説明

PLK阻害剤

式(I)


[式中、Arは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基を表し、
及びZは、同一または異なって窒素原子(N)またはCHを表し、
Xは水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、シアノ、テトラゾリル等を表し、
1)Xがシアノまたはテトラゾリルを表す場合、
Yは水素原子を表し、
は−OR(式中、Rは置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)等を表し、
Wは−NHCR−(式中、R及びRは同一または異なって水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)等を表し、
2)Xがシアノ及びテトラゾリル以外の基を表す場合、
Yは水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル等を表し、
は−OR2A(式中、R2Aは置換もしくは非置換の低級アルキル等を表す)等を表し、
Wは−NHCR5B6B−(式中、R5B及びR6Bは同一または異なって水素原子、ハロゲン等を表す)等を表す]で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するポロ様キナーゼ(Polo−like kinase、PLK)阻害剤等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ポロ様キナーゼ(Polo−like kinase、PLK)阻害剤、PLK阻害活性または抗腫瘍活性等を有するピリミジン誘導体等に関する。
【背景技術】
細胞周期において、有糸分裂期(M期)は真核細胞の染色体を分配し、正確な遺伝情報を娘細胞に伝えるための重要なステップであり厳密に制御されている。M期の進行には様々なプロテインキナーゼが関与していることが知られている。PLKファミリーは、真核生物においてM期への進入から脱出まで様々なステージに関与しているセリンスレオニンキナーゼ群である[ジーンズ・アンド・ディベロプメント(Genes & Dev.)、12巻、3777頁(1998年)]。哺乳動物(マウス)のPLK遺伝子の単離は1994年にHamanakaらにより初めて報告された[セル・グロウス・アンド・ディファレンシエーション(Cell Growth & Diff.)、5巻、249頁(1994年)]。
多くの癌組織では、正常細胞に比べPLKが過剰発現しており、癌化や癌の進行に関与していると考えられている[US6180380;インターナショナル・ジャーナル・オブ・オンコロジー(Int.J.Oncol.)、15巻、687頁(1999年)]。非小細胞肺癌、頭頸部癌及び卵巣癌ではPLKの高発現と癌の悪性化や予後の再発との相関が認められている[オンコジーン(Oncogene)、14巻、543頁(1997年);インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(Int.J.Cancer)、89巻、535頁(2000年);キャンサー・レターズ(Cancer Letters)、169巻、41頁(2000年)]。
PLKの機能阻害変異体の導入実験では、PLK阻害が正常細胞よりも高い割合で癌細胞に細胞死を誘導するという報告がある[セル・グロウス・アンド・ディファレンシエーション(Cell Growth & Diff.)、11巻、615頁(2000年)]。また、PLKのアンチセンスオリゴヌクレオチドがマウスXenograftモデルで抗腫瘍効果を示すことも報告されている[バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Comm.)、260巻、352頁(2000年)]。
また、アルツハイマー病患者の脳ではPLKの発現が上昇しており、神経変性疾患とPLKの関連が明らかになりつつある[ニューロバイオロジー・オブ・エージング(Neurobiol.Aging)、21巻、837頁(2000年)]。このことから、PLK阻害剤は神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病等の治療剤としても有用であると考えられる。さらに末梢血液由来の静止リンパ球はPLKを発現しないが、フィトヘマグルチニン刺激またはIL−2刺激により、PLKの発現が誘導される(US6180380)。このことから、PLK阻害剤は免疫系の活性化に関わる疾患、例えばアレルギーやリウマチの治療剤としても有用であると考えられる。
以上のように、PLKを阻害する薬剤は癌や神経変性疾患、アレルギー疾患等の細胞シグナル伝達異常に関わる疾患の治療剤として有望であると考えられる。
PLK酵素阻害活性を示す化合物としては、cyanobacteriaから単離されたscytoneminが報告されている(WO 01/62900)。
5位にシアノまたは複素環基を有するピリミジン誘導体としては、以下の化合物が知られている。
後記の式(I)においてZ及びZがNで、Xがシアノで、W−Arに相当する基が芳香族アミノであるピリミジン誘導体がKDRキナーゼ及び/またはFGFrキナーゼ阻害剤として(WO 00/78731)、後記の式(I)においてZ及びZがNで、Rが二環式芳香族複素環基であるピリミジン誘導体がSrcキナーゼ阻害剤として(WO 01/00213)、後記の式(I)においてZ及びZがNで、Xがシアノで、Rがアミノで、W−Arに相当する基が芳香族アミノであるピリミジン誘導体がサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤として(WO 01/72717)、後記の式(I)においてXがシアノである誘導体がCD40機能阻害剤として(特開2001−89452)、後記の式(I)においてZ及びZがNで、Xがシアノで、W−Arに相当する基が芳香族アミノであるピリミジン誘導体がグリコーゲンシンターゼキナーゼ3阻害剤として(WO 02/04429)、後記の式(I)においてXが芳香族複素環基である誘導体がグリコーゲンシンターゼキナーゼ3阻害剤として(WO 99/65897、WO 02/20495)、後記の式(I)においてZ及びZがNであるピリミジン誘導体が抗ウイルス剤(WO 99/41253)または抗腫瘍剤(WO 00/39101)としてそれぞれ知られている。
また、後記の式(I)においてZ及びZがNで、Rがアミノで、Xがテトラゾリルである化合物が知られている[ケミカー‐ツァイトゥン(Chemiker−Zeitung)、112巻、135頁(1988年)]。
【発明の開示】
本発明の目的は、PLK阻害剤、PLK阻害作用または抗腫瘍作用等を有するピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩等を提供することにある。
本発明は、以下の(1)〜(19)に関する。
(1)式(I)

[式中、Arは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基を表し、
及びZは、同一または異なって窒素原子(N)またはCHを表し、
Xは水素原子、ニトロ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、−CONHR(式中、Rは水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表す)、シアノまたはテトラゾリルを表し、
1)Xがシアノまたはテトラゾリルを表す場合、
Yは水素原子を表し、
は−OR(式中、Rは置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)または−NR(式中、Rは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表し、Rは水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表すか、またはRとRが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する)を表し、
Wは−NHCR−(式中、R及びRは同一または異なって水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)または−NHCRCR5A6A−(式中、R及びRはそれぞれ前記と同義であり、R5A及びR6Aはそれぞれ前記R及びRと同義である)を表し、
2)Xがシアノ及びテトラゾリル以外の基を表す場合、
Yは水素原子、ニトロ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキルまたは−CONHR7A(式中、R7Aは水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表す)を表し、
は−OR2A(式中、R2Aは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)、−SR2B(式中、R2Bは前記R2Aと同義である)または−NR3A4A(式中、R3Aは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、R4Aは水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表すか、またはR3AとR4Aが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する)を表し、
Wは−NHCR5B6B−(式中、R5B及びR6Bは同一または異なって水素原子、ハロゲンまたは置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)、−NHCR5B6BCR5C6C−(式中、R5B及びR6Bはそれぞれ前記と同義であり、R5C及びR6Cはそれぞれ前記R5B及びR6Bと同義である)または−NHCR5B6BCR5C6CCR5D6D−(式中、R5B、R6B、R5C及びR6Cはそれぞれ前記と同義であり、R5D及びR6Dはそれぞれ前記R5B及びR6Bと同義である)を表す]で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するPLK阻害剤。
(2)Xがシアノまたはテトラゾリルであり、
が−OR2a(式中、R2aは低級アルキル、シクロアルキルアルキルまたは脂環式複素環アルキルを表す)または−NR(式中、R及びRはそれぞれ前記と同義である)であり、
及びZが窒素原子(N)である前記(1)記載のPLK阻害剤。
(3)式(IA)

[式中、Arは置換または非置換の芳香族複素環基を表し、
nは0または1を表し、
は−OR10(式中、R10は低級アルキル、シクロアルキルアルキルまたは脂環式複素環アルキルを表す)または−NR1112(式中、R11は低級アルキル、シクロアルキルアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表し、R12は水素原子または低級アルキルを表すか、またはR11とR12が隣接する窒素原子と一緒になってテトラヒドロイソキノリン−2−イル、3,5−ジメチルピペリジノまたは2,6−ジメチルモルホリノを形成する)を表し、
9a、R9b、R9c及びR9dは、同一または異なって水素原子または低級アルキルを表す]で表されるピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
(4)Rが−NHR11a(式中、R11aは置換もしくは非置換のアリールを表す)であり、R9a、R9b、R9c及びR9dが水素原子である前記(3)記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
(5)式(IB)

