説明

PTPシートの排出装置

【課題】排出すべきPTPシートを回転ドラムに吸着して所定の離脱位置まで移動させた後に、PTPシートを回転ドラムから離脱させるようにした排出装置を提供する。
【解決手段】搬送手段の搬送面の上方に配置され、周面に複数の吸引口21,22,23,24を有した固定ドラム20と、固定ドラム20の吸引口21,22,23,24に連通可能な複数の通気孔を有し、固定ドラム20の外周側に配置される回転ドラム11とを備え、回転ドラム11の外周面の両側端部に、凸状のリブを全周に亘り形成し、両側端部のリブの間の通気孔から外気を吸引してPTPシート5を回転ドラム11の外周面に吸着可能とし、PTPシート5を吸着する吸着位置A1から離脱させる離脱位置A2までPTPシート5を移動させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTP包装された錠剤シート又はカプセル剤シート等のPTPシートを検査した後に、不良品のPTPシートを排出するPTPシートの排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、錠剤、カプセル剤の包装形態は、その携帯性、認識性などの優位性によりPTP(Press Through Package)包装が主流になってきている。このPTP包装された錠剤シート又はカプセル剤シート(以下、PTPシートと云う)は、シート上の異物、シール不良、異物混入等の各種検査が行われ、検査によって不良品と判断されたPTPシートは排出装置によって排出される。この排出装置として、従来から、搬送コンベアの流れ方向と直角に搬送レールを設置し、この搬送レール上で排出機能を持たせたガイドをエア等の駆動手段で移動させることにより、不良品のPTPシートを搬送コンベア上から排除する構造のものがあった。
【0003】
このような方式で排出する場合、シートの形状は多種類に及ぶため、その形状に合わせて搬送レールの位置を型替えする必要があり、また微妙なシート形状の差異については型替時に微調整が必要なことから、熟練した作業が必要とされていた。そして、調整不良の際には、シートが排出途中で搬送コンベアや搬送レールに噛みこんだり、搬送コンベア上に脱落したりしてシートを排出できない場合があった。またシートの搬送速度が多段速の場合、排出装置の各動作と搬送コンベアの速度を同期させるのは困難であった。
【0004】
上述の問題点を解決するため、本件出願人は、特開2003−71389号公報(特許文献1)において、搬送コンベアと対向するように配置され、周面にPTPシートを吸引する吸引部を形成した固定ドラムと、通気孔が複数形成され前記固定ドラムの外周側を回転する回転ドラムとを備え、排出すべきPTPシートを回転ドラムに吸着して所定の離脱位置まで移動させた後に、PTPシートを回転ドラムから離脱させるようにした排出装置を提案している。
【0005】
この排出装置においては、固定ドラムには真空経路が独立して複数確保され、それぞれの真空経路は各々別々の真空装置に接続されている。通常のPTPシートは一定の間隔ピッチでシート毎に搬送されてくるので(速度は多段の場合有り)、回転ドラムは常に一定の速度で回転している。
【0006】
上記回転ドラムの上流側に設置した検出器によりシートが不良と判断されると、シートが上流側から回転ドラムの下に到着したことを知らせるセンサが作動し、回転ドラムの真空装置を作動させる。これらの真空装置は5台あるが、順次1台目から5台目までを回転ドラムの外周速度に同期させて作動させる。その結果、不良品シートは、回転ドラムに吸着されたまま、回転ドラムと共に回転し、所定の位置まで運ばれ、排出信号によりエアブローによって排出される。
【0007】
上記排出装置においては、回転ドラムの中心に、Oリングの溝が2本加工されており、回転ドラムの外周に沿ってOリングが2本取り付けられていた。このOリングの役割は、PTPシートを吸着する際に、固定ドラムに形成された吸着の際に必要な吸引口に、PTPシートが噛み込まれることを防止することにある。また、PTPシートが回転ドラムに吸着される際に、錠剤を収納する収納部が凸状に出ているシートの表側が吸着されるために、錠剤と回転ドラムがPTPシートのラミネートフィルムを介して直接接触することから、錠剤自体が傷つく場合があった。そのため、Oリングの別の役割は、このような損傷から錠剤を保護することにある。このように、回転ドラムの外周の中心付近にOリングが取り付けられると、Oリングが回転ドラムの外周表面よりも出っ張る形状となることから、錠剤の形状による影響を受ける場合があった。この場合、錠剤が平面状である場合には、Oリングの表面が球状であっても、錠剤がOリング表面に接触しつつ吸着がなされていた。
