説明

POSシステム

【課題】購入金額の大きい優良顧客を固定化するとともに、遠方や競合店の周辺に居住している顧客を吸引して商圏の拡大を図ることを目的とする。
【解決手段】取引毎に還元サービスの内容を決定するように構成されるPOSシステムにおいて、顧客の住所関連情報を記憶する記憶手段と、顧客を特定する顧客カードの読取手段と、を備えてなり、取引額及び前記住所関連情報に応じて還元サービスの内容を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取引毎に顧客に対する還元サービスの内容を決定するように構成されるPOSシステム(販売時点情報管理システム)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小売流通業において、従来のチラシ配布や特売等のマスマーケティングから脱却して、ワンツーワンマーケティングを実現しようとする動きが活発化している。実際、特売品の多くは購入金額の少ない客層(下位20%)のバーゲンハンターによって購入されており、優良固定顧客への恩恵が少ないことから、販売促進の仕方が問題視されている。例えば、購入金額が多い上位20%の優良顧客が店の売上の75%をカバーし、その金額は購入金額が少ない下位20%の顧客の50倍に当たると報告されている事例もある。
【0003】
そこで、従来の販促費用を、購入金額に応じて付与するポイント等として顧客に振り分けることにより、優良顧客を固定化していく手法としてFSP(FREQUENT SHOPPERS PROGRAM)が考えられている。FSPの実施手段としては、商品販売時に、レジスター端末が、顧客カードから読み取られる顧客識別コード及び取引額をストアコントローラーに送信し、ストアコントローラーが、取引額に応じたポイントを算定して該当顧客の累計ポイントに加算するようにしたPOSシステムが採用されている。
【0004】
また、FSPによる顧客の囲い込みを強化策として、購入金額のみをポイント算定の基礎とするのではなく、さらに顧客の購買履歴や来店頻度に応じて、ポイント算定倍率や割引率の変更等が行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3272525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
顧客の購買履歴や来店頻度に応じてポイント算定倍率を変更すれば、顧客の囲い込みに一定の効果を上げることができるものの、遠方や競合店の周辺に居住している顧客を吸引できる効果まで発揮することは難しく、商圏の拡大には至っていない。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みて、購入金額の大きい優良顧客を固定化するとともに、遠方や競合店の周辺に居住している顧客を吸引して商圏の拡大を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、取引毎に還元サービスの内容を決定するように構成されるPOSシステムにおいて、顧客の住所関連情報を記憶する記憶手段と、顧客を特定する顧客カードの読取手段と、を備えてなり、取引額及び前記住所関連情報に応じて還元サービスの内容を決定することを特徴とするPOSシステムを提供する。なお、ここで「住所関連情報」とは、各顧客が顧客住所から来店するために費やす時間、費用、労力等の度合いを評価するための情報であって、これには、顧客住所から店舗までの「距離」、顧客住所から店舗まで移動するための「所要時間」、顧客住所との「競合店の位置関係」、顧客住所から来店するために使用される「交通手段」等に基づいて設定されるすべての情報が含まれる。
【0008】
請求項2の発明は、取引毎に還元サービスの内容を決定するように構成されるPOSシステムにおいて、顧客の住所関連情報を記憶する顧客カードの読取手段を備えてなり、取引額及び前記住所関連情報に応じて還元サービスの内容を決定することを特徴とするPOSシステムを提供する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のPOSシステムにおいて、前記還元サービスはポイントの付与であって、前記住所関連情報に応じて付与される特別ポイントを決定し、取引額に応じて付与される通常ポイントに加算することを特徴とするPOSシステムを提供する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載のPOSシステムにおいて、前記特別ポイントと、前記通常ポイントと、前記特別ポイントが特別ポイントである旨のメッセージと、を顧客カード又はレシートに表示することを特徴とするPOSシステムを提供する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のPOSシステムにおいて、前記住所関連情報には、顧客住所から店舗までの距離に基づいて設定される距離情報が含まれていることを特徴とするPOSシステムを提供する。