説明

PRRSVのGP5を基礎とする組成物及び方法

本開示は、ブタ繁殖呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスに対する免疫応答を誘発するための組成物及び方法を含む。本開示は、部分的に、それぞれがPRRSVのGP5タンパク質外部ドメイン由来の相異なる配列を有する2つ以上のペプチドドメインの使用に基づく。前記2つ以上のドメインを含むポリペプチド又はそれらをコードする核酸を含む組成物及び方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2007年4月30日に出願された米国仮特許出願第60/915,049号に基づく優先権の利益を主張し、当該仮特許出願の全てが、十分に説明されているものであるかのように本明細書中に援用される。
【0002】
開示の分野
本開示は、ブタ繁殖呼吸障害症候群(PRRS)ウイルス(PRRSV)ポリペプチドの、そのポリペプチドに対する、つまるところPRRSVに対する免疫応答を誘発するための使用を指向する組成物及び方法を含む。本開示は、HV-2超可変領域内の配列において差異を有する2つ以上のGP5外部ドメインを使用することにより、単独の外部ドメインを使用する場合と比較してより広範なPRRSVに対する免疫応答が可能になるという知見に部分的に基づいている。また、より広範な免疫応答を誘発するための、1つ以上の外部ドメインをコードする核酸分子の使用も開示されている。本開示は、1つ以上の外部ドメインを備えたポリペプチド、又はそれらのポリペプチドをコードする1つ以上の核酸分子を含む組成物を包含する。また、ポリペプチド、それらをコードする核酸分子、及び/又は本開示に係る組成物を使用することにより免疫応答を誘発する方法も開示される。
【背景技術】
【0003】
PRRSVは、動物RNAウイルス群の一つである、Ateriviridae科に属する。他のRNAウイルスと同様に絶えず変化するPRRSウイルスの抗原特性は、この病原体に対する効果的なワクチンの開発を甚だ困難な課題としている。しかしながら、前記PRRSV生物系の中で、変化しない基本部分が存在する。重要なことに、前記ウイルスは、複製又は増殖のために多細胞有機体の宿主細胞に感染する。感染するためには、前記ウイルスはその生活サイクルの一部分として宿主細胞に接着しなければならない。接着するためには、前記ウイルスは宿主細胞上にある1つ以上の特定の受容体を認識する、受容体認識タンパク質(RRP)を有しなければならない。最後に、前記宿主細胞の受容体は、一般には変化しない。なぜなら、通常それは特定の機能において必要なものであり、ウイルスが認識するために存在するのではないからである。
【0004】
しかしながら、ウイルスは、宿主細胞の接着又は認識にその細胞の受容体を利用する。受容体の構造を変更するよりむしろ、その宿主細胞を含む生物は、ウイルスのRRPを認識する抗体を生産し、その宿主細胞へのウイルスの接着をブロックする。前記抗体は通常、中和抗体(NA)と称される。それに対抗して、ウイルス集団はしばしばそのRRPの変異体を含み、又は生産し、NAによる認識を回避することが可能である。しかしながら、前記RRPの変更は、その変更されたRRPがなおもウイルスの接着のために細胞受容体を認識するものでなければならないという事実により制限される。仮に変更により機能しないRRPが生じた場合、そのウイルスは接着が出来なくなり、そして複製又は生存が不可能となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の概要
本開示は、ブタ繁殖呼吸障害症候群(PRRS)ウイルス(PRRSV)のGP5タンパク質中に存在するアミノ酸残基の三次元的配置に関する。残基の配置、つまりポリペプチドドメインは、GP5タンパク質の外部ドメイン(ectodomain)とも称されている、GP5タンパク質のN末端部分に存在する。本開示は、ペプチド、ポリペプチド、ウイルス粒子、又は他のタンパク質を含む組成物と関連して、そのドメインの使用を含む。幾つかの態様において、前記ドメインは、組換え体若しくは融合体、ペプチド又はポリペプチドの形態で存在し得る。他の態様において、前記ドメインは、組換えウイルス粒子又はウイルス中又はそれらと共に存在し得る。更なる態様において、前記ドメインを含むペプチド又はポリペプチドをコードする核酸分子が、本開示の実施に係るドメインの発現に使用され得る。
【0006】
本開示は、従来評価されていなかったHV-2超可変領域内で次々に変化が起こる外部ドメインが、動物中でPRRSVに対抗する防御反応を含む免疫応答を誘発するための材料の調製及び使用における使用において選択され得るという、予期しない発見に部分的に基づいている。幾つかのケースにおいて、前記HV-2領域において少なくとも1つの配列の差異を有するようにそれぞれが異なるGP5タンパク質を含む、少なくとも2つのPRRSV分離株が、免疫応答を誘発するために調製及び使用され得る。他のケースにおいて、少なくとも前記HV-2領域中で配列の差異を有するようにそれぞれが異なるGP5タンパク質を含む、少なくとも3つ又は4つのPRRSV分離株が、免疫応答を誘発するために調製及び使用され得る。
【0007】
本開示は、推定シグナル配列の後のGP5外部ドメインが、推定膜貫通領域(あるいは膜貫通(spanning)ドメイン又はMSD)の前に配される3つの領域の組み合わせとしてみなされ得るという認識を含む。前記GP5タンパク質のN末端からC末端にかけての連続した順番で、それらの領域は、HV-1超可変領域(「HV1」)、保存領域(「CR」)、及びHV-2超可変領域(「HV2」)であり、その後に推定膜貫通領域(「TR」又はMSD)が配される。図1は、非限定的な例を提供する。PRRSVに対する免疫応答の誘発と同じく重要であるHV2の同定により、本開示は、HV2の配列が異なる少なくとも2つのGP5外部ドメインの組み合わせを含む。幾つかのケースにおいて、前記少なくとも2つの外部ドメインは、少なくとも2つのPRRSV分離株中に存在し得て、それらは本明細書中に記載されるように免疫応答を誘発するために投与され得る。
【0008】
故に、第一の側面において、本開示は少なくとも1つの第一のポリペプチドドメイン及び第二のポリペプチドドメインの組み合わせを含み、それぞれのドメインは1つのHV2が共有結合的に連結された保存的GP5モチーフを含み、そしてそれぞれのドメインは動物対象においてPRRSV感染に対し免疫原性である。多くの態様において、前記結合は、ポリペプチド中のアミノ酸残基間ペプチド結合又はアミド結合である。同一のポリペプチド分子中でHV2がGP5モチーフのすぐ後ろに続くように、前記モチーフ及びHV2が隣接している場合がある。他の態様において、前記モチーフ及びHV2は、1つ以上のアミノ酸残基等のリンカーにより隔離されている場合がある。更なる態様において、前記モチーフ及びHV2は、ペプチド結合ではなく、化学結合を介して接続されている場合がある。
【0009】
本開示のこの側面は、第一及び第二のポリペプチドドメインの代替の態様を含み、ここで、前記ドメインの少なくとも1つは、保存的GP5モチーフと共有結合的に連結したHV1を更に含む拡張されたドメインである。これにより、少なくとも3つの領域:HV1、保存的GP5モチーフを含む保存領域(CR)、及びHV2を順番に含む少なくとも1つのドメインがもたらされる。当然に、本開示の態様は、2つ以上、例えば3つ又は4つのドメインの組み合わせであり、それらのドメインの少なくとも2つが本明細書中に記載されたような拡張されたドメインであるものを含む。幾つかのケースにおいて、組み合わせられるそれぞれのドメインは、拡張されたドメインである。
【0010】
幾つかの態様において、少なくとも2つのポリペプチドドメインの組み合わせは、少なくとも2つのPRRSV分離株であって、それぞれが前記ドメインの少なくとも1つを含むものの組み合わせであり得る。多くのケースにおいて、それぞれのドメインは、HV1、CR、及びHV2を含む拡張されたドメインであり、それぞれのドメインはHV2中の少なくとも1つの配列の差異により相違する。当然に、前記ドメインは、HV1中の1つ以上の配列の相違等、任意的に他にも配列の相違が含まれ得る。
【0011】
複数のドメインの組み合わせは、複数のGP5ポリペプチドであり、それぞれがPRRSV分離株上に存在するものの組み合わせにおいて存在し得る。故に、本開示は、2つ以上の分離株の組み合わせであり、それぞれが本明細書中に記載されるような異なるHV2配列を含む拡張されたポリペプチドドメインを備えたGP5タンパク質を含むものを含む。4つの分離株の組み合わせは、例えば、限定されないが、第一のポリペプチドドメインが第一の分離株中に存在し、第二のポリペプチドドメインが第二の分離株中に存在し、第三のポリペプチドドメインが第三の分離株中にあり、そして第四のポリペプチドドメインが第四の分離株中に存在する。前記分離株はそれぞれ、その分離株中のGP5タンパク質における異なるHV2配列により、少なくとも他の物と相異し得る。当然に、HV1における1つ以上の相異等の他の配列の相異も、それらの分離株中に存在し得る。
【0012】
GP5タンパク質以外のポリペプチドに基づく態様において、第一及び第二のポリペプチドドメインは、同一の分子上又は別個のポリペプチド分子上に位置し得る。前記第一及び第二のドメインのそれぞれは、保存的GP5モチーフを含み、アミノ酸配列C(E/S)LNG(T/A)(配列番号1)により表される。本開示の態様は、前記2つのドメインのそれぞれにおける前記保存的GP5モチーフが同一である組合せを含む。あるいは、第一及び第二のドメインは、配列番号1により示唆されるような保存モチーフ内の限定的な可変性(4つの可能な配列)により、配列において、故に構造において相異し得る。
【0013】
本明細書中に記載されるとき、1つの組み合わせ中のそれぞれのドメインは1つのHV2を含み、その配列はそれぞれのドメイン間で相異する。拡張されたドメインの場合、HV1配列も任意的にそれぞれのドメイン間で相異し得る。これは、HV1、CR、及びHV2を含む拡張されたドメインが、組み合わせ内のドメインが相違するものの間で相異すべき、認識の「ポケット」を形成して、その組合せが免疫応答の誘発に使用されたときに多様性を増大させるという、非限定的な見地に部分的に基づいている。よって、非限定的な例示としては、HV2の配列の相異は、「ポケット」構造の変化を引き起こし得て、一方HV2とHV1との両方の配列の変化は、前記「ポケット」構造の異なる変化を引き起こし得る。そして一方、本開示の幾つかの態様はHV1及びHV1のみにおける変化を含むが、他の態様は、CRにおける変化を含み得る。
【0014】
多くの態様において、前記HV2は、約8アミノ酸残基及び/又はX0WLのトリペプチド配列で表され、X0は天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つである保存部分を含む。このトリペプチド配列は、HV2の最初、あるいはN末端に配置され得る。幾つかの態様において、前記保存性トリペプチド配列は、配列DWLであり、X0がアスパラギン酸(D)であるものを含む。他の態様において、X0はアスパラギン(N)、又はアスパラギン酸を除く他のいずれかのアミノ酸残基である。更なる態様において、X0はグルタミン酸(E)又はグルタミン(Q)等の酸性アミノ酸残基;アルギニン(R)、リシン(L)、又はヒスチジン(H)等の塩基性アミノ酸残基;アラニン(A)又はイソロイシン(I)又はグリシン(G)又はロイシン(L)又はバリン(V)等の脂肪族側鎖を有するアミノ酸残基;スレオニン(T)又はセリン(S)等のヒドロキシを含む側鎖を有するアミノ酸残基;あるいはチロシン(Y)等の芳香族側鎖を有するアミノ酸残基である。
【0015】
第二の態様において、本開示は、2つ以上のドメインの組み合わせ中の各ドメイン中の保存的GP5モチーフ及びHV2の抗原性及び/又は免疫原性に基づく。幾つかの態様において、少なくとも2つのドメインのそれぞれにおいて認識「ポケット」を形成するための保存的GP5モチーフ及びHV2、そして任意的にHV1の存在は、抗原性及び/又は免疫原性を誘発し、そこで本開示は、それらのドメインを含む抗原性及び免疫原性組成物を含む。追加的な態様において、各ドメインは、細胞膜又は他の脂質二重層に結合又は連結する別個のポリペプチド分子中に存在する。幾つかのケースにおいて、前記ポリペプチド分子は、GP5膜貫通ドメイン等のTRを含み、それは膜又は脂質二重層との連結を促進する。幾つかの態様において、前記膜は無細胞膜(cell-free membrane)、又は細胞により生産されるウイルス粒子を囲むエンベロープ又は被覆(coat)等の細胞膜の断片若しくは部分であり得る。
【0016】
更なる組成物は、単一のウイルス粒子又は別個のウイルス粒子等と膜結合又は膜連結する2つ以上のポリペプチド分子を含む。前記ウイルス粒子(単数又は複数)は、感染性又は非感染性であり得て、そして独立して、複製可能又は複製不可能であり得る。あるウイルス粒子は、PRRSV粒子、又は前記ポリペプチド分子を含む組換えウイルス粒子等のもう1つのウイルスであり得る。本開示に係るポリペプチドの発現に使用され得る組換えウイルス粒子の非限定的な例は、ブタアデノウイルス及びポックスウイルスを含む。
【0017】
感染及び複製のいずれも可能なウイルス粒子は、ビリオン(virion)と称される。よって、幾つかの態様において、前記組成物は、単一のビリオン又は別個のビリオン等と膜結合又は膜連結する2つ以上のポリペプチド分子を含む。2つ以上のPRRSV粒子等の2つ以上のビリオンを含む組成物の態様において、1つ以上が天然に存在するPRRSV粒子、又は本明細書中に記載されているような第一又は第二のポリペプチドドメインを含む分離株であり得る。幾つかのケースにおいて、1を超えるが、最大全ての前記粒子は、天然に存在する分離株であり得る。
