパカが含まれる。ラクダ科は軽鎖の欠如した機能的抗体を生成する。重鎖可変(VH)ドメインは自動的に折り畳まれ、抗原結合単位として独立して機能する。その結合表面には、古典的な抗原結合分子(Fab)または1本鎖可変断片(scFv)の6個のCDRと比較して、3個のみのCDRが含まれる。ラクダ科抗体は、従来の抗体と同程度の結合親和性に達することができる。本明細書で例示した抗PCSK9抗体の結合特異性を備えたラクダ科骨格をベースにした抗PCSK9分子は、当業界で周知の方法、例えば、Dumoulin et al., Nature Struct. Biol. 11:500?515, 2002;Ghahroudi et al., FEBS Letters 414:521?526, 1997およびBond et al., J Mol Biol. 332:643-55, 2003を使用して生成することができる。
【0112】
本発明の改善された抗PCSK9抗体は、参照抗体の特異性および親和性を保持しながら、ヒト生殖系列V領域配列と実質的にアミノ酸配列が同一なV領域配列を有する遺伝子操作されたヒト抗体である。いずれも本明細書に参考として組み込んだ米国特許出願公開第2005/0255552号および米国特許出願公開第2006/0134098号を参照のこと。改善のプロセスでは、参照抗体の可変領域から抗原結合特異性を決定するために必要な最小限の配列情報を確認し、その情報をヒトの部分的V領域遺伝子配列のライブラリーに移してヒト抗体V領域のエピトープを焦点に当てたライブラリーを作製する。微生物をベースにした分泌系を使用して、抗体Fab断片としてライブラリーのメンバーを発現し、例えば、コロニーリフト結合アッセイを使用して、このライブラリーの抗原結合Fabをスクリーニングする。例えば、米国特許出願公開第2007/0020685号参照。陽性クローンはさらに、最高の親和性を有するものとして特徴付けることができる。遺伝子操作して得られたヒトFabは、親、参照抗PCSK9抗体の結合特異性を保持しており、通常、親抗体と比較して抗原に対して同等またはより高い親和性を有し、ヒト生殖系列V領域に匹敵した高い程度の配列同一性を有するV領域を有する。
【0113】
エピトープを焦点とするライブラリーを作製するために必要な最小限の結合特異性決定基(BSD)は通常、重鎖CDR3(「CDRH3」)内の配列、および軽鎖のCDR3(「CDRL3」)内の配列によって表される。BSDは、CDR3の一部または完全長を含んでいてもよい。BSDは、連続または非連続アミノ酸残基から構成され得る。場合によっては、エピトープを焦点とするライブラリーは、BSDおよびヒト生殖系列Jセグメント配列を含有する参照抗体の特有のCDR3−FR4領域に結合したヒトVセグメント配列から構成される(米国特許出願公開第2005/0255552号を参照のこと)。あるいは、ヒトVセグメントライブラリーは、参照抗体Vセグメントの一部のみがヒト配列のライブラリーによって最初に置換される連続的カセット置換によって作製され得る。残存する参照抗体アミノ酸配列の場合に結合を支持する同定されたヒト「カセット」は、その後、完全なヒトVセグメントを作製するために第2のライブラリースクリーンに再結合される(米国特許出願公開第2006/0134098号を参照のこと)。
【0114】
いずれの場合においても、参照抗体の特異性決定基を含有する、対になった重鎖および軽鎖CDR3セグメント、CDR3−FR4セグメント、またはJセグメントは、ライブラリーから得られた抗原結合部が参照抗体のエピトープ特異性を保持するように、結合特異性を制限するように使用される。最適な結合速度を備えた抗体を同定するために、ライブラリー構築中に各鎖のCDR3領域に、成熟した変化をさらに導入することができる。得られた遺伝子操作されたヒト抗体は、ヒト生殖系列ライブラリーから得られたVセグメント配列を有し、CDR3領域内の短いBSD配列を保持し、ヒト生殖系列フレームワーク4(FR4)領域を有する。
【0115】
したがって、いくつかの実施形態では、抗PCSK9抗体は、元の、または参照モノクローナル抗体から得られた重鎖および軽鎖のCDR3内の最小限の結合配列決定基(BSD)を含有する。重鎖および軽鎖可変領域(CDRおよびFR)の残存する配列、例えば、VセグメントおよびJセグメントは、対応するヒト生殖系列および親和性成熟したアミノ酸配列由来である。Vセグメントは、ヒトVセグメントライブラリーから選択することができる。さらなる配列の改良は、親和性成熟によって達成することができる。
【0116】
他の実施形態では、抗PCSK9抗体の重鎖および軽鎖は、例えば、ヒトVセグメントライブラリーから選択される、対応するヒト生殖系列配列のヒトVセグメント(FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3)および元のモノクローナル抗体のCDR3−FR4配列セグメントを含有する。CDR3−FR4配列セグメントはさらに、配列セグメントを対応するヒト生殖系列配列で置換することによって、かつ/または親和性成熟によって改良することができる。例えば、FR4および/またはBSDを取り囲むCDR3配列は、対応するヒト生殖系列配列で置換することができ、元のモノクローナル抗体のCDR3のBSDは保持される。
【0117】
いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントの対応するヒト生殖系列配列はVh1−02である。いくつかの実施形態では、重鎖Jセグメントの対応するヒト生殖系列配列はJH4である。いくつかの実施形態では、重鎖Jセグメントは、ヒト生殖系列JH4の部分的配列WGQGTLVTVSS(配列番号50)を含む。ヒト生殖系列JH4の完全長Jセグメントは、YFDYWGQGTLVTVSS(配列番号51)である。可変領域遺伝子は、イムノグロブリン可変領域遺伝子の標準的命名法を基準とする。現在のイムノグロブリン遺伝子情報は、例えば、ImMunoGeneTics(IMGT)のワールドワイドウェブ、V−baseおよびPubMedデータベースから利用可能である。Lefranc, Exp Clin Immunogenet. 2001;18(2):100-16;Lefranc, Exp Clin Immunogenet. 2001;18(3):161-74;Exp Clin Immunogenet. 2001;18(4):242-54およびGiudicelli, et al., Nucleic Acids Res. 2005 Jan 1;33(Database issue):D256-61も参照のこと。
【0118】
いくつかの実施形態では、軽鎖Vセグメントの対応するヒト生殖系列配列はVK3 L6である。いくつかの実施形態では、軽鎖Jセグメントの対応するヒト生殖系列配列はJk2である。いくつかの実施形態では、軽鎖Jセグメントは、ヒト生殖系列Jk2の部分的配列FGQGTKLEIK(配列番号52)を含む。ヒト生殖系列Jk2の完全長Jセグメントは、YTFGQGTKLEIK(配列番号53)である。
【0119】
いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントは、アミノ酸配列QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFS(D/T)MYMSWVRQAPGQGLEWMGRIDPAN(A/E/G)HTNY(A/D)(P/Q)KFQ(A/G)RVTMTRDTSISTAYMELSRLTSDDTAVYYCAR(配列番号28)と少なくとも85%、89%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントは、アミノ酸配列QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFSTMYMSWVRQAPGQGLEWMGRIDPANEHTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLTSDDTAVYYCAR(配列番号27)と少なくとも85%、89%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0120】
いくつかの実施形態では、軽鎖Vセグメントは、アミノ酸配列(E/Q)IV(L/M)TQSPATLSVSPGERATLSC(R/S)AS(Q/S)SVSYMHWYQQKPGQAPRLLIY(G/L)(T/V)F(N/R)(L/R)A(S/T)GIPDRFSGSGSGTDFTLTIGRLEPEDFAVYYC(配列番号31)と少なくとも85%、89%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントは、アミノ酸配列QIVLTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSVSYMHWYQQKPGQAPRLLIYGVFRRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTIGRLEPEDFAVYYC(配列番号29)と少なくとも85%、89%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、重鎖Vセグメントは、アミノ酸配列EIVMTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSVSYMHWYQQKPGQAPRLLIYGVFRRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTIGRLEPEDFAVYYC(配列番号30)と少なくとも85%、89%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0121】
いくつかの実施形態では、
i)重鎖CDR3は、アミノ酸配列SYYYY(A/N)MD(A/F/S/V/Y)(配列番号14)を含み、
ii)軽鎖CDR3可変領域は、アミノ酸配列LQWSSDPPT(配列番号26)を含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、
i)重鎖CDR3は、配列番号12および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
ii)軽鎖CDR3は、配列番号26のアミノ酸配列を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、アミノ酸配列(D/T)MYMS(配列番号8)を含むCDR1、アミノ酸配列RIDPAN(A/E/G)HTNY(A/D)(P/Q)KFQ(A/G)(配列番号11)を含むCDR2およびアミノ酸配列SYYYY(A/N)MD(A/F/S/V/Y)(配列番号14)を含むCDR3を含む重鎖可変領域を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、アミノ酸配列(R/S)AS(Q/S)SVSYMH(配列番号22)を含むCDR1、アミノ酸配列(G/L)(T/V)F(N/R)(L/R)A(S/T)(配列番号25)を含むCDR2およびアミノ酸配列LQWSSDPPT(配列番号26)を含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号32のアミノ酸配列を含むFR1、配列番号33のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号34のアミノ酸配列を含むFR3および配列番号35のアミノ酸配列を含むFR4を含む。同定したアミノ酸配列は、1個または複数の置換されたアミノ酸(例えば、親和性成熟から)または1個または2個の保存的に置換されたアミノ酸を有することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は配列番号36のアミノ酸配列を含むFR1、配列番号37のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号38のアミノ酸配列を含むFR3および配列番号39のアミノ酸配列を含むFR4を含む。同定したアミノ酸配列は、1個または複数の置換されたアミノ酸(例えば、親和性成熟から)または1個または2個の保存的に置換されたアミノ酸を有することができる。
【0127】
完全長にわたって、本発明の抗PCSK9抗体の可変領域は一般的に、可変領域全体(例えば、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4)が対応するヒト生殖系列可変領域アミノ酸配列と少なくとも約85%、例えば、少なくとも約89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。例えば、抗PCSK9抗体の重鎖は、ヒト生殖系列可変領域Vh1−02に対して少なくとも約85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。抗PCSK9抗体の軽鎖は、ヒト生殖系列可変領域VK3L6に対して少なくとも約85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、フレームワーク領域内のアミノ酸のみが添加、欠失または置換されている。いくつかの実施形態では、配列同一性の比較にはCD3を除外する。
【0128】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号40の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域を含み、配列番号41の軽鎖可変領域(すなわち、コンセンサス配列)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号1の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域を含み、配列番号15の軽鎖可変領域(すなわち、マウスLFU720)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号2の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域を含み、配列番号16の軽鎖可変領域(すなわち、LGT−209)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号2の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域を含み、配列番号18の軽鎖可変領域(すなわち、LGT−210)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号4の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域を含み、配列番号16の軽鎖可変領域(すなわち、LGT−211)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号3の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖ポリペプチドを含み、配列番号17の軽鎖可変領域(すなわち、LGT−209)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖ポリペプチドを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号3の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖ポリペプチドを含み、配列番号19の軽鎖可変領域(すなわち、LGT−210)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖ポリペプチドを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体は、配列番号5の重鎖可変領域に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖ポリペプチドを含み、配列番号17の軽鎖可変領域(すなわち、LGT−211)に対して少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖ポリペプチドを含む。
【0136】
アミノ酸の長さが20個未満の同定されたアミノ酸配列では、1個または2個の保存的アミノ酸残基置換が許容得る一方、所望する特異的結合および/またはアンタゴニスト活性を依然として保持される。
【0137】
本発明の抗PCSK9抗体は一般的にPCSK9に結合し、平衡解離定数(KD)は約10−8Mまたは10−9M未満、例えば、約10−10Mまたは10−11M未満、いくつかの実施形態では、約10−12Mまたは10−13M未満である。
【0138】
抗PCSK9抗体は、所望により多量体化し、本発明の方法に従って使用することができる。抗PCSK9抗体は、完全長4量体抗体(すなわち、2本の軽鎖および2本の重鎖を有する)、1本鎖抗体(例えば、scFv)または1個もしくは複数の抗原結合部位を形成し、PCSK9結合特異性を付与する抗体断片、例えば、重鎖および軽鎖可変領域(例えば、Fab’またはその他の類似の断片)を含む分子であってもよい。
【0139】
