説明

PDFインヒビターとしての二環式化合物および組成物

本発明は新規二環式化合物、種々医薬としての応用、例えば、細菌感染の処置など、ペプチジルデホルミラーゼ・インヒビターによる処置を施し得る障害の処置へのこれら化合物の使用、およびこれら化合物を含有してなる医薬組成物を目的とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願のクロス・リファレンス
本出願は米国仮特許出願第60/491,765号(2003年7月31日出願)の優先権の利益を請求するものである。この出願の全開示をそのまま本明細書において参照により本明細書の一部とする。
【0002】
技術分野
本発明は新規二環式化合物、種々医薬としての応用、例えば、細菌感染の処置など、ペプチド・デホルミラーゼ・インヒビターによる処置を施し得る障害の処置へのこれら化合物の使用、およびこれら化合物を含有してなる医薬組成物を目的とする。
【0003】
背景技術
宿主生物における微生物感染の処置では、できるだけ宿主に害とならないように、微生物を殺す有効な手段を必要とする。従って、病原となる微生物に特有の性質を標的とする薬剤が処置のために望ましい。ペニシリンはかかる薬剤のあまりにも有名な例である。ペニシリンは細菌(バクテリア)の細胞壁の生合成を阻害することによって作用する。哺乳動物の細胞は、生存のために細胞壁を必要としないので、細菌に感染したヒトにペニシリンを投与すると、ヒトの細胞を殺すことなく細菌を殺すことができる。しかし、抗生物質と抗菌剤の使用は、これら薬剤に対する耐性を増大させる結果となる。細菌は古典的な、より広範に使用されている抗微生物剤に対し耐性となるので、微生物感染に罹患しているヒトおよび非ヒト動物を有効に処置するためには、新しい抗微生物剤を開発しなければならない。
【0004】
ペプチド・デホルミラーゼは細菌などの原核生物に見出されるメタロペプチダーゼである。原核生物でのタンパク質合成はN−ホルミルメチオニン(fMet)で始まる。タンパク質合成の開始後、ホルミル基は酵素ペプチド・デホルミラーゼ(PDF)により除かれる;この活性はタンパク質の成熟に必須である。PDFは細菌の増殖に必要であることが示されている(Chang et al., J. Bacteriol., Vol. 171, pp. 4071-4072 (1989); Meinnel et al., J. Bacteriol., Vol. 176, No. 23, pp. 7387-7390 (1994); Mazel et al., EMBO J., Vol. 13, No. 4, pp. 914-23 (1994))。真核生物のタンパク質合成は、その開始に際しfMetに依存しないので、PDFを阻害する薬剤は新しい抗微生物剤および抗細菌剤の開発にとって魅力的な候補である。原核生物(病原性原核生物を含む)については文献(Balows A, Truper HG, Dworkin M, Harder W and Schleifer K-H (eds.),“The Prokaryotes(原核生物)”, 2nd ed., New York: Springer-Verlag Q. (1992); and Holt JG (Editor-in-chief), “Bergey & Apos, S., Manual of Systematic Bacteriology(系統細菌学マニュアル)”, Vols. 1-4, Baltimore: Williams & Wilkins (1982,1986,1989))に記載がある。
【0005】
PDFはメタロプロテイナーゼ・スーパーファミリーの一種である。PDFがメタロプロテイナーゼを特徴付ける特徴の多くを担う一方、PDFではその二次/三次構造およびその活性部位に配位する金属イオンが、スーパーファミリーの他のメンバーと異なっている。メタロプロテイナーゼは通常の代謝の多くの局面において重要である。マトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMP)として既知のクラスのものが、細胞外マトリックスの分解など、組織改造作用に関わっている。これらの酵素は妊娠中の黄体の形成(参照;Liu et al., Endocrinology, Vol. 140, No. 11, pp. 5330-5338 (1999))、創傷治癒(Yamagiwa et al., Bone, Vol. 25, No. 2, pp. 197-203 (1999))、および健常児における骨増殖(Bord et al., Bone, Vol. 23, No. 1, pp. 7-12 (1998))などの正常または有益な生物事象において役割を果たすと信じられる。メタロプロテイナーゼの関与する障害は、癌、関節炎および自己免疫疾患などの数種の疾患に関係している。MMPが正常の生理過程において重要であるため、原核生物にのみ存在するメタロプロテイナーゼPDFを阻害し、MMPの有意な阻害は回避する薬剤を開発することが好ましい。あるいは、PDFインヒビターがMMPを阻害するとしても、MMP阻害による副作用のリスクを、PDFを阻害する治療上の有益性が上回る場合にはこれも使用し得る。
【0006】
広範囲の多様な化合物がMMPおよび他のメタロプロテイナーゼの候補インヒビターとして開発されているが、PDFのインヒビターについての研究はそれ程広範囲ではない。既存の抗生物質に抵抗する細菌を処置するための新規な抗生物質を同定することの重要性に鑑み、評価用の新規PDFインヒビターを開発し、抗細菌剤および抗微生物剤として使用することが望ましい。本発明はこの必要性を満足するものである。
【0007】
発明の開示
本発明は、式I:
【化1】

