説明

PDGF−Rβ結合剤

本発明によれば、シグナルジェネレーター(例えば、常磁性標識、放射性核種又は発蛍光団)で標識されたポリペプチドであるPDGF−Rβイメージング剤であって、PDGFR−βと特異的に結合するイメージング剤が提供される。また、かかるイメージング剤を用いるインビボイメージング方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはPDGF−Rβに結合する薬剤に関する。さらに詳しくは、本発明はPDGF−Rβに結合する標識薬剤及びかかる薬剤を用いる検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PDGF−Rβは、線維症性及び腫瘍形成性疾患に関係するレセプターチロシンキナーゼであり、潜在的に有用な分子イメージング標的となっている。インビボ又はインビトロでPDGF−Rβを定性的又は定量的に可視化できれば、研究者達及び臨床医達には重要な診断ツール及び治療ツールが提供されることになる。例えば、肝線維症、肝硬変又は肝機能異常のような肝臓関連疾患を目視で同定することができ、またかかる状態を有する患者においてPDGF−Rβの発現パターンをインビボで測定することができれば、臨床医達及び研究者達にとって肝臓関連疾患状態を診断、予後判定及び治療する際の助けとなろう。
【0003】
天然のブドウ球菌プロテインAは、IgGのFc領域に結合する三重らせん構造を形成するドメインを含んでいる。ブドウ球菌プロテインAのBドメインから導かれる58残基のポリペプチドのZドメインは、結合力を保有している。
【0004】
プロテインAのZドメインから導かれるある種のポリペプチドは、ループによって連結された3本のαらせんからなる足場(scaffold)を含んでいる。これらのらせんの2本上に位置する特定の残基は、IgGのFc部分に対する結合部位をなしている。タンパク質工学の分野で使用される用語に従えば、結合表面は足場上に位置する表面である。したがって、ここでいう足場は三重らせんバンドルタンパク質ドメインである。らせん1及び2上に位置する13の表面に露出したアミノ酸残基を置換することで、IgGのFc部分と結合する能力を他の分子との結合に置き換えることにより、別の結合剤分子が生み出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
国際公開第2009/077569号パンフレット
【発明の概要】
【0006】
本明細書中には、シグナルジェネレーター(例えば、常磁性標識、放射性核種又は発蛍光団)で標識された配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9又はその保存的変異体のいずれかのポリペプチドであって、PDGFR−βと特異的に結合するポリペプチドを含んでなるPDGF−Rβイメージング剤が提供される。若干の実施形態では、ポリペプチドはA772細胞、U87細胞又はM231細胞によって発現されるPDGFR−βに対して10nM以上の結合親和性を有する。
【0007】
若干の実施形態では、ポリペプチドは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号9から選択される2以上のアミノ酸配列を含むことで多価ポリペプチドを形成し得る。多価ポリペプチドは、90%より大きい配列同一性を有する2つの反復アミノ酸配列を含むことで二価均質ポリペプチドを生成する。
【0008】
若干の実施形態では、シグナルジェネレーターは、フッ素(例えば、F−18)、ヨウ素(I−123)、テクネチウム(例えば、Tc−99m)、ガリウム及びガドリニウムから選択される放射性核種であり得る。若干の実施形態では、F−18又はI−123はアミノキシリンカーを介してポリペプチドに結合される。若干の実施形態では、F−18又はI−123はポリペプチドのN末端にあるアミノキシリンカーを介してポリペプチドに結合される。
【0009】
若干の実施形態では、テクネチウムはCNP216のようなPNリンカーを介してポリペプチドに結合し得る。別法として、Tc−99mはポリペプチドのN末端にあるPNリンカーを介してポリペプチドに結合し得る。
【0010】
常磁性標識はGd−157、Mn−55、Dy−162、Cr−52又はFe−56からなり得ると共に、NOTA、DOTA及びDTPAから選択されるキレーターを介してポリペプチドに結合し得る。
【0011】
放射性標識はGd−153又はGa−67からなり得ると共に、NOTA、DOTA及びDTPAから選択されるキレーターを介してポリペプチドに結合し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、抗PDGF−Rβポリペプチドの表面プラズモン共鳴(SPR)を示す。図1AはヒトPDGF−Rβに対するZ2465(配列番号16)の結合を示す。図1BはマウスPDGF−Rβに対するZ2465(配列番号16)の結合を示す。
【図2】図2は、ヒトPDGF−Rα(hPDGF−Rα)に対するZ2465(配列番号16)のSPRを示す。
【図3】図3は、4つの細胞タイプ、即ちA172(ヒト脳膠芽腫、陽性対照)、U87(ヒト脳膠芽腫)、M231(ヒト乳腺癌)及びHT29(ヒト結腸直腸腺癌、陰性対照)に対する抗ヒトPDGF−Rβ抗体についての定性的フローサイトメトリーの結果を示す。
【図4】図4は、腫瘍タイプのパネルに対するELISAアッセイの結果を示す。
【図5】図5は、U87(高PDGF−Rβ発現)、M231(中/低PDGF−Rβ発現)及びHT29(無PDGF−Rβ発現)腫瘍において抗ヒトPDGF−Rβを用いたインビボ光学アッセイを示す。
【図6】図6は、標識Z2465(配列番号16)のHPLCガンマクロマトグラムを示す。図6Aのクロマトグラムは単量体バージョンを示しており、図6Bは二量体バージョン(Z2465)2(配列番号19)を示す。
【図7】図7は、血液及び腫瘍組織におけるZ2465(配列番号16)のインビボ生体分布試験を示す。パネル7AはU87腫瘍担持マウスにおけるZ2465(配列番号16)の分布を示す。パネル7BはHT29腫瘍担持マウスにおけるZ2465(配列番号16)の分布を示す。パネル7CはU87腫瘍担持マウスにおけるZtaq(配列番号10)の分布を示す。そして、パネル7Dはパネル7A〜7Cに示した一連の実験に関する腫瘍:血液比を示す。
【図8】図8は、Z2465(配列番号16)のクリアランスパターンを示す。パネル8Aは、肝臓、腎臓、脾臓、膀胱/尿及び腸におけるZ2465(配列番号16)の%ID[%注射量]を示す。パネル8Bは、肝臓、腎臓及び脾臓に関する%ID/g[%注射量/組織1グラム]を示す。
【図9】図9Aは、U87腫瘍細胞株を使用した、5種のポリペプチド、即ちZtaq(配列番号10)、Z2465(配列番号16)、Z2477(配列番号25)、Z2483(配列番号18)及びZ2516(配列番号17)に関する注射後2時間での腫瘍:血液比を示す。図9Bは、U87腫瘍細胞株を使用した、5種のポリペプチドに関する注射後2時間での腫瘍取込み量を示す。
【図10】図10は、Z2465ポリペプチドの一価及び二価バージョン(配列番号16及び配列番号19)に関する原子価比較を示す。図10Aは、血液及び腫瘍細胞中における二価(Z2465)2(配列番号19)のレベルを経時的に示す。図10Bは、血液及び腫瘍細胞中における一価Z2465(配列番号16)のレベルを経時的に示す。そして、図10Cは一価(配列番号16)及び二価(配列番号19)の化学種の比較を示す。
【図11】図11は、高発現(U87)及び中/低発現(M231)腫瘍における腫瘍:血液比及び%ID/gの比較を示す。
【図12】図12は、高発現(U87)及び中/低発現(M231)腫瘍を使用した、一価ポリペプチド(配列番号16)及び二価ポリペプチド(配列番号19)に関する注射後2時間での腫瘍:血液比を示す。
【図13】図13は、3つの細胞株(即ち、HT29、M231及びU87)におけるZtaq(配列番号10)及びZ1982(配列番号14)の腫瘍:血液比を示す。
【図14】図14は、Mal−cPn216リンカーの化学構造を示す。
【図15】図15は、Mal−PEG−cPn216の化学構造を示す。
【図16】図16は、cPn216標識Z02465(配列番号23)の逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)精製を示す。
【図17】図17は、Tc−99mによるcPn216標識Z2465(配列番号16)の標識に関する濃度依存性を示す。
【図18】図18は、Tc−99m標識Z2465(配列番号16)及びcPn216標識Z02465(配列番号23)に関する、サイズ排除クロマトグラフィーHPLCによる保持時間の相似性を示す。
【図19】図19は、cPn216を介してTc−99mで標識されたZ02465(配列番号23)に関する、U87及びHT29細胞での腫瘍取込みを示す。
【図20】図20は、cPn216を介してTc−99mで標識されたZ02465(配列番号23)の、肝臓及び膀胱/尿におけるクリアランスプロファイル(%ID、%注射量)を示す。
【図21】図21は、Z03358(配列番号24)がZ02465(配列番号23)と同様な生体分布パターンを実証することを示す。パネル21Aは腫瘍:血液比、腫瘍中の%ID/g、及び肝臓中の%ID/gを示しており、パネル21Bも同じモノマーを示すが、さらに血液中の%ID/gを含んでいる。
【図22】図22は、PEG4−cPn216を介してTc−99mで標識されたZ02465(配列番号23)に関する、U87及びHT29細胞での腫瘍取込みを示す。
【図23】図23は、マレイミド−アミノキシ(Mal−AO)リンカーの化学構造を示す。パネルAはtert−ブチル−2−(2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロル−1−イル)エチルアミノ)−2−オキソエトキシカルバメートの化学構造を示しており、パネルBは2−(アミノキシ)−N−(2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロル−1−イル)エチル)アセトアミド塩酸塩の化学構造を示す。
【図24】図24は、18Fで標識されたZ02465(配列番号23)を示す。
【図25】図25は、U87腫瘍担持動物における、F−18で標識されたZ02465(配列番号23)ポリペプチドの%ID/g(パネルA)及び腫瘍:血液比(パネルB)を示す。
【図26】図26は、パネルAには血液、腫瘍、膀胱/尿、肝臓、腎臓、脾臓及び尾におけるF−18標識Z02465(配列番号23)のクリアランスプロファイル(%ID)を示しており、パネルBには血液、腫瘍、肝臓、腎臓及び脾臓における%ID/gを示す。
【図27】図27は、粗Gd−153−DOTA標識Z2465(配列番号16)に関するγトレースHPLCを示す。
【図28】図28は、精製Gd−153−DOTA標識Z2465(配列番号16)に関するγトレースHPLCを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
参照付きの「ポリペプチド」という用語は、一般に、ポリペプチドの結合界面残基を標的との結合が可能になるように適切に配置するための三次元構造を与えるポリペプチドの残基をいう。同じトポロジー(zドメインの三重らせん折りたたみ)をもって結合部位及び結合活性を保存する配列はいずれも、そのポリペプチドに基づいている。
【0014】
「脂肪族アミノ酸」とは、脂肪族炭化水素側鎖を有する疎水性アミノ酸をいう。遺伝的にコード化された脂肪族アミノ酸には、Ala(A)、Val(V)、Leu(L)及びIle(I)がある。
【0015】
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体をいう。天然アミノ酸とは、遺伝暗号によってエンコードされるもの、並びに以後に修飾されたこれらのアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、O−ホスホセリン、ホスホトレオニン及びホスホチロシン)である。本明細書中に定義されるアミノ酸のカテゴリーは、互いに排他的ではない。したがって、2以上の物理化学的性質を示す側鎖を有するアミノ酸は複数のカテゴリーに含めることができる。例えば、例えば、極性置換基でさらに置換された芳香族部分を有するアミノ酸側鎖(例えば、Tyr(Y))は芳香族疎水性及び極性又は親水性の両方を示すことがあり、したがって芳香族カテゴリー及び極性カテゴリーの両方に含めることができる。
【0016】
「酸性アミノ酸」とは、7未満の側鎖pK値を有する親水性アミノ酸をいう。酸性アミノ酸は、通例、水素イオンの喪失のために生理的pHで負に帯電した側鎖を有する。遺伝的にコード化された酸性アミノ酸には、Glu(E)及びAsp(D)がある。
【0017】
「アミノ酸類似体」とは、天然アミノ酸と同じ基本化学構造(即ち、水素、カルボキシル基及びアミノ基に結合した炭素)を有するが、通常でないR基を含む化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド又はメチオニンメチルスルホニウム)をいう。かかる類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)又は修飾ペプチド主鎖を有するが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持している。
【0018】
「芳香族アミノ酸」とは、少なくとも1つの芳香環またはヘテロ芳香環を有する側鎖を持つ疎水性アミノ酸をいう。芳香環又はヘテロ芳香環は、−OH、−SH、−CN、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、−NO、−NH2、−NHR、−NRR、−C(O)R、−C(O)OH、−C(O)OR、−C(O)NH2、−C(O)NHR、−C(O)NRRなど(式中、各Rは独立に(C1〜C6)アルキル、置換(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルケニル、置換(C1〜C6)アルケニル、(C1〜C6)アルキニル、置換(C1〜C6)アルキニル、(C5〜C20)アリール、置換(C5〜C20)アリール、(C6〜C26)アルカリール、置換(C6〜C26)アルカリール、5〜20員へテロアリール、置換5〜20員へテロアリール、6〜26員アルクヘテロアリール又は置換6〜26員アルクヘテロアリールである。)のような1以上の置換基を含み得る。遺伝的にコード化された芳香族アミノ酸には、Phe(F)、Tyr(Y)及びTrp(W)がある。
【0019】
「塩基性アミノ酸」とは、7より大きい側鎖pK値を有する親水性アミノ酸をいう。塩基性アミノ酸は、通例、ヒドロニウムイオンとの会合のために生理的pHで正に荷電した側鎖を有する。遺伝的にコード化された塩基性アミノ酸には、His(H)、Arg(R)及びLys(K)がある。
【0020】
本明細書中で使用する「結合」という用語は、所定の標的又は密接に関連する標的以外の非特異的標的(例えば、BSA又はカゼイン)と結合するための親和性より2倍以上高い親和性をもって標的と優先的に結合するポリペプチドの能力をいう。本明細書中に示されるポリペプチドは、約5×10-5M未満、さらに好ましくは約2×10-7M未満、最も好ましくは約1×10-8M未満のKD値を有する親和性をもってそれぞれの標的と結合する。同様に、「特異的結合」とは、約2×10-7M未満のKD値を有する親和性をもって所定の抗原と結合するポリペプチドの性質をいう。
【0021】
「結合界面残基」という用語は標的結合に関与するポリペプチドの残基をいい、これらは表1及び表2に示す代表的なポリペプチド中に例示される。
【0022】
本明細書中で使用する「血中半減期」という語句は、排出が一次的又は擬一次的である場合、薬剤の血漿中濃度が1/2だけ低下するのに要する時間をいう。多重減衰相の場合、「血中半減期」という用語は、(相異なる相の減衰半減期が類似していれば)見掛けの半減期をいい、相異なる半減期が類似していなければ(クリアランスの大部分を説明する)優勢な半減期をいう。
【0023】
本明細書中で使用する「保存的変異体」という用語は、アミノ酸配列及び核酸配列の両方に適用される。特定のアミノ酸配列に関しては、保存的変異体とは、若干のアミノ酸が同じカテゴリー(例えば、上記に概述したような酸性、塩基性、極性、疎水性、親水性、芳香族及び脂肪族)に由来する類似のアミノ酸で置き換えられている配列をいう。
【0024】
本明細書中で使用する「疾患管理」という用語は、PDGFR−βの発現又は調節不全に関連する疾患状態の医学的処置であって、本発明の薬剤を用いて容易化し得るものをいう。疾患管理には、PDGFR−β関連疾患に罹患した被験体の治療経過に関して医学専門家が行う判断が含まれ、これらの判断には特に限定されないが治療の成否、罹患組織の状態及び/又は化学的又は外科的介入の適用の有無がある。外科的又は他の非全身的介入が適用される場合、疾患管理には罹患組織の空間的位置決定も含まれる。
【0025】
