説明

PEGインターフェロン−ベータ製剤

本発明は、ペグ化IFN−β(PEG−IFN−β)、賦形剤、界面活性剤、及び緩衝液を含む液体医薬組成物であって、前記賦形剤がポリオールであり、前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であり、そして前記緩衝液が酢酸ナトリウム緩衝液である、前記組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペグ化インターフェロンベータ(PEG−IFN−β)の製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロン−βはタンパク質であり、そして現在、例えば多発性硬化症(MS)の処置に適用される有用な医薬として知られている。
【0003】
例えばそれらの活性又は安定性を変化又は改善するために、タンパク質は、それらの配列中を、又は他の修飾によって変更され得る。かかる修飾の一つは、ポリエチレングリコール(PEG)のようなポリマーへの結合の導入である。
【0004】
ポリエチレングリコールと結合したインターフェロン−β(PEG−IFN−β)は、例えば国際公開第99/55377号、及び欧州特許出願公開第0593868A1号明細書に記載されている。
【0005】
凍結乾燥によって、又は液体医薬組成物の形態でタンパク質を安定化するために、医学分野において種々の試みがなされた。凍結乾燥された物質は、使用に先立って溶液中で、もどされなければならない。患者への適用のために、さらなる任意の準備を必要としない、濃縮された、又は既製の液体医薬組成物はより簡便であり、かつ非常に興味深い。
【0006】
インターフェロン−βの液体医薬製剤は、例えば国際公開第95/31213号及び国際公開第2004/096263号に記載されている。
【0007】
国際公開第2005/084303号には、インターフェロン−ベータ1bポリマー複合体組成物が記載されている。
【0008】
米国特許第6,531,122号明細書は、賦形剤、可溶化剤、及び緩衝液と一緒になった製剤中の、ペグ化インターフェロン変異体に関する。
【0009】
国際公開第2004/060299号は、インターフェロン−ベータ、及びその受容体結合性アンタゴニストを含む、サイトカインのポリマー複合体の合成方法を提供する。
【0010】
米国特許出願公開第20060051320A1号明細書は、トレハロースを抗凍結剤として使用する、ペグ化インターフェロンの凍結乾燥製剤に関する。
【0011】
国際公開第99/48535号は、凍結乾燥中及びその後における、PEG−インターフェロンアルファ複合体の損失及び損傷を防ぐ製剤を提供する。
【0012】
国際公開第03002152号は、インターフェロンポリペプチド及びスルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体を含む、安定化された組成物に特に関する。
【0013】
上記のいずれの参考文献も、本発明の液体製剤を開示又は示唆していない。
【発明の概要】
【0014】
発明の概要
本発明の一つの態様に従って、ペグ化インターフェロンベータ(PEG−IFN−β)、賦形剤、界面活性剤、及び緩衝液を含む液体医薬組成物であって、前記賦形剤がポリオールであり、前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であり、そして前記緩衝液が酢酸ナトリウム緩衝液である、前記組成物が提供される。
【0015】
本発明の別の態様に従って、計算された量の賦形剤及び界面活性剤を緩衝液溶液へ添加し、その後PEG−IFN−βを添加することを含む、液体医薬組成物を製造するための方法が提供される。
【0016】
本発明の別の態様に従って、本発明の液体医薬製剤を含む、無菌であり、かつ使用前の貯蔵に好適である条件下で密封された容器が提供される。
【0017】
本発明の別の態様に従って、本発明の医薬組成物を充填した容器を含む、医薬組成物のキットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、AFおよびT0での回収を%で表した、%回収を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
表及び図の簡単な説明
I.0.044mg/mlのPEG−IFN−ベータを含む、本発明製剤
【0020】
表1は、0.044mg/mlのPEG−IFN−ベータを含む、本発明の種々の製剤を示す。
【0021】
表2は、40℃、25℃及び2〜8℃のそれぞれにおける、pH4.2での、本発明の製剤の経時的な安定性試験(SE−HPLC)を示す。
【0022】
表3は、40℃、25℃及び2〜8℃のそれぞれにおける、pH4.2での、本発明の製剤の経時的な安定性試験(RP−HPLC)を示す。
【0023】
表4は、SE−HPLCによる、本発明の製剤の力価(mcg/mL)を示す。
【0024】
表5は、%回収を用いての、ろ過前及び後における、SE−HPLCによる本発明の製剤の力価(mcg/mL)を示し、そしてグラフ(図1:AF及びT0回収を%で示した%回収)として示される。
【0025】
表6は、4週から26週間の、25℃、及び2〜8℃の各々における、本発明の製剤のpH値を示す。
【0026】
表7は、本発明の製剤の経時的なバイオアッセイの結果を示す。
【0027】
II.0.055及び0.110mg/mlのPEG−IFN−ベータを各々含む、本発明の製剤:
【0028】
これらの製剤において、PEG−IFN−ベータ量は、0.055及び0.110mg/mlへと各々増大された。
【0029】
表8は、40℃、25℃、及び2〜8℃の各々における、pH4.2での、本発明の製剤純度を経時的に測定するSE−HPLC試験を示す。
【0030】
表9は、40℃、25℃、及び2〜8℃の各々における、pH4.2での、本発明の製剤のタンパク質含量を経時的に測定するSE−HPLC試験を示す。
【0031】
表10は、40℃、25℃、及び2〜8℃の各々における、pH4.2での、本発明の製剤純度を経時的に測定するRP−HPLC試験を示す。
【0032】
表11は、25℃及び2〜8℃の各々における、4〜13週間での本発明の製剤の経時的pH値を示す。
【0033】
表12は、25℃及び2〜8℃の各々における、本発明の製剤のバイオアッセイデータを示す。
【0034】
表13は、本発明の製剤のPEG−IFN−ベータのペプチドマッピングによる酸化形態に関するデータを示す。
【0035】
発明の詳細な説明
本発明は、ペグ化インターフェロンベータ(PEG−IFN−β、PEG−IFN−ベータ)、賦形剤、界面活性剤及び緩衝液を含む液体医薬組成物であって、前記賦形剤がポリオールであり、前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であり、そして前記緩衝液が酢酸ナトリウム緩衝液である、前記組成物に関する。
【0036】
一つの態様において、本発明は、PEG−IFN−β若しくはそのムテイン又はそれらの活性断片、賦形剤、界面活性剤及び緩衝液を含む液体医薬組成物であって、前記賦形剤がポリオールであり、前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であり、そして前記緩衝液が酢酸ナトリウム緩衝液である、前記組成物に関する。
【0037】
以下の段落において、本発明の製剤を構成する種々の化合物の定義が与えられ、そしてそれらは、他でより広い定義が提供されない限り、本明細書及びクレーム全体を通じて適用されることが意図される。
【0038】
本製剤のペグ化インターフェロン−ベータは、ポリエチレングリコールの共有結合修飾、又は同等の修飾により生じる任意のインターフェロン−ベータであり得る。PEG−インターフェロン−ベータの一つの例は、既知の方法、例えば国際公開第99/55377号に記載されたものによってPEG化が行われ得る、PEG−インターフェロン−ベータである。
【0039】
特に本発明に従って、IFN−ベータは、ポリエチレンオキシド(PEO)としても知られる疎水性ポリマーポリエチレングリコール(PEG)と共有結合している。当該PEGは、各々の末端にヒドロキシル基を有する線状ポリマーであり得る:
【0040】
【化1】