本発明はさらに、本明細書で記載した抗体をコードするポリヌクレオチド、例えば、重鎖または軽鎖可変領域または本明細書で記載した相補性決定領域を含むセグメントをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、重鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号42、配列番号43および配列番号54からなる群から選択されるポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号44、配列番号45および配列番号55からなる群から選択されるポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。
【0140】
いくつかの実施形態では、重鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号42のポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号45(すなわち、LGT−209)のポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。
【0141】
いくつかの実施形態では、重鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号42からなる群から選択されるポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号44(すなわち、LGT−210)からなる群から選択されるポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。
【0142】
いくつかの実施形態では、重鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号43からなる群から選択されるポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号45(すなわち、LGT−211)からなる群から選択されるポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。
【0143】
いくつかの実施形態では、重鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号54のポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号55(すなわち、マウスLFU720)のポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の核酸配列同一性を有する。
【0144】
3.抗PCSK9抗体を同定するためのアッセイ
アンタゴニスト抗体は、抗PCSK9抗体を生成し、各抗体のPCSK9媒介による現象、例えば、LDLRへの結合、LDLR分解の促進を低下させるかまたは阻害する能力を試験することによって同定することができる。このアッセイは、インビボまたはインビトロ(in vitro)で実施することができる。好ましい抗体はPCSK9に結合し、PCSK9がLDLRに結合するのを防御せず、PCSK9媒介によるLDLRの分解を低下させるかまたは阻害する。
【0145】
抗体または抗原結合分子のPCSK9への結合は、限定はしないが、ELISA、Biacoreおよびウェスタンブロットを含む当業界で公知の任意の方法を使用して測定することができる。
【0146】
PCSK9媒介によるLDLRの分解はまた、当業界で公知の任意の方法を使用して測定することができる。一実施形態では、抗PCSK9抗体または抗原結合分子がLDLR分解を阻害する能力は、注入マウスモデルを使用して測定する。抗PCSK9抗体または抗原結合分子をマウスに静脈内注入し(例えば、3μg/時間)、肝臓膜調製物中のLDLRのレベルを、対照抗体(例えば、無関連の抗原に結合する)の静脈内注入を受けたマウスの肝臓膜調製物中のLDLRのレベルと比較して測定した。アンタゴニスト抗PCSK9抗体を受けたマウスは、対照抗体を受けたマウスと比較して、検出可能な高レベルの、例えば、少なくとも10%、20%、50%、80%、100%高いLDLRを有するだろう。
【0147】
抗PCSK9アンタゴニスト抗体はまた、LCL−C、非HDL−Cおよび/または全コレステロールの血漿レベルの低下における治療効果を試験することができる。抗PCSK9抗体または抗原結合分子を哺乳類(例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、ヒト)に静脈内注入し(例えば、3μg/時間)、LCL−C、非HDL−Cおよび/または全コレステロールの血漿レベルを、処理前の同じ哺乳類または対照抗体(例えば、無関連の抗原に結合する)の静脈内注入を受けた哺乳類のLCL−C、非HDL−Cおよび/または全コレステロールの血漿レベルと比較して測定する。アンタゴニスト抗PCSK9抗体を受けた哺乳類は、例えば、処理前の哺乳類または対照抗体を受けた哺乳類と比較して、検出可能に低い、例えば、少なくとも10%、20%、50%、80%、100%低いLCL−C、非HDL−Cおよび/または全コレステロールの血漿レベルを有するだろう。
【0148】
4.抗PCSK9抗体を含む組成物
本発明は、薬学的に許容される担体と一緒に製剤化した本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子を含む医薬組成物を提供する。この組成物は、所与の障害を治療または予防するために適しているその他の治療薬をさらに含有することができる。薬学的担体は、組成物を増強するか、または安定化し、あるいは、組成物の調製を容易にする。薬学的に許容される担体には、生理学的に適合した溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などが含まれる。
【0149】
本発明の医薬組成物は、当業界で公知の様々な方法によって投与することができる。投与の経路および/または様式は、所望する結果に応じて変化する。投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下に投与するか、あるいは標的部位の近位に投与することが好ましい。薬学的に許容される担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、鼻腔内、吸入、脊髄内または腸内投与(例えば、注射または注入による)に適しているべきである。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、抗体、二特異性および多特異性分子は、酸による作用および化合物を不活性化することができるその他の天然の状態から化合物を防御するための材料でコーティングしてもよい。
【0150】
抗体は、単独でまたはその他の適切な成分と組み合わせて、吸入によって投与するエアロゾル製剤にすることができる(すなわち、「噴霧」することができる)。エアロゾル製剤は、例えば、ジクロロフルオロメタン、プロパン、窒素などの許容できる加圧噴射剤に入れることができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、組成物は滅菌されており、流体である。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合には必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。多くの場合、組成物には等張化剤、例えば、糖、マンニトールまたはソルビトールなどのポリアルコールおよび塩化ナトリウムを含めることが好ましい。吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物中に含めることによって、注射可能な組成物を長期にわたって吸収させることができる。
【0152】
本発明の医薬組成物は、当業界で周知であり、日常的に実施されている方法によって調製することができる。薬学的に許容される担体は、投与する特定の組成物によって、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法によって、ある程度決定される。したがって、本発明の医薬組成物の適切な製剤は多種多様である。抗体を製剤化するため、ならびに適切な用量および計画を決定するために適用できる方法は、例えば、それぞれ本明細書に参考として組み込んだRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., University of the Sciences in Philadelphia, Eds., Lippincott Williams & Wilkins (2005)およびMartindale: The Complete Drug Reference, Sweetman, 2005, London: Pharmaceutical Press.およびMartindale, Martindale: The Extra Pharmacopoeia, 31st Edition., 1996, Amer Pharmaceutical AssnおよびSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978に見出すことができる。医薬組成物は、GMP条件下で製造されることが好ましい。通常、抗PCSK9抗体の治療有効量または効果用量を本発明の医薬組成物に使用する。抗PCSK9抗体は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容される剤形に製剤化する。投与計画は、所望する応答(例えば、治療応答)を実現するために調節する。治療または予防有効用量の決定において、低用量を投与し、その後、所望する応答が、最小限の副作用で、または副作用なく実現するまで徐々に増加させることができる。例えば、1回で大量投与してもよく、数回に分けて徐々に投与してもよく、または、治療状況の緊急性によって必要に応じて用量を減少させるか、または増加させてもよい。投与を簡便にし、投薬を一定にするためには、非経口組成物を投与単位形態に製剤化すると特に有利である。本明細書で使用した投与単位形態とは、治療する対象のための単位製剤として適当な物理的に分離された単位のことで、各単位は、必要な医薬担体と共に、所望する治療効果を生じるように計算された、予め決定された量の活性化合物を含有する。
【0153】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、患者に対して毒性を有さず、特定の患者、組成物および投与様式について所望する応答を実現するために有効な活性成分の量を得るために変化させることができる。選択した用量レベルは、使用した本発明の特定の組成物またはそのエステル、塩またはアミドの活性を含む様々な薬物動態因子、投与経路、投与時間、使用した特定の化合物の排泄速度、治療期間、使用した特定の組成物と併用したその他の薬剤、化合物および/または材料、治療する患者の年齢、性別、体重、症状、一般的健康状態および既往歴などの要素によって左右される。
【0154】
いくつかの実施形態では、薬理学的組成物には、抗PCSK9抗体または抗原結合分子および第2の薬理学的作用物質の混合物が含まれる。例えば、組成物には、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子およびLDL−C、非HDL−Cおよび全コレステロールを含むコレステロールを低下させるため、および/またはHDL−Cを上昇させるために有益であることが知られている薬剤を含めてもよい。
【0155】
本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体または抗原結合分子と混合して含めるための第2の薬剤の例には、限定はしないが、HMG−CoA還元酵素阻害剤(すなわち、スタチン)、フィブラート(例えば、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、シプロフィブラート、ベザフィブラート)、ナイアシンおよびその類似体、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸捕捉剤(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム)、回腸胆汁酸輸送体(IBAT)阻害剤、甲状腺ホルモン様物質(例えば、化合物KB2115)、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤、二重ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アルファおよびガンマアゴニスト、アシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤、ニーマンピックC1様1(NPC1−L1)阻害剤(例えば、エゼチミブ)、ATP結合カセット(ABC)タンパク質G5またはG8のアゴニスト、コレステロールエステル輸送タンパク質(CETP)阻害剤、PCSK9を標的とする阻害性核酸およびapoB100を標的とする阻害性核酸が含まれる。脂質低下剤は当業界では公知で、例えば、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 11th Ed., Brunton, Lazo and Parker, Eds., McGraw-Hill (2006); 2009 Physicians’ Desk Reference (PDR)、例えば、63rd (2008) Eds., Thomson PDRに記載されている。
【0156】
本発明の組成物で使用する他の脂質低下剤は、例えば、Chang, et al., Curr Opin Drug Disco Devel (2002) 5(4):562-70;Sudhop, et al., Drugs (2002) 62(16):2333-47;Bays and Stein, Expert Opin Pharmacother (2003) 4(11):1901-38;Kastelein, Int J Clin Pract Suppl (2003) Mar(134):45-50;Tomoda and Omura, Pharmacol Ther (2007) 115(3):375-89;Tenenbaum, et al., Adv Cardiol (2008) 45:127-53;Tomkin, Diabetes Care (2008) 31(2):S241-S248;Lee, et al., J Microbiol Biotechnol (2008) 18(11):1785-8;Oh, et al., Arch Pharm Res (2009) 32(1): 43-7;Birch, et al, J Med Chem (2009) 52(6):1558-68およびBaxter and Webb, Nature Reviews Drug Discovery (2009) 8:308-320に記載および/または概説されている。
【0157】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子はスタチンとの混合物として形成される。スタチンの例には、限定はしないが、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンが含まれる。
【0158】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子は、高コレステロール血症またはトリグリセリド血症を誘導する薬理学的作用物質との混合物として提供される。例えば、第2の薬理学的作用物質は、プロテアーゼ阻害剤、例えば、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、チプラナビル、ダウラナビル、アバカビル−ラミブジン−ジドブジン(トリジビル)であってもよい。いくつかの実施形態では、この第2の薬理学的作用物質はタクロリムスである。
【0159】
5.抗PCSK9抗体の使用方法
a.抗PCSK9抗体による治療を受ける状態
本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体および抗原結合分子は、PCSK9の活性または過剰活性によって媒介される任意の病的状態の治療において用途が見出される。
【0160】
例えば、様々な理由または病因のために脂質代謝異常または高コレステロール血症を発症する危険性を有するか、またはその危険性に瀕している個体は、本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体および抗原結合分子の投与によって利益を得る可能性がある。例えば、個体は、機能的LDL−Rが存在する家族的または遺伝的に伝達されたホモ接合的またはヘテロ接合的高コレステロール血症を有していてもよい。家族的または遺伝的に受け継がれた高コレステロール血症に関連した、および/または原因となる遺伝子変異は、例えば、Burnett and Hooper, Clin Biochem Rev (2008) 29(1):11-26にまとめて記載されている。個体はまた、脂質代謝異常または高コレステロール血症を発症する危険性に関与するか、または危険性を増大させるその他の病的状態を有するか、または行動をとっていてもよい。例えば、個体は肥満であるか、または糖尿病もしくは代謝異常症候群に罹患していてもよい。個体は、喫煙者であってもよく、ほとんど体を動かさない生活を送っていていてもよく、またはコレステロールの高い食事をとっていてもよい。