本明細書中で使用する「発蛍光団」という用語は、特定波長の光への暴露によって励起された場合に(異なる波長の)光を発生する化合物をいう。発蛍光団はその発光プロファイル又は「色」を用いて記述できる。緑色の発蛍光団(例えば、Cy3、FITC及びOregon Green)は、一般に515〜540ナノメートルの範囲内の波長での発光によって特徴づけることができる。赤色の発蛍光団(例えば、Texas Red、Cy5及びテトラメチルローダミン)は、一般に590〜690ナノメートルの範囲内の波長での発光によって特徴づけることができる。発蛍光団の例には、特に限定されないが、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、アクリジン、アクリジン及びアクリジンイソチオシアネートの誘導体、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)、4−アミノ−N−[3−ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド−3,5−ジスルホネート(Lucifer Yellow VS)、N−(4−アニリノ−1−ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド、Brilliant Yellow、クマリン、クマリン誘導体、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC、Coumarin 120)、7−アミノ−トリフルオロメチルクマリン(Coumaran 151)、シアノシン、4’,6−ジアミニジノ−2−フェニルインドール(DAPI)、5’,5”−ジブロモピロガロール−スルホンフタレイン(Bromopyrogallol Red)、7−ジメチルアミノ−3−(4’−イソチオシアナトフェニル)−4−メチルクマリン、4,4’−ジイソチオシアナトジヒドロスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジイソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、5−[ジメチルアミノ]ナフタレン−1−スルホニルクロリド(DNS、ダンシルクロリド)、エオシン、エオシン誘導体(例えば、エオシンイソチオシアネート)、エリスロシン、エリスロシン誘導体(例えば、エリスロシンB及びエリスロシンイソチオシアネート)、エチジウム、フルオレセイン及び誘導体(例えば、5−カルボキシフルオレセイン(FAM)、5−(4,6−ジクロロトリアジン−2−イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン及びフルオレセインイソチオシアネート(FITC))、QFITC(XRITC)、フルオレスカミン誘導体(アミンと反応して蛍光を発する)、IR 144、IR 1446、マラカイトグリーンイソチオシアネート、4−メチルウンベリフェロン、o−クレゾールフタレイン、ニトロチロシン、パラロサニリン、Phenol Red、B−フィコエリトリン、o−フタルジアルデヒド誘導体(アミンと反応して蛍光を発する)、ピレン及び誘導体(例えば、ピレン、ピレンブチレート及びスクシンイミジル1−ピレンブチレート)、Reactive Red 4(Cibacron.RTM.Brilliant Red 3B−A)、ローダミン及び誘導体(例えば、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101及びスルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体(Texas Red)、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、テトラメチルローダミン及びテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC))、リボフラビン、ロゾール酸及びランタニドキレート誘導体、量子ドット、シアニン類並びにスクアライン類がある。
【0026】
本明細書中で使用する「常磁性金属イオン」、「常磁性イオン」又は「金属イオン」という用語は、磁場に比例した程度で磁場に対してパラレル又はアンチパラレルに磁化する金属イオンをいう。一般に、これらは不対電子を有する金属イオンである。好適な常磁性金属イオンの例には、特に限定されないが、ガドリニウムIII(Gd3+又はGd(III))、鉄III(Fe3+又はFe(III))、マンガンII(Mn2+又はMn(II))、イットリウムIII(Yt3+又はYt(III))、ジスプロシウム(Dy3+又はDy(III))及びクロム(Cr(III)又はCr3+)がある。若干の実施形態では、常磁性イオンは、高い磁気モーメント(μ2=63BM2)、対称的な電子基底状態(S8)及び現在承認されている哺乳動物での診断用途の点から、ランタニド原子Gd(III)である。
【0027】
「配列同一性の百分率」とは、比較窓にわたって2つの最適整列した配列を比較することで決定される値を意味し、比較窓内にあるポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の部分は2つの配列の最適整列のための(付加、置換又は欠失を含まない)参照配列と比較したときに付加、置換又は欠失(即ち、ギャップ)を含むことがある。百分率は、両配列中に同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が生じる位置の数を求めてマッチした位置の数を得、マッチした位置の数を比較窓内の位置の総数で割り、その結果に100を掛けて配列同一性の百分率を得ることによって算出される。
【0028】
本明細書中で使用する「生理的条件」という用語は、一般に哺乳動物体内に存在する条件をいう。即ち、生理的条件とは約6.5〜約7.5のpH及び約36〜約39℃の範囲内の温度を意味する。
【0029】
本明細書中で使用する「シグナルジェネレーター」という用語は、1以上の検出技法(例えば、分光測定、比色定量、分光分析又は目視検査)を用いて検出可能なシグナルを生じ得る分子をいう。検出可能なシグナルの好適な例としては、光学信号、電気信号及び放射性信号が挙げられる。本発明の方法で有用なシグナルジェネレーターの例には、例えば、発色団、発蛍光団、ラマン活性タグ、放射性標識、酵素、酵素基質及びこれらの組合せがある。好適な放射性同位体には、H−3、C−11、C−14、F−18、P−32、S−35、I−123、I−124、I−125、I−131、Cr−51、Cl−36、Co−57、Fe−59、Se−75及びEu−152がある。ハロゲン(例えば、塩素、フッ素、臭素及びヨウ素)並びにテクネチウム、イットリウム、レニウム及びインジウムをはじめとする金属の同位体も有用な標識である。シグナルジェネレーターとして使用できる金属イオンの典型例には、Tc−99m、I−123、In−111、I−131、Ru−97、Cu−67、Ga−67、I−125、Ga−68、As−72、Zr−89、Gd−153及びTl−201がある。ポジトロン放出断層撮影法(「PET」)によるインビボ診断イメージング用の放射性同位体には、C−11、F−18、Ga−68及びI−124がある。常磁性標識は、金属錯体又は金属酸化物粒子の形態で存在する金属イオンであり得る。好適な常磁性同位体には、Gd−157、Mn−55、Dy−162、Cr−52及びFe−56がある。
【0030】
「親水性アミノ酸」とは、Eisenberg疎水性スケールの正規化コンセンサスに従ってゼロ未満の疎水性を示すアミノ酸をいう。遺伝的にコード化された親水性アミノ酸には、Thr(T)、Ser(S)、His(H)、Glu(E)、Asn(N)、Gln(Q)、Asp(D)、Lys(K)及びArg(R)がある。
【0031】
「疎水性アミノ酸」とは、正規化コンセンサス疎水性Eisenbergスケールに従ってゼロより大きい疎水性を示すアミノ酸をいう。遺伝的にコード化された疎水性アミノ酸には、Pro(P)、Ile(I)、Phe(F)、Val(V)、Leu(L)、Trp(W)、 Met(M)、Ala(A)、Gly(G)及びTyr(Y)がある。
【0032】
「非極性アミノ酸」とは、生理的pHで帯電していないが、2つの原子によって共有される電子対が一般に2つの原子の各々によって等しく保持される結合を持つ側鎖を有する(即ち、側鎖は極性でない)疎水性アミノ酸をいう。遺伝的にコード化された非極性アミノ酸には、Leu(L)、Val(V)、Ile(I)、Met(M)、Gly(G)及びAla(A)がある。
【0033】
「非経口投与」という語句は、被験体に物質又は化合物を導入するための任意の手段であって経口摂取又は胃腸管への直接導入を伴わないものをいい、特に限定されないが、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、静脈内注射、鞘内注射、脳内注射、脳室内注射及び脊椎内注射並びにこれらの任意の組合せを包含する。
【0034】
本明細書中で使用する「PDGFR−β関連病態」という語句は、一般にPDGFR−βの発現パターンが、特に限定されないが肝線維症、肝硬変又は肝機能異常或いはこれらの任意の組合せのような症候群、疾患又は他の病理学的状態の原因となるか或いはそれに関連する任意の状態をいう。
【0035】
「極性アミノ酸」とは、生理的pHで帯電していないが、2つの原子によって共有される電子対が一方の原子により近接して保持される1以上の結合を持つ側鎖を有する親水性アミノ酸をいう。極性アミノ酸には、Asn(N)、Gln(Q)、Ser(S)及びThr(T)がある。
【0036】
らせん状ポリペプチドへの参照付きの「足場」という用語は、一般に、ポリペプチドの結合界面残基を標的との結合が可能になるように適切に配置するための三次元構造を与えるポリペプチドの残基をいう。
【0037】
本明細書中で使用する「シグナルジェネレーター」という用語は、1以上の検出技法(例えば、分光測定、比色定量、分光分析又は目視検査)を用いて検出可能なシグナルを生じ得る分子をいう。
【0038】
本明細書中で使用する「活性化基」という用語は、求核試薬(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド、酸塩化物及び尿素中間体)に対するカルボニル基の反応性を高める任意の基をいう。
【0039】
本明細書中で使用する「アルデヒド反応性末端」という用語は、アルデヒド官能基と反応し得る任意の官能基をいう。アルデヒド反応性官能基の若干の例には、特に限定されないが、−ONH2、−CONHNH2、−NHNH2、−NHCONH2及び−NHCSNH2がある。アルデヒド反応性官能基はまた、アルデヒドとの反応前に脱保護するか、又はアルキルとの反応中にインサイチュで脱保護することができる保護誘導体であってもよい。アルデヒド反応性末端に対する保護基の若干の例には、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基及びホスフィノイル基がある。アルデヒド反応性末端に対する保護基の若干の具体例には、tert−ブチルオキシカルボニル、トリフェニルメチル、9−フルオレニルメチルカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、4−アジドベンジルカルバメート、4−ニトロベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、2,4−ジニトロベンゼンスルホニル及びジフェニルホスフィノイルがある。
【0040】
本明細書中で使用する「脂肪族ラジカル」又は「脂肪族基」という用語は、一般に、環状でなくかつsp3炭素原子である結合点を有する炭素原子配列をいう。炭素原子配列はさらに、sp3、sp2又はsp混成炭素原子の任意の組合せを含み得る。さらに、炭素原子配列は一価、二価又は三価であり得る。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、イソオクチル、ベンジル、シクロヘキシルメチル、フェネチル及び1’,1’−ジメチルベンジルなどがある。
【0041】
本明細書中で使用する「周囲温度」という用語は、一般に臨床環境又は実験室環境中に存在する温度をいう。即ち、周囲温度は約0〜約37℃の範囲内にあり得る。
【0042】
本明細書中で使用する「芳香族ラジカル」及び/又は「芳香族基」という用語は、sp2混成炭素原子及び共役炭素−炭素二重結合の環状配列をいい、環状炭素原子配列の一部をなす芳香族sp2混成炭素原子の位置に結合点を有する。芳香族基又はラジカルは、1乃至最大許容数の置換基を有し得る。アリール基の例には、フェニル、置換フェニル、トリル、置換トリル、キシリル、メシチル、クロロフェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピロリルなどがある。
【0043】
本明細書中で使用する「シクロアルキルラジカル」又は「シクロアルキル基」という用語は、sp3混成炭素原子の環状配列をいい、環状炭素原子配列の一部をなすsp3混成炭素原子の位置に結合点を有する。炭素原子配列はさらに、sp3、sp2又はsp混成炭素原子の任意の組合せを含み得る。さらに、環状炭素原子配列は1乃至最大許容数の置換基で置換されていてもよい。さらに、環状炭素原子配列はO、N又はSのようなヘテロ原子を含み得る。シクロアルキル基の例には、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、トリメチルシクロヘキシル、フェニルシクロヘキシル、テトラヒドロピラニル、4−チアシクロヘキシル、シクロオクチルなどがある。
【0044】
「アルキル」、「脂肪族」、「脂環式」及び「芳香族」という用語に適用される「ラジカル」及び「基」という用語は、本明細書中では互換的に使用される。
【0045】
本明細書中で使用する「置換」という用語は、化学反応の結果として1以上の元素又はラジカルが置き換えられることをいう。好適な置換基には、アルキル基、アルキルアリール基、アリール基、アリールアルキル基及びヘテロアリール基であって、該残基の3以下のH原子が低級アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、ハロアルキル基、アルコキシ基、カルボニル基、カルボキシアルコキシ、カルボキサミド基、アシルオキシ基、アミジノ基、ニトロ基、ハロ基、ヒドロキシ基、OCH(COOH)2基、シアノ基、第一アミノ基、第二アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、スルホキシド基、スルホン基、フェニル基、ベンジル基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヘテロアリール基又はヘテロアリールオキシ基で置き換えられたものがある。
【0046】
本明細書中で使用する「チオール反応性末端」という用語は、チオール基又はメルカプタン基(即ち、−SH基)と反応し得る官能基をいう。チオール反応性官能基の例には、特に限定されないが、マレイミド基、ハロ脂肪族基、ハロ芳香族基、ハロ脂環式基、(ハロアセチル)アルキル基、(ハロアセチル)シクロアルキル基、(ハロアセチル)アリール基、α,β−不飽和スルホン基、ビニルスルホン基、α,β−不飽和カルボニル基、エポキシ基、アジリジン基、及びチオール基とチオール交換反応を行い得るジスルフィド基がある。
【0047】
「チオール基とチオール交換反応を行い得るジスルフィド基」という用語は、生体分子のチオール基(例えば、ポリペプチドのチオール基)と反応し得る基をいう。したがって、ジスルフィドはチオール反応性基とみなすことができる。ピリジルジスルフィドはかかるジスルフィドの好適な例である。好適なマレイミド基には、母体(非置換)基並びに脂肪族基、脂環式基又は芳香族基を置換基として含む誘導体がある。好適なα,β−不飽和カルボニル基には、アクリロイル基を含むものがある。好適なα,β−不飽和カルボニル基には、α,β−不飽和エステル及びα,β−不飽和スルホンがある。ビニルスルホン基はα,β−不飽和スルホン基の具体例である。
【0048】
本明細書中で使用する「フッ素置換アルデヒド」という用語は、1以上のフッ素置換基を有するアルデヒド含有化合物を意味する。さらに、フッ素置換基は任意の種類の同位体(例えば、F−18及びF−19)であり得る。さらに、アルデヒドは脂肪族アルデヒド、脂環式アルデヒド又は芳香族アルデヒドであり得る。さらに、脂環式アルデヒド及び芳香族アルデヒドは単環式、二環式又は多環式構造を有し得る。
【0049】
実施形態
一般に、検出剤として使用する場合、PDGF−Rと結合するポリペプチドは標識(例えば、発蛍光団又は放射性同位体)の付加によってシグナルを発生するように修飾することができる。
【0050】
結合ポリペプチドは、標準的な固相合成技法を用いて生成できる。別法として、ポリペプチドは組換え技法を用いて生成することもできる。ポリペプチドが組換え技法を用いて生成される実施形態では、ポリペプチド又はその保存的変異体をエンコードするDNAを単離することができる。ポリペプチド又はその保存的変異体をエンコードするDNAをクローニングベクター中に挿入し、宿主細胞(例えば、真核細胞、植物細胞又は原核細胞)中に導入し、当技術分野で認められている発現系を用いて発現させることができる。
【0051】
ポリペプチドがペプチド合成技法又は組換え技法のいずれで生成されるにせよ、生成されたポリペプチドは実質的にただ1種のキラル形のアミノ酸残基からなり得る。したがって、本発明のポリペプチドは実質的にL−アミノ酸又はD−アミノ酸からなり得るが、L−アミノ酸及びD−アミノ酸の組合せも使用できる。
【0052】
本明細書中に示されるポリペプチドはプロテインAのZドメインから導かれるので、結合界面上の残基は結合活性を保存しながら保存的に置換されていてもよい。若干の実施形態では、置換される残基は20の天然アミノ酸のいずれか又はその類似体のいずれかであり得る。
【0053】
本明細書中に示されるポリペプチドは、本質的に長さが49〜71残基のポリペプチドからなる。ポリペプチドの長さは、約49残基〜約130残基とすることができる。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

