説明

PIV−5及びPIV−2のFタンパク質の突然変異タンパク質

本発明は、5型PIV (PIV-5またはPIV5) 及び2型PIV (PIV-2またはPIV2) として現在表示されるパラインフルエンザウイルス (PIV) の融合タンパク質 (Fタンパク質) の突然変異タンパク質に関する。本発明は、それらに由来する生成物、たとえば、核酸、ベクター、細胞;抗体、アプタマー、干渉RNAの融合阻害剤;骨髄腫、ハイブリドーマ;幹細胞及び前駆細胞などに関する。また本発明は、医学的及び生物工学的適用において使用するための、前記突然変異タンパク質及びそれらに由来する生成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、現在、5型PIV(PIV-5又はPIV5)及び2型PIV(PIV-2又はPIV2)として表示されている、パラインフルエンザウイルス(PIV)の融合タンパク質(Fタンパク質)の突然変異タンパク質に関する。
【0002】
本願は、それらに由来する生成物、例えば:
・核酸、ベクター、細胞;
・抗体、アプタマー、干渉RNAタイプの融合阻害剤;
・骨髄腫、ハイブリドーマ;
・幹細胞及び前駆細胞
に関する。
【0003】
本願はまた、医学的及び生物工学的な適用において使用するための、これらの突然変異タンパク質及びそれらに由来する生成物に関する。
【背景技術】
【0004】
現在、5型PIV(PIV-5又はPIV5)として表示されているパラインフルエンザウイルス(PIV)は、パラミクソウイルス科のルブラウイルス属のエンベロープに包まれたウイルスである。PIV-5は、最初にサル細胞の初代培養物から単離されたため、従来はSV5(シミアンウイルス5)という名で知られていた。しかしながら、PIV-5の自然なホストはイヌであると思われ、イヌにおいてケンネルコフ(kennel cough)として知られる咳を引き起こす。
【0005】
その後に、幾つかのPIV-5単離体が、ヒトから収集されたが動物細胞で培養されたサンプルから得られた。さらに、ヒトにおいては、何の症状又は疾病もPIV-5に付随しなかった。このように、ヒトが実際にPIV-5のホストであるかどうかという問題は今なお熱く討論されている。
【0006】
何れにせよ、PIV-5ウイルスは現在、動物ウイルスであると考えられている。
【0007】
2型PIV(PIV-2又はPIV2)として現在表示されているパラインフルエンザウイルス(PIV)もまた、パラミクソウイルス科のルブラウイルス属のエンベロープに包まれたウイルスである。
【0008】
現在、PIV-2のヒト単離体のみが同定されており(hPIV-2)、そのため、PIV-2はヒトウイルスであると考えられている。
【0009】
PIV-5及びPIV-2ウイルスは、核酸配列、タンパク質配列、組織、構造及び形態の点から互いに極めて類似している。
【0010】
ヒトパラインフルエンザウイルスの中で、PIV-2は、ヒトにおいて発見されたPIV-5に最も近いウイルスである。
【0011】
PIV-2は、PIV-5のヒト同等物であると考えることができ、少なくとも本発明者らによってそのように考えられている。
【0012】
PIV-5又はPIV-2による感染は、シンシチウムとして知られる多核性構造体の形成を導き、これは、感染したホスト由来の細胞が融合した結果である。
【0013】
PIV-5及びPIV-2ウイルスは、ウイルスエンベロープと細胞膜との融合によってホスト細胞へ入る。
【0014】
この融合は、赤血球凝集素ノイラミニダーゼ結合タンパク質(HN)及び融合タンパク質(F)の二つのウイルス糖タンパク質を関与させる。
【0015】
PIV-5及びPIV-2の融合タンパク質Fは、単純な前駆体(F0)の形態で合成され、グリコシル化ホモトリマーの形態である。PIV-5及びPIV-2の融合タンパク質Fは、ジスルフィド架橋を介して連結した二つのサブユニット(大カルボキシ末端サブユニットF1及び小アミノ末端サブユニットF2)から成る「前活性化」形態を生成するために、ホストのフューリン(furines)によるタンパク分解性の切断を必要とする。
【0016】
サブユニットF1は、疎水性融合ペプチド(FP)並びにコイルドコイル型のコンフォメーションを有する二つの7アミノ酸繰り返しドメイン(heptade repeat domains)(HR-1及びHR-2)で構成される。HNによる活性化の後、融合タンパク質は、一連のコンフォメーション変化を起こし、結果として、融合ペプチドの標的細胞膜への挿入を生じる。次に、HR-1及びHR-2ドメイン間の相互作用が生じ、ウイルスエンベロープを細胞膜に近づける(Russell et al, 2006)。これらのドメインは、三つのHR-1ドメインが三つのHR-2ドメインに非平行配向で連結された三量体コイルドコイル構造で構成された6らせん体の極めて安定な束を形成することが知られている。このコンフォメーションは、Fタンパク質の融合後形態を表す(Baker et al, 1999, Sergel-Germano et al, 2000, West et al, 2005)。
【0017】
PIV-5及びPIV-2の融合タンパク質Fは、融合の促進のために、同じウイルス型に由来するHNタンパク質を必要とする(Yao et al, 1997)。しかしながら、FとHNの間に存在する相互作用の詳細な性質は未だに正しく知られていない。
【0018】
しかし、幾つかの研究が、PIV-5及びPIV-2のある株が、融合を引き起こすためのHNの必要性において相違していることを示している。
【0019】
例として、Ito et al(1997)は、そのFタンパク質が3つのアミノ酸(残基22、443及び516)によってのみ相違している「SV5」(PIV-5)の二つの株、即ち、W3A及びWRを開示している。W3A株のFタンパク質は、自律的な(autonomous)様式で、即ち、HNタンパク質の非存在下で融合を誘導することができ、一方、WR株のFタンパク質はその能力を有していない。
【0020】
Ito et al(1997)は、WR株のFタンパク質の膜融合(fusogenic)活性が、このタンパク質の22位のアミノ酸をアミノ酸プロリンで置換することによって回復され得ることを示している。
【0021】
Ito et al(2000)は、W3A及びWR株のFタンパク質の132位のアミノ酸E及び290位のアミノ酸Aが、これらの株のFタンパク質がHNタンパク質に自律的である能力に関与し得ることを示唆している。
【0022】
Paterson et al(2000)は、W3A株のFタンパク質の22位のアミノ酸プロリンの存在、及び、WR株のFタンパク質のアミノ酸443の存在が、これらのウイルス株の膜融合能力を上昇させ得ることを示している。
【0023】
Russell et al(2003)は、W3A株のFタンパク質の残基L447及びI449を芳香族アミノ酸によって置換することにより、このウイルス株のFタンパク質の膜融合活性が上昇され得ることを示している。
【0024】
Gardner及びDutch(2007)は、野生型「SV5」(PIV-5)ウイルスのFタンパク質の突然変異I49Aが、膜融合促進効果(pro-fusogenic effect)を有するであろうことを示している。
【0025】
Gardner et al(2007)は、野生型「SV5」(PIV-5)ウイルスのFタンパク質の突然変異V402Aが、膜融合促進効果を有するであろうことを示している。
【0026】
タンパク質PIV-2に関しては、このウイルスのFタンパク質の配列に突然変異を導入し、それによって自律性及び膜融合能力を上昇させるタイプの試みを記載した従来技術文献は見当たらない。
【0027】
さらに、インフルエンザタンパク質HA1/HA2、ラブドウイルスGタンパク質、又はHIVのgp41/gpl20タンパク質などの融合能力を有するウイルスタンパク質が他に多くある。
【0028】
これらの種々のウイルスタンパク質の膜融合性能力及び自律性に関する現在の知識は、今なお極めて限られている。
【0029】
いずれにせよ、ウイルス融合タンパク質に関する現在の知識は、有効な医学的及び/又は生物工学的適用を構想するのに十分な技術的ノウハウを提供しない。
【発明の概要】
【0030】
本発明者らは、高い膜融合性であり、且つ、その融合能力における実質的な自律性を示す融合タンパク質を利用可能にすることが、幾つかの医学的及び生物工学的な状況の解決を提供し得ると考えた。
【0031】
本発明者らは、従って、例えばインフルエンザのHA1/HA2タンパク質、ラブドウイルスのGタンパク質、又はHIVのgp41/gpl20タンパク質などの、他の一連のウイルス融合タンパク質から、PIV-5及び/又はPIV-2のFタンパク質を精選して選択した。
【0032】
次いで、本発明者らは、HNタンパク質の非存在下における膜融合能力を有する突然変異Fタンパク質を構築及び生産した。
【0033】
本発明の突然変異タンパク質は、高い膜融合能力と高い自律性を有することが証明された。それらは、細胞融合を誘導するためにHNタンパク質の存在を必要とせず、また、シンシチウムの形成を必要としなかった。
【0034】
また、本発明者らは、これらの突然変異タンパク質に、Fタンパク質が天然の状態で示しているものとは異なる切断サイト、より具体的には組織特異的切断サイトを導入することが可能であることを示した。
【0035】
また、本発明者らは、本発明の突然変異タンパク質及び/又はそれらに由来するか又はそれらから得られる生成物の医学的適用(治療的、予防的、緩和的、また診断的)及び/又は生物工学的適用を提案する。
【0036】
より具体的には、本発明者らは、癌(より具体的には転移性の癌、好ましくは転移性黒色腫)又は胎盤の発達不全などの、シンシチウムの形成を誘導または増加することが望まれる疾病又は機能障害を生体内で又は生体外で治療、予防又は緩和するための、本発明の突然変異タンパク質又はそれらをコードする核酸の使用を提案する。
【0037】
本発明者らはさらに、エンベロープに包まれたウイルスの感染、アレルギー、自己免疫疾患又は移植片拒絶などの、シンシチウムの形成を阻害又はブロックすることが望まれる疾病又は機能障害を生体内で又は生体外で治療、予防又は緩和するための、抗体、組換え樹状細胞、アンチセンス、siRNA、核酸アプタマーなどの、PIV-5及び/又はPIV-2のFタンパク質をブロッキングする薬剤を提案する。
【0038】
本発明者らはさらに、シンシチウムの過剰な形成、又は反対に不十分な形成を検出するための診断手段を提案する。
【0039】
本発明者らはさらに、他の生物工学的手段、特に、シンシチウムの形成を減少させることができる活性成分をスクリーニングするための手段を提案する。
【0040】
本発明者らはさらに、本発明の突然変異タンパク質を含む、癌細胞、より具体的には骨髄腫を提案する。本発明者らはさらに、本発明の突然変異タンパク質を含むハイブリドーマを提案する。本発明の癌細胞、より具体的には骨髄腫は、ポリエチレングリコール(PEG)も、エレクトロポレーションも、他のいずれの融合誘導手段も用いることなく、別の細胞と、より具体的にはBリンパ球と融合することができる。本発明の癌細胞、より具体的には骨髄腫は、自律的な融合能力を有する。
【0041】
本発明のハイブリドーマは、ポリエチレングリコール(PEG)も、エレクトロポレーションも、他のいずれの融合誘導手段も必要とせずに、(Bリンパ球の骨髄腫への)融合によって生産され得る。本発明のハイブリドーマは、本発明の少なくとも一つの癌細胞、より具体的には少なくとも一つの骨髄腫を用いることによって実際に生産され得る。
【0042】
本発明者らはさらに、本発明の突然変異タンパク質を発現する組換え幹細胞又は前駆細胞、及び、筋繊維の生産におけるそれらの適用を提案する。
【0043】
本発明の他の側面は、下記の「詳細な説明」の項において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
ファイルされた出願の図面セットは、カラーでファイルされた。これは、特許庁でファイルを閲覧することによりアクセスすることができる。
【図1A】PIV-5のFタンパク質の基準配列 (配列番号31;WR単離体のFタンパク質の配列) 及び対応するCDS配列 (配列番号30;配列番号31のタンパク質をコードする核酸配列)。配列番号31の配列において、ボールドで下線付きの文字は、以下の位置のアミノ酸を示す: - 22 (L)、 - 49 (I)、 - 132 (E、この単離体に予め存在する突然変異)、 - 147 (T)、 - 158 (T)、 - 290 (A、この単離体に予め存在する突然変異)、 - 402 (V)、 - 443 (P、この単離体に理論的に予め存在する突然変異)、 - 447 (L)、 - 449 (I)、及び - 463 (A)。
【図1B】PIV-2のFタンパク質の基準配列 (配列番号33;Greer単離体のFタンパク質の配列) 及び対応するCDS配列 (配列番号32;配列番号33のタンパク質をコードする核酸配列)。配列番号33の配列において、ボールドで下線付きの文字は、以下の位置のアミノ酸を示す: - 24 (I)、 - 53 (I)、 - 133 (K)、 - 151 (T)、 - 162 (S)、 - 294 (I)、 - 406 (A)、 - 428 (S)、 - 439 (S)、 - 445 (I)、 - 474 (S)。
【図2A】PIV-2のFタンパク質 (配列番号33のアミノ酸8〜533) に対するPIV-5のFタンパク質 (配列番号31のアミノ酸4〜529) のアラインメント:これら2つのタンパク質の間で、タンパク質同一性は47.7%である。このアラインメントから得られるコンセンサス配列は、配列番号34として参照される。
【図2B】PIV-5のFタンパク質のアミノ酸及び突然変異に対応する、PIV-2のFタンパク質のアミノ酸及び突然変異。
【図3】PIV-5のFタンパク質の天然の切断サイト (配列番号23) の、組織特異的切断サイト、この場合、転移性腫瘍組織により特異的に発現される酵素、すなわちマトリクス金属プロテアーゼ9 (MMP-9) のサイトによる置換の図解。 MMP-9サイトのコンセンサスサイト:配列番号27の配列 (PXXhyS/Tサイト、ここで、X = 任意のアミノ酸、及びHy = 任意の疎水性アミノ酸、すなわちF、M、V、L、Iから選択される任意のアミノ酸)。 MMP-9サイトの例示的配列:配列番号28の配列、配列番号29の配列。
【図4】PIV-5のFタンパク質をコードする配列がクローニングされているプラスミドpcDNA3.1の構造。 Amp:アンピシリン耐性遺伝子 pCMV:サイトメガロウイルスプロモーター MCS:マルチプルクローニングサイト F PIV5:PIV-5のFタンパク質 BGHpolyA:ウシ成長ホルモンpolyA。
【図5A】PIV-5のFタンパク質において本発明者らにより作成された突然変異の視覚化。
【図5B】PIV-5のFタンパク質において本発明者らにより作成された突然変異の視覚化。
【図5C】PIV-5のFタンパク質において本発明者らにより作成された突然変異の視覚化。
【図5D】PIV-5のFタンパク質において本発明者らにより作成された突然変異の視覚化。
【図6A】半定量的融合テストの間に行われた顕微鏡観察の写真 (本発明者らにより作成された突然変異体の大きな一群)。
【図6B】半定量的融合テストの後に得られた融合スコアを示す図 (本発明者らにより作成された突然変異体の大きな一群)。
【図7A】半定量的融合テストの間に行われた顕微鏡観察の写真 (本発明者らにより作成された突然変異体の選択物)。
【図7B】半定量的融合テストの後に得られた融合スコアを示す図 (本発明者らにより作成された突然変異体の選択物)。
【図8A】定量的融合テストの結果(本発明者らにより作成された突然変異体の選択物)。
【図8B】定量的融合テストの結果(本発明者らにより作成された突然変異体の選択物)。
【図8C】定量的融合テストの結果(本発明者らにより作成された突然変異体の選択物)。
【図9】PIV-5 タンパク質の天然の切断サイト以外の切断サイトを有する、本発明の突然変異タンパク質について免疫螢光法を用いて作製した共焦点顕微鏡観察の図(本発明の突然変異タンパク質 Fus8M及びFus8.7M、これは、配列番号28の切断サイト MMP-9による、天然の切断サイトの置換によって、本発明の突然変異タンパク質 Fus8及びFus8.7と相違する)。
【詳細な説明】
【0045】
本願発明において、「タンパク質」という用語は、「糖タンパク質」という用語をその範囲に包含する。これは特に、実際に糖タンパク質であるFタンパク質及びHNタンパク質の場合である。
【0046】
PIV-5及びPIV-2のFタンパク質(非突然変異タンパク質):
PIV-5のFタンパク質の配列を図1Aに示す(配列番号31のタンパク質配列;配列番号30のコーディング核酸配列)。これは、サル単離体(isolate)であるWR単離体の配列である。それらの配列は、ジーンバンクデータベースから受入れ番号AB021962により入手可能である。
【0047】
本発明者らがATCCから入手し、下記の実施例に記載した突然変異タンパク質の構築及び生産に用いたWR単離体のサンプルは、しかしながら、Fタンパク質の443位において、(ジーンバンクから入手可能な配列の点から見て予想されるものとは対照的に)アミノ酸Pを有しておらず、アミノ酸Sを有している。従って、このWR単離体のFタンパク質の代替配列は、443位のアミノ酸がSでありPではないことを除いて、配列番号31の配列と同一である。簡略のために、ここではこの代替配列を「443位にSを有する配列番号31」と記載する。
【0048】
配列番号31の配列及び代替配列「443位にSを有する配列番号31」、好ましくは代替配列「443位にSを有する配列番号31」は、本特許出願の文脈においては、PIV-5のFタンパク質のための基準配列として作用する。
【0049】
しかしながら、WR単離体以外の単離体、特に、
・例えばW3A単離体などの他のサル単離体;
・他の非ヒト動物からの単離体、例えば、
○イヌ単離体、例えば、イヌ単離体CPI+、CPI−、H221、78524、Tl;
○ブタ単離体、例えば、ブタ単離体SER;
・ヒトから採取されたサンプルに由来するが、動物細胞で培養された(上記導入部分を参照)「ヒト」単離体と名付けられた単離体、例えば、MIL単離体、DEN単離体、LN単離体、MEL単離体、及びWO 02 077211において「クリプトウイルス」であると記載されている単離体;
が明らかに存在する。
【0050】
それらの種々のPIV-5単離体のFタンパク質の配列における変異は極めてわずかである。
【0051】
それらの変異の記述は、Chatziandreou et al,(2004)(その内容並びに特に表3及び該論文中でそれに付随しているコメントは、参照により本特許出願に援用される)によって与えられる。
【0052】
該論文の表3をここに再現する:
【表A−1】

