説明

PDE4阻害薬として有用なニコチンアミド誘導体

本発明は、一般式(I)のニコチンアミド誘導体(R1、R2およびR3は明細書中に定めたものである)、ならびにそれらの誘導体を含む組成物およびPDE4阻害薬としての使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、一般式(I)のニコチンアミド誘導体:
【0002】
【化1】

【0003】
(式中のR1、R2およびR3は後記の意味をもつ)、ならびにそれらの誘導体の製造方法、それらの製造に使用する中間体の製造方法、それらを含む組成物、およびその使用に関する。
【0004】
3',5'-サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)は、構造、生化学および薬理的に互いに区別される少なくとも11の異なるファミリーに分類される大きな酵素クラスを構成する。各ファミリー内の酵素は一般にイソ酵素またはアイソザイムと呼ばれる。合計15種類を超える遺伝子生成物がこのクラスに含まれ、それらの遺伝子生成物のスプライシングおよび翻訳後プロセシングの相異からさらに多様性が生じる。本発明は、主に第4ファミリーのPDEの4種類の遺伝子生成物、すなわちPDE4A、PDE4B、PDE4C、およびPDE4Dに関する。これらの酵素はPDE4アイソザイムファミリーのイソ形またはサブタイプと総称される。
【0005】
PDE4は、第2メッセンジャーサイクリックヌクレオチドであるアデノシン3',5'-サイクリック一リン酸(cAMP)の選択的な高親和性加水分解、およびロリプラム(rolipram)による阻害に対する感受性を特色とする。多数の選択的PDE4阻害薬が近年見いだされ、その阻害により生じる有益な薬理効果が多様な疾患モデルにおいて示された(たとえば下記を参照:
【0006】
【化2】

【0007】
したがって、さらに他の選択的PDE4阻害薬を見いだすことに関して、なお当技術分野でかなりの関心がある。
選択的PDE4阻害薬の知見および開発により、成果が既に得られている。インビボPDE4阻害薬は、アレルゲン攻撃された動物の肺に好酸球が流入するのを低下させ、一方では気管支収縮、およびアレルゲン攻撃後に亢進した気管支反応性を低下させる。PDE4阻害薬はまた、免疫細胞(CD4+ T-リンパ球、単球、マスト細胞および好塩基球)の活性を抑制し、肺水腫を軽減し、興奮性非アドレナリン作動性非コリン作動性神経伝達(eNANC)、プロテイナーゼ阻害性非アドレナリン作動性非コリン作動性神経伝達(iNANC)を阻害し、気道平滑筋有糸分裂を低下させ、気管支拡張を誘発する。PDE4阻害薬はまた、COPDの病態生理に関連する多数の炎症細胞(単球/マクロファージ、CD4+ T-リンパ球、好酸球および好中球を含む)の活性を抑制する。PDE4阻害薬はまた、血管平滑筋有糸分裂を低下させ、気道上皮細胞が前炎症性メディエーターを産生する能力を妨害する可能性をもつ。好中球は、中性プロテアーゼおよび酸性ヒドロラーゼをそれらの顆粒から放出し、かつ反応性酸素種を生成することにより、慢性炎症関連の組織破壊に関与し、さらに気腫などの状態の病理との関連が示唆されている。したがって、PDE4阻害薬は多数の炎症性、呼吸器系およびアレルギー性の疾患、障害または状態の処置、ならびに創傷に特に有用であり、それらのうちのあるものは主に喘息、COPD、気管支炎および気腫の処置のために臨床開発されている。
【0008】
PDE4阻害薬が多様な炎症性細胞反応に及ぼす作用を、他の研究のための阻害薬をプロファイリングおよび選択するための根拠として利用できる。これらの作用には、cAMPの増加、ならびに好酸球、好中球および単球におけるスーパーオキシド産生、脱顆粒、走化性、および腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)放出の阻害が含まれる。
【0009】
PDE4阻害活性をもつある種のニコチンアミド誘導体が既に合成されている。たとえば特許出願WO 98/45263には、選択的PDE4アイソザイム阻害薬としての活性をもつニコチンアミド誘導体が開示されている。
【0010】
特許出願WO 01/57036およびWO 03/068235にも、多様な炎症性、アレルギー性および呼吸器系の疾患および状態の処置に有用なPDE4阻害薬であるニコチンアミド誘導体が開示されている。
【0011】
しかし、良好な薬物候補である他のPDE4阻害薬がなお強く求められている。特に、好ましい化合物は、PDE4酵素に結合でき、一方では他の受容体および酵素に対してはほとんど親和性を示すべきでない。それらはまた、好ましい薬物動態および代謝活性をもつべきであり、無毒性であり、副作用をほとんど示すべきでない。さらに、理想的な薬物候補は安定な配合しやすい物理的状態で存在することも望ましい。
【0012】
したがって本発明は、新規な次式のニコチンアミド誘導体:
【0013】
【化3】

【0014】
ならびにその医薬的に許容できる塩類、溶媒和物、多形、およびプロドラッグを提供する;
式中:
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、ハロ、および(C1-C3)アルキルよりなる群から選択され;
R3は、下記のものから選択されるヘテロアリールであり:窒素、酸素および硫黄ならびにその混合物から選択される1〜3個のヘテロ原子を含む9-員もしくは10-員二環式ヘテロアリール;フェニル環;または1〜3個の窒素原子を含む5-員もしくは6-員ヘテロアリール;その際、R3のヘテロアリールはそれぞれ独立して、OH、CN、ハロ、(C1-C4)アルキル、ヒドロキシ(C1-C4)アルキル、ハロ(C1-C4)アルキル、(C1-C4)アルコキシおよびヒドロキシ(C2-C4)アルコキシから選択される1個以上の基により置換されていてもよい。
【0015】
好ましくはR1はH、F、Clまたはメチルであり、より好ましくはR1はFである。
好ましくはR2はHまたはFであり、より好ましくはR2はHである。
R3が二環式ヘテロアリールである場合、好ましくはヘテロアリールは窒素、酸素および硫黄ならびにその混合物から選択される1〜3個のヘテロ原子を含むC-結合した9-員または10-員二環式ヘテロアリールである。
【0016】
R3がC-結合した9-員または10-員二環式ヘテロアリールである場合、より好ましくはR3は、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、イミダゾピリジン、ピロロピリダジン、ピロロピリジン、ベンゾトリアゾール、ピラゾロピリジン、イミダゾピリジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、ナフチリジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾールおよびベンゾオキサジアゾールよりなる群から選択される。
【0017】
R3がC-結合した9-員または10-員二環式ヘテロアリールである場合、特に好ましくはR3は、キノリン、2,1,3-ベンゾチアジアゾールおよび2,1,3-ベンゾオキサジアゾールよりなる群から選択される。
【0018】
R3のC-結合した9-員または10-員二環式ヘテロアリールに好ましい任意置換基は、OH、メチル、エチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシエトキシ、FおよびClから選択される。R3のC-結合した9-員または10-員二環式ヘテロアリールに任意置換基として特に好ましいものは、OHである。
【0019】
R3がフェニル基である場合、好ましくは該フェニル基はOH、メチル、エチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシエトキシ、FおよびClから選択される1個以上の置換基により置換されていてもよい。
【0020】
R3がフェニル基である場合、より好ましくは該フェニル基は、OH、メチル、F、CNおよびCF3から選択される1個以上の置換基により置換されていてもよい。
R3が5-員または6-員ヘテロアリールである場合、好ましくはR3は置換されていてもよい、2または3個の窒素原子を含むC-結合した5-員ヘテロアリールである。
【0021】
R3が5-員または6-員ヘテロアリール化合物である場合、より好ましくはR3はピラゾールおよびイミダゾールから選択される。
R3が5-員または6-員ヘテロアリールである場合、きわめて好ましいものは(C1-C3)アルキルおよび(C1-C3)アルコキシから選択される1個以上の基により置換されていてもよい、2個の窒素原子を含むC-結合した5-員ヘテロアリールである。
【0022】
R3が5-員または6-員ヘテロアリールである場合、特に好ましいものは、1個以上のメチル基により置換されていてもよい、2個の窒素原子を含むC-結合した5-員ヘテロアリールである。
【0023】
本発明による好ましい化合物は、下記よりなる群から選択される:
Syn-N-(4-ベンゼンスルホニルアミノ-シクロヘキシル)-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-N-[4-(3-フルオロ-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-N-[4-(4-フルオロ-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-N-[4-(トルエン-3-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-2-(4-メチルスルファニル−フェノキシ)-N-[4-(トルエン-3-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-ニコチンアミド;
Syn-N-[4-(3-シアノ-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-N-[4-(2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-N-[4-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-N-[4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-N-[4-(キノリン-8-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-ニコチンアミド;
Syn-N-[4-(ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-N-[4-(ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-N-[5-ヒドロキシ-4-(ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-N-[4-(2-ヒドロキシ-4-メチル-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;または
Syn-5-フルオロ-N-[4-(2-ヒドロキシ-5-メチル-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-2-(4-フルオロ-3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
ならびにその医薬的に許容できる塩類、溶媒和物、多形、およびプロドラッグ。
【0024】
本発明において特に好ましい化合物は、下記よりなる群から選択される:
Syn-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-N-[4-(キノリン-8-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-ニコチンアミド;
Syn-N-[4-(ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;および
Syn-5-フルオロ-N-[4-(2-ヒドロキシ-4-メチル-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
ならびにその医薬的に許容できる塩類、溶媒和物、多形、およびプロドラッグ。
【0025】
本発明はさらに、R1、R2およびR3が前記に定めたものであり、R3の任意置換基がさらにヒドロキシメトキシを含む式(I)の化合物を提供する。
これらのニコチンアミド誘導体はPDE4イソ酵素の阻害薬であり、特に炎症性、呼吸器系およびアレルギー性の疾患および状態の処置ならびに創傷に有用であることが見いだされた。
【0026】
前記の一般式(I)において、ハロはフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨード、特にフルオロまたはクロロよりなる群から選択されるハロゲン原子を表わす。
(C1-C3)アルキルまたは(C1-C4)アルキル基は、それぞれ1〜3および1〜4個の炭素原子を含む直鎖基または分枝鎖基を表わす。これは、それらが置換基をもつ場合、または他の基の置換基としてたとえば(C1-C4)アルコキシ基、ヒドロキシ(C1-C4)アルキル基、ハロ(C1-C4)アルキル基およびヒドロキシ(C2-C4)アルコキシ基中にある場合にも適用される。適切な(C1-C3)アルキルおよび(C1-C4)アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルである。適切な(C1-C4)アルコキシおよび(C2-C4)アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、イソブチルオキシ、sec-ブチルオキシおよびt-ブチルオキシである。ヒドロキシ(C1-C4)アルキルおよびヒドロキシ(C2-C4)アルコキシ基は、1個より多いヒドロキシ基(-OH)を含むことができる。本発明の好ましい態様によれば、それらの基は1個のヒドロキシ置換基を含む。適切なヒドロキシ(C1-C4)アルキル基の例は、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチルまたは2-ヒドロキシエチルである。したがって、ハロ(C1-C4)アルキル基は1個より多いハロ基を含むことができる。
【0027】
前記の一般式(I)において”5-員または6-員ヘテロアリール”は、5または6個の環原子をもつ単環式芳香族系の基であって、環員子の総数および性質に応じて、1、2または3個の窒素(N)原子を含むものを意味する。他の任意ヘテロ原子の例は、酸素(O)および硫黄(S)である。数個のヘテロ原子を含む場合、それらは同一でも異なってもよい。複素環式基も、本発明による前記の一般式(I)についてR3の定義に示したように非置換、モノ置換またはポリ置換であってよい。1〜3個の窒素(N)原子を含む適切な5-員または6-員ヘテロアリールをいずれも使用できる。適切な単環式複素環式基の好ましい例は、2個の窒素原子を含むピラゾールおよびイミダゾールから誘導される基である。
【0028】
前記の一般式(I)において”9-員または10-員二環式ヘテロアリール”は、9または10個の環原子をもつ二環式芳香族系の基であって、環員子の総数および性質に応じて、1、2または3個の窒素(N)原子を含むものを意味する。他の任意ヘテロ原子の例は、酸素(O)および硫黄(S)である。数個のヘテロ原子を含む場合、それらは同一でも異なってもよい。これらのヘテロアリール基も、本発明による前記の一般式(I)についてR3の定義に示したように非置換、モノ置換またはポリ置換であってよい。適切な二環式ヘテロアリール基の例は、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、プリン、ナフチリジン、フタラジン、キノリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリン、イソキノリン、ベンゾイミダゾール、イミダゾ[1,2-a]ピリジン、ベンゾトリアゾール、ピラゾロ[1,5-a]ピリジンおよびピラゾロピリミジンから誘導される基である。特に好ましいものは、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、イミダゾピリジン、ピロロピリダジン、ピロロピリジン、ベンゾトリアゾール、ピラゾロピリジン、イミダゾピリジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、ナフチリジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾールおよびベンゾオキサジアゾールから選択される二環式ヘテロアリール基である。より好ましいものは、キノリン、2,1,3-ベンゾチアジアゾールおよび2,1,3-ベンゾオキサジアゾールである。
【0029】
窒素ヘテロアリール基は、N-オキシドまたは第四級塩類として存在することもできる。
本発明による一般式(I)において、基がモノ置換またはポリ置換されている場合、それらの置換基は希望するいかなる位置にあってもよい。また、基がポリ置換されている場合、別途記載しない限りそれらの置換基は同一でも異なってもよい。
【0030】
式(I)のニコチンアミド誘導体は、常法により、たとえば下記の具体的方法により製造できる。その際、R1、R2およびR3は別途記載しない限り式(I)のニコチンアミド誘導体について前記に定めたものである。
【0031】
式(I)の化合物は、以下に開示する方法、ならびに実施例および製造例に例示する方法により製造できる。当業者の知識に従って他の方法も採用できる。
別途記載しない限り下記のとおりである:
PyBOP(登録商標)は、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートを意味する;
PyBrOP(登録商標)は、ブロモ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートを意味する;
CDIは、N,N'-カルボニルイミダゾールを意味する;
WSCDIは、塩酸1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドを意味する;
ムカイヤマ(Mukaiyama)試薬は、ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウムを意味する;
HATUは、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートを意味する;
HBTUは、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートを意味する;
DCCは、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドを意味する;
CDIは、N,N'-カルボニルイミダゾールを意味する;
HOATは、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールを意味する;
HOBTは、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物を意味する;
ヒューニッヒ(Huenig)塩基は、N-エチルジイソプロピルアミンを意味する;
Et3Nは、トリエチルアミンを意味する;
NMMは、N-メチルモルホリンを意味する;
NMPは、1-メチル-2-ピロリジノンを意味する;
DMAPは、4-ジメチルアミノピリジンを意味する;
NMOは、4-メチルモルホリンN-オキシドを意味する;
KHMDSは、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドを意味する;
NaHMDSは、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドを意味する;
Bocは、t-ブトキシカルボニルを意味する;
CBzは、ベンジルオキシカルボニルを意味する;
MeOHはメタノールを意味し、EtOHはエタノールを意味し、EtOAcは酢酸エチルを意味する;
THFはテトラヒドロフランを意味し、DMSOはジメチルスルホキシドを意味し、DCMはジクロロメタンを意味し、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを意味し、AcOHは酢酸を意味し、TFAはトリフルオロ酢酸を意味し、RTは室温を意味し、3°は第三級を意味し、eqは当量を意味し、Meはメチルを意味し、Etはエチルを意味し、Bnはベンジルを意味する。他の略号を合成化学標準法に従って使用する。
【0032】
経路A
【0033】
【化4】

