説明

PPAR作動薬としてのオキサゾール誘導体

式(I)の縮合ヘテロアリールカルボン酸(式中R、Ar、A、Y、HET、Q及びTは明細書に定義するとおり);前記化合物又はその塩の有効量を含有する医薬組成物は、糖尿病、異脂肪血症、肥満症、炎症性疾患等PPAR関連疾患の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物の血中ブドウ糖の調節及びインスリン感受性の増強において有用となることを可能とするペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)に対し、作動薬活性を示す、縮合ヘテロアリールカルボン酸、具体的には、インダゾール及びアザ−インドールカルボン酸に関する。本発明は糖尿病、異脂肪血症、肥満症、炎症性疾患等のPPAR関連疾患の治療にも関する。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシソーム増殖剤は、げっ歯類に投与したとき肝及び腎のペルオキシソームのサイズ及び数の劇的な増大を惹起し、同時に、β酸化サイクルに必要な酵素の発現の増加を介してペルオキシソームの脂肪酸代謝能も増大させる、多様な構造を有する化合物群である。この群に含まれる化学物質は脂質低下薬のフィブラート類、除草剤及びフタル酸エステル系可塑剤である(Reddy and Lalwani, Crit. Rev. Toxicol. 12: 1-58(1983))。ペルオキシソームの増殖は、高脂肪食及び寒冷馴化等の食事又は生理的要因でも惹起される。
【0003】
ペルオキシソーム増殖剤により活性化される核内ホルモン受容体スーパーファミリーのメンバーが同定されたため、ペルオキシソーム増殖剤がその多面発現的な作用を発揮する機序について深い知見が得られた(Isseman and Green, Nature 347-645-650(1990))。この受容体はペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPAR−α)と命名され、後に、様々な中鎖及び長鎖脂肪酸によって活性化されると判明するとともに、ラットアシル−CoAオキシダーゼ及びヒドラターゼ−デヒドロゲナーゼ(ペルオキシソームでのβ酸化に必要な酵素)に加え、脂肪酸Ω−ヒドロキシラーゼであるウサギシトクロムP450 4A6をコードする遺伝子の発現を刺激すると判明した。
【0004】
PPAR−αはレチノイドX受容体とのヘテロダイマーとして、ペルオキシソーム増殖剤応答因子(PPRE)と呼ばれるDNA配列因子に結合することにより、転写を活性化する。レチノイドX受容体は9−シスレチノイン酸により活性化される(Kliewer ら, Nature 358: 771-774(1992)、Gearing ら, Proc. Natl. Acad.
Sci. USA 90: 1440-1444(1993)、Keller ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:
2160-2164(1993)、Heyman ら, Cell 68: 397-406(1992)及びLevin ら, Nature 355:
359-361(1992)を参照されたい)。PPAR−α−RXR複合体はペルオキシソーム増殖剤及び/又は9−シスレチノイン酸により活性化されるので、レチノイド及び脂肪酸シグナリング経路は脂質代謝の調節に収束するようである。
【0005】
PPAR−αの発見以後、例えばPPAR−β、PPAR−γ、PPAR−δ等PPARの他のアイソフォームが同定されており、これらは空間的に異なる位置に発現される。それぞれのPPAR受容体は組織発現パターンが異なり、多様な構造の化合物による活性化反応も異なる。例えばPPAR−γは脂肪組織に最も大量に発現され、骨格筋、心臓、肝臓、腸、腎臓、血管内皮及び平滑筋の細胞やマクロファージでの発現レベルは低い。PPAR−γには2種類のアイソフォームが存在し、それぞれγ及びγと識別されている。PPAR−γは脂肪細胞のシグナリング、脂肪貯蔵及び脂質代謝に介在する。現在までに集められた証拠からは、PPAR−γが糖尿病治療薬の1クラスであるチアゾリジン2,4ジオン類のインスリン抵抗性改善作用に介在する主たる、そしておそらく唯一の、分子標的であるとの結論が裏付けられている。
【0006】
単独療法又は併用療法の状況において、新規及び確立された経口糖尿病治療薬は、統一性がなく、むしろ限定的な効果であると考えられている。経口糖尿病療法の有効性に限界がある理由の例として、血糖コントロールが不良である又は限定されること、あるいは忍容し難い副作用による患者のコンプライアンス不良が挙げられる。この副作用には浮腫、体重増加の他、さらに重篤な合併症が含まれる。例えば、スルホニル尿素系薬剤を服用する患者の一部では低血糖症が観察される。置換ビグアニドであるメトホルミンにより、下痢及び胃腸不快感が発現する可能性がある。最後に、浮腫及び体重増加、場合によっては肝毒性は、一部チアゾリジン2,4ジオン糖尿病治療薬投与と関連付けられている。上掲の薬剤2種類以上を使用した併用療法はよく知られるが、一般的には、血糖コントロールの付加的な改善が得られるに過ぎない。
【0007】
その結果、単独又は併用療法として使用することができ、かつ体液貯留、末梢性浮腫、体重増加や、さらに重症度の高い合併症等の副作用を誘発しない経口糖尿病治療薬を求めるニーズが存在する。
【0008】
PPARには数種のアイソフォームが存在するため、PPARアイソフォームの1種類のみ、好ましくはPPAR−γのみと選択的に相互作用する能力を有する化合物を同定することも、望ましいと思われる。そのような化合物では、例えば糖尿病、異脂肪血症、肥満、炎症性疾患等のPPAR、好ましくはPPAR−α及びPPAR−γが介在する過程を調節すると思われる。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、式(I)の新規化合物、又はその薬学的に許容できる塩を提供する。
【化1】

【0010】
[式中、
Arは(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、又は(C〜C10)ヘテロアリールであり(ここで、各Arは、Zから選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい)、
Aは−CH−、−NH、−O−、又は−S−であり、
は(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、又は(C〜C10)ヘテロアリールであり(ここで、各Rは、Zから選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい)、
Yは−(CH−、−(CH−NR15−、−(CH−O−及び−(CH−S−からなる群から選択され{ここで、nは、独立して、0、1、2、又は3であり、
15は水素、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、又は(C〜C10)ヘテロアリールである(ここで、各R15は、Zから選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい)}、
Qは−(CR−、−(CR−NR15−、−NR15−(CR−、(CR−O−、−O−(CR−、−S−(CR−、及び−(CR−S−からなる群から選択され(ここで、mは、独立して、1、2、3、又は4である)、
【化2】

はZから選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい下記の式を有する縮合(C〜C12)ヘテロアリールであり、
【化3】

または
【化4】

ここで、Zは下記の式i又はiiの構造を有する縮合(C〜C12)ヘテロアリールのいずれの環に存在していてもよい。点線は前記縮合(C〜C12)ヘテロアリールが芳香族となるような任意の二重結合であり、
、X、W、W、W、W、B、B、B、B、D、D、D及びDのそれぞれは、独立して、=CH−又は=N−であり、
、X、B、B、B、及びBのうち少なくとも1つは=N−であることが必要であり、
、W、W、W、D、D、D及びDのうち少なくとも1つは=N−であることが必要である。
各 - -cは−Y−基への結合点であり、各
- -dは−Q−基への結合点であり、
Z、Z、Z、及びZのそれぞれは、下記の群から選択される:
(a)F、Cl、Br、I、CF又はCN;
(b)Rから独立して選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい(C〜C)アルキル;
(c)−C(=O)−R{式中、Rは、H、OH、CF、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−O−、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)シクロアルキル−O−、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)ヘテロシクリル−O−、(C〜C10)アリール、(C〜C10)アリール−O−、(C〜C10)ヘテロアリール及び(C〜C10)ヘテロアリール−O−からなる群から選択される};
(d)−C(=O)−NR{式中、Rは、H又は(C〜C)アルキルであり、また、Rは、H、(C〜C)アルキル、−CH−(C=O)−O−(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール及び(C〜C10)ヘテロアリールからなる群から選択される};
(e)(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、又は(C〜C10)ヘテロアリール;
(f)NR10{式中、Rは、独立して、H又は(C〜C)アルキルであり、また、R10は、−C(=O)−O−C(CH、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール及び(C〜C10)ヘテロアリールからなる群から選択されるか、あるいは、R及びR10は、それらが結合する窒素と一体となって、5〜8員環のヘテロアリール又はヘテロシクリル環を形成してもよい};
(g)R11−O−{式中、R11は、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、及び(C〜C10)ヘテロアリールからなる群から選択される};
(h)R12−SO−{式中、R12は、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、及び(C〜C10)ヘテロアリールからなる群から選択され、式中、pは、0、1、又は2である};
(i)R1314N−SO−{式中、R13は、H又は(C〜C)アルキルであり、また、R14は、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、又は(C〜C10)ヘテロアリールであるか、あるいは、R13及びR14は、それらが結合する窒素と一体となって、5〜8員環のヘテロアリール又はヘテロシクリル環を形成するものとしてもよく、qは、1又は2である}。
及びRのそれぞれは、独立して、H、又はRから独立して選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい(C〜C)アルキル若しくはRから独立して選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい(C〜C10)アリール{式中、R及びRのそれぞれは、独立して、下記の群より選択される:
(a)F、Cl、Br、I、CN、CF又はNO
(b)−NR10(式中、Rは、独立して、H又は(C〜C)アルキルであり、また、R10は、−C(=O)−O−C(CH、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール及び(C〜C10)ヘテロアリールからなる群から選択されるか、あるいは、R及びR10は、それらが結合する窒素と一体となって、5〜8員環のヘテロアリール又はヘテロシクリル環を形成してもよい);
(c)R11−O−(式中、R11は、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、及び(C〜C10)ヘテロアリールからなる群から選択される);
(d)R12−SO−(式中、R12は、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、及び(C〜C10)ヘテロアリールからなる群から選択され、pは、0、1、又は2である);、
(e)R1314N−SO−(式中、R13は、H又は(C〜C)アルキルであり、また、R14は、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、又は(C〜C10)ヘテロアリールであり、あるいは、R13及びR14は、それらが結合する窒素と一体となって、5〜8員環のヘテロアリール又はヘテロシクリル環を形成してもよく、qは、1又は2である)。}
Tは、−(C=O)−OH、−(C=O)−OR15、−(C=O)−OM{式中、Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である}、テトラゾリル、チアゾリジニル、−SO−NH−R15、−NH−SO−R15、−(C=O)−NH−SO−R15、及び他の酸プロドラッグ又はその同配体からなる群から選択される。]
【0011】
本発明の一態様においては、
【化5】

