説明

PCVD堆積プロセスを実施する装置および方法

【課題】軸方向において基本的に均一の厚さ並びに基本的に均一の屈折率およびアルファ値の蒸着ガラス層を有するガラス基材チューブを提供する。
【解決手段】本発明は、一つまたは複数のドープまたはアンドープガラス層がガラス基材チューブの内部にコーティングされるPCVD堆積プロセスを実施する装置に関する。この装置は、内壁および外壁を有するアプリケータと、アプリケータに開口するマイクロ波ガイドとを備える。アプリケータは、円柱軸の周りに延びており、内壁の近傍に通路を備え、該通路を通ってマイクロ波ガイドを介して供給されたマイクロ波は出ることができ、基材チューブは、円柱軸にわたって位置づけ可能である。一方で、アプリケータは、円柱軸にわたって延びる加熱炉により完全に覆われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCVD堆積プロセスを実施する方法に関する。この方法は、i)ガラス基材チューブを設けるステップと、ii)該基材チューブに一つまたは複数のガラス成形ガスを供給するステップと、iii)基材チューブの少なくとも一部にマイクロ波放射によりプラズマを誘発させて、ガラス基材チューブの内面上に一つまたは複数のガラス層の堆積を生じさせるステップと、を備える。
【0002】
本発明はさらに、PCVD堆積プロセスを実施する装置に関する。この装置においては、一つまたは複数のドープまたはアンドープガラス層が、供給側と排出側とを有するガラス基材チューブの内面上に堆積される。この装置は、マイクロ波アプリケータと、マイクロ波を誘導するためのマイクロ波ガイドとを備える。マイクロ波アプリケータは、供給側に位置する反転点と排出側に位置する反転点との間で基材に沿って移動可能である。
【背景技術】
【0003】
プラズマ化学気相堆積法(PECVDまたはPCVD)は、基材上に気体の状態(蒸気)から固体の状態に薄膜を堆積するために用いられるプロセスである。該プロセスには、反応ガスのプラズマを生成後に起こる化学反応が含まれる。
【0004】
通常、光ファイバの分野では、ガラスの多重薄膜が基材チューブの内面に堆積される。ガラス成形ガス(すなわち、ドープまたはアンドープ反応ガス)は、一端部(基材チューブの供給側)から基材チューブの内部に誘導される。ドープまたはアンドープガス層は、基材チューブの内面上に堆積される。ガスは、オプションで真空ポンプを用いて(基材チューブの排出側)、基材チューブの他端部から排出または除去される。真空ポンプは、基材チューブの内部に減圧を生じさせる効果がある。減圧は、通常、5〜50mbarの圧力値を含む。
【0005】
通常、マイクロ波発振器からのマイクロ波は、導波路を介してアプリケータに向けられており、アプリケータは、ガラス基材チューブを取り囲んでいる。アプリケータは、プラズマ中に高周波エネルギーを結合する。アプリケータ(および従ってそれによって形成されるプラズマ)は、基材チューブの長手方向に相互に移動され、その結果、ストロークごとまたはパスごとに薄いガラス層が基材チューブの内側に堆積される。
【0006】
従って、アプリケータは、加熱炉の境界内で基材チューブの長さにわたって平行に移動される。このアプリケータの平行移動とともに、プラズマもまた同じ方向に移動する。アプリケータが基材チューブの一端部近傍の加熱炉の内壁に到達すると、アプリケータの移動が反転され、加熱炉の他の内壁に向かって基材チューブの他端部に移動する。アプリケータおよび従ってプラズマは、基材チューブの長さに沿って往復運動する。往復運動のそれぞれは、「パス」または「ストローク」と呼ばれる。各パスとともに、ガラス材料の薄層が基材チューブの内側に堆積される。
【0007】
通常、プラズマは、基材チューブの一部、すなわち、マイクロ波アプリケータにより取り囲まれた部分にのみ生成される。マイクロ波アプリケータの寸法は、加熱炉の寸法および基材チューブの寸法よりも小さい。プラズマの位置においてのみ、反応ガスは固体ガラスに変換され、基材チューブの内面に堆積される。
【0008】
パスの数が増加すると、これらの薄膜、すなわち堆積物の累積厚さが増大し、従って基材チューブの残りの内径の減少につながる。言い換えると、基材チューブ内部の空洞スペースは、各パスとともに小さくなり続ける。
【0009】
アプリケータおよび基材チューブは、通常、堆積プロセスの間に900〜1300℃の温度に基材チューブを維持するよう、加熱炉により取り囲まれる。
【0010】
PCVDプロセスによって光プリフォームを製造する一つの方法は、本出願人の名称による米国特許第4,314,833号から知られている。その文献から知られているプロセスによれば、ガラス基材チューブ中に低圧プラズマを用いることで、一つまたは複数のドープまたはアンドープガラス層が基材チューブの内面上に堆積される。ガラス層が基材チューブの内面上に堆積された後、ガラス基材チューブは続いて熱することにより固体ロッドに収縮される(「中実化(collapsing)」)。特別な実施形態では、固体ロッドはさらに、例えば、外部蒸着プロセスによって、または一つまたは複数の前もって作られたガラスチューブを用いて、追加的なガラス量を外部から与えられてもよく、このようにして複合プリフォームが取得される。このように生成されたプリフォームから、その一端が熱せられ、線引きにより光ファイバが取得される。
【0011】
本出願人の名称による国際特許出願WO99/35304号によれば、マイクロ波発振器からのマイクロ波は、導波路を介して、ガラス基材チューブを取り囲むアプリケータに導かれる。アプリケータは、プラズマ中に高周波エネルギーを結合する。
【0012】
本出願人の名称による欧州特許EP1550640号(US2005/0172902号としても刊行)から、PCVD堆積プロセスを実施するための装置が知られている。この装置では、特定の長さと幅を有するチョークが装置の円柱軸を中心として置かれる。チョークは環状形であり、アプリケータ内に配置される。チョークの寸法は、全堆積プロセスの間の高周波エネルギーの損失を最小化するように選択されており、これは、効率的なエネルギー消費につながる。この文献は、マイクロ波漏洩およびその低減に関係している。
【0013】
US4,741,747号は、PCVDプロセスにおいて光学的および幾何学的エンドテーパを低減する方法に関する。プリフォームの端部における均一でない堆積形状の部位(テーパ)は、少なくとも一つの反転点の領域で時間に対して非線形にプラズマを移動することにより、および/または、時間の関数としてプラズマの長手方向範囲を変えることにより低減される。
【0014】
US4,857,091号は、屈折率プロファイルが特定の周辺の光変調構造および/または放射状の光変調構造および/または軸方向の光変調構造を示す光ファイバを製造するPCVD法に関する。(a)チューブの内壁への材料輸送の均一性および/またはチューブ外周を覆うガラスの堆積生成量および/または(b)プラズマを生成する反応炉に関する局所堆積ゾーンの軸位置、に影響を及ぼすパラメータは変更される。
