説明

PTPシート及びその製造装置

【課題】包装用フィルム及びカバーフィルムがそれぞれ不透明材料により形成され、収容されている錠剤が視認不能であっても、取り出された錠剤と収容されている錠剤とが一致しているか否かを容易に確認可能とする。
【解決手段】PTPシート1は、不透明材料からなり、錠剤5が収容されるポケット部2を有する包装用フィルム3と、不透明材料からなり、ポケット部2を塞ぐように包装用フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを備える。また、PTPシート1には、錠剤5の外観を示す写真、及び、絵のうちの少なくとも一方が印刷されてなる錠剤表示部11が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤を包装するためのブリスタ包装用シート(以下、「PTPシート」という)及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PTPシートは、錠剤を収容するためのポケット部が形成された包装用フィルムと、ポケット部の開口側を密封するように包装用フィルムに取着されるカバーフィルムとから構成されている。また、一般に包装用フィルムは透明な樹脂等によって形成され、カバーフィルムはアルミニウム等の不透明材料で形成される。さらに近年では、遮光性や防湿性の向上を図るという観点から、包装用フィルムをアルミニウム等の不透明材料によって形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、上記のように包装用フィルム及びカバーフィルムの双方が不透明材料により形成されたPTPシートにおいては、その内部に収容された錠剤を視認することができない。そのため、複数のPTPシートからそれぞれ錠剤を取り出した後に、ある錠剤がどのPTPシートから取り出されたものであるかを確認することができないおそれがある。
【0004】
例えば、2種類の錠剤a,bを異なる個数ずつ(例えば、aを1個、bを2個)服用するような場合、錠剤aが収容され内部が視認不能なPTPシートA、及び、錠剤bが収容され内部が視認不能なPTPシートBから、錠剤を服用する者等が、必要な個数ずつ(例えば、一方のPTPシートから1個、他方のPTPシートから2個)錠剤を取り出したとする。ここで、包装用フィルムが透明材料により形成されること等により、PTPシート内の錠剤が視認可能であれば、取り出された錠剤が、どちらのPTPシートから取り出されたものであるか、つまり、錠剤a,bのどちらであるのかを確認することができる。しかしながら、錠剤を視認不能なPTPシートにおいては、取り出された錠剤がどちらのPTPシートから取り出されたものであるかを確認することができない。すなわち、取り出された2個の錠剤が錠剤aであることを確認することはできず、取り出された1個の錠剤が錠剤bであることを確認することはできない。そのため、本来服用すべき錠剤と異なる錠剤を誤って服用してしまうなどの事態が発生してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、PTPシートに、錠剤の種類などを示す文字表示を設けることで、取り出された錠剤と、PTPシートに収容されている錠剤とが一致しているか否かを確認可能とすることが考えられる(例えば、特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−118978号公報
【特許文献2】特開2007−223625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、PTPシートに表される文字表示は、錠剤の名称等であり、錠剤に関する知識等に乏しい者では、取り出された錠剤と、PTPシートに収容されている錠剤とが一致しているか否かを確認することは難しい。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、包装用フィルム及びカバーフィルムがそれぞれ不透明材料により形成され、収容されている錠剤が視認不能であっても、取り出された錠剤と収容されている錠剤とが一致しているか否かを容易に確認することができるPTPシート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.不透明材料からなり、錠剤が収容されるポケット部を有する包装用フィルムと、
不透明材料からなり、前記ポケット部を塞ぐように前記包装用フィルムに取着されたカバーフィルムと
を備えるPTPシートであって、
前記錠剤の外観を示す写真、及び、絵のうちの少なくとも一方が印刷されてなる錠剤表示部を備えることを特徴とするPTPシート。
