説明

PF1364物質、その製造方法、生産菌株、及び、それを有効成分とする農園芸用殺虫剤

【課題】優れた殺虫活性を有する、効果が確実で安全な農園芸用殺虫剤を提供する。
【解決手段】Aspergillus属に属する微生物が生産するPF1364物質を有効成分として含有する農園芸用殺虫剤を提供する。PF1364物質を生産する菌株はAspergillus ustus、または、Aspergillus pseudodeflectusであり、酢酸エチルで抽出し、HP−20のカラムで分離後TLCまたはHPLCで分画することにより製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺虫活性を有する新規な化合物、その製造方法、生産菌株、及び、それを有効成分とする農園芸用殺虫剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの農園芸用殺虫剤が知られているが、薬剤抵抗性や安全性などの問題から、より有効で安全に使える剤が必要とされている。
PF1364物質は、Austin系新規化合物である。類縁物質であるAustinは、アスペルギルス(Aspergillus)属の生産する代謝産物として(非特許文献1)、Dehydroaustinは、ぺニシリウム(Penicillium)属、及び、アスペルギルス(Aspergillus)属の生産する代謝産物として(非特許文献2)報告されている。
また、Austin類縁物質が、カイコに対して痙攣作用を有する化合物の、痙攣作用を増強する作用を有することが報告されているが(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)、これらAustin類縁物質の農業害虫に対する殺虫活性については報告がない。さらに、Journal of the Brazilian Chemical Society, 2003, 14(5), 722-727(非特許文献6)、Chemistry & Biodiversity, 2008, 5(2), 341-345(非特許文献7)には、Austin類、とりわけDehydroaustinの、蚊の幼虫に対する活性が強いことが報告されているが、やはり農業害虫に対する殺虫活性についての報告はない。
【0003】
【非特許文献1】Journal of the American ChemicalSociety, 1976, 98(21), 6748-6750
【非特許文献2】Chemical& Pharmaceutical Bulletin, 1982, 30(5), 1911-1912
【非特許文献3】Bioscience,Biotechnology, and Biochemistry, 1994, 58(2), 334-338
【非特許文献4】天然有機化合物討論会要旨集,1993, 35th, 670-677
【非特許文献5】Recent Research Developments in Agricultural & Biological Chemistry, 1998, 2(Pt.2), 511-525
【非特許文献6】Journal of the Brazilian Chemical Society, 2003, 14(5), 722-727
【非特許文献7】Chemistry & Biodiversity,2008, 5(2), 341-345
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでに多くの農園芸用殺虫剤が報告されているが、いずれも薬剤抵抗性虫種や難防除虫種が認められ、新しい殺虫剤が望まれている。
本発明の目的は、殺虫活性を有する新規な化合物、その製造方法、生産菌株、及び、それを有効成分とする農園芸用殺虫剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、新規な農園芸用殺虫剤を鋭意探索した結果、Aspergillus sp.の生産する式(1)で示される新規なPF1364物質(以下、PF1364と称す)が農園芸用殺虫剤として有用な殺虫活性を示すことを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(1)
で表されるPF1364物質、そのエナンチオマー、それらの混合物、または、その溶媒和物に関するものである。
【0009】
また、本発明は前記の式(1)で示すPF1364物質、そのエナンチオマー、それらの混合物、または、その溶媒和物を有効成分として含んでなる農園芸用殺虫剤を提供するものである。
【0010】
さらに、本発明はAspergillus属に属しPF1364物質を生産する能力を有する微生物を培養し、その培養物からPF1364物質を採取することを特徴とする、PF1364物質の製造方法に関するものであり、Aspergillus属に属しPF1364物質を生産する能力を有する微生物が、Aspergillus ustus、または、Aspergillus pseudodeflectusであるPF1364物質の製造方法、さらには、Aspergillus属に属しPF1364物質を生産する能力を有する微生物が、Aspergillus sp. PF1364菌株であるPF1364物質の製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明の別の態様としては、前記の式(1)で示すPF1364物質を生産する能力を有するAspergillus属に属する微生物に関するものである。さらにはPF1364物質を生産する能力を有するAspergillus属に属する微生物がAspergillus ustus、または、Aspergillus pseudodeflectus、また、PF1364物質を生産する能力を有するAspergillus属に属する微生物がAspergillus sp. PF1364菌株、または、その変異株である微生物を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のPF1364、その製造方法、生産菌株、を提供することで、優れた殺虫活性かつ安全な農薬園芸用殺虫剤を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