【0034】
式(II)のニコチン酸またはニコチン酸誘導体は、市販されているか、あるいはHaylorら(EP 0634413、例9および10、p.12〜13)、またはMarziらの方法(European J. Org. Chem. 2001(7), 1371-1376)と同様にして得ることができる。式(III)の保護されたアミンは、市販されているか、あるいはOkuらの方法(WO 99/54284、たとえばp.80、製造77(1))と同様にして製造できる。
【0035】
経路Aにおいて、R1、R2およびR3は前記に定めたものであり、PGは適切なアミン保護基、一般にBoc、CBzまたはBn、好ましくはBocであり、LGは適切な脱離基、一般にハロ、好ましくはClである。
【0036】
工程(a)−酸-アミン結合
この酸-アミン結合は、下記のいずれかを用いて実施できる:
(i)酸(II)のアシルクロリド誘導体+アミン(III)、適切な溶媒中、過剰の酸受容体を含む;または
(ii)一般的な結合剤を含む酸または酸誘導体(II)+アミン(III)、所望により触媒の存在下に、適切な溶媒中、過剰の酸受容体を含む。
【0037】
一般に条件は下記のとおりである:
(i)酸(II)の酸クロリド(その場で生成)、過剰のアミン(III)、所望により過剰の第三級アミン、たとえばEt3N、ヒューニッヒ塩基またはNMMを含み、DCMまたはTHF中、加熱せずに1〜24時間;あるいは
(ii)酸(II)、WSCDI/DCC/CDI、所望によりHOBTもしくはHOATの存在下に、過剰のアミン(III)、過剰のNMM、Et3N、ヒューニッヒ塩基を含み、THF、DCMまたはEtOAc中、室温で4〜48時間;または酸(II)、PYBOP(登録商標)/PyBrOP(登録商標)/ムカイヤマ試薬/HATU/HBTU、過剰のアミン(III)、過剰のNMM、Et3N、ヒューニッヒ塩基を含み、THF、DCMまたはEtOAc中、室温で4〜24時間。
【0038】
好ましい条件は下記のとおりである:(II)の酸クロリド(その場で生成)、約1.1当量のアミン(III)、および約2〜約3当量のヒューニッヒ塩基またはトリエチルアミンを、DCM中、室温で18時間処理。本明細書の製造例6に記載。
【0039】
工程(b)−エーテル形成
化合物(IV)の脱離基LG(脱離基は、たとえばハロゲン、好ましくは塩素である)を置換フェノールで置換して、式(V)の化合物を得る。
【0040】
一般式(V)の化合物は、一般式(IV)の化合物から、適切な溶媒中、過剰の置換されていてもよい3-メチルスルファニル-フェノールの存在下に、適切な塩素で処理することにより製造できる。塩素としてはアルカリ金属塩(たとえばCs2CO3、K2CO3、NaH)を用い、MeCN、ジオキサン、またはN,N-ジメチルホルムアミドが使用に適した溶媒である。この反応は、高められた温度で実施される。所望により、この反応を触媒(たとえばイミダゾール、DMAP)の存在下で実施してもよい。
【0041】
好ましい条件は下記のとおりである:LGが塩素である化合物(IV)と、約1〜約2.5当量の置換されていてもよい3-メチルスルファニル-フェノールを、過剰の炭酸セシウムの存在下にジオキサン中、反応物のほぼ還流温度で、約24〜約72時間反応させる。本明細書の製造例12に例示。
【0042】
工程(c)−保護基の除去
一般式(V)の化合物から、N保護基(PG)を脱保護して一般式(VI)の化合物を得る反応は、”Protective Groups in Organic Synthesis”, T.W. Greene and P. Wutzに記載の標準法により行われる。
【0043】
たとえばPGがBocである場合、適切な条件は下記のとおりである:化合物(V)を、適切な溶媒、たとえばジオキサンまたはDCM中、室温で、強酸(たとえばTFA、HCl)により処理する。本発明においてBoc基の除去に好ましい条件は、ジオキサン中の塩酸(たとえば4M)およびDCMにより、室温で約3時間の処理、またはHCl飽和DCMにより約3時間の処理である。本明細書の製造例13および14に例示。
【0044】
工程(d)−スルホンアミドの形成
式(I)の化合物は、アミン(VI)と式R3SO2LG(LGは適切な脱離基、一般にハロ、好ましくはClである)の適切な化合物を、前記の経路A、工程(a)に記載した方法と同様に反応させることにより製造できる。
【0045】
好ましい条件は下記のとおりである:
(i)アミン(VI)を約1.5当量のR3SO2Clにより、過剰のEt3Nの存在下に、ジクロロメタン中、室温ないし反応物の還流温度で、約18〜約48時間処理する;あるいは
(ii)アミン(VI)とWSCDI、HOBT、および約1当量のR3SO2Clの混合物を、過剰の第三級アミン塩基(ヒューニッヒ塩基、Et3NまたはNMM)により、N,N-ジメチルホルムアミド中、室温で約18時間処理する。
【0046】
本明細書の実施例1〜13に、式(VI)の化合物から式(I)の化合物への変換を示す。式R3SO2LGの化合物は、市販されているか、あるいは標準法により得ることができる。
【0047】
経路B
あるいは、一般式(I)の化合物は経路Bにより製造できる:
【0048】
【化5】

【0049】
式(VII)の化合物は、アミン(III)から、前記の経路A、工程(d)に記載した方法に従ってR3SO2LGと反応させることにより製造できる。
一般式(VIII)の脱保護したアミン化合物は、一般式(VII)の保護されたアミン化合物から、前記の経路A、工程(c)に記載した方法と同様に、保護基PG、好ましくはBoc基を除去することにより製造できる。
【0050】
一般式(IX)の化合物は、一般式(VIII)のアミンと酸(II)を、前記の経路A、工程(a)および(d)に記載した方法に従って反応させることにより製造できる。
式(I)の化合物は、前記の経路A、工程(b)に記載したように、式(IX)の化合物の脱離基LGを、置換されていてもよい3-メチルスルファニル-フェノール基で置換することにより製造できる。
【0051】
経路C
あるいは、一般式(I)の化合物は経路Cにより製造できる:
【0052】
【化6】