【0008】
[ただし、式中、
nは1、2または3である;
Zは−CH−、−CHCH−、−S−、−S(O)−、−S(O)−および−NR−から選択される(式中、Rは水素、ヒドロキシ、ハロおよびC1−4アルキルから選択される);
は水素、C1−6アルキル、−XC(O)NROR、−XNRCORおよび−XC(O)NRから選択される(式中、Xは結合、C1−6アルキレン、C2−6アルケニレンおよびC2−6アルキニレンから選択される;式中、Xにはハロ、ヒドロキシおよびシアノが任意に置換し得る;Rは水素、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される;また、Rは水素およびC1−4アルキルから選択される);
は水素、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、ハロ置換C1−12アルキル、−XOR、−XOR、−XC(O)OR、−XOC(O)R、−XC(O)NR、−XC(O)NR、−XC(O)NROR、−XR、−XCHR、−XC(O)R、−XOXOR、−XOXOR、−XC(O)R、−XC≡N、−XC(O)XR、−XOXR、−XC(O)NRXRおよび−XC(O)NRXNRから選択される;式中、X、RおよびRは上記のとおりであり、RはC3−10シクロアルキル、C5−8ヘテロシクロアルキル、C6−10アリールおよびC5−8ヘテロアリールから選択される;Rのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールにはいずれにもハロ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、シアノ、ハロ置換C1−4アルキルおよび−XC(O)ORから選択される1ないし3個の基が任意に置換し得る;式中、XおよびRは上記のとおりである;ただし、ただし、RとRが共に水素であることはできない;Rが−CHC(O)NHOHである場合、Rは水素ではない;RとRは共に水素でない;
は水素、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルおよびハロ置換C1−6アルコキシから選択される]
で示される化合物およびそのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、個々の異性体および異性体の混合物;およびかかる化合物の医薬的に許容し得る塩および溶媒和物(例えば、水和物)に関する。
【0009】
本発明の第二の側面は、式Iで示される化合物、またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体または異性体の混合物;またはその医薬的に許容し得る塩を、1種以上の適切な添加剤と混合して含有する医薬組成物である。
本発明の第三の側面は、PDF活性の阻害により疾患の病理および/または症候を予防、阻害または回復させ得る動物の疾患の処置方法であって、式Iで示される化合物、またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体または異性体の混合物;またはその医薬的に許容し得る塩の治療有効量を該動物に投与することを特徴とする方法である。
【0010】
本発明の第四の側面は、PDF活性が疾患の病理および/または症候に寄与する動物疾患処置のための医薬の製造における式Iで示される化合物の使用である。
本発明の第五の側面は、式Iで示される化合物、およびそのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、保護誘導体、個々の異性体および異性体の混合物;およびその医薬的に許容し得る塩の製造法である。
【0011】
発明を実施するための最良の形態
本発明はPDF活性が介在する疾患の処置および/または予防に有用な化合物を提供する。また、かかる疾患または障害の処置方法をも提供する。
定義
本明細書においては、特に断りのない限り、以下のように定義する:
1つの基としての、または他の基、例えば、ハロ置換アルキル、アルコキシ、アシル、アルキルチオ、アルキルスルホニルおよびアルキルスルフィニルの構造要素としての「アルキル」は、直鎖であるか、または分枝していてもよい。1つの基としての、または他の基の構造要素としての「アルケニル」は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有し、直鎖であるか、または分枝していてもよい。好適なアルケニル基はビニルである。1つの基としての、または他の基および化合物の構造要素としての「アルキニル」は、少なくとも1つのC≡C三重結合を有し、また1つ以上のC=C二重結合を有してもよく、可能な限り直鎖であるか、分枝であり得る。好適なアルキニル基はプロパルギルである。シクロアルキル基は、それ自体としてまたは他の基の構造要素として、3ないし8個の炭素原子、好ましくは3ないし6個の炭素原子を有し得る。「アルキレン」および「アルケニレン」はそれぞれ「アルキル」および「アルケニル」基から誘導される二価の基である。
【0012】
「アリール」は6個ないし10個の環炭素原子を含む単環状または縮合二環状芳香環集合体を意味する。例えば、C6−12アリールはフェニル、ビフェニルまたはナフチルであり、好ましくはフェニルである。「アリレン」はアリール基から誘導される二価の基を意味する。例えば、本明細書にて使用されるアリレンは、フェニレン、ビフェニレンまたはナフチレンであり、好ましくはフェニレン、より好ましくは1,4-フェニレンである。
【0013】
「ビシクロアリール」は表示された数の環炭素原子を含む二環式環の集合体を意味し、環が単結合によりつながるか、または縮合しており、その集合体を含む環の少なくとも1つは芳香族である。例えば、ビシクロアリールはナフチル、ビフェニルなどである。「トリシクロアリール」は表示された数の環炭素原子を含む三環式環の集合体を意味し、その場合の環は縮合しており、その集合体を含む環の少なくとも1つは芳香族である。例えば、トリシクロアリールはアントラセニルなどである。「ビシクロアリレン」はビシクロアリール基から誘導される二価の基である。「ヘテロトリシクロアリール」は本出願に定義したトリシクロアリールを意味するが、ただし、1個以上の炭素原子が−N=、−NR−、−O−、−S−、−S(O)−および−S(O)−から選択されるヘテロ原子部分が置換わっている(式中、−NR−のRは水素またはC1−4アルキルである)。「ヘテロトリシクロアリレン」はヘテロトリシクロアリール基から誘導される二価の基であり、例えば、5,7−ジヒドロ−オキサゾロ[4,5−f]イソインドール−6−イレンである。「ヘテロビシクロアリール」は本出願に定義したビシクロアリールを意味するが、ただし、1個以上の炭素原子が−N=、−NR−、−O−、−S−、−S(O)−および−S(O)−から選択されるヘテロ原子部分が置換わっている(式中、−NR−のRは水素またはC1−4アルキルである)。例えば、C8−10ヘテロビシクロアリレンは、式Iで示されるYの説明に使用するように、ベンゾオキサゾール−2−イル、ベンゾチアゾール−2−イルなどである。
【0014】
「ハロ」または「ハロゲン」はF、Cl、BrまたはIを意味し、好ましくはFまたはClである。ハロ置換アルキル基および化合物は部分的にハロゲン化されているか、または過ハロゲン化されており、ハロゲン化が複数である場合、ハロゲン置換基は同一でも異なってもよい。好適な過ハロゲン化アルキル基は、例えば、トリフルオロメチルである。
【0015】
「ヘテロアリール」は本出願に定義するようなアリールを意味する;ただし、表示された1個以上の炭素原子はN、OまたはSから選択されるヘテロ原子部分と置換わっており、また各環は特に断りのない限り、5ないし6個の環原子から構成される。例えば、本出願に使用されるヘテロアリールは、チオフェニル、ピリジニル、フラニル、イソキサゾリル、ベンゾオキサゾリルまたはベンゾ[1,3]ジオキソリル、好ましくはチオフェニル、フラニルまたはピリジニルである。「ヘテロアリレン」は本出願に定義するようなヘテロアリールを意味するが、ただし、環集合体は二価の基を含む。
【0016】
「保護基」は以下の特性を有する化学基をいう:1)所望の官能性基と選択的に好収率で反応し、企図する反応に対し保護しようとするその反応に安定な保護された基質を生じること;2)保護された基質から選択的に除去可能であり、所望の官能性基を生じること;さらに3)かかる企図した反応に際し存在するまたは生成する他の官能基と適合し得る試薬により好収率で除去し得ること。適切な保護基の例は、文献(Greene et al., “Protective Groups in Organic Synthesis(有機合成における保護基)”, 2nd Ed., John Wiley & Sons, Inc., New York (1991))に見出し得る。好適なアミノ保護基は、限定されるものではないが、ベンジルオキシカルボニル(CBz)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、T−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、9−フルオレニルメチル−オキシカルボニル(Fmoc)、または適切な光感受性保護基、例えば、6−ニトロベラトリルオキシカルボニル(Nvoc)、ニトロピペロニル、ピレニルメトキシカルボニル、ニトロベンジル、ジメチルジメトキシベンジル、5−ブロモ−7−ニトロインドリニルなどである。好適なヒドロキシ保護基は、Fmoc、TBDMS、光感受性保護基(例えば、ニトロベラトリルオキシメチル(Nvom))、Mom(メトキシメチルエーテル)、およびMem(メトキシエトキシメチルエーテル)である。取分け好適な保護基はNPEOC(4−ニトロフェネチルオキシカルボニル)およびNPEOM(4−ニトロフェネチルオキシ−メチルオキシカルボニル)である。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明はPDF活性が仲介する疾患または障害の処置または予防に有用な化合物を提供する。一態様において、式Iで示される化合物では:nが1または2である;Zは−CH−、−CHCH−および−S−から選択される;Rは水素、−XC(O)NRORおよび−XNRCORから選択される(式中、Xは結合、C1−6アルキレン、C2−6アルケニレンおよびC2−6アルキニレンから選択される;式中、Xにはヒドロキシが任意に置換し得る;Rは水素、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される;また、Rは水素およびC1−4アルキルから選択される);Rは水素、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、ハロ置換C1−12アルキル、−XOR、−XOR、−XC(O)OR、−XOC(O)R、−XC(O)NR、−XC(O)NR、−XC(O)NROR、−XR、−XCHR、−XC(O)R、−XOXOR、−XOXOR、−XOXR、−XC(O)R、−XC≡N、−XC(O)NRXRおよび−XC(O)NRXNRから選択される;式中、X、RおよびRは上記のとおりであり、RはC3−10シクロアルキル、C5−8ヘテロシクロアルキル、C6−10アリールおよびC5−8ヘテロアリールから選択される;ただし、Rのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールにはいずれにもハロ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、シアノおよび−XC(O)ORから選択される1ないし3個の基が任意に置換し得る;式中、XおよびRは上記のとおりである;また、Rは水素およびハロから選択される。
【0018】
もう一つの態様において、Rは水素、−XC(O)NRORおよび−XNRCORから選択される(式中、Xは結合、C1−6アルキレン、C2−6アルケニレンおよびC2−6アルキニレンから選択される;式中、Xにはヒドロキシが任意に置換し得る;Rは水素、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される;また、Rは水素およびC1−4アルキルから選択される);Rは水素、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、ハロ置換C1−12アルキル、−XOR、−XOR、−XC(O)OR、−XOC(O)R、−XC(O)NR、−XC(O)NR、−XC(O)NROR、−XR、−XCHR、−XC(O)R、−XOXOR、−XOXOR、−XOXR、−XC(O)R、−XC≡N、−XC(O)NRXRおよび−XC(O)NRXNRから選択される;式中、X、RおよびRは上記のとおりであり、RはC3−10シクロアルキル、C5−8ヘテロシクロアルキル、C6−10アリールおよびC5−8ヘテロアリールから選択される;ただし、Rのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールにはいずれにもハロ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、シアノおよび−XC(O)ORから選択される1ないし3個の基が任意に置換し得る;式中、XおよびRは上記のとおりである;また、Rは水素およびハロから選択される。
【0019】
もう一つの態様において、Zは−S−である。
さらなる態様において、Rは水素、メトキシ−カルバモイル−メチル、ヒドロキシ−カルバモイル−メチル、ヒドロキシ−カルバモイル−ヒドロキシ−メチル、(ホルミル−ヒドロキシ−アミノ)−メチルおよび(アセチル−ヒドロキシ−アミノ)−メチルから選択される。
【0020】
さらなる態様において、Rは水素、カルバモイル−メチル、シアノ−メチル、メチル、シクロプロピル−メチル、ベンジル、ヒドロキシ−カルバモイル−メチル、2−メトキシ−エチル、3,3,3−トリフルオロ−プロピル、3−メチル−ブチル、4−メチル−ペンチル、ペンチル、シクロブチル−メチル、1−メチル−2−オキソ−2−フェニル−エチル、シクロヘキシル−メチル、シクロヘキシル−エチル、3,3−ジメチル−2−オキソ−ブチル、3−ブテニル、ピリジン−2−イル−カルバモイル−メチル、(3,4−ジフルオロ−フェニルカルバモイル)−メチル、(2,6−ジエチル−フェニルカルバモイル)−メチル、[1−(4−フルオロ−フェニル)−エチル−カルバモイル]−メチル、2−オキソ−2−ピロリジン−1−イル−エチル、(2,5−ジフルオロ−ベンジルカルバモイル)−メチル、プロピル−カルバモイル−メチル、(2−ジメチルアミノ−エチルカルバモイル)−メチル、ブチル、フェネチル、ホルミル−ヒドロキシ−アミノ、1−カルバモイル−エチル、2−[1,3]ジオキソラン−2−イル−エチル、テトラヒドロ−ピラン−2−イル−メチル、2−フルオロ−ベンジル、4−フルオロ−ベンジル、2,4−ジフルオロ−ベンジル、2−シアノ−ベンジル、3−シアノ−ベンジル、4−シアノ−ベンジル、3−メトキシ−ベンジル、2−(4−シアノ−フェニル)−2−オキソ−エチル、カルボキシ−メチル、2−(4−カルボキシ−メチル−エステル−フェニル)−2−オキソ−エチル、ピリジン−3−イル−カルバモイル−メチル、3,7−ジメチル−オクチル、2−オキソ−ブチル、2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル、3,3−ジフェニル−プロピル、エチル、2−エチル−ブチル、3−フルオロ−プロピル、3−ベンジルオキシ−プロピル、4−フェノキシ−ブチル、2−(3−メトキシ−フェニル)−2−オキソ−エチル、2−(4−メトキシ−フェニル)−2−オキソ−エチル、4−カルボキシ−ベンジル、2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−エチル、ノニル、3−メトキシ−カルボニル−プロピル、4−シアノ−ブチル、3−メチル−2−ブテニル、フェニル−プロピル、エトキシ−エチル、4−メチル−3−ペンテニル、フェノキシ−エチル、4−メトキシカルボニル−ブチル、4−アセトキシ−ブチル、4−プロピオニルオキシ−ブチルおよびヘキシルから選択される。
【0021】
本発明の好適な化合物は後記表1に示す。
本発明は保護された形状で存在するヒドロキシルまたはアミン基を有する形状の化合物を提供する;これらはプロドラッグとして機能する。プロドラッグは投与後に、1種以上の化学的または生化学的転換を介して活性薬物に変換される化合物である。インビトロでは強力なPDF酵素インヒビターであるが、細胞壁に浸透し難い化合物の抗菌力は、細胞壁通過後に元の分子に変換するプロドラッグの形状でそれらを使用することにより改善し得る。生理的条件下で請求項の化合物に容易に変換する本発明化合物の形状は、請求項化合物のプロドラッグであり、本発明の範囲内のものである。プロドラッグの例は、ヒドロキシル基をアシル化して酢酸エステルなどの比較的に不安定なエステルを形成させた形状、およびアミノ基をグリシンまたはセリンなどのL−アミノ酸のカルボキシル基でアシル化して、取分け共通の代謝酵素による加水分解を受け易いアミド結合を形成させた形状である。
【0022】
式Iで示される化合物は遊離の形状または塩の形状、例えば、無機または有機の酸が付加した塩の形状で存在し得る。ヒドロキシル基が存在する場合、これらの基は塩の形状、例えば、アンモニウム塩またはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛もしくはマグネシウムなどの金属との塩の形状でも存在し得る。式Iで示される化合物およびその塩の水和物または溶媒和物の形状も本発明の一部である。
【0023】
式Iで示される化合物がその分子内に不斉中心を有する場合、種々の光学異性体が得られる。本発明はまたエナンチオマー、ラセミ体、ジアステレオマーおよびその混合物をも包含する。さらに、式Iで示される化合物が幾何異性体を含む場合、本発明はシス−化合物、トランス−化合物およびその混合物を包含する。同様の考え方は、不斉炭素原子または上記の不飽和結合を有する出発原料に関しても適合する。
【0024】
抗菌性化合物の製造法
本発明はまた本発明の抗菌性化合物の製造法を包含する。記載した反応においては、反応性の官能基、例えば、ヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基が反応に不所望に関与することを回避するために、これらが最終産物に望ましい場合には、これら官能基を保護する必要がある。常套の保護基が標準的手法に従って使用し得る;例えば、文献(T.W. Greene and P. G. M. Wuts in “Protective Groups in Organic Chemistry(有機化学における保護基)”, John Wiley and Sons, 1991)参照。
式Iで示される化合物は以下の反応工程図1に従って製造し得る:
反応工程図I
【化2】