【0018】
当然に、本発明の追加的な態様は、3つ以上のポリペプチド又はウイルス粒子の組合せを含み、本明細書注に記載されるように、それぞれが保存的GP5モチーフ及びHV2、任意的にHV1を含む。よって、第一及び第二のポリペプチドドメイン以外の追加的なポリペプチドドメインを含む組成物は、明らかに本開示の範囲内にある。当然に、そのような態様において、ある組合せのそれぞれのポリペプチドドメインにおけるHV2、及び任意的にHV1は、その組み合わせのそれぞれの他のドメインにおけるHV2、及び任意的にHV1と、配列において、故に構造において相異する。
【0019】
更なる側面において、本開示は、本明細書に記載される組成物を調製する方法を記載する。幾つかの態様において、ある方法は、本明細書中に記載される少なくとも第一及び第二のポリペプチドドメインの同定又は選択、並びにそれらのドメインを混合することによる組成物の形成を含み得る。多くのケースにおいて、ある方法は、少なくとも前記第一のドメインを含む第一のポリペプチド分子、及び前記第二のドメインを含む第二のポリペプチド分子の同定又は選択、並びにそれらのポリペプチドを混合することによる組成物の形成を含み得る。幾つかのケースにおいて、前記混合は、組成物の形成における1つ以上の医薬として許容される賦形剤及び/又は担体の添加を含み得る。
【0020】
他の態様において、前記同定又は選択は、PRRSV分離株の間で、それぞれの分離株におけるHV2の配列に基づいてなされ得る。幾つかのケースにおいて、前記同定又は選択は、保存的モチーフ又はHV1等の、GP5分子の1つ以上の他の部分と共に、HV2配列を検出することによりなされ得る。検出方法の非限定的な一例には、任意的にGP5分子のもう1つの部分と組み合わせて、又はこれとの関連で、所定のHV2配列を認識する抗体を使用することが含まれる。他の非限定的な検出方法には、HV2のアミノ酸配列決定、又はHV2をコードする配列の核酸配列決定が含まれる。
【0021】
幾つかの態様において、前記検出は、PRRSVに感染した個体等の動物対象由来の生体液のサンプル中のPRRSVからなされ得る。前記方法は、GP5タンパク質中のHV2の部分と少なくとも結合する結合剤を、前記サンプル又はその希釈物と接触させることを含み得る。前記サンプルはブタ対象由来であり得るが、PRRSVに感染した任意の対象、あるいはPRRSVキャリアが使用され得る。前記生体液は、その中でGP5タンパク質及び/又はPRRSV粒子が検出可能な程度に存在し得る任意の液体であり得る。非限定的な例は、対象の体分泌液、例えば唾液、涙、粘液、鼻汁、及び膣分泌液、あるいは他の体液、例えば血液、血清、血漿、精液(semen)、精液(seminal fluid)、及び尿、あるいは排出物の任意の液体成分又は排出物の液体抽出物を含む。
【0022】
更なる態様において、前記同定、選択、又は検出は、本明細書中に記載される配列を有するHV2を有しない新規なPRRSV分離株において、又はこれに対してなされ得る。新規な分離株は、本明細書中に記載される1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のドメインを含むPRRSV分離株との組み合わせに係る開示において有利に使用されるものであり得る。新規な分離株との組み合わせは、新規な分離株を欠いた組み合わせに対する応答と比較して新規な抗体又は免疫応答を誘発する可能性が高いため、有利であることが予想され得る。
【0023】
上述で示唆されるように、本開示の追加的な側面は、抗体応答(液性免疫応答)又は免疫応答を誘発する方法である。幾つかの態様において、ある方法は、免疫応答の発動が可能な免疫系を有する動物対象に、本明細書中に記載されるポリペプチドドメインの混合物を投与することを含み得る。所定の応答は、前記ドメインに対する、又は前記ドメインを含むポリペプチドに対する応答を含むものとみなされ得るが、本開示は、1つ以上のPRRSV分離株中のGP5も認識する応答の誘発を含む。幾つかの態様において、前記抗体応答は、1つ以上の中和抗体(neutralizing antibody)の生産を含む。他の態様において、前記免疫応答は、T細胞媒介性応答等の1つ以上の細胞性免疫応答の誘発を含む。幾つかのケースにおいて、前記抗体応答又は免疫応答は、本開示に係るポリペプチドドメインを含むGP5タンパク質を発現するもの等のPRRDV粒子に対する防御反応である。
【0024】
幾つかのケースにおいて、前記抗体応答又は免疫応答は、特定の地理的領域内に存在する可能性がある、HV2が相異するPRRSVの少なくとも2つの変異体、又は株に対するものである。故に、本開示の態様は、欧州で流行するLelystad分離株の1つ以上の変異体、PRRSVの北米若しくは朝鮮血清型の1つ以上の変異体、又はアジア若しくは南米で見られるPRRSVの1つ以上の変異体に対する応答を含む。
【0025】
追加的な態様において、対象中で抗体又は免疫応答を誘発する方法は、本明細書中に記載されるように、少なくとも第一のポリペプチドドメイン及び第二のポリペプチドドメインの同定又は選択、そしてその後の上記選択されたドメインを対象に投与することによる抗体又は免疫応答の誘発を含む。幾つかの態様において、前記同定又は選択は、少なくとも第一のポリペプチドドメインを含む第一のポリペプチド、及び第二のポリペプチドドメインを含む第二のポリペプチドを同定し、そしてその後対象に選択されたポリペプチドを投与して、交代又は免疫応答を誘発するものであり得る。多くのケースにおいて、少なくとも1つの第一及び第二のポリペプチドは、1つのPRRSV分離株中に存在し得る。幾つかのケースにおいて、各ポリペプチドは、別個のPRRSV分離株中に存在し得る。
【0026】
別の態様において、前記同定又は選択は、少なくとも第一のポリペプチドドメインを含む第一のPRRSV分離株、及び第二のポリペプチドドメインを含む第二のPRRSV分離株を同定し、そしてその後対象に選択されたポリペプチドを投与するものであり得る。幾つかの態様において、前記同定又は選択は、少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又はそれ以上の分離株についてなされる。多くのケースにおいて、前記選択は、PRRSV分離株のGP5タンパク質中のHV2配列に基づく。HV2配列に基づく同定又は選択は、限定されないが、HV2のアミノ酸配列解析、PCRに基づく、若しくは抗体に基づくHV2の検出;又は既に特定されたPRRSV分離株におけるHV2配列の知見を含む、適切な方法により実行され得る。
【0027】
本開示の1つ以上の態様の詳細は、添付した図面及び以下の記載において説明される。本開示の他の特性、目的、及び利点は、図面及び詳細な説明から、並びに特許請求の範囲から明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】代表的な米国型PRRSV株(VR-2332)と欧州型PRRSV株(Lelystad株、LV)とのアミノ酸配列の比較を示す。それぞれの推定シグナル配列は、HV1、「保存領域」あるいはCR(保存的GP5モチーフを含む)、及びHV2(下線)と並んで同定される。HV1の代表的な、そして非限定的な開始位置も同定されている。
【0029】
【図2】本明細書中に開示されるPRRSV分離株の群の配置図である。
【0030】
【図3−1】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0031】
【図3−2】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0032】
【図3−3】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0033】
【図3−4】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0034】
【図3−5】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0035】
【図3−6】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0036】
【図3−7】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0037】
【図3−8】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0038】
【図3−9】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0039】
【図3−10】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0040】
【図3−11】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0041】
【図3−12】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0042】
【図3−13】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0043】
【図3−14】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0044】
【図3−15】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0045】
【図3−16】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0046】
【図3−17】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0047】
【図3−18】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0048】
【図3−19】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0049】
【図3−20】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0050】
【図3−21】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0051】
【図3−22】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0052】
【図3−23】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0053】
【図3−24】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0054】
【図3−25】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0055】
【図3−26】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0056】
【図3−27】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0057】
【図3−28】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0058】
【図3−29】公的にアクセス可能なPRRSVから取得される、保存的GP5モチーフ及びHV2を含むGP5外部ドメイン配列の部分のアラインメントを示す。配列に対応するNCBI(米国立生物工学情報センター)受入番号は、分離株と並べて表示される。これらの分離株には、北米型及び欧州型のいずれも、そして他の型も含まれる。
【0059】
【図4】GP5タンパク質により媒介されるPRRSVと宿主ブタ細胞との相互作用を図示する。
【0060】
【図5】GP5タンパク質のアミノ酸配列のKyte-Doolittle疎水性プロットである。表示される番号は、米国分離株によるものである。推定膜貫通領域の開始部分に相当する約62番目のアミノ酸残基において、疎水性残基への急変が認められる。
【0061】
【図6】代表的なPRRSVのGP5タンパク質をコードする配列のGenBank受入番号及びGI番号を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本明細書中で使用されるとき、ブタ繁殖呼吸症候群(PRRS)ウイルス、あるいはPRRSVという用語は、PRRS;謎豚病(Mystery Swine Disease)(MSD);以前「青耳病(blue- eared syndrome)」として知られていたブタ不妊呼吸症候群(Swine Infertility and Respiratory Syndrome)(SIRS);ブタ流行性流産呼吸症候群(porcine epidemic abortion and respiratory syndrome)(PEARS);ウォバシュ症候群;謎豚病(mystery pig disease)(MPD);ブタペスト(swine plague);英国の青耳病であるブタ青流産病(blue abortion disease);オランダのabortus blau;ドイツのseuchenhafter spatabort der schweine;及びヘコヘコ病(Shimizu et al., 1994)を引き起こすことが報告されているウイルスを指す。ウイルスにより引き起こされる病態の追加的な代替的な名称には、青耳病、青耳ブタ病、Enfermedad misteriosa del cerdo、Epidemisch spatabort der sauen、Lane r bing (中国語)、Maladie blue du pore、Maladie mysterieuse du pore、謎豚病、新豚病(New pig disease)、1988年〜1989年のペスト、Ratselhafte schweinekrankheit、Sindrome disgenesico y respiratorio del cerdo、Sindrome misterioso del cerdo、Syndrom reproductive et respiratoire du pore、Syndrome dysgenesique et respiratoire du pore、及びHAAT症候群(Hyperthermie-Anorexie-Avortement de Ia Truie)が含まれる。