【0041】
それはまた、メトキシ−PEG−OH(m−PEG)として使用され得、この中で、一方の末端は比較的不活性なメトキシ基であり、他方の末端は化学的修飾がなされるヒドロキシル基である:
【0042】
【化2】

【0043】
上式において、nは1〜数百であり得る。
【0044】
別の好ましい実施形態において、当該PEGはまた、R(PEG−OH)mによって表される分岐のPEGであり得、ここでRは中心のコア部、例えばペンタエリスリトール又はグリセロールであり、そしてmは分岐した腕の数を示す。分岐した腕(m)は、3〜100又は数百個の範囲であり得る。ヒドロキシル基は化学修飾され得る。
【0045】
本発明の分岐の別の形態は、例えば国際公開第96/21469号に記載されており、ここで当該PEGは、化学修飾がなされる単一の末端を有する。このPEG型は、(CH3OPEG)pRXとして表され得、ここでpは2又は3であり、Rは中心のコア、例えばリシン又はグリセロールを示し、そしてXは官能基、例えば化学的活性化がなされるカルボキシルを示す。
【0046】
本発明の分岐の別の形態は、「ペンダント形PEG」と表され、そしてそれは反応基、例えばカルボキシルを、PEG鎖の末端よりもむしろPEGバックボーンに沿って有する。
【0047】
さらに、例えば米国特許出願第06/026,716号明細書に記載されている、弱い又は分解性の結合をそのバックボーンに有する、本発明のPEG−IFN−ベータを製造することが可能である。したがってPEGは、当該ポリマーバックボーン中に、加水分解がなされるエステル結合を有して製造され得る。以下のスキームに従って、当該加水分解によってポリマーの切断が起こり、より小さい分子量の断片となる:
【0048】
【化3】

【0049】
エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体は、それらの化学においてPEGと密接に関連しており、そして本発明に従って、それらはPEGの代わりに使用され得る。
【0050】
種々の方法が、タンパク質をPEG化するために開発された。PEGは、通常親電子的に活性化されたPEG誘導体を利用して、タンパク質中に見られる反応基と結合され得る。αアミノ基又はリシン残基中で見られるεアミノ基、及び当該N末端が製造物の混合物からなる複合体を生じるN末端が使用され得る。
【0051】
当該複合体は好ましくは、ひとつのタンパク質分子あたり、1個からタンパク質中のアミノ酸の数の範囲でPEG分子と結合した複合体の一群からなる。
【0052】
例えばチオール選択的PEG誘導体の合成に関する、Woghiren et al.Bioconjugate Chem.,4(5):314−318,1993に記載されたように、IFN−ベータ中に、PEG化されるよう意図された部位を導入することは好ましい。
【0053】
一つの実施形態において、IFNは特異的にPEG化されている。特異的PEG化は、欧州特許第675201号明細書特許に従って、例えばmPEG−プロピオンアルデヒドを有するN末端残基で行われ得る。Woghiren et al.,Bioconjugate Chem.,4(5):314−318,1993に記載された部位特異的モノPEG化が特に好ましい。
【0054】
本発明の実施形態は、国際公開第99/55377号に記載されたような、Cys17で共有結合してモノPEG化されるIFN−ベータである。PEG部分は、線状又は分岐のメトキシPEG、加水分解的に又は酵素的に分解されるPEG、及び一つ以上のポリオール並びにPEG及びPLGA(ポリ(乳酸/グリコール酸))の共重合体であり得る。
【0055】
本発明の実施形態におけるシステインのチオール基は、チオールと反応するPEG化試薬と反応され得る。それは、例えばオルトピリジルジスルフィド、ビニルスルホン、マレイミド、ヨードアセトイミドのような官能基を含むPEGであり得る。好ましくは、チオール反応性PEG化試薬は、PEGのオルトピリジルジスルフィド(OPSS)誘導体である。PEG化試薬は、その一末端のみが結合に利用されるモノメチル化形態で、又は両末端が結合に利用される二官能性形態で使用される。
【0056】
好ましい実施形態の反応において、IFN−β−Cys17が使用され、そしてそれは本願明細書に記載された反応スキームに従って反応する。この反応は、Cys17に対して部位特異的であり、なぜならばIFN−βにおける(31番目及び141番目の)他の2つのシステイン残基は、ジスルフィド結合を形成し、したがってPEG化できないからである。PEG−IFN−βは、50〜110kDa、好ましくは約70kDaの分子量を有するタンパク質の大きさに匹敵する有効な大きさを有する。部位特異的なIFN−β修飾において、結合されるPEG分子は、好ましくは20kD超の分子量を有する。一つの実施形態において、スペーサーを介してCys17と結合されたPEG分子は、2×20kDaである。
【0057】
スペーサー及びIFNは、以下の合成スキームに従って、IFN 2kDa−OPSSを形成する。
【0058】
PEG化後、遊離のスペーサー及び/又はPEGからPEG−IFN−βを分離するために、溶液を精製する。好ましくは、この精製ステップは限外ろ過によって行われる。限外ろ過は、10℃未満で、好ましくは5+/−3℃の温度で、より好ましくは4℃で、塩基性条件で行われる。精製ステップにおいて、好ましくは0.1MのNaOHが使用される。生じるPEG−IFN−β溶液は、0.5EU/ml未満のエンドトキシンを、好ましくは0.25EU/ml未満のエンドトキシンを含む。
【0059】
一つの実施形態において、PEG化は、以下のスキームに従ってIFN−βへと導入される:
【0060】
【化4】