はZから選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい下記の式iの構造を有する縮合(C〜C12)ヘテロアリールである(ここで、Zは前記縮合(C〜C12)ヘテロアリールのいずれの環に存在していてもよい)。
【化6】

【0012】
ここで、式iは、下記の式i(a)〜i(s)からなる群から選択される。
【化7】


【化8】


【0013】
別の一態様においては、本発明は、
【化9】

がZから選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい下記の式(ii)の構造を有する縮合(C〜C12)ヘテロアリールである(ここで、Zは前記縮合(C〜C12)ヘテロアリールのいずれの環に存在していてもよい)、式(I)の化合物に関する。
【化10】

【0014】
ここで、式(ii)は、下記の式ii(a)〜ii(h)からなる群から選択される。
【化11】

【0015】
別の一態様においては、本発明は、Arがフェニルである式(I)の化合物に関する。
【0016】
別の好ましい態様においては、本発明は、Aが−O−である式(I)の化合物に関する。
【0017】
別の一態様においては、本発明は、Rが(C〜C)アルキル、好ましくはメチルである式(I)の化合物に関する。
【0018】
別の一態様においては、本発明は、Rが(C〜C10)アリール、好ましくはフェニルである式(I)の化合物に関する。
【0019】
別の一態様においては、本発明は、Qが−(CR−でmは2又は3、かつR及びRのそれぞれが水素又は(C〜C)アルキルである式(I)の化合物に関する。
【0020】
別の一態様においては、本発明は、Qが−(CR−NH−でmは1又は2、かつR及びRのそれぞれが水素又は非置換(C〜C)アルキルである式(I)の化合物に関する。
【0021】
別の一態様においては、本発明は、Qが−(CR−O−でmは1又は2、かつR及びRのそれぞれが水素又は非置換(C〜C)アルキルである式(I)の化合物に関する。
【0022】
別の一態様においては、本発明は、Qが−(CR−S−でmは1又は2、かつR及びRのそれぞれが水素又は非置換(C〜C)アルキルである式(I)の化合物に関する。
【0023】
別の好ましい態様においては、本発明は、Tが−(C=O)−OHである式(I)の化合物に関する。
【0024】
別の一態様においては、本発明は、Tがテトラゾリル、チアゾリジニル、−SO−NH−R15、−NH−SO−R15、−(C=O)−NH−SO−R15、及び他の酸プロドラッグ又はその同配体からなる群から選択される式(I)の化合物に関する。
【0025】
別の一態様においては、本発明は、ZがF、Cl、Br、又はIからなる群から選択される式(I)の化合物に関する。
【0026】
別の一態様においては、本発明は、Zが(C〜C)アルキル、好ましくは非置換(C〜C)アルキルである式(I)の化合物に関する。
【0027】
別の一態様においては、本発明は、Yが−(CH−O−、かつnが1、2、又は3である式(I)の化合物に関する。
【0028】
別の一態様においては、本発明は、Yが−(CH−NR15−でR15は水素、(C〜C)アルキル又は(C〜C10)シクロアルキル、かつnは1、2、又は3である式(I)の化合物に関する。
【0029】
別の一態様においては、本発明は、Yが−(CH−、かつnが1、2、又は3である式(I)の化合物に関する。
【0030】
別の一態様においては、本発明は、Yが−(CH−S−、かつnが1、2、又は3である式(I)の化合物に関する。
【0031】
本発明の好ましい化合物は、下記の化学構造式の化合物及びその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される。

【化12】



【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【0032】
本発明は、哺乳動物におけるインスリン非依存性糖尿病を治療する方法であって、かかる必要がある哺乳動物に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。一態様においては、前記哺乳動物には耐糖能障害が存在する。
【0033】
本発明は、哺乳動物における多嚢胞性卵巣症候群を治療する方法であって、かかる必要がある哺乳動物に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。
【0034】
本発明は、哺乳動物における肥満症を治療する方法であって、かかる必要がある哺乳動物に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。
【0035】
本発明は、肥満哺乳動物において体重を減量する方法であって、かかる必要がある哺乳動物に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。
【0036】
本発明は、哺乳動物における高血糖症を治療する方法であって、かかる必要がある哺乳動物に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。
【0037】
本発明は、哺乳動物における高脂血症を治療する方法であって、かかる必要がある哺乳動物に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。
【0038】
本発明は、哺乳動物における高コレステロール血症を治療する方法であって、かかる必要がある哺乳動物に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。
【0039】
本発明は、哺乳動物におけるアテローム性動脈硬化症を治療する方法であって、かかる必要がある哺乳動物に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。
【0040】
本発明は、哺乳動物における高トリグリセリド血症を治療する方法であって、かかる必要がある哺乳動物に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。
【0041】
本発明は、哺乳動物における高インスリン血症を治療する方法であって、かかる必要がある哺乳動物に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。
【0042】
本発明は、インスリン異常を呈する患者、及び/又は循環するグルココルチコイド類、成長ホルモン、カテコールアミン類、グルカゴン、若しくは副甲状腺ホルモンに関連するブドウ糖障害の徴候を呈する患者を治療する方法であって、前記患者に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。
【0043】
本発明は、ヒトにおけるインスリン抵抗性症候群を治療する方法であって、かかる治療を要する患者に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。
【0044】
本発明は、ヒトにおけるPPAR関連疾患を治療する方法であって、かかる治療を要する患者に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。
【0045】
本発明は、哺乳動物に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む、哺乳動物におけるPPAR活性を調節する方法も提供する。
【0046】
本発明は、哺乳動物に対し式(I)の化合物の血中ブドウ糖降下に有効な量を投与することを含む、哺乳動物における血中ブドウ糖を低下させる方法も提供する。
【0047】
本発明は、哺乳動物に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む、哺乳動物における脂肪細胞分化を調節する方法も提供する。
【0048】
本発明は、哺乳動物に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む、哺乳動物におけるPPARの介在する作用を調節する方法も提供する。
【0049】
本発明は、哺乳動物に対し式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む、哺乳動物におけるインスリン感受性を増強する方法も提供する。
【0050】
本発明は、式(I)のPPAR調節物質少なくとも1種類及びその薬学的に許容できる担体を含む組成物も提供する。代表的な薬学的に許容できる担体には、経口、静脈内、皮下、筋肉内、皮内等の投与に適した担体を含む。クリーム、ローション、錠剤、分散性粉末、顆粒、シロップ、エリキシル、又は無菌の水性若しくは非水性溶液、懸濁液若しくは乳液等の形態としての投与が意図される。
【0051】
経口液剤の調製には、適した担体には乳液、溶液、懸濁液、シロップ等が含まれ、湿潤剤、乳化及び懸濁化剤、甘味、着香及び芳香剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0052】
非経口投与用の液体の調製には、適した担体として滅菌水性又は非水性溶液、懸濁液又は乳液が含まれる。非水性溶媒又は媒体の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油及びトウモロコシ油等の植物油類、ゼラチン、並びにオレイン酸エチル等の注射用有機エステル類である。前記の剤形には、保存、湿潤、乳化及び分散剤等の佐剤も含有されてもよい。例えば細菌捕捉フィルターでのろ過、組成物中への滅菌剤の添加、組成物への照射、又は組成物の加熱により、前記剤形を滅菌してもよい。また、使用直前に滅菌水、又は他の無菌注射用媒質に溶解させるようなの形式として製造することができる。
【0053】
(定義)
ここに記載し請求する本発明の目的においては、下記の用語を次のように定義する。
別に指示しない限り、用語「(C〜C)アルキル」及び本明細書中で言及する他の用語の(C〜C)アルキル部分(例:(C〜C)アルキル−O−の「(C〜C)アルキル」部分)は、直鎖状であっても分枝状であってもよい(メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等)。
【0054】
別に指示しない限り、用語「(C〜C10)シクロアルキル」とは、本明細書中で言及する非芳香族の飽和又は部分飽和、単環式若しくは縮合、スピロ又は非縮合二環式若しくは三環式炭化水素であって、合計3〜10個の炭素原子、好ましくは5〜8個の環炭素原子を含有するものを表す。代表的な(C〜C10)シクロアルキルには3〜7個、好ましくは3〜6個の炭素原子を有する単環式環構造を含み、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等がある。(C〜C10)シクロアルキルの説明のための具体例は下に掲げる構造から誘導されるが、これに限定するものではない。
【化21】

【0055】
別に指示しない限り、用語「(C〜C10)ヘテロシクリル」とは、本明細書中で言及する非芳香族の飽和又は部分飽和、1価、単環式若しくは縮合、スピロ又は非縮合二環式若しくは三環式官能基であって、合計2〜10個の環炭素原子、並びに窒素、酸素及びイオウから選択される1〜5個の環ヘテロ原子を含有するものを表す。(C〜C10)ヘテロシクリルの説明のための具体例は下に掲げる構造から誘導されるが、これに限定するものではない。
【化22】


