説明

PCV−DNAワクチン

【課題】PCVからの遺伝子、特にPCV−2のORF1、PCV−2のORF2、PCV−1のORF1およびPCV−1のORF2から成る群から選択される遺伝子をコ−ドし、発現するプラスミドと、免疫応答を増加させる要素とから成る免疫原製剤およびワクチンの提供。
【解決手段】該要素は、遺伝子の発現産物に応答するカルボマ−、ブタサイトカイン、例えばGM−CSF、式(I)のカチオン脂質にすることができる(R1は12〜18の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖脂肪族基、R2は2〜3の炭素原子を有する他の脂肪族基、Xは水酸基またはアミン基)。カチオン脂質はDMRIEでよく、DOPEと組み合わせることができる。式(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PMWS(ブタ多臓器消耗症候群、porcine multisystemicwasting syndromまたは離乳後多臓器消耗症候群)の原因であるブタシルコウイルス(porcine circovirus、PCV)の免疫原をコ−ドし、発現するプラスミド構造物と、ワクチン接種法方法と、DNAワクチンと、このワクチン製剤の製造方法とに関するものである。
なお、本明細書で引用した全ての文献の内容は本明細書の一部をなす。
【背景技術】
【0002】
PCVは最初にブタ腎臓細胞株PK/15の非細胞変性汚染物として検出された。このウィルスはニワトリ貧血ウィルス(Chicken Anaemia Virus、CAV)およびPBFDVウィルス(Pscittacine Beak Feather Disease Virus)とともにCircoviridaeに分類された。これらに一般的な特性は1.76〜2.31キロ塩基(kb)のゲノムを含む円形の一重鎖DNAの形をした小さいエンべロップのないウィルス(15〜24ナノメ−トル)である点である。当初、これらのゲノムは約30kDaのポリペプチドをコ−ドすると思われた(非特許文献1)が、最近の研究では、多くの複雑な転写をすることが示されている(非特許文献2)。さらに、これら3つの化学種の間のヌクレオチド配列または抗原決定基に有意な共通性は認められていない。
【0003】
PK/15細胞に由来するPCVは病原性でないと考えられている。その配列は非特許文献3で公知である。このPCVの菌株が病原があり、PMWS症候群と関連するとしたのはほんの最近である (非特許文献4)(非特許文献5)。Nayar et alはPCR法を用いてPMWS症候群のブタのPCV DNAを検出している。
【0004】
PMWS症候群の徴候を示すブタで見出されたサーコウイルスに対するモノクロ−ナル抗体およびポリクロ−ナル抗体によってこれらのサーコウイルスとPK−15細胞の栽培物から分離されたブタサーコウイルスとが相違することがわかった(非特許文献6)。
【0005】
カナダ、米国およびフランスで検出されたPMWS症候群は体重の漸進的減少と、頻呼吸、呼吸困難および黄疽のような臨床的症状の現れによって特徴付けられる。病理学的にはリンパ球または肉芽腫性の溶浸、リンパ節症、肝炎、簡単にはリンパ球または肉芽腫性の腎炎から明らかになる(非特許文献7〜10)。
【0006】
北アメリカとヨ−ロッパで得られるサーコウイルスは非常に密接に関連し、ヌクレオチド配列の96%が一致するが、これらのサーコウイルスのヌクレオチド配列とPK−15細胞から分離されたブタのサーコウイルスと比較するとその一致度は80%以下である。そのため、二つのウイルスサブグループが提案され、PK−15細胞から分離されるサーコウイルスをPCV−1とし、PMWS症候群に関連するサーコウイルスをPCV−2とされた (非特許文献11)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Todd et al., Arch. Virol., 1991,117: 129−135
【非特許文献2】Meehan B. M. et al., J. Gen. Virol., 1997,78: 221−227
【非特許文献3】B. M. Meehan et al., J. Gen. Virol. 1997 (78) 221−227
【非特許文献4】G. P. S. Nayar et al., Can.Vet. J., 1997,38: 385−387
【非特許文献5】Clark E. G., Proc. Am. Assoc. Swine Prac. 1997: 499−501
【非特許文献6】Allan G. M. et al. Vet Microbiol.,1999,66: 115−123
【非特許文献7】Clark E. G., Proc. Am. Assoc. Swine Prac. 1997: 499−501;
【非特許文献8】La Semaine Veinaire No. 26, upplement to La Semaine Veinaire 1996 (834);
【非特許文献9】LaSemaine Veinaire 1997 (857): 54;
【非特許文献10】G. P. S. Nayer et al., Can.Vet. J., 1997,38: 385−387
【非特許文献11】Meehan B. M. et al., J. Gen. Virol., 1998,79: 2171−2179; WO−A−9918214
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はPCV−2免疫原をコ−ドし、発現するプラスミド構造物がブタのPMWS症候群に対する免疫力があることを見い出した。
PCV−2免疫原はPCV−1免疫原と一緒にしてPCV−2に対して動物を免疫するために使うことができる。
【0009】
好しくはないが、PCV−1免疫原単独で用いることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の対象は、PCV−1またはPCV−2免疫原、特にPCV−1の転写解読枠(ORF)1および/または2と、PVC−2のORF1および/または2とをコ−ドし、発現するプラスミド構造物にある。
ORFは転写解読枠(open reading frame)を意味する。
【0011】
本発明が上記と均等なヌクレオチド配列をコ−ドし、発現するプラスミド、すなわち、対応する遺伝子またはこの遺伝子でコー度されるポリペプチドの機能性や株特異性(タイプ1型の菌株およびタイプ2型の菌株)を変えない配列を含むということは言うまでもない。コ−ドの縮重によって違っている配列ももちろん含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】プラスミドpJP109の図
【図2】プラスミドpJP111の図
【図3】プラスミドpJP120の図
【図4】プラスミドpJP121の図
【図5】プラスミドpJP058の図
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例で使われるPCV−2配列はMeehan達から供給された(菌株Imp. 1010、ORF1ヌクレオチド398−1342、ORF2ヌクレオチド1381−314、これらはそれぞれ特許文献1(1998年9月25日出願の米国特許第09/161092号)に記載のORF4およびORF13に対応し、特許文献2(国際特許第WO−A−9918214号公報)のCOL4およびCOL13に対応する)。
【特許文献1】米国特許出願第09/161092号(1998年9月25日出願)
【特許文献2】国際特許第WO−A−9918214号公報
【0014】
他のPCV−2菌株およびそれらの配列は特許文献2(国際特許第WO−A−9918214号公報)に開示されており、ImplO08、Imp999、Imp1011−48285およびImplO11−48121とよばれている(非特許文献12(GenBank AF027217)および非特許文献13のGenBankAF086834、AF086835およびAF086836、他の均等なORF配列も入手可能。
【非特許文献12】A. L. Hamel et al. J. Virol. June 1998, vol 72,6: 5262−5267
【非特許文献13】I. orozov et al. J. Clinical Microb. Sept. 1998 vol. 36,9: 2535−2541
【0015】
本発明はさらに、厳密な条件で考えた時に上記遺伝子のヌクレオチド配列とハイブリッド化が可能な均等な配列をも含むものである。こうした均等な配列としては完全配列の免疫原性を保持した遺伝子断片が挙げられる。
【0016】
タイプ1および2の全ゲノムの相同性は約75%である。ORF1では約66%、ORF2では約86%である。これに対してゲノム間およびタイプ2内のORF間の相同性は一般に95%以上である。
【0017】
さらに、本発明の均等配列としては、ORF1の場合、菌株ImplOl0の88%以上、特に90%以上、好ましくは92%または95%以上の相同性を有するか、ORF2の場合には菌株ImplO10の80%以上、特に85%以上、好ましくは90%または95%以上の相同性を有する配列が挙げられる。
【0018】
Meehan 1998によるORF1およびORF2はそれぞれ37.7kDおよび27.8kDの予測分子量を有する蛋白をコ−ドする。ORF3とORF4(Meehan et al. 1998はWO−A−9918214のORF7とORF10にそれぞれ対応する)はそれぞれ11.9および6.5kDの予測分子量を有する蛋白をコ−ドする。これらのORFsの配列はGenbank からAF 055392で入手可能である。これらは本発明のプラスミドに取り入れることができ、単独または組み合わせて、例えばORF1および/またはORF2と一緒に使うことができる。
【0019】
特許文献1(米国特許出願第09/161092号(1998年9月25日出願)(WO−A−9918214)のCOLs 1−3および5,6,8−9,11−12)に開示されている他のORFs 1−3および5,6,8−9,11−12も本明細書に記載の条件下で使うことができ、上記定義のORF 1および2と組み合わせることができる。
【0020】
種々のPCV−2菌株から来るORF、特にORF 2からの均等な配列を使用することができる。相同物とは菌株1010の対応ORFと相同性を有するORF2および/またはORF1を有するPCVから来る配列を意味する。Meehanに従うORF3では菌株ImplOlOのORF3と80%以上、特に85%以上、好ましくは90%または95%以上の相同性といえる。Meehan 1998のORF4の場合には、菌株Impl010のORF4と86%以上、特に90%以上、好ましくは95%以上の相同性といえる。
【0021】
例えば特許文献1(米国特許出願第09/161092号(1998年9月25日出願)(WO−A−9918214)に開示のゲノムのヌクレオチド配列から標準のソフトウェア(例えばMacVectort)を用いてORFを決定することはル−チンの技術である。また、菌株1010のゲノムを整合させ、菌株1010のORFと比較して他の菌株(例えばWO−A−99 18214に開示のもの)のゲノムのORFを決定することは当業者が容易にできることである。整合させ、ソフトウェアを使用することで過度の実験なしに均等なORFに直接接近できる。
【0022】
「プラスミド」とは、生体内でポリヌクレオチド配列の形で発現すべきPCV配列とその発現に必要な要素とを含む任意のDNA転写単位を含む用語である。円形プラスミド、ス−パ−コイル、その他が好ましい。直鎖形状のプラスミドも本発明の範囲に含まれる。
【0023】
本発明の対象はプラスミド、特にpJP109(PCV−2(図1)のORF2遺伝子を含む)と、pJP111(PCV−2(図2)のORF1遺伝子を含む)と、pJP120(PCV−1(図3)のORF2遺伝子を含む)と、pJP121(PCV−1(図4)のORF1遺伝子を含む)とよばれるプラスミドにある。
【0024】
各プラスミドは、宿主細胞において、その対照の下に挿入された遺伝子の発現を確実にすることができるプロモ−タを含み、それは一般に強い真核性のプロモ−タ、特にヒトまたはネズミ起源のメガロウィルス早期プロモ−タCMV−IEまたはモルモットのような他の動物起源のものにすることができる。より一般には、プロモ−タはウイルス性細胞起源のものである。CMV−IE以外のウイルスのプロモ−タとしてはSV40ウイルス早期または後期プロモ−タまたはRous SarcomaウィルスLTRプロモ−タが挙げられる。また、遺伝子(例えば遺伝子へのプロモ−タ特性)が誘導されるウィルスからのプロモ−タであってもよい。細胞のプロモ−タはデスミン・プロモ−タまたはアクチン・プロモ−タのようなサイトスケルトン遺伝子のプロモ−タでもよい。いくつかの遺伝子が同じプラスミドに存在する場合にはそれらは同じ転写単位または二つの異なる単位において提供されることができる。
【0025】
また、プラスミドは例えばイントロンタイプのスタビライジング配列、好ましくはウサギp−グロビン遺伝子のイントロンIIのような他の転写制御要素 (非特許文献14), 組織プラスミノ−ゲンアクチベ−タ遺伝子でコ−ドされる蛋白質のシグナル配列(tPA; 非特許文献15)、ウシの成長ホルモン(bGH)遺伝子(特許文献3)またはウサギ−グロビン遺伝子のポリアデニル酸化シグナル(polyA)を含むこともできる。
【非特許文献14】van Ooyen et al. Science, 1979,206: 337−344
【非特許文献15】Montgomery et al. Cell. Mol. Biol. 1997,43: 285−292
【特許文献3】米国特許第US−A−5122458号明細書
【0026】
本発明の対象は、PCV−1またはPCV−2免疫原の一つ、好ましくは上記ORFsの一つをコ−ドし、発現する少なくとも一つの本発明のプラスミドと、獣医学上許容されるビヒクルまたは希釈剤とを含み、必要に応じてさらに獣医学上許容されるアジュバントとを含む免疫原性製剤およびDNAワクチンにある。
【0027】
特に、本発明の対象はPCV−1またはPCV−2免疫原の一つをコ−ドし、発現する少なくとも一つのプラスミドを含み、さらに、組成物中にアジュバント、特に下記式の第四アンモニウム塩を含むカチオン性脂質を含む免疫原性製剤およびワクチンにある。
【0028】
【化2】

