説明

PD−1特異抗体およびその使用

本開示内容の1つの態様は、PD−1アゴニストとして作用し、それによってPD−1により調節される免疫応答を調整することができる抗体を提供する。本開示内容の他の態様は、PD−1特異抗体を含む組成物および免疫応答を下方制御する方法におけるそれらの使用を提供する。これらの方法は、ヒトまたは動物を含むいずれの対象に対しても実施することができる。本明細書中で開示される抗PD−1抗体は、本発明の他の態様では、生体試料中のPD−1またはその断片を検出するために用いられ得る。検出されたPD−1の量は、PD−1の発現レベルと相関し得るし、対象における免疫細胞の活性状態(例えば、活性化T細胞、B細胞および/または単球)に関係し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2008年9月12日に出願された米国仮出願第61/096,485号の利益を主張し、その開示内容は図、表およびアミノ酸または核酸配列の全てを含む全体を引用により本明細書の一部とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
(発明の概要)
本開示内容の1つの態様は、PD−1のアゴニストとして作用し、それによってPD−1により調節される免疫応答を調整し得る抗体を提供する。1つの実施形態において、抗PD−1抗体は新規な抗原結合性フラグメントであってよい。本明細書で開示される抗PD−1抗体は、ヒトPD−1に結合することができ、PD−1の活性を刺激し、それによってPD−1を発現する免疫細胞の機能を抑制することができる。本開示内容において使用する例示的な抗体は、限定するものではないが、クローン10により産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。
【0003】
本開示内容の別の態様は、PD−1特異抗体を含む組成物および免疫応答を下方制御する方法におけるそれらの使用を提供する。これらの方法は、ヒトまたは動物を含むいずれの対象にも実施することができる。特定の実施形態では、抗PD−1抗体を用いて、T細胞の応答を低下させることにより免疫障害を処置または予防する。PD−1特異抗体を対象に投与することにより処置することができる非制限的な免疫障害には、限定するものではないが、関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、クローン病、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、過剰増殖性免疫異常(hyperproliferative immune disorder)、癌および感染症が挙げられる。本発明のこの態様の幾つかの実施形態では、別個の重ならないエピトープに結合する2つのPD−1特異抗体を用いることができる。
【0004】
本明細書中で開示される抗PD−1抗体は、本発明の他の態様では、生体試料中のPD−1またはその断片を検出するために用いることができる。検出されるPD−1の量は、PD−1の発現レベルと相関し、対象における免疫細胞の活性状態(例えば、活性化T細胞、B細胞および/または単球)と関係する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】ヒトPD−1トランスフェクタントに結合する抗体の検出。ヒトPD−1の細胞外領域を発現する構築物(パネルAおよびB)またはクローン19抗PD−1抗体の結合に影響を及ぼす変異型(L16R;パネルC)もしくはクローン10抗PD−1抗体の結合に影響を及ぼす変異型(L103E;パネルD)で細胞をトランスフェクトした。前記細胞を、アイソタイプ対照抗体(パネルA)またはクローン19抗体(パネルBおよびC)またはクローン10抗体(パネルD)で標識し、続いてAlexa647標識二次抗体で標識した。トランスフェクトされた293T細胞はeGFP陽性(X軸)である。抗体の結合はy軸で示される。
【図2】PD−1エピトープ・スクリーン。HEK293T細胞中で全長のタンパク質として発現された各PD−1変異体に関するGFP細胞のAlexa647蛍光強度の幾何平均を示す。
【図3】抗PD−1抗体のエピトープ。HEK293T細胞における一残基変異のPD−1の発現後の抗体の結合分析により、エピトープをマッピングした。変異させた場合にクローン2、10および19抗体の結合を部分的にまたは完全に抑制するヒトPD−1残基に相当するマウスPD−1残基を、マウスPD−1結晶構造(Zhang et al. Immunity 20, 337-47 (2004))上に、黒色で強調する。変異させた場合でも抗体の結合性に影響を及ぼさないヒトPD−1残基の相当するマウス残基を、灰色に着色する。非結合性の変異体の変異させた残基の番号は、各抗体ごとに結晶構造に沿って示す。この分析結果に基づけば、クローン2とクローン10抗体とは、PD−1と結合する際に互いに競合し得る。
【図4A】hPD−1/mCD3ζWT/mCD28キメラに結合する抗PD−1抗体により誘導されるIL−2分泌。(図4A)ヒトPD−1の細胞外領域とマウス(m)TCRζおよびCD28の膜貫通領域および細胞質領域とからなるキメラを、DO11.10細胞中で発現させた。
【図4B】hPD−1/mCD3ζWT/mCD28キメラに結合する抗PD−1抗体により誘導されるIL−2分泌。(図4B)細胞を固定化した抗CD3(KT3)または抗PD−1抗体で処理し、放出されたIL−2の量を測定した。
【図5】トシル活性化(tosyl-activated)DYNALBEADS上にロードされたモノクローナル抗体の定量。使用したローディングあたりの抗ヒトCD3 OKT3抗体の量(総量2.5μgの抗体による10ビーズ)をx軸に示す。抗体の残量は、ラビットIgGまたは抗PD−1抗体(クローン19、クローン10、クローン2)で構成され、2.5μg総量であった。検出されたビーズあたりのIgG1(ラビットIgGまたは抗PD−1抗体;赤棒)またはIgG2a(OKT3;青棒)の分子数をy軸に示す。緑の矢印は、図6で示される実験に使用するために選択したビーズを示す。値は、二重試験の結果である。
【図6】トシル活性化(tosyl-activated)DYNALBEADSに連結された抗PD−1抗体の滴定。PBLのバルク調製物を、抗CD3抗体と増加量の抗PD−1抗体(クローン19またはクローン10)とを有するビーズと一緒にインキュベートした。ロードされた10ビーズあたりの抗PD−1抗体の量(10ビーズあたり総量2.5μgのmAb)をx軸に示す。増殖(y軸)は、5日目にCFSE希釈により測定した。棒は三重試験の平均値±SDを表す。
【図7】2つの抗PD−1抗体の滴定による、PD−1/mCD28キメラ発現DO11.10細胞系の刺激。PD−1/mCD28キメラを発現するDO11.10細胞を抗PD−1クローン19抗体(100μg/ml〜0μg/ml)と抗PD−1クローン10抗体(100μg/ml〜0μg/ml)との滴定物と共にインキュベートした。次いで、細胞をロバ抗マウスIgG抗体(500μg/ml)でコートした96穴プレート中で48時間インキュベートした後、組織培養上清をELISAによりIL−2についてアッセイした。
【図8】Ig含有量に対して定量されたビーズによるT細胞の活性化。PBLからプラスチック付着により単球を除去した(バルクPBL)。抗CD3抗体(OKT3)および抗PD−1抗体(クローン19またはクローン10)を定量し、ビーズあたりの分子数として表現して表(左欄)に示す。増殖(y軸)は、5日目にCFSE希釈により測定した。バーは二重試験±SDである。
【図9】2つの抗体による異なるシグナル伝達の説明。クローン19は、クローン10よりも、hPD−1/mCD3ζWT/mCD28キメラによるより強力なシグナル伝達を示す。PD−1は、ITIM(抑制性、青)とITSM(活性化、赤)チロシンベースのシグナル伝達モチーフとを有する。インビトロ(試験管内)で、クローン19が双方のモチーフのリン酸化を引き起こすのに対し、クローン10ライゲーションは結果的に抑制性モチーフのみをリン酸化し、より強力な抑制性のシグナル伝達をもたらすことが示される。
【図10A】hPD−1/mCD28キメラに結合する抗PD−1抗体により誘導されるIL−2分泌。(図10A)ヒトPD−1の細胞外領域とマウスCD28の膜貫通領域および細胞内領域とから成るキメラをDO11.10細胞に発現させた。
【図10B】hPD−1/mCD28キメラに結合する抗PD−1抗体により誘導されるIL−2分泌。(図10B)上記細胞を、固定化した抗CD3抗体(KT3)または抗PD−1抗体により処理し、放出されるIL−2の量を測定した。
【図11A】単量体のシグナル伝達タンパク質に結合する抗体ペアにより誘導される強力なシグナル伝達。(図11A)二価抗体はシグナル伝達ドメインの高い局所的な密度を作り出すことができるため、ホモ二量体の受容体による強力なシグナル伝達を引き起こすことができる。
【図11B】単量体のシグナル伝達タンパク質に結合する抗体ペアにより誘導される強力なシグナル伝達。(図11B)対照的に、抗体は、単量体の受容体、例えばPD−1のペアを集めることができるだけで、非常に弱い強度のシグナル伝達を導く。
【図11C】単量体のシグナル伝達タンパク質に結合する抗体ペアにより誘導される強力なシグナル伝達。(図11C)重ならない2つのエピトープに結合する抗体を用いることにより、単量体のシグナル伝達受容体のより高い密度を作りだせ、より強力なシグナル伝達を作り出せる。
【図12】表面プラズモン共鳴ベースの分析により決定されたクローン2、10および19抗体の解離速度。3つの抗体および陰性対照(OX−7)をバイオセンサー表面に間接的に、すなわち共有結合により連結されたラビット抗マウスFc抗体を介して、結合させた。次いで、単量体の可溶性ヒトPD−1を、10mM Hepes、150mM NaCl、pH7.4の緩衝液中で、固定化した抗体に対して飽和濃度で注入した。可溶性PD−1の注入に続いて、緩衝液のみを注入し、同時に各抗体からの結合した可溶性PD−1の解離を可能にした。解離速度は、抗マウスFc抗体から解離するOX−7の解離速度を差し引いた後に、Origin v.5.0ソフトウェア(MicroCal Software Inc, Northampton, MA)を用いてフィッティングした。
【図13】抗PD−1抗体によるCD4T細胞増殖の抑制。CD4T細胞を、ヒトPBLから陰性選択により精製し、抗CD3に加えて対照(BSAまたはMOPC21)またはクローン10抗体でコートしたダイナビーズと一緒にインキュベートした。増殖(y軸)を6日目にH−チミジン取り込みにより測定した。バーは最大応答の%を表し(抗CD3/BSA)、4つの異なるドナー培養液の平均値+/−S.E.Mである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(発明の詳しい説明)
本明細書で用いられる用語「抗体」は、免疫グロブリンまたはそのフラグメントもしくは誘導体を表し、インビトロまたはインビボ(生体内)で産生されたかどうかに関わらず、抗原結合部位を含むいずれかのポリペプチドを包含する。従って、抗体には、限定するものではないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、多特異性抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド抗体、変異導入抗体およびグラフト化抗体(gragted antidobies)が含まれる。
【0007】
用語「抗体フラグメント」または「抗原結合性フラグメント」には、Fab、F(ab')、Fv、scFv、Ed、dabなどの抗体フラグメント、および抗原結合機能、すなわち特異的にPD−1と結合する能力を保持するおよび/または本明細書中で開示されるモノクローナル抗体から生成される他の抗体フラグメントが含まれる。これらのフラグメントは、抗原結合ドメインを含み、また幾つかの実施形態においてはPD−1の機能を刺激することができる。本明細書中で開示される抗体およびそのフラグメントには、親抗体(例えばクローン10および/またはクローン19により産生される抗体)と比較した場合に改変されたグリコシル化パターンを有する抗体が含まれる。
