PPARリガンド剤
【課題】本発明は、安全な食品素材由来であるペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)リガンド剤を提供することを目的とする。
【解決手段】トカドヘチマの抽出物、またはトカドヘチマ抽出物中の新規化合物を有効成分とするPPARリガンド剤。本発明のPPARリガンド剤は、肥満、肥満に伴うインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧、糖尿病などの予防および/または改善に有効である。
【解決手段】トカドヘチマの抽出物、またはトカドヘチマ抽出物中の新規化合物を有効成分とするPPARリガンド剤。本発明のPPARリガンド剤は、肥満、肥満に伴うインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧、糖尿病などの予防および/または改善に有効である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPARリガンド剤に関する。より具体的には、肥満、肥満に伴い発症するインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧または糖尿病を予防および/または改善する作用を有するPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤に関する。さらに、PPARα、δおよび/またはγのリガンド作用を有する新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(Peroxisome proliferator−activated receptors:PPARs)は、リガンド依存的に転写を制御する核内受容体で、PPARα、PPARδ(PPARβ)、PPARγの3種のサブタイプの存在が知られている。
【0003】
PPARαの主要調節臓器は肝臓であり、PPARαが活性化することにより、肝臓における脂肪の燃焼が促進され、血中・肝臓・骨格筋の中性脂肪含量が減少し、インスリン抵抗性が改善される。
【0004】
PPARδはPPARβとも呼ばれ、特に骨格筋を中心とした強力なエネルギー代謝促進作用、脂肪酸燃焼促進作用をつかさどっていることが明らかとなっている。PPARδアゴニスト(GW501516)を用いた実験では、PPARδの活性化により、骨格筋の脂肪酸酸化が亢進し、高脂肪食による肥満やインスリン抵抗性も抑制されたことが示されている。
【0005】
PPARγの主要調節臓器は脂肪組織である。PPARγのアゴニストであるチアゾリジン誘導体は、PPARγを介して肥大脂肪細胞のアポトーシスと前駆脂肪細胞から小型脂肪細胞への分化による生成より、肥大脂肪細胞を小型脂肪細胞に置き換えることにより、インスリン抵抗性を改善することが報告されている(非特許文献1)。
【0006】
このように、PPARsは生体内の糖、脂質代謝の制御に関与しているのみならず、肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病などの生活習慣病、癌、炎症性疾患、動脈硬化症などの疾患の発症への関与が明らかとなっている(非特許文献2)。
【0007】
メタボリックシンドロームにおいて、肥満は他のリスクファクター、インスリン抵抗性、高脂血症、高血圧、糖尿病などの上流に位置しており、したがって、肥満を改善することにより、他のリスクファクターをも改善することが可能である。すなわち、PPARのリガンド剤はPPARを活性化することにより、生体内における脂質代謝を促進し、蓄積した脂肪を減少させることにより、肥満を予防および改善し、さらに肥満に伴い発症するインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧、糖尿病を予防および改善することが可能である(非特許文献3)。
【0008】
ウリ科植物の抽出物の抗肥満作用が報告されている(特許文献1)。その内容は、タワシヘチマ(Luffa cylindrica L.)由来の、インスリン分泌促進作用やサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用による肥満および糖尿病の予防および治療効果である。また、ウリ科植物、タワシヘチマ由来の有効成分であるデヒドロジコニフェリルアルコールが、PPARαおよびδの働きを活性化させ、脂肪前駆細胞からの脂肪生成を抑制すると報告されている(特許文献2および3)。
【0009】
ウリ科の植物であるトカドヘチマ(Luffa acutangula Roxb.)は、インドから東南アジア、中国南部にかけて広く栽培され、未熟果実を野菜として利用している。果実ジュースのエーテル抽出物に細胞毒性を示すククルビタシン類(cucurbitacins)が存在するという報告(非特許文献4)、幼苗、根、完熟種子はククルビタシン類を含むという報告がある(非特許文献5)。しかし、トカドヘチマ抽出物がPPARリガンド作用を示すことは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005-139136
【特許文献2】特表2007-513150
【特許文献3】特表2007-515407
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】(門脇孝、第124回日本医学会シンポジウム、脂肪細胞によるインスリン抵抗性の分子機構)
【非特許文献2】日本臨床63巻4号(2005−4)
【非特許文献3】Journal of Clinical and Experimental Medicine (IGAKU NO AYUMI) vol.220 No.1 (2007) “PPARと疾患“
【非特許文献4】Silapa-Archa,Weena et al.: Warasan Phesatchasat (1981),8(1),p.5
【非特許文献5】Gry, J. et al.: Cucurbitacin in plant food. Norden Nordic Counil of Ministers, TemaNord (2006), 556 ,p.34
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
PPARリガンド剤は、肥満を予防および/または改善することが期待され、さらにはメタボリックシンドロームのリスクファクターであるインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧または糖尿病などを予防および/または改善することが期待される。しかし、既存のPPARリガンド剤は、医薬品の長期投与による副作用などが危惧されるほか、食品由来のポリフェノール類などには、十分なPPARリガンド作用が得られないなどの問題点がある。
【0013】
本発明の目的は、安全で、優れたPPARリガンド剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため、長期摂取しても安全で副作用の少ないPPARリガンドを天然由来の420種類の植物に求め、鋭意探索した結果、トカドヘチマの抽出物に高いPPARリガンド活性があることを見出した。さらに、トカドヘチマ抽出物中から新規化合物である式(1):
【0015】
【化1】
【0016】
(Rは糖である)
で表わされる化合物を精製し、この化合物が強いPPARリガンド作用を有することを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0017】
すなわち本発明は、次の[1]〜[7]である。
[1] トカドヘチマの溶媒抽出物を有効成分とするPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
[2] 溶媒がアルコール類または含水アルコール類である、[1]記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
[3] 有効成分として、式(1):
【0018】
【化2】
【0019】
(RはHまたは糖である)
で表される化合物を含む、[1]または[2]記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
[4] 肥満、肥満に伴い発症するインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧または糖尿病を予防および/または改善するための、[1]〜[3]のいずれかに記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
[5] 飲食品の形態である、[4]記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
[6] 医薬品の形態である、[4]記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
[7] 式(1):
【0020】
【化3】
【0021】
(Rは糖である)
で表される化合物。
【発明の効果】
【0022】
本発明のPPARリガンド剤は、PPARα、δおよびγに対して優れたリガンド活性を示し、かつ、食物として摂取されている植物由来であり、安全性が高い。したがって、本発明により、優れたPPARリガンド剤が提供され、肥満、肥満に伴うインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧、糖尿病などを予防および/または改善に有効な飲食物、医薬品の形態であるPPARリガンド剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、トカドヘチマの未熟果実(9月収穫)メタノール抽出物のPPARリガンド活性の用量反応性を示す。
【図2】図2は、トカドヘチマの根、茎、葉(9月収穫)メタノール抽出物のPPARリガンド活性の用量反応性を示す。
【図3】図3は、トカドヘチマの根、茎、葉(10月下旬収穫)メタノール抽出物のPPARリガンド活性の用量反応性を示す。
【図4】図4は、トカドヘチマの熱水抽出物のPPARリガンド活性の用量反応性を示す。
【図5】図5は、トカドヘチマのメタノール抽出物のPPARリガンド活性の用量反応性を示す。
【図6】図6は、トカドヘチマの70容量% エタノール抽出物のPPARリガンド活性の用量反応性を示す。
【図7】図7は、トカドヘチマエキスのクロマトグラムを示す。縦軸:280 nmの吸光度、横軸:時間、マーカー:分画したフラクションを示す。
【図8】図8は、分画物のPPARリガンド活性を示す。縦軸:活性化率、横軸:フラクションNo.、α:PPARα、δ:PPARδ、γ:PPARγに対する作用、を示す。
