説明

PEGT/PBTブロックコポリマーを基にしたインターフェロンのための制御放出組成物

【課題】比較的毒性の強い活性化合物の、特にインターフェロンのクラス由来の生物活性タンパク質に関する、制御放出のための薬学的組成物の提供。
【解決手段】ポリ(エチレングリコール)テレフタレート(PEGT)およびポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)から構築される生分解性ブロックコポリマーを含み、注射可能な微粒子、自己ゲル化の性質を有しうる注射可能な液体、又は固体インプラントの形態であり、さらに、組成物を含む薬学的キット、組成物を調製するための方法、及びそれに関する薬学的使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、活性化合物の制御放出のための薬学的組成物に関する。組成物は、ポリマー微粒子、インサイチューゲルまたは固体インプラントの形態にある。それらは生分解性ポリマーを基にしており、治療用のタンパク質またはペプチドの制御送達のために特に有用である。さらに、本発明は、組成物中に含まれるポリマー微粒子、およびこのような微粒子を製造する方法にも関する。さらなる局面において、本発明は、組成物を含む薬学的キットおよびこのようなキットの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
緩徐な薬物放出特性を有する非経口剤形は、その物理化学的性質のために経口投与すべきでない薬物、および半減期が比較的短く、そのために頻回に注射しなければならない薬物の治療的使用を改善させる必要性に応えるために開発されている。頻回の注射は患者にとって不快であり、注射が医師または看護師によって行われなければならないならば、それらはかなり費用もかかる。不快感および疼痛の経験は、患者のコンプライアンス不良を招いて、治療の成功を危うくする恐れがある。
【0003】
簡便な経口投与によって投与することができない薬物の数は、主として、効力の強いペプチド薬剤およびタンパク質薬剤の数の増加をもたらしている製薬分野におけるバイオテクノロジー研究の最近の進展の結果として、現在増加しつつある。しかし、おそらくはいくつかの小型ペプチドを例外として、これらの化合物は、胃腸液の中では比較的不安定であり、さらにより重要なことに、かなりの程度が腸粘膜を通して吸収されるような分子としてはあまりも大型で親水性が高い。これらの薬物のいくつかに関しては、注射可能または植込み可能な制御放出製剤が、投薬頻度を減少させて、それ故に患者の不快感を減らし、高いレベルのコンプライアンスおよび治療上の成功を実現する目的で開発されている。
【0004】
非経口的な制御放出剤形は、通常、肉眼で見える固体の単一単位または複数単位のインプラント(ポリマー性の棒状体およびウェファーなど)、微粒子懸濁液の形態にあり、さらに最近ではインサイチュー形成ゲルを含むゲルの形態にもある。薬物が装入された固体インプラントは、指定された薬物作用期間の後に外科的に除去しなければならない非分解性のポリマー性、セラミック性もしくは金属性のデバイスとして、または除去を必要としない生分解性ポリマーの形態として入手可能である。非分解性インプラントの一例には、ペプチド薬物であるロイプロリドを1年間という期間にわたって放出する、BayerのViadur(登録商標)がある。生分解性インプラントの一例には、ペプチド薬物であるゴセレリンをそれぞれ1カ月および3カ月という期間にわたって放出しうるポリマー性棒状体である、AstraZenecaのZoladex(登録商標)がある。
【0005】
初の生分解性インプラントの市場投入から間もなく、ロイプロリドをそれぞれ1カ月、3カ月および4カ月という期間にわたって放出するTakedaのLupron(登録商標)デポー製剤などの制御放出型微粒子が入手可能になった。このような微粒子を注射するためには、それらを水性担体中に懸濁させなければならない。しかし、安定性の理由から、デポー微粒子を水性懸濁液として貯蔵することはできず、それらを乾燥粉末から再構成しなければならない。
【0006】
薬物が装入された微粒子の種々のデザイン、およびそれらの調製のための方法は、E. Mathiowitz et al., Microencapsulation, in:Encyclopedia of Controlled Drug Delivery(ed. E. Mathiowitz), Vol.2, p.493-546, John Wiley & Sons(1999)(非特許文献1)に記載されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0007】
患者の快適さの向上を得るために、特に細い針を介した薬物送達システムの注射を可能にするために、薬物送達の研究者は近年、皮下または筋肉内のデポーを形成しうる注射可能なゲルの開発を始めている。これらの概念の1つにおいては、剪断減粘性および揺変性が高いゲル製剤が設計されている。投与の前に剪断力を加えることによって、これらのゲルの粘性が十分に低下して、比較的細い針を用いた注射が可能となる一方で、ゲル強度は投与後にゆっくりと回復する。もう1つの概念によれば、pH、温度、イオン強度といったその環境の変化に応じて投与後にゲルを形成する液体組成物が製剤化される。第3のアプローチによれば、非水性溶媒を含む液体ポリマー製剤が注射される。投与されると、溶媒は注射部位から拡散して離れ、それはポリマー粒子の沈殿またはゲルの形成につながる。
【0008】
生分解性の注射可能なゲルは、A. Hatefi et al., Journal of Controlled Release 80 (2002), 9-28(非特許文献2)に詳しく考察されており、この文書は参照により本明細書に組み入れられる。
【0009】
制御放出用のいくつかのポリマー担体の治療的有用性、特に乳酸およびグリコール酸のポリマーおよびコポリマーのそれは、ロイプロリド、ゴセレリン、ブセレリンおよびトリプトレリンなどの少数の活性化合物に関して示されているが、これらはすべて、治療指数が極めて高い、すなわち、治療的に有効な濃度をはるかに上回るレベルであっても毒性が極めて低い、ペプチドである。これに対して、厳密に制御された送達が、耐えられない副作用を伴わずに治療効果を得るために必要である、エリスロポエチンおよびインターフェロンなどのより認容性の低い活性化合物は、制御放出剤形として開発されることに成功していない。主な問題は、成功した以前の製品に用いられた生分解性ポリマー担体が、ゼロ次またはゼロ次に近い放出プロフィールを与えることができないように思われるということである。むしろ、それらは投与されると非常に望ましくない初期バースト放出を生じる。さらに、乳酸およびグリコール酸のポリマーおよびコポリマーの自己触媒的分解は、薬物放出の後期での用量減少効果にもつながる可能性がある。一方、治療用化合物用の改良された制御放出担体として考察されている他の新たなポリマーには、ポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)についての安全性の記録がない。
【0010】
したがって、生体適合性が証明されていて、さらに比較的毒性の強い治療用化合物の放出を以前に用いられていた担体よりもより良く制御することもできる新たなポリマー送達システムに対しては、需要が存在する。
【0011】
このため、優れた生体適合性を有する1つまたは複数のポリマー担体、およびタンパク質などのように経口経路を介して投与すべきではない比較的毒性の強い治療用化合物を含む、新たな制御放出組成物を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、制御された速度で放出される活性化合物を含む、微粒子、インプラントおよびゲル組成物を提供することである。さらに、このような組成物を含むキット、およびその薬学的使用を提供することも、本発明の目的である。さらなる目的は、以下の説明および特許請求の範囲に基づいて明らかになると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】E. Mathiowitz et al., Microencapsulation, in:Encyclopedia of Controlled Drug Delivery(ed. E. Mathiowitz), Vol.2, p.493-546, John Wiley & Sons(1999)
【非特許文献2】A. Hatefi et al., Journal of Controlled Release 80 (2002), 9-28
【発明の概要】
【0014】
本発明は、インターフェロンの制御放出のための薬学的組成物を提供する。より具体的には、本発明によって提供される組成物は、生分解性ポリマーと、インターフェロンの群より選択される活性化合物とを含む。生分解性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)テレフタレート(PEGT)およびポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)から構築されるブロックコポリマーである。好ましい活性化合物は、α-インターフェロンのファミリーから選択されるインターフェロンである。
【0015】
さらにもう1つの態様において、本発明の組成物は、ブロックコポリマーおよび組成物中に含まれるインターフェロンの少なくとも一部を含む微粒子を含むように設計される。このような組成物は、筋肉内または皮下に注射しうる非経口制御放出製剤として特に有用である。
【0016】
もう1つの態様において、本発明は、第1および第2の密閉された区画を含む薬学的キットであって、第1の区画がこのような微粒子を基にした組成物を実質的に乾燥した形態で含み、第2の区画が組成物を注射可能な微粒子懸濁液へと再構成するための水性液体担体を含むキットを提供する。
【0017】
さらにもう1つの態様において、本発明の組成物は固体インプラントとして成形される。
【0018】
さらなる態様には、組成物の調製のための方法およびその薬学的使用が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】インビトロおよびハムスターにおけるコポリマー微粒子からのインターフェロンの放出を表している。
【図2】インビトロおよびサルにおけるコポリマー微粒子からのインターフェロンの放出を表している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明に至る発見プロセスにおいて、乳酸および/またはグリコール酸のポリマーなどのような、活性化合物に対する制御放出剤として提案されてきたポリマーの多くが、インターフェロンなどの比較的毒性の強い活性化合物の送達のためには特に適していないことが明らかになった。具体的には、放出挙動はほとんど制御不能であるように思われ、特にポリマーが微粒子またはゲルとして形成されている場合にはそう思われた。例えば、従来のポリマー担体を用いた場合には、いわゆるバースト放出、すなわち、組み込まれた活性化合物のかなりの割合が投与後間もなく急に放出されることを避けることは困難であるように思われる。それぞれの活性化合物の治療指数によっては、このようなバースト放出は患者においてむしろ毒性作用を生じる恐れがある。
【0021】
これに対して、この説明でさらに考察するように、PEGTおよびPBTのブロックコポリマーが、バースト作用をほとんどまたは実質的に伴わずに、はるかに良く制御された様式で、インターフェロン(上述した化合物)を組み込んで放出することができることが、驚いたことに見いだされた。
【0022】