【0063】
本明細書中で使用されるとき、PRRSVの「GP5タンパク質」及び「主要エンベロープ糖タンパク質」という用語は、当該技術分野で理解されるPRRSVゲノムのORF5によりコードされるポリペプチドを指す。代表的な、そして非限定的なGP5配列コード配列には、図6において提供される受入番号及びGI番号により特定されるものが含まれる。理論に拘束されること無く、そして本開示の理解を深めるための提案を受けること無く、前記PRRSVゲノムのORF5によりコードされるGP5タンパク質は、PRRSVにおいて受容体認識タンパク質(RRP)であると信じられている。GP5タンパク質の外部ドメインは、米国株においてはおよそアミノ酸N30からおよそD60まで及び、そして欧州株においてはおよそD33からG63まで及ぶ(図1を参照されたい。米国型株と欧州型株との間の典型的な相異は、(1)GP5タンパク質を構成するアミノ酸の合計個数が、それぞれ200と201であること、(2)米国株と比較して欧州株のほうがより長いシグナル配列を有すること、そして(3)米国株と比較して欧州株のほうが変異体が少ないことである。本開示は、部分的に、およそ1740のGP5配列及びそれらの個々の外部ドメインのそれぞれのHV2の解析並びに同定に基づいている。代表的な配列を図3に示す。本開示は、それらの代表的な配列を用いて実施されるが、本開示はそれらに限定されない。
【0064】
「HV-1領域」又は「HV1」という用語は、本明細書中に記載されるとき、GP5の保存料域のN末端に位置するポリペプチド配列を指す。前記領域は、本開示に係るポリペプチドドメイン中に任意的に存在する。しかし、存在しているときは、その配列は約14アミノ酸残基以上の長さであり得て、特に長さが11、12、13、及び14アミノ酸残基であることが意図される。また、他の態様において、約11、約9、約7、約5、又は約3以下の残基も使用され得る。本開示は、この領域の配列が顕著に変化する態様を含む。HV1配列の非限定的な配列の例は、図3に表されるものを含む。
【0065】
開示される配列におけるアミノ酸配列は、類似した特性及び性質を備えるもう1つの残基により、保存的に置換(substitute)又は入れ換え(replace)られ得る。本明細書中で使用されるとき、本開示に係る保存的アミノ酸置換は、以下の表1において示される。
【0066】
【表1】

【0067】
実施形態の詳細な説明
概要
本開示は、部分的に、GP5タンパク質のDNA情報等の、現在のPRRSV遺伝子情報の解析に基づいている。また、臨床的なPRRS症状を示すブタから同定されたPRRSVの配列も解析された。前記解析は、HV-1及びHV-2の2つの超可変領域の同定を導き、HV2はX0WLで表されるトリペプチドモチーフを有し、ここでX0は、本明細書中に記載される天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つである。また、前記解析は、米国株においてI42〜T55の位置にあり、欧州株においてI44〜T55の位置にある、保存領域の同定を導いた(図1を参照されたい)。
【0068】
PRRSVの米国株及び欧州株における外部ドメイン中の保存領域の存在は、その保存領域が、受容体認識タンパク質としてのGP5タンパク質と、PRRSVが感染するべき宿主細胞上の受容体との間の直接的な接触に寄与することを示唆する。この発想に基づき、そして理論に拘束されること無く、保存領域のいずれかの側にある前記2つのHV領域は、保存領域の疎水的性質を担持する「門」(あるいは構造モチーフ)として機能すると考えられている。HV-1領域には変異体が余りにも多かったため、HV-1領域及び保存領域における従来の解釈は、GP5タンパク質の免疫原性の研究を推進するものではなかった。しかし、HV-2の超可変性を考慮すると、HV-2がGP5と宿主細胞受容体との間の相互作用に寄与し得ることを期待するのは不合理であった。
【0069】
また、本開示は、HV-1領域の変異は、変異の少ないHV-2配列と組み合わせて考えられ得るという認識に部分的に基づいている。故に、本開示は、(1)免疫学的な類似性に基づいて分類するためにHV2配列の変異に基づいてPRRSV分離株を分類し、(2)投与時により広範かつ不均質な防御を提供する広範囲のワクチンを作製するために、異なる群のPRRSV株の組合せを選択することを含む。前記分類及び選択は、HV-1領域の考慮を任意的に含む。加えて、前記分離株は、ワクチン又は免疫原性組成物として投与される前に、弱毒化又は不活性化される。弱毒化の非限定的な例は、細胞又は組織等の培養物中の連続継代、又は動物中の継代等の、当業者に知られる方法を含む。当然に、前記継代は、インビトロで実施され得る。不活性化の非限定的な例は、加熱、放射線、化学不活性化処理等の、当業者に知られるものを含む。
【0070】
本開示は、任意的に、アミノ酸位置61に基づいて全ての米国株を2つの群に区分することを含む。85%を越える米国型分離株が、位置61においてD(Asp)又はS(Ser)を含むという報告がされている。それ以外(15%未満)は通常、位置61においてC(Cys)、F(Phe)、M(Met)、W(Trp)及びP(Pro)以外のアミノ酸残基を有する。故に、本開示は、第一のHV2領域中の位置61が、C、F、M、W、及びP以外のアミノ酸残基である態様を含む。幾つかの態様において、上記残基は、A(Ala)、G(GIy)、V(VaI)、L(Leu)、I(He)、S(Ser)、T(Thr)、N(Asn)、E(GIu)、Q(GIn)、R(Arg)、K(Lys)、H(His)、又はY(Tyr)から選択される。しかしながら、別の態様において、上記残基は、C、F、M、W、又はPから選択される。
【0071】
本開示は、任意的に、観察された配列情報に基づき、米国株をグループD及びグループSという2つのグループに、更にそれぞれを8つのサブグループ(D-1〜D-8及びS-1〜S−8)に分類することを含む。更に本開示は、観察された配列情報に基づき、全ての欧州株を8つのサブグループ(E-1〜E8)に分割することを含む。これらのグルーピングは、図2に例証されている。
【0072】
前記グループ及びサブグループは、本開示の幾つかの態様の基礎を成し、異なるグループ又はサブグループに由来する第一及び第二のポリペプチドドメイン(それぞれが、本明細書中に記載されるように、HV2と共有結合的に連結した保存的GP5モチーフを含む)の少なくとも1つの組み合わせが、前記ポリペプチドドメインの単独の(あるいは個別の)使用の場合よりも広範な抗体応答又は免疫応答を誘発する組成物又はワクチンを生産するために選択又は使用され得る。幾つかの態様において、2〜4つ、あるいはそれ以上のポリペプチドドメインが、本解除の実施に使用される。更なる態様において、1つのグループ又はサブグループに由来するドメインの使用が、同一のグループ又はサブグループに由来する2つ以上のドメインに対する抗体又は免疫応答の誘発をもたらし得る。
【0073】
本開示の非限定的な例は少なくとも4つのドメインの組み合わせを含み、それら4つの各々は、本明細書中に記載されるD-1〜D-8、S-1〜S−8、及びE-1〜E-8の24のサブグループの1つから重複無く選択される。可能な組み合わせの大まかな推定数は、数式(24x23x22x21)/(4x3x2x1)により得られ、即ち約10,600となる。しかしながら、幾つかの態様において、各組合せがグループD及びグループSのサブグループのそれぞれに由来する、及びE-1〜E-8に由来する少なくとも1つのドメインを含むものである場合、その可能な組み合わせの数は顕著に減少する。そのような例における大まかな推定は、式(8x8x8x21)/(4x3x2x1)により得られ、即ち約448となる。グループD及びグループSのサブグループのみが使用される他の態様において、またしても可能な組み合わせは減少する。同様に、E-1〜E-8に由来する4つのドメインが使用される態様において、可能な組み合わせの数は更に減少する。
【0074】
更に一般的には、本開示に係る組成物又はワクチンは、本明細書中に記載されるD及びSグループのそれぞれに由来する少なくとも1つのポリペプチドドメインを含み得る。即ち、2つのドメインの組合せは、それぞれD及びSグループのそれぞれに由来するドメインを1つずつ有しうる。他の態様において、組成物又はワクチンは、Dサブグループドメインのいずれかの組み合わせ及び/又はSサブグループドメインのいずれかの組み合わせを含み得る。即ち、2つのドメインの組み合わせは、両方ともグループDに由来するか、又は両方ともグループSに由来するものであるか、又はそれぞれが別のグループに由来するものであり得る。多くの態様において、組み合わせに使用されるポリペプチドドメインは、本開示に係る組成物又はワクチンとして使用されるPRRSV分離株のGP5タンパク質中に存在する。従って、本開示は、PRRSV分離株を単離し、そしてGP5タンパク質中のHV-2配列に基づいて本明細書中に記載される同一のグループ及びサブグループに分類することも含む。そして、分類された分離株は、開示されているように選択され得る。
【0075】
追加的かつ非限定的な例として、本開示に係る組成物又はワクチンは、
D-1サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのDサブグループ、又はS若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
D-2サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのDサブグループ、又はS若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
D-3サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのDサブグループ、又はS若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
D-4サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのDサブグループ、又はS若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
D-5サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのDサブグループ、又はS若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
D-6サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのDサブグループ、又はS若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
D-7サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのDサブグループ、又はS若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;あるいは
D-8サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのDサブグループ、又はS若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
を含み得る。
【0076】
あるいは、本開示に係る組成物又はワクチンは、
S-1サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのSサブグループ、又はD若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
S-2サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのSサブグループ、又はD若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
S-3サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのSサブグループ、又はD若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
S-4サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのSサブグループ、又はD若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
S-5サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのSサブグループ、又はD若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
S-6サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのSサブグループ、又はD若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