【表A−2】

【表A−3】

【表A−4】

【0053】
上記の表1において、空欄は、関係するFタンパク質が左側のカラムに示されているW3A株のFタンパク質と同じアミノ酸を有することを示す。その位置がこの表に明確に収載されていないアミノ酸ももちろん、W3AのFタンパク質の配列中におけるそれらに対応するものと同じである。それらのアミノ酸自体は、WR単離体のFタンパク質についての配列中におけるそれらに対応するものと同じである(配列番号31の配列を参照)。
【0054】
それ故、配列番号35〜46の配列は、表1に示された配列番号31のアミノ酸の配列中の、それらの配列のそれぞれの置換(及び、適切であれば、示された配列番号31のアミノ酸の配列のC−末端部分における付加)の結果の配列である。
【0055】
W3A単離体のFタンパク質、並びに、上記の他の単離体のFタンパク質は、
・147位における、アミノ酸T;
・158位における、アミノ酸T;
・447位における、アミノ酸L;及び
・449位における、アミノ酸I
を有する。
【0056】
このように、W3A及びWR単離体は、他の単離体において529位を超えて伸長する細胞質伸長(cytoplasmin extension)を有さない。関係する単離体に依存して、この細胞質伸長は、2から7のアミノ酸を含有する。
【0057】
また、それらの単離体のFタンパク質の配列は、WR株のFタンパク質の配列と比較して5%未満(特には、最大で3%)で変化していることが分かる(細胞質伸長を考慮にいれない、即ち、この割合はWRのFタンパク質の長さから算出される);Chatziandreou et al.(2004)による論文の第85頁の終わりを参照されたい。
【0058】
PIV-5のFタンパク質は、従って、
・配列番号31の配列、又は前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」;又は
・この配列番号31の配列又は前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」の変異配列であって、
○配列番号31のものと同じサイズであるか、又は、配列番号31のものより最大で7アミノ酸だけ小さいサイズであるか、又は、配列番号31のものより最大で7アミノ酸だけ大きいサイズであり[前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」は、配列番号31の配列と同じサイズである]、好ましくは配列番号31のものと同じサイズを有し、又は、配列番号31のものより最大で7アミノ酸だけ大きい;及び
○配列番号31の配列又は前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」に対して、95%を超える配列同一性、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%の配列同一性を有する(この同一性は、配列番号31の配列又は適切であれば前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」の配列の長さを用いて算出される)、
として定義され得る変異配列;
から成る。
【0059】
配列番号31のPIV-5のFタンパク質についての変異配列は、特に、上記の単離体W3A、MIL、DEN、LN、MEL、クリプトウイルス、CPI+、CPI−、H221、78524、Tl及びSERのFタンパク質についての配列を含む(上記表1及びChatziandreou et al,(2004)の論文を参照されたい)。
【0060】
同様に、本願においてPIV-2 Fタンパク質のための基準として作用する配列は、図1Bに提示されたGreer株の配列である(配列番号33のタンパク質配列、配列番号32のコーディング核酸配列)。
【0061】
例えば、V98、V94 Toshiba 単離体などのGreer 単離体以外のPIV-2 単離体があることが明らかである。
【0062】
それらの他のPIV-2単離体のFタンパク質の配列は、Greer単離体のものと極めて近いが、単離体間の変異である幾つかの小さい変異を有する。
【0063】
それ故、PIV-2 Fタンパク質は、
・配列番号33の配列;又は
・配列番号33の配列の変異配列であって、
○配列番号33の配列と同じサイズであるか、又は、配列番号33の配列より最大で2アミノ酸だけ小さいサイズであるか、又は、配列番号33の配列より最大で2アミノ酸だけ大きいサイズであり、好ましくは配列番号33のものと同じサイズを有し、好ましくは配列番号33のものとサイズが同じである;及び
○配列番号33の配列に対して、95%を超える配列同一性、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%の配列同一性を有する(この同一性は、配列番号33の配列の長さを用いて算出される)
で定義される変異配列;
から成りうる。
【0064】
PIV-5(配列番号31)のFタンパク質の配列をPIV-2(配列番号33)のものにおいてアラインメントした結果のコンセンサス配列(配列番号34)は、以下の通りであり、図2Aに見出される。このコンセンサス配列は、以下のように書き換えられる。
【化1】

【0065】
シンボル「-」は、PIV-5のFタンパク質とPIV-2のFタンパク質がその位置において異なるアミノ酸を有することを示す。
【0066】
このコンセンサス配列は、以下のように形式化することもできる:
【化2】