したがって、本発明は、生分解性ポリマーと、インターフェロンの群より選択される活性化合物とを含む、制御放出のための薬学的組成物であって、生分解性ポリマーがポリ(エチレングリコール)-テレフタレート(PEGT)およびポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)から構築されるブロックコポリマーであるような組成物を提供する。
【0023】
また、上記のブロックポリマーが、制御放出用途のためのインターフェロンを組み込むのに驚くほど適したマトリックスを形成しうることも本発明者らによって見いだされた。具体的には、それらは大量のインターフェロンを生物活性を損なうことなく組み込むことができる。
【0024】
これらの特定のコポリマーが特に適しているもう1つの理由は、それらが、組み込まれたインターフェロンの放出を、具体的な治療用途に応じて望ましいと考えられる広範囲に及ぶ放出プロフィールにわたって制御しうることにある。ポリマー担体は、微粒子、薄膜、ゲルおよび固体インプラントなどの種々の剤形デザインとして開発することができ、これは剤形またはその構成単位の形状寸法と相まって、種々のインターフェロン放出期間および種々のタイプの放出プロフィールを実現しうるある範囲の分子量および親水性を含むことができる。
【0025】
薬学的組成物は、典型的には治療または診断の目的のため、または健康推進および疾患予防のために用いられる組成物と定義される。多くの薬学的組成物が、組み込まれた活性化合物の即時放出のために設計され、製剤化されているが、長期間にわたる有効性を提供するための制御放出特性を有する組成物もある。いくつかの用語が、種々のタイプの制御放出特性を記載するために用いられている。本明細書で用いる場合、制御放出とは、遅延放出、延長放出、一定またはゼロ次の放出、長期放出、持続放出、緩徐放出、二相性放出などの、任意の改変された活性化合物放出のことを指す。
【0026】
本組成物は生分解性ポリマーを含む。IUPACの命名法によれば、ポリマーは、高分子で構成される物質と定義される。次に高分子とは、分子質量が比較的大きく、その構造が多数の構成単位の多数の繰り返しを本質的に含む分子のことである。しかし、一般的な用語では、ポリマーとそれを含む高分子との区別は常に行われるわけではない。また、厳密に言えば高分子の属性とされるべきである緒特徴をポリマーの属性とすることも、本説明については当てはまる。
【0027】
生分解性は、物質が、生理的条件で、生理的環境において、または酵素作用を通じて、化学的に分解される能力と定義することができる。本発明の文脈において、生分解性ポリマーは、実質的な分解が数時間、数日、数週間、数カ月または数年の間に起こるという意味で、体温の生理的液体などにおける生理的環境で、酵素の非存在下であっても分解されることが好ましい。分解には、加水分解または酸化を含む、さまざまな化学的機序が含まれうる。誤解を避けるために言えば、生分解性は、生分解性ポリマーが各々のモノマー単位に分解されなければならないことを意味するのではない。分解プロセスが、腎排泄または肝排泄などのプロセスによって生物体から排出されうる可溶性分子種をもたらすことで十分である。本発明において、ポリマーは典型的には、活性化合物に対する担体として、および放出制御物質としての役割を果たす。
【0028】
さらに、生分解性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)テレフタレート(PEGT)およびポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)から構築されるブロックコポリマーの群より選択される。コポリマーは、複数のモノマー種に由来するポリマーと定義される。ブロックコポリマー(またはブロックポリマー)において、構成要素である高分子は構成上異なる隣接ブロックを有する。すなわち隣接ブロックは、異なるモノマー種に、または同じではあるが構成単位の組成もしくは配列分布が異なるモノマー種に由来する構成単位を含む。ブロックは、隣接部分には存在しない少なくとも1つの特徴を有する多数の構成単位を含む、高分子の一部分と定義することができる。
【0029】
PEGTおよびPBTを含む数多くのブロックコポリマーは、先行技術において、例えば、J. M. Bezemer et al.(J. Control Release 1999, 62 (3), 393-405;J. Biomed. Mater. Res. 2000, 52 (1), 8-17;J. Control Release 2000, 66(2-3), 307-320;J. Control Release 2000, 67 (2-3), 249-260;J. Control Release 2000, 67 (2-3), 233-248;J. Control Release 2000, 64 (1-3), 179-192), R. Dijkhuizen-Radersma et al.(Biomaterials 2002, 23 (24), 4719-4729;J. Biomed. Mater. Res. 2004, 71A(1), 118;Biomaterials 2002, 23 (6), 1527-1536;Pharm. Res. 2004, 21 (3), 484-491;Int. J. Pharm. 2002, 248 (1-2), 229-237;Eur. J. Pharm. Biopharm. 2002, 54 (1), 89-93)およびJ. Sohier et al.(J. Control Release 2003, 87 (1-3), 57-68;Eur. J. Pharm. Biopharm. 2003, 55 (2), 221-228)により、ならびにWO 93/21858、EP 0 830 859 A2およびEP 1 090 928 A1に記載されており、これらの文書はすべてその全体が本明細書に組み入れられる。
【0030】
これらのコポリマーは、親水性ポリ(エチレングリコール)(PEG)および疎水性ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)の反復ブロックで構成されると解釈することができる。これらのポリ(エーテルエステル)は典型的には、PEG、ブタンジオールおよびジメチルテレフタレートの重縮合によって調製される。または、それらをポリ(エチレングリコール)テレフタレート(PEGT)およびPBTの反復ブロックで構成されると解釈することもできる。これらのコポリマーは通常、熱可塑性エラストマーの性質を有する。水性環境中で、それらはヒドロゲルまたはヒドロゲル様ポリマーのネットワークを形成し、その中でポリマー鎖は化学的ではなく物理的に架橋されている。この架橋は「硬い」PBT区域の結晶ドメインへの会合によって起こり、一方、「軟らかい」PEG区域およびいくらかのPBTを含む非晶質領域は水中での膨張挙動の原因になると考えられている。化学架橋とは異なり、これらの物理的架橋は高温では、または適切な溶媒中では可逆的である。
【0031】
本発明によれば、活性化合物はインターフェロンの群より選択される。インターフェロンは、ヒト細胞に由来する天然のタンパク質のファミリーであり、ウイルス感染との戦いにおけるような、免疫系のさまざまな機能に関与する。いくつかのインターフェロンが薬学的製品として開発されており、今日では白血病、肝炎、多発性硬化症および他の重症疾患の治療に用いるために遺伝子工学の製品としても入手可能である。
【0032】
制御放出製剤としての開発に成功しているいくつかの他の活性ペプチドおよびタンパク質とは異なり、インターフェロンの治療指数は比較的小さい。換言すれば、それらは治療有効濃度を上回るレベルではかなりの毒性を示す。このため、耐えられない副作用を伴うことなく治療効果を実現するためには、それらの厳密に制御された送達が必要である。
【0033】
インターフェロンの主なクラスの1つは、α-インターフェロン(IFN-α(IFN-alfaまたはIFN-alpha)のそれである。α-インターフェロンは、分子量および機能が類似した数多くの天然および改変タンパク質を含む(D. J. A. Crommelin et al., Pharmaceutical Biotechnology, Harwood Academic Publishers (1997), 219-222)。白血球が、ヒトにおけるこれらのタンパク質の主な起源の1つである。少なくとも23種類の天然のサブタイプ、およびいくつかの改変型のIFN-αが公知であり、そのいくつかは薬学的製品として入手可能である。例えば、プールした感染ヒト白血球に由来するいくつかの天然のIFN-αサブタイプの混合物が、商業的に開発されている。IFN-α群の現在最も重要なメンバーは、IFN-α-2aおよびIFN-α-2bの組換え変異体である。治療に用いられているもう1つの組換えIFN-αは、IFN-αcon-1である。
【0034】
これらのインターフェロンの基本的な機能は、癌細胞またはウイルスを認識して直接的または間接的に破壊することができる免疫細胞の賦活といった、免疫系のアップレギュレーションである。α-インターフェロンの治療的な適応症には、(慢性)B型肝炎、(慢性)C型肝炎、有毛状細胞性白血病、(慢性)骨髄性白血病、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、カルチノイド腫瘍、悪性黒色腫、陰部疣贅、膀胱癌、子宮頸癌、腎細胞癌、咽頭乳頭腫症、菌状息肉腫、尖圭コンジローム、SARS、および(AIDS関連)カポジ肉腫がある。実際に、本発明によれば、現在は、活性化合物がα-インターフェロンの群より選択されることが最も好ましい。
【0035】
α-インターフェロンの天然のメンバーは分子質量19〜26kDaであり、長さが156〜166および172アミノ酸のタンパク質からなる。すべてのIFN-αサブタイプは、アミノ酸位置115〜151の間に共通の保存配列領域を有し、一方、アミノ末端は多様である。多くのIFN-αサブタイプは、1つまたは2つの位置のみで配列に違いがある。天然の変異体には、カルボキシ末端の10アミノ酸が短縮されたタンパク質も含まれる。
【0036】
インターフェロンのもう1つの主なクラスはβ-インターフェロン(IFN-β)のそれであり、治療において現在最も重要な代表物はIFN-β-1aおよびIFN-β-1bである。これらのインターフェロンは、例えば、ある種の型の多発性硬化症、特に再燃型の多発性硬化症の管理において、身体能力障害の蓄積を緩徐化し、臨床的な増悪の頻度を低下させるために用いられている。有効性が示されている多発性硬化症の患者には、最初の臨床的エピソードを経験していて、かつ多発性硬化症に一致するMRI上の特徴を有する患者が含まれる。
【0037】
インターフェロンのもう1つの治療的に用いられるクラスは、γ-インターフェロン(IFN-γ)のそれである。これらのインターフェロンは、抗ウイルス活性、抗増殖活性および免疫調節活性を有する。γ-インターフェロンのメンバーの1つであるIFN-γ-1bは、慢性肉芽腫症に伴う重篤な感染症の管理用に現在販売されている。
【0038】
より最近になって、IFN-ε、IFN-κおよびIFN-λを含む、さらにいくつかのインターフェロンのクラスが発見されて記載されている(P. Kontsek et al., Acta Virol. 2003;47 (4): 201-15を参照のこと)。
【0039】