【特許文献1】特開2003−71389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
実ラインで多く採用されている搬送レール上を移動するガイドによる排除方式は、搬送コンベア上のシートをコンベアの流れ方向と直角方向のコンベア外に排除する方式の為、コンベアが単列や2列の場合には対応可能であるが、コンベアが3列以上になると、一番外側の搬送コンベア以外で搬送されたシートは、その両側にもシートを搬送するコンベアが稼働しているので、どちらの側にも排出ができなかった。すなわち、搬送レール上を移動するガイドによる排除方式は、搬送コンベアが3列以上の構成には対応できていなかった。
【0009】
回転ドラム方式の排出装置においては、以下に列挙する問題点があった。
(1)錠剤が球状である場合には、Oリングの表面と同様に球状であるために、錠剤の搬送される位置関係によっては、球状の表面同士が接触する結果、不安定な状態となり、すべりが生じてシートの真空吸着が困難となり、搬送ライン上に脱落してしまうことから、表面が球状の錠剤には使用することができなかった。
(2)回転ドラムに吸着されたシートはエアブローにより排出されるが、排出時の姿勢が一定ではなく、シートが排出コンベア上に噛み込んだり、飛散する場合があった。
(3)クラス10万から100万程度のクリーンルーム内に設置する装置であるため、エアブロー方式で排出すると、排出時に固定ドラム内の真空経路を通過したダスト、ミスト、ゴミ等が混ざったエアをクリーンルーム内に撒き散らしており、環境上問題があった。
(4)PTPシートを吸着するために、回転ドラムの外周部の通気孔が千鳥状に開口しているので、エアーブロー方式で排出すると、シートが飛び出して行く方向がまちまちであり、排出コンベアに排出されずに外部に飛び出してしまうことがあった。
(5)真空装置を多く使用するため、駆動用に使用するエアの供給量が多く必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のPTPシートの排出装置は、搬送手段によって搬送される複数のPTPシートの中から所定のPTPシートを選択して排出するPTPシートの排出装置において、前記搬送手段の搬送面の上方に配置され、周面に複数の吸引口を有した固定ドラムと、前記固定ドラムの吸引口に連通可能な複数の通気孔を有し、前記固定ドラムの外周側に配置される回転ドラムとを備え、前記回転ドラムの外周面の両側端部に、凸状のリブを全周に亘り形成し、前記両側端部のリブの間の前記通気孔から外気を吸引してPTPシートを前記回転ドラムの外周面に吸着可能とし、PTPシートを吸着する吸着位置から離脱させる離脱位置までPTPシートを移動させるようにした。
【0011】
本発明よれば、搬送手段の搬送面に載せられて搬送されている複数のPTPシートの中から所定のPTPシートを選択して回転ドラムの外周面に吸着し、PTPシートを吸着位置から離脱位置まで移動させることができる。この際、球状の錠剤を収納したPTPシートであっても、回転ドラムの両側端部のリブ間のスペースに球状の錠剤を収容できるので、PTPシートを支障なく吸着することができる。
【0012】
本発明の1態様によれば、前記固定ドラムの複数の吸引口は、前記吸着位置から前記離脱位置の手前まで形成された複数の独立した吸引口からなり、これら吸引口には吸引手段がそれぞれ接続されており、前記吸着位置側の吸引口に接続された吸引手段から順番に前記離脱位置側の吸引口に接続された吸引手段までを作動させる制御手段を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、回転ドラムの回転に伴うPTPシートの移動に対応させて吸着位置を移動させることができ、PTPシートを吸着位置から離脱位置まで移動させている間、PTPシートを回転ドラムから脱落させることなく確実に移動させることができる。
【0013】
本発明の1態様によれば、前記吸引口の周縁は、前記固定ドラムの外周面にて、隣り合う吸引口の一部同士が前記固定ドラムの幅方向で重なっていることを特徴とする。