【0053】
Ralkは、C1-C4アルキル基またはBz、好ましくはC1-C3アルキル基、より好ましくはMeまたはEtを表わす。
式(X)の化合物は、市販されているか、あるいは式(II)の化合物から標準的なエステル化条件を用いて得ることができる。式(III)の保護されたアミンは、市販されているか、あるいは前記のOkuら(WO 99/54284)の方法と同様にして製造できる。
【0054】
式(XI)の化合物は、エステル(X)と置換されていてもよい3-メチルスルファニル-フェノールを、前記の経路A、工程(b)に記載したように反応させることにより製造できる。この反応に使用する適切な任意触媒には、CuIが含まれる。その際、使用するのに好ましい条件は、ジオキサン中、約100℃で約48時間、炭酸セシウムにより処理することである。本明細書の製造例9に例示。
【0055】
工程(e)−エステルの加水分解
エステル(XI)の加水分解は、酸または塩基の存在下に、適切な溶媒中、所望により高められた温度で達成でき、酸(XII)が得られる。一般にエステル(XI)を、適切な塩基、たとえばアルカリ金属水酸化物(たとえばLiOH、NaOH、CsOH)により、水性溶媒(MeOH、EtOH、ジオキサン、THF)中、室温ないし反応物の還流温度で処理して、酸(XII)を得る。その際、好ましい条件は、THF中のエステル(XI)を約2.5当量の1 M LiOH水溶液により、THF中、室温で約2時間処理することである。本明細書の製造例10に例示。
【0056】
あるいは、式(XI)の化合物は、前記の経路A、工程(b)に記載したように、式(II)の化合物から、置換されていてもよい3-メチルスルファニル-フェノールとの反応により製造できる。
【0057】
式(XII)の酸と式(VIII)のアミンを、前記の経路A、工程(a)、および経路B、工程(a)に記載したように反応させると、式(I)の化合物が得られる。
あるいは、酸(XII)と式(III)の保護されたアミンを経路A、工程(a)に詳述した方法に従って反応させると、式(V)の保護されたアミンが生成する。本明細書の製造例11に例示。
【0058】
そのような式(V)の保護されたアミン化合物を経路A、工程(c)に詳述した方法で脱保護し、次いで経路A、工程(d)に記載したように式R3COOHの適切な酸と反応させると、式(I)の化合物が得られる。
【0059】
あるR3基は、さらに官能基の相互変換および変換、たとえば酢酸中でのHBr処理またはジクロロメタン中でのBBr3処理により、メトキシ基の脱メチルを受けることができる(本明細書の実施例14〜16に記載)。
【0060】
たとえば式PGR3SO2LGの保護された化合物(たとえば製造例15の化合物)を同様に経路A、工程(d)に記載した変換に用いて、保護されたスルホンアミド(たとえば本明細書の製造例16、17および18の化合物)にし、続いて後記に詳述する適切な脱保護工程を行って、式(I)の化合物を得ることができる(本明細書の実施例14〜16に記載)。
【0061】
以上の方法に用いた前記のすべての反応および新規な出発物質の製造は一般的なものであり、それらの実施または製造に適切な試薬および反応条件ならびに目的生成物の単離方法は、文献法ならびに本明細書の実施例および製造例を参照して当業者が容易になしうるであろう。
【0062】
以上に記載した式(I)のニコチンアミド誘導体の製造方法のある工程については、反応させたくない潜在反応性官能基を保護することが必要な可能性がある。そのような場合、適合するいかなる保護基も使用できる。特にT.W. GREENE(Protective Groups in Organic Synthesis, A. Wily-Interscience Publication, 1981)またはMcOMIE(Protective Groups in Organic Chemistry, Plenum Press, 1973)に記載の方法を使用できる。
【0063】
同様に、式(I)のニコチンアミド誘導体およびその製造用中間体を種々の周知の方法、たとえば結晶化またはクロマトグラフィーにより精製できる。
したがって他の態様によれば本発明は、下記を含む請求項1に記載した式(I)のニコチンアミド誘導体の製造方法を提供する:
(i)アミン(VI)とR3SO2LGの適切な化合物(LGは適切な脱離基である)を反応させる;または
(ii)式(IX)の化合物の脱離基LGを、置換されていてもよい3-メチルスルファニル-フェノール基で置換する;または
(iii)式(V)の化合物を脱保護し、次いで式R3COOHの適切な酸と反応させる;
これらにおいて式(VI)、(IX)および(V)は前記に定めたものである。
【0064】
本発明はさらに、前記に定めた一般式(VI)、(IX)および(V)の化合物を提供する。
さらに他の態様によれば、一般式(VI)、(IX)および(V)の化合物の製造方法であって、本明細書の経路A、工程(a)、(b)および(c)、ならびに経路B、工程(d)、(c)および(a)、ならびに経路C、工程(b)、(e)および(a)により示したものである方法を提供する。
【0065】
式(I)のニコチンアミド誘導体を、所望により医薬的に許容できる塩類に変換してもよい。特に、これらの式(I)のニコチンアミド誘導体の医薬的に許容できる塩類には、その酸付加塩および塩基塩(二塩を含む)が含まれる。
【0066】
適切な酸付加塩は、無毒性塩を形成する酸から形成される。その例には下記のものが含まれる:酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩、カムシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/クロリド、臭化水素酸塩/ブロミド、ヨウ化水素酸塩/ヨージド、リン酸水素塩、イセチオン酸塩、D-およびL-乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロット酸塩、パルモエート、リン酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、D-およびL-酒石酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩およびトシル酸塩。
【0067】
適切な塩基塩は、無毒性塩を形成する塩基から形成される。その例には下記のものが含まれる:アルミニウム塩、アルギニン塩、ベンザチン塩、カルシウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、ジオラミン塩、グリシン塩、リシン塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、オーラミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、トロメタミン塩および亜鉛塩。
【0068】
適切な塩類の概説については、Stahl and Wermuth, Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use, Wily-VCH, ドイツ、ワインハイム(2002)を参照。
式(I)のニコチンアミド誘導体の医薬的に許容できる塩類は、式(I)のニコチンアミド誘導体の溶液と、適宜、目的の酸または塩基を混和することによって、容易に製造できる。塩類は溶液から沈殿し、濾過により採集し、または溶媒の蒸発により回収することができる。
【0069】
本発明による医薬的に許容できる溶媒和物には水和物および溶媒和物が含まれ、その際、結晶化溶媒を同位体置換してもよい;たとえばD2O、d6-アセトン、d6-DMSO。
本発明の範囲にはクラスレート(包接化合物)、すなわち薬物-ホスト封入複合体も含まれ、この場合、前記の溶媒和物と異なり、薬物とホストが非化学量論的量で存在する。そのような複合体の概説については、J Pharm Sci, 64(8), 1269-1288, Haleblian (1975年8月)を参照。
【0070】
以下において式(I)のニコチンアミド誘導体という表現には、その塩類、ならびに式(I)の化合物およびその塩類の溶媒和物およびクラスレートが含まれる。
本発明は、式(I)のニコチンアミド誘導体のすべての多形を含む。
【0071】
本発明の範囲には、式(I)のニコチンアミド誘導体のいわゆる”プロドラッグ”も含まれる。たとえば、式(I)のニコチンアミド誘導体の、それ自体はほとんどまたは全く薬理活性をもたない特定の誘導体は、身体内または身体上に投与された際に代謝されて、目的活性をもつ式(I)のニコチンアミド誘導体を生成することができる。そのような誘導体を”プロドラッグ”と呼ぶ。
【0072】
本発明によるプロドラッグは、たとえば式(I)のニコチンアミド誘導体中に存在する適切な官能基を、”プロ-部分”として当業者に知られている特定の部分と交換することにより製造できる;たとえば”Design of Prodrugs”, H Bundgaard (Elsevier, 1985)に記載。
【0073】
さらに、特定の式(I)のニコチンアミド誘導体はそれ自体が式(I)の他のニコチンアミド誘導体のプロドラッグとして作用することができる。
1以上の不斉炭素原子を含む式(I)のニコチンアミド誘導体は、2種類以上の光学異性体として存在する可能性がある。式(I)のニコチンアミド誘導体がアルケニルまたはアルケニレン基を含む場合、シス/トランス(またはZ/E)幾何異性体の可能性があり、ニコチンアミド誘導体がたとえばケトまたはオキシム基を含む場合、互変異性体形成(’互変異性’)が起きる可能性がある。その結果、単一のニコチンアミド誘導体が1タイプより多い異性を示す場合がある。
【0074】
本発明の範囲には、すべての光学異性体、幾何異性体および互変異性体形の式(I)のニコチンアミド誘導体が含まれる。これには、1タイプより多い異性を示す化合物、およびその1種類以上の混合物が含まれる。
【0075】
シス/トランス異性体は、当業者に周知の常法、たとえば分別結晶化およびクロマトグラフィーにより分離できる。
個々の立体異性体の製造/単離のための常法には、適切な光学的に純粋な前駆物質の変換、またはたとえばラセミ体と適切な光学活性酸または塩基(たとえば酒石酸)の反応により形成したジアステレオ異性体塩類のキラルHPLCまたは分別結晶化によるラセミ体(または塩類もしくは溶媒和物のラセミ体)分割が含まれる。
【0076】
本発明には、式(I)のニコチンアミド誘導体の医薬的に許容できる同位体変異形もすべて含まれる。同位体変異形は、少なくとも1個の原子が、同一原子番号をもつけれども自然界で通常みられる原子質量と異なる原子質量をもつ原子で置換されたものと定義される。
【0077】
本発明のニコチンアミド誘導体に含有させるのに適した同位体の例には、下記の同位体が含まれる:水素、たとえば2Hおよび3H、炭素、たとえば13Cおよび14C、窒素、たとえば15N、酸素、たとえば17Oおよび18O、リン、たとえば32P、硫黄、たとえば35S、フッ素、たとえば18F、ならびに塩素、たとえば36Cl。
【0078】
式(I)のニコチンアミド誘導体の、たとえばジューテリウム、すなわち2H置換体は、より大きな代謝安定性から生じる療法上のある種の利点、たとえばインビボ半減期の延長または投与必要量の減少をもたらす可能性があり、したがって状況によっては好ましい場合がある。
【0079】
式(I)のニコチンアミド誘導体のある種の同位体変異形、たとえば放射性同位体を含有するものは、薬物および/または基質の組織分布研究に有用である。放射性同位体トリチウム、すなわち3H、およびカーボン-14、すなわち14Cは、それらの取り込ませやすさおよび検出手段の容易さからみて、この目的に特に有用である。
【0080】
式(I)のニコチンアミド誘導体のある種の同位体変異形は、一般に当業者に既知の常法により、または適切な試薬の適宜な同位体変異形を用いて本明細書に示す実施例および製造例に記載したものと同様な方法により製造できる。
【0081】
他の態様によれば、本発明は式(I)のニコチンアミド誘導体の混合物、ならびにそれらの医薬的に許容できる塩類、溶媒和物、多形、異性体形および/または同位体形との、あるいはこれらの混合物に関する。
【0082】
本発明によれば、式(I)のニコチンアミド誘導体の本明細書に前述したすべての形態のうち、医薬的に許容できる塩類以外のもの(すなわち溶媒和物、多形、異性体形および同位体形)を、以下において式(I)のニコチンアミド誘導体の”誘導形”と定義する。
【0083】
式(I)のニコチンアミド誘導体、それらの医薬的に許容できる塩類および/または誘導形は、有用な医薬有効化合物であり、PDE4酵素が関係する多数の障害、特に炎症性障害、呼吸器系障害およびアレルギー性障害ならびに創傷の治療および予防に適する。
【0084】
前記の式(I)のニコチンアミド誘導体ならびにそれらの医薬的に許容できる塩類および/または誘導形を、本発明に従って動物、好ましくは哺乳動物、特にヒトに、治療または予防のための医薬として投与できる。それらはそのまま、他の薬物と互いに混合して、または組み合わせて投与するか、あるいは有効成分として有効量の少なくとも1種類の式(I)のニコチンアミド誘導体、その医薬的に許容できる塩類および/または誘導形を、医薬的に無害である一般的な賦形剤および/または添加剤と共に含有する経口(腸管)または非経口(腸管以外)投与可能な医薬製剤の形で投与できる。用語”賦形剤”は、本明細書において本発明化合物以外のいずれかの成分を記述するために用いられる。賦形剤の選択は大部分が個々の投与様式に依存するであろう。
【0085】
式(I)のニコチンアミド誘導体、それらの医薬的に許容できる塩類および/または誘導形を凍結乾燥、噴霧乾燥または蒸発乾燥させて、結晶質または非晶質物質の固体プラグ、粉末、またはフィルムにすることができる。マイクロ波乾燥または高周波乾燥をこの目的に使用できる。
【0086】
経口投与
本発明の式(I)のニコチンアミド誘導体、それらの医薬的に許容できる塩類および/または誘導形を経口投与することができる。経口投与は嚥下を伴い、したがって化合物は消化管に進入する。あるいは口腔投与または舌下投与を採用でき、これにより化合物は口から血流に直接進入する。
【0087】
経口投与に適した配合物には、固体配合物、たとえば錠剤、粒子、液体もしくは粉末を収容したカプセル剤、トローチ剤(液体充填したものを含む)、咀しゃく錠、マルチ粒子およびナノ粒子、ゲル剤、フィルム剤(粘膜接着型を含む)、卵形錠、スプレー剤、ならびに液体配合物が含まれる。
【0088】
液体配合物には、懸濁剤、液剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。そのような配合物は軟または硬カプセル中の充填物として使用でき、一般にキャリヤー、たとえば水、エタノール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または適切な油、ならびに1種類以上の乳化剤および/または沈殿防止剤を含む。液体配合物は、たとえば小分けした袋からの固体を再構成することによっても調製できる。
【0089】
本発明の式(I)のニコチンアミド誘導体、それらの医薬的に許容できる塩類および/または誘導形を、たとえばExpert Opinion in Therapeutic Patents,11(6), 981-986, Liang and Chen (2001)に記載される即溶性、即時崩壊性の剤形でも使用できる。
【0090】
本発明による一般的な錠剤の組成物は、下記のものを含むことができる。
【0091】
【表1】