【0011】
上記手段1によれば、包装用フィルム及びカバーフィルムの双方は、不透明材料により形成されている。従って、遮光性や防湿性の向上を図ることができる一方で、取り出された錠剤と、PTPシートに収容されている錠剤とが一致しているか否かを確認することが難しい。
【0012】
この点、上記手段1によれば、PTPシートには、錠剤の外観を示す写真や絵を有してなる錠剤表示部が印刷形成されている。従って、錠剤に関する知識等に乏しい者であっても、錠剤表示部に基づいて、取り出された錠剤と、PTPシートに収容されている錠剤とが一致しているか否かを容易に確認することができる。その結果、本来服用すべき錠剤と異なる錠剤を誤って服用してしまうなどの事態をより確実に防止することができる。
【0013】
また、PTPシートに対して、本来収容されるべき錠剤とは異なる錠剤が誤って収容されている場合には、錠剤表示部に基づいて、誤った錠剤が収容されていることを認識することができる。その結果、誤った錠剤の服用を一層確実に防止することができる。
【0014】
尚、「錠剤表示部」は、必ずしも錠剤の形状及び色を示すものでなくてもよく、錠剤の形状のみを示すものであってもよい。
【0015】
手段2.前記錠剤表示部は、
前記錠剤をその表側から視認したときにおける前記錠剤の外観を示す写真、及び、絵のうちの少なくとも一方が印刷されてなる表側表示部と、
前記錠剤をその裏側から視認したときにおける前記錠剤の外観を示す写真、及び、絵のうちの少なくとも一方が印刷されてなる裏側表示部と
を備えることを特徴とする手段1に記載のPTPシート
上記手段2によれば、錠剤表示部は、錠剤の表側を示す表側表示部と、錠剤の裏側を示す裏側表示部とを備えている。従って、取り出された錠剤と、PTPシートに収容されている錠剤とが一致しているか否かをより容易に、かつ、より正確に確認することができる。
【0016】
手段3.前記錠剤表示部において示される前記錠剤の大きさが、前記PTPシートに収容される前記錠剤の大きさと同一とされることを特徴とする手段1又は2に記載のPTPシート。
【0017】
上記手段3によれば、錠剤表示部において示される錠剤の大きさが、PTPシートに収容される錠剤の大きさと同一とされている。従って、取り出された錠剤の確認を一層正確に行うことができる。
【0018】
手段4.前記錠剤表示部において示される前記錠剤の色が、前記PTPシートに収容される前記錠剤の色と同一とされることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のPTPシート。
【0019】
上記手段4によれば、錠剤表示部において示される錠剤の色が、PTPシートに収容される錠剤の色と同一とされている。従って、取り出された錠剤の色と、錠剤表示部に表示された錠剤の色とを比較することで、取り出された錠剤に変質(色の変化)が生じているか否かを確認することができ、その結果、変質した錠剤の服用防止等を図ることができる。
【0020】
手段5.前記錠剤表示部は、前記包装用フィルムに設けられることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載のPTPシート。
【0021】
錠剤を取り出す際に、カバーフィルムは破られ、包装用フィルムから分離(破棄)されることとなる。そのため、カバーフィルム(特に、ポケット部を塞ぐ複数の部位のうちの一部のみ)に錠剤表示部を設けた場合には、PTPシート内に錠剤が存在するにも関わらず、PTPシートに錠剤表示部が存在しないといった事態が生じ得る。これに対して、包装用フィルムは、PTPシート内の錠剤が全て使用されるまで破棄されることなく利用されることが多い。
【0022】
この点を考慮して、上記手段5によれば、錠剤表示部が包装用フィルムに設けられている。そのため、PTPシートに錠剤表示部が存在しないといった事態をより生じにくくすることができる。従って、取り出された錠剤の確認をより確実に行うことができる。
【0023】
手段6.前記錠剤表示部は、前記ポケット部に対応して設けられていることを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載のPTPシート。
【0024】
錠剤表示部は、錠剤の外観を示す写真等であるため、錠剤表示部が単なるマークと誤認識されてしまい、錠剤表示部の機能が有効的に利用されないおそれがある。特に、錠剤表示部が、錠剤を示す絵である場合には、誤認識がより懸念される。
【0025】
この点、上記手段6によれば、錠剤表示部は、錠剤が収容されるポケット部に対応して設けられている。従って、錠剤表示部が、ポケット部に収容された錠剤の外観を示すものであることを、錠剤を服用する者等に対して、より確実に認識させることができる。