S-7サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのSサブグループ、又はD若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;あるいは
S-8サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのSサブグループ、又はD若しくはEサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
を含み得る。
【0077】
同様に、本開示に係る組成物又はワクチンは、
E-1サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのE、又はD若しくはSサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
E-2サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのE、又はD若しくはSサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
E-3サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのE、又はD若しくはSサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
E-4サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのE、又はD若しくはSサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
E-5サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのE、又はD若しくはSサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
E-6サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのE、又はD若しくはSサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
E-7サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのE、又はD若しくはSサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;あるいは
E-8サブグループに由来する分離株又はドメイン、及びそれ以外のいずれかのE、又はD若しくはSサブグループに由来する少なくとも1つ又はそれ以上(2つ又は3つ又はそれ以上)の分離株又はドメイン;
を含み得る。
【0078】
しかしながら、幾つかの態様において、本開示に係る組み合わせは、本明細書中に記載されるVR2332及びLVのGP5外部ドメインの組み合わせではない。他の態様において、本開示に係る組合せは、GP5外部ドメインと、HV2とGP5の推定膜貫通領域との間の境界を繋ぐ以下の配列;
ANKFDWAVET (配列番号:7)
ANKFDWAVEP (配列番号:8)
AGEFDWAVET (配列番号:9)
ADKFDWAVEP (配列番号:10)
ADRFDWAVEP (配列番号:11)又は
SSHFGWAVET (配列番号:12)
との組合せのみではない。
【0079】
しかしながら、具体的に意図された本発明の態様は、HV2配列におけるX0WL中のX0残基と少なくとも1つの追加的な残基のいずれもが、組み合わせにおける双方のドメイン間で異なる、ドメインの組合せを含む。
【0080】
本明細書中に記載されるとき、それぞれのポリペプチドドメイン(それぞれの分離株も同様)は、アミノ酸配列C(E/S)LNG(T/A)、配列番号:1により表される保存的GP5モチーフを含む。従って、本発明の態様は、GP5モチーフが、アミノ酸配列CELNGT(配列番号:2)、CELNGA(配列番号:3)、CSLNGT(配列番号:4)、又はCSLNGA(配列番号:5)により表されるドメインを含む。他の態様において、保存的GP5モチーフはより大きく、そして、図1において示される「保存領域」に相当する、アミノ酸配列I(Y/F)(N/D/S/K)(L/S/F/M)(T/P/M)(L/I)C(E/S)LNG(T/A)、配列番号:6により表される。
【0081】
ウイルスを基礎とする組成物
本開示は、本明細書中に記載される組成物において使用される、ポリペプチドドメイン中の保存性GP5モチーフ及びHV2の抗原性及び/又は免疫原性に基づく。よって、本開示は、前記のようなウイルス分離株の組合せを含む。非限定的な例には、本明細書中に記載されるグループ及びサブグループに区分され得る場合、図3に列挙された(それらの配列受託情報に基づく)ウイルス分離株の組み合わせが含まれる。幾つかの態様において、少なくとも2つ又はそれ以上、例えば3つ又は4つ又はそれ以上等の分離株の組み合わせは、本開示の実施における使用が意図される。
【0082】
加えて、本開示は、それぞれが本明細書中に記載される組合せのポリペプチドを含む、ウイルス分離株とウイルス粒子との組み合わせを含む。他の態様において、2つ以上のウイルス粒子が使用され得る。本開示に係るウイルス粒子を含むポリペプチドドメインの非限定的な例は、独立的な複製が可能な、又は不可能な、感染性の、又は非感染性のウイルス粒子を含む。追加的かつ非限定的な例は、インビトロで培養又は継代されたウイルス粒子;無毒かされたウイルス;及び組換えウイルス粒子を含む。
【0083】
多くの態様において、ウイルス粒子は、本開示に係るポリペプチドドメインを有するGP5タンパク質を含む外膜を有するPRRSV粒子である。他の態様において、前記ウイルス粒子は、本明細書中に記載されるように、任意的にGP5タンパク質の部分として、ポリペプチドドメインを含む外膜を有する非PRRSウイルスであり得る。更なる態様は、例えば、本明細書中に記載される異なる外部ドメインを有する2つ以上のGP5タンパク質を通じて、本明細書中で開示される2つ以上のポリペプチドドメインを含む外膜を備えたPRRSV又は非PRRSVウイルス粒子を含む。幾つかのケースにおいて、ウイルス粒子は、複数のコピーのGP5タンパク質をコードするORF5配列を含むゲノムを有するPRRSVである。そのようなウイルス分離株は以前から報告されており、「過剰生産変異型(overproduction mutant)」又は「高複製表現型(high-replication phenotype)」PRRSVと称されている。本開示は、それぞれが本明細書中に記載される相異なるHV2領域を有するポリペプチドドメインを含む、2つ以上のGP5タンパク質を含み、そして発現するように遺伝子組換えされているようなPRRSVを含む。他の態様において、組換えウイルスは、PRRSVGP5タンパク質の発現が可能なことが既に報告されているバキュロウイルス等の昆虫ウイルス、ブタアデノウイルス、又はポックスウイルスであり得る。
【0084】
更なる態様において、ウイルス分離株又はウイルス粒子は、PRRSV分離株又は感染性粒子等の、感染性及び複製能力を有するものである。ほとんどのケースにおいて、前記粒子は、GP5タンパク質をコードし、及びインビボでの感染後、GP5タンパク質を発現してGP5を生産することが可能なゲノムを含む。感染性及び複製能力のいずれも有する粒子は、ビリオンと称され得る。別の態様において、本開示に係る粒子は感染性ではあるが複製能力を有しない。しかしながら、任意的に細胞内でGP5タンパク質を発現することが可能である。
【0085】
PRRSV分離株の使用を含む態様において、その分離株は、分離株のHV2の配列に基づいて、同定又は選択され得る。例えば本明細書における図3において表される分離株のような幾つかのケースにおいて、前記同定又は選択は、配列情報の再検証に基づくものであり得て、又は特定された分離株におけるHV2配列の知見に基づくものであり得る。前記分離株がこれまでに特定されていないものである等の他のケースにおいて、前記選択は、所定のHV2配列を認識する抗体の使用;その分離株のGP5コード配列(ORF5)の配列決定;又はGP5タンパク質それ自体の精製及びアミノ酸配列決定等により、HV2配列を検出することによるものであり得る。抗体に基づく検出の非限定的な例は、免疫沈降法、並びに例えばELISA、RIA、及びウエスタンブロッティング等のアッセイを含む。配列決定の非限定的な例は、ジデオキシヌクレオチドに基づくDNA分子の配列決定、及びPCRの前にGP5をコードするRNA分子の逆転写に基づく方法を含むPCRに基づく配列決定を含む。幾つかの態様において、分離株の選択は、HV2を超えて1つ以上のGP5タンパク質の部分の配列、例えば保存的モチーフ及び/又はHV1等を検出することを含む。
【0086】
抗体に基づく検出方法の多くの態様において、抗体は、多重のPRRSV及び分離株において認められるようなGP5タンパク質と結合しない。その代わりに、前記抗体は、HV2配列又は構造上の全部又は一部に基づく特定の分離株を検出することが出来る程度に、HV2に対して十分に特異的であるべきである。その検出を促進するための標識抗体等の抗体の使用に加えて、PRRSVのGP5タンパク質のHV2に結合する抗体フラグメントも使用され得る。前記抗体フラグメントは、HV2結合抗体のFv又はFab領域であり得て;他の非限定的な例には、単鎖Fv領域及び単鎖Fab領域を含む単鎖抗体が含まれる。前記抗体及び抗体フラグメントは、好ましくはモノクローナルであるが、幾つかのケースにおいてはポリクローナルであり得る。
【0087】
更なる態様において、PRRSV分離株の検出は、PRRSVが感染した個体等のブタ対象に由来する生体液のサンプルの使用によりなされる。その方法は、前記サンプル、又はその希釈物を、好ましくはその生体液中に存在する他の分子を除いてGP5タンパク質のHV2と結合する結合剤と接触させる工程を含む。多くの態様において、前記対象はブタであり、そして前記サンプルはブタ由来の生体液又は分泌物に由来するものであり得る。本開示の使用のために収得され得るサンプルが由来するブタの非限定的な例は、雄ブタ(boar)、雌ブタ(sow)、肥育ブタ(fattener)、及び未産雌ブタ(gilt)を含む。前記ブタは、1〜約30日、31〜約40日、41〜約50日、又は51〜約60日、あるいはそれ以上の日齢の範囲であり得る。
【0088】
当然に、前記生体液は、GP5タンパク質及びPRRSV粒子がその中に検出可能な程度に存在しているべきである。非限定的な例は、体分泌液、例えば唾液、涙、粘液、鼻汁、及び膣分泌液、あるいは他の体液、例えば血液、血清、血漿、精液、精液、及び尿、あるいは排出物の任意の液体成分又は排出物の液体抽出物を含む。
【0089】
前記生体液がPRRSV粒子を含む場合、検出はPCRに基づく使用によりなされ得て、GP5タンパク質を含むDNA若しくはRNA分子等の、GP5タンパク質をコードする核酸分子、又は少なくともHV2をコードする前記分子の一部を検出する。
【0090】
追加的な態様において、前記選択及び検出は、本明細書中に記載されるもの、又は従来特定されているもののいずれとも異なるHV2配列を有するGP5タンパク質を有するPRRSV分離株のためのものである。そのような新規な分離株は、なおも本明細書中に記載される1つのグループ又はサブグループに分類され得る。あるいは、開示されたグループ又はサブグループに分類され得ないような分離株があるとすれば、それは開示された組み合わせの部分として有利に使用され得る。なぜなら、その新規分離株は、新規な抗体又は免疫応答を誘発する可能性が高いからである。
【0091】
よって、本開示は、本明細書中に開示されるいずれのHV2配列とも異なるHV2配列を有するGP5タンパク質を含むPRRSV分離物の使用による、対象中の抗体又は免疫応答を誘発する方法を含む。よって、分離株のHV2は、何らかの形で本明細書中に記載されているものであるか、又は開示されたいずれかのグループ又はサブグループに包含されるものであるとは限らない。本方法は、図3のHV2配列のいずれとも、又はD、S、若しくはEサブグループのいずれとも異なるHV2領域を含むGP5ポリペプチド分子を含むものとして単離されたPRRSVの同定、及び前記対象中で抗体又は免疫応答を誘発するための前記対象への前記分離株の投与を含み得る。特徴的なHV2配列の同定又は決定は必ず本明細書中に記載され得て、非限定的な例の如き抗体又は核酸に基づく方法を含み、その後に本開示との比較がなされる。幾つかの態様において、前記分離株は、本明細書中に記載される如く、無毒化又は不活性化される。
【0092】
ポリペプチド及び組成物
本開示は、本明細書中に記載されているような保存的GP5モチーフ及びHV2を含むポリペプチドドメインの抗原性及び/又は免疫原性に基づく。前記HV2部分は、2つの異なるドメインを含むポリペプチド分子の組み合わせの使用が、そのドメインの単独での使用と比較してより広範な抗原及び免疫応答をもたらすようにして、前記ドメインの抗原性及び/又は免疫原性に寄与する。故に、本開示は、例えば組成物又はワクチン等の2つ以上のポリペプチドの組み合わせ、あるいは対象を免疫化する方法におけるそれらの使用を含む。
【0093】