{式中、nは0または1を表し、
13は−OR17(式中、R17はシクロアルキルアルキルまたは含酸素脂環式複素環アルキルを表す)または−NR1819[式中、R18は低級アルキル、シクロアルキルアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは式(II)

(式中、nは1〜3の整数を表す)で表される基を表し、R19は水素原子または低級アルキルを表すか、またはR18とR19が隣接する窒素原子と一緒になってテトラヒドロイソキノリン−2−イル、3,5−ジメチルピペリジノまたは2,6−ジメチルモルホリノを形成する]を表し、
14a、R14b、R14c及びR14dは、同一または異なって水素原子または低級アルキルを表し、R15及びR16は同一または異なって水素原子、ハロゲン、低級アルキルまたは低級アルコキシを表すか、またはR15とR16が一緒になって−O(CHO−(式中、mは1または2を表す)を形成する}で表されるピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
(6)nが0であり、R15及びR16が同一または異なって水素原子または低級アルコキシであるか、またはR15とR16が一緒になって−OCHO−である前記(5)記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
(7)前記(1)または(2)に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するPLKが関与する疾患の予防及び/または治療剤。
(8)PLK阻害剤の製造のための、前記(1)または(2)に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩の使用。
(9)PLKが関与する疾患の予防及び/または治療剤の製造のための、前記(1)または(2)に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩の使用。
(10)前記(1)または(2)に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、PLKが関与する疾患の予防及び/または治療方法。
(11)前記(3)〜(6)のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するPLK阻害剤。
(12)前記(3)〜(6)のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するPLKが関与する疾患の予防及び/または治療剤。
(13)前記(3)〜(6)のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する抗腫瘍剤。
(14)前記(3)〜(6)のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬。
(15)PLK阻害剤の製造のための、前記(3)〜(6)のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の使用。
(16)PLKが関与する疾患の予防及び/または治療剤の製造のための、前記(3)〜(6)のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の使用。
(17)前記(3)〜(6)のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、PLKが関与する疾患の予防及び/または治療方法。
(18)抗腫瘍剤の製造のための、前記(3)〜(6)のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の使用。
(19)前記(3)〜(6)のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、腫瘍の予防及び/または治療方法。
以下、式(I)、(IA)及び(IB)で表される化合物をそれぞれ化合物(I)、(IA)及び(IB)という。他の式番号の化合物についても同様である。
式(I)、(IA)及び(IB)の各基の定義において、以下の例示が挙げられる。
(i)ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素の各原子を表す。
(ii)低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルコキシカルボニルの低級アルキル部分としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数1〜10のアルキルが挙げられ、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。
(iii)シクロアルキル及びシクロアルキルアルキルのシクロアルキル部分としては、例えば炭素数3〜8のシクロアルキルが挙げられ、具体的にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。
(iv)低級アルケニルとしては、例えば直鎖、分岐または環状の炭素数2〜8のアルケニルが挙げられ、具体的にはビニル、アリル、1−プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、シクロヘキセニル、2,6−オクタジエニル等が挙げられる。
(v)低級アルキニルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜8のアルキニルが挙げられ、具体的にはエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル等が挙げられる。
(vi)アリールとしては、例えば炭素数6〜14の単環式、二環式または三環式のアリール及び炭素数8〜14のベンゾシクロアルキルが挙げられ、具体的にはフェニル、ナフチル、インデニル、アントラニル、インダニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、6,7,8,9−5H−ベンゾシクロヘプチル等が挙げられる。
(vii)アラルキル、複素環アルキル、脂環式複素環アルキル、含酸素脂環式複素環アルキル及びシクロアルキルアルキルのアルキレン部分は、前記低級アルキル(ii)の定義から水素を一つ除いたものと同義である。
(viii)アラルキルのアリール部分としては、前記アリール(vi)の定義で挙げた基が挙げられる。
(ix)複素環基及び複素環アルキルの複素環基部分としては、例えば窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員、6員または7員の単環式複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環式であって窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環式複素環基等が挙げられ、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ベンゾイミダゾリル、2−オキソベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、プリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル、インダゾリル、インドリル、イソインドリル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、ピロリル、ピラゾリル、キナゾリニル、シンノリニル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チエニル、フリル、ピロリジニル、2,5−ジオキソピロリジニル、チアゾリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジル、ピペリジノ、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ホモピペリジル、ホモピペリジノ、モルホリニル、モルホリノ、チオモルホリニル、チオモルホリノ、ピラニル、テトラヒドロピリジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、オクタヒドロキノリル、インドリニル等が挙げられる。脂環式複素環アルキルの脂環式複素環基部分は、上記のうち芳香族性を有さないものを表し、芳香族複素環基は上記のうち芳香族性を有するものを表す。また、含酸素脂環式複素環アルキルの含酸素脂環式複素環基部分としては、例えばテトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、ピラニル等が挙げられる。
(x)隣接する窒素原子と一緒になって形成される複素環基としては、少なくとも1個の窒素原子を含む5員または6員の単環式複素環基(該単環式複素環基は、他の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい)、3〜8員の環が縮合した二環または三環式で少なくとも1個の窒素原子を含む縮環式複素環基(該縮環式複素環基は、他の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい)等が挙げられ、具体的にはテトラヒドロピリジル、インドリニル、イソインドリニル、ピロリジニル、チアゾリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジノ、ホモピペリジノ、ピペラジニル、ホモピペラジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、ペルヒドロアゼピニル、ペルヒドロアゾシニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、オクタヒドロキノリル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、インドリル、イソインドリル、プリニル、ジヒドロインドリル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル等が挙げられる。
(xi)置換低級アルキルにおける置換基としては、同一または異なって、例えば置換数1〜3の、ハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、置換アリールオキシ[該置換アリールオキシにおける置換基としては、同一または異なって、例えば置換数1〜3の、ハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる。ここでハロゲンは前記ハロゲン(i)と同義であり、低級アルキルは前記低級アルキル(ii)と同義であり、低級アルコキシ及び低級アルコキシカルボニルの低級アルキル部分は前記低級アルキル(ii)と同義である]、アラルキルオキシ、置換アラルキルオキシ[該置換アラルキルオキシにおける置換基としては、同一または異なって、例えば置換数1〜3の、ハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる。ここでハロゲンは前記ハロゲン(i)と同義であり、低級アルキルは前記低級アルキル(ii)と同義であり、低級アルコキシ及び低級アルコキシカルボニルの低級アルキル部分は前記低級アルキル(ii)と同義である]、複素環基、置換複素環基[該置換複素環基における置換基としては、同一または異なって、例えば置換数1〜3の、ハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる。ここでハロゲンは前記ハロゲン(i)と同義であり、低級アルキルは前記低級アルキル(ii)と同義であり、低級アルコキシ及び低級アルコキシカルボニルの低級アルキル部分は前記低級アルキル(ii)と同義である]、低級アルカノイルオキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルキルチオ、モノまたはジ低級アルキルアミノ、低級アルキルスルホニル、低級アルキルスルフィニル、低級アルコキシカルボニルアミノ、低級アルカノイルアミノ、モノまたはジ低級アルキルアミノカルボニル、モノまたはジ低級アルキルアミノカルボニルオキシ等が挙げられる。
ここで示したハロゲン、アリールオキシ及びアラルキルオキシのアリール部分、シクロアルキル、複素環基ならびに低級アルカノイル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルキルチオ、モノまたはジ低級アルキルアミノ、低級アルキルスルホニル、低級アルキルスルフィニル、低級アルコキシカルボニルアミノ、低級アルカノイルアミノ、モノまたはジ低級アルキルアミノカルボニル及びモノまたはジ低級アルキルアミノカルボニルオキシの低級アルキル部分は、それぞれ前記ハロゲン(i)、アリール(vi)、シクロアルキル(iii)、複素環基(ix)ならびに低級アルキル(ii)と同義であり、アラルキルオキシのアルキレン部分は、前記低級アルキル(ii)から水素を一つ除いたものと同義である。
ジ低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノカルボニル及びジ低級アルキルアミノカルボニルオキシの2つの低級アルキル部分は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
(xii)置換アリール、置換アラルキル、置換シクロアルキル、置換低級アルケニル、置換低級アルキニル、置換複素環基、置換複素環アルキル、置換芳香族複素環基及び隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基としては、前記置換低級アルキルにおける置換基(xi)の定義で挙げた基に加え、低級アルキル、ハロゲン置換低級アルキル[該ハロゲン置換低級アルキルは、1から置換可能な数のハロゲン、好ましくは1〜6個のハロゲン、より好ましくは1〜3個のハロゲンで置換された低級アルキルである]、アリール、置換アリール[該置換アリールにおける置換基としては、同一または異なって、例えば置換数1〜3の、ハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる。ここでハロゲンは前記ハロゲン(i)と同義であり、低級アルキルは前記低級アルキル(ii)と同義であり、低級アルコキシ及び低級アルコキシカルボニルの低級アルキル部分は前記低級アルキル(ii)と同義である]、アラルキル、置換アラルキル[該置換アラルキルにおける置換基としては、同一または異なって、例えば置換数1〜3の、ハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる。ここでハロゲンは前記ハロゲン(i)と同義であり、低級アルキルは前記低級アルキル(ii)と同義であり、低級アルコキシ及び低級アルコキシカルボニルの低級アルキル部分は前記低級アルキル(ii)と同義である]、アリールカルボニル、置換アリールカルボニル[該置換アリールカルボニルにおける置換基としては、同一または異なって、例えば置換数1〜3の、ハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる。ここでハロゲンは前記ハロゲン(i)と同義であり、低級アルキルは前記低級アルキル(ii)と同義であり、低級アルコキシ及び低級アルコキシカルボニルの低級アルキル部分は前記低級アルキル(ii)と同義である]、複素環アルキル、置換複素環アルキル[該置換複素環アルキルにおける置換基としては、同一または異なって、例えば置換数1〜3の、ハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる。ここでハロゲンは前記ハロゲン(i)と同義であり、低級アルキルは前記低級アルキル(ii)と同義であり、低級アルコキシ及び低級アルコキシカルボニルの低級アルキル部分は前記低級アルキル(ii)と同義である]、N−低級アルキル−N−低級アルカノイルアミノ等が挙げられる。さらに、置換アリール及び隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基は置換低級アルキル[該低級アルキルは前記低級アルキル(ii)と同義であり、該置換低級アルキルにおける置換基としては、同一または異なって、例えば置換数1〜3の、ヒドロキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる。ここで低級アルコキシカルボニルの低級アルキル部分は前記低級アルキル(ii)と同義である]であってもよい。
ここで示したハロゲン置換低級アルキルのハロゲン部分、低級アルキル及びN−低級アルキル−N−低級アルカノイルアミノの2つの低級アルキル部分、アリール、アラルキル及びアリールカルボニルのアリール部分、アラルキル、複素環アルキルの複素環基部分ならびにアラルキル及び複素環アルキルのアルキレン部分は、それぞれ前記ハロゲン(i)、低級アルキル(ii)、アリール(vi)、複素環基(ix)、アラルキルのアルキレン部分(vii)及びアラルキルのアリール部分(viii)と同義である。またハロゲン置換低級アルキルのアルキレン部分は、前記低級アルキル(ii)から水素を一つ除いたものと同義である。
また置換アリール及び置換アラルキルにおける置換アリール部分は、以下に示すアルキレンジオキシフェニルであってもよい。