【0015】
GB2068359号は、PCVDプロセスに関する。このPCVDプロセスでは、デバイスへのパワー入力を変化させることにより、プラズマ柱が基材チューブに沿って掃引され、チューブの掃引および加熱領域に沿ってガラス層の直接形成を生じさせる。
【0016】
本出願人による欧州特許出願EP2199263号(US2010/0154479号としても刊行)から、基材チューブ中のガス組成(プライマリドーパント組成)を共振器(プラズマゾーン)位置に応じて制御することにより、基材チューブに沿って軸方向屈折率変化を最小化するために用いることのできるPCVDプロセスが知られている。
【0017】
米国特許第6,901,775号から、PCVDプロセスによって基材チューブの内側をコーティングするための装置が知られている。この基材チューブからプリフォームが生成される。この装置において、ガス供給ユニットは、ガス流の乱れを防止するためにクレームされている挿入部を含む。この乱れは、ガス流における一定周期および振幅の定常波を含む。この米国特許によれば、定常波は、基材チューブの内部領域中で順々に一定の堆積物に関与している。堆積物は、その軸方向にそって厚さが不均一であるという特徴を有する。
【0018】
本出願の欧州特許出願EP1,923,360号(US2009/0022906号としても刊行)から、基材チューブの軸方向に均一な厚さおよび屈折率の堆積物を提供するPCVDプロセスが知られている。この方法では、加熱炉が基材チューブの軸方向に沿って、例えば30mm、60mm、または15mm相互に動かされる。加熱炉の移動は、例えばマイクロ波アプリケータを取り囲んでいる加熱炉の内壁からの、マイクロ波パワーの一部の位置依存性反射に起因する、基材チューブの軸方向に沿ったマイクロ波パワーの不均一分布と見られるものの影響を低減するために用いられる。このような軸方向のマイクロ波パワーの不均一性は、軸方向の堆積物の厚さおよび屈折率の不均一性の原因となり、これは減衰、モードフィールド幅均一性、および帯域幅均一性などのファイバ品質パラメータに悪影響を及ぼす。EP1,923,360号で用いられている方法は、高周波エネルギーの漏洩問題を部分的にしか解決しない。
【0019】
本出願人の名称による刊行された米国特許出願第2011/0247369号から、反応ゾーンが中空ガラス基材チューブの長手方向に往復運動するPCVDプロセスが知られている。内部蒸着プロセスの間に組み込まれた水酸基の数を低減するために反転点の近傍または反転点に反応ゾーンが位置するときに、フッ素含有化合物を含む追加のガス量が中空ガラス基材チューブの内部にその供給側を介して供給される。
PCVDプロセスでは、基材チューブの内側へのガラス蒸着物の形成は、プラズマが存在する位置において起こるだけである。本発明者は、プラズマのフロントエンド(front end)の位置(すなわち、ガラス成形ガス流の上流位置)が共振器位置に対して変化する可能性があることに気づいた。この変化は、通常、共振器位置の非単調増加関数または非単調減少関数である。プラズマの(累積的な)存続時間が高くなる基材チューブの位置上に、大きなまたは厚いガラス層が形成される。この効果はそれ自身を増強し、次のパスにおいて「厚いスポット」がガラスの悪い熱伝導率に起因してより多くの熱を発生させ、次の層にさらに多くのガラス堆積物をもたらすことを意味する。これは、堆積変動(deposition oscillation)の効果を増大させる。堆積変動は、それ故、基材チューブの長さにわたって堆積したガラスの厚さまたは組成の変動として定義される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の態様は、軸方向において基本的に均一の厚さ並びに基本的に均一の屈折率およびアルファ値の蒸着ガラス層を有するガラス基材チューブを提供することである。基材チューブは、その後さらに収縮プロセスを経て固体ロッドに処理される。最終的に、この固体ロッドは、多くの処理ステップを経て、光ファイバに変換される。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、PCVD堆積プロセスを実施する装置および方法を提供することである。この装置は、アプリケータからのマイクロ波エネルギーのどんな乱れでも最小化するよう構成される。この乱れは、最終的に生成されるプリフォームの光学性能に悪影響を与えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、PCVD堆積プロセスを実施する方法に関する。この方法は、i)ガラス基材チューブを設けるステップと、ii)ステップi)の基材チューブに一つまたは複数のガラス成形ガスを供給するステップと、iii)ステップii)の基材チューブの少なくとも一部にマイクロ波放射によりプラズマを誘発させて、基材チューブの内面上に一つまたは複数のガラス層の堆積を生じさせるステップと、を備え、少なくとも一つのプラズマ反応ガスが、ステップiii)の間に、基材チューブの長さに沿ってプラズマの軸方向位置に応じて、一つまたは複数のパルスで基材チューブに供給され、プラズマ反応ガスの複数のパルスが提供され、プラズマ反応ガスの複数のパルスが、ステップii)のマイクロ波の波長の半分(1/2)に等しいまたはその奇数倍に等しい基材チューブの長さに沿った長手方向間隔(ミリメートル)で供給されることを特徴とする。
【0023】
本発明はまた、PCVD堆積プロセスを実施する方法に関する。この方法は、
i)ガラス基材チューブを設けるステップと、
ii)ステップi)の基材チューブに一つまたは複数のガラス成形ガスを供給するステップと、
iii)ステップii)の基材チューブの少なくとも一部にマイクロ波放射によりプラズマを誘発させて、基材チューブの内面上に一つまたは複数のガラス層の堆積を生じさせるステップと、を備え、
プラズマ反応ガスの少なくとも一つが、ステップiii)の間に、基材1の長さに沿ってプラズマの軸方向位置に応じて、一つまたは複数のパルスで基材チューブに供給され、プラズマ反応ガスの一つの単一パルスが供給され、前記パルスのタイミングおよび配置が、基材チューブの長さにわたって堆積したガラスの厚さの変動である堆積変動に対応する長手方向位置に落ちるよう選択されることを特徴とする。一実施形態では、プラズマ反応ガスの一つの単一パルスが供給される。別の実施形態では、前記単一パルスは、250から1000ミリ秒の持続時間を有し、好ましくは500から750ミリ秒の持続時間を有する。
【0024】