【0061】
一つの実施形態において、低分子量のPEG部分はIFN−βと結合され得る。
【0062】
低分子量のPEG部分は、式:
【0063】
【化5】

【0064】
[式中、W及びXは、独立して、アミン、スルフヒドリル、カルボキシル、又はヒドロキシル基と反応する基であって、当該低分子量のPEG部分とIFN−βとを結合させる]
を有する。W及びXは、好ましくは、独立してオルトピリジルジスルフィド、マレイミド、ビニルスルホン、ヨードアセトアミド、アミン、チオール、カルボキシル、活性エステル、ベンゾトリアゾールカーボネート、p−ニトロフェノールカーボネート、イソシアネート、及びビオチンから選択される。
【0065】
低分子量のPEG部分は、好ましくは、100〜5000ダルトンの分子量を有する。好ましい実施形態において、それは、1000〜3000ダルトン、好ましくは1500〜2000ダルトン、及びより好ましくは2000ダルトンである。
【0066】
低分子量PEGの遊離の末端とINF−βとの結合のための、単官能性の又は二官能性のPEG部分は、好ましくは約100〜200ダルトンの範囲内の分子量を有する。それは好ましくは、メトキシPEG、分岐のPEG、加水分解的に又は酵素的に分解されるPEG、ペンダント型PEG又はデンドリマーPEGである。
【0067】
単官能性の又は二官能性のPEGはさらに、以下の式:
【0068】
【化6】