【0067】
PIV-5のWR単離体のFタンパク質の配列は、N−末端においてアミノ酸MGTにより先行される配列番号34の配列である(図1A及び2Aを参照)。
【0068】
PIV-2のGreer単離体のFタンパク質の配列は、N−末端においてアミノ酸MHHLHPM(配列番号86)により先行され、C−末端においてアミノ酸ENPAFFSKNNHGNIYGIS(配列番号87)が続く配列番号34の配列である(図1B及び2Aを参照)。
【0069】
PIV-5及びPIV-2のFタンパク質の配列は、配列番号34の配列を含む配列であり、好ましくは配列番号34の配列を含むPIVウイルスのFタンパク質の配列であると考えられ得る。より具体的には、PIV-5及びPIV-2のFタンパク質の配列は、以下のように考えられ得る:
a)配列番号34の配列:
・N−末端において3〜7のアミノ酸によって先行され、特にはN−末端において3アミノ酸(例えばMGT)に先行され又は7アミノ酸(例えばMHHLHPM)に先行され;及び
・任意に、C−末端において18アミノ酸が続き、特にはC−末端においてアミノ酸ENPAFFSKNNHGNIYGISが続き;又は
b) 上記a)で記載された配列の変異配列であって、
・下記の何れか:
i. 配列番号31のものと同じサイズを有するか、又は、配列番号31のものより最大で7アミノ酸だけ小さいサイズであるか、又は、配列番号31のものより最大で7アミノ酸だけ大きいサイズであり;及び好ましくは配列番号31のものと同じサイズを有し、又は、配列番号31のものより最大で7アミノ酸だけ大きいサイズである;及び
ii. 配列番号31の配列又は前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」に対して、95%を超える配列同一性、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%の配列同一性を有する(この同一性は、配列番号31の配列の長さ、又は、適切であれば前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」の長さを用いて算出される);
・又は:
i. 配列番号33のものと同じサイズを有するか、又は、配列番号33のものより最大で2アミノ酸だけ小さいサイズであるか、又は、配列番号33のものより最大で2アミノ酸だけ大きいサイズであるか、好ましくは配列番号33のものと同じサイズを有する;及び
ii. 配列番号33の配列に対して、95%を超える配列同一性、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%の配列同一性を有する(この同一性は、配列番号33の配列の長さを用いて算出される);
である変異配列。
【0070】
本発明の突然変異タンパク質:
本願は、突然変異タンパク質であって、該アミノ酸配列が、
・置換:
○PIV-5 Fタンパク質の配列中の22位のアミノ酸、又は、PIV-2 Fタンパク質の配列中の24位のアミノ酸の、アミノ酸Pによる置換(PIV-5のFにおける突然変異22P;PIV-2のFにおける突然変異24P);及び
○PIV-5 Fタンパク質の配列中の132位のアミノ酸、又は、PIV-2 Fタンパク質の配列中の133位のアミノ酸の、アミノ酸Eによる置換(PIV-5のFにおける突然変異132E;PIV-2のFにおける突然変異133E);及び
○PIV-5 Fタンパク質の配列中の290位のアミノ酸、又は、PIV-2 Fタンパク質の配列中の294位のアミノ酸の、アミノ酸Aによる置換(PIV-5のFにおける突然変異290A;PIV-2のFにおける突然変異294A);及び
○PIV-5 Fタンパク質の配列中の449位のアミノ酸、又は、PIV-2 Fタンパク質の配列中の439位のアミノ酸の、アミノ酸Pによる置換(PIV-5のFにおける突然変異449P;PIV-2のFにおける突然変異439P);
・並びに、任意に:
○前記Fタンパク質の天然の(又は自然な)切断サイトの、他の酵素的切断サイトによる置換、及び/又は、前記Fタンパク質の天然の(又は自然な)切断サイト以外の酵素的切断サイトの、前記Fタンパク質への挿入;及び/又は
○前記Fタンパク質のC−末端部分であって、該タンパク質のC−末端にある最後のアミノ酸からN−末端方向に伸張するが、前記Fタンパク質のHR2ドメインを超えては伸張しないC−末端部分の欠失;
によって、PIV-5又はPIV-2ウイルスのFタンパク質の配列から導き出される(derivable)配列を含む突然変異タンパク質に関する。
【0071】
前記アミノ酸の位置は、前記Fタンパク質の前駆体形態(F0)の配列(即ち、切断前のFタンパク質の配列)に対して算出され、その位置はN−末端からC−末端へカウントされる。
【0072】
PIV-2 Fタンパク質において示された位置は、PIV-5のFタンパク質において示されたものと対応する位置である(位置の対応の表を示す図2Bを参照されたい)。
【0073】
PIV-5又はPIV-2ウイルスの前記Fタンパク質の配列は上記で定義されたとおりである。よって、それは特に配列番号34の配列(PIV-5及びPIV-2のFタンパク質のコンセンサス配列)を含むと定義され得る。
【0074】
PIV-5 Fタンパク質の突然変異タンパク質:
本発明の一つの側面に従って、本発明の突然変異タンパク質はPIV-5ウイルスのFタンパク質の配列から導き出される配列を含む。
【0075】
PIV-5の前記Fタンパク質の配列は上記で定義されたとおりである。それは特に、
・配列番号31の配列(図1Aに示されたPIV-5のWR単離体のFタンパク質の配列)、又は、前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」の配列;又は
・この配列番号31の配列又は前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」の変異配列であって、
○配列番号31のものと同じサイズであるか(即ち、529アミノ酸から成る)、又は、配列番号31のものより最大で7アミノ酸だけ大きいサイズであるか(即ち、530, 531, 532, 533, 534, 535又は536 アミノ酸から成る)、又は、配列番号31のものより最大で7アミノ酸だけ小さいサイズであり(即ち、522, 523, 524, 525, 526, 527又は528 アミノ酸から成る);及び
○配列番号31の配列又は前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」に対して、95%を超える配列同一性、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%の配列同一性を有し、この同一性は、配列番号31の配列の長さ、又は、(適切であれば)前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」の長さを用いて算出される、変異配列;
から成り得る。
【0076】
好ましくは、PIV-5の前記Fタンパク質の配列は、以下から成る:
・配列番号31の配列(図1Aに示されたPIV-5のWR単離体のFタンパク質の配列)、又は、前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」の配列;又は
・この配列番号31の配列又は前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」の変異配列であって、
○配列番号31のものと同じサイズであるか(即ち、529アミノ酸から成る)、又は、配列番号31のものより最大で7アミノ酸だけ大きいサイズである(即ち、530, 531, 532, 533, 534, 535又は536 アミノ酸から成る);及び
○配列番号31の配列又は前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」に対して、95%を超える配列同一性、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%の配列同一性を有し、この同一性は、配列番号31の配列の長さ、又は、適切であれば、前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」の長さを用いて算出される、変異配列。
【0077】
そのような変異配列の具体的な例は、本願の表1に示されているW3A、MIL、DEN、LN、MEL、クリプトウイルス、CPI+、CPI−、H221、78524、Tl及びSERの単離体の一つのFタンパク質(上記を参照)の配列、即ち、配列番号35〜46の配列の一つを含む。
【0078】
好ましくは、PIV-5の前記Fタンパク質の配列は、配列番号31の配列(図1Aに示されたPIV-5のWR単離体のFタンパク質の配列)から成り、又は、前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」の配列から成り、極めて好ましくは、前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」中の配列から成る。
【0079】
PIV-5のFタンパク質の配列から導き出される前記配列は、PIV-5の前記Fタンパク質配列に対して、上記の突然変異22P、132E、290A、449P以外の突然変異を含まなくてもよい。これは特に、配列番号65(Fus8)の配列の場合である。
【0080】
或いは、PIV-5のFタンパク質の配列から導き出される前記配列は、このFタンパク質配列から、上記の突然変異22P、132E、290A、449Pによって、及び、それらの上記突然変異22P、132E、290A、449P以外の少なくとも一つの突然変異によって、好ましくは、
・以下から選択される少なくとも一つの融合前突然変異:
○49位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○402位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○443位のアミノ酸のアミノ酸Pによる置換;
○447位のアミノ酸のアミノ酸Pによる置換;
及び/又は
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○147位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○158位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換。
【0081】
によって導き出され得る。
【0082】
好ましくは、PIV-5の前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列は、上記の突然変異22P、132E、290A、449Pによって、及び、
・以下から選択される少なくとも一つの融合前突然変異:
○49位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○402位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
及び/又は
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○147位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○158位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換。
【0083】
によって、このFタンパク質の配列から導き出される。
【0084】
前記疎水性アミノ酸は、V、I、Lから有利に選択され、好ましくはVである。
【0085】
好ましくは、PIV-5の前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列は、上記の突然変異22P、132E、290A、449Pによって、及び、
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○147位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○158位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
及び、
・少なくとも一つの他の融合後突然変異、即ち、463位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換、好ましくはV、I又はL、より好ましくはVによる置換;
によって、このFタンパク質の配列から導き出される。
【0086】
前記Fタンパク質の配列から導き出されるそのような配列は、特に、配列番号67〜79(それぞれ、Fus10、Fus10.4、Fus10.5、Fus11、Fus8.1、Fus8.2、Fus8.4、Fus8.5、Fus8.6、Fus8.7、Fus10.1、Fus10.2、Fus10.3)の配列(下記表4を参照)から選択される配列であってよい。
【0087】
好ましくは、PIV-5の前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列は、上記の突然変異22P、132E、290A、449Pによって、及び、以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○147位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○158位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
によって、このFタンパク質の配列から導き出される。
【0088】
前記Fタンパク質の配列から導き出されるそのような配列は、特に、配列番号68〜79(それぞれ、Fus10.4、Fus10.5、Fus11、Fus8.1、Fus8.2、Fus8.4、Fus8.5、Fus8.6、Fus8.7、Fus10.1、Fus10.2、Fus10.3)の配列(下記表4を参照)から選択される配列であってよい。
【0089】
好ましくは、PIV-5の前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列は、上記の突然変異22P、132E、290A、449Pによって、及び、
・以下から選択される少なくとも一つの融合前突然変異:
○49位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○402位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
及び
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○147位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○158位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
によって、このFタンパク質の配列から導き出される。
【0090】
前記Fタンパク質の配列から導き出されるそのような配列は、特に、配列番号68、69、70(それぞれ、Fus10.4、Fus10.5、Fus11)の配列(下記表4を参照)から選択される配列であってよい。
【0091】
好ましくは、PIV-5の前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列は、上記の突然変異22P、132E、290A、449Pによって、及び、二つの融合後突然変異、即ち、
○147位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○158位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
によって、このFタンパク質の配列から導き出される。
【0092】
前記Fタンパク質の配列から導き出されるそのような配列は、特に、配列番号76、78(それぞれ、Fus8.7、Fus10.2)の配列(下記表4を参照)から選択される配列であってよい。
【表B】

【0093】
表4に示した突然変異は、任意のPIV-5単離体、即ち、WR単離体又は変異体の単離体のFタンパク質に導入され得る。
【0094】
より具体的には、それらは、図1Aに示された配列番号31のFタンパク質(ジーンバンクデータベースから受入れ番号AB021962で入手可能なWRFタンパク質)の配列中に導入され得る。
【0095】
しかしながら、上記のように、本発明者らがATCCから受領し、下記の実施形態に記載した突然変異タンパク質の構築及び生産に用いたWR単離体のサンプルは、(ジーンバンクから入手可能な配列の点から見て予想されるものとは対照的に)Fタンパク質の443位のアミノ酸Pを有しておらず、アミノ酸Sを有していた。表4に示した突然変異は、従って、前記代替配列「443位にSを有する配列番号31」(配列番号65、67〜79)中に導入され得る。
【0096】
PIV-2 Fタンパク質の突然変異タンパク質:
本発明の他の側面に従って、本発明の突然変異タンパク質は、PIV-2ウイルスのFタンパク質の配列から導き出される配列を含む。
【0097】
前記PIV-2 Fタンパク質の配列は、上記で定義されたとおりである。特にそれは、
・配列番号33の配列(図1Bに示したPIV-2のGreer 単離体のFタンパク質の配列);又は
・配列番号33の配列の変異配列であって、
○配列番号33の配列と同じサイズであるか(即ち、551アミノ酸から成る)、又は、配列番号33の配列より最大で2アミノ酸だけ大きいサイズであるか(即ち、552又は553アミノ酸から成る)、又は、配列番号33の配列より最大で2アミノ酸だけ小さいサイズであり(即ち、549又は550アミノ酸から成る);及び
○配列番号33の配列に対して、95%を超える配列同一性、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%の配列同一性を有し、この同一性は、配列番号33の配列の長さを用いて算出される、変異配列;
から成り得る。
【0098】
好ましくは、PIV-2の前記Fタンパク質の配列は、
・配列番号33の配列(図1Bに示したPIV-2のGreer 単離体のFタンパク質の配列);又は
・配列番号33の配列の変異配列であって、
○配列番号33の配列と同じサイズであるか(即ち、551アミノ酸から成る)、又は、配列番号33の配列より最大で2アミノ酸だけ大きいサイズであり(即ち、552又は553アミノ酸から成る);及び
○配列番号33の配列に対して、95%を超える配列同一性、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%の配列同一性を有し、この同一性は、配列番号33の配列の長さを用いて算出される、変異配列;
からなる。
【0099】
さらに好ましくは、PIV-2の前記Fタンパク質の配列は、
・配列番号33の配列(図1Bに示したPIV-2のGreer 単離体のFタンパク質の配列);又は
・配列番号33の配列の変異配列であって、
○配列番号33の配列と同じサイズであり(即ち、551アミノ酸から成る);及び
○配列番号33の配列に対して、95%を超える配列同一性、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%の配列同一性を有し、この同一性は、配列番号33の配列の長さを用いて算出される、変異配列;
からなる。
【0100】
特に好ましくは、前記Fタンパク質の配列は、配列番号33の配列(図1Bに示したPIV-2のGreer 単離体のFタンパク質の配列)からなる。
【0101】
PIV-2のFタンパク質の配列から導き出される前記配列は、PIV-2の前記Fタンパク質配列に対して、上記の突然変異24P、133E、294A、439P以外の突然変異を含まなくて良い。これは、例えば、配列番号90の配列を含むか又は該配列からなる突然変異タンパク質の場合である。
【0102】
或いは、PIV-2のFタンパク質の配列から導き出される前記配列は、上記の突然変異24P、133E、294A、439Pによって、及び、上記の突然変異24P、133E、294A、439P以外の少なくとも一つの突然変異によって、好ましくは、
・以下から選択される少なくとも一つの融合前突然変異:
○53位アミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○406位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○428位のアミノ酸のアミノ酸Pによる置換;
○445位のアミノ酸のアミノ酸Pによる置換;
及び/又は
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○151位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○162位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
によって、このFタンパク質配列から導き出され得る。
【0103】
これは、例えば、配列番号91〜103の配列の一つを含む(又は、前記配列の一つからなる)、突然変異タンパク質の場合である。
【0104】
好ましくは、前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列は、上記の突然変異24P、133E、294A、439Pによって、及び、
・以下から選択される少なくとも一つの融合前突然変異:
○53位アミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○406位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
及び/又は
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○151位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○162位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
によって、このFタンパク質配列と相違する。
【0105】
これは、例えば、配列番号91〜103の配列の一つを含む(又は、前記配列の一つからなる)、突然変異タンパク質の場合である。
【0106】
有利には、前記疎水性アミノ酸は、V、I、Lから選択され、好ましくはVである。
【0107】
好ましくは、前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列は、上記の突然変異24P、133E、294A、439Pによって、及び、
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○151位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○162位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
及び、
・少なくとも一つの他の融合後突然変異、即ち、474位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換、好ましくは、V、I又はL、より好ましくはVによる置換;
によって、このFタンパク質の配列と相違する。
【0108】
これは、例えば、配列番号92、93、98、99、100、103の配列の一つを含む(又はそれらの配列の一つからなる)突然変異タンパク質の場合である。
【0109】
好ましくは、前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列は、上記の突然変異24P、133E、294A、439Pによって、及び、以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○151位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○162位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
によって、このFタンパク質の配列と相違する。
【0110】
これは、例えば、配列番号92、93及び94〜103の配列の一つを含む(又はそれらの配列の一つからなる)突然変異タンパク質の場合である。
【0111】
好ましくは、前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列は、上記の突然変異24P、133E、294A、439Pによって、及び、
・以下から選択される少なくとも一つの融合前突然変異:
○53位アミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○406位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
及び、
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○151位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○162位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
によって、このFタンパク質の配列と相違する。
【0112】
これは、例えば、配列番号92、93の配列の一つを含む(又はそれらの配列の一つからなる)突然変異タンパク質の場合である。
【0113】
好ましくは、前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列は、上記の突然変異24P、133E、294A、439Pによって、及び、二つの融合後突然変異、即ち、
○151位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○162位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
によって、このFタンパク質の配列と相違する。
【0114】
これは、例えば、配列番号92、93、97、100、102、103の配列の一つを含む(又はそれらの配列の一つからなる)突然変異タンパク質の場合である。
【0115】
本願は、より具体的には、図2Bに示されているわけではないが、PIV-5について上記表4に示されているものに対応するPIV-2 Fタンパク質の突然変異タンパク質を想定している:
・F PIV-5の突然変異49Aは、F PIV-2の突然変異53Aに対応する;
・F PIV-5の突然変異402Aは、F PIV-2の406Aに対応する;
・F PIV-5の突然変異147Vは、F PIV-2の151Vに対応する;
・F PIV-5の突然変異158Vは、F PIV-2の162Vに対応する;
・F PIV-5の突然変異463Vは、F PIV-2の474Vに対応する。
【表C】