本発明によれば、固定ドラムの次の吸引口に対応する位置にPTPシートが移動する場合に、吸引口からの吸引力が途切れることがなく、PTPシートの回転ドラムへの吸着状態を確実に維持することができる。
【0014】
本発明の1態様によれば、前記制御手段は、前記回転ドラムの回転速度を前記吸引手段の作動のタイミングに同期させて、前記吸着位置側の吸引口に接続された吸引手段から順番に前記離脱位置側の吸引口に接続された吸引手段を作動させることを特徴とする。
本発明によれば、回転ドラムの回転速度と吸引手段の作動の流れとを同期させることにより、PTPシートの移動位置に対応する位置の吸引手段を作動させることができ、PTPシートの吸引口から吸引口への受け渡しを円滑に行うことができるとともに、PTPシートの回転ドラムからの脱落を防止できる。
【0015】
本発明の1態様によれば、前記離脱位置には、前記回転ドラムに吸着されているPTPシートに接触し前記回転ドラムからPTPシートを機械的に離脱させる強制離脱手段が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、回転ドラムに吸着されてPTPシートが離脱位置に移動した際に、強制離脱手段がPTPシートに接触して当該PTPシートを機械的に回転ドラムから離脱させるために、PTPシートを円滑に回転ドラムから離脱させることができる。
本発明の1態様によれば、前記強制離脱手段は、エアシリンダで駆動される排出ガイドからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
(1)従来、回転ドラムの外周部に噛みこみ防止用のOリングを設けていたため、球状の錠剤には対応できなかったが、本発明によれば、回転ドラムの外周部の両側端部に凸状のリブを設けることにより、PTPシートの噛みこみ防止を図ることができるとともに、球状の錠剤であっても吸着することができる。
(2)エアブロー方式を用いることなく、PTPシートを回転ドラムの外周部から機械的に除去して排出するので、クリーンルームでの対応が可能となる。
(3)エアブロー方式を用いることなく、PTPシートを回転ドラムの外周部から機械的に除去して排出するので、シートが除去される方向が一定で、シートを確実に排出コンベアに排出できる。
(4)真空経路が独立していることから、吸引手段(真空装置)を個別に制御することができ、確実に不良シートのみを吸着排出することができる。シートは重量が軽いので、吸引手段を低真空大流量にしておけば、シートの形状等に左右されることなく、シートを吸着することができる。
(5)搬送ラインが多段の場合であっても、回転ドラムの回転速度をそれに合わせ、吸着のタイミングも回転ドラムの回転速度に合わせるだけで済み、調整が簡単である。
(6)排出装置におけるドラム自体を搬送コンベアの幅(規格)に合わせているので、PTPシートの型替は、シート形状の差異によるドラムの上下移動のみで済み、排出装置を既存の検査ラインへそのまま搭載することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る排出装置の実施の形態を図1乃至図15を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る排出装置が設置されたPTPシートの搬送ラインを示している。PTPシート5を搬送する搬送ライン1は、平行に配置された2本の案内レール2,2と、これらの案内レール2,2のやや下側で2本の案内レール2,2の間に配置され、案内レール2,2の延びる方向に沿って駆動されるベルトコンベヤ3とを備えている。PTPシート5は、案内レール2,2の長手方向の所定間隔毎に、これら案内レール2,2に跨るようにして支持されている。ベルトコンベヤ3の両側部には、長手方向の所定間隔毎に上方に向けて突出している爪4…4が取り付けられており、各PTPシート5は、これら爪4…4により前方に押されて案内レール2,2上を摺動して搬送される。
【0018】
前記搬送ライン1の図1に示された部分より上流側の工程では、検査用カメラ(図示せず)が設けられており、各PTPシート5をカメラにより撮像し、搬送されているPTPシート5について種々の検査が行われるようになっている。検査の項目としては、PTPシート5に収納された錠剤の形状不良の検査、錠剤を収納するための各収納部5aに異物が含まれていないかの検査、錠剤の表面にプリントされた文字の検査等がある。