(式中、nは1〜3の整数を表す)
また置換シクロアルキルは、例えば以下に示す縮合環基のような、シクロアルキルがアリールまたは置換アリールと縮合して形成される縮合環基であってもよい。

[式中、nは1〜5の整数を表し、R17、R18及びR19は、同一または異なって水素原子、ハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル等を表す。ここでハロゲンは前記ハロゲン(i)と同義であり、低級アルキルは前記低級アルキル(ii)と同義であり、低級アルコキシ及び低級アルコキシカルボニルの低級アルキル部分は前記低級アルキル(ii)と同義である]
化合物(I)、(IA)及び(IB)の薬理学的に許容される塩としては、毒性のない、水溶性のものが好ましく、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩等の酸付加塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等の金属塩、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等のアンモニウム塩、モルホリン付加塩、ピペリジン付加塩等の有機アミン付加塩、グリシン付加塩、フェニルアラニン付加塩、リジン付加塩、アスパラギン酸付加塩、グルタミン酸付加塩等のアミノ酸付加塩等が挙げられる。
次に化合物(IA)、(IB)の製造法について説明する。
なお、以下に示した製造法において、定義した基が反応条件下変化するか、または方法を実施するのに不適切な場合、有機合成化学で常用される方法、例えば官能基の保護、脱保護等[例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス 第三版(Protective Groups in Organic Synthesis,the third edition)、グリーン(T.W.Greene)、ワッツ(Peter G.M.Wuts)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(1999年)]の手段に付すことにより容易に製造を実施することができる。また、必要に応じて置換基導入等の反応工程の順序を変えることもできる。
化合物(IA)は、例えば以下に示す製造法1によって得ることが出来る。
製造法1:

(式中、Ar、R、R9a、R9b、R9c、R9d及びnは、それぞれ前記と同義であり、mcは1または2を表す)
[工程1]
2−エトキシメチレン−2−シアノ酢酸エチル(A)を溶媒中、アルカリ存在下、0.5当量から大過剰量、好ましくは0.5〜2当量の硫酸メチルイソチオ尿素(B)と反応させることにより、化合物(C)を得ることができる。
溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等を単独でまたはそれらを混合して用いることができ、中でもエタノールが好ましい。
アルカリとしては、例えば水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウム等のアルカリ水溶液、カリウムtert−ブトキシドの水溶液、テトラヒドロフラン溶液もしくは2−メチル−2−プロパノール溶液、ナトリウムメトキシドの水溶液もしくはメタノール溶液等を用いることができ、中でも水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
反応は、0〜50℃の間の温度、好ましくは0〜15℃の間の温度で行われ、通常1〜48時間で終了する。
[工程2]
工程1で得られる化合物(C)を、反応に不活性な溶媒中または無溶媒で、1当量から大過剰量の塩素化剤と反応させることにより化合物(D)を得ることができる。
塩素化剤としては、例えばオキシ塩化リン等が用いられる。
反応に不活性な溶媒は、反応に不活性なものであればいずれでもよく、特に限定されないが、例えば1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン等を単独でまたはそれらを混合して用いることができる。
反応は、0℃から溶媒の沸点の間の温度、好ましくは50℃から溶媒の沸点の間の温度で行われ、通常1〜48時間で終了する。
なお、本工程で得られる化合物(D)は上記の方法以外に、ジャーナル・オブ・ヘテロサイクリック・ケミストリー(J.Heterocycl.Chem.)、8(3)巻、445頁(1971年)、WO99/61444等に記載の方法またはそれらに準じた方法によっても得ることができる。
[工程3]
工程2で得られる化合物(D)を反応に不活性な溶媒中、1当量から大過剰量、好ましくは1〜10当量の塩基の存在下に、1当量から大過剰量、好ましくは1〜3当量の化合物(E)と反応させることにより、化合物(F)を得ることができる。
反応に不活性な溶媒は、反応に不活性なものであればいずれでもよく、特に限定されないが、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等を単独でまたはそれらを混合して用いることができ、中でもテトラヒドロフラン、クロロホルムまたはそれらの混合溶媒が好ましい。
反応は、0〜100℃の間の温度、好ましくは0〜50℃の間の温度で行われ、通常10分間から48時間で終了する。
塩基としては、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、キノリン等の有機塩基、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、カリウムtert−ブトキシド等の無機塩基、アンバーリストA−21(ロームアンドハース社製)、AG 1−X8(バイオラッド社製)等の塩基性アニオン交換レジン、ポリビニルピリジン、モルホリノメチルポリスチレン等の固相に担持された塩基等が用いられ、中でもモルホリノメチルポリスチレン、DBUが好ましい。
化合物(E)は、市販品としてまたはコンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ第二版(Comprehensive Organic Transformations,second edition)、ラロック(R.C.Larock)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(1999年)等に記載の方法に準じて得ることができる。
[工程4]
工程3で得られる化合物(F)を、反応に不活性な溶媒中、1当量から大過剰量、好ましくは1〜5当量の酸化剤で処理することにより、化合物(G)を得ることができる。
反応に不活性な溶媒は、反応に不活性なものであればいずれでもよく、特に限定されないが、例えばジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、アセトニトリル、水等を単独でまたはそれらを混合して用いることができ、中でもジクロロメタンが好ましい。
酸化剤としては、例えばメタクロロ過安息香酸、過酸化ベンゾイル、過酢酸、過酸化水素水、過ヨウ素酸ナトリウム等を用いることができ、中でもメタクロロ過安息香酸が好ましい。
反応は0〜100℃の間の温度、好ましくは0〜50℃の間の温度で行われ、通常10分間から24時間で終了する。
なお、化合物(G)において、mcが1である化合物とmcが2である化合物は、例えば酸化剤の当量数、反応の温度等の条件等を調節することにより一方を選択的に得ることも可能であり、それらが混在することもある。混在する場合、その比率は特に限定されず、いずれの場合もそのまま次工程に使用することができる。
[工程5]
工程4で得られる化合物(G)を、反応に不活性な溶媒中、1〜5当量の化合物(H)と反応させることにより、化合物(J)を得ることができる。
反応に不活性な溶媒は、反応に不活性なものであればいずれでもよく、特に限定されないが、例えばジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、アセトニトリル等を単独でまたはそれらを混合して用いることができ、中でもテトラヒドロフランが好ましい。
反応は0〜100℃の間の温度、好ましくは20〜60℃の間の温度で行われ、通常1〜72時間で終了する。
化合物(H)は、市販品としてまたはコンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ第二版(Comprehensive Organic Transformations,second edition)、ラロック(R.C.Larock)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(1999年)等に記載の方法に準じて得ることができる。
[工程6]
工程5で得られる化合物(J)を、反応に不活性な溶媒中、1〜10当量のアジ化ナトリウムまたはアジ化アンモニウムと反応させることにより、化合物(IA)を得ることができる。
反応に不活性な溶媒は、反応に不活性なものであればいずれでもよく、特に限定されないが、例えばクロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、アセトニトリル等を単独でまたはそれらを混合して用いることができ、中でもジメチルホルムアミドが好ましい。また、反応を加速する目的で、反応系中へ塩化アンモニウム、塩化エチルアンモニウム等を1当量以上添加することもできる。
反応は0〜180℃の間の温度、好ましくは50〜120℃の間の温度で行われ、通常1〜72時間で終了する。
化合物(IB)は、例えば以下に示す製造法2によって得ることができる。
製造法2:

(式中、R13、R14a、R14b、R14c、R14d、R15、R16、n及びmcは、それぞれ前記と同義である)
[工程7]
製造法1の工程3に記した方法に準じ、製造法1の工程2で得られる化合物(D)を化合物(K)と反応させることにより、化合物(L)を得ることができる。
工程7において溶媒、塩基、温度、当量、反応時間等は、製造法1の工程3に記載したものに準じて化合物(L)を製造することができる。
[工程8]
製造法1の工程4に記した方法に準じ、工程7で得られる化合物(L)から化合物(M)を得ることができる。
工程8において溶媒、塩基、温度、当量、反応時間等は、製造法1の工程4に記載したものに準じて化合物(M)を製造することができる。
[工程9]
製造法1の工程5に記した方法に準じ、工程8で得られる化合物(M)を化合物(N)と反応させることにより、化合物(IB)を得ることが出来る。
工程9において溶媒、塩基、温度、当量、反応時間等は、製造法1の工程5に記載したものに準じて化合物(IB)を製造することができる。
化合物(IA)、(IB)及び原料化合物における各官能基の変換ならびに置換基に含まれる官能基の変換は、公知の方法[例えば、コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ 第二版(Comprehensive Organic Transformatios,the second edition)、R.C.ラロック(Larock)著、ジョン・・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレーティッド(John Wiley & Sons Inc.)(1999年)に記載の方法]等によって行うことができる。
上記の方法等を適宜組み合わせて実施することにより、所望の位置に所望の官能基を有する化合物(IA)、(IB)を得ることができる。
上記製造法における中間体及び生成物の単離・精製は、通常の有機合成で用いられる方法、例えば濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、各種クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて行うことができる。さらに一般的な並列合成法で常用される精製法、例えばスカベンジャーレジン、イオン交換レジンを用いた精製法によって行うことができる。また、中間体においては、特に精製することなく次の反応に供することもできる。
化合物(IA)、(IB)には、位置異性体、幾何異性体、光学異性体または互変異性体のような異性体が存在し得るものもあるが、これらを含め可能な全ての異性体及び該異性体のいかなる比率における混合物も本発明に包含される。
化合物(IA)、(IB)の塩を取得したい場合には、化合物(IA)、(IB)の塩が得られるときはそのまま精製すればよく、また化合物(IA)、(IB)が遊離の形で得られるときは化合物(IA)、(IB)を適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えて単離・精製すればよい。
また、化合物(IA)、(IB)またはその薬理学的に許容される塩は、水または各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これらの付加物も本発明に包含される。
化合物(I)の中で、化合物(IA)、(IB)以外の化合物(I)は、公知の方法[例えば、シンレット(Synlett)、625頁(2000年);ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサエティー(J.Chem.Soc.)、800頁(1952年);テトラヘドロン(Tetrahedron)、43巻、2557頁(1987年);ジャーナル・オブ・ヘテロサイクリック・ケミストリー(J.Heterocyclic Chem.)、24巻、85頁(1987年);ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.)、60巻、1875頁(1995年)]等によって合成することができる。
以下、第1表〜第2表に本発明によって得られる化合物(IA)、(IB)の具体例を示すが、本発明の範囲はこれらの化合物に限定されることはない。