【0025】
(式中、n、Z、R、RおよびRは上記式Iの定義のとおりである。Yはハロゲンなどである)
反応は適当な溶媒(例えば、DMF、THF、DMSOなど)中、適切な塩基(例えば、NaH、LDAなど)の存在下に約25℃の温度で進行可能であり、完了までに12時間を要し得る。
【0026】
本発明化合物のさらなる製造法
本発明化合物は遊離塩基形状の化合物を医薬的に許容し得る無機または有機の酸と反応させることにより、医薬的に許容し得る酸付加塩として調製し得る。あるいは、遊離酸形状の本発明化合物を医薬的に許容し得る無機または有機の塩基と反応させることにより、医薬的に許容し得る塩基付加塩としての本発明化合物を調製し得る。あるいは、塩形状の本発明化合物は出発原料または中間体の塩を使用しても調製し得る。
【0027】
遊離酸または遊離塩基形状の本発明化合物は、それぞれ対応する塩基付加塩または酸付加塩の形状から調製し得る。例えば、酸付加塩形状の本発明化合物は、適切な塩基(例えば、水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウムなど)で処理することにより、対応する塩基に変換することができる。塩基付加塩形状の本発明化合物は、適切な酸(例えば、塩酸など)で処理することにより、対応する遊離酸に変換することができる。
【0028】
未酸化形状の本発明化合物は、本発明化合物のN−オキシドから、適当な不活性有機溶媒(例えば、アセトニトリル、エタノール、水性ジオキサンなど)中、還元剤(例えば、イオウ、二酸化イオウ、トリフェニルホスフィン、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、三臭化物など)で、0ないし80℃で処理することにより調製することができる。
【0029】
本発明化合物のプロドラッグ誘導体は、当業者周知の方法により調製し得る(さらなる詳細は以下を参照:Saulnier et al., (1994), Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985)。例えば、適切なプロドラッグは本発明の非誘導化合物を適切なカルバミル化剤(例えば、1,1−アシルオキシアルキルカルバノクロリデート、炭酸パラニトロフェニルなど)と反応させることにより調製し得る。
【0030】
本発明化合物の保護誘導体は、当業者周知の手段により調製し得る。保護基の創出とその除去に適用し得る技法の詳細な説明は、文献(T W. Greene, “Protecting Groups in Organic Chemistry”, 3rd edition, John Wiley and Sons, Inc., 1999)に見出し得る。
本発明化合物は溶媒和物(例えば、水和物)として簡便に調製し得るか、または本発明方法に際して形成し得る。本発明化合物の水和物は、ジオキサン、テトラヒドロフランまたはメタノールを使用する水性/有機溶媒混合物から再結晶することにより調製し得る。
【0031】
本発明化合物は、本発明化合物のラセミ混合物を光学活性分割剤と反応させ、一対のジアステレオマー化合物を形成させ、このジアステレオマーを分離し、光学的に純粋なエナンチオマーを回収することにより、その個々の立体異性体として調製することができる。エナンチオマーの分割は本発明化合物の共有結合ジアステレオマー誘導体を用いて実施し得るが、解離可能な複合体が好ましい(例えば、結晶性ジアステレオマー塩)。ジアステレオマーは異なる物理的性質(例えば、融点、沸点、溶解度、反応性など)を有し、これらの不同性を利用して容易に分離することができる。ジアステレオマーはクロマトグラフィーにより分離するか、または好ましくは溶解性の差に基づく分離/分割技法により分離し得る。光学的に純粋なエナンチオマーは、次いで、ラセミ化を起こさないような実際的な手段により、分割剤とともに回収される。該化合物のラセミ混合物からの立体異性体の分割に利用し得る技法についてのより詳細な説明は文献(Jean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolutions(エナンチオマー、ラセミ体および分割)”, John Wiley And Sons, Inc., 1981)に見出し得る。
【0032】
要約すると、式Iで示される化合物は以下の工程を含む方法により調製し得る:
(b)(a)反応工程図1;または
(b)本発明化合物を医薬的に許容し得る塩に変換する任意工程;
(c)塩形状の本発明化合物を非塩の形状に変換する任意工程;
(d)未酸化形状の本発明化合物を医薬的に許容し得るN−オキシドに変換する任意工程;
(e)N−オキシド形状の本発明化合物をその非酸化形状に変換する任意工程;
(f)異性体の混合物から本発明化合物の個々の異性体を分割する任意工程;
(g)非誘導化の本発明化合物を医薬的に許容し得るプロドラッグ誘導体に変換する任意工程;
(h)本発明化合物のプロドラッグ誘導体をその非誘導化形状に変換する任意工程。
【0033】
出発原料の製造について特に記載していない場合には、該化合物は既知であるか、または技術上既知の方法と同様に、あるいは以下の実施例に記載のように調製し得る。
当業者は上記の変換法が本発明化合物製造法の単なる代表例であること、また、他の周知の方法も同様に使用し得ることを認識するであろう。
【実施例】
【0034】
以下の実施例は代表的な化合物の調製法につき詳細に記載し、説明するものであるが、本発明を限定するものではない。
実施例1
2−(2−ヒドロキシカルバモイルメチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル)プロピオンアミド
【化3】

【0035】
(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)酢酸エチルエステル(0.59mmol)と無水DMF1mLとの溶液にNaH(鉱油中60%)(0.77mmol)を加え、その混合物を室温で20分間攪拌する。次いで、2−ブロモプロピオンアミドを加え、反応物を室温で12時間攪拌する。溶媒を蒸発させ、粗製の[4−(1−カルバモイル−エチル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル]酢酸エチルエステルをさらに精製することなく次工程に使用する。
【0036】
前工程で得られた[4−(1−カルバモイル−エチル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル]酢酸エチルエステルをMeOH500μLおよびDMF500μLに溶かし、400μLのLiOH(3M)で処理する。反応物を室温で12時間攪拌し、次いで溶媒を蒸発させる。得られる混合物をEtOAcで希釈し、HCl(1M)で洗浄する。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させる。粗製の[4−(1−カルバモイル−エチル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル]酢酸はさらに精製することなく次工程に使用する。
【0037】
粗製の[4−(1−カルバモイル−エチル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル]酢酸を無水THF1mLに溶かし、EtCOCl(0.71mmol)を0℃で加え、次いでN−メチルモルホリン(0.76mmol)を加える。反応混合物を0℃で10分間攪拌する。新たに調製したNHOH(1M/MeOH)(0.88mmol)を加え、反応物を室温で15分間攪拌する。溶媒を蒸発させた後、最終の2−(2−ヒドロキシカルバモイルメチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル)プロピオンアミドを、1〜99%ACNを勾配とする分取LC/MS(TFA不存在)により得る。
1H NMR (400 MHz, MeOD): δ 7.28 (m, 1H), 7.18 (m, 1H), 7.04 (m, 1H), 6.96 (m, 1H), 5.26 (m, 1H), 3.73 (m, 1H), 2.5 (m, 1H), 2.19 (m, 1H), 1.26 (m, 3H)。
MS: (ES+): 332.2 [M+23]。
【0038】
実施例2
2−(2−ヒドロキシカルバモイルメチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル)−N−(ピリジン−2−イル)アセトアミド
【化4】

【0039】
LDA(2M)/THF(3.26mmol)と2mLの無水THFとの溶液に、0℃窒素気流下に、(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)酢酸エチルエステル(1.62mmol)と4mLの乾燥THFとの溶液を滴下する。反応混合物の温度を室温に2時間保持し、次いで−78℃に低下させる。2−ブロモ酢酸(1.64mmol)と2mLの無水THFとの溶液を加え、反応温度をゆっくりと室温まで上昇させる。HCl(1M)を加えてpH=1とする。エチルエーテルを加えて、相分離する。有機相をNaSOで乾燥し、乾燥剤を濾去し、溶媒を蒸発させる。粗製産物を自動カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製して、産物2−(3,4−ジヒドロ−4−(カルボキシメチル)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン−2−イル)酢酸エチルを得る。収率:50%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.07 (bs, 1H), 7.38 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.27 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.07 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.93 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.69 (dd, 2H), 4.18 (dd, 2H), 3.99 (t,J = 6.4 Hz, 1H), 3.04 (dd, J1= 6.4 Hz, J2 = 16.8 Hz, 1H), 2.58 (dd, 1H), 1.26 (m, 3H)。
【0040】
2−(3,4−ジヒドロ−4−(カルボキシメチル)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン−2−イル)酢酸エステル(0.35mmol)と1mLの無水DMFとの溶液に、2−アミノピリジン(0.42mmol)、DIEA(0.42mmol)およびHATU(0.42mmol)を加える。次いで、反応混合物を4時間攪拌する。溶媒を蒸発させた後、自動カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により2−(2−カルボエトキシメチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル)−N−(ピリジン−2−イル)アセトアミドを得る。収率:40%。
【0041】
前工程で得られる2−(2−カルボエトキシメチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル)−N−(ピリジン−2−イル)アセトアミドを1mLのMeOHに溶かし、LiOH(3M)430μLで処理する。反応物を室温で12時間攪拌し、次いで溶媒を蒸発させる。得られる混合物をEtOAcで希釈し、HCl(1M)で洗う。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させる。
【0042】
粗製の2−(2−カルボキシメチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル)−N−(ピリジン−2−イル)アセトアミドを無水エチルエーテル0.5mLに溶かし、EtCOCl(0.043mmol)を0℃で加え、次いでN−メチルモルホリン(0.044mmol)を加える。反応混合物を0℃で10分間攪拌する。新たに調製したNHOH(1M/MeOH)(0.054mmol)を加え、反応物を室温で15分間攪拌する。最終の2−(2−ヒドロキシカルバモイルメチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル)−N−(ピリジン−2−イル)アセトアミドを、1〜99%ACNを勾配とする分取LC/MS(TFA不存在)により得る。
1H NMR (400 MHz, MeOD) δ 8.23 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.90 (t, 1H, J = 8.0 Hz), 7.80 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.32 (d, 1H, J = 9.0 Hz), 7.20 (m, 2H), 7.05 (d, 1H, J = 9.0 Hz), 7.01 (t, 1H, J = 8.0 Hz), 4.77 (s, 2H), 3.91 dd, 1H, J = 6.6 Hz, J = 8.8 Hz), 2.65 ( dd, 1H, J = 6.6 Hz, J = 14.4 Hz), 2.28 (dd, 1H, J = 8.8 Hz, J = 14.4 Hz)。
MS: (ES+): 373.20 [M+1]。
【0043】
実施例3
2−(8−ブロモ−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−N−ヒドロキシ−アセトアミド
【化5】

