説明

PDE11モジュレーターの同定方法

本発明は、ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)のGAFAドメイン及びGAFBドメインと、アデニル酸シクラーゼの触媒ドメインとを有する新規のポリペプチド並びにPDE11モジュレーターの同定方法におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)のGAFAドメインとGAFBドメインとアデニル酸シクラーゼの触媒ドメインとを有する新規のポリペプチド並びに該ポリペプチドをPDE11モジュレーターの同定方法において用いる使用に関する。
【0002】
従来技術
ホスホジエステラーゼ類(=PDE類)は、真核タンパク質であり、環状ヌクレオチドであるcAMP及びcGMPのモジュレーターとして知られている。PDE類は、3つのクラス(I、II、そしてIII)に分類され、そのうち哺乳動物では11種のPDEファミリー(PDE1〜11と呼ばれる)を有するクラスIのみが存在する。
【0003】
GAFドメインは、あらゆる生物界において偏在し、かつ該ドメインは、AravindとPonting(Aravind L.and Ponting C.P:The GAF domain:an evolutionary link between diverse phototransducing proteins.1997,TIBS,22,458−459)によってタンパク質構造比較とタンパク質配列比較に基づいて定義された。PDE2、PDE5及びPDE6は、いわゆるcGMP結合性GAFドメインを有し、該ドメインは、PDE類のアロステリックな活性化において役割を担う。
【0004】
ヒトPDE11から、種々のイソ型がクローニングされ、特性決定された(Hetman et al.PNAS 2000,97,12891〜12895及びSonderling et al.,Current Opinion in Cell Biology 2000,12,174−179)。
【0005】
アデニル酸シクラーゼ類(=AC類)は、あらゆる生物の範囲においてATPからcAMPへの転化を触媒する(Cooper D.M.:Regulation and organization of adenylyl cyclases and cAMP.2003,Biochem J.,375(Pt3),517−29;Tang W.J.and Gilman A.G.:Construction of a soluble adenylyl cyclase activated by Gsα and forskolin.1995,Science,268,1769−1772)。配列比較と構造の考察に基づいて、アデニル酸シクラーゼは、5つのクラス(I〜V)に分類される。シアノバクテリア由来の、特にネンジュモ属の種PCC7120由来の細菌性のクラスIIIのAC類であって、CyaB1も所属するAC類が生物学的に関心が持たれている。シアノバクテリアのAC類であるCyaB1及びCyaB2は、同様にN末端のGAFドメインを有し、該ドメインは、PDE類のそれに構造的に類似しているが、cAMPを活性化リガンドとして有する。ヒトのクラスIIIのAC類の9つの公知のファミリーは、全て膜結合性であり、かつGタンパク質を介して調節される(Tang W.J.and Gilman A.G.:Construction of a soluble adenylyl cyclase activated by Gsα and forskolin.1995,Science,268,1769−1772)。GAFドメインとの組合せは、知られていない。
【0006】
ラットPDE2のGAFドメインとアデニル酸シクラーゼCyaB1の触媒中心とからのキメラの構築は、既に記載されている(Kanacher T.,Schultz A.,Linder J.U.and Schultz J.E.:A GAF−domain−regulated adenylyl cyclase from Anabaena is a self activated cAMP switch.2002,EMBO J.,21,3672−3680)。
【0007】
ヒトPDE11と細菌のアデニル酸シクラーゼとからのキメラは、知られていない。同様に、係るキメラをPDE11モジュレーターの同定方法において用いる使用は従来技術から知られていない。
【0008】
発明の詳細な説明
本発明の課題は、PDE11モジュレーターの同定方法を提供することにある。
【0009】
前記課題は、(a)ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)のGAFAドメイン及びGAFBドメイン又はそれらの機能的に等価の変異体と、(b)アデニル酸シクラーゼの触媒ドメイン又はそれらの機能的に等価な変異体とを機能的に結合されて有する本発明によるポリペプチドを提供すること並びにPDE11モジュレーターの同定方法においてそれらを使用することによって解決される。
【0010】
驚くべきことに、N末端のヒトPDE11−GAFドメインとアデニル酸シクラーゼのC末端触媒中心とからのキメラタンパク質がエフェクター分子として適していることが確認された。該キメラタンパク質において、GAFドメインは、リガンドの結合に際してそのコンフォメーションを変化させ、それにより読み出しとして役立つアデニル酸シクラーゼドメインの触媒活性を変調する活性化ドメインである。
【0011】
更に、驚くべきことに、cGMPは、PDE11のGAFドメインをアゴニストとして選択的に活性化することが見出された。
【0012】
前記の結果が特に驚くべきことであるのは、例えばPDE11A4のGAFドメインが、たった26%だけの同一性をCyaB1のGAFドメインに対して示すに過ぎないことと、PDE11A4のGAFドメインの機能的な活性化リガンドが今まで知られていなかったことからである(Yuasa K.,Kanoh Y.,Okumura K.,Omori K.Genomic organization of the human phosphodiesterase PDE11A gene.Evolutionay relatedness with other PDEs containing GAF domains.Eur J Biochem.2001,268,168−78)。
【0013】
本発明は、PDE11の触媒中心の結合と遮断を介して作用せずに、PDE11のN末端での、すなわちGAFドメインでのアロステリック調節によって作用するPDE11モジュレーター、すなわちPDE11アンタゴニスト又はPDE11アゴニストの同定を可能にする。
【0014】
上述のように、本発明は、
(a)ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)のGAFAドメイン及びGAFBドメイン又はそれらの機能的に等価な変異体と、
(b)アデニル酸シクラーゼの触媒ドメイン又はそれらの機能的に等価な変異体と
を機能的に結合されて有するポリペプチドに関する。
【0015】
ヒトのホスホジエステラーゼ又はPDEとは、ヒト由来の酵素であってcAMP又はcGMPを相応の不活性な5′−モノホスフェートに転化しうる酵素を表す。それらの構造と特性に基づいて、PDE類は、種々のファミリーに分類される。ヒトのホスホジエステラーゼ11又はPDE11とは、特にヒト由来の酵素ファミリーであってcGMPを不活性な5′−モノホスフェートに転化できる酵素ファミリーを表す。
【0016】
本発明によれば、PDE11としては、GAFAドメインとGAFBドメインを有するPDE11全体が該当する。PDE11のそれらのGAFドメインは、タンデムとしてN末端でタンパク質中に局在している。N末端に最も近いGAFドメインを、GAFAと呼称し、すぐ後続のものを、GAFBと呼称する。GAFドメインの開始と終わりは、タンパク質配列比較をもとに決定することができる。SMART配列比較(Schultz J.,Milpetz F.,Bork P.and Pointing C.P.:SMART a simple modular architecture research tool:identification of signaling domains.1998,PNAS,95,5857−5864)により、例えばイソ型PDE11A4のGAFAについては:L240〜L403(配列番号6)であり、かつGAFBについては:V425〜K591(配列番号8)であった。
【0017】
アデニル酸シクラーゼとは、ATPをcAMPに転化できる酵素を表す。それに相応して、アデニル酸シクラーゼ活性とは、規定時間において本発明によるポリペプチドによって転化されたATPの量あるいは形成されたcAMPの量を表す。
【0018】
アデニル酸シクラーゼの触媒ドメインとは、アデニル酸シクラーゼのアミノ酸配列の部分であって、アデニル酸シクラーゼが、ATPをcAMPに転化するその特性をなおも有するために必要であり、従って実質的に機能的であり、それゆえアデニル酸シクラーゼ活性を有する部分を表す。