【0092】
薬物活性に従って調整した量
一般的な錠剤は、配合化学者に既知の標準法により、たとえば直接圧縮、造粒(乾式、湿式または溶融法)、溶融凝固、または押出しにより製造できる。錠剤配合物は1以上の層を含むことができ、コーティングされてもよく、コーティングされなくてもよい。
【0093】
経口投与に適した賦形剤の例には、キャリヤー、たとえばセルロース、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、マンニトールおよびクエン酸ナトリウム、造粒結合剤、たとえばポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびゼラチン、崩壊剤、たとえばグリコール酸デンプンナトリウムおよびケイ酸塩、滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸、湿潤剤、たとえばラウリル硫酸ナトリウム、保存剤、酸化防止剤、着香剤ならびに着色剤が含まれる。
【0094】
経口投与用の固体配合物を、即時放出および/または改変放出するように配合することができる。改変放出配合物には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御二重放出、ターゲティングおよびプログラミングした放出が含まれる。適切な改変放出技術、たとえば高エネルギー分散、浸透圧粒子および被覆粒子の詳細は、Verma et al., Pharmaceutical Technology On-line, 25(2), 1-14 (2001)にある。他の改変放出配合物は、USP No. 6,106,864に記載されている。
【0095】
非経口投与
本発明の式(I)のニコチンアミド誘導体、それらの医薬的に許容できる塩類および/または誘導形を、血流、筋肉または内臓中へ直接投与することもできる。非経口投与に適した手段には、静脈内、動脈内、腹腔内、クモ膜下(髄腔内)、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内および皮下投与が含まれる。非経口投与に適した用具には、針(マイクロニードルを含む)注射器および無針注射器、ならびに注入法が含まれる。
【0096】
非経口配合物は一般に水性液剤であり、これらは賦形剤、たとえば塩類、炭水化物および緩衝剤(好ましくはpH 3〜9)を含有してもよいが、ある種の用途には、発熱物質を含まない無菌水など適切なビヒクルと共に使用する無菌非経水性溶液または乾燥形として配合する方が適切な場合がある。
【0097】
無菌条件下で、たとえば凍結乾燥による非経口配合物の調製は、当業者に周知の医薬標準法によって容易に達成できる。
非経口液剤の調製に使用する本発明の式(I)のニコチンアミド誘導体の溶解度を、適切な処理、たとえば高エネルギー噴霧乾燥分散物の使用(WO 01/47495)、および/または適切な配合法の使用、たとえば溶解促進剤の使用によって高めることができる。
【0098】
非経口投与用の配合物を、即時放出および/または改変放出するように配合することができる。改変放出配合物には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御二重放出、ターゲティングおよびプログラミングした放出が含まれる。
【0099】
局所投与
本発明のニコチンアミド誘導体を、皮膚投与または経皮投与により皮膚または粘膜へ局所投与することもできる。この目的のための一般的な配合物には、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤、散粉剤、包帯剤、フォーム、フィルム、皮膚パッチ、ウエファース、埋込み剤、スポンジ、繊維、包帯およびマイクロエマルションが含まれる。リポソームも使用できる。一般的なキャリヤーには、アルコール類、水、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリンおよびプロピレングリコールが含まれる。透過促進剤を含有させてもよい−たとえばJ Pharm Sci, 88(10), 955-958, Finnin and Morgan (1999年10月)を参照。
【0100】
局所投与のための他の手段には、イオントフォレーゼ、エレクトロポレーション、ホノフォレーゼ、ソノフォレーゼ、および無針注射またはマイクロニードル注射が含まれる。
局所投与のための配合物を、即時放出および/または改変放出するように配合することができる。改変放出配合物には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御二重放出、ターゲティングおよびプログラミングした放出が含まれる。たとえば、埋込みデポー剤として投与して有効化合物を長期放出させるために、式(I)のニコチンアミド誘導体をより硬い形態で配合することができる。
【0101】
吸入/鼻腔内投与
式(I)のニコチンアミド誘導体を鼻腔内に、または吸入により、乾燥粉末の形態で(単独で、混合物として、たとえば乳糖[無水もしくは1水和物、好ましくは1水和物の形]、マンニトール、デキストラン、ブドウ糖、マルトース、ソルビトール、キシリトール、果糖、ショ糖もしくはトレハロースとの乾燥ブレンド中で、またはたとえばリン脂質と混合した混合成分粒子として)乾燥粉末吸入器から、あるいはエアゾルスプレー剤として加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくはミスト生成のために電気流体力学を利用したアトマイザー)またはネブライザーから、ジクロロジフルオロエタンなど適切な噴射剤を用いて、または用いずに投与することもできる。
【0102】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザーまたはネブライザーは、有効化合物の液剤または懸濁剤を収容し、これらはたとえばエタノール(所望により水性エタノール)、または有効成分の分散、可溶化、もしくは延長放出のための適切な他の物質、溶媒としての噴射剤(1以上)、ならびに所望により界面活性剤、たとえばトリオレイン酸ソルビタンまたはオリゴ乳酸を含む。
【0103】
薬物生成物を乾燥粉末または懸濁配合物中に使用する前に、吸入による送達に適切なサイズ(一般に5ミクロン未満)に微細化する。これは、適切な微粉砕法、たとえばスパイラルジェットミリング、流動床ジェットミリング、ナノ粒子形成のための超臨界流体処理、高圧ホモジナイゼーションまたは噴霧乾燥のいずれかにより達成できる。
【0104】
電気流体力学を利用して微細ミストを生成するアトマイザーに使用するのに適切な液剤配合物は、1回の操作につき1μg〜20mgの式(I)のニコチンアミド誘導体を含有することができ、操作容量は1〜100μlであってよい。一般的な配合物は、式(I)のニコチンアミド誘導体、プロピレングリコール、無菌水、エタノールおよび塩化ナトリウムを含むことができる。プロピレングリコールの代わりに使用できる他の溶媒には、グリセロールおよびポリエチレングリコールが含まれる。
【0105】
吸入器または吹入器に使用するためのカプセル、ブリスターおよびカートリッジ(たとえばゼラチンまたはHPMC製)は、式(I)のニコチンアミド誘導体、適切な粉末基剤、たとえば乳糖またはデンプン、および性能改質剤、たとえばl-ロイシン、マンニトールまたはステアリン酸マグネシウムを含有する粉末ミックスを収容するように調製できる。
【0106】
乾燥粉末吸入器およびエアゾル剤の場合、投与単位は計量された量を送達する弁により決定される。本発明による単位は、一般に式(I)のニコチンアミド誘導体1〜4000μgを含有する計量された量、すなわち”一吹き”を投与するように設定される。全1日量は、一般に1μg〜20mgであり、これを1回量で、またはより一般的にはその日全体で分割量として投与することができる。
【0107】
吸入/鼻腔内投与のための配合物を、即時放出および/または改変放出するように配合することができる。改変放出配合物には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御二重放出、ターゲティングおよびプログラミングした放出が含まれる。持続放出または制御放出は、たとえばポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)を用いて達成できる。
【0108】
着香剤、たとえばメトール(methol)およびレボメトール(levomethol)、ならびに/あるいは甘味剤、たとえばサッカリンまたはサッカリンナトリウムを配合物に添加できる。
【0109】
直腸/膣内投与
式(I)のニコチンアミド誘導体を直腸または膣に、たとえば坐剤、膣坐剤または浣腸剤の形で投与することができる。カカオ脂が伝統的な坐剤基剤であるが、各種の代替品を適宜使用できる。
【0110】
直腸/膣投与のための配合物を、即時放出および/または改変放出するように配合することができる。改変放出配合物には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御二重放出、ターゲティングおよびプログラミングした放出が含まれる。
【0111】
眼内/耳内投与
式(I)のニコチンアミド誘導体を、一般に等張のpH調整した無菌塩類溶液中における微細懸濁液または溶液の滴剤の形で、眼または耳に直接投与することもできる。眼内または耳内投与に適切な他の配合物には、軟膏剤、生物分解性(たとえば吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン)および生物非分解性(たとえばシリコン)埋込み剤、ウエファース、レンズ、および粒状または小胞状の系、たとえばニオソームまたはリポソームが含まれる。ポリマー、たとえば架橋したポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、セルロースポリマー、たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、もしくはメチルセルロース、またはヘテロ多糖類ポリマー、たとえばゲランゴムを、保存剤、たとえば塩化ベンザルコニウムと一緒に含有させることができる。そのような配合物をイオントフォレーゼにより送達することもできる。
【0112】
眼内/耳内投与のための配合物を、即時放出および/または改変放出するように配合することができる。改変放出配合物には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御二重放出、ターゲティングおよびプログラミングした放出が含まれる。
【0113】
調製方法
式(I)のニコチンアミド誘導体の溶解度、溶解速度、味覚隠ぺい性、生物学的利用能および/または安定性を改良するために、それらを可溶性高分子物質、たとえばシクロデキストリンまたはポリエチレングリコール含有ポリマーと組み合わせることができる。
【0114】
たとえば薬物-シクロデキストリン複合体は、一般に大部分の剤形および投与経路に有用であることが認められた。封入複合体および非封入複合体の両方を使用できる。薬物と直接に複合体を形成する代わりに、シクロデキストリンを補助添加剤として、すなわちキャリヤー、希釈剤または可溶化剤として使用してもよい。これらの目的に最も一般的に用いられるものは、α-、β-およびγ-シクロデキストリンであり、その例は国際特許出願No. WO 91/11172、WO 94/02518およびWO 98/55148にある。
【0115】
投与量
ヒト患者への投与について、式(I)のニコチンアミド誘導体の全1日量は一般に0.001〜100 mg/kgであり、当然、投与方式に依存する。全1日量を1回量または分割量で投与できる。患者の年齢、体重、健康状態および性別ならびに疾病の重症度に応じて、対象に対する用量を医師が容易に決定できるであろう。
【0116】
本発明の他の態様によれば、式(I)のニコチンアミド誘導体、それらの医薬的に許容できる塩類および/またはそれらの誘導形を、1種類以上の他の療法薬との組合わせとして用いて患者に共投与し、ある特定の目的療法効果を得ることもできる。第2およびさらに追加の療法薬も式(I)のニコチンアミド誘導体、それらの医薬的に許容できる塩類および/またはそれらの誘導形であってもよく、あるいは当技術分野で既知の1種類以上のPDE4阻害薬であってもよい。より一般的には、第2およびさらに追加の療法薬は、異なるクラスの療法薬から選択されるであろう。
【0117】
式(I)のニコチンアミド誘導体、それらの医薬的に許容できる塩類および/またはそれらの誘導形について本明細書中で用いる用語”共投与”、”共投与する”および”組合わせ投与する”は、下記のことを含み、それらを意味するものとし、実際に意味する:
・処置を必要とする患者に、ニコチンアミド誘導体(1以上)と療法薬(1以上)の組合わせを同時に投与する;この場合、それらの成分は単一剤形中へ一緒に配合され、それらの剤形はそれらの成分を実質的に同時に患者に放出する;
・処置を必要とする患者に、ニコチンアミド誘導体(1以上)と療法薬(1以上)の組合わせを実質的に同時に投与する;この場合、それらの成分は互いに分離して別個の剤形中に配合され、それらは実質的に同時に患者に摂取され、その際それらの成分は実質的に同時に患者に放出される;
・処置を必要とする患者に、ニコチンアミド誘導体(1以上)と療法薬(1以上)の組合わせを逐次投与する;この場合、それらの成分は互いに分離して別個の剤形中に配合され、それらは各摂取間に有意の時間間隔をおいて患者に逐次摂取され、その際それらの成分は実質的に異なる時点で患者に放出される;
・処置を必要とする患者に、ニコチンアミド誘導体(1以上)と療法薬(1以上)の組合わせを逐次投与する;この場合、それらの成分は単一剤形中へ一緒に配合され、それらの剤形はそれらの成分を制御様式で放出し、その際それらは同一および/または異なる時点で同時、連続的、および/または重複して患者に投与される。
【0118】
式(I)のニコチンアミド誘導体、それらの医薬的に許容できる塩類および/またはそれらの誘導形と組み合わせて使用できる他の療法薬の適切な例には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:
(a)5-リポキシゲナーゼ(5-LO)阻害薬または5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)アンタゴニスト、
(b)ロイコトリエンアンタゴニスト(LTRA):LTB4、LTC4、LTD4およびLTE4のアンタゴニストを含む、
(c)ヒスタミン受容体アンタゴニスト:H1、H3およびH4アンタゴニストを含む、
(d)うっ血除去用のα1-およびα2-アドレナリン受容体アゴニスト系の血管収縮性交感神経様作動薬、
(e)ムスカリンM3受容体アンタゴニストまたは抗コリン作動薬、
(f)β2-アドレナリン受容体アゴニスト、
(g)テオフィリン、
(h)クロモグリク酸ナトリウム(sodium cromoglycate)、
(i)COX-1阻害薬(NSAID)およびCOX-2選択的阻害薬、
(j)経口または吸入グルココルチコステロイド、
(k)内因性炎症性物質に対して有効なモノクローナル抗体、
(l)抗腫瘍壊死因子(抗-TNF-α)薬、
(m)接着分子阻害薬:VLA-4アンタゴニストを含む、
(n)キニン-B1-およびB2-受容体アンタゴニスト、
(o)免疫抑制薬、
(p)マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の阻害薬、
(q)タキキニンNK1、NK2およびNK3受容体アンタゴニスト、
(r)エラスターゼ阻害薬、
(s)アデノシンA2a受容体アゴニスト、
(t)ウロキナーゼの阻害薬、
(u)ドーパミン受容体に作用する化合物、たとえばD2アゴニスト、
(v)NFkb経路の調節薬、たとえばIKK阻害薬、
(w)粘膜溶解薬または鎮咳薬として分類できる薬物、