【0116】
表5に示した突然変異は、任意のPIV-2単離体、即ち、Greer単離体又は変異体の単離体のFタンパク質に導入され得る。従って、より具体的には、それらは、図1Bに示した配列番号33のFタンパク質配列中に導入され得る(GreerのFタンパク質;配列番号90〜103)。
【0117】
切断サイト:
本発明に従って、本発明の突然変異タンパク質は、
・上述の突然変異;及び更に
・前記Fタンパク質の天然の切断サイトの、別の酵素的切断サイトによる置換、及び/または前記Fタンパク質の天然の切断サイト以外の酵素的切断サイトの前記Fタンパク質への挿入、好ましくは、前記Fタンパク質の天然の切断サイトの、別の酵素的切断サイトによる置換
によって、PIV-5またはPIV-2ウイルスのFタンパク質の配列から導き出される配列を含み得る。
【0118】
PIV-5またはPIV-2のFタンパク質の切断サイトは、このFタンパク質の2つのサブユニット(F1及びF2)の切断サイトである。Fタンパク質の図解のための図9を参照されたい。
【0119】
PIV-5及びPIV-2のFタンパク質の天然型において、この切断サイトは、フューリン(furines)により切断されるサイトである。
【0120】
PIV-5のFタンパク質の天然型において、この切断サイトは、配列RRRRR (配列番号23) からなる。これは、PIV-5のFタンパク質の天然型の98〜102位にある (図1A、図9を参照)。PIV-5のFタンパク質の天然(または自然)の切断サイトを含むPIV-5のFタンパク質配列の断片の例は、以下のとおりである:
IGENLETIRNQLIPTRRRRRFAGVVIGL (配列番号24)。
【0121】
PIV-2のFタンパク質の天然型において、切断サイトは、配列KTRQKR (配列番号25) からなる。これは、PIV-2のFタンパク質の天然型の101〜106位にある (図1B参照)。PIV-2のFタンパク質の天然(または自然)の切断サイトを含むPIV-2のFタンパク質配列の断片の例は、LTPLIENLSKISTVTDTKTRQKRFAGVVVGLAALGVA (配列番号26) である。
【0122】
好ましくは、天然の切断サイト以外の前記切断サイトは、組織特異的切断サイトである。
【0123】
好ましくは、天然の切断サイト以外の前記切断サイトは、一または複数の腫瘍組織によって特異的に発現される酵素の切断サイトであり、更に好ましくは、一または複数の転移性組織によって酵素特異的に発現される酵素の切断サイトである。
【0124】
一例として、天然の切断サイト以外の前記切断サイトは、金属プロテアーゼの切断サイト、たとえばマトリクス金属プロテアーゼ9 (MMP-9) の切断部位であり得る;下記の例2を参照。
【0125】
マトリクス金属プロテアーゼ9 (MMP-9) の切断サイトは、配列PXXHy S/T (配列番号27){ここでX = 任意のアミノ酸、Hy = 任意の疎水性アミノ酸 (すなわち、F, M, V, L, Iから選択される任意のアミノ酸)}を含んでいてもよいし、この配列からなっていてもよい。
【0126】
一例として、マトリクス金属プロテアーゼ9 (MMP-9) の切断サイトは、配列PRRIT (配列番号28) 及び/または配列
IGENLETIRNQLIPTPRRITFAGVVIGL (配列番号29)
を含んでいてもよいし、この配列からなっていてもよい。
【0127】
そのような切断サイトを(天然の切断サイトの置換によって)含む本発明の突然変異タンパク質の例は、Fタンパク質(PIV-5の)に導き出される配列が配列番号88又は89の配列である、突然変異タンパク質(それぞれ、Fus8M及びFus8.7M;下記の実施例2を参照)を含む。
【0128】
本発明の核酸:
また本出願は、本発明による突然変異タンパク質をコードする核酸、DNAまたはRNA (普遍的な遺伝暗号に従って、この遺伝暗号の縮重を許容する)、並びにかかる核酸の相補的核酸(同じ長さの完全に相補的な核酸)に関する。
【0129】
かかる核酸は、配列番号30の配列 (天然のPIV-5 Fタンパク質をコードする配列)、または前記代替配列「443にSを有する配列番号31」をコードする代替配列、または変異Fタンパク質をコードする変異配列、あるいは、配列番号32の配列 (天然のPIV-2 Fタンパク質をコードする配列)、または変異Fタンパク質をコードする変異配列から導き出される。
【0130】
本発明のベクター:
また本出願は、本発明による少なくとも一つの核酸を含む核酸ベクター、より具体的には、トランスフェクション、形質導入または形質転換ベクターに関する。
【0131】
有利には、かかるベクターは、発現ベクターであり得る。
【0132】
好ましくは、これは、動物細胞 (非ヒト動物細胞及び/またはヒト細胞) において、より好ましくは、
・ヒト細胞、有利には病的なヒト細胞、より具体的にはヒト腫瘍細胞、より好ましくは転移性黒色腫細胞において;または
・胎盤細胞において、
前記少なくとも一つの核酸の発現を許容するベクターである。
【0133】
かかる発現ベクターは、有利には、アデノウイルスベクターであり得る。
【0134】
前記アデノウイルスベクターは、前記核酸の発現を調節するためのエレメント、好ましくはプロモーターを含んでいてもよく、腫瘍細胞、好ましくは転移性細胞、より好ましくは転移性黒色腫細胞において前記核酸の発現を許容する。
【0135】
好ましくは、この発現は特異的である。有利には、この発現は、非腫瘍 (または非転移性) 細胞において有意な発現は存在しないが、前記腫瘍細胞または転移性細胞において前記核酸の発現を許容するように十分に特異的である。
【0136】
有利には、かかるアデノウイルスベクターは、腫瘍崩壊性アデノウイルスベクターである。
【0137】
有利には、本発明の発現ベクターは、前記核酸の発現を調節するためのエレメント、好ましくはプロモーターを含み、胎盤細胞、好ましくは不十分な膜融合性 (fusogenicity) を有する病的な胎盤細胞において前記核酸の発現を許容する、アデノウイルスベクターであり得る。
【0138】
好ましくは、この発現は特異的である。有利には、この発現は、非胎盤細胞において有意な発現は存在しないが、前記胎盤細胞において前記核酸の発現を許容するように十分に特異的である。
【0139】
本発明のベクターは、択一的または補足的に、動物細胞 (非ヒト動物細胞及び/またはヒト細胞)、より好ましくはヒト細胞、有利には病的なヒト細胞、より具体的にはヒト腫瘍細胞、好ましくは転移性ヒト細胞、より好ましくは転移性黒色腫細胞のゲノムへの、前記少なくとも一つの核酸の挿入を許容するベクターであり得る。かかるベクターは、より具体的には、腫瘍、具体的には転移性腫瘍、より具体的には転移性黒色腫の遺伝子治療のために向けられる。
【0140】
また本出願は、本発明の少なくとも一つの核酸を含み、動物細胞 (非ヒト動物細胞及び/またはヒト細胞)、より好ましくはヒト細胞、有利には胎盤細胞、好ましくはヒトの胎盤細胞のゲノムへの、前記少なくとも一つの核酸の挿入を許容する、ベクターに関する。かかるベクターは、より具体的には、不完全な胎盤の発達を伴う疾病または状態の遺伝子治療のために向けられる。
【0141】
本発明の細胞:
また本出願は、本発明による少なくとも一つの突然変異タンパク質、及び/または本発明による少なくとも一つの核酸、DNAまたはRNA、及び/または本発明による少なくとも一つのベクターを含む細胞に関する。
【0142】
かかる細胞は、ヒト細胞または非ヒト動物細胞であり得る。
【0143】
好ましくは、かかる細胞は、腫瘍細胞、好ましくは転移性細胞、より好ましくは転移性黒色腫細胞である。
【0144】
かかる細胞は、後述されるとおり、シンシチウムの形成を誘導することができる膜融合 (fusogenic) 能力を備えた細胞としての適用を見出す。
【0145】
あるいは、本発明の細胞は、ヒトまたは非ヒト動物の免疫系の非腫瘍細胞、好ましくは非腫瘍性のヒトまたは非ヒト動物の樹状細胞であってもよく、前記細胞は、本発明による少なくとも一つの突然変異タンパク質をその表面で発現している。かかる細胞は、後述されるとおり、たとえば活性な免疫処置により、細胞融合阻害剤の産生を誘導することができる薬剤としての適用を見出す。
【0146】
医学的適用 (融合促進(pro-fusion)):
本発明の突然変異タンパク質、及び/または本発明の核酸、DNAまたはRNA、及び/または本発明のベクター、及び/または本発明の細胞は、病的な細胞及び/または生物の健康に好ましくない細胞の存在及び/または増殖を伴う疾病または状態の治療及び/または予防及び/または緩和において、より具体的には、不十分な細胞の膜融合性 (cellular fusogenicity) を伴う疾病または状態の治療及び/または予防及び/または緩和において、好ましくは疾病または腫瘍形成状態、たとえば腫瘍、転移性腫瘍、有利には転移性黒色腫の治療及び/または予防及び/または緩和において使用され得る。
【0147】
かかる疾病または状態は、これらの病的な細胞及び/または好ましくない細胞の低減または除去により、治療及び/または予防及び/または緩和され得る。
【0148】
かかる細胞の表面で発現される本発明の突然変異タンパク質は、これら細胞の融合を誘導し、その結果、シンシチウムの形成を誘導し、これら細胞の破壊(または少なくとも数の減少)につながる。
【0149】
本発明の突然変異タンパク質、及び/または本発明の核酸、DNAまたはRNA、及び/または本発明のベクター、及び/または本発明の細胞は、胎盤の発達不全を伴う疾病または状態の治療及び/または予防及び/または緩和において使用され得る。
【0150】
かかる疾病または状態は、胎盤細胞の融合の誘導または刺激により、治療及び/または予防及び/または緩和され得る。
【0151】
よって、本出願はまた、本発明の少なくとも一つの突然変異タンパク質、及び/または本発明の少なくとも一つの核酸、DNAまたはRNA、及び/または本発明の少なくとも一つのベクター、及び/または本発明の細胞を含む、薬学的組成物または薬に関する。
【0152】
かかる薬学的組成物またはかかる薬は、上述のような病的な細胞及び/または生物の健康に好ましくない細胞の存在及び/または増殖を伴う疾病または状態 (例として、腫瘍、転移性腫瘍、転移性黒色腫) の治療及び/または予防及び/または緩和、あるいは不十分な細胞の膜融合性 (cellular fusogenicity) を伴う疾病または状態 (例として、胎盤の発達不全) の治療及び/または予防及び/または緩和に向けられてもよい。
【0153】
かかる薬学的組成物またはかかる薬は、少なくとも一つの薬学的及び/または生理学的に許容可能な賦形剤を更に含んでもよい。
【0154】
本発明の突然変異タンパク質 (または本発明の核酸、DNA、RNA、または発現ベクター) は、ヒト細胞または非ヒト動物細胞により発現されるように、好ましくはかかる細胞の表面で発現されるように使用され得る。
【0155】
この細胞は、病的な細胞、好ましくは腫瘍細胞、より好ましくは転移性細胞、より好ましくは転移性黒色腫細胞であってもよいし、非腫瘍細胞、たとえば健康な細胞であってもよい。
【0156】
より具体的には、ヒト患者または病気の非ヒト動物被検体から取り出された病的な細胞を、本発明の少なくとも一つの突然変異タンパク質、及び/または本発明の少なくとも一つの核酸、DNAまたはRNA、及び/または本発明の少なくとも一つの発現ベクターと、本発明の突然変異タンパク質を発現させるように接触させることにより、エクスビボで(ex vivo)(またはインビトロで) 処理してもよい。
【0157】
択一的または補足的に、患者または被検体の病的な細胞の近くに局在するが病的でない細胞を、当該処理を行うために取り出してもよい。
【0158】
このようにエクスビボで(またはインビトロで)処理された細胞は、その後、前記患者または被検体に再投与するように向けられてもよい。
【0159】
かかる細胞は、前記患者または被検体が冒されている病状、たとえば腫瘍、転移性腫瘍、転移性黒色腫の治療及び/または予防及び/または緩和のために有用である。
【0160】
あるいは、この細胞は、胎盤の細胞、より具体的には、不十分な膜融合性(fusogenicity)に罹患している胎盤の細胞であり得る。かかる細胞は、本発明の突然変異タンパク質をその表面で発現させることにより一旦処理されると、胎盤の発達不全の治療及び/または予防及び/または緩和に向けられてもよい。
【0161】
よって本出願は、より具体的には、疾病または腫瘍形成状態、好ましくは腫瘍、より好ましくは転移性腫瘍、更に好ましくは転移性黒色腫の治療及び/または予防及び/または緩和において使用するための、本発明による突然変異タンパク質、本発明による核酸、DNAまたはRNA、本発明によるベクター、本発明による細胞に関する。
【0162】
また本出願は、より具体的には、胎盤の発達不全の治療及び/または予防及び/または緩和において使用するための、本発明による突然変異タンパク質、本発明による核酸、DNAまたはRNA、本発明によるベクター、本発明による細胞に関する。
【0163】
本発明による融合阻害剤:
また本出願は、細胞融合を減少させるかまたは遮断する能力を有する生成物に関する。これら生成物は、本発明の一または複数の突然変異タンパク質の阻害剤である。
【0164】
かかる阻害剤は、過剰な細胞の膜融合性(cellular fusogenicity)を伴う疾病または状態の治療及び/または予防及び/または緩和において、好ましくはエンベロープに包まれたウイルスの感染(たとえばHIV、インフルエンザ、パラインフルエンザまたはラブドウイルスの感染)、アレルギー、自己免疫疾患または移植片拒絶の治療及び/または予防及び/または緩和において使用され得る。
【0165】
好ましくは、本発明による阻害剤は、以下のとおりである:
・本発明による突然変異タンパク質に対する抗体、またはかかる抗体のFabもしくはF(ab’)2断片;または
・本発明による少なくとも一つの突然変異タンパク質に、または本発明による核酸、DNA、RNAに、特異的に結合する核酸アプタマーまたはペプチドアプタマー;または
・本発明による少なくとも一つの突然変異タンパク質をその表面で発現する、組換え免疫系細胞、好ましくは組換え樹状細胞;または
・本発明による核酸のアンチセンス核酸;または
・19〜22のヌクレオチドを含有する二本鎖RNAを含み、かつ本発明による核酸に結合する(ハイブリダイズする)ことができる、低分子干渉(small interfering)RNA、siRNA。
【0166】
よって、本出願はまた、ヒトまたは非ヒト動物の免疫系の非腫瘍細胞、好ましくはヒトまたは非ヒト動物の樹状細胞であって、本発明による少なくとも一つの突然変異タンパク質をその表面で発現する細胞に関するとともに、過剰な細胞の膜融合性(cellular fusogenicity)を伴う疾病または状態の治療及び/または予防及び/または緩和における、好ましくはエンベロープに包まれたウイルスの感染(たとえばHIV、インフルエンザ、パラインフルエンザまたはラブドウイルスの感染)、アレルギー、自己免疫疾患または移植片拒絶の治療及び/または予防及び/または緩和における、この細胞の使用に関する。
【0167】
また本出願は、本発明による突然変異タンパク質または本発明の幾つかの突然変異タンパク質に対する抗体に関する。好ましくは、この抗体は、本発明の一つ又は複数の前記突然変異タンパク質に特異的な抗体である。有利には、この抗体はモノクローナル抗体である。本発明の阻害剤は、かかる抗体の保存された断片、たとえばFabまたはF(ab')2断片であり得る。
【0168】
かかる抗体または抗体断片は、たとえば、それを必要とする患者または被検体に前記抗体または抗体断片を投与することにより、細胞融合メカニズムを遮断または阻害するように向けられてもよい。
【0169】
択一的または補足的に、本発明の突然変異タンパク質は、このタンパク質に対して活性な免疫化を誘導するために、すなわち、前記患者または被検体による抗−突然変異タンパク質抗体の産生を誘導するために、前記患者または被検体にそれ自体投与するように向けられてもよい。必要な場合または所望の場合、一または複数のワクチンアジュバントが、前記突然変異タンパク質の一または複数と一緒に、または異なる時間で投与されてもよい。
【0170】
