説明

PTC素子および電池保護システム

【課題】素子本体の酸化を防止することができ、また、電極板の表面に保護膜が誤って形成されることを防止できるPTC素子を提供することであり、さらには、過剰な電流が流れた場合に、電池を有効に保護することができる電池保護システムを提供すること。
【解決手段】本発明に係るPTC素子2は、所定の温度領域において温度上昇に伴い抵抗値が増加する素子本体4と、素子本体4の表裏面に接合された一対の第1電極板10および第2電極板12とを有するPTC素子2である。第1電極板10および第2電極板12で覆われていない素子本体4の露出面には、保護膜3が形成されている。素子本体4が、第1電極板10との素子接合面から外方に飛び出している突出部7を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池や電子回路を過電流から保護すること等を目的として使用されるPTC素子と、そのPTC素子を有する電池保護システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
PTC(positive temperature coefficient)素子は、所定の温度領域において、素子の温度が上昇すると、素子の抵抗値が増加する特性を有する。特に、PTC素子の温度が素子本体を構成するポリマーの融解温度に達すると、PTC素子の抵抗が急激に増加する。このような性質はPTC特性と呼ばれる。
【0003】
PTC素子は、電子機器等の電気回路に組み込まれる。電子機器の使用中に、何らかの理由によって回路に過剰電流が流れた場合、電子機器の温度が上昇し、それに伴いPTC素子自体の温度も上昇する。そして、PTC素子の温度が素子本体を構成するポリマーの融解温度に達すると、PTC素子の抵抗値が急激に増加する。その結果、電気回路において、PTC素子が過剰電流を遮断する。よって、電気機器が過剰電流によって故障することを未然に防止できる。
【0004】
このように、PTC素子は、過熱、過剰電流に対する安全保護装置として使用される。具体的には、PTC素子は、携帯電話の電源である2次電池を過電流から保護するための回路(保護回路)に組み込まれたりする。2次電池の充電中または放電中に過剰電流が流れた場合、PTC素子は電流を遮断して2次電池を保護する。
【0005】
このようなPTC素子の一例としては、ポリマー材料(結晶性重合体)に導電性粒子を分散させた素子本体(重合体正温度係数抵抗体)を、電極板(あるいは金属箔)で挟んだ構造を有するポリマーPTC素子が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
ポリマーPTC素子は、従来、以下のような方法によって製造される。まず、金属粒子、カーボンブラック等の導電性フィラーを含む高分子(高密度ポリエチレン等)を押出成形し、素子本体を形成する。次に、素子本体の表裏面に、電極板を熱圧着することによって、ポリマーPTC素子が完成する。
【0007】
このポリマーPTC素子を所定の保護回路に組み込む際は、その電極板を、保護回路と電気的に接続された端子板へ接合する。この接合は、従来、ハンダ付け、溶接等により実施される。
【0008】
ハンダ付け、溶接等を行う場合、電極板および端子板の少なくとも一部分を高温に加熱する必要がある。ポリマーPTC素子の電極板(あるいは金属箔)は非常に薄いため、ハンダ付け、溶接の際に電極板へ加わる熱が、直ちに素子本体に伝導する。その結果、素子本体が高温となり、熱劣化(軟化または溶融)することがある。素子本体が軟化または溶融すると、ポリマー中の導電性粒子の分散性が不均一となる。このような熱履歴を経たポリマーPTC素子においては、室温での抵抗値(室温抵抗値)がこの熱履歴前に比べて大きく増大してしまう。
【0009】
また、素子本体が大気に直接曝されると、素子本体が大気中の酸素によって酸化されることが問題となる。素子本体が酸化されると、室温におけるポリマーPTC素子の室温抵抗値が、素子本体の酸化前に比べて大きく増大してしまう。また、上述のハンダ付け、溶接等に伴う素子本体の熱劣化は、素子本体の酸化によって促進されてしまう。
【0010】
さらには、素子本体が熱劣化あるいは酸化したポリマーPTC素子に対して、温度の上昇、下降を繰り返すと、ポリマーPTC素子の室温抵抗値がますます高くなってしまう。このように室温抵抗値の高くなったポリマーPTC素子においては、消費電力が増加してしまう。
【0011】
このように、ポリマーPTC素子の室温抵抗値の増大は、携帯電話などの小型機器に搭載する場合に、電力の浪費、あるいは電池の短寿命化などの問題につながる。
【0012】
素子本体の酸化、熱劣化、およびこれらに起因するポリマーPTC素子の室温抵抗値の増大を防止する方法として、電極板で覆われていない素子本体の露出面に保護膜を形成することが挙げられる。保護膜は、酸素を遮蔽する機能を有する樹脂を素子本体の露出面に塗布することによって形成される。
【0013】
このような従来の保護膜形成法においては、樹脂を素子本体の露出面に塗布する際に、素子本体に接合された電極板の表面(本来樹脂が塗布されてはならない部分)まで樹脂が塗布され、保護膜で覆われてしまうことが問題となる。電極板の表面に保護膜が形成されると、そこに段差が形成される。電極板に端子板を接合する際には、この段差のため(電極板と端子板との間に保護膜が介在するため)、接合不良が発生してしまう。また、本来素子本体に塗布されるべき樹脂が、電極板表面にまで塗布されると、素子本体の露出面における樹脂の被覆厚さが低下する恐れがある。その結果、素子本体の酸化を充分に防止できない恐れがある。