【図9】図9は、フラクション93のPPARリガンド活性を示す。
【図10】図10は、フラクション94のPPARリガンド活性を示す。
【図11】図11は、フラクション124のPPARリガンド活性を示す。
【図12】図12は、フラクション125のPPARリガンド活性を示す。
【図13】図13は、式(1)においてRがHである化合物のHPLCクロマトグラムと吸収スペクトルを示す。
【図14】図14は、式(1)においてRがGlcである化合物のHPLCクロマトグラムと吸収スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
<PPARリガンド剤>
本発明のPPARリガンド剤は、トカドヘチマ抽出物または該抽出物中の特定の化合物を有効成分として含有する。
【0025】
トカドヘチマ抽出物
原料となるトカドヘチマ(Luffa acutangula Roxb.)はウリ科の植物である。トカドヘチマはインドから東南アジア、中国南部にかけて広く栽培され、未熟果実を野菜として利用している(世界有用植物事典 平凡社 p. 637、熱帯の野菜 農林水産省熱帯農業研究センター p. 37-39)。
【0026】
トカドヘチマ抽出物の原料は、未熟果実を用いるのが好ましいが、これら以外の部位、果皮、葉、花、地上部、全草などのいずれかを、またはいずれも用いることができる。
抽出に用いる溶媒としては、炭素数1〜4の低級アルコール類(たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、液状多価アルコール(例えば、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)、ケトン類(たとえば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)などが挙げられる。これらは、単独または2種以上を混合して用いることもできる。本発明においては、含水アルコール類またはアルコール類を用いるのが好ましく、特に含水低級アルコール類または低級アルコール類が好ましい。
【0027】
溶媒抽出する場合、トカドヘチマは生のまま、または乾燥させたもののいずれを用いても良く、抽出する際の植物体は原型のまま、切断したもの、粉砕したもの、粉末化したものなどいずれを用いても良い。抽出温度は5〜80℃の範囲で適宜に、更に加圧、減圧などの条件も適宜に設定することが可能であるが、抽出溶媒の安全性、抽出成分の安定性の点から、温度としては室温が好ましい。抽出時間は0.1時間〜1ヶ月の範囲で適宜に設定することが可能であるが、好ましくは0.5時間〜7日である。植物体と抽出溶媒の比率は1〜1000倍(W/V)の範囲で任意に設定することが可能であるが、好ましくは1〜100倍(W/V)である。
【0028】
2−アリルベンゾフラン類縁体
本発明のリガンド剤は、式(1)
【0029】
【化4】
【0030】
(RはHまたは糖である)
で表される2−アリルベンゾフラン類縁体を含む。
R部分の糖は、3炭糖〜7炭糖のいずれであってもよく、また単糖に限らず複数個結合した糖であってもよい。好ましい例としては、構成糖としてはグルコース、ラムノース、アラビノース、キシロース、またはガラクトースであり、それらが1〜8個結合したものが挙げられる。特に好ましくは、糖はグルコースである。
【0031】
Rが糖の場合、糖中のいずれのOH基が結合した化合物であってもよいが、C−1位のOH基が結合したものが好ましい。
上記化合物は、トカドヘチマから抽出・精製することにより得ることができる。抽出・精製方法は、当業者の知識に基づいて適宜実施することができる。例示としては、抽出物を実施例8〜12に示す方法で精製することにより得ることができる。
【0032】
上記化合物は、強いPPARα、δおよびγリガンド作用を有する。
なお、WO 2003051860には、本発明に用いられる2−アリルベンゾフラン類縁体と構造類似のCAS 551002−33−6が開示されている。しかし、該物質のエストロジェン作用を標榜しており、PPARリガンド作用や抗肥満効果に関しては開示されていない。また、WO 2009064251には、2−アリルベンゾフラン類縁体(RがH)が開示されている。しかし、該物質を部分構造とするプロスタグランジンE合成酵素阻害作用を標榜しており、PPARリガンド作用や抗肥満効果に関しては開示されていない。
【0033】
PPARリガンド活性の評価
PPARリガンド活性は、当業者が通常用いる方法で測定することができる。たとえば、培養細胞にPPARα、δまたはγを発現させると同時に、PPARの活性化に反応して蛍光シグナル等の測定用シグナルを発する系を発現させ、試験物を投与して、測定用シグナルの強度を測定することにより、PPARリガンド活性を定量化することができる。具体的には、実施例1〜3に示す方法で評価することができる。
【0034】
PPARリガンド剤
本発明のPPARリガンド剤は、PPARの生体内分布や生理活性に応じて、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体が関連する疾患の予防および/または改善のために用いることができる。具体的には、本発明のPPARリガンド剤は、肥満、肥満に伴い発症するインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧または糖尿病の予防および/または改善に有効である。
【0035】
本発明において、肥満の予防とは、肥満または肥満症であるとされる状態になるのを防ぐ又は遅らせることをいう。また、肥満の改善とは、肥満または肥満症であるとされる状態を改善することをいう。
【0036】
本発明において、インスリン抵抗性とは、肝臓・脂肪細胞・骨格筋で、インスリンの主な作用である糖の吸収促進作用が弱っている状態をいう。インスリン抵抗性の予防とは、SSPG(Steady-state plasma glucose)法などによるインスリン抵抗性の指標となる値がより悪化するのを防ぐ又は遅らせることを指す。インスリン抵抗性の改善とは、上記のインスリン抵抗性の指標となる値をより改善することをいう。
【0037】
本発明において、高脂血症の予防とは、高脂血症の状態又は境界域の状態になるのを防ぐ又は遅らせることをいう。また、高脂血症の改善とは、上記に示す高脂血症の状態または境界域の状態から、正常域と定義している状態に近づけることをいう。
【0038】
本発明において、高血圧の予防とは、高血圧とされる状態または境界域の状態になるのを防ぐ又は遅らせることをいう。また、高血圧の改善とは、高血圧とされる状態または境界域の状態から、正常域と定義している状態に近づけることをいう。
【0039】
本発明において、糖尿病の予防とは、糖尿病の状態または境界域の状態になるのを防ぐ又は遅らせることをいう。また、糖尿病の改善とは、糖尿病の状態または境界域の状態から、正常域と定義している状態に近づけることをいう。
【0040】
本発明のPPARリガンド剤は、PPARα、δ、γのいずれをも活性化する効果を有する。本発明のPPARリガンド剤は、PPARγに対してもリガンド作用を有することから、トカドヘチマ抽出物の作用はタワシヘチマの作用と明確に区別される。
【0041】
本発明のPPARリガンド剤は、飲食品および医薬品として利用することができるが、その形態は限定されず、健康食品、栄養補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品などの飲食品および医薬品として用いることができる。
【0042】
飲食品としては、チューインガム、チョコレート、キャンディー、ゼリー、ビスケット、クラッカーなどの菓子類、アイスクリーム、氷菓などの冷菓類、 茶、清涼飲料、栄養ドリンク、美容ドリンクなどの飲料、うどん、中華麺、スパゲティー、即席麺などの麺類、蒲鉾、竹輪、はんぺんなどの練り製品、ドレッシング、マヨネーズ、ソースなどの調味料、マーガリン、バター、サラダ油などの油脂類、パン、ハム、スープ、レトルト食品、冷凍食品など、すべての飲食品に使用することができる。これら肥満、肥満に伴い発症するインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧、糖尿病を予防および/または改善する組成物を摂取する場合、その摂取量は当該抽出物として成人一人一日当たり、好ましくは0.01〜1000mg/kg体重、より好ましくは1〜300mg/kg体重である。
【0043】
医薬品として用いる場合は、その剤形は特に限定されず、例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、注射剤、座薬、貼付剤などが挙げられる。製剤化においては、薬剤学的に許容される他の製剤素材、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、酸化防止剤、着色剤、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤などを適宜添加して調製することができる。これら製剤を当該抽出物換算で成人一人一日当たり、好ましくは0.01〜1000mg/kg体重、より好ましくは1〜300mg/kg体重を1回ないし数回に分けて投与する。
【0044】
<新規化合物>
本発明は、トカドヘチマから得られる新規化合物に関する。具体的には、
式(1):
【0045】
【化5】
【0046】
(Rは糖である)
で表される化合物である。
R部分の糖は、3炭糖〜7炭糖のいずれであってもよく、また単糖に限らず複数個結合した糖であってもよい。好ましい例としては、構成糖としてはグルコース、ラムノース、アラビノース、キシロース、またはガラクトースであり、それらが1〜8個結合したものが挙げられる。特に好ましくは、糖はグルコースである。
【0047】
R部分が糖である化合物は、化学的に合成することができる。たとえば、N,N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)中、2、3、4、6−テトラ−O−ベンジル−D−グルコピラノースをR部分がHの化合物とカップリングさせたのち、通常の水素化分解によってベンジル基を除去する。例えば、酢酸やアルコールなどのプロトン性極性溶媒中で、あるいはベンゼン、トルエン、酢酸エチルなどの非極性溶媒中で、パラジウム炭素やパラジウム黒、あるいはプラチナ炭素やプラチナ黒などを触媒として水素の存在で脱ベンジル化し、R部分がグルコースの化合物に導くことができる。
【0048】
R部分の糖は、糖中のいずれのOH基が結合した化合物であってもよいが、C−1位のOH基が結合したものが好ましい。