【0019】
アミノ酸配列の繰り返しの短縮と引き続いてのアデニル酸シクラーゼ活性の測定によって、アデニル酸シクラーゼの触媒ドメインを簡単に決定することができる。
【0020】
アデニル酸シクラーゼ活性の測定は、例えば放射線活性の[α−32P]−ATPから[α−32P]−cAMPへの転化の測定によって行うことができる。
【0021】
一般に、アデニル酸シクラーゼ活性は、生成されるcAMPを抗体結合を介して測定することによって簡単に可能である。そのためには、種々の市販のアッセイキット、例えばcAMP[3H−]又は[125−I]Biotrak(登録商標)cAMP SPAアッセイ(Amersham(登録商標)社)又はAlphaScreen(登録商標)もしくはLance(登録商標)cAMPアッセイ(PerkinElmer(登録商標)社)が存在する:これらは全て、ATPからのAC反応時に未標識のcAMPが生ずる原理に基づいている。これは、外与的に添加された3Hで標識されたcAMP、125Iで標識されたcAMP又はビオチンで標識されたcAMPと、cAMP特異抗体への結合を巡って競合する。放射線活性でないLance(登録商標)アッセイの場合には、Alexa(登録商標)Fluorと抗体が結合されており、それはトレーサーによって665nmでTR−FRETシグナルを生ずる。未標識のcAMPがより多く結合されれば、標識されたcAMPによって引き起こされるシグナルは弱くなる。標準曲線をもって、シグナル強度を、相応のcAMP濃度に割り当てることができる。
【0022】
Molecular Devices社の、IMAPテクノロジーを基礎とする高効率蛍光偏光(HEFP(商標))−PDEアッセイと同様に、放射線活性の代わりに、蛍光標識された基質を使用することもできる。HEFP−PDEアッセイの場合に、フルオレセイン標識されたcAMP(Fl−cAMP)が使用され、それはPDEによってフルオレセイン標識された5′AMP(Fl−AMP)に転化される。Fl−AMPは、特殊なビーズに選択的に結合し、それによって蛍光が強く偏光される。Fl−cAMPは、該ビーズに結合しないので、偏光の増加は、生ずるFl−AMPの量に比例する。相応のACテストのために、蛍光標識されたATPをFl−cAMPの代わりに使用し、かつFl−cAMPの代わりにFl−cAMPに選択的に結合するビーズ(例えばcAMP抗体で負荷されているビーズ)を使用することができる。
【0023】
規定の機能を有するポリペプチドもしくはドメイン、すなわちポリペプチドの配列断片の"機能的に等価な変異体"とは、以下に記載されるように構造的に異なるが、なおも同じ機能を満たすポリペプチドもしくはドメインを表す。ドメインの機能的に等価な変異体を、当業者は、以下に詳細に記載されるようにして、相応のドメインのバリエーションと機能試験によって、他の公知のタンパク質の相応のドメインとの配列比較によって、又は前記ドメインをコードする相応の核酸配列と別の生物由来の好適な配列とのハイブリダイゼーションによって容易に見つけ出すことができる。
【0024】
"機能的な結合"とは、ドメインの結合、有利には共有結合であって、ドメインがその機能を満たしうる配置に導く結合を表す。例えば、GAFAドメインと、GAFBドメインと、アデニル酸シクラーゼの触媒ドメインとの機能的な結合とは、GAFドメインがリガンド結合に際して、例えばcGMP又はPDE11モジュレーターの結合に際してそのコンフォメーションを変化させ、それによりアデニル酸シクラーゼの触媒活性が変調する配置に導くドメインの結合を表す。更に、GAFAドメインとGAFBドメインとの機能的な結合とは、GAFAドメインとGAFBドメインとが一緒になってGAFドメインとしてリガンド結合に際して、例えばcGMP又はPDE11モジュレーターの結合に際してそのコンフォメーションを変化させる配置に導くドメインの結合を表す。
【0025】
有利には、GAFドメインであるGAFA及びGAFBについて該当するヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)は、イソ型PDE11A(アクセッション番号:NP_058649/BAB16371)、PDE11A1(アクセッション番号:BAB62714/CAB82573)、PDE11A2(アクセッション番号:BAB16372)、PDE11A3(アクセッション番号:BAB62713)及びPDE11A4(アクセッション番号:BAB62712)の群又はそれぞれの機能的に等価な変異体から選択され、特にイソ型PDE11A4のGAFドメイン又はそれらの機能的に等価な変異体の本発明による使用が好ましい。
【0026】
好ましい一実施態様においては、本発明によるポリペプチドのGAFAドメインは、配列番号6のアミノ酸配列又は当該配列からアミノ酸の置換、挿入又は欠失によって誘導される配列であって、アミノ酸レベル配列番号6の配列とで少なくとも90%、有利には少なくとも91%、有利には少なくとも92%、有利には少なくとも93%、有利には少なくとも94%、有利には少なくとも95%、有利には少なくとも96%、有利には少なくとも97%、有利には少なくとも98%、有利には少なくとも99%の同一性を有し、かつGAFAドメインの特性を有する配列を有するアミノ酸配列を有する。
【0027】
配列番号6の代わりに、全記載について配列番号15も同様に使用することができる。配列番号15の場合に、GAFAドメインのN末端は、配列番号6に対して1つのアミノ酸(L240)だけ短縮されている。
【0028】
それは、前記のように別のタンパク質との配列の同一性比較によって見つけ出すことができるGAFAドメインの天然の機能的に等価な変異体であるか、又は配列番号6の配列から出発して人工的な改変、例えばアミノ酸の置換、挿入又は欠失によって変更を加えた人工的なGAFAドメインであってよい。
【0029】
概念の"置換"とは、本願においては、1つ又は複数のアミノ酸を1つ又は複数のアミノ酸によって交換することを表す。有利には、いわゆる保存的交換が行われ、その際には、交換されたアミノ酸は、本来のアミノ酸と同様の特性を有しており、例えばGluのAspによる交換、GlnのAsnによる交換、ValのIleによる交換、LeuのIleによる交換、SerのThrによる交換である。
【0030】
欠失は、アミノ酸を直接的な結合によって交換することである。好ましい欠失の位置は、ポリペプチドの末端と、個々のタンパク質ドメイン間の結合部である。
【0031】
挿入は、アミノ酸をポリペプチド鎖中に導入することであり、その際、形式的には直接的な結合が1つ又は複数のアミノ酸によって交換される。
【0032】
2つのタンパク質間の同一性とは、それぞれのタンパク質全長にわたるアミノ酸の同一性を表し、特に米国ウィスコンシン州マジソンにあるDNASTAR,inc.社のLasergeneソフトウェアを用いた比較によってClustal法(Higgins DG,Sharp PM.Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer.Comput Appl.Biosci.1989 Apr;5(2):151−1)を使用して以下のパラメータ:
多重アラインメントパラメータ:
ギャップペナルティ 10
ギャップ長ペナルティ 10
ペアワイズアラインメントパラメータ:
Kタプル 1
ギャップペナルティ 3
ウィンドウ 5
保存された対角 5
を設定して計算される同一性を表す。
【0033】
配列番号6の配列とアミノ酸レベルで少なくとも90%の同一性を有するタンパク質又はドメインとは、それに相応して、タンパク質又はドメインであってその配列と配列番号6の配列とを、特に上述のパラメータ群を用いた上述のプログラムアルゴリズムに従って比較した場合に少なくとも90%の同一性を有するものを表す。
【0034】
GAFAドメインの特性とは、特にその機能、特にGAFBドメインと一緒にcGMPを結合する機能を表す。
【0035】
更なる好ましい一実施態様においては、本発明によるポリペプチドのGAFAドメインは、配列番号6のアミノ酸配列を有する。
【0036】
好ましい一実施態様においては、本発明によるポリペプチドのGAFBドメインは、配列番号8のアミノ酸配列又は当該配列からアミノ酸の置換、挿入又は欠失によって誘導される配列であって、アミノ酸レベルで配列番号8の配列と少なくとも90%、有利には少なくとも91%、有利には少なくとも92%、有利には少なくとも93%、有利には少なくとも94%、有利には少なくとも95%、有利には少なくとも96%、有利には少なくとも97%、有利には少なくとも98%、有利には少なくとも99%の同一性を有し、かつGAFBドメインの特性を有する配列を有するアミノ酸配列を有する。
【0037】
それは、前記のように別のタンパク質との配列の同一性比較によって見つけ出すことができるGAFBドメインの天然の機能的に等価な変異体であるか、又は配列番号6の配列から出発して人工的な改変、例えば前記のようにアミノ酸の置換、挿入又は欠失によって変更を加えた人工的なGAFBドメインであってよい。