【0161】
PCSK9の標的化は、脂質代謝異常、高コレステロール血症および食後トリグリセリド血症の軽減、回復、阻害または予防のために有用である。例えば、Le May, et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol (2009) 29(5):684-90;Seidah, Expert Opin Ther Targets (2009) 13(1):19-28およびPoirier, et al., J Biol Chem (2009) PMID 19635789を参照のこと。したがって、本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体および抗原結合分子の投与は、脂質代謝異常、高コレステロール血症および食後トリグリセリド血症の軽減、回復、阻害および予防を必要とする個体における脂質代謝異常、高コレステロール血症および食後トリグリセリド血症の軽減、回復、阻害および予防に用途が見出される。
【0162】
本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体および抗原結合分子は、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の減少または低下を必要とする個体における低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の減少または低下に用途が見出される。個体は、LDL−Cのレベルが持続的に上昇していてもよい。いくつかの実施形態では、個体は、LDL−C血漿レベルが一貫して80mg/dLを上回り、例えば、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190mg/dLを上回る。本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体および抗原結合分子はまた、非高密度リポタンパク質コレステロール(非HDL−C)または全コレステロールの減少または低下を必要とする個体における非高密度リポタンパク質コレステロール(非HDL−C)または全コレステロールの減少または低下に用途が見出される。
【0163】
個体は、コレステロールを低下させるために別の薬理学的作用物質を既に摂取していて、この薬剤に耐性または不耐性であってもよい。例えば、個体は、LDL−C、非HDL−Cまたは全コレステロールの許容されるレベルまでの低下においてこの個体では無効であることが証明されたスタチンの治療計画下に既にあってもよい。個体はまた、スタチンの投与に不耐性であってもよい。本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体および抗原結合分子とLDL−Cまたは非HDL−Cの低下および/またはHDL−Cの上昇に有用な第2の薬剤との併用投与は、例えば、投与する第2の薬剤の用量の低下を可能にすることによって、第2の薬剤の有効性および耐性を改善する。
【0164】
いくつかの実施形態では、個体は、例えば、LDLRの分解の異常な増加を引き起こすPCSK9遺伝子の機能獲得型変異を有する。
【0165】
いくつかの実施形態では、個体は、脂質代謝異常または高コレステロール血症を誘導する薬理学的作用物質を投与されており、すなわち、個体は薬剤誘導性の脂質代謝異常または高コレステロール血症である。例えば、個体は、例えば、HIV感染を治療するためにプロテアーゼ阻害剤の治療計画を受けていてもよい。血漿トリグリセリドレベル上昇の原因となることが知られている別の薬理学的作用物質は、移植患者に投与される免疫抑制剤、タクロリムスである。シクロスポリンは、LDLを著しく増加させることが示されたことがある。例えば、Ballantyne, et al. (1996) 78(5):532-5を参照のこと。第2世代抗精神病薬(例えば、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジプラシドン)はまた、脂質代謝異常に関連している。例えば、Henderson, J Clin Psychiatry (2008) 69(2):e04 and Brooks, et al., Curr Psychiatry Rep (2009) 11(1):33-40を参照のこと。
【0166】
b.抗PCSK9抗体の投与
医師または獣医師は、医薬組成物中において使用する本発明の抗体の用量を所望する治療効果を実現するために必要なレベルよりも低いレベルで開始し、所望する効果が実現するまで投薬量を徐々に増加させることができる。一般的に、本発明の組成物の有効用量は、治療する特定の疾患または症状、投与の手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるかまたは動物であるか、その他の投与された治療薬、および処置が予防的であるかまたは治療的であるかを含む多種多様な要素に応じて変化する。治療投薬は、安全性および効果を最適にするために用量設定する必要がある。抗体の投与については、投薬量は宿主体重当たり約0.0001から100mg/kg、より通常は0.01から5mg/kgの範囲である。例えば、投薬量は1mg/kg体重または10mg/kg体重または1〜10mg/kgの範囲内であってもよい。投薬は、必要があれば、または所望であれば、毎日、毎週、2週間毎、毎月またはそれより多いかもしくは少なくてもよい。治療計画の例には、週1回、2週間に1回または月1回または3から6ヵ月に1回の投与が含まれる。
【0167】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを投与する。薬剤が核酸である実施形態では、典型的な投薬量は約0.1mg/kg体重から約100mg/kg体重まで(約100mg/kg体重を含む)の範囲、例えば、約1mg/kg体重と約50mg/kg体重の間であってもよい。いくつかの実施形態では、約1、2、3、4、5、10、15、20、30、40または50mg/kg体重である。
【0168】
抗体は、1回または分割投与で投与することができる。抗体は通常、様々な場合に投与される。1回の投薬の間隔は、必要または所望により、1週間、2週間、1ヵ月または1年であってもよい。間隔はまた、患者における抗PCSK9抗体の血液レベルを測定することによって指示して、不規則であってもよい。いくつかの方法では、投薬量は、血漿抗体濃度1〜1000μg/ml、いくつかの場合では25〜300μg/mlを実現するように調節する。あるいは、抗体は、より少ない頻度での投与を必要とする場合では、徐放製剤として投与することができる。投薬量および頻度は、患者における抗体の半減期に応じて変化させる。一般的に、ヒト化抗体は、キメラ抗体および非ヒト抗体よりも長い半減期を示す。投与の投薬量および頻度は、処置が予防であるか、または治療であるかに応じて変化させることができる。予防適用では、比較的低用量が比較的少ない頻度の間隔で、長期間にわたって投与される。患者によっては、残りの人生において治療を受け続ける。治療適用では、疾患の進行が抑えられるか、または停止するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高用量が必要とされることが時々ある。その後、患者は予防的投与計画を受けることができる。いくつかの実施形態では、抗PCSK9抗体または抗原結合剤は、患者の血漿LDL−Cレベルが予め決定した閾値レベルを上回るとき、例えば、少なくとも約80mg/dL、例えば、少なくとも約90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190mg/dLまたはそれ以上のときに投与される。
【0169】
c.第2の薬剤との同時投与
PCSK9抗体アンタゴニストは、LDL−C、非HDL−Cおよび全コレステロールを含むコレステロールを低下させるため、および/またはHDL−Cを上昇させるために有益であることが知られている薬剤と組み合わせて使用することができる。
【0170】
活性薬剤は抗PCSK9アンタゴニスト抗体と混合して一緒に投与することができるか、または各薬剤は別々に投与することができる。抗体薬剤およびその他の活性剤は同時に投与することができるが、同時に投与する必要はない。
【0171】
本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体または抗原結合分子との同時投与で使用するための第2の薬剤の例には、限定はしないが、HMG−CoA還元酵素阻害剤(すなわち、スタチン)、フィブラート(例えば、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、シプロフィブラート、ベザフィブラート)、ナイアシンおよびその類似体、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸捕捉剤(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム)、回腸胆汁酸輸送体(IBAT)阻害剤、甲状腺ホルモン様物質(例えば、化合物KB2115)、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤、二重ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アルファおよびガンマアゴニスト、アシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤、ニーマンピックC1様1(NPC1−L1)阻害剤(例えば、エゼチミブ)、ATP結合カセット(ABC)タンパク質G5またはG8のアゴニスト、コレステロールエステル輸送タンパク質(CETP)阻害剤、PCSK9を標的とする阻害性核酸およびapoB100を標的とする阻害性核酸が含まれる。
【0172】
使用する他の脂質低下剤は、例えば、Chang, et al., Curr Opin Drug Disco Devel (2002) 5(4):562-70;Sudhop, et al., Drugs (2002) 62(16):2333-47;Bays and Stein, Expert Opin Pharmacother (2003) 4(11):1901-38;Kastelein, Int J Clin Pract Suppl (2003) Mar(134):45-50;Tomoda and Omura, Pharmacol Ther (2007) 115(3):375-89;Tenenbaum, et al., Adv Cardiol (2008) 45:127-53;Tomkin, Diabetes Care (2008) 31(2):S241-S248;Lee, et al., J Microbiol Biotechnol (2008) 18(11):1785-8;Oh, et al., Arch Pharm Res (2009) 32(1): 43-7;Birch, et al, J Med Chem (2009) 52(6):1558-68およびBaxter and Webb, Nature Reviews Drug Discovery (2009) 8:308-320に記載および/または概説されている。
【0173】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子はスタチンと同時投与される。スタチンの例には、限定はしないが、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンが含まれる。
【0174】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子は、高コレステロール血症またはトリグリセリド血症を誘導する薬理学的作用物質と同時投与される。例えば、第2の薬理学的作用物質は、プロテアーゼ阻害剤、例えば、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、チプラナビル、ダウラナビル、アバカビル−ラミブジン−ジドブジン(トリジビル)であってもよい。いくつかの実施形態では、この第2の薬理学的作用物質はタクロリムスである。
【0175】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子は、PCSK9またはapoB100を特異的に標的とする阻害性核酸(例えば、siRNA、miRNA、アンチセンス配列、リボザイム)と共に同時投与する。
【0176】
6.キット
本発明の医薬組成物はキットで提供することができる。ある実施形態では、本発明のキットは、本明細書で記載したように、本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体または抗原結合分子を含む。抗PCSK9抗体または抗原結合分子は均一に、または様々な投薬量で提供することができる。
【0177】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書で記載したように、1種または複数の第2の薬理学的作用物質を含む。第2の薬理学的作用物質は、同じ製剤中に、または抗PCSK9抗体または抗原結合分子とは別の製剤中に提供することができる。第1および第2の薬剤の投薬量は、独立して均一であるか、または変化させてもよい。
【0178】
いくつかの実施形態では、キットは、PCSK9抗体アンタゴニストならびに(an)LDL−C、非HDL−Cおよび全コレステロールを含むコレステロールを低下させ、かつ/またはHDL-Cを上昇させるために有益であることが知られている1種または複数の薬剤を含む。
【0179】
本発明の抗PCSK9アンタゴニスト抗体または抗原結合分子を含むキットに含めるための第2の薬剤の例には、限定はしないが、HMG−CoA還元酵素阻害剤(すなわち、スタチン)、フィブラート(例えば、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、シプロフィブラート、ベザフィブラート)、ナイアシンおよびその類似体、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸捕捉剤(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム)、回腸胆汁酸輸送体(IBAT)阻害剤、甲状腺ホルモン様物質(例えば、化合物KB2115)、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤、二重ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アルファおよびガンマアゴニスト、アシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤、ニーマンピックC1様1(NPC1−L1)阻害剤(例えば、エゼチミブ)、ATP結合カセット(ABC)タンパク質G5またはG8のアゴニスト、コレステロールエステル輸送タンパク質(CETP)阻害剤、PCSK9を標的とする阻害性核酸およびapoB100を標的とする阻害性核酸が含まれる。
【0180】
キットで使用する他の脂質低下剤は、例えば、Chang, et al., Curr Opin Drug Disco Devel (2002) 5(4):562-70;Sudhop, et al., Drugs (2002) 62(16):2333-47;Bays and Stein, Expert Opin Pharmacother (2003) 4(11):1901-38;Kastelein, Int J Clin Pract Suppl (2003) Mar(134):45-50;Tomoda and Omura, Pharmacol Ther (2007) 115(3):375-89;Tenenbaum, et al., Adv Cardiol (2008) 45:127-53;Tomkin, Diabetes Care (2008) 31(2):S241-S248;Lee, et al., J Microbiol Biotechnol (2008) 18(11):1785-8;Oh, et al., Arch Pharm Res (2009) 32(1): 43-7;Birch, et al, J Med Chem (2009) 52(6):1558-68およびBaxter and Webb, Nature Reviews Drug Discovery (2009) 8:308-320に記載および/または概説されている。
【0181】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子はスタチンと共にキットに供給した。スタチンの例には、限定はしないが、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンが含まれる。
【0182】