上記化合物は、トカドヘチマから抽出・精製することにより得ることができる。抽出・精製方法は、当業者の知識に基づいて適宜実施することができる。例示としては、抽出物を実施例8〜12に示す方法で精製することにより得ることができる。また、化学合成によっても得ることができる。
【0049】
上記化合物は、強いPPARα、δおよびγリガンド作用を有する。
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
実施例1 PPARγリガンド活性の測定方法
PPARγリガンド活性測定用CHO細胞を以下の方法で取得した。
PPARレポータープラスミド(pPPRE-Luc)は、SV40プロモーター遺伝子、蛍ルシフェラーゼ遺伝子を含むレポータープラスミド pGL3(Promega社)のSV40プロモーター遺伝子の上流にPPAR応答配列(PPRE)を3回組み込んだレポータープラスミドである。PPARγ発現プラスミド(pKD-rPPARγ)はSV40プロモーターによる哺乳類細胞用発現プラスミドにラットPPARγ遺伝子を組み込んだプラスミドである。 pPPRE-LucとpKD-rPPARγを、Lipofectamine(Invitorgen社)を用いてCHO(dhfr-)細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来細胞ジヒドロ葉酸還元酵素欠損株)にコトランスフェクションした。チミジンをほとんど含有しない透析ウシ胎児血清(Gibco社)を含むDMEM培地(Dulbecco‘s Modified Eagle Medium、Gibco社)で細胞を培養することにより、pPPRE-Luc と pKD-rPPARγを保持する安定形質転換株(CHO/PPARγ/PPRE)を取得した。
【0051】
上記細胞を96穴培養プレートに1x104 Cells/well となるように播種し、37℃、5% CO2条件下で24時間培養した。培地には、10% FBS(ウシ胎仔血清;Equitech−Bio社)、0.3g/l−Glutamine(日水製薬)、10ml/l MEM用非必須アミノ酸溶液(大日本住友製薬)を含むDMEM(日水製薬)を用いた。24時間培養後、試験物を含む培地に交換し、24時間培養した。溶媒対照にはジメチルスルホキシドを用い、培地に1/100量添加した。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS−)で洗浄した後、細胞溶解液(Cell Culture Lysis Reagent:Promega社)で細胞を溶解させ、Luciferase Assay Reagent(Promega社)を添加してマルチラベルカウンター(Wallac社)にてルシフェラーゼの発光強度を測定した。また、PPARγの合成アゴニストであるシグリチゾン(Ciglitizone)(Sigma社、濃度25μM)をポジティブコントロールとして用いた。リガンド活性の評価は、コントロール(溶媒対照)の発光強度に対する試験物の発光強度の比を試験物のPPARγリガンド活性発光度比とし、1.3以上を示したものについて、PPARγのリガンド活性があると判断した。
【0052】
実施例2 PPARδリガンド活性の測定方法
HepG2細胞(ヒト肝臓癌由来の培養細胞)を96穴培養プレートに1x104 cells/wellとなるように播種し、37℃、5% CO2条件下で24時間培養した。培地には、10% FBS(ウシ胎仔血清;Equitech−Bio社)、0.3g/l L−Glutamine(日水製薬)を含むRPMI1640(日水製薬)を用いた。その細胞をOPTI−MEM(Gibco社)で洗浄した後、pBIND/GAL4::mPPARδとpG5luc(Promega社)を用いてトランスフェクションした。なお、pBIND/GAL4::mPPARδは、酵母由来転写因子GAL4融合タンパク発現プラズミドであるpBIND(Promega社)にマウスPPARδ遺伝子を挿入したプラスミドであり、pG5lucはルシフェラーゼ遺伝子の上流にGAL4の応答配列(UAS)を5回組み込んだレポーター・プラスミドである(Cell,1995年,83巻,803〜812頁などに記載の方法で作成可能)。トランスフェクションの約24時間後、試験物を含む培地に交換し、24時間培養した。溶媒対照にはジメチルスルホキシドを用い、培地に1/100量添加した。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS−)で洗浄した後、細胞溶解液(Cell Culture Lysis Reagent:Promega社)で細胞を溶解させ、Luciferase Assay Reagent(Promega社)を添加してマルチラベルカウンター(Wallac社)にてルシフェラーゼの発光強度を測定した。また、PPARδの合成アゴニストであるL−165041(Sigma社、濃度25μM)をポジティブコントロールとして用いた。リガンド活性の評価は、コントロール(溶媒対照)の発光強度に対する試験物の発光強度の比を試験物のPPARδリガンド活性発光度比とし、1.3以上を示したものについて、PPARδのリガンド活性があると判断した。
【0053】
実施例3 PPARαリガンド活性の測定方法
実施例2に記載の方法のうち、融合タンパク発現プラスミドとして、pBIND/GAL4::mPPARδの代わりに、pBIND/GAL4::mPPARαを用いる以外は、実施例2と同様に実施し、PPARαリガンド活性の測定を行った。なお、pBIND/GAL4::mPPARαとは、pBIND(Promega社)にマウスPPARα遺伝子を挿入したプラスミドである。また、PPARαの合成アゴニストであるWY−14643(Sigma社、濃度25μM)をポジティブコントロールとして用いた。リガンド活性の評価は、コントロール(溶媒対照)の発光強度に対する試験物の発光強度の比を試験物のPPARαリガンド活性発光度比とし、1.3以上を示したものについて、PPARαのリガンド活性があると判断した。
【0054】
実施例4 試験物のPPARリガンド活性
植物420種の乾燥物をそれぞれ破砕し、破砕物1gに対して10倍量の70容量%エタノールに浸し、室温下、1日1回撹拌操作を加えて7日間抽出した。遠心分離後の上澄みを減圧濃縮後、凍結乾燥し、抽出物を得た。抽出物をジメチルスルホキシドに溶かして10mg/mlとし、実施例1−3の方法に従ってPPARリガンド活性を測定した。セイヨウニワトコ(Sambucus nigra L.(花))、アギタケ(Pleurotus ferulae(子実体))、アシュワガンダ(Withania somnifera Dunal(根))、アニス(Pimpinella anisum L.(種子))、ギョリュウモドキ(Calluna vulgaris(L.)Hull.(花))、サクナ(Peucedanum japonicum Thunb.(地上部))、セイヨウサンザシ(Crataegus monogyna Jaquin emend.Lindman(果実))、セキガイチャ(Adinandra nitida(葉))、タワシヘチマ(Luffa cylindrica L.(果実))、チャボトケイソウ(Passiflora incarnate L.(地上部))、トカドヘチマ(Luffa acutangula Roxb.(果実))、ハリエンジュ(Robinia pseudoacacia L.(花))、マンシュウウコギ(Acanthopanax sessiliflorus(Rupr.et Maxim.)Seem.(葉))に活性が認められた。中でも、トカドヘチマ抽出物が活性スペクトル上、とくに優れていた。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例5 トカドヘチマ抽出物の部位の違いによるPPARリガンド活性
236(ID2380)未熟果実(9月収穫)、421(ID2379)根、茎、葉(9月収穫)、433(ID4715)根、茎、葉(10月下旬収穫)の乾燥物をブレンダー(ラボミルサーLM−PLUS,大阪ケミカル株式会社製)で粉砕後、15gに5倍量のメタノールを添加し、室温で一週間浸漬した。東洋ろ紙No.2で吸引ろ過し、ろ液を減圧乾固し、抽出物を得た。固形分回収率は、それぞれ6.2%、4.1%、3.1%であった。抽出物をジメチルスルホキシドに溶かして10mg/mlとし、実施例1−3の方法に従ってPPARリガンド活性を測定した。結果を表2〜4及び図1〜3に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
最大用量の100μg/mlでは細胞障害性を示したが、根・茎・葉および未熟果実にほぼ同等の活性が観察された。
実施例6 トカドヘチマ抽出物の抽出溶媒の違いによるPPARリガンド活性
トカドヘチマ乾燥物をブレンダーで粉砕後、熱水、70容量%エタノール、メタノールの3種類の溶媒で抽出した。抽出条件(固形分収率)は、熱水:10倍量、80℃、30分(28%)、70容量%エタノール:10倍量、室温一週間(21%)、メタノール:5倍量、室温一週間(6%)である。得られた乾燥抽出物をジメチルスルホキシドに溶かして10mg/mlとし、実施例1−3の方法に従ってPPARリガンド活性を測定した。結果を表5〜7及び図4〜6に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】
実施例7 トカドヘチマ抽出物の抽出条件の違いによるPPARリガンド活性
トカドヘチマ乾燥物をブレンダーで粉砕後、2gに対して10倍量の含水量の異なるエタノール(10容量%、30容量%、50容量%、70容量%、90容量%エタノール)を添加し、室温で抽出した。1日後、3日後、5日後、7日後に遠心分離し、抽出液を得た。それぞれの抽出液を減圧濃縮、凍結乾燥し、固形分を得た。70容量%エタノール、7日間浸漬条件の固形分抽出効率(17.6%)を1.00とした相対抽出効率を求めた。結果を表8に示す。また、得られた乾燥抽出物をジメチルスルホキシドに溶かして50mg/mlとし、実施例1−3の方法に従ってPPARリガンド活性を測定した。結果を表9〜11に示す。
【0065】
【表8】
【0066】
【表9】
【0067】
【表10】
【0068】
【表11】
【0069】
実施例8
成分の分画
トカドヘチマのメタノールエキス310mgにメタノール4mlを添加した試料をBond−Elut−C8 1ml(Varians社)5本に分けて負荷し、それぞれメタノール2ml、アセトニトリル1mlで溶出し、湿重量290mgを得た。この前処理ののち、ジメチルスルホキシド200μl、メタノール100μlを添加した試料をパックドカラムに付し、5ml/0.5分ずつ採取した。結果を図7に示す。
【0070】
分取条件
