説明

PLL回路

【課題】温度変動による位相雑音の悪化を低減することが可能なPLL回路を提供することを目的とする。
【解決手段】電圧制御発振回路81と、分周器82と、基準信号REF-INと発振信号Outputとの互いの位相を比較し、位相差に応じたパルス幅のパルス信号UP、DOWNを出力する位相比較器と、パルス信号UP、DOWNのパルス幅に応じた大きさのCP電流ICPp、ICPnを出力する出力電流補正機能付きチャージポンプ1と、CP電流ICPp、ICPnに応じてVt電圧を制御するループフィルタ85と、温度変動に応じて遅延時間が変化する遅延回路8とを備えてPLL回路100を構成し、遅延回路8の遅延時間に基づいて、CP電流ICPpとCP電流ICPnとの差が小さくなるように、CP電流ICPp又はCP電流ICPnを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度補償機能付きのPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、既存のPLL回路を示す図である。
図9に示すPLL回路80は、電圧制御発振回路81と、分周器82と、位相比較器83と、チャージポンプ84と、ループフィルタ85と、VCO選択部86とを備えて構成されている。
【0003】
分周器82は、電圧制御発振回路81から出力される発振信号Outputを1/Nに分周して出力する。
位相比較器83は、入力される発振信号REF-IN(基準信号)と、分周器82から出力される発振信号との互いの位相を比較し、発振信号REF-INに対して分周器82から出力される発振信号が遅れているときの位相差に応じたパルス幅のパルス信号UP(第1のパルス信号)を出力するとともに、発振信号REF-INに対して分周器82から出力される発振信号が進んでいるときの位相差に応じたパルス幅のパルス信号DOWN(第2のパルス信号)を出力する。
【0004】
チャージポンプ84は、位相比較器83から出力されるパルス信号UPのパルス幅に応じた大きさのCP電流ICPp(第1の出力電流)を出力するとともに、位相比較器83から出力されるパルス信号DOWNのパルス幅に応じた大きさのCP電流ICPn(第2の出力電流)を出力する。
【0005】
ループフィルタ85は、チャージポンプ84から出力されるCP電流ICPpに応じてVt電圧(制御電圧)を上げるとともに、チャージポンプ84から出力されるCP電流ICPnに応じてVt電圧を下げる。
【0006】
電圧制御発振回路81は、互いに異なる発振周波数帯域をもち、隣り合う発振周波数帯域同士が少しずつ重なり合う複数の電圧制御発振器を備え、VCO選択部86から出力される選択信号VCOに基づいて、複数の電圧制御発振器から1つの電圧制御発振器を選択するとともに、その選択した電圧制御発振器においてループフィルタ85から出力されるVt電圧に応じた周波数の発振信号Outputを出力する。なお、各電圧制御発振器から出力される発振信号Outputの周波数は、それぞれの発振周波数帯域において、Vt電圧が上がるに従って高くなるものとする。
【0007】
VCO選択部86は、ループフィルタ85から出力されるVt電圧が所定範囲に入るように選択信号VCOを出力する。
このように構成されるPLL回路80では、電圧制御発振回路81から出力される発振信号Outputの位相がパルス信号REF-INの位相にロックされるとともに、電圧制御発振回路81から出力される発振信号Outputの周波数が分周器82において設定される分周比1/Nにより制御される。
【0008】
また、PLL回路80は、複数の電圧制御発振器を備えているので、広い発振周波数帯域において、発振信号Outputを出力することができる。
図10(a)は、チャージポンプ84の一例を示す図である。
【0009】
図10(a)に示すチャージポンプ84は、pチャネルのMOSFET87、88及び定電流源89から構成されるカレントミラー回路90と、nチャネルのMOSFET91、92及び定電流源93から構成されるカレントミラー回路94と、カレントミラー回路90と出力端子CPOとの間に設けられるスイッチ95と、出力端子CPOとカレントミラー回路94との間に設けられるスイッチ96とを備えて構成されている。
【0010】
パルス信号UPがハイレベルになりスイッチ95がオンすると、出力端子CPOにカレントミラー回路90に流れるCP電流ICPpが流れてループフィルタ85から出力されるVt電圧が上がる。一方、パルス信号DOWNがハイレベルになりスイッチ96がオンすると、出力端子CPOにカレントミラー回路94に流れるCP電流ICPnが流れてループフィルタ85から出力されるVt電圧が下がる。