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のPOSシステムにおいて、前記住所関連情報には、顧客住所から店舗まで移動するための所要時間に基づいて設定される時間情報が含まれていることを特徴とするPOSシステムを提供する。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載のPOSシステムにおいて、前記住所関連情報には、顧客住所と競合店との位置関係に基づいて設定される競合店情報が含まれていることを特徴とするPOSシステムを提供する。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載のPOSシステムにおいて、前記住所関連情報には、顧客が来店するために使用する交通手段に基づいて設定される交通手段情報が含まれていることを特徴とするPOSシステムを提供する。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載のPOSシステムにおいて、前記住所関連情報には、顧客住所の属する居住区域に基づいて設定される区域情報が含まれていることを特徴とするPOSシステムを提供する。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載のPOSシステムにおいて、
新規顧客を店に紹介した顧客の所定期間内の来店に対して、還元サービスの内容を優待することを特徴とするPOSシステムを提供する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1又は2に記載のPOSシステムによれば、以下の優れた効果を発揮し得るものである。取引額のみならず顧客の住所関連情報に応じて、還元サービスの内容を決定するので、顧客が来店するために費やす時間・金額・労力の違い等を還元サービスの内容に反映させることができ、その結果として、より広い地域範囲における顧客の囲い込みを図ることができる。
【0018】
請求項3に記載のPOSシステムによれば、請求項1又は2に記載のPOSシステムが奏する効果に加えて、以下の優れた効果を発揮し得るものである。住所関連情報に応じて付与される特別ポイントを決定し、取引額に応じて付与される通常ポイントに加算することしたので、取引額の多い顧客を通常ポイントの付与で固定化する一方、顧客が来店するために費やす時間・金額・労力等に見合った特別ポイントの付与で、より広い地域的範囲における顧客の囲い込みを図ることができる。
【0019】
請求項4に記載のPOSシステムによれば、請求項3に記載のPOSシステムが奏する効果に加えて、以下の優れた効果を発揮し得るものである。特別ポイントについて、通常ポイントと分けて、しかも特別ポイントである旨のメッセージを表示することとしたので、顧客に対して、来店のために費やす時間・金額・労力等に見合った優待がなされていることを知らせることができる。
【0020】
請求項5に記載のPOSシステムによれば、請求項1乃至4に記載のPOSシステムが奏する効果に加えて、以下の優れた効果を発揮し得るものである。顧客住所から店舗までの距離に基づいて設定される距離情報に応じて還元サービスの内容を決定するので、店舗から遠方に居住する顧客への還元サービスを手厚くする等、遠方からの来店について動機付けを図ることができる。
【0021】
請求項6に記載のPOSシステムによれば、請求項1乃至5に記載のPOSシステムが奏する効果に加えて、以下の優れた効果を発揮し得るものである。顧客住所から店舗まで移動するための所要時間に基づいて設定される時間情報に応じて還元サービスの内容を決定するので、来店の所要時間が長い顧客への還元サービスを手厚くする等、来店に時間がかかる顧客に対して来店の動機付けを図ることができる。
【0022】