【0069】
[式中、
Yは、IFN−βと結合する低分子量PEG部分の遊離末端上の末端基である程度に反応性があり、そしてZは、−OCH3、又は二官能性複合体を形成する程度に反応性を有する基である]
を有する。
【0070】
したがって、段階的な方法で、2個以上のPEG部分が使用されて、本発明の組成物において及び医薬としての使用のために有用である、PEG−IFN−βを産生する。
【0071】
有利なことに、PEGとIFN−βとの間のジスルフィド結合は、血液循環において安定であり、そして細胞への侵入時に切断される。
【0072】
本発明の製剤において使用されるPEG−IFN−βは、天然のインターフェロン−βと比較して、ほぼ同等又はより高いインターフェロン−β活性を有する。
【0073】
賦形剤は、任意のポリオールであり得、他の成分と一緒になって、安定なPEG−インターフェロン−ベータ製剤をもたらす。ポリオールの例は、マンニトール(PEARLITOL(登録商標))、ソルビトール(NEOSORB(登録商標))、マルチトール(MALTISORB)、キシリトール(XYLISORB)、及びマルチトール(LYCASIN)である。好ましいポリオール賦形剤は、マンニトールである。
【0074】
本発明に従って、非イオン性界面活性剤が使用される。非イオン性界面活性剤は、ポリオール誘導体、ポリオキシエチレンエステル及びエーテル、ポロキサマー、ノニルフェニルエーテル、ポリビニルアルコール、プロピレングリコールジアセテート、アルカノールアミドを含む。非イオン性界面活性剤は、好ましくはポロキサマーであり得る。ポロキサマー188が特に好ましい。
【0075】
選択されたレベルでpHを維持することができる、任意の緩衝液が使用され得る。当該緩衝液は、酢酸ナトリウム緩衝液又はPBSであり得る。酢酸ナトリウム緩衝液が特に好ましい。
【0076】
一つの実施形態において、本発明は、PEG−インターフェロン−ベータ、賦形剤、界面活性剤、及び緩衝液を含む液体医薬組成物であって、前記賦形剤がマンニトールであり、前記界面活性剤がポロキサマー188であり、そして前記緩衝液が酢酸ナトリウム緩衝液である、前記組成物である。
【0077】
インターフェロン−ベータは、本発明に従ってペグ化がなされる、天然に存在するヒトインターフェロン−ベータ又は組み換えにより産生されるものであり得る。さらに、本発明のインターフェロン−ベータ(IFN−β)は、ウィルス感染の応答において身体で産生される糖タンパク質のことである。
【0078】
インターフェロン単位又はインターフェロンの国際単位(国際単位において、U又はIU)が、ウィルスによる損傷に対して細胞の50%を保護するために必要な量として定義されている、IFN活性の測定単位として報告されている。生物活性を測定するために使用され得るアッセイは、報告のなされている(Rubinstein,et al.1981;Familletti,P.C,et al.,1981)細胞変性効果阻害アッセイである。このインターフェロンに関する抗ウィルスアッセイにおいて、1単位/mlのインターフェロンが、50%の細胞変性効果を生じるために必要な量である。当該単位は、国立衛生研究所によって提供されたHu−IFN−ベータの国際参照標準(international reference standard)(Pestka,S.1986)によって決定された。
【0079】
インターフェロンはまた、腫瘍への生物の応答に対して影響を有し、免疫修飾を通じた認識に影響があるため、生物学的応答調節物質(BRM)とも呼ばれる。
【0080】
ヒト線維芽細胞インターフェロン(IFN−β)は抗ウィルス活性を有し、そしてまた、新生細胞に対するナチュラルキラー細胞を刺激し得る。それは、ウィルス及び二重鎖RNAによって誘導される約20,000Daのポリペプチドである。線維芽細胞インターフェロンの遺伝子のヌクレオチド配列から、組み換えDNA技術(Derynk et al.1980)によってクローニングされ、タンパク質の完全アミノ酸配列が推定された。それは166個のアミノ酸である。
【0081】
多発性硬化症(MS)のインターフェロン療法におけるRebif(登録商標)(Merck Serono−組換えヒトインターフェロン-β)は、哺乳動物細胞株から産生されるインターフェロン、(IFN)−ベータ−1aである。その推奨される国際一般名(INN)は、「インターフェロンβ−1a」である。
【0082】
本明細書において使用される「インターフェロンベータ」又は「IFN−β」は、例えば上節で言及された任意の種類のIFN−βを含む、文献においてそのようなものとして定義されている任意の分子を含むことが意図されている。本発明に従って好適であるIFN−βは、特定のPEG化のための結合部分を示す限り、例えばRebif(登録商標)(Merck Serono)、Avonex(登録商標)(Biogen Idec)として市販されている。本発明に従って、ヒト由来のインターフェロンベータの使用が同様に好ましい。本明細書において使用される用語「インターフェロンベータ」は、その塩、官能基誘導体、変異体、類縁体及び活性断片を含むことが意図されている。
【0083】
本明細書において使用される用語「インターフェロン−ベータ(IFN−β)」は、生体液からの単離によって得られるものとしての、又は真核性宿主細胞からDNA組み換え技術によって得られるものとしての、特にヒト由来の線維芽細胞インターフェロン、並びにその塩、官能基誘導体、変異体、類縁体及び活性断片を含むことが意図されている。好ましくは、IFN−ベータは、インターフェロンベータ−1aを意味することが意図されている。
【0084】
本明細書において使用される用語「ムテイン」は、野生型IFN−βと比較して、生じる生産物の活性を大幅に変化させることなく、天然IFN−βの一つ以上のアミノ酸残基が異なるアミノ酸で置換されている、又は欠失している、IFN−β及びPEG−IFN−βの類縁体のことである。これらのムテインは、既知の合成法によって、及び/又は部位特異的変異誘発によって、又は好適な任意の他の技術によって製造される。好ましいムテインは、例えば、Shepard他(1981)、又はMark他(1984)によって説明されたものを含む。特に本発明のムテインはCys17を含むが、分子中に上記の任意の変化が存在し得る。
【0085】
任意のかかるムテインは、好ましくは、IFN−βのものと実質的に同等、又はより強い活性を有するために、IFN−βのものと十分に重複したアミノ酸配列を有する。インターフェロンの生物学的機能は当業者に周知であり、そして生物学的標準は、例えばNational Institute for Biological Standards and Controlで確立され、及び利用可能である(http://immunology org/links/NIBSC)。