【0026】
また、一般に錠剤の取り出しは、ポケット部を押すことにより行われるため、錠剤を服用する者等は、錠剤を取り出す際に、ポケット部に着目しやすい。そのため、錠剤表示部をポケット部に設けておくことで、錠剤を服用する者等に、錠剤表示部の存在をより確実に認識させることができる。
【0027】
手段7.前記錠剤表示部は、前記カバーフィルムのうち前記ポケット部を塞ぐ部位以外の部位に設けられることを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載のPTPシート。
【0028】
上記手段7によれば、錠剤表示部は、カバーフィルムのうちポケット部を塞ぐ部位以外の部位(つまり、錠剤を取り出す際に、破棄されやすい部位以外の部位)に設けられている。従って、PTPシートに錠剤表示部が存在しないといった事態を一層生じにくくすることができ、取り出された錠剤の確認をより確実に行うことができる。
【0029】
手段8.所定のポケット部単位のシート小片に切離し可能とするミシン目を有し、
前記錠剤表示部は、前記ミシン目からオフセットした位置に、前記シート小片ごとに設けられることを特徴とする手段1乃至7のいずれかに記載のPTPシート。
【0030】
尚、「ミシン目」とは、PTPシートを貫通した切込みが断続的に並んでなる切離し線を意味する。
【0031】
利便性を考慮して、PTPシートには、これをポケット部単位のシート小片に切離し可能とするミシン目が設けられることがある。しかしながら、ミシン目上に錠剤表示部が存在していると、PTPシートをシート小片に切離した場合、シート小片において錠剤表示部の一部しか確認することができず、ひいては取り出された錠剤と、PTPシート(シート小片)に収容されている錠剤とが一致しているか否かの確認に支障が生じてしまうおそれがある。
【0032】
この点、上記手段8によれば、錠剤表示部は、ミシン目からオフセットした位置(ずれた位置)に設けられている。従って、PTPシートをシート小片に切離したとしても、シート小片において錠剤表示部の全体を確認することができる。その結果、取り出された錠剤と、シート小片に収容されている錠剤とが一致しているか否かをより一層確実に確認することができる。
【0033】
手段9.不透明材料からなり、錠剤が収容されるポケット部を有する包装用フィルムと、
不透明材料からなり、前記ポケット部を塞ぐように前記包装用フィルムに取着されたカバーフィルムと、
前記カバーフィルムに設けられ、前記錠剤の外観を示す写真、及び、絵のうちの少なくとも一方が印刷されてなる錠剤表示部とを備えるPTPシートの製造装置であって、
帯状の前記包装用フィルムに前記ポケット部を形成するポケット部形成手段と、
前記ポケット部に前記錠剤を投入する投入手段と、
前記ポケット部へと前記錠剤が投入された前記包装用フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐように前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記包装用フィルムに対する前記カバーフィルムの取着前に、前記カバーフィルムに前記錠剤表示部を設ける印刷手段と
を具備することを特徴とするPTPシートの製造装置。
【0034】
上記手段9によれば、包装用フィルムへの取着前のカバーフィルムに対して、錠剤表示部が印刷形成されるように構成されている。従って、カバーフィルムに対して、錠剤表示部をより確実に、かつ、良好な印刷品質で印刷することができる。
【0035】
手段10.不透明材料からなり、錠剤が収容されるポケット部を有する包装用フィルムと、
不透明材料からなり、前記ポケット部を塞ぐように前記包装用フィルムに取着されたカバーフィルムと、
前記包装用フィルムに設けられ、前記錠剤の外観を示す写真、及び、絵のうちの少なくとも一方が印刷されてなる錠剤表示部とを備えるPTPシートの製造装置であって、
帯状の前記包装用フィルムに前記ポケット部を形成するポケット部形成手段と、
前記ポケット部に前記錠剤を投入する投入手段と、
前記ポケット部へと前記錠剤が投入された前記包装用フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐように前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記ポケット部形成手段による前記ポケット部の形成前に、前記包装用フィルムに前記錠剤表示部を設ける印刷手段と
を具備することを特徴とするPTPシートの製造装置。
【0036】