PF1364の理化学的性状を以下に示す。なお、理化学的性状の測定方法は次のとおりである。
1.色および形状は外観から判断した。
2.マススペクトラムの測定はJMS-700質量分析器(日本電子)とZQ-4000(Waters)を用いた。
イオンの検出は、大気圧イオン化法のエレクトロンスプレー法(ES-MSと記す)、高速原子衝突法(FAB-MSと記す)で行った。
3.NMRスペクトラムの測定は、JNM-LA400(日本電子)を用いた。
4.紫外線吸収波長は島津紫外可視分光光度計UV-1800シリーズを用いて行った。
【0014】
<PF1364物質の理化学的性状>
1)色および形状:白色粉末/結晶
2)マススペクトル:(ES-MS)M/Z 617(M+H)+、(FAB-MS)M/Z 617(M+H)+ M/Z 639(M+H+Na)+
3)分子式:C31H36O13
4)1H -NMRスペクトル(400MHz、CDCl3)
δ(ppm):1.41(3H,s)、1.45(3H,s)、1.47(3H,s)、1.70〜1.94(8H,m)、2.08(3H,s)、2.29(1H,dd)、3.00(1H,dd)、4.30(1H,dd)、5.21(H,q)、5.50(1H,dd)、5.82(1H,d)、5.93(1H,s)、5.93(1H,d)、6.87(1H,m)
5)13C -NMRスペクトル(100MHz、CDCl3)
δ(ppm):11.8、12.2、13.9、14.7、16.0、20.8、23.3、27.3、35.5、37.0、45.9、61.3、64.6、65.4、67.0、75.8、77.3、83.3、85.9、89.7、93.5、125.1、127.1、137.6、140.6、163.6、164.1、166.5、168.4、174.6、191.5
6)紫外線吸収スペクトル
λmax(MeOH):218nm、202nm
【0015】
式(1)で示されるPF1364は、PF1364の生産能を有する微生物を培養し、その培養物から採取することによって得ることができる。
従って本発明のもう一つの態様として、前記式(1)で示されるPF1364生産菌を培養し、その培養物よりPF1364を採取することを特徴とするPF1364の製造方法を提供するものである。
式(1)で示されるPF1364生産菌としては、Aspergillus属の微生物が挙げられる。さらに好ましくは、Aspergillusustus、または、Aspergillus pseudodeflectus などが挙げられる。一例としては、Aspergillus sp. PF1364株が挙げられる。PF1364株は独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されており、その受領番号はFERM AP−21597である。
上記新規物質PF1364は、Aspergillus sp. PF1364株を培養し、PF1364を生産・蓄積させて、この培養物よりPF1364を採取することにより得られる。PF1364の生産菌であるAspergillus sp. PF1364株は、長崎県五島列島で採集した土壌試料から新たに分離された菌株である。次の遺伝的、及び、菌学的性質を有する。
【0016】
(1)PF1364株の遺伝情報による相同性検索結果
菌株の同定に必要な以下の2種類の遺伝情報の取得を実施した。
<Aspergillus sp. PF1364の28S rDNA-D1/D2領域の塩基配列>
GCATATCAATAAGCGGAGGAAAAGAAACCAACCGGGATTGCCTCAGTAACGGCGAGTGAAGCGGCAAGAGCTCAAATTTGAAATCTGGCCCCTCCGGGGTCCGAGTTGTAATTTGCAGAGGATGCTTCGGGTGCGGCCCCTGTCTAAGTGCCCTGGAACGGGCCATCAGAGAGGGTGAGAATCCCGTCTTGGGCAGGGTGCCCGTGCCCGTGTGAAGCTCCTTCGACGAGTCGAGTTGTTTGGGAATGCAGCTCTAAATGGGTGGTAAATTTCATCTAAAGCTAAATACCGGCCGGAGACCGATAGCGCACAAGTAGAGTGATCGAAAGATGAAAAGCACTTTGAAAAGAGAGTTAAACAGCACGTGAAATTGTTGAAaGGGAAGCGCTTGCGACCAGACTCGGCCCCGGGGTTCAGCCAGCACTCGTGCTGGTGTACTTCCCCGGGGGCGGGCCAGCGTCGGTTTGGGCGGCCGGTCAAAGGCCCCAGGAATGTGTCGCCCTCCGGGGCGTCTTATAGCCTGGGGTGCAATGCGGCCAGCCCGGACCGAGGAACGCGCTTCGGCACGGACGCTGGCGTAATGGTCGCAAACGACCCGTCTTGAAACACGGACC
【0017】
一般的に属レベルで分類が可能とされる28SリボソームRNAの遺伝情報から相同性検索を実施(国際塩基配列データベースBLAST検索による)した結果、子のう菌類の一種であるAspergillus ustus UWFP546(アクセッション番号AY216676)、およびAspergillus pseudodeflectus NRRL6135(アクセッション番号AF433123)と99.8%の相同率を示した。相同性検索で得られた上位の塩基配列をもとに作成した系統樹において、Aspergillus sp. PF1364株の28S rDNA-D1/D2領域の塩基配列はAspergillus ustus およびAspergillus pseudodeflectusと同一の系統枝を形成した。
【0018】
<Aspergillus sp. PF1364のITS-5.8S rDNA領域の塩基配列>
