説明

PDE4インヒビター及びテトラヒドロビオプテリン誘導体との組合せ物

本発明は、PDE4インヒビターとBH4もしくはBH4誘導体とを組み合わせて、呼吸器疾患の予防及び/又は治療のために用いる使用を記載している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PDE4インヒビターとテトラヒドロビオプテリン誘導体との組合せ物に関する。更に、本発明は、この新規の組合せ物を、呼吸器疾患の予防及び/又は治療のために用いる使用に関する。
【0002】
発明の背景
内皮依存性血管拡張の低下は、主に、内皮依存性血管拡張剤である窒素酸化物(NO)の生物学的利用能の低下と、血管収縮物質として作用するスーパーオキシドアニオンのような毒性の酸素フリーラジカルの活性の増加によって誘発される。
【0003】
先行技術からは、窒素酸化物合成酵素[NOS:nNOS(NOS1)、iNOS(NOS2)及びeNOS(NOS3)]がNOとスーパーオキシドアニオンの両者を生成することが知られている。NOSによりNOを生成する正味の成果に重要なことは、(6R)−L−エリスロ−5,6,7,8−テトラヒドロビオプテリン(以下、"BH4"と呼称する)の存在であると考えられる。
【0004】
BH4はNOSの必須の補因子であり、それはNOSによるNOとスーパーオキシドの生成率に影響する[Werner−Felmayer G et al.(2002)Current Drug Metabolism 3:159]。BH4が減少した状況では、NOSはNOの代わりにスーパーオキシドを生成する[Vasquez−Vivar et al.(1998)PNAS 95:9220]。NOはスーパーオキシドアニオンによって迅速に不活性化され、こうして血管毒性のパーオキシ亜硝酸イオン(ONOO-)が形成される。毒性のオキシドラジカル、すなわちスーパーオキシドアニオン及びONOO-が存在すると、BH4は、BH2(L−エリスロ−7,8−ジヒドロ−ビオプテリン)に分解される。BH2はNOSの補因子として作用せず、NOS活性に悪影響を及ぼす[Landmesser et al.J Clin Invest(2003)111:1201]。並行して、ONOO-はNOSを脱共役させるので、NOSはNOの代わりにスーパーオキシドを生成する。血管系において、NOは血管拡張に主要な役割を担うが、一方でスーパーオキシドは血管収縮をもたらす。内皮でのBH4の分解とNOSの脱共役と、こうして生ずるNO濃度の低下は、血管収縮をもたらし、最終的には肺高血圧をもたらす。
【0005】
先行技術からは、BH4が、神経伝達物質形成、血管緊張低下及び免疫応答に関連する幾つかの生物学的過程と病理学的状態で主要な役割を担うことは知られている[Werner−Felmayer G et al.(2002)Current Drug Metabolism 3:159]。一例としては、BH4の生成不全は"異型"フェニルケトン尿症に関連し[Werner−Felmayer G et al.(2002)Current Drug Metabolism 3:159]、かつそれがアテローム性硬化症、糖尿病、高コレステロール血漿及び喫煙における内皮不全の基礎をなしている[Tiefenbacher et al.(2000)Circulation 102:2172,Shinozaki et al(2003)J Pharmacol Sci 91:187,Fukuda et al(2002)Heart 87:264,Heitzer et al(2000)Circulation 86:e36]。
【0006】
また、当該技術分野においては、BH4が内皮不全を改善し、それによりNOの利用能が向上し、毒性のラジカルの存在を低下させることが知られている。BH4は、内皮機能に有用な効果を有し、その効果はNOSのための補因子という役割によって惹起される[Werner−Felmayer G et al.(2002)Current Drug Metabolism 3:159]。
【0007】
先行技術から知られているように、BH4とその医薬品としての使用は幾つかの疾病と関連している。ウエダ他(Ueda et al.)[Ueda S et al.(2000)J.Am.Coll.Cardiol.35:71]によれば、BH4は慢性喫煙者における内皮依存性血管拡張を改善することができる。マイヤー他(Mayer W.et al.)[Mayer W.et al.(2000)J.Cardiovasc.Pharmacol.35:173]によれば、ヒトにおける冠状血流応答はBH4の適用によって大きく改善される。WO9532203号は、NO濃度の増大によって引き起こされる疾病の治療のためのNOS阻害性プテリジン誘導体("アンチプテリン")の使用に関連している。特に、WO9532203号によれば、阻害性プテリジン誘導体は、病理学的な血圧増大、潰瘍性大腸炎、心筋梗塞、移植片拒絶、アルツハイマー病、てんかん及び偏頭痛の予防又は治療に関して記載されている。EP0908182号は、NOS機能不全に関連する疾病の予防及び/又は治療用のBH4又はその誘導体を含有する医薬組成物に関連する。WO0156551号は、BH4及びcGMP類似体を、呼吸器疾患、例えば肺炎及び喘息の治療のために用いる使用を開示している。EP0209689号は、幼児自閉症の治療用の医薬品の製造におけるテトラヒドロビオプテリンの使用に関連する。WO2005041975号は、BH4又はその誘導体をCOPDの治療のために用いる使用を開示しており、またこの国際特許出願においては、BH4又はその誘導体とアルギニンもしくはその誘導体との組合せ物を、COPDの治療のために用いる使用を開示している。
【0008】
