PVA−PAAヒドロゲル
本発明は、加工PVAヒドロゲル、PVAヒドロゲル含有組成物、およびその作製方法を提供する。本発明は、また、必要とする対象を治療するために、PVAヒドロゲル、またはPVAヒドロゲル含有組成物を埋め込むか、または投与する方法を提供する。予め固化したか、または予めゲル化したヒドロゲル粒子を架橋する方法、および架橋PVAヒドロゲルを作製する方法、ならびに架橋PVAヒドロゲル含有組成物も、本明細書において開示される。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本出願は、2007年4月24日出願の米国暫定出願第60/913,618号、および2007年9月4日出願の米国暫定出願第60/969,831号の優先権を主張するものであり、これらの内容全体は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、耐クリープ性の滑らかなポリ(ビニルアルコール)(PVA)ヒドロゲル、耐クリープ性の滑らかなPVAヒドロゲル含有組成物の製造、および加工PVAヒドロゲルおよびPVAヒドロゲル含有組成物の作製方法に関する。本発明は、また、関節腔における高応力環境下で完全に機能し、ヒトの関節の高負荷に耐えるための機械的完全性、高い水分含有量、および優れた潤滑性を必要とする骨軟骨欠損修復のための、加工耐クリープ性PVAヒドロゲルおよび耐クリープ性PVAヒドロゲル含有組成物の使用方法に関する。
【0003】
背景技術
骨軟骨欠損修復のための合成材料としての生体適合性ヒドロゲルは、ヒトの関節腔における高応力環境下で完全に機能するための機械的完全性、高い水分含有量、および優れた潤滑性を必要とする。PVAヒドロゲルは、そのような目的に対して良い候補であるが、現在入手可能な製剤は、天然の関節軟骨と十分に互換性のある機械的強度および潤滑性を提供しない。
【0004】
関節軟骨置換適用に使用可能なほとんどのヒドロゲル系は、ヒトの関節の高負荷に耐えるために必要な機械的強度を有さない。以下に記載される様々な脱水方法は、ヒドロゲルの特性を変更するために、組み合わせて使用することができる。
【0005】
ヒドロゲルの溶媒脱水は、Bao(米国特許第US5,705,780号)により記載される。Baoは、形状変形せずにPVAヒドロゲルを脱水するための、室温でのエタノール/水の混合物等の溶媒へのPVAヒドロゲルの浸漬を記載している。
【0006】
HyonおよびIkada(米国特許第4,663,358号)およびBao(米国特許第5,705,780号)は、PVA粉末を溶解するために水および有機溶媒混合物を使用し、その後、溶液を室温以下に冷却し、加熱して室温まで戻し、ヒドロゲルを形成することを記載している。その後、ヒドロゲルを水に浸漬させ、有機溶媒を除去する。HyonおよびIkadaは、このようにして形成されたPVAヒドロゲルは、PVA粉末を溶解するための溶媒として水のみを使用する凍結融解方法によって形成されるものとは対照的に、透明であることを主張する。
【0007】
Bao(米国特許第5,522,898号)は、髄核を置換するための人工脊椎装置としての使用に対する、PVAヒドロゲルの脱水速度を制御し、形状変形を防止するために空気脱水、真空脱水、または部分的湿気脱水を使用する脱水方法を記載する。Baoの出発ゲルは、米国特許第5,705,780号に記載される凍結融解ゲルである。
【0008】
Ku et al.(米国特許第5,981,826号)は、PVA水溶液を凍結融解に供し、その後、水に浸漬させ、水に浸漬させながら、さらに数回の凍結融解に供することにより、PVAヒドロゲルを形成するための凍結融解方法を記載している。
【0009】
PVAの耐クリープ性は、ヒドロゲルの平衡含水量(EWC)を低下させることによって、現在、当該分野において得られるが、ヒドロゲルの潤滑性も低下させる。したがって、特に、潤滑性も保持する耐クリープ性PVAヒドロゲルに対する、長年に渡る切実であるが満たされていない必要性が残る。そのような耐クリープ性PVAヒドロゲル、およびそのような組成物の作製方法は、本発明まで周知ではなかった。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、概して、耐クリープ性PVAヒドロゲル、PVAヒドロゲル含有組成物、ならびにPVAヒドロゲルおよびPVAヒドロゲル含有組成物の作製方法に関する。本発明は、また、例えば、関節腔における高応力環境下で完全に機能し、ヒトの関節の高負荷に耐えるための機械的完全性、高い水分含有量、および優れた潤滑性を必要とする骨軟骨欠損修復のための、必要とする対象を治療する際の耐クリープ性PVAヒドロゲルおよび耐クリープ性PVAヒドロゲル含有組成物の使用方法に関する。
【0011】
本発明の一態様は、PVAヒドロゲルを作製する方法であって、a)ポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液をポリ(アクリル酸)(PAA)の水溶液に室温以上の温度で接触させることによって、均質PVA−PAA溶液を形成するステップと、b)PVA−PAA溶液をポリエチレングリコール(PEG)の水溶液に接触させることによって、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成するステップと、c)PVA−PAA−PEG溶液を室温以下に冷却することによって、PVAヒドロゲルを形成するステップと、を含む方法を提供する。
【0012】
本発明の別の態様は、PVAヒドロゲルを作製する方法であって、a)ポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液をポリ(アクリル酸)(PAA)の水溶液に室温以上の温度で接触させることによって、均質PVA−PAA溶液を形成するステップと、b)PVA−PAA溶液を鋳型(任意で予熱した)に注入し、その後、室温まで冷却することによって、PVAヒドロゲルの形成を可能にするステップと、c)PVAヒドロゲルを0℃以下の温度で凍結することによって冷却するステップと、d)PVAヒドロゲルを0℃以上の温度で融解するステップと、e)PVAヒドロゲルをPEG溶液に浸水させることによって、PVAヒドロゲルへのPEGの拡散を可能にするステップと、を含む方法を提供する。
【0013】
本発明の別の態様は、PVAヒドロゲルを作製する方法であって、a)ポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液をポリ(アクリル酸)(PAA)の水溶液に室温以上の温度で接触させることによって、均質PVA−PAA溶液を形成するステップと、b)PVA−PAA溶液をポリエチレングリコール(PEG)の水溶液に接触させることによって、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成するステップと、c)PVA−PAA−PEG溶液を鋳型(任意で予熱した)に注入し、その後、室温まで冷却することによって、PVAヒドロゲルの形成を可能にするステップと、d)PVAヒドロゲルを0℃以下の温度で凍結することによって冷却するステップと、e)PVAヒドロゲルを0℃以上の温度で融解するステップと、を含む方法を提供する。
【0014】
本発明の一態様によると、鋳型は、約1〜約200℃、好ましくは約25℃〜約150℃、より好ましくは約90℃の温度まで予熱される。
【0015】
別の態様によると、本発明は、上述の方法を提供し、ヒドロゲルは、PVAヒドロゲルを含み、ヒドロゲルは、水および/または1つもしくはそれ以上の他の成分を含む。成分は、PAA、PEG、および/または塩、プロテオグリカン、水溶性ポリマー、アミノ酸、アルコール、DMSO、水溶性ビタミンであり、成分は、水において部分的または完全に可溶性である。
【0016】
別の態様によると、成分は、PAA、および/または塩、プロテオグリカン、水溶性ポリマー、アミノ酸、アルコール、DMSO、水溶性ビタミンであり、成分は、水において部分的または完全に可溶性である。
【0017】
別の態様によると、成分は、PEGであり、PEGは、水、エタノール、エチレングリコール、DMSO、または別の適切な溶媒の溶液中にある。
【0018】
別の態様によると、成分は、非揮発性である。
【0019】
別の態様によると、成分は、水において少なくとも部分的に混和性である。
【0020】
別の態様によると、成分は、PEG、塩、NaCl、KCl、CaCl2、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、およびアミノ酸、異なる分子量のPEG、または異なる分子量のPEGの混合物、または上記の任意の組み合わせから成る群より選択される。
【0021】
別の態様によると、水混和性ポリマーは、PEO、プルロニック、アミノ酸、プロテオグリカン、ポリビニルピロリドン、多糖類、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、コンドロイチン硫酸、またはデキストラン硫酸、または上記の任意の組み合わせである。
【0022】
別の態様によると、ヒドロゲルの重量の少なくとも0.1%は、1つまたはそれ以上の非揮発性成分を構成する。
【0023】
別の態様によると、脱水は、ヒドロゲルを、a)非溶媒であって、i)PEG、アルコール、アセトン、飽和食塩水、ビタミン、またはカルボン酸、アルカリ金属の塩の水溶液、またはそれらの組み合わせである非溶媒、およびii)水、PEG、ビタミン、ポリマー、エステル、プロテオグリカン、およびカルボン酸を含む2つ以上の成分を含有する非溶媒である、非溶媒、またはb)超臨界流体、に配置することによって行われる。
【0024】
別の態様によると、脱水は、室温、または例えば、40℃、約40℃以上、約80℃、80℃以上、約90℃、約100℃、100℃以上、約150℃、約160℃、160℃以上、約180℃、約200℃、または200℃以上の高温に、ヒドロゲルを空気中に放置することによって、ヒドロゲルを真空に配置することによって行われる。
【0025】
別の態様によると、脱水は、空気または不活性雰囲気(窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウム等の不活性ガスの存在下において)、または真空下で、高温でヒドロゲルを加熱することによって行われ、加熱速度は、遅いか、もしくは速いか、または加熱は、真空または空気脱水の後に行われる。
【0026】
別の態様によると、脱水は、100%の空気、100%の不活性ガス、0.1%〜99.9%の空気を含有する1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物、または0.1%〜99.9%の酸素と混合した1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物において行われる。
【0027】
別の態様によると、脱水ヒドロゲルは、脱水ヒドロゲルを、i)水、食塩溶液、リンゲル溶液、食塩水、緩衝液等、またはそれらの組み合わせ、ii)湿度室、またはiii)室温もしくは高温に配置することによって再水和される。
【0028】
別の態様によると、上記で開示される方法によって作製されるPVAヒドロゲルは、平衡になるように再水和され、PVAヒドロゲルは、水または塩溶液において再水和される。
【0029】
一態様においては、本発明は、ポリマーおよび水を含むPVAヒドロゲルを提供し、PVAヒドロゲルは、少なくとも約1%〜約50%の平衡含水量を含有する。
【0030】
別の態様においては、本発明は、上述の工程のいずれかによって作製されるPVAヒドロゲルを提供し、PVAヒドロゲルは、再水和、その後の脱水を行うことが可能であり、脱水は、ヒドロゲルの重量を低下させ、再水和は、再水和ヒドロゲルにおける平衡含水量の増加を引き起こす。
【0031】
別の態様においては、PVAヒドロゲルは、二軸配向または一軸配向であり、PVAヒドロゲルは、高い最大抗張力を有する。
【0032】
本発明のさらに別の態様は、PVA−PAAヒドロゲルを含む医療移植片、例えば、挿入装置を提供し、挿入装置は、ユニスペーサであり、ユニスペーサは、膝、腰、肩、肘、または上部もしくは四肢の関節等のヒトの関節における浮遊関節移植片である。
【0033】
本発明のさらに別の態様は、PVA−PAA−PEG-ヒドロゲル、を含む医療移植片、例えば、挿入装置を提供し、挿入装置は、ユニスペーサであり、ユニスペーサは、膝、腰、肩、肘、または上部もしくは四肢の関節等のヒトの関節における浮遊関節移植片である。
【0034】
別の態様によると、本発明は、上述の工程のいずれかによって作製されるPVAヒドロゲルを提供し、ゲル化前の、PVAに富む領域およびPAAに富む領域へのPVA−PAA溶液のpH誘導相分離は、PAA含有PVAヒドロゲルの耐クリープ性を増加させる。
【0035】
別の態様によると、本発明は、上述の工程のいずれかによって作製されるPVAヒドロゲルを提供し、特定のpH値(「混和性転誘導」pH(pHmt))は、総ポリマー濃度、各ポリマーの分子量、PVA:PAA比率、溶液の塩濃度またはイオン強度等から成る群より選択される要因によって異なる。
【0036】
別の態様によると、本発明は、上述の工程のいずれかによって作製されるPVAヒドロゲルを提供し、ゲル化前のPVA−PAA溶液の混和性は、PVA−PAA溶液のpH値をpHmt以上または以下に調整することによって制御される。
【0037】
別の態様によると、本発明は、上述の工程のいずれかによって作製されるPVAヒドロゲルを提供し、1.654w/w%含水PAA溶液、および19:1のPVA:PAA比率を有する25%全ポリマーを含有するPVA−PAA溶液の特定のpH値(「混和性転誘導」pH(pHmt))は、約3.0〜約5.5である。
【0038】
別の態様によると、本発明は、上述の工程のいずれかによって作製されるPVAヒドロゲルを提供し、0.332w/w%含水PAA溶液、および99:1のPVA:PAA比率を有する25%全ポリマーを含有するPVA−PAA溶液の特定のpH値(「混和性転誘導」pH(pHmt))は、約1.5〜約5.5である。
【0039】
定義されない限り、本明細書において使用される様々な文法形式のすべての技術的および科学的用語は、本発明が所属する当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記載されるものと同様の方法および材料を、本発明の履行または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料が以下に記載される。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が規制する。さらに、材料、方法、および実施例は、説明のためのみであり、限定的なものではない。
【0040】
本発明のさらなる特色、目的、利益、および態様は、以下の請求項および詳細な説明において明らかである。しかしながら、当然のことながら、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい態様を示すが、本発明の精神および範囲内における様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者にとって明らかとなるため、説明のためのみである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1〜3において記載される様々な処理後の3回の凍結融解による15%PEGとの15%固形PVA−PAA−PEG混合物から形成されるPVA−PAAヒドロゲルを示す。1(A)生理食塩水における再水和の後(実施例1)、1(B)真空脱水、その後の生理食塩水における再水和の後(実施例2)、および1(C)真空脱水、加熱、その後の生理食塩水における再水和の後(実施例3)。
【図2】実施例5〜8において記載される様々な処理後の3回の凍結融解による15%固形PVA−PAA混合物から形成されるPVA−PAAヒドロゲルを示す。2(A)生理食塩水における再水和の後(実施例5)、2(B)真空脱水、その後の生理食塩水における再水和の後(実施例6)、2(C)真空脱水、加熱、その後の生理食塩水における再水和の後(実施例7)、および2(D)100%PEG400における浸漬、その後の生理食塩水における再水和の後(実施例8)。
【図3】それぞれ10時間の負荷および10時間の無負荷サイクルに対する、歪対時系列におけるクリープ挙動を示す。
【図4】表7に示されるサンプル1〜3に関する、それぞれ10時間の負荷および無負荷サイクルに対する、歪対時系列におけるクリープ挙動を示す。
【図5】表7に示されるサンプル4〜6に関する、それぞれ10時間の負荷および無負荷サイクルに対する、歪対時系列におけるクリープ挙動を示す。
【図6】表7に示されるサンプル7〜10に関する、それぞれ10時間の負荷および無負荷サイクルに対する、歪対時系列におけるクリープ挙動を示す。
【図7】実施例24に記載されるクリープ試験から得られたPVAヒドロゲルの総クリープ歪みを示し、平衡含水量の機能として示される。
【図8】PEGが、ゲル化工程の間、PVAおよびPAA溶液に存在する方法(実施例1)によって作製された再水和PVAヒドロゲルの共焦点顕微鏡写真を示す(尺度図=20μm)。
【図9】PEGが、予め作製されたPVA−PAAゲルに連続して組み込まれた方法(実施例8)によって作製された再水和PVAヒドロゲルの共焦点顕微鏡写真を示す(尺度図=20μm)。
【図10】PEGがPVAゲル化の間に存在した「PVA−PAA−PEGゲル」、およびPEGがPVAゲル化後に組み込まれた「組み込まれたPEGを有するPVA−PAAゲル」の耐クリープ性を示す。両方のゲルは、熱処理され、クリープ変形試験の前に生理食塩水において再水和された。
【図11】11(A)25%PAA(MW=200K)溶液、11(B)5%PAA(MW=200K)、11(C)5%PAA(MW=5K)、11(D)25%PAA(MW=5K)、11(E)PAAを有さない脱イオン水(対照)、および11(F)約50%PAA(MW=5K)を含む6つの異なるPAA水溶液における浸漬によるPAA拡散後の脱PEGPVAヒドロゲルを示す。
【図12A】PAA含有PVAヒドロゲルの平衡含水量(EWC)を示す。「PVAのみ;NA」は、PAAなしのPVAのみで作製された非アニール化ヒドロゲルを示す。ヒドロゲルは、EWC測定のために乾燥させる前に、25℃(12A)または40℃(12B)で平衡化された。
【図12B】PAA含有PVAヒドロゲルの平衡含水量(EWC)を示す。「PVAのみ;NA」は、PAAなしのPVAのみで作製された非アニール化ヒドロゲルを示す。ヒドロゲルは、EWC測定のために乾燥させる前に、25℃(12A)または40℃(12B)で平衡化された。
【図13】1型ゲル法によって作製された、様々なPVA−PAA比率でのPAA含有PVAゲルの典型的なクリープ挙動を示す。(1)PVAのみ、非アニール化、(2)7:3のPVA:PAA、(3)8:2のPVA:PAA、(4)9:1のPVA:PAA、および(5)PVAのみ。
【図14】2型ゲル法によって作製された、様々なPVA−PAA比率でのPAA含有PVAゲルの典型的なクリープ挙動を示す。(1)PVAのみ、非アニール化、(2)8:2のPVA:PAA、(3)7:3のPVA:PAA、(4)9:1のPVA:PAA、および(5)PVAのみ。
【図15】PAA含有PVAヒドロゲルの総クリープ歪みを示す。2つの値の平均が示された*の場合以外の、3つの値および標準偏差の平均数を示す。
【図16】1型ゲル法によって作製されたPAA含有PVAゲルの摩擦係数(COF)を示す。
【図17】2型ゲル法によって作製されたPAA含有PVAゲルの摩擦係数(COF)を示す。
【図18】実施例30に記載されるPEGドーピングステップの有無にかかわらず作製された7:3のPVA:PAA比率の25%全ポリマーヒドロゲルの平衡含水量(EWC)および総クリープ歪みを示す。ヒドロゲルは、EWC測定のために乾燥させる前に、40℃で平衡化された。
【図19】実施例30に記載されるPEGドーピングステップの有無にかかわらず作製された7:3のPVA:PAA比率の25%全ポリマーヒドロゲルの典型的なクリープ挙動を示す。(1)PEGドープ、および(2)非PEGドープ。
【図20】実施例30に記載されるPEGドーピングステップの有無にかかわらず作製された7:3のPVA:PAA比率の25%全ポリマーヒドロゲルの摩擦係数(COF)。
【図21】実施例31〜34に記載される1型ゲル法によって作製された、様々なPVA:PAA比率での25%全ポリマー含量のPAA含有PVAゲルの平衡含水量(EWC)および摩擦係数(COF)を示す。EWCは、測定前にゲルを40℃で平衡化した後に測定した。7Nの垂直抗力下のCOFは、各ゲルに対する代表的なCOFとしてみなした。すべてのゲルは、アルゴンガス下で160℃で1時間アニールした。PVA:PAA比率は、各ゲル化溶液が作製されたpH値の前に示される。「PVAのみ」は、PAAを有さないPVAゲルを示す。「混和性」および「非混和性」は、ゲル化前の各PVA−PAA溶液の混和状態を示す。(1)PVAのみ、(2)99:1のPVA:PAA、pH3.3、(3)99:1のPVA:PAA、pH1.5、(4)19:1のPVA:PAA、pH5.5、および(5)19:1のPVA:PAA、pH3.0。
【図22】実施例36に記載される様々なアニール条件下で1型ゲル法によって作製された、9:1のPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの平衡含水量を示す。EWCは、測定前にゲルを40℃で平衡化した後に測定した。(A)アルゴンガス下で160℃で1時間加熱、(B)空気(アルゴンガス抜きせず)中で160℃で1時間加熱、(C)アルゴンガス下で160℃で16時間加熱、および(D)アルゴンガス下で200℃で1時間加熱。
【図23】実施例36に記載される様々なアニール条件下で1型ゲル法によって作製された、9:1のPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの総クリープ歪みを示す。(A)アルゴンガス下で160℃で1時間加熱、(B)空気(アルゴンガス抜きせず)中で160℃で1時間加熱、(C)アルゴンガス下で160℃で16時間加熱、および(D)アルゴンガス下で200℃で1時間加熱。
【図24】実施例36に記載される様々なアニール条件下で1型ゲル法によって作製された、9:1のPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの摩擦係数(COF)を示す。(A)アルゴンガス下で160℃で1時間加熱、(B)空気(アルゴンガス抜きせず)中で160℃で1時間加熱、(C)アルゴンガス下で160℃で16時間加熱、および(D)アルゴンガス下で200℃で1時間加熱。
【図25】実施例36に記載される様々なアニール条件下で1型ゲル法によって作製された、9:1のPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの摩擦係数(COF)を示す。7Nの垂直抗力下のCOFは、各ゲルに対する代表的なCOFとしてみなした。(A)アルゴンガス下で160℃で1時間加熱、(B)空気(アルゴンガス抜きせず)中で160℃で1時間加熱、(C)アルゴンガス下で160℃で16時間加熱、および(D)アルゴンガス下で200℃で1時間加熱。
【図26】1型ゲル法によって作製された、様々なPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの摩擦係数(COF)を示す。PAAなしのPVAのみで作製された非アニールヒドロゲルを示す、「PVAのみ;非アニール化」以外のすべてのゲルは、アルゴンガス下で160℃で1時間アニールした。「PVAのみ」は、PAAなしのPVAのみで作製されたアニール化PVAゲルを示す。(A)PVAのみ、(B)9:1のPVA:PAA、(C)8:2のPVA;PAA、(D)7:3のPVA:PAA、(E)PVAのみ;非アニール化。
【図27】1型ゲル法によって作製された、様々なPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの摩擦係数(COF)を示す。PAAなしのPVAのみで作製された非アニールヒドロゲルを示す、「PVAのみ;非アニール化」以外のすべてのゲルは、空気下で160℃で1時間アニールした。「PVAのみ」は、PAAなしのPVAのみで作製されたアニール化PVAゲルを示す。(A)PVAのみ、(B)9:1のPVA:PAA、(C)8:2のPVA;PAA、(D)7:3のPVA:PAA、(E)PVAのみ;非アニール化。
【図28】1型ゲル法に続いてアルゴンガス下または空気中で160℃で1時間アニールすることによって作製された、様々なPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの平衡含水量(EWC)を示す。「PVAのみ」は、PAAなしのPVAのみで作製されたアニール化PVAゲルを示す。(A)PVAのみ、(B)9:1のPVA:PAA、(C)8:2のPVA;PAA、(D)7:3のPVA:PAA。
【図29】1型ゲル法に続いてアルゴンガス下または空気中で160℃で1時間アニールすることによって作製された、様々なPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの総クリープ歪み(TCS)を示す。「PVAのみ」は、PAAなしのPVAのみで作製されたアニール化PVAゲルを示す。(A)PVAのみ、(B)9:1のPVA:PAA、(C)8:2のPVA;PAA、(D)7:3のPVA:PAA。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、潤滑性も保持する、耐クリープ性PVAヒドロゲル、および関節腔における高応力環境下で完全に機能するための機械的完全性、高い水分含有量、優れた潤滑性のうち1つまたはそれ以上を有し、ヒトの関節の高負荷に耐える能力を有する、骨軟骨欠損修復のための耐クリープ性PVAヒドロゲルの作製方法を提供する。
【0043】
本発明の一実施形態によると、第2のポリマーは、ヒドロゲルにおいて、PVAと物理的に混合する、および/または第2のポリマーの分子をPVA分子と化学的に連結することによって組み込まれる。第2のポリマーは、PVA分子の存在下で重合させることもできる。凍結融解、真空脱水、溶媒脱水、加熱等の多くの後処理法を使用することもできる。
【0044】
この第2のポリマーを添加することによって得られる親水性の増加により、水分摂取量が増加し、PVAヒドロゲルの表面潤滑性が改善される。第2のポリマーが高イオン強度を有する場合、軟骨と同様に、静電反発力は、圧縮または引張荷重下で弾性を増加させる。第2のポリマーは、本来のPVAネットワーク構造を補強する相互貫入ネットワークを形成するために、互いにか、またはPVA分子と架橋することができる化学官能基を有することもできる。弱酸または弱塩基官能基を有するポリマーは、本来非イオン性のPVAヒドロゲルにpH感度を与えるために使用することもできる。これは、染料、薬物、および/または生体分子によるpH誘導体積転移および錯体形成に有用である。
【0045】
別の実施形態においては、本発明は、そのような系統の設計方法を提供する。塩基ヒドロゲル系とのPVAヒドロゲルでは、新規に組み込まれた親水性体は、イオン化学官能性または水素結合能力を有するマクロ分子、すなわち、ポリ(アクリル酸)(PAA)およびポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)、PVA−PAAコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)PAAコポリマー、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ヒアルロン酸(HA)、およびポリビニルピロリドン(PVP)である。新規の親水性部分を組み込むための方法として、ゲル形成前のPVAの混合、およびゲル形成後のPVAへの拡散を含む。本来のゲルネットワーク内での導入された新規部分を安定させるための方法として、化学的架橋、照射、脱水、および熱処理ならびにそれらの組み合わせを含む。PVAにおける第2のポリマーの組み込みは、例えば、異なる含水量、クリープ強度、機械的特性、および架橋密度等の不均一勾配特性を最終移植片に与えるために、不均一であり得る。
【0046】
PVA−PAA−PEGゲルの作製方法
1.PEG添加を伴う、PVAおよびPAAの溶液中での混合
一実施形態においては、含水ポリ(アクリル酸)(PAA)溶液は、均質PVA−PAA溶液を形成するために、室温以上の高温でポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液と混合する。PVA:PAA比率は、約10%、15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれらの程度、それらの間の任意の値、もしくはそれら以上での混合物における全ポリマー含量を含めて、約99.9:0.1〜5:5、例えば、99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の比率であり得る。ポリエチレングリコール(PEG)は、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成するためにPVA−PAAの高温の(例えば、約90℃)混合物に添加し、鋳型(任意で予熱した)に注入し、その後、ゲルを形成するために低温まで冷却する。
【0047】
2.PVA−PAA−PEGゲルの凍結融解
別の実施形態においては、含水ポリ(アクリル酸)(PAA)溶液は、均質PVA−PAA溶液を形成するために、室温以上の高温でポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液に混合する。PVA:PAA比率は、約15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、それらの程度、それらの間の任意の値、またはそれら以上での混合物における全ポリマー含量を含めて、約99.9:0.1〜5:5、例えば、99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の比率であり得る。ポリエチレングリコール(PEG)は、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成するためにPVA−PAAの高温の(例えば、約90℃)混合物に添加し、鋳型(任意で予熱した)に注入し、その後、0℃以下の温度で凍結させ、続いて、0℃以上で融解する。一部の実施形態においては、凍結融解サイクルは、繰り返される。
【0048】
3.PEGドーピングと伴う、PVA−PAAゲルの凍結融解
別の実施形態においては、含水ポリ(アクリル酸)(PAA)溶液は、均質PVA−PAA溶液を形成するために、室温以上の高温でポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液に混合する。PVA:PAA比率は、約10%、15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれらの程度、それらの間の任意の値、もしくはそれら以上での混合物における全ポリマー含量を含めて、約99.9:0.1〜5:5、例えば、99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の比率であり得る。混合物は、鋳型(任意で予熱した)に注入し、その後、0℃以下の温度で凍結させ、続いて、0℃以上で融解する。PVA−PAAゲルは、PEGに浸漬させ、PEGをゲル中に拡散させる。ゲルは、水または生理食塩水における再水和の後、この形で使用されるか、または加熱等のさらなる処理に供する。
【0049】
4.PVA−PAAゲルへのPEGの拡散
別の実施形態においては、含水ポリアクリル酸(PAA)溶液は、均質PVA−PAA溶液を形成するために、室温以上の高温でポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液に混合する。PVA:PAA比率は、約10%、15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれらの程度、それらの間の任意の値、もしくはそれら以上での混合物における全ポリマー含量を含めて、約99.9:0.1〜5:5、例えば、99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の比率であり得る。混合物は、鋳型(任意で予熱した)に注入し、その後、0℃以下の温度で凍結させ、続いて、0℃以上で融解する。PVA−ヒドロゲルは、水の一部または全部を抽出しながらPEGをゲルに拡散させるためにPEGに浸漬させる。
【0050】
5.PVAゲルの凍結融解、およびその後のPVAゲルへのPAAの拡散
別の実施形態においては、室温以上の高温の含水ポリ(ビニルアルコール)(PVA)溶液は、PVA冷却ゲルを形成するために、鋳型(任意で予熱した)に注入し、0℃以下に冷却し、0℃以上の温度で融解する。ゲル中の全PVA含量は、約10%、15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、またはそれらの程度、それらの間の任意の値、もしくはそれら以上であり得る。PVA冷却ゲルは、PAAをゲルに拡散するためにPAAの水溶液に浸漬させる。力強い攪拌および/または高温を使用して、拡散率を増加させる。拡散率は、ゲルを超臨界流体に浸漬させることによっても増加させることができる。
【0051】
6.PAA組み込みPVA冷却ゲル、およびその後のPEGドーピング
別の実施形態においては、室温以上の高温の含水ポリ(ビニルアルコール)(PVA)溶液は、PVA冷却ゲルを形成するために、鋳型(任意で予熱した)に注入し、0℃以下に冷却し、0℃以上の温度で融解する。ゲル中の全PVA含量は、約10%、15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、またはそれらの程度、それらの間の任意の値、もしくはそれら以上であり得る。PVA冷却ゲルは、PAAをゲルに拡散させるPAAの水溶液に浸漬させる。力強い攪拌および/または高温を使用して、拡散率を増加させる。拡散率は、ゲルを超臨界流体に浸漬させることによっても増加させることができる。その後、ゲルは、水の一部または全部を抽出しながらPEGをゲルに拡散させるためにPEGに浸漬させることができる。
【0052】
上述の方法のいずれかによってPVAゲルに組み込まれる親水性体は、PAAホモポリマーに限らないが、化学官能性を有する他の種類の親水性ポリマー、すなわち、PVA−PAAコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)PAAコポリマー、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒアルロン酸(HA)、およびポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)であり得る。上記のゲルにおいて記載される凍結融解方法は、1回の凍結融解に限定される必要はないが、2回以上、例えば、2回、3回、4回、5回、8回、10回、またはそれ以上であり得る。上記の実施形態のいずれにおいて、最終ゲル装置は、溶媒中または真空下で脱水、および/またはその後、水または生理食塩水における最終再水和の前に加熱することができる。
【0053】
一実施形態によると、上記の方法のいずれかにおける鋳型は、約1〜約200℃、好ましくは約25℃〜約150℃、より好ましくは約90℃の温度に予熱する。
【0054】
7.PVA溶液と他の成分との混合
混合は、様々な方法で行うことができる。例えば、
a)PVA溶液は、ビーカー等の容器で、本明細書において記載される他の成分と混合/攪拌することによって混合することができ、
b)PVA溶液は、化合物を使用して、本明細書において記載される他の成分と混合することができる。
【0055】
別の実施形態においては、含水ポリ(アクリル酸)(PAA)溶液は、容器で混合するか、または他の成分とともに化合物を使用することによって、均質PVA−PAA溶液を形成するために、室温以上の高温でポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液と混合する。本発明の一態様によると、ヒドロゲルは、水および/またはPAA、PEG(PEGは水溶液、エタノール、エチレングリコール、DMSO、または別の適切な溶媒中にある)、異なる分子量のPEGまたは異なる分子量のPEGの混合物、塩、NaCl、KCl、CaCl2、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、アミノ酸、プロテオグリカン、水溶性ポリマー、アルコール等の1つまたはそれ以上の他の成分を含み、他の成分は、水において、少なくとも部分的に混和性または溶性である。
【0056】
混合するための成分は、粉末、丸薬、液体、ワックス、ペースト、ミクロまたはナノ粒子、または既にゲル化した物質等の任意の形態であり得る。既にゲル化した物質は、脱水、再水和、溶媒浸漬、熱処理、照射、および/または凍結融解等の後ゲル化法によって前もって処理することができる。
【0057】
ゲル化:
一部の実施形態によると、ゲル化は、PEG、および/または凍結融解(1つまたはそれ以上の回数)、および/または照射等のゲル化剤の存在下において冷却することによって行うことができる。
【0058】
本発明の一態様によると、溶液の照射は、ゲル化を引き起こすために行われる。照射の間、ゲル溶液中の溶媒は、水、DI水、生理食塩水、DMSO、エタノール、PEG、別の適切な溶媒、および上記のいずれかの任意の混合物等の任意の媒体中にあり得る。
【0059】
照射:
別の態様によると、照射は、ゲル化剤と混合することか、または凍結融解することによって、既にゲル化した物質に対して行うことができる。ゲル化物質は、照射の前またはその間に、水、DI水、生理食塩水、DMSO、エタノール、PEG、および任意の適切な溶媒、ならびに上記のいずれかの任意の混合物等の媒体に浸漬することができる。ゲル化物質は、脱水のために雰囲気含有空気、不活性ガス、または真空に配置し、照射後にアニールによってさらに処理することができる。
【0060】
別の態様によると、ゲル化物質は、水、DI水、生理食塩水、DMSO、エタノール、PEG、および任意の適切な溶媒、ならびに上記のいずれかの任意の混合物等の媒体に浸した後、空気中または真空下で脱水し、その後、照射することができる。照射物質は、室温または高温で空気または真空においてさらに脱水することができる。
【0061】
別の態様によると、ゲル化物質は、脱水し、および/または照射前に熱的にアニールすることができる。
【0062】
別の態様によると、照射は、MIR、CISM、CIMA、WIAM等の任意の種類であり得、その間にアニールによるステップのいずれかを続けることができる。
【0063】
照射の方法および順序:
放射線化学を使用するポリマーおよびポリマー合金の選択的な制御された操作は、別の態様においては、ポリマーが照射される方法の選択によって得られる。選択されるポリマーまたはポリマー合金等の単独または本発明の他の態様との組み合わせのいずれかで使用される照射の特定の方法は、照射ポリマーの全体的特性に貢献する。
【0064】
ガンマ照射または電子放射を使用することができる。概して、ガンマ照射は、電子照射より高度な放射侵入深さを引き起こす。しかしながら、ガンマ照射は、一般的に、低い放射線量率を提供し、長い時間を必要とし、特に、ガンマ照射が空気中で行われる場合、より深い広範囲に及ぶ酸化が生じ得る。酸化は、ガンマ照射を窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウム等の不活性ガス、もしくは真空下で行うことによって低減または防止することができる。概して、電子照射は、より限定された線量侵入深さをもたらすが、より短い時間を要するため、照射が空気中で行われる場合、広範囲に及ぶ酸化のリスクを減少させる。さらに、所望の線量レベルが、例えば、20Mradと高い場合、ガンマによる照射が1日以上行われる場合があり、非実用的な生産時間につながる。一方、電子ビームの線量率は、コンベヤー速度、スキャン幅、および/またはビーム出力等の照射パラメータを変化させることによって調節することができる。適切なパラメータで、20Mradの溶融照射は、例えば、10分未満で完了することができる。電子ビームの侵入は、百万電子ボルト(MeV)で測定されるビームエネルギーによる。ほとんどのポリマーは、約1g/cm3の密度を示し、2〜3MeVのビームエネルギーで約1cm、10MeVのビームエネルギーで約4cmの侵入につながる。電子照射が好ましい場合、侵入の所望の深さは、ビームエネルギーに基づいて調節することができる。したがって、ガンマ照射または電子照射は、好ましい侵入の深さ、期間制限、および許容酸化レベルに基づいて使用することができる。
【0065】
ある実施形態によると、架橋ポリマー材料は、ポリマー材料が、架橋のための照射と同時または後で溶解することを意味する溶解履歴を有することができる。他の実施形態によると、架橋ポリマー材料は、そのような溶解履歴を有さない。
【0066】
IMS、CIR、CISM、WIR、およびWIAMを含む様々な照射方法が定義され、同時または後に行われる溶解と共に照射される溶解履歴を有する架橋ポリマー材料に対して、以下により詳細に記載される。
【0067】
(i)融解状態における照射(IMS)
溶融照射(MIR)、または融解状態における照射(「IMS」)は、米国特許第5,879,400号において詳述される。IMS工程においては、照射されるポリマーは、その融点またはそれ以上まで加熱する。その後、ポリマーを照射する。照射後、ポリマーを冷却する。
【0068】
照射の前に、ポリマーは、融解温度またはそれ以上まで加熱し、ポリマー鎖がもつれた状態となるまで十分な時間、この温度で維持する。十分な時間は、例えば、約5分〜約3時間の範囲に及ぶ場合がある。
【0069】
ガンマ照射または電子放射を使用することができる。概して、ガンマ照射は、電子照射より高度な放射侵入深さを引き起こす。しかしながら、ガンマ照射は、一般的に、低い放射線量率を提供し、長い時間を必要とし、特に、ガンマ照射が空気中で行われる場合、より深い酸化が生じ得る。酸化は、ガンマ照射を窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウム等の不活性ガス、もしくは真空下で行うことによって低減または防止することができる。概して、電子照射は、より限定された線量侵入深さをもたらすが、より短い時間を要するため、照射が空気中で行われる場合、広範囲に及ぶ酸化のリスクを減少させる。さらに、所望の線量レベルが、例えば、20Mradと高い場合、ガンマによる照射が1日以上行われる場合があり、非実用的な生産時間につながる。一方、電子ビームの線量率は、コンベヤー速度、スキャン幅、および/またはビーム出力等の照射パラメータを変化させることによって調節することができる。適切なパラメータで、20Mradの溶融照射は、例えば、10分未満で完了することができる。電子ビームの侵入は、百万電子ボルト(MeV)で測定されるビームエネルギーによる。ほとんどのポリマーは、約1g/cm3の密度を示し、2〜3MeVのビームエネルギーで約1cm、10MeVのビームエネルギーで約4cmの侵入につながる。電子ビームの侵入は、照射温度の上昇によってわずかに増加することが周知である。電子照射が好ましい場合、侵入の所望の深さは、ビームエネルギーに基づいて調節することができる。したがって、ガンマ照射または電子照射は、好ましい侵入の深さ、期間制限、および許容酸化レベルに基づいて使用することができる。
【0070】
既定のポリマーに対する溶融照射の温度は、そのポリマーに対するDSC(最初の熱サイクルの間、10℃/分の加熱速度で測定される)ピーク融解温度(「PMT」)による。概して、IMS工程における照射温度は、PMTより少なくとも約2℃高く、より好ましくはPMTより約20Cから約20℃高く、最も好ましくはPMTより約5℃から約10℃高い。
【0071】
許容総量の例示的な範囲は、米国特許第5,879,400号、および同号6,641,617号、ならびに国際公開第WO97/29793号においてより詳細に開示されている。例えば、好ましくは、約1MRadまたはそれより大きい総量を使用する。より好ましくは、約20Mradより大きい総量を使用する。
【0072】
電子ビームIMSにおいては、電子によって堆積されるエネルギーは、熱に変換される。これは、主に、サンプルが照射の間、いかに良く熱的に絶縁されるかによる。良い熱絶縁性では、生成される熱のほとんどは、周りの環境に失われず、照射温度より高い温度までのポリマーの断熱昇温につながる。加熱は、周りの環境への熱損失を最低限にするために、十分に高い線量率を使用することによって誘導することもできる。状況次第で、加熱は、照射されるサンプルに悪影響を与える場合がある。ポリマーが照射される場合の水素ガス等の気体副産物は、照射の間に形成される。照射の間、加熱が、気体副産物の急速な拡大を引き起こすほど急速で高温であり、それによって、それらがポリマーから拡散することができない場合、ポリマーは、空洞を作製する場合がある。キャビテーションは、順に、ポリマーの機械的特性、およびそれから作製される装置の体内性能に悪影響を及ぼす、構造における欠損(空洞部分、亀裂等)の形成につながるという点において望ましくない。
【0073】
温度は、線量レベル、絶縁レベル、および/または線量率によって上昇する。照射段階において使用される線量レベルは、所望の特性に基づいて決定される。概して、熱絶縁性は、ポリマーの冷却およびポリマーの温度を所望の照射温度で維持することを回避するために使用される。したがって、温度上昇は、照射に対する上線量率を決定することによって制御することができる。
【0074】
電子放射が使用される本発明の実施形態においては、電子のエネルギーは、電子の侵入の深さを変更するために変化させることができ、それによって、照射に続く架橋の程度を制御する。適切な電子エネルギーの範囲は、米国特許第5,879,400号、同第6,641,617号、および国際公開第WO97/29793号においてより詳細に開示されている。一実施形態においては、エネルギーは、約0.5MeV〜約12MeVである。別の実施形態においては、エネルギーは、約1MeV〜10MeVである。別の実施形態においては、エネルギーは、約10MeVである。
【0075】
(ii)冷照射(CIR)
冷照射は、米国特許第US6,641,617号、同第US6,852,772号、および国際公開第WO97/29793号において詳述されている。冷照射工程においては、ポリマーは、室温または室温以下で提供される。好ましくは、ポリマーの温度は、約20℃である。その後、ポリマーは照射される。冷照射の一実施形態においては、ポリマーは、ポリマーの結晶の少なくとも部分的な溶解を引き起こすために、ポリマーにおいて十分な熱を生成するために十分に高い総量および/または十分に高い線量率で照射することができる。
【0076】
ガンマ照射または電子放射を使用することができる。概して、ガンマ照射は、電子照射よりさらに高い線量侵入深さを引き起こす。しかしながら、ガンマ照射は、一般的に、長い時間を必要とし、特に、ガンマ照射が空気中で行われる場合、より深い酸化が生じ得る。酸化は、ガンマ照射を窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウム等の不活性ガス、もしくは真空下で行うことによって低減または防止することができる。概して、電子照射は、より限定された線量侵入深さをもたらすが、より短い時間を要するため、広範囲に及ぶ酸化のリスクを減少させる。したがって、ガンマ照射または電子照射は、好ましい侵入の深さ、期間制限、および許容酸化レベルに基づいて使用することができる。
【0077】
照射の総量は、照射ポリマーの特性を制御する際、パラメータとして選択することができる。特に、照射の線量は、照射ポリマーにおける架橋の程度を制御するために変化させることができる。好ましい線量レベルは、ポリマーの分子量、および照射後に得られる所望の特性による。概して、CIRによって線量レベルを増加させることは、耐摩耗性の増加につながる。
【0078】
許容総量の例示的な範囲は、米国特許第6,641,617号および同第6,852,772号、国際公開第WO97/29793号、および以下の実施形態においてより詳細に開示される。一実施形態においては、総量は、約0.5MRad〜約1,000Mradである。別の実施形態においては、総量は、約1MRad〜約100MRadである。さらに他の実施形態においては、総量は、約4MRad〜約30MRadである。さらに他の実施形態においては、総量は、約20MRad〜約15MRadである。
【0079】
電子放射が使用される場合、電子のエネルギーも、照射ポリマーの特性を調整するために変更することができるパラメータである。特に、電子エネルギーが異なることは、ポリマーへの電子の侵入の異なる深さを引き起こす。実用的な電子エネルギーは、約0.1MeV〜16MeVの範囲に及び、それぞれ、0.5mm〜8cmの近似等線量侵入レベルを与える。最大侵入に対する好ましい電子エネルギーは、約10MeVであり、Studer(Daniken,Switzerland)またはE−Beam Services(New Jersey,USA)等の製造供給元を通して市販される。低電子エネルギーは、ポリマーの表面層が、表面からの距離に応じて、架橋密度における勾配によって優先的に架橋される実施形態に対して好ましい場合がある。
【0080】
(iii)暖照射(WIR)
暖照射は、米国特許第6,641,617号、および国際公開第WO97/29793号において詳述される。暖照射工程においては、ポリマーは、室温以上およびポリマーの融解温度以下の温度で提供される。その後、ポリマーは、照射される。暖照射の一実施形態においては、「暖照射断熱溶解」または「WIAM」と称される。理論上の意味においては、断熱昇温は、周りの環境への熱移動が存在しないという意味である。実用的な意味においては、そのような加熱は、本明細書および本明細書において挙げられる文献に開示される絶縁、照射線量率、および照射期間の組み合わせによって得ることができる。しかしながら、照射が加熱を引き起こす状況があるが、まだ周りの環境へのエネルギーの損失がある。また、すべての暖照射が断熱昇温を言及するわけではない。暖照射は、非断熱または部分的(生成される熱の約10〜75%が、周りの環境へ失われる等)断熱昇温を有することもできる。WIRのすべての実施形態において、ポリマーは、ポリマーの結晶の少なくとも部分的な溶解を引き起こすために、ポリマーにおいて十分な熱を生成するために十分に高い総量および/または十分に高い線量率で照射することができる。
【0081】
ポリマーは、その融点以下であるが、好ましくは室温以上の任意の温度で提供することができる。温度選択は、ポリマーの溶解の特定の熱およびエンタルピー、および使用される総線量レベルによる。米国特許第6,641,617号および国際公開第WO97/29793号において提供される式を使用して、ポリマーの最終温度が、融点以上または以下であるかの基準を利用して、好ましい温度範囲を計算することができる。所望の温度でのポリマーの予熱は、不活性(窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウム等の下、またはそれらの組み合わせ等)または非不活性環境(空気等)において行うことができる。
【0082】
一般論として、ポリマーの前照射加熱温度は、最初の加熱の間の10℃/分の加熱速度でのDSCに対するピーク融解温度(PMT)測定に基づいて調節することができる。一実施形態においては、ポリマーは、約20℃〜約PMTまで加熱する。別の実施形態においては、ポリマーは、約90℃まで予熱する。別の実施形態においては、ポリマーは、約100℃まで加熱する。別の実施形態においては、ポリマーは、PMTより約30℃低い、およびPMTより2℃低い温度まで予熱する。別の実施形態においては、ポリマーは、PMTより約12℃低い温度まで予熱する。
【0083】
WIRのWIAM実施形態においては、照射後のポリマーの温度は、ポリマーの融解温度またはそれ以上である。照射後の許容温度の例示的な範囲は、米国特許第6,641,617号および国際公開第WO97/29793号により詳細に開示される。一実施形態においては、照射後の温度は、約室温〜PMT、または約40℃〜PMT、または約100℃〜PMT、または約110℃〜PMT、または約120℃〜PMT、または約PMT〜約200℃である。これらの温度範囲は、ポリマーのPMTにより、ほとんどのヒドロゲルは、完全に脱水しているが、PMTがかなり高く、水和レベルが低い場合、100℃以下で溶解する。別の実施形態においては、照射後の温度は、約145℃〜約190℃である。さらに他の実施形態においては、照射後の温度は、約145℃〜約190℃である。さらに他の実施形態においては、照射後の温度は、約150℃である。
【0084】
WIRにおいては、ガンマ照射または電子放射を使用することができる。概して、ガンマ照射は、電子照射よりさらに高い線量侵入深さをもたらす。しかしながら、ガンマ照射は、一般的に、長い時間を必要とし、特に、ガンマ照射が空気中で行われる場合、より深い酸化が生じ得る。酸化は、ガンマ照射を窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウム等の不活性ガス、もしくは真空下で行うことによって低減または防止することができる。概して、電子照射は、より限定された線量侵入深さをもたらすが、より短い時間を要するため、広範囲に及ぶ酸化のリスクを減少させる。したがって、ガンマ照射または電子照射は、好ましい侵入の深さ、期間制限、および許容酸化レベルに基づいて使用することができる。WIRのWIAMの実施形態においては、電子放射が使用される。
【0085】
照射の総量も、照射ポリマーの特性を制御する際、パラメータとして選択することができる。特に、照射の線量は、照射ポリマーにおける架橋の程度を制御するために変化させることができる。許容総量の例示的な範囲は、米国特許第6,641,617号および国際公開第WO97/29793号により詳細に開示されている。
【0086】
照射の線量率も、所望の結果を得るために変更することができる。線量率は、WIAM工程における顕著な変数である。照射の好ましい線量率は、電子ビーム下で1回の照射において所望の総線量レベルを投与するためのものである。ビーム下で複数回の照射で総線量レベルを送達することもでき、1回で総量の一部(等量または非等量)を送達する。これは、効果の低い線量率につながる。
【0087】
許容線量率の範囲は、米国特許第6,641,617号および国際公開第WO97/29793号においてより詳細に例示される。概して、線量率は、0.5Mrad/1回の照射から50Mrad/1回の照射の間で変化する。線量率の上限は、照射によって誘導されるキャビテーション/亀裂へのポリマーの耐性による。
【0088】
電子放射が使用される場合、電子のエネルギーも、照射ポリマーの特性を調整するために変更することができるパラメータである。特に、電子エネルギーが異なることは、ポリマーへの電子の侵入の異なる深さをもたらす。実用的な電子エネルギーは、約0.1MeV〜16MeVの範囲に及び、それぞれ、0.5mm〜8cmの近似等線量侵入レベルを与える。最大侵入に対する好ましい電子エネルギーは、約10MeVであり、Studer(Daniken,Switzerland)またはE−Beam Services(New Jersey,USA)等の製造供給元を通して市販される。低電子エネルギーは、ポリマーの表面層が、表面からの距離に応じて、架橋密度における勾配によって優先的に架橋される実施形態に対して好ましい場合がある。
【0089】
(iv)後に行われる溶解(SM)−検出可能な残留遊離基の実質的な排除
使用するポリマーまたはポリマー合金、およびポリマーがその融点以下で照射されたかによって、照射工程後の材料に残留遊離基が残る場合がある。イオン化放射によってその融点以下で照射されたポリマーは、架橋および長寿命捕捉遊離基を含有する。照射の間に生成された遊離基の一部は、結晶領域および/または結晶層板表面に捕捉され、長期的に酸化誘導不安定性につながる(Kashiwabara,H.S.Shimada,and Y.Hori,Radiat.Phys.Chem.,1991,37(1):p.43−46;Jahan,M.S.and C.Wang,Journal of Biomedical Materials Research,1991,25:p.1005-1017;Sutula,L.C,et al.,Clinical Orthopedic Related Research,1995,3129:p.1681−1689を参照)。したがって、加熱によるこれらの残留捕捉遊離基の排除は、ポリマーの長期酸化不安定性を妨げる際、望ましい場合がある。Jahan M.S.and C.Wang,Journal of Biomedical Materials Research,1991,25:p.1005−1017;Sutula,L.C,et al.,Clinical Orthopedic Related Research,1995,319:p.28−4.