【0008】
上記のように、本明細書中で開示されるPD−1抗体は、PD−1を刺激することにより、リンパ球の活性化および/または増殖をアンタゴナイズできる。用語「活性をアンタゴナイズする」とは、リンパ球の増殖または活性を少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または90%超減少(または低下)を意味する。用語「アンタゴナイズ」は、用語「抑制性」および「抑制」と相互交換可能に用いられ得る。PD−1媒介性活性は、本明細書に記載されるようにT細胞増殖アッセイを用いて定量的に決定することができる。
【0009】
用語「治療上の有効」、「治療上の有効量」、「有効な量」または「有効量で」は、PD−1の活性を刺激し、対象における症状の改善を提供するか、または所望の生物学的応答、例えば低下したT細胞活性等を達成するのに十分な開示抗体の用量または量を示す。
【0010】
用語「単離された」は、その天然環境から実質的に独立した分子を示す。例えば、単離された抗体は、細胞性物質または細胞(例えばハイブリドーマ)もしくはそれらが誘導された他の供給源由来の他のタンパク質を実質的に含まない。用語「単離された」は、単離されたタンパク質が、医薬組成物として投与するのに十分に純粋であるか、少なくとも70〜80%(w/w)純粋、少なくとも80〜90%(w/w)純粋、90〜95%純粋;または少なくとも95%、96%,97%、98%、99%、または100%(w/w)純粋な調製物を示す。
【0011】
本開示内容の1つの態様は、PD−1のアゴニストとして作用し、それによってPD−1により調製される免疫応答を調整することができる抗体を提供する。1つの実施形態において、抗PD−1抗体は新規な抗原結合性フラグメントであってよい。本明細書中で開示される抗PD−1抗体は、例えばヒトPD−1と結合してPD−1を刺激し、それによってPD−1を発現する免疫細胞の機能を抑制することができる。幾つかの実施形態において、免疫細胞は活性化リンパ球、例えばPD−1を発現するT細胞、B細胞および/または単球である。この開示の内容で使用する例示的な抗体は、限定するものではないが、クローン10により産生されたモノクローナル抗体が挙げられる。本発明のこの態様の幾つかの実施形態では、別個の重ならないエピトープと結合する2つのPD−1特異抗体を用いることができる。他の実施形態は、PD−1上のエピトープに結合する他の抗体と競合する抗体を提供する(例えば、クローン10とクローン2)。
【0012】
本明細書に記載される抗PD−1抗体は、別の分子/部分に連結することができる。非制限的な例には、他のペプチドまたはタンパク質(アルブミン、他の抗体等)、毒素、ラジオアイソトープ、細胞毒性薬または細胞増殖抑制薬が挙げられる。用語「連結」または「連結された」は、組換え法による他の分子/部分との化学的架橋または共有結合に関する。本明細書中で開示される抗体は、1つ以上の非タンパク質性のポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンにも連結することができる(例えば、米国特許第4,791,192号;第4,766,106号;第4,670,417号;第4,640,835号;第4,609,546号;第4,496,689号;第4,495,285号;第4,301,144号および第4,179,337号を参照のこと、各々引用により完全に本明細書の一部とする)。
【0013】
抗体は、検出可能なまたは機能的な標識をタグ付けすることができる。検出可能な標識には、99Tcなどの放射標識が挙げられ、それらは標準的な化学を用いて抗体に結合させることも可能である。検出可能な標識には、酵素標識、例えば西洋ワサビペルオキダーゼまたはアルカリホスファターゼも挙げられる。他の種類の検出可能な標識には、ビオチンなどの化学部分が挙げられ、それらは特異的なコグネート検出可能部分、例えば標識アビジンに対する結合を介して検出することができる。
【0014】
本発明の他の態様は、PD−1またはPD−1発現細胞を単離するために、本明細書中で開示される抗体の使用を提供する。本発明のさらなる他の態様は、特異抗原に対する寛容を誘導する方法を提供する。例えば、寛容は、本明細書中で開示される抗原と抗PD−1抗体の同時投与により誘導することができる。本発明のさらなる他の態様は、本明細書中で開示される抗PD−1抗体を投与することを含む、対象における活性化リンパ球により調整される免疫応答を低下させることに関する。本発明の他の態様では、PD−1を刺激し、免疫応答を下方制御するための(幾つかの場合には、活性化リンパ球の増殖を抑制または低下させるための)、開示抗PD−1抗体の使用を提供する。具体的な実施形態において、免疫応答はTcR/CD28媒介型である。本明細書中で記載するように、アレルギー、関節リウマチ、I型糖尿病、多発性硬化症、炎症性腸疾患、クローン病、全身性エリテマトーデス、組織、皮膚および器官の移植片拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)は、抗PD−1抗体の投与を介して処置し得る。本発明のこの態様の幾つかの実施形態では、別個の重ならないエピトープに結合する2つのPD−1特異抗体を使用することができる。
【0015】
本開示内容の他の態様は、PD−1特異抗体を含む組成物および免疫応答を下方制御する(または、活性化T細胞、B細胞または単球細胞の増殖を低下させる)方法を提供する。これらの方法は、いずれの対象、例えばヒトまたは動物においても実施することができる。特定の実施形態において、抗PD−1抗体は、T細胞応答を低下させることによって免疫異常を処置または予防するために用いられる。PD−1特異抗体の投与を介して処置することができる免疫異常の非制限的な例としては、限定するものではないが、関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、クローン病、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、過剰増殖性免疫異常、癌、および感染症が挙げられる。本発明の更なる他の態様は、炎症性病変におけるリンパ球(T細胞、B細胞および/または単球)の活性を抑制または低下させることを提供する。本発明のこの態様の幾つかの実施形態は、別個の重ならないエピトープに結合する2つのPD−1特異抗体を用いることができる(そのような抗体は、所望のインビボ活性を与えるように同等の親和性を有し得る(例えば、クローン19およびクローン2))。
【0016】
図12で示すように、クローン10により産生された抗体は、PD−1に対して比較的低い親和性を有する。そのような低い親和性抗体は、PD−1のリガンドと類似の様式で用いることができる。例えば、クローン10抗体は非常に速い解離速度(PD−1の天然リガンド(すなわち、PD−L2)の解離速度と類似する解離速度)を有する。速い解離速度は、インビトロにおいてクローン10による良好なシグナル伝達を与える。これは、複数のPD−1分子の「連続的な会合(serial engagement)」を可能にし得るためである。かくして、クローン10により産生される抗体のような抗体は、複数のPD−1分子を会合させ、抑制性のシグナル伝達を引き起こすために用いることができる。
【0017】
本明細書中で開示される抗PD−1抗体は、本発明の他の態様において、生体試料中のPD−1またはその断片を検出するために用いることができる。検出されるPD−1の量は、PD−1の発現レベルに相関し、対象における免疫細胞(例えば、活性化T細胞、B細胞および/または単球)の活性状態と関係する。
【0018】
本発明の他の態様は、改変された結合親和性を有する抗PD−1特異モノクローナル抗体を提供する。1つの実施形態は、抗体がPD−1に対して低い親和性を有する(例えば、抗体は0.1秒−1と0.5秒−1との間のまたは0.90秒−1未満の解離速度を有する)ように結合親和性を改変することを提供する。特定の実施形態は、0.10秒−1、0.15秒−1、0.20秒−1、0.25秒−1、0.30秒−1、0.35秒−1、0.40秒−1、0.45秒−1または0.50秒−1の解離速度(off rate)を有する抗体、あるいは0.04秒−1から2.0秒−1(例えば、0.04秒−1、0.05秒−1、0.06秒−1、0.07秒−1、0.08秒−1、0.09秒−1,0.10秒−1、0.15秒−1、0.20秒−1、0.25秒−1、0.30秒−1、0.35秒−1、0.40秒−1、0.45秒−1、0.50秒−1、0.55秒−1、0.60秒−1、0.65秒−1、0.70秒−1、0.75秒−1、0.80秒−1、0.85秒−1、0.90秒−1、0.95秒−1、1.0秒−1、1.10秒−1、1.20秒−1、1.30秒−1、1.40秒−1、1.50秒−1、1.60秒−1、1.70秒−1、1.80秒−1、1.90秒−1または2.00秒−1)までの範囲の解離速度を有する抗体を提供した。そのような結合親和性を有する抗体は、いずれかの適切なプロセスで改変することができる。
【0019】
かくして、抗体(例えばクローン2、クローン10またはクローン19により産生された抗体)の結合親和性は、当分野で公知の様々な方法を介して増強または減弱させることができる。例えば、結合特性は、定方向突然変異、親和性成熟法、ファージディスプレイ法または抗体分子をコードする核酸分子内でのチェインシャッフリング(chain shuffling)により改変することができる。別の方法で特定された抗原結合部位集団において、特定の部位の20アミノ酸全てを調べ、結合特性/親和性を親和性成熟法(例えば、Yang et al. (1995) J. Mol. Biol. 254, 392-403;Hawkins et al. (1992) J. Mol. Bio. 226,889-896;またはLow et al. (1996) J. Mol. Biol. 250, 359-368(各々、引用によりその全部を、特に抗体の結合親和性を低下または増強する方法に関して、本明細書の一部とする)を参照のこと)により改変し得るように、個々の残基または残基の組合せをランダム化することができる。当分野で公知の方法としては、例えば、Marks et al. BioTechnology, 10, 779-783 (1992)が記載する、VHおよびVLドメインシャッフリングによる親和性成熟;Barbas et al. Proc Nat. Acad. Sci, USA 91, 3809-3813 (1994);Schier et al. Gene, 169, 147-155 (1995);Yelton et al. J. Immunol., 155, 1994-2004 (1995);Jackson et al. J. Immunol., 154, 3310-9 (1995);およびHawkins et al. J. Mol. Biol., 226, 889-896 (1992)により記載されるCDRおよび/またはフレームワーク残基のランダム変異導入法が挙げられる。
【0020】