環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)インヒビター、特に4型(PDE4)のインヒビターは、様々なアレルギー疾患及び炎症疾患の治療において、例えば喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような呼吸器疾患において有用である。Lipworth Bは、Lancet 2005,Vol365,pp176−175において、PDE4インヒビター、特にロフルミラスト及びシロミラストを、喘息及びCOPDの治療のために用いる使用を検討している。Drugs in R&D,Vol5,No3,2004,pp176−181において、PDE4インヒビターのロフルミラストが調査されている。
【0009】
本発明による新規の組合せ物の一部をなすPDE4インヒビターは、国際特許出願WO9501338号に開示されている。
【0010】
一方で、BH4もしくはその誘導体の、他方でPDE4インヒビターの種々の治療経路を利用して、様々な呼吸器疾患、特にCOPDを治療する組合せ物を提供することが望まれている。
【0011】
発明の開示
驚くべきことに、ロフルミラストとBH4との組合せ物が、部分呼吸不全及び全呼吸不全を原因とする呼吸器疾患の予防及び/又は治療に好ましい作用を有し、特に該組合せ物が、COPDの予防及び/又は治療に有用であることが判明した。
【0012】
従って、本発明の第一の態様によれば、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第一の療法化合物の量と、BH4、BH4の製剤学的に認容性の塩、BH4誘導体及びBH4誘導体の製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第二の療法化合物の量と、場合により製剤学的に認容性の助剤、希釈剤及び/又は担体とを含み、その際、第一の量と第二の量とが、一緒になって、呼吸器疾患の予防及び/又は治療のための治療学的有効量を成す医薬製剤から構成される組み合わせ製品が提供される。
【0013】
本発明による組み合わせ製品は、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第一の療法化合物と、BH4、BH4の製剤学的に認容性の塩、BH4誘導体及びBH4誘導体の製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第二の療法化合物と組み合わせて投与するために提供されるので、従って、組み合わせ調剤として存在しても(すなわち、第一の療法化合物と第二の療法化合物とを含む単一の製剤として存在しても)、又は別個の製剤として存在してもよく、その際、これらの製剤の少なくとも1つは、第一の療法化合物を含有し、かつ少なくとも1つは、第二の療法化合物を含有する。
【0014】
こうして更に以下のものが提供される:
ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第一の療法化合物(A)の量と、BH4、BH4の製剤学的に認容性の塩、BH4誘導体及びBH4誘導体の製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第二の療法化合物(B)の量を含む組み合わせ製品であって、第一の量と第二の量とが、一緒になって、呼吸器疾患の予防及び/又は治療のための治療学的有効量を成し、かつ構成要素(A)と(B)のそれぞれが、場合により、製剤学的に認容性の助剤、希釈剤及び/又は担体と混合されて製剤化されている組み合わせ製品。
【0015】
ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第一の療法化合物の量を、場合により製剤学的に認容性の助剤、希釈剤及び/又は担体と混合されて含む医薬製剤である構成要素(a)と、BH4、BH4の製剤学的に認容性の塩、BH4誘導体及びBH4誘導体の製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第二の療法化合物の量を、場合により製剤学的に認容性の助剤、希釈剤及び/又は担体と混合されて含む医薬製剤である構成要素(b)とから構成される小分けキットであって、第一の量と第二の量とが、一緒になって、呼吸器疾患の予防及び/又は治療のための治療学的有効量を成し、かつ構成要素(a)と(b)が、他のものと組み合わせて投与するのに適した形態でそれぞれ提供される小分けキット。
【0016】
本発明のもう一つの態様によれば、前記の小分けキットの製造方法において、前記の構成要素(a)と、前記の構成要素(b)とを連関させ、こうして2つの構成要素を、互いに組み合わせて投与するのに適したものにする方法が提供される。
【0017】
2つの構成要素を互いに"連関"させるとは、小分けキットの構成要素(a)及び(b)が、
(i)別々の製剤として(すなわち、互いに独立に)提供され、それらを後に、組み合わせ療法において互いに組み合わせて使用するために一緒にしてよいこと
又は
(ii)組み合わせ療法において互いに組み合わせて使用するための"組み合わせパッケージ"の別々の構成要素として一緒に包装されて一緒に存在してよいこと
を含む。
【0018】
その場合に、小分けキットの構成要素(a)及び(b)は、組み合わせ療法において互いに組み合わせて使用するための"組み合わせパッケージ"の別々の構成要素として一緒に包装され一緒に存在し、構成要素(a)と(b)の医薬製剤の種類は類似していてよい、例えば両方の構成要素は、別々の錠剤もしくはカプセル剤中に製剤化されているか、又はそれらの種類は異なってよい、例えば一方の構成要素は、錠剤もしくはカプセル剤として製剤化されており、かつ他方の構成要素は、例えば吸入によって適用するために製剤化されている。
【0019】
更に、
本願に定義される構成要素(a)又は(b)の一方(I)を、