一実施形態では、パスの前進運動(供給側から排出側への進行)およびパスの後退運動(排出側から供給側への進行)の両方でパルスが与えられる。例えば、排出側近傍の基材チューブの最後の150〜400または150〜200ミリメートルにおいて与えられる。一つのパルスが与えられる場合、前進運動の最後の一部および後退運動の最初の一部に効果があるように、長さおよび位置が選択される。前記パルスの長さおよび位置は、それ故に、堆積変動に対応する長手方向位置に落ちるように選択される。
【0025】
さらに別の実施形態では、プラズマ反応ガスの複数のパルスが与えられる。前記パルスは、好ましくは、ステップii)のマイクロ波の波長の半分(1/2)と等しいまたはその奇数倍に等しい間隔で供給される。別の実施形態では、マイクロ波は、12センチメートルであり、パルス間隔は、6センチメートルである。さらに別の実施形態では、これら複数のパルスのうちの一つの持続時間は、1から100ミリ秒であり、例えば25から75ミリ秒である。
【0026】
例えばガスのパルスが50ミリ秒の持続時間で供給されるとき、アルファ振動への影響は約3cmである。パルス持続時間は、アルファ振動への影響を調節するために、当業者により容易に変更可能である、すなわち、アルファへの影響に応じてパルスを長くしたり短くしたりすることができる。理論に縛られることを望むものではないが、パルスが3cmの領域にわたって作用する理由は、チューブ内部に入った後にパルス幅のいくらかの分散が存在するという事実にある。
【0027】
注目すべきは、ガスは例えば10メートル毎秒の速度で基材チューブ中を進み、従ってガスの注入とガスがプラズマに到達する瞬間との間に一種の位相遅れ(lag phase)が存在することである。当業者であれば、その位相遅れを測定し、ガスの位置およびタイミングを調整してこれを説明できるであろう。バルブを閉じて注入を止めることについても同じことがいえる。位相遅れが生じた後には、プラズマ反応ガスはプラズマの位置にもはや存在しない。
さらに別の実施形態では、プラズマ反応ガスの圧力は、0.5から5bar、好ましくは1から2bar、さらに好ましくは約1.5barである。
【0028】
本明細書では、プラズマ反応ガスは、プラズマ中でイオン化可能な非ガラス成形前駆ガスである。
さらに別の実施形態では、プラズマ反応ガスは、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素およびそれらの一つ以上の化合物から成る群から選択される。
さらに、本発明は、マイクロ波誘発プラズマにより、供給側および排出側を有するガラス基材チューブの内面上に一つまたは複数のガラス層が堆積されるPCVD堆積プロセスを実施する装置に関する。この装置は、マイクロ波アプリケータと、マイクロ波を誘導するとともにプラズマを形成するマイクロ波ガイドとを備える。該アプリケータは、基材チューブの供給側に位置する反転点と基材チューブの排出側に位置する反転点との間で基材チューブに沿って移動可能である。この装置は、基材チューブの供給側にガラス成形ガスおよびプラズマ反応ガスを提供するガス注入装置を備え、プラズマ反応ガスが、PCVD堆積プロセスの間に、基材チューブの長さに沿ったアプリケータの軸方向位置に応じて、一つまたは複数のパルスで供給されることを特徴とする。
【0029】
一実施形態では、前記ガス注入装置は、プラズマ反応ガスの流れを制御するバルブ、好ましくは高速バルブを備える。別の実施形態では、前記装置はさらに、コントローラ、好ましくはマイクロコントローラを備える。
【0030】
本明細書では、高速バルブは、100ミリ秒(ms)またはそれ未満で開位置と閉位置を切り替えるバルブである。
【0031】
一つまたは複数の上記態様は、本装置および方法を用いることにより達成される。
【0032】
このように、本発明は、いくつかのステップを備えるPCVD堆積プロセスを実施する方法に関する。ステップi)ガラス基材チューブを設ける。通常、前記基材チューブは、供給側と排出側を有する。ステップii)基材チューブに一つまたは複数のガラス成形ガスを、好ましくは供給側を通って、好ましくはバルブシステム/注入システムによって、供給する。好ましくは、前記ガラス成形ガスは、ドープまたは非ドープである。ステップiii)基材チューブの少なくとも一部にプラズマを誘発させて、ガラス基材チューブの内面上に一つまたは複数のドープまたはアンドープガラス層の堆積を生じさせる。プラズマにより、ガラス成形ガスは、ガラス層を形成するために固体状態に変換される。前記プラズマは、基材チューブに沿って往復運動で移動するマイクロ波アプリケータにより誘発される。本発明は、少なくとも一つのプラズマ反応ガスが、基材チューブの長さに沿ったプラズマの位置に応じて、一つまたは複数のパルスで基材チューブに供給される。本発明は、以下の図面を参照して下記に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1は、チューブの供給側に関してチューブの長手方向位置に対してプロットされた、固体ロッドのコアにおける断面積(CSA:cross-sectional area)値(平方ミリメートル)のグラフを示す。このグラフは、本発明によらない方法を示しており、プラズマ反応ガスのパルスは提供されていない。
【0034】
図2は、チューブの供給側に関してチューブの長手方向位置に対してプロットされたCSA値(平方ミリメートル)のグラフを示す。このグラフは、本発明に係る方法を示しており、プラズマ反応ガスの一つのパルスが提供されている。
図3は、チューブの供給側に関してチューブの長手方向位置に対してプロットされたアルファ値(単位なし)のグラフを示す。このグラフは、本発明によらない方法を示しており、プラズマ反応ガスのパルスは提供されていない。
【0035】
図4は、チューブの供給側に関してチューブの長手方向位置に対してプロットされたアルファ値(単位なし)のグラフを示す。このグラフは、本発明に係る方法を示しており、プラズマ反応ガスの一つのパルスが提供されている。
【0036】
