説明

PEG−インターフェロンアルファ接合体の配合物

【課題】PEG-インターフェロンアルファ接合体の配合物を提供する。
【解決手段】本発明は、PEG-インターフェロンアルファ接合体の新規凍結乾燥および安定化配合物、ならびにそれらの調製方法に関する。本願発明により報告されるPEG-インターフェロンアルファ接合体の新規配合物は、凍結乾燥サイクルの必要がより小さく、より費用競争力が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PEG-インターフェロンアルファ接合体の凍結乾燥および安定化配合物、ならびにそれらの調製に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの生物学的物質の治療上の使用に伴う不利益な点は主に、それらを非経口、例えば静脈内(i.v.), 皮下(s.c), 筋肉内(i.m.)などに投与されることであり、患者に対する送達が痛みと不快を伴うことをそれは意味している。さらに、通常非常に短いそれらの半減期のために、薬物の治療血中レベルを維持するために、患者に頻繁に投与することが生物学的物質には必要である。多くの型の自分で投与できない注射は、病院へ頻繁に足を運ばなければならず、患者の不快さをさらに大きくする。そのような頻繁に投与する必要がある生物学的薬物の複数の実施例が存在する。インターフェロンアルファ-2a (Roferon, Roche)およびインターフェロンアルファ-2b (Intron A, Schering AG)、ヒトインターフェロンアルファの2種類の組換え形態は、慢性B型およびC型肝炎の治療に使用され、12時間未満の血清半減期を有し(McHutchison, et al., Engl. J. Med. 1998, 339, 1485-1492; Glue, et al., Clin. Pharmacol. Ther. 2000, 68, 556-567)、それゆえ1週間に3回の投与を必要とする。インターフェロンベータIb(Betaseron)の繰り返し注射はまた、多発性硬化症(MS)の患者の治療に必要とされる。推薦される投与量は、皮下経路で1日おきに投与されるものである。繰り返し注射が必要な薬物の他の例は、フィルグラスチム(filgrastim)(顆粒球コロニー刺激因子、G-CSF)であり、ここで注射は2週間の治療を継続する間毎日投与される。
【0003】
頻繁に高投与量の注射をするにより体内における薬物の閾値レベルを維持するという上記の欠点を克服する、非常に成功して十分受け入れられている方法の一つは、治療用タンパク質をポリマー、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)と結合させることにより、治療用タンパク質のin vivoの半減期を長くすることである。長鎖を有するPEG分子は、水溶液中のペグ化薬物分子周辺に保護壁を作り出し、それによりタンパク質薬物の免疫原性を減少させるのみではなく、タンパク質薬物をプロテアーゼの作用から保護するが、PEG分子はまた、腎臓糸球体ネットワークの濾過機構からその損失を低減させる、流体力学的容積を増大させることにより薬物の血液循環中半減期を増大させる助けとなる。
タンパク質分子から分離した後、PEG部分は構造変化を全く伴わず除去され、その除去はその分子量に比例する。タンパク質のPEGへの接合は1970年代から報告されている。通常PEG部分は、PEG部分を最初に活性化し、その後リジン残基の側鎖および/またはタンパク質のN末端アミノ基と反応することによりタンパク質に結合される。交差反応および凝集に抵抗性であるため、最も頻繁に使用されるPEGは単官能性PEGである。そう例の一つは、米国特許4,179,337号においてDavis et al.により開示されている。PEG-タンパク質接合体は、ポリマーがタンパク質に結合する位置に関わらず、末端結合基を有する高度に活性化された過剰モル濃度のポリマーと、生物学的活性物質を反応させ、生理学的に活性で非免疫原性の水溶性ポリペプチド組成物を生ずることにより形成された。インターフェロンのペグ化は、米国特許4,766,106号および4,917,888号で報告され、そこには、とりわけmPEG-2,4,6-トリクロロ-S-トリアジン、mPEG-N-スクシニミジルグルタレート、またはmPEG-N-スクシニミジルスクシネートを含む活性化ポリマーと接合されたベータインターフェロンが記載されている。米国特許5,951,974号におけるそのような開示の一つには、実質的に非抗原性ポリマーへのヒスチジン部位におけるインターフェロンの接合体が記載されている。米国特許5,981,709号におけるそのような開示の別の一つには、相対的に長いin vivo血液循環中半減期を有するアルファインターフェロン-ポリマー接合体が記載されている。