当該構成要素を2つの構成要素の他方と組み合わせて使用することの説明書(II)と
一緒に含む小分けキットが提供される。
【0020】
本願に記載の小分けキットに関して、"〜と組み合わせて投与する"とは、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第一の療法化合物と、BH4、BH4の製剤学的に認容性の塩、BH4誘導体及びBH4誘導体の製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第二の療法化合物を含むそれぞれの製剤を、連続的に、別々に及び/又は同時に、関連の疾患の治療の経過にわたって投与することを含む。
【0021】
このように、本発明による組み合わせ製品に関して、"〜と組み合わせて投与する"という用語は、組み合わせ製品の2つの構成要素を、一緒に(同時に)又は時間的に十分に近接して(連続的にもしくは別々に)、関連の疾患の治療の経過にわたって投与(場合により繰り返しで)して、第一の治療剤を含む製剤か、又は第二の治療剤を含む製剤かのいずれかを、単独で、もう一方の構成要素の不在下に、同じ治療の経過にわたって投与(場合により繰り返しで)した場合よりも大きな患者に対する有益な作用を可能にすることを含む、すなわち本発明による組み合わせ製品の2つの構成要素の投与が、相乗作用をもたらす。
【0022】
本発明の組み合わせ製品の相乗作用は、呼吸器疾患の予防及び/又は治療についての付加的な予測されない利点を含む。係る付加的な利点は、これらに制限されないが、組み合わせ製品の1種以上の療法化合物の必要な用量の低下、組み合わせ製品の1種以上の療法化合物の副作用の軽減、又は呼吸器疾患の治療が必要な患者に対する1種以上の療法化合物のより高い許容性の付与を含む。
【0023】
ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩と、BH4、BH4の製剤学的に認容性の塩、BH4誘導体及びBH4誘導体の製剤学的に認容性の塩との組合せ投与は、別々に投与する場合より回数を減らすためにも有用となり、従って呼吸器疾患の治療が必要な患者のコンプライアンスの潜在的な向上のためにも有用となりうる。
【0024】
更に、本発明による小分けキットの関連において、"〜と組み合わせて"との用語は、2つの構成要素の一方もしくは他方を、そのもう一方の構成要素の投与前に、その後に、及び/又はそれと同時に投与(場合により繰り返しで)してよいことを含む。
【0025】
本発明の更なる一態様は、本発明による組み合わせ製品又は小分けキットを、呼吸器疾患の予防及び/又は治療のための医薬組成物の製造のために用いる使用である。
【0026】
なおも更なる本発明の一態様は、必要な患者において呼吸器疾患の予防及び/又は治療するための方法において、その治療又は予防が、前記患者に、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第一の療法化合物の量と、BH4、BH4の製剤学的に認容性の塩、BH4誘導体及びBH4誘導体の製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第二の療法化合物の量を、場合により製剤学的に認容性の助剤、希釈剤及び/又は担体と組み合わせて含み、その際、第一の量と第二の量とが、一緒になって、呼吸器疾患の予防及び/又は治療のための治療学的有効量を成す医薬製剤を投与することを含む方法を提供する。
【0027】
本発明のもう一つの態様においては、
ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第一の療法化合物の量を、場合により製剤学的に認容性の助剤、希釈剤及び/又は担体と混合されて含む医薬製剤(a)を、
BH4、BH4の製剤学的に認容性の塩、BH4誘導体及びBH4誘導体の製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第二の療法化合物の量を、場合により製剤学的に認容性の助剤、希釈剤及び/又は担体と混合されて含む医薬製剤(b)と組み合わせて、係る疾患を患うもしくは係る疾患に感受性の患者に投与することを含む呼吸器疾患の予防及び/又は治療のための方法において、第一の量と第二の量とが、一緒になって、呼吸器疾患の予防及び/又は治療のための治療学的有効量を成す方法が提供される。
【0028】
本願で使用される"治療学的に有効な量"とは、療法化合物の量の特性か、又は組合せ療法における組み合わされた療法化合物の特性を指す。組み合わせ量の分量は、疾病もしくは疾患の予防、回避、軽減もしくは排除の目的を達成するものである。
【0029】
本願で使用される"療法化合物"という用語は、疾病もしくは疾患の予防及び/又は治療に有用な化合物を指す。
【0030】
ロフルミラストは、3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロ−メトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンザミド[式(1.1)の構造]についての国際一般名称(INN)である。3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリジ−4−イル)ベンザミド、その製剤学的に認容性の塩及びそのN−オキシド[3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロ−1−オキシド−ピリジ−4−イル)ベンザミド;[式(1.2)の構造]]の製造並びにこれらの化合物のホスホジエステラーゼ(PDE)4インヒビターとしての使用は、国際特許出願WO95/01338号に記載されている。
【0031】
【化1】