【化23】

【0056】
別に指示しない限り、前述の(C〜C10)ヘテロシクリルは、可能な場合はC−結合であってもN−結合であってもよい。例えば、ピペリジルはピペリド−1−イル(N−結合)であってもピペリド−2−イル(C−結合)であってもよい。
【0057】
別に指示しない限り、用語「(C〜C10)アリール」とは、本明細書中で言及する芳香族の1価、単環式又は縮合若しくは非縮合二環式若しくは三環式官能基であって、合計6〜10個の環炭素原子を含有するものを表す。(C〜C10)アリールの説明のための具体例は下に掲げる構造から誘導されるが、これに限定するものではない。



【化24】

【0058】
別に指示しない限り、用語「(C〜C10)ヘテロアリール」とは、本明細書中で言及する芳香族の1価、単環式又は縮合若しくは非縮合二環式又は三環式官能基であって、合計1〜10個の環炭素原子、並びに窒素、酸素及びイオウから選択される1〜5個の環ヘテロ原子を含有するものを表す。(C〜C10)ヘテロアリールの説明のための具体例は下に掲げる構造から誘導されるが、これに限定するものではない。

【化25】

【化26】

【0059】
別に指示しない限り、前述の(C〜C10)ヘテロアリールは、可能な場合はC−結合であってもN−結合であってもよい。例えば、ピリジルはピリド−1−イル(N−結合)であってもピリド−3−イル(C−結合)であってもよい。
【0060】
用語「薬学的に許容できる塩」とは、特定の化合物の遊離酸及び塩基の生物学的有効性を保持しており、生物学的にもその他の見地からも好ましくない点のない塩を表す。本発明の化合物は十分な酸性、十分な塩基性、又はこの両者の官能基を有する場合があり、それに応じて多数の無機又は有機塩基、並びに無機及び有機酸のいずれとも反応し、薬学的に許容できる塩を形成する。代表的な薬学的に許容できる塩には、本発明の化合物を鉱酸若しくは有機酸、又は無機塩基と反応させることにより調製される塩を含み、例えば硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、およびマンデル酸塩を含む塩が挙げられる。
【0061】
本明細書中で使用する用語「治療する」又は「治療される」とは、当該の用語が適用される疾患若しくは状態、又は前記疾患若しくは状態の1つ以上の症状について、回復させる、緩和する、進行を阻害する、又は予防することを表す。本明細書中で使用する用語「治療」とは、直前に定義された「治療する」に従い、治療する行為を表す。
【0062】
本明細書中で使用する用語「調節」又は「調節する」とは、ステロイド/甲状腺スーパーファミリーに属するものに対する調節物質が、直接的(リガンドとして受容体に結合することにより)又は間接的(リガンドの前駆物質として、又は前駆物質からのリガンド産生を促進する誘発物質として)に、ホルモン発現コントロール下に維持される遺伝子の発現を誘発する、又は前記コントロール下に維持される遺伝子の発現を抑制する能力を表す。
【0063】
本明細書中で使用する用語「肥満症」又は「肥満」とは、一般的に、その年齢、性別及び身長に対する平均体重を約20〜30%以上上回る体重の個体を表す。専門的には、「肥満」とは男性ではそのボディ・マス・インデックスが27.8kg/mを超える個体、女性ではそのボディ・マス・インデックスが27.3kg/mを超える個体と定義される。当業者ならば、本発明の方法が上記の基準に該当する個体に限られるものではなく、例えば肥満症の傾向のあるもの等、このような従来の基準に該当しない個体によっても、有利に実行されるものであることを容易に認識する。
【0064】
本明細書中で使用する用語「炎症性疾患」とは、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、乾癬、軟骨石灰化症、痛風、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、線維筋痛、悪液質等の疾患を表す。
【0065】
本明細書中で使用する語句「治療有効量」とは、研究者、獣医師、医師又はその他の者が求める、組織、系、動物又はヒトの生物学的若しくは医学的応答を惹起する薬物又は医薬物質の量を表す。
【0066】
本明細書中で使用する語句「血中ブドウ糖降下に有効な...量」とは、所望の効果の達成に足る循環血中濃度を得るのに十分な化合物の量を表す。このような濃度は、通常約10nMから2μMまでの範囲に入り、100nMから500nMまでの範囲の濃度が好ましい。先に述べたように、上に定めた式(I)の定義に当てはまる各種化合物の活性にはかなりの幅があると思われるため、また、個別の投与対象における症状の重症度には、大きな幅があると思われるため、治療に対する対象の応答を確認し、それに応じて投与量を変更するのは実務者に委ねられている。
【0067】
本明細書中で使用する語句「インスリン抵抗性」とは、全身又は骨格筋組織、心筋組織、脂肪組織、肝組織等の個別組織におけるインスリンの作用に対する感受性の低下を表す。インスリン抵抗性は、糖尿病患者及び非糖尿病患者を含め、多数の個体に認められる。
【0068】
本明細書中で使用する語句「インスリン抵抗性症候群」とは、インスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、動脈性高血圧、中心性(内臓性)肥満症、異脂肪血症を含む発現症状群を表す。
【0069】
ブドウ糖利用の障害及びインスリン抵抗性に関与する他の代謝障害として例えば糖尿病性血管障害、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性ニューロパシー等のNIDDMの主要な晩期合併症、網膜症・白内障形成・緑内障等を含む糖尿病性眼合併症、また異脂肪血症、グルココルチコイド誘発性インスリン抵抗性、異脂肪血症、多嚢胞性卵巣症候群、肥満症、高血糖、高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高インスリン血症、および高血圧を含むNIDDMに関係する多数の他の状態が挙げられる。この状態の簡単な定義は、例えばステッドマン医学大辞典(第10版)(Stedman's Medical Dictionary(Xth Ed.))等どのような医学辞書にも記載されている。
【0070】
本明細書中で使用する語句「PPAR−γの介在する過程」とは、本明細書中に記載するPPAR作動薬に反応する受容体又は受容体の組み合わせの介在する生物学的、生理的、内分泌的、及びその他の身体の過程[例えば、糖尿病、高脂血症、肥満症、耐糖能障害、高血圧、脂肪肝、糖尿病合併症(例:網膜症、腎症、神経症、白内障、冠動脈疾患等)、動脈硬化症、妊娠糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、心臓血管疾患(例:虚血性心疾患等)、アテローム性動脈硬化症又は虚血性心疾患で誘発された細胞障害(例:脳卒中に誘発された脳損傷等)、痛風、炎症性疾患(例:骨関節炎、疼痛、発熱、関節リウマチ、炎症性腸炎、ざ瘡、日焼け、乾癬、湿疹、アレルギー疾患、喘息、胃腸潰瘍、悪疫質、自己免疫疾患、膵炎等)、癌、骨粗鬆症、白内障]を表す。このような過程の調節は、インビトロ又はインビボで達成することができる。インビボ調節は、例えばヒト、げっ歯類、ヒツジ、ブタ、ウシ等広範囲の対象において実施することができる。
【0071】
本発明のPPAR作動薬は、α−グルコシダーゼ阻害薬、アルドース還元酵素阻害薬、ビグアニド製剤、スタチン系化合物、スクワレン合成阻害薬、フィブラート系化合物、LDL異化作用促進剤、アンジオテンシン変換酵素阻害薬等の他の薬剤と併用して投与してもよい。
【0072】
上の記載において、α−グルコシダーゼ阻害薬とは、アミラーゼ、マルターゼ、α−デキストリナーゼ、スクラーゼ等の消化酵素を阻害し、それによってデンプン又はショ糖の消化を遅らせる作用を有する医薬品である。α−グルコシダーゼ阻害薬の例としてアカルボース、N−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロピル)バリオールアミン(一般名:ボグリボース)、およびミグリトールが挙げられる。
【0073】
上の記載において、アルドース還元酵素阻害薬とは、ポリオール経路の第1段階の律速酵素を阻害し、それによって糖尿病合併症を阻止する医薬品である。この例としてトルレスタット、エパルレスタット、2,7−ジフルオロ−スピロ(9H−フルオレン−9,4'−イミダゾリジン)−2',5'−ジオン(一般名:イミレスタット)、3−[(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)メチル]−7−クロロ−3,4−ジヒドロ−2,4−ジオキソ−1(2H)−キナゾリン酢酸(一般名:ゼナレスタット)、6−フルオロ−2,3−ジヒドロ−2,5’−ジオキソ−スピロ[4H−1−ベンゾピラン−4,4'−イミダゾリジン]−2−カルボキサミド(SNK−860)、ゾポルレスタット、ソルビニル、1−[(3−ブロモ−2−ベンゾフラニル)スルホニル]−2,4−イミダゾリジンジオン(M−16209)が挙げられる。
【0074】
上の記載において、ビグアニド製剤とは、嫌気性解糖促進、末梢におけるインスリン作用増強、腸管からのブドウ糖吸収阻害、肝の糖新生阻害及び脂肪酸酸化阻害において効果を有する医薬品であり、例としてはフェンホルミン、メトホルミン、ブホルミンが挙げられる。
【0075】
上の記載において、スタチン系化合物とは、ヒドロキシメチルグルタリルCoA(HMG−CoA)還元酵素を阻害し、それによって血中コレステロールレベルを低下させる医薬品であり、例としてはプラバスタチン及びそのナトリウム塩、シンバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチンが挙げられる。
【0076】
上の記載において、スクワレン合成阻害薬とは、スクワレン合成を阻害し、それによって血中コレステロールレベルを低下させるための医薬品であり、例としては(S)−α−[ビス(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ)メトキシ]ホスフィニル−3−フェノキシベンゼン−ブタンスルホン酸モノカリウム(BMS−188494)が挙げられる。
【0077】
上の記載において、フィブラート系化合物とは、肝でのトリグリセリド類の合成及び分泌を阻害し、かつリポ蛋白リパーゼを活性化し、それによって血中トリグリセリドレベルを低下させるための医薬品である。例としてはベザフィブラート、ベクロブラート、ビニフィブラート、シプロフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブラート、クロフィブリン酸、エトフィブラート(ethofibrate)、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、ニコフィブラート、ピリフィブラート、ロニフィブラート、シンフィブラート、およびテオフィブラート(theofibrate)が挙げられる。
【0078】
上の記載において、LDL異化作用促進剤とは、LDL(低比重リポ蛋白)受容体を増加させ、それによって血中コレステロールレベルを低下させるための医薬品であり、例としては日本国特許出願公開公報特開平7−316144に記載された化合物及びその塩、具体的には、N−[2−[4−ビス(4−フルオロフェニル)メチル−1−ピペラジニル]エチル]−7,7−ジフェニル−2,4,6−ヘプタントリエン酸アミドが挙げられる。
【0079】
上述のスタチン系化合物、スクワレン合成阻害薬、フィブラート系化合物及びLDL異化作用促進剤は、血中コレステロール又はトリグリセリドレベルの低下に有効な他の化学物質で代用することができる。このような医薬品の例としてはニコモール、ニセリトロール等のニコチン酸誘導体製剤、プロブコール等の抗酸化剤、コレスチラミン等のイオン交換樹脂製剤が挙げられる。
【0080】
上の記載において、アンジオテンシン変換酵素阻害薬とは、アンジオテンシン変換酵素を阻害し、それによって血圧を低下させ、同時に糖尿病患者の血糖値を部分的に低下させるための医薬品である。例としてはカプトプリル、エナラプリル、アラセプリル、デラプリル、ラミプリル、リシノプリル、イミダプリル、ベナゼプリル、セロナプリル、シラザプリル、エナラプリラト、ホシノプリル、モベルチプリル、ペリンドプリル、キナプリル、スピラプリル、テモカプリル、およびトランドラプリルが挙げられる。
【0081】
本明細書中で使用する語句「併用して」とは、式(I)の縮合ヘテロアリール化合物が、上のパラグラフに記載した他の物質に対して直前に、直後に、同時に、又は前、後、若しくは同時のいずれの組み合わせでもって投与されてもよいことを意味する。このため、式(I)の縮合ヘテロアリール化合物及び他の薬剤は、単独の組成物若しくは2つの別々の組成物として同時に、又は2つの別々の組成物として逐次的に投与されてもよい。
【0082】
本発明の他の態様、利点、及び好ましい特徴は、以下の詳細な説明により認識される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
式(I)の化合物は、既知の方法、すなわちこれまでに使用された又は文献中に記載された方法の適用又は改変により調製することができる。本発明の化合物を調製する一般的な方法は、後述の反応スキームの記載に従ってもよい。別に指示しない限り、後述の反応スキーム及び考察中のR、Ar、A、Y、HET、Q及びTは、上の定義に従う。
【化27】