【0029】
(ここで、
R1は12〜18の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖脂肪族基を表し、
R2は2〜3の炭素原子を有する他の脂肪族基を表し、
Xは水酸基またはアミン基を表す)
【0030】
好ましくはDMRIE(N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル1-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンアンモニウム、WO−A−9634109)であり、中性脂質、例えばDOPE (ジオレイルホスファチジルエタノールアミン)と組み合わされてDMRIE−DOPEの形になるのが好ましい。
【0031】
このアジュバントとのプラスミド混合物は使用の直前に作るのが好ましく、複合体ができるまで得られた混合物を動物へ投与する前に10〜60分間、特に30分間放置しておくのが好ましい。
DOPEが存在する場合のDMRIE:DOPEのモル比は95:5〜5:95、特に1:1にするのが好ましい。プラスミド:DMRIEまたはDMRIE−DOPEアジュバントの重量比は50:1〜1:10、特に10:1〜の1:5、好ましくは1:1〜1:2にする。
【0032】
本発明の他の有利な型式では、アジュバントとしてアクリルまたはメタアクリル酸のポリマーおよび無水マレイン酸やアルケニル誘導体とのコポリマーから選択されるアジュバント化合物を用いることができる。アクリルまたはメタアクリル酸と砂糖のポリアルケニルエ−テルまたは多価アルコ−ルとの架橋したポリマ−が特に好ましい。これらの化合物はカルボマ−(Pharmeuropa vol 8, No 2, 1996年6月)の用語で公知である。当業者は特許文献4も参照できる。
【特許文献4】米国特許第US−A−2909462号明細書
【0033】
この特許にはポリヒドロキシル化された化合物と架橋されたアクリル重合体が記載されている(上記は引用したものとする)。このアクリル重合体は少なくとも3つ、好ましくは8以下のヒドロキシル基を有し、少なくとも3つのヒドロキシルの水素原子は少なくとも2つの炭素原子を有する不飽和脂肪族基で置換できる。好ましい基は2〜4つの炭素原子を含むもの、例えばビニル、アリルおよび他のエチレン性不飽和基である。
【0034】
不飽和基自身が他の置換基(例えばメチル)を含むことができる。カルボポル(Carbopol)の名称でGFグッドリッチ(オハイオ、USA)から市販の製品が特に適切である。これはアリルサッカロ−スまたはアリルペンタエリスリト−ルと架橋されている。これらの中では特にカルボポル(Carbopol、登録商標) 974P、934Pおよび971Pが挙げられる。
【0035】
無水マレイン酸とアルケニル誘導体とのコポリマ−としてはEMAs(登録商標、モンサント)が好ましい。これは直鎖または架橋、例えばジビニ−ルエ−テルと架橋した無水マレイン酸とエチレンとのコポリマ−ある。この点に関しては非特許文献16(引用したものとする)を参照できる。構造上の観点から、アクリルまたはメタアクリル酸のポリマ−およびEMA (登録商標)は下記の式の基礎単位を有するのが好ましい:
【非特許文献16】J. Fields et al. Nature, 186:778−780,4 June 1960
【0036】
【化3】

