説明

PDE5の結晶、その結晶構造及び創薬におけるその使用

本発明は、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)のソーキング可能な結晶及び、PDE5リガンド及び阻害物質化合物を含むPDE5リガンドの同定におけるその使用に関する。本発明は同様に、かかるPDE5阻害物質化合物の同定方法及びその医学的使用にも関する。本発明はさらに、中にリガンドをソーキングできるPDE5の結晶及び結晶内にソーキングされたPDE5リガンドを含むPDE5、10の結晶にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ホスホジエステラーゼ(PDE5)及びPDE5のリガンド複合体の結晶構造、及びPDE5阻害物質化合物を含むPDE5リガンドの同定におけるその使用に関する。本発明は同様に、かかるPDE5阻害物質化合物の同定方法及びその医学的使用にも関する。本発明はさらに、リガンドを中にソーキングできるPDE5の結晶及び結晶内にソーキングされたリガンドを含むPDE5の結晶に関する。同様に本発明により考慮されているのは、PDE5阻害物質化合物を含むPDE5のリガンドの同定におけるリガンドを中にソーキングさせ得るPDE5の結晶の使用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
心筋収縮、血流調節、神経伝達、腺分泌、細胞分化及び遺伝子発現を含む多種多様な生物学的プロセスが、環状ヌクレオチドの生物学的な第2のメッセンジャcAMP及びcGMPの定常状態レベルにより影響を受ける。これらの分子の細胞内レセプタには、環状ヌクレオチド依存性タンパク質キナーゼ(PGK)(Lohmann et al., 1997)、環状ヌクレオチドゲート付きチャンネル及びクラスIホスホジエステラーゼ(PDE)(Charbonneau1990)が含まれる。PDEは、Sutherland及びその共同研究者により最初に報告された(Rall & Sutherland 1958,Butcher & Sutherland 1962)大きなタンパク質ファミリである。環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼのファミリは、対応する5’モノホスファートへの3’,5’−環状ヌクレオチドの加水分解の触媒として作用する。最新の文献では、関連したものであるが生化学的には全く異なる11のヒトホスホジエステラーゼ遺伝子群が存在すること、及びこれらの群の多くが複数の遺伝子亜型を含み、合計20の遺伝子を提供していること、が示されている。一部のPDEは、cAMPの加水分解に対しきわめて高い特異性を有し(PDE4、PDE7、PDE8)、一部はcGMPに対する高い特異性を有し(PDE5、PDE6、PDE9)、一部は混合した特異性を有する(PDE1、PDE2、PDE3、PDE10、PDE11)。
【0003】
全てのPDEはマルチドメインタンパク質であり、各PDEは、ファミリ間で高度のアミノ酸配列保存をもつC末端に向かって位置設定された最高270のアミノ酸ドメインを有する(Charbonneau 1986)。このドメインは、広範に研究されてきており、共通の触媒機能を担当することが示されてきた(Francis, S.H et al.,1994)。タンパク質の残りのものの中の非相同セグメントは、調節機能を有し、そうでなければ特異的結合特性を付与する。PDE2、PDE5、PDE6及びPDE10は全て、その調節アミノ末端部分の内部に推定上のGAFドメインを含有することが報告されている(Aravind & Ponting 1997及びSoderling & Beavo 2000)。これらのGAFドメインは、cGMPに結合することが示されてきているが、それらの機能はなお充分に理解されていない。これまでに特徴づけされてきた全長哺乳動物 PDEは、溶解状態で2量体であるが、2量体構造の関連性はわかっていない。cGMPに結合したPDE2Aの調節セグメントは最近解明されており、cGMPが各単量体上の2つのGAFドメインのうちの1つにのみ結合している状態で4つのGAFドメインの平行2量体を明らかにしている(Martinez et al. 2001)。
【0004】
cGMP特異的PDEであるPDE5が、近年重要な治療標的として認識されてきている。それは、cGMPの分割の触媒として作用する保存されたC末端、亜鉛含有触媒ドメイン、及び2つのGAFドメイン反復を含有するN末端調節部分で構成されている。各々のGAFドメインは、1つは高親和性でもう1つは比較的低い親和性をもつcGMP結合部位を含有する。PDE5活性は、高及び低親和性のcGMP結合部位に対するcGMPの結合とそれに続く、両方の部位が占有されている場合にのみ起こるリン酸化を通して調節される(Thomas et al. 1990)。PDE5は、血小板、血管及び内臓の平滑筋及び骨格筋を含む数多くの組織の中で変動する濃度で見い出される。タンパク質は、勃起性海綿体組織の平滑筋の中のcGMPレベルの重要なレギュレータである。勃起の生理学的メカニズムには、性的刺激の間の海綿体内の一酸化窒素(NO)の放出が関与している。このときNOは、酵素グアニル酸シクラーゼを活性化し、これがcGMPのレベルを増加させ、海綿体内の平滑筋の弛緩を生成し、血液の流入を可能にする。PDE5の阻害は、cGMPの分解を阻害し、cGMPのレベルひいては平滑筋弛緩を維持できるようにする(Corbin & Francis 1999)。Viagra(登録商標)の活性成分でありPDE5の強力な阻害物質であるSildenafil(UK−092,480)は、男性の勃起不全の有効な治療のため広く注意をひいてきた。cAMP特異的PDEであるPDE4bの触媒ドメインについての構造情報が近年示されてきた(Xu et al.2000)。この構造はPDEファミリの触媒ドメインの全体的折畳みについての情報を提供するが、これまでのところ、潜在的阻害物質の酵素に対する結合の仕方については、いかなる構造的情報も示されていない。
【0005】
Sildenafilとの複合体中の触媒ドメインを含む組換え型PDE5のX線構造は、決定されている(本書に援用する先の関連特許出願第PCT/IB02/004426号;例9「Sildenafilを用いた野生型PDE5触媒ドメインの結晶化」、44頁29行目〜45頁17行目;例13「Sildenafilを用いた野生型PDE5のデータ収集、構造決定及び精製」、48頁1行目〜49頁9行目;表4、91頁〜248頁を参照のこと)。リガンド複合物の結晶の産生のための改善された品質を示すこのPDE5の工学処理された一形態であるPDE5*も同じく産生されてきており、かかる複合体の構造は決定されている(本書に援用する、出願番号PCT/IB02/04426;例11、「Sildenafilを用いたPDE5*の結晶化」46頁8行目〜25行目;例15「Sildenafilを用いたPDE5*のデータ収集、構造決定及び精密化」50頁、9行目〜51頁6行目;及び表6「Sildenafilを用いたバキュロウイルス発現されたPDE5*複合体についての原子座標」、328頁〜408頁を参照のこと)。これらの複合体は、この新規のタンパク質ファミリについての重要な構造的情報を提供するのみならず、PDEが1つの役割を果たしている数多くの疾病を治療するべくPDEのより強力で特異的な阻害物質の設計をも援助することができる。
【0006】
分子解像度レベルそして好ましくは原子解像度での特異的リガンド相互作用の詳細を得るために、そのリガンドとの複合体の形で生物学的高分子の結晶を得ることができることが望ましい。これは、高分子のさらなる、そして場合によっては改善されたリガンドをそれに基づいて設計しその後さらなる結晶化ラウンド内でテストし得る情報を提供する上で非常に重要な段階を不変的に形成している。従って、高分子の複合体を得るこのプロセスが高速で再現可能であり、かつ各々の潜在的複合体について新しい結晶化条件をつねに見い出すか又は各々の潜在的複合体構造の解明のための複雑で時間集約的な構造ソリューション方法を使用する必要性を最小限におさえるものであることが最も望ましい。この目的で、問題の高分子の最も好ましい結晶形態は、アポ高分子の予め形成された結晶中にソーキングされた潜在的リガンドを有する確率の高い形態である。このことは、従来産生されてきた共結晶に比べ全く異なる利点を有する。特に、各々の潜在的複合体のために新しい結晶条件を発見する必要性が全く無い。
【0007】
各々の新しいリガンド複合体についての細胞寸法及び格子対称性は、アポ高分子に関して実質的に同じとなり、従って、アポ及び全複合体結晶についてのデータ収集パラメータは基本的に同一となる。このとき構造ソリューションは、高速差フーリエ法を用いて行なうことができ、かくして、より込み入った時間及び労働集約的位相決定方法が避けられる。従って、高分子のソーキング可能な結晶は、新しい高分子−リガンド複合体の特に高速のスクリーニング及び構造決定を可能にする。
【0008】
PDE5の工学処理された形態であるPDE5*は、リガンド複合体のソーキング可能な結晶の産生を可能にし、このようなソーキングされたPDE5*−リガンド複合体の構造は決定されている。
【発明の開示】
【0009】
発明の要約
PDE5は結晶化可能であることがわかっている。同様に、野生型PDE5アミノ酸配列を操作することによってPDE5の結晶化を容易にできるということも発見されてきた。特定的に言うと、PDE5アミノ酸配列の或る部分の操作によりPDE5の結晶化が容易になることが発見された。さらに特定的には、PDE5のアミノ酸配列の特定の操作は、結晶ソーキングプロセスにより潜在的PDE5リガンドを中に導入できるPDE5のソーキング可能な結晶形態を提供することができる、ということが示されてきた。野生型PDE5アミノ酸の操作の結果、配列修飾済みPDE5タンパク質が結果として得られる。
【0010】
PDE5の触媒ドメイン特にPDE5の657−682領域(「ループ領域」)の操作によってPDE5の結晶化を容易にし、特にPDE5のソーキング可能な結晶を提供することができるということが示されてきた。さらに特定的に言うと、PDE5のループ領域アミノ酸配列(HRGVNNSYIQRSEHPLAQLYCHSIME=配列番号1)の操作により、PDE5の結晶化を容易にし、PDE5のソーキング可能な結晶を提供することが可能である。この操作は、PDE5ループ領域の単数又は複数のアミノ酸残基の欠失、付加又は置換によって達成でき、そうでなければ、もう1つのタンパク質、好ましくはもう1つのPDE、より好ましくはPDE4、最も好ましくはPDE4bからのループ領域(又はその他のアミノ酸配列)でのPDE5ループ領域の完全な交換によって達成可能である。
【0011】
PDE5の結晶は、出願第PCT/IB02/04426号(例9「Sildenafilを用いた野生型PDE5触媒ドメインの結晶化」、44頁29行目〜45頁17行目;例11、「Sildenafilを用いたPDE5*の結晶化」46頁8行目〜25行目;例13「Sildenafilを用いた野生型PDE5のデータ収集、構造決定及び精密化」、48頁1行目〜49頁9行目;例15*Sildenafilを用いたPDE5*のデータ収集、構造決定及び精密化」、50頁、9行目〜51頁6行目;表4「Sildenafilと複合された野生型PDE5についての原子座標」91頁〜240頁;及び表6の「Sildenafilを用いたバキュロウイルス発現されたPDE5*複合体についての原子座標」、328頁〜408頁を参照のこと)の中で示されているように、PDE5リガンド(例えばPDE5阻害物質)とPDE5を共結晶化することによって、又は(ii)本発明で示されているように−PDE5の結晶内にPDEリガンド(例えばPDE5阻害物質)をソーキングすることによって、PDE5リガンド特にPDE5阻害物質についてスクリーニングするために有用であることが発見されてきた。
【0012】
本発明の方法によって同定されるようなPDE5リガンド特にPDE5−阻害物質は、治ゆ、苦痛緩和又は予防目的の処置において有用である。
【0013】
かくして、本発明は、以下の(付番された)態様を提供する。
【0014】
態様
1.結晶がソーキング可能であるホスホジエステラーゼ5(PDE5)の結晶。
【0015】
2.前記PDE5が哺乳動物由来である、態様1に記載のPDE5の結晶。
【0016】
3.前記PDESがヒト由来である、態様1及び2に記載のPDE5の結晶。
【0017】
4.前記PDE5が、PDE5A1、PDE5A2、PDE5A3及びPDE5A4から成る群の中から選択されたイソ型である、態様1〜3のいずれか1つの記載のPDE5の結晶。
【0018】
5.前記PDE5が配列番号1(PDE5ループ領域)又はその相同体、フラグメント、変異体、類似体又は誘導体を含む、態様1〜4のいずれか1つに記載のPDE5の結晶。
【0019】
配列番号1は、PDE5のいわゆる「ループ領域」である。このループ領域又はその相同体、フラグメント、変異体、前記P又は誘導体は、ループ領域内に含まれるアミノ酸残基の付加、欠失又は置換を内含する。
【0020】
好ましくは、本発明のPDE5結晶のアミノ酸配列との関係における変異体は、配列番号1(HRGVNNSYIQRSEPLAQLYCHSIME)内で太字下線付きで示されているようなヒスチジン(His/H)残基の欠失又は置換を内含している。前記ヒスチジン(H)残基の交換は、好ましくは単数又は複数のアミノ酸残基(ヒスチジン以外)を取込むことによるものであり、ここで好ましくは前記アミノ酸残基は中性又は非極性である。
【0021】
より好ましくは、本発明のPDE5の結晶のアミノ酸配列との関係における変異体は、もう1つのタンパク質、好ましくはPDE、より好ましくはPDE4、最も好ましくはPDE4b(以下参照)由来のループ領域(又はその他のアミノ酸配列)でのループ領域の完全な置換を含む。
【0022】
6.前記PDE5が配列番号4(PDE4ループ)又はその相同体、フラグメント、変異体、類似体又は誘導体を含む、態様1〜5のいずれか1つに記載のPDE5の結晶。
【0023】
7.前記PDE5が配列番号5(PDE5*=ループスワップされたPDE5触媒ドメイン)又はその相同体、フラグメント、変異体、類似体又は誘導体を含む、態様1〜6のいずれか1項に記載のPDE5の結晶。
【0024】
8.前記PDE5が配列番号6(PDE5*を含むPDE5配列)又はその相同体、フラグメント、変異体、類似体又は誘導体を含む、態様1〜7のいずれか1項に記載のPDE5の結晶。
【0025】
9.ポリエチレングリコールを沈殿剤として用いて成長させる、態様1〜8のいずれかに記載のPDE5の結晶。一般的には、分子量2000〜8000のポリエチレングリコールが使用される。好ましくは、ポリエチレングリコールの分子量は、4000である。ポリエチレングリコールは、10%〜30%の間の濃度であり得るが、最も好ましくは20%である。付加的には、結晶を成長させるのに用いられるPDE5タンパク質は1〜20mg/mlの間、好ましくは5〜15mg/mlの間の濃度のものであることが望まれ、最も好ましくは10mg/mlの濃度である。
【0026】
10.6.5〜8.0のpH範囲内の緩衝液中で成長する、態様1〜9のいずれかに記載のPDE5の結晶。好ましくは、pHは7.0〜7.8の範囲内にあり、最も好ましくはpHは7.4である。緩衝液は、所要pH範囲全体にわたる緩衝能力を提供するもの、好ましくはHEPESであるべきである。
【0027】
11.アルコールの存在下で成長させる態様1〜10のいずれかに記載のPDE5の結晶。好ましくはアルコールは、イソプロパノールである。
【0028】
12.HEPES緩衝液、ポリエチレングリコール4000及びイソプロパノールを含有する溶液内で成長させる態様1〜11のいずれかに記載のPDE5の結晶。好ましくは、溶液はpH7.4の0.1MナトリウムHEPES、20%のポリエチレングリコール4000及び10%のイソプロパノールを含有する。結晶は、室温(20―25℃)以下でインキュベートされた溶液から成長する。好ましくは、結晶は、2〜6℃の範囲内の温度でインキュベートされた溶液から成長する。より好ましくは、結晶は約4℃でインキュベートされた溶液から成長する。
【0029】
ソーキング可能な結晶は、透析、シッティングドロップ蒸気拡散法又はバッチ方法、微結晶化方法、マイクロ又はマクロ播種方法又はゲル結晶化方法といったようなさまざまな方法を用いて成長させることができるが、好ましくはハンギングドロップ蒸気拡散を用いて成長させる。
【0030】
13.(a)空間群C2;
(b)単位格子寸法a〜56ű1%,b〜77ű1%,c〜81ű1%,α=γ=90°,β=103°±1%;
(c)1非対称単位あたり1分子;
(d)約40kDa±2kDaの分子量のPDE5を含む;
(e)約44±5%の計算上の溶剤含有量;及び
(f)単斜晶系;
といった特徴のうちの1以上を有する、態様1〜6のいずれか1つに記載のPDE5の結晶。
【0031】
14. PDE5が、図2に示されているようなヘリックス11及び12a(H12a725〜731)の間のループ領域に沿ってヘリックス15(H15 813〜824)及び14(H14 772〜797),ヘリックス13(H13 749〜765)のC末端及びヘリックス11(H11 706〜721)のC末端を境界とするタンパク質の第3のサブドメイン内に活性部位を有する、態様1〜13のいずれか1つに記載のPDE5の結晶。
【0032】
15.活性部位がピラゾロ−ピリミジノンを収容する能力を有する、態様14に記載のPDE5の結晶。好ましいピラゾロ−ピリミジノンの一例としては、UK−088,800がある。