いくつかの実施形態では、本発明の抗PCSK9抗体または抗原結合分子は、高コレステロール血症またはトリグリセリド血症を誘導する薬理学的作用物質と共にキットに供給する。例えば、第2の薬理学的作用物質は、プロテアーゼ阻害剤、例えば、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、チプラナビル、ダウラナビル、アバカビル−ラミブジン−ジドブジン(トリジビル)であってもよい。いくつかの実施形態では、この第2の薬理学的作用物質はタクロリムスである。
【実施例】
【0183】
以下の実施例は、限定はしないが請求した本発明を例示するために挙げる。
【実施例1】
【0184】
実施例1:Pcsk9アンタゴニストNVPLFU720の生成および同定
概要
Pcsk9に対する機能的抗体アンタゴニストを作製するために研究を行った。タンパク質のHisタグ型に結合することができる抗体を分泌する多数のハイブリドーマを同定した。ハイブリドーマからの抗体は、HepG2細胞のLDLコレステロール取り込み能力を増加させるHepG2細胞上のLDL受容体のPcsk9媒介による分解を阻害する能力で測定した機能的アンタゴニスト活性で評価した。潜在的な機能的マウス抗ヒトPcsk9 IgG1−カッパモノクローナル抗体を同定し、NVP−LFU720(LFU720)と称した。
【0185】
方法
抗原およびその他のタンパク質
ヒトPcsk9タンパク質を分泌する安定した発現細胞株は、HEK293Freestyle(商標)細胞(Invitrogen、Carlsbad、Ca)の形質移入によって作製した。簡単に説明すると、BioCoatフラスコ(Becton Dickinson)でFreestyle(商標)培地(Invitrogen)および10%牛胎児血清中で接着させて培養した細胞を、Lipofectamine 2000(商標)形質移入試薬およびメリチンシグナル配列を特徴とする組換えプラスミド、成熟Pcsk9 cDNA(アミノ酸31〜692)および配列のC末端のhis6(配列番号57)タグ(E.Hampton、GNF、NPL010051によってクローニングされた)を使用して形質移入した。形質移入して48時間後、ゼオシン100μg/mlを培養培地に添加することによって陽性形質移入体の選択を開始した。4週間後、Pcsk9産生細胞の4つの安定した収集物が出現した。最も産生が多いプール4をFreestyle(商標)培地中で無血清懸濁条件に適応させ、その後、生成用量の規模が10〜20LのWave(商標)バイオリアクターを使用して、大量生成のために規模を拡大した。
【0186】
時間をかけて数回培養を実施し、組換えタンパク質は12および30mg/Lの間の生成率で生成した。細胞上清を収集し、クロスフロー濾過によって濃縮した。得られた濃縮物を25ml NiNTA His−Bind Superflowカラム(Tris 50mM/NaCl 300mM/CaCl2 1mM/β−メルカプトエタノール 2mM、pH7.4で平衡化)に0.5ml/分で添加した。ベースラインに達した後、Tris 50mM/NaCl 300mM/イミダゾール 20mM、pH7.4で洗浄して、結合した物質はTris 50mM/NaCl 300mM/イミダゾール 250mM、pH7.4で溶出した。得られた溶出液をPBS、pH7.3で透析し、滅菌濾過して分取した。重合化を測定するため、分析用分子ふるいクロマトグラフィーによって試料を分析した。精製したタンパク質から得られたHPLCクロマトグラムは、2本のピークを示し、主要なピークが85%を占める。完全長タンパク質のHPLC−ESI MS分析によって、質量は58176.0Daで、全システイン残基が酸化したメリチン−hsPcsk9アミノ酸31〜692−Hisから予測された質量に一致していることが明らかである。試料の一部はさらにNグリコシル化されている。混入する質量約13kDのタンパク質は、おそらくタンパク質の遊離プロドメインに類似している。マウスおよびカニクイザルの対応するPcsk9相同体は、Freestule培地中の無血清懸濁液中で培養したHEK293 Freestyle細胞を再度使用して、大規模一時発現法で生成した。組換えプラスミド、天然のリーダー配列およびC末端のhis6(配列番号57)タグを特徴とするマウスPcsk9 cDNAならびにCD33リーダー配列およびC末端his6(配列番号57)タグを特徴とするcyno Pcsk9を、プラスミドDNAの担体としてポリエチレンイミンを1:3(μg/ml:μg/ml DNA:PEI)の比で使用して、Freestyle細胞に形質移入した。生成操作は、Wave(商標)バイオリアクターにおいて10リットルの規模で実施し、タンパク質精製および特徴付けは、ヒトPcsk9タンパク質で前述したプロトコールと同様に実施した。マウスPcsk9タンパク質の収率は0.7と2.7mg/L培養物の間であり、cyno Pcsk9は3.1mg/Lで得られた。
【0187】
ハイブリドーマ作製
マウスの免疫およびハイブリドーマの生成
Bcl−2トランスジェニックマウス(C57BL/6−Tgn(bcl−2)22wehi種)を免疫する前に、精製Pcsk9をフロイント完全アジュバントで1:1に希釈した。マウスは、複数部位での反復免疫(RIMMS)を必要とする方法を使用して免疫した。簡単に説明すると、マウスの末梢リンパ節(PLN)の近位の特定部位8ヵ所に抗原1〜3μgを注射した。この方法を12日間にわたり6回反復した。12日目に試験血を収集し、血清抗体力価をELISAによって分析した。力価の高いマウスから15日目にPLNを取り出し収集した。リンパ球を採取するために、PLNを基本DMEMで2回洗浄し、次に、22ミクロンの篩い(Falcon #352350)に通すことによって分離した。得られたリンパ球を融合前にさらに2回洗浄した。NSO/Bcl−2骨髄腫細胞をリンパ球と、リンパ球2.5対NSO細胞1の比で混合した。細胞混合物を遠心し、その後細胞ペレットにPEG1500 1mLを1分間かけて滴下した。30秒後、DMEM 1mlをゆっくり添加し、1分後、DMEM 19mlを5分間かけて添加した。融合した細胞をペレットにし、HAT培地(DMEM+20%FBS、Pen/Strep/Glu、1×NEAA、1×HAT、0.5×HFCS)中に2×105細胞/mLの密度で再懸濁し、37℃で1時間置いた。その後、細胞を384−ウェルプレートに60μl/ウェルで接種した。
【0188】
Pcsk9に対する機能的抗体を分泌するハイブリドーマのスクリーニング
融合して10日後、ハイブリドーマプレートのPcsk9特異的抗体の存在をスクリーニングした。ELISAスクリーニングのため、Maxisorp384ウェルプレート(Nunc #464718)をPcsk9 50μlでコーティングし(PBSで15ng/ウェルに希釈)、一晩4℃でインキュベートした。残存するタンパク質を吸引し、ウェルをPBSに溶かした1%BSAで遮断した。室温で30分間インキュベーションした後、ウェルをPBS+0.05%Tween(PBST)で4回洗浄した。ハイブリドーマ上清15μlをELISAプレートに移した。PLNを取り出す時に採取したマウス血清15μlをPBSで1:1000に希釈し、陽性対照として追加した。2次抗体50μl(ヤギ抗マウスIgG−HRP(Jackson Immuno Research #115−035−071)、PBSで1:5000に希釈)をELISAプレートの全ウェルに添加した。室温で1時間インキュベーションした後、プレートをPBSTで8回洗浄した。TMB(KPL#50−76−05)25μlを添加し、室温で30分インキュベーションした後、プレートを605nmの吸収で読み取った。陽性ウェルの細胞を24−ウェルプレートでHT培地(DMEM+20%FBS、Pen/Strep/Glu、1×NEAA、1×HT、0.5×HFCS)中で増殖させた。
【0189】
抗体精製
LFU720を含有する上清をタンパク質G(Upstate#16−266(Billerica、MA))を使用して精製した。上清を添加する前に、樹脂を10カラム容量のPBSで平衡化した。試料を結合させた後、カラムを10カラム容量のPBSで洗浄し、次いで抗体を5カラム容量のグリシン0.1M、pH2.0で溶出した。カラム画分は1/10容量のTris HCl、pH9.0ですぐに中和した。画分のOD280を測定し、陽性画分を収集し、PBS、pH7.2に対して一晩透析した。
【0190】
結合反応速度およびBiacoreアッセイ
動力学的結合パラメータの測定は、光学的バイオセンサーBiacore S51を使用して、表面プラズモン共鳴測定によって実施した。この技術によって、標識を用いない受容体に対するリガンドの結合(Ka)および解離(Kd)の顕微鏡的速度定数の測定が可能である。したがって、抗体−抗原相互反応を特徴付けるために特に適している。
【0191】
Pcsk9のLFU720(2μg/ml)への結合の研究は、予めシリーズS CM−5 Biacoreセンサーチップ(認定)(Biacore #BR−1005−30)に固定されたウサギ抗マウスFcγ抗体(Biacore #BR−1005−14)でマウス抗体を捕捉することによって実施した。Fcγ捕捉抗体の共有結合は、「アミン結合キット」(Biacore #BR−1000−50)で実施した。捕捉抗体(ウサギ抗マウス)は、酢酸ナトリウム10mM、pH5に溶かした抗Fcγ抗体溶液(Biacore #BR−1003−51)50μg/mlを流速10μl/分でEDC活性化デキストラン表面に結合させた。Pcsk9を0.5μMから7.8nM(2倍希釈系列)の濃度範囲で、PBSおよびNaCl 100mM、0.005%P20(Biacore#BR−1000−54)中での捕捉LFU720チップ上に流した。得られたセンサーグラムは、Biacore S51評価ソフトウェアを使用して分析した。全濃度のデータは全体的に1:1Langmuirモデルに適合させた。
【0192】
TR−FRETアッセイ
TR−FRETアッセイは、浅い384ウェル白色プレート(Perkin Elmer、6008280)で実施した。hPcsk9−AF(10.7nM)を標識していないhPcsk9タンパク質、EGF−AペプチドまたはNVP−LFU720−AX−1抗体の希釈系列とアッセイ緩衝液(HEPES 20mM、pH7.2、NaCl 150mM、CaCl2 1mM、0.1%v/v Tween20および0.1% w/v BSA)15μl中で室温で30分間インキュベートした。この後、アッセイ緩衝液に溶かした5μlのhLDL−R−Eu(4nM)を予めインキュベートしたhPcsk9およびNVP−LFU720−AX−1の複合体に添加し、室温で90分間インキュベートした。これらの標識タンパク質の最終濃度は、hPcsk9−AF 8nMおよびhLDL−R−Eu 1nMであった。TR−FRETシグナルは、EnVision 2100マルチラベルリーダー(Perkin Elmer)を用いて励起330nmおよび放射665nmで測定した。データは、以下の式:[(665nmの値×10,000)/(615nmの値)]を使用して正規化した値に変換した。パーセント阻害は、以下の式:100−[(処理試料の正規化した値/未処理試料の正規化した値の平均値)×100]で計算した。パーセント阻害用量反応曲線はPrism バージョン5を使用して、式Y=最小結合度(Bottom)+(最大結合度(Top)−最小結合度)/(1+10^((LogIC50−X)*傾き(HillSlope))(GraphPad Prism Software)を用いてプロットした。
【0193】
LDL−R代謝回転アッセイ
HepG2細胞をトリプシン処理し、予め1% v/vコラーゲンでコーティングした平底96−ウェルプレート(Corning、3595)で、培養培地100μlにウェル当たり6×104細胞を接種し、その後37℃で5%CO2中で24時間インキュベートした。一般的に、細胞は、hPcsk9タンパク質、EGF−Aペプチドおよび/またはNVP−LFU720−AX−1抗体のいずれかを含有する無血清培地100μlで処理した。処理後、培地を廃棄し、細胞をPBS100μlで洗浄した。細胞を採取するために、Versine(Biowhittaker、17−771E)100μlを添加し、37℃で5%CO2中で1時間インキュベートし、次いでFACS緩衝液100μlを添加した。細胞をV底96ウェルプレート(Corning、3894)に移し、1200rpMで5分間遠心して細胞をペレットにした。細胞上の非特異的結合部位を遮断するため、FACS緩衝液に溶かした正常ウサギIgG(MP biomedicals、55944)およびマウスIgG(Sigma、I5381)100μg/mlの50μlを各ウェルに添加し、氷上で30分間インキュベートした。細胞を1200rpMで5分間遠心して、プレートをはじくことによって緩衝液を除去した。細胞を標識するために、FACS緩衝液に溶かしたウサギ抗hLDL−R−Alexa647IgG(5μg/ml)10μlおよびマウス抗トランスフェリン−R−フィコエリトリン(PE)IgG(2μg/ml)(CD71、Becton Dickinson Biosciences、624048)標識抗体10μlを各ウェルに添加し、氷上で60分間インキュベートした。細胞を1200rpMで5分間遠心して、プレートをはじくことによって緩衝液を除去した。結合していない抗体は、FACS緩衝液ウェル当たり200μlで細胞を2回洗浄することによって除去した。細胞は、PBSに溶かした1%パラホルムアルデヒドで固定し、生細胞をゲーティングし(5000)、BD LSRIIフローサイトメーターおよびFACSDIVAソフトウェア(Becton Dickinson)を使用して分析した。PE蛍光の中央値は、488nmの励起および575nmの放射で測定した。Alexa647蛍光の中央値は、488nmの励起および633nmの放射で測定した。HepG2細胞上の表面hLDL−RのFACS検出のために、特注のウサギ抗hLDL−RポリクローナルIgG583はCovance(Denver、PA、USA)によって注文生産された。ウサギ抗hLDL−R IgG583は、正常なウサギIgGと比較して、HepG2細胞表面上のhLDL−Rの検出について約7倍のウインドウを示した。抗hLDL−R IgG583のHepG2細胞表面上のLDL−Rに対する特異性を測定するために、このIgGの結合の競合相手としてhLDL−Rタンパク質を使用して実験を実施した。HepG2細胞に対する抗hLDL−R IgG583の平均培地蛍光の用量依存減少が、hLDL−Rタンパク質の濃度増加につれて認められた。このことは、FACSによって測定されたように、抗hLDL−R IgG583がHepG細胞表面上のLDL−Rを特異的に認識することを示唆した。その後の研究では、HepG2細胞表面上のLDL−RのFACS定量のために、直接標識した抗hLDL−R−583−Alexa647IgGを使用した。
【0194】
LDL−C取り込み
HepG2細胞をトリプシン処理し、平底96−ウェルプレート(Corning、3595、予め1% v/vコラーゲンでコーティング中の培養培地100μlにウェル当たり6×104細胞を接種し、その後37℃で5%CO2中で24時間インキュベートした。特に記載しない限り、細胞は、hPcsk9タンパク質、EGF−Aペプチドおよび/またはNVP−LFU720−AX−1抗体のいずれかを含有する無血清培地100μlで処理した。処理後、無血清培地に溶かした3,3’−ジオクタデシルインドカルボシアニン標識低密度リポタンパク質(DiI−LDL)(Intracell、RP−077−175)30μg/ml、20μlを各ウェルに入れ、37℃で5%CO2中で2時間インキュベートした。プレートをはじくことによって培地を除去し、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(カルシウムおよびマグネシウムを含まないPBS、Invitrogen、14190−144)100μlで洗浄した。プレートをはじくことによってPBSを除去し、0.25%トリプシン−EDTA100μlを各ウェルに添加し、37℃で5%CO2中で5分間インキュベートした。FACS緩衝液(5%FBS、EDTA 2mMおよび0.2%アジ化ナトリウムを含有するPBS)100μlを各ウェルに添加し、1200rpmで5分間遠心することによって細胞をペレットにした。プレートをはじくことによって培地を廃棄し、PBSに溶かした1%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences、15710)をウェル当たり50μl添加することによって細胞を固定した。生細胞をゲーティングし、BD LSR IIフローサイトメーターおよびFACSDIVAソフトウェア(Becton Dickinson)を使用して分析した。DiI−LDL蛍光の中央値は、488nmの励起および575nmの放射で測定し、5000個の細胞を分析した。Microsoft Excel 2002(Microsoft Corporation)を使用して棒グラフを作成した。活性化のパーセントは以下の通りに算出した、%活性化=[1−(X÷A)]×100、式中、X=試料ウェルから読み取った培地蛍光およびA=hPcsk9処理のみのウェルから読み取った培地蛍光。
【0195】
式Y=最小結合度+(最大結合度−最小結合度)/(1+10^((LogEC’50−X)×傾き))およびGraphPad Prism 5(GraphPad Software)を使用して作成した用量反応曲線からEC50を決定するために、活性化のパーセントを処理に対してプロットした。
