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PEG化ラクトフェリンを主成分とする医薬製剤
説明

PEG化ラクトフェリンを主成分とする医薬製剤

【課題】種々の疾患及び症状に対する安全で有効な医薬として非常に有用性の高いLF、特にPEG化LFを、輸送性及び保存安定性に優れ、様々な投与法が可能な医薬品として実用化するための製剤形態を提供する。
【解決手段】PEG化されているラクトフェリンを含有する水性溶液を凍結乾燥することにより調製されたことを特徴とする医薬製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PEG化ラクトフェリンを有効成分とする医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ラクトフェリン(以下「LF」と呼ぶことがある)は、鉄結合性の分子量約8万の糖タンパク質であり、哺乳動物の乳に共通して含まれている。中でも、ヒトの母乳中での含有量は抜きん出ていて、牛乳の10倍も濃度が高いことがわかっている。このことから、ヒトはLFへの依存度が特に高いといわれている。
【0003】
LFは、体内でも絶えず合成されており、成人では1日3〜5gのLFが体内で作られている。これらのLFは、涙や唾液、消化液、粘液など外界と接する部分に多く分布しており、特に免疫機能を担う白血球の一種である好中球には、多量に含まれている。
【0004】
また、心臓や脳、骨格筋、肝臓、副腎、脾臓など全身のあらゆる組織の表面にLFの受容体(リセプター)が見つかっており、LFが多機能性生理活性タンパク質であって体内で様々な生理現象をコントロールしていることが強く示唆されている。
【0005】
LFについてこれまでの研究から明らかになっている機能としては、抗炎症、鉄吸収、抗ウイルス、抗菌、免疫賦活、抗酸化、抗がん、鎮痛、抗ストレス、脂質代謝改善などの作用があり、LFの応用分野は、ウイルス性肝炎、がん(治療、二次予防)、関節炎(慢性関節リウマチ、変形性関節炎)、鎮痛(がん性疼痛、その他慢性疼痛)、オーラルケア(歯周病、口内炎、ドライマウス)、アトピー、花粉症など多岐にわたる疾患又は症状の治療、改善又は予防を含む。したがって、これらの機能は創薬の面から見ても非常に興味深く、現在も多くの研究機関でその機能の分析が進められている。
【0006】
現在、市販されているものは、主に牛乳から分離精製された天然型のウシラクトフェリンであるが、医薬品用途には、遺伝子組換えによるヒト型LFの溶液製剤が開発されている。溶液製剤の場合は、製剤の保存、輸送はすべて低温下で行わなければならず、また溶液のため重量もあり、輸送コストなどの面から見て、とても不便であると考えられる。
【0007】
LFは、タンパク質であるために熱や酸、酵素により分解されやすいという欠点を有する。経口摂取されたLFは、小腸上皮細胞に存在する受容体を介して腸管から取り込まれ、リンパ系を介して血液中に移行することが報告されており(非特許文献1)、また、LFが生体内で生理活性を示すためには消化されていないLF分子が受容体へ到達することが重要であるとされている。つまり、LFの効果を発揮させるためには、LFをそのままの形で小腸に届けることが必要なのである。
【0008】
しかし、タンパク質であるLFを経口摂取した場合、LFは食道を通り胃へ運ばれ、この胃の中でタンパク質分解酵素であるペプシンによって分解されてしまい、効率よく小腸へ到達することができない。
【0009】
そこで、LFの欠点を克服するために開発されたのが、ポリエチレングリコール(以下「PEG」ということがある)でLFを修飾したPEG化LFである。PEGを用いてタンパク質を化学修飾する方法は、「PEGylation」(PEG化)と呼ばれており、医薬品開発において重要な技術のうちの1つである(非特許文献2)。PEGは、分子量数千〜数万の水溶性高分子であり、PEG自体は親水性であるが、その基本構造(CHCHO)は疎水性と親水性の両方の性質を示す。そして、水溶性高分子であるが、有機溶媒などにも親和性を示す。したがって、タンパク質をPEG化して医薬品化する場合、凍結乾燥製剤にすることができれば流通、臨床現場での使い勝手が良くなると期待されるが、PEG化されたラクトフェリンの凍結乾燥製剤の報告例は見当たらず、PEG化されたラクトフェリンを乾燥した場合に実際にどのような物理化学的性質、保存安定性、再溶解した場合の溶解性、吸入剤として用いる場合の分散性等を示すかについては、知られていない。