【0033】
UK−088,800は図4に例示されており、5−(2−エトキシフェニル)−1−メチル−3−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ〔4.3−d〕ピリミジン−7−オンという化学名をもつ化合物の構造的表現である。
【0034】
16.PDE5がタンパク質の第3サブドメイン内部で活性部位を有し、Leu765、Ala767及びIle768、ならびにPhe820、Val782、Phe786、Tyr612、Leu804、Ala779、Ala783、Ile813、Met816及びGln817のうちの1以上を含んでいる、態様1〜15のいずれか1つに記載のPDE5の結晶。
【0035】
17.活性部位がピラゾロ−ピリミジノンを収容する能力を有する、態様16に記載のPDE5の結晶。好ましいピラゾロ−ピリミジノンの一例としては、UK−088,800がある。
【0036】
18.タンパク質が、任意の基準枠内で発現されるような誘導体セット又は表4(PDE5*アポC2形態)で記されている原子座標により特徴づけされる3次元構造を有する、態様1〜17のいずれか1つに記載のPDE5の結晶。
【0037】
19.態様1〜18のいずれか1つに記載のPDE5の結晶の重原子誘導体。
【0038】
20.PDE5リガンドが中にソーキングされている、態様1〜20のいずれかに記載のPDE5の結晶。ソーキングプロセスには、ソーキングされるべき結晶を、それが中で成長させられる溶液から、リガンドを含有するか又は中にひとたび結晶が存在した時点でそれに対しリガンドが付加される安定化溶液へと移す段階が関与し得る。安定化用溶液は、移送された時点で結晶がその構造的無欠性を保持し、ひび割れしたり溶解したりせず又その結晶パラメータ、対称性又は結晶寸法を著しく改変しないような物理的特性を有していることが望まれる。好ましくは、安定化溶液は、結晶を成長させる元となる化学成分の一部又は全てを含む。より好ましくは、安定化溶液は、上述の態様9〜12で記されている結晶成長のために使用された溶液と類似の又は同一の組成のものであるが、使用された沈殿剤の濃度はわずかに増大させることができる。最も好ましくは、安定化溶液は、結晶成長溶液と同じpHをもつ。リガンドは、固体としてか又は液体形態で(すなわちリガンドはすでに溶解状態にある)ソーキングするため結晶を含有する溶液又は今後結晶を含有すべき溶液に添加することができる。好ましくは、リガンドは溶解状態にあり、溶剤は、水性、有機性又は無機性であり得る。最も好ましくは、リガンドはDMSOである。リガンドは、一般にPDE5によるリガンドについての予測される結合定数より高い最終リガンド濃度を生成するべくソーキング用溶液に添加される;好ましくは、これは、結合定数の10倍以上である。結晶ソーキング用溶液中に存在するリガンドの最終濃度は、好ましくは0.1〜20mg/ml、より好ましくは0.5〜10mg/ml、最も好ましくは1〜5mg/mlの間である。
【0039】
21.前記PDE5リガンドがPDE5阻害物質である、態様20に記載のPDE5の結晶。
【0040】
22.前記PDE5阻害物質がピラゾロピリミジノン、好ましくはUK−088,800である、態様21に記載のPDE5の結晶。
【0041】
23.タンパク質が、任意の基準枠内で発現されているような誘導体セット又は表5(PDE5*−UK−088,800複合体)で記されている原子座標により特徴づけされる3次元構造を有する、態様22に記載のPDE5の結晶。
【0042】
24.PDE5又は突然変異体、誘導体、変異体、類似体、相同体、サブドメイン又はフラグメントの3次元構造を誘導するための、態様22〜23のいずれか1つに記載のPDE5の結晶から決定された原子座標の使用。
【0043】
25.PDE5サブドメインが触媒ドメインである、態様24に記載の使用。
【0044】
26.PDE5上の活性部位を伴う化学的化合物の結合相互作用を計算によってか又はその他の形で評価することを目的とした、態様24又は態様25に従って誘導可能であるようなPDE5の3次元構造の使用。
【0045】
27.PDE5と会合する能力をもつ化合物を設計するための態様26に従って誘導可能であるようなPDE5の3次元構造の使用。好ましくは、前記化合物は、ピラゾロ−ピリミジノン、より好ましくはUK−088,800である。
【0046】
28.化合物がPDE5リガンドである、態様26又は態様27に記載の使用。
【0047】
29.前記化合物がPDE5阻害物質である、態様28に記載の使用。
【0048】
30.前記PDE5阻害物質がピラゾロ−ピリミジノン、好ましくはUK−088,800である、態様29に記載の使用。
【0049】
31.潜在的PDE5リガンド化合物の群の中からPDE5と会合する能力をもつ化合物を選択する方法において、
i.潜在的PDE5リガンド化合物を含有する溶液中に態様1〜19のいずれか1つに記載のPDE5の結晶をソーキングする段階;
ii.ソーキングされた結晶から3次元構造を決定する段階;及び
iii.化合物がPDE5に結合しているか否かを査定する段階;
を含む方法。
【0050】
32.態様31に従って使用することにより選択される化合物。
【0051】
33.態様27〜30のいずれか1つに記載の使用によって設計されるか又は態様31の方法により同定される化合物。
【0052】
PDE5阻害物質である態様33に記載の化合物。
【0053】
35.潜在的PDE5リガンドの1群の中からPDE5リガンドを選択する方法において、
(a)態様24又は態様25にしたがって誘導可能であるようなPDE5の構造の3次元表現及び潜在的PDE5リガンドの構造の3次元表現を計算により新規作成する段階、
(b)潜在的PDEリガンドの3次元表現とPDE5構造の3次元表現を同時に表示する段階、
(c)潜在的PDE5リガンドの3次元表現がPDE5構造の活性部位の3次元表現に適合するか否かを評価する段階、
を含む方法。
【0054】
好ましくは、リガンドは分子グラフィクスツールを用いて構築され、より好ましくは、設計されたリガンドは、同時表示及び分析に先立ちエネルギー最小化されている。
【0055】
36.(d)生物学的PDE5活性検定内に潜在的PDE5リガンドを取込む段階;及び
(e)前記検定において潜在的PDE5リガンドがPDE5活性を変調させるか否かを決定する段階、
をさらに含んで成る、態様35に記載の方法。
【0056】
37.前記潜在的PDE5リガンドが潜在的PDE5阻害物質であり、前記潜在的PDE5阻害物質化合物がPDE5活性を阻害する、態様35又は態様36に記載の方法。
【0057】
38.態様35〜37のいずれか1つの方法によって選択されたPDE5リガンド。好ましくは、リガンドはPDE5阻害物質である。
【0058】
39.医薬品としての態様38に記載のPDE5リガンドの使用。好ましくは、リガンドはPDE5阻害物質である。
【0059】
40.態様38に記載の単数又は複数のPDE5リガンド及び1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【0060】
41.PDE5の阻害が予防的に又は治療的に有利である身体条件、疾病、障害又は不全の予防又は治療のための医薬の製造における態様38に記載のPDE5リガンドの使用。
【0061】
42.前記障害が哺乳動物の性的障害である、態様41に記載の使用。
【0062】
本発明が考慮している治ゆ、苦痛緩和又は予防用処置としては、哺乳動物の性的障害の治ゆ、苦痛緩和又は予防用処置、特に男性勃起機能不全(MED)、陰萎、女性性的機能不全(FSD)、陰核機能不全、女性性的欲求低下障害、女性の性的興奮障害(FSAD)、女性の性交疼痛障害又は女性オルガズム機能不全(FSOD)並びに精髄損傷に起因する性的機能不全又は選択的セロトニン再摂取阻害物質(SSRI)誘発性性的機能不全といったような哺乳動物の性的機能不全の治療が含まれるが、明らかに、PDE5阻害物質が適応指示されているその他の医学的身体条件の治療にも有用であると思われる。かかる身体条件としては、早産、月経痛、良性前立腺過形成(BPH)、膀胱排尿障害、失禁、安定、不安定及び異型(Prinzmetal)狭心症、高血圧症、肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、冠動脈疾患、うっ血性心不全、アテローム性動脈硬化症、例えば経皮経管的冠動脈形成術後(post−PTCA)血管能力低下状態、末梢血管障害、脳卒中、硝酸塩誘発性耐性、気管支炎、アレルギー性喘息、慢性喘息、アレルギー性鼻炎、緑内障、視神経症、黄班変性症、眼内圧亢進、網膜又は動脈閉塞などの目の疾病及び身体条件並びに、例えば過敏性腸症候群(IBS)などの消化管運動性障害を特徴とする疾患が含まれる。
【0063】
PDE5阻害物質が適応指示され本発明の化合物での治療が有用でありうるさらなる医学的身体条件としては、子癇前症、川崎症候群、硝酸塩耐性、多発性硬化症、糖尿病性腎症、自立性及び末梢性ニューロパシー、特に糖尿病性ニューロパシーを含むニューロパシー及びそれらの症候、例えば胃不全麻痺、末梢性糖尿病性ニューロパシー、アルツハイマー病、急性呼吸不全、乾癬、皮膚壊死、癌、転移、脱毛症、ナッツクラッカー形食道、裂肛、痔核、インシュリン耐性症候群、糖尿病、低酸素性血管収縮並びに血液透析中の血圧の安定化が含まれる。
【0064】
特に好ましい身体条件としては、MED及びFSD(好ましくはFSAD)が含まれる。
【0065】
本発明のさらなる(付番された)態様としては、以下のものが含まれる:
43.PDE5の突然変異体、誘導体、フラグメント、変異体、類似体、相同体又は複合体の結晶構造を解明するための、態様1〜23のいずれか1つに記載のPDE5の結晶から決定された原子座標の使用。
【0066】
44.PDE5関連タンパク質の3次元構造のモデルを生成するための、態様1〜23のいずれか1つに記載のPDE5の結晶から決定された原子座標の使用。
【0067】
45.その他のPDE5イソ型を模倣する部位特異的突然変異体又はその変異体を設計するための、態様24又は態様25に従って誘導可能であるようなPDE5の3次元構造の使用。
【0068】
46.a)緩衝液及びポリエチレングリコールを含む安定化用水溶液中で結晶をインキュベートする段階、
b)好ましくは、化学化合物が固体又は液体形態、より好ましくは液体形態であり、最も好ましくはDMSO中で可溶化されている安定化用溶液と化学的化合物を組合わせる段階及び、
c)任意には、安定化用溶液に抗凍結剤を添加する段階、
を含む、態様1〜19のいずれか1つに記載の結晶内に化学的化合物をソーキングさせる方法。
【0069】
47.安定化溶液が、分子量4000であるポリエチレングリコールを含む、態様46に記載の方法。ポリエチレングリコールは、10%〜30%の間の濃度であり得るが、最も好ましくは20%である。付加的には、pHは好ましくは7.0〜8.0の範囲内にあり、最も好ましくはpHは7.4である。緩衝液は、所要pH範囲全体にわたり緩衝力を提供する能力をもつものでなくてはならず、好ましくはHEPESである。好ましくは、安定化溶液はアルコールを含有する。最も好ましくは、これはイソプロパノールである。好ましくは、安定化溶液はpH7.4の0.1MナトリウムHEPES、20%のポリエチレングリコール4000及び10%のイソ−プロパノールを含有する。適切な抗凍結剤の例としては、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)及び有機重合体例えば低分子量PEGがある。ソルビトール又はキシリトールといったような炭水化物及びアルコールも同様に使用可能である。好ましくは、抗凍結剤はグリセロールである。
【0070】
態様38に記載のPDE5リガンド(PDE5阻害化合物としても知られている)(以下「化合物」と呼ぶ)は単独で投与できるが、ヒトの療法においては一般に、意図されている投与経路及び標準の薬学的実践方法に関して選択された適切な薬学的賦形剤、希釈剤又は担体との混和物の形で投与されることになる。かくして、本発明が考慮している薬学組成物、医薬品及び薬剤は、当業者にとって周知のさまざまなやり方で処方し、同様に周知の方法によって投与できるものである。
【0071】
例えば、本発明の化合物は、持続性、2元性又は脈動性適用といった即時放出、遅延放出、修正放出又は制御放出のため、着香剤又は着色剤を含有し得る錠剤、カプセル(ソフトジェルカプセルを含む)、小卵(ovules)、エリキシル剤、溶液又は懸濁剤の形で、経口投与、口腔内投与又は舌下投与することができる。該化合物は、海綿体内注射を介しても投与可能である。該化合物は同様に、高速分散又は高速溶解剤形を介して又は高エネルギー分散の形で又はコーティングされた粒子としても投与可能である。化合物の適切な薬学的処方は、望まれる通りコーティングされた形態であってもコーティングされない形態であってもよい。
【0072】
かかる錠剤は、微晶質セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、グリシン及びでんぷん(好ましくは、コーン、ポテト又はタピオカでんぷん)、錠剤分割物質例えばグリコール酸ナトリウムデンプン、クロスカルメロースナトリウム及び一部のケイ酸塩複合体、及びポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン及びアカシアなどの造粒結合剤といったような賦形剤を含有し得る。さらには、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、グリセリルベヘネート及びタルクといったような潤滑剤も含み得る。
【0073】
類似のタイプの固体組成物も、ゼラチンカプセル中の充填材として利用可能である。この点において好ましい賦形剤としては、ラクトース、でんぷん、セルロース、乳糖又は高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。水性懸濁液及び/又はエレキシル剤のためには、化合物をさまざまな甘味料又は着香剤、着色物質又は染、乳化剤及び/又は懸濁剤及び水、エタノール、プロピレングリコール及びグリセリンといった希釈剤、及びそれらを組合せたものと組合せることができる。
【0074】
修正放出及び脈動性放出の剤形は、コーティングされかつ/又は装置の本体内に内含される放出速度調整剤として作用する付加的な賦形剤と合わせて、即時放出型剤形について詳述されたもののような賦形剤を含有する。放出速度調整剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース、酸化ポリエチレン、キサンタンゴム、カルボマー、アンモニオメタクリレート共重合体、水素化ヒマシ油、カルナバろう、パラフィンろう、酢酸セルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、メタクリル酸共重合体及びそれらの混合物が含まれるが、これらに排他的に制限されるわけではない。修正放出型及び脈動性放出型剤形は、放出速度調整用賦形剤のうちの1つ又はその組合せを含有し得る。放出速度調整用賦形剤は、剤形内部すなわちマトリクス内部に及び/又はその剤形の上すなわち表面又はコーティングの上の両方に存在し得る。
【0075】
高速分散又は溶解用投薬量処方(EDDF)は以下の成分を含有し得る;アスパルターム、アセスルファムカリウム、クエン酸、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、2アスコルビン酸、アクリル酸エチル、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチル セルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、メタクリル酸メチル、ミント香味料、ポリエレングリコール、ヒュームドシリカ、二酸化ケイ素、グリコール酸ナトリウムデンプン、フマル酸ナトリウムステアリル、ソルビトール、キシリトール。FDDFを説明するために本書で使用されている通りの分散用又は溶解用という語は、使用される薬物の可溶性によって左右され、薬物物質が不溶性である場合、高速分散用剤形を調製でき、薬物物質が可溶である場合、高速溶解用剤形を調製することができる。
【0076】
化合物は同様に、非経口的に、例えば海綿体内、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、頭がい内、筋内又は皮下で投与することもでき、そうでなければ、輸液又は無針注射技術により投与することもできる。このような非経口投与のためには、これらは、例えば溶液を血液と等張にするのに充分な塩又はグルコースといったその他の物質を含有し得る無菌水溶液の形で最もうまく使用される。水溶液は、必要とあらば適切に緩衝(好ましくは3〜9のpHに)されているべきである。無菌条件下の適切な非経口処方の調製は、当業者にとって周知の標準的な薬学的技術によって容易に達成される。
【0077】
ヒトの患者への経口及び非経口投与のためには、化合物の1日投薬量レベルは、通常10〜500mg(単回用量又は分割用量で)となる。
【0078】