よって、本出願はまた、免疫原性剤としての本発明の少なくとも一つの突然変異タンパク質、及び有利には少なくとも一つの免疫化アジュバントを含む、治療用及び/または予防用及び/または緩和用ワクチンに関する。かかるワクチンは、過剰な細胞の膜融合性(cellular fusogenicity)を伴う疾病または状態の治療及び/または予防及び/または緩和のため、好ましくは、エンベロープに包まれたウイルスの感染(たとえば、HIV、インフルエンザ、パラインフルエンザまたはラブドウイルスの感染)、アレルギー、自己免疫疾患または移植片拒絶の治療及び/または予防及び/または緩和のために向けられてもよい。
【0171】
また本出願は、以下のものに関する:
・本発明の少なくとも一つの突然変異タンパク質に、または本発明の核酸、DNA、RNAに、特異的に結合する核酸アプタマーまたはペプチドアプタマー;
・本発明の少なくとも一つの突然変異タンパク質をその表面で発現する、組換え免疫系細胞、好ましくは組換え樹状細胞;
・本発明の核酸のアンチセンス核酸;
・19〜22のヌクレオチドを含有する二本鎖RNAを含み、かつ本発明の核酸に結合する(ハイブリダイズする)ことができ、有利には前記核酸の転写を遮断または阻害することができる、低分子干渉(small interfering)RNA、siRNA。
【0172】
また、かかる生成物は、本発明の阻害剤でもある。よって、これらは、上述のような過剰な細胞の膜融合性(cellular fusogenicity)を伴う疾病または状態の治療及び/または予防及び/または緩和のために向けられてもよい。より具体的には、これらは、Fタンパク質の発現または過剰発現について少なくとも一つの遺伝子を伴う疾病または状態の治療及び/または予防及び/または緩和のために向けられる。
【0173】
よって、本出願はまた、本発明の少なくとも一つの阻害剤を含む薬学的組成物または薬に関する。
【0174】
かかる薬学的組成物または薬は、とりわけ、上述のような過剰な細胞の膜融合性(cellular fusogenicity)を伴う疾病または状態の治療及び/または予防及び/または緩和のために向けられてもよい。
【0175】
かかる薬学的組成物または薬は、少なくとも一つの薬学的及び/または生理学的に許容可能な賦形剤を更に含んでもよい。
【0176】
本出願は、より具体的には、過剰な細胞の膜融合性(cellular fusogenicity)を伴う疾病または状態の治療及び/または予防及び/または緩和において使用するための本発明による阻害剤であって、前記疾病または状態が、エンベロープに包まれたウイルスの感染(好ましくは、HIV及び/またはインフルエンザ及び/またはパラインフルエンザ及び/またはラブドウイルスの感染)、アレルギー、自己免疫疾患または移植片拒絶である阻害剤に関する。
【0177】
本出願は、より具体的には、過剰な細胞の膜融合性(cellular fusogenicity)を伴う疾病または状態の治療及び/または予防及び/または緩和において免疫原性剤として使用するための本発明による突然変異タンパク質であって、前記疾病または状態が、エンベロープに包まれたウイルスの感染(好ましくは、HIV及び/またはインフルエンザ及び/またはパラインフルエンザ及び/またはラブドウイルスの感染)、アレルギー、自己免疫疾患または移植片拒絶である突然変異タンパク質に関する。
【0178】
本出願は、より具体的には、ワクチンまたはワクチン組成物、より具体的には、過剰な細胞の膜融合性(cellular fusogenicity)を伴う疾病または状態の治療及び/または予防及び/または緩和のために向けられたワクチンまたはワクチン組成物であって、前記疾病または状態が、エンベロープに包まれたウイルスの感染(好ましくは、HIV及び/またはインフルエンザ及び/またはパラインフルエンザ及び/またはラブドウイルスの感染)、アレルギー、自己免疫疾患または移植片拒絶であるワクチンまたはワクチン組成物に関する。かかるワクチンまたはワクチン組成物は、少なくとも本発明による突然変異タンパク質を含み、少なくとも一つの生理学的に許容可能なアジュバントを任意に含む。
【0179】
診断及び予後の適用:
また本出願は、
・不十分なシンシチウムの形成、たとえば、腫瘍、転移性腫瘍、転移性黒色腫または胎盤の発達不全;あるいは対照的に
・過剰なシンシチウムの形成、たとえば、エンベロープに包まれたウイルスの感染(好ましくは、HIV及び/またはインフルエンザ及び/またはパラインフルエンザ及び/またはラブドウイルスの感染)、アレルギー、自己免疫疾患または移植片拒絶
を伴う疾病または状態の診断または予後のための方法、より具体的にはインビトロでの方法に関する。
【0180】
本発明の診断または予後の方法は、たとえば、診断または予後を受ける患者または被検体から採取された生物学的サンプルなどの生物学的サンプルにおいて、本発明による少なくとも一つの突然変異タンパク質または本発明による少なくとも一つの核酸を検出することを含む。
【0181】
この検出は、たとえば、前記サンプル中に含有されるタンパク質または核酸の配列を決定することにより行ってもよい。
【0182】
この検出は、たとえば、前記少なくとも一つの突然変異タンパク質に結合する抗体、ペプチドアプタマーまたはオリゴヌクレオチドアプタマーを用いて、より具体的には、本発明の抗体、ペプチドアプタマーまたはオリゴヌクレオチドアプタマーを用いて、本発明の前記少なくとも一つの突然変異タンパク質を検出することにより行ってもよい。
【0183】
この検出は、たとえば、前記少なくとも一つの核酸に結合する核酸、ペプチドアプタマーまたはオリゴヌクレオチドアプタマーを用いて、より具体的には、本発明の核酸に相補的な核酸、本発明のペプチドアプタマーまたはオリゴヌクレオチドアプタマーを用いて、本発明の前記少なくとも一つの核酸を検出することにより行ってもよい。
【0184】
また本出願は、不十分なシンシチウムの形成または対照的に過剰なシンシチウムの形成の診断または予後のための方法で使用するための、前記抗体、ペプチドアプタマー、オリゴヌクレオチドアプタマー、相補的な核酸に関する。
【0185】
生物工学的適用 (スクリーニング):
また本出願は、シンシチウムの形成を減少させるかまたは遮断することができる化合物をスクリーニングするための方法、より具体的にはインビトロでの方法に関する。本発明の方法は、(たとえば、候補化合物の存在下で達成される融合度を、その非存在下で達成される融合度と比較することにより) 候補化合物が前記細胞の融合を減少させるかまたは遮断するかどうかを決定するために、候補化合物を、本発明の少なくとも一つの突然変異タンパク質を発現する細胞と接触させることを含む。
【0186】
かかる化合物は、過剰な細胞の膜融合性(cellular fusogenicity)を伴う疾病または状態、たとえば、エンベロープに包まれたウイルスの感染、アレルギー、自己免疫疾患または移植片拒絶の治療及び/または予防及び/または緩和のための有効成分候補である。
【0187】
生物工学的適用 (骨髄腫、ハイブリドーマ):
また本出願は、本発明による少なくとも一つの突然変異タンパク質を含む、好ましくは少なくとも一つのかかる突然変異タンパク質をその表面に含む、及び/または本発明による少なくとも一つの核酸を含む、及び/または本発明による少なくとも一つのベクター、より具体的には本発明による発現ベクターを含む、腫瘍細胞、より具体的には骨髄腫に関する。
【0188】
かかる腫瘍細胞、より具体的にはかかる骨髄腫は、とりわけ、(この腫瘍細胞とBリンパ球との融合による)ハイブリドーマの産生、より具体的には抗体産生ハイブリドーマの産生に使用され得る。
【0189】
また本出願は、本発明による少なくとも一つの突然変異タンパク質、及び/または本発明による少なくとも一つの核酸、及び/または本発明による少なくとも一つのベクターを含む、ハイブリドーマ、より具体的には抗体産生ハイブリドーマに関する。かかるハイブリドーマは、とりわけ、本発明による少なくとも一つの突然変異タンパク質を含む、好ましくは少なくとも一つのかかる突然変異タンパク質をその表面に含む、及び/または本発明による少なくとも一つの核酸を含む、及び/または本発明による少なくとも一つのベクターを含む、少なくとも一つの腫瘍細胞、より具体的には骨髄腫と、少なくとも一つのBリンパ球を接触させることにより産生され得る。かかる腫瘍細胞は、固有の膜融合 (fusogenic) 能力を有する:よって、かかる腫瘍細胞は、従来技術においてハイブリドーマの産生を目的として腫瘍細胞とBリンパ球との融合を誘導するために慣用的に使用されるポリエチレングリコール(PEG)またはエレクトロポレーション法または任意の他の方法を使用することなく、前記少なくとも一つのBリンパ球と融合することができる。
【0190】
生物工学的適用 (幹細胞または前駆細胞):
また本出願は、本発明による少なくとも一つの突然変異タンパク質を含む、好ましくは少なくとも一つのかかる突然変異タンパク質をその表面に含む、及び/または本発明による少なくとも一つの核酸を含む、及び/または本発明による少なくとも一つのベクター、より具体的には本発明による発現ベクターを含む、幹細胞または前駆細胞に関する。
【0191】
かかる幹細胞または前駆細胞は、固有の膜融合 (fusogenic) 能力を有する:よって、かかる幹細胞または前駆細胞は、融合によりシンシチウムを形成することができる。
【0192】
この幹細胞または前駆細胞が、筋細胞への分化能力を有している場合、(細胞の融合及びシンシチウムの形成により) 筋繊維を形成することができる。
【0193】
よって、本出願はまた、筋繊維の産生、たとえばインビトロでの産生において使用するための、かかる幹細胞または前駆細胞に関する。
【0194】
この産生は、たとえば、複数の前記幹細胞または前駆細胞を、互いに接触させて、幹細胞、または適切な場合には前駆細胞の増殖を許容する培地上または培地中に置くことにより行ってもよく、その結果、前記幹細胞または前駆細胞の膜融合(fusogenic)能力が発揮され、これによりシンシチウム、より具体的には筋繊維の形成を誘導することができる。幹細胞、または適切な場合には前駆細胞の増殖を許容し、かつ筋細胞、より具体的には筋繊維への可能な分化能力の発現に適している培地の例は、当業者に公知であり;一例は、MCDB培地である。
【0195】
幹細胞または前駆細胞の、筋細胞、より具体的には筋繊維への分化を観察することを許容する細胞マーカーの例は、当業者に公知であり、たとえばCD56である。
【0196】
本出願において、“含む(comprising)”の用語は、“包含する(including)”または“含有する(containing)”と同義であり、明示的に指摘されない一または複数の追加のエレメント、成分または工程の存在を除外しないオープンな用語であり、一方、“からなる(consisting)”または“構成される(constituted)”の用語は、明示的に開示されない任意の他の追加のエレメント、工程または成分の存在を除外するクローズした用語である。“から本質的になる(essentially consisting of)”または“により本質的に構成される(essentially constituted by)”の用語は、追加のエレメント、成分または工程が、発明に基づいて特徴に重大な影響を及ぼさない限り、一または複数の追加のエレメント、成分または工程の存在を除外しない部分的にオープンな用語である。
【0197】
その結果、“含む(comprising)”(または“comprise(s)”)の用語は、“からなる(consisting of)”、“により構成される(constituted by)”の用語、並びに“から本質的になる(essentially consisting of)”及び“により本質的に構成される(essentially constituted by)”の用語を包含する。
【0198】
本出願で引用される文献及び参照文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0199】
以下の実施例は、例示のために純粋に記載され、本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0200】
例1:突然変異体の構築及びそれらの膜融合性(fusogenicity)の測定
材料及び方法及び:
細胞及びウイルス
細胞株LLC-MK2 (Macaca mulatta腎臓細胞株) は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション (American Type Culture Collection (ATCC)) から受入れ番号CCL-7で入手可能である。
【0201】
細胞株A549 (ヒト肺癌細胞株) は、ATCCから受入れ番号CCL-185で入手可能である。
【0202】
組換え株HuH7-Tat (ヒト肝癌細胞株) は、HIV-1 TatによるHuH-7株の細胞の形質導入により入手可能である。
【0203】
HuH-7株は、ジャパニーズ・コレクション・オブ・リサーチ・バイオリソース(Japanese Collection of Research Bioresources)からリファレンス番号JCRB0403で入手可能である。
【0204】
HIV-TatによるHuH-7株の形質導入は、レトロウイルスベクターLXSN-tatを用いて行い、Tatプラスミドを形質導入した。
【0205】
細胞LLC-MK2、A549及びHuH7-Tatは、5%ウシ胎仔血清を含むEMEM (イーグル最小必須培地) またはDMEM (ダルベッコ/フォークト改変イーグル最小必須培地) で培養した。
【0206】
PIV-5 WR株は、ATCC (ATCC番号VR-288) から入手し、Terrier et al, 2008に記載されるとおりLLC-MK2細胞上で培養した。
【0207】
RNAの抽出、RT-PCR及びクローニング
ウイルスRNAは、PIV-5によるLLC-MK2細胞の感染から得られた上清から、Absolutely RNA(登録商標) Microprep Kit (Stratagene, USA) を用いて、供給業者により提供される説明書に従って抽出した。逆転写は、pd(N)6ランダムヘキサマー (Amersham Biosciences, GB) 及び鳥類骨髄芽球症ウイルスAMVの逆転写酵素 (Reverse Transcriptase; RT) (Promega から入手可能なAMV-RT逆転写酵素) を用いて行った。
【0208】
PIV-5 Fの全配列の増幅は、データベースから入手可能なPIV-5のヌクレオチド配列 (GenBank受入れ番号AB021962) から設計されたプライマー対を用いて行った。
【0209】
使用されたプライマー対は、以下のとおりであった:
センスプライマー (配列番号 1):
5' TTGCGGCCGCATGGGTACTATAA 3'
アンチセンスプライマー (配列番号 2):
5' CCGCTCGAGTTATGATAAACAAAATTCTCC 3'。
【0210】
増幅は、以下のプロトコールに従って行った:95℃で2 min、その後39サイクル (95℃/30s、55℃/1 min、72℃/3 min)、及び72℃で10 minの最後の伸長。
【0211】
PIV-5 Fの相補的DNAは、マルチプルクローニングサイトにあるNotI及びXhoIサイトで、発現プラスミドpcDNA3.1(+) にクローニングした (図4参照)。
【0212】
PCR産物及びプラスミドは、それぞれ、Nucleospin(登録商標) ExtractIIキット及びNucleospin(登録商標) プラスミドキット (Macherey Nagel, Germany) を用いて、供給業者により提供される説明書に従って精製した。
【0213】
この研究における配列決定のシリーズは、MWG Biotech (Ebersberg, Germany) により実行した。
【0214】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いた指定突然変異誘発
PIV-5のFタンパク質の突然変異タンパク質は、PIV-5 F融合タンパク質をコードするプラスミドpcDNA3.1において、指定突然変異により産生した。突然変異は、供給業者により提供されるプロトコール (Stratageneから入手可能なQuickChange(登録商標) Site-Directed Mutagenesis System) に従って、相補的プライマーを用いたPCRにより作成した。使用されたプライマーのリストは、下記表2に示す。プラスミドのアセンブリは、配列決定により確認した。
【表D−1】