ポリペプチドドメインの態様は、本明細書中に記載されている。一般的に、前記ドメインは、HV2領域と共有結合的に連結した保存的GP5モチーフを含む。多くの態様は、GP5モチーフとHV2を連結するペプチド結合又はアミド結合を有し、その結果、N末端からC末端の配列を考慮すると、それらが隣接しているようになる。他の態様は、リンカー部分の使用を含む。リンカー部分の非限定的な例は、約1、2、3、4、又は5アミノ酸長等である短ペプチド配列、及び少なくとも1つの鎖状の炭素原子を有する原子の短鎖、又は他の合成リンカー等の非ペプチドリンカーを含む。短ペプチド配列のケースにおいて、アミノ酸は、本明細書の表1に記載の20種類のアミノ酸等の、天然に存在するアミノ酸のいずれかであり得る。幾つかの別の態様において、前記モチーフとHV2は、例えば炭素-炭素結合等の非ペプチド結合の連結を介して共有結合的に接合し得る。
【0094】
第一及び第二のポリペプチドドメインを使用すれば、それらのドメインは、同一のポリペプチド分子上に、又は2つの別個の分子上に位置し得る。多くの態様において、前記ドメインは別個のポリペプチド分子上に位置しており、それぞれが脂質二重層との結び付きを可能とする膜貫通ドメイン又は他のタンパク質ドメインを含む。また、膜貫通ドメインは、単一のポリペプチド分子が両方のドメインを含む場合にも存在し得る。幾つかの態様において、膜貫通ドメインは、当業者に知られ、そして本明細書中に記載される、PRRSVのGP5タンパク質の推定膜貫通領域である。
【0095】
多くの態様において、前記ドメインは、別個のGP5タンパク質上に位置する。多くの体の態様において、前記ドメインは、保存的GP5モチーフ中に、CELNGT(配列番号2)で表されるような同一の配列を有する。しかしながら、同一の保存的GP5モチーフを有していても、第一及び第二のポリペプチドドメインはHV2配列において相異しており、それによりドメイン間で異なる所望の抗原性及び/又は免疫原性をもたらす。
【0096】
第一及び第二のポリペプチドドメインを有する別個のGP5タンパク質の多くの態様において、各GP5タンパク質は、N末端からC末端までの間に、推定シグナル配列、HV−1超可変領域、保存的GP5モチーフを含む保存領域(CR)、HV-2超可変領域、推定膜貫通領域、及びGP5タンパク質の残りの部分を含み得る。他の態様において、GP5タンパク質は、全て、又は部分的に、推定シグナル配列を欠損している。また、当然に、本開示に係るポリペプチドドメインの抗原性及び/又は免疫原性を保持するが、GP5成分が少ないポリペプチド分子も使用され得る。非限定的な例は、HV−1超可変領域、保存的GP5モチーフを含む保存領域(CR)、及びHV-2超可変領域を含み、任意的に前記にて開示される膜貫通領域を有するポリペプチド分子を含む。
【0097】
一般的に、開示されたHV2領域は、長さが約8アミノ酸残基である。別の態様において、前記長さは、6、7、8、9、又は10残基であり得る。残基の正確な個数は、形成されるドメインが所望の抗原性及び/又は免疫原性活性を保持している限りにおいて重要では無い。幾つかの態様において、HV2は、X0が本明細書中に定義されるトリペプチド配列X0WLで始まる。故に、幾つかの態様において、HV2は、配列X0WLX1X2X3X4X5により表され、ここで、X0、X、X2、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、表1に記載される、天然に存在する20種類のアミノ酸残基であり、そしてX5は、いずれかのアミノ酸残基から選択され、但し場合によってはC(Cys)、F(Phe)、M(Met)、W(Trp)及びP(Pro)は除外される。
【0098】
他の態様において、HV2は、X0WLX1X2X3X4Dで表されるDグループ配列であり、ここでアスパラギン酸(D)残基(X0WLX1X2X3X4Dの末端)がC、F、M、P、W、S、T、及びY以外のいずれかのアミノ酸残基(A、G、V、L、I、N、E、Q、R、K、又はH等で表される)で置換され得て、そしてX0が前に記載したものであり、そしてD-1〜D-8のサブグループの1つが、以下
D-1: X1は脂肪族アミノ酸残基であり、X2は酸性アミノ酸残基であり(又はX1が酸性アミノ酸残基であり、そしてX2が脂肪族アミノ酸残基であり)、X3は塩基性アミノ酸残基であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;
D-2: X1は脂肪族アミノ酸残基であり、X2はSer、Thr、Tyr若しくは塩基性アミノ酸残基であり(又はX1がSer、Thr、Tyr若しくは塩基性アミノ酸残基であり、そしてX2が脂肪族アミノ酸残基であり)、X3は塩基性アミノ酸残基であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;
D-3: X1及びX2のそれぞれは独立して脂肪族アミノ酸残基であり、X3は塩基性アミノ酸残基であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;
D-4: X1は酸性アミノ酸残基であり、X2はSer、Thr、Tyr若しくは塩基性アミノ酸残基であり(又はX1がSer、Thr、Tyr若しくは塩基性アミノ酸残基であり、そしてX2が酸性アミノ酸残基であり)、X3は塩基性アミノ酸残基であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;
D-5: X1及びX2のそれぞれは独立して酸性アミノ酸残基であり、X3は塩基性アミノ酸残基であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;
D-6: X1及びX2のそれぞれは独立して天然に存在する20種類のアミノ酸残基であり、X3は酸性アミノ酸残基であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;
D-7: X1及びX2のそれぞれは独立して天然に存在する20種類のアミノ酸残基であり、X3はヒドロキシルを含むR基を有する非芳香族アミノ酸残基(Ser又はThr等)であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;あるいは
D-8: X1及びX2のそれぞれは独立してチロシン(Y)、セリン(S)、スレオニン(T)若しくはフェニルアラニン(F)等の、塩基性アミノ酸残基、又は芳香環を含むアミノ酸残基であり、X3は塩基性アミノ酸残基であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;
によって表される。
【0099】
追加的な態様において、HV2は、X0WLX1X2X3X4X5(X0は上述される)で表されるSグループ配列であり、そしてS-1〜S-8のサブグループの1つが、以下
S-1: X1は酸性アミノ酸残基であり、X2はアスパラギン(N)であり、X3は塩基性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はSである;
S-2: X1及びX2のそれぞれは、独立して酸性アミノ酸であり、但し、X2はアスパラギン(N)ではなく、X3は塩基性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はSである;
S-3: X1は脂肪族アミノ酸残基であり、X2は酸性アミノ酸残基であり(又はX1が酸性アミノ酸残基であり、そしてX2が脂肪族アミノ酸残基であり)、X3は塩基性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はSである;
S-4: X1は脂肪族アミノ酸残基であり、X2はSer、Thr、Tyr若しくは塩基性アミノ酸残基であり(又はX1がSer、Thr、Tyr若しくは塩基性アミノ酸残基であり、そしてX2が脂肪族アミノ酸残基であり;あるいはX1及びX2のそれぞれが、独立して、Ser、Thr、Tyr若しくは塩基性アミノ酸残基のいずれか1つであり;あるいはX1及びX2のそれぞれが、独立して、脂肪族アミノ酸残基であり)、X3は塩基性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はSである;
S-5: X1は酸性アミノ酸残基であり、X2はSer、Thr、Tyr又は塩基性アミノ酸残基であり(又はX1がSer、Thr、Tyr若しくは塩基性アミノ酸残基であり、そしてX2がN(Asn)以外の酸性アミノ酸残基であり)、X3は塩基性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はSである;
S-6: X1は塩基性アミノ酸残基であり、X2はアスパラギン(N)であり、X3は塩基性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はSである;
S-7: X1及びX2のそれぞれは独立して天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、X3は塩基性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はT又はYである;あるいは
S-8: X1は酸性アミノ酸残基であり、X2は酸性アミノ酸残基であり(又はX1が酸性アミノ酸残基であり、そしてX2が脂肪族アミノ酸残基であるか、あるいはX1が脂肪族アミノ酸残基であり、そしてX2が酸性アミノ酸残基であり)、X3は酸性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はSである;
によって表される。
【0100】
なおも追加的な態様において、HV2は、以下のE-1〜E-8サブグループ;
配列NWLSX2X3X4X5(E-1と表記される)、ここで、X2、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、そしてX5は酸性又は脂肪族アミノ酸残基である;
配列X0WLX1X2X3X4X5(E-2と表記される)、ここで、X0はアスパラギン(N)以外の酸性アミノ酸残基であり、X1、X2、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、そしてX5は酸性又は脂肪族アミノ酸残基である;
配列X0WLX1X2X3X4X5(E-3と表記される)、ここで、X0は塩基性アミノ酸残基であり、X1、X2、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、そしてX5は酸性又は脂肪族アミノ酸残基である;
配列X0WLX1X2X3X4X5(E-4と表記される)、ここで、X0はいずれかの非酸性及び非塩基性アミノ酸残基であり、X1、X2、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、そしてX5は酸性又は塩基性アミノ酸残基である;
配列NWLSX2X3X4X5(E-5と表記される)、ここで、X2、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、そしてX5はセリン(S)又はスレオニン(T)である;
配列X0WLX1NX3X4X5(E-6と表記される)、ここで、X0はアスパラギン(N)以外のいずれかのアミノ酸残基であり、X1、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、そしてX5はセリン(S)又はスレオニン(T)である;
配列X0WLX1X2X3X4X5(E-7と表記される)、ここで、X0はアスパラギン(N)以外の酸性アミノ酸残基であり、X1、X2、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、但し、X2がアスパラギン(N)ではなく、そしてX5はいずれかの非酸性アミノ酸残基である;あるいは
配列X0WLX1X2X3X4X5(E-8と表記される)、ここで、X0はいずれかの非酸性アミノ酸残基であり、X1、X2、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、そしてX5はいずれかの非酸性アミノ酸残基である;
の1つによって表されるEグループ配列である。
【0101】
「非酸性」という用語は、酸性アミノ酸以外のアミノ酸残基を意味し;そして「非塩基性」という用語は、塩基性アミノ酸以外のアミノ酸残基を意味する。
【0102】
前記第一及び第二のポリペプチドドメインを含む別個のポリペプチド分子の態様において、それらのポリペプチド分子は、本明細書中に開示される方法により、一緒に又は別個に投与され得る。一緒に投与されるとき、それらは組成物として製剤化され得る。任意的に、前記組成物は、当業者が所望する1つ以上の許容される担体又は賦形剤又はアジュバントを含む。
【0103】
調製の方法
本開示は、本明細書中に開示されるポリペプチドドメイン及びポリペプチド分子を調製する方法を含む。幾つかの態様において、ペプチド又は短鎖ポリペプチドは、当業者に知られる自動化された化学的手法等のデノボ合成を使用することにより調製され得る。あるいは、前記調製は、本開示に係るペプチドドメイン及びポリペプチド分子をコードする核酸分子の有用性に基づく、組換えDNA手法の使用によるものであり得る。限定的ではないが、PCRに基づく突然変異生成、及び当業者に知られる自動化した化学的手法等による核酸分子のデノボ合成等の既知の技術により前記核酸分子の配列は変更され得る。
【0104】
開示されたポリペプチドの生産に、組換えDNA技術の使用を基礎とした方法が使用され得る。そのような方法は、インビトロ細胞培養系又は生産動物(producer animal)等の適切な発現系による核酸分子の発現、並びに発現したポリペプチドの前記発現系からの単離を含み得る。前記発現系は、開示されたポリペプチドをコードし、そして適切な制御配列又はプロモーター配列と操作可能な形で連結するする核酸配列を含み得る。適切な細胞又は細胞株の非限定的な例には、ブタ肺胞マクロファージ、CRL 11171、MA-104、MARC-145、PSP-36、及びPSP-36-SAHが含まれる。生産動物の非限定的な例には、雄ブタ、雌ブタ、肥育ブタ、及び未産雌ブタが挙げられる。