図5は、チューブの供給側に関してチューブの長手方向位置に対してプロットされたアルファ値(単位なし)のグラフを示す。このグラフは、本発明に係る方法を示しており(点線)、プラズマ反応ガスの複数のパルスが提供されている。実線は、本発明によらない方法を示しており、反応ガスのパルスは提供されていない。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明者は、マイクロ波エネルギーの不均一分布が観測され、それがとりわけマイクロ波パワーの分散または散乱により引き起こされることを見いだした。本発明者は、このような理論に縛られることを望むものではないが、マイクロ波パワーの一部がプラズマと基材チューブとの間の境界上で移動すると仮定した。定常波が基材チューブの内側に生じる可能性がある。定常波は、生成されたプラズマを超えて移動できる。マイクロ波は、プラズマのフロントラインの外側に分散される可能性があり、導電面、例えば取り囲んでいる加熱炉の内壁だけでなく、半導体面でも反射される可能性がある。より一般的には、マイクロ波は、物質の変化が起こるとき、すなわち、空気−水、金属−プラスチック、空気−セラミックなどの変化が起こるときに反射されるということができる。従って、結果として生じるアプリケータに対するマイクロ波の分布はアプリケータの位置に依存し、いわゆる不均一なマイクロ波パワーを生じさせ、不均一な温度およびさらに多くのプラズマをもたらす可能性がある、と考えられる。後者は、マイクロ波の漏洩量が、増加したマイクロ波濃度が基材チューブの異なる位置に存在するようになるときに起こり、この増加した濃度は、(アプリケータの外側で)それ自身のプラズマを生成する。これは、加熱炉がアプリケータ内の基材チューブを取り囲むだけでなく、基材チューブの残りの大部分も取り囲んでいるので起こり得る。これにより、確実に基材チューブの大部分が高温、例えば900〜1300℃に加熱される。
【0038】
従来、欧州特許出願第EP1,923,360号では、本発明者は、加熱炉だけでなくアプリケータを相互に基材チューブの長手方向軸に対して移動可能にすることにより、PCVDプロセス間の不均一なマイクロ波分布が弱まることを示した。
【0039】
しかしながら、本発明者は、最近になって、アプリケータが基材チューブの排出側に近づくときに、さらなる現象が生じることを見いだした。
【0040】
誘発されたプラズマは、共振器のパワーによって決まるある空間を占める。プラズマの幅は、基材チューブの内側の内部空間によって決まる。パスの数が増加し、従って基材チューブの開口直径が減少するにつれて、共振器のパワーが同じ、すなわちプラズマの空間が同じ状態を維持する場合に、プラズマの長手方向長さが増加する。本発明者は、プロセス中のあるポイントにおいて、基材チューブの空洞の内部空間が、共振器の往復運動の間にプラズマが、特にアプリケータが基材チューブの排出側に近づいているときに、基材チューブの周囲に存在する加熱炉の外側に延びる程度まで減少することを見いだした。ガスの流れの方向におけるプラズマの「テール(tail)」(すなわち、ポンプの方向の「テール」)は、非常に大きくなるので、加熱炉の外側に延びる。マイクロ波の空気中への分散は、大きい。本発明者は、プラズマの「テール」が大きな範囲と小さな範囲に交互に見えるプラズマのポンピング運動または揺動運動を視覚的に観測した。言い換えると、プラズマが少し前および少し後ろに動き、再び前後に動くのが目に見える。
【0041】
空気中でのマイクロ波の波長のために、連続的な反射ではなく、不連続または段階的または振動的な反射が存在する。これは、プラズマの段階的または振動的な摂動をもたらす。
【0042】
従って、プラズマは、二重の動きを有すると言われている。第一に、プラズマは、基材チューブの長さに沿ってアプリケータの動きとともに直線的に動く。第二に、プラズマは、通常は基材チューブの一部においてのみ、マイクロ波エネルギーの分散に起因する揺動往復運動(oscillating forwards-backwards movement)を示す可能性がある。この第二の運動は、通常、プロセスの一部において、すなわち基材チューブの排出側近傍において見えるだけである。さらに、もしかしたら、最初のいくつかのパスまたはストロークの間に、このプラズマの第2の揺動挙動は全く見えないか、または全く存在すらしないかもしれない。基材チューブの内部の空洞空間は、十分に大きな直径を有しているので、プラズマは十分な空間を有する。しかしながら、発生器または共振器のパワーが同じ状態のままであり、且つ基材チューブの内部の自由空間の直径がパスの数の増加とともに減少するときに、この揺動プラズマの現象が起こる。
【0043】
基材チューブの内側へのガラス堆積物の形成は、プラズマが存在する位置において起こるだけである。ガラス成形ガスは、ドープされていてもよいし、アンドープであってもよい。プラズマ前端のフロントラインの位置が不連続な方式で変化する場合(すなわち、パルスまたは振動する方式により)、ガラスの堆積は、同様の挙動を示す(「堆積変動(deposition oscillation)」と呼ばれる)。一つのパスでは、完全に平坦な薄い蒸着膜は形成されない。プラズマの存在する(累積的な)期間が長い基材チューブの位置上に、大きなまたは厚いガラス層が形成される。この効果はそれ自身を増強し、次のパスにおいて「厚いスポット」は、ガラスの低い熱伝導率のせいでより多くの熱を発生させ、次の層にさらに多くのガラス堆積物をもたらすことを意味する。これは、堆積変動の効果を増大させる。
【0044】
図3は、アルファ値の変化を示す。アルファ値は、屈折率プロファイルの形状を決める値である。図3の右側から明確に分かるように、上述された堆積変動は、アルファ値の変動または振動をもたらす。
【0045】
光ファイバにおいて、屈折率プロファイルは、通常、それぞれステップ、台形、三角形、または勾配の形状を有するプロファイルに対し、「ステップ」、「台形」または「三角形」または「アルファ」プロファイルと称される。ステップインデックスファイバでは、異なるモードが異なる速度でファイバに沿って伝搬する。これは、パルス間の間隔に相当するようになり、許容できないエラーレートをもたらす可能性のある光パルスの広がりを引き起こす。マルチモードファイバの多モード分散を低減するために、「アルファ」コアプロファイルを備えたグレーデッドインデックスファイバを製造することが提案されている。このようなファイバは、長年用いられており、その特性は、D. Gloge等著、「グレーデッドコアファイバのマルチモード理論("Multimode theory of graded-core fibres.")、Bell System Technical Journal 1973 pp 1563-1578、およびG. Yabre著、「グレーデッドインデックス光ファイバにおける分散の包括的理論("Comprehensive theory of dispersion in graded-index optical fibers")、Journal of Lightwave Technology, February 2000, vol. 18, n°2, pp 166-177といった文献に詳細に説明されている:
【0046】
グレーデッドインデックスプロファイルは、ある点での屈折率の値と、この点からファイバの中心までの距離rとの間の関係として定義することができる。
【数1】

ここで、a>1;(a→∞はステップインデックスに相当する);n、マルチモードコアの最大屈折率値;a、マルチモードコアの半径;および
【数2】