【特許文献1】国際公開 WO2004/023499
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、素子本体の酸化を防止することができ、また、電極板の表面に保護膜が誤って形成されることを防止できるPTC素子を提供することである。また、本発明の別の目的は、過剰な電流が流れた場合に、電池を有効に保護することができる電池保護システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係るPTC素子は、
所定の温度領域において温度上昇に伴い抵抗値が増加する素子本体と、
前記素子本体の表裏面に接合された一対の第1および第2電極板とを有するPTC素子であって、
前記第1および第2電極板で覆われていない前記素子本体の露出面には、保護膜が形成され、
前記素子本体が、前記第1電極板との素子接合面から外方に飛び出している突出部を有する。なお、好ましくは、突出部は、素子接合面と同一平面方向において、素子接合面側から外方に飛び出す。
【0016】
好ましくは、前記素子本体が、正の温度係数を持つ導電性ポリマーである。
【0017】
本発明に係るPTC素子では、素子本体の露出面に保護膜を形成することによって、素子本体が大気中の酸素によって酸化されることを防止できる。また、素子本体の酸化を防止することにより、ポリマーPTC素子の室温抵抗値の上昇を防止することができる。また、保護膜によって、素子本体を外部からの衝撃から保護することができる。すなわち、保護膜によって素子本体の機械的強度を向上させることができる。
【0018】
また、本発明に係るPTC素子では、素子本体が、第1電極板との素子接合面から外方に飛び出している突出部を有する。よって、素子本体の露出面に樹脂(保護膜形成用樹脂)を塗布し、保護膜を形成する際に、樹脂が素子本体の露出面から第1電極板側へ回り込んだとしても、樹脂は、第1電極板表面と突出部表面との段差を乗り越えることができない。その結果、樹脂は、第1電極板表面上へは回り込めず、突出部表面にのみ保持される。すなわち、第1電極板の表面(端子板が接合される側)に樹脂が塗布されることが防止される。そのため、第1電極板の表面(端子板と接合される側)に保護膜が形成されない。よって、第1電極板と端子板とを、保護膜に介在されることなく良好に密着、接合させることができる。
【0019】
また、突出部によって、第1電極板の表面(端子板が接合される側)に保護膜が形成されることが防止されるため、第1電極板と端子板との接合位置(端子接合部の位置)の寸法精度を向上させることができる。また、PTC素子全体の幅や厚みの寸法不良を防止することができる。
【0020】
また、本来、素子本体の露出面に塗布されるべき樹脂が、第1電極板の表面(本来、樹脂が塗布されてはならない面)に塗布されることを防止することにより、素子本体の露出面における樹脂の被覆厚さを充分なものとすることができる。その結果、素子本体の酸化を有効に防止することができる。
【0021】
また、本発明に係るPTC素子では、素子本体が突出部を有することによって、素子本体と第1電極板とを接合する際に、両者間の位置決めが容易となる。すなわち、位置決めの際に、突出部の寸法以下程度の位置ズレが生じたとしても、第1電極板における素子接合面側(素子本体側)の表面を外部に露出させることなく、素子本体と第1電極板とを良好に接合することができる。
【0022】
上述のように、本発明に係るPTC素子においては、素子本体の酸化を防止することができる。その結果、本発明に係るPTC素子では、通常使用時においては、消費電力の低減を図ることができると共に、必要な場合には、電流を遮断して電子機器を保護すると言う本来の機能を有効に発揮することができる。
【0023】
好ましくは、所定回路と接続するための端子板と、前記第1電極板とが、前記端子板と前記第1電極板とが重複する部分に位置する端子接合部において接合され、該端子接合部の近傍に前記突出部が位置する。より好ましくは、前記突出部が、前記素子本体の全周に位置する。
【0024】
第1電極板における端子接合部の近傍に突出部が位置することによって、素子本体の露出面に保護膜形成用の樹脂を塗布する際に、樹脂は、端子接合部近傍に位置する突出部表面に保持され、端子接合部までには至ることができない。すなわち、第1電極板表面上には、樹脂が塗布されず、保護膜は形成されない。その結果、端子接合部において、第1電極板と端子板とを、保護膜に介在されることなく、良好に密着、接合させることができる。
【0025】
また、突出部が素子本体の全周(4辺)に位置することによって、樹脂を素子本体のいずれの側面(露出面)に塗布した場合であっても、樹脂が、素子本体の露出面から、第1電極板の表面(端子接合部側の表面)へ回り込むことを確実に防止できる。
【0026】
好ましくは、前記端子板が、ニッケルを主として含むニッケル端子板で構成される。
【0027】
ニッケルを主成分とする端子板を用いることによって、ニッケルを主成分とする第1電極板との接合(スポット溶接)の強度を向上させることができる。
【0028】
好ましくは、前記第2電極板が、二種類以上の材質の板材が積層してあるクラッド板に接合してある。
【0029】