【0044】
2−クロロ−1,3−ジニトロ−ベンゼン(10mmol)とDMF30mLとの溶液を0℃に冷却する。2−メルカプト−コハク酸ビス(3−メチル−ブチル)エステル(11mmol)を一度に加える。添加後、EtN(12mmol)をその温度を0℃に維持しながら混合物に滴下する。0℃で2時間攪拌した後、混合物を水(300mL)に注ぎ、EtOAc(3×50mL)で抽出する。有機層を併合し、食塩水で洗い、MgSOで乾燥する。乾燥剤を濾去後、濾液を濃縮し、フラッシュ・カラム・クロマトグラフィー(シリカゲル、0〜25%EtOAc/ヘキサン)により精製して、所望の産物2−(2,6−ジクロロ−フェニルスルファニル)−コハク酸ビス(3−メチル−ブチル)エステルを暗赤色油として得る。収率:59%。
MS: (ES+): 457 [M+1]。
【0045】
2−(2,6−ジクロロ−フェニルスルファニル)−コハク酸ビス(3−メチル−ブチル)エステル(4.35mmol)とEtOH40mLとの溶液に、鉄粉(108.7mmol)を加え、次いで、水8mLとHCl(1M)4mLを加える。この混合物を90℃に加熱し、3時間攪拌する。鉄を濾去した後、混合物を室温に冷却し、濃縮する。残渣をフラッシュ・カラム・クロマトグラフィー(シリカゲル、0〜30%EtOAc/ヘキサン)により精製して、所望の産物、(8−アミノ−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−酢酸3−メチル−ブチルエステルを灰白色固体として得る。収率:80%。
MS: (ES+): 309[M+1]。
【0046】
(8−アミノ−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−酢酸3−メチル−ブチルエステル(0.49mmol)を含むアセトニトリル(3mL)溶液に、亜硝酸tert−ブチル(0.73mmol)を加え、次いで、CuBr(0.59mmol)を0℃で加える。この混合物を0℃で30分攪拌した後、HCl(1M)溶液10mLに注ぎ、EtOAc(20mL)で抽出する。有機層を集め、食塩水で洗い、MgSOで乾燥する。乾燥剤を濾去後、濾液を濃縮し、フラッシュ・カラム・クロマトグラフィー(シリカゲル、0〜15%EtOAc/ヘキサン)により精製して、所望の産物、(8−ブロモ−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−酢酸3−メチル−ブチルエステルを白色固体として得る。収率:24%。
MS: (ES+): 372 [M+1]。
【0047】
前工程で得られた(8−ブロモ−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−酢酸3−メチル−ブチルエステル(0.12mmol)とEtOH2mLとの溶液に、NaOH(1N)(0.24mmol)を加える。この混合物を室温で2時間攪拌した後、HCl(1M)0.3mLを加える。次いで、混合物をEtOAc(3×5mL)で抽出する。有機層を併合し、濃縮し、2mLの無水EtOに再溶解する。実施例1と同様の手法で、(8−ブロモ−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−酢酸を標題化合物、2−(8−ブロモ−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−N−ヒドロキシ−アセトアミドに変換し、分取薄層クロマトグラフィーにより精製する。
1H NMR (400 MHz, MeOD) δ7.18 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 6.70 (t, 1H, J = 8.0 Hz), 6.85 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 3.88 (dd, 1H, J = 9.0 Hz, J = 5.6 Hz), 2.66 (dd, 1H, J = 5.6Hz, J = 14.9Hz), 2.25 (dd, 1H, J =9.0Hz, J = 14.9Hz)。
MS: (ES+): 317.10 [M+1]。
【0048】
実施例4
2,N−ジヒドロキシ−2−(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−アセトアミド
【化6】

【0049】
4H−ベンゾ[1,4]チアジン−3−オン(6.06mmol)と無水THF30mLとの溶液に、新たに調製したLDA(13.9mmol)を−78℃で滴下する。混合物を−78℃で30分間攪拌した後、30分間0℃に加温し、再度−78℃に冷却する。得られる混合物を、−78℃に維持したグリオキサル酸エチル(18.3mmol、50%/トルエン)と無水THF10mLとの溶液に両端針を用いてゆっくり移す。添加後、混合物を0℃までゆっくり加温し、3時間攪拌する。EtOHと水(1:1)の混合物2mLを加えて反応を停止させ、その混合物をNHClの飽和水溶液(50mL)に注ぐ。EtOAc(3×40mL)で抽出した後、有機層を併合し、食塩水で洗い、MgSOで乾燥する。乾燥剤を濾去後、濾液を濃縮し、フラッシュ・カラム・クロマトグラフィー(シリカゲル、0〜2%EtOH/CHCl)により精製して、所望の産物、ヒドロキシ−(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−酢酸エチルエステルを白色固体として得る。収率:32%。
MS: (ES+): 268 [M+1]。
【0050】
ヒドロキシ−(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−酢酸エチルエステル(1.12mmol)とEtOH5mLとの溶液に、NaOH(1N)(2.24mmol)を加え、その混合物を室温で1時間攪拌する。水(20mL)を混合物に加え、次いで抽出する(EtOAc、3×10mL)。次いで、水層をHCl(1N)(2.5mL)で処理し、EtOAc(3×30mL)で抽出する。併合した抽出液を食塩水で洗い、MgSOで乾燥する。乾燥剤を濾去後、溶液を濃縮し、粗製の産物ヒドロキシ−(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−酢酸を灰白色固体として得る。収率:76%。
MS: (ES+): 240 [M+1]。
【0051】
ヒドロキシ−(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−酢酸(0.13mmol)と、p−TSA(1mg)および2,2−ジメトキシプロパン1.5mLの混合物を室温で16時間攪拌する。減圧下に溶媒を除去し、残渣をNaHCOの飽和水溶液(2mL)で処理する。得られる混合物をEtOAc(3×5mL)で抽出する。有機層を併合し、濃縮して粗製の2−(2,2−ジメチル−5−オキソ−[1,3]ジオキソラン−4−イル)−4H−ベンゾ[1,4]チアジン−3−オンを得る;これは精製することなくそのまま次工程で使用した。収率:31%。
【0052】
粗製の2−(2,2−ジメチル−5−オキソ−[1,3]ジオキソラン−4−イル)−4H−ベンゾ[1,4]チアジン−3−オン(0.036mmol)をTHF0.5mLに溶かし、この混合物にNHOH(1N/MeOH)を加える。添加後、混合物を60℃で3時間攪拌する。次いで、溶媒を減圧下に除去し、残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、10%MeOH/CHCl)により精製して、標題化合物、2,N−ジヒドロキシ−2−(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−アセトアミドを得る。収率:70%。
1H NMR (400 MHz, MeOD) δ7.30 (dd, 1H, J = 1.29 Hz, J = 8.0 Hz), 7.18, (dt, 1H, J = 1.3 Hz, J = 8.0 Hz), 7.01 ( dt, 1H, J = 1.3 Hz, J = 8.0 Hz), 6.95 ( dd, 1H, J = 1.3 Hz, J = 8.0 Hz), 4.74 (d, 1H, J = 3.80), 3.97 (d, 1H, J = 3.8)。
MS: (ES+): 255.1[M+1]。
【0053】
実施例5
N−ヒドロキシ−N−(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イルメチル)−ホルムアミド
【化7】

【0054】
4H−ベンゾ[1,4]チアジン−3−オン(165mmol)を60mLのCHClに溶かし、次いで、塩化スルフリル(135mmol)を30分かけてゆっくり加える。混合物を12時間攪拌し、次いで、溶媒を蒸発させる。粗製の2−クロロ−4H−ベンゾ[1,4]チアジン−3−オンは精製せずに次工程で使用する。
【0055】
2−クロロ−4H−ベンゾ[1,4]チアジン−3−オン(60.5mmol)を亜リン酸トリエチル(269mmol)に溶かし、その混合物を100℃に加熱する。その色が黄色から次第に橙色に変わる。2時間後に、過剰の亜リン酸トリエチルを減圧下に除去し、産物(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−ホスホン酸ジエチルエステルをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製する。収率:40%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.25 (m, 1H), 7.09 (m, 1H), 6.94 (m, 1H), 6.82 (m, 1H), 4.08 (m, 2H), 3.96 (m, 1H), 3.79 (m, 2H), 1.20 (t, 3H), 0.95 (t, 3H)。
MS: (ES+): 302.2 [M+1]。
【0056】
(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−ホスホン酸ジエチルエステル(12.2mmol)を無水MeOH40mLに溶かし、この橙色溶液に37%ホルムアルデヒド/水(12.2mmol)を加える。NaOMe(2N/MeOH)(12.2mmol)を加え、反応物を0℃に冷却する。沈殿する固体を濾取し、2−メチレン−4H−ベンゾ[1,4]チアジン−3−オンを得る。収率:72%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.03 (s, 1H), 7.06 (m, 2H), 6.94 (m, 1H), 6.81 (m, 1H), 6.80 (s, 1H), 5.62 (s, 1H)。
MS: (ES+): 178.2 [M+1]。
【0057】
2−メチレン−4H−ベンゾ[1,4]チアジン−3−オン(5.14mmol)と無水DMF10mLとの溶液に、EtN(25.7mmol)を加え、次いで、O−ベンジルヒドロキシルアミン塩酸塩(25.7mmol)を加える。この混合物を100℃で12時間攪拌し、次いで、溶媒を蒸発させる。粗製産物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製し、2−(ベンジルオキシアミノ−メチル)−4H−ベンゾ[1,4]チアジン−3−オンを得る。収率:58%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.51 (s, 1H), 7.13 (m, 9H), 6.1 (bs, 1H), 4.64 (s, 2H), 3.86 (m, 1H), 3.3 (m, 1H), 2.9 (m, 1H)。
MS: (ES+): 301.2 [M+1]。
【0058】
2−(ベンジルオキシアミノ−メチル)−4H−ベンゾ[1,4]チアジン−3−オン(2.96mmol)とギ酸(15mL)との溶液に、無水酢酸(15.1mmol)を加え、反応物を室温で一夜攪拌する。混合物をEtOAcで希釈し、水、次いで食塩水およびNaHCOで洗う。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製し、N−ベンジルオキシ−N−(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イルメチル)−ホルムアミドを得る。収率:81%。
MS: (ES+): 329.2 [M+1]。
【0059】
N−ベンジルオキシ−N−(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イルメチル)−ホルムアミド(0.17mmol)とEtOH(12mL)との溶液に、Pd/C(10%)(88.5mg)を加え、次いで、シクロヘキサジエン(1.8mL)を加える。反応混合物を室温で12時間攪拌し、最終のN−ヒドロキシ−N−(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イルメチル)−ホルムアミドを、1〜99%ACNを勾配とする分取LC/MSにより得る。
1H NMR (400 MHz, MeOD):δ 8.48 (s, 0.4H), 7.97 (s, 0.6H), 7.49 (m, 2H), 7.19 (m, 2H), 4.03 (m, 2H), 3.5 (dd, 1H)。
MS: (ES+): 239.1[M+1]。
【0060】
実施例6
2−{2−[(ベンジルオキシ−ホルミル−アミノ)−メチル]−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル}−N−プロピル−アセトアミド
【化8】