残留遊離基は、ポリマーを使用するポリマーの融点以上に加熱することによって減少させることができる。加熱により、残留遊離基は互いに再結合することができる。既定の系統に対して、プリフォームが、照射後、実質的に任意の検出可能な残留遊離基を有さない場合、その後の加熱ステップは省略してもよい。また、既定の系統に対して、残留遊離基の濃度が十分に低く、装置性能の低下を引き起こさない場合、加熱ステップは省略してもよい。検出可能な遊離基が実質的に存在しなくなるまでの遊離基の還元は、融点以上にまでポリマーを加熱することによって得ることができる。加熱は、ポリマーの結晶から生じる制約を排除するために十分な可動性を有する分子を提供するため、原則的に残留遊離基のすべてを再結合させる。好ましくは、ポリマーは、ポリマーのピーク融解温度(PMT)から分解温度(Td)、より好ましくはPMTより約3℃高い温度からTd、より好ましくはPMTより約10℃高い温度からPMTより50℃高い温度、より好ましくは約10℃からPMTより12℃高い温度、最も好ましくはPMTより約15℃高い温度まで加熱される。
【0090】
ある実施形態においては、照射後アニールがポリマーの融点以下で行うこともでき、そのような遊離基の効果は、抗酸化物質によって最小限または排除することができる場合、残留遊離基の許容レベルが存在することがある。
【0091】
(v)連続照射
ポリマーは、連続的な方法でガンマまたは電子ビーム放射のいずれかで照射される。電子ビームの場合、照射は、ビーム下で複数回の照射で行われ、ガンマ放射の場合、照射は、ガンマ線源を通して複数回の照射で行われる。任意で、ポリマーは、毎回または一部の照射通過の間に熱処理される。熱処理は、ポリマーの融点以下または融点での加熱であり得る。ステップのいずれかの照射は、上述のように、暖照射、冷照射、または溶解照射であり得る。例えば、ポリマーは、架橋の各ステップにおいて30kGyで照射され、まず、約120℃まで加熱され、その後、各照射サイクル後、約120℃で約5時間アニールされる。
【0092】
(vi)混合およびドーピング
上記のように、架橋ポリマー材料は、照射と同時または後に溶解されるという意味の溶解履歴を任意で有することができる。ポリマー材料は、圧密および照射の前に抗酸化物質と混合することができる。また、圧密ポリマー材料は、照射の前または後に抗酸化物質でドーピングすることができ、任意で、照射と同時または後に溶解していることができる。さらに、ポリマー材料は、圧密の前に抗酸化物質での混合、および圧密(照射および任意の溶解の前または後)に抗酸化物質でのドーピングの両方を行うことができる。ポリマー材料は、工程の間に異なる時点で抽出に供することができ、複数回抽出することもできる。
【0093】
系統におけるPAAの安定化
1.空気、真空、不活性ガス、および/または溶媒における脱水
PAAを含有するPVAゲルが、本明細書において記載される上記の方法のいずれかを使用して作製されると、ゲルは、次の環境の1つまたは組み合わせにおいて脱水される:空気、真空、不活性ガス、または有機溶媒。例えば、ゲルは、100%の空気、100%の不活性ガスを含有する雰囲気、0.1%〜99.9%の空気と混合された1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物、または0.1%〜99.9%の酸素を含有する1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物において脱水される。PAA含有PVAゲルの脱水は、緻密化、細孔崩壊、またはさらなるPVA結晶化によって、PAA分子をPVAゲルネットワーク内に物理的に捕捉させることができる。
【0094】
2.80℃以下または以上、例えば、室温以上から約100℃等の高温での空気、真空、不活性ガスにおける脱水
PAAを含有するPVAゲルが、上記の方法のいずれかを使用して作製されると、ゲルは、次の環境の1つまたは組み合わせにおいて脱水される:当該ゲルの融点以下の高温の空気、真空、および/または不活性ガス。例えば、ゲルは、100%の空気、100%の不活性ガスを含有する雰囲気、0.1%〜99.9%の空気と混合された1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物、または0.1%〜99.9%の酸素を含有する1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物において脱水される。PAA含有PVAゲルの脱水は、緻密化、細孔崩壊、またはさらなるPVA結晶化によって、PAA分子をPVAゲルネットワーク内に物理的に捕捉させることができる。
【0095】
3.空気、真空、不活性ガス、溶媒における脱水、その後の160℃以上または以下、例えば、約80℃以上から約260℃の温度での真空、不活性ガスにおける熱処理
PAAを含有するPVAゲルが、上記の方法1〜6のいずれかを使用して作製されると、ゲルは、次の環境の1つまたは組み合わせにおいて脱水される:当該ゲルの融点以下の高温の空気、真空、および/または不活性ガス。例えば、ゲルは、100%の空気、100%の不活性ガスを含有する雰囲気、0.1%〜99.9%の空気と混合された1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物、または0.1%〜99.9%の酸素を含有する1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物において脱水される。PAA含有PVAゲルの脱水は、緻密化、細孔崩壊、またはさらなるPVA結晶化によって、PAA分子をPVAゲルネットワーク内に物理的に捕捉させることができる。脱水後、当該ゲルは、100℃より高い高温、好ましくは160℃以下または以上、例えば、約80℃以上から約260℃で真空、または不活性ガスにおいて、約1時間から最長約20時間、またはそれ以上の間熱処理することができる。そのような熱処理は、さらにPVA結晶化度を増加させることによって、ゲルの機械的強度を改善することができる。
【0096】
4.高圧下での熱処理
上述の熱処理方法は、周囲雰囲気より高い圧力でも行うことができる。
【0097】
5.無水物およびエステルによる架橋
上述の熱処理方法は、カルボン酸の間で無水物を形成することによってPAA鎖を化学的に架橋することができるため、PVAネットワークを有するPAA相互貫入ネットワークを作製する。PVAにおけるヒドロキシル基およびPAAにおけるカルボン酸は、そのような熱処理の間にエステルも形成することができる。
【0098】
6.ガンマ、電子ビーム照射による架橋
一部の実施形態においては、ここで記載される方法によって処理されるPAA含有PVAゲルにおける放射線架橋は、ガンマまたは電子ビーム照射によって行われる。架橋は、耐摩耗性および耐クリープ性を増加させる。架橋は、本明細書において記載される処理/方法のいずれかのステップにおいて行うことができる。
【0099】
7.架橋剤による架橋
別の種類の化学架橋方法は、エチレングリコールジメタクリル酸(EGDMA)等の架橋剤を使用して、上述の方法によって処理されるPVA−PAAゲルにおけるPAA鎖を架橋する。グルタルアルデヒドおよびエピクロルヒドリン等の架橋剤は、当該ゲルへの組み込まれたPAAの物理的固定に加えて、機械的特性を改善するために、当該ゲルにおけるPVA鎖を架橋することができる。
【0100】
8.pH誘導体積転移の間のPAAの架橋
PAA鎖の電荷密度は、pH調整可能であり、アニオン電荷から与えられる静電反発力の系統的な制御を可能にする。PAA含有ゲルのpHをそのpKa値をはるかに下回るほど低下させることによって電荷密度を調節することにより、PAA鎖を近づけ、PAAにおいて分子内または分子間水素結合を促進することもできる、PAAにおけるプロトン化カルボン酸塩の数を増加させることができる。そのような状態でのPAA鎖は、上述の方法のいずれかによって、それらの間で、または隣接するPVA鎖で架橋される。当該ゲルのpHを生理的pH値まで増加させることは、PAAにおける非架橋酸性基を脱プロトン化し、それらの静電反発力は、関節腔において期待される反復的な荷重条件下で、ゲルの機械的完全性のために役立つ。
【0101】
PAA組み込みからの勾配特性に対する構造設計
1.受容ゲルにおけるPAAの勾配分布に対するPVA冷却ゲルへのPAAの制御された拡散
PVAゲルへ組み込まれたPAAの効果は、特性の勾配を有する不均一ゲル、すなわち、ゲルの大部分より高い、ゲル表面のPAA濃度を有することによる、ゲルの大部分より高い、ゲル表面のPAAの存在からの効果を得るために制御することができる。これは、拡散率を制御および/または変化させることによって得られる。拡散率は、PAAのより低い分子、PVAにおけるより大きい細孔、PVAの多孔性の増加、PVAのより高い水和等によって高くなる。
【0102】
2.「垂直」勾配特性を作製するための層ごとの集積
PVA−PAAゲルまたはPVA−PAA−PEGゲルは、勾配特性を得るために鋳型において異なる濃度の溶液を連続的に成型することによって、層ごとの方法で集積することができる。そのため、勾配は、堆積の方向と垂直な方向で配置される。高温の(例えば、約90℃)PVA−PAA−PEG混合物溶液は、第1の層を形成するために、一定の厚さまでの容器に注入する。鋳型の溶液は、室温またはより低い温度まで冷却することによってゲル化する。ゲル化後、容器中の第1の層は、形成された層を破壊せずに、融解温度以下の温度まで加熱する。溶液の別の層を、高温のPVA−PAA−PEG混合物から第1の層に添加し、2つの層を確実に接着させる。第2の層は、ポリマー溶液の同じまたは異なる組成物から形成することができるか、または新規の成分を混合物に添加することができる。容器は、再度冷却し、層状のゲル構造が形成される。この手順は、所望の層の数または厚さまで繰り返すことができる。そのような層ごとのゲル形成は、PVA−PEGゲルまたはPVA冷却ゲル、およびその後のPAA拡散にも適用することができる。
【0103】
3.熱処理の勾配効果
PAA含有PVAゲルに対する熱処理は、脱水ゲルの表面の1つを、当該ゲルの反対の表面より高い温度に接触させることによって、勾配の方法で意図的に制御することができる。より高い温度に接触するゲル表面は、加熱、すなわち、より低い温度に接触する他方の表面より多い架橋およびより高い結晶化度、より低い含水量によって、より影響を受ける。
【0104】
他の実施形態においては、耐クリープ性PVAヒドロゲルは、いくつかの異なる方法、その後の、異なる順序における以下の様々な処理ステップによって調製することができる。例えば、
○アクリル酸(AA)モノマーの取り込み
・PEGの添加を伴う、溶液におけるPVAおよびAAの混合
・PVA−PEGゲルへのAAの拡散
・PVA−AAゲルの凍結融解
・PVA−AA−PEGゲルの凍結融解
・PVAゲルの凍結融解、その後のPVAゲルへのAAの拡散、および/または
・AAモノマーが、そのままで重合される、上記のすべて
○系統におけるPAAの安定化
・緻密化、脱水による崩壊する細孔(DPサンプル中)
○系統におけるAAの安定化
・空気、真空、不活性ガス、溶媒における脱水
・80℃以下または以上、例えば、室温以上から約100℃等の高温での空気、真空、不活性ガスにおける脱水
・空気、真空、不活性ガス、溶媒における脱水、その後の160℃以上または以下、例えば、約80℃以上から約260℃の温度での真空、不活性ガスにおける熱処理
・高圧下での上記のすべて
・加熱による架橋−無水物、エステル
・ガンマ、電子ビーム照射による架橋
・化学剤による架橋−グルタルアルデヒド、エピクロルヒドリン、EGDMA、および/または
・緻密化、脱水による崩壊する細孔(DPサンプル中)
【0105】
一実施形態によると、本発明は、加工PVAヒドロゲル、PVAヒドロゲル含有組成物、およびPVAヒドロゲルおよびPVAヒドロゲル含有組成物の作製方法を提供する。本発明は、また、必要とする対象を治療の際の加工PVAヒドロゲルおよびPVAヒドロゲル含有組成物の使用方法も提供する。
【0106】
従来技術において記載されるヒドロゲル(例えば、米国特許第4,663,358号、同第5,981,826号、および同第5,705,780号、米国公開特許第20040092653号、および同第20040171740号を参照)は、最初に本明細書において記載される方法を使用することによって、本発明のPVAヒドロゲルを作製するための出発材料として使用することができる。本発明において提供されるPVAヒドロゲルは、軟骨、筋肉、乳房組織、椎間板の髄核、他の軟組織、概して関節内でのクッションの役目を果たす挿入装置等の任意の組織を増加または置換するために体内において使用することができる。
【0107】
PVAヒドロゲルは、概して、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)のポリマー、ポリマー混合物、またはコポリマー、アルギン酸塩、多糖類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリ−N−アルキルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸、またはそれらの2つまたはそれ以上の組み合わせを含む。
【0108】
本明細書において開示されるPVAヒドロゲルは、他のポリマーまたはゲル化剤、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸等、またはそれらの2つまたはそれ以上の組み合わせの少なくとも1つと共重合および/または混合されたポリビニルアルコール(PVA)を含む均等に分布したヒドロゲル分子またはヒドロゲル粒子から成る。
【0109】
本発明の一態様によると、PVAヒドロゲルは、他のポリマーの少なくとも1つと共重合および/または混合されたポリビニルアルコール(PVA)を含む。
【0110】
本発明の別の態様によると、ヒドロゲル溶液は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、またはそれらの2つまたはそれ以上の組み合わせを含む。
【0111】
本発明の別の態様によると、ヒドロゲル溶液は、ポリビニルアルコール(PVA)溶液である。
【0112】
本発明のPVAヒドロゲルは、ヒトの関節等の哺乳類の関節において様々な方法で使用することができる。例えば、挿入装置は、ヒトの関節の高負荷に耐えるために必要とする機械的強度を有するPVAヒドロゲルから製造することができ、関節軟骨置換応用において使用することができる。挿入装置は、通常、軟骨表面の互いに対する接触を最小限にするために、関節内でクッションとして作用する。これは、関節炎にかかった関節を有する患者において有益である。軟骨損傷部における早期関節炎にかかった関節は、患者の損傷軟骨表面の間での接触を最小限にする、そのような挿入装置で治療することができる。挿入装置は、Fell et al.(米国特許第6,923,831号、同第6,911,044号、同第6,866,684号、および同第6,855,165号を参照)によって記載される。これらの装置は、様々な形状および大きさを有することができる。長期的に体内で機能するヒドロゲル挿入装置では、装置は、まず、高度な耐クリープ性を有する必要がある。これは、体内における使用の間に、挿入ヒドロゲル装置の形状の変化を最小限にするためである。剛性が高い本発明のPVAヒドロゲル材料は、高い耐クリープ性を示す。本発明によるヒドロゲル挿入装置は、靱性、耐摩耗性、高度な耐クリープ性等の優れた機械的特性も有する。
【0113】
ヒドロゲル移植片の使用のための別の方法は、関節における空洞の充填による。空洞は、既存のものまたは執刀医によって用意されたものでよい。PVAヒドロゲルプラグは、空洞に挿入することができる。ヒドロゲルプラグは、任意の形状および大きさであり得る。例えば、円筒形であり得る。一部の実施形態においては、プラグは、周囲の軟骨表面から上昇するために大き過ぎてもよい。他の実施形態においては、プラグは、空洞に埋め込まれた状態でいるために小さ過ぎでもよい。プラグが、周囲の軟骨表面の上にしっかりと留まるか、または周囲の軟骨表面から埋まることができるように、小型化または大型化は、約1mm未満、約1mm、約1mm以上、約2mm、約3mm、または約3mm以上であり得る。一部の実施形態においては、ヒドロゲルプラグは、その大きさを収縮し、空洞への配置を容易にするために、わずかに脱水してもよい。その後、ヒドロゲルプラグは、空洞に合うように、水和し、そのままで膨張させることができる。ヒドロゲルプラグの脱水および再水和した寸法は、再脱水および再膨張後にプラグの良い適合、小型化、または大型化を得るために、調整することができる。そのままでの再脱水は、プラグと空洞の間の摩擦ばめを増加させるために使用することもできる。これは、再脱水後に、プラグの断面が、例えば、約1mm、1mm未満、または1mm以上、空洞の断面より大きくなってもよくするために、寸法または脱水の程度を調整することによって得ることができる。一部の実施形態においては、空洞は、RubertiおよびBraithwaite(米国公開特許第20040092653号および同第20040171740号を参照)、Muratoglu et al.(国際公開第WO2006/125082号)、Lowman(米国公開特許第20040220296号)によって記載されるもの、および他の注入可能な系統等の当該分野で周知の注入可能なヒドロゲル系で充填することができる。
【0114】
本発明は、また、ヒトの関節の高応力下で形状を維持することができるPVAヒドロゲルを得るための、PVAヒドロゲル系の加工方法も提供する。本発明の一態様によると、PVAヒドロゲルは、クリープに対する耐性および損耗に対する耐性を増加するためのヒドロゲルの剛性、靱性、および強度を改善することによって得られる。本発明は、ヒドロゲルの機械的特性を改善するために有用な脱水方法を提供する。上述の様々な脱水方法は、ヒドロゲルの特性を改善するために、組み合わせて使用することができる。脱水方法のいずれかは、ヒドロゲルの機械的特性を改善するために、それ自体、または他の脱水方法と組み合わせて使用することができる。
【0115】
PVAヒドロゲルの極度の脱水の場合、一部の実施形態に対して、水の存在によって与えられる潤滑を取り戻すために、少なくともある程度まで、後にPVAヒドロゲルを再水和することが、一部の適用に対して重要となり得る。最初に水、およびほとんどの実施形態において、低分子量PEG等の非揮発性成分およびPVP、PEO、PAA、PMAA、コンドロイチン硫酸等の他の成分のうち1つまたはそれ以上の他の成分を含有するヒドロゲルで熱脱水が行われる場合、脱水ヒドロゲルは、様々なレベルまで容易に再水和される。本発明の一態様によると、熱脱水後の再水和のレベルは、脱水前の最初のヒドロゲルの水相における他の成分の濃度による。対照的に、出発ヒドロゲルが水以外の他の成分を含有しない場合、熱脱水の後の再水和の程度は、他の成分の存在下において脱水されたヒドロゲルの再水和レベルと比較して、かなり低下する。水以外の他の成分の存在は、熱脱水および再水和後のヒドロゲルのクリープ挙動にも関係がある。ヒドロゲルは、他の成分の存在下において熱処理される場合、より粘弾性となる。
【0116】
別の態様によると、PEG等の低分子量成分を含有するPVAヒドロゲルは、熱脱水の間、それらの不透明性を保持する。対照的に、そのような成分を含有しない、同一の条件で熱脱水されたPVAヒドロゲルは、それらの不透明性を失い、透明となり、分子多孔性の損失を示す。分子多孔性は、水分子がヒドロゲルを分離するために、脱水する構造における自由空間であると考えられる。そのような成分のいずれも含有しないヒドロゲルの熱脱水後の不透明性の損失は、それらのかなり低い再水和能力の原因であり得る。本発明の一態様によると、非揮発性成分は、熱脱水の間、ヒドロゲル構造に残り、分子多孔性の崩壊を防止するため、これらのヒドロゲルは熱脱水後に再水和することができる。
【0117】
本発明は、また、凍結融解調製されたPVA−PAA(FT−PVA−PAA)ヒドロゲルも提供し、PVA−PAAヒドロゲルは、約160℃で加熱することによってさらに処理される。再水和の後、加熱されたゲルは、透明のままであり、弾力性のある、堅い、一種のゴムのような材料を形成する。この材料は、一部の用途において有用であるが、ヒドロゲルにおける高い水分含有量を必要とする用途に対しては有用ではない。再水和の程度は、加熱前にPEG等の成分を水相に添加することによって、加熱されたFT−PVA−PAAにおいてさらに調整される。
【0118】
別の実施形態においては、PVAヒドロゲル移植片は、包装され、滅菌される。包装は、滅菌および保存の間等の移植までに脱水を防止するために、ヒドロゲル装置を水溶液に浸漬させるためであり得る。水溶液は、水、脱イオン水、食塩溶液、リンゲル溶液、または食塩水であり得る。水溶液は、水中のポリエチレングリコールの溶液でもあり得る。溶液は、PEGにおいて5%(wt)未満、約5%(wt)、約5%(wt)以上、約10%(wt)、約15%(wt)、約20%(wt)、約30%(wt)、約50%(wt)、約90%(wt)、または約100%(wt)であり得る。ヒドロゲル装置は、非揮発性溶媒または非溶媒においても滅菌および保存することができる。
【0119】
PVAヒドロゲル移植片の滅菌は、例えば、ガンマ線滅菌、熱、ガスプラズマ滅菌、またはエチレンオキシド滅菌によって行うことができる。一実施形態によると、ヒドロゲルは、加圧滅菌器によって滅菌される。滅菌は、工場で行われるか、代わりに、移植片は、加圧滅菌器で滅菌される病院へ搬送される。一部の病院には、ヒドロゲル移植片を滅菌するためにも使用される、エチレンオキシド滅菌装置が設置される。
【0120】
一実施形態においては、ヒドロゲル移植片は、包装の後に滅菌される。他の実施形態においては、ヒドロゲル移植片は、滅菌され、滅菌水溶液に配置される。
【0121】
別の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルは、含水PVA溶液(少なくとも約10%(wt)PVA、約15%(wt)PVA以上、約20%(wt)PVA、約25%(wt)PVA、約27%(wt)PVA、約30%(wt)PVA、約35%(wt)PVA、約40%(wt)PVA、約45%(wt)PVA、約50%(wt)PVA以上)から開始する凍結融解方法を使用して調製され、凍結融解サイクル(少なくとも1回、1回以上、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上の回数)に供する。凍結融解サイクルは、PVA溶液を0℃以下に冷却し、0℃以上に加熱することとして定義される。その後、PVA−PAAヒドロゲルは、脱水に供する。その後、脱水ヒドロゲルは、再水和のために食塩溶液に配置する。この工程は、高い機械的強度を有する、ほんの少しの再水和PVA−PAAヒドロゲルをもたらす。
【0122】
別の実施形態においては、本発明は、ゲル化および/または形成されたゲルへの拡散の前の混合方法による、PAA等の親水性イオン性分子の添加によって、耐クリープ性等の機械的強度とのほとんど妥協せずに、含水量を増加させ、潤滑性を改善するために、PVAヒドロゲルの修正の工程を提供する。
【0123】
別の実施形態においては、本発明は、PVA−PAAゲル形成の間にPEGを混合する方法、PEGをPVA−PAAゲルに拡散する方法、および/またはPEGをPAAとして同時または連続的にPVAゲルへ拡散する方法によって、機械的完全性の損失を防止し、水に対する高い親和性を維持するための、PVA−PAAゲルに対して後に行われる処理の間に、PEG等の溶媒の組み込みの工程を提供する。
【0124】
本発明の一実施形態においては、PVA:PAA比率は、約10%、15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれらの程度、それらの間の任意の値、もしくはそれら以上での混合物における全ポリマー含量を含めて、約99.9:0.1〜5:5、例えば、99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の比率であり得る。別の実施形態においては、最終ゲル含量におけるPAAとPVAの組成率は、約0.1%〜90%であり得る。別の実施形態においては、基礎PVA−PAAヒドロゲルのポリマー含量は、10%から最大90%であり得る。混合または拡散に対するPAAの平均分子量は、約2,000から最大100万であり得る。
【0125】
本発明の一態様によると、PAA拡散は、基礎PVAゲルを、含水PAA溶液、またはPEG、もしくはアルコール、DMSO、NaCl溶液、CaCl2溶液、生理食塩水、リンゲル溶液、リン酸緩衝生理食塩水、超臨界流体等の他の溶媒との混合物溶液に浸漬させることによって行うことができる。PAA拡散は、80℃以下または以上、例えば、室温以上から約100℃等の高温で行うことができる。PAA拡散は、約0.1%〜70%の範囲の濃度のPAA溶液において行うことができる。
【0126】
別の実施形態においては、本発明は、受容ゲルにおけるPAAの勾配分布に対するPVAゲルへのPAAの制御された拡散の工程を提供する。PAA含有PVAゲルは、室温、もしくは80℃以下または以上、例えば、室温以上から約100℃等の高温でのPVAゲルにおけるPAAの物理的固定に対して、空気、真空、不活性ガス、溶媒において脱水することができる。PAA含有PVAゲルに対する脱水後の熱処理は、ヒドロゲルネットワークにおいてPAAを不可逆的に結合し、耐クリープ性を改善するために、1時間から最大20時間、またはそれ以上、高温、例えば、100℃以上、好ましくは160℃以下または以上、例えば、約80℃以上〜約260℃で真空、不活性ガスにおいて行うことができる。真空または不活性ガスにおけるPAA含有PVAゲルに対する脱水後の熱アニールも、約1時間から最大24時間またはそれ以上、室温、または80℃、例えば、室温以上から約100℃の高温から開始して、約100℃より高い最終温度、好ましくは160℃以下または以上、例えば、約80℃以上〜約260℃まで、約0.01℃/分、約0.1℃/分、約1℃/分、または約10℃/分等の加熱速度で加熱することによって行うことができる。
【0127】
物理的架橋PVAヒドロゲルにおける耐クリープ性を改善するためのゲル化後の強化方法である熱アニールは、PVAヒドロゲルのEWCおよび潤滑性の変化を引き起こし得る。ゲル化前にPAAをPVA溶液に混合し、PAA含有PVAヒドロゲルを形成することによって、PVAゲルの親水性および圧縮強度は、陰電荷を非電荷PVAゲルマトリクスに与えることによって増加させることができる。PVA−PAAヒドロゲルに対する熱アニール工程も、特に、アニールが空気中で行われる場合、PAAおよびPVA鎖の熱誘導架橋のために、ゲルを脆弱にすることができる。しかしながら、本発明の態様によると、熱アニール中のPEG400等の低分子量PEGの存在は、これらの問題を軽減することができる。例えば、PAA含有PVAヒドロゲルに存在するPEG400分子は、付近にあるPVAおよびPAAのそのような官能基を選抜することによって、熱アニールの間、PVAのヒドロキシル基とPAAのカルボン酸との間に生じるエステル化を軽減または予防することができる。本発明の別の態様によると、熱アニール中のPEGの存在は、PAA含有PVAヒドロゲルの表面潤滑性を有意に改善することができる。
【0128】
別の実施形態においては、熱アニール中のPEGの存在は、PAA含有PVAヒドロゲルの表面潤滑性を有意に改善することができる。PEGは、保存された細孔が、表面潤滑のために好ましい、再水和後の含水量の保持ができるように、アニール工程の間、ゲルにおける細孔が崩壊しないように保護することができる。PEGは、空気の存在下において熱酸化分解を行うことが周知である。空気中での熱分解の間、PEGは、酸素と反応し、ギ酸エステル等の低分子量エステルを生成することができる、熱に不安定なα−ヒドロペルオキシドを形成する。空気中でのPEGのそのような分解工程は、他のポリマー成分からのカルボン酸基が、例えば、本発明のポリ(アクリル酸)であり得るゲルにおいて共存する場合、より容易にすることができる。PEGの熱分解生成物または誘導体は、ゲルの表面潤滑性をさらに改善することができる、ゲル上のさらに陰電荷された基を作製するために、アニール工程の間、ゲルにおけるPVAまたはPAAと反応することができる。
【0129】
二種類のゲル、例えば、PEGドープ(1型)およびPVA:PAAの異なる混合率でのPEG混合(2型)を使用することができる。
【0130】
1型−PEGドープゲル:PVA−PAA溶液を予熱したガラスのシート状鋳型に注入し、3回の凍結融解サイクル(−17℃での約16時間の凍結、および室温での約8時間の融解)に供する。その後、成型されたゲルは、100%のPEGに浸漬し(浸漬によるPEGドーピング)、その後、真空脱水し、約1時間またはそれ以上、自己加圧容器における不活性環境下(アルゴン等)または空気において約160℃でアニールする。
【0131】
2型−PEG混合ゲル:約15w/w%PEG(PVA−PAA混合物における全PEGおよび水の量に対する)は、約90℃で予熱し、PVA−PAA−PEG均質溶液を形成するために高温のPVA−PAA混合物に添加する。得られた均質ポリマー混合物を予熱したガラス鋳型に注入する。その後、成型されたゲルは、約1時間またはそれ以上、自己加圧容器における不活性環境下(アルゴン等)または空気において、3回の凍結融解サイクルに供し、その後、真空脱水および約160℃でアニールを行う。各ゲルシートは、脱イオン(DI)水に浸漬させ、残留PEGを除去し、平衡再水和を得る。
【0132】
1型および2型の両方における非アニール「PVAのみ」(PAAなしのPVA)ゲルは、凍結融解サイクルの完了後、鋳型から取り出した直後にDI水においてゲルを再水和することによって作製される。
【0133】
本発明の別の態様によると、PVAヒドロゲルにおけるPAAの存在とのPEGドーピングステップの組み合わせは、平衡含水量を増加させ、PVAヒドロゲルにおける摩擦係数を低下させることができる。例えば、1型ゲルで記載されるPEGドーピングステップの間、PEGは、ゲル化後、PAA含有PVAヒドロゲルに存在するマイクロおよびナノ細孔に拡散させ、およびそれを充填し、その後、アニールの間、崩壊から細孔を保護することができる。アニール工程後の再水和の後、保存された細孔は、PVA−PAAゲルの吸水度を促進することができ、細孔が、推定上、崩壊される非PEGドープPVA−PAAゲルと比較して、より高いEWCおよび改善された表面潤滑性をもたらす。
【0134】
別の実施形態においては、PVA:PAA比率は、約10%、15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれらの程度、それらの間の任意の値、もしくはそれら以上での混合物における全ポリマー含量を含めて、約99.9:0.1〜5:5、例えば、99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の比率であり得る。
【0135】
本発明の別の態様によると、ゲル化前のPVAに富む領域、およびPAAに富む領域へのPVA−PAA溶液のpH誘導相分離は、PAA含有PVAヒドロゲルの耐クリープ性を増加させることができる。分子レベルにおいてPVAと共存している場合、カルボン酸基の妨害により、PAAは、PVAの結晶化を低下させることが周知である。PVAヒドロゲルの機械的強度は、物理的に架橋したPVAヒドロゲルにおけるPVA結晶化度の程度に由来するため、隣接するPVA鎖の結晶化を妨害するPAA鎖の存在は、PVAヒドロゲルの機械的強度を低下させ得る。しかしながら、PAAの存在は、アニールPVAヒドロゲルにおいて、平衡含水量を増加させ、高表面潤滑性を提供する。したがって、PAA鎖が、PVAおよびPAAの非混和性の混合物においてPVA鎖から分離される場合、分離したPVA領域のPVA鎖は、PAA鎖が、再水和後に表面潤滑性を与える高い保水性をまだ維持できている間に、熱アニール工程によるPAAから妨害されずに、さらに結晶化することができる。PAA鎖におけるカルボン酸基は、pH1.5より低いpH値でのほぼ100%プロトン化される。PAAにおけるカルボン酸は、低いpHの酸性型のPVAおよびPAA鎖の間で、混和性を促進するために、PVA鎖におけるヒドロキシル基との水素結合を活発に形成する。しかしながら、PAA分子が、増加するpHにより部分的にイオン化する場合、PAAおよびPVA鎖との間の水素結合は破壊しだし、PVAおよびPAAの混和性を低下させ、最終的に、PVA−PAA混合物の非混和性溶液をもたらす。
【0136】
PVAとPAAとの間の分子間相互作用がもうPVA−PAA複雑形状を好まない一定のpH値(「混和性転誘導」pH(pHmt)である)以上のpHの溶液のさらなる増加により、PVA−PAA混合物は、最終的に、非混和性溶液になる。例えば、PVA:PAA比率が19:1の25%全ポリマーによるPAA含有PVAヒドロゲルを作製するため、PVA粉末を溶解する前の含水PAA(1.654w/w%)溶液の天然のpHは、室温で約3.0である。いかなる付加的pH調整がないそのような組成物は、90℃で、添加されたPVAを有する完全に透明な混和性のPVA−PAA溶液を形成する。一方、1.654w/w%PAA溶液のpHが、PVA粉末の添加前のpH5.5の値まで増加する場合、最終PVA−PAA混合物は、わずかに濁った非混和性の混合物となる。したがって、19:1のPVA:PAA比率を有する25%全ポリマーを有するPVA−PAA溶液が、混和性から非混和性の混合物に変わるpHmtは、約3.0から約5.5の間の値であり得る。pHmtは、総ポリマー濃度、各ポリマーの分子量、PVA:PAA比率、溶液の塩濃度またはイオン強度等によって異なり得る。PVA−PAA溶液のpH値をpHmt以下または以上に調節することによって、PVA−PAA溶液の混和性をゲル化前に操作することができる。したがって、ゲル化およびゲル化後の工程の間、PVAおよびPAA鎖の間における分子相互作用は、溶液のpHによって制御することができる。PAAに富む領域、およびPVAに富む領域が、pHmt以上の非混和性のPVA−PAA溶液において分相すると、PVA鎖の結晶化は、PAA鎖の妨害によって影響を受け難く、それにより、高度のPVA結晶化度に達成することによって、PAA含有PVAヒドロゲルの耐クリープ性を最終的に改善する。
【0137】
本発明の別の態様によると、上述の工程は、高圧環境においても行うことができる。本明細書において記載される熱処理方法は、周囲雰囲気より上昇した圧力で行うこともできる。
【0138】
本発明の別の態様によると、PEGの有無にかかわらず、PVAゲルにおけるPAAの架橋は、ガンマまたは電子ビーム照射によって行うことができる。PEGの有無に関わらないPVAゲルにおけるPAAの架橋は、エチレングリコールジメタクリル酸(EGDMA)等の架橋剤を使用する化学的架橋方法によって行うことができる。PVAゲルにおけるPAAの架橋密度は、PAA鎖におけるプロトン化カルボン酸塩の数を変化させることによる架橋の前に、pH調整によって制御することができる。
【0139】
本発明の別の態様によると、最終ゲルの「垂直」勾配特性は、組成制御、例えば、a)反復的凍結融解工程において1回に付き1つの層を添加することによる、各層におけるPVAとPAAの様々な組成率によるPVA−PAAゲルの層ごとの集積、b)反復的凍結融解工程またはシータゲル化工程において1回に付き1つの層を添加することによる、各層におけるPVAとPAAまたはPVAとPEGの様々な組成率によるPVA−PAA−PEGゲルの層ごとの集積、およびc)異なる濃度のPVA/PAAおよび/またはPV/PEG/PAAの層を形成するための共押し出し、によって形成することができる。
【0140】
本発明の別の態様によると、最終ゲルの「垂直」勾配特性は、a)脱水ゲルの表面の1つを当該ゲルの反対の表面より高い温度に接触させる、b)非PEG含有脱水ゲルの表面の1つのみを、加熱の間にPEGに接触させる、およびc)非PEG含有脱水ゲルの表面の1つを、PEGおよび当該ゲルの反対の表面より高い温度に接触させることによる加熱条件制御によって形成することもできる。
【0141】
本発明の一実施形態においては、PEGは、PVAヒドロゲルに対する非揮発性非溶媒として使用される。DMSOは、含水PVA−PAA溶液、ヒドロゲルに対する前駆体を調製する際、水の代わりに使用される。
【0142】
本発明の一実施形態においては、PEG溶液は、溶媒(好ましくは水、エタノール、エチレングリコール、DMSO、またはその他)におけるPEGの溶液である。溶液濃度は、0.1%(wt)PEGから99.9%(wt)PEGの間のいずれかであり得る。溶液中のPEGは、異なる分子量(好ましくは300、400、または500g/mol、300g/mol以上、1000g/mol、5000g/mol、またはそれ以上)であり得る。溶液中のPEGは、異なる平均分子量のPEGの混合物であり得る。
【0143】
別の実施形態においては、PEG含有PVA−PAAヒドロゲルは、含水PVA溶液(少なくとも約10%(wt)PVA、約15%(wt)PVA、約20%(wt)PVA、約25%(wt)PVA、約27%(wt)PVA、約30%(wt)PVA、約35%(wt)PVA、約40%(wt)PVA、約45%(wt)PVA、約50%(wt)PVA以上)から開始し、それを、凍結融解サイクル(少なくとも1回、1回以上、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上の回数)に供する凍結融解方法を使用して調製される。このステップでは、PVA−PAAヒドロゲルは、完全水和に到達するために、任意で生理食塩水に配置することができる。その後、ゲルは、低分子量PEG溶液に配置される。これは、ヒドロゲルを非溶媒PEGでドープするためである。PEG溶液浸漬の期間は、ヒドロゲル中における均一平衡PEG含量への到達、または不均一PEG分布(浸漬期間を短縮することによる)への到達のいずれかを得るため、異なり得る。後者は、PEGに富む皮膚、およびPVA−PAAヒドロゲル内のPEG濃度の勾配をもたらす。
【0144】
別の実施形態においては、PEG含有PVAヒドロゲルは、含水PVA溶液(少なくとも約10%(wt)PVA、約15%(wt)PVA以上、約20%(wt)PVA、約25%(wt)PVA、約27%(wt)PVA、約30%(wt)PVA、約35%(wt)PVA、約40%(wt)PVA、約45%(wt)PVA、約50%(wt)PVA以上)から開始し、それを高温(室温以上または50℃以上)で低分子量PEG溶液と混合することによって調製される。室温までの冷却後、混合物は、水および非溶媒PEGを含有するPVA−PAAヒドロゲルを形成する。別の実施形態においては、高温のPVA−PAA/PEG混合物は、室温まで冷却されないが、その代わり、凍結融解サイクルに供する。
【0145】
別の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルは、熱脱水される。PVA−PAAヒドロゲルは、熱脱水(または加熱)の間にPEGを含有する。熱脱水は、約40℃、約40℃以上、約80℃、80℃以上、90℃、約100℃、100℃以上、約150℃、約160℃、160℃以上、約180℃、180℃以上、約200℃、または200℃以上で行われる。別の実施形態においては、脱水は、約40℃、約80℃、約90℃、約100℃、約150℃、約160℃、約180℃、約200℃、または200℃以上で行われる。熱処理の期間および温度は、ヒドロゲルの大きさ、および水和レベルにより、例えば、期間は、約1時間またはそれ以下、約5時間、約10時間、約24時間、数日、または数週間であり得る。熱脱水は、任意の環境、好ましくは窒素またはアルゴンのような不活性ガス、または真空において行うことができる。熱脱水は、空気またはアセチレンガス、もしくは多くのガス混合物において行うこともできる。熱脱水は、より高い熱脱水率を得るために、既に加熱された環境にヒドロゲルを配置することによってか、または熱脱水の低い率を得るために、ヒドロゲルをゆっくりと加熱することによってのいずれかで行うことができる。熱脱水率は、ヒドロゲルが、1日に付き1%重量の損失、1日に付き10%重量の損失、1日に付き50%重量の損失、1時間に付き1%重量の損失、1時間に付き10%重量の損失、1時間に付き50%重量の損失、1分に付き1%重量の損失、1分に付き5%重量の損失、1分に付き10%重量の損失、1分に付き50%重量の損失、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の量の割合で、水の除去によって重量を失うようにするためであり得る。熱脱水率は、温度が上昇する割合およびヒドロゲルの大きさによる。熱脱水の前、ヒドロゲルの水和レベルは、真空脱水によって低下することができる。熱脱水の後、ヒドロゲルは、再水和のために食塩溶液に配置される。これは、PVAヒドロゲルにおける良いレベルの再水和を引き起こし、ヒトの軟骨または他の親水性表面を接合する場合の高い機械的強度および良い潤滑をもたらす。このヒドロゲルは、その水素結合構造を維持することが期待されるため、水、生理食塩水、または体液における長期間の溶解に供さない。
【0146】
説明および実施例は、PVAヒドロゲル系に対して与えられるが、ポリマー構造の任意のヒドロゲル系、つまり、長鎖分子を有するものに適用することができる。したがって、本発明は、PVAを基材として含むが、これに限定されないヒドロゲル系を提供する。
【0147】