かくして例えば、該化合物の錠剤又はカプセルは、適宜単回で、又は一度に2回以上の投与のため5mg〜250mgの活性化合物を含有し得る。いずれの場合でも、医師は、任意の個々の患者に最も適切であると思われる実際の投量を決定し、それは特定の患者の年令、体重及び応答性によって変動することになる。上述の投薬量は、平均的ケースの例である。当然のことながら、より高い又はより低い投薬量範囲に値する個々のケースも存在し得、このようなケースも本発明の範囲内に入る。当業者は同様に、(MED及びFSDを含む)或る種の身体条件の治療において、該化合物を「要求通り」のベース(すなわち必要又は要望に応じたベース)で単回用量として摂取させることができる、ということも認識することだろう。
【0079】
該化合物は同様に、鼻腔内投与又は吸入により投与することもでき、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134ATM又は1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA227EATM)2酸化炭素、又はその他の適切な気体などの適切な推進剤を使用して加圧コンテナ、ポンプ、スプレー又はネブライザから乾燥粉末吸入器又はエアゾルスプレー提示の形で、適切に送達される。加圧エアゾルの場合、投薬量単位は、計測された量を送達するべくバルブを備えることにより決定可能である。加圧コンテナ、ポンプ、スプレー又はネブライザは、例えば、付加的に潤滑剤例えばトリオレイン酸ソルビタンを含有しうる溶剤として推進剤とエタノールの混合物を用いる活性化合物の溶液又は懸濁液を収納し得る。吸入器又は吹送器内で使用するための(例えばゼラチンで作られた)カプセル及びカートリッジを、ラクトース又はでんぷんといったような適切な粉末ベース及び本発明の化合物の粉末混合物を収納するように処方することができる。
【0080】
エアゾル又は乾燥粉末処方は、好ましくは、各々の計測済み用量又は「パフ」が、患者への送達のため本発明の化合物を1〜50mgを含有するような形で準備される。エアゾルでの全体的日用量は、1〜50mgの範囲内にあり、これは、単回用量で又はさらに通常は一日全体を通した分割用量の形で投与可能である。
【0081】
該化合物は同様にアトマイザを介しての送達のために処方され得る。アトマイザ用の処方は可溶化剤又は懸濁剤として、水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、低分子量ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、フルオロカーボン、ポリエチレングリコールエーテル、トリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸を含有し得る。
【0082】
代替的には、該化合物は、座薬又はペッサリーの形で投与でき、そうでなければゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟こう又は散布剤の形で局所施用可能である。化合物は同様に皮ふ投与することもできる。化合物は又、例えば皮ふ用パッチ剤を使用することによって経皮的に投与することもできる。該化合物は同様に、眼科、肺又は直腸経路により投与することもできる。
【0083】
眼科用途のためには、該化合物を、等張でpH調整された無菌食塩水中の微粉末化された懸濁液として、又は好ましくは、任意には塩化ベンジルアルコニウムといったような防腐剤と組合わせた形で、等張でpH調整された無菌食塩水中の溶液として処方可能である。代替的には、化合物をペトロラタムといったような軟膏の形で処方することも可能である。
【0084】
皮膚に対する局所施用のためには、本発明の化合物を、例えば鉱油、液体ペトロラタム、白色ペトロラタム、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化用ろう及び水のうちの単数又は複数のものとの混合物の中に懸濁された又は溶解された活性化合物を含有する適切な軟こうとして処方することができる。代替的には、例えば鉱油、、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、液体パラフィン、ポリソルバート60、セチルエステルろう、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水のうちの単数又は複数のものの混合物の中に懸濁又は溶解させられた適切なローション又はクリームとして処方可能である。
【0085】
該化合物は同様に、シクロデキストリンとの組合せの中で使用することもできる。シクロデキストリンは、薬物分子との封入及び非封入複合体を形成するものとして知られている。薬物−シクロデキストリン複合体の形成は、薬物分子の可溶性、溶解速度、生物学的利用能及び/又は安定性特性を修正する可能性がある。薬物−シクロデキストリン複合体は一般に、大部分の投薬量形態及び投与経路のために有用である。薬物との直接的複合体形成の代替案として、例えば担体、希釈剤又は可溶化剤としてといったように1つの補助的添加剤としてシクロデキストリンを使用することができる。アルファ、ベータ及びガンマシクロデキストリンが最も一般的に使用され、適切な例は、WO−A−91/11172、WO−A−94/02518及びWO−A−98/55148の中で記述されている。
【0086】
一般に、ヒトにおいては、化合物の経口投与が最も好ましい経路であり、最も便利でかつ例えばMEDにおいては、海綿体内(i.c.)投与に付随する周知の欠点を回避する。標準的な男性についてのMEDにおける好ましい経口投薬計画は、必要時の25〜250mgの化合物である。レシピエントがえん下障害又は経口投与後の薬物吸収障害を患っている状況においては、薬物を非経口、舌下又は口腔内投与することができる。
【0087】
獣医での使用のためには、化合物又はその獣医学的に受容可能な塩、又はその獣医学的に受容可能な溶剤和物又はプロドラッグは、通常の獣医学的実践方法に従って適切に受容可能な処方として投与され、獣医は、特定の動物にとって最も適切であると思われる投薬計画及び投与経路を決定することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0088】
本発明は、以下の付番された好ましい態様を提供する。
【0089】
1.図4に表わされた構造式の化合物が、タンパク質の活性部位に結合されるような形でその中にソーキングされ得る、配列番号4を含む配列修飾されたPDE5タンパク質の結晶。
【0090】
本書で使用される「配列修飾されたPDE5タンパク質」という語は、タンパク質の結晶化を容易にし、特にリガンドが結晶に入り結晶ソーキングのプロセス中にタンパク質の活性部位に結合できるような形でリガンドを含む溶液中に結晶をソーキングすることによって中にPDE5リガンド又は潜在的リガンドが導入され得るタンパク質のソーキング可能な結晶形態を提供するように操作された野生型PDE5タンパク質アミノ酸配列を内含している。この用語は、PDE5の触媒ドメインのアミノ酸配列、特定的にはPDE5の657〜687領域(「ループ領域」)又は配列番号1の操作の対象となったものでかつタンパク質の結晶化を容易にし、特にタンパク質のソーキング可能な結晶形態を提供するPDE5タンパク質を内含する。関連する操作には、PDE5ループ領域の単数又は複数のアミノ酸残基の欠失、付加又は置換による操作が含まれる。かかる操作には例えば、単数又は複数のアミノ酸残基(ヒスチジン以外)特に中性で非極性であるアミノ酸残基を取込むように、配列番号1(HRGVNNSYIQRSEHPLAQLYCHSIME)中に太字で示され下線が付いたヒスチジン(His/H)残基の欠失又は置換が含まれる。関連する操作には同様に、例えばPDE4といったようなもう1つのPDE、好ましくはPDE4bといったもう1つのタンパク質又はタンパク質配列からのループ領域(又はその他のアミノ酸配列)でのPDESループ領域の完全な交換による操作も含まれる。配列修飾されたPDE5 タンパク質は、完全PDE5配列の操作された配列又代替的にはPDE5配列のサブドメイン又はフラグメントの操作された配列を含むことができ、好ましくは、PDES触媒ドメインの操作された配列である。
【0091】
2.配列番号5を含む好ましい態様1に記載の結晶。
【0092】
沈殿剤としてポリエチレングリコールを使用して成長させられる、好ましい態様1又は好ましい態様2に記載の結晶。分子量2000〜8000のポリエチレングリコールが一般に使用される。好ましくは、ポリエチレングリコールの分子量は4000である。ポリエチレングリコールは、10%〜30%の間の濃度にあり得るが、最も好ましくは20%である。付加的には、結晶を成長させるのに用いられるタンパク質は、1〜20mg/mlの間、好ましくは5〜15mg/mlの間の濃度のものであり、最も好ましくは10mg/mlの濃度にある。
【0093】
4.6.5〜8.0のpH範囲内の緩衝液内で成長させられる好ましい態様1〜3のいずれか1つに記載の結晶。好ましくは、pHは7.0〜7.8の範囲内にあり、最も好ましくはpHは7.4である。緩衝液は、要求されるpH範囲全体にわたり緩衝力を提供する能力をもつものでなくてはならず、好ましくはHEPESである。
【0094】
5.アルコールの存在下で成長させられる好ましい態様1〜4のいずれか1つに記載の結晶。好ましくは、アルコールはイソプロパノールである。
【0095】
6.HEPES緩衝液、ポリエチレングリコール4000及びイソプロパノールを含む溶液中で成長させられる、好ましい態様1〜5のいずれか1つに記載の結晶。好ましくは該溶液は0.1MのナトリウムHEPES pH7.4、20%のポリエチレングリコール4000及び10%のイソプロパノールを含有する。結晶は、室温(20〜25℃)以下でインキュベートされた溶液から成長させられる。好ましくは、結晶は2〜6℃の範囲内の温度でインキュベートされた溶液から成長させられる。より好ましくは、結晶は約4℃でインキュベートされた溶液から成長させられる。
【0096】
7.(m)空間群C2;
(n)単位格子寸法a〜56ű1%、b〜77ű1%、c〜81ű1%、α=γ=90°、β=103°±1%;
(o)1非対称単位あたり1分子;
(p)約40kDa±2kDaの分子量のタンパク質を含む;
(q)約44±5%の計算上の溶剤含有量;及び
(r)単斜晶系;
といった特徴のうちの1以上を有する、好ましい態様1〜6のいずれか1つに記載の結晶。
【0097】
8.タンパク質が、図2に示されているようなヘリックス11及び12a(H12a725〜731)の間のループ領域に沿ってヘリックス15(H15 813〜824)及び14(H14 772〜797)、ヘリックス13(H13 749〜765)のC末端及びヘリックス11(H11 706〜721)のC末端を境界とするタンパク質の第3のサブドメイン内に活性部位を有する、好ましい態様1〜7のいずれか1つに記載の結晶。
【0098】
9.タンパク質がその第3サブドメイン内部に活性部位を有し、Leu765、Ala767及びIle768、ならびにPhe820、Val782、Phe786、Tyr612、Leu804、Ala779、Ala783、Ile813、Met816及びGln817のうちの単数又は複数のものを含んでいる、好ましい態様1〜8のいずれか1つに記載の結晶。
【0099】
11.タンパク質が、任意の基準枠内で発現されるような誘導体セット又は表4で記されている原子座標により特徴づけされる3次元構造を有する、好ましい態様1〜9のいずれか1つに記載の結晶。
【0100】
12.PDE5リガンドがその中にソーキングされた、好ましい態様1〜11のいずれか1つに記載の結晶。ソーキングプロセスには、ソーキングすべき結晶を、それがPで成長させられている溶液から、リガンドを含有するか結晶がその中にひとたび存在した時点でリガンドが結晶に入り好ましくはタンパク質の活性部位に結合するような形でリガンドが添加されることになる安定化溶液内へと移送する段階が関与し得る。安定化溶液は、移送された時点で結晶がその構造的無欠性を保持し、ひび割れしたり溶解したりせず又その結晶パラメータ、対称性又は結晶寸法を著しく改変しないような物理的特性を有していることが望まれる。好ましくは、安定化溶液は、結晶を成長させる元となる化学成分の一部又は全てを含む。より好ましくは、安定化溶液は、上述の態様3〜6で記されている結晶成長のために使用された溶液と類似の又は同一の組成のものであるが、使用された沈殿剤の濃度はわずかに1〜10%の間の割合だけ増大させることができる。最も好ましくは、安定化溶液は、結晶成長溶液と同じpHをもつ。リガンドは、固体としてか又は液体形態で(すなわちリガンドはすでに溶解状態にある)ソーキングするため結晶を含有する溶液又は今後結晶を含有すべき溶液に添加することができる。好ましくは、リガンドは溶解状態にあり、溶剤は、水性、有機性又は無機性であり得る。最も好ましくは、リガンドはDMSOである。リガンドは、一般にPDE5によるリガンドについての予測される結合定数より高い最終リガンド濃度を生成するべくソーキング用溶液に添加される;好ましくは、これは、結合定数の10倍以上である。結晶ソーキング用溶液中に存在するリガンドの最終濃度は、好ましくは0.1〜20mg/ml、より好ましくは0.5〜10mg/ml、最も好ましくは1〜5mg/mlの間である。任意には、データ収集前に結晶を凍結させる必要のある場合には、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)、アルコール及び有機重合体例えばより低分子量のPEG又はソルビトール又はキシリトールといったような炭水化物といった抗凍結剤をソーキング溶液に加えることも可能である。
【0101】
13.タンパク質が、任意の基準枠内で発現されているような誘導体セット又は表5で記されている原子座標により特徴づけされる3次元構造を有する、好ましい態様12に記載の結晶。
【0102】
14.態様1〜13のいずれか1つに記載の結晶の重原子誘導体。
【0103】
15.PDE5又は突然変異体、誘導体、変異体、類似体、相同体、サブドメイン又はフラグメントの3次元構造を誘導することを目的とした、態様1〜14のいずれか1項に記載の結晶から決定された原子座標の使用。座標セット又はその一部分は、既知の方法に従って、構造的に類似した又は関連するタンパク質又はタンパク質サブドメイン又はフラグメントのX線結晶構造を決定するべく分子交換手順のための完全又は部分同期モデルを提供するために使用することができ、さらに、座標セットは、構造的に類似した又は関連したタンパク質又はタンパク質 サブドメイン又はフラグメントのNMR構造ソリューションのためのNMR割当てをそれに基づいて決定できる1つの構造モデルを提供してくれる。
【0104】
16.サブドメインが触媒ドメインである、好ましい態様15に記載の使用。
【0105】
17.PDE5のリガンドである化合物を同定する方法において、
a)好ましい態様1〜14のいずれか1項に記載の結晶を提供する段階、
b)化合物を結晶内にソーキングするのに貢献する条件下で化合物と結晶を接触させる段階、
c)化合物が結果として得られたソーキングされた結晶内のタンパク質の活性部位に結合されているか否かをX線回折及び構造ソリューションを用いて決定する段階
d)任意にはPDE5の阻害物質であるか否かを決定するためにリガンドを検定する段階、
を含む方法。
【0106】
結晶は、好ましい態様12に記載の通りの条件下でソーキングされ得、結晶をX線回折し、直接的方法、重原子位相決定方法、単一又は多重異常分散、分子交換又は差フーリエ法といったような適切な任意の方法を適用することによって、X線結晶構造を決定することができる。タンパク質の活性部位におけるリガンドの存在又は不在は、電子密度マップ、例えばX線回折データから計算された差フーリエマップ又はオミットマップから決定できる。
【0107】
18.化合物が図4に示されている通りの構造鋳型に基づいている、好ましい態様17に記載の方法。
【0108】
19.PDE5と会合する能力をもつ化合物を設計する方法において、
(a)好ましい態様1〜14のいずれか1項に記載の結晶の中に存在するタンパク質又はそのフラグメント又はそのサブドメインの構造の3次元表現を計算により新規作成する段階、
(b)1つの化合物の構造の3次元表現を計算により新規作成する段階、
(c)タンパク質構造の3次元表現と化合物構造の3次元表現を同時に表示する段階、
(d)化合物構造の3次元表現がタンパク質構造の活性部位の3次元表現に適合するか否かを評価する段階、
(e)任意には、PDE5の阻害物質であるか否かを決定するべくリガンドを作り検定する段階、
を含む方法。
【0109】
20.潜在的PDE5リガンドの1群の中からPDE5リガンドを選択する方法において、
(a)好ましい態様1〜14のいずれか1項に記載の結晶の中に存在するタンパク質又はそのフラグメント又はそのサブドメインの構造の3次元表現を計算により新規作成する段階、
(b)リガンドの構造の3次元表現を計算により新規作成する段階、
(c)タンパク質構造の3次元表現とリガンド構造の3次元表現を同時に表示する段階、
(d)リガンド構造の3次元表現がタンパク質構造の活性部位の3次元表現に適合するか否かを評価する段階、
(e)任意には、PDE5の阻害物質であるか否かを決定するべくリガンドを作り検定する段階、
を含む方法。
【0110】