抗体の最適化に関する方策は、時にはランダム変異導入法を用いて実施される。この場合、部位を無作為に選び出すか、または単純な基準を用いてアミノ酸変異が行われる。例えば全ての残基をアラニンに突然変異させることができ、これはアラニンスキャニングと称される。国際特許公開第9523813号(引用により全体を本明細書の一部とする)は、アラニンスキャニング変異導入法を利用して抗体の親和性を改変するインビトロ方法を教示する。アラニンスキャニング変異導入法は、例えば抗体による抗原結合残基をマップするために用いることも可能である(Kelley et al. Biochemistry 32, 6828-6835 (1993);Vajdos et al. J. Mol. Biol. 320, 415-428 (2002))。親和性成熟の配列ベースの方法(例えば、米国特許出願番号第2003/022240A1号および米国特許第2002/177170A1号を参照のこと、双方とも引用により全体を本明細書の一部とする)もまた、抗体の結合親和性を増強または減弱させるために用いることができる。最終的に、親和性が改変された抗体の結合親和性は、本明細書に開示するような方法を用いて決定することができる(例えば、改変された抗体の解離速度は、図12に記載されるように、表面プラズモン共鳴ベースの分析方法により決定することができる)。T細胞は、いずれかのT細胞活性化化合物により活性化できる。実施例で記載するように、そのようなT細胞活性化化合物の1つに、TcRに結合する抗CD3抗体がある。活性化抗CD3抗体は当分野で公知である(例えば、米国特許第6,405,696号および第5,316,763号(各々、引用により全体を本明細書の一部とする)を参照のこと)。活性化TcRシグナルと陰性PD−1シグナルとの比は、当分野で公知の標準的な手法を実験的に用いて決定されるか、または実施例で記載するように決定される。
【0021】
本発明の抗体または抗体組成物は、治療上の有効量で投与される。一般に、治療上の有効量は、対象の年齢、状態および性別、ならびに対象の医学的状態の重篤度により変更され得る。抗体の治療上の有効量は、体重1kgあたり約0.001〜約25mgであり、好ましくは体重1kgあたり約0.01〜約25mgであり、体重1kgあたり約0.1〜20mgであり、または体重1kgあたり約1〜約10mgである。この投薬量は、必要に応じて、処置の観察結果に合わせて調整され得る。適当な用量は、処置する医師により臨床的適応に応じて選択される。
【0022】
他の態様において、本発明の抗体は、PD−1を発現する細胞に、他の治療薬または細胞毒性薬(例えば、毒素)の送達に標的薬剤として用いることができる。本方法は、細胞表面に発現されたPD−1に対する抗体の結合を可能にする条件下で治療薬または細胞毒性薬に連結された抗PD−1抗体を投与することを含む。
【0023】
本発明のさらなる他の態様は、生体試料中のPD−1の存在を検出するための開示した抗体の使用を提供する。検出されるPD−1の量は、PD−1の発現レベルと相関し、同様に、対象における免疫細胞の活性状態(例えば、活性化T細胞、B細胞、および単球)と相関する。
【0024】
本発明は、抗体−抗原複合体の形成を可能にする条件下で、PD−1またはPD−1を発現する細胞を含み得る試料を抗体に接触させることを含む、PD−1ポリペプチドに抗体を結合させる方法を提供する。これらの方法は、前記抗体−抗原複合体の形成を検出する工程をさらに含む。前記複合体は、当分野で公知のいずれかの方法(例えば、蛍光活性化セルソーター、放射免疫測定、または色原体アッセイ(chromogenic assay))を用いて検出することができる。
【0025】
開示内容の他の態様は、抗PD−1抗体を含む組成物を提供する。これらの組成物は、医薬上有用な組成物を製造する公知の方法に従って製剤化することができる。製剤化は、周知および当業者に容易に利用できる、多くの情報源に記載される。例えば、Remington's Pharmaceutical Science(Martin E.W., Easton Pennsylvania, Mack Publishing Company, 19th ed., 1995)は、本発明に関連して用いることができる製剤化を記載する。投与に適した製剤は、例えば対象とする受容人の血液と等張性の製剤を与える抗酸化剤、緩衝液、細菌発育阻止および溶質を含んでいてよい水性滅菌注射液;ならびに懸濁剤および増粘剤を含有してよい水性および非水性滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位服用量または複数服用量容器、例えば密封アンプルおよびバイアルに製造されてよく、ならびに滅菌液体キャリア、例えば使用前の注射液の条件のみを要求する凍結して乾燥させた(凍結乾燥)条件で貯蔵することができる。即座の注射液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、錠剤等から調製することができる。特に上記の成分に加えて、本発明の製剤は検討の製剤タイプに関する分野で慣用される他の成分を含ませることができる。
【0026】
本発明の他の態様は、本明細書中で開示されるPD−1特異抗体をコードする核酸を提供する。例えば、クローン10またはクローン2により分泌される抗体をコードする核酸は、当業者に公知の方法に従って単離することができる。本発明の更なる他の態様は、クローン10またはクローン2により分泌されるようなPD−1特異抗体をコードする核酸を含むベクターおよび形質転換された宿主細胞を提供する。当業者には明らかであるように、本明細書中で開示されるネズミ抗体の定常領域は、ヒト定常領域と置換することができ、ネズミ可変領とヒト定常領域とを含むキメラ抗体を形成させることができる。幾つかの実施形態は、抗体による高いFc受容体結合性を提供する、開示抗体における重鎖定常領域の置換を提供する(例えば、ヒトIgG1、IgG3およびネズミIgG2aアイソタイプ、これらFc受容体に強く結合するものは全て、結合特異性に影響を及ぼさずに開示抗体の可変領域に対してグラフトすることができる)。別には、本明細書中で開示するネズミ抗体由来のCDRを単離し、ヒトフレームワーク領域にグラフトしてヒト化抗体を形成させることができる。最終的に、開示するPD−1特異抗体を作製する方法(例えば、前述のヒト化抗体およびキメラ抗体を作製する方法)もまた本発明により提供される。
【0027】
本明細書中で開示されるハイブリドーマは、2008年9月9日にHPA Culture Collections, Health Protection Agency, Centre For Emergency Preparedness and Response, Porton Down, Salisbury, Wiltshire, SP4 0JG United Kingdomに寄託した。ハイブリドーマの受入番号は以下の通りである:
クローン 2: 08090903;
クローン10: 08090902;および
クローン19: 08090901。
【0028】
上記のように、本明細書中で開示される抗体は、全長のネズミ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体、あるいはそれらのフラグメントまたは誘導体であってよい。1つの実施形態において、抗体は、クローン10または配列番号:2、あるいはa)配列番号:10および配列番号:8;またはb)配列番号:6および配列番号:2を含むモノクローナル抗体と同じエピトープまたは実質的に同一のエピトープに結合する。他の実施形態において、抗体、例えばそのフラグメントまたは誘導体は、クローン10(配列番号:10および8)またはクローン2(配列番号:6および2)と同じまたは実質的に同一のVHおよび/またはVk領域を含む。
【0029】
他の実施形態において、抗体、例えばそのフラグメントまたは誘導体は、クローン10またはクローン2のVkおよびVH配列に見出される配列と同一または実質的に同一のCDR1、CDR2およびCDR3領域を含む。1つの実施形態において、抗体は、a)配列番号:10および配列番号:8、またはb)配列番号:6および配列番号:2、ならびにネズミIgG1定常重鎖領域の配列(ジーンバンク受入番号.D78344、引用により全体を本明細書の一部とする)およびネズミIgG1定常軽鎖領域(ジーンバンク受入番号.V0087、引用により全体を本明細書の一部とする)を含む。本発明の他の態様は、開示抗体をコードする核酸配列、前記配列を含む発現ベクター、前記ベクターを含む宿主細胞、前記宿主細胞から前記抗体を製造する方法を提供する。
【0030】
本発明の抗体のフラグメントおよび誘導体を、当分野で公知の技術により作製することができる。「免疫反応性フラグメント」は、完全抗体(intact antibody)の一部、概して、抗原結合部位または可変領域を包含する。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab'、Fab'−SH、F(ab')、およびFvフラグメント;二重特異性抗体;連続アミノ酸残基の1つの連続配列からなる一次配列を有するポリペプチドであるいずれかの抗体フラグメント(本明細書中では「一本鎖抗体フラグメント」または「一本鎖ポリペプチド」と称する)、限定するものではないが、(1)一本鎖Fv(scFv)分子、(2)会合する重鎖部分を含まず、1つの軽鎖可変ドメインのみを含む一本鎖ポリペプチドまたは軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含むそのフラグメント、および(3)会合する軽鎖部分を含まず、1つの重鎖可変領域のみを含む一本鎖ポリペプチドまたは重鎖の可変領域の3つのCDRを含むそのフラグメント;ならびに抗体フラグメントから形成される多特異性抗体が挙げられる。例えば、FabまたはF(ab')フラグメントは、慣用技術に従って、単離抗体のプロテアーゼ消化により作製することができる。別には、本発明の抗体を産生するハイブリドーマは、本発明のフラグメントをコードするよう、改変することができる。次いで、改変DNAを発現ベクター中に挿入し、適当な細胞を形質転換またはトランスフェクトするために用い、次いで所望のフラグメントを発現させる。
【0031】
他の実施形態において、本発明の抗体を産生するハイブリドーマのDNAを改変して、例えば、ヒト重鎖定常ドメインおよび軽鎖定常ドメインのコード配列を相同な非ヒト配列の正しい場所に置換することによって(例えばMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81, pp. 6851 (1984))、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部もしくは一部の免疫グロブリンのコード配列に共有結合させることによって、発現ベクター中への挿入する。この様式において、元の抗体の結合特異性を有する「キメラ」抗体または「ハイブリッド」抗体を製造することができる。典型的には、そのような非免疫グロブリン・ポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインで置換されている。かくして、本発明の抗体は、所望の生物学的活性を示す限り、その重鎖および/または軽鎖の一部が元の抗体に対応する配列と同一または相同であって、前記鎖(両方の鎖)の残りの部分が他の種由来の抗体または他のクラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一または相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)であってもよい(Cabilly et al., supra; Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81, pp. 6851 (1984))。
【0032】
例示的な実施形態において、クローン10またはクローン2のVHおよびVk配列またはその誘導体もしくはバリアント由来のキメラ組換えmAbが作製される。クローン10またはクローン2のVHおよびVk配列をコードする核酸配列(それぞれ、配列番号:10および8または配列番号:6および2)を、ヒトまたは非ヒト抗体の軽鎖および重鎖の定常領域を含む商業的に入手可能なまたは他の公知の真核生物用の発現ベクター中に、標準的な技術を用いてクローニングする。商業的に入手可能なベクターの1つの例としては、ATCCから入手可能なpASK84(American Type Culture Collection、カタログナンバー87094)がある。次いで、CHO細胞または他の哺乳動物細胞系を、前記ベクターを用いて標準的な方法、例えば「Molecular Cloning”, Sambrook et al」に記載されるような方法によりトランスフェクトする。その結果は、目的の抗体分子、例えばクローン19の元のVHおよびVk領域とヒトmAb由来の定常領域とを含むクローン10または2のキメラ型を安定して発現および分泌するトランスフェクト細胞系である。ヒトIgGの定常領域をコードする完全なcDNA配列は、以下のジーンバンク・エントリーで探し出すことができ、各々、引用により全体を本明細書の一部とする:ヒトIgG1重鎖定常領域;ジーンバンク受入番号:J00228、ヒトIgG2重鎖定常領域;ジーンバンク受入番号:J00230、ヒトIgG3重鎖定常領域;ジーンバンク受入番号:X04646、ヒトIgG4重鎖定常領域;ジーンバンク受入番号:K01316、およびヒト・カッパ軽鎖定常領域;ジーンバンク受入番号:J00241。