【0037】
(ここで、R1とR2はHまたはCH3−を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、x=0または1、好ましくはx=1であり、y=1または2で、x+y=2)
EMAs(登録商標)ではx=0、y=2であり、カルボマーではx=y=1である。
【0038】
水にこのポリマ−を溶解すると酸性溶液になるので、好ましくは、実際のワクチンが取り入れられるアジュバント溶液を与えるために、生理学的なpHに中和する。ポリマ−のカルボキシル基は部分的にCOO−形になっている。本発明のアジュバント溶液、特にカルボマ−の溶液では、好ましくは塩化ナトリウム存在下で蒸留水に溶かす。得られる溶液は酸性pHである。
この原液に必要な量の水を加えて所望の最終濃度まで薄めてアジュバントの溶液を調製するのが好ましい。または、好ましくは生理的食塩水、好ましくはNaCl を添加(9g NaC 9g/1)した生理的食塩水とNaOHで中和(pH 7.3〜7.4)する。生理学的なpHのこの溶液は凍結乾燥するか、液状で凍った状態で保存され、プラスミドと混合するためにそのままに扱われる。最終的なワクチン組成物のポリマ−濃度は0.01%〜2% w/v、特に0.06〜1% w/v、好ましくは0.1〜0.6% w/vである。
【0039】
本発明の一つの実施例の免疫原またはワクチン製剤は、PCV−2ORF1およびORF2をコ−ドし、発現するプラスミドのプラスミドまたは混合物から成る。
本発明はさらに、ブタ・サーコウイルスに対する予防接種と、ブタの他の病原体(特に、PMWS症候群と関連する病原体)に対する予防接種とを結合することを提供する。
例としては以下が挙げられる:仮性狂犬病ウイルス、ブタ・インフルエンザウィルス、PRRS、ブタ・パルボウィルス、豚コレラウイルス、アクチノバチルス プルーポニューモニア(Actinobacilluspleuropneumoniae)。
【0040】
本発明の対象は、少なくとも一つの本発明のプラスミドと、下記の中から選択されるブタ免疫原をコ−ドし、発現する少なくとも一つの他のプラスミドとを含むプラスミド混合物にある:例えば、仮性狂犬病ウイルスのグリコプロテインgBおよびgD、仮性狂犬病ウイルスまたはPRV、ヘムアグルチニン、ブタ・インフルエンザウィルスH1N1、ヘムアグルチニンおよびブタ・インフルエンザウィルスH3N2、ORF5およびLelystadおよびUSA菌株のPRRSウィルス、ブタ・パルボウィルスのVP2蛋白質、E1および豚コレラウイルス(HCV)、apxI、apxIIおよびアクチノバチルス プルーポニューモニア(Actinobacilluspleuropneumoniae)からのapxIII遺伝子のE2蛋白質類のORF3遺伝子のヌクレオプロテインのヌクレオプロテイン(WO−A−9803658のプラスミドを参照)。
【0041】
これらのプラスミド混合物は獣医学上許容されるビヒクルまたは希釈剤に溶かし、必要な場合にはさらに、上記の獣医学上許容されるアジュバントと一緒にして、免疫原製剤または多価DNAワクチンを形成する。これらの製剤または多価ワクチンはカチオン脂質、特に、DMRIEと配合され、さらには中性脂質、DOPEと一緒に用いて、DMRIE−DOPEを形成するのが好ましい。
上記のようにアジュバントと配合した本発明の製剤または一価または多価のDNAワクチンにはブタ起源のサイトカイン、特にブタGM−CSFを補うのが好ましい。このブタGM−CSF(顆粒球マクロファ−ジ−コロニ−形成刺激因子、非特許文献17、18)は製剤中に添加するか、ワクチンまたはブタGM−CSF蛋白質またはブタGM−CSF遺伝子をコ−ドし、発現するプラスミド(非特許文献19)に添加することがきる。
【非特許文献17】Clark S. C. et al. Science 1987,230: 1229
【非特許文献18】Grant S. M. et al. Drugs, 1992,53: 516)
【非特許文献19】Inumaru S. andTakamatsu H. Immunol. Cell. Biol.(1995,73:474−476)
【0042】
ブタGM−CSF遺伝子はPCV免疫原または他のブタ免疫原をコ−ドするものとは異なるプラスミド中に挿入するのが好ましい。ブタGM−CSFをコ−ドし、発現するプラスミドは特にプラスミドpJP058(図5)にすることができる。
【0043】
本発明の免疫原の製剤および一価または多価のDNAワクチンはさらに、少なくとも一つの従来のワクチン(弱毒化、不活化またはサブユニット)または互いに異なるか同一の少なくとも一つのブタ病原体に対する組換え型ワクチン(ウイルス性ベクタ−)と組み合わせることができる。本発明は特に、アジュバントを含む従来のワクチン(弱毒化、不活化またはサブユニット)と組み合わせることができる。不活化またはサブユニットワクチンでは特に、アジュバントとしてのサポニンと混合したアルミナゲルを含むもの、水中油乳濁液の形の配合物が挙げられる。
【0044】
本発明のさらに他の対象は、本発明のサーコウイルスに対してブタの免疫応答を誘発することが可能な免疫化方法にある。その対象はブタに対して特に効果的なワクチン接種法である。この免疫化および予防接種方法は上記の製剤または一価または多価のDNAワクチンを投与することから成る。この免疫化および予防接種方法は上記製剤またはDNAワクチンを一回または連続して投与することから成る。この免疫化方法またはポリヌクレオチド予防接種は上記製剤およびDNAワクチンを従来技術で提案されている種々の投与経路および公知の投与方法、例えば、筋肉内および皮内への注射針を用いた注射、液体ジェット(非特許文献20)や、DNAで被覆された金粒子の投射(非特許文献21)によって、投与できる。
【非特許文献20】Furth et al. AnalyticalBioch., 1992,205: 365−368
【非特許文献21】Tang et al. Nature, 1992,356: 152−154
【0045】
本発明方法は大人のブタだけでなく、若いブタや妊娠した雌ブタにも投与できる。後者の場合には新生児に受身免疫(母性の抗体)を授けることができる。雌ブタには増殖の前に予防接種し、および/または、妊娠前、および/または、妊娠中に予防接種するのが好ましい。
好ましくは妊娠前に少なくとも1回接種し、妊娠中にさらに接種を行う。例えば、妊娠中期(妊娠の6−8週間頃)および/または妊娠後期(妊娠の11−13週間頃)に接種するのが好ましい。従って、有利な飼育は妊娠前の接種と妊娠中のブ−スタ接種である。その後は妊娠前の接種および/または妊娠中および/または妊娠後期に再接種する。子豚(例えば予防注射した雌(例えば上記の接種した雌)から生まれた子豚)は生まれてから数週以内に予防接種する。例えば、生まれてから1週間および/または2週間および/または3週間および/または4週間および/または5週間明細書に接種する。好ましくは子豚に生まれてから1週以内に接種するか、第3週以内(例えば、離乳時)に予防接種する。それから2〜4週間後に子豚にブースター投与をするのが好ましい。
【0046】
本発明のワクチンにおいて使われるDNAの量は約50μg〜約1000μgが好ましく、特に約10μg〜約2000μgが好ましい。当業者は、正確に各免疫化または予防接種プロトコルのために使われるDNAの効果量を定義することができる。
【0047】
投与量容積は0.5〜5mlにすることができ、特に2〜3mlが好ましい。免疫化または予防接種の好ましい方法は筋肉経路で本発明のDNAワクチンを投与する方法である。
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明が下記実施例に限定れるものではない。
【実施例】
【0048】