【0010】
【特許文献1】特開2007−70277号公報
【特許文献2】特表2006−509825号公報
【非特許文献1】T.Takeuchi et al., Exp. Physiol., 89(3): 263-270 (2004)
【非特許文献2】M.J.Roberts et al., Advanced Drug Delivery Reviews, 54: 459-476 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、種々の疾患及び症状に対する安全で有効な医薬として非常に有用性の高いLF、特にPEG化LFを、輸送性及び保存安定性に優れ、様々な投与法が可能な医薬品として実用化するための製剤形態の開発を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
〔1〕 PEG化されているラクトフェリンを含有する水性溶液を凍結乾燥することにより調製されたことを特徴とする医薬製剤;
〔2〕 経肺、経鼻、経粘膜又は経口投与用である、前記〔1〕記載の医薬製剤;
〔3〕 賦形剤を含まない、前記〔1〕又は〔2〕記載の医薬製剤;
〔4〕 賦形剤を含有する、前記〔1〕又は〔2〕記載の医薬製剤;
〔5〕 再溶解して溶液とした後に噴霧吸入法により投与される、前記〔3〕又は〔4〕記載の医薬製剤;
〔6〕 微粉末化されており、粉末吸入法により投与される、前記〔3〕又は〔4〕記載の医薬製剤、
を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の医薬製剤は、製造工程が単純で製造が容易であるうえ、従来の溶液製剤等と比較して省スペースかつ軽量であり、熱安定性を有し長期室温保存が可能であるため、保存及び輸送等に関して有利である。また、溶解性が優れているので、医療現場で、用時溶解して簡便に使用することができる。さらに、賦形剤としては種々のものを利用できるが、賦形剤を加えない場合でも溶解性及び保存安定性に優れていることに加えて、崩壊性にも優れている。したがって、投与経路としては、注射、点滴、経口投与等のほか、ネブライザーや粉末吸入器により、エアロゾル又は微粉末として経肺投与することができるという顕著なメリットがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の製剤における有効成分であるPEG化ラクトフェリンに含まれる「ラクトフェリン」(LF)は、天然又は天然型のラクトフェリン分子そのもののほか、遺伝子組換え型(一部のアミノ酸が置換された改変型を含む)ラクトフェリン、及びラクトフェリンの活性フラグメントなどのラクトフェリンの機能的等価物であってもよく、鉄イオンの有無又はその含有量、由来する生物種などを問わない。好ましくは、牛乳由来ウシラクトフェリン又は遺伝子組換えヒト型ラクトフェリンである。
【0015】
ラクトフェリンのPEG化は、公知の方法で行うことができる。好適な方法としては、例えば、特開2007−70277に記載された方法が挙げられる。PEG化に使用するPEGは、直鎖型でも分岐型でもよく、種々の市販の誘導体を用いることができる。また、PEGは、ポリエチレングリコール又はその修飾物(例えばメトキシ化物)であってもよく、最も好ましくは、直鎖状のPEG又は分岐型PEGである。
【0016】
本発明の医薬製剤に含まれるPEG化ラクトフェリンにおいて、ラクトフェリン1分子あたりの共有結合されたPEG誘導体の数は、好ましくは1〜5である。
【0017】
本発明の医薬製剤は、PEG化LFを含有する水性溶液を凍結乾燥することにより調製することができる。この水性溶液は、PEG化LFに加えて、生体適合性の塩類及び/又は緩衝剤を含んでいることが好ましい。このような塩類及び/又は緩衝剤を含有する水性溶液としては、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)等の薬学的に許容されうる塩類溶液及び緩衝液等が挙げられる。したがって、例えば、PEG化LFを含有する水溶液に、生理食塩水又は緩衝液を添加して、水性溶液を製造し、これを凍結乾燥することができる。この水性溶液には、さらに賦形剤及び製剤の分野において公知の種々の添加剤を含有させることができる。