【0011】
ところで、MOSFET87、88、91、92がそれぞれもつ特性により、CP電流ICPpはVt電圧が上がるに従って小さくなり、CP電流ICPnはVt電圧が上がるに従って大きくなる。
【0012】
そして、電流ICPpと電流ICPnとの差が大きくなると、発振信号Outputにおける位相雑音が悪化してしまう。
そのため、VCO選択部86は、電流ICPpと電流ICPnとの差が大きくならないように、選択信号VCOを出力する必要がある。
【0013】
そこで、通常、図10(b)に示すように、あるVt電圧においてCP電流ICPpと電流ICPnとが一致するようにチャージポンプ84を設計し、そのCP電流ICPpと電流ICPnとが一致するVt電圧を中心とするVASロック範囲内でVt電圧が制御されるようにVCO選択部86から選択信号VCOが出力される。
【0014】
また、このように構成されるPLL回路80では、発振信号Outputの位相がパルス信号REF-INの位相にロックされた後に、温度変動があると、電圧制御発振回路81から出力される発振信号Outputの周波数を一定に保つためにVt電圧が変化する。すなわち、温度が上昇すると、発振信号Outputの周波数が高くなり、分周器82から出力される発振信号の位相が発振信号REF-INの位相に対して遅れるため、Vt電圧が大きくなる。一方、温度が下降すると、発振信号Outputの周波数が低くなり、分周器82から出力される発振信号の位相が発振信号REF-INの位相に対して進むため、Vt電圧が小さくなる。
【0015】
しかしながら、温度変動によりVt電圧が大きく変化すると、CP電流ICPpとCP電流ICPnとの差が大きくなってしまう。すなわち、図10(b)に示すように、Vt電圧が上がると、CP電流ICPnが大きくなるとともにCP電流ICPpが小さくなるため、CP電流ICPpとCP電流ICPnとの差が大きくなってしまう。また、Vt電圧が下がると、CP電流ICPpが大きくなるとともにCP電流ICPnが小さくなるため、CP電流ICPpとCP電流ICPnとの差が大きくなってしまう。そして、CP電流ICPpとCP電流ICPnとの差が大きくなってしまうと、上述したように、位相雑音が悪化するという問題がある。
【0016】
CP電流ICPpとCP電流ICPnとの差を小さくするための構成としては、例えば、CP電流ICPpとCP電流ICPnとの差を抽出し、その差がゼロになるようにCP電流ICPpを補正するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2008−87115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明では、温度変動による位相雑音の悪化を抑えることが可能なPLL回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のPLL回路は、制御電圧が上がるに従って高くなる周波数の発振信号を出力する電圧制御発振回路と、前記電圧制御発振回路から出力される発振信号を分周して出力する分周器と、基準信号と、前記分周器から出力される発振信号との互いの位相を比較し、前記基準信号の位相に対して前記分周器から出力される発振信号の位相が遅れているときのそれら信号の位相差に応じたパルス幅の第1のパルス信号を出力するとともに、前記基準信号の位相に対して前記分周器から出力される発振信号の位相が進んでいるときのそれら信号の位相差に応じたパルス幅の第2のパルス信号を出力する位相比較器と、前記位相比較器から出力される第1のパルス信号のパルス幅に応じた大きさの第1の出力電流を出力するとともに、前記位相比較器から出力される第2のパルス信号のパルス幅に応じた大きさの第2の出力電流を出力するチャージポンプと、前記第1の出力電流に応じて前記制御電圧を上げるとともに、前記第2の出力電流に応じて前記制御電圧を下げるループフィルタと、温度変動に応じて遅延時間が変化する遅延回路と、前記遅延回路の遅延時間に基づいて、前記第1の出力電流と前記第2の出力電流との差が小さくなるように、前記第1の出力電流又は前記第2の出力電流を補正する出力電流補正手段とを備える。
【0020】
これにより、温度が変動しても、第1の出力電流と第2の出力電流との差が大きくなることを低減することができるので、温度変動による位相雑音の悪化を抑えることができる。
【0021】