表3(下記)は、ヒトPDGF−Rβ及びPDGF−Rβに対する選択されたポリペプチドの結合親和性測定値並びにこれらのポリペプチドの(標識条件に関係する)等電点(pI)を示す。
【0057】
【表4】

選択された官能性を付与するため、末端に追加の配列を付加することができる。即ち、PDGF−R結合剤の精製又は単離を容易にするため、一方又は両方の末端に追加の配列を、単独で又は(例えば、ポリペプチドにhisタグを付加することで)結合標的に連結した状態で付加することができる。
【0058】
ポリペプチドの末端位置又は内部位置にシグナルジェネレーターを組み込むことができる。シグナルジェネレーターの好適な例には、発色団、発蛍光団、ラマン活性タグ、放射性標識、酵素、酵素基質及びこれらの組合せがある。検出可能なシグナルの好適な例としては、光学信号、電気信号及び放射性信号が挙げられる。
【0059】
本発明の若干の実施形態では、放射性金属をポリペプチド中の特定の残基によってキレート化することができる。例えば、システインチオールがシステインの主鎖アミン基及び2つの先行残基と共に形成するN3Sキレーター中にTc−99mを含めることができる。
【0060】
独立した化学的実在物(例えば、タグ又は標識)への結合を容易にするため、ポリペプチドにリンカーを付加することができる。本明細書中に開示されるポリペプチドは、薬物動態を向上させるため(例えば、ポリグリカンを付加して血中循環半減期を調整するため)さらに修飾することができる。
【0061】
かかるリンカーは、一端ではチオール反応性末端を介してチオール含有化合物を結合し、他端ではアルデヒド反応性末端を介してアルデヒド(特にフッ素置換アルデヒド)を結合するために使用できる。リンカーの若干の例を次の構造(I)〜(IV)に示す。
【0062】
【化1】

式中、「Boc」は保護基ベンジルオキシカルボニルの略語である。
【0063】
若干の実施形態では、チオール反応性末端、アルデヒド反応性末端、又はチオール反応性末端及びアルデヒド反応性末端の両方を類似の保護誘導体で置き換えることができる。かかるリンカーは、一端ではチオール反応性末端を介してチオール含有化合物を結合するため、及び/又は他端ではアルデヒド反応性末端を介してアルデヒド(例えば、フッ素置換アルデヒド)を結合するために使用できる。
【0064】
リンカーは、チオール反応性官能基及びアルデヒド反応性官能基の両方を、それぞれ(i)1以上のチオール基を有するポリペプチド及び(ii)フッ素置換アルデヒドとの反応のために利用可能にする任意の方法によって製造できる。一実施形態では、リンカーは、チオール反応性官能基を含むアミン化合物を、アルデヒド反応性官能基を含むカルボン酸又は活性化エステルと反応させることで製造される。チオール反応性官能基を有する任意のアミン化合物が使用できる。一実施形態では、アミン化合物は次の構造(V)を有する。
【0065】
G−J−NHR1 (V)
式中、Gはチオール反応性官能基であり、Jは連結単位であり、R1はH、脂肪族基、芳香族基又は脂環式基である。二価連結単位Jの性質は、チオール反応性官能基及びアルデヒド反応性官能基の反応性に悪影響を及ぼすことがある立体障害を最小にするように設計すればよい。本アプローチの利点の1つは、バイオコンジュゲートの最終性質を変更するように連結単位を調整できることである。即ち、リンカーのサイズ、極性、電荷及び化学組成を変化させることにより、溶解性及びPK/PD特性のような最終コンジュゲートの性質を変更することができる。さらにリンカーは、標的化及び/又は溶解性を向上させる基を結合するための追加の結合手(handle)を含むことができる。
【0066】
他の実施形態では、リンカーは、アルデヒド反応性官能基を含むアミン化合物を、チオール反応性官能基を含むカルボン酸又は活性化エステル化合物と反応させることで製造できる。
【0067】
活性化エステルは次の構造(VI)を有する。
【0068】
L−M−COR2 (VI)
式中、Lはアルデヒド反応性官能基、ケトン反応性官能基又はその保護誘導体からなり、Mは二価連結単位であり、R2はOH又は活性化基である。活性化基R2は、チオール基を有するアミン化合物と構造(VI)のカルボニル炭素原子との反応を容易にする。構造(X)を有するリンカーを製造するための例示的な合成アプローチを次の反応スキーム1及び2に示す。
【0069】
【化2】

【0070】
【化3】

スキーム1中、EDACは1−エチレン−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを表し、スキーム2中、DCCはジシクロヘキシルカルボジイミドを表す。これらの方法を用いて製造できるリンカーの若干の例は、上記の構造(I)及び(II)に示されている。
【0071】
リンカーのアルデヒド反応性末端は、保護形態又は非保護形態で存在し得る。若干の特定の実施形態では、アルデヒド反応性末端は、−ONH2−、−CONHNH2−、−NHNH2−、−NHCONH2−及び−NHCSNH2−から選択される。一実施形態では、アルデヒド反応性末端は保護形態で存在する。これは、チオール反応性末端とポリペプチドのチオール基との一層クリーンで一層選択的な反応を可能にするからである。アルデヒド反応性末端のための好適な保護基の例には、特に限定されないが、tert−ブトキシカルボニル、トリフェニルメチル、9−フルオレニルメチルカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、4−アジドベンジルカルバメート、4−ニトロベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、2,4−ジニトロベンゼンスルホニル及びジフェニルホスフィノイル基がある。
【0072】
本明細書中に記載される方法は、フッ素標識バイオコンジュゲート、さらに詳しくは放射性フッ素(例えば、F−18)標識バイオコンジュゲートの製造を可能にする。これらの方法の利点の1つは、ポリペプチドのチオール基をリンカーのチオール反応性官能基と選択的に反応させ得る非放射性条件下でリンカーをポリペプチドのような生体分子に選択的に結合し、得られたバイオコンジュゲートをF−18又は通常のフッ素で置換されたアルデヒドとの反応前に精製できることである。別の利点は、放射性フッ素標識を最終段階で選択的に付加することができ、最終バイオコンジュゲートを特にトレーサーレベルで製造する前に時間のかかる追加の精製段階を行う必要性が排除されることである。
【0073】
一態様では、ポリペプチド上に1以上のフッ素原子を導入するための方法が開示される。本方法は、(i)チオール反応性末端及びアルデヒド反応性末端を含むリンカーを用意する段階、(ii)リンカーのチオール反応性末端を、1以上のチオール基又はその反応性誘導体を含むポリペプチドと反応させる段階、並びに(iii)次いでリンカーのアルデヒド反応性末端をフッ素置換アルデヒドと反応させる段階を含み得る。
【0074】
ポリペプチド上にフッ素原子を導入するための方法の若干の実施形態では、リンカーのチオール反応性末端は、マレイミド基、ハロ脂肪族基、ハロ芳香族基、ハロ脂環式基、(ハロアセチル)アルキル基、(ハロアセチル)シクロアルキル基、(ハロアセチル)アリール基、ビニルスルホン基、アクリロイル基、エポキシ基、アジリジン基、及びチオール基とチオール交換反応を行い得るジスルフィド基から選択される。
【0075】
さらに詳しくは、本明細書中に記載される方法は、2−(アミノキシ)−N−(2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロル−1−イル)エチル)アセトアミドをリンカーとして用いてポリペプチド上に1以上のフッ素原子を導入するために使用できる。かかる方法は、(i)2−(アミノキシ)−N−(2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロル−1−イル)エチル)アセトアミドのチオール反応性基を、1以上のチオール基を含むポリペプチドと反応させる段階、及び(ii)次いで段階(i)から得られた中間生成物のアミノキシ基をフッ素置換アルデヒドと反応させる段階を含んでいる。
【0076】
保護形態のアルデヒド反応性末端を有するリンカーを使用する場合、一実施形態では、続くフッ素置換アルデヒドとの反応は、(i)アルデヒド反応性末端を脱保護し、(ii)脱保護されたアルデヒド反応性末端をフッ素置換アルデヒドと反応させることで実施できる。他の実施形態では、ユーザーは、保護アルデヒド反応性末端とフッ素置換アルデヒドとの反応のための反応条件を、脱保護段階がインサイチュで起こるように選択することができる。
【0077】
リンカーのアルデヒド反応性末端とフッ素置換アルデヒドとの反応は、ほぼ中性から酸性までの範囲内にあり得る任意の媒質中で実施できる。一実施形態では、反応は約2〜約7の範囲内のpHを有する媒質中で実施でき、別の実施形態では、約2〜約5のpH範囲内で実施できる。反応温度は周囲温度から約70℃まで変化し得る。反応時間は様々に変化し得るが、一般には約10〜約60分であり得る。若干の実施形態では、反応時間は約10〜約30分の範囲内で変化する。しかし、それより長い反応時間も使用できる。
【0078】
リンカーと1以上のチオール基を有するポリペプチドとの反応から得られる生成物をバイオコンジュゲートと呼ぶ。かくして一実施形態では、バイオコンジュゲートは(i)1以上のチオール基を含むポリペプチド及び(ii)リンカーから導かれる構造単位を含んでいる。ここでリンカーは、チオール反応性官能基を含むアミン化合物を、アルデヒド反応性官能基を含む活性化エステルと反応させることを含む方法によって製造される。次のスキーム3は、バイオコンジュゲート(XVII)を製造するための2つの可能なアプローチを示す。
【0079】
【化4】

1つのアプローチでは、Boc保護リンカーを最初にチオール基を含むポリペプチドと反応させ、得られたBoc保護中間体(XXV)を脱保護して所望のバイオコンジュゲート(XXVII)を得ることができる。別法として、Boc保護リンカーを最初に脱保護してリンカー(XVI)を得、次いでこれをチオール基を含むポリペプチドと反応させて生成物(XXVII)を得ることもできる。
【0080】
上述の技法を使用すれば、フッ素又は放射性フッ素原子(例えば、F−18)をポリペプチド上に導入することができる。フッ素置換アルデヒドをバイオコンジュゲートと反応させた場合、フッ素置換バイオコンジュゲートが得られる。そして、放射性フッ素置換アルデヒドをバイオコンジュゲートと反応させた場合、放射性フッ素標識バイオコンジュゲートが得られる。好適なフッ素置換アルデヒドの非限定的な例を次の構造(XVIII)〜(XXVIII)に示す。フッ素置換又は放射性標識バイオコンジュゲートを製造するためには、フルオロデオキシグルコース(FDG)又はF−18標識FDGを使用することもできる。また、これらのアルデヒドの各々が放射性フッ素(F−18)置換基を有することもでき、これは対応する放射性フッ素標識バイオコンジュゲートの製造を可能にする。
【0081】
【化5】