好ましい態様19及び20の好ましい実施形態に従うと、タンパク質の構造の3次元表現は、結晶のために決定された原子座標から直接誘導されてよく、好ましい態様8及び9に定義されているようにタンパク質の活性部位を同定するために適切に表示され得る。タンパク質の活性部位は、好ましくはタンパク質の活性部位を含む基及び原子と化合物のそれの間の良好なパッキング及び/又は結合相互作用及び/又は立体構造の衝突について検査することによって、タンパク質活性部位と化合物の間の適合度を探すべく類似の形で図形的にレンダリングされた化合物分子を活性部位内にドッキングできるような形で活性部位を含む原子の原子半径を表示するように、計算によって図形的にレンダリングすることができる。代替的には、結果として得られたドッキングされた化合物−タンパク質モデルを計算により分析して、適合を査定することもできるし、或るいは又例えば適合分析に先立ち活性部位内の化合物の適合を改善するためモデルのエネルギー最小化及び分子力学などによって計算によりこれを調整することもできる。
【0111】
22.PDE5の部位特異的突然変異体を設計するために好ましい態様17に従って誘導可能であるような3次元構造の使用。
【0112】
本発明の好ましい態様の好ましい実施形態においては、好ましくは、その結晶のために決定された原子座標から直接誘導されうるように、好ましい態様1〜14のいずれかに従った結晶中に存在するタンパク質又はそのフラグメント又はそのサブドメインの構造の3次元表現を計算により新規作成することによって、部位特異的突然変異体が設計される。該モデルには、例えば構造間の既知の安定したループ又は領域で既知の不安定なループ又は領域を置換するためといったように、タンパク質の物理的特性を改変するべく知識に基づいてモデル間でのアミノ酸又はペプチド領域全体の置換を可能にする目的で、類似した又は関連するタンパク質又はタンパク質配列フラグメントのモデルのオーバーレイされていてもよいし、又はこのモデルに対し最小二乗適合されてもよい(タンパク質配列の領域の安定性は、座標セット内のタンパク質領域についてのB因子により判断できる)。タンパク質のモデル内で単数又は複数の側鎖の交換、付加又は欠失を行なうことができ、そうでなければタンパク質の物理的特性例えば不安定な領域の改変による結晶化能力、親水性基での疎水性基の置換による可溶性に潜在的に影響を及ぼすべくPOPのフラグメント全体を交換、付加又は欠失させることができる。任意には、タンパク質の部位特異的突然変異体を作り、例えば未変性タンパク質に比べて突然変異を受けたタンパク質の可溶性又は突然変異を受けたタンパク質を結晶化する能力を評価することにより、物理的パラメータの改善についてテストすることができる。
【0113】
あるいは、活性部位残基の部位特異的突然変異を、PDE5リガンド又は潜在的リガンド化合物での主要な結合のドナー又はアクセプター機能に関与する側鎖を査定する目的で、又は化合物によりうまく対応するべく活性部位突然変異を設計するように、設計することができる。これは、好ましい態様19及び/又は20に詳述されているようなタンパク質及び化合物モデルを同時表示すること及び/又は、化合物とタンパク質モデルの間の適合及び結合相互作用の図形的視覚化によってか又は立体構造適合又は衝突及び/又は結合相互作用についてのモデル複合体の計算による分析によってのいずれかによって、1つの化合物がかかる変化により活性部位内によりうまく収容されているか否かを査定する目的でタンパク質モデルの活性部位におけるタンパク質側鎖の交換を行なうことによって、達成可能である。このプロセスには任意には、好ましい態様19及び/又は20で予め言及された実施形態の中で記述されているようなモデルエネルギー最小化及び/又は分子力学の段階が関与し得る。任意には、タンパク質の部位特異的突然変異体を作り、PDE5リガンド結合検定内で検定することができる。
【0114】
a)緩衝液及びポリエチレングリコールを含む安定化用水溶液中で結晶をインキュベートする段階、
b)安定化用溶液と化合物を組合わせる段階及び、
c)任意には、安定化用溶液に抗凍結剤を添加する段階、
を含む、好ましい態様1〜14のいずれか1つに記載の結晶内に化合物をソーキングする方法。
【0115】
好ましくは、安定化溶液は、上述の態様3〜6に記されている通りの結晶成長のために用いられる溶液と類似の又は同一の組成をもつが、使用される沈殿剤の濃度は、1〜10%の間の割合だけわずかに増大させることができる。最も好ましくは、安定化溶液は、結晶成長溶液と同じpHを有する。より好ましくは、安定化溶液は、pH7.4の0.1MナトリウムHEPES、20%のPEG4000、10%のイソプロパノールを含む。好ましくは、化合物は溶解状態にあり、溶剤は水性、有機性又は無機性であり得る。最も好ましくは、化合物はDMSO中にある。リガンドは一般的には、PDE5によりリガンドに対する予想結合定数よりも高い最終的リガンド濃度を生み出すように、ソーキング溶液に添加される。好ましくはこれは結合定数の10倍以上である。結晶ソーキング溶液中に存在するリガンドの最終濃度は、好ましくは0.1〜20mg/mlの間、より好ましくは0.5〜10mg/mlの間、そして最も好ましくは1〜5mg/mlの間である。好ましくは、抗凍結剤は、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)、アルコール、有機重合体、例えばより低い分子量のPEG、ソルビトール又はキシリトールといった炭水化物のうちの単数又は複数のものから選択され、最も好ましくは、抗凍結剤はグリセロールである。
【0116】
発明の詳細な説明
本書で使用されている「アポ」という語は、高分子特に、a)そのリガンド(単複)及び/又は補欠分子族(単複)から離脱されているあらゆるタンパク質(又は指名されたタンパク質)を意味するものとして考えられている。
【0117】
本書で使用される「緩衝液」という語は、弱酸及びこの酸の接合体塩基(又はさほど一般的ではないが弱塩基及びその接合体酸)を含むあらゆる溶液を内含するものとして考えられる。かくして、本書で使用される通りの「緩衝液」というのは、酸が付加塩基を中和する(又はさほど一般的ではないが塩基が付加酸を中和する)ことから、酸又は塩基が加えられた時点でそのpHレベルの変化に耐えるものである。
【0118】
PDE5に関して本書で言及されているような「活性検定」というのは、そのIC50値(酵素活性の50%阻害のために必要とされる化合物の濃度)の測定により決定可能である環状グアノシン3’,5’−モノリンホスファート(cGMP)及び環状アデノシン3’,5’−モノホスファート(cAMP)ホスホジエステラーゼに対するPDE阻害活性のインビトロ検定を意味するものとして考えられている。好ましくは、必要とされるPDE酵素は、ヒト海綿体、ヒト及びウサギ血小板、ヒト心嚢、ヒト骨格筋及びウシ網膜を含むさまざまな供給源から、基本的に例えばBallard SA et al.;J. Urology 159(6)、2164−2171、1998に記述されているようなThompson WJ及びAppleman MM;Biochemistry10(2)、311−316、1971の方法の修正により単離可能である。特に、cGMP特異的PDE5及びcGMP阻害されたcAMP PDE3は、ヒト海綿体組織、ヒト血小板又はウサギ血小板から得ることができる。
【0119】
検定は、基本的にBallard SA et al.;J. Urology 159(6)、2164−2171、1998に記述されているようなThompson WJ et al;Biochemistry18(23)、5228−5237、1979の「バッチ」方法の修正を用いるか、又は製品コードTRKQ7090/7100の下でAmersham plcにより記述されているプロトコルの修正を用いて〔3H〕標識されたAMP/GMPの直接的検出のためのシンチレーション近隣検定を用いて実施可能である。要約すると、シンチレーション近接検定のために、PDE・阻害物質の効果は、IC50Kiとなるように、変動する阻害物質濃度及び低基質の存在下で一定量の酵素を検定すること(最高1/3km以下の濃度で〔3H〕標識されたものに対する未標識のものの比が3:1のcGMP又はcAMP)によって調査される。最終検定量は、検定緩衝液〔20mMのトリス−HClpH7.4、5mMのMgCl2、1mg/mlのウシ血清アルブミン〕で100μlまでにする。反応を、酵素で開始し、30℃で30〜60分間インキュベートして30%未満の基質回転率を得、50μlのケイ酸イットリウムSPAビーズ(PDE5についてそれぞれの未標識環状ヌクレオチドを3mMずつ含有する)で終結させる。平板を再度密封し、20分間振とうさせ、その後、ビーズを暗所で30分間沈降させて、次にTop Count平板読取り装置(Packard, Meriden, CT)上で計数した。放射能単位を未阻害の対照の活性%(100%)に変換し、阻害物質濃度に対しプロットし、「適合曲線」Microsoft Excel拡張を用いて阻害物質 IC50値を得た。
【0120】
本書で使用する「沈殿剤」という語は、生体分子を含む溶液に添加された時点で生体分子を溶液から沈殿又は結晶化させることになるあらゆる物質を含むものと考えられている。
【0121】
本書で使用する「複合体」という語は、リガンド(単複)が結合されている状態の生体高分子,
ましくはタンパク質を意味するものとして考えられ、タンパク質の結晶化の前、途中又は後で形成され得る。
【0122】
本書で使用されるような「ソーキング」又は「ソーキングを受ける能力をもつ」という語は、(通常は)小分子(例えば阻害物質)である化学的化合物を含有する水溶液中に結晶を置くか又は、化合物が拡散により結晶格子内に入ることができかつ、好ましくは格子を含む分子がタンパク質分子である場合タンパク質−リガンド複合体を形成するため、又最も好ましくは格子を含む分子がタンパク質分子でありかつリガンド又は化合物がタンパク質分子の活性部位に結合した状態となった場合に格子を含む分子と相互作用(例えば接触及び結合)することができるような形で結晶を含有する水溶液に化学的化合物を添加するプロセスを意味するものとして考えられている。該化合物は、固体形態で水溶液に添加し得るか又は、適切な溶剤、好ましくはジメチルスルフォキシド(DMSO)の中に溶解され得る。
【0123】
本書で使用される「ソーキング可能な結晶」という語は、リガンドが結晶格子に入りそれを通過できるように又格子を含む分子に対しアクセスできる又はそれと会合できるような形で格子の有意な分断無く小さな分子又はリガンドが中にソーキングされ得る結晶を意味するものとして考えられている。好ましくはソーキング可能な結晶は、溶解状態又は固体形態にある小分子又はリガンドが結晶を含有する溶液に添加されるソーキングプロセスに敏感に反応する結晶である。小分子はこのとき拡散により結晶格子の中に入り、結晶格子を含む分子と会合することができる。ソーキング可能な結晶が格子の分断又は結晶のひびわれ無くリガンドと結合すること及び格子対称性及び結晶パラメータがソーキング及びリガンド結合プロセスによって著しく改変されないことが好ましい。ソーキング可能な結晶が、ソーキングプロセスを受けた後でX線を原子解像度、好ましくは3.5Å、より好ましくは2.5Å、最も好ましくは1.5Åまで回折することが好ましい。
【0124】
本書で使用されている「安定化溶液」という語は、例えばソーキングといったような、さらなる操作を目的として、結晶を中に移送でき、その中で結晶がその構造的無欠性を保持し、その結晶パラメータ、対称性又は細胞寸法に関して著しく改変することのない溶液を意味するものとして考えられる。好ましくは、安定化溶液は、結晶がそこから成長させられた、ほぼ同じかつより好ましくは同一のpHをもつ化学的成分の一部又は全てを含んでいる。
【0125】
本書で使用される「抗凍結剤」という語は、溶液に添加されたとき、氷結晶の形成無く急速に溶液が凍結するようにする化学的化合物を意味するものとして考えられている。このような抗凍結剤は好ましくはエタノールといったアルコール又はキシリトール又はソルビトールといったような炭水化物であるが、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)又はその他の有機重合体例えばより低分子量のPEGでもあり得る。最も好ましくは、抗凍結剤はグリセロールである。
【0126】
本書で使用されている「共結晶化」という語は、高分子とそのリガンドの予備形成された複合体すなわちタンパク質/小分子複合体の結晶化を意味するものと考えられている。
【0127】
「突然変異体」、「変異体」、「相同体」、「類似体」、「誘導体」又は「フラグメント」という語は、本発明の結晶を生成するのに使用されるポリペプチド配列又はPDE5タンパク質のアミノ酸配列に関連するものである。これらの語は、結果として得られるPDE5が結晶化される能力をもつことを条件として、該配列から(又はこの配列への)1つ(又は複数)のアミノ酸のあらゆる置換、変異、修飾、交換、欠失又は付加を内含する。
【0128】
標準的には、本発明の結晶のPDE5のタンパク質又はポリペプチドのアミノ酸配列に関連する「突然変異体」、「変異体」、「相同体」、「類似体」、「誘導体」又は「フラグメント」については、実施できるアミノ酸置換のタイプは、アミノ酸配列の疎水性/親水性を維持するものでなければならない。修飾されたPDE5が本発明に従って結晶化される能力を維持することを条件として、例えば1、2、又は3から10、20又は30回の置換といったようにアミノ酸置換を行なうことができる。
【0129】
アミノ酸配列に関連して、本書で用いられている「変異体」という語は、野生型アミノ酸配列又はそのフラグメントの内部に含まれたアミノ酸残基の付加、欠失又は置換を意味する。好ましくは、本発明のPDE5の結晶のアミノ酸配列に関連する変異体には、本発明の結晶のPDE5のタンパク質又はポリペプチドの中に含まれている、配列番号1(HRGVNNSYIQRSEPLAQLYCHSIME)の中で太字で示され下線の付されているようなヒスチジン(His/H)の欠失又は置換が内含され得ると思われる。前記ヒスチジン(H)残基の交換は好ましくは、アミノ酸残基が中性又は非極性である、単数又は複数のアミノ酸残基(ヒスチジン以外)を取込むことによるものである。
【0130】
本発明の結晶のPDE5についてコードするヌクレオチド配列に関連する「突然変異体」、「変異体」、「相同体」、「類似体」、「誘導体」又は「フラグメント」という語は、結果として得られたヌクレオチド配列が、結晶化される能力をもつPDE5についてコードするか又はコードする能力をもつことを条件として、該配列からの(又はその配列への)1つ(又は複数)のヌクレオチドのあらゆる置換、変異、修飾、交換、欠失、又は付加を内含する。
【0131】
ヌクレオチド配列に関連して、本書で使用されている「変異体」という語は、野生型ヌクレオチド配列又はそのフラグメントのヌクレオチドの付加、欠失又は置換を意味する。
【0132】
本書で使用されている通りの「フラグメント」という語は、前記PDE5部分を含む結果として得られるPDE5が結晶化される能力をもつことを条件として、本発明で規定されている通りのPDE5 アミノ酸配列のあらゆる部分を意味する。
【0133】
本発明に従った配列番号6(全長「ループスワップした」PDE5 配列)の特異的フラグメントの一例は、配列番号5(「ループスワップした」PDE5触媒ドメイン)であり得る。さらに、本発明に従った配列番号5(ループスワップした触媒ドメイン)の特異的フラグメントの例は、配列番号4(PDE4「ループ領域」;HPGVSNQFLINTNSELALMYNDESVLE)であり得る。
【0134】
本書で使用されている「類似体」という語は、本発明の結晶のPDE5ポリペプチドのアミノ酸配列又は配列番号1、2、3、4、5又は6のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に類似しているものの、不利でない(すなわち結晶化されるPDE5の能力にとって不利でない)アミノ酸置換又は欠失が行なわれてきた配列を意味する。
【0135】
本書で本発明の結晶のPDE5の又は配列番号1、2、3、4、5又は6のうちのいずれか1つのもののアミノ酸配列に関連して使用されている「誘導体」という語は、PDE5の化学的修飾を内含する。かかる修飾を例示するものとしては、アルキル、アシル又はアミノ基による水素の交換があるだろう。
【0136】
結晶に関して本書で使用されている「重原子誘導体」という語は、その構造内への重原子(すなわち、例えば炭素、窒素、酸素、リンなどといった有機高分子に共通の原子よりも著しく大きい原子質量のもの)の内含により修飾される結晶格子内の高分子を含む結晶を意味する。これは一般的には、イオン化合物との共結晶化の間か又は結晶内に化合物をソーキングさせることによって、高分子上のいくつかの基に共有結合し得る水銀、白金、金又は銀の塩といったようなイオン化合物を用いて達成される。セレノ−メチオニン又はキセノンといったような貴ガスでの誘導体化といったその他のプロセスも使用可能である。結晶のかかる重原子誘導体の目的は、構造ソリューションのための同期情報を提供することにある。
【0137】
本書で使用されている「欠失」という語は、単数又は複数のヌクレオチド又はアミノ酸残基がそれぞれに不在であるアミノ酸配列又はヌクレオチドのいずれかの中での変化として定義される。
【0138】
本書で使用されるように「挿入」又は「付加」というのは、天然に発生するPDE5の配列に比べて、それぞれ単数又は複数のヌクレオチド又はアミノ酸残基の付加を結果としてもたらしたヌクレオチド又はアミノ酸配列の変化である。
【0139】
本書で使用されているように「置換」は、それぞれ異なるヌクレオチド又はアミノ酸による単数又は複数のヌクレオチド又はアミノ酸の交換の結果もたらされる。
【0140】
保存的置換は、例えば下表に従って行なうことができる。第2欄中の同じブロック内及び第3欄内の同一行内のアミノ酸は互いに置換可能である。
【0141】
【表1】