また、上記PLL回路において、前記電圧制御発振回路から出力される発振信号の周波数は、温度が上昇するに従って高くなり、温度が下降するに従って低くなり、前記チャージポンプは、所定の制御電圧において第1の出力電流と第2の出力電流とが一致するように設計され、前記遅延回路は、温度が上昇するに従って遅延時間が長くなり、温度が下降するに従って遅延時間が短くなり、前記出力電流補正手段は、前記遅延回路の遅延時間が長くなると、前記第1の出力電流を増加させ、前記遅延回路の遅延時間が短くなると、前記第2の出力電流を増加させるように構成してもよい。
【0022】
また、前記出力電流補正手段は、前記遅延回路の遅延時間を記憶する第1の記憶手段と、前記第1の記憶手段に遅延時間が記憶されてから所定時間経過毎に前記遅延回路の遅延時間を記憶する第2の記憶手段とを備え、前記第1の記憶手段に記憶される遅延時間から前記第2の記憶手段に記憶される遅延時間を減算した値がマイナスのとき、前記第1の記憶手段に記憶される遅延時間と前記第2の記憶手段に記憶される遅延時間との差分、前記第1の出力電流を増加させ、前記第1の記憶手段に記憶される遅延時間から前記第2の記憶手段に記憶される遅延時間を減算した値がプラスのとき、前記第1の記憶手段に記憶される遅延時間と前記第2の記憶手段に記憶される遅延時間との差分、前記第2の出力電流を増加させるように構成してもよい。
【0023】
また、上記PLL回路は、前記ループフィルタから出力される制御電圧が所定範囲に入るように選択信号を出力する選択手段を備え、前記電圧制御発振回路は、互いに異なる発振周波数帯域をもつ複数の電圧制御発振器を備え、前記選択手段から出力される選択信号に基づいて複数の電圧制御発振器から1つの電圧制御発振器を選択し、その選択した電圧制御発振器において前記制御電圧に応じた周波数の発振信号を出力するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、PLL回路において、温度変動による位相雑音の悪化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態のPLL回路を示す図である。
【図2】出力電流補正機能付きチャージポンプを示す図である。
【図3】出力電流補正部の各構成の出力タイミングチャートを示す図である。
【図4】遅延回路の一例を示す図である。
【図5】ワンショットパルス発生回路の一例を示す図である。
【図6】減算器の一例を示す図である。
【図7】演算回路の一例を示す図である。
【図8】レジスタに記憶される値の一例及びスイッチをON、OFFさせるための信号の一例を示す図である。
【図9】既存のPLL回路を示す図である。
【図10】チャージポンプの構成と動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の実施形態のPLL回路を示す図である。なお、図9に示す構成と同じ構成には同じ符号を付している。
図1に示すPLL回路100は、電圧制御発振回路81と、分周器82と、位相比較器83と、ループフィルタ85と、VCO選択部86(選択手段)と、出力電流補正機能付きチャージポンプ1(チャージポンプ)とを備えて構成されている。
【0027】
図2は、出力電流補正機能付きチャージポンプ1を示す図である。なお、図10(a)に示す構成と同じ構成には同じ符号を付している。
図2に示す出力電流補正機能付きチャージポンプ1は、チャージポンプ部2と、出力電流補正部3とを備えて構成されている。
【0028】
チャージポンプ部2は、MOSFET87、88及び定電流源89から構成されるカレントミラー回路90と、MOSFET91、92及び定電流源93から構成されるカレントミラー回路94と、スイッチ95、96と、pチャネルの複数のMOSFET4(4−0〜4−7)と、nチャネルの複数のMOSFET5(5−0〜5−7と)、複数のスイッチ6(6−0〜6−7)と、複数のスイッチ7(7−0〜7−7)とを備えて構成されている。なお、スイッチ6−0〜6−8は、それぞれ、pチャネルのMOSFETにより構成され、スイッチ7−0〜7−7は、それぞれ、nチャネルのMOSFETにより構成されているものとする。また、MOSFET4、MOSFET5、スイッチ6、及びスイッチ7のそれぞれの個数は特に限定されない。
【0029】
各MOSFET4と各スイッチ6はそれぞれ互いに直列接続され、それらはMOSFET88及びスイッチ95に並列接続されているため、ONになるスイッチ6が増えると、そのスイッチ6に対応するMOSFET4に電流が流れ始め出力端子CPOに流れるCP電流ICPpが大きくなる。また、各MOSFET5と各スイッチ7はそれぞれ互いに直列接続され、それらはMOSFET91及びスイッチ96に並列接続されているため、ONになるスイッチ7が増えると、そのスイッチ7に対応するMOSFET5に電流が流れ始め出力端子CPOに流れるCP電流ICPnが大きくなる。