バイオコンジュゲートを製造するためには、1以上のチオール基を有する前述のポリペプチドのいずれかを使用できる。1以上のチオール基を有する骨格系タンパク質及び人工結合タンパク質のようなポリペプチドが特に有用であるが、これはかかる物質が潜在的に有用な診断学的及び治療学的価値を有するからである。かくして一実施形態では、アフィボディのような骨格系タンパク質を2−(アミノキシ)−N−(2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロル−1−イル)エチル)アセトアミドリンカーと反応させることで有用なバイオコンジュゲートを製造できる。さらに、バイオコンジュゲートをフッ素置換アルデヒドと反応させることで有用なフッ素標識バイオコンジュゲートを製造できる。
【0082】
フッ素標識バイオコンジュゲートは、診断用途において有用な物質である。F−18標識バイオコンジュゲートは、当技術分野で公知のイメージング技法(例えば、PET(ポジトロン放出断層撮影法))を用いて可視化できる。
【0083】
本明細書中に開示される技法はまた、キレート化基を有していても有していなくてもよい各種のリンカーを製造するための広範な一般的アプローチも提供する。以下に示す実施例から明らかな通り、キレート化基を有しない構造(I)及び(II)のリンカーを形成するための方法は、キレート化基を含むリンカー(例えば、構造(III)及び(IV))を形成するためにも使用できる。さらに、キレート化基を含むリンカーは、チオール基を含む適当なポリペプチドと反応させてバイオコンジュゲートを形成することができる。次いで、これらのバイオコンジュゲートは、イメージング用途のために各種の放射性金属(例えば、Cu−64、Ga−67、Ga−68、Zr−89、Ru−97、Tc−99m、Rh−105、Pd−109、In−111、Re−186、Re−188、Au−198、Au−199、Pb−203、At−211、Gd−153又はBi−212)と錯体化することができる。
【0084】
本明細書中に開示される組成物は、ヒト及び他の動物に非経口的に投与できる。非経口注射用の本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される無菌の水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液又は乳濁液、或いは使用直前に無菌の注射用溶液又は分散液に再構成するための無菌粉末を含んでいる。好適な水性又は非水性キャリヤー、希釈剤、溶媒及び賦形剤の例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及びこれらの適当な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)並びにオレイン酸エチルのような注射用有機エステルがある。適当な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用、分散液の場合には所要粒度の維持、及び界面活性剤の使用によって維持できる。
【0085】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤のような補助剤も含むことができる。微生物の活動の予防は、各種の抗菌剤及び抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸など)を含めることで保証できる。また、ショ糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めるのが望ましいこともある。注射用医薬製剤の持続吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン)を含めることで達成できる。
【0086】
開示された薬剤は、起こり得る毒性を最小限に抑えるため、生理学的に許容されるキャリヤー中に分散させることができる。即ち、本発明の薬剤は約6〜約8のpHを有する生体適合性溶液中に分散させることができる。若干の実施形態では、薬剤は約7〜約7.4のpHを有する生体適合性溶液中に分散させる。他の実施形態では、薬剤は約7.4のpHを有する生体適合性溶液中に分散させる。
【0087】
開示された薬剤は、化合物を水性媒質中に懸濁又は溶解するために製薬業界で常用されている添加剤と混合することができ、次いで懸濁液又は溶液を当業界で公知の技法によって滅菌できる。本発明の薬剤又はその薬学的に許容される塩は、選択された投与経路に適合した各種の形態で被験体に投与できる。即ち、開示された薬剤は、局所適用(即ち、組織又は粘膜への投与)、静脈内注射、筋肉内注射、皮内注射又は皮下注射によって導入できる。注射のために適する形態には、無菌水溶液又は水性分散液、並びに無菌注射用溶液、分散液、リポソーム製剤又はエマルジョン製剤を調製するための無菌粉末がある。いずれの場合にも、形態は無菌でなければならず、注射器による投与を可能にする程度の流動性を有するべきである。吸入用途のために適する形態には、無菌エアゾル中に分散させた薬剤がある。局所投与のために適する形態には、クリーム、ローション、軟膏などがある。
【0088】
若干の実施形態では、好ましい量の薬剤を被験体に簡便に送達しかつ所望形態の容器にパッケージするため、本発明の薬剤は濃縮される。かくして若干の実施形態では、薬剤は、生理学的に許容される溶液中に分散させた状態で、被験体の体重1kg当たり薬剤約0.1〜約50mgの濃度で薬剤を投与することを容易にする容器内に小分けされる。
【0089】
薬剤を投与してから約3時間後又はそれ以内に標的組織のイメージングが行われる。別の実施形態では、薬剤を被験体に投与してから約24時間後又はそれ以内に標的組織のイメージングが行われる。
【0090】
別の一連の実施形態では、本発明は、PDGFR−β関連疾患のイメージング方法を提供する。PDGFR−βに関連する状態の管理方法は、被験体を処置してPDGFR−β関連疾患を治療又は軽減する前、その後又はその前後に標的組織のイメージングを行うことを含み得る。かくして、PDGFR−β関連疾患の開示管理方法は、(a)標的組織のイメージングを行って基線情報又は診断情報を得る段階、(b)被験体を処置する段階、及び(c)被験体のイメージングを1回以上行って疾患状態に関する追加の情報を得る段階を含み得る。
【0091】
医療専門家は、最初に罹患組織の特性決定を行い又は事後に罹患組織を評価するための他の技法に頼ることで、処置の前後に被験体のイメージングを行わないことを選択できる。かくして、代替実施形態では、PDGFR−βに関連する状態の管理方法は、開示された薬剤を使用しない技法によって同定された疾患状態を処置し、処置に続いて標的組織のイメージングを行うことを含んでいる。同様に、別の代替実施形態では、状態の開示管理方法は、被験体又は標的組織のイメージングを行った後に処置し、続いて標的組織の再イメージングは行わないことも含み得る。
【0092】
疾患管理が処置の効果を判定することに向けられる場合、かかる方法は、処置の適用前に対象組織のイメージングを行って処置前評価を得る段階、次いで処置を適用する段階、及び処置に続いて対象組織のイメージングを1回以上行って対象組織の処置後評価を得る段階を含んでいる。処置前評価及び処置後評価を比較することで、処置の効果を判定することができる。
【0093】
疾患管理が処置の全体的又は全身的適用ではなく罹患組織に局限された処置(例えば、外科的介入又は放射線介入)を含む場合、疾患管理方法は、開示された薬剤を用いて罹患組織の空間位置確認を行うことで処置(例えば、切除又は照射)すべき特定領域を画定する段階を含み得る。
【実施例】
【0094】
結合剤を試験するためのインビトロ及びインビボモデル
インビボ試験のためには、動物モデルが高レベルのPDGF−Rβを確実に発現させる。ヒト標的を発現させるモデルの使用可能性を許すという理由で、腫瘍異種移植モデルを選択した。PDGF−Rβを発現させる可能性が適度に高い腫瘍形成性細胞株のパネルを利用可能な文献(Bronzer et al,1987;Strawn et al,1994;Khana et al,2001;Fitzer−Attas et al,1993)に基づいて選択した。陽性及び陰性対照と共に、このパネルを用いてインビボ実験のために適した細胞株を見つけた(表4)。
【0095】
【表5】

すべての細胞株はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手し、推奨された通りに培養した。使用前に細胞を>90%コンフルエンスまで培養した。
【0096】
表3に示したヒト由来の細胞株に関し、抗hPDGF−Rβ一次抗体(R&D Systems社、PN Mab1263)及び抗マウスIgG−Alexa488二次抗体(Invitrogen社)を用いてフローサイトメトリー(Beckman Coulter Cytomics FC500 MPL)を実施した。表3に示した齧歯類の細胞株のフローサイトメトリーは、R&D Systems社製一次抗体(抗mPDGF−Rβ Mab1042)及びInvitrogen社製二次抗体(抗マウスIgG−Alexa488)、或いは直接に標識された一次抗mCD140b−PE(Ebioscience社)を用いて実施した。いずれの場合にも、対応する販売者から適当なアイソタイプ対照を入手した。
【0097】
細胞表面レセプターのタンパク質分解を回避するため、トリプシンではなく細胞解離緩衝液(PBS+10mM EDTA)を用いて付着細胞をフラスコから遊離させた。細胞をPBSで2回洗浄し、氷冷FC緩衝液(PBS+0.5%(w/v)BSA)中に5〜10×106細胞/mlの濃度に再懸濁した。200μlアリコートの細胞を1.5μgの一次抗体と混合し、氷上で45分間インキュベートした。次いで、細胞を1mlの氷冷PBSで2回洗浄し、直接標識一次抗体の場合の分析のためには1mlのフローサイトメトリー(FC)緩衝液(0.2%のウシ血清アルブミンを含むPBS)中に再懸濁し、或いはさらに二次抗体による染色のためには100〜200μlのFC緩衝液中に再懸濁した。一次抗体−二次抗体の組合せを用いて実施されるフローサイトメトリー実験のためには、3μgの二次抗体を各管に添加し、細胞を氷上で30分間インキュベートし、2回洗浄し、分析のため1mlのFC緩衝液中に再懸濁した。流動細胞の凝結を防止するため、フローサイトメトリーに先立ってすべての染色細胞を100ミクロンフィルターに通した。染色中に広範囲にわたってクランプしたLS174T細胞は、このフィルターを容易に通過できなかった。
【0098】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリーはBeckman Coulter Cytomics FC500 MPL上で実施した。各管について最小5×104のイベントを収集した。すべての分析は、FL1中のAlexa−488の検出又はFL2中のPEの検出による単色分析であった。前方散乱(FS)及び側方散乱(SS)データは、すべての細胞集団がきっちりと分類されることを実証していた。
【0099】
フローサイトメトリーを用いて、細胞のPDGF−Rβ発現をインビトロで評価した(表5)。1つの細胞株(LS174T)は、広範囲なクランピングが分析を妨害したために分析されなかった。図3は、2つの最高発現細胞株並びに陽性及び陰性対照に関する代表的な結果を示す。図3の結果は再現可能であった(n=3)。
【0100】
【表6】

最高発現細胞株は、いずれもヒト由来のU87及びM231であった。これら2つの株を陰性対照株(HT29)と共に6〜12週齢の免疫無防備マウスに注射した。腫瘍増殖曲線及び成功率は接種細胞数に依存していた。HT29及びU87細胞株に関しては、マウス1頭当たり3〜4百万個の細胞を用いると最適の腫瘍増殖が得られ、M231に関しては、1千万個の細胞を用いると最適の結果が得られた。
【0101】
8〜15週齢の範囲内の雌CD−1ヌードマウス(Charles River Labs社、ホプキントン、米国マサチューセッツ州)を用いてインビボ試験を実施した。マウスは換気ラック内に収容し、食物及び水を随意に与えると共に、標準的な12時間昼夜照明サイクル下に置いた。異種移植のためには、マトリゲル及びPBSの50/50(v/v)混合物中の細胞100μlを動物に注射した。細胞は左後四半部の皮下に移植した。移植はイソフルラン麻酔下で実施した。HT29及びU87に関しては、各マウスに3〜4×106個の細胞を移植した。M231に関しては、各マウスに1×107個の細胞を移植した。これらの条件下では、80%を超える注射動物において3〜4週間で使用可能な腫瘍(100〜300μg)が得られた。
【0102】
ELISA
剔出によってマウスから腫瘍を集め、全腫瘍を処理まで−20℃に貯蔵した。ダウンス(dounce)ホモジナイザーにより、腫瘍を氷上においてプロテアーゼ阻害剤カクテルを追加したRIPA緩衝液(Santa Cruz Biotech社、サンタクルズ、米国カリフォルニア州#24948)1ml中で粉砕した。次に、ホモジネートを氷上で30分間インキュベートし、次いで冷却遠心機において10000×Gで10分間遠心した。上澄み液を集め、さらなる処理まで氷上又は4℃で貯蔵した。BCAタンパク質アッセイキット(Pierce Biotechnology 23225)を用いて、細胞溶解物中のタンパク質濃度を測定した。細胞溶解物を標準濃度に希釈することで、マイクロタイタープレート中に20μg/ウェルのタンパク質を得た。製造者の指示に従い、市販のヒトPDGF−Rβキット(R&D Systems社、DYC385)を用いてELISAを実施した。各試料の三重反復試験を実施し、データをpg PDGF−Rβ/μg総タンパク質として報告し、誤差を標準偏差として報告する。
【0103】
インビボでの標的発現をELISAによって測定した。剔出した腫瘍をホモジナイズし、市販のマッチドペアキット(R&D Systems社、ミネアポリス、米国ミネソタ州)を用いてPDGF−Rβについて分析した。図4の結果は、U87細胞株が高発現腫瘍を増殖させ、M231が低発現腫瘍を増殖させ、HT29が無発現腫瘍を増殖させたことを示す。GRCの独立した研究者(グループB)からの3以上のU87腫瘍を含め、複数の供給源(グループA及びC)からの腫瘍に関して分析を行った。ELISA対照は、フローサイトメトリーのために使用した陽性及び陰性対照株の培養細胞溶解物であった。これらの結果は、U87、M231及びHT29の腫瘍異種移植物がヒトPDGF−Rβを標的化する分子のインビボ試験のために適切であることを示す。
【0104】
光学イメージング
抗体標識キット(Invitrogen社、A20186)を用いて、ヒトPDGF−Rβに対するモノクローナル抗体(R&D Systems社、Mab1263)又はアイソタイプ対照(R&D Systems社、Mab002)をAlexa−fluor 647で標識した。続いて、抗体を残留する色素から分離して精製した。UV/Vis分光法は、平均して6個の色素/抗体を示した。
【0105】
標識抗体を用いて、インビボでの標的発現を確認した。Alexa 647官能化抗体(アイソタイプ対照又は抗ヒトPDGF−Rβ抗体)を、U87、M231又はHT29腫瘍を担持するマウスに注射した。結果は、U87腫瘍で最高の抗体取込みを示し、M231がそれに続いた。HT29腫瘍では顕著な取込みは見られなかった。各腫瘍の周囲に自由形式のROIを描き、平均蛍光強度を算出することで、取込みを定量化した。腫瘍:バックグラウンド蛍光比を図5に示す。
【0106】
結果は、U87モデルでは腫瘍中における最高の標的発現量が見出され、M231モデルでは中位の量が見出されることを示す。HT29モデルは、バックグラウンドシグナルを評価するために使用される。これらの結果は、ELISAキットを用いて実証された結果を確認している。これらの結果に基づき、U87モデルをPDGF−Rβポリペプチドの生体分布試験のために選択した。ポリペプチドはまた、低発現組織を標的化するそれの能力を評価するため、M231モデルでも評価した。
【0107】
His6−ポリペプチド生体分布試験
すべてのポリペプチドはスウェーデンのAffibody ABから受け入れた。ポリペプチドは、「Z」に続く内部開発番号コードによって表される。表1には、本明細書中に記載されるポリペプチドが詳しく示されている。かかるポリペプチドは、1種の対照ポリペプチドZtaq(配列番号10)、1種の低親和性一価抗PDGF−Rβポリペプチド(Z1982、配列番号14)、3種の高親和性一価抗PDGF−Rβポリペプチド(Z2465、配列番号16)とZ2483(配列番号18)とZ2516(配列番号17)のパネル、及び1種の高親和性抗PDGF−Rβポリペプチドの二量体Z(2465)2(配列番号19)を含んでいる。すべてのHis6含有配列はC末端システインを含み、そのチオール基はN−エチルマレイミド(NEM)を用いてブロックされている。
【0108】
図1は、ヒト(A)及びマウス(B)のPDGF−Rβで官能化された表面上で実施した場合、Z2465(配列番号16)に関して得られた例示的な表面プラズモン共鳴(SPR)データを示す。すべてのポリペプチドはヒトPDGF−Rβに対して高められたが、マウス標的に対する親和性の値はマウスモデルにおける前臨床試験に関連して重要である。図1のデータは、この特定のポリペプチドに関しては、マウス標的に対する親和性はヒト標的に対するものより劣ることを示す。このような関係は、親和性が知られているすべてのポリペプチド(表2)に当てはまる。ここで、二量体Z(2465)2(配列番号19)に関する値は結合活性効果に基づいて推定されている。これらのポリペプチドはまた、PDGF−Rαに比べ、PDGF−Rβに対して特異的である。図2は、ヒトPDGF−R Rβで官能化されたチップ上で実施した場合のZ2465(配列番号16)に関するSPRデータを示す。これらのデータは、このポリペプチドが想定される標的に対して高い親和性を有する一方、高い相同性をもったPDGF−R Rβに対しては全く親和性を有しないことを実証している。
【0109】
「6−his」タグを介したTc−66m放射性標識による99mTc(CO)3(His6)−ポリペプチドの製造
fac−[99mTc(CO)3+コアによるHis6タグ付きポリペプチドの標識は、以前に発表された方法(Waibel,R.,et al.,A.Nat.Biotechnol.1999,17,897)の変法を用いて行った。簡単に述べれば、食塩水中のNa[99mTcO4](4mCi、2mL)をIsolink(登録商標)ボラノカーボネートキット(Alberto,R.et al,J.Am.Chem.Soc.2001,123,3135)に添加した。得られた溶液を95℃で15〜20分間加熱することでfac−[99mTc(CO)3(H2O)3+を得た。溶液の一部(2mCi、1mL)を取り出し、1N HClでpH約7に中和した。325μLのアリコートを取り出し、His6−ポリペプチド(100μg)に添加した。得られた溶液を35〜37℃の水浴中で40分間加熱した。典型的な放射化学収率は、(ITLC−SG、Biodex社、0.9%NaClで測定して)80〜95%の範囲内にあった。粗反応生成物をNAP−5カラム(GE Healthcare社、10mM PBS)上でのクロマトグラフィーに付すことで、放射化学純度>99%の生成物を得た。得られた典型的な比放射能は3〜4μCi/μgであった。次いで、得られた溶液を10mM PBSで希釈することで、以後の生体分布試験のために適した濃度を得た。
【0110】
Grace−Vydac Peptide/Protein C4(4.6×250mm)カラム及びRaytest GABI放射能検出器を備えたAgilent 1100シリーズHPLC上でHPLCを実施した。溶媒Aは0.1%TFAを含む95:5の水:MeCNであり、溶媒Bは0.1%TFAを含む5:95の水:MeCNであった。勾配は次の通りである(すべて直線的に変化する、t/%B):0/0、4/20、16/60、20/100、25/100、26/0、31/0。
【0111】
精製前に、各ポリペプチドをトリカルボニルテクネチウムコアによって高収率(>90%)で標識した。NAP−5クロマトグラフィーで精製したところ、Tc−99m標識ポリペプチドの試料が>99%の放射化学純度で得られた(表6)。
【0112】
【表7】