【0033】
別には、抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント)を発現させるために、クローン10またはクローン2のVHおよびVk領域またはその変異体もしくは誘導体は、切断型の定常領域をコードするベクター中にクローニングすることができる。抗体のアイソタプスイッチは、同様の原理に従って作製することができる。例えば、クローン10またはクローン2と完全に同じ特異性を有するが異なるアイソタイプの抗体は、ヒト・カッパ軽鎖定常領域とIgG1またはIgG2またはIgG3またはIgG4重鎖定常領域から選択されるヒト重鎖定常領域とをコードするcDNAを含むプラスミドに、VkおよびVH配列をコードするcDNAをサブクローニングすることによって得ることができる。このように、作り出される抗体はいずれかのアイソタプを有することができ、次いで該抗体は当分野で一般的な技術を用いてアイソタイプスイッチさせることが可能である。そのような技術には、直接的な組換え技術の使用(例えば、米国特許第4,816,397号を参照のこと)、細胞−細胞融合技術(例えば、米国特許第5,916,771号を参照のこと)、および当分野で公知の適切な他の技術が含まれる。従って、本発明により提供される抗体のエフェクター機能は、様々な治療または他の使用のために、親の抗体のアイソタイプについてはアイソタイプスイッチにより、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM抗体に「変える」ことができる。
【0034】
他の実施形態に従い、本発明の抗体はヒト化される。本発明による抗体の「ヒト化」型には、ネズミ免疫グロブリンから誘導される最小の配列を含む、特異的なキメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖またはフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')、または抗体の他の抗原結合部分配列)がある。大抵の場合、ヒト化抗体は、受容側の相補性決定領域(CDR)由来の残基が元の抗体(提供側の抗体)のCDR由来の残基により置換されるが、元の抗体の所望の特異性、親和性および受容力を保持する、ヒト免疫グロブリン(受容側の抗体)である。幾つかの実施形態において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基により置換されてよい。さらに、非ヒト抗体は、受容側の抗体またはインポートされたCDRもしくはフレームワーク配列のいずれでも見出されない残基を含んでいてよい。これらの改変は、抗体の性能をさらに改良し、最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインを実質的に全部含み、そのCDR領域は全部または実質的に全部が元の抗体のCDR領域に対応し、また、そのFR領域の全部または実質的に全部はヒト免疫グロブリン定常配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、随意に、少なくとも免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのFcの一部を含み得る。さらなる詳細に関しては、Jones et al., Nature, 321, pp. 522 (1986);Reichmann et al., Nature, 332, pp. 323 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2, pp. 593 (1992)を参照のこと。従って、クローン10またはクローン2のVHおよびVkのCDR領域とヒトmAb由来のフレームワーク領域とを含むクローン10またはクローン2のヒト化型は、公知の定常およびフレームワークヒトmAb配列と当分野で確立された技術とを、本明細書に記載するように用いることで作り出すことができる。クローン2のVH CDR1ドメインを含むいずれかのヒト化抗体に関して、前記ドメインは配列番号:18または配列番号:18のアミノ酸6〜10を含み得る。クローン10のVH CDR1ドメインを取り入れるいずれかのヒト化抗体に関して、前記ドメインは配列番号:24または配列番号:24のアミノ酸6〜11を含んでいてよい。
【0035】
本発明の抗体をヒト化する方法は、当分野で周知である。一般に、本発明にかかるヒト化抗体は、元の抗体からヒト化抗体に導入された1つ以上の残基を有する。これらのネズミまたは他の非ヒトアミノ酸残基はしばしば、「インポート」残基と称され、それらは典型的には「インポート」可変ドメインから得られる。ヒト化は、本質的には、Winterと協力者の方法(Jones et al., Nature, 321, pp. 522 (1986); Riechmann et al., Nature, 332, pp. 323 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239, pp. 1534 (1988))に従って実施される。従って、そのような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(Cabilly et al., U.S. Pat. No. 4,816,567)、実質的に完全なヒト可変ドメインではなく、元の抗体に由来する対応配列で置換されている。実際には、本発明にかかるヒト化抗体は、典型的には、幾つかのCDR残基また可能な幾つかのFR残基が元の抗体の類似部位の残基により置換されたヒト抗体である。
【0036】
実施例
実施例1−抗PD−1抗体を作出する方法
1.1 ミエローマ細胞系
融合に関しては、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (DSMZ GmbH, Braunschweig)からのミエローマ細胞系SP2/0−Ag14を用いた。この細胞系は、BALB/c脾臓細胞とミエローマ細胞系P3x63Ag8とのハイブリッドである。この細胞は、免疫グロブリン鎖を合成も分泌もせず、20μg/mlの8−アザグアニンに耐性であり、HAT(ヒポキサチン、アミノプテリン、チミジン)培地中で生育しないと記載されている。SP2/0細胞は、組織培養フラスコ中の標準的な増殖培地(10%のFCSを含む)にて慣用的に維持される。HGPRT陽性の復帰突然変異の実行を避けるために、凍結SP2/0細胞の新たな一部を2週間後に用いた。ミエローマ細胞は、全てのマイコプラズマ試験で陰性であることが示された。
【0037】
1.2 免疫化のための抗原およびスクリーニング
組換えタンパク質PD−1Fcを、CD28Fcの調製に関して記載された方法(Evans et al. Nat Immunol. 6, 271-9 (2005))を用いて作製し、0.01M HEPES、150mM NaCl、pH7.4中、5.1mg/mlに濃縮した。還元および非環元条件下で実施される抗原のSDS−PAGE分析により、タンパク質の純度が>95%であることを確かめた。
【0038】
1.3 免疫化
5匹のマウス(約8週齢)を、60日に亘る免疫プロトコルを用い、腹膜腔内を介して免疫した。免疫に関し、免疫原のミョウバン沈殿物を調製した。ミョウバン沈殿物を各ブーストのために新たに調製した。マウスを50μgのタンパク質で免疫し、25μgのタンパク質でブーストした。融合体には3匹のマウスを用いた。
【0039】
1.4 細胞の一般的な取扱い
細胞は、層流空気流システム、滅菌材料および滅菌溶液を用いた滅菌条件下で取り扱った。細胞は、5%二酸化炭素を含む湿潤雰囲気下37℃でインキュベートした。ハイブリドーマ細胞の培養では、DMEMを含み、2−メルカプトエタノール、L−グルタミン、グルタマックス(GlutaMax)、HT、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、抗生物質/抗真菌溶液(供給業者が推奨する濃度)、および種々の濃度のFCS(10%、15%または20%)を含有する完全培養基(CGM)を用いた。
【0040】
1.5 脾臓細胞の調製および細胞融合
3匹の免疫マウスをCO下で窒息させた後に、脾臓を防腐処理して取り出した。プールした脾臓の単一細胞懸濁液を調製した。脾臓細胞およびミエローマ細胞を、DMEMで複数回洗浄し、1mlの50%(w/v)PEG3550の存在下で融合させて二倍にした(脾臓細胞対SP2/0 2.5:1および2.4:1)。作製したハイブリドーマを、20%FCSおよびアミノプテリンを含有するCGM(HAT培地)に懸濁した。各融合体の細胞懸濁液(140Cl/ウェル)を、20%FCSを含むCGM中で1ウェルあたり140Clの腹膜浸出細胞をフィーダー細胞として含む96ウェル組織培養平底プレート(Corning-Costar)8枚に撒いた。前記プレートを10日間インキュベートした。この期間中に、細胞に2回HAT培地を供給した。脾臓細胞調製物の一部(約8×10脾臓細胞)を、24ウェルプレートのウェル中で10日間培養し、細胞培養上清をELISAの陽性対照として供した。
【0041】
1.6 スクリーニングアッセイ
細胞培養上清中のIgGスクリーニングのために、ELISAを用いた。0.5M 炭酸/重炭酸緩衝液、pH9.6中のPD−1Fc抗原(5μg/ml)を1ウェルあたり50μlを用いて、96ウェル平底ポリスチレンマイクロタイタープレート(Greiner, Cat. No 655061)をコートした。4℃の湿室で一晩インキュベートした後、プレートを0.01%トライトン(Triton)X−100を含むトリス緩衝食塩水(TBS、50mM Tris、pH7.8、500mM 塩化ナトリウム)(洗浄緩衝液)を用いて洗浄し、TBS中の2%FCSを1ウェルあたり200μl用いて室温(RT)にて1時間、攪拌器上でブロッキングした。ウェルを洗浄緩衝液にて洗浄し、100μlの細胞培養上清を適当なウェルに加えた。SP2/0ミエローマ細胞からの細胞培養上清を陰性対照として用いた。陽性対照として、脾臓細胞培養からの細胞培養上清を用いた。プレートを、攪拌器上で1時間RTにてインキュベートし、続いて複数回洗浄した。結合抗体の検出のために、ブロッキング緩衝液中のアルカリホスファターゼがコンジュゲートされたヤギ抗マウスIgG(Fab特異的)(1:5000)を1ウェルあたり50μl用いて、1時間RTにて攪拌器上で、プレートをインキュベートし、続いて複数回洗浄し、そして1ウェルあたり150μlの基質緩衝液(5%ジエタノールアミン+0.5M MgCl中の2mM 4−ニトロフェニルリン酸、pH9.8)を添加した。光学密度(OD)を、12チャネルのDynex Opsys MRマイクロプレートリーダーにて405nmで評価した。OD405nmの平均プレート値よりも2倍以上高いOD405nmを有するウェルを陽性として選択した。
【0042】
1.7 安定抗体産生体の選択
IgG産生陽性の培養物由来の細胞を、48ウェルプレートのウェルに移し、数日間(細胞の増殖特性に依存する)培養した。特異的な結合体を選択するために、PD−1Fcに対するELISAを予め抗原をコーティングせずに実施した。ELISA−陽性ウェルの細胞を、凍結用培地(90%FCS、10%DMSO)中で凍結した。一部の細胞を、さらなる特徴づけのための細胞培養上清の調製のためにさらに培養した。
【0043】
1.8 限界希釈クローニング