【0030】
出力電流補正部3は、遅延回路8と、D型のフリップフロップ9〜31と、レジスタ32と(第1の記憶手段)、レジスタ33(第2の記憶手段)と、Mビットカウンタ34と、減算器35と、ワンショットパルス発生器36と、演算回路37と、OR回路38とを備えて構成されている。
【0031】
なお、フリップフロップ9〜31、レジスタ32、33、Mビットカウンタ34、減算器35、ワンショットパルス発生器36、演算回路37、及びOR回路38により、特許請求の範囲に記載される出力電流補正手段を構成するものとする。
【0032】
図3は、出力電流補正部3の各構成の出力タイミングチャートを示す図である。
フリップフロップ9は、外部からOR回路38を介して入力端子Dに入力されるスタート信号STRがローレベルからハイレベルになった後、外部からクロック端子Cに入力されるクロック信号CLKがローレベルからハイレベルになると、出力端子Qから出力される信号data1がローレベルからハイレベルになる。
【0033】
遅延回路8は、フリップフロップ9から出力される信号data1を所定時間遅延させて信号data2を出力する。なお、遅延回路8を構成するための素子は特に限定されないが、例えば、図4に示すように、コンデンサ40と、抵抗41と、インバータ42、43とを備えて遅延回路8を構成してもよい。
【0034】
フリップフロップ10〜23は、互いに直列接続され、それぞれのクロック端子Cにクロック信号CLKが入力される。
まず、フリップフロップ9の出力端子Qからフリップフロップ10の入力端子Dへ入力される信号data1がローレベルからハイレベルになった後、クロック信号CLKがローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ10の出力端子Qから出力される信号がローレベルからハイレベルになる。
【0035】
次に、フリップフロップ10の出力端子Qからフリップフロップ11の入力端子Dへ入力される信号がローレベルからハイレベルになった後、クロック信号CLKがローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ11の出力端子Qから出力される信号がローレベルからハイレベルになる。
【0036】
同様に、フリップフロップ12〜23において、前段のフリップフロップの出力信号がハイレベルになった後、クロック信号CLKがハイレベルになると、後段のフリップフロップから出力される信号がハイレベルになる。
【0037】
このように、フリップフロップ9〜23は、スタート信号STRがローレベルからハイレベルになると、クロック信号CLKがローレベルからハイレベルになる度に、順番に出力信号をローレベルからハイレベルにする。
【0038】
フリップフロップ24〜31は、互いに直列接続され、それぞれの入力端子Dに遅延回路8から出力される信号data2が入力される。
例えば、信号data2がローレベルからハイレベルになった後に、フリップフロップ15の出力端子Qからフリップフロップ24のクロック端子Cに入力される信号X0がローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ24の出力端子Qから出力される信号Q0がローレベル(0)からハイレベル(1)になる。
【0039】
また、信号data2がローレベルからハイレベルになった後に、フリップフロップ16の出力端子Qからフリップフロップ25のクロック端子Cに入力される信号X1がローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ25の出力端子Qから出力される信号Q1がローレベルからハイレベルになる。
【0040】
また、信号data2がローレベルからハイレベルになった後に、フリップフロップ17の出力端子Qからフリップフロップ26のクロック端子Cに入力される信号X2がローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ26の出力端子Qから出力される信号Q2がローレベルからハイレベルになる。
【0041】
また、信号data2がローレベルからハイレベルになった後に、フリップフロップ18の出力端子Qからフリップフロップ27のクロック端子Cに入力される信号X3がローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ27の出力端子Qから出力される信号Q3がローレベルからハイレベルになる。