ここで、nはマルチモードコアの最小屈折率値であり、通常はクラッド(ほとんどの場合シリカである)の屈折率に相当する。グレーデッド・インデックスマルチモードファイバは、それ故に、半径方向に沿って、屈折率の値がファイバの中心からその外周に向かって連続的に減少するような、回転対称なコアプロファイルを有する。
【0047】
マルチモード光信号が前記グレーデッドインデックスコア中を伝搬するとき、異なるモードは異なる伝搬媒質を経験し、これはそれらの伝搬速度に異なる影響を及ぼす。従って、パラメータ・アルファの値を調整することにより、全てのモードに対してほとんど等しい群速度を取得することができ、故に低減された多モード分散を得ることができる。
【0048】
アルファ値が1である場合、三角のコアプロファイルが得られる。グレーデッドインデックスファイバのために、アルファ値は、基材チューブの長手方向位置にわたって実質的に一定であることが望ましい。
【0049】
上述したように、図3は、アルファ値の変化を示す。それは、グラフ上に示されるように、長手方向位置AとBとの間に大きな振動を示す。これは、基材チューブの排出側の近くである。これらのアルファ値の振動を低減することが本方法の一つの目的である。
【0050】
図1は、蒸着層の厚さを基準に算出された、いわゆる断面積(CSA)を示す。前述の断面積(CSA)は、以下のように計算される。
【数3】

ここで、d=層xの外径、d=層xの内径、CSA=層xの断面積である。
【0051】
図1は、PCVDプロセスおよび中実化(collapsing)が完了した後に測定されたコアのCSAを示す。図1から、グラフ上に示された位置Iと位置IIとの間では、実質的にCSAが一定であることが分かる。
【0052】
光ファイバプリフォームの製造における最新の商業的なトレンドは、より大きな(より厚いプリフォーム)に向かっていく傾向があるので、より多くのパスまたはストロークが必要とされる。これは、さらに小さい内径を有する堆積後(中実化前)のチューブにつながる。特に基材チューブの排出側近傍における、(アルファ値振動をもたらす)堆積変動の問題は、ますます差し迫っている。振動現象の観察結果から、プラズマの長さおよびプラズマの前部位置が加熱炉の金属壁に対する位置に応じて変化すると、この問題が起こることが知られている。この変化するプラズマ前部により、堆積前部が共振器位置に対する位置を変化させ、その結果、位置の関数として厚さおよび屈折率が変動する。
【0053】
本発明者は、この問題の新しい解決法を新たに見いだした。この解決法は、プラズマの軸方向位置に応じて(プラズマに反応する)特定のガスを与えて、プラズマ前部の運動を妨げるものである。プラズマ反応ガスは、ガラス成形が起こる基材チューブに供給され、該プラズマ反応ガスは、プラズマと相互作用してプラズマのサイズを小さくし、従って堆積変動を最小化するためにプラズマのフロントラインの位置を変化させる。これは、例えば、ガラス成形ガスを注入するためにPCVD装置すでに存在するガス注入装置を用いることにより行うことができる。このガス注入装置は、(マイクロ)コントローラに接続された高速バルブを介して接続された追加のガス管を追加することにより改造することができる。
【0054】
本発明者は、このような理論に縛られることを望むものではないが、好ましくは加熱炉の外側に延びる瞬間に、プラズマを「押し返す」ことにより、プラズマの周期的に振動する挙動を減らそうと試みた。これは、ある期間にプラズマに影響を及ぼすガスにプラズマをさらすことにより得られる。このガスは、一つまたは複数のパルスで供給される。このガスは、好ましくは、基材チューブの供給側から基材チューブ内に供給される。これらのガスパルスのタイミングおよび持続時間は、本発明に係るPCVDプロセスを始める前に本発明者により決められた。本発明者は、類似の基材チューブおよび類似の反応条件を用いた類似のプロセスから取得したデータを用いている。このようなテストプロセスの間に、例えば図1および3に示されるようなデータが取得される。これらの図に基づいて、「厚いスポット」の長手方向位置が、これらのスポットの幅および高さと同様に決定される。これらのパラメータに基づいて、本発明者は、プラズマ反応ガスのパルスが必要とされるアプリケータの長手方向位置または一つのプラズマ反応ガスのパルスが必要とされる長手方向位置を決定した。さらに、パルスの持続時間およびガスの流速が決定される。
【0055】
この進歩的な方法は、パスまたはストロークの間にプラズマのフロントラインを一定に保つ効果を有する。言い換えると、プラズマの周期的に振動する挙動が低減される、またはさらに除かれる。
【0056】
好ましくは、使用されているマイクロ波の波長の半分(1/2)と等しいまたはその奇数倍に等しい間隔でパルスが起こる。マイクロ波が12センチメートルの波長を有する場合、パルスの間隔はそれぞれ6センチメートルとされる。当業者であれば、図1および3に類似したグラフに基づいて、上述したテストプロセスで用意されている別の連続するパルスを決めることができる。
【0057】
本発明の一実施形態では、プラズマ反応ガスの一つの単一パルスが供給される。前記パルスは、例えば110または250から1000ミリ秒、またはさらに長い持続時間を有する。パルスのタイミングまたは配置は、堆積変動に対応する長手方向位置に落ちるよう選択される。
【0058】
パルスの持続時間は、必要とされるプラズマ反応ガスの量によって変えることができる。例えば、持続時間は、1から1000ミリ秒、例えば25から750ミリ秒とすることができる。当業者であれば、ガスが流れる開口部(オリフィス)のサイズ、ガスの流速または圧力、およびガスの組成と一緒にパルスの持続時間を決めることができる。より多くのパルスが与えられる場合、持続時間は、好ましくは1から100ミリ秒、より好ましくは25から75ミリ秒である。
【0059】
ガスの圧力は、例えば0.5から5bar、好ましくは1から2bar、より好ましくは約1.5barとすることができる。当業者であれば、ガスが流れる開口部のサイズ、ガスの流速、パルスの持続時間およびガスの組成と一緒にガスの圧力を決めることができる。
【0060】
例えば、パルスの持続時間が流速の2倍である場合、同量のプラズマ反応ガスを得るために半分にされるべきである。プラズマ反応ガスの濃度が非プラズマ反応ガスでの希釈により減少した場合、例えばパルスの持続時間またはガス注入口のサイズまたは圧力または流速は、同量のプラズマ反応ガスを維持するために増加されるべきである。
【0061】
例えばプラズマ反応ガスとして用いることのできるガスは、アルゴン、ヘリウム、窒素および酸素を含む。一実施例では、アルゴンが用いられる。別の実施例では、ヘリウムが用いられる。別の実施例では、窒素が用いられる。ガスの影響は、用いられる種類および最大流量によって決まる。例えばある量の酸素が追加されるとき、プラズマのサイズが短くなるまたは減る傾向にある。好ましくは、プラズマ反応ガスとして酸素が用いられる。