【表D−2】

【0215】
突然変異443Pは、理論的には、WR単離体のFタンパク質に予め存在する。しかし、発明者らがATCCから受領したこの単離体のサンプルに、この突然変異は実際に存在しなかった。このため、発明者らはそれを導入しなければならなかった。
【0216】
細胞のトランスフェクション
試薬ExGen500 (Fermentas) を用いて、供給業者により提供される説明書に従って、細胞をプラスミドによりトランスフェクトした。1〜3マイクログラムのプラスミドDNAを、48hの間、細胞 (70〜80% コンフルエンス) に添加した。トランスフェクションの効率は、緑色蛍光タンパク質GFPをコードするプラスミドを用いて評価した。
【0217】
共焦点顕微鏡による免疫蛍光法
トランスフェクトされた細胞は、リン酸緩衝生理食塩水PBS中のパラホルムアルデヒド (1% v/v) を用いて固定し、その後、2回洗浄した。PBSで1/10に希釈された、PIV-5 Fタンパク質に対するモノクローナル抗体の存在下で、この場合、Randall et al, 1987に記載されるモノクローナル抗体F1aの存在下で、細胞マットを3hの間インキュベートした。モノクローナル抗体F1aは、PIV-5の単離体 (この場合、LN単離体) に対するマウスの免疫処置、ハイブリドーマの調製、及び特異的な抗F抗体の選択により得た。
【0218】
その後、細胞マットを洗浄し、PBSで1/200に希釈された抗マウスIgG-Alexa Fluor(登録商標) 633二次抗体 (Invitrogen) とともに30分間インキュベートした。細胞を、すすいだ後、1/1000のDapi (4',6'-ジアミジノ-2-フェニルインドール) とともに、リン酸緩衝生理食塩水PBS中1/200の、Alexa Fluor(登録商標) 488に結合した小麦胚凝集素 (WGA) (Invitrogenから入手可能なWGA-Alexa Fluor(登録商標)) と混合するか、または混合せずに、10分間インキュベートした。TCS SP2共焦点顕微鏡 (Leica) を用いて、画像を取得した。
【0219】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリーは、文献 (Horvat and Lamb 1992) に記載されるとおり行った。A549細胞を、種々のFusをコードするプラスミドによりトランスフェクトし、氷上に置いた。細胞マットを、1 %のアジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水PBSですすいだ。その後、そのマットに、抗PIV-5 Fタンパク質モノクローナル抗体 (この場合、モノクローナル抗体F1a) を添加し (1% ウシ胎仔血清を含む1/500 PBSリン酸緩衝液)、4℃で30分間インキュベートした。その後、そのマットをすすぎ、1/1000のAlexa Fluor(登録商標) 488 に結合した抗マウス二次抗体 (Invitrogen) の存在下でインキュベートした。細胞を、すすいだ後、500μLのPBSリン酸緩衝液、EDTA (エチレンジアミンジアミン四酢酸) 中0.5mMを用いて穏やかに引き離した。細胞を、500μLの1 %パラホルムアルデヒド溶液を含有する専用のフローサイトメトリー管に移した。5000細胞の蛍光強度を、蛍光活性化細胞ソーティングFACSを用いて、この場合、Becton DickinsonからのFACSVantageTM SEフローを用いて測定した。
【0220】
半定量的融合テスト (シンシチウムのサイズ及び核の数の関数として確立した融合スコア)
種々のFus発現プラスミドによりトランスフェクトし、免疫蛍光法で観察したマットに、半定量的分析を行った。この分析は、以下の基準を用いて突然変異体の各々について融合スコアを決定することから構成される:
・融合または融合なし (単純な集合)、-/+で表示;
・シンシチウムのサイズ、1〜5のスケールで表示;
・核の数、1〜5のスケールで表示。
【0221】
これにより計算されるスコアを、2つの点数を足すことにより得た:このため、最大の理論的点数は、10であり、最大数の核をもつ最大サイズのシンシチウムに相当する。
【0222】
定量的融合テスト (ルシフェラーゼ活性の測定)
細胞−細胞融合を定量するために、“ドナー”A549細胞 (6ウェルプレートのウェルあたり2.5百万の細胞) を、種々のFus突然変異タンパク質をコードする2μgのプラスミドpcDNA3.1、並びに長い末端反復配列LTRに依存してルシフェラーゼを発現する50 ngのプラスミドで、同時トランスフェクトした (Lavillette et al, 2007)。
【0223】
ネガティブコントロールは、2μgの空のプラスミドpcDNA3.1で同時トランスフェクトした細胞により提供した。
【0224】
トランスフェクションから12時間後、“ドナー”細胞を、リン酸緩衝液 (PBS)、EDTA中0.5 mMを用いて引き離し、カウントした後に、新たな6ウェルプレート(105細胞/ウェル)に置き換えた。“インジケーター”HuH7-Tat細胞 (4 × 105細胞/ウェル) を、PBS-EDTA緩衝液を用いて引き離し、その後、すすいで“ドナー”細胞に添加した。
【0225】
ルシフェラーゼ活性は、共培養 (co-culture) の72時間後に、ルシフェラーゼ活性測定キットを用いて、この場合、PromegaからのLuciferase Assay System (E1500) キットを用いて、供給業者により提供される指示書に従って測定した。
【0226】
結果:
本発明者らにより構築され産生された突然変異タンパク質は、上記表3に示される。
【0227】
この表3において、本発明者らは、種々の突然変異を、それらが属する機能に従ってまとめた。すなわち、
・HNに対する自律性の機能への関与: PIV-5のFタンパク質の22、132及び290位;
・融合前の機能への関与:PIV-5のFタンパク質の49、402、443、447及び449位;
・融合後の機能への関与:PIV-5のFタンパク質の147、158及び463位。
【0228】
図5A、5B、5C及び5Dは、表3の突然変異の位置を図示する。
【0229】
このように、本発明者らは、突然変異タンパク質を構築し、産生し、試験した。
【表E−1】