NAP−5で精製された放射性標識ポリペプチドの代表的なHPLCクロマトグラムを図6に示す。各放射性標識化学種の保持時間は、(UV検出器及びγ線検出器の物理的分離に原因する時間差(データは示さず)を除けば)220nm UVクロマトグラム中における対応非標識ポリペプチドの保持時間から実質的に変化していなかった。次いで、これらの標識ポリペプチドを生体分布試験のために使用した。
【0113】
His及びCysチャレンジ試験−99mTc(CO)3(His6)−ポリペプチド
N−エチルマレイミド(NEM)を(His6)−Z2465(配列番号16)にコンジュゲートし、続いてセクション「「6−his」タグを介してのTc−99m放射性標識」に記載したようにして放射性標識することで、99mTc(CO)3(His6)−Z2465(配列番号16)を得た。800μLの10mM PBS中に50μg(6.25×10-9mol)以下のHis6−Z2465(配列番号16)を含む約300μCiの最終精製生成物を、2つの別々の1ドラムバイアル中に等分した。第1のバイアルには97μLのL−His(食塩水中10mg・mL-1で6.25×10-6mol)を添加し、バイアルにキャップを付け、37℃の予熱した鉛反応ブロック上に置いた。第2の1ドラムバイアルには、151.4μLのL−Cys(食塩水中5mg・mL-1で6.25×10-6mol)を添加した。この第2のバイアルにもキャップを付け、鉛反応ブロック中に置いた。両溶液を37℃に一晩維持した。t=6時間及びt=24時間にアリコートを取り出し、SEC HPLCで分析した。ITLCによる99mTc(CO)3(His6)−Z2465(配列番号16)の初期純度は、ほぼ定量的(99.9%)であった。1000倍モル過剰量のL−Hisを導入することによるチャレンジでは、6時間後には95.7%の生成物がインタクトなままに保たれ、24時間後には96.6%で変化していなかった。1000倍モル過剰量のL−Cysを導入した場合、6時間後には69.0%を含む生成物混合物が得られた。これは一晩変化しないままで、最終混合物は70.8%の99mTc(CO)3(His6)−Z2465(配列番号16)を含んでいた。
【0114】
生体分布
マウスに約1μgのTc−99m標識ポリペプチド(約3μCi/1μg)の尾静脈注射を施した。マウスは安楽死まで濾紙で内張りしたケージ内に置いた。各時点で3頭のマウスを安楽死させ、検査対象組織を剔出し、Perkin Elmer Wallac Wizard 1480 Gamma Counter上でカウントした。血液、腎臓、肝臓、脾臓及び注射部位(尾)に関してデータを収集した。ケージからの尿を膀胱と共にプールし、やはりカウントした。残りの組織をカウントし、各動物についてすべての組織及び尿の和を合計して総注射量を得た。この総量に基づいて各器官に関する%注射量を求め、器官を秤量することで1グラム当たりの%注射量(%ID/g)を求めた。データは、各時点における全部で3頭のマウスに関する平均値として、各群の標準偏差を表す誤差バーと共に報告される。
【0115】
Tc−99mで標識されたZ2465(配列番号16)及びZtaq(配列番号10)ポリペプチドをU87マウスに注射し、またZ2465(配列番号16)ポリペプチドをHT29マウスに注射したが、収集した時点は一層限られていた。図7は、これらの実験に関する腫瘍及び血液曲線を示す。Z2465(配列番号16)ポリペプチドは標的発現U87腫瘍中への高い腫瘍取込み量を示し、注射後(PI)30分で組織1グラム当たり注射量の7%を超える最大値及び注射後120分で25を超えるピーク腫瘍:血液比を有している。対照として、非標的発現HT29腫瘍を担持するマウスにZ2465(配列番号16)ポリペプチドを注射し、標的発現U87腫瘍を担持するマウスに非標的化Ztaq(配列番号10)ポリペプチドを注射した。両対照実験は、0%及び1%の公称腫瘍取込み量並びに<5の腫瘍:血液比を有している。やはり図7に示されるこれらの結果は、Z2465(配列番号16)ポリペプチドがU87腫瘍で発現されるPDGF−Rβを特異的に標的化することを示す。
【0116】
ポリペプチドは、2分未満の半減期を有する血液からの単一指数関数的なクリアランスを示す。このクリアランスは、主として腎臓によって媒介される。結果として、放射能は尿中に分泌される。脾臓中へのポリペプチド取込み量は微小であり、肝臓中への可変取込み量が認められる。これらの結果は、ポリペプチドが腎臓経路を介して効果的に排除される。
【0117】
下位選択
Z2465(配列番号16)ポリペプチドは注射後120分で最大の腫瘍:血液比を示したので、この時点を比較試験のために選択した。4種の単量体ポリペプチドのすべてについて単点生体分布を実施し、腫瘍:血液比及び絶対腫瘍取込み量を比較した(図9)。Z2483(配列番号18)ポリペプチドは最高の絶対腫瘍取込み量を有していた一方、Z2465(配列番号16)ポリペプチドは僅かに低い血液値のために最高の腫瘍:血液比を有していた。これらの結果は、Z2465(配列番号16)が最も性能の良い単量体ポリペプチドであることを明確に示す。
【0118】
原子価
二価ポリペプチドは、恐らくは結合活性効果のため、対応する単量体より高い親和性を示す。しかし、その大きいサイズは腫瘍侵入を妨げることがある。PDGF−Rβポリペプチドに関しては、4種の高親和性ポリペプチドの各々の二価形態が入手可能であった。Z2465(配列番号16)の二量体である(Z2465)2(配列番号19)を放射性標識し、U−87腫瘍担持マウスにおける4時間生体分布実験のために使用した。結果(図10)が示す通り、二価ポリペプチドは対応する単量体に関して認められたほどの高い腫瘍取込み量を有していないが、いかなるウォッシュアウトも示さない。これは恐らく減少したオフレートによるものである。注射後4時間までは、一価及び二価ポリペプチドは同等な腫瘍:血液比を有している。
【0119】
一価及び二価ポリペプチドは他の点では同様な生体分布特性を示し、いずれについても1〜2分の範囲内に血中半減期が認められた。結果は、一価及び二価ポリペプチドの両方がインビボでPDGF−Rβを標的化し得ることを明確に示している。
【0120】
低発現モデル
ポリペプチドが低いコピー数でそれの標的を検出し得る能力を評価するため、M231腫瘍担持マウスでの生体分布実験のためにZ2465(配列番号16)ポリペプチドを使用した。上述の通り、M231腫瘍は低レベルのPDGF−Rβ発現を示す。結果(図11)は、Z2465(配列番号16)ポリペプチドがなおもバックグラウンドレベルより高い取込み量及び腫瘍:血液比を示すものの、これらは高発現モデルで認められたものに比べて低下していることを示す。これは、PDGF−Rβ標的化ポリペプチドがインビボで低レベルの標的を検出するためにも使用できることを明確に実証している。
【0121】
二価ポリペプチドZ(2465)2(配列番号19)をM231腫瘍担持マウスで使用した場合、取込み量又は腫瘍:血液比に対する効果は認められなかった。値は高発現モデルから変化しなかった(図12)。これらのデータは、一価ポリペプチドに関して認められる取込み量は標的濃度で限定されるが、二価ポリペプチドに関して認められる取込み量は何か他の過程(恐らくは腫瘍侵入)によって限定されることを示す。これらの結果はまた、一価及び二価ポリペプチドの両方が標的化用途のために使用でき、その選択は用途特有の性質に依存することも示している。例えば、二価ポリペプチドは低レベルの発現が予想される用途のために選択できよう。
【0122】
低親和性ポリペプチド
僅か4nmの親和性を有するZ1982(配列番号14)ポリペプチドを、腫瘍担持マウスにおける単点生体分布のために使用した。結果(図13)は、低発現又は無発現モデルに比べ、高発現モデルで増加した取込み量を示す。腫瘍:血液比は対照腫瘍で認められるもの又はZtaq(配列番号)対照に関して認められるものより高い。しかし、Ztaq(配列番号10)の場合、この差は高い血液値(約1%)によって生み出されている。
【0123】
cPn216を介してTc−99m標識されたポリペプチド
Z02465(配列番号23)及びZ03358(配列番号24)を、部位特異的標識のため、His6タグを用いずに人工C末端システイン残基で官能化した。Affibody ABがBIAcore(GEHC社)を用いてZ2465(配列番号16)に関するポリペプチド親和性を測定したところ、600pMのKdを有することが示された。かかるポリペプチドはヒトPDGF−RBβに対して高められたので、マウス標的に対する親和性は低く、約4nMのKd値を有する。提供される化合物はまた、インビトロ及びインビボの両方で実証される通り、高度の特異性も有している。
【0124】
すべての記載されたポリペプチド用のエピトープは、レセプターの天然リガンドPDGF−βと共有されている。Z2465(配列番号16)は、BIAcore競合実験においてPDGF−BBと完全に競合し得る。
【0125】
Z2465(配列番号16)は、好ましい生体分布特性、詳しくは微小な肝臓内の非特異的保持量と組み合わされた高い標的取込み量を実証した。Z03358(配列番号24)は、Z2465及びZ02465(それぞれ配列番号16及び配列番号23)の誘導体である。ポリペプチド分子の純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって>95%と決定された。
【0126】
【表8】