第2電極板が、電池の電極と異なる材質で構成してある場合に、第2電極板と、電池の電極との間にクラッド板を介在させる。スポット溶接により、第2電極板と、クラッド板において第2電極板と同じ材質を有する側面とを接合し、クラッド板において電池の電極と同じ材質を有する側面と、電池の電極とを接合する。その結果、クラッド板を用いない場合に比べて、第2電極板と、電池の電極との接続が容易になる。
【0030】
本発明では、前記素子本体の表裏面には、金属箔が積層してあり、各金属箔に対して、前記第1および第2電極板が接合してあっても良い。また、前記保護膜が、前記素子本体の前記突出部に位置する前記金属箔の少なくとも一部を覆っていてもよい。
【0031】
本発明に係る電池保護システムは、
上記のいずれかに記載のPTC素子と、
前記PTC素子の第1電極板に電気的に接続される保護回路と、
前記PTC素子の第2電極板に電気的に接続される電池とを有する。
【0032】
本発明に係る電池保護システムでは、過剰な電流が流れたとしても、電池を有効に保護することができる。また、電池保護システムが、室温抵抗値の小さいPTC素子を有することによって、電池保護システム、および電池保護システムを有する電子機器全体の消費電力を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るポリマーPTC素子の使用状態(電池保護システム)を示す要部断面図、
図2は、図1に示すポリマーPTC素子の断面図、
図3は、図2に示すIII部分の拡大図であって、突出部の詳細を示す要部断面図、
図4は、本発明の一実施形態に係るポリマーPTC素子を、図2のIV方向に見た外観図であって、第1電極板、端子接合部、保護膜、および素子本体の位置関係を示す概略図、
図5は、本発明の一実施形態に係るポリマーPTC素子の製造工程において、素子本体の素子接合面(第1面)に対して第1電極板を接合(熱圧着)する方法、および突出部の形成方法を示す概略図、
図6A、図6Bは、本発明の一実施形態に係るポリマーPTC素子の製造工程において、素子本体の露出面に保護膜形成用の樹脂を塗布する方法を示す概略図、
図7は、本発明の他の実施形態に係るポリマーPTC素子の製造工程において、素子本体の素子接合面(第1面)に対して第1電極板を接合(熱圧着)する方法、および突出部の形成方法を示す概略図、
図8は、本発明の他の実施形態に係るポリマーPTC素子の断面図である。
【0034】
ポリマーPTC素子の全体構成
まず、本発明に係るPTC素子の一実施形態として、携帯電話の電源として用いられる2次電池セルを保護するためのポリマーPTC素子について説明する。
【0035】
図1に示すポリマーPTC素子2は、携帯電話の電源である2次電池セル32と、その二次電池セル32を過電流から保護するための保護回路30(所定回路)との間に組み込まれる。ポリマーPTC素子2は、過充電によるセル温度の異常上昇やセルの外部短絡による過電流が流れた場合、保護回路30と二次電池セル32との間の電流を遮断して2次電池セル32を保護する。
【0036】
以下では、まず、ポリマーPTC素子2の全体構成について説明する。
【0037】
図1および図2に示すポリマーPTC素子2は、正の抵抗温度特性(PTC特性)を有する導電性ポリマーで構成してある素子本体4を備えている。この素子本体4は、表裏面(互いに対向する第1面6および第2面8)を有する。第1面6および第2面8には、それぞれ第1電極板10と、第2電極板12とが接合されている。なお、素子本体4の第1面6は、第1電極板10における素子接合面11と接合されている。このように、素子本体4は、第1電極板10と第2電極板12との間に挟まれるように配置される。
【0038】
素子本体4の形状は、特に限定されず、直方体型、円柱型等が例示される。素子本体4の形状が直方体の場合、素子本体4の寸法は、縦3〜5mm×横2〜5mm×厚さ0.5〜1.0mm程度である。
【0039】
第1電極板10は、端子板16と第1電極板10とが重複する部分に位置する端子接合部9(図4参照)において、端子板16に対してスポット溶接される。端子板16は、保護回路30に対して電気的に接続される。第1電極板10は、ニッケルまたはニッケル合金で構成してあり、端子板16も、第1電極板10とのスポット溶接において接合しやすいニッケル端子板(ニッケルを主として含む板)で構成してある。第1電極板10の厚みは、特に限定されないが、通常100〜300μm程度である。端子板16の厚みも、特に限定されないが、通常100〜300μm程度である。
【0040】
第2電極板12は、例えば二種類以上の材質の板材が積層してあるクラッド板18に対してスポット溶接される。第2電極板12は、ニッケル金属あるいはニッケル合金で構成してある。第2電極板12の厚みは、特に限定されないが、通常100〜300μm程度である。第2電極板12の長さは、特に限定されず、用途に応じて自由に設計される。
【0041】
クラッド板18は、ニッケル層20とアルミニウム層22との積層板で構成してある。クラッド板18におけるニッケル層20は、ニッケル金属あるいはニッケル合金で構成してある第2電極板12にスポット溶接などで接合される。また、クラッド板18におけるアルミニウム層22は、2次電池セル32の電極端子34と接触してスポット溶接などで接合される。
【0042】
クラッド板18の厚さは、特に限定されないが、通常、100〜300μm程度である。クラッド板18の長さは、特に限定されず、用途に応じて自由に設計される。
【0043】
2次電池セル32の電極端子34は、一般的には、アルミニウム材で構成してあり、クラッド板18におけるアルミニウム層22に対して接合されやすい。
【0044】