【0032】
ロフルミラスト及びロフルミラスト−N−オキシドの"製剤学的に認容性の塩"という用語の範囲内に含まれる塩は、前記化合物の無毒の塩を指し、係る塩は、一般に、遊離塩基と好適な有機酸もしくは無機酸とを反応させるか、又は酸と好適な有機塩基もしくは無機塩基とを反応させることによって製造される。薬学で慣用に使用される製剤学的に認容性の無機酸及び有機酸のそれが特に挙げられる。これらの好適な塩は、特に、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、酢酸、クエン酸、D−グルコン酸、安息香酸、2−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、酪酸、スルホサリチル酸、マレイン酸、ラウリン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、エンボン酸、ステアリン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸又は1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のような酸との水溶性及び水不溶性の酸付加塩である。塩基との製剤学的に認容性の塩の一例としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、チタン塩、アンモニウム塩、メグルミン塩又はグアニジニウム塩を挙げることができる。
【0033】
"BH4"は、(6R)−L−エリスロ−5,6,7,8−テトラヒドロビオプテリン(式1.3の構造):
【化2】

を表す。
【0034】
本願で使用される用語"BH4誘導体"は、以下の(a)又は(b)を指す:
(a)式1.4
【化3】

[式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子を表すか、又は互いに一緒になって、単結合を表し、R3は、−CH(OH)CH(OH)CH3−、−CH(OCOCH3)CH(OCOCH3)CH3、−CH3、−CH2OHを表すか、又はR1及びR2がそれぞれ水素原子を表す場合にはフェニル基を表すか、又はR1及びR2が一緒になって単結合を表す場合には−COCH(OH)CH3を表す]で示される化合物、それらの立体異性体もしくは製剤学的に認容性の塩(但し、(6R)−L−エリスロ−5,6,7,8−テトラヒドロビオプテリンを除く)。
【0035】
(b)式1.5
【化4】

[式中、R1及びR2は、互いに無関係に、一般式−C(O)R3で示されるアシル基であり、その際、R3は、水素又は1つ以上の炭素原子、特に2〜9個の炭素原子を有する炭化水素残基である]で示される化合物又はこの化合物の製剤学的に認容性の塩。
【0036】
R3によって表される炭化水素残基の好ましい例は、例えば
1つ以上の炭素原子、有利には2〜9個の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分枝鎖状の、飽和もしくは不飽和のいずれかであるアルキル基;
一般式
【化5】

[式中、R4、R5、R6、R7及びR8は、水素又は直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基であってその炭素原子の合計が、有利には3個以下である基である]によって表される置換もしくは非置換のフェニル基;
一般式
【化6】

[式中、R9及びR10は、水素、メチル基又はエチル基であって、その炭素原子の合計が、有利には2個以下である基である]によって表される置換もしくは非置換のベンジル基;及び
一般式
【化7】

[式中、R11は、水素又はメチル基である]によって表される置換もしくは非置換のアリールアルキル基
である。
【0037】
前記のアシル基−C(O)R3の中でも、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基及びベンゾイル基が最も好ましい。また、R1及びR2が同一であることも好ましい。
【0038】
式1.5の化合物は、2種類のジアステレオマー(すなわち6位でのジアステレオマーである、1′,2′−ジアシル−(6R)−5,6,7,8−テトラヒドロ−L−ビオプテリン及び1′,2′−ジアシル−(6S)−5,6,7,8−テトラヒドロ−L−ビオプテリン)を有する。本発明による用語"BH4誘導体"は、2種類のジアステレオマーのそれぞれ及びそれらの混合物を含む。
【0039】
挙げることができる好ましいBH4誘導体は、
【化8】