【0061】
実施例5に記載のとおりに合成したN−ベンジルオキシ−N−(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イルメチル)−ホルムアミド(2.4mmol)と無水DMFとの溶液にNaH(60%/鉱油)(3.36mmol)を加え、混合物を室温で30分間攪拌する。次いで、ブロモ酢酸tert−ブチルを加え、反応物を室温で一夜攪拌する。溶媒を蒸発し、粗製の{2−[(ベンジルオキシ−ホルミル−アミノ)−メチル]−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル}−酢酸tert−ブチルエステルはさらに精製することなく次工程で使用する。
【0062】
前工程で得られる{2−[(ベンジルオキシ−ホルミル−アミノ)−メチル]−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル}−酢酸tert−ブチルエステルをギ酸12mL中TFA(2.4mmol)で処理する。反応物を室温で3時間攪拌する。溶媒を除去し、混合物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製し、{2−[(ベンジルオキシ−ホルミル−アミノ)−メチル]−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル}−酢酸を得る。収率:50%。
MS: (ES+): 359.2 [M+1]。
【0063】
{2−[(ベンジルオキシ−ホルミル−アミノ)−メチル]−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル}−酢酸(0.13mmol)と無水DMFとの溶液に、プロピルアミン(0.13mmol)を加え、次いで、DIEA(0.13mmol)およびHATU(0.13mmol)を加える。反応混合物を一夜攪拌し、所望の産物2−{2−[(ベンジルオキシ−ホルミル−アミノ)−メチル]−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル}−N−プロピル−アセトアミドを得て、これをさらに製造することなく次工程で使用する。
MS: (ES+): 428.2 [M+1]。
【0064】
2−{2−[(ベンジルオキシ−ホルミル−アミノ)−メチル]−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル}−N−プロピル−アセトアミド(0.13mmol)とEtOH9mlとの溶液に、Pd/C(10%)(65.6mg)を加え、次いで、1,4−シクロヘキサジエン(1.29mL)を加える。反応混合物を室温で12時間攪拌し、最終産物2−{2−[(ベンジルオキシ−ホルミル−アミノ)−メチル]−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル}−N−プロピル−アセトアミドを、1〜99%ACNを勾配とする分取LC/MS(TFA不存在)により得る。
MS: (ES+): 338.2 [M+1]。
【0065】
実施例7
2−(7−クロロ−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル)−N−ヒドロキシ−アセトアミド
【化9】

【0066】
LDA(2M)(2mmol)とTHF/ヘプタン/エチルベンゼンとの溶液を0℃に維持した7−クロロ−4H−ベンゾ[1,4]チアジン−3−オン(1mmol)と無水THF2mLとの溶液に窒素気流下滴下する。得られる溶液を0℃で30分間攪拌する。反応混合物を−78℃に冷却し、次いで、ブロモ酢酸(0.82mmol)と無水THF2mLとの溶液を加える。12時間攪拌を続け、温度を室温まで上げる。得られる混合物をEtOAcで希釈し、HCl(1M)で洗う。有機層をNaSOで乾燥し、濾過して溶媒を蒸発させる。粗製の(7−クロロ−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル)−酢酸はさらに精製することなく次工程に使用する。
【0067】
前工程で得られた(7−クロロ−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル)−酢酸を3mLのEtOに溶かし、EtCOCl(1.2mmol)を0℃で加え、次いでN−メチルモルホリン(1.3mmol)を加える。反応混合物を0℃で10分間攪拌する。新たに調製したNHOH(1M/MeOH)(1.5mmol)を加え、反応物を室温で15分間攪拌する。最終の2−(7−クロロ−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]チアジン−4−イル)−N−ヒドロキシ−アセトアミドを、1〜99%ACNを勾配とする分取LC/MS(TFA不存在)により得る。
1H NMR (400 MHz, MeOD): δ 8.95 (s, 1H), 7.5 (s, 1H), 7.3 (d, 1H), 7.05 (d, 1H), 4.35 (s, 2H), 3.6 (s, 2H)。
MS: (ES+): 295.05 [M+23]。
【0068】
実施例8
2−(3,4−ジヒドロ−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン−2−イル)−N−メトキシアセトアミド
【化10】

【0069】
(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−酢酸(0.21mmol)とMeOH1mLとの溶液に、KCO(0.25mmol)を加え、次いで、MeI(0.25mmol)を加える。反応混合物を室温で12時間攪拌し、最終産物2−(3,4−ジヒドロ−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]チアジン−2−イル)−N−メトキシアセトアミドを、10〜30%ACNを勾配とする分取LC/MSにより得る。
MS: (ES+): 270.05 [M+23]。
【0070】
実施例9
N−ヒドロキシ−2−(2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル)−アセトアミド
【化11】

【0071】
3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(27mmol)と無水DMF250mLとの溶液に、NaH(60%/鉱油)(30mmol)を加え、その混合物を室温で30分間攪拌する。次いで、塩化4−メトキシベンジル(30mmol)を加え、反応混合物を室温で2時間攪拌する。溶媒を蒸発させる。残渣を水100mLに溶かし、CHClで3回抽出する。併合した有機層をMgSOで乾燥し、濾過、蒸発させて粗製の1−(4−メトキシ−ベンジル)−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オンを得る;これを精製することなく次工程で使用する。収率:95%。
【0072】
前工程で得た1−(4−メトキシ−ベンジル)−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(7.86mmol)を無水THF10mLに溶かす。新たに調製したLDA(9.43mmol)と無水THF3.5mLとの溶液を−78℃で滴下する。反応混合物を−78℃で10分間攪拌し、15分間0℃に昇温し、再度−78℃に冷却し、両端針を用いて、ブロモ酢酸tert−ブチル(10.2mmol)と無水THF5mLとの溶液に移動滴下する。得られる溶液を−78℃で1時間攪拌し、さらに1時間以内に0℃に昇温し、次いで、MeOHで反応停止する。溶媒を除去した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製して、[1−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル]−酢酸tert−ブチルエステルを淡黄色油として得る。収率:53%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.13 (m, 4H), 6.96 (t, 1H), 6.90 (d, 1H), 6.83 (d, 2H), 5.25 (d, 1H), 4.95 (d, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.13 (m, 1H), 3.00-2.85 (m, 3H), 2.41 (dd, 1H), 1.48 (s, 9H)。
MS: (ES+): 404.2 [M+23]。
【0073】
前工程で得た[1−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル]−酢酸tert−ブチルエステル(3.35mmol)をTFA7mLに溶かし、1.5時間加熱還流する。過剰のTFAを減圧下に除去した後、酸−塩基抽出により粗製の(2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル)−酢酸を黄色固体として得る。収率:93%。
実施例1に記載の同様の手法に従い、前工程で得た(2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル)−酢酸を最終のN−ヒドロキシ−2−(2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル)−アセトアミドに変換する。
MS: (ES+): 243.2 [M+23]。
【0074】
実施例10
N−ヒドロキシ−2−[1−(3−メチル−ブチル)−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル)−アセトアミド
【化12】

【0075】
(2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル)−酢酸(2.73mmol)、EDCI(3.27mmol)およびDIEA(3.27mmol)をMeOH10mLに溶かす。また、CHCl約2mLを加え、固体の溶解を助ける。反応混合物を室温で2時間攪拌し、減圧下に溶媒を除去する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製し、(2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル)−酢酸メチルエステルを白色固体として得る。収率:60%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.88 (br, 1H), 7.18 (m, 2H), 7.00 (td, 1H), 6.75 (d, 1H), 3.73 (s, 3H), 3.13-2.98 (m, 3H), 2.89 (m, 1H), 2.51 (dd, 1H)。
MS: (ES+): 220.2 [M+1]。
【0076】
実施例9に記載のN−アルキル化手法と同様に、前工程で得られる(2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル)−酢酸メチルエステル(0.068mmol)を1−ブロモ−3−メチルブタンによりアルキル化し、粗製の[1−(3−メチル−ブチル)−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル]−酢酸メチルエステルを得る;これをさらに精製することなく次工程で使用する。
【0077】
前工程で得た粗製の[1−(3−メチル−ブチル)−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル]−酢酸メチルエステルを無水THF0.5mLに溶かす。次いで、新たに調製したNHOH(0.77M/MeOH)(0.44mL)(0.77M−NaOHをも含有)を加え、その混合物を室温で12時間攪拌する。最終産物N−ヒドロキシ−2−[1−(3−メチル−ブチル)−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル)−アセトアミドを、1〜99%ACNを勾配とする分取LC/MSにより得る。
1H NMR (400 MHz, MeOD): δ 7.29 (t, 1H), 7.20 (d, 1H), 7.11 (d, 1H), 7.04 (t, 1H), 3.97 (m, 2H), 3.02-2.89 (m, 2H), 2.77-2.65 (m, 2H), 2.17 (dd, 1H), 1.65 (m, 1H), 1.50 (m, 2H), 0.97 (2d, 6H)。
MS: (ES+): 291.3 [M+1]。
【0078】
実施例11
N−ヒドロキシ−2−[2−オキソ−1−(ピリジン−2−イルカルバモイルメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル]−アセトアミド
【化13】

【0079】
実施例6に記載のN−アルキル化手法と同様に、(2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル)−酢酸メチルエステル(0.99mmol)をブロモ酢酸tert−ブチルによりアルキル化し、(1−tert−ブトキシカルボニルメチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル)−酢酸メチルエステルを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)で精製することにより、無色油として得る。収率:89%。
MS: (ES+): 356.2 [M+23]。
【0080】
前工程で得た(1−tert−ブトキシカルボニルメチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル)−酢酸メチルエステル(0.30mmol)をCHCl/TFA(1:1)1mLに溶かす。反応混合物を室温で一夜攪拌し、減圧下に溶媒を除去する。粗製の(3−メトキシカルボニルメチル−2−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−酢酸を得、これをさらに精製することなく次工程で使用する。収率:100%。
【0081】
前工程で得た(3−メトキシカルボニルメチル−2−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−酢酸(0.072mmol)、EDCI(0.078mmol)、2−アミノピリジン(0.087mmol)およびDIEA(0.087mmol)のDCM0.5mLの溶液を室温で一夜攪拌する。溶媒除去後、粗製の[2−オキソ−1−(ピリジン−2−イルカルバモイルメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル]−酢酸メチルエステルを得、これをさらに精製することなく次工程で使用する。
【0082】
実施例10に記載の手法と同様に、前工程で得た粗製の[2−オキソ−1−(ピリジン−2−イルカルバモイルメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル]−酢酸メチルエステルを最終産物N−ヒドロキシ−2−[2−オキソ−1−(ピリジン−2−イルカルバモイルメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル]−アセトアミドに変換し、これを1〜99%ACNを勾配とする分取LC/MSにより精製する。
1H NMR (400 MHz, MeOD): δ 8.30 (dd, 1H), 8.04 (d, 1H), 7.76 (td, 1H), 7.24 (m, 2H), 7.12 (dd, 1H), 7.05 (t, 1H), 6.99 (d, 1H), 4.91 (d, 1H), 4.76 (d, 1H), 3.13 (m, 1H), 3.03 (dd, 1H), 2.90 (dd, 1H), 2.73 (dd, 1H), 2.25 (dd, 1H)。
MS: (ES+): 355.2 [M+1]。
【0083】
実施例12
N−ヒドロキシ−2−(2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イル)−アセトアミド
【化14】