特に、インターフェロンが、α-インターフェロンの群、好ましくはIFN-α、IFN-α-2a、IFN-α-2b、IFN-αcon-1、ペグ化IFN-α-2a、ペグ化IFN-α-2b、短縮型(truncated)IFN-α-2a、短縮型IFN-α-2b、IFN-αとアルブミンとの融合タンパク質、およびそれらの機能的誘導体からなる群より選択される、本発明による組成物は、極めて優れた特性を与える。この文脈において、α-インターフェロンは、分離および精製が困難または不要である天然のα-インターフェロンの混合物などのような、種々のα-インターフェロン変異体の混合物であってもよい。インターフェロンを生きた生物体または単離された細胞もしくは細胞培養物から抽出してもよい。インターフェロンを入手する細胞および/または生物体を、所望のインターフェロンを産生させるために、感染などによって改変することもできる。
【0040】
インターフェロンが遺伝的に操作された細胞または生物体から産生される組換えインターフェロンであり、細胞または生物体が好ましくは哺乳動物、昆虫、細菌、酵母、真菌、および高等植物の細胞または生物体より選択される、本発明による組成物は、特に優れた特性を与える。
【0041】
本発明を実施するために特に適したインターフェロンの1つは、短縮型のIFN-α-2b、または任意で、複数の短縮型のIFN-α-2bの混合物である。例えば、N末端の末尾5〜10アミノ酸が除去されたIFN-α-2bアミノ酸配列を含む分子は、現在利用しうる遺伝子工学の方法によって調製することができる。さらにもう1つの態様においては、7または8個のN末端アミノ酸が短縮されたIFN-α-2bの変異体が好ましい。
【0042】
本発明の組成物は、活性化合物の放出を少なくとも約7日の期間にわたって示すことが好ましい。より好ましくは、インターフェロンは、少なくとも約10日または少なくとも約14日の期間にわたって放出される。さらなる態様において、放出は、それぞれ少なくとも約3週間、4週間、6週間および2カ月間にわたって起こる。現在非常に好ましいのは、約10日〜1カ月の期間にわたる放出である。このような放出期間を実現するために、どの等級のポリマーを選択すべきか、およびどのようなさらなる特徴が有用であるかは、少なくとも一部には、選択される剤形デザインによって決まり、これについては以下でさらに詳細に述べる。
【0043】
本発明はまた、生分解性ポリマーと、インターフェロンの群より選択される1つまたは複数の活性化合物とを含む、制御放出のための薬学的組成物であって、活性化合物の総重量に基づいて、活性化合物の少なくとも約80重量%が、モノマー性の非凝集形態として放出されるような組成物にも関する。本発明のこの態様によれば、生分解性であるものは、好ましくは、ポリ(エチレングリコール)テレフタレート(PEGT)およびポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)から構築される、本明細書で定義したブロックコポリマーであるが、それには限定されない。上記のブロックポリマーは、制御放出用途のためのインターフェロンを組み込むのに驚くほど適したマトリックスを形成しうることが、本発明者らによって見いだされている。具体的には、それらは大量のインターフェロンを生物活性を損なうことなく組み込むことができ、しかもそれらは組み込まれたインターフェロンのモノマー性非凝集状態を保たせるように思われる。インターフェロンは種々のポリマーおよびプロセス条件に敏感であって、特に凝集を起こしやすく、これはしばしば不活性化を伴うことから、このことは注目に値する。これとは対照的に、本明細書で特定したブロックポリマーをインターフェロンに対する担体として用いると、組み込まれたインターフェロンの大部分をモノマー形態で放出させることを実現することが可能である。
【0044】
好ましくは、ポリマー等級および加工処理条件は、組み込まれた活性成分、すなわちインターフェロンの少なくとも約80%がモノマー性の非凝集形態として確実に放出されるように選択されるべきである。インターフェロンの少なくとも約90%、またはさらなる態様によれば、それぞれ少なくとも約95%、97%、および98%が、モノマーとして放出されることがさらにより好ましい。これらのパーセンテージは、組み込まれた活性成分の総重量に基づく重量比によるものである。
【0045】
本発明による組成物のさらに好ましい形態については以下で述べる。
【0046】
一回に投与される組成物の量のことである、組成物の単位用量は、好ましくは、各々のインターフェロンの1×百万国際単位(MIU)と等価な量の活性化合物を含む。組み込まれる厳密な量は、当然ながら、組成物の放出プロフィールおよび特定の患者が受けるべき1日または1週間の用量によって決まる。
【0047】
態様の1つにおいて、組成物は、少なくとも約5MIUのインターフェロンを14日にわたって、すなわち投与後の最初の14日にわたって放出するように適合化される。もう1つの態様において、それは約10〜約150MIUの用量を含み、その用量は約10日〜約1カ月の期間にわたって、特に約14日の期間にわたって放出される。約20〜約100MIUという用量を含み、同じ期間にわたってそれを放出する組成物も好ましい。このような組成物は、活性成分がIFN-α-2bなどのα-インターフェロンまたはその誘導体である場合に特に好ましい。
【0048】
投与後のインターフェロン放出期間における一日平均に関して計算した上で、組成物は好ましくは、約0.5〜20MIUの量の各々のインターフェロン、または約1〜10MIUを放出するように適合化される。放出プロフィールの形状によっては、投与後の最初の1日で放出される活性成分の量が10または20MIUを上回って、それでもなお平均一日放出量が好ましい範囲に収まることが可能である。
【0049】
本発明の組成物は、種々の治療的使用のため、および局所的、経口、直腸内、膣内または眼科的投与といった投与様式のために適するように設計、製剤化および加工処理してもよい;しかし、好ましくは、それは非経口投与のために適合化される。本明細書で用いる場合、非経口投与には、真皮下、皮内、皮下、筋肉内、局所領域的、腫瘍内、腹腔内、間質内、病変内といった任意の侵襲的投与経路が含まれ、本発明の文脈において幾分好ましさが落ちるものとして静脈内、動脈内などもある。組成物の非常に好ましい投与経路は皮下および筋肉内の注射または植込みである。
【0050】
非経口投与のために適しているとは、具体的には、組成物が好ましくは無菌であり、エンドトキシンの含有量、重量オスモル濃度などに関して最新の薬局方の要求事項に準拠していることを意味する。賦形剤は、好ましくは、非経口投与のために安全であって認容性があるように選択される。さらにもう1つの局面において、組成物は、約150〜500 mOsmol/kgの領域内、好ましくは約250〜400 mOsmol/kgの領域内というように比較的等張性(または等浸透圧性)である。さらに、注射時の疼痛および局所的不耐性を避けるためにpHはほぼ生理的な範囲内にあるべきである。好ましくは、組成物のpHは、約4〜8.5の領域内にあり、より好ましくは約5.0〜7.5の領域内にある。
【0051】
本発明の組成物は微粒子を含むように設計および製剤化することができ、その微粒子は生分解性ブロックコポリマーおよび活性化合物、または組成物中に存在する活性化合物の少なくともかなりの部分を含む。この場合には、投与される組成物の剤形は、典型的には、微粒子およびコヒーレントな(coherent)液体担体を含む注射可能な懸濁液である。
【0052】
本発明の文脈において、微粒子は、その形状または内部構造にかかわらず、直径が約0.1〜約500μmの領域内にある固体または半固体粒子として解釈されるべきである。例えば、微粒子にはマイクロスフェアおよびマイクロカプセルも含まれると考えられる。1つのより好ましい態様において、微粒子は直径約1〜約300μmである。さらに、望ましい放出特性は、光子相関分光法による測定で容積平均直径が約25〜約200μmである、PEGT/PBTブロックコポリマーを基にした微粒子中に組み込まれたインターフェロンに関して、最も良く実現されることも見いだされている。このような粒径を選択することにより、これらの微粒子の懸濁液を十分にシリンジ注射可能なものとし、筋肉内注射または皮下注射を介して容易かつ便利に投与できるようにすることが確実になると考えられる。
【0053】
このサイズの範囲内で、特定の製品用途のため、または特定のインターフェロンに適応させるために、直径をさらに最適化することもできる。例えば、任意で短縮された、インターフェロン-α-2aおよびインターフェロン-α-2bの場合には、約30〜約175μmの容積平均微粒子直径を選択することが現在では最も好ましい。さらなる好ましい態様において、平均直径は約50〜約150μmの範囲にある。
【0054】
好ましくは、微粒子の有孔率は比較的低くあるべきである。特に、α-インターフェロンの制御放出用途のための所望の放出プロフィールは、大きな孔の存在がおおむね回避された場合に最も良く実現される。この文脈において、大きな孔とは約5μmまたはそれ以上の直径を有する孔と定義しうる。したがって、好ましい態様の1つにおいて、微粒子の大半は5μmまたはそれ以上の直径を有する孔を実質的に有しない。もう1つの態様において、微粒子の大半は、約2μmまたはそれ以上の直径を有する孔を実質的に有しない。
【0055】
任意で、微粒子を、薬剤を含まないポリマー層によってコーティングすることもできる。このような態様は、組み込まれた活性化合物の初期バースト放出を防止するため、または望まれるならば、放出が始まるまでの所定の遅延時間を実現するためにすら、有用な可能性がある。
【0056】
微粒子は、担体および制御放出剤として用いられるPEGTおよびPBTのブロックコポリマーを基にしている。しかし、PEGTおよびPBTのすべてのコポリマーが、すべてのインターフェロンの制御放出用の微粒子を作製するのに等しく有用というわけではないことが見いだされている。さらに、意図した放出時間または作用持続時間は、ブロックコポリマーの選択のために重要である。α-インターフェロンの場合には、コポリマーは好ましくは約50〜約95重量%のPEGT、そしてその結果として約5〜約50重量%のPBTを含むべきであることが見いだされている。もう1つの態様において、コポリマーは、約70〜約95重量%のPBGTを含む。さらになお好ましい態様において、コポリマーは約70〜約85重量%のPEGTを含む。
【0057】
コポリマーの化学組成をさらに特定するためには、PEGT構成要素のPEG区域の分子量が重要なパラメーターである。α-インターフェロンはコポリマー微粒子中に極めて容易に組み込まれ、その放出プロフィールはPEGの平均分子量が約600〜約3,000である場合に有用な範囲内に調整しうることが見いだされている。さらにより好ましくは、PEGの平均分子量は約1,000〜約2,000である。
【0058】
PEGの平均分子量の選択に平均粒径を考慮に入れてもよい。例えば、加工処理などの理由から、約100μm未満またはさらには約75μm未満というような比較的小さな粒径が選択されるならば、親水性の度合いが比較的低い、すなわちPEGの平均分子量が約1,500もしくはそれ未満または約1,000もしくはそれ未満というように比較的小さい、ブロックポリマーを選択することが好ましく、2週間またはそれよりも長い放出期間が望まれる場合には特にそうである。代替的または追加的に、約75重量%を上回らないといった、比較的低いPEGT区域の含有量を選択することにより、低い度合いの親水性を実現することもできる。
【0059】
その反対に、例えば、加工処理の考慮に基づいて、または所望のインビボ挙動を実現するために、約100μmを上回るというような比較的大きな平均粒子サイズを選択する理由も考えられる。この場合には、約1,000〜約3,000もしくは少なくとも約1,500というPEGの平均分子量、および/または少なくとも約75重量%というようなPEGTの比較的高い含有量を選択することが現時点では好ましい。