(6R,S)−5,6,7,8−テトラヒドロビオプテリン、
【化9】

[1′,2′−ジアセチル−5,6,7,8−テトラヒドロビオプテリン]、
【化10】

[セピアプテリン]、
【化11】

[6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロプテリン]、
【化12】

[6−ヒドロキシメチル−5,6,7,8−テトラヒドロプテリン]、
【化13】

[6−フェニル−5,6,7,8−テトラヒドロプテリン]、及びこれらの化合物の製剤学的に認容性の塩
である。
【0040】
BH4及びBH4誘導体の製剤学的に認容性の塩としては、例えば、これらの化合物と、薬理学的に無毒の酸、例えば鉱酸、例えば塩化水素酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、及び有機酸、例えば酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸及びメシル酸との塩を挙げることができる。
【0041】
好ましい一実施態様においては、BH4の製剤学的に認容性の塩は、BH4の二塩酸塩である。
【0042】
前記の療法化合物及びそれらの製剤学的に認容性の塩は、例えば製剤学的に認容性の溶媒和物の形、特にその水和物の形で存在してもよいと解されるべきである。
【0043】
本発明による用語"呼吸器疾患"とは、部分呼吸不全及び全呼吸不全、すなわち肺における酸素摂取又は二酸化炭素放出の障害を原因とする肺疾患を指す。人の健康な肺において、休息時と運動中の両方で、常に換気が良好な領域と換気が乏しい又は全く換気がない領域とが同時に並行して存在する(換気不均一性)。今までに未知の機構は、殆ど換気がないか又は換気がない肺胞に隣接する毛細血管には潅流が殆どないか又は全くないことを確認する。これにより、ガス交換に関連しない肺の領域の不十分な潅流が最小限となる。身体運動中には、換気の分布が変化し(新規の肺胞の動員)、そして関連の毛細血管床の潅流に増大が見られる。反対に、生理学的又は病理学的な過程により殆ど換気がない場合に(気道閉塞)、毛細血管流は血管収縮を通じて減少する。この過程を、低酸素性血管収縮と呼ぶ(Euler−Liljestrand機構)。前記の換気と潅流の順応機構が損なわれる("ミスマッチ")と、換気が適切で肺の潅流が正常であるにも拘わらず、ガス交換機能に多かれ少なかれ顕著な虚脱が見られることがあり、これは換気又は潅流を更に高めても不適切にのみ補償できるに過ぎない。これらの状態では、換気がなくてもより良く潅流がなされる(短絡)領域と、より換気が良くても潅流がない(死腔換気)領域とが存在する。この"換気と潅流とのミスマッチ"の結果は、低酸素症(ガス交換の低下に伴う患者の血液の酸素含量の低下)、無効潅流(換気がない領域の不経済な潅流)及び無効換気(潅流の乏しい領域の不経済な換気)である。
【0044】
この"部分呼吸不全及び全呼吸不全"の原因は、肺内潅流状態と換気の不均等分布との不適切な順応である。生ずるミスマッチは、生理学的順応機構で支配的な血管療法性(炎症性)メディエータの効果に由来している。この作用は、特に運動中と、酸素要求量が高まり、それが呼吸困難(低酸素症)と身体能力の限界によって表面化した場合とで明らかである。
【0045】
本発明による用語"部分呼吸不全"は、前記の酸素摂取又は二酸化炭素放出の障害の発現としての血中O2分圧の低下に関連している。
【0046】
本発明による用語"全呼吸不全"は、前記の酸素摂取又は二酸化炭素放出の障害の発現としての血中O2分圧の低下と血中CO2分圧の増加に関連している。
【0047】
炎症性肺疾患及び変性性肺疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息、肺高血圧、肺線維症、肺気腫、間質性肺疾患及び肺炎を患う患者においては、部分呼吸不全又は全呼吸不全が観察される。このように本発明によれば、用語"呼吸器疾患"又は"部分呼吸不全及び全呼吸不全を原因とする呼吸器疾患"は、以下の臨床状態:COPD、気管支喘息、肺高血圧、肺線維症、肺気腫、間質性肺疾患又は肺炎の1つ以上を指す。
【0048】
用語"COPD"は、慢性閉塞性肺疾患の略語である。COPDを患う患者は、身体能力の限界のような肺変化並びに肺外変化を特徴としている。肺変化は、炎症、粘液過剰分泌及び肺血管の変化により閉塞した気道の変化である。生ずる気流の制限と気道上皮の損失によって酸素化が損なわれる。更に、肺血液循環は、血管再構築[Santos S et al.Eur Respir J 2002 19:632−8]と、生理学的順応機構で支配的な血管作動性(炎症性)メディエータの効果に由来し、かつ疾患悪化に伴い発生する肺血管の構造変化に部分的に由来する換気/潅流ミスマッチとにより損なわれる。この作用は、特に運動中と、酸素要求量が高まり、それが呼吸困難(低酸素症)と身体能力の限界によって表面化した場合とで明らかである。
【0049】
本発明は、PDE4インヒビターのロフルミラストとBH4との組合せ物が、部分呼吸不全及び全呼吸不全を患う患者の治療に適しているという原理に基づくものである。ホスホジエステラーゼ4のインヒビターは、呼吸器疾患においても生ずる炎症においてNADPHからのスーパーオキシド生成を遮断することが示されている。スーパーオキシド生成が血管系において増大すると、有効BH4濃度が優勢的に低下することが示されている(Kuzkaya et al;J Biol Chem 2003 278,22546−54;Landmesser et al.J Clin Invest 2003,111,1201−9)。本発明によれば、内皮中で、NADPHオキシダーゼとNOSシンターゼの調節障害及びONOO-濃度の増大は、BH4の酸化をもたらし、こうして肺中及び骨格筋中のBH4濃度の低下をもたらす。BH4濃度の低下により、NOS(iNOS及びeNOS)の脱共役が生じ、そしてスーパーオキシドの増大がもたらされ、最終的にはONOO-の生成に導かれる。スーパーオキシドアニオン濃度の増大は、より多くのONOO-に導き、そしてそのONOO-の増大が生ずることで、肺中及び骨格筋中でBH4が少なくなる。このスーパーオキシドとONOO-の生成の循環並びにBH4不活性化は最終的には内皮不全と換気/潅流ミスマッチをもたらす。PDE4インヒビターのロフルミラストとBH4との組合せ物の投与は、スーパーオキシドアニオンとONOO-の生成を低下させ、こうしてNOSの再共役(すなわちNOSがスーパーオキシドアニオンの代わりにNOを生成する)をもたらし、そして生物学的に利用可能なNOを増大させ、それはとりわけ血管拡張と、換気/潅流ミスマッチの低下を引き起こす。
【0050】