GGAAGTAAAAGTCGTAACAAGGTTTCCGTAGGTGAACCTGCGGAAGGATCATTACCGAGTGCAGGTCTGCCCCCGGGCAGGCCTAACCTCCCACCCGTGAATACCTGACCAACGTTGCTTCGGCGGTGCGCCCCCCCCCGGGGGTAGCCGCCGGAGACCACACCGAACCTCCTGTCTTTAGTGTTGTCTGAGCTTGATAGCAAACCTAtTAAAACTTTCAACAATGGATCTCTTGGTTCCGGCATCGATGAAGAACGCAGCGAACTGCGATAAGTAATGTGAATTGCAGAATTCAGTGAATCATCGAGTCTTTGAACGCACATTGCGCCCCCTGGCATTCCGGGGGGCATGCCTGTCCGAGCGTCATTGCTGCCCTTCAAGCCCGGCTTGTGTGTTGGGTCGTCGTCCCCCCCGGGGGACGGGCCCGAAAGGCAGCGGCGGCACCGCGTCCGGTCCTCGAGCGTATGGGGCTTTGTCACCCGCTCGATTAGGGCCGGCCGGGCGCCAGCCGGCGTCTCCAACCTTCTATTTTACCAGGtTGACCTCGGATCAGGTAGGGATACCCGCTGAACTTAAGCATATCAATAAGCGGAGGA
【0019】
一般的に種レベルで分類が可能とされるITS1−5.8S−ITS2領域のリボソームRNAの遺伝情報から相同性検索を実施(国際塩基配列データベースBLAST検索による)した結果、子のう菌類の一種であるAspergillus ustus UWFP546(アクセッション番号AF455532)、およびAspergillus pseudodeflectus NRRL6135(アクセッション番号DQ778908)と99.8%の相同率を示した。相同性検索で得られた上位の塩基配列をもとに作成した系統樹において、Aspergillus sp. PF1364株のITS-5.8S rDNA領域の塩基配列はAspergillus ustus およびAspergillus pseudodeflectusと同一の系統枝を形成した。
以上より、Aspergillus sp. PF1364株はAspergillus属Nidulantes亜属Usti節に属し、その中でもAspergillusustus またはAspergillus pseudodeflectus に近縁なAspergillus 属の一種(Aspergillus sp.)と推定された。
【0020】
(2)PF1364株の菌学的性状
(2)−1 生育状態
ポテトデキストロース寒天培地上で生育良く、25℃、7日間の培養でコロニーの直径23〜27mmに達する。淡赤色〜白色、ベルベット状、周辺部が盛り上がり、厚い菌糸層からなる。分生子は周縁部を除く全体に多数生じる。黄色の可溶性色素を産生する。裏面は暗黄色となる。
麦芽エキス寒天培地上で生育良く、25℃、7日間の培養の培養でコロニーの直径13〜18mmに達する。茶褐色から白色、ベルベット状、分生子は中心部に生じる。
オートミール寒天培地上で生育良く、25℃、7日間の培養の培養でコロニーの直径33〜36mmに達する。暗茶色、ベルベット状、平坦、薄い菌糸層からなり、分生子は全体に多数生じる。裏面は淡黄土色となる。
37℃の培養での生育も確認されている。
【0021】
(2)−2 形態的特徴
分生子柄は100〜200× 3〜4.5μm、栄養菌糸から直立し、非分岐、無隔壁で、表面は平滑〜微棘状、無色〜茶褐色に着色している。柄の先端部が膨らみ球形〜亜球形の頂のう(8.0〜13.0μm)の形成が認められ、頂のうの周縁上2/3から円筒形のメトレ(4.5〜7.5 × 1.5〜2.5μm)が形成され、さらにその先端部から分生子形成細胞である首の短いアンプル型のフィアライド(5.0〜7.5× 1.5〜2.5μm)が形成される2列アスペルジラムの構造を有する。分生子(2.5〜3.5μm)はフィアロ型で球形、1細胞、表面は微棘状〜粗面、明褐色〜茶褐色。
【0022】
以上の菌学的性状より本菌株はAspergillus属Nidulantes亜属Usti節に属すると考えられる。本節に含まれる5種のうち、PF1364株の分生子が微棘状であることから、Aspergillus ustus またはAspergillus pseudodeflectusに絞られた。
以上の得られた遺伝情報、菌学的性状に矛盾はなく、それらの結果より、本菌株をAspergillus ustus またはAspergillus pseudodeflectusに近縁なAspergillus属Nidulantes亜属Usti節に属するアスペルギルス・スピーシーズ(Aspergillus sp.)PF1364株と呼称することにした。
Aspergillus sp. PF1364株は他のカビに見られるようにその性状が変化し易い。例えば、Aspergillus sp. PF1364株に由来する突然変異株(自然発生または誘発性)、形質接合体または遺伝子組換体であっても、PF1364を生産するものはすべて本発明に使用できる。
【0023】
(3)PF1364菌株の培養方法、PF1364の精製方法
本技術の方法では、アスペルギルス・スピーシーズ(Aspergillus sp.)に属し、PF1364を生産する能力を有している菌として、例えばPF1364株を炭素源及び窒素源を含む栄養培地で培養する。
栄養源としては、従来カビの培養に利用されている公知のものが使用でき、使用する培地は天然培地または合成培地いずれでもよい。
【0024】
例えば、炭素源としては、グルコース、スクロース、水飴、デキストリン、澱粉、グリセロール、糖蜜、米、麦、コーングリッツなどの穀類等、動植物油等を使用し得る。また、窒素源としては、大豆粉、小麦胚芽、コーン・スティープ・リカー、綿実粕、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素等を使用し得る。その他必要に応じてナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、塩素、燐酸、硫酸及びその他のイオンを生成することができる無機塩類を添加することは有効である。また、菌の発育を助け、PF1364を生産するような有機物及び無機物を適当に添加することができる。さらに、培地には必要に応じて、本菌の生育やPF1364の生産を促進するビタミン類などの微量栄養素、発育促進物質、前駆物質などを適当に添加してもよい。
【0025】