本発明の一態様によると、ポリビニルアルコール(PVA)は、ベースヒドロゲルとして使用することができる。ベースPVAヒドロゲルは、PVA溶液(PVAは、水またはDMSO等の溶媒に溶解することができる)を1回または複数回の凍結融解に供することによって、周知の凍結融解方法で調製することができる。凍結融解方法において使用されるPVA溶液は、PEGのような他の成分を含有し得る。ベースPVAヒドロゲルは、PVA溶液の放射線架橋によっても調製することができる。PVAヒドロゲルを調製するための別の方法を使用して、高温でPVA溶液と(PEG)等のゲル化剤を混合し、室温まで冷却することができる。
【0148】
一実施形態においては、ヒドロゲルは、立方体形状、円筒形状、直角プリズム形状、または移植片の形状等の任意の形状であり得る。
【0149】
別の実施形態においては、NIPAAmをベースヒドロゲルとして使用することができる。ベースNIPAAmヒドロゲルは、NIPAAm溶液の放射線架橋によって調製することができる。代替として、Lowman et al.によって記載される方法を使用することができる。
【0150】
別の実施形態においては、位相ゲル(TP)をベースヒドロゲルとして使用することができる。ベースTPヒドロゲルは、Tanaka et al.によって記載される方法で調製することができる(Progress in Polymer Science,2005,30:1−9を参照)。TPゲルにおけるポリマー鎖は、個々の鎖に沿ってスライドしている架橋剤によって柔軟に結合する。
【0151】
以下の実施形態においては、ナノ複合(NC)ゲル構造をベースヒドロゲルとして使用することができる。ベースNCヒドロゲルは、Tanaka et al.によって記載される方法で調製することができる(Prog.Polym.Sci 2005,30:1−9を参照)。
【0152】
一部の実施形態においては、脱水ヒドロゲルをベースヒドロゲルとして使用することができる。脱水のレベルは、ベースヒドロゲルが99%〜1%の水、より好ましくは99%〜5%の水、より好ましくは99%〜25%の水、より好ましくは99%〜50%水、より好ましくは99%〜75%のヒドロゲル、より好ましくは約70%(wt)の水、または80%(wt)の水を含有するように制御することができる。
【0153】
ヒドロゲルの含水量は、その平衡水和レベルとその脱水レベルの間の重量変化を測定することによって判断することができる。
【0154】
一部の実施形態においては、水中のPVA/PAA/PEGの高温の溶液は、室温まで冷却され、「ゲルとしての」形態において使用される。
【0155】
本発明の一態様によると、PVA−PAA−PEGヒドロゲルは、PEGを除去するために、水、脱イオン水、食塩溶液、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液、または食塩水に浸漬される。該工程は、脱PEG工程と称される。脱PEGの間、ヒドロゲルは、水も吸収し、平衡含水量に近づく。したがって、脱PEGも、再水和工程であり得る。
【0156】
別の実施形態においては、脱水ヒドロゲルは、再水和される。一部の実施形態においては、再水和ヒドロゲルは、ヒドロゲルが脱水ステップの前に含有していた水より少ない水を含有する。
【0157】
一部の実施形態においては、ヒドロゲル寸法は、医療装置の機械加工を可能にするために十分大きい。
【0158】
ヒドロゲルの脱水は、様々な方法によって得ることができる。例えば、ヒドロゲルは、水を出すために、室温または高温で真空に配置し、脱水を引き起こすことができる。真空の量は、ヒドロゲルが脱水の間に配置される真空チャンバに、空気または不活性ガスを添加することによって低減することができる。ヒドロゲルの脱水は、それを室温または高温で空気または不活性ガスに保持することによって得ることもできる。空気または不活性ガスにおける脱水は、室温以下の温度で行うこともできる。多くの実施形態においては、脱水が高温で行われる場合、温度をヒドロゲルの融点以下に保持することが必要である。しかしながら、ヒドロゲルの融点は、脱水ステップの間に上昇し得、脱水が進むにつれて、より高い温度に上昇できるようにする。ヒドロゲルの脱水は、ヒドロゲルを溶媒に配置することによって行うこともできる。この場合、溶媒は、水をヒドロゲルから追い出す。例えば、PVA−PAAヒドロゲルを低分子量PEG(100g/mol以上、約300〜400g/mol、約500g/mol)に配置することによって、PVA−PAAヒドロゲルの脱水を引き起こすことができる。この場合、PEGは、純粋な溶液として、または溶液において使用することができる。PEG濃度が高いほど、脱水の程度が高くなる。溶媒脱水も高温で行うことができる。これらの脱水方法は、互いに組み合わせ使用することができる。
【0159】
ヒドロゲルの再水和は、生理食塩水、水、脱イオン水、食塩水等の溶液、または水溶液もしくはDMSOを含有する水において行うことができる。
【0160】
一部の実施形態においては、ヒドロゲルは、医療装置に形付けられ、その後脱水される。その後、脱水移植片は、再水和される。医療移植片の最初の大きさ、および形状は、脱水によって生じた収縮およびその後の再水和によって生じた膨張(ほとんどの実施形態においては、脱水収縮は、再水和膨張より大きい)によって、ヒトの関節において使用できる所望の移植片の大きさと形状が得られるように調整される。
【0161】
ある実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルは、膝用の腎臓形状の挿入装置、腰用のカップ形状の挿入装置、肩用の浅いくぼみのある形状の挿入装置、任意のヒトの関節に対する挿入装置のための他の形状等、医療装置として作用するための所望の形状に機械加工することができる。また、PVA−PAAヒドロゲルの機械加工により、関節にあるか、または手術の間に執刀医によって調製されるかいずれかの軟骨欠陥を充填するための円筒、立方形、または他の形状が得ることができる。
【0162】
PVA−PAAヒドロゲル医療装置は、膝関節、腰関節、肩関節、肘関節、ならびに上部および下部の四肢関節等のヒトの関節において浮遊関節移植片として作用する、ユニスペーサ等の挿入装置であり得る。
【0163】
一部の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルは、ヒドロゲルを脱水するために100%のPEGに配置される。その後、脱水ゲルは、再水和のために食塩溶液に配置される。この工程は、ゲルの平衡含水量を低下させるため、ヒドロゲルの機械的特性をさらに改善する。
【0164】
他の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルは、制御された脱水のためにPEG水溶液に配置され、その後、生理食塩水において再水和される。PEG水溶液の濃度は、ヒドロゲルの脱水の所望のレベルを得るために調整することができる。より高度の脱水により、機械的特性のより多くの改善が提供され、より低い脱水では、改善は少なくなる。一部の用途において、より低い剛性を得ることが望ましいため、より低いPEGおよび/または水濃度の溶液を脱水工程に使用することができる。
【0165】
一部の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルは、室温または高温で真空中で脱水される。真空脱水は、約10℃、約10℃以上、約20℃、約30、40、50、60、75、80、90℃、約100℃、または100℃以上、または130℃、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の温度で行うことができる。
【0166】
一部の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルの真空脱水は、脱水の所望のレベルが得られるまで、まず室温で行われ、その後、温度は、ヒドロゲルをさらに脱水するために上昇させる。温度は、好ましくは約100℃以上、160℃以上または以下、例えば、約80℃以上から約260℃まで上昇させる。
【0167】
一部の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルは、脱水のために、空気または不活性ガス、もしくは不活性ガスの部分的な真空において加熱される。
【0168】
これらの実施形態の一部においては、PVA−PAAヒドロゲルは、空気または不活性ガスにおける加熱の前に真空脱水される。
【0169】
一部の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルの加熱は、ゆっくりと、例えば、約1℃/分未満、約1℃/分以上、2、5、10℃/分、またはそれより速く、行われる。遅い加熱速度により、一部のPVAヒドロゲル製剤では、高い加熱速度より強いゲルが得られる。
【0170】
ほとんどの実施形態においては、完成した医療装置は、包装され、滅菌される。
【0171】
一部の実施形態においては、ヒドロゲルは、脱水ステップに供される。脱水は、空気中、または真空中、またば高温で(例えば、160℃以上または以下での加熱、例えば、約80℃以上から約260℃)行われる。脱水は、水の損失を引き起こすため、重量の低下に伴う体積の低下につながる。重量損失は、水の損失のためである。一方、体積の低下は、水の損失またはヒドロゲルのさらなる結晶化のためであり得る。一部の実施形態においては、脱水は、ヒドロゲルを低分子量ポリマーに配置することによって行われる(例えば、PVA−PAAヒドロゲルをPEG溶液に配置する)。場合によっては、脱水は、水の損失によって生じるが、ほとんどの場合、ヒドロゲルによる非溶媒の摂取もある。したがって、ヒドロゲルの重量変化は、水の損失および非溶媒の摂取の合計である。この場合の体積における変化は、水の損失、非溶媒の摂取、ヒドロゲルのさらなる結晶化、または水が細孔を充填していた空間を占領していなかった非溶媒の多孔質構造の部分的な崩壊のためである。
【0172】
一部の実施形態においては、ヒドロゲルは、金属片に付着する。金属片は、ヒドロゲル移植片を定位置に固定するための、体への骨の侵入に使用される多孔質の裏面である。ヒドロゲルへの金属片付着は、多孔質表面を、それがヒドロゲルに接触する気質上に有することによって得られ、多孔質表面は、ゲル化ヒドロゲル溶液(例えば、高温のPVA−PAAおよび/または水中のPEG混合物)によって浸潤することができ、溶液がヒドロゲルを形成する場合、ヒドロゲルは、多孔質空間を充填することによって、金属片と相互に連結することができる。
【0173】
一部の実施形態においては、複数の位置への体内のヒドロゲルによる固定に対して、2つ以上の金属片がヒドロゲルに付着し得る。
【0174】
一部の実施形態においては、ヒドロゲル/金属片構築物は、溶媒脱水、非溶媒脱水、照射、包装、滅菌等の、上述される処理ステップの間に使用することができる。
【0175】
一部の実施形態においては、ヒドロゲルは、ヒドロゲルを作製するために使用される溶液にHAを有するか、および/またはHAをヒドロゲルに拡散するかのいずれかによって、ヒアルロン酸(HA)を含有する。一部の実施形態においては、HA含有ヒドロゲルは、放射を受ける。照射は、真空脱水、非溶媒脱水、再水和、および/または加熱等の処理ステップの前、後、または最中に行うことができる。照射は、ヒドロゲルマトリクスを架橋し、一部の実施形態においては、HAとの共有結合を形成する。HAの一部のヒドロゲルへの添加は、ヒドロゲル移植片の潤滑性を増加させる。大幅に減少した含水量を含有することは、PVA−PAAヒドロゲルにとって有利となり得る。
【0176】
一部の実施形態においては、水和ヒドロゲル移植片は、ヒドロゲルを部分的に融解し、より多くの摂取および潤滑性によって改良できるように表面をわずかに加熱する。
【0177】
一部の実施形態においては、電子レンジを使用してPVA溶液を調製することができる。PVA粉末は、水に配置し、混合物は、溶液を形成するために電子レンジで加熱される。
【0178】
一部の実施形態においては、ヒドロゲルの熱脱水または加熱は、電子レンジで行われる。
【0179】
本発明の一実施形態によると、PVA−PAAゲルは、PVA粉末等のポリマー材料を提供するステップと、室温以上の温度(約50℃〜60℃等)で水を混合し、それによって、溶液を形成するステップと、溶液を少なくとも1回の凍結融解サイクルに供するか、約80℃等の融解温度以下の温度まで加熱するステップと、加熱した溶液を室温等の大気温度まで冷却し、それによって、ヒドロゲル(概して均一であり、ヒドロゲル粒子も含む場合がある)を形成するステップと、および/またはヒドロゲルを脱水し、それによって、PVA−PAAヒドロゲルを形成するステップを含む工程によって調製される。
【0180】
本発明の実施形態および態様は、以下も含む。
1.脱水後に再水和することが可能なPVAヒドロゲルであって、PVAヒドロゲルは、脱水後に再水和することが可能であり、a)脱水は、例えば、約34%以上、ヒドロゲルの重量を減少させ、b)再水和の結果は、例えば、少なくとも約46%、再水和ヒドロゲルの平衡含水量において増加する。
2.二軸配向を有するPVAヒドロゲル
3.一軸配向を有するPVAヒドロゲル
4.高い最大抗張力を有するPVAヒドロゲル
5.水および/または1つまたはそれ以上の他の成分(例えば、PEGまたは塩)を含有するPVAヒドロゲルの脱水であって、
a.成分は、PEG等の非揮発性であり、
b.成分は、水と少なくとも部分的に混和性であり、
c.ヒドロゲル重量の少なくとも0.1%は、PEG、炭化水素等の1つまたはそれ以上の非揮発性成分を構成し、
d.成分は、PEO、プルロニック、アミノ酸、プロテオグリカン、ポリビニルピロリドン、多糖類、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、等の水混和性ポリマーであり、
e.成分は、PEG、塩、NaCl、KCl、CaCl2、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、アミノ酸等の群より選択され、
f.成分は、PEGであって、
i.異なる分子量のPEGまたは
ii.PEGの混合物であり、
g.脱水は、非溶媒に配置することによって行われ、
i.非溶媒は、PEG、アルコール(イソプロピルアルコール等)、アセトン、飽和食塩水、アルカリ金属の塩の水溶液、ビタミン、カルボン酸等から選択されるか、または
ii.非溶媒は、水、PEG、ビタミン、ポリマー、プロテオグリカン、カルボン酸、エステル等の2つ以上の成分を含有し、
h.脱水は、ヒドロゲルを空気に放置することによって行われ、
i.脱水は、ヒドロゲルを真空に配置することによって行われ、
j.脱水は、ヒドロゲルを室温で真空に配置することによって行われ、
k.脱水は、ヒドロゲルを高温で真空に配置することによって行われ、
l.脱水は、ヒドロゲルを高温で空気または不活性ガスに配置することによって行われ、
i.加熱速度は遅い、
ii.加熱速度は早いか、または
iii.加熱は、真空または空気脱水の後に行われ、
m.脱水ヒドロゲルは、
i.水、食塩溶液、リンゲル溶液、食塩水、緩衝液等に配置することによってか、
ii.相対湿度チャンバに配置することによってか、または
iii.室温または高温で配置することによって、
再水和される。
【0181】
上述される、各組成物および付随の態様、ならびに各方法および付随の態様は、本明細書において包含される教示と一致する方法で、別のものと組み合わせることができる。本発明の実施形態によると、すべての方法および各方法におけるステップは、本明細書において包含される教示と一致する方法で、任意の順序で適応し、何度も繰り返すことができる。
【0182】
定義:
「超臨界流体」という用語は、例えば、超臨界プロパン、アセチレン、二酸化炭素(CO2)の当技術分野で周知のものを指す。これに関連して、臨界温度は、その温度以上では、圧力のみでガスが液化することができない温度である。物質が臨界温度で液体と平衡状態にあるガスとして存在できる圧力が、臨界圧力である。超臨界流体条件は、概して、流体が、超臨界流体およびそれによる超臨界流体混合物が得られる、そのような温度およびそのような圧力に曝されることを意味し、該温度は、CO2に対して31.3℃である超臨界温度であり、該圧力は、CO2に対して73.8バールである超臨界圧力である。
【0183】
「加熱」という用語は、所望の加熱温度で、またはその温度までのポリマーの熱処理を指す。一態様においては、加熱は、所望の加熱温度まで1分に付き約10℃の率で行うことができる。別の態様においては、加熱は、所望の期間、所望の加熱温度で行うことができる。すなわち、加熱ポリマーは、所望の期間、所望の加熱温度でアニールまたは加熱し続けることができる。所望の加熱温度で、またはその温度までの加熱時間は、少なくとも1分〜48時間から数週間の長さであり得る。一態様においては、加熱時間は、約1時間〜約24時間である。加熱温度は、本発明による加熱の熱的条件を指す。
【0184】
「アニール」という用語は、ヒドロゲルをそのピーク融点以下で加熱することを指す。アニール時間は、少なくとも1分から数日間の長さであり得る。一態様においては、アニール時間は、約4時間〜約48時間、好ましくは24〜48時間、より好ましくは約24時間である。「アニール温度」は、本発明によるアニールの熱的条件を指す。ある実施形態においては、「アニール」という用語は、一種の熱処理を指す。
【0185】
製造の任意のステップにおいて、ヒドロゲルは、架橋するための電子ビームまたはガンマによって照射することができる。照射は、空気、不活性ガス、感作ガス、または水、食塩溶液、ポリエチレングリコール溶液等の流体媒体において行うことができる。放射線量レベルは、1kGy〜10,000kGy、好ましくは25kGy、40kGy、50kGy、200kGy、250kGy、またはそれ以上である。
【0186】
数値および範囲との関係において、「約」または「およそ」という用語は、本明細書において包含される教示から当業者に明らかである、架橋、耐クリープ性、潤滑性および/または靱性の所望の程度を有する等、本発明を意図されたように行うことができるように、列挙された値または範囲に近似するか、または近い値または範囲を指す。これは、少なくとも一部において、ポリマー組成物の様々な特性のためである。そのため、これらの用語は、定誤差から生じる値を超える値を包含する。これらの用語は、不明確なものを明確にする。
【0187】
本発明の一態様においては、一種の放射、好ましくはイオン化である「照射」を使用する。本発明の別の態様によると、約25kGy〜約1000kGyの範囲に及ぶイオン化放射線量を使用する。放射線量は、約25kGy、約50kGy、約65kGy、約75kGy、約100kGy、約150kGy、約200kGy、約300kGy、約400kGy、約500kGy、約600kGy、約700kGy、約800kGy、約900kGy、または約1000kGy、または1000kGy以上、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の値である。好ましくは、放射線量は、約25kGy〜約150kGy、または約50kGy〜約100kGyであり得る。ガンマおよび/または電子ビームを含む、これらの種類の放射は、細菌、ウイルス、または接合部分を含む医療移植片を汚染する可能性がある他の微生物因子を消滅または不活性化するため、生成物の滅菌が得られる。本発明による、電子またはガンマ照射であり得る照射は、酸素を含有する空気雰囲気において行うことができ、雰囲気における酸素濃度は、少なくとも1%、2%、4%、または最大約22%、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の値である。別の態様においては、照射は、不活性雰囲気において行うことができ、雰囲気は、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等、またはそれらの組み合わせから成る群より選択されるガスを含有する。照射は、アセチレン、または混合物等の感作ガス、もしくは不活性ガスを有する感作ガスまたは不活性ガスにおいて行うこともできる。照射は、真空において行うこともできる。照射は、室温、または室温とポリマー材料の融点との間、もしくはポリマー材料の融点以上で行うこともできる。照射ステップの後、ヒドロゲルは、アニールのために、融解、またはその融点以下の温度で加熱することができる。これらの照射後熱処理は、空気、PEG、溶媒、非溶媒、不活性ガスおよび/または真空において行うことができる。また、照射は、少量ずつの放射線量で行うことができ、一部の実施形態においては、これらの連続増分照射は、熱処理で中断することができる。連続照射は、約1、10、20、30、40、50、100kGy、またはそれ以上の放射線量の増分で行うことができる。各増分または一部の増分の間で、ヒドロゲルは、融解および/またはアニールステップによって熱処理することができる。照射後の熱処理は、主に、照射によって作製されたヒドロゲルにおける残留遊離基を低減または除去、および/または結晶物質を除去、および/またはヒドロゲルに存在し得る任意の抽出物の除去を促進するためである。
【0188】
本発明の他の態様によると、照射は、感作雰囲気において行われる場合がある。これは、ポリマーに拡散するために十分小さい分子の大きさであり、多官能性移植部分として照射に対して作用するガス状物質を含む場合がある。実施例は、置換または非置換ポリ不飽和炭化水素、例えば、アセチレン等のアセチレン炭化水素、ブタジエンおよび(メタ)アクリレートモノマー等の共役または非共役オレフィン炭化水素、クロロ−トリ−フルオロエチレン(CTFE)、または特に好ましいアセチレンを有する一塩化硫黄を含む。本明細書において、「ガス状」は、感作雰囲気が、照射温度において、その臨界温度以上または以下のいずれかの気相中にあることを意味する。
【0189】
本発明によると、ポリマー材料により接合部分を形成する片である「金属片」は、例えば、金属である。本発明による、ポリマー材料と機能的関係にある金属片は、例えば、コバルトクロム合金、ステンレス鋼、チタニウム、チタニウム合金、またはニッケルコバルト合金で作製することができる。
【0190】
本発明によると、ポリマー材料により接合部分を形成する片である「非金属片」は、例えば、非金属である。本発明による、ポリマー材料と機能的関係にある非金属片は、例えば、セラミック材料で作製することができる。
【0191】
「空気」を指すか、または含む雰囲気または環境は、反応性および不活性ガスの混合物を有する。空気は、窒素、酸素、CO2、他の不活性ガス(例えば、希ガス)を含む微量の他のガス、水蒸気等を含有する。
【0192】
不活性雰囲気は、十分な純度の1つまたはそれ以上の不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、またはネオン)を含有する環境を指し、雰囲気が不活性であり、そのような純度のガスは市販される。「不活性雰囲気」または「不活性環境」は、通常、約1%の酸素以上を有さず、より好ましくは、ポリマー材料における遊離基が、滅菌の間、問題のある酸化なしに架橋を形成することができるように条件を提供する。不活性雰囲気は、条件によっては装置の問題のある酸化を引き起こし得る、C2のいくらかの悪影響を回避するために使用される。窒素、アルゴン、ヘリウム、またはネオン等の不活性ガスは、イオン化放射でポリマー医療移植片を滅菌する際に使用することができる。
【0193】
窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、または真空等の不活性大気条件も、イオン化放射による医療移植片の接合部分を滅菌するために使用される。
【0194】
不活性条件も、不活性流体、不活性ガス、またはシリコーン油等の不活性液体媒体の使用を指す場合がある。
【0195】
「真空」という用語は、大量のガスを有さない環境を指す。真空は、O2を避けるために使用される。真空条件は、イオン化放射によって移植片を滅菌するために使用することができる。真空条件は、市販の真空ポンプを使用して作製することができる。真空条件は、イオン化放射によって医療移植片における接合部分を滅菌する場合にも使用することができる。
【0196】
「滅菌」に関して、本発明の一態様は、PVA−PAAヒドロゲル等のPVAヒドロゲルを含有する医療移植片の滅菌の工程を開示する。工程は、例えば、約25〜70kGyの範囲に及ぶ線量レベルで、ガンマまたは電子ビーム放射でのイオン化滅菌、もしくはエチレンオキシドまたはガスプラズマでのガス滅菌によって、医療移植片を滅菌するステップを含む。
【0197】
本発明の別の態様は、PVA−PAAヒドロゲル等のPVAヒドロゲルを含有する医療移植片の滅菌の工程を開示する。工程は、例えば、約25〜200kGyの範囲に及ぶ線量レベルで、ガンマまたは電子ビーム放射でのイオン化滅菌によって、医療移植片を滅菌するステップを含む。滅菌の線量レベルは、照射で使用される標準レベルより高い。これは、滅菌の間の医療移植片の架橋またはさらなる架橋を可能にするためである。
【0198】
「接触」という用語は、1つの成分の別のとの物理的接近、触れること、混合、または混ぜることを含む。例えば、PAA溶液と接触するPVA溶液。
【0199】
本明細書において記載される「ヒドロゲル」という用語、または「PVAヒドロゲル」という用語は、「PVA−PAAヒドロゲル」、「PVA−PAA−PEGヒドロゲル」、「PVA−PEG−PAAヒドロゲル」のすべてのPVAベースのヒドロゲル、および脱水ヒドロゲルを含む、本明細書において開示されるすべての他のヒドロゲル組成物を包含する。PVAヒドロゲルは、不足する前に、機械的エネルギー等の大量のエネルギーを吸収することができる、吸収された水を含有する親水性ポリマーのネットワークである。
【0200】
「耐クリープ性」(形容詞:耐クリープ性の)という用語は、概して、連続負荷におけるポリマー鎖の粘弾性流によって生じる、継続的伸展または変形に対する耐性を指す。
【0201】
「潤滑性」(形容詞:潤滑性の)という用語は、概して、ヒドロゲルの物理的特性を指し、例えばヒドロゲル表面の滑りやすさの程度であり、同じ表面の親水性にも関連する。
【0202】
上述される、各組成物および付随の態様、ならびに各方法および付随の態様は、本明細書において包含される教示と一致する方法で、別のものと組み合わせることができる。本発明の実施形態によると、すべての方法および各方法におけるステップは、本明細書において包含される教示と一致する方法で、任意の順序で適応し、何度も繰り返すことができる。
【0203】
本発明は、いずれの方法によっても本発明を限定しない以下の実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0204】
ヒドロゲルにおける平衡含水量(EWC)の定義
以下の方法を使用して、ヒドロゲルにおける平衡含水量(EWC)を判定した。
【0205】
試料は、まず、いずれの非結合分子の除去および平衡水和のために、攪拌しながら食塩溶液に浸漬させた。ゲルがいつ平衡水和に到達したかを判定するために、それらの重量変化を毎日記録し、食塩溶液を新しい食塩溶液と交換した。平衡水和レベルに到達した後、試料の平衡水和重量を記録した。その後、ゲル試料は、重量における有意な変化が検出されなくなるまで、90℃で空気対流オーブンで乾燥させた。その後、ゲルのEWCは、水和と脱水重量との間の差異に対する平衡水和状態での重量の比率によって計算した。
【0206】
実施例1.15%PEGを含む、7:3のPVA-PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終ゲルの平衡含水量は、89.63±0.17%であった。
【0207】
実施例2.15%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、脱水によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、室温で真空下で脱水した。その後、真空脱水ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終ゲルの平衡含水量は、89.17±0.11%であった。
【0208】
実施例3.15%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、脱水によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ヒドロゲル試料を、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終ゲルの平衡含水量は、72.93±1.04%であった。
【0209】
実施例1〜3に記載される様々な処理後の3回の凍結融解による、15%PEGを含む15%固形PVA−PAA−PEG混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルを図1に示し、図1(A)は、生理食塩水における再水和後(実施例1)、図1(B)は、真空脱水、その後の生理食塩水における再水和後(実施例2)、および図1(C)は、真空脱水、加熱、その後の生理食塩水における再水和後(実施例3)である。
【0210】
実施例4.15%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;脱PEG;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、ヒドロゲルを鋳型から取り出し、生理食塩水における再水和の間に水と交換することによって、ゲルにおける残留PEGを除去する「脱PEG」工程のために、食塩溶液に配置した。その後、脱PEGPVA−PAAゲルを、脱水によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ヒドロゲル試料を、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、42.40±0.48%であった。
【0211】
表1は、実施例1〜4の処理の各段階における3回の凍結融解サイクルによる、15%PEGを含む15%固形PVA−PAA−PEG混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルの重量変化および平衡含水量(EWC)を示す。
【0212】
【表1】
【0213】
表1は、PEGの存在下において、加熱はEWCを73%にまでしか減少させないが、PEGの非存在下において、減少はより大きかった(EWC=42%)ことも示す。PEGは、熱処理の間、細孔が崩壊しないよう保護した。
【0214】
実施例5.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、84.11±6.77%であった。
【0215】
実施例6.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、脱水によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、73.98±0.14%であった。
【0216】
実施例7.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、脱水によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ヒドロゲル試料を、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、36.50±0.37%であった。
【0217】
実施例8.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、PEG浸漬によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、攪拌しながら100%PEG400に浸漬させた。その後、PEG−脱水PVA−PAAゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、85.54±0.11%であった。
【0218】
実施例5〜8に記載される様々な処理後の3回の凍結融解による、15%固形PVA−PAA混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルを図2に示し、図2(A)は、生理食塩水における再水和後(実施例5)、図2(B)は、真空脱水、その後の生理食塩水における再水和後(実施例6)、図2(C)は、真空脱水、加熱、その後の生理食塩水における再水和後(実施例7)、および図2(D)100%PEG400における浸漬、その後の生理食塩水における再水和後(実施例8)である。
【0219】
実施例9.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、ヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、攪拌しながら100%PEG400に浸漬させた。その後、PEGドープPVA−PAAゲルを、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、83.81%であった。
【0220】
実施例10.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、ヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、攪拌しながら100%PEG400に浸漬させた。その後、PEGドープPVA−PAAゲルを、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、69.34±1.28%であった。
【0221】
表2は、実施例5〜10の処理の各段階における3回の凍結融解による、15%固形PVA−PAA混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルの重量変化および平衡含水量(EWC)を示す。
【0222】
【表2】
【0223】
実施例1〜4において見られるように、存在する場合、PEGは、熱処理の間、細孔が崩壊しないよう保護した。
【0224】
実施例11.15%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の30%全ポリマー;室温ゲル化;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=50,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における30w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を室温で24時間ゆっくりと冷却した。ゲル化後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、74.57±0.32%であった。
【0225】
実施例12.15%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の30%全ポリマー;室温ゲル化;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=50,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における30w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を室温で24時間ゆっくりと冷却した。ゲル化後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、57.66±1.40%であった。
【0226】
実施例13.15%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;室温ゲル化;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を室温で24時間ゆっくりと冷却した。ゲル化後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、77.17±0.05%であった。
【0227】
実施例14.15%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;室温ゲル化;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を室温で24時間ゆっくりと冷却した。ゲル化後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、57.58±0.92%であった。
【0228】
表3は、実施例11〜13の処理の各段階における1日の室温ゲル化による、15%PEGを含む27%固形PVA−PAA−PEG混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルの重量変化および平衡含水量(EWC)を示す。
【0229】
実施例15.20%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの20w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、83.33±0.09%であった。
【0230】
【表3】
【0231】
実施例16.20%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの20w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、83.25±0.27%であった。
【0232】
実施例17.20%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの20w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、66.72±0.19%であった。
【0233】
表4は、実施例15〜17の処理の各段階における3回の凍結融解による、20%PEGを含む27%固形PVA−PAA−PEG混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルの重量変化および平衡含水量(EWC)を示す。
【0234】
実施例18.20%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;室温ゲル化
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの20w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型は、室温で24時間ゆっくりと冷却した。ゲル化後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、平衡再水和まで生理食塩水にに浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、91.61±0.06%であった。
【0235】
【表4】
【0236】
実施例19.20%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;室温ゲル化;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの20w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型は、室温で24時間ゆっくりと冷却した。ゲル化後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、82.12±0.10%であった。
【0237】
実施例20.20%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;室温ゲル化;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの20w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型は、室温で24時間ゆっくりと冷却した。ゲル化後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、63.71±0.42%であった。
【0238】
【表5】
【0239】
表5は、実施例18〜20の処理の各段階における1日の室温ゲル化による、20%PEGを含む27%固形PVA−PAA−PEG混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルの重量変化および平衡含水量(EWC)を示す。
【0240】
実施例21.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、脱水によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、71.67±1.00%であった。
【0241】
実施例22.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、PEG浸漬によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、攪拌しながら100%PEG400に浸漬させた。その後、PEG−脱水PVA−PAAゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、76.21±0.10%であった。
【0242】
実施例23.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬;真空脱水.