【0084】
1,3,4,5−テトラヒドロ−ベンゾ[b]アゼピン−2−オン(1.55mmol)とDMF5mLとの溶液にNaH(60%/鉱油)(1.86mmol)を0℃で加える。0℃で15分間攪拌した後、混合物を室温に戻す。この混合物に塩化p−メトキシベンジル(1.94mmol)を加える。室温で16時間攪拌した後、混合物を水50mLに注ぎ、EtOAc(3×25mL)で抽出する。有機層を併合し、食塩水で洗い、MgSOで乾燥する。減圧下に溶媒を除去した後、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製し、所望の産物、1−(4−エトキシ−ベンジル)−1,3,4,5−テトラヒドロ−ベンゾ[b]アゼピン−2−オンを白色固体として得る。収率:90%。
MS: (ES+): 282.1 [M+1]。
【0085】
1−(4−メトキシ−ベンジル)−1,3,4,5−テトラヒドロ−ベンゾ[b]アゼピン−2−オン(0.71mmol)と無水THF2mLとの溶液を−78℃に冷却し、新たに調製したLDA(0.85mmol)をこの混合物にゆっくり加える。添加後、この混合物を0℃に昇温し、次いで30分間攪拌して、再び−78℃に冷却する。ブロモ酢酸tert−ブチルを加える。混合物を−78℃で1時間攪拌し、次いで、0℃に昇温する。反応停止するために、EtOHと水(1:1)の混合物1mLを該混合物に0℃で加え、室温に戻す。水(20mL)を加え、次いで抽出(EtOAc、3×15mL)する。併合した有機層を食塩水で洗い、MgSOで乾燥する。溶媒を減圧除去し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、0〜25%EtOAc/ヘキサン)により精製し、所望の産物[1−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イル]−酢酸tert−ブチルエステルを白色固体として得る。収率:30%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.24 (m, 2H), 7.13 (m, 4H), 6.75 (d, 2H), 5.10 (d, 1H), 4.80 (d, 1H), 2.86(m, 2H), 2.38~2.50(m, 2H), 2.17(q, 1H), 1.80~2.05(m, 2H), 1.40(s, 9H)。
MS: (ES+): 396 [M+1]。
【0086】
[1−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イル]−酢酸tert−ブチルエステル(0.19mmol)をTFA1.5mLに溶かし、100℃に3時間加熱する。混合物を室温に冷却し、濃縮する。残渣をNaOH(1N)(1mL)で処理し、EtOAc(3×1mL)で抽出する。次いで、水層をHCl(1M)にてpH=2に中和し、EtOAc(3×2mL)で抽出する。この抽出による有機層を濃縮し、粗製の(2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イル]−酢酸を得る。収率:72%。
【0087】
(2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イル]−酢酸を、EtCOClおよび新たに調製したNHOHにより、実施例1に記載した手法同様に処理し、標題化合物N−ヒドロキシ−2−(2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イル)−アセトアミドを得、これを分取LC/MSにより精製する。
1H NMR (400 MHz, MeOD)δ 7.28 (m, 2H), 7.17(dt, 1H, J = 1.2 Hz, J = 8.0 Hz), 7.04 (dd, 1H, J = 1.2 Hz, J 8.0 Hz), 2.90 (m, 2H), 2.72 (m, 1H), 2.55 (m, 1H), 2.28 (m, 1H), 2.15 (m, 1H), 1.97 (m, 1H)。
MS: (ES+): 235.3 [M+1]。
【0088】
実施例13
N−ヒドロキシ−N−(2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルメチル)−ホルムアミド
【化15】

【0089】
実施例12の記載どおりに合成した1−(4−メトキシ−ベンジル)−1,3,4,5−テトラヒドロ−ベンゾ[b]アゼピン−2−オン(0.71mmol)を無水THF5mLに溶かし、−78℃に冷却する。新たに調製したLDA(0.85mmol)をこの混合物にゆっくり加える。同温度で10分間攪拌した後、混合物を30分間0℃に昇温し、次いで再び−78℃に冷却する。ギ酸エチル(3.55mmol)を反応混合物に滴下する。添加後、混合物を−78℃で10分間攪拌し、次いで0℃に1時間昇温する。水とEtOH(1:1)の混合物1mLを加えて反応を停止し、濃縮し、減圧下に24時間乾燥する。残渣を無水THF4mLに再溶解し、混合物にNa(AcO)BH(2.1mmol)を加え、得られる混合物を室温で16時間攪拌する。反応混合物を水20mLに注ぎ、EtOAc(3×10mL)で抽出する。有機層を併合し、食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥する。溶媒を減圧除去し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製し、所望の産物、3−ヒドロキシメチル−1−(4−メトキシ−ベンジル)−1,3,4,5−テトラヒドロ−ベンゾ[b]アゼピン−2−オンを白色固体として得る。収率:45%。
MS: (ES+): 312 [M+1]。
【0090】
3−ヒドロキシメチル−1−(4−メトキシ−ベンジル)−1,3,4,5−テトラヒドロ−ベンゾ[b]アゼピン−2−オン(0.26mmol)と無水THF2mLとの溶液にMsCl(0.39mmol)とDIEA(0.47mmol)を0℃で加える。添加後、室温に昇温し、1時間攪拌する。減圧下に溶媒を除去し、残渣を水(5mL)で処理し、EtOAc(3×5mL)で抽出する。併合した有機層を濃縮し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製し、メタンスルホン酸・1−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルメチルエステルを白色結晶として得る。収率:90%。
MS: (ES+): 390[M+1]。
【0091】
メタンスルホン酸・1−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルメチルエステル(0.15mmol)とTFA1mLとの混合物を80℃に3時間加熱する。減圧下に溶媒を除去し、残渣を正味のO−ベンジルヒドロキシルアミン(0.2mL)と100℃で16時間処理する。反応混合物を冷却し、そのままフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、10〜60%EtOAc/ヘキサン)により精製し、粗製の産物3−(ベンジルオキシアミノ−メチル)−1,3,4,5−テトラヒドロ−ベンゾ[b]アゼピン−2−オンを油として得る;このものはなお少量のO−ベンジル−ヒドロキシルアミンを含有する。次いで、粗製の産物をギ酸(1mL)と無水酢酸(0.2mL)との混合物に0℃で加え、その混合物をこの温度で3時間攪拌する。減圧下に溶媒を除去し、残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、50%EtOAc/ヘキサン)により精製し、所望の産物、N−ベンジルオキシ−N−(2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルメチル)−ホルムアミドを白色固体として得た。収率:36%。
MS: (ES+): 325 [M+1]。
【0092】
EtOH中、N−ベンジルオキシ−N−(2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルメチル)−ホルムアミド(0.052mmol)およびPd/C(10%)(3mg)の混合物を脱ガスし、水素で満たす。この混合物を室温で14時間攪拌した後、Pd/Cを濾去する。濾液を濃縮し、分取薄層クロマトグラフィー(10%EtOAc/CHCl)により精製し、標題化合物N−ヒドロキシ−N−(2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルメチル)−ホルムアミドを得る。収率:58%。
1H NMR (400 MHz, MeOD): δ 8.13 (s, 1H), 7.87 (s, 1H), 7.17 (m, 2H), 7.06 (t, 1H, J = 8.0 Hz), 6.92 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 3.88 (dd, 1H, J = 8.0 Hz, J = 14.4 Hz), 3.24 (dd, 1H, J = 4.8 Hz, J = 14.4 Hz), 2.77 (m, 2H), 2.62 (m, 1H), 2.11 (m, 1H), 1.84 (m, 1H)。
MS: (ES+): 235.2 [M+1]。
【0093】
適切な出発原料を用い、上記実施例に記載の手法を繰り返すことにより、表1に同定する以下の式Iで示される化合物を得る。
表 1
【表1】