【0004】
複数の市販されているペグ化治療用タンパク質には、X連鎖性の重篤複合免疫原性症候群の治療に使用されるADAGEN (ペグ化ウシアデノシンデアミナーゼ);C型肝炎の治療に使用されるPEGASYS (ペグ化アルファインターフェロン2a);慢性C型肝炎のためのPEG-イントロン(ペグ化アルファインターフェロン2b);L-アスパラギン酸の天然非修飾形態に高感受性である患者における急性リンパ芽細胞白血病の治療のためのオンカスパー(Oncaspar)(ペグ化L-アスパラギナーゼ);およびガンの化学療法に誘導される好中球減少のためのニューラスタ(Neulasta)(ペグ化組換えメチオニルヒト顆粒球コロニー刺激因子)が含まれる。
【0005】
C型肝炎ウイルス(HCV)は、世界中で肝臓疾患の主原因の一つである。200万人に近い人々が世界中で罹患している。リバビリンと組み合わせたインターフェロンが、慢性C型肝炎を有する患者のウイルス負荷を減少させるために有効であることが示されているが、それは週に3回付与される必要がある。PEG-インターフェロンアルファ2bは、1:1のモル比でモノメトキシPEGを有する組換えインターフェロンアルファ2bの共有結合接合体である(Glue P et al., Clin Pharmacol Ther. 2000; 68; 556-567)。PEG-インターフェロンアルファ2bの平均吸収半減期は、非ペグ化アルファインターフェロン2bよりも5倍大きい。平均除去半減期は、C型肝炎に感染した患者において40時間である。別の製品は、PEG-インターフェロンアルファ2aであり、これは各PEG分枝が平均分子量20kDaである、40kDaの分枝鎖分子を有している。2個のモノメトキシPEG鎖は、1個はリジンアルファアミノ基で、もう1個はリジンイプシロンアミノ基で、加水分解に安定なウレタン結合を介して、リジンリンカー分子に結合している。PEG-インターフェロンアルファ2aの平均吸収半減期は、非ペグ化アルファインターフェロン2aよりも10倍大きい。平均除去半減期は、C型肝炎に感染した患者において60時間である。これらの改善された製品は両方とも、1週間のレジメンで1回だけ投与される。
【0006】
いくつかのタンパク質-ポリマー接合体は液体形態で安定である一方、他のものは安定ではない。例えば、水性媒体中において主に安定である、安定なウレタン結合がペグ化によりもたらされるPEG-インターフェロンアルファ2aの場合と異なり、主にヒスチジン(His 34)残基にリンクしているPEGを含むPEG-インターフェロンアルファ2bは、液体形態で非常に不安定である。そのようなタンパク質-ポリマー接合体と共に、所望の期間にわたり生物学的物質に安定な形態を供与することができる、凍結乾燥のような技術-凍結後、組成物から水を昇華する方法-が使用されなければならない。そして、PEG-インターフェロンアルファ2bの安定な配合物を作製するために、適切な抗凍結剤または抗凍結乾燥剤(lyoprotectant)、およびペグ化インターフェロンアルファ接合体を安定化して凍結乾燥の間および後に脱ペグ化-PEG-インターフェロンアルファ2b生成物と一般的に関係する現象-を防ぐ安定化剤と共に配合物を注意深く凍結乾燥しなければならない。さらに、抗凍結剤および安定化剤のほかに、凍結乾燥配合物はまた膨張剤を含み、バイアル中の固体物質の量を増大させる。
【0007】
His 34残基におけるウレタンリンクの不安定性の問題をPEG-インターフェロンアルファ2bの場合解決している特定の方法の一つは、米国特許6,180,096号に開示されている配合物を利用しており、ここでPEG-IFNアルファ2b接合体は、バッファー、抗凍結剤、安定化剤、および溶媒の存在下で凍結乾燥され、そのような配合物の一つは、バッファーとして単塩基リン酸ナトリウム二水和物および二塩基リン酸ナトリウム無水物、安定化剤としてポリソルベート80(polysorbate 80)、ならびに溶媒として水と共に、凍結剤として二糖スクロースを含有する。上記の配合物がC型肝炎の治療において商業上成功を収めている一方、それはいまだ複数の問題に関係しており、それらのいくつかは、同一の会社により他の特許出願WO 2006/020720で詳述され、WO 2006/020720において新規の配合物を発見し報告した理由として、より長い凍結乾燥サイクルにより、製造コストが増大し、市販の配合物と関連する高湿度含量がもたらされることが報告されている。WO 2006/020720では、発明者は、PEG-IFNアルファ2bの別の凍結乾燥接合体を開示し、ここで抗凍結剤は少なくとも60%の取れはロースを含み、バッファー成分は単塩基リン酸ナトリウム二水和物および二塩基リン酸ナトリウム無水物を含み、配合物はさらに