【0042】
また、信号data2がローレベルからハイレベルになった後に、フリップフロップ19の出力端子Qからフリップフロップ28のクロック端子Cに入力される信号X4がローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ28の出力端子Qから出力される信号Q4がローレベルからハイレベルになる。
【0043】
また、信号data2がローレベルからハイレベルになった後に、フリップフロップ20の出力端子Qからフリップフロップ29のクロック端子Cに入力される信号X5がローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ29の出力端子Qから出力される信号Q5がローレベルからハイレベルになる。
【0044】
また、信号data2がローレベルからハイレベルになった後に、フリップフロップ21の出力端子Qからフリップフロップ30のクロック端子Cに入力される信号X6がローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ30の出力端子Qから出力される信号Q6がローレベルからハイレベルになる。
【0045】
また、信号data2がローレベルからハイレベルになった後に、フリップフロップ22の出力端子Qからフリップフロップ31のクロック端子Cに入力される信号X7がローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ31の出力端子Qから出力される信号Q7がローレベルからハイレベルになる。
【0046】
また、フリップフロップ23の出力端子Qから出力される信号A0がOR回路38を介してフリップフロップ9の入力端子Dに入力されるため、信号A0がローレベルからハイレベルになった後、クロック信号CLKがローレベルからハイレベルになると、再びフリップフロップ9の出力端子Qから出力される信号data1がローレベルからハイレベルになる。すなわち、フリップフロップ15〜22から信号X0〜X7が繰り返し出力され、フリップフロップ24〜31から遅延回路81の遅延時間を示す信号Q0〜Q7が繰り返し出力される。
【0047】
ワンショットパルス発生器36は、フリップフロップ23の出力端子Qから出力される信号A0がローレベルからハイレベルになった後、クロック信号CLKがローレベルからハイレベルになると、1パルスの信号A1を出力する。例えば、ワンショットパルス発生器36は、図5に示すように、D型のフリップフロップ60、61と、NOR回路62とを備えて構成してもよい。
【0048】
ワンショットパルス発生器36から1パルスの信号A1が出力されると、信号Q0〜Q7がD1[0]〜D1[7]としてレジスタ32に記憶されるとともに、信号Q0〜Q7がD2[0]〜D2[7]としてレジスタ33に記憶される。
【0049】
Mビットカウンタ34は、入力されるクロック信号CLKのクロックを所定数(スタート信号STRがローレベルからハイレベルになってから信号Q0〜Q7がD1[0]〜D1[7]としてレジスタ32に記憶されるまでの時間よりも長い時間に相当するクロック数)カウントする毎に、1パルスの信号Bを出力する。
【0050】
Mビットカウンタ34から1パルスの信号Bが出力される度に、信号Q0〜Q7がD2[0]〜D2[7]としてレジスタ33に上書きされる。
このように、遅延回路8、フリップフロップ9〜31、レジスタ32、33、Mビットカウンタ34、ワンショットパルス発生器36、及びOR回路38により、スタート信号STRがローレベルからハイレベルになると、初期状態の遅延回路8の遅延時間を示す信号Q0〜Q7がD1[0]〜D1[7]としてレジスタ32、33にそれぞれ記憶され、その後、所定時間経過毎に遅延回路8の遅延時間を示す信号Q0〜Q7がD2[0]〜D2[7]としてレジスタ33に上書きされる。
【0051】
所定時間経過後に信号Q0〜Q7がD2[0]〜D2[7]としてレジスタ33に記憶されるとき、初期状態に比べて温度が上昇していると、遅延回路8の遅延時間が長くなるため、D2[0]〜D2[7]における「0」の個数がD1[0]〜D1[7]に比べて多くなる。一方、所定時間経過後に信号Q0〜Q7がD2[0]〜D2[7]としてレジスタ33に記憶されるとき、初期状態に比べて温度が下降していると、遅延回路8の遅延時間が短くなるため、D2[0]〜D2[7]における「0」の個数がD1[0]〜D1[7]に比べて少なくなる。
【0052】