【0019】
本発明に係る排出装置10は、搬送ライン1に沿って配置されており、上流側の検査工程で検出された不良品を搬送ライン1から除去するために使用されている。排出装置10の本体部は、ベルトコンベア3を跨ぐように設置されている。なお、図1には搬送ライン1を1列のみ示しているが、搬送するPTPシート5の数量などに応じ、複数の搬送ライン1を多列に設置することを適宜行えばよい。
【0020】
図2は、排出装置の正面図であり、排出装置を搬送ラインの搬送方向と直交する方向から見た図である。図3は、排出装置の側面図であり、排出装置を搬送ラインの延びる方向からみた図である。図4は固定ドラムの外周面を平面状に展開した状態の図であり、図5は図4のV−V線断面図である。
【0021】
図2乃至図5に示すように、排出装置10は、ドーナツ状の固定ドラム20と、この固定ドラム20を収容するドーナツ状の凹部を有した略円筒状の回転ドラム11と、これら両ドラムの側方に配置され回転ドラム11を回転駆動する駆動モータ40とを備えている。なお、図3は、排出装置10が2連の排出装置の場合を示している。すなわち、図3においては、排出装置10が2セットの固定ドラム20,回転ドラム11を備える場合を示している。排出装置10は1セットの固定ドラム20,回転ドラム11を有していてもよいことは勿論である。固定ドラム20および回転ドラム11は、PTPシートの搬送面を構成するベルトコンベア3の上方に配置されている。固定ドラム20、回転ドラム11および駆動モータ40は、搬送面に対して鉛直方向に高さ調整が可能な構造になっている。回転ドラム11は、円盤状の側面部12と、側面部12の中心部から軸方向に突出する筒状のボス部13と、側面部12の外周縁で軸方向に張り出すリング状の外環部14とを有している。側面部12とボス部13と外環部14は一体に形成されている。そして、ボス部13の内側には、駆動モータ40により回転駆動される回転軸41が挿入されている。駆動モータ40は支持台46によって支持されている。回転軸41には、プーリ47が固定されており、プーリ47はチェーン48を介して駆動モータ40に連結されている。なお、この回転ドラム11のボス部13と、駆動モータ40によって回転駆動される回転軸41とはキーとキー溝により連結されており、回転軸41の回転が回転ドラム11に伝達されるようになっている。
【0022】
一方、ボス部13の外周側と外環部14の内周側の間に形成されたドーナツ状の凹部には、固定ドラム20が挿入されている。この固定ドラム20は、回転することなく固定されているものであり、プーリ47の配置された側面と対向する逆側の側面が固定ブラケット(図示せず)により固定されている。固定ドラム20の内周面と回転ドラム11のボス部13の外周面との間には、ベアリング42,42が設けられており、回転ドラム11が固定ドラム20に対して円滑に回転されるようになっている。
【0023】
なお、回転ドラム11の外環部14の内周面と固定ドラム20の外周面とは、均一なクリアランスが維持されるように固定ドラム20及び回転ドラム11は精度良く形成されており、回転ドラム11が回転したときに、回転ドラム11の外環部14と固定ドラム20の外周面とが接触しないようになっている。なお、回転ドラム11と固定ドラム20のクリアランスは微小に形成する必要は無く、適度な寸法に形成すればよい。
前記回転ドラム11および固定ドラム20には、駆動モータ40が配置された側面と逆側の側面において、円盤状のエンドプレート43とエンドプレート43の外周側に配置されるドーナツ状エンドプレート44が被せられ、固定ドラム20と回転ドラム11とが軸方向に位置ずれすることが防止されるようになっている。
【0024】
また、固定ドラム20には、その下部から搬送ライン1の前方側の前端部までのおよそ90度の間に、半径方向外側に向けて放射状に延びる4つの吸引口21,22,23,24からなる吸引部26が形成されている。下端に形成された吸引口21の位置がPTPシートを吸着せしめる吸着位置A1であり、吸引口24のさらに上方の位置がPTPシートを離脱させる離脱位置A2である。4つの吸引口21,22,23,24は、固定ドラム20の一方の側面と固定ドラム20の周面とがそれぞれ独立して連通するように形成されている。離脱位置A2には、排出ガイド30が設置されている。排出ガイド30はエアシリンダ31に連結されており、エアシリンダ31を作動させることにより、排出ガイド30が回転ドラム11の外周面に吸着されたPTPシート5に係合してPTPシート5を機械的に離脱させるようになっている。