【0018】
賦形剤としては、製剤分野において公知の一般的な物質を使用することができるが、マンニトール、デキストラン、及びヒト血清アルブミンのいずれか一種類、及びそれらの混合物は好適に使用することができる。これらの賦形剤は、いずれも製剤化後のラクトフェリンの残存生理活性に大きな影響を与えないことが分かった。また、賦形剤を加えない場合でも、溶解性、保存安定性に優れていることに加えて、崩壊性にも優れているので、賦形剤は含有させなくても製剤の性能に問題は生じない。
【0019】
水性溶液又は本発明の医薬製剤に含まれていてもよいその他の添加物としては、糖類、アミノ酸類、有機及び無機の酸及びその塩、ペプチド・タンパク質、核酸などが挙げられる。
【0020】
凍結乾燥の条件は、PEG化ラクトフェリンを含有する水性溶液のpHがpH4〜9、好ましくはpH6〜7であることが好ましい。
【0021】
本発明の医薬製剤は、凍結保存することもできるが、熱安定性が高いので、冷蔵又は長期間常温保存することができる。
【0022】
本発明の医薬製剤は、固体の状態で又は再溶解して溶液の状態として使用することができる。固体の場合、乾燥後そのままの状態でもよいが、これをさらに粉砕して微粉末化したり、タブレット等に成型するなど、さらに加工してもよい。再溶解した液体の場合、そのまま経口投与することもできるが、噴霧吸入器(ネブライザー)を用いてエアロゾルとして噴霧投与法により投与することができる。また、さらに微粉末化した製剤は、粉末吸入器を使用して吸入投与法により投与することができる。したがって、本発明の医薬製剤は、その剤型を適宜選択することにより、注射、経口、経鼻、経粘膜、経肺等の種々の投与経路で投与することができる。
【0023】
本発明の医薬製剤の有効投与量は、治療又は予防すべき疾患又は症状の種類や程度、投与対象の状態、剤型などによって異なり、公知の有効ラクトフェリン量を目安に適宜選択することができる。一般に、公知の有効ラクトフェリン量と比較して有意に少ない用量(例えばラクトフェリン量換算で1/2〜1/20量)とすることができ、同等の用量で用いるのであれば投与回数を減らすことが可能である。
【実施例】
【0024】
1. PEG化LFの製造
特開2007−70277記載の方法に基づいて、天然型ウシLFに分子量2万(20K)の分岐型PEG鎖を結合させたPEG化LF(以下「20K−PEG−LF」と呼ぶことがある)溶液(7.5mg/ml)を調製した。具体的には以下のとおりである。
【0025】
1−1.PEG化反応
市販のウシラクトフェリン(TB 905 007、TATUA社、ニュージーランド)の3.1gと分岐型PEG化試薬(GL2-200GS2、分子量20,000、日油社製)の0.78gとを、PBS(リン酸緩衝生理食塩溶液、pH7.4)中、モル比で1:1、タンパク質濃度20mg/mlとなるようにして、25℃で24時間反応させた。
【0026】
1−2.カラムでの精製
精製に使用したカラムは、93mlの陽イオン交換体(商品名「MacroCAP SP」、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)をカラムに充填し、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3)で平衡化して作製した。
【0027】
溶出液は以下のものを用いた。
開始緩衝液:10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)
溶出緩衝液:開始緩衝液に5M NaClを含む開始緩衝液(pH7.4)を混合して、目的の塩濃度の溶出液を調製した。溶出塩濃度は0.2M及び0.3Mとした。
【0028】
溶出は以下のようにして二段階で行った。
精製工程―1:PEG化反応液を精製カラムにアプライし、溶出タンパク質をUV検出器でモニタリングしながら、非吸着画分(カラム容量の約2.7倍)、及び0.2M NaCl溶出画分(カラム容量の約3.3倍)、0.3M NaCl溶出画分(カラム容量の約3.3倍)を分取した。
精製工程―2:上記非吸着画分を、精製工程―1の約1/3量の精製カラムに吸着させた後、0.3M NaClで溶出する分画を回収した。
【0029】