【0105】
開示されたポリペプチドドメインの生産後、前記方法は、組成物を形成するために、本明細書に開示されるように、そのポリペプチドドメインを第一のポリペプチドドメインとして選択し、及び/又はそれと第二のポリペプチドドメインとを組み合わせる工程を含み得る。前記組合せは、組成物を形成するために、1つ以上の許容される担体、賦形剤及び/又はアジュバントを添加することを含む。
【0106】
PRRSVを基礎とする核酸分子等を用いる幾つかの態様において、前記発現系は、開示されたポリペプチドを外膜内に組み込むウイルス粒子を生産する。前記PRRSVを基礎とする核酸分子は、本明細書中に開示される、HV2領域を含むGP5タンパク質を発現するように改変されているウイルスゲノムであり得る。更なる態様において、前記核酸分子は、2コピー以上のGP5タンパク質をコードする配列を含み、それぞれのコピーが本明細書中に記載される異なるHV2領域をコードするものであり得る。他の態様において、前記発現系は、ウサギ膜状赤血球系における場合の如き無細胞系であり得る。
【0107】
また、PRRSV粒子を生産する他の方法も提供される。幾つかの態様において、前記生産は、本明細書中に記載されるPRRSV分離株の選択及び/又は単離を含む。前記選択及び/又は単離は、当業者に知られる、又は本明細書中に記載される分離株を培養又は継代することを含み得る。代替の態様において、前記選択は、ブタ等の感染した対象に由来する分離株の選択であり得て、そして本明細書中に記載されるHV2領域の原料として使用するための、前記対象由来の感染性体液及び/又は組織の取得を更に含む。感染性体液及び/又は組織の非限定的な例は、血液、血清、血漿、鼻汁、精液(semen)、精液(seminal fluid)、及び尿、あるいは肺組織、扁桃腺組織、脊髄組織、排出物の液体成分又は排出物の液体抽出物を含む。幾つかの態様において、前記感染性体液及び/又は組織は、開示された組み合わせの部分として使用され得る。非限定的な例には、体液又は組織を、任意的に本明細書に開示されるポリペプチド分子又はウイルス粒子中にある第二のHV2領域と組み合わせて、接種材料として使用することを含む。
【0108】
使用の方法
本開示は、第一及び第二のポリペプチドドメインの開示された組み合わせの投与を介して対象中の抗体又は免疫応答を誘発する方法を含む。幾つかの態様において、前記方法は、抗体及び/又は免疫応答を誘発するのに効果的な量の開示された組成物の投与を含む。多くのケースにおいて、投与される量は、処置された対象中で、その後になされるPRRSVによる感染等の1つ以上のPRRSVによる抗原投与に対して防御状態(protected state)を引き起こすのに有効である。幾つかのケースにおいて、ある方法は更に、開示された組成物を「追加免疫(booster)」として追加的に投与することを含む。対象の非限定的な例には、雌ブタ、未産雌ブタ、妊娠雌ブタ、又は妊娠未産雌ブタが含まれる。幾つかの態様において、前記対象は、約1〜12週齢の、例えば約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、又は約11週齢のブタであり得る。他の態様において、前記ブタは約12〜約22週齢又はそれ以上であり得て、例えば、約14、約16、約18、約20、約22、約24、約26、約28、約30、約32、約34、約36、約38、約40、約42、約44、約46、約48、約50、約52、又は約54週齢であり得る。追加的な態様において、前記ブタは、既に離乳しており、及び/又は母体の抗体が十分な防御を提供する段階を経過している。
【0109】
開示された組み合わせ又は組成物がワクチンとしてブタ等の対象中で防御状態を引き起こすのに有効な量は、罹患していないブタへのそのワクチンの投与に続くPRRSV分離株を用いた抗原投与によっても決定され得る。幾つかのケースにおいて、前記分離株は、そのウイルス粒子が同一のゲノム、即ち同一のGP5タンパク質、即ち同一のGP5外部ドメインを有するように精製又は単離され得る。抗原投与に使用される分離株の非限定的な例は、図3に列記されるもの、あるいはその分離株に感染した動物由来の感染性の体液又は組織を含む。幾つかの態様において、前記抗原投与は、追加免疫の投与後約3〜8週になされ得て、そして大量の、又は過剰量のPRRSVによりなされ得る。
【0110】
前記ワクチン及びその量は、同一の分離株を投与した非ワクチン接種(ワクチンで処置していない)ブタに抗原投与したときの結果と比較して、PRRSV感染のいずれかの症状、及び/又はいずれかの肉眼的若しくは組織病理的変化の重度を減少するとき、有効であるといえる。当然に、そのブタは、過去にそのウイルスに曝露されたことが無く、又は曝露されたことがあるが十分な期間発症していないことにより非感染であると確認されたブタ等の、PRRSVを含まないものであるべきである。あるいは、そのブタは、体液又は組織中のPRRSV又は抗PRRSV抗体の存在を検出するアッセイの使用により、非感染であると確認されたものであり得る。
【0111】
PRRSV感染の症状の非限定的な例は、発熱、呼吸困難、チアノーゼ、肺炎、倦怠感、くしゃみ、咳、目の浮腫、青耳、並びに心臓及び/又は脳障害を含む。加えて、抗原投与において使用された分離株の存在は、他の定量的又は定性的手法により判定され得る。非限定的な例には、ワクチン接種を行った、又は行わないブタへの抗原投与後約2日〜約2週間での、肺病変、又は血液又は血清サンプル中のウイルスの検出が含まれる。ワクチン接種したブタが、非処理のブタと比較して病変が減少したとき、それは感染の検出について定量的な手段を提供する。あるいは、ワクチン接種したブタの血液又は血清中のウイルスの検出は、そのワクチン接種が有効ではなかった場合があり得ることを示唆し、一方ウイルスの検出が陰性であったとき、そのワクチン接種が有効であった場合があり得ることを示唆する。
【0112】
対象中の免疫防御の有効な刺激は、本開示に係る組み合わせ又は組成物への曝露後の抗体又は免疫応答の誘発により仲介され得る。前記対象の非限定的な例は、過去にPRRSVに曝露されたことが無いブタ、又は過去にPRRSVに曝露され、若しくはPRRSV感染による症状に苦しんでいるブタであり得る。多くの態様において、抗体応答の誘発は、内部に全部又は一部のHV2を含むGP5タンパク質に対する中和抗体の生産を含む。そのような抗体の生産の確認は、処置された動物の血液又は血清を、そのような抗体を検出するためのアッセイに付することにより実行され得る。そのような抗体検出アッセイの非限定的な例は、ELISA、RIA、及びウエスタンブロッティングを含む。
【0113】
本開示は、本明細書中に開示される、対象中の抗体及び/又は免疫応答を誘発する方法を含む。幾つかの態様において、前記方法は、少なくとも、i)第一のHV-2超可変領域を含むポリペプチド分子を含む、第一のPRRSV分離株を同定又は選択し;ii)前記第一の超可変領域と異なる第二のHV-2超可変領域を含むポリペプチド分子を含む、第二のPRRSV分離株を同定又は選択し;そしてiii)抗体及び/又は免疫応答を誘発するために、対象に第一及び第二の分離株を投与する工程を含む。幾つかの態様において、前記方法は、異なる追加的なHV-2領域を有する1つ以上の追加的な分離株の選択、及びその後の第一及び第二の分離株と共にされるそれらの投与を含み得る。他の態様において、前記方法は、第一及び第二の分離株と共に、1つ以上の選択されていない分離株を投与することを含み得る。
【0114】
投与するべき第一及び第二の分離株の量は、当然に、所望の抗体及び/又は免疫応答を誘発するのに十分であるべきである。幾つかの態様において、投与される量は、対象中で、その後になされる1つ以上の分離株によるPRRSV感染に対して、ワクチン化又は防御状態を形成するのに十分である。
【0115】
幾つかのケースにおいて、前記同定又は選択は、i)PRRSVのGP5外部ドメインのHV-2超可変領域のアミノ酸配列解析;ii)PRRSVのGP5外部ドメインのHV-2超可変領域のPCRに基づく、若しくは抗体に基づく検出;又はiii)PRRSVのGP5外部ドメインのHV-2超可変領域のもう1つの分離株と比較した配列の認識を含み得る。
【0116】
他の態様において、抗体及び/又は免疫応答を誘発する方法は、D-1、D-2、D-3、D-4、D-5、D-6、D-7、又はD-8から選択される1つのHV-2領域を含む第一のポリペプチド(抗原性)ドメイン、及びS-1、S-2、S-3、S-4、S-5、S-6、S-7、又はS-8から選択される1つのHV-2領域を含む第二のポリペプチド(抗原性)ドメインの投与を含む。多くのケースにおいて、前記D-1、D-2、D-3、D-4、D-5、D-6、D-7、D-8、S-1、S-2、S-3、S-4、S-5、S-6、S-7、及びS-8から選択される2つ以上の異なるポリペプチド(抗原性)ドメインの組み合わせは、北米において有利に使用される。
【0117】
他の態様において、前記投与は、E-I、E-2、E-3、E-4、E-5、E-6、E-7、及びE-8から選択される2つ以上のポリペプチド(抗原性)ドメインを含む。多くのケースにおいて、この組み合わせは、欧州において有利に使用される。追加的な態様において、2つ以上の異なるポリペプチド(抗原性)ドメインの組み合わせは、特定の地理的領域において見出されるPRRSV分離株に基づいて、前記24のサブグループから選択され得る。非限定的な例は、韓国、中国、日本、東南アジア、又は南米において見出される分離株を含む。追加的な態様において、韓国、中国、又は日本において使用される組合せは、北米において使用されるものと同一であり得る。他の態様において、E-I、E-2、E-3、E-4、E-5、E-6、E-7、及びE-8のいずれのドメインも、北米又はアジア地域において使用されるドメインの組合せから除外される。
【0118】
更なる態様において、ある地理的領域で検出されたそれぞれのサブグループを少なくとも1つ含む、2つ以上のポリペプチド(抗原性)ドメイン、又はそれらを含むポリペプチド分子若しくは分離株の組み合わせが、本開示の実施において投与され得る。ポリペプチド(抗原性)ドメイン、又はそれらを含むポリペプチド分子若しくは分離株の投与は、当業者に知られる任意の適切な手法によりなされ得る。非限定的な例は、1つ以上の開示された単離株、又はPRRSVに感染した対象由来の細胞及び/若しくは組織の1つ以上のサンプルの、注射、鼻腔内投与、又は経口投与を含む。
【0119】
前記ドメイン、又はそれらを含むポリペプチド分子若しくは分離株が別個に投与又は適用されるとき、それは投与の間に任意の期間を置く連続的な投与であり得る。前記期間の非限定的な例は、約1〜2日;約1、約3、又は約5週間;約1、約3、約4、又は約6月、又はそれ以上を含む。最初の投与イベントと1つ以上のその後の「追加免疫」イベントとの間に、同一の期間が使用され得る。
【0120】
前記ポリペプチド分子(単数又は複数)の投与が同時に又は別個にされるかは、膜結合型であるか、又は脂質二重層に組み込まれる等の膜連結型であるかに依存し得る。幾つかのケースにおいて、前記膜は、細胞膜の断片等の細胞由来のものであり得る。他の態様において、前記膜は、リポソーム、水中油又は油中水懸濁物等の、膜の小胞であり得る。細胞由来の膜の非限定的な例は、PRRSV粒子又は本明細書に記載の他のウイルス粒子の外膜を含む。
【0121】
キット
前記ポリペプチドドメイン、ポリペプチド分子、及び分離株、あるいはそれらを含む組み合わせ又は組成物、並びにそれらを使用する方法は、周知の手法に従って生産される1つ以上のキットにおいて具体化され得る。故に、本開示は、本明細書中に開示される1つ以上のポリペプチドドメイン、ポリペプチド分子、若しくは分離株、又はそれらを含む組み合わせ又は組成物を含む1つ以上の試薬を有する、本明細書に記載の1つ以上の方法を使用するためのキットを含む。そのようなキットは、識別記載若しくは標識、又は本開示の1つ以上の方法におけるそれらの使用に関する取扱説明書を任意的に更に含む。そのようなキットは、前記方法に利用される1つ以上の様々な試薬(典型的には濃縮形態)のそれぞれについての容器を含み得る。典型的には、取扱説明書一式も含まれ得る。
【0122】
ここまで本発明を一般的に記載してきたが、以下の実施例を参照することにより、本発明はより容易に理解され得る。本実施例は例示を目的として提供されるものであり、特に断りのない限り、本開示の限定を意図するものではない。
【実施例】
【0123】
実施例1: 防御状態を誘発するための保存的GP5配列の障害
本開示は、部分的には、PRRSVの第一の分離株に以前感染したブタが回復し、第二の分離株に感受性になり得るという知見に基づいており、この場合、両方の分離株は、保存領域において同じ配列を有するGP5タンパク質を含む。そのような事象の非限定的な例が下記表2に示されており、それぞれの事象は、特定された分離株の1つ(表中の各事象セットの最初のもの)による感染から回復したブタが、示されるように、他の分離株の少なくとも1つ(事件1〜3及び5〜7のそれぞれにおいては2番目のもの)に感染していることが見出されたことを意味する。それぞれの分離株について、外部ドメインを含むGP5配列の部分が示されており、図1において同定されているような保存領域に下線を引き、そしてHV2領域中の相異箇所は太字で示した。
【0124】
【表2】

【0125】
そのような事象の研究を基礎として、ある分離株のGP5タンパク質中の保存領域に対する抗体は、その後のPRRSVに対する防御を提供するのに不十分であるという発見がなされた。加えて、HV-1領域の配列は、事象において適切な説明を提供するものではなかった。示された殆どの事象において、HV1の変化は認められなかった。これにより、HV-2領域の配列の変異が、過去にHV-2領域において異なる配列を有するPRRSVに晒された動物の免疫学的監視を回避するのに寄与するという発見がもたらされた。言い方を変えると、上記のGP5外部ドメインにおける保存的配列は、GP5タンパク質中でHV-2領域が異なるもう1つのPRRSVに対して防御が可能な抗体又は免疫応答を誘発することが出来ない。