培養は、静置培養、通常振とうまたは通気攪拌培養などの好気的条件下で行ってもよい。液体培養でのpHは中性付近で培養を行うのが好ましい。培養に適当な温度は25〜40℃であるが、多くの場合25〜30℃付近で培養する。PF1364の生産は、培地や培養条件によって異なるが、静置培養、振盪培養、タンク培養のいずれにおいても、通常2〜20日間でその蓄積が最高に達する。培養物中、目的とするPF1364の蓄積が最高になった時に培養を停止する。これらの培地組成、培地の液性、培養温度、攪拌速度、通気量などの培養条件は使用する菌株の種類や外部の条件などに応じて好ましい結果が得られるように適宜調節、選択されることはいうまでもない。液体培養において、発泡があるときは、シリコン油、植物油、界面活性剤などの消泡剤を適宜使用できる。このようにして得られた培養物に蓄積されるPF1364は、菌体内および培養濾液中に含有されるので、培養物の溶媒抽出を行い、PF1364を採取するのが有利である。
【0026】
培養物からの精製方法としては、例えば、培養物より適当な有機溶媒を用いて式(1)で示される化合物を抽出し、該抽出物について吸着剤を用いた吸脱着法、ゲル濾過剤を用いた分子分配法等を用いて精製することが挙げられる。より具体的には、有効成分を含む培養物を例えば酢酸エチルにより抽出し、抽出液を減圧濃縮し、該抽出物を少量のクロロホルムに溶解し、クロロホルムで平衡化したシリカゲルカラムを用いて、クロロホルム/メタノールの溶媒でクロマトグラフィーを行う。そして、活性物質を含む溶出画分を減圧濃縮し、これをメタノールに再溶解して、メタノールで平衡化したセファデックスLH−20(ファルマシアファインケミカルズ社製)によるゲル濾過、あるいはヘキサン/酢酸エチルの溶媒で平衡化したシリカゲルカラムを用いて、ヘキサン/酢酸エチルの溶媒でクロマトグラフィーを行い、得られた活性化合物群を、ODSカラムなどを用いた逆相系、あるいはシリカゲルカラムなどを用いた順相系で、高速液体クロマトグラフィーを行うなどにより目的とする化合物を得ることができる。
【0027】
本発明化合物であるPF1364の溶媒和物の溶媒とは以下のものが挙げられる。
水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、アセトン、アセトニトリル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルムなどである。
好ましい溶媒和物は、水和物、メタノール和物、エタノール和物、酢酸エチル和物などであり、さらに好ましくは水和物である。
【0028】
本発明のPF1364は、各種の害虫に対して優れた防除効果(殺虫活性)を示し、農園芸用殺虫剤として利用することができる。PF1364が防除効果を示す虫種としては、鱗翅目害虫(例えば、ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、アワヨトウ、ヨトウガ、タマナヤガ、トリコプルシア属、ヘリオティス属、ヘリコベルパ属等のヤガ類、ニカメイガ、コブノメイガ、ヨーロピアンコーンボーラー、ハイマダラノメイガ、シバツトガ、ワタノメイガ、ノシメマダラノメイガ等のメイガ類、モンシロチョウ等のシロチョウ類、アドキソフィエス属、ナシヒメシンクイ、コドリンガ等のハマキガ類、モモシンクイガ等のシンクイガ類、リオネティア属等のハモグリガ類、リマントリア属、ユープロクティス属等のドクガ類、コナガ等のスガ類、ワタアカミムシ等のキバガ類、アメリカシロヒトリ等のヒトリガ類、イガ、コイガ等のヒロズコガ類等)、半翅目害虫(例えば、モモアカアブラムシ、ワタアブラムシ等のアブラムシ類、ヒメトビウンカ、トビイロウンカ、セジロウンカ等のウンカ類、ツマグロヨコバイ等のヨコバイ類、アカヒゲホソミドリカスミカメ、チャバネアオカメムシ、ミナミアオカメムシ、ホソヘリカメムシ等のカメムシ類、オンシツコナジラミ、タバココナジラミ等のコナジラミ類、クワシロカイガラムシ、クワコナカイガラムシ等のカイガラムシ類、グンバイムシ類、キジラミ類等)、鞘翅目害虫(例えば、メイズウィービル、イネミズゾウムシ、アズキゾウムシ等のゾウムシ類、チャイロコメノゴミムシダマシ等のゴミムシダマシ類、ドウガネブイブイ、ヒメコガネ等のコガネムシ類、キスジノミハムシ、ウリハムシ、コロラドポテトハムシ、ウェスタンコーンルートワーム、サザンコーンルートワーム等のハムシ類、イネドロオイムシ、アオバアリガタハネカクシ、シンクイムシ類、ニジュウヤホシテントウ等のエピラクナ類、カミキリムシ類等)、ダニ目(例えば、ナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ、オリゴニカス属等のハダニ類、トマトサビダニ、ミカンサビダニ、チャノサビダニ等のフシダニ類、チャノホコリダニ等のホコリダニ類、コナダニ類等)、膜翅目害虫(例えば、カブラハバチ等のハバチ類等)、直翅目害虫(例えば、バッタ類等)、双翅目害虫(例えばイエバエ類、イエカ類、ハマダラカ類、ユスリカ類、クロバエ類、ニクバエ類、ヒメイエバエ類、ハナバエ類、マメハモグリバエ、トマトハモグリバエ、ナスハモグリバエ等のハモグリバエ類、ミバエ類、ノミバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、ブユ類、アブ類、サシバエ類等)、アザミウマ目害虫(例えば、ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、ハナアザミウマ、チャノキイロアザミウマ、ヒラズハナアザミウマ、カキクダアザミウマ等)、植物寄生性線虫(例えば、ネコブセンチュウ類、ネグサレセンチュウ類、シストセンチュウ類、イネシンガレセンチュウ等のアフェレンコイデス類、マツノザイセンチュウ等) などである。好ましくは、半翅目、アザミウマ目害虫である。
【0029】
本発明化合物であるPF1364を、農園芸用殺菌剤の有効成分として用いる場合は、そのまま用いても良いが、通常は適当な固体担体、液体担体、ガス状担体、界面活性剤、分散剤その他の製剤用補助剤と混合して乳剤、液剤、懸濁剤、水和剤、粉剤、粒剤、錠剤、油剤、エアゾール、フロワブル剤等の任意の剤型にして使用する。
【0030】