請求項7に記載のPOSシステムによれば、請求項1乃至6に記載のPOSシステムが奏する効果に加えて、以下の優れた効果を発揮し得るものである。顧客住所と競合店との位置関係に基づいて設定される競合店情報に応じて還元サービスの内容を決定するので、競合店の近所に居住する顧客への還元サービスを手厚くする等、競合店の販売エリアに居住する顧客に対して来店の動機付けを図ることができる。
【0023】
請求項8に記載のPOSシステムによれば、請求項1乃至7に記載のPOSシステムが奏する効果に加えて、以下の優れた効果を発揮し得るものである。顧客が来店するために使用する交通手段に基づいて設定される交通手段情報に応じて還元サービスの内容を決定するので、例えば、来店する際に乗車する電車の乗り継ぎ回数が多い顧客や、来店する際に利用する高速道路の通行料金が高い顧客への還元サービスを手厚くする等、来店するために相当の労力・金額を要する顧客に対して来店の動機付けを図ることができる。
【0024】
請求項9に記載のPOSシステムによれば、請求項1乃至8に記載のPOSシステムが奏する効果に加えて、以下の優れた効果を発揮し得るものである。顧客住所の属する居住区域に基づいて設定される区域情報に応じて還元サービスの内容を決定するので、例えば、距離が近いにもかかわらず来店顧客数が伸びない区域から来店する顧客への還元サービスを手厚くする等により、潜在的な顧客に対して来店の動機付けを図ることができる。
【0025】
請求項10に記載のPOSシステムによれば、請求項1乃至9に記載のPOSシステムが奏する効果に加えて、以下の優れた効果を発揮し得るものである。新規顧客を店に紹介した顧客の所定期間内の来店に対して、還元サービスの内容を優待することとしたので、新規顧客を繰り返し紹介することの動機付けを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の第一の実施の形態を、添付図面を参照しつつ説明する。
【0027】
〔POSシステムの概要〕
図1は、本実施形態に係るPOSシステムのハードウェア構成の概要を示す図である。POSシステム1は、店舗内のデータ管理を行うストアコントローラー2と、顧客の買上代金を精算する複数のレジスター端末3と、を通信回線Wで接続することにより構成され、店舗における販売管理、及び顧客への還元サービスであるポイント付与の管理を行う。
【0028】
ポイント付与は、顧客が購入商品の買上代金を精算する際に行われ、ポイント数は、当該顧客の買上金額(取引額)、購買履歴、及び顧客住所から店舗までの距離に基づいて設定される距離識別記号(距離情報)に応じて決定される。ポイントとしては、買上金額及び購買履歴に応じてすべての顧客にもれなく付与する「買上ポイント(通常ポイント)」と、買上ポイントとは別に距離識別記号に応じて付与する「遠方来店ポイント(特別ポイント)」の2種類が設定される。なお、これらのポイントは、「累計ポイント」として、一つに足し合わされた状態で貯められるが、システム変更により、遠方来店ポイント(特別ポイント)を単独で使用させるようにすることも可能である。例えば、「遠方来店ポイント1000ポイントで、10000円分のガソリンチケットを進呈」する等の優待が考えられる。
【0029】
ストアコントローラー2には、ポイント付与の管理に使用される顧客カード情報テーブルT1(図2)と、購買履歴に応じて決定される買上ポイントの算定倍率を設定した買上ポイント算定倍率テーブルT2(図3)と、距離識別記号に応じて決定される遠方来店ポイントを設定した遠方来店ポイントテーブルT3(図4)と、を記憶する記憶手段(不図示)が備えられる。レジスター端末3には、顧客を特定する顧客カードCの読取手段4が備えられる。
【0030】
〔顧客カード情報テーブルT1〕
顧客カード情報テーブルT1は、各顧客に設定される「カードID番号」に対し、図2に示されるように、その顧客の個人情報である「顧客名」及び「顧客住所」、並びに該顧客へポイントを付与するための管理情報である「距離識別番号」、「購買履歴」、「累計ポイント数」及び「今月の買上金額合計」等を組み合わせて構成するものであり、顧客登録されたすべての顧客について作成される。
【0031】
ここで「距離識別番号」とは、図4に示される遠方来店ポイントテーブルT3において、顧客住所から店舗までの距離を複数段階に層別する区分(例えば「500m超〜800mまで」等)に付けられる符号であって、特別ポイントを決定する際に使用される。距離識別番号は、顧客登録時に入力する顧客住所が図5に示す地図上にプロットされることで自動的に割り出される。例えば、顧客住所が星印Xで示される位置にプロットされる場合、距離識別番号は「3」となる。なお、距離識別番号は、地図上の直線距離で割り出せるため、割出し用のソフトウェアは容易に作成できる。