【表E−2】

【表E−3】

【表E−4】

【表E−5】

【表E−6】

【表E−7】

【0230】
これら突然変異タンパク質の構築及び産生の間に使用されたPIV-5のFタンパク質配列は、WR単離体の代替Fタンパク質配列であった。この代替配列は、443位のアミノ酸がPでなくSであることを除いて、配列番号31の配列 (Genbank配列) と同じであった (代替配列「443にSを有する配列番号31」)。
【0231】
このため、配列番号47〜79の配列は、前述の代替配列「443にSを有する配列番号31」内におけるアミノ酸の置換から得られる配列であり、このアミノ酸の置換は、上記表3に、これら配列の各々について示される。
【0232】
半定量的融合テストの間に顕微鏡下で行われた観察の写真を、図6Aに示す。
【0233】
半定量的融合テストの最後に得られたスコアを、図6Bに示す。
【0234】
突然変異タンパク質Fus6、Fus 6.1、Fus 6.2及びFus 6.3は、多くの細胞の凝集という結果につながったが、細胞融合という結果につながらなかった。
【0235】
突然変異タンパク質Fus 3.3、Fus 3.1、Fus2、Fus 1.1、Fus 1.2及びFus 1は、ゼロの融合スコアを得た。
【0236】
突然変異タンパク質Fus 9、Fus7、Fus 3、Fus 5及びFus 4は、低い融合スコアを得た。
【0237】
Fus 4の融合スコアを超えて、有意な融合スコアを有する一連の突然変異タンパク質が分離した。すなわち、
・自律性の3つの突然変異及び融合前の突然変異449Pを共通に含む突然変異タンパク質のグループ、たとえば、突然変異タンパク質Fus8、Fus10、Fus10.4、Fus10.5、Fus11、Fus8.l、Fus8.2、Fus8.4、Fus8.5、Fus8.6、Fus8.7、Fus10.l、Fus10.2、Fus10.3;及び
・自律性の3つの突然変異、融合前の突然変異447P、及び少なくとも一つの融合後の突然変異 (147Vまたは158V) を共通に含む突然変異タンパク質のグループ、たとえば、Fus7.1、Fus7.2またはFus7.3。
【0238】
図7A及び7Bは、テストされた突然変異タンパク質の選択物について、顕微鏡観察の写真を示し、融合スコアを示す。すなわち、自律性の3つの突然変異と融合前の突然変異449Pを共通に含む突然変異タンパク質のグループ、例えば、突然変異タンパク質Fus7.1、Fus7Fus8、Fus10、Fus10.4、Fus10.5、Fus11、Fus8.l、Fus8.2及びFus7、Fus8.4、Fus8.5、Fus8.6、Fus8.7、Fus10.l、Fus10.2、Fus10.3。
【0239】
図8A、8B及び8Cは、「定量的」融合テスト(ルシフェラーゼによるテスト)を用いて得られた結果の図を示す。
【0240】
図8A及び8Cは、自律性の3つの突然変異と融合前の突然変異449Pを共通に含む突然変異タンパク質、例えば突然変異タンパク質Fus8が、タンパク質Fus3よりも、天然の状況の模倣として、糖タンパクHNを伴っている場合でさえ、高い膜融合能力を有することを示す(実際に、3倍以上高い)(図8A)。
【0241】
突然変異タンパク質Fus8.7は、突然変異タンパク質Fus8より高い膜融合能力を有し(ほぼ2倍高い)、それは、Fus3が天然の状況の模倣として糖タンパクHNを伴っている場合でさえ、タンパク質Fus3より高い(6倍以上高い)(図8C)。
【0242】
図8Bは、自律性の3つの突然変異と融合前の突然変異449Pを共通に含む突然変異タンパク質のグループの膜融合能力が、得られた表面発現の程度との単純な関連によるものではない事実を示している。実際に、Fus8の発現は、Fus3の発現の半分未満であった(図8B)。
【0243】
例2:転移性腫瘍組織により特異的に発現される酵素のサイトによる天然の切断サイトの置換
本発明の突然変異タンパク質、及びとりわけ上記表1に記載されるものは、天然のFタンパク質の天然の切断サイトの置換により、たとえば、それを組織特異的な切断サイトで置換することにより、予め改変された。
【0244】
例として、ここで提示される本発明の突然変異タンパク質は、天然の切断サイトが転移性腫瘍組織により特異的に発現される酵素、すなわちマトリクス金属プロテアーゼ9 (MMP-9) のサイトにより置換されたものである。
【0245】
図9は、PIV-5 Fタンパク質の突然変異タンパク質について実行された置換を示す。
【0246】
PIV-5のFタンパク質の天然の切断サイトは、以下のとおりである:
RRRRR (配列番号 23)。
【0247】
PIV-5のFタンパク質の天然の切断サイトを含むFタンパク質配列の断片の例は、以下のとおりである:
IGENLETIRNQLIPTRRRRRFAGVVIGL (配列番号 24)。
【0248】
MMP-9切断サイトのコンセンサス配列は、以下のとおりである:
PXXHyS/T (配列番号 27)
ここでX = 任意のアミノ酸、及び
ここでHy = 任意の疎水性アミノ酸 (すなわち、F、M、V、L、Iから選択される任意のアミノ酸)。
【0249】
MMP-9切断サイトの例は、以下のとおりである:
PRRIT (配列番号 28)。
【0250】
MMP-9切断サイトを含む本発明の突然変異Fタンパク質配列の断片の例は、以下のとおりである:
IGENLETIRNQLIPTPRRITFAGVVIGL (配列番号 29)。
【0251】
材料及び方法:
PIV-5のFタンパク質の突然変異タンパク質は、上記例1に記載されるとおり産生した。
【0252】
選択された切断サイト、この場合、配列番号28のMMP-9切断サイトによる天然の切断サイトの置換は、以下のとおり行った:
切断サイトの置換は、融合タンパク質F PIV-5をコードするプラスミドpcDNA3.1において、3つの連続的な指定突然変異誘発により行った。突然変異は、供給業者により提供されるプロトコール (Stratageneから入手可能なQuickChange(登録商標) Site-Directed Mutagenesis System) に従って、相補的プライマーを用いたPCRにより作成した。プラスミドのアセンブリは、配列決定により確認した。
【0253】
1st 突然変異 R98P
センス 5' CCAGTTGATTCCAACTCCGAGGAGACGCCGGTTTGC 3' (配列番号80)
アンチセンス 5' GCAAACCGGCGTCTCCTCGGAGTTGGAATCAACTGG 3' (配列番号81)
2nd 突然変異 R101I
センス 5 ' GATTCCAACTCCGAGGAGAATCCGGTTTGCAGGAGTGGTG 3 ' (配列番号82)
アンチセンス 5 ' CACCACTCCTGCAAACCGGATTCTCCTCGGAGTTGGAATC 3' (配列番号83)
3rd 突然変異 R102T
センス 5' GATTCCAACTCCGAGGAGAATCACGTTTGCAGGAGTGGTGATTGG 3' (配列番号84)
アンチセンス 5' CCAATCACCACTCCTGCAAACGTGATTCTCCTCGGAGTTGGAATC 3' (配列番号85)。
【0254】
細胞のトランスフェクション
試薬ExGen500 (Fermentas) を用いて、供給業者により提供される説明書に従って、細胞をプラスミドによりトランスフェクトした。1〜3マイクログラムのプラスミドDNAを、48hの間、細胞 (70〜80% コンフルエンス) に添加した。トランスフェクションの効率は、緑色蛍光タンパク質GFPをコードするプラスミドを用いて評価した。
【0255】
共焦点顕微鏡による免疫蛍光法
トランスフェクトされた細胞は、リン酸緩衝生理食塩水PBS中のパラホルムアルデヒド (1% v/v) を用いて固定し、その後、2回洗浄した。PBSで1/10に希釈された、融合タンパク質PIV-5 Fに対するモノクローナル抗体の存在下で、この場合、Randall et al, 1987に記載されるモノクローナル抗体F1aの存在下で、細胞マットを3hの間インキュベートした。モノクローナル抗体F1aは、PIV-5の単離体 (この場合、LN単離体) に対するマウスの免疫処置、ハイブリドーマの調製、及び特異的な抗F抗体の選択により得た。
【0256】
その後、細胞マットを洗浄し、PBSで1/200に希釈された抗マウスIgG-Alexa Fluor(登録商標) 633二次抗体 (Invitrogen) とともに30分間インキュベートした。細胞を、すすいだ後、1/1000のDapi (4',6'-ジアミジノ-2-フェニルインドール) とともに、リン酸緩衝生理食塩水PBS中1/200の、Alexa Fluor(登録商標) 488に結合した小麦胚凝集素 (WGA) (Invitrogenから入手可能なWGA-Alexa Fluor(登録商標)) と混合するか、または混合せずに、10分間インキュベートした。TCS SP2共焦点顕微鏡 (Leica) を用いて、画像を取得した。
【0257】
結果:
本発明者らはこのように、突然変異タンパク質、例えば、その天然の切断サイトが配列番号28のMMP-9サイトにより置換されることにより、突然変異タンパク質Fus8及びFus8.7と相違する、タンパク質Fus8M及びFus8.7M(それぞれ、配列番号88及び89)を得た。
【0258】
Fus8 (配列番号65):
【化3】

【0259】
天然の切断サイトは、98位から102位(RRRRR)である。
【0260】
Fus8M (配列番号88):
【化4】

【0261】
天然の切断サイトRRRRRは、サイトPRRIT (MMP-9のサイト)によって置換された。
【0262】
Fus8.7 (配列番号76):
【化5】