固体担体としては、例えばタルク、ベンナイト、クレー、カオリン、ケイソウ土、バーミキュライト、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム等があげられる。
【0031】
液体担体としては、例えばメタノール、n−ヘキサノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、n−ヘキサン、ケロシン、灯油等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリル、イソブチロニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の酸アミド類、ダイズ油、綿実油等の植物油類、ジメチルスルホキシド、水等があげられる。また、ガス担体としてはLPG、空気、窒素、炭酸ガス、ジメチルエーテル等があげられる。
【0032】
乳化、分散、展着等のための界面活性剤、分散剤としては、例えばアルキル硫酸エステル類、アルキル(アリール)スルホン酸塩類、ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル類、多価アルコールエステル類、リグニンスルホン酸塩等が用いられる。
更に、製剤の性状を改善するための補助剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース、アラビアガム、ポリエチレングリコール、ステアリン酸カルシウム等が用いられる。
上記の担体、界面活性剤、分散剤、及び補助剤は、必要に応じて各々単独で、あるいは組み合わせて用いられる。
これらの製剤中の有効成分の含有量は、乳剤で通常1−75重量%、粉剤では通常0.3−25重量%、水和剤では通常1−90重量%、粒剤では通常0.5−10重量%が適当である。
【0033】
これらの製剤は、そのまま用いても良いが、場合によっては希釈して用いる。また、これらの製剤は他の殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤、植物成長調節剤、肥料等と混合して用いることもできる。
【0034】
本明細書において、混合可能な他の有害生物防除剤とは、殺虫剤、殺菌剤、殺ダニ剤、除草剤、植物成長調節剤であり、具体的な薬剤としては、例えば、ペスティサイド マニュアル(The Pesticide Manual、第13版 The British Crop Protection Council 発行)およびシブヤインデックス(SHIBUYA INDEX 第10版、2005年、SHIBUYA INDEX RESEARCH GROUP 発行)に記載のものが挙げられる。
【0035】
混合可能な他の有害生物防除剤の望ましい例としては、殺虫剤では、アセフェート(acephate)、ジクロルボス(dichlorvos)、EPN、フェニトロチオン(fenitothion)、フェナミホス(fenamifos)、プロチオホス(prothiofos)、プロフェノホス(profenofos)、ピラクロホス(pyraclofos)、クロルピリホスメチル(chlorpyrifos-methyl)、クロルフェンビンホス(chlorfenvinphos)、デメトン(demeton)、エチオン(ethion)、マラチオン(malathion)、クマホス(coumaphos)、イソキサチオン(isoxathion)、フェンチオン(fenthion)、ダイアジノン(diazinon)、チオジカルブ(thiodicarb)、アルジカルブ(aldicarb)、オキサミル(oxamyl)、プロポキスル(propoxur)、カルバリル(carbaryl)、フェノブカルブ(fenobucarb)、エチオフェンカルブ(ethiofencarb)、フェノチオカルブ(fenothiocarb)、ピリミカーブ(pirimicarb)、カルボフラン(carbofuran)、カルボスルファン(carbosulfan)、フラチオカルブ(furathiocarb)、ヒキンカルブ(hyquincarb)、アラニカルブ(alanycarb)、メソミル(methomyl)、ベンフラカルブ(benfuracarb)、カルタップ(cartap)、チオシクラム(thiocyclam)、ベンスルタップ(bensultap)、ジコホル(dicofol)、テトラジホン(tetradifon)、アクリナトリン(acrinathrin)、ビフェントリン(bifenthrin)、シクロプロトリン(cycloprothrin)、シフルトリン(cyfluthrin)、ジメフルトリン(dimefluthrin)、エンペントリン(empenthrin)、フェンフルトリン(fenfluthrin)、フェンプロパトリン(fenpropathrin)、イミプロトリン(imiprothrin)、メトフルトリン(metofluthrin)、ペルメトリン(permethrin)、フェノトリン(phenothrin)、レスメトリン(resmethrin)、テフルトリン(tefluthrin)、テトラメトリン(tetramethrin)、トラロメトリン(tralomethrin)、トランスフルトリン(transfluthrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、デルタメトリン(deltamethrin)、シハロトリン(cyhalothrin)、フェンバレレート(fenvalerate)、フルバリネート(fluvalinate)、エトフェンプロックス(ethofenprox)、フルフェンプロックス(flufenprox)、ハルフェンプロックス(halfenprox)、シラフルオフェン(silafluofen)、シロマジン(cyromazine)、ジフルベンズロン(diflubenzuron)、テフルベンズロン(teflubenzuron)、フルシクロクスロン(flucycloxuron)、フルフェノクスロン(flufenoxuron)、ヘキサフルムロン(hexaflumuron)、ルフェヌロン(lufenuron)、ノバルロン(novaluron)、ペンフルロン(penfluron)、トリフルムロン(triflumuron)、クロルフルアズロン(chlorfluazuron)、ジアフェンチウロン(diafenthiuron)、メトプレン(methoprene)、フェノキシカルブ(fenoxycarb)、ピリプロキシフェン(pyriproxyfen)、ハロフェノジド(halofenozide)、テブフェノジド(tebufenozide)、メトキシフェノジド(methoxyfenozide)、クロマフェノジド(chromafenozide)、ジシクラニル(dicyclanil)、ブプロフェジン(buprofezin)、ヘキシチアゾクス(hexythiazox)、アミトラズ(amitraz)、クロルジメホルム(chlordimeform)、ピリダベン(pyridaben)、フェンピロキシメート(fenpyroxymate)、フルフェネリム(flufenerim)、ピリミジフェン(pyrimidifen)、テブフェンピラド(tebufenpyrad)、トルフェンピラド(tolfenpyrad)、フルアクリピリム(fluacrypyrim)、アセキノシル(acequinocyl)、シフルメトフェン(cyflumetofen)、フルベンジアミド(flubendiamide)、エチプロール(ethiprole)、フィプロニル(fipronil)、エトキサゾール(ethoxazole)、イミダクロプリド(imidacloprid)、ニテンピラム(nitenpyram)、クロチアニジン(c1othianidin)、アセタミプリド(acetamiprid)、ジノテフラン(dinotefuran)、チアクロプリド(thiacloprid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、ピメトロジン(pymetrozine)、ビフェナゼート(bifenazate)、スピロジクロフェン(spirodiclofen)、スピロメシフェン(spiromesifen)、フロニカミド(flonicamid)、クロルフェナピル(chlorfenapyr)、ピリプロキシフェン(pyriproxyfene)、インドキサカルブ(indoxacarb)、ピリダリル(pyridalyl)、スピノサド(spinosad)、アベルメクチン(avermectin)、ミルベマイシン(milbemycin)、アザジラクチン(azadirachtin)、ニコチン(nicotine)、ロテノン(rotenone)、BT剤、昆虫病原ウイルス剤、エマメクチン安息香酸塩(emamectinbenzoate)、スピネトラム(spinetoram)、ピリフルキナゾン(pyrifluquinazon)、クロルアントラニリプロール(chlorantraniliprole)、シエノピラフェン(cyenopyrafen)、スピロテトラマット(spirotetramat)、レピメクチン(lepimectin)、メタフルミゾン(metaflumizone)、ピラフルプロール(pyrafluprole)、ピリプロール(pyriprole)、ジメフルスリン(dimefluthrin)、フェナザフロル(fenazaflor)、ヒドラメチルノン(hydramethylnon)、トリアザメート(triazamate)である。
【0036】
混合可能な殺菌剤の例としては、例えば、アゾキシストルビン(azoxystrobin)、クレソキシムメチル(kresoxym-methyl)、トリフロキシストロビン(trifloxystrobin)、オリザストロビン(orysastrobin)、ピコキシストロビン(picoxystrobin)、フロキサストロビン(fuoxastrobin)などのストロビルリン系化合物、メパニピリム(mepanipyrim)、ピリメサニル(pyrimethanil)、シプロジニル(cyprodinil)のようなアニリノピリミジン系化合物、トリアジメホン(triadimefon)、ビテルタノール(bitertanol)、トリフルミゾール(triflumizole)、エタコナゾール(etaconazole)、プロピコナゾール(propiconazole)、ペンコナゾール(penconazole)、フルシラゾール(flusilazole)、ミクロブタニル(myclobutanil)、シプロコナゾール(cyproconazole)、テブコナゾール(tebuconazole)、ヘキサコナゾール(hexaconazole)、プロクロラズ(prochloraz)、シメコナゾール(simeconazole)のようなアゾール系化合物、キノメチオネート(quinomethionate)のようなキノキサリン系化合物、マンネブ(maneb)、ジネブ(zineb)、マンコゼブ(mancozeb)、ポリカーバメート(polycarbamate)、プロビネブ(propineb)のようなジチオカーバメート系化合物、ジエトフェンカルブ(diethofencarb)のようなフェニルカーバメート系化合物、クロロタロニル(chlorothalonil)、キントゼン(quintozene)のような有機塩素系化合物、ベノミル(benomyl)、チオファネートメチル(thiophanate-methyl)、カーベンダジム(carbendazole)のようなベンズイミダゾール系化合物メタラキシル(metalaxyl)、オキサジキシル(oxadixyl)、オフラセ(ofurase)、ベナラキシル(benalaxyl)、フララキシル(furalaxyl)、シプロフラン(cyprofuram)のようなフェニルアミド系化合物、ジクロフルアニド(dichlofluanid)のようなスルフェン酸系化合物、水酸化第二銅(copperhydroxide)、オキシキノリン銅(oxine-copper)のような銅系化合物、ヒドロキシイソキサゾール(hydroxyisoxazole)のようなイソキサゾール系化合物、ホセチルアルミニウム(fosetyl-aluminium)、トルクロホス−メチル(tolclofos-methyl)のような有機リン系化合物、キャプタン(captan)、カプタホール(captafol)、フォルペット(folpet)のようなN−ハロゲノチオアルキル系化合物、プロシミドン(procymidone)、イプロジオン(iprodione)、ビンクロゾリン(vinchlozolin)のようなジカルボキシイミド系化合物、フルトラニル(flutolanil)、メプロニル(mepronil)のようなベンズアニリド系化合物、フェンプロピモルフ(fenpropimorph)、ジメトモルフ(dimethomorph)のようなモルフォリン系化合物、水酸化トリフェニルスズ(fenthinhydroxide)、酢酸トリフェニルスズ(fenthin