【化28】

【0084】
スキーム1は、式Iの化合物の調製を表す。スキーム1について述べると、式Iの化合物は、エステル構造を有する式IIの化合物(式中、COOR基はメチルエステル、ベンジルエステル、エチルエステル等のエステル基である。)をエステル加水分解剤と溶媒中で反応させることにより調製することができる。適したエステル加水分解剤として水酸化リチウム等の塩基が挙げられる。上述の反応に使用する溶媒の性質に関し、通常の加水分解に使用できる溶媒であれば、制限はない。例としてテトラヒドロフランが挙げられる。前述の反応は一般的に、例えばT. W. Green(Protective Groups in Organic Synthesis), John Wiley
& Sons又はJ. F. W. McOmie, (Protective Groups in Organic Chemistry), Plenum
Press等、有機合成化学の分野において既知の方法により実施することができる。
【0085】
式IIの化合物は、式IIIの化合物を式H−Q−COORで示される化合物(式中、COORは前記段落で示された通りである。)と溶媒中で反応させることにより調製することができる。

適した式H−Q−COORの化合物にはアクリル酸メチル及びアクリル酸エチルがある。適した溶媒にはクロロホルム、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド又は塩化メチレンがあり、好ましくは、テトラヒドロフランである。前述の反応は、約0℃〜約25℃の温度で、好ましくは約25℃の温度で実施することができる。前述の反応は、約5分〜約24時間の反応時間で、好ましくは約5時間の反応時間で実施することができる。
【0086】
別法として、式IIの化合物は、式IVの化合物を下記式の化合物と、適した塩基及び触媒の存在下、ベンゼン又はトルエン等の非極性溶媒中で反応させることにより調製することができる。
【化29】

【0087】
(式中、COORは上の段落の通りである。)適した塩基としてアルコキシド塩基(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等)、水素化物塩基(水素化ナトリウム等)、炭酸塩基(炭酸カリウム、炭酸セシウム等)が挙げられ、好ましくは炭酸カリウムである。適した触媒には酢酸パラジウムがあり、前述の反応は、約50℃〜約100℃の温度で、好ましくは約80℃の温度で実施することができる。前述の反応は、約0.5時間〜約72時間の反応時間で、好ましくは約18時間の反応時間で実施することができる。
【0088】
さらに別法として、式IIの化合物は、式Vの化合物を式H−Q−COORの化合物(式中、COORは前記段落で示された通りである。)と、適した塩基及び触媒の存在下、ベンゼン又はトルエン等の非極性溶媒中で反応させることにより調製することができる。

適した式H−Q−COORの化合物にはアクリル酸ベンジル及びアクリル酸エチルがある。適した塩基には、トリエチルアミン等のアミンがある。適した触媒には酢酸パラジウムがある。前述の反応は、約50℃〜約100℃の温度で、好ましくは約90℃の温度で実施することができる。前述の反応は、約0.5時間〜約72時間の反応時間で、好ましくは約4時間の反応時間で実施することができる。
【0089】
ある種の縮合ヘテロアリールは、閉環反応により調製することができる。スキーム2は、式IIIの化合物であって、式中HET基が式(i)である式IIIaの化合物の調製を表す。スキーム2について述べると、式IIIaの化合物は、ベンゼン等の非極性溶媒中、式VIの化合物を酢酸カリウム等の酢酸塩及び無水酢酸と反応させ、次いで、亜硝酸イソアミル等のニトロソ化剤とともに反応させることにより調製することができる。
【0090】
式VIの化合物は、メタノール及び酢酸エチル等の極性溶媒中、式VIIの化合物を10%パラジウムカーボン等の水素化剤と反応させることにより調製することができる。前述の反応は、約0℃〜約25℃の温度で実施することができる。前述の反応は、約5分〜約24時間の反応時間で、好ましくは約4時間の反応時間で実施することができる。
【0091】
式VIIの化合物は、極性溶媒中、好ましくは臭素若しくは塩素のハロ、又はp−TsO−等の脱離基Lvを有する式VIIIの化合物を、3−メチル−2−ニトロフェノール等の下記の式の化合物と反応させることにより調製することができる。
【化30】

【0092】
適した極性溶媒にはアセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、又はアルコール類(エタノール等)があり、好ましくは、アセトニトリルである。前述の反応は、約60℃〜約100℃の温度で、好ましくは約70℃の温度で実施することができる。前述の反応は、約3時間〜約72時間の反応時間で、好ましくは約24時間の反応時間で実施することができる。
【実施例】
【0093】
本発明は、下記の実施例(これに制限されない。)を挙げることによりさらに詳細に説明される。
【0094】
(実施例1)
【化31】