【0038】
GAFBドメインの特性とは、特にダイマー形成を担いうるその機能を表し、特にGAFAと一緒にcGMPの結合によってPDE11を活性化できるその特性又はPDE11モジュレーターの結合によってPDE11活性を変調できるその特性、すなわち該活性を高める又は低める特性を表す。
【0039】
更なる好ましい一実施態様においては、本発明によるポリペプチドのGAFBドメインは、配列番号8のアミノ酸配列を有する。
【0040】
本発明によるポリペプチドの更なる好ましい一実施態様においては、ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)の機能的に結合されたGAFAドメイン及びGAFBドメイン、すなわち完全なGAFドメイン又はそれらの機能的に等価な変異体は、配列番号10のアミノ酸配列又は当該配列からアミノ酸の置換、挿入又は欠失によって誘導される配列であって、アミノ酸レベルで配列番号10の配列と少なくとも70%、有利には少なくとも75%、有利には少なくとも80%、有利には少なくとも85%、有利には少なくとも90%、有利には少なくとも93%、有利には少なくとも95%、有利には少なくとも97%、有利には少なくとも98%、有利には少なくとも99%の同一性を有し、かつヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)のGAFドメインの調節特性を有する配列を有するアミノ酸配列を有し、その際、配列番号6のGAFAドメインと配列番号8のGAFBドメインの含まれるアミノ酸配列は、アミノ酸の置換、挿入又は欠失によって、最大で10%だけ、有利には最大で9%だけ、有利には最大で8%だけ、有利には最大で7%だけ、有利には最大で6%だけ、有利には最大で5%だけ、有利には最大で4%だけ、有利には最大で3%だけ、有利には最大で2%だけ、有利には最大で1%だけ、有利には最大で0.5%だけ変更が加えられている。
【0041】
殊に、配列番号10の特に好ましいGAFドメインのN末端残基は、そのN末端から配列番号6のGAFAドメインまで自由に変更を加えることができ、かつ特に短縮可能である。有利には、配列番号10の特に好ましいGAFドメインのN末端残基は、100アミノ酸だけ、有利には90アミノ酸だけ、有利には80アミノ酸だけ、有利には70アミノ酸だけ、有利には60アミノ酸だけ、有利には50アミノ酸だけ、有利には40アミノ酸だけ、有利には30アミノ酸だけ、有利には20アミノ酸だけ、有利には10アミノ酸だけ、有利には5アミノ酸だけN末端で短縮することができる。
【0042】
配列番号6のGAFAドメイン及び配列番号8のGAFBドメインのアミノ酸部分配列は、アミノ酸の置換、挿入又は欠失によって、それぞれ前記の機能を失うことなく、最大で10%だけ、有利には最大で9%だけ、有利には最大で8%だけ、有利には最大で7%だけ、有利には最大で6%だけ、有利には最大で5%だけ、有利には最大で4%だけ、有利には最大で3%だけ、有利には最大で2%だけ、有利には最大で1%だけ、有利には最大で0.5%だけ変更を加えることができる。
【0043】
有利には、ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)の機能的に結合されたGAFAドメインとGAFBドメイン、すなわち完全なGAFドメイン又はそれらの機能的に等価な変異体は、
(a)ヒトのPDE11A4のアミノ酸M24からアミノ酸K591までのN末端か、又は
(b)配列番号10
の群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0044】
本発明によるポリペプチドのアデニル酸シクラーゼの触媒ドメインの部分のためには、有利には天然形においてGAFドメインを有するアデニル酸シクラーゼが使用される。特に好ましいアデニル酸シクラーゼは、細菌由来の、特にシアノバクテリア由来のアデニル酸シクラーゼであって、特に天然形においてGAFドメインを有するもの又はそれぞれの機能的に等価な変異体である。
【0045】
特に好ましいアデニル酸シクラーゼは、
(a)アナベナ属の種PCC7120由来のアデニル酸シクラーゼ又はその機能的に等価な変異体、
(b)アナベナ・バリアビリ(Anabaena variabili)ATTC29413由来のアデニル酸シクラーゼ又はその機能的に等価な変異体、
(c)ノストク・プンクチフォルメ(Nostoc punctiforme)PCC73102由来のアデニル酸シクラーゼ又はその機能的に等価な変異体、
(d)トリコデスニウム・エリスラエウム(Trichodesmium erythraeum)IMS101由来のアデニル酸シクラーゼ又はその機能的に等価な変異体、
(e)ブデロビブリオ・バクテリオボラス(Bdellovibrio bacteriovorus)HD100由来のアデニル酸シクラーゼ又はその機能的に等価な変異体、
(f)マグネトコッカス属の種MC−1由来のアデニル酸シクラーゼ又はその機能的に等価な変異体
の群から選択される。
【0046】
殊に好ましいアデニル酸シクラーゼは、アナベナ属の種PCC7120由来のイソ型CyaB1又はCyaB2の、特にCyaB1のアデニル酸シクラーゼ(アクセッション番号:NP_486306,D89623)又はその機能的に等価な変異体である。
【0047】
好ましい一実施態様においては、アデニル酸シクラーゼの触媒ドメイン又はその機能的に等価な変異体は、配列番号12のアミノ酸配列又は当該配列からアミノ酸の置換、挿入又は欠失によって誘導される配列であって、アミノ酸レベルで配列番号12の配列と少なくとも90%、有利には少なくとも91%、有利には少なくとも92%、有利には少なくとも93%、有利には少なくとも94%、有利には少なくとも95%、有利には少なくとも96%、有利には少なくとも97%、有利には少なくとも98%、有利には少なくとも99%の同一性を有し、かつアデニル酸シクラーゼの触媒特性を有する配列を有するアミノ酸配列を有する。
【0048】
それは、前記のように別のアデニル酸シクラーゼとの配列の同一性比較によって見つけ出すことができるアデニル酸シクラーゼの触媒ドメインの天然の機能的に等価な変異体であるか、又は配列番号12の配列から出発して人工的な改変、例えば前記のようにアミノ酸の置換、挿入又は欠失によって変更を加えた人工的なアデニル酸シクラーゼの触媒ドメインであってよい。
【0049】
アデニル酸シクラーゼの触媒ドメインの特性とは、アデニル酸シクラーゼの前記の触媒特性、特にATPをcAMPへと転化する能力を表す。
【0050】
有利には、アデニル酸シクラーゼの触媒ドメイン又はその機能的に等価な変異体は、
(a)CyaB1のアミノ酸L386からK859までのC末端であって、CyaB1のL386がV386によって交換されているもの、又は
(b)配列番号12
の群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0051】
特に好ましい一実施態様において、本発明によるポリペプチドは、配列番号1もしくは配列番号4のアミノ酸配列又は当該配列からアミノ酸の置換、挿入又は欠失によって誘導される配列であって、アミノ酸レベルで配列番号1もしくは配列番号4の配列と少なくとも70%、有利には少なくとも75%、有利には少なくとも80%、有利には少なくとも85%、有利には少なくとも90%、有利には少なくとも93%、有利には少なくとも95%、有利には少なくとも97%、有利には少なくとも98%、有利には少なくとも99%の同一性を有し、かつヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)のGAFドメインの調節特性を有する配列を有し、その際、配列番号6のGAFAドメイン、配列番号8のGAFBドメイン及び配列番号12のアデニル酸シクラーゼの触媒ドメインの含まれるアミノ酸配列は、アミノ酸の置換、挿入又は欠失によって最大で10%だけ変更が加えられている。
【0052】
配列番号4の代わりに、全記載について配列番号13も同様に使用することができる。配列番号13の場合は、配列番号4に対してアミノ酸A1020を欠いている。
【0053】
殊に、特に好ましい配列番号1と配列番号4の本発明によるポリペプチドのN末端残基は、そのN末端から配列番号6のGAFAドメインまで自由に変更を加えることができ、かつ特に短縮可能である。有利には、特に好ましい配列番号1もしくは配列番号4の本発明によるポリペプチドのN末端残基は、100アミノ酸だけ、有利には90アミノ酸だけ、有利には80アミノ酸だけ、有利には70アミノ酸だけ、有利には60アミノ酸だけ、有利には50アミノ酸だけ、有利には40アミノ酸だけ、有利には30アミノ酸だけ、有利には20アミノ酸だけ、有利には10アミノ酸だけ、有利には5アミノ酸だけN末端で短縮することができる。
【0054】