Mal−cPn216
Tc−99mキレーターcPn216(図14)を導入するため、ポリペプチドの末端システインへのコンジュゲーションのためのチオール反応性マレイミド基及びTc−99mをキレート化するためのアミンオキシム基からなる二官能性化合物Mal−cPn216を合成した。
【0127】
cPn216−アミンはGE Healthcare社から入手した。N−β−マレイミドプロピオン酸はPierce Biotechnologies社(ロックフォード、米国イリノイ州)から購入した。N−メチルモルホリン、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBoP)、ジチオトレイトール(DTT)、重炭酸アンモニウム及び無水DMFは、Aldrich社(ミルウォーキー、米国ウィスコンシン州)から購入した。PBS緩衝液(1×、pH7.4)はInvitrogen社(カールスバッド、米国カリフォルニア州)から入手した。HPLC精製のためには、HPLC用アセトニトリル(CH3CN)、HPLC用トリフルオロ酢酸(TFA)及びMillipore 18mΩ水を使用した。
【0128】
0℃の無水DMF中におけるN−β−マレイミドプロピオン酸(108mg、0.64mmol)、cPn216−アミン(200mg、0.58mmol)及びPyBoP(333mg、0.64mmol)の氷冷溶液に、DMF中の0.4M N−メチルモルホリン(128μL、1.16mmol)を添加した。2時間後に氷浴を取り除き、混合物を室温で一晩撹拌した後、HPLC精製に付した。生成物は白色粉末(230mg、80%収率)として得られた。1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ 1.35(m,2H)、1.43(s,12H)、1.56(m,5H)、1.85(s,6H)、2.33(dd,J1=8Hz,J2=4Hz,2H)、2.78(m,4H)、3.04(m,2H)、3.61(dd,J1=8Hz,J2=4Hz,2H)、7.02(s,2H)、8.02(s,1H)、8.68(s,4H)、11.26(s,2H);m/z=[M+H]+に関して495.2(C244365に関するMW計算値=495.3)。
【0129】
Mal−PEG4−cPn216
ポリペプチド分子の性能に対するPEG化リンカーの効果を評価するため、末端システインへのコンジュゲーションのためのチオール反応性マレイミド基及びTc−99mをキレート化するためのアミンオキシム基からなる二官能性化合物Mal−PEG4−cPn216(図15)を合成した。マレイミド基及びアミンオキシム基はPEG4リンカーによって連結された。
【0130】
cPn216−アミンはGE Healthcare社から入手した。NHS−PEG4−マレイミドはPierce Biotechnologies社(ロックフォード、米国イリノイ州)から購入した。HPLC精製のためには、HPLC用アセトニトリル(CH3CN)、トリフルオロ酢酸(TFA)及びMillipore 18mΩ水を使用した。
【0131】
無水DMF(0.5mL)中におけるcPn216−アミン(5mg、0.0145mmol)及びNHS−PEG4−マレイミド(9mg、0.0174mmol)の混合物を室温で18時間撹拌した。得られた混合物をHPLC(水中0〜30%CH3CN)で精製することで、5.1mg(46%)の標記化合物を白色固体として得た。1H−NMR(400MHz,MeOH−d4):δ 1.55(m,15H)、1.65−1.78(m,6H)、1.94(s,6H)、2.48(q,J=7.23Hz,4H)、3.03(t,J=8.25Hz,4H)、3.52(t,J=5.05Hz,2H)、3.60−3.66(m,14H)、3.75(t,J=8.00Hz,2H)、3.79(t,J=8.00Hz,2H)、6.84(s,2H);高分解能MS m/z:C3564710[M+H]+に関する計算値742.4715、実測値742.4853。
【0132】
ポリペプチド分子に対するMal−cPn216及びMal−PEG4−cPn216のバイオコンジュゲーション
新鮮な脱気PBS緩衝液(1×、pH7.4)を用いて、ポリペプチドを約1mg/mLの濃度で溶解した。ポリペプチド中のジスルフィド結合を、新鮮な脱気PBS緩衝液(1×、pH7.4)中のDTT溶液の添加によって還元した。DTTの最終濃度は20mMであった。反応混合物を2時間渦動させ、脱気PBS緩衝液(1×、pH7.4)で予備平衡化したZeba脱塩スピンカラム(Pierce Biotechnologies社)に通して過剰のDTT試薬を除去した。溶出する還元ポリペプチド分子を集め、(ポリペプチド1当量当たり20当量の)二官能性化合物mal−cPn216又はMal−PEG4−cPn216をDMF溶液として添加し、混合物を室温で渦動させた。ポリペプチド分子の完全な転化を保証するため、反応を一晩進行させた。ある種のポリペプチド分子(例えば、Z02465(配列番号23))に関しては、液体クロマトグラフィー及びそれに続くエレクトロスプレーイオン化−飛行時間質量分析計(LC−MS)で反応をモニターしたところ、mal−cPn216との反応は2時間に短縮できることが示唆された。
【0133】
透析又は脱塩スピンカラムによる標的生成物の初期精製は、過剰のmal−cPn216を除去するには十分でなかった。また、標的生成物の回収率も低かった(約20%)。そこで、ポリペプチド分子の高安定性に基づく精製方法として逆相HPLCを選択した。
【0134】
HPLC精製は、MiCHROM Magic C18AQ 5μ 200Aカラム(MiCHROM Bioresources社、オーバーン、米国カリフォルニア州)上で実施した。溶媒A:H2O(0.1%ギ酸を含む)、溶媒B:CH3CN(0.1%ギ酸を含む)。勾配:30分で5〜100%B。
【0135】
所望生成物を含む画分を合わせ、100mM重炭酸アンモニウム溶液で中和し、凍結乾燥によって溶媒を除去することで、コンジュゲート化ポリペプチドを白色固体として得た。純度(図16に示されるHPLCで測定して>95%)及び収率(66〜93%)の顕著な向上が達成された。
【0136】
精製生成物のLC−MS分析では所望生成物の存在が確認され、MWはZ02465(配列番号23)及びZ03358(配列番号24)を含むポリペプチド構築物にただ1つのcPn216又はPEG4−cPn216標識が付加されていることを示唆していた(Z02465(配列番号23)−cPn216、Z02465(配列番号23)−PEG4−cPn216及びZ03358(配列番号24)−cPn216のそれぞれに関し、MW計算値:7732Da、7979Da及び7011Da、実測値:7732Da、7979Da及び7011Da)。
【0137】
cPn216を介してのTc−99m標識:Low Volume Chelakit Assembly
20mLバイアルに10.00mLの蒸留脱イオン水を添加した。この溶液中に窒素ガスを約30分間吹き込んだ後、NaHCO3(450mg、5.36×10-3mol)、Na2CO3(60mg、5.66×10-4mol)及びp−アミノ安息香酸ナトリウム(20mg、1.26×10-4mol)を添加した。図17は、有効な標識のための濃度要件を調べるための結果を示す。すべての試薬を独立に秤量し、水を含むバイアルに添加した。塩化スズ(1.6mg、7.09×10-6mol)及びMDP(2.5mg、1.42×10-5mol)を一緒に1ドラムバイアル中に秤取し、続いて約1mLの炭酸塩緩衝液混合物中への迅速な懸濁によって移送した(続いて1回洗浄した)。10μLアリコートを取り出し、窒素流下でシラン化バイアルに移し、直ちに凍結し、凍結乾燥まで液体窒素浴中に保存した。各バイアルをゴム隔膜で部分的に覆い、トレー式凍結乾燥機内に一晩配置した。バイアルを真空下で密封し、凍結乾燥機から取り出し、アルミニウムキャップでクリンプシールし、無水窒素で再加圧し、将来の使用までフリーザー内に貯蔵した。
【0138】
ポリペプチド−Cys−mal−cPn216のTc−99m標識
テクネチウム用還元剤としての塩化第一スズ、メチレンジホスホン酸、フリーラジカルスカベンジャーとしてのp−アミノ安息香酸塩、及び緩衝剤としての重炭酸ナトリウム/炭酸ナトリウム(pH9.2)の凍結乾燥混合物を含む自家製造した一段階キット配合物(Chelakit A+)を用いて、放射性標識ポリペプチドの合成を行った。手早く続けて、ポリペプチドの2μg/μL食塩水溶液20μLをChelakitに添加し、次いで直ちにCardinal Health社(オールバニー、米国ニューヨーク州)から入手した0.080mL食塩水(0.15M NaCl)中のNa99mTcO4(0.8mCi、29.6MBq)を添加した。混合物を1回撹拌し、周囲温度で20分間静置した。完了後、粗放射化学収率をITLC(ITLC−SG、Biodex社、0.9%NaCl)によって測定した(下記表8)。
【0139】
【表9】

0.35mLの150mM無菌NaClで反応容量を0.45mLに増加させ、最終生成物をサイズ排除クロマトグラフィー(NAP5カラム、GE Healthcare社、10mM PBSを充填)によって精製した。粗反応混合物をNAP5カラム上に装填し、ゲルベッド中に入れ、0.8mLの10mM PBSで溶出した後に最終精製生成物を単離した。最終放射能は、標準的な線量キャリブレーター(CRC−15R、Capintec社、ラムゼー、米国ニュージャージー州)中で評価した。放射化学収率(表8)及び純度は、ITLC(>98.5%)、C4 RP−HPLC及びSEC−HPLC分析によって測定した。図18は、His6構築物Z2465(配列番号16)と比較した、標識ポリペプチド−cPn構築物Z02465(配列番号23)の単量体に関する化学的に予測可能な挙動を示す。最終生成物(10〜15μCi/μg、0.2〜0.5μCi/μL(0.37MBq/μg、7.4MBq/mL))を直ちに生体分布試験で使用した。
【0140】
対応するZ02465(配列番号23)−Cys−cPn216、Z02465(配列番号23)−Cys−PEG4−cPn216及びZ03358(配列番号24)−Cys−cPn216誘導体を、標準的な一段階キットに基づく手順(Chelakit A+−自家組立)を用いて標識した。以前の研究では、cPn含有ベクターは、ベクター濃度が1×10−5M以上でありかつ周囲温度で作業した場合に最も良く標識されることが確認されている。適度な量のZ02465(配列番号23)−Cys−cPn216(MW=7733g・mol-1)及びZ03358(配列番号24)−Cys−cPn216(MW=7011g・mol-1)を用いてこの濃度を達成するため、反応容量を約100〜120μL未満に保つと共に、20〜40μgの材料の使用を必要とした。小さい容量に対処するため、Chelakitは減少した量のSnCl2、メチレンジホスホン酸、p−アミノ安息香酸塩、炭酸カリウム及び重炭酸カリウムを含むように変更した。0.5〜1.2mCi(18.5〜44.4MBq)のNa99mTcO4(10〜25mCi/mL)を小容量Chelakit中の20μLの2μg/μLポリペプチド溶液と周囲温度で20分間化合させることにより、Z02465(配列番号23)−Cys−cPn216及びZ03358(配列番号24)−Cys−cPn216をかなり高い放射化学収率(表8)で標識した。これらの誘導体のRP−HPLCは、水中の0.06%アンモニアを移動相として用いて塩基性pHで実施する場合にはチャレンジであった(下記参照)。NAP5精製によれば、高い放射化学純度及び54〜67%の単離放射化学収率を有する最終生成物が得られた。
【0141】
この実験のために使用したHPLC条件は次の通りであった。C4 RP−HPLC方法1:溶媒A:95/5 H2O/CH3CN(0.05%TFAを含む)、溶媒B:95/5 CH3CN/H2O(0.05%TFAを含む)。勾配溶出:0分,0%B、4分,20%B、16分,60%B、20分,100%B、25分,100%B、26分,0%B、31分,0%B。
【0142】
C4 RP−HPLC方法2:溶媒A:水中0.06%NH3、溶媒B:CH3CN。勾配溶出:0分,0%B、4分,20%B、16分,60%B、20分,100%B、25分,100%B、26分,0%B、31分,0%B。
【0143】
RP−HPLC分析は、G1311A QuatPump、100μLシリンジ及び2.0mLシートキャピラリーを有するG1313Aオートインジェクター、Grace Vydac−Protein C4カラム(S/N E050929−2−1、4.6mm×150mm)、G1316Aカラムヒーター、G1315A DAD並びにRamon Star−GABIγ線検出器を備えたHP Agilent 1100上で実施した。
【0144】
SEC HPLC:溶媒:1×(10mM)PBS(Gibco社、Invitrogen]社、pH7.4、CaCl2及びMgCl2含有)。30分間のイソクラティック溶出。分析は、Perkin Elmer SEC−4溶媒環境制御装置、Series 400 LCポンプ、TSS 200 Advanced LCサンプルプロセッサー及びSeries 200ダイオードアレイ検出器上で実施した。Raytest GABI with Socket 8103 0111ピンホール(内径0.7mmで容積250μL)フローセルγ線検出器が、Perkin Elmer NCI 900 Network Chromatography Interfaceを介してインターフェースされた。使用したカラムは、Superdex 75 10/300 GL High Performance SECカラム(GE Healthcare社、コード:17−5174−01,ID no.0639059)であった。
【0145】
ポリペプチド−Cys−mal−cPn216の非特異的Tc−99m標識の欠如
Tc−99m金属がポリペプチド構築物上の別の部位に配位していないことを確認するため、テクネチウム用還元剤としての塩化第一スズ、メチレンジホスホン酸、フリーラジカルスカベンジャーとしてのp−アミノ安息香酸塩、及び緩衝剤としての重炭酸ナトリウム/炭酸ナトリウム(pH9.2)の凍結乾燥混合物を含む一段階キット配合物(Chelakit A+)を用いて、ポリペプチド主鎖上にTc−99mを組み込む試みを行った。手早く続けて、Z02465(配列番号23)−Cys−NEMの0.69μg・μL-1食塩水溶液50μLをChelakitに添加し、次いで直ちにCardinal Health社(オールバニー、米国ニューヨーク州)から入手した0.050mL食塩水(0.15M NaCl)中のNa[99mTcO4](0.5mCi、18.5MBq)を添加した。混合物を1回撹拌し、周囲温度で20分間静置した。20分後、粗反応混合物のアリコートを取り出し、SEC HPLCによって分析した。
【0146】
His及びCysチャレンジ試験−Z02465(配列番号23)−Cys−cPn216−99mTc(O)2
ポリペプチド−cPn−99mTc(O)2構築物のインビトロ安定性をシステイン及びヒスチジンチャレンジによって測定した。十分な過剰量のチャレンジ剤を確保するため、存在するポリペプチド(標識又は非標識)の総量に比べて1000倍過剰量のいずれかのアミノ酸を10mM PBS溶液に添加し、37℃で一晩インキュベートした(L−His及びL−Cysモル量)。簡単に述べれば、上記[セクション「ポリペプチド−Cys−mal−cPn216のTc−99m標識」]に記載したようにしてZ02465(配列番号23)−Cys−cPn−99mTc(O)2を得た。800μLの10mM PBS中に40μg(5.17×10-9mol)以下のZ02465(配列番号23)−Cys−cPn216を含む約300μCiの最終精製生成物を、2つの別々の1ドラムバイアル中に等分した。第1のバイアルには97μLのL−His(食塩水中10mg/mLで6.25×10-6mol)を添加し、バイアルにキャップを付け、37℃の予熱した鉛反応ブロック上に置いた。第2の1ドラムバイアルには、151.4μLのL−Cys(食塩水中5mg/mLで6.25×10-6mol)を添加した。この第2のバイアルにもキャップを付け、鉛反応ブロック中に置いた。両溶液を37℃に一晩維持した。t=7時間及びt=24時間にアリコートを取り出し、ITLCで分析した。t=7時間では、Z02465(配列番号23)−cPn−99mTc(O)2はL−Hisによって31.5%の分解を示し、L−Cysによって69%の分解を示した一方、24時間後には、それぞれ74.1%及び93.6%の分解が認められた。
【0147】
ポリペプチド構築物の可変pH分析
cPn216−99mTc(O)2構築物は一般に、0.06%アンモニア水溶液を水性移動相として用いるpH9での逆相HPLCによって分析される。これは、HPLCによる生物学的構築物の分析のために広く使用されている酸性条件(即ち、水中0.05%トリフルオロ酢酸)下におけるcPn216−99mTc(O)2複合体の固有の不安定性及び急速な分解のためである。99mTc(CO)3(His6)−ポリペプチド構築物は一層丈夫であり、水中0.05%TFAを水性移動相として用いて分析できる。一連の99mTc(CO)3(His6)標識ポリペプチド構築物(即ち、Z2465変異体)を使用しながら、3種の水性移動相、即ち1)水中0.05%TFA(pH<2)、2)50mM酢酸アンモニウム(pH約7)及び3)水中0.06%アンモニア(pH約9)を用いて化学的に丈夫なHis6−誘導体を分析した。結果は塩基性pHにおけるポリペプチドの異常なHPLC挙動を実証しており、分析はpH7以下で実施すべきことを示す。これらの結果に基づき、我々のポリペプチド−cPn216−99mTc(O)2構築物は通常のpH9条件でなくpH7で分析した。
【0148】
99mTc−ポリペプチド−cPn216コンジュゲートを試験するために使用した動物モデル
8〜15週齢の範囲内の雌CD−1ヌードマウス(Charles River Labs社、ホプキントン、米国マサチューセッツ州)を用いてインビボ試験を実施した。マウスは換気ラック内に収容し、食物及び水を随意に与えると共に、標準的な12時間昼夜照明サイクル下に置いた。異種移植のためには、マトリゲル及びPBSの50/50(v/v)混合物中の細胞100μlを動物に注射した。細胞は左後四半部の皮下に移植した。移植はイソフルラン麻酔下で実施した。HT29及びU87に関しては、各マウスに3〜4×106個の細胞を移植した。M231に関しては、各マウスに1×107個の細胞を移植した。これらの条件下では、80%を超える注射動物において3〜4週間で使用可能な腫瘍(100〜300μg)が得られた。
【0149】
Tc−99m−ポリペプチド−cPn216コンジュゲートの生体分布
マウスに約1μgのTc−99m標識ポリペプチド(約3μCi/1μg)の尾静脈注射を施した。マウスは安楽死まで濾紙で内張りしたケージ内に置いた。各時点で3頭のマウスを安楽死させ、検査対象組織を剔出し、Perkin Elmer Wallac Wizard 1480 Gamma Counter上でカウントした。血液、腎臓、肝臓、脾臓及び注射部位(尾)に関してデータを収集した。ケージからの尿を膀胱と共にプールし、やはりカウントした。残りの組織をカウントし、各動物についてすべての組織及び尿の和を合計して総注射量を得た。この総量に基づいて各器官に関する%注射量を求め、器官を秤量することで1グラム当たりの%注射量(%ID/g)を求めた。データは、各時点における全部で3頭のマウスに関する平均値として、各群の標準偏差を表す誤差バーと共に報告される。4時間にわたって4つの時点を選択した(注射後5、30、120及び240分)。
【0150】
Z02465(配列番号23)−cPn216−Tc−99mポリペプチドは標的発現U87腫瘍中への高い腫瘍取込み量を示し、注射後(PI)30分で組織1グラム当たり注射量の7.15±3.39%(n=6)の値を有するが、これは注射後240分までの試験期間を通じてかなり一定に保たれている。腫瘍:血液比は、注射後30、120及び240分でそれぞれ5、12及び15であった。減少する血液値が主として腫瘍:血液比を経時的に高めている。図19は、これらの実験に関する腫瘍曲線、血液曲線及び腫瘍:血液曲線を示す。
【0151】
対照として、非標的発現HT29腫瘍を担持するマウスにポリペプチドを注射した。また、セクション「His6−ポリペプチド生体分布試験」における生体分布試験では、標的発現U87腫瘍を担持するマウスにおいて非標的化Ztaq(配列番号10)ポリペプチドを調べてある。対照HT29モデルでは、顕著な取込みは認められなかった。即ち、腫瘍:血液比は試験期間を通じて1〜2であり、絶対腫瘍取込み量は試験期間を通じて約1%ID/gであった。HT29株及びU87株の間における血液曲線はほぼ同一であり、観測される腫瘍取込み量の一因となる血管分布の差は排除されている。標的発現U87腫瘍を担持するマウスに注射された非標的化Ztaq(配列番号10)ポリペプチドに関しては、同様な挙動が認められた。両対照とも、異種移植モデルにおいて、PDGF−Rβに対するZ02465(配列番号23)−cPn216−99mTcの非常に高度の特異性を示唆している。
【0152】
ポリペプチドは、2分未満の半減期を有する血液からの単一指数関数的なクリアランスを示す。このクリアランスは主として腎臓によって媒介され、注射後(PI)240分で39.30±7.30%(n=10)ID/器官である。放射能は主として尿中に分泌される。脾臓中へのポリペプチド取込み量は微小であり、肝臓中には低い取込み量が認められ、注射後30分を過ぎた試験期間を通じて約1.5%ID/器官(マウスにおける値については%ID/gと同等)である。
【0153】
Z03358(配列番号24)−cPn216−Tc−99mに関する生体分布結果
Z03358(配列番号24)−cPn216−Tc−99m及びZ02465(配列番号23)−cPn216−Tc−99mの生体分布の間に顕著な差は認められなかった。図21は、試験期間中における臨界器官取込み量を示す。
【0154】
Z02465(配列番号23)−PEG−cPn216−Tc−99mに関する生体分布結果
Z02465(配列番号23)−cPn216−Tc−99m及びZ02465(配列番号23)−PEG4−cPn216−Tc−99mの腫瘍取込み量の間に顕著な差は認められなかったが、PEG化バージョンに関しては高い血液及び肝臓保持量が認められた。図22は、試験期間中における臨界器官取込み量を示す。
【0155】
【表10】