上記手段10によれば、ポケット部形成前の包装用フィルムに対して錠剤表示部が印刷形成される。従って、ポケット部が印刷手段に干渉することに伴う、印刷不良の発生を防止することができる。
【0037】
また、ポケット部形成後の包装用フィルムには多少のうねりが生じ得るため、ポケット部形成手段の下流に印刷手段を設けた場合には、包装用フィルムと印刷手段との間の距離が不安定となることが懸念されるが、上記手段10によれば、このような懸念を払拭することができ、良好な印刷品質を実現することができる。
【0038】
手段11.不透明材料からなり、錠剤が収容されるポケット部を有する包装用フィルムと、
不透明材料からなり、前記ポケット部を塞ぐように前記包装用フィルムに取着されたカバーフィルムと、
前記包装用フィルムに設けられ、前記錠剤の外観を示す写真、及び、絵のうちの少なくとも一方が印刷されてなる錠剤表示部とを備えるPTPシートの製造装置であって、
帯状の前記包装用フィルムに前記ポケット部を形成するポケット部形成手段と、
前記ポケット部に前記錠剤を投入する投入手段と、
前記ポケット部へと前記錠剤が投入された前記包装用フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐように前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記カバーフィルムが取着された前記包装用フィルムを、PTPシート単位に打抜く打抜き手段と、
前記取着手段による前記カバーフィルムの取着後、前記打抜き手段による前記包装用フィルムの打抜き前に、前記包装用フィルムに前記錠剤表示部を設ける印刷手段と
を具備することを特徴とするPTPシートの製造装置。
【0039】
ポケット部の形成時やカバーフィルムの取着時において、錠剤表示部に損傷が生じ得る点を考慮して、上記手段11によれば、ポケット部を形成し、カバーフィルムを取着した後に、包装用フィルムに対して錠剤表示部が印刷形成されるように構成されている。従って、錠剤表示部の損傷を防止することができ、良好な印刷品質を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】(a)は、PTPシートを示す斜視図であり、(b)は、ポケット部に収容された錠剤等を示す部分拡大断面図である。
【図2】(a)は、PTPシートの表面の構成を示す正面図であり、(b)は、PTPシートの裏面の構成を示す背面図である。
【図3】PTP包装機の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0042】
図1(a),(b)に示すように、PTPシート1は、凹状をなす複数のポケット部2を備えた包装用フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして包装用フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを備えている。さらに、ポケット部2には、錠剤5が1つずつ収容されている。
【0043】
さらに、包装用フィルム3には、例えば2つのポケット部2が含まれたペア小片7(シート小片に相当する)へと容易に切離すことができるように、シート横方向に沿って複数のミシン目6が形成されている。
【0044】
また、本実施形態において、包装用フィルム3は、不透明材料(例えば、アルミニウムや、アルミニウムに樹脂被膜等がラミネートされ複層構造を有するもの等)により形成されており、不透明な外観を呈している。さらに、カバーフィルム4は、包装用フィルム3と同様に、不透明材料〔例えば、PP(ポリプロピレン)等よりなるシーラントが塗布されたアルミニウム箔等〕により形成されており、不透明な外観を呈している。そして、包装用フィルム3及びカバーフィルム4がそれぞれ不透明であることから、ポケット部2に収容された錠剤5は、外部から視認不能となっている。
【0045】
また、本実施形態では、図2(a),(b)に示すように、包装用フィルム3及びカバーフィルム4のうち外部から視認可能な位置に錠剤表示部11が設けられている。錠剤表示部11は、錠剤5の外観を示す写真(錠剤5の外観を示す絵であってもよい)が印刷されてなり、表側表示部12と、裏側表示部13とを備えている。
【0046】
表側表示部12は、錠剤5をその表側から視認したときにおける錠剤5の外観を示す写真が印刷されることで形成されている。また、表側表示部12は、包装用フィルム3の各ポケット部2に対応してそれぞれ設けられており、結果として、前記ミシン目6からオフセット位置に配置されている。
【0047】