配列番号6のGAFAドメイン、配列番号8のGAFBドメイン及び配列番号12のアデニル酸シクラーゼの触媒ドメインのアミノ酸部分配列は、アミノ酸の置換、挿入又は欠失によって、それぞれ前記の機能を失うことなく、最大で10%だけ、有利には最大で9%だけ、有利には最大で8%だけ、有利には最大で7%だけ、有利には最大で6%だけ、有利には最大で5%だけ、有利には最大で4%だけ、有利には最大で3%だけ、有利には最大で2%だけ、有利には最大で1%だけ、有利には最大で0.5%だけ変更を加えることができる。
【0055】
特に有利には、本発明によるキメラポリペプチドのM24〜K591のN末端では、ヒトのPDE11A4(アクセッション番号:BAB62712)のN末端を有する。そこにC末端で、クローニング切断部位の挿入でL386から突然変異させたV386から、CyaB1(アクセッション番号:NP_486306)のC末端のK859までが引き続く。
【0056】
特に、配列番号1もしくは配列番号4のアミノ酸配列を含む本発明によるポリペプチドが好ましい。
【0057】
殊に好ましい本発明によるポリペプチドは、配列番号1もしくは配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0058】
更なる一実施態様においては、本発明は更に、前記の本発明によるポリペプチドの1つをコードするポリヌクレオチド(以下に核酸とも呼ばれる)に関する。
【0059】
発明の詳細な説明に挙げられる全てのポリヌクレオチド又は核酸は、例えばRNA配列、DNA配列又はcDNA配列であってよい。
【0060】
特に好ましい本発明によるポリヌクレオチドは、部分配列として
(a)配列番号5又は、配列番号5の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列と、
(b)配列番号7又は、配列番号7の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列と、
(c)配列番号11又は、配列番号11の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列と
を有する。
【0061】
配列番号5は、配列番号6の特に好ましいGAFAドメインをコードする特に好ましい部分核酸配列を表す。
【0062】
配列番号7は、配列番号8の特に好ましいGAFBドメインをコードする特に好ましい部分核酸配列を表す。
【0063】
配列番号11は、配列番号12の特に好ましいアデニル酸シクラーゼの触媒ドメインをコードする特に好ましい部分核酸配列を表す。
【0064】
前記のドメインをコードする核酸もしくは部分核酸についての他の天然の例は、更に、前記の部分核酸配列から出発して、特に、ゲノム配列が知られていない種々の生物由来の配列番号5、7又は11の配列から出発して、ハイブリダイゼーション技術によって自体公知のように容易に見つけ出すことができる。
【0065】
ハイブリダイゼーションは、中程度の(低い厳密性)又は有利にはストリンジェントな(高い厳密性)条件下で実施することができる。
【0066】
係るハイブリダイゼーション条件は、例えばSambrook,J.,Fritsch,E.F.,Maniatis,T.著のMolecular Cloning(A Laboratory Manual)(第二版),Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989,9.31〜9.57ページ又はCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6に記載されている。
【0067】
例えば、洗浄工程の間の条件は、低い厳密性(2×SSC、50℃)での条件と、高い厳密性(0.2×SSC、50℃、有利には65℃)(20×SSC:0.3Mのクエン酸ナトリウム、3Mの塩化ナトリウム、pH7.0)での条件とによって区切られる条件範囲から選択することができる。
【0068】
更に、洗浄工程の間の温度を、室温、つまり22℃での中程度の条件から、65℃でのストリンジェントな条件まで増加させることができる。
【0069】
両方のパラメータ、塩濃度及び温度は、同時に変更でき、また両方のパラメータの1つを一定に保持して、もう一方のみを変更することもできる。ハイブリダイゼーションの間に、変性剤、例えばホルムアミド又はSDSを使用してもよい。50%のホルムアミドの存在下で、ハイブリダイゼーションは、有利には42℃で実施される。
【0070】
ハイブリダイゼーション及び洗浄工程のための幾つかの例示される条件を、以下に示す:
(1)例えば以下によるハイブリダイゼーション条件
(i)4×SSCを65℃で、又は
(ii)6×SSCを45℃で、又は
(iii)6×SSCを68℃で、100mg/mlの変性された魚精子DNA、又は
(iv)6×SSC、0.5%のSDS、100mg/mlの変性され、断片化されたサケ精子DNAを68℃で、又は
(v)6×SSC、0.5%のSDS、100mg/mlの変性され、断片化されたサケ精子DNA、50%のホルムアミドを、42℃で、又は
(vi)50%のホルムアミド、4×SSCを42℃で、又は
(vii)50%(容量/容量)のホルムアミド、0.1%のウシ血清アルブミン、0.1%のFicoll、0.1%のポリビニルピロリドン、50mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH6.5)、750mMのNaCl、75mMのクエン酸ナトリウムを42℃で、又は
(viii)2×又は4×のSSCを、50℃で(中程度の条件)、又は
(ix)30〜40%のホルムアミド、2×又は4×のSSCを42℃で(中程度の条件)、
(2)例えば以下によりそれぞれ10分間の洗浄工程
(i)0.015MのNaCl/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のSDSを50℃で、又は
(ii)0.1×SSCを65℃で、又は
(iii)0.1×SSC、0.5%のSDSを68℃で、又は
(iv)0.1×SSC、0.5%のSDS、50%のホルムアミドを42℃で、又は
(v)0.2×SSC、0.1%のSDSを42℃で、又は
2×SSCを65℃で(中程度の条件)。
【0071】
本発明によるポリペプチドをコードする特に好ましい本発明によるポリヌクレオチドは、配列番号2の核酸配列を有する。
【0072】
本発明によるポリペプチドをコードする殊に好ましい本発明によるポリヌクレオチドは、配列番号2の核酸配列を有する。
【0073】
本発明によるポリペプチドは、有利には、本発明によるポリペプチドをコードする前記のポリヌクレオチドを、好適な発現ベクターにクローニングし、宿主細胞に前記発現ベクターを形質転換し、この宿主細胞を発現させて本発明によるポリペプチドを発現させ、そして引き続き本発明によるタンパク質を単離することで製造することができる。
【0074】
従って、本発明は、本発明によるポリペプチドを、組み換え宿主細胞を培養し、本発明によるポリペプチドを発現させ、そして単離することによって製造する方法に関する。
【0075】
形質転換法は、当業者に公知であり、かつ例えばSambrook,J.,Fritsch、E.F.,Maniatis,T.著のMolecular Cloning(A Laboratory Manual)(第二版),Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989,9.31〜9.57ページに記載されている。
【0076】
更に本発明は、本発明によるポリペプチドをコードする本発明によるポリヌクレオチドを有する組み換えプラスミドベクター、特に発現ベクターに関する。
【0077】
発現ベクターの種類は重要ではない。相応の宿主細胞において所望のポリペプチドを発現できるあらゆる発現ベクターを使用することができる。好適な発現系は、当業者に公知である。
【0078】
好ましい発現ベクターは、PQE30(Quiagen社)、pQE60(Quiagen)pMAL(NEB)pIRES.PIVEX2.4a(ROCHE社)、PIVEX2.4b(ROCHE社)、PIVEX2.4c(ROCHE社)、pUMVC1(Aldevron社)、pUMVC2(Aldevron社)、PUMVC3(Aldevron社)、PUMVC4a(Aldevron社)、PUMVC4b(Aldevron社)、pUMVC7(Aldevron社)、PUMVC6a(Aldevron社)、pSP64T、pSP64TS、pT7TS、pCro7(Takara社)、pKJE7(Takara社)、pKM260、pYes260、pGEM−T Easyである。
【0079】
更に、本発明は、本発明によるプラスミドベクターを有する組み換え宿主細胞に関する。前記の組み換え宿主細胞は、有利には、本発明によるポリペプチドを発現することができる。
【0080】