次に、代表的な化合物(I)の薬理作用について試験例により具体的に説明する。
「試験例1」PLK酵素に対する阻害活性
以下に示す方法にてPLK酵素に対する阻害活性を測定した。GST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)をN末端に融合した全長のマウスPLK[セル・グロウス・アンド・ディファレンシエーション(Cell Growth & Diff.)、5巻、249頁(1994年)]を発現するバキュロウイルスを、Spodoptera frugiperda(スポドプテラ フルギペルダ)(Sf)9昆虫細胞に感染させた。その後、Sf9細胞をESF921培地(EXPRESSION SYSTEMS、カタログ番号96−001)を用いて、28℃で48時間振とう培養した。培養後、細胞を遠心して沈殿物を回収し、−20℃で凍結した。凍結した細胞沈殿物を融解し、200mLのLysis Buffer〔20mmol/L Hepes(pH7.5)、20mmol/Lβグリセロホスフェート、1%CHAPS{3−[(3−Cholamidopropyl)dimethylammonio]propanesulfonic acid}、1mmol/L DTT(Dithiothreitol)、10μmol/L MG132(カルビオケム社、カタログ番号474790)、1×Complete Mix EDTA free(ロシュ・ダイアグノスティックス社、カタログ番号1873580)〕に懸濁した。氷上で10分間静置後、4℃、10,000gで15分間遠心し、上清を回収した。上清にLysis Bufferで平衡化した50%グルタチオンビーズ(アマシャムファルマシア社、カタログ番号27−4574−01)8mLを加えて、ローテーターRT−t(タイテック社)で回転させながら4℃で5時間反応させた。反応液を4℃、3,000g、1分間遠心後、上清を取り除き沈殿したビーズを回収した。Lysis Buffer 8mLで2回洗浄後、Wash Buffer[50mmol/L Tris/HCl(pH7.5)]16mLで2回洗浄した。洗浄したビーズに9mLのElute Buffer[50mmol/L Tris/HCl(pH7.5)、10mmol/Lグルタチオン、10μmol/L MG132、100nmol/Lオカダ酸]を加え、ローテーターで回転させながら4℃で5時間反応させた。反応液を4℃、3,000g、1分間遠心後、上清8mLを回収した。回収した溶出液を最終的に以下の保存状態になるように保存した[最終保存条件;GST−PLK 38μg/mL、25mmol/L Tris/HCl(pH7.5)、3.3mmol/Lグルタチオン、0.5mmol/L EDTA、5mmol/L NaCl、0.5mmol/L DTT、5μmol/L MG132、50nmol/Lオカダ酸、50%グリセロールで−20℃で保存]。
PLK酵素阻害50%の濃度を求めるために、以下の系を構築した。試験用薬剤サンプルはDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解した1mmol/Lサンプルを順次希釈して調製した。コントロールとブランクには薬剤を溶解していないDMSOを用いた。40μLの容量で最終濃度がGST−PLK 5μg/μL、脱リン酸化型α−カゼイン(シグマアルドリッチ社、カタログ番号C−8032)250μg/μL、20mmol/L Hepes(pH7.5)、1mmol/L DTT、DMSO1%、試験用薬剤濃度が0.12、0.37、1.11、3.33、10μmol/Lになるようにそれぞれ溶液を調整した。ブランクにはGST−PLKを加えないサンプルを用いた。その後5×ATP溶液{[γ−33P]−ATP 1.6μCi(アマシャムファルマシア社、カタログ番号AH9968、1000−3000Ci/mmol)、25μmol/L cold ATP、100mmol/L MgCl、20mmol/L Hepes(pH7.5)、1mmol/L DTT}を10μL加え、30℃で50分間反応させた。反応液50μLのうち20μLをP81フィルター(ワットマン社、カタログ番号3698023)に添加し、0.75%リン酸液に入れた。フィルターは0.75%リン酸液で4回洗浄し、65℃で30分間乾燥させた。乾燥させたフィルターの33P放射能のカウントはTRI−CARB 2700TR液体シンチレーションアナライザー(パッカード社)によって測定した。フィルターに添加してから測定までの操作は2連で行った。このアッセイによって測定した化合物濃度10μmol/LにおけるPLK阻害率(%)を第3表に、また一部の化合物についてPLK酵素阻害50%の濃度(IC50)を第4表に示した。


「試験例2」PKAキナーゼアッセイ
酵素阻害の選択性を調べるため、PLKと同じセリンスレオニンキナーゼであるPKAに対する酵素阻害率を求めるために、以下の系を構築した。PKA酵素はcAMP−dependent Protein Kinase(PKA)、catalytic subunit(ニューイングランドバイオラブ社、カタログ番号6000S)を用いた。試験用薬剤サンプルはDMSOに溶解した1mmol/Lサンプルを順次希釈して調整した。コントロールとブランクには薬剤を溶解していないDMSOを用いた。40μLの容量で最終濃度がPKA 5unit/mL、MBP,bovine,purified(アップステート社、カタログ番号13−104)400μg/μL、50mmol/L Tris(pH7.5)、1mmol/L DTT、DMSO 1%、試験用薬剤濃度が50または10μmol/Lになるようにそれぞれ溶液を調整した。ブランクにはPKAを加えないサンプルを用いた。その後5×ATP溶液{[γ−33P]−ATP 1.6μCi(1000−3000Ci/mmol)、25μmol/L cold ATP、100mmol/L MgCl、50mmol/L Tris(pH7.5)、1mmol/L DTT}を10μL加え、30℃で30分間反応させた。10μLの10%リン酸バッファーを添加して、反応を止めた。反応液60μLのうち20μLをP81フィルターに添加し、0.75%リン酸液に入れた。フィルターは0.75%リン酸液で4回洗浄し、65℃で30分間乾燥させた。乾燥させたフィルターの33P放射能のカウントはTRI−CARB 2700TR液体シンチレーションアナライザー(パッカード社)によって測定した。フィルターに添加してから測定までの操作は2連で行った。このアッセイによって測定した化合物濃度50μmol/L及び10μmol/LでのPKA酵素阻害率(%)を第5表に示した。
いずれの化合物も50μmol/Lという高濃度でも阻害活性を示さず、PKAとPLKの阻害作用に選択性があることが示された。
「試験例3」Erk2キナーゼアッセイ
酵素阻害の選択性を調べるため、PLKと同じセリンスレオニンキナーゼであるExtracellular Signal−Regulated Kinase 2(Erk2)酵素に対する阻害率を求めるために、以下の系を構築した。Erk2酵素はMAP Kinase 2/ Erk2,active(アップステート社、カタログ番号14−173)を用いた。試験用薬剤サンプルはDMSOに溶解した1mmol/Lサンプルを順次希釈して調整した。コントロールとブランクには薬剤を溶解していないDMSOを用いた。40μLの容量で最終濃度がErk2 400ng/mL、MBP,bovine,purified 400μg/μL、50mmol/L Tris(pH7.5)、1mmol/L DTT、DMSO 1%、試験用薬剤濃度が50または10μmol/Lになるようにそれぞれ溶液を調整した。ブランクにはErk2を加えないサンプルを用いた。その後5×ATP溶液{[γ−33P]−ATP 1.6μCi(1000−3000Ci/mmol)、25μmol/L cold ATP、100mmol/L MgCl、50mmol/L Tris(pH7.5)、1mmol/L DTT}を10μL加え、30℃で30分間反応させた。10μLの10%リン酸バッファーを添加して、反応を止めた。反応液60μLのうち20μLをP81フィルターに添加し、0.75%リン酸液に入れた。フィルターは0.75%リン酸液で4回洗浄し、65℃で30分間乾燥させた。乾燥させたフィルターの33P放射能のカウントはTRI−CARB 2700TR液体シンチレーションアナライザー(パッカード社)によって測定した。フィルターに添加してから測定までの操作は2連で行った。このアッセイによって測定した化合物濃度50μmol/L及び10μmol/LでのErk2酵素阻害率(%)を第5表に示した。
いずれの化合物も50μmol/Lという高濃度でも50%を超える阻害活性を示さず、Erk2とPLKの阻害作用に選択性があることが示された。
以上の結果より、本発明で見出されたPLK阻害剤は、他のキナーゼとの選択性が高く、PLK阻害剤として優れた特徴を有する化合物と結論された。

「試験例4」抗細胞試験
ヒト子宮頚癌HeLa細胞(ATCC番号:CCL−2)に対する増殖阻害を以下の方法で実施した。HeLa細胞の培養には10%FBS入りRPMI[RPMI1640(GIBCO BRLカタログ番号11875−093)]培地を用いた。1×10個/ウェルのHeLa細胞をTC MICROWELL 96Fプレート(ナルジェン・ヌンク社、カタログ番号167008)に100μLずつ播種し、37℃で24時間、5%炭酸ガスインキューベーター内で培養した。ブランクには培地のみを100μL添加したサンプルを使用した。その後、段階的に希釈した試験化合物を50μL加え、さらに37℃で72時間、5%炭酸ガスインキュベーター内で培養した。コントロールとブランクには0.3%のDMSO入りRPMI培地を50μL添加した。RPMI培地を取り除き、100μLのPBS(Phosphate buffer saline)を加えた後、取り除いた。その後RPMI培地で10%に希釈したWST{4−[3−(4−Iodophenyl)−2−(4−nitrophenyl)−2H−5−tetrazolio]−1,3−benzene disulfonate}試薬(ロシュ・ダイアグノスティックス社、カタログ番号1644807)を100μL加え、37℃で40分間インキュベートした。マイクロプレート分光光度計SPECTRA max 340PC(モレキュラーデバイス社)を用い、450nm(対照波長690nm)の吸光度を測定した。代表的な化合物の結果をHeLa細胞増殖阻害50%の濃度として第6表に示した。