演算器35は、D1[0]〜D1[7]における「0」の個数からD2[0]〜D2[7]における「0」の個数を減算した値(レジスタ32に記憶される遅延時間からレジスタ33に記憶される遅延時間を減算した値)がマイナスの場合、すなわち、温度が上昇して遅延時間が長くなった場合、ローレベルの信号Cを出力する。また、減算器35は、D1[0]〜D1[7]における「0」の個数からD2[0]〜D2[7]における「0」の個数を減算した値(レジスタ32に記憶される遅延時間からレジスタ33に記憶される遅延時間を減算した値)がプラスの場合、すなわち、温度が下降して遅延時間が短くなった場合、ハイレベルの信号Cを出力する。
【0053】
例えば、減算器35は、図6に示すように、複数の全加算器50(50−0〜50−7)と、複数のインバータ51(51−0〜51−7)とを備えて構成してもよい。各全加算器50は、それぞれ、OR回路52と、半加算器53、54とを備えている。半加算器53、54は、それぞれ、XOR回路55と、AND回路56とを備えている。
【0054】
ここで、D1[0]〜D1[3]がそれぞれ「0」、D1[4]〜D1[7]がそれぞれ「1」、D2[0]〜D2[5]がそれぞれ「0」、D2[6]及びD2[7]がそれぞれ「1」になった場合を考える。この場合、全加算器50−0〜50−3のそれぞれの出力がハイレベルになり、全加算器50−4〜50−7のそれぞれの出力がローレベルになるため、減算器35の出力である信号Cはローレベルになる。また、D1[0]〜D1[3]がそれぞれ「0」、D1[4]〜D1[7]がそれぞれ「1」、D2[0]〜D2[2]がそれぞれ「0」、D2[3]〜D2[7]がそれぞれ「1」になった場合は、全加算器50−0〜50−3のそれぞれの出力がローレベルになり、全加算器50−3〜50−7のそれぞれの出力がハイレベルになるため、減算器35の出力である信号Cはハイレベルになる。
【0055】
演算回路37は、レジスタ33に記憶されるD2[0]がレジスタ32に記憶されるD1[0]と異なる場合に、減算器35から出力される信号Cがローレベルのとき、スイッチ6−0をON、OFFさせるための信号SA[0]をローレベル(0)にしてスイッチ6−0をONさせ、減算器35から出力される信号Cがハイレベルのとき、スイッチ7−0をON、OFFさせるための信号SB[0]をハイレベルにしてスイッチ7−0をONさせる。
【0056】
また、演算回路37は、レジスタ33に記憶されるD2[1]がレジスタ32に記憶されるD1[1]と異なる場合に、減算器35から出力される信号Cがローレベルのとき、スイッチ6−1をON、OFFさせるための信号SA[1]をローレベルにしてスイッチ6−1をONさせ、減算器35から出力される信号Cがハイレベルのとき、スイッチ7−1をON、OFFさせるための信号SB[1]をハイレベルにしてスイッチ7−1をONさせる。
【0057】
また、演算回路37は、レジスタ33に記憶されるD2[2]がレジスタ32に記憶されるD1[2]と異なる場合に、減算器35から出力される信号Cがローレベルのとき、スイッチ6−2をON、OFFさせるための信号SA[2]をローレベルにしてスイッチ6−2をONさせ、減算器35から出力される信号Cがハイレベルのとき、スイッチ7−2をON、OFFさせるための信号SB[2]をハイレベルにしてスイッチ7−2をONさせる。
【0058】
また、演算回路37は、レジスタ33に記憶されるD2[3]がレジスタ32に記憶されるD1[3]と異なる場合に、減算器35から出力される信号Cがローレベルのとき、スイッチ6−3をON、OFFさせるための信号SA[3]をローレベルにしてスイッチ6−3をONさせ、減算器35から出力される信号Cがハイレベルのとき、スイッチ7−3をON、OFFさせるための信号SB[3]をハイレベルにしてスイッチ7−3をONさせる。
【0059】
また、演算回路37は、レジスタ33に記憶されるD2[4]がレジスタ32に記憶されるD1[4]と異なる場合に、減算器35から出力される信号Cがローレベルのとき、スイッチ6−4をON、OFFさせるための信号SA[4]をローレベルにしてスイッチ6−4をONさせ、減算器35から出力される信号Cがハイレベルのとき、スイッチ7−4をON、OFFさせるための信号SB[4]をハイレベルにしてスイッチ7−4をONさせる。
【0060】
また、演算回路37は、レジスタ33に記憶されるD2[5]がレジスタ32に記憶されるD1[5]と異なる場合に、減算器35から出力される信号Cがローレベルのとき、スイッチ6−5をON、OFFさせるための信号SA[5]をローレベルにしてスイッチ6−5をONさせ、減算器35から出力される信号Cがハイレベルのとき、スイッチ7−5をON、OFFさせるための信号SB[5]をハイレベルにしてスイッチ7−5をONさせる。