【0095】
3−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エトキシ]−1H−インダゾール−1−イル}プロピオン酸
THF(200mL)中エステル1e(4.13g、9.83mmol)溶液を、室温で1N LiOH 30mLにより処理した。5時間攪拌した後、減圧下でTHFを留去し、得られたスラリーを過剰量の0.5M NaHSO水溶液中に注ぎ、CHClで抽出した。有機層を濃縮し、標記化合物を白色の粉末として得た(3.93g、XX%)。H NMR(DMSO−d)δ:12.11(1H、br s)、7.78(1H、s)、7.75(2H、dd、J=7.3及び2.3Hz)、7.35〜7.30(3H、m)、7.10(1H、t、J=7.3Hz)、7.05(1H、d、J=8.6Hz)、6.43(1H、d、J=7.3Hz)、4.37(2H、t、J=6.6Hz)、4.19(2H、t、J=6.3Hz)、2.85(2H、t、J=6.6Hz)、2.65(2H、t、J=6.6Hz)、2.23(3H、s)。LRMS(m/z)392(M+H)。C2221についての理論値:C、67.51;H、5.41;N、10.74。実測値:C、67.47;H、5.49;N、10.55。
【0096】
化合物1e:3−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エトキシ]−1H−インダゾール−1−イル}プロピオン酸エチルの調製
DMF(200mL)中インダゾール1d(4.47g、14.0mmol)及びアクリル酸エチル(1.8mL、17mmol)溶液にCsCO(5.47g、16.8mmol)を添加し、反応混合物を60℃に加温した。1時間攪拌したあと、反応物を室温に冷却し、酢酸エチル中に注ぎ、HOで洗浄した(2回)。有機層を濃縮し、シリカゲル上でCHCl中アセトン0%から5%の直線勾配溶離により精製し、標記化合物を白色の固体として得た(4.41g、75%)。H NMR(CDCl)δ:8.03(1H、s)、7.98(2H、dd、J=7.8及び1.8Hz)、7.45〜7.39(3H、m)、7.26(1H、t、J=8.1Hz)、7.03(1H、d、J=8.3Hz)、6.48(1H、d、J=7.8Hz)、4.62(2H、t、J=7.1Hz)、4.40(2H、t、J=6.6Hz)、4.09(2H、q、J=7.3Hz)、3.08(2H、t、J=6.6Hz)、2.94(2H、t、J=6.8Hz),2.42(3H、s)、1.18(3H、t、J=7.1Hz)。LRMS(m/z)420(M+H)。C2425についての理論値:C、68.72;H、6.01;N、10.02。実測値:C、68.55;H、5.97;N、9.98。
【0097】
化合物1d:4−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エトキシ]−1H−インダゾールの調製
室温のベンゼン(400mL)中アニリン1c(5.65g、18.3mmol)溶液を、酢酸カリウム(1.98g、20.2mmol)及び無水酢酸(6.9mL、73.1mmol)により処理した。1時間攪拌した後、白色の沈殿が生成し、得られたスラリーを亜硝酸イソアミル(4.93mL、36.7mmol)で処理し、還流した。20時間後、減圧下で溶媒を留去し、残渣をメタノール(500mL)に溶解し、KCO(14.4g、146mmol)で処理した。室温で4時間攪拌した後、減圧下でメタノールを留去し、得られた残渣をCHClとHOに分配した。水層をCHClでさらに抽出し、有機層を合わせ、濃縮し、シリカゲル上でCHCl中アセトン0%から30%の直線勾配溶離により精製し、標記化合物を淡黄褐色の固体として得た(4.52g、77%)。H NMR(DMSO−d)δ:12.92(1H、br s)、7.85(1H、s)、7.81(2H、dd、J=7.8及び1.8Hz)、7.42〜7.35(3H、m)、7.12(1H、t、J=8.1Hz)、6.96(1H、d、J=8.3Hz)、6.46(1H、1 d、J=7.6Hz)、4.25(2H、t、J=6.3Hz)、2.92(2H、t、J=6.3Hz)、2.30(3H、s)。LRMS(m/z)320(M+H)。C1917・0.20HOについての理論値:C、70.66;H、5.43;N、13.01。実測値:C、70.69;H、5.25;N、12.77。
【0098】
化合物1c:2−メチル−3−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エトキシ]アニリンの調製
メタノール/酢酸エチル1:1混液200mL中化合物1b(6.37g、18.8mmol)溶液を、10% Pd/C(0.60g)により処理し、40psiのH下で水素化した。1時間後、反応混合物をセライト(Celite(登録商標))でろ過し、濃縮して明るい黄褐色の固体を得、これを更なる精製なしで使用した(5.68g、98%)。H NMR(DMSO−d)δ:7.81(2H、dd、J=7.6及び2.0Hz)、7.28〜7.21(3H、m)、6.55(1H、t、J=8.1Hz)、6.00(1H、d、J=7.8Hz)、5.96(1H、d、J=7.8Hz)、4.52(2H、s)、3.86(2H、t、J=6.3)、2.66(2H、t、J=6.3Hz)、2.12(3H、s)、1.60(3H、s)。LRMS(m/z)309(M+H)。C1920についての理論値:C、74.00;H、6.54;N、9.08。実測値:C、73.80;H、6.55;N、9.08。
【0099】
化合物1b:5−メチル−4−[2−(2−メチル−3−ニトロフェノキシ)エチル]−2−フェニル−1,3−オキサゾールの調製
室温のアセトニトリル(100mL)中トシラート1a(5.21g、14.6mmol)溶液に、3−メチル−2−ニトロフェノール(3.35g、21.9mmol)を添加し、次いでCsCO(7.13g、21.9mmol)を添加した。70℃で3時間攪拌し、さらに60℃で16時間攪拌した後、減圧下でアセトニトリルを留去し、得られた残渣を酢酸エチルとHOに分配した。有機層を1N NaOHで洗浄し(4回)、濃縮し、得られた粗残渣をシリカゲル上でヘキサン中酢酸エチル0%から30%の直線勾配溶離により精製し、標記化合物を淡黄色の固体として得た(3.83g、78%)。H NMR(CDCl)δ:7.99〜7.96(2H、m)、7.46〜7.36(4H、m)、7.23(1H、t、J=7.8Hz)、7.06(1H、d、J=8.1Hz)、4.30(2H、d、J=6.3Hz)、3.03(2H、t、J=6.6)、2.39(3H、s)、2.33(3H、s)。C1919についてのHRMS理論値339.1340(M+H)、測定値339.1352。C1918Oについての理論値:C、67.45;H、5.36;N、8.28。実測値:C、67.20;H、5.36;N、8.27。
【0100】
化合物1a:4−メチルベンゼンスルホン酸2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エチルの調製
0℃のピリジン(100mL)中2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エタノール(5.0g、25mmol)溶液に、p−トルエンスルホン酸無水物を一度に添加した。室温で1時間経過後、反応をHO(10mL)で15分かけて停止し、減圧下で濃縮した。粗残渣をシリカゲル上でヘキサン中酢酸エチル0%から30%の直線勾配溶離により精製し、標記化合物を白色の固体として得た(7.58g、86%)。H NMR(CDCl)δ:7.88〜7.85(2H、m)、7.66(2H、d、J=8.3Hz)、7.43〜7.40(3H、m)、7.18(2H、d、J=7.8Hz),4.31(1H、t、J=6.3Hz)、2.82(2H、t、J=6.3Hz)、2.30(3H、s)、2.20(3H、s)。C1920についてのHRMS理論値358.1108(M+H)、測定値358.1108。
【0101】
(実施例2A及び2B)
【化31】

【0102】
実施例2A:{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エトキシ]−1H−インダゾール−1−イル}酢酸
化合物2aを実施例1の記載に従い加水分解し、標記化合物2Aを白色の粉末として得た(116mg、83%)。H NMR(DMSO−d)δ:7.78(1H、s)、7.74〜7.72(2H、m)、7.33〜7.28(3H、m)、7.08(1H、t、J=7.8Hz)、6.97(1H、d、J=8.3Hz)、6.44(1H、d、J=7.6Hz)、5.02(2H、s)、4.19(2H、t、J=6.6Hz)、2.84(2H、t、J=6.3Hz)、2.22(3H、s)。LRMS(m/z)378(M+H)
【0103】
実施例2B:{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エトキシ]−2H−インダゾール−2−イル}酢酸
化合物2bを実施例1の記載に従い加水分解し、標記化合物2Bを白色の粉末として得た(59mg、100%)。H NMR(DMSO−d)δ:8.26(1H、s)、7.89〜7.86(2H、m)、7.48〜7.86(3H、m)、7.09〜7.07(2H、m)、6.40(1H、dd、J=5.56及び2.5Hz)、5.02(2H、s)、4.29(2H、t、J=6.3Hz)、2.98(2H、t、J=6.1Hz)、2.38(3H、s)。LRMS(m/z)378(M+H)
【0104】
化合物2a:{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エトキシ]−1H−インダゾール−1−イル}酢酸エチル及び2b:{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エトキシ]−2H−インダゾール−2−イル}酢酸エチルの調製
室温のDMF(15mL)中4−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エトキシ]−1H−インダゾール(0.228g、0.714mmol)及びブロモ酢酸エチル(0.1mL、0.9mmol)溶液に、CsCOを添加した。16時間攪拌した後、反応混合物を酢酸エチル中に注ぎ、HOで洗浄し(2回)、濃縮し、シリカゲル上でヘキサン中酢酸エチル5%から40%の勾配溶離により精製し、標記化合物iia(0.149g、52%)及びiib(0.052g、18%)を白色の固体として得た。
2a:LRMS(m/z)378(M+H)
2b:LRMS(m/z)378(M+H)
【0105】
(実施例3)
【化32】