(x)抗生物質、ならびに
(y)p38 MAPキナーゼ阻害薬。
【0119】
本発明によれば、式(I)のニコチンアミド誘導体と下記の組合わせが好ましい:
・ムスカリンM3受容体アゴニストまたは抗コリン作動薬:特にイプラトロピウム(ipratropium)の塩類、すなわちブロミド、チオトロピウム(tiotropium)の塩類、すなわちブロミド、オキシトロピウム(oxitropium)の塩類、すなわちブロミド、ペレンゼピン(perenzepine)およびテレンゼピン(telenzepine)を含む、
・β2-アドレナリン受容体アゴニスト:アルブタロール(albutarol)、サルブタモール(salbutamol)、フォルモテロール(formoterol)およびサルメテール(salmeterol)を含む、
・p38 MAPキナーゼ阻害薬、
・H3アンタゴニスト
・グルココルチコステロイド、特に副作用の少ない吸入グルココルチコステロイド:プレドニゾン(prednisone)、プレドニゾロン(prednisolone)、フルニソリド(flunisolide)、トリアムシノロンアセトニド(triamcinolone acetonide)、ジプロピオン酸ベクロメタゾン(beclomethasone dipropionate)、ブデソニド(budesonide)、プロピオン酸フルチカゾン(fluticasone propionate)およびフロ酸モメタゾン(momethasone furoate)を含む、
・またはアデノシンA2a受容体アゴニスト。
【0120】
本明細書中で処置という表現はすべて治療処置、対症処置および予防処置を含むと理解すべきである。以下の記述は式(I)のニコチンアミド誘導体を使用できる療法用途に関する。
【0121】
式(I)のニコチンアミド誘導体はPDE4アイソザイムを阻害し、これにより、PDE4ファミリーのアイソザイムがあらゆる哺乳動物の生理において役割をもつという本質的な理由からさらに以下に記載する広範な療法用途をもつ。PDE4アイソザイムが行う酵素的役割は、前炎症性白血球におけるアデノシン3',5'-サイクリック一リン酸(cAMP)の細胞内加水分解である。cAMPは体内で多数のホルモンの作用の仲介に関与し、その結果、PDE4阻害は多様な生理学的プロセスにおいて重要な役割をもつ。PDE4阻害薬が多様な炎症細胞反応に及ぼす作用について記載した多数の文献がある。これらの作用には、cAMP増加のほかに、好酸球、好中球および単球におけるスーパーオキシド産生、脱顆粒、走化性、および腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)放出の阻害が含まれる。
【0122】
したがって、本発明の他の態様は、PDE4アイソザイムが関係する疾患、障害および状態の処置における、式(I)のニコチンアミド誘導体、それらの医薬的に許容できる塩類および/またはそれらの誘導形の使用に関する。より具体的には、本発明は下記よりなる群から選択される疾患、障害および状態の処置における、式(I)のニコチンアミド誘導体、それらの医薬的に許容できる塩類および/またはそれらの誘導形の使用に関する:
・あらゆるタイプ、病因または病原の喘息、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである喘息:アトピー性喘息、非アトピー性喘息、アレルギー性喘息、アトピー性IgE仲介気管支喘息、気管支喘息、本態性喘息、真性喘息、病態生理障害により起きる内因性喘息、環境因子により起きる外因性喘息、原因未知または原因不明の本態性喘息、非アトピー性喘息、気管支炎性喘息、肺気腫性喘息、運動誘発喘息、アレルゲン誘発喘息、冷気誘発喘息、職業性喘息、細菌、真菌、原虫またはウイルスの感染により起きる感染性喘息、非アレルギー性喘息、初発喘息および喘鳴乳児症候群;
・慢性または急性の気管支収縮、慢性気管支炎、末梢気道閉塞および気腫、
・あらゆるタイプ、病因または病原の閉塞性または炎症性の気道疾患、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである閉塞性または炎症性の気道疾患:慢性好酸球性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関連の慢性気管支炎、肺気腫または呼吸困難を含むCOPD、回復不能な進行性気道閉塞を特色とするCOPD、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、および他の薬物療法による気道反応亢進の増悪;
・あらゆるタイプ、病因または病原の塵肺症、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである間質型塵肺:アルミニウム症またはボーキサイト工病、炭粉症または坑夫喘息、石綿症または蒸気管取付け工喘息、石粉症またはフリント病、ダチョウの羽毛塵を吸入することにより起きる睫毛脱落症、鉄粒子の吸入により起きる鉄症、珪粉症または粉砕工症、綿繊維症または木綿塵喘息、および滑石塵肺症;
・あらゆるタイプ、病因または病原の気管支炎、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである気管支炎:急性気管支炎、急性喉頭気管支炎、アラキジン気管支炎、カタル性気管支炎、クループ性気管支炎、乾性気管支炎、感染性喘息性気管支炎、増殖性気管支炎、ブドウ球菌性または連鎖球菌性気管支炎、および小胞性気管支炎;
・あらゆるタイプ、病因または病原の気管支拡張症、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである気管支拡張症:円柱状気管支拡張症、嚢状気管支拡張症、紡錘状気管支拡張症、細気管支拡張症、嚢胞状気管支拡張症、乾性気管支拡張症および濾胞状気管支拡張症;
・季節性アレルギー性鼻炎もしくは通年性アレルギー性鼻炎、またはあらゆるタイプ、病因または病原の副鼻腔炎、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである副鼻腔炎:化膿性または非化膿性の副鼻腔炎、急性または慢性の副鼻腔炎、および篩骨洞炎、前頭洞炎、上顎洞炎または蝶形骨洞炎;
・あらゆるタイプ、病因または病原のリウマチ性関節炎、特に下記よりなる群から選択されるメンバーであるリウマチ性関節炎:急性関節炎、急性通風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎および椎骨関節炎;
・炎症に関連する通風および発熱および痛み;
・あらゆるタイプ、病因または病原の好酸球関連障害、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである好酸球関連障害:好酸球増加症、肺浸潤性好酸球増加症、レフレル症候群、慢性好酸球性肺炎、局所性肺好酸球増加症、気管支肺炎性アスペルギルス症、アスペルギルス腫、好酸球を含む肉芽腫、アレルギー性肉芽腫性血管炎またはチャーグ-ストラウス症候群、結節性多発動脈炎(PAN)および全身性壊死性血管炎;
・アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、接触皮膚炎、またはアレルギー性もしくはアトピー性湿疹;
・あらゆるタイプ、病因または病原のじんま疹、特に下記よりなる群から選択されるメンバーであるじんま疹:免疫仲介じんま疹、補体仲介じんま疹、じんま疹誘発物質により誘発されるじんま疹、物理的要因により誘発されるじんま疹、ストレス誘発じんま疹、特発性じんま疹、急性じんま疹、慢性じんま疹、血管浮腫、コリン性じんま疹、常染色体優性型または後天性の寒冷じんま疹、接触じんま疹、巨大じんま疹および丘疹状じんま疹;
・あらゆるタイプ、病因または病原の結膜炎、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである結膜炎:照射性結膜炎、急性カタル性結膜炎、急性接触感染性結膜炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性結膜炎、慢性カタル性結膜炎、化膿性結膜炎および春季結膜炎;
・あらゆるタイプ、病因または病原のブドウ膜炎、特に下記よりなる群から選択されるメンバーであるブドウ膜炎:ブドウ膜全体または一部の炎症、前部ブドウ膜炎、虹彩炎、毛様体炎、虹彩毛様体炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、脈絡膜炎および脈絡網膜炎;
・乾癬;
・あらゆるタイプ、病因または病原の多発硬化症、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである多発硬化症:原発性進行性多発硬化症および再発性寛解性多発硬化症;
・あらゆるタイプ、病因または病原の自己免疫性/炎症性疾患、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである自己免疫性/炎症性疾患:自己免疫性血液障害、溶血性貧血、再生不良性貧血、真正赤血球性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、全身性紅斑性狼瘡、胆汁過多症、強皮症、ヴェグナー肉芽腫症、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、スティーヴェンズ-ジョンソン症候群、特発性熱帯性下痢、自己免疫炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、内分泌性眼障害、グレーブス病、類肉腫症、肺胞炎、慢性過敏性間質性肺炎、原発性胆汁性肝硬変、若年型糖尿病またはI型糖尿病、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、広汎性間質性肺線維症または間質性肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、ネフローゼ症候群を伴うまたは伴わない腎炎、急性腎炎、特発性ネフローゼ症候群、微小病変腎障害、炎症性/増殖亢進性皮膚疾患、良性家族性天疱瘡、紅斑性天疱瘡、落葉状天疱瘡および尋常性天疱瘡;
・臓器移植に伴う同種移植片拒絶の防止;
・あらゆるタイプ、病因または病原の炎症性腸疾患(IBD)、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである炎症性腸疾患:膠原性大腸炎、ポリープ性大腸炎、貫壁性大腸炎、潰瘍性大腸炎およびクローン病(CD);
・あらゆるタイプ、病因または病原の敗血症性ショック、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである敗血症性ショック:腎不全、急性腎不全、悪液質、マラリア性悪液質、下垂体性悪液質、尿毒症性悪液質、心臓悪液質、副腎悪液質またはアディソン病、癌性悪液質、およびヒト免疫不全ウィルス(HIV)感染の結果としての悪液質;
・肝傷害;
・あらゆるタイプ、病因または病原の肺高血圧症:原発性肺高血圧症/本態性高血圧症、うっ血性心不全の続発性肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患の続発性高血圧症、肺静脈高血圧症、肺動脈高血圧症および低酸素誘発肺高血圧症を含む;
・骨損失疾患、原発性骨粗鬆症および続発性骨粗鬆症;
・あらゆるタイプ、病因または病原の中枢神経系障害、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである中枢神経系障害:うつ病、アルツハイマー病、パーキンソン病、学習障害および記憶障害、遅発性ジスキネジー、薬物依存、動脈硬化性認知症およびハンチントン舞踏病を伴う認知症、ウィルソン病、振戦麻痺および視床萎縮;
・感染症、特にウイルス性の感染症であって、ウイルスがそれらの宿主におけるTNF-αの産生を高め、またはウイルスがそれらの宿主におけるTNF-αのアップレギュレーションに感受性であるため、それらの複製その他の生命活動が有害な作用を受ける感染症;HIV-1、HIV-2およびHIV-3、サイトメガロウイルス(CMV)、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、ならびに帯状ヘルペスおよび単純ヘルペスを含むヘルペスウイルスよりなる群から選択されるメンバーであるウイルスの感染症を含む;
・酵母および真菌感染症であって、酵母および真菌がそれらの宿主におけるTNF-αによるアップレギュレーションに感受性であるか、またはTNF-α産生の引き金を引くもの、たとえば真菌性髄膜炎、特に全身性の酵母および真菌感染症の処置のために選択される下記を含めた他の薬物と組合わせ投与した場合:ポリミキシン類、たとえばポリミキシンB、イミダゾール類、たとえばクロトリマゾール(clotrimazole)、エコナゾール(econazole)、ミコナゾール(miconazole)およびケトコナゾール(ketoconazole)、トリアゾール類、たとえばフルコナゾール(fluconazole)およびイトラナゾール(itranazole)、ならびにアンホテリシン類、たとえばアンホテリシンB(Amphotericin B)およびリポソーム型アンホテリシンB;
・虚血-再潅流傷害、虚血性心疾患、自己免疫性糖尿病、腎性自己免疫病、慢性リンパ球性白血病、HIV感染症、紅斑性狼蒼、腎および尿管の疾患、尿生殖器および消化器の障害、ならびに前立腺疾患;
・人体または動物体における瘢痕組織形成、たとえば急性創傷の治癒に際しての、瘢痕組織形成の軽減;ならびに
・乾癬その他の皮膚病および美粧における用途:消炎、皮膚軟化、皮膚の柔軟性および水分を高める行動を含む。
【0123】
1態様によれば、本発明は特に呼吸器系疾患、たとえば成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、喘息、気腫、気管支拡張症、副鼻腔炎および鼻炎の処置に関する。
【0124】
他の態様によれば、本発明は特に消化器(GI)障害、特に炎症性腸疾患(IBD)、たとえばクローン病、回腸炎、膠原性大腸炎、ポリープ性大腸炎、貫壁性大腸炎および潰瘍性大腸炎の処置に関する。
【0125】
他の態様によれば、本発明は特に瘢痕形成の軽減に関する。
本発明のさらに他の態様は、PDE4阻害活性をもつ薬剤の調製のための、式(I)のニコチンアミド誘導体、それらの医薬的に許容できる塩類および/または誘導形の使用に関する。特に本発明は、炎症性、呼吸器系、アレルギー性および瘢痕形成性の疾患、障害および状態の処置、より好ましくは前記に挙げた疾患、障害および状態の処置に用いる薬剤の調製のための、式(I)のニコチンアミド誘導体、それらの医薬的に許容できる塩類および/または誘導形の使用に関する。
【0126】
したがって本発明は、ヒトを含めた哺乳動物をPDE4阻害薬で処置するための特に重要な方法であって、有効量の式(I)のニコチンアミド誘導体、その医薬的に許容できる塩類および/または誘導形で哺乳動物を処置することを含む方法を提供する。より詳細には本発明は、炎症性、呼吸器系、アレルギー性および瘢痕形成性の疾患、障害および状態の処置のためにヒトを含めた哺乳動物を処置する特に重要な方法であって、有効量の式(I)のニコチンアミド誘導体、その医薬的に許容できる塩類および/または誘導形で哺乳動物を処置することを含む方法を提供する。
【0127】
以下の実施例は式(I)のニコチンアミド誘導体の製造を説明する。
製造例または実施例を他の方法と”同様な”方法で行ったと記載する場合、これは実際の方法にわずかな相異、たとえばカラムクロマトグラフィーではなく再結晶の使用、または分離段階での他の溶媒の使用がありうることを意味する。しかし、そのようなわずかな相異は、そのような反応を行う際の当業者の一般的な知識および実験的経験の範囲内にあるとみなされる。
【0128】
製造例1
2-クロロ-5-フルオロニコチン酸
【0129】
【化7】