クロ−ニングORFsで使うPCV−2菌株は、たとえばECACCで寄託された受入れ番号V97100219(Impl008),V97100218(ImplOlO)およびV971G0217(Imp999)(これは1997年10月2日に寄託された)、V98011608(ImplO11'48285)およびV98011609(Imp1011−48121) (これは1998年1月16日に寄託された)菌株である。以下の実施例は菌株Imp1010を使用して作った。当業者は他のPCV−2菌株に適応させることが可能である。
【0049】
実施例1
プラスミドpJP109の構築
EcoRI断片の形でPCV−2ウィルスのゲノムを含むプラスミドpGEM7Z−Impl010 Stoon−EcoRI No.14 (B. Meehan et al. J. Gen. Virol.1998.79 2171−2179)を EcoRIで消化し、アガロ−スゲル電気泳動の後、1768の塩基対(bp)のEcoRIEcoRI断片を分離した。この断片を自己リゲ−トした。PCV−2ウィルス菌株1010−Stoon (B. Meehan et al. J. Gen. Virol. 1998.79.2171−2179のORF2遺伝子、GenBank配列寄託番号AF055392)は、自己リゲ−トしたEcoRI−EcoRI断片から成るひな型を用い、下記オリゴヌクレオチドのPCR法(PCR)法により増殖した:
【0050】
JP779(配列番号 1)(35mer):
5'CATCATCATGTCGACATGACGTATCCAAGGAGGCG3'
JP780(配列番号 2)(36mer):
5'TACTACTACAGATCTTTAGGGTTTAAGTGGGGGGTC3'
【0051】
730bp PCR断片を得る。この断片をSalIおよびBglIIで消化し、アガロ−スゲル電気泳動の後、715bp SalI−BglII制限断片を単離する。この断片はプラスミドpVR1012(Hartikka J. wt al Human Gene Therapy. 1996.7.1205−1217)でリゲ−トされ、予めSalIおよびBglIIで消化して、プラスミドにpJP109(5567pb)(図1)を得る。
【0052】
実施例2
プラスミドpJP111の構築
プラスミドpGem7Z−Impl010−Stoon(Example 1を参照)について PCR法を実行し(B. Meehan et al. J. Gen. Virol. 1998.79.2171−2179)、下記オリゴヌクレオチドを用いた:
【0053】
JP781(配列番号 3)(35mer):
5'CATCATCATGTCGACATGCCCAGCAAGAAGAATGG3'
JP782(配列番号 4)(36mer):
5'TACTACTACAGATCTTCAGTAATTTATTTCATATGG3'
PCV−2ウィルスのORF1遺伝子を含む970bp PCR断片を得た。この断片をSalIおよびBglIIで消化し、アガロ−スゲル電気泳動の後、955bp SalI−BglII制限断片を単離した。この断片をプラスミドpVR1012(実施例1)でリゲ−トして、プラスミド(実施例2)を得た。
【0054】
実施例3
プラスミドpJP120(PCV−1ORF2)の構築
プラスミドpPCVl (B. Meehan et al. J. Gen. Virol. 1997. 78.221−227) についてPCR法を実行し、下記オリゴヌクレオチドを用いた:
【0055】
JP783(配列番号 5)(35mer):
5'CATCATCATGTCGACATGACGTGGCCAAGGAGGCG3'
JP784(配列番号 6)(40mer):
5'TACTACTACAGATCTTTATTTATTTAGAGGGTCTTTTAGG3'
【0056】
PCV−1ウィルスのORF2geneを含む730bpの PCR断片(PK−15菌株、GenBank配列寄託番号U49186)を得る。この断片をSalIおよびBglIIで消化し、アガロ−スゲル電気泳動の後、715bp SalI−BglII制限断片を単離する。この断片をプラスミドpVR1012(実施例1)でリゲ−トしてプラスミドにpJPl20(5565bp)(図3)を得る。
【0057】
実施例4
プラスミドpPCVl(PCV−1 ORF1)の構築
PstI断片の形でPCV1ウイルスゲノムを含むプラスミドpJP121 (B. Meehan et al. J. Gen. Virol. 1997,78,221−227)をPstIで消化し、アガロ−スゲル電気泳動の後、1759塩基対(bp)PstI−PstI断片を分離する。この断片を自己リゲ−トする。PCV−1ウィルス菌株PK−15のORF1遺伝子(E. Meehan et al. J. Gen. Virol. 1997,78,221−227、GenBank配列寄託番号U49186)は、自己リゲ−トされたPst−pst断片から成るひな型を用い、下記オリゴヌクレオチド2からPCR法(PCR)で増殖した:
【0058】
JP785(配列番号 7)(35mer):
5'CATCATCATGTCGACATGCCAAGCAAGAAAAGCGG3'
JP786(配列番号 8)(36mer):
5'TACTACTACAGATCTTCAGTAATTTATTTTATATGG3'
【0059】
PCV−1ウィルス(菌株PK−15)のORF1遺伝子を含む955bp PCR断片を得る。この断片をSalIおよびBglIIで消化し、アガロ−スゲル電気泳動後、946 bp SaiI−BglII制限断片を分離する。この断片をプラスミドpVR1012(実施例1)でリゲ−トし、プラスミドpJP121(5804bp)(図4)を得る。
【0060】
実施例5
プラスミドpJP058(ブタGM−CSF)の構築
頸静脈からEDTAを含んでいる管を通じてブタ血液を集める。単核化した細胞をフィコ−ル勾配の遠心分離で回収し、RPMI 1640培地(Gibco−BRL)でインビトロで培養する。約5μ\ochgの終濃度/培地mlにconcanavaline A(シグマ)を添加して刺激する。72時間刺激した後、リンパ芽球を回収し、細胞の全RNAを抽出キット"MicroScale Total RNA Separator Kit" (Clontech)でこのメーカの推薦方法に従って抽出する。
【0061】
逆転写反応はキット"lst−Strand cDNA Synthesis Kit (Perkin Elmer)」を用いて行い、リンパ芽球から抽出される全RNAに下記オリゴヌクレオチドを用いてPCR法を実行した:
【0062】
RG972(33mer)(配列番号.9):
5'TATGCGGCCGCCACCATGTGGCTGCAGAACCTG3'
RG973(34mer):(配列番号.10)
5'TATGCGGCCGCTACGTATCACTTCTGGGCTGGTT3'
【0063】
約450の塩基対(bp)のPCR断片を得る。この断片をNotIで消化し、アガロ−スゲル電気泳動後、450bp NotI−NotI断片を分離する。この断片を好ましくはNotIでリゲートしたプラスミドpVR1012(実施例1)で消化し、脱ホスホリル化し、プラスミドpJP058(5405bp)(図5)を得る。
【0064】
pGM−CSF遺伝子配列をプラスミドpJP058でクロ−ニングし、検査した結果、GenBankデ−タベ−ス(寄託番号D21074)で入手可能なものと同一であることがわかる。
【0065】
実施例6
ブタ予防接種用精製プラスミドの生産
大腸菌K12バクテリアの(菌株DH10BまたはSCS1)を実施例1〜5のプラスミドpJP109、pJPlll、pJP058、pJP120およびpJP121で変性する。5つのプラスミドから得られる5つの形質転換クロ−ンを+37℃でLuria−Broth (LBの)培地で振盪培養する。培養細菌を対数期の終わりに収穫し、プラスミドをアルカリ溶解技術に従って抽出する。抽出されたプラスミドをSambrook et al. (Molecular Biology: A Laboratory Manual, 2nd Edition, 1989, Cold Spring HarborLaboratory, Cold Spring Harbor, NYにに記載の技術に従って、塩化セシウム勾配で精製する。エチジウムブロミドの最終抽出および絶対エタノ−ル存在下での沈降後に得られる精製されたプラスミドをTE緩衝液、1mMトリス/EDTA、pH 8.0に再懸濁し、lml当たり2mgのプラスミドを含む原液を得る。この原液は−20℃で使用時まで保存する。