【0106】
実施例3:4−{6−[(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)メトキシ]−1H−インダゾール−1−イル}ブタン酸
標記化合物例3は、化合物3dを出発物質として実施例1の記載に従い調製し、生成物51.7mgを白色の固体として得た。H NMR(CDCl)δ:8.01〜7.98(2H、m)、7.88(1H、s)、7.57〜7.55(1H、m)、7.45〜7.41(3H、m)、7.00〜6.99(1H、m)、6.88〜6.85(1H、m)、5.08(2H、s)、4.41(2H、t、J=6.8Hz)、2.44(3H、s)、2.31(2H、t、J=6.8Hz)、2.23〜2.16(2H、m)。LRMS(m/z)392(M+H)。C2221(M+H)についてのHRMS理論値:392.1605、測定値392.1598。
【0107】
化合物3d:4−{6−[(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)メトキシ]−1H−インダゾール−1−イル}ブタン酸エチルの調製
標記化合物3dは、化合物3cを出発物質として実施例2の記載に従い調製し、生成物を白色の固体として得た(56.6mg、21%)。H NMR(MeOD)δ:8.00〜7.91(3H、m)、7.65〜7.62(1H、m)、7.50〜7.48(3H、m)、7.18(1H、s)、6.90〜6.87(1H、m)、5.11(2H、s)、4.46〜4.40(2H、m)、4.07〜4.00(2H、m)、2.29〜2.22(2H、m)、2.20〜2.16(2H、m)、1.21〜1.15(3H、m)。LRMS(m/z)420(M+H)
【0108】
化合物3c:6−[(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)メトキシ]−1H−インダゾールの調製
標記化合物3cは、化合物3bを出発物質として実施例1の記載に従い調製し、生成物を灰白色の固体として得た(552mg、26%)。H NMR(MeOD)δ:8.02〜7.99(2H、m)、7.94(1H、s)、7.66〜7.63(1H、m)、7.51〜7.47(3H、m)、7.10〜7.11(1H、m)、6.89〜6.86(1H、m)、5.07(2H、s)、2.48(3H、s)。LRMS(m/z)306(M+H)
【0109】
化合物3b:2−メチル−5−[(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)メトキシ]アニリンの調製
標記化合物3bは、化合物3aを出発物質として実施例1の記載に従い調製し、生成物を黄色の油状物質として得た。LRMS(m/z)295(M+H)
【0110】
化合物3a:5−メチル−4−[(4−メチル−3−ニトロフェノキシ)メチル]−2−フェニル−1,3−オキサゾールの調製
DMF(100mL)中4−(クロロメチル)−5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール(10.0g、48.15mmol)溶液に、4−メチル−3−ニトロフェノールを添加し、次いでKCO(7.98g、57.78mmol)を一度に添加した。反応物を70℃で16時間加熱した。その後、減圧下で溶媒を留去し、残渣を水300mL中に懸濁した。この水層を酢酸エチルで抽出した(3回)。合わせた有機層を乾燥し(MgSO)、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗残渣をシリカゲル上でクロロホルム溶離により精製し、標記化合物を黄色の固体として得た(9.66g、61%)。H NMR(MeOD)δ:8.02〜7.99(2H、m)、7.69〜7.68(1H、m)、7.52〜7.50(2H、m)、7.38〜7.35(1H、m)、7.29〜7.25(1H、m)、5.09(2H、s)、3.36(3H、s)、2.50(3H、s)。LRMS(m/z)325(M+H)
【0111】
上の実施例1〜3で概説した手法により、下記の化合物を製造した。
【表1】

【表2】

【表3】

【0112】
(実施例28)
【0113】
化合物28:3−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エトキシ]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−1−イル}プロピオン酸の調製
THF(0.4mL)及びメタノール(0.1mL)中化合物28bの生成物(34mg、0.08mmol)溶液に、2M水酸化リチウム(3当量)を添加した。得られた混合物を23℃で1時間攪拌した後、水(3mL)を添加した。0℃で1N塩酸によりpHを5に調節した。0℃で10分間攪拌した後、白色の沈殿をろ取し、空気中で乾燥して標記化合物を得た(13.3mg、42%)。LRMS(m/z)392(M+H)
【0114】
化合物28b:3−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エトキシ]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−1−イル}プロピオン酸エチルの調製
トルエン(1mL)中化合物28a(51mg、0.2mmol)溶液に、2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エタノール(82mg、2当量)、酢酸パラジウム(3.6mg、0.08当量)、炭酸セシウム(142mg、2当量)及び2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル(8mg、0.1当量)(Strem Chemicals)を添加した。得られた混合物を80℃で18時間加熱した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した(10mL、3回)。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、ヘキサン中酢酸エチル0から25%の勾配溶離を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製し、標記化合物を得た(34mg、40%)。LRMS(m/z)420(M+H)
【0115】
化合物28a:3−(4−クロロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−1−イル)プロピオン酸エチルの調製
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、3mL)中4−クロロ−7−アザインドール(59mg、0.39mmol)(Clark, B. A.ら、J. Chem. Soc, Perkin I, 2270(1974))溶液に、炭酸セシウム(318mg、2当量)及び3−ブロモプロピオン酸エチル(77mg、1.1当量)を添加した。得られた溶液を23℃で1時間攪拌した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した(10mL、3回)。合わせた有機層を水(20mL、1回)及び飽和塩化ナトリウム溶液(20mL、1回)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して標記化合物を得た(77mg、79%)。LRMS(m/z)254(M+H)
【0116】
(実施例29)
【化33】

【0117】
化合物29:{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エトキシ]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−1−イル}酢酸の調製
メタノール(2mL)中化合物29b(8mg)溶液に10%パラジウムカーボン(2mg)を添加した。混合物を水素気流下で3時間攪拌した。セライト(Celite(登録商標))でろ過し、濃縮して標記化合物を得た(6.5mg、100%)。LRMS(m/z)378(M+H)
【0118】
化合物29b:{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エトキシ]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−1−イル}酢酸ベンジルの調製
化合物28bの調製に記載した手法に従い、化合物28aの代わりに化合物29aを用い、標記化合物を得た。LRMS(m/z)467(M+H)
【0119】
化合物29a:(4−クロロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−1−イル)酢酸ベンジルの調製
実施例8に記載した手法に従い、3−ブロモプロピオン酸エチルの代わりに2−ブロモ酢酸ベンジルを用い、標記化合物29aを収率80%で調製した。LRMS(m/z)301(M+H)
【0120】
(実施例30)
【化34】

【0121】
化合物30:({1−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エチル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−4−イル}オキシ)酢酸の調製
実施例29に記載した手法に従い、化合物30bを出発物質として用い、標記化合物を収率100%で得た。LRMS(m/z)378(M+H)
【0122】
化合物30b:({1−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エチル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−4−イル}オキシ))))酢酸ベンジルの調製
化合物28bの調製に記載した手法に従い、化合物28aの代わりに化合物30a、及び2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エタノールの代わりに2−ヒドロキシ酢酸ベンジルを用い、標記化合物を収率20%で得た。LRMS(m/z)467(M+H)
【0123】
化合物30a:4−クロロ−1−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エチル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンの調製
化合物28aの調製に記載した手法に従い、3−ブロモプロピオン酸エチルの代わりに4−メチルベンゼンスルホン酸2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)−エチルを用い、標記化合物を収率95%で調製した。LRMS(m/z)338(M+H)
【0124】
(実施例31)
【化35】

【0125】
化合物31:3−(4−{[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エチル]アミノ}−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−1−イル}プロピオン酸の調製
実施例28に記載した手法に従い、化合物28bの代わりに化合物31aを用い、標記化合物を収率29%で得た。LRMS(m/z)391(M+H)
【0126】
化合物31a:3−(4−{[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エチル]アミノ}−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−1−イル)プロピオン酸エチルの調製
化合物28bの調製に記載した手法に従い、2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エタノールの代わりに2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エチルアミン(対応するトシラートから慣用の方法を用いて調製する)、及び2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)−1,1'−ビナフチルの代わりに2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2'−(N,N−ジメチルアミノ)−ビフェニルを用い、化合物31aを収率15%で調製した。LRMS(m/z)419(M+H)
【0127】
(実施例32)
【化36】

【0128】
化合物32:2−メチル−2−({1−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エチル]−1H−インダゾール−4−イル}オキシ)プロピオン酸の調製
メタノール(1mL)中化合物32d(52mg、0.124mmol)溶液に炭酸カリウム(34mg、2当量)及び水(0.5mL)を添加した。得られた混合物を80℃で12時間加熱した。この混合物を水(5mL)で希釈し、1N塩酸でpH2の酸性とし、酢酸エチルで抽出した(5mL、3回)。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して完全に乾固し、標記化合物を生成した(50mg、100%)。LRMS(m/z)406(M+H)
【0129】
化合物32d:2−メチル−2−({1−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エチル]−1H−インダゾール−4−イル}オキシ)プロピオン酸メチルの調製
化合物28aの調製に記載した手法に従い、化合物32c及び4−メチルベンゼンスルホン酸2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)−エチルを出発物質として用い、標記化合物を収率46.6%で得た。LRMS(m/z)420(M+H)
【0130】
化合物32c:2−(1H−インダゾール−4−イルオキシ)−2−メチルプロピオン酸メチルの調製
段階1:ベンゼン(10mL)中化合物32b(0.35g、1.57mmol)溶液に、酢酸カリウム(170mg、1.1当量)及び無水酢酸(0.45mL、3当量)を添加した。得られた混合物を23℃で30分間攪拌した。この時点のLCMSにより完全アセチル化が示された。この混合物に亜硝酸イソアミル(276mg、1.5当量)を添加し、得られた混合物を80℃で4時間加熱した。白色の固体をろ過して除き、ろ液を濃縮乾固し、粗1−酢酸インダゾールを得、これを更なる精製なしで使用した。
段階2:段階1の生成物をメタノール(5mL)に溶解し、炭酸カリウム(43mg、0.2当量)により23℃で12時間処理した。ろ過、濃縮及びシリカゲルクロマトグラフィーにより、標記化合物32cを得た(288mg、2段階終了時で78%)。LRMS(m/z)235(M+H)
【0131】
化合物32b:2−(3−アミノ−2−メチルフェノキシ)−2−メチルプロピオン酸メチルの調製
メタノール(10mL)及び酢酸エチル(10mL)中化合物32a(0.36g)溶液に10%パラジウムカーボン(72mg)を添加した。得られた混合物を水素気流下で4時間攪拌した。セライト(Celite(登録商標))でろ過し、濃縮して標記化合物を得た(0.35g、100%)。LRMS(m/z)224(M+H)
【0132】
化合物32a:2−メチル−2−(2−メチル−3−ニトロフェノキシ)プロピオン酸メチルの調製
DMF(6mL)中2−メチル−3−ニトロフェノール(300mg、2mmol)溶液に、炭酸カリウム(0.55g、2当量)及び2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸メチル(0.31mL、1.2当量)を添加した。得られた混合物を95℃で3日間加熱した。23℃に冷却した後、混合物を水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した(20mL、3回)。有機層を合わせ、水及び飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。ヘキサン中酢酸エチル0から15%を用いたシリカゲル精製により残渣を精製し、標記化合物を得た(367mg、75%)。LRMS(m/z)254(M+H)
【0133】
(実施例33)
【化37】