システム:Gilson(登録商標)305型および303型
カラム:DevelosilTM C30−UG−5(20*250mm+20*50mm、野村化学株式会社製)
移動相:A:蒸留水、B:アセトニトリル
プログラム:0分(0% B)、76分(100% B)、114分(100% B)
流速:10ml/分
検出波長:280nm
フラクションコレクター:Gilson(登録商標) FC204型
実施例9 分画物のPPARリガンド活性測定
実施例8で得られたフラクション81−130から各々200μl採取し、減圧濃縮してジメチルスルホキシド100μlに再溶解した。実施例1−3の方法にしたがって測定した結果、フラクション93、94、124―127に活性が認められた(図8)。
【0071】
実施例10 成分のPPARリガンド活性
実施例8で得られた活性画分のうち、フラクション93、94、および124、125の用量反応性を実施例1−3の方法にしたがって測定した。結果を表12および図9〜12に示す。活性を示す最大有効希釈倍率はフラクション93、94では1300倍、124、125では12000倍であった。アッセイ時に用いた試料はフラクションを2倍濃縮したものなので、もとの試料ではそれぞれ650倍、6000倍希釈となる。該当フラクションを減圧濃縮、凍結乾燥し、得られた重量が0.2mgであることを考慮すると、有効濃度は、
フラクション93、94:0.2mg/10ml/650=0.00003mg/ml=0.03μg/ml
フラクション124、125:0.2mg/10ml/6000=0.000003mg/ml=0.003μg/ml
【0072】
【表12】
【0073】
実施例11 精製物の活性
実施例8で得られたフラクョン124,125をDevelosilTM C30−UG−5に付し、50V/V%アセトニトリル−0.1%ギ酸で溶出し、化合物A(RはH)を得た(図15)。また、実施例8で得られたフラクョン93,94をDevelosilTM C30−UG−5に付し、30V/V%アセトニトリル−0.1%ギ酸で溶出し、化合物B(RはGlc)を得た(図16)。化合物A(RはH)の極大吸収は251nmおよび304nm、化合物B(RはGlc)の極大吸収は256nmおよび304nmであった(図13,14)。PPARリガンド活性を測定した結果を表13に示す。
【0074】
【表13】
【0075】
糖部分の無い物質(アグリコン)よりも配糖体の方が吸収されやすいことが知られている。例えば、ケルセチン配糖体の方が糖部分のないケルセチンよりも生物学的利用率が高いことが知られている(Free Radic. Res. 31(6):569−573; 1999)。また、糖部分の無い物質(アグリコン)よりも配糖体の方が極性が高く、より水に溶けやすいという性質を有する。これらの性質からも、化合物Bは優れたPPARリガンド剤であるといえる。
【0076】
実施例12 精製物の質量分析
Q−TOF Premier(Micromass社製、UK)を用いて、以下の条件で精密質量分析(LC−MSおよびLC−MS/MS)を行った;
カラム:DevelosilTM C30−UG−5(3mm*150mm、野村化学株式会社製)、カラム温度:40℃
移動相:50V/V%アセトニトリル−0.1%ギ酸、流速:0.25ml/分
イオン化法:ESI、イオンソース;Z−スプレー
Capillary voltage:2.7kV(ネガティブ、Vモード)、3.0kV(ポジティブ、Vモード、)
Cone voltage:
38V{ネガティブモード、化合物A(RはH)のMSおよび化合物A(RはH)のm/z 267.07のMS/MS測定時}
40V{ポジティブモード、化合物A(RはH)のMSおよび化合物A(RはH)のm/z 269.08のMS/MS測定時}
24V{ネガティブモード、化合物B(RはGlc)のMS測定時}
20V{ネガティブモード、化合物B(RはGlc)のm/z 429.12のMS/MS測定時}
Collision energy:
20−30eV{ネガティブモード、化合物A(RはH) の m/z 267.07のMS/MS測定時}
25−30eV{ポジティブモード、化合物A(RはH) の m/z 269.08のMS/MS測定時}
20 eV{ネガティブモード、化合物B(RはGlc) の m/z 429.12のMS/MS測定時}
Source Temp:100℃(ネガティブモード、ポジティブモード)
Desolvation Temp:300℃(ネガティブモード、ポジティブモード)
ロックスプレーによる質量補正を行い、リファレンスにはロイシンエンケファリン(m/z 554.2615(ネガティブモード)、m/z 556.2771(ポジティブモード))を用いた。
<化合物A>(RはH)
ネガティブモード:
MS:m/z 267.0650[M−H]−、C16H11O4(理論m/z 267.0657、誤差―2.6ppm)
MS/MS(プレカーサーイオン m/z 267.07):
フラグメントイオン m/z 208.0526、m/z 223.0756
ポジティブモード:
MS:m/z 269.0808[M+H]+、C16H13O4(理論m/z 269.0814、誤差−2.2ppm)
MS/MS(プレカーサーイオンm/z 269.08):
フラグメントイオンm/z 165.0703、m/z 181.0656、
m/z 195.0800、m/z 209.0606、m/z 223.0760、m/z 241.0858
<化合物B>(RはGlc)
ネガティブモード:
MS:m/z 429.1185[M−H]−、C22H21O9(理論m/z 429.1186、誤差−0.2ppm)
MS/MS(プレカーサーイオン m/z 429.12):
フラグメントイオン m/z 223.0756、m/z 267.0640
ポジティブモードの精密質量のMSとMS/MSは分析せず。
【0077】
実施例13 構造解析
実施例11で得られた化合物A,化合物Bの試料をメタノール−D4に溶解し、溶媒を内部標準として、DMX−750 spectrometer(BRUKER BIOSPIN, Germany)を用いて測定した。測定項目は1H NMR、1H{13C}−HSQC、1H{13C}−HMBC、TOCSY、DQF−COSY、NOESYおよびROESYである。
化合物A(RはH): 2−(4−methoxyphenyl)benzofuran−5−carboxylic acid
δH(Hz):8.18(C−4H,1H、d、J=1.4)、7.92(C−6H,1H、dd、J=8.5,1.4)、7.83(C−2‘H,C−6’H、2H、d、J=8.8)、7.43(C−7H,1H、d、J=8.5)、7.06(C−3H,1H、s)、7.02(C−3‘H,C−5’H,2H、d、J=8.8)、3.86(C−4’−OCH3、3H、s)
δC: 157.6(C2)、101.1(C3)、134.4(C3a)、123.4(C4),130.4(C5)、126.7(C6)、110.5(C7)、157.4(C7a)、167.9(C8)、124.5(C1‘)、127.4(C2’,C6‘)、115(C3’,C5‘)、161.7(C4’)、56(C4‘−OCH3)
化合物B(RはGlc): 5−[(β−D−glucopyranosyloxy)carbonyl]−2−(4−methoxyphenyl)benzofuran
GlcのC−1位の水素(C−1”H、δH5.75)とカルボキシル基の炭素(C−8、δc167)とのつながりを示す1H{13C}−HMBCスペクトルデータから、GlcのC−1位のOHが結合していると結論した。また、グルコース C−1位の水素(C−1”H、δH5.75)の結合定数、J=8.1 Hzであることから、β結合であることが分かった。
δH(Hz):8.37(C−4H,1H、d、J=1.7)、8.04(C−,1H、dd、J=8.6,1.7)、7.86(C−2‘H,C−6’H,2H、d、J=8.8)、7.60(C−7H,1H、d、J=8.6)、7.14(C−3H,1H、s)、7.04(C−3‘H,C−5’H,2H、d、J=8.8)、3.56(C4’−OCH3,3H、s); 5.75(C−1“H,1H、d、J=8.1)、3.87(C−6”H,1H、dd、J=12.3、2.0)、3.72(C−6“H,1H、dd、J=12.3、5.2)、3.55(C−2”H,1H、dd、J=9.1、8.1)、3.51(C−3“H、1H、J=9.1、8.7)、3.47(C−5”H、1H、m)、3.43(C−4“H、1H、dd、J=9.6、8.7)
δC:159.5(C2)、101(C3)、131(C3a)、124.5(C4),126(C5)、127(C6)、112(C7)、159(C7a)、167(C8)、124(C1‘)、128(C2’,C6‘)、116(C3’,C5‘)、162(C4’)、56(C4‘−OCH3);96(C1“)、74(C2”)、78(C3“)、71(C4”)、79(C5“)、62.4(C6”)
【0078】
【化6】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明により、優れたPPARリガンド剤が提供され、肥満、肥満に伴うインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧、糖尿病などの予防および/または改善に有効な飲食物、医薬品の形態であるPPARリガンド剤が提供される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPARリガンド剤に関する。より具体的には、肥満、肥満に伴い発症するインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧または糖尿病を予防および/または改善する作用を有するPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤に関する。さらに、PPARα、δおよび/またはγのリガンド作用を有する新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(Peroxisome proliferator−activated receptors:PPARs)は、リガンド依存的に転写を制御する核内受容体で、PPARα、PPARδ(PPARβ)、PPARγの3種のサブタイプの存在が知られている。
【0003】
PPARαの主要調節臓器は肝臓であり、PPARαが活性化することにより、肝臓における脂肪の燃焼が促進され、血中・肝臓・骨格筋の中性脂肪含量が減少し、インスリン抵抗性が改善される。
【0004】