【0060】
さらに、最適化された放出挙動を有する微粒子を調製するために、2種またはそれ以上の異なるPEGT/PBTブロックコポリマーを混ぜ合わせることも有用と考えられる。この2種またはそれ以上のブロックコポリマーは、例えばその相対的なPEGT含有量に差があってもよく、またはそれらがPEGの平均分子量に差があってもよく、またはそれらが両方のパラメーターに関して差があってもよい。例えば、α-インターフェロンを活性物質として有する微粒子を作製するのに有用なポリマー配合物は、PEGT含有量はいずれも約80重量%であるが平均PEG分子量はそれぞれ約1,000および約2,000である2種類のポリマーを含みうる。もう1つの有用な配合物は、PEGT含有量が約80重量%であって平均PEG分子量がそれぞれ約1,000および約1,500である2種類のポリマーを含む。この2種またはそれ以上の異なるポリマーは、50:50、75:35または75:25というようなさまざまな比で配合することができる。
【0061】
本発明の組成物は、α-インターフェロンを組み込んで約1〜約8週間の放出時間を実現するために適している。例えば、適切なブロックコポリマーを選択することにより、現時点で最も好ましい放出時間である約10日または2週間〜約4週間という期間にわたって薬物の効果を得るために放出プロフィールを調整することができる。放出時間または放出持続時間は、組み込まれた活性化合物の少なくとも約80重量%、より好ましくは少なくとも90または95重量%が放出される時間と解釈されるべきである。放出プロフィールは顕著なバースト作用を示さず、すなわち初期放出(4時間以内)は組み込まれた用量の約10%を上回らず、より好ましくは組み込まれた用量の約7%を上回らない。
【0062】
上記のブロックコポリマーを用いて、治療的に有用な量のインターフェロンを組み込んだ微粒子を作製することが可能である。例えば、好ましい態様に従って選択されるポリマーは、α-インターフェロンを微粒子の総重量に比して約0.1〜約20重量%の含有量で組み込みうることが見いだされている。より好ましくは、微粒子のインターフェロン含有量はそれぞれ約0.2〜約10重量%または0.5〜約5重量%である。これらの範囲内ではインターフェロンはポリマーマトリックスとの適合性があり、凝集する傾向はほとんどまたは全くない。同時に、活性物質の濃度は、注射しようとする比較的少ない容量の微粒子懸濁液の便利な投与を可能にするのに十分である。
【0063】
典型的には、1回の注射当たりのα-インターフェロンの用量は、患者の状態、疾患の種類および重症度、ならびに特に微粒子からの放出持続時間といった要因に応じて、約3〜2,400百万国際単位(MIU)の範囲にあると考えられる。インターフェロンをそれぞれ約2または4週間内に放出するように微粒子を設計する場合には、用量は通常、約10〜約150MIUの範囲にあると考えられる。実際に、好ましい態様の1つにおいて、本発明の組成物は、インターフェロン-α-2a、インターフェロン-α-2bまたはその断片を、注射される容量当たり約10〜約150MIUの強度で含む。さらに好ましいものによれば、組成物は注射1回当たり約20〜約100MIUの範囲にある強度を有する。
【0064】
患者の快適さのためには、筋肉内注射または皮下注射という好ましい投与経路の点からみて、注射容量は極めて多くあるべきではなく、例えば約3mLを上回らない。皮下投与の場合には、注射容量は約2mLを上回らないことがより好ましい。その一方で、容量が極めて少ない高濃度の注射液では正確な用量で投与することが困難であり、その理由から、1回の注射当たりの容量は少なくとも約0.1mLであることが好ましく、より好ましくは少なくとも約0.3mLである。現時点で最も好ましい範囲は約0.5mL〜約2mLである。
【0065】
微粒子組成物の筋肉内注射または皮下注射が好ましい投与経路ではあるものの、ある種の患者または疾患の場合には、他の経路を通じて組成物を投与することも当然ながら可能であって有用な可能性がある。これらの経路はより典型的には非経口経路であるが、肺、鼻、口腔粘膜、例えば舌下もしくは頬側など、または他の経路であってもよい。筋肉内および皮下注射と並ぶ有用な非経口経路には、特に腫瘍内、病変内、局所領域、動脈、間質および腹腔内注射がある。
【0066】
注射用の微粒子およびその懸濁液は非経口投与のために適合化され、これはそれらが非経口剤形の要求事項を満たすように製剤化および加工処理されることを意味する。このような要求事項は、例えば、主要な薬局方に概説されている。1つの局面において、組成物、または投与の前に組成物を作るためのそのプレミックスもしくはキットは、無菌でなければならない。もう1つの局面において、賦形剤は非経口投与のために安全であって認容性があるように選択されなければならない。さらにもう1つの局面において、組成物は、約150〜500 mOsmol/kgの領域内、好ましくは約250〜400 mOsmol/kgの領域内というように比較的等張性(または等浸透圧性)であるように製剤化される。さらに、注射時の疼痛および局所的不耐性を避けるためにpHはほぼ生理的な範囲内にあるべきである。好ましくは、組成物のpHは、約4〜8.5の領域内にあり、より好ましくは約5.0〜7.5の領域内にある。
【0067】
微粒子は通常、それらを、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの他の生体適合性溶媒または他の有機溶媒が存在してもよいが好ましくは水を基にしている適切な生理的に許容される液体担体中に懸濁させることによって注射可能になる。より好ましい態様において、液体担体の液体成分は水性であり、有機溶媒を実質的に含まない。また一方で、他の薬学的賦形剤の組み込みが、認容性、薬物放出に関する成績、および安定性というような製剤の特性を最適化するために有用または必要であることも考えられる。これは微粒子それ自体および液体担体の両方に関して成り立つ。いずれかの相が生理的な認容性のある1つまたは複数の添加物を含んでもよい。
【0068】
典型的には、微粒子は、固体粒子含有量が約1〜20重量%、より好ましくは約3〜10重量%である懸濁液を形成するために液体担体中に再懸濁される。粒径および液体媒体の粘度は、好ましくは、20〜22G針のように比較的細い針による注射が可能となるように選択される。もう1つの好ましい態様において、粒径および液体媒体の粘度は、23〜25G針を用いた皮下または筋肉内注射が可能となるように適合化される。
【0069】
任意で、微粒子は、注射用の無菌等張塩化ナトリウム溶液を用いた再構成のために設計される。
【0070】
インターフェロンを、1つまたは複数の塩、糖、糖アルコール、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ポリマー、界面活性剤、凍結保護剤、浸透圧剤、緩衝液塩、酸または塩基といった安定化用の賦形剤または賦形剤の組み合わせを用いて安定化することも有用な可能性がある。これらの賦形剤のいくつかは、微粒子またはその懸濁液の認容性を改善するといった他の薬学的な理由からも有用な可能性がある。ポリマー担体の性質を調節するため、またはその安定性を改良するためには、1つまたは複数の可塑剤、孔形成剤、放出調節剤または抗酸化剤をさらに組み込むことが有用なこともある。
【0071】
微粒子を水性担体中に懸濁させた場合の凝集を避けるために、水性担体が1つまたは複数の生理的に許容される界面活性剤を含んでもよい。実際に、剤形の実際の提示に応じて、界面活性剤などの必要とされる賦形剤を、水性担体中または微粒子を含む乾燥組成物中に組み込むことができる。適切な界面活性剤の選択は、約3分を超えず、または好ましくは約60秒以内、より好ましくは約30秒を超えずに、微粒子を迅速かつ容易に確実に再構成する助けにもなると思われる。潜在的に有用な界面活性剤の例には、ポロキサマー、ポリソルベート、リン脂質およびビタミンE-TPGSが含まれる。
【0072】
さらにもう1つの態様において、本発明は、上記の微粒子を含む薬学的キットを提供する。この文脈において、薬学的キットは、組み合わせられて、特定の治療、予防または診断の目的のために用いられる、少なくとも2つの組成物のセットと定義される。今回の場合において、キットは、第1および第2の密閉された区画を含み、それらは同じ一次パッケージのメンバーであっても異なる2つの一次パッケージのメンバーであってもよい。第1の区画は、請求項1記載の組成物を実質的に乾燥した形態で含み、一方、第2の区画はこの乾燥組成物を注射可能な微粒子懸濁液へと再構成するための水性液体担体を含む。任意で、本キットは、第1および第2の区画のそれぞれの2つまたはそれ以上のセットを含む。
【0073】
典型的には、第1の区画中に含まれる実質的に乾燥した組成物は注射される1回の単回用量に類似し、通常はまた、第2の区画も第1の区画の内容物を再構成するために必要な容量の液体担体を保持すると考えられる。現時点で好ましさが落ちるのは、1回で注射される用量を複数含む区画である。このため、第1の区画におけるインターフェロンの含有量は約10〜約150MIUであること、および針で移しうる第2の区画における水性液体担体の容量は約0.3mL〜約3mL、特に約0.5mL〜約2mLであることが好ましい。
【0074】
キットはさらに、第1および第2の区画の1つまたは複数のセットを収容するのに適した第2のパッケージを提供する。
【0075】
第1および第2の区画は、単一のデバイスまたは単一の一次パッケージの異なる腔であってもよい。例えば、それらが二腔シリンジの2つの腔であってもよい。あらかじめ充填された二腔シリンジの利点は、いくつかの容器を無菌条件下で取り扱うことを必要としないため、調製および投与が安全かつ便利であることにある。このようなシリンジの欠点の1つは、それらを提供するのにコストがかかること、および完全で信頼性のある再構成を必ずしも可能としないことにある。
【0076】
または、セットの2つの区画が、2つの異なる一次容器またはパッケージのメンバーであってもよい。例えば、実質的に乾燥した微粒子組成物を含む第1の区画を、適したガラスまたは合成樹脂による密閉された瓶またはバイアルの形態で提供し、水性液体担体を瓶、バイアルまたはアンプルの形態で提供することもできる。さらにもう1つの態様において、第1の区画はシリンジの腔であり、第2の区画は瓶、バイアルまたはアンプルとして提供される。
【0077】
任意で、容器の1つは、デバイスの自己注射用のカートリッジとして設計される。乾燥組成物および水性液体担体を混ぜ合わせると、すぐに使える液体懸濁液がカートリッジ中に保たれ、これを自己注射装置に装填することができる。
【0078】
この場合もまた、第1の区画中の実質的に乾燥した組成物または水性液体担体のいずれか、またはその両方が、増量剤、充填剤、界面活性剤、保存料、酸、塩基、塩、糖、糖アルコール、アミノ酸、安定化剤、抗酸化剤、ポリマー、緩衝液、ポリオール、ヒト血清アルブミンなどのタンパク質、および可塑剤といった、1つまたは複数のさらなる賦形剤を含んでもよいことが強調されるべきである。
【0079】
微粒子を含む乾燥組成物および水性液体担体は、注射用に適した、すなわち無菌であって、比較的等張で等浸透圧性であり、非経口的に投与された時に毒性のある成分を実質的に含まない、再構成された懸濁液が生じるように適合化される。粘度は、17ゲージもしくはそれ以上の針、より好ましくは20ゲージもしくはそれ以上の針、またはさらには22ゲージの針による注射が可能となるように十分に低くあるべきである。本明細書で用いる場合、投与可能であるとは、約25Nを上回る射出力を必要とすることなく、特定された種類の針による注射を可能にするレオロジー特性のことを指す。より好ましくは、特に筋骨たくましいわけではない医師、看護師または患者によっても投与を行えるように、約20Nを上回らない力、さらにより好ましくは約15Nを上回らない射出力での注射を可能とするために、レオロジー特性が適合化され、針のサイズが選択される。当然ながら、このような針サイズに関するもう1つの前提条件は、微粒子の直径が十分に小さく、微粒子が再構成後に凝集しないことである。上述したように、大半の微粒子の重量平均直径は約200μmより大きくあるべきではなく、より好ましくは約30〜約175μmの範囲にある。