加えて、表側表示部12において示される錠剤の大きさは、錠剤5をその表側から視認したときにおける錠剤5の大きさ(より詳しくは、錠剤5の表側を前記視認方向に沿って前記視認方向と直交する平面に投影したときにおける、投影された錠剤5の大きさ)と同一とされている。さらに、表側表示部12における錠剤の色は、錠剤5の表側の色と同一とされている。
【0048】
裏側表示部13は、錠剤5をその裏側から視認したときにおける錠剤5の外観を示す写真が印刷されることで形成されている。また、裏側表示部13は、カバーフィルム4のうちポケット部2の開口を塞ぐ部位にそれぞれ設けられており、結果として、前記ミシン目6からオフセット位置に配置されている。
【0049】
加えて、裏側表示部13において示される錠剤の大きさは、錠剤5をその裏側から視認したときにおける錠剤5の大きさ(より詳しくは、錠剤5の裏側を前記視認方向に沿って前記視認方向と直交する平面に投影したときにおける、投影された錠剤5の大きさ)と同一とされている。さらに、裏側表示部13における錠剤の色は、錠剤5の裏側の色と同一とされている。尚、表側表示部12や裏側表示部13における錠剤の大きさや色は、錠剤5の大きさや色と厳密に同一とする必要はなく、微々たる違いがあってもよい。
【0050】
次に、図3に基づいて、上記PTPシート1を製造するためのPTPシートの製造装置としてのPTP包装機20の概略構成について説明する。
【0051】
図3に示すように、PTP包装機20の最上流側には、帯状の包装用フィルム3がロール状に巻回されている。そして、ロール状に巻回された包装用フィルム3は、間欠的に搬送されるようになっており、包装用フィルム3の搬送経路に沿って、第1印刷手段21が設けられている。第1印刷手段21により、包装用フィルム3のうちポケット部2の形成予定位置に前記表側表示部12が印刷形成される。尚、第1印刷手段21は、例えば、凸版印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機、又は、インクジェット印刷機等により構成されている。
【0052】
加えて、本実施形態では、表側表示部12として印刷される、錠剤5をその表側から視認したときの錠剤5の形状や大きさ、色を示すデータが予め取得されており、当該データに基づいて、第1印刷手段21の設定が行われる。また、包装用フィルム3に予め設けられたマーク(図示せず)を、所定のセンサー(図示せず)により検知することで、ポケット部2の形成予定位置が検出され、当該形成予定位置に対して表側表示部12が印刷形成される。
【0053】
包装用フィルム3の搬送経路に沿って、第1印刷手段21の下流側には、ポケット部形成手段22が設けられている。ポケット部形成手段22は、下型23及び上型24を備えており、下型23には、ポケット部2の形状に合わせた成形面を有する複数の凸部が形成されている。一方で、上型24のうち前記凸部に対応した位置には、ポケット部2の形状に対応する成形面を有する複数の凹部が設けられている。ポケット部2を形成するにあたっては、包装用フィルム3を下型23及び上型24によって挟み込み、下型23の凸部及び上型24の凹部の形状に合わせて伸張させることで、包装用フィルム3に複数のポケット部2が形成される。尚、このポケット部2の形成は、間欠的に搬送される包装用フィルム3の搬送動作間のインターバルの際に行われる。
【0054】
ポケット部2が形成された包装用フィルム3の搬送経路に沿って、ポケット部形成手段22の下流側には、ポケット部2に錠剤5を自動的に投入する投入手段25と、外観検査手段26と、取着手段27とが配設されている。
【0055】
投入手段25は、所定間隔毎にシャッタを開くことで錠剤5を落下させるものであり、このシャッタ開放動作に伴って各ポケット部2に錠剤5が投入される。
【0056】
外観検査手段26は、錠剤5が各ポケット部2に確実に充填されているか否か、また錠剤5の欠け、ひび等の外観異常の有無、異物混入の有無等の検査を行うものである。外観検査手段26は、ポケット部2の開口側からの検査を行う。
【0057】
取着手段27は、フィルム受けローラ28と加熱ローラ29とを備えており、フィルム受けローラ28に加熱ローラ29が圧接可能に構成されている。そして、包装用フィルム3と、ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端とが、両ローラ28,29間に案内されており、包装用フィルム3及びカバーフィルム4が、両ローラ28,29間を加熱圧接状態で通過することにより、容器フィルム3にカバーフィルム4が貼着される。これにより、錠剤5が各ポケット部2に充填された帯状のPTPフィルム8が得られる。
【0058】