用語"呼吸器疾患の予防及び/又は治療"並びに"部分呼吸不全又は全呼吸不全を原因とする呼吸器疾患の予防及び/又は治療"及びそれに加えて用語"COPDの予防及び/又は治療"とは、PDE4インヒビターのロフルミラストとBH4との組合せ物の投与が肺循環の血管の拡張をもたらすのと同時に、肺内の換気のより良い領域を選んで血流が再配分に導かれるという状況を指す。この原理は、以下にリマッチングと呼称するが、これは部分呼吸不全又は全呼吸不全を患う患者、例えばCOPD患者の肺において休息時と身体運動中の両方でガス交換機能に改善をもたらす。リマッチングは、肺中にガス交換の改善をもたらすだけでなく、骨格筋中にもガス交換の改善をもたらし、従って身体能力の改善をももたらす。用語"COPD患者における筋不全の予防及び/又は治療"とは、まさにCOPD患者へのPDE4インヒビターのロフルミラストとBH4との組合せ物の投与の優れた結果を指すものである。
【0051】
本発明の療法化合物は当業者に公知の任意の好適な経路によって投与することができる。該製剤は、経口、非経口(皮下、皮内、筋内、静脈内及び動脈内)、鼻内、吸入(例えば、種々の型の加圧式定量エーロゾル、噴霧器又は注入器によって生成できる微粒子ダスト又はミスト)、直腸及び局所(例えば、皮膚、頬、舌下及び眼内の投与)のために適した製剤を含むが、最も好適な経路は、例えば被検者の状態及び疾患に依存しうる。
【0052】
本発明の療法化合物は、当該技術分野で公知の種々の方法によって投与できるが、多くの治療用途のためには、有利な投与形路は経口経路である。もう一つの好ましい投与形路は、吸入によるものである。
【0053】
経口投与を意図する医薬組成物の場合には、療法化合物を配合して、自体公知の方法及び当業者によく知られた方法に従って医薬品が得られる。療法化合物は医薬品として、有利には適当な医薬品担体、助剤及び/又は希釈剤と組み合わせて、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、エマルジョン、懸濁液、シロップ又は液剤の形で使用され、その際、療法化合物含量は有利には0.1〜95質量%であり、そして適当な担体の選択によって、療法化合物及び/又は所望の作用開始(例えば徐放形又は腸溶形)に厳密に合わせた医薬品投与形を達成することができる。
【0054】
当業者は、その専門知識に基づき、どの担体、助剤又は希釈剤が所望の医薬製剤に適しているかに精通している。溶剤、ゲル形成剤、錠剤助剤及び他の療法化合物担体の他に、例えば、酸化防止剤、分散剤、乳化剤、消泡剤、矯臭剤、保存剤、可溶化剤、着色剤又は浸透促進剤及び錯化剤(例えばシクロデキストリン)を使用することができる。
【0055】
BH4を含有する医薬製剤は、有利には、助剤として、酸化防止剤、例えばアスコルビン酸を含有する。更に、BH4を含有する医薬製剤に有用な助剤は、L−システインもしくはN−アセチル−L−システインである。
【0056】
吸入用製剤は、有利にはラクトースを含有する粉末組成物と、例えば加圧包装から好適な噴射剤、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、二酸化炭素又は他の好適なガスを用いて送達される水溶液又は水性懸濁液又はエーロゾルとして配合されてよい噴霧組成物とを含む。従来のクロロフルオロカーボンと比較して最小限のオゾン枯渇作用しか有さないと考えられる噴射剤の種類と、係る噴射剤系を使用した多くの医薬用エーロゾル製剤は、例えばEP0372777号、WO9104011号、WO9111173号、WO9111495号、WO9114422号、WO9311743号及びEP0553298号に開示されている。これらの用途は、全て、医薬品の投与のために加圧式エーロゾルを製造することを関連しており、そして新規の噴射剤のクラスの使用と関連する問題、特に製造される医薬品製剤に付随する安定性の問題を克服すると考えられる。それらの用途には、例えば極性の助溶剤のような1種以上の賦形剤(例えばエタノールのようなアルコール)、アルカン、ジメチルエーテル、界面活性剤(例えばフッ素化及び非フッ素化の界面活性剤、オレイン酸のようなカルボン酸、ポリエトキシレートなど)又は糖類のような増量剤の添加が推奨される(例えばWO02/30394号を参照のこと)。懸濁液エーロゾルに関しては、療法化合物を微細化して、エーロゾル製剤の投与後に肺中に療法化合物の事実上全てが吸入されるべきであり、従って、療法化合物は100ミクロン未満、所望には20ミクロン未満、有利には1〜10ミクロンの範囲、例えば1〜5ミクロンの範囲の粒度を有する。
【0057】
本発明による組合せ物を投与するための厳密な用量並びに投与計画は、必要に応じて、使用される療法化合物の効力、作用期間、治療される疾患の性質及び重度、並びに治療される患者の性別、年齢、体重、全体的な健康及び個々の応答性、そして他の関連の状況に依存する。
【0058】
制限を意図するものではないが、BH4調剤を経口投与する場合に、1錠が10〜500mgのBH4又はBH4誘導体を含有する調剤1〜3錠を投与することが好ましいことが判明した。
【0059】
有利には、本発明による調剤は、1回服用あたり、BH4又はBH4誘導体の量が体重kgあたり0.2〜50mgとなる量で投与される。一般的に慢性呼吸器疾患、例えばCOPDの長期治療においては、BH4又はBH4誘導体は、数年間にわたって10〜500mgの用量で一日当たり1〜3回投与することができる。慢性疾患の急性エピソードの治療においては、BH4もしくはBH4誘導体の日用量を2000mgにまで増大させることも可能である。
【0060】
慢性の呼吸器疾患の連続的治療は、BH4又はBH4誘導体を吸入によって又は静脈内もしくは皮下の経路で投与することによっても達成できる。
【0061】
BH4又はBH4誘導体を吸入により投与する場合には、BH4もしくはBH4誘導体を配合して当業者に公知の剤形とし、そして治療が必要な者に慣用の程度の規模で投与する。BH4を以下の適用計画で吸入によって投与することが好ましいと判明した:有利には、10〜1000mgのBH4を1%のアスコルビン酸を含有する滅菌水中に溶解させる。その溶液を、吸入装置を用いて、一日一回ないし一日三回で、BH4の最終量が一日当たり体重1kgにつき0.2〜50mgとなるような量で投与する。BH4を吸入によって一日当たり10〜1000mgの用量で1〜3回で連続的に投与することが好ましいと判明した。慢性疾患の急性エピソードの治療においては、用量を付き添いの医師の経験に基づいて用量を増大させることも可能である。
【0062】