【0032】
また、「購買履歴」とは、前月の買上金額合計であり、買上ポイント算定倍率を決定する際に使用される。「累計ポイント数」とは、前回の買上代金精算(ポイント付与)後におけるポイント数の累計であり、「今月の買上金額合計」は、その月初めから前回の購入代金精算時までの買上代金の累計であり、翌月に「購買履歴」として使用される。
【0033】
〔買上ポイント算定倍率テーブルT2〕
買上ポイント算定倍率テーブルT2には、図3に示されるように、買上ポイント数のポイント算定倍率が適用条件ごとに登録され、これらのポイント算定倍率を買上金額に乗じて買上ポイント数を決定する。本実施形態では、「0円〜14,999円」、「15,000円〜24,999円」、「25,000円〜」という購買履歴(前月の買上金額合計)に応じて、ポイント算定倍率が「0.01」、「0.02」、「0.03」に設定される。
【0034】
〔遠方来店ポイントテーブルT3〕
遠方来店ポイントテーブルT3には、図4に示されるように、遠方来店ポイント数が適用条件ごとに登録される。本実施形態では、「1」、「2」、「3」等という距離識別番号(距離情報)に応じて、遠方来店ポイントを「+10」、「+20」、「+30」等に設定する。例えば、適用条件の距離識別番号が「3」の場合、遠方来店ポイントは「+30」で、これは該顧客の買上金額の多少に関係なく加算される。
【0035】
なお、上記した買上ポイント算定倍率テーブルT2、遠方来店ポイントテーブルT3は、大売出しキャンペーン等、その時々の店舗事情を考慮して作成され、その都度変更可能に構成されている。
【0036】
〔POSシステム1によるポイント付与手続の流れ〕
図6は、POSシステム1によるポイント付与手続の流れを示すフローチャートである。レジスター端末3における処理は、オペレーターが購入商品精算のためにレジを訪れる顧客から、顧客カードCを預かって読取手段4に挿入することで開始される。
【0037】
レジスター端末3は、読取手段4で顧客カードCに記録されているカードID番号を読み取り(ステップA1)、そのカードID番号に基づいて、ポイント付与の管理に要するデータをストアコントローラー2に照会する(ステップA2)。具体的には、当該顧客の「累計ポイント数」、「今月の買上金額合計」、及び当該顧客に適用する「買上ポイント算定倍率」並びに「遠方来店ポイント」を照会する。
【0038】
ストアコントローラー2は、レジスター端末3からのデータ照会を受けるために待機しており(ステップB1)、照会があれば、カードID番号に対応する顧客カード情報を顧客カード情報テーブルT1から読み出す(ステップB2)。さらに、読み出した顧客カード情報の「購買履歴」に対応する「買上ポイント算定倍率」を買上ポイント算定倍率テーブルT2から読み出し、「距離識別番号」に対応する「遠方来店ポイント」を遠方来店ポイントテーブルT3から読み出す(ステップB3)。
【0039】
例えば、図2の顧客カード情報テーブルT1に示される顧客の場合、距離識別番号「3」、累計ポイント数「1470Pt」、購買履歴「16000円」、今月の買上金額「5800円」を顧客カード情報テーブルT1から読み出し、さらに「16000円」の購買履歴に応じたポイント算定倍率として「0.02」を買上ポイント算定倍率テーブルT2から読み出し、「3」の距離識別番号に応じた遠方来店ポイントとして「+30」を遠方来店ポイントテーブルT3から読み出す。このように読み出したデータはレジスター端末3へ送信する(ステップB4)。
【0040】
レジスター端末3は、すべての購入商品がレジを通されて買上代金が確定し(ステップA3)、ストアコントローラー2から照会データを受信した(ステップA4)後に、「買上ポイント数」、買上ポイント数に遠方来店ポイント数を加算した「合計ポイント数」、累計ポイントに合計ポイント数を加算した新しい「累計ポイント数」、及び受信した今月の買上金額合計に買上代金を加算した新しい「今月の買上金額合計」を算定する(ステップA5)。これらの算定は、レジスター端末3に搭載する不図示の演算手段により行う。
【0041】