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、ヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、攪拌しながら100%PEG400に浸漬させた。その後、PEGドープPVA−PAAゲルを、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、74.64±0.19%であった。
【0243】
実施例24.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、ヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、攪拌しながら100%PEG400に浸漬させた。その後、PEGドープPVA−PAAゲルを、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、55.68±1.52%であった。
【0244】
【表6】
【0245】
表6は、実施例21〜24の処理の各段階における3回の凍結融解による、27%固形PVA−PAA混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルの重量変化および平衡含水量(EWC)を示す。
【0246】
実施例25.実施例1〜24によって生成されたPVAゲルのクリープ試験
上記の実施例によるヒドロゲルシートサンプルは、直径17mmのトレフィンで機械加工し、クリープ試験の開始前少なくとも24時間、40℃で食塩溶液において平衡化させた。
【0247】
ヒドロゲルクリープ試験は、MTS(Eden Prairie、MN)858Mini Bionix油圧サーボ機で行った。直径約17mm、高さ5〜10mmの円筒形ヒドロゲル試料を、試験用ステンレス鋼圧縮板の間に配置した。試験前に、上下の圧縮板を引き合わせ、この位置でLVDT変位をゼロに合わせた。試料を下板に配置した後、上板を、クリープ試料の上面に接触するまで下げた。MTSのLVDTから読み取れる変位を試料の高さとして記録した。圧縮負荷を、最初は、50ニュートン/分(N/分)の率で100ニュートン(N)のクリープ負荷まで上昇させた。この負荷は、10時間一定に維持した。その後、負荷を、10Nの回復負荷まで50N/分の率に低下させた。この負荷も、10時間一定に保持した。時間、変位、および負荷値は、負荷および無負荷サイクルの間、2秒ごとに記録した。データを圧縮歪み対時間として描画し、上述の異なるヒドロゲル製剤のクリープ挙動を比較した(図3参照)。
【0248】
クリープ歪みは、(1)100Nまでの負荷の上昇の完了時の歪み、(2)10時間の負荷後の全歪み、(3)10時間の負荷後の粘弾性歪み、(4)100〜10Nの無負荷後の弾性回復、(5)10N以下の10時間の無負荷後の粘弾性歪み回復、(6)10N以下の10時間の無負荷後の全歪み回復、および(7)10時間の負荷、その後の10N以下の10時間の無負荷後の全歪み、として計算した(図3参照)。図3は、クリープ挙動が、10時間の負荷および10時間の無負荷サイクルのそれぞれに対する歪対時系列で特徴付けられることを示す。表7は、弾性および粘塑性歪みが、実施例25において使用されたヒドロゲルサンプルによるクリープ実験の負荷および無負荷段階の間に得られたことを示す。
【0249】
【表7】
【0250】
図4〜6は、表7に示されるサンプル番号1〜10に関して、クリープ挙動が、10時間の負荷および無負荷サイクルのそれぞれに対する歪対時系列で特徴付けられることをさらに示す。図7は、実施例24において記載されるクリープ試験から得られたPVAヒドロゲルの総クリープ歪みを示し、平衡含水量の機能として描画される。
【0251】
実施例26.実施例1〜24によって生成されたPVAゲルの摩擦係数測定
摩擦係数は、CoCrに対して、40℃でDI水において、上記の方法によって形成されたヒドロゲルサンプルに対して測定した。アルミニウムの槽を、ペルチェプレートに載せ、ヒドロゲルサンプルを浴槽に配置した。この試験では、CoCr環をせん断レオメータ(AR−1000、TA Instruments Inc.)の上部の材料固定具に載せた。CoCrは、0.11/sの一定のせん断率でヒドロゲルサンプルに衝突した。ねじり負荷を、約1、2、4、6、および8Nの定格負荷の下で記録した。KavehpourおよびMcKinley(Kavehpour,H.P. and McKinley,G.H.,Tribology Letters,17(2),pp.327−335,2004参照)の方法を使用して、ヒドロゲルとCoCr合わせ面との間の摩擦係数を計算することができる。
【0252】
実施例27.異なる作製方法による同じ組成物を有するPVAゲルの比較(PVA−PAAゲル化の間に存在するPEG対PVA−PAAゲル化後に連続的に組み込まれたPEG)
実施例1(PEGがPVA−PAAゲル化の間に存在する、「PVA−PAA−PEGゲル」として示される)および実施例8(PEGが、PVA−PAAゲル化後に連続的に組み込まれる、「組み込まれたPEGを有するPVA−PAAゲル」として示される)において記載される方法で作製されたPVAヒドロゲルは、さらに処理、例えば、生理食塩水における再水和または熱処理による脱水される前に、PVA、PAA、およびPEGのすべての3つの成分を基本的に含有する。しかしながら、PEGがPVAゲル化の期間に存在するか、または既に形成されたPVAゲルに組み込まれるかにより、図8および9に見られるように、わずかに異なるPVAマイクロ構造が得られる。
【0253】
図8は、PEGがゲル化工程の期間にPVAおよびPAA溶液に存在した方法(実施例1)によって作製された再水和PVAヒドロゲルの共焦点顕微鏡写真を示す(尺度図=20μm)。図9は、PEGが予め作製されたPVA−PAAゲルに連続的に組み込まれた方法(実施例8)によって作製された再水和PVAヒドロゲルの共焦点顕微鏡写真を示す(尺度図=20μm)。図8および9に示されるように、両方のゲルは、PVAおよびPAAの同じ組成率(7:3)を含有する。
【0254】
図1におけるPVA−PAA−PEGゲルは、様々な形状および大きさの細孔を有する遥かに厚い、水かき様のポリマーマトリクスを示す、図2における組み込まれたPEGを有するPVA−PAAゲルと比較し、より微細なPVA支柱に囲まれたより均一な大きさの細孔を示す。PVA−PAAゲル化の間にPEGの存在は、さらに処理されたゲルにおける最終含水量を増加させる傾向があり、それは、密接に耐クリープ性に影響を与える。図3は、実施例3および9のそれぞれにおいて記載される方法によって熱処理されたそのようなPVAヒドロゲルにおける耐クリープ性の比較を示す。PVA−PAA−PEGゲルは、組み込まれたPEGを有するPVA−PAAゲルと比較して、より高い弾性反応を有するわずかに高い総耐クリープ性、および同じ最終クリープ歪みを得た。
【0255】
図10は、PEGがPVAゲル化の間に存在したPVA−PAA−PEGゲル、およびPEGがPVAゲル化後に組み込まれた、組み込まれたPEGを有するPVA−PAAゲルの耐クリープ性を示す。両方のゲルは、クリープ変形試験の前に、熱処理し、生理食塩水において再水和させた。
【0256】
実施例28.PVAヒドロゲルへのPAAの拡散
本実施例は、形成されたPVAゲルをPAA溶液に浸漬させることによって、PAAをPVAゲルに含むための別の方法を示す。PEGは、同時にPAA溶液に混合することができるか、またはPAA吸収PVAゲルは、PEG100%または溶媒を含有する他のPEGに連続的に浸漬させることができる。
【0257】
30gのポリ(ビニルアルコール)(PVA、MW=115,000)を、170gの冷脱イオン水に添加し、約2時間加熱しながら攪拌し、完全に溶解した15%(wt)PVA溶液を調製した。溶解したPVA溶液にガスを抜くために、90℃の空気対流オーブン内で維持した。PEGを空気対流オーブン内で90℃に加熱した。66gの高温のポリ(エチレングリコール)(PEG、MW=400)(約90℃)を、加熱しながら機械的攪拌によって、ゆっくりと高温のPVA溶液に混合した。PVA−PEGのゲル化溶液を、90℃に維持された異なる大きさ鋳型に注入した。鋳型を絶縁毛布で覆い、放置し、室温まで冷却した。溶液は、室温まで冷却した後、ヒドロゲルを形成した。ヒドロゲルを鋳型から取り出し、生理食塩水における再水和の間に水を交換することによって、ゲルにおける残留PEGを除去する「脱PEG」工程のために、食塩溶液に配置した。その後、そのような脱PEGゲルを、PAAの拡散のための基礎PVAゲルとして使用した。
【0258】
PVA冷却ゲルは、基礎PVAゲルとして使用することができる。高温の15%PVA水溶液を予熱した鋳型(例えば、鋳型は、約1〜約200℃、好ましくは約25℃〜約150℃、より好ましくは約90℃の温度まで予熱することができる)に注入し、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。1回またはそれ以上の凍結融解サイクルの完了後、ヒドロゲルを鋳型から取り出し、PAA拡散に供した。
【0259】
2つの異なる分子量のPAA(MW=200,000g/mol(99.7%加水分解された)、水中の25w/w%、Polysciences;MW=5,000g/mol、水中の49.24w/w%)は、室温で脱イオン水に溶解し、各分子量のPAAの5%および25%水溶液を調製した。49.24w/w%PAA(MW=5,000g/mol)は、約50%濃度として希釈せずに使用した。脱PEGゲルは、20mm×20mm×14mmの寸法の6つの片に切り、各試料における体積比に対する均一表面を確実にした。各試料は、6つの異なる溶液に浸漬させ、機械的に攪拌した(図11参照)。各試料の重量変化は、拡散工程が平衡に到達するまでモニタした。図11は、6つの異なるPAA水溶液への浸漬によるPAA拡散後の脱PEGPVAヒドロゲルを示し、図11(A)は、25%PAA(MW=200K)溶液、図11(B)は、5%PAA(MW=200K)、図11(C)は、5%PAA(MW=5K)、図11(D)は、25%PAA(MW=5K)、図11(E)は、PAAを有さない脱イオン水(対照)、および図11(F)は、約50%PAA(MW=5K)である。
【0260】
最初は、不透明な脱PEGゲル(図11E参照)は、半透明となり、形状が歪み(図11Aおよび図11F参照)、わずかに不透明(図11D参照)となり、PAAがゲルに拡散し、水がゲルから抽出されたことを示す。PAA拡散の効果は、PAA浸漬の間のPAA濃度およびPAA分子量によって制御することができる。その後、PAA拡散PVAゲルは、さらなる処理に供し、加熱、放射、化学反応等の架橋方法によって、PVAマトリクス内においてPAAを安定させた。
【0261】
表8は、6つの異なるPAA水溶液における浸漬によるPAA拡散後の各脱PEGPVAヒドロゲルの重量変化を示す。
【0262】
【表8】
【0263】
実施例29.様々なPVA:PAA比率、PEGドープまたはPEG混合の25%全ポリマー、その後のゲル化後処理
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA重量の比率は、「PVAのみ」(すなわち、PAAを含有しない)から、各混合物における25w/w%全ポリマー含量を含めて9:1、8:2、7:3と異なった。2種類のゲル、例えば、PEGドープ(1型)、およびPVA:PAAの異なる混合率を有するPEG混合(2型)を使用した。
【0264】
1型−PEGドープゲル:PVA−PAA溶液を予熱したガラスシート状の鋳型に注入し、3回の凍結融解サイクル(マイナス17℃で16時間の凍結、および室温で8時間の融解)に供した。その後、成型されたゲルを100%PEG(浸漬によるPEGドーピング)に浸漬させ、その後、真空脱水し、1時間、自己加圧容器においてアルゴン中で160℃でアニールした。アルゴンガス雰囲気に対して、ゲルを含有する容器を、アニール前に少なくとも5分間、アルゴンガスで浄化した。アルゴン浄化された容器がアニール工程の間、完全に密封されていなかったという出来事があったと考えられる。その結果、サンプルは、100%不活性アルゴンガスにおいてアニールされず、すなわち、サンプルは、アニールの間にアルゴンガス中の残留空気に曝した。
【0265】
2型−PEG混合ゲル:約15w/w%PEG(PVA−PAA混合物における総PEGおよび水の量に対して)を90℃に予熱し、高温のPVA−PAA混合物に添加し、PVA−PAA−PEGの均質溶液/混合物を形成した。得られた均質ポリマー混合物を予熱したガラス鋳型に注入した。その後、成型されたゲルを3回の凍結融解サイクルに供し、その後、真空脱水し、自己加圧容器においてアルゴン下で約160℃でアニールした。各ゲルシートは、脱イオン(DI)水に浸漬させ、残留PEGを除去し、平衡再水和を得た。
【0266】
1型および2型の両方の型における非アニール「PVAのみ」(つまり、PAAを含有しないPVA)ゲルは、凍結融解サイクルの完了後に鋳型から取り出した直後に、ゲルをDI水において再水和することによって作製した。
【0267】
クリープ試験:円筒形のディスクを、直径17mmのトレフィンを使用して、各水和ヒドロゲルシートから切り出した。40℃、24時間のDI水における平衡後、クリープ試験を、複数台機械的テスタ(Cambridge Polumer Group、Boston、MA)で、40℃のDI水槽において行った。ゲルディスクを、40℃のDI水に浸漬させながら、100ニュートン(N)のクリープ負荷まで、50N/分の上昇率でポリカーボネート板の間で圧縮した。負荷は、10時間一定に維持し、その後、10Nの回復負荷まで50N/分の率で減少させた。この負荷も、10時間一定に保持した。時間、変位、および負荷値を、負荷の間、記録した。総クリープ歪みを、結果の代表的な特徴とみなした。
【0268】
平衡含水量(EWC):ヒドロゲルサンプルは、25℃または40℃のいずれかで、少なくとも24時間、脱イオン(DI)水において平衡水和させ、1日真空オーブンで乾燥させ、その後、有意な重量変化が検出されなくなるまで、90℃の空気対流オーブンで乾燥させた。その後ゲルにおけるEWCは、水和と脱水重量との間における差異に対する、平衡水和状態での重量の比率によって計算した。
【0269】
摩擦係数:COF試験は、特注のアルミニウムの槽における平らなヒドロゲルに対して、特注の輪状CoCr環(外径31.2、内径28.8mm、表面粗度Ra=0.08μm)を使用して、40℃のDI水におけるAR2000exレオメータ(TA Instruments、Newark、DE)で行った。サンプルは、試験前に1日、40℃のDI水で平衡化した。トルク、垂直抗力、および速度データは、0.11/sの一定のせん断率での低負荷から高負荷の実行の間に、既定の負荷での2分間の平衡による1、3、5および7Nで90秒記録し、摩擦係数の計算に対して分析した。
【0270】
結果:全体として、PAAをPVAゲルに添加することは、1型および2型のゲルの両方に対するアニール後のEWCを有意に増加させた(図12Aおよび12B、また詳細なデータに関しては表9を参照)。図12Aおよび12Bは、PAA含有PVAヒドロゲル(「PVAのみ;NA」は、PAAなしのPVAのみで作製された非アニールヒドロゲルを示す)のEWCを示す。そのような効果は、25℃(図12A)のDIにおいて平衡化されたものと比較して、EWC測定の前に40℃(図12B)のDIで平衡化されたPVAヒドロゲルに対してより顕著であった。PAAの存在は、非アニールPVAヒドロゲルと同程度の値まで、アニールPVAヒドロゲルのEWCを増加させた。
【0271】
【表9】
【0272】
アニールゲルの耐クリープ性は、EWCの増加によるPAAの存在で低下した(1型および2型の方法のそれぞれによって作製したPAA含有PVAヒドロゲルの典型的なクリープ挙動に関して、図13および14を参照)。それにも関わらず、7:3のPVA:PAA比率を有する1型ゲルを除き、すべてのPAA含有アニール化PVAゲルは、PAAを有さない非アニールPVAゲル(PVAのみ;NA)より優れた耐クリープ性を示した。(PAA含有PVAヒドロゲルの総クリープ歪みの比較に関して、図15を参照)。
【0273】
アニール化PVAゲルの潤滑性は、10:0のゲルより低い、それらのCOF値によって示されるように、1型および2型ゲルの両方に対して、PAAの存在下において有意に改善した(図16および17参照)。図16および17は、1型および2型の方法のそれぞれによって作製されたPAA含有PVAゲルの摩擦係数(COF)を示す。ゲルに存在する最多量のPAAを有する7:3(PVA:PAA)ゲルは、両ゲル型において、8:2または9:1より潤滑性がわずかに低下するようであったが、差異は、統計的に有意ではなかった。ゲルがアニールされたかどうかに関わらず、PAAの存在は、1型PVAのみのゲルによって得ることができる値より有意に低いCOF値をもたらしたことに注意する。9:1のPVA:PAA比率を有する1型ゲルは、COFおよびアニール中の耐クリープ性の変化を最小限にするという点において、本実施例において記載されるゲルの中で最も適した製剤である。
【0274】
実施例30.PEGを有さない7:3のPVA:PAAの比率の25%全ポリマーにおけるアニール前のPEG400ドーピングステップの効果、3回の凍結融解サイクル;真空脱水;および加熱
加熱の間のPAA含有PVAヒドロゲルに存在するPEG400の効果は、EWC、耐クリープ性、および摩擦係数に関して定量化した。PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。7:3のPVA:PAAゲルの25%全ポリマーは、予熱したガラスシート状の鋳型に注入したPVA−PAA溶液を3回の凍結融解サイクル(−17℃での16時間の凍結、および室温での8時間の融解)に供することによって作製した。その後、「PEGドープ」群(実施例29による)をPEG400に浸漬させ(PEGドーピングのために)、その後、真空脱水し、1時間、自己加圧容器においてアルゴン下で160℃でアニールした。アルゴンガス雰囲気に対して、ゲルを含有する容器を、アニール前に少なくとも5分間、アルゴンガスで浄化した。アルゴン浄化された容器がアニール工程の間、完全に密封されていなかったという出来事があったと考えられる。その結果、サンプルは、100%不活性アルゴンガスにおいてアニールされず、すなわち、サンプルは、アニールの間にアルゴンガス中の残留空気に曝された。
【0275】
対照群におけるゲル(非PEGドープ)は、ゲルを鋳型から取り出し、PEGドーピングステップを省略し、その後、アルゴンガス下で同じアニール手段を行った直後に真空脱水した。
【0276】
総クリープ歪み、EWC、およびCOFは、実施例29において記載されるように測定した。ヒドロゲルは、EWC測定のための乾燥の前に、40℃で平衡化した。
【0277】
結果:熱アニール前のPEGドーピングステップは、7:3のPVA:PAA比率を有する1型ゲルのEWCを有意に増加させた(図18参照)。PEGドープゲルの耐クリープ性は、より高いEWCのため、非PEGドープゲルのそれより大幅に劣った。ヒドロゲルの総クリープ歪み、および典型的なクリープ挙動のそれぞれに関して、図18および19を参照。しかしながら、PAA含有1型ゲルにおける熱アニール中のPEGの存在は、非PEGドープヒドロゲルのCOF値とは対照的に、PEGドープヒドロゲルの顕著に低いCOF値によって証明されるように、表面潤滑性を高度に改善した(図20参照)。図20は、本実施例において記載されるPEGドーピングステップの有無にかかわらず作製された、7:3のPVA:PAA比率の25%全ポリマーヒドロゲルの摩擦係数(COF)を示す。
【0278】
実施例31.PEGを有さない19:1のPVA:PAAの比率の25%全ポリマー、pH3.0、3回の凍結融解サイクル;PEGドープ、真空脱水;および加熱
5.625gの純粋なPAAを含有する22.5gのPAA(MW=200,000g/mol、水中で25%固形、Polysciences)を、加熱せずに攪拌しながら317.625gの脱イオン水で希釈し、1.654w/w%PAA溶液を作製した。1.654%PAA溶液のpH値は、室温で約3.0であった。106.875gのPVA粉末(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃で上記のPAA溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。最終PVA−PAA溶液におけるPVA:PAA重量比は、25w/w%全ポリマー含量を含めて19:1であった。最終PVA−PAA溶液は、完全に透明の混和性溶液であった。PVA−PAA溶液を予熱したガラスシート状の鋳型に注入し、3回の凍結融解サイクル(−17℃での16時間の凍結、および室温での8時間の融解)に供した。その後、成型されたゲルを100%PEG400に浸漬させ、その後、真空脱水し、1時間、自己加圧容器においてアルゴン下で160℃でアニールした。ゲルシートを脱イオン(DI)水に浸漬させ、残留PEGを除去し、平衡再水和を得た。
【0279】
総クリープ歪み、EWC、およびCOFは、実施例29に記載されるように測定することができる。
【0280】
実施例32.PEGを有さない99:1のPVA:PAAの比率の25%全ポリマー、pH1.5、3回の凍結融解サイクル;PEGドープ、真空脱水;および加熱
1.125gの純粋なPAAを含有する4.5gのPAA(MW=200,000g/mol、水中で25%固形、Polysciences)を、室温で334.125gの脱イオン水に混合し、0.332wt%PAA溶液を作製した。0.332%PAA溶液のpHは、室温で最初は3.3であり、少量の塩酸(HCl)水溶液を添加することによってpH1.5に調整した。111.375gのPVA粉末(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃で上記のPAA溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。最終PVA−PAA溶液のPVA:PAA重量比は、25w/w%全ポリマー含量を含めて99:1であった。最終PVA−PAA溶液は、完全に透明の混和性溶液であった。PVA−PAA溶液を、予熱したガラスシート状の鋳型に注入し、3回の凍結融解サイクル(−17℃での16時間の凍結、および室温での8時間の融解)に供した。その後、成型されたゲルを、100%PEG400に浸漬させ、その後、真空脱水し、1時間、自己加圧容器においてアルゴン下で160℃でアニールした。ゲルシートを脱イオン(DI)水に浸漬させ、残留PEGを除去し、平衡再水和を得た。
【0281】
99:1のPVA:PAA混合物を作製する際、酸性状態へのpH調節は、凍結融解サイクルによるゲル化前にPVAおよびPAAの均質の混和性溶液を形成する際に非常に重要である。0.332%PAA溶液のpHが、PVAを混合する前に、例えば、pH2.674またはpH3.315等、1.5より高い場合、90℃の99:1のPVA:PAA比率の混合物において、濁った非混和性溶液が得られる。
【0282】
総クリープ歪み、EWC、およびCOFは、実施例29に記載されるように測定することができる。
【0283】
実施例33.PEGを有さない19:1のPVA:PAAの比率の25%全ポリマー、pH5.5、3回の凍結融解サイクル;PEGドープ、真空脱水;および加熱
5.625gの純粋なPAAを含有する22.5gのPAA(MW=200,000g/mol、水中で25%固形、Polysciences)を、加熱せずに攪拌しながら317.625gの脱イオン水で希釈し、1.654w/w%PAA溶液を作製した。1.654%PAA溶液のpH値は、室温で2.998であり、少量の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を添加することによってpH5.5に調整した。106.875gのPVA粉末(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃で上記のPAA溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。最終PVA−PAA溶液のPVA:PAA重量比は、25w/w%全ポリマー含量を含めて19:1であった。最終PVA−PAA溶液は、均質であったが、わずかに不透明性を有する非混和性であった。PVA−PAA溶液を予熱したガラスシート状の鋳型に注入し、3回の凍結融解サイクル(−17℃での16時間の凍結、および室温での8時間の融解)に供した。その後、成型されたゲルを100%PEG400に浸漬させ、その後、真空脱水し、1時間、自己加圧容器においてアルゴン下で160℃でアニールした。ゲルシートを脱イオン(DI)水に浸漬させ、残留PEGを除去し、平衡再水和を得た。
【0284】
総クリープ歪み、EWC、およびCOFは、実施例29に記載されるように測定することができる。
【0285】
実施例34.PEGを有さない99:1のPVA:PAAの比率の25%全ポリマー、pH3.3、凍結融解サイクル;PEGドープ、真空脱水;および加熱
1.125gの純粋なPAAを含有する4.5gのPAA(MW=200,000g/mol、水中で25%固形、Polysciences)を、室温で334.125gの脱イオン水に混合し、0.332wt%PAA溶液を作製した。0.332%PAA溶液のpHは、室温で最初は3.315であり、PAA溶液は、pH調整をせずに使用した。111.375gのPVA粉末(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃で上記のPAA溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。
【0286】
最終PVA−PAA溶液は、均質であったが、わずかに不透明性を有する非混和性であった。最終PVA−PAA溶液のPVA:PAA重量比は、25w/w%全ポリマー含量を含めて99:1であった。PVA−PAA溶液を予熱したガラスシート状の鋳型に注入し、3回の凍結融解サイクル(−17℃での16時間の凍結、および室温での8時間の融解)に供した。その後、成型されたゲルを100%PEG400に浸漬させ、その後、真空脱水し、1時間、自己加圧容器においてアルゴン下で160℃でアニールした。ゲルシートを脱イオン(DI)水に浸漬させ、残留PEGを除去し、平衡再水和を得た。
【0287】
総クリープ歪み、EWC、およびCOFは、実施例29に記載されるように測定することができる。
【0288】
実施例35.PEGを有さない99:1または19:1のPVA:PAA比率の25%全ポリマーにおける平衡含水量(EWC)および摩擦係数(COF)の結果、3回の凍結融解サイクル;PEG浸漬;真空脱水;および加熱
99:1または19:1のPVA:PAA比率で作製した1型PVAゲルは、実施例31〜34のように作製した。ゲル化前、PVA−PAA溶液の調製の間に、各溶液はpHを調整し、ゲル化前に混和性の混合物または非混和性の混合物のいずれかを形成した。ゲル化後、すべてのゲルをPEGに浸漬させ、その後、真空脱水し、160℃で1時、アルゴンガス下でアニールした。
【0289】
PVAのみのゲルと比較すると、EWCは、99:1のPVA:PAAゲルにおいて、1%PAA含量では変化しなかった。19:1のPVA:PAA比率のゲルにおいて、EWCは、PVAのみのゲルとは対照的に有意に増加した。PVAのみのゲルとは対照的に、PVAゲルにおいて、最低1%PAA含量で、COF値の検出可能な低下が示された。ゲル化溶液の混和性は、表面潤滑性を影響しないようであり、これは官能基の化学組成物の効果は、PVAゲルの表面形態よりも実質的であることを意味する。
【0290】
実施例36.PEGを有さない9:1のPVA:PAA比率の25%全ポリマーにおける加熱条件の効果、3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬;真空脱水;および加熱
9:1のPVA:PAA比率を有するPAA含有PVAヒドロゲルにおける様々な加熱条件の効果を、EWC、耐クリープ性、および摩擦係数に関して定量化した。PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。9:1のPVA:PAAゲルの25%全ポリマーは、予熱したガラスシート状の鋳型に注入したPVA−PAA溶液を、3回の凍結融解サイクル(−17℃での16時間の凍結、および室温での8時間の融解)に供することによって作製した。その後、ゲルをPEG400に浸漬させ(PEGドーピングのために)、その後、真空脱水し、自己加圧式容器において加熱した。標準状態として、アルゴンガス下、160℃での1時間の加熱を使用し、加熱時間、温度、およびガスの種類等の各パラメータは、他のパラメータは変化させずに、一度に1つずつ変更した。試験をした4つの異なるアニール条件は、(A)アルゴンガス下、160℃での1時間の加熱、(B)空気(アルゴンガスを抜かない)における160℃での1時間の加熱、(C)アルゴンガス下、160℃での16時間の加熱、および(D)アルゴンガス下、200℃での1時間の加熱、であった。アルゴンガス雰囲気に対して、ゲルを含有する容器を、アニール前に5分間、アルゴンガスで浄化した。アニール後、サンプルは、平衡水和が得られるまで、脱イオン水において再水和した。総クリープ歪み、EWC、およびCOFは、実施例29に記載されるように測定することができる。
【0291】
結果:アルゴンガス下、160℃での1時間の加熱の参照アニール条件における80%のEWC値と比較して、様々な加熱条件は、ゲルのEWCの変化をもたらした(図21参照)。アニール中のアニールチャンバ内の残留空気における酸素の存在は、不活性アルゴンガス環境と比較して、EWCを10%わずかに低下させた。1時間から16時間へのアニール時間の延長、および160℃から200℃への加熱温度の増加は、それぞれ、38%および45%までEWCを有意に低下させた。
【0292】
各ゲルのクリープ反応は、様々なアニール条件によっても影響された(図22参照)。クリープ挙動の代表的な値である総クリープ歪み(TCS)は、より長いアニール期間、またはより高い温度で、アルゴンガスの代わりに空気中で加熱される場合、低下した。期間または温度変化によるTCSの低下は、アニール中の空気の存在より、さらに有意であった。
【0293】
ゲルの表面潤滑性は、アルゴンガス環境下で加熱されたすべての他のゲルとは対照的に、劇的に低いCOF値によって証明されるように、アニール中の空気の存在によって最も有意に改善された(図23および24参照)。加熱時間の延長および加熱温度の増加は、ゲルの表面潤滑性に悪影響を与えると考えられる。
【0294】
実施例37.PEGを有さない様々なPVA:PAA比率の25%全ポリマーにおける、アニール中の空気の存在の効果、3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬;真空脱水;および加熱
後に、一部の前の実験において、空気の存在下においてヒドロゲルをアニールするためにアルゴンガスで浄化されたアニール容器のいくつかが、アニール工程の間に不活性状態を維持するために完全に密封されていなかったことが明らかとなった。その結果、実施例29および30において記載される一部の1型ゲルは、アニールの間に空気に曝され、実施例29および30に示されるCOF、EWC、およびクリープのデータは、不活性アルゴンガスのみではなく、残留空気の存在下においてアニールされた可能性のあるサンプルから生成された。実際は、実施例29および30において上記で報告されたCOF値は、別々にアニールされた4つのサンプルの平均である。それらの一部は、COF値において異常に大きな相違を示した。例えば、1型ゲル法によって作製された7:3のPVA:PAAゲルの7Nの垂直抗力におけるCOF値は、4つのサンプルに対して、0.109、0.128、0.075、および0.056である。したがって、空気の存在がこの変化に関与するかどうかを把握するためには、様々なPVA:PAA比率を有するPAA含有PVAヒドロゲルにおける、アニール中の空気の存在の効果を、本実施例におけるEWCおよび摩擦係数に関して定量化した。以下に記載されるように、アニール中の空気の存在は、アニール中の空気の非存在とは対照的に、PAA含有PVAゲルの表面潤滑性を有意に改善した。そのため、実施例29および30に示されるCOF値は、空気の非存在下においてアニールされたゲルの実際のCOF値より低い値を示す可能性がある。
【0295】
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA重量比は、「PVAのみ」(すなわち、PAAを含有しない)から、各混合物における25w/w%全ポリマー含量を含めて9:1、8:2、7:3と異なった。各PVA−PAA溶液を予熱したガラスシート状の鋳型に注入し、3回の凍結融解サイクル(−17℃での16時間の凍結、および室温での8時間の融解)に供した。その後、ゲルをPEGドーピング(実施例29による)のためにPEG400に浸漬させ、その後、真空脱水し、1時間、自己加圧容器において160℃でアニールした。「アルゴン」群(対照)に対して、ゲルを含有する容器を、アニール前に少なくとも5分間、アルゴンガスで浄化した。「空気」群に対して、アニール前のアルゴンガス抜きは省略し、ゲルは、ゲルを配置する前に既に存在していた周囲空気を含有する自己加圧容器においてアニールした。加熱後、サンプルは、平衡水和が得られるまで、脱イオン水において再水和した。EWC、TCSおよびCOFは、実施例29に記載されるように測定した。
【0296】
結果:熱アニールは、アニール後のCOF値の増加によって証明されるように、PVAのみのゲル(PAAを含有しない)の表面潤滑性に悪影響を与えた。COFにおける増加は、アニールがアルゴンガス下で行われた場合、空気中より、さらに有意であった(図26および27参照)。1型の方法によって作製されたPVAゲルにおけるPAAの存在は、アニールによるCOFに対するそのような悪影響を完全に排除し、非アニールPVAのみのゲル以上に表面潤滑性をさらに改善した。アニールゲルにおけるPAAの存在によるCOF値の低下は、不活性ガスより、空気の存在下においてアニールされたゲルに対してより有意に増幅し(例えば、空気の存在下においてアニールされた9:1のPVA:PAA比率のゲルのCOFは、空気の非存在下におけるアルゴンガス下でアニールされた同じ組成のゲルにおける0.18のCOF値とは対照的に、最低で0.02であり得る)、これは、アニール容器内の空気からの残留酸素は、ゲルの表面または大部分に対して酸化および/または他の化学的変化を引き起こす可能性があることを示す。
【0297】
PVAゲルのEWCは、アルゴンガス下および空気中の両方においてアニールされたゲルにおけるPAAの存在によって増加した(図28)。EWCは、空気の非存在下とは対照的に、空気の存在下においてアニールされたゲルにおいて、極わずか、またはわずかな低下(約10%未満)を示した。PAA含有PVAゲルの総クリープ歪みは、空気の非存在下とは対照的に、アニール中の空気(すなわち、ゲルを配置する前に自己加圧容器に既に存在する窒素、酸素、CO2、微量の他のガス、水蒸気等を含有する周囲空気)の存在下において、わずか(約10%未満)、または極わずかな低下を示した(図29)。
【0298】
結論として、空気の非存在下におけるアルゴンガス下でアニールされた同じPVA:PAA組成ゲルとは対照的には、空気の存在下においてアニールされたPAA含有PVAゲルは、同じか、またはわずかに改善された耐クリープ性を維持しながら、優れた表面潤滑性を示した。
【0299】
当然のことながら、例示的な実施形態を示すが、説明、特定の実施例、およびデータは、説明のために与えられ、本発明を限定することを意図しない。本発明内における様々な変更および修正は、本明細書において含有される議論、開示、およびデータから、当業者にとって明らかであり、したがって、本発明の一部とみなされる。
【発明の背景】
【0001】
本出願は、2007年4月24日出願の米国暫定出願第60/913,618号、および2007年9月4日出願の米国暫定出願第60/969,831号の優先権を主張するものであり、これらの内容全体は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、耐クリープ性の滑らかなポリ(ビニルアルコール)(PVA)ヒドロゲル、耐クリープ性の滑らかなPVAヒドロゲル含有組成物の製造、および加工PVAヒドロゲルおよびPVAヒドロゲル含有組成物の作製方法に関する。本発明は、また、関節腔における高応力環境下で完全に機能し、ヒトの関節の高負荷に耐えるための機械的完全性、高い水分含有量、および優れた潤滑性を必要とする骨軟骨欠損修復のための、加工耐クリープ性PVAヒドロゲルおよび耐クリープ性PVAヒドロゲル含有組成物の使用方法に関する。
【0003】
背景技術
骨軟骨欠損修復のための合成材料としての生体適合性ヒドロゲルは、ヒトの関節腔における高応力環境下で完全に機能するための機械的完全性、高い水分含有量、および優れた潤滑性を必要とする。PVAヒドロゲルは、そのような目的に対して良い候補であるが、現在入手可能な製剤は、天然の関節軟骨と十分に互換性のある機械的強度および潤滑性を提供しない。
【0004】
関節軟骨置換適用に使用可能なほとんどのヒドロゲル系は、ヒトの関節の高負荷に耐えるために必要な機械的強度を有さない。以下に記載される様々な脱水方法は、ヒドロゲルの特性を変更するために、組み合わせて使用することができる。
【0005】
ヒドロゲルの溶媒脱水は、Bao(米国特許第US5,705,780号)により記載される。Baoは、形状変形せずにPVAヒドロゲルを脱水するための、室温でのエタノール/水の混合物等の溶媒へのPVAヒドロゲルの浸漬を記載している。
【0006】
HyonおよびIkada(米国特許第4,663,358号)およびBao(米国特許第5,705,780号)は、PVA粉末を溶解するために水および有機溶媒混合物を使用し、その後、溶液を室温以下に冷却し、加熱して室温まで戻し、ヒドロゲルを形成することを記載している。その後、ヒドロゲルを水に浸漬させ、有機溶媒を除去する。HyonおよびIkadaは、このようにして形成されたPVAヒドロゲルは、PVA粉末を溶解するための溶媒として水のみを使用する凍結融解方法によって形成されるものとは対照的に、透明であることを主張する。
【0007】
Bao(米国特許第5,522,898号)は、髄核を置換するための人工脊椎装置としての使用に対する、PVAヒドロゲルの脱水速度を制御し、形状変形を防止するために空気脱水、真空脱水、または部分的湿気脱水を使用する脱水方法を記載する。Baoの出発ゲルは、米国特許第5,705,780号に記載される凍結融解ゲルである。
【0008】
Ku et al.(米国特許第5,981,826号)は、PVA水溶液を凍結融解に供し、その後、水に浸漬させ、水に浸漬させながら、さらに数回の凍結融解に供することにより、PVAヒドロゲルを形成するための凍結融解方法を記載している。
【0009】
PVAの耐クリープ性は、ヒドロゲルの平衡含水量(EWC)を低下させることによって、現在、当該分野において得られるが、ヒドロゲルの潤滑性も低下させる。したがって、特に、潤滑性も保持する耐クリープ性PVAヒドロゲルに対する、長年に渡る切実であるが満たされていない必要性が残る。そのような耐クリープ性PVAヒドロゲル、およびそのような組成物の作製方法は、本発明まで周知ではなかった。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、概して、耐クリープ性PVAヒドロゲル、PVAヒドロゲル含有組成物、ならびにPVAヒドロゲルおよびPVAヒドロゲル含有組成物の作製方法に関する。本発明は、また、例えば、関節腔における高応力環境下で完全に機能し、ヒトの関節の高負荷に耐えるための機械的完全性、高い水分含有量、および優れた潤滑性を必要とする骨軟骨欠損修復のための、必要とする対象を治療する際の耐クリープ性PVAヒドロゲルおよび耐クリープ性PVAヒドロゲル含有組成物の使用方法に関する。
【0011】
本発明の一態様は、PVAヒドロゲルを作製する方法であって、a)ポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液をポリ(アクリル酸)(PAA)の水溶液に室温以上の温度で接触させることによって、均質PVA−PAA溶液を形成するステップと、b)PVA−PAA溶液をポリエチレングリコール(PEG)の水溶液に接触させることによって、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成するステップと、c)PVA−PAA−PEG溶液を室温以下に冷却することによって、PVAヒドロゲルを形成するステップと、を含む方法を提供する。
【0012】
本発明の別の態様は、PVAヒドロゲルを作製する方法であって、a)ポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液をポリ(アクリル酸)(PAA)の水溶液に室温以上の温度で接触させることによって、均質PVA−PAA溶液を形成するステップと、b)PVA−PAA溶液を鋳型(任意で予熱した)に注入し、その後、室温まで冷却することによって、PVAヒドロゲルの形成を可能にするステップと、c)PVAヒドロゲルを0℃以下の温度で凍結することによって冷却するステップと、d)PVAヒドロゲルを0℃以上の温度で融解するステップと、e)PVAヒドロゲルをPEG溶液に浸水させることによって、PVAヒドロゲルへのPEGの拡散を可能にするステップと、を含む方法を提供する。
【0013】
本発明の別の態様は、PVAヒドロゲルを作製する方法であって、a)ポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液をポリ(アクリル酸)(PAA)の水溶液に室温以上の温度で接触させることによって、均質PVA−PAA溶液を形成するステップと、b)PVA−PAA溶液をポリエチレングリコール(PEG)の水溶液に接触させることによって、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成するステップと、c)PVA−PAA−PEG溶液を鋳型(任意で予熱した)に注入し、その後、室温まで冷却することによって、PVAヒドロゲルの形成を可能にするステップと、d)PVAヒドロゲルを0℃以下の温度で凍結することによって冷却するステップと、e)PVAヒドロゲルを0℃以上の温度で融解するステップと、を含む方法を提供する。
【0014】
本発明の一態様によると、鋳型は、約1〜約200℃、好ましくは約25℃〜約150℃、より好ましくは約90℃の温度まで予熱される。
【0015】
別の態様によると、本発明は、上述の方法を提供し、ヒドロゲルは、PVAヒドロゲルを含み、ヒドロゲルは、水および/または1つもしくはそれ以上の他の成分を含む。成分は、PAA、PEG、および/または塩、プロテオグリカン、水溶性ポリマー、アミノ酸、アルコール、DMSO、水溶性ビタミンであり、成分は、水において部分的または完全に可溶性である。
【0016】
別の態様によると、成分は、PAA、および/または塩、プロテオグリカン、水溶性ポリマー、アミノ酸、アルコール、DMSO、水溶性ビタミンであり、成分は、水において部分的または完全に可溶性である。
【0017】
別の態様によると、成分は、PEGであり、PEGは、水、エタノール、エチレングリコール、DMSO、または別の適切な溶媒の溶液中にある。
【0018】
別の態様によると、成分は、非揮発性である。
【0019】
別の態様によると、成分は、水において少なくとも部分的に混和性である。
【0020】
別の態様によると、成分は、PEG、塩、NaCl、KCl、CaCl2、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、およびアミノ酸、異なる分子量のPEG、または異なる分子量のPEGの混合物、または上記の任意の組み合わせから成る群より選択される。
【0021】
別の態様によると、水混和性ポリマーは、PEO、プルロニック、アミノ酸、プロテオグリカン、ポリビニルピロリドン、多糖類、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、コンドロイチン硫酸、またはデキストラン硫酸、または上記の任意の組み合わせである。
【0022】
別の態様によると、ヒドロゲルの重量の少なくとも0.1%は、1つまたはそれ以上の非揮発性成分を構成する。
【0023】
別の態様によると、脱水は、ヒドロゲルを、a)非溶媒であって、i)PEG、アルコール、アセトン、飽和食塩水、ビタミン、またはカルボン酸、アルカリ金属の塩の水溶液、またはそれらの組み合わせである非溶媒、およびii)水、PEG、ビタミン、ポリマー、エステル、プロテオグリカン、およびカルボン酸を含む2つ以上の成分を含有する非溶媒である、非溶媒、またはb)超臨界流体、に配置することによって行われる。
【0024】
別の態様によると、脱水は、室温、または例えば、40℃、約40℃以上、約80℃、80℃以上、約90℃、約100℃、100℃以上、約150℃、約160℃、160℃以上、約180℃、約200℃、または200℃以上の高温に、ヒドロゲルを空気中に放置することによって、ヒドロゲルを真空に配置することによって行われる。
【0025】
別の態様によると、脱水は、空気または不活性雰囲気(窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウム等の不活性ガスの存在下において)、または真空下で、高温でヒドロゲルを加熱することによって行われ、加熱速度は、遅いか、もしくは速いか、または加熱は、真空または空気脱水の後に行われる。
【0026】
別の態様によると、脱水は、100%の空気、100%の不活性ガス、0.1%〜99.9%の空気を含有する1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物、または0.1%〜99.9%の酸素と混合した1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物において行われる。
【0027】
別の態様によると、脱水ヒドロゲルは、脱水ヒドロゲルを、i)水、食塩溶液、リンゲル溶液、食塩水、緩衝液等、またはそれらの組み合わせ、ii)湿度室、またはiii)室温もしくは高温に配置することによって再水和される。