【0061】
また、演算回路37は、レジスタ33に記憶されるD2[6]がレジスタ32に記憶されるD1[6]と異なる場合に、減算器35から出力される信号Cがローレベルのとき、スイッチ6−6をON、OFFさせるための信号SA[6]をローレベルにしてスイッチ6−6をONさせ、減算器35から出力される信号Cがハイレベルのとき、スイッチ7−6をON、OFFさせるための信号SB[6]をハイレベルにしてスイッチ7−6をONさせる。
【0062】
また、演算回路37は、レジスタ33に記憶されるD2[7]がレジスタ32に記憶されるD1[7]と異なる場合に、減算器35から出力される信号Cがローレベルのとき、スイッチ6−7をON、OFFさせるための信号SA[7]をローレベルにしてスイッチ6−7をONさせ、減算器35から出力される信号Cがハイレベルのとき、スイッチ7−7をON、OFFさせるための信号SB[7]をハイレベルにしてスイッチ7−7をONさせる。
【0063】
なお、初期状態では、レジスタ32、33にそれぞれ同じ値が記憶されるため、スイッチ6−0〜6−7及びスイッチ7−0〜7−7はすべてOFFになる。
例えば、演算回路37は、図7に示すように、複数の比較回路70(70−0〜70−7)を備えて構成してもよい。各比較回路70は、それぞれ、XOR(排他的論理和)回路71と、AND回路72と、OR回路73と、インバータ74とを備えている。
【0064】
ここで、例えば、図8(a)に示すように、初期状態に比べて温度が上昇してD1[0]〜D1[3]がそれぞれ「0」、D1[4]〜D1[7]がそれぞれ「1」、D2[0]〜D2[5]がそれぞれ「0」、D2[6]及びD2[7]がそれぞれ「1」になった場合を考える。この場合、比較回路70−4、70−5の各XOR回路71の出力がハイレベル(1)になり、信号Cがローレベル(0)になるため、比較回路70−4、70−5の各インバータ74の出力がローレベル(0)になり、比較回路70−4、70−5の各OR回路73の出力であるSA[4]及びSA[5]がそれぞれローレベル(0)になる。従って、スイッチ6−4、6−5がそれぞれONする。これにより、MOSFET4−4、4−5にそれぞれ電流が流れるため、電流ICPpを増加させることができる。
【0065】
また、例えば、図8(b)に示すように、初期状態に比べて温度が下降してD1[0]〜D1[3]がそれぞれ「0」、D1[4]〜D1[7]がそれぞれ「1」、D2[0]〜D2[2]がそれぞれ「0」、D2[3]〜D2[7]がそれぞれ「1」になった場合を考える。この場合、比較回路70−3のXOR回路71の出力がハイレベル(1)になり、信号Cがハイレベル(1)になるため、AND回路72の出力であるSB[3]がハイレベル(1)になる。従って、スイッチ7−3がONする。これにより、MOSFET5−3に電流が流れるため、電流ICPnを増加させることができる。
【0066】
このように、減算器35及び演算回路37により、初期状態に比べて温度が上昇した分(レジスタ32に記憶される遅延時間とレジスタ33に記憶される遅延時間との差分)、ONさせるスイッチ6の個数を増やしてCP電流ICPpを増加させ、初期状態に比べて温度が下降した分(レジスタ32に記憶される遅延時間とレジスタ33に記憶される遅延時間との差分)、ONさせるスイッチ7の個数を増やしてCP電流ICPnを増加させることができる。
【0067】
なお、ONさせるスイッチ4、5の個数は、CP電流ICPpとCP電流ICPnとの差がゼロに近づくように設定されているものとする。
本実施形態のPLL回路100によれば、初期状態に比べて温度が上昇すると、その分電流ICPpを増加させることができるとともに、初期状態に比べて温度が下降すると、その分電流ICPnを増加させることができる。これにより、初期状態に比べて温度が上昇して電圧制御発振回路81から出力される発振信号Outputの周波数が高くなっても、又は、初期状態に比べて温度が下降して発振信号Outputの周波数が低くなっても、電流ICPpと電流ICPnとの差が大きくなることを低減することができるので、温度変動による位相雑音の悪化を抑えることができる。
【0068】
なお、上記実施形態のPLL回路100では、複数の電圧制御発振器により複数の発振周波数帯域を電圧制御発振回路81にもたせる構成であるが、複数の電圧制御発振器を備えず1つの発振周波数帯域のみを電圧制御発振回路81にもたせるように構成してもよい。このように構成する場合、VCO選択部86は省略してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 出力電流補正機能付きチャージポンプ