本実施形態においては、図1、2に示すように、第1電極板10および第2電極板12で覆われていない素子本体4の露出面には、保護膜3が形成されている。保護膜3を形成することで、大気中の酸素による素子本体4の酸化を防止し、素子本体4の劣化を防止することができる。また、素子本体の酸化を防止することにより、ポリマーPTC素子2の室温抵抗値の上昇を防止することができる。また、保護膜3によって、素子本体4を外部からの衝撃から保護することができる。
【0045】
保護膜3の種類としては、酸素を遮蔽する機能を有するものであれば特に限定されないが、エポキシ樹脂、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)、PVA(ポリビニルアルコール)等が例示される。
【0046】
図3に示す保護膜3の厚さtは、特に限定されないが、好ましくは、30〜500μm、より好ましくは、50〜150μm程度である。厚さtが薄過ぎると、保護膜3が、素子本体4の酸化を充分に防止できない。また、厚さtが厚過ぎると、保護膜3を形成するたの樹脂が、第1電極板10の表面(端子板16が接合される側)に塗布される恐れがある。そこで、厚さtを上記範囲内とすることによって、これらの不具合を防止できる。
【0047】
本実施形態においては、図1および図2に示す素子本体4が、第1電極板10との素子接合面から外方に飛び出している突出部7を有する。なお、第1電極板10との素子接合面とは、素子本体4の第1面6において第1電極板10と重なる領域を意味する。また、第1電極板10において素子本体4と重なる領域を、以下では、第1電極板側素子接合面11と記す。
【0048】
素子本体4が突出部7を有することによって、素子本体4の露出面に樹脂を塗布し、保護膜3を形成する際に、樹脂が素子本体4の露出面から第1電極板側へ回り込んだとしても、樹脂は、第1電極板10の表面と突出部7の表面との段差を乗り越えることができない。その結果、樹脂は、第1電極板10の表面上へ回り込めず、突出部7の表面にのみ保持される。すなわち、第1電極板10の表面(端子板16が接合される側)に樹脂が塗布されない。そのため、第1電極板10の表面(端子板16と接合される側)に保護膜3が形成されず、第1電極板10と端子板16とを良好に密着、接合させることができる。
【0049】
さらには、図3に示すように、樹脂が、第1電極板表面と突出部表面との段差近辺(素子本体4と第1電極板10との境界部31)に塗布されることによって、素子本体4と第1電極板10との境界部31に保護膜3を厚く形成することができる。その結果、素子本体4の酸化を有効に防止することができる。
【0050】
また、突出部7によって、第1電極板10の表面(端子板16が接合される側)に保護膜3が形成されることが防止される結果、第1電極板10と端子板16との接合位置(図4に示す端子接合部9の位置)の寸法精度を向上させることができる。また、ポリマーPTC素子2の幅や厚みの寸法不良を防止することができる。
【0051】
また、本来、素子本体4の露出面に塗布されるべき樹脂が、第1電極板10の表面(本来、樹脂が塗布されてはならない面)に塗布されることを防止することにより、素子本体4の露出面における樹脂の被覆厚さを充分なものとすることができる。その結果、素子本体4の酸化を有効に防止することができる。
【0052】
また、本実施形態に係るPTC素子2では、素子本体4が突出部7を有することによって、素子本体4と第1電極板10とを接合する際に、両者間の位置決めが容易となる。すなわち、位置決めの際に、突出部7の寸法以下程度の位置ズレが生じたとしても、第1電極板側素子接合面11を外部に露出させることなく、素子本体4と第1電極板10とを良好に接合することができる。
【0053】
図3に示す突出部7の突出幅Wは、特に限定されないが、好ましくは、第1電極板10の端部に対して、500〜1000μm程度である。
【0054】
突出幅Wが小さ過ぎると、樹脂が素子本体4の露出面から第1電極板10の表面へ回り込む恐れがある。また、突出幅Wが大き過ぎると、保護膜3を、素子本体4の露出面に形成する際に、素子本体4と第1電極板10との境界部31に樹脂が充分に回り込まず、樹脂が塗布されない恐れがある。その結果、境界部31における保護膜3を充分に厚くすることができず、素子本体4の酸化を充分に防止できない恐れがある。そこで、突出幅Wを上記の範囲内とすることによって、これらの不具合を防止できる。
【0055】
図4に示すように、好ましくは、端子接合部9の近傍に突出部7が位置する。より好ましくは、突出部7が素子本体4の全周に位置する。換言すれば、図1、2に示す素子本体4における第1面6の面積が、第1電極板10における第1電極板側素子接合面11の面積より大きいことが好ましい。すなわち、第1電極板側素子接合面11が、素子本体4の第1面6によって完全に覆われることが好ましい。
【0056】
図4に示すように、第1電極板10における端子接合部9の近傍に、素子本体4の突出部7が位置することによって、素子本体4の露出面に保護膜形成用の樹脂を塗布する際に、樹脂は端子接合部9の近傍に位置する突出部7の表面に保持される。よって、樹脂は、第1電極板10の表面上には回り込めない。その結果、端子接合部9において、第1電極板10と端子板16とを、保護膜3(樹脂)に介在されることなく、良好に密着、接合(スポット溶接)させることができる。
【0057】