【0028】
別の態様によると、上記で開示される方法によって作製されるPVAヒドロゲルは、平衡になるように再水和され、PVAヒドロゲルは、水または塩溶液において再水和される。
【0029】
一態様においては、本発明は、ポリマーおよび水を含むPVAヒドロゲルを提供し、PVAヒドロゲルは、少なくとも約1%〜約50%の平衡含水量を含有する。
【0030】
別の態様においては、本発明は、上述の工程のいずれかによって作製されるPVAヒドロゲルを提供し、PVAヒドロゲルは、再水和、その後の脱水を行うことが可能であり、脱水は、ヒドロゲルの重量を低下させ、再水和は、再水和ヒドロゲルにおける平衡含水量の増加を引き起こす。
【0031】
別の態様においては、PVAヒドロゲルは、二軸配向または一軸配向であり、PVAヒドロゲルは、高い最大抗張力を有する。
【0032】
本発明のさらに別の態様は、PVA−PAAヒドロゲルを含む医療移植片、例えば、挿入装置を提供し、挿入装置は、ユニスペーサであり、ユニスペーサは、膝、腰、肩、肘、または上部もしくは四肢の関節等のヒトの関節における浮遊関節移植片である。
【0033】
本発明のさらに別の態様は、PVA−PAA−PEG-ヒドロゲル、を含む医療移植片、例えば、挿入装置を提供し、挿入装置は、ユニスペーサであり、ユニスペーサは、膝、腰、肩、肘、または上部もしくは四肢の関節等のヒトの関節における浮遊関節移植片である。
【0034】
別の態様によると、本発明は、上述の工程のいずれかによって作製されるPVAヒドロゲルを提供し、ゲル化前の、PVAに富む領域およびPAAに富む領域へのPVA−PAA溶液のpH誘導相分離は、PAA含有PVAヒドロゲルの耐クリープ性を増加させる。
【0035】
別の態様によると、本発明は、上述の工程のいずれかによって作製されるPVAヒドロゲルを提供し、特定のpH値(「混和性転誘導」pH(pHmt))は、総ポリマー濃度、各ポリマーの分子量、PVA:PAA比率、溶液の塩濃度またはイオン強度等から成る群より選択される要因によって異なる。
【0036】
別の態様によると、本発明は、上述の工程のいずれかによって作製されるPVAヒドロゲルを提供し、ゲル化前のPVA−PAA溶液の混和性は、PVA−PAA溶液のpH値をpHmt以上または以下に調整することによって制御される。
【0037】
別の態様によると、本発明は、上述の工程のいずれかによって作製されるPVAヒドロゲルを提供し、1.654w/w%含水PAA溶液、および19:1のPVA:PAA比率を有する25%全ポリマーを含有するPVA−PAA溶液の特定のpH値(「混和性転誘導」pH(pHmt))は、約3.0〜約5.5である。
【0038】
別の態様によると、本発明は、上述の工程のいずれかによって作製されるPVAヒドロゲルを提供し、0.332w/w%含水PAA溶液、および99:1のPVA:PAA比率を有する25%全ポリマーを含有するPVA−PAA溶液の特定のpH値(「混和性転誘導」pH(pHmt))は、約1.5〜約5.5である。
【0039】
定義されない限り、本明細書において使用される様々な文法形式のすべての技術的および科学的用語は、本発明が所属する当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記載されるものと同様の方法および材料を、本発明の履行または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料が以下に記載される。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が規制する。さらに、材料、方法、および実施例は、説明のためのみであり、限定的なものではない。
【0040】
本発明のさらなる特色、目的、利益、および態様は、以下の請求項および詳細な説明において明らかである。しかしながら、当然のことながら、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい態様を示すが、本発明の精神および範囲内における様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者にとって明らかとなるため、説明のためのみである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1〜3において記載される様々な処理後の3回の凍結融解による15%PEGとの15%固形PVA−PAA−PEG混合物から形成されるPVA−PAAヒドロゲルを示す。1(A)生理食塩水における再水和の後(実施例1)、1(B)真空脱水、その後の生理食塩水における再水和の後(実施例2)、および1(C)真空脱水、加熱、その後の生理食塩水における再水和の後(実施例3)。
【図2】実施例5〜8において記載される様々な処理後の3回の凍結融解による15%固形PVA−PAA混合物から形成されるPVA−PAAヒドロゲルを示す。2(A)生理食塩水における再水和の後(実施例5)、2(B)真空脱水、その後の生理食塩水における再水和の後(実施例6)、2(C)真空脱水、加熱、その後の生理食塩水における再水和の後(実施例7)、および2(D)100%PEG400における浸漬、その後の生理食塩水における再水和の後(実施例8)。
【図3】それぞれ10時間の負荷および10時間の無負荷サイクルに対する、歪対時系列におけるクリープ挙動を示す。
【図4】表7に示されるサンプル1〜3に関する、それぞれ10時間の負荷および無負荷サイクルに対する、歪対時系列におけるクリープ挙動を示す。
【図5】表7に示されるサンプル4〜6に関する、それぞれ10時間の負荷および無負荷サイクルに対する、歪対時系列におけるクリープ挙動を示す。
【図6】表7に示されるサンプル7〜10に関する、それぞれ10時間の負荷および無負荷サイクルに対する、歪対時系列におけるクリープ挙動を示す。
【図7】実施例24に記載されるクリープ試験から得られたPVAヒドロゲルの総クリープ歪みを示し、平衡含水量の機能として示される。
【図8】PEGが、ゲル化工程の間、PVAおよびPAA溶液に存在する方法(実施例1)によって作製された再水和PVAヒドロゲルの共焦点顕微鏡写真を示す(尺度図=20μm)。
【図9】PEGが、予め作製されたPVA−PAAゲルに連続して組み込まれた方法(実施例8)によって作製された再水和PVAヒドロゲルの共焦点顕微鏡写真を示す(尺度図=20μm)。
【図10】PEGがPVAゲル化の間に存在した「PVA−PAA−PEGゲル」、およびPEGがPVAゲル化後に組み込まれた「組み込まれたPEGを有するPVA−PAAゲル」の耐クリープ性を示す。両方のゲルは、熱処理され、クリープ変形試験の前に生理食塩水において再水和された。
【図11】11(A)25%PAA(MW=200K)溶液、11(B)5%PAA(MW=200K)、11(C)5%PAA(MW=5K)、11(D)25%PAA(MW=5K)、11(E)PAAを有さない脱イオン水(対照)、および11(F)約50%PAA(MW=5K)を含む6つの異なるPAA水溶液における浸漬によるPAA拡散後の脱PEGPVAヒドロゲルを示す。
【図12A】PAA含有PVAヒドロゲルの平衡含水量(EWC)を示す。「PVAのみ;NA」は、PAAなしのPVAのみで作製された非アニール化ヒドロゲルを示す。ヒドロゲルは、EWC測定のために乾燥させる前に、25℃(12A)または40℃(12B)で平衡化された。
【図12B】PAA含有PVAヒドロゲルの平衡含水量(EWC)を示す。「PVAのみ;NA」は、PAAなしのPVAのみで作製された非アニール化ヒドロゲルを示す。ヒドロゲルは、EWC測定のために乾燥させる前に、25℃(12A)または40℃(12B)で平衡化された。
【図13】1型ゲル法によって作製された、様々なPVA−PAA比率でのPAA含有PVAゲルの典型的なクリープ挙動を示す。(1)PVAのみ、非アニール化、(2)7:3のPVA:PAA、(3)8:2のPVA:PAA、(4)9:1のPVA:PAA、および(5)PVAのみ。
【図14】2型ゲル法によって作製された、様々なPVA−PAA比率でのPAA含有PVAゲルの典型的なクリープ挙動を示す。(1)PVAのみ、非アニール化、(2)8:2のPVA:PAA、(3)7:3のPVA:PAA、(4)9:1のPVA:PAA、および(5)PVAのみ。
【図15】PAA含有PVAヒドロゲルの総クリープ歪みを示す。2つの値の平均が示された*の場合以外の、3つの値および標準偏差の平均数を示す。
【図16】1型ゲル法によって作製されたPAA含有PVAゲルの摩擦係数(COF)を示す。
【図17】2型ゲル法によって作製されたPAA含有PVAゲルの摩擦係数(COF)を示す。
【図18】実施例30に記載されるPEGドーピングステップの有無にかかわらず作製された7:3のPVA:PAA比率の25%全ポリマーヒドロゲルの平衡含水量(EWC)および総クリープ歪みを示す。ヒドロゲルは、EWC測定のために乾燥させる前に、40℃で平衡化された。
【図19】実施例30に記載されるPEGドーピングステップの有無にかかわらず作製された7:3のPVA:PAA比率の25%全ポリマーヒドロゲルの典型的なクリープ挙動を示す。(1)PEGドープ、および(2)非PEGドープ。
【図20】実施例30に記載されるPEGドーピングステップの有無にかかわらず作製された7:3のPVA:PAA比率の25%全ポリマーヒドロゲルの摩擦係数(COF)。
【図21】実施例31〜34に記載される1型ゲル法によって作製された、様々なPVA:PAA比率での25%全ポリマー含量のPAA含有PVAゲルの平衡含水量(EWC)および摩擦係数(COF)を示す。EWCは、測定前にゲルを40℃で平衡化した後に測定した。7Nの垂直抗力下のCOFは、各ゲルに対する代表的なCOFとしてみなした。すべてのゲルは、アルゴンガス下で160℃で1時間アニールした。PVA:PAA比率は、各ゲル化溶液が作製されたpH値の前に示される。「PVAのみ」は、PAAを有さないPVAゲルを示す。「混和性」および「非混和性」は、ゲル化前の各PVA−PAA溶液の混和状態を示す。(1)PVAのみ、(2)99:1のPVA:PAA、pH3.3、(3)99:1のPVA:PAA、pH1.5、(4)19:1のPVA:PAA、pH5.5、および(5)19:1のPVA:PAA、pH3.0。
【図22】実施例36に記載される様々なアニール条件下で1型ゲル法によって作製された、9:1のPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの平衡含水量を示す。EWCは、測定前にゲルを40℃で平衡化した後に測定した。(A)アルゴンガス下で160℃で1時間加熱、(B)空気(アルゴンガス抜きせず)中で160℃で1時間加熱、(C)アルゴンガス下で160℃で16時間加熱、および(D)アルゴンガス下で200℃で1時間加熱。
【図23】実施例36に記載される様々なアニール条件下で1型ゲル法によって作製された、9:1のPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの総クリープ歪みを示す。(A)アルゴンガス下で160℃で1時間加熱、(B)空気(アルゴンガス抜きせず)中で160℃で1時間加熱、(C)アルゴンガス下で160℃で16時間加熱、および(D)アルゴンガス下で200℃で1時間加熱。
【図24】実施例36に記載される様々なアニール条件下で1型ゲル法によって作製された、9:1のPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの摩擦係数(COF)を示す。(A)アルゴンガス下で160℃で1時間加熱、(B)空気(アルゴンガス抜きせず)中で160℃で1時間加熱、(C)アルゴンガス下で160℃で16時間加熱、および(D)アルゴンガス下で200℃で1時間加熱。
【図25】実施例36に記載される様々なアニール条件下で1型ゲル法によって作製された、9:1のPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの摩擦係数(COF)を示す。7Nの垂直抗力下のCOFは、各ゲルに対する代表的なCOFとしてみなした。(A)アルゴンガス下で160℃で1時間加熱、(B)空気(アルゴンガス抜きせず)中で160℃で1時間加熱、(C)アルゴンガス下で160℃で16時間加熱、および(D)アルゴンガス下で200℃で1時間加熱。
【図26】1型ゲル法によって作製された、様々なPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの摩擦係数(COF)を示す。PAAなしのPVAのみで作製された非アニールヒドロゲルを示す、「PVAのみ;非アニール化」以外のすべてのゲルは、アルゴンガス下で160℃で1時間アニールした。「PVAのみ」は、PAAなしのPVAのみで作製されたアニール化PVAゲルを示す。(A)PVAのみ、(B)9:1のPVA:PAA、(C)8:2のPVA;PAA、(D)7:3のPVA:PAA、(E)PVAのみ;非アニール化。
【図27】1型ゲル法によって作製された、様々なPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの摩擦係数(COF)を示す。PAAなしのPVAのみで作製された非アニールヒドロゲルを示す、「PVAのみ;非アニール化」以外のすべてのゲルは、空気下で160℃で1時間アニールした。「PVAのみ」は、PAAなしのPVAのみで作製されたアニール化PVAゲルを示す。(A)PVAのみ、(B)9:1のPVA:PAA、(C)8:2のPVA;PAA、(D)7:3のPVA:PAA、(E)PVAのみ;非アニール化。
【図28】1型ゲル法に続いてアルゴンガス下または空気中で160℃で1時間アニールすることによって作製された、様々なPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの平衡含水量(EWC)を示す。「PVAのみ」は、PAAなしのPVAのみで作製されたアニール化PVAゲルを示す。(A)PVAのみ、(B)9:1のPVA:PAA、(C)8:2のPVA;PAA、(D)7:3のPVA:PAA。
【図29】1型ゲル法に続いてアルゴンガス下または空気中で160℃で1時間アニールすることによって作製された、様々なPVA:PAA比率でのPAA含有PVAゲルの総クリープ歪み(TCS)を示す。「PVAのみ」は、PAAなしのPVAのみで作製されたアニール化PVAゲルを示す。(A)PVAのみ、(B)9:1のPVA:PAA、(C)8:2のPVA;PAA、(D)7:3のPVA:PAA。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、潤滑性も保持する、耐クリープ性PVAヒドロゲル、および関節腔における高応力環境下で完全に機能するための機械的完全性、高い水分含有量、優れた潤滑性のうち1つまたはそれ以上を有し、ヒトの関節の高負荷に耐える能力を有する、骨軟骨欠損修復のための耐クリープ性PVAヒドロゲルの作製方法を提供する。
【0043】
本発明の一実施形態によると、第2のポリマーは、ヒドロゲルにおいて、PVAと物理的に混合する、および/または第2のポリマーの分子をPVA分子と化学的に連結することによって組み込まれる。第2のポリマーは、PVA分子の存在下で重合させることもできる。凍結融解、真空脱水、溶媒脱水、加熱等の多くの後処理法を使用することもできる。
【0044】
この第2のポリマーを添加することによって得られる親水性の増加により、水分摂取量が増加し、PVAヒドロゲルの表面潤滑性が改善される。第2のポリマーが高イオン強度を有する場合、軟骨と同様に、静電反発力は、圧縮または引張荷重下で弾性を増加させる。第2のポリマーは、本来のPVAネットワーク構造を補強する相互貫入ネットワークを形成するために、互いにか、またはPVA分子と架橋することができる化学官能基を有することもできる。弱酸または弱塩基官能基を有するポリマーは、本来非イオン性のPVAヒドロゲルにpH感度を与えるために使用することもできる。これは、染料、薬物、および/または生体分子によるpH誘導体積転移および錯体形成に有用である。
【0045】
別の実施形態においては、本発明は、そのような系統の設計方法を提供する。塩基ヒドロゲル系とのPVAヒドロゲルでは、新規に組み込まれた親水性体は、イオン化学官能性または水素結合能力を有するマクロ分子、すなわち、ポリ(アクリル酸)(PAA)およびポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)、PVA−PAAコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)PAAコポリマー、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ヒアルロン酸(HA)、およびポリビニルピロリドン(PVP)である。新規の親水性部分を組み込むための方法として、ゲル形成前のPVAの混合、およびゲル形成後のPVAへの拡散を含む。本来のゲルネットワーク内での導入された新規部分を安定させるための方法として、化学的架橋、照射、脱水、および熱処理ならびにそれらの組み合わせを含む。PVAにおける第2のポリマーの組み込みは、例えば、異なる含水量、クリープ強度、機械的特性、および架橋密度等の不均一勾配特性を最終移植片に与えるために、不均一であり得る。
【0046】
PVA−PAA−PEGゲルの作製方法
1.PEG添加を伴う、PVAおよびPAAの溶液中での混合
一実施形態においては、含水ポリ(アクリル酸)(PAA)溶液は、均質PVA−PAA溶液を形成するために、室温以上の高温でポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液と混合する。PVA:PAA比率は、約10%、15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれらの程度、それらの間の任意の値、もしくはそれら以上での混合物における全ポリマー含量を含めて、約99.9:0.1〜5:5、例えば、99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の比率であり得る。ポリエチレングリコール(PEG)は、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成するためにPVA−PAAの高温の(例えば、約90℃)混合物に添加し、鋳型(任意で予熱した)に注入し、その後、ゲルを形成するために低温まで冷却する。
【0047】
2.PVA−PAA−PEGゲルの凍結融解
別の実施形態においては、含水ポリ(アクリル酸)(PAA)溶液は、均質PVA−PAA溶液を形成するために、室温以上の高温でポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液に混合する。PVA:PAA比率は、約15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、それらの程度、それらの間の任意の値、またはそれら以上での混合物における全ポリマー含量を含めて、約99.9:0.1〜5:5、例えば、99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の比率であり得る。ポリエチレングリコール(PEG)は、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成するためにPVA−PAAの高温の(例えば、約90℃)混合物に添加し、鋳型(任意で予熱した)に注入し、その後、0℃以下の温度で凍結させ、続いて、0℃以上で融解する。一部の実施形態においては、凍結融解サイクルは、繰り返される。
【0048】
3.PEGドーピングと伴う、PVA−PAAゲルの凍結融解
別の実施形態においては、含水ポリ(アクリル酸)(PAA)溶液は、均質PVA−PAA溶液を形成するために、室温以上の高温でポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液に混合する。PVA:PAA比率は、約10%、15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれらの程度、それらの間の任意の値、もしくはそれら以上での混合物における全ポリマー含量を含めて、約99.9:0.1〜5:5、例えば、99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の比率であり得る。混合物は、鋳型(任意で予熱した)に注入し、その後、0℃以下の温度で凍結させ、続いて、0℃以上で融解する。PVA−PAAゲルは、PEGに浸漬させ、PEGをゲル中に拡散させる。ゲルは、水または生理食塩水における再水和の後、この形で使用されるか、または加熱等のさらなる処理に供する。
【0049】
4.PVA−PAAゲルへのPEGの拡散
別の実施形態においては、含水ポリアクリル酸(PAA)溶液は、均質PVA−PAA溶液を形成するために、室温以上の高温でポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液に混合する。PVA:PAA比率は、約10%、15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれらの程度、それらの間の任意の値、もしくはそれら以上での混合物における全ポリマー含量を含めて、約99.9:0.1〜5:5、例えば、99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の比率であり得る。混合物は、鋳型(任意で予熱した)に注入し、その後、0℃以下の温度で凍結させ、続いて、0℃以上で融解する。PVA−ヒドロゲルは、水の一部または全部を抽出しながらPEGをゲルに拡散させるためにPEGに浸漬させる。
【0050】
5.PVAゲルの凍結融解、およびその後のPVAゲルへのPAAの拡散
別の実施形態においては、室温以上の高温の含水ポリ(ビニルアルコール)(PVA)溶液は、PVA冷却ゲルを形成するために、鋳型(任意で予熱した)に注入し、0℃以下に冷却し、0℃以上の温度で融解する。ゲル中の全PVA含量は、約10%、15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、またはそれらの程度、それらの間の任意の値、もしくはそれら以上であり得る。PVA冷却ゲルは、PAAをゲルに拡散するためにPAAの水溶液に浸漬させる。力強い攪拌および/または高温を使用して、拡散率を増加させる。拡散率は、ゲルを超臨界流体に浸漬させることによっても増加させることができる。
【0051】
6.PAA組み込みPVA冷却ゲル、およびその後のPEGドーピング
別の実施形態においては、室温以上の高温の含水ポリ(ビニルアルコール)(PVA)溶液は、PVA冷却ゲルを形成するために、鋳型(任意で予熱した)に注入し、0℃以下に冷却し、0℃以上の温度で融解する。ゲル中の全PVA含量は、約10%、15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、またはそれらの程度、それらの間の任意の値、もしくはそれら以上であり得る。PVA冷却ゲルは、PAAをゲルに拡散させるPAAの水溶液に浸漬させる。力強い攪拌および/または高温を使用して、拡散率を増加させる。拡散率は、ゲルを超臨界流体に浸漬させることによっても増加させることができる。その後、ゲルは、水の一部または全部を抽出しながらPEGをゲルに拡散させるためにPEGに浸漬させることができる。
【0052】
上述の方法のいずれかによってPVAゲルに組み込まれる親水性体は、PAAホモポリマーに限らないが、化学官能性を有する他の種類の親水性ポリマー、すなわち、PVA−PAAコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)PAAコポリマー、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒアルロン酸(HA)、およびポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)であり得る。上記のゲルにおいて記載される凍結融解方法は、1回の凍結融解に限定される必要はないが、2回以上、例えば、2回、3回、4回、5回、8回、10回、またはそれ以上であり得る。上記の実施形態のいずれにおいて、最終ゲル装置は、溶媒中または真空下で脱水、および/またはその後、水または生理食塩水における最終再水和の前に加熱することができる。
【0053】
一実施形態によると、上記の方法のいずれかにおける鋳型は、約1〜約200℃、好ましくは約25℃〜約150℃、より好ましくは約90℃の温度に予熱する。
【0054】
7.PVA溶液と他の成分との混合
混合は、様々な方法で行うことができる。例えば、
a)PVA溶液は、ビーカー等の容器で、本明細書において記載される他の成分と混合/攪拌することによって混合することができ、
b)PVA溶液は、化合物を使用して、本明細書において記載される他の成分と混合することができる。
【0055】
別の実施形態においては、含水ポリ(アクリル酸)(PAA)溶液は、容器で混合するか、または他の成分とともに化合物を使用することによって、均質PVA−PAA溶液を形成するために、室温以上の高温でポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液と混合する。本発明の一態様によると、ヒドロゲルは、水および/またはPAA、PEG(PEGは水溶液、エタノール、エチレングリコール、DMSO、または別の適切な溶媒中にある)、異なる分子量のPEGまたは異なる分子量のPEGの混合物、塩、NaCl、KCl、CaCl2、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、アミノ酸、プロテオグリカン、水溶性ポリマー、アルコール等の1つまたはそれ以上の他の成分を含み、他の成分は、水において、少なくとも部分的に混和性または溶性である。
【0056】
混合するための成分は、粉末、丸薬、液体、ワックス、ペースト、ミクロまたはナノ粒子、または既にゲル化した物質等の任意の形態であり得る。既にゲル化した物質は、脱水、再水和、溶媒浸漬、熱処理、照射、および/または凍結融解等の後ゲル化法によって前もって処理することができる。
【0057】
ゲル化:
一部の実施形態によると、ゲル化は、PEG、および/または凍結融解(1つまたはそれ以上の回数)、および/または照射等のゲル化剤の存在下において冷却することによって行うことができる。
【0058】
本発明の一態様によると、溶液の照射は、ゲル化を引き起こすために行われる。照射の間、ゲル溶液中の溶媒は、水、DI水、生理食塩水、DMSO、エタノール、PEG、別の適切な溶媒、および上記のいずれかの任意の混合物等の任意の媒体中にあり得る。
【0059】
照射:
別の態様によると、照射は、ゲル化剤と混合することか、または凍結融解することによって、既にゲル化した物質に対して行うことができる。ゲル化物質は、照射の前またはその間に、水、DI水、生理食塩水、DMSO、エタノール、PEG、および任意の適切な溶媒、ならびに上記のいずれかの任意の混合物等の媒体に浸漬することができる。ゲル化物質は、脱水のために雰囲気含有空気、不活性ガス、または真空に配置し、照射後にアニールによってさらに処理することができる。
【0060】
別の態様によると、ゲル化物質は、水、DI水、生理食塩水、DMSO、エタノール、PEG、および任意の適切な溶媒、ならびに上記のいずれかの任意の混合物等の媒体に浸した後、空気中または真空下で脱水し、その後、照射することができる。照射物質は、室温または高温で空気または真空においてさらに脱水することができる。
【0061】
別の態様によると、ゲル化物質は、脱水し、および/または照射前に熱的にアニールすることができる。
【0062】
別の態様によると、照射は、MIR、CISM、CIMA、WIAM等の任意の種類であり得、その間にアニールによるステップのいずれかを続けることができる。
【0063】
照射の方法および順序:
放射線化学を使用するポリマーおよびポリマー合金の選択的な制御された操作は、別の態様においては、ポリマーが照射される方法の選択によって得られる。選択されるポリマーまたはポリマー合金等の単独または本発明の他の態様との組み合わせのいずれかで使用される照射の特定の方法は、照射ポリマーの全体的特性に貢献する。
【0064】
ガンマ照射または電子放射を使用することができる。概して、ガンマ照射は、電子照射より高度な放射侵入深さを引き起こす。しかしながら、ガンマ照射は、一般的に、低い放射線量率を提供し、長い時間を必要とし、特に、ガンマ照射が空気中で行われる場合、より深い広範囲に及ぶ酸化が生じ得る。酸化は、ガンマ照射を窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウム等の不活性ガス、もしくは真空下で行うことによって低減または防止することができる。概して、電子照射は、より限定された線量侵入深さをもたらすが、より短い時間を要するため、照射が空気中で行われる場合、広範囲に及ぶ酸化のリスクを減少させる。さらに、所望の線量レベルが、例えば、20Mradと高い場合、ガンマによる照射が1日以上行われる場合があり、非実用的な生産時間につながる。一方、電子ビームの線量率は、コンベヤー速度、スキャン幅、および/またはビーム出力等の照射パラメータを変化させることによって調節することができる。適切なパラメータで、20Mradの溶融照射は、例えば、10分未満で完了することができる。電子ビームの侵入は、百万電子ボルト(MeV)で測定されるビームエネルギーによる。ほとんどのポリマーは、約1g/cm3の密度を示し、2〜3MeVのビームエネルギーで約1cm、10MeVのビームエネルギーで約4cmの侵入につながる。電子照射が好ましい場合、侵入の所望の深さは、ビームエネルギーに基づいて調節することができる。したがって、ガンマ照射または電子照射は、好ましい侵入の深さ、期間制限、および許容酸化レベルに基づいて使用することができる。
【0065】
ある実施形態によると、架橋ポリマー材料は、ポリマー材料が、架橋のための照射と同時または後で溶解することを意味する溶解履歴を有することができる。他の実施形態によると、架橋ポリマー材料は、そのような溶解履歴を有さない。
【0066】
IMS、CIR、CISM、WIR、およびWIAMを含む様々な照射方法が定義され、同時または後に行われる溶解と共に照射される溶解履歴を有する架橋ポリマー材料に対して、以下により詳細に記載される。
【0067】
(i)融解状態における照射(IMS)
溶融照射(MIR)、または融解状態における照射(「IMS」)は、米国特許第5,879,400号において詳述される。IMS工程においては、照射されるポリマーは、その融点またはそれ以上まで加熱する。その後、ポリマーを照射する。照射後、ポリマーを冷却する。
【0068】
照射の前に、ポリマーは、融解温度またはそれ以上まで加熱し、ポリマー鎖がもつれた状態となるまで十分な時間、この温度で維持する。十分な時間は、例えば、約5分〜約3時間の範囲に及ぶ場合がある。
【0069】
ガンマ照射または電子放射を使用することができる。概して、ガンマ照射は、電子照射より高度な放射侵入深さを引き起こす。しかしながら、ガンマ照射は、一般的に、低い放射線量率を提供し、長い時間を必要とし、特に、ガンマ照射が空気中で行われる場合、より深い酸化が生じ得る。酸化は、ガンマ照射を窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウム等の不活性ガス、もしくは真空下で行うことによって低減または防止することができる。概して、電子照射は、より限定された線量侵入深さをもたらすが、より短い時間を要するため、照射が空気中で行われる場合、広範囲に及ぶ酸化のリスクを減少させる。さらに、所望の線量レベルが、例えば、20Mradと高い場合、ガンマによる照射が1日以上行われる場合があり、非実用的な生産時間につながる。一方、電子ビームの線量率は、コンベヤー速度、スキャン幅、および/またはビーム出力等の照射パラメータを変化させることによって調節することができる。適切なパラメータで、20Mradの溶融照射は、例えば、10分未満で完了することができる。電子ビームの侵入は、百万電子ボルト(MeV)で測定されるビームエネルギーによる。ほとんどのポリマーは、約1g/cm3の密度を示し、2〜3MeVのビームエネルギーで約1cm、10MeVのビームエネルギーで約4cmの侵入につながる。電子ビームの侵入は、照射温度の上昇によってわずかに増加することが周知である。電子照射が好ましい場合、侵入の所望の深さは、ビームエネルギーに基づいて調節することができる。したがって、ガンマ照射または電子照射は、好ましい侵入の深さ、期間制限、および許容酸化レベルに基づいて使用することができる。
【0070】
既定のポリマーに対する溶融照射の温度は、そのポリマーに対するDSC(最初の熱サイクルの間、10℃/分の加熱速度で測定される)ピーク融解温度(「PMT」)による。概して、IMS工程における照射温度は、PMTより少なくとも約2℃高く、より好ましくはPMTより約20Cから約20℃高く、最も好ましくはPMTより約5℃から約10℃高い。
【0071】
許容総量の例示的な範囲は、米国特許第5,879,400号、および同号6,641,617号、ならびに国際公開第WO97/29793号においてより詳細に開示されている。例えば、好ましくは、約1MRadまたはそれより大きい総量を使用する。より好ましくは、約20Mradより大きい総量を使用する。
【0072】
電子ビームIMSにおいては、電子によって堆積されるエネルギーは、熱に変換される。これは、主に、サンプルが照射の間、いかに良く熱的に絶縁されるかによる。良い熱絶縁性では、生成される熱のほとんどは、周りの環境に失われず、照射温度より高い温度までのポリマーの断熱昇温につながる。加熱は、周りの環境への熱損失を最低限にするために、十分に高い線量率を使用することによって誘導することもできる。状況次第で、加熱は、照射されるサンプルに悪影響を与える場合がある。ポリマーが照射される場合の水素ガス等の気体副産物は、照射の間に形成される。照射の間、加熱が、気体副産物の急速な拡大を引き起こすほど急速で高温であり、それによって、それらがポリマーから拡散することができない場合、ポリマーは、空洞を作製する場合がある。キャビテーションは、順に、ポリマーの機械的特性、およびそれから作製される装置の体内性能に悪影響を及ぼす、構造における欠損(空洞部分、亀裂等)の形成につながるという点において望ましくない。
【0073】
温度は、線量レベル、絶縁レベル、および/または線量率によって上昇する。照射段階において使用される線量レベルは、所望の特性に基づいて決定される。概して、熱絶縁性は、ポリマーの冷却およびポリマーの温度を所望の照射温度で維持することを回避するために使用される。したがって、温度上昇は、照射に対する上線量率を決定することによって制御することができる。
【0074】
電子放射が使用される本発明の実施形態においては、電子のエネルギーは、電子の侵入の深さを変更するために変化させることができ、それによって、照射に続く架橋の程度を制御する。適切な電子エネルギーの範囲は、米国特許第5,879,400号、同第6,641,617号、および国際公開第WO97/29793号においてより詳細に開示されている。一実施形態においては、エネルギーは、約0.5MeV〜約12MeVである。別の実施形態においては、エネルギーは、約1MeV〜10MeVである。別の実施形態においては、エネルギーは、約10MeVである。
【0075】
(ii)冷照射(CIR)
冷照射は、米国特許第US6,641,617号、同第US6,852,772号、および国際公開第WO97/29793号において詳述されている。冷照射工程においては、ポリマーは、室温または室温以下で提供される。好ましくは、ポリマーの温度は、約20℃である。その後、ポリマーは照射される。冷照射の一実施形態においては、ポリマーは、ポリマーの結晶の少なくとも部分的な溶解を引き起こすために、ポリマーにおいて十分な熱を生成するために十分に高い総量および/または十分に高い線量率で照射することができる。
【0076】
ガンマ照射または電子放射を使用することができる。概して、ガンマ照射は、電子照射よりさらに高い線量侵入深さを引き起こす。しかしながら、ガンマ照射は、一般的に、長い時間を必要とし、特に、ガンマ照射が空気中で行われる場合、より深い酸化が生じ得る。酸化は、ガンマ照射を窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウム等の不活性ガス、もしくは真空下で行うことによって低減または防止することができる。概して、電子照射は、より限定された線量侵入深さをもたらすが、より短い時間を要するため、広範囲に及ぶ酸化のリスクを減少させる。したがって、ガンマ照射または電子照射は、好ましい侵入の深さ、期間制限、および許容酸化レベルに基づいて使用することができる。
【0077】
照射の総量は、照射ポリマーの特性を制御する際、パラメータとして選択することができる。特に、照射の線量は、照射ポリマーにおける架橋の程度を制御するために変化させることができる。好ましい線量レベルは、ポリマーの分子量、および照射後に得られる所望の特性による。概して、CIRによって線量レベルを増加させることは、耐摩耗性の増加につながる。
【0078】
許容総量の例示的な範囲は、米国特許第6,641,617号および同第6,852,772号、国際公開第WO97/29793号、および以下の実施形態においてより詳細に開示される。一実施形態においては、総量は、約0.5MRad〜約1,000Mradである。別の実施形態においては、総量は、約1MRad〜約100MRadである。さらに他の実施形態においては、総量は、約4MRad〜約30MRadである。さらに他の実施形態においては、総量は、約20MRad〜約15MRadである。
【0079】
電子放射が使用される場合、電子のエネルギーも、照射ポリマーの特性を調整するために変更することができるパラメータである。特に、電子エネルギーが異なることは、ポリマーへの電子の侵入の異なる深さを引き起こす。実用的な電子エネルギーは、約0.1MeV〜16MeVの範囲に及び、それぞれ、0.5mm〜8cmの近似等線量侵入レベルを与える。最大侵入に対する好ましい電子エネルギーは、約10MeVであり、Studer(Daniken,Switzerland)またはE−Beam Services(New Jersey,USA)等の製造供給元を通して市販される。低電子エネルギーは、ポリマーの表面層が、表面からの距離に応じて、架橋密度における勾配によって優先的に架橋される実施形態に対して好ましい場合がある。
【0080】
(iii)暖照射(WIR)
暖照射は、米国特許第6,641,617号、および国際公開第WO97/29793号において詳述される。暖照射工程においては、ポリマーは、室温以上およびポリマーの融解温度以下の温度で提供される。その後、ポリマーは、照射される。暖照射の一実施形態においては、「暖照射断熱溶解」または「WIAM」と称される。理論上の意味においては、断熱昇温は、周りの環境への熱移動が存在しないという意味である。実用的な意味においては、そのような加熱は、本明細書および本明細書において挙げられる文献に開示される絶縁、照射線量率、および照射期間の組み合わせによって得ることができる。しかしながら、照射が加熱を引き起こす状況があるが、まだ周りの環境へのエネルギーの損失がある。また、すべての暖照射が断熱昇温を言及するわけではない。暖照射は、非断熱または部分的(生成される熱の約10〜75%が、周りの環境へ失われる等)断熱昇温を有することもできる。WIRのすべての実施形態において、ポリマーは、ポリマーの結晶の少なくとも部分的な溶解を引き起こすために、ポリマーにおいて十分な熱を生成するために十分に高い総量および/または十分に高い線量率で照射することができる。
【0081】
ポリマーは、その融点以下であるが、好ましくは室温以上の任意の温度で提供することができる。温度選択は、ポリマーの溶解の特定の熱およびエンタルピー、および使用される総線量レベルによる。米国特許第6,641,617号および国際公開第WO97/29793号において提供される式を使用して、ポリマーの最終温度が、融点以上または以下であるかの基準を利用して、好ましい温度範囲を計算することができる。所望の温度でのポリマーの予熱は、不活性(窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウム等の下、またはそれらの組み合わせ等)または非不活性環境(空気等)において行うことができる。
【0082】
一般論として、ポリマーの前照射加熱温度は、最初の加熱の間の10℃/分の加熱速度でのDSCに対するピーク融解温度(PMT)測定に基づいて調節することができる。一実施形態においては、ポリマーは、約20℃〜約PMTまで加熱する。別の実施形態においては、ポリマーは、約90℃まで予熱する。別の実施形態においては、ポリマーは、約100℃まで加熱する。別の実施形態においては、ポリマーは、PMTより約30℃低い、およびPMTより2℃低い温度まで予熱する。別の実施形態においては、ポリマーは、PMTより約12℃低い温度まで予熱する。
【0083】
WIRのWIAM実施形態においては、照射後のポリマーの温度は、ポリマーの融解温度またはそれ以上である。照射後の許容温度の例示的な範囲は、米国特許第6,641,617号および国際公開第WO97/29793号により詳細に開示される。一実施形態においては、照射後の温度は、約室温〜PMT、または約40℃〜PMT、または約100℃〜PMT、または約110℃〜PMT、または約120℃〜PMT、または約PMT〜約200℃である。これらの温度範囲は、ポリマーのPMTにより、ほとんどのヒドロゲルは、完全に脱水しているが、PMTがかなり高く、水和レベルが低い場合、100℃以下で溶解する。別の実施形態においては、照射後の温度は、約145℃〜約190℃である。さらに他の実施形態においては、照射後の温度は、約145℃〜約190℃である。さらに他の実施形態においては、照射後の温度は、約150℃である。
【0084】
WIRにおいては、ガンマ照射または電子放射を使用することができる。概して、ガンマ照射は、電子照射よりさらに高い線量侵入深さをもたらす。しかしながら、ガンマ照射は、一般的に、長い時間を必要とし、特に、ガンマ照射が空気中で行われる場合、より深い酸化が生じ得る。酸化は、ガンマ照射を窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウム等の不活性ガス、もしくは真空下で行うことによって低減または防止することができる。概して、電子照射は、より限定された線量侵入深さをもたらすが、より短い時間を要するため、広範囲に及ぶ酸化のリスクを減少させる。したがって、ガンマ照射または電子照射は、好ましい侵入の深さ、期間制限、および許容酸化レベルに基づいて使用することができる。WIRのWIAMの実施形態においては、電子放射が使用される。
【0085】
照射の総量も、照射ポリマーの特性を制御する際、パラメータとして選択することができる。特に、照射の線量は、照射ポリマーにおける架橋の程度を制御するために変化させることができる。許容総量の例示的な範囲は、米国特許第6,641,617号および国際公開第WO97/29793号により詳細に開示されている。
【0086】
照射の線量率も、所望の結果を得るために変更することができる。線量率は、WIAM工程における顕著な変数である。照射の好ましい線量率は、電子ビーム下で1回の照射において所望の総線量レベルを投与するためのものである。ビーム下で複数回の照射で総線量レベルを送達することもでき、1回で総量の一部(等量または非等量)を送達する。これは、効果の低い線量率につながる。
【0087】
許容線量率の範囲は、米国特許第6,641,617号および国際公開第WO97/29793号においてより詳細に例示される。概して、線量率は、0.5Mrad/1回の照射から50Mrad/1回の照射の間で変化する。線量率の上限は、照射によって誘導されるキャビテーション/亀裂へのポリマーの耐性による。
【0088】
電子放射が使用される場合、電子のエネルギーも、照射ポリマーの特性を調整するために変更することができるパラメータである。特に、電子エネルギーが異なることは、ポリマーへの電子の侵入の異なる深さをもたらす。実用的な電子エネルギーは、約0.1MeV〜16MeVの範囲に及び、それぞれ、0.5mm〜8cmの近似等線量侵入レベルを与える。最大侵入に対する好ましい電子エネルギーは、約10MeVであり、Studer(Daniken,Switzerland)またはE−Beam Services(New Jersey,USA)等の製造供給元を通して市販される。低電子エネルギーは、ポリマーの表面層が、表面からの距離に応じて、架橋密度における勾配によって優先的に架橋される実施形態に対して好ましい場合がある。
【0089】
(iv)後に行われる溶解(SM)−検出可能な残留遊離基の実質的な排除
使用するポリマーまたはポリマー合金、およびポリマーがその融点以下で照射されたかによって、照射工程後の材料に残留遊離基が残る場合がある。イオン化放射によってその融点以下で照射されたポリマーは、架橋および長寿命捕捉遊離基を含有する。照射の間に生成された遊離基の一部は、結晶領域および/または結晶層板表面に捕捉され、長期的に酸化誘導不安定性につながる(Kashiwabara,H.S.Shimada,and Y.Hori,Radiat.Phys.Chem.,1991,37(1):p.43−46;Jahan,M.S.and C.Wang,Journal of Biomedical Materials Research,1991,25:p.1005-1017;Sutula,L.C,et al.,Clinical Orthopedic Related Research,1995,3129:p.1681−1689を参照)。したがって、加熱によるこれらの残留捕捉遊離基の排除は、ポリマーの長期酸化不安定性を妨げる際、望ましい場合がある。Jahan M.S.and C.Wang,Journal of Biomedical Materials Research,1991,25:p.1005−1017;Sutula,L.C,et al.,Clinical Orthopedic Related Research,1995,319:p.28−4.