【0126】
部分的に、この発見が、本開示に係る組み合わせ、組成物、及び方法をもたらした。
【0127】
実施例2: PRRSV分離株の増殖
PRRSV分離株を増殖及び維持する方法は、既に報告されている(例えば、Meng et al., 1994, J. Gen. Virol. 75:1795-1801 and Meng et al., 1996, J. of Vet. Diag. Invest. 8:374-381を参照されたい)。非限定的な例は、ウイルス分離株の播種に適した単相で増殖しうる細胞株であるATCC CRL 11171の使用を含む。別の細胞及び細胞株は、MA-104、PSP-36、PSP-36-SAH、MARC-145及びブタ肺胞マクロファージを含む。
【0128】
非限定的な例として、感染多重度(moi)約0.1、0.5、又は1が使用され得て、その後感染及びウイルス増殖の確認前に約48時間インキュベーションされる確認は、上清(培養培地)を取り出し、細胞を固定後、Nタンパク質(ORF7にコードされる)に特異的なモノクローナル抗体、又は本明細書中に記載されるGP5タンパク質の特定のHV2領域に対する抗体等の、抗PRRSV抗体に標識を施したものを用いた検出によりなされ得る。
【0129】
実施例3: ウイルス分離株の組み合わせ
本明細書中に記載されるように、PRRSV分離株は、少なくともHV2配列に基づいて、本開示に係る組み合わせにおける使用のために分類(同定)され、そして選択され得る。以下のデータは、多数の代表的なPRRSV分離株のそれぞれにおけるGP5配列(外部ドメインを含む)の部分を示しており、それらの幾つかは、外部領域外の領域において異なっている。本明細書中に記載される、HV1、保存領域(CR)、及びHV2の位置は、本データの下部に示されており、HV1の開始の特定は、非限定的な代表例である。
【0130】
開示されたグループへのその配列の分類が含まれ、異なるサブグループに由来する分離株の組み合わせは、本開示の実施において使用され得る。1つの非限定的な例となるように、D-4分離株(Ingelvac-ATP)、D-1分離株(Ingelvac-MLV又はMJ-3〜MJ-14の1つ)、S-1分離株(MJ-1又はMJ-2)、及びD-3分離株(MJ-15又はMJ-16)の組合せが、本明細書中で開示される、対象中の免疫応答の誘発に使用され得る。
【0131】
非限定的なもう一の例は、D-1分離株(MJ-17〜MJ-27の1つ)、D-6分離株(MJ-28〜MJ-30の1つ)、D-2分離株(MJ-34又はMJ-35)、及びD-3分離株(MJ-36等)の組み合わせである。以下のデータにおいて表され、本開示に従う分離株の他の全ての組み合わせは、本明細書中で記載される調製及び使用に具体的に予定される。
【0132】
【表3】

【0133】
【表4】

【0134】
【表5】

【0135】
【表6】

【0136】
本明細書中に引用される全ての参考文献は、先に具体的に援用されていたか否かに拘らず、それらの全てにおいて参照により本明細書に援用される。本明細書中で使用されるとき、「ある(a)」、「ある(an)」、及び「いずれかの(any)」という用語は、それぞれが単数形及び複数形の両方を含むことが意図される。
【0137】
ここまで本明細書中で本発明を十分に記載しているが、当業者は、本開示の精神及び範囲から逸脱すること無く、そして過度の実験を要さずに、同等のパラメーター、濃度、及び条件の広い範囲内で、同一の発明を実施し得ることを認識されたい。本発明は、その特定の態様との関連で記載されているが、更なる改変が可能であることを理解されたい。この出願は、本開示の理念に一般的に従う、そして、本開示に関連する分野における知識又は慣例に入るような、及び上記で説明した基本的な特性に適用され得るような、本開示から逸脱する事項を含む、本開示の任意の変化、使用、又は改変を包含することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第一及び第二の抗原ドメインを含み、それぞれのドメインが、約8アミノ酸残基を含むHV-2超可変領域と化学的に連結された、約13アミノ酸の可変HV-1領域、及び配列C(E/S)LNG(T/A)(配列番号1)により表される保存的GP5モチーフを含み、ここで前記第一及び第二の抗原ドメインが異なるHV-2超可変領域を含む免疫原性組成物。
【請求項2】
前記第一及び第二の抗原ドメインの少なくとも1つが、配列X0WLX1X2X3X4X5で表されるHV-2超可変領域を含み、ここでX0、X1、X2、X3、X4、及びX5のそれぞれが、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、但し、X5は、システイン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、又はトリプトファンではない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記HV-2領域が、配列X0WLX1X2X3X4X5で表され、X5がシステイン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、スレオニン、又はチロシンではなく、そして
D-1: X1は脂肪族アミノ酸残基であり、X2は酸性アミノ酸残基であり(又はX1が酸性アミノ酸残基であり、そしてX2が脂肪族アミノ酸残基であり)、X3は塩基性アミノ酸残基であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;
D-2: X1は脂肪族アミノ酸残基であり、X2はセリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)若しくは塩基性アミノ酸残基であり(又はX1がセリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)若しくは塩基性アミノ酸残基であり、そしてX2が脂肪族アミノ酸残基であり)、X3は塩基性アミノ酸残基であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;
D-3: X1及びX2のそれぞれは独立して脂肪族アミノ酸残基であり、X3は塩基性アミノ酸残基であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;
D-4: X1は酸性アミノ酸残基であり、X2はセリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)若しくは塩基性アミノ酸残基であり(又はX1がセリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)若しくは塩基性アミノ酸残基であり、そしてX2が酸性アミノ酸残基であり)、X3は塩基性アミノ酸残基であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;
D-5: X1及びX2のそれぞれは独立して酸性アミノ酸残基の1つであり、X3は塩基性アミノ酸残基であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;
D-6: X1及びX2のそれぞれは独立して天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、X3は酸性アミノ酸残基であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;
D-7: X1及びX2のそれぞれは独立して天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、X3はヒドロキシルを含むR基を有する非芳香族アミノ酸残基であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;あるいは
D-8: X1及びX2のそれぞれは独立してセリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)、若しくは塩基性アミノ酸残基であり、X3は塩基性アミノ酸残基であり、そしてX4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基である;
請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記HV-2領域が、配列X0WLX1X2X3X4X5で表され、
S-1: X1は酸性アミノ酸残基であり、X2はアスパラギン(N)であり、X3は塩基性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はSである;
S-2: X1及びX2のそれぞれは、独立して、酸性アミノ酸残基であり、但し、X2はアスパラギン(N)ではなく、X3は塩基性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はSである;
S-3: X1は脂肪族アミノ酸残基であり、X2は酸性アミノ酸残基であり(又はX1が酸性アミノ酸残基であり、そしてX2が脂肪族アミノ酸残基であり)、X3は塩基性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はSである;
S-4: X1は脂肪族アミノ酸残基であり、X2はセリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)若しくは塩基性アミノ酸残基であり(又はX1がセリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)若しくは塩基性アミノ酸残基であり、そしてX2が脂肪族アミノ酸残基であり;あるいはX1及びX2のそれぞれが、独立して、セリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)若しくは塩基性アミノ酸残基のであり;あるいはX1及びX2のそれぞれが、独立して、脂肪族アミノ酸残基のであり)、X3は塩基性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はSである;
S-5: X1は酸性アミノ酸残基であり、X2はセリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)又は塩基性アミノ酸残基であり(又はX1がセリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)若しくは塩基性アミノ酸残基であり、そしてX2がN(Asn)以外の酸性アミノ酸残基であり)、X3は塩基性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はSである;
S-6: X1はセリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)又は塩基性アミノ酸残基であり、X2はアスパラギン(N)であり、X3は塩基性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はSである;
S-7: X1及びX2のそれぞれは独立して天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、X3は塩基性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はT又はYである;あるいは
S-8: X1は酸性アミノ酸残基であり、X2は酸性アミノ酸残基であり(又はX1が酸性アミノ酸残基であり、そしてX2が脂肪族アミノ酸残基であるか、あるいはX1が脂肪族アミノ酸残基であり、そしてX2が酸性アミノ酸残基であり)、X3は酸性アミノ酸残基であり、X4はフェニルアラニン(F)等の芳香環を含むアミノ酸残基であり、そしてX5はSである;
請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記HV-2領域が、
配列NWLSX2X3X4X5(E-1と表記される)で表され、X2、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、そしてX5は酸性アミノ酸残基である;
配列X0WLX1X2X3X4X5(E-2と表記される)で表され、X0はアスパラギン(N)以外の酸性アミノ酸残基であり、X1、X2、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、そしてX5は酸性アミノ酸残基である;
配列X0WLX1X2X3X4X5(E-3と表記される)で表され、X0は塩基性アミノ酸残基であり、X1、X2、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、そしてX5は酸性アミノ酸残基である;
配列X0WLX1X2X3X4X5(E-4と表記される)で表され、X0はいずれかの非酸性及び非塩基性アミノ酸残基であり、X1、X2、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、そしてX5は酸性アミノ酸残基である;
配列NWLSX2X3X4X5(E-5と表記される)で表され、X2、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、そしてX5はセリン(S)又はスレオニン(T)である;