【0062】
プラズマ反応ガスは、その物質だけで、互いに組み合わせて、および/または非プラズマ反応ガスと組み合わせて(すなわち希釈された形態で)用いることができる。非プラズマ反応ガスの一例は、フロンである。希釈された形態の一例は、酸素(O)中の5%のフロン(C)である。
【0063】
本発明の一実施形態では、追加的なガス管が基材チューブの供給側に接続される。例えばいわゆる高速バルブなどのバルブを用いて、この(プラズマ反応ガスの供給用の)ガス管は、ガラス成形ガスの供給システムに連結される。プラズマ反応ガスを供給するためのバルブは、ある開口サイズを有するオリフィスに接続することができる。開口の大きさは、オリフィスを通って導かれるガスの量に直接影響する。
【0064】
バルブ(または高速バルブ)は、アプリケータの位置を測定するとともにバルブの開口の持続時間を制御して、そのような方法でその位置および基材チューブ中に導入されたガスの量を制御する制御手段、すなわちマイクロコントローラにオプションで連結することができる。
【0065】
従って、本発明は、特定のガス(例えば、O,Ar,He)の(短い)バーストを注入することにより、プラズマの長さまたは前部の変動に起因するどのような変化もオフセット(相殺)する。プラズマ反応ガスのパルスまたはバーストまたは注入は、基材チューブの軸方向位置に沿って共振器またはアプリケータの位置に応じて注入される。例えば、高速バルブおよびマイクロコントローラを用いることにより、時間に関しては、プラズマの長さ/前部位置の偏差(増加)が基材チューブの軸方向に沿って共振器位置に応じてオフセットされる(減少する)ように、ガスバーストが注入される。例えば唯一のキャリアガスであるOとともに、バーストの増加したガス流(全ガス流およびO濃度)がプラズマの長さを短くするために用いられる。特に、Oバーストの長さ(バルブ開放時間)および/または大きさ(O流速)は、例えば、チューブに沿って(例えば、チューブの中央とチューブのポンプ側との間で)長さおよび/または大きさの点で異なる可能性のあるプラズマの長さ/前部位置の偏差(堆積変動)をオフセットするために、共振器の軸方向位置に応じて変えることができる。上記は、Oに加えて、他のプラズマ反応ガスにも適用することができる。
【0066】
本発明は、既に使用されている機器セットアップまたは装置に対して大きな変更を要求しない。従って、本発明において提示された問題に対する解決法は、実行が容易であり且つ費用効率が高い。
【0067】
一実施形態では、全部のパスの間にパルスが供給される。しかしながら、バルブが排出側における反転点の近くでのみ開いている異なる注入手順を決めることも可能である。例えば、排出側近傍の位置で、例えば排出側近傍の基材チューブの最後の150〜400または150〜200ミリメートルで、注入が起こるだけにすることも可能である。
【0068】
本発明の一実施形態では、注入のパルスまたはバーストは、パスごとの間に同じ位置で供給される。各別々のパスまたはストロークに対して位置を決め、パスまたはストローク間の位置を調整することも可能である。これは、例えば濃縮ゲルマニウムまたは内径に応じて選択することができる。これにより確実に、パス間において条件が変わったとしても、完全なPCVDプロセスの間の同じ環境は、起こり得る光学特性の摂動を最小化する。
【0069】
しかしながら、PCVDプロセスの最後のいくつかのパスの間にのみバルブが開いている異なる注入手順を決めることも可能である。当業者であれば、最適な手順を決めることができるであろう。
【0070】
図2は、上述した図1と比較可能なグラフを示す。図2は、実施例1に開示された発明に係る方法で準備されたチューブを測定している。このグラフは、プラズマ反応ガスがプラズマに影響を及ぼすことを明確に示す。図2では、長手方向位置IIIとIVの間でCSA値が減少している。これは、プラズマの減少に起因して非プラズマ反応ガスが追加されている図1と比較して、ガラス成形量が減少することを示す。
【0071】
図4は、上述の図3と比較可能なグラフを示す。図4は、実施例1に開示された本発明に係る方法で準備されたチューブを測定している。このグラフは、本発明が望ましい効果を有することを明確に示す。AとBの間におけるアルファ値の周期的に振動する挙動は、大幅に低減されている。従って、本発明は、望ましい効果をもたらし、最初に言及したゴールの一つまたは複数に到達している。
【0072】
図5は、図4と比較可能なグラフを示す。図5では、実施例2で開示された本発明(点線)に係る方法で準備されたチューブに対し測定が行われており、従来技術の方法(実線)と比較される。
【0073】
図5のグラフは、比較例1に記載された方法に係るチューブに対し行われた測定を表す黒い実線を示す。660から1240mmの間でアルファ値の大きな振動があることが明らかである。一方、図5の点線は、本発明に従って行われた測定を示す。アルファの周期的な振動する挙動は、特に、1240,1140,1020,900および780mmでアスタリスクで表示されたパルスが与えられる位置において、660から1240mmの間で大幅に減少している。
【0074】
図5から、本発明に係る方法は、アルファ値の振動を大幅に減らし、従って本発明は、望ましい効果をもたらし、最初に言及したゴールの一つまたは複数に到達していることが明らかに分かる。
【0075】
既に上述したように、当業者は、図1および図3に類似するグラフが用意される間のテストPCVDプロセスに基づいて、注入手順を決定する。起こる現象は物理現象であるので、マイクロ波の波長が変化しないとすれば、それは毎回正確に同じ位置で起こる。このプロセスは、用いられる最初の基材チューブの幅に関係なく、且つ用いられるパスの数に関係なく、完全に再現可能である。
【0076】
最大22ミリメートルの最終的な基材チューブの内径、またはさらに最大20ミリメートルの基材チューブの内径まで、ガラス層を堆積(蒸着)することが好ましい。
【0077】
このようにして内部蒸着後に取得された基材チューブの屈折率値およびアルファ値は、その長さに沿って実質的に均一である。
【0078】
好適な実施形態では、基材チューブが装置の両端の位置に固定またはクランプされる場合、アプリケータ(および追加的に加熱炉も)は、基材チューブの長手方向軸に沿って移動可能である。このような構成は、既存のPCVD装置が簡単な方法で適応できるので、特に有利である。基材チューブの外側への加熱炉粒子の堆積を防ぐために、堆積プロセスの間に基材チューブを回転させることもできるし、または、不活性ガスで基材チューブを外部から洗い流すこともできる。
【0079】