【0130】
2-クロロ-5-フルオロニコチン酸エチル(50.4g, 0.247mol)(J. Med. Chem., 1993, 36(18), 2676-88, p.2684, 2欄, 第3例, 2-クロロ-5-フルオロピリジン-3-カルボン酸エチルの方法に従って製造できる)をテトラヒドロフラン(350mL)に溶解し、2M水酸化リチウム水溶液(247mL, 0.495mol)を添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。6M塩酸の添加により溶液のpHをpH 1に低下させ、次いでジクロロメタン(3回)で抽出した。抽出液を合わせて乾燥させ(MgSO4)、溶媒を減圧下で蒸発させると固体が得られた。これをジエチルエーテルで摩砕処理し、次いで乾燥させて、表題化合物を白色固体40.56gとして得た。
【0131】
【化8】

【0132】
製造例2
トランス-(4-ヒドロキシ-シクロヘキシル)-カルバミン酸N-t-ブチル
【0133】
【化9】

【0134】
トランス-4-アミノシクロヘキサノール(100g, 0.87mol)を、アセトニトリル(1 L)に撹拌しながら添加し、続いてジ炭酸ジ-t-ブチル(208g, 0.96mol)を少量ずつ1時間かけて添加した。反応物を室温で18時間撹拌し、生成した沈殿を濾別し、酢酸エチル:ヘキサン(1:3, 250mL)、次いでヘキサン(250mL)で洗浄し、乾燥させて、表題化合物を白色固体166.9gとして得た。
融点167〜170℃。
【0135】
製造例3
トランス-メタンスルホン酸4-t-ブトキシカルボニルアミノ-シクロヘキシルエステル
【0136】
【化10】

【0137】
メシルクロリド(122.4g, 1.07mol)の、ジクロロメタン(400mL)中における溶液を、製造例2で得たアルコール(200g, 0.93mol)およびトリエチルアミン(112.8g, 1.115 mol)の、ジクロロメタン(1 L)中における氷冷溶液に、45分間かけて滴加した。反応物を15分間撹拌し、次いで1時間かけて室温に高めた。混合物を水(3回, 1.5L)で洗浄し、次いでシリカ(100mL, Merck 60H)と共に撹拌した。この混合物を濾過し、濾液を減圧濃縮してほぼ1/4の体積にした。ヘキサン(500mL)を添加し、混合物を0℃に冷却し、生成した固体を濾別し、乾燥させ、酢酸エチルから再結晶して、表題化合物221.1gを得た。
融点146〜148℃。
【0138】
製造例4
syn-(4-アジド-シクロヘキシル)-カルバミン酸t-ブチルエステル
【0139】
【化11】

【0140】
ナトリウムアジド(25.5g, 0.39mol)を、製造例2で得たメシラート(100g, 0.34mol)の、N,N-ジメチルホルムアミド(500mL)中における溶液に添加し、反応物を徐々に80℃に加温し、この温度でさらに24時間撹拌した。冷却した反応物に氷/水(1 L)を徐々に添加し、生成した沈殿を濾別し、水で洗浄し、乾燥させた。この固体を酢酸エチル(200mL)に溶解し、溶液を水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で蒸発させた。残留固体をヘキサンから再結晶して、表題化合物を白色固体50.8gとして得た。
融点79〜81℃。
【0141】
製造例5
syn-4-アミノシクロヘキシルカルバミン酸t-ブチル
【0142】
【化12】

【0143】
カーボン上5%パラジウム(5g)をトルエン(10mL)と混合し、メタノール(400mL)中の製造例4で得た生成物(170g, 0.71mol)に添加した。混合物を室温で18時間水素化し(80気圧)、次いで濾過した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物を酢酸エチル(50mL)、次いでヘキサン(200mL)で摩砕処理した。生成した固体を濾過により単離し、酢酸エチル(600mL)に溶解し、セライト(Celite、登録商標)により濾過した。濾液を減圧濃縮するとスラッシュが得られ、これをヘキサン(300mL)で希釈した。生成した固体を濾過により単離し、ヘキサン中の酢酸エチル(20:80)で洗浄した。母液を合わせて減圧濃縮し、残留物をシリカゲル上、酢酸エチル、次いでメタノールを溶離剤として用いるクロマトグラフィーにより精製した。得られた物質を酢酸エチルおよびヘキサンから結晶化し、1回目の採集物と合わせて、表題化合物を白色固体76.0gとして得た。
融点88〜90℃。
【0144】
【化13】

【0145】
製造例6
syn-{4-[(2-クロロ-5-フルオロピリジン-3-カルボニル)アミノ]-シクロヘキシル}-カルバミン酸t-ブチルエステル
【0146】
【化14】

【0147】
オキサリルクロリド(8mL, 90mmol)を、製造例1で得た酸(10g, 57mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(5滴)の、ジクロロメタン(200mL)中における氷冷懸濁液に、10分間かけて添加した。次いで懸濁液を室温で3時間撹拌し、減圧濃縮した。残留物をジクロロメタンと共沸させると、中間体である酸クロリドが白色固体として得られた。この白色固体をジクロロメタン(200mL)に溶解し、溶液を氷浴で冷却し、次いでN-ジイソプロピルエチルアミン(20mL, 115mmol)および製造例5で得たアミン(13.4g, 62mmol)を添加した。反応混合物を18時間撹拌し、ジクロロメタン(100mL)で希釈し、順に10%クエン酸溶液、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(2回)、水、次いでブラインで洗浄した。有機溶液を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で蒸発させて、表題化合物を黄色泡状物20.2gとして得た。
【0148】
【化15】

【0149】
製造例7
1-フルオロ-4-メトキシ-2-メチルスルファニル-ベンゼン
【0150】
【化16】

【0151】
1,2-ジフルオロ-4-メトキシ-ベンゼン(100g, 0.69mmol)およびナトリウムメタンエチオラート(148g, 2.08mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(2mL)に溶解し、反応混合物を60℃で18時間撹拌した。さらにナトリウムメタンエチオラート(99g, 139mmol)を添加し、反応混合物を100℃に18時間加熱した。反応混合物を水で希釈し、エーテル(2回)で抽出した。エーテル抽出液を水(2回)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、次いで減圧濃縮した。残留物をペンタン:エーテル 1:1溶液(2mL)に溶解し、ピペット内のシリカプラグにより濾過し、次いでペンタン:エーテル 1:1溶液(5mL)で洗浄した。溶液を減圧濃縮して、表題生成物を無色の油135mgとして得た。
【0152】
【化17】

【0153】
製造例8
4-フルオロ-3-メチルスルファニル-フェノール
【0154】
【化18】

【0155】
三臭化ホウ素(2.5mL, 2.5mmol)を、製造例7で得たエーテル(118.3mg, 0.69mmol)の、ジクロロメタン(10mL)中における溶液に、0℃で窒素下に添加し、反応混合物を0℃で4時間撹拌した。次いで反応物を室温でさらに18時間撹拌した。反応混合物を炭酸ナトリウム溶液(10mL)で反応停止し、1時間撹拌した。混合物を2M塩酸で酸性にし、次いで層を分離し、有機層を減圧濃縮した。粗生成物をエーテル:ペンタン溶液1:1溶液(2mL)に溶解し、次いでピペット内のシリカプラグにより濾過した。残留物をさらにエーテル:ペンタン1:1溶液(5mL)で洗浄し、減圧濃縮して、表題生成物を黄色の油110mgとして得た。
【0156】
【化19】

【0157】
製造例9
5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル-フェノキシ)-ニコチン酸エチルエステル
【0158】
【化20】

【0159】
2-クロロ-5-フルオロ-ニコチン酸エチル(J. Med. Chem., 1993, 36(18), 2676-88, p.2684, 2欄, 第3化合物, 2-クロロ-5-フルオロピリジン-3-カルボン酸エチルに記載の方法に従って製造)および3-メチルスルファニル-フェノール(20g, 0.143mol)(WO 98/45268, p.68,製造61に記載の方法に従って製造)の、ジオキサン(300mL)中における溶液を、炭酸セシウム(46.5g, 0.143mol)により室温で処理した。反応混合物を100℃に加熱し、48時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残留物を水(600mL)に溶解し、酢酸エチル(3回, 250mL)で抽出した。有機層を合わせてブライン(200mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。残留物をシリカゲル上、ジクロロメタン:トルエン(99.75:0.25から99.5:0.5まで)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題生成物を黄色の油27.1gとして得た。
【0160】
【化21】

【0161】
製造例10
5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル-フェノキシ)-ニコチン酸
【0162】
【化22】

【0163】
製造例9のエステル(27.1g, 88.2mmol)をテトラヒドロフラン(300mL)に溶解し、この溶液を1M水酸化リチウム水溶液(220mL, 220mmol)で処理した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応物を減圧濃縮してテトラヒドロフランを除去し、水溶液を0℃に冷却した後、塩酸でpH 1の酸性にした。生成した桃色の沈殿を濾去し、氷水で洗浄した。固体をジクロロメタン(800mL)に溶解し、酸性ブライン溶液(200mL)で洗浄した。有機層を分離し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。残留物をトルエンで摩砕処理して、表題生成物を白色固体21.13g(90%)として得た。
【0164】
【化23】

【0165】
製造例11
syn-(4-{[5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル-フェノキシ)-ピリジン-3-カルボニル]-アミノ}-シクロヘキシル)-カルバミン酸t-ブチルエステル
【0166】
【化24】

【0167】
製造例10の酸(5g, 17.9mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(5滴)をジクロロメタン(100mL)に溶解し、反応混合物を0℃に冷却した。混合物をオキサリルクロリド(3.1mL, 35.8mmol)で15分間かけて滴加処理し、次いで室温で2時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残留物をジクロロメタン(100mL)に溶解した。この溶液を0℃に冷却し、トリエチルアミン(7.5mL, 54mmol)および製造例5のアミン(4.2g, 19.6mmol)で処理した。反応物を室温に高め、室温で48時間撹拌した。反応混合物をジクロロメタン(100mL)で希釈し、水(70mL)、10%クエン酸溶液(2回, 70mL)、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(2回, 70mL)および水(70mL)で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮して、表題生成物8.0gを得た。
【0168】
【化25】

【0169】
製造例12
syn-(4-{[5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル-フェノキシ)-ピリジン-3-カルボニル]-アミノ}-シクロヘキシル)-カルバミン酸t-ブチルエステル
【0170】
【化26】

【0171】
製造例6のクロロ化合物(6.4g, 17.2mmol)、製造例8のフェノール(3.0g, 19.0mmol)および炭酸セシウム(11.2g, 34.4mmol)をジオキサン(200mL)に溶解し、反応混合物を72時間還流した。反応混合物を室温に冷却し、減圧濃縮した。残留物を酢酸エチルおよび水に溶解し、層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせて乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。残留物をシリカゲル上、ジクロロメタン:メタノール(99.5:0.5から98:2まで)で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題生成物を淡黄色泡状物6.31gとして得た。
【0172】
【化27】

【0173】
製造例13
syn-N-(4-アミノ-シクロヘキシル)-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル-フェノキシ)-ニコチンアミド塩酸塩
【0174】
【化28】

【0175】
製造例11の保護されたアミン(8.0g, 16.8mmol)をジオキサン(50mL)に溶解し、この溶液をジオキサン(25mL)中の4M塩酸溶液で処理した。反応混合物を室温で5時間撹拌した後、減圧濃縮し、酢酸エチルおよびジクロロメタンと共沸させて、表題生成物5.0gを得た。
【0176】
【化29】

【0177】
製造例14
syn-N-(4-アミノ-シクロヘキシル)-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル-フェノキシ)-ニコチンアミド塩酸塩
【0178】
【化30】

【0179】
製造例12の保護されたアミン(6.31g, 12.8mmol)をジクロロメタン(100mL)に溶解し、この溶液を0℃に冷却した。塩化水素ガスを溶液に1時間吹き込み、混合物をさらに1時間撹拌した。塩化水素ガスを再び反応物に1時間吹き込み、反応混合物を室温で48時間撹拌した。反応物を減圧濃縮し、残留物を酢酸エチルで摩砕処理して、表題生成物を淡桃色固体4.70gとして得た。
【0180】
【化31】

【0181】
製造例15
5-メトキシ-ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール-4-スルホニルクロリド
【0182】
【化32】

【0183】
5-メトキシ-ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール(500mg, 3mmol)を少量ずつ10分間かけて氷冷クロロスルホン酸(1.0mL)に添加し、添加が終了した時点で反応物を100℃に1時間加熱した。冷却した溶液を氷-水(15mL)に注入し、生成した沈殿を濾別し、乾燥させて、表題化合物をベージュ色固体535mgとして得た。
【0184】
【化33】

【0185】
製造例16
syn-5-フルオロ-N-[4-(5-メトキシ-ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-2-(3-メチルスルファニル-フェノキシ)-ニコチンアミド
【0186】
【化34】

【0187】
製造例13で得たアミン(200mg, 0.49mmol)、製造例15で得たスルホニルクロリド(193mg, 0.73mmol)およびトリエチルアミン(0.2mL, 1.4mmol)の、ジクロロメタン(10mL)中における混合物を、室温で24時間撹拌した。反応物を10%クエン酸溶液で希釈し、層を分離し、有機相を減圧濃縮した。残留油を酢酸イソプロピル/ジクロロメタンから結晶化し、乾燥させて、表題化合物をベージュ色固体254mgとして得た。
【0188】
【化35】