PPARδはPPARβとも呼ばれ、特に骨格筋を中心とした強力なエネルギー代謝促進作用、脂肪酸燃焼促進作用をつかさどっていることが明らかとなっている。PPARδアゴニスト(GW501516)を用いた実験では、PPARδの活性化により、骨格筋の脂肪酸酸化が亢進し、高脂肪食による肥満やインスリン抵抗性も抑制されたことが示されている。
【0005】
PPARγの主要調節臓器は脂肪組織である。PPARγのアゴニストであるチアゾリジン誘導体は、PPARγを介して肥大脂肪細胞のアポトーシスと前駆脂肪細胞から小型脂肪細胞への分化による生成より、肥大脂肪細胞を小型脂肪細胞に置き換えることにより、インスリン抵抗性を改善することが報告されている(非特許文献1)。
【0006】
このように、PPARsは生体内の糖、脂質代謝の制御に関与しているのみならず、肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病などの生活習慣病、癌、炎症性疾患、動脈硬化症などの疾患の発症への関与が明らかとなっている(非特許文献2)。
【0007】
メタボリックシンドロームにおいて、肥満は他のリスクファクター、インスリン抵抗性、高脂血症、高血圧、糖尿病などの上流に位置しており、したがって、肥満を改善することにより、他のリスクファクターをも改善することが可能である。すなわち、PPARのリガンド剤はPPARを活性化することにより、生体内における脂質代謝を促進し、蓄積した脂肪を減少させることにより、肥満を予防および改善し、さらに肥満に伴い発症するインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧、糖尿病を予防および改善することが可能である(非特許文献3)。
【0008】
ウリ科植物の抽出物の抗肥満作用が報告されている(特許文献1)。その内容は、タワシヘチマ(Luffa cylindrica L.)由来の、インスリン分泌促進作用やサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用による肥満および糖尿病の予防および治療効果である。また、ウリ科植物、タワシヘチマ由来の有効成分であるデヒドロジコニフェリルアルコールが、PPARαおよびδの働きを活性化させ、脂肪前駆細胞からの脂肪生成を抑制すると報告されている(特許文献2および3)。
【0009】
ウリ科の植物であるトカドヘチマ(Luffa acutangula Roxb.)は、インドから東南アジア、中国南部にかけて広く栽培され、未熟果実を野菜として利用している。果実ジュースのエーテル抽出物に細胞毒性を示すククルビタシン類(cucurbitacins)が存在するという報告(非特許文献4)、幼苗、根、完熟種子はククルビタシン類を含むという報告がある(非特許文献5)。しかし、トカドヘチマ抽出物がPPARリガンド作用を示すことは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005-139136
【特許文献2】特表2007-513150
【特許文献3】特表2007-515407
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】(門脇孝、第124回日本医学会シンポジウム、脂肪細胞によるインスリン抵抗性の分子機構)
【非特許文献2】日本臨床63巻4号(2005−4)
【非特許文献3】Journal of Clinical and Experimental Medicine (IGAKU NO AYUMI) vol.220 No.1 (2007) “PPARと疾患“
【非特許文献4】Silapa-Archa,Weena et al.: Warasan Phesatchasat (1981),8(1),p.5
【非特許文献5】Gry, J. et al.: Cucurbitacin in plant food. Norden Nordic Counil of Ministers, TemaNord (2006), 556 ,p.34
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
PPARリガンド剤は、肥満を予防および/または改善することが期待され、さらにはメタボリックシンドロームのリスクファクターであるインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧または糖尿病などを予防および/または改善することが期待される。しかし、既存のPPARリガンド剤は、医薬品の長期投与による副作用などが危惧されるほか、食品由来のポリフェノール類などには、十分なPPARリガンド作用が得られないなどの問題点がある。
【0013】
本発明の目的は、安全で、優れたPPARリガンド剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため、長期摂取しても安全で副作用の少ないPPARリガンドを天然由来の420種類の植物に求め、鋭意探索した結果、トカドヘチマの抽出物に高いPPARリガンド活性があることを見出した。さらに、トカドヘチマ抽出物中から新規化合物である式(1):
【0015】
【化1】
【0016】
(Rは糖である)
で表わされる化合物を精製し、この化合物が強いPPARリガンド作用を有することを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0017】
すなわち本発明は、次の[1]〜[7]である。
[1] トカドヘチマの溶媒抽出物を有効成分とするPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
[2] 溶媒がアルコール類または含水アルコール類である、[1]記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
[3] 有効成分として、式(1):
【0018】
【化2】
【0019】
(RはHまたは糖である)
で表される化合物を含む、[1]または[2]記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
[4] 肥満、肥満に伴い発症するインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧または糖尿病を予防および/または改善するための、[1]〜[3]のいずれかに記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
[5] 飲食品の形態である、[4]記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
[6] 医薬品の形態である、[4]記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
[7] 式(1):
【0020】
【化3】
【0021】
(Rは糖である)
で表される化合物。
【発明の効果】
【0022】
本発明のPPARリガンド剤は、PPARα、δおよびγに対して優れたリガンド活性を示し、かつ、食物として摂取されている植物由来であり、安全性が高い。したがって、本発明により、優れたPPARリガンド剤が提供され、肥満、肥満に伴うインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧、糖尿病などを予防および/または改善に有効な飲食物、医薬品の形態であるPPARリガンド剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、トカドヘチマの未熟果実(9月収穫)メタノール抽出物のPPARリガンド活性の用量反応性を示す。
【図2】図2は、トカドヘチマの根、茎、葉(9月収穫)メタノール抽出物のPPARリガンド活性の用量反応性を示す。
【図3】図3は、トカドヘチマの根、茎、葉(10月下旬収穫)メタノール抽出物のPPARリガンド活性の用量反応性を示す。
【図4】図4は、トカドヘチマの熱水抽出物のPPARリガンド活性の用量反応性を示す。
【図5】図5は、トカドヘチマのメタノール抽出物のPPARリガンド活性の用量反応性を示す。
【図6】図6は、トカドヘチマの70容量% エタノール抽出物のPPARリガンド活性の用量反応性を示す。
【図7】図7は、トカドヘチマエキスのクロマトグラムを示す。縦軸:280 nmの吸光度、横軸:時間、マーカー:分画したフラクションを示す。
【図8】図8は、分画物のPPARリガンド活性を示す。縦軸:活性化率、横軸:フラクションNo.、α:PPARα、δ:PPARδ、γ:PPARγに対する作用、を示す。
【図9】図9は、フラクション93のPPARリガンド活性を示す。
【図10】図10は、フラクション94のPPARリガンド活性を示す。
【図11】図11は、フラクション124のPPARリガンド活性を示す。
【図12】図12は、フラクション125のPPARリガンド活性を示す。
【図13】図13は、式(1)においてRがHである化合物のHPLCクロマトグラムと吸収スペクトルを示す。
【図14】図14は、式(1)においてRがGlcである化合物のHPLCクロマトグラムと吸収スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
<PPARリガンド剤>
本発明のPPARリガンド剤は、トカドヘチマ抽出物または該抽出物中の特定の化合物を有効成分として含有する。
【0025】
トカドヘチマ抽出物
原料となるトカドヘチマ(Luffa acutangula Roxb.)はウリ科の植物である。トカドヘチマはインドから東南アジア、中国南部にかけて広く栽培され、未熟果実を野菜として利用している(世界有用植物事典 平凡社 p. 637、熱帯の野菜 農林水産省熱帯農業研究センター p. 37-39)。
【0026】
トカドヘチマ抽出物の原料は、未熟果実を用いるのが好ましいが、これら以外の部位、果皮、葉、花、地上部、全草などのいずれかを、またはいずれも用いることができる。
抽出に用いる溶媒としては、炭素数1〜4の低級アルコール類(たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、液状多価アルコール(例えば、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)、ケトン類(たとえば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)などが挙げられる。これらは、単独または2種以上を混合して用いることもできる。本発明においては、含水アルコール類またはアルコール類を用いるのが好ましく、特に含水低級アルコール類または低級アルコール類が好ましい。
【0027】