【0080】
本発明の微粒子は、噴霧乾燥、コアセルベーション、音波液滴形成後の脱溶媒和、噴霧凍結乾燥などによる、両親媒性ポリマーから微粒子を生じさせることが知られた任意の方法によって調製することができる。しかし、より好ましくは、微粒子はエマルションを用いる方法であって、(a)活性成分を含む水性内部相と、生分解性ポリマーおよび少なくとも1つの有機溶媒を含む有機外部相とを含むエマルションを調製する段階;(b)段階(a)で調製されたエマルションから有機溶媒の少なくとも一部を除去することによって、生分解性ポリマーを微粒子へと固体化させる段階;ならびに(c)段階(b)で形成された微粒子を収集して乾燥させる段階、を含む方法によって製造される。基本的な工程のデザインは、例えば、JM. Bezemer et al. in J. Control Release 2000, 67 (2-3), 233-248および249-260、ならびにJ. Control Release 2000, 66 (2-3), 307-320に記載されており、それらの開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0081】
一般的に言って、微粒子は、水相または親水相中に液滴として分散された有機ポリマー溶液から形成される。粒子へと固体化させるためには、分散相から有機溶媒を少なくとも部分的に除去しなければならない。これは溶媒抽出または溶媒蒸発またはそれらの組み合わせの段階によって行うことができる。溶媒抽出とは、連続した水相を、それが分散相の有機溶媒のかなりの部分を溶解または抽出しうるような程度まで変更することを意味する。例えば、有機溶媒が何らかの中程度の水混和性を有するならば、水相の希釈または容量増加はすでに、有機相の何らかの実質的な抽出を起こしていると思われる。または、水と混和しうるが、分散相の有機溶媒を溶解および抽出するための補助溶媒として作用しうる、1つまたは複数の有機溶媒を添加することにより、外部相の組成を変更することもできる。例えば、エタノール、メタノール、アセトン、イソプロピルアルコールをこのような補助溶媒として用いることができる。
【0082】
これに対して、溶媒蒸発は、有機相の組成および特性に直接的に影響を及ぼす成分の添加を必要とせず、分散相の有機溶媒の蒸気圧が水相の蒸気圧と比較して典型的にははるかに高いことを利用する:陰圧または熱を加えることにより、有機溶媒を蒸発させることができる。有機相においてある特定のポリマー濃度に達すると、ポリマーが固体化して微粒子が形成される。重要なこととして、分散相の溶媒蒸発には通常、溶媒抽出の機序の存在も含まれると考えられる。
【0083】
親水性活性化合物を微粒子中に組み込むために、有機相に活性成分を直接装入することは賢明ではない。第1に、エマルションが形成された時に親水性化合物が水相中に区分されると考えられるため、これは組込み効率の低さにつながる可能性がある。第2に、関心対象の多くの化合物、特に本発明に従って組み込もうとするインターフェロンなどのペプチドおよびタンパク質は、有機溶媒に対してかなり敏感であり、不活性化される可能性がある。このため、インターフェロンは、ブロックコポリマーの有機溶液中に乳化されて「油中水型」エマルションを形成し、その後に別の水相中に乳化されて「水中油中水型」(w/o/w)ダブルエマルションを形成する、水性溶液の形態で組み込まれることが好ましい。上記のような溶媒抽出または溶媒蒸発の段階を実施すると、インターフェロンを含む内部水相はポリマー微粒子中に封入される。
【0084】
ブロックコポリマーを溶解させるため、およびo/w型エマルションまたはw/o/w型ダブルエマルションの有機相を提供するために、現時点で好ましい有機溶媒は、ジクロロメタンである。有機相のポリマー含有量は、実際に用いられる具体的な組成物および有機溶媒に従って異なると考えられ、約1〜約300mg/mLの範囲にあってよい。ジクロロメタン を溶媒として用いる場合には、より好ましくは、ポリマー含有量は約50〜約250mg/mL、またはさらには約100〜約150mg/mLの範囲内にあるべきである。
【0085】
活性成分、すなわちインターフェロンは、好ましくは、有機ポリマー溶液中にて乳化される水性溶液の形態として組み込まれる。インターフェロン水溶液は、ある特定のpH値を実現および維持するための酸、塩基もしくは緩衝塩などの賦形剤により、または1つもしくは複数の塩、糖、糖アルコール、アミノ酸などの浸透圧剤により、安定化することができる。これらの賦形剤のいくつかは、重量オスモル濃度に関連するもの以外の安定化効果のためにも有意義である。しかし、インターフェロン、特にα-インターフェロンは、単純なインターフェロン水溶液をそれ以外に賦形剤を含まない最も内側のエマルション相として用いるw/o/w型ダブルエマルション法を用いて、容易に組み込まれることが見いだされている。
【0086】
内部水相のインターフェロン含有量は明らかに微粒子のインターフェロン含有量に影響を及ぼすと考えられ、このため、所望の微粒子特性に従って選択しうる。α-インターフェロンの場合には、例えば、含有量は約1〜約100mg/mL、より好ましくは約10〜約50mg/mLの範囲にあってよい。
【0087】
内部水相の容量と有機相の容量の比も、微粒子の活性成分の含有量に影響を及ぼすと考えられる。さらにそれは、その有孔率および放出プロフィールといったといった粒子の他の重要な特性にも影響を及ぼす可能性がある。したがって、それぞれの個々の場合で、この比は所望の製品特性へと注意深く調整すべきである。内部水相および有機相の特徴が、以上に考察した好ましさに従って選択される場合には、約1:3〜約1:15(内部水相:有機相)という容量比が有用であることが見いだされている。好ましい態様の1つによれば、容量比は約1:5〜約1:10から選択される。
【0088】
w/o/w型ダブルエマルションを安定化するためには、界面活性剤特性を有する1つまたは複数の安定化剤を外部水相に組み込むことが有用なことがある。有用な安定化剤が、イオン性もしくは非イオン性の界面活性剤もしくは洗剤などの両親媒性低分子、または界面活性ポリマーであってもよい。例えば、ポリビニルアルコールは、調製方法または最終的な生成物に対して実質的に有害な影響を及ぼすことなくエマルションを安定化することができる有用な添加物である。有用なポリビニルアルコールは、平均分子量が約10,000〜約100万の範囲であってよく、加水分解の度合いが約80〜約99%、より好ましくは約85〜約90%であってよい。または、ポリビニルピロリドンまたは界面活性のある多糖を用いてもよい。外部相における安定化剤の含有量は、その化学的性質、ならびに分散される有機相の性質および相対容量に依存する。例えば、ポリビニルアルコールの場合には、それは約0.1〜約10重量%の範囲、より好ましくは約0.5〜約5重量%の範囲であってよい。ポリビニルピロリドンの場合には、有用な範囲は約1〜約30重量%、より好ましくは約5〜約25重量%である。
【0089】
また、外部水相が緩衝剤、浸透圧剤または補助溶媒などのさらなる賦形剤を含んでもよい。エタノールまたはメタノールなどの補助溶媒を、水相の親水性を調節するため、および調整工程の溶媒抽出段階を改良するために用いてもよい。浸透圧剤は、例えば、塩、糖、糖アルコール、オリゴ糖、グリコール、他のアルコールおよびアミノ酸の群より選択することができる。好ましい態様の1つにおいては、塩化ナトリウムが浸透圧剤として用いられる。外部相に存在する任意の緩衝系が何らかの浸透圧を誘導すると考えられることにも注意が必要である。
【0090】
外部相の重量オスモル濃度をダブルエマルションの最も内側の水相の重量オスモル濃度と等しいかそれよりも高い値となるように調整することが有用なことがある。このようにして、浸透圧性に駆動される外部水相から内部水相への水の拡散をおおむね回避することができる。このような拡散プロセスは、その後の段階における溶媒抽出および/または溶媒蒸発によって形成される微粒子の有孔率を高める可能性があることが見いだされている。より好ましくは、外部水相の重量オスモル濃度は、塩化ナトリウムを約3〜約6重量%のレベルで組み込むことなどにより、最も内側の水相のそれを実質的に上回るように調整される。
【0091】
外部相の相対容量は、他の2つの相の組み込みのために必要な最小容量を上回るように選択されなければならず、このためすべての相の、特に有機相および外部水相の性質および組成にも依存する。最小容量を上回る外部水相の実際の容量は、主としてその後の溶媒抽出および/または溶媒蒸発の工程の点からみて重要である。通常、外部水相の容量は、その内部に組み込もうとするw/o型エマルションのそれよりも大きい。例えば、それはw/o型エマルションの容量の少なくとも2倍であってよい。より好ましくは、それは約5〜約40倍もしくは50倍の大きさである。
【0092】
内部w/o型エマルションの調製は、活性成分が剪断力に対して比較的安定であるならば、例えばUltra-Turrax型の高速ローター-ステーターデバイスのような従来の高剪断装置を用いて行うことができる。界面活性化合物を含む水相中にあるこのようなエマルションを乳化するために、高剪断も攪拌も適用する必要がなく、従来の攪拌装置で十分な場合もある。w/o型およびw/o/w型のエマルションの調製は、好ましくは、室温または室温を下回る温度、例えば約0℃〜約25℃で標準圧にて行われる。明らかに、用いられる乳化方法は、その結果としての平均直径、分散相の分布ならびに微粒子の分布およびサイズ分布に影響を及ぼす。これらのパラメーターに影響を及ぼす他の要因には、各々の相の組成、特に有機溶媒の性質、ならびに外部相における界面活性安定化剤の種類および含有量がある。
【0093】
微粒子を形成するために有機相中に溶解されたポリマーの固体化は、溶媒蒸発を主な機序とすることによって誘導することができる。これは攪拌しながらw/o/w型ダブルエマルションの温度を上昇させること、および/または陰圧を適用することによって実現することができる。
【0094】
しかし、より好ましくは、微粒子の形成は、溶媒抽出を含む段階によって誘導される。これを行うためには、w/o/w型ダブルエマルションの外部相を別の水溶液で希釈するが、この水溶液は、任意で、その組成の点で外部水相の水溶液と同様またはさらには同一であってもよい。外部水性エマルション相の安定化剤の含有量が十分に多いならば、溶媒抽出工程を誘導するために添加される水溶液は、さらなる任意の安定化剤を含む必要がないことがある。その一方で、添加される水溶液は、ダブルエマルションの内部水相と外部水相との間の浸透圧勾配を維持するため、および内部相への水の拡散を回避するために、1つまたは複数の塩、糖、糖アルコール、オリゴ糖、グリコール、他のアルコールおよびアミノ酸といった浸透圧性活性成分を含むことが推奨される。任意で、添加される水溶液は、メタノールもしくはエタノールなどの補助溶媒または緩衝剤なども含みうる。
【0095】