安定化剤としてポリソルベート80、および溶媒として水を含み、これにより市販の配合物の上記の問題を克服することが可能となる。PEG-IFNアルファ2b接合体を保護するための付加配合物の必要性は、米国特許6,180,096号(市販の配合物)の受託者およびWO 2006/020720の出願人が同一の会社Schering Corporationであるという事実以上に強調されるものではなく、前記Schering CorporationはPEG-IFNアルファ2bのさらなる凍結乾燥配合物を開発し、開示し続けている。
【0008】
既存のPEG-IFNアルファ2bに対するその付加配合物の必要性は、凍結乾燥の間および後にPEG-インターフェロンアルファ接合体を保護するだけではなく、適切な容器中で凍結乾燥した際に室温で長期間保存する目的を有する。そのような配合物の製造方法は、取り扱いが容易であり、(スクロースベースの)現在の配合物に対して使用されるよりも、よりコスト効率がよくあるべきである。PEG-IFNアルファ2bの現在市販されている配合物は、(米国特許6,180,096号に記載されているように)スクロースベースであり、5日近くの比較的長い凍結乾燥サイクルを有する。本発明で開示される配合物は、顕著により短い時間-およそ24時間から48時間-である乾燥サイクルを使用し、それによりこの薬物を製造するコストを著しく削減するための助けとなるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許4,179,337号
【特許文献2】米国特許4,766,106号
【特許文献3】米国特許4,917,888号
【特許文献4】米国特許5,981,709号
【特許文献5】米国特許6,180,096号
【特許文献6】WO 2006/020720
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】McHutchison, et al., Engl. J. Med. 1998, 339, 1485-1492
【非特許文献2】Glue, et al., Clin. Pharmacol. Ther. 2000, 68, 556-567
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、PEG-インターフェロンアルファ接合体の新規凍結乾燥および安定化配合物、ならびにそれらの調製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施態様
本発明の主目的は、PEG-インターフェロンアルファ接合体の新規凍結乾燥および安定化配合物を提供することである。
【0013】
本発明の実施態様により、EG-インターフェロンアルファ接合体の新規配合物の調製方法が提供される。
【0014】
発明の記載
本発明は、PEG-インターフェロンアルファ接合体の新規凍結乾燥および安定化配合物、ならびにそれらの調製に関する。前記配合物は、適切なバッファー、適切な抗凍結剤、適切な安定化剤、および溶媒と、任意に他の適切な賦形剤とPEG-インターフェロンアルファ接合体を配合し、その後凍結乾燥される。
【0015】
本明細書に開示されるような、新規配合物中における成分の濃度により、本発明が制限されないことが理解されるであろう。
【0016】
本発明によるPEG-インターフェロンアルファ接合体は、インターフェロンアルファ分子、あるいは1つまたは複数のPEG分子に共有結合でリンクされるそれらのバリアントである。本発明のPEG-インターフェロンアルファ接合体は、インターフェロンアルファ2a、インターフェロンアルファ2b、またはインターフェロンアルファ2c、およびそれらの安定なバリアントを含んでよい。好ましくは、前記PEG-インターフェロンアルファ接合体は、モノペグ化インターフェロンアルファ2bである。
【0017】
ポリマーは、共有結合でリンクした繰り返し化学単位を含む分子である。しばしば、適切な分子量のポリマーが、繰り返し化学単位の名前に続く数とともに示される。例えば、「PEG12000」または「ポリエチレングリコール(12000)」は、平均分子量およそ12,000ダルトンを有するポリエチレングリコールのポリマーを指す。