2 チャージポンプ部
3 出力電流補正部
4、5 MOSFET
6、7 スイッチ
8 遅延回路
9〜31 フリップフロップ
32、33 レジスタ
34 Mビットカウンタ
35 減算器
36 ワンショットパルス発生器
37 演算回路
38 OR回路
80 PLL回路
81 電圧制御発振回路
82 分周器
83 位相比較器
84 チャージポンプ
85 ループフィルタ
86 VCO選択部
87、88 MOSFET
89 定電流源
90 カレントミラー回路
91、92 MOSFET
93 定電流源
94 カレントミラー回路
95、96 スイッチ
100 PLL回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電圧が上がるに従って高くなる周波数の発振信号を出力する電圧制御発振回路と、
前記電圧制御発振回路から出力される発振信号を分周して出力する分周器と、
基準信号と、前記分周器から出力される発振信号との互いの位相を比較し、前記基準信号の位相に対して前記分周器から出力される発振信号の位相が遅れているときのそれら信号の位相差に応じたパルス幅の第1のパルス信号を出力するとともに、前記基準信号の位相に対して前記分周器から出力される発振信号の位相が進んでいるときのそれら信号の位相差に応じたパルス幅の第2のパルス信号を出力する位相比較器と、
前記位相比較器から出力される第1のパルス信号のパルス幅に応じた大きさの第1の出力電流を出力するとともに、前記位相比較器から出力される第2のパルス信号のパルス幅に応じた大きさの第2の出力電流を出力するチャージポンプと、
前記第1の出力電流に応じて前記制御電圧を上げるとともに、前記第2の出力電流に応じて前記制御電圧を下げるループフィルタと、
温度変動に応じて遅延時間が変化する遅延回路と、
前記遅延回路の遅延時間に基づいて、前記第1の出力電流と前記第2の出力電流との差が小さくなるように、前記第1の出力電流又は前記第2の出力電流を補正する出力電流補正手段と、
を備えることを特徴とするPLL回路。
【請求項2】
請求項1に記載のPLL回路であって、
前記電圧制御発振回路から出力される発振信号の周波数は、温度が上昇するに従って高くなり、温度が下降するに従って低くなり、
前記チャージポンプは、所定の制御電圧において第1の出力電流と第2の出力電流とが一致するように設計され、
前記遅延回路は、温度が上昇するに従って遅延時間が長くなり、温度が下降するに従って遅延時間が短くなり、
前記出力電流補正手段は、前記遅延回路の遅延時間が長くなると、前記第1の出力電流を増加させ、前記遅延回路の遅延時間が短くなると、前記第2の出力電流を増加させる
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のPLL回路であって、
前記出力電流補正手段は、
前記遅延回路の遅延時間を記憶する第1の記憶手段と、
前記第1の記憶手段に遅延時間が記憶されてから所定時間経過毎に前記遅延回路の遅延時間を記憶する第2の記憶手段と、
を備え、
前記第1の記憶手段に記憶される遅延時間から前記第2の記憶手段に記憶される遅延時間を減算した値がマイナスのとき、前記第1の記憶手段に記憶される遅延時間と前記第2の記憶手段に記憶される遅延時間との差分、前記第1の出力電流を増加させ、前記第1の記憶手段に記憶される遅延時間から前記第2の記憶手段に記憶される遅延時間を減算した値がプラスのとき、前記第1の記憶手段に記憶される遅延時間と前記第2の記憶手段に記憶される遅延時間との差分、前記第2の出力電流を増加させる
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のPLL回路であって、
前記ループフィルタから出力される制御電圧が所定範囲に入るように選択信号を出力する選択手段を備え、
前記電圧制御発振回路は、互いに異なる発振周波数帯域をもつ複数の電圧制御発振器を備え、前記選択手段から出力される選択信号に基づいて複数の電圧制御発振器から1つの電圧制御発振器を選択し、その選択した電圧制御発振器において前記制御電圧に応じた周波数の発振信号を出力する
ことを特徴とするPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−252126(P2010−252126A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100499(P2009−100499)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】