【0086】
IFN−β/PEG−IFN−β活性の決定のためのバイオアッセイは、文献に記載されている。IFNアッセイは、例えば、Rubinstein他,1981によって記載されたとおりに実施され得る。したがって定められた実験によって、任意の所定のムテインが、IFN−βと実質的に同等又はより強い活性を有するか否かが決定され得る。
【0087】
本発明に従って使用され得るIFN−β及びPEG−IFN−βのムテイン、又はそれをコードする核酸は、当業者によって過度の実験がなされることなく、本明細書に記載された技術及び指導に基づいて通常得られる置換ペプチド又はポリヌクレオチドと実質的に対応する有限の配列を含む。
【0088】
本発明のムテインの好ましい変化は、「保存的」置換として知られているものである。本発明のポリペプチド又はタンパク質の保存的アミノ酸置換は、十分に同等の物理化学的特性を有する群中の同義のアミノ酸を含み得、ここで当該群のメンバー間における置換は、当該分子の生物学的機能を保存するであろう。アミノ酸の挿入及び欠失はまた、特に当該挿入又は欠失が少数のアミノ酸、例えば30個未満、好ましくは10個未満に関してであり、そして機能的構造に対して重要であるアミノ酸、例えばシステイン残基を除去又は置き換えたりしない場合において、それらの機能を変えることなく、上で定義された配列中においてなされ得ることは明らかである。かかる欠失及び/又は挿入によって産生されるタンパク質及びムテインは、本発明の範囲内である。
【0089】
本発明における使用のための、PEG−IFN−βのムテインを得るために使用され得る、タンパク質のアミノ酸置換体の生産例は、Mark他による、米国特許第4,959,314号、4,588,585号、及び4,737,462号明細書;Koths他による、米国特許第5,116,943号明細書、Namen他による、米国特許第4,965,195号明細書;Chong他による、米国特許第4,879,111号明細書;及びLee他による、米国特許第5,017,691号明細書において記載されたような任意の既知のステップ、並びに米国特許第4904,584号明細書(Shaw他)に記載されたリシン置換タンパク質を含む。IFN−ベータの特定のムテインは、例えばMark他、1984に説明されている。
【0090】
本明細書において使用される「官能基誘導体」は、PEG−IFN−βの誘導体、並びにそれらのムテイン及び融合タンパク質を含み、そしてそれらは、残基又はN末端基若しくはC末端基における側鎖として生じる官能基から、当技術分野において既知の方法で製造され得、そしてそれらが医薬として許容される限り、すなわちそれらがIFN−βの活性と実質的に同等であるタンパク質の活性を破壊しない限り、そしてそれを含む組成物に毒性特性を付与しない限り、本発明に含まれる。これらの誘導体は、例えば、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニア又は一級若しくは二級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部を伴って形成される、アミノ酸残基の遊離のアミノ酸のN−アシル誘導体(例えば、アルカノイル、若しくは炭素環式アロイル基)、又はアシル部を伴って形成される、遊離のヒドロキシル基のO−アシル誘導体(例えばセリル若しくはスレオニル残基のもの)を含む。
【0091】
PEG−IFN−β、ムテイン、及び融合タンパク質の「活性断片」として、本発明は、タンパク質分子単体の、又はそれらと結合する関連分子又は残基、例えば糖若しくはリン酸残基、又はタンパク質分子、若しくはそれら自体の糖残基の凝集体を伴うポリペプチド鎖の任意の断片若しくは前駆体を含み、ただし前記断片が、対応するIFNと比較して著しい活性減少を有さないことを条件とする。
【0092】
本明細書における用語「塩」は、カルボキシル基の両方の塩のことであり、そして上記タンパク質又はその類縁体のアミノ基の酸付加塩のことである。カルボキシル基の塩は、当技術分野で既知の手段により形成され、そして無機塩、例えばナトリウム、カルシウム塩、アンモニウム塩、鉄塩、亜鉛塩などを含み、そして有機塩基との塩、例えば、トリエタノールアミン、アルギニン、又はリシン、ピペリジン、プロカインなどのアミンを用いて形成されるものを含む。酸付加塩は、例えば塩酸又は硫酸のような鉱酸との塩、及び例えば酢酸又はシュウ酸のような有機酸との塩を含む。もちろん、任意のかかる塩は、本発明に関するタンパク質(IFN)の生物学的活性、例えば対応する受容体と結合する能力、及び受容体シグナル伝達を開始させる能力を保持していなければならない。
【0093】
さらなる実施形態において、本発明の組成物中に含まれる融合タンパク質は、Ig融合体を含む。当該融合体は、直接に、又は1〜3個のアミノ酸残基、又はそれ以上の長さの、例えば13個のアミノ酸残基であり得る短いリンカーペプチドを経由して結合し得る。前記リンカーは、IFN配列と免疫グロブリン配列との間に導入される、例えばE−F−M(Glu−Phe−Met)のトリペプチド、又はGlu−Phe−Gly−Ala−Gly−Leu−Val−Leu−Gly−Gly−Gln−Phe−Metであり得る。生じる融合タンパク質は、改善された特性、例えば生体液中における滞留時間の延長、特異的活性の増大、発現レベルの増大、又は促進された融合タンパク質の精製を有し得る。
【0094】
好ましくは、PEG−IFN−ベータは、約0.1mg/ml〜約0.01mg/ml、好ましくは約0.06mg/ml〜約0.03mg/ml、そしてより好ましくは約0.044mg/mlの濃度で組成物中に存在する。
【0095】
別の実施形態において、PEG−IFN−ベータは、本発明の製剤中に、0.05〜0.150mg/mlの濃度で、好ましくは0.055又は0.110mg/mlの濃度で存在する。
【0096】
当該組成物中で使用される投与量、及び個体へ適用され得る用量は、薬物動態特性、投与経路、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康状態、大きさ)、症状の程度、併用療法、処置の頻度、及び所望の効果を含む、種々の要素に依存して変化するだろう。
【0097】
ヒトIFN−ベータ/PEG−IFN−ベータの標準的投与量は、1日あたり80000IU/kg〜200000IU/kg、又は1日あたり1人あたり6MIU(百万国際単位)〜12MIU、又は一人あたり22〜44μg(マイクログラム)IFN−ベータ当量の範囲内である。本発明に従って、本発明の組成物中におけるPEG−IFN−βは、好ましくはIFN−ベータ換算で、一日あたり一人あたり約1〜50μg、より好ましくは約10〜30μg、又は約10〜20μgの投与量で使用され得る。