【0018】
ポリマーのタンパク質に対する接合により、1個のタンパク質に対して接合される1個の単独ポリマーがもたらされてよく、または1個のタンパク質に対してそのような接合体が複数もたらされてよい。接合の程度は、反応条件および所望の結果に依存する。好ましい実施態様において、本発明の配合物中のPEG-インターフェロンアルファ接合体は、単独のPEG12000に接合される単独のインターフェロンアルファ2bを含む。さらに好ましい実施態様において、本発明の配合物中のPEG-インターフェロンアルファ接合体は、単独のPEG分子に接合される単独のインターフェロンアルファ2bを含む。特に好ましい実施態様において、インターフェロンアルファ2b分子は、ウレタン結合を有するPEG12000分子にリンクされている。PEG-IFN接合体を調製する複数の方法は当業者に周知であり、そのような方法およびそのような方法に由来する製品は、本発明の範囲に包含される。このタンパク質-ポリマー接合体を生成するそのような方法の例は、米国特許5,612,460号(Zalipsky)、および米国特許5,711,944号(Gilbert et al)に見出されてよい。本発明の範囲を制限することなく、そのようなタンパク質-ポリマー接合体が本発明の配合物中で利用される際、PEG-インターフェロンアルファ接合体の好ましい濃度は、1 mlあたり0.03 mgから2.0 mgのインターフェロンアルファである。
【0019】
単独のインターフェロンアルファ分子が単独のPEG-12000分子にリンクされる際、結果生じる接合されたPEG-インターフェロンアルファ接合体は、単独または位置異性体の混合物の形態であってよい。本発明の実施態様において、そのような位置異性体の混合物の一つは、インターフェロンアルファ分子のヒスチジン残基でリンクされるPEG-インターフェロンアルファ接合体である一方、別のPEG-インターフェロンアルファ接合体がインターフェロンアルファ分子の別の部位、例えばリジン残基にリンクされていることを意味する可能性がある。
【0020】
最も安定で活性な形態にあるPEG-インターフェロンアルファ接合体を保持するために、凍結乾燥を使用してよい。凍結乾燥は、凍結する水性混合物を処理して水を除去する、組成物を凍結し乾燥する方法である。一般に、前記方法は、通常減圧条件下で水性溶液から水を昇華することを含む。凍結乾燥後、PEG-インターフェロンアルファ接合体を貯蔵する期間を延ばすことができる。
【0021】
しかしながら、PEG-インターフェロンアルファ接合体は、凍結乾燥の間および後に損害を蒙る(米国特許6,180,096号)。それゆえ、凍結乾燥の間および後にPEG-インターフェロンアルファ接合体を分解から保護するために、PEG-インターフェロンアルファ接合体を適切に配合する必要がある。さらに、そのような配合が、配合物に物理的強度を供与するならば、それもまた有用であろう。
【0022】
本発明は、凍結乾燥の間および後損傷を防ぐ配合物中にPEG-インターフェロンアルファ接合体を含むことにより、PEG-インターフェロンアルファ接合体を損傷から防ぐ。
本発明は特定の配合物に限定されない一方、本明細書で予期される配合物は、PEG-インターフェロンアルファ接合体に加えて、適切なバッファー、適切な安定化剤、適切な抗凍結剤および/または抗凍結乾燥剤、膨張剤、溶媒を、単独でまたは適切に組み合わせて、任意に他の適切な賦形剤を利用する。以下に記載されるバッファー、安定化剤、および抗凍結剤の選択される群の種々の可能性がある組み合わせを使用して、本発明の新規配合物を調製してよい。バッファーは、配合物のpHを維持するために適している。使用してよいバッファー系は、所望のpH範囲を提供する、リン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、塩化ヒスチジン、グリシン酸ナトリウムなどを、単独でまたは適切に組み合わせて含む。好ましいpH範囲は、4.5と7.1との間、好ましくは6.5と7.1の間、最も好ましくは6.8である。コハク酸ナトリウムのバッファー系を使用することが好ましい。好ましいモル濃度は、0.001 Mから0.5M (molar)の範囲である。他のバッファー系もまた使用して、所望のpH範囲を維持してよい。
【0023】