陽性ウェルが特定されるとすぐに、ハイブリドーマ細胞を、非産生細胞の過増殖の危険を小さくするためにクローン化した(最初のクローニング)。抗体が本当にモノクローナルであることを確認するために、ハイブリドーマを再びクローン化した(第2のクローニング)。限界希釈法を両方のクローニング手順に用いた。IgG産生細胞を、フィーダー細胞を1ウェルあたり1〜3細胞の密度で含む96ウェルプレート1枚に分配した。8〜10日(増殖特性に依存する)後に、全てのプレートを、単クローン増殖検出のために顕微鏡下で可視的に検査した。該ウェルからの培養上清を、上記のスクリーニングアッセイを用いて特異的な免疫グロブリン内容物をスクリーニングした。増殖特性およびELISAシグナルに関して適当なクローンを選択し、24ウェルプレートのウェルに移して数日間培養した。スクリーニングアッセイを行った。この手順を2回または3回繰返した。適当なサブクローンを第2のクローニング手順または低温保存用の培養のために別々に選択した。この手順の結果、3つの抗PD−1抗体が得られた:クローン2、クローン10およびクローン19。クローン2は、そのエピトープおよび結合の解離速度に関してのみ特徴付けた。
【0044】
実施例2−クローン10およびクローン19抗体の特徴づけ
2.1 抗体の特性を特徴づけるために用いた試薬
以下の直接標識抗体を用いた:ロバ抗マウスIgG Alexa647コンジュゲート(Molecular Probes)、抗ヒトCD4 Alexa647コンジュゲート(Serotec Ltd)および抗ヒトCD4 FITCコンジュゲート(Serotec Ltd)。OX7(mIgG培養上清;社内品)およびMOPC21(mIgG;Sigma-Aldrich Ltd)を、アイソタイプ対照として用いた。アイソタイプ特異的PE標識ヤギ抗マウスIgGおよびIgG2a抗体(それぞれSTAR81PEおよびSTAR82PE)をSerotec Ltdから入手し、他のネズミIgサブクラスとは<1%の交差反応性を示した。ヨウ化プロピジウムおよびラビットIgGはSigma Ltdから入手した。上記のように作製したクローン19抗PD−1抗体を、キットを用い、製造元(Molecular Probes)の指示に従ってAlexa647にコンジュゲートした。細胞培養上清中のIL−2レベルを、DuoSet Human IL-2 ELISA Kit(R&D Systems Ltd)を用いて定量した。
【0045】
2.2 抗体の調製およびアイソタイピング
ハイブリドーマ上清を調製し、アザイドを含まない滅菌PBS中に希釈した。精製したモノクローナル抗体ストックを、IsoStrip Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Kit (Santa Cruz;sc−24958)を用いてPBS中1μg/mlでアイソタイピングした。クローン19、クローン10およびクローン2のアイソタイプは、IgG1κであった。
【0046】
2.3 エピトープマッピング
PD−1のヒト細胞外領域とマウスCD28の膜貫通領域および細胞内領域とをコードする構築物を、BioSignal Packard LtdからのGFPもコードするバイシストロニック性の哺乳動物発現ベクターpGFP2−n2中にクローニングした。1アミノ酸を改変した変異体構築物を、「ドラスチック」ミュータージェネシス・アプローチ(Davis et al. Proc Natl Acad Sci USA. 95, 5490-4 (1998))を用いて調製した。Genejuiceトランスフェクション試薬(Novagen;6μl/ウェル)を用いて、プラスミド(2μg/ウェル)を6ウェルプレート中のHEK−293T細胞にトランスフェクトした。モックおよび非トランスフェクション対照を各実験に含めた。細胞を18〜24時間で回収し、PBS−アザイド中10μg/mlの抗PD−1抗体またはアイソタイプ対照を用いて1時間4℃で染色した。細胞をPBS−アザイドにより洗浄し、1500rpmで5分間ペレット化し、PBS−アザイド中で、一次抗体をAlexa647コンジュゲート・ロバ抗マウスIgG(5μg/ml)を用いて30分間4℃で標識した。細胞を上記のように洗浄し、200μlのPBS−アザイド中に再懸濁し、フローサイトメトリーで分析した。ヨウ化プロピジウム(5μg/ml)をすぐに添加し、死細胞を特定するために分析した。GFP−陽性(トランスフェクトされた)可視細胞を分取し、抗PD−1抗体の結合性について分析した。変異体を、「ノックアウト」(抗PD−1抗体により結合される細胞のパーセンテージを減少させる)または「ノックダウン」(他のPD−1抗体に比例して抗体染色の強度を下げる)と特定した。
【0047】
トランスフェクションに続いて、フローサイトメトリーで分析した細胞は、ヨウ化プロピジウム排出により85〜90%生存であった。結合性分析の例を図1に示す。トランスフェクション効率は15〜50%(GFP)の範囲であった。アイソタイプ対照は全てのトランスフェクタントで陰性であった。Alexa647も陽性(抗PD−1抗体結合性)であるGFP細胞のパーセンテージ分析は、L16RおよびR118D変異が、クローン19の結合性を完全に失わせることを示す(図2)。R118D発現細胞はすべてクローン10に結合し、これはPD−1の機能的な発現を示すが、全変異体の中で最も低い強度を有し(図2)、これは低レベルの発現を示す。V18Rは部分的にクローン19の結合性を失わせる。クローン10は、N41KおよびL103E変異体を除く全ての変異体に結合するが、他のPD−1抗体に対するこの抗体の結合強度は有意に低下した(図2)。かくして、この結合分析は、2つの別個のエピトープを明確にし、次いで各々少なくとも2個の残基で定義された:抗PD−1抗体クローン10は、リガンド結合領域(Zhang et al. Immunity 20, 337-47 (2004))と重なる膜遠位のエピトープに結合する;クローン19は膜近傍のエピトープに結合する。結合を乱す残基を、図3においてネズミPD−1結晶構造上にマップする。
【0048】
実施例3−活性化細胞質ドメインを含むPD−1二量体形によるクローン10およびクローン19誘導性シグナル伝達の分析
抗体のシグナル生成活性を直接比較するために、CD3ζの膜貫通領域に連結されたヒトPD−1の細胞外(抗体−結合)領域とCD28の細胞質領域(IL−2分泌を含む「活性な」出力(readout)を持たせるために)とから成るPD−1二量体形を作り出した(図4A)。
【0049】
3.1 T細胞ハイブリドーマにおける抗PD−1抗体誘導性活性化シグナル伝達を検出するためのPD−1二量体形の構築
【化1】


hPD−1/mCD3ζWT/mCD28構築物を、一連の5工程で作製した。工程1では、BglII制限部位およびラットリボソーム結合部位をコードし、続いて開始コドンおよびヒトPD−1のシグナルペプチドコード配列の最初の21塩基をコードするオリゴヌクレオチド1(左の矢印;配列5'−TAGTAGAGATCTCTCAAGCAGGCCACCATGCAAATCCCACAGGCGCCGTGG−3'、配列番号:33)を、相補のオリゴヌクレオチド2(5'−TCAGCCGGATCCTTCCAAACCCTGGTGCTCTGCTACTTGCTAGATGG−3'、配列番号:34)と共に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR1)に用いた。オリゴヌクレオチド2は、BamH1部位を挿入するヒトPD−1細胞外ドメイン(成熟ポリペプチドの170残基まで)の最後の9残基をコードし、続いてマウスCD3ζ膜貫通ドメインのNH末端をコードする20塩基を含む。PCR反応は標準的な条件下で行った。工程2では、オリゴヌクレオチド2を、マウスCD3ζの膜貫通領域のCOOH末端をコードし、続いてマウスCD28の細胞質ドメインのNH末端をコードする最初の21塩基を含む相補のオリゴヌクレオチド3(5'−ATCACAGCCCTGTACCTGAATAGTAGAAGGAATAGACTC−3'、配列番号:35)と共に、PCR反応(PCR2)に用いた。工程3では、PCR1反応産物およびPCR2反応産物を精製し、アニールし、伸張させ、次いでオリゴヌクレオチド1および相補のオリゴヌクレオチド3の存在下で増幅して、CD3ζの膜貫通領域と融合されたPD−1の細胞外領域をコードするcDNAを作り出した。工程4では、オリゴヌクレオチド3を、CD28の細胞質ドメインのCOOH末端をコードし、続いて終止コドンおよびXhoI制限部位をコードするオリゴヌクレオチド4(5'−CTCGAGCTACTAGGGGCGGTACGCTGCAAA−3'、配列番号:36)と共に、PCR反応(PCR3)に用いた。工程5では、精製したPCR3産物と工程3の精製したPCR産物とをアニールさせ、アニールしたハイブリッドを伸張させ、次いでその伸張物をオリゴヌクレオチド1および4を用いて増幅することによって、PCR3産物と工程3のPCR産物とを融合した。
【0050】
ヒトPD−1およびマウスCD28cDNAは、Geneservices Ltd (Cambridge UK)から入手したIMAGEクローンから元々構築されたpENTRhPD−1/mCD28をテンプレートとして用いて増幅した。マウスCD3ζは、DO11.10マウスT細胞ハイブリドーマcDNAから増幅した。融合PCR産物を、pCR4(登録商標)−TOPO(登録商標)(Invitrogen)中にクローニングし、最終産物をジデオキシ法により配列決定した。この構築物を、BglIIおよびXhoIで切断し、レンチウイルスベクターpHR−SIN−BX−IRES−Em中に挿入した。
【0051】
3.2 hPD−1/mCD3ζWT/mCD28キメラによる活性化シグナル伝達の検出
HEK293T細胞を、hPD−1/mCD3ζWT/mCD28をコードするpHR−SIN−BX−IRES−Emでトランスフェクトし、その上清を、DO11.10T細胞ハイブリドーマを感染させるために用いた。感染したDO11.10細胞を増殖させ、FACSによりマウスPD−1およびEGFP発現について選別し、次いで刺激アッセイ(stimulation assay)の出力としてのIL−2放出を用いて抗PD−1抗体による作動性のシグナル伝達を試験した。IL−2分泌の結果は、両方の抗体がhPD−1/mCD3ζWT/mCD28キメラを介したシグナル伝達を誘導することができるが、膜に近接するPD−1に結合するクローン19が多量のIL−2放出を誘導すること(代表的なデータは図4Bに示される)を示す。これは、抗体により形成される複合体のトポロジーがアゴニストにより誘導されるシグナル伝達の相対的なレベルを決定するものであるという概念を支持する。このデータは、作動性のシグナル伝達の度合いが抗体の選択により変化し得るということも示す。
【0052】
実施例4−ヒト末梢血リンパ球(PBL)におけるクローン10およびクローン19抗体による抑制性シグナル伝達の分析
抗体をトシル活性化DYNALBEADSに抗CD3抗体と共に共有結合させることにより、TCR誘導性活性化シグナル伝達を抑制するその能力について、抗体を試験した。次いで、前記ビーズを、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識したPBL培養物に加えた。増殖レベルは、フローサイトメトリー分析により決定された希釈CFSEを含む細胞画分ごとに示された。
【0053】
4.1 DYNALBEADSへの抗体のローディングおよび定量