また、ロール状に巻回されたカバーフィルム4と取着手段27との間には、第2印刷手段30(例えば、凸版印刷機やフレキソ印刷機、オフセット印刷機、インクジェット印刷機等により構成される)が設けられており、当該第2印刷手段30により、包装用フィルム3に対する貼着の直前に、カバーフィルム4に裏側表示部13が印刷形成される。具体的には、カバーフィルム4のうち、前記ポケット部2を塞ぐ部位のそれぞれに裏側表示部13が印刷形成される。
【0059】
尚、本実施形態では、裏側表示部13として印刷される、錠剤5をその裏側から視認したときの錠剤5の形状や大きさ、色を示すデータが予め取得されており、当該データに基づいて、第2印刷手段30の設定が行われる。また、カバーフィルム4に予め設けられたマーク(図示せず)を、所定のセンサー(図示せず)により検知することで、カバーフィルム4のうちポケット部2を塞ぐ部位が検出され、当該部位に対して裏側表示部13が印刷形成される。
【0060】
さらに、取着手段27の下流側には、ポケット部2側から錠剤5等の異常を検出するための外観検査手段31(例えば、X線を利用した検査装置)が設けられている。尚、外観検査手段26,31によって不良品判定された場合、図示しない不良シート排出機構に不良品信号が送られ、その不良品判定となったPTPシートは、不良シート排出機構によって別途排出され、図示しない不良品ホッパに移送される。
【0061】
外観検査手段31の下流ではPTPフィルム8の搬送経路に沿って、ミシン目形成手段32と、打抜き手段33とがこの順序で配設されている。ミシン目形成手段32は、PTPフィルム8の所定位置に前記ミシン目6を形成する機能を有する。打抜き手段33は、PTPフィルム8をPTPシート1単位に打抜く機能を有する。
【0062】
さらに、打抜き手段33の下流側には、打抜き手段33から落下する端材9を貯留するためのスクラップ用ホッパ34が設けられている。また、打抜き手段33の下側には、打抜かれたPTPシート1を移送するためのコンベア35が設けられており、得られたPTPシート1は完成品用ホッパ36に移送されるようになっている。
【0063】
以上詳述したように、本実施形態によれば、PTPシート1には、それに収容される錠剤5の外観を示す錠剤表示部11が印刷形成されている。従って、錠剤に関する知識等に乏しい者であっても、錠剤表示部11に基づいて、PTPシート1から取り出された錠剤と、PTPシート1に収容されている錠剤5とが一致しているか否かを容易に確認することができる。その結果、本来服用すべき錠剤と異なる錠剤を誤って服用してしまうなどの事態をより確実に防止することができる。
【0064】
また、PTPシート1に対して、本来収容すべき錠剤5とは異なる錠剤が誤って収容されている場合には、錠剤表示部11に基づいて、誤った錠剤が収容されていることを認識することができる。その結果、誤った錠剤の服用を一層確実に防止することができる。
【0065】
さらに、錠剤表示部11は、錠剤5の表側を示す表側表示部12と、錠剤5の裏側を示す裏側表示部13とを備えている。従って、取り出された錠剤と、PTPシート1に収容されている錠剤5とが一致しているか否かをより容易に、かつ、より正確に確認することができる。
【0066】
加えて、錠剤表示部11において示される錠剤の大きさが、PTPシート1に収容される錠剤5の大きさと同一とされている。従って、取り出された錠剤の確認を一層正確に行うことができる。
【0067】
併せて、錠剤表示部11において示される錠剤の色が、PTPシート1に収容される錠剤5の色と同一とされている。従って、取り出された錠剤5の色と、錠剤表示部11に表示された錠剤の色とを比較することで、取り出された錠剤5に変質(色の変化)が生じているか否かを確認することができ、その結果、変質した錠剤の服用防止等を図ることができる。
【0068】
また、錠剤表示部11(表側表示部12)は、錠剤5が収容されるポケット部2に対応して設けられている。従って、錠剤表示部11が、ポケット部2に収容された錠剤5の外観を示すものであることを、錠剤を服用する者等に対して、より確実に認識させることができる。さらに、錠剤表示部11をポケット部2に設けておくことで、錠剤を服用する者等に、錠剤表示部11の存在をより確実に認識させることができる。
【0069】
加えて、錠剤表示部11(表側表示部12及び裏側表示部13の双方)は、ミシン目6からオフセットした位置(ずれた位置)に設けられている。従って、PTPシート1をペア小片7に切離したとしても、ペア小片7において錠剤表示部11の全体を確認することができる。その結果、取り出された錠剤と、ペア小片7に収容されている錠剤5とが一致しているか否かをより一層確実に確認することができる。
【0070】