acetate)のような有機スズ系化合物、フルジオキソニル(fludioxonil)、フェンピクロニル(fenpiclonil)のようなシアノピロール系化合物、その他フサライド(fthalide)、プロベナゾール(probenazole)、アシベンゾラルSメチル(acibenzolar-S-methyl)、チアジニル(tiadinil)、イソチアニル(isotianil)、カルプロパミド(carpropamid)、ジクロシメット(diclocymet)、フェノキサニル(fenoxanil)、トリシクラゾール(tricyclazole)、ピロキロン(pyroquilon)、フェリムゾン(ferimzone)、フルアジナム(fluazinam)、シモキサニル(cymoxanil)、トリホリン(triforine)、ピリフェノックス(pyrifenox)、フェナリモル(fenarimol)、フェンプロピディン(fenpropidin)、ペンシクロン(pencycuron)、シアゾファミド(cyazofamid)、シフルフェナミド(cyflufenamid)、ボスカリド(boscalid)、ペンチオピラド(penthiopyrad)、プロキナジド(proquinazid)、キノキシフェン(quinoxyfen)、ファモキサドン(famoxadone)、フェナミドン(fenamidone)、イプロバリカルブ(iprovalicarb)、ベンチアバリカルブイソプロピル(benthiavalicarb-isopropyl)、フルオピコリド(fluopicolide)、ピリベンカルブ(pyribencarb)、カスガマイシン(kasugamycin)、またはバリダマイシン(validamycin)が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
製造例
製造例1 PF1364の製造
種培地として、でんぷん(スターチ)2.0%、ぶどう糖(グルコース)1.0%、ポリペプトン0.5%、小麦胚芽 0.6%、酵母エキス 0.3%、大豆粕 0.2%および炭酸カルシウム 0.2% の組成からなる培地(殺菌前pH7.0)を用いた。また、生産培地としては、充分水を吸収させた米に、大豆粕0.3%を加えたものを用いた。
前記の種培地20mLを分注した100mL容三角フラスコを120℃で20分間殺菌し、これにPF1364株の斜面寒天培養の1白金耳を接種後、25℃で3日間振とう培養することによって種培養液を得た。次いで、生産培地(米)4kgずつを仕込んだ315×435×98mmの培養容器(ステンレス鋼製)を120℃で20分間殺菌し、これに上記種培養液を150mLずつ接種し、よく撹拌後、25℃で14日間静置培養した。
こうして得られた培養物1kgに67%アセトン水溶液を等量加えて目的物質を抽出しアセトンを減圧下留去し酢酸エチルを加えて抽出した。酢酸エチル層を減圧濃縮して1.03gの粗抽出物を得た。これをHP−20のカラムにかけて80%アセトン溶離部で活性成分を溶離し減圧下乾燥して210mgの固形物を得た。この固形物を少量のメタノールに溶離後、TLCまたは高速液体クロマトグラフィー(CAPCELPAK・ODS(SHISEIDO)4.6φ×200mm、水-アセトニトリル)にて分画操作を行うことにより、式(1)で示すPF1364を単離することが出来る。
【0039】
製剤例
製剤例1〔粒剤〕
PF1364 3重量%
ベントナイト 40重量%
タルク 10重量%
クレー 45重量%
リグニンスルホン酸カルシウム 2重量%
上記成分を均一に粉砕混合し、水を加えてよく練合した後、造粒乾燥して粒剤を得た。
【0040】
製剤例2〔水和剤〕
PF1364 30重量%
クレー 50重量%
ホワイトカーボン 2重量%
ケイソウ土 13重量%
リグニンスルホン酸カルシウム 4重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 1重量%
上記成分を均一に混合し、粉砕して水和剤を得た。
【0041】
製剤例3〔顆粒水和剤〕
PF1364 30重量%
クレー 60重量%
デキストリン 5重量%
アルキルマレイン酸共重合物 4重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 1重量%
上記成分を均一に粉砕混合し、水を加えてよく練合した後、造粒乾燥して顆粒水和剤を得た
【0042】
製剤例4〔フロアブル剤〕
PF1364 25重量%
POEポリスチリルフェニルエーテル硫酸塩 5重量%
プロピレングリコール 6重量%
ベントナイト 1重量%
キサンタンガム1%水溶液 3重量%
PRONAL EX−300(東邦化学工業株式会社)0.05重量%
ADDAC 827(ケイ・アイ化成株式会社) 0.02重量%
水 加えて100重量%
上記配合からキサンタンガム1%水溶液と適当量の水を除いた全量を予備混合した後、湿式粉砕機にて粉砕した。その後、キサンタンガム1%水溶液と残りの水を加え100重量%としてフロアブル剤を得た。
【0043】
製剤例5〔乳剤〕
PF1364 15重量%
N,N−ジメチルホルムアミド 20重量%
ソルベッソ150(エクソンモービル有限会社) 55重量%
ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル 10重量%
上記成分を均一に混合、溶解して乳剤を得た。
【0044】
製剤例6〔粉剤〕
PF1364 2重量%
クレー 60重量%
タルク 37重量%
ステアリン酸カルシウム 1重量%
上記成分を均一に混合して粉剤を得た。
【0045】
製剤例7〔DL粉剤〕
PF1364 2重量%
DLクレー 94.5重量%
ホワイトカーボン 2重量%
ステアリン酸カルシウム 1重量%
軽質流動パラフィン 0.5重量%