「試験例5」M期集積能試験
PLKは細胞周期のM期への進入から脱出までの過程で機能することが知られており、PLKの活性阻害により、細胞周期、特にM期の進行に影響が出ると予想される。PLK阻害剤による細胞周期への影響を、M期の細胞数を調べる方法(M期集積能試験)により測定した。HeLa細胞の培養には10%FBS入りRPMI培地を用いた。MULTIDISH6プレート(ナルジェン・ヌンク社、カタログ番号152795)にカバーグラスを入れておき、HeLa細胞を1×10cells/mLを2mL播種し、37℃で24時間、5%炭酸ガスインキュベーター内で培養した。RPMI培地を取り除き、さらに2mLのPBSを加えた後、取り除いた。その後RPMI培地で希釈した試験化合物を2mL加え、さらに37℃で15時間、5%炭酸ガスインキュベーター内で培養した。培地を静かに取り除き、3.7%ホルムアルデヒドを含むPBSを2mLずつ添加し、10分間固定した。100μmol/L Hoechest 33342(シグマアルドリッチ社、カタログ番号B−2261)を含むPBSを2mLずつ添加し、静かに揺らした後、10分間室温に放置した。カバーグラスを取り出し、倒立顕微鏡ECLIPSE TE300(ニコン社)で観察した。染色体が核一様に染まる細胞を間期の細胞とし、染色体が凝集したパターンを示す細胞をM期の細胞として、各細胞数を生細胞のみカウントした。なお核の断片化、細胞膜の湾曲等のアポトーシスの兆候が認められない細胞を生細胞と定義した。各条件下最低100個以上の細胞をカウントし、各形態の細胞の割合(%)を算出した。カウントは2連で行った。M期集積作用が知られている微小管作用性物質ノコダゾール(Nocodazole)をコントロールに用いた。代表的な化合物の結果を第7表に示す。PLK阻害活性を有する化合物16及び20では、化合物未処理の細胞に比べ明らかにM期の細胞数が増大しており、これら化合物がHeLa細胞に対しM期集積作用を有することが明らかになった。この結果は、本発明で見出されたPLK阻害剤がM期集積という作用を介して、癌細胞の増殖を抑制する効果、すなわち抗腫瘍作用を有することを示している。