【0156】
【表11】

生体分布:代謝試験
注射後t=5、30、60及び120分で各組織中に存在する放射性化学種のサイズ及び組成を決定するため、血液、尿、腎臓ホモジネート及び腫瘍ホモジネートから組織試料を集めた。腎臓及び腫瘍は剔出し、乳鉢及び乳棒を用いる機械的摩砕によってホモジナイズした。プロテアーゼ阻害剤(Santa Cruz Biotech社、サンタクルズ、米国カリフォルニア州#24948)を含むRIPA緩衝液中に放射性化学種を抽出し、すべての試料を10000rpmで5分間遠心した。得られた上澄み液を取り出し、0.2μm PTFEフィルターで濾過した。0.5〜1μCiの「カラム上」標的放射能で存在する正味放射能によってHPLC注入量を決定した。
【0157】
4種の別々の組織(即ち、5、30、60及び120分の時点における血液、尿、腎臓及び腫瘍)を剔出し、その放射能含有量を分析した。濾過及び遠心した組織ホモジネートに関し、各時点についてITLC、逆相HPLC及びサイズ排除HPLC分析を実施した。血液は、経時的に減少するシグナル/ノイズ比をもって注射トレーサーZ02465(配列番号23)−cPn216−99mTc(O)2の存在を示したが、これは血液からのトレースの緩徐なクリアランスを示唆している。腎臓組織中に存在する放射性化学種を分析したところ、注射したトレーサーは(たとえあっても)僅かしか存在せず、大部分の放射能は低分子量の親水性化合物として存在していた。同様に、尿の分析によっても、小さい親水性の放射性化学種のみが排泄のため尿中に侵入したことが確認された。尿分析に関するシグナル:ノイズ比は経時的に増加し、放射能の経時的なインビボ蓄積を示しているが、これは生体分布データに一致した結果である。最後に、腫瘍ホモジネートの分析は、注射したトレーサーと同様な組成の放射性化学種の存在を示すと共に、分子量がそれより大きい化合物及び小さい化合物の存在も示した。逆相HPLC分析は、注射したトレーサーと同様な保持時間を有するピークを与えた。
【0158】
アミノキシ官能基を介してF−18標識されたポリペプチド
Z02465(配列番号23)−システインポリペプチドを、人工C末端システインを介してアミノキシ基で官能化した。提供されたポリペプチド分子の純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって>95%と測定された。
【0159】
Mal−アミノキシ(Mal−AO)の合成
ポリペプチド分子中にF−18を組み込むため、2つの直交基(即ち、人工システインへのコンジュゲーションのためのチオール反応性マレイミド基及びF−18−アルデヒド反応性アミノキシ基)からなる二官能性リンカーMal−AOを合成した。このリンカーを製造するためには、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC)媒介カップリング条件を用いてN−(2−アミノエチル)マレイミドを2−(tert−ブトキシカルボニルアミノキシ)酢酸と反応させてBoc保護形態のリンカーを生成した。次いで、Boc保護基を酸開裂により脱保護することで、最終のMal−AO生成物を定量的収率で得た。最終生成物は、それ以上精製せずに直接使用した。
【0160】
ジクロロメタン、2−(tert−ブトキシカルボニルアミノキシ)酢酸、トリエチルアミン、N−(2−アミノエチル)マレイミドトリフルオロ酢酸(TFA)塩、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBT)、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC)、ジチオトレイトール(DTT)及びその他すべての標準合成試薬は、Sigma−Aldrich Chemical Co.(セントルイス、米国ミズーリ州)から購入した。すべての化学薬品は、それ以上精製せずに使用した。PBS緩衝液(1×、pH7.4)は、Invitrogen社(カールスバッド、米国カリフォルニア州)から入手した。精製のためには、HPLC用酢酸エチル、ヘキサン、アセトニトリル(CH3CN)、トリフルオロ酢酸(TFA)及びMillipore 18mΩ水を使用した。
【0161】
二官能性化合物tert−ブチル−2−(2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロル−1−イル)エチルアミノ)−2−オキソエトキシカルバメート(図23A)(「Mal−AO−Boc」と略示する)の製造手順
2−(tert−ブトキシカルボニルアミノキシ)酢酸(382mg、2mmol)の無水ジクロロメタン(20mL)溶液に、トリエチルアミン(307μL、2.2mmol)、N−(2−アミノエチル)マレイミドTFA塩(508mg、2mmol)、HOBT(306mg、2mmol)及びEDC(420mg、2.2mmol)を順次に添加した。室温で24時間撹拌した後、反応混合物を酢酸エチル(50mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液(3×30mL)、水(30mL)及びブライン(30mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。濾液を濃縮して淡黄色固体とし、これをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中70%酢酸エチル)で精製することで、生成物を白色粉末(500mg、80%収率)として得た。
【0162】
二官能性化合物2−(アミノキシ)−N−(2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロル−1−イル)エチル)アセトアミド塩酸塩(図23B)(「Mal−AO」と略示する)の製造手順
メタノール中3M HClの1mLに9.3mgのMal−AO−Bocを溶解した溶液を室温で18時間撹拌した。真空下で溶媒を除去することで、Mal−AOを淡黄色固体として得た。
【0163】
ポリペプチド分子に対するMal−AOのバイオコンジュゲーション
新鮮な脱気PBS緩衝液(1×、pH7.4)を用いて、ポリペプチドを約1mg/mLの濃度で溶解した。ポリペプチド中のジスルフィド結合を、新鮮な脱気PBS緩衝液(1×、pH7.4)中のジチオトレイトール(DTT)溶液の添加によって還元した。DTTの最終濃度は20mMである。反応混合物を2時間渦動させ、脱気PBS緩衝液で予備平衡化したZeba脱塩スピンカラム(Pierce Biotechnologies社)に通して過剰のDTT試薬を除去した。還元ポリペプチドを集め、(ポリペプチド1当量当たり20当量の)二官能性化合物Mal−AOをDMSO溶液として添加した。室温で一晩渦動させた後、反応混合物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製した。
【0164】
HPLC精製は、MiCHROM Magic C18AQ 5μ 200Aカラム(MiChrom Bioresources社、オーバーン、米国カリフォルニア州)上で実施した。溶媒A:H2O(0.1%ギ酸を含む)、溶媒B:CH3CN(0.1%ギ酸を含む)。勾配:30分で5〜100%B。所望生成物を含む画分を合わせ、100mM重炭酸アンモニウム溶液で中和し、凍結乾燥によって溶媒を除去することで、アミノキシ修飾ポリペプチドを白色固体(62%収率)として得た。
【0165】
ESI−TOF−MS分析によれば、予想される分子量(Z02465(配列番号23)−ONH2に関するMW計算値:7451Da、実測値:7451Da)をもった標的生成物の存在が確認された。2つのONH2標識がポリペプチド分子に付加された副生物は認められなかった。
【0166】
放射性標識
総論:すべての反応は、窒素雰囲気下又は窒素でパージしたクリンプトップ密封バイアル中で実施した。Kryptofix 222(Aldrich社)及びK2CO3(EMD Science社)は購入し、受け入れたままで使用した。Optima(商標)グレードのアセトニトリルをHPLC溶媒及び反応溶媒として使用した。
【0167】
[F−18]KF(精製水中で40mCi・mL-1(1480MBq・mL-1))をIBA Molecular社(オールバニー、米国ニューヨーク州)又はPETNET Solutions社(オールバニー、米国ニューヨーク州)から入手し、受け入れたままで使用した。[F−18]−フッ化物をまずChromafix 30−PS−HCO3陰イオン交換カートリッジ(ABX社、ラーデベルク、ドイツ)上に固定化し、次いでKryptofix K222(376g・mol-1、8mg、2.13×10-5mol)及び炭酸カリウム(138.2g・mol-1、2.1mg、1.52×10-5mol)を含むアセトニトリル及びH2Oの4:1混合物1mLを用いてドライダウン容器内に溶出した。穏やかに加熱(約45℃)しながら部分真空及び窒素流下で溶媒を除去した(約15分)。次に、K222(8mg)を含む0.5mLのアセトニトリルで供給源バイアル及び陰イオン交換カートリッジを洗浄し、再び反応混合物を部分真空及び穏やかな加熱下で乾固した(約10分)。反応器をN2で再加圧し、さらに0.5mLのアセトニトリルを用いて共沸ドライダウンを1回繰り返した。4−ホルミル−N,N,N−トリメチルアニリニウムトリフレート(313.30g・mol-1、3.1mg、9.89×10-6mol)を0.35mLの無水DMSO(Acros社)に溶解し、[F−18]KF・K222及びK2CO3を含む反応器に直接添加した。反応混合物を90℃で15分間加熱し、直ちに3mLの蒸留脱イオンH2O(ddH2O)で冷却しかつ奪活した。続いて、この混合物を陽イオン交換カートリッジ(Waters SepPak Light Accell Plus C18)に通し、ddH2Oで10mLに希釈し、逆相C18 SepPak(Waters SepPak Plus C18)上に装填した。SepPakを10mLのddH2Oでフラッシュし、次いで30mLの空気でパージした。[F−18]4−フルオロベンズアルデヒド([F−18]FBA)を1.0mLのメタノールで溶出した。
【0168】
別途、高回収バイアル(2mL、National Scientific社)にZ02465(配列番号23)−Cys−ONH2(0.35〜0.5mg)を仕込んだ。固体を25μLのddH2O及び8μLのトリフルオロ酢酸中に懸濁した。メタノール中の[F−18]FBA(上記参照)25μLを反応バイアルに移した。容器にキャップを付け、クリンプ加工し、加熱ブロック中に配置し、60℃に15分間保った。この時点で分析HPLCでの分析(図1)のために小アリコート(<5μL)を取り出した。半分取HPLC精製のための準備として、0.1%TFAを含む450μLのddH2Oを用いて溶液を約500μLに希釈した。[F−18]FB−ポリペプチドを半分取HPLCによって単離精製した。生成物(0.113mCi/4.18MBq)を含むHPLC画分をddH2Oで5:1に希釈し、次いでtC18 Plus SepPak(Waters社)上に固定化した。SepPakをまず5mLのddH2Oで、次いで30mLの空気でフラッシュした。まずボイド容積(約0.5mL)を溶出させ、次いで250〜300μLの溶出液を独立のフラスコ内に集めることにより、[F−18]FB−ポリペプチド(0.073mCi、2.70MBq)を最小量のエタノール中に単離した。放射化学純度及び化学純度を確定するため、単離した生成物に関してRP−HPLC分析を実施した。通例、製剤化後分析のためには10μLの0.1μCi/μL溶液を注入した。単離放射化学収率は16%([F−18]FBA添加からの崩壊補正値27%)であり、放射化学純度は>99%であった。反応時間は変動したが、平均は143±48分であった。これは図24に示されている。
【0169】
【表12】