【0189】
製造例17
syn-5-フルオロ-2-(4-フルオロ-3-メチルスルファニル-フェノキシ)-N-[4-(2-メトキシ-5-メチル-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-ニコチンアミド
【0190】
【化36】

【0191】
製造例14で得たアミンおよび2-メトキシ-5-メチルベンゼンスルホニルクロリドから、製造例16に記載の方法に従って、ただし生成物をメタノールから結晶化して、表題化合物を白色固体として74%の収率で得た。
【0192】
【化37】

【0193】
製造例18
syn-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル-フェノキシ)-N-[4-(2-メトキシ-4-メチル-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-ニコチンアミド
【0194】
【化38】

【0195】
製造例13で得たアミン(200mg, 0.49mmol)、トリエチルアミン(0.34mL, 2.4mmol)および6-メトキシ-m-トルエンスルホニルクロリド(139mg, 0.63mmol)の、ジクロロメタン(10mL)中における溶液を、3時間、還流撹拌し、室温でさらに72時間撹拌した。反応物を水で洗浄し、有機溶液を減圧下で蒸発させた。残留物をメタノールから結晶化して、表題化合物を白色固体222mgとして得た。
【0196】
【化39】

【0197】
実施例1〜9
【0198】
【化40】

【0199】
製造例13で得たアミン(691mg, 1.68mmol)およびトリエチルアミン(339mg, 3.36 mmol)の、ジクロロメタン(14mL)中における溶液を調製した。この溶液250μLを適宜なスルホニルクロリド(30μmol)に添加し、反応物を室温で48時間振とうした。反応物を水(250μL)で洗浄し、混合物を疎水性フィルターにより濾過し、追加のジクロロメタン(250μL)で十分に洗浄した。有機溶液を減圧下で蒸発させ、残留物を逆相HPLCにより精製した:Phenomenex Luna C18(15010mm, 10μm)カラム、流速8 mL min-1、225nmで検出、下記に示す勾配溶離を使用:
【0200】
【表2】

【0201】
【表3】

【0202】
実施例10
syn-N-[4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル-フェノキシ)-ニコチンアミド
【0203】
【化41】

【0204】
製造例13で得たアミン(150mg, 0.36mmol)、3,5-ジメチル-ピラゾール-4-スルホニルクロリド(J. Het. Chem. 1981, 18(5), 997-1006, p.997-998および表1に3,5-ジメチル-ピラゾールからの化合物III(a)の製造について詳述された方法に従って製造)(106 mg, 0.55mmol)およびトリエチルアミン(0.15mL, 1.1mmol)の、ジクロロメタン(10mL)中における混合物を、18時間、還流撹拌した。さらにスルホニルクロリド(70mg, 0.36 mmol)およびトリエチルアミン(1 mL)を添加し、反応物をさらに24時間、還流撹拌した。冷却した混合物を10%クエン酸溶液で洗浄し、層を分離し、有機相を減圧下で蒸発させた。粗生成物をシリカゲル上、ジクロロメタン:メタノール(98:2)を溶離剤として用いるカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物を酢酸エチルから再結晶して、表題化合物を白色結晶質固体121mgとして得た。
【0205】
【化42】

【0206】
実施例11
syn-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル-フェノキシ)-N-[4-(キノリン-8-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-ニコチンアミド
【0207】
【化43】

【0208】
製造例13で得たアミンおよびキノリン-8-スルホニルクロリドから、実施例10に記載したものと同様な方法に従い、酢酸イソプロピルから結晶化した後、表題化合物を白色結晶質固体として得た。
【0209】
【化44】

【0210】
実施例12
syn-N-[4-(ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル-フェノキシ)-ニコチンアミド
【0211】
【化45】

【0212】
製造例13で得たアミンおよびベンゾフラザン-4-スルホニルクロリドから、実施例10に記載したものと同様な方法に従い、酢酸イソプロピルから結晶化した後、表題化合物を白色結晶質固体として得た。
【0213】
【化46】

【0214】
実施例13
syn-N-[4-(ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル-フェノキシ)-ニコチンアミド
【0215】
【化47】

【0216】
製造例13で得たアミン(150mg, 0.36mmol)、ベンゾ-2,1,3-チアジアゾール-4-スルホニルクロリド(128mg, 0.55mmol)およびトリエチルアミン(0.15mL, 1.1mmol)の、ジクロロメタン(10mL)中における混合物を、18時間、還流撹拌した。冷却した混合物を10%クエン酸溶液で洗浄し、層を分離し、有機相を減圧下で蒸発させた。粗生成物をシリカゲル上、ジクロロメタン:メタノール(98:2)を溶離剤として用いるカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物を酢酸エチルから再結晶して、表題化合物を黄色結晶質固体194mgとして得た。
【0217】
【化48】

【0218】
実施例14
syn-N-[5-ヒドロキシ-4-(ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル-フェノキシ)-ニコチンアミド
【0219】
【化49】

【0220】
製造例16で得たエーテル(94mg, 0.15mmol)の、臭化水素酸(酢酸中)(30%, 2mL)中における溶液を、100℃で7時間撹拌した。冷却した反応物を水とジクロロメタンの間で分配し、層を分離し、有機層を減圧下で蒸発させた。残留油を、Luna C8(II) 10μmカラムおよびアセトニトリル:0.1%トリフルオロ酢酸水溶液(50:50から100:0まで)を溶離剤として用いるHPLCにより精製した。生成物をジクロロメタン:ジイソプロピルエーテルから結晶化して、表題化合物を黄色固体26mgとして得た。
【0221】
【化50】

【0222】
実施例15
syn-5-フルオロ-N-[4-(2-ヒドロキシ-4-メチル-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-2-(3-メチルスルファニル-フェノキシ)-ニコチンアミド
【0223】
【化51】

【0224】
三臭化ホウ素(1.29mL, ジクロロメタン中1M, 1.29mmol)を、製造例18で得たエーテル(180mg, 0.32mmol)の、ジクロロメタン(10mL)中における氷冷溶液に添加し、反応物を2時間撹拌した。炭酸ナトリウム溶液(10mL)を添加し、混合物を室温で1時間、すべての固体が溶解するまで撹拌した。混合物を2M塩酸で酸性にし、フィルターカートリッジで濾過することにより層を分離した。有機層を減圧濃縮し、残留物をシリカゲル上、ジクロロメタン:メタノール(98:2)を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物をジイソプロピルエーテルで摩砕処理して、表題化合物を白色泡状物127mgとして得た。
【0225】
【化52】

【0226】
実施例16
syn-5-フルオロ-N-[4-(2-ヒドロキシ-5-メチル-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-2-(4-フルオロ-3-メチルスルファニル-フェノキシ)-ニコチンアミド
【0227】
【化53】

【0228】
製造例17で得たエーテルから、実施例15に記載したものと同様な方法に従い、酢酸イソプロピルから結晶化した後、表題化合物を灰白色固体として得た。この場合、生成物をクロマトグラフィーによる精製ではなく、酢酸イソプロピルからの結晶化により精製した。
【0229】
【化54】

【0230】
ニコチンアミド誘導体のインビトロ活性
式(I)のニコチンアミド誘導体のPDE4阻害活性は、化合物がPDE4によるcAMPからAMPへの加水分解を阻害する能力により判定される(参考文献1も参照)。トリチウム標識cAMPをPDE4と共にインキュベートする。インキュベーションの後、生成した放射性標識AMPはケイ酸イットリウムSPAビーズを結合することができる。次いでこれらのSPAビーズは発光し、これをシンチレーション計数により定量できる。PDE4阻害薬を添加すると、cAMPからのAMP形成が阻止され、計数が減少する。PDE4阻害薬のIC50は、PDE4単独(阻害薬なし)対照ウェルと比較して計数を50%低下させる化合物濃度と定義できる。
【0231】
式(I)のニコチンアミド誘導体の抗炎症性は、それらがヒト末梢血単核細胞からのTNFα放出を阻害する能力により判定される(参考文献2も参照)。健康なボランティアから静脈血を採集し、Histopaque(Ficoll)クッションによる遠心分離により単核細胞を精製する。これらの細胞からのTNFα産生は、リポ多糖類の添加によって刺激される。LPSの存在下で18時間インキュベートした後、細胞上清を取り出し、上清のTNFα濃度をELISAにより測定する。PDE4阻害薬を添加すると、TNFα産生量が減少する。LPS刺激した対照ウェルと比較してTNFα産生を50%阻害する化合物濃度と等しいIC50を判定する。
【0232】
すべての実施例を前記のアッセイ法で試験して、20nM未満のIC50(TNFαスクリーニング)をもつことが立証された。試験した大部分の化合物について、10nM未満のIC50(TNFαスクリーニング)をもつことすら認められた。
【0233】
説明のために、次表は5nM未満のIC50(TNFαスクリーニング)をもつ本発明の若干の代表例の厳密なIC50(TNFαスクリーニング)を示す。
【0234】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