例えば、上記顧客の買上金額が「3000円」であれば、これに受信したポイント算定倍率「0.02」を乗じた3000×0.02=「60pt」が買上ポイントとして算定され、遠方来店ポイント「30pt」を加算した60+30=「90pt」が合計ポイント数として算定される。また、受信した累計ポイント数「1470pt」に合計ポイント数を加算した1470+90=「1560pt」が、新しい累計ポイント数として算定され、受信した今月の買上金額合計「5800円」に買上金額を加算した5800+3000=「8800円」が、新しい今月の買上金額合計として算定される。
【0042】
レジスター端末3は、買上ポイント数等を算定して、図7に示されるレシートRを印字発行する(ステップA6)。レシートRには、買上商品明細、買上金額合計、顧客からの預り金、及びお釣りからなる精算情報に加えて、ポイント付与の管理情報として、カードID番号、買上ポイント数「60pt」、遠方来店ポイント数「30pt」、合計ポイント数「90pt」、累計ポイント数「1560pt」、及び今月の買上金額合計「5800円」を印字する。
【0043】
レジスター端末3は、新しく算定した累計ポイント数「1560pt」及び今月の買上金額合計「8800円」をストアコントローラー2に送信して(ステップA7)、処理を終了する。また、ストアコントローラー2は、レジスター端末3から新しく算定された「累計ポイント数」及び「今月の買上金額合計」を受信するために待機しており(ステップB5)、データ受信を受信すれば、図8に示されるように、顧客カード情報テーブルT1を更新して(ステップB6)、処理を終了する。
【0044】
〔POSシステム1の特徴点〕
上記POSシステム1は、下記のような特徴点を有している。
【0045】
第一に、顧客住所から店舗までの距離に基づいて設定する距離識別番号(距離情報)を記憶する記憶手段と、顧客を特定する顧客カードの読取手段4と、を備えてなり、取引額のみならず距離識別番号に応じて、顧客に対する還元サービスの内容(ポイント数)を決定するので、顧客が来店に費やす時間、金額、労力等を反映した還元サービスを提供できるという特徴点を有している。
【0046】
第二に、距離識別番号に応じて付与する遠方来店ポイントを、取引額に応じて付与する買上ポイントに加算するので、通常ポイントにより取引額の多い顧客を固定化する一方、顧客が来店に費やす時間、金額、労力等を反映した遠方来店ポイントにより遠方からの来店顧客の囲い込みを図れるという特徴点を有している。
【0047】
第三に、遠方来店ポイントについて、図7に示されるように、買上ポイントと分けて、しかも遠方来店ポイントである旨のメッセージとともに表示するので、遠方からの顧客に対して、来店に費やす時間等に応じて優待していることを知らせる特徴点を有している。
【0048】
〔上記実施形態の変形例〕
上記実施形態では、複数商品の買上代金をレジで精算する際のポイント付与について説明したが、顧客からの注文に応じてパック詰めする商品に、その都度、商品代金等の情報を印字したラベルを貼付する販売形態においても、同様のPOSシステムを採用できる。具体的には、図1に示されるPOSシステム1において、レジスター端末3を、商品を計量して代金を印字したラベル発行するラベルプリンタに置き換えた構成となる。還元方法としては、ラベル上の商品代金を値引きして印字したり、ラベルに優待クーポンを印字したりして、それが住所関連情報に応じた優待である旨を印字することが考えられる。また、読取手段4及び顧客カードCが、カード表面への書き換え印字に対応したものであれば、上記実施形態と同様にポイントを付与し、カード表面に、買上ポイント(通常ポイント)、遠方来店ポイント(特別ポイント)、累計ポイント等を表示することができる。
【0049】
上記実施形態では、図5に示されるように、顧客住所から店舗までの直線距離に基づいて、還元サービス内容を決定するための基礎となる距離識別番号(距離情報)を設定したが、例えば、顧客住所と店舗の間に河川を渡るために橋のあるところまで迂回する必要がある等、直線距離では顧客が来店するための労力等に見合った遠方来店ポイントが付与できない場合がある。このような場合には、迂回経路による実質的な移動距離に基づいて、距離識別番号を設定しても良い。また、顧客住所から店舗までの移動時に通過する道路距離に基づいて、距離識別番号を設定しても良い。
【0050】