本発明の効果的な作用を実現するために、アプリケータが基材チューブの供給側に位置する反転点と排出側に位置する反転点との間で移動可能な距離が、加熱炉が常にアプリケータを取り囲むように選択されることが好ましい。該加熱炉の動きは、連続的に、不連続的に、または段階的に起こってもよい。言い換えると、アプリケータは、堆積プロセスの間に、同じように移動可能である加熱炉が常にアプリケータを取り囲むように移動される。これは、アプリケータが加熱炉の外側に出ることができないことを意味する。これは、基材チューブの長さに沿って移動可能なアプリケータが、同様に基材チューブの長さに沿って移動可能である加熱炉内に常時位置していることを意味する。ガラス層の堆積は、アプリケータが動く距離に沿って起こる。基材チューブは、加熱炉の長さと移動可能な加熱炉の「ストローク」の合計よりも大きい長さを有する。この理由は、基材チューブの両端が加熱炉に広がる高温に耐えることができないクランプに固定されるからである。
【0080】
アプリケータは、好ましくは円柱状に対称且つ環状形であり、円柱軸の周りに円柱状に対称的に延びるとともに環状形である共振器空間を備える。該共振器空間は、円柱軸の周りに一周延びるスリットを備える。該スリットを通ってマイクロ波ガイドからのマイクロ波エネルギーが運ばれる。さらにとりわけ、マイクロ波ガイドが共振器空間に開口している。
【0081】
マイクロ波エネルギーの最適な移送を実現するために、導波路が円柱軸に対し実質的に垂直に延びる長手方向軸を有することが望ましい。該長手方向軸はスリットまたは通路と交わらない。さらにとりわけ、長手方向軸は共振器空間を二等分しない。
【0082】
アプリケータおよび加熱炉は、基材チューブの長さに沿って同じ方向または反対方向に移動してよい。
【0083】
具体的な実施形態では、加熱炉は、基材チューブの長さに沿って段階的に移動することが望ましい。前記段階的移動は、例えば基材チューブの排出側などの位置への加熱炉の移動、しばらくの間この位置を維持すること、その後に加熱炉を、例えば基材チューブの供給側などの元の位置または別の位置に戻すことを含むものと理解される。この後者の位置は、望ましくはしばらくの間、同様に維持され、そして加熱炉は、再度基材チューブの排出側の位置に移動される。例えば供給側から排出側に向かって、加熱炉を段階的に移動させることもできる。該移動の間に、加熱炉は、従って基材チューブの長さに沿って特定位置にしばらくの間静止し、その後、加熱炉はその進路を進み続け、再び停止される。このような速度プロファイルに従って、加熱炉は、時間の観点から見て、段階的に基材チューブの長さに沿って相互に動かされる。前記サイクルは、全堆積プロセスの間または一部の堆積プロセスの間に繰り返されてよい。本発明者は、上記の加熱炉の移動のサイクル時間が望ましくは1秒から600秒の範囲であることを見いだした。600秒を超える値は、プロファイルの障害につながり、一方で1秒未満の値は、CSAの意図した均一性および屈折率プロファイルに関して不十分な結果につながる。それに加えて、1秒未満の値は、機械的問題につながる可能性がある。基材チューブの長さに沿って移動する加熱炉およびアプリケータを用いる実施形態では、加熱炉のサイクル時間とアプリケータのサイクル時間との比率は、整数値に等しくならないことが望ましい。前述の比率を決めるために、最長のサイクル時間の割合と最短のサイクル時間の割合が取得されなければならない。
【0084】
基材チューブにわたる加熱炉の移動は、用いられるマイクロ波の1/4波長の奇数倍に等しいことが望ましい。実際には、適切なマイクロ波は、例えば2.45GHz、890MHzまたは5.8GHzの波長を有する。実際には、30,90,150mmなどの距離が特に用いられる。「移動」という用語は、加熱炉が基材チューブの長手方向に移動される距離と理解されるべきである。
【0085】
本方法の別の実施形態によれば、加熱炉は、基材チューブの供給側と排出側の2つの位置間で連続的に移動する。加熱炉が移動される距離は、用いられるマイクロ波の1/4波長の奇数倍である場合が好ましい。加熱炉のサイクル時間をアプリケータのサイクル時間と比べるとき、最長のサイクル時間の割合と最短のサイクル時間の割合が整数値に等しくない場合がさらに望ましい。実用的な理由から、5cm/sec未満の加熱炉の移動速度、特に1cm/sec未満が用いられる。
【0086】
これまで移動する加熱炉が説明されているが、特定の実施形態では、加熱炉に基材チューブの長さに沿って移動する部分または要素を与えることも可能である。このような実施形態では、堆積プロセスの間に、時間の観点から見て、加熱炉それ自体は静止位置を取り、一方で基材チューブの周囲に同軸に配置された望ましくは金属から成る部分または要素は、基材チューブの長さに沿ってマイクロ波エネルギーの乱れを防ぐように移動される。
【0087】
本発明の別の実施形態によれば、当業者に知られるような接続を含む基材チューブは、静止した加熱炉およびアプリケータに対し移動可能である。
【0088】
本明細書で用いられる「長手方向軸に沿って移動可能」という表現は、基材チューブの長さに沿った移動と理解されるべきである。この移動は、その長手方向から見て、基材チューブと平行だけでなく、一定の角度で、例えば上部側から底部側へまたは前部側から後部側へ行うことができる。ガラス層がガラス基材チューブの内側に堆積した後、ガラス基材チューブは、その後に加熱により固体ロッドに収縮される(「中実化(collapsing)」)。一実施形態では、固体ロッドはさらに、例えば、外部蒸着プロセスによって、または一つまたは複数の前もって作られたガラスチューブを用いて、追加的なガラス量を外部から与えられてもよく、このようにして複合プリフォームが取得されてもよい。このように生成されたプリフォームから、その一端が加熱され、光ファイバを生成するための線引きタワー(drawing tower)において線引きにより光ファイバが取得される。
【0089】
ここで、本発明は、いくつかの実施例に基づき説明するが、その関係で、本発明は、そのような特定の実施例に決して限定されないことに留意すべきである。
【0090】
比較例1
PCVDプロセスは、静止した基材チューブ、前記基材チューブにわたって相互に移動する加熱炉、および前記基材チューブにわたって相互に移動するアプリケータを含むPCVD装置中で実施され、そのプロセスの間、ガラス形成前駆体が基材チューブの内部へ供給された。加熱炉の有効長(すなわち加熱炉壁の厚さを除いた内法長さ)は、約1.7メートルである。基材チューブの長さは、約2メートルである。アプリケータの長さは、約0.2メートルである。アプリケータは、約330ミリメートル/秒の速度で移動する。基材チューブの外径は39ミリメートルで、基材チューブの内径は34ミリメートルである。基材チューブの内部に広く行き渡る条件下で、通常のアプリケータ速度30センチメートル/秒を使用して、同心のガラス層が堆積された。