【0263】
天然の切断サイトは、98位から102位(RRRRR)である。
【0264】
Fus8.7M (配列番号89):
【化6】

【0265】
天然の切断サイトRRRRRは、サイトPRRIT (MMP-9のサイト)によって置換された。
【0266】
得られた突然変異タンパク質は、それが由来する天然の切断サイトを有する突然変異タンパク質と同様に機能する(多数の核を含む大きいシンシチウム、表面発現及び高い膜融合性度の定量化の誘導)。
【0267】
その結果を図9に示す(実施例1に記載したような共焦点顕微鏡による免疫蛍光法)。
【0268】
切断サイトの修飾は、本発明の突然変異タンパク質の膜融合能力(極めて近い融合スコア)及び機能性を著しく改変しないように見える。
【0269】
PIV-2 Fタンパク質に由来する本発明の突然変異タンパク質に関して、同様の切断サイトの導入又は置換の操作が実行され得る。
【0270】
PIV-2のFタンパク質の天然の切断サイトは、KTRQKR (配列番号25)であり;PIV-2 Fタンパク質の天然の切断サイトを含むFタンパク質配列の断片の例は、LTPLIENLSKISTVTDTKTRQKRFAGVVVGLAALGVA (配列番号26)である。本発明の突然変異タンパク質において、この天然の切断サイト以外の切断サイトは、導入され得るか、又は、例えば組織特異的切断サイト、より具体的には転移性腫瘍組織によって特異的に発現される酵素、例えばマトリクス金属プロテアーゼ9 (MMP-9;例えば、配列番号27又は28のサイト)の切断サイトで置換され得る。
【0271】
参照文献
Baker et al, 1999, Mol Cell. 3(3):309-19.
Chatziandreou et al, 2004, Journal of General Virology 85: 3007-3016.
Horvat and Lamb 1992, J. Virol. 66(4): 2443-2455.
Ito et al 1997, J Virol. 71(12): 9855-9858.
Ito et al, 2000, J Gen Virol. 81(Pt 3):719-727.
Gardner and Dutch 2007, J. Virol. 81(15):8303-14.
Gardner et al, 2007, Biochemistry 46(17):5094-5105.
Lavillette D. et al, 2007, J. Virol. 81(16): 8752-8765
Paterson et al, 2000, Virology 270(l):17-30.
Randall et al, 1987, J . Gen. Virol. 68(Pt 1l): 2769-2780
Russell et al, 2003, J. Cell Biol. 163(2):363-74.
Terrier et al, 2008, Journal of Clinical Virology, 2008, 43(1): 86-92.
West et al, 2005, J Virol. 79(3):1543-1551.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突然変異タンパク質であって、該アミノ酸配列が、
・置換:
○PIV-5 Fタンパク質の配列中の22位のアミノ酸、又は、PIV-2 Fタンパク質の配列中の24位のアミノ酸の、アミノ酸Pによる置換;及び
○PIV-5 Fタンパク質の配列中の132位のアミノ酸、又は、PIV-2 Fタンパク質の配列中の133位のアミノ酸の、アミノ酸Eによる置換;及び
○PIV-5 Fタンパク質の配列中の290位のアミノ酸、又は、PIV-2 Fタンパク質の配列中の294位のアミノ酸の、アミノ酸Aによる置換;及び
○PIV-5 Fタンパク質の配列中の449位のアミノ酸、又は、PIV-2 Fタンパク質の配列中の439位のアミノ酸の、アミノ酸Pによる置換;
・並びに、任意に:
○前記Fタンパク質の天然の切断サイトの、他の酵素的切断サイトによる置換、及び/又は、前記Fタンパク質の天然の切断サイト以外の酵素的切断サイトの、前記Fタンパク質への挿入;及び/又は
○前記Fタンパク質のC−末端部分であって、該タンパク質のC−末端にある最後のアミノ酸からN−末端方向に伸張するが、前記Fタンパク質のHR2ドメインを超えては伸張しないC−末端部分の欠失;
によって、PIV-5又はPIV-2ウイルスのFタンパク質の配列から導き出される(derivable)配列を含む突然変異タンパク質。
【請求項2】
PIV-5又はPIV-2ウイルスの前記Fタンパク質の配列が、配列番号34の配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の突然変異タンパク質。
【請求項3】
前記Fタンパク質の配列がPIV-5のFタンパク質であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の突然変異タンパク質。
【請求項4】
前記Fタンパク質の配列が、
・配列番号31の配列、又は、443位のアミノ酸が(配列番号31のPの代わりに)Sであることを除いて配列番号31の配列と同じである代替配列;又は
・この配列番号31の配列又は前記代替配列の変異配列であって、
○配列番号31のものと同じサイズであるか、又は、配列番号31のものより最大で7アミノ酸だけ大きいサイズであるか、又は、配列番号31のものより最大で7アミノ酸だけ小さいサイズであり;及び
○配列番号31の配列又は前記代替配列に対して、95%を超える配列同一性、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%の配列同一性を有し、この同一性は、配列番号31の配列の長さ、又は、適切であれば前記代替配列の長さを用いて算出される、変異配列;
から成ることを特徴とする、請求項3に記載の突然変異タンパク質。
【請求項5】
前記Fタンパク質は、配列番号35から46の配列の一つから成ることを特徴とする、請求項4に記載の突然変異タンパク質。
【請求項6】
そのアミノ酸配列が前記PIV-5 Fタンパク質配列に対して他の突然変異を含まないことを特徴とする、請求項3〜5の何れか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項7】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、配列番号65の配列であることを特徴とする、請求項6に記載の突然変異タンパク質。
【請求項8】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、
・以下から選択される少なくとも一つの融合前突然変異:
○49位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○402位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○443位のアミノ酸のアミノ酸Pによる置換;
○447位のアミノ酸のアミノ酸Pによる置換;
及び/又は
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○147位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○158位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
によって、前記Fタンパク質配列からさらに導き出されることを特徴とする、請求項3〜5の何れか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項9】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、
・以下から選択される少なくとも一つの融合前突然変異:
○49位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○402位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
及び/又は
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○147位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○158位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
によって、前記Fタンパク質配列からさらに導き出されることを特徴とする、請求項3〜5及び8の何れか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項10】
前記疎水性アミノ酸が、V、I、Lから選択され、好ましくはVであることを特徴とする、請求項8又は9に記載の突然変異タンパク質。
【請求項11】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○147位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○158位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
及び
・○少なくとも一つの他の融合後突然変異、即ち、463位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換、好ましくはV、I又はL、より好ましくはVによる置換;
によって、前記Fタンパク質配列からさらに導き出されることを特徴とする、請求項3〜5及び8〜10の何れか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項12】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、配列番号67〜79の配列から選択される配列であることを特徴とする、請求項3〜5及び8〜11の何れか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項13】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、
○147位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○158位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
から選択される少なくとも一つの融合後突然変異によって前記Fタンパク質配列からさらに導き出されることを特徴とする、請求項3〜5及び8〜12の何れか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項14】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、配列番号68〜79の配列から選択される配列であることを特徴とする、請求項13に記載の突然変異タンパク質。
【請求項15】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、
・以下から選択される少なくとも一つの融合前突然変異:
○49位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○402位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
及び、
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○147位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○158位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
によって、前記Fタンパク質配列からさらに導き出されることを特徴とする、請求項3〜5及び8〜11の何れか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項16】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、配列番号68、69、70の配列から選択される配列である、請求項15に記載の突然変異タンパク質。
【請求項17】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、
○147位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○158位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
によって、前記Fタンパク質配列からさらに導き出されることを特徴とする、請求項3〜5及び8〜11の何れか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項18】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、配列番号76、78の配列から選択される配列である、請求項17に記載の突然変異タンパク質。
【請求項19】
前記Fタンパク質の配列がPIV-2 Fタンパク質である、請求項1又は2に記載の突然変異タンパク質。
【請求項20】
前記Fタンパク質の配列が、
・配列番号33の配列;又は
・配列番号33の配列の変異配列であって、
○配列番号33の配列と同じサイズであるか、又は、配列番号33の配列より最大で2アミノ酸だけ大きいサイズであるか、又は、配列番号33の配列より最大で2アミノ酸だけ小さいサイズであり;及び
○配列番号33の配列に対して、95%を超える配列同一性、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%の配列同一性を有し、この同一性は、配列番号33の配列の長さを用いて算出される、変異配列
から成ることを特徴とする、請求項19に記載の突然変異タンパク質。
【請求項21】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、配列番号90〜103の配列から選択される配列である、請求項19又は20に記載の突然変異タンパク質。
【請求項22】
そのアミノ酸配列が、前記PIV-2 Fタンパク質配列に対して他の突然変異を含まないことを特徴とする、請求項19又は20に記載の突然変異タンパク質。
【請求項23】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、
・以下から選択される少なくとも一つの融合前突然変異:
○53位アミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○406位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○428位のアミノ酸のアミノ酸Pによる置換;
○445位のアミノ酸のアミノ酸Pによる置換;
及び/又は
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○151位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○162位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
によって、前記Fタンパク質配列からさらに導き出されることを特徴とする、請求項19又は20に記載の突然変異タンパク質。
【請求項24】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、
・以下から選択される少なくとも一つの融合前突然変異:
○53位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○406位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
及び/又は
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○151位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○162位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
によって、前記Fタンパク質配列からさらに導き出されることを特徴とする、請求項19,20,23の何れか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項25】
前記疎水性アミノ酸が、V、I、Lから選択され、好ましくはVである、請求項23又は24に記載の突然変異タンパク質。
【請求項26】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○151位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○162位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
及び
・少なくとも一つの他の融合後突然変異、即ち、474位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換、好ましくはV、I又はL、より好ましくはVによる置換;
によって、前記Fタンパク質配列からさらに導き出されることを特徴とする、請求項19、20、23〜25の何れか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項27】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、
○151位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○162位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
から選択される少なくとも一つの融合後突然変異によって、前記Fタンパク質配列からさらに導き出されることを特徴とする、請求項19、20及び23〜26の何れか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項28】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、
・以下から選択される少なくとも一つの融合前突然変異:
○53位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
○406位のアミノ酸のアミノ酸Aによる置換;
及び、
・以下から選択される少なくとも一つの融合後突然変異:
○151位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○162位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
によって、前記Fタンパク質配列からさらに導き出されることを特徴とする、請求項19、20及び23〜27の何れか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項29】
前記Fタンパク質の配列から導き出される前記配列が、
○151位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換;
○162位のアミノ酸の疎水性アミノ酸による置換
によって、前記Fタンパク質配列からさらに導き出されることを特徴とする、請求項19、20及び23〜28の何れか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項30】
前記Fタンパク質の天然の切断サイトの、他の酵素的切断サイトによる置換によって、及び/又は、前記Fタンパク質の天然の切断サイト以外の酵素的切断サイトの、前記Fタンパク質への挿入によって、PIV-5又はPIV-2ウイルスのFタンパク質の配列から導き出される配列を含むことを特徴とする、請求項1〜29の何れか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項31】
天然の切断サイト以外の前記切断サイトが、組織特異的切断サイトであることを特徴とする、請求項30に記載の突然変異タンパク質。
【請求項32】
天然の切断サイト以外の前記切断サイトが、一または複数の腫瘍組織によって酵素特異的に発現される切断サイトであることを特徴とする、請求項30又は31に記載の突然変異タンパク質。
【請求項33】
天然の切断サイト以外の前記切断サイトが、一または複数の転移性組織によって特異的に発現される酵素の切断サイトであることを特徴とする、請求項30〜32のいずれか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項34】
天然の切断サイト以外の前記切断サイトが、金属プロテアーゼの切断サイトであることを特徴とする、請求項30〜33のいずれか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項35】
天然の切断サイト以外の前記切断サイトが、マトリクス金属プロテアーゼ9(MMP−9)の切断サイトであることを特徴とする、請求項30〜34のいずれか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項36】
天然の切断サイト以外の前記切断サイトが、配列PXXHyS/T(配列番号27)を含み、ここで、X = 任意のアミノ酸であり、Hy=F、M、V、L、Iから選択される任意のアミノ酸であることを特徴とする、請求項30〜35のいずれか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項37】
天然の切断サイト以外の前記切断サイトが、配列PRRIT(配列番号28)及び/又は配列IGENLETIRNQLIPTPRRITFAGVVIGL(配列番号29)を含むことを特徴とする、請求項30〜36のいずれか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項38】
配列番号88又は89の配列を含むことを特徴とする、請求項30〜37の何れか一項に記載の突然変異タンパク質。
【請求項39】
請求項1〜38の何れか一項に記載の突然変異タンパク質をコードする、核酸、DNA若しくはRNA、又はそのような核酸の相補的核酸。
【請求項40】
請求項39に記載の少なくとも一つの核酸を含む、トランスフェクション、形質導入又は形質転換ベクター。
【請求項41】
発現ベクターであることを特徴とする、請求項40に記載のベクター。
【請求項42】
アデノウイルスベクターであることを特徴とする、請求項41に記載の発現ベクター。
【請求項43】
前記核酸の発現を制御するためのエレメントを含み、且つ、腫瘍細胞、好ましくは転移性細胞、より好ましくは転移性黒色腫細胞中の前記核酸の発現を可能にする、アデノウイルスベクターであることを特徴とする、請求項41又は42に記載の発現ベクター。
【請求項44】
腫瘍崩壊性のアデノウイルスベクターであることを特徴とする、請求項41〜43の何れか一項に記載の発現ベクター。
【請求項45】
動物細胞、好ましくはヒト細胞、特にヒト腫瘍細胞、好ましくは転移性ヒト細胞のゲノムへの、より好ましくは転移性黒色腫細胞への、前記少なくとも一つの核酸の挿入を可能にするベクターであることを特徴とする、請求項40に記載のベクター。
【請求項46】
請求項1〜38の何れか一項に記載の少なくとも一つの突然変異タンパク質、及び/又は、請求項39に記載の核酸、DNA又はRNAの少なくとも一つ、及び/又は、請求項40〜45の何れか一項に記載の少なくとも一つのベクターを含むことを特徴とする細胞。
【請求項47】
ヒト細胞又は非ヒト動物細胞であることを特徴とする、請求項46に記載の細胞。
【請求項48】
腫瘍細胞であり、好ましくは転移性細胞であり、より好ましくは転移性黒色腫細胞である、請求項46又は47に記載の細胞。
【請求項49】
疾病又は腫瘍形成状態、好ましくは転移性腫瘍、好ましくは転移性黒色腫の、治療及び/又は予防及び/又は緩和において使用するための、請求項1〜38の何れか一項に記載の突然変異タンパク質、請求項39に記載の核酸、DNA又はRNA、請求項40〜45の何れか一項に記載のベクター、請求項46〜48の何れか一項に記載の細胞。
【請求項50】
胎盤の発達不全の治療及び/又は予防及び/又は緩和において使用するための、請求項1〜38の何れか一項に記載の突然変異タンパク質、請求項39に記載の核酸、DNA又はRNA、請求項40〜45の何れか一項に記載のベクター、請求項46〜48の何れか一項に記載の細胞。
【請求項51】
細胞融合の阻害剤であって、
・請求項1〜38の何れか一項に記載の突然変異タンパク質に対して作られた抗体、又は、該抗体のFab又はF(ab’)2断片;
・請求項1〜38の何れか一項に記載の少なくとも一つの突然変異タンパク質に、又は請求項39に記載の核酸、DNA、RNAに、特異的に結合する核酸アプタマー又はペプチドアプタマー;
・請求項1〜38の何れか一項に記載の少なくとも一つの突然変異タンパク質をその表面で発現する、組換え免疫系細胞、好ましくは組換え樹状細胞;
・請求項39に記載の核酸のアンチセンス核酸;
・19〜22のヌクレオチドを含む二重鎖RNAを含み、かつ請求項39に記載の核酸に結合できる、低分子干渉RNA、siRNA;
であることを特徴とする阻害剤。
【請求項52】
請求項46の細胞であって、ヒト又は非−ヒト動物の免疫系の細胞、好ましくはヒト又は非−ヒト動物の樹状細胞であり、請求項1〜38の何れか一項に記載の少なくとも一つの突然変異タンパク質をその表面で発現する細胞。
【請求項53】
過剰な細胞の膜融合性(cellular fusogenicity)を含む疾病又は状態の治療及び/又は予防及び/又は緩和において使用するための、請求項51の細胞融合阻害剤であって、前記疾病又は状態が、エンベロープに包まれたウイルスの感染(好ましくはHIV及び/又はインフルエンザ及び/又はパラインフルエンザ及び/又はラブドウイルスの感染)、アレルギー、自己免疫疾患又は移植片拒絶である、細胞融合阻害剤。
【請求項54】
過剰な細胞の膜融合性を含む疾病又は状態の、治療及び/又は予防及び/又は緩和において免疫原性剤として使用するための、請求項1〜38の何れか一項に記載の突然変異タンパク質であって、前記疾病又は状態が、エンベロープに包まれたウイルスの感染(好ましくはHIV及び/又はインフルエンザ及び/又はパラインフルエンザ及び/又はラブドウイルス感染)、アレルギー、自己免疫疾患又は移植片拒絶である、突然変異タンパク質。
【請求項55】
過剰な細胞の膜融合性を含む疾病又は状態の治療及び/又は予防及び/又は緩和のためのワクチンであって、前記疾病又は状況がエンベロープに包まれたウイルスの感染(好ましくはHIV及び/又はインフルエンザ及び/又はパラインフルエンザ及び/又はラブドウイルス感染)、アレルギー、自己免疫疾患又は移植片拒絶であり、少なくとも請求項1〜38の何れか一項に記載の突然変異タンパク質を含むことを特徴とするワクチン。
【請求項56】
不十分な又は対照的に過剰なシンシチウムの形成を伴う疾病の診断又は予後のためのインビトロでの方法であって、請求項1〜38の何れか一項に記載の少なくとも一つの突然変異タンパク質又は請求項39に記載の少なくとも一つの核酸の、生物学的サンプル中における検出を含むことを特徴とするインビトロでの方法。
【請求項57】
シンシチウムの形成を減少させるか又は遮断することのできる化合物をスクリーニングするためのインビトロでの方法であって、候補化合物を、該候補化合物が前記細胞の融合を減少させるか又は遮断するかどうかを決定するために、請求項1〜38の何れか一項に記載の少なくとも一つの突然変異タンパク質に接触させることを含むことを特徴とするインビトロでの方法。
【請求項58】
請求項1〜38の何れか一項に記載の少なくとも一つの突然変異タンパク質を含み、好ましくは、該少なくとも一つの突然変異タンパク質をその表面上に含み、及び/又は、請求項39に記載の少なくとも一つの核酸を含み、及び/又は、請求項40、41及び45の何れか一項に記載の少なくとも一つのベクターを含む、腫瘍細胞、特に骨髄腫。
【請求項59】
ハイブリドーマの産生において使用するための、請求項58に記載の腫瘍細胞、特に骨髄腫。
【請求項60】
請求項1〜38の何れか一項に記載の少なくとも一つの突然変異タンパク質、及び/又は、請求項39に記載の少なくとも一つの核酸、及び/又は、請求項41及び45の何れかに記載の少なくとも一つのベクターを含むことを特徴とするハイブリドーマ。
【請求項61】
筋細胞への分化能力を有する幹細胞又は前駆細胞であって、請求項1〜38の何れか一項に記載の少なくとも一つの突然変異タンパク質を含み、好ましくは該少なくとも一つの突然変異タンパク質をその表面上に含み、及び/又は、請求項39に記載の少なくとも一つの核酸を含み、及び/又は、請求項40、41及び45の何れか一項に記載の少なくとも一つのベクターを含むことを特徴とし、前記細胞はヒト胚細胞ではない、幹細胞又は前駆細胞。
【請求項62】
筋繊維幹細胞又は前駆細胞としての使用のための、請求項61の幹細胞又は前駆細胞。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−509077(P2012−509077A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536919(P2011−536919)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【国際出願番号】PCT/FR2009/001318
【国際公開番号】WO2010/058100
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【出願人】(511123681)ウニベルジテ・クロード・ベルナール・ドゥ・リヨン 1 (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE CLAUDE BERNARD DE LYON 1
【住所又は居所原語表記】43, Bd du 11 Novembre 1918, 69622 VILLEURBANNE CEDEX, France
【出願人】(510017491)
【氏名又は名称原語表記】LES HOSPICES CIVILS DE LYON
【住所又は居所原語表記】162, avenue Lacassagne−Batiment A, 69424 LYON CEDEX 03, France
【Fターム(参考)】