宿主細胞の種類は重要ではない。原核性の宿主細胞も、真核性の宿主細胞も適している。相応の発現ベクターによって所望のポリペプチドを発現できるあらゆる宿主細胞を使用することができる。発現ベクターと宿主細胞からの好適な発現系は、当業者に公知である。
【0081】
好ましい宿主細胞は、例えば原核細胞、例えば大腸菌、コリネバクテリア、酵母、ストレプトミセス科細菌又は真核細胞、例えばCHO、HEK293又は昆虫細胞系統、例えばSF9、SF21、アフリカツメガエル卵母細胞である。
【0082】
形質転換された宿主細胞の培養条件、例えば培養培地組成及び発酵条件は、当業者に公知であり、かつ選択された宿主細胞の種類に左右される。
【0083】
ポリペプチドの単離と精製は、標準的な方法に従って実施することができ、例えば"The QuiaExpressionists(登録商標),第五版、2003年6月"に記載されている。
【0084】
本発明によるポリペプチドを発現する前記の形質転換された宿主細胞は、特に以下に記載される細胞性アッセイでのPDE11モジュレーターの同定方法の実施のためにも適している。このためには、更に、相応の宿主細胞を固体担体上に固定化し、かつ/又は相応のスクリーニング法を高スループットの観点で実施する(ハイスループットスクリーニング)ことが好ましいことがある。
【0085】
上述の全ての核酸配列は、当業者によって知られた、例えば酵素的な方法によって公知の核酸配列から切り出すことができかつ公知の核酸配列とともに新たに組み立てて、製造することができる。更に、上述の全ての核酸は、自体公知のようにして化学合成によって、ヌクレオチド構成単位から、例えば二重らせんの個々の重複した相補的な核酸構成単位の断片縮合によって製造することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば公知のようにして、ホスホアミダイト法(Voet,Voet,第二版、Wiley Press New York,896〜897頁)に従って実施することができる。DNAポリメラーゼのクレノウ断片を用いて、ライゲーション反応並びに一般的なクローニング法による合成オリゴヌクレオチドの付加と、間隙の補填は、Sambrook et al.(1989),Molecular cloning:A laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0086】
更に本発明は、ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)のモジュレーターの同定方法において、
(a)ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)の可能性のあるモジュレーターと、本発明によるポリペプチドとを接触させる工程と、
(b)該可能性のあるモジュレーターが、可能性のあるモジュレーターが不在の場合と比較して本発明によるポリペプチドのアデニル酸シクラーゼ活性を変化させるか否かを測定する工程と、
を含む方法に関する。
【0087】
本発明による方法の好ましい一実施態様において、工程(a)では、ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)の可能性のあるモジュレーターの他に、cGMPと本発明によるポリペプチドとを接触させる。
【0088】
本発明による方法では、可能性のあるPDE11モジュレーターを、有利には精製されていることが好ましい本発明によるポリペプチドと、特に有利にはcGMPと一緒にインビトロでインキュベートし、そして本発明によるポリペプチドのアデニル酸シクラーゼ活性が、PDE11モジュレーター不在の試験バッチに対して変わった変化を測定する。
【0089】
それに代えて、アデニル酸シクラーゼ活性の変化は、本発明によるポリペプチドと、場合によりcGMPとを含有する試験バッチに、可能性のあるPDE11モジュレーターを添加した後に測定することができる。PDE11/CyaB1キメラのアデニル酸シクラーゼ活性は、以下に詳細に記載されるように、定義された量のATPがcAMPに転化されたことを介して測定される。
【0090】
ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)のモジュレーター(以下にPDE11モジュレーターとも呼称される)とは、PDE11のGAFドメインへの結合を介してPDE11活性を変調することができる、すなわち変更することができる物質を表し、ここでは測定はアデニル酸シクラーゼ活性の変化を介して行われる。従ってPDE11モジュレーターは、PDE11のアロステリック中心を介して作用するのであって、PDE11の触媒中心を介して作用せず又は決して作用しない。該モジュレーターは、PDE11の触媒活性を高めるアゴニスト(PDE11アゴニスト)又はPDE11の触媒活性を低めるアゴニスト(PDE11アンタゴニスト)であってよい。
【0091】
例えば、本発明による方法によって、以下に説明されるように、驚くべきことに、cGMPはPDE11アゴニストであることを示すことができた。
【0092】
更に、好ましいPDE11モジュレーターは、例えばペプチド、ペプチドミメティック、タンパク質、特に抗体、特にGAFドメインに対するモノクローナル抗体、アミノ酸、アミノ酸類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、特にオリゴヌクレオチド、特に有利にはいわゆる"小分子"又はSMOL類である。好ましいSMOL類は、有機又は無機の化合物、例えばヘテロ有機化合物又は有機金属化合物であって、1000g/モルの分子質量、特に200〜800g/モルの分子質量、特に有利には300〜600g/モルの分子質量を有する化合物である。
【0093】
本発明によれば、PDE11モジュレーターは、有利には本発明によるポリペプチド(PDE11/CyaB1キメラ)中のGAFドメインに結合し、そして本発明によるポリペプチド(PDE11/CyaB1キメラ)のアデニル酸シクラーゼ活性の変化を直接もたらすか、又はPDE11/CyaB1キメラからのcGMPの排除によってPDE11/CyaB1キメラのアデニル酸シクラーゼ活性の変化をもたらす。
【0094】
本発明による方法を、cGMP又はcAMPだけで、試験されるべき物質として、PDE11モジュレーターなくして実施する場合に、図5による用量作用曲線が得られる。PDE11A4/CyaB1キメラは、1mMのcGMPによって約4倍活性化される。それは、400の%基準値に相当し、かつcGMPが、PDE11A4−GAFアゴニストであることを示す。cAMPは、1mMでは活性化せず、約150の%基準値を有する、すなわちそれはGAFアゴニストでもアンタゴニストでもない。
【0095】
cGMPを含まない試験バッチ中のPDE11モジュレーターによるアデニル酸シクラーゼ活性の変調、従って変化、従って増大又は低下は、%基準値として以下の式に従って計算される:
【数1】

【0096】
100μMの可能性のあるPDE11モジュレーターが使用される場合に%基準値が50未満である場合に、PDE11/CyaB1キメラ中のGAFドメインに結合するPDE11アンタゴニストを指すが、%基準値が200より高いものはPDE11アゴニストを指す。
【0097】
従って、本発明は、モジュレーターの存在下に、アデニル酸シクラーゼ活性の低下を、モジュレーターの不在と比較して測定し、そして該モジュレーターがPDE11アンタゴニストを表す特に好ましい本発明による方法に関する。
【0098】
更に、本発明は、モジュレーターの存在下に、アデニル酸シクラーゼ活性の増大を、モジュレーターの不在と比較して測定し、そして該モジュレーターがPDE11アゴニストを表す特に好ましい本発明による方法に関する。
【0099】
本発明による方法の特に好ましい一実施態様において、アデニル酸シクラーゼ活性の測定は、放射線活性標識されたATP又は蛍光標識されたATPの転化の測定によって行われる。
【0100】
本発明によるポリペプチド、つまりPDE11/CyaB1キメラのアデニル酸シクラーゼ活性の測定は、放射線活性の[α−32P]−ATPから[α−32P]−cAMPへの転化の測定によって行うことができる。
【0101】
一般に、アデニル酸シクラーゼ活性は、生成されるcAMPを抗体結合を介して測定することによって簡単に可能である。そのためには、種々の市販のアッセイキット、例えばcAMP[3H−]又は[125−I]Biotrak(登録商標)cAMP SPAアッセイ(Amersham(登録商標)社)又はAlphaScreen(登録商標)もしくはLance(登録商標)cAMPアッセイ(PerkinElmer(登録商標)社)が存在する:これらは全て、ATPからのAC反応時に未標識のcAMPが生ずる原理に基づいている。これは、外与的に添加された3Hで標識されたcAMP、125Iで標識されたcAMP又はビオチンで標識されたcAMPと、cAMP特異抗体への結合を巡って競合する。放射線活性でないLance(登録商標)アッセイの場合には、Alexa(登録商標)Fluorと抗体が結合されており、それはトレーサーによって665nmでTR−FRETシグナルを生ずる。未標識のcAMPがより多く結合されれば、標識されたcAMPによって引き起こされるシグナルは弱くなる。標準曲線をもって、シグナル強度を、相応のcAMP濃度に割り当てることができる。