配列X0WLX1NX3X4X5(E-6と表記される)で表され、X0はアスパラギン(N)以外のいずれかのアミノ酸残基であり、X1、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、そしてX5はセリン(S)又はスレオニン(T)である;
配列X0WLX1X2X3X4X5(E-7と表記される)で表され、X0はアスパラギン(N)以外の酸性アミノ酸残基であり、X1、X2、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、但し、X2はアスパラギン(N)ではなく、そしてX5はいずれかの非酸性アミノ酸残基である;あるいは
配列X0WLX1X2X3X4X5(E-8と表記される)で表され、X0はいずれかの非酸性アミノ酸残基であり、X1、X2、X3、及びX4のそれぞれは、独立して、天然に存在する20種類のアミノ酸残基の1つであり、そしてX5はいずれかの非酸性アミノ酸残基である;
請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、前記第一の抗原ドメインを含む第一のポリペプチド分子、及び前記第二の抗原ドメインを含む第二のポリペプチド分子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第一及び第二のポリペプチドが、GP5膜貫通ドメインを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記第一及び第二のポリペプチドの少なくとも1つが、膜結合型(membrane bound)又は膜連結型(membrane associated)である、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記第一及び第二のポリペプチドの少なくとも1つがPRRSVウイルス粒子と連結される、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記ウイルス粒子がビリオン(virion)である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、2〜4個のPRRSV分離株を含み、それらの内2つが前記第一及び第二のドメインを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記第一の抗原ドメインが、D-1、D-2、D-3、D-4、D-5、D-6、D-7、及びD-8から選択されるHV-2領域を含み、そして前記第二の抗原ドメインが、S-1、S-2、S-3、S-4、S-5、S-6、S-7、及びS-8から選択されるHV-2を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
1つのHV-2超可変領域と共有結合的に連結する保存的GP5モチーフを含む1つ以上の追加的なポリペプチドであり、前記第一及び第二のポリペプチドと異なるHV-2超可変領域を含む前記1つ以上の追加的なポリペプチドを更に含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項14】
前記第一のドメインを含む第一のポリペプチド分子、及び前記第二のドメインを含む第二のポリペプチド分子の同定又は選択、並びに前記第一と第二のポリペプチドとを組み合わせて、組成物を形成することを含む、請求項6に記載の組成物を調製する方法。
【請求項15】
前記組み合わせることが、医薬として許容される賦形剤又は担体の添加を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第一のポリペプチド分子が、D-1、D-2、D-3、D-4、D-5、D-6、D-7、及びD-8から選択されるHV-2を含み、そして前記第二のポリペプチド分子が、S-1、S-2、S-3、S-4、S-5、S-6、S-7、及びS-8から選択されるHV-2を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリペプチド分子の少なくとも1つが、膜結合型又は膜連結型である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリペプチド分子の少なくとも1つが、PRRSVウイルス粒子と連結する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記ウイルス粒子がビリオンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記組合せが、2〜4個のPRRSV分離株であり、それらの内2つが前記第一及び第二のポリペプチド分子を含むものからなされる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物を対象に投与することにより、前記対象中で前記抗原ドメインに対する免疫応答を誘発することを含む、対象中で免疫応答を誘発する方法。
【請求項22】
少なくとも、
第一のHV-2超可変領域を含むポリペプチド分子を含む第一のPRRSV分離株の同定又は選択、
前記第一の超可変領域と異なる第二のHV-2超可変領域を含むポリペプチド分子を含む第二のPRRSV分離株の同定又は選択、並びに
対象に前記第一及び第二の分離株を投与することによる、前記対象中での免疫応答の誘発
を含む、対象中で免疫応答を誘発する方法。
【請求項23】
前記選択が、
PRRSVのGP5外部ドメインのHV-2超可変領域のアミノ酸配列解析;
PRRSVのGP5外部ドメインのHV-2超可変領域のPCRに基づく、若しくは抗体に基づく検出;又は
PRRSVのGP5外部ドメインのHV-2超可変領域のもう1つの分離株と比較した配列ステータスの認識
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が雌ブタ(sow)、未産雌ブタ(gilt)、妊娠雌ブタ(pregnant sow)、又は妊娠未産雌ブタ(pregnant gilt)である、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図3−6】
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【図3−7】
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【図3−8】
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【図3−9】
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【図3−10】
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【図3−11】
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【図3−12】
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【図3−13】
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【図3−14】
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【図3−15】
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【図3−16】
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【図3−17】
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【図3−18】
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【図3−19】
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【図3−20】
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【図3−21】
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【図3−22】
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【図3−23】
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【図3−24】
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【図3−25】
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【図3−26】
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【図3−27】
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【図3−28】
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【図3−29】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図6−6】
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【図6−7】
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【図6−8】
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【図6−9】
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【図6−10】
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【図6−11】
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【図6−13】
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【図6−14】
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【図6−20】
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【図6−21】
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【図6−22】
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【図6−23】
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【図6−24】
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【図6−25】
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【図6−26】
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【図6−28】
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【図6−29】
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【図6−30】
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【図6−31】
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【図6−32】
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【図6−33】
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【図6−34】
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【図6−35】
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【図6−36】
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【図6−37】
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【図6−38】
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【図6−39】
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【公表番号】特表2010−526086(P2010−526086A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506591(P2010−506591)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/061962
【国際公開番号】WO2008/134697
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(509300304)エムジェイ バイオロジクス,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】