【0025】
図2に示すように、吸引口21,22,23,24の開口部21a,22a,23a,24aは、固定ドラム20の一方の側面に形成されている。下端にある1番目の吸引口21から4番目の吸引口24までの開口部21a,22a,23a,24aは、固定ドラム20の一方の側面の所定円弧上に並んで配置されている。このように開口部21a,22a,23a,24aの位置を固定ドラム20の円周方向にずらすことにより、固定ドラム20の内部で隣り合う吸引口同士を離間させて相互に連通しないようにしている。
【0026】
図4に示すように、固定ドラム20の周面に形成された開口部21b,22b,23b,24bは、固定ドラム20の幅方向のほぼ中心位置に1列に並ぶようにして配置されている。また、開口部21b,22b,23,24bの周囲には、図4及び図5に示すように、平行四辺形の形状を有する所定深さの凹部27,27,27,27が形成されている。これら凹部27,27,27,27は、図4に示すように、縦の辺27hが周方向に斜めに傾くようにそれぞれ形成されている。このため、隣り合う凹部27,27,27,27のうち、鋭角に形成された部分(斜線部27c,27cで表す部分)が固定ドラム20の幅方向においてオーバラップする(重なる)ようになっている。
【0027】
上述した4つの吸引口21,22,23,24の開口部21a,22a,23a,24aは、図2に示すように、配管32…32によって吸引装置(真空装置)B1,B2,B3,B4にそれぞれ接続されている。これにより、固定ドラム20の下端から前方側の前端部までの間では固定ドラム20の外周側に位置するPTPシート5を吸引することができるようになっている。なお、各吸引口21,22,23,24に接続されている吸引装置B1,B2,B3,B4は、比較的大流量のエアを吸い込むことができる装置が使用されている。これら吸引装置B1,B2,B3,B4は、コントローラCに接続されており、コントローラCによって吸引のタイミングがそれぞれ制御されている。すなわち、各吸引装置B1,B2,B3,B4は、コントローラCからの信号に基づいてON・OFF動作が行われる。また、搬送ライン1には、エンコーダEが設けられており、このエンコーダEからの信号に基づいて、コントローラCは、搬送ライン1を流れるPTPシート5と排出装置10との位置関係を演算している。
【0028】
なお、固定ドラム20の周面に形成される凹部の形状は、周方向において隣り合う凹部が部分的にオーバラップ(重なる)するように形成されていれば、図4に示す平行四辺形に形成されたものに限定されるものではない。図6は、他の形状の凹部28,28,28,28の形成された固定ドラム20を示している。図6に示す固定ドラム20に形成された凹部28,28,28,28は、固定ドラム20の幅方向の中心を境に一方の片側半分と他方の片側半分とが周方向の逆向きにそれぞれ張り出すように形成されている。このため、隣り合う凹部28,28,28,28のうち、互いに逆向きに張り出した部分(斜線部28c,28cで表す部分)が、固定ドラム20の幅方向においてオーバラップする(重なる)ようになっている。
【0029】
図7は回転ドラム11の外環部14の一部を展開して見た図である。図8は、回転ドラム11の外環部14の一部を示す斜視図であり、回転ドラム11を搬送ラインの延びる方向から見た図である。図7及び図8に示すように、回転ドラム11の外周縁に形成された外環部14には、その外周と内周とを連通する複数の通気孔15…15が形成されている。そして、これら通気孔15…15は、回転ドラム11の周方向に2列をなして千鳥状に配列されており、各列の通気孔15…15は外環部14の全周に亘って所定間隔で形成されている。このように、外環部14には複数の通気孔15…15が形成されているので、固定ドラム20の下端から搬送ライン1の前方側の水平部分に対応する範囲ではこれら通気孔15…15から外気が吸引され、固定ドラム20の吸引口21,22,23,24に吸引され、回転ドラム11の外周面にあるPTPシート5を通気孔15…15を介して回転ドラム11に吸着させて移動させることができる。