「抗凍結剤」の語は一般に、凍結誘導ストレスに対する安定性をタンパク質に供与する薬剤を含む;しかし、その語はまた、非凍結誘導ストレスに対する安定性を、例えば膨張薬物配合物に供与する薬剤も含む。例示的な抗凍結剤は、ポリオールを含み、スクロース、ラクトース、トレハロース、およびマンニトールのような多糖を含み、付加的にポリソルベート、またはポリエチレングリコールなどのような界面活性剤を含む。「抗凍結剤」の語は、おそらく水素結合を介するタンパク質の適切なコンフォメーションを維持することにより、乾燥過程の間、系からの水除去に対する安定性をタンパク質に供与する薬剤を含む。抗凍結剤はまた、抗凍結乾燥効果を有することができ、それゆえ「抗凍結剤」および「抗凍結乾燥剤」は、本明細書中でお互いにほとんど同じ意味で使用される。
【0024】
安定化剤は、配合物を作製および貯蔵するために使用される過程の装置のガラスおよびステンレス鋼表面に対するPEG-インターフェロンアルファ接合体の吸着を防ぐ際に使用される。使用してよい適切な安定化剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ポリソルベート(例えば、単独または組み合わせて、ポリソルベート20、40、または80)である。例示は、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)誘導体の種類に由来する。そのような好ましい安定化剤の一つは、好ましい濃度0.01 mg/mlから1 mg/mlの、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレイン酸、ポリソルベート80 (Tween 80)である。
【0025】
本発明は、特定の抗凍結剤または特定の量に限定されない。抗凍結剤を、単独でまたは適切に組み合わせて使用してよい。ある実施態様において、PEG-インターフェロンアルファ溶液の総重量に対して、抗凍結剤は、0.05%から90%、好ましくは0.05%から50%最も好ましくは0.15%から20%の量で存在する。特定の実施例において、ラクトースが単独で抗凍結剤として使用されるとき、好ましい濃度は10 mg/mlから100 mg/mlである。
【0026】
本発明の適切な溶媒は水であり、好ましくは溶媒は注射用の水であってよい。
【0027】
任意に他の適切な賦形剤を配合物に添加してよい。そのような賦形剤は、配合物をさらに安定化させるための適切な濃度のグリシンを含む。
【0028】
PEG-インターフェロンアルファ接合体の新規配合物を、バッファー、安定化剤、抗凍結剤および/または抗凍結乾燥剤、溶媒、任意に他の賦形剤を使用して調製し、適切に凍結乾燥し、乾燥粉末として貯蔵し、脂溶前に再構成する。
【0029】
そのように調製される配合物は、有効量の生物学的活性PEG-インターフェロンアルファ接合体を含有し、B型およびC型肝炎、ならびにガンなどのような複数の疾患を治療する際に使用できる。それらは好ましくは注射可能な水性溶液として使用される。
【0030】
以下の非限定的実施例により、本発明の記載された医薬組成物および本発明を実行してPEG-インターフェロンアルファ接合体の適切な医薬投与形態を取得する手段が示される。実施例は例示的なものであり、そのような他の適切な改変/付加などが、当業者の創造範囲内にあるように、本発明の範囲に包含されることが意味される。
【実施例】
【0031】
コハク酸ナトリウムバッファー中に溶解したインターフェロンアルファ2b接合体タンパク質の種々の配合物を、組成物中の安定なインターフェロンアルファ2b接合体タンパク質を取得するために、ラクトース存在下で、異なる実験条件下において、ガラスバイアル中で調製した。凍結乾燥後、サンプルを5 °C (±3 °C)で貯蔵し、異なる時間の間に、水で再構成して解析した。再構成したサンプルを、可視光透明度、タンパク質含量、抗ウイルス活性、および遊離インターフェロンのレベルについて解析した。抗ウイルス活性において、新鮮で、配合されておらず、精製されたPEG-インターフェロンアルファ接合体は、1 mgのインターフェロンタンパク質あたり、0.2 x 108 IUから0.8 x 108 IUの範囲で特異的活性を示した。
【0032】
実施例1
当業者に周知の技術により調製されたPEG-インターフェロンアルファ接合体を、表1に概説されるように、pH 6.8の10 mMコハク酸ナトリウムバッファー、ラクトース(18 mg/mL)、およびポリソルベート80 (0.1 mg/mL)を含有する水性媒体中に溶解させた。
【0033】
【表1】

【0034】