ならびにその医薬的に許容できる塩類、溶媒和物、多形、およびプロドラッグ
[式中:
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、ハロ、および(C1-C3)アルキルよりなる群から選択され;
R3は、下記のものから選択されるヘテロアリールであり:窒素、酸素および硫黄ならびにその混合物から選択される1〜3個のヘテロ原子を含む9-員もしくは10-員二環式ヘテロアリール;フェニル環;または1〜3個の窒素原子を含む5-員もしくは6-員ヘテロアリール;その際、R3のヘテロアリールはそれぞれ独立して、OH、CN、ハロ、(C1-C4)アルキル、ヒドロキシ(C1-C4)アルキル、ハロ(C1-C4)アルキル、(C1-C4)アルコキシおよびヒドロキシ(C2-C4)アルコキシから選択される1個以上の基により置換されていてもよい]。
【請求項2】
R1がH、F、Clまたはメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1がFである、前記請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項4】
R2がHまたはFである、前記請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R2がHである、前記請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
R3が、窒素、酸素および硫黄ならびにその混合物から選択される1〜3個のヘテロ原子を含むC-結合した9-員または10-員二環式ヘテロアリールである、前記請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R3が、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、イミダゾピリジン、ピロロピリダジン、ピロロピリジン、ベンゾトリアゾール、ピラゾロピリジン、イミダゾピリジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、ナフチリジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾールおよびベンゾオキサジアゾールよりなる群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
R3が、キノリン、2,1,3-ベンゾチアジアゾールおよび2,1,3-ベンゾオキサジアゾールよりなる群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
R3の二環式ヘテロアリールが、OH、メチル、エチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシエトキシ、FおよびClから選択される1個以上の基により置換されていてもよい、前記請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
R3の二環式ヘテロアリールが、OH基により置換されていてもよい、前記請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
R3が、OH、メチル、エチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシエトキシ、FおよびClから選択される1個以上の置換基により置換されていてもよいフェニル基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
R3が、OH、メチル、F、CNおよびCF3から選択される1個以上の置換基により置換されていてもよいフェニル基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
R3が、置換されていてもよい、2または3個の窒素原子を含むC-結合した5-員ヘテロアリールである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
R3がピラゾールおよびイミダゾールから選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
R3が、(C1-C3)アルキルおよび(C1-C3)アルコキシから選択される1個以上の基により置換されていてもよい、2個の窒素原子を含むC-結合した5-員ヘテロアリールである、請求項13または14に記載の化合物。
【請求項16】
R3が、1個以上のメチル基により置換されていてもよい、2個の窒素原子を含むC-結合した5-員ヘテロアリールである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
下記よりなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物:
Syn-N-(4-ベンゼンスルホニルアミノ-シクロヘキシル)-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-N-[4-(3-フルオロ-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-N-[4-(4-フルオロ-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-N-[4-(トルエン-3-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-2-(4-メチルスルファニル−フェノキシ)-N-[4-(トルエン-3-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-ニコチンアミド;
Syn-N-[4-(3-シアノ-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-N-[4-(2-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-N-[4-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-N-[4-(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-N-[4-(キノリン-8-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-ニコチンアミド;
Syn-N-[4-(ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-N-[4-(ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-N-[5-ヒドロキシ-4-(ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
Syn-5-フルオロ-N-[4-(2-ヒドロキシ-4-メチル-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;または
Syn-5-フルオロ-N-[4-(2-ヒドロキシ-5-メチル-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-2-(4-フルオロ-3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
ならびにその医薬的に許容できる塩類、溶媒和物、多形、およびプロドラッグ。
【請求項18】
下記よりなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物:
Syn-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-N-[4-(キノリン-8-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-ニコチンアミド;
Syn-N-[4-(ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール-4-スルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-5-フルオロ-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;および
Syn-5-フルオロ-N-[4-(2-ヒドロキシ-4-メチル-ベンゼンスルホニルアミノ)-シクロヘキシル]-2-(3-メチルスルファニル−フェノキシ)-ニコチンアミド;
ならびにその医薬的に許容できる塩類、溶媒和物、多形、およびプロドラッグ。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の式(I)のニコチンアミド誘導体またはその医薬的に許容できる塩もしくは溶媒和物を、医薬的に許容できる賦形剤、希釈剤またはキャリヤーと一緒に含む、医薬組成物。
【請求項20】
医薬として使用するための、請求項1〜18のいずれか1項に記載の式(I)のニコチンアミド誘導体またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくは組成物。
【請求項21】
PDE4アイソザイムが関係する疾患、障害および状態の処置に使用するための、請求項1〜18のいずれか1項に記載の式(I)のニコチンアミド誘導体またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくは組成物。
【請求項22】
炎症性、呼吸器系およびアレルギー性の疾患、障害および状態の処置ならびに創傷の治療に使用するための、請求項1〜18のいずれか1項に記載の式(I)のニコチンアミド誘導体またはその医薬的に許容できる塩、誘導体形もしくは組成物。
【請求項23】
下記の処置に使用するための、請求項1〜18のいずれか1項に記載の式(I)のニコチンアミド誘導体またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくは組成物:
・あらゆるタイプ、病因または病原の喘息、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである喘息:アトピー性喘息、非アトピー性喘息、アレルギー性喘息、アトピー性IgE仲介気管支喘息、気管支喘息、本態性喘息、真性喘息、病態生理障害により起きる内因性喘息、環境因子により起きる外因性喘息、原因未知または原因不明の本態性喘息、非アトピー性喘息、気管支炎性喘息、肺気腫性喘息、運動誘発喘息、アレルゲン誘発喘息、冷気誘発喘息、職業性喘息、細菌、真菌、原虫またはウイルスの感染により起きる感染性喘息、非アレルギー性喘息、初発喘息および喘鳴乳児症候群;
・慢性または急性の気管支収縮、慢性気管支炎、末梢気道閉塞および気腫、
・あらゆるタイプ、病因または病原の閉塞性または炎症性の気道疾患、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである閉塞性または炎症性の気道疾患:慢性好酸球性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関連の慢性気管支炎、肺気腫または呼吸困難を含むCOPD、回復不能な進行性気道閉塞を特色とするCOPD、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、および他の薬物療法による気道反応亢進の増悪;
・あらゆるタイプ、病因または病原の塵肺症、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである間質型塵肺:アルミニウム症またはボーキサイト工病、炭粉症または坑夫喘息、石綿症または蒸気管取付け工喘息、石粉症またはフリント病、ダチョウの羽毛塵を吸入することにより起きる睫毛脱落症、鉄粒子の吸入により起きる鉄症、珪粉症または粉砕工症、綿繊維症または木綿塵喘息、および滑石塵肺症;
・あらゆるタイプ、病因または病原の気管支炎、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである気管支炎:急性気管支炎、急性喉頭気管支炎、アラキジン気管支炎、カタル性気管支炎、クループ性気管支炎、乾性気管支炎、感染性喘息性気管支炎、増殖性気管支炎、ブドウ球菌性または連鎖球菌性気管支炎、および小胞性気管支炎;
・あらゆるタイプ、病因または病原の気管支拡張症、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである気管支拡張症:円柱状気管支拡張症、嚢状気管支拡張症、紡錘状気管支拡張症、細気管支拡張症、嚢胞状気管支拡張症、乾性気管支拡張症および濾胞状気管支拡張症;
・季節性アレルギー性鼻炎もしくは通年性アレルギー性鼻炎、またはあらゆるタイプ、病因または病原の副鼻腔炎、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである副鼻腔炎:化膿性または非化膿性の副鼻腔炎、急性または慢性の副鼻腔炎、および篩骨洞炎、前頭洞炎、上顎洞炎または蝶形骨洞炎;
・あらゆるタイプ、病因または病原のリウマチ性関節炎、特に下記よりなる群から選択されるメンバーであるリウマチ性関節炎:急性関節炎、急性通風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎および椎骨関節炎;
・炎症に関連する通風および発熱および痛み;
・あらゆるタイプ、病因または病原の好酸球関連障害、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである好酸球関連障害:好酸球増加症、肺浸潤性好酸球増加症、レフレル症候群、慢性好酸球性肺炎、局所性肺好酸球増加症、気管支肺炎性アスペルギルス症、アスペルギルス腫、好酸球を含む肉芽腫、アレルギー性肉芽腫性血管炎またはチャーグ-ストラウス症候群、結節性多発動脈炎(PAN)および全身性壊死性血管炎;
・アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、接触皮膚炎、またはアレルギー性もしくはアトピー性湿疹;
・あらゆるタイプ、病因または病原のじんま疹、特に下記よりなる群から選択されるメンバーであるじんま疹:免疫仲介じんま疹、補体仲介じんま疹、じんま疹誘発物質により誘発されるじんま疹、物理的要因により誘発されるじんま疹、ストレス誘発じんま疹、特発性じんま疹、急性じんま疹、慢性じんま疹、血管浮腫、コリン性じんま疹、常染色体優性型または後天性の寒冷じんま疹、接触じんま疹、巨大じんま疹および丘疹状じんま疹;
・あらゆるタイプ、病因または病原の結膜炎、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである結膜炎:照射性結膜炎、急性カタル性結膜炎、急性接触感染性結膜炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性結膜炎、慢性カタル性結膜炎、化膿性結膜炎および春季結膜炎;
・あらゆるタイプ、病因または病原のブドウ膜炎、特に下記よりなる群から選択されるメンバーであるブドウ膜炎:ブドウ膜全体または一部の炎症、前部ブドウ膜炎、虹彩炎、毛様体炎、虹彩毛様体炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、脈絡膜炎および脈絡網膜炎;
・乾癬;
・あらゆるタイプ、病因または病原の多発硬化症、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである多発硬化症:原発性進行性多発硬化症および再発性寛解性多発硬化症;
・あらゆるタイプ、病因または病原の自己免疫性/炎症性疾患、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである自己免疫性/炎症性疾患:自己免疫性血液障害、溶血性貧血、再生不良性貧血、真正赤血球性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、全身性紅斑性狼瘡、胆汁過多症、強皮症、ヴェグナー肉芽腫症、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、スティーヴェンズ-ジョンソン症候群、特発性熱帯性下痢、自己免疫炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、内分泌性眼障害、グレーブス病、類肉腫症、肺胞炎、慢性過敏性間質性肺炎、原発性胆汁性肝硬変、若年型糖尿病またはI型糖尿病、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、広汎性間質性肺線維症または間質性肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、ネフローゼ症候群を伴うまたは伴わない腎炎、急性腎炎、特発性ネフローゼ症候群、微小病変腎障害、炎症性/増殖亢進性皮膚疾患、良性家族性天疱瘡、紅斑性天疱瘡、落葉状天疱瘡および尋常性天疱瘡;
・臓器移植に伴う同種移植片拒絶の防止;
・あらゆるタイプ、病因または病原の炎症性腸疾患(IBD)、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである炎症性腸疾患:膠原性大腸炎、ポリープ性大腸炎、貫壁性大腸炎、潰瘍性大腸炎およびクローン病(CD);
・あらゆるタイプ、病因または病原の敗血症性ショック、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである敗血症性ショック:腎不全、急性腎不全、悪液質、マラリア性悪液質、下垂体性悪液質、尿毒症性悪液質、心臓悪液質、副腎悪液質またはアディソン病、癌性悪液質、およびヒト免疫不全ウィルス(HIV)感染の結果としての悪液質;
・肝傷害;
・あらゆるタイプ、病因または病原の肺高血圧症:原発性肺高血圧症/本態性高血圧症、うっ血性心不全の続発性肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患の続発性高血圧症、肺静脈高血圧症、肺動脈高血圧症および低酸素誘発肺高血圧症を含む;
・骨損失疾患、原発性骨粗鬆症および続発性骨粗鬆症;
・あらゆるタイプ、病因または病原の中枢神経系障害、特に下記よりなる群から選択されるメンバーである中枢神経系障害:うつ病、アルツハイマー病、パーキンソン病、学習障害および記憶障害、遅発性ジスキネジー、薬物依存、動脈硬化性認知症およびハンチントン舞踏病を伴う認知症、ウィルソン病、振戦麻痺および視床萎縮;
・感染症、特にウイルス性の感染症であって、ウイルスがそれらの宿主におけるTNF-αの産生を高め、またはウイルスがそれらの宿主におけるTNF-αのアップレギュレーションに感受性であるため、それらの複製その他の生命活動が有害な作用を受ける感染症;HIV-1、HIV-2およびHIV-3、サイトメガロウイルス(CMV)、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、ならびに帯状ヘルペスおよび単純ヘルペスを含むヘルペスウイルスよりなる群から選択されるメンバーであるウイルスの感染症を含む;
・酵母および真菌感染症であって、酵母および真菌がそれらの宿主におけるTNF-αによるアップレギュレーションに感受性であるか、またはTNF-α産生の引き金を引くもの、たとえば真菌性髄膜炎、特に全身性の酵母および真菌感染症の処置のために選択される下記を含めた他の薬物と組合わせ投与した場合:ポリミキシン類、たとえばポリミキシンB、イミダゾール類、たとえばクロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾールおよびケトコナゾール、トリアゾール類、たとえばフルコナゾールおよびイトラナゾール、ならびにアンホテリシン類、たとえばアンホテリシンBおよびリポソーム型アンホテリシンB;
・虚血-再潅流傷害、虚血性心疾患、自己免疫性糖尿病、腎性自己免疫病、慢性リンパ球性白血病、HIV感染症、紅斑性狼蒼、腎および尿管の疾患、尿生殖器および消化器の障害、ならびに前立腺疾患;
・人体または動物体における瘢痕組織形成、たとえば急性創傷の治癒に際しての、瘢痕組織形成の軽減;ならびに
・乾癬その他の皮膚病および美粧における用途:消炎、皮膚軟化、皮膚の柔軟性および水分を高める行動を含む。
【請求項24】
PDE4阻害活性を有する薬剤の調製のための、請求項1〜18のいずれか1項に記載の式(I)のニコチンアミド誘導体またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくは組成物の使用。
【請求項25】
炎症性、呼吸器系およびアレルギー性の疾患、障害および状態の処置ならびに創傷の治療に有用な薬剤の調製のための、請求項1〜18のいずれか1項に記載の式(I)のニコチンアミド誘導体またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくは組成物の使用。
【請求項26】
請求項23に記載の群から選択される疾患、障害および状態の処置に用いる薬剤の調製のための、請求項1〜18のいずれか1項に記載の式(I)のニコチンアミド誘導体またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくは組成物の使用。
【請求項27】
PDE4阻害薬によりヒトを含めた哺乳動物を処置する方法であって、該哺乳動物に有効量の請求項1〜18のいずれか1項に記載の式(I)のニコチンアミド誘導体またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくは組成物を投与することを含む方法。
【請求項28】
処置する疾患、障害または状態が請求項23に記載の群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の式(I)のニコチンアミド誘導体またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくは組成物と、下記のものから選択される他の療法薬の組合わせ:
(a)5-リポキシゲナーゼ(5-LO)阻害薬または5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)アンタゴニスト、
(b)ロイコトリエンアンタゴニスト(LTRA):LTB4、LTC4、LTD4およびLTE4のアンタゴニストを含む、
(c)ヒスタミン受容体アンタゴニスト:H1、H3およびH4アンタゴニストを含む、
(d)うっ血除去用のα1-およびα2-アドレナリン受容体アゴニスト系の血管収縮性交感神経様作動薬、
(e)ムスカリンM3受容体アンタゴニストまたは抗コリン作動薬、
(f)β2-アドレナリン受容体アゴニスト、
(g)テオフィリン、
(h)クロモグリク酸ナトリウム、
(i)COX-1阻害薬(NSAID)およびCOX-2選択的阻害薬、
(j)経口または吸入グルココルチコステロイド、
(k)内因性炎症性物質に対して有効なモノクローナル抗体、
(l)抗腫瘍壊死因子(抗-TNF-α)薬、
(m)接着分子阻害薬:VLA-4アンタゴニストを含む、
(n)キニン-B1-およびB2-受容体アンタゴニスト、
(o)免疫抑制薬、
(p)マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の阻害薬、
(q)タキキニンNK1、NK2およびNK3受容体アンタゴニスト、
(r)エラスターゼ阻害薬、
(s)アデノシンA2a受容体アゴニスト、
(t)ウロキナーゼの阻害薬、
(u)ドーパミン受容体に作用する化合物、たとえばD2アゴニスト、
(v)NFkb経路の調節薬、たとえばIKK阻害薬、
(w)粘膜溶解薬または鎮咳薬として分類できる薬物、
(x)抗生物質、ならびに
(y)p38 MAPキナーゼ阻害薬。

【公表番号】特表2006−528656(P2006−528656A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521681(P2006−521681)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002353
【国際公開番号】WO2005/009964
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】