精製工程―1の0.2M NaCl溶出画分及び0.3M NaCl溶出画分、及び精製工程―2の0.3M NaCl溶出画分を集めて、限外ろ過膜(商品名「セントリコン YM50」、ミリポア社製)を用いて、脱塩・濃縮した。
【0030】
得られた精製20K−PEG−LFのタンパク質濃度は7.5mg/mlであった。電気泳動により、未反応ラクトフェリンは含まれないことを確認した。このPEG化LF液を5mlずつチューブに分注して−30℃で凍結保存した。
【0031】
2. PEG化LF凍結乾燥製剤の製造
PEG化LF液(合計15ml)を解凍して撹拌し、新たなチューブ5本に3mlずつ分注した。
【0032】
賦形剤としてD−マンニトール、デキストラン40及びBSAを用いて、予め10% D−マンニトール、20% デキストラン40及び2% BSAの各溶液(濃度はいずれもW/V)を調製し、上記のPEG化LF液に添加してよく攪拌することにより、次の5種類のPEG化LF含有水性溶液(以下「タンパク質溶液」という)を調製した。
(A)PEG化LF 3ml+10% D−マンニトール溶液3ml
(最終濃度は、PEG化LF:3.75mg/ml、D−マンニトール:5%)
(B)PEG化LF 3ml+20% デキストラン40溶液3ml
(最終濃度は、PEG化LF:3.75mg/ml、デキストラン40:10%)
(C)PEG化LF 3ml+2% BSA溶液3ml
(最終濃度は、PEG化LF:3.75mg/ml、BSA:1%)
(D)PEG化LF 3ml+10% D−マンニトール溶液1.5ml+20% デキストラン40溶液1.5ml
(最終濃度は、PEG化LF:3.75mg/ml、D−マンニトール:2.5%、デキストラン40:5%)
(E)PEG化LF 3ml+生理食塩液3ml(最終濃度は、PEG化LF:3.75mg/ml;賦形剤なし)
【0033】
調製した上記5種類の各タンパク質溶液を、10mlバイアル×3本に1.95mlずつ分注(合計15本)し、ゴム栓を半打栓した。予め−40℃に予備凍結した凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製、FDU−2100)のバットに、タンパク質溶液を分注したバイアルを入れ、マニュアル運転で一晩凍結した。翌朝、凍結を確認して以下のプログラムでプログラム運転をすることにより、凍結乾燥処理を完了した。プログラムは、減圧条件下で、−40℃で20分間、−20℃で9時間、0℃で9時間、20℃で24時間以上であった。
【0034】
プログラム運転終了後、窒素ガスで復圧し、直ちに打栓し、アルミキャップで巻き締めをした。その後、−30℃に保存した。
【0035】
各種性能の確認のため、上記のように製造し、凍結乾燥後−30℃に2ヶ月保存したサンプル(以下「凍結保存品」という)に加えて、凍結乾燥後、40℃、相対湿度75%で2ヶ月間の条件で熱処理を行ったサンプル(以下「熱処理品」という)を用意した。40℃、相対湿度75%で2ヶ月間の熱処理は恒温恒湿器で行い、毎週温度と湿度のチェックを行った。温度や湿度に異常は見られなかった。
【0036】
なお、以下、PEG化LF含有水性溶液を凍結乾燥したものを「サンプル」、各サンプルを調製する際にPEG化LF液に添加した賦形剤溶液又は生理食塩水をそのサンプルの「サンプル溶液」、各サンプルを水に溶解して再構成した溶液をそのサンプルの「復元液」と呼ぶ。
【0037】
3. 外観の観察及び溶解性の試験
3−1.外観
(1) 凍結保存品
サンプルA〜Eのいずれも、白く粉っぽいものがケーキ状に固まっているような感じであった。サンプルC(賦形剤:1% BSA)では大きさが他の条件よりも小さくなっていた。また、サンプルE(賦形剤なし)の場合は他のものよりも結晶のように見えるところが多かった。全体的に大きな問題は見られなかった。
【0038】
(2) 熱処理品
全体的に大きな異常は見られず、いずれのサンプルも白く粉っぽい状態であった。凍結保存品と比較して全体的に大きな変化は見られなかった。具体的には以下のとおりであった。
<サンプルA(賦形剤:5% D−マンニトール)>
大きな変化は見られず、表面も綺麗な状態であった。
<サンプルB(賦形剤:10% デキストラン40)>
大きさが凍結保存品と比較して縮んでいた。表面の中心が結晶のようになっており、そのまわりは粉っぽい状態であった。
<サンプルC(賦形剤:1% BSA)>