使用した分析HPLC条件は次の通りである。分析は、G1311A QuatPump、100μLシリンジ及び2.0mLシートキャピラリーを有するG1313Aオートインジェクター、Phenomenex Gemini C18カラム(4.6mm×150mm、5μ、100Å(S/N 420477−10))、G1316Aカラムヒーター、G1315A DAD並びにRamon Star−GABIγ線検出器を備えたHP Agilent 1100上で実施した。95:5 ddH2O:CH3CN(0.05%TFAを含む)、溶媒B:CH3CN(0.05%TFAを含む)。勾配溶出(1.0mL・min-1):0分,0%B、1分,15%B、21分,50%B、22分,100%B、26分,100%B、27分,0%B、32分,0%B(TR約15分)又は勾配溶出(1.2mL・min-1):0分,0%B、1分,15%B、10分,31%B、10.5分,100%B、13.5分,100%B、14分,0%B、17分,0%B(TR約13.2分)。
【0170】
使用した半分取HPLC条件は次の通りである。精製は、DG−2080−54 4ラインデガッサー、MX−2080−32ダイナミックミキサー、2台のPU−2086 Plus Prepポンプ、大容量注入キットを取り付けたAS−2055 Plus Intelligentオートインジェクター、ガード(S/N 295860−1、P/N 00G−4252−N0)付きのPhenomenex 5μ Luna C18(2)100Å,250×10mm,5μカラム、MD−2055 PDA、及び固体SiPINフォトダイオードγ線検出器に取り付けたCarrol & Ramsey Associates Model 105Sアナログレートメーターを備えたJasco LC上で実施した。勾配溶出:0分,5%B、32分,20%B、43分,95%B、46分,95%B、49分,5%B。溶媒A:ddH2O:CH3CN(0.05%TFAを含む)、溶媒B:CH3CN(0.05%TFAを含む)(TR約39.5分。
【0171】
F−18−ポリペプチド−アミノキシコンジュゲートを試験するために使用した動物モデル
8〜15週齢の範囲内の雌CD−1ヌードマウス(Charles River Labs社、ホプキントン、米国マサチューセッツ州)を用いてインビボ試験を実施した。マウスは換気ラック内に収容し、食物及び水を随意に与えると共に、標準的な12時間昼夜照明サイクル下に置いた。異種移植のためには、マトリゲル及びPBSの50/50(v/v)混合物中の細胞100μlを動物に注射した。細胞は左後四半部の皮下に移植した。移植はイソフルラン麻酔下で実施した。HT29及びU87に関しては、各マウスに3〜4×106個の細胞を移植した。M231に関しては、各マウスに1×107個の細胞を移植した。これらの条件下では、80%を超える注射動物において3〜4週間で使用可能な腫瘍(100〜300μg)が得られた。
【0172】
Z02465(配列番号23)−フルオロベンジル−F−18の生体分布
マウスに約1μgのF−18標識ポリペプチド(約2μCi/1μg)の尾静脈注射を施した。マウスは安楽死まで濾紙で内張りしたケージ内に置いた。各時点で3〜5頭のマウスを安楽死させ、検査対象組織を剔出し、Perkin Elmer Wallac Wizard 1480 Gamma Counter上でカウントした。血液、腎臓、肝臓、脾臓及び注射部位(尾)に関してデータを収集した。ケージからの尿を膀胱と共にプールし、やはりカウントした。残りの組織をカウントし、各動物についてすべての組織及び尿の和を合計して総注射量を得た。この総量に基づいて各器官に関する%注射量を求め、器官を秤量することで1グラム当たりの%注射量(%ID/g)を求めた。データは、各時点における全部で3頭のマウスに関する平均値として、各群の標準偏差を表す誤差バーと共に報告される。
【0173】
ポリペプチドは、U87細胞異種移植モデルにおいて生体分布試験を受けた。4時間にわたって4つの時点を選択した(注射後5、30、120及び240分)。完全な生体分布データは表11(U87腫瘍担持マウスにおけるZ02465(配列番号23)−フルオロベンジル−F−18の%ID/g)に含まれている。
【0174】
図26及び図27は、これらの実験に関する腫瘍、血液、腫瘍:血液及びクリアランス曲線を示す。
【0175】
Z02465(配列番号23)−フルオロベンジル−F−18ポリペプチドは標的発現U87腫瘍中への高い腫瘍取込み量を示し、注射後(PI)30分で組織1グラム当たり注射量の5.53±0.78%(n=5)の値を有する。腫瘍:血液比は、注射後30、120及び240分でそれぞれ約5、10及び32であった。
【0176】
ポリペプチドは、2分未満の半減期を有する血液からの単一指数関数的なクリアランスを示す。このクリアランスは主として腎臓によって媒介され、注射後(PI)240分で2.32±0.307%(n=5)ID/器官である。放射能は主として尿中に分泌される。脾臓中へのポリペプチド取込み量は微小であり、肝臓中には低い取込み量が認められ、(注射後4時間の)試験期間を通じて約0.5%ID/器官(マウスにおける値については%ID/gと同等)である。
【0177】
【表13】

ポリペプチドのヨウ素(I)放射性標識
すべての反応は、窒素雰囲気下又は窒素でパージしたクリンプトップ密封バイアル中で実施した。Optima(商標)グレードのアセトニトリルをHPLC溶媒及び反応溶媒として使用した。
【0178】
ポリペプチド(Z02465、配列番号23)−ONH2(0.35〜0.5mg)を含む高回収バイアル(2mL、National Scientific社)に[123I]4−ヨードベンズアルデヒド([123I]IBA)を添加する。反応は、ポリペプチドを25μLのddH2Oに溶解し、8μLのトリフルオロ酢酸を添加し、次いでメタノール中の[123I]IBAを添加することで開始する。容器にキャップを付け、クリンプ加工し、加熱ブロック中に配置し、60℃に15分間保つ。反応状態を評価するため、分析HPLCでの分析のためのアリコート(<5μL)を取り出する。半分取HPLC精製のための準備として、0.1%TFAを含むddH2O及びアセトニトリルの1:1混合物の最小量に希釈する。[123I]IB−ポリペプチドを半分取HPLC又はNAP5サイズ排除クロマトグラフィーによって単離精製する。生成物を含むHPLC画分をddH2Oでさらに希釈(5:1)し、次いでtC18 Plus SepPak(Waters社)上に固定化した。SepPakをまず5mLのddH2Oで、次いで30mLの空気でフラッシュした後、まずボイド容積(約0.5mL)を溶出させ、次いで250〜300μLの溶出液を独立のフラスコ内に集めることにより、[123I]IB−ポリペプチドを最小量のエタノール中に得る。放射化学純度及び化学純度を確定するため、単離した生成物に関してRP−HPLC分析を実施する。
【0179】
ポリペプチドのガドリニウム(Gd)放射性標識
ポリペプチドZ2465(配列番号16)にDOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N',N,N"'−四酢酸)キレーターをコンジュゲートした後、ポリペプチドをGd(詳しくはGd−153)で標識した。
【0180】
ポリペプチド分子に対するMal−DOTAのバイオコンジュゲーションを次のようにして実施した。新鮮な脱気PBS緩衝液(1×、pH7.4)を用いて、ポリペプチドを約1mg/mLの濃度で溶解した。ポリペプチド中のジスルフィド結合を、新鮮な脱気PBS緩衝液(1×、pH7.4)中のDTT溶液の添加によって還元した。DTTの最終濃度は20mMであった。反応混合物を2時間渦動させ、脱気PBS緩衝液(1×、pH7.4)で予備平衡化したZeba脱塩スピンカラム(Pierce Biotechnologies社)に通して過剰のDTT試薬を除去した。溶出する還元ポリペプチド分子を集め、(ポリペプチド1当量当たり15当量の)二官能性化合物mal−DOTAをDMSO溶液として添加し、混合物を室温で渦動させた。ポリペプチド分子の完全な転化を保証するため、反応を一晩進行させた。
【0181】
HPLC精製は、MiCHROM Magic C18AQ 5μ 200Aカラム(MiChrom Bioresources社、オーバーン、米国カリフォルニア州)上で実施した。溶媒A:H2O(0.1%ギ酸を含む)、溶媒B:CH3CN(0.1%ギ酸を含む)。勾配:30分で5〜100%B。
【0182】
所望生成物を含む画分を合わせ、100mM重炭酸アンモニウム溶液で中和し、凍結乾燥によって溶媒を除去することで、コンジュゲート化ポリペプチドを白色固体として得た。
【0183】
精製生成物のLC−MS分析では所望生成物の存在が確認され、ポリペプチド構築物にただ1つのDOTAキレーターが付加されていることを示唆していた(Z2465(配列番号16)−DOTAに関するMW計算値:8587Da、実測値:8588Da)。
【0184】
続いて、放射性標識を次のようにして実施した。10μlの酢酸アンモニウム溶液(pH=6.75)をスクリュートップバイアルに添加し、0.1M HCl中の153GdCl3(Perkin Elmer社)95μl(4.1MBq)を添加した。次いで、50μlのH2O中のZ2465(配列番号16)−DOTAポリペプチド400μg(MW=8587g・mol-1、4.7×10-8mol)を反応混合物に添加して、0.3mMの最終Z2465(配列番号16)−DOTA濃度及び4.5のpHを得た。反応バイアルを密封し、反応物を周囲温度に保った。粗反応混合物の逆相HPLC分析によれば、Ga−67−NOTA Her2ポリペプチドの放射化学純度は9日後に64%であることがわかった(図29)。Z2465(配列番号16)−DOTAポリペプチドをHPLCで精製したところ、0.065mCi(2.4MBq)のZ2465(配列番号16)−DOTA(収率=57%)が得られた。HPLC溶媒を真空下で除去することで、約0.6mLの残留溶媒を含む最終溶液を得た。次いで、約0.9mLの50mMリン酸緩衝食塩水を添加することで、0.043mCi/mL(1.6MBq/mL)の最終濃度を有するpH7の最終溶液が得られた。精製して製剤化したZ2465(配列番号16)−DOTAポリペプチドは、−70℃で貯蔵した場合、43日以上にわたって安定であることが判明した(図30)。
【0185】
使用した分析HPLC条件は次の通りである。カラム:Grace Vydac C4 protein 5ミクロン,300Å,4.6×250mm。溶媒A=95/5 H2O/CH3CN(0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む)。溶媒B=95/5 CH3CN/H2O(0.05%TFAを含む)。HPLC勾配:0分,0%B、4分,20%B、16分,60%B、20分,100%B、25分,100%B、26分,0%B。
【0186】
使用した半分取HPLC条件は次の通りである。カラム:Grace Vydac C4 protein 5ミクロン,300Å,4.6×250mm。溶媒A=95/5 H2O/CH3CN(0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む)。溶媒B=95/5 CH3CN/H2O(0.05%TFAを含む)。HPLC勾配:0分,0%B、4分,20%B、16分,60%B、20分,100%B、25分,100%B、26分,0%B。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シグナルジェネレーターで標識された配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9又はその保存的変異体のいずれかのポリペプチドであって、PDGFR−βと特異的に結合するポリペプチドを含んでなるPDGF−Rβイメージング剤。
【請求項2】
ポリペプチドがA772細胞、U87細胞又はM231細胞によって発現されるPDGFR−βに対して10nM以上の結合親和性を有する、請求項1記載のイメージング剤。
【請求項3】
ポリペプチドが配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号9から選択される2以上のアミノ酸配列を含むことで多価ポリペプチドを形成する、請求項1又は請求項2記載のイメージング剤。
【請求項4】
多価ポリペプチドが90%より大きい配列同一性を有する2つの反復アミノ酸配列を含むことで二価均質ポリペプチドを生成する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のイメージング剤。
【請求項5】
シグナルジェネレーターが常磁性標識、放射性核種又は発蛍光団からなる、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のイメージング剤。
【請求項6】
シグナルジェネレーターが放射性核種であり、フッ素、ヨウ素、テクネチウム、ガリウム及びガドリニウムから選択される、請求項5記載のイメージング剤。
【請求項7】
フッ素が18Fからなる、請求項6記載のイメージング剤。
【請求項8】
18Fがアミノキシリンカーを介してポリペプチドに結合される、請求項6記載のイメージング剤。
【請求項9】
18FがポリペプチドのN末端にあるアミノキシリンカーを介してポリペプチドに結合される、請求項6記載のイメージング剤。
【請求項10】
ヨウ素が123Iからなる、請求項6記載のイメージング剤。
【請求項11】
123Iがアミノキシリンカーを介してポリペプチドに結合される、請求項10記載のイメージング剤。
【請求項12】
123IがポリペプチドのN末端にあるアミノキシリンカーを介してポリペプチドに結合される、請求項10記載のイメージング剤。
【請求項13】
テクネチウムが99mTcからなる、請求項10記載のイメージング剤。
【請求項14】
99mTcがジアミンジオキシムキレーターを介してポリペプチドに結合される、請求項13記載のイメージング剤。
【請求項15】
ジアミンジオキシムキレーターがcPn216からなる、請求項14記載のイメージング剤。
【請求項16】
99mTcがポリペプチドのN末端にあるジアミンジオキシムキレーターを介してポリペプチドに結合される、請求項14記載のイメージング剤。
【請求項17】
シグナルジェネレーターが、157Gd、55Mn、162Dy、52Cr及び56Feから選択される常磁性標識である、請求項5記載のイメージング剤。
【請求項18】
常磁性標識が、NOTA、DOTA及びDTPAから選択されるキレーターを介してポリペプチドに結合される、請求項17記載のイメージング剤。
【請求項19】
放射性核種がGd−153、Ga−67、Co−55、Co−57、Cu−64、Cu−67、Zr−89又はY−86からなる、請求項6記載のイメージング剤。
【請求項20】
放射性核種標識が、NOTA、DOTA及びDTPAから選択されるキレーターを介してポリペプチドに結合される、請求項19記載のイメージング剤。
【請求項21】
哺乳動物におけるPDGF−Rβ関連疾患状態のイメージングを行う方法において、シグナルジェネレーターで標識された配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9又はその保存的変異体のいずれかのポリペプチドであって、PDGFR−βと特異的に結合するポリペプチドを哺乳動物中に導入する段階、該薬剤を罹患組織に移動させる段階、及び疾患状態を使用しかつ任意には疾患状態を管理しながら罹患組織のイメージングを行う段階を含んでなる方法。
【請求項22】
哺乳動物がヒトである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
PDGF−Rβ関連疾患状態が肝線維症、肝硬変又は肝機能異常或いはこれらの組合せである、請求項21記載の方法。
【請求項24】
イメージング方法が、PET、SPECT、MRI、放射線イメージング及び光学イメージングから選択される、請求項21記載の方法。
【請求項25】
さらに、イメージング段階の前、後又は前後に哺乳動物を処置する段階、及びその結果を用いて疾患状態を管理する段階を含む、請求項21記載の方法。
【請求項26】
該薬剤が約6〜約8のpHを有する薬学的に許容される溶液中に分散している、請求項21記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2012−512233(P2012−512233A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541452(P2011−541452)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067447
【国際公開番号】WO2010/079079
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】