凍結乾燥を、ガラス容器中の上記特定の溶液を設置し、その後ガラス容器を、大気圧および10 °Cから30 °Cの間の温度で凍結乾燥機にセットすることにより実行した。3時間から12時間の時間をかけて、大気圧および-40 °Cから-55 °Cの間の温度で、制御された方式でサンプルを凍結した。その後、凍結したサンプルを、500 mTorrから50 mTorrの真空圧を維持しながら、-45 °Cから0 °Cの範囲の種々の温度で、少なくとも16時間の間、段階的に最初の乾燥にかけた。最初の乾燥サイクルの後、第二の乾燥サイクルを、20 mTorrから30 mTorrの真空圧で、少なくとも6時間の間実行した。凍結乾燥サイクルの完了後、凍結乾燥固形物を含有するガラス容器を、周辺温度および大気圧下で取り外した。
【0035】
凍結乾燥後、(崩壊した固形物またフタをされた固形物または縮んだ固形物または溶解した固形物などのような)欠陥を有さない固形物を含有するバイアルを収集し、さらなる解析に使用するまで5 (±3) °Cで貯蔵した。サンプルを、表1に特定されるように、異なる時間の間、解析のために水で再構成した。再構成された溶液を、可視光透明度についてチェックした。凍結乾燥配合物中のPEG-インターフェロンアルファ接合体の安定性を、凍結乾燥全後の溶液に存在する、タンパク質含量、タンパク質含量、抗ウイルス活性、および遊離インターフェロンのレベル(脱ペグ化の程度)について比較することにより、調査した(表2)。
【0036】
【表2】

【0037】
実施例2
PEG-インターフェロンアルファ接合体を、表3に概説されるように、pH 6.8の10 mMコハク酸ナトリウムバッファー、ラクトース(100 mg/mL)、およびポリソルベート80(0.1 mg/mL)を含有する水性媒体中に溶解させた。
【0038】
【表3】

【0039】
凍結乾燥を、ガラス容器中の上記特定の溶液を設置し、その後ガラス容器を、大気圧および10 °Cから30 °Cの間の温度で凍結乾燥機にセットすることにより実行した。3時間から12時間の時間をかけて、大気圧および-40 °Cから-55 °Cの間の温度で、制御された方式でサンプルを凍結した。
【0040】
その後、凍結したサンプルを、500 mTorrから50 mTorrの真空圧を維持しながら、-35 °Cから-45 °Cの範囲の種々の温度で、最初の乾燥にかけた。最初の乾燥サイクルの後、第二の乾燥サイクルを、20 mTorrから30 mTorrの真空圧で、少なくとも6時間の間実行した。凍結乾燥サイクルの完了後、凍結乾燥固形物を含有するガラス容器を、周辺温度および大気圧下で取り外した。
【0041】
凍結乾燥後、欠陥を有さない固形物を含有するバイアルを収集し、さらなる解析に使用するまで5 (±3) °Cで貯蔵した。サンプルを、表4に特定されるように、異なる時間の間、解析のために水で再構成した。再構成された溶液を、可視光透明度についてチェックした。凍結乾燥配合物中のPEG-インターフェロンアルファ接合体の安定性を、表4に示すように、凍結乾燥全後の溶液に存在する、タンパク質含量、タンパク質含量、抗ウイルス活性、および遊離インターフェロンのレベル(脱ペグ化の程度)について比較することにより、調査した。
【0042】
【表4】

【0043】
実施例3
PEG-インターフェロンアルファ接合体を、表5に概説されるように、pH 6.8の10 mMコハク酸ナトリウムバッファー、ラクトース(57.1 mg/mL)およびトレハロース(31.4 mg/mL)を含む抗凍結剤の混合物、ならびにポリソルベート80(0.1 mg/mL)を含有する水性媒体中に0.2 mg/mLで溶解させた。
【0044】
【表5】

【0045】
凍結乾燥を、ガラス容器中の上記特定の溶液を設置し、その後ガラス容器を、大気圧および10 °Cから30 °Cの間の温度で凍結乾燥機にセットすることにより実行した。3時間から12時間の時間をかけて、大気圧および-40 °Cから-55 °Cの間の温度で、制御された方式でサンプルを凍結した。
【0046】
その後、凍結したサンプルを、500 mTorrから50 mTorrの真空圧を維持しながら、-35 °Cから-45 °Cの範囲の種々の温度で、最初の乾燥にかけた。最初の乾燥サイクルの後、第二の乾燥サイクルを、20 mTorrから30 mTorrの真空圧で、少なくとも6時間の間実行した。凍結乾燥サイクルの完了後、凍結乾燥固形物を含有するガラス容器を、周辺温度および大気圧下で取り外した。
【0047】