端子接合部9の近傍に突出部7がない場合、端子接合部9の近傍にまで保護膜3が形成され、保護膜3と第1電極板10の表面との間に段差が生じる。この段差のある部分において、第1電極板10と端子板16とを接合しようとすると、段差によって両者が密着することができず、接合不良が生じる。そこで、端子接合部9の近傍に突出部7を位置させることによって、この不具合を防止できる。
【0058】
また、突出部7は、第1電極板10を取り囲むように、素子本体4の全周(長方形の4辺)に位置する。その結果、樹脂を素子本体4のいずれの側面に塗布した際、樹脂が、素子本体4の露出面から第1電極板10の側へ回り込んだとしても、樹脂は、突出部7の表面上に保持される。よって、樹脂が、第1電極板10の表面上へ回り込むことがなく、第1電極板10の表面に保護膜3が形成されることを確実に防止できる。
【0059】
また、図2に示す素子本体4の第1面6の面積が、第1電極板側素子接合面11の面積より大きいため、素子本体4と第1電極板10との接合の際、素子本体4に対して第1電極板10の位置決めを行い易い。すなわち、仮に、接合の際に素子本体4と第1電極板10との位置決めに多少のズレが生じてた場合であっても、第1電極板側素子接合面11の一部が外部に露出する不具合を防止することができる。
【0060】
また、本実施形態においては、図1に示す第2電極板12が、素子本体4との素子接合面から外方に飛び出している電極板突出部77を有する。
【0061】
電極板突出部77を有することによって、素子本体4の露出面に樹脂を塗布し、保護膜3を形成する際に、素子本体4の露出面から第2電極板12の表面(クラッド板18が接合される側)へ回り込みもうとする樹脂が、電極板突出部77によって妨げられる。すなわち、第2電極板12の表面に樹脂が塗布されることを防止できる。よって、第2電極板12の表面に保護膜3が形成されず、第2電極板12とクラッド板18(及びスペーサー36)とを良好に密着、接合させることができる。
【0062】
ポリマーPTC素子2の製造方法
次に、図1、2に示すポリマーPTC素子2の製造方法について説明する。
【0063】
(素子本体4)
素子本体4は、通常、主成分である重合体(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の高分子化合物)および導電性粒子を含む樹脂組成物(導電性ポリマー)から構成される。なお、素子本体4は、重合体として、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との両方を含んでもよい。
【0064】
まず、高分子化合物(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等)、導電性粒子(金属粉、カーボンブラック等)、低分子有機化合物および、高分子化合物同士を架橋反応させるための反応開始剤等を秤量、混練し、PTC組成物を調整する。混練の方法としては、特に限定されないが、ニーダ、押出機、ミル等が例示される。また、PTC組成物に含有させる導電性粒子としては、ふるい機等によって所定の粒径をもつ導電性粒子のみを分級し、これを用いる。次に、このPTC組成物を成形し、素子本体4(図1)を得る。
【0065】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂及びフェノール樹脂等が挙げられる。好ましくは、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる。エポキシ樹脂を用いることによって、ポリマーPTC素子が、十分な抵抗変化量及び耐熱性を有することができる。熱硬化性樹脂の分子量は、通常、重量平均分子量Mwが300〜10000程度である。上記の熱硬化性樹脂は単独で用いてもよく、また複数種の樹脂を用いてもよい。また、異なる種類の熱硬化性樹脂同士が架橋された構造を有する化合物を用いてもよい。
【0066】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、好ましくは、結晶性ポリマーをを用いる。熱可塑性樹脂の融点は、特に限定されないが、好ましくは、70〜200℃程度である。融点がこの範囲にある樹脂を用いることによって、ポリマーPTC素子動作時における熱可塑性樹脂の融解、流動、素子本体4の変形を防止することができる。
【0067】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニルコポリマ−等のコポリマ−、ポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリビニリデンフルオライド等のハロゲン化ビニルおよびビニリデンポリマ−、12−ナイロン等のポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、熱可塑性エラストマ−、ポリエチレンオキサイド、ポリアセタ−ル、熱可塑性変性セルロ−ス、ポリスルホン類、ポリメチル(メタ)アクリレ−ト等が挙げられる。
【0068】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量Mwは、特に限定されないが、好ましくは、10000〜5000000である。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、また複数種の樹脂を用いてもよい。また、異なる種類の熱可塑性樹脂同士が架橋された構造を有する化合物を用いてもよい。
【0069】