【0196】
結果
抗ヒトPcsk9モノクローナル抗体の作製
B細胞は、Pcsk9タンパク質で免疫した動物の一次リンパ節から採取した。ハイブリドーマは、標準的PEG媒介融合を使用して作製した。得られた融合物は、ELISAによってアッセイし、ヒトPcsk9に陽性結合するものを同定し、上清を生成するために増殖させた。ELISA陽性クローンが多数同定され、その後の機能アッセイによって選別された。主要な候補として同定されたクローンは、LFU720であった。我々の主要な候補、LFU720に加えて、Pcsk9に結合してPcsk9がLDLr分解を媒介する能力を遮断することはできても(LDLc取り込みによって測定した通り)、Pcsk9とLDLrの相互作用は遮断することはできない(FRETによって測定した通り)、クローン21D6、5A4−C1および13F1を含む多数のその他のクローンが同定された。クローン21D6はまた、インビボにおいてPcsk9によるLDLrの分解を遮断する能力を示した。
【0197】
Pcsk9に特異的に結合するLFU720のスクリーニング
LFU720の特異性は、一連のその他のタンパク質に対する結合をELISAで評価することによって調べた。HISでタグ付けした3種類のその他のタンパク質に対するLFU720の結合をPcsk9−HISに対する結合と比較した。これによって、Pcsk9に対する結合が特異的で、この抗体はHISタグには結合しないことが示された。
【0198】
LFU720のカニクイザルPcsk9に対する結合の評価
LFU720のPcsk9のカニクイザル相同体に対する結合を測定した。このアッセイのために、HISでタグ付けしたカニクイザルPcsk9を発現する細胞の上清をNi捕捉プレートと共に利用し、材料を精製する必要性を省いた。ヒトPcsk9を希釈し、そのHISタグを介してまた捕捉した。LFU720は、ヒトおよびカニクイザル両方のPcsk9に結合することができた。5P20はまた、ELISAではヒトLDL−RにもマウスPcsk9にも結合しなかった。
【0199】
LFU720の結合速度
光学的バイオセンサー技術(Biacore)を使用することによって、ヒトPcsk9タンパク質を認識するマウス抗体LFU720の結合親和性を分析した。LFU720は、組換えヒトPcsk9にナノモル以下の高い親和性(KD =200pM)で結合することが見出された。
【0200】
LFU720のPcsk9/LDL−R相互作用遮断のスクリーニング
抗hPcsk9抗体NVP−LFU720がhPcsk9−AFとhLDL−R−Eu標識タンパク質との間の相互作用を中断させることができるかどうかを測定するために、TR−FRETアッセイを使用した。hLDL−R−EuとhPcsk9−AF標識タンパク質の相互作用によって生じたTR−FRETシグナルの中断をアッセイが検出できることを示すために、標識していないhPcsk9タンパク質またはEGF−Aペプチドを評価した。標識していないhPcsk9の濃度を増加させると、hLDL−R−Euへの結合をhPcsk9−AFと競合し、TR−FRETシグナルの減少が生じた。EGF−Aペプチドは、hLDL−R−EuとhPcsk9−AFの相互作用をIC502.5μMで中断させた。対照的に、NVP−LFU720はhPcsk9−EuとhLDL−R−AFの間のTR−FRETシグナルをあまり中断させず、IC50は1000nMを上回り、低い抗体濃度ではU型の応答を示した。
【0201】
Pcsk9媒介によるLDL−R分解のLFU720による阻害のスクリーニング
LDL−RへのPcsk9の結合は、LDL−R分解を引き起こすことが示され、このことはHepG2細胞および組換えヒトPcsk9を使用して確かめられた。LFU720がPcsk9に結合し、この効果を遮断する能力を測定した。NVP−LFU720は外来性Pcsk9で処理したHepG2細胞を阻害し、細胞表面LDL−Rの増加を引き起こした。
【0202】
LFU720のPcsk9阻害およびLDL取り込み回復のスクリーニング
LDL−RのPcsk9分解の阻害は、HepG2細胞がLDL−Cを内部移行させる能力を回復させる。NVP−LFU720は、外来性hPcsk9で処理したHepG2細胞でのPcsk9媒介によるLDL−R分解を妨害し、DiI−LDL取り込みをEC50 99nMで増加させた。
【実施例2】
【0203】
実施例2:PCSK9アンタゴニスト抗体NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211の生成
導入
この実施例では、マウスPCSK9アンタゴニストモノクローナル抗体NVP−LFU720のヒト生殖系列抗体に対する配列相同性が高くなるように遺伝子操作することによって、ヒト抗体NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211を作製することを説明する。NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211は、親マウス抗体、NVP−LFU720のエピトープ特異性、親和性およびカニクイザルマカクPCSK9交差反応性を保持している。NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211は、元のマウス抗体よりもヒト生殖系列配列により高い相同性を有し、したがってヒト免疫系により耐性であろう。
【0204】
マウスモノクローナル抗体LFU720は、そのタンパク質配列がヒト生殖系列配列により近く、その免疫原性が減少するように、Humaneered(商標)した。Humaneering(商標)技術は、南サンフランシスコのKaloBios(ワールドワイドウェブkalobios.com)から入手可能である。抗体のHumaneering(商標)によって、ヒト生殖系列配列と高い相同性を有する一方、親または参照抗体の特異性および親和性をなお維持しているV領域配列を有する遺伝子操作されたヒト抗体が作製される(米国特許出願公開第2005/0255552号および第2006/0134098号)。このプロセスではまず、参照Fabの重鎖および軽鎖可変領域における最小抗原結合特異性決定基(BSD)(通常は重鎖CDR3および軽鎖CDR3内の配列)を同定する。これらの重鎖および軽鎖BSDは、Humaneering(商標)プロセス中に構築された全ライブラリー中に維持されるので、各ライブラリーはエピトープに注目し、最終的な完全なHumaneered(商標)抗体は元のマウス抗体のエピトープ特異性を保持する。
【0205】
次に、完全長ライブラリー(軽鎖または重鎖可変領域全体がヒト配列のライブラリーで置換されている)および/またはカセットライブラリー(マウスFabの重鎖または軽鎖可変領域の一部がヒト配列のライブラリーで置換されている)を作製する。抗体Fab断片としてライブラリーのメンバーを発現させるために細菌分泌系を使用して、コロニーリフト結合アッセイ(CLBA)を使用してこのライブラリーの抗原に結合するFabをスクリーニングする。陽性クローンはさらに特徴を明らかにして、最高の親和性を有するものを同定する。残存するマウス配列において結合を支持することが同定されたヒト「カセット」は次に、完全なヒトV領域を作製するための最終的なライブラリースクリーンにおいて一緒にする。
【0206】
得られたHumaneered(商標)Fabは、ヒトライブラリーから得られたVセグメント配列を有し、CDR3領域内で同定された短いBSD配列を保持しており、ヒト生殖系列フレームワーク4領域を有する。これらのFabは、重鎖および軽鎖の可変領域をIgG発現ベクターにクローニングすることによって、完全なIgGに変換する。この方法で作製された完全なHumaneered(商標)抗体は、親、マウス抗体の結合特異性を保持しており、通常、親抗体よりも抗原に対して同等またはより高い親和性を有し、タンパク質レベルでヒト生殖系列抗体遺伝子に匹敵する高い程度の配列同一性のV領域を有する。
【0207】
方法
マウスV領域のクローニング
マウスモノクローナルNVP−LFU720のV領域DNAは、標準的方法を使用してハイブリドーマ細胞株から単離されたRNAからRT−PCRによって増幅した。ハイブリドーマcDNAの重鎖可変領域のPCR増幅での使用に成功したプライマーは、VH14(5’−CTTCCTGATGGCAGTGGTT−3’、配列番号58)(Chardes T, et al 1999, FEBS Letters; 452(3):386-94)およびHC定常部(5’−GCGTCTAGAAYCTCCACACACAGGRRCCAGTGGATAGAC−3’、配列番号59)であった。ハイブリドーマcDNAの軽(カッパ)鎖可変領域のPCR増幅での使用に成功したプライマーは、Vκ4/5(5’−TCAGCTTCYTGCTAATCAGTG−3’、配列番号60)(Chardes T, et al., 1999、前述)およびLC定常部(5’−GCGTCTAGAACTGGATGGTGGGAAGATGG−3’、配列番号61)であった。増幅された重鎖および軽鎖の可変領域の配列を決定した。次に、PCRを使用してV遺伝子を増幅し、クローニング用の制限酵素部位をKaloBiosベクターに組み込んだ。すなわち、VhをKB1292−His(C末端可動性リンカーおよびCH1上のアミノ酸配列AAGASHHHHHH(配列番号62)の6−His(配列番号57)タグをコードするKB1292の改変変種)のNcoI(5’)およびNheI(3’)に組み込み、VkをKB1296のNcoI(5’)およびBsiWI(3’)に組み込んだ。これらの個々の重鎖および軽鎖ベクターは次に、BssHIIおよびClaIによる制限消化および連結によって単一のジシストロニックKaloBios Fab発現ベクターに結合させた。Fab断片は、このベクターによってイー・コリ(E.coli)で発現させた。このFabのPCSK9−抗原結合を試験し、参照Fab SR032と称した。
【0208】
Fab精製
Fab断片は、KaloBios発現ベクターを使用してイー・コリから分泌させることによって発現させた。細胞は、2×YT培地で、OD600が約0.6になるまで増殖させた。発現は、IPTGを100μMまで添加し、33℃で4時間振盪することによって誘導した。アセンブルされたFabは、浸透圧溶解によって周辺質画分から得られ、Ni−NTAカラム(HisTrap HPカラム、GE Healthcareカタログ番号17−5247−01)を使用したアフィニティークロマトグラフィーによって標準的方法に従って精製した。Fabは、イミダゾール500mMを含有する緩衝液中に溶出し、カルシウムおよびマグネシウムを含まないPBS pH7.4で徹底的に透析した。
【0209】
ライブラリー構築
ライブラリー構築の最初の工程では、KaloBiosヒトVセグメントライブラリー配列をPCR増幅することによって、エピトープを特徴とする完全なヒトV領域ライブラリーを作製した。これらの完全鎖ライブラリーの作製においては、最適化した参照Fab SR038のBSDおよびヒト生殖系列Jセグメント配列を含有する特有のCDR3−FR4領域を、重複PCRを使用してヒトVセグメントライブラリーに結合させた。これらの完全なV領域ライブラリーは、直接スクリーニングせず、むしろVhおよびVk中間ライブラリー構築のための鋳型として使用した。完全鎖ライブラリー構築のために使用したKaloBiosヒトVセグメントライブラリーは、CDR領域における元のマウスのVhおよびVk’に最も近いヒト生殖系列配列をベースにして選択した。元のマウスNVP−LFU720 Vhは、CDRがヒト生殖系列配列Vh1−02に最も近いので、Vh1亜群のメンバーを含有する2種類のKaloBiosライブラリー(KB1410およびKB1411)の混合物を、完全なVhライブラリーの作製において使用した。同様に、NVP−LFU720Vkは、そのCDRがVk3 L6ヒト生殖系列配列に最も近いので、Vk3亜群のメンバーを含有する2種類のKaloBiosヒトVセグメントライブラリー(KB1423およびKB1424)の混合物を、完全なVkライブラリーの作製において使用した。次に、これらの完全長VhおよびVkライブラリーを、親マウスVセグメントの一部のみがヒト配列のライブラリーによって置換されているカセットライブラリーの構築のための鋳型として使用した。2種類のカセットは、ブリッジPCRによって構築し、FR1、CDR1およびFR2の最初の部分にヒト配列を含有するフロントエンドカセットは鋳型として前述したVh1ライブラリー(KB1410およびKB1411)の混合物またはVk3ライブラリー(KB1423およびKB1424)の混合物から増幅した。FR2の最後の部分、CDR2およびFR3にヒト配列を含有するミドルカセットは、鋳型として前述した完全なヒトVhまたはVk領域ライブラリーを使用して増幅した。VhカセットはF2におけるアミノ酸45〜49位(Kabatによる番号付け)に重複する共通配列を有し、VkカセットはFR2においてアミノ酸残基35〜39(Kabatによる番号付け)に重複する共通配列を有していた。このように、フロントエンドおよびミドルヒトカセットライブラリーは、ヒトV重鎖1およびVカッパ3アイソタイプについてPCRによって構築した。各Vhカセットライブラリーは、ベクターKB1292−His at NcoI(5’)およびKpnI(3’)にクローニングし、各Vkカセットライブラリーは、ベクターKB1296−B(FR4にサイレントHindIII部位を添加したKaloBiosベクターKB1296の改変変種)のNcoI (5’)およびHindIII(3’)にクローニングした。次に、得られたVhまたはVkプラスミドライブラリーは、BssHIIおよびClaIで消化し、その後連結して完全なFabを発現するジシストロニックベクターのライブラリーを生成することによって、最適化した参照Fab SR038の相補鎖と結合させた(例えば、Vhフロントエンドライブラリーは最適化した参照Vkベクターと結合させた)。
【0210】
一般的ELISA
組換えヒトまたはカニクイザルマカクPCSK9−His6抗原をELISAアッセイ全てに使用した。通常、PBSpH7.4で希釈したPCSK9−His6抗原を96ウェルマイクロタイタープレートに300ng/ウェルで一晩4℃でインキュベートすることによって結合させた。プレートをPBSに溶かした3%BSA溶液で37℃で1時間遮断し、次いでPBSTで1回濯いだ。その後、Fabを含有する誘導細胞培地または希釈した精製Fab(50μl)を各ウェルに添加した。37℃で1時間インキュベートした後、プレートをPBSTで3回濯いだ。PBSで1:5000に希釈した抗ヒトカッパ鎖HRP結合体(Sigma #A7164)(50μl)を各ウェルに添加し、このプレートを室温で45分間インキュベートした。プレートをPBSTで3回洗浄し、次いでSureBlue TMB基質(KPL #52−00−03)100μlを各ウェルに添加し、プレートを室温で約10分間インキュベートした。プレートを分光光度計によって650nmで読み取った。
【0211】
精製したヒトおよびマウスIgGに対する特異的なELISAのために、384ウェルプレートを一群の精製したヒトおよびマウス抗原によってウェル当たり88ngでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを前述のように遮断して洗浄し、次いでPBSで2μg/mlに希釈した精製したマウスまたはヒト抗PCSK9抗体22μlを各ウェルに添加した。プレートを37℃で1時間インキュベートし、その後PBSTで洗浄した。HRPに結合させた抗マウスFc抗体(Jackson ImmunoResearch Labs#115−035−071)または抗ヒトカッパ抗体(Sigma #A7164)をPBSで1:5000に希釈し(25μl)、各ウェルに添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、その後洗浄して、前述のように発色させた。
【0212】
コロニーリフト結合アッセイ(CLBA)
Fab断片のHumaneered(商標)ライブラリーのスクリーニングは、PCSK9−His6 6μg/mlでコーティングしたニトロセルロースフィルターを使用して、本質的に(米国特許出願公開第2005/0255552号および第2006/0134098号)で記載されたように実施した。抗原をコーティングしたフィルターに結合したFabは、PBSTで1:5000に希釈したアルカリホスファターゼ結合抗ヒトカッパ軽鎖抗体(Sigma #A3813)を使用して検出し、ブロットはアルカリホスファターゼのDuoLux化学ルミネセンス基質で発色させた(Vector Laboratories #SK−6605)。
【0213】
ビオチン化組換えPCSK9の作製および親和性測定