【0098】
本発明の活性成分の投与は、静脈内経路、筋肉内経路、又は皮下経路でなされ得る。本発明の組成物の好ましい投与経路は、皮下経路及び筋肉内経路である。
【0099】
本発明のPEG−IFN−β組成物はまた、毎日、又は一日おきに、又は低頻度で投与され得る。好ましくは、PEG−IFN−β組成物は、一週間に一回、二回、又は三回投与される。好ましくは、それは任意の二週間に一回投与される。
【0100】
好ましい投与経路は皮下投与であり、例えば一週間に三回投与される。さらに好ましい投与経路は筋肉内投与であり、そしてそれは例えば一週間に一回投与され得る。
【0101】
好ましくは、IFN−ベータ換算で22〜44μg、又は6MIU〜12MIUの、本発明の組成物中のPEG−IFN−ベータは、皮下注射によって一週間に三回投与される。
【0102】
PEG−IFN−ベータ組成物は、一日おきに、25〜30μg、又は8MIU〜9.6MIUの投与量で皮下投与され得る。IFN−ベータ換算で30μg、又は6MIUのPEG−IFN−ベータはさらに、一週間に一度筋肉内投与され得る。
【0103】
用語「安定性」は、(生物学的効果の維持を含む、)本発明のインターフェロン製剤の物理学的、化学的、及び構造的安定性のことである。タンパク質分子の化学的分解又は凝集による、より大きい次数のポリマー形成、脱グリコシル化、グリコシル化修飾、酸化、又は本発明に含まれるインターフェロンポリペプチドの少なくとも一つの生物学的活性を減少させる任意の他の構造的修飾によって、タンパク質製剤の不安定性が生じ得る。
【0104】
「安定な」組成物、溶液、又は製剤は、タンパク質の分解、修飾、凝集、生物学的活性の喪失などの程度が許容可能に制御されており、そして時間と共に許容不能に増大しないものを言う。好ましくは、当該製剤は、少なくとも60%又は約60%、より好ましくは少なくとも70%又は約70%、最も好ましくは少なくとも80%又は約80%の標識化されたインターフェロン活性が、12〜24か月に渡って維持される。本発明の好ましいPEG−IFN−β組成物は、2〜8℃で貯蔵されるとき、少なくとも約6か月、12か月、18か月の、より好ましくは少なくとも約20か月の、さらにより好ましくは少なくとも約22か月の、最も好ましくは少なくとも約24か月の貯蔵寿命を有する。
【0105】
本発明のPEG−IFN−β液体医薬組成物の安定性を測定するための方法は、本明細書において記載された方法を含めて、当技術分野において利用可能である。したがって、本発明の液体組成物の貯蔵の間における、PEG−IFN−β凝集体形成は、溶液中の溶解PEG−IFN−βにおける変化を経時的に測定することによって容易に決定され得る。溶液中の溶解ポリペプチド量は、特定のPEG−IFN−βの検出に適用される多くの分析アッセイによって定量化され得る。かかるアッセイは、例えば以下の実施例において記載されたような逆相(RP)−HPLC及びUV吸収分光法を含む。
【0106】
可溶性凝集体として存在する可溶性ポリペプチド画分と非凝集性の生物学的に活性のある分子形態で存在する画分との間を区別するために、例えば以下の実施例に記載されているような分析超遠心分離を使用して、液体組成物中での貯蔵の間における可溶性及び不溶性凝集体の両方の決定が達成され得る。
【0107】
用語「緩衝液」又は「生理学的に許容される緩衝液」は、製剤中で、医薬的又は獣医学的使用のために安全であることが既知であり、そして製剤のpHを当該製剤に好適なpH範囲で維持又は調節する効果を有する化合物の溶液のことである。適度に酸性のpHでpHを調節するために許容可能な緩衝液は、限定されないが、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、アルギニン、TRIS、及びヒスチジンのような化合物を含む。「TRIS」は、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、及び任意のその薬理学的に許容可能な塩のことである。好ましい緩衝液は、生理食塩水、又は許容可能な塩と一緒になった酢酸バッファーである。
【0108】
賦形剤は、好ましくは、約30mg/ml〜約50mg/mlの濃度で、より好ましくは約40mg/ml〜約50mg/mlの濃度で、さらにより好ましくは約45mg/mlの濃度で存在する。
【0109】
界面活性剤は、好ましくは、約0.1mg/ml〜約1mg/mlの濃度で、好ましくは約0.4mg/ml〜約0.7mg/mlの濃度で、さらにより好ましくは約0.5mg/mlの濃度である。
【0110】
用語「界面活性剤」は、液体の表面張力を減少させる、又は2つの液体間、若しくは液体と固体との間の界面張力を減少させる可溶性化合物のことであり、ここで表面張力は、表面領域を最小化する傾向にある、液体表面上に作用する力のことである。
【0111】
界面活性剤は、薬剤の吸収、又は標的組織への送達の変更のために、低分子量薬剤、及びポリペプチドの送達を含めて、医薬製剤中に時折使用される。周知の界面活性剤は、ポリソルベート(ソルビトール脂肪酸エステルのポリオキシエチレン誘導体;Tween(登録商標))、及びポロキサマー、例えばBASF(ドイツ)によって市販されているプルロニック(Pluronic)(登録商標)又はルトロール(Lutrol)(登録商標)を含む。
【0112】
本発明の好ましい実施形態に従って、プルロニック(登録商標)F77、プルロニック(登録商標)F87、プルロニック(登録商標)F88、及びプルロニック(登録商標)F68から選択される界面活性剤、特に好ましくはプルロニック(登録商標)F68(BASF、プルロニック(登録商標)F68はまた、ポロキサマー188として知られている)を用いて、PEG−IFN−βを製剤化することによって、バイアル及び/又は送達装置(例えばシリンジ、ポンプ、カテーテルなど)の表面上における吸収によって引き起こされる活性の本源の損失を最小化する安定な製剤が得られることが見出された。プルロニック(登録商標)F77、プルロニック(登録商標)F87、プルロニック(登録商標)F88、及びプルロニック(登録商標)F68から選択される界面活性剤、特に好ましくはプルロニック(登録商標)F68(BASF、プルロニック(登録商標)F68はまた、ポロキサマー188として知られている)を用いて、PEG−IFN−βを製剤化することによって、酸化及びタンパク質凝集体の形成に対してより抵抗性がある安定な組成物が得られることも見出された。
【0113】
プルロニック(登録商標)界面活性剤は、エチレンオキシド(EO)及びポリエチレンオキシド(PO)のブロック共重合体である。プロピレンオキシドブロック(PO)は、二つのエチレンオキシド(EO)ブロックの間に挟まれる。
【0114】
【化7】