【0102】
Molecular Devices社の、IMAPテクノロジーを基礎とする高効率蛍光偏光(HEFP(商標))−PDEアッセイと同様に、放射線活性の代わりに、蛍光標識された基質を使用することもできる。HEFP−PDEアッセイの場合に、フルオレセイン標識されたcAMP(Fl−cAMP)が使用され、それはPDEによってフルオレセイン標識された5′AMP(Fl−AMP)に転化される。Fl−AMPは、特殊なビーズに選択的に結合し、それによって蛍光が強く偏光される。Fl−cAMPは、該ビーズに結合しないので、偏光の増加は、生ずるFl−AMPの量に比例する。相応のACテストのために、蛍光標識されたATPをFl−cAMPの代わりに使用し、かつFl−cAMPの代わりにFl−cAMPに選択的に結合するビーズ(例えばcAMP抗体で負荷されているビーズ)を使用することができる。
【0103】
本発明による方法の更に好ましい実施態様において、変化した%基準値が、物質のGAFモジュレーター効果によって引き起こされるか又はAC触媒中心の直接的な変調によって引き起こされるかどうかを区別するためには、更にカウンタースクリーニングを実施する。
【0104】
更に本発明は、アデニル酸シクラーゼの触媒ドメインの直接的なモジュレーターの排除のために、アデニル酸シクラーゼの触媒ドメインを有するが、ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)の機能的なGAFドメインを有さないポリペプチドを使用して実施される好ましい本発明による方法に関する。
【0105】
有利には、そのためには、%基準値は、前記の方法と同様にして、有利にはPDE11/CyaB1キメラによる代わりに、有利には
a)AC触媒中心を有するか、又は
b)GAF機能に必須のアミノ酸に突然変異を有するか、又は
c)N末端でGAFドメインだけ短縮されている
タンパク質によってのみで測定される。
【0106】
a)についての一例は、配列番号1のアミノ酸を有するが、但し、N末端でA2〜L775を欠失しているポリペプチドである。
【0107】
b)についての一例は、配列番号1のアミノ酸を有するが、但し、突然変異D355Aを有するポリペプチドである。
【0108】
c)についての一例は、配列番号1のアミノ酸を有するが、但し、L240〜K568の部分配列を欠失しているポリペプチドである。
【0109】
100μMの物質が、a、bもしくはcにより改変されたタンパク質と一緒に%基準値50未満を生じる場合に、AC触媒中心の阻害があり、かつ純粋なGAF拮抗作用を排除することができる。
【0110】
本発明による方法の更に好ましい実施態様において、該方法は、細胞性アッセイとして、前記の本発明による宿主細胞の存在下に実施される。
【0111】
それについて、生成するcAMPを、アデニル酸シクラーゼ活性の尺度として、細胞性アッセイにおいても測定でき、例えばJohnston,P.A.著のCellular assays in HTS,Methods Mol Biol.190,107−16.(2002)及びJohnston,P.A.及びJohnston,P.A.著のCellular platforms for HTS:three case studies.Drug Discov Today.7,353−63.(2002)に記載されている。
【0112】
そのために、有利には本発明によるポリペプチド、つまりPDE11/CyaB1キメラのcDNAは、好適な切断部位を介してトランスフェクションベクター中に挿入され、そして生ずるベクター構築物によって、好適な細胞、例えばCHO細胞又はHEK283細胞にトランスフェクションされる。本発明によるポリペプチドを安定に発現する細胞クローンが選択される。
【0113】
トランスフェクションされた細胞クローンの細胞内cAMP濃度は、本発明によるポリペプチドのアデニル酸シクラーゼ活性によって決定的に影響される。GAFアンタゴニストは、アデニル酸シクラーゼ活性の阻害によって、細胞内cAMPの低下を引き起こし、そしてGAFアゴニストは、細胞内cAMPの増大を引き起こす。
【0114】
cAMP量は、細胞の溶解後に前記の方法(BioTrak(登録商標)、Alphascreen(登録商標)又はHEFP(登録商標))によって測定でき、又は直接的に細胞中で測定できる。そのためには、該細胞系統において、有利にはレポーター遺伝子がCRE(cAMP応答要素)にカップリングされる(Johnston,P.著のCellular assays in HTS,Methods Mol Biol.190,107−16.(2002))。高められたcAMP濃度は、CREB(cAMP応答要素結合タンパク質)のCRE調節因子への高められた結合と、こうしてレポーター遺伝子の高められた転写をもたらす。レポーター遺伝子としては、例えば緑色蛍光タンパク質、β−ガラクトシダーゼ又はルシフェラーゼを用いることができ、その発現レベルは、蛍光測定的に、測光的に又は発光測定的に測定することができ、例えばGreer,L.F.及びSzalay,A.A.著のImaging of light emission from the expression of luciferase in living cells and organisms:a review.Luminescence 17,43−72(2002)又はHill,S.他著のReporter−gene systems for the study of G−protein coupled receptors.Curr.Opin.Pharmacol.1,526−532(2001)に記載されている。
【0115】
特に好ましい一実施態様においては、前記の本発明による方法は、特に細胞性アッセイとして高スループットの観点で使用される。
【0116】
以下の実施例は、本発明を具体的に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0117】
実施例1
PDE11/CyaB1キメラをコードする組み換えDNAの製造
クローニングは標準的方法に従って実施した。ヒトのPDE11A4についての遺伝子(Genbankアクセッション番号:BAB62712)を有するオリジナルクローンを、ベクター中に提供した。PCRによって、Kanadier他著のEMBO J.2002で記載されるPDE2−GAFキメラのクローニングと同様に行った。特異的プライマーを用いて、遺伝子断片hPDE11A41-391を増幅させ、該断片は、GAFAドメインを有するPDE11A4のN末端をコードし、かつN末端にBglII切断部位を有し、かつC末端にXbaI切断部位を有する。同様にして、遺伝子断片hPDE11A4392-569を増幅させ、該断片は、GAFBドメインをコードし、かつN末端にXbaI切断部位を有し、かつC末端にSalI切断部位を有する。両方の断片を、サブクローニング工程を経て、クローニングベクターpBluescriptII SK(−)中にXbaI切断部位を介してhPDE11A41-569につないだ。遺伝子断片hPDE11A41-569に、SalI切断部位を介してC末端で、PCRによって生成された遺伝子断片CyaB1386-859を、アデニル酸シクラーゼCyaB1の触媒ドメイン(Genbankアクセッション番号:D89623)と連結した。その際に、hPDE11A41-569のN末端SalI切断部位を、CyaB1386-859のC末端XhoI切断部位にクローニングし、そしてCyaB1のL386をVに突然変異させた。全てのクローニング工程は、大腸菌Xl1blueMRF′において行った。
【0118】
PDE11−GAFキメラについての遺伝子を、発現ベクターpQE30(Quiagen社製)中に再クローニングした。
【0119】
実施例2
ポリペプチドの発現と精製
PDE11−GAFキメラについての遺伝子を有するpQE30ベクターを、大腸菌BL21細胞に再形質転換した。該タンパク質の発現と精製は、"The QiaExpressionist(登録商標)"、第五版、2003年6月と同様に実施した。その際、発現条件:25μMのIPTGでの誘導、16℃でのインキュベーション、引き続いての大腸菌のフレンチプレス処理で最適なタンパク質収率が達成された。
【0120】
実施例3
アッセイの実施