本発明に係る医薬は、式(I)で表される化合物及びその薬理学的に許容される塩、ならびにそれらの水和物及び溶媒和物からなる群から選ばれる物質を有効成分として含むことを特徴とする。本発明に係る医薬としては、有効成分である上記物質をそのまま投与してもよいが、一般的には、有効成分である上記の物質と1または2以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物の形態で投与することが望ましい。このような医薬組成物は、それ自体製剤学の分野で周知または慣用の方法に従って製造することが可能である。また、医薬組成物の形態である本発明に係る医薬には、他の医薬の有効成分が1または2以上含まれていてもよい。なお、本発明の医薬は、ヒトを含む哺乳類動物に適用可能である。
本発明の医薬の投与経路は特に限定されず、経口投与または静脈内投与等の非経口投与のいずれかから治療及び/または予防のために最も効果的な投与経路を適宜選択することができる。経口投与に適する製剤の例としては、例えば、錠剤等を挙げることができ、非経口投与に適する製剤の例としては、例えば、注射剤等を挙げることができる。
錠剤等の固形製剤の製造には、例えば、乳糖、マンニット等の賦形剤;デンプン等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤;脂肪酸エステル等の界面活性剤;グリセリン等の可塑剤を用いることができる。
非経口投与に適する製剤のうち注射剤等の血管内投与用製剤は、好ましくはヒト血液と等張の水性媒体を用いて調製することができる。例えば、注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、塩水とブドウ糖溶液の混合物等から選ばれる水性媒体を用い、常法に従って適当な助剤とともに溶液、懸濁液または分散液として調製することができる。非経口用の製剤の製造には、例えば、希釈剤、香料、防腐剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤等から選択される1または2以上の製剤用添加物を用いることもできる。
本発明の医薬の投与量及び投与頻度は特に限定されず、有効成分である上記物質の種類、投与経路、治療及び/または予防の目的、患者の年齢及び体重、症状の性質及び重篤度等の種々の条件に応じて適宜選択することが可能である。例えば、成人1日当り0.1〜100mg/kgを3〜4回に分けて投与するのが好ましい。しかしながら、これら投与量及び投与回数は前述の種々の条件等により変動する。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、本発明を実施例及び参考例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により限定されることはない。
下記実施例及び参考例中の各化合物の物理化学的データは、以下の機器類によって測定した。
H NMR:JEOL EX−270型(270MHz)またはJEOL GX−270型(270MHz)
IR:HORIBA FT−200
MS:JEOL JMS−DX303(FAB法)またはMicromass Quattro(APCI法)
参考例1:4−クロロ−5−シアノ−2−メチルチオピリミジンの合成
工程1:5−シアノ−3,4−ジヒドロ−2−メチルチオピリミジン−4−オンの合成
硫酸メチルイソチオ尿素(90.5g,0.325mmol)を水酸化ナトリウム水溶液(2mol/L,325mL)に溶解し、氷冷下、その水溶液に2−エトキシメチレン−2−シアノ酢酸エチル(100g,0.591mmol)のエタノール溶液(350mL)を、内温が15℃を超えないように注意しながら少しずつ滴下した。全てのエタノール溶液を加えた後、水酸化ナトリウム水溶液(2mol/L,300mL)を少しずつ加え、さらにエタノール(150mL)を加え、室温で一晩攪拌した。反応混合物中に析出した結晶を濾取し、エタノール(500mL)で洗浄した。得られた白色結晶を減圧乾燥し、目的とする5−シアノ−3,4−ジヒドロ−2−メチルチオピリミジン−4−オン(113.3g,100%)を得た。
工程2:4−クロロ−5−シアノ−2−メチルチオピリミジンの合成
工程1で得た5−シアノ−3,4−ジヒドロ−2−メチルチオピリミジン−4−オン(30.0g,0.159mmol)にオキシ塩化リン(150mL)を加え、7時間加熱還流を行った。反応混合物を放冷した後、オキシ塩化リンを減圧留去した。得られた残渣を氷(約1000mL)にあけ、析出した淡黄色固体を濾取し、水で洗浄した。その固体を減圧乾燥し、目的とする4−クロロ−5−シアノ−2−メチルチオピリミジン(11.9g,40%)を得た。
実施例1:化合物1の合成
工程1
参考例1で得られた4−クロロ−5−シアノ−2−メチルチオピリミジン(0.25mol/Lクロロホルム溶液,0.20mL,0.050mmol)と6−アミノ−1,4−ベンゾジオキサン(1.0mol/Lクロロホルム溶液,0.060mL,0.060mmol)の混合液に、モルホリノメチルポリスチレン(35mg,0.12mmol)を加え、50℃で1日間攪拌した。その後、反応混合物にベンゾイルクロリドポリマーバウンド(23mg,0.058mmol)及びクロロホルム(0.50mL)を加え、室温でさらに1日間攪拌した。反応混合物中の樹脂を濾別し、樹脂をクロロホルムとメタノールの混合溶媒(クロロホルム/メタノール=3/1,1.2mL)で洗浄した。得られた溶液を全て合わせ、溶媒留去して対応する化合物を得た。
工程2
工程1で得られた化合物をジクロロメタン(0.20mL)に溶解し、メタクロロ過安息香酸(0.50mol/Lジクロロメタン溶液,0.125mL,0.063mmol)を加え、室温で0.5〜1時間攪拌した。反応混合物に飽和重曹水(0.20mL)を加え、攪拌した後、水層を除去した。その後、再度飽和重曹水(0.20mL)を加えて攪拌した後、分液した。有機層を硫酸マグネシウムと珪藻土の混合物(硫酸マグネシウム/珪藻土=1/1,140mg)で乾燥した。硫酸マグネシウムと珪藻土の混合物をジクロロメタン(0.80mL)で洗浄した。得られた溶液を全て合わせ、溶媒を留去して、対応する化合物を得た。
工程3
工程2で得られた化合物をテトラヒドロフラン(0.20mL)に溶解し、2−(2−チエニル)エチルアミン(1.0mol/Lクロロホルム溶液,0.060mL,0.060mmol)を加え、室温で1日間攪拌した。その後、反応混合物にクロロホルム(0.40mL)、ベンゾイルクロリドポリマーバウンド(23mg,0.058mmol)、ポリ(4−ビニルピリジン)(23mg)を加え、室温で1日間攪拌した。反応混合物中の樹脂を濾別し、樹脂をクロロホルムとメタノールの混合溶媒(クロロホルム/メタノール=3/1,1.4mL)で洗浄した。得られた溶液を全て合わせ、溶媒を留去して対応する化合物を得た。
工程4
工程3で得られた化合物をジメチルホルムアミド(0.10mL)に溶解し、アジ化アンモニウムのジメチルホルムアミド溶液(1.0mol/L,0.080mL,0.080mmol)を加え、100℃で1日間撹拌した。その後、溶媒を留去し、残渣をクロロホルムと1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールの混液(3:1,0.40mL)に溶解し、5%クエン酸水溶液で洗浄した。有機層を乾燥・濃縮後、残渣をエタノール(0.300mL)に溶解し、イオン交換樹脂AG1−X8(バイオラッド社製)を加え、室温で2時間撹拌した。樹脂をメタノール(0.60mL)で洗浄後、樹脂にクロロホルムとメタノールの混液(1:1,0.40mL)及び塩酸の酢酸エチル溶液(4mol/L,0.050mL)を加え、目的物を溶出した。樹脂をクロロホルムとメタノールの混液(1:1,1.2mL)で洗浄し、溶出液と洗浄液を合わせて濃縮し、目的とする化合物1を得た。
その他の化合物(IA)(化合物2〜14)も上記と同様の方法において、工程1及び工程3において対応する試薬を用いることで合成した。なおそれらの通算収率は約30%であった。
得られた化合物は質量分析により同定した。各化合物の分析結果は第1−1表〜第1−2表に機器データとして記載する。また、以下に代表的化合物のプロトンNMR(H NMR)を記載する。
化合物1
H NMR(270MHz,DMSO−d)δ(ppm):3.07(t,J=6.8Hz,2H),3.49−3.50(br,2H),4.24(s,4H),6.84−7.10(m,5H),7.32−7.47(m,2H),8.53(s,1H),8.76(s,1H),10.77(s,0.2H),10.58(s,0.8H)
化合物2
H NMR(270MHz,DMSO−d)δ(ppm):1.79(s,3H),3.11(t,J=7.8Hz,2H),3.16(s,3H),3.61(t,J=7.8Hz,2H),6.88(s,1H),6.94(dd,J=3.5Hz,5.0Hz,1H),7.25−7.33(m,3H),7.79(d,J=8.4Hz,2H),7.86(s,1H),8.12(s,1H),8.69(s,1H),10.50(s,0.4H),10.77(s,0.6H)
化合物3
H NMR(270MHz,DMSO−d)δ(ppm):3.10(t,J=7.3Hz,2H),3.50−3.51(m,2H),3.66(s,6H),3.72(s,3H),6.85−6.95(m,2H),7.07(s,2H),7.31(dd,J=1.2Hz,5.1Hz,1H),7.63(br,1H),7.81(br,1H),8.64(s,1H),10.24(br,0.4H),10.68(br,0.6H)
化合物7(主なピーク)
H NMR(270MHz,DMSO−d)δ(ppm):1.30(s,9H),4.58(s,2H),7.22−7.76(m,5H),7.95(s,1H),8.13−8.25(m,1H),8.45(d,J=3.5Hz,1H),8.56(s,1H),8.66(s,1H),10.28(s,0.4H),10.55(s,0.6H)
化合物8
H NMR(270MHz,DMSO−d)δ(ppm):4.60(d,J=5.6Hz,2H),7.35(dd,J=4.9Hz,7.7Hz,1H),7.51−7.70(br,2H),7.77(d,J=7.4Hz,2H),8.10(br,1H),8.25(br,1H),8.38(br,1H),8.45(d,J=4.9Hz,1H),8.59(s,1H),8.72(s,1H),10.70(br,1H)
実施例2:化合物15の合成
工程1参考例1で得られた4−クロロ−5−シアノ−2−メチルチオピリミジン(0.25mol/Lクロロホルム溶液,0.20mL,0.050mmol)と3−エチルアニリン(1.0mol/Lクロロホルム溶液,0.060mL,0.060mmol)の混合液に、モルホリノメチルポリスチレン(35mg,0.12mmol)を加え、50℃で1日間攪拌した。その後、反応混合物にベンゾイルクロリドポリマーバウンド(23mg,0.058mmol)及びクロロホルム(0.50mL)を加え、室温でさらに1日間攪拌した。反応混合物中の樹脂を濾別し、樹脂をクロロホルムとメタノールの混合溶媒(クロロホルム/メタノール=3/1,1.2mL)で洗浄した。得られた溶液を全て合わせ、溶媒留去して対応する化合物を得た。
工程2
工程1で得られた化合物をジクロロメタン(0.20mL)に溶解し、メタクロロ過安息香酸(0.50mol/Lジクロロメタン溶液,0.125mL,0.063mmol)を加え、室温で0.5〜1時間攪拌した。反応混合物に飽和重曹水(0.20mL)を加え、攪拌した後、水層を除去した。その後、再度飽和重曹水(0.20mL)を加えて攪拌した後、分液した。有機層を硫酸マグネシウムと珪藻土の混合物(硫酸マグネシウム/珪藻土=1/1,140mg)で乾燥した。硫酸マグネシウムと珪藻土の混合物をジクロロメタン(0.80mL)で洗浄した。得られた溶液を全て合わせ、溶媒を留去して、対応する化合物を得た。
工程3
工程2で得られた化合物をテトラヒドロフラン(0.20mL)に溶解し、1−フェニルエチルアミン(1.0mol/Lクロロホルム溶液,0.060mL,0.060mmol)を加え、室温で1日間攪拌した。その後、反応混合物にクロロホルム(0.40mL)、ベンゾイルクロリドポリマーバウンド(23mg,0.058mmol)、ポリ(4−ビニルピリジン)(23mg)を加え、室温で1日間攪拌した。反応混合物中の樹脂を濾別し、樹脂をクロロホルムとメタノールの混合溶媒(クロロホルム/メタノール=3/1,1.4mL)で洗浄した。得られた溶液を全て合わせ、溶媒を留去して化合物15を得た。
なお化合物(IB)の中で、R13が−NR1819で表される化合物(IBa)(化合物16〜22及び化合物25〜28)は上記と同様の方法に従い、工程1及び工程3で対応する試薬を用いることにより合成した。
得られた化合物(IBa)は質量分析により同定した。各化合物の分析結果は第2−1表〜第2−2表に機器データとして記載する。また、以下に代表的化合物のプロトンNMR(H NMR)を記載する。
化合物16
H NMR(270MHz,CDCl)δ(ppm):1.55(d,J=6.9Hz,3H),3.79(s,3H),5.02−5.17(m,1H),5.90−6.04(br,1H),6.70(dd,J=2.3Hz,8.2Hz,1H),6.83−6.90(m,1H),7.10(s,1H),7.13−7.43(m,6H),8.17(s,1H),8.27(br s,1H)
化合物20
H NMR(270MHz,CDCl)δ(ppm):0.11−0.26(m,2H),0.39−0.58(m,2H),0.89(t,J=7.3Hz,3H),0.81−1.03(br,1H),1.53(d,J=6.9Hz,3H),1.48−1.70(m,2H),3.24−3.70(m,4H),4.90−5.08(br,1H),5.53−5.73(br,1H),7.13−7.42(m,5H),8.11(s,1H)
化合物22
H NMR(270MHz,CDCl)δ(ppm):1.56(d,J=6.9Hz,3H),2.80−3.05(br,2H),3.80−4.09(br,2H),4.63−4.90(m,2H),5.00(br,1H),5.87(br,1H),7.11−7.41(m,9H),8.12(s,1H)
化合物28
H NMR(270MHz,CDCl)δ(ppm):0.23−0.29(m,2H),0.51−0.58(m,2H),0.93(t,J=7.3Hz,3H),1.01−1.14(m,1H),1.55−1.76(m,2H),3.52(d,J=6.6Hz,2H),3.63(t,J=7.9Hz,2H),4.45(d,J=5.3Hz,2H),5.95(s,2H),6.38(br,1H),6.76−6.79(m,3H),7.90(s,1H)
実施例3:化合物23の合成
工程1
参考例1で得られる4−クロロ−5−シアノ−2−メチルチオピリミジン(223mg,1.20mmol)をクロロホルム(5mL)に溶解し、テトラヒドロピラン−2−イルメタノール(1.44mmol)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(0.215mL,1.44mmol)を加え、室温で1〜2時間攪拌した。反応液を5%クエン酸水溶液で希釈し、クロロホルムにて抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、濃縮することにより得られる残渣をクロロホルム(12mL)に溶解し、ベンゾイルクロリドポリマーバウンド(552mg,1.66mmol)、ポリ(4−ビニルピリジン)(552mg)を加え、室温にて12〜24時間攪拌した。反応溶液を濾過し、濃縮することによって、対応する化合物を得た。
工程2
工程1により得られた化合物を、実施例2の工程2に示した方法と同一の方法により反応させ、対応する化合物を得た。
工程3
工程2により得られた化合物を、実施例2の工程3に示した方法と同一の方法により1−フェニルエチルアミンと反応させ、化合物23を得た。
化合物24も上記と同様の方法において、工程1でシクロヘキシルメタノールを用いることで合成することが可能である。
化合物23
H NMR(270MHz,CDCl)δ(ppm):1.24−1.76(m,3H),1.57(d,J=6.9Hz,3H),1.77−1.95(m,2H),3.30−3.74(m,4H),3.85−4.07(m,2H),4.90−5.12(m,1H),6.36(br,1H),7.23−7.40(m,5H),8.13(s,1H)
化合物24
H NMR(270MHz,CDCl)δ(ppm):0.74−1.08(m,2H),1.13−1.38(m,2H),1.51−1.80(m,7H),1.58(d,J=6.9Hz,3H),4.05(d,J=6.2Hz,2H),4.90−5.15(m,1H),6.58(d,J=6.5Hz,1H),7.24−7.38(m,5H),8.17(s,1H)
製剤例1:錠剤
常法により、次の組成からなる錠剤を調製する。
処方 化合物1 20 mg
乳糖 143.4mg
馬鈴薯デンプン 30 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
200 mg
製剤例2:注射剤
常法により、次の組成からなる注射剤を調製する。
処方 化合物10 2 mg
精製ダイズ油 200 mg
精製卵黄レシチン 24 mg
注射用グリセリン 50 mg
注射用蒸留水 1.72ml
2.00ml
【産業上の利用可能性】
本発明により、PLK阻害剤、PLK阻害作用または抗腫瘍活性等を有するピリミジン誘導体等が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