【0115】
プルロニック(登録商標)F77において、ポリオキシエチレン(親水性物質)のパーセンテージは70%であり、そして疎水性物質(ポリオキシプロピレン)の分子量は、約2,306Daである。
【0116】
プルロニック(登録商標)F87において、ポリオキシエチレン(親水性物質)のパーセンテージは70%であり、そして疎水性物質(ポリオキシプロピレン)の分子量は、約2,644Daである。
【0117】
プルロニック(登録商標)F88において、ポリオキシエチレン(親水性物質)のパーセンテージは80%であり、そして疎水性物質(ポリオキシプロピレン)の分子量は、約2,644Daである。
【0118】
プルロニック(登録商標)F68において、ポリオキシエチレン(親水性物質)のパーセンテージは80%であり、そして疎水性物質(ポリオキシプロピレン)の分子量は、約1,967Daである。
【0119】
プルロニックシリーズのものと同程度の特性を有する他のポリマーはまた、本発明の組成物中で使用され得る。好ましい界面活性剤は、プルロニック(登録商標)F68、及び同様の特性を有する界面活性剤である。
【0120】
プルロニック、特にプルロニック(登録商標)F68は、所望の貯蔵期間(例えば12〜24か月)の間、PEG−IFN−βの安定性を維持するために十分である濃度で、同様に、例えばバイアル、アンプル、又はカートリッジ又はシリンジの表面上の吸収によるタンパク質の損失を予防するために十分である濃度で好ましくは存在する。
【0121】
好ましくは、液体製剤におけるプルロニック(登録商標)、特にプルロニック(登録商標)F68の濃度は、0.01又は約0.01mg/ml〜10又は約10mg/ml、より好ましくは0.05又は約0.05mg/ml〜5又は約5mg/ml、特により好ましくは0.1又は約0.1mg/ml〜2又は約2mg/ml、最も好ましくは1又は約1mg/mlである。
【0122】
別の好ましい実施形態において、メチオニン、特にL−メチオニンが使用される。0.1mg/ml〜0.5mg/ml、好ましくは約0.1mg/ml〜0.3mg/ml、より好ましくは約0.25mg/ml又は約0.12mg/mlの濃度が特に有用である。
【0123】
メチオニンの添加によって、当該製剤が有利にさらに安定化され、そしてタンパク質の酸化が減少することが見出された。
【0124】
本発明の製剤に含有される又は含まれる種々の化合物は上記の通り変化され得、そしてメチオニンの好ましい効果が達成され得る。一つの実施形態において、製剤は0.055mg/mlのPEG−IFN−ベータ、約pH3.5〜4.5の、好ましくはpH4.2の10mM酢酸ナトリウム緩衝液、45mg/mlのマンニトール、及び0.5mg/mlのポロキサマー188、或いは0.110mg/mlのPEG−IFN−ベータを含む、又は含有する。
【0125】
本発明の組成物は、特定のpHのプラス又はマイナス0.5単位以内で、前記組成物のpHを維持するために十分な量の緩衝液を含み、ここで前記特定のpHは約3.0〜約5.0、好ましくは約3.5〜4.5、さらにより好ましくは約4.2±0.2である。
【0126】
当該緩衝液は、約5mM〜500mM、好ましくは約10mMの濃度で本発明の組成物中に存在する。
【0127】
当該組成物は、好ましくは水溶液である。
【0128】
本発明は液体組成物を含む。注射用の好ましい溶媒は水である。
【0129】
PEG−IFN−βに関してpHを約pH3〜5に、好ましくは3.5〜4.5に、そしより好ましくは約4.2+/−0.2に調節することによって、安定な製剤が提供されることが示され得る。
【0130】
本発明の組成物は、液体組成物中で負に影響し得るPEG−IFN−βの分解工程を、正に影響させることを達成した。この影響は、SE−HPLCによって、例えば40℃及び25℃のそれぞれで測定され得る。本発明の組成物は、PEG−IFN−β含量の著しい減少が(SE−HPLCで)観測されずに得られた。特に、PEG−IFN−β含量の減少が、40℃で2週間まで、及び25℃で6週間まで検出されなかった。本発明の組成物は良好な安定性特性を示し、及び特に、貯蔵中におけるタンパク質凝集の減少が達成され得る。
【0131】
ガラスバイアル中、好ましくは3mlのもの、又はガラスシリンジ中、好ましくは1mlのもの中で調製される、0044mg/mlのPEG−IFN−β、約pH4.2の10mMの酢酸ナトリウム、45mg/mlのマンニトール、及び0.5mg/mlのポロキサマー188を含む組成物に関して、肯定的な結果が特に達成され得る。
【0132】
本発明の組成物は、SE−HPLC、RP−HPLCを使用して測定される純度のように優れた安定性、SE−HPLCによって測定されるように優れたタンパク質含量、及び優れた生物学的活性を示す。
【0133】
別の態様において、本発明は、上記の液体医薬組成物を調製するための方法であって、計算された量の賦形剤及び界面活性剤を緩衝液へ添加し、その後PEG−IFN−βを添加する、前記方法に関する。
【0134】
さらに別の態様において、本発明は、無菌かつ使用前の貯蔵に好適である条件で本発明の液体医薬製剤を含む、密閉された容器に関する。
【0135】
医薬適用に好適である任意の容器が使用され得る。当該容器は好ましくは、自己注射器用の、あらかじめ充填された、シリンジ、バイアル、又はカートリッジである。
【0136】
本発明の製剤は、評価された装置を使用して投与され得る。これらの単一バイアル系を含む例は、溶液送達用の自己注射装置又はペン型注射装置、例えばRebiject(登録商標)を含む。
【0137】
本願で特許請求されている生産物は、包装材料を含む。当該包装材料は、管理機関によって必要とされる情報に加え、当該生産物が使用され得る条件を提供する。必要ならば、最終溶液を調製するために、及びかかる最終溶液を24時間以上、2つのバイアルで、湿式/乾式生産物で使用するために、本発明の当該包装材料は、患者への指示を提供する。単一バイアルの溶液生産物に関して、ラベルは、かかる溶液が24時間以上の期間使用され得ることを示す。本願で特許請求される生産物は、ヒト医薬生産物の使用のために有用である。当該組成物は、透明な溶液として患者へ提供され得る。
【0138】
PEG−IFN−βは、本発明に従って、SC又はIM注射、経皮、経肺、経粘膜、インプラント、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプ、経口、又は当業者によって認識されている他の手段を含む、種々の送達法経由で患者へ投与され得る。
【0139】
別の態様において、本発明は、本発明の医薬組成物を充填した容器を含む、医薬組成物のキットに関する。
【0140】
当該容器は、好ましくは送達装置としての使用のためのシリンジである。
【0141】
雑誌の記事又は要約、公表された又は未公表の米国又は外国特許出願、発行された米国又は外国特許出願又は任意の他の参考文献を含む、本明細書で引用された全ての参考文献は、当該引用文献中の全てのデータ、表、図、及び文章を含めて、本明細書に参照により完全に援用される。さらに、本明細書中に引用された参考文献中に引用された参考文献の全ての内容が同様に、参照により完全に援用される。
【0142】
以下において、本発明は実施例によって説明されるが、それは本発明の範囲を限定するものと解釈されない。
【実施例】
【0143】
本発明の実施形態は、以下の実施例によって説明されるだろう。
1.PEG−IFN−β複合体の製造
PEG−IFN−βの製造例を、以下のスキームに示す:
【0144】
【化8】