PDE11A4/CyaB1キメラのアデニル酸シクラーゼ活性を、調査されるべき物質を使用して、かつ使用せずに測定する。その際、アデニル酸シクラーゼ活性は、規定量のATPがcAMPに転化したことをもって測定され、そしてそのクロマトグラフィー分離は、2つのカラムステップを通じてSalomon他に従って定める。転化の検出のために、放射線活性トレーサー[α−32P]−AMPを使用し、そして生成した量の[α−32P]−cAMPを測定する。3H−cAMPを、回収率についての内部標準として用いる。インキュベーション時間は、1〜120分であることが望ましく、インキュベーション温度は20〜45℃であることが望ましく、Mg2+−補因子濃度は、1〜20mM(相応量のMn2+を補因子としても使用できる)であることが望ましく、かつATP濃度は、0.5μM〜5mMであることが望ましい。物質を用いない場合に対する物質を用いた転化率の増大は、GAF−拮抗作用を指し示す。転化が物質添加によって阻害される時には、該物質のGAF拮抗作用を示す。GAF拮抗作用は、またPDE11A4/CyaB1キメラの活性化の遮断を介して、本来のGAFリガンドであるcAMPによって測定することもできる。このために、cAMP濃度を高めつつ、物質を用いて、かつ物質を用いずに転化率が測定される。物質を用いた転化率が、物質を用いない場合より低い場合に、該物質のGAF拮抗作用を示す。
【0121】
反応バッチは:
・ 50μlのAC試験カクテル(グリセリン43.5%(V/V)、0.1MのTris/HCl(pH7.5)、20mMのMgCl2
・ 40−xμlの酵素希釈物(活性に応じて、0.1%(W/V)のBSA水溶液中に0.1〜0.3μgのPDE10/CyaB1−キメラを含有する)
・ xμlの物質
・ 16〜30kBqの[α−32P]−ATPを含む10μlの750μMのATP開始溶液
を含有する。
【0122】
タンパク質試料と前記カクテルを、1.5mlの反応容器中で氷上で混合し、反応をATPを用いて開始させ、そして37℃で10分間インキュベートする。150μlのAC停止バッファーによって反応を停止させ、反応容器を氷上に置き、100Bqの[2,8−3H]−cAMPと750μlの水を含む10μlの20mMのcAMPを添加する。
【0123】
各試験バッチに2回実施する。ブランクとして、酵素の代わりに水を有する試験バッチを用いた。物質とcGMPを有さない試験バッチを用いて、酵素基準活性を測定する。ATPとcAMPの分離のために、それぞれの試料を1.2gのDowex−50WX4−400を有するガラスカラムに入れて、浸透後に3〜4mlの水で洗浄する。引き続き、5mlの水を用いて酸化アルミニウムカラム(1.0gのAL23を有する9×1cmのガラスカラム、90活性、中性)に溶出させ、そしてこれを4mlの0.1MのTRIS/HCl(pH7.5)を用いて、4mlのシンチレーターUltima XR Goldが供されたシンチレーション容器中に溶出させた。慎重に混合した後に、液体シンチレーションカウンター中で計数した。放射線活性標識されたcAMPとATPの使用される量は、3H−と32P−のトータルとして、直接的に5mlの溶出バッファーと4mlのシンチレーター中で計数される。転化率は、酵素活性として以下の式:
【数2】

に従って計算される。
【0124】
該物質による酵素の阻害又は活性化は、%基準値として以下の式:
【数3】

に従って計算される。
【0125】
100μMの物質の場合に%基準値が50未満である場合に、AC触媒中心の阻害を排除すれば、GAFアンタゴニストを示し、一方で200より大きい%基準値はGAFアゴニストを示す。
【0126】
100μMのcGMPを有する試験バッチにおいて、100μMの調査されるべき物質が使用される場合に%基準値が90未満であればGAFアンタゴニストが存在する。
【0127】
カラムは、使用後に以下のように再生した:
Dowexカラム:5mlの2NのHCl、2×5mlの水
酸化アルミニウムカラム:2×5mlの0.1MのTRIS/HCl(pH7.5)
アッセイを、試験されるべき物質としてcGMP又はcAMPを用いて実施すると、図5による用量作用曲線が得られる。PDE11A4/CyaB1キメラは、1mMのcGMPによって約4倍活性化される。それは、400の%基準値に相当し、かつcGMPが、PDE11A4−GAFアゴニストであることを示す。cAMPは、1mMでは活性化せず、約150の%基準値を有する、すなわちそれはGAFアゴニストでもアンタゴニストでもない。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、PDE11/CyaB1キメラのアミノ酸配列を示す。
【図2】図2は、PDE11/CyaB1キメラのcDNA配列を示す。
【図3】図3は、精製後のPDE11/CyaB1キメラのタンパク質配列を示す。イタリック体=発現ベクターからの精製タグ(Quiagen社のPQE30);ボールド体=PDE11−GAFドメインを有するN末端;ボールド体で下線=GAFAドメインとGAFBドメイン;V386を、クローニング切断部位の挿入のためにL386から突然変異させた;下線=触媒ドメインを有するCyaB1のC末端。
【図4】図4は、キメラPDE11/CyaB1−ポリペプチドの概略図を示す。
【図5】図5は、環状ヌクレオチドによるPDE11/CyaB1キメラの活性化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドであって、
(a)ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)のGAFAドメイン及びGAFBドメイン又はそれらの機能的に等価な変異体と、
(b)アデニル酸シクラーゼの触媒ドメイン又はそれらの機能的に等価な変異体と
を機能的に結合されて有するポリペプチド。
【請求項2】
請求項1記載のポリペプチドであって、ホスホジエステラーゼ11(PDE11)が、PDE11A1、PDE11A2、PDE11A3、PDE11A4又はそれぞれの機能的に等価な変異体の群から選択されることを特徴とするポリペプチド。
【請求項3】
請求項1又は2記載のポリペプチドであって、ホスホジエステラーゼ11(PDE11)が、イソ型のPDE11A4を有することを特徴とするポリペプチド。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載のポリペプチドであって、GAFAドメインが、配列番号6のアミノ酸配列又は当該配列からアミノ酸の置換、挿入もしくは欠失によって誘導される配列であって、アミノ酸レベルで配列番号6の配列と少なくとも90%の同一性を有し、かつGAFAドメインの特性を有する配列を有するアミノ酸配列を有することを特徴とするポリペプチド。
【請求項5】
請求項4記載のポリペプチドであって、GAFAドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を有することを特徴とするポリペプチド。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載のポリペプチドであって、GAFBドメインが、配列番号8のアミノ酸配列又は当該配列からアミノ酸の置換、挿入もしくは欠失によって誘導される配列であって、アミノ酸レベルで配列番号8の配列と少なくとも90%の同一性を有し、かつGAFBドメインの特性を有する配列を有するアミノ酸配列を有することを特徴とするポリペプチド。
【請求項7】
請求項6記載のポリペプチドであって、GAFBドメインが、配列番号8のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を有することを特徴とするポリペプチド。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載のポリペプチドであって、ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)の機能的に結合されたGAFAドメインとGAFBドメイン又はその機能的に等価な変異体が、配列番号10のアミノ酸配列又は当該配列からアミノ酸の置換、挿入もしくは欠失によって誘導される配列であって、アミノ酸レベルで配列番号10の配列と少なくとも70%の同一性を有し、かつヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)のGAFドメインの調節特性を有する配列を有するアミノ酸配列を有し、その際、配列番号6のGAFAドメイン及び配列番号8のGAFBドメインの含まれるアミノ酸配列が、アミノ酸の置換、挿入又は欠失によって最大で10%だけ変更が加えられていることを特徴とするポリペプチド。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載のポリペプチドであって、ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)の機能的に結合されたGAFAドメインとGAFBドメイン又はそれらの機能的に等価な変異体が、
(a)ヒトのPDE11A4のアミノ酸M24からアミノ酸K591までのN末端か、又は
(b)配列番号10