上記成分を均一に混合して粉剤を得た。
【0046】
製剤例8〔微粒剤F〕
PF1364 2重量%
キャリヤー 94重量%
ホワイトカーボン 2重量%
ハイゾールSAS−296 2重量%
上記成分を均一に混合して粉剤を得た。
【0047】
試験例
試験例1 ヒメトビウンカ防除試験
水耕栽培のコムギ苗根部に、10%アセトン水にて所定濃度に調製した薬液を処理した(10μg/苗)。3日間根部より薬剤を吸収させた後、これにヒメトビウンカ2令幼虫を10頭放飼した。その後、25℃の恒温室(16時間明期一8時間暗期)に放置した。放飼3日後に虫の生死を観察し、次式に従って死虫率を算出した。2連制試験。

死虫率(%)={死亡虫数 /(生存虫数十死亡虫数)}×100
表1に示すように、PF1364の殺虫活性は、Austin類縁のDehydroaustinと比べて、極めて高いことが明らかである。
【0048】
【表1】

【0049】
試験例2 アカヒゲホソミドリカスミカメ防除試験
ポット栽培のイネ苗に、10%アセトン水にて200ppmとなるように調製した薬液を茎葉散布処理した。風乾後、これに2令幼虫を放飼した。その後、25℃の恒温室(16時間明期一8時間暗期)に放置した。放飼3日後に虫の生死を観察し、次式に従って死虫率を算出した。2連制試験。

死虫率(%)={死亡虫数 /(生存虫数十死亡虫数)}×100
PF1364は、アカヒゲホソミドリカスミカメに対して、死虫率80%以上の高い殺虫活性を示した。
【0050】
試験例3 ワタアブラムシ防除試験
ポット栽培のキュウリから直径2.0cmのリーフディスクを切り抜き、これに50%アセトン水(0.05%Tween20加用)にて200ppmとなるように調製した薬液を散布した。風乾後、これに1令幼虫を放飼した。その後、これを25℃の恒温室(16時間明期一8時間暗期)に放置した。放飼3日後に虫の生死を観察し、次式に従って死虫率を算出した。2連制試験。

死虫率(%)={死亡虫数 /(生存虫数十死亡虫数)}×100
PF1364は、ワタアブラムシに対して、死虫率80%以上の高い殺虫活性を示した。
【0051】
試験例4 ミカンキイロアザミウマ防除試験
ポット栽培のインゲンから直径2.8cmのリーフディスクを切り抜き、これに50%アセトン水(0.05%Tween20加用)にて200ppmとなるように調製した薬液を散布した。風乾後、これに1令幼虫を放飼した。その後、これを25℃の恒温室(16時間明期一8時間暗期)に放置した。放飼3日後に虫の生死を観察し、次式に従って死虫率を算出した。2連制試験。

死虫率(%)={死亡虫数 /(生存虫数十死亡虫数)}×100
PF1364は、ミカンキイロアザミウマに対して、死虫率80%以上の高い殺虫活性を示した。
【0052】
試験例5 ツマグロヨコバイ防除試験
ポット栽培のイネ苗に、10%アセトン水にて200ppmとなるように調製した薬液を茎葉散布処理した。風乾後、これに2令幼虫を放飼した。その後、25℃の恒温室(16時間明期一8時間暗期)に放置した。放飼3日後に虫の生死を観察し、次式に従って死虫率を算出した。2連制試験。

死虫率(%)={死亡虫数 /(生存虫数十死亡虫数)}×100
PF1364は、ツマグロヨコバイに対して、死虫率80%以上の高い殺虫活性を示した。
【0053】
試験例6 オンシツコナジラミ防除試験
ポット栽培のキュウリに、50%アセトン水(0.05%Tween20加用)にて100ppmとなるように調製した薬液を散布した。これにオンシツコナジラミ成虫を10頭(/1株)ずつ放飼し、2日間産卵させた。放飼2日後、成虫を除き、ポットを25℃の恒温室(16時間明期一8時間暗期)に放置した。成虫放飼15日後に中老令幼虫数を観察し、次式に従って密度指数を算出した。

密度指数=(処理区の中老令幼虫数 / 無処理区の中老令幼虫数)×100
PF1364は、オンシツコナジラミに対して、密度指数0の高い密度抑制効果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(1)
で表されるPF1364物質、そのエナンチオマー、それらの混合物、または、その溶媒和物。
【請求項2】
請求項1に記載のPF1364物質、そのエナンチオマー、それらの混合物、または、その溶媒和物を有効成分として含んでなる農園芸用殺虫剤。
【請求項3】
Aspergillus属に属しPF1364物質を生産する能力を有する微生物を培養し、その培養物からPF1364物質を採取することを特徴とする、PF1364物質の製造方法。
【請求項4】
Aspergillus属に属しPF1364物質を生産する能力を有する微生物が、Aspergillus ustus、または、Aspergillus pseudodeflectusである請求項3に記載のPF1364物質の製造方法。
【請求項5】
Aspergillus属に属しPF1364物質を生産する能力を有する微生物が、Aspergillus sp. PF1364菌株である請求項3に記載のPF1364物質の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載のPF1364物質を生産する能力を有するAspergillus属に属する微生物。
【請求項7】
Aspergillus属に属する微生物が、Aspergillus ustus、または、Aspergillus pseudodeflectusである請求項6に記載の微生物。
【請求項8】
Aspergillus属に属する微生物が、Aspergillus sp. PF1364菌株、または、その変異株である請求項6に記載の微生物。


【公開番号】特開2010−18586(P2010−18586A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182390(P2008−182390)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1.研究集会名 平成20年度日本農薬学会大会 2.主催者名 日本農薬学会 3.開催日 平成20年3月30日(日)−4月1日(火)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】