凍結乾燥後、欠陥を有さない固形物を含有するバイアルを収集し、さらなる解析に使用するまで5 (±3) °Cで貯蔵した。サンプルを、表6に特定されるように、異なる時間の間、解析のために水で再構成した。再構成された溶液を、可視光透明度についてチェックした。凍結乾燥配合物中のPEG-インターフェロンアルファ接合体の安定性を、表6に示すように、凍結乾燥全後の溶液に存在する、タンパク質含量、タンパク質含量、抗ウイルス活性、および遊離インターフェロンのレベル(脱ペグ化の程度)について比較することにより、調査した。
【0048】
【表6】

【0049】
実施例4
PEG-インターフェロンアルファ接合体を、表7に概説されるように、pH 6.8の10 mMコハク酸ナトリウムバッファー、ラクトース(40 mg/mL)、トレハロース(31.4 mg/mL)およびグリシン(1.05 mg/mL)、ならびにポリソルベート80(0.1 mg/mL)を含有する水性媒体中に溶解させた。
【0050】
【表7】

【0051】
凍結乾燥を、ガラス容器中の上記特定の溶液を設置し、その後ガラス容器を、大気圧および10 °Cから30 °Cの間の温度で凍結乾燥機にセットすることにより実行した。3時間から12時間の時間をかけて、大気圧および-40 °Cから-55 °Cの間の温度で、制御された方式でサンプルを凍結した。
【0052】
その後、凍結したサンプルを、500 mTorrから50 mTorrの真空圧を維持しながら、-35 °Cから-45 °Cの範囲の種々の温度で、最初の乾燥にかけた。最初の乾燥サイクルの後、第二の乾燥サイクルを、20 mTorrから30 mTorrの真空圧で、少なくとも6時間の間実行した。凍結乾燥サイクルの完了後、凍結乾燥固形物を含有するガラス容器を、周辺温度および大気圧下で取り外した。
【0053】
凍結乾燥後、欠陥を有さない固形物を含有するバイアルを収集し、さらなる解析に使用するまで5 (±3) °Cで貯蔵した。サンプルを、表8に特定されるように、異なる時間の間、解析のために水で再構成した。再構成された溶液を、可視光透明度についてチェックした。凍結乾燥配合物中のPEG-インターフェロンアルファ接合体の安定性を、表8に示すように、凍結乾燥全後の溶液に存在する、タンパク質含量、タンパク質含量、抗ウイルス活性、および遊離インターフェロンのレベル(脱ペグ化の程度)について比較することにより、調査した。
【0054】
【表8】

【0055】
実施例5
PEG-インターフェロンアルファ接合体を、表9に概説されるように、pH 6.8の10 mMコハク酸ナトリウムバッファー、ラクトース(57.1 mg/mL)、トレハロース(22.8 mg/mL)、およびポリソルベート80(0.1 mg/mL)、ならびに付加的にグリシン(1.05 mg/mL)を含有する水性媒体中に0.2 mg/mLで溶解させた。
【0056】
【表9】

【0057】
凍結乾燥を、ガラス容器中の上記特定の溶液を設置し、その後ガラス容器を、大気圧および10 °Cから30 °Cの間の温度で凍結乾燥機にセットすることにより実行した。3時間から12時間の時間をかけて、大気圧および-40 °Cから-55 °Cの間の温度で、制御された方式でサンプルを凍結した。
【0058】
その後、凍結したサンプルを、500 mTorrから50 mTorrの真空圧を維持しながら、-35 °Cから-45 °Cの範囲の種々の温度で、最初の乾燥にかけた。最初の乾燥サイクルの後、第二の乾燥サイクルを、20 mTorrから30 mTorrの真空圧で、少なくとも6時間の間実行した。凍結乾燥サイクルの完了後、凍結乾燥固形物を含有するガラス容器を、周辺温度および大気圧下で取り外した。
【0059】
凍結乾燥後、欠陥を有さない固形物を含有するバイアルを収集し、さらなる解析に使用するまで5 (±3) °Cで貯蔵した。サンプルを、表10に特定されるように、異なる時間の間、解析のために水で再構成した。再構成された溶液を、可視光透明度についてチェックした。凍結乾燥配合物中のPEG-インターフェロンアルファ接合体の安定性を、表10に示すように、凍結乾燥全後の溶液に存在する、タンパク質含量、タンパク質含量、抗ウイルス活性、および遊離インターフェロンのレベル(脱ペグ化の程度)について比較することにより、調査した。
【0060】
【表10】

【0061】
上記全ての実施例における遊離IFN含量を、HP-SEC分析を使用して測定した。
【0062】
本発明に記載されるPEG-インターフェロンアルファ接合体の新規凍結乾燥および安定化配合物は、以下の利点を有する。
1.操作上の簡便性を含む。