残留遊離基は、ポリマーを使用するポリマーの融点以上に加熱することによって減少させることができる。加熱により、残留遊離基は互いに再結合することができる。既定の系統に対して、プリフォームが、照射後、実質的に任意の検出可能な残留遊離基を有さない場合、その後の加熱ステップは省略してもよい。また、既定の系統に対して、残留遊離基の濃度が十分に低く、装置性能の低下を引き起こさない場合、加熱ステップは省略してもよい。検出可能な遊離基が実質的に存在しなくなるまでの遊離基の還元は、融点以上にまでポリマーを加熱することによって得ることができる。加熱は、ポリマーの結晶から生じる制約を排除するために十分な可動性を有する分子を提供するため、原則的に残留遊離基のすべてを再結合させる。好ましくは、ポリマーは、ポリマーのピーク融解温度(PMT)から分解温度(Td)、より好ましくはPMTより約3℃高い温度からTd、より好ましくはPMTより約10℃高い温度からPMTより50℃高い温度、より好ましくは約10℃からPMTより12℃高い温度、最も好ましくはPMTより約15℃高い温度まで加熱される。
【0090】
ある実施形態においては、照射後アニールがポリマーの融点以下で行うこともでき、そのような遊離基の効果は、抗酸化物質によって最小限または排除することができる場合、残留遊離基の許容レベルが存在することがある。
【0091】
(v)連続照射
ポリマーは、連続的な方法でガンマまたは電子ビーム放射のいずれかで照射される。電子ビームの場合、照射は、ビーム下で複数回の照射で行われ、ガンマ放射の場合、照射は、ガンマ線源を通して複数回の照射で行われる。任意で、ポリマーは、毎回または一部の照射通過の間に熱処理される。熱処理は、ポリマーの融点以下または融点での加熱であり得る。ステップのいずれかの照射は、上述のように、暖照射、冷照射、または溶解照射であり得る。例えば、ポリマーは、架橋の各ステップにおいて30kGyで照射され、まず、約120℃まで加熱され、その後、各照射サイクル後、約120℃で約5時間アニールされる。
【0092】
(vi)混合およびドーピング
上記のように、架橋ポリマー材料は、照射と同時または後に溶解されるという意味の溶解履歴を任意で有することができる。ポリマー材料は、圧密および照射の前に抗酸化物質と混合することができる。また、圧密ポリマー材料は、照射の前または後に抗酸化物質でドーピングすることができ、任意で、照射と同時または後に溶解していることができる。さらに、ポリマー材料は、圧密の前に抗酸化物質での混合、および圧密(照射および任意の溶解の前または後)に抗酸化物質でのドーピングの両方を行うことができる。ポリマー材料は、工程の間に異なる時点で抽出に供することができ、複数回抽出することもできる。
【0093】
系統におけるPAAの安定化
1.空気、真空、不活性ガス、および/または溶媒における脱水
PAAを含有するPVAゲルが、本明細書において記載される上記の方法のいずれかを使用して作製されると、ゲルは、次の環境の1つまたは組み合わせにおいて脱水される:空気、真空、不活性ガス、または有機溶媒。例えば、ゲルは、100%の空気、100%の不活性ガスを含有する雰囲気、0.1%〜99.9%の空気と混合された1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物、または0.1%〜99.9%の酸素を含有する1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物において脱水される。PAA含有PVAゲルの脱水は、緻密化、細孔崩壊、またはさらなるPVA結晶化によって、PAA分子をPVAゲルネットワーク内に物理的に捕捉させることができる。
【0094】
2.80℃以下または以上、例えば、室温以上から約100℃等の高温での空気、真空、不活性ガスにおける脱水
PAAを含有するPVAゲルが、上記の方法のいずれかを使用して作製されると、ゲルは、次の環境の1つまたは組み合わせにおいて脱水される:当該ゲルの融点以下の高温の空気、真空、および/または不活性ガス。例えば、ゲルは、100%の空気、100%の不活性ガスを含有する雰囲気、0.1%〜99.9%の空気と混合された1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物、または0.1%〜99.9%の酸素を含有する1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物において脱水される。PAA含有PVAゲルの脱水は、緻密化、細孔崩壊、またはさらなるPVA結晶化によって、PAA分子をPVAゲルネットワーク内に物理的に捕捉させることができる。
【0095】
3.空気、真空、不活性ガス、溶媒における脱水、その後の160℃以上または以下、例えば、約80℃以上から約260℃の温度での真空、不活性ガスにおける熱処理
PAAを含有するPVAゲルが、上記の方法1〜6のいずれかを使用して作製されると、ゲルは、次の環境の1つまたは組み合わせにおいて脱水される:当該ゲルの融点以下の高温の空気、真空、および/または不活性ガス。例えば、ゲルは、100%の空気、100%の不活性ガスを含有する雰囲気、0.1%〜99.9%の空気と混合された1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物、または0.1%〜99.9%の酸素を含有する1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物において脱水される。PAA含有PVAゲルの脱水は、緻密化、細孔崩壊、またはさらなるPVA結晶化によって、PAA分子をPVAゲルネットワーク内に物理的に捕捉させることができる。脱水後、当該ゲルは、100℃より高い高温、好ましくは160℃以下または以上、例えば、約80℃以上から約260℃で真空、または不活性ガスにおいて、約1時間から最長約20時間、またはそれ以上の間熱処理することができる。そのような熱処理は、さらにPVA結晶化度を増加させることによって、ゲルの機械的強度を改善することができる。
【0096】
4.高圧下での熱処理
上述の熱処理方法は、周囲雰囲気より高い圧力でも行うことができる。
【0097】
5.無水物およびエステルによる架橋
上述の熱処理方法は、カルボン酸の間で無水物を形成することによってPAA鎖を化学的に架橋することができるため、PVAネットワークを有するPAA相互貫入ネットワークを作製する。PVAにおけるヒドロキシル基およびPAAにおけるカルボン酸は、そのような熱処理の間にエステルも形成することができる。
【0098】
6.ガンマ、電子ビーム照射による架橋
一部の実施形態においては、ここで記載される方法によって処理されるPAA含有PVAゲルにおける放射線架橋は、ガンマまたは電子ビーム照射によって行われる。架橋は、耐摩耗性および耐クリープ性を増加させる。架橋は、本明細書において記載される処理/方法のいずれかのステップにおいて行うことができる。
【0099】
7.架橋剤による架橋
別の種類の化学架橋方法は、エチレングリコールジメタクリル酸(EGDMA)等の架橋剤を使用して、上述の方法によって処理されるPVA−PAAゲルにおけるPAA鎖を架橋する。グルタルアルデヒドおよびエピクロルヒドリン等の架橋剤は、当該ゲルへの組み込まれたPAAの物理的固定に加えて、機械的特性を改善するために、当該ゲルにおけるPVA鎖を架橋することができる。
【0100】
8.pH誘導体積転移の間のPAAの架橋
PAA鎖の電荷密度は、pH調整可能であり、アニオン電荷から与えられる静電反発力の系統的な制御を可能にする。PAA含有ゲルのpHをそのpKa値をはるかに下回るほど低下させることによって電荷密度を調節することにより、PAA鎖を近づけ、PAAにおいて分子内または分子間水素結合を促進することもできる、PAAにおけるプロトン化カルボン酸塩の数を増加させることができる。そのような状態でのPAA鎖は、上述の方法のいずれかによって、それらの間で、または隣接するPVA鎖で架橋される。当該ゲルのpHを生理的pH値まで増加させることは、PAAにおける非架橋酸性基を脱プロトン化し、それらの静電反発力は、関節腔において期待される反復的な荷重条件下で、ゲルの機械的完全性のために役立つ。
【0101】
PAA組み込みからの勾配特性に対する構造設計
1.受容ゲルにおけるPAAの勾配分布に対するPVA冷却ゲルへのPAAの制御された拡散
PVAゲルへ組み込まれたPAAの効果は、特性の勾配を有する不均一ゲル、すなわち、ゲルの大部分より高い、ゲル表面のPAA濃度を有することによる、ゲルの大部分より高い、ゲル表面のPAAの存在からの効果を得るために制御することができる。これは、拡散率を制御および/または変化させることによって得られる。拡散率は、PAAのより低い分子、PVAにおけるより大きい細孔、PVAの多孔性の増加、PVAのより高い水和等によって高くなる。
【0102】
2.「垂直」勾配特性を作製するための層ごとの集積
PVA−PAAゲルまたはPVA−PAA−PEGゲルは、勾配特性を得るために鋳型において異なる濃度の溶液を連続的に成型することによって、層ごとの方法で集積することができる。そのため、勾配は、堆積の方向と垂直な方向で配置される。高温の(例えば、約90℃)PVA−PAA−PEG混合物溶液は、第1の層を形成するために、一定の厚さまでの容器に注入する。鋳型の溶液は、室温またはより低い温度まで冷却することによってゲル化する。ゲル化後、容器中の第1の層は、形成された層を破壊せずに、融解温度以下の温度まで加熱する。溶液の別の層を、高温のPVA−PAA−PEG混合物から第1の層に添加し、2つの層を確実に接着させる。第2の層は、ポリマー溶液の同じまたは異なる組成物から形成することができるか、または新規の成分を混合物に添加することができる。容器は、再度冷却し、層状のゲル構造が形成される。この手順は、所望の層の数または厚さまで繰り返すことができる。そのような層ごとのゲル形成は、PVA−PEGゲルまたはPVA冷却ゲル、およびその後のPAA拡散にも適用することができる。
【0103】
3.熱処理の勾配効果
PAA含有PVAゲルに対する熱処理は、脱水ゲルの表面の1つを、当該ゲルの反対の表面より高い温度に接触させることによって、勾配の方法で意図的に制御することができる。より高い温度に接触するゲル表面は、加熱、すなわち、より低い温度に接触する他方の表面より多い架橋およびより高い結晶化度、より低い含水量によって、より影響を受ける。
【0104】
他の実施形態においては、耐クリープ性PVAヒドロゲルは、いくつかの異なる方法、その後の、異なる順序における以下の様々な処理ステップによって調製することができる。例えば、
○アクリル酸(AA)モノマーの取り込み
・PEGの添加を伴う、溶液におけるPVAおよびAAの混合
・PVA−PEGゲルへのAAの拡散
・PVA−AAゲルの凍結融解
・PVA−AA−PEGゲルの凍結融解
・PVAゲルの凍結融解、その後のPVAゲルへのAAの拡散、および/または
・AAモノマーが、そのままで重合される、上記のすべて
○系統におけるPAAの安定化
・緻密化、脱水による崩壊する細孔(DPサンプル中)
○系統におけるAAの安定化
・空気、真空、不活性ガス、溶媒における脱水
・80℃以下または以上、例えば、室温以上から約100℃等の高温での空気、真空、不活性ガスにおける脱水
・空気、真空、不活性ガス、溶媒における脱水、その後の160℃以上または以下、例えば、約80℃以上から約260℃の温度での真空、不活性ガスにおける熱処理
・高圧下での上記のすべて
・加熱による架橋−無水物、エステル
・ガンマ、電子ビーム照射による架橋
・化学剤による架橋−グルタルアルデヒド、エピクロルヒドリン、EGDMA、および/または
・緻密化、脱水による崩壊する細孔(DPサンプル中)
【0105】
一実施形態によると、本発明は、加工PVAヒドロゲル、PVAヒドロゲル含有組成物、およびPVAヒドロゲルおよびPVAヒドロゲル含有組成物の作製方法を提供する。本発明は、また、必要とする対象を治療の際の加工PVAヒドロゲルおよびPVAヒドロゲル含有組成物の使用方法も提供する。
【0106】
従来技術において記載されるヒドロゲル(例えば、米国特許第4,663,358号、同第5,981,826号、および同第5,705,780号、米国公開特許第20040092653号、および同第20040171740号を参照)は、最初に本明細書において記載される方法を使用することによって、本発明のPVAヒドロゲルを作製するための出発材料として使用することができる。本発明において提供されるPVAヒドロゲルは、軟骨、筋肉、乳房組織、椎間板の髄核、他の軟組織、概して関節内でのクッションの役目を果たす挿入装置等の任意の組織を増加または置換するために体内において使用することができる。
【0107】
PVAヒドロゲルは、概して、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)のポリマー、ポリマー混合物、またはコポリマー、アルギン酸塩、多糖類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリ−N−アルキルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸、またはそれらの2つまたはそれ以上の組み合わせを含む。
【0108】
本明細書において開示されるPVAヒドロゲルは、他のポリマーまたはゲル化剤、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸等、またはそれらの2つまたはそれ以上の組み合わせの少なくとも1つと共重合および/または混合されたポリビニルアルコール(PVA)を含む均等に分布したヒドロゲル分子またはヒドロゲル粒子から成る。
【0109】
本発明の一態様によると、PVAヒドロゲルは、他のポリマーの少なくとも1つと共重合および/または混合されたポリビニルアルコール(PVA)を含む。
【0110】
本発明の別の態様によると、ヒドロゲル溶液は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、またはそれらの2つまたはそれ以上の組み合わせを含む。
【0111】
本発明の別の態様によると、ヒドロゲル溶液は、ポリビニルアルコール(PVA)溶液である。
【0112】
本発明のPVAヒドロゲルは、ヒトの関節等の哺乳類の関節において様々な方法で使用することができる。例えば、挿入装置は、ヒトの関節の高負荷に耐えるために必要とする機械的強度を有するPVAヒドロゲルから製造することができ、関節軟骨置換応用において使用することができる。挿入装置は、通常、軟骨表面の互いに対する接触を最小限にするために、関節内でクッションとして作用する。これは、関節炎にかかった関節を有する患者において有益である。軟骨損傷部における早期関節炎にかかった関節は、患者の損傷軟骨表面の間での接触を最小限にする、そのような挿入装置で治療することができる。挿入装置は、Fell et al.(米国特許第6,923,831号、同第6,911,044号、同第6,866,684号、および同第6,855,165号を参照)によって記載される。これらの装置は、様々な形状および大きさを有することができる。長期的に体内で機能するヒドロゲル挿入装置では、装置は、まず、高度な耐クリープ性を有する必要がある。これは、体内における使用の間に、挿入ヒドロゲル装置の形状の変化を最小限にするためである。剛性が高い本発明のPVAヒドロゲル材料は、高い耐クリープ性を示す。本発明によるヒドロゲル挿入装置は、靱性、耐摩耗性、高度な耐クリープ性等の優れた機械的特性も有する。
【0113】
ヒドロゲル移植片の使用のための別の方法は、関節における空洞の充填による。空洞は、既存のものまたは執刀医によって用意されたものでよい。PVAヒドロゲルプラグは、空洞に挿入することができる。ヒドロゲルプラグは、任意の形状および大きさであり得る。例えば、円筒形であり得る。一部の実施形態においては、プラグは、周囲の軟骨表面から上昇するために大き過ぎてもよい。他の実施形態においては、プラグは、空洞に埋め込まれた状態でいるために小さ過ぎでもよい。プラグが、周囲の軟骨表面の上にしっかりと留まるか、または周囲の軟骨表面から埋まることができるように、小型化または大型化は、約1mm未満、約1mm、約1mm以上、約2mm、約3mm、または約3mm以上であり得る。一部の実施形態においては、ヒドロゲルプラグは、その大きさを収縮し、空洞への配置を容易にするために、わずかに脱水してもよい。その後、ヒドロゲルプラグは、空洞に合うように、水和し、そのままで膨張させることができる。ヒドロゲルプラグの脱水および再水和した寸法は、再脱水および再膨張後にプラグの良い適合、小型化、または大型化を得るために、調整することができる。そのままでの再脱水は、プラグと空洞の間の摩擦ばめを増加させるために使用することもできる。これは、再脱水後に、プラグの断面が、例えば、約1mm、1mm未満、または1mm以上、空洞の断面より大きくなってもよくするために、寸法または脱水の程度を調整することによって得ることができる。一部の実施形態においては、空洞は、RubertiおよびBraithwaite(米国公開特許第20040092653号および同第20040171740号を参照)、Muratoglu et al.(国際公開第WO2006/125082号)、Lowman(米国公開特許第20040220296号)によって記載されるもの、および他の注入可能な系統等の当該分野で周知の注入可能なヒドロゲル系で充填することができる。
【0114】
本発明は、また、ヒトの関節の高応力下で形状を維持することができるPVAヒドロゲルを得るための、PVAヒドロゲル系の加工方法も提供する。本発明の一態様によると、PVAヒドロゲルは、クリープに対する耐性および損耗に対する耐性を増加するためのヒドロゲルの剛性、靱性、および強度を改善することによって得られる。本発明は、ヒドロゲルの機械的特性を改善するために有用な脱水方法を提供する。上述の様々な脱水方法は、ヒドロゲルの特性を改善するために、組み合わせて使用することができる。脱水方法のいずれかは、ヒドロゲルの機械的特性を改善するために、それ自体、または他の脱水方法と組み合わせて使用することができる。
【0115】
PVAヒドロゲルの極度の脱水の場合、一部の実施形態に対して、水の存在によって与えられる潤滑を取り戻すために、少なくともある程度まで、後にPVAヒドロゲルを再水和することが、一部の適用に対して重要となり得る。最初に水、およびほとんどの実施形態において、低分子量PEG等の非揮発性成分およびPVP、PEO、PAA、PMAA、コンドロイチン硫酸等の他の成分のうち1つまたはそれ以上の他の成分を含有するヒドロゲルで熱脱水が行われる場合、脱水ヒドロゲルは、様々なレベルまで容易に再水和される。本発明の一態様によると、熱脱水後の再水和のレベルは、脱水前の最初のヒドロゲルの水相における他の成分の濃度による。対照的に、出発ヒドロゲルが水以外の他の成分を含有しない場合、熱脱水の後の再水和の程度は、他の成分の存在下において脱水されたヒドロゲルの再水和レベルと比較して、かなり低下する。水以外の他の成分の存在は、熱脱水および再水和後のヒドロゲルのクリープ挙動にも関係がある。ヒドロゲルは、他の成分の存在下において熱処理される場合、より粘弾性となる。
【0116】
別の態様によると、PEG等の低分子量成分を含有するPVAヒドロゲルは、熱脱水の間、それらの不透明性を保持する。対照的に、そのような成分を含有しない、同一の条件で熱脱水されたPVAヒドロゲルは、それらの不透明性を失い、透明となり、分子多孔性の損失を示す。分子多孔性は、水分子がヒドロゲルを分離するために、脱水する構造における自由空間であると考えられる。そのような成分のいずれも含有しないヒドロゲルの熱脱水後の不透明性の損失は、それらのかなり低い再水和能力の原因であり得る。本発明の一態様によると、非揮発性成分は、熱脱水の間、ヒドロゲル構造に残り、分子多孔性の崩壊を防止するため、これらのヒドロゲルは熱脱水後に再水和することができる。
【0117】
本発明は、また、凍結融解調製されたPVA−PAA(FT−PVA−PAA)ヒドロゲルも提供し、PVA−PAAヒドロゲルは、約160℃で加熱することによってさらに処理される。再水和の後、加熱されたゲルは、透明のままであり、弾力性のある、堅い、一種のゴムのような材料を形成する。この材料は、一部の用途において有用であるが、ヒドロゲルにおける高い水分含有量を必要とする用途に対しては有用ではない。再水和の程度は、加熱前にPEG等の成分を水相に添加することによって、加熱されたFT−PVA−PAAにおいてさらに調整される。
【0118】
別の実施形態においては、PVAヒドロゲル移植片は、包装され、滅菌される。包装は、滅菌および保存の間等の移植までに脱水を防止するために、ヒドロゲル装置を水溶液に浸漬させるためであり得る。水溶液は、水、脱イオン水、食塩溶液、リンゲル溶液、または食塩水であり得る。水溶液は、水中のポリエチレングリコールの溶液でもあり得る。溶液は、PEGにおいて5%(wt)未満、約5%(wt)、約5%(wt)以上、約10%(wt)、約15%(wt)、約20%(wt)、約30%(wt)、約50%(wt)、約90%(wt)、または約100%(wt)であり得る。ヒドロゲル装置は、非揮発性溶媒または非溶媒においても滅菌および保存することができる。
【0119】
PVAヒドロゲル移植片の滅菌は、例えば、ガンマ線滅菌、熱、ガスプラズマ滅菌、またはエチレンオキシド滅菌によって行うことができる。一実施形態によると、ヒドロゲルは、加圧滅菌器によって滅菌される。滅菌は、工場で行われるか、代わりに、移植片は、加圧滅菌器で滅菌される病院へ搬送される。一部の病院には、ヒドロゲル移植片を滅菌するためにも使用される、エチレンオキシド滅菌装置が設置される。
【0120】
一実施形態においては、ヒドロゲル移植片は、包装の後に滅菌される。他の実施形態においては、ヒドロゲル移植片は、滅菌され、滅菌水溶液に配置される。
【0121】
別の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルは、含水PVA溶液(少なくとも約10%(wt)PVA、約15%(wt)PVA以上、約20%(wt)PVA、約25%(wt)PVA、約27%(wt)PVA、約30%(wt)PVA、約35%(wt)PVA、約40%(wt)PVA、約45%(wt)PVA、約50%(wt)PVA以上)から開始する凍結融解方法を使用して調製され、凍結融解サイクル(少なくとも1回、1回以上、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上の回数)に供する。凍結融解サイクルは、PVA溶液を0℃以下に冷却し、0℃以上に加熱することとして定義される。その後、PVA−PAAヒドロゲルは、脱水に供する。その後、脱水ヒドロゲルは、再水和のために食塩溶液に配置する。この工程は、高い機械的強度を有する、ほんの少しの再水和PVA−PAAヒドロゲルをもたらす。
【0122】
別の実施形態においては、本発明は、ゲル化および/または形成されたゲルへの拡散の前の混合方法による、PAA等の親水性イオン性分子の添加によって、耐クリープ性等の機械的強度とのほとんど妥協せずに、含水量を増加させ、潤滑性を改善するために、PVAヒドロゲルの修正の工程を提供する。
【0123】
別の実施形態においては、本発明は、PVA−PAAゲル形成の間にPEGを混合する方法、PEGをPVA−PAAゲルに拡散する方法、および/またはPEGをPAAとして同時または連続的にPVAゲルへ拡散する方法によって、機械的完全性の損失を防止し、水に対する高い親和性を維持するための、PVA−PAAゲルに対して後に行われる処理の間に、PEG等の溶媒の組み込みの工程を提供する。
【0124】
本発明の一実施形態においては、PVA:PAA比率は、約10%、15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれらの程度、それらの間の任意の値、もしくはそれら以上での混合物における全ポリマー含量を含めて、約99.9:0.1〜5:5、例えば、99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の比率であり得る。別の実施形態においては、最終ゲル含量におけるPAAとPVAの組成率は、約0.1%〜90%であり得る。別の実施形態においては、基礎PVA−PAAヒドロゲルのポリマー含量は、10%から最大90%であり得る。混合または拡散に対するPAAの平均分子量は、約2,000から最大100万であり得る。
【0125】
本発明の一態様によると、PAA拡散は、基礎PVAゲルを、含水PAA溶液、またはPEG、もしくはアルコール、DMSO、NaCl溶液、CaCl2溶液、生理食塩水、リンゲル溶液、リン酸緩衝生理食塩水、超臨界流体等の他の溶媒との混合物溶液に浸漬させることによって行うことができる。PAA拡散は、80℃以下または以上、例えば、室温以上から約100℃等の高温で行うことができる。PAA拡散は、約0.1%〜70%の範囲の濃度のPAA溶液において行うことができる。
【0126】
別の実施形態においては、本発明は、受容ゲルにおけるPAAの勾配分布に対するPVAゲルへのPAAの制御された拡散の工程を提供する。PAA含有PVAゲルは、室温、もしくは80℃以下または以上、例えば、室温以上から約100℃等の高温でのPVAゲルにおけるPAAの物理的固定に対して、空気、真空、不活性ガス、溶媒において脱水することができる。PAA含有PVAゲルに対する脱水後の熱処理は、ヒドロゲルネットワークにおいてPAAを不可逆的に結合し、耐クリープ性を改善するために、1時間から最大20時間、またはそれ以上、高温、例えば、100℃以上、好ましくは160℃以下または以上、例えば、約80℃以上〜約260℃で真空、不活性ガスにおいて行うことができる。真空または不活性ガスにおけるPAA含有PVAゲルに対する脱水後の熱アニールも、約1時間から最大24時間またはそれ以上、室温、または80℃、例えば、室温以上から約100℃の高温から開始して、約100℃より高い最終温度、好ましくは160℃以下または以上、例えば、約80℃以上〜約260℃まで、約0.01℃/分、約0.1℃/分、約1℃/分、または約10℃/分等の加熱速度で加熱することによって行うことができる。
【0127】
物理的架橋PVAヒドロゲルにおける耐クリープ性を改善するためのゲル化後の強化方法である熱アニールは、PVAヒドロゲルのEWCおよび潤滑性の変化を引き起こし得る。ゲル化前にPAAをPVA溶液に混合し、PAA含有PVAヒドロゲルを形成することによって、PVAゲルの親水性および圧縮強度は、陰電荷を非電荷PVAゲルマトリクスに与えることによって増加させることができる。PVA−PAAヒドロゲルに対する熱アニール工程も、特に、アニールが空気中で行われる場合、PAAおよびPVA鎖の熱誘導架橋のために、ゲルを脆弱にすることができる。しかしながら、本発明の態様によると、熱アニール中のPEG400等の低分子量PEGの存在は、これらの問題を軽減することができる。例えば、PAA含有PVAヒドロゲルに存在するPEG400分子は、付近にあるPVAおよびPAAのそのような官能基を選抜することによって、熱アニールの間、PVAのヒドロキシル基とPAAのカルボン酸との間に生じるエステル化を軽減または予防することができる。本発明の別の態様によると、熱アニール中のPEGの存在は、PAA含有PVAヒドロゲルの表面潤滑性を有意に改善することができる。
【0128】
別の実施形態においては、熱アニール中のPEGの存在は、PAA含有PVAヒドロゲルの表面潤滑性を有意に改善することができる。PEGは、保存された細孔が、表面潤滑のために好ましい、再水和後の含水量の保持ができるように、アニール工程の間、ゲルにおける細孔が崩壊しないように保護することができる。PEGは、空気の存在下において熱酸化分解を行うことが周知である。空気中での熱分解の間、PEGは、酸素と反応し、ギ酸エステル等の低分子量エステルを生成することができる、熱に不安定なα−ヒドロペルオキシドを形成する。空気中でのPEGのそのような分解工程は、他のポリマー成分からのカルボン酸基が、例えば、本発明のポリ(アクリル酸)であり得るゲルにおいて共存する場合、より容易にすることができる。PEGの熱分解生成物または誘導体は、ゲルの表面潤滑性をさらに改善することができる、ゲル上のさらに陰電荷された基を作製するために、アニール工程の間、ゲルにおけるPVAまたはPAAと反応することができる。
【0129】
二種類のゲル、例えば、PEGドープ(1型)およびPVA:PAAの異なる混合率でのPEG混合(2型)を使用することができる。
【0130】
1型−PEGドープゲル:PVA−PAA溶液を予熱したガラスのシート状鋳型に注入し、3回の凍結融解サイクル(−17℃での約16時間の凍結、および室温での約8時間の融解)に供する。その後、成型されたゲルは、100%のPEGに浸漬し(浸漬によるPEGドーピング)、その後、真空脱水し、約1時間またはそれ以上、自己加圧容器における不活性環境下(アルゴン等)または空気において約160℃でアニールする。
【0131】
2型−PEG混合ゲル:約15w/w%PEG(PVA−PAA混合物における全PEGおよび水の量に対する)は、約90℃で予熱し、PVA−PAA−PEG均質溶液を形成するために高温のPVA−PAA混合物に添加する。得られた均質ポリマー混合物を予熱したガラス鋳型に注入する。その後、成型されたゲルは、約1時間またはそれ以上、自己加圧容器における不活性環境下(アルゴン等)または空気において、3回の凍結融解サイクルに供し、その後、真空脱水および約160℃でアニールを行う。各ゲルシートは、脱イオン(DI)水に浸漬させ、残留PEGを除去し、平衡再水和を得る。
【0132】
1型および2型の両方における非アニール「PVAのみ」(PAAなしのPVA)ゲルは、凍結融解サイクルの完了後、鋳型から取り出した直後にDI水においてゲルを再水和することによって作製される。
【0133】
本発明の別の態様によると、PVAヒドロゲルにおけるPAAの存在とのPEGドーピングステップの組み合わせは、平衡含水量を増加させ、PVAヒドロゲルにおける摩擦係数を低下させることができる。例えば、1型ゲルで記載されるPEGドーピングステップの間、PEGは、ゲル化後、PAA含有PVAヒドロゲルに存在するマイクロおよびナノ細孔に拡散させ、およびそれを充填し、その後、アニールの間、崩壊から細孔を保護することができる。アニール工程後の再水和の後、保存された細孔は、PVA−PAAゲルの吸水度を促進することができ、細孔が、推定上、崩壊される非PEGドープPVA−PAAゲルと比較して、より高いEWCおよび改善された表面潤滑性をもたらす。
【0134】
別の実施形態においては、PVA:PAA比率は、約10%、15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれらの程度、それらの間の任意の値、もしくはそれら以上での混合物における全ポリマー含量を含めて、約99.9:0.1〜5:5、例えば、99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の比率であり得る。
【0135】
本発明の別の態様によると、ゲル化前のPVAに富む領域、およびPAAに富む領域へのPVA−PAA溶液のpH誘導相分離は、PAA含有PVAヒドロゲルの耐クリープ性を増加させることができる。分子レベルにおいてPVAと共存している場合、カルボン酸基の妨害により、PAAは、PVAの結晶化を低下させることが周知である。PVAヒドロゲルの機械的強度は、物理的に架橋したPVAヒドロゲルにおけるPVA結晶化度の程度に由来するため、隣接するPVA鎖の結晶化を妨害するPAA鎖の存在は、PVAヒドロゲルの機械的強度を低下させ得る。しかしながら、PAAの存在は、アニールPVAヒドロゲルにおいて、平衡含水量を増加させ、高表面潤滑性を提供する。したがって、PAA鎖が、PVAおよびPAAの非混和性の混合物においてPVA鎖から分離される場合、分離したPVA領域のPVA鎖は、PAA鎖が、再水和後に表面潤滑性を与える高い保水性をまだ維持できている間に、熱アニール工程によるPAAから妨害されずに、さらに結晶化することができる。PAA鎖におけるカルボン酸基は、pH1.5より低いpH値でのほぼ100%プロトン化される。PAAにおけるカルボン酸は、低いpHの酸性型のPVAおよびPAA鎖の間で、混和性を促進するために、PVA鎖におけるヒドロキシル基との水素結合を活発に形成する。しかしながら、PAA分子が、増加するpHにより部分的にイオン化する場合、PAAおよびPVA鎖との間の水素結合は破壊しだし、PVAおよびPAAの混和性を低下させ、最終的に、PVA−PAA混合物の非混和性溶液をもたらす。
【0136】
PVAとPAAとの間の分子間相互作用がもうPVA−PAA複雑形状を好まない一定のpH値(「混和性転誘導」pH(pHmt)である)以上のpHの溶液のさらなる増加により、PVA−PAA混合物は、最終的に、非混和性溶液になる。例えば、PVA:PAA比率が19:1の25%全ポリマーによるPAA含有PVAヒドロゲルを作製するため、PVA粉末を溶解する前の含水PAA(1.654w/w%)溶液の天然のpHは、室温で約3.0である。いかなる付加的pH調整がないそのような組成物は、90℃で、添加されたPVAを有する完全に透明な混和性のPVA−PAA溶液を形成する。一方、1.654w/w%PAA溶液のpHが、PVA粉末の添加前のpH5.5の値まで増加する場合、最終PVA−PAA混合物は、わずかに濁った非混和性の混合物となる。したがって、19:1のPVA:PAA比率を有する25%全ポリマーを有するPVA−PAA溶液が、混和性から非混和性の混合物に変わるpHmtは、約3.0から約5.5の間の値であり得る。pHmtは、総ポリマー濃度、各ポリマーの分子量、PVA:PAA比率、溶液の塩濃度またはイオン強度等によって異なり得る。PVA−PAA溶液のpH値をpHmt以下または以上に調節することによって、PVA−PAA溶液の混和性をゲル化前に操作することができる。したがって、ゲル化およびゲル化後の工程の間、PVAおよびPAA鎖の間における分子相互作用は、溶液のpHによって制御することができる。PAAに富む領域、およびPVAに富む領域が、pHmt以上の非混和性のPVA−PAA溶液において分相すると、PVA鎖の結晶化は、PAA鎖の妨害によって影響を受け難く、それにより、高度のPVA結晶化度に達成することによって、PAA含有PVAヒドロゲルの耐クリープ性を最終的に改善する。
【0137】
本発明の別の態様によると、上述の工程は、高圧環境においても行うことができる。本明細書において記載される熱処理方法は、周囲雰囲気より上昇した圧力で行うこともできる。
【0138】
本発明の別の態様によると、PEGの有無にかかわらず、PVAゲルにおけるPAAの架橋は、ガンマまたは電子ビーム照射によって行うことができる。PEGの有無に関わらないPVAゲルにおけるPAAの架橋は、エチレングリコールジメタクリル酸(EGDMA)等の架橋剤を使用する化学的架橋方法によって行うことができる。PVAゲルにおけるPAAの架橋密度は、PAA鎖におけるプロトン化カルボン酸塩の数を変化させることによる架橋の前に、pH調整によって制御することができる。
【0139】
本発明の別の態様によると、最終ゲルの「垂直」勾配特性は、組成制御、例えば、a)反復的凍結融解工程において1回に付き1つの層を添加することによる、各層におけるPVAとPAAの様々な組成率によるPVA−PAAゲルの層ごとの集積、b)反復的凍結融解工程またはシータゲル化工程において1回に付き1つの層を添加することによる、各層におけるPVAとPAAまたはPVAとPEGの様々な組成率によるPVA−PAA−PEGゲルの層ごとの集積、およびc)異なる濃度のPVA/PAAおよび/またはPV/PEG/PAAの層を形成するための共押し出し、によって形成することができる。
【0140】
本発明の別の態様によると、最終ゲルの「垂直」勾配特性は、a)脱水ゲルの表面の1つを当該ゲルの反対の表面より高い温度に接触させる、b)非PEG含有脱水ゲルの表面の1つのみを、加熱の間にPEGに接触させる、およびc)非PEG含有脱水ゲルの表面の1つを、PEGおよび当該ゲルの反対の表面より高い温度に接触させることによる加熱条件制御によって形成することもできる。
【0141】
本発明の一実施形態においては、PEGは、PVAヒドロゲルに対する非揮発性非溶媒として使用される。DMSOは、含水PVA−PAA溶液、ヒドロゲルに対する前駆体を調製する際、水の代わりに使用される。
【0142】
本発明の一実施形態においては、PEG溶液は、溶媒(好ましくは水、エタノール、エチレングリコール、DMSO、またはその他)におけるPEGの溶液である。溶液濃度は、0.1%(wt)PEGから99.9%(wt)PEGの間のいずれかであり得る。溶液中のPEGは、異なる分子量(好ましくは300、400、または500g/mol、300g/mol以上、1000g/mol、5000g/mol、またはそれ以上)であり得る。溶液中のPEGは、異なる平均分子量のPEGの混合物であり得る。
【0143】
別の実施形態においては、PEG含有PVA−PAAヒドロゲルは、含水PVA溶液(少なくとも約10%(wt)PVA、約15%(wt)PVA、約20%(wt)PVA、約25%(wt)PVA、約27%(wt)PVA、約30%(wt)PVA、約35%(wt)PVA、約40%(wt)PVA、約45%(wt)PVA、約50%(wt)PVA以上)から開始し、それを、凍結融解サイクル(少なくとも1回、1回以上、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上の回数)に供する凍結融解方法を使用して調製される。このステップでは、PVA−PAAヒドロゲルは、完全水和に到達するために、任意で生理食塩水に配置することができる。その後、ゲルは、低分子量PEG溶液に配置される。これは、ヒドロゲルを非溶媒PEGでドープするためである。PEG溶液浸漬の期間は、ヒドロゲル中における均一平衡PEG含量への到達、または不均一PEG分布(浸漬期間を短縮することによる)への到達のいずれかを得るため、異なり得る。後者は、PEGに富む皮膚、およびPVA−PAAヒドロゲル内のPEG濃度の勾配をもたらす。
【0144】
別の実施形態においては、PEG含有PVAヒドロゲルは、含水PVA溶液(少なくとも約10%(wt)PVA、約15%(wt)PVA以上、約20%(wt)PVA、約25%(wt)PVA、約27%(wt)PVA、約30%(wt)PVA、約35%(wt)PVA、約40%(wt)PVA、約45%(wt)PVA、約50%(wt)PVA以上)から開始し、それを高温(室温以上または50℃以上)で低分子量PEG溶液と混合することによって調製される。室温までの冷却後、混合物は、水および非溶媒PEGを含有するPVA−PAAヒドロゲルを形成する。別の実施形態においては、高温のPVA−PAA/PEG混合物は、室温まで冷却されないが、その代わり、凍結融解サイクルに供する。
【0145】
別の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルは、熱脱水される。PVA−PAAヒドロゲルは、熱脱水(または加熱)の間にPEGを含有する。熱脱水は、約40℃、約40℃以上、約80℃、80℃以上、90℃、約100℃、100℃以上、約150℃、約160℃、160℃以上、約180℃、180℃以上、約200℃、または200℃以上で行われる。別の実施形態においては、脱水は、約40℃、約80℃、約90℃、約100℃、約150℃、約160℃、約180℃、約200℃、または200℃以上で行われる。熱処理の期間および温度は、ヒドロゲルの大きさ、および水和レベルにより、例えば、期間は、約1時間またはそれ以下、約5時間、約10時間、約24時間、数日、または数週間であり得る。熱脱水は、任意の環境、好ましくは窒素またはアルゴンのような不活性ガス、または真空において行うことができる。熱脱水は、空気またはアセチレンガス、もしくは多くのガス混合物において行うこともできる。熱脱水は、より高い熱脱水率を得るために、既に加熱された環境にヒドロゲルを配置することによってか、または熱脱水の低い率を得るために、ヒドロゲルをゆっくりと加熱することによってのいずれかで行うことができる。熱脱水率は、ヒドロゲルが、1日に付き1%重量の損失、1日に付き10%重量の損失、1日に付き50%重量の損失、1時間に付き1%重量の損失、1時間に付き10%重量の損失、1時間に付き50%重量の損失、1分に付き1%重量の損失、1分に付き5%重量の損失、1分に付き10%重量の損失、1分に付き50%重量の損失、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の量の割合で、水の除去によって重量を失うようにするためであり得る。熱脱水率は、温度が上昇する割合およびヒドロゲルの大きさによる。熱脱水の前、ヒドロゲルの水和レベルは、真空脱水によって低下することができる。熱脱水の後、ヒドロゲルは、再水和のために食塩溶液に配置される。これは、PVAヒドロゲルにおける良いレベルの再水和を引き起こし、ヒトの軟骨または他の親水性表面を接合する場合の高い機械的強度および良い潤滑をもたらす。このヒドロゲルは、その水素結合構造を維持することが期待されるため、水、生理食塩水、または体液における長期間の溶解に供さない。
【0146】
説明および実施例は、PVAヒドロゲル系に対して与えられるが、ポリマー構造の任意のヒドロゲル系、つまり、長鎖分子を有するものに適用することができる。したがって、本発明は、PVAを基材として含むが、これに限定されないヒドロゲル系を提供する。
【0147】
本発明の一態様によると、ポリビニルアルコール(PVA)は、ベースヒドロゲルとして使用することができる。ベースPVAヒドロゲルは、PVA溶液(PVAは、水またはDMSO等の溶媒に溶解することができる)を1回または複数回の凍結融解に供することによって、周知の凍結融解方法で調製することができる。凍結融解方法において使用されるPVA溶液は、PEGのような他の成分を含有し得る。ベースPVAヒドロゲルは、PVA溶液の放射線架橋によっても調製することができる。PVAヒドロゲルを調製するための別の方法を使用して、高温でPVA溶液と(PEG)等のゲル化剤を混合し、室温まで冷却することができる。
【0148】
一実施形態においては、ヒドロゲルは、立方体形状、円筒形状、直角プリズム形状、または移植片の形状等の任意の形状であり得る。
【0149】
別の実施形態においては、NIPAAmをベースヒドロゲルとして使用することができる。ベースNIPAAmヒドロゲルは、NIPAAm溶液の放射線架橋によって調製することができる。代替として、Lowman et al.によって記載される方法を使用することができる。
【0150】
別の実施形態においては、位相ゲル(TP)をベースヒドロゲルとして使用することができる。ベースTPヒドロゲルは、Tanaka et al.によって記載される方法で調製することができる(Progress in Polymer Science,2005,30:1−9を参照)。TPゲルにおけるポリマー鎖は、個々の鎖に沿ってスライドしている架橋剤によって柔軟に結合する。
【0151】
以下の実施形態においては、ナノ複合(NC)ゲル構造をベースヒドロゲルとして使用することができる。ベースNCヒドロゲルは、Tanaka et al.によって記載される方法で調製することができる(Prog.Polym.Sci 2005,30:1−9を参照)。
【0152】
一部の実施形態においては、脱水ヒドロゲルをベースヒドロゲルとして使用することができる。脱水のレベルは、ベースヒドロゲルが99%〜1%の水、より好ましくは99%〜5%の水、より好ましくは99%〜25%の水、より好ましくは99%〜50%水、より好ましくは99%〜75%のヒドロゲル、より好ましくは約70%(wt)の水、または80%(wt)の水を含有するように制御することができる。
【0153】
ヒドロゲルの含水量は、その平衡水和レベルとその脱水レベルの間の重量変化を測定することによって判断することができる。
【0154】
一部の実施形態においては、水中のPVA/PAA/PEGの高温の溶液は、室温まで冷却され、「ゲルとしての」形態において使用される。
【0155】
本発明の一態様によると、PVA−PAA−PEGヒドロゲルは、PEGを除去するために、水、脱イオン水、食塩溶液、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液、または食塩水に浸漬される。該工程は、脱PEG工程と称される。脱PEGの間、ヒドロゲルは、水も吸収し、平衡含水量に近づく。したがって、脱PEGも、再水和工程であり得る。
【0156】
別の実施形態においては、脱水ヒドロゲルは、再水和される。一部の実施形態においては、再水和ヒドロゲルは、ヒドロゲルが脱水ステップの前に含有していた水より少ない水を含有する。
【0157】
一部の実施形態においては、ヒドロゲル寸法は、医療装置の機械加工を可能にするために十分大きい。
【0158】
ヒドロゲルの脱水は、様々な方法によって得ることができる。例えば、ヒドロゲルは、水を出すために、室温または高温で真空に配置し、脱水を引き起こすことができる。真空の量は、ヒドロゲルが脱水の間に配置される真空チャンバに、空気または不活性ガスを添加することによって低減することができる。ヒドロゲルの脱水は、それを室温または高温で空気または不活性ガスに保持することによって得ることもできる。空気または不活性ガスにおける脱水は、室温以下の温度で行うこともできる。多くの実施形態においては、脱水が高温で行われる場合、温度をヒドロゲルの融点以下に保持することが必要である。しかしながら、ヒドロゲルの融点は、脱水ステップの間に上昇し得、脱水が進むにつれて、より高い温度に上昇できるようにする。ヒドロゲルの脱水は、ヒドロゲルを溶媒に配置することによって行うこともできる。この場合、溶媒は、水をヒドロゲルから追い出す。例えば、PVA−PAAヒドロゲルを低分子量PEG(100g/mol以上、約300〜400g/mol、約500g/mol)に配置することによって、PVA−PAAヒドロゲルの脱水を引き起こすことができる。この場合、PEGは、純粋な溶液として、または溶液において使用することができる。PEG濃度が高いほど、脱水の程度が高くなる。溶媒脱水も高温で行うことができる。これらの脱水方法は、互いに組み合わせ使用することができる。
【0159】
ヒドロゲルの再水和は、生理食塩水、水、脱イオン水、食塩水等の溶液、または水溶液もしくはDMSOを含有する水において行うことができる。
【0160】
一部の実施形態においては、ヒドロゲルは、医療装置に形付けられ、その後脱水される。その後、脱水移植片は、再水和される。医療移植片の最初の大きさ、および形状は、脱水によって生じた収縮およびその後の再水和によって生じた膨張(ほとんどの実施形態においては、脱水収縮は、再水和膨張より大きい)によって、ヒトの関節において使用できる所望の移植片の大きさと形状が得られるように調整される。
【0161】
ある実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルは、膝用の腎臓形状の挿入装置、腰用のカップ形状の挿入装置、肩用の浅いくぼみのある形状の挿入装置、任意のヒトの関節に対する挿入装置のための他の形状等、医療装置として作用するための所望の形状に機械加工することができる。また、PVA−PAAヒドロゲルの機械加工により、関節にあるか、または手術の間に執刀医によって調製されるかいずれかの軟骨欠陥を充填するための円筒、立方形、または他の形状が得ることができる。
【0162】
PVA−PAAヒドロゲル医療装置は、膝関節、腰関節、肩関節、肘関節、ならびに上部および下部の四肢関節等のヒトの関節において浮遊関節移植片として作用する、ユニスペーサ等の挿入装置であり得る。
【0163】
一部の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルは、ヒドロゲルを脱水するために100%のPEGに配置される。その後、脱水ゲルは、再水和のために食塩溶液に配置される。この工程は、ゲルの平衡含水量を低下させるため、ヒドロゲルの機械的特性をさらに改善する。
【0164】
他の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルは、制御された脱水のためにPEG水溶液に配置され、その後、生理食塩水において再水和される。PEG水溶液の濃度は、ヒドロゲルの脱水の所望のレベルを得るために調整することができる。より高度の脱水により、機械的特性のより多くの改善が提供され、より低い脱水では、改善は少なくなる。一部の用途において、より低い剛性を得ることが望ましいため、より低いPEGおよび/または水濃度の溶液を脱水工程に使用することができる。
【0165】
一部の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルは、室温または高温で真空中で脱水される。真空脱水は、約10℃、約10℃以上、約20℃、約30、40、50、60、75、80、90℃、約100℃、または100℃以上、または130℃、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の温度で行うことができる。
【0166】
一部の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルの真空脱水は、脱水の所望のレベルが得られるまで、まず室温で行われ、その後、温度は、ヒドロゲルをさらに脱水するために上昇させる。温度は、好ましくは約100℃以上、160℃以上または以下、例えば、約80℃以上から約260℃まで上昇させる。
【0167】
一部の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルは、脱水のために、空気または不活性ガス、もしくは不活性ガスの部分的な真空において加熱される。
【0168】
これらの実施形態の一部においては、PVA−PAAヒドロゲルは、空気または不活性ガスにおける加熱の前に真空脱水される。
【0169】
一部の実施形態においては、PVA−PAAヒドロゲルの加熱は、ゆっくりと、例えば、約1℃/分未満、約1℃/分以上、2、5、10℃/分、またはそれより速く、行われる。遅い加熱速度により、一部のPVAヒドロゲル製剤では、高い加熱速度より強いゲルが得られる。
【0170】
ほとんどの実施形態においては、完成した医療装置は、包装され、滅菌される。
【0171】
一部の実施形態においては、ヒドロゲルは、脱水ステップに供される。脱水は、空気中、または真空中、またば高温で(例えば、160℃以上または以下での加熱、例えば、約80℃以上から約260℃)行われる。脱水は、水の損失を引き起こすため、重量の低下に伴う体積の低下につながる。重量損失は、水の損失のためである。一方、体積の低下は、水の損失またはヒドロゲルのさらなる結晶化のためであり得る。一部の実施形態においては、脱水は、ヒドロゲルを低分子量ポリマーに配置することによって行われる(例えば、PVA−PAAヒドロゲルをPEG溶液に配置する)。場合によっては、脱水は、水の損失によって生じるが、ほとんどの場合、ヒドロゲルによる非溶媒の摂取もある。したがって、ヒドロゲルの重量変化は、水の損失および非溶媒の摂取の合計である。この場合の体積における変化は、水の損失、非溶媒の摂取、ヒドロゲルのさらなる結晶化、または水が細孔を充填していた空間を占領していなかった非溶媒の多孔質構造の部分的な崩壊のためである。
【0172】
一部の実施形態においては、ヒドロゲルは、金属片に付着する。金属片は、ヒドロゲル移植片を定位置に固定するための、体への骨の侵入に使用される多孔質の裏面である。ヒドロゲルへの金属片付着は、多孔質表面を、それがヒドロゲルに接触する気質上に有することによって得られ、多孔質表面は、ゲル化ヒドロゲル溶液(例えば、高温のPVA−PAAおよび/または水中のPEG混合物)によって浸潤することができ、溶液がヒドロゲルを形成する場合、ヒドロゲルは、多孔質空間を充填することによって、金属片と相互に連結することができる。
【0173】
一部の実施形態においては、複数の位置への体内のヒドロゲルによる固定に対して、2つ以上の金属片がヒドロゲルに付着し得る。
【0174】
一部の実施形態においては、ヒドロゲル/金属片構築物は、溶媒脱水、非溶媒脱水、照射、包装、滅菌等の、上述される処理ステップの間に使用することができる。
【0175】
一部の実施形態においては、ヒドロゲルは、ヒドロゲルを作製するために使用される溶液にHAを有するか、および/またはHAをヒドロゲルに拡散するかのいずれかによって、ヒアルロン酸(HA)を含有する。一部の実施形態においては、HA含有ヒドロゲルは、放射を受ける。照射は、真空脱水、非溶媒脱水、再水和、および/または加熱等の処理ステップの前、後、または最中に行うことができる。照射は、ヒドロゲルマトリクスを架橋し、一部の実施形態においては、HAとの共有結合を形成する。HAの一部のヒドロゲルへの添加は、ヒドロゲル移植片の潤滑性を増加させる。大幅に減少した含水量を含有することは、PVA−PAAヒドロゲルにとって有利となり得る。
【0176】
一部の実施形態においては、水和ヒドロゲル移植片は、ヒドロゲルを部分的に融解し、より多くの摂取および潤滑性によって改良できるように表面をわずかに加熱する。
【0177】