pRS5a/PCSK9プラスミドのPCSK9およびHis6(配列番号57)タグをコードする遺伝子の間にEcoRI制限部位を挿入することによってC末端にAvi(部位特異的ビオチン化のため)およびHis6(配列番号57)タグ(PCSK9−Avi−His6)を有するPCSK9を作製し、C末端His6(配列番号57)タグを有するPCSK9 Uniprot Accession Q8NBP7のアミノ酸31〜692を発現する。Aviタグ(アミノ酸配列GGGLNDIFEAQKIEWHE;配列番号63)をコードし、EcoRIオーバーハングが隣接するオリゴヌクレオチドをT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Invitrogen)でリン酸化し、アニーリングし、その後新たに挿入されたEcoRI部位を使用してpRS5a/PCSK9に連結した。Aviタグを含有するクローンを配列分析によって確認した。PCSK9−Avi−His6の発現は、293Freestyle発現系(Invitrogen)で実施し、分泌した組換えタンパク質はNi−NTA樹脂(QIAGEN)を使用して精製した。精製後、PCSK9−Avi−His6タンパク質は、10mM Tris pH8.0、NaCl 50mMに対して透析した。タンパク質は、製造者のプロトコールに従ってビオチン−タンパク質リガーゼ(Avidity)によってインビトロでビオチン化した。完了後、反応物をPBS pH7.2に対して透析し、ビオチン化はウェスタンブロットでHRP結合ストレプトアビジンで探索することによって確認した。
【0214】
IgGおよびFab断片の結合速度は、溶液平衡滴定(「SET」)アッセイを使用して分析した。簡単に説明すると、hPCSK9の希釈系列をIgG 60pMまたはFabに添加し、一晩インキュベートした。96−ウェル標準結合マイクロタイタープレート(Meso Scale Discovery)にhPCSK9 1μg/mlをコーティングし、一晩インキュベートして、PBS/0.05%(w/v)Tween20で洗浄し、PBS/5%(w/v)BSAで遮断し、再度洗浄した。抗体−抗原調製物をPCSK9コーティング標準結合プレートに添加し、室温で30分間インキュベートした。さらに3回洗浄工程を経た後、スルホ−タグ標識ヤギ抗ヒト検出抗体(R32AJ−5、Meso Scale Discovery)を添加し、室温で一時間インキュベートした。プレートを3回洗浄した後、読み取り緩衝液(Meso Scale Discovery)を添加し、電気化学ルミネセンス(ECL)シグナルをSector Imager 6000(Meso Scale Discovery)によって測定した。ECLデータは、Piehler, et al., (1997) J Immunol Methods 201:189-206に記載された抗体に適用可能な適当なモデルを使用して、excelアドインXLfit4.3.2(ID Business Solutions)で処理した。溶液中において、ヒトPCSK9と抗体LGT209、LGT210およびLGT211の間で親和性の高い結合が認められ、それぞれについて算出されたKD値は150〜190pMであった。
【0215】
抗体産生および精製
完全なHumaneered(商標)NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211抗体(サイレントIgG1カッパ)は、293fectin形質移入試薬(Invitrogen #51−0031)を使用して、製造者のプロトコールに従って、以下の通りにベクターを293 Freestyle細胞に同時形質移入することによって生成した。
LGT−209−pJG04(Vh)+pJG10(Vk)
LGT−210−pJG04(Vh)+pJG01(Vk)
LGT−211−pSR74(Vh)+pJG10(Vk)
【0216】
抗体は、5mLのHiTrapプロテインA HPカラム(GE Healthcare #17−0403−03)を使用して、293Freestyle細胞上清から精製した。抗体は、IgG溶出緩衝液(Pierce #21004)を使用して溶出し、透析によって緩衝液をPBSに交換した。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーは、AKTAFPLC液体クロマトグラフィー系(GE Healthcare)で実施した。
【0217】
エピトープ競合アッセイ
元のマウス抗体NVP−LFU720とそのHumaneered(商標)誘導体化NVP−LGT209の間のPCSK9上のエピトープへの結合の競合は、ForteBio Octet QKシステムおよびビオチン化PCSK9−Avi−His6でコーティングしたストレプトアビジン高結合バイオセンサーを使用してアッセイした。次に、3種類の異なる抗体、マウスLFU720、完全ヒトLGT209または対照マウス抗体7D16(LFU720とは別のエピトープを有することが知られている)を別々のPCSK9コーティングセンサーに飽和するまで結合させた。次に、センサーを全て、LFU720マウス抗体を含有するウェルに浸漬し、第1抗体がLFU720の結合を遮断できるかどうかを測定した。
【0218】
結果
マウスおよび参照V領域アミノ酸配列
NVP−LFU720を発現するハイブリドーマ細胞からのRT−PCR生成物を配列決定し、この配列はThermoElectron LTQ−Orbitrap 質量スペクトル分析を使用してタンパク質レベルでほとんど(95%以上)確認された。次に、参照Fab SR032を作製するために、LFU720の重鎖および軽鎖可変領域をKaloBiosベクターにクローニングした。参照Fab SR032作製用のKaloBiosベクターへのクローニングを可能にするために、NVP−LFU720 Vkの最初のアミノ酸はグルタミン(Q)からグルタミン酸(E)に変化させなければならなかったので、SR 032Vkは最初のVk位置にグルタミン酸を有する。Fab SR032には、ヒト定常領域に融合したNVP−LFU720由来の完全なマウスV領域が有り、イー・コリから精製された。PCSK9−His6抗原結合の希釈ELISA試験において、クローニングされたSR032参照Fabは、Fab濃度に応じた結合曲線を生じた。参照Fab(SR032)に加えて、最適化した参照Fab、SR038を構築した。SR038では、SR032のいくつかのフレームワークアミノ酸残基をヒト生殖系列に変化させた。
【0219】
参照および最適化した参照Fabの親和性分析
FR1およびFR3中の最適化した参照FabSR038に組み込まれたヒト生殖系列残基は、ヒトVセグメントレパートリーを増幅するために使用されたPCRプライマーによって特定されたものであり、したがって、Humaneered(商標)V領域ライブラリーの全メンバー中に存在する。最適化した参照Fabは、ヒト生殖系列への変化のいずれかがFab結合の特性を変化させるかさせないかを評価するために構築する。精製したFabを使用した希釈ELISAによって、組換えPCSK9抗原に対するSR032およびSR038の親和性は同一であることが測定され、SR038中のアミノ酸変化には耐性があることが示唆された。
【0220】
ライブラリー構築および完全なHumaneered(商標)Fabの選択
Vh1またはVk3に限定された重鎖および軽鎖フロントエンドおよびミドルカセットライブラリー亜群を作製し、CLBAによってスクリーニングした。Vhについては、PCSK9抗原への結合を支持するフロントエンドカセットはコロニーリフト結合アッセイによって同定されたが、Vhミドルカセットは同定されなかった。Vkについては、フロントエンドカセットおよびミドルカセットの両方がコロニーリフトによって同定され、さらに、いくつかの完全なVkクローンが同定された(Vkフロントエンドライブラリーに完全鎖Vkクローンが混入したため)。各ライブラリーの多くの結合物がFab含有細胞上清におけるELISAアッセイで再確認され、各ライブラリーのいくつかのFabが周辺質画分から精製され、Forte分析を使用して親和性によって順位付けされた。
【0221】
PCSK9結合を支持するV−重鎖ミドルカセットは同定されなかったので、重鎖CDR2またはFR3内の全位置で親のマウス残基またはヒト生殖系列に最も近い残基のいずれかをコードする2種類の突然変異誘発ライブラリーを構築した。こうして、遺伝子操作されたヒトミドルカセットライブラリーを構築し、スクリーニングし、抗原結合クローンを同定した。その後、個々のクローンにおいて結合を支持した、Vhミドル内におけるヒト生殖系列への変化を一緒にして最終的に1個のミドルカセットを作り出し、最適化した参照Fabにおいてこのカセットを含有するFabの結合の親和性を確認し、最適化した参照FabをForte分析した。
【0222】
作り出したライブラリーから、CLBAによって重鎖および軽鎖両方についてPCSK9抗原への結合を支持するフロントエンドおよびミドルヒトカセットを同定することに成功した。これらの結合物は全てELISAによって確認し、次いでFabを精製し、ForteBio Octetシステムを使用して順位付けした。重鎖および軽鎖について高く順位付けされたカセットをブリッジPCRによって最終的な1個のライブラリーに一緒にし、PCSK9への結合を支持する完全なHumaneered(商標)FabをCLBAによってこのライブラリーから選択した。これと並行して、上位にランク付けされたカセットまたは鎖全て(最良のVhフロントエンド、遺伝子操作されたVhミドル、および最良の完全な軽鎖)を一緒にして、親和性の高い結合を支持することが予測される1個のFab SR066を作り出した。
【0223】
親マウスmAb NVP−LFU720およびHumaneered(商標)Ab NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211の重鎖および軽鎖可変領域の配列をそれぞれ図1〜4に示す。
【0224】
ForteBio Octet分析を使用した完全なHumaneered(商標)FabのPCSK9抗原に対する親和性試験
Humaneered(商標)SR066 Fabおよび最終的なコンビナトリアルライブラリーから引き出された3個のFab(#1−2、#3−2および#4−2)を発現させ、精製した。その後、これら4種類のヒトFabの結合速度は、ForteBio Octetシステムを使用して最適化した参照Fab SR038の速度と比較した(数値データは表1にまとめて示した)。
【表1】
【0225】
これらのFabのタンパク質濃度の決定は困難で、そのため解離速度(off−rate)(kd)データは結合速度(on−rate)(ka)およびKDデータよりもずっと信頼性が高い(解離速度(off−rate)のみが濃度依存的である)。試験したHumaneered(商標)Fab4種は全て、最適化した参照Fabよりも3から4倍「劣る」(すなわち、速い)解離速度(off−rate)を有するように見える。元の重鎖フロントエンドカセットライブラリーから選択されるFab結合物の全ては、最適化した参照Fabよりも「劣る」解離速度(off−rate)を有するように見えたので(データは示さず)親和性のこの減少は、これらのクローンにおける重鎖フロントエンドによるものと考えられる。重鎖フロントエンドは、CDR1を含有するので、Vhフロントエンドカセット中のこのCDRに生じた変化は、最終的なHumaneered(商標)Fabの親和性の減少の原因である可能性があった。完全なHumaneered(商標)Fab、SR066は、最高の解離速度(off−rate)を有し(表1)、重鎖CDR1中のSR066と参照(マウス)配列の間には3つの違いがある。CDRH1に生じた変化がHumaneered(商標)Fab全てに認められる親和性の減少に関連することを試験するために、SR066のCDRH1に同時に2個の残基を元のマウス残基に一致するように変化させて戻し、発現させ、Forte速度分析のためにこれらの変化したFabを精製した。
【0226】
CDRH1(SR079)に2つの変化を同時に有する1個のFabは(表2)、SR066の結合速度が著しく改善された(数値データは表3にまとめて示す)。実際に、SR079 Fabは最適化した参照(マウス)Fab SR038と同等の解離速度(off−rate)を有するように見えた。
【表2】
【表3】
【0227】
Humaneered(商標)Fab SR066、#1−2、#3−2および#4−2は、CDRH2中に「Asn−Gly」(「NG」)アミノ酸配列を含有しており、これは元のマウス抗体由来であった。この配列は、生成に望ましくない特性である脱アミド化を受ける可能性があることが知られている。したがって、Humaneered(商標)SR066 Fabの親和性を改善するように努力すると同時に、2種類の突然変異誘発ライブラリーをSR066について構築し、「N」または「G」を元のアミノ酸以外の可能性のあるアミノ酸全てによって置換した(例えば、「N除去ライブラリー」では、「N」は「N」以外の全アミノ酸で置換した)。次に、「NG」配列はもう有さないが、SR066の結合レベルをまだ保持している(最適化した参照Fab SR038よりは少ない)クローンを同定するために、このライブラリーからのFab含有細胞上清をELISAによってスクリーニングした。「N除去ライブラリー」は、SR066と同程度に結合するFabを生じないが、「G除去ライブラリー」は、「G」位置にいくつかの異なる置換を有し、十分な結合レベルを備えたFabを生じた。そのうち、「NG」から「NE」、「NA」および「NM」への変化を有するFabを精製およびForte速度分析のために選択し、親Fab SR066と類似の反応速度を有することを見出した。
【0228】
親和性を改善するための7472個のヒトIgGの遺伝子操作
Vk操作
完全なヒトIgGを作り出すために、SR079のVh配列(親和性を改善したSR066の改変変種)のCDRH2までを増幅し、ブリッジPCRによってCDRH2からFR4のほとんどの「G除去ライブラリー」クローンの配列(CDRH2中に「NE」を含有する)に付着させた(stitch)。このVh配列をpRS5a−hIgG1LALA+ KpnI(Vhのアミノ酸配列に影響を及ぼすことなく、FR4にKpnI部位を添加するために改変されたサイレントIgG1クローニングベクター)のNruI(5’)およびKpnI(3’)にクローニングし、pSR074を作り出した。SR066からのVk(FR1からFR4を通る経路まで)を増幅して、pRS5a−hカッパのAgeIおよびBsiWIにクローニングし、pSR072を作り出した。これらのベクターは配列決定によって確認し、293 Freestyle細胞に同時形質移入した。このIgG(「7472」と称する)を抗体含有細胞培地から精製した。驚くべきことに、抗体7472は、Biacore分析では親マウス抗体LFU720よりも結合速度(on−rate)が著しく遅かった(示さず)。各ヒト鎖を相補的なマウス鎖で交換することによって、この結合速度(on−rate)の不足は、ヒト軽鎖に関する問題によることが決定された。親和性を回復させるためにpSR072ヒト軽鎖に改変を起こさせ(表4)、軽鎖の最初の4残基をマウス配列に戻すように変換し、CDR1の後半の残基をマウスに戻すように変換した。この軽鎖を前述のようにpRS5a−hカッパにクローニングして、pJG10およびpJG01を作製し、pSR074(Hcベクター)およびpJG10(Lcベクター)またはpJG01(Lcベクター)を同時形質移入することによって完全なIgGを作製した。総合すると、Biacoreによって測定されたように、これらの変化は部分的にHumaneered(商標)抗体の親和性を回復させた。
【表4】
【0229】
表4は、ヒト抗体7472、親マウス抗体LFU720の軽鎖の一部およびpJG10によってコードされた軽鎖のアラインメントを示している。この部分はpJG01によってコードされた軽鎖と同一である。軽鎖ベクターは、最終的なHumaneered(商標)抗体NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT−211の発現のために使用した。
【0230】
CDRH3の親和性成熟
軽鎖の改変と並行して、pSR074重鎖のCDR3の親和性成熟のためにFabライブラリーを構築した。このライブラリーでは、CDR3残基は、元の残基を除くその他の全アミノ酸で1つずつ置換した。このライブラリーはCLBAによってスクリーニングし、結合物はELISAによって確認し、得られたFabは精製して、親ヒトFabと比較して結合速度が改善したかどうかを決定するためにバイオレイヤーインターフェロメトリによって試験した。
【0231】
親和性が著しく改善されたCDRH3置換、AからNへの変化を同定した(表5)。この変化はその後、pSR074重鎖IgG発現プラスミドの場合にも行い、この新たなコンストラクトをpJG04と呼んだ。最終的なHumaneered(商標)抗体NVP−LGT209(LGT209)は、pJG04(Hc)およびpJG10を同時形質移入し、その後精製することによって作製した。最終的なHumaneered(商標)抗体NVP−LGT210(LGT210)は、pJG04(Hc)およびpJG01を同時形質移入し、その後精製することによって作製した。この変化は、抗体NVP−LGT211(LGT211)には導入しなかった。
【表5】
【0232】
表5は、ヒト抗体7472、親マウス抗体LFU720の重鎖CDR3およびpJG04によってコードされた重鎖(最終的なHumaneered(商標)抗体NVP−LGT209およびNVP−LGT210の発現のために使用された重鎖ベクター)のアラインメントを示している。AからNの置換には下線を引いてある。
【0233】
溶液平衡滴定(SET)システムを使用したNVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211の結合速度の分析
SETアッセイを使用して、ヒトPCSK9に対するNVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVP−LGT211抗体の結合親和性は表6に示したように150〜190pMの間であることを測定した。このことは、溶液中における抗体とPCSK9の間の高い親和性相互作用を示唆している。