【0066】
実施例7
PCV−2ウィルスのORFs 1および2の発現(対照)
対照としてPCV−2 ORF2およびPCV−2 ORF1遺伝子の発現産物をそれぞれプラスミドpJP109およびpJPlllでクロ−ニングする。これらのプラスミドはトランスフェクションキット(Lipofectamine Plus (登録商標)、Gibco−BRL、Catalogue #、10964−013)を用い、メーカ推薦の方法に従ってCHO−K1(中国Hamster Ovary)細胞(ATCC番号CCL−61)に形質移入した。
【0067】
48時間トランスフェクションの後、トランスフェクション細胞を蒸留水に通し、3分間の氷温の95%アセトン溶液で室温で固定した。PCV−2 ORF1蛋白質類(F199 1D3GAおよびF210 7G5GD)およびORF2蛋白質類(F190 4C7CF、F190 2B1BCおよびF1903A8BC)のための5つのモノクロ−ナル抗体特性を最初の抗体として用いた。抗マウス免疫グロブリンG接合体(Cy3でラベル化)を用いて特異的な標識付けをした。APCV−2特異的な蛍光はプラスミドpJP109で形質移入した細胞の3つのPCV−2 ORF2モノクロ−ナルで観測されたが、プラスミドpJPlllで形質移したものでは観測されなかった。これとは対照的にプラスミドpJPlllで形質移入された細胞では二つのPCV−2 ORF1モノクロ−ナルでPCV−2特異的な蛍光が観測され、プラスミドpJP109で形質移入された細胞で観測されなかった。プラスミドpVR1012だけで形質移入したCHO細胞または非形質移入のCHO細胞ではPCV−2モノクロ−ナルでの蛍光は検出されなかった。PCV−2ウィルスのためのポリクロ−ン性の血清特性でも同じ発現結果が得られた。
【0068】
この場合、フルオレセインのラベルが付いた坑ブタ免疫グロブリンG接合体を用いて特異的な蛍光を検出した。プラスミドpVR1012のみを形質移入したCHO細胞または非形質移入のCHO細胞ではこのポリクロ−ン性の血清での蛍光は検出されなかった。
【0069】
実施例8
ブタへの裸DNAの予防接種
8.1 誕生1日目の子豚
カーサリアンで得たブタのグループをプロトコルのDO(一日目)に分離単位に置いた。これらの子豚には2日にプラスミドの各種ワクチン溶液を筋肉内経路で予防注射した。ワクチン溶液は無菌生理的食塩水(0.9% NaCl)に原液を薄めて調製した。各子豚には下記を予防注射した:
プラスミドpJP109単独
プラスミドpJP109およびpJP111の混合物
プラスミドpJP109およびpJP058の混合物
プラスミドpJP109、pJP111およびpJP058の混合物
ワクチン溶液は各プラスミドの500μgから成る。
容積:ワクチン溶液は、2mlの全容積を筋肉内経路で注射する。予防接種(1−2日)では子豚の首の各側面に(2×1ml)注射した。
【0070】
二回のワクチン注射は2週の間隔で実行した(すなわちプロトコルのD2とD14)。抗原投与はビルレントなPCV−2菌株のプロトコルまたはウイルスのサスペンションを鼻噴投与した(D21)。その後、離乳後多臓器消耗症候群の特異的な臨床徴候を観察するために子豚を3週間モニターした。モニタ−した徴候は以下の通り:
【0071】
直腸温: 最初の14日、その後は抗原投与後第3週まで毎日測定。
重量:抗原投与直前と、抗原投与後3週間、1週間に1回子豚を秤量。
ウイルス血症/抗体検査用血液サンプルの収集: D2、D14、D21、D28、D35、D42に血液サンプルを採取。
検死: 生き残ったブタは病変を捜すためにD42に屠殺し、病理解剖し、肝臓、リンパ節、脾臓、腎臓および胸腺から組織を取り、組織の障害を調べた。
【0072】
8.2 5〜7周齢のブタ
5〜7周齢の子豚(PCV−2ウィルスに対する母性特異的抗体はもはやない)へ筋肉内の経
路で予防注射した:
プラスミドpJP109だけ
プラスミドpJP109およびpJP111の混合物
プラスミドpJP109 andpJP058の混合物
プラスミドpJP109、pJP111およびpJP058の混合物
これらのワクチンの投与量は実施例8.1と同じである(プラスミドにつき500μg)。ワクチンの溶液は2mlの容積を筋肉内の経路で注射した(首筋への2mlの単独投与)。
【0073】
二回の予防接種は、21日の間隔(DOおよびD21)で実行される。抗原投与は、最後の予防接種(D35)から14日後に、ビルレントなPCV−2菌株のウイルスのサスペンションを筋内投与して行った。
それから子豚の多臓器消耗症候群の特異的な臨床徴候を見るために各ブタを8週間モニタ−した。観測の全持期間は8週間であることを除いては、抗原投与の後の子豚の臨床監視結果は実施例8.1に記載されているそれに同一である。
【0074】
実施例9
DMRIE−DOPEを用いて配合しDNAのブタの予防接種
実施例8に記載の裸のプラスミドDNA溶液の代わりに、DMRIE−DOPEを用いたプラスミドDNAの溶液を使用することができる。DNA溶液(実施例6の一種以上のプラスミドを含む)を1mg/ml、0.9% NaCl中に調製する。滅菌蒸留水中に適切な容積のDMRIE−DOPE生理食塩水を取り、0.75mMのDMRIE−DOPE溶液を調製する。
【0075】
プラスミドDNA−カチオン脂質複合体を、0.9% NaCl中の1mg/mlのDNA溶液を等量のDMRIE−DOPE溶液中に0.75mMに希釈して形成した。気泡を避けるためにカチオン脂質溶液を収容した小びんの内壁に沿って26G針を取付けた注射器を用いてDNA溶液を徐々に導入した。二つの溶液の混合後直ちに穏やかに攪拌する。最後に得られる組成物は0.375mMのDMRIE−DOPEと500μg/mlのDNAとから成る。上記の全ての操作で、全ての溶液は室温で使用するのが望ましい。DNA/DMRIE−DOPE複合体はブタへの免疫の30分前に室温で作った。
【0076】
それからブタに実施例8.1および8.2に記載の条件で予防注射する。
【0077】
実施例10
子豚の予防接種とその結果
第1実験
3〜4匹の子豚(caesarianから入手)の0日をアイソレ−タに入れた。子豚には日2にpJP109単独またはpJP109 +pJP111プラスミド混合物を予防注射した。対照群には生理学溶液を投与した。各プラスミドは無菌の生理溶液(NaCl 0.9%)に250μg/μl(最終濃度)で希釈した。2点で2ml容積を筋肉経路で注射した(首の各側面に1mlづつ)。ワクチンまたはプラセボの第2の注射を日14に投与した。DNAの予防接種は子豚に寛容で、予防接種の副作用の兆候は見られない。子豚には日21にPCV−2ウイルス性サスペンションを口鼻投与(各外鼻孔の1ml)して抗原投与した。抗原投与後、週に一度子豚の重さを量る。直腸温は日17,21,22,24,27,29,31,34,37,41,44に記録する。日44の糞便のスワブは各子豚PCV−2排泄物から集めた。ウィルスを検出し、PCRで定量化した。日45に剖検を実行し、組織サンプルを集め、ウィルスを単離した。
【0078】
臨床症状
グル−プ間で平均体重増加または平均体温に有意差はない。最終時にブタに見られた総所見は気管支リンパ節症である。
剖検病変
病変は下記基準で記録した。
【0079】
0=見えるような大きなリンパ節はない。
1=気管支リンパ節に限られる小さなリンパ節がある。
2=気管支リンパ節に限られる大きなリンパ節がある。
3=気管支submandibullar prescapsularおよびinguinallymph節へ延びた大きなリンパ節がある。
stdは標準偏差の省略である。
Nは各グル−プの動物の数である。
【0080】
【表1】