溶媒抽出する場合、トカドヘチマは生のまま、または乾燥させたもののいずれを用いても良く、抽出する際の植物体は原型のまま、切断したもの、粉砕したもの、粉末化したものなどいずれを用いても良い。抽出温度は5〜80℃の範囲で適宜に、更に加圧、減圧などの条件も適宜に設定することが可能であるが、抽出溶媒の安全性、抽出成分の安定性の点から、温度としては室温が好ましい。抽出時間は0.1時間〜1ヶ月の範囲で適宜に設定することが可能であるが、好ましくは0.5時間〜7日である。植物体と抽出溶媒の比率は1〜1000倍(W/V)の範囲で任意に設定することが可能であるが、好ましくは1〜100倍(W/V)である。
【0028】
2−アリルベンゾフラン類縁体
本発明のリガンド剤は、式(1)
【0029】
【化4】
【0030】
(RはHまたは糖である)
で表される2−アリルベンゾフラン類縁体を含む。
R部分の糖は、3炭糖〜7炭糖のいずれであってもよく、また単糖に限らず複数個結合した糖であってもよい。好ましい例としては、構成糖としてはグルコース、ラムノース、アラビノース、キシロース、またはガラクトースであり、それらが1〜8個結合したものが挙げられる。特に好ましくは、糖はグルコースである。
【0031】
Rが糖の場合、糖中のいずれのOH基が結合した化合物であってもよいが、C−1位のOH基が結合したものが好ましい。
上記化合物は、トカドヘチマから抽出・精製することにより得ることができる。抽出・精製方法は、当業者の知識に基づいて適宜実施することができる。例示としては、抽出物を実施例8〜12に示す方法で精製することにより得ることができる。
【0032】
上記化合物は、強いPPARα、δおよびγリガンド作用を有する。
なお、WO 2003051860には、本発明に用いられる2−アリルベンゾフラン類縁体と構造類似のCAS 551002−33−6が開示されている。しかし、該物質のエストロジェン作用を標榜しており、PPARリガンド作用や抗肥満効果に関しては開示されていない。また、WO 2009064251には、2−アリルベンゾフラン類縁体(RがH)が開示されている。しかし、該物質を部分構造とするプロスタグランジンE合成酵素阻害作用を標榜しており、PPARリガンド作用や抗肥満効果に関しては開示されていない。
【0033】
PPARリガンド活性の評価
PPARリガンド活性は、当業者が通常用いる方法で測定することができる。たとえば、培養細胞にPPARα、δまたはγを発現させると同時に、PPARの活性化に反応して蛍光シグナル等の測定用シグナルを発する系を発現させ、試験物を投与して、測定用シグナルの強度を測定することにより、PPARリガンド活性を定量化することができる。具体的には、実施例1〜3に示す方法で評価することができる。
【0034】
PPARリガンド剤
本発明のPPARリガンド剤は、PPARの生体内分布や生理活性に応じて、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体が関連する疾患の予防および/または改善のために用いることができる。具体的には、本発明のPPARリガンド剤は、肥満、肥満に伴い発症するインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧または糖尿病の予防および/または改善に有効である。
【0035】
本発明において、肥満の予防とは、肥満または肥満症であるとされる状態になるのを防ぐ又は遅らせることをいう。また、肥満の改善とは、肥満または肥満症であるとされる状態を改善することをいう。
【0036】
本発明において、インスリン抵抗性とは、肝臓・脂肪細胞・骨格筋で、インスリンの主な作用である糖の吸収促進作用が弱っている状態をいう。インスリン抵抗性の予防とは、SSPG(Steady-state plasma glucose)法などによるインスリン抵抗性の指標となる値がより悪化するのを防ぐ又は遅らせることを指す。インスリン抵抗性の改善とは、上記のインスリン抵抗性の指標となる値をより改善することをいう。
【0037】
本発明において、高脂血症の予防とは、高脂血症の状態又は境界域の状態になるのを防ぐ又は遅らせることをいう。また、高脂血症の改善とは、上記に示す高脂血症の状態または境界域の状態から、正常域と定義している状態に近づけることをいう。
【0038】
本発明において、高血圧の予防とは、高血圧とされる状態または境界域の状態になるのを防ぐ又は遅らせることをいう。また、高血圧の改善とは、高血圧とされる状態または境界域の状態から、正常域と定義している状態に近づけることをいう。
【0039】
本発明において、糖尿病の予防とは、糖尿病の状態または境界域の状態になるのを防ぐ又は遅らせることをいう。また、糖尿病の改善とは、糖尿病の状態または境界域の状態から、正常域と定義している状態に近づけることをいう。
【0040】
本発明のPPARリガンド剤は、PPARα、δ、γのいずれをも活性化する効果を有する。本発明のPPARリガンド剤は、PPARγに対してもリガンド作用を有することから、トカドヘチマ抽出物の作用はタワシヘチマの作用と明確に区別される。
【0041】
本発明のPPARリガンド剤は、飲食品および医薬品として利用することができるが、その形態は限定されず、健康食品、栄養補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品などの飲食品および医薬品として用いることができる。
【0042】
飲食品としては、チューインガム、チョコレート、キャンディー、ゼリー、ビスケット、クラッカーなどの菓子類、アイスクリーム、氷菓などの冷菓類、 茶、清涼飲料、栄養ドリンク、美容ドリンクなどの飲料、うどん、中華麺、スパゲティー、即席麺などの麺類、蒲鉾、竹輪、はんぺんなどの練り製品、ドレッシング、マヨネーズ、ソースなどの調味料、マーガリン、バター、サラダ油などの油脂類、パン、ハム、スープ、レトルト食品、冷凍食品など、すべての飲食品に使用することができる。これら肥満、肥満に伴い発症するインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧、糖尿病を予防および/または改善する組成物を摂取する場合、その摂取量は当該抽出物として成人一人一日当たり、好ましくは0.01〜1000mg/kg体重、より好ましくは1〜300mg/kg体重である。
【0043】
医薬品として用いる場合は、その剤形は特に限定されず、例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、注射剤、座薬、貼付剤などが挙げられる。製剤化においては、薬剤学的に許容される他の製剤素材、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、酸化防止剤、着色剤、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤などを適宜添加して調製することができる。これら製剤を当該抽出物換算で成人一人一日当たり、好ましくは0.01〜1000mg/kg体重、より好ましくは1〜300mg/kg体重を1回ないし数回に分けて投与する。
【0044】
<新規化合物>
本発明は、トカドヘチマから得られる新規化合物に関する。具体的には、
式(1):
【0045】
【化5】
【0046】
(Rは糖である)
で表される化合物である。
R部分の糖は、3炭糖〜7炭糖のいずれであってもよく、また単糖に限らず複数個結合した糖であってもよい。好ましい例としては、構成糖としてはグルコース、ラムノース、アラビノース、キシロース、またはガラクトースであり、それらが1〜8個結合したものが挙げられる。特に好ましくは、糖はグルコースである。
【0047】
R部分が糖である化合物は、化学的に合成することができる。たとえば、N,N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)中、2、3、4、6−テトラ−O−ベンジル−D−グルコピラノースをR部分がHの化合物とカップリングさせたのち、通常の水素化分解によってベンジル基を除去する。例えば、酢酸やアルコールなどのプロトン性極性溶媒中で、あるいはベンゼン、トルエン、酢酸エチルなどの非極性溶媒中で、パラジウム炭素やパラジウム黒、あるいはプラチナ炭素やプラチナ黒などを触媒として水素の存在で脱ベンジル化し、R部分がグルコースの化合物に導くことができる。
【0048】
R部分の糖は、糖中のいずれのOH基が結合した化合物であってもよいが、C−1位のOH基が結合したものが好ましい。
上記化合物は、トカドヘチマから抽出・精製することにより得ることができる。抽出・精製方法は、当業者の知識に基づいて適宜実施することができる。例示としては、抽出物を実施例8〜12に示す方法で精製することにより得ることができる。また、化学合成によっても得ることができる。
【0049】
上記化合物は、強いPPARα、δおよびγリガンド作用を有する。
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
実施例1 PPARγリガンド活性の測定方法
PPARγリガンド活性測定用CHO細胞を以下の方法で取得した。
PPARレポータープラスミド(pPPRE-Luc)は、SV40プロモーター遺伝子、蛍ルシフェラーゼ遺伝子を含むレポータープラスミド pGL3(Promega社)のSV40プロモーター遺伝子の上流にPPAR応答配列(PPRE)を3回組み込んだレポータープラスミドである。PPARγ発現プラスミド(pKD-rPPARγ)はSV40プロモーターによる哺乳類細胞用発現プラスミドにラットPPARγ遺伝子を組み込んだプラスミドである。 pPPRE-LucとpKD-rPPARγを、Lipofectamine(Invitorgen社)を用いてCHO(dhfr-)細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来細胞ジヒドロ葉酸還元酵素欠損株)にコトランスフェクションした。チミジンをほとんど含有しない透析ウシ胎児血清(Gibco社)を含むDMEM培地(Dulbecco‘s Modified Eagle Medium、Gibco社)で細胞を培養することにより、pPPRE-Luc と pKD-rPPARγを保持する安定形質転換株(CHO/PPARγ/PPRE)を取得した。
【0051】