【表6】
【0234】
ELISAによるNVP−LGT209の抗原特異性の分析
親マウス抗体LFU720の抗原特異性が最終的なHumaneered(商標)IgG、LGT209、LGT210およびLGT211で保持されているかどうかを試験するために、一群のヒトおよびマウス抗原(ならびにヒトPCSK9)に対する抗体の結合をELISAアッセイで試験した。このアッセイの結果(図5A−C)は、LGT209、LGT210およびLGT211が、マウス抗体LFU720と同様にPCSK9に対して高い特異性を保持していることを示している。
【0235】
ELISAにおいてヒトおよびカニクイザルマカクPcsk9タンパク質に結合する抗体
LGT209、LGT210およびLGT211のヒトおよびカニクイザルマカク(cyno)Pcsk9への特異的結合を評価した。このELISAアッセイは、親マウス抗体LFU720のように、Humaneered(商標)抗体LGT209、LGT210およびLGT211が同様の様式でヒトおよびcyno Pcsk9の両方に結合できることを示している(図6A〜C)。
【0236】
バイオレイヤーインターフェロメトリをベースにしたエピトープ競合アッセイ
親マウス抗体NVP−LFU720のエピトープ特異性が最終的なHumaneered(商標)抗体LGT209、LGT210およびLGT211で保持されているかどうかを試験するために、ForteBio Octetシステムを使用した競合アッセイを開発した。Humaneered(商標)抗体LGT209、LGT210およびLGT211は親マウス抗体NVP−LFU720の結合を遮断し、Humaneered(商標)抗体が元のマウス抗体のエピトープ特異性を保持していることを示唆している。抗体の添加の順番を変えると、すなわち、NVP−LFU720を最初に結合させ、次にHumaneered(商標)抗体を結合させても類似の結果が得られた。
【0237】
Humaneered(商標)抗体LGT209、LGT210およびLGT211のアミノ酸配列ならびにヒト生殖系列配列に対するパーセント同一性
最終的なHumaneered(商標)IgG LGT209、LGT210およびLGT211の可変領域アミノ酸配列をそれぞれ、図2〜4に示す。CDRは下線を引いた太字である。ヌクレオチド配列も配列リストに含める。
【0238】
ヒト生殖系列配列に対する抗体LGT209、LGT210およびLGT211のパーセント同一性は、単一のヒト生殖系列配列(それぞれ、Vh1 1−02およびVk3 A27、表7)に対してVhおよびVkアミノ酸配列をアラインメントさせることによって測定した。CDRH3およびCDRL3の残基は、各鎖の計算から除外した。
【表7】
【0239】
humaneered抗体の機能的特徴に関する追加情報は、図8〜14の説明に記載されている。
【実施例3】
【0240】
実施例3:PCSK9アンタゴニスト抗体NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVPLGT211の突然変異分析
PCSK9アンタゴニスト抗体NVP−LGT209、NVP−LGT210およびNVPLGT211の変異体のPCSK9に結合する能力について評価した。結果を以下にまとめて示す。
【0241】
重鎖CDR1、
【表8】
(配列番号66)に関して、元のマウス残基(太字)を含有するクローンのみがマウスAbの結合速度を保持している(バイオレイヤーインターフェロメトリ分析によって測定された通り)。したがって、重鎖CDR1内のこれらの残基は結合において役割を果たしている。
【0242】
重鎖CDR2、
【表9】
(配列番号74)に関して、太字の残基は、元の(マウス)残基または各位置において最も近いヒト生殖系列配列の対応する残基のいずれかをコードするライブラリーから取り出した抗体結合体中では変化しなかった(ELISAによってスクリーニングした)。したがって、太字の残基は結合において役割を果たしている。保存的置換は、下線を引いたGlu残基によって示された位置では耐性があり、例えば、この位置は、ELISAによって測定され、バイオレイヤーインターフェロメトリによって確認されたように、A、EまたはDであってもよい。
【0243】
重鎖CDR3、
【表10】
(配列番号75)に関して、太字の残基は、各位置において可能性のある全アミノ酸をコードする(元のアミノ酸は除く)親和性成熟ライブラリーから取り出したクローンでは変化しなかった。したがって、太字の残基は結合において役割を果たしている。保存的置換は、下線を引いたAlaまたはAsn残基によって示された位置では耐性があり、例えば、この位置は、Biacoreによって測定されたように、A、NまたはQであってもよい。保存的置換は、下線を引いたTry残基によって示された位置では耐性があり、例えば、この位置は、Biacoreによって測定されたように、A、F、S、VまたはYであってもよい。
【0244】
軽鎖FR1に関して、
【表11】
(配列番号76)、保存的置換は、Biocoreによって測定されたように、下線を引いた位置1および4において耐性がある。例えば、位置1のアミノ酸はA、D、E、NまたはQであってもよい。位置4のアミノ酸はV、I、LまたはMであってもよい。QIVLとしての位置1〜4(配列番号69)(マウス親LFU720、LGT209およびLGT211Vkにおけるように)は、Biocoreによって測定されたように、EIVMとして位置1〜4(配列番号67)にわたって結合を改善した(LGT210Vkにおけるように)。
【0245】
軽鎖CDR1、
【表12】
(配列番号71)に関して、太字の残基の空間的配置は、Lc CDR1のこの位置に2つの他のアミノ酸を有するヒトクローンの親和性が損なわれたように、結合について影響を及ぼした。したがって、太字の残基は結合において役割を果たしている。
【0246】
軽鎖CDR3、
【表13】
(配列番号26)に関して、これらの位置のヒト生殖系列への変化は、ELISAによって測定されたように、耐性はない。したがって、太字の残基は結合において役割を果たしている。
【0247】
本明細書で記載された実施例および実施形態は、例示した目的のためだけのものであって、それらに関する様々な変更または変化は当業者に示唆されており、本出願の精神および範囲内ならびに特許請求の範囲内に含まれるものである。本明細書で引用した全出版物、特許、特許出願および配列受入記録は、全目的のために全体を参考として本明細書に組み込む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に結合する抗体であって、
a)PCSK9が低密度リポタンパク質受容体(LDLR)に結合するのを遮断せず、
b)PCSK9が媒介するLDLRの分解を阻害する、
抗体。
【請求項2】
ヒトPCSK9の680〜692位の残基内の少なくとも1個のアミノ酸に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
平衡解離定数(KD)が約500pM以下でヒトPCSK9に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
インビボにおける半減期が少なくとも7日である、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
(a)ヒト重鎖Vセグメント、重鎖相補性決定領域3(CDR3)および重鎖フレームワーク領域4(FR4)を含む重鎖可変領域と、
(b)ヒト軽鎖Vセグメント、軽鎖CDR3、および軽鎖FR4を含む軽鎖可変領域と
を含み、
i)重鎖CDR3がアミノ酸配列SYYYY(A/N)MD(A/F/S/V/Y)(配列番号14)を含み、
ii)軽鎖CDR3可変領域がアミノ酸配列LQWSSDPPT(配列番号26)を含む、
請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
重鎖Vセグメントが配列番号28と少なくとも85%の配列同一性を有し、軽鎖Vセグメントが配列番号31と少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
重鎖Vセグメントが配列番号27と少なくとも85%の配列同一性を有し、軽鎖Vセグメントが配列番号29および配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸と少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項5に記載の抗体。
【請求項8】
i)重鎖CDR3が、配列番号12および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
ii)軽鎖CDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む、
請求項5に記載の抗体。
【請求項9】
重鎖FR4がヒト生殖系列FR4である、請求項5に記載の抗体。
【請求項10】
重鎖FR4が配列番号35である、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
軽鎖FR4がヒト生殖系列FR4である、請求項5に記載の抗体。
【請求項12】
軽鎖FR4が配列番号39である、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
重鎖Vセグメントおよび軽鎖Vセグメントがそれぞれ相補性決定領域1(CDR1)および相補性決定領域2(CDR2)を含み、
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号8のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号11のアミノ酸配列を含み、
iii)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号22のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号25のアミノ酸配列を含む、
請求項5に記載の抗体。
【請求項14】
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号7を含み、
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号10を含み、
iii)重鎖CDR3が、配列番号12および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号21を含み、
v)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号24を含み、
vi)軽鎖CDR3が配列番号26を含む、
請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
重鎖可変領域が配列番号40の可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域が配列番号41の可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項5に記載の抗体。
【請求項16】
重鎖可変領域が配列番号40の可変領域と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域が配列番号41の可変領域と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項5に記載の抗体。
【請求項17】
配列番号40を含む重鎖および配列番号41を含む軽鎖を含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項18】
重鎖可変領域が、配列番号2および配列番号4からなる群から選択される可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域が、配列番号16および配列番号18からなる群から選択される可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項5に記載の抗体。
【請求項19】
重鎖可変領域が、配列番号2および配列番号4からなる群から選択される可変領域と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域が、配列番号16および配列番号18からなる群から選択される可変領域と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項5に記載の抗体。
【請求項20】
重鎖可変領域が、配列番号2および配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号16および配列番号18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項21】
FAb’断片である、請求項1に記載の抗体。
【請求項22】
IgGである、請求項1に記載の抗体。
【請求項23】
1本鎖抗体(scFv)である、請求項1に記載の抗体。
【請求項24】
ヒト定常領域を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項25】
担体タンパク質に連結している、請求項1に記載の抗体。
【請求項26】
PEG化されている、請求項1に記載の抗体。
【請求項27】
PCSK9に特異的に結合する抗体であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域がそれぞれ以下の3種類の相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2およびCDR3を含み、
i)重鎖可変領域のCDR1が配列番号8のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖可変領域のCDR2が配列番号11のアミノ酸配列を含み、
iii)重鎖可変領域のCDR3が配列番号14のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖可変領域のCDR1が配列番号22のアミノ酸配列を含み、
v)軽鎖可変領域のCDR2が配列番号25のアミノ酸配列を含み、
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む
抗体。
【請求項28】
i)重鎖可変領域のCDR1が、配列番号6および配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖可変領域のCDR2が、配列番号9および配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
iii)重鎖可変領域のCDR3が、配列番号12および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖可変領域のCDR1が、配列番号20および配列番号21からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
v)軽鎖可変領域のCDR2が、配列番号23および配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む、
請求項27に記載の抗体。
【請求項29】
請求項1に記載の抗体および生理学的に適合した賦形剤を含む組成物。
【請求項30】
個体における低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)レベルを低下させる第2の薬剤をさらに含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
第2の薬剤がスタチンである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
スタチンが、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンからなる群から選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
第2の薬剤が、フィブラート、ナイアシンおよびそれらの類似体、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸捕捉剤、甲状腺ホルモン様物質、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤、PCSK9を標的とする阻害性核酸およびapoB100を標的とする阻害性核酸からなる群から選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項34】
必要とする個体におけるLDL−Cの低下方法であって、請求項1に記載の抗体の治療有効量を個体に投与し、それによって個体のLDL−Cを低下させることを含む方法。
【請求項35】
個体がスタチン治療に低応答性または耐性である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
個体がスタチン治療に不耐性である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