【0030】
図7及び図8に示すように、回転ドラム11の外環部14の外周面には、回転ドラム11の幅方向の両側端部に、凸状のリブ14a,14bが全周に亘って形成されている。なお、リブ14aは駆動モータ40に近い側の回転ドラム11の側端部にあり、リブ14bは駆動モータ40から遠い側の回転ドラム11の側端部にある。本実施形態においては、回転ドラム11の幅は38mmである。リブ14a,14bの幅は、各々、1.5mm、5.5mmであり、リブ14a,14bの高さは1mmである。リブ14aの幅は、0.5mm〜2.5mmが好ましく、リブ14bの幅は、3.5mm〜7.5mmが好ましい。リブ14a,14bの高さは、0.5mm〜1.5mmが好ましい。
PTPシート5は、PTPシートの短手方向に搬送されるため、回転ドラム11に当接するのは短手方向となる。通常のPTPシートであれば、長手方向の幅が短いものであっても、回転ドラム11の幅の2倍程度はある。この回転ドラム11に、球状の錠剤が当接すると、錠剤の球状部は、回転ドラム11のリブ14a,14bによる効果としてリブ14a,14bの間のスペースに入り込むため、回転ドラム11はPTPシートを安定して吸着することが可能となり、同時にPTPシートの噛み込み防止も可能となる。
【0031】
図9は、搬送ライン1から不良品と判断されたPTPシート5を除去する際の吸引装置B1,B2,B3,B4の作動のタイミングを表すタイムチャートである。また、図10から図13は、排出装置10の回転ドラム11に不良品と判断されたPTPシート5が吸着されてから、PTPシート5が回転ドラム11から離脱するまでの様子を順に示したものである。
【0032】
図9に示すように、固定ドラム20の下端に位置する吸引口21に接続された1番目の吸引装置B1から前端部に位置する吸引口24に接続された4番目の吸引装置B4までは、時間の経過に伴い順に作動するようにコントローラCに制御されている。なお、これら吸引装置B1,B2,B3,B4間同士の作動の流れは、回転ドラム11の回転速度に同期するように予め設定されている。さらに、吸引装置B1,B2,B3,B4の作動の流れ及び回転ドラム11の回転速度は、搬送ライン1のベルトコンベヤ3の搬送速度と同期されている。搬送ライン1が多段の場合であっても、回転ドラム11の回転速度を搬送ライン1の多段の速度に合わせて、調整するようになっている。
【0033】
検査工程にて不良品と判断されたPTPシート5が固定ドラム20の下端に形成された吸引口21の位置に到達すると、この下端の吸引口21に接続された吸引装置B1がコントローラCからの信号に基づいて作動する。不良品と判断した搬送ライン1の位置から排出装置10までの距離をコントローラCが演算し、この演算結果と、エンコーダEからの信号に基づいて得られる排出装置10までの残りの距離とを比較して、不良品が排出装置10の設置された位置まで到達したか否かを判断している。これにより、順次搬送されているPTPシート5の中から不良品のみを選別して搬送ライン1から除去している。
【0034】
コントローラCからの信号に基づいて1番目の吸引装置B1が作動すると、図10に示すように、搬送されてきたPTPシート5が吸い上げられて回転ドラム11の外周面に吸着される。回転ドラム11に吸着されたPTPシート5は回転ドラム11によって前方へ送られ、図11に示すように、2番目の吸引口22の形成された位置に移動される。PTPシート5が2番目の吸引口22の位置まで移動すると、吸引口22に接続された吸引装置B2がコントローラCからの信号に基づいて作動する。その後、1番目の吸引装置B1が停止される。ただし、この1番目の吸引装置B1が停止されるタイミングは、搬送ライン1において、不良品の次に搬送されている良品がこの排出装置10の設置された位置に到達する前の時点である。吸着位置A1から離脱位置A2にPTPシート5が移動されるまでの間、回転ドラム11に吸着されたPTPシート5の移動に伴い、1番目の吸引装置B1から4番目の吸引装置B4までこの動作が繰り返し行われることで、PTPシート5が途中で回転ドラム11から離脱することなくPTPシート5の回転ドラム11への吸着状態が維持される。
【0035】