一部の実施形態においては、電子レンジを使用してPVA溶液を調製することができる。PVA粉末は、水に配置し、混合物は、溶液を形成するために電子レンジで加熱される。
【0178】
一部の実施形態においては、ヒドロゲルの熱脱水または加熱は、電子レンジで行われる。
【0179】
本発明の一実施形態によると、PVA−PAAゲルは、PVA粉末等のポリマー材料を提供するステップと、室温以上の温度(約50℃〜60℃等)で水を混合し、それによって、溶液を形成するステップと、溶液を少なくとも1回の凍結融解サイクルに供するか、約80℃等の融解温度以下の温度まで加熱するステップと、加熱した溶液を室温等の大気温度まで冷却し、それによって、ヒドロゲル(概して均一であり、ヒドロゲル粒子も含む場合がある)を形成するステップと、および/またはヒドロゲルを脱水し、それによって、PVA−PAAヒドロゲルを形成するステップを含む工程によって調製される。
【0180】
本発明の実施形態および態様は、以下も含む。
1.脱水後に再水和することが可能なPVAヒドロゲルであって、PVAヒドロゲルは、脱水後に再水和することが可能であり、a)脱水は、例えば、約34%以上、ヒドロゲルの重量を減少させ、b)再水和の結果は、例えば、少なくとも約46%、再水和ヒドロゲルの平衡含水量において増加する。
2.二軸配向を有するPVAヒドロゲル
3.一軸配向を有するPVAヒドロゲル
4.高い最大抗張力を有するPVAヒドロゲル
5.水および/または1つまたはそれ以上の他の成分(例えば、PEGまたは塩)を含有するPVAヒドロゲルの脱水であって、
a.成分は、PEG等の非揮発性であり、
b.成分は、水と少なくとも部分的に混和性であり、
c.ヒドロゲル重量の少なくとも0.1%は、PEG、炭化水素等の1つまたはそれ以上の非揮発性成分を構成し、
d.成分は、PEO、プルロニック、アミノ酸、プロテオグリカン、ポリビニルピロリドン、多糖類、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、等の水混和性ポリマーであり、
e.成分は、PEG、塩、NaCl、KCl、CaCl2、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、アミノ酸等の群より選択され、
f.成分は、PEGであって、
i.異なる分子量のPEGまたは
ii.PEGの混合物であり、
g.脱水は、非溶媒に配置することによって行われ、
i.非溶媒は、PEG、アルコール(イソプロピルアルコール等)、アセトン、飽和食塩水、アルカリ金属の塩の水溶液、ビタミン、カルボン酸等から選択されるか、または
ii.非溶媒は、水、PEG、ビタミン、ポリマー、プロテオグリカン、カルボン酸、エステル等の2つ以上の成分を含有し、
h.脱水は、ヒドロゲルを空気に放置することによって行われ、
i.脱水は、ヒドロゲルを真空に配置することによって行われ、
j.脱水は、ヒドロゲルを室温で真空に配置することによって行われ、
k.脱水は、ヒドロゲルを高温で真空に配置することによって行われ、
l.脱水は、ヒドロゲルを高温で空気または不活性ガスに配置することによって行われ、
i.加熱速度は遅い、
ii.加熱速度は早いか、または
iii.加熱は、真空または空気脱水の後に行われ、
m.脱水ヒドロゲルは、
i.水、食塩溶液、リンゲル溶液、食塩水、緩衝液等に配置することによってか、
ii.相対湿度チャンバに配置することによってか、または
iii.室温または高温で配置することによって、
再水和される。
【0181】
上述される、各組成物および付随の態様、ならびに各方法および付随の態様は、本明細書において包含される教示と一致する方法で、別のものと組み合わせることができる。本発明の実施形態によると、すべての方法および各方法におけるステップは、本明細書において包含される教示と一致する方法で、任意の順序で適応し、何度も繰り返すことができる。
【0182】
定義:
「超臨界流体」という用語は、例えば、超臨界プロパン、アセチレン、二酸化炭素(CO2)の当技術分野で周知のものを指す。これに関連して、臨界温度は、その温度以上では、圧力のみでガスが液化することができない温度である。物質が臨界温度で液体と平衡状態にあるガスとして存在できる圧力が、臨界圧力である。超臨界流体条件は、概して、流体が、超臨界流体およびそれによる超臨界流体混合物が得られる、そのような温度およびそのような圧力に曝されることを意味し、該温度は、CO2に対して31.3℃である超臨界温度であり、該圧力は、CO2に対して73.8バールである超臨界圧力である。
【0183】
「加熱」という用語は、所望の加熱温度で、またはその温度までのポリマーの熱処理を指す。一態様においては、加熱は、所望の加熱温度まで1分に付き約10℃の率で行うことができる。別の態様においては、加熱は、所望の期間、所望の加熱温度で行うことができる。すなわち、加熱ポリマーは、所望の期間、所望の加熱温度でアニールまたは加熱し続けることができる。所望の加熱温度で、またはその温度までの加熱時間は、少なくとも1分〜48時間から数週間の長さであり得る。一態様においては、加熱時間は、約1時間〜約24時間である。加熱温度は、本発明による加熱の熱的条件を指す。
【0184】
「アニール」という用語は、ヒドロゲルをそのピーク融点以下で加熱することを指す。アニール時間は、少なくとも1分から数日間の長さであり得る。一態様においては、アニール時間は、約4時間〜約48時間、好ましくは24〜48時間、より好ましくは約24時間である。「アニール温度」は、本発明によるアニールの熱的条件を指す。ある実施形態においては、「アニール」という用語は、一種の熱処理を指す。
【0185】
製造の任意のステップにおいて、ヒドロゲルは、架橋するための電子ビームまたはガンマによって照射することができる。照射は、空気、不活性ガス、感作ガス、または水、食塩溶液、ポリエチレングリコール溶液等の流体媒体において行うことができる。放射線量レベルは、1kGy〜10,000kGy、好ましくは25kGy、40kGy、50kGy、200kGy、250kGy、またはそれ以上である。
【0186】
数値および範囲との関係において、「約」または「およそ」という用語は、本明細書において包含される教示から当業者に明らかである、架橋、耐クリープ性、潤滑性および/または靱性の所望の程度を有する等、本発明を意図されたように行うことができるように、列挙された値または範囲に近似するか、または近い値または範囲を指す。これは、少なくとも一部において、ポリマー組成物の様々な特性のためである。そのため、これらの用語は、定誤差から生じる値を超える値を包含する。これらの用語は、不明確なものを明確にする。
【0187】
本発明の一態様においては、一種の放射、好ましくはイオン化である「照射」を使用する。本発明の別の態様によると、約25kGy〜約1000kGyの範囲に及ぶイオン化放射線量を使用する。放射線量は、約25kGy、約50kGy、約65kGy、約75kGy、約100kGy、約150kGy、約200kGy、約300kGy、約400kGy、約500kGy、約600kGy、約700kGy、約800kGy、約900kGy、または約1000kGy、または1000kGy以上、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の値である。好ましくは、放射線量は、約25kGy〜約150kGy、または約50kGy〜約100kGyであり得る。ガンマおよび/または電子ビームを含む、これらの種類の放射は、細菌、ウイルス、または接合部分を含む医療移植片を汚染する可能性がある他の微生物因子を消滅または不活性化するため、生成物の滅菌が得られる。本発明による、電子またはガンマ照射であり得る照射は、酸素を含有する空気雰囲気において行うことができ、雰囲気における酸素濃度は、少なくとも1%、2%、4%、または最大約22%、またはそれらの程度、もしくはそれらの間の任意の値である。別の態様においては、照射は、不活性雰囲気において行うことができ、雰囲気は、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等、またはそれらの組み合わせから成る群より選択されるガスを含有する。照射は、アセチレン、または混合物等の感作ガス、もしくは不活性ガスを有する感作ガスまたは不活性ガスにおいて行うこともできる。照射は、真空において行うこともできる。照射は、室温、または室温とポリマー材料の融点との間、もしくはポリマー材料の融点以上で行うこともできる。照射ステップの後、ヒドロゲルは、アニールのために、融解、またはその融点以下の温度で加熱することができる。これらの照射後熱処理は、空気、PEG、溶媒、非溶媒、不活性ガスおよび/または真空において行うことができる。また、照射は、少量ずつの放射線量で行うことができ、一部の実施形態においては、これらの連続増分照射は、熱処理で中断することができる。連続照射は、約1、10、20、30、40、50、100kGy、またはそれ以上の放射線量の増分で行うことができる。各増分または一部の増分の間で、ヒドロゲルは、融解および/またはアニールステップによって熱処理することができる。照射後の熱処理は、主に、照射によって作製されたヒドロゲルにおける残留遊離基を低減または除去、および/または結晶物質を除去、および/またはヒドロゲルに存在し得る任意の抽出物の除去を促進するためである。
【0188】
本発明の他の態様によると、照射は、感作雰囲気において行われる場合がある。これは、ポリマーに拡散するために十分小さい分子の大きさであり、多官能性移植部分として照射に対して作用するガス状物質を含む場合がある。実施例は、置換または非置換ポリ不飽和炭化水素、例えば、アセチレン等のアセチレン炭化水素、ブタジエンおよび(メタ)アクリレートモノマー等の共役または非共役オレフィン炭化水素、クロロ−トリ−フルオロエチレン(CTFE)、または特に好ましいアセチレンを有する一塩化硫黄を含む。本明細書において、「ガス状」は、感作雰囲気が、照射温度において、その臨界温度以上または以下のいずれかの気相中にあることを意味する。
【0189】
本発明によると、ポリマー材料により接合部分を形成する片である「金属片」は、例えば、金属である。本発明による、ポリマー材料と機能的関係にある金属片は、例えば、コバルトクロム合金、ステンレス鋼、チタニウム、チタニウム合金、またはニッケルコバルト合金で作製することができる。
【0190】
本発明によると、ポリマー材料により接合部分を形成する片である「非金属片」は、例えば、非金属である。本発明による、ポリマー材料と機能的関係にある非金属片は、例えば、セラミック材料で作製することができる。
【0191】
「空気」を指すか、または含む雰囲気または環境は、反応性および不活性ガスの混合物を有する。空気は、窒素、酸素、CO2、他の不活性ガス(例えば、希ガス)を含む微量の他のガス、水蒸気等を含有する。
【0192】
不活性雰囲気は、十分な純度の1つまたはそれ以上の不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、またはネオン)を含有する環境を指し、雰囲気が不活性であり、そのような純度のガスは市販される。「不活性雰囲気」または「不活性環境」は、通常、約1%の酸素以上を有さず、より好ましくは、ポリマー材料における遊離基が、滅菌の間、問題のある酸化なしに架橋を形成することができるように条件を提供する。不活性雰囲気は、条件によっては装置の問題のある酸化を引き起こし得る、C2のいくらかの悪影響を回避するために使用される。窒素、アルゴン、ヘリウム、またはネオン等の不活性ガスは、イオン化放射でポリマー医療移植片を滅菌する際に使用することができる。
【0193】
窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、または真空等の不活性大気条件も、イオン化放射による医療移植片の接合部分を滅菌するために使用される。
【0194】
不活性条件も、不活性流体、不活性ガス、またはシリコーン油等の不活性液体媒体の使用を指す場合がある。
【0195】
「真空」という用語は、大量のガスを有さない環境を指す。真空は、O2を避けるために使用される。真空条件は、イオン化放射によって移植片を滅菌するために使用することができる。真空条件は、市販の真空ポンプを使用して作製することができる。真空条件は、イオン化放射によって医療移植片における接合部分を滅菌する場合にも使用することができる。
【0196】
「滅菌」に関して、本発明の一態様は、PVA−PAAヒドロゲル等のPVAヒドロゲルを含有する医療移植片の滅菌の工程を開示する。工程は、例えば、約25〜70kGyの範囲に及ぶ線量レベルで、ガンマまたは電子ビーム放射でのイオン化滅菌、もしくはエチレンオキシドまたはガスプラズマでのガス滅菌によって、医療移植片を滅菌するステップを含む。
【0197】
本発明の別の態様は、PVA−PAAヒドロゲル等のPVAヒドロゲルを含有する医療移植片の滅菌の工程を開示する。工程は、例えば、約25〜200kGyの範囲に及ぶ線量レベルで、ガンマまたは電子ビーム放射でのイオン化滅菌によって、医療移植片を滅菌するステップを含む。滅菌の線量レベルは、照射で使用される標準レベルより高い。これは、滅菌の間の医療移植片の架橋またはさらなる架橋を可能にするためである。
【0198】
「接触」という用語は、1つの成分の別のとの物理的接近、触れること、混合、または混ぜることを含む。例えば、PAA溶液と接触するPVA溶液。
【0199】
本明細書において記載される「ヒドロゲル」という用語、または「PVAヒドロゲル」という用語は、「PVA−PAAヒドロゲル」、「PVA−PAA−PEGヒドロゲル」、「PVA−PEG−PAAヒドロゲル」のすべてのPVAベースのヒドロゲル、および脱水ヒドロゲルを含む、本明細書において開示されるすべての他のヒドロゲル組成物を包含する。PVAヒドロゲルは、不足する前に、機械的エネルギー等の大量のエネルギーを吸収することができる、吸収された水を含有する親水性ポリマーのネットワークである。
【0200】
「耐クリープ性」(形容詞:耐クリープ性の)という用語は、概して、連続負荷におけるポリマー鎖の粘弾性流によって生じる、継続的伸展または変形に対する耐性を指す。
【0201】
「潤滑性」(形容詞:潤滑性の)という用語は、概して、ヒドロゲルの物理的特性を指し、例えばヒドロゲル表面の滑りやすさの程度であり、同じ表面の親水性にも関連する。
【0202】
上述される、各組成物および付随の態様、ならびに各方法および付随の態様は、本明細書において包含される教示と一致する方法で、別のものと組み合わせることができる。本発明の実施形態によると、すべての方法および各方法におけるステップは、本明細書において包含される教示と一致する方法で、任意の順序で適応し、何度も繰り返すことができる。
【0203】
本発明は、いずれの方法によっても本発明を限定しない以下の実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0204】
ヒドロゲルにおける平衡含水量(EWC)の定義
以下の方法を使用して、ヒドロゲルにおける平衡含水量(EWC)を判定した。
【0205】
試料は、まず、いずれの非結合分子の除去および平衡水和のために、攪拌しながら食塩溶液に浸漬させた。ゲルがいつ平衡水和に到達したかを判定するために、それらの重量変化を毎日記録し、食塩溶液を新しい食塩溶液と交換した。平衡水和レベルに到達した後、試料の平衡水和重量を記録した。その後、ゲル試料は、重量における有意な変化が検出されなくなるまで、90℃で空気対流オーブンで乾燥させた。その後、ゲルのEWCは、水和と脱水重量との間の差異に対する平衡水和状態での重量の比率によって計算した。
【0206】
実施例1.15%PEGを含む、7:3のPVA-PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終ゲルの平衡含水量は、89.63±0.17%であった。
【0207】
実施例2.15%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、脱水によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、室温で真空下で脱水した。その後、真空脱水ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終ゲルの平衡含水量は、89.17±0.11%であった。
【0208】
実施例3.15%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、脱水によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ヒドロゲル試料を、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終ゲルの平衡含水量は、72.93±1.04%であった。
【0209】
実施例1〜3に記載される様々な処理後の3回の凍結融解による、15%PEGを含む15%固形PVA−PAA−PEG混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルを図1に示し、図1(A)は、生理食塩水における再水和後(実施例1)、図1(B)は、真空脱水、その後の生理食塩水における再水和後(実施例2)、および図1(C)は、真空脱水、加熱、その後の生理食塩水における再水和後(実施例3)である。
【0210】
実施例4.15%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;脱PEG;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、ヒドロゲルを鋳型から取り出し、生理食塩水における再水和の間に水と交換することによって、ゲルにおける残留PEGを除去する「脱PEG」工程のために、食塩溶液に配置した。その後、脱PEGPVA−PAAゲルを、脱水によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ヒドロゲル試料を、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、42.40±0.48%であった。
【0211】
表1は、実施例1〜4の処理の各段階における3回の凍結融解サイクルによる、15%PEGを含む15%固形PVA−PAA−PEG混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルの重量変化および平衡含水量(EWC)を示す。
【0212】
【表1】
【0213】
表1は、PEGの存在下において、加熱はEWCを73%にまでしか減少させないが、PEGの非存在下において、減少はより大きかった(EWC=42%)ことも示す。PEGは、熱処理の間、細孔が崩壊しないよう保護した。
【0214】
実施例5.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、84.11±6.77%であった。
【0215】
実施例6.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、脱水によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、73.98±0.14%であった。
【0216】
実施例7.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、脱水によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ヒドロゲル試料を、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、36.50±0.37%であった。
【0217】
実施例8.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、PEG浸漬によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、攪拌しながら100%PEG400に浸漬させた。その後、PEG−脱水PVA−PAAゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、85.54±0.11%であった。
【0218】
実施例5〜8に記載される様々な処理後の3回の凍結融解による、15%固形PVA−PAA混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルを図2に示し、図2(A)は、生理食塩水における再水和後(実施例5)、図2(B)は、真空脱水、その後の生理食塩水における再水和後(実施例6)、図2(C)は、真空脱水、加熱、その後の生理食塩水における再水和後(実施例7)、および図2(D)100%PEG400における浸漬、その後の生理食塩水における再水和後(実施例8)である。
【0219】
実施例9.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、ヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、攪拌しながら100%PEG400に浸漬させた。その後、PEGドープPVA−PAAゲルを、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、83.81%であった。
【0220】
実施例10.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の15%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における15w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、ヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、攪拌しながら100%PEG400に浸漬させた。その後、PEGドープPVA−PAAゲルを、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、69.34±1.28%であった。
【0221】
表2は、実施例5〜10の処理の各段階における3回の凍結融解による、15%固形PVA−PAA混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルの重量変化および平衡含水量(EWC)を示す。
【0222】
【表2】
【0223】
実施例1〜4において見られるように、存在する場合、PEGは、熱処理の間、細孔が崩壊しないよう保護した。
【0224】
実施例11.15%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の30%全ポリマー;室温ゲル化;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=50,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における30w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を室温で24時間ゆっくりと冷却した。ゲル化後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、74.57±0.32%であった。
【0225】
実施例12.15%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の30%全ポリマー;室温ゲル化;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=50,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における30w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を室温で24時間ゆっくりと冷却した。ゲル化後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、57.66±1.40%であった。
【0226】
実施例13.15%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;室温ゲル化;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を室温で24時間ゆっくりと冷却した。ゲル化後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、77.17±0.05%であった。
【0227】
実施例14.15%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;室温ゲル化;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの15w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を室温で24時間ゆっくりと冷却した。ゲル化後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、57.58±0.92%であった。
【0228】
表3は、実施例11〜13の処理の各段階における1日の室温ゲル化による、15%PEGを含む27%固形PVA−PAA−PEG混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルの重量変化および平衡含水量(EWC)を示す。
【0229】
実施例15.20%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの20w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、83.33±0.09%であった。
【0230】
【表3】
【0231】
実施例16.20%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの20w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、83.25±0.27%であった。
【0232】
実施例17.20%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの20w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、66.72±0.19%であった。
【0233】
表4は、実施例15〜17の処理の各段階における3回の凍結融解による、20%PEGを含む27%固形PVA−PAA−PEG混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルの重量変化および平衡含水量(EWC)を示す。
【0234】
実施例18.20%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;室温ゲル化
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの20w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型は、室温で24時間ゆっくりと冷却した。ゲル化後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、平衡再水和まで生理食塩水にに浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、91.61±0.06%であった。
【0235】
【表4】
【0236】
実施例19.20%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;室温ゲル化;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの20w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型は、室温で24時間ゆっくりと冷却した。ゲル化後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、82.12±0.10%であった。
【0237】
実施例20.20%PEGを含む、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;室温ゲル化;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。その後、混合物におけるPEGおよび水の総量に対する、PEGの20w/w%の予熱したポリエチレングリコール(MW=400)(PEG400)を、90℃で力強く機械的に攪拌しながら溶液に添加し、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成した。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型は、室温で24時間ゆっくりと冷却した。ゲル化後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、63.71±0.42%であった。
【0238】
【表5】
【0239】
表5は、実施例18〜20の処理の各段階における1日の室温ゲル化による、20%PEGを含む27%固形PVA−PAA−PEG混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルの重量変化および平衡含水量(EWC)を示す。
【0240】
実施例21.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;真空脱水
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、脱水によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、71.67±1.00%であった。
【0241】
実施例22.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、PEG浸漬によるヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、攪拌しながら100%PEG400に浸漬させた。その後、PEG−脱水PVA−PAAゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、76.21±0.10%であった。
【0242】
実施例23.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬;真空脱水.
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、ヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、攪拌しながら100%PEG400に浸漬させた。その後、PEGドープPVA−PAAゲルを、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、74.64±0.19%であった。
【0243】
実施例24.PEGを含まない、7:3のPVA:PAA比率の27%全ポリマー;3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬;真空脱水;加熱
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products、Ontario、NY)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA比率は、混合物における27w/w%全ポリマー含量を含めて7:3であった。得られた透明溶液からガスを抜き、気泡を除去し、高温のガラス鋳型に注入し、ガラス蓋で密封した。この鋳型は、予め90℃に加熱した2つのステンレス鋼ブロックの間に保持した。その後、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。3回の凍結融解サイクルの完了後、得られたヒドロゲルシートを鋳型から取り出し、ヒドロゲルの重量変化が平衡に到達するまで、攪拌しながら100%PEG400に浸漬させた。その後、PEGドープPVA−PAAゲルを、室温で真空下で脱水した。真空脱水後、ゲルを、1時間、既に160℃に加熱されたアルゴン充填密閉チャンバにおいて160℃で加熱した。その後、加熱ゲルを、平衡再水和まで生理食塩水に浸漬させた。最終処理されたゲルの平衡含水量は、55.68±1.52%であった。
【0244】
【表6】
【0245】
表6は、実施例21〜24の処理の各段階における3回の凍結融解による、27%固形PVA−PAA混合物から形成されたPVA−PAAヒドロゲルの重量変化および平衡含水量(EWC)を示す。
【0246】
実施例25.実施例1〜24によって生成されたPVAゲルのクリープ試験
上記の実施例によるヒドロゲルシートサンプルは、直径17mmのトレフィンで機械加工し、クリープ試験の開始前少なくとも24時間、40℃で食塩溶液において平衡化させた。
【0247】
ヒドロゲルクリープ試験は、MTS(Eden Prairie、MN)858Mini Bionix油圧サーボ機で行った。直径約17mm、高さ5〜10mmの円筒形ヒドロゲル試料を、試験用ステンレス鋼圧縮板の間に配置した。試験前に、上下の圧縮板を引き合わせ、この位置でLVDT変位をゼロに合わせた。試料を下板に配置した後、上板を、クリープ試料の上面に接触するまで下げた。MTSのLVDTから読み取れる変位を試料の高さとして記録した。圧縮負荷を、最初は、50ニュートン/分(N/分)の率で100ニュートン(N)のクリープ負荷まで上昇させた。この負荷は、10時間一定に維持した。その後、負荷を、10Nの回復負荷まで50N/分の率に低下させた。この負荷も、10時間一定に保持した。時間、変位、および負荷値は、負荷および無負荷サイクルの間、2秒ごとに記録した。データを圧縮歪み対時間として描画し、上述の異なるヒドロゲル製剤のクリープ挙動を比較した(図3参照)。
【0248】
クリープ歪みは、(1)100Nまでの負荷の上昇の完了時の歪み、(2)10時間の負荷後の全歪み、(3)10時間の負荷後の粘弾性歪み、(4)100〜10Nの無負荷後の弾性回復、(5)10N以下の10時間の無負荷後の粘弾性歪み回復、(6)10N以下の10時間の無負荷後の全歪み回復、および(7)10時間の負荷、その後の10N以下の10時間の無負荷後の全歪み、として計算した(図3参照)。図3は、クリープ挙動が、10時間の負荷および10時間の無負荷サイクルのそれぞれに対する歪対時系列で特徴付けられることを示す。表7は、弾性および粘塑性歪みが、実施例25において使用されたヒドロゲルサンプルによるクリープ実験の負荷および無負荷段階の間に得られたことを示す。
【0249】
【表7】
【0250】
図4〜6は、表7に示されるサンプル番号1〜10に関して、クリープ挙動が、10時間の負荷および無負荷サイクルのそれぞれに対する歪対時系列で特徴付けられることをさらに示す。図7は、実施例24において記載されるクリープ試験から得られたPVAヒドロゲルの総クリープ歪みを示し、平衡含水量の機能として描画される。
【0251】
実施例26.実施例1〜24によって生成されたPVAゲルの摩擦係数測定
摩擦係数は、CoCrに対して、40℃でDI水において、上記の方法によって形成されたヒドロゲルサンプルに対して測定した。アルミニウムの槽を、ペルチェプレートに載せ、ヒドロゲルサンプルを浴槽に配置した。この試験では、CoCr環をせん断レオメータ(AR−1000、TA Instruments Inc.)の上部の材料固定具に載せた。CoCrは、0.11/sの一定のせん断率でヒドロゲルサンプルに衝突した。ねじり負荷を、約1、2、4、6、および8Nの定格負荷の下で記録した。KavehpourおよびMcKinley(Kavehpour,H.P. and McKinley,G.H.,Tribology Letters,17(2),pp.327−335,2004参照)の方法を使用して、ヒドロゲルとCoCr合わせ面との間の摩擦係数を計算することができる。
【0252】
実施例27.異なる作製方法による同じ組成物を有するPVAゲルの比較(PVA−PAAゲル化の間に存在するPEG対PVA−PAAゲル化後に連続的に組み込まれたPEG)
実施例1(PEGがPVA−PAAゲル化の間に存在する、「PVA−PAA−PEGゲル」として示される)および実施例8(PEGが、PVA−PAAゲル化後に連続的に組み込まれる、「組み込まれたPEGを有するPVA−PAAゲル」として示される)において記載される方法で作製されたPVAヒドロゲルは、さらに処理、例えば、生理食塩水における再水和または熱処理による脱水される前に、PVA、PAA、およびPEGのすべての3つの成分を基本的に含有する。しかしながら、PEGがPVAゲル化の期間に存在するか、または既に形成されたPVAゲルに組み込まれるかにより、図8および9に見られるように、わずかに異なるPVAマイクロ構造が得られる。
【0253】
図8は、PEGがゲル化工程の期間にPVAおよびPAA溶液に存在した方法(実施例1)によって作製された再水和PVAヒドロゲルの共焦点顕微鏡写真を示す(尺度図=20μm)。図9は、PEGが予め作製されたPVA−PAAゲルに連続的に組み込まれた方法(実施例8)によって作製された再水和PVAヒドロゲルの共焦点顕微鏡写真を示す(尺度図=20μm)。図8および9に示されるように、両方のゲルは、PVAおよびPAAの同じ組成率(7:3)を含有する。
【0254】
図1におけるPVA−PAA−PEGゲルは、様々な形状および大きさの細孔を有する遥かに厚い、水かき様のポリマーマトリクスを示す、図2における組み込まれたPEGを有するPVA−PAAゲルと比較し、より微細なPVA支柱に囲まれたより均一な大きさの細孔を示す。PVA−PAAゲル化の間にPEGの存在は、さらに処理されたゲルにおける最終含水量を増加させる傾向があり、それは、密接に耐クリープ性に影響を与える。図3は、実施例3および9のそれぞれにおいて記載される方法によって熱処理されたそのようなPVAヒドロゲルにおける耐クリープ性の比較を示す。PVA−PAA−PEGゲルは、組み込まれたPEGを有するPVA−PAAゲルと比較して、より高い弾性反応を有するわずかに高い総耐クリープ性、および同じ最終クリープ歪みを得た。
【0255】
図10は、PEGがPVAゲル化の間に存在したPVA−PAA−PEGゲル、およびPEGがPVAゲル化後に組み込まれた、組み込まれたPEGを有するPVA−PAAゲルの耐クリープ性を示す。両方のゲルは、クリープ変形試験の前に、熱処理し、生理食塩水において再水和させた。
【0256】
実施例28.PVAヒドロゲルへのPAAの拡散
本実施例は、形成されたPVAゲルをPAA溶液に浸漬させることによって、PAAをPVAゲルに含むための別の方法を示す。PEGは、同時にPAA溶液に混合することができるか、またはPAA吸収PVAゲルは、PEG100%または溶媒を含有する他のPEGに連続的に浸漬させることができる。
【0257】
30gのポリ(ビニルアルコール)(PVA、MW=115,000)を、170gの冷脱イオン水に添加し、約2時間加熱しながら攪拌し、完全に溶解した15%(wt)PVA溶液を調製した。溶解したPVA溶液にガスを抜くために、90℃の空気対流オーブン内で維持した。PEGを空気対流オーブン内で90℃に加熱した。66gの高温のポリ(エチレングリコール)(PEG、MW=400)(約90℃)を、加熱しながら機械的攪拌によって、ゆっくりと高温のPVA溶液に混合した。PVA−PEGのゲル化溶液を、90℃に維持された異なる大きさ鋳型に注入した。鋳型を絶縁毛布で覆い、放置し、室温まで冷却した。溶液は、室温まで冷却した後、ヒドロゲルを形成した。ヒドロゲルを鋳型から取り出し、生理食塩水における再水和の間に水を交換することによって、ゲルにおける残留PEGを除去する「脱PEG」工程のために、食塩溶液に配置した。その後、そのような脱PEGゲルを、PAAの拡散のための基礎PVAゲルとして使用した。
【0258】
PVA冷却ゲルは、基礎PVAゲルとして使用することができる。高温の15%PVA水溶液を予熱した鋳型(例えば、鋳型は、約1〜約200℃、好ましくは約25℃〜約150℃、より好ましくは約90℃の温度まで予熱することができる)に注入し、鋳型を、−17℃の冷凍庫に16時間配置し、その後、室温で8時間融解した。この工程で、1回の凍結融解手順が完了した。1回またはそれ以上の凍結融解サイクルの完了後、ヒドロゲルを鋳型から取り出し、PAA拡散に供した。
【0259】
2つの異なる分子量のPAA(MW=200,000g/mol(99.7%加水分解された)、水中の25w/w%、Polysciences;MW=5,000g/mol、水中の49.24w/w%)は、室温で脱イオン水に溶解し、各分子量のPAAの5%および25%水溶液を調製した。49.24w/w%PAA(MW=5,000g/mol)は、約50%濃度として希釈せずに使用した。脱PEGゲルは、20mm×20mm×14mmの寸法の6つの片に切り、各試料における体積比に対する均一表面を確実にした。各試料は、6つの異なる溶液に浸漬させ、機械的に攪拌した(図11参照)。各試料の重量変化は、拡散工程が平衡に到達するまでモニタした。図11は、6つの異なるPAA水溶液への浸漬によるPAA拡散後の脱PEGPVAヒドロゲルを示し、図11(A)は、25%PAA(MW=200K)溶液、図11(B)は、5%PAA(MW=200K)、図11(C)は、5%PAA(MW=5K)、図11(D)は、25%PAA(MW=5K)、図11(E)は、PAAを有さない脱イオン水(対照)、および図11(F)は、約50%PAA(MW=5K)である。
【0260】
最初は、不透明な脱PEGゲル(図11E参照)は、半透明となり、形状が歪み(図11Aおよび図11F参照)、わずかに不透明(図11D参照)となり、PAAがゲルに拡散し、水がゲルから抽出されたことを示す。PAA拡散の効果は、PAA浸漬の間のPAA濃度およびPAA分子量によって制御することができる。その後、PAA拡散PVAゲルは、さらなる処理に供し、加熱、放射、化学反応等の架橋方法によって、PVAマトリクス内においてPAAを安定させた。
【0261】
表8は、6つの異なるPAA水溶液における浸漬によるPAA拡散後の各脱PEGPVAヒドロゲルの重量変化を示す。
【0262】
【表8】
【0263】
実施例29.様々なPVA:PAA比率、PEGドープまたはPEG混合の25%全ポリマー、その後のゲル化後処理
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA重量の比率は、「PVAのみ」(すなわち、PAAを含有しない)から、各混合物における25w/w%全ポリマー含量を含めて9:1、8:2、7:3と異なった。2種類のゲル、例えば、PEGドープ(1型)、およびPVA:PAAの異なる混合率を有するPEG混合(2型)を使用した。
【0264】
1型−PEGドープゲル:PVA−PAA溶液を予熱したガラスシート状の鋳型に注入し、3回の凍結融解サイクル(マイナス17℃で16時間の凍結、および室温で8時間の融解)に供した。その後、成型されたゲルを100%PEG(浸漬によるPEGドーピング)に浸漬させ、その後、真空脱水し、1時間、自己加圧容器においてアルゴン中で160℃でアニールした。アルゴンガス雰囲気に対して、ゲルを含有する容器を、アニール前に少なくとも5分間、アルゴンガスで浄化した。アルゴン浄化された容器がアニール工程の間、完全に密封されていなかったという出来事があったと考えられる。その結果、サンプルは、100%不活性アルゴンガスにおいてアニールされず、すなわち、サンプルは、アニールの間にアルゴンガス中の残留空気に曝した。
【0265】
2型−PEG混合ゲル:約15w/w%PEG(PVA−PAA混合物における総PEGおよび水の量に対して)を90℃に予熱し、高温のPVA−PAA混合物に添加し、PVA−PAA−PEGの均質溶液/混合物を形成した。得られた均質ポリマー混合物を予熱したガラス鋳型に注入した。その後、成型されたゲルを3回の凍結融解サイクルに供し、その後、真空脱水し、自己加圧容器においてアルゴン下で約160℃でアニールした。各ゲルシートは、脱イオン(DI)水に浸漬させ、残留PEGを除去し、平衡再水和を得た。
【0266】
1型および2型の両方の型における非アニール「PVAのみ」(つまり、PAAを含有しないPVA)ゲルは、凍結融解サイクルの完了後に鋳型から取り出した直後に、ゲルをDI水において再水和することによって作製した。
【0267】
クリープ試験:円筒形のディスクを、直径17mmのトレフィンを使用して、各水和ヒドロゲルシートから切り出した。40℃、24時間のDI水における平衡後、クリープ試験を、複数台機械的テスタ(Cambridge Polumer Group、Boston、MA)で、40℃のDI水槽において行った。ゲルディスクを、40℃のDI水に浸漬させながら、100ニュートン(N)のクリープ負荷まで、50N/分の上昇率でポリカーボネート板の間で圧縮した。負荷は、10時間一定に維持し、その後、10Nの回復負荷まで50N/分の率で減少させた。この負荷も、10時間一定に保持した。時間、変位、および負荷値を、負荷の間、記録した。総クリープ歪みを、結果の代表的な特徴とみなした。
【0268】
平衡含水量(EWC):ヒドロゲルサンプルは、25℃または40℃のいずれかで、少なくとも24時間、脱イオン(DI)水において平衡水和させ、1日真空オーブンで乾燥させ、その後、有意な重量変化が検出されなくなるまで、90℃の空気対流オーブンで乾燥させた。その後ゲルにおけるEWCは、水和と脱水重量との間における差異に対する、平衡水和状態での重量の比率によって計算した。
【0269】
摩擦係数:COF試験は、特注のアルミニウムの槽における平らなヒドロゲルに対して、特注の輪状CoCr環(外径31.2、内径28.8mm、表面粗度Ra=0.08μm)を使用して、40℃のDI水におけるAR2000exレオメータ(TA Instruments、Newark、DE)で行った。サンプルは、試験前に1日、40℃のDI水で平衡化した。トルク、垂直抗力、および速度データは、0.11/sの一定のせん断率での低負荷から高負荷の実行の間に、既定の負荷での2分間の平衡による1、3、5および7Nで90秒記録し、摩擦係数の計算に対して分析した。
【0270】
結果:全体として、PAAをPVAゲルに添加することは、1型および2型のゲルの両方に対するアニール後のEWCを有意に増加させた(図12Aおよび12B、また詳細なデータに関しては表9を参照)。図12Aおよび12Bは、PAA含有PVAヒドロゲル(「PVAのみ;NA」は、PAAなしのPVAのみで作製された非アニールヒドロゲルを示す)のEWCを示す。そのような効果は、25℃(図12A)のDIにおいて平衡化されたものと比較して、EWC測定の前に40℃(図12B)のDIで平衡化されたPVAヒドロゲルに対してより顕著であった。PAAの存在は、非アニールPVAヒドロゲルと同程度の値まで、アニールPVAヒドロゲルのEWCを増加させた。
【0271】
【表9】
【0272】
アニールゲルの耐クリープ性は、EWCの増加によるPAAの存在で低下した(1型および2型の方法のそれぞれによって作製したPAA含有PVAヒドロゲルの典型的なクリープ挙動に関して、図13および14を参照)。それにも関わらず、7:3のPVA:PAA比率を有する1型ゲルを除き、すべてのPAA含有アニール化PVAゲルは、PAAを有さない非アニールPVAゲル(PVAのみ;NA)より優れた耐クリープ性を示した。(PAA含有PVAヒドロゲルの総クリープ歪みの比較に関して、図15を参照)。
【0273】
アニール化PVAゲルの潤滑性は、10:0のゲルより低い、それらのCOF値によって示されるように、1型および2型ゲルの両方に対して、PAAの存在下において有意に改善した(図16および17参照)。図16および17は、1型および2型の方法のそれぞれによって作製されたPAA含有PVAゲルの摩擦係数(COF)を示す。ゲルに存在する最多量のPAAを有する7:3(PVA:PAA)ゲルは、両ゲル型において、8:2または9:1より潤滑性がわずかに低下するようであったが、差異は、統計的に有意ではなかった。ゲルがアニールされたかどうかに関わらず、PAAの存在は、1型PVAのみのゲルによって得ることができる値より有意に低いCOF値をもたらしたことに注意する。9:1のPVA:PAA比率を有する1型ゲルは、COFおよびアニール中の耐クリープ性の変化を最小限にするという点において、本実施例において記載されるゲルの中で最も適した製剤である。
【0274】
実施例30.PEGを有さない7:3のPVA:PAAの比率の25%全ポリマーにおけるアニール前のPEG400ドーピングステップの効果、3回の凍結融解サイクル;真空脱水;および加熱
加熱の間のPAA含有PVAヒドロゲルに存在するPEG400の効果は、EWC、耐クリープ性、および摩擦係数に関して定量化した。PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。7:3のPVA:PAAゲルの25%全ポリマーは、予熱したガラスシート状の鋳型に注入したPVA−PAA溶液を3回の凍結融解サイクル(−17℃での16時間の凍結、および室温での8時間の融解)に供することによって作製した。その後、「PEGドープ」群(実施例29による)をPEG400に浸漬させ(PEGドーピングのために)、その後、真空脱水し、1時間、自己加圧容器においてアルゴン下で160℃でアニールした。アルゴンガス雰囲気に対して、ゲルを含有する容器を、アニール前に少なくとも5分間、アルゴンガスで浄化した。アルゴン浄化された容器がアニール工程の間、完全に密封されていなかったという出来事があったと考えられる。その結果、サンプルは、100%不活性アルゴンガスにおいてアニールされず、すなわち、サンプルは、アニールの間にアルゴンガス中の残留空気に曝された。
【0275】
対照群におけるゲル(非PEGドープ)は、ゲルを鋳型から取り出し、PEGドーピングステップを省略し、その後、アルゴンガス下で同じアニール手段を行った直後に真空脱水した。
【0276】
総クリープ歪み、EWC、およびCOFは、実施例29において記載されるように測定した。ヒドロゲルは、EWC測定のための乾燥の前に、40℃で平衡化した。
【0277】
結果:熱アニール前のPEGドーピングステップは、7:3のPVA:PAA比率を有する1型ゲルのEWCを有意に増加させた(図18参照)。PEGドープゲルの耐クリープ性は、より高いEWCのため、非PEGドープゲルのそれより大幅に劣った。ヒドロゲルの総クリープ歪み、および典型的なクリープ挙動のそれぞれに関して、図18および19を参照。しかしながら、PAA含有1型ゲルにおける熱アニール中のPEGの存在は、非PEGドープヒドロゲルのCOF値とは対照的に、PEGドープヒドロゲルの顕著に低いCOF値によって証明されるように、表面潤滑性を高度に改善した(図20参照)。図20は、本実施例において記載されるPEGドーピングステップの有無にかかわらず作製された、7:3のPVA:PAA比率の25%全ポリマーヒドロゲルの摩擦係数(COF)を示す。
【0278】
実施例31.PEGを有さない19:1のPVA:PAAの比率の25%全ポリマー、pH3.0、3回の凍結融解サイクル;PEGドープ、真空脱水;および加熱
5.625gの純粋なPAAを含有する22.5gのPAA(MW=200,000g/mol、水中で25%固形、Polysciences)を、加熱せずに攪拌しながら317.625gの脱イオン水で希釈し、1.654w/w%PAA溶液を作製した。1.654%PAA溶液のpH値は、室温で約3.0であった。106.875gのPVA粉末(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃で上記のPAA溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。最終PVA−PAA溶液におけるPVA:PAA重量比は、25w/w%全ポリマー含量を含めて19:1であった。最終PVA−PAA溶液は、完全に透明の混和性溶液であった。PVA−PAA溶液を予熱したガラスシート状の鋳型に注入し、3回の凍結融解サイクル(−17℃での16時間の凍結、および室温での8時間の融解)に供した。その後、成型されたゲルを100%PEG400に浸漬させ、その後、真空脱水し、1時間、自己加圧容器においてアルゴン下で160℃でアニールした。ゲルシートを脱イオン(DI)水に浸漬させ、残留PEGを除去し、平衡再水和を得た。
【0279】
総クリープ歪み、EWC、およびCOFは、実施例29に記載されるように測定することができる。
【0280】
実施例32.PEGを有さない99:1のPVA:PAAの比率の25%全ポリマー、pH1.5、3回の凍結融解サイクル;PEGドープ、真空脱水;および加熱