上記実施形態では、顧客住所から店舗までの距離に基づいて設定される距離情報に応じて、還元サービスの内容を決定したが、「距離情報」に代えて、あるいは「距離情報」に加えて、顧客住所から店舗まで移動するための所要時間に基づいて設定される「時間情報」、顧客住所と競合店との位置関係に基づいて設定される「競合店情報」、顧客が来店するために使用する交通手段に基づいて設定される「交通手段情報」、あるいは顧客住所の属する居住区域に基づいて設定される「区域情報」に応じて還元サービス内容を決定しても良い。もちろん、これらの情報の全部又は一部を組み合わせた複合情報に応じて、還元サービスの内容を決定しても良い。
【0051】
「時間情報」に応じて還元サービスの内容を決定する場合には、来店の所要時間が長い顧客への還元サービスを手厚くして、来店のために費やす時間が長い顧客に対して来店の動機付けを図ることができる。「競合店情報」に応じて還元サービスの内容を決定する場合には、競合店の近隣に居住する顧客への還元サービスを手厚くして、競合店の販売エリアに居住する顧客に対して来店の動機付けを図ることができる。
【0052】
「交通手段情報」に応じて還元サービスの内容を決定する場合には、来店する際に乗車する電車の乗り継ぎ回数が多い顧客や、来店する際に利用する高速道路の通行料金が高い顧客への還元サービスを手厚くして、来店するための労力・金額が大きい顧客に対して来店の動機付けを図ることができる。なお、「交通手段情報」を知るためには、顧客登録のために顧客に記載させる登録用紙に、質問項目として含めておくことで対応できる。
【0053】
「区域情報」に応じて還元サービスの内容を決定する場合には、例えば、距離が近いにもかかわらず来店顧客数が伸びない区域から来店する顧客への還元サービスを手厚くして、潜在的な顧客に対して来店の動機付けを図ることができる。なお、「区域情報」として郵便番号を利用すれば、区域情報を設定するための特別なソフトウェアを準備する必要がなく、顧客登録にかかる手間が少なく済む。
【0054】
上記実施形態では、還元サービスとしてポイントを付与したが、これに代えて、買上商品の現金割引、粗品引換券の発行(例えば、レシートRの裏面に印字する)をしても良く、これらの還元サービスの場合、顧客の住所関連情報に応じて、割引率を上げたり、粗品をグレードアップしたりすることが考えられる。交通手段情報に応じて、高速道路の通行券や電車の切符を渡しても良い。また、上記実施形態では、買上ポイント(通常ポイント)の算定倍率を購買履歴に応じて変更したが、これを一定にしても良い。さらに、上記実施形態では、遠方来店ポイント(特別ポイント)を距離識別番号ごとに固定したが、買上代金に応じて変動させるようにしても良い。
【0055】
上記実施形態では、住所関連情報に基づいて、顧客が来店する際に要する時間、費用、労力等の負担を評価して、還元サービスの内容を優待したが、これに加えて、新規顧客を店に紹介した顧客に対して、紹介することによる顧客の負担や店舗側の利益を評価して、還元サービスの内容を優待しても良い。具体的には、新規顧客を紹介した顧客について、顧客カード情報テーブルT1に「新規顧客の紹介日」を読み出し可能に登録しておき、新規顧客の紹介日から所定期間内である場合に、還元サービスの内容を優待することが考えられる。ここでは、優待期間を、新規顧客の紹介日から起算したが、これに代えて、「新規顧客を紹介した翌月1日から1ヶ月以内」等にしても良い。以上により、単なる来店だけではなく、新規顧客を繰り返し紹介することの動機付けが図られる。
【0056】
また、店側が来店客数を増やしたい特定日(例えば、来店客数の少ない平日、来店客を集めたい大売出し日)、特定時間帯(例えば、来店客数が少なくなりがちな平日の昼間時間帯等)、特定天候時(例えば、来店数が少なくなる雨天時、冬場で前日から気温が大きく下がった時等)に来店する顧客に対して、来店による顧客の負担や店舗側の利益を評価した還元サービスの優待を提供しても良い。これにより、来店客数の少ないとき等における来店の動機付けが図られる。
【0057】
上記実施形態では、顧客カードCに顧客を特定するためのカードID番号を記憶させ、「距離識別番号」等のポイント付与の管理に要するデータは、ポイント付与手続の際に、レジスター端末3からストアコントローラー2に照会させた。しかしながら、店舗事情等により、図9に示されるようにストアコントローラー2が設置されていない場合には、レジスター端末の一台にマスター機としてポイント付与管理用の情報を一括記憶させておき、サテライト機となる他のレジスター端末から照会させても良い。また、顧客カードCに、ポイント付与管理に要する情報を記憶させ、代金精算をするレジスター端末のみでポイント付与手続をしても良いことはもちろんである。
【0058】