の群から選択されるアミノ酸配列を有することを特徴とするポリペプチド。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載のポリペプチドであって、アデニル酸シクラーゼが、細菌由来のGAFドメイン含有のアデニル酸シクラーゼ又はそれぞれの機能的に等価な変異体であることを特徴とするポリペプチド。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載のポリペプチドであって、アデニル酸シクラーゼが、
(a)アナベナ属の種PCC7120由来のアデニル酸シクラーゼ又はその機能的に等価な変異体、
(b)アナベナ・バリアビリATTC29413由来のアデニル酸シクラーゼ又はその機能的に等価な変異体、
(c)ノストク・プンクチフォルメPCC73102由来のアデニル酸シクラーゼ又はその機能的に等価な変異体、
(d)トリコデスニウム・エリスラエウムIMS101由来のアデニル酸シクラーゼ又はその機能的に等価な変異体、
(e)ブデロビブリオ・バクテリオボラスHD100由来のアデニル酸シクラーゼ又はその機能的に等価な変異体、
(f)マグネトコッカス属の種MC−1由来のアデニル酸シクラーゼ又はその機能的に等価な変異体
の群から選択されるアデニル酸シクラーゼであることを特徴とするポリペプチド。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載のポリペプチドであって、アデニル酸シクラーゼが、アナベナ属の種PCC7120由来のアデニル酸シクラーゼのイソ型のCyaB1又はCyaB2又はその機能的に等価な変異体であることを特徴とするポリペプチド。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載のポリペプチドであって、アデニル酸シクラーゼの触媒ドメイン又はその機能的に等価な変異体が、配列番号12のアミノ酸配列又は当該配列からアミノ酸の置換、挿入もしくは欠失によって誘導される配列であって、アミノ酸レベルで配列番号12の配列と少なくとも90%の同一性を有し、かつアデニル酸シクラーゼの触媒特性を有する配列を有するアミノ酸配列を有することを特徴とするポリペプチド。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載のポリペプチドであって、アデニル酸シクラーゼの触媒ドメイン又はその機能的に等価な変異体が、
(a)CyaB1のアミノ酸L386からK859までのC末端であって、CyaB1のL386がV386によって交換されているもの、又は
(b)配列番号12
の群から選択されるアミノ酸配列を有することを特徴とするポリペプチド。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載のポリペプチドであって、配列番号1もしくは配列番号4のアミノ酸配列又は当該配列からアミノ酸の置換、挿入又は欠失によって誘導される配列であって、アミノ酸レベルで配列番号1もしくは配列番号4の配列と少なくとも70%の同一性を有し、かつヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)のGAFドメインの調節特性を有する配列を有し、その際、配列番号6のGAFAドメイン、配列番号8のGAFBドメイン及び配列番号12のアデニル酸シクラーゼの触媒ドメインの含まれるアミノ酸配列が、アミノ酸の置換、挿入又は欠失によって最大で10%だけ変更が加えられているポリペプチド。
【請求項16】
請求項1記載のポリペプチドであって、配列番号1もしくは配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項17】
配列番号1もしくは配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載のポリペプチドの1つをコードするポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項18記載のポリヌクレオチドであって、部分配列として
(a)配列番号5又は、配列番号5の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列と、
(b)配列番号7又は、配列番号7の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列と、
(c)配列番号11又は、配列番号11の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列と
を有するポリヌクレオチド。
【請求項20】
配列番号2の核酸配列を有するポリヌクレオチド。
【請求項21】
配列番号2の核酸配列のポリヌクレオチド。
【請求項22】
請求項18から22までのいずれか1項記載のポリヌクレオチドを含む組み換えプラスミドベクター。
【請求項23】
請求項22記載のプラスミドベクターを含む組み換え宿主細胞。
【請求項24】
請求項1から17までのいずれか1項記載のポリペプチドの製造方法であって、請求項23記載の組み換え宿主細胞を培養し、請求項1から17までのいずれか1項記載のポリペプチドを発現及び単離することによる製造方法。
【請求項25】
ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)のモジュレーターの同定方法において、
(a)ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)の可能性のあるモジュレーターと、請求項1から17までのいずれか1項記載のポリペプチドとを接触させる工程と、
(b)該可能性のあるモジュレーターが、可能性のあるモジュレーターが不在の場合と比較して請求項1から17までのいずれか1項記載のポリペプチドのアデニル酸シクラーゼ活性を変化させるか否かを測定する工程と、
を含む方法。
【請求項26】
請求項25記載の方法において、工程(a)で、ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)の可能性のあるモジュレーターの他に、cGMPと請求項1から17までのいずれか1項記載のポリペプチドとを接触させる方法。
【請求項27】
請求項25又は26記載の方法において、アデニル酸シクラーゼ活性の測定を、放射線活性標識されたATP又は蛍光標識されたATPの転化の測定によって行うことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項25から27までのいずれか1項記載の方法において、モジュレーターの存在下に、アデニル酸シクラーゼ活性の低下を、モジュレーターの不在と比較して測定し、そして該モジュレーターがPDE11アンタゴニストを表すことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項25から28までのいずれか1項記載の方法において、モジュレーターの存在下に、アデニル酸シクラーゼ活性の増大を、モジュレーターの不在と比較して測定し、そして該モジュレーターがPDE11アゴニストを表すことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項25から29までのいずれか1項記載の方法において、アデニル酸シクラーゼの触媒ドメインの直接的なモジュレーターの排除のために、請求項25から27までのいずれか1項記載の方法を、アデニル酸シクラーゼの触媒ドメインを有するが、ヒトのホスホジエステラーゼ11(PDE11)の機能的なGAFドメインを有さないポリペプチドを使用して実施することを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項25から30までのいずれか1項記載の方法において、該方法を、細胞性アッセイとして、請求項23記載の宿主細胞の存在下で実施することを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法において、該方法を、高スループットの観点で使用することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−531025(P2008−531025A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557341(P2007−557341)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052273
【国際公開番号】WO2006/092175
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(507229021)ニコメッド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (90)
【氏名又は名称原語表記】Nycomed GmbH
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2, D−78467 Konstanz, Germany
【Fターム(参考)】