1.125gの純粋なPAAを含有する4.5gのPAA(MW=200,000g/mol、水中で25%固形、Polysciences)を、室温で334.125gの脱イオン水に混合し、0.332wt%PAA溶液を作製した。0.332%PAA溶液のpHは、室温で最初は3.3であり、少量の塩酸(HCl)水溶液を添加することによってpH1.5に調整した。111.375gのPVA粉末(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃で上記のPAA溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。最終PVA−PAA溶液のPVA:PAA重量比は、25w/w%全ポリマー含量を含めて99:1であった。最終PVA−PAA溶液は、完全に透明の混和性溶液であった。PVA−PAA溶液を、予熱したガラスシート状の鋳型に注入し、3回の凍結融解サイクル(−17℃での16時間の凍結、および室温での8時間の融解)に供した。その後、成型されたゲルを、100%PEG400に浸漬させ、その後、真空脱水し、1時間、自己加圧容器においてアルゴン下で160℃でアニールした。ゲルシートを脱イオン(DI)水に浸漬させ、残留PEGを除去し、平衡再水和を得た。
【0281】
99:1のPVA:PAA混合物を作製する際、酸性状態へのpH調節は、凍結融解サイクルによるゲル化前にPVAおよびPAAの均質の混和性溶液を形成する際に非常に重要である。0.332%PAA溶液のpHが、PVAを混合する前に、例えば、pH2.674またはpH3.315等、1.5より高い場合、90℃の99:1のPVA:PAA比率の混合物において、濁った非混和性溶液が得られる。
【0282】
総クリープ歪み、EWC、およびCOFは、実施例29に記載されるように測定することができる。
【0283】
実施例33.PEGを有さない19:1のPVA:PAAの比率の25%全ポリマー、pH5.5、3回の凍結融解サイクル;PEGドープ、真空脱水;および加熱
5.625gの純粋なPAAを含有する22.5gのPAA(MW=200,000g/mol、水中で25%固形、Polysciences)を、加熱せずに攪拌しながら317.625gの脱イオン水で希釈し、1.654w/w%PAA溶液を作製した。1.654%PAA溶液のpH値は、室温で2.998であり、少量の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を添加することによってpH5.5に調整した。106.875gのPVA粉末(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃で上記のPAA溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。最終PVA−PAA溶液のPVA:PAA重量比は、25w/w%全ポリマー含量を含めて19:1であった。最終PVA−PAA溶液は、均質であったが、わずかに不透明性を有する非混和性であった。PVA−PAA溶液を予熱したガラスシート状の鋳型に注入し、3回の凍結融解サイクル(−17℃での16時間の凍結、および室温での8時間の融解)に供した。その後、成型されたゲルを100%PEG400に浸漬させ、その後、真空脱水し、1時間、自己加圧容器においてアルゴン下で160℃でアニールした。ゲルシートを脱イオン(DI)水に浸漬させ、残留PEGを除去し、平衡再水和を得た。
【0284】
総クリープ歪み、EWC、およびCOFは、実施例29に記載されるように測定することができる。
【0285】
実施例34.PEGを有さない99:1のPVA:PAAの比率の25%全ポリマー、pH3.3、凍結融解サイクル;PEGドープ、真空脱水;および加熱
1.125gの純粋なPAAを含有する4.5gのPAA(MW=200,000g/mol、水中で25%固形、Polysciences)を、室温で334.125gの脱イオン水に混合し、0.332wt%PAA溶液を作製した。0.332%PAA溶液のpHは、室温で最初は3.315であり、PAA溶液は、pH調整をせずに使用した。111.375gのPVA粉末(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃で上記のPAA溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。
【0286】
最終PVA−PAA溶液は、均質であったが、わずかに不透明性を有する非混和性であった。最終PVA−PAA溶液のPVA:PAA重量比は、25w/w%全ポリマー含量を含めて99:1であった。PVA−PAA溶液を予熱したガラスシート状の鋳型に注入し、3回の凍結融解サイクル(−17℃での16時間の凍結、および室温での8時間の融解)に供した。その後、成型されたゲルを100%PEG400に浸漬させ、その後、真空脱水し、1時間、自己加圧容器においてアルゴン下で160℃でアニールした。ゲルシートを脱イオン(DI)水に浸漬させ、残留PEGを除去し、平衡再水和を得た。
【0287】
総クリープ歪み、EWC、およびCOFは、実施例29に記載されるように測定することができる。
【0288】
実施例35.PEGを有さない99:1または19:1のPVA:PAA比率の25%全ポリマーにおける平衡含水量(EWC)および摩擦係数(COF)の結果、3回の凍結融解サイクル;PEG浸漬;真空脱水;および加熱
99:1または19:1のPVA:PAA比率で作製した1型PVAゲルは、実施例31〜34のように作製した。ゲル化前、PVA−PAA溶液の調製の間に、各溶液はpHを調整し、ゲル化前に混和性の混合物または非混和性の混合物のいずれかを形成した。ゲル化後、すべてのゲルをPEGに浸漬させ、その後、真空脱水し、160℃で1時、アルゴンガス下でアニールした。
【0289】
PVAのみのゲルと比較すると、EWCは、99:1のPVA:PAAゲルにおいて、1%PAA含量では変化しなかった。19:1のPVA:PAA比率のゲルにおいて、EWCは、PVAのみのゲルとは対照的に有意に増加した。PVAのみのゲルとは対照的に、PVAゲルにおいて、最低1%PAA含量で、COF値の検出可能な低下が示された。ゲル化溶液の混和性は、表面潤滑性を影響しないようであり、これは官能基の化学組成物の効果は、PVAゲルの表面形態よりも実質的であることを意味する。
【0290】
実施例36.PEGを有さない9:1のPVA:PAA比率の25%全ポリマーにおける加熱条件の効果、3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬;真空脱水;および加熱
9:1のPVA:PAA比率を有するPAA含有PVAヒドロゲルにおける様々な加熱条件の効果を、EWC、耐クリープ性、および摩擦係数に関して定量化した。PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。9:1のPVA:PAAゲルの25%全ポリマーは、予熱したガラスシート状の鋳型に注入したPVA−PAA溶液を、3回の凍結融解サイクル(−17℃での16時間の凍結、および室温での8時間の融解)に供することによって作製した。その後、ゲルをPEG400に浸漬させ(PEGドーピングのために)、その後、真空脱水し、自己加圧式容器において加熱した。標準状態として、アルゴンガス下、160℃での1時間の加熱を使用し、加熱時間、温度、およびガスの種類等の各パラメータは、他のパラメータは変化させずに、一度に1つずつ変更した。試験をした4つの異なるアニール条件は、(A)アルゴンガス下、160℃での1時間の加熱、(B)空気(アルゴンガスを抜かない)における160℃での1時間の加熱、(C)アルゴンガス下、160℃での16時間の加熱、および(D)アルゴンガス下、200℃での1時間の加熱、であった。アルゴンガス雰囲気に対して、ゲルを含有する容器を、アニール前に5分間、アルゴンガスで浄化した。アニール後、サンプルは、平衡水和が得られるまで、脱イオン水において再水和した。総クリープ歪み、EWC、およびCOFは、実施例29に記載されるように測定することができる。
【0291】
結果:アルゴンガス下、160℃での1時間の加熱の参照アニール条件における80%のEWC値と比較して、様々な加熱条件は、ゲルのEWCの変化をもたらした(図21参照)。アニール中のアニールチャンバ内の残留空気における酸素の存在は、不活性アルゴンガス環境と比較して、EWCを10%わずかに低下させた。1時間から16時間へのアニール時間の延長、および160℃から200℃への加熱温度の増加は、それぞれ、38%および45%までEWCを有意に低下させた。
【0292】
各ゲルのクリープ反応は、様々なアニール条件によっても影響された(図22参照)。クリープ挙動の代表的な値である総クリープ歪み(TCS)は、より長いアニール期間、またはより高い温度で、アルゴンガスの代わりに空気中で加熱される場合、低下した。期間または温度変化によるTCSの低下は、アニール中の空気の存在より、さらに有意であった。
【0293】
ゲルの表面潤滑性は、アルゴンガス環境下で加熱されたすべての他のゲルとは対照的に、劇的に低いCOF値によって証明されるように、アニール中の空気の存在によって最も有意に改善された(図23および24参照)。加熱時間の延長および加熱温度の増加は、ゲルの表面潤滑性に悪影響を与えると考えられる。
【0294】
実施例37.PEGを有さない様々なPVA:PAA比率の25%全ポリマーにおける、アニール中の空気の存在の効果、3回の凍結融解サイクル;PEG400浸漬;真空脱水;および加熱
後に、一部の前の実験において、空気の存在下においてヒドロゲルをアニールするためにアルゴンガスで浄化されたアニール容器のいくつかが、アニール工程の間に不活性状態を維持するために完全に密封されていなかったことが明らかとなった。その結果、実施例29および30において記載される一部の1型ゲルは、アニールの間に空気に曝され、実施例29および30に示されるCOF、EWC、およびクリープのデータは、不活性アルゴンガスのみではなく、残留空気の存在下においてアニールされた可能性のあるサンプルから生成された。実際は、実施例29および30において上記で報告されたCOF値は、別々にアニールされた4つのサンプルの平均である。それらの一部は、COF値において異常に大きな相違を示した。例えば、1型ゲル法によって作製された7:3のPVA:PAAゲルの7Nの垂直抗力におけるCOF値は、4つのサンプルに対して、0.109、0.128、0.075、および0.056である。したがって、空気の存在がこの変化に関与するかどうかを把握するためには、様々なPVA:PAA比率を有するPAA含有PVAヒドロゲルにおける、アニール中の空気の存在の効果を、本実施例におけるEWCおよび摩擦係数に関して定量化した。以下に記載されるように、アニール中の空気の存在は、アニール中の空気の非存在とは対照的に、PAA含有PVAゲルの表面潤滑性を有意に改善した。そのため、実施例29および30に示されるCOF値は、空気の非存在下においてアニールされたゲルの実際のCOF値より低い値を示す可能性がある。
【0295】
PVA(MW=115,000g/mol(99.7%加水分解された)、Scientific Polymer Products)を、90℃でPAA(MW=200,000g/mol、Polysciences)の水溶液に混合し、均質PVA−PAA溶液を形成した。PVA:PAA重量比は、「PVAのみ」(すなわち、PAAを含有しない)から、各混合物における25w/w%全ポリマー含量を含めて9:1、8:2、7:3と異なった。各PVA−PAA溶液を予熱したガラスシート状の鋳型に注入し、3回の凍結融解サイクル(−17℃での16時間の凍結、および室温での8時間の融解)に供した。その後、ゲルをPEGドーピング(実施例29による)のためにPEG400に浸漬させ、その後、真空脱水し、1時間、自己加圧容器において160℃でアニールした。「アルゴン」群(対照)に対して、ゲルを含有する容器を、アニール前に少なくとも5分間、アルゴンガスで浄化した。「空気」群に対して、アニール前のアルゴンガス抜きは省略し、ゲルは、ゲルを配置する前に既に存在していた周囲空気を含有する自己加圧容器においてアニールした。加熱後、サンプルは、平衡水和が得られるまで、脱イオン水において再水和した。EWC、TCSおよびCOFは、実施例29に記載されるように測定した。
【0296】
結果:熱アニールは、アニール後のCOF値の増加によって証明されるように、PVAのみのゲル(PAAを含有しない)の表面潤滑性に悪影響を与えた。COFにおける増加は、アニールがアルゴンガス下で行われた場合、空気中より、さらに有意であった(図26および27参照)。1型の方法によって作製されたPVAゲルにおけるPAAの存在は、アニールによるCOFに対するそのような悪影響を完全に排除し、非アニールPVAのみのゲル以上に表面潤滑性をさらに改善した。アニールゲルにおけるPAAの存在によるCOF値の低下は、不活性ガスより、空気の存在下においてアニールされたゲルに対してより有意に増幅し(例えば、空気の存在下においてアニールされた9:1のPVA:PAA比率のゲルのCOFは、空気の非存在下におけるアルゴンガス下でアニールされた同じ組成のゲルにおける0.18のCOF値とは対照的に、最低で0.02であり得る)、これは、アニール容器内の空気からの残留酸素は、ゲルの表面または大部分に対して酸化および/または他の化学的変化を引き起こす可能性があることを示す。
【0297】
PVAゲルのEWCは、アルゴンガス下および空気中の両方においてアニールされたゲルにおけるPAAの存在によって増加した(図28)。EWCは、空気の非存在下とは対照的に、空気の存在下においてアニールされたゲルにおいて、極わずか、またはわずかな低下(約10%未満)を示した。PAA含有PVAゲルの総クリープ歪みは、空気の非存在下とは対照的に、アニール中の空気(すなわち、ゲルを配置する前に自己加圧容器に既に存在する窒素、酸素、CO2、微量の他のガス、水蒸気等を含有する周囲空気)の存在下において、わずか(約10%未満)、または極わずかな低下を示した(図29)。
【0298】
結論として、空気の非存在下におけるアルゴンガス下でアニールされた同じPVA:PAA組成ゲルとは対照的には、空気の存在下においてアニールされたPAA含有PVAゲルは、同じか、またはわずかに改善された耐クリープ性を維持しながら、優れた表面潤滑性を示した。
【0299】
当然のことながら、例示的な実施形態を示すが、説明、特定の実施例、およびデータは、説明のために与えられ、本発明を限定することを意図しない。本発明内における様々な変更および修正は、本明細書において含有される議論、開示、およびデータから、当業者にとって明らかであり、したがって、本発明の一部とみなされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PVAヒドロゲルを作製する方法であって、
a)ポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液をポリ(アクリル酸)(PAA)の水溶液に室温以上の温度で接触させることによって、均質PVA−PAA溶液を形成するステップと、
b)前記PVA−PAA溶液をポリエチレングリコール(PEG)の水溶液に接触させることによって、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成するステップと、
c)前記PVA−PAA−PEG溶液を室温以下に冷却することによって、PVAヒドロゲルを形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
PVAヒドロゲルを作製する方法であって、
a)ポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液をポリ(アクリル酸)(PAA)の水溶液に室温以上の温度で接触させることによって、均質PVA−PAA溶液を形成するステップと、
b)前記PVA−PAA溶液を鋳型に注入し、その後、室温まで冷却することによって、前記PVAヒドロゲルの形成を可能にするステップと、
c)前記PVAヒドロゲルを0℃以下の温度で凍結することによって冷却するステップと、
d)前記PVAヒドロゲルを0℃以上の温度で融解するステップと、
e)PVAヒドロゲルをPEG溶液に浸漬させることによって、前記PVAヒドロゲルへの前記PEGの拡散を可能にするステップと、
を含む、方法。
【請求項3】
PVAヒドロゲルを作製する方法であって、
a)ポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液をポリ(アクリル酸)(PAA)の水溶液に室温以上の温度で接触させることによって、均質PVA−PAA溶液を形成するステップと、
b)前記PVA−PAA溶液をポリエチレングリコール(PEG)の水溶液に接触させることによって、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成するステップと、
c)前記PVA−PAA−PEG溶液を鋳型に注入し、その後、室温まで冷却することによって、前記PVAヒドロゲルの形成を可能にするステップと、
d)前記PVAヒドロゲルを0℃以下の温度で凍結することによって冷却するステップと、
e)前記PVAヒドロゲルを0℃以上の温度で融解するステップと、
を含む、方法。
【請求項4】
前記PVA:PAA比率は、約99.9:0.1〜5:5である、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記PVA:PAA比率は、約99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、8:2、7:3、6:4、または5:5である、請求項4に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項6】
PVA−PAA溶液における全ポリマー含量は、約10%〜約50%である、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
PVA−PAA溶液における全ポリマー含量は、約15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、またはそれ以上である、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記PVAヒドロゲルは、前記PEG溶液に浸漬されることによって、前記PVAヒドロゲルへの前記PEGの拡散を可能にする、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記PVA−PAA溶液は、予熱した鋳型に注入し、その後、室温まで冷却することによって、前記PVAヒドロゲルの形成を可能にする、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記PVA−PAA−PEG溶液は、予熱した鋳型に注入し、その後、室温まで冷却することによって、前記PVAヒドロゲルの形成を可能にする、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記PVA溶液は、室温以上の温度から約90℃に加熱される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記PVA−PAA溶液は、室温以上の温度から約90℃に加熱される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記PVA−PAA溶液は、予熱した鋳型に注入し、その後、0℃以下で凍結させ、0℃以上の温度まで融解することによって、前記PVAヒドロゲルの形成を可能にする、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記PVA−PAAまたはPVA−PAA−PEG溶液は、予熱した鋳型に注入し、その後、0℃以下で凍結させ、0℃以上の温度まで融解することによって、前記PVAヒドロゲルの形成を可能にする、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記PVAヒドロゲルは、水または生理食塩水において再水和される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記PVAヒドロゲルは、前記ヒドロゲルの前記融解温度以下または以上の温度で加熱される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記凍結融解ステップは、少なくとも2〜100回繰り返される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記凍結融解ステップは、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上繰り返される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記PVAヒドロゲルは、前記含水量の一部または全部を除去するために脱水される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記ヒドロゲルの重量の少なくとも0.1%は、1つまたはそれ以上の非揮発性成分を構成する、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記PVA−PAAまたはPVA−PAA−PEG溶液は、予熱した鋳型に注入し、その後、室温まで冷却し、前記PVAヒドロゲルの形成を可能にする、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記PVAヒドロゲルは、
a)前記PVAヒドロゲルを有機溶媒に接触させるステップであって、前記ヒドロゲルは、前記溶媒において可溶性ではないポリマーを含み、前記溶媒は、水において少なくとも部分的に混和性である、ステップと、
b)前記ヒドロゲルを前記ヒドロゲルの前記融点以下または以上の温度まで加熱するステップと、
c)前記加熱したヒドロゲルを室温まで冷却するステップと、
を含む方法によって脱水される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記PVAヒドロゲルは、
a)前記PVAヒドロゲルを有機溶媒に接触させるステップであって、前記ヒドロゲルは、前記溶媒において可溶性ではないポリマーを含み、前記溶媒は、水において少なくとも部分的に混和性である、ステップと、
b)前記ヒドロゲルを室温で空気乾燥させるステップと、
を含む方法によって脱水される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記PVAヒドロゲルは、
a)前記PVAヒドロゲルを有機溶媒に接触させるステップであって、前記ヒドロゲルは、前記溶媒において可溶性ではないポリマーを含み、前記溶媒は、水において少なくとも部分的に混和性である、ステップと、
b)前記ヒドロゲルを少なくとも1回の凍結融解サイクルに供し、前記ヒドロゲルを室温まで温めるステップと、
を含む方法によって脱水される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記脱水は、前記ヒドロゲルを、
a)非溶媒であって、
i)前記非溶媒は、PEG、アルコール、アセトン、飽和食塩水、ビタミン、またはカルボン酸、アルカリ金属の塩の水溶液である、非溶媒、
ii)前記非溶媒は、水、PEG、ビタミン、ポリマー、エステル、プロテオグリカン、およびカルボン酸を含む、2つ以上の成分を含有する、非溶媒、または
b)超臨界流体、
に配置することによって行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記脱水は、前記ヒドロゲルを空気中に放置することによって行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記脱水は、前記ヒドロゲルを真空中に配置することによって行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記脱水は、前記ヒドロゲルを室温で真空中に配置することによって行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記脱水は、前記ヒドロゲルを高温で真空中に配置することによって行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記脱水は、約40℃〜200℃以上で行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記脱水は、約1時間以下、約5時間、約10時間、約24時間、数日間、または数週間、40℃以上、約80℃、80℃以上、約90℃、約100℃、100℃以上、約150℃、約160℃、160℃以上、約180℃、180℃以上、約200℃、または200℃以上で行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記脱水は、約1時間、約40℃、約80℃、約90℃、約100℃、約150℃、約160℃、約180℃、約200℃、または200℃以上で行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記脱水は、前記ヒドロゲルを空気中または不活性雰囲気において高温まで加熱することによって行われ、前記加熱速度は、約0.01℃/分から約10℃/分の範囲において遅いか、もしくは速く、または前記加熱は、前記真空もしくは空気脱水の後に行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記脱水は、100%の空気、100%の不活性ガス、0.1%〜99.9%の空気と混合した1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物、または0.1%〜99.9%の酸素を含有する1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物を含有する雰囲気において行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記脱水ヒドロゲルは、前記脱水ヒドロゲルを、
i)水、食塩溶液、リンゲル溶液、食塩水、緩衝液等に、
ii)湿度室、または
iii)室温もしくは高温、
に配置することによって再水和される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記方法は、約40℃〜約200℃以上の温度まで加熱するステップをさらに含む、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記PVAヒドロゲルは、平衡になるように再水和される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記PVAヒドロゲルは、水または塩溶液において再水和される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ゲル化前のPVAに富む領域およびPAAに富む領域へのPVA−PAA溶液のpH誘導相分離は、PAA含有PVAヒドロゲルの耐クリープ性を増加させる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
「混和性転移誘導」pH(pHmt)は、前記総ポリマー濃度、各ポリマーの分子量、PVA:PAA比率、前記溶液の塩濃度または前記イオン強度等から成る群より選択される因子によって異なる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
ゲル化前のPVA−PAA溶液の混和性は、前記PVA−PAA溶液のpH値をpHmt以下または以上に調整することによって制御される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
19:1のPVA:PAA比率を有する、1.654w/w%含水PAA溶液および25%全ポリマーを含有するPVA−PAA溶液のpHmtは、約3.0〜約5.5である、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
99:1のPVA:PAA比率を有する、0.332w/w%含水PAA溶液および25%全ポリマーを含有するPVA−PAA溶液のpHmtは、約1.5〜約5.5である、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
上記の請求項のいずれかに記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項45】
前記PVA:PAA比率は、約99.9:0.1〜5:5である、上記の請求項のいずれかに記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項46】
前記PVA:PAA比率は、約99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、8:2、7:3、6:4、または5:5である、請求項45に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項47】
PVA−PAA溶液における前記全ポリマー含量は、約15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、またはそれ以上である、上記の請求項のいずれかに記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項48】
前記PVAヒドロゲルは、PVA−PAAコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)PAAコポリマー、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒアルロン酸(HA)、およびポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)から成る群より選択される1つまたはそれ以上の親水性ポリマーを含む、上記の請求項のいずれかに記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項49】
前記ヒドロゲルは、水および/または1つもしくはそれ以上の他の成分を含む、上記の請求項のいずれかに記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項50】
前記成分は、PVA、PAA、PEG、および/または塩、プロテオグリカン、水溶性ポリマー、アミノ酸、アルコール、DMSO、水溶性ビタミンであり、前記成分は、水において部分的または完全に水溶性である、請求項49に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項51】
前記成分は、PEGであり、前記PEGは、水、エタノール、エチレングリコール、DMSO、または適切な溶媒の溶液中にある、請求項49に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項52】
前記成分は、非揮発性である、請求項49に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項53】
前記成分は、水において少なくとも部分的に混和性である、請求項49に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項54】
前記成分は、PEG、塩、NaCl、KCl、CaCl2、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、およびアミノ酸である、請求項49に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項55】
前記成分は、異なる分子量のPEG、または異なる分子量のPEGの混合物である、請求項49に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項56】
前記成分は、水混和性ポリマーである、請求項49に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項57】
前記水混和性ポリマーは、PEO、プルロニック、アミノ酸、プロテオグリカン、ポリビニルピロリドン、多糖類、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、コンドロイチン硫酸、またはデキストラン硫酸である、請求項56に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項58】
上記の請求項のいずれかに記載の工程によって作製される脱水ヒドロゲルを含むPVAヒドロゲル。
【請求項59】
上記の請求項のいずれかに記載のPVAヒドロゲルを含む医療移植片。
【請求項60】
挿入装置である、請求項59に記載の医療移植片。
【請求項61】
前記挿入装置は、ユニスペーサであり、前記ユニスペーサは、ヒトの関節における浮遊関節移植片である、請求項59に記載の医療移植片。
【請求項62】
前記ヒトの関節は、膝、腰、肩、肘、または上部もしくは四肢の関節である、請求項59に記載の医療移植片。
【請求項1】
PVAヒドロゲルを作製する方法であって、
a)ポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液をポリ(アクリル酸)(PAA)の水溶液に室温以上の温度で接触させることによって、均質PVA−PAA溶液を形成するステップと、
b)前記PVA−PAA溶液をポリエチレングリコール(PEG)の水溶液に接触させることによって、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成するステップと、
c)前記PVA−PAA−PEG溶液を室温以下に冷却することによって、PVAヒドロゲルを形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
PVAヒドロゲルを作製する方法であって、
a)ポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液をポリ(アクリル酸)(PAA)の水溶液に室温以上の温度で接触させることによって、均質PVA−PAA溶液を形成するステップと、
b)前記PVA−PAA溶液を鋳型に注入し、その後、室温まで冷却することによって、前記PVAヒドロゲルの形成を可能にするステップと、
c)前記PVAヒドロゲルを0℃以下の温度で凍結することによって冷却するステップと、
d)前記PVAヒドロゲルを0℃以上の温度で融解するステップと、
e)PVAヒドロゲルをPEG溶液に浸漬させることによって、前記PVAヒドロゲルへの前記PEGの拡散を可能にするステップと、
を含む、方法。
【請求項3】
PVAヒドロゲルを作製する方法であって、
a)ポリ(ビニルアルコール)(PVA)の水溶液をポリ(アクリル酸)(PAA)の水溶液に室温以上の温度で接触させることによって、均質PVA−PAA溶液を形成するステップと、
b)前記PVA−PAA溶液をポリエチレングリコール(PEG)の水溶液に接触させることによって、均質PVA−PAA−PEG溶液を形成するステップと、
c)前記PVA−PAA−PEG溶液を鋳型に注入し、その後、室温まで冷却することによって、前記PVAヒドロゲルの形成を可能にするステップと、
d)前記PVAヒドロゲルを0℃以下の温度で凍結することによって冷却するステップと、
e)前記PVAヒドロゲルを0℃以上の温度で融解するステップと、
を含む、方法。
【請求項4】
前記PVA:PAA比率は、約99.9:0.1〜5:5である、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記PVA:PAA比率は、約99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、8:2、7:3、6:4、または5:5である、請求項4に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項6】
PVA−PAA溶液における全ポリマー含量は、約10%〜約50%である、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
PVA−PAA溶液における全ポリマー含量は、約15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、またはそれ以上である、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記PVAヒドロゲルは、前記PEG溶液に浸漬されることによって、前記PVAヒドロゲルへの前記PEGの拡散を可能にする、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記PVA−PAA溶液は、予熱した鋳型に注入し、その後、室温まで冷却することによって、前記PVAヒドロゲルの形成を可能にする、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記PVA−PAA−PEG溶液は、予熱した鋳型に注入し、その後、室温まで冷却することによって、前記PVAヒドロゲルの形成を可能にする、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記PVA溶液は、室温以上の温度から約90℃に加熱される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記PVA−PAA溶液は、室温以上の温度から約90℃に加熱される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記PVA−PAA溶液は、予熱した鋳型に注入し、その後、0℃以下で凍結させ、0℃以上の温度まで融解することによって、前記PVAヒドロゲルの形成を可能にする、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記PVA−PAAまたはPVA−PAA−PEG溶液は、予熱した鋳型に注入し、その後、0℃以下で凍結させ、0℃以上の温度まで融解することによって、前記PVAヒドロゲルの形成を可能にする、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記PVAヒドロゲルは、水または生理食塩水において再水和される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記PVAヒドロゲルは、前記ヒドロゲルの前記融解温度以下または以上の温度で加熱される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記凍結融解ステップは、少なくとも2〜100回繰り返される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記凍結融解ステップは、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上繰り返される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記PVAヒドロゲルは、前記含水量の一部または全部を除去するために脱水される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記ヒドロゲルの重量の少なくとも0.1%は、1つまたはそれ以上の非揮発性成分を構成する、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記PVA−PAAまたはPVA−PAA−PEG溶液は、予熱した鋳型に注入し、その後、室温まで冷却し、前記PVAヒドロゲルの形成を可能にする、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記PVAヒドロゲルは、
a)前記PVAヒドロゲルを有機溶媒に接触させるステップであって、前記ヒドロゲルは、前記溶媒において可溶性ではないポリマーを含み、前記溶媒は、水において少なくとも部分的に混和性である、ステップと、
b)前記ヒドロゲルを前記ヒドロゲルの前記融点以下または以上の温度まで加熱するステップと、
c)前記加熱したヒドロゲルを室温まで冷却するステップと、
を含む方法によって脱水される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記PVAヒドロゲルは、
a)前記PVAヒドロゲルを有機溶媒に接触させるステップであって、前記ヒドロゲルは、前記溶媒において可溶性ではないポリマーを含み、前記溶媒は、水において少なくとも部分的に混和性である、ステップと、
b)前記ヒドロゲルを室温で空気乾燥させるステップと、
を含む方法によって脱水される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記PVAヒドロゲルは、
a)前記PVAヒドロゲルを有機溶媒に接触させるステップであって、前記ヒドロゲルは、前記溶媒において可溶性ではないポリマーを含み、前記溶媒は、水において少なくとも部分的に混和性である、ステップと、
b)前記ヒドロゲルを少なくとも1回の凍結融解サイクルに供し、前記ヒドロゲルを室温まで温めるステップと、
を含む方法によって脱水される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記脱水は、前記ヒドロゲルを、
a)非溶媒であって、
i)前記非溶媒は、PEG、アルコール、アセトン、飽和食塩水、ビタミン、またはカルボン酸、アルカリ金属の塩の水溶液である、非溶媒、
ii)前記非溶媒は、水、PEG、ビタミン、ポリマー、エステル、プロテオグリカン、およびカルボン酸を含む、2つ以上の成分を含有する、非溶媒、または
b)超臨界流体、
に配置することによって行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記脱水は、前記ヒドロゲルを空気中に放置することによって行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記脱水は、前記ヒドロゲルを真空中に配置することによって行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記脱水は、前記ヒドロゲルを室温で真空中に配置することによって行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記脱水は、前記ヒドロゲルを高温で真空中に配置することによって行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記脱水は、約40℃〜200℃以上で行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記脱水は、約1時間以下、約5時間、約10時間、約24時間、数日間、または数週間、40℃以上、約80℃、80℃以上、約90℃、約100℃、100℃以上、約150℃、約160℃、160℃以上、約180℃、180℃以上、約200℃、または200℃以上で行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記脱水は、約1時間、約40℃、約80℃、約90℃、約100℃、約150℃、約160℃、約180℃、約200℃、または200℃以上で行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記脱水は、前記ヒドロゲルを空気中または不活性雰囲気において高温まで加熱することによって行われ、前記加熱速度は、約0.01℃/分から約10℃/分の範囲において遅いか、もしくは速く、または前記加熱は、前記真空もしくは空気脱水の後に行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記脱水は、100%の空気、100%の不活性ガス、0.1%〜99.9%の空気と混合した1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物、または0.1%〜99.9%の酸素を含有する1つまたはそれ以上の不活性ガスの混合物を含有する雰囲気において行われる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記脱水ヒドロゲルは、前記脱水ヒドロゲルを、
i)水、食塩溶液、リンゲル溶液、食塩水、緩衝液等に、
ii)湿度室、または
iii)室温もしくは高温、
に配置することによって再水和される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記方法は、約40℃〜約200℃以上の温度まで加熱するステップをさらに含む、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記PVAヒドロゲルは、平衡になるように再水和される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記PVAヒドロゲルは、水または塩溶液において再水和される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ゲル化前のPVAに富む領域およびPAAに富む領域へのPVA−PAA溶液のpH誘導相分離は、PAA含有PVAヒドロゲルの耐クリープ性を増加させる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
「混和性転移誘導」pH(pHmt)は、前記総ポリマー濃度、各ポリマーの分子量、PVA:PAA比率、前記溶液の塩濃度または前記イオン強度等から成る群より選択される因子によって異なる、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
ゲル化前のPVA−PAA溶液の混和性は、前記PVA−PAA溶液のpH値をpHmt以下または以上に調整することによって制御される、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
19:1のPVA:PAA比率を有する、1.654w/w%含水PAA溶液および25%全ポリマーを含有するPVA−PAA溶液のpHmtは、約3.0〜約5.5である、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
99:1のPVA:PAA比率を有する、0.332w/w%含水PAA溶液および25%全ポリマーを含有するPVA−PAA溶液のpHmtは、約1.5〜約5.5である、上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
上記の請求項のいずれかに記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項45】
前記PVA:PAA比率は、約99.9:0.1〜5:5である、上記の請求項のいずれかに記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項46】
前記PVA:PAA比率は、約99.5:0.5、99:1、79:1、59:1、39:1、19:1、8:2、7:3、6:4、または5:5である、請求項45に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項47】
PVA−PAA溶液における前記全ポリマー含量は、約15%、20%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、またはそれ以上である、上記の請求項のいずれかに記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項48】
前記PVAヒドロゲルは、PVA−PAAコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)PAAコポリマー、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒアルロン酸(HA)、およびポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)から成る群より選択される1つまたはそれ以上の親水性ポリマーを含む、上記の請求項のいずれかに記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項49】
前記ヒドロゲルは、水および/または1つもしくはそれ以上の他の成分を含む、上記の請求項のいずれかに記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項50】
前記成分は、PVA、PAA、PEG、および/または塩、プロテオグリカン、水溶性ポリマー、アミノ酸、アルコール、DMSO、水溶性ビタミンであり、前記成分は、水において部分的または完全に水溶性である、請求項49に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項51】
前記成分は、PEGであり、前記PEGは、水、エタノール、エチレングリコール、DMSO、または適切な溶媒の溶液中にある、請求項49に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項52】
前記成分は、非揮発性である、請求項49に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項53】
前記成分は、水において少なくとも部分的に混和性である、請求項49に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項54】
前記成分は、PEG、塩、NaCl、KCl、CaCl2、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、およびアミノ酸である、請求項49に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項55】
前記成分は、異なる分子量のPEG、または異なる分子量のPEGの混合物である、請求項49に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項56】
前記成分は、水混和性ポリマーである、請求項49に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項57】
前記水混和性ポリマーは、PEO、プルロニック、アミノ酸、プロテオグリカン、ポリビニルピロリドン、多糖類、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、コンドロイチン硫酸、またはデキストラン硫酸である、請求項56に記載の工程によって作製されるPVAヒドロゲル。
【請求項58】
上記の請求項のいずれかに記載の工程によって作製される脱水ヒドロゲルを含むPVAヒドロゲル。
【請求項59】
上記の請求項のいずれかに記載のPVAヒドロゲルを含む医療移植片。
【請求項60】
挿入装置である、請求項59に記載の医療移植片。
【請求項61】
前記挿入装置は、ユニスペーサであり、前記ユニスペーサは、ヒトの関節における浮遊関節移植片である、請求項59に記載の医療移植片。
【請求項62】
前記ヒトの関節は、膝、腰、肩、肘、または上部もしくは四肢の関節である、請求項59に記載の医療移植片。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公表番号】特表2010−525154(P2010−525154A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506488(P2010−506488)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/061388
【国際公開番号】WO2008/131451
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(392015468)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション (14)
【氏名又は名称原語表記】THE GENERAL HOSPITAL CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/061388
【国際公開番号】WO2008/131451
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(392015468)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション (14)
【氏名又は名称原語表記】THE GENERAL HOSPITAL CORPORATION
【Fターム(参考)】
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