【0081】
N = 各グル−プの子豚の数
pJP109で免疫した4匹中3匹の子豚と、pJP109およびpJP111プラスミド混合物で免疫した3匹中田の1匹の子豚でリンパ節病変の低下が観測された。標準偏差(std)の高い値であるので、この相違は有意でない(p > 0.05)。
【0082】
リンパ節組織中のウィルス負荷
気管支および腸間膜のリンパ節から調製したホモゲネ−ト組織で量的なウィルスre−isolationを実行した。示したデ−タはlog10変換後のホモゲネ−ト組織のウィルス力価に対応する。
【0083】
【表2】

【0084】
気管支のリンパ節が感染ウィルスを最も含むようである。pJP109またはpJP109+pJP111プラスミド混合物で免疫した子豚では気管支および腸間膜リンパ節でのウイルス負荷の低下が観測される。この低下は有意である(プラスミド混合物の場合p < 0.05)。
【0085】
ウイルスの排出
ポスト抗原投与糞便のスワブでPCV−2 orf2の増殖をベースにしたPCRによってPCV−2のscheddingを確認した。各検定は2mlのサンプルの三つ組で実行した。ワクチン非投与の対照は抗原投与前はPCV−2に対してネガティブで、抗原投与後はポジティブになる。これでPCRの妥当性が確認される。値はlog10で示してある(2μlサンプル中のPCV−2 DNA分子の数)。
【0086】
【表3】