3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンズアミド(ロフルミラスト)を経口投与する場合に、成人の日用量は、有利に一日一回投与によって、50〜1000μgの範囲内、有利に50〜500μgの範囲内、より有利には250〜500μgの範囲内である。
【0063】
ロフルミラスト及びロフルミラスト−N−オキシドの好適な剤形は、国際特許出願WO0370279号に記載されている。
【0064】
3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンズアミド(ロフルミラスト)を静脈内投与する場合、成人の日用量は、50〜500μgの範囲内、有利に150〜300μgの範囲内である。
【0065】
ロフルミラスト及びロフルミラスト−N−オキシドの静脈内投与に適した剤形は、国際特許出願WO2006032676号に記載されている。
【0066】
好ましい一実施態様においては、ロフルミラストとBH4を、2つの異なる経口医薬組成物で同時に投与する。
【0067】
もう一つの好ましい実施態様においては、ロフルミラストとBH4を、多かれ少なかれ同時に投与するが、異なる経路を介して別々に投与する。この好ましい実施態様においては、BH4は、吸入によって投与され、そしてロフルミラストは、経口投与される。
【0068】
更にもう一つの好ましい実施態様においては、ロフルミラストとBH4を、1つの経口医薬組成物において一緒に投与する。
【0069】
更なる好ましい実施態様においては、ロフルミラストとBH4を、多かれ少なかれ同時に投与するが、異なる経路を介して別々に投与する。この更なる好ましい実施態様においては、BH4は、経口投与され、そしてロフルミラストは、吸入によって投与される。
【0070】
実施例
実施例1:
注射用BH4調剤の製造
均質溶液を作製するために、1.5gのBH4二塩酸塩、1.5gのアスコルビン酸、0.5gのL−システイン塩酸塩及び6.5gのマンニトールを滅菌精製水中に溶解させて、100mlにし、次いで滅菌し、1mlのアリコートそれぞれをバイアル又はアンプル中に分注し、凍結乾燥させてから密封する。
【0071】
実施例2:
注射用BH4調剤の製造
有酸素雰囲気下で、2.0gのBH4二塩酸塩を滅菌脱イオン水中に溶解させ、100mlにし、滅菌してから密封する。
【0072】
実施例3:
BH4錠剤型調剤の製造
10部のアスコルビン酸と5部のL−システイン塩酸塩を、1部のポリビニルピロリドンに添加し、これを滅菌脱イオン水中に溶解させ、均質溶液を得る。次いで、10部のBH4二塩酸塩を添加して、均質溶液を調製する。この溶液を58部のラクトースと15部の微結晶性セルロースと1部のステアリン酸マグネシウムと混合し、そして打錠する。
【0073】
実施例4:
ロフルミラスト錠剤型調剤の製造
a)質量は、0.125mgのロフルミラストを含有する錠剤に対するものである。
【0074】
1.ロフルミラスト 0.125mg
2.ラクトース一水和物 49.660mg
3.トウモロコシデンプン 13.390mg
4.ポリビドンK90 1.300mg
5.ステアリン酸マグネシウム(植物性) 0.650mg
合計 65.125mg
製造:(1)を(3)の一部と混合し、そして磨砕は遊星型ミルで行う。その磨砕物を、流動床造粒システムの生成物容器中で(2)及び残量の(3)と一緒にし、そして(4)を精製水中に溶かした5%造粒溶液を噴霧し、好適な条件下に乾燥させる。その造粒物に(5)を添加し、そして混合後に得られた混合物を打錠機で加圧して、平均質量65.125mgを有する錠剤を得る。
【0075】
b)質量は、0.25mgのロフルミラストを含有する錠剤に対するものである。
【0076】
1.ロフルミラスト 0.250mg
2.微結晶性セルロース 33.900mg
3.トウモロコシデンプン 2.500mg
4.ポリビドンK90 2.250mg
5.ナトリウムカルボキシメチルデンプン(タイプA) 20.000mg
6.ステアリン酸マグネシウム(植物性) 0.600mg
合計 59.500mg
製造:(1)を(3)の一部と混合し、そして磨砕は遊星型ミルで行う。その磨砕物を、流動床造粒システムの生成物容器中で(2)、(5)及び残量の(3)と一緒にし、そして(4)を精製水中に溶かした5%造粒溶液を噴霧し、好適な条件下に乾燥させる。その造粒物に(6)を添加し、そして混合後に得られた混合物を打錠機で加圧して、平均質量59.5mgを有する錠剤を得る。
【0077】
c)質量は、0.5mgのロフルミラストを含有する錠剤に対するものである。
【0078】
1.ロフルミラスト(超微粉砕化) 0.500mg
2.ラクトース一水和物 49.660mg
3.トウモロコシデンプン 13.390mg
4.ポリビドンK90 1.300mg
5.ステアリン酸マグネシウム(植物性) 0.650mg
合計 65.500mg
製造:(4)を精製水中に溶かした5%造粒溶液を製造する。(1)を、該溶液中に懸濁させる。(2)と(3)を、流動床造粒システムの生成物容器中に満たす。該懸濁液を噴霧し、好適な条件下に乾燥させる。その造粒物に(5)を添加し、そして混合後に得られた混合物を打錠機で加圧して、平均質量65.5mgを有する錠剤を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第一の療法化合物の量と、BH4、BH4の製剤学的に認容性の塩、BH4誘導体及びBH4誘導体の製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第二の療法化合物の量と、場合により製剤学的に認容性の助剤、希釈剤及び/又は担体とを含み、その際、第一の量と第二の量とが、一緒になって、呼吸器疾患の予防及び/又は治療のための治療学的有効量を成す医薬製剤から構成される組み合わせ製品。
【請求項2】
ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第一の療法化合物(A)の量と、BH4、BH4の製剤学的に認容性の塩、BH4誘導体及びBH4誘導体の製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第二の療法化合物(B)の量を含む組み合わせ製品であって、第一の量と第二の量とが、一緒になって、呼吸器疾患の予防及び/又は治療のための治療学的有効量を成し、かつ構成要素(A)と(B)のそれぞれが、場合により、製剤学的に認容性の助剤、希釈剤及び/又は担体と混合されて製剤化されている組み合わせ製品。
【請求項3】