上記細胞を96穴培養プレートに1x104 Cells/well となるように播種し、37℃、5% CO2条件下で24時間培養した。培地には、10% FBS(ウシ胎仔血清;Equitech−Bio社)、0.3g/l−Glutamine(日水製薬)、10ml/l MEM用非必須アミノ酸溶液(大日本住友製薬)を含むDMEM(日水製薬)を用いた。24時間培養後、試験物を含む培地に交換し、24時間培養した。溶媒対照にはジメチルスルホキシドを用い、培地に1/100量添加した。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS−)で洗浄した後、細胞溶解液(Cell Culture Lysis Reagent:Promega社)で細胞を溶解させ、Luciferase Assay Reagent(Promega社)を添加してマルチラベルカウンター(Wallac社)にてルシフェラーゼの発光強度を測定した。また、PPARγの合成アゴニストであるシグリチゾン(Ciglitizone)(Sigma社、濃度25μM)をポジティブコントロールとして用いた。リガンド活性の評価は、コントロール(溶媒対照)の発光強度に対する試験物の発光強度の比を試験物のPPARγリガンド活性発光度比とし、1.3以上を示したものについて、PPARγのリガンド活性があると判断した。
【0052】
実施例2 PPARδリガンド活性の測定方法
HepG2細胞(ヒト肝臓癌由来の培養細胞)を96穴培養プレートに1x104 cells/wellとなるように播種し、37℃、5% CO2条件下で24時間培養した。培地には、10% FBS(ウシ胎仔血清;Equitech−Bio社)、0.3g/l L−Glutamine(日水製薬)を含むRPMI1640(日水製薬)を用いた。その細胞をOPTI−MEM(Gibco社)で洗浄した後、pBIND/GAL4::mPPARδとpG5luc(Promega社)を用いてトランスフェクションした。なお、pBIND/GAL4::mPPARδは、酵母由来転写因子GAL4融合タンパク発現プラズミドであるpBIND(Promega社)にマウスPPARδ遺伝子を挿入したプラスミドであり、pG5lucはルシフェラーゼ遺伝子の上流にGAL4の応答配列(UAS)を5回組み込んだレポーター・プラスミドである(Cell,1995年,83巻,803〜812頁などに記載の方法で作成可能)。トランスフェクションの約24時間後、試験物を含む培地に交換し、24時間培養した。溶媒対照にはジメチルスルホキシドを用い、培地に1/100量添加した。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS−)で洗浄した後、細胞溶解液(Cell Culture Lysis Reagent:Promega社)で細胞を溶解させ、Luciferase Assay Reagent(Promega社)を添加してマルチラベルカウンター(Wallac社)にてルシフェラーゼの発光強度を測定した。また、PPARδの合成アゴニストであるL−165041(Sigma社、濃度25μM)をポジティブコントロールとして用いた。リガンド活性の評価は、コントロール(溶媒対照)の発光強度に対する試験物の発光強度の比を試験物のPPARδリガンド活性発光度比とし、1.3以上を示したものについて、PPARδのリガンド活性があると判断した。
【0053】
実施例3 PPARαリガンド活性の測定方法
実施例2に記載の方法のうち、融合タンパク発現プラスミドとして、pBIND/GAL4::mPPARδの代わりに、pBIND/GAL4::mPPARαを用いる以外は、実施例2と同様に実施し、PPARαリガンド活性の測定を行った。なお、pBIND/GAL4::mPPARαとは、pBIND(Promega社)にマウスPPARα遺伝子を挿入したプラスミドである。また、PPARαの合成アゴニストであるWY−14643(Sigma社、濃度25μM)をポジティブコントロールとして用いた。リガンド活性の評価は、コントロール(溶媒対照)の発光強度に対する試験物の発光強度の比を試験物のPPARαリガンド活性発光度比とし、1.3以上を示したものについて、PPARαのリガンド活性があると判断した。
【0054】
実施例4 試験物のPPARリガンド活性
植物420種の乾燥物をそれぞれ破砕し、破砕物1gに対して10倍量の70容量%エタノールに浸し、室温下、1日1回撹拌操作を加えて7日間抽出した。遠心分離後の上澄みを減圧濃縮後、凍結乾燥し、抽出物を得た。抽出物をジメチルスルホキシドに溶かして10mg/mlとし、実施例1−3の方法に従ってPPARリガンド活性を測定した。セイヨウニワトコ(Sambucus nigra L.(花))、アギタケ(Pleurotus ferulae(子実体))、アシュワガンダ(Withania somnifera Dunal(根))、アニス(Pimpinella anisum L.(種子))、ギョリュウモドキ(Calluna vulgaris(L.)Hull.(花))、サクナ(Peucedanum japonicum Thunb.(地上部))、セイヨウサンザシ(Crataegus monogyna Jaquin emend.Lindman(果実))、セキガイチャ(Adinandra nitida(葉))、タワシヘチマ(Luffa cylindrica L.(果実))、チャボトケイソウ(Passiflora incarnate L.(地上部))、トカドヘチマ(Luffa acutangula Roxb.(果実))、ハリエンジュ(Robinia pseudoacacia L.(花))、マンシュウウコギ(Acanthopanax sessiliflorus(Rupr.et Maxim.)Seem.(葉))に活性が認められた。中でも、トカドヘチマ抽出物が活性スペクトル上、とくに優れていた。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例5 トカドヘチマ抽出物の部位の違いによるPPARリガンド活性
236(ID2380)未熟果実(9月収穫)、421(ID2379)根、茎、葉(9月収穫)、433(ID4715)根、茎、葉(10月下旬収穫)の乾燥物をブレンダー(ラボミルサーLM−PLUS,大阪ケミカル株式会社製)で粉砕後、15gに5倍量のメタノールを添加し、室温で一週間浸漬した。東洋ろ紙No.2で吸引ろ過し、ろ液を減圧乾固し、抽出物を得た。固形分回収率は、それぞれ6.2%、4.1%、3.1%であった。抽出物をジメチルスルホキシドに溶かして10mg/mlとし、実施例1−3の方法に従ってPPARリガンド活性を測定した。結果を表2〜4及び図1〜3に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
最大用量の100μg/mlでは細胞障害性を示したが、根・茎・葉および未熟果実にほぼ同等の活性が観察された。
実施例6 トカドヘチマ抽出物の抽出溶媒の違いによるPPARリガンド活性
トカドヘチマ乾燥物をブレンダーで粉砕後、熱水、70容量%エタノール、メタノールの3種類の溶媒で抽出した。抽出条件(固形分収率)は、熱水:10倍量、80℃、30分(28%)、70容量%エタノール:10倍量、室温一週間(21%)、メタノール:5倍量、室温一週間(6%)である。得られた乾燥抽出物をジメチルスルホキシドに溶かして10mg/mlとし、実施例1−3の方法に従ってPPARリガンド活性を測定した。結果を表5〜7及び図4〜6に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】
実施例7 トカドヘチマ抽出物の抽出条件の違いによるPPARリガンド活性
トカドヘチマ乾燥物をブレンダーで粉砕後、2gに対して10倍量の含水量の異なるエタノール(10容量%、30容量%、50容量%、70容量%、90容量%エタノール)を添加し、室温で抽出した。1日後、3日後、5日後、7日後に遠心分離し、抽出液を得た。それぞれの抽出液を減圧濃縮、凍結乾燥し、固形分を得た。70容量%エタノール、7日間浸漬条件の固形分抽出効率(17.6%)を1.00とした相対抽出効率を求めた。結果を表8に示す。また、得られた乾燥抽出物をジメチルスルホキシドに溶かして50mg/mlとし、実施例1−3の方法に従ってPPARリガンド活性を測定した。結果を表9〜11に示す。
【0065】
【表8】
【0066】
【表9】
【0067】
【表10】
【0068】
【表11】
【0069】
実施例8
成分の分画
トカドヘチマのメタノールエキス310mgにメタノール4mlを添加した試料をBond−Elut−C8 1ml(Varians社)5本に分けて負荷し、それぞれメタノール2ml、アセトニトリル1mlで溶出し、湿重量290mgを得た。この前処理ののち、ジメチルスルホキシド200μl、メタノール100μlを添加した試料をパックドカラムに付し、5ml/0.5分ずつ採取した。結果を図7に示す。
【0070】
分取条件
システム:Gilson(登録商標)305型および303型
カラム:DevelosilTM C30−UG−5(20*250mm+20*50mm、野村化学株式会社製)
移動相:A:蒸留水、B:アセトニトリル
プログラム:0分(0% B)、76分(100% B)、114分(100% B)
流速:10ml/分
検出波長:280nm
フラクションコレクター:Gilson(登録商標) FC204型
実施例9 分画物のPPARリガンド活性測定
実施例8で得られたフラクション81−130から各々200μl採取し、減圧濃縮してジメチルスルホキシド100μlに再溶解した。実施例1−3の方法にしたがって測定した結果、フラクション93、94、124―127に活性が認められた(図8)。
【0071】
実施例10 成分のPPARリガンド活性
実施例8で得られた活性画分のうち、フラクション93、94、および124、125の用量反応性を実施例1−3の方法にしたがって測定した。結果を表12および図9〜12に示す。活性を示す最大有効希釈倍率はフラクション93、94では1300倍、124、125では12000倍であった。アッセイ時に用いた試料はフラクションを2倍濃縮したものなので、もとの試料ではそれぞれ650倍、6000倍希釈となる。該当フラクションを減圧濃縮、凍結乾燥し、得られた重量が0.2mgであることを考慮すると、有効濃度は、
フラクション93、94:0.2mg/10ml/650=0.00003mg/ml=0.03μg/ml
フラクション124、125:0.2mg/10ml/6000=0.000003mg/ml=0.003μg/ml
【0072】
【表12】
【0073】
実施例11 精製物の活性
実施例8で得られたフラクョン124,125をDevelosilTM C30−UG−5に付し、50V/V%アセトニトリル−0.1%ギ酸で溶出し、化合物A(RはH)を得た(図15)。また、実施例8で得られたフラクョン93,94をDevelosilTM C30−UG−5に付し、30V/V%アセトニトリル−0.1%ギ酸で溶出し、化合物B(RはGlc)を得た(図16)。化合物A(RはH)の極大吸収は251nmおよび304nm、化合物B(RはGlc)の極大吸収は256nmおよび304nmであった(図13,14)。PPARリガンド活性を測定した結果を表13に示す。