この際、吸引装置B1,B2,B3,B4の作動の流れと、回転ドラム11の回転速度が同期するように制御されているので、回転ドラム11に吸着されたPTPシート5の移動位置に対応した吸引装置B1,B2,B3,B4が作動する。このため、回転ドラム11にPTPシート5を確実に吸着させて移動させることができる。また、吸引装置B1,B2,B3,B4の作動の流れ、及び回転ドラム11の回転速度がベルトコンベヤ3の搬送速度と同期しているので、搬送ライン1を流れているPTPシート5の中から不良品を吸着した後に、次のPTPシート5が固定ドラム20の下部に形成された吸引口21の位置に到達する前に1番目の吸引装置B1は停止される。このため、不良品の次に搬送されている良品を排出装置10が搬送ライン1から誤って排出することがない。
【0036】
また、図9から明らかなように、手前側の吸引装置の作動が停止されるタイミングよりその後の吸引装置が作動し始めるタイミングの方が早くなるように制御されている。吸引口と吸引口との間に対応する部分では、吸引力が若干低下する。そのため、PTPシート5が手前側の吸引口を通過した時点でこの吸引口に接続された吸引装置を停止し、次の吸引口に接続された吸引装置をその後に作動させると、PTPシート5が回転ドラム11から離脱するおそれがある。そのため、図9に示すように、隣り合う吸引口に接続された吸引装置の作動時間に若干重なり合う時間を設定することにより、吸引口同士の間をPTPシート5が通過するときでも、PTPシート5を確実に回転ドラム11に吸着させている。
【0037】
次に、図12に示すように、PTPシート5が離脱位置A2まで移動されると、図13に示すように、コントローラCからの信号に基づいてエアシリンダ31が作動して排出ガイド30がPTPシート5に係合して回転ドラム11から引き剥がす。これにより、回転ドラム11に吸着されていたPTPシート5が強制的に離脱され、排出コンベア35上に排出される。
図14は、PTPシート5が回転ドラム11から離脱される前に回転ドラム11に吸着されている状態を示す斜視図である。図14に示すように、回転ドラム11の外周面には、リブ14a,14bが形成されていて、PTPシート5の錠剤を収納した収納部5aが通気孔15…15にはまり込んでしまうことを防止しているため、当該PTPシート5の回転ドラム11からの離脱が円滑に行われる。また球状の錠剤が収納部5aに収納されていても、二つのリブ14a,14b間には収納部5aを収容するスペースが形成されているため、球状の錠剤を収納したPTPシート5であっても回転ドラム11は支障なく吸着できる。
【0038】
図15は、PTPシート5が排出ガイド30により回転ドラム11から引き剥がされる状態を示す図であり、図13のXV矢視図である。図15に示すように、排出ガイド30は逆U字状の形状を有し、排出ガイド30は、回転ドラム11に吸着されていないPTPシート5の両端部に係合し、エアシリンダ31の作動により、PTPシート5を回転ドラム11から引き剥がす。
【0039】
以上、PTPシート5が通気孔15…15にはまり込むことを防止する防護部材としてのリブ14a,14bを回転ドラム11の外周面に形成すると共に、回転ドラム11に吸着されたPTPシート5を機械的に回転ドラム11から離脱させる排出ガイド30を設けた例を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、PTPシートに接触して回転ドラム11から強制的に離脱させるのであれば、どのような機構のものであってもよい。
また本発明の排出装置は、不良品と判断されたPTPシートを搬送ラインから排出する用途に限定されるものではなく、PTPシート以外のもので、表面に凹凸があるシート状の物品の排出に適用可能であり、さらに不良品を排出すること以外の用途にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態にかかる排出装置が設置されたPTPシート搬送ラインを示す図である。
【図2】排出装置を搬送ラインの搬送方向と直交する方向から見た図である。
【図3】排出装置を搬送ラインの延びる方向から見た図である。
【図4】固定ドラムの外周面を平面状に展開した状態の図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】図4に示す固定ドラムの外周面とは別形状の凹部が形成された固定ドラムの外周面を平面上に展開した状態の図である。
【図7】回転ドラムを構成する外環部の外周面を示す図である。