ダブルエマルションに対して添加される水溶液の容量は、典型的には、溶媒抽出段階を実施する前のエマルションの容量と少なくとも同じ大きさである。より好ましくは、容量はダブルエマルションの容量の約1〜5倍である。容器内での局所的な不均一性を避けるために、溶液は一定の攪拌の下でゆっくりと添加することが賢明である。任意で、抽出された有機溶媒のいくらかを除去するために、温度を上昇させること、および/または何らかの陰圧を加えることもできる。水溶液の添加の後に、有機相からのより徹底的な溶媒抽出が可能となるように、およびおそらくはエマルションの内部水相から外部相への水の拡散も可能となるように、ある程度の期間にわたって攪拌を続けてもよい。
【0096】
微粒子が固体化した後に、遠心分離、濾過または篩い分けなどによってそれらを収集することができる。緩衝液などの何らかの新たな水溶液中に微粒子を再懸濁させた後には、微粒子中に存在することが望ましくない、残っている有機溶媒のすべておよびすべての可溶性化合物を実質的に除去するために、反復的な遠心分離、濾過または篩い分けを行うべきである。任意で、所望の粒径画分を分離するために微粒子をスクリーニングしてもよい。
【0097】
洗浄の後に、微粒子を貯蔵のために乾燥させてもよい。好ましい乾燥方法は凍結乾燥である。例えば、微粒子を液体窒素中で凍結させ、その後に残留した水を昇華させるために減圧下で乾燥させることができる。通常、乾燥の工程は、0℃未満の温度で行われる第1の乾燥相、およびそれに続く、周囲温度またはさらに高い温度での第2の乾燥相を含む。
【0098】
本発明の組成物に到達するために、乾燥した微粒子を、上記のようなさらなる随意の賦形剤と混合することもできる。例えば、微粒子と、界面活性剤、再懸濁剤、浸透圧剤および緩衝剤の群より選択される1つまたは複数の固体状態の賦形剤とを含む粉末混合物が、請求項1記載の組成物であってもよい。好ましくは、微粒子および賦形剤は無菌の形態で提供され、混合は無菌的に行われる。このような粉末混合物を瓶またはバイアルへと無菌的に濾過することもできる。上述したように、瓶またはバイアルは、薬学的キットに備わった粉末を再構成するための水性液体担体と組み合わせることができる。
【0099】
さらにもう1つの態様において、本発明の組成物は、注射可能な液体製剤の形態で提供される。この態様において、インターフェロンおよびブロックコポリマーは、生理的に許容されるべきである液体担体中に溶解または分散される。非経口投与を行うと、ポリマー溶液または分散液は筋肉または皮下組織中にデポーを形成し、そこからインターフェロンがゆっくりと放出されると考えられる。この態様は、本発明の組成物のブロックコポリマーが、生理的環境において肉眼で見えるゲルを実際に形成しうるという発見に基づく。
【0100】
好ましくは、注射後にゲルを形成しうるように、液体製剤を構成して適合化させる。ゲルはそのレオロジー特性によって定義することができる。本明細書で用いる場合、ゲルとは、低い剪断力の行使下では固体のように振る舞い、剪断力が降伏点として定義される閾値を上回った場合には粘性液体のように振る舞う、半固体材料である。換言すれば、ゲルは、降伏応力が有限であり、通常はかなり小さい系である。
【0101】
制御放出剤形としての注射可能なゲルおよびインサイチュー形成ゲルは、A. Hatefi et al., J. Control. Rel. 80 (2002), 9-28によって記載されており、この文書は参照により本明細書に組み入れられる。注射可能なゲルの製剤化のためにはいくつかの一般的なアプローチがあり、その大部分はゲル形成性ポリマー担体の使用に基づく。例えば、ある種のポリマーは、pHまたは温度のような特定の環境条件に応答するゲルを形成しうる。例えば、比較的低いpHまたは室温の下でゾル(粘性のあるコロイド性溶液)として存在するゾル-ゲル系が記載されている。注射されると、生理的液体の緩衝作用によってpHがより中性の値となり、固体化およびゲル形成が生じる。温度応答性の系においては、注射後に温度が生理的レベルに上昇し、系のゲル化をもたらす。
【0102】
しかし、より好ましくは、注射可能な溶液は非水性で生体適合性のある有機溶媒または補助溶媒を含み、それはインビトロでは液体溶液または懸濁液を提供するが、注射後には、水性環境中に不溶性であるがゲル形成は行いうるブロックコポリマーからゆっくりと拡散する。
【0103】
有機溶媒または補助溶媒は、ブロックコポリマーを溶解させることができて、意図する投与用量および頻度からみて生体適合性があると考えられるものから選択しうる。このような溶媒の例には、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジアセチン、トリブチリン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、トリエチルグリセリド、リン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、酒石酸ジエチル、ポリブテン、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、オクタノール、乳酸エチル、プロピレングリコール、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、ブチロラクトン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、グリセロールホルマール、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オンおよびそれらの混合物が含まれる。
【0104】
好ましい態様の1つにおいて、非水性溶媒は、DMSO、NMP、ベンジルアルコール、テトラヒドロフラン、酢酸エチルおよび安息香酸ベンジルからなる群より選択される1つまたは複数のメンバーである。
【0105】
注射可能な液体組成物のブロックコポリマー含有量は、典型的には約5重量%〜約60重量%であり、これは主として、実際に用いられる厳密な1つまたは複数のポリマーに依存する。より好ましくは、ポリマー含有量は約15〜約45重量%である。
【0106】
本発明のこの局面を実施するのに特に適したブロックコポリマーは、例えば約70〜約98重量%、より好ましくは約75〜約95重量%というように、平均PEGT含有量が比較的高い。現時点で最も好ましいのは、平均PEGT含有量が約80〜約90重量%であるブロックコポリマーである。
【0107】
PEGTブロックのPEG区域の平均分子量は、典型的には約300〜約6,000であり、より好ましくは約600〜約2,000である。
【0108】
任意で、組成物が、PEGT含有量の点で、PEG区域の分子量の点で、またはこれらのパラメーターの両方の点で異なる、さらに2つまたはそれ以上のブロックコポリマーを含んでもよい。1つの好ましい態様、組成物は1つまたは2つのブロックコポリマーを含む。
【0109】
この場合も、組成物は、1つまたは複数の補助溶媒、界面活性剤、保存料、酸、塩基、塩、糖、糖アルコール、アミノ酸、安定化剤、抗酸化剤、浸透圧剤およびポリマーといった、1つまたは複数のさらなる賦形剤を含んでよい。これらの賦形剤の任意のものを組み込むことに関する根拠は、微粒子を基にした組成物の文脈において以上にさらに考察したものと同じであってもよい。または、賦形剤が、液体注射可能な製剤に一般に付随する任意の機能を果たしてもよい。
【0110】
典型的には、液体製剤の容量は、注射する1回の用量当たり約0.3〜約3mLであり、より好ましくは約0.5〜約2mLである。
【0111】
本発明の注射可能な製剤は、典型的には筋肉内注射または皮下注射用に設計される。これらの投与経路は、無菌であるといった、非経口用製品に一般に求められる、品質に関係したある種の性質を必要とする。したがって、注射可能な液体製剤は無菌であって、かつ最新の米国薬局方(United States Pharmacopoeia)(USP)のような主要な薬局方において特定されているような、非経口剤形に関するすべての要求事項を満たすことが好ましい。
【0112】
注射可能な液体製剤は、ブロックコポリマーを、任意では高温にて、非水性の生体適合性溶媒中に溶解させることによって調製することができる。活性化合物、すなわちインターフェロンを、このポリマー溶液に対して、凍結乾燥粉末などの乾燥粉末として攪拌しながら添加することができる。好ましくは、製剤中の水の存在を回避する目的で、インターフェロンは水溶液の形態では組み込まれない。
【0113】
さらにもう1つの態様として、本発明は、肉眼で見える固体インプラントの形態にある請求項1記載の組成物を提供する。インプラントは、インプラントが典型的には、単一の投薬単位内または小数のみの単位内に活性成分の単回用量を含むという点で微粒子とは異なる、固体の実質的に乾燥した剤形と定義することができる。通常、インプラントの最大の寸法は数ミリメートルまたはそれ以上の範囲にあり、一方、微粒子は多数の単位として投与され、ミリメートル尺度よりも小さい寸法を有する。
【0114】
好ましい態様の1つにおいて、インプラントは棒状体として成形される。これは、組織損傷がおおむね回避されるという「侵襲性の低い」投与の観点で特に有利である。さらに、ポリマー性の棒状物品を、溶融押出に続いて押出品を棒状体として切り出すことによって効率的に調製することもできる。このような押し出しを行うためには、ブロックコポリマー、インターフェロンおよびさらなる賦形剤を乾燥粉末または顆粒の形態で提供し、均一になるように混合すべきである。その後に、混合物を単一または二重スクリュー押出機などの押出機に投入して、コヒーレントな固体ストランドとして押し出し、続いて個々の棒状体を切り出す。
【0115】
ブロックコポリマーの組成は、微粒子の文脈において以上で考察したようにして選択することができる。インプラントにおいて特に有用と思われる賦形剤の種類は、ポリマーの融解の範囲またはガラス転移点を、組み込まれたインターフェロンの安定性に対して有害な影響を及ぼさない温度へと低下させることができるような可塑剤である。潜在的に有用な可塑剤には、グリセロール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールが含まれる。
【0116】
組成物が、微粒子を基にした製剤、注射可能な液体またはゲルもしくは固体インプラントのいずれの形態で提供されるかにかかわらず、その薬学的使用は、インターフェロンの投与によって、最も好ましくはα-インターフェロンの投与によって、治療しうる、またはその進行を予防もしくは減速させることができる疾患および病状の管理のための薬学的製品の調製物である。これらの疾患および病状の例には、急性および慢性のB型肝炎、急性および慢性のC型肝炎、有毛状細胞性白血病、急性および慢性の骨髄性白血病、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、カルチノイド腫瘍、悪性黒色腫、尖圭コンジローマ、SARS、およびAIDS関連カポジ肉腫などのカポジ肉腫が含まれる。
【0117】
本発明の組成物は、従来の注射用インターフェロン製剤を上回る利点を提供し、その制御放出特性によって、1週間に数回の注射を行う代わりに2または4週間毎に1回の注射というように、注射の頻度を大きく減らすことができる。その結果として、患者の快適性およびコンプライアンスが高まり、頻回の注射に伴うコストが潜在的に軽減される。注射または植込みのための他のポリマー性制御放出システムに関連して、本発明は、バースト作用、用量減少、または自己触媒的なポリマー分解および浸蝕を伴うことなく、インターフェロンとの優れた適合性、改良された放出制御を提供する。さらに、本発明の送達システムは、生理的に認容性が十分であり、担体に関連した顕著な副作用を生じることがない。
【0118】