さらに、ポケット部2形成前の包装用フィルム3に対して錠剤表示部11(表側表示部12)が印刷形成されるように構成されている。従って、ポケット部2が第1印刷手段21に干渉することに伴う、印刷不良の発生を防止することができる。
【0071】
また、ポケット部2形成後の包装用フィルム3には多少のうねりが生じ得るため、ポケット部形成手段22の下流に第1印刷手段21を設けた場合には、包装用フィルムと印刷手段との間の距離が不安定となることが懸念されるが、本実施形態によれば、このような懸念を払拭することができ、良好な印刷品質を実現することができる。
【0072】
さらに、カバーフィルム4に錠剤表示部11(裏側表示部13)を印刷形成するにあたっては、包装用フィルム3への取着前のカバーフィルム4に対して、錠剤表示部11(裏側表示部13)が印刷形成される。従って、カバーフィルム4に対して、錠剤表示部11をより確実に、かつ、良好な印刷品質で印刷することができる。
【0073】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0074】
(a)上記実施形態において、表側表示部12は包装用フィルム3に設けられており、裏側表示部13はカバーフィルム4に設けられているが、包装用フィルム3及びカバーフィルム4の一方に、表側表示部12及び裏側表示部13の双方を設けることとしてもよい。
【0075】
(b)上記実施形態において、錠剤表示部11(裏側表示部13)は、カバーフィルム4のうちポケット部2を塞ぐ部位に設けられているが、錠剤表示部11を、カバーフィルム4のうちポケット部2を塞ぐ部位以外の部位に設けることとしてもよい。つまり、錠剤表示部11を、錠剤5を取り出す際に、破棄されやすい部位以外の部位に設けることとしてもよい。この場合には、カバーフィルム4のうちポケット部2を塞ぐ部位の破棄に伴い、PTPシート1に錠剤表示部11が存在しなくなってしまうといった事態をより生じにくくすることができる。その結果、取り出された錠剤の確認をより確実に行うことができる。
【0076】
(c)上記実施形態においては、表側表示部12及び裏側表示部13が設けられているが、表側表示部12及び裏側表示部13のうちの一方のみを設けることとしてもよい。
【0077】
(d)上記実施形態では、ポケット部2の形成前に、包装用フィルム3に錠剤表示部11(表側表示部12)が印刷形成されているが、ポケット部2の形成後に、包装用フィルム3に錠剤表示部11を印刷形成することとしてもよい。従って、例えば、包装用フィルム3に対するカバーフィルム4の取着後、包装用フィルム3(PTPフィルム8)の打抜き前に、包装用フィルム3に錠剤表示部11を印刷形成することとしてもよい。この場合には、ポケット部2の形成時やカバーフィルム4の取着時における錠剤表示部11の損傷という事態が発生せず、良好な印刷品質を実現することができる。
【符号の説明】
【0078】
1…PTPシート、2…ポケット部、3…包装用フィルム、4…カバーフィルム、5…錠剤、6…ミシン目、7…ペア小片(シート小片)、11…錠剤表示部、12…表側表示部、13…裏側表示部、20…PTP包装機、21…第1印刷手段、22…ポケット部形成手段、25…投入手段、27…取着手段、30…第2印刷手段、33…打抜き手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明材料からなり、錠剤が収容されるポケット部を有する包装用フィルムと、
不透明材料からなり、前記ポケット部を塞ぐように前記包装用フィルムに取着されたカバーフィルムと
を備えるPTPシートであって、
前記錠剤の外観を示す写真、及び、絵のうちの少なくとも一方が印刷されてなる錠剤表示部を備えることを特徴とするPTPシート。
【請求項2】
前記錠剤表示部は、
前記錠剤をその表側から視認したときにおける前記錠剤の外観を示す写真、及び、絵のうちの少なくとも一方が印刷されてなる表側表示部と、
前記錠剤をその裏側から視認したときにおける前記錠剤の外観を示す写真、及び、絵のうちの少なくとも一方が印刷されてなる裏側表示部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のPTPシート。
【請求項3】
前記錠剤表示部において示される前記錠剤の大きさが、前記PTPシートに収容される前記錠剤の大きさと同一とされることを特徴とする請求項1又は2に記載のPTPシート。
【請求項4】
前記錠剤表示部において示される前記錠剤の色が、前記PTPシートに収容される前記錠剤の色と同一とされることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のPTPシート。
【請求項5】