素子本体4に含まれる導電性粒子としては、特に限定されないが、金属粉、カーボンブラック等が例示される。好ましくは、導電性粒子として金属粉を用いる。この金属粉としては、好ましくは、ニッケルを主成分とするものを用いる。金属粉の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5〜4.0μm程度である。
【0070】
素子本体4において、樹脂組成物中の導電性粒子の含有量は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは、20〜80質量%である。導電性粒子の含有量をこの範囲内とすることによって、非動作時の室温抵抗値を十分に低くすることができ、また、大きな抵抗変化量を得ることができる。さらには、素子抵抗のバラツキを十分に減少させることができる。
【0071】
素子本体4を構成する樹脂組成物は、上記の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、および導電性粒子以外に、例えば、ワックス、油脂、脂肪酸、高級アルコ−ル等の低分子有機化合物を更に含んでもよい。その結果、素子本体4の温度上昇に伴う抵抗変化量を増大させることができる。
【0072】
素子本体4は、内部に空隙を有し、この空隙に上記樹脂組成物を充填することが可能な基材を含んでもよい。このような基材としては、上記の役割を果たすことが可能なものであれば特に制限されず、織布、不織布、連続多孔質体等が例示される。
【0073】
素子本体4には、必要に応じて、電子線照射を行う。この電子線照射によって、反応開始剤が機能し、高分子同士の架橋反応が促進される。架橋反応のエネルギー源としては、電子線に限定されず、ガンマ線、紫外線、熱等も用いられる。照射する電子線の加速電圧及び電子線照射量は、素子本体4に含まれる高分子化合物の種類、あるいは素子本体の寸法等に応じて、適宜調整すればよい。なお、電子線照射は、電極板10および12の接合後であっても良い。
【0074】
(第1電極板10および第2電極板12の形成)
第1金属板10および第2金属板12は、所定厚みのニッケル金属板あるいはニッケル合金板を打ち抜き成型して形成される。
【0075】
次に、素子本体4における表裏面のうち第2面8に対して、第2電極板12を、熱プレス機等により、熱圧着する。熱圧着時の加熱温度は、素子本体4の材質にもよるが、好ましくは、130〜180°C程度である。また、熱圧着時の圧力は、好ましくは1×10〜20×10Pa程度である。
【0076】
(突出部7の形成)
次に、あるいは、その前後に、素子本体4における表裏面のうち第1面6に対して、第1電極板10を、熱プレス機等により、熱圧着する。図5に示すように、第1電極板10を、素子本体4の第1面6に対して、圧力Pで熱圧着すると、加圧により素子本体4が厚み方向に多少潰れて、第1電極板10の側方に多少はみ出す。このはみ出した部分が突出部7となる。突出部7は、熱圧着前の素子本体4に対して、側方に突出幅Wだけはみ出すように調整する。
【0077】
第1電極板10を素子本体4の第1面6に対して熱圧着する時の加熱温度は、素子本体4の材質にもよるが、好ましくは、130〜180°C程度である。また、熱圧着時の圧力Pは、好ましくは1×10〜20×10Pa程度である。なお、熱圧着時の加熱温度、および圧力Pなどの工程条件を上記範囲内で適宜調整することによって、突出部7の突出幅W が、500〜1000μmの範囲内となるように制御される。
【0078】
(保護膜3の形成)
次に、第1電極板10および第2電極板12で覆われていない素子本体4の露出面に、保護膜3を形成する。保護膜3の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、以下に示すように、前述した樹脂を塗布して乾燥させる方法が例示される。
【0079】
まず、樹脂で満たされた液溜め(図示省略)に、図6Aに示すプレート50を浸す。次に、プレート50を液溜めから引き上げることによって、プレート50の表面に、保護膜形成用の樹脂3aが付着する。
【0080】
次に、塗布棒52の先端をプレート50の表面に付着した樹脂3aに押し当てる。その結果、塗布棒52の先端に樹脂3aが付着する。
【0081】
次に、図6Bに示すように、樹脂3aが付着した塗布棒52の先端を、素子本体4の露出面に対して押し当てる。この押し当て作業を素子本体4の露出面全体に対して行うことによって、素子本体4の露出面全体に樹脂3aが塗布される。次に、素子本体4の露出面に塗布された樹脂3aを乾燥させることによって、図1、2に示す保護膜3が形成される。
【0082】
なお、素子本体4への押し当てられる塗布棒52の先端の寸法は、好ましくは、素子本体4の露出面(側面)の寸法以下である。塗布棒52の先端の寸法が大き過ぎると、第1電極板10の表面にまで樹脂3aが塗布される恐れがある。そこで、塗布棒52の先端の寸法を、素子本体4の露出面(側面)の寸法以下とすることによって、このような不具合を防止できる。
【0083】
このようにして、図1、2に示すように、本実施形態に係るポリマーPTC素子2が完成する。
【0084】
ポリマーPTC素子2の組み付け方法
ポリマーPTC素子2は、図1に示すように、2次電池セル32と、保護回路30との間に組み込まれる。ポリマーPTC素子2を、図1に示すように接続するために、たとえば、まず、素子2における第2電極板12を、クラッド板18のニッケル層20側に対してスポット溶接する。
【0085】
次に、あるいは、その前後に、クラッド板18におけるアルミニウム層22を、2次電池セル32の電極端子34と接触してスポット溶接する。素子2と2次電池セル32との間に隙間が形成される場合には、スペーサ36などを、素子2と2次電池セル32との間に配置させる。