特定の理論に拘束されることは望まないが、本発明の送達システムの優れた放出挙動は、活性化合物が主として、現在知られているポリ(ラクチド)-および/または-(グリコリド)を基にした送達システムの多くの場合のように浸蝕によってではなく、拡散によって放出されるという事実と関係するように思われる。両親媒性ブロックコポリマーを用いると、放出プロセスにかかわる自己触媒性ポリマー分解はみられない。公知の送達システムとは異なり、ブロックコポリマーは、敏感な生体化合物に対して不都合な酸性微小環境を生じない。これに対して、ブロックコポリマーの親水性ブロックは、このような敏感な生体化合物のインサイチュー安定性を高める親水性微小環境を提供する可能性が高い。具体的には、インターフェロン、特にインターフェロンのαファミリーは、本発明の担体システムにおいて両親媒性ブロックコポリマーによって提供される微小環境で、非凝集状態で安定化される。
【0119】
特に微粒子の場合には、ブロックコポリマーから形成される粒子の有孔率が比較的低いことが、本発明の組成物で観察されるバースト作用が小さいことの原因の1つであるとも考えられている。
【0120】
本発明のさらなる態様、用途および利点は、以下の非限定的な実施例によって明らかになると考えられ、または薬物送達の分野の当業者により、この説明に基づいて容易に導き出せると考えられる。
【実施例】
【0121】
実施例1:インターフェロン-α-2bを含むw/o/w型ダブルエマルションの調製
165アミノ酸から構成され、分子量が約19,000Daであって等電点が約6.0のタンパク質である、グリコシル化されていない組換えインターフェロン-α-2b(IFN-a-2b)を、タンパク質濃度が約10mg/mLである水溶液の形態として入手した。PEGTが80重量%でPBTが20重量%であって、PEG区域の平均分子量が1,500であるブロックコポリマーを、IsoTis社、Bilthoven、Netherlandsから入手した。7mLのジクロロメタン中にポリマー1gを含む溶液を調製した。w/o型エマルションを調製するためには、1mLのIFN-α-2b溶液を、ポリマー溶液に攪拌しながら添加し、その後にultra turraxにより19,000rpmで約30秒間かけてホモジネート化した。
【0122】
上記のようにして調製した2種類のw/oエマルションを、50mLの(a)4%PVA(w/v)(MW約130,000、加水分解の度合いは約87%)を含む水性PBS緩衝液、または(b)4%PVA(w/v)をも含む塩化ナトリウム水溶液(5%w/v)に対して、700rpmで攪拌しながら別々に注ぎ入れることにより、2つの異なるw/o/w型ダブルエマルションを調製した。
【0123】
実施例2:溶媒抽出および蒸発による微粒子の調製
実施例1に従って調製したダブルエマルションを、さらに微粒子を調製するための加工処理にかけた。2つのダブルエマルションのそれぞれに対して、100mLの水性PBS緩衝液を、700rpmで連続攪拌しながらゆっくりと添加した。添加されたPBS溶液は、ダブルエマルションの外部水相の拡張をもたらした。その後に、ジクロロメタンの主要部分を外部水相中に抽出するため、および有機相におけるポリマーの固体化のために、攪拌を約1時間続けた。その後に、固体化した微粒子を2,500rpmおよび室温で遠心した。上清を廃棄し、ペレットを新たなPBS緩衝液中に再懸濁させて再び遠心を行った。この手順を3回繰り返した。最後に、微粒子を液体窒素中で凍結させ、約12〜24時間にわたって凍結乾燥させた。封入効率は、外部相が5%塩化ナトリウムを含むw/o/w型ダブルエマルションからの微粒子に関しては約85%であり、もう一方のバッチに関しては約25%であることが明らかにされた。微粒子を電子顕微鏡(SEM)によって検査したところ、大まかに球状であって、サイズの範囲は主として約50〜約120μmであることが見いだされた。
【0124】
実施例3:インビトロでの微粒子からのインターフェロン-α-2bの放出
その放出挙動について試験するために、実施例2に従って調製した微粒子の約15mgの各バッチを、1.5mLフラスコ内で3回ずつ秤量した。それぞれのフラスコに対して、1mLのPBS緩衝液を添加した。フラスコは37℃の水浴中に保った。試料採取の時点で、微粒子を1,000rpmにて室温で2分間遠心した。700μlの試料を取り出して、新たなPBS緩衝液と交換した。各試料におけるIFN-α-2bの量を、Microビチンコン酸(bichinchonic acid)総タンパク質アッセイを用いて決定した。
【0125】
両方のバッチが、持続的放出特性を明らかに示すことが見いだされた。外部相に5%塩化ナトリウムを含むw/o/w型ダブルエマルションから得られたバッチは、約10%を下回る初期バースト作用を示し、一方、もう他のバッチは約20%のバースト作用を有していた。いずれのバッチも、そのインターフェロン含有量の50%を約3〜4日以内に放出し、約7〜8日以内に75%を放出した。14日後では、組み込まれた用量の約85〜90%が放出された。
【0126】
実施例4:短縮型IFN-α-2bを組み込んだ微粒子を含む組成物の調製
微粒子を含む組成物を、無菌条件を用いて以下の通りに調製した。PEGTが77重量%でPBTが23重量%であってPEG区域の平均分子量が1,500である、量6gの無菌ブロックコポリマーを秤量し、54gの無菌ジクロロメタン中に溶解させた。この有機ポリマー溶液を、平均で長さが約158アミノ酸残であって比活性が1μg当たり約0.25〜0.35MIUで、インターフェロン濃度が約10mg/mLであるN末端短縮型INF-α-2b分子を含む混合物を含む、5.5mLの無菌水溶液と混ぜ合わせた。ultraturraxデバイスを用いて、均一な油中水型エマルションを得た。
【0127】
その後に、このエマルションを、塩化ナトリウム(5%w/v)をも含む445gのポリビニルアルコール(4%w/v)の無菌水溶液と、攪拌しながら混ぜ合わせた。それにより、ポリビニルアルコール溶液が外部水相を形成している、w/o/w型ダブルエマルションが得られた。
【0128】
次の段階では、有機相からの溶媒の除去によって粒子を形成させて硬化させ、これは溶媒抽出と溶媒蒸発との組み合わせによって行った。いくつかの溶媒抽出はダブルエマルションの連続相に対する無菌PBS緩衝液の添加によって行い、無菌窒素を、ダブルエマルションの表面に対して約5〜10L/分の流速で約24時間にわたって吹きかけることによってジクロロメタンの別の部分を蒸発させた。
【0129】
微粒子を収集して無菌マンニトール溶液(26.7g/L)で洗浄し、重量オスモル濃度を生理的に認容性のある値に調整するため、および凍結乾燥による十分なケーク形成を可能とするために、適切な容量のマンニトール溶液中に再懸濁させた。懸濁液のアリコートを無菌ガラスバイアルに充填して凍結乾燥させ、白色の凍結乾燥物を得た。バイアルを合成樹脂製の栓およびアルミニウム製の蓋で閉鎖した。
【0130】
分析検査によって微粒子の数平均直径は約83μmであることが示され、インターフェロン含有量から、封入効率は約90%を上回ることが結論された。残留ジクロロメタンは実質的に600ppm未満であった。微粒子の電子顕微鏡写真により、有孔率は小さいことが判明した;具体的には、粒子の大部分は直径が約2〜5μmを上回る孔を有しなかった。
【0131】
実施例5:短縮型IFN-α-2bを含む微粒子のインビボ試験
実施例4に類似したやり方で調製した、微粒子を含む組成物を、ハムスターおよびサルにおいてインビボ成績に関して試験した。凍結乾燥させた固体組成物を、液相の重量オスモル濃度を調整するために任意でさらにマンニトールを含む、カルボキシメチルセルロースナトリウムの無菌水溶液(0.1%w/v)中に懸濁させた。活性成分の含有量および投与される用量に基づいて水溶液の量を算出し、単回投与当たりの注射容量が0.5〜1.0mLとなるようにした。10匹のハムスターのそれぞれに用量0.99mg/kgの活性化合物を7日毎の皮下注射によって投与し、別の10匹のハムスターの群には7日毎に3.46mg/kgを投与した。選択された間隔で動物から血清試料を入手し、それらの試料を凍結形態で貯蔵して、そのインターフェロン含有量に関して後に分析した。すべての動物が投与に対して十分な認容性があるように思われた。
【0132】
血清プロフィールに基づいて、活性化合物のインビボ放出プロフィールを算出した。別の1つの実験では、インビトロ放出プロフィールを実施例3に記載したように決定した。インビボおよびインビトロ放出プロフィールの比較により、各々のプロフィールの間には形状および放出持続時間の両方に関して優れた相関があること、ならびにインビトロ放出挙動は組成物のインビボ成績の優れた予測因子であるように思われることが示された。インビボおよびインビトロのいずれにおいても有意なバースト作用はみられなかった。
【0133】
図1は、低用量ハムスター群、高用量群の算出された平均インビボ放出プロフィール、および100%総放出に対して標準化された各々のインビトロ放出プロフィールを示している。
【0134】
もう1つの一連の実験では、同じ組成物の試料を雄性および雌性のサルに対して皮下投与した。活性成分の用量は動物1匹当たり180μgであり、組成物を1回の注射当たり0.5〜1.0mlの容量に分散させるために同じ再構成液を用いた。注射時点から始めて、14日の期間にわたり、選択した時間間隔で血清試料を入手した。この場合も、血清濃度をインビボ放出プロフィールの算出に用い、続いてそれを、実施例3に記載された方法に従った組成物の同じバッチの他の試料から決定されたインビトロ放出プロフィールと比較した。
【0135】
その結果、各々の放出プロフィールの間の相関は顕著であった。インビトロ組成物およびインビボ組成物の両方が、そのインターフェロン含有量を14日の期間にわたって絶え間なく放出するように思われ、バースト放出は実質的にみられなかった。
【0136】
図2は、算出された平均インビボ放出プロフィール、および100%総放出に対して標準化された各々のインビトロ放出プロフィールを示している。
【0137】
実施例6:放出されたインターフェロンの純度
実施例4および5に記載されたインビトロ放出試験から得られた、放出されたインターフェロンの試料を、モノマー形態で放出されたインターフェロンの割合を決定するために、高速サイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。注目すべきことに、α-インターフェロンは容易に凝集することが知られているとはいえ、放出された活性化合物の1%は二量体またはさらに大きい凝集体の形態にあることが見いだされた。したがって、この微粒子組成物はインターフェロンの実質的な安定化の原因になるように思われた。
【0138】
実施例7:ブロックコポリマーおよびインターフェロンβを組み込んだ薄膜組成物の調製
PEGTが80重量%でPBTが20重量%であって、PEG区域の平均分子量が2,000である、量0.5gのブロックコポリマーを秤量し、3.5mLのジクロロメタン中に溶解させた。1.94mgの凍結乾燥インターフェロン-βを、ultraturraxを用いて溶液中に分散させた。調整可能な薄膜アプリケーターを用いて、この分散液をガラス板の鋳型に入れた。ジクロロメタンの蒸発後に薄膜が得られ、これをガラス板から剥離させた。この薄膜を換気フード中にてさらに数時間乾燥させた。
【0139】
約1.77cm2の試料を薄膜から切り出し、振盪水浴において水性酢酸緩衝液pH 3.5(1ml)、37℃中にてインキュベートした。24時間のインキュベーション毎に、放出された媒質の全容量を更新し、試料をさらにインキュベートした。取り出された緩衝液のアリコートをHP-SEC分析に用いたところ、組み込まれたβ-インターフェロンの約83%がモノマー性の非凝集形態として放出されたことが判明した。放出持続時間は薄膜の厚さに依存した。
【0140】
実施例8:IFN-α-2aを含む自己ゲル化ブロックコポリマー溶液の調製および放出特性