【表2】

【表3】


【表4】

【表5】


【表6】


【表7】

【表8】

【表9】


【表10】

【表11】

【表12】

【表13】



【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】


【表19】

【表20】


【表21】

【表22】

【表23】

【表24】


【表25】

【表26】


【表27】

【表28】

【表29】

【表30】

【表31】

【表32】

【表33】

【表34】

【表35】

【表36】

【表37】

【表38】

【表39】

【表40】

【表41】

【表42】

【表43】


【表44】


【表45】

【0094】
本発明化合物、例えば、式Iで示される化合物の遊離形状または医薬的に許容し得る塩形状のものまたはそのプロドラッグは、有用な薬理学的性質、例えば、実施例3に示すインビトロ試験により示されるような、例えば、抗感染症薬として有用な性質を有し、従って、治療に適用し得る。
【0095】
実施例14
ペプチド・デホルミラーゼ活性の阻害
黄色ブドウ球菌酵素によるPDFアッセイは、クレメンツら(Clements et al. Antimicrob. Agents Chemother. 2001, 45, 563-570)の方法に従い、f−Met−Ala−Ser(f−MAS)を基質として用い、PDF産物MASの遊離アミノ基をフルオレサミンで検出することにより、二重測定で実施する。アッセイは384穴プレート中、5nM−PDF、2mM−f−MAS、80mM−HEPES(pH7.4)、0.7M−KCl、1mM−NiCl、0.135%Brij35、および1.25mM−TCEPを含有する最終ウエル容量50μlで実施する。反応混合物を種々濃度のインヒビターとともに室温で30分間インキュベートし、基質MASの遊離アミノ基を0.2mg/mlフルオレサミン/アセトニトリル25μlを添加することにより検出する。蛍光をアクエスト(Acquest)プレートリーダーにより、励起波長388nm、発光波長445nmとして定量する。プラスまたはマイナス酵素のアッセイ対照は、それぞれ0%および100%阻害値とする。データ解析は蛍光単位をパーセント阻害に変換することにより実施し、そのデータをパーセント阻害に対しプロットする。酵素活性を50%低下させるために必要なインヒビターの濃度(ナノモル)(IC50)を用量応答曲線から決定する。
【0096】
遊離の形状または医薬的に許容し得る塩形状の式Iで示される化合物は、有用な薬理学的性質、例えば、実施例4のインビトロテストにより示されるような抗菌性を有し、従って治療に適用される。本発明化合物はPDFに対し阻害活性を示し、そのIC50は1×10−9ないし1×10−5Mの範囲、好ましくは500nM未満、より好ましくは100nM未満である。例えば、N−ヒドロキシ−2−(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]チアジン−2−イル)−アセトアミド(実施例1)はIC50が5nM未満である。
【0097】
従って、本発明化合物は細菌または原核生物が原因の感染性障害の処置および/または予防に有用である。
その例は限定させるものではないが、グラム陽性およびグラム陰性の好気および嫌気性バクテリア、例えば、ブドウ球菌類:黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌など;エンフェロコクシ:E.フェカリスおよびE.フェシウムなど;ストレプトコッカス類:肺炎連鎖球菌など;ヘモフィルス類:H.インフルエンゼなど;モラクセラ:M.カタラーリスなど;バクテロイデス:バクテロイデス・フラジリスなど;クロストリジウム:クロストリジウム・ディフィシレなど;ナイセリア:M.メニンジティディス(髄膜炎菌)および淋菌など;レジオネラ菌;およびエシェリキア:大腸菌などである。その他の例はマイコバクテリウム類:例えば、結核菌;細胞内微生物:例えば、クラミジアおよびリケッチャ;マイコプラズマ:例えば、肺炎マイコプラズマ;シュードモナス:例えば、緑濃菌;ヘリコバクター・ピロリ;および寄生虫:例えば、熱帯熱マラリア原虫などである。
【0098】
本明細書にて使用する場合、感染性障害とはバクテリアの存在など、微生物感染の存在を特徴とする障害である。かかる感染性障害は、例えば、中枢神経系感染、外耳感染、急性中耳炎などの中耳感染、頭蓋静脈洞感染、眼感染、歯、歯肉および粘膜の感染などの口腔感染、上気道感染、下気道感染、泌尿器感染、胃腸感染、婦人科感染、敗血症、骨と関節の感染、皮膚および皮膚構造の感染、細菌性心内膜炎、火傷、手術の抗菌予防、癌化学療法を受けている患者または臓器移植患者などの免疫抑制患者における抗菌予防、および感染性生物を原因とする慢性疾患、例えば、動脈硬化症などである。
【0099】
該化合物は感染の重症度を処置、予防、および/または緩和するために、被験対象を処置するために使用し得る。被験対象とは動物、植物、血液産物、培養物、および医療用または研究用器具の表面、例えば、グラス、針、手術器具および管などの表面、および一時的または永久的に生体内に移植するための対象物などである。
【0100】
好ましい動物とは哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、子ブタ、ウマ、ブタ、霊長類(例えば、アカゲザル、チンパンジー、ゴリラ)および最も好ましくはヒトである。被験対象の処理に制限はないが、微生物による被験対象の感染を原因とする臨床症状を予防、軽減および/または除去;微生物による被験対象の感染の予防、軽減および/または除去;または、微生物による被験対象の汚染の予防、軽減および/または除去である。関与する微生物は、好ましくは原核生物、より好ましくは細菌である。
【0101】
上記の使用に際し、必要な投与量は勿論、投与の方式、処置すべき特定の条件、および所望の効果によって変わる。該組成物は投与方法に依存的に、例えば、約0.1重量%ないし99重量%の活性物質、例えば、約10〜60重量%の活性物質を含み得る。
【0102】
該組成物が用量単位を含む場合、各単位は、例えば、約1〜1000mg、例えば、1〜500mgの有効成分を含む。成人の処置に使用する投与量は、例えば、約1〜3000mg/日、例えば、1500mg/日であり、投与経路および頻度に依存する。かかる投与量は1日あたり約0.015〜50mg/kgに相当する。適切には、投与量は例えば、1日あたり約5〜20mg/kgである。適切な経口投与用の単位投与形状は約0.25〜1500mgの有効成分を含んでなる。
【0103】
式Iで示される化合物は常套的な経路、例えば、局所的または全身的、例えば、経口的、局部的、非経口的、皮下または吸入により投与可能であり、動物などの被験対象、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける細菌感染の処置に使用し得る。
【0104】
遊離形状または医薬的に許容し得る塩の形状の式Iで示される化合物を、少なくとも1種の医薬的に許容し得る担体または賦形剤と組み合わせて含む、医薬組成物は、医薬的に許容し得る担体または賦形剤と混合することにより、常套の方法で製造することができる。「医薬的に許容し得る担体」とは、一般的に安全で、非毒性であり、生物学的にもその他の意味でも不都合のない医薬組成物を調製するのに有用な医薬品添加物を意味し、獣医用途ならびにヒトの医薬用途に許容し得る添加物である。本明細書および請求項にて使用する「医薬的に許容し得る担体」とは、かかる担体の1種および1種以上である。
【0105】
本発明の化合物は他の抗生物質と同様に、ヒトまたは獣医用医薬用途用に常套的方法で投与するように製剤化し得る。かかる方法は技術上既知であり(参照:Remington's Pharmaceutical Sciences, Easton, PA: Mack Publishing Co.)、本明細書では詳細に記載しない。
【0106】
該組成物は技術上既知の如何なる形状でもよく、これらに限定されるものではないが、錠剤、カプセル剤、オブラート剤、迅速融解剤(オブラートなし)、粉末剤、顆粒剤、ロゼンジ、クリームまたは液剤(経口または無菌非経口溶液または懸濁液)である。該化合物はリポソーム、ミセルまたはエマルジョン製剤でも投与し得る。該化合物はまたプロドラッグとしても投与可能であり、その場合、投与されたプロドラッグは処置された哺乳動物において生物学的に活性な形状に生物変換を受ける。
【0107】
本発明の局所製剤は、例えば、軟膏、クリームまたはローション、溶液、ろう膏、エマルジョン、硬膏剤、眼軟膏および点眼または点耳液、含浸包帯、経皮パッチ、スプレーおよびエーロゾルであり、適切な常套の添加物、例えば、保存剤、薬物浸透を助ける溶媒、および軟膏とクリームの皮膚軟化剤を含有し得る。
該製剤は適合し得る常套の担体、例えば、クリームまたは軟膏基剤、およびローション用のエタノールまたはオレイルアルコールなどを含有し得る。かかる担体は、例えば、製剤の約1%から約99%まで存在し得る。例えば、それらは製剤の約80%までを形成し得る。
【0108】
経口投与用の錠剤およびカプセルは単位用量提示形状でもよく、常套の賦形剤、例えば、結合剤、例えば、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、またはポリビニルピロリドン;増量剤、例えば、ラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトールまたはグリシン;錠剤化滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールまたはシリカ;崩壊剤、例えば、ジャガイモデンプン;または許容し得る湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどを含有し得る。該錠剤は標準的薬剤慣習において周知の方法に従い被覆し得る。
【0109】
経口液状製剤は、例えば、水性または油性懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップまたはエリキシルの形状であってもよく、またはドライ製品として提供し、使用前に水または他の適切な媒体で再構成するものでもよい。かかる液状製剤は常套の添加剤、例えば、懸濁剤、例えば、ソルビトール、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルまたは水素化食用脂肪など;乳化剤、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタンまたはアラビアゴム;非水性媒体(食用油を含み得る)、例えば、アーモンド油、グリセリンなどの油状エステル、プロピレングリコール、またはエチルアルコール;保存剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸、および要すれば、常套の香味剤または着色剤を含有し得る。
【0110】
非経口投与用には、該化合物と無菌の媒体(水が好適である)を利用し、液状単位投与形状を調製する。使用する媒体と濃度により、該化合物は該媒体または他の適切な溶媒に懸濁または溶解し得る。溶液剤の調製には、該化合物を注射用水に溶解し、無菌濾過し、次いで適当なバイアルまたはアンプルに詰め、密封する。有利には、局所麻酔保存剤および緩衝剤などの薬剤を媒体に溶解し得る。安定性を増すために、該組成物をバイアルに詰めた後、凍結し、減圧下に水を除去し得る。次いで、凍結乾燥粉末をバイアル中に密封し、備え付けのバイアルの注射用水を供給して、使用前に液剤を再構成する。非経口懸濁液は実質的に同じ方法で調製するが、ただし、化合物は媒体に溶解する代わりに懸濁し、濾過による無菌化は実施できない。化合物は無菌媒体に懸濁する前に酸化エチレンと接触して滅菌してもよい。有利には、界面活性剤または湿潤剤を組成物に含め、化合物の均一な分布を容易にする。
【0111】
本発明の化合物、例えば、式Iで示される化合物は、例えば、上記に示したように、遊離の形状または医薬的に許容し得る塩の形状で投与し得る。かかる塩は常套の方法で調製可能であり、遊離の化合物と同程度の活性を示す。
前記に従い、本発明はさらに以下を提供する:
1.1 ヒトまたは他の動物被験対象における感染障害を処置および/または予防する方法であって、本発明の化合物、例えば、式Iの化合物、その医薬的に許容し得る塩またはそのプロドラッグの治療有効量を被験対象に投与することを特徴とする方法。
【0112】
1.2.被験対象におけるペプチジルデホルミラーゼを阻害する方法であって、本発明の化合物、例えば、式Iの化合物、その医薬的に許容し得る塩またはそのプロドラッグの有効なペプチジルデホルミラーゼ阻害量を被験対象に投与することを特徴とする方法。
2. 本発明の化合物、例えば、遊離の形状または医薬的に許容し得る塩の形状の式Iの化合物であって、例えば、上記項目1.1または1.2に示したいずれかの方法で医薬として使用するための化合物。
【0113】
3.医薬組成物、例えば、上記項目1.1または1.2に示したいずれかの方法で使用する組成物であって、本発明の化合物、例えば、遊離の形状または医薬的に許容し得る塩の形状の式Iの化合物と、例えば、それに対する医薬的に許容し得る希釈剤または担体とを組み合わせて含む、組成物。
4.本発明の化合物、例えば、式Iの化合物、その医薬的に許容し得る塩またはそのプロドラッグであって、医薬として使用するか、または上記項目1.1または1.2に示したいずれかの方法で使用するための医薬組成物の調製に使用する化合物。
【0114】
疾患を「処置する」または疾患の「処置」とは:(1)疾患の予防、すなわち、当該疾患に接触したか、または罹患した可能性があるが、未だその疾患を経験していないか、または症状として現れていない被験対象、例えば、哺乳動物に、疾患の臨床的症状が発症しないようにすること;(2)疾患の阻害、すなわち、該疾患またはその臨床的症状の発症を阻害するか、または緩和すること;または(3)疾患の軽快、すなわち、疾患またはその臨床的症状を回復させること;である。
【0115】
「有効なペプチジルデホルミラーゼ阻害量」とは、化合物、医薬的に許容し得るその塩またはそのプロドラッグの量であって、ペプチジルデホルミラーゼの阻害に応答する感染性障害の処置のために、またはペプチジルデホルミラーゼを阻害するために被験対象に投与したときに、ペプチジルデホルミラーゼを阻害するために十分な量を意味する。「有効なペプチジルデホルミラーゼ阻害量」は、使用する化合物、その塩またはそのプロドラッグ、被験対象において阻害される微生物、処置すべき被験対象の年齢、体重、性別、病状、種、障害およびその重症度、および投与経路によって変わるが、それでも当業者がそれを決定することは容易である。
【0116】
本発明化合物、例えば、式Iで示される化合物、その医薬的に許容し得る塩またはそのプロドラッグは、単独で、または他の治療剤との組み合わせで投与し得る。かかる治療剤の例は、限定されるものではないが、β−ラクタムなどの他の抗菌剤、例えば、ペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム;ケトリド;キノロン、例えば、フルオロキノロン;マクロライド、例えば、クラリスロマイシン、アジスロマイシンまたはバンコマイシン;リファマイシン;モノバクタム;イソニアジド;リコサミド;ムリプロシン;スルホンアミド;フェニコール;ホスホマイシン;グリコペプチド;テトラサイクリン;ストレプトグラミン;クロラムフェニコール;およびオキサゾリジノン;抗炎症剤、例えば、コルチコステロイド類またはNSAID;鎮痛剤、例えば、麻薬または非オピオイド鎮痛剤である。
【0117】
前記に従い、本発明はなおさらなる観点で以下を提供する:
5.共に投与することを含む上記定義の方法であって、例えば、本発明の化合物、例えば、式Iで示される化合物、医薬的に許容し得るその塩またはそのプロドラッグと、第二の治療剤とを同時にまたは連続して投与する方法。
6.治療的組合わせ、例えば、a)本発明の化合物、例えば、式Iで示される化合物、医薬的に許容し得るその塩またはそのプロドラッグ、およびb)少なくとも1種の第二の治療剤を含んでなるキット。成分a)および成分b)は同時にまたは連続して使用し得る。キットはその投与についての説明書を含み得る。
【0118】
以下は式Iで示される化合物を含む代表的な医薬製剤である。
錠剤製剤
以下の成分を十分に混合し、単刻線の錠剤に圧縮する:
【表46】