個体のベースラインLDL−Cレベルが少なくとも約100mg/dLである、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
個体が家族性高コレステロール血症を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
全コレステロールがLDL−Cと共に低下する、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
個体がトリグリセリド血症を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
個体が機能獲得型PCSK9遺伝子変異を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
個体が薬剤誘導性脂質代謝異常を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
LDL−Cの低下に有効な第2の薬剤の治療有効量を個体に投与することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
第2の薬剤がスタチンである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
スタチンが、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンからなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
第2の薬剤が、フィブラート、ナイアシンおよびそれらの類似体、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸捕捉剤、甲状腺ホルモン様物質、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤、PCSK9を標的とする阻害性核酸およびapoB100を標的とする阻害性核酸からなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
抗体および第2の薬剤を混合物として同時投与する、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
抗体および第2の薬剤を別々に同時投与する、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
抗体を静脈内投与する、請求項34に記載の方法。
【請求項50】
抗体を皮下投与する、請求項34に記載の方法。
【請求項1】
プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に結合する抗体であって、
a)PCSK9が低密度リポタンパク質受容体(LDLR)に結合するのを遮断せず、
b)PCSK9が媒介するLDLRの分解を阻害する、
抗体。
【請求項2】
ヒトPCSK9の680〜692位の残基内の少なくとも1個のアミノ酸に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
平衡解離定数(KD)が約500pM以下でヒトPCSK9に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
インビボにおける半減期が少なくとも7日である、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
(a)ヒト重鎖Vセグメント、重鎖相補性決定領域3(CDR3)および重鎖フレームワーク領域4(FR4)を含む重鎖可変領域と、
(b)ヒト軽鎖Vセグメント、軽鎖CDR3、および軽鎖FR4を含む軽鎖可変領域と
を含み、
i)重鎖CDR3がアミノ酸配列SYYYY(A/N)MD(A/F/S/V/Y)(配列番号14)を含み、
ii)軽鎖CDR3可変領域がアミノ酸配列LQWSSDPPT(配列番号26)を含む、
請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
重鎖Vセグメントが配列番号28と少なくとも85%の配列同一性を有し、軽鎖Vセグメントが配列番号31と少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
重鎖Vセグメントが配列番号27と少なくとも85%の配列同一性を有し、軽鎖Vセグメントが配列番号29および配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸と少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項5に記載の抗体。
【請求項8】
i)重鎖CDR3が、配列番号12および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
ii)軽鎖CDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む、
請求項5に記載の抗体。
【請求項9】
重鎖FR4がヒト生殖系列FR4である、請求項5に記載の抗体。
【請求項10】
重鎖FR4が配列番号35である、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
軽鎖FR4がヒト生殖系列FR4である、請求項5に記載の抗体。
【請求項12】
軽鎖FR4が配列番号39である、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
重鎖Vセグメントおよび軽鎖Vセグメントがそれぞれ相補性決定領域1(CDR1)および相補性決定領域2(CDR2)を含み、
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号8のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号11のアミノ酸配列を含み、
iii)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号22のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号25のアミノ酸配列を含む、
請求項5に記載の抗体。
【請求項14】
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号7を含み、
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号10を含み、
iii)重鎖CDR3が、配列番号12および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号21を含み、
v)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号24を含み、
vi)軽鎖CDR3が配列番号26を含む、
請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
重鎖可変領域が配列番号40の可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域が配列番号41の可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項5に記載の抗体。
【請求項16】
重鎖可変領域が配列番号40の可変領域と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域が配列番号41の可変領域と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項5に記載の抗体。
【請求項17】
配列番号40を含む重鎖および配列番号41を含む軽鎖を含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項18】
重鎖可変領域が、配列番号2および配列番号4からなる群から選択される可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域が、配列番号16および配列番号18からなる群から選択される可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項5に記載の抗体。
【請求項19】
重鎖可変領域が、配列番号2および配列番号4からなる群から選択される可変領域と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域が、配列番号16および配列番号18からなる群から選択される可変領域と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項5に記載の抗体。
【請求項20】
重鎖可変領域が、配列番号2および配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号16および配列番号18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項21】
FAb’断片である、請求項1に記載の抗体。
【請求項22】
IgGである、請求項1に記載の抗体。
【請求項23】
1本鎖抗体(scFv)である、請求項1に記載の抗体。
【請求項24】
ヒト定常領域を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項25】
担体タンパク質に連結している、請求項1に記載の抗体。
【請求項26】
PEG化されている、請求項1に記載の抗体。
【請求項27】
PCSK9に特異的に結合する抗体であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域がそれぞれ以下の3種類の相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2およびCDR3を含み、
i)重鎖可変領域のCDR1が配列番号8のアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖可変領域のCDR2が配列番号11のアミノ酸配列を含み、
iii)重鎖可変領域のCDR3が配列番号14のアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖可変領域のCDR1が配列番号22のアミノ酸配列を含み、
v)軽鎖可変領域のCDR2が配列番号25のアミノ酸配列を含み、
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む
抗体。
【請求項28】
i)重鎖可変領域のCDR1が、配列番号6および配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
ii)重鎖可変領域のCDR2が、配列番号9および配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
iii)重鎖可変領域のCDR3が、配列番号12および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
iv)軽鎖可変領域のCDR1が、配列番号20および配列番号21からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
v)軽鎖可変領域のCDR2が、配列番号23および配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号26のアミノ酸配列を含む、
請求項27に記載の抗体。
【請求項29】
請求項1に記載の抗体および生理学的に適合した賦形剤を含む組成物。
【請求項30】
個体における低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)レベルを低下させる第2の薬剤をさらに含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
第2の薬剤がスタチンである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
スタチンが、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンからなる群から選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
第2の薬剤が、フィブラート、ナイアシンおよびそれらの類似体、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸捕捉剤、甲状腺ホルモン様物質、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤、PCSK9を標的とする阻害性核酸およびapoB100を標的とする阻害性核酸からなる群から選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項34】
必要とする個体におけるLDL−Cの低下方法であって、請求項1に記載の抗体の治療有効量を個体に投与し、それによって個体のLDL−Cを低下させることを含む方法。
【請求項35】
個体がスタチン治療に低応答性または耐性である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
個体がスタチン治療に不耐性である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
個体のベースラインLDL−Cレベルが少なくとも約100mg/dLである、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
個体が家族性高コレステロール血症を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
全コレステロールがLDL−Cと共に低下する、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
個体がトリグリセリド血症を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
個体が機能獲得型PCSK9遺伝子変異を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
個体が薬剤誘導性脂質代謝異常を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
LDL−Cの低下に有効な第2の薬剤の治療有効量を個体に投与することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
第2の薬剤がスタチンである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
スタチンが、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンからなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
第2の薬剤が、フィブラート、ナイアシンおよびそれらの類似体、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸捕捉剤、甲状腺ホルモン様物質、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤、ジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤、PCSK9を標的とする阻害性核酸およびapoB100を標的とする阻害性核酸からなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
抗体および第2の薬剤を混合物として同時投与する、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
抗体および第2の薬剤を別々に同時投与する、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
抗体を静脈内投与する、請求項34に記載の方法。
【請求項50】
抗体を皮下投与する、請求項34に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2013−513620(P2013−513620A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543320(P2012−543320)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/059959
【国際公開番号】WO2011/072263
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/059959
【国際公開番号】WO2011/072263
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
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