なお、上記した変形例の他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、変形を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態に係るPOSシステムのハードウェア構成の概要を示す図。
【図2】本実施形態に係るPOSシステムの顧客カード情報テーブルを示す図。
【図3】本実施形態に係るPOSシステムの買上ポイント算定倍率テーブルを示す図。
【図4】本実施形態に係るPOSシステムの遠方来店ポイントテーブルを示す図。
【図5】距離識別番号を割り出すために使用される地図を示す図。
【図6】本実施形態に係るPOSシステムによるポイント付与手続の流れを示すフローチャート。
【図7】本実施形態に係るPOSシステムにより発行されるレシートを示す図。
【図8】図2の顧客カード情報テーブルが書き換えられた状態を示す図。
【図9】本実施形態の変形例に係るPOSシステムのハードウェア構成の概要を示す図。
【符号の説明】
【0060】
1 POSシステム
2 ストアコントローラー
3 レジスター端末
4 読取手段
C 顧客カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引毎に還元サービスの内容を決定するように構成されるPOSシステムにおいて、
顧客の住所関連情報を記憶する記憶手段と、
顧客を特定する顧客カードの読取手段と、を備えてなり、
取引額及び前記住所関連情報に応じて還元サービスの内容を決定することを特徴とするPOSシステム。
【請求項2】
取引毎に還元サービスの内容を決定するように構成されるPOSシステムにおいて、
顧客の住所関連情報を記憶する顧客カードの読取手段を備えてなり、
取引額及び前記住所関連情報に応じて還元サービスの内容を決定することを特徴とするPOSシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のPOSシステムにおいて、
前記還元サービスはポイントの付与であって、
前記住所関連情報に応じて付与される特別ポイントを決定し、
取引額に応じて付与される通常ポイントに加算することを特徴とするPOSシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のPOSシステムにおいて、
前記特別ポイントと、前記通常ポイントと、前記特別ポイントが特別ポイントである旨のメッセージと、を顧客カード又はレシートに表示することを特徴とするPOSシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のPOSシステムにおいて、
前記住所関連情報には、顧客住所から店舗までの距離に基づいて設定される距離情報が含まれていることを特徴とするPOSシステム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のPOSシステムにおいて、
前記住所関連情報には、顧客住所から店舗まで移動するための所要時間に基づいて設定される時間情報が含まれていることを特徴とするPOSシステム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のPOSシステムにおいて、
前記住所関連情報には、顧客住所と競合店との位置関係に基づいて設定される競合店情報が含まれていることを特徴とするPOSシステム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のPOSシステムにおいて、
前記住所関連情報には、顧客が来店するために使用する交通手段に基づいて設定される交通手段情報が含まれていることを特徴とするPOSシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のPOSシステムにおいて、
前記住所関連情報には、顧客住所の属する居住区域に基づいて設定される区域情報が含まれていることを特徴とするPOSシステム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のPOSシステムにおいて、
新規顧客を店に紹介した顧客の所定期間内の来店に対して、還元サービスの内容を優待することを特徴とするPOSシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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