【0086】
次に、あるいは、その前後に、第1金属板10に対して、保護回路30に接続してある端子板16を、端子接合部9(図4参照)において、スポット溶接し、接合する。
【0087】
このようにして、図1に示すように、ポリマーPTC素子2と、保護回路30と、2次電池セル32とを有する電池保護システム1が完成する。
【0088】
本実施形態に係るポリマーPTC素子2においては、図1、2に示すように、第1電極板10および第2電極板12で覆われていない素子本体4の露出面に保護膜3が形成される。
【0089】
素子本体4の露出面に保護膜3を形成することによって、素子本体4が大気中の酸素によって酸化されることを防止できる。また、素子本体4の酸化を防止することにより、ポリマーPTC素子2の室温抵抗値の上昇を防止することができる。また、保護膜によって素子本体の機械的強度を向上させることができる。
【0090】
また、本実施形態に係るポリマーPTC素子2は、素子本体4が、第1電極板10との素子接合面から外方に飛び出している突出部7を有する。よって、図6A、6Bに示すように、素子本体7の露出面に樹脂3a(保護膜形成用樹脂)を塗布し、保護膜3を形成する際に、樹脂が素子本体4の露出面から第1電極板10の側へ回り込んだとしても、樹脂3aは、第1電極板表面と突出部表面との段差を乗り越えることができない。その結果、樹脂3aは、第1電極板表面上へ回り込めず、突出部7の表面にのみ保持される。すなわち、第1電極板10の表面(端子板が接合される側)には樹脂3aが塗布されない。そのため、第1電極板10の表面(端子板と接合される側)に保護膜3が形成されず、図1に示すように、第1電極板10と端子板16とを良好に密着、接合させることができる。
【0091】
さらには、図3に示すように、樹脂3aが、第1電極板表面と突出部表面との段差近辺(素子本体4と第1電極板10の端部との境界部31)に塗布されることによって、素子本体4と第1電極板10との境界部31に保護膜3を厚く形成することができる。その結果、素子本体4の酸化を有効に防止することができる。
【0092】
また、突出部7によって、第1電極板10の表面(端子板16が接合される側)に保護膜3が形成されることが防止されるため、第1電極板10と端子板16との接合位置(図4に示す端子接合部9の位置)法精度を向上させることができる。また、ポリマーPTC素子全体の幅、厚さの寸法不良を防止することができる。
【0093】
また、本来、素子本体4の露出面に塗布されるべき樹脂3aが、第1電極板10の表面(本来、樹脂3aが塗布されてはならない面)に塗布されることを防止することにより、素子本体4の露出面における樹脂3a(保護膜3)の被覆厚さを充分なものとすることができる。その結果、素子本体4の酸化を有効に防止することができる。
【0094】
また、素子本体4が突出部7を有することによって、素子本体4と第1電極板10とを接合する際に、両者間の位置決めが容易となる。すなわち、位置決めの際に、突出部7の寸法以下程度の位置ズレが生じたとしても、第1電極板側素子接合面11を外部に露出させることなく、素子本体4と第1電極板10とを良好に接合することができる。
【0095】
上述のように、本実施形態に係るポリマーPTC素子2においては、素子本体4の酸化を防止することができる。その結果、本実施形態に係るポリマーPTC素子2では、通常使用時においては、消費電力の低減を図ることができると共に、必要な場合には、電流を遮断して電子機器を保護すると言う本来の機能を有効に発揮することができる。
【0096】
また、本実施形態に係るポリマーPTC素子2と、保護回路30と、2次電池セル32とを有する電池保護システム1では、過剰な電流が流れた場合や、衝撃や圧力が作用したとしても、電池を有効に保護することができる。
【0097】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0098】
例えば、本発明に係るポリマーPTC素子2は、2次電池セル32の過電流保護素子としてのみならず、自己制御型発熱体、温度センサー、限流素子、過電流保護素子等としても使用されることが可能である。
【0099】
また、本発明では、ポリマーPTC素子2の製造方法は、特に限定されない。たとえば上述した実施形態のように、素子本体4、第1電極板10、および第2電極板12を、それぞれ単独の状態で互いに接合することなく、以下のようにしてポリマーPTC素子2を製造しても良い。すなわち、切断後に素子本体4を構成するシート状素子本体と、切断後に第1電極板10および第2電極板12をそれぞれ構成することになる一対のシート状電極とを、熱圧着した後に、不要部分をプレスで打ち抜くことによって個別のポリマーPTC素子2を形成しても良い。その場合には、ポリマーPTC素子2を構成する部品の集合体同士を、一度に接合することによって、ポリマーPTC素子2の製造工程の効率を向上することできる。
【0100】
上述した実施形態では、図5に示すように、素子本体4へ第1電極板10を熱圧着する際に、素子本体4を第1電極板10の側方へはみ出させることによって突出部7を形成する。突出部7の形成方法はこれに限られず、例えば、図7に示すように、素子本体4の第1面6に対して、第1面6よりも面積の小さい第1電極側素子接合面11を熱圧着し、熱圧着によりはみ出した余剰はみ出し部72を除去してもよい。その結果、突出部7が形成される。なお、突出部7の形成の際は、突出部7の突出幅Wが500〜1000μmの範囲内となるように、余剰はみ出し部72を除去する。この場合においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0101】