【0142】
「相同体」という語は、特定的には一次、二次三次及び四次といったタンパク質構造に関しての相同性を網羅し、結晶化される能力をもつあらゆる構造的PDE5相同体を網羅する。
【0143】
本書に詳述されているアミノ酸配列の相同性に関しては、好ましくは、配列番号1、2、3、4、5又は6に対し少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、さらに一層好ましくは少なくとも90%の相同性が存在する。より好ましくは、少なくとも95%、そして最も好ましくは少なくとも98%の相同性が配列番号1、2、3、4、5又は6に対して存在する。
【0144】
本書に詳述されているアミノ酸配列に対しコードするヌクレオチド配列の相同性に関しては、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%さらにより好ましくは少なくとも85%、さらに一層好ましくは少なくとも90%の相同性が、配列番号1、2、3、4、5又は6についてコードするヌクレオチド配列に対して存在する。より好ましくは、配列番号1、2、3、4、5又は6についてコードするヌクレオチド配列に対して少なくとも95%、そして好ましくは少なくとも98%の相同性が存在する。
【0145】
本発明の中で定義されているPDE5のヌクレオチド配列及び本発明の中で定義されているPDE5のアミノ酸配列に関する「相同体」という語は、配列の対立遺伝子変異と同義であり得る。
【0146】
特に、本書で使用されている「相同体」という語は、「同一性」と同一視され得る。ここで、例えば本発明の結晶のPDE5のアミノ酸配列に関する配列相同性は、該配列のうちのいずれか単数又は複数のものともう1つの配列を厳密に比較して、そのもう1方の配列が該配列(単複)に対し少なくとも70%の同一性を有するか否かを見ることにより、決定可能である。2つ以上の配列間の相同性百分率(%)を計算できる市販のコンピュータプログラムにより相対的配列相同性(すなわち配列同一性)を決定することも可能である。このようなコンピュータプログラムの典型的な例がCLUSTALである。
【0147】
相同性百分率は、隣接する配列全体にわたり計算できる。すなわち1つの配列はもう1つの配列と整列させられ、1つの配列の各々のアミノ酸が一度に1残基ずつ、もう1方の配列内の相応するアミノ酸と直接比較される。これは「無ギャップアライメント」と呼ばれる。標準的には、かかる無ギャップアライメントは、比較的短かい残基数(例えば50未満の隣接アミノ酸)にわたってのみ実施される。
【0148】
これは非常に単純で一貫性ある方法ではあるものの、それは、例えばその他の点では同一である配列対の中で1つの挿入又は欠失が後続のアミノ酸残基をアライメントの外へ出しかくして包括的アライメントが実施された時点で相同性%の大幅な削減が結果としてもたらされることになるということを考慮に入れることができない。その結果、大部分の配列比較方法が、全体的な相同性評点に過度に不利に作用することなく、考えられる挿入及び欠失を考慮に入れる最適なアライメントを生成するように設計されている。これは、局所的相同性を最大限にしようとして配列アライメント内に「ギャップ」を挿入することによって達成される。
【0149】
しかしながら、これらのより複雑な方法は、同数の同一アミノ酸について(2つの比較された配列の間のより高い関連性を反映する)可能なかぎり少ないギャップしか伴わない配列アライメントが多数のギャップを伴うものよりも高い評点を達成することになるような形でアライメント内で発生する各ギャップに対して「ギャップペナルティ」を割当てる。1つのギャップの存在に対し比較的高いコストを課しそのギャップ内の各々の後続残基についてはより小さいペナルティを課す「アフィンギャップコスト」が使用される。これは最も一般的に使用されるギャップ評点システムである。高ギャップペナルティは当然、より少ないギャップを伴う最適化されたアライメントを生成することになる。大部分のアライメントプログラムは、ギャップペナルティの修正を許容している。しかしながら、このようなソフトウェアを配列比較のために使用する場合デフォルトの値を使用することが好まれる。例えば、GCGWisconsin Bestfitパッケージ(以下参照)を用いる場合、アミノ酸配列に対するデフォルトのギャップペナルティは、1ギャップあたり−12、各拡張毎に−4である。
【0150】
従って、最大百分率相同性の計算はまず最初に、ギャップペナルティを考慮に入れた最適アライメントの生成を必要とする。かかるアライメントを実施するための最適なコンピュータプログラムがGCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin, U.S.A;Devereux et al., 1984,Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を実施できるその他のソフトウェアの例としては、BLA段階パッケージ(Ausubel et al.,1999,同書第18章参照)。FASTA(Atschul et al.,1990,J.Mol. Biol.,403−410)及びGENEWORKS比較ツールセットが含まれるが、これらに制限されるわけではない。オフライン及びオンライン探索には、BLAST及びFASTAの両方が利用可能である(Ausubel et al., 1999,同書、7−58〜7−60ページ参照)。しかしながら一部の利用分野については、GCG Bestfitプログラムを使用することが好まれる。
【0151】
最終的百分率相同性は同一性として測定できるが、一部のケースでは、アライメントプロセス自体は標準的に、全か無かの対比較に基づくものではない。代りに、化学的類似性又は進化距離に基づいて各々の対様比較に対し評点を割当てるスケーリングされた類似性評点マトリクスが一般に使用される。一般に使用されるこのようなマトリクスの例としては、BLASTプログラム対についてのデフォルトマトリクスであるBLOSUM62マトリクスがある。GCG Wisconsinプログラムは一般に、公開デフォルト値か又は供給されている場合にはカスタム記号比較表のいずれかを用いる(詳しくはユーザーマニュアルを参照のこと)。GCGパッケージについての公開デフォルト値を使用すること、又はその他のソフトウェアの場合には、BLOSUM62といったようなデフォルトマトリクスを用いることが好ましい。
【0152】
ソフトウェアがひとたび最適アライメントを生成した時点で、相同性百分率、好ましくは配列同一性百分率を計算することが可能である。ソフトウェアは標準的にこれを配列比較の一部として行ない、数値的結果を生成する。
【0153】
すでに指示した通り、一部の利用分野については、配列相同性(又は同一性)は、任意の適切な相同性アルゴリズムを用いて、例えばデフォルトパラメータを用いて、配列相同性(又は同一性)を決定することができる。配列データベースの類似性探索における基本的問題の論述については、Altschul et al(1994)、Nature Genetics 6:119−129を参照のこと。一部の利用分野については、パラメータはデフォルトの値にセットされた状態で、BLASTアルゴリズムが利用される。BLASTアルゴリズムについては、http://www.ncbi.nih.gov/BLAST/blast-help.htmlで詳述されている。有利には、BLASTによって査定される場合「実質的な相同性」は、少なくとも約7、好ましくは少なくとも約9、そして最も好ましくは10以上のEXPECT値で整合する配列と同じである。BLAST探索におけるEX−PECTについてのデフォルト閾値は通常10である。
【0154】
2つの配列の間の同一性及び類似性を決定するためのその他のコンピュータプログラム方法としては、GCGプログラムパッケージ(Devereux et al 1984 Nucleic Acids Research 12:387)及びFASTA(Atschul et al 1990 J Molec Biol 403−410)が含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0155】
本発明のPDE5のアミノ酸配列は、適切な発現系の中でのそれについてコードするヌクレオチド配列の発現によって産生され得る。
【0156】
付加的に又は代替的には、タンパク質自体は、PDE5アミノ酸配列を全体に又は部分的に合成するための化学的方法を用いて産生することができる。例えば、固相技術によりペプチドを合成し、樹脂から分割し、分取高性能液体クロマトグラフィによって精製することができる(例えば(Creighton(1983)「タンパク質構造及び分子原理」、WH Freeman 及びCo., New York, NY, USA)。合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析又は配列決定(例えばEdman分解手順)によって確認可能である。
【0157】
さまざまな固相技術(Roberge JY et al, Science, Vol269,1995,pp.202−204)を用いて直接ペプチド合成を実施することができ、例えばメーカーにより提供される指示事項に従ってABI 431 A ペプチド合成装置(Perkin Elmer, Boston, MA, USA)を用いて、自動化された合成を達成することができる。付加的には、直接的合成中に、PDE5のアミノ酸配列又はそのいずれかの部分を改変させかつ/又はその他のサブユニットからの配列又はそのいずれかの部分で化学的方法を用いてこれを組合わせて変異体ポリペプチドを産生することができる。
【0158】
PDE5*のタンパク質工学処理
質量分析法及びSDS−PAGE(デ−タは示さず)による野生型PDE5タンパク質の触媒ドメインの分析は、該タンパク質が残基664−682の領域内部で分割されることを示している。高濃度のプロテアーゼ阻害物質がタンパク質を幾分か安定化するが、分割がなおも再現性結晶化を妨げる。
【0159】
PDE5の657−682領域がPDE4内の同じ領域により交換されキメラ構成体を産生する「PDE5*」と呼ばれるPDE5の触媒ドメインの工学処理された形態が、産生されてきた(この領域の配列アライメントについては図1を参照のこと)。この構成体のC末端も同様に、野生型構造(C−term875)と比べてトランケートされる(C−term858)。以後この工学処理された構成体を「PDE5*」と呼ぶ。
【0160】
この工学処理されたタンパク質は、質量分析法及びSDS−PAGE(データ示さず)による分解に対し安定していることが示されてきた。該タンパク質は、代替的精製プロトコルの開発を可能にする改善された生物物理学的特性を示す。新しいプロトコルは、ブルーセファロースカラムに対する結合及びcGMPとの特異的溶出を利用している。野生型タンパク質は、おそらくはプロテアーゼ分割部位のまわりの構造の混乱に起因してこのカラムに結合しないことが示されてきた。このPDE5*タンパク質は、より高い解像度まで回折していかなる混乱領域ももたない阻害物質を伴う結晶を産生するのに使用された。該タンパク質は、同様に、1.8Å以上の解像度まで日常的に回折しそれを構造ベースの薬物設計において使用するための改善されたタンパク質とするさらなる阻害物質を伴う結晶を産生するために、再現可能な形で使用されてきた。
【0161】
PDE4及び野生型PDE5触媒ドメインの構造
(これについては同じく、出願番号PCT/IB02/04426、28ページ、19行目〜29ページ、17行目にも詳述されており、本書に援用する)。
【0162】
PDE4bの触媒ドメインの構造が公開された(Xu et al. 2000)。タンパク質データバング(PDB)内の構造とPDE5触媒のトポロジー比較からは、PDE4構造を除き、その他の既知のタンパク質構造との有意な付加的な相同性は明らかになっていない。2つの構造の間の比較が行なわれた(当該出願の図1は、2つのタンパク質の配列及び二次構造アライメントを示している)。構造及びドメインの配置は、PDE4に強調されている第2のサブドメインが以下で詳述されている通りPDE5構造内に部分的にのみ存在するという点を除いて、PDE4のものと事実上同一である。
【0163】
該構造は、ち密な折畳み(本出願の図2)の形で配置された15αのヘリックスの単一ドメインで構成されている。ドメイン全体の内部では、3つのサブドメインを規定することもできる。ヘリックスI(H1 539−545)及び2(H2 551−554)はタンパク質の外部に存在し、構成体のN末端領域を含む。これら2つのヘリックスは、PDE4構造内の等価のもの(H0、H1及びH2)とオーバーレイしない。この領域は、PDE タンパク質ファミリを横断して充分に保存されていない。ヘリックス3(H3 568−582)、4(H4 584−588)、5(H5 592−604)、6(H6 615−631)及び7(H7 640〜652)は、タンパク質の第1のサブドメインを形成し、タンパク質のコア内部に含まれている。PDE4の命名法に基づくと、ヘリックス8及び9についての観察可能な電子密度は全く存在しない。ヘリックス10(H10 684−694)はここでも外部にあり、構造内部で2量体界面を形成する。ヘリックス10及び11(H11 706〜721)は、第2のサブドメインの可視部分である。ヘリックス12(H12a 725−731、H12b 733−741)、13(H13 749−765)、14(H14 772−797)、15(H15 813−824)、16(H16 826−836)、及び17(H17 841−861)がタンパク質の、第3のサブドメインを形成する。PDE5の中でヘリックスH12はPDE4内のように隣接するヘリックスではなく、中央にねじれを伴う2つの短かいヘリックスで構成されており、ヘリックスH15がPDE5内では隣接するヘリックスであるがPDE4ではそうではない、という点に留意すべきである。
【0164】
UK−088,800と複合体形成されたPDE5*触媒ドメインの構造
UK−088,800と複合体形成されたPDE5*タンパク質の触媒ドメインの構造を、本出願の表3内にその座標が内含されている探索モデルのベースとして(本書に援用する、出願番号PCT/IB02/04426;例11「Sildenafilを用いたPDE5*の結晶化」46頁、8行目〜25行目; 例15「Sildenafilを用いたPDE5*のデータ収集、構造決定及び精密化」、50頁9行目〜51頁6行目及び表6「Sildenafilを用いたバキュロウイルス発現されたPDE5*複合体についての原子座標」328頁〜408頁に記述されているような)SildenafilとのPDE5*複合体からのタンパク質構造の1分子を使用した分子交換によって決定した。PDE5*触媒ドメインは、非対称ユニット内に1つの分子が存在する状態の単量体として、空間群C2の中で結晶化する。PDE5*触媒ドメインのC2形態は、a=55.97Å、b=76.55Å、c=80.50Å及びβ=103.09というおおよその細胞寸法で空間群C2内で結晶化する。これらは、1非対称2ニットあたり1つの分子を含有し、44%という溶剤含有率を有する(Matthews 1969)。PDE5*の構造は、17αのヘリックスを含み、折畳み全体は、一定数の重要な差異を伴っているが野生型構造ときわめて類似している。構造の主たる差異は、PDE4からのスワッピングされた部分(残基657−682)から成るヘリックス H8及びH9の存在にある。これらは、PDE4構造内で観察されたものと同一の要領で折畳まれ、タンパク質の第2のサブドメインを完成する。この構成体のC末端領域全体を電子密度の中へと構築し、この構造のN末端に3つの混乱した残基のみを残すこともできる。これは、その結晶化特性の増強に貢献する確率が高い。
【0165】
PDE5*:活性部位及びタンパク質−阻害物質相互作用
UK−088,800は、以下で詳述するように、前述したUK−092,480、Sildenafilについて観察されたものと同じ活性部位領域を占有し(本書に参考として内含されている出願番号PCT/IB02/04426;図4、「ループスワッピングしたPDE5(PDE5*)に結合した化合物Sildenafilの図、p425)、タンパク質との同じ主として疎水性の相互作用を示す(本出願の図3「活性部位領域における、UK−088,800でソーキングされたPDE5*(右)及びアポPDE5*(左)の2.5σで輪郭取りされたfo−fc電子密度マップの比較」)。SildenafilとのPDE5*の複合体の中に見られる同じ2つの直接的水素結合は、タンパク質のGln817と阻害物質の間(Oε1−N42.9Å及びNε2−Ol3.1Å)にも見られる。
【0166】
阻害物質の炭素原子C7は、Leu765、Ala767及びIle768により形成された小さい疎水性ポケット内に向いている。これらの残基は、Phe820と共に、阻害物質のプリン環がそれに対して積重なっている結合部位に対する平坦な面を形成している。プリンの反対側は、Val782に対し充填している。C10プロピル置換基は、Phe786と優れたファンデルワールス接触を形成する。それ自体阻害物質のフェニル部分と付加的な疎水的相互作用を形成するLeu804に対し充填している。O−アルキル部分は、Ala779、Phe786、Ala783、Val782、Leu804、Ile813、Met816、及びGln817を境界とする小さなポケットを占有する。活性部位内に見られる亜鉛イオンと阻害物質の間には直接的相互作用は全く存在しない。該構造は、活性部位内に結合し従って(同じくモデリングされてきた(データは含まれず))cGMP基質へのアクセスを遮断することによるUK−088,800の阻害様式の競合性を確認している。
【0167】
SildenafilとUK−088,800を比較した場合の主たる差異は、後者の阻害物質には、活性部位から外に向いたSildenafilの中に存在するスルフォニルピペラジンが欠如しているという点にある。
【0168】
野生型PDE5−Sildenafil複合体:活性部位及びタンパク質−阻害物質相互作用
(これは、出願番号PCT/IB02/04426、30頁、8行目〜31頁1行目の中に詳述され、本書に援用する)。
【0169】
活性部位は主として、タンパク質の第3のサブドメイン内部に存在し、H17とH12aの間のループ領域と共に、ヘリックスH15、H14、H13のC末端及びH11のC末端を境界としている。阻害物質とタンパク質の間の相互作用の大部分は、事実上疎水性であり、2つの直接的水素結合のみが観察されている(本書に援用する出願番号 PCT/IBO2/04426;図3、424頁)。第1のものは、阻害物質のプリン環のN17とGln817(2.8Å)のOε1の間にあり、第2のものは阻害物質の隣接する酸素原子O16から同じ残基Gln817(3.1Å)のNε2までの間にある。
【0170】
阻害物質の炭素原子C12はLeu765、Ala767及びIle768により形成された小さい疎水性ポケット内に向いている。これらの残基は、Phe820と共に、阻害物質のプリン環がそれに対して積重なっている結合部位に対する平坦な面を形成している。プリンの反対側は、Val782に対し充填している。C−5プロピル置換基は、Val782及びPhe786及びTry612と優れたファンデルワールス接触を形成する。Phe786及びLeu804は阻害物質のフェニル部分と付加的な疎水的相互作用を形成する。O−アルキル部分は、Ala779、Phe786、Ala783、Val782、Leu804、Ile813、Met816、及びGln817を境界とする小さなポケットを占有する。スルホンアミド基は、溶剤に向かって外に向いており、一方ピペラジン環は、拡張した残基662−665を境界としているが、構造のこの部分の立体構造が連鎖の破断の影響を受けていないかどうかは不確かである。活性部位内に見られる亜鉛イオンと阻害物質の間には直接的相互作用は全く存在しない。該構造は、活性部位内に結合し従って(同じくモデリングされてきた(データは含まれず))cGMP基質へのアクセスを遮断することによるSildenafilの阻害様式の競合性を確認している。
【0171】
野生型PDE5−Sildenafil複合体:活性部位内の金属イオン
この構造の活性部位には1つの亜鉛部位のみが存在する。活性部位内のイオンの配位も同様に、亜鉛について予想されたものと一貫している。金属は、His653(Nε2−Zn2.0Å)、His617(Nε2−Zn2.1Å)、Asp764(0D2−Zn2.2Å)と同様Asp654(0D2−Zn2.2Å)によっても配位される。これらの残基は、PDE 遺伝子ファミリ全体にわたり完全に保存される。活性部位内の第2の金属イオンの証拠は全く存在しない。
【0172】
本発明について、ここで添付の配列リスト及び図を参照しながら、単なる一例として記述する:
配列番号1: PDE5からのループ領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号2: 野生型PDE5触媒ドメインのアミノ酸配列を示す。
配列番号3: 全長野生型PDE5配列のアミノ酸配列を示す。
配列番号4: PDE4のループ領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号5: ループスワップされたPDE5触媒ドメイン=PDE5*のアミノ酸配列を示す。
配列番号6: PDE5*を含む全長PDE5配列のアミノ酸配列を示す。
配列番号 7−14:オリゴヌクレオチドプライマである。
【0173】
図1は、PDE5(上部配列)及びPDE4b(下部配列)触媒ドメインのアライメントを示している。構造からのへリックスの位置及び付番は、各々についてマーキングされている。太字体の残基は、工学処理された領域についての配列アライメントを示している。PDE4由来の配列は、PDE5中の対応する領域を交換するために使用されてきた。こうして、この領域への残基の挿入という結果がもたらされる。下線は、PDE5*中に不在のC−末端領域を強調している。
【0174】
図2は、二次構造要素を示すタンパク質の全体的折畳みのリボン表現を示している。阻害物質は、全原子ステック表現で示され、金属イオンは球体として示されている。(A)=PDE4b、(B)=野生型PDE5+Sildenafil、(C)=「ループスワップされた」PDE5(PDE5*)+Sildenafil。へリックスは、基準としてPDE4構造を用いて付番されている。へリックスH0−H7はサブドメイン1を形成し、へリックスH8−Hllは、サブドメイン2を形成し、へリックスH12−H16はサブドメイン3を形成している。
【0175】
図3: 活性部位領域での、アポPDE5*(「ループスワップされた」PDE5)(左)及びUK−088,800でソーキングされたPDE5*(右)の2.5σで輪郭どりされたfo−fc電子密度マップの比較。
【0176】
図4: UK−088,800、5−(2−エトキシフェニル)−l−メチル−3−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オンの構造の二次元表現(N4上の水素のみが例示されている)。
【実施例】
【0177】
実験の部
実施例1 − PDE5野生型触媒ドメイン(E534−N875)の構築及び発現
ヒトPDE5配列(受入番号=AB001635)からオリゴヌクレオチドプライマを設計した。PCR増幅によって全長PDE5クローンからDNAフラグメントを生成させた。以下のオリゴヌクレオチドを用いた:
【0178】
PDE5 5’タグ無しオリゴ:
【化1】