トシル活性化DYNALBEADS4.5μm(M450;Invitrogen)を、0.1Mの滅菌リン酸緩衝液(pH8)中で洗浄し、3×10のビーズあたり2.5μg総量の抗体をロードし、37℃で18〜24時間、反転混合し続けた。ウサギIgG(Sigma)を用いて、ビーズ−ローディング反応あたりの抗体の総量を揃えた。ビーズを少なくとも30分間10%FCSを含むRPMI中で室温にてブロッキングし、無血清RPMI中で3回洗浄した。幾つかの実験に関して、ビーズ結合抗体は、飽和量のアイソタイプ特異的PE標識ヤギ抗体を用いて二重試験で定量し、Quantibrite(商標)プレラベルド・クアンティフィケーション・キット(BD Biosciences Ltd.)を用いて比較した。ビーズ一重項の幾何平均蛍光PE強度(対照としての未標識ビーズの背景光を差し引いた)を用いて、標準曲線からビーズあたりにロードされた抗体の絶対量を算出した。そのような滴定の例は図5で示される。ロードしたビーズを4℃で保管した。ビーズローディングの間、添加した抗CD3抗体の量は、実験の際にほぼ同等レベルの抗CD3抗体を有するビーズの適合セットの効果を比較することができるように変更した。抗CD3ロードビーズにより与えられる刺激レベルは、低い(5日目のバルクのリンパ球の15%増殖という結果を与える)、中程度−低い(30%の増殖)、中程度−高い(60%の増殖)および高い(80%増殖)と定義した。
【0054】
4.2 増殖試験
新鮮なヘパリン添加血液をPBSで1:1に希釈し、リンパ球は密度勾配分離(Ficoll Hypaque)により単離した。幾つかの実験では、アクセサリー細胞を37℃で2時間のプラスチック吸着によってか、または特異抗体標識DYNALBEADS(対CD14/19/8/56)を用いて除去した。細胞を、PBSおよびRPMI中で洗浄し、無血清RPMI中に1mlあたり10細胞に再懸濁した。細胞を、室温暗所にて10分間PBS中の25μMのCFSEを用いて標識した。CFSEは等量のFCSを用いて室温で5分間不活性化した。細胞を、RPMIを用いて3〜5回洗浄し、10%FCS+PSG+2−ME(終濃度5×10−5M)を含むRPMI中に1mlあたり10細胞で再懸濁した。抗体(ビーズ)、分裂促進剤または培地を、96ウェル丸底プレートの適切なウェルに加え、1ウェルあたり10細胞を分配し、37℃で3〜5日間インキュベートした。増殖試験に関して、細胞は、4℃で1時間、直接的に標識する細胞表面抗体により染色した。細胞をPBS−アザイドを用いて洗浄し、1500rpm/5分でペレットにし、200μlのPBS−アザイドに再懸濁した。細胞を、FlowJo Flow Cytometry Analysis Softwareを用いるフローサイトメーターでCFSEおよび抗体標識化について分析した。
【0055】
4.3 抗体の効果
図6に記載の実験結果において、用いたトシル活性化ビーズは、最大2375ngの抗PD−1クローン10またはクローン19抗体と、抗PD−1抗体が存在しない場合に〜25%の増殖を誘導するのに十分な抗CD3抗体とを含む2.5μg総量の抗体と共にインキュベートした。増殖は、5日目にCFSE希釈により測定した。実験1において、外観検査は、増殖の抑制が3つの抗体のすべてで見られること、クローン2および19では最も高いレベルの抑制を与えることも示す。自動分析ソフトウェア(FlowJo)を用いて分析することができるデータに関してクローン19による増殖抑制の量は80%のオーダーである。実験2では、OKT3のみが存在する場合でも増殖の程度は幾分か減少するが(〜15%まで)、クローン2および19は増殖を大きく抑制することは明らかであり;増殖を始める細胞は最大で増殖を1または2ラウンドしか受けない。クローン10は実験2ではいずれの抑制効果も示さない。
【0056】
クローン10抗体をトシル活性化DYNALBEADSに抗CD3抗体と共に共有結合させることにより、TCR誘導性の活性化シグナル伝達を抑制するその能力について、クローン10抗体をさらに試験した。次いで、ビーズをヒトCD4T細胞の培養物に加え、増殖をH−チミジン取り込みにより測定した。
【0057】
トシル活性化DYNALBEADS4.5μm(M450;Invitrogen)を0.1Mの滅菌リン酸緩衝液(pH7.5)中で洗浄し、1×10ビーズあたり2μgの抗ヒトCD3(クローンOKT3)を加え、37℃で8時間、反転攪拌し続けた。次いで、ビーズを洗浄して、コンジュゲートしていない抗CD3を取り除いた。次いで、抗CD3コンジュゲートビーズの一部を、3μgの抗PD−1抗体を用いて二次的にコートするか、または1×10ビーズあたり対照を37℃で19時間、反転混合し続けた。ビーズを洗浄し、次いで0.2MのTris/0.1%BSA(pH8.5)中で3時間インキュベートして、フリーのトシル基を不活性化し、続いて洗浄してPBS/0.1%BSA/2mM EDTA(pH7.4)中にビーズを再懸濁した。ビーズセットの相等の抗CD3および抗体のコーティングを、ビーズを蛍光色素標識アイソトープ特異抗体で染色することによってか、またはフローサイトメトリーによる分析によって確認した。
【0058】
新鮮なヘパリン添加血液を、RPMIを用いて1:1に希釈し、リンパ球を密度勾配分離(Ficoll Hypaque)により単離した。CD4T細胞を、MACS(CD4T細胞アイソレーションキット;Miltenyi Biotec)を用いた陰性選択によりPBL全体から精製した。1ウェルあたり1×10のヒトCD4T細胞を、96ウェル丸底プレート中でコーティングしたビーズと一緒に1:1の比率で培養し、37℃で6日間インキュベートした。増殖は、6日目に培養の最後の6時間に1ウェルあたり0.5μCiのH−チミジンを添加して測定した。細胞をガラス繊維ろ紙上に収集し、取り込まれたH−チミジンをβ−シンチレーション計数により測定した。
【0059】
図13の結果は、抗CD3に加えてクローン10抗体または対照コートビーズの存在下で測定されたヒトCD4T細胞による6日の増殖反応を示す。データは、最大応答(抗CD3に加えてBSA対照)のパーセンテージとして表し、4つの異なるドナーの応答の平均値である。CD4+T細胞増殖は、クローン10の存在下で抑制され、結果的に、観察された平均増殖は最大値のわずか37.7%であった。
【0060】
クローン19は、クローン10よりもhPD−1/mCD3ζWT/mCD28によるより強力なシグナル伝達を誘導するが(図4B)、幾つかの実施形態においてクローン19は天然のPD−1によるより弱い抑制性のシグナル伝達を与える(例えば、図8を参照のこと)。これは、幾つかの実験において、クローン10ライゲーションではなくクローン19が、結果的にPD−1のITIM(抑制性、青)とITSM(活性化、赤)チロシン−ベースのシグナル伝達モチーフ双方のリン酸化となるためである可能性がある(図9を参照のこと)。
【0061】
実施例5−単量体の受容体によるシグナル伝達を増強させるための重ならないエピトープでの2つの抗体の使用。
単独で作用する別個の抗PD−1抗体、例えばクローン10は既に抑制性であるが、抗PD−1抗体のペアを用いることによってこれらの効果を有意に増強することが可能であり得よう。抗体のシグナル伝達特性の初期の特徴づけは、PD−1がホモ二量体を形成するhPD−1/mCD3ζWT/mCD28キメラの形態で発現されるアッセイに依存した。これは、抗CD28超作動性抗体との比較を容易にするために行った。それはCD28もまたホモ二量体であるからである。生じる疑問としては、「hPD−1/mCD3ζWT/mCD28キメラによるシグナル伝達がその二価性に、および架橋化の結果にどの程度依存するか?」がある。これを試験するために、CD28の細胞質領域(IL−2分泌を含む「活性な」出力を持たせるために)に連結されたヒトPD−1の細胞外領域(抗体−結合)と膜貫通領域とからなる単量体で一価型のPD−1であるhPD−1/mCD28を作り出した(図10A)。
【0062】
5.1 T細胞ハイブリドーマにおける抗PD−1抗体誘導性の活性化シグナル伝達を検出するためのPD−1の単量体型の構築
【化2】


hPD−1/mCD28構築物を、一連の3工程で作り出した。工程1において、BglII制限部位およびラットリボソーム結合部位をコードし、続いて開始コドンおよびヒトPD−1のシグナルペプチドコード配列の最初の24塩基をコードオリゴヌクレオチド1(左の矢印;配列5'−TAGTAGAGATCTCTCAAGCAGGCCACCATGCAAATCCCACAGGCGCCGTGG−3'、配列番号:33)を、相補のオリゴヌクレオチド2(5'−GCCCAGCCGGCCAGTTCCAAACCTTTTGGGTGCTGGTGGTGGTTGGT−3'、配列番号:37)と共に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR1)に用いた。オリゴヌクレオチド2は、ヒトPD−1細胞外ドメイン(成熟ポリペプチドの149残基まで)の最後の23塩基をコードし、続いてマウスCD28膜貫通領域のNH末端配列をコードする24塩基を含む。PCR反応は標準的な条件下で実施した。工程2では、オリゴヌクレオチド2を、マウスCD28の細胞質ドメインのCOOH末端をコードし、MluI制限部位、続いて停止コドンおよびXhoI制限部位をコードする相補のオリゴヌクレオチド3(5'-TTTGCAGCGTACCGCCCCACGCGTTAGTAGCTCGAG−3'、配列番号:38)と共に、PCR反応(PCR2)に用いた。工程3では、精製したPCR2産物を工程1由来の精製したPCR1産物とアニールさせ、アニールしたハイブリッドを伸張させ、次いでそれをオリゴヌクレオチド1および3を用いて増幅することによって、PCR2産物とPCR1産物とを融合させた。
【0063】
マウスCD28配列は、DO11.10マウスT細胞ハイブリドーマcDNAから元々増幅されたpCR4(登録商標)−TOPO(登録商標)rCD28/mCD28をテンプレートとして用いて増幅した。ヒト細胞外PD−1は、MRC Human Immunology Unit, OxfordのChao Yu博士から譲り受けたpE14hPD-1Longから増幅した。融合PCR産物を、pCR4(登録商標)−TOPO(登録商標)(Invitrogen)中にクローニングし、最終産物をジデオキシ法により配列決定した。構築物をBglIIとXhoIで切断し、DO11.10細胞感染のためにレンチウイルスベクターpHR−SIN−BX−IRES−Em中に挿入した。抗PD−1抗体によるhPD−1/mCD28キメラ発現DO11.10細胞の活性化は、出力としてのIL−2分泌を用いて試験した。
【0064】
5.2 hPD−1/mCD28によるシグナル伝達の欠如は、作動性のシグナル伝達が、単量体受容体を重ならないエピトープに結合する2つの抗体で架橋することによって、増強され得ることを示す。
クローン10およびクローン19が、CD28の膜貫通と細胞内シグナル伝達ドメインに連結されたPD−1の単量体細胞外領域とからなるヒトPD−1のキメラ型、すなわちhPD−1/mCD28に対して作動性ではなかったのは(図10)、その同等物のCD28構築物(ラットCD28のホモ二量体の細胞外ドメインからなる)とは対照的である。これに関する最も有力な説明としては、PD−1は単量体であるがCD28がホモ二量体であるため、二価抗体の結合は「架橋された」CD28分子の多量体配置の集合体であって非常に高密度のシグナル伝達ドメインを導くことになるが(図11A)、クローン10またはクローン19の結合は、PD−1分子のペアを結びつけるだけである(図11B)、ということになる。従って、インビボではホモ二量体の受容体に結合する抗体は、単量体の受容体に結合する抗体よりも一般に強力なシグナル伝達を生成する。PD−1の場合に、PD−1分子の多量体集合体を作り出すことができれば、より強力なシグナル伝達を導くことが推定され得る(図11C)。クローン10(またはクローン2)のエピトープおよびクローン19のエピトープがPD−1の反対「側」にあるという位置関係(図3)は、この2つの抗体が重ならない表面に結合し得ること、すなわち各々の天然のPD−1単量体が双方の抗体に結合でき得ることを意味している。これは、図11Cで示されるように、この抗体のペアがインビボで天然のPD−1単量体を「架橋」するために用い得ることを意味する。かくして作り出された隔てられたPD−1分子の高密度配置化は、単一の抗体を用いた場合に可能であろうシグナル伝達よりもより強力なシグナル伝達を作り出せることが期待される。
【0065】
5.3 作動性シグナル伝達は、重ならないエピトープに結合する2つの抗体を用い、単量体の受容体を架橋することによって増強される。