【図8】回転ドラムの外環部の一部を示す斜視図であり、回転ドラムを搬送ラインの延びる方向から見た図である。
【図9】吸引装置の作動のタイミングを表すタイムチャートである。
【図10】不良品と判断されたPTPシートが固定ドラムの下部に形成された吸引口によって回転ドラムに吸着された状態を示す図である。
【図11】第2番目の吸引装置と接続された吸引口に対応する位置にPTPシートが移動された状態を示す図である。
【図12】PTPシートが離脱位置に移動された状態を示す図である。
【図13】回転ドラムからPTPシートが離脱した状態を示す図である。
【図14】PTPシートが回転ドラムから離脱される前に回転ドラムに吸着されている状態を示す斜視図である。
【図15】PTPシートが排出ガイドにより回転ドラムから引き剥がされる状態を示す図であり、図13のXV矢視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 搬送ライン
2 案内レール
3 ベルトコンベヤ
4 爪
5 PTPシート
10 排出装置
11 回転ドラム
12 側面部
13 ボス部
14 外環部
14a,14b リブ
15 通気孔
20 固定ドラム
21,22,23,24 吸引口
27,28 凹部
30 排出ガイド
31 エアシリンダ
32 配管
35 排出コンベア
40 駆動モータ
41 回転軸
42 ベアリング
43 エンドプレート
44 ドーナツ状エンドプレート
46 支持台
47 プーリ
48 チェーン
B1,B2,B3,B4 吸引装置(真空装置)
A1 吸着位置
A2 離脱位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送手段によって搬送される複数のPTPシートの中から所定のPTPシートを選択して排出するPTPシートの排出装置において、
前記搬送手段の搬送面の上方に配置され、周面に複数の吸引口を有した固定ドラムと、
前記固定ドラムの吸引口に連通可能な複数の通気孔を有し、前記固定ドラムの外周側に
配置される回転ドラムとを備え、
前記回転ドラムの外周面の両側端部に、凸状のリブを全周に亘り形成し、前記両側端部
のリブの間の前記通気孔から外気を吸引してPTPシートを前記回転ドラムの外周面に吸
着可能とし、PTPシートを吸着する吸着位置から離脱させる離脱位置までPTPシート
を移動させるようにしたことを特徴とするPTPシートの排出装置。
【請求項2】
前記固定ドラムの複数の吸引口は、前記吸着位置から前記離脱位置の手前まで形成された複数の独立した吸引口からなり、これら吸引口には吸引手段がそれぞれ接続されており、前記吸着位置側の吸引口に接続された吸引手段から順番に前記離脱位置側の吸引口に接続された吸引手段までを作動させる制御手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のPTPシートの排出装置。
【請求項3】
前記吸引口の周縁は、前記固定ドラムの外周面にて、隣り合う吸引口の一部同士が前記固定ドラムの幅方向で重なっていることを特徴とする請求項2記載のPTPシートの排出装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記回転ドラムの回転速度を前記吸引手段の作動のタイミングに同期させて、前記吸着位置側の吸引口に接続された吸引手段から順番に前記離脱位置側の吸引口に接続された吸引手段を作動させることを特徴とする請求項2又は3記載のPTPシートの排出装置。
【請求項5】
前記離脱位置には、前記回転ドラムに吸着されているPTPシートに接触し前記回転ドラムからPTPシートを機械的に離脱させる強制離脱手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のPTPシートの排出装置。
【請求項6】
前記強制離脱手段は、エアシリンダで駆動される排出ガイドからなることを特徴とする請求項5記載のPTPシートの排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−46223(P2009−46223A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212298(P2007−212298)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】