(配列番号7)
【0179】
PDE5 3’長オリゴ:
【化2】

(配列番号8)
【0180】
1.5mMのMgCl2、200μMのdNTPs、50pmolの各プライマ及び2.5単位のExpand DNAポリメラーゼ(Roche, East Sussex, UK)を含む溶液の中で合計体積50lでPCR反応を30サイクルの間実施した。各サイクルは94°Cで1分間、50℃で1分間及び72℃で2分間であった。
【0181】
1%のアガロースゲル上で両方の構成体についての最終的な増幅済みDNAフラグメントを分離し、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, West Sussex, UK)を用いて精製した。次に、EcoRI及びXbaIを用いてフラグメントを消化させ、pFastbacl EcoRI/XbaIで消化されたベクター(Life Technologies, Paisley, UK)内にライゲートした。ライゲーションは、12°Cで16時間実施した。次に、ライゲーション混合物をE.coli(TOP 10)中に電気穿孔した (Invitrogen, Gronigen, The Netherlands)。
【0182】
所望のインサートを含むクローンを、100ug/mlのアンピシリンを含む2YTプレートを用いて選択し、適正なサイズのインサートの存在についてエンドクレアーゼ消化を用いて検査した。Lark(Saffron Waldon, UK)によりDNA配列分析を実施した。
【0183】
pFastbacl::PDE5触媒ドメイン(534−875)プラスミドDNAを用いてE.coli DH10BACTMを形質転換することにより組換え型バクミドDNAを産生した。Bac to BacTM バキュロウイルス発現マニュアル(Life Technologies, Paisley, UK)中に示されている方法に従ってこれを実施した。PCR分析を用して、pUC/M13増幅プライマ(Invitrogen, Gronigen, The Netherlands)を用いたバクミドへの転位がうまくいったかどうかをした。
【0184】
Sf−9昆虫細胞を用いたトランスフェクションにより一次バキュロウイルスストックの生成を実施した。適正なインサートを含むバクミドDNAをCELLFECTINTMトランスフェクション試薬(Life Technologies, Paisley, UK)と混合し、SF−900II無血清培地(Invitrogen, Gronigen, The Netherlands)を用いてSf−9昆虫細胞の単層に添加した。27°Cで72時間のインキュベーションの後、上清を初期バキュロウイルスストックとして収穫した。27°Cで125rpmの攪拌下で1リットル入りアーレンマイヤーフラスコ(Corning Life Sciences, New York, USA)内で1×106 細胞/mlの割合でSf−9昆虫細胞の懸濁液中に初期ウイルスストックを加えることによって、このストックを増幅させた。感染から6日後に上清を遠心分離より収穫し、作業ウイルスストックとして4℃で保管した。この作業ストックの力価を、Bac to Bac バキュロウイルス発現マニュアル(Invitrogen, Gronigen, The Netherlands)中にあるように、従来のプラーク検定分析によって決定した。
【0185】
異なる感染多重度(MOI)及び収穫時間を観察してSf−9及びTni High5昆虫細胞培養を用いてアーレンマイヤーフラスコ培養中でタンパク質発現を最適化し、次に発見した最適条件を発酵装置内へとスケールアップした。
【0186】
使用された発酵装置は、Applikon1030バイオコントローラを用いて制御される加圧滅菌可能なApplikon3リットル入りの攪拌付き容器であった。T.li High5細胞の接種材料を当初、振とうフラスコ培養から調製した。Excel405無血清培地(JRH Biosciences, Kansas, USA)中で作り上げた1.8リットルの初期作業体積で、1mlあたり5×105 個の細胞を発酵装置に接種した。温度を27℃で制御し、溶存酸素濃度を60%で制御し、pHは測定したが、制御はしなかった。酸素濃度は全体を通じて制御した。培養内部ではマリンインペラの二重インペラシステムにより、又液体/ヘッドスペース界面ではRushtonインペラで攪拌を150rpmに設定した。曝気は、毎分0.5lでヘッドスペースまで連続的であった。
【0187】
生存細胞密度が2×106細胞/mlに達した時点で、滴定されたバキュロウイルス作業ストックから1のMOIを用いて培養に感染させた。該培養についての収穫時間は感染から48時間後であった。収穫は、2000gで15分間の遠心分離により達成された。次に昆虫細胞ペレットを、精製に先立ち80°Cで保管した。
【0188】
実施例2 − His6−タグ付きPDE5野生型触媒ドメイン(E534−N875)の構築及び発現
ヒトPDE5の配列(=PDE5A1イソ型;受入番号=AB001635)からオリゴヌクレオチドプライマを設計した。PCR増幅によって全長PDE5クローンからDNAフラグメントを生成させた。以下のオリゴヌクレオチドを用いた:
【0189】
PDE5 5’His6オリゴ:
【化3】