抗体ペアを用いて天然のPD−1単量体を「架橋」し、増強された作動性のシグナル伝達を誘導することができるという概念を試験するために、hPD−1/mCD28キメラタンパク質を発現するDO11.10細胞を、以下のクローン10/クローン19抗体刺激アッセイに用いた。96ウェル平底プレート(Costar EIA/RIAプレート)を、コーティング緩衝液(15mM NaCO、35mM NaHCO、pH9.6)中の500μg/mlのロバ抗マウスIgG(Jackson Immunoresearch)を用いて4℃で一晩コートした。細胞を加える前に、プレートを3回200μlの冷PBSで洗浄した。5×10細胞を1200rpmで3分間遠心分離し、クローン19抗体を様々な濃度で含有する完全培地100μl中に30分間再懸濁した。次いで、細胞を洗浄し、様々な濃度のクローン10と共にさらに30分間インキュベートした後に、細胞をロバ抗マウスIgG抗体で予めコートした96ウェルプレートに3重試験で撒いた。細胞を、37℃で5%CO下にて48時間インキュベートした後、細胞培養上清を取り出し、ELISAによるマウス・インターロイキン−2(IL−2)に関してアッセイした。
【0066】
この実験結果(図7)は、最も高い濃度、すなわち100μg/mlではクローン10もクローン19もhPD−1/mCD28キメラタンパク質発現DO11.10細胞においてシグナル伝達(IL−2産生)を開始しないことを示す。しかしながら、10〜100μg/mlの抗体の一連のインキュベーションは、有意水準のIL−2生成を誘導した。これは、抗体による架橋ペアが、インビボでの増強されたシグナル伝達を誘導するために用い得ることを示す。
【0067】
クローン2、10および19抗体の配列情報
(CDRはアミノ酸配列中、下線で示す)
クローン2
VK DNA(配列番号:1)
gacattgtgctgacacagtctcctgcttctttagctgtatctctggggcagagggccaccatctcatgcagggccagcaaaagtgtcagtacatctggctttaattatatacactggtaccaacagaaaccaggacagccacccaaactcctcatctatcttgcatccaacctagaatctggggtccctgccaggttcagtggcagtgggtctgggacagacttcaccctcaacatccatcctgtggaggacgaggatgctgcaacctattactgtcagcacagtagggagcttccgctcacgttcggtgctgggaccaagctggaaataaaa
【0068】
VKタンパク質(配列番号:2)
DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASKSVSTSGFNYIHWYQQKPGQPPKLLIYLASNLESGVPARFSGSGSGTDFTLNIHPVEDEDAATYYCQHSRELPLTFGAGTKLEIK
【0069】
VH DNA(元のクローン化)(配列番号:3)
caggtccaactgcagcagcctggggctgaactggtgaagcctggggcttcagtgaagttgtcctgcaaggcttctggctacaccttcaccacctactatttgtactgggtgaggcagaggcctggacaaggccttgagtggattggggggattaatcctagcaatggtggtactaacttcaatgagaagttcaagagcaaggccacactgactgtagacaaatcctccagcacagcctacatgcaactcaacagcctgacatctgaggactctgcggtctattactgtacaagacgggactataggtacgacagaggctttgactactggggccaaggcacctcagtcacagtc
【0070】
VH DNA(スプライス部位を除去した変異型)(配列番号:5)
caggtccaactgcagcagcctggggctgaactggtgaagcctggggcttcagtgaagttgtcctgcaaggcttctggctacaccttcaccacctactatttgtactgggtgaggcagaggcctggacaaggccttgagtggattggggggattaatcctagcaatggtggtactaacttcaatgagaagttcaagagcaaggccacactgactgtagacaaatcctcctctacagcctacatgcaactcaacagcctgacatctgaggactctgcggtctattactgtacaagacgggactataggtacgacagaggctttgactactggggccaaggcacctcagtcacagtc
【0071】
VHタンパク質(配列番号:4または配列番号:6)
QVQLQQPGAELVKPGASVKLSCKASGYTFTTYYLYWVRQRPGQGLEWIGGINPSNGGTNFNEKFKSKATLTVDKSSSTAYMQLNSLTSEDSAVYYCTRRDYRYDRGFDYWGQGTSVTV
【0072】
クローン10
VK DNA(配列番号:7)
gatgttttgatgacccaaactccactctccctgcctgtcagtcttggagatcaagcctccatctcttgcagatctggtcagaacattgtacatagtaatggaaacacctatttagaatggtacctacagaaaccaggccagtctccaaagctcctgatctacaaagtctccaaccgattttttggggtcccagacaggatcagtggcagtggatcagggacagatttcacactcaagatcagcagagtggaggctgaggatctgggagtttatttctgctttcaaggttcacatgttccattcacgttcggctcggggacaaagctggaaataaaa
【0073】
VKタンパク質(配列番号:8)
DVLMTQTPLSLPVSLGDQASISCRSGQNIVHSNGNTYLEWYLQKPGQSPKLLIYKVSNRFFGVPDRISGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYFCFQGSHVPFTFGSGTKLEIK
【0074】
VH DNA(配列番号:9)
gatgtgcagcttcaggagtcgggacctggcctggtgaaaccttctcagtctctgtccctcacctgcactgtcactggctactcaatcaccagtgattatgcctggaactggatccggcagtttccaggaaacaaactggagtggatgggctacataaactacagtggtagcactagctacaacccatctctcaaaagtcgaatctctatcactcgagacacatccaagaaccagttcttcctgcagttgaattctgtgactactgaggacacagccacatattactgtgcaagatggatcggtagtagcgcctggtacttcgatgtctggggcgcagggaccacggtcacagtc
【0075】
VHタンパク質(配列番号:10)
DVQLQESGPGLVKPSQSLSLTCTVTGYSITSDYAWNWIRQFPGNKLEWMGYINYSGSTSYNPSLKSRISITRDTSKNQFFLQLNSVTTEDTATYYCARWIGSSAWYFDVWGAGTTVTV
【0076】
クローン19
VK DNA(配列番号:11)
gaaaatgtgctcacccagtctccagcaatcatgtctgcatctccaggggaaaaggtcaccatgacctgcagggccagctcaagtgtaatttccagttacttgcactggtaccagcagaagtcaggtgcctcccccaaactctggatttatagcacttccaacttggcttctggagtccctgatcgcttcagtggcagtgggtctgggacctcttactctctcacaatcagcagtgtggaggctgaagatgctgccacttattactgccagcagtacaatggttacccgctcacgttcggtgctgggaccaagctggaaataaaa
【0077】
VKタンパク質(配列番号:12)
ENVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCRASSSVISSYLHWYQQKSGASPKLWIYSTSNLASGVPDRFSGSGSGTSYSLTISSVEAEDAATYYCQQYNGYPLTFGAGTKLEIK
【0078】
VH DNA(配列番号:13)
caggttcagctacagcagtctggggctgagctggtgaagcctggggcctcagtgaagatgtcctgcaaggcttttggctacaccttcactacctatccaatagagtggatgaagcagaatcatgggaagagcctagagtggattggaaattttcatccttacaatgatgatactaagtacaatgaaaaattcaagggcaaggccaaattgactgtagaaaaatcctctaccacagtctacttggagctcagccgattaacatctgacgactctgctgtttattactgtgcaagggagaactacggtagtcacgggggttttgtttactggggccaagggactctggtcaccgtc
【0079】
VHタンパク質(配列番号:14)
QVQLQQSGAELVKPGASVKMSCKAFGYTFTTYPIEWMKQNHGKSLEWIGNFHPYNDDTKYNEKFKGKAKLTVEKSSTTVYLELSRLTSDDSAVYYCARENYGSHGGFVYWGQGTLVTV
【0080】
【表1】

【0081】
前掲の表1および配列中、クローン2、10および19に関する重鎖CDR1は、組み合せたカバット(Kabat)/コチア(Chothia)ナンバリングシステムおよびカバット・ナンバリングシステムに従って特定した。他のCDRは全て、カバット・ナンバリングシステム(Kabat et al., 1987, “In sequences of proteins of immunological interest”, U.S. Dept. Health and Human Services, NIH USA)に従って特定した。カバット・ナンバリングシステムにより特定されたクローン2、10および19の重鎖CDR1を、表1にて特定した(下線を付したアミノ酸)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリドーマ・クローン10またはハイブリドーマ・クローン2により産生された、モノクローナル抗体。
【請求項2】
ハイブリドーマ・クローン10またはハイブリドーマ・クローン2により産生されるモノクローナル抗体と同じエピトープに結合する、モノクローナル抗体。
【請求項3】
ハイブリドーマ・クローン10またはハイブリドーマ・クローン2により産生される抗体と同じエピトープに結合する二重特異性抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体または組換え抗体。
【請求項4】
クローン10またはクローン2により産生されるモノクローナル抗体と同じエピトープに結合する抗原結合性フラグメント。
【請求項5】
0.04秒−1〜2.0秒−1の解離定数を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項6】
PD−1との結合に際して、配列番号:2および配列番号:4;または配列番号:8および配列番号:10を含む抗体と競合する、単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項7】
配列番号:2および配列番号:4;または配列番号:8および配列番号:10を含む抗体と同じPD−1エピトープに結合する、請求項6に記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項8】