【0134】
化合物30:2−メチル−2−({1−[3−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)プロピル]−1H−インダゾール−4−イル}オキシ)プロピオン酸の調製
実施例32に記載した手法に従い、化合物33aを出発物質として用い、化合物33を収率88%で得た。LRMS(m/z)420(M+H)
【0135】
化合物33a:2−メチル−2−({1−[3−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)プロピル]−1H−インダゾール−4−イル}オキシ)プロピオン酸メチルの調製
化合物28aの調製に記載した手法に従い、化合物32c及び4−メチルベンゼンスルホン酸2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)−プロピルを出発物質として用い、標記化合物33aを収率58%で得た。LRMS(m/z)434(M+H)
【0136】
(実施例34)
【化38】

【0137】
化合物34:3−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)エトキシ]−1H−ベンズイミダゾール−1−イル}プロピオン酸の調製
段階1:化合物34c及びアクリル酸ベンジル(3当量)のDMF溶液に炭酸セシウム(1当量)を添加した。この混合物をマイクロ波の下100℃で10分間加熱した。
段階2:段階1の混合物に2N水酸化リチウム(2当量)を添加した。23℃で1時間攪拌した後、逆相HPLCで混合物を精製し、標記化合物34を得た。LRMS(m/z)392(M+H)
【0138】
化合物34c:4−[2−(2−メチル−5−フェニル−3−フリル)エトキシ]−1H−ベンズイミダゾールの調製
化合物34bをギ酸に溶解し、得られた溶液をマイクロ波の下100℃で10分間加熱した。冷却後、減圧下で溶媒を留去し、標記化合物34cを収率88%で得た。LRMS(m/z)320(M+H)
【0139】
化合物34b:3−[2−(2−メチル−5−フェニル−3−フリル)エトキシ]−ベンゼン−1,2−ジアミンの調製
化合物32bの調製に記載した手法に従い、化合物32aの代わりに化合物34aを出発物質として用い、標記化合物を定量的収率で調製した。LRMS(m/z)310(M+H)
【0140】
化合物34a:2−[2−(2−メチル−5−フェニル−3−フリル)エトキシ]−6−ニトロアニリンの調製
テトラヒドロフラン(THF、10mL)中2−アミノ−3−ニトロフェノール(0.4g、2.5mmol)及び2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)−エタノール(0.5g、2.5mmol))溶液に、トリフェニルホスフィン(0.66g、2.5mmol)及びアゾジ酢酸ジイソプロピル(0.66g、2.5mmol)を0℃で添加した。得られた混合物を23℃で終夜攪拌した。この混合物を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物を得た(488mg、57%)。LRMS(m/z)340(M+H)
【0141】
(実施例35)
【化39】

【0142】
化合物35:3−{4−[2−(2−メチル−5−フェニル−3−フリル)エトキシ]−キノリン−8−イル}プロピオン酸の調製
実施例29に記載した手法に従い、化合物29bの代わりに化合物35bを出発物質として用い、標記化合物35を定量的収率で得た。LRMS(m/z)402(M+H)
【0143】
化合物35b:(2E)−3−{4−[2−(2−メチル−5−フェニル−3−フリル)エトキシ]キノリン−8−イル}プロプ−2−エン酸ベンジルの調製
化合物35aのトルエン溶液にトリ−(o−トリル)ホスフィン(0.1当量)、トリエチルアミン(2当量)、アクリル酸ベンジル(3当量)、および酢酸パラジウム(0.1当量)を添加した。得られた混合物を90℃で4時間加熱した。濃縮及びシリカゲルクロマトグラフィーにより、標記化合物35bを収率40%で得た。LRMS(m/z)490(M+H)
【0144】
化合物35a:8−クロロ−4−[2−(2−メチル−5−フェニル−3−フリル)エトキシ]キノリンの調製
化合物28aの調製に記載した手法に従い、4−ヒドロキシ−8−クロロキノリン及び4−ベンゼンスルホン酸2−(5−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4−イル)−エチルを出発物質として用い、標記化合物35aを収率70%で生成した。LRMS(m/z)364(M+H)
【0145】
(他の実施例)
【0146】
適切な出発物質を用い、上に記載した手法に従い調製することのできる本発明の他の実施例を下の表4および5に示す。

【表4】

【表5】

【0147】
(生物実験結果)
【0148】
トランスフェクションしたヒト肝癌(HepG2)細胞を利用したレポーター遺伝子アッセイは、PPAR介在経路を介してPPRE転写を活性化する化合物のスクリーニングに使用することができる。DMSOに溶解した被験化合物に細胞を36〜48時間曝露した後、レポーター遺伝子活性を測定する。15dPGJ2(2μM)を陽性対照、溶媒(DMSO)を陰性対照として使用する。
本発明の化合物とそれぞれのKiデータを下の表6〜9に提示する。
【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【0149】
(動物試験)
【0150】
上記実施例に従い調製した縮合ヘテロアリール化合物は、db/dbマウス(C578BL/KsJ−db/db Jcl)において血清グルコース及び血清インスリンに対する効果を評価することができる。化合物は蒸留水中2% Tween80からなる媒体に溶解し、経口投与する。投与量は10 ml/kg体重とする。実験及び動物の処分を含む作業の全局面は、全般的に、International Guiding Principles for Biomedical Research Involving
Animals (CIOMS Publication No. ISBN 92 90360194,1985)に従い実施することができる。血清ブドウ糖の測定にはGlucose−HA Assayキット(和光純薬工業株式会社)を使用することができ、インスリンの測定にはELISA Mouse,Insulin Assayキット(SPI bio社、フランス)を利用することができる。陽性対照はトログリタゾン(Helios Pharmaceutical、ケンタッキー州ルイビル)とすることができる。
【0151】
被験動物は各群4匹の20群に分ける。被験動物は体重52±0.5グラム、8〜10週齢であってもよい。
【0152】
処置の前に、血液試料(処置前血液)を各動物から採取する。被験動物の4群、すなわち溶媒群には、溶媒のみを投与する。溶媒群の各群には、溶媒100、30、10又は1ml/kg体重を経口投与する。陽性対照群4群に対し、トログリタゾン溶液(Tween 80/水中10ml/kg体重)をそれぞれ用量100、30、10及び1ml/kg体重として投与する。溶媒、陽性対照及び被験化合物溶液は、処置前血液の採取の直後、採取から24時間後及び48時間後に投与する。血液(処置後血液)は最終投与から1.5時間後に採取する。
【0153】
採取した血液試料中の血清ブドウ糖値は酵素的に測定することができ(Mutaratose−GOD)、またインスリン値はELISAにより測定することができる(マウスインスリン定量キット)。各群の平均±SEMを測定し、血清ブドウ糖及びインスリンの阻害パーセントは処置前血液と処置後血液との比較により得ることができる。処置前血液に対する処置後血液の血清ブドウ糖及びインスリン値の減少パーセントを計算し、対照及び被験溶液群と溶媒群との比較には、対応のないスチューデントのt検定を適用することができる。P<0.05で有意な差とみなすことができる。
【0154】
本発明のPPAR作動薬化合物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容できる塩若しくは溶媒和物の治療有効量を投与することが関与する、ヒトを含む哺乳動物の治療方法において、PPARの効果を変化させることが治療的に有益である治療条件において有用である。本発明化合物のPPAR作動薬活性は、PPAR介在疾患の治療における医薬品として特に有用である。例えば、I型及びII型を含む糖尿病、高血糖症、インスリン抵抗性、肥満症、アテローム性動脈硬化症及び高血圧を含むある種の血管及び心血管疾患等の疾患には、PPAR値の上昇が随伴する。治療という語は、式(I)の縮合ヘテロアリール化合物をPPAR介在疾患の予防又は防止のため使用することも表すと解釈されよう。
【0155】
式(I)の縮合ヘテロアリール化合物は、PPAR介在疾患の治療における使用に適した局所、経口及び非経口用の医薬製剤として提供することができる。本発明の化合物は、錠剤若しくはカプセル剤として、油性若しくは水性懸濁液、ロゼンジ(lozenge)、トローチ、粉末、顆粒、乳液、シロップ又はエリキシルとして投与してもよい。経口用組成物には、薬剤的に洗練され、かつ嗜好性の高い製剤を生産するため、着香、甘味、着色及び保存を目的とした物質を1種類以上含んでもよい。錠剤には、その製造を補助するものとして、薬学的に許容できる添加剤を含有してもよい。当技術分野で慣用的であるように、前記錠剤は、消化管内での崩壊及び吸収を遅延させ、長時間にわたる持続的な作用を得るために、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリン等の薬学的に許容できる腸溶コーティングにより被覆されていてもよい。
【0156】
経口用製剤は、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン等の不活性な固体希釈剤と有効成分を混合した硬ゼラチンカプセルの形態であってもよい。また、水又はラッカセイ油、流動パラフィン、オリーブ油等の油性媒質と有効成分を混合した軟ゼラチンカプセルの形式であってもよい。
【0157】
水性懸濁液は、通常、水性懸濁液の製造に適した添加剤との混和物中に有効成分を含有する。前記添加剤には、懸濁剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、アラビアゴム等の他、分散剤又は湿潤剤としてのレシチン等の天然に存在するリン脂質、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン等のエチレンオキシドと長鎖脂肪酸との縮合物、ヘプタデカエチレンオキシセタノール等のエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレイン酸エステル等のエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合物、あるいはポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル等の脂肪酸ヘキシトール無水物がある。
【0158】
医薬組成物は、無菌の注射用水性又は油脂性懸濁液の形式であってもよい。前記懸濁液は、上述の適した分散又は湿潤剤及び懸濁化剤を用い、既知の方法に従い製剤化することができる。無菌注射用製剤は、例えば1,3ブタンジオール中の溶液等、無毒性の非経口で許容される希釈剤又は溶媒中の懸濁液として製剤化してもよい。採用してもよい許容される媒体及び溶媒として、水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液がある。この目的には、合成モノ又はジグリセリドを含む、あらゆる低刺激性の不揮発性油を採用してもよい。加えて、オレイン酸等の脂肪酸も、注射剤の調製に用途が見出される。
【0159】
式(I)の縮合ヘテロアリール化合物はまた、薬物の直腸投与向けの坐剤の形式として投与してもよい。このような組成物は、室温付近では固体であるが直腸温度では液体となり、したがって直腸内では融解して薬物を放出する適した非刺激性添加剤と薬物を混合することにより、調製することができる。この添加剤としてカカオ脂及び他のグリセリドが挙げられる。
【0160】
局所使用には、例えばクリーム、軟膏、ゼリー、溶液、懸濁液等の本発明の化合物を含有する製剤を利用する。
【0161】
式(I)の縮合ヘテロアリール化合物はまた、小単層、大単層、多重層等のリポソーム送達システムの形式として投与してもよい。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、ホスファチジルコリン等様々なリン脂質から形成することができる。
【0162】
本発明の化合物の用量レベルは、約0.5mg/kg体重から約100mg/kg体重の程度である。好ましい用量割合は約30mg/kg体重から約100mg/kg体重の間である。しかし、ある特定の患者に対する特異的な用量レベルは、投与する特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食餌、投与時間、投与経路、排泄速度、薬物の併用、治療対象となっている特定の疾患の重症度を含む、多数の要因に左右されることは当然である。本発明の化合物の治療的活性を増強するため、例えばトルブタミド等といったスルホニル尿素等、他の経口で有効な化合物とともに投与してもよい。
【0163】
以上、本発明について具体的な好ましい実施態様を引例として説明したが、当業者ならば、本発明の日常的な実験及び実行を介して変形形態及び修正形態を実施できると認識するであろう。このため、本発明は、前述の明細書本文に限定することを意図したものではなく、添付する請求項及びその均等物により定義されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩。
【化1】