凍結保存品と比較してサンプルBよりも縮んでしまっていた。表面はサンプルBと同様の状態であった。
<サンプルD(賦形剤:2.5% D−マンニトール、5% デキストラン40)>
大きな変化は見られなかった。表面は綺麗な状態であった。
<サンプルE(賦形剤なし)>
表面全体が結晶のような状態で、全体に崩れやすい様子であった。
【0039】
3−2.溶解性試験
凍結保存品及び熱処理品のそれぞれ5種類の各サンプルを含むバイアルに1.95mlの注射用蒸留水を添加し、もとの各サンプル溶液への復元を行った(各復元液はPEG化LF 7.3mgを含有)。
【0040】
(1) 凍結保存品
サンプルB(賦形剤:10% デキストラン40)を除いて、他は速やかに溶解した。サンプルBは比較的溶けにくい様子であったが、どのサンプルも最終的には溶解し、溶け残りなどは生じなかった。具体的には以下のとおりであった。
<サンプルA(賦形剤:5% D−マンニトール)>
瞬間的に溶けた。特に問題は見られず、溶液は綺麗な状態であった。
<サンプルB(賦形剤:10% デキストラン40)>
瞬間的には溶けず、他と比較的すると溶けにくかった。溶液は少し濁っていた。
<サンプルC(賦形剤:1% BSA)>
すぐに溶けた。溶液は透明な状態であった。
<サンプルD(賦形剤:2.5% D−マンニトール及び5% デキストラン40)>
瞬間的に溶けた。泡が少し残った。
<サンプルE(賦形剤なし)>
瞬間的に溶けた。溶液は綺麗な透明な状態であった。
【0041】
(2) 熱処理品
溶解性においても凍結保存品と比較して異常は見られず、どのサンプルも問題は見られなかった。
【0042】
4. 凍結乾燥処理PEG化LFの抗炎症活性の測定
上記で製造した凍結乾燥処理PEG化LFの各サンプルについて、THP−1細胞に炎症惹起物質LPSを作用させたときに産生される炎症性サイトカインIL−6の産生をLFが抑制する活性(抗炎症作用)を測定した。
【0043】
各サンプルを含むバイアルに1.95mlの注射用蒸留水を添加し、もとのサンプル溶液への復元を行った。これらの復元液は、PEG化LF 7.3mgを含有した。
【0044】
本実験で使用したヒト単球由来細胞(THP−1)は、10%FBS、2mM Glutamax(商品名;インビトロジェン社製)を含むRPMI1640培地10ml中で37℃、5%二酸化炭素で培養し、3〜4日おきに継代を行った。細胞を5×10細胞/mlの濃度で75cm2のTフラスコに播き、72時間培養した。その後、400×G、4℃で5分間遠心した。上清をアスピレーターで吸引し、新たな培地を10ml添加して細胞を懸濁した。これを1回の細胞の洗浄とし、計3回行った。洗浄後、新しいフラスコに細胞数が5×10細胞/mlになるように細胞を播き、24時間培養した。24時間培養後、培養液にインターフェロン−γ(IFN−γ)及びカルシトリオールをそれぞれ最終濃度40ng/ml及び20ng/mlになるように加え、48時間培養した。THP−1細胞はフラスコの底に付着するので、セルスクレイパーで細胞をはがして回収した後、最終的に1×10細胞/mlの細胞懸濁液を調製した。24ウェルプレートにこの細胞懸濁液を400μl/ウェルで加え、さらに各ウェルに以下のように試薬等を添加し24時間培養した。
【0045】
サンプルAについて、
「medium」=培地のみ(試薬等の添加なし)
「LF」=4μlの10mg/ml LF溶液(PEG化LFの製造に使用したウシラクトフェリンの水溶液)
「LPS」=4μlの10μg/ml LPS溶液
「LPS+LF」=4μlの10μg/ml LPS溶液及び4μlの10mg/ml LF溶液
「サンプル溶液A」=16.5μlのサンプル溶液A
「復元液A」=10.7μlの復元液A(3.75mg/mlのPEG化LFを含有)
「LPS+サンプル溶液A」=4μlの10μg/ml LPS溶液及び16.5μlのサンプル溶液A
「LPS+サンプル溶液A+LF」=4μlの10μg/ml LPS溶液、16.5μlのサンプル溶液A及び4μlの10mg/ml LF溶液
「LPS+復元液A」=4μlの10μg/ml LPS溶液及び10.7μlの復元液A(3.75mg/mlのPEG化LFを含有)
サンプルB〜Eについても同様に行った。
【0046】
培養液中に分泌されたIL−6量を、「ヒトIL−6 ELISAキット」(株式会社鎌倉テクノサイエンス社、製品番号KTS302)を用いて測定し、復元液の抗炎症活性を調べた。