前記錠剤表示部は、前記包装用フィルムに設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のPTPシート。
【請求項6】
前記錠剤表示部は、前記ポケット部に対応して設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のPTPシート。
【請求項7】
前記錠剤表示部は、前記カバーフィルムのうち前記ポケット部を塞ぐ部位以外の部位に設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のPTPシート。
【請求項8】
所定のポケット部単位のシート小片に切離し可能とするミシン目を有し、
前記錠剤表示部は、前記ミシン目からオフセットした位置に、前記シート小片ごとに設けられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のPTPシート。
【請求項9】
不透明材料からなり、錠剤が収容されるポケット部を有する包装用フィルムと、
不透明材料からなり、前記ポケット部を塞ぐように前記包装用フィルムに取着されたカバーフィルムと、
前記カバーフィルムに設けられ、前記錠剤の外観を示す写真、及び、絵のうちの少なくとも一方が印刷されてなる錠剤表示部とを備えるPTPシートの製造装置であって、
帯状の前記包装用フィルムに前記ポケット部を形成するポケット部形成手段と、
前記ポケット部に前記錠剤を投入する投入手段と、
前記ポケット部へと前記錠剤が投入された前記包装用フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐように前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記包装用フィルムに対する前記カバーフィルムの取着前に、前記カバーフィルムに前記錠剤表示部を設ける印刷手段と
を具備することを特徴とするPTPシートの製造装置。
【請求項10】
不透明材料からなり、錠剤が収容されるポケット部を有する包装用フィルムと、
不透明材料からなり、前記ポケット部を塞ぐように前記包装用フィルムに取着されたカバーフィルムと、
前記包装用フィルムに設けられ、前記錠剤の外観を示す写真、及び、絵のうちの少なくとも一方が印刷されてなる錠剤表示部とを備えるPTPシートの製造装置であって、
帯状の前記包装用フィルムに前記ポケット部を形成するポケット部形成手段と、
前記ポケット部に前記錠剤を投入する投入手段と、
前記ポケット部へと前記錠剤が投入された前記包装用フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐように前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記ポケット部形成手段による前記ポケット部の形成前に、前記包装用フィルムに前記錠剤表示部を設ける印刷手段と
を具備することを特徴とするPTPシートの製造装置。
【請求項11】
不透明材料からなり、錠剤が収容されるポケット部を有する包装用フィルムと、
不透明材料からなり、前記ポケット部を塞ぐように前記包装用フィルムに取着されたカバーフィルムと、
前記包装用フィルムに設けられ、前記錠剤の外観を示す写真、及び、絵のうちの少なくとも一方が印刷されてなる錠剤表示部とを備えるPTPシートの製造装置であって、
帯状の前記包装用フィルムに前記ポケット部を形成するポケット部形成手段と、
前記ポケット部に前記錠剤を投入する投入手段と、
前記ポケット部へと前記錠剤が投入された前記包装用フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐように前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記カバーフィルムが取着された前記包装用フィルムを、PTPシート単位に打抜く打抜き手段と、
前記取着手段による前記カバーフィルムの取着後、前記打抜き手段による前記包装用フィルムの打抜き前に、前記包装用フィルムに前記錠剤表示部を設ける印刷手段と
を具備することを特徴とするPTPシートの製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−49453(P2013−49453A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188130(P2011−188130)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000106760)CKD株式会社 (627)
【Fターム(参考)】