請求項3に記載の抗体であって、配列番号:15、16、17、19、20およびi)配列番号:18;またはii)配列番号:18のアミノ酸6〜10のクローン2のVkおよびVH CDR、あるいは配列番号:21、22、23、25、26およびi)配列番号:24;または配列番号:24のアミノ酸6〜11のクローン10のCDRを含む、前記抗体。
【請求項9】
配列番号:2および配列番号:4;または配列番号:8および配列番号:10を含む、単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗体を含む、医薬組成物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗体をコードする、1つ以上の単離された核酸。
【請求項12】
請求項11に記載の単離された核酸であって、抗体が、配列番号:1および配列番号:3;配列番号:1および配列番号:5;または配列番号:7および配列番号:9によりコードされる、前記核酸。
【請求項13】
請求項11〜12に記載の1つ以上の核酸を含む、ベクター。
【請求項14】
請求項13に記載のベクターまたは請求項11〜12に記載の核酸を含む、宿主細胞。
【請求項15】
クローン10の結合特異性を有する抗体を、PD−1またはPD−1発現細胞と接触させることを含む、PD−1またはPD−1発現細胞を単離する方法。
【請求項16】
クローン10により産生される抗体の結合特異性を有する抗PD−1特異抗体と組み合わせて、特異抗原を対象に投与することを含む、特異抗原に対する寛容を誘導する方法。
【請求項17】
ハイブリドーマ・クローン10により産生される抗体の結合特異性を有する抗PD−1特異抗体の対象への投与を含む、対象における活性化リンパ球により調整される免疫応答を低減する方法。
【請求項18】
アレルギー、関節リウマチ、I型糖尿病、多発性硬化症、炎症性腸疾患、クローン病、全身性エリテマトーデス、組織、皮膚および器官の移植片拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)を処置する方法であって、クローン10により産生される抗体の結合特異性を有する抗PD−1特異抗体を、前記疾患を有する対象に投与することを含む、前記処置方法。
【請求項19】
付加的なPD−1特異モノクローナル抗体をPD−1またはPD−1発現細胞と接触させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
付加的なPD−1特異モノクローナル抗体を投与することを含む、請求項16〜18に記載の方法。
【請求項21】
付加的なPD−1特異モノクローナル抗体が、クローン10により産生される抗体により結合されるエピトープと別個の重ならないエピトープに結合する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
付加的なPD−1特異モノクローナル抗体が、クローン19により産生される抗体と同じエピトープに結合する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
抗体が、クローン19により産生された抗体である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
付加的なPD−1特異モノクローナル抗体が、クローン2により産生される抗体と同じエピトープに結合する、請求項19または請求項20に記載の方法。
【請求項25】
抗体が、クローン2により産生された抗体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
抗体が、0.04秒−1と2.00秒−1との間の解離定数を有する、請求項15〜19に記載の方法。
【請求項27】
配列番号:2、配列番号:4、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:18のアミノ酸6〜10、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:24のアミノ酸6〜11、配列番号:25または配列番号:26を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項28】
請求項27に記載のポリペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項29】
請求項27に記載のポリペプチドをコードするベクターまたは核酸を含む、単離された宿主細胞。
【請求項30】
請求項27に記載のポリペプチドをコードする核酸を含む、ベクター。
【請求項31】
クローン2の結合特異性を有する抗体を、PD−1またはPD−1発現細胞と接触させる工程および前記細胞を単離する工程を含む、PD−1またはPD−1発現細胞を単離する方法。
【請求項32】
クローン2により産生される抗体の結合特性を有する抗PD−1特異抗体と組み合わせて、特異抗原を対象に投与することを含む、特異抗原に対する寛容を誘導する方法。
【請求項33】
ハイブリドーマ・クローン2により産生される抗体の結合特異性を有する抗PD−1特異抗体の対象への投与を含む、対象における活性化リンパ球により調整される免疫応答を低減する方法。
【請求項34】
アレルギー、関節リウマチ、I型糖尿病、多発性硬化症、炎症性腸疾患、クローン病、全身性エリテマトーデス、組織、皮膚および器官の移植片拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)を処置する方法であって、クローン2により産生される抗体の結合特異性を有する抗PD−1特異抗体を、前記疾患を有する対象に投与することを含む、前記処置方法。
【請求項35】
付加的なPD−1特異モノクローナル抗体をPD−1またはPD−1発現細胞と接触させることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
付加的なPD−1特異モノクローナル抗体を投与することを含む、請求項32〜34に記載の方法。
【請求項37】
付加的なPD−1特異モノクローナル抗体が、クローン2により産生される抗体により結合されるエピトープと別個の重ならないエピトープに結合する、請求項35または請求項36に記載の方法。
【請求項38】
付加的なPD−1特異モノクローナル抗体が、クローン19により産生される抗体と同じエピトープに結合する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
抗体が、クローン19により産生された抗体である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
付加的なPD−1特異モノクローナル抗体が、クローン10により産生される抗体と同じエピトープに結合する、請求項35または請求項36に記載の方法。
【請求項41】
抗体が、クローン10により産生された抗体である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
抗体が、0.04秒−1と2.00秒−1との間の解離定数を有する、請求項31〜34に記載の方法。
【請求項43】
a)配列番号:18、配列番号:18のアミノ酸6〜10、配列番号:19または配列番号:20から選択される1つ以上の重鎖CDR配列;あるいは
b)配列番号:24、配列番号:24のアミノ酸6〜11、配列番号:25または配列番号:26から選択された1つ以上の重鎖CDR配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項44】
a)配列番号:15、配列番号:16または配列番号:17から選択された1つ以上の軽鎖CDR配列;あるいは
b)配列番号:21、配列番号:22または配列番号:23から選択された1つ以上の軽鎖CDR配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項45】
請求項43に記載の単離されたポリペプチドであって、
a)重鎖CDR1および配列番号:19;重鎖CDR1および配列番号:20;配列番号:19および配列番号:20;または重鎖CDR1、配列番号:19および配列番号:20であって、重鎖CDR1は、配列番号:18のアミノ酸6〜10または配列番号:18から選択される;あるいは
b)重鎖CDR1および配列番号:25;重鎖CDR1および配列番号:26;配列番号:25および配列番号:26;または重鎖CDR1、配列番号:25および配列番号:26であって、重鎖CDR1は、配列番号:24のアミノ酸6〜11または配列番号:24から選択される、前記ポリペプチド。
【請求項46】
2つまたは3つすべての軽鎖CDR配列を含む、請求項44に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項47】
a)配列番号:18、配列番号:18のアミノ酸6〜10、配列番号:19または配列番号:20から選択される1つ以上の重鎖CDR配列;あるいは
b)配列番号:24、配列番号:24のアミノ酸6〜11、配列番号:25または配列番号:26から選択される1つ以上の重鎖CDR配列から選択される、1つ以上の重鎖CDR配列を含む、単離された抗体。
【請求項48】
a)配列番号:15、配列番号:16または配列番号:17から選択される1つ以上の軽鎖CDR配列;あるいは
b)配列番号:21、配列番号:22または配列番号:23から選択される1つ以上の軽鎖CDR配列から選択される1つ以上の軽鎖CDR配列を含む、単離された抗体。
【請求項49】
請求項47に記載の単離された抗体であって、
a)重鎖CDR1および配列番号:19;重鎖CDR1および配列番号:20;配列番号:19および配列番号:20;または重鎖CDR1、配列番号:19および配列番号:20であって、重鎖CDR1が配列番号:18のアミノ酸6〜10または配列番号:18から選択される;あるいは
b)重鎖CDR1および配列番号:25;重鎖CDR1および配列番号:26;配列番号:25および配列番号:26;または重鎖CDR1、配列番号:25および配列番号:26であって、重鎖CDR1が配列番号:24のアミノ酸6〜11または配列番号:24から選択される、PD−1に結合する抗体を含む、前記抗体。
【請求項50】
請求項48に記載の単離された抗体であって、2つまたは3つすべての軽鎖CDR配列を含み、PD−1に結合する抗体である、請求項48に記載の単離された抗体。
【請求項51】
請求項43〜46のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項52】
請求項47〜50のいずれか一項に記載の抗体をコードする、単離された核酸。
【請求項53】
請求項51に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項54】
請求項52に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項55】
請求項53に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項56】
請求項54に記載のベクターを含む、宿主細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−501670(P2012−501670A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526592(P2011−526592)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006946
【国際公開番号】WO2010/029435
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(500056231)アイシス・イノベーション・リミテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】ISIS INNOVATION LIMITED
【Fターム(参考)】