【0145】
【化9】

【0146】
2.製剤化
PEG−IFN−β組成物は、PEG−IFN−ベータ1aを使用して製剤化された。当該溶液を、0.22umのメンブラン(Durapore)を通じて濾過し、そして最終容器へと充填した(バイアル又はシリンジ中1ml)。
【0147】
試験組成物は、0.044mg/mlのPEG−IFN−ベータ1a、pH4.2の10mM酢酸ナトリウム緩衝液、45mg/mlのマンニトール、及び0.5mg/mlのポロキサマー188を含んだ。或いはそれは、0.055又は0.110mg/mlのPEG−IFN−ベータ1a、及び場合によりメチオニンを共に含んだ。
【0148】
試験組成物の試料を、40℃、25℃及び2〜8℃のそれぞれで貯蔵し、そしてSE−HPLC又はRP−HPLCによる純度の決定のために、SE−HPLCによるタンパク質含量の決定のために、IFN−ベータが誘導する細胞の保護、及びpHに基づく、経時的な抗ウィルスアッセイによる生物学的活性の決定のために、並びにペプチドマッピング/UPLC分析による、酸化形態の測定のために試験を行った。
【0149】
3.安定性アッセイ及び他の実験
3.1 SE−HPLCによる、純度及びアッセイ
SE−HPLCによる純度を、Shodexカラム(水性SE、コードKW−803)で評価した;定組成モードで、1.0mL/分にて、PBS10×(Gibco BRL コード70013−016)から、水で10倍希釈することによって調製されたPBS1×を使用して溶出を行った;214nmのUVで検出を行った。
【0150】
IFN−PEG製剤化された試料を、以下の注入量を使用して注入した:200mcL(44及び55mcg/mLの試料用);100mcL(110mcg/mLの試料用)。
【0151】
アッセイのために、参照標準であるPS200−01に対してタンパク質の定量を行った(シングルポイントアッセイ)。
【0152】
3.2 RP−HPLCによる純度
RP−HPLCによる純度を、C4カラム(Symmetry 300 C4,5m サイズ4.6×250mm,Waters)で行い、35℃に温度調節し;波長を214nmにセットし、そして溶出を以下の条件を使用して、1mL/分で行った:
【0153】
【表1】

【0154】
IFN−PEG製剤化された試料を、以下の注入量を使用して注入した:160mcL(44mcg/mL試料用);200mcL(55mcg/mL試料用);100mcL(110mcg/mL試料用)。
【0155】
3.3 生物学的活性(インビトロにおけるバイオアッセイ)
ウイルス(Vesicular Stomatitis Virus)の細胞変性効果に対する、細胞(WISH 細胞−ヒト羊膜組織)のIFN−β誘導性保護に基づく抗ウィルスアッセイである、IFN−βに利用可能な方法を使用して生物学的活性を測定した。
【0156】
3.4 pHの決定
較正されたpHメーター(Mettler−Toledo,mod.713)を使用して、標準的操作手順に従ってpH測定を行った。
【0157】
3.5 ペプチドマッピング/UPLCによる酸化形態
酸化されたメチオニン残基(Met1、Met117、Met36)の定量化法は、エンドプロテアーゼLys−Cを用いたIFN−PEG試料のタンパク質分解、及びその後のグラジエントUPLC分析を予測する;基質成分による任意の障害を除去するために、タンパク質分解前に、製剤化された試料の前処理が行われる。
【0158】
タンパク質分解混合物の分離を、Acquity UPLC分析カラム(BEH C18 1,7μm 2.1×50mm cod.1860002350,Waters)で行った;0.1%TFA/水(A1)及び0.1%TFA/アセトニトリル(B1)を使用するグラジエント条件で溶出を行った。
【0159】
以下の機器設定及び分析パラメータが使用され得る:
【0160】
【表2】

【0161】
【表3】

【0162】
【表4】

【0163】
【表5】

【0164】
【表6】

【0165】
【表7】

【0166】
【表8】

【0167】
【表9】

【0168】
【表10】

【0169】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペグ化インターフェロン−β(PEG−IFN−β)若しくはそのムテイン又はそれらの活性断片、賦形剤、界面活性剤、及び緩衝液を含む液体医薬組成物であって、前記賦形剤がポリオールであり、前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であり、そして前記緩衝液が酢酸ナトリウム緩衝液である前記組成物。
【請求項2】
PEG−IFN−β、賦形剤、界面活性剤、及び緩衝液を含み、前記賦形剤がマンニトールであり、前記界面活性剤がポロキサマー188であり、そして前記緩衝液が酢酸ナトリウム緩衝液である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記PEG−IFN−βが約0.01mg/ml〜約0.1mg/mlの濃度で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記PEG−IFN−βが約0.044mg/ml、0.055mg/ml、又は0.110mg/mlの濃度で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記PEG−IFN−βが、線状又は分岐のPEG、好ましくは分岐のPEGを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記PEGが、少なくとも20kDa、好ましくは少なくとも40kDa、より好ましくは40kDaの分子量を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記PEG−IFN−βがスペーサーを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記スペーサーが、100〜5000ダルトン、好ましくは1500〜2500ダルトン、より好ましくは2000ダルトンの分子量を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記賦形剤が約30mg/ml〜約50mg/mlの濃度で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項10】
前記賦形剤が約40mg/ml〜約50mg/mlの濃度で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項11】
前記賦形剤が約45mg/mlの濃度で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤が約0.1mg/ml〜約1mg/mlの濃度で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項13】
前記界面活性剤が約0.4mg/ml〜約0.7mg/mlの濃度で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項14】
前記界面活性剤が約0.5mg/mlの濃度で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項15】
前記緩衝液が、特定のpHのプラス又はマイナス0.5単位以内で前記組成物のpHを維持するために十分な量で存在し、ここで前記特定のpHが約3.0〜約5.0である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項16】
前記pHが約3.5〜4.5である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記pHが4.2±0.2である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記緩衝液が約5mM〜500mMの濃度で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項19】
前記緩衝液が約10mMの濃度で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が水溶液である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物がメチオニンをさらに含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
メチオニンが、0.10〜0.50mg/ml、好ましくは0.20〜0.40mg/ml、より好ましくは0.12又は0.25mg/mlの濃度で存在する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の液体医薬組成物を製造するための方法であって、計算された量の賦形剤及び界面活性剤を前記緩衝溶液へ添加し、その後PEG−IFN−ベータを添加する、前記方法。
【請求項24】
無菌であり、かつ使用前の貯蔵に好適である条件で密閉された容器であって、請求項1〜22のいずれか一項に記載の液体医薬製剤を含む、前記容器。
【請求項25】
自己注射器のための、あらかじめ充填されたシリンジ又はバイアルである、請求項24に記載の容器。
【請求項26】
医薬組成物のキットであって、請求項1〜22のいずれか一項に記載の医薬組成物で充填された容器を含む、前記キット。

【図1】
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【公表番号】特表2011−506562(P2011−506562A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538728(P2010−538728)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067876
【国際公開番号】WO2009/080699
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(309025524)メルク セローノ ソシエテ アノニム (49)
【Fターム(参考)】