グル−プ間の相違は有意でない(p > 0.05)。
【0087】
第2実験
14週齢の通常の子豚(各グル−プ毎に8匹)を二回の投与で免疫した(pJP109と、pJPlllプラスミド+DMRIE DOPE混合物とを日0および日20)。各投与では2mlを筋注経路で耳の後の首側に注射した。ワクチン組成物は生理学溶液(0,9% NaCl)および0.375mM DMRIE DOPEのmlに対して各プラスミド250μgを含む。
【0088】
対照群の子豚には生理学溶液を注射した。子豚には日32に口鼻経路で5mlのPCV−2ウイルス性サスペンションを抗原投与した(各外鼻孔に注射器で105.6 TCID50/mlタイタ−)。
子豚の臨床症状、へばり、おう吐、呼吸困難、咳、食欲不振、高体温(直腸温をポスト抗原投与後、28日間毎日記録)、体重減少(子豚の重さを日32、40、46、53、60に計量)をモニタ−した。徴候は下記基準で記録した:
付属書1(1匹の子豚のための評点は、観測の異なる日に対応する評点の合計に等しい)。日60に剖検を実行して、病変を下記基準で記録した:付属書2 (1匹の子豚のための評点は観測される各器官に対応する評点の合計に等しい)。組織サンプル、特にリンパ節を回収した。
【0089】
ウイルス排出を調べるために直腸スワブを回収した(日32、39、42、46、49、53、56、60)。
【0090】
臨床症状
免疫された子豚のグル−プで対照と比較して臨床的症状の有意な低下が観測される。対照群1はPMWS徴候で死んだが、予防注射をされた子豚グル−プは死ななかった。
【0091】
【表4】