また、図8に示すように、素子本体4(導電性ポリマー単独から成るポリマー層)の表裏面に、金属箔60が形成されていてもよい。この素子本体4は、例えば、シート状のポリマー層の両面に金属箔60を熱プレスした後に、これを所定の寸法に打ち抜くことによって形成することができる。第1電極板10と、金属箔60とは、はんだ層62を介して接合されている。クラッド板18と金属箔60も、はんだ層62を介して接合されている。この場合においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。金属箔60の厚みは、第1電極板10の厚みよりも薄く、一般的には、25〜30μm程度である。なお、図8においては、クラッド板18が、第2電極板としての機能も有している。このクラッド板18は、素子本体4との素子接合面から外方に飛び出しているクラッド板突出部88を有する。また、図8に示すように、保護膜3は、素子本体4の突出部7に位置する金属箔60の少なくとも一部を覆っている。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るPTC素子の使用状態(電池保護システム)を示す要部断面図である。
【図2】図2は、図1に示すPTC素子の断面図である。
【図3】図3は、図2に示すIII部分の拡大図であって、突出部の詳細を示す要部断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係るポリマーPTC素子を、図2のIV方向に見た外観図であって、第1電極板、端子接合部、保護膜、および素子本体の位置関係を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係るポリマーPTC素子の製造工程において、素子本体の素子接合面(第1面)に対して第1電極板を接合(熱圧着)する方法、および突出部の形成方法を示す概略図である。
【図6A】図6Aは本発明の一実施形態に係るポリマーPTC素子の製造工程において、素子本体の露出面に保護膜形成用の樹脂を塗布する方法を示す概略図である。
【図6B】図6Bは本発明の一実施形態に係るポリマーPTC素子の製造工程において、素子本体の露出面に保護膜形成用の樹脂を塗布する方法を示す概略図である。
【図7】図7は本発明の他の実施形態に係るポリマーPTC素子の製造工程において、素子本体の素子接合面(第1面)に対して第1電極板を接合(熱圧着)する方法、および突出部の形成方法を示す概略図である。
【図8】図8は本発明の他の実施形態に係るポリマーPTC素子の断面図であるである。
【符号の説明】
【0103】
1… 電池保護システム
2… ポリマーPTC素子
3… 保護膜
4… 素子本体
6… 第1面
8… 第2面
7… 突出部
10… 第1電極板
12… 第2電極板
16… 端子板
18… クラッド板
30… 保護回路
32… 2次電池セル
34… 電極端子
60… 金属箔
62… ハンダ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度領域において温度上昇に伴い抵抗値が増加する素子本体と、
前記素子本体の表裏面に接合された一対の第1および第2電極板とを有するPTC素子であって、
前記第1および第2電極板で覆われていない前記素子本体の露出面には、保護膜が形成され、
前記素子本体が、前記第1電極板との素子接合面から外方に飛び出している突出部を有することを特徴とするPTC素子。
【請求項2】
前記素子本体が、正の温度係数を持つ導電性ポリマーである請求項1に記載のPTC素子。
【請求項3】
所定回路と接続するための端子板と、前記第1電極板とが、前記端子板と前記第1電極板とが重複する部分に位置する端子接合部において接合され、
該端子接合部の近傍に前記突出部が位置することを特徴とする請求項1または2に記載のPTC素子。
【請求項4】
前記突出部が、前記素子本体の全周に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のPTC素子。
【請求項5】
前記端子板が、ニッケルを主として含むニッケル端子板で構成される請求項3または4に記載のPTC素子。
【請求項6】
前記第2電極板が、二種類以上の材質の板材が積層してあるクラッド板に接合してある請求項1〜5のいずれかに記載のPTC素子。
【請求項7】
前記素子本体の表裏面には、金属箔が積層してあり、各金属箔に対して、前記第1および第2電極板が接合してある請求項1〜6のいずれかに記載のPTC素子。
【請求項8】
前記保護膜が、前記素子本体の前記突出部に位置する前記金属箔の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする請求項7に記載のPTC素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のPTC素子と、
前記PTC素子の第1電極板に電気的に接続される保護回路と、
前記PTC素子の第2電極板に電気的に接続される電池とを有する電池保護システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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