【0074】
【表13】
【0075】
糖部分の無い物質(アグリコン)よりも配糖体の方が吸収されやすいことが知られている。例えば、ケルセチン配糖体の方が糖部分のないケルセチンよりも生物学的利用率が高いことが知られている(Free Radic. Res. 31(6):569−573; 1999)。また、糖部分の無い物質(アグリコン)よりも配糖体の方が極性が高く、より水に溶けやすいという性質を有する。これらの性質からも、化合物Bは優れたPPARリガンド剤であるといえる。
【0076】
実施例12 精製物の質量分析
Q−TOF Premier(Micromass社製、UK)を用いて、以下の条件で精密質量分析(LC−MSおよびLC−MS/MS)を行った;
カラム:DevelosilTM C30−UG−5(3mm*150mm、野村化学株式会社製)、カラム温度:40℃
移動相:50V/V%アセトニトリル−0.1%ギ酸、流速:0.25ml/分
イオン化法:ESI、イオンソース;Z−スプレー
Capillary voltage:2.7kV(ネガティブ、Vモード)、3.0kV(ポジティブ、Vモード、)
Cone voltage:
38V{ネガティブモード、化合物A(RはH)のMSおよび化合物A(RはH)のm/z 267.07のMS/MS測定時}
40V{ポジティブモード、化合物A(RはH)のMSおよび化合物A(RはH)のm/z 269.08のMS/MS測定時}
24V{ネガティブモード、化合物B(RはGlc)のMS測定時}
20V{ネガティブモード、化合物B(RはGlc)のm/z 429.12のMS/MS測定時}
Collision energy:
20−30eV{ネガティブモード、化合物A(RはH) の m/z 267.07のMS/MS測定時}
25−30eV{ポジティブモード、化合物A(RはH) の m/z 269.08のMS/MS測定時}
20 eV{ネガティブモード、化合物B(RはGlc) の m/z 429.12のMS/MS測定時}
Source Temp:100℃(ネガティブモード、ポジティブモード)
Desolvation Temp:300℃(ネガティブモード、ポジティブモード)
ロックスプレーによる質量補正を行い、リファレンスにはロイシンエンケファリン(m/z 554.2615(ネガティブモード)、m/z 556.2771(ポジティブモード))を用いた。
<化合物A>(RはH)
ネガティブモード:
MS:m/z 267.0650[M−H]−、C16H11O4(理論m/z 267.0657、誤差―2.6ppm)
MS/MS(プレカーサーイオン m/z 267.07):
フラグメントイオン m/z 208.0526、m/z 223.0756
ポジティブモード:
MS:m/z 269.0808[M+H]+、C16H13O4(理論m/z 269.0814、誤差−2.2ppm)
MS/MS(プレカーサーイオンm/z 269.08):
フラグメントイオンm/z 165.0703、m/z 181.0656、
m/z 195.0800、m/z 209.0606、m/z 223.0760、m/z 241.0858
<化合物B>(RはGlc)
ネガティブモード:
MS:m/z 429.1185[M−H]−、C22H21O9(理論m/z 429.1186、誤差−0.2ppm)
MS/MS(プレカーサーイオン m/z 429.12):
フラグメントイオン m/z 223.0756、m/z 267.0640
ポジティブモードの精密質量のMSとMS/MSは分析せず。
【0077】
実施例13 構造解析
実施例11で得られた化合物A,化合物Bの試料をメタノール−D4に溶解し、溶媒を内部標準として、DMX−750 spectrometer(BRUKER BIOSPIN, Germany)を用いて測定した。測定項目は1H NMR、1H{13C}−HSQC、1H{13C}−HMBC、TOCSY、DQF−COSY、NOESYおよびROESYである。
化合物A(RはH): 2−(4−methoxyphenyl)benzofuran−5−carboxylic acid
δH(Hz):8.18(C−4H,1H、d、J=1.4)、7.92(C−6H,1H、dd、J=8.5,1.4)、7.83(C−2‘H,C−6’H、2H、d、J=8.8)、7.43(C−7H,1H、d、J=8.5)、7.06(C−3H,1H、s)、7.02(C−3‘H,C−5’H,2H、d、J=8.8)、3.86(C−4’−OCH3、3H、s)
δC: 157.6(C2)、101.1(C3)、134.4(C3a)、123.4(C4),130.4(C5)、126.7(C6)、110.5(C7)、157.4(C7a)、167.9(C8)、124.5(C1‘)、127.4(C2’,C6‘)、115(C3’,C5‘)、161.7(C4’)、56(C4‘−OCH3)
化合物B(RはGlc): 5−[(β−D−glucopyranosyloxy)carbonyl]−2−(4−methoxyphenyl)benzofuran
GlcのC−1位の水素(C−1”H、δH5.75)とカルボキシル基の炭素(C−8、δc167)とのつながりを示す1H{13C}−HMBCスペクトルデータから、GlcのC−1位のOHが結合していると結論した。また、グルコース C−1位の水素(C−1”H、δH5.75)の結合定数、J=8.1 Hzであることから、β結合であることが分かった。
δH(Hz):8.37(C−4H,1H、d、J=1.7)、8.04(C−,1H、dd、J=8.6,1.7)、7.86(C−2‘H,C−6’H,2H、d、J=8.8)、7.60(C−7H,1H、d、J=8.6)、7.14(C−3H,1H、s)、7.04(C−3‘H,C−5’H,2H、d、J=8.8)、3.56(C4’−OCH3,3H、s); 5.75(C−1“H,1H、d、J=8.1)、3.87(C−6”H,1H、dd、J=12.3、2.0)、3.72(C−6“H,1H、dd、J=12.3、5.2)、3.55(C−2”H,1H、dd、J=9.1、8.1)、3.51(C−3“H、1H、J=9.1、8.7)、3.47(C−5”H、1H、m)、3.43(C−4“H、1H、dd、J=9.6、8.7)
δC:159.5(C2)、101(C3)、131(C3a)、124.5(C4),126(C5)、127(C6)、112(C7)、159(C7a)、167(C8)、124(C1‘)、128(C2’,C6‘)、116(C3’,C5‘)、162(C4’)、56(C4‘−OCH3);96(C1“)、74(C2”)、78(C3“)、71(C4”)、79(C5“)、62.4(C6”)
【0078】
【化6】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明により、優れたPPARリガンド剤が提供され、肥満、肥満に伴うインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧、糖尿病などの予防および/または改善に有効な飲食物、医薬品の形態であるPPARリガンド剤が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トカドヘチマの溶媒抽出物を有効成分とするPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
【請求項2】
溶媒がアルコール類または含水アルコール類である、請求項1記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
【請求項3】
有効成分として、式(1):
【化1】
(RはHまたは糖である)
で表される化合物を含む、請求項1または2記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
【請求項4】
肥満、肥満に伴い発症するインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧または糖尿病を予防および/または改善するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
【請求項5】
飲食品の形態である、請求項4に記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
【請求項6】
医薬品の形態である、請求項4記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
【請求項7】
式(1):
【化2】
(Rは糖である)
で表される化合物。
【請求項1】
トカドヘチマの溶媒抽出物を有効成分とするPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
【請求項2】
溶媒がアルコール類または含水アルコール類である、請求項1記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
【請求項3】
有効成分として、式(1):
【化1】
(RはHまたは糖である)
で表される化合物を含む、請求項1または2記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
【請求項4】
肥満、肥満に伴い発症するインスリン抵抗性、高脂血症、高血圧または糖尿病を予防および/または改善するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
【請求項5】
飲食品の形態である、請求項4に記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
【請求項6】
医薬品の形態である、請求項4記載のPPARα、δおよび/またはγのリガンド剤。
【請求項7】
式(1):
【化2】
(Rは糖である)
で表される化合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−12011(P2011−12011A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157200(P2009−157200)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【出願人】(000004156)日本新薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【出願人】(000004156)日本新薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
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