請求項2記載の組み合わせ製品であって、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第一の療法化合物の量を、場合により製剤学的に認容性の助剤、希釈剤及び/又は担体と混合されて含む医薬製剤である構成要素(a)と、BH4、BH4の製剤学的に認容性の塩、BH4誘導体及びBH4誘導体の製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される第二の療法化合物の量を、場合により製剤学的に認容性の助剤、希釈剤及び/又は担体と混合されて含む医薬製剤である構成要素(b)とから構成される小分けキットから構成され、第一の量と第二の量とが、一緒になって、呼吸器疾患の予防及び/又は治療のための治療学的有効量を成し、かつ構成要素(a)と(b)が、他のものと組み合わせて投与するのに適した形態でそれぞれ提供される組み合わせ製品。
【請求項4】
請求項3記載の小分けキットであって、構成要素(a)及び(b)が、呼吸器疾患の予防及び/又は治療において、連続的に、別々に、及び/又は同時に使用するために適している小分けキット。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の組み合わせ製品であって、第一の療法化合物がロフルミラストである組み合わせ製品。
【請求項6】
請求項1から4までのいずれか1項記載の組み合わせ製品であって、第一の療法化合物がロフルミラスト−N−オキシドである組み合わせ製品。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の組み合わせ製品であって、第二の療法化合物が、(6R)−L−エリスロ−5,6,7,8−テトラヒドロビオプテリンである組み合わせ製品。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項記載の組み合わせ製品であって、第二の療法化合物が、(6R)−L−エリスロ−5,6,7,8−テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩である組み合わせ製品。
【請求項9】
請求項1から6までのいずれか1項記載の組み合わせ製品であって、第二の療法化合物が、(6R,S)−5,6,7,8−テトラヒドロビオプテリン、1′,2′−ジアセチル−5,6,7,8−テトラヒドロビオプテリン、セピアプテリン、6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロプテリン、6−ヒドロキシメチル−5,6,7,8−テトラヒドロプテリン、6−フェニル−5,6,7,8−テトラヒドロプテリン及びこれらの化合物の製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される組み合わせ製品。
【請求項10】
請求項1から6までのいずれか1項記載の組み合わせ製品であって、第二の療法化合物が、セピアプテリンもしくはその製剤学的に認容性の塩である組み合わせ製品。
【請求項11】
請求項3から10までのいずれか1項記載の小分けキットの製造方法において、請求項3から10までのいずれか1項に定義される構成要素(a)と、請求項3から10までのいずれか1項に定義される構成要素(b)とを連関させ、こうして2つの構成要素を、互いに組み合わせて投与するのに適したものにすることを含む方法。
【請求項12】
請求項3から10までのいずれか1項に定義される構成要素(a)又は(b)の一方(I)を、当該構成要素を2つの構成要素の他方と組み合わせて使用することの説明書(II)と一緒に含む小分けキット。
【請求項13】
COPD、気管支喘息、肺高血圧、肺線維症、肺気腫、間質性肺疾患及び肺炎からなる群から選択される1種以上の呼吸器疾患の予防及び/又は治療において使用するための、請求項1から10までのいずれか1項記載の組み合わせ製品又は請求項12記載の小分けキット。
【請求項14】
COPDの予防及び/又は治療に使用するための、請求項1から10までのいずれか1項記載の組み合わせ製品又は請求項12記載の小分けキット。
【請求項15】
COPD患者における筋不全の予防及び/又は治療に使用するための、請求項1から10までのいずれか1項記載の組み合わせ製品又は請求項12記載の小分けキット。
【請求項16】
1種以上の呼吸器疾患を予防及び/又は治療するための方法において、請求項1から10までのいずれか1項記載の組み合わせ製品又は請求項12記載の小分けキットを、係る疾患を患う患者もしくは係る疾患に感受性の患者に投与することを含む方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法において、呼吸器疾患が、COPD、気管支喘息、肺高血圧、肺線維症、肺気腫、間質性肺疾患及び肺炎からなる群から選択される方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、呼吸器疾患がCOPDである方法。
【請求項19】
COPD患者における筋不全の予防及び/又は治療のための方法において、請求項1から10までのいずれか1項記載の組み合わせ製品又は請求項12記載の小分けキットを、係る疾患を患う患者もしくは係る疾患に感受性の患者に投与することを含む方法。
【請求項20】
請求項1から10までのいずれか1項記載の組み合わせ製品又は請求項12記載の小分けキットを、1種以上の呼吸器疾患の予防及び/又は治療のための医薬組成物の製造のために用いる使用であって、呼吸器疾患が、COPD、気管支喘息、肺高血圧、肺線維症、肺気腫、間質性肺疾患及び肺炎からなる群から選択される使用。
【請求項21】
請求項20記載の使用であって、呼吸器疾患がCOPDである使用。
【請求項22】
請求項1から10までのいずれか1項記載の組み合わせ製品又は請求項12記載の小分けキットを、COPD患者における筋不全の予防及び/又は治療のための医薬組成物の製造のために用いる使用。

【公表番号】特表2008−540486(P2008−540486A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510556(P2008−510556)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062117
【国際公開番号】WO2006/120176
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(507229021)ニコメッド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (90)
【氏名又は名称原語表記】Nycomed GmbH
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2, D−78467 Konstanz, Germany
【Fターム(参考)】