2.性質上吸湿性の少ない抗凍結剤および/または抗凍結乾燥剤の使用を含む。
3.凍結乾燥配合物に対してより大きい物理的強度を供与する。
4.上記全ての因子は、本発明の方法のコスト有効性に貢献する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PEG-インターフェロンアルファ接合体、バッファー、安定化剤、抗凍結剤、および溶媒を含み、前記バッファーが、ナトリウムホスフェート、ナトリウムスクシネート、カリウムスクシネート、ヒスチジンクロリド、およびナトリウムグリシネートから単独でまたは組み合わせて選択され、前記抗凍結剤がラクトースである、配合物。
【請求項2】
前記安定化剤が、ナトリウムドデシルサルフェート、または適切なポリソルベートから選択される、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記ポリソルベートが、ポリソルベート20、40、または80から選択される、請求項1または2に記載の配合物。
【請求項4】
前記抗凍結剤がトレハロースをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項5】
前記PEG-インターフェロンアルファ接合体の濃度が、1 mlあたりインターフェロンアルファ0.03 mgから2.0 mgである、請求項1から4のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項6】
前記バッファーが、ナトリウムスクシネートである、請求項1から5のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項7】
ナトリウムスクシネートバッファーの濃度が、0.001 Mから0.5 Mの範囲である、請求項6に記載の配合物。
【請求項8】
pHの範囲が、4.0から6.8の範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項9】
前記安定化剤が、0.01 mg/mlから1.0 mg/mlの濃度で存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項10】
抗凍結剤の濃度が10 mg/mlから100 mg/mlの間である、請求項1から9のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項11】
前記溶媒が水である、請求項1から10のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項12】
組成物がグリシンをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項13】
前記PEG-インターフェロンアルファ接合体が、単独のインターフェロンアルファ分子に接合された単独のPEG分子を主に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項14】
前記インターフェロンアルファ分子が、インターフェロンアルファ2a、インターフェロンアルファ2b、インターフェロンアルファ2c、およびそれらの適切なバリアントからなる群より選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項15】
前記インターフェロンアルファ分子が、インターフェロンアルファ2bである、請求項14に記載の配合物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の配合物を凍結乾燥して、凍結乾燥粉末を取得する方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法により調製される、凍結乾燥配合物。
【請求項18】
前記凍結乾燥粉末が水で再構成される、請求項17に記載の配合物。

【公開番号】特開2012−250995(P2012−250995A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−204274(P2012−204274)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2009−537764(P2009−537764)の分割
【原出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(507365927)カディラ・ヘルスケア・リミテッド (26)
【Fターム(参考)】