[式中、
Arは(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、又は(C〜C10)ヘテロアリールであり(ここで、各Arは、Zから選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい)、
Aは−CH−、−NH、−O−、又は−S−であり、
は(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、又は(C〜C10)ヘテロアリールであり(ここで、各Rは、Zから選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい)、
Yは−(CH−、−(CH−NR15−、−(CH−O−及び−(CH−S−からなる群から選択され
{ここで、nは、独立して、0、1、2、又は3であり、
15は水素、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、又は(C〜C10)ヘテロアリールであり(ここで、各R15は、Zから選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい)}、
Qは−(CR−、−(CR−NR15−、−NR15−(CR−、−(CR−O−、−O−(CR−、−S−(CR−、及び−(CR−S−からなる群から選択され(ここで、各mは、独立して、1、2、3、又は4である)、
【化2】

はZから選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい下記の式を有する縮合(C〜C12)ヘテロアリールである:
【化3】

または
【化4】


(ここで、Zは前記縮合(C〜C12)ヘテロアリールのいずれの環に存在していてもよい。
点線は前記縮合(C〜C12)ヘテロアリールが芳香族となるような任意の二重結合であり、
、X、W、W、W、W、B、B、B、B、D、D、D及びDのそれぞれは、独立して、=CH−又は=N−であり、
、X、B、B、B、及びBのうち少なくとも1つは=N−であることが必要であり、
、W、W、W、D、D、D及びDのうち少なくとも1つは=N−であることが必要であり、
各 - -cは−Y−基への結合点であり、各
- -dは−Q−基への結合点であり、
Z、Z、Z、及びZのそれぞれは、下記の群より選択される:
(a)F、Cl、Br、I、CF又はCN;
(b)Rから独立して選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい(C〜C)アルキル;
(c)−C(=O)−R{式中、Rは、H、OH、CF、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−O−、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)シクロアルキル−O−、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)ヘテロシクリル−O−、(C〜C10)アリール、(C〜C10)アリール−O−、(C〜C10)ヘテロアリール及び(C〜C10)ヘテロアリール−O−からなる群から選択される};
(d)−C(=O)−NR{式中、Rは、H又は(C〜C)アルキルであり、また、Rは、H、(C〜C)アルキル、−CH−(C=O)−O−(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール及び(C〜C10)ヘテロアリールからなる群から選択される};
(e)(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、又は(C〜C10)ヘテロアリール;
(f)NR10{式中、Rは、独立して、H又は(C〜C)アルキル、R10は、−C(=O)−O−C(CH、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール及び(C〜C10)ヘテロアリールからなる群から選択されるか、あるいは、R及びR10は、それらが結合する窒素と一体となって、5〜8員環のヘテロアリール又はヘテロシクリル環を形成してもよい};
(g)R11−O−{式中、R11は、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、及び(C〜C10)ヘテロアリールからなる群から選択される};
(h)R12−SO−{式中、R12は、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、及び(C〜C10)ヘテロアリールからなる群から選択され、pは、0、1、又は2である。};
(i)R1314N−SO−{式中、R13は、H又は(C〜C)アルキルであり、R14は、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、又は(C〜C10)ヘテロアリールであるか、あるいは、R13及びR14は、それらが結合する窒素と一体となって、5〜8員環のヘテロアリール又はヘテロシクリル環を形成してもよく、qは、1又は2である}。)
及びRのそれぞれは、独立して、H、又はRから独立して選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい(C〜C)アルキル若しくはRから独立して選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい(C〜C10)アリールであり、
{ここで、R及びRのそれぞれは、独立して、下記の群より選択される:
(a)F、Cl、Br、I、CN、CF又はNO
(b)−NR10(式中、Rは、独立して、H又は(C〜C)アルキルであり、R10は、−C(=O)−O−C(CH、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール及び(C〜C10)ヘテロアリールからなる群から選択されるか、あるいは、R及びR10は、それらが結合する窒素と一体となって、5〜8員環のヘテロアリール又はヘテロシクリル環を形成してもよい);
(c)R11−O−(式中、R11は、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、及び(C〜C10)ヘテロアリールからなる群から選択される);
(d)R12−SO−(式中、R12は、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、及び(C〜C10)ヘテロアリールからなる群から選択され、pは、0、1、又は2である);
(e)R1314N−SO−(式中、R13は、H又は(C〜C)アルキルであり、R14は、(C〜C)アルキル、(C〜C10)シクロアルキル、(C〜C10)ヘテロシクリル、(C〜C10)アリール、又は(C〜C10)ヘテロアリールであり、あるいは、R13及びR14は、それらが結合する窒素と一体となって、5〜8員環のヘテロアリール又はヘテロシクリル環を形成してもよく、qは、1又は2である)。}
Tは−(C=O)−OH、−(C=O)−OR15、−(C=O)−OM{式中、Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である}、テトラゾリル、チアゾリジニル、−SO−NH−R15、−NH−SO−R15、−(C=O)−NH−SO−R15、及び他の酸プロドラッグ又はその同配体からなる群から選択される。]
【請求項2】
【化5】

がZから選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい下記式iを有する縮合(C〜C12)ヘテロアリール(ここで、Zは前記縮合(C〜C12)ヘテロアリールのいずれの環に存在していてもよい)である、請求項1に記載の化合物。
【化6】

(ここで、式iは、下記の基からなる群より選択される。
【化7】

【化8】


【請求項3】
【化9】

がZから選択される1〜4個の置換基により置換されていてもよい下記式を有する縮合(C〜C12)ヘテロアリール(ここで、Zは前記縮合(C〜C12)ヘテロアリールのいずれの環に存在していてもよい。)である、請求項1に記載の化合物。
【化10】

(ここで、前記式は、下記の基からなる群より選択される。
【化11】


【請求項4】
該Arがフェニルである請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
該Aが−O−である請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
該Rが(C〜C)アルキルである請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
該Qが−(CR−でmは2又は3、かつR及びRのそれぞれが水素又は(C〜C)アルキルである請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
該Tが−(C=O)−OHである請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
該Yが−(CH−O−であり、かつnが1、2、又は3である請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
下記の化学構造式の化合物及びその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【化12】

【化13】


【化14】


【化15】

【化16】

【化17】


【化18】


【化19】


【化20】

【請求項11】
哺乳動物におけるインスリン非依存性糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、肥満症、高血糖症、高脂血症、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、高トリグリセリド血症、高インスリン血症、炎症性疾患を治療する方法であって、かかる必要がある哺乳動物に対し投与することを含む、請求項1に記載の縮合ヘテロアリール化合物の治療有効量の使用。
【請求項12】
哺乳動物におけるPPAR関連疾患を治療する方法であって、かかる必要がある哺乳動物に対し投与することを含む、請求項1に記載の縮合ヘテロアリール化合物の治療有効量の使用。
【請求項13】
請求項1に記載の少なくとも1つのPPAR調節物質及びその薬学的に許容できる担体を含む組成物。
【請求項14】
α−グルコシダーゼ阻害薬、アルドース還元酵素阻害薬、ビグアニド製剤、スタチン系化合物、スクワレン合成阻害薬、フィブラート系化合物、LDL異化作用促進剤、アンジオテンシン変換酵素阻害薬からなる群から選択される化合物少なくとも1つをさらに含む、請求項13に記載の組成物。

【公表番号】特表2006−518366(P2006−518366A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502422(P2006−502422)
【出願日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000338
【国際公開番号】WO2004/074284
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】