【0047】
(1) 凍結保存品
結果を、図1〜5に示す。図1〜5の測定値は、2ウェルずつ測定した平均値である。また、各復元液の抗炎症活性を、同じ重量の未修飾LFの活性を100%としたときの相対値で表した残存活性を、表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
使用した培地のみ、LF溶液のみ、サンプル溶液のみ、及び復元液のみを添加した場合では、THP−1細胞からのIL−6産生がほとんど認められないことから、これら溶液へのエンドトキシンの混入は無いと考えられる。また、凍結乾燥に使用した各種サンプル溶液は、LFとLPSを添加した場合のTHP−1から産生されるIL−6量を変化させなかったことから、ここで用いた抗炎症活性測定方法への影響は無いと考えられる。表1からわかるように、復元液については、約40〜約60%の残存活性が確認された。
【0050】
(2) 熱処理品
結果を、図6〜10に示す(2ウェルずつの測定値の平均値)。各復元液の抗炎症活性を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
熱処理品についても、使用した培地のみ、LF溶液のみ、及び復元液のみを添加した場合では、THP−1細胞からのIL−6産生がほとんど認められないことから、これら溶液へのエンドトキシンの混入は無いと考えられる。表2からわかるように、約70%の残存活性が確認された。
【0053】
以上をまとめると、抗炎症活性は、凍結保存品で約40〜約60%の活性を保持しており、熱処理品で約70%の活性を保持していた。凍結乾燥処理を行っていない通常のPEG化LFの抗炎症活性は天然型LFの約60%であることがわかっている。したがって、凍結乾燥処理により大幅に活性が低下しているものはなく、温度40℃、湿度75%、2ヶ月間の熱処理を行っても、比較的高い活性を保持できることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、サンプルA(凍結保存品)の復元液の抗炎症活性をIL−6産生量で表す図である。
【図2】図2は、サンプルB(凍結保存品)の復元液の抗炎症活性をIL−6産生量で表す図である。
【図3】図3は、サンプルC(凍結保存品)の復元液の抗炎症活性をIL−6産生量で表す図である。
【図4】図4は、サンプルD(凍結保存品)の復元液の抗炎症活性をIL−6産生量で表す図である。
【図5】図5は、サンプルE(凍結保存品)の復元液の抗炎症活性をIL−6産生量で表す図である。
【図6】図6は、サンプルA(熱処理品)の復元液の抗炎症活性をIL−6産生量で表す図である。
【図7】図7は、サンプルB(熱処理品)の復元液の抗炎症活性をIL−6産生量で表す図である。
【図8】図8は、サンプルC(熱処理品)の復元液の抗炎症活性をIL−6産生量で表す図である。
【図9】図9は、サンプルD(熱処理品)の復元液の抗炎症活性をIL−6産生量で表す図である。
【図10】図10は、サンプルE(熱処理品)の復元液の抗炎症活性をIL−6産生量で表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PEG化されているラクトフェリンを含有する水性溶液を凍結乾燥することにより調製されたことを特徴とする医薬製剤。
【請求項2】
経肺、経鼻、経粘膜又は経口投与用である、請求項1記載の医薬製剤。
【請求項3】
賦形剤を含まない、請求項1又は2記載の医薬製剤。
【請求項4】
賦形剤を含有する、請求項1又は2記載の医薬製剤。
【請求項5】
再溶解して溶液とした後に噴霧吸入法により投与される、請求項3又は4記載の医薬製剤。
【請求項6】
微粉末化されており、粉末吸入法により投与される、請求項3又は4記載の医薬製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−221159(P2009−221159A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67941(P2008−67941)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(801000038)よこはまティーエルオー株式会社 (31)
【Fターム(参考)】