インターフェロン-α-2a、ならびにPEGTを85重量%で含み、PEG区域の平均分子質量が約1,000であるPEGT/PBTブロックコポリマーを乾燥形態として入手した。ポリマーを安息香酸ベンジルとベンジルアルコールとの混合物(98:2)中に20重量%の濃度で溶解させた。インターフェロンを粉末形態として4重量%の濃度で溶解させ、ポリマー溶液と十分に混合した。その結果得られた混合物を針の付いたシリンジに充填し、37℃のPBS緩衝液中に注入した。注射したところ、不規則なゲルがゆっくりと沈殿した。このゲルを連続的に攪拌しながら37℃に保った。試料を適切な時間間隔で取り出し、新たなPBS緩衝液と混合した。試料をそのIFN-α-2bの含有量に関して分析したところ、放出時間が約14日を上回ること(90%の放出)が確かめられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリマーと、インターフェロンの群より選択される1つまたは複数の活性化合物とを含み、生分解性ポリマーがポリ(エチレングリコール)テレフタレート(PEGT)およびポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)から構築されるブロックコポリマーである、制御放出のための薬学的組成物。
【請求項2】
インターフェロンが、α-インターフェロンの群、好ましくはIFN-α、IFN-α-2a、IFN-α-2b、IFN-αcon-1、ペグ化IFN-α-2a、ペグ化IFN-α-2b、短縮型(truncated)IFN-α-2a、短縮型IFN-α-2b、IFN-αとアルブミンとの融合タンパク質、およびそれらの機能的誘導体からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
インターフェロンが、遺伝的に操作された細胞または生物体から産生される組換えインターフェロンであり、細胞または生物体が好ましくは哺乳動物、昆虫、細菌、酵母、真菌、および高等植物の細胞または生物体より選択される、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
活性化合物を少なくとも7日、好ましくは少なくとも10日の期間にわたって放出するように適合化されている、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
生分解性ポリマーと、インターフェロンの群より選択される1つまたは複数の活性化合物とを含み、活性化合物の少なくとも約80%がモノマー性の非凝集形態として放出される、制御放出のための薬学的組成物。
【請求項6】
組成物の単位用量が少なくとも約5MIU(百万国際単位)の活性化合物を14日の期間にわたって放出するように適合化されており、該期間が単位用量の投与時点に始まる、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
無菌であり、かつ非経口投与、特に皮下または筋肉内への注射または植込みに適するように製剤化されている、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
活性化合物およびブロックコポリマーを含む微粒子を含む、前記請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
微粒子の大半が、約5μmを上回る直径を有する孔を実質的に有しない、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
ブロックコポリマーが約50〜約95重量%のPEGT、好ましくは約70〜約85重量%のPEGTを含む、請求項8または9記載の組成物。
【請求項11】
PEGTブロックのPEG区域の平均分子量が約600〜約3,000、好ましくは約1,000〜約2,000である、請求項8〜10のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
ポリエチレングリコールテレフタレート(PEGT)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)から構築される少なくとも2種のブロックコポリマーを含み、この少なくとも2種のブロックコポリマーがPEGTおよびPBTの相対含有量ならびに/またはPEGTブロックのPEG区域の平均分子量の点で互いに異なる、請求項8〜11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
微粒子の重量平均直径が約25〜約200μm、好ましくは約50〜約150μmである、請求項8〜12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
微粒子中のインターフェロンの含有量が約0.1〜約20重量%、より好ましくは約0.2〜約10重量%である、請求項8〜13のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
増量剤、充填剤、界面活性剤、保存料、酸、塩基、塩、糖、糖アルコール、アミノ酸、安定化剤、抗酸化剤、ポリマー、緩衝液、ポリオール、ヒト血清アルブミンなどのタンパク質、および可塑剤からなる群より選択される1つまたは複数の賦形剤をさらに含む、請求項8〜14のいずれか一項記載の組成物。
【請求項16】
第1および第2の密閉された区画または複数のそれを含む薬学的キットであって、第1の区画が、前記請求項のいずれか一項記載の組成物を実質的に乾燥した形態で含み、第2の区画が、組成物を注射可能な微粒子懸濁液へと再構成するための水性液体担体を含む、キット。
【請求項17】
第1の区画における活性化合物の含有量が約10〜約150百万国際単位(MIU)である、請求項16記載のキット。
【請求項18】
水性液体担体の容量が約0.5〜約3mL、好ましくは約1〜約2mLである、請求項16または17記載のキット。
【請求項19】
水性液体担体が、界面活性剤、保存料、酸、塩基、塩、糖、糖アルコール、アミノ酸、安定化剤、浸透圧剤、抗酸化剤、およびポリマーからなる群より選択される1つまたは複数の賦形剤を含む、請求項16〜18のいずれか一項記載のキット。
【請求項20】
第1および第2の密閉された区画が、2つの一次パッケージング容器の形態で提供される、請求項16〜19のいずれか一項記載のキット。
【請求項21】
第1の区画が瓶またはバイアルの形態で提供され、第2の区画がシリンジの形態で提供される、請求項20記載のキット。
【請求項22】
第1および第2の密閉された区画が、二腔シリンジの2つの腔の形態で提供される、請求項16〜19のいずれか一項記載のキット。
【請求項23】
以下の段階を含む、請求項8〜15のいずれか一項記載の組成物の調製のための方法:
(a)(aa)活性化合物を含む水性内部相と、
(ab)生分解性ポリマーおよび少なくとも1つの有機溶媒を含む有機外部相とを含むエマルションを調製する段階;
(b)段階(a)で調製されたエマルションから有機溶媒の少なくとも一部を除去することによって、生分解性ポリマーを微粒子へと固体化させる段階;
(c)段階(b)で形成された微粒子を収集して乾燥させる段階。
【請求項24】
段階(b)が、w/o/w型ダブルエマルションを入手するために、段階(a)で調製されたエマルションをコヒーレントな(coherent)水相中で乳化させることによって行われる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
w/o/w型ダブルエマルションのコヒーレントな水相が、界面活性剤および水溶性ポリマーからなる群より選択される安定化剤を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
コヒーレントな水相の重量オスモル濃度が、w/o/w型ダブルエマルションの内部水相の重量オスモル濃度と少なくとも同じ高さである、請求項24または25記載の方法。
【請求項27】
活性化合物およびブロックコポリマーが、注射可能な液体製剤の形態で液体担体中に溶解または分散されている、請求項1〜7記載の組成物。
【請求項28】
注射可能な液体製剤の容量が約0.5〜約3mL、好ましくは約1〜約2mLである、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
ブロックコポリマーが約75〜約95重量%のPEGT、好ましくは約80〜約90重量%のPEGTを含む、請求項27または28記載の組成物。
【請求項30】
PEGTブロックのPEG区域の平均分子量が約600〜約2,000である、請求項27〜29のいずれか一項記載の組成物。
【請求項31】
液体担体が非水性の生体適合性溶媒を含む、請求項27〜30のいずれか一項記載の組成物。
【請求項32】
非水性の生体適合性溶媒が、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、安息香酸ベンジル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ベンジルアルコール、およびこれらの任意のものの混合物からなる群より選択される、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
界面活性剤、保存料、酸、塩基、塩、糖、糖アルコール、アミノ酸、安定化剤、抗酸化剤、およびポリマーからなる群より選択される1つまたは複数の賦形剤をさらに含む、請求項27〜32のいずれか一項記載の組成物。
【請求項34】
哺乳動物へ筋肉内注射または皮下注射された場合にゲル形成が可能であるように適合化されている、請求項27〜33のいずれか一項記載の組成物。
【請求項35】
肉眼で見える固体インプラントとして成形される、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項36】
固体インプラントが棒状体として成形される、請求項35記載の組成物。
【請求項37】
以下の段階を含む、請求項35または36記載の組成物の調製のための方法:
(a)ブロックコポリマー、活性化合物、および任意でさらに賦形剤を混合する段階、ならびにその後に
(b)溶融押出によってコヒーレントな固体ストランドを形成する段階、それに続いて
(c)該コヒーレントな固体物品を固体インプラントへと分ける段階。
【請求項38】
急性もしくは慢性のB型肝炎、急性もしくは慢性のC型肝炎、有毛状細胞性白血病、急性もしくは慢性の骨髄性白血病、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、カルチノイド腫瘍、悪性黒色腫、尖圭コンジローム、SARS、またはAIDS関連カポジ肉腫などのカポジ肉腫の治療のための薬学的製品の製造のための、請求項1〜15および請求項27〜36のいずれか一項記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−16836(P2011−16836A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205413(P2010−205413)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【分割の表示】特願2007−550316(P2007−550316)の分割
【原出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(503040136)バイオレックス・セラピューティクス インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】