(配列番号9)
【0190】
PDE5 3’長オリゴ:
【化4】

(配列番号8)
【0191】
1.5mMのMgCl2、200μMのdNTPs、50pmolの各プライマ及び2.5単位のExpand DNAポリメラーゼ(Roche, East Sussex, UK)を含む溶液の中で合計体積50lでPCR反応を30サイクルの間実施した。各サイクルは94°Cで1分間、50℃で1分間及び72℃で2分間であった。
【0192】
1%のアガロースゲル上で、両方の構成体についての最終的な増幅済みDNAフラグメントを分離し、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, West Sussex, UK)を用いて精製した。次に、EcoRI及びXbaIを用いてフラグメントを消化させ、pFastbacl EcoRI/XbaIで消化されたベクター(Life Technologies, Paisley, UK)内にライゲートした。ライゲーションは、12°Cで16時間実施した。次に、ライゲーション混合物をE.coli(TOP 10)中に電気穿孔した (Invitrogen, Gronigen, The Netherlands)。
【0193】
所望のインサートを含むクローンを、100ug/mlのアンピシリンを含む2YTプレートを用いて選択し、適正なサイズのインサートの存在についてエンドクレアーゼ消化を用いて検査した。Lark(Saffron Waldon, UK)によりDNA配列分析を実施した。
【0194】
組換え型バキュロウイルスを生成するための方法は、野生型PDE5触媒ドメイン用のものと同じであった(実施例1参照)。
【0195】
発現最適化は、再びT.ni High5昆虫細胞が最適な発現を与えることを示した。従って、先行の構成体の場合と同様の手順を用いて、発酵装置内でバキュロウイルス発現を実施した。
【0196】
実施例3 − バキュロウイルス中でのPDE5*(E534−E858)の構築及び発現
以下のオリゴヌクレオチドを用いたオーバーラップエクステンションPCRを使用することによって、PDE5*構成体を産生した。
【0197】
【化5】

(配列番号7)
【0198】
【化6】

(配列番号10)
【0199】
【化7】

(配列番号11)
【0200】
【化8】

(配列番号12)
【0201】
野生型PDE5触媒ドメイン構成体の場合と同じ鋳型DNAと共にオリゴヌクレオチドA+B及びC+Dを用いて、初期DNAフラグメントを生成した。1.5mMのMgCl2、200μMのdNTPs、50pmolの各プライマ及び2.5単位のExpand DNAポリメラーゼ(Roche, East Sussex, UK)を含む溶液の中で合計体積50lでPCR反応を30サイクルの間実施した。各サイクルは94℃で1分間、50℃で1分間及び72℃で2分間であった。PCRの第2ラウンドでは、全長構成体を増幅させるためにオリゴヌクレオチドA+Dを用いた状態で、鋳型DNAとしてPCR A+B及びC+DからのDNA産物を用いた。PCR条件は、初期PCR反応と同じであった。これによって、PDE5触媒ドメイン(C−term875)と比較してC−末端トランケーション(C−term858)とPDE4スワップされた領域を伴う構成体が生成される。
【0202】
組換え型バキュロウイルスを生成するための方法は、野生型PDE5触媒ドメイン用のものと同じであった(実施例1参照)。
【0203】
発現最適化は、再びT.ni High5昆虫細胞が最適な発現を与えることを示した。従って、先行の構成体の場合と同様の手順を用いて、発酵装置内でバキュロウイルス発現を実施した。
【0204】
実施例4 − E.coli中でのPDE5*(E534−E858)の構築及び発現
以下のオリゴヌクレオチドを用いたPCRを使用し、鋳型DNAは、実施例3で生成されたpFastbacl::PDE5*プラスミドDNA(配列確認済み)であるものとして、E.coli中のPDE5*構成体を生成した。
【0205】
【化9】

(配列番号13)
【0206】
【化10】

(配列番号14)
1.5mMのMgCl2、200μMのdNTPs、50pmolの各プライマ及び2.5単位のExpand DNAポリメラーゼ(Roche, East Sussex, UK)を含む溶液の中で合計体積50lでPCR反応を30サイクルの間実施した。各サイクルは94°Cで1分間、50℃で1分間及び72℃で2分間であった。
【0207】
最終的な増幅済みDNAフラグメントを1%のアガロースゲル上で分離し、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, West Sussex, UK)を用いて精製した。次に、Ndel及びXholを用いてフラグメントを消化させ、pET21C(Life Technologies, Paisley, UK)Ndel/XhaIによる消化済みベクター内にライゲートした。ライゲーションは、12℃で16時間実施した。次に、ライゲーション混合物をE.coli(TOP 10)中に電気穿孔した (Invitrogen, Gronigen, The Netherlands)。
【0208】
100ug/mlのアンピシリンを含む2YTプレートを用いて所望のインサートを含むクローンを選択した。適正なサイズのインサートの存在についてのエンドクレアーゼ消化を用いてプラスミドDNAも同様に検査した。Lark(Saffron Waldon, UK)によりDNA配列分析を実施した。
【0209】
次に、適正に配列決定されたプラスミドDNAを発現のためにE.coli BL21 (DE3)(Novagen, Nottingham, UK)中に電気穿孔した。100pg/mlのカルベニシリンを培地として含む5リットルの2YT培養液を用いて、7リットル入りのApplikon発酵装置中で発現を実施した。2重ラシュトンインペラアセンブリを用いて攪拌を1000rpmに、かつスパージャへの曝気を毎分2リットルに設定した。37°C及び200rpmで一晩成長させた振とうフラスコ培養を発酵装置に接種し、ここで接種密度は1%vol/volであった。発酵のpHを20%vol/volのNH4OH溶液を用いて7.2に制御し、温度を当初37℃に設定した。OD600nmが1.5に到達した時点で、温度設定点を25°Cに降下させ、次にlmMの最終濃度で、IPTGを用いて培養を誘発させた。誘発から4時間後に、発酵をバッチ遠心分離(10分間8,000rpm)により収穫した。その後最終ペレットを凍結(−80°C)させて、後続の精製を待った。
【0210】
実施例5 − PDE5*触媒ドメインの精製
E.coli発酵由来のペレットを、湿潤細胞重量1グラムあたり10mlsの溶解緩衝液中に再懸濁させ、連続細胞分析器(Constant Systems, Warwickshire, UK)を用い20kpsiの圧力で機械的に分解した。溶解緩衝液は、50mMのトリスHCl(pH7.5)、100mMのNaCl、EDTA−を含まないプロテアーゼ阻害物質カクテル錠剤を含有する1 mMのDTT(Roche, East Sussex, UK)及び10mμMのE−64でを成っていた。溶解物を急冷し、細胞残屑を除去するために45分間14000gで遠心分離した。その後全ての精製を、Akta Explorer精製システム(Amersham Pharmacia, Buckinghamshire, UK).を用いて実施した。収集されたフロースルーと共に毎分5mlの速度で、50mlのQ−セファロースファストフローカラム(Amersham Pharmacia, Buckinghamshire, UK)に対して上清を適用した。次にブルーセファロース緩衝液A(50Mのビス−トリス(pH6.4)、50mMのNaCl、2mMのEDTA、2mMのEGTA及び1mMのDTT)中で予備平衡された2リットルのG−25超微細脱塩カラム(Amersham Pharmacia, Buckinghamshire, UK)に対してフロースルー試料を毎分50 mlで適用した。ブルーセファロース緩衝液A中でタンパク質画分を溶出させた。
【0211】
次のカラムステップを順次行い、試料を当初20mlのSP−セファロース高性能カラム(Amersham Pharmacia, Buckinghamshire, UK)上に投入し、ここから10mlのブルーセファロースファストフローカラム(Amersham Pharmacia, Buckinghamshire, UK)上に毎分2mlの流量で直接フロースルーさせた。ひとたび投入が完了した時点で、SP−セファロースカラムをラインから取り出し、ブルーセファロースカラムを5カラム体積のブルーセファロース緩衝液Aで洗浄した。280nmの吸光度が基線に到達するまで1MのNaClを含むブルーセファロース緩衝液Aでカラムを洗浄し、次に5カラム体積のブルーセファロース緩衝液で洗浄した。20mMのcGMP(Na塩)を含有するブルーセファロース緩衝液(Sigma, Dorset, UK)を用いてPDE5* タンパク質溶液を段階溶出させた。
【0212】
トリス-グリシンSDSゲル(Invitrogen, Gronigen, The Netherlands)上で画分を検定し、適宜プールした。遠心濃縮装置(Vivascience, Gloucestershire, UK)を用いてこれらの画分を2.5mg/mlまで濃縮し、毎分1.5mlで50mMのビス−トリス(pH6.8)、500mMのNaCl、1mMのDTT及び2μMnoE−64で予備平衡されたSuperdex−200のprepグレード26/60カラム上に投入した。溶出した画分をトリス-グリシンSDS PAGEゲル上で分析した。
【0213】
実施例6 - PDE5*の結晶化
最終ゲルろ過カラムからのPDE5*画分をプールし(合計体積25mls)、タンパク質濃度を検定した(0.2mg/ml)。タンパク質溶液に対して、10μMのE−64及び1mg/mlのロイペプチン (Sigma, Dorset, UK)を補足した。4°C、3,000rpmでCentriprepの10kDa分子量カットフ遠心濃縮器(Amicon Bioseparations, Maine, USA)を用いて、溶液を10mg/mlまで濃縮した。結晶化に先立ち、エッペンドルフ遠心分離機を用いて、タンパク質溶液を5分間14,000rpmで遠心分離した。
【0214】
懸垂液滴の蒸気拡散結晶化試行を4℃でセットした。2μlのタンパク質溶液と混合させた2μlの貯液槽緩衝液から成るを液滴を、0.1MナトリウムHEPES pH7.4、20%ポリエチレングリコール4000及び10%イソ−プロパノールを含有する500μlの貯液槽溶液上のカバースリップの上に懸濁させた。最大寸法が700μmまでの板状結晶が、1〜3日後に成長した。正方形のマイクロブリッジ中の20%ポリエチレングリコール4000及びpH7.4の0.1MのナトリウムHEPESの20μl液滴に結晶を移した。次に15%のグリセロールを伴う20%ポリエチレングリコール4000、0.1MのナトリウムHEPES pH7.4の溶液に結晶を移し、その後X線データ収集の間は凍結させた。
【0215】
結晶は、格子寸法がa=55.97Å、b=76.55Å、c=80.50Å及びβ=103.09で空間群C2に属する。これらは、非対称単位1つあたり1個の分子を含み、44%の溶剤含有率を有する(Matthews, 1969)。
【0216】
実施例7 − 阻害物質をPDE5*内にソーキングさせる
実施例6中で詳述された方法に従って得られたアポPDE5*の板状結晶を、正方形のマイクロブリッジ中の20%ポリエチレングリコール4000及び0.1MのナトリウムHEPESの20μl液滴に移した。これに対して、DMSO中に溶解させた濃度20mg/mlの阻害物質1.0μlを加えた。次に15%のグリセロールを伴う20%ポリエチレングリコール4000、pH7.4の0.1MのナトリウムHEPESの溶液に結晶を移し、その後X線データ収集の間凍結させた。
【0217】
実施例 8 - PDE5*のソーキング可能なC2結晶形態のデータ収集、構造決定及び精密化
P21結晶形態(結晶は、単位細胞寸法、a=54.93Å、b=77.77Å、c=82.05Å、α=γ=90°、β=100.955°でモノリシック空間群P2lに属する)中のPDE5*の1つのサブセットの座標を用いて分子交換(MR)によりE.coliで工学処理されたPDE5*の構造を解き、その座標セットを表3中で詳述した。該分子交換は、AMORE(CCP4, J. Navaza 1994)を用いて実施した。結果として得られたマップは優れた品質のものであり、QUANTA(登録商標)(Accelrys products)を用いて構造を再適合させた。
【0218】
Osmicミラー(MSC)を伴う社内のFR-D回転陽極(リガク)上のリガクSturn92CCD検出装置を用いて代表的なX線回折データセットを収集した。Crystal Clear/D*Trek処理パッケージ(リガク−MSC)を用いてデータを処理した。データ収集統計は、表1中に要約されている(Apo)。
【0219】
結晶は、細胞寸法、1a=55.97Å、b=76.55Å、c=80.50Å、β=103.09°で空間群C2に属する。これらは、非対称単位1つあたり1個の分子を含有し、44%の溶剤含有率を有する(Matthews, 1969)。
【0220】
「mlf」最大尤度標的関数を用いたCNX(Bruenger et al.,1998)を使用して解像度範囲30〜1.6Å内で精密化を実施した。平坦バルク溶剤モデルからの部分構造因子及び異方性B−因子補正を精密化全体を通して提供した。精密化されたモデルについてのR−因子は30〜1.6Åの解像度範囲の全てのデータについて0.231である(自由R−因子、データの5%、0.267)。精密化統計は、表2中に要約されている(Apo)。
【0221】
アポPDE5*の精密化モデルについての座標セットは表4に記録されている。モデルは、323個のアミノ酸残基、537−858(残基Glu681Aは、PDE5付番スキームを維持するように付番されている)、亜鉛イオン及びマグネシウムイオン、並びに222個の水分子を含んでいる。
【0222】
実施例9 − UK−088,800でソーキングされたPDE5*のソーキング可能なC2結晶形態のデータ収集、構造決定及び精密化
PDE5*のC2結晶形態中にソーキングさせたUK−088,800の構造を、差フーリエ法により解いた。
【0223】
Osmicミラー(MSC)を伴う社内のFR−D回転陽極(リガク)上のRaxisIV画像プレート検出装置を用いてX線回折データセットを収集した。HKLパッケージ(Otwinowski & Minor, 1997)を用いて全てのデータを処理した。データ収集統計は、表1中に要約されている(UK−088,800)。
の分子を含み、44%の溶剤含有率を有する(Matthews, 1969)。
【0224】
「mlf」最大尤度標的関数を用いたCNX(Bruenger et al., 1998)を使用して解像度範囲30〜1.5Å内で精密化を実施した。平坦バルク溶剤モデルからの部分構造因子及び異方性B−因子補正を精密化全体を通して提供した。精密化されたモデルについてのR−因子は30〜1.5Åの解像度範囲の全てのデータについて0.219である(自由R−因子、データの5%、0.228)。精密化統計は、表2中に要約されている(UK−088,800)。
【0225】
PDE5*−UK−088,800の精密化モデルについての座標セットは表5に記録されている。モデルは、323個のアミノ酸残基、537−858(残基Glu681Aは、PDE5付番スキームを維持するように付番されている)、リガンドUK−088,800、亜鉛イオン及びマグネシウムイオン、並びに183個の水分子を含んでいる。
【0226】
実施例10 - UK−088,800でソーキングされたPDE5*とアポPDE5*の比較
モデル内へのリガンドの取り込みに先立ち誘導されたモデル位相及び実験構造要素振幅を用いて計算されたUK−088,800でソーキングされたPDE5*の(fo−fc)αcalc電子密度マップは、UK−088,880として明白に解釈することのできる明らかな特長を有するピークを示している(図3)。これと対照的に、アポPDE5*の等価の(fo−fc)αcalc電子密度マップは、小分子リガンドとして解釈し得るような有意の残留特長を全く示していない。実験は、PDE5*に対するUK−088,800の結合モードを実験的に決定することを可能しており、本書中に記述されている通りのPDE5*C2結晶形態がリガンドソーキングに反応しやすいことを実施している。C2結晶形態中のPDE5*の構造は、P21結晶形態で観察されたものに対して有意な差異を示していない。
【0227】
【表2】