(Kruskal−Wallisテスト p < 0.01)
【0092】
免疫された子豚グル−プにおいて抗原投与高体温の持続期間での有意な低下が観測される(p:0.05)。
【0093】
【表5】

【0094】
予防注射をされたグル−プおよび対照グル−プの間で抗原投与後の毎日の体重増加に差はない。
【0095】
病変検死
免疫された子豚において対照と比較して病変の有意な差が特にリンパ節症(p≦0.005)で観測される。
【0096】
【表6】

【0097】
リンパ節組織のウィルス負荷
腸間膜のおよび縦隔のリンパ節のウィルス負荷を免疫化学で求めた。以下の基準が、評点のために使われる:
0 = 蛍光なし
1 =いくつかの器官スライド上にいくらかの蛍光が見える。
2= 約1つの器官が蛍光。
3= 全てが螢光性器官。
【0098】
ウィルス負荷の有意な差が免疫されたグル−プ(p < 05)に観測される。
【表7】

【0099】
ウイルス排出
PCV−2排泄物のPCRで排出スワブを調べた。
【0100】
結果は、以下の基準で記録した:
0=PCV−2なし
1=PCV−2存在
【0101】
免疫されたグル−プの大便中の38%にPCV−2が存在するのに対して、対照群の子豚の排出物では88%。ウイルス性排出の持続期間は対照と比較して予防注射をされたグル−プでは大幅に減少している。
【0102】
【表8】

【0103】
本発明が実施例に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない限り、種々変更できるということは理解されなければならない。
【0104】
ANNEXE 1
【表9】

【0105】
ANNEXE 2
【表10】

【0106】
添付配列表は下記を表す:
配列番号.1:オリゴヌクレオチドJP779
配列番号.2:オリゴヌクレオチドJP780
配列番号.3:オリゴヌクレオチドJP781
配列番号.4:オリゴヌクレオチドJP782
配列番号.5:オリゴヌクレオチドJP783
配列番号.6:オリゴヌクレオチドJP784
配列番号.7:オリゴヌクレオチドJP785
配列番号.8:オリゴヌクレオチドJP786
配列番号.9:オリゴヌクレオチドRG972
配列番号.10:オリゴヌクレオチドRG973

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCV−2のORF1、PCV−2のORF2、PCV−1のORF1およびPCV−1のORF2から成る群の中から選択される遺伝子をコ−ドし、発現するプラスミドと、この遺伝子の発現産物に対する免疫応答を増加することができる要素とからなる免疫原製剤またはワクチン。
【請求項2】
免疫応答を増加させることができる要素が下記の[式1]のカチオン脂質から成るアジュバントである請求項1に記載の免疫原製剤またはワクチン:
【化1】

(ここで、
R1は12〜18の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖脂肪族基を表し、
R2は2〜3の炭素原子を有する他の脂肪族基を表し、
Xは水酸基またはアミン基を表す)
【請求項3】
カチオン脂質がDMRIE(N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンアンモニウム)である請求項2に記載の免疫原製剤またはワクチン。
【請求項4】
DMRIEと中性脂質とを組み合わせた請求項3に記載の免疫原製剤またはワクチン。
【請求項5】
DMRIEとDOPE(ジオレイルホスファチジルエタノールアミン)とを組み合わせた請求項4に記載の免疫原製剤またはワクチン。
【請求項6】
免疫応答を増加させることができる要素がカルボマ−から成るアジュバントを含む請求項1に記載の免疫原製剤またはワクチン。
【請求項7】
免疫応答を増加させることができる要素がブタサイトカインを含む請求項1に記載の免疫原製剤またはワクチン。
【請求項8】
ブタサイトカインがGM−CSFである請求項7に記載の免疫原製剤またはワクチン。
【請求項9】
ブタサイトカインをコ−ドし、発現するプラスミドを含む請求項7また
は8に記載の免疫原製剤またはワクチン。
【請求項10】
免疫応答を増加させることができる要素がブタサイトカインと、DMRI
E、DMRIE/DOPEおよびカルボマ−から成る群の中から選択されるアジュバント化合物とを
含む請求項1に記載の免疫原製剤またはワクチン。
【請求項11】
他のブタの免疫原をコ−ドし、発現するプラスミドを含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の免疫原製剤またはワクチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−207897(P2011−207897A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116460(P2011−116460)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【分割の表示】特願2001−503633(P2001−503633)の分割
【原出願日】平成12年6月8日(2000.6.8)
【出願人】(503365659)
【Fターム(参考)】