堆積プロセスが終了した後、そのようにして得られた基材チューブが収縮プロセスを受けて固定ロッド(一次プリフォーム)を得た。図1は、軸方向位置の関数として、そのようにして取得されたロッドのコアの断面積(CSA)を示し、図3はアルファ値を示す。図1および3は、ガラスロッドの軸方向位置にわたって不均一性が存在することを示している。このような不均一性は、それから得られる光ファイバの、モードフィールド幅および帯域幅の減衰および均一性など、多くの品質パラメータに悪影響を及ぼす。
【0091】
実施例
実施例1
比較例1と同じPCVDプロセスが用いられたが、酸素の一つの長いパルスが与えられたという違いがあった。このパルスは、1240ミリメートルの軸方向位置で開始され(図2および4のXを参照)、750ミリ秒の持続時間を有し、ガスが流れる開口の大きさはオリフィスno.28(0.011mn/時のKvパラメータ値)を有し、1.5barの圧力を有する。そのようにして得られた基材チューブは、比較例1と同じようにして固体ロッドに形成された。
【0092】
実施例2
実施例1と同じPCVDプロセスが用いられたが、5%フロン(95%酸素)の5パルスが与えられたという違いがあった。このパルスは、1240ミリメートルの軸方向位置で開始され、1140,1020,900,780,および660ミリメートルで繰り返され(図5のアスタリスクを参照)、50ミリ秒の持続時間を有し、ガスが流れる開口の大きさはオリフィスno.28(0.028インチ)(0.011mn/時のKvパラメータ値)を有し、1.8barの圧力を有する。そのようにして得られた基材チューブは、比較例1と同じようにして固体ロッドに形成された。
【0093】
比較例1
そのようにして得られた固体ロッドは、比較例1で得られた固体ロッドと同じ測定を受けた。
図2は、軸方向位置の関数として、そのようにして取得されたロッドのコアの断面積(CSA)を示し、図4は、アルファ値を示す。図2および4は、本発明の効果を示す。図4は、アルファ値に関して、ガラスロッドの軸方向位置にわたって均一性が存在することを示す。このような均一性は、比較例1に存在している悪影響を取り除いている。
従って、上述の本発明の一つまたは複数の目的は到達された。本発明のより多くの実施形態は、添付の特許請求の範囲で言及されている。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCVD堆積プロセスを実施する方法であって、
i)ガラス基材チューブを設けるステップと、
ii)ステップi)の基材チューブに一つまたは複数のガラス成形ガスを供給するステップと、
iii)ステップii)の基材チューブの少なくとも一部にマイクロ波放射によりプラズマを誘発させて、基材チューブの内面上に一つまたは複数のガラス層の堆積を生じさせるステップと、を備え、
少なくとも一つのプラズマ反応ガスが、ステップiii)の間に、基材チューブの長さに沿ってプラズマの軸方向位置に応じて、一つまたは複数のパルスで基材チューブに供給され、
プラズマ反応ガスの複数のパルスが提供され、プラズマ反応ガスの複数のパルスが、ステップii)のマイクロ波の波長の半分(1/2)に等しいまたはその奇数倍に等しい基材チューブの長さに沿った長手方向間隔(ミリメートル)で供給されることを特徴とする方法。
【請求項2】
PCVD堆積プロセスを実施する方法であって、
i)ガラス基材チューブを設けるステップと、
ii)ステップi)の基材チューブに一つまたは複数のガラス成形ガスを供給するステップと、
iii)ステップii)の基材チューブの少なくとも一部にマイクロ波放射によりプラズマを誘発させて、基材チューブの内面上に一つまたは複数のガラス層の堆積を生じさせるステップと、を備え、
プラズマ反応ガスの少なくとも一つが、ステップiii)の間に、基材1の長さに沿ってプラズマの軸方向位置に応じて、一つまたは複数のパルスで基材チューブに供給され、 プラズマ反応ガスの一つの単一パルスが供給され、前記パルスの長さおよび位置が、基材チューブの長さにわたって堆積したガラスの厚さまたは組成の変動である堆積変動に対応する長手方向位置に落ちるよう選択されることを特徴とする方法。
【請求項3】
パルスは、250から1000ミリ秒の持続時間を有し、好ましくは500から750ミリ秒の持続時間を有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
マイクロ波が12センチメートルであり、パルス間隔が6センチメートルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
パルスの持続時間が1から100ミリ秒、例えば25から75ミリ秒であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
プラズマ反応ガスの圧力が0.5から5bar、好ましくは1から2bar、より好ましくは約1.5barであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
プラズマ反応ガスが、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素、およびそれらの一つまたは複数の化合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
マイクロ波誘発プラズマにより、供給側および排出側を有するガラス基材チューブの内面上に一つまたは複数のガラス層が堆積されるPCVD堆積プロセスを実施する装置であって、
マイクロ波アプリケータと、マイクロ波を誘導するとともにプラズマを形成するマイクロ波ガイドとを備え、
該アプリケータは、基材チューブの供給側に位置する反転点と基材チューブの排出側に位置する反転点との間で前記基材チューブに沿って移動可能であり、
当該装置は、基材チューブの供給側にガラス成形ガスおよびプラズマ反応ガスを提供するガス注入装置を備え、
プラズマ反応ガスは、PCVD堆積プロセスの間に、基材チューブの長さに沿ったアプリケータの軸方向位置に応じて、一つまたは複数のパルスで供給されることを特徴とする装置。
【請求項9】
前記ガス注入装置は、プラズマ反応ガスの流れを制御するバルブ、好ましくは高速バルブを備えることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
コントローラ、好ましくはマイクロコントローラを備えることを特徴とする請求項8または9に記載の装置。

【公開番号】特開2013−107820(P2013−107820A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−252922(P2012−252922)
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【出願人】(507112468)ドラカ・コムテツク・ベー・ベー (39)
【Fターム(参考)】