【0119】
カプセル製剤
以下の成分を十分に混合し、硬殻ゼラチンカプセルに詰める:
【表47】

【0120】
懸濁液製剤
以下の成分を十分に混合し、経口投与用懸濁液を形成する:
【表48】

【0121】
注射用製剤
以下の成分を十分に混合し、注射用製剤を形成する:
【表49】

【0122】
坐剤製剤
本発明化合物とウイテプゾル(Witepsol)(登録商標)H−5(飽和植物脂肪酸のトリグリセリド;リッチス−ネルソン・インク(Riches-Nelson, Inc.)、ニューヨーク)を混合し、総重量2.5gの坐剤を調製する;このものは以下の成分を含む:
【表50】

【0123】
本発明化合物は細菌を阻害するために有用であり、細菌と本発明化合物の1種以上とを接触させることにより該細菌を阻害したい場合に有用である。その細菌阻害能力の故に、本発明化合物は取分け細胞培養物の汚染を防止するために有用である。この状況下で使用する場合、「阻害する」という用語は細菌の抑制、制御、静止、または殺滅を意味する。
【0124】
真核細胞、取分け動物細胞は、タンパク質などの物質を産生する能力を有するなど、様々な理由で多くの場合培養される。かかる細胞の例はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、アフリカミドリザル腎臓細胞、親細胞(骨髄腫細胞など)と有用物質産生正常細胞(リンパ球など)と融合することにより構築したハイブリドーマなどである。典型的には、本発明化合物の細菌阻害量、例えば、約0.0001ないし約10マイクログラム/mlの濃度、好ましくは約0.0001ないし約1、より好ましくは約0.001ないし約0.1の濃度で細胞用培地に取り込ませる。技術上既知の常套の細胞用培地を使用することができる。
【0125】
前記に従い、本発明はなおさらなる観点で以下を提供する:
7.細胞用培地の細菌汚染を予防する方法であって、当該細胞用培地に細菌阻害量の本発明化合物、例えば、式の化合物または医薬的に許容し得るその塩を取り込ませることを特徴とする方法。
8.細菌阻害量の本発明化合物、例えば、式の化合物または医薬的に許容し得るその塩を含んでなる細胞用培地。
【0126】
本明細書に記載の例示および態様は説明することのみを目的とするものであって、その観点からの種々の改変または変更が当業者に示唆されるとしても、それらが本出願の精神と知力および添付の請求項の範囲内に包含されるべきことは当然である。本明細書に引用した刊行物、特許および特許出願はすべてをそのまま参照により本明細書の一部とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[ただし、式中、
nは1、2または3である;
Zは−CH−、−CHCH−、−S−、−S(O)−、−S(O)−および−NR−から選択される(式中、Rは水素、ヒドロキシ、ハロおよびC1−4アルキルから選択される);
は水素、C1−6アルキル、−XC(O)NROR、−XNRCORおよび−XC(O)NRから選択される(式中、Xは結合、C1−6アルキレン、C2−6アルケニレンおよびC2−6アルキニレンから選択される;式中、Xにはハロ、ヒドロキシおよびシアノが任意に置換し得る;Rは水素、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される;また、Rは水素およびC1−4アルキルから選択される);
は水素、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、ハロ置換C1−12アルキル、−XOR、−XOR、−XC(O)OR、−XOC(O)R、−XC(O)NR、−XC(O)NR、−XC(O)NROR、−XR、−XCHR、−XC(O)R、−XOXOR、−XOXOR、−XC(O)R、−XC≡N、−XC(O)XR、−XOXR、−XC(O)NRXRおよび−XC(O)NRXNRから選択される;式中、X、RおよびRは上記のとおりであり、RはC3−10シクロアルキル、C5−8ヘテロシクロアルキル、C6−10アリールおよびC5−8ヘテロアリールから選択される;Rのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールにはいずれにもハロ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、シアノ、ハロ置換C1−4アルキルおよび−XC(O)ORから選択される1ないし3個の基が任意に置換し得る;式中、XおよびRは上記のとおりである;ただし、RとRが共に水素であることはできない;Rが−CHC(O)NHOHである場合、Rは水素ではない;RとRは共に水素でない;
は水素、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルおよびハロ置換C1−6アルコキシから選択される]
で示される化合物およびその医薬的に許容し得る塩、水和物、溶媒和物、異性体およびプロドラッグ。
【請求項2】
nが1または2であり;
Zが−CH−、−CHCH−および−S−から選択されるものであり;
が水素、−XC(O)NRORおよび−XNRCORから選択されるものであり(式中、Xは結合、C1−6アルキレン、C2−6アルケニレンおよびC2−6アルキニレンから選択される;式中、Xにはヒドロキシが任意に置換し得る;Rは水素、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される;また、Rは水素およびC1−4アルキルから選択される);
が水素、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、ハロ置換C1−12アルキル、−XOR、−XOR、−XC(O)OR、−XOC(O)R、−XC(O)NR、−XC(O)NR、−XC(O)NROR、−XR、−XCHR、−XC(O)R、−XOXOR、−XOXOR、−XOXR、−XC(O)R、−XC≡N、−XC(O)NRXRおよび−XC(O)NRXNRから選択されるものであり(式中、X、RおよびRは上記のとおりであり、RはC3−10シクロアルキル、C5−8ヘテロシクロアルキル、C6−10アリールおよびC5−8ヘテロアリールから選択される;Rのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールにはいずれにもハロ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、シアノおよび−XC(O)ORから選択される1ないし3個の基が置換し得る;式中、XおよびRは上記のとおりである);
が水素およびハロから選択されるものである;
請求項1記載の化合物。
【請求項3】
nが1であり;
が水素、−XC(O)NRORおよび−XNRCORから選択されるものであり(式中、Xは結合、C1−6アルキレン、C2−6アルケニレンおよびC2−6アルキニレンから選択される;式中、Xにはヒドロキシが任意に置換し得る;Rは水素、ヒドロキシおよびC1−4アルキルから選択される;また、Rは水素およびC1−4アルキルから選択される);
が水素、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、ハロ置換C1−12アルキル、−XOR、−XOR、−XC(O)OR、−XOC(O)R、−XC(O)NR、−XC(O)NR、−XC(O)NROR、−XR、−XCHR、−XC(O)R、−XOXOR、−XOXOR、−XOXR、−XC(O)R、−XC≡N、−XC(O)NRXRおよび−XC(O)NRXNRから選択されるものであり(式中、X、RおよびRは上記のとおりであり、RはC3−10シクロアルキル、C5−8ヘテロシクロアルキル、C6−10アリールおよびC5−8ヘテロアリールから選択される;Rのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールにはいずれにもハロ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、シアノおよび−XC(O)ORから選択される1ないし3個の基が置換し得る;式中、XおよびRは上記のとおりである);
が水素およびハロから選択されるものである;
請求項2記載の化合物。
【請求項4】
Zが−S−である請求項3記載の化合物。
【請求項5】
が水素、メトキシ−カルバモイル−メチル、ヒドロキシ−カルバモイル−メチル、ヒドロキシ−カルバモイル−ヒドロキシ−メチル、(ホルミル−ヒドロキシ−アミノ)−メチルおよび(アセチル−ヒドロキシ−アミノ)−メチルから選択されるものである請求項3記載の化合物。
【請求項6】
が水素、カルバモイル−メチル、シアノ−メチル、メチル、シクロプロピル−メチル、ベンジル、ヒドロキシ−カルバモイル−メチル、2−メトキシ−エチル、3,3,3−トリフルオロ−プロピル、3−メチル−ブチル、4−メチル−ペンチル、ペンチル、シクロブチル−メチル、1−メチル−2−オキソ−2−フェニル−エチル、シクロヘキシル−メチル、シクロヘキシル−エチル、3,3−ジメチル−2−オキソ−ブチル、3−ブテニル、ピリジン−2−イル−カルバモイル−メチル、(3,4−ジフルオロ−フェニルカルバモイル)−メチル、(2,6−ジエチル−フェニルカルバモイル)−メチル、[1−(4−フルオロ−フェニル)−エチル−カルバモイル]−メチル、2−オキソ−2−ピロリジン−1−イル−エチル、(2,5−ジフルオロ−ベンジルカルバモイル)−メチル、プロピル−カルバモイル−メチル、(2−ジメチルアミノ−エチルカルバモイル)−メチル、ブチル、フェネチル、ホルミル−ヒドロキシ−アミノ、1−カルバモイル−エチル、2−[1,3]ジオキソラン−2−イル−エチル、テトラヒドロ−ピラン−2−イル−メチル、2−フルオロ−ベンジル、4−フルオロ−ベンジル、2,4−ジフルオロ−ベンジル、2−シアノ−ベンジル、3−シアノ−ベンジル、4−シアノ−ベンジル、3−メトキシ−ベンジル、2−(4−シアノ−フェニル)−2−オキソ−エチル、カルボキシ−メチル、2−(4−カルボキシ−メチル−エステル−フェニル)−2−オキソ−エチル、ピリジン−3−イル−カルバモイル−メチル、3,7−ジメチル−オクチル、2−オキソ−ブチル、2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル、3,3−ジフェニル−プロピル、エチル、2−エチル−ブチル、3−フルオロ−プロピル、3−ベンジルオキシ−プロピル、4−フェノキシ−ブチル、2−(3−メトキシ−フェニル)−2−オキソ−エチル、2−(4−メトキシ−フェニル)−2−オキソ−エチル、4−カルボキシ−ベンジル、2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−エチル、ノニル、3−メトキシ−カルボニル−プロピル、4−シアノ−ブチル、3−メチル−2−ブテニル、フェニル−プロピル、エトキシ−エチル、4−メチル−3−ペンテニル、フェノキシ−エチル、4−メトキシカルボニル−ブチル、4−アセトキシ−ブチル、4−プロピオニルオキシ−ブチルおよびヘキシルから選択されるものである請求項3記載の化合物。
【請求項7】
請求項1記載の化合物の治療有効量と医薬的に許容し得る添加剤とを組合わせて含む、医薬組成物。
【請求項8】
PDF活性の阻害により疾患の病理および/または症候を予防、阻害または回復させ得る動物の疾患の処置方法であって、請求項1記載の化合物の治療有効量を該動物に投与することを特徴とする方法。
【請求項9】
PDF活性が疾患の病理および/または症候に寄与する動物疾患処置のための医薬の製造における請求項1記載の化合物の使用。



【公表番号】特表2007−500728(P2007−500728A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522131(P2006−522131)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/024938
【国際公開番号】WO2005/011611
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】