[式中、Arは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基を表し、
及びZは、同一または異なって窒素原子(N)またはCHを表し、
Xは水素原子、ニトロ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、−CONHR(式中、Rは水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表す)、シアノまたはテトラゾリルを表し、
1)Xがシアノまたはテトラゾリルを表す場合、
Yは水素原子を表し、
は−OR(式中、Rは置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)または−NR(式中、Rは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表し、Rは水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表すか、またはRとRが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する)を表し、
Wは−NHCR−(式中、R及びRは同一または異なって水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)または−NHCRCR5A6A−(式中、R及びRはそれぞれ前記と同義であり、R5A及びR6Aはそれぞれ前記R及びRと同義である)を表し、
2)Xがシアノ及びテトラゾリル以外の基を表す場合、
Yは水素原子、ニトロ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキルまたは−CONHR7A(式中、R7Aは水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換の複素環アルキルを表す)を表し、
は−OR2A(式中、R2Aは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)、−SR2B(式中、R2Bは前記R2Aと同義である)または−NR3A4A(式中、R3Aは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、R4Aは水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表すか、またはR3AとR4Aが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する)を表し、
Wは−NHCR5B6B−(式中、R5B及びR6Bは同一または異なって水素原子、ハロゲンまたは置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)、−NHCR5B6BCR5C6C−(式中、R5B及びR6Bはそれぞれ前記と同義であり、R5C及びR6Cはそれぞれ前記R5B及びR6Bと同義である)または−NHCR5B6BCR5C6CCR5D6D−(式中、R5B、R6B、R5C及びR6Cはそれぞれ前記と同義であり、R5D及びR6Dはそれぞれ前記R5B及びR6Bと同義である)を表す]で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するポロ様キナーゼ(Polo−like kinase、PLK)阻害剤。
【請求項2】
Xがシアノまたはテトラゾリルであり、
が−OR2a(式中、R2aは低級アルキル、シクロアルキルアルキルまたは脂環式複素環アルキルを表す)または−NR(式中、R及びRはそれぞれ前記と同義である)であり、
及びZが窒素原子(N)である請求の範囲1記載のPLK阻害剤。
【請求項3】
式(IA)

[式中、Arは置換または非置換の芳香族複素環基を表し、
nは0または1を表し、
は−OR10(式中、R10は低級アルキル、シクロアルキルアルキルまたは脂環式複素環アルキルを表す)または−NR1112(式中、R11は低級アルキル、シクロアルキルアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールを表し、R12は水素原子または低級アルキルを表すか、またはR11とR12が隣接する窒素原子と一緒になってテトラヒドロイソキノリン−2−イル、3,5−ジメチルピペリジノまたは2,6−ジメチルモルホリノを形成する)を表し、
9a、R9b、R9c及びR9dは、同一または異なって水素原子または低級アルキルを表す]で表されるピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
が−NHR11a(式中、R11aは置換もしくは非置換のアリールを表す)であり、R9a、R9b、R9c及びR9dが水素原子である請求の範囲3記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項5】
式(IB)

{式中、nは0または1を表し、
13は−OR17(式中、R17はシクロアルキルアルキルまたは含酸素脂環式複素環アルキルを表す)または−NR1819[式中、R18は低級アルキル、シクロアルキルアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは式(II)

(式中、nは1〜3の整数を表す)で表される基を表し、R19は水素原子または低級アルキルを表すか、またはR18とR19が隣接する窒素原子と一緒になってテトラヒドロイソキノリン−2−イル、3,5−ジメチルピペリジノまたは2,6−ジメチルモルホリノを形成する]を表し、
14a、R14b、R14c及びR14dは、同一または異なって水素原子または低級アルキルを表し、R15及びR16は同一または異なって水素原子、ハロゲン、低級アルキルまたは低級アルコキシを表すか、またはR15とR16が一緒になって−O(CHO−(式中、mは1または2を表す)を形成する}で表されるピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項6】
が0であり、R15及びR16が同一または異なって水素原子または低級アルコキシであるか、またはR15とR16が一緒になって−OCHO−である請求の範囲5記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項7】
請求の範囲1または2に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するPLKが関与する疾患の予防及び/または治療剤。
【請求項8】
PLK阻害剤の製造のための、請求の範囲1または2に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩の使用。
【請求項9】
PLKが関与する疾患の予防及び/または治療剤の製造のための、請求の範囲1または2に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩の使用。
【請求項10】
請求の範囲1または2に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、PLKが関与する疾患の予防及び/または治療方法。
【請求項11】
請求の範囲3〜6のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するPLK阻害剤。
【請求項12】
請求の範囲3〜6のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するPLKが関与する疾患の予防及び/または治療剤。
【請求項13】
請求の範囲3〜6のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する抗腫瘍剤。
【請求項14】
請求の範囲3〜6のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬。
【請求項15】
PLK阻害剤の製造のための、請求の範囲3〜6のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の使用。
【請求項16】
PLKが関与する疾患の予防及び/または治療剤の製造のための、請求の範囲3〜6のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の使用。
【請求項17】
請求の範囲3〜6のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、PLKが関与する疾患の予防及び/または治療方法。
【請求項18】
抗腫瘍剤の製造のための、請求の範囲3〜6のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の使用。
【請求項19】
請求の範囲3〜6のいずれかに記載のピリミジン誘導体またはその薬理学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、腫瘍の予防及び/または治療方法。

【国際公開番号】WO2004/043936
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【発行日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551234(P2004−551234)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014518
【国際出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】