【0228】
【表3】

【0229】
表3
Sildenafilを伴うバキュロウイルスにより発現されたPDE5*の複合体についての原子座標
原子番号、原子タイプ、残基のタイプ、残基番号デカルト座標X、Y、Z、原子占有率(O)及び温度因子(B)
【0230】
【表4】

【0231】
【表5】

【0232】
【表6】

【0233】
【表7】

【0234】
【表8】

【0235】
【表9】

【0236】
【表10】

【0237】
【表11】

【0238】
【表12】

【0239】
【表13】

【0240】
【表14】

【0241】
【表15】

【0242】
【表16】

【0243】
【表17】

【0244】
【表18】

【0245】
【表19】

【0246】
【表20】

【0247】
【表21】

【0248】
【表22】

【0249】
【表23】

【0250】
【表24】

【0251】
【表25】

【0252】
【表26】

【0253】
【表27】

【0254】
【表28】

【0255】
【表29】

【0256】
【表30】

【0257】
【表31】

【0258】
【表32】

【0259】
【表33】

【0260】
【表34】

【0261】
【表35】

【0262】
【表36】

【0263】
【表37】

【0264】
【表38】

【0265】
【表39】

【0266】
【表40】

【0267】
【表41】

【0268】
【表42】

【0269】
【表43】

【0270】
【表44】

【0271】
【表45】

【0272】
【表46】

【0273】
【表47】

【0274】
【表48】

【0275】
【表49】

【0276】
【表50】

【0277】
【表51】

【0278】
【表52】

【0279】
【表53】

【0280】
【表54】

【0281】
【表55】

【0282】
【表56】

【0283】
【表57】

【0284】
【表58】

【0285】
【表59】

【0286】
【表60】

【0287】
【表61】

【0288】
【表62】

【0289】
【表63】

【0290】
【表64】

【0291】
【表65】

【0292】
【表66】

【0293】
【表67】

【0294】
【表68】

【0295】
【表69】

【0296】
【表70】

【0297】
【表71】

【0298】
【表72】

【0299】
【表73】

【0300】
【表74】

【0301】
【表75】

【0302】
【表76】

【0303】
【表77】

【0304】
【表78】

【0305】
【表79】

【0306】
【表80】

【0307】
【表81】

【0308】
【表82】

【0309】
【表83】

【0310】
【表84】

【0311】
表4
PDE5*アポタンパク質についての原子座標
原子番号、原子のタイプ、残基のタイプ、残基番号デカルト座標X、Y、Z、原子占有率(O)、温度因子(B)
【0312】
【表85】

【0313】
【表86】

【0314】
【表87】

【0315】
【表88】

【0316】
【表89】

【0317】
【表90】

【0318】
【表91】

【0319】
【表92】

【0320】
【表93】

【0321】
【表94】

【0322】
【表95】

【0323】
【表96】

【0324】
【表97】

【0325】
【表98】

【0326】
【表99】

【0327】
【表100】

【0328】
【表101】

【0329】
【表102】

【0330】
【表103】

【0331】
【表104】

【0332】
【表105】

【0333】
【表106】

【0334】
【表107】

【0335】
【表108】

【0336】
【表109】

【0337】
【表110】

【0338】
【表111】

【0339】
【表112】

【0340】
【表113】

【0341】
【表114】

【0342】
【表115】

【0343】
【表116】

【0344】
【表117】

【0345】
【表118】

【0346】
【表119】

【0347】
【表120】

【0348】
【表121】

【0349】
【表122】

【0350】
【表123】

【0351】
【表124】

【0352】
【表125】

【0353】
【表126】

【0354】
【表127】

【0355】
【表128】

【0356】
表5
UK−088,800をもつPDE5*複合体の原子座標
原子番号、原子のタイプ、残基番号デカルト座標X,Y,Z,原子占有(O)、温度因子(B)、及び原子タイプ
【0357】
【表129】

【0358】
【表130】

【0359】
【表131】

【0360】
【表132】

【0361】
【表133】

【0362】
【表134】

【0363】
【表135】

【0364】
【表136】

【0365】
【表137】

【0366】
【表138】

【0367】
【表139】

【0368】
【表140】

【0369】
【表141】

【0370】
【表142】

【0371】
【表143】

【0372】
【表144】

【0373】
【表145】

【0374】
【表146】

【0375】
【表147】

【0376】
【表148】

【0377】
【表149】

【0378】
【表150】

【0379】
【表151】

【0380】
【表152】

【0381】
【表153】

【0382】
【表154】

【0383】
【表155】

【0384】
【表156】

【0385】
【表157】

【0386】
【表158】

【0387】
【表159】

【0388】
【表160】

【0389】
【表161】

【0390】
【表162】

【0391】
【表163】

【0392】
【表164】

【0393】
【表165】

【0394】
【表166】

【0395】
【表167】

【0396】
【表168】

【0397】
【表169】

【0398】
【表170】

【0399】
【表171】

【0400】
【表172】

【0401】
【化11】

【0402】
【化12】

【0403】
略語
cAMP 環式アデノシンモノリン酸塩
cGMP 環式グアノシンモノリン酸塩
PDE ホスホジエステラーゼ
PGK タンパク質キナーゼG
MAD 多重波長異常分散
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
2YT 1リットルあたりトリプトン 16g、酵母エキス 10g、 NaCl 5gの溶液
Tris トリス[ヒドロキシメチル]アミノ−メタン
E−64 エポキシスクシニル−l−リューシルアミド−(4−グアニジ ノ) タン
【0404】
DTT DL−ジチトトレイトール
β−ME β−メルカプトエタノール
IPTG β−D−イソプロピル−チオガラクトピラノシド
EDTA エチレンジアミン四酢酸
Bis−Tris ビス[2−ヒドロキシエチル]イミノ−トリス [ヒドロキシ メチル]メタン
PEG ポリエチレングリコール
PEG2KMME ポリエチレングリコール2000モノメチルエーテル
rmsd 標準偏差
rpm 毎分回転数
Moi 感染の多重度
Sildenfil 5−[2−エトキシ−5−(4−メチル−1−ピペラジニルス ルホニル)フェニル]−1−メチル−3−n−プロピル−1, 6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7 −オン、これは1−[[3−(6,7−ジヒドロ−1−メチル −7−オキソ−3−プロピル−lH−ピラゾロ[4,3−d] ピリミジン−5−イル)−4−エトキシフェニル]スルホニル ]−4−メチルピペラジン(欧州特許第A−0463756号 参照)としても知られている。
UK−092,480 「Sildenfil」参照
UK−088,800 5−(2−エトキシフェニル)−1−メチル−3−プロピル− 1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン −7−オン
【0405】
配列表
配列番号1
野生型PDE5「ループ領域」
【化13】

【0406】
配列番号2
野生型PDE5触媒ドメイン
【化14】

【0407】
配列番号3
全長野生型PDE5配列
【化15】

【0408】
配列番号4
野生型PDE4「ループ領域」
HPGVSNQFLINTNSELALMYNDESVLE
【0409】
配列番号5
ループスワップされたPDE5触媒ドメイン=PDE5*
【化16】

【0410】
配列番号6
PDE5*を含む全長PDE5配列
【化17】

【0411】
配列番号7
【化18】

【0412】
配列番号8
【化19】

【0413】
配列番号9
【化20】

【0414】
配列番号10
【化21】

【0415】
配列番号11
【化22】

【0416】
配列番号12
【化23】

【0417】
配列番号13
【化24】

【0418】
配列番号14
【化25】

【図面の簡単な説明】
【0419】
【図1】図1は、PDE5(上部配列)及びPDE4b(下部配列)触媒ドメインのアライメントを示している。構造からのへリックスの位置及び付番は、各々についてマーキングされている。太字体の残基は、工学処理された領域についての配列アライメントを示している。PDE4由来の配列は、PDE5中の対応する領域を交換するために使用されてきた。こうして、この領域への残基の挿入という結果がもたらされる。下線は、PDE5*中に不在のC−末端領域を強調している。
【図2】図2は、二次構造要素を示すタンパク質の全体的折畳みのリボン表現を示している。阻害物質は、全原子ステック表現で示され、金属イオンは球体として示されている。(A)=PDE4b、(B)=野生型PDE5+Sildenafil、(C)=「ループスワップされた」PDE5(PDE5*)+Sildenafil。へリックスは、基準としてPDE4構造を用いて付番されている。へリックスH0−H7はサブドメイン1を形成し、へリックスH8−Hllは、サブドメイン2を形成し、へリックスH12−H16はサブドメイン3を形成している。
【図3】図3: 活性部位領域での、アポPDE5*(「ループスワップされた」PDE5)(左)及びUK−088,800でソーキングされたPDE5*(右)の2.5σで輪郭どりされたfo−fc電子密度マップの比較。
【図4】図4: UK−088,800、5−(2−エトキシフェニル)−l−メチル−3−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オンの構造の二次元表現(N4上の水素のみが例示されている)。
【配列表】









【特許請求の範囲】
【請求項1】
図4に表わされる式の化合物が、PDE5タンパク質の活性部位に結合されるように当該タンパク質中にソーキングされ得る、配列番号4を含む配列修飾されたPDE5タンパク質の結晶。
【請求項2】
配列番号5を含む、請求項1に記載の結晶。
【請求項3】
沈殿剤としてポリエチレングリコールを使用して成長させる、請求項1又は2に記載の結晶。
【請求項4】
6.5〜8.0のpH範囲内の緩衝液中で成長させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の結晶。
【請求項5】
アルコールの存在下で成長させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶。
【請求項6】
HEPES緩衝液、ポリエチレングリコール4000及びイソプロパノールを含む溶液中で成長させられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶。
【請求項7】
(m)空間群C2;
(n)単位格子寸法a〜56ű1%、b〜77ű1%、c〜81ű1%、α=γ=90°、β=103°±1%;
(o)1非対称単位あたり1分子;
(p)約40kDa±2kDaの分子量のタンパク質を含む;
(q)約44±5%の計算上の溶剤含有量;及び
(r)単斜晶系;
といった特徴の内1以上を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の結晶。
【請求項8】
前記タンパク質が、図2に示すヘリックス11及び12a(H12a725〜731)の間のループ領域に沿ってヘリックス15(H15 813〜824)及び14(H14 772〜797)、ヘリックス13(H13 749〜765)のC末端及びヘリックス11(H11 706〜721)のC末端を境界とするタンパク質の第3のサブドメイン内に活性部位を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の結晶。
【請求項9】
前記タンパク質がその第3サブドメイン内部に活性部位を有し、Leu765、Ala767及びIle768、ならびにPhe820、Val782、Phe786、Tyr612、Leu804、Ala779、Ala783、Ile813、Met816及びGln817の内の1以上を含んでいる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶。
【請求項10】
前記タンパク質が、任意の基準枠内で発現されるような誘導体セット又は表4で記されている原子座標により特徴づけされる3次元構造を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の結晶。
【請求項11】
PDE5リガンドがその中にソーキングされた、請求項1〜10のいずれか1項に記載の結晶。
【請求項12】
前記タンパク質が、任意の基準枠内で発現されているような誘導体セット又は表5で記されている原子座標により特徴づけされる3次元構造を有する、請求項11に記載の結晶。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の結晶の重原子誘導体。
【請求項14】
PDE5又は突然変異体、誘導体、変異体、類似体、相同体、サブドメイン又はフラグメントの3次元構造を誘導するための、請求項1〜13のいずれか1項に記載の結晶から決定された原子座標の使用。
【請求項15】
サブドメインが触媒ドメインである、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
PDE5のリガンドである化合物を同定する方法において、以下のステップ:
e)請求項1〜13のいずれか1項に記載の結晶を提供し、
f)化合物を結晶内にソーキングするのに貢献する条件下で化合物と結晶を接触させ、
g)得られたソーキングされた結晶内のタンパク質の活性部位に化合物が結合されているか否かをX線回折及び構造ソリューションを用いて決定し、
h)任意にはPDE5の阻害物質であるか否かを決定するためにリガンドを検定する、
を含む前記方法。
【請求項17】
前記化合物が図4に示す構造鋳型に基づいている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
PDE5と会合する能力をもつ化合物を設計する方法において、以下のステップ:
(a)請求項1〜13のいずれか1項に記載の結晶の中に存在するタンパク質又はそのフラグメント又はそのサブドメインの構造の3次元表現を計算により新規作成し、
(b)1つの化合物の構造の3次元表現を計算により新規作成し、
(c)タンパク質構造の3次元表現と化合物構造の3次元表現を同時に表示し、
(d)化合物構造の3次元表現がタンパク質構造の活性部位の3次元表現に適合するか否かを評価し、
(e)任意には、PDE5の阻害物質であるか否かを決定するべくリガンドを作り検定する、
を含む前記方法。
【請求項19】
潜在的PDE5リガンドの1群の中からPDE5リガンドを選択する方法において、以下の:
(a)請求項1〜13のいずれか1項に記載の結晶の中に存在するタンパク質又はそのフラグメント又はそのサブドメインの構造の3次元表現を計算により新規作成し、
(b)リガンドの構造の3次元表現を計算により新規作成し、
(c)タンパク質構造の3次元表現とリガンド構造の3次元表現を同時に表示し、
(d)リガンド構造の3次元表現がタンパク質構造の活性部位の3次元表現に適合するか否かを評価し、
(e)任意には、PDE5の阻害物質であるか否かを決定するべくリガンドを作り検定する、
を含む前記方法。
【請求項20】
PDE5の部位特異的突然変異体を設計するための、請求項16に従って誘導可能であるような3次元構造の使用。
【請求項21】
以下のステップ:
d)緩衝液及びポリエチレングリコールを含む安定化用水溶液中で結晶をインキュベートし、
e)安定化用溶液と化合物を組合わせ、及び
f)任意には、安定化用溶液に抗凍結剤を添加する、
を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の結晶内に化合物をソーキングする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−525801(P2006−525801A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506553(P2006−506553